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特表2024-542166フィルタチョーク、フィルタチョークの製造方法、および電気機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】フィルタチョーク、フィルタチョークの製造方法、および電気機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20241106BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20241106BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20241106BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20241106BHJP
   H01F 27/26 20060101ALI20241106BHJP
   H01F 41/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01F37/00 E
H01F37/00 C
H01F37/00 A
H01F37/00 N
H01F27/32 150
H01F27/28 147
H01F37/00 T
H01F27/24 J
H01F27/26 130Q
H01F41/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527153
(86)(22)【出願日】2022-10-31
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2022080359
(87)【国際公開番号】W WO2023088672
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】21208886.8
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22176294.1
(32)【優先日】2022-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515078095
【氏名又は名称】エスエムエイ ソーラー テクノロジー アクティエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMA Solar Technology AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】リルコ,マレク
(72)【発明者】
【氏名】カッチ,マーチン
(72)【発明者】
【氏名】ハビンカ,プシェミスワフ
(72)【発明者】
【氏名】トビアシュ,アダム
【テーマコード(参考)】
5E043
5E044
【Fターム(参考)】
5E043AB04
5E044BA04
5E044BB01
5E044BB05
5E044BC01
(57)【要約】
本出願は、EMIフィルタに使用されるフィルタチョーク(10)であって、
2つのコア脚部(21、22)を有する閉じた磁気コア(20)であって、少なくとも2つのコアセグメント(23)から組み立てられるように構成された、閉じた磁気コア(20)と、
少なくとも2つのボビン(30)であって、各々のボビンは、ベースフランジ(31)と、ベースフランジ(31)から垂直方向に延びる管状セクション(32a、32b)とを備え、管状セクション(32a、32b)は、2つのコア脚部(21、22)のうちの1つを受け入れるための開口部(33)を備える、少なくとも2つのボビン(30)と、
各々のボビン(30)の管状セクション(32a、32b)の周囲に配置された複数の巻線を有する導電体(41)によって形成されたコイル(40)と
を備えた、フィルタチョーク(10)において、
フィルタチョーク(10)が組み立てられた状態では、ボビン(30)は、それらの開口部(33)が互いに同軸上に整列し、コア脚部(21、22)のうちの1つが開口部(33)を通って延びるように積み重ねて配置され、各々のボビン(30)は、そのベースフランジ(31)の対向するエッジ(34)に配置された少なくとも2つの第1の嵌合要素(35)を備え、第1のボビン(30)の第1の嵌合要素(35)は、隣接する第2のボビン(30)の第1の嵌合要素(35)と係合して、2つのボビン(30)を共に取り外し可能に固定するように構成されることを特徴とする、フィルタチョーク(10)を開示する。
本出願はさらに、前記フィルタチョーク(10)を製造する方法、ならびに前記フィルタチョーク(10)を備える電気機器を開示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EMIフィルタに使用されるフィルタチョーク(10)であって、前記フィルタチョーク(10)は、
2つのコア脚部(21、22)を備えた閉じた磁気コア(20)であって、少なくとも2つのコアセグメント(23)から組み立てられるように構成された、閉じた磁気コア(20)と、
少なくとも2つのボビン(30)であって、各々のボビンは、ベースフランジ(31)と、前記ベースフランジから垂直方向に延びる管状セクション(32a、32b)とを備え、前記管状セクション(32a、32b)は、前記2つのコア脚部(21、22)のうちの1つを受け入れるための開口部(33)を備える、少なくとも2つのボビン(30)と、
各々のボビン(30)の前記管状セクション(32)の周囲に配置された複数の巻線を有する導電体(41)によって形成されたコイル(40)と
を備えた、フィルタチョーク(10)において、
前記少なくとも2つのボビン(30)のうちの1つは、事前に巻かれた状態の前記コイル(40)が前記少なくとも2つのボビン(30)のそれぞれ1つの前記管状セクション(32)に取り付け可能であるように構成され、前記フィルタチョーク(10)が組み立てられた状態では、前記ボビン(30)は、それらの開口部(33)が互いに同軸上に整列し、前記コア脚部(21、22)のうちの1つが前記開口部(33)を通って延びるように積み重ねて配置され、各々のボビン(30)は、そのベースフランジ(31)の対向するエッジ(34)に配置された少なくとも2つの第1の嵌合要素(35)を備え、前記第1のボビン(30)の前記第1の嵌合要素(35)は、前記隣接する第2のボビン(30)の前記第1の嵌合要素(35)と係合して、2つのボビン(30)を共に取り外し可能に固定するように構成され、前記コイル(40)は、前記第1のボビン(30)の前記ベースフランジ(31)と前記隣接する第2のボビン(30)の前記ベースフランジ(31)との間に配置されることを特徴とする、フィルタチョーク(10)。
【請求項2】
