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特表2024-542162PEMFC電解質膜用耐久性向上剤、これを含むPEMFC用複合電解質膜およびPEMFC用膜-電極接合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】PEMFC電解質膜用耐久性向上剤、これを含むPEMFC用複合電解質膜およびPEMFC用膜-電極接合体
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/1051 20160101AFI20241106BHJP
   H01M 8/1018 20160101ALI20241106BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20241106BHJP
   H01M 8/1053 20160101ALI20241106BHJP
【FI】
H01M8/1051
H01M8/1018
H01M8/10 101
H01M8/1053
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527097
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2022013804
(87)【国際公開番号】W WO2023080427
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0149037
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0061939
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524169135
【氏名又は名称】サン-ア フロンテック シーオー.,エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100212392
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 悠
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジ ホン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ソンギ
(72)【発明者】
【氏名】リ ミンジン
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA05
5H126BB06
5H126FF05
5H126GG02
5H126GG11
5H126GG12
5H126GG18
5H126JJ05
(57)【要約】
本発明は、PEMFC用高耐久性増強剤、これを用いて製造したPEMFC用複合電解質膜および膜-電極接合体に関し、PEMFC電解質膜を薄膜化する場合、劣化によって電解質膜の耐久性が低下するが、本発明の高耐久性増強剤は、電解質膜の劣化を抑制することによって、劣化によって電解質膜の耐久性が低下するのを防止し、高い寸法安定性、機械的物性および電気的安定性を有するPEMFC用複合電解質膜および膜-電極接合体に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白金(Pt)および前記白金を担持した担体を含み、
前記白金は、ナノサイズの白金粉末であり、前記白金粉末が担体の表面に結合して一体化しており、
前記担体は、CeO、GDC(Gd doped Ceria)、IrO、SnOおよびTiの中から選択された1種以上を含むことを特徴とするPEMFC電解質膜用耐久性向上剤。
【請求項2】
前記GDCは、下記化学式(1)で表される化合物であり、ガドリニウム(Gd)がセリア格子にドープされたことを特徴とする請求項1に記載のPEMFC電解質膜用耐久性向上剤;
【化1】

化学式(1)中、xは、0<x≦0.3を満たす整数であり、yは、化合物を電気的中性とする酸素空孔値であり、0<y≦0.25を満たす整数である。
【請求項3】
前記白金粉末の粒度(D50)は、0.1~50nmであり、
前記担体は、粒度(D50)が10~2,000nmであることを特徴とする請求項1に記載のPEMFC電解質膜用耐久性向上剤。
【請求項4】
前記耐久性向上剤は、BET比表面積が10~500m/gであることを特徴とする請求項1に記載のPEMFC電解質膜用耐久性向上剤。
【請求項5】
白金0.01~6.00重量%および前記白金を担持した担体を全重量%中の残量で含むことを特徴とする請求項1に記載のPEMFC電解質膜用耐久性向上剤。
【請求項6】
前記担体がCeOであるとき、高耐久性向上剤全重量に対して白金粒子0.01~6.00重量%を含み、
前記担体がIrOであるとき、高耐久性向上剤全重量に対して白金粒子0.01~4.50重量%を含み、
前記担体がSnOであるとき、高耐久性向上剤全重量に対して白金粒子0.01~3.00重量%を含み、
前記担体がTiであるとき、高耐久性向上剤全重量に対して白金粒子0.01~5.50重量%を含むことを特徴とする請求項1に記載のPEMFC電解質膜用高耐久性向上剤。
【請求項7】
前記白金粒子および前記白金粒子を担持したCeOを担体として含むセリウム系複合体と;
前記白金粒子および担体として含む非セリウム系複合体と;を含み、
非セリウム系複合体の担体は、IrO、SnOおよびTiの中から選択された1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のPEMFC電解質膜用高耐久性向上剤。
【請求項8】
前記セリウム系複合体および前記非セリウム系複合体を1:0.1~50重量比で含むことを特徴とする請求項7に記載のPEMFC電解質膜用高耐久性向上剤。
【請求項9】
前記白金粒子および前記白金粒子を担持したCeOを担体として含むセリウム系複合体と;
白金(Pt)粒子および前記白金粒子を担持したGDC担体を含むガドリニウム系複合体と;を含むことを特徴とする請求項1に記載のPEMFC電解質膜用高耐久性向上剤。
【請求項10】
前記セリウム系複合体および前記ガドリニウム系複合体を1:0.05~10重量比で含むことを特徴とする請求項9に記載のPEMFC電解質膜用高耐久性向上剤。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の耐久性向上剤を含むことを特徴とするPEMFC用複合電解質膜。
【請求項12】
前記PEMFC用複合電解質膜は、第1電解質層、第1支持体層および第2電解質層が順次に積層された電解質膜であり、
前記第1電解質層および前記第2電解質層の中から選択されたいずれか1層以上は、前記耐久性向上剤、セリウム(Ce)系ラジカルスカベンジャーおよびイオノマーを含み、
前記PEMFC用複合電解質膜の平均厚さは、5~30μmであることを特徴とする請求項11に記載のPEMFC用複合電解質膜。
【請求項13】
前記第1電解質層および前記第2電解質層の中から選択されたいずれか1層以上は、セリウム(Ce)系ラジカルスカベンジャーをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載のPEMFC用複合電解質膜。
【請求項14】
前記第1電解質層は、アノード電極方向の電解質層であり、前記第2電解質層は、カソード電極方向の電解質層であり、
第1電解質層および第2電解質層は、前記高耐久性向上剤を含み、
前記第1電解質層内高耐久性向上剤含有量および第2電解質層内高耐久性向上剤含有量は、0.05~1.0:1重量比であることを特徴とする請求項11に記載のPEMFC用複合電解質膜。
【請求項15】
前記PEMFC用複合電解質膜は、アノード電極からカソード電極方向に、
第1電解質層、第1支持体層、第2電解質層、第2支持体層および第3電解質層が順次に積層された複合電解質膜;または
第1電解質層、第1支持体層、第2電解質層、第2支持体層、第3電解質層、第3支持体層および第4電解質層が順次に積層された複合電解質膜;であり、
前記第1電解質層、第2電解質層、第3電解質層および第4電解質層それぞれは、独立して、前記高耐久性向上剤を含み、電解質層内高耐久性向上剤含有量は、カソード電極を基準として含有量が低くなる勾配を有することを特徴とする請求項11に記載のPEMFC用複合電解質膜。
【請求項16】
前記PEMFC用複合電解質膜は、アノード電極からカソード電極方向に、
第1電解質層、第2電解質層、および第3電解質層が順次に積層された複合電解質膜;または
第1電解質層、第2電解質層、第3電解質層および第4電解質層が順次に積層された複合電解質膜;であり、
前記複合電解質膜は、第1電解質層と第2電解質層の間、第2電解質層と第3電解質層の間、または第3電解質層と第4電解質層の間に支持体層を含み、
前記第1電解質層、第2電解質層、第3電解質層および第4電解質層それぞれは、独立して、前記高耐久性向上剤を含み、電解質層内高耐久性向上剤含有量は、カソード電極を基準として含有量が低くなる勾配を有することを特徴とする請求項11に記載のPEMFC用複合電解質膜。
【請求項17】
前記PEMFC用複合電解質膜は、PEMFC用膜-電極接合体への適用時に、アノード方向からカソード方向に第1電解質層、第1支持体層および第2電解質層が順次に積層された電解質膜であり、
前記PEMFC用複合電解質膜は、下記条件(2)を満たすことを特徴とする請求項11に記載のPEMFC用複合電解質膜;
条件(2)A≦A
前記条件(2)において、Aは、第1電解質層内耐久性向上剤の含有量、Aは、第2電解質層内耐久性向上剤の含有量を示す。
【請求項18】
前記PEMFC用複合電解質膜は、PEMFC用膜-電極接合体への適用時に、アノード方向からカソード方向に第1電解質層、第1支持体層、第2電解質層、第2支持体層および第3電解質層が順次に積層された複合電解質膜であり、
前記第1電解質層、前記第2電解質層および第3電解質層の中から選択されたいずれか1層以上は、前記耐久性向上剤を含み、
前記PEMFC用複合電解質膜は、下記条件(3)および(4)を全部満たすことを特徴とする請求項11に記載のPEMFC用複合電解質膜;
(3)B≦A、B≦A、B≦A
(4)B≦A、B≦A、B≦A
前記条件(3)において、Aは、第1電解質層の厚さ、Aは、第2電解質層の厚さ、Aは、第3電解質層の厚さ、Bは、第1支持体層の厚さを示し、前記条件(4)において、Aは、第1電解質層の厚さ、Aは、第2電解質層の厚さ、Aは、第3電解質層の厚さ、Bは、第2支持体層の厚さを示す。
【請求項19】
前記PEMFC用複合電解質膜は、PEMFC用膜-電極接合体への適用時に、アノード方向からカソード方向に第1電解質層、第1支持体層、第2電解質層、第2支持体層および第3電解質層が順次に積層された複合電解質膜であり、
前記PEMFC用複合電解質膜は、下記条件(5)または条件(6)を満たすことを特徴とする請求項11に記載のPEMFC用複合電解質膜;
条件(5)A≦A≦A
条件(6)A≦A、A≦A、A≦A
前記条件(5)および(6)において、Aは、第1電解質層内耐久性向上剤の含有量、Aは、第2電解質層内耐久性向上剤の含有量、Aは、第3電解質層内耐久性向上剤の含有量を示す。
【請求項20】
アノード(酸化電極);請求項11に記載のPEMFC用複合電解質膜;およびカソード(還元電極);を含むことを特徴とするPEMFC用膜-電極接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PEMFC用膜-電極接合体の電解質膜の劣化(Chemical Degradation)を抑制する高耐久性向上剤、これを適用して製造したPEMFC用複合電解質膜および膜-電極接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料(水素またはメタノール)と酸化剤(酸素)を電気化学的に反応させて発生する化学的エネルギーを直接電気的エネルギーに変換する発電システムであり、高いエネルギー効率性と汚染物排出の少ない環境にやさしい特徴を有し、次世代エネルギー源として研究開発されている。燃料電池は、適用分野によって高温用および低温用燃料電池を選択して使用することができ、通常、電解質の種類によって分類されているが、高温用には、固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell,SOFC)、溶融炭酸塩燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell,MCFC)などがあり、低温用には、アルカリ電解質燃料電池(Alkaline Fuel Cell,AFC)および高分子電解質燃料電池(Polymer Electrolyte membrane Fuel Cell,PEMFC)などが代表的に開発されている。
【0003】
これらのうち高分子電解質燃料電池を細分すると、水素ガスを燃料に使用する水素イオン交換膜燃料電池(PEMFC,Proton Exchange Membrane Fuel Cell)と、液状のメタノールを直接燃料として酸化極(Anode)に供給して使用する直接メタノール燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell,DMFC)などがある。高分子電解質燃料電池は、100℃未満の低い作動温度、固体電解質の使用による漏水問題排除、迅速な始動と応答特性、および優れた耐久性などの長所によって携帯用、車両用、および家庭用電源装置として脚光を浴びている。特に他の形態の燃料電池に比べて電流密度が大きい高出力燃料電池であり、小型化が可能なので、携帯用燃料電池としての研究が続けられている。
【0004】
このような燃料電池の単位電池構造は、高分子物質で構成された電解質膜を中心に両側に酸化極(Anode、燃料極)および還元極(Cathode、酸素極)が塗布されている構造を成しているが、これを膜-電極接合体(Membrane Electrode Assembly,MEA)と称する。この膜-電極接合体(MEA)は、水素と酸素の電気化学的反応が生じる部分であり、還元極と酸化極および電解質膜、すなわちイオン伝導性電解質膜(例えば、水素イオン伝導性電解質膜)で構成されている。
【0005】
酸化極では、燃料としての水素またはメタノールが供給され、水素の酸化反応が生じて水素イオンと電子を発生させ、還元極では、高分子電解質膜を通過した水素イオンと酸素が結合して酸素の還元反応によって水が生成される。
【0006】
この膜-電極接合体は、このような酸化極と還元極の電極触媒層がイオン伝導性電解質膜の両面に塗布されている形態を成し、電極触媒層を成している物質は、Pt(白金)やPt-Ru(白金-ルテニウム)などの触媒物質がカーボン担体に担持されている形態である。燃料電池の電気化学的反応の核心部品と見られる膜-電極接合体(MEA)には、特に価格構成比の高いイオン伝導性電解質膜と白金触媒などが使用され、電力生産効率と直結した部分であるため、燃料電池の性能向上と価格競争力を高める上で最も重要な部分と見なされている。
【0007】
一般的に使用されているMEAを製造する既存の方法は、触媒物質と水素イオン伝導性バインダー(binder)、すなわちフッ素系ナフィオンイオノマー(Nafion Ionomer)、そして水および/またはアルコール溶媒を混合してペースト(paste)を製造し、これを、触媒層を支持する電極支持体であると同時に、気体拡散層の役割をするカーボン布(carbon cloth)やカーボン紙(carbon paper)などにコーティングした後、乾燥し、水素イオン伝導性電解質膜に熱融着する方法を使用する。
【0008】
