(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】酸素供給式燃料電池システム及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04089 20160101AFI20241106BHJP
H01M 8/0444 20160101ALI20241106BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20241106BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241106BHJP
【FI】
H01M8/04089
H01M8/0444
H01M8/0438
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526800
(86)(22)【出願日】2022-04-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 US2022026072
(87)【国際公開番号】W WO2022231990
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519252985
【氏名又は名称】ピーエイチ マター、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】マター、ポール
(72)【発明者】
【氏名】オカンポ、ミネット
(72)【発明者】
【氏名】ヘリー、トラヴィス
(72)【発明者】
【氏名】ホルト、クリストファー
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA14
5H127BA22
5H127BB02
5H127BB10
5H127BB13
5H127BB39
5H127CC06
5H127DB34
5H127DB69
5H127DC28
5H127DC76
(57)【要約】
【要約】
【解決手段】
燃料電池システムは、水素貯蔵容器および酸素貯蔵容器と、燃料電池スタックと、空気供給部と、内部酸素圧を生成する酸素供給部と、少なくとも1つのカソードと、少なくとも1つのカソード排気口とを含む。このシステムは、前記空気供給部および/または前記酸素供給部間を切り替えて前記燃料電池の前記カソードへの供給を行うことができ、低消費電力条件で空気運転を、高消費電力条件で酸素運転を行うことができる。酸素は化学量論的割合よりも高い割合で前記カソード排気口から再循環されてもよく、内部酸素圧が1.1バール以上に上昇してもよい。前記燃料電池スタックから空気が排出された後、自動制御システムが酸素を再循環させることができ、カソード排気の再循環が、特に酸素排気の再循環がなされうる。前記燃料電池は、前記水素貯蔵容器および前記酸素貯蔵容器を補充するための取り外し可能な接続部を備えたポートを有するように構成されていてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
a.水素供給部と流体連通する水素貯蔵容器と、
b.酸素供給部と流体連通する酸素貯蔵容器と、
c.前記水素供給部および前記酸素供給部と流体連通する燃料電池スタックと、空気供給部と、内部酸素圧を生成する酸素供給部と、少なくとも1つのカソードと、少なくとも1つのカソード排気口と、
d.前記空気供給部および/または前記酸素供給部間を切り替えて前記燃料電池の前記カソードへの供給を行う手段と、
e.前記燃料電池において所定の出力レベルを生成するように前記酸素供給部から前記燃料電池に酸素を供給する自動制御手段と、
f.液体冷却剤を有し、前記燃料電池から廃熱を除去する冷却システムと
を有する、燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、前記カソード排気口からの酸素を化学量論的割合よりも高い割合で再循環させる手段を有するものである、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、前記内部酸素圧を1.1バール以上に上昇させる手段を有するものである、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、前記燃料電池スタックから空気が排出された後に酸素を再循環させる自動制御システムを有するものである、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、前記カソード排気口からの酸素排気を前記燃料電池に再循環させる前に除湿する手段を有するものである、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、前記燃料電池スタックから空気が排出されたことを検出する酸素センサーを有するものである、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、酸素によって前記燃料電池から空気が少なくとも50%排出されると、酸素排気の再循環を開始する手段を有するものである、システム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記冷却システムは、さらに、高出力モード運転中、前記液体冷却剤を増加された速度で再循環させる可変速ポンプを有するものである、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、高出力モードで運転されているとき、1平方センチメートルあたり1ワットを超える電力を生成する燃料電池を有するものである、システム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、酸素モードで運転されているとき、空気モードと比較して最大出力が2倍になる燃料電池を有するものである、システム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、前記水素貯蔵容器および前記酸素貯蔵容器を補充するための取り外し可能な接続部を有するポートを有するものである、システム。