各々のボビン(30)は、前記ベースフランジ(31)から垂直方向に延びる2つの管状セクション(32a、32b)を備え、前記管状セクション(32a、32b)の各々は、前記2つのコア脚部(21、22)のうちの異なる1つを受け入れるための開口部(33)を含み、複数の巻線を有する導電体(41)によって形成されたコイル(40)が、前記ボビン(30)の各々の管状セクション(32a、32b)の周囲に配置され、前記少なくとも2つのボビン(30)のうちの1つは、事前に巻かれた状態にある各々のコイル(40)が前記2つの管状セクション(32)のうちの関連する1つに取り付け可能であるように構成され、前記フィルタチョーク(10)が組み立てられた状態では、前記コイル(40)は、前記隣接するボビン(30)の前記ベースフランジ(31)の間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載のフィルタチョーク(10)。
【請求項3】
各々のボビン(30)は、前記導電体(41)によって形成される前記コイル(40)の少なくとも1つの端子(42a、42b)を位置決めおよび/または整列させるためのそのベースフランジ(31)の底面(36a)および/または上面(36b)に配置された案内要素(43a~43f)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のフィルタチョーク(10)。
【請求項4】
前記少なくとも2つの第1の嵌合要素(35)はそれぞれ、前記隣接する第2のボビン(30)とのスナップフィット(38)を形成するように構成された部分(38a)および/または対応する相手部分(38b)を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルタチョーク(10)。
【請求項5】
各々の第1の嵌合要素(35)に対して、前記スナップフィット部分(38a)および前記スナップフィット相手部分(38b)は、前記ベースフランジ(31)のエッジ(34)から対向する軸方向に延びる、請求項4に記載のフィルタチョーク(10)。
【請求項6】
前記少なくとも2つのボビン(30)のうちの1つの前記ベースフランジ(31)は、前記磁気コア(20)の前記複数のコアセグメント(23)のうちの少なくとも1つを固定するように構成されたコアクリップ(24)の対応する嵌合要素(39b)と取り外し可能に係合するための2つの第2の嵌合要素(39a)を備えることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルタチョーク(10)。
【請求項7】
絶縁材料から作られ、前記ボビン(30)の前記ベースフランジ(31)と実質的に同じ形状を有する蓋部(37)が、前記第1のボビン(30)および前記第2のボビン(30)のうちの外側のボビンに取り外し可能に固定されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルタチョーク(10)。
【請求項8】
前記磁気コア(20)は、間隙(26)の周囲に低磁気抵抗バイパス経路(25)を備え、前記間隙(26)は、前記フィルタチョーク(10)の動作中に磁束方向と実質的に平行に向けられた間隙面法線
を備え、前記バイパス経路(25)は、前記間隙(26)に隣接して配置される2つのコアセグメント(23)間に重なり領域(27)をさらに備え、前記重なり領域(27)は、前記フィルタチョーク(10)の動作中に、その界面法線
が前記磁束に対して実質的に垂直となるように向けられることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルタチョーク(10)。
【請求項9】
前記磁気コア(20)は、少なくとも2つの層に配置された少なくとも4つのコアセグメント(23)を備え、各々の層が、少なくとも2つのコアセグメント(23)から形成される実質的に同じ幾何学的形状を有する閉じた磁気サブコア(27a、27b)を含むようにし、前記サブコア(27a、27b)は、互いに同軸に整列されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルタチョーク(10)。
【請求項10】
異なる層内の前記サブコア(27a、27b)の前記コアセグメント(23)は、それらの間隙面法線
が前記磁束に対して実質的に平行となるように向けられたそれらの間隙(26)が、前記異なるサブコア(27a、27b)で互いにオフセットして配置される、請求項9に記載のフィルタチョーク(10)。
【請求項11】
前記導電体(41)は、平角線を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のフィルタチョーク(10)。
【請求項12】
前記複数のコアセグメント(23)は、異なるコア材料を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のフィルタチョーク(10)。
【請求項13】
前記少なくとも2つのボビン(30)は、互いに実質的に同一である、請求項1~12のいずれか一項に記載のフィルタチョーク(10)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のフィルタチョーク(10)を含む電気機器、特にインバータであって、前記フィルタチョークは、前記電気機器内でコモンモードチョークとして動作する、電気機器。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のフィルタチョーク(10)を製造する方法であって、
2つのコア脚部(21、22)を有する閉じた磁気コア(20)に組み立てられるように構成された少なくとも2つのコアセグメント(23)を提供するステップと、
第1のボビン(30)および第2のボビン(30)を提供するステップであって、各々のボビン(30)は、ベースフランジ(31)と、前記ベースフランジ(31)から垂直方向に延びる管状セクション(32)とを備え、前記管状セクション(32)は、前記2つのコア脚部(21、22)のうちの1つを受け入れるための開口部(33)を備える、ステップと、
自動巻線プロセスを使用することにより少なくとも2つのコイル(40)を形成するために導電体(41)を巻くステップと、
各々のボビン(30)の前記管状セクション(32)上に事前に巻かれたコイル(40)を配置するステップと、
前記第1のボビン(30)を前記第2のボビン(30)に対して上下に積み重ねて配置し、それらの開口部(33)が互いに同軸に向くように前記第1のボビン(30)を前記第2のボビン(30)にラッチするステップであって、前記コイル(40)の端子(42a、42b)は、実質的に所定の位置に配置される、ステップと、