触媒層では、触媒による水素と酸素の酸化還元反応;密着した炭素粒子による電子の移動;水素、酸素および水分を供給し、反応後に余剰ガスを排出するための通路の確保;酸化した水素イオンの移動などが同時に行われなければならない。さらに、性能の向上のためには、供給燃料と触媒およびイオン伝導性高分子電解質膜が会う3相界面領域(Triple Phase Boundary)の面積を増大させて活性分極(Activation polarization)を低減しなければならず、触媒層と電解質膜との界面および触媒層と気体拡散層との界面を均一に接合して界面での抵抗分極(Ohmic polarization)を低減しなければならない。したがって、触媒層と電解質膜との界面抵抗を最大限減少させることによって燃料電池の性能を向上させるためには、MEAの製造時に触媒層と電解質膜の接合力を有さなければならないだけでなく、燃料電池の駆動中にも触媒層と電解質膜間の界面接合を続いて維持しなければならない。
【0009】
これより、最近では、触媒層と電解質膜との界面および触媒層と気体拡散層との界面を均一に接合するための技術開発が活発に行われているが、界面均一性が依然として制限的であるという短所がある。
【0010】
また、前述した構造を有するMEAの場合、通常、厚さの厚い電解質膜を使用するので、水素イオンの伝達が遅れて性能低下が発生することがある。
【0011】
また、燃料電池の駆動時に水素イオンの移動と使用時間が長くなるにつれて触媒層と電解質膜との界面および触媒層と気体拡散層との界面接合性が弱くなって分離される。これによって、燃料電池に適用されたとき、燃料電池の性能低下を引き起こすことができる。
【0012】
水素イオンの移動時間などの短縮のために、電解質膜の厚さを減らさなければならず、このために、電解質膜を構成する多孔性支持体の厚さを薄くする方法があるが、支持体の厚さを薄くするために、高延伸時に支持体の強度などの物性が大きく減少するだけでなく、支持体の製造時に不良率が高くて、経済性、商業性が低下する問題があり、特に電解質膜の耐久性が良くない問題がある。
【0013】
そして、燃料電池の反応気体である水素および空気中の酸素は、電解質膜を介して交差移動(Crossover)をして過酸化水素の生成を促進するが、このような過酸化水素がヒドロキシル(Hydroxyl)ラジカル(・H)およびヒドロペルオキシル(Hydroperoxyl)ラジカル(・OOH)などの酸素含有ラジカル(Oxygen-Containing Radicals)を生成することとなる。このようなラジカルは、イオノマー電解質膜を攻撃して膜の化学的劣化(Chemical Degradation)を誘発し、結局、燃料電池の性能を低下(Voltage drop)させる問題を発生させる。
【0014】
これを防止するために、多様な酸化防止剤を使用し、一例として、ラジカル捕捉剤(Radical Scavenger)の機能を有する一次酸化防止剤(Primary Antioxidant)、過酸化水素分解剤(Hydrogen Peroxide Decomposer)の機能を有する二次酸化防止剤(Secondary Antioxidant)を混用して電解質膜に適用することがあるが、このような一次酸化防止剤の使用は、酸化防止性を増大させるが、電解質膜の長期安定性減少を惹起させる問題があることが知られている(S.Schlick et al.,J.Phys.Chem.C,120,6885-6890(2016);S.Deshpande et al.,Appl.Phys.Lett.,8,133113(2005))。
【0015】
これより、燃料電池の商用化を増大させるために電解質膜の耐久性向上のための新しいアプローチが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記のような点を勘案してなされたものであって、特定の素材で複合化して一次酸化防止剤の役割だけでなく、同時に二次酸化防止剤の役割を行うことができるPEMFC電解質膜用高耐久性増強剤を開発し、これを薄膜化した電解質膜に適用し、これと共に電解質膜を多層構造で複合化したPEMFC用複合電解質膜およびこれを用いたPEMFC用膜-電極接合体およびこれに適用される耐久性向上剤を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前述した課題を解決するための本発明は、PEMFC電解質膜用耐久性向上剤に関し、白金(Pt)および前記白金を担持した担体を含み、前記担体は、CeO、GDC(Gd doped Ceria)、IrO、SnOおよびTiの中から選択された1種以上を含む。
【0018】
本発明の好ましい一実施例において、前記白金は、ナノサイズの白金粉末であり、前記白金粉末が担体の表面に結合して一体化していてもよい。
【0019】
本発明の好ましい一実施例において、前記GDCは、下記化学式(1)で表される化合物であり、ガドリニウム(Gd)がセリア格子にドープされたものであってもよい。
【0020】
【化1】
【0021】
化学式(1)中、xは、0<x≦0.3を満たす整数であり、yは、化合物を電気的中性とする酸素空孔値であり、0<y≦0.25を満たす整数である。
【0022】
本発明の好ましい一実施例において、前記白金0.01~6.00重量%および残量の担体を含んでもよい。
【0023】
本発明の好ましい一実施例において、前記白金粉末の粒度(D50)は、0.1~50nmであり、前記担体は、粒度(D50)は、10~2,000nmであってもよい。
【0024】
本発明の好ましい一実施例において、前記耐久性向上剤は、BET比表面積が10~500m/gであってもよい。
【0025】
本発明の好ましい一実施例において、前記担体がCeOであるとき、高耐久性向上剤全重量に対して白金粒子0.01~6.00重量%を含んでもよい。
【0026】
本発明の好ましい一実施例において、前記担体がIrOであるとき、高耐久性向上剤全重量に対して白金粒子0.01~4.5重量%を含んでもよい。
【0027】
本発明の好ましい一実施例において、前記担体がSnOであるとき、高耐久性向上剤全重量に対して白金粒子0.01~3.0重量%を含んでもよい。
【0028】
本発明の好ましい一実施例において、前記担体がTiであるとき、高耐久性向上剤全重量に対して白金粒子0.01~5.5重量%を含んでもよい。
【0029】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の高耐久性向上剤は、2種以上の前記複合体を含んでもよいし、前記白金粒子および前記白金粒子を担持したCeOを担体として含むセリウム系複合体;および前記白金粒子および担体として含む非セリウム系複合体;を含み、非セリウム系複合体の担体は、IrO、SnOおよびTiの中から選択された1種以上を含んでもよい。
【0030】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の高耐久性向上剤は、前記セリウム系複合体および前記非セリウム系複合体を1:0.1~50重量比で含んでもよい。
【0031】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の高耐久性向上剤は、前記セリウム系複合体;および白金(Pt)粒子および前記白金粒子を担持した前記化学式(1)で表されるGDC(Gd doped Ceria)担体を含むガドリニウム系複合体;を含むこともできる。
【0032】
本発明の好ましい一実施例において、本発明の高耐久性向上剤は、前記セリウム系複合体;およびガドリニウム系複合体;を1:0.05~10重量比で含んでもよい。
【0033】
本発明の他の目的は、前述した耐久性向上剤を含むPEMFC用電解質膜を提供することにある。
【0034】
本発明の好ましい一実施例において、PEMFC用電解質膜は、単層構造または多層構造であってもよい。
【0035】
本発明の好ましい一実施例において、PEMFC用電解質膜は、複合電解質膜であってもよい。
【0036】
本発明の好ましい一実施例において、前記複合電解質膜は、第1電解質層、第1支持体層および第2電解質層が順次に積層された構造であってもよい。
【0037】
本発明の好ましい一実施例において、前記複合電解質膜は、第1電解質層、第1支持体層、第2電解質層、第2支持体層および第3電解質層が順次に積層された多層構造であってもよい。
【0038】
本発明の好ましい一実施例において、前記第3電解質層の一面に形成された第3支持体層;および前記第3支持体層の一面に形成された第4電解質層;をさらに含むこともできる。
【0039】
本発明の好ましい一実施例において、前記第1電解質層、前記第2電解質層および前記第3電解質層および/または第4電解質層の中から選択されたいずれか1層以上は、前述した高耐久性向上剤を含んでもよい。
【0040】
本発明の好ましい一実施例において、前記PEMFC用複合電解質膜は、第1電解質層および第2電解質層を含み、第1電解質層および第2電解質層は、前記高耐久性向上剤を含み、前記第1電解質層内高耐久性向上剤含有量および第2電解質層内高耐久性向上剤含有量は、1:0.05~1.00重量比であってもよい。
【0041】
本発明の好ましい一実施例において、前記第1電解質層および前記第2電解質層の中から選択されたいずれか1層以上は、前記高耐久性向上剤およびイオノマーを含んでもよい。
【0042】
本発明の好ましい一実施例において、前記第1電解質層および前記第2電解質層の中から選択されたいずれか1層以上は、セリウム(Ce)系ラジカルスカベンジャーをさらに含んでもよい。
【0043】
本発明の好ましい一実施例において、前記第1電解質層、第2電解質層、第3電解質層および/または第4電解質層それぞれは、過フッ素系スルホン化イオノマーおよび炭化水素系イオノマーの中から選択された1種以上を含んでもよい。
【0044】
本発明の好ましい一実施例において、前記第1電解質層、第2電解質層、第3電解質層および/または第4電解質層それぞれは、前記高耐久性向上剤の他にCeZnO、CeO、Ru、Ag、RuO、WO、Fe、CePO、CrPO、AlPO、FePO、CeF、FeF、Ce(CO・8HO、Ce(CHCOO)・HO、CeCl・6HO、Ce(NO・6HO、Ce(NH(NO、Ce(NH(SO・4HOおよびCe(CHCOCHCOCH・3HOの中から選択された1種以上を含むラジカルスカベンジャーをさらに含むこともできる。
【0045】
本発明の好ましい一実施例において、前記第1電解質層、第2電解質層、第3電解質層および/または第4電解質層それぞれは、中空シリカおよび吸収剤の中から選択された1種以上をさらに含むこともできる。
【0046】
本発明の好ましい一実施例において、前記PEMFC用複合電解質膜の第1電解質層、第2電解質層、第3電解質層および/または第4電解質層それぞれは、独立して、前記高耐久性向上剤を含み、電解質層内高耐久性向上剤含有量は、カソード電極を基準として含有量が低くなる勾配を有するように構成されてもよい。
【0047】
本発明の好ましい一実施例において、前記PEMFC用複合電解質膜は、前記複合電解質膜は、第1電解質層と第2電解質層の間、第2電解質層と第3電解質層の間および第3電解質層と第4電解質層の間ごとに支持体層が形成;されていてもよく、または前記複合電解質膜は、第1電解質層と第2電解質層の間、第2電解質層と第3電解質層の間または第3電解質層と第4電解質層の間のうち1つの支持体層のみが形成;されていてもよい。
【0048】
本発明の好ましい一実施例において、前記PEMFC用複合電解質膜は、平均厚さが5~30μmであってもよい。
【0049】
本発明の好ましい一実施例において、前記第1電解質層、第2電解質層、第3電解質層および/または第4電解質層それぞれは、1~20μmの厚さを有することができる。
【0050】
本発明の好ましい一実施例において、前記第1支持体層、第2支持体層および/または第3支持体層それぞれは、0.1~10μmの厚さを有することができる。
【0051】
本発明の好ましい一実施例において、前記第1支持体層、第2支持体層および/または第3支持体層それぞれは、平均気孔サイズが0.080~0.200μmであり、平均気孔率が60~90%のPTFE多孔性支持体を含んでもよい。
【0052】
本発明の好ましい一実施例において、前記複合電解質膜は、第1電解質層、第1支持体層および第2電解質層が順次に積層された構造であるとき、下記条件(1)を満たすことができる。
【0053】
条件(1)B≦A、B≦A
前記条件(1)において、Aは、第1電解質層の厚さ、Aは、第2電解質層の厚さ、Bは、第1支持体層の厚さを示す。
【0054】
本発明の好ましい一実施例において、前記複合電解質膜は、PEMFC用膜-電極接合体に適用するとき、アノード方向からカソード方向に第1電解質層、第1支持体層および第2電解質層が順次に積層された電解質膜であり、前記複合電解質膜は、下記条件(2)を満たすことができる。
【0055】
条件(2)A≦A
前記条件(2)において、Aは、第1電解質層内耐久性向上剤の含有量、Aは、第2電解質層内耐久性向上剤の含有量を示す。
【0056】
本発明の好ましい一実施例において、前記PEMFC用複合電解質膜は、下記条件(3)および(4)を全部満たすことができる。
【0057】
条件(3)B≦A、B≦A、B≦A
条件(4)B≦A、B≦A、B≦A
前記条件(3)および(4)において、Aは、第1電解質層の厚さ、Aは、第2電解質層の厚さ、Aは、第3電解質層の厚さ、Bは、第1支持体層の厚さを示し、Bは、第2支持体層の厚さを示す。
【0058】
本発明の好ましい一実施例において、前記複合電解質膜は、PEMFC用膜-電極接合体に適用するとき、アノード方向からカソード方向に第1電解質層、第1支持体層、第2電解質層、第2支持体層および第3電解質層が順次に積層された複合電解質膜であり、前記複合電解質膜は、下記条件(5)または条件(6)を満たすことができる。
【0059】
条件(5)A≦A≦A
条件(6)A≦A、A≦A、A≦A
前記条件(5)および(6)において、Aは、第1電解質層内耐久性向上剤の含有量、Aは、第2電解質層内耐久性向上剤の含有量、Aは、第3電解質層内耐久性向上剤の含有量を示す。
【0060】
本発明の好ましい一実施例において、本発明のPEMFC用複合電解質膜は、下記条件(3)を満たすことができる。
【0061】
【数1】

前記条件(3)において、Aは、第1電解質層の厚さ、Aは、第2電解質層の厚さ、Aは、第3電解質層の厚さ、Bは、第1支持体層の厚さ、Bは、第2支持体層の厚さを示す。
【0062】
本発明の好ましい一実施例において、本発明のPEMFC用複合電解質膜は、下記条件(4)を満たすことができる。
【0063】
【数2】

前記条件(4)において、Aは、第1電解質層の厚さ、Aは、第2電解質層の厚さ、Aは、第3電解質層の厚さを示す。
【0064】
本発明のさらに他の目的は、前記高耐久性増強剤を含む複合電解質膜を含むPEMFC用膜-電極接合体に関し、アノード(酸化電極);前記PEMFC用複合電解質膜;およびカソード(還元電極);を含んでもよい。
【発明の効果】
【0065】
本発明の高耐久性向上剤は、ラジカルスカベンジャー効果である酸化防止剤の役割だけでなく、ガス透過度を減少させる抗酸化剤の役割もするので、別のラジカルスカベンジャーを添加しなくても、電解質膜の耐久性向上効果に優れ、電解質膜の製造時にラジカルスカベンジャー添加工程を省略してもよい。このような本発明の高耐久性向上剤を導入して製造したPEMFC用複合電解質膜は、薄い厚さを有しながらも、耐久性および寸法安定性に優れているだけでなく、引張強度が高く、性能にも優れているところ、長期安定性に優れ、かつ高効率のPEMFC用膜-電極接合体、これを導入した燃料電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1a図1aは、本発明の好ましい一具現例によるPEMFC用複合電解質膜の概略図である。
図1b図1bは、本発明の好ましい一具現例によるPEMFC用複合電解質膜の概略図である。
