(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】マルチレベルコンバータにおける軽負荷回復の改善
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
H02M3/155 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526931
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 US2022078920
(87)【国際公開番号】W WO2023081610
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】シュチェシンスキー,グレゴリー
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730BB11
5H730BB57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD31
5H730FG05
(57)【要約】
マルチレベルコンバータの制御ループにおいて、軽負荷状態の間に大きな出力電流リップルを発生させるリップル信号を生成することによって、マルチレベルコンバータの軽負荷問題を解決する回路及び方法。この追加された電流リップルは、平均出力電流を変化させないが、マルチレベルコンバータのフライコンデンサをバランスさせ、充電/放電させるために使用することができる一時的な正及び負の電流を生成する。代替のアプローチは、出力リップル電流が0と交差するときに、フライコンデンサのための追加のスイッチングサイクルを追加することである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチレベルコンバータであって、
(a) 制御入力に応答して、入力端子に印加された入力電圧を出力端子の出力電圧に変換するように構成されたMレベルコンバータセル;
(b) 前記Mレベルコンバータセルに結合されたコントローラであって、前記コントローラは前記Mレベルコンバータセルのノードを監視し、前記監視に応答して前記Mレベルコンバータセルへの前記制御入力を生成するように構成される、コントローラ;及び
(c) 前記コントローラに結合され、前記コントローラの信号経路にサブハーモニック信号を選択的に注入するように構成されたサブハーモニック信号発生器;を含む、
マルチレベルコンバータ。
【請求項2】
前記サブハーモニック信号は、前記Mレベルコンバータセルの前記出力端子にサブハーモニックリップルを誘発する、
請求項1に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項3】
前記Mレベルコンバータセルは、少なくとも1つのフライコンデンサを含み、前記サブハーモニック信号は、前記少なくとも1つのフライコンデンサにわたる電荷のバランスさせることを促進するために、前記Mレベルコンバータセルの前記出力端子にサブハーモニックリップルを誘発する、
請求項1に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項4】
前記コントローラは、前記Mレベルコンバータセルの前記出力端子に結合された入力を有する比較装置を含み、前記サブハーモニック信号発生器は、前記出力端子と前記比較装置との間の前記信号経路に前記サブハーモニック信号を選択的に注入するように構成される、
請求項1に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項5】
前記コントローラは、基準信号入力を有する比較装置を含み、前記サブハーモニック信号発生器は、前記基準信号入力において前記サブハーモニック信号を選択的に注入するように構成される、
請求項1に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項6】
前記コントローラは、補償回路を含み、前記サブハーモニック信号発生器は、前記補償回路の後の前記信号経路に前記サブハーモニック信号を選択的に注入するように構成される、
請求項1に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項7】
前記コントローラは、補償回路を含み、前記サブハーモニック信号発生器は、前記補償回路の前の前記信号経路に前記サブハーモニック信号を選択的に注入するように構成される、
請求項1に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項8】
前記コントローラは、パルス幅変調発生器を含み、前記サブハーモニック信号発生器は、前記パルス幅変調発生器の後の前記信号経路に前記サブハーモニック信号を選択的に注入するように構成される、
請求項1に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項9】
前記サブハーモニック信号発生器は、前記出力端子を通る平均電流が約0アンペアのときに前記サブハーモニック信号を注入するように構成される、
請求項1に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項10】
前記サブハーモニック信号発生器は、前記出力端子に軽負荷が存在するときに前記サブハーモニック信号を注入するように構成される、
請求項1に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項11】
(a) Mレベルコンバータセルであって、
(1) 入力端子と;
(2) 電圧源と基準電圧との間に直列結合されたスイッチのセットと;
(3) 前記スイッチのセットの最も内側の対に結合され、インダクタに結合されるように構成された出力端子と;
(4) 前記スイッチのセットに結合されたスイッチ制御入力と;
(5) 特定のそれぞれのスイッチと直列に結合され、前記それぞれのスイッチの間に位置するスイッチと並列に結合された少なくとも1つのフライコンデンサと;
を含み、
前記Mレベルコンバータセルは、前記スイッチ制御入力の制御信号に応答して、前記入力端子に印加された入力電圧を前記出力端子の出力電圧に変換するように構成される;
Mレベルコンバータセル;
(b) 前記インダクタ及び前記スイッチ制御入力に結合されたコントローラであって、前記コントローラは、前記Mレベルコンバータセルの出力を監視し、前記監視に応答して、前記Mレベルコンバータセルに対するスイッチ制御入力値のセットを動的に生成するように構成される、コントローラ;及び
(c) 前記コントローラに結合され、前記コントローラの信号経路にサブハーモニック信号を選択的に注入するように構成されるサブハーモニック信号発生器;を含む、
マルチレベルコンバータ。
【請求項12】
前記コントローラは、前記インダクタに結合された入力を有する比較装置を含み、前記サブハーモニック信号発生器は、前記インダクタと前記比較装置との間の前記信号経路に前記サブハーモニック信号を選択的に注入するように構成される、
請求項11に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項13】
前記コントローラは、基準電圧入力を有する比較装置を含み、前記サブハーモニック信号発生器は、前記基準電圧入力において前記サブハーモニック信号を選択的に注入するように構成される、
請求項11に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項14】
前記コントローラは補償回路を含み、前記サブハーモニック信号発生器は、前記補償回路の後の前記信号経路に前記サブハーモニック信号を選択的に注入するように構成される、
請求項11に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項15】
前記コントローラは補償回路を含み、前記サブハーモニック信号発生器は、前記補償回路の前の前記信号経路に前記サブハーモニック信号を選択的に注入するように構成される、
請求項11に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項16】
前記コントローラは、パルス幅変調発生器を含み、前記サブハーモニック信号発生器は、前記パルス幅変調発生器の後の前記信号経路に前記サブハーモニック信号を選択的に注入するように構成される、
請求項11に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項17】
前記サブハーモニック信号発生器は、前記インダクタを通る平均電流が約0アンペアのときに前記サブハーモニック信号を注入するように構成される、
請求項11に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項18】
前記サブハーモニック信号発生器は、軽負荷が前記出力端子に存在するときに、前記サブハーモニック信号を注入するように構成される、
請求項11に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項19】
前記サブハーモニック信号発生器は、前記インダクタを通る平均電流の絶対値の関数として、スケーリングされたサブハーモニック信号を注入するように構成される、
請求項11に記載のマルチレベルコンバータ。
【請求項20】
前記スイッチのセットはスイッチング周波数を有し、前記サブハーモニック信号は、前記スイッチのセットの前記スイッチング周波数の約1/2の周波数を有する、
請求項11に記載のマルチレベルコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照-優先権の主張]
本出願は、2021年11月8日に出願された「Light-Load Recovery in a Multi-Level Converter」に関する米国仮出願第63/276,962号、及び2021年12月23日に出願された「Light-Load Recovery in a Multi-Level Converter」に関する米国特許出願第17/560,683号の優先権を主張するものであり、両出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、電子回路に関し、より具体的には、DC-DC電力コンバータ回路を含む電力コンバータ回路に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの電子製品、特にモバイルコンピューティング及び/又は通信製品及びコンポーネント(例えば、携帯電話、ノートパソコン、ウルトラブックコンピュータ、タブレットデバイス、LCD及びLEDディスプレイ)は、複数の電圧レベルを必要とする。例えば、無線周波数(RF)送信機電力増幅器は、比較的高い電圧(例えば12V以上)を必要とする場合があり、一方、論理回路は、低い電圧レベル(例えば1-3V)を必要とする場合がある。さらに他の回路は、中間の電圧レベル(例えば、5~10V)を必要とする場合がある。
【0004】
直流電力変換器はしばしば、バッテリ、太陽電池、燃料電池、整流されたAC電源などの共通の電源から低電圧又は高電圧を生成するために使用される。より高い入力電圧電源からより低い出力電圧レベルを生成する電力変換器は、一般的にバックコンバータとして知られており、これは、出力電圧VOUTが入力電圧VINよりも小さく、したがってコンバータが入力電圧に「逆らう(bucking)」ためである。より低い入力電圧電源からより高い出力電圧レベルを生成する電力変換器は、VOUTがVINよりも大きいため、一般的にブーストコンバータとして知られている。一部の電力変換器は、どの端子が入力及び出力に使用されるかに応じて、バックコンバータ又はブーストコンバータのいずれかであることがある。一部の電力変換器は、反転出力を提供することがある。マルチレベルコンバータとして知られる一部の電力変換器は、一般的に「フライコンデンサ」又は「ポンプコンデンサ」と呼ばれる電荷転送コンデンサを使用する。
