(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】マルチレベル電力変換器における電荷平衡及び過渡電流の制御
(51)【国際特許分類】
H02M 3/18 20060101AFI20241106BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H02M3/18
H02M3/155 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526930
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 US2022078918
(87)【国際公開番号】W WO2023081609
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】シュチェシンスキー,グレゴリー
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS05
5H730BB03
5H730DD02
5H730FD21
5H730FG05
(57)【要約】
過去にどのようなスイッチ状態が使用されているかにかかわらず、出力ノードにおける電圧レベルを選択するたびごとに、本質的に最適なパターン又はスイッチ状態のセットを選択する制御方法を確立することによって、マルチレベル変換器回路の電荷平衡問題をより効果的に且つより効率的に解決する回路及び方法を提供し、それらの本質的に最適なパターン又はスイッチ状態のセットは、電荷平衡状態となるようにフライキャパシタを動作させるか、又は、現在の充電状態を維持する。したがって、本発明のマルチレベル変換器回路の実施形態は、前のスイッチ状態又はスイッチ状態のシーケンスを追跡する必要なく、スイッチングサイクル毎に異なるスイッチ状態又は出力電圧レベルを自由に選択することが可能である。追加的な利点は、新規な電荷平衡方法によって可能になる改善されている過渡現象性能を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチレベル変換器回路のスイッチングサイクルの際に出力レベルを設定し、フライキャパシタに対して電荷平衡を実行する方法であって、前記マルチレベル変換器回路は、(1) 第1の電圧と第2の電圧との間に直列に結合されるように構成されるスイッチのセットと、(2) 特定のそれぞれのスイッチと直列に結合されているとともに、前記それぞれのスイッチの間のスイッチと並列に結合されている少なくとも1つのフライキャパシタと、を含み、当該方法は、
(a) 以前に選択されていない1つのフライキャパシタを選択するステップであって、前記フライキャパシタは、スイッチの前記セットのうちの一対のローサイドスイッチの間で、且つ、スイッチの前記セットのうちの一対のハイサイドスイッチの間に結合されている、ステップと、
(b) 前記選択されているフライキャパシタでの電圧が、関連するターゲット電圧を上回り、且つ、閉じられて前記選択されているフライキャパシタのための放電経路を有効化することを可能とする残りのローサイドスイッチ又はハイサイドスイッチが存在する場合に、(1) 前記選択されているフライキャパシタのための前記放電経路を有効化する前記スイッチを閉じられている状態に設定し、それ以外の場合に、(2) 前記選択されているフライキャパシタのための充電経路を有効化する前記スイッチを閉じられている状態に設定するステップと、
(c) フライキャパシタのすべてが選択されるまで、ステップ(a)にループするステップと、
(d) 残されているスイッチの残りの対について、スイッチの計数規則のセットに基づいて、関連するハイサイドスイッチ又は関連するローサイドスイッチを閉じられている状態に設定するステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記選択されているフライキャパシタのための前記放電経路を有効化する前記スイッチを設定するときに、閉じられているローサイドスイッチの数及び閉じられているハイサイドスイッチの数を減少させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マルチレベル変換器回路のレベルmの場合のスイッチの計数規則の前記セットは、
(a) M-m個のローサイドスイッチを閉じる必要があるということ、
(b) m-1個のハイサイドスイッチを閉じる必要があるということ、及び、
(c) 閉じる必要のないローサイドスイッチ及びハイサイドスイッチを開いている必要があるということ、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マルチレベル変換器回路は、出力インダクタをさらに含み、当該方法は、前記出力インダクタの両端の間の望ましい最小電圧降下を満たすか又は超えるように、前記関連するターゲットレベルを選択するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
当該方法は、前記マルチレベル変換器回路の検出されている負荷過渡現象の関数として、前記関連するターゲットレベルを設定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
当該方法は、望ましいターゲット値からの前記マルチレベル変換器回路の出力電圧又は電流の偏差の関数として、前記関連するターゲットレベルを設定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
当該方法は、印加されている入力信号によって、前記関連するターゲットレベルを設定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
マルチレベル電力変換器であって、当該マルチレベル電力変換器は、
(a) (i) 第1の電圧と第2の電圧との間に直列に結合されるように構成されるスイッチのセットと、(ii) 特定のそれぞれのスイッチの間に結合されている少なくとも1つのフライキャパシタと、を含むマルチレベル変換器回路であって、各々のフライキャパシタは、スイッチの前記セットのうちの1対のローサイドスイッチの間で、且つ、スイッチの前記セットのうちの1対のハイサイドスイッチの間に結合され、前記マルチレベル変換器回路は、入力において入力電圧を受信し、出力において出力電圧を生成するように構成され、前記出力は、インダクタの第1の端子に結合されるように構成される、マルチレベル変換器回路と、
(b) 前記インダクタの第2の端子に結合されるとともに、前記インダクタの前記第2の端子における前記電圧を示す信号を生成するように構成されるフィードバックコントローラと、
(c) 前記フィードバックコントローラ及び前記マルチレベル変換器回路に結合されるとともに、少なくとも、前記フィードバックコントローラからの前記信号及び前記少なくとも1つのフライキャパシタに対応する前記マルチレベル変換器回路からのそれぞれの電圧状態信号を受信するように構成されるマルチレベルコントローラと、を含み、前記マルチレベルコントローラは、
(1) 以前に選択されていない1つのフライキャパシタを選択し、
(2) 前記選択されているフライキャパシタでの電圧が、関連するターゲット電圧を上回り、且つ、閉じられて、前記選択されているフライキャパシタのための放電経路を有効化することを可能とする残りのローサイドスイッチ又はハイサイドスイッチが存在する場合に、(1) 前記選択されているフライキャパシタのための前記放電経路を有効化する前記スイッチを閉じられている状態に設定し、及び、それ以外の場合に、(2) 前記選択されているフライキャパシタのための充電経路を有効化する前記スイッチを閉じられている状態に設定し、
(3) フライキャパシタのすべてが選択されるまで、要素(c)のステップ(1)にループし、
(4) 残されているスイッチの残りの対について、スイッチの計数規則のセットに基づいて、関連するハイサイドスイッチ又は関連するローサイドスイッチを閉じられている状態に設定する、
ことによって、前記受信した信号に応答して、前記マルチレベル変換器回路のスイッチングサイクルの際に、前記少なくとも1つのフライキャパシタに対して電荷平衡を行うように構成される、
マルチレベル電力変換器。
【請求項9】
前記マルチレベルコントローラは、さらに、前記選択されているフライキャパシタのための前記放電経路を有効化する前記スイッチを設定するときに、閉じられているローサイドスイッチの数及び閉じられているハイサイドスイッチの数を減少させるように構成される、請求項8に記載のマルチレベル電力変換器。
【請求項10】
前記マルチレベル変換器回路のレベルmの場合のスイッチの計数規則の前記セットは、
(a) M-m個のローサイドスイッチを閉じる必要があるということ、
(b) m-1個のハイサイドスイッチを閉じる必要があるということ、及び、
(c) 閉じる必要のないローサイドスイッチ及びハイサイドスイッチを開いている必要があるということ、
を含む、請求項8に記載のマルチレベル電力変換器。
【請求項11】
前記マルチレベル変換器回路は、出力インダクタをさらに含み、前記マルチレベルコントローラは、さらに、前記出力インダクタの両端の間の望ましい最小電圧降下を満たすか又は超えるように、前記関連するターゲットレベルを選択するように構成される、請求項8に記載のマルチレベル電力変換器。
【請求項12】
前記マルチレベル変換器回路の検出されている負荷過渡現象の関数として、前記関連するターゲットレベルを設定することをさらに含む、請求項8に記載のマルチレベル電力変換器。
【請求項13】
前記マルチレベルコントローラは、さらに、望ましいターゲット値からの前記マルチレベル変換器回路の出力電圧又は電流の偏差の関数として、前記関連するターゲットレベルを設定するように構成される、請求項8に記載のマルチレベル電力変換器。
【請求項14】
前記マルチレベルコントローラは、さらに、印加されている入力信号によって、前記関連するターゲットレベルを設定するように構成される、請求項8に記載のマルチレベル電力変換器。
【請求項15】
マルチレベルスイッチ状態セレクタであって、当該マルチレベルスイッチ状態セレクタは、マルチレベル変換器回路に結合されて、前記マルチレベル変換器回路を制御するように構成され、前記マルチレベル変換器回路は、(1) 第1の電圧と第2の電圧との間に直列に結合されるように構成されるスイッチのセットと、(2) それぞれのスイッチの間に結合されている少なくとも1つのフライキャパシタと、を含み、当該マルチレベルスイッチ状態セレクタは、さらに、スイッチの前記セットについてスイッチ状態のセットを生成するように構成され、スイッチの前記セットは、過去のスイッチ状態にかかわらず、前記マルチレベル変換器回路のための出力電圧レベルを選択するときに、電荷平衡状態となるように前記少なくとも1つのフライキャパシタを動作させるか、又は、前記少なくとも1つのフライキャパシタの現在の充電状態を維持する、
マルチレベルスイッチ状態セレクタ。
【請求項16】
当該マルチレベルスイッチ状態セレクタは、電圧レベルセレクタをさらに含み、前記電圧レベルセレクタは、当該マルチレベルスイッチ状態セレクタに結合されて、パルス幅変調(PWM)信号及び随意的に1つ又は複数の制御信号に結合されるように構成され、前記電圧レベルセレクタは、当該マルチレベルスイッチ状態セレクタへの電圧ターゲットレベル出力へと、前記受信した信号を変換するように構成される、請求項15に記載のマルチレベルスイッチ状態セレクタ。
【請求項17】
当該マルチレベルスイッチ状態セレクタは、フィードバックコントローラをさらに含み、前記フィードバックコントローラは、前記電圧レベルセレクタ及び前記マルチレベル変換器回路に結合され、前記フィードバックコントローラは、前記マルチレベル変換器回路の出力電圧を示す信号を前記電圧レベルセレクタに提供するように構成される、請求項16に記載のマルチレベルスイッチ状態セレクタ。
【請求項18】
前記フィードバックコントローラは、前記PWM信号を生成するように構成されるPWM生成器を含む、請求項17に記載のマルチレベルスイッチ状態セレクタ。
【請求項19】
前記フィードバックコントローラは、該フィードバックコントローラの閉ループ応答を安定化させるように構成される補償回路を含む、請求項17に記載のマルチレベルスイッチ状態セレクタ。
【請求項20】
前記フィードバックコントローラは、フィードバック回路を含み、前記フィードバック回路は、望ましいターゲット電圧を表す基準電圧と前記マルチレベル変換器回路の前記出力電圧とを比較し、前記マルチレベル変換器回路の前記出力電圧が、前記基準電圧が表す前記ターゲット電圧を上回るか又は前記ターゲット電圧を下回るかを示す制御信号を出力する、ように構成される、請求項17に記載のマルチレベルスイッチ状態セレクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
この出願は、2021年11月8日付で出願された“マルチレベル電力変換器における電荷平衡及び過渡電流の制御”と題する米国仮出願第63/276,923号、及び、2021年12月23日付で出願された“マルチレベル電力変換器における電荷平衡及び過渡電流の制御”と題する米国特許出願第17/560,767号に基づく優先権を主張し、それらの出願の内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、電子回路に関し、より詳細には、DC-DC電力変換器回路(DC-DC power converter circuits)を含む電力変換器回路(power converter circuits)に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの電子製品、特に、(例えば、ノートブックコンピュータ、ウルトラブックコンピュータ、タブレットデバイス、LCDディスプレイ及びLEDディスプレイ等の)モバイルコンピューティング製品及び/又は通信製品及び構成要素は、複数の電圧レベルを必要とする。例えば、無線周波数(RF)送信機電力増幅器は、(例えば、12[V]又はそれ以上の)比較的高い電圧を必要とする場合があり、一方で、論理回路は、(例えば、1乃至3[V]等の)低い電圧レベルを必要とする場合がある。さらに、他の回路は、(例えば、5乃至10[V]等の)中間電圧レベルを必要とする場合がある。
【0004】
直流電力変換器(direct current power converters)は、バッテリ、太陽電池(solar cells)、整流されたAC電源(rectified AC sources)等の共通の電源からより低い電圧又はより高い電圧を生成するのに使用されることが多い。より高い入力電圧電源からより低い出力電圧レベルを生成する電力変換器は、出力電圧VOUTが入力電圧VINよりもより低く、その変換器が入力電圧を“降圧変換(bucking)”するので、一般的に、降圧変換器(buck converters)として知られている。より低い入力電圧電源からより高い出力電圧レベルを生成する電力変換器は、VOUTがVINよりも大きいので、一般的に、昇圧変換器(boost converters)として知られている。電力変換器のうちのいくつかは、いずれの端子が入力及び出力のために使用されるかに依存して、降圧変換器又は昇圧変換器のいずれかとなることができる。電力変換器のうちのいくつかは、反転出力(inverted output)を提供する場合がある。
【0005】
マルチレベル電力変換器(multi-level power converter)として知られている1つのタイプの直流電力変換器(direct current power converter)は、エネルギー蓄積素子(energy storage elements)としての電荷転送キャパシタ(charge transfer capacitors)を含み、その電荷転送キャパシタは、VINからVOUTへと電荷を転送するように制御されるスイッチによって結合される。そのような電荷転送キャパシタは、一般的に、“フライキャパシタ(fly capacitors)”又は“ポンプキャパシタ(pump capacitors)”として知られている。フライキャパシタが使用される(すなわち、バイパスされない(not bypassed))たびごとに、そのフライキャパシタを流れる電気エネルギーは、一般的に、そのフライキャパシタを充電する(charge)か、又は、そのフライキャパシタを放電させる(discharge)であろう。このことは、制御の問題、すなわち、それらのフライキャパシタの平均電圧を維持しながら、どのような構成で及びどのような順序でそれらのフライキャパシタをスイッチングすることが可能であるかという問題を生じさせる。このことは、マルチレベル変換器回路が、それらのフライキャパシタの平均電圧を維持するために、それらのフライキャパシタでの電荷を平衡させることを導入する電荷平衡の問題(charge-balance problem)となる。
【0006】
適切な電荷平衡方法の決定は、マルチレベル変換器回路の複雑さが増すにつれて、極めて困難になる可能性がある。ほとんどの従来の制御方法は、一連のリンクされている状態変化を確立することに依拠して、電荷平衡を達成しようと試みる。複数のスイッチ状態の長いシーケンスに基づく制御システムは、一般的に、入力電圧及び出力電流等のシステム変数のすべてが、そのシーケンスの際に一定であるということを仮定する。このことは、システム変数のすべてが動的になる傾向がある実世界の環境では非現実的である。
【0007】
したがって、マルチレベル変換器回路のための電荷平衡の問題をより効果的に且つより効率的に解決するための回路及び方法の必要性が存在する。本発明は、この必要性及び他の必要性に対処する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、マルチレベル変換器回路の電荷平衡の問題をより効果的に且つより効率的に解決する回路及び方法を包含し、その電荷平衡の問題は、複数のスイッチ状態の本質的に最適なパターン又はセットを選択する制御方法を確立することによって解決され、その制御方法は、過去にどのようなスイッチ状態が使用されているかにかかわらず、LXノードにおける電圧レベルを選択するたびごとに、電荷平衡状態となるように複数のフライキャパシタの状態を変えさせる(moves the fly capacitors towards a charge-balance state)か、又は、現在の充電状態(current charge state)を維持する。したがって、本発明のマルチレベル変換器回路の複数の実施形態は、任意の以前のスイッチ状態又はスイッチ状態のシーケンスの追跡を維持する必要なく、スイッチングサイクル毎に(every switching cycle)、異なるスイッチ状態又はLX電圧レベルを自由に選択することが可能である。追加的な利点は、新規な電荷平衡方法によって可能となる改善されている過渡電流性能(improved transient performance)を含む。
【0009】
ある1つの実施形態において、Mレベルのマルチレベル電力変換器(M-level multi-level power converter)は、(1) Mレベルの変換器回路(M-level converter circuit)であって、前記Mレベルの変換器回路は、(i) 第1の電圧と第2の電圧との間に直列に結合されている(series-coupled)スイッチのセットと、(ii) 特定のそれぞれのスイッチと直列に結合されている(coupled in series with)とともに、前記それぞれのスイッチの間にあるスイッチと並列に結合されている(coupled in parallel with switches in between the respective switches)少なくとも1つのフライキャパシタ(fly capacitor)と、を含み、各々のフライキャパシタは、スイッチの前記セットのうちの1対のローサイドスイッチ(a pair of low-side switches)の間で、且つ、スイッチの前記セットのうちの1対のハイサイドスイッチ(a pair of high-side switches)の間に結合され、前記変換器回路は、入力において入力電圧を受信し、出力において出力電圧を生成するように構成され、前記出力電圧は、前記入力電圧とは異なり、前記出力は、インダクタの第1の端子に結合されるように構成される、Mレベルの変換器回路と、(2) 前記インダクタの第2の端子に結合されるとともに、前記インダクタの前記第2の端子における前記電圧を示す信号を生成する(produce)ように構成されるフィードバックコントローラ(feedback controller)と、(3) 前記フィードバックコントローラ及び前記Mレベルの変換器回路に結合されるとともに、少なくとも、前記フィードバックコントローラからの前記信号及び前記少なくとも1つのフライキャパシタに対応する前記Mレベルの変換器回路からのそれぞれの電圧状態信号(respective voltage status signals)を受信するように構成されるマルチレベルコントローラ(multi-level controller)と、を含む。
【0010】
マルチレベルコントローラは、(1) 以前に選択されていないフライキャパシタを選択し、(2) 前記選択されているフライキャパシタでの電圧が、関連するターゲット電圧を上回り、且つ、前記選択されているフライキャパシタのための放電経路を有効化する(enable a discharge path)ように閉じることが可能である残りのローサイドスイッチ又はハイサイドスイッチが存在する場合に、(a) 前記選択されているフライキャパシタのための前記放電経路を有効化する前記スイッチを閉じられている状態に設定し、及び、前記選択されているフライキャパシタでの電圧が、関連するターゲット電圧以下であるか、或いは、前記選択されているフライキャパシタのための放電経路を有効化するように閉じることが可能である残りのローサイドスイッチ又はハイサイドスイッチが存在しない場合に、(b) 前記選択されているフライキャパシタのための充電経路を有効化する前記スイッチを閉じられている状態に設定する、ことによって、前記受信した信号に応答して、前記Mレベルのマルチレベル変換器回路のスイッチングサイクルの際に、前記Mレベルのマルチレベル変換器回路のための出力レベルを設定し、前記少なくとも1つのフライキャパシタに対して電荷平衡を実行する(charge-balance the at least one fly capacitor)ように構成される。その後に、プロセスは、フライキャパシタのすべてが選択されるまで、ステップ(1)にループする。残されているスイッチの残りの対(a remaining pair of left-over switches)について、プロセスは、スイッチの計数規則のセットに基づいて(based on a set of switch count rules)、関連するハイサイドスイッチ(associated high-side switch)又は関連するローサイドスイッチ(associated low-side switch)を閉じられている状態に設定するステップを含む。
【0011】
本発明は、Mレベルのマルチレベル変換器回路(M-level multi-level converter circuit)のスイッチングサイクルの際に、出力レベルを設定するとともに、複数のフライキャパシタに対して電荷平衡を実行する(charge-balancing fly capacitors)ための装置及び方法をさらに包含し、前記Mレベルのマルチレベル変換器回路は、(1) 第1の電圧と第2の電圧との間に直列に結合されている(series-coupled)スイッチのセットと、(2) 特定のそれぞれのスイッチと直列に結合されている(coupled in series with)とともに、前記それぞれのスイッチの間にあるスイッチと並列に結合されている(coupled in parallel with switches in between the respective switches)少なくとも1つのフライキャパシタ(at least one fly capacitor)と、を含み、当該装置及び当該方法は、スイッチの前記セットについてスイッチ状態のセットを生成し、当該装置及び当該方法は、過去のスイッチ状態にかかわらず、前記Mレベルのマルチレベル変換器回路のための出力電圧レベルを選択するときに、電荷平衡状態となるように前記少なくとも1つのフライキャパシタの状態を変えさせる(moves the at least one fly capacitor towards a charge-balance state)か、又は、前記少なくとも1つのフライキャパシタの現在の充電状態(current charge state)を維持する。
【0012】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、複数の添付の図面及び以下の発明の詳細な説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、発明の詳細な説明及び図面、及び、特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来技術の電力変換器を含む回路のブロック図である。
【
図2A】
図1の変換器回路として使用されてもよい従来技術の2レベルのDC-DC降圧変換器回路(2-level DC-to-DC buck converter circuit)の概略的な図である。