【請求項12】
請求項11に記載のシステムにおいて、前記ポートは、前記水素貯蔵容器および前記酸素貯蔵容器を補充するための取り外し可能なノズル接続部を備え、単一のハンドルに固定されている、システム。
【請求項13】
燃料電池システムのための自動制御システムであって、空気運転と酸素運転との間で切り替え可能であり、前記制御システムは前記燃料電池を低消費電力条件では空気運転に、高消費電力条件では酸素運転に切り替えるものである、システム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムにおいて、前記酸素運転は純粋な加圧酸素を用いるものである、システム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、前記燃料電池は前記純粋な加圧酸素で約500mW/cm
2を超える電流密度で運転するものである、システム。
【請求項16】
請求項14に記載のシステムにおいて、前記燃料電池は前記純粋な加圧酸素で約1,000mW/cm
2を超える電流密度で運転するものである、システム。
【請求項17】
請求項14に記載のシステムにおいて、前記燃料電池は前記純粋な加圧酸素で約2,000mW/cm
2を超える電流密度で運転するものである、システム。
【請求項18】
請求項13に記載のシステムにおいて、前記制御システムは、前記制御システムへの電力要求の増加、所定の燃料電池電圧測定、所定の酸素センサー測定、および所定の電流測定からなるイベント群から選択されたイベントに基づいて、空気運転から酸素運転に切り替えるものである、システム。
【請求項19】
燃料電池システムであって、
a.水素貯蔵容器と、
b.酸素貯蔵容器と、
c.前記水素貯蔵容器および前記酸素貯蔵容器と流体連通する燃料電池と、少なくとも1つのカソードと、カソード排気口と、
d.前記燃料電池の前記カソードへ空気供給をしたり酸素供給をしたりし、それにより酸素が前記燃料電池から空気を少なくとも部分的に排出することを可能にする手段と、
e.高出力レベルが必要なときに前記燃料電池に酸素を供給する自動制御スキームと、
f.液体冷却剤により前記燃料電池から廃熱を除去する冷却手段と、
g.前記水素貯蔵容器および前記酸素貯蔵容器を補充するための取り外し可能な接続部を備えたポートと
を有する、燃料電池システム。
【請求項20】
請求項20に記載のシステムにおいて、さらに、酸素によって前記燃料電池から空気が排出されると酸素排気の再循環を開始する手段を有するものである、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2021年4月30日に出願された米国仮特許出願63/181,994号、2021年5月28日に出願された米国仮特許出願63/194,413号、および2022年4月22日に出願された米国特許出願17/727,138号の利益を主張するものである。
【0002】
連邦政府の資金援助を受けた研究開発に関する陳述
この発明はエネルギー省契約番号DESC0017144の下に政府の支援を受けてなされたものである。政府は本発明に対して一定の権利を有しうる。
【0003】
本開示は、一般的には燃料電池システムに関し、特に、酸素供給式燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0004】
燃料電池は水素と酸素からのエネルギーを水と電気に変換する電気化学装置である。燃料電池は、大量のエネルギーを水素の形で貯蔵できるため、特に有用である。より多くのエネルギーを貯蔵するにはより大きな水素タンクが必要となるが、これはバッテリーなどの他の形式のエネルギー貯蔵手段と比べて比較的低コストのエネルギー貯蔵手段である。電気化学反応に必要な酸素は空気から容易に得られる。生成されるのは水だけなので、水の電気分解など、再生可能な資源から水素が生成されれば、水素燃料電池は排出ゼロの電力源となりうる。したがって、燃料電池は定置式エネルギー貯蔵や輸送を含む多くの用途に役立つ。
【0005】
当業者であれば、燃料電池の主な制限は出力密度であることを理解するであろう。出力密度は燃料電池システムのコストおよびサイズに直接影響を及ぼす。燃料電池の出力は典型的には酸素が水に変換されるカソードによって制限される。酸素は空気チャネルからカソード触媒層に輸送されなければならない。電池からより高い電流が引かれるにつれて、空気は、窒素リッチ、水分リッチになり且つ酸素が減少し、最終的には「質量輸送制限電流」または「最大出力」に到達する。出力密度の制限により、十分な電力を供給するためにはより大きくより高価な燃料電池スタックを使用する必要がある。多くの場合、燃料電池システムは最大出力を供給するためにバッテリーとハイブリッド化されている。その欠点は、ハイブリッド手法では多くの場合、システムのコストおよび複雑性が増大することである。
【0006】