【0005】
マルチレベルコンバータの欠点の1つは、フライコンデンサCFxが、出力負荷電流を使用してエネルギーを出し入れすることによってのみ電圧を変更できることである。負荷が軽い場合(ゼロ又は非常に低い、例えば典型的なコンバータの最大電流仕様の絶対値の約10%未満)、フライコンデンサCFxは、電荷(charge(充電))バランス回路(balancing circuitry)を備えていても、電圧を再バランス又は再調整することができない。フライコンデンサCFxの平均電圧を維持し、スイッチのストレスを回避するために、フライコンデンサCFxの電荷をバランスさせることが必要である。この特性は、例えば、電源をスイッチングする場合(例えば、あるバッテリから別のバッテリへ、又はバッテリから整流されたAC主電源へ)に生じる可能性があるなど、マルチレベルコンバータの入力VINにラインステップがある場合、特に問題である。VINが突然変化した場合、十分に長い時間負荷電流が存在するまで、フライコンデンサCFxはそれぞれの電圧を再調整することができない。
【0006】
したがって、マルチレベルコンバータにおける軽負荷回復を改善する回路及び方法が必要である。本発明は、この必要性に対処する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、マルチレベルコンバータの制御ループにおいて、軽負荷状態の間に大きな出力電流リップルを生じるリップル信号を生成することによって、マルチレベルコンバータの軽負荷問題を解決する回路及び方法を包含する。この追加された電流リップルは、平均出力電流を変化させないが、マルチレベルコンバータのフライコンデンサをバランスさせ、充電/放電させるために使用されることができる一時的な正及び負の電流を生成する。別のアプローチは、出力リップル電流が0に近い又は0と交差する(crosses(クロスする))ときに、フライコンデンサに追加の(extra)スイッチングサイクルを追加することである。
【0008】
回路実施形態は、スイッチ制御入力に応答して、入力端子に印加された入力電圧を出力端子の出力電圧に変換するように構成されたMレベルコンバータセル;Mレベルコンバータセルに結合されたコントローラであって、Mレベルコンバータセルの出力電圧を監視し、Mレベルコンバータセルへのスイッチ制御入力を動的に生成するように構成されたコントローラ;及びコントローラに結合され、Mレベルコンバータセルの出力端子にサブハーモニック(sub-harmonic)リップルを誘発する(induce)ように、コントローラの信号経路にサブハーモニック信号を選択的に注入するように構成されたサブハーモニック信号発生器;を含むマルチレベルコンバータを含む。
【0009】
方法は、マルチレベルコンバータの充電サイクル及び放電サイクルを規定するコントローラからの入力信号に応答して、入力端子に印加された入力電圧を出力端子の出力電圧に変換するように構成されたMレベルマルチレベルコンバータにおける軽負荷回復を改善することを含む。第1の方法は、Mレベルマルチレベルコンバータの出力端子にサブハーモニックリップルを誘発するように、コントローラの信号経路にサブハーモニック信号を注入する。第2の方法は、放電サイクルの後にゼロ電流クロス点(zero-current crossing point)で追加の充電サイクルを追加し、充電サイクルの後にゼロ電流クロス点で追加の放電サイクルを追加する。
【0010】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】従来技術の電力コンバータを含む回路のブロック図である。
【0012】
【
図2A】特定のコンバータセルを含む従来技術の2レベルDC-DCバックコンバータ回路の一部の概略図である。
【0013】
【
図2B】
図2Aの回路の時間に応じたノードL
Xにおける電圧レベルを示すグラフである。
【0014】
【
図3A】特定のコンバータセルを含む従来技術の3レベルDC-DCバックコンバータ回路の一部の概略図である。
【0015】
【
図3B】
図3Aの回路の時間に応じたノードL
Xにおける電圧レベルを示すグラフである。
【0016】
【
図4】インダクタL及び出力コンデンサC
OUTを含む出力ブロックに結合されたMレベルコンバータセルのための制御回路の一実施形態のブロック図である。
【0017】
【
図5】可能な変更点を示すMレベルコンバータセルのための制御回路の一実施形態のブロック図である。
【0018】
【
図6】第1の負荷条件のセット下での時間に応じた3レベルコンバータのインダクタを通る電流のグラフである。
【0019】
【
図7】第2の負荷条件のセット下での時間に応じた3レベルコンバータのインダクタを通る電流のグラフである。
【0020】
【
図8】インダクタを通る負の電流フロー(negative current flow)をもたらし得る条件下での、時間に応じたマルチレベルコンバータのインダクタを通る電流のグラフである。
【0021】
【
図9A】時間に応じたマルチレベルコンバータのインダクタLを通る電流のグラフであり、軽負荷回復を改善するためのスイッチングサイクルの追加を示す。
【0022】
【
図9B】時間に応じたマルチレベルコンバータの特定のフライコンデンサCの電圧のグラフである。
【0023】
【
図10】サブハーモニック信号生成回路の一実施形態の概略図である。
【0024】
【
図11】サブハーモニックPWMエッジ遅延回路の一実施形態の概略図である。
【0025】
【
図12】Mレベルマルチレベルコンバータにおける軽負荷回復を改善する第1の方法を示すプロセスフローチャートである。
【0026】
【
図13】Mレベルマルチレベルコンバータにおける軽負荷回復を改善する第2の方法を示すプロセスフローチャートである。
【0027】
様々な図面における同様の参照番号及び名称は、同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、従来技術の電力コンバータ100を含む回路のブロック図である。図示の例では、電力コンバータ100は、コンバータセル102及びコントローラ104を含む。コンバータセル102は、端子V1+、V1-(共通)間の電圧源106(例えば、バッテリー)から入力電圧V
INを受け取り、入力電圧V
INを端子V2+、V2-(共通)間の出力電圧V
OUTに変換するように構成される。出力電圧V
OUTは、一般に、出力コンデンサC
OUTの両端に結合され、その両端に等価抵抗Rとして表される負荷が接続され得る。電力コンバータ100のいくつかの実施形態では、バイアス電圧発生器(複数可)、クロック発生器、電圧制御回路などのような補助回路(図示せず)が存在してもよく、コンバータセル102及びコントローラ104に結合されてもよい。
【0029】
コントローラ104は、入力信号のセットを受け取り、出力信号のセットを生成する。これらの入力信号のいくつかは、コンバータセル102に接続された信号経路110に沿って到着する。いくつかの入力信号は、コンバータセル102の動作状態を示す情報を搬送する。コントローラ104は、一般に、少なくともクロック/タイミング信号CLK(しかし、いくつかのコントローラは、例えば、ヒステリシスコントローラ又はコンスタントオンタイムコントローラのように、非同期動作のために構成されてもよい)と、アナログ、デジタル(符号化又は直接信号線)、又はその両方の組み合わせであり得る1つ以上の外部入力/出力信号I/Oも受け取る。受信された入力信号に基づいて、コントローラ104は、コンバータセル102にVINをVOUTに変換させるようにコンバータセル102の内部コンポーネント(例えばFET、特にMOSFET等の内部スイッチ)を制御する信号経路110上のコンバータセル102に戻る制御信号のセットを生成する。いくつかの実施形態では、補助回路(図示せず)が、クロック信号CLK、入力/出力信号I/O、並びに一般的な電源電圧VDD及びトランジスタバイアス電圧VBIASなどの様々な電圧などの様々な信号をコントローラ104に(及びオプションでコンバータセル102に直接)供給し得る。
【0030】
一部の電力コンバータ設計では、コンバータセル102は、インダクタをエネルギー蓄積要素として使用する。例えば、
図2Aは、特定のコンバータセル102aを含む従来技術の2レベルDC-DCバックコンバータ回路200の一部の概略図である。コンバータセル102a内では、2つのスイッチQH、QLのセットが、V
IN(端子V1+に印加される)と共通の基準電圧(例えば、端子V1-に結合された回路グランドGND)との間で直列に結合される。エネルギー蓄積インダクタLが、スイッチQH、QLのセットの間のノードL
Xから、平滑化及びエネルギー蓄積を提供する出力コンデンサC
OUTに結合される。端子V2+からの出力コンデンサC
OUTの両端の電圧はV
OUTであり、負荷Rに結合される。
【0031】
インダクタL及び出力コンデンサC
OUTの1つの機能は、エネルギーの転送及び蓄積である。コンバータセル102aのコントローラ回路の一部は、一般に、スイッチQH、QLの制御入力(例えば、MOSFETのゲート)に結合されるパルス幅変調(PWM)デューティサイクルコントローラ(図示せず)を含み、負荷Rへのエネルギーの流れを制御するためにスイッチQH、QLを交互に有効(閉じる又は「オン(ON)」にする)及び無効(開く又は「オフ(OFF)」にする)にする。PWMデューティサイクルコントローラは、一般に、クロック信号及びフィードバック電圧としてのV
OUTを受け取る。フィードバック電圧により、PWMデューティサイクルコントローラは、スイッチQH、QLへのPWM制御信号のデューティサイクルを変化させて、負荷Rの変化をオフセットすることができ、それによってV
OUTを調整する。PWMデューティサイクルコントローラは、
図1のコントローラ104の一部であってもよいが、スタンドアロン回路であってもよい。
【0032】
図2Aに示す例では、コンバータセル102aは、2つの状態:QH閉及びQL開(ノードL
Xにおける電圧レベル=V
IN)、又はQH開及びQL閉(ノードL
Xにおける電圧レベル=GND)のみの間でスイッチングする。
図2Bは、
図2Aの回路の時間に応じたノードL
Xにおける電圧レベルを示すグラフである。グラフ線202は、スイッチQH及びQLが2つの利用可能なスイッチ状態(すなわち、QH閉及びQL開、又はQH開及びQL閉)のみの間でトグルするときのノードL
Xにおける平均電圧レベルである。PWMデューティサイクルコントローラは、ノードL
Xにおける平均電圧の振幅を決定する各スイッチ状態における時間を設定する。このようなコンバータセル102aに基づく電力コンバータ100は、スイッチドモード電源(SMPS)又はDC-DCコンバータとしても知られている。
【0033】
図2Bを考慮することによって理解されるように、インダクタLは、ノードL
Xにおいて、GNDからV
INへ、そしてGNDへ戻る電圧レベルの大きなジャンプを認識する。結果として生じるインダクタLの両端の電圧リップルは、V
OUTを平滑化するためにかなりの量のフィルタリングを必要とし、これは、一般に、インダクタLが大きいことを意味し、インダクタLの両端の電圧が高いほど、必要なインダクタンスが大きくなる。さらに、スイッチQH及びQLは、V
INからGNDまでの全電圧範囲に耐える必要がある場合があり、これは、一般に、FETとして実装される場合、スイッチQH、QLが物理的に大きいことを意味する。
【0034】