図2図2は、本発明の他の好ましい一具現例によるPEMFC用複合電解質膜の概略図である。
図3図3は、本発明のさらに他の好ましい一具現例によるPEMFC用複合電解質膜の概略図である。
図4図4は、本発明のさらに他の好ましい一具現例によるPEMFC用複合電解質膜の概略図である。
図5図5は、本発明の好ましい一具現例によるPEMFC用膜-電極接合体の概略図である。
図6図6は、実験例1で実施した実施例1、実施例3~4および比較例1のOCV測定結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態で具現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されない。図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、明細書全体において同一または類似の構成要素に対しては同じ参照符号を付加する。
【0068】
本発明のPEMFC電解質膜用耐久性向上剤は、PEMFC運転時に発生するラジカルによって電解質膜が劣化するのを防止し、電解質膜の耐久性を増大させる役割をする。このような本発明の耐久性向上剤は、複合体タイプの粉末形態であり、白金(Pt)および前記白金を担持した担体を含む。このような複合体タイプの本発明の耐久性向上剤は、一次酸化防止剤の機能であるラジカルスカベンジャー(Radical Scavenger)の機能および二次酸化防止剤の機能である過酸化水素分解の機能を同時に行い、また、ガス分解および/またはガスバリア(barrier)の機能、電子伝導体の機能も行うことができる。
【0069】
前記高耐久性向上剤は、白金粒子0.01~6.00重量%および残量の担体を含み、好ましくは、白金粒子0.01~5.50重量%および残量の担体を、より好ましくは、白金粒子0.10~5.00重量%および残量の担体を含んでもよい。この際、高耐久性向上剤全重量に対して白金粒子含有量が0.01重量%未満の場合、ラジカル捕捉機能が不十分で、これによる劣化防止効果が低下することがあり、白金粒子含有量が6.00重量%を超えると、過酸化水素分解効果以外に副反応によって劣化防止効率が低下することがあるので、前記範囲内に使用した方が良い。
【0070】
本発明の高耐久性向上剤は、ナノサイズの白金粒子が担体の表面に結合して一体化している。一例を挙げると、白金粒子を担体の表面に蒸着して結合させることができる。
【0071】
前記白金粒子の粒度(D50)は、0.1~50nmであり、好ましくは、0.1~30nmであってもよく、より好ましくは、3.0~20.0nmである。この際、白金粒子の粒度(D50)が0.1nm以下の場合、取り扱いにくいだけでなく、高耐久性向上剤を製造することも難しい問題があり得、白金粒子の粒度(D50)が50nmを超えると、反応面積減少と白金粒子が凝集する問題があり得る。
【0072】
前記担体は、CeO、GDC(Gd doped Ceria)、IrO、SnOおよびTiの中から選択された1種以上を含んでもよい。
【0073】
CeO、GDC、IrO、SnO、Tiは、酸素発生反応の良い触媒素材であり、高電圧酸性環境で使用される担体の場合、優れた安定性と高い電気伝導性を有し、高電圧酸性環境で安定した物質であり、担体を使用した場合、Ptの分散度を増加させる役割をすることができる。また、燃料電池駆動中に燃料の不足による逆電圧発生時に水を分解して炭素の腐食を防止するのに特化した素材であり、電極内の水が気孔を塞いたり、燃料電池をオン(on)、オフ(off)する状況で燃料供給が不十分な状況が発生し、この際、CeO、IrO、SnO、Tiは、燃料電池セルの耐久および安定性を高める役割をすることができる。
【0074】
また、前記GDC(Gd doped Ceria)は、ガドリニウム(Gd)がセリア格子にドープされた酸化物であり、下記化学式(1)で表される化合物であってもよい。
【0075】
【化2】
【0076】
化学式(1)中、xは、0<x≦0.3を、好ましくは、0<x≦0.25を、より好ましくは、0<x≦0.20を満たす整数であり、yは、化合物を電気的中性とする酸素空孔値であり、0<y≦0.25を満たす整数である。
【0077】
本発明の耐久性向上剤は、ナノサイズの白金粉末が担体の表面に結合して一体化している。一例を挙げると、白金粉末を担体の表面に蒸着して結合させることができる。
【0078】
そして、担体の種類によって高耐久性向上剤内白金粒子最適含有量が多少異なっていてもよい。
【0079】
担体がCeOであるとき、高耐久性向上剤全重量に対して白金粒子含有量は、0.01~6.00重量%、好ましくは、0.1~5.5重量%、より好ましくは、0.5~5.5重量%であってもよい。
【0080】
また、担体がIrOであるとき、高耐久性向上剤全重量に対して白金粒子含有量は、0.01~4.50重量%、好ましくは、0.1~3.5重量%、より好ましくは、0.5~3.0重量%であってもよい。
【0081】
また、担体がSnOであるとき、高耐久性向上剤全重量に対して白金粒子含有量は、0.01~3.00重量%、好ましくは、0.1~2.5重量%、より好ましくは、0.3~2.0重量%であってもよい。
【0082】
また、担体がTiであるとき、高耐久性向上剤全重量に対して白金粒子含有量は、0.01~5.50重量%、好ましくは、0.1~4.5重量%、より好ましくは、0.5~3.5重量%であってもよい。
【0083】
また、本発明の高耐久性向上剤は、単種の複合体(白金粒子+担体)を使用することができ、または2種の複合体を使用して単種の複合体より少ない量または同一量を使用しながらも、同等ないしさらに優れた耐久性向上効果を得ることもできる。
【0084】
具体的な一例を挙げると、本発明の高耐久性向上剤は、2種以上の前記複合体を含んでもよいし、セリウム系複合体および非セリウム系複合体を含んでもよいし、好ましくは、セリウム系複合体および非セリウム系複合体を1:0.1~50重量比で含んでもよい。
【0085】
さらに他の具体的な一例を挙げると、高耐久性向上剤は、2種以上の前記複合体を含んでもよいし、セリウム系複合体およびガドリニウム系担体複合体を含んでもよいし、好ましくは、セリウム系複合体およびガドリニウム系複合体を1:0.05~10重量比で含んでもよい。
【0086】
この際、前記セリウム系複合体は、前記白金粒子および前記白金粒子を担持したCeOを担体として含む複合体を意味し、非セリウム系複合体は、前記白金粒子およびIrO、SnOおよびTiの中から選択された1種以上を含む担体を含む複合体を意味する。そして、ガドリニウム系担体複合体として、GDC複合体は、白金(Pt)粒子および前記白金粒子を担持した前記化学式(1)で表されるGDC(Gd doped Ceria)担体を含む複合体を意味する。
【0087】
また、前記担体は、粒度(D50)は、10~2,000nm、好ましくは、10~1,000nm、さらに好ましくは、50~800nmであってもよく、より一層好ましくは、50~650nmであってもよい。この際、担体の粒度(D50)が10nm以下の場合、白金粒度の付着が難しい問題があり得、担体の粒度(D50)が2,000nmを超えると、反応面積が減少する問題があり得る。
【0088】
本発明の高耐久性向上剤は、BET表面積が10~500m/gであってもよく、好ましくは、80~400m/g、より好ましくは、90~250m/gであってもよい。
【0089】
以下では、前述した本発明の耐久性向上剤を用いたPEMFC用電解質膜について説明する。
【0090】
本発明のPEMFC用電解質膜は、単層構造または多層構造であってもよく、多層構造の一例を挙げると、下記のような複合電解質膜であってもよい。この際、複合電解質膜の各層の電解質層は、前記電解質膜形成溶液で形成することができ、他の構成の電解質膜形成溶液で形成することもできる。
【0091】
本発明のPEMFC(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)用複合電解質膜は、図1aを参照すると、第1電解質層21、第1支持体層11、第2電解質層22が順次に積層された構造であり、第1電解質層および/または第2電解質層のいずれか1層以上は、前述した耐久性向上剤を含んでもよい。
【0092】
また、前記第1電解質層および前記第2電解質層の中から選択されたいずれか1層以上は、セリウム(Ce)系ラジカルスカベンジャーをさらに含んでもよい。
【0093】
前記PEMFC用複合電解質膜は、PEMFC用膜-電極接合体に適用するとき、アノード方向からカソード方向に第1電解質層、第1支持体層および第2電解質層が順次に積層された電解質膜であり、下記条件(2)を満たすように電解質層内耐久性向上剤を含むこともでき、アノード(anode)よりカソード(cathode)において耐久性向上剤の役割および効果が大きいので、下記条件(2)を満たすことが、PEMFC膜-電極接合体の性能および耐久性の観点から有利である。
【0094】
条件(2)A≦A
前記条件(2)において、Aは、第1電解質層内耐久性向上剤の含有量、Aは、第2電解質層内耐久性向上剤の含有量を示す。
【0095】
また、図1bを参照すると、本発明のPEMFC(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell)用複合電解質膜は、第1電解質層21、第1支持体層11、第2電解質層22、第2支持体層12および第3電解質層23が順次に積層された構造を有することができる。
【0096】
具体的には、本発明のPEMFC用複合電解質膜は、第1電解質層21と、前記第1電解質層21の一面に形成された第1支持体層11と、前記第1支持体層11の一面に形成された第2電解質層22と、前記第2電解質層22の一面に形成された第2支持体層12と、前記第2支持体層12の一面に形成された第3電解質層23とを含んでもよい。そして、第1電解質層~第3電解質層のいずれか1層以上は、前述した耐久性向上剤を含んでもよい。
【0097】
前記PEMFC用複合電解質膜は、PEMFC用膜-電極接合体に適用するとき、アノード方向からカソード方向に第1電解質層、第1支持体層、第2電解質層、第2支持体層および第3電解質層が順次に積層された複合電解質膜であり、下記条件(5)または条件(6)を満たすこともでき、下記条件(5)または(6)を満たすことが、PEMFC膜-電極接合体の耐久性向上剤効果の最適化の観点から有利である。
【0098】
条件(5)A≦A≦A
条件(6)A≦A、A≦A、A≦A
前記条件(5)および(6)において、Aは、第1電解質層内耐久性向上剤の含有量、Aは、第2電解質層内耐久性向上剤の含有量、Aは、第3電解質層内耐久性向上剤の含有量を示す。
【0099】
また、図2を参照すると、本発明のPEMFC用複合電解質膜は、第1電解質層21、第1支持体層11、第2電解質層22、第2支持体層12、第3電解質層23、第3支持体層13および第4電解質層24が順次に積層された構造を有することができる。
【0100】
具体的には、本発明のPEMFC用複合電解質膜は、第1電解質層21、前記第1電解質層21の一面に形成された第1支持体層11、前記第1支持体層11の一面に形成された第2電解質層22、前記第2電解質層22の一面に形成された第2支持体層12、前記第2支持体層12の一面に形成された第3電解質層23、前記第3電解質層23の一面に形成された第3支持体層13および第3支持体層13の一面に形成された第4電解質層24を含んでもよい。
【0101】
また、図3を参照すると、本発明のPEMFC用複合電解質膜は、第5電解質層25、第4支持体層14、第1電解質層21、第1支持体層11、第2電解質層22、第2支持体層12、第3電解質層23、第3支持体層13および第4電解質層24が順次に積層された構造を有することができる。
【0102】
具体的には、本発明のPEMFC用複合電解質膜は、第5電解質層25、前記第5電解質層25の一面に形成された第4支持体層14、前記第4支持体層14の一面に形成された第1電解質層21、前記第1電解質層21の一面に形成された第1支持体層11、前記第1支持体層11の一面に形成された第2電解質層22、前記第2電解質層22の一面に形成された第2支持体層12、前記第2支持体層12の一面に形成された第3電解質層23、前記第3電解質層23の一面に形成された第3支持体層13および第3支持体層13の一面に形成された第4電解質層24を含んでもよい。この際、第4支持体層13は、前述した第1支持体層11、第2支持体層12および/または第3支持体層13と同一であってもよく、第5電解質層25は、前述した第1電解質層21、第2電解質層22、第3電解質層23および/または第4電解質層24と同一であってもよい。
【0103】
また、前記PEMFC用複合電解質膜は、前記複合電解質膜は、第1電解質層と第2電解質層の間、第2電解質層と第3電解質層の間または第3電解質層と第4電解質層の間のうち1つの支持体層のみが形成されていてもよく、好ましい一具現例として、図4に概略図を示したように、第1電解質層21、第1電解質層の一面に形成された第2電解質層22、前記第2電解質層22の一面に形成された支持体層11、前記支持体層11の一面に形成された第3電解質層23、前記第3電解質層23の一面に形成された第4電解質層24を含むこともできる。
【0104】
本発明の第1支持体層、第2支持体層、および第3支持体層それぞれは、当業界において使用する一般的な多孔性支持体を使用することができ、好ましくは、下記製造方法で製造された特定の物性を有するPTFE(Polytetrafluoroethylene)多孔性支持体を含んでもよい。
【0105】
本発明のPTFE多孔性支持体は、PTFEパウダーおよび潤滑剤を混合および撹拌してペースト(paste)を製造する第1-1段階;前記ペーストを熟成する第1-2段階;熟成されたペースト(paste)を押出および圧延して未焼成テープを製造する第1-3段階;未焼成テープを乾燥した後、液状潤滑剤を除去する第1-4段階;潤滑剤が除去された未焼成テープを1軸延伸する第1-5段階;1軸延伸された未焼成テープを2軸延伸する第1-6段階;および焼成する第1-7段階;を含む工程を行って製造することができる。
【0106】
第1-1段階で前記ペーストは、PTFEパウダー100重量部に対して潤滑剤15~35重量部を、好ましくは、15~30重量部を、より好ましくは、15~25重量部を含んでもよい。前記PTFEパウダー100重量部に対して潤滑剤が15重量部未満の場合、後述する2軸延伸工程によってPTFE多孔性支持体の形成時に気孔度が低くなることがあり、35重量部を超える場合、PTFE多孔性支持体の形成時に気孔のサイズが大きくなって、支持体の強度が弱くなることがある。
【0107】
前記PTFEパウダーの平均粒径は、300μm~800μm、好ましくは、450μm~700μmであってもよいが、これに制限されない。前記潤滑剤は、液状潤滑剤として、流動パラフィン、ナフタ、ホワイトオイル、トルエン、キシレンなどの炭化水素オイルの他に、各種アルコール類、ケトン類、エステル類などを使用することができ、好ましくは、流動パラフィン、ナフタおよびホワイトオイルの中から選択された1種以上を使用することができる。
【0108】
次に、第1-2段階の熟成は、予備成形工程であり、前記ペーストを30℃~70℃の温度で12~24時間熟成することができ、好ましくは、35℃~60℃の温度で16~20時間熟成することができる。前記熟成温度が35℃未満、または熟成時間が12時間未満の場合、PTFEパウダーの表面に潤滑剤コーティングが不均一になって、後述する2軸延伸時にPTFE多孔性支持体の延伸均一性が制限的になることがある。
【0109】
また、熟成温度が70℃を超えたり熟成時間が24時間を超える場合、潤滑剤の蒸発によって2軸延伸工程後のPTFE多孔性支持体の気孔サイズが非常に小さくなる問題があり得る。
