(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】長期高温性能のためのポリアミド配合物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/06 20060101AFI20241106BHJP
C08G 69/26 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08L77/06
C08G69/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527093
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 US2022049363
(87)【国際公開番号】W WO2023086359
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509354042
【氏名又は名称】アセンド・パフォーマンス・マテリアルズ・オペレーションズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ASCEND PERFORMANCE MATERIALS OPERATIONS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,キンバリー・エム
(72)【発明者】
【氏名】スパークス,ブラッドリー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】レイ,ジェイコブ・ジー
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB04
4J001DC14
4J001DC16
4J001EA06
4J001EB08
4J001EB36
4J001EB37
4J001EC13
4J001JA05
4J001JA07
4J001JB38
4J002AE032
4J002CL011
4J002CL031
4J002CL051
4J002EF057
4J002EG037
4J002EG047
4J002EJ036
4J002EJ066
4J002EP016
4J002EV076
4J002EW066
4J002EW086
4J002FD066
4J002FD172
4J002FD177
4J002GN00
4J002GQ01
(57)【要約】
全体的に高い芳香族度を有する、テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位を含む芳香族ポリアミドまたは6T/DTコポリマーを、熱安定剤および/または滑剤と共に含む、ポリマー組成物が本明細書で提供される。ポリマー組成物は、体積抵抗率および絶縁耐力に関して改善された電気的性能を実証する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位を含みかつ31%を超える全体的芳香族度を有する芳香族ポリアミド、または25%を超える全体的芳香族度を有する6T/DTコポリマーと、
熱安定剤と、
任意選択の滑剤と、
を含むポリマー組成物であって、
IEC 62631によって150℃で測定された場合に1.0E+10オーム-cmを超える体積抵抗率を示す、ポリマー組成物。
【請求項2】
ポリマー組成物が、IEC 60243によって150℃で測定された場合に25KV/mmを超える絶縁耐力を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリマー組成物が、湿度老化下で絶縁耐力保持率を保つ、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
芳香族ポリアミドが、35%を超える全体的芳香族度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
芳香族ポリアミドが、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位およびアジピン酸単位を含み、かつ32%を超える全体的芳香族度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
芳香族ポリアミドが、6T/DT、6I/6T、6T/6I/66、もしくは6T/66/6I、またはこれらの組合せを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
テレフタル酸単位とイソフタル酸単位を合わせた含有量と、アジピン酸単位の含有量との差異が、30~100の範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
芳香族ポリアミドが、芳香族ポリアミドの総重量に基づいて、35wt%~100wt%のテレフタル酸単位を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
芳香族ポリアミドが、芳香族ポリアミドの総重量に基づいて、10wt%~70wt%のイソフタル酸単位を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
0wt%~10wt%のPA6をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ポリマー組成物が、ポリマー組成物の総重量に基づいて、25wt%~95wt%の芳香族ポリアミドを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
熱安定剤が、ヒンダードフェノールである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
熱安定剤が、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-dit-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミドである、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
滑剤が、モンタネートである、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
85℃の温度および85%の相対湿度で1K時間水分処理された場合に、85MPaを超える引張強度を示し、85℃の温度および85%の相対湿度で1K時間水分処理された場合に、5.0E+13オーム-cmを超える体積抵抗率を示す、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
[0001]本出願は、2021年11月9日に出願された米国仮出願第63/277,424号の優先権を主張し、その内容は本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
[0002]本開示は、ポリアミド組成物、詳細には要求の厳しい条件下で、改善された電気的性能を有するポリアミド組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]ポリアミド樹脂組成物は、高融点、高再結晶温度、より速い射出成形サイクル時間、高流動性、靭性、弾性、耐薬品性、固有のUL94 V2難燃性、および耐摩耗性などの有益な物理的特性を有することが公知である。これらの特性は、ポリアミド樹脂組成物を、高性能の自動車および電気/電子の用途に理想的なものとすることが多い。しかしながら、自動車用途または電気/電子用途などにおいて、プラスチック部品が高温に長期間曝露された場合、ポリマーの熱酸化に起因して、機械的特性は一般に低下する傾向がある。この現象は、熱劣化と呼ばれることが多い。
【0004】
[0004]ポリマーの熱劣化特徴を改善する試みとして、ポリマー組成物に熱安定剤を添加することが従来から行われてきた。しかしながら、既存の技術の熱劣化特徴は、通例、例えば自動車用途および電気/電子用途のような、より高温への曝露を含む、より要求の厳しい用途には不十分である。また、一部の熱安定剤の添加は、例えば加工可能性または電気的特性のような他の性能特色を損なうことが多い。多くの場合、熱劣化性能における向上は、加工可能性の損失につながる。
【0005】
[0005]加えて、ポリアミド樹脂への安定剤の添加が熱劣化を改善し得る一方、これらの付加的な成分はまた、他の望まれない化合物/要素を付け加える場合もある。例えば、一部の従来的な熱安定剤の添加は、組成物にハロゲン化合物を導入することが多く、これは、ポリマー組成物の「非ハロゲン」規格に対して負に寄与する可能性がある。これは、難燃性ポリマー組成物に特に関連する。
【0006】
[0006]したがって、好ましくは、例えば難燃性、加工可能性、または例えば体積抵抗率のような電気的特性のような他の性能特色を維持しながら、より高温において効果的な機械的性能をもたらすことが可能なポリアミド組成物に対する必要が存在する。
【発明の概要】
【0007】
[0007]一態様では、テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位を含み、かつ31%を超える全体的芳香族度(aromaticity)を有する芳香族ポリアミド、熱安定剤、ならびに任意選択の滑剤を含むポリマー組成物が提供される。長期高温性能が改善される。一実施形態では、ポリマー組成物は、150℃などの高温下でIEC 62631によって測定された場合に1.0E+10オーム-cmを超える体積抵抗率を示す。一実施形態では、ポリマー組成物は、150℃などの高温下でIEC 60243によって測定された場合に25KV/mmを超える絶縁耐力を示す。好ましくは、ポリマー組成物は、湿度老化(humidity aging)下で絶縁耐力保持率を保つ。したがって、一実施形態では、本組成物は、85℃の温度および85%の相対湿度で1K時間水分処理された場合に、85MPaを超える引張強度を示し、85℃の温度および85%の相対湿度で1K時間水分処理された場合に、5.0E+13オーム-cmを超える体積抵抗率を示す。芳香族ポリアミドは、35%を超える全体的芳香族度を有し得る。一実施形態では、芳香族ポリアミドは、テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位に加えてアジピン酸単位を含み、32%を超える全体的芳香族度を有する。芳香族ポリアミドは、6I/6T、6T/6I/66、もしくは6T/66/6I、またはこれらの組合せを含み得る。テレフタル酸単位とイソフタル酸単位を合わせた含有量と、アジピン酸単位の含有量との差異は、30~100の範囲であり得る。芳香族ポリアミドは、芳香族ポリアミドの総重量に基づいて、35wt%~100wt%のテレフタル酸単位を含み得る。一実施形態では、芳香族ポリアミドは、芳香族ポリアミドの総重量に基づいて、10wt%~70wt%のイソフタル酸単位を含む。一部の実施形態はまた、0wt%~10wt%の量のPA6も含み得る。ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、25wt%~95wt%の芳香族ポリアミドを含む。一実施形態では、熱安定剤は、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-dit-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミドなどのヒンダードフェノールである。一実施形態では、滑剤はモンタネートである。
【0008】
[0008]本発明の一態様では、25%を超える全体的芳香族度を有する6T/DTコポリマー、熱安定剤、任意選択の滑剤を含むポリマー組成物が提供される。一実施形態では、ポリマー組成物は、150℃などの高温下でIEC 62631によって測定された場合に1.0E+10オーム-cmを超える体積抵抗率を示す。一実施形態では、ポリマー組成物は、150℃などの高温下でIEC 60243によって測定された場合に25KV/mmを超える絶縁耐力を示す。好ましくは、ポリマー組成物は、湿度老化下で絶縁耐力保持率を保つ。したがって、一実施形態では、本組成物は、85℃の温度および85%の相対湿度で1K時間水分処理された場合に、85MPaを超える引張強度を示し、85℃の温度および85%の相対湿度で1K時間水分処理された場合に、5.0E+13オーム-cmを超える体積抵抗率を示す。芳香族ポリアミドは、31を超えるか、またはより好ましくは35%を超える全体的芳香族度を有し得る。一部の実施形態はまた、0wt%~10wt%の量のPA6も含み得る。ポリマー組成物は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、25wt%~95wt%の芳香族ポリアミドを含む。一実施形態では、熱安定剤は、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-dit-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミドなどのヒンダードフェノールである。一実施形態では、滑剤はモンタネートである。