インダクタLの両端の電圧リップル及び任意の1つのスイッチの両端の電圧スイングは、VINからVOUTへ電荷を転送するためのエネルギー蓄積要素(energy storage elements)として、より多くの直列スイッチ及び電荷転送コンデンサを追加することによって低減することができる。電荷転送コンデンサは、一般に、「フライコンデンサ」又は「ポンプコンデンサ」として知られており、コンバータ回路の集積回路の実施形態の内部コンポーネント、又は残りのコンバータ回路の集積回路の実施形態に結合された外部コンポーネントであってもよい。
【0035】
例えば、
図3Aは、特定のコンバータセル102bを含む従来技術の3レベルDC-DCバックコンバータ回路300の一部の概略図である。4つのスイッチのセット、QH2、QH1、QL1、QL2が、V
IN(V1+において印加される)と共通基準電圧(例えば、端子V1-に結合された回路グランドGND)との間に直列結合される。フライコンデンサC1が、スイッチQH2とQH1との間の「ハイサイド(high-side)」ノードN
Hから、スイッチQL1とQL2との間の「ローサイド(low-side)」ノードN
Lに結合される。エネルギー蓄積インダクタLが、最も内側のスイッチのセットQH1とQL1との間のノードL
Xから出力コンデンサC
OUTに結合される。ここでも、出力コンデンサC
OUTの両端の電圧はV
OUTである。いくつかの実施形態では、インダクタLは、コンバータ回路300の集積回路実施形態の外部にあってもよく、そのような場合、ノードL
Xは、コンバータ回路300の出力端子にあると考えられてもよい。
【0036】
図示の例では、コンバータ回路300内にフライコンデンサC1が存在することにより、以下の表1に示すように、それぞれがノードL
Xにおいて3つの「ノード」電圧レベルのうちの1つを発生する4つのスイッチ状態が可能になる。
【表1】
【0037】
図3Bは、
図3Aの回路の時間に応じたノードL
Xにおける電圧レベルを示すグラフである。グラフ線302は、スイッチがGNDと2つのレベル2(すなわち、V
IN/2)スイッチ状態との間でサイクルするときのノードL
Xにおける平均電圧レベルであり、
図2Bのグラフ線202と同じ値を有する。
図3Bを考慮することによって理解できるように、インダクタLは、GND(レベル1)からV
IN/2のみ(レベル2)に進み、GNDに戻る、ノードL
Xにおける電圧レベルのはるかに小さいジャンプを認識する。結果として生じる低減されたインダクタL両端の電圧リップルは、V
OUTを平滑化するためにはるかに少ないフィルタリングを必要とし、FETとして実装される場合に、より小さなスイッチの使用を可能にする。
【0038】
図2Aのコンバータセル102aのトポロジは、一般にバックコンバータとして知られている。
図3Aのコンバータセル102bのトポロジは、一般に「マルチレベルバックコンバータ」、より具体的には3レベルバックコンバータとして知られており、このトポロジは、追加の対の直列スイッチ及び対応するフライコンデンサC2 ... Cn(一般に「C
Fx」)を追加することによって、少なくとも5レベルに拡張されている。
【0039】
コンバータ回路300の表1の電圧レベル2a及び2bの場合と同様に、いくつかのレベルは、ノードL
Xで選択された電圧レベルを生成する複数の方法を有する。これは、選択された特定の状態に基づいて、フライコンデンサC
Fxを充電又は放電することを可能にする。すべてのフライコンデンサC
Fxは、適切な出力レベルを維持するために目標平均電圧を有する。M≧3及びx=1,2,...[M-2]であるMレベルコンバータの場合、フライコンデンサC
Fxの目標電圧は次の通りである:
【数1】
【0040】
単純な比較器型回路であり得る電圧検出器(図示せず)が、フライコンデンサCFxの所望の目標電圧を表す基準電圧VREFに対する対応するフライコンデンサCFxの両端の電圧を感知するために使用され得る。
【0041】
本質的に、マルチレベルコンバータは、チャージポンプ容量性電圧コンバータとインダクタベースの電力コンバータを1つの構造内に組み合わせる。マルチレベルコンバータでは、インダクタLは、フライコンデンサCFx間のすべての電荷を移動させる仮想電流源として機能する。これは、非常に効率的な電荷転送の形態を作り出し、異なる電圧を有するコンデンサが並列に接続されるときに本質的に生じる電荷再分配損失を実質的に軽減又は排除する。
【0042】
上述したように、マルチレベルコンバータの欠点の1つは、フライコンデンサCFxが、エネルギーを出し入れするために出力負荷電流を用いることによって電圧を変化させることしかできないことである。負荷が軽い(例えば、典型的なコンバータの最大電流仕様の絶対値の約10%未満のような、ゼロ又は非常に低い)場合、たとえ電荷バランス回路を備えていても、フライコンデンサCFxは電圧を再バランス又は再調整することができない。平均電圧を維持し、スイッチ上のストレスを回避するために、フライコンデンサCFxの電荷をバランスさせること(Balancing charge)が必要である。この特性は、電源をスイッチングする場合(例えば、あるバッテリから別のバッテリへ、又はバッテリから整流されたAC幹線電源へ)に生じ得るなど、マルチレベルコンバータの入力VINにラインステップがある場合、特に問題となる。VINが突然変化する場合、負荷電流が十分に長い期間存在するまで、フライコンデンサCFxはそれぞれの電圧を再調整することができない。
【0043】
例えば、VINが急速に上昇するとき、VINを基準にするすべての状態も一般に同じ量だけ上昇する(例えば、表1では、電圧レベル2a及び3は両方ともVINを基準にする)。すべての中間電圧レベル(電圧レベル1及び最高電圧レベル以外のすべてのレベル)について、すべてのグランド基準状態はVIN変化前と同じ電圧に留まり、VINを基準にするすべての状態はVIN変化の全量を上昇させる。定常状態の解決策は、フライコンデンサCFxがそれぞれの目標電圧に達するように、グランド基準状態が上昇し、VIN基準状態が下降することを必要とする。表1の例では、電圧レベル2aについて、フライコンデンサC1の両端の電圧は、VINの増加に基づいて新しいVIN/2値に安定する(settle)必要がある。この安定化させること(settling)(電荷バランスさせること)を可能にするために、コンバータの出力電流は、それぞれの目標電圧が達成されるように、フライコンデンサCFxを充電又は放電するために使用される。しかしながら、出力電流が0又は非常に低い場合、電荷バランスさせることが起こるとしても非常に遅く、コンバータの目標出力電圧VOUTの調整を困難又は不可能にする。
【0044】
従来のバランス回路は、フライコンデンサCFxを再バランスさせることができるが、エネルギーを捨てることによってのみであることが知られている:これらは、追加の電流経路(電流源、抵抗器など)を追加して、フライコンデンサからエネルギーを追加又は除去するが、これは、バランスさせるタスクを達成する一方で、非常にエネルギーを浪費する。さらに、追加の電流経路は、フライコンデンサを迅速に再バランスさせるために大量の電流を供給する必要がある。
【0045】
本発明は、軽負荷状態で大きな出力電流リップルを引き起こし得るマルチレベルコンバータの制御ループ内のリップル信号を生成することによって、マルチレベルコンバータの軽負荷問題をエネルギー効率の良い方法で解決する回路及び方法を包含する。この追加された電流リップルは、平均出力電流を変更しないが、マルチレベルコンバータのフライコンデンサをバランスさせ、充電/放電するために使用することができる一時的な正及び負の電流を生成する。代替のエネルギー効率の良いアプローチは、出力リップル電流がゼロに近いか又はゼロと交差するときに、フライコンデンサのための追加のスイッチングサイクルを追加することである。
【0046】
Mレベルコンバータセルの例示的な制御回路
【0047】
図4は、インダクタL及び出力コンデンサC
OUT(概念的には、インダクタLは、Mレベルコンバータセル401内に含まれるものと考えることもできる)を有する出力ブロック403に結合されたMレベルコンバータセル401のための制御回路400の一実施形態のブロック図である。この例示的な制御回路400は、本発明の譲受人に譲渡された、2021年11月8日出願され、「Controlling Charge-Balance and Transients in a Multi-Level Power Converter」[代理人整理番号PER-370-PROV]と題する米国特許出願第63276923号に記載された教示に従い、その内容は参照により援用される。しかしながら、本発明は、Mレベルコンバータセル401のための他のタイプの制御回路と組み合わせて使用され得る。
【0048】
制御回路400は、Mレベルコンバータセル401の出力及びMレベルコンバータセル401のスイッチ制御入力に結合された制御ループとして機能する。一般に、制御回路400は、Mレベルコンバータセル401の出力(例えば、電圧及び/又は電流)を監視し、VIN及び出力負荷の変動を考慮して、出力電圧及び/又は電流を特定の値に安定させようと試みるMレベルコンバータセル401へのスイッチ制御入力のセットを動的に生成するように構成される。代替実施形態では、制御回路400は、Mレベルコンバータセル401の入力(例えば、電圧及び/又は電流)及び/又はMレベルコンバータセル401の内部ノード(例えば、1つ以上のフライコンデンサの両端の電圧又は1つ以上のパワースイッチを通る電流)を監視するように構成され得る。したがって、最も一般的には、制御回路400は、Mレベルコンバータセル401のノード(例えば、入力端子、内部ノード、出力端子)の電圧及び/又は電流を監視するように構成され得る。制御回路400は、Mレベルコンバータセル401を具体化する電力コンバータ100の全体的なコントローラ104に組み込まれてもよいし、それとは別に構成されてもよい。
【0049】
第1のブロックが、フィードバックコントローラ402を含み、このフィードバックコントローラは、固定周波数電圧モード又は電流モードコントローラ、一定オン時間コントローラ、ヒステリシスコントローラ、又は他の任意の変形などの従来のコントローラであり得る。フィードバックコントローラ402は、Mレベルコンバータセル401からVOUTに結合されるように示されている。代替実施形態では、フィードバックコントローラ402は、Mレベルコンバータセル401の入力及び/又はMレベルコンバータセル401の内部ノードを監視するように構成され得る。フィードバックコントローラ402は、VOUTの電圧を直接的又は間接的に示す信号を生成し、この信号は、一般的に言えば、VOUTの所望の値を維持するためにMレベルコンバータセル401において行う必要があること:充電、放電、又はトライステート(すなわち、電流が流れない、開)を決定する。
【0050】
図示の例では、フィードバックコントローラ402は、フィードバック回路404、補償回路406、及びPWM発生器408を含む。フィードバック回路404は、例えば、VOUT(又はVOUTの減衰バージョン)を所望のVOUT目標電圧(動的であり得る)を表す基準電圧と比較し、VOUTが目標電圧より上か下かを示すために制御信号VCOMPを出力するフィードバックループ電圧検出器を含み得る。フィードバックループ電圧検出器は、演算増幅器(オペアンプ)又はトランスコンダクタンス増幅器(gm増幅器)などの比較装置405を用いて実装され得る。
【0051】
補償回路406は、発振を引き起こす可能性のある正のフィードバックの意図しない生成を回避し、フィードバックコントローラ402のステップ応答におけるオーバーシュート及びリンギングを制御することによって、フィードバックコントローラ402の閉ループ応答を安定化させるように構成される。補償回路406は、既知の方法で実装することができ、LC及び/又はRC回路を含み得る。PWM発生器408は、Mレベルコンバータセル401のスイッチのデューティサイクルを最終的に設定する実際のPWM制御信号を生成する。
【0052】