【0110】
次に、第1-3段階の前記押出は、熟成されたペーストを圧縮機で圧縮してPTFEブロックを製造した後、PTFEブロックを0.069~0.200Ton/cmの圧力で、好ましくは、0.090~0.175Ton/cmの圧力で加圧押出して行うことができる。
【0111】
この際、前記加圧押出圧力が0.069Ton/cm未満の場合、多孔性支持体の気孔サイズが大きくなって多孔性支持体の強度が弱くなることがあり、0.200Ton/cmを超える場合、2軸延伸工程後の多孔性支持体の気孔サイズが小さくなる問題があり得る。
【0112】
また、第1-3段階の前記圧延は、5~10MPaの油圧で、50~100℃下でカレンダー工程で行うことができる。この際、前記油圧が5MPa未満の場合、多孔性支持体の気孔サイズが大きくなって多孔性支持体の強度が弱くなることがあり、10MPaを超える場合、多孔性支持体の気孔サイズが小さくなる問題があり得る。
【0113】
次に、第1-4段階の乾燥は、当業界において使用する一般的な乾燥方法を通じて行うことができ、好ましい一例を挙げると、圧延して製造した未焼成テープを100℃~200℃の温度で1~5M/minの速度でコンベヤーベルトで移送させながら、好ましくは、140℃~190℃の温度で2~4M/minの速度で移送させながら行うことができる。この際、前記乾燥温度が100℃以下であるか、乾燥速度が5M/minを超える場合、潤滑剤の未蒸発によって延伸工程進行時に気泡が発生することがあり、前記乾燥温度が200℃以上、または乾燥速度が1M/min未満の場合、乾燥されたテープのスティフネス(Stiffness)が増加し、延伸工程中にスリップ(Slip)が発生することがある。
【0114】
次に、第1-5段階の1軸延伸は、潤滑剤が除去された未焼成テープを長さ方向に延伸を行う工程であり、ローラーを通じて移送するとき、ローラー間の速度差を用いて1軸延伸を行う。そして、1軸延伸は、潤滑剤が除去された未焼成テープを長さ方向に3~10倍で、好ましくは、6~9.5倍で、より好ましくは、6.2~9倍で、より一層好ましくは、6.3~8.2倍で延伸を行った方が良い。この際、1軸延伸比が3倍未満の場合、十分な機械的物性を確保することができず、1軸延伸比が10倍を超えると、機械的物性がかえって減少し、支持体の気孔が非常に大きくなる問題があり得る。
【0115】
また、1軸延伸は、260℃~350℃の延伸温度および6~12M(meter)/minの延伸速度、好ましくは、270℃~330℃の延伸温度および8~11.5M/minの延伸速度で、行った方が良く、1軸延伸時に延伸温度が260℃未満、または延伸速度が6M/min未満の場合、乾燥シートに負荷される熱が多くなって、焼成区間が発生する問題があり得、1軸延伸時に延伸温度が350℃を超えたり、延伸速度が12M/minを超えると、1軸延伸工程中にスリップ(Slip)が発生し、厚さ均一度が低下する問題があり得る。
【0116】
次に、第1-6段階の2軸延伸は、1軸延伸された未焼成テープの幅方向(1軸延伸に垂直な方向)に延伸を行い、終端が固定された状態で横方向に幅を広げて延伸することができる。しかしながら、これに制限されるものではなく、当業界において通常使用される延伸方法により延伸することができる。本発明において前記2軸延伸は、幅方向に15~50倍で延伸を行うことができ、好ましくは、25~45倍、より好ましくは、28~45倍、より一層好ましくは、29~42倍で行うことができ、この際、2軸延伸比が15倍以下の場合、十分な機械的物性を確保しないことがあり、50倍を超過しても機械的物性向上がないだけでなく、長さ方向および/または幅方向への物性均一性が低下する問題があり得るので、前記範囲内に延伸を行った方が良い。
【0117】
また、2軸延伸は、150℃~260℃の延伸温度下で10~20M/minの延伸速度で、好ましくは、200℃~250℃の延伸温度下で11~18M/minの延伸速度下で行った方が良く、2軸延伸温度が150℃未満または延伸速度が10M/min未満の場合、横方向の延伸均一性が低下する問題があり得、2軸延伸温度が260℃を超えたり、または延伸速度が20M/minを超えると、未焼成区間が発生し、物性が低下する問題があり得る。
【0118】
最後に、第1-7段階の焼成は、延伸された多孔性支持体をコンベヤーベルト上で10~18M/minの速度で、好ましくは、13~17M/minの速度で移動させながら、350℃~450℃、好ましくは、380℃~440℃の温度を、より好ましくは、400℃~435℃の温度を加えて行うことができ、これを通じて、延伸比を固定し、強度向上効果を図ることができる。焼成時に、焼成温度が350℃未満の場合、多孔性支持体の強度が低くなることがあり、450℃を超える場合、過剰な焼成によるフィブリル(Fibril)数の減少によって支持体の物性が低下する問題があり得る。
【0119】
また、第1-7段階の工程を行って製造したPTFE多孔性支持体は、1軸方向(長さ方向)および2軸方向(幅方向)の延伸比(または縦横比)が1:3.00~8.5、好ましくは、1:4.0~7.0、さらに好ましくは、1:4.00~5.50であってもよく、より一層好ましくは、1:4.20~5.00であってもよく、1軸方向および2軸方向延伸比(または縦横比)が前記範囲であることが、高い機械的物性、支持体の適正気孔サイズ確保の観点および適正電流の流れ性確保の観点から好ましい。
【0120】
製造された本発明のPTFE多孔性支持体は、平均気孔サイズが0.080μm~0.200μm、好ましくは、0.090μm~0.180μm、さらに好ましくは、0.095μm~0.150μm、より一層好ましくは、0.100~0.140μmであってもよい。また、本発明のPTFE多孔性支持体は、平均気孔率が60%~90%、より好ましくは、60%~79.6%であってもよい。
【0121】
本発明のPTFE多孔性支持体の平均気孔サイズが0.080μm未満、または気孔率が60%未満の場合、PTFE多孔性支持体を用いて電解質膜を製造するために電解質に含浸するとき、PTFE多孔性支持体内電解質の含浸程度が制限的になることがある。また、前記平均気孔サイズが0.200μmを超えたり気孔率が90%を超える場合、電解質への含浸時にPTFE多孔性支持体構造が変形され、寸法安定性の低下により製品寿命が低下する問題があり得る。
【0122】
なお、本発明のPTFE多孔性支持体は、ASTM D 882に基づいて測定するとき、1軸方向モジュラスと2軸方向モジュラス値が下記方程式1を満たすことができる。
【0123】
[方程式1]
0≦|(1軸方向モジュラス-2軸方向モジュラス)/(1軸方向モジュラス)X100%|≦54%、好ましくは、0≦|(1軸方向モジュラス-2軸方向モジュラス)/(1軸方向モジュラス)X100%|≦40%、より好ましくは、1≦|(1軸方向モジュラス-2軸方向モジュラス)/(1軸方向モジュラス)X100%|≦26%
また、本発明のPTFE多孔性支持体は、ASTM D 882に基づいて測定するとき、1軸方向(長さ方向)モジュラス(modulus)が40MPa以上であってもよく、好ましくは、1軸方向モジュラスが50MPa以上、より好ましくは、1軸方向モジュラスが48~75MPa、より一層好ましくは、65~75MPaであってもよい。また、2軸方向(幅方向)モジュラスが40MPa以上、好ましくは、2軸方向(幅方向)モジュラスが55MPa以上、より好ましくは、46~75MPa、より一層好ましくは、55~75MPaであってもよい。
【0124】
また、本発明のPTFE多孔性支持体は、ASTM D882に基づいて測定するとき、1軸方向(長さ方向)引張強度が40MPa以上および2軸方向(幅方向)引張強度が40MPa以上であってもよく、好ましくは、1軸方向引張強度が50MPa以上、より好ましくは、1軸方向引張強度が54~65MPaであってもよい。また、好ましくは、2軸方向引張強度が52MPa以上、より好ましくは、2軸方向引張強度が52~70MPaであってもよい。
【0125】
なお、本発明の第1支持体層、第2支持体層、および第3支持体層それぞれは、0.1~10μmの厚さ、好ましくは、1~7μmの厚さ、より好ましくは、1~5μmの厚さ、より一層好ましくは、1.5~4μmの厚さ、さらにより一層好ましくは、1.5~2.5μmを有することができ、厚さが0.1μm未満の場合、引張強度が減少する問題があり得、10μmを超えると、薄膜化に不利な問題があり得る。
【0126】
そして、前記第1電解質層、第2電解質層、第3電解質層および/または第4電解質層それぞれは、独立して、前記高耐久性向上剤を含み、電解質層ごとに高耐久性向上剤含有量を異ならせることができ、一例を挙げると、前記PEMFC用複合電解質膜がアノード電極からカソード電極方向に、第1電解質層、第1支持体層、第2電解質層、第2支持体層および第3電解質層が順次に積層された複合電解質膜;またはアノード電極からカソード電極方向に、第1電解質層、第1支持体層、第2電解質層、第2支持体層、第3電解質層、第3支持体層および第4電解質層が順次に積層された複合電解質膜;である場合、カソード電極から遠ざかるほど電解質層内高耐久性向上剤含有量が低くなるように電解質層内高耐久性向上剤含有量を調節して、カソード電極を基準として電解質層内高耐久性含有量が低くなる勾配を有するようにすることができる。
【0127】
好ましい一例を挙げると、前記第4電解質層、前記第3電解質層、前記第2電解質層および前記第1電解質層の高耐久性向上剤含有量比を1:0.1~0.99:0~0.80:0~0.70重量比になるように高耐久性向上剤含有量を調節して、複合電解質膜を製造することができる。
【0128】
次に、本発明の第1電解質層21、第2電解質層22、第3電解質層23および第4電解質層24それぞれは、過フッ素系スルホン化イオノマー(PFSA ionomer)および炭化水素系イオノマーの中から選択された1種以上を含むイオノマーを含んでもよい。
【0129】
本発明の過フッ素系スルホン化イオノマーは、ナフィオン(Nafion)、フレミオン(Flemion)、アクイビオン(aquivion)およびアシプレックス(Aciplex)の中から選択された1種以上を含んでもよいし、好ましくは、アクイビオン(aquivion)を含んでもよい。
【0130】
前記炭化水素系イオノマーは、ポリアリルエーテルスルホン(PAES)系、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系、ポリイミド(PI)系の中から選択された1種以上を含んでもよい。
【0131】
そして、前記イオノマーは、第1電解質層21、第2電解質層22、第3電解質層23および第4電解質層24それぞれを構成するだけでなく、第1支持体層11および/または第2支持体層12の気孔内に含まれてもよい。
【0132】
なお、本発明の第1電解質層21、第2電解質層22、第3電解質層23および第4電解質層24それぞれは、耐久性向上剤を含んでもよいし、前記耐久性向上剤は、白金(Pt)および前記白金を担持した担体を含み、これに関する説明は、前述した通りである。
【0133】
そして、電解質層(または電解質膜)形成のための電解質溶液の製造時に、電解質溶液全重量に対して前記耐久性向上剤0.01~20重量%および残量の前記イオノマーを含んでもよいし、好ましくは、耐久性向上剤0.1~10重量%および残量のイオノマーを含んでもよいし、より好ましくは、耐久性向上剤0.1~1.0重量%および残量のイオノマーを含んでもよい。この際、耐久性向上剤の含有量が0.01重量%未満の場合、その使用量があまり少ないため、電解質層(または電解質膜)の劣化防止効果がないこともあり、耐久性向上剤含有量が20重量%を超えると、不純物としての役割をしてイオン伝導度が低くなる問題が発生することがあるので、前記範囲内に使用した方が良い。
【0134】
また、前記第1電解質層21、第2電解質層22、第3電解質層23および第4電解質層24それぞれは、前記イオノマーおよび耐久性向上剤の他にPEMFC用ラジカルスカベンジャー(radical scavenger)をさらに含むこともできる。
【0135】
本発明のPEMFC用ラジカルスカベンジャー(radical scavenger)は、[Zn(OH)2-含有溶液にCe前駆体水溶液を混合および還元反応を行ってセリウムイオンがドープされたZnO結晶構造を有するCeZnO金属酸化物粒子を形成して製造することができる。ここで、「CeイオンがドープされたZnO結晶構造」は、ウルツ鉱(Wurtzite)などの結晶構造を有するZnO結晶構造においてZn原子の一部がCe原子で置換された形態の結晶構造が新しく形成されることを意味する。
【0136】
これをより具体的に説明すると、Zn前駆体をアルコールに溶解してZn前駆体溶液を製造した後、Zn前駆体溶液を昇温する第1段階;[Zn(OH)2-含有溶液を製造する第2段階;[Zn(OH)2-含有溶液にCe前駆体水溶液を混合および還元反応を行ってCeイオンがドープされたZnO結晶構造を有するCeZnO金属酸化物粒子を形成する第3段階;前記CeZnO金属酸化物粒子を回収および洗浄する第4段階;および洗浄したCeZnO金属酸化物粒子を乾燥する第5段階;を含む工程を行ってPEMFC用ラジカルスカベンジャーを製造することができる。これに対するより詳しい説明は、同一出願人による韓国特許登録第10-1860870号が参照として挿入されてもよい。
【0137】
本発明のPEMFC用ラジカルスカベンジャーは、セリウム(Ce)原子、亜鉛(Zn)原子および酸素(O)原子で構成された結晶構造を有する金属酸化物粒子として、好ましい一例として、ウルツ鉱(Wurtzite)などの結晶構造を有するZnO結晶構造でZn原子の一部がCe原子で置換されている形態の結晶構造を有することができる。
【0138】
また、本発明のPEMFC用ラジカルスカベンジャーは、CeZnO、CeO、Ru、Ag、RuO、WO、Fe、CePO、CrPO、AlPO、FePO、CeF、FeF、Ce(CO・8HO、Ce(CHCOO)・HO、CeCl・6HO、Ce(NO・6H2O、Ce(NH(NO、Ce(NH(SO・4HOおよびCe(CHCOCHCOCH・3HOの中から選択された1種以上を含んでもよい。
【0139】
また、本発明のPEMFC用ラジカルスカベンジャーは、Ce12~91重量%、Zn7~84.5重量%および残量のO(酸素原子)を含んでもよいし、好ましくは、Ce13.40~89.20重量%、Zn7.55~88.20重量%および残量のOを含むこともできる。そして、その他不可避不純物をさらに含むこともできる。
【0140】
また、本発明のラジカルスカベンジャーは、DLS(Dynamic Light Scattering)方式のナノ粒度分析器で粒度(D50)分析時に、500nm以下、好ましくは、300nm以下、より好ましくは、200~300nmであってもよい。
【0141】
なお、本発明の第1電解質層、第2電解質層、第3電解質層および第4電解質層それぞれは、過フッ素系スルホン化イオノマー100重量部に対してPEMFC用ラジカルスカベンジャー0.001~10重量部、好ましくは、0.01~10重量部、より好ましくは、0.1~8重量部を含んでもよいし、0.001重量部未満で含むと、耐久性が良くない問題があり得、10重量部を超えると、耐久性は良くなるが、イオン伝導度が低下し、本発明の複合電解質膜の性能が低下する問題があり得る。
【0142】
また、前記第1電解質層21、第2電解質層22、第3電解質層23および第4電解質層24それぞれは、前記イオノマーおよび高耐久性向上剤の他に中空シリカおよび/または前述したPEMFC用ラジカルスカベンジャーをさらに含むこともできる。
【0143】