【
図2B】
図2Aの回路について、L
Xにおける電圧レベルを時間の関数として示すグラフである。
【
図3A】
図1の変換器回路として使用されてもよい従来技術の3レベルのDC-DC降圧変換器回路(3-level DC-to-DC buck converter circuit)の概略的な図である。
【
図3B】L
Xノードにおけるレベル1の電圧レベルを定義する第1のスイッチ状態となっている変換器回路の概略的な図である。
【
図3C】L
Xノードにおけるレベル3の電圧レベルを定義する第2のスイッチ状態となっている変換器回路の概略的な図である。
【
図3D】L
Xノードにおけるレベル2の電圧レベルを定義する第3のスイッチ状態となっている変換器回路の概略的な図である。
【
図3E】L
Xノードにおけるレベル2の電圧レベルを定義する第4のスイッチ状態となっている変換器回路の概略的な図である。
【
図3F】
図3Aの回路について、L
Xにおける電圧レベルを時間の関数として示すグラフである。
【
図4A】
図1の変換器回路として使用されてもよい一般化されているMレベルのマルチレベル変換器セルの概略的な図である。
【
図4B】対応する“制御されている”スイッチセットを示す
図4Aからの1つのフライキャパシタCxの概略的な図である。
【
図4C】フライキャパシタCxと関連する外側ハイサイドスイッチ及び内側ローサイドスイッチが閉じられ、且つ、他の関連するスイッチのすべてが開かれている
図4Bのバージョンである。
【
図4D】フライキャパシタCxと関連する内側ハイサイドスイッチ及び外側ローサイドスイッチが閉じられ、且つ、他の関連するスイッチのすべてが開かれている
図4Bのバージョンである。
【
図4E】フライキャパシタCxと関連する内側ローサイドスイッチ及び外側ローサイドスイッチが閉じられ、他の関連するスイッチのすべてが開かれている
図4Bのバージョンである。
【
図4F】フライキャパシタCxと関連する外側ハイサイドスイッチ及び内側ハイサイドスイッチが閉じられ、他の関連するスイッチのすべてが開かれている
図4Bのバージョンである。
【
図5】
図4Aに示されている一般化されているバージョン等のMレベルの変換器セルのための高度化されている制御回路のある1つの実施形態のブロック図である。
【
図6A】ある1つの例示的な6レベルの変換器についてのターゲットレベル遷移(Target Level transitions)及びフライキャパシタの充電イベント又は放電イベント(fly capacitor charge or discharge events)の第1の例の図である。
【
図6B】
図6Aに示されているプロセスが生成するスイッチ状態のパターンを示す表である。
【
図7A】ある1つの例示的な6レベルの変換器についてのターゲットレベル遷移及びフライキャパシタの充電イベント又は放電イベントの第2の例の図である。
【
図7B】ある1つの例示的な6レベルの変換器についてのターゲットレベル遷移及びフライキャパシタの充電イベント又は放電イベントの第3の例の図である。
【
図8】外から内への外側スイッチ方法(Outward-In outer-switch method)のより詳細なフローチャートである。
【
図9】外から内への内側スイッチ方法(Outward-In inner-switch method)のより詳細なフローチャートである。
【
図10】内から外への内側スイッチ方法(Inward-Out inner-switch method)のより詳細なフローチャートである。
【
図11】内から外への外側スイッチ方法(Inward-Out outer-switch method)のより詳細なフローチャートである。
【
図12】インダクタ電圧降下(inductor voltage drop)に基づいて、より高いレベルにジャンプする時点を決定する(determining when to jump to a higher level)方法を示すフローチャートである。
【
図13】インダクタ電圧降下に基づいて、より低いレベルにジャンプする時点を決定する方法を示すフローチャートである。
【
図14】負荷過渡現象(load transients)に基づいて、より高いレベルにジャンプする時点を決定する方法を示すフローチャートである。
【
図15】負荷過渡現象に基づいて、より低いレベルにジャンプする時点を決定する方法を示すフローチャートである。
【
図16】出力偏差(output deviations)に基づいて、より高いレベルにジャンプする時点を決定する方法を示すフローチャートである。
【
図17】出力偏差に基づいて、より低いレベルにジャンプする時点を決定する方法を示すフローチャートである。
【0014】
さまざまな図面における同様の参照番号及び名称は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、マルチレベル変換器回路の電荷平衡の問題(charge-balance problem)をより効果的に且つより効率的に解決する回路及び方法を包含し、その電荷平衡の問題は、複数のスイッチ状態の本質的に最適なパターン又はセットを選択する制御方法を確立することによって解決され、その制御方法は、過去にどのようなスイッチ状態が使用されているかにかかわらず、LXノードにおける電圧レベルを選択するたびごとに、電荷平衡状態となるように複数のフライキャパシタの状態を変えさせる(moves the fly capacitors towards a charge-balance state)か、又は、現在の充電状態(current charge state)を維持する。したがって、本発明のマルチレベル変換器回路の複数の実施形態は、任意の以前のスイッチ状態又はスイッチ状態のシーケンスの追跡を維持する必要なく、スイッチングサイクル毎に(every switching cycle)、異なるスイッチ状態又はLX電圧レベルを自由に選択することが可能である。追加的な利点は、新規な電荷平衡方法によって可能となる改善されている過渡電流性能(improved transient performance)を含む。
【0016】
マルチ状態電力変換器(Multi-State Power Converters)
【0017】
図1は、従来技術の電力変換器100を含む回路のブロック図である。図示されている例では、電力変換器100(power converter 100)は、変換器回路102(converter circuit 102)及びコントローラ104(controller 104)を含む。変換器回路102は、端子V1+及び端子V1-の両端の間で(例えば、バッテリ等の)電圧源106(voltage source 106)から入力電圧V
INを受信し、端子V2+及び端子V2-の両端の間で入力電圧V
INを出力電圧V
OUTへと変換する(transform the input voltage V
IN into an output voltage V
OUT across terminals V2+, V2-)ように構成される。出力電圧V
OUTは、一般的に、出力キャパシタC
OUTの両端に結合され(coupled across an output capacitor C
OUT)、(また、等価抵抗として表和されてもよい)負荷108は、出力キャパシタC
OUTの両端に接続されてもよい。電力変換器100の複数の実施形態のうちのいくつかにおいて、また、バイアス電圧生成器(bias voltage generator(s))、クロック生成器(clock generator)、電圧制御回路(voltage control circuit)等の(示されていない)補助回路(auxiliary circuitry)が存在してもよく、変換器回路102及びコントローラ104に結合されてもよい。
【0018】
コントローラ104は、入力信号のセットを受信し、出力信号のセットを生成する(produces)。これらの入力信号の一部は、変換器回路102に接続される信号経路110に沿って到着する。これらの入力信号は、変換器回路102の動作状態を示す情報を搬送する。コントローラ104は、また、(同期変換器回路102(synchronous converter circuits 102)のための)クロック信号CLK、及び、1つ又は複数の外部入力/出力信号I/O(external input/output signals I/O)を受信してもよく、それらの1つ又は複数の外部入力/出力信号I/Oは、アナログ、ディジタル(符号化されている信号線又は直接信号線)、或いは、それらの双方の組み合わせであってもよい。受信した入力信号に基づいて、コントローラ104は、信号経路110に、変換器回路102に戻る制御信号のセットを生成し(produces)、それらの制御信号のセットは、変換器回路102の(例えば、低電圧FET、特に、MOSFET等の内部スイッチ等の)内部構成要素(internal components)を制御して、変換器回路102に入力電圧VINから出力電圧VOUTへと昇圧させ(boost)又は降圧させる(buck)。複数の実施形態のうちのいくつかにおいて、(示されていない)補助回路は、コントローラ104に(及び、随意的に、変換器回路102に直接的に)、クロック信号CLK、入力/出力信号I/O、及び、一般的な電源電圧VDD(general supply voltage VDD)及びトランジスタバイアス電圧VBIAS(transistor bias voltage VBIAS)等のさまざまな電圧等のさまざまな信号を提供してもよい。
【0019】
複数の電力変換器設計のうちのいくつかでは、変換器回路102は、エネルギー蓄積素子(energy storage element)としてインダクタを使用する。例えば、
図2Aは、従来技術の2レベルのDC-DC降圧変換器回路200(2-level DC-to-DC buck converter circuit 200)の概略的な図であり、その2レベルのDC-DC降圧変換器回路200は、
図1の変換器回路102として使用されてもよい。2つのスイッチのセット、すなわち、S1及びS2は、V
INと(V
INに対して0[V]となっている)回路接地との間に直列に結合される(series-coupled)。随意的なインダクタLは、出力キャパシタC
OUTに結合されるとともに、スイッチS1とスイッチS2との間のノードL
Xに結合される。出力キャパシタC
OUTの両端の電圧は、V
OUTとなる。
【0020】
インダクタL及びフィルタキャパシタC
OUT(filter capacitor C
OUT)の機能の1つは、エネルギーの転送及び蓄積(energy transfer and storage)である。コントローラ回路の一部である変換器回路102は、一般的に、(示されていない)パルス幅変調(pulse-width modulation (PWM))デューティサイクルコントローラ(duty cycle controller)を含み、そのパルス幅変調(PWM)デューティサイクルコントローラは、(例えば、MOSFETのゲート等の)スイッチS1及びスイッチS2の制御入力に結合されて、スイッチS1及びスイッチS2を交互に有効化し(enable)(閉じるか、又は、“オン”にし)及び無効化し(disable)(開くか、又は、“オフ”にし)、その結果、負荷からのエネルギーの流れ及び負荷へのエネルギーの流れを制御する。PWMデューティサイクルコントローラは、フィードバック電圧及びクロック信号としてV
OUTを受信する。フィードバック電圧は、PWMデューティサイクルコントローラが、スイッチS1及びスイッチS2へのPWM制御信号のデューティサイクルを変動させて(vary)、負荷の変化をオフセットし(offset changes in the load)、それにより、V
OUTを調整する(regulating)ことを可能にする。PWMデューティサイクルコントローラは、一般的に、
図1のコントローラ104の一部となっているが、独立型回路(stand-alone circuit)であってもよい。
【0021】
図示されている例では、変換器回路200は、2つのスイッチ状態、すなわち、スイッチS1が閉じられ且つスイッチS2が開かれている状態(L
X=V
INでの電圧レベル)、又は、スイッチS1が開かれ且つスイッチS2が閉じられている状態(L
X=GNDでの電圧レベル)の間で切り替わる。
図2Bは、
図2Aの回路について、L
Xにおける電圧レベルを時間の関数として示すグラフである。グラフ線202は、スイッチS1及びスイッチS2が2つの利用可能なスイッチ状態の間で切り替わる(toggle between the two available switch states)ときのL
Xにおける平均電圧レベルである。PWMデューティサイクルコントローラは、V
OUTにおける電圧に基づいて各々のスイッチ状態となっている時間を設定し、その時間は、L
Xにおける平均電圧の振幅を決定する(平均のL
X電圧は、理論的には、V
OUT平均電圧に等しいが、寄生性に起因して、L
X平均電圧は、V
OUT平均よりも(負の電流に対して)より高く及び/又はより低いということに留意するべきである)。
図2Bを考慮することによって理解することができるように、インダクタLは、L
Xにおける電圧レベルにおいて、GNDからV
INへの大きなジャンプ及びGNDへ戻る大きなジャンプを観測する(sees large jumps in the voltage level at L
X, from GND to V
IN and back to GND)。インダクタLの両端に結果として生じる電圧リップルは、V
OUTを平滑化するために有意な量のフィルタリングを必要とする。
【0022】
インダクタLの両端の電圧リップル(the voltage ripple across the inductor L)を減少させる代替的な手法は、より多くの直列スイッチを追加するのみならず、エネルギー蓄積素子(energy storage elements)として電荷転送キャパシタ(charge transfer capacitors)を追加して、VINからVOUTへと電荷を転送することである。上記のように、そのような電荷転送キャパシタは、一般的に、“フライキャパシタ(fly capacitors)”又は“ポンプキャパシタ(pump capacitors)”として知られており、変換器回路の集積回路の実施形態に結合されている外部構成要素であってもよい。X個のフライキャパシタCxの存在は、マルチレベル容量性変換器回路を定義し、そのマルチレベル容量性変換器回路は、ノードLXにおいて、2(X+1)個のスイッチ状態からM=X+2個の電圧レベルを生成することが可能である。
【0023】
例えば、
図3Aは、従来技術の3レベルのDC-DC降圧変換器回路300の概略的な図であり、その3レベルのDC-DC降圧変換器回路300は、
図1の変換器回路102として使用されてもよい。4つのスイッチS1-S4のセットは、V
INと回路接地との間に直列に結合される。フライキャパシタC1は、スイッチS3及びスイッチS4と直列に結合されるとともに、スイッチS1及びスイッチS2と並列に結合される。随意的なインダクタLは、出力キャパシタC
OUTに結合されるとともに、スイッチS1とスイッチS2との間のノードL
Xに結合され、出力キャパシタC
OUTの両端の電圧はV
OUTである。
【0024】
図示されている例では、変換器回路200の中の単一の(X=1である)フライキャパシタC1の存在は、4つのスイッチ状態の各々が、ノードLXにおいて3つの電圧レベルのうちの1つを生成することを可能とする。
【0025】
図3Bは、L
Xノードにおけるレベル1の電圧レベルを定義する第1のスイッチ状態となっている変換器回路300の概略的な図である。この第1のスイッチ状態においては、S2及びS4は閉じられ、且つ、S1及びS3は開かれ、(点線の接続線によって示される)C1を事実上バイパスし、回路接地(L
X=GNDにおける電圧レベル)にL
Xを接続する。
【0026】
図3Cは、L
Xノードにおけるレベル3の電圧レベルを定義する第2のスイッチ状態となっている変換器回路300の概略的な図である。この第2のスイッチ状態においては、S2及びS4は開かれ、且つ、S1及びS3は閉じられ、再び、効果的にC1をバイパスし、V
IN(L
X=V
INにおける電圧レベル)にL
Xを接続する。
【0027】
図3Dは、L
Xノードにおけるレベル2の電圧レベルを定義する第3のスイッチ状態となっている変換器回路300の概略的な図である。この第3のスイッチ状態においては、S1及びS4は開かれ、且つ、S2及びS3は閉じられ、V
INからL
XにC1を接続し、したがって、負荷に流れるインダクタL電流によってC1を充電する。C1の両端の電圧は、約V
IN/2となり、L
Xにおける電圧レベルは、また、約V
IN/2に等しくなるであろう。
【0028】
図3Eは、L
Xノードにおけるレベル2の電圧レベルを定義する第4のスイッチ状態となっている変換器回路300の概略的な図である。この第4のスイッチ状態においては、S1及びS4は閉じられ、且つ、S2及びS3は開かれ、L
XからGNDにC1を接続し、したがって、負荷から流れるインダクタL電流によってC1を放電する。C1の両端の電圧は、約V
IN/2となり、L
Xにおける電圧レベルは、また、約V
IN/2に等しくなるであろう(これは、C1が、前もって、状態3のときに充電されているということを仮定する)。したがって、図示されている変換器回路300は、2つのスイッチ状態を有し、それらの2つのスイッチ状態は、L
XノードにおいてV
IN/2というレベル2の電圧レベルを生成する。
【0029】
図3Fは、
図3Aの回路について、時間の関数としてL
Xにおける電圧レベルを示すグラフである。グラフ線302は、スイッチS1乃至S4がGNDと2つのレベル2のスイッチ状態との間を循環するときのL
Xにおける平均電圧レベルであり、
図2Bの中のグラフ線202と同じ値を有する。
図3Fを考慮することによって理解することができるように、変換器回路300が、(フライキャパシタC1をバイパスするスイッチ状態2を回避しながら)スイッチ状態3とスイッチ状態4との間で切り替えられる(toggled between switch states three and four)場合に、インダクタLは、L
Xにおける電圧レベルにおいて、GND(レベル1の電圧レベル)からV
IN/2(レベル2の電圧レベル)のみに遷移し(going from GND (Level-1) to only V
IN/2 (Level-2))、そして、GNDに戻る、よりいっそう小さなジャンプを観測する(sees much smaller jumps)。インダクタLの両端の電圧リップルが結果として減少すると(resulting reduced voltage ripple across the inductor L)、V
OUTを平滑化するために必要なフィルタリングが大幅に少なくなる(necessitates much less filtering to smooth V
OUT)。
【0030】
2レベルの変換器回路300に追加的な直列スイッチSx及びフライキャパシタCxを追加すると、スイッチ状態の数、及び、LXノードに印加される場合がある回路接地(circuit ground)とVINとの間の結果として生じる電圧レベルを増加させ、その結果、インダクタLの両端にさらに小さな電圧リップルを生成する。このことは、平滑な出力電圧を得るためのフィルタリング要件を減少させる。例えば、4レベルのDC-DC降圧変換器回路(4-level DC-to-DC buck converter circuit)は、6個の直列結合されているスイッチS1乃至S6と、2つのフライキャパシタCx(X=2)と、を含む。その結果、4レベルの変換器回路は、(3つのスイッチ状態は、LXにおいて1/3VINレベルになり、他の3つのスイッチ状態は、LXにおいて2/3VINレベルになる)8つのスイッチ状態から、ノードLXにおける(VIN, GND, 1/3VIN, 及び2/3VINの)4つの電圧レベルを定義することが可能である。いくつかの適用例の場合には、VOUTは、ノードLXにおける電圧レベルが、GNDと利用可能な次に高い電圧レベルとの間で交互に入れ替わる(alternates)ように十分に低く設定される。より高い出力電圧の場合には、スイッチングパターンはGNDを決して使用しない場合がある。例えば、4レベルの変換器回路において、0.5*VINに設定される出力VOUTは、2/3VINと1/3Vとの間でLXノードにおける電圧を交互に入れ替えることによって達成されてもよい。
【0031】
マルチレベル変換器回路(multi-level converter circuit)の異なる解釈は、フライキャパシタCxが、
図2Aの降圧変換器回路200のための電荷ポンプ(charge-pump)を生成するということである。重要な相違点は、出力がある1つの出力に制限される標準的な電荷ポンプとは異なり、マルチレベル変換器回路は、フライキャパシタCxを結合して、複数の中間電圧を生成することを可能とすることである。4レベルの例では、2つのフライキャパシタの各々は、1/3電荷ポンプとして機能し、その1/3電荷ポンプは、V
IN及びGNDを含めて、1/3比の総和である任意の入力電圧を生成することが可能であるという追加的な利点を有する。
【0032】
マルチレベル変換器回路は、LXノードにおける電圧レベルを低下させ又は上昇させるために、複数の異なる組み合わせでフライキャパシタCxを結合する。上記のように、フライキャパシタが使用される(すなわち、バイパスされない)ときはいつも、そのフライキャパシタを流れる電気エネルギーは、一般的に、そのフライキャパシタを充電するか又はそのフライキャパシタを放電するかのいずれかであり、このことは、それらのフライキャパシタの平均電圧を維持しながら、フライキャパシタをどのような構成によって及びどのような順序で切り替えることが可能であるかという問題、すなわち、制御問題を生じる。
【0033】
電荷平衡の問題(charge-balance problem)を解決して、3レベルの変換器回路において単一のキャパシタの両端の平均電圧を維持することは比較的容易である。例えば、3レベルの変換器回路においては、(それぞれ、
図3B及び3Cを参照すると)L
Xノードにおいてレベル1(GND)の電圧レベル及びレベル3(V
IN)の電圧レベルを生成する方法は1つのみ存在し、フライキャパシタC1は、これらのL
X電圧レベルには使用されない。これに対して、L
Xにおけるレベル2(V
IN/2)の電圧レベルの場合には、2つの個別のスイッチ状態を使用することが可能であり、1つのスイッチ状態は、キャパシタを充電し(
図3Dを参照すると、S3及びS2は閉じられ、且つ、S1及びS4は開かれ)、他のスイッチ状態は、キャパシタを放電する(
図3Eを参照すると、S3及びS2は開かれ、且つ、S1及びS4は閉じられている)。3レベルの変換器回路の制御は、このようにして、かなり容易であり、変換器回路がレベル2に状態を切り替えるたびごとに、コントローラは、単一のキャパシタの充電と単一のキャパシタの放電との間で交互に切り替わって(alternate between charging and discharging the single capacitor)、その単一のキャパシタの電圧を維持することが可能である。電圧比較器は、キャパシタをモニタリングして、充電状態(charging state)又は放電状態(discharging state)を決定するのに役立てるのに使用されてもよい。例えば、キャパシタ電圧がV
IN/2を下回る場合には、コントローラは、(
図3Dに示されている第3のスイッチ状態である)充電を選択し、キャパシタ電圧がV
IN/2を上回る場合には、コントローラは、(
図3Eに示されている第4のスイッチ状態である)放電を選択する。
【0034】
4レベルの変換器回路(X=2)は、より多くのキャパシタが存在するときに、電荷平衡の困難さを明らかにする。LXノードにおけるレベル1の電圧レベル(GND)及びレベル4の電圧レベル(VIN)の各々は、単一のスイッチ状態によって決定される。これに対して、LXにおけるレベル2の電圧レベル(1/3VIN)及びレベル3の電圧レベル(2/3VIN)の各々は、3つの異なるスイッチ状態のうちのいずれかによって達成されてもよい。マルチレベル変換器回路のより高い次数(X>2)の場合には、VINとGNDとの間の中間レベルを生成するために、より多くのスイッチ状態が可能である。この問題は、5レベルの変換器回路(X=3)ではよりいっそう悪化する。LXノードにおけるレベル1の電圧レベル(GND)及びレベル4の電圧レベル(VIN)の各々は、単一のスイッチ状態によって決定される。これに対して、LXにおけるレベル2の電圧レベル(1/4VIN)及びレベル4の電圧レベル(3/4VIN)の各々は、4つの異なるスイッチ状態のうちのいずれかによって達成されてもよく、LXにおけるレベル3の電圧レベル(2/4VIN)の各々は、6つの異なるスイッチ状態のうちのいずれかによって達成されてもよい。
【0035】
これらの例から明らかであるように、マルチレベル変換器回路の複雑さが増すにつれて、適切な電荷平衡方法を決定することは、極めて困難となる場合がある。上記のように、ほとんどの従来の制御方法は、リンクされている状態変化のシーケンスを確立することに依拠して、電荷平衡を達成しようと試みる。スイッチ状態の長いシーケンスに基づく制御システムは、一般的に、入力電圧及び出力電流等のシステム変数のすべてが、そのシーケンスの間に一定であるということを仮定する。このことは、システム変数のすべてが動的になる傾向がある実世界の環境の場合には非現実的である。