いくつかの実施形態では、PWM発生器408は、例えば、VOUTと基準電圧と401の間の差の大きさ(例えば、より高いレベル又はより低いレベルに到達するために、Mレベルコンバータセル401のいくつかのレベルがバイパスされるべきであることを示す)、及びその差の方向(例えば、VOUTが基準電圧より大きい又は小さい)を示す追加のオプションの制御信号CTRLを通過させ得る。他の実施形態では、オプションの制御信号CTRLは、補償回路406の出力から、又はフィードバック回路404の出力から、又は例えばVOUTに結合された別個の比較器(図示せず)から導出されることができる。オプションの制御信号CTRLの1つの目的は、VOUTが目標出力電圧からどの程度離れているかを知ることが有益であり得る場合の、高度な制御アルゴリズムのためであり、したがって、VOUTが著しく過小に調整されている場合に、インダクタLのより速い充電を可能にすることである。
【0053】
第2のブロックは、Mレベルコントローラ410を含み、その主な機能は、過去にどのようなスイッチ状態が使用されたかにかかわらず、出力電圧レベルが選択されるたびに、Mレベルコンバータセル401内のフライコンデンサの電荷バランス状態(charge-balance state)を維持しながら、所望のVOUTを生成するスイッチ状態を選択することである。
【0054】
Mレベルコントローラ410は、PWM制御信号及び可能であれば追加の制御信号CTRLを受信する電圧レベルセレクタ412を含む。さらに、電圧レベルセレクタ412は、VOUT及び/又はVINに結合され、一部の実施形態では、Mレベルコンバータセル401内の対応するフライコンデンサCFxに結合された電圧検出器からのHIGH/LOW状態信号CFx_H/Lに結合され得る。電圧レベルセレクタ412の機能は、受信信号を目標出力電圧レベル(例えばサイクルごとに)に変換することである。電圧レベルセレクタ412は、通常、少なくともVOUT及びVINを考慮して、どのターゲットレベルがMレベルコンバータセル401の出力を所望のレートで充電又は放電すべきかを決定する。
【0055】
電圧レベルセレクタ412の出力は、Mレベルスイッチ状態セレクタ414に結合され、これは、一般に、フライコンデンサCFxのコンデンサ電圧検出器からのステータス信号CFx_H/Lに結合される。電圧レベルセレクタ412によって生成されたターゲットレベルを考慮して、Mレベルスイッチ状態セレクタ414は、所望の出力レベルに対するどのスイッチ状態がコンデンサの電荷バランスにとって最適であるべきかを決定する。Mレベルスイッチ状態セレクタ414は、例えば、ルックアップテーブル(LUT)として、又は比較回路及び組合せ論理又はより一般化されたプロセッサ回路として実装され得る。Mレベルスイッチ状態セレクタ414の出力は、Mレベルコンバータセル401のスイッチに結合され(特定のコンバータセルに必要な場合、適切なレベルシフタ回路及びドライバ回路を介して)、Mレベルスイッチ状態セレクタ414(選択された目標レベルに対応するMレベルコンバータセル401内のスイッチの構成を選択する)によって決定されたスイッチ状態設定を含む。
【0056】
一般に(しかし、常にではない)、電圧レベルセレクタ412及びMレベルスイッチ状態セレクタ414は、PWM信号が変化したときにのみ、その状態を変化させる。例えば、PWM信号がハイになると、電圧レベルセレクタ412は、どのレベルがインダクタLの充電をもたらすかを選択し、Mレベルスイッチ状態セレクタ414は、そのレベルのどのバージョンを使用するかを設定する。次に、PWM信号がローになると、電圧レベルセレクタ412は、どのレベルがインダクタLを放電すべきかを選択し、Mレベルスイッチ状態セレクタ414は、そのレベルのどのバージョンを使用するかを設定する。したがって、電圧レベルセレクタ412及びMレベルスイッチ状態セレクタ414は、一般に、PWM信号が変化したときにのみ、状態を変化させる(PWM信号は、事実上、クロック信号である)。しかしながら、CTRL信号が電圧レベルセレクタ412の状態を変化させることが望ましい状況又は事象があり得る。さらに、重大な中間サイクルアンバランスが発生するときなど、Mレベルコンバータセル401内のフライコンデンサCFxに結合された電圧検出器からのCFx_H/L状態信号(複数可)が、Mレベルスイッチ状態セレクタ414に電力スイッチ設定の特定の構成を選択させることが望ましい状況又は事象があり得る。いくつかの実施形態では、例えば、電荷アンバランスを潜在的に引き起こす、非常に長い間1つのレベルで「スタック」することを回避するために、Mレベルスイッチ状態セレクタ414に状態の最適なバージョンを定期的に再評価させるタイミング機能(timing function)を含めることが有用であり得る。
【0057】
上述の「Controlling Charge-Balance and Transients in a Multi-Level Power Converter」と題する特許出願に記載された教示を利用する実施形態では、Mレベルコントローラ410は、過去にどのようなスイッチ状態又は状態が使用されたかにかかわらず、LXノードでの電圧レベルが選択されるたびに、フライコンデンサCFxを電荷バランス状態に向けて移動させる本質的に最適なスイッチ状態を選択するMレベルコンバータセル401のための制御方法を実施する。したがって、このようなマルチレベルコンバータ回路は、以前のスイッチ状態又はスイッチ状態のシーケンスを追跡し続ける必要なしに、スイッチングサイクルごとに異なるスイッチ状態又はLX電圧レベルを自由に選択できる。
【0058】
図4に示す制御回路の1つの注目すべき利点は、従来のマルチレベルDC-DCコンバータ回路では達成不可能な出力電圧を表す電圧レベル間の境界ゾーンにおける電圧の生成を可能にすることである。
【0059】
制御されていないチャージポンプの代替的な実施形態では、フィードバックコントローラ402及び電圧レベルセレクタ412は省略されてもよく、代わりにクロック信号CLKがMレベルスイッチ状態セレクタ414に印加され得る。Mレベルスイッチ状態セレクタ414は、過去にどのようなスイッチ状態が使用されたかにかかわらず、フライコンデンサCFxを周期的に電荷バランスさせるスイッチ状態設定のパターンを生成する(事前に定義された状態のシーケンスを循環するのとは対照的に)。これは、VINの変化又は異常事象が発生した場合、システムは概して常にフライコンデンサCFxの電荷バランスを求めることを確実にする。
【0060】
いくつかの実施形態では、Mレベルスイッチ状態セレクタ414は、従来の方法で実装され得るオプションの電流測定入力416を介してインダクタLを流れる電流ILを考慮に入れることができる。
【0061】
図4は、本発明に従って変更されたMレベルコンバータセル用の制御回路の特定の実施形態を示しているが、他の制御回路が、コンバータセル内のスイッチに適切なスイッチング信号を提供するように適合又は工夫され得ることが理解されるべきである。
【0062】
第1の実施形態
【0063】
本発明に従って、
図4の制御回路と同一又は類似の制御回路が、マルチレベルコンバータの軽負荷問題を解決するために変更され得る。
図5は、可能な変更点を示すMレベルコンバータセル401用の制御回路の一実施形態のブロック
図500である。特に、「リップル」発生器回路が、いくつかの挿入ノードのうちの1つで制御フィードバックループに挿入され得、サブハーモニック信号を注入するように構成され得る。リップル発生器回路の詳細は、挿入ノードごとに多少異なり得るが、各場合の機能は、軽負荷状態が発生したときに、マルチレベルコンバータのインダクタLにサブハーモニックリップルを誘発することである。サブハーモニックリップルは、インダクタLを通る平均出力電流を変化させないが、フライコンデンサC
Fxをバランスさせ、充電/放電するために使用されることができる一時的な正及び負の電流を生成する。
【0064】
サブハーモニック信号の注入は、複数の挿入ノードのいずれにおいても発生し得、各挿入ノードは、異なる利点及び欠点を提供する。サブハーモニック信号は、印加された信号の平均電圧が0である限り、例えば、方形波、正弦波、三角波(のこぎり波)などのAC波形であり得る。いくつかの実施形態において、サブハーモニック信号は、デジタル波形(例えばPWM信号)のタイミングを変更することによって注入され得る。
【0065】
一例として、
図5は、4つの挿入ノードA、B、C、及びDを示しており、ここでは、サブハーモニック信号の注入が有益であり得る。
【0066】
挿入ノードA1:挿入ノードA1にサブハーモニック信号を注入すること、したがって、VOUTから比較装置405の入力へのフィードバック信号を変調することは、実装が比較的簡単である。挿入ノードA1にサブハーモニック信号を注入することの欠点は、注入されたサブハーモニック信号もフィルタリングされ、結果として生じる振幅の制御がより困難になるので、注入された信号が補償回路406によって影響を受ける可能性があることである。例えば、注入された信号が1VのAC正弦波である場合、補償回路406のフィルタリング動作は、注入された信号の有効振幅を減少させる。別の例として、注入された信号が方形波である場合、補償回路406のローパスフィルタリング動作は、注入された信号をより正弦波に見えるようにする可能性がある。
【0067】
挿入ノードA2:比較装置405の基準側である挿入ノードA2にサブハーモニック信号を注入することは、挿入ノードA1に注入することと同じ利点及び欠点を有する。
【0068】
挿入ノードB:比較装置405の出力である挿入ノードBにサブハーモニック信号を注入することは、出力に注入することが入力に注入することと同じであり、比較装置405の利得で除算されるだけであるため、挿入ノードA1又はA2に注入することと同じ利点及び欠点を有する。
【0069】
挿入ノードC:補償回路406の後に挿入ノードCにサブハーモニック信号を注入することは、非常に効果的であることができる。電流モード制御の実施形態では、サブハーモニック信号が代わりに電流感知回路(通常はPWM発生器408の一部)に注入されて、同じ効果を得ることができる。
【0070】
挿入ノードD:PWM信号が生成されると、サブハーモニック信号が、PWM波形の立ち上がり及び/又は立ち下がりエッジに可変遅延を追加するようにPWMデューティサイクルを変調することによって、挿入ノードDに注入されることができる。例えば、表1を参照すると、特定のコンバータセルサイクルでは、デューティサイクルがレベル2aに対して60%であり、レベル1aに対して40%である場合、サブハーモニック発生器は、レベル2aのデューティサイクルの立ち下がりエッジを遅延させて、比率があるサイクルでは65%から35%になり、次のサイクルでは55%から45%になるようにし、それにより、選択された60%から40%の比率を平均して維持することができる。
【0071】
挿入ノードA1、A2、B、C、及びDのそれぞれについて、注入されたサブハーモニック信号は、Mレベルコンバータセル401のスイッチング状態の持続時間(デューティサイクル)を制御するPWM信号の変化を引き起こす。認識されるように、印加された信号の平均電圧がゼロであり、その結果、軽負荷状態が発生したときにインダクタLにサブハーモニックリップルを誘発する限り、他の挿入ノード及びサブハーモニック信号波形を注入する方法が存在してもよい。
【0072】
注入されたサブハーモニック信号は、Mレベルコンバータセル401のスイッチ(例えば、
図3AのスイッチQH2、QH1、QL1、QL2)のスイッチング周波数の約1/2であり得る。これは、最小のループ干渉及び最小の出力リップル劣化をもたらす。さらに低いサブハーモニック周波数は、フライコンデンサC