質量輸送制限電流を向上させるために、燃料電池の開発者等が検討してきたいくつかの手法がある。燃料電池は、疎水性細孔と親水性細孔との混合など、質量輸送が向上するように設計することができる。燃料電池の構成を最適化することで質量輸送の向上を促進することができる。しかしながら、これらの手法を用いても、最大電流密度は酸素輸送により制限される。システムレベルでは、空気の流量を増加させて質量移動を向上させることができる。いくつかの場合、最大出力運転中、酸素分圧および質量移動を向上させるために空気が圧縮される。これらの手法の制限は追加の構成要素や寄生損失が発生することである。圧縮空気の流量が高くても、燃料電池の電流密度は酸素輸送によって依然として制限される。
【0007】
当業者であれば、燃料電池は空気の代わりに純酸素で運転できることを理解するであろう。航空宇宙用途向けに開発された最初の燃料電池は純酸素が用いられた[燃料電池ハンドブック-https://www.osti.gov/servlets/purl/769283で入手可能]。純酸素は燃料電池の電圧を高めることが知られており、その結果、出力密度を高める可能性がある。純酸素を用いることの主な欠点は、酸素をオンボードで調達し貯蔵しなければならないことであり、これはシステムのコスト、重量、およびサイズを大幅に増大させる。結果として、酸素のオンボード貯蔵は空気から酸素を供給する場合と比べて出力密度を低下させる。
【0008】
いくつかの場合について、発明者等は、空気と、特定の場合で酸素の両方で運転するシステムを構想した。米国特許第4,657,829号では、水素生成改質装置を稼働しつつ、オンボード電解装置が水素と酸素を生成して燃料電池システムを駆動するシステムが開示されている。特許出願WO2021/118660A2には、燃料電池が主に空気によって駆動され、且つ緊急時、空気が利用できない場合には燃料電池が一体化された電解装置から生成される酸素によって駆動される航空宇宙システムが開示されている。しかしながら、この従来技術には、燃料電池システムの出力密度を需要に応じて急速に増加させる方法が開示されていない。酸素を生成するためにオンボード電解装置に依存すると、システムの複雑性、重量、およびサイズが増加し、したがってシステムの出力密度が低下する。さらに、従来技術には、システムからの未使用の純酸素の放出を最小限に抑える方法が開示されていない。空気ベースの燃料電池でなされるように、未使用の酸素がカソード出口から逃げるようにすると、搭載する酸素の必要性が増加し、したがってシステムの出力密度がさらに低下する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はエネルギー貯蔵および電力生産の手段に関する。エネルギー貯蔵は、発電量や需要の変動に合わせて再生可能エネルギーを貯蔵することを含め、様々な用途で重要である。エネルギー貯蔵は輸送にとっても重要である。輸送の場合、エネルギーは、搭載される車両に蓄えられ、負荷要件に合わせて電力に変換されなければならない。水素燃料電池は、エネルギーを貯蔵し必要なときに電力を生成するゼロ排気手段を提供する。しかしながら、多くの場合、空気供給式の水素燃料電池システムでは電力生産量が制限要因となる。本発明は、高エネルギー密度を維持しつつ、酸素を用いて燃料電池システムの電力生産量を増加させる手段を明らかにする。
【0010】
燃料電池システムは、水素供給部と流体連通する水素貯蔵容器と、酸素供給部と流体連通する酸素貯蔵容器とを含みうる。好ましい実施形態において燃料電池スタックとして構成され且つ水素供給部および酸素供給部と流体連通する燃料電池があり、該システムの他の機構としては、空気供給部と、内部酸素圧を生成する酸素供給部と、少なくとも1つのカソードと、少なくとも1つのカソード排気口とを含みうる。
【0011】
前記空気供給部および/または前記酸素供給部間を切り替えて前記燃料電池の前記カソードへの供給を行う手段と、前記燃料電池において所定の出力レベルを生成するように前記酸素供給部から前記燃料電池に酸素を供給する自動制御手段とがあってもよい。上記の一部として、好ましい実施形態において、前記カソード排気口からの酸素を化学量論的割合よりも高い割合で再循環させる手段と、内部酸素圧を1.1バールを超えて少なくとも30バールまで上昇させる手段とがあってもよい。他の好ましい実施形態において、前記燃料電池スタックから空気が排出された後に酸素を再循環させる自動制御システムがあってもよく、具体的には、この手段は、タイマー、電気化学酸素センサー、または当業者に知られているその他の手段によって制御することができる。
【0012】
好ましい実施形態において、カソード排気の再循環、特に酸素排気の再循環がなされてもよい。これは、酸素によって前記燃料電池から空気が少なくとも50%排出されると酸素排気の再循環を開始する手段を含むことができる。前記燃料電池システムは、前記水素貯蔵容器および前記酸素貯蔵容器を補充するための取り外し可能な接続を備えたポートを有するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、前記燃料電池システムは、水素および酸素のデュアル充填ノズルを有する燃料補給システムと組み合わせることができる。
【0013】
他の一連の実施形態では、空気運転と酸素運転の間で切り替え可能な燃料電池を含む燃料電池システムのための自動制御システムがあってもよく、低消費電力条件で前記空気運転に、高消費電力条件で酸素運転にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本明細書に開示の燃料電池の範囲を制限することなく、以下、図面および図を参照する。
