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特表2024-542115リナプラザングルレートのメシラート塩の多形体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】リナプラザングルレートのメシラート塩の多形体
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20241106BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C07D471/04 108
C07D471/04 CSP
A61K31/437
A61P1/04
A61P29/00
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526695
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2022080849
(87)【国際公開番号】W WO2023079093
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】2151355-1
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.CREMOPHOR
(71)【出願人】
【識別番号】522176768
【氏名又は名称】シンクルス・ファーマ・ホールディング・アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シェル・ヤリング
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ラーション
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA03
4C086CB05
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZB11
4C086ZB35
4C086ZC54
(57)【要約】
本発明は、5-{2-[({8-[(2,6-ジメチルベンジル)アミノ]-2,3-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル}カルボニル)-アミノ]エトキシ}-5-オキソペンタン酸(リナプラザングルレート)のメシラート塩の多形体、より詳細には、リナプラザングルレートのメシラート塩の形態A及び形態Bに関する。本発明はまた、このような多形体を含む医薬組成物、及び消化管炎症性疾患又は胃酸関連疾患、詳細には、びらん性胃食道逆流症(eGERD)の治療又は予防におけるこれらの多形体の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項2】
結晶性メシラート塩が室温にて94%の相対湿度で安定である、請求項1に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項3】
非化学量論的水和物である、請求項1又は2に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項4】
7.5±0.2、9.1±0.2、12.1±0.2、16.0±0.2、17.6±0.2、21.9、24.3±0.2、24.6±0.2、及び25.3±0.2からなるリストより選択される2θ値(°)に少なくとも2つのピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する形態Aである、請求項3に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項5】
形態Aが、7.5±0.2、9.1±0.2、16.0±0.2、及び17.6±0.2の2θ値(°)に少なくともピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する、請求項4に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項6】
形態Aが、7.5±0.2、9.1±0.2、12.1±0.2、16.0±0.2、17.6±0.2、21.9、24.3±0.2、24.6±0.2、及び25.3±0.2の2θ値(°)に少なくともピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する、請求項4に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項7】
実質的に図1又は図2に示す、CuKα放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する形態Aである、請求項3に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項8】
形態Aが約175℃から約200℃の間での吸熱を含むDSC曲線を有する、請求項4から7のいずれか一項に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項9】
6.4±0.2、7.0±0.2、9.4±0.2、14.6±0.2、15.6±0.2、18.2±0.2、21.8±0.2、23.4±0.2、24.4±0.2、及び25.4±0.2からなるリストより選択される2θ値(°)に少なくとも2つのピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する形態Bである、請求項3に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項10】
形態Bが、6.4±0.2、7.0±0.2、9.4±0.2、及び15.6±0.2の2θ値(°)に少なくともピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する、請求項9に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項11】
形態Bが6.4±0.2、7.0±0.2、9.4±0.2、15.6±0.2、18.2±0.2、23.4±0.2、及び25.4±0.2の2θ値(°)に少なくともピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する、請求項9に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項12】
実質的に図3に示す、CuKα放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する形態Bである、請求項3に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項13】
形態Bが、約100℃から約130℃の間での吸熱を含むDSC曲線を有する、請求項9から12のいずれか一項に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項14】
99%超の結晶化度を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項15】
1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤と組み合わせて、請求項1から14のいずれか一項に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩の治療的有効量を含む医薬組成物。
【請求項16】
療法における使用のための、請求項1から14のいずれか一項に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項17】
消化管炎症性疾患又は胃酸関連疾患の治療又は予防における使用のための、請求項1から14のいずれか一項に記載のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項18】