閉じた磁気コア(20)を形成するために前記コアセグメント(23)を前記ボビン(30)の前記開口部(33)に挿入するステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁干渉(EMI)フィルタに使用されるフィルタチョークに関する。特に、本発明は、一方で、特に大量生産時に再現性の高い磁気特性を提供し、他方で、断面積の大きな電線が使用される場合であっても、組み立てが容易なフィルタチョークに関する。フィルタチョークは、差動モードフィルタおよびコモンモードフィルタを含む様々な機器で使用できるが、特にコモンモードフィルタチョークとして使用することを目的としている。また、本発明は、それぞれのフィルタチョークを備えた電気機器およびフィルタチョークの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチモード電源などの様々な電気機器は、典型的には、通常の動作中に電磁放射を放出している。この電磁放射を少なくとも関連する電気規格で定義されている値よりも低く低減させるために、通常、機器内にEMIフィルタが実装される。したがって、EMIフィルタは、動作中の機器の電磁両立性(EMC)を確保するために必要な部品である。EMIフィルタは、フィルタリングされる放射モードに応じて、差動モードフィルタチョークまたはコモンモードフィルタチョークとして構成できるフィルタチョークを備えている。
【0003】
フィルタチョークは、磁気コアと少なくとも2つのコイルとを備えることができ、各々のコイルは、1つまたは複数の巻線の形態で磁気コアの脚部の周囲に配置された導電体を備える。磁気コアが低い磁気抵抗を備えることが頻繁に要求されるため、コアは、一体部品の形態の閉じた磁気コア(closed magnetic core)として設計される。その場合、コイルは通常、手動で磁気コアの周囲に電線を巻き付けることによって製造される。しかしながら、典型的には導体の低いオーム抵抗が要求される場合である、特に大きな断面積を有する電線が使用される場合、手作業による製造プロセスは比較的労働集約的である。また、手作業による製造プロセスでは、理論的には同じ設計を含む複数のフィルタチョークを次々に製造する際の再現性が比較的低くなる。また、部品のサイズも大きくなる。したがって、フィルタチョークの最適化された設計を提供することが望ましい。
【0004】
CN203858954Uは、鉄心セット、2つの巻枠、仕切り部品、及び巻線を備えるチョークを開示している。鉄心セットは、第1の鉄心と第2の鉄心とを備える。第1の鉄心の両端と第2の鉄心の両端は分離可能に接続され、閉じた形状を形成する。各々の巻枠は、鉄心セットが貫通可能な鉄心通路が設けられた巻枠本体を備えている。仕切り部品は、2つの巻枠に固定して組み合わせることができる。巻線は、2つの巻枠に巻かれる。
【0005】
JP6458720B2は、コアと、コアの周囲に配置されたコイルを備えるボビンとからなるリアクトルを開示している。ボビンは、第1の本体部分と第2の本体部分からなる。第1の本体部分は、コアが貫通する開口部を含む第1のフランジと、第1のフランジの一側面に配置される第1の円筒部材と、第1のアーム部材とからなる。第2の本体部分は、コアが貫通する開口部を含む第2のフランジと、第2のフランジの一側面に配置される第2の円筒部材と、2つの第2のアーム部材とからなる。ボビンは、2つの第2のアーム部材の間に第1のアーム部材を嵌合することにより形成される。
【0006】
JPH0562020Uは、端子ブロックとボビンのアセンブリを含む構造を開示している。このアセンブリは、巻枠に複数の係止突起を設けた構造となっている。巻枠と他の巻枠、あるいは巻枠と端子台とを係合して固定するために、係止凹部および凸部が使用される。これにより、1つまたは複数のセクションを有するボビン部と、様々なピンを有する端子台とを組み合わせたボビンが提供される。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点の少なくとも1つに対処する、それを除去する、または軽減する、EMIフィルタに使用するためのフィルタチョークを提供することである。特に、フィルタチョークは、簡単な組み立て方法と組み合わせて、同じ設計に従って製造された複数のフィルタチョーク内で再現性の高い磁気特性を備えるものとする。
【0008】
本開示によれば、本発明の目的は、独立請求項1の構成を備えるフィルタチョークによって解決される。従属請求項2~13は、本発明に係るフィルタチョークの好ましい実施形態に関する。請求項14は、本発明のフィルタチョークを備える電気機器に関する。請求項15は、フィルタチョークの製造方法に関する。
【0009】
本発明によれば、EMIフィルタに使用されるフィルタチョークは、
2つのコア脚部を有する閉じた磁気コアであって、少なくとも2つのコアセグメントから組み立てられるように構成された、閉じた磁気コアと、
少なくとも2つのボビンであって、各々のボビンは、ベースフランジと、ベースフランジから垂直方向に延びる管状セクションとを備え、管状セクションは、2つのコア脚部のうちの第1のコア脚部を受け入れるための開口部を備える、少なくとも2つのボビンとを備える。フィルタチョークは、
各々のボビンの管状セクションの周囲に配置された複数の巻線を有する導電体によって形成されたコイルをさらに備える。フィルタチョークは、
少なくとも2つのボビンのうちの1つは、事前に巻かれた状態のコイルが少なくとも2つのボビンのそれぞれ1つの管状セクションに取り付け可能、特に管状セクションの軸方向に沿って取り付け可能であるように構成され、フィルタチョークが組み立てられた状態では、ボビンは、それらの開口部が互いに同軸上に整列し、コア脚部のうちの1つが開口部を通って延びるように積み重ねて配置されることを特徴とする。さらに、各々のボビンは、そのベースフランジの対向するエッジに配置された少なくとも2つの第1の嵌合要素を備える。フィルタチョークが組み立てられた状態では、第1のボビンの第1の嵌合要素は、隣接して配置される第2のボビンの第1の嵌合要素と係合して、2つのボビンを共に取り外し可能に固定するように構成される。したがって、フィルタチョークが組み立てられた状態では、コイルは隣接するボビン、すなわち第1のボビンのベースフランジとそれに隣接する第2のボビンのベースフランジとの間に配置される。隣接するボビンのベースフランジ間のコイルの配置は、フィルタチョークが組み立てられた状態において、コイルが隣接するボビンのベースフランジによってその軸方向にわずかに加圧されるようにすることができる。この加圧により、コイルを加圧しない場合に比べて、組み立てられた状態または事前に組み立てられた状態にあるフィルタチョークをより機械的に安定させることができる。したがって、一般的にフィルタチョークの磁気特性の再現性も、特にその取り扱い中の再現性も最適化することができる。
【0010】