【
図1】
図1は、プロトン交換膜(PEM)燃料電池を150kPaおよび250kPaの空気で運転した場合の電流-電位曲線および電流-電力曲線を、同じPEM燃料電池を250kPaの純酸素で運転した場合と比較して示す。
【
図2】
図2は、バックアップ電源燃料電池システムの実施形態の図を示す。
【
図3】
図3は、燃料電池システム部分を移動可能にする取り外し可能なポートを備えた電解装置と一体化された燃料電池システム設計の実施形態の図を示す。
【
図4】
図4は、いくつかの可能な制御通信ラインの例を含む燃料電池システムの実施形態の図を示す。 これらの図は、以下でより詳細に説明するように、燃料電池システムの例示的な実施形態およびその使用方法の理解を助けるために提供されているものであり、明細書を過度に制限するものと解釈されるべきではない。具体的には、図面に示す様々な要素の相対的な間隔、位置、サイズ、および寸法は、実際の縮尺どおりに描かれていない場合があり、分かりやすくするために強調、縮小、またはその他の方法で変更されている場合がある。また、当業者であれば、単に明瞭性を向上させおよび図面の数を減らすために、様々な代替構成が省略されていることを理解するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、通常運転ではアノードに水素をカソードに空気を用いることによって駆動され、電力需要が高い期間ではカソードに加圧された純酸素を用いることによって駆動される燃料電池システムを含む。好ましい実施形態において、燃料電池から高出力が必要な場合、バルブまたは一連のバルブが制御システムによって作動される。バルブはカソードのガス供給を空気から純粋な加圧酸素に切り替える。第1のバルブが流入ガスの供給を酸素に切り替えることができる。酸素が燃料電池から空気の大部分を排出すると、第2のバルブが酸素の再循環および加圧を開始する。本明細書において、「排出(purge)」とは、燃料電池のカソードにおける空気の少なくとも50%が酸素に置き換えられたことを意味する。第1のバルブの作動はシステムの使用者により手動で開始されてもよい。好ましい実施形態において、バルブの作動は燃料電池制御システムによって自動的に開始することができる。燃料電池制御システムは、電力需要の増加に基づいてバルブの切り替えを開始することができ、それは、電力需要の増加によって生じた燃料電池スタックの電圧低下を測定することにより、または当業者に知られている他の信号により行うことができる。好ましい実施形態において、第2のバルブの作動は、既知の排出時間に基づきタイマーにより開始されてもよいし、既知の動作電流での燃料電池スタック電圧の測定により、酸素センサーにより、または当業者に知られている他の手段により開始することができる。
【0016】
当業者であれば、燃料電池は空気と比較して酸素中では同様の電流密度でより高い電圧を有することを理解するであろう。好ましい実施形態において、第1のバルブの作動は、電力需要の増加から5秒以内、好ましくは50ミリ秒以内に実行され、電力需要の増加に対し迅速な応答を可能にする。さらに好ましい実施形態において、燃料電池スタックから排出された純酸素は、除湿器を通過して余分な水分が除去され、その後、酸素セーフブロワーを用いて酸素が再循環される。好ましい実施形態において、燃料電池の性能を向上させるために、酸素は1.1バールを超える絶対圧力まで加圧される。いくつかの場合において、燃料電池の性能を高めるために、酸素は30バール以上の絶対圧力まで加圧される。他の好ましい実施形態において、流入する空気を濾過および精製して、カソードにおける純粋な加圧酸素の安全な使用を潜在的に損なう可能性のある粒子および汚染物質を除去することができる。
【0017】
いくつかの実施形態において、制御システムはまた、コンデンサを含むことができる。コンデンサは、燃料電池のカソードにおいて空気が酸素に置き換わる間、短時間で増加した電力を供給することができる。この場合、システムは電力需要に対しより早く応答することができる。出力レベルが低下すると、コンデンサは、酸素が空気により完全に排除されて燃料電池の電流が低下する前に、燃料電池から電力を受け取ることができる。この場合、燃料電池は低電流で高電圧を経験することはない。当業者であれば、純酸素が低電流で関与した高電圧は燃料電池のカソードをより急速に劣化させる可能性があることを理解するであろう。
【0018】
好ましい実施形態において、燃料電池はプロトン交換膜(PEM)燃料電池とすることができる。PEM燃料電池はデッドエンド構成で水素を供給してもよい。さらに好ましい実施形態において、燃料電池は、内部マニホールド型酸化剤流路を備えた液体冷却式PEM燃料電池であってもよい。液体冷却には、酸化剤の高い化学量論的流れを用いて冷却を提供する非効率性なしにスタック温度を低出力レベルまたは高出力レベルで維持できることなど、多くの利点がある。内部マニホールド型酸化剤には、未使用の酸素を大気中に放出するのではなくスタックに戻して再循環させることができることを含め、多くの利点がある。
【0019】
好ましい実施形態において、燃料電池スタックは、
図1~