Fxを充電及び放電する複数の後続サイクルを維持することによって、充電/放電電流を増加させることを容易にする。しかし、そのような低いサブハーモニック周波数は、より多くのシステムに増加した出力電流及び電圧リップルのような副作用を引き起こす可能性がある。
【0073】
図6は、第1の負荷条件のセットの下での時間に応じた3レベルコンバータのインダクタを通る電流のグラフ600である。3レベルコンバータは、例えば、
図3Aに示すコンバータと同様であるが、適切な挿入ノードで選択的に注入可能なサブハーモニック信号を有する、
図5に示すような制御回路を備え得る。
【0074】
図示の例では、3レベルコンバータのインダクタLを通る平均電流は、時間T1まで約8アンペアである。インダクタ電流が高い場合、フライコンデンサCFxの電圧を充電/放電して再バランスさせるのに十分な電流がある。しかしながら、時間T1において、平均インダクタ電流は、軽減された負荷のために減少する(T1とT2の間の時間として示される)。平均インダクタ電流は、フライコンデンサCFxを再バランスさせるのに十分な電流がない場合、約0アンペアに近づき得る又は達し得る(T2とT3の間の時間として示される)。
【0075】
時間T2とT3の間で、フライコンデンサCFxに十分な残留電圧があり、それらがそれぞれの目標電圧以上である場合、コンバータの制御回路にサブハーモニック信号を注入する必要はない。しかしながら、その残留電圧が、時間T3における軽負荷状態下など、それぞれの目標電圧を一旦下回ると、フライコンデンサCFxは、負荷電流が十分に長い期間存在するまで、ラインステップに応答するようにそれぞれの電圧を再調整することができない。従って、コンバータのインダクタLを通る平均電流が約0アンペアに近づく又は約0アンペアに達し、フライコンデンサCFxがバランスを失う場合、関連する制御回路は、フライコンデンサCFxをバランスさせるのを助けるためにサブハーモニック信号の注入(ここでは、時間T3で開始するように示される)を強制する。この注入されたサブハーモニックリップルは、Mレベルコンバータセル401のスイッチング状態のデューティサイクルを変更する。
【0076】
図6に示される例において、表1を参照すると、特定のV
OUTに対して、3レベルコンバータは、0VのL
X電圧を有する電圧レベル1(L1)と、V
IN/2のL
X電圧を有する電圧レベル2a又は2b(2L)との間で交互になる。完全サイクル(CyX)は、L1で費やされるある量の時間と、L2で費やされるある量の時間とから成る。図示の例では、完全サイクルCy1では、電圧レベルL2デューティサイクルは増加し、電圧レベルL1デューティサイクルは減少する。完全サイクルのL2デューティサイクルが長いほど、インダクタLをより多く充電し、インダクタ電流を増加させて、次の完全サイクルCy2で正になる(この例では約1.5A)。逆に、完全サイクルCy2では、電圧レベルL1デューティサイクルが増加し、電圧レベルL2デューティサイクルが減少する。完全サイクルのL1デューティサイクルが長いほど、インダクタLをより多く放電し、インダクタ電流を減少させて、次の完全サイクルCy3で負になる(この例では約-0.5A)。完全サイクルCy3では、L2デューティサイクルが再び増加し、L1デューティサイクルが再び減少し、これは、次の完全サイクルCy4でインダクタLの平均電流が正にする。同様に、完全サイクルCy4では、L2デューティサイクルが再び減少し、L1デューティサイクルが再び増加し、これは次の完全サイクル(図示せず)でインダクタLの平均電流を負にする。
【0077】
重要なことに、サブハーモニック信号の注入から生じる正及び負の偏位は、フライコンデンサCFx電圧が既知の方法で再バランス回路(図示せず)によってバランスされることを可能にするのに十分である。
【0078】
このプロセスは、制御回路がインダクタLを通る平均電流が負であるか正であるかを考慮する必要があることに留意されたい。負の平均電流は、Mレベルコンバータセル401内のスイッチの必要な状態を反転させることを必要とし;したがって、負の電流が存在する場合、通常は充電状態にあるスイッチは放電状態に設定されるべきである(
図8に関する以下の説明も参照)。
【0079】
いくつかの実施形態では、インダクタLを通る平均電流が約0アンペアである場合にのみ、サブハーモニック信号を注入することが有用であり得る。他の実施形態では、インダクタLを通る平均電流の絶対値の関数として、サブハーモニック信号の注入の程度をスケーリングすることが有用であり得る。このアプローチは、より滑らかな遷移を可能にし、システム応答に問題を生じ得る突然のモード変化を回避する。サブハーモニック信号のスケーリングされた注入は、ターゲット電流が容易に入手できる電流モード制御システムにおいて比較的容易に実施することができる。スケーリングされた注入サブハーモニック信号は、振幅においてスケーリングされてもよく、又は注入のデューティサイクル(すなわち、注入されたサブハーモニック信号の平均量を得るために、ある期間のフルスケール注入及びその後のある期間のオフ)を変更することによってスケーリングされてもよく、又はこれら2つの方法の何らかの組み合わせによってスケーリングされてもよい。
【0080】
例えば、
図7は、第2の負荷条件のセットの下での時間に応じた3レベルコンバータのインダクタを通る電流のグラフ700である。3レベルコンバータは、例えば、
図3Aに示されたコンバータと同様であり得る、適切な挿入ノードで選択的に注入可能なサブハーモニック信号を有する
図5に示されたような制御回路を備え得る。
【0081】
図示の例では、3レベルコンバータのインダクタLを通る平均電流は、時間T1まで約8アンペアである。時間T1において、出力負荷は低下し、平均インダクタ電流は減少し(T1とT2の間の時間として示される)、0アンペアに近づき得る(T2とT3の間の時間として示される)。図示の例では、時間T1とT2の間のインダクタLを通る平均電流は、約1.1Aである。したがって、何らかの電荷バランスが生じることを可能にするために、利用可能な最大量よりもある程度少ないサブハーモニック信号を注入することを開始することが有用であり得る。絶対平均電流が低下し続ける場合(例えば、時間T3の後に示されるように)、注入されるサブハーモニック信号の量は、利用可能な最大量まで増加し得る。
【0082】
いくつかの実施形態の実施において、マルチレベルコントローラは、現在のサブハーモニック注入サイクルが正又は負の平均電流をもたらすかどうかを予測する必要がある。負の平均電流の場合、コントローラは、フライコンデンサ(複数可)C
Fxを充電及び放電するスイッチ状態の定義(definitions)を逆にする必要がある。例えば、上記の
図3A及び表1を参照すると、電圧レベル2aは、通常、スイッチQH2、フライコンデンサC1、及びスイッチQL1を通ってV
INをインダクタL1に結合する充電状態であると考えられる。逆に、電圧レベル2bは、通常、回路グランドをスイッチQL2、フライコンデンサC1、及びスイッチQH1を通ってインダクタL1に結合する放電状態であると考えられる。しかしながら、これらの状態指示は、インダクタLを通る平均正電流フローを前提としている。インダクタLを通る平均電流フローが負の場合、電圧レベル2aは、インダクタLからV
IN端子に電流が流れる放電状態であると考えられ、電圧レベル2bは、インダクタLから回路グランドに電流が流れる充電状態であると考えられる。より一般的には、平均電流が負の場合、通常、充電するように設定されたスイッチ状態を有するフライコンデンサC
Fxは、代わりにそのスイッチ状態を相補的な設定に逆転し、通常、放電するように設定されたスイッチ状態を有するフライコンデンサC
Fxは、代わりにそのスイッチ状態を相補的な設定に逆転する。
【0083】
図8は、インダクタを通る負の電流フローをもたらし得る条件下での時間に応じたマルチレベルコンバータのインダクタを通る電流のグラフ800である。グラフ800は、測定によって決定されることができる開始電流と、サブハーモニック信号の注入を考慮して制御回路400によって決定される目標電流とを有するサブハーモニック注入サイクルを示す。サブハーモニック注入サイクルが正又は負の平均電流をもたらすかどうかを予測する方法は、コンバータコントローラの種類に依存し得る。
【0084】
固定周波数ピーク電流モードコントローラの場合、各サイクルにおいて、立ち上がりエッジ(すなわち、図示の例における時間T1とT2との間)について、立ち上がりエッジの最初の電流(例えば、時間T1における)が測定される。立ち上がりエッジの最後の電流(例えば、時間T2における)は、比較装置405によって出力される電圧V
COMPから容易に推定され得る(
図4参照)。V
COMPの値は、目標電流に比例し、したがって、最終的な出力電流が何であるべきかを決定することができる-本質的に、V
COMP電圧は、出力電流を予測する代理として使用される。次に、これら2つの値の平均が計算される。計算された平均電流が負の場合、コントローラは、上記のように、フライコンデンサ(複数可)C
Fxを充電及び放電するスイッチ状態の定義を逆にする必要がある。立ち下がりエッジ(すなわち、図示の例における時間T2とT3との間)については、立ち下がりエッジの開始における(例えば、時間T2における)電流が測定され、固定周波数サイクルにどれだけの時間が残っているかとインダクタLのインダクタンス及び電圧を知ることによって終点電流(例えば、時間T3における)が推定される。次に、これら2つの値の平均が計算される。ここでも、計算された平均電流が負の場合、コントローラは、上記のように、フライコンデンサ(複数可)C
Fxを充電及び放電するスイッチ状態の定義を逆にする必要がある。
【0085】
固定周波数電圧モードコントローラの場合、各サイクルにおいて、立ち上がりエッジ(すなわち、図示の例における時間T1とT2との間)について、立ち上がりエッジ(例えば、時間T1における)の開始時の電流が測定される。時間T2に到達するために必要な時間は既知である-これはCOMP電圧が設定するものである。インダクタLのインダクタンス及び両端の電圧は、立ち上がりエッジの終了時の(例えば、時間T2における)最終電流を計算するために使用され得る。次に、これら2つの値の平均が計算される。計算された平均電流が負の場合、コントローラは、上記のように、フライコンデンサ(複数可)CFxを充電及び放電するスイッチ状態の定義を逆にする必要がある。立ち下がりエッジ(すなわち、図示の例における時間T2とT3との間)については、立ち下がりエッジの開始時の(例えば、時間T2における)電流が測定され、固定周波数サイクルにどれだけの時間がのこっているかとインダクタLのインダクタンス及び両端の電圧を知ることによって終点電流(例えば、時間T3における)が推定される。次に、これら2つの値の平均が計算される。ここでも、計算された平均電流が負である場合、コントローラは、上述のように、フライコンデンサ(複数可)CFxを充電及び放電するスイッチ状態の定義を逆にする必要がある。
【0086】
第2の実施形態
【0087】
マルチレベルコンバータの制御ループフィードバック経路にサブハーモニック信号を注入することの代替として、インダクタLを通る電流をリアルタイムで感知し、追加のスイッチングサイクルを追加することによって、同じ結果を達成することができる(インダクタLを通って流れる電流は、コンバータ内の複数の経路で感知できることに留意されたい)。必要とされるのは、いつインダクタLを通る電流が負から正へ(正の遷移)又は正から負へ(負の遷移)からゼロ(すなわち、有意に正でも負でもない)に近づくか又は交差するかを感知し、Mレベルスイッチ状態セレクタ414(
図5参照)をフライコンデンサC
Fxの充電/放電状態を切り替えるように再プログラミングすることだけである。別の言い方をすると、フライコンデンサの電圧を目標値に向けて動かす結果となるゼロに近い電流レベルで、追加のスイッチングサイクルが追加される。
【0088】