事前に巻かれた状態のコイルが少なくとも2つのボビンのそれぞれ1つの管状セクションに取り付け可能であるように、少なくとも2つのボビンのうちの1つが構成されているという特徴は、少なくともフィルタチョークの最終組み立て前の状態において、そのそれぞれの管状セクションにコイルをスライドして案内される動作の可能性を備えることができる。特に、コイルが差し込まれる管状セクションの少なくともその端部には、その管端部へのコイルの取り付けを妨げるいかなる障壁も存在しない。好ましくは、それぞれの端部セクションは、円錐形の設計を含むことができ、それによって管状セクション上にコイルを取り付ける簡単な方法が可能になる。また、その端部とは別に、ボビンのベースフランジが設けられている。例えば、それは、その端部の反対側にある管状セクションの他端の近くに設けることができ、組み立て中に事前に巻かれたコイルがその上に取り付けられる。あるいはまた、それは、管状セクションの中間部付近に設けることもできる。これらのいずれの場合においても、フィルタチョークが組み立てられた状態において、事前に巻かれたコイルが、隣接するボビンのベースフランジ間に配置され、任意選択で、わずかに加圧されることが保証される。
【0011】
本発明の範囲内で、1つだけでなく、少なくとも2つのボビンの各々を、事前に巻かれた状態のコイルが少なくとも2つのボビンの各々の管状セクションに取り付け可能であるように構成することができる。言うまでもなく、管状セクションの開口部、特に各々の管状セクションの開口部は、各々の管状セクションの軸方向に連続した貫通孔が設けられるように、ベースフランジ内のそれぞれの位置にも存在し、管状セクション内に存在するだけでなく、ベースフランジも貫通する。フィルタチョークは、2つよりも多いボビン、例えば3つまたはさらにより多いボビンを含んでもよく、これらのボビンは、上下に積み重ねて配置され、隣接するボビンは、互いに取り外し可能に固定される。
【0012】
2つのコア脚部のうちの1つが積み重ねられたボビンの同軸に配置された開口部を通って延びているという特徴は、単一のコアセグメントもこれらの開口部を貫通していることを暗示している可能性がある。しかしながら、これは、それぞれの特徴を実現するための1つの選択肢にすぎない。代替の一実施形態では、フィルタチョークが組み立てられた状態において、磁気コアを形成する2つのコアセグメント間の間隙が2つのボビン間に配置されることも可能である。その実施形態では、両方のコアセグメントの各々1つが、開口部のうちの1つの開口部のみを貫通する。さらに別の一実施形態では、フィルタチョークが組み立てられた状態において、コアセグメントのうちの1つおよび/または2つが1つの開口部を部分的にのみ貫通し、それらの間に形成される間隙が特定のボビンの管状セクションの内部に局在化するようにすることも可能である。
【0013】
少なくとも2つのボビンは通常、絶縁材料(例えば、合成樹脂材料)から作られている。ボビンの製造プロセスは、射出成形プロセスを含むことができる。射出成形プロセスにより、ボビンの寸法に関する小さな公差を保証することができ、フィルタチョークの磁気特性の再現性に関して有利になる。フィルタチョークの磁気特性は、フィルタチョーク内にモジュール方式で実際に存在するボビンの数を変更することによって、したがって事前に巻かれたコイルの数を変更することによって変えることができる。特に、フィルタチョークがインダクタンス値の増加を必要とする場合、積み重ねられるボビンの数、および事前に巻かれたコイルの数も増やすことができる。したがって、本発明の範囲内で、一実施形態におけるフィルタチョークは、2つだけよりも多いボビン、例えば3つ、4つ、またはさらにより多いボビンを備えることができる。少なくとも2つのボビンが実質的に同じ設計を備える必要はないが、しかしながら、投資を比較的低いレベルに保つには、単一の射出成形金型のみが必要であるため、それは有利である。しかしながら、用途によっては、少なくとも2つのボビンの異なる設計を使用することが有利な場合がある。この場合、異なるボビンの設計は、特に、ボビンごとに管状セクションの長さに関して異なることが可能であり、これによって異なる巻数の事前に巻かれたコイルを異なる管状セクションに配置することができる。しかしながら、ボビン(特に、そのベースフランジ)の横方向の寸法を一定に保つことが有利である。
【0014】
閉じた磁気コアは、少なくとも2つのコアセグメントから組み立てられるように構成されているため、労力を要する手作業による製造方法はもはや必要とされない。したがって、本発明によれば、フィルタチョークの設計により、フィルタチョークの製造方法は、
2つのコア脚部を有する閉じた磁気コアに組み立てられるように構成された少なくとも2つのコアセグメントを提供するステップと、
第1のボビンおよび第2のボビンを提供するステップであって、各々のボビンは、ベースフランジと、ベースフランジから垂直方向に延びる管状セクションとを備え、管状セクションは、2つのコア脚部のうちの第1のコア脚部を受け入れるための開口部を備える、ステップと、
自動巻線プロセスを使用することにより少なくとも2つのコイルを形成するために導電体を巻くステップと、
各々のボビンの管状セクション上に事前に巻かれたコイルを配置するステップと、
第1のボビンを第2のボビンに対して上下に積み重ねて配置し、それらの開口部が互いに同軸に向くように第1のボビンを第2のボビンに取り外し可能に固定するステップであって、コイルの端子は、実質的に所定の位置に配置される、ステップと、
閉じた磁気コアを形成するためにコアセグメントをボビンの開口部に挿入するステップと
を含む。
【0015】
フィルタチョークの設計により、高度に自動化された製造方法を使用できる。特に、自動巻線技術は、導電体を巻くために使用することができ、再現性が高くコスト効率の高い方法でコイルを製造するのに有利である。これは、導電体が大きな断面を有し、手作業で巻くのが非常に困難で再現不可能な場合に特に有利である。ボビンの一方または両方は、コイルが少なくとも2つのボビンのそれぞれ1つの管状セクションに取り付け可能であるように構成されており、コイルの巻き付けは、ボビン上およびコア脚部上に配置される前に行われるので、手動巻線プロセスを使用する場合に通常存在する、巻線中に磁気コアにもたらされる機械的応力とその悪影響を排除できる。磁気コアは、少なくとも2つのコアセグメントから組み立てられるように構成されており、したがって少なくとも1つの間隙を備えているが、組み立てられた磁気コアの磁気特性に対する間隙の悪影響(ここでは、磁気コアの磁気抵抗の増加)は、磁気コアが組み立てられた状態で少なくとも1つの間隙の周囲に磁束のバイパス経路を提供するようにコアセグメントを設計することによって低減させることができる。これについては、図4aおよび図4bでより詳細に説明する。
【0016】
