(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】細胞内のオイル含有量の高い新規のシゾキトリウム属菌株およびこれを用いたオメガ3を含むオイルの生産方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/12 20060101AFI20241106BHJP
C12P 7/6427 20220101ALI20241106BHJP
C12P 7/6432 20220101ALI20241106BHJP
C12P 7/6434 20220101ALI20241106BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20241106BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20241106BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20241106BHJP
【FI】
C12N1/12 C
C12P7/6427 ZNA
C12P7/6432
C12P7/6434
C12N1/12 A
A23L33/10
C12N1/02
A23K10/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527175
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 KR2022011959
(87)【国際公開番号】W WO2023080400
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0152561
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507406611
【氏名又は名称】シージェイ チェルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジョン‐ウン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヘ‐ウォン
(72)【発明者】
【氏名】グァク,ジュン・ソク
(72)【発明者】
【氏名】シン,ウォン・ソブ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ソンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リュ,エ・ジン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
2B150AA02
2B150AA03
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4B065CA43
(57)【要約】
本出願は、細胞内のオイル含有量の高い新規のシゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)菌株およびこれを用いたオメガ3を含むオイルの生産方法に関するものであって、本発明に係る新規のシゾキトリウム属微細藻類は、バイオマスのうち脂肪含有量が高く、その中でもドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸のような不飽和脂肪酸の含有量が高いため、それ自体または培養および発酵によって生産されたバイオマスおよびバイオマスからの不飽和脂肪酸を含む脂肪成分の抽出が非常に容易である。よって、前記微細藻類、これから製造されるバイオマス乾燥物およびバイオオイルは、飼料組成物または食品組成物などに有用に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新規のシゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)CD01-1821微細藻類(受託番号:KCTC14660BP)。
【請求項2】
前記シゾキトリウム属CD01-1821微細藻類は、オメガ-3不飽和脂肪酸生産能を有する、請求項1に記載のシゾキトリウム属微細藻類。
【請求項3】
前記オメガ-3不飽和脂肪酸は、ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid;DHA)およびエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid;EPA)である、請求項2に記載のシゾキトリウム属微細藻類。
【請求項4】
前記微細藻類は、脂肪酸の総重量を基準に、35ないし60重量%のドコサヘキサエン酸を生産するものである、請求項3に記載のシゾキトリウム属微細藻類。
【請求項5】
前記微細藻類は、脂肪酸の総重量を基準に、0.1ないし2重量%のエイコサペンタエン酸を生産するものである、請求項3に記載のシゾキトリウム属微細藻類。
【請求項6】
請求項1に記載のシゾキトリウム属微細藻類、前記微細藻類の培養物、前記培養物の乾燥物、または前記乾燥物の破砕物を含む、シゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマス。
【請求項7】
請求項6に記載のシゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマス、前記バイオマスの濃縮物または乾燥物、または前記バイオマスの抽出物を含む、組成物。
【請求項8】
前記組成物は、飼料組成物または食品組成物のものである、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のシゾキトリウム属CD01-1821微細藻類を培養するステップと、前記微細藻類、その乾燥物、またはその破砕物からドコサヘキサエン酸含有のバイオマスを回収するステップと、を含む、シゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマス製造方法。