図9Aは、時間に応じたマルチレベルコンバータのインダクタLを通る電流のグラフ900であり、軽負荷回復を改善するためのスイッチングサイクルの追加を示す。円902の例の変曲点のような負から正への遷移は、インダクタLへの充電電流フローの開始を示す。円904の例の変曲点のような正から負への遷移は、インダクタLからの放電電流フローの開始を示す。
【0089】
「追加されたサイクル」の実施形態では、出力負荷が低下すると、追加のインダクタ充電サイクル又は放電サイクルが追加される。例えば、
図9Aの時間T1では、条件は追加のサイクルを追加するのに適している。従って、円906及び908の例のゼロクロス点(zero-crossing points)のようなゼロクロス点では、その時点での(then-current)充電サイクルの状態が逆転される。例えば、ゼロクロス点906において、電流が逆転したときに、その時点での放電サイクルのスイッチ状態はフライコンデンサの放電又は放電を維持するために逆転される。別の例として、ゼロクロス点908において、その時点での電流充電サイクルのスイッチ状態は、追加の放電サイクルを提供するために逆転される。追加された充電/放電サイクルの数及び間隔は、マルチレベルコンバータの特定の状態に必要な軽負荷回復の程度をスケーリングするために、必要に応じて調整され得る。
【0090】
図9Bは、時間委応じた3レベルマルチレベルコンバータの特定のフライコンデンサCの電圧のグラフである。フライコンデンサCの目標電圧は5Vであってもよいが、時間T1(
図9Aの時間T1に対応する)において、フライコンデンサCの両端の電圧は、例えば、わずか4.8Vであってもよい。時間T1においてコンバータに対して選択されたレベルは、インダクタLを放電するように設定され、スイッチ状態は、フライコンデンサCを充電するように選択される。しかしながら、ゼロクロス点906において、インダクタ電流が逆転すると、その時点でのインダクタ放電サイクルのスイッチ状態は逆転される(反転される)。これにより、出力レベルを維持する一方で、フライコンデンサCが逆転した電流フローで充電し続けることを可能にする。スイッチ状態がレベル3又はレベル2bに設定されると、インダクタLを放電することができるが、レベル2bのみがインダクタ放電サイクル中にフライコンデンサCを充電できることに留意されたい。この例では、グラフ線920が示すように、フライコンデンサCは時間T1とT2の間に約4.9Vに充電される。
【0091】
図9Bの時間T2では、フライコンデンサCの両端の電圧はまだ5Vの目標を下回っているため、ゼロクロス点908において、その時点でのインダクタ充電サイクルのスイッチ状態が反転されて、さらに別のコンデンサ充電サイクルが提供される-スイッチ状態がレベル1又はレベル2aに設定されると、インダクタLを充電することができるが、レベル2aのみがインダクタ充電サイクル中にフライコンデンサCを充電できることに留意されたい。この例では、グラフ線920が示すように、フライコンデンサCは時間T2とT3の間に約5Vに充電される。追加のコンデンサ充電サイクルがない場合、グラフ線922に示すように、フライコンデンサCの電荷は減少する。
【0092】
「追加されたサイクル」実施形態の利点は、リップル発生器回路の必要性がないこと、実装が容易であること、負荷がゼロのときにスイッチングが行われるため追加の遷移損失がないこと、及び十分に大きなインダクタリップルが存在する場合にフライコンデンサCFxの高速再バランスが可能であることを含む。一部の実施形態では、必要な場合にのみサイクルが追加され得る。例えば、フライコンデンサCFxが目標電圧から十分にアンバランスである場合にのみ、追加のサイクルが追加され得、したがって、コンデンサCFxが許容範囲内にある場合には、追加のサイクルを回避する。したがって、例えば、ゼロクロス点910では、追加の放電サイクルが必要とされなくてよい。別の例として、コントローラは、サイクルが十分に長い場合に、充電サイクル及び/又は放電サイクルを実行することのみを決定し得る。いくつかのシナリオでは、充電/放電サイクルは、最小オフ時間のように非常に短く、「追加サイクル」プロセスは、ほとんど利益をもたらさない。
【0093】
「追加サイクル」技術は、サブハーモニック信号生成のための回路を含むマルチレベルコンバータで使用され得る。例えば、それぞれの目標電圧に対するフライコンデンサCFxの電圧のわずかなについては、高速であり、コントローラループへの影響が少ないため、追加サイクル技術を使用することが有用であり得る。フライコンデンサCFxの電圧のより大きな偏位については、サブハーモニック信号発生器を使用することがより効率的であり得る。場合によっては、追加サイクル技術とサブハーモニック信号発生器の両方を同時に使用することが有用であり得る-サブハーモニック信号は電流をより大きく増加させることができ、追加サイクル(ゼロクロス)技術を使用して、フライコンデンサを流れるすべての電流が充電又は放電に使用されることを確実にすることができる。
【0094】
サブハーモニック信号発生回路の例
【0095】
図10は、サブハーモニック信号発生回路1000の一実施形態の概略図である。図示されたサブハーモニック信号発生回路1000は、例えば、
図5に示す制御回路の挿入ノードA1、A2、B、又はCのいずれかで使用され得る。電流源I1、I2の間の一対の抵抗R1、R2は、入力信号V
INに対してそれぞれ正及び負のI×R電圧降下を与え、V
INに等しい平均電圧を有する時変出力信号V
OUTを生成する。例示的な実施形態では、電流源I1、I2は約10μAの電流を供給し得、抵抗R1、R2はそれぞれ約1KΩの値を有する。
【0096】
第1のMOSFET M1は、抵抗R1と並列に結合され、そのゲートはサブハーモニック周波数(例えば、関連するコンバータセル内のスイッチのスイッチング周波数の1/2)によって変調される。同様に、第2のMOSFET M2は、抵抗R2と並列に結合され、そのゲートはサブハーモニック周波数によって変調される。図示の例では、サブハーモニック周波数は、相補的な方形波の形でMOSFET M1及びM2のゲートに印加される。したがって、オン状態のMOSFET M1は、その方形波の半サイクルごとに正のオフセット電圧VIN+I×R1をVOUTに結合し、一方、オン状態のMOSFET M2は、その方形波の半サイクルごとに負のオフセット電圧VIN-I×R2をVOUTに結合する。したがって、出力電圧VOUTは、(1)VIN+I×R1と(2)VIN-I×R2との間で周期的に変化し、VINに平均化される。
【0097】
図11は、サブハーモニックPWMエッジ遅延回路1100の一実施形態の概略図である。PWM信号PWM
INが、マルチプレクサ1102の第1入力S1、ORゲート1104の第1入力、遅延回路1106の入力、及び従来のSRフリップフロップ1108のクロック入力に印加されるように示されている。遅延回路1106の出力は、ORゲート1104の第2入力に結合される。ORゲート1104の出力は、マルチプレクサ1102の第2入力S2に結合される。SRフリップフロップ1108のQ出力は、マルチプレクサ1102の選択入力Cに結合される。SRフリップフロップ1108のQ-BAR出力は、SRフリップフロップ1108の設定入力Sに結合される。マルチプレクサ1102の出力Dは、入力信号PWM
INのエッジ遅延バージョンPWM
OUTである。
【0098】
動作中、PWMINが0(ロー)から1(ハイ)に遷移すると、SRフリップフロップ1108は、その出力状態をトグルする(すなわち、SRフリップフロップ1108は、PWMIN遷移の正方向エッジによってトリガされる)。PWMIN信号の最初の(例えば、奇数)正のパルスが、SRフリップフロップ1108のQ出力をローにすると仮定する。したがって、最初のPWMINパルスに対して、マルチプレクサ1102は、最初の入力S1を選択し、マルチプレクサ1102の出力Dは、修正されていない正のPWMINパルスとなる。PWMIN信号の2番目の(例えば、even)正のパルスは、SRフリップフロップ1108をトグルさせ、SRフリップフロップ1108のQ出力をハイにする。したがって、2番目のPWMINパルスに対して、マルチプレクサ1102は2番目の入力S2を選択し、マルチプレクサ1102の出力Dは、遅延回路1106を介してPWMINの遅延バージョンでORすることによって長く引き伸ばされた正のPWMINパルスとなる。したがって、SRフリップフロップ1108は、PWMOUT信号として、通常のPWMINパルス又は引き伸ばされた正のパルスのいずれかを代わりに選択する。
【0099】
追加の制御及び動作上の考慮事項
【0100】
電力変換器、特にマルチレベル電力変換器において、電力スイッチは、FET、特にMOSFETを用いて実装され得る。各電力FETに対して、ドライバ回路が一般に必要とされる。さらに、一部の電力FETに対して、アナログ又はデジタルコントローラからのグランド基準低電圧論理オン/オフ信号を、電力FETのゲートを充電又は放電し、それによって電力FETの導通又は遮断状態を制御するために、信号が駆動している電力FETのソース電圧を参照しているが、同じ電圧スイングを有する信号に変換するためにレベルシフタが必要とされることがある。いくつかの用途では、レベルシフタ及びドライバ回路の機能は1つの回路に組み込まれてもよい。
【0101】
本開示に従って設計されたマルチレベルコンバータセルを利用する電力コンバータの信頼性が高く効率的な動作を可能にする追加の制御及び動作回路(又は1つ以上のシャットダウン手順)を提供することが望ましい場合がある。例えば、降圧電力コンバータでは、コンバータセルの出力電圧はコンバータセルの入力電圧よりも低い。出力負荷電流がゼロでない間に、出力に接続された設計上のインダクタンスを有するコンバータセルをシャットダウン又は無効にする(例えば、ショートなどの障害イベントのために)ことは、一般に、インダクタ電流を放電するための何らかの手段を必要とする。いくつかの実施形態では、バイパススイッチが、コンバータセルの出力に接続された設計上のインダクタンスと並列に接続され、通常動作時には開き、コンバータセルをシャットダウンするとき又は障害イベントが発生した場合には閉じるように制御され得る。理想的には、過渡的なリンギングを防止し、インダクタ電流の安全な放電を提供するために、コンバータセルのスイッチングを無効にする前にバイパススイッチを閉じることができる。コンバータのメインスイッチにMOSFETを使用する代替実施形態では、各MOSFETのボディ端子とドレイン端子との間に接続された固有のボディダイオードも、インダクタ電流を放電することができる。これらの解決策、並びに代替のシャットダウン解決策の詳細は、2020年6月16日に発行され、本発明の譲受人に譲渡された「Apparatus and Method for Efficient Shutdown of Adiabatic Charge Pumps」と題する米国特許第10,686,367号に教示されており、その内容は参照により援用される。
【0102】