フィルタチョークの好ましい一実施形態では、各々のボビンは、ベースフランジから垂直方向に延びる2つの管状セクションを備え、管状セクションの各々は、2つのコア脚部のうちの異なる1つを受け入れるための開口部を含む。各々のボビンが2つの管状セクションを備えるという特徴は、上述の管状セクションに加えて、各々のボビンがベースフランジから垂直方向に延びるさらなる管状セクションを備えることを理解すべきである。各々のボビンに対して、さらなる管状セクションを管状セクションに隣接して配置することができる。この場合、導電体によって形成され、複数の巻線を含む、コイルおよびさらなるコイルのうちのそれぞれのコイルが、各々のボビンの各々の管状セクションの周囲に配置される。ここで、少なくとも2つのボビンのうちの1つは、事前に巻かれた状態にある各々のコイルが2つの管状セクションのうちの関連する1つに取り付け可能、特に管状セクションの軸方向に沿って取り付け可能であるように構成される。この実施形態では、フィルタチョークが組み立てられた状態で、コイルは、隣接するボビンのベースフランジの間に、任意選択でわずかに加圧された方法で配置される。少なくとも2つのボビンの両方またはすべては、事前に巻かれた状態の各々のコイルが少なくとも2つのボビンの各々の2つの管状セクションに取り付け可能であるように構成されることも可能である。2つの管状セクションは、互いに実質的に平行に向けられた軸方向を含むことができる。これは、磁気コアが、磁気コアの対向する部位に、平行に向けられたコア脚部を備えた、閉じた長方形の設計を含む場合に、特に当てはまり得る。磁気コアは、組み立てられた状態でトロイダル形状を構成することも可能である。
【0017】
一実施形態では、フィルタチョークの各々のボビンは、そのベースフランジの底面および/または上面に配置された案内要素を含むことができる。導電体によって形成され、フィルタチョークが組み立てられた状態で管状セクション上に配置された事前に巻かれたコイルの少なくとも1つの端子または各々の端子を位置決めおよび/または整列させるように案内要素を構成することができる。好ましくは、各々のボビンは、組み立てられたフィルタチョーク内に存在する各々のコイルの各々の端子が互いに整列され、組み立てられたフィルタチョークに対して所定の位置に配置されるように、案内要素を含むことができる。フィルタチョークと電気機器内の他の電気部品との簡単な組み立て、特にプリント回路基板(PCB)上でのフィルタチョークの組み立ては、案内要素によって支援され得る。
【0018】
フィルタチョークの一実施形態では、第1のボビンの少なくとも2つの第1の嵌合要素は、フィルタチョークが組み立てられた状態で、隣接する第2のボビンのそれぞれの第1の嵌合要素とスナップフィットを形成するように構成することができる。具体的には、第1のボビンおよび第2のボビンの各々の第1の嵌合要素は、スナップフィットの部分および/または対応する相手部分を含むことができる。スナップフィットは、スナップフィットの部分としての「フック」が対応する相手部分としての「ループ」と係合するフック/ループ設計を備えることができる。各々の第1の嵌合要素に対して、スナップフィットの部分およびスナップフィットの相手部分は、ベースフランジに対して垂直に、かつベースフランジのエッジから互いに反対の軸方向に延びるように設計することができる。フィルタチョークの好ましい一実施形態では、少なくとも2つのボビンは、ボビンの各々の第1の嵌合要素内にそのように設計された部分および相手部分を設けることによって、互いに実質的に同一に設計することができる。少なくとも2つのボビンを互いに実質的に同一に設計することによって、ボビンを製造するために必要な射出成形金型への投資を最小限に抑えることができる。これは、少なくとも2つのボビンがそれぞれの管状セクションの長さにおいてのみ異なっている場合にも当てはまる。したがって、「実質的に同一」という表現は、ここでは、管状セクションの長さの違いは別として、少なくとも2つのボビンについて同一であるボビンの設計も包含することを意味する。
【0019】
フィルタチョークの一実施形態では、少なくとも2つのボビンのうちの1つまたは2つのベースフランジ、特にフィルタチョークのアセンブリ内の少なくとも2つのボビンのうちの外側のボビンは、コアクリップの対応する嵌合要素と取り外し可能に係合するための2つの第2の嵌合要素を備えることができ、コアクリップは、フィルタチョークのアセンブリ内で磁気コアの複数のコアセグメントのうちの少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を固定するように構成されている。フィルタチョークの組み立て、特に磁気コアのサブアセンブリ内での磁気コアセグメントの固定は、コアクリップ(複数可)を使用して簡単に実現できる。
【0020】
好ましくは、絶縁材料から作られ、ボビンのベースフランジと実質的に同じ形状を有する蓋部を、フィルタチョークは、さらに備えることができる。特に、蓋部の外周形状は、ボビンのベースフランジの外周形状と同一である。したがって、フィルタチョークを組み立てた状態において、蓋部に必要な横方向の構築空間は、ベースフランジに必要な構築空間と実質的に等しい。蓋部は、絶縁手段として機能し、これによって外側コイル(複数可)と磁気コアとの間の望ましくない電気接触を確実に防止できる。蓋部は、フィルタチョークのアセンブリ内の第1のボビンおよび第2のボビンのうちの上部のボビンまたは外側のボビンに取り外し可能に固定されるように構成することができる。それぞれのボビンに対する固定は、蓋部の片側に、隣接して配置されたボビンの自由なスナップフィット相手部分と係合するように構成されたそれぞれのスナップフィット部分を設けることによっても実現できる。蓋部はまた、フィルタチョーク内のボビンの各々1つと比較して、同様の位置に同じ数の開口部を備えることができるため、蓋部は、磁気コアの少なくとも1つのコア脚部または2つのコア脚部を受け入れるようにも構成される。しかしながら、ボビンの設計とは対照的に、蓋部の片側は、それぞれの方向に延びる管状セクションのない実質的に平坦な表面設計を備える。しかしながら、その側には、フィルタチョークのさらなるコアクリップの対応する嵌合要素と係合するように構成された第2の嵌合要素が存在することができる。フィルタチョークの両側に2つのコアクリップを設けることにより、アセンブリ全体を簡単な方法でしっかりと固定できる。
【0021】
フィルタチョークの磁気コアは、複数のコアセグメントから組み立てられるように構成されているため、磁気コア内に間隙が存在し、それは通常、その磁気抵抗を増加させる。フィルタチョークの関連用途では磁気コアの磁気抵抗が低いことがしばしば必要とされるため、磁気抵抗の増加は、望ましくない影響となる。この悪影響は、従来、いくつかのコアセグメントの外面を研磨することによってわずかに軽減されるだけであり、これには追加の労働集約的なプロセスが含まれる。しかしながら、本出願によれば、フィルタチョークの磁気コアは、間隙の周囲に、任意選択で各々の間隙の周囲に、低磁気抵抗のバイパス経路を備えることができる。したがって、労力をかけて研磨することなく、悪影響を最小限に抑えることができるか、またはさらに排除することができる。
【0022】
具体的には、フィルタチョークの磁気コアは、フィルタチョークの動作中に磁束方向と実質的に平行に向けられる間隙面法線