【0009】
[0009]一部の実施形態では、本開示は、テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位(および任意選択でアジピン酸単位)、例えば、PA6T/DT、6I/6T、6T/6I/66もしくは6T/66/6Iもしくはこれらの組合せまたはPA6T/6I/66もしくはPA6T/66/6Iもしくはこれらの組合せを含みかつ20%を超える、例えば35%を超える全体的芳香族度を有する(25wt%~95wt%の)、芳香族ポリアミド;熱安定剤、例えば、ヒンダードフェノールおよび/またはN,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-dit-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド;任意選択の滑剤、例えば、モンタネートを含むポリアミド組成物であって、23℃で測定された146MPaを超える引張強度(成形したままの乾燥状態)およびIEC 62631によって150℃で測定された場合に1.0E+10オーム-cmを超える体積抵抗率ならびに/または85℃の温度および85%の相対湿度で1000時間水分気処理された場合に85MPaを超える引張強度ならびに85℃の温度および85%の相対湿度で1000時間水分処理された場合に5.0E+13オーム-cmを超える体積抵抗率を示す、ポリアミド組成物に関する。テレフタル酸単位とイソフタル酸単位を合わせた含有量と、アジピン酸(および任意選択でカプロラクタム)単位の含有量との差異は、30~100の範囲であり得る。芳香族ポリアミドは、芳香族ポリアミドの総重量に基づいて、35wt%~100wt%のテレフタル酸単位および/または10wt%~70wt%のイソフタル酸単位、ならびに任意選択で0wt%~10wt%のPA6を含み得る。
【0010】
[0010]一部の実施形態では、本開示は、1種または複数の6T/DTコポリマー;テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位(および任意選択でカプロラクタム単位)を含む6I/6Tコポリマー;ならびに25%を超える、例えば30%を超える全体的芳香族度を有する、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位およびアジピン酸単位を含むターポリマーを含む、ポリマー組成物に関する。ポリマー組成物は、熱安定剤;任意選択の滑剤をさらに含み、該ポリマー組成物は、23℃で測定された146MPaを超える引張強度(成形したままの乾燥状態)およびIEC 62631によって150℃で測定された場合に1.0E+10オーム-cmを超える体積抵抗率を示す。
【0011】
[0011]一部の実施形態では、本開示は、全単位の総重量に基づいて、25wt%~45wt%のテレフタル酸単位;および55wt%~75wt%のイソフタル酸単位を含む6I/6Tコポリマー;0wt%~20wt%のカプロラクタムをベースとするポリアミド;熱安定剤;ならびに任意選択の滑剤を含むポリマー組成物に関する。
【0012】
[0012]一部の実施形態では、本開示は、全単位の総重量に基づいて、50wt%~65wt%のテレフタル酸単位;20wt%~30wt%のイソフタル酸単位;および10wt%~25wt%のアジピン酸単位を含む6T/6I/66ターポリマー;ならびに0wt%~20wt%のカプロラクタムをベースとするポリアミド;熱安定剤;任意選択の滑剤を含むポリマー組成物に関する。
【0013】
[0013]一部の実施形態では、本開示は、全単位の総重量に基づいて、45wt%~60wt%のテレフタル酸単位;12wt%~27wt%のイソフタル酸単位;および25wt%~40wt%のアジピン酸単位を含む6T/66/6Iターポリマー;ならびに0wt%~20wt%のカプロラクタムをベースとするポリアミド;熱安定剤;任意選択の滑剤を含むポリマー組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0014]従来のポリアミド組成物は、高温熱劣化性能の改善を試みる熱安定剤パッケージを含むことが多い。当技術分野では熱安定化組成物の例は豊富であるが、これらの組成物の全てではないにせよ大部分は、自動車または電気/電子用途などの長期間の高温用途に必要とされる非常に高い熱劣化性能を達成することはできない。さらに、一部の熱安定剤の添加は、例えば、加工可能性または例えば絶縁耐力および体積抵抗率のような電気的特性のような他の性能特色を損なうことが多く、および/またはポリマー組成物に、例えば過剰のハロゲンのような他の望まれない化合物/要素を付け加える場合がある。しかしながら、このように、従来のポリアミド組成物が特定の組合せの性能特色における改善を達成することは困難であった。
【0015】
[0015]本発明者らは、驚いたことに、特定の種類、量、および比(本明細書に記載される)において任意選択で利用された特定のポリマー(ポリマー、コポリマー、および/またはターポリマー)が、より高温において、例えば伸び、引張り、および/または衝撃特性のような機械的性能における驚くべき改善をもたらすことを発見した。本発明者らは、本明細書に開示される材料が、詳細には増加した水分および高温などの要求の厳しい条件下で、体積抵抗率および/または絶縁耐力などの電気的特性における改善も驚いたことに示し得ることをさらに見出した。これは、より高温において長期にわたり実証される。多くの場合、芳香族度が、前述の性能特性における著しくかつ驚くべき改善に寄与することが見出された。場合によっては、これらのポリマーは、特定の種類、量、および比の1種または複数の他の添加剤と共に利用され、これが前述の性能上の利点を有する相乗的組成物をもたらす。これらのポリマー組成物は、有利なことに、機械的および/または電気的な特性における前述の改善を提供しながら、例えば加工可能性のような性能特色を維持する。換言すれば、本明細書に開示されるポリマー組成物は、これまでに達成されなかった性能因子の予想外のバランスを有利に実証する。
【0016】
[0016]詳細には、ポリマー芳香族度が、例えば31%~50%のような特定の範囲内に保たれる場合、絶縁耐力と体積抵抗率の両方を含む特性の相乗的なバランスが達成される。対照的に、芳香族度および繰り返し単位含有量を主眼としない(または低芳香族度を有し得る)従来のポリマー組成物は、機械的性能をなんとか達成する一方で、特に熱劣化された場合、例えば加工可能的な利点と共に、絶縁耐力および/または体積抵抗率の性能のような他の随伴する特性を達成することができない。その上、本開示の組成物に関して、高湿環境において、例えば、85℃/85%の相対湿度で1000+時間における絶縁耐力、体積抵抗率、引張特性、および衝撃特性のような予想外の性能もまた実証された。
【0017】
組成物
芳香族コポリマー(特定の芳香族度を有する)
[0017]一部の実施形態では、芳香族ポリアミドは、例えば30%超または31%超の高い芳香族度を有する。この芳香族度は、例えば絶縁耐力および体積抵抗率のような、改善された電気的特性を提供するのに特に有利であることが見出された。理論に束縛されることなく、例えば6Tおよび/または6Iのような芳香族の含有量が、特に高温および増加した水分レベルなどの要求の厳しい条件下で、より高い絶縁耐力および体積抵抗率につながる、水分吸収関連および/またはガラス転移関連の特徴に有利に寄与することが推論される。一部の従来的な高度の脂肪族配合物は、より低い温度で好適に機能し得るが、これらの配合物は、例えば125℃または150℃のようなより高い温度における、または水分に曝露された場合の保持課題に苦慮していることが見出された。
【0018】
[0018]芳香族ポリアミドは構造的に広く変化し得て、一般により高い芳香族度を有する。一部の実施形態では、芳香族ポリアミドは、例えばテレフタル酸繰り返し単位および/またはイソフタル酸繰り返し単位のような芳香族繰り返し単位を含む。場合によっては、芳香族ポリアミドは、20%超、例えば25%超、30%超、31%超、32%超、35%超、39%超、40%超、42%超、45%超、または50%超の全体的芳香族度を有する。範囲に関して、芳香族ポリアミドは、20%~50%、例えば30%~50%、31%~50%、32%~50%、32%~50%、35%~50%の範囲の全体的芳香族度を有し得て、上限に関して、芳香族ポリアミドは、50%未満、例えば49%未満、45%未満、40%未満、または35%未満の全体的芳香族度を有し得る。
【0019】
[0019]有利なことに、前述の芳香族ポリアミドの使用が、予想外の加工上の利点をもたらすことが見出された。例えば、芳香族ポリアミドを利用する場合、例えば水成形、蒸気成形などのようなより多くの成形上の選択肢が可能となる。対照的に、異なるポリアミドの使用は油成形が必要であり、これは一般により高価であり、手がかかることが見出された。場合によっては、より低い6Tおよび/もしくは6I含有量ならびに/またはより高い66および/もしくはカプロラクタム含有量を有するポリアミドは、水成形または蒸気成形を予想外に可能とする。場合によっては、本開示の成形プロセスは、有利なことに、プロセスに都合の悪い油成形技術を利用しない。
【0020】
[0020]芳香族ポリアミドは、芳香族ポリアミドの総重量に基づいて、20wt%~100wt%、例えば35wt%~100wt%、50wt%~100wt%、45wt%~75wt%、35wt%~60wt%、40wt%~55wt%、45wt%~55wt%、45wt%~50wt%、または50wt%~70wt%の範囲の量のヘキサメチレンジアミン(HMD)-テレフタル酸(6T)単位を含む。上限に関しては、芳香族ポリアミドは、100wt%未満、例えば90wt%未満、75wt%未満、70wt%未満、65wt%未満、61wt%未満、60wt%未満、55wt%未満、50wt%未満、45wt%未満、40wt%未満、または35wt%未満の6T単位を含み得る。下限に関しては、芳香族ポリアミドは、34wt%超、例えば35wt%超、40wt%超、45wt%超、50wt%超、55wt%超、または59wt%超の6Tを含み得る。
【0021】
[0021]芳香族ポリアミドは、芳香族ポリアミドの総重量に基づいて、10wt%~75wt%、例えば10wt%~70wt%、15wt%~65wt%、10wt%~35wt%、または15wt%~35wt%の範囲の量のHMD-イソフタル酸(6I)単位を含む。上限に関しては、芳香族ポリアミドは、75wt%未満、例えば70wt%未満、65wt%未満、50wt%未満、45wt%未満、40wt%未満、35wt%未満、30wt%未満、または25wt%未満の6I単位を含み得る。下限に関しては、芳香族ポリアミドは、10wt%超、例えば15wt%超、17wt%超、20wt%超、25wt%超、30wt%超、40wt%超、50wt%超、または60wt%超の6I単位を含み得る。
【0022】
[0022]芳香族ポリアミドは、芳香族ポリアミドの総重量に基づいて、5wt%~85wt%、例えば5wt%~50wt%、5wt%~35wt%、10wt%~40wt%、15wt%~35wt%または20wt%~35wt%の範囲の量の6単位(カプロラクタム)および/または66単位(HMD-アジピン酸)を含む。上限に関しては、芳香族ポリアミドは、85wt%未満、例えば75wt%未満、70wt%未満、65wt%未満、60wt%未満、50wt%未満、45wt%未満、40wt%未満、35wt%未満、30wt%未満、25wt%未満、20wt%未満、または15wt%未満の6単位および/または66単位を含み得る。下限に関しては、芳香族ポリアミドは、0wt%超、例えば5wt%超、10wt%超、15wt%超、20wt%超、25wt%超、30wt%超、34wt%超、または35wt%超の6単位および/または66単位を含み得る。