図4によく示されているように、アノード側で貯蔵されている水素と流体連通し、カソード側で大気または貯蔵されている酸素と流体連通する。水素および酸素貯蔵部のサイズはシステムの用途に応じて適切に設定することができる。具体的には、酸素貯蔵部は、システムの高出力デューティサイクル中に純酸素を使用できる十分な酸素容積を有するが水素に対する化学量論量の酸素よりも少ない酸素となるようにサイズ設定することができる。例えば、システムが50%の時間、高出力で運転する場合、酸素1モルあたり2モルの水素が消費されることから、酸素貯蔵の最大モル数は水素貯蔵の25%となる。他の例では、システムが10%の時間、高出力で運転する場合、酸素1モルあたり水素2モルが消費されることから、酸素貯蔵の最大モル数は水素貯蔵の5%となる。その結果、比較的小型の酸素タンクにより、大型の燃料電池の必要性や、複雑で高価且つ大規模でスペースを消費する、バッテリー、コンデンサ、タービン、および/またはその他の高出力エネルギー変換手段とのハイブリッド化の必要性が排除されうる。また、当業者であれば、稀であるが酸素貯蔵部から酸素が完全に枯渇した場合に大気中の空気と水素により低出力レベルで運転を継続するようシステムを設計できることを理解するであろう。
【0020】
さらに、
図3によく示されているように、水素および酸素貯蔵部には、ガスを迅速に補給できるポートが取り付けられていてもよい。他の場合では、液体水素および/または液体酸素が用いられてもよい。更なる他の例では、水素および酸素貯蔵部は水電解装置に接続されていてもよい。好ましい実施形態において、水素ポートおよび酸素ポートは、水素および酸素のデュアル充填ステーションから供給され、水素と酸素の両方を同時に補給することができる。さらに好ましい実施形態において、水素ポートおよび酸素ポートは単一のハンドル上にある水素ノズルおよび酸素ノズルに接続されており、使用者が両タンクへの補充を同時に簡単に行うことができる。他の好ましい構成では、酸素の流れを制限し、それにより水素のより大きな体積が同時に補給される場合と同様の補給時間となるようにしてもよく、したがって、酸素の速度を最小限にしてもよい。好ましい実施形態において、酸素ポートおよびノズルは、使用されていないときは覆われ、粒子や破片のない清潔な状態に保たれる。
【0021】
実施例
実施例1 PEM燃料電池の運転
25cm2の燃料電池システムであって、スルホン化テトラフルオロエチレンベースのフッ素ポリマー共重合体(NAFION(登録商標)、The Chemours CompanyFC,LLC、デラウェア州、米国)211膜、20重量パーセントの白金/炭素アノード触媒、および40重量パーセントの白金/炭素カソード触媒を有するシステムが構築された。まず、触媒がNAFION(登録商標)アイオノマー、水、アルコール溶媒と混合され、アノードインクとカソードインクがそれぞれ形成された。インクはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(TEFLON(登録商標)、The Chemours CompanyFC,LLC、デラウェア州、米国)裏地層に塗布され、ホットプレスによって膜に転写された。アノードおよびカソード上の白金の積載量は各々0.2mg/cm2であった。燃料電池は、25cm2のマニホールドを有する燃料電池技術試験ステーションに搭載された。
【0022】
燃料電池には、アノード側に純水素が供給され、カソード側に空気または酸素が供給された。カソードのガス供給を切り替えるために、三方弁とマスフローコントローラが用いられた。背圧レギュレータが電池の運転圧力を制御した。加湿器を用いて、流入するガスが80°Cで相対湿度100%近くまで加湿された。マニホールドが80°Cに加熱された。
図1に示すように、燃料電池の電流電圧特性が150kPaおよび250kPaの空気下ならびに250kPaの酸素下で測定された。図に示すように、加圧酸素下で電池を運転すると、非常に高い出力および効率が得られる。
【0023】
当業者であれば、より薄い膜を用いてさらに高い出力を達成できることを理解するであろう。NAFION(登録商標)211の厚さは25ミクロンであるが、8ミクロンよりも薄い膜を生成することも可能である。より薄い膜を用いると、抵抗が比例して低下し、出力密度が1平方センチメートルあたり5ワットを超えうる。
【0024】
また、当業者であれば、燃料電池および封止が適切に設計されている場合、PEM燃料電池は最大約30バールの圧力で運転できることを理解するであろう。水素および/または酸素の圧力が高くなると、所与の電流で燃料電池のネムスト電位が劇的に増加する。さらに、酸素還元速度が酸素分圧とともに向上することが知られている。最終的に、圧力が高くなると質量移動も向上する。その結果、本発明によって可能な高圧運転により、燃料電池の出力密度および効率が劇的に向上しうる。
【0025】
実施例2 定置式バックアップ電源システム
本発明の一実施形態において、酸素パワーブースト機能を備えた燃料電池システムを用いてバックアップ電源を提供することができる。このシステムは、実施例1と同様の複数の電池から作られたPEM燃料電池スタックを用いることができる。本実施例の好ましいプロセスフロー図を
図2に示す。バルブ1およびバルブ2は三方弁である。バルブ1は、ブロワー(簡略化のため図示せず)によって純酸素または空気が酸化剤として燃料電池に供給されるように配置されている。通常運転では、空気が燃料電池の酸化剤として用いられる。バルブ1は、電力要求の増加、低燃料電池電圧の測定、高電流の測定、および/または低酸素濃度センサーの測定に基づき酸素供給用に配置される。酸化剤は、流入するガスを加湿し且つカソード出口のガスから水分を除去する水交換サブアセンブリを通過する。
【0026】