前記中空シリカは、球状であり、平均粒径は、10~300nmであってもよく、より好ましくは、10~100nmであってもよい。ここで、粒径の意味は、中空シリカの形状が球状の場合の直径を意味し、球状でない場合、中空シリカ表面の任意の一点から他の一点までの直線距離のうち最大距離を意味する。
【0144】
また、本発明の第1電解質層21、第2電解質層22、第3電解質層23および第4電解質層24それぞれは、ゼオライト、チタニア、ジルコニアおよびモンモリロナイトの中から選択された1種以上の吸収剤をさらに含んでもよい。
【0145】
なお、本発明の第1電解質層21、第2電解質層22、第3電解質層23および第4電解質層24それぞれは、1~10μmの厚さ、好ましくは、1~8μmの厚さ、より好ましくは、2~5μmの厚さ、より一層好ましくは、2.5~4.5μmの厚さを有することができ、厚さが1μm未満の場合、引張強度が減少する問題があり得、10μmを超えると、薄膜化に不利な問題があり得る。
【0146】
また、本発明の第1電解質層21、第2電解質層22、第3電解質層23および第4電解質層24それぞれは、-SOH基の当量(EW:equivalent weight)が1,100以下、好ましくは、900以下、より好ましくは、500~900、より一層好ましくは、600~830、さらにより一層好ましくは、680~750であってもよく、-SOH基の当量が1,100を超えると、性能が低下する問題があり得る。
【0147】
さらに、本発明のPEMFC用複合電解質膜は、下記関係式1によって測定されたMD方向(=長さ方向)の寸法変化率が10%以下、好ましくは、0~5%、より好ましくは、0~3%、より一層好ましくは、0.5~2%であってもよく、下記関係式1によって測定されたTD方向(=幅方向)の寸法変化率が10%以下、好ましくは、2~8%、より好ましくは、3~7%、より一層好ましくは、4~6%であってもよい。
【0148】
【数3】
【0149】
前記関係式1において、Aは、PEMFC用複合電解質膜の初期長さを示し、Bは、前記PEMFC用複合電解質膜を80℃の温度で20分間放置した後に測定した長さを示す。
【0150】
このように本発明のPEMFC用複合電解質膜は、MD方向だけでなく、TD方向でも低い寸法変化率を示すことによって、寸法安定性に顕著に優れている。
【0151】
なお、本発明のPEMFC用複合電解質膜は、平均厚さが5~30μm、好ましくは、7~20μm、より好ましくは、10~18μm、より一層好ましくは、12~16μmであってもよく、薄い厚さを有しながらも、耐久性および寸法安定性に優れるだけでなく、引張強度が高く、性能にも優れている。
【0152】
また、本発明のPEMFC用複合電解質膜は、第1電解質層、第1支持体層および第2電解質層が順次に積層された電解質膜である場合、下記条件(1)を満たすことができる。
【0153】
条件(1)B≦A、B≦A
前記条件(1)において、Aは、第1電解質層の厚さ、Aは、第2電解質層の厚さ、Bは、第1支持体層の厚さを示す。
【0154】
また、本発明のPEMFC用複合電解質膜は、第1電解質層、第1支持体層、第2電解質層、第2支持体層および第3電解質層が順次に積層された複合電解質膜である場合、下記条件(3)および(4)を全部満たすことができる。
【0155】
条件(3)B≦A、B≦A、B≦A
条件(4)B≦A、B≦A、B≦A
前記条件(3)において、Aは、第1電解質層21の厚さ、Aは、第2電解質層22の厚さ、Aは、第3電解質層23の厚さ、Bは、第1支持体層11の厚さを示し、前記条件(4)において、Aは、第1電解質層21の厚さ、Aは、第2電解質層22の厚さ、Aは、第3電解質層23の厚さ、Bは、第2支持体層12の厚さを示す。
【0156】
本発明のPEMFC用複合電解質膜が条件(3)および(4)を全部満たさない場合、均一性が低下する問題があり得る。
【0157】
また、本発明のPEMFC用複合電解質膜は、条件(7)の値
【数4】

は、下記範囲を満たすことができる。
【0158】
条件(7)1.5≦条件(7)値≦12、好ましくは、1.5≦条件(7)値≦9、より好ましくは、2≦条件(7)値≦7、より一層好ましくは、2.2≦条件(7)値≦5、より一層好ましくは、2.5≦条件(7)値≦3.0
前記条件(7)において、Aは、第1電解質層21の厚さ、Aは、第2電解質層22の厚さ、Aは、第3電解質層23の厚さ、Bは、第1支持体層11の厚さ、Bは、第2支持体層12の厚さを示す。
【0159】
条件(7)値が1.5未満の場合、複合電解質膜が製造されない問題があり得、12を超えると、耐久性が低下する問題があり得る。
【0160】
また、本発明のPEMFC用複合電解質膜は、条件(8)の値
【数5】

を満たすことができる。
【0161】
条件(8)0.2≦条件(8)値≦10、好ましくは、0.5≦条件(8)値≦8、より好ましくは、1.0≦条件(8)値≦6、より一層好ましくは、1.5≦条件(8)値≦4
前記条件(8)において、Aは、第1電解質層21の厚さ、Aは、第2電解質層22の厚さ、Aは、第3電解質層23の厚さを示す。
【0162】
条件(8)の値が0.2未満の場合、耐久性が低下する問題があり得、10を超えると、性能が減少する問題があり得る。
【0163】
[PEMFC用複合電解質膜の製法]
本発明のPEMFC用複合電解質膜の製造方法は、第1段階~第4段階を含む工程を行うことができる。
【0164】
まず、本発明のPEMFC用複合電解質膜の製造方法の第1段階は、第1支持体層および第2支持体層をそれぞれ準備することができる。この際、第1支持体層および第2支持体層としてPTFE(Poly tetra fluoro ethylene)多孔性支持体を使用することができ、使用可能なPTFE多孔性支持体は、前述したPTFE多孔性支持体および製造する方法と同一である。
【0165】
次に、本発明のPEMFC用複合電解質膜の製造方法の第2段階は、第1段階で準備した第1支持体層の一面に第1電解質層を形成することができ、第1段階で準備した第2支持体層の一面に第3電解質層を形成することができる。
【0166】
具体的には、本発明のPEMFC用複合電解質膜の製造方法の第2段階は、第1支持体層の一面にイオノマー混合溶液を塗布したり、第1支持体層の一面を前記イオノマー混合溶液に含浸した後、乾燥して、第1電解質層を形成することができる。
【0167】
また、第2支持体層の一面に前記イオノマー混合溶液を塗布したり、第2支持体層の一面を前記イオノマー混合溶液に含浸した後、乾燥して、第3電解質層を形成することができる。
【0168】
前記第2段階の乾燥は、それぞれ1分~30分間60℃~200℃の熱を加えて行ったり、好ましくは、15分~25分間70℃~150℃の熱を加えて行うことができる。この際、乾燥温度が60℃未満の場合、第1支持体層および/または第2支持体層に含浸されたイオノマーを含む溶液の保液性が低下することがあり、200℃を超えると、電解質膜および/または膜-電極接合体の製造時に電極との接合性が低下することがある。
【0169】
次に、本発明のPEMFC用複合電解質膜の製造方法の第3段階は、第1段階で準備した第1支持体層の他面に第2電解質層を形成することができる。
【0170】
具体的には、第3段階は、第1電解質層が形成された第1支持体層の他面に第2電解質層を形成する工程であり、第1支持体層の他面にイオノマー混合溶液を塗布したり、第1支持体層の他面をイオノマー混合溶液に含浸した後、乾燥して、第2電解質層を形成することができる。
【0171】
前記第3段階の乾燥は、1分~30分間60℃~200℃の熱を加えて行ったり、好ましくは、5分~15分間70℃~150℃の熱を加えて行うことができる。この際、乾燥温度が60℃未満の場合、第1支持体層に含浸されたイオノマー混合溶液の保液性が低下することがあり、200℃を超えると、電解質膜および/または膜-電極接合体の製造時に電極との接合性が低下することがある。
【0172】
第2段階および第3段階の前記イオノマー混合溶液は、過フッ素系スルホン化イオノマーおよび炭化水素系イオノマーの中から選択された1種以上を含むイオノマー;および前述した耐久性向上剤を含んでもよい。
【0173】
また、前記イオノマー混合溶液は、前述したラジカルスカベンジャー、中空シリカおよび吸収剤の中から選択された1種以上をさらに含むこともできる。
【0174】
最後に、本発明のPEMFC用複合電解質膜の製造方法の第4段階は、第1段階で準備した第2支持体層の他面に前記第2電解質層を積層し、熱処理して、第1電解質層、第1支持体層、第2電解質層、第2支持体層および第3電解質層が順次に積層された本発明のPEMFC用複合電解質膜を製造することができる。
【0175】
具体的には、第4段階は、一面には第1電解質層が形成され、他面には第2電解質層が形成された第1支持体層と、一面に第3電解質層が形成された第2支持体層とを積層して一体化する工程であり、第1支持体層の他面に形成された第2電解質層と第2支持体層を触れ合うように積層し、熱処理して、第1電解質層、第1支持体層、第2電解質層、第2支持体層および第3電解質層が順次に積層された本発明のPEMFC用複合電解質膜を製造することができる。
【0176】
第4段階の熱処理は、100℃~200℃で1分~20分間、好ましくは、140℃~180℃で1分~15分間行うことができ、熱処理温度が100℃未満、または熱処理時間が1分未満の場合、第1電解質層、第2電解質層および/または第3電解質層の保液性が低下することがあり、熱処理温度が200℃を超えると、第1、第2および第3電解質層と第1および第2支持体層間の接着性(結合性)が低下することがある。
【0177】
第4段階の熱処理を行った複合電解質膜の第1支持体層および/または第2支持体層は、閉塞された気孔の体積が全体気孔体積に対して85体積%以上、好ましくは、90体積%以上であってもよい。
【0178】
[PEMFC用膜-電極接合体]
図5のAおよびBを参照すると、本発明のPEMFC用膜-電極接合体は、アノード(酸化電極)200、前述した本発明のPEMFC用複合電解質膜100およびカソード(還元電極)300を含む。
【0179】
本発明の一実施例による膜-電極接合体(図5のA)は、複合電解質膜100を挟んで互いに対向して位置するアノード(anode、酸化電極)200およびカソード(cathode、還元電極)300を備える。この際、アノード200は、アノード気体拡散層3、アノード触媒層2およびアノード電極基材1を含み、カソード300は、カソード気体拡散層4、カソード触媒層5およびカソード電極基材6を含んでもよい。
【0180】
具体的には、アノード200は、アノード気体拡散層3、アノード触媒層2およびアノード電極基材1が順次に積層されて形成されてもよく、アノード気体拡散層3は、複合電解質膜200の一面に接合されていてもよい。また、カソード300は、カソード気体拡散層4、カソード触媒層5およびカソード電極基材6が順次に積層されて形成されてもよく、カソード気体拡散層4は、複合電解質膜200の他面に接合されていてもよい。
【0181】
また、本発明の一実施例による膜-電極接合体(図5のB)のアノード200は、アノード気体拡散層3およびアノード電極基材1を含み、カソード300は、カソード気体拡散層4およびカソード電極基材6を含んでもよい。この際、アノード電極基材は、アノード触媒電極で構成されてもよく、カソード電極基材は、カソード触媒電極で構成されてもよい。
【0182】
本発明の膜-電極接合体は、アノード200、複合電解質膜100およびカソード300それぞれを配置した後、締結して形成したり、これを高温および高圧で圧着して形成することができる。
【0183】
アノード気体拡散層3は、複合電解質膜100の一面に気体拡散層形成物質を塗布したり、またはアノード電極基材1の一面に気体拡散層形成物質を塗布して形成することができる。
【0184】
アノード気体拡散層3は、燃料電池に注入される燃料の急激な拡散を防止し、イオン伝導度の低下を防止するために設けられてもよい。また、アノード気体拡散層3は、熱処理または電気化学的処理を通じて燃料の拡散速度を調節することができる。また、アノード気体拡散層3は、PEMFC用複合電解質膜100とアノード触媒層2の間で電流伝導体の役割を行い、反応物としてのガスと生成物としての水の通路となる。したがって、アノード気体拡散層3は、ガスがよく通じるように気孔率が20%~90%の多孔性構造であってもよい。アノード気体拡散層3の厚さは、必要に応じて適宜採択することができ、例えば、100~400μmであってもよい。前記アノード気体拡散層3の厚さが100μm以下の場合、アノード触媒層2と前記アノード電極基材1の間で電気接触抵抗が大きくなり、圧縮によって構造が不安定になることがある。また、前記アノード気体拡散層3の厚さが400μmを超える場合、反応物としてのガスの移動が難しくなることがある。
【0185】
また、アノード気体拡散層3は、炭素系物質およびフッ素系樹脂を含んで形成されてもよい。炭素系物質としては、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、活性カーボン、多孔性中空カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンナノリング、カーボンナノワイヤー、フラーレン(C60)およびスーパーPから成る群から選択される1つ以上を含んでもよいが、これに限定されない。また、フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、またはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)から成る群から選択される1つ以上を含んでもよい。また、燃料は、ギ酸溶液、メタノール、ホルムアルデヒド、またはエタノールのような液体燃料であってもよい。
【0186】
アノード触媒層2は、酸化触媒が導入される層であり、アノード触媒層2は、前記アノード気体拡散層3上に触媒層形成物質を塗布して形成することができる
前記触媒層形成物質は、金属触媒または炭素系支持体に担持された金属触媒を使用することができる。金属触媒としては、代表的に白金、ルテニウム、白金-ルテニウム合金、白金-オスミウム合金、白金-パラジウム合金、および白金-遷移金属合金から成る群から選択される1つ以上を使用することができる。また、前記炭素系支持体としては、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、活性カーボン、多孔性中空カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンナノリング、カーボンナノワイヤー、フラーレンおよびスーパーPから成る群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0187】
また、アノード触媒層2は、導電性支持体およびイオン伝導性バインダー(不図示)を含んでもよい。これに加えて、アノード触媒層2は、導電性支持体に付着した主触媒を含んでもよい。前記導電性支持体は、カーボンブラックであってもよく、前記イオン伝導性バインダーは、ナフィオンイオノマーまたはスルホン化されたポリマーであってもよい。また、前記主触媒は、金属触媒であってもよく、一例として白金(Pt)であってもよい。アノード触媒層2は、電気メッキ法、スプレー法、ペインティング法、ドクターブレード法または転写法を使用して形成することができる。
【0188】
アノード電極基材1は、カーボン紙、カーボン布、および炭素フェルトから成る群から選択される導電性基材を使用することができるが、これに限定されず、高分子電解質燃料電池に適用が可能なアノード(anode)電極物質は、全部使用が可能である。前記アノード電極基材1は、通常の蒸着方法を通じてアノード触媒層2の一面に形成されてもよく、前記アノード電極基材1に前記アノード触媒層2を形成した後、前記アノード気体拡散層3上にアノード触媒層2およびアノード電極基材1が接するように配置して形成されてもよい(図5のA参照)。また、前記アノード電極基材1の一面にアノード気体拡散層3を形成することもできる(図5のB参照)。