【0023】
[0023]重要なことに、本発明者らは、6単位(カプロラクタム)および/または66単位(HMD-アジピン酸)の含有量が15wt%を超える(または等しい)場合、前述の性能上の利点が特に明白であることを見出した。場合によっては、ターポリマーが利用され、かつ6単位および/または66単位の含有量が論じられた通りである場合、相乗的な性能上の利点が達成される。注目すべき量の6または66が、機械的性能に対して悪影響を与えることなく、電気的性能に寄与し、融点およびガラス転移温度を低減し得る(したがって水/蒸気の成形可能性をより実現可能なものとする)ことが推論される。
【0024】
[0024]一部の実施形態では、テレフタル酸単位とイソフタル酸単位を合わせた含有量と、カプロラクタムおよび/またはアジピン酸単位の含有量との差異(重量に基づく)は、20~100、例えば20~80、25~75、30~100、30~70、30~75、60~100、30~60、または40~60の範囲である。下限に関しては、テレフタル酸単位とイソフタル酸単位を合わせた含有量と、カプロラクタムおよび/またはアジピン酸単位を合わせた含有量との差異(重量に基づく)は、20超、例えば25超、29超、30超、35超、40超、45超、50超、60超、70超、80超、90超、95超、または99超であり得る。場合によっては、6および/または66含有量が低いかまたは存在しない場合、テレフタル酸単位とイソフタル酸単位を合わせた含有量と、アジピン酸単位の含有量との差異は、テレフタル酸単位とイソフタル酸単位の合計含有量に等しい場合がある(差し引くアジピン酸単位がない)。上限に関しては、テレフタル酸単位とイソフタル酸単位を合わせた含有量と、アジピン酸単位の含有量との差異は、100未満、例えば85未満、70未満、または60未満であり得る。
【0025】
[0025]一実施形態では、ポリアミドは、6T、6I、および66単位を有するターポリマーである。ターポリマーは、45wt%~75wt%、例えば、47wt%~72wt%、50wt%~70wt%、52wt%~68wt%、55wt%~65wt%、または57wt%~62wt%の範囲の量の6T単位を含み得る。下限に関しては、ターポリマーは、45wt%超、例えば47wt%超、50wt%超、52wt%超、55wt%超、または57wt%超の6T単位を含み得る。上限に関しては、ターポリマーは、75wt%未満、例えば72wt%未満、70wt%未満、68wt%未満、65wt%未満、または62wt%未満の6T単位を含み得る。ターポリマーは、10wt%~40wt%、例えば12wt%~38wt%、15wt%~35wt%、17wt%~32wt%、20wt%~30wt%、または22wt%~28wt%の範囲の量の6I単位を含み得る。下限に関しては、ターポリマーは、10wt%超、例えば12wt%超、15wt%超、17wt%超、20wt%超、または22wt%超の6I単位を含み得る。上限に関しては、ターポリマーは、40wt%未満、例えば38wt%未満、35wt%未満、32wt%未満、30wt%未満、または28wt%未満の6I単位を含み得る。ターポリマーは、5wt%~35wt%、例えば7wt%~32wt%、10wt%~30wt%、12wt%~28wt%、10wt%~25wt%、15wt%~25wt%、または17wt%~23wt%の範囲の量の66単位を含み得る。下限に関しては、ターポリマーは、5wt%超、例えば7wt%超、10wt%超、12wt%超、15wt%超、または17wt%超の66単位を含み得る。上限に関しては、ターポリマーは、35wt%未満、例えば32wt%未満、30wt%未満、28wt%未満、25wt%未満、または23wt%未満の66単位を含み得る。
【0026】
[0026]一実施形態では、ターポリマーは、38wt%~68wt%、例えば40wt%~65wt%、42wt%~62wt%、45wt%~60wt%、48wt%~57wt%、または50wt%~55wt%の範囲の量の6T単位を含み得る。下限に関しては、ターポリマーは、38wt%超、例えば40wt%超、42wt%超、45wt%超、48wt%超、または50wt%超の6T単位を含み得る。上限に関しては、ターポリマーは、68wt%未満、例えば65wt%未満、62wt%未満、60wt%未満、57wt%未満、または55wt%未満の6T単位を含み得る。一実施形態では、ターポリマーは、2wt%~37wt%、例えば5wt%~35wt%、7wt%~32wt%、10wt%~30wt%、12wt%~27wt%、または15wt%~25wt%の範囲の量の6I単位を含み得る。下限に関しては、ターポリマーは、2wt%超、例えば5wt%超、7wt%超、10wt%超、12wt%超、または15wt%超の6I単位を含み得る。上限に関しては、ターポリマーは、37wt%未満、例えば35wt%未満、32wt%未満、30wt%未満、27wt%未満、または25wt%未満の6I単位を含み得る。一実施形態では、ターポリマーは、7wt%~47wt%、例えば10wt%~45wt%、12wt%~42wt%、15wt%~40wt%、25wt%~40wt%、17wt%~37wt%、または20wt%~35wt%の範囲の量の66単位を含み得る。下限に関しては、ターポリマーは、7wt%超、例えば10wt%超、12wt%超、15wt%超、17wt%超、または20wt%超の66単位を含み得る。上限に関しては、ターポリマーは、47wt%未満、例えば45wt%未満、42wt%未満、40wt%未満、37wt%未満、または35wt%未満の66単位を含み得る。
【0027】
[0027]一実施形態では、ポリアミドは、6Tおよび6I単位を有するコポリマーである。ターポリマーは、20wt%~50wt%、例えば22wt%~47wt%、25wt%~45wt%、27wt%~42wt%、30wt%~40wt%、または32wt%~38wt%の範囲の量の6T単位を含み得る。下限に関しては、コポリマーは、20wt%超、例えば22wt%超、25wt%超、27wt%超、30wt%超、または32wt%超の6T単位を含み得る。上限に関しては、コポリマーは、50wt%未満、例えば47wt%未満、45wt%未満、42wt%未満、40wt%未満、または38wt%未満の6T単位を含み得る。コポリマーは、50wt%~80wt%、例えば52wt%~77wt%、55wt%~75wt%、57wt%~72wt%、60wt%~70wt%、または62wt%~68wt%の範囲の量の6I単位を含み得る。下限に関しては、コポリマーは、50wt%超、例えば52wt%超、55wt%超、57wt%超、60wt%超、または62wt%超の6I単位を含み得る。上限に関しては、ターポリマーは、80wt%未満、例えば77wt%未満、75wt%未満、72wt%未満、70wt%未満、または68wt%未満の6I単位を含み得る。
【0028】
[0028]一部の実施形態では、ポリアミドはコポリマーである。コポリマーは、本明細書で言及される含有量および芳香族度を有し得る。例えば、芳香族ポリアミドは、6T/DTもしくは6I/6Tまたはこれらの組合せを含み得る。6T/DTは、例えば、分岐HMD、または1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンのような分岐ジアミン成分を有する。
【0029】
[0029]一部の実施形態では、6T単位の含有量は、66単位もしくは6I単位、または66単位と6I単位を合わせた組合せの含有量を超える(または等しい)。一部の実施形態では、6T単位の含有量は、66単位もしくは6I単位の含有量、または66単位と6I単位を合わせた組合せの含有量の少なくとも1%超、例えば少なくとも3%超、少なくとも5%超、少なくとも7%超、少なくとも10%超、少なくとも12%超、少なくとも15%超、少なくとも17%超、少なくとも20%超、少なくとも25%超、少なくとも30%超、少なくとも40%超、少なくとも50%超、少なくとも75%超、または少なくとも100%超である。
【0030】
[0030]場合によっては、芳香族ポリアミドのテレフタル酸含有量とイソフタル酸含有量との比は、例えば0.1~10、例えば0.1~5、0.2~5、0.1~1、0.2~0.7、0.2~0.8、1.0~3.5、2.0~3.5、0.3~3、3.5~10、2~7、または0.4~3.5の範囲であり得る。上限に関しては、芳香族ポリアミドのテレフタル酸含有量とイソフタル酸含有量との比は、10未満、例えば7未満、5未満、4未満、3.5未満、2未満、1未満、または0.5未満であり得る。下限に関しては、芳香族ポリアミドのテレフタル酸含有量とイソフタル酸含有量との比は、0.1超、例えば0.2超、0.5超、0.7超、1超、1.5超、2超、2.5超、または3.0超であり得る。テレフタル酸含有量をこれらのモル範囲内に保持することが、前述の性能上の利点に寄与することが発見された。
【0031】
[0031]例示的な芳香族ポリアミドは、PA6T/6I/66ターポリマーを含むが、これに限定されない。PA6T/6I/66ターポリマーは、上述および本明細書に述べられた6T、6I、およびPA66単位含有量を有し得る。場合によっては、PA6T/6I/66ターポリマーは、45wt%~75wt%(45wt%~60wt%または50wt%~65wt%)の6T単位;15wt%~65wt%(15wt%~30wt%または15wt%~35wt%)の6I単位、および10wt%~40wt%(15wt%~35wt%)のPA66単位を含む。
【0032】
[0032]他の例示的な芳香族ポリアミドは、PA-4T/4I;PA-4T/6I;PA-5T/5I;PA-6,6/6T;PA-6T/6I;PA-6T/6I/6;PA-6T/6;PA-6T/6I/66;PA-6T/66;PA-6I/6T、PA-6T/6;PA-6,6/6I/6;PA-6I/6;または6T/6I/6、PA-6T/610;PA-10T/612;PA-10T/106;PA-6T/612;PA-6T/10T;PA-6T/10I;PA-9T;PA-10T;PA-12T;PA-10T/10I;PA-10T/12;PA-10T/11;PA-6T/9T;PA-6T/12T;PA-6T/10T/6I;PA-6T/6I/6;PA-6T/61/12;MPMD-T;MPMD-I;またはMPMD-T/MPMD-Iとのポリアミドブレンド、例えばDT/DIブレンド;またはこれらの組合せを含み得る。
【0033】
[0033]提供される組成物中の異なる種類の芳香族ポリアミドの数は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10より大きくあり得る。一部の実施形態では、本組成物の1種または複数の芳香族ポリアミドは、部分的芳香族ポリアミドを含む。一部の実施形態では、本組成物のそれぞれの芳香族ポリアミドは、部分的芳香族ポリアミドである。一部の実施形態では、1種または複数の芳香族ポリアミドは、非晶質コポリアミドを含む。一部の実施形態では、それぞれの芳香族ポリアミドは非晶質コポリアミドである。
【0034】
[0034]1つの例示的な市販のポリアミド製品は、Solvay S.A.からのAmodel A-1006である。
【0035】
[0035]一部の実施形態では、芳香族ポリアミドの濃度は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、25wt%~95wt%、例えば35wt%~85wt%、40wt%~75wt%、25wt%~50wt%、30wt%~50wt%、32wt%~50wt%、35wt%~50wt%、40wt%~50wt%、45wt%~50wt%、47wt%~50wt%、50wt%~70wt%、60wt%~80wt%、55wt%~65wt%、または65wt%~75wt%の範囲である。上限に関しては、ポリアミドの濃度は、95wt%未満、例えば85wt%未満、80wt%未満、75wt%未満、70wt%未満、65wt%未満、60wt%未満、55wt%未満、51wt%未満、50wt%未満、45wt%未満、40wt%未満、35wt%未満、32wt%未満、または30wt%未満であり得る。下限に関しては、ポリアミドの濃度は、25wt%超、例えば30wt%超、32wt%超、35wt%超、40wt%超、45wt%超、49wt%超、50wt%超、55wt%超、60wt%超、65wt%超、または70wt%超であり得る。例えば25wt%未満のようなより低い濃度もまた企図される。
【0036】