排出された酸化剤からの余分な水はこのサブアセンブリ内で除去することができる。加湿された酸化剤は燃料電池のカソード入口に供給される。排出された酸化剤(純酸素、酸素が減少した空気、またはそれらの混合物)は、カソード出口から水交換サブアセンブリに送られ、その後バルブ2に送られる。空気運転の場合、バルブ2は酸素が減少した空気を大気中に排出する。酸素運転の場合、バルブ2は純酸素を酸素入口側へと再循環させる。空気運転と酸素運転を切り替えるために、バルブ1がまず酸素を供給するように配置される。次いで、酸素センサー、スタックの電圧、またはタイミング機構を監視して、いつ燃料電池のカソードから窒素が排出されたかを判定する。その時点で、バルブ2は未使用の酸素を再循環させるように配置され、大量の未使用の酸素が排出されるのを防ぐ。酸素貯蔵が枯渇した場合、バルブの切り替えが無効になり、システムは酸化剤として空気のみを用いて運転する。制御システムは、簡略化のため図示していないが、スタックの電圧、スタックの電流、および酸素濃度を監視する一方、バルブ配置の制御も行う。さらに好ましい実施形態において、燃料電池は加圧酸素で運転する。酸素圧力の上昇により電池の電位が高くなり、性能が向上する。また、燃料電池は加圧水素で運転してもよい。バルブ1とバルブ2の両方が閉ループ酸素運転用に配置されると、酸素ガス圧力が上昇し、酸素貯蔵部からの入口酸素圧力が上昇する。
【0027】
好ましい実施形態において、燃料電池スタックは燃料電池の過熱を防ぐために液体冷却することができる。電力需要が高くなる期間中、燃料電池スタックを通る液体冷却剤の循環速度は制御システムによって増加されてもよい。熱交換器、ラジエータ、または温度制御の分野の当業者に知られているその他の方法を用いて液体冷却剤から熱を放出させてもよい。
【0028】
さらに好ましい実施形態において、高出力運転中、生成水が酸素の循環を介して余分な水を除去しおよび/または酸素を冷却する装置を通り燃料電池スタックから除去されてもよい。このような装置の例としては、これらに限定されないが、凝縮器、膜分離器、またはその他の形式の除湿器が含まれる。このような手法により、乾燥した酸素を燃料電池スタックに戻すことができる。
【0029】
好ましい実施形態において、水素および酸素は、それぞれのガス貯蔵タンクに供給する水電解装置によって補充される。この実施形態において、ガスタンクは電力が利用可能なときに補充されるものであり、燃料電池は、電力の需要が高いとき、酸素により運転されてよく、また酸素が利用できなくなったとき、または低出力が長時間必要なとき、空気により低出力で運転されてよい。好ましい実施形態において、電解装置は陰イオン交換膜(AEM:anion exchange membrane)を用いて酸素と水素を分離した状態にする。好ましい実施形態において、電解装置は高圧(10~1,000バール)で運転するものであり、それにより、さらなる機械的圧縮なしに経済的に貯蔵できる水素ガスおよび酸素ガスの生成が可能になる。ポンプによる水の圧縮は、機械式圧縮器によるガスの圧縮ほどエネルギーを消費せず、非効率的でもない。したがって、このような実施形態は、圧縮器を用いる従来の電気分解システムと比べて大きな利点を有する。
【0030】
典型的には、本発明のいくつかの実施形態において、電解装置は30バール以上で運転する。いくつかの場合において、電解装置の水素側を酸素よりも高い圧力で運転することが有利となりうる。輸送用の水素燃料電池を含む多くの用途では、高圧の水素が必要になる場合がある。モル基準では、水の電気分解による水素と比較して酸素の量は半分しか生成されないため、酸素貯蔵タンクはより安価になる。いくつかの場合において、酸素圧力が高くなると安全上の懸念が生じる可能性がある。いくつかの場合において、システムは、酸素を周囲の空気から容易に入手できることから、大量の酸素貯蔵を必要としなくてもよい。説明したシステムでは、エネルギーの少なくとも一部が酸素と水素の両方の形で蓄えられる。
【0031】
当業者であれば、水素を生成する方法は、メタン改質、光電水分解、アンモニア分解、炭化水素分解などを含め、数多く存在することを理解するであろう。水素タンクには、任意の方法で生成された水素が補充されてよく、必ずしも電解装置によるものでなくてもよい。水素は、水素パイプラインから供給されてもよく、必ずしもタンクからではなくてもよい。さらに、当業者であれば、純酸素は、空気からの圧力スイング吸着、空気からの膜分離、空気の分留、またはその他の供給源を含め、その他の方法から生成されてもよいことを理解するであろう。酸素貯蔵タンクには任意の方法で生成された酸素が補充されてよい。
【0032】
実施例3 移動式電力システム
本発明の他の好ましい実施形態において、酸素パワーブースト機能を備えた燃料電池システムを用いて移動式の電源を提供することができる。本実施例の好ましいプロセスフロー図を
図3および
図4に示す。この特定のシステムの実施形態は実施例2と同様に運転する。ただし、本実施例では水素および酸素の貯蔵が2つの部分で構成されている。1つのタンクのセットが水電解装置に接続されており、当該水電解装置は電力が利用可能なときにタンクを補充する。第2のタンクのセットが移動車両に搭載されている。車両に搭載されたタンクは、電解装置のタンクに取り付けられた取り外し可能なコネクタを用いて随時補充することができる。この手法において、電気分解システムは実質的に燃料電池車両のための水素および酸素のデュアル充填ステーションとなる。他の実施形態では、電解装置を車両の給油所から離れた場所に設置して、ガスを電解装置から給油所へ輸送し、その後、給油所から車両へ移送するようにしてもよい。
【0033】