【0189】
カソード気体拡散層4は、複合電解質膜100の他面に気体拡散層形成物質を塗布して形成したり、またはカソード電極基材6の一面に気体拡散層形成物質を塗布して形成することができる。
【0190】
カソード気体拡散層4は、カソード300に注入されるガスの急激な拡散を防止し、カソード300に注入されたガスを均一に分散させるために設けられてもよい。また、カソード気体拡散層4は、PEMFC用複合電解質膜100とカソード触媒層5の間で電流伝導体の役割を行い、反応物としてのガスと生成物としての水の通路となる。したがって、カソード気体拡散層4は、ガスがよく通じるように気孔率が20%~90%の多孔性構造であってもよい。カソード気体拡散層4の厚さは、必要に応じて適宜採択することができ、例えば、100~400μmであってもよい。前記カソード気体拡散層4の厚さが100μm以下の場合、カソード触媒層5と前記カソード電極基材6の間で電気接触抵抗が大きくなり、圧縮によって構造が不安定になることがある。また、前記カソード気体拡散層4の厚さが400μmを超える場合、反応物であるガスの移動が難しくなることがある。
【0191】
また、カソード気体拡散層4は、炭素系物質およびフッ素系樹脂を含んで形成されてもよい。炭素系物質としては、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、活性カーボン、多孔性中空カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンナノリング、カーボンナノワイヤー、フラーレン(C60)およびスーパーPから成る群から選択される1つ以上を含んでもよいが、これに限定されない。また、フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、またはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)から成る群から選択される1つ以上を含んでもよい。また、燃料は、ギ酸溶液、メタノール、ホルムアルデヒド、またはエタノールのような液体燃料であってもよい。
【0192】
カソード触媒層5は、還元触媒が導入される層であり、カソード触媒層5は、前記カソード気体拡散層4上に触媒層形成物質を塗布して形成することができる。
【0193】
前記触媒層形成物質は、金属触媒または炭素系支持体に担持された金属触媒を使用することができる。金属触媒としては、代表的に白金、ルテニウム、白金-ルテニウム合金、白金-オスミウム合金、白金-パラジウム合金、および白金-遷移金属合金から成る群から選択される1つ以上を使用することができる。また、前記炭素系支持体としては、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、活性カーボン、多孔性中空カーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンナノリング、カーボンナノワイヤー、フラーレンおよびスーパーPから成る群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0194】
また、カソード触媒層5は、導電性支持体およびイオン伝導性バインダー(不図示)を含んでもよい。これに加えて、前記カソード触媒層5は、前記導電性支持体に付着した主触媒を含んでもよい。前記導電性支持体は、カーボンブラックであってもよく、前記イオン伝導性バインダーは、ナフィオンイオノマーまたはスルホン化されたポリマーであってもよい。また、前記主触媒は、金属触媒であってもよく、一例として白金(Pt)であってもよい。前記カソード触媒層5は、電気メッキ法、スプレー法、ペインティング法、ドクターブレード法または転写法を使用して形成することができる。
【0195】
カソード電極基材6は、カーボン紙、カーボン布、および炭素フェルトから成る群から選択される導電性基材を使用することができるが、これに限定されず、高分子電解質燃料電池に適用が可能なカソード(cathode)電極物質は、いずれも使用が可能である。前記カソード電極基材6は、通常の蒸着方法を通じてカソード触媒層5の一面に形成されてもよく、前記カソード電極基材6に前記カソード触媒層5を形成した後、前記カソード気体拡散層4上にカソード触媒層5およびカソード電極基材6が接するように配置して形成されてもよい(図5のA参照)。また、前記カソード電極基材6の一面にカソード気体拡散層4を形成することもできる(図5のB参照)。
【0196】
なお、本発明の一実施例による高分子電解質膜燃料電池は、燃料の酸化反応と酸化剤の還元反応を通じて電気エネルギーを発生させる少なくとも1つの電気発生部と、前述した燃料を前記電気発生部に供給する燃料供給部と、酸化剤を前記電気発生部に供給する酸化剤空隙部とを含んで構成される。
【0197】
本発明の膜-電極接合体を1つ以上を含み、本発明の膜-電極接合体の両端に燃料と酸化剤を供給するためのセパレーターが配置されて電気発生部が構成されてもよい。このような電気発生部少なくとも1つが集まってスタックを構成することができる。
【0198】
この際、本発明の高分子電解質膜燃料電池の配置形態または製造方法は、高分子電解質燃料電池に適用可能な形態であれば、制限なしで形成が可能なので、従来技術を参照して多様に適用することができる。
【0199】
下記実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、下記実施例が本発明の範囲を制限するものではなく、これは、本発明の理解を助けるためのものと解すべきである。
【0200】
[実施例]
実施例1:耐久性向上剤(Pt/GDC)および電解質膜形成溶液の製造
(1)耐久性向上剤の製造
一定環境条件の水溶液にセリウム前駆体(硝酸セリウム)、ガドリニウム前駆体(硝酸ガドリニウム)の混合溶液を滴下し、共沈物を得る方法で下記化学式(1-1)で表されるGDCを担体として準備した。この際、担体の粒度(D50)は、180nmであった。
【0201】
【化3】
【0202】
化学式(1-1)中、xは、0.1であり、yは、化合物を電気的中性とする酸素空孔値であり、0<y≦0.25を満たす整数である。
【0203】
次に、前駆体状態の白金を準備し、そこへ担体を混合後、還元剤を使用して前駆体状態の白金からナノ粒子状態の白金金属に還元反応を誘導する工程を行って、白金ナノ粒子が担体の表面に蒸着されて一体化した耐久性向上剤(Pt/GDC)を製造した。
【0204】
製造された耐久性向上剤内白金ナノ粒子の含有量は、0.10重量%であり、白金粉末の平均粒度(D50)は、約17nmであった。
【0205】
(2)電解質膜形成溶液の製造
-SOH基の当量(equivalent weight)が720の過フッ素スルホン酸系イオノマー(商品名:Aquivion(登録商標)D72-25DS、solvay社)を準備した。
【0206】
前記耐久性向上剤(Pt/GDC)0.5重量%、ラジカルスカベンジャー(CeZnO)0.97重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0207】
実施例2:耐久性向上剤(Pt/GDC)および電解質膜形成溶液の製造
(1)耐久性向上剤の製造
前記実施例1と同じ方法で耐久性向上剤を製造するが、下記化学式(1-2)で表されるGDCを担体を使用して耐久性向上剤を製造した。
【0208】
【化4】
【0209】
化学式(1-2)中、xは、0.2であり、yは、化合物を電気的中性とする酸素空孔値であり、0<y≦0.25を満たす整数である。
【0210】
(2)電解質膜形成溶液の製造
前記実施例1と同じ過フッ素スルホン酸系イオノマーを使用して前記耐久性向上剤(Pt/GDC)0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0211】
実施例3:耐久性向上剤(Pt/CeO)および電解質膜形成溶液の製造
(1)耐久性向上剤の製造
粒度(D50)が177nmのCeOを担体として準備し、実施例1で使用した同じ白金前駆体を準備した。
【0212】
次に、前駆体状態の白金を準備し、そこへ担体を混合後、還元剤を使用して前駆体状態の白金からナノ粒子状態の白金金属に還元反応を誘導する工程を行って、白金ナノ粒子が担体の表面に蒸着されて一体化した耐久性向上剤(Pt/CeO)を製造した。
【0213】
製造された耐久性向上剤内白金ナノ粒子の含有量は、0.10重量%であり、白金粉末の平均粒度(D50)は、約15nmであった。
【0214】
(2)電解質膜形成溶液の製造
前記実施例1と同じ過フッ素スルホン酸系イオノマーを使用して前記耐久性向上剤(Pt/CeO)0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0215】
実施例4:耐久性向上剤(Pt/IrO)および電解質膜形成溶液の製造
(1)耐久性向上剤製造
粒度(D50)が242nmのIrOを担体として準備し、実施例1で使用した白金前駆体を準備した。
【0216】
次に、前駆体状態の白金を準備し、そこへ担体を混合後、還元剤を使用して前駆体状態の白金からナノ粒子状態の白金金属に還元反応を誘導する工程を行って、白金ナノ粒子が担体の表面に蒸着されて一体化した耐久性向上剤(Pt/IrO)を製造した。
【0217】
製造された耐久性向上剤内白金ナノ粒子の含有量は、0.10重量%であり、白金粉末の平均粒度(D50)は、約25nmであった。
【0218】
(2)電解質膜形成溶液の製造
前記実施例1と同じ過フッ素スルホン酸系イオノマーを使用して前記耐久性向上剤(Pt/IrO)0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0219】
比較例1
高耐久性向上剤を使用せず、実施例1の過フッ素スルホン酸系イオノマー自体を電解質膜形成溶液として準備した。
【0220】
実施例5~8および比較例2~6
前記実施例1と同じ方法で耐久性向上剤および電解質膜形成溶液を製造するが、下記表1のように耐久性向上剤またはその含有量を異ならせて電解質膜形成溶液をそれぞれ製造した。
【0221】
【表1】
【0222】
実験例1:電解質膜の耐久性評価およびフッ素イオン放出速度の分析実験
電解質膜の耐久性を評価するために前記実施例1~8および比較例2~6で製造した電解質膜形成溶液それぞれをフィルムの上にコーティングした後、乾燥して、厚さ10umの単層構造の電解質膜をそれぞれ製造した。
【0223】
(1)フッ素イオン放出速度(FER、umol/g・h)の測定
鉄硫酸鉛水和物と過酸化水素を混合してペントン溶液を製造した後、前記ペントン溶液に実施例および比較例で製造した電解質膜それぞれを投入した後、80℃で120時間放置後、フッ素イオン放出速度を測定した。ペントン溶液のラジカルによって電解質膜が劣化してフッ素イオン(F)を放出することとなり、ペントン溶液内のフッ素イオン濃度を測定することで耐久性を評価し、その結果を下記表2に示した。
【0224】
また、実施例1、実施例3~4および比較例1のOCV測定グラフを図6に示した。
【0225】
(2)OCV(open cercit voltage)ホールディング耐久性の測定
実施例および比較例の電解質膜それぞれに触媒とGDL(Gas Diffusion Layer)を付着して膜-電極接合体を製造した後、実際セル運転条件より過酷な環境(90℃/相対湿度30%)の条件で開放回路電圧(OCV,open circuit voltage)を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0226】
【表2】
【0227】
前記表2のフッ素イオン放出速度の測定結果を見ると、比較例1の電解質膜の場合、約15.1umol/g・hの高いフッ素イオン放出速度を示した。これに対し、耐久性向上剤としてPt/CeOを適用した実施例3の電解質膜の場合、2.45umol/g・hのフッ素イオン放出速度を示し、耐久性向上剤としてPt/GDCとPt/IrOを適用した実施例1および実施例4の電解質膜の場合、1.83umol/g・hと2.81umol/g・hのフッ素イオン放出速度を示し、耐久性向上剤を適用することにより、フッ素イオン放出速度が顕著に減少することを確認することができた。
【0228】
また、前記表2のOCV(open cercitvoltage)ホールディング耐久性の測定結果を見ると、長時間運転により各実施例および比較例の劣化(Voltage drop)の差異を確認することができた。また、図5を参照すると、高耐久性向上剤が適用されない比較例1は、電圧降下(Voltage drop)が迅速に起こり、318時間後に寿命が尽き、実施例3(Pt/CeO)の場合、914時間以上、実施例1(Pt/GDC)は、1,027時間以上、実施例4(Pt/IrO)は、851時間以上の耐久性能を示した。
【0229】
そして、耐久性向上剤内Pt含有量が6.0重量%を超えた比較例2の場合、実施例5と比較してかえってFER値が増加し、寿命時間が短縮される問題があり、耐久性向上剤内Pt含有量が0.01重量%未満の比較例3の場合、実施例6(Pt0.05重量%)と比較して、FER値が高く、寿命時間も大きく短縮される問題があった。
【0230】
また、耐久性向上剤内Pt平均粒度が100nmを超えた比較例4および耐久性向上剤内担体の平均粒度が1000nmを超えた比較例5の場合、実施例4と比較して、かえって耐久性が低下し、FER値が高い結果を示した。
【0231】
また、電解質形成溶液内耐久性向上剤含有量が20.0重量%を超えて使用した比較例6の場合、耐久性向上剤の過量使用による利得がない結果を示した。
【0232】
実施例9-1:高耐久性向上剤(Pt/CeO複合体)および電解質膜形成溶液の製造
(1)高耐久性向上剤の製造
粒度(D50)が177nmのCeOを担体として準備した。
【0233】
次に、前駆体状態の白金を準備し、そこへ前記CeO担体を混合後、還元剤を使用して前駆体状態の白金からナノ粒子状態の白金金属に還元反応を誘導する工程を行って、白金ナノ粒子が担体の表面に蒸着されて一体化した高耐久性向上剤(Pt/CeO複合体)を製造した。
【0234】
製造された高耐久性向上剤内白金ナノ粒子の含有量は、0.10重量%であり、白金粒子の平均粒度(D50)は、約5nmであった。
【0235】
(2)電解質膜形成溶液の製造
-SOH基の当量(equivalent weight)が720の過フッ素スルホン酸系イオノマー(商品名:Aquivion(登録商標)D72-25DS、solvay社)を準備した。
【0236】
前記高耐久性向上剤(Pt/CeO複合体)0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0237】
実施例9-2~9-4および比較例7-1~7-2
前記実施例9-1と同じ方法で電解質膜形成溶液を製造するが、下記表3のように高耐久性向上剤(Pt/CeO複合体)白金粒子含有量が1.0重量%、3.0重量%および5.5重量%になるように電解質膜形成溶液をそれぞれ製造して、実施例9-2~9-4をそれぞれ実施した。
【0238】
ただし、比較例7-1は、白金粒子を使用せず、CeOのみを耐久性向上剤として使用し、比較例7-2は、白金粒子が6.0重量%になるように高耐久性向上剤を製造した。
【0239】
実施例10-1:高耐久性向上剤(Pt/IrO複合体)および電解質膜形成溶液の製造
(1)高耐久性向上剤の製造
粒度(D50)が242nmのIrOを担体として準備し、実施例9-1で使用した白金前駆体を準備した。
【0240】
次に、前駆体状態の白金を準備し、そこへ担体を混合後、還元剤を使用して前駆体状態の白金からナノ粒子状態の白金金属に還元反応を誘導する工程を行って、白金ナノ粒子が担体の表面に蒸着されて一体化した高耐久性向上剤(Pt/IrO複合体)を製造した。