【0036】
制御キャパシタ
【0037】
図4Aは、一般化されているMレベルのマルチレベル変換器セル400の概略的な図であり、そのMレベルのマルチレベル変換器セル400は、
図1の変換器回路102として使用されてもよい。スイッチのセットS1乃至S[2*(M-1)]は、V
INと回路接地との間に直列に結合されている。それらのスイッチのセットは、S1及びS2,S3及びS4,…,S[2*(M-2)+1]及びS[2*(M-1)]のスイッチの対となるように構成される。M-2個のフライキャパシタCxのセットは、(
図4Bを参照して)特定のそれぞれのスイッチと直列に結合されるとともに、それらのスイッチの中のスイッチと並列に結合される。スイッチの対に関しては、スイッチのM-1個の対が存在するか、又は、フライキャパシタの数よりも1つ多いスイッチの対が存在する。
【0038】
随意的なインダクタLは、出力キャパシタCOUTに結合されるとともに、スイッチS1とスイッチS2との間のノードLXに結合され、再度説明するが、出力キャパシタCOUTの両端の電圧は、VOUTである。そのインダクタLは、仮想的な電流源(virtual current source)としての機能を兼ね(doubles as)、その仮想的な電流源は、複数のフライキャパシタCxの間で電荷のすべてを移動させる(moves all charge)。このことは、非常に効率的な形態の電荷移動をもたらすが、それらの複数のフライキャパシタCxの電荷平衡の問題をもたらす。
【0039】
図4Bは、対応する“制御されている”スイッチセットを示している
図4Aからの1つのフライキャパシタCxの概略的な
図420である。各々のフライキャパシタCxは、外側ハイサイドスイッチS[2*x+1](outer high-side switch S[2*x+1])と内側ハイサイドスイッチS[2*x-1](inner high-side switch S[2*x-1])との間に結合されている第1の端子(first terminal)を有し、“ハイサイド”は、変換器回路のV
INの側を指す。各々のフライキャパシタCxは、外側ローサイドスイッチS[2*x+2](outer low-side switch S[2*x+2])と内側ローサイドスイッチS[2*x](inner low-side switch S[2*x])との間に結合されている第2の端子(second terminal)を有し、“ローサイド”は、変換器回路の回路接地(GND)の側を指す。このようにして、M=3のマルチレベル変換器セル400の場合には、単一の(X=1の)フライキャパシタC1の第1の端子は、外側ハイサイドスイッチS3と内側のハイサイドスイッチS1との間に結合され、そのフライキャパシタC1の第2の端子は、内側ローサイドスイッチS2と外側ローサイドスイッチS4との間に結合されるであろう。したがって、マルチレベル変換器セル400の中のフライキャパシタCxの各々は、4つのスイッチを有し、それらの4つのスイッチは、そのフライキャパシタCxを通って流れる電流の流れに影響を及ぼすことが可能である。
【0040】
図4Bは、また、電圧検出器422を示す。その電圧検出器422は、単純な比較器型の回路(comparator-type circuit)であってもよく、基準電圧V
REFに関して(with respect to a reference voltage, V
REF)、対応するフライキャパシタCxの両端の電圧を検知し、その基準電圧V
REFは、フライキャパシタCxのための望ましいターゲット電圧(desired target voltage)を表す。あらゆるフライキャパシタCxは、適切な出力レベルを維持するためにターゲット平均電圧(target average voltage)を有する。Mレベルの変換器及びキャパシタCxの場合には、x=1,2,…,[M-2]であり、そのキャパシタCxのターゲット電圧は、
【数1】
となる。
【0041】
電圧検出器422は、HIGH/LOW状態信号CFx_H/L(HIGH/LOW status signal, CFx_H/L)を出力し、そのHIGH/LOW状態信号CFx_H/Lは、対応するフライキャパシタCxの両端の電圧がVREFよりも大きいか又はVREFよりも小さいということを示す。CFx_H/L状態信号は、以下で説明されるように、フライキャパシタCxと関連するスイッチのための制御回路に結合される。
【0042】
フライキャパシタCxを通って流れる電流に影響を与えることが可能である4つのスイッチのための制御回路は、フライキャパシタCxの両端の電圧の関数として、部分的に、これらのスイッチの状態を設定し、フライキャパシタCxの両端の電圧は、関連する電圧検出器422によって測定されるとともに、CFx_H/Lx状態信号によって伝達される。したがって、理解を容易にするために、各々のフライキャパシタCxは、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチのそれ自身の対を“制御する”といえる。
【0043】
インダクタの中の電流が出力VOUTを充電しているということを仮定する場合に、各々のフライキャパシタCxのためのハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチの対に対して定義することが可能である4つの可能な状態が存在する。
【0044】
図4Cは、フライキャパシタCxと関連する外側ハイサイドスイッチ及び内側ローサイドスイッチが閉じられ、且つ、他の関連するスイッチのすべてが開かれている
図4Bのバージョンである。このスイッチ状態においては、フライキャパシタCxは、充電構成(charging configuration)となるであろう(充電が実際に生起するか否かは、他のフライキャパシタCxのスイッチ状態に依存してもよい)。電流が流れる経路(current flow path)は、破線の矢印によって示されている。
【0045】
図4Dは、フライキャパシタCxと関連する内側ハイサイドスイッチ及び外側ローサイドスイッチが閉じられ、且つ、他の関連するスイッチのすべてが開かれている
図4Bのバージョンである。このスイッチ状態においては、フライキャパシタCxは、放電構成(discharging configuration)となるであろう(放電が実際に生起するか否かは、他のフライキャパシタCxのスイッチ状態に依存してもよい)。電流が流れる経路は、破線の矢印によって示されている。
【0046】
図4Eは、フライキャパシタCxと関連する内側ローサイドスイッチ及び外側ローサイドスイッチが閉じられ、且つ、他の関連するスイッチのすべてが開かれている
図4Bのバージョンである。このスイッチ状態においては、フライキャパシタCxは、点線の接続線によって示されているように、バイパスされるであろう。電流が流れる経路は、破線の矢印によって示されている。
【0047】
図4Fは、フライキャパシタCxと関連する外側ハイサイドスイッチ及び内側ハイサイドスイッチが閉じられ、且つ、他の関連するスイッチのすべてが開かれている
図4Bのバージョンである。このスイッチ状態においては、フライキャパシタCxは、点線の接続線によって示されているように、再びバイパスされるであろう。電流が流れる経路は、破線の矢印によって示されている。
【0048】
図4C乃至4Fにおいて、破線の矢印によって示されている電流が流れる経路は、正の出力電流のための経路であり、電流が流れる経路は、負の出力電流のために方向を逆にしてもよいということに留意するべきである。
【0049】
各々のフライキャパシタCxは、ハイサイドスイッチ(high-side switch)及びローサイドスイッチ(low-side switch)のそれ自身の対の双方を制御することが可能であるが、一般的に、以下で開示される制御の好ましい方法は、各々の対応するキャパシタによって制御可能である外側スイッチ(outer switches)又は内側スイッチ(inner switches)のうちのいずれかを利用する。例えば、
図4Aを参照すると、“外側スイッチ”方法においては、フライキャパシタC1は、そのフライキャパシタC1の外側スイッチS3及び外側スイッチS4を制御し、フライキャパシタC2は、そのフライキャパシタC2の外側スイッチS5及び外側スイッチS6を制御するであろう等である。逆に、例えば、“内側スイッチ”方法においては、フライキャパシタC1は、そのフライキャパシタC1の内側スイッチS1及び内側スイッチS2を制御し、フライキャパシタC2は、そのフライキャパシタC2の内側スイッチS3及び内側スイッチS4を制御するであろう等である。フライキャパシタCxが制御するスイッチのいずれかの対(内側の対又は外側の対)のスイッチ状態は、常に、相補的である(always complementary)、すなわち、いずれのフライキャパシタCxも、そのフライキャパシタCxのハイサイドの制御されるスイッチ(high-side controlled switches)及びローサイドの制御されるスイッチ(low-side controlled switches)の双方を同時に閉じ又は開くことはない。各々のフライキャパシタCxがそのフライキャパシタCxの外側スイッチを制御する場合には、いずれのフライキャパシタも、残されている最も内側のスイッチS1及びS2(left-over innermost switches S1 and S2)を制御することはない。代わりに、各々のフライキャパシタCxがそのフライキャパシタCxの内側スイッチを制御する場合には、いずれのフライキャパシタも、残されている最も外側のスイッチS[2*(M-1)]及びS[2*(M-2)+1](left-over outermost switches S[2*(M-1)] and S[2*(M-2)+1])を制御することはない。残されているスイッチのスイッチ状態は、また、相補的である。
【0050】
例示的な制御回路の実施形態
【0051】
図5は、
図4Aに示されている一般化されているバージョン等のMレベルの変換器セル400のための高度化されている制御回路500(advanced control circuitry 500)のある1つの実施形態のブロック図である。Mレベルの変換器セル400は、インダクタL及び出力キャパシタC
OUTを含む出力ブロック501に結合されるように示されている(概念的には、インダクタLは、また、Mレベルの変換器セル400の中に含まれていると考えられてもよい)。高度化されている制御回路500は、制御ループ(control loop)として機能し、その制御ループは、Mレベルの変換器セル400の出力に結合されているとともに、Mレベルの変換器セル400のスイッチの制御入力(switch control inputs)に結合されている。一般的に、高度化されている制御回路500は、Mレベルの変換器セル400の(例えば、電圧及び/又は電流等の)出力をモニタリングし、そして、そのMレベルの変換器セル400へのスイッチの制御入力のセットを動的に生成する、ように構成され、その高度化されている制御回路500は、V
IN及び出力負荷の変動を考慮して、特定の値となるように出力電圧及び/又は出力電流を安定化させることを試みる。代替的な実施形態において、高度化されている制御回路500は、Mレベルの変換器セル400の(例えば、電圧及び/又は電流等の)入力及び/又はMレベルの変換器セル400の内部ノード(internal node)の(例えば、1つ又は複数のフライキャパシタの両端の電圧又は1つ又は複数の電力スイッチを通る電流等の)入力をモニタリングするように構成されてもよい。したがって、最も一般的には、高度化されている制御回路500は、Mレベルの変換器セル400の(例えば、入力端子、内部ノード、又は出力端子等の)ノードの電圧及び/又は電流をモニタリングするように構成されてもよい。高度化されている制御回路500は、Mレベルの変換器セル400を実現する電力変換器100のための全体的なコントローラ104の中に組み込まれてもよく、又は、その全体的なコントローラ104と分離していてもよい。
【0052】
第1のブロックは、固定周波数電圧モード又は電流モードコントローラ(fixed frequency voltage mode or current mode controller)、オン時間一定コントローラ(constant-ON-time controller)、ヒステリシスコントローラ(hysteretic controller)、或いは、任意の他の変形等の従来のコントローラであってもよいフィードバックコントローラ502を含む。フィードバックコントローラ502は、Mレベルの変換器セル400からのVOUTに結合されるように示されている。代替的な実施形態において、フィードバックコントローラ502は、Mレベルの変換器セル400の入力及び/又はMレベルの変換器セル400の内部ノード(internal node)をモニタリングするように構成されてもよい。フィードバックコントローラ502は、VOUTにおける電圧を直接的に又は間接的に示す信号を生成し、そのフィードバックコントローラ502は、充電、放電、又は3状態(すなわち、開放、電流なし)等のVOUTの望ましい値を維持するためにマルチレベル変換器セル400の中で行う必要がある操作を一般的に決定する。
【0053】
図示されている例では、フィードバックコントローラ502は、フィードバック回路504、補償回路506、及びPWM生成器508を含む。フィードバック回路504は、例えば、フィードバックループ電圧検出器(feedback-loop voltage detector)を含んでもよく、そのフィードバックループ電圧検出器は、(動的であってもよい)望ましいVOUTターゲット電圧を表す基準電圧とVOUT(又は、VOUTの減衰バージョン)とを比較し、VOUTがそのターゲット電圧を上回るか又は下回るかを示す制御信号を出力する。そのフィードバックループ電圧検出器は、演算増幅器(operational amplifier (op-amp))又は相互コンダクタンス増幅器(transconductance amplifier (gm amplifier))等の比較デバイスによって実装されてもよい。
【0054】
補償回路506は、発振を引き起こす場合がある正帰還の意図しない生成(unintentional creation of positive feedback)を回避することによって、また、フィードバックコントローラ502のステップ応答におけるオーバーシュート(overshoot)及びリンギング(ringing)を制御することによって、フィードバックコントローラ502の閉ループ応答を安定化させるように構成される。補償回路506は、既知の方法で実装されてもよく、LC回路及び/又はRC回路を含んでもよい。
【0055】
PWM生成器508は、実際のPWM制御信号(actual PWM control signal)を生成し、その実際のPWM制御信号は、マルチレベル変換器セル400のスイッチのデューティサイクル(duty cycle)を最終的に設定する。加えて、複数の実施形態のうちのいくつかにおいて、PWM生成器508は、追加的な且つ随意的な制御信号CTRL(additional optional control signals CTRL)を渡してもよく(may pass on)、その追加的な且つ随意的な制御信号CTRLは、例えば、(例えば、Mレベルの変換器セル400の複数のレベルのうちのいくつかが、より高いレベル又はより低いレベルに到達するためにバイパスされるべきであるということを示す)VOUTと基準電圧との間の差の大きさ(magnitude of the difference)及び(例えば、VOUTが基準電圧よりもより大きいか又はより小さいか等の)VOUTと基準電圧との間の差の方向(direction of that difference)を示す。他の実施形態において、随意的な制御信号CTRLは、補償回路506の出力から又はフィードバック回路504の出力から、或いは、例えば、VOUTに結合されている(示されていない)個別の比較器から導出されてもよい。その随意的な制御信号CTRLの目的の1つは、VOUTがターゲット出力電圧からどれだけ離れているか(how far away VOUT is from a target output voltage)を知ることが有益である可能性があるときに、制御アルゴリズムを高度化し、したがって、VOUTが大幅に調整不足である場合に(if the VOUT is severely under regulated)インダクタLのより高速な充電を可能とすることである。
【0056】
第2のブロックは、マルチレベルコントローラ510(multi-level controller 510)を含み、そのマルチレベルコントローラ510の主要な機能は、過去にどのようなスイッチ状態が使用されているかにかかわらず、出力電圧レベルが選択されるときはいつでも、Mレベルの変換器セル400の中のフライキャパシタにおける電荷平衡状態(charge-balance state on the fly capacitors)を維持しながら、望ましいVOUTを生成するスイッチ状態を選択することである。
【0057】
マルチレベルコントローラ510は、電圧レベルセレクタ512(Voltage Level Selector 512)を含み、その電圧レベルセレクタ512は、PWM制御信号(PWM control signal)及び利用可能である場合に追加的な制御信号CTRL(additional control signals CTRL)を受信する。加えて、電圧レベルセレクタ512は、VOUT及び/又はVINに結合されてもよく、複数の実施形態のうちのいくつかにおいて、Mレベルの変換器セル400の中の対応するフライキャパシタCxに結合されている電圧検出器422からのHIGH/LOW状態信号CFx_H/L(HIGH/LOW status signals, CFx_H/L)に結合されてもよい。電圧レベルセレクタ512の機能は、(例えば、サイクル毎の基準で(on a cycle-by-cycle basis))出力電圧ターゲットレベル(output voltage Target Level)へと、受信した信号を変換することである。電圧レベルセレクタ512は、通常、少なくともVOUT及びVINを考慮して、いずれのターゲットレベルが望ましいレートでMレベルの変換器セル400の出力を充電し又は放電する必要があるか(which Target Level should charge or discharge the output of the M-level converter cell 400 with a desired rate)を決定する。例えば、6レベルの変換器回路においては、利用可能なターゲットレベルは、レベル1(GND)、レベル2(1/5VIN)、レベル3(2/5VIN)、レベル4(3/5VIN)、レベル5(4/5VIN)、及びレベル6(VIN)であり、これらは、1乃至6(又は、0乃至5)のうちのある1つのカウント値として表されてもよい。
【0058】
ある1つの例として、4レベルの変換器回路において、VIN=12[V]であり、且つ、VOUTが名目上3[V]である必要がある場合に、電圧レベルセレクタ512は、“2”のターゲットレベルを選択することが可能であるということを示してもよく、その結果、LXにおいて1/3VIN電圧レベル(すなわち、4[V])を生じる。PWM制御信号は、そのターゲットレベルと(例えば、GND等の)他のターゲットレベルとの間のデューティサイクルを設定し、それによって、LXにおける平均電圧レベルは、約3[V]となるであろう。
【0059】
一般的に、定常状態動作(steady-state operations)の場合に、選択アルゴリズムの簡素化のために、インダクタLを充電するか又は放電するVOUTに最も近いターゲットレベル電圧(Target Level voltage)を選択してもよい。一般的に、過渡応答(transient response)のために、その最も近いターゲットレベルよりも高い(充電のための)ターゲットレベル又はその最も近いターゲットレベルよりも低い(放電のための)ターゲットレベルを選択して、インダクタLを迅速に充電し又は放電してもよい。電圧レベルセレクタ512は、例えば、ルックアップテーブル(LUT)として、或いは、比較回路及び組合せ論理回路又はより一般化されているプロセッサ回路として、実装されてもよい。複数の実施形態のうちのいくつかにおいて、電圧レベルセレクタ512は、インダクタ電圧降下(inductor voltage drop)、負荷過渡現象(load transients)、出力偏差の大きさ(magnitude of output deviations)、及び/又は外部ソースからの外部入力信号(external input signals from external sources)等の追加的な要因に基づいて、充電又は放電の速度を増加させることを試みる(以下で説明されている)高度化されている方法を実装してもよい。電圧レベルセレクタ512の出力は、(例えば、入力PWM制御信号から導出される)デューティサイクル情報のみならずスイッチ状態を含んでもよい。
【0060】
電圧レベルセレクタ512の出力は、マルチレベルスイッチ状態セレクタ514(Multi-Level Switch State Selector 514)に結合され、そのマルチレベルスイッチ状態セレクタは、一般的に、フライキャパシタCxのための電圧検出器422からの状態信号CFx_H/Lに結合されるであろう。電圧レベルセレクタ512が生成するターゲットレベルを考慮して、マルチレベルスイッチ状態セレクタ514は、フライキャパシタCxの電荷平衡を概ね達成する望ましい出力レベルのためのスイッチ状態のパターンを決定する。マルチレベルスイッチ状態セレクタ514は、例えば、比較回路及び組合せ論理として、ルックアップテーブル(look-up table (LUT))として、又はより一般化されているプロセッサ回路として実装されてもよい。マルチレベルスイッチ状態セレクタ514の出力は、(特定の変換器セルのために必要とされるであろうような適切なレベルシフタ回路(level-shifter circuits)及びドライバ回路(drivers circuits)によって)マルチレベル変換器セル400のスイッチに結合され、マルチレベルスイッチ状態セレクタ514が決定するスイッチ状態設定のパターン(pattern of switch state settings)を含む。スイッチ状態設定のパターンは、マルチレベル変換器セル400の中のスイッチの構成を選択する。
【0061】
一般的に(常にではないが)、PWMベースの制御システム(PWM-based control systems)の場合には、電圧レベルセレクタ512及びMレベルのスイッチ状態セレクタ514は、PWM信号が変化するときにのみ、それらの状態を変化させる。例えば、PWM信号がハイになるときに、電圧レベルセレクタ512は、いずれのレベルがインダクタLの充電をもたらすか(which level results in charging of the inductor L)を選択し、Mレベルのスイッチ状態セレクタ514は、そのレベルの使用に対するバージョンを設定する(sets which version to use of that level)。その次に、PWM信号がローになるときに、電圧レベルセレクタ512は、いずれのレベルがインダクタLを放電することを可能とするか(which level can discharge the inductor L)を選択し、Mレベルのスイッチ状態セレクタ514は、そのレベルのいずれのバージョンを使用するか(which version of that level to use)を設定する。このようにして、電圧レベルセレクタ512及びMレベルのスイッチ状態セレクタ514は、一般的に、PWM信号が変化するときにのみ状態を変化させる(PWM信号は、事実上、それらのクロック信号となる)。ところが、CTRL信号が電圧レベルセレクタ512の状態を変化させることが望ましい状況又はイベントが存在する場合がある。さらに、深刻なサイクル途中の不均衡(severe mid-cycle imbalance)が生起するとき等、CFx_H/L状態信号(CFx_H/L status signal(s))がMレベルのスイッチ状態セレクタ514に電力スイッチ設定の特定の構成を選択させる(cause the M-level Switch State Selector 514 to select a particular configuration of power switch settings)ことが望ましい状況又はイベントが存在する場合がある。複数の実施形態のうちのいくつかにおいて、例えば、非常に長い時間にわたって1つのレベルに“留められ”(being “stuck” at one level for a very long time)、潜在的に電荷不均衡を引き起こすことを回避するために、Mレベルのスイッチ状態セレクタ514にその状態の最適なバージョンを定期的に再評価させる(forces the M-level Switch State Selector 514 to re-evaluate the optimal version of the state periodically)タイミング機能を含めることが有用である場合がある。