【請求項10】
前記培養は、従属栄養条件下で行われるものである、請求項9に記載のシゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマス製造方法。
【請求項11】
前記培養は、炭素源および窒素源を含む培地を用いて行うものである、請求項9に記載のバイオマス製造方法。
【請求項12】
前記炭素源は、グルコース、フルクトース、マルトース、ガラクトース、マンノース、スクロース、アラビノース、キシロースおよびグリセロールからなる群より選択される1種以上のものである、請求項11に記載のバイオマス製造方法。
【請求項13】
前記窒素源は、i)酵母抽出物(yeast extract)、牛肉抽出物(beef extract)、ペプトンおよびトリプトンからなる群より選択されるいずれか一つ以上の有機窒素源、または、ii)酢酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素およびMSG(Monosodium glutamate)からなる群より選択されるいずれか一つ以上の無機窒素源のものである、請求項11に記載のシゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマス製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載のシゾキトリウム属CD01-1821微細藻類を培養するステップと、前記微細藻類、その乾燥物、またはその破砕物からドコサヘキサエン酸含有のバイオマスを回収するステップと、を含む、シゾキトリウム属微細藻類由来のバイオオイル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年11月8日付の韓国特許出願第10-2021-0152561号に基づいた優先権の利益を主張しながら、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、細胞内のオイル含有量の高い新規のシゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)菌株およびこれを用いたオメガ3を含むオイルの生産方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
スラウストキトリッド(Thraustochytrids)は、自然系内の多様な環境で生存および分布している。有機体に付着して共生をするか、海洋環境または淡水、汽水環境で浮遊することもあり、多様な堆積地形層に分布して生存する。このようなスラウストキトリッドは、海洋生態食物連鎖の最下位階層に属し、植物性プランクトンであって有機従属栄養原生生物微細藻類に分類されることもある。自然環境内でのスラウストキトリッドは、機能的に硫黄(Sulfur)、窒素(Nitrogen)、リン(Phosphorous)、カリウム(Potassium)などの自然系循環元素の循環と浄化の役割を果たす。また、オメガ-3に分類されるドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid;DHA)およびエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid;EPA)を含む多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid;PUFA)を高濃度で含有して海洋生態系で供給源として機能をする。
【0004】
ヒトを含む大部分の高等生物は、ドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸を含む多価不飽和脂肪酸を自ら合成できないため、必須栄養素として摂取しなければならない。多価不飽和脂肪酸のうちドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸は、頭脳、眼球組織および神経系に必須の脂肪酸であって、特に乳児の視力および運動神経能力など神経体系発達および心血管疾患予防に重要な機能をするものと知られており、脳の構造的脂質に最も豊富な構成要素である。
【0005】
今まで多価不飽和脂肪酸の主要な供給源は、サバ、サンマ、マグロ、アジ、イワシ、ニシンなどのような背の青い魚の油から抽出された魚油であり、これは海水魚類の初期飼料のような養魚飼料としても非常に有用である。魚油からの多価不飽和脂肪酸の抽出および摂取は産業的に発達しているが、デメリットもまた存在する。魚油の品質は、魚種、季節、漁獲位置によって多様であり、漁獲を通じて発生するために持続的に供給することに困難性がある。また、魚油内に含まれた重金属および有機化学物質による汚染問題、魚油特有の生臭い臭いはもちろん、加工工程中に二重結合が酸化する問題などで製造過程および生産量の制限がある。
【0006】
このような問題点を解決するために、最近、微生物培養によるドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸を含む多価不飽和脂肪酸の製造方法に対する研究が進められている。特に、微細藻類は、自然に脂肪酸を新しく合成するという能力以外にも魚油に比べての色々な利点を提供することができる。産業的スケールの培養を通じて安定的に供給が可能であり、相対的に一定の生化学的組成を有するバイオマスの製造を可能にする。魚油とは異なり、微細藻類によって製造される脂質は、任意の不快な臭いを有しない。また、魚油に比べて単純な脂肪酸組成を有し、これは主要な脂肪酸を分離するためのステップを容易にする。
【0007】