消化管炎症性疾患又は胃酸関連疾患が、胃炎、胃食道逆流症(GERD)、びらん性胃食道逆流症(eGERD)、H・ピロリ感染症、ゾリンジャーエリソン症候群、消化性潰瘍疾患(胃潰瘍及び十二指腸潰瘍を含む)、出血性胃潰瘍、胃食道逆流症の症状(胸焼け、吐き戻し及び悪心を含む)、ガストリノーマ、又は急性上部消化管出血である、請求項17に記載の使用のためのリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【請求項19】
消化管炎症性疾患又は胃酸関連疾患が、びらん性胃食道逆流症(eGERD)である、請求項17に記載の使用のためのリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月5日に出願されたスウェーデン国特許出願第2151355-1号の優先権を主張するものであり、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、5-{2-[({8-[(2,6-ジメチルベンジル)アミノ]-2,3-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル}カルボニル)-アミノ]エトキシ}-5-オキソペンタン酸(リナプラザングルレート(linaprazan glurate))のメシラート塩の多形体、より詳細には、リナプラザングルレートのメシラート塩の形態A及び形態Bに関する。本発明はまた、このような多形体を含む医薬組成物、及び消化管炎症性疾患又は胃酸関連疾患、詳細には、びらん性胃食道逆流症(eGERD)の治療又は予防におけるこれらの多形体の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
化合物リナプラザングルレート(5-{2-[({8-[(2,6-ジメチルベンジル)アミノ]-2,3-ジメチルイミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル}カルボニル)-アミノ]エトキシ}-5-オキソペンタン酸、X842として以前から知られている)は、国際公開第2010/063876号に開示されている。その構造を、以下に示す。このリナプラザングルレートは、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)であり、カリウムイオン競合型アシッドブロッカーは、壁細胞で胃水素カリウムポンプ(H/KATPアーゼ)を競合的に阻害する。したがって、リナプラザングルレートは、胃において胃酸の分泌を制御するために使用されうる。
【0004】
【化1】
【0005】
リナプラザングルレートはリナプラザンのプロドラッグであり、これは国際公開第99/55706号に開示されており、以前、フェーズI試験及びフェーズII試験で研究された。これらの研究により、リナプラザンは、作用の速やかな発現及び初回の投与での最大効果と共に、良好な耐容性を示すことが示された。しかし、リナプラザンは急速に体外に排出され、酸抑制の持続時間が短すぎた。それに対し、リナプラザングルレートは、体内での半減期がより長く、リナプラザンと比較してより長い間胃酸生成の完全な制御を示す。臨床フェーズI試験により、リナプラザングルレートの単回用量を投与することによって、pH4を超える胃内酸性度が24時間維持されうることが示された。したがって、リナプラザングルレートは、重度のびらん性胃食道逆流症(eGERD)の患者に適合する。
【0006】
医薬製剤における使用のために、医薬品有効成分(API)は高結晶性形態であることが望ましい。非結晶性(すなわち、アモルファス)物質はより高いレベルの残留溶媒を含有することがあり、これは望ましくない。また、その化学的安定性及び物理的安定性がより低いために、結晶性物質と比較すると、アモルファス物質は、より速い分解を示すことがあり、自然発生的にさまざまな結晶化度を有する結晶を形成することがある。これによって、再現できない(unreproducible)溶解速度並びに物質を保存及び取り扱う上での困難となりうる。
【0007】
リナプラザングルレートの遊離塩基の2つの結晶性形態は、CN10627915に開示されている。遊離塩基の形態A及び形態Bは無水物(anhydrates)であることがわかり、形態Aは非常に低い吸湿性を有することが示された。形態Aは、良好な物理的安定性及び化学的安定性を有し、高い結晶化度で得ることができるものの、これはpH6.8では実質的に水に不溶であり、pH1ではわずかに溶解する。溶解度が低いことによって、望ましい特性を有する製剤の開発が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/063876号
【特許文献2】国際公開第99/55706号
【特許文献3】CN10627915
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】R. Jenkins及びR. L. Snyder, "Introduction to X-ray powder diffractometry", John Wiley & Sons, 1996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、アモルファスのリナプラザングルレート及び以前に開示されたその結晶性形態よりも良い特性を有するリナプラザングルレートのさらなる結晶性形態が必要とされている。特に、本発明の一つの目的は、良好な溶解度を有し、低いレベルの残留溶媒しか含有せず、高い化学的安定性及び低い吸湿性を有し、高いレベルの結晶化度で得ることができるリナプラザングルレートの安定した結晶性形態を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】RTにおいて2-プロパノール中のスラリーから得られる、リナプラザングルレートのメシラート塩の形態AのX線粉末ディフラクトグラムを示す図である(「試料1」)。
図2】RTにおいてアセトン中のスラリーから得られる、リナプラザングルレートのメシラート塩の形態AのX線粉末ディフラクトグラムを示す図である(「試料2」)。
図3】MTBEを貧溶媒として使用してエタノールから結晶化される、リナプラザングルレートのメシラート塩の形態BのX線粉末ディフラクトグラムを示す図である。
図4】形態Aの試料1の熱重量分析(TGA)質量損失曲線を示す図である。
図5】形態Aの試料2のTGA質量損失曲線を示す図である。
図6】形態BのTGA質量損失曲線を示す図である。
図7】形態Aの試料1の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す図である。
図8】形態Aの試料2の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す図である。
図9】形態Bの示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す図である。
図10】形態Aの試料1の動的蒸気収着(dynamic vapour sorption)(DVS)質量変化プロット(A)及びDVS等温線プロット(B)を示す図である。
図11】形態Aの試料2の動的蒸気収着(DVS, dynamic vapour sorption)質量変化プロット(A)及びDVS等温線プロット(B)を示す図である。
図12】形態BのDVS質量変化プロット(A)及びDVS等温線プロット(B)を示す図である。
図13】胃液及び腸液(FaSSIF-V2、FeSSIF-V2及びFEDGAS)を模擬した培養液中の形態Aの溶解度(μg/mL)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特定の条件下でリナプラザングルレートのメシラート塩は、安定した結晶性形態(多形体)を形成しうることが発見された。高い結晶化度及び高い化学的安定性に加えて、これらの多形体は、リナプラザングルレートの遊離塩基の形態A及び形態Bよりも著しく高い溶解度を有する。したがって、この新規な多形体は、リナプラザングルレートの医薬組成物に有用であることが予想される。したがって、第1の態様において、本発明は、リナプラザングルレートの結晶性メシラート塩に関する。
【0013】