【0241】
製造された高耐久性向上剤内白金ナノ粒子の含有量は、1.0重量%であり、白金粒子の平均粒度(D50)は、約12nmであった。
【0242】
(2)電解質膜形成溶液の製造
前記実施例9-1と同じ過フッ素スルホン酸系イオノマーを使用して前記高耐久性向上剤(Pt/IrO複合体)0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0243】
実施例10-2
前記実施例10-1と同じ方法で高耐久性向上剤(Pt/IrO複合体)を製造するが、白金含有量が0.1重量%になるようにして高耐久性向上剤を製造した後、高耐久性向上剤(Pt/IrO複合体)0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0244】
実施例11-1:高耐久性向上剤(Pt/SnO複合体)および電解質膜形成溶液の製造
(1)高耐久性向上剤の製造
粒度(D50)が353nmのSnOを担体として準備し、実施例9-1で使用した白金前駆体を準備した。
【0245】
次に、前駆体状態の白金を準備し、そこへ担体を混合後、還元剤を使用して前駆体状態の白金からナノ粒子状態の白金金属に還元反応を誘導する工程を行って、白金ナノ粒子が担体の表面に蒸着なされて一体化した高耐久性向上剤(Pt/SnO複合体)を製造した。
【0246】
製造された高耐久性向上剤内白金ナノ粒子の含有量は、1.0重量%であり、白金粒子の平均粒度(D50)は、約9nmであった。
【0247】
(2)電解質膜形成溶液の製造
前記実施例9-1と同じ過フッ素スルホン酸系イオノマーを使用して前記高耐久性向上剤(Pt/SnO複合体)0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0248】
実施例11-2
前記実施例11-1と同じ方法で高耐久性向上剤(Pt/SnO複合体)を製造するが、白金含有量が0.1重量%になるようにして高耐久性向上剤を製造した後、高耐久性向上剤(Pt/SnO複合体)0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0249】
実施例12-1:高耐久性向上剤(Pt/Ti複合体)および電解質膜形成溶液の製造
(1)高耐久性向上剤の製造
粒度(D50)が502nmのTiを担体として準備し、実施例1で使用した白金前駆体を準備した。
【0250】
次に、前駆体状態の白金を準備し、そこへ担体を混合後、還元剤を使用して前駆体状態の白金からナノ粒子状態の白金金属に還元反応を誘導する工程を行って、白金ナノ粒子が担体の表面に蒸着されて一体化した高耐久性向上剤(Pt/Ti複合体)を製造した。
【0251】
製造された高耐久性向上剤内白金ナノ粒子の含有量は、1.0重量%であり、白金粒子の平均粒度(D50)は、約7nmであった。
【0252】
(2)電解質膜形成溶液の製造
前記実施例9-1と同じ過フッ素スルホン酸系イオノマーを使用して前記高耐久性向上剤(Pt/Ti複合体)0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0253】
実施例12-2
前記実施例12-2と同じ方法で高耐久性向上剤(Pt/Ti複合体)を製造するが、白金含有量が0.1重量%になるようにして高耐久性向上剤を製造した後、高耐久性向上剤(Pt/Ti複合体)0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0254】
実施例13
前記実施例9-1と同じ電解質膜形成溶液を製造するが、高耐久性向上剤含有量を17.0重量%になるように製造した。
【0255】
比較例7-3~7-5
前記実施例1-1と同じ方法で高耐久性向上剤および電解質膜形成溶液を製造するが、下記表1のように高耐久性向上剤内白金の粒度、担体粒度または高耐久性向上剤含有量を異ならせて電解質膜形成溶液をそれぞれ製造した。
【0256】
【表3】
【0257】
実験例2:電解質膜の耐久性評価およびフッ素イオン放出速度の分析実験
電解質膜の耐久性を評価するために、前記実施例9-1~13および比較例7-1~7-5で製造した電解質膜形成溶液それぞれをフィルムの上にコーティングした後、乾燥して、厚さ10umの単層構造の電解質膜をそれぞれ製造した。
【0258】
そして、実験例1と同じ方法でフッ素イオン放出速度およびOCVホールディング耐久性を測定し、その結果を下記表4に示した。
【0259】
下記表4の対照群は、白金触媒だけでなく、担体も使用せずに製造した電解質膜である。
【0260】
【表4】
【0261】
前記表4のフッ素イオン放出速度の測定結果を見ると、Ptと担体が適用されない対照群電解質膜の場合、約15.10umol/g・hのフッ素イオン放出速度を示し、担体のみを適用した比較例7-1の電解質膜の場合、約9.21umol/g・hの高いフッ素イオン放出速度を示した。
【0262】
これに対し、高耐久性向上剤としてPt/CeOを適用した実施例9-1~9-4の電解質膜の場合、3.50umol/g・h以下の非常に低いフッ素イオン放出速度(FER)を有することを確認することができた。そして、担体としてIrO、SnO、またはTiをそれぞれ使用して製造した実施例10-1~10-2、実施例11-1~11-2、実施例12-1~12-2も、FER減少効果が優れた結果を示した。
【0263】
全般的に高耐久性向上剤内白金含有量が増加するほどFER(フッ素イオン放出速度)が減少する結果を示したが、担体としてCeOを6.0重量%使用した比較例7-2の場合、実施例9-4と比較して、FER減少効果増大がない結果を示した。
【0264】
また、前記表4のOCV(open cercitvoltage)ホールディング耐久性測定結果を見ると、長時間運転によって各実施例および比較例の劣化(Voltage drop)の差異を確認することができた。
【0265】
そして、高耐久性向上剤内Pt含有量が5.5重量%を超えた比較例7-2の場合、実施例9-4と比較して、かえってFER値が増加し、寿命時間が短縮される問題があり、高耐久性向上剤内Ptを使用しない比較例7-1の場合、FER値が高く、寿命時間も大きく短縮される問題があった。
【0266】
また、高耐久性向上剤内白金粒子の粒度が50nmを超えた比較例7-3の場合、同一Pt含有量と比べてPt比表面積が小さくなる問題とPt粒子と担体粒度のサイズが似ているので、担体の上にPtが位置することよりPtどうし互いに凝集して長時間運転時に耐久性効率減少とセルの電気化学的性能が低くなる問題があった。
【0267】
また、高耐久性向上剤内担体の平均粒度が2,000nmを超えた比較例7-4の場合、担体粒度が大きいので、低い比表面積に起因してナノサイズのPt粒子が均一に分散せず、Pt反応特性効率減少、Pt凝集などの問題により耐久性および電気化学的性能が低くなる問題があった。
【0268】
また、電解質形成溶液内の高耐久性向上剤含有量が20.0重量%を超えて使用した比較例7-5の場合、高耐久性向上剤の過量使用による利得がない結果を示した。
【0269】
実施例10-3~実施例10-4および比較例8-1~8-2
前記実施例10-1と同じ担体を使用するが、下記表5のようにPt粒子含有量を異ならせて、高耐久性向上剤(Pt/IrO)を製造した後、これを用いて高耐久性向上剤(Pt/IrO)0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0270】
実験例3:電解質膜の耐久性評価およびフッ素イオン放出速度分析実験
実施例10-3~10-4および比較例8-1~8-2で製造した電解質膜形成溶液を使用して実験例1と同じ方法で厚さ10umの単層構造の電解質膜をそれぞれ製造した後、FERおよびOCVを測定し、その結果を下記表5に示した。
【0271】
【表5】
【0272】
前記表5を通じて、担体としてIrO適用時に複合体内Ptナノ粒子の適正含有量が0.01~4.5重量%であることを確認することができた。
【0273】
実施例11-3~実施例11-4および比較例9-1~9-2
前記実施例11-1と同じ担体を使用するが、下記表6のようにPt粒子含有量を異ならせて、高耐久性向上剤(Pt/SnO)を製造した後、これを用いて高耐久性向上剤(Pt/SnO)0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0274】
実験例4:電解質膜の耐久性の評価およびフッ素イオン放出速度の分析実験
実施例11-3~11-4および比較例9-1~9-2で製造した電解質膜形成溶液を使用して実験例1と同じ方法で厚さ10umの単層構造の電解質膜をそれぞれ製造した後、FERおよびOCVを測定し、その結果を下記表6に示した。
【0275】
【表6】
【0276】
前記表6を通じて、担体としてSnO適用時に複合体内Ptナノ粒子の適正含有量が0.01~3.0重量%であることを確認することができた。
【0277】
実施例12-3~実施例12-4および比較例10-1~10-2
前記実施例12-1と同じ担体を使用するが、下記表7のようにPt粒子含有量を異ならせて、高耐久性向上剤(Pt/IrO)を製造した後、これを用いて高耐久性向上剤(Pt/Ti)0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0278】
実験例5:電解質膜の耐久性の評価およびフッ素イオン放出速度の分析実験
実施例12-3~12-4および比較例10-1~10-2で製造した電解質膜形成溶液を使用して実験例1と同じ方法で厚さ10umの単層構造の電解質膜をそれぞれ製造した後、FERおよびOCVを測定し、その結果を下記表7に示した。
【0279】
【表7】
【0280】
前記表7のOCV最終寿命とVoltage性能値を通じて、担体としてTi適用時に複合体内Ptナノ粒子の適正含有量が0.01~5.50重量%であることを確認することができた。
【0281】
実施例14
前記実施例9-1で製造した複合体および前記実施例10-1で製造した複合体を1:0.3重量比で混合した高耐久性向上剤0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0282】
実施例15
(1)Pt/GDC複合体の製造
一定環境条件の水溶液にセリウム前駆体(硝酸セリウム)、ガドリニウム前駆体(硝酸ガドリニウム)の混合溶液を滴下して共沈物を得る方法で下記化学式(1-1)で表されるGDCを担体として準備した。この際、担体の粒度(D50)は、180nmであった。
【0283】
【化5】
【0284】
化学式(1-1)中、xは、0.1であり、yは、化合物を電気的中性とする酸素空孔値であり、0<y≦0.25を満たす整数である。
【0285】
次に、前駆体状態の白金を準備し、そこへ担体を混合後、還元剤を使用して前駆体状態の白金からナノ粒子状態の白金金属に還元反応を誘導する工程を行って、白金ナノ粒子が担体の表面に蒸着されて一体化したPt/GDC複合体を製造した。
【0286】
製造されたPt/GDC複合体内白金ナノ粒子の含有量は、0.1重量%であり、白金粉末の平均粒度(D50)は、約5nmであった。
【0287】
(2)電解質膜形成溶液の製造
前記実施例9-1で製造した複合体および前記Pt/GDC複合体を1:0.3重量比で混合した高耐久性向上剤0.5重量%および残量の前記イオノマーを混合して、電解質膜形成溶液を製造した。
【0288】
実験例6:電解質膜の耐久性の評価およびフッ素イオン放出速度の分析実験
実施例14~15で製造した電解質膜形成溶液を使用して実験例1と同じ方法で厚さ10umの単層構造の電解質膜をそれぞれ製造した後、FERおよびOCVを測定し、その結果を下記表8に示した。
【0289】
【表8】
【0290】
前記表8を参照すると、高耐久性向上剤として、1種だけを使用したことより、2種の複合体を混用して使用した実施例14および実施例15が、さらに優れた耐久性向上効果があることを確認することができた。
【0291】
製造例1-1:PTFE多孔性支持体の製造
平均粒径570μmのPTFE微細パウダー100重量部に対して液状潤滑剤としてのナフタ(naphtha)23重量部を混合および撹拌し、均一に分散させて、ペーストを製造した。
【0292】
次に、前記ペーストを50℃で18時間放置して熟成した後、成形ジグを用いて圧縮してPTFEブロックを製造した。
【0293】
次に、前記PTFEブロックを押出金型に投入後、約0.10Ton/cm圧力下で加圧押出を実施した。
【0294】
次に、圧延ロールを用いて、圧延して、平均厚さ850μmの未焼成テープを製造した。
【0295】
次に、未焼成テープを3M/minの速度でコンベヤーベルトで移送させながら、180℃の熱を加えて乾燥して、潤滑剤を除去した。
【0296】
次に、潤滑剤が除去された未焼成テープを延伸温度280℃および延伸速度10M/min条件下で6.5倍で1軸延伸(長さ方向延伸)を行った。
【0297】
次に、1軸延伸された未焼成テープを延伸温度250℃および延伸速度10M/min条件下で30倍で2軸延伸(幅方向延伸)を行って、多孔性支持体を製造した。
【0298】
次に、1軸および2軸延伸された多孔性支持体をコンベヤーベルト上で15M/minの速度で420℃の温度を加えて焼成して、平均厚さ16μm、平均気孔サイズ0.114μmのPTFE多孔性支持体を製造した。
【0299】
製造例1-2:PTFE多孔性支持体の製造
製造例1-1と同じ方法でPTFE多孔性支持体を製造した。ただし、支持体製造例1-1とは異なって1軸および2軸延伸条件を異ならせて、平均厚さ5μm、平均気孔サイズ0.114μmのPTFE多孔性支持体を製造した。
【0300】
製造例1-3:PTFE多孔性支持体の製造
製造例1-1と同じ方法でPTFE多孔性支持体を製造した。ただし、支持体製造例1-1とは異なって、1軸および2軸延伸条件を異ならせて、平均厚さ12μm、平均気孔サイズ0.114μmのPTFE多孔性支持体を製造した。
【0301】
製造例1-4:PTFE多孔性支持体の製造
製造例1-1と同じ方法でPTFE多孔性支持体を製造した。ただし、支持体製造例1-1とは異なって、1軸および2軸延伸条件を異ならせて、平均厚さ3μm、平均気孔サイズ0.114μmのPTFE多孔性支持体を製造した。
【0302】
製造例2-1:PEMFC用複合電解質膜の製造
(1)電解質膜形成用溶液の製造
実施例1で製造した耐久性向上剤(Pt/GDC)0.5重量%および-SOH基の当量(equivalent weight)が720の過フッ素系スルホン化イオノマー(solvay,aquivion D72-25DS)95.5重量%を混合して、電解質膜形成用溶液を製造した。
【0303】
(2)第1支持体層および第2支持体層として製造例1-2で製造したPTFE多孔性支持体をそれぞれ準備した。
【0304】
(3)第1支持体層をガラス基板に固定し、アプリケーター(Film Applicator)を用いて第1支持体層の一面を前記電解質膜形成用溶液に含浸した後、80℃真空オーブンで20分間乾燥を行って、第1支持体層の一面に平均厚さが4μmの第1電解質層を形成した。
【0305】
(4)第2支持体層をガラス基板に固定し、アプリケーター(Film Applicator)を用いて第2支持体層の一面を前記電解質膜形成用溶液に含浸した後、80℃真空オーブンで20分間乾燥を行って、第2支持体層の一面に平均厚さが4μmの第3電解質層を形成した。
【0306】
(5)一面に第1電解質層が形成された第1支持体層の他面を前記電解質膜形成用溶液に含浸した後、80℃真空オーブンで20分間乾燥を行って、第1支持体層の他面に平均厚さが3μmの第2電解質層を形成した。
【0307】