[0036]芳香族ポリアミドは、200℃~400℃、例えば270℃~340℃、275℃~330℃、280℃~335℃、285℃~320℃、250℃~350℃、275℃~325℃、260℃~325℃、270℃~320℃、275℃~320℃、280℃~320℃、285℃~315℃、290℃~310℃、または290℃~320℃の範囲の融点を有し得る。
【0037】
[0037]上限に関しては、芳香族ポリアミドは、400℃未満、例えば375℃未満、365℃未満、350℃未満、340℃未満、330℃未満、325℃未満、320℃未満、315℃未満、310℃未満、300℃未満、290℃未満、または285℃未満の融点を有し得る。下限に関しては、芳香族ポリアミドは、200℃超、例えば250℃超、265℃超、270℃超、275℃超、280℃超、285℃超、290℃超、295℃超、300℃超、305℃超、または310℃超の融点を有し得る。場合によっては、ポリアミドは、例えば6I/6Tのような非晶質であり、それ自体の融点を持たない。
【0038】
[0038]芳香族ポリアミドは、25℃~225℃、例えば50℃~200℃、75℃~175℃、100℃~175℃、125℃~175℃、125℃~150℃、85℃~130℃、90℃~125℃、90℃~120℃、90℃~115℃、90℃~110℃、または95℃~110℃の範囲のガラス転移温度、Tgを有し得る。
【0039】
[0039]上限に関しては、芳香族ポリアミドは、225℃未満、例えば、200℃未満、190℃未満、180℃未満、175℃未満、150℃未満、140℃未満、130℃未満、125℃未満、120℃未満、110℃未満、105℃未満、100℃未満、95℃未満、93℃未満、または92℃未満のTgを有し得る。下限に関しては、芳香族ポリアミドは、25℃超、例えば、50℃超、65℃超、75℃超、85℃超、90℃超、95℃超、100℃超、105℃超、110℃超、または115℃超のTgを有し得る。
【0040】
[0040]本明細書で使用される場合、限界点「を超える」および「未満」は、それらと関連する数も含み得る。換言すれば、「超える」および「未満」は、「超えるかまたは等しい」および「未満かまたは等しい」と解釈され得る。この文言は、特許請求の範囲において、「または等しい」を含むと、引き続き修正され得ることが企図される。例えば、「4.0を超える」は、特許請求の範囲において、「4.0を超えるかまたは等しい」と解釈され、引き続き修正され得る。
【0041】
[0041]場合によっては、ポリマー組成物(またはその成分の1つまたは複数における)の化学的特徴は、少なくとも部分的に性能改善に寄与する。本開示の組成物および部品は、例えばポリマー組成物の個々のポリアミドのような組成構成にかかわりなく、化学的特徴によって特徴付けられ得る。場合によっては、本組成物は、100℃~200℃もしくは0℃~84℃のTgを有する低Tgポリマー、またはおよび0℃~160℃もしくは85℃~130℃のTgを有する高Tgポリマーを含む。
【0042】
付加的ポリマー(PA6)含有量
[0042]場合によっては、ポリアミド組成物は、付加的ポリアミドを(芳香族コポリマーに加えて)含む。付加的ポリアミドは広く変化し得て、PA6T、PA6I、およびPA66の含有量を持たない任意のポリアミドを含み得る。場合によっては、ポリアミド組成物は、例えばPA6のようなカプロラクタム含有ポリマーを含む。有利なことに、本発明者らは、ある量のこれらのポリマーの添加が、例えば高温性能および/または加工性改善のような付加的で相乗的な特性改善をもたらすことを見出した。
【0043】
[0043]一部の実施形態では、付加的ポリアミドの濃度は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0wt%~10wt%、例えば0.01wt%~8wt%、0.05wt%~7wt%、0.1wt%~5wt%、0.1wt%~3wt%、0.1wt%~2wt%、または0.1wt%~1wt%の範囲である。上限に関しては、付加的ポリアミドの濃度は、10wt%未満、例えば、9wt%未満、8wt%未満、7wt%未満、6wt%未満、5wt%未満、4wt%未満、3wt%未満、2wt%未満、または1wt%未満であり得る。下限に関しては、付加的ポリアミドの濃度は、0.01wt%超、例えば0.05wt%超、0.07wt%超、0.1wt%超、0.15wt%超、0.2wt%超、0.3wt%超、0.4wt%超、または0.5wt%超であり得る。
【0044】
[0044]本明細書で使用される場合、用語「PA66」、「ナイロン66」および「ポリアミド66」は、ヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸モノマーサブユニットから調製されるホモポリマーを指す。PA66ポリアミドは、ポリマー骨格内に、著しい部分のPA66単位、例えば少なくとも5wt%、少なくとも10wt%、少なくとも20wt%、少なくとも30wt%、少なくとも40wt%、少なくとも50wt%、少なくとも60wt%、少なくとも70wt%、少なくとも80wt%または少なくとも90wt%のPA66単位を含有するポリアミドであり得る。本明細書で使用される場合、用語「PA6」、「ナイロン6」および「ポリアミド6」は、カプロラクタムモノマーサブユニットから調製されるホモポリマーを指す。本明細書で使用される場合、用語「PA66/6」、「ナイロン66/6」および「ポリアミド66/6」は、ヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸モノマーサブユニットから調製され、またカプロラクタムモノマーサブユニットも組み込んでいるコポリマーを指す。本明細書で使用される場合、用語「PA66/6I」、「ナイロン66/6I」、および「ポリアミド66/6I」は、ヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸モノマーサブユニットから調製され、またイソフタル酸モノマーサブユニットも組み込んでいるコポリマーを指す。
【0045】
熱安定剤
[0045]上記のように、場合によっては前述の芳香族ポリアミドは、特定の熱安定剤および滑剤と共に利用されてもよい。これらの成分の組合せは、とりわけ、絶縁耐力および体積抵抗率と共に、改善された(熱劣化)引張/衝撃性能を有するポリマー組成物を相乗的にもたらすことが見出された。
【0046】
[0046]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、例えばフェノールおよび/またはアミン安定剤のような熱安定剤を含む。詳細には、一部のヒンダードフェノール安定剤が、芳香族ポリアミドと予想外に良好に作動し、本明細書で述べられた性能特色を達成することが見出された。例は、N,N’-ヘキサメチレン-ビス-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオンアミド、ビス-(3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)-ブタン酸)-グリコールエステル、2,1’-チオエチルビス-(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、4-4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオネート、またはこれらの安定剤の混合物を含む。場合によっては、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-dit-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミドとの相乗的な結果が見出された。例示的な市販製品は、AddivantからのLowinox(登録商標)HD98、BASFからのIrganox 1098(フェノール)を含むが、これらに限定されない。
【0047】
[0047]他の市販製品は、例えばTreibacher Industrie AGからのHPA 100、HPA 110、および/またはHPA 120のようなAuerStab製品系列を含む。
【0048】
[0048]一部の実施形態では、熱安定剤は、フェノール類、アミン類、ポリオール類、およびこれらの組合せからなる群から選択されてもよい。
【0049】
[0049]例えば、熱安定剤パッケージは、例えば第2級芳香族アミンのようなアミン安定剤を含み得る。例は、フェニレンジアミンとアセトンとの付加物(Naugard A)、フェニレンジアミンとリノレンとの付加物、Naugard 445、N,N’-ジナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-シクロヘキシル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、またはこれらのうちの2種以上の混合物を含む。
【0050】
[0050]他の例は、立体障害フェノールをベースとする熱安定剤を含む。例は、N,N’-ヘキサメチレン-ビス-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオンアミド、ビス-(3,3-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)-ブタン酸)-グリコールエステル、2,1’-チオエチルビス-(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、4-4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオネート、またはこれらの安定剤の混合物を含む。
【0051】
[0051]さらなる例は、ホスファイトおよび/またはホスホナイトを含む。ホスファイトおよびホスホナイトを含む特定の例は、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトルジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトルジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリトリトルジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリトリトルジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリトリトルジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリトリトルジホスファイト、ビス(2,4,6-トリス-(tert-ブチルフェニル)ペンタエリトリトルジホスファイト、トリステアリルソルビトルトリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、6-イソオクチルオキシ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12H-ジベンゾ-[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、6-フルオロ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12-メチル-ジベンゾ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチルホスファイト、およびビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイトである。特に好ましいのは、トリス[2-tert-ブチル-4-チオ(2’-メチル-4’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチル)-フェニル-5-メチル]フェニルホスファイトおよびトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Hostanox(登録商標)PAR24:Clariant社の市販製品、BASFからのBaselまたはOrgafos 168)である。
【0052】
[0052]場合によっては、熱安定剤はラジカル捕捉剤を含み得て、その多くは公知である。一次酸化防止剤は、ペルオキシラジカルおよびアルコキシラジカルと反応して「ラジカル」捕捉剤として作用し、この相互作用は有利であることが見出された。二次酸化防止剤は、ヒドロペルオキシドと反応し、非ラジカル生成物を得る。加水分解的に安定なホスファイトは、ポリマーと一次酸化防止剤の両方を酸化から保護する。