一部の実施形態において、本発明は、リナプラザングルレートの結晶性メシラート塩を提供し、結晶性メシラート塩は、室温にて94%の相対湿度(RH)において安定である。このような結晶性メシラート塩は、少なくとも1日、1週間、1か月、3か月、6か月、1年、2年、3年又は更に長い間、これらの条件下で安定であることができる。
【0014】
一部の実施形態において、結晶性メシラート塩は水和物、例えば、非化学量論的水和物である。
【0015】
一実施形態において、結晶性水和物は形態Aである。この高結晶性形態は、例えば、2-プロパノール、アセトン、MEK、アセトニトリル、THF若しくはトルエン中のスラリーからのリナプラザングルレートのメシラート塩から;アセトン若しくはTHFから、蒸発させることによって;DMFから及び酢酸エチル若しくはMTBEを貧溶媒として使用する貧溶媒結晶化によって;又は2-プロパノール、アセトン若しくはTHFから冷却させることによって、調製されうる。一実施形態において、形態Aは、7.5±0.2、9.1±0.2、12.1±0.2、16.0±0.2、17.6±0.2、21.9、24.3±0.2、24.6±0.2、及び25.3±0.2からなるリストより選択される2θ値(°)において少なくとも2つのピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるX線粉末回折(XRPD)パターンを有する。一部の実施形態において、形態Aは、16.0±0.2及び17.6±0.2の2θ値(°)、又は7.5±0.2及び17.6±0.2の2θ値(°)に少なくともピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する。一部の実施形態において、形態Aは、7.5±0.2、9.1±0.2、12.1±0.2、16.0±0.2、17.6±0.2、21.9、24.3±0.2、24.6±0.2及び25.3±0.2からなるリストより選択される2θ値(°)に少なくとも4つのピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する。一部の実施形態において、形態Aは、7.5±0.2、9.1±0.2、16.0±0.2及び17.6±0.2の2θ値(°)に少なくともピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する。一部の実施形態において、形態Aは、7.5±0.2、9.1±0.2、12.1±0.2、16.0±0.2、17.6±0.2、21.9、24.3±0.2、24.6±0.2及び25.3±0.2からなるリストより選択される2θ値(°)に少なくとも6つのピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する。一部の実施形態において、形態Aは、7.5±0.2、9.1±0.2、12.1±0.2、16.0±0.2、17.6±0.2、21.9、24.3±0.2、24.6±0.2及び25.3±0.2の2θ値(°)に少なくともピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する。特定の実施形態において、本発明は、実質的に図1又は図2に示されるCuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する形態Aに関する。別の特定の実施形態において、本発明は、実質的に表5又は表6に示すようなCuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する形態Aに関する。
【0016】
一部の実施形態において、形態Aは、約175℃から約200℃の間での吸熱を含むDSC曲線を有する。特定の実施形態において、形態Aは、およそ190℃での吸熱を含むDSC曲線を有する。
【0017】
形態Aの含水量は、相対湿度に応じて、約0から1.7%の間で変動しうる。水分取り込みは、相対湿度の上昇と共にほとんど直線的に増大する。したがって、結晶性非化学量論的水和物は、チャネル水和物(channel hydrate)として特徴付けることができる。形態Aは、2-プロパノール及びアセトンをチャネル構造に取り込むということが示されている。一部の実施形態において、形態Aは、25℃の温度において最大90%の相対湿度で安定である。
【0018】
別の実施形態において、結晶性水和物は形態Bである。この形態は、MTBEを貧溶媒として使用してエタノールから結晶化することによって調製されうる。一実施形態において、形態Bは、6.4±0.2、7.0±0.2、9.4±0.2、14.6±0.2、15.6±0.2、18.2±0.2、21.8±0.2、23.4±0.2、24.4±0.2及び25.4±0.2からなるリストより選択される2θ値において少なくとも2つのピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるX線粉末回折(XRPD)パターンを有する。一部の実施形態において、形態Bは、6.4±0.2及び7.0±0.2の2θ値(°)に少なくともピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する。一部の実施形態において、形態Bは、6.4±0.2、7.0±0.2、9.4±0.2、14.6±0.2、15.6±0.2、18.2±0.2、21.8±0.2、23.4±0.2、24.4±0.2及び25.4±0.2からなるリストより選択される2θ値(°)に少なくとも4つのピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する。一部の実施形態において、形態Bは、6.4±0.2、7.0±0.2、9.4±0.2及び15.6±0.2の2θ値(°)に少なくともピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する。一部の実施形態において、形態Bは、6.4±0.2、7.0±0.2、9.4±0.2及び15.6±0.2、並びに14.6±0.2、18.2±0.2、21.8±0.2、23.4±0.2、24.4±0.2及び25.4±0.2の1つ又は複数の2θ値(°)に少なくともピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する。一部の実施形態において、形態Bは、6.4±0.2、7.0±0.2、9.4±0.2、15.6±0.2、18.2±0.2、23.4±0.2及び25.4±0.2の2θ値(°)に少なくともピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する。一部の実施形態において、形態Bは、6.4±0.2、7.0±0.2、9.4±0.2、14.6±0.2,15.6±0.2、18.2±0.2、21.8±0.2,23.4±0.2、24.4±0.2及び25.4±0.2の2θ値(°)に少なくともピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する。一部の実施形態において、形態Bは、6.4±0.2、7.0±0.2、9.4±0.2、14.6±0.2,15.6±0.2、18.2±0.2、21.8±0.2,23.4±0.2、24.4±0.2及び25.4±0.2、並びに19.0±0.2、20.6±0.2、21.3±0.2、23.8±0.2及び27.0±0.2の1つ又は複数の2θ値(°)に少なくともピークを有する、CuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する。特定の実施形態において、本発明は、実質的に図3に示すようなCuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する形態Bに関する。別の特定の実施形態において、本発明は、実質的に表5又は表7に示すCuKα1放射線を用いて得られるXRPDパターンを有する形態Bに関する。
【0019】
一部の実施形態において、形態Bは、約100℃から約130℃の間に広い吸熱を含むDSC曲線を有する。
【0020】
0から90%RHの間で、形態Bの水分取り込みは、相対湿度の上昇と共にほとんど直線的に増大する。80%RHにおいて、形態Bの含水量は、約3.4%である。したがって、結晶性非化学量論的水和物は、チャネル水和物として特徴付けられる。形態Bは、エタノールをチャネル構造に取り込むことが示されている。一部の実施形態において、形態Bは、25℃の温度において最大90%の相対湿度で安定である。