(6)一面に第3電解質層が形成された第2支持体層の他面を製造された第2電解質層に積層し、160℃で10分間熱処理して、図1のような第1電解質層、第1支持体層(=製造上の収縮により平均厚さ2μmと薄くなる)、第2電解質層、第2支持体層(=製造上の収縮により平均厚さ2μmと薄くなる)および第3電解質層が順次に積層された平均厚さが15μmのPEMFC用複合電解質膜を製造した。
【0308】
製造例2-2:PEMFC用複合電解質膜の製造
(1)第1支持体層および第2支持体層として支持体製造例1-1で製造したPTFE多孔性支持体をそれぞれ準備した。
【0309】
(2)~(4)前記製造例1-1のPTFE多孔性支持体および製造例2-1で製造した電解質膜形成用溶液を使用して、第1電解質層-第1支持体層-第2電解質層-第2支持体層-第3電解質層が積層された積層体を製造するが、第1電解質層(平均厚さ2.0μm)、第2電解質層(平均厚さ1.0μm)および第3電解質層(平均厚さ2.0μm)を形成した。
【0310】
(5)次に、前記積層体を160℃で10分間熱処理して、図1のような第1電解質層、第1支持体層(=製造上の収縮により平均厚さ5μmと薄くなる)、第2電解質層、第2支持体層(=製造上の収縮により平均厚さ5μmと薄くなる)および第3電解質層が順次に積層された平均厚さが15μmのPEMFC用複合電解質膜を製造した。
【0311】
製造例2-3:PEMFC用複合電解質膜の製造
(1)~(4)前記製造例2-2と同じPTFE多孔性支持体および製造例2-1で製造した電解質膜形成用溶液を使用して、第1電解質層-第1支持体層-第2電解質層-第2支持体層-第3電解質層が積層された積層体を製造するが、第1電解質層、第2電解質層および第3電解質層それぞれが全部平均厚さが1μmになるように形成した。
【0312】
(5)次に、前記積層体を160℃で10分間熱処理して、図1のような第1電解質層、第1支持体層(=製造上の収縮により平均厚さ5μmと薄くなる)、第2電解質層、第2支持体層(=製造上の収縮により平厚さ5μmと薄くなる)および第3電解質層が順次に積層された平均厚さが13μmのPEMFC用複合電解質膜を製造した。
【0313】
製造例2-4:PEMFC用複合電解質膜の製造
(1)第1支持体層および第2支持体層として製造例1-3で製造したPTFE多孔性支持体をそれぞれ準備した。
【0314】
(2)~(4)前記製造例1-3のPTFE多孔性支持体および製造例2-1で製造した電解質膜形成用溶液を使用して、第1電解質層-第1支持体層-第2電解質層-第2支持体層-第3電解質層が積層された積層体を製造するが、第1電解質層(平均厚さ2.5μm)、第2電解質層(平均厚さ2.0μm)および第3電解質層(平均厚さ2.5μm)を形成した。
【0315】
(5)次に、前記積層体を160℃で10分間熱処理して、図1のような第1電解質層、第1支持体層(=製造上の収縮により平均厚さ4μmと薄くなる)、第2電解質層、第2支持体層(=製造上の収縮により平均厚さ4μmと薄くなる)および第3電解質層が順次に積層された平均厚さが15μmのPEMFC用複合電解質膜を製造した。
【0316】
製造例2-5:PEMFC用複合電解質膜の製造
(1)第1支持体層および第2支持体層として製造例1-4で製造したPTFE多孔性支持体をそれぞれ準備した。
【0317】
(2)~(4)前記製造例1-4のPTFE多孔性支持体および製造例2-1で製造した電解質膜形成用溶液を使用して、第1電解質層-第1支持体層-第2電解質層-第2支持体層-第3電解質層が積層された積層体を製造するが、第1電解地層(平均厚さ5.0μm)、第2電解質層(平均厚さ3.0μm)および第3電解質層(平均厚さ5.0μm)を形成した。
【0318】
(5)次に、前記積層体を160℃で10分間熱処理して、図1のような第1電解質層、第1支持体層(=製造上の収縮により平均厚さ1μmと薄くなる)、第2電解質層、第2支持体層(=製造上の収縮により平均厚さ1μmと薄くなる)および第3電解質層が順次に積層された平均厚さが15μmのPEMFC用複合電解質膜を製造した。
【0319】
比較製造例2-1:PEMFC用複合電解質膜の製造
(1)電解質膜形成用溶液の製造
-SOH基の当量(equivalent weight)が720の過フッ素系スルホン化イオノマー(solvay,aquivion D72-25DS)95.5重量%を混合して、耐久性向上剤を使用しない電解質膜形成用溶液を製造した。
【0320】
(2)~(4)前記製造例1-1のPTFE多孔性支持体および製造例2-1で製造した電解質膜形成用溶液を使用して、第1電解質層-第1支持体層-第2電解質層-第2支持体層-第3電解質層が積層された積層体を製造するが、第1電解質層(平均厚さ4.0μm)、第2電解質層(平均厚さ3.0μm)および第3電解質層(平均厚さ4.0μm)を形成した。
【0321】
(5)次に、前記積層体を160℃で10分間熱処理して、図1のような第1電解質層、第1支持体層(=製造上の収縮により平均厚さ5μmと薄くなる)、第2電解質層、第2支持体層(=製造上の収縮により平均厚さ5μmと薄くなる)および第3電解質層が順次に積層された平均厚さが15μmのPEMFC用複合電解質膜を製造した。
【0322】
実験例7:PEMFC用複合電解質膜の物性の測定
(1)耐久性測定実験(Fenton test)
製造例2-1~2-5および比較製造例2-1で製造されたPEMFC用複合電解質膜それぞれを5cm×5cm(横×縦)サイズで試験片を準備し、オーブンに80℃、5時間以上乾燥後、質量を測定する。準備した試験片を2体積%濃度の過酸化水素にFe2+3ppmを添加して製造した溶液200gに浸漬した後、80℃、120時間放置した。
【0323】
試験片から溶出されたフッ素イオン濃度は、フッ素イオン選択電極を使用して測定し、その結果を下記表9に示した。ペントンテストは、測定値が低いほどフッ素イオン溶出が低いものであり、すなわち、電解質膜の耐久性に優れたものである。
【0324】
(2)寸法安定性の測定実験
製造例2-1~2-5および比較製造例2-1で製造されたPEMFC用複合電解質膜それぞれを5cmX1cm(MD方向XTD方向)で裁断し、裁断したPEMFC用複合電解質膜それぞれを下記関係式1によってMD方向(=長さ方向)とTD方向(=幅方向)の寸法変化率をそれぞれ測定し、その結果を下記表9に示した。
【0325】
[関係式1]
寸法変化率(%)=(B-A)/AX100
前記関係式1において、Aは、PEMFC用複合電解質膜の初期長さを示し、Bは、前記PEMFC用複合電解質膜を80℃の温度で20分間放置した後に測定した長さを示す。
【0326】
寸法変化率実験は、測定値が低いほど寸法安定性が高いものであり、すなわち、電解質膜の機械的物性に優れたものである。
【0327】
(3)性能測定実験
製造例2-1~2-5および比較製造例2-1で製造されたPEMFC用複合電解質膜それぞれを8cmX8cm(MD方向XTD方向)で裁断し、裁断したPEMFC用複合電解質膜それぞれを含む図2のようなPEMFC用膜-電極接合体を製造した。その後、温度65℃、RH100%条件で1Aの電流で測定される電圧(V)を測定して性能を計算し、その結果を下記表9に示した。
【0328】
(4)引張強度の測定実験
ASTM D882規定によって製造例2-1~2-5および比較製造例2-1で製造されたPEMFC用複合電解質膜それぞれに対する引張強度を測定して、その結果を下記表9に示した。
【0329】
【表9】
【0330】
表9から確認できるように、製造例2-1~2-5で製造されたPEMFC用複合電解質膜は、耐久性および寸法安定性に優れるだけでなく、引張強度が高く、性能にも優れていることを確認することができた。そして、比較製造例2-1と比較して、電解質層内耐久性向上剤を含む製造例2-1~2-5が相対的に耐久性に特化した特性を確認することができた。
【0331】
製造例3-1:PEMFC用複合電解質膜の製造
各層の厚さが前記製造例2-1と同じ第1電解質層(4μm)-第1支持体層(2μm)-第2電解質層(3μm)-第2支持体層(2μm)-第3電解質層(4μm)が積層された積層体を製造するが、第1、第2支持体層は、製造例1-2で製造したPTFE多孔性支持体を使用した。
【0332】
下記表10のように実施例1の耐久性向上剤含有量をそれぞれ異ならせた電解質膜形成用溶液を製造した後、これを用いて第1電解質層~第3電解質層それぞれを形成して、複合電解質膜を製造した。
【0333】
製造例3-2および比較製造例3-1~3-2
前記製造例3-1と同じ厚さの電解質層形成および同じ支持体を使用して第1電解質層(4μm)-第1支持体層(2μm)-第2電解質層(3μm)-第2支持体層(2μm)-第3電解質層(4μm)が積層された積層体を製造するが、電解質膜形成用溶液内耐久性向上剤含有量を異ならせて製造した後、下記表10のように電解質層内耐久性向上剤含有量をそれぞれ異ならせて複合電解質膜をそれぞれ製造して、製造例3-2および比較製造例3-1~3-2を実施した。
【0334】
実験例8:PEMFC用複合電解質膜の物性の測定
図5に概略図で示されたように、アノード電極1、アノード触媒層2、アノード気体拡散層3、複合電解質膜100、カソード気体拡散層4、カソード触媒層5、カソード電極基材6を備えたPEMFC用膜-電極接合体を製造した。
【0335】
この際、前記複合電解質100は、前記製造例2-1、製造例3-1~3-2および比較製造例3-1~3-2複合電解質膜それぞれを用いるが、各第1電解質層がアノード方向に、第3電解質層がカソード方向に備えられるようにした。
【0336】
そして、製造した膜-電極接合体中に耐久性向上剤添加含有量および適用デザインによる性能および耐久性測定結果を下記表10に示した。
【0337】
【表10】
【0338】
前記表10の物性測定結果を見ると、製造例2-1、製造例3-1および製造例3-2がいずれも全般的に優れた耐久性測定結果を示した。製造例3-1~3-2および比較製造例3-1~3-2を比較してみると、複合電解質を構成する第1~3電解層の各層内アノード方向よりカソード方向に耐久性向上剤の含有量が増加するほど(第1電解質層<第2電解質層<第3電解質層)または第2電解質層より第1および第2電解質層に耐久性向上剤含有量がさらに高い場合(第2電解質層<第1電解質層、第3電解質層)が、耐久性向上効果が相対的にさらに優れた結果を示し、性能の面でも有利な結果を示した。
【0339】
製造例4:PEMFC用複合電解質膜の製造
(1)電解質膜形成用溶液の製造
実施例9-2で製造した高耐久性向上剤(Pt/CeO)0.5重量%および-SOH基の当量(equivalent weight)が720の過フッ素系スルホン化イオノマー(solvay,aquivion D72-25DS)95.5重量%を混合して、電解質膜形成用溶液を製造した。
【0340】
(2)第1支持体層および第2支持体層として製造例1-2で製造したPTFE多孔性支持体をそれぞれ準備した。
【0341】
(3)第1支持体層をガラス基板に固定し、アプリケーター(Film Applicator)を用いて第1支持体層の一面を前記電解質膜形成用溶液に含浸した後、80℃真空オーブンで20分間乾燥を行って、第1支持体層の一面に平均厚さが4μmの第1電解質層を形成した。
【0342】
(4)第2支持体層をガラス基板に固定し、アプリケーター(Film Applicator)を用いて第2支持体層の一面を前記電解質膜形成用溶液に含浸した後、80℃真空オーブンで20分間乾燥を行って、第2支持体層の一面に平均厚さが4μmの第3電解質層を形成した。
【0343】
(5)一面に第1電解質層が形成された第1支持体層の他面を前記電解質膜形成用溶液に含浸した後、80℃真空オーブンで20分間乾燥を行って、第1支持体層の他面に平均厚さが3μmの第2電解質層を形成した。
【0344】
(6)一面に第3電解質層が形成された第2支持体層の他面を製造された第2電解質層に積層し、160℃で10分間熱処理して、図1のような第1電解質層、第1支持体層(=製造上の収縮により平均厚さ2μmと薄くなる)、第2電解質層、第2支持体層(=製造上の収縮により平均厚さ2μmと薄くなる)および第3電解質層が順次に積層された平均厚さが15μmのPEMFC用複合電解質膜を製造した。
【0345】
製造例5-1:PEMFC用複合電解質膜の製造
各層の厚さが前記製造例4と同じ第1電解質層(4μm)-第1支持体層(2μm)-第2電解質層(3μm)-第2支持体層(2μm)-第3電解質層(4μm)が積層された積層体を製造するが、第1、第2支持体層は、前記製造例1-2で製造したPTFE多孔性支持体を使用した。
【0346】
下記表11のように実施例9-1の高耐久性向上剤含有量をそれぞれ異ならせた電解質膜形成用溶液を製造した後、これを用いて第1電解質層~第3電解質層それぞれを形成して複合電解質膜を製造した。
【0347】
製造例5-2および比較製造例4-1~4-2
前記製造例5-1と同じ厚さの電解質層形成および同じ支持体を使用して第1電解質層(4μm)-第1支持体層(2μm)-第2電解質層(3μm)-第2支持体層(2μm)-第3電解質層(4μm)が積層された積層体を製造するが、電解質膜形成用溶液内の高耐久性向上剤含有量を異ならせて製造した後、下記表11のように電解質層内高耐久性向上剤含有量をそれぞれ異ならせて、複合電解質膜をそれぞれ製造して製造例5-2および比較製造例4-1~4-2を実施した。
【0348】
実験例9:PEMFC用複合電解質膜の物性測定
実験例8のようにアノード電極1、アノード触媒層2、アノード気体拡散層3、複合電解質膜100、カソード気体拡散層4、カソード触媒層5、カソード電極基材6を備えたPEMFC用膜-電極接合体を製造した。
【0349】
この際、前記複合電解質100は、前記製造例4、製造例5-1~5-2および比較製造例4-1~4-2複合電解質膜それぞれを用いるが、各第1電解質層がアノード方向に、第3電解質層がカソード方向に設けられるようにした。
【0350】
そして、製造した膜-電極接合体中に高耐久性向上剤添加含有量および適用デザインによる性能および耐久性測定結果を下記表11に示した。
【0351】
【表11】
【0352】
前記表11の物性測定結果を見ると、製造例4、製造例5-1および製造例5-2がいずれも全般的に優れた耐久性測定結果を示した。製造例5-1~5-2および比較製造例4-1~4-2を比較してみると、複合電解質を構成する第1~第3電解層の各層内アノード方向よりカソード方向に高耐久性向上剤の含有量が増加するほど(第1電解質層<第2電解質層<第3電解質層)または第2電解質層より第1および第2電解質層に高耐久性向上剤含有量がさらに高い場合(第2電解質層<第1電解質層、第3電解質層)が、耐久性向上効果が相対的にさらに優れた結果を示し、性能の面でも有利な結果を示した。
【0353】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明の思想は、本明細書に提示される実施例に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は、同じ思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加などによって他の実施例を容易に提案することができるが、これも、本発明の思想範囲内に入るといえる。
【符号の説明】
【0354】
1:アノード電極基材 2:アノード触媒層
3:アノード気体拡散層 4:カソード気体拡散層
5:カソード触媒層 6:カソード電極基材
11:第1支持体層 12:第2支持体層
13:第3支持体層 14:第4支持体層
21:第1電解質層 22:第2電解質層
23:第3電解質層 24:第4電解質層
25:第5電解質層 100:PEMFC用複合電解質膜
200:アノード 300:カソード
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】