【0053】
[0053]一部の実施形態では、熱安定剤は、銅をベースとする安定剤を含む。理論に束縛されることなく、セリウムをベースとする熱安定剤と銅をベースとする安定剤の活性化温度の組合せが、例えば190℃~220℃または190℃~210℃のような特に有用な範囲において、予想外に熱酸化的安定化をもたらすと考えられる。この特定の範囲は、従来の安定剤パッケージが利用された場合、性能上の相違をもたらすことが示された。本明細書で論じられる量の、銅をベースとする化合物とセリウムをベースとする化合物の組合せを利用することによって、予想外に熱安定化が達成される。
【0054】
[0054]非限定的な例として、銅をベースとする熱安定剤は、一価または二価の銅の化合物、例えば一価もしくは二価の銅と無機酸もしくは有機酸との塩、または一価もしくは二価のフェノール類との塩、一価もしくは二価の銅の酸化物、または銅塩とアンモニア、アミン、アミド、ラクタム、シアニドもしくはホスフィンとの錯化合物、およびこれらの組合せなどを含み得る。一部の好ましい実施形態では、銅をベースとする熱安定剤は、一価または二価の銅とヒドロハロゲン酸、シアン化水素酸または脂肪族カルボン酸との塩、例えば塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、シアン化銅(I)、酸化銅(II)、塩化銅(II)、硫酸銅(II)、酢酸銅(II)、またはリン酸銅(II)などを含み得る。好ましくは、銅をベースとする熱安定剤は、ヨウ化銅および/または臭化銅である。熱安定剤は、以下で論じられるハロゲン化物添加剤と共に利用されてもよい。ステアリン酸銅もまた、第2の熱安定剤として(ステアレート添加剤としてではなく)企図される。場合によっては、電気的用途が最終使用である場合、結合銅熱安定剤が利用されてもよい。
【0055】
[0055]一部の実施形態では、熱安定剤の濃度は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0wt%~10wt%、例えば0.01wt%~8wt%、0.05wt%~7wt%、0.05wt%~5wt%、0.05wt%~3wt%、0.05wt%~2wt%、0.05wt%~1wt%、0.1wt%~1wt%、または0.1wt%~0.5wt%の範囲である。上限に関しては、熱安定剤の濃度は、10wt%未満、例えば9wt%未満、8wt%未満、7wt%未満、6wt%未満、5wt%未満、4wt%未満、3wt%未満、2wt%未満、1wt%未満、または0.5wt%未満であり得る。下限に関しては、熱安定剤の濃度は、0.01wt%超、例えば0.05wt%超、0.07wt%超、0.1wt%超、0.15wt%超、または0.2wt%超であり得る。
【0056】
[0056]一部の実施形態では、複数の熱安定剤が使用される場合、ポリアミド組成物は、0wt%~5.0wt%、例えば0.01wt%~5.0wt%、0.01wt%~4.0wt%、0.02wt%~3.0wt%、0.03~2.0wt%、0.03wt%~1.0wt%、0.04wt%~1.0wt%、0.05wt%~0.5wt%、0.05wt%~0.2wt%、または0.07wt%~0.1wt%の範囲の量の第1の熱安定剤を含む。下限に関しては、ポリアミド組成物は、0.01wt%超、例えば0.02wt%超、0.03wt%超、0.035wt%超、0.04wt%超、0.05wt%超、0.07wt%超、または0.1wt%超の第1の熱安定剤を含み得る。上限に関しては、ポリアミド組成物は、5.0wt%未満、例えば4.0wt%未満、3.0wt%未満、2.0wt%未満、1.0wt%未満、0.5wt%未満、0.2wt%未満、0.1wt%未満、0.05wt%未満、または0.035wt%未満の第1の熱安定剤を含み得る。第1の熱安定剤に加えて、ポリアミド組成物は、第1の熱安定剤とは異なる第2の熱安定剤を含んでもよい。一部の実施形態では、ポリアミド組成物は、0.1wt%~2wt%、例えば0.1wt%~0.6wt%、0.13wt%~0.81wt%、0.18wt%~1.1wt%、0.25wt%~1.5wt%、または0.33wt%~2wt%の範囲の量の第2の熱安定剤を含む。上限に関しては、第2の熱安定剤の濃度は、2wt%未満、例えば1.5wt%未満、1.1wt%未満、0.81wt%未満、0.6wt%未満、0.45wt%未満、0.33wt%未満、0.25wt%未満、0.18wt%未満、または0.13wt%未満であり得る。下限に関しては、第2の熱安定剤の濃度は、0.1wt%超、例えば0.13wt%超、0.18wt%超、0.25wt%超、0.33wt%超、0.45wt%超、0.6wt%超、0.81wt%超、1.1wt%超、または1.5wt%超であり得る。
【0057】
難燃剤
[0057]一般に、ハロゲン系難燃剤の潜在的な環境への悪影響を回避するという要望のために、非ハロゲン系難燃剤が使用される。ハロゲン系難燃剤も同様に企図される。
【0058】
[0058]例示的な非ハロゲン系難燃剤は、リン-またはメラミン-含有の難燃剤を含む。メラミン難燃剤は当技術分野で公知であり、リン酸メラミンおよびシアヌル酸メラミンを含む。リン酸エステルが使用に特に好適である。そのような化合物は、例えば、リン酸のアルキルエステルおよびアリールエステル、例えばリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリブトキシエチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、リン酸クレシルジフェニル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリ(2-エチルヘキシル)、リン酸ジ-イソ-プロピルフェニル、リン酸トリキシレニル、リン酸トリス(イソ-プロピルフェニル)、リン酸トリナフチル、リン酸ビスフェノールAジフェニル、およびリン酸レソルシノールジフェニルなどを含む。一般に使用されるリン酸トリアリールは、例えば、リン酸トリフェニル(TPP)、リン酸クレシルジフェニル、およびリン酸トリクレシルを含む。ポリリン酸アンモニウム(膨張性(intumescent)難燃剤として作用する)などの無機リン酸塩難燃剤もまた利用されてもよい。Fushimi Pharmaceutical社のRabitle FP-100(高純度)、Rabitle FP-110(標準グレード)などのヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン(フェノキシホスファゼンのオリゴマー)は、高い熱安定性を示し、これらの芳香族ポリアミドと共に使用され得る。高い熱安定性の窒素化合物であるメラム(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン-n-(4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン-2-イル)、メレム(2,5,8-トリアミノ-トリ-s-トリアジン)、およびメロン(ポリ[8-アミノ-1,3,4,6,7,9,9b-ヘプタアザフェナレン-2,5-ジイル)イミノ)は、リン難燃剤との相乗剤として使用され得る。
【0059】
[0059]ホスフィネート難燃剤は、Exolit(登録商標)によってOP1230およびOP1400として販売されているものを含み、本明細書に記載の組成物に使用され得る。ホスフィネート難燃剤は、その高い熱安定性および/または防錆性のために望ましくあり得る。
【0060】
[0060]一部の実施形態では、難燃剤(または難燃剤および相乗剤)の濃度は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、0wt%~35wt%、例えば0.01wt%~30wt%、1wt%~30wt%、5wt%~27wt%、5wt%~25wt%、7wt%~20wt%、7wt%~17wt%、10wt%~20wt%、または10wt%~15wt%の範囲である。上限に関しては、難燃剤の濃度は、35wt%未満、例えば、30wt%未満、27wt%未満、25wt%未満、20wt%未満、17wt%未満、または15wt%未満であり得る。下限に関しては、難燃剤の濃度は、0wt%超、例えば0.01wt%超、0.1wt%超、0.5wt%超、1wt%超、5wt%超、7wt%超、または10wt%超であり得る。
【0061】
[0061]本明細書で言及されるこれらの成分は、任意選択のものと考えられてもよい。場合によっては、本開示の組成物は、本項において、例えば、特許請求の範囲の文言によって、1つまたは複数の前述の成分を明示的に除外してもよい。例えば、特許請求の範囲の文言は、本開示の組成物、プロセスなどが、1つまたは複数の前述の成分を利用しないかまたは含まない、例えば、本組成物が難燃剤を含まないと記載するように修正されてもよい。
【0062】
他の添加剤
[0062]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、任意選択で1種または複数の添加剤を含むことができる。一部の実施形態では、添加剤は、触媒、ポリアミド以外のポリマー、接着促進剤、イオン、化合物、熱安定剤および抗酸化剤などの防腐剤、滑剤、流動性向上剤、または当技術分野で公知の他の原料のうちの1種もしくは複数を含む。添加剤(複数可)は、無機安定剤、有機安定剤、難燃剤、滑剤、染料、顔料、成核剤、金属フレーク、衝撃改質剤、帯電防止剤、導電性添加剤、離型剤、蛍光増白剤、接着促進剤、劣化阻害剤、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、UV安定剤、UV吸収剤、UV遮断剤、無機熱安定剤、有機熱安定剤、加工助剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、流動助剤、例えば繊維材料および微粒子充填剤のような補強剤のうちの少なくとも1種を含み得る。これは本明細書において企図される。例えば、本開示の組成物は、難燃剤および/もしくは補強剤(または任意の他の前述の添加剤)を除外してもよい。これは、特許請求の範囲の文言において、1つまたは複数のこれらの成分の明示的除外を支持するものである。
【0063】
[0063]一部の実施形態では、提供された組成物は、上述のもの以外のもう1種の熱安定剤(第2の熱安定剤)を含む。本組成物の1種または複数の熱安定剤は、材料の強度または他の熱特性に著しく悪影響を及ぼすことなく、例えば、より高い作動温度において、性能を改善するように選択され得る。
【0064】
[0064]一部の実施形態では、31%超の全体的芳香族度を有する芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物は、加工助剤として役立つように選択された1種または複数の滑剤を含む。滑剤の種類および相対量は、組成物の加工を改善し、材料の高強度に寄与するように選択され得る。一部の実施形態では、滑剤は、ワックスを含む。一部の実施形態では、滑剤は、ワックスからなる。一部の実施形態では、ワックスは脂肪酸を含む。一部の実施形態では、滑剤は、モンタネートまたはモンタンをベースとする化合物、例えばモンタン酸カルシウムまたはモンタンをベースとするワックスの(部分的)ケン化エステルである。ケン化エステルワックスが非常に高い熱安定性を有するため、そのような滑剤が、前述の芳香族ポリマーおよび/または熱安定剤と良好に作動することが予想外に見出され、本明細書で論じられるように使用された場合、それが改善された離型に予想外に寄与する。
【0065】
[0065]一部の実施形態では、滑剤は、脂肪酸を含む。一部の実施形態では、ワックスは、飽和脂肪酸を含む。一部の実施形態では、滑剤は、飽和脂肪酸からなる。一部の実施形態では、ワックスは、ステアリン酸、ベヘン酸、またはこれらの塩もしくは組合せを含む。一部の実施形態では、滑剤は、ステアリン酸、ベヘン酸、またはこれらの塩もしくは組合せからなる。ステアリン酸塩滑剤は、例えばステアリン酸亜鉛ステアリン酸カルシウム、ジステアリン酸アルミニウム、および/またはステアリン酸カルシウムを含み得る。相乗的な滑剤の市販製品の一例は、ClariantからのLicocareである。
【0066】