一実施形態において、当業者に知られている任意の数の利用可能な手法を用いて空気から酸素を分離することによって酸素を生成することができ、当該利用可能な手法には圧力スイング吸着または膜分離が含まれる。好ましい実施形態において、空気分離器は、酸素充填ステーション用に酸素を生成する定置式ユニットの一部であってもよい。他の好ましい実施形態では、空気分離器が車両に搭載されていてもよい。空気分離器は車両の使用時に車両に搭載された状態で回生ブレーキまたは補助電力によって電力供給されうる。代替的に、空気分離器は、車両がアイドリング状態のときに、共通コンセントなどの電気接続を通じて電力供給されうる。
【0034】
好ましい実施形態において、燃料電池スタックは燃料電池の過熱を防ぐために液体冷却することができる。電力需要が増加する期間中、燃料電池スタックを通る液体冷却剤の循環速度は制御システムによって増加されてもよい。熱交換器、ラジエータ、または温度制御の分野の当業者に知られているその他の方法を用いて液体冷却剤から熱を放出させることができる。
【0035】
一実施形態において、制御システムはまたコンデンサを含んでもよい。コンデンサは、燃料電池のカソードにおいて空気が酸素に置き換わる間、短時間だけ増加した電力を供給することができる。この場合、システムは電力需要により早く応答することができる。電力レベルが低下すると、酸素が空気により十分に除去され燃料電池の電流が低下する前に、コンデンサが燃料電池から電力を受け取ることができる。この場合、燃料電池は低電流で高電圧を経験することはない。当業者であれば、純酸素が低電流で関与した高電圧は燃料電池のカソードをより急速に劣化させる可能性があることを理解するであろう。
【0036】
さらに好ましい実施形態において、高出力運転中、生成水が酸素の循環を介して余分な水を除去しおよび/または酸素を冷却する装置を通り燃料電池スタックから除去されてもよい。このような装置の例には、これらに限定されないが、凝縮器、膜分離器、またはその他の形式の除湿器が含まれる。このような手法により、乾燥した酸素を燃料電池スタックに戻すことができる。
【0037】
当業者であれば、水素を生成する方法は、メタン改質、光電水分解、アンモニア分解、炭化水素分解などを含め、数多く存在することを理解するであろう。移動式の水素タンクには任意の方法で生成された水素が補充されてよい。その水素は、水素パイプラインから供給されてもよく、必ずしもタンクからの供給でなくてもよい。さらに、当業者であれば、純酸素は、空気からの圧力スイング吸着、空気からの膜分離、空気の分留などを含め、その他の方法から生成してもよいことを理解するであろう。移動式の酸素タンクには任意の方法で生成された酸素が補充されてよい。
【0038】
実施例4 デュアル燃料補給ノズル
他の好ましい実施形態において、移動式燃料電池システムが水素および酸素のデュアル充填ステーションで燃料補給されうる。当該充填ステーションは、車両の水素タンクと酸素タンクを同時に補給するシステムを含むことができる。好ましい実施形態において、それらの車両貯蔵タンクはノズルのセットを用いて燃料補給することができ、当該ノズルのセットにおいて両ノズルを通るガスの流量は同一システムによって制御されてもよい。さらに好ましい実施形態において、両ノズルは使用者の利便性のために同一ハンドル上に配置されていてもよく、したがって車両の燃料補給ポートはデュアルノズルと嵌合するように設計されている。
【0039】
実施例5 配送トラック
好ましい実施形態において、実施例3に記載の燃料電池システムはトラックに配置することができる。この実施形態の利点はトラックがゼロ排気で積荷を運搬できることである。加速期間中、燃料電池は酸素モードで運転する。トラックが加速していないとき、燃料電池は空気モードで運転する。本発明は、燃料電池のサイズを最小限にし、重く高価なバッテリーの必要性を排除し、同時にゼロ排気および電力要件を達成する。燃料補給接続は、トラックフリートの本拠地または頻繁に通行される通路沿いに便利に設置されうる。
【0040】
実施例6 垂直離着陸
他の好ましい実施形態において、実施例3に記載の燃料電池システムは、ゼロ排気の垂直離着陸式航空機に配置することができる。この実施形態の利点は、車両がゼロ排出でより重い積荷を運搬することができることである。燃料電池は、上昇、加速、および/または操縦の期間中、酸素モードで運転しうる。燃料電池は、車両が下降または平均速度で走行しているとき、空気モードで運転しうる。本発明は、燃料電池のサイズを最小限にし、重く高価なバッテリーの必要性を排除し、同時にゼロ排気および電力要件を達成する。燃料補給接続は、車両の本拠地または頻繁に通行される通路沿いに便利に設置されうる。
【0041】
実施例7 高出力燃料電池システム
上記実施例で説明した高出力燃料電池システムは他の多くの実施形態でも利益をもたらすであろう。当業者であれば、本技術が、船舶、貨物船、客船、列車、鉄道車両、採掘設備、建設設備、フリート車両、資材搬送設備、携帯式電子機器、定置式設備などの用途、および当業者に知られているそのような他の用途に有用であることを理解するであろう。また、当業者であれば、上記実施例で説明した要素の混合物または組み合わせを組み込んだシステムも想定できるであろう。
【0042】
請求は、水素供給部と流体連通する水素貯蔵容器と、酸素供給部と流体連通する酸素貯蔵容器とを含む燃料電池システムに関する。好ましい実施形態において燃料電池スタックとして構成され且つ水素供給部および酸素供給部と流体連通する燃料電池がある。システムのその他の機構としては、空気供給部と、内部酸素圧を生成する酸素供給部と、少なくとも1つのカソードと、少なくとも1つのカソード排気口とを含みうる。