【0021】
別の態様において、本発明は、1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤と合わせて、本明細書に開示されるようなリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩の治療的有効量を含む医薬組成物に関する。添加剤には、充填剤、結合剤、界面活性剤、崩壊剤、流動促進剤(glidants)及び滑沢剤が例えば含まれうる。一部の実施形態において、リナプラザングルレートの結晶性メシラート塩は、形態Aである。一部の実施形態において、リナプラザングルレートの結晶性メシラート塩は、形態Bである。
【0022】
一部の実施形態において、医薬組成物は、少なくとも約90%の多形純度を有する形態A又は形態B等のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩を含む。一部の実施形態において、多形純度は、少なくとも約95%である。一部の実施形態において、多形純度は、少なくとも約98%である。例えば、多形純度は、少なくとも約99%等の、少なくとも約99.5%等の、少なくとも約99.8%等の、又は少なくとも約99.9%等の、少なくとも98.5%であってよい。一部の実施形態において、リナプラザングルレートの結晶性メシラート塩を含む医薬組成物は、リナプラザングルレートの他の形態を実質的に含まない。例えば、一部の実施形態において、形態Aを含む医薬組成物は、リナプラザングルレートの形態B等のリナプラザングルレートの他の形態を実質的に含まない。一部の実施形態において、形態Aは、約15質量%未満のリナプラザングルレートの形態B又はリナプラザングルレートのその他の多形体を含有する。例えば、形態Aは、約14質量%未満、約13質量%、約12質量%、約11質量%、約10質量%、約9質量%、約8質量%、約7質量%、約6質量%、約5質量%、約4質量%、約3質量%、約2質量%、約1質量%又はそれ以下のリナプラザングルレートの形態B又はリナプラザングルレートのその他の多形体を含有する。他の実施形態において、形態Bは、約15質量%未満のリナプラザングルレートの形態A又はリナプラザングルレートのその他の多形体を含有する。例えば、形態Bは、約14質量%未満、約13質量%、約12質量%、約11質量%、約10質量%、約9質量%、約8質量%、約7質量%、約6質量%、約5質量%、約4質量%、約3質量%、約2質量%、約1質量%又はそれ以下のリナプラザングルレートの形態A又はリナプラザングルレートのその他の多形体を含有する。
【0023】
一部の実施形態において、医薬組成物は、約1質量%から約50質量%の間等の、又は約1質量%から約20質量%の間等の、約1質量%から約100質量%の間のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩を含みうる。例えば、組成物は、約1質量%から約10質量%の間、約5質量%から約15質量%の間及び約10質量%から約20質量%の間等の、又は約1質量%から約5質量%の間、約5質量%から約10質量%の間、約10質量%から約15質量%の間及び約15質量%から約20質量%の間等の、約1質量%から約15質量%の間、又は約5質量%から約20質量%の間のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩を含みうる。一部の実施形態において、組成物は、約20質量%、約19質量%、約18質量%、約17質量%、約16質量%、約15質量%、約14質量%、約13質量%、約12質量%、約11質量%、約10質量%、約9質量%、約8質量%、約7質量%、約6質量%、約5質量%、約4質量%、約3質量%、約2質量%又は約1質量%のリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩を含む。
【0024】
一部の実施形態において、組成物は、リナプラザングルレートの結晶性メシラート塩の約25mg~約150mgの単位用量を含む。例えば、組成物は、約25mg~約50mgの間、約50mg~約75mgの間、約75mg~約100mgの間、約100mg~約125mgの間、又は約125mg~約150mgの間で含むことができる。一部の実施形態において、組成物は、約25mg、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、約125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、又は約150mgのリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩を含む。1日用量は、単回用量として又は2つ、3つ若しくはそれ以上の単位用量に分割して投与されてもよい。
【0025】
一部の実施形態において、医薬組成物は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤であってもよい。カチオン性界面活性剤の例としては、セチルトリメチルアンモニウム臭化物(臭化セトリモニウム)及びセチルピリジニウム塩化物が挙げられるが、それだけに限定されない。アニオン性界面活性剤の例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)及びドデシル硫酸アンモニウム(ラウリル硫酸アンモニウム)が挙げられるが、それだけに限定されない。非イオン性界面活性剤の例としては、グリセロールモノオレアート、グリセロールモノステアラート、ポリオキシルヒマシ油(Cremophor EL)、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー407又はポロキサマー188)、ポリソルベート80及びソルビタンエステル(Tween)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0026】
一部の実施形態において、医薬組成物は、充填剤(フィラー)を含む。好適な充填剤の例としては、リン酸二カルシウム二水和物(dicalcium phosphate dihydrate)、硫酸カルシウム、ラクトース(ラクトース一水和物等)、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、微結晶性セルロース、乾燥デンプン、加水分解デンプン及びアルファ化デンプンが含まれるが、それらに限定されない。
【0027】
一部の実施形態において、医薬組成物は、結合剤(バインダー)を含む。好適な結合剤の例としては、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、ブドウ糖、ラクトース及びソルビトール等)、ポリエチレングリコール、ワックス、天然ゴム及び合成ゴム(アカシアゴム及びトラガカントゴム等)、アルギン酸ナトリウム、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(又はヒプロメロース)、ヒドロキシプロピルセルロース及びエチルセルロース等)並びに合成ポリマー(アクリル酸及びメタクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸コポリマー並びにポリビニルピロリドン(ポビドン)等)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0028】
一部の実施形態において、医薬組成物は、崩壊剤を含む。好適な崩壊剤の例には、乾燥デンプン、加工デンプン((部分)アルファ化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム及びカルボキシメチルスターチナトリウム(sodium carboxymethyl starch)等)、アルギン酸、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及び低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)等)並びに架橋ポリマー(カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム及び架橋PVP(クロスポビドン)等)が含まれるが、それらに限定されない。