[0066]一部の実施形態では、本組成物の1種または複数の滑剤を合わせた濃度は、0wt%~2wt%、例えば0.1wt%~2wt%、0.1wt%~0.6wt%、0.13wt%~0.81wt%、0.18wt%~1.1wt%、0.25wt%~1.5wt%、または0.33wt%~2wt%の範囲である。上限に関しては、滑剤の濃度は、2wt%未満、例えば1.5wt%未満、1.1wt%未満、0.81wt%未満、0.6wt%未満、0.45wt%未満、0.33wt%未満、0.25wt%未満、0.18wt%未満、または0.13wt%未満であり得る。下限に関しては、滑剤の濃度は、0.1wt%超、例えば0.13wt%超、0.18wt%超、0.25wt%超、0.33wt%超、0.45wt%超、0.6wt%超、0.81wt%超、1.1wt%超、または1.5wt%超であり得る。
【0067】
[0067]一部の実施形態では、ポリアミド組成物は、0.1wt%~2wt%、例えば0.1wt%~0.6wt%、0.13wt%~0.81wt%、0.18wt%~1.1wt%、0.25wt%~1.5wt%、または0.33wt%~2wt%の範囲の量の滑剤を含む。上限に関しては、滑剤の濃度は、2wt%未満、例えば1.5wt%未満、1.1wt%未満、0.81wt%未満、0.6wt%未満、0.45wt%未満、0.33wt%未満、0.25wt%未満、0.18wt%未満、または0.13wt%未満であり得る。下限に関しては、滑剤の濃度は、0.1wt%超、例えば0.13wt%超、0.18wt%超、0.25wt%超、0.33wt%超、0.45wt%超、0.6wt%超、0.81wt%超、1.1wt%超、または1.5wt%超であり得る。
【0068】
[0068]一部の実施形態では、提供された組成物は、1種または複数の補強剤、例えば、鉱物補強物もしくは繊維補強物またはこれらの組合せを含む。補強剤は、所望の組成物の熱特性を損なうことなく、組成物の強度特徴をさらに向上させるように選択され得る。充填剤の材料は特に限定されず、当技術分野で公知のポリアミド充填剤から選択されてもよい。非限定的な例として、充填剤は、ガラス繊維および/または炭素繊維、微粒子充填剤、例えば天然および/または合成の層状シリケート、タルク、マイカ、シリケート、石英、二酸化チタン、ケイ灰石、カオリン、非晶質ケイ酸、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、チョーク、石灰、長石、硫酸バリウム、KEVLAR(登録商標)繊維、玄武岩繊維、中実または中空のガラス球またはガラス粉、永久磁性または磁化可能な金属化合物および/もしくは合金ならびに/またはこれらの組合せをベースとする鉱物充填剤など、またこれらの組合せを含み得る。
【0069】
[0069]一部の実施形態では、本組成物の1種または複数の補強剤を合わせた濃度は、15wt%~60wt%、例えば15wt%~42wt%、19.5wt%~46.5wt%、24wt%~51wt%、28.5wt%~55.5wt%、または33wt%~60wt%の範囲である。上限に関しては、補強剤の濃度は、60wt%未満、例えば55.5wt%未満、51wt%未満、46.5wt%未満、42wt%未満、37.5wt%未満、33wt%未満、28.5wt%未満、24wt%未満、または19.5wt%未満であり得る。下限に関しては、補強剤は、15wt%超、例えば19.5wt%超、24wt%超、28.5wt%超、33wt%超、37.5wt%超、42wt%超、46.5wt%超、51wt%超、または55.5wt%超であり得る。
【0070】
[0070]他の場合には、ポリアミド組成物は「ニートな」組成物であり、例えば、ポリアミド組成物は充填剤をほとんど含まないかまたは全く含まない。例えば、ポリアミド組成物は、20wt%未満、例えば17wt%未満、15wt%未満、10wt%未満、または5wt%未満の充填剤を含み得る。範囲に関して、ポリアミド組成物は、0.01wt%~20wt%、例えば0.1wt%~15wt%または0.1wt%~5wt%の充填剤を含み得る。そのような場合には、他の成分の量は、前述の成分の範囲および限界に基づいて、それに合うように調整され得る。当業者は、ガラス充填剤の包含または非包含を考慮して、ポリアミド組成物の他の成分の濃度を調整することができると企図される。
【0071】
性能特徴
[0071]本明細書に開示される組成物の利点は、驚いたことに、予想外の機械的性能、例えば伸び、引張り、および/もしくは衝撃特性、ならびに/または予想外の電気的性能、例えば絶縁耐力、体積抵抗率を同時に提供することができることである(より高い温度および高い湿度環境の両方において)。上で論じた理由に関して、従来のポリアミド組成物が、そのような温度および湿度条件下で、これらの異なる性能特徴を同時に提供することは特に困難である。
【0072】
絶縁耐力(23℃、125℃、150℃)
[0072]絶縁耐力は、ポリアミド組成物が絶縁体として機能する能力の指標となる。本開示の目的に関して、絶縁耐力(DS)は、電流が流れる前の、ポリアミド組成物が抵抗し得る最大電位である。絶縁耐力は、IEC 60243を使用して測定され、単位厚さ(ミリメートル)当たりのキロボルトとして表される。
【0073】
[0073]大部分のプラスチックは、典型的には10KV/mm~30KV/mmの絶縁耐力を有する一方、本明細書に記載の芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物は、より高い絶縁体性能を実証することができる。一部の実施形態では、ポリマー組成物は、IEC 60243によって23℃で測定された場合に、30KV/mm超、例えば35KV/mm超、38KV/mm超、39KV/mm超、40KV/mm超、41KV/mm超、42KV/mm超、43KV/mm超、44KV/mm超、または45KV/mm超の絶縁耐力を示す。
【0074】
[0074]高温時に、本明細書に記載の芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物は、依然として良好な絶縁体特性を有する。一部の実施形態では、ポリマー組成物は、IEC 60243によって125℃で測定された場合に、25KV/mm超、例えば、27KV/mm超、35KV/mm超、36KV/mm超、37KV/mm超、38KV/mm超、39KV/mm超、または40KV/mm超の絶縁耐力を示す。
【0075】
[0075]さらに要求の厳しい条件および高温下でさえも、本明細書に記載の芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物は、依然として良好な絶縁体特性を有する。一部の実施形態では、ポリマー組成物は、IEC 60243によって150℃で測定された場合に、25KV/mm超、例えば、27KV/mm超、35KV/mm超、36KV/mm超、37KV/mm超または38KV/mm超の絶縁耐力を示す。
【0076】
[0076]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、湿度老化下(85℃/85%で1000+時間)で、30KV/mm超、例えば、33KV/mm超、35KV/mm超、36KV/mm超、または37KV/mm超の絶縁耐力を示す。
【0077】
[0077]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、湿度老化下(85℃/85%で1000+時間)で、5%超、例えば10%超、25%超、35%超、50%超、75%超、または90%超の絶縁耐力保持率を示す。
【0078】
体積抵抗率
[0078]電気的性能における改善はまた、高い体積抵抗率によっても測定され得る。電気絶縁体として作動するために、ポリマー組成物は、10E+9オーム-cm超の体積抵抗率を持たなければならない。
【0079】
[0079]一部の実施形態では、本明細書に記載の芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物は、IEC 62631によって23℃で測定された場合に、1.0E+14オーム-cm超、例えば、1.5E+14オーム-cm超、1.0E+15超、7.0E+15超、1.0E+16超、1.3E+16超、1.45E+16超、1.5E+16超、または1.6E+16超の体積抵抗率を示す。
【0080】
[0080]一部の実施形態では、本明細書に記載の芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物は、IEC 62631によって125℃で測定された場合に、1.0E+11オーム-cm超、例えば、8.0E+11オーム-cm超、1.0E+12超、2.0E+12超、5.0E+12超、1.0E+13超、1.5E+13超、1.75E+13超、2.0E+13超、または1.0E+14超の体積抵抗率を示す。
【0081】
[0081]一部の実施形態では、本明細書に記載の芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物は、IEC 62631によって150℃で測定された場合に、1.0E+10オーム-cm超、例えば、1.0E+11超、5.0E+11超、5.5E+11超、2.0E+11超、1.0E+12超、1.5E+12超、または2.0E+12超の体積抵抗率を示す。
【0082】
[0082]一部の実施形態では、本明細書に記載の芳香族ポリアミドを含むポリマー組成物は、湿度老化下(85℃/85%で1000+時間)で、1.0E+13オーム-cm超、例えば5.0E+13超、1.0E+14超、5.0E+14超、または1.0E+15超の体積抵抗率を示す。
【0083】
[0083]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、湿度老化下(85℃/85%で1000+時間)で、5%超、例えば、10%超、25%超、35%超、50%超、75%超、または90%超の体積抵抗率保持率を示す。
【0084】
引張強度
[0084]例えばこれらの組成物から製造される製品は、引張力から生じる破損への抵抗力を付随するため、ポリマー組成物が高い引張強度を有することは有益であり得る。本明細書に開示される組成物は、高温減衰特性を向上させるように修正されていない従来のポリマー組成物と比較して、引張強度の低下がないことを有利に実証し得る。引張強度は、例えば標準試験法であるASTM D882-18(2018)またはISO 527-2(2012)を用いて測定され、任意選択で23℃および/または場合によってはさまざまな熱劣化/湿度老化条件下で測定され得る。
【0085】
[0085]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、100MPa超、例えば110MPa超、130MPa超、140MPa超、146MPa超、150MPa超、160MPa超、165MPa超、170MPa超または173MPa超の引張強度(成形したままの乾燥状態)を示す。
【0086】
[0086]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、75MPa超、例えば85MPa超、95MPa超、105MPa超、110MPa超、125MPa超、150MPa超、165MPa超、または170MPa超の引張強度(平衡水分に調節)を示す。
【0087】
[0087]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、湿度老化下(85℃/85%で1000+時間)で、85MPa超、例えば95MPa超、100MPa超、105MPa超、110MPa超、115MPa超、120MPa超、または124MPa超の引張強度を示す。
【0088】
引張伸び
[0088]ポリマー組成物の強度はまた、その伸び特性に関して特徴付けられ得る。これらの材料から製造される製品は、低い伸びを有する材料が裂けるかまたは破裂する原因となり得る延伸力に付されることが多いため、ポリマー材料が高い伸びを有することは有益であり得る。本明細書に開示される組成物は、高温減衰特性を向上させるように修正されていない従来のポリマー組成物と比較して、伸びの低下がないことを有利に実証する。伸びは、例えば、標準試験法であるASTM D882-18 (2018)またはISO 527-2 (2012)を用いて測定され得る。
【0089】
[0089]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、1.5超、例えば1.75超、1.8超、2.0超、2.05超、または2.1超、2.2超、2.4超、または2.6超の引張伸び(成形したままの乾燥状態)を示す。
【0090】