を有する間隙を備えることができる。複数のコアセグメントから組み立てられた閉じた磁気コアの場合、フィルタチョークの動作中の磁束、したがって間隙面法線
も、実質的に閉じた磁気コアの円周方向または外周方向に向けられている。そして、バイパス経路は、間隙に隣接して配置された2つのコアセグメント間に重なり領域を備えることができ、重なり領域は、フィルタチョークの動作中に、その界面法線
が磁束に対して実質的に垂直となるように向けられる。複数のコアセグメントから組み立てられた閉じた磁気コアの場合、磁束は、実質的に閉じた磁気コアの円周方向または外周方向に向けられるため、したがって、界面法線
は、閉じた磁気コアの円周方向または外周方向に対して実質的に垂直に向けられる。そのコアセグメントの密着接触(close contact)は、コアセグメント間の重なり領域によって提供され、重なり領域を通して、磁束は、一方のコアセグメントから他方のコアセグメントに容易に貫通できる。また、一方のコアセグメントから他方のコアセグメントへの磁束の貫通の傾向は、重なり領域のサイズに依存する。具体的には、前記貫通は、重なり領域の面積が増加するにつれて容易になる。したがって、バイパス経路の磁気抵抗、および磁気コアの磁気抵抗は、重なり領域の面積の増加とともに減少する。したがって、コアセグメントの幾何学的形状、特にそれらの重なり領域を設計することによって、磁気コアの特定の磁気抵抗を設計することができる。
【0023】
重なり領域は、やはり間隙を形成している2つのコアセグメント間に形成することができる(これは、図4aに開示された磁気コアの場合である)。しかしながら、磁気コアが少なくとも3つ以上のコアセグメントを備えることも可能である。その場合、第1のコアセグメントおよび第2のコアセグメントによって間隙が形成され、間隙に隣接する2つの重なり領域が形成され、そこから第1のコアセグメントと第3のコアセグメントとの間に1つの重なり領域が形成され、第3のコアセグメントと第2のコアセグメントとの間に他の重なり領域が形成されることが可能である(図4bを参照)。
【0024】
一実施形態では、フィルタチョークが組み立てられた状態の磁気コアは、上下に配置された少なくとも2つの層に配置された少なくとも4つのコアセグメントを備えることができる。各々の層は、少なくとも2つのコアセグメントから形成された実質的に同じ幾何学的形状を有する閉じた磁気サブコアを含むことができ、閉じたサブコアは、互いに同軸に整列される。その場合、異なる層のサブコアのコアセグメントは、磁束に対して実質的に平行に向けられた間隙面法線を有するすべての間隙が、異なるサブコア内で互いにオフセットして配置されるように配置される。この設計上の特徴により、第1の層内における各々の間隙の周囲の低磁気抵抗バイパス経路は、隣接する第2の層内のコアセグメントに沿って導かれ、第1の層の間隙の上方または下方に配置される。さらに、第2の層内における各々の間隙の周囲の低磁気抵抗バイパス経路は、隣接する第1の層内のコアセグメントに沿って導かれ、第2の層内の間隙の上方または下方に配置される。
【0025】
磁気コアが1つ以上の層を含むかどうか、また2つ以上のコアセグメントを含むかどうかに関係なく、複数のコアセグメントは、異なるコア材料を含むことができる。したがって、各々の個別のコアセグメントは、単一のコア材料のみから形成されるが、複数のコアセグメントのうちの少なくとも2つの個別のコアセグメントのコア材料は、互いに異なっていてもよい。磁気コアが複数の層を含む場合、一実施形態では、各々の層は、単一のコア材料のみを含むことができるが、少なくとも2つの異なる層のコア材料は、互いに異なっていてもよい。代替の一実施形態では、1つの層、複数の層、または各々の層が、異なるコア材料を有する少なくとも2つのコアセグメントを含むことができる。コアセグメントに異なるコア材料を選択することにより、例えば、第1のコアセグメントに材料Aと第2のコアセグメントに材料Bを選択するなどにより、フィルタチョークの特定の磁気特性の目標値を達成するためのより大きな自由度を達成することができる。したがって、フィルタチョークのインダクタンスは、各々のコアセグメントに同じ材料を備えた磁気コアの場合よりも良好に必要な値に調整することができる。
【0026】
フィルタチョークの一実施形態では、少なくとも2つのコイルを巻くために使用される導電体は、平角線を含む。任意選択で、少なくとも2つのコイルは、平角ワイヤーをその細いエッジの周囲に巻くことによって形成される。平角線を巻くことにより、特に平角線をその細いエッジの周囲に巻くことにより、比較的高い巻線密度と組み合わせて比較的低いオーム抵抗を有するコイル(「エッジ巻きコイル」とも呼ばれる)を製造することができる。これにより、フィルタチョークの部品サイズが有利に減少する。このような「平角線コイル」、特に「エッジ巻きコイル」の直流抵抗は、低く保つことができるため、パワーエレクトロニクス電気機器(例えば、DC/DCコンバータまたはDC/ACインバータ)内のフィルタチョークに使用することが好ましい。従来の手作業と労働集約的な巻線技術を使用すると、多くの場合、このようなエッジ巻きコイルを製造することができない。しかしながら、このことは、本出願に係るフィルタチョークにとっては問題ではなく、なぜなら、前記フィルタチョークを製造する方法は、自動巻線技術を使用してコイルを形成する行為を含むからである。
【0027】
本発明に係る電気機器は、本発明に係るフィルタチョークを備えるEMIフィルタを含むことを特徴とする。機器内のフィルタチョークは、「差動モード」フィルタチョークまたは「コモンモード」フィルタチョークのいずれかとして動作するように構成できる。電気機器は、パワーエレクトロニクス機器、特に、DC/ACインバータまたはDC/DCコンバータとすることができる。電気機器に生じる効果は、フィルタチョークおよびその製造方法と組み合わせて既に説明したものと同様である。したがって、電気機器に関連する効果については、関連するセクションが参照される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明は、図面に示される好ましい例示的な実施形態に関してさらに説明され記載される。
【0029】
図1図1aは、正面図で示されたフィルタチョークに使用できるボビンの例示的な一実施形態を示す。図1bは、背面図で示された図1aのボビンを示す。
図2図2は、事前に組み立てられた状態の第1のボビンおよび第2のボビンの実施形態を示す。
図3図3aは、本発明に係るフィルタチョークの第1の実施形態を分解図で示す。図3bは、組み立てられた状態の図3aのフィルタチョークを示す。
図4図4aは、磁気コアの第1の実施形態における間隙およびその低磁気抵抗バイパス経路の概略図である。図4bは、磁気コアの第2の実施形態における間隙およびその低磁気抵抗バイパス経路の概略図である。