【0029】
一部の実施形態において、医薬組成物は、流動促進剤又は滑沢剤を含む。好適な流動促進剤及び滑沢剤の例としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、コロイド状無水シリカ、水性二酸化ケイ素、合成ケイ酸マグネシウム、細粒状酸化ケイ素、デンプン、ラウリル硫酸ナトリウム、ホウ酸、酸化マグネシウム、ワックス(カルナウバワックス等)、硬化油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、及び鉱物油が含まれるが、それらに限定されない。
【0030】
一般に、医薬組成物は、従来の添加剤を使用して従来の形態で調製できる。一部の実施形態において、製剤の成分は均一な混合物に混合され、ついで錠剤又はカプセル剤として製剤化される。成分の均一な混合物は、ロータリー打錠機等の従来の技術を使用して錠剤に圧縮されてもよい。成分の混合物は、造粒されてもよい。例えば、成分の混合物は、水及び/又は適切な有機溶媒(例えば、エタノール又はイソプロパノール)等の液体を添加することによって湿らせ、その後造粒し乾燥されてもよい。或いは、顆粒は、ローラー圧縮によってなどの、乾式造粒によって調製されてもよい。得られた顆粒は、従来の技術を使用して錠剤に圧縮されてもよい。カプセル剤は、成分の粉末混合物又は成分の小さな多粒子(multiparticulates)(顆粒、押し出されたペレット又はミニ錠剤(minitablets)等)を含んでもよい。望ましい場合には、上記の錠剤、カプセル剤、顆粒、押し出されたペレット及びミニ錠剤のいずれかは、1つ又は複数のコーティング層で被覆されてもよい。このようなコーティング層は、穴のあいたパン(perforated pans)及び流動床を含むフィルムコーティングによるなど、当分野で公知の方法によって施されてもよい。一部の実施形態において、製剤は錠剤の形態である。
【0031】
血流中への吸収に続いて、リナプラザングルレートは、活性代謝物であるリナプラザンへと急速に代謝される。リナプラザングルレートの血漿中濃度は非常に低く、測定することは困難であるが、代わりにリナプラザンの血漿中濃度を測定してもよい。フェーズI試験により、リナプラザングルレートの特定の用量によって、投与後pH4を超える胃内Phが24時間維持されうるはずであることが示された。これには、22時間後少なくとも約240nmol/Lのリナプラザンの最小血漿中濃度(Cmin)が必要であると推定される。このような用量では、製剤の1日1回の経口投与で十分であろう。したがって、一部の実施形態において、リナプラザングルレートの医薬組成物の単回単位用量によって、ヒトへの医薬組成物の経口投与の後、22時間後に少なくとも約240nmol/Lの前記ヒトにおけるリナプラザンのCminがもたらされる。他の実施形態において、リナプラザングルレートの医薬組成物の2単位用量の連日投与によって、ヒトへの医薬組成物の最後の単位用量の経口投与の後、10時間後に少なくとも約240nmol/Lの、ヒトにおけるリナプラザンのCminがもたらされる。
【0032】
一つの側面において、本発明は、療法における使用のための本明細書に開示されるリナプラザングルレートのメシラート塩の結晶性形態に関する。
【0033】
本明細書に開示されるリナプラザングルレートのメシラート塩の結晶性形態は、胃酸分泌の抑制が必要であるか又は望ましい、疾患又は状態の治療又は予防、例えばH・ピロリ(H.pylori)の根絶において使用されてもよい。このような疾患及び状態の例には、胃炎、胃食道逆流症(GERD)、びらん性胃食道逆流症(eGERD)、H・ピロリ感染症、ゾリンジャーエリソン症候群、消化性潰瘍疾患(胃潰瘍及び十二指腸潰瘍を含む)、出血性胃潰瘍、胃食道逆流症の症状(胸焼け、吐き戻し及び悪心を含む)、ガストリノーマ及び急性上部消化管出血等の消化管炎症性疾患及び胃酸関連疾患が含まれる。
【0034】
したがって、一つの側面において、本発明は、必要とする対象における消化管炎症性疾患又は胃酸関連疾患の治療方法又は予防方法に関し、本明細書に開示されるようなリナプラザングルレートのメシラート塩の結晶性形態の治療的有効量を含む医薬組成物を投与することを含む。一部の実施形態において、リナプラザングルレートのメシラート塩の結晶性形態は、形態Aである。一部の実施形態において、リナプラザングルレートのメシラート塩の結晶性形態は、形態Bである。
【0035】
一部の実施形態において、GERDの治療は、GERDのオンデマンド治療である。
【0036】
別の側面において、本発明は、消化管炎症性疾患又は胃酸関連疾患の治療又は予防における使用のための本明細書に開示されるリナプラザングルレートの結晶性メシラート塩の治療的有効量を含む医薬組成物に関する。
【0037】
本明細書では、「多形体」という用語は、結晶格子中の分子の順序の結果として、異なる物理的特性を有する同一の分子の結晶を指す。単一化合物の多形体は、1つ又は複数の互いに異なる化学的特性、物理的特性、機械的特性、電気的特性、熱力学的特性、及び/又は生物学的特性を有する。多形体によって示される物理的特性の差は、保存安定性、圧縮性、密度(組成物及び製品の製造において重要)、溶解速度(バイオアベイラビリティの測定における重要な因子)、溶解度、融点、化学的安定性、物理的安定性、粉末流動性、水分収着、圧密、及び粒子形態等の薬学的パラメータに影響を及ぼす場合がある。安定性の差は、化学的反応性における変化(例えば、1つの多形体からなる場合、別の多形体からなる場合よりも剤形が速く変色するような、異なった酸化)、若しくは機械的変化(例えば、動力学的に好まれる多形体が、熱力学的により安定な多形体に変質するように、保存時に結晶が変化する)又は両方(例えば、1つの多形体は、他の多形体よりも吸湿性である)により生じうる。溶解度/溶解の差の結果として、いくつかの転移は、効力及び/又は毒性に影響を及ぼす。更に、結晶の物理的特性は、加工において重要であることもあり、例えば、1つの多形体は、溶媒和物を形成する可能性が高いことがあるか、又は不純物を濾過し、洗い落とすことは困難なことがある(すなわち、粒子形状及び粒径分布が、1つの多形体と他の多形体との間で異なることがある)。「多形体」は、化合物のアモルファス形態を含まない。
【0038】
本明細書では、「アモルファス」という用語は、化合物の固体状態形態(solid state form)又は化合物の可溶化形態でありうる化合物の非結晶性形態を指す。例えば、「アモルファス」は、分子又は外表面(external face planes)の規則的に繰り返される配列を伴わない化合物を指す。
【0039】
本明細書では、リナプラザングルレートの多形体を含む組成物に関して使用される場合の「多形純度」という用語は、参照される組成物中のリナプラザングルレートの別の多形体又はアモルファス形態に対する1つの特定の多形体の割合を指す。例えば、多形純度90%を有する形態Aを含む組成物は、形態Aを90質量部及びリナプラザングルレートの他の結晶性形態及び/又はアモルファス形態を10質量部含むことになる。
【0040】
本明細書では、「有効量」又は「治療的有効量」という用語は、対象へ投与の後、治療される疾患又は状態の1つ又は複数の症状をある程度緩和するであろうリナプラザングルレートの十分な量を指す。結果には、疾患の兆候、症状、若しくは原因の軽減及び/若しくは緩和、又は生体システムのその他の望ましい変化が含まれる。例えば、治療上の使用のための「有効量」は、疾患症状の臨床的に顕著な減少をもたらすために必要とされるリナプラザングルレートの量である。任意の個々の症例における適切な「有効」量は、用量漸増試験等の任意の好適な技術を使用して決定される。
【0041】
本明細書では、「治療」、「治療する」及び「治療すること」という用語は、本明細書に記載の疾患若しくは障害、若しくはその1つ若しくは複数の症状の発症を反転させること、緩和すること、遅延させること、又は本明細書に記載の疾患若しくは障害、若しくはその1つ若しくは複数の症状の進行を阻害することを指す。一部の実施形態において、治療は、1つ又は複数の症状が発症してから施されてもよい。他の実施形態において、治療は、症状の非存在下で施されてもよい。例えば、治療は、感染しやすい人に(例えば、症状の病歴を考慮して、及び/又は、遺伝因子若しくは他の感受性因子を考慮して)症状が発症するより前に施されてもよい。治療はまた、例えば、症状の再発を予防又は遅延させるために、症状が回復した後も継続されてもよい。