コンバータセルを並列に組み合わせる際の別の考慮事項は、起動中又は障害状態が発生したときなど、電力コンバータのすべてが完全に動作していない場合に、突入電流(例えば、電力変換器のソフトスタート期間中)及び/又はスイッチの過剰ストレスを回避するために、複数の並列電力コンバータを制御することである。条件付き制御は、電圧及び/又は電流を監視するために並列に接続された電力コンバータ内の選択されたノードに結合されたノード状態検出器を使用することによって達成され得る。このようなノード状態検出器は、一部の実施形態では、起動中に関連する電力コンバータの出力電圧を測定する出力状態検出器と並列に動作するように構成され得る。ノード状態検出器は、並列電力コンバータのフルパワー定常状態動作を可能にする前に、電力コンバータのコンバータセル(複数可)内の重要なコンポーネント(例えば、フライコンデンサ及び/又はスイッチ)の両端の電圧が所望の範囲内にあることを確実にし、そうでなければ、フルパワー定常状態動作を防止する。ノード状態検出器は、1つ以上の共通制御信号を使用して並列電力コンバータの1つ以上を制御するマスターコントローラに結合され得る。マスターコントローラ構成の促進のために、並列電力コンバータは、フルパワー定常状態動作のために起動フェーズを離れる準備ができたときに、それぞれ電力良好信号(Pgood)を報告し得る。マスターコントローラは、基本的に、そのようなすべてのPgood信号を、可能であれば、他の回路からの1つ以上のステータス信号と共に、一緒に「AND」し得、その結果、並列電力コンバータのすべてがその状態に対して準備ができない限り、マスターコントローラは、どの並列電力コンバータのフルパワー定常状態動作も可能にしない。本質的に、各並列電力コンバータからのPgood信号は、すべてのPgood信号が定常動作に移行する準備ができていることを示すまで、並列電力コンバータが起動フェーズから移行しないように、すべて一緒に結び付けられる。さらに、並列電力コンバータの1つ以上の障害状態によりPgood信号が変化する場合、並列電力コンバータは、定常状態動作から自動再起動又はシャットダウン動作に移行することができる。これらの解決策、並びに代替のシャットダウン解決策の詳細は、2021年4月27日に発行され、本発明の譲受人に譲渡された「Startup Detection for Parallel Power Converters」と題する米国特許第10,992,226号に教示されており、その内容は参照により援用される。
【0103】
マルチレベルコンバータセルを動作させる際の別の考慮事項は、すべてのスイッチが同様の電圧ストレスを受けるように、本質的に完全に比例的にバランスされたフライコンデンサ電圧を達成(すなわち、プリチャージ)し、維持することである。これは、アンバランスフライコンデンサが、高電圧への曝露によりスイッチ(特にFETスイッチ)の故障につながる可能性があるためである。マルチレベルDC-DCコンバータ回路におけるコンデンサ電圧のプリチャージ及びコンデンサ電圧の動作バランスの両方に対する1つの解決策は、並列の「シャドウ(shadow)」回路を提供することであり、この並列の「シャドウ」回路は、条件付きでフライコンデンサを電圧源又は他の回路に結合してコンデンサをプリチャージする、又は条件付きで2つ以上のフライコンデンサを一緒に結合して高電圧コンデンサから低電圧コンデンサに電荷を転送する、又は条件付きでフライコンデンサを電圧シンクに結合してそのコンデンサを放電するが、これらはすべてリアルタイムのコンデンサ電圧測定の制御下にある。各並列の「シャドウ」回路は、マルチレベルコンバータセルの一部であるメインスイッチに並列に結合されたスイッチ及び抵抗器を含み得る(場合によっては、1つのスイッチ抵抗対が直列接続された2つのスイッチにまたがることがある)。フライコンデンサのプリチャージ及び/又は電荷バランスのためのこの特定の解決策は、非常に高速であり、プリチャージ期間中にフライコンデンサの低速プリチャージを提供し、突入電流からスイッチを保護し、コンバータセルスイッチに安定した電圧を提供する。この解決策、並びに代替のプリチャージ及び電荷バランスの解決策の詳細は、2020年7月21日に発行され、本発明の譲受人に譲渡された「Multi-Level DC-DC Converter with Lossy Voltage Balancing」と題する米国特許第10,720,843号に教示されており、その内容は参照により援用される。
【0104】
マルチレベルDC-DCコンバータ回路のコンデンサ電圧をバランスさせるための別の解決策は、マルチレベルDC-DCコンバータセルの順不同(out-of-order)状態遷移が通常動作中に発生することを許容する、損失のない電圧バランスの解決策を提供することである。順不同状態遷移の正味の効果は、特定のフライコンデンサの両端の電圧を増加又は減少させることであり、これにより、DC-DCコンバータのメインスイッチ上の電圧過剰ストレスを防止する。いくつかの実施形態では、遷移状態のトグルを低減又は回避するために、状態遷移の全体的なシーケンスに制限が設けられ、それにより、あるコンデンサが別のコンデンサの電圧バランシングの前に電圧バランシングされることを可能にするのではなく、各コンデンサが必要に応じて電圧ステアリングを受ける機会を可能にする。この解決策及び代替の電荷バランスの解決策の詳細は、2020年9月8日に発行され、本発明の譲受人に譲渡された、「Multi-Level DC-DC Converter with Lossless Voltage Balancing」と題する米国特許第10,770,974号に教示されており、その内容は参照により援用される。
【0105】
いくつかの実施形態に対する追加の考慮事項は、電圧が電圧レベル間の境界ゾーン内で生成されることができるように、マルチレベルコンバータセルの動作を可能にすることである。「境界ゾーン」は、従来のマルチレベルDC-DCコンバータ回路に対して達成不可能な出力電圧を表す。境界ゾーン内で出力電圧を生成するために、いくつかの実施形態は、本質的に、コンバータセルスイッチの状態を境界ゾーン遷移パターンに設定することによって、隣接する(又は近接する)ゾーン間で交互に切り替える(トグルする)。例えば、3レベルDC-DCコンバータ回路は、選択された時間にゾーン1で動作し、選択された時間に隣接するゾーン2で動作し得る。したがって、ゾーン1及び2は、単一の「スーパーゾーン」として扱われる。より一般的には、場合によっては、非隣接ゾーンを使用して又は2つ以上のゾーン(隣接及び/又は非隣接)を使用してスーパーゾーンを作成することが有用であり得る。この解決策の詳細は、2020年7月21日に発行され、本発明の譲受人に譲渡された「Multi-Level DC-DC Converter with Boundary Transition Control」と題する米国特許第10,720,842号に教示されており、その内容は、参照により援用される。
【0106】
一部の実施形態のさらに別の考慮事項は、ストレス状態、特にそのようなスイッチ(特にFETスイッチ)の破壊電圧を超える電圧からの、電力コンバータ内の主電力スイッチ及び他のコンポーネントの保護である。マルチレベル電力コンバータを保護するための1つの手段は、他のすべて又はほとんどの主電力スイッチを低電圧FETスイッチとすることを可能にしながら少なくとも1つの高電圧FETスイッチを使用する。
【0107】
明らかなように、本開示に記載されたマルチレベル電力コンバータの実施形態は、このセクションに記載された追加の制御及び動作回路並びに方法の1つ以上の教示と相乗的に組み合わせることができる。
【0108】
方法
【0109】
本発明の別の態様は、Mレベルマルチレベルコンバータにおける軽負荷回復を改善する方法を含む(ここで、「軽負荷」とは、負荷がゼロ又は非常に低い、例えば、典型的なコンバータの最大電流仕様の絶対値の約10%未満であることを意味する)。例えば、
図12は、Mレベルマルチレベルコンバータにおける軽負荷回復を改善する第1の方法を示すプロセスフローチャート1200である。マルチレベルコンバータの充電サイクル及び放電サイクルを規定するコントローラからの入力信号に応答して、入力端子に印加される入力電圧を出力端子の出力電圧に変換するように構成されたMレベルマルチレベルコンバータから開始して(ブロック1202)、本方法は:Mレベルマルチレベルコンバータの出力端子においてサブハーモニックリップルを誘発するように、コントローラの信号経路にサブハーモニック信号を注入することを含む(ブロック1204)。
【0110】
上記方法の追加の態様は、以下のうちの1つ以上を含み得る:コントローラは、出力端子に結合された入力を有する比較器を含み、さらに、出力端子と比較器との間の信号経路にサブハーモニック信号を選択的に注入することを含む;コントローラは、基準電圧入力を有する比較器を含み、さらに、基準電圧入力においてサブハーモニック信号を選択的に注入することを含む;コントローラは、補償回路を含み、さらに、補償回路の前後の信号経路にサブハーモニック信号を選択的に注入することを含む;コントローラは、パルス幅変調発生器を含み、さらに、パルス幅変調発生器の後の信号経路にサブハーモニック信号を選択的に注入することを含む;さらに、出力端子を通る平均電流が約0アンペアのときにサブハーモニック信号を選択的に注入することを含む;さらに、軽負荷が出力端子に存在するときにサブハーモニック信号を選択的に注入することを含む;さらに、出力端子を通る平均電流の絶対値の関数としてスケーリングされたサブハーモニック信号を選択的に注入することを含む;Mレベルマルチレベルコンバータはスイッチング周波数を有し、サブハーモニック信号はMレベルマルチレベルコンバータのスイッチング周波数の約1/2の周波数を有する;Mレベルマルチレベルコンバータはスイッチング周波数を有し、サブハーモニック信号はMレベルマルチレベルコンバータのスイッチング周波数の1/2未満の周波数を有する;サブハーモニック信号はMレベルマルチレベルコンバータ内の少なくとも1つのフライコンデンサの電荷バランスを可能にする;サブハーモニック信号はMレベルマルチレベルコンバータ内の少なくとも1つのフライコンデンサの電荷バランスを可能にするのに十分な一時的な正及び負の電流を生成する;サブハーモニック信号はAC波形である;サブハーモニック信号は0の平均電圧を有するAC波形である;サブハーモニック信号は、Mレベルマルチレベルコンバータの動作を制御するコントローラによって生成されるデジタル波形のタイミングを変更することによって注入される;及び/又はコントローラからの入力信号は、パルス幅変調された波形を含み、さらに、パルス幅変調された波形のタイミングを変更することによってサブハーモニック信号を選択的に注入することを含む。
【0111】
別の例として、
図13は、Mレベルマルチレベルコンバータにおける軽負荷回復を改善する第2の方法を示すプロセスフローチャート1300である。マルチレベルコンバータの充電サイクル及び放電サイクルを規定するコントローラからの入力信号に応答して、入力端子に印加される入力電圧を出力端子の出力電圧に変換するように構成されたMレベルマルチレベルコンバータから開始して(ブロック1302)、本方法は:放電サイクル後のゼロ電流交差ポイントの近く又はその位置に追加の充電サイクルを追加すること(ブロック1304)と;充電サイクル後のゼロ電流交差ポイントの近く又はその位置に追加の放電サイクルを追加すること(ブロック1306)とを含む。
【0112】
マルチレベル電力コンバータの一般的な利益及び利点
【0113】
本発明の実施形態は、回路及び回路モジュール又はブロックを組み込む際の電力密度及び/又は電力効率を改善する。当業者が理解すべきように、システムアーキテクチャは、より低い電力及び/又はより長いバッテリ寿命を含む重要な方法で、本発明の実施形態を利用して有益な影響を受ける。したがって、本発明は、大規模なシステム設計及びアプリケーションに含めることによって創造的に可能となるシステムレベルの実施形態を特に包含する。
【0114】
より具体的には、マルチレベル電力コンバータは、以下を含む多数の利益及び利点を提供又は可能にする:
【0115】
- 入力及び/又は出力電圧が広いダイナミックレンジ(例えば、変化するバッテリ入力電圧レベル、変化する出力電圧)を有し得る用途への適応性;
【0116】
- ポータブル電気エネルギー源(電池、液体又は気体燃料を使用する発電機又は燃料電池、太陽電池等。)で動作するデバイスの実行時間の効率向上;
【0117】
- 熱管理、特に過剰な熱から他のコンポーネント(ディスプレイ、周辺IC等)を保護するために効率が重要な場合の効率向上;
【0118】