【0062】
図5に示されている制御回路の顕著な利点の1つは、その制御回路が、従来のマルチレベルDC-DC変換器回路では達成できない出力電圧を表す複数の電圧レベルの間の境界ゾーンの中での電圧の生成を可能とするということである。
【0063】
代替的な調整されていない電荷ポンプの実施形態において、フィードバックコントローラ502及び電圧レベルセレクタ512を省略することが可能であり、代わりに、Mレベルのスイッチ状態セレクタ514にクロック信号CLKを印加してもよい。Mレベルのスイッチ状態セレクタ514は、(状態のあらかじめ定義されているシーケンスを循環するのと反対に(as opposed to cycling through a pre-defined sequency of states))どのような状態が過去に使用されているのかにかかわらず(regardless of what switch state or states were used in the past)、フライキャパシタCxを周期的に電荷平衡させる(periodically charge balances the fly capacitors Cx)スイッチ状態設定のパターン(pattern of switch state settings)を生成するであろう。このことは、VINの変化又はVINの異常が生起する場合でさえ、そのシステムが、一般的に、常に、フライキャパシタCxの電荷平衡を求めるということを保証する。
【0064】
複数の実施形態のうちのいくつかにおいて、Mレベルのスイッチ状態セレクタ514は、従来の方法によって実装することが可能である随意的な電流測定入力516(current-measurement input 516)によって、インダクタLを通って流れる電流ILを考慮に入れてもよい。
【0065】
以下では制御方法を記載し、マルチレベルスイッチ状態セレクタ514の中でその制御方法を実装して、過去のスイッチ状態にかかわらず、電荷平衡状態となるようにフライキャパシタCxを動作させる本質的に最適なスイッチ状態をサイクル毎に選択してもよい。
【0066】
一般的な制御方法
【0067】
Mレベルのマルチレベル変換器回路においては、(例えば、GND等の)レベル1又は(例えば、VIN等の)レベルMを達成するスイッチの構成は、フライキャパシタCxを効果的にバイパスする。逆に、複数の中間電圧レベルのすべてについて、少なくとも1つのフライキャパシタCxは、VOUTに結合され、任意の中間電圧レベルを達成することが可能であるスイッチの少なくとも2つの構成が常に存在する。任意の特定の中間電圧レベルについて、スイッチの少なくとも1つの構成は、関連するフライキャパシタの充電をもたらし、スイッチの少なくとも1つの他の構成は、その関連するフライキャパシタの放電をもたらす。本発明の1つの態様は、スイッチ構成のパターンを動的に選択して、すなわち、任意の以前のスイッチングサイクルのスイッチ構成にかかわらず又は任意の以前のスイッチングサイクルのスイッチ構成の記憶なしに、スイッチ構成を選択して適切なレベルを選択し、及び、また、フライキャパシタCxの間で電荷を平衡させる充電スイッチ構成又は放電スイッチ構成のうちのいずれかを意図的に選択する方法でスイッチ構成を選択して適切なレベルを選択することによって、中間電圧レベルを必要とする任意の達成可能な出力電圧VOUTを達成することができるという実現である。
【0068】
本発明の複数の実施形態は、正のインダクタL電流(充電VOUT)の場合には以下のアプローチを使用する。
(1) 充電を必要とするフライキャパシタCxは、そのフライキャパシタCxの充電スイッチ(外側スイッチ制御方法のときの外側ハイサイドスイッチ、又は、内側スイッチ制御方法の場合には内側ローサイドスイッチ)を閉じるように設定され、そして、
(2) 放電を必要とするフライキャパシタCxは、そのフライキャパシタCxの放電スイッチ(外側スイッチ制御方法の場合には外側ローサイドスイッチ、又は、内側スイッチ制御方法の場合には内側ハイサイドスイッチ)を閉じるように設定されるであろう。
【0069】
負のインダクタL電流(放電VOUT)の場合には、スイッチの選択は反転する。したがって、
(1) 充電を必要とするフライキャパシタCxは、そのフライキャパシタCxの充電スイッチ(外側スイッチ制御方法のときの外側ローサイドスイッチ、又は、内側スイッチ制御方法の場合には内側ハイサイドスイッチ)を閉じるように設定され、
(2) 放電を必要とするフライキャパシタCxは、そのフライキャパシタCxの放電スイッチ(外側スイッチ制御方法の場合には外側ハイサイドスイッチ、又は、内側スイッチ制御方法の場合には内側ローサイドスイッチ)を閉じるように設定されるであろう。
【0070】
再び、充電が特定のフライキャパシタCxに対して実際に生起するか否かは、一般的に、他のフライキャパシタのすべてのスイッチ状態に依存するということに留意するべきである。フライキャパシタC(x)が実際に充電するか又は放電するためには、(外側スイッチ制御方法の場合には)(存在する場合には)次の内側フライキャパシタC(x-1)(next inward fly capacitor C(x-1))又は(内側スイッチ制御方法の場合には)(存在する場合には)前の外側フライキャパシタC(x+1)(previous outward fly capacitor C(x+1))は、反対の状態(すなわち、放電又は充電)に設定される必要があり、それによって、バイパス状態は生起しない。
【0071】
M個の電圧レベル、すなわち、(例えば、GND等の)レベル1から(例えば、VIN等の)レベルMまでの電圧レベルを生成することが可能であるM次の任意のマルチレベル変換器回路の場合には、以下のスイッチの計数規則(switch count rules)が任意のレベルmに適用される。
(1) M-m個のローサイドスイッチは、閉じられる(ON)ように設定される必要があり、
(2) m-1個のハイサイドスイッチは、閉じられる(ON)ように設定される必要があり、
(3) ONとなる必要がないスイッチは、OFF(開かれる)となるように設定される必要がある。
【0072】
これらのスイッチの計数規則を考慮して、以下の一般化されているキャパシタ制御方法が、マルチレベルスイッチ状態セレクタ514の各々の状態変化に適用される。
(ステップ1) 以前にまだ選択されていないフライキャパシタ(fly capacitor that has not previously been selected)を選択する。
(ステップ2) 選択されているフライキャパシタの電圧が、そのフライキャパシタのVtargetを上回り、且つ、選択されているフライキャパシタのための放電経路を有効化するために閉じるように設定することが可能である残りの(remaining)(すなわち、このサイクルにおいてこの方法によってまだ設定されていない(not been set by this method in this cycle))ローサイドスイッチ又はハイサイドスイッチが存在する場合に、選択されているフライキャパシタのための放電経路を有効化するこれらのスイッチを閉じるように設定し(set those switches that enable a discharge path for the selected fly capacitor to be closed)、(例えば、閉じるように設定されるローサイドスイッチの数及び閉じるように設定されるハイサイドスイッチの数についての)1つ又は複数の適切なカウンタを減少させ、現在のフライキャパシタに“完了”(すなわち、すでに選択されている)を示すフラグを立てる(flag the current fly capacitor as “done” (i.e., as having been selected))。そうでない場合には(選択されているフライキャパシタの電圧がそのフライキャパシタのVtargetを下回っているため)、選択されているフライキャパシタのための充電経路を有効化するそれらのスイッチを閉じるように設定し(set the switches that enable a charging path for the selected fly capacitor to be closed)、現在のフライキャパシタに“完了”を示すフラグを立てる(flag the current fly capacitor as “done”)。
(ステップ3) フライキャパシタのすべてが選択されるまで、ステップ1に戻るようにループする。
(ステップ4) 残されているスイッチの残りの対(remaining pair of left-over switches)については、スイッチの計数規則及びカウンタ値に基づいて、ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを閉じるように設定する。
【0073】
上記の一般化されているキャパシタ制御方法によって、より具体的なマルチレベルの電荷平衡制御方法を作成することが可能であり、例は、以下のようになる。
【0074】
A. 外から内への方法(Outward-In Methods)
【0075】
外から内への方法は、Mレベルの変換器回路の最も外側のフライキャパシタ(outward-most fly capacitor)(
図4Aの中のC[M-2])から開始して、最も内側のフライキャパシタ(inward-most fly capacitor)(
図4AのC1)に向かって順次的に作用する一般化されているキャパシタ制御方式に適用される。このようにして、外から内への方法は、外側フライキャパシタを優先する(give priority to the outward fly capacitors)、すなわち、外側フライキャパシタは、それらのフライキャパシタの制御されているスイッチを充電状態又は放電状態に設定する最初の機会を与えられる(given the first opportunity to set their controlled switches to a charging or discharging state)。バイパスされない任意のフライキャパシタのために、(存在する場合には)あとに続く(より内側にある)フライキャパシタは、そのフライキャパシタの制御されているスイッチを反対の状態(すなわち、放電又は充電)に設定する必要がある。このことは、同じ充電/放電状態が連続して選択されている(same charging/discharging state is being selected in a row)ときに、より内側のフライキャパシタを優先することにつながる(results in the more inward fly capacitors taking precedence)。
【0076】
外から内への方法の場合に、各々のフライキャパシタCxがスイッチの自身の外側のセットの状態を制御する外側スイッチ方法及び各々のフライキャパシタCxがスイッチの自身の内側のセットの状態を制御する内側スイッチ方法の2つの変形が存在する。
【0077】
(1) 外から内への外側スイッチ方法(Outward-In Outer-Switch Method)
【0078】
スイッチの計数規則を考慮し、スイッチの対の一方のスイッチを閉じるように設定することが、その対の他方のスイッチを開くように設定することを意味するということを考慮すると、次の一般的な外から内への外側スイッチ方法は、Mレベルの変換器回路の各々のスイッチングサイクルに適用される。
(ステップ1) まだ考慮されていない最も外側のフライキャパシタを選択する(したがって、フライキャパシタC[M-2]から開始する)。
(ステップ2) 選択されているフライキャパシタの電圧が、そのフライキャパシタのVtargetを上回り、且つ、より内側のフライキャパシタのすべてのためのローサイドスイッチの数がまだ使い果たされていない(has not been exhausted)場合には、選択されているフライキャパシタの外側ローサイドスイッチを閉じるように設定して、その選択されているフライキャパシタを放電させ、そうでない場合には、選択されているフライキャパシタの電圧が、そのフライキャパシタのVtargetを下回るので、選択されているフライキャパシタの外側ハイサイドスイッチを閉じるように設定して、その選択されているフライキャパシタを充電する。
(ステップ3) フライキャパシタのすべてが選択されるまで、ステップ1に戻るようにループする。
(ステップ4) 残されている最も内側の内側スイッチ(S1及びS2)の残りの対(remaining pair of left-over inward-most inner switches (S1 and S2))について、スイッチの計数規則に基づいて、ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを閉じるように設定する。
【0079】
いくつのハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを閉じ又は開くように設定しているのかを追跡し(keeping track of how many high-side or low-side switches have been set to be closed or opened)、スイッチの合計数が制限に達する時点を知る複数の異なる方法が存在する。これを行う方法の1つは、各々のマルチレベル変換器回路が全体として特定の複雑さの構造を表し、各々のより内側のフライキャパシタ(each more-inward fly capacitor)が、次のより外側の変換器回路よりも1つ少ない利用可能な電圧レベルを有するより複雑でないマルチレベル変換器回路部分構造(substructure)を表すということを認識することである。
【0080】
例えば、マルチレベルスイッチ状態セレクタ514によって実装されてもよい計数方法の1つ(one accounting method)は、以下のステップを含む。
(A) ターゲットレベルをフライキャパシタCxに提供する。
(B) それ自身の測定電圧に応答して、フライキャパシタCxが、そのフライキャパシタCxのローサイドスイッチを閉じるように設定することによって、そのフライキャパシタCxそれ自体を放電するように設定する場合に、同じターゲットレベルは、次の内側のフライキャパシタに渡される(割り当てられる)。
(C) 代わりに、フライキャパシタCxが、そのフライキャパシタCxのハイサイドスイッチを閉じるように設定することによって、そのフライキャパシタCxそれ自体を充電するように設定する場合に、受信したターゲットレベルは1だけ減少させられ、次の内側のフライキャパシタに渡される(割り当てられる)。
(D) フライキャパシタCxのターゲットレベルが“1”である場合に、フライキャパシタCxは、そのフライキャパシタCxの外側ローサイドスイッチを閉じるように設定する必要がある。
(E) 逆に、フライキャパシタCxのターゲットレベルが、そのフライキャパシタCxに対応する変換器回路のより複雑でない部分構造(lower-complexity substructure)の最大電圧レベルを表す場合に、フライキャパシタCxは、そのフライキャパシタCxの外側ハイサイドスイッチを閉じるように設定する必要がある。
(F) プロセスは、関連するフライキャパシタCxを接続するスイッチのすべてを開いている状態又は閉じている状態に設定するまで、ステップ(B) に戻るようにループする。
(G) 残されている最も内側の内側スイッチ(S1及びS2)の残りの対(remaining pair of left-over inward-most inner switches (S1 and S2))について、スイッチの計数規則に基づいて、ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを閉じるように設定する。
【0081】
この計数プロセスを解説するために、
図6Aは、ある1つの例示的な6レベルの変換器構造についてのターゲットレベル遷移(Target Level transitions)及びフライキャパシタの充電イベント又は放電イベント(fly capacitor charge or discharge events)の第1の例の
図600である。この図は、いくつのレベルが方法の各々のステップにおいて使用可能であるかを示し、影付きの行は、現在のステップが調整する必要があるターゲットレベルを示している。例えば、6レベルの変換器回路においては、利用可能なターゲットレベルは、レベル1(GND)、レベル2(1/5V
IN)、レベル3(2/5V
IN)、レベル4(3/5V
IN)、レベル5(4/5V
IN)、及びレベル6(V
IN)であり、それらの利用可能なターゲットレベルは、1乃至6(又は、0乃至5)からのカウント値として表されてもよい。
【0082】
最初の列(first column)は、(GNDからVINまでの)6つのレベルのすべてが、最も外側のフライキャパシタ(すなわち、この例ではC4)のために利用可能であるということを示している。この例において提供されるターゲットレベルは、“3”(すなわち、2/5VIN)であり、そのターゲットレベルは、制限最小電圧レベル又は制限最大電圧レベル(limiting minimum or maximum voltage level)ではない。このようにして、フライキャパシタC4は、それ自体の測定される電圧に基づいて、充電モード又は放電モードを自由に選択することができる。図示されている例では、フライキャパシタC4は、そのフライキャパシタC4の制御されているスイッチ(S10及びS9)のために放電モードを選択し、その放電モードは、次のフライキャパシタへのVINを1つのレベルだけ効果的に下げる(すなわち、次のフライキャパシタC3は、GNDと4/5VINとの間に効果的に接続される)。
【0083】
2番目の列(second column)は、フライキャパシタC3が、より複雑でない5レベルの変換器の部分構造(lower-complexity 5-Level converter substructure)の最も外側のキャパシタであるということを示す。フライキャパシタC4は、放電モードに設定されていたので、ターゲットレベルは、依然として“3”であり、フライキャパシタC3は、それ自体の測定される電圧に基づいて、充電モード又は放電モードを自由に選択することができる。図示されている例では、フライキャパシタC3は、そのフライキャパシタC3の制御されているスイッチ(S8及びS7)のために充電モードを選択し、その充電モードは、接地ノードを1つのレベルだけ増加させることによって、変換器回路の残りのより複雑でない部分構造から電圧レベルを効果的に除去する(すなわち、次のフライキャパシタC2は、1/5VINと4/5VINとの間に効果的に接続される)。
【0084】
3番目の列(third column)は、フライキャパシタC2が、より複雑でない4レベルの変換器の部分構造(lower-complexity 4-Level converter substructure)の最も外側のキャパシタであるということを示す。フライキャパシタC3は充電されているので、ターゲットレベルは、“2”に減少させられる。フライキャパシタは、依然として、それ自体の測定される電圧に基づいて、充電モード又は放電モードを自由に選択することが可能である。図示されている例では、フライキャパシタC2は、そのフライキャパシタC2の制御されているスイッチ(S6及びS5)のために放電モードを選択し、その放電モードは、次のフライキャパシタへのVINを1つのレベルだけ効果的に下げる(すなわち、次のフライキャパシタC1は、1/5VINと3/5VINとの間に効果的に接続される)。
【0085】
4番目の列(fourth column)は、フライキャパシタC1が、より複雑でない3レベルの変換器の部分構造(lower-complexity 3-Level converter substructure)の最も外側のキャパシタであるということを示す。このフライキャパシタC1は、最後の使用可能なキャパシタであり、“2”のターゲットレベルカウントは中間にある(is in the middle)ので、そのフライキャパシタは、それ自体の測定される電圧に基づいて、充電モード又は放電モードを自由に選択することができる。図示されている例では、フライキャパシタC1は、そのフライキャパシタC1の制御されるスイッチ(S4及びS3)のために充電モードを選択する。そのようにすると、接地レベルを除去し(removes a ground level)、接地ノードを1つのレベルだけ(すなわち、2/5VINと4/5VINの間に)増加させることによって、変換器回路の残りのより複雑でない部分構造からレベルを効果的に除去する(effectively removes a level from the remaining lower-complexity substructures)。
【0086】
5番目の列(fifth column)は、最も内側の最も複雑度の低い部分構造(inward-most lowest-complexity substructure)のスイッチの残されている対(left-over pair of switches)(S2及びS1)に関する。フライキャパシタC1は充電されているので、ターゲットレベルは、“1”に減少させられる。変換器回路のためのマルチレベルスイッチ状態セレクタ514は、いくつのハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチが以前に閉じるように設定されているか(how many high-side switches and low-side switches have been set to be closed previously)に依存して、ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチのうちのいずれかを閉じるように設定するであろう。その方法は、同じ状態のままであり(stays the same)、この時点において、ターゲットレベルは、“1”(すなわち、2/5VINの最小部分構造のレベル)又は“2”(3/5VINの最大部分構造のレベル)のうちのいずれかとなり、したがって、いずれのスイッチを閉じている状態に設定するかを指示する(dictate which switch to set to a closed state)。図示されている例では、ターゲットレベルカウントは、現在、“1”であるので、ローサイドスイッチは、閉じるように設定され、望ましい出力電圧VOUT=2/5VINは、6列目に到達する。
【0087】
上記プロセスにおける各々のステップは、このようにして、上位からある1つのレベルを除去することによって又は下位からある1つのレベルを除去することによって(either by removing a level from the top or by removing a level from the bottom)、1つずつターゲットレベルを減少させる。本質的に、各々のステップは、ターゲットレベルに達するまで、対応するフライキャパシタを充電し又は放電することを選択し、その時点で、残りのステップは出力に影響を与えなくなる。
【0088】
図6Bは、
図6Aに示されているプロセスが生成するスイッチ状態のパターンを示す表650である。各々のスイッチの対において、その表の2番目の行(second row)の中の“1”は、閉じるように設定される(set to be closed)ということを示し、“0”は、開くように設定される(set to be open)ということを示す。例えば、対1の場合には、外側ローサイドスイッチS10は、閉じるように設定され、外側ハイサイドスイッチS9は、開くように設定される。他の例として、対4の場合には、外側ローサイドスイッチS4は、開くように設定され、外側ハイサイドスイッチS39は、閉じるように設定される。図示されている例は、正のインダクタ電流I
Lについての例であり、負のインダクタ電流I
Lについては、表650に示されている開かれている状態(open state)及び閉じられている状態(closed state)は、逆になるであろうということに留意するべきである。
【0089】
図7Aは、ある1つの例示的な6レベルの変換器の場合のターゲットレベルの遷移(Target Level transitions)及びフライキャパシタの充電イベント又は放電イベント(fly capacitor charge or discharge events)の第2の例の
図700である。図示されている例では、ステップは、プロセスの早い段階で最上位レベルに達する(reach the top level early on in the process)。
【0090】
最初の列(first column)は、(GNDからVINまでの)6つのレベルのすべてが、最も外側のフライキャパシタ(すなわち、この例ではC4)のために利用可能であるということを示している。この例において提供される電圧ターゲットレベルは、“5”(すなわち、4/5VIN)であり、そのターゲットレベルは、制限最小レベル又は制限最大レベル(limiting minimum or maximum Level)ではない。このようにして、フライキャパシタC4は、それ自体の測定される電圧に基づいて、充電モード又は放電モードを自由に選択することができる。図示されている例では、フライキャパシタC4は、そのフライキャパシタC4の制御されているスイッチのために放電モードを選択し、その放電モードは、次のフライキャパシタへのVINを1つのレベルだけ効果的に下げる(すなわち、次のフライキャパシタC3は、GNDと4/5VINとの間に効果的に接続される)。