【0042】
本明細書では、「薬学的に許容される」という用語は、ヒトの薬学的使用に適し、一般に安全で、無毒性かつ生物学的にもその他の点でも望ましくないものではないこれらの化合物、物質、組成物及び/又は剤形を指す。
【0043】
本明細書では、化合物又は組成物は、この化合物又は組成物がその他の成分を有意な量で含有しない場合、1つ又は複数の他の成分を「実質的に含まない」。このような成分には、出発物質、残留溶媒等の不純物、又は本明細書で提供される化合物及び組成物の調製及び/若しくは単離によって生じる場合があるその他の不純物が含まれうる。一部の実施形態において、本明細書で提供される多形形態は、他の多形形態を実質的に含まない。一部の実施形態において、本明細書で提供される多形体は、不純物を「実質的に含まない」。特定の多形体の純度は、約95%(w/w)超等、約97%(w/w)超等、又は約99%(w/w)超等、約90%(w/w)超であることが好ましい。一部の実施形態において、特定の多形体の純度は、99.5%(w/w)超、又は更には99.9%(w/w)超である。一部の実施形態において、特定の多形体の不純物は、約0.5%(w/w)未満等、又は約0.1%(w/w)未満等、約1%(w/w)未満である。不純物の総量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって測定される。
【0044】
一部の実施形態において、リナプラザングルレートの特定の多形体は、この特定の多形体が存在するリナプラザングルレートの少なくとも約95質量%を構成する場合、他の多形体を「実質的に含まない」。一部の実施形態において、リナプラザングルレートの特定の多形体は、この特定の多形体が存在するリナプラザングルレートの少なくとも約97質量%、約98質量%、約99質量%、又は約99.5質量%を構成する場合、他の多形体を「実質的に含まない」。
【0045】
本明細書では、化合物は、例えば、この化合物の少なくとも約60%質量、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、又は少なくとも約90質量%がその多形体の形態である場合等、化合物の少なくとも約50質量%がその多形体の形態である場合、所定の多形体として「実質的に存在する」。一部の実施形態において、化合物の少なくとも約96質量%等、少なくとも約97質量%等、少なくとも約98質量%等、少なくとも約99質量%等又は少なくとも約99.5%等、少なくとも約95質量%がその多形体の形態である。
【0046】
本明細書では、「安定な」という用語は、多形体が、経時的に1つ又は複数の多形形態(例えば、特定の形態の増加又は減少)、外見、pH、パーセント不純物、活性(in vitroアッセイによって測定される)、又はモル浸透圧濃度の変化を示さないことを意味する。一部の実施形態において、本明細書で提供される多形体は、少なくとも1、2、3、又は4週間安定である。例えば、多形体は、1つ又は複数の多形形態(例えば、特定の形態の増加又は減少)、外見、pH、パーセント不純物、活性(in vitroアッセイによって測定される)、又はモル浸透圧濃度の変化を、少なくとも1、2、3、又は4週間にわたって示さない。一部の実施形態において、本明細書で提供される多形体は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12か月間安定である。例えば、多形体は、1つ又は複数の多形形態(例えば、特定の形態の増加又は減少)、外見、pH、パーセント不純物、活性(in vitroアッセイによって測定される)、又はモル浸透圧濃度の変化を、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12か月間にわたって示さない。上記において、「変化を示さない」という語句は、当該の期間にわたるパラメータのいずれかについて測定される5%未満(例えば、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満)の変化を指す。
【0047】
リナプラザングルレートのメシラート塩の多形体の結晶化度は、例えば、X線粉末回折(XRPD)法によって、又は示差走査熱量測定(DSC)法によって測定されうる。本明細書において結晶性化合物について言及する場合には、結晶化度は、約80%超、詳細には約90%超、より詳細には約95%超等、約70%超であることが好ましい。一部の実施形態において、結晶化度は、約98%超である。一部の実施形態において、結晶化度は、約99%超である。%結晶化度は、結晶性である全試料質量の質量パーセントを指す。
【0048】
本明細書では、「約」という用語は、その値又はパラメータ自体を対象にする実施形態を含む(及び記載する)本明細書における値又はパラメータを指す。例えば、「約20」を指す記述は、「20」の記述を含む。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。一般的に言えば、「約」という用語は、変数の表示値、及び表示値の実験誤差の範囲内(例えば、平均に関する95%信頼区間の範囲内)又は表示値の10%の範囲内であり、どちらか大きい方の変数の全ての値を指す。
【0049】
これから本発明を、いかなる点においても本発明を限定するものではない以下の実施例によって説明する。本明細書で言及される全ての引用された文献及び参照は、その全体が参照により組み込まれる。
【0050】
略語
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
MEK メチルエチルケトン
MTBE メチルtert-ブチルエーテル
MeOH メタノール
RH 相対湿度
THF テトラヒドロフラン
【0051】
実験方法
一般的方法
H-NMRスペクトルを、25℃においてBruker社の400MHz機器で記録し、使用した重水素化溶媒:DMSO-d(δ2.50ppm)中の残留プロトン性溶媒を基準とした。
【0052】
分析的HPLC-MCを、エレクトロスプレーインターフェース(electrospray interface)及びUVダイオードアレイ検出器を備えたAgilent1100シリーズ液体クロマトグラフィー/質量選択検出器(MSD)(シングル四重極)を使用して行った。分析は、3分にわたり流量1mL/分で、0.1%水性TFA中のアセトニトリルの勾配で、ACE3C8(3.0×50mm)カラムを使用して行った。
【0053】
溶解度研究のために、HPLCを、DAD分光計を備えたAgilent1100シリーズ液体クロマトグラフィーシステムを使用して行った。分析を、30℃でWaters社のXBridge BEH C18カラム(4.6×100mm、2.5μm)を使用して行った。移動相:A=水中の0.1%ギ酸、B=アセトニトリル中の0.1%ギ酸。流量0.8mL/分。移動相プログラムは以下に示す通りである。
【0054】
【表1】
【0055】
X線粉末回折(XRPD)分析
分析を、Cu陽極(45kV、40mA)を備えたPanAlytical社のX’Pert Pro回折計、Kα-1 Johansson単色光分光器(Kα-1 Johansson monochromator)(1.540598Å)及びPixcel検出器で行った。2θ範囲は、0.013°のステップサイズ及び0.10°/s(「6分走査」)又は0.03°/s(「20分走査」)の走査速度を使用して2~35°であった。低速スピン試料ホルダー(Slow spinning sample holders)を使用した。試料を、Siゼロバックグラウンドウェハに塗り付け、平らな粉末状の表面を得た。測定を、プログラム可能な入射発散スリット(incident divergency slit)を使用して行った。
【0056】