【0043】
空気供給部および/または酸素供給部間を切り替え燃料電池のカソードへの供給を行う手段と、燃料電池において所定の出力レベルを生成するように酸素供給部から燃料電池に酸素を供給する自動制御手段とがあってもよい。燃料電池または燃料電池スタックから廃熱を除去するための液体冷却剤を有する冷却システム手段が存在してもよい。
【0044】
上記の一部として、好ましい実施形態において、カソード排気口からの酸素を化学量論的割合よりも高い割合で再循環させる手段と、内部酸素圧を1.1バール以上に上昇させる手段とがあってもよい。
【0045】
他の好ましい実施形態において、燃料電池スタックから空気が排出された後に酸素を再循環させる自動制御システムがあってもよく、具体的には、この手段はタイマーによって制御されてもよい。
【0046】
更なる他の実施形態では、酸素排気を燃料電池に再循環させる前にカソード排気口からの酸素排気を除湿する手段と、燃料電池スタックから空気が排出されたことを検出する酸素センサーがあってもよい。
【0047】
好ましい実施形態において、カソード排気の再循環、特に酸素排気の再循環がなされてもよい。これは、酸素によって燃料電池から空気が少なくとも50%排出されると酸素排気の再循環を開始する手段を含むことができる。また、冷却システムは、高出力モード運転中、液体冷却剤を増加された速度で再循環させる可変速ポンプを有してもよい。
【0048】
2つの特定の実施形態において、それらは同一範囲にあるが、燃料電池は、高出力モードで運転する場合、1平方センチメートルあたり1ワットを超えて生成することができ、および/または、酸素モードで運転する場合、空気モードと比較してその最大出力が2倍になる。
【0049】
燃料電池は、水素貯蔵容器および酸素貯蔵容器を補充するための取り外し可能な接続部を備えたポートを有するように構成され、当該ポートに関連するノズルは単一のハンドルに固定されていてもよい。
【0050】
他の一連の実施形態では、空気運転と酸素運転の間で切り替え可能な燃料電池を含む燃料電池システムのための自動制御システムがあってもよく、低消費電力条件では空気運転に、高消費電力条件では酸素運転にする。消費電力に付される「より低い」および「より高い」という用語は、当業者には知られているように正確なパラメータの影響を受けるものではなく、特定の場合において燃料電池の容量や使用者のニーズによって確立されるであろう。酸素運転は実質的に純粋な加圧酸素を用いる。本明細書では、「純粋な」酸素とは、少なくとも50%の純粋なO2、好ましくは少なくとも90%の純粋なO2、最も好ましくは少なくとも95%の純粋なO2である酸素として定義される。これにより、燃料電池は、一実施形態において純粋な加圧酸素で、約500mW/cm2を超える電流密度で、他の一実施形態では約1,000mW/cm2を超える電流密度で、更なる他の実施形態では約2,000mW/cm2を超える電流密度で運転することができる。更なる他の一連の実施形態では、電流密度が5,000mW/cm2またはそれ以上に達することがある。
【0051】
空気運転から酸素運転への切り替えを制御する様々な手段が当業者には理解されるであろうが、それは、例えば、制御システムへの電力要求の増加、所定の燃料電池電圧測定、所定の酸素センサー測定、所定の電流測定、およびその他の手段およびイベントなどのイベントを含むことができる。そのようなイベントは、例示のみを目的とし限定するものではないが、酸素投入と空気投入との間で切り替え可能な混合バルブを制御することができる。
【0052】
更なる他の一連の実施形態では、水素貯蔵容器と、酸素貯蔵容器とを、前記水素貯蔵容器および前記酸素貯蔵容器と流体連通する燃料電池と、少なくとも1つのカソードと、カソード排気口に加えて含む燃料電池システムがあってもよい。燃料電池のカソードへ空気供給をしたり酸素供給をしたりし、それにより酸素が燃料電池から空気を少なくとも部分的に排出することを可能にする手段があってもよく、そのようなガスの切り替えは、高出力レベルが必要なときに燃料電池に酸素を供給する自動制御スキームによって少なくとも部分的に制御されうる。
【0053】
さらに、システムは、液体冷却剤により燃料電池から廃熱を除去する冷却手段と、水素貯蔵容器および酸素貯蔵容器を補充するための取り外し可能な接続部を備えた充填ポートを含んでもよい。また、酸素によって燃料電池から空気が少なくとも50%排出されると酸素排気の再循環を開始する手段があってもよい。
【0054】
当業者には、本明細書に開示した好ましい実施形態の多数の変更、修正、および変形が明らかであろうし、それらはすべて本開示の明細書の主旨および範囲内にあることが予想され企図される。例えば、特定の実施形態が詳細に説明されているが、当業者であれば、前述の実施形態および変形形態は、様々な種類の、代替物、追加若しくは代替材料、要素の相対的配置、諸工程の順序および追加の工程、ならびに寸法構成を組み込むように変更できることを理解するであろう。したがって、本明細書では物および方法のいくつかの変形形態のみを説明しているが、そのような追加の修正および変形、ならびにそれらの均等物の実施は、以下の請求項で定義された方法および物の主旨および範囲内にあることが理解されよう。以下の請求項における全ての手段またはステップ・プラス・ファンクション要素の対応する構成、材料、動き、および均等物は、具体的に請求項に記載された他の要素との組み合わせで機能を実行するための任意の構成、材料、または動きを含むことが意図される。
【国際調査報告】