【0091】
2番目の列(second column)は、フライキャパシタC3が、より複雑でない5レベルの変換器の部分構造(lower-complexity 5-Level converter substructure)の最も外側のキャパシタであるということを示す。フライキャパシタC4は、放電モードに設定されていたので、ターゲットレベルは、依然として、“5”である。フライキャパシタC3は、この最大レベルによって制約される(constrained)。したがって、フライキャパシタC3は、充電モード(charge mode)を選択する必要があり、その充電モードは、1つのレベル(one Level)だけ接地ノード(ground node)を増加させることによって、変換器回路の残りの素子からレベルを効果的に除去する(effectively removes a level)(すなわち、次のフライキャパシタC2は、1/5VINと4/5VINとの間に効果的に接続される)。フライキャパシタC3が充電されているので、ターゲットレベルは、“5”から“4”に減少させられる。
【0092】
3番目の列(third column)は、フライキャパシタC2が、より複雑でない4レベルの変換器の部分構造(lower-complexity 4-Level converter substructure)の最も外側のキャパシタであるということを示す。この時点で、そのターゲットレベルは、この部分構造についてのその最大レベルであり、且つ、フライキャパシタC2は、充電モードを選択するように強制され、したがって、ターゲットレベルカウンタは、“4”から“3”に減少させられる(すなわち、次のフライキャパシタC1は、2/5VINと4/5VINとの間に効果的に接続される)。充電モードは、そのフライキャパシタC2の制御されているスイッチ設定(controlled switch settings)に関してフライキャパシタC2によって選択されるが、そのフライキャパシタC2は、他のフライキャパシタのスイッチ設定に起因して、実際の電流の流れに関してはバイパスされてもよい(may be bypassed in terms of actual current flow)ということに留意するべきである。
【0093】
4番目の列(fourth column)は、フライキャパシタC1が、より複雑でない3レベルの変換器の部分構造(lower-complexity 3-Level converter substructure)の最も外側のキャパシタであるということを示す。このフライキャパシタC1は、最後の利用可能なキャパシタであり、ターゲットレベルカウントは、このステップにおいて最大レベルとなっているので、フライキャパシタC1は、充電モードを選択するように強制され、したがって、ターゲットレベルは、“3”から“2”に減少させられる(すなわち、最後の部分構造は、3/5VINと4/5VINとの間に効果的に接続される)。ここでも、充電モードは、そのフライキャパシタC1の制御されているスイッチ設定に関してフライキャパシタC1によって選択されるが、そのフライキャパシタC1は、他のフライキャパシタのスイッチ設定に起因して、実際の電流の流れに関してはバイパスされてもよい。
【0094】
5番目の列(fifth column)は、最も複雑度の低い最も内側の部分構造(lowest-complexity inward-most substructure)として、スイッチの残されている対(left-over pair of switches)に関する。変換器回路のためのマルチレベルスイッチ状態セレクタ514は、いくつのハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチが以前に閉じるように設定されているか(how many high-side switches and low-side switches have been set to be closed previously)に依存して、ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチのうちのいずれかを閉じるように設定するであろう。その方法は、同じ状態のままであり(stays the same)、この時点において、ターゲットレベルは、“1”(すなわち、3/5VINの最小部分構造レベル(minimum substructure Level of 3/5VIN))又は“2”(4/5VINの最大部分構造レベル(maximum substructure Level of 4/5VIN))のうちのいずれかとなり、したがって、いずれのスイッチを閉じている状態に設定するかを指示する(dictate which switch to set to a closed state)。図示されている例では、ターゲットレベルカウントは、現在、“2”であるので、ハイサイドスイッチは、閉じるように設定され、望ましい出力電圧VOUT=4/5VINは、6列目に到達する。
【0095】
図7Aの例では、最大状態に達すると直ちに、後続の部分構造のすべて(all subsequent substructures)は、それらの部分構造のそれぞれのハイサイドスイッチをオンにし、出力への電力の流れをバイパスするように強制される。
【0096】
図7Bは、ある1つの例示的な6レベルの変換器構造の場合のターゲットレベルの遷移(Target Level transitions)及びフライキャパシタの充電イベント又は放電イベント(fly capacitor charge or discharge events)の第3の例の
図750である。図示されている例では、それらのステージは、プロセスの早い段階で最下位レベルに到達する(reach the bottom level early on in the process)。
【0097】
最初の列(first column)は、再び、(GNDからVINまでの)6つのレベルのすべてが、最も外側のフライキャパシタ(すなわち、この例では、C4)のために利用可能であるということを示している。この例において提供されるターゲットレベルは、“2”(すなわち、1/5VIN)であり、そのターゲットレベルは、制限最小レベル又は制限最大レベル(limiting minimum or maximum Level)ではない。このようにして、フライキャパシタC4は、それ自体の測定される電圧に基づいて、充電モード又は放電モードを自由に選択することができる。図示されている例では、フライキャパシタC4は、そのフライキャパシタC4の制御されているスイッチのために放電モードを選択し、その放電モードは、次のフライキャパシタへのVINを1つのレベルだけ効果的に下げる(すなわち、次のフライキャパシタC3は、GNDと4/5VINとの間に効果的に接続される)。
【0098】
2番目の列(second column)は、再び、フライキャパシタC3が、より複雑でない5レベルの変換器の部分構造(lower-complexity 5-Level converter substructure)の最も外側のキャパシタであるということを示す。フライキャパシタC4は、放電モードに設定されていたので、ターゲットレベルは、依然として、“2”である。したがって、フライキャパシタC3は、それ自体の測定される電圧に基づいて、充電モード又は放電モードを自由に選択することができる。図示されている例では、フライキャパシタC3は、そのフライキャパシタC3の制御されているスイッチの充電モードを選択し、その充電モードは、1つのレベルだけ接地ノードを増加させる(increasing the ground node by one Level)ことによって、変換器回路の残りの素子からレベルを効果的に除去する(effectively removes a level from the remaining elements)(すなわち、次のフライキャパシタC2は、1/5VINと4/5VINとの間に効果的に接続される)。フライキャパシタC3が充電されているので、ターゲットレベルは、“2”から“1”に減少させられる。
【0099】
3番目の列(third column)は、フライキャパシタC2が、より複雑でない4レベルの変換器の部分構造(lower-complexity 4-Level converter substructure)の最も外側のキャパシタであるということを示す。この時点で、ターゲットレベルは、この部分構造についてのその最小レベルであり(すなわち、フライキャパシタC2は、“1”のターゲットレベルをすでに受信し)、フライキャパシタC2は、放電モードを選択するように強制され、その放電モードは、1つのレベルだけ次のフライキャパシタへのVINを効果的に下げる(すなわち、次のフライキャパシタC1は、1/5VINと3/5VINとの間に効果的に接続される)。放電モードは、そのフライキャパシタC2の制御されているスイッチ設定に関してフライキャパシタC2によって選択されるが、フライキャパシタC2は、他のフライキャパシタのスイッチ設定に起因して、実際の電流の流れに関してはバイパスされるであろうということに留意するべきである。
【0100】
4番目の列(fourth column)は、フライキャパシタC1が、より複雑でない3レベルの変換器の部分構造(lower-complexity 3-Level converter substructure)の最も外側のキャパシタであるということを示す。このフライキャパシタC1は、最後の利用可能なキャパシタであり、ターゲットレベルカウント(Target Level count)は、最小レベルとなっているので、フライキャパシタC1は、放電モードを選択することを強制され、その放電モードは、1つのレベルだけ次の部分構造へのVINを効果的に下げる(すなわち、次の部分構造は、1/5VINと2/5VINとの間に効果的に接続される)。ここでも、放電モードは、そのフライキャパシタC1の制御されているスイッチ設定に関して、フライキャパシタC1によって選択されるが、フライキャパシタC1は、他のフライキャパシタのスイッチ設定に起因して、実際の電流の流れに関してはバイパスされるであろう。
【0101】
5番目の列(fifth column)は、最も複雑度の低い最も内側の部分構造(lowest-complexity inward-most substructure)として、スイッチの残されている対(left-over pair of switches)に関する。変換器回路のためのマルチレベルスイッチ状態セレクタ514は、いくつのハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチが以前に閉じるように設定されているか(how many high-side switches and low-side switches have been set to be closed previously)に依存して、ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチのうちのいずれかを閉じるように設定するであろう。その方法は、同じ状態のままであり(stays the same)、この時点において、ターゲットレベルは、“1”(すなわち、1/5VINの最小部分構造レベル(minimum substructure Level of 1/5VIN))又は“2”(2/5VINの最大部分構造レベル(maximum substructure Level of 2/5VIN))のうちのいずれかとなり、したがって、いずれのスイッチを閉じている状態に設定するかを指示する(dictate which switch to set to a closed state)。図示されている例では、ターゲットレベルカウントは、現在、“1”であるので、ローサイドスイッチは、閉じるように設定され、望ましい出力電圧VOUT=1/5VINは、6列目に到達する。
【0102】
図7Bの例では、最小状態に達すると直ちに、後続の部分構造のすべては、それらの部分構造のそれぞれのローサイドスイッチをオンにし、出力への電力の流れをバイパスするように強制される。
【0103】
上記の例によって示されているように、充電モード又は放電モードは、最上位レベル又は最下位レベルを選択するまで(until the top or bottom level is picked)、各々の部分構造のために選択される。その後に、残りの内側の部分構造のすべては、また、同様に、それらの部分構造の最上位レベル又は最下位レベルを選択するように強制される。
【0104】
図8は、外から内への外側スイッチ方法(Outward-In outer-switch method)のより詳細なフローチャート800である。最も外側のフライキャパシタから開始して(Beginning with the outward-most fly capacitor)[ステップ802]、マルチレベルスイッチ状態セレクタ514は、ターゲットレベルが最小となっているか否かを決定し(determines if the Target Level is at the minimum)[ステップ804]、ターゲットレベルが最小となっている場合に、変換器回路の中の残りのスイッチの対のすべての外側ローサイドスイッチは、閉じるように設定され(the outer low-side switches of all remaining switch pairs in the converter circuit are set to be closed)[ステップ806]、そして、プロセスは完了する[ステップ822]。図においては、簡潔にするために、“閉じるように設定される(set to be closed)”は、“閉じる(close)”に短縮され、“閉じる”は、最終的に、スイッチ状態のセットが完全に決定されるときに生起すること(what occurs as the set of switch states is fully determined)、又は、スイッチ状態のセットが完全に決定された後に生起すること(what occurs after the set of switch states is fully determined)である。
【0105】
ターゲットレベルが最小となっていない場合には(If the Target Level is not at the minimum)[ステップ804]、マルチレベルスイッチ状態セレクタ514は、ターゲットレベルが最大となっているか否かを決定し(determines if the Target Level is at the maximum)[ステップ808]、ターゲットレベルが最大となっている場合には、変換器回路の中の残りのスイッチの対のすべての外側ハイサイドスイッチは、閉じるように設定され(the outer high-side switches of all remaining switch pairs in the converter circuit are set to be closed)[ステップ810]、プロセスは完了する[ステップ822]。決定ステップ804及び808(decision steps 804 and 808)は、いずれかの順序で実行されてもよいということに留意するべきである。
【0106】
ターゲットレベルが最大となっていない場合には(If the Target Level is not at the maximum)[ステップ808]、マルチレベルスイッチ状態セレクタ514は、現在のフライキャパシタの両端の電圧が、そのフライキャパシタのためのVtargetを上回るか否かを決定し(determines if the voltage across the current fly capacitor is above Vtarget for that fly capacitor)[ステップ812]、現在のフライキャパシタの両端の電圧が、そのフライキャパシタのためのVtargetを上回る場合には、そのフライキャパシタが制御する外側ローサイドスイッチは、閉じるように設定され、その外側ローサイドスイッチは、そのフライキャパシタを放電モードにする(places that fly capacitor into a discharge mode)[ステップ814]。その後に、処理は、ステップ818に続く。
【0107】
フライキャパシタの両端の電圧が、そのフライキャパシタのためのVtargetを上回っていない場合には(If the voltage across the fly capacitor is not above Vtarget for that fly capacitor)[ステップ812]、そのフライキャパシタが制御する外側ハイサイドスイッチは、閉じるように設定され、その外側ハイサイドスイッチは、そのフライキャパシタを充電モードにし(places that fly capacitor into a charge mode)、加えて、ターゲットレベルは減少させられる[ステップ816]。その後に、処理はステップ818に続く。
【0108】
スイッチの対のすべてが適切な状態に設定されているか否かについて決定を行い(determination is made as to whether all switch pairs have had appropriate states set)[ステップ818]、スイッチの対のすべてが適切な状態に設定されている場合には、処理は完了し[ステップ822]、スイッチの対のすべてが適切な状態に設定されていない場合には、外側スイッチの次のより内側の対(the next more-inward pair of outer switches)を選択し、外側スイッチの次のより内側の対が残っていない場合には、最も内側の内側スイッチの対(S1, S2)(the pair of inward-most inner switches (S1, S2))を選択し[ステップ820]、処理は、ステップ804にループする。フライキャパシタCxが制御するスイッチ(内側スイッチ又は外側スイッチ)のいずれかの対のスイッチ状態は、常に、相補的であるので、対の一方のスイッチのために閉じられている状態を選択することは、必然的に、対の他方のスイッチが開かれている状態を有するということを意味する。
【0109】
外から内への外側スイッチ方法(Outward-In outer-switch method)は、フライキャパシタCxの電荷平衡を維持しながら(while preserving the charge-balance of the fly capacitor Cx)、任意のレベルから他のレベルへの任意の遷移(arbitrary transitions from any Level to other Level)を可能とする。加えて、この方法は、必要に応じてキャパシタを自動的に再び平衡させながら(while automatically rebalancing capacitors)、配線及び負荷の過渡現象を処理する(deal with line and load transients)ことが可能である。この方法の他の利点は、実装の容易さである、すなわち、その方法は、各々のフライキャパシタの両端の電圧を検知し、そのフライキャパシタと関連するスイッチの状態を決定するために、そのフライキャパシタのためのターゲット電圧とその電圧とを比較するのと同じくらい簡単である。
【0110】
外から内への外側スイッチ方法の変形方法は、複数の適用のうちのいくつかにおいては便利である場合がある。例えば、最も外側のキャパシタは、それらのキャパシタの充電状態/放電状態に関して最初に選択されるので、より複雑な決定木を導入する(introduce a more complex decision tree)ことが有益となる場合がある。
(1) 現在の変換器の構造又は部分構造(the current converter structure or substructure)のフライキャパシタが電荷平衡を必要としない一方で、内側フライキャパシタ(inward fly capacitor)が電荷平衡を必要とする場合には、現在のフライキャパシタ(the current fly capacitor)は、内側フライキャパシタが電荷平衡を行うことを可能とするそれらのスイッチ状態(those switch states that allow the inward fly capacitor to charge balance)に、その現在のフライキャパシタのスイッチ状態の選択を制限してもよい。
(2) 2つのプロセスステップが連続して同じスイッチ状態を選択する(two process steps in succession select the same switch state)場合に、外側フライキャパシタ(outward fly capacitor)は、効果的にバイパスされる。したがって、条件を追加することが可能である(a condition can be added)、すなわち、現在のフライキャパシタが緊急の電荷平衡を必要とする(requires urgent charge balancing)場合には、現在のフライキャパシタと比較して(充電又は放電等の)反対のスイッチ状態を選択するように次のより内側のフライキャパシタに強制し、許可される場合には、それによって、より外側の部分構造は、バイパスされないであろう。
【0111】
(2) 外から内への内側スイッチ方法(Outward-In Inner-Switch Method)
【0112】
再び、スイッチの計数規則(switch count rules)、及び、スイッチの対のうちの一方のスイッチを閉じるように設定することは、その対の他方のスイッチが開くように設定されるということを意味するということを考慮して、以下の一般的な外から内への内側スイッチ方法は、Mレベルの変換器回路の各々のスイッチングサイクルに適用される。
ステップ(1) まだ考慮されていない最も外側のフライキャパシタ(the outward-most fly capacitor that has not been considered yet)を選択する(したがって、フライキャパシタC[M-2]から開始する)。
ステップ(2) 選択されているフライキャパシタの電圧が、そのフライキャパシタのVtargetを上回り、且つ、より内側のフライキャパシタのすべてのためのハイサイドスイッチの数が使い果たされていない(the number of high-side switches for all more-inward fly capacitors has not been exhausted)場合には、選択されているフライキャパシタの内側ハイサイドスイッチを閉じるように設定して、その選択されているフライキャパシタを放電させる。そうでない場合には、その選択されているフライキャパシタの電圧は、そのフライキャパシタのVtargetを下回るので、選択されているフライキャパシタの内側ローサイドスイッチを閉じるように設定して、その選択されているフライキャパシタを充電する。
ステップ(3) フライキャパシタのすべてが選択されるまで、ステップ1にループする。
ステップ(4) 残されている最も外側の外側スイッチの残りの対(S[2*x+1]及びS[2*x+2])について(For the remaining pair of left-over outward-most outer switches (S[2*x+1] and S[2*x+2]))、スイッチの計数規則に基づいて、ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを閉じるように設定する。
【0113】
外から内への内側スイッチ方法(Outward-In inner-switch method)は、外から内への外側スイッチ方法(Outward-In outer-switch method)とほとんど同じである。主な相違点は、
(1) フライキャパシタを充電させ又は放電させることを決定するときに、反対側のスイッチを選択し(ハイサイド対ローサイド)、及び、
(2) 残されているスイッチは、最も内側のスイッチではなく、むしろ、外側のスイッチの最も外側の対である、
ということである。
【0114】
いくつのハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを閉じ又は開くように設定しているのかを追跡し(keeping track of how many high-side or low-side switches have been set to be closed or opened)、スイッチの合計数が制限に達する時点を知る(knowing when the limit of total switches has been reached)ことに関する外から内への外側スイッチ方法のために上記で説明されている簡素化されている計数方法(simplified accounting method)は、外から内への内側スイッチ方法のために軽微な修正を必要とする。マルチレベルスイッチ状態セレクタ514において実装されてもよいある1つの修正されている計数方法は、以下のステップを含む。
(A) フライキャパシタCxは、ターゲットレベルを提供される。