図5図5aは、フィルタチョークに使用される磁気コアの例示的な一実施形態を分解図で示す。図5bは、組み立てられた状態の図5aの磁気コアを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明に係るフィルタチョーク10の一実施形態で使用することができるボビン30の例示的な一実施形態の設計をより詳細に説明する。説明は、図1aおよび図1bを参照し、図1aは、ボビン30を正面図で示し、図1bは、同じボビン30を背面図で示す。
【0031】
ボビン30は、平面のベースフランジ31と、ベースフランジ31の前面36bからベースフランジ31に垂直な方向に延びる2つの管状セクション32a、32bとを備える。各々の管状セクション32a、32bは、内側開口部33を備える。また、ベースフランジ31は、管状セクション32a、32bの内側開口部33に対応し、これらと整列されたそれぞれの開口部を備え、これにより各々の管状セクションに対して、同様にベースフランジ31を通って延びる連続的な貫通孔が設けられる。各々の開口部33は、磁気コア20の異なるコア脚部21、22を受け入れるように構成される(図3a、図3bを参照)。図1aおよび図1bでは、各々の開口部は、隔壁50によって分割されているが、前記隔壁50は、単に任意選択である。したがって、ボビン30の他の実施形態は、開口部33の内側に前記隔壁50を備えていなくてもよい。
【0032】
ボビン30は、ベースフランジ31の対向するエッジ34上に配置された複数の第1の嵌合要素35をさらに備える。一例として、図1aおよび図1bに示されるボビン30は、各々の対向エッジ34に2つずつ、合計4つの第1嵌合要素35を備える。ボビン30は、第1の嵌合要素35を介して、ボビン30に対して実質的に同一の別のさらなるボビンを取り外し可能に固定するように構成される。各々の第1の嵌合要素35は、ボビンおよびさらなるボビン30の第1の嵌合要素35が係合しているときに形成されるスナップフィット38の部分38aおよび対応する相手部分38bを含む。一例として、スナップフィット38は、「フック-ループ」スナップフィットとして形成される。それが、各々の部分38aがフックとして形成されているのに対して、対応する相手部分38bはループとして形成されている理由である。しかしながら、スナップフィットの他の設計、例えば「フック-アンダーカット」スナップフィット設計も可能である。
【0033】
ベースフランジ31の背面36aには、2つの第2の嵌合要素39aが配置されており、これらは、フィルタチョーク10の組み立てられた状態(図3b参照)において、コアクリップ24の対応する嵌合要素39bと係合するように構成される。また、前面36bおよび/または背面36aは、組み立てられたフィルタチョーク10内で事前に巻かれたコイル40のコイル端子42a、42bを案内および/または整列するように構成された案内要素を備えることができ、その機能は、図2でより詳細に説明する。
【0034】
図2は、第1のボビン30と、第1のボビン30と実質的に同一の第2のボビン30’とのプリアセンブリの一実施形態を示す。両方のボビンは、上下に積み重ねて配置され、第1の嵌合要素35を介して互いに取り外し可能に固定される。具体的には、第2のボビン30’の第1の嵌合要素35の各々の部分38aは、第1のボビン30の第1の嵌合要素35の対応する相手部分38bと係合する。導電体41によって形成され、プリアセンブリの前に第1のボビン30の管状セクション32a、32b上に配置された2つの事前に巻かれたコイル40は、加圧され、それによってボビン30、30’の固定を介してボビン間に固定される。各々のコイル40は、2つの端子42a、42bを備え、これらの端子は、各々のボビン30、30’の前面および/または背面から延びる案内要素43a~43cおよび43d~43fを介してプリアセンブリ内で位置決めされ、整列される。通常、ボビン30、30’の射出成形によって達成できる公差が小さいため、端子42a、42bの正確な整列および位置決めが保証される。
【0035】
ここで、フィルタチョークの例示的な一実施形態の組み立てについて、図3aおよび図3bを参照して説明し、図3aは、フィルタチョーク10の分解図を示し、図3bは、組み立てられた状態の図3aのフィルタチョーク10を示す。フィルタチョーク10は、3つの実質的に同一のボビン30を備える。一例として、各々のボビンも、図1aおよび図1bに示されるボビン30と同一に設計される。フィルタチョーク10はさらに、6つの事前に巻かれたコイル40を備え、コイル40の各々は、平角線によって形成された導電体41を備える。一例として、事前に巻かれたコイル40は、平角線41をその細いエッジの周囲に巻くことによって製造される、いわゆる「エッジ巻きコイル」として形成される。また、フィルタチョーク10は、外側ボビン37(図3aでは左側のボビン30)に取り付けられ、着脱可能に固定されるように構成された蓋部37を備える。蓋部37のデザインは、少なくともその横方向の寸法ならびにその背面の幾何学的形状に関して、ボビン30のデザインと類似している。しかしながら、蓋部37の前面は、実質的に平面である。蓋部37も、ボビン30の場合と同様に、対応する位置に2つの開口部33を備える。蓋部37の各々の開口部33は、磁気コア20のコア脚部21、22のうちの異なる1つを収容するように構成される。フィルタチョーク10の磁気コア20は、2つの隣接する層に配置された4つのU字型コアセグメント23によって形成される。各々の層は、2つのU字型コアセグメント23を含み、フィルタチョーク10が組み立てられた状態では、各々の層が閉じた磁気サブコア28a、28bを備えるようになっている。U字型コアセグメント23は、2つの異なる長さを有し、フィルタチョーク10が組み立てられた状態では、第1の層内の磁気サブコア28a内に形成された間隙26が、第2の層内の磁気サブコア28a内に形成された間隙26に対してオフセットして配置されるようになっている。これらのオフセット間隙と、異なる層内のコアセグメント23によって形成された重なり領域とによって、低磁気抵抗のバイパス経路が、磁気コア20の間隙26の各々を横切って延びる。したがって、磁気コアは、合計4つの間隙26を含み、各々の間隙は、フィルタチョーク10の動作中に磁気コア20内の磁束と実質的に平行に向けられる間隙面法線
を有するが、磁気コア20の磁気抵抗は、比較的低く保つことができる。
【0036】
フィルタチョーク10を組み立てるとき、各々のコイル40は、いくつかのボビン30の管状セクション32a、32bのうちの異なる1つの周囲に配置される。コイル40を管状セクション32a、32b上に配置した後、各々のボビン30は、隣接するボビン30に取り外し可能に固定され、それによって隣接するボビン間にコイル40を押し付け、コイル40の端子42a、42bをアセンブリ全体に対して所定の位置に配置/整列させる。また、蓋部37は、同様に蓋部37の対向するエッジに配置されたスナップフィットの対応する部分38aおよび/または相手部分38bを介して、外側ボビン30上に取り外し可能に固定される。そして、U字型コアセグメント23を蓋部37およびボビン30の開口部33に挿入することにより、磁気コア20が組み立てられる。最後に、磁気コアのコアセグメント23は、フィルタチョーク10の両側の2つのコアクリップ24のうちの1つを取り外し可能に固定することによって、外側ボビン30に対して固定され、また蓋部37に対しても固定される。