- 電力効率、電力密度、及びパワーコンバータのフォームファクタの設計最適化を可能にすること-例えば、小さいサイズのマルチレベルパワーコンバータは、負荷に近接してパワーコンバータを配置することを可能にし得、したがって、効率が向上する、及び/又は全体的な部品表を削減する。
【0119】
- より小型の低電圧トランジスタのパフォーマンスを活用する能力;
【0120】
- バッテリ、その他の電力変換器、液体又は気体燃料を使用する発電機又は燃料電池、太陽電池、ライン電圧(AC)、及びDC電圧源(例えば、USB、USB-C、パワーオーバーイーサネットなど)のような、電源が広範囲に変化する可能性がある用途への適応性;
【0121】
- 一般的なIC(マイクロプロセッサやメモリICを含む)、電動機及びアクチュエータ、トランスデューサ、センサ、ディスプレイ(例えば、あらゆるタイプのLCD及びLED)など、負荷が大きく変化し得る用途への適応性;
【0122】
- いくつかのIC技術(例えば、MOSFET、GaN、GaAs、及びバルクシリコン)及びパッケージング技術(例えば、フリップチップ、ボールグリッドアレイ、ウェハレベルスケールチップパッケージ、ワイドファンアウトパッケージ、及び組み込みパッケージ)に実装される能力。
【0123】
マルチレベル電力変換器の利益及び利点は、広範囲の用途での使用を可能にする。例えば、マルチレベル電力変換器の用途は、ポータブル及びモバイルコンピューティング並びに/又は通信製品及びコンポーネント(例えば、ノートパソコン、ウルトラブックコンピュータ、タブレット端末、及び携帯電話)、ディスプレイ(例えば、LCD、LED)、無線ベースのデバイス及びシステム(例えば、携帯電話システム、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、Z-Wave、GPSベースのデバイス)、有線ネットワークデバイス及びシステム、データセンタ(例えば、処理システム及び/又は電子/光ネットワークシステムのためのバッテリバックアップシステム及び/又は電力変換用)、モノのインターネット(IOT)デバイス(例えば、スマートスイッチ及びライト、安全センサ、防犯カメラ)、家電製品及び電子機器(例えば、セットトップボックス、電池式掃除機、洗濯機、乾燥機、冷蔵庫などの無線トランシーバーを内蔵した電化製品)、AC/DC電力変換器、あらゆる種類の電気自動車(例えば、ドライブトレイン、制御システム、及び/又はインフォテインメントシステム用)、並びに、ポータブル発電源を利用する及び/又は電力変換を必要とするその他のデバイス及びシステムを含む。
【0124】
無線システムの使用は、様々な種類の直交周波数分割多重化(「OFDM」)、直交振幅変調(「QAM」)、符号分割多元接続(「CDMA」)、時間分割多元接続(「TDMA」)、広帯域符号分割多元接続(「W-CDMA」)、移動通信用グローバルシステム(「GSM」)、ロングタームエボリューション(「LTE」)、5G、及びWiFi(登録商標)(例えば、802.11a、b、g、ac、ax)、並びにその他の無線通信規格及びプロトコルを含む、様々な技術及びプロトコルを使用する無線RFシステム(基地局、中継局、携帯トランシーバーを含む)を含む。
【0125】
製造技術及びオプション
【0126】
マルチレベル電力変換器の様々な実施形態では、特定の種類のコンデンサ、特にフライコンデンサを使用することが有益である場合がある。例えば、このようなコンデンサは、低等価直列抵抗(ESR)、低DCバイアス劣化、高容量、及び小さい体積(volume)を有することが一般的に有用である。低ESRは、電圧レベルの数を増加させるために追加のスイッチ及びフライコンデンサを組み込むマルチレベル電力変換器にとって特に重要である。特定のコンデンサの選択は、電力レベル、効率、サイズなどの仕様を考慮した後に行われるべきである。セラミック(多層セラミックコンデンサを含む)、電解コンデンサ、フィルムコンデンサ(パワーフィルムコンデンサを含む)、及びICベースのコンデンサを含む、様々なタイプのコンデンサ技術が使用され得る。コンデンサ誘電体は、特定の用途のために必要に応じて変更してもよく、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化ハフニウム(HFO2)、又は酸化アルミニウムAl2O3などの常誘電体である誘電体を含み得る。さらに、マルチレベル電力コンバータの設計は、回路サイズを縮小する及び/又は回路性能を向上させるために、設計されたコンデンサと組み合わせて、又はその代わりに、固有の寄生容量(例えば、パワーFETに固有の)を有利に利用し得る。マルチレベル電力コンバータのためのコンデンサの選択は、コンデンサコンポーネントのバリエーション、DCバイアスによる減少した実効容量、及びセラミックコンデンサ温度係数(最低及び最高温度の動作限界、及び温度による静電容量の変化)などの要因も考慮することができる。
【0127】
同様に、マルチレベル電力コンバータの様々な実施形態では、特定の種類のインダクタを使用することが有利であり得る。例えば、インダクタが、低いDC等価抵抗、高いインダクタンス、及び小さい体積を有することが一般的に有用である。
【0128】
マルチレベル電力コンバータの起動及び動作を制御するために使用されるコントローラ(複数可)は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、レジスタ転送レベル(RTL)回路、及び/又は組合せ論理として実装され得る。
【0129】
いくつかの例示的な実施形態は、3レベルコンバータを含むが、本発明は、一般に、4レベル及び5レベルコンバータを含むマルチレベルコンバータを含む。
【0130】
本開示で使用される用語「MOSFET」は、その電圧がトランジスタの導電性を決定する絶縁ゲートを有する任意の電界効果トランジスタ(FET)を含み、金属又は金属様、絶縁体、及び/又は半導体構造を有する絶縁ゲートを包含する。用語「金属」又は「金属様」は、少なくとも1つの導電性材料(アルミニウム、銅、又は他の金属、又は高度にドープされたポリシリコン、グラフェン、又は他の導電体など)を含み、「絶縁体」は、少なくとも1つの絶縁材料(酸化シリコン又は他の誘電体材料など)を含み、「半導体」は、少なくとも1つの半導体材料を含む。
【0131】
本開示で使用されるとき、用語「無線周波数」(RF)は、約3kHz~約300GHzの範囲の発振率を指す。この用語は、無線通信システムで使用される周波数も含む。RF周波数は、電磁波の周波数、又は、回路内の交流電圧又は電流の周波数であってもよい。
【0132】
本開示で参照される図に関して、様々な要素の寸法は一定の縮尺ではない。いくつかの寸法は、明確化又は強調のために垂直及び/又は水平に大幅に誇張されている。さらに、向き及び方向(例えば、「上部」、「底部」、「上に」、「下に」、「横の」、「垂直」、「水平」など。)への言及は、例示的な図面に対するものであり、必ずしも絶対的な向き又は方向ではない。
【0133】
本発明の様々な実施形態は、多種多様な仕様を満たすように実装することができる。上記に特に記載がない限り、適切なコンポーネント値の選択は、設計の選択の問題である。本発明の様々な実施形態は、任意の適切な集積回路(IC)技術(MOSFET構造を含むが、これに限定されない)において、又は、ハイブリッド又はディスクリート回路形態において実装することができる。集積回路の実施形態は、標準バルクシリコン、高抵抗バルクCMOS、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、及びシリコン・オン・サファイア(SOS)を含むがこれらに限定されない、任意の適切な基板及びプロセスを使用して製造され得る。上記に特に記載がない限り、本発明の実施形態は、バイポーラ、BiCMOS、LDMOS、BCD、GaAs HBT、GaN HEMT、GaAs pHEMT、及びMESFET技術などの他のトランジスタ技術において実装され得る。しかしながら、本発明の実施形態は、SOI又はSOSベースのプロセスを用いて製造される場合、又は同様の特性を有するプロセスを用いて製造される場合に特に有用である。SOI又はSOSプロセスを用いたCMOSでの製造は、低消費電力、FETスタッキングによる動作中の高電力信号に耐える能力、良好な直線性、及び高周波数動作(300GHzギガヘルツまでの及び300GHzを超える無線周波数)を有する回路を可能にする。モノリシックICの実装は、慎重な設計によって寄生容量を一般に低く維持する(又は、最低でも、すべてのユニットで均一に維持され、それらが補償されることを可能にする)ことができるため、特に有用である。
【0134】
特定の仕様及び/又は実装技術(例えば、NMOS、PMOS、又はCMOS、及びエンハンスメントモード又はデプレションモードのトランジスタデバイス)に応じて、電圧レベルを調整し、及び/又は、電圧及び/又は論理信号の極性を反転させることができる。コンポーネントの電圧、電流、及び電力処理能力は、必要に応じて、例えば、デバイスサイズを調整し、より大きな電圧に耐えるようにコンポーネント(特にFET)を直列に「スタッキング」すること、及び/又はより大きな電流を処理するために複数のコンポーネントを並列に使用することによって、適応させることができる。開示された回路の機能を大幅に変更することなく、開示された回路の能力を強化するために、及び/又は追加の機能を提供するために、追加の回路コンポーネントを追加することができる。
【0135】
本発明による回路及びデバイスは、単独で、又は他のコンポーネント、回路、及びデバイスと組み合わせて使用することができる。本発明の実施形態は、集積回路(IC)として製造することができ、集積回路は、取り扱い、製造、及び/又は性能を向上させるためにICパッケージ及び/又はモジュールに収容されることができる。特に、本発明のICの実施形態は、そのようなICのうちの1つ以上が他の回路コンポーネント又はブロック(例えば、フィルタ、増幅器、受動コンポーネント、及び場合によっては追加のIC)と組み合わされて1つのパッケージとなるモジュールで使用されることが多い。その後、IC及び/又はモジュールは、通常、印刷回路基板上で他のコンポーネントと組み合わされて、携帯電話、ラップトップコンピュータ、又は電子タブレットなどの最終製品の一部を形成する、又は車両、試験装置、医療デバイスなどの広範な製品で使用されることができる上位レベルのモジュールを形成する。モジュール及びアセンブリの様々な構成を通じて、このようなICは、通常、通信モード、多くの場合、無線通信を可能にする。
【0136】
結論
【0137】
本発明のいくつかの実施形態が記載されている。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることを理解されたい。例えば、上述のステップのいくつかは、順序に依存しないことができ、したがって、記載された順序とは異なる順序で実行することができる。さらに、上述のステップのいくつかはオプションであることができる。上述の方法に関して記載された様々な活動は、反復的、直列的、及び/又は並列的に実行することができる。
【0138】
上述の説明は、以下の特許請求の範囲の範囲によって定義される本発明の範囲を説明することを意図しており、限定することを意図していないこと、及び他の実施形態が特許請求の範囲の範囲内にあることを理解されたい。特に、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲に記載されるプロセス、機械、製造物、又は組成物の1つ以上のあらゆる実現可能な組み合わせを含む。(請求項の要素の括弧で括られたラベルは、そのような要素の参照を容易にするためのものであり、それ自体は、要素の特定の必要な順序又は列挙を示すものではないことに留意されたい。さらに、そのようなラベルは、矛盾するラベル配列の開始とみなされることなく、追加要素への参照として従属請求項において再利用されることができる)。
【国際調査報告】