(B) それ自体の測定される電圧に応答して、フライキャパシタCxが、そのフライキャパシタCxのローサイドスイッチを閉じるように設定することによって、充電するようにそのフライキャパシタCx自体を設定する場合に、次の内部フライキャパシタ(next inner fly capacitor)のために同じターゲットレベルを渡す(the same Target Level is passed on)。
(C) 代わりに、フライキャパシタCxが、そのフライキャパシタCxのハイサイドスイッチを閉じるように設定することによって、放電するようにそのフライキャパシタCx自体を設定する場合に、受信したターゲットレベルは、1だけ減少させられ、次の内部フライキャパシタに渡される。
(D) フライキャパシタCxのターゲットレベルが“1”である場合に、そのフライキャパシタCxは、そのフライキャパシタCxのローサイドスイッチを閉じるように設定する必要がある。
(E) 反対に、フライキャパシタCxのターゲットレベルが、変換器回路のその部分構造の最大電圧レベルとなっている場合に、そのフライキャパシタCxは、そのフライキャパシタCxのハイサイドスイッチを閉じるように設定する必要がある。
(G) 残されている最も外側の外側スイッチの残りの対(S[2*x+1]及びS[2*x+2])については(For the remaining pair of left-over outward-most outer switches (S[2*x+1] and S[2*x+2]))、スイッチの計数規則に基づいて、ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを閉じるように設定する。
【0115】
図9は、外から内への内側スイッチ方法のより詳細なフローチャート900である。最も外側のフライキャパシタから開始して[ステップ902]、マルチレベルスイッチ状態セレクタ514は、ターゲットレベルが最小となっているか否かを決定し(determines if the Target Level is at the minimum)[ステップ904]、ターゲットレベルが最小となっている場合に、変換器回路の中の残りのスイッチの対のすべての内側ローサイドスイッチを閉じるように設定し[ステップ906]、プロセスは完了する[ステップ922]。図の中では簡潔にするために、“閉じるように設定される”は、“閉じる”と短縮され、“閉じる”は、最終的に、スイッチ状態のセットを完全に決定するときに、又は、スイッチ状態のセットを完全に決定した後に、生起することである。
【0116】
ターゲットレベルが最小となっていない場合には[ステップ904]、マルチレベルスイッチ状態セレクタ514は、ターゲットレベルが最大となっているか否かを決定し(determines if the Target Level is at the maximum)[ステップ908]、ターゲットレベルが最大となっている場合には、変換器回路の中の残りのスイッチの対のすべての内側ハイサイドスイッチを閉じるように設定し[ステップ910]、プロセスは完了する[ステップ922]。決定ステップ904及び908(decision steps 904 and 908)は、いずれかの順序で実行されてもよいということに留意するべきである。
【0117】
ターゲットレベルが最大となっていない場合には[ステップ908]、マルチレベルスイッチ状態セレクタ514は、現在のフライキャパシタの両端の電圧がそのフライキャパシタのためのVtargetを上回るか否かを決定し(determines if the voltage across the current fly capacitor is above Vtarget for that fly capacitor)[ステップ912]、現在のフライキャパシタの両端の電圧がそのフライキャパシタのためのVtargetを下回る場合に、そのフライキャパシタが制御する内側ローサイドスイッチを閉じるように設定し、その内側ローサイドスイッチは、そのフライキャパシタを充電モードにする[ステップ914]。その後、処理はステップ918に続く。
【0118】
フライキャパシタの両端の電圧がそのフライキャパシタのためのVtargetを上回っていない場合には[ステップ912]、そのフライキャパシタが制御する内側ハイサイドスイッチを閉じるように設定し、その内側ハイサイドスイッチは、フライキャパシタを放電モードにし、加えて、ターゲットレベルは減少させられる[ステップ916]。その後、処理はステップ918に続く。
【0119】
スイッチの対のすべてが適切な状態に設定されているか否かについての決定が行われ(A determination is made as to whether all switch pairs have had appropriate states set)[ステップ918]、スイッチの対のすべてが適切な状態に設定されている場合には、プロセスは完了し[ステップ922]、スイッチの対のすべてが適切な状態に設定されているわけではない場合には、内側スイッチの次のより内側の対(the next more-inward pair of inner switches)を選択し、内側スイッチの次のより内側の対が残っていない場合には、最も外側の外側スイッチの対(S[2*x+1]及びS[2*x+2])を選択し[ステップ920]、プロセスは、ステップ904にループする。
【0120】
外から内への内側スイッチ方法は、フライキャパシタCxの電荷平衡を維持しながら(while preserving the charge-balance of the fly capacitor Cx)、任意のレベルから他のレベルへの任意の遷移(arbitrary transitions from any Level to other Level)を可能とする。加えて、この方法は、必要に応じてキャパシタを自動的に再平衡させながら(while automatically rebalancing capacitors)、配線及び負荷の過渡現象を処理する(deal with line and load transients)ことが可能である。この方法の他の利点は、実装の容易さである、すなわち、その方法は、各々のフライキャパシタの両端の電圧を検知し、そのフライキャパシタと関連するスイッチの状態を決定するために、そのフライキャパシタのためのターゲット電圧とその電圧とを比較するのと同じくらい簡単である。
【0121】
B. 内から外への方法(Inward-Out Methods)
【0122】
内から外への方法は、Mレベルの変換器回路の最も内側のフライキャパシタ(inward-most fly capacitor)(
図4AにおけるC1)から開始して、順次的に最も外側のフライキャパシタ(outward-most fly capacitor)(
図4AにおけるC[M-2])に向かって、一般化されているキャパシタ制御方法を適用する。このようにして、内から外への方法は、内側フライキャパシタを優先する(give priority to the inward fly capacitors)、すなわち、内側フライキャパシタは、それらの内側フライキャパシタの制御されているスイッチを充電状態又は放電状態に設定する最初の機会を与えられる。
【0123】
内から外への方法には、各々のフライキャパシタCxがそのフライキャパシタCxのスイッチの内側セット(inner set of switches)を制御する内側スイッチ方法(inner-switch method)及び各々のフライキャパシタCxがそのフライキャパシタCxのスイッチの外側セット(outer set of switches)を制御する外側スイッチ方法(outer-switch method)の2つの変形がある。
【0124】
(1) 内から外への内側スイッチ方法(Inward-Out Inner-Switch Method)
【0125】
内から外への内側スイッチ方法においては、複数のキャパシタが連続して同じ状態を設定する(multiple capacitors set the same state in a row)場合に、この変形例は、シーケンスの中の最後の(最も外側の)キャパシタが充電又は放電されるという結果をもたらす。
【0126】
スイッチの計数規則を考慮して、次の一般的な内から外への内側スイッチ方法が、Mレベルの変換器回路の各々のスイッチングサイクルに適用される。
ステップ(1) まだ考慮されていない最も内側のフライキャパシタ(the inward-most fly capacitor that has not been considered yet)を選択する(したがって、フライキャパシタC1から開始する)。
ステップ(2) 選択されているフライキャパシタの電圧が、そのフライキャパシタのVtargetを上回り、且つ、より外側のフライキャパシタのすべて(all more-outward fly capacitors)のハイサイドスイッチの数が使い果たされていない(has not been exhausted)場合に、選択されているフライキャパシタの内側ハイサイドスイッチを閉じるように設定して、その選択されているフライキャパシタを放電させる。そうでない場合には、選択されているフライキャパシタの電圧は、そのフライキャパシタのVtargetを下回るので、選択されているフライキャパシタの内側ローサイドスイッチを閉じるように設定して、その選択されているフライキャパシタを充電する。
ステップ(3) フライキャパシタのすべてが選択されるまで、ステップ1にループする。
ステップ(4) 残されている最も外側の外側スイッチの残りの対(S[2*x+1]及びS[2*x+2])については(For the remaining pair of left-over outward-most outer switches (S[2*x+1] and S[2*x+2]))、スイッチの計数規則に基づいて、ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを閉じるように設定する。
【0127】
いくつのハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを閉じ又は開くように設定しているかを追跡し(how many high-side or low-side switches have been set to be closed or opened)、スイッチの合計数の制限に達する時点を知る(knowing when the limit of total switches has been reached)ことに関する外から内への方法について上記で示されている単純化されている形式は、ここでは使用可能ではない。わずかにより一般的化されているカウンタを使用してもよい。主な相違点は、外から内への方法においては、全体的な構造を知る必要なく、そのステップでの自身の構造又は部分構造及びマルチレベル変換器回路における位置の知識のみに基づいて、各々のステップにおいて決定を行ったということである。これは、モジュールの拡張に有用である、すなわち、任意の程度に連結させられて任意のMレベルの変換器を作成することが可能である単一のユニットを作成することが可能である。これに対して、内から外への方法の場合には、(最も内側のキャパシタ部分構造から開始して)最終的なターゲットレベル電圧及び変換器回路の(部分構造の数等の)合計のサイズを事前に知る必要がある。
【0128】
ある1つの例として、最初に、2つの値M及びLに基づいて、2つのカウンタを使用して、変換器回路の中のスイッチの計数(accounting of switches)を実装してもよく、
M=変換器回路におけるレベルの合計数(total number of levels in the converter circuit)、
L=ターゲットレベル(マルチレベル変換器回路が制御アルゴリズムのための開始レベルとして出力する必要があるVIN/4等のレベル; ターゲットレベルは、以下の計数方法(accounting method)にしたがって必要に応じて調整されてもよい)。
【0129】
計数方法は、以下のステップを含んでもよい。
(A) 2つのカウンタを初期化する。
ハイサイドスイッチカウンタ(High-Side switch counter)をL-1に設定する。
ローサイドスイッチカウンタ(Low-Side switch counter)をM-Lに設定する。
(B) ローサイドスイッチが選択されて閉じている状態に設定される(selected to be set to a closed state)たびごとに、ローサイドスイッチカウンタが減少させられる。
(C) ハイサイドスイッチが選択されて閉じている状態に設定されるたびごとに、ハイサイドスイッチカウンタが減少させられる。
(D) ハイサイドスイッチカウンタが0に達する場合に、スイッチの残りの対のすべて(all remaining pairs of switches)は、ローサイドスイッチを選択して閉じている状態に設定する必要がある。
(E) ローサイドスイッチカウンタが0に達する場合に、スイッチの残りの対のすべては、ハイサイドスイッチを選択して閉じられている状態に設定する必要がある。
【0130】
図10は、内から外への内側スイッチ方法のより詳細なフローチャート1000である。ハイサイドスイッチカウンタ(“High-Sw Ctr”)をL-1に設定し、ローサイドスイッチカウンタ(“Low-Sw Ctr”)をM-Lに設定する[ステップ1001]。その次に、最も内側のフライキャパシタから開始する[ステップ1002]。ステップ1001及びステップ1002の順序は逆であってもよいということに留意するべきである。
【0131】
High-Sw Ctr=0である場合[ステップ1004]に、残りの外側にある内側ローサイドスイッチ(remaining outward inner low-side switches)のすべてを閉じるように設定し[ステップ1006]、プロセスは完了する[ステップ1022]。一方、Low-Sw Ctr=0である場合[ステップ1008]に、残りの外側にある内側ハイサイドスイッチ(remaining outward inner high-side switches)のすべてを閉じるように設定し[ステップ1010]、プロセスは完了する[ステップ1022]。決定ステップ1004及び1008(decision steps 1004 and 1008)は、いずれかの順序で実行されてもよいということに留意するべきである。図においては簡潔にするために、“閉じるように設定される”は、“閉じる”に短縮され、“閉じる”は、最終的に、スイッチ状態のセットが完全に決定されるとき又はスイッチ状態のセットが完全に決定された後に生起することである。
【0132】
Low-Sw Ctr≠0である場合[ステップ1008]に、フライキャパシタの両端の電圧がそのフライキャパシタのためのVtargetを上回るか否かを決定し[ステップ1012]、フライキャパシタの両端の電圧がそのフライキャパシタのためのVtargetを上回っていない場合に、フライキャパシタが制御する内側ローサイドスイッチを閉じるように設定し、その内側ローサイドスイッチは、フライキャパシタを充電モードにし、加えて、1だけLow-Sw Ctrを減少させる[ステップ1014]。その後、処理は、ステップ1018に続く。
【0133】
フライキャパシタの両端の電圧が、そのフライキャパシタのためのVtargetを上回る場合[ステップ1012]に、フライキャパシタが制御する内側ハイサイドスイッチを閉じるように設定し、その内側ハイサイドスイッチは、そのフライキャパシタを放電モードにし、加えて、1だけHigh-Sw Ctrを減少させる[ステップ1016]。その後、処理は、ステップ1018に続く。
【0134】
スイッチの対のすべてが適切な状態に設定されているか否かについての決定が行われ(A determination is made as to whether all switch pairs have had appropriate states set)[ステップ1018]、スイッチの対のすべてが適切な状態に設定されている場合には、プロセスは完了し[ステップ1022]、スイッチの対のすべてが適切な状態に設定されているわけではない場合には、内側スイッチの次のより外側の対を選択し、次のより外側の対が残っていない場合には、最も外側にある外側スイッチ(outward-most outer switches)の対(S[2*x+1]及びS[2*x+2])を選択し[ステップ1020]、プロセスはステップ1004にループする。
【0135】
この方法は、外から内への内側スイッチ方法と非常によく似ているが、ハイサイドスイッチのためのカウンタ及びローサイドスイッチのためのカウンタの2つのカウンタを動作させ続けるという重要な相違点を有する。
【0136】
(1) 内から外への外側スイッチ方法(Inward-Out Outer-Switch Method)
【0137】
内から外への外側スイッチ方法においては、複数のキャパシタが連続して同じ状態を設定する(multiple capacitors set the same state in a row)場合に、この変形例は、シーケンスの中の最初の(最も内側の)キャパシタが充電され又は放電させられるという結果をもたらす。
【0138】
スイッチの計数規則を考慮して、次の一般的な内から外への内側スイッチ方法が、Mレベルの変換器回路の各々のスイッチングサイクルに適用される。
ステップ(1) まだ考慮されていない最も内側のフライキャパシタ(the inward-most fly capacitor that has not been considered yet)を選択する。
ステップ(2) 選択されているフライキャパシタの電圧が、そのフライキャパシタのVtargetを上回り、且つ、より外側のフライキャパシタのすべてのローサイドスイッチの数が使い果たされていない(the number of low-side switches for all more-outward fly capacitors has not been exhausted)場合に、選択されているフライキャパシタの外側ローサイドスイッチを閉じるように設定して、その選択されているフライキャパシタを放電させる。そうでない場合には、選択されているフライキャパシタの電圧は、そのフライキャパシタのVtargetを下回るので、選択されているフライキャパシタの外側ハイサイドスイッチを閉じるように設定して、その選択されているフライキャパシタを充電する。
ステップ(3) フライキャパシタのすべてが選択されるまで、ステップ1にループする。
ステップ(4) 残されている最も内側の内側スイッチの残りの対(S1及びS2)については(For the remaining pair of left-over inward-most inner switches (S1 and S2))、スイッチの計数規則に基づいて、ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを閉じるように設定する。
【0139】
いくつのハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを閉じ又は開くように設定しているかを追跡し(tracking how many high-side or low-side switches have been closed or opened)、スイッチの合計数の制限に達する時点を知る(knowing when the limit of total switches has been reached)ための計数方法(accounting method)は、内から外への内側スイッチ計数方法と同じになるであろう。ただ1つの相違点は、最後に考慮されるように最も内側のスイッチを動作させる(moving the inward-most switches to be considered last)ことである。したがって、計数方法は、以下のステップを含んでもよい。
(A) 2つのカウンタを初期化する。
ハイサイドスイッチカウンタをL-1に設定する。
ローサイドスイッチカウンタをM-Lに設定する。
(B) ローサイドスイッチが選択されて閉じている状態に設定される(selected to be set to a closed state)たびごとに、ローサイドスイッチカウンタが減少させられる。
(C) ハイサイドスイッチが選択されて閉じている状態に設定されるたびに、ハイサイドスイッチカウンタが減少させられる。
(D) ハイサイドスイッチカウンタが0に達する場合に、スイッチの残りの対のすべて(all remaining pairs of switches)は、ローサイドスイッチを選択して閉じている状態に設定する必要がある。
(E) ローサイドスイッチカウンタが0に達する場合に、スイッチの残りの対のすべては、ハイサイドスイッチを選択して閉じている状態に設定する必要がある。
【0140】
図11は、内から外への外側スイッチ方法のより詳細なフローチャート1100である。ハイサイドスイッチカウンタ(“High-Sw Ctr”)をL-1に設定し、ローサイドスイッチカウンタ(“Low-Sw Ctr”)をM-Lに設定する[ステップ1101]。その次に、最も内側のフライキャパシタから開始する[ステップ1102]。ステップ1101及びステップ1102の順序は反対となっていてもよいということに留意するべきである。
【0141】
High-Sw Ctr=0である場合[ステップ1104]に、残りの外側にある外側ローサイドスイッチ(remaining outward outer low-side switches)のすべてを閉じるように設定し[ステップ1106]、プロセスは完了する[ステップ1122]。一方、Low-Sw Ctr=0である場合[ステップ1108]に、残りの外側にある外側ハイサイドスイッチ(remaining outward outer high-side switches)のすべてを閉じるように設定し[ステップ1110]、プロセスは完了する[ステップ1122]。決定ステップ1104及び1108(decision steps 1104 and 1108)は、いずれかの順序で実行されてもよいということに留意するべきである。図においては簡潔にするために、“閉じるように設定される”は、“閉じる”に短縮され、“閉じる”は、最終的に、スイッチ状態のセットが完全に決定されるとき又はスイッチ状態のセットが完全に決定された後に生起することである。
【0142】
Low-Sw Ctr≠0である場合[ステップ1108]に、フライキャパシタの両端の電圧がそのフライキャパシタのためのVtargetを上回るか否かを決定し[ステップ1112]、フライキャパシタの両端の電圧がそのフライキャパシタのためのVtargetを上回っていない場合に、フライキャパシタが制御する外側ローサイドスイッチを閉じるように設定し、その外側ローサイドスイッチは、フライキャパシタを充電モードにし、加えて、Low-Sw Ctrを減少させる[ステップ1114]。その後、処理は、ステップ1118に続く。
【0143】
フライキャパシタの両端の電圧が、そのフライキャパシタのためのVtargetを上回る場合[ステップ1112]に、フライキャパシタが制御する外側ハイサイドスイッチを閉じるように設定し、その外側ハイサイドスイッチは、そのフライキャパシタを放電モードにし、加えて、High-Sw Ctrを減少させる[ステップ1116]。その後、処理は、ステップ1118に続く。
【0144】
スイッチの対のすべてが適切な状態に設定されているか否かについての決定が行われ(A determination is made as to whether all switch pairs have had appropriate states set)[ステップ1118]、スイッチの対のすべてが適切な状態に設定されている場合には、プロセスは完了し[ステップ1122]、スイッチの対のすべてが適切な状態に設定されているわけではない場合には、外側スイッチの次のより外側の対を選択し、次のより外側の対が残っていない場合には、最も内側にある内側スイッチ(inward-most inner switches)の対(S1, S2)を選択し[ステップ1120]、プロセスはステップ1104にループする。
【0145】
C. 優先度を優先する方法(Priority First Methods)
【0146】
上記で説明されているように、ダブルカウンタの計数方法(double-counter accounting method)では、厳密な順序でフライキャパシタCxを考慮する必要がない。非常に有用な代替的な方法は、それらのフライキャパシタの各々がそのフライキャパシタのターゲット電圧Vtargetからどれだけ遠いか(how far each is from its target voltage)に基づいて、それらのフライキャパシタに優先順位を付ける(prioritize the fly capacitors)ことであり、したがって、より頑健なシステム挙動のために、最初に最も不均衡なフライキャパシタを優先順位付けする(prioritizing the most imbalanced fly capacitors first)。
【0147】
優先度ベースの外側スイッチ方法(Priority-Based outer-switch method)の1つは、以下のようになる。