当分野において、測定条件(使用される装置、試料調製物又は機械等の)に応じて、1つ又は複数の測定誤差を有するX線粉末回折パターンが得られることは公知である。特に、測定条件及び試料調製物に応じてXRPDパターンの強度が増減しうることは一般に公知である。例えば、XRPDの当業者であれば、試験下の試料の配向、並びに使用される機器のタイプ及び設定に応じて、ピークの相対強度が変動しうることを理解するであろう。当業者であれば、試料が回折計中に位置する正確な高さ及び回折計のゼロ較正によって、反射の位置が影響されうることも理解するであろう。試料の表面平面性も小さな影響を及ぼすことがある。したがって、当業者であれば、本明細書に提示される回折パターンは、絶対的なものとして解釈するべきではなく、本明細書に開示される粉末回折パターンと実質的に同一である粉末回折パターンをもたらすいかなる結晶性形態も本開示の範囲内に入ることを理解するであろう(さらなる情報については、R. Jenkins及びR.L.Snyder, "Introduction to X-ray powder diffractometry", John Wiley & Sons, 1996を参照されたい)。
【0057】
熱重量分析(TGA)
分析をPerkinElmer社のTGA7機器で行った。
【0058】
方法1:試料数mgを、オープンPtパンに静かに入れ、10℃/分の連続的なスキャンスピードを使用して25~140℃で、続いて140℃にて60分間等温工程で(乾燥過程が60分前に完了した場合、手動で終了した)、不活性雰囲気を確実にするために乾燥窒素ガスの流量(20mL/分)で、質量分析した。
【0059】
方法2:試料数mgを、オープンPtパンに静かに入れ、10℃/分の連続的なスキャンスピードを使用して25~30℃で、続いて30℃にて15分間等温工程で、不活性雰囲気を確実にするために乾燥窒素ガスの流量(20mL/分)で、質量分析した。ついで、10℃/分の連続的なスキャンスピードを使用して温度を30~110℃に上昇させ、最終的に110℃にて44分間の等温工程で終了した(分析は手動で終了した)。
【0060】
示差走査熱量測定(DSC, Differential scanning calorimetry)
分析は、Netzsch社のDSC204F1機器で行った。
【0061】
試料数mgをAlパンに静かに入れ、秤量した。予め小さな穴が開けられた蓋をパンに適合させ圧着した。10℃/分の加熱速度で従来のDSCを用いた。最低温度(開始)は0℃であり、最高温度は250℃であった。
【0062】
動的蒸気収着(DVS, Dynamic vapor sorption)
分析を、SMS社のDVS-1機器で行った。
【0063】
方法1:物質数mgをAlパンに入れ、開ループモードを使用して0-10-20-30-40-50-60-70-80-90-80-70-60-50-40-30-20-10-0%RHにしたがって、2つの同一の連続サイクルの間に段階的なRH変化に曝露させた。実験を、200mL/分のガス流量を使用し、25℃で行った。12時間の固定時間に設定した第1の段階を除いて、全ての工程について、適用したdm/dt基準は、360分の最大許容時間及び10分の最小許容時間の5分のウィンドウで0.001質量%/分であった。
【0064】
方法2:物質数mgをAlパンに入れ、開ループモードを使用して0-10-20-30-40-50-60-70-80-90-80-70-60-50-40-30-20-10-0%RHにしたがって、2つの同一の連続サイクルの間に段階的なRH変化に曝露させた。実験を、200mL/分のガス流量を使用し、25℃で行った。全ての工程について、適用したdm/dt基準は、360分の最大許容時間及び10分の最小許容時間の5分のウィンドウで0.001質量%/分であった。
【0065】
方法3:物質数mgをAlパンに入れ、開ループモードを使用して0-10-20-30-40-50-60-70-80-90-80-70-60-50-40-30-20-10-0%RHにしたがって、2つの同一の連続サイクルの間に段階的なRH変化に曝露させた。実験を、200mL/分のガス流量を使用し、25℃で行った。6時間の固定時間に設定した第1の段階を除いて、全ての工程について、適用したdm/dt基準は、360分の最大許容時間及び10分の最小許容時間の5分のウィンドウで0.001質量%/分であった。
【実施例
【0066】
(実施例1)
<リナプラザングルレートのメシラート塩の調製>
リナプラザングルレート(0.500g、1.04mmol)を、22℃で2-プロパノール(25mL)に懸濁させ、懸濁液を撹拌した。メチルスルホン酸(99.0mg、1.03mmol)を添加し、得られた混合物を80℃まで加熱して、全ての固体を完全に溶解させた。ついでその溶液を、減圧下で濃縮した。収率:103%(0.615g、無色の粉末)、LCMSにより純度100%。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 13.70 (s, 1H), 12.07 (s, 1H), 8.92 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 8.35 (d, J = 1.3 Hz, 1H), 7.51-6.98 (m, 4H), 6.08 (s, 1H), 4.42 (d, J = 3.9 Hz, 2H), 4.21 (t, J = 5.7 Hz, 2H), 3.58 (q, J = 5.7 Hz, 2H), 2.44-2.21 (m, 15H), 1.74 (p, J = 7.4 Hz, 2H)。MS: (ESI+) m/z 481 (M+H)。
【0067】
(実施例2)
<多形体スクリーニング>
リナプラザングルレートのメシラート塩に対して、溶解度、多形性及び熱力学的安定性を測定するために、多形体スクリーニングを行った。
【0068】
X線粉末回折(XRPD)、熱重量分析(TGA)、及び示差走査熱量測定(DSC)により、スクリーニングのために使用した製剤原料が完全にアモルファスであることが示された。結晶化実験の前に、製剤原料の溶解度を、>20の溶媒及び溶媒混合物中で測定した。
【0069】
<スラリー実験>:
スラリー実験を、様々な溶媒中で行った。およそ30~120mgの薬剤物質を、室温にて及び40℃にて、多くの異なる純溶媒及び二成分溶媒中でスラリー化した。スラリーを調製する前に、全ての溶媒を、分子ふるいを添加することによって乾燥させた。別段の記載が無い限り、13日後に固相を単離し、XRPDで分析した。表1に示す実験で、結晶性固体形態を得た。
【0070】
【表2】
【0071】
<蒸発実験>:
実験を、リナプラザングルレートのメシラート塩が十分に高い溶解度を有することがわかった溶媒中で行った。溶液を調製する前に、全ての溶媒を、分子ふるいを添加することによって乾燥させた。およそ10~25mgの薬剤物質を溶解し、ゆっくり蒸発するようにバイアル中又は直接XRPDゼロバックグラウンドプレート上に放置した。実験を、室温にて、40℃にて、又は45℃にて、且つ環境中の相対湿度(ambient relative humidity)において行った。結晶性固体形態を、表2に示す実験で得た。
【0072】
【表3】
【0073】
<貧溶媒結晶化>:
リナプラザングルレートのメシラート塩がほとんど不溶性である特定の貧溶媒と共に、リナプラザングルレートのメシラート塩が高い溶解度を有することがわかった特定の溶媒から、結晶化を行った。実験を行う前に、全ての溶媒を、分子ふるいを添加することによって乾燥させた。薬剤物質を溶媒1及び溶媒2に溶解し、ついで0.2mLずつ加えた。別段の記載がない限り、試料をRT(室温)で保存した。表3に示す実験で、結晶性固体形態を得た。
【0074】
【表4】
【0075】
<冷却実験>:
対応するスラリー実験で固体物質が形成した選択された溶媒中で、冷却実験を行った。最初に約25mgの薬剤物質を室温で溶解し、又は部分的に溶解し、続いて固体物質を沈殿させた。沈殿の後、澄明な上澄みを新しいバイアルに移し、約45℃まで加熱して、薬剤物質を完全に溶解させた。ついでバイアルを5℃の冷蔵庫に置いた。表4に示す実験で、結晶性固体形態を得た。
【0076】
【表5】
【0077】
RT(室温)において、2-プロパノール中のスラリーから得られる形態A(「試料1」)のXRPDピークを、下の表5に記載している。形態Aの試料1のディフラクトグラムを、図1に示している。
【0078】