【0037】
以下に、低磁気抵抗バイパス経路25の動作原理をより詳細に説明する。具体的には、図4aは、磁気コア20の第1の実施形態に係る磁気コア20の断面の概略図を表す。この断面は、第1のコアセグメント23aおよび第2のコアセグメント23bによって形成される間隙26を示す。間隙26は、磁束Φに対して実質的に平行に向けられた間隙面法線
を含み、その方向は、コアセグメント23a、23b内の太矢印によって表されている。対策がなければ、前記間隙26は通常、磁気コア20の磁気抵抗の増加をもたらすであろう。しかしながら、図4aに示されるように、隣接するコアセグメント23a、23bの両方は、重なり領域27が間隙26に隣接して設けられるようにデザインされている。重なり領域27は、その面法線
が、フィルタチョーク10の動作中、磁束Φの方向に対して実質的に垂直に向けられるように向けられる。重なり領域27では、(少なくとも間隙26に関連する面積より大きい)比較的広い表面積にわたって両方のコアセグメント23a、23bの間の密着接触を提供することができる。したがって、重なり領域27内では、第1のコアセグメント23aから第2のコアセグメント23bへの磁束Φの貫通に対する抵抗が低くなり、第1のコアセグメント23aから第2のコアセグメント23bへの磁束Φの貫通、およびその逆の貫通に対する磁気抵抗が低くなり、少なくとも間隙26を貫通する場合の磁気抵抗よりも大幅に低くなる。これにより、図4aに小さな矢印および点線で表されるように、間隙26の周囲に低磁気抵抗バイパス経路25がもたらされる。
【0038】
重なり領域27における磁束Φの貫通抵抗は、その横方向の寸法に依存し、通常、抵抗は、重なり領域27の横方向の寸法が増加するにつれて減少し、そのため、コアセグメント23a、23bの相互の目標デザインによって容易に変更できる。
【0039】
図4bは、磁気コア20の第2の実施形態における間隙26およびその低磁気抵抗バイパス経路25の概略図を表す。この状況は、図4aに示した状況と似ている。しかしながら、図4bの実施形態では、磁気コア20は、2つの隣接する層を備え、各々の層には、閉じた磁気サブコア28a、28bが設けられ、閉じたサブコア28a、28bが上下に積み重なるようになっている。各々のサブコア28a、28bは、閉じた磁性サブコアを表すが、各々のサブコア28a、28bが、(第1の層28a内の)少なくとも2つのコアセグメント23a、23b、および第2の層28b内の少なくとも2つのコアセグメント23c、23d(図4bには図示せず)によって形成されるという事実により、間隙26が存在する。異なるサブコア28a、28b内の間隙26は、サブコア28a、28bの一方内の間隙に隣接して、サブコア28b、28aの他方のコアセグメント23の連続セクションが常に存在するように、互いにオフセットして配置される。図4bは、第1の層28a内(図4bでは第1の層内)におけるそのような間隙26の周囲の状況を例として示している。
【0040】
間隙26に隣接して、その部位の各々に、2つの異なるコアセグメント23a~23c間の重なり領域27が形成される。特に図4bでは、間隙26の一方の側に、第1のコアセグメント23aと第3のコアセグメント23cとの間の重なり領域27が形成され、一方、間隙26の他方の側には、第2のコアセグメント23bと第3のコアセグメント23cとの間のさらなる重なり領域27が形成されている。図4aに関連して提供される説明に基づいて、これにより、第1のコアセグメント23a内の間隙26の一方の側から始まり、第3のコアセグメント23cを介して重なり領域27を通り、さらに重なり領域27を通って第2のコアセグメント23bに入る、およびその逆の、間隙26の周囲の低磁気抵抗バイパス経路がもたらされる。この実施形態では、低磁気抵抗バイパス経路25は、隣接して配置されたサブコア28a、28b、すなわち隣接する層内のサブコア28a、28b内の磁気サブコアのコアセクション23c、23dを通って間隙26の周囲に案内される。3つ以上のサブコア28a、28b、または層が、磁気コア20内に設けられる場合、間隙26の周囲のそれぞれのバイパス経路25は、各々の隣接するサブコア28a、28b内に存在する。
【0041】
以下では、図3aおよび図3bに示されるものと比較して磁気コア20の代替の一実施形態が説明される。説明のために、図5aおよび図5bが参照され、図5aは、磁気コア20を分解図で示し、図5bは、磁気コア20を事前に組み立てられた状態で示す。磁気コア20は、2つのコアセグメント23によって形成される。各々のコアセグメント23a、23bは、2つのU字型脚部と、厚い中央領域を有するU字型ベースとを備えるU字型デザインを含む。コアセグメント23a、23bが事前に組み立てられた状態では、(上面図から見て)長方形の幾何学的形状を有する閉じた磁気コア20が形成される。さらに、図5a、5bの磁気コア20が事前に組み立てられた状態では、2つのコアセグメント23a、23b間の2つの間隙26が、各々のU字型ベース上(言い換えれば、磁気コア20の各々の短辺上)に形成される。さらに、2つの重なり領域27が事前に組み立てられた状態で形成され、それらの重なり領域27は、U字型脚部に沿って(言い換えれた、コア脚部21、22に沿って)延びる。図3aに示された説明を念頭に置くと、これにより、磁気コア20の一方の短辺上の(4つのうちの)2つの間隙26に対して、図5bに概略的に示されるように、各々の間隙26の周囲に磁気バイパス経路25がもたらされる。
【0042】
図5a、図5bの磁気コア20は、単層のみを有する磁気コアとして使用されるように構成されているが、代わりに、磁気サブコア28a、28bのような複数の磁気コアを含む磁気コア20を形成することも可能であり、各々のサブコア28a、28bは、複数の層のうちの単一の層に配置される。
【符号の説明】
【0043】
10 フィルタチョーク
20 磁気コア
21、22 コア脚部
23、23a~23d コアセグメント
24 コアクリップ
25 バイパス経路
26 間隙
27 重なり領域
28a、28b サブコア
30、30’ ボビン
31 ベースフランジ
32a、32b 管状セクション
33 開口部
34 エッジ
35 嵌合要素
36a 背面
36b 前面
37 蓋部
38 スナップフィット
38a (スナップフィットの)部分
38b (スナップフィットの)相手部分
39a、39b 嵌合要素
50 隔壁
40 コイル
41 導電体
42a、42b 端子
43a~43f 案内要素
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
【国際調査報告】