ステップ(1) まだ考慮されていない最も優先度の高いフライキャパシタ(the highest priority fly capacitor that has not been considered yet)(すなわち、そのフライキャパシタのVtargetから最も大きなデルタを有する測定される電圧を有する(with a measured voltage that has the largest delta from that fly capacitors Vtarget)フライキャパシタ)を選択する。
ステップ(2) 選択されているフライキャパシタの電圧が、そのフライキャパシタのVtargetを上回り、且つ、他のフライキャパシタのすべてのためのローサイドスイッチの数が使い果たされていない(the number of low-side switches for all other fly capacitors has not been exhausted)場合に、選択されているフライキャパシタの外側ローサイドスイッチを閉じるように設定して、その選択されているフライキャパシタを放電させ、そうでない場合には、選択されているフライキャパシタの電圧は、そのフライキャパシタのVtargetを下回るので、選択されているフライキャパシタの外側ハイサイドスイッチを閉じるように設定して、その選択されているフライキャパシタを充電する。
ステップ(3) フライキャパシタのすべてが選択されるまで、ステップ1にループする。
ステップ(4) 残されている最も内側のスイッチの残りの対(S1及びS2)については(For the remaining pair of left-over inward-most switches (S1 and S2))、スイッチの計数規則に基づいて、ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを閉じるように設定する。
【0148】
優先度ベースの内側スイッチ方法(Priority-Based inner-switch method)の1つは、以下のようになる。
ステップ(1) まだ考慮されていない最も優先度の高いフライキャパシタ(the highest priority fly capacitor that has not been considered yet)(すなわち、そのフライキャパシタのVtargetから最も大きなデルタを有する測定される電圧を有する(with a measured voltage that has the largest delta from that fly capacitors Vtarget)フライキャパシタ)を選択する。
ステップ(2) 選択されているフライキャパシタの電圧が、そのフライキャパシタのVtargetを上回り、且つ、他のフライキャパシタのすべてのためのハイサイドスイッチの数が使い果たされていない(the number of high-side switches for all other fly capacitors has not been exhausted)場合に、選択されているフライキャパシタの内側ハイサイドスイッチを閉じるように設定して、その選択されているフライキャパシタを放電させる。そうでない場合には、選択されているフライキャパシタの電圧は、そのフライキャパシタのVtargetを下回るので、選択されているフライキャパシタの内側ローサイドスイッチを閉じるように設定して、その選択されているフライキャパシタを充電する。
ステップ(3) フライキャパシタのすべてが選択されるまで、ステップ1にループする。
ステップ(4) 残されている最も外側のスイッチの残りの対(S[2*x+1]及びS[2*x+2])については(For the remaining pair of left-over outward-most switches (S[2*x+1] and S[2*x+2]))、スイッチの計数規則に基づいて、ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを閉じるように設定する。
【0149】
優先度ベースの方法のいずれかによって発生する場合がある問題が1つ存在する、すなわち、最も優先度の高いキャパシタは、(外側スイッチ方法の場合に)次により内側のキャパシタ又は(内側スイッチ方法の場合に)次により外側のキャパシタのスイッチ状態の選択によってその最も優先度の高いキャパシタがバイパスされることにつながる場合がある。上記の優先度ベースの方法を修正して、以下のような優先度ベースの二重スイッチ方法(Priority-Based dual-switch method)とすることによって、この潜在的な問題を解決することが可能である。
ステップ(1) まだ考慮されていない最も優先度の高いフライキャパシタ(すなわち、そのフライキャパシタのVtargetから最も大きなデルタを有する測定される電圧を有するフライキャパシタ)を選択する。
ステップ(2) 選択されているフライキャパシタの電圧とそのフライキャパシタのVtargetとを比較する。
(A) 放電が必要である(DISCHARGE is required)場合には、以下のようになる。
(1) ハイサイドスイッチカウンタが0よりも大きく(>0)、且つ、そのフライキャパシタの内側スイッチがまだ設定されていない場合には、内側ハイサイドスイッチを設定する。
(2) ローサイドスイッチカウンタが0よりも大きく(>0)、且つ、そのフライキャパシタの外側スイッチがまだ設定されていない場合には、外側ローサイドスイッチを設定する。
(B) 充電が必要である(CHARGE is required)場合には、以下のようになる。
(1) ローサイドスイッチカウンタが0よりも大きく(>0)、且つ、そのフライキャパシタの内側スイッチがまだ設定されていない場合には、内側ローサイドスイッチを設定する。
(2) ハイサイドスイッチカウンタが0よりも大きく(>0)、且つ、そのフライキャパシタの外側スイッチがまだ設定されていない場合には、外側ハイサイドスイッチを設定する。
(C) (例えば、最上位のスイッチカウンタ又は最下位のスイッチカウンタが制限に達するとき(when the top or bottom switch counter has reached a limit)等の)バイパスが必要である(BYPASS is required)場合には、以下のようになる。
(1) ハイサイドスイッチカウンタが0に等しい(=0)場合には、残りのローサイドスイッチのすべてを閉じるように設定する。
(2) ローサイドスイッチカウンタが0に等しい(=0)場合には、残りのハイサイドスイッチのすべてを閉じるように設定する。
ステップ(3) フライキャパシタのすべてが選択されるまで、ステップ1にループする。
ステップ(4) 残されているスイッチの残りの対がまだ設定されていない場合には、スイッチの計数規則に基づいて、ハイサイドスイッチ又はローサイドスイッチを閉じるように設定する。
【0150】
本質的に、この方法は、優先度キャパシタ(priority capacitors)のための内側スイッチ及び外側スイッチの双方を変更して、可能であるときはバイパスを回避しながら、それらの優先度キャパシタが一般的に必要に応じて充電され又は放電されることを保証する。
【0151】
D. 高度化されている方法(Advanced Methods)
【0152】
常に電荷平衡に向かうように変換器回路のフライキャパシタを動作させる(always move the fly capacitors of a converter circuit towards charge-balance)能力によって、さらなる制限なしに、レベルからレベルへの遷移を行うことが可能であり(transitions from level-to-level can be made)、このことは、高度化されている方法を追加するための多くの可能性を開く。変換器回路のための電圧ターゲットレベルを選択するときに、(1) 定常状態動作の場合には、効率のために、インダクタLを充電するか又は放電させるV
OUTに最も近いターゲットレベル電圧を選択し、(2) 過渡応答の場合には、インダクタLを迅速に充電し又は放電させるように、その最も近いターゲットレベルよりも(充電のために)より高い又は(放電のために)より低いターゲットレベルを選択する、という、2つの一般的な規則にしたがう。一方で、代替的な実施形態において、追加的な論理を追加することにより、異なるターゲットレベルにジャンプして、変換器回路の動的な問題又は動作上の問題を解決することが有益である場合がある。以下の記載は、そのような方法の4つの例であり、それらの4つの例のうちのいずれか又はすべては、
図5の電圧レベルセレクタ512によって実装されてもよい。
【0153】
(1) 高度化されている方法 - インダクタ電圧降下に基づくレベルジャンプ(Level Jumps Based on Inductor Voltage Drop)
【0154】
図4Aを参照すると、インダクタLは、ループ応答に影響を与えないように、インダクタを迅速に充電し/放電させるための望ましい最小電圧降下を必要とする。V
OUTが、変換器回路の複数の隣接するレベルの間の境界に近いか又はその境界にある電圧に近づく場合に、変換器セル400は、“デッドゾーン”に達し、その“デッドゾーン”においては、インダクタLにわたる十分な降下が存在せず、過渡現象に対応することができない。したがって、また、望ましい最小電圧降下を満たすか又は超えるV
OUTに最も近い電圧ターゲットレベルを選択し、そのレベルが最小要件を満たさない場合には、最も近い電圧ターゲットレベルをバイパスすることが有益である。その結果として、V
OUTがレベルの境界に近づくときに、コントローラは、自動的に、次のターゲットレベルにジャンプすることが可能である。
【0155】
図12は、インダクタ電圧降下(inductor voltage drop)に基づいて、より高いターゲットレベルにジャンプする時点を決定する方法を示すフローチャート1200である。電圧レベルセレクタ512が望ましいV
OUTのために最も近いターゲットレベルを選択するときに[ステップ1202]、そのターゲットレベルは、そのターゲットレベルがインダクタLの両端に望ましい電圧降下を与えるか否かについて評価され[ステップ1204]、そのターゲットレベルがインダクタLの両端に望ましい電圧降下を与える場合には、プロセスは完了する[ステップ1206]。そのターゲットレベルがインダクタLの両端に望ましい電圧降下を与えない場合には、変換器回路のための最大ターゲットレベルに到達しているか否かについての決定が行われ[ステップ1208]、変換器回路のための最大ターゲットレベルに到達している場合には、プロセスは完了する[ステップ1210]。
【0156】
変換器回路のための最大ターゲットレベルに達していない場合には[ステップ1208]、選択されているターゲットレベルは増加させられ[ステップ1212]、処理は、完了するまでステップ1204にループする。
【0157】
図13は、インダクタ電圧降下に基づいて、より低いターゲットレベルにジャンプする時点を決定する方法を示すフローチャート1300である。電圧レベルセレクタ512が望ましいV
OUTのために最も近いターゲットレベルを選択するときに[ステップ1302]、そのターゲットレベルは、そのターゲットレベルがインダクタLの両端に望ましい電圧降下を与えるか否かについて評価され[ステップ1304]、そのターゲットレベルがインダクタLの両端に望ましい電圧降下を与える場合には、プロセスは完了する[ステップ1306]。そのターゲットレベルがインダクタLの両端に望ましい電圧降下を与えない場合には、変換器回路のための最小ターゲットレベルに到達しているか否かについての決定が行われ[ステップ1308]、変換器回路のための最小ターゲットレベルに到達している場合には、処理は完了する[ステップ1310]。
【0158】
変換器回路のための最小ターゲットレベルに達していない場合には[ステップ1308]、選択されているターゲットレベルが減少させられ[ステップ1312]、処理は、完了するまでステップ1304にループする。
【0159】
(2) 高度化されている方法2 - 負荷過渡現象に基づくレベルジャンプ(Level Jumps Based on Load Transients)
【0160】
(
図5を参照すると)フィードバックコントローラが、突然の負荷ステップ(sudden load-step)又は負荷解放(load release)を検出する場合に、フィードバックコントローラは、最も近いターゲットレベルよりもより高い又はより低いターゲットレベルの選択を積極的に要求して、インダクタの旋回速度(slewing speed)を改善してもよい。フィードバックコントローラは、出力dV/dTを検出して、突然の出力電流の変化を間接的に検知することが可能である。代替的に、フィードバックコントローラは、電流検知技術を使用して、出力電流を直接的に測定することが可能である。出力変化が望ましいレベルを超えるときに、電圧レベルセレクタ512は、(負荷ステップ又は負荷解放が検知されているか否か(whether a load step or load release has been sensed)に依存して)より高い又はより低いターゲットレベルを選択することが可能である。その結果として、インダクタLのための旋回レート(slew rate)は、大きな出力負荷過渡現象の際に増加し、高速応答を可能とするが、それでも、定常状態効率(steady-state efficiency)を維持する。
【0161】
図14は、負荷過渡現象(load transients)に基づいて、より高いターゲットレベルにジャンプする時点を決定する方法を示すフローチャート1400である。電圧レベルセレクタ512が、望ましいV
OUTのために、最も近いターゲットレベルを選択するときに[ステップ1402]、(増加する又は減少する)大きな負荷過渡現象が検出されているか否かについての決定が行われ[ステップ1404]、大きな負荷過渡現象が検出されていない場合には、プロセスは完了する[ステップ1406]。大きな負荷過渡現象が検出されている場合には、変換器回路のための最大ターゲットレベルに到達しているか否かについての決定が行われ[ステップ1408]、最大ターゲットレベルに到達している場合には、処理は完了する[ステップ1410]。
【0162】
変換器回路のための最大ターゲットレベルに到達していない場合には[ステップ1408]、(例えば、インダクタLの両端の間で測定されている電圧降下が、ターゲット電圧レベルに到達している、といったように)選択されているターゲットレベルに到達しているか否かについての決定が行われ[ステップ1412]、選択されているターゲットレベルに到達している場合には、プロセスは完了する[ステップ1414]。選択されているターゲットレベルに到達していない場合には、選択されているターゲットレベルは増加させられ[ステップ1416]、プロセスは、完了するまでステップ1404にループする。
【0163】
図15は、負荷過渡現象(load transients)に基づいて、より低いターゲットレベルにジャンプする時点を決定する方法を示すフローチャート1500である。電圧レベルセレクタ512が、望ましいV
OUTのために、最も近いターゲットレベルを選択するときに[ステップ1502]、(増加する又は減少する)大きな負荷過渡現象が検出されているか否かについての決定が行われ[ステップ1504]、大きな負荷過渡現象が検出されていない場合には、プロセスは完了する[ステップ1506]。大きな負荷過渡現象が検出されている場合には、変換器回路のための最小ターゲットレベルに到達しているか否かについての決定が行われ[ステップ1508]、最小ターゲットレベルに到達している場合には、プロセスは完了する[ステップ1510]。
【0164】
変換器回路のための最小ターゲットレベルに達していない場合には[ステップ1508]、選択されているターゲットレベルに達しているか否かについての決定が行われ[ステップ1512]、選択されているターゲットレベルに達している場合には、プロセスは完了する[ステップ1514]。選択されているターゲットレベルに達していない場合には、選択されているターゲットレベルは減少させられ[ステップ1516]、プロセスは、完了するまでステップ1504にループする。
【0165】
(3) 高度化されている方法3 - 出力偏差に基づくレベルジャンプ(Level Jumps Based on Output Deviations)
【0166】
出力電圧VOUT又は出力電流がターゲット誤差値(target error value)と異なる場合に、より高いターゲットレベル又は低いターゲットレベルを選択してもよい。選択されているターゲットレベルは、誤差に比例してもよい。例えば、出力電圧が小さな量だけずれている場合に、最も近いターゲットレベルよりも次のより高いターゲットレベルを選択してもよい。出力電圧がターゲット誤差値から大きく異なる場合には、いくつかのターゲットレベルを(上げるか又は下げるかにより)バイパスして(bypassed (up or down))、誤差をより迅速に減少させてもよい。結果として、出力電圧又は電流は望ましいターゲットから離れる(deviates from a desired target)ので、最も近いターゲットレベルよりもより高いターゲットレベル又はより低いターゲットレベルを選択することが可能であり、問題を軽減するのに役立つ。バイパスするべきターゲットレベルの数は、誤差の大きさの関数であってもよい。
【0167】
図16は、出力偏差(output deviations)に基づいて、より高いターゲットレベルにジャンプする時点を決定する方法を示すフローチャート1600である。電圧レベルセレクタ512が望ましいV
OUTのために、最も近いターゲットレベルを選択するときに[ステップ1602]、出力電圧V又は電流Iが特定の用途に対して許容可能なレベルよりも小さいか否かについての決定が行われ[ステップ1604]、出力電圧V又は電流Iが特定の用途に対して許容可能なレベルよりも小さくはない場合には、プロセスは完了する[ステップ1606]。出力電圧V又は電流Iが特定の用途に対して許容可能なレベルよりも小さい場合には、変換器回路のための最大ターゲットレベルに到達しているか否かについての決定が行われ[ステップ1608]、最大ターゲットレベルに到達している場合には、プロセスは完了する[ステップ1610]。
【0168】
変換器回路のための最大ターゲットレベルに達していない場合には[ステップ1608]、選択されているターゲットレベルに達しているか否かについての決定が行われ[ステップ1612]、選択されているターゲットレベルに達している場合には、プロセスは完了する[ステップ1614]。選択されているターゲットレベルに達していない場合には、選択されているターゲットレベルは増加させられ[ステップ1616]、プロセスは、完了するまでステップ1604にループする。
【0169】
図17は、出力偏差(output deviations)に基づいて、より低いターゲットレベルにジャンプする時点を決定する方法を示すフローチャート1700である。電圧レベルセレクタ512が、望ましいV
OUTのために、最も近いターゲットレベルを選択するときに[ステップ1702]、出力電圧V又は電流Iが特定の用途に対して許容可能なレベルよりも大きいか否かについての決定が行われ[ステップ1704]、出力電圧V又は電流Iが特定の用途に対して許容可能なレベルよりも大きくはない場合には、プロセスは完了する[ステップ1706]。出力電圧V又は電流Iが特定の用途に対して許容可能なレベルよりも大きい場合には、変換器回路のための最小ターゲットレベルに到達しているか否かについての決定が行われ[ステップ1708]、最小ターゲットレベルに到達している場合には、プロセスは完了する[ステップ1710]。
【0170】
変換器回路のための最小ターゲットレベルに達していない場合には[ステップ1708]、選択されているターゲットレベルに達しているか否かについての決定が行われ[ステップ1712]、選択されているターゲットレベルに達している場合には、プロセスは完了する[ステップ1714]。選択されているターゲットレベルに達していない場合には、選択されているターゲットレベルは減少させられ[ステップ1716]、プロセスは、完了するまでステップ1704にループする。
【0171】
(4) 高度化されている方法3 - 入力信号に基づくレベルジャンプ(Level Jumps Based on Input Signals)
【0172】
理解することが可能であるように、本発明の複数の概念のうちのある1つの変換器回路の実施形態は、一般的に、大きな電子システムの一部であり、複数の特定の用途に合わせて調整されてもよい。したがって、複数の応用例のうちのいくつかにおいて、変換器回路の電圧レベルセレクタ512が選択してもよいターゲットレベル(the Target Level that might be selected by the Voltage Level Selector 512)を、入力信号を印加することによって上書きする(to be overridden by application of an input signal)ことが有用となる場合がある。例えば、(例えば、システムの中の追加的な回路がオン又はオフにされる、といったように)大きな過渡現象イベントが生起する可能性があり、及び、その大きな過渡現象イベントにしたがって、変換器回路が、VOUTのために、より高い旋回レート(slew rate)を強制されてもよいということが、システムの中の他の回路によって知られる場合がある。そのような回路から変換器回路の電圧レベルセレクタ512への入力信号は、変換器回路それ自体が検出可能である場合があるいずれかのシステム変更に先立って、(充電の場合には)より高いターゲットレベル又は(放電の場合には)より低いターゲットレベルの選択を可能としてもよい。例えば、電話機のマイクロコントローラが(ディスプレイ画面等の)負荷をオンにしようとする場合には、そのマイクロコントローラは、信号によって、大きな負荷ステップが発生しようとしているということをマルチレベル変換器回路に伝えてもよい。マルチレベル変換器回路は、その後に、それ自体の内部状態及び測定に基づいて要求されるであろうターゲットレベルよりもより高いターゲットレベルを使用して、過渡現象応答要件を満たしてもよい。
【0173】
制御及び運用に関する追加的な考慮事項
【0174】
本開示にしたがって設計されているマルチレベル変換器セルを利用する電力変換器の信頼性が高く且つ効率的な動作を可能とする追加的な制御及び動作回路(或いは、1つ又は複数のシャットダウン手順)を提供することが望ましい場合がある。例えば、降圧電力変換器(step-down power converter)においては、変換器セルの出力電圧は、変換器セルの入力電圧よりも低い。出力負荷電流が0ではない間に、出力に接続される設計上のインダクタンスを有する変換器セルを(例えば、短絡等の故障イベントのために)シャットダウンし又は無効化する(disabling)には、一般的に、インダクタ電流を放電するための何らかの手段が必要である。複数の実施形態のうちのいくつかにおいて、バイパススイッチは、変換器セルの出力に接続される設計上のインダクタンスと並列に接続され、通常動作の際は開くように制御され、変換器セルをシャットダウンするとき又は故障イベントが生起する場合には閉知るように制御されてもよい。理想的には、過渡現象リンギング(transient ringing)を防止するとともに、インダクタ電流の安全な放電を提供するために、バイパススイッチは、変換器セルのスイッチングを無効化する前に閉じられてもよい。変換器の主スイッチにMOSFETを使用する代替的な実施形態において、各々のMOSFETの本体とドレイン端子との間に接続される固有の本体ダイオードは、また、インダクタ電流を放電することが可能である。これらの解決方法の詳細のみならず代替的なシャットダウン解決方法は、本発明の譲受人に譲渡され、2020年6月16日に特許になっている“断熱電荷ポンプの効率的なシャットダウンのための装置及び方法”と題する米国特許第10,686,367号の中で教示されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0175】