【表6A】
【0079】
【表6B】
【0080】
RTにおいてアセトン中のスラリーから得られる形態A(「試料2」)のXRPDピークを、下の表6に記載している。形態Aの試料2のディフラクトグラムを、図2に示す。
【0081】
【表7A】
【0082】
【表7B】
【0083】
MTBEを貧溶媒として使用してエタノールから結晶化した形態BのXRPDピークを、下の表7に記載している。形態Bのディフラクトグラムを、図3に示す。
【0084】
【表8】
【0085】
ピリジン中のスラリー実験で得たピリジン溶媒和物は、高結晶性固体形態であったが、薬学的に実施可能であるとは考えられなかった。TGA実験によって、この形態がリナプラザングルレートのメシラート塩の1モルあたりピリジン約2モルを含有することが確認された。
【0086】
(実施例3)
<熱重量分析>
方法1を使用して形態Aを分析した。形態Aの試料1及び試料2は、25~140℃まで加熱すると、それぞれ1.2%及び1.1%の質量損失を示した。形態Aは、非化学量論的溶媒和物/水和物であると結論づけた(1:1プロパノール溶媒和物は9%の質量損失があり、1:1水和物は3%の質量損失があったであろう)。形態Aの試料1及び試料2のTGA質量損失曲線を、それぞれ図4及び図5に示す。
【0087】
TGA実験の後、形態Aの試料1のXRPD分析によって、この形態が残っていたことが確認された(ディフラクトグラムは示していない)。
【0088】
方法2を使用して形態Bを分析した。試料(MTBEを貧溶媒として使用してエタノールからの結晶化によって得た)を、緩い結合水を放出するために30℃で等温的に乾燥させ、ついで可能性のある溶媒和物から溶媒を放出するために110℃で等温的に乾燥させた。緩い結合溶媒を除外した場合、形態Bの質量損失は2.9%と算出した。質量損失は、水分の放出に起因する。形態Bは、非化学量論的溶媒和物であると結論づけた(1:1エタノール溶媒和物は7.4%の質量損失があり、1:1MTBE溶媒和物は13.3%の質量損失があったであろう)。形態BのTGA質量損失曲線を、図6に示す。
【0089】
(実施例4)
<示差走査熱量測定(DSC)分析>
形態Aの試料1(2-プロパノール中のスラリーから得た)は、およそ190℃(開始)において単一の吸熱イベントを示し、これは結晶の融解に起因しうる。形態Aの試料2(アセトン中のスラリーから得た)を、凝集体を取り除くために軽く粉砕し、ついでDSCるつぼにぎっしりと詰めた。試料は、およそ180℃(開始)において広域の吸熱を示し、融解温度領域における2つの重複するイベントを示唆した。形態Aの試料1及び試料2のDSCサーモグラムを、それぞれ図7及び図8に示す。
【0090】
形態Bの試料は、およそ120℃において1つの広域の吸熱イベントのみを示し、これは同時の溶媒放出及び融解として解釈される。形態BのDSCサーモグラムを、図9に示す。
【0091】
(実施例5)
<動的蒸気収着(DVS)分析>
形態Aの試料1(2-プロパノール中のスラリーから得た)の吸湿性を、方法1を使用して調べた。質量変化プロットは、2つの同時イベント、すなわち相対湿度の上昇に伴う直線的な水分取り込み及び溶媒(2-プロパノール)の放出を示す。直線的な収着(sorption)及び脱着(desorption)は、周囲雰囲気における湿度の変化に応じて、結晶構造が、水分が吸収されうるか又は放出されうるチャネル又は空隙を含んでいることを意味している。小さい溶媒分子(2-プロパノールのような)が、これらのチャネル又は空隙を占めるという可能性がある。DVS実験において、最初に、溶媒分子は0%RHで乾燥させることによって放出され、ついでRHが上昇するにつれて、水分子によって置換される。質量変化プロット及び収着等温線プロットを、それぞれ図10A及び図10Bに示す。
【0092】
形態Aの試料2(アセトン中のスラリーから得た)について、方法2を使用してTGA乾燥試料を調べた。質量変化曲線の2つのサイクルは同一ではない。第1のサイクルは、DVS実験に先行するTGA乾燥手順によって影響されうる。昇温での乾燥によって、結晶構造がいくらか崩されたという可能性がある。ついで、第1のサイクルにおける収着の増加は、水分活性が増加するときの「純粋な」水分収着及び結晶構造の秩序性の組合せとして解釈されうる。第2のサイクルにおいて、「純粋な」水分の吸収及び脱着を記録する。直線的な収着及び脱着は、周囲雰囲気における湿度の変化に応じて、結晶構造が、水分が吸収されうるか又は放出されうるチャネル又は空隙を含んでいることを意味している。形態Aの試料2についての質量変化プロット及び収着等温線プロットを、それぞれ図11A及び図11Bに示す。
【0093】
DVS分析の後、形態Aの試料2のXRPD分析によって、この形態が残っていたことが確認された(ディフラクトグラムは示していない)。
【0094】
方法3を使用して、形態Bの吸湿性を調べた。質量変化プロット及び収着等温線プロットに示されているように(それぞれ図12A及び図12Bを参照されたい)、第1のサイクル及び第2のサイクルは明らかに異なる。第1のサイクルでは、水分活性が増大するにつれて、溶媒は水によって置換される。固体物質が、MTBE及びエタノールを用いて貧溶媒実験から得られたので、閉じ込められた溶媒はエタノールである可能性が最も高い。第2のサイクルにおいて、「純粋な」水分収着が現れる。第2のサイクルにおける直線的な水分の吸収及び脱着は、形態Bがチャネル水和物であることを示している。
【0095】
(実施例6)
<溶解度研究>
<胃液及び腸液を模擬した培養液中の形態Aの溶解度>
中期段階の摂食状態模擬胃液(FEDGAS)、絶食状態模擬腸液の第2バージョン(FaSSIF-2)、及び摂食状態模擬腸液の第2バージョン(FeSSIF-2)中での形態Aの溶解度を研究した。
【0096】
緩衝用液の調製
<FaSSIF-V2>:
MilliQ水90mLにNaOH139mg、マレイン酸222mg、及びNaCl401mgを添加し、得られた混合物を完全に溶解するまで撹拌した。pHを、1M HCl及び1M NaOHで6.5に調整し、MilliQ水を用いて100mLとした。FaSSIF-V2の179mg(Biorelevant社、V2FAS-1020-Aバッチ)を、調製した緩衝液100mLと混合し、完全に溶解するまで撹拌して、使用前の1時間、RT(室温)において平衡化させた。
【0097】
<FeSSIF-V2>:
MilliQ水90mLにNaOH327mg、マレイン酸639mg及びNaCl733mgを添加し、得られた混合物を完全に溶解するまで撹拌した。pHを、1M HCl及び1M NaOHで5.8に調整し、MilliQ水を用いて100mLとした。FeSSIF-V2の976mg(Biorelevant社、V2FES-1020-Aバッチ)を、調製した緩衝液100mLと混合し、完全に溶解するまで撹拌して、使用前の1時間、RTにおいて平衡化させた。
【0098】
<FEDGAS(中期段階、pH4.5)>:
FEDGAS緩衝液濃縮物(Biorelevant社、FEDBUF45-0122-Aバッチ)3.68g、MilliQ水73.1g、及びFEDGASゲル(Biorelevant社、FEDGAS-0322-Aバッチ)15.3gを完全に混合した。その媒体を、使用前に37℃において保存した。
【0099】
試料調製、分析及び結果
形態Aの固定質量(過剰量)を異なる緩衝溶液のそれぞれ2mLに添加することによって、4mLバイアル中に飽和溶液を調製した。各実験を2度繰り返して行った。それらの溶液を、37℃で24時間、磁気撹拌子を用いて撹拌した。試料を1、3、6、及び24時間後に採取した。各試料採取ポイントにて、試料溶液200μLを、0.2μgPPシリンジレスフィルターを使用してろ過した。ろ過した試料溶液を、DMAを用いて2倍又は5倍に希釈し、ついでリナプラザングルレートの濃度を測定するためにHPLC-UVによって分析した。7つの較正標準品に基づく検量線から、濃度を算出した(原液100及び250μg/ml、並びにその段階希釈)。
【0100】
FEDGAS中の形態Aの溶解度は、FaSSIF-V2中より約20倍高く、FeSSIF-V2中より約7倍高いことがわかった。結果を図13に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
【国際調査報告】