[0090]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、1.5超、例えば、1.75超、1.8超、2.0超、2.05超、2.1超、2.2超、2.4超、2.6超、または2.8超の引張伸び(平衡水分に調節)を示す。
【0091】
[0091]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、湿度老化下(85℃/85%で1000+時間)で、1.0超、例えば1.2超、1.5超、1.7超、1.8超の引張伸びを示し、
[0092]2.0超、2.1超、2.2超、2.4超、または2.6超。
【0092】
引張弾性率
[0093]ポリマー組成物の引張弾性率は、延伸力に対する組成物の抵抗力の指標である。低弾性率は、その組成物から製造される製品の弾性を増加させ、これらの製品が延伸または熱形成に関連する加工ステップをより容易に受け容れるようにし得るため、ポリマー組成物が低い引張弾性率を有することは有益であり得る。本明細書に開示される組成物は、高温減衰特性を向上させるように修正されていない従来のポリマー組成物と比較して、引張弾性率の増加がないことを有利に実証し得る。引張弾性率は、例えば、標準試験法であるASTM D882-18(2018)またはISO 527-2(2012)を用いて測定され得る。
【0093】
[0094]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、10000MPa超、例えば10500MPa超、11000MPa超、11200MPa超、11500MPa超、または12000MPa超の引張弾性率(成形したままの乾燥状態)を示す。
【0094】
[0095]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、8500MPa超、例えば9000MPa超、9500MPa超、10000MPa超、11000MPa超、12000MPa超、または13000MPa超の引張弾性率(平衡水分に調節)を示す。
【0095】
耐衝撃性
[0096]ポリマー組成物の衝撃強度は、ショック負荷による破壊に対する組成物の抵抗力の指標である。本明細書に開示される組成物は、高温減衰特性を向上させるように修正されていない従来のポリマー組成物と比較して、衝撃強度の低下がないことを有利に実証し得る。衝撃強度は、例えば、標準試験法であるISO 179(2010)を使用して、切り込み付きシャルピー衝撃強度または切り込み無しシャルピー衝撃強度に関して測定され得る。
【0096】
[0097]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、7.0kJ/m2超、例えば7.5kJ/m2超、8.0kJ/m2超、8.5kJ/m2超、9.0kJ/m2超、または9.5kJ/m2超の切り込み付きシャルピー衝撃強度(成形したままの乾燥状態)を示す。
【0097】
[0098]一部の実施形態では、ポリマー組成物は、6.5kJ/m2超、例えば、7.0kJ/m2超、7.5kJ/m2超、8.0kJ/m2超、8.5kJ/m2超、9.0kJ/m2超、または9.5kJ/m2超の切り込み付きシャルピー衝撃強度(平衡水分に調節)を示す。一部の実施形態では、ポリマー組成物は、湿度老化下(85℃/85%で1000+時間)で、6.5kJ/m2超、例えば7.0kJ/m2超、7.5kJ/m2超、8.0kJ/m2超、8.5kJ/m2超、9.0kJ/m2超、または9.5kJ/m2超の切り込み付きシャルピー衝撃強度を示す。
【0098】
[0099]付加的性能特色の改善もまた企図される。
【0099】
用途(接続部品/自動車部品)
[0100]場合によっては、本組成物は、電動車両用途、例えば、バッテリ電動車両(BEV)およびプラグインハイブリッド電動車両(PHEV)などの高電圧コネクタ電動車両(EV)用途に特に有用である。前述の絶縁耐力および体積抵抗率は、特により高い温度において、これらの用途で相乗的に作動することが見出された。
【実施例】
【0100】
[0101]本実施形態は、ここで、以下の実施例および比較例を使用してより詳細に記載される。しかしながら、本実施形態は、これらの実施例のみに限定されるわけではない。
【0101】
[0102]6つの試料組成物を調製し、芳香族度を表1に示す。
【0102】
【0103】
[0103]樹脂A、B、E、およびFを、表2に示す量の添加剤と合わせ、2軸スクリュー押出機中で混ぜ合わせた。組成物を溶融し、添加剤を溶融物に添加し、得られた混合物を押出し、ペレット化した。次に、この材料を、試験用標本に射出成形した。非ハロゲン系難燃性添加剤は、Exolit(登録商標)OP1230であり、Clariantから入手可能であった。熱安定剤は、立体障害フェノール抗酸化剤(NA-246)である。滑剤は高融点の乳化ワックス(Licocare RBW 330P TP Vita)であり、Clariantから入手可能である。比較例Cには、カーボンブラック(NA-271;PA6中20%のC Black)もまた添加した。比較例AおよびBは完全配合した樹脂であり、さらなる加工は行わなかった。
【0104】
【0105】
[0104]実施例2は、313℃の融点(Tm)および256℃の結晶点(Tc)を有する。比較例Cは、282℃の融点(Tm)および219℃の結晶点(Tc)を有する。
【0106】
体積抵抗率
[0105]体積抵抗率値は、IEC 62631-3-1:2016に準拠して決定する。この手順に従って、標準標本(例えば、1メートル立方体)を2つの電極の間に置く。電圧を60秒間印可し、抵抗力を測定する。体積抵抗率を、材料中の電流に平行な電位勾配(V/mにおける)と、電流密度との比として決定する。SI単位では、体積抵抗率は、材料の1メートル立方体の対向する面間の直流抵抗力(オーム-mまたはオーム-cm)と数値的に等しい。
【0107】
[0106]実施例1に従って調製した樹脂を、体積抵抗率(VR)を決定するために室温(23℃)、125℃、および150℃において試験して、結果を下の表2に示す。樹脂を、成形したままの乾燥状態にした後に、高湿条件に曝露した後の体積抵抗率を決定するために、さらに試験した。試験1では、試験前に、樹脂を50%湿度に23℃で48K時間にわたり曝露した。試験2では、試験前に、樹脂を85%湿度に85℃で3K時間、次に50%湿度に23℃で48K時間にわたり曝露した。これらの結果もまた、下の表3に示す。
【0108】
【0109】
[0107]実施例1および2は、23℃~125℃で体積抵抗率において、比較樹脂より小さい変化を示す。これは、比較例A、B、C、およびDと比較して、実施例1および2における樹脂の増加した安定性を示している。
【0110】
[0108]表2から分かるように、実施例1は、試験した全温度にわたり、優れた体積抵抗率を表した。実施例2は、比較樹脂AおよびBと異なり、高湿条件への曝露後でさえ、試験した全温度にわたり、優れた体積抵抗率を表した。全般に、実施例1および2は、全範疇において、比較樹脂より著しく良好に機能する。
【0111】
絶縁耐力
[0109]絶縁耐力を、ASTM D149およびIEC 60243に準拠して決定する。この手順に従って、材料を通して絶縁破壊を生じるのに必要とされる最大電圧を測定し、単位厚さ当たりのボルトとして表し、より高い絶縁耐力はより良好な絶縁体を示す。
【0112】
[0110]一般的に0.8~3.2mm厚さのプラークである材料を試験するために、2つの電極間にプラークを入れ、2つの電極間に電圧を印可することによって試験する。電圧を、均一な速度でゼロから絶縁破壊まで上げる。破壊は、電気的溶け落ちが試料に穴をあけるか、または試料を崩壊する場合と定義する。電圧上昇の速度は、試料が絶縁破壊に到達するのに必要とする時間によって決定する。次に、材料の絶縁耐力は、破壊電圧を試料の厚さで除算することによって算出される。
【0113】
[0111]実施例1に従って調製した樹脂を、絶縁耐力(DS)を決定するために室温(23℃)、125℃、150℃、および1K時間後に150℃において試験して、結果を下の表4に示す。樹脂を、高湿条件に曝露した後の絶縁耐力を決定するために、さらに試験した。試験3では、試験前に、樹脂を50%湿度に23℃で48k時間にわたり曝露した。試験4では、試験前に、樹脂を85%湿度に85℃で3k時間、曝露した。これらの結果もまた、下の表3に示す。
【0114】
【0115】
[0112]実施例1および2は、比較例と同様の結果をもたらすか、または比較樹脂より性能が優れている。特に注目すべきは、より過酷な条件下(より高い温度でより長時間、高湿条件に曝露した後の試験)における実施例1および2の性能であり、これは比較樹脂の性能より著しく良好である。
【0116】
実施例4
引張強度、引張伸び、および引張弾性率
[0113]引張強度、伸び、および弾性率は、ASTM D638に準拠して測定され得る。引張強度は、材料が破壊するかまたは回復不能に延伸する前に、材料に印可された力の量を表す。引張伸びは、破壊後の試料の長さの増加を測定し元の長さで除算することによって、材料の延性を表す。引張弾性率は、材料が屈する前に受ける変形の量を測定することによって、材料の剛性を表す。
【0117】
[0114]実施例1に従って調製した樹脂を、引張強度(TS)および引張伸び(TE)を決定するために試験した。引張強度を、周囲条件下(試験5)、23℃および50%湿度で48k時間後(試験6)、ならびに85℃および85%湿度で3k時間後(試験7)に測定した。引張伸びを、周囲条件下(試験8)、23℃および50%湿度で48k時間後(試験9)、ならびに85℃および85%湿度で3k時間後(試験10)に測定した。引張弾性率(試験11)は表4に含まれる。
【0118】
【0119】
衝撃強度および曲げ強度
[0115]衝撃強度は、破砕中に試料によって吸収されるエネルギー量を決定することによって測定され得る。シャルピー衝撃およびシャルピー切り込み試験は、ASTM A370を使用して衝撃強度を決定するために使用され得て、この試験では既知の質量および長さの振り子を切り込み付き試料上に落下させる。材料に移行されたエネルギーは、破砕の前と後の振り子の高さにおける差異を比較することによって決定され得る。曲げ強度および曲げ弾性率は材料の剛性を表し、ASTM D790に準拠して測定され得て、ここでは、力が試料に印可された場合の、試料の変形に対する抵抗力を測定する。最後に、熱変形温度はASTM D648に準拠して測定され得る。本試験は、負荷下で、試料が特定の距離だけたわむ温度を決定する。
【0120】
[0116]実施例1に従って調製した樹脂を、切り込み付きシャルピー衝撃(試験12)、23℃および50%湿度で48K時間超の後のシャルピー衝撃(試験13)、ならびに85℃および85%湿度で3K時間後のシャルピー衝撃(試験14)を決定するために試験し、結果を表5に示す。曲げ強度(試験15)および曲げ弾性率(試験16)の試験結果を表6に示す。1.8MPaにおける熱変形温度(試験17)も、表6に示す。
【0121】
【0122】
実施形態
[0117]以下の実施形態が企図される。特色および実施形態の全ての組合せが企図される。
【0123】
[0118]実施形態1:テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位を含み、かつ20%を超える全体的芳香族度を有する芳香族ポリアミド;熱安定剤;任意選択の滑剤を含み、ポリマー組成物が、23℃で測定された146MPaを超える引張強度(成形したままの乾燥状態)およびIEC62631によって150℃で測定された場合に1.0E+10オーム-cmを超える体積抵抗率を示す、ポリアミド組成物。
【0124】
[0119]実施形態2:芳香族ポリアミドが、35%を超える全体的芳香族度を有する、実施形態1に記載の実施形態。
【0125】
[0120]実施形態3:芳香族ポリアミドが、テレフタル酸、イソフタル酸、およびアジピン酸の繰り返し単位を含み、かつ32%を超える全体的芳香族度を有する、実施形態1または2に記載の実施形態。
【0126】
[0121]実施形態4:芳香族ポリアミドが、PA6T/DT、6I/6T、6T/6I/66、もしくは6T/66/6I、またはこれらの組合せを含む、実施形態1から3のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0127】
[0122]実施形態5:芳香族ポリマーが、PA6T/6I/66もしくはPA6T/66/6Iまたはこれらの組合せである、実施形態1から4のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0128】