並列に複数の変換器セルを組み合わせるときの他の考慮事項は、起動の際又は故障状態が生起するときのように、電力変換器のすべてが完全には動作しない場合に、(例えば、電力変換器のソフトスタート期間の間の)突入電流(in-rush current)及び/又はスイッチの過負荷を回避するために、複数の並列の電力変換器を制御することである。条件付きの制御は、複数のノード状態検出器を使用することによって達成されてもよく、それらの複数のノード状態検出器は、電圧及び/又は電流をモニタリングするために、並列接続される電力変換器の中の複数の選択されているノードに結合されている。そのようなノード状態検出器は、複数の実施形態のうちのいくつかにおいて、出力状態検出器と並列に動作するように構成されてもよく、その出力状態検出器は、起動の際に関連する電力変換器の出力電圧を測定する。それらの複数のノード状態検出器は、並列電力変換器の全電力定常状態動作(full power steady-state operation)を可能とする前に、電力変換器の変換器セルの中の(例えば、フライキャパシタ及び/又はスイッチ等の)重要な構成要素の両端の間の電圧が、望ましい範囲の中にあることを保証し、それ以外の場合には、全電力定常状態動作を防止する。ノード状態検出器は、マスターコントローラに結合されてもよく、そのマスターコントローラは、1つ又は複数の共通の制御信号を使用して複数の並列電力変換器のうちの1つ又は複数を制御する。マスタコントローラ構成を促進するために、複数の並列電力変換器の各々は、フル電力定常状態動作のための起動フェーズを出る準備ができたときに、電力良好信号(Pgood)を報告してもよい。マスタコントローラは、場合によっては、他の回路からの1つ又は複数の状態信号と共に、本質的に、そのようなPgood信号のすべて論理積をとってもよく(may essentially “AND” all such Pgood signals)、それによって、そのマスタコントローラは、複数の並列電力変換器のすべてが、その状態に対して準備ができていない限り、いずれの並列電力変換器の全電力定常状態動作も可能にしない。本質的に、各々の並列電力変換器からのPgood信号は、すべて一緒に結び付けられ、それによって、複数の並列電力変換器は、それらのPgood信号が定常動作に遷移する準備ができているということをそれらのPgood信号のすべてが示すまで、起動フェーズから遷移することができない。さらに、Pgood信号が、それらの複数の並列電力変換器のうちの1つ又は複数における故障状態に起因して変化する場合に、それらの複数の並列電力変換器は、定常状態動作から自動再起動動作又はシャットダウン動作に移行することができる。これらの解決方法の詳細は、代替的なシャットダウン解決方法と同様に、本発明の譲受人に譲渡され、2021年4月27日に特許になっている“並列電力変換器の起動検出”と題する米国特許第10,992,226号に教示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0176】
マルチレベル変換器セルを動作させる際の他の考慮事項は、不平衡フライキャパシタが高電圧への露出に起因してスイッチ(特に、FETスイッチ)の破壊をもたらす場合があるので、スイッチのすべてが、同様の電圧ストレスを受けるように、複数のフライキャパシタの電圧を達成する(すなわち、あらかじめ充電する)とともに、それらのフライキャパシタの電圧を維持することであり、それらの複数のフライキャパシタの電圧は、本質的に完全に且つ比例的に平衡されている。マルチレベルDC-DC変換器回路におけるキャパシタ電圧の予備充電とキャパシタ電圧の動作バランスの双方に対する解決方法のうちの1つは、並列の“シャドウ”回路を提供することであり、その並列の“シャドウ”回路は、電圧源又は他の回路にフライキャパシタを条件付きで結合して、そのキャパシタを予備充電するか、条件付きで2つ以上のフライキャパシタを一緒に結合して、より高い電圧のキャパシタからより低い電圧のキャパシタに電荷を転送するか、或いは、条件付きで電圧シンクにフライキャパシタを結合して、そのキャパシタを放電し、それらのキャパシタ電圧のすべては、リアルタイムのキャパシタ電圧測定の制御下にある。各々の並列の“シャドウ”回路は、スイッチ及び抵抗器を含んでもよく、それらのスイッチ及び抵抗器は、マルチレベル変換器セルの一部である主スイッチと並列に結合されている(場合によっては、ある1つのスイッチ-抵抗器対は、2つの直列接続されるスイッチにまたがってもよい)。フライキャパシタの予備充電及び/又は充電バランスをとるためのこの特定の解決方法は、非常に高速であり、予備充電期間中にフライキャパシタの遅い予備充電を提供し、スイッチを突入電流から保護し、変換器セルスイッチに安定した電圧を提供する。この解決方法の詳細、及び代替的な予備充電及び電荷平衡解決方法は、本発明の譲受人に譲渡され、2020年7月21日に特許になっている“損失電圧平衡を有するマルチレベルDC-DC変換器”と題する米国特許第10,720,843号に教示されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0177】
マルチレベルDC-DC変換器回路においてキャパシタ電圧を平衡させるための他の解決方法は、無損失電圧平衡解決方法(lossless voltage balancing solution)を提供することであり、その無損失電圧平衡解決方法においては、通常動作の際に、マルチレベルDC-DC変換器セルの順不同の状態遷移(out-of-order state transitions)が生起することを可能とする。順不同の状態遷移の正味の効果は、特定のフライキャパシタの両端の電圧を増加させ又は減少させることであり、したがって、DC-DC変換器のメインスイッチに対する電圧の過負荷を防止する。複数の実施形態のうちのいくつかにおいて、状態遷移の全体的なシーケンスに制限を設けて、遷移状態の切り替わりを減少させ又は回避し、それにより、あるキャパシタが他のキャパシタの電圧平衡をとる前に電圧平衡をとることを可能にするのではなく、むしろ、各々のキャパシタが必要に応じてその電圧を方向づける(have its voltage steered as necessary)機会を可能とする。この解決方法の詳細は、代替的な電荷平衡解決方法と同様に、本発明の譲受人に譲渡され、2020年9月8日に特許になっている“無損失電圧平衡を有するマルチレベルDC-DC変換器”と題する米国特許第10,770,974号に教示されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0178】
複数の実施形態のうちのいくつかのための追加的な考慮事項は、マルチレベル変換器セルの動作を可能とすることであり、それによって、複数の電圧レベルの間の複数の境界ゾーン(boundaries zones)において電圧を生成することが可能となる。“境界ゾーン”は、従来のマルチレベルDC-DC変換器回路の達成不可能な出力電圧を表す。ある1つの境界ゾーンの中に出力電圧を生成するために、複数の実施形態のうちのいくつかは、ある1つの境界ゾーン遷移パターン(a boundary zone transition pattern)を形成するように変換器セルスイッチの状態を設定することによって、複数の隣接する(又は、近くの)ゾーンの間で本質的に交互に変化する(alternate)(切り替わる(toggle))。例えば、3レベルのDC-DC変換器回路は、選択されている時間の間に、ゾーン1で動作し、選択されている時間の間に、隣接するゾーン2で動作してもよい。したがって、ゾーン1及びゾーン2は、単一の“スーパーゾーン(super-zone)”として取り扱われる。より一般的には、場合によっては、複数の非隣接のゾーンを使用して、又は、(隣接する及び/又は非隣接の)2つよりも多くのゾーンを使用して、スーパーゾーンを作成することが有用となる場合がある。この解決方法の詳細は、本発明の譲受人に譲渡されている、2020年7月21日に発行されている“境界遷移制御を有するマルチレベルDC-DC変換器”という名称の米国特許第10,720,842号に教示されており、その内容は参照により組み込まれる。
【0179】
複数の実施形態のうちのいくつかのためのさらに別の考慮事項は、ストレス状態、特に、複数のそのようなスイッチ(特に、複数のFETスイッチ)の破壊電圧を超える電圧から、主電源スイッチ及び電力変換器の中の他の構成要素を保護することである。マルチレベル電力変換器を保護するための手段のうちの1つは、少なくとも1つの高電圧FETスイッチを使用する一方で、他のすべて又は大部分の主電力スイッチを低電圧FETスイッチにすることを可能とする。
【0180】
電力変換器、特に、マルチレベル電力変換器において、電力スイッチは、FET、特にMOSFETによって実装されてもよい。各々の電力FETの場合には、一般的に、ドライバ回路を必要とする。加えて、いくつかの電力FETの場合には、電力FETのゲートを充電し又は放電し、それにより、電力FETの導通又は遮断状態を制御するために、信号が駆動している電力FETの電源電圧を基準とするが同じ電圧振幅を有する信号へと、アナログ又はディジタルコントローラからの接地基準低電圧論理オン/オフ信号を変換するのにレベルシフタを必要とする場合がある。用途によっては、レベルシフタとドライバ回路の機能を1つの回路に組み込んでもよい。
【0181】
明らかなように、本開示の中で説明されているマルチレベル電力変換器の実施形態は、この節の中で説明されている追加的な制御及び動作回路及び方法のうちの1つ又は複数の教示と相乗的に組み合わせられてもよい。
【0182】
マルチレベル電力変換器の一般的な利点及び優位性
【0183】
本発明の複数の実施形態は、内蔵回路及び回路モジュール又はブロックの電力密度及び/又は電力効率を改善する。当業者が理解するように、システムアーキテクチャは、重要な方法で本発明の複数の実施形態を利用して有益に影響を受け、それらの複数の実施形態は、低電力及び/又はより長いバッテリ寿命を含む。したがって、本発明は、特に、大規模なシステム設計及びアプリケーションの中に含めることによって、創造的に可能となるシステムレベルの実施形態を包含する。
【0184】
より具体的には、マルチレベル電力変換器は、以下のような数多くの利点及び優位性を提供し又は可能とする。すなわち、
【0185】
- 入力及び/又は出力電圧が広いダイナミックレンジを有する可能性のある用途への(例えば、バッテリ入力電圧レベルの変化、出力電圧の変化等の)適応性;
【0186】
- (液体又は気体燃料を使用するバッテリ、発電器又は燃料電池、太陽電池等の)持ち運び可能な電気エネルギー源によって作動するデバイスの動作時間に関する効率の改善;
【0187】
- 熱管理、特に、過度の熱から(例えば、ディスプレイ、近くのIC等の)他の構成要素を保護するために効率が重要である場合の効率改善;
【0188】
- 例えば、より小型のマルチレベル電力変換器は、負荷の極めて近くに電力変換器を配置することを可能とし、したがって、効率を増加させ及び/又は全体の部品点数を減少させることが可能である、といったように、電力変換器の電力効率、電力密度、及び形状因子のための設計最適化を可能とすること;
【0189】
- より小型で低電圧のトランジスタの性能を利用する能力;
【0190】
- バッテリ、その他の電力変換器、発電器、或いは、液体又は気体燃料を使用する燃料電池、太陽電池、ライン電圧(AC)、及び(例えば、USB、USB-C、電力オーバーイーサネット等の)DC電圧源のように、電源が大きく変化する場合がある用途への適応性;
【0191】
- (マイクロプロセッサ及びメモリICを含む)一般的なIC、電気モータ及びアクチュエータ、トランスデューサ、センサ、及び、(例えば、あらゆるタイプのLCD及びLED等の)ディスプレイのように、負荷が大きく変化する場合がある用途への適合性;
【0192】
- (例えば、MOSFET、GaN、GaAs、及び、バルクシリコン等の)数多くのIC技術及び(例えば、フリップチップ、ボールグリッドアレイ、ウェハレベルスケールチップパッケージ、ワイドファンアウトパッケージング、及び埋め込みパッケージング等の)パッケージング技術によって実装される能力; である。
【0193】
マルチレベル電力変換器の優位性及び利点は、幅広い用途での使用を可能とする。例えば、マルチレベル電力変換器の用途は、(例えば、ノートブックコンピュータ、ウルトラブックコンピュータ、タブレット装置、及び携帯電話等の)持ち運び可能な及び移動可能なコンピューティング及び/又は通信製品及び構成要素、(例えば、LCD、LED等の)ディスプレイ、(例えば、セルラーシステム、WiFi、ブルートゥース(登録商標)、Zigbee、Z-Wave、及びGPSベースのデバイス等の)無線ベースのデバイス及びシステム、有線ネットワークデバイス及びシステム、(例えば、バッテリバックアップシステム及び/又は処理システム及び/又は電子/光ネットワークシステムのための電力変換のための)データセンター、(例えば、スマートスイッチ及びライト、安全センサ、及びセキュリティカメラ等の)モノのインターネット(IOT)デバイス、(例えば、セットトップボックス、バッテリ作動式掃除機、洗濯機、乾燥機、及び冷蔵庫等の内蔵型の無線トランシーバを有する機器等の)家電製品及び電子機器、AC/DC電力変換器、(例えば、ドライブトレイン、制御システム、及び/又はインフォテインメントシステムのための)あらゆるタイプの電気自動車、及び、持ち運び可能なの発電源を利用する及び/又は電力変換を必要とする他のデバイス及びシステムを含む。
【0194】
無線システムの使用は、(基地局、中継局、及びハンドヘルドトランシーバを含む)無線RFシステムを含み、その無線RFシステムは、さまざまなタイプの直交周波数分割多重(“OFDM”)、直交振幅変調(“QAM”)、符号分割多元接続(“CDMA”)、時分割多元接続(“TDMA”)、広帯域符号分割多元接続(“W-CDMA”)、汎欧州ディジタル移動体通信システム(“GSM”)、ロングタームエボリューション(“LTE”)、5G、及び(例えば、802.11a、b、g、ac、ax等の)WiFi、及び、他の無線通信標準及びプロトコルを含むさまざまな技術及びプロトコルを使用する。
【0195】
プログラム可能な実施形態
【0196】
本発明のいくつかの又はすべての態様、特に、
図5のマルチレベルスイッチ状態セレクタ514は、ハードウェア又はソフトウェア、或いは、(例えば、プログラマブル論理アレイ等の)それらの双方の組み合わせによって実装されてもよい。別段の記載がある場合を除き、本発明の一部として含まれるアルゴリズムは、いかなる特定のコンピュータ又は他の装置にも本質的に関連しない。特に、さまざまな汎用コンピューティングマシンが、本明細書の教示にしたがって書かれているプログラムと共に使用されてもよく、或いは、特定の機能を実行するために、(集積回路等の)専用コンピュータ又は専用ハードウェアを使用する方がより便利である。したがって、本発明の実施形態は、少なくとも1つのプロセッサ、(揮発性及び不揮発性メモリ及び/又は記憶素子を含んでもよい)少なくとも1つのデータ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス又はポート、及び、少なくとも1つの出力デバイス又はポートを各々が含む(分散、クライアント/サーバ、又はグリッド等のさまざまなアーキテクチャのものとなることができる)1つ又は複数のプログラムされている又はプログラム可能なコンピュータシステムによって実行される1つ又は複数のコンピュータプログラム(すなわち、命令又はコードのセット)で実装することができる。プログラム命令又はコードを入力データに適用して、本開示に記載される機能を実行し、出力情報を生成することができる。出力情報は、既知の方法で1つ又は複数の出力デバイスに適用されてもよい。
【0197】
そのようなコンピュータプログラムの各々は、コンピュータシステムと通信するために、(マシン、アセンブリ、又は高レベル手続き型、論理型、もしくはオブジェクト指向プログラミング言語を含む)任意の望ましいコンピュータ言語によって実装されてもよく、ソフトウェアによって指定されている計算の異なる部分が異なるコンピュータ又はプロセッサによって実行される分散されている方式によって実装されてもよい。いずれの場合も、コンピュータ言語は、コンパイルされている言語又はインタプリタ型の言語であってよい。本発明の一部又はすべてを実装するコンピュータプログラムは、より大きなプログラム又はプログラムのシステムの1つ又は複数のモジュールを形成してもよい。コンピュータプログラムの要素の一部又は全部は、コンピュータ可読媒体に格納されているデータ構造、又はデータリポジトリに格納されているデータモデルに適合する他の編成されているデータとして実装されてもよい。
【0198】
このようなコンピュータプログラムの各々は、(例えば、ダイナミックRAM等のダイナミックメモリデバイスのリフレッシュ期間の間の時間、或いは、半永久的に又は永久的に、といったように)ある期間の間、(例えば、固体メモリメディア又はデバイス、或いは、磁気又は光メディア等の)有形の非一時的記憶媒体又はデバイスの中に格納され、又は、(例えば、伝搬されている信号の中に符号化され、ネットワーク等の通信媒体を介して配信されることによって)ダウンロードされ、記憶媒体又はデバイスは、汎用又は専用のプログラム可能なコンピュータ又はプロセッサによって読み出し可能であり、記憶媒体又はデバイスが、上記の手順を実行するためにコンピュータ又はプロセッサによって読み出されるときに、コンピュータ又はプロセッサを構成し、動作させる。本発明のシステムは、コンピュータプログラムで構成されている非一時的なコンピュータ可読記憶媒体として実装されると考えることもでき、そのように構成されている記憶媒体は、コンピュータ又はプロセッサを特定の又は所定の方法で動作させて、本開示に記載されている機能を実行する。
【0199】
製造技術及びオプション
【0200】
マルチレベル電力変換器のさまざまな実施形態において、特定のタイプのキャパシタ、特に、フライキャパシタを使用することが有益である場合がある。例えば、そのようなキャパシタが、低い等価直列抵抗(ESR)、低いDCバイアス劣化、高いキャパシタンス、及び小さい体積を有することは、一般的に、有用である。低ESRは、電圧レベルの数を増加させるために追加的なスイッチ及びフライキャパシタを組み込んであるマルチレベル電力変換器にとって特に重要である。キャパシタの選定は、出力レベル、効率、サイズ等の仕様を考慮して行う必要がある。(積層セラミックキャパシタを含む)セラミック、電解キャパシタ、(電力フィルムキャパシタを含む)フィルムキャパシタ、ICベースのキャパシタ等のさまざまなタイプのキャパシタ技術を使用してもよい。キャパシタ誘電体は、特定の用途に必要に応じて変化してもよく、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化ハフニウム(HFO2)、又は酸化アルミニウムAl2O3等の常誘電誘電体を含んでもよい。加えて、マルチレベル電力変換器の設計は、回路サイズを縮小し、及び/又は回路性能を向上させるために、設計されているキャパシタと共に、又は、その代わりに、(例えば、電力FETに固有の)固有の寄生キャパシタンスを有益に利用してもよい。マルチレベル電力変換器のためのキャパシタの選択は、キャパシタ構成要素の変動、DCバイアスによる実効キャパシタンスの減少、及びセラミックキャパシタ温度係数等の(最小及び最大温度動作限界、及び温度によるキャパシタンス変動等の)要因も考慮に入れてもよい。
【0201】
同様に、マルチレベル電力変換器のさまざまな実施形態において、特定のタイプのインダクタを使用することが有益である場合がある。例えば、インダクタが低いDC等価抵抗、高いインダクタンス、及び小さい体積を有することは、一般的に、有用である。
【0202】
マルチレベル電力変換器の起動及び動作を制御するのに使用されるコントローラは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、ディジタル信号プロセッサ、レジスタ転送レベル回路、及び/又は組合せ論理として実装されてもよい。
【0203】
本開示の中で使用される“MOSFET”の語は、その電圧がトランジスタの導電性を決定する絶縁ゲートを有する任意の電界効果トランジスタ(FET)を含み、金属又は金属様、絶縁体、及び/又は半導体構造を有する絶縁ゲートを包含する。“金属”又は“金属様の”の語は、(アルミニウム、銅、又は他の金属、又は高度にドープされているポリシリコン、グラフェン、又は、他の導電体等の)少なくとも1つの導電性材料を含み、“絶縁体”は、(酸化シリコン又は他の誘電体材料等の)少なくとも1つの絶縁材料を含み、“半導体”は、少なくとも1つの半導体材料を含む。
【0204】
本開示の中で使用されるときに、“無線周波数”(RF)の語は、約3[kHz]乃至約300[GHz]の範囲の振動の速度を指す。この語は、また、無線通信システムで使用される周波数を含む。RF周波数は、電磁波の周波数、或いは、回路の中の交流電圧又は交流電流の周波数であってもよい。
【0205】
本開示において参照される図に関して、さまざまな要素の寸法は、原寸に比例しておらず、いくつかの寸法は、明瞭化又は強調のために、垂直方向及び/又は水平方向に大きく誇張されている。加えて、(例えば、“最も上の“、”最も下の“、”上方の“、”下方の“、”横の“、”垂直の“、”水平の“等の)向き及び方向への言及は、例示的な図面に対して相対的であり、必ずしも、絶対的な向き又は方向ではない。
【0206】
本発明のさまざまな実施形態は、広範な仕様に適合するように実装されてもよい。上記で特に言及する場合を除き、適切な成分値の選択は設計上の選択の問題である。本発明のさまざまな実施形態は、(これらには限定されないが、MOSFET構造を含む)任意の適切な集積回路(IC)技術、或いは、ハイブリッド又はディスクリート回路形態によって実装されてもよい。集積回路の実施形態は、任意の適切な基板及びプロセスを使用して製造されてもよく、これらには限定されないが、標準的なバルクシリコン、高抵抗バルクCMOS、シリコンオン絶縁体(SOI)、及びシリコンオンサファイア(SOS)を含む。上記で特に言及しない限り、本発明の実施形態は、バイポーラ、BiCMOS、LDMOS、BCD、GaAs HBT、GaN HEMT、GaAs pHEMT、及びMESFET技術などの他のトランジスタ技術によって実装されてもよい。しかしながら、本発明の実施形態は、SOI又はSOSベースのプロセスを使用して製造される場合、或いは、同様の特性を有するプロセスで製造される場合に特に有用である。SOI又はSOSプロセスを使用するCMOSでの製造は、低電力消費、FETスタッキングによる動作中の高電力信号に耐える能力、良好な直線性、及び高周波動作(すなわち、300[GHz]以下の無線周波数)を有する回路を可能にする。モノリシックICの実装は、寄生容量が一般的に、慎重な設計によって低く維持されてもよい(又は、少なくとも、すべてのユニットにわたって均一に維持され、それらが補償されることを可能にする)ため、特に有用である。
【0207】
(例えば、NMOS、PMOS、又はCMOS、及びエンハンスメントモード又はデプレッションモードのトランジスタデバイス等の)特定の仕様及び/又は実装技術に依存して、電圧レベルを調整してもよく、及び/又は電圧及び/又は論理信号の極性を反転させてもよい。例えば、デバイスサイズを調節し、より大きな電圧に耐えるように構成要素(特に、FET)を直列に“積み重ね”、及び/又はより大きな電流を取り扱うために複数の構成要素を並列に使用することによって、構成要素の電圧、電流、及び電力処理能力を必要に応じて適合させてもよい。開示されている回路の能力を強化するために、及び/又は開示されている回路の機能を大幅に変更することなく追加的な機能を提供するために、追加的な回路構成要素が追加されてもよい。
【0208】
本発明にしたがった回路及びデバイスは、単独で使用されてもよく、又は、他の構成要素、回路、及びデバイスと組み合わせて使用されてもよい。本発明の実施形態は、集積回路(IC)として製造されてもよく、ICは、取り扱い、製造を容易にし、及び/又は性能を向上させるために、ICパッケージ及び/又はモジュールに収容されてもよい。特に、本発明のICの実施形態は、モジュールの中で使用されることが多く、そのモジュールにおいては、1つ又は複数のそのようなICが(例えば、フィルタ、増幅器、受動部品、及び、場合によっては、追加的なIC等の)他の回路ブロックと組み合わされて、1つのパッケージとされている。IC及び/又はモジュールは、その次に、典型的には、しばしばプリント回路基板上で他の構成要素と組み合わされて、より高いレベルのモジュールを形成し、そのより高いレベルのモジュールは、携帯電話、ラップトップコンピュータ、又は電子タブレットなどの最終製品の一部を形成するか、或いは、車両、試験機器、医療デバイス等の広範な製品に使用されてもよい。モジュール及びアセンブリのさまざまな構成を通じて、このようなICは、典型的には、通信モード、しばしば無線通信を可能にする。
【0209】
結び
【0210】
本発明の数多くの実施形態が説明されてきた。本発明の趣旨及び範囲から離れることなく、さまざまな修正を行うことが可能であるということを理解するべきである。例えば、上記で説明されている複数のステップのうちのいくつかは、順序のとおりでなくてもよく、したがって、説明されている順序とは異なる順序で実行されてもよい。さらに、上記で説明されている複数のステップのいくつかは、随意的であってもよい。上記で特定されている複数の方法に関して説明されているさまざまな動作は、反復的な方法、直列的な方法、及び/又は並列的な方法によって実行されてもよい。
【0211】
上記の説明は、解説することを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図してはおらず、本発明の範囲は、請求項に記載されている発明によって定義され、及び、複数の他の実施形態は、請求項に記載されている発明の範囲の中にあるということを理解するべきである。特に、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲に記載されているプロセス、機械、製造、又は組成物のうちの1つ又は複数の任意の且つすべての実現可能な組合せを含む。(請求項に記載されている要素の括弧内の表示は、そのような要素を参照することを容易にするための表示であり、それら自体は、要素の特定の必要な順序又は列挙を示す表示ではなく、さらに、そのような表示は、矛盾する表示のシーケンスを開始するものであると考えられることなく、追加的な要素への参照として従属請求項の中で再利用されてもよいということに留意するべきである。)
【国際調査報告】