[0123]実施形態6:テレフタル酸単位とイソフタル酸単位を合わせた含有量と、アジピン酸単位の含有量との差異が、30~100の範囲である、実施形態1から5のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0129】
[0124]実施形態7:芳香族ポリアミドが、芳香族ポリアミドの総重量に基づいて、35wt%~100wt%のテレフタル酸単位を含む、実施形態1から6のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0130】
[0125]実施形態8:芳香族ポリアミドが、芳香族ポリアミドの総重量に基づいて、10wt%~70wt%のイソフタル酸単位を含む、実施形態1から7のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0131】
[0126]実施形態9:0wt%~10wt%のPA6をさらに含む、実施形態1から8のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0132】
[0127]実施形態10:ポリマー組成物が、ポリマー組成物の総重量に基づいて、25wt%~95wt%の芳香族ポリアミドを含む、実施形態1から9のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0133】
[0128]実施形態11:熱安定剤が、ヒンダードフェノールである、実施形態1から10のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0134】
[0129]実施形態12:熱安定剤が、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-dit-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミドである、実施形態1から11のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0135】
[0130]実施形態13:滑剤が、モンタネートである、実施形態1から12のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0136】
[0131]実施形態14:組成物が、85℃の温度および85%の相対湿度で1000時間水分処理された場合に、85MPaを超える引張強度を示し、85℃の温度および85%の相対湿度で1000時間水分処理された場合に、5.0E+13オーム-cmを超える体積抵抗率を示す、実施形態1から13のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0137】
[0132]実施形態15:25%を超える全体的芳香族度を有する6T/DTコポリマー;熱安定剤;任意選択の滑剤を含み、23℃で測定された146MPaを超える引張強度(成形したままの乾燥状態)およびIEC 62631によって150℃で測定された場合に1.0E+10オーム-cmを超える体積抵抗率を示す、ポリマー組成物。
【0138】
[0133]実施形態16:テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位を含み、かつ25%を超える全体的芳香族度を有する6I/6Tコポリマー;熱安定剤;任意選択の滑剤を含み、23℃で測定された146MPaを超える引張強度(成形したままの乾燥状態)およびIEC 62631によって150℃で測定された場合に1.0E+10オーム-cmを超える体積抵抗率を示す、ポリマー組成物。
【0139】
[0134]実施形態17:テレフタル酸単位、イソフタル酸単位、およびアジピン酸単位を含み、かつ25%を超える全体的芳香族度を有するターポリマー;熱安定剤;任意選択の滑剤を含み、23℃で測定された146MPaを超える引張強度(成形したままの乾燥状態)およびIEC 62631によって150℃で測定された場合に1.0E+10オーム-cmを超える体積抵抗率を示す、ポリマー組成物。
【0140】
[0135]実施形態18:全単位の総重量に基づいて、25wt%~45wt%のテレフタル酸単位;および55wt%~75wt%のイソフタル酸単位を含む6I/6Tコポリマー;0wt%~20wt%のカプロラクタムをベースとするポリアミド;熱安定剤;ならびに任意選択の滑剤を含むポリマー組成物。
【0141】
[0136]実施形態19:全単位の総重量に基づいて、50wt%~65wt%のテレフタル酸単位;20wt%~30wt%のイソフタル酸単位;および10wt%~25wt%のアジピン酸単位を含む6T/6I/66ターポリマー;ならびに0wt%~20wt%のカプロラクタムをベースとするポリアミド;熱安定剤;任意選択の滑剤を含むポリマー組成物。
【0142】
[0137]実施形態20:全単位の総重量に基づいて、45wt%~60wt%のテレフタル酸単位;12wt%~27wt%のイソフタル酸単位;および25wt%~40wt%のアジピン酸単位を含む6T/66/6Iターポリマー;ならびに0wt%~20wt%のカプロラクタムをベースとするポリアミド;熱安定剤;任意選択の滑剤を含むポリマー組成物。
【0143】
[0138]実施形態21:テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位を含み、かつ31%を超える全体的芳香族度を有する芳香族ポリアミド;熱安定剤;および任意選択の滑剤を含み、IEC 62631によって150℃で測定された場合に1.0E+10オーム-cmを超える体積抵抗率を示す、ポリマー組成物。
【0144】
[0139]実施形態22:ポリマー組成物が、IEC 60243によって150℃で測定された場合に25KV/mmを超える絶縁耐力を示す、実施形態21に記載の実施形態。
【0145】
[0140]実施形態23:ポリマー組成物が、湿度老化下で絶縁耐力保持率を保つ、実施形態21から22のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0146】
[0141]実施形態24:芳香族ポリアミドが、35%を超える全体的芳香族度を有する、実施形態21から23のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0147】
[0142]実施形態25:芳香族ポリアミドが、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位およびアジピン酸単位を含み、かつ32%を超える全体的芳香族度を有する、実施形態21から24のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0148】
[0143]実施形態26:芳香族ポリアミドが、6I/6T、6T/6I/66、もしくは6T/66/6I、またはこれらの組合せを含む、実施形態21から25のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0149】
[0144]実施形態27:芳香族ポリマーが、PA6T/6I/66もしくはPA6T/66/6Iまたはこれらの組合せである、実施形態21から26のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0150】
[0145]実施形態28:テレフタル酸単位とイソフタル酸単位を合わせた含有量と、アジピン酸単位の含有量との差異が、30~100の範囲である、実施形態21から27のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0151】
[0146]実施形態29:芳香族ポリアミドが、芳香族ポリアミドの総重量に基づいて、35wt%~100wt%のテレフタル酸単位を含む、実施形態21から28のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0152】
[0147]実施形態30:芳香族ポリアミドが、芳香族ポリアミドの総重量に基づいて、10wt%~70wt%のイソフタル酸単位を含む、実施形態21から29のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0153】
[0148]実施形態31:0wt%~10wt%のPA6をさらに含む、実施形態21から30のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0154】
[0149]実施形態32:ポリマー組成物が、ポリマー組成物の総重量に基づいて、25wt%~95wt%の芳香族ポリアミドを含む、実施形態21から31のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0155】
[0150]実施形態33:熱安定剤が、ヒンダードフェノールである、実施形態21から32のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0156】
[0151]実施形態34:熱安定剤が、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-dit-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミドである、実施形態21から33のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0157】
[0152]実施形態35:滑剤が、モンタネートである、実施形態21から34のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0158】
[0153]実施形態36:組成物が、85℃の温度および85%の相対湿度で1K時間水分処理された場合に、85MPaを超える引張強度を示し、85℃の温度および85%の相対湿度で1K時間水分処理された場合に、5.0E+13オーム-cmを超える体積抵抗率を示す、実施形態21から35のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0159】
[0154]実施形態37:25%を超える全体的芳香族度を有する6T/DTコポリマー、熱安定剤、および任意選択の滑剤を含み、IEC 62631によって150℃で測定された場合に1.0E+10オーム-cmを超える体積抵抗率を示す、ポリマー組成物。
【0160】
[0155]実施形態38:ポリマー組成物が、IEC 60243によって150℃で測定された場合に25KV/mmを超える絶縁耐力を示す、実施形態37に記載の実施形態。
【0161】
[0156]実施形態39:熱安定剤が、ヒンダードフェノールである、実施形態37から38のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0162】
[0157]実施形態40:熱安定剤が、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-dit-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミドである、実施形態37から39のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0163】
[0158]実施形態41:滑剤が、モンタネートである、実施形態37から40のいずれかの実施形態に記載の実施形態。
【0164】
[0159]本発明を詳細に説明してきたが、前述の議論、当技術分野の関連する知識、ならびに背景技術および発明を実施するための形態と関連して上で論じられた、その開示が参照により本明細書に全て組み込まれる参照文献を鑑みれば、本発明の趣旨および範囲内の修正が、当業者には容易に明らかであろう。加えて、本発明の態様、ならびに以下および/または添付の特許請求の範囲で言及されるさまざまな実施形態およびさまざまな特色の部分は、全体的または部分的のいずれかで組み合わせられまたは交換され得ることが理解されよう。前述のさまざまな実施形態の記載において、別の実施形態に言及するこれらの実施形態は、当業者に理解されるように、他の実施形態と適切に組み合わせられてもよい。さらに、前述の記載は一例としてのみであり、本発明を限定することを意図するものではないことが、当業者には理解されよう。
【国際調査報告】