このようなメリットに基づいて、最近、微細藻類を用いたドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid;DHA)、エイコサペンタエン酸(Eicosapentaenoic acid;EPA)、アラキドン酸(Arachidonic acid;ARA)、ドコサペンタエン酸(Docosapentaenoic acid;DPA)、およびα-リノレン酸などのようなオメガ-3不飽和脂肪酸(ωunsaturated fatty acid)を含む多価不飽和脂肪酸生産に関する研究および産業化が非常に急速に進められており、主に海洋微細藻類の一種のスラウストキトリウム(Thraustochytrium)属およびシゾキトリウム(Schizochytrium)属微生物による多価不飽和脂肪酸生産である。実例として、シゾキトリウム属微生物のシゾキトリウム sp.ATCC20888(Schizochytrium sp.ATCC20888)およびシゾキトリウム sp.PTA10208(Schizochytrium sp.PTA10208)を用いてオメガ-3多価不飽和脂肪酸を製造する方法が開示されており(米国特許第5、130、242号)、さらにスラウストキトリッド系スラウストキトリウム属微生物のスラウストキトリウム sp.ATCC10212(Thraustochytrium sp.PTA10212)を用いてドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸を製造する方法が開示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願の一例は、新規のシゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)微細藻類を提供する。一具体例として、前記新規のシゾキトリウム属微細藻類は、シゾキトリウム属CD01-1821微細藻類(受託番号;KCTC14660BP)であってもよい。
【0010】
本出願の他の例は、前記シゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマスまたはバイオオイルを提供する。
【0011】
本出願の他の例は、前記シゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマス、バイオオイル、またはこれらの組み合わせを含む飼料組成物を提供する。
【0012】
本出願の他の例は、前記シゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマス、バイオオイル、またはこれらの組み合わせを含む食品組成物を提供する。
【0013】
本出願の他の例は、前記シゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマスまたはバイオオイル製造方法を提供する。
【0014】
本出願の他の例は、前記シゾキトリウム属微細藻類のバイオマスまたはバイオオイルを製造するための使用を提供する。
【0015】
本出願のまた他の例は、前記シゾキトリウム属微細藻類の飼料組成物または食品組成物を製造するための使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本出願で開示されるそれぞれの説明および実施形態は、それぞれの他の説明および実施形態にも適用することができる。つまり、本出願で開示された多様な要素のすべての組み合わせが本出願の範疇に属する。また、下記記述された具体的な叙述によって本出願の範疇が制限されるものと見られない。また、当該技術分野における通常の知識を有する者は、通常の実験だけを通じて本出願に記載された本出願の特定の様態に対する多数の等価物を認知するか確認することができる。また、このような等価物は、本出願に含まれるものと意図される。
【0017】
本出願の一例は、新規のシゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)微細藻類を提供する。
【0018】
本明細書で使用される用語、「スラウストキトリッド(Thraustochytrid)」は、スラウストキトリアレス(Thraustochytriales)目の微細藻類を意味する。また、本明細書で使用される用語、「シゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)」は、スラウストキトリアレス目のスラウストキトリアシエ(Thraustochytriaceae)科に属する属名のうちの一つであって、用語「シゾキトリウム属(genus Schizochytrium)」と互換的に使用され得る。また、前記用語「微細藻類(microalgae)」は、葉緑素で光合成をする植物のうち、肉眼では見ることができず、顕顕微鏡を通してしか見ることができ、水の中で自由に浮遊して生きていく生物を意味する。前記微細藻類には多様な種類があり、光合成が不可能で従属栄養だけで生育する菌株まで含む。
【0019】
本出願では、一例として、海岸一帯地域の環境サンプルを採取してスラウストキトリッド(Thraustochytrid)系の純粋分離コロニーを得た後、粗脂肪および脂肪酸の分析結果、細胞内のDHA含有量に優れたCD01-1821およびCD01-1822の2種の菌株を得ており、培養評価結果、CD01-1821菌株が同一の発酵条件内のバイオマス総生産量と総オイル含有量が高いため、スケールアップ(Scale-up)工程により容易であることを確認した。
【0020】
したがって、本明細書において、前記新規のシゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)微細藻類は、シゾキトリウム属CD01-1821微細藻類(受託番号:KCTC14660BP)であってもよい。
【0021】
また、前記(野生型)シゾキトリウム属菌株は、配列番号1の18s rRNA塩基配列を有してもよいが、これに制限されるものではない。例えば、前記シゾキトリウム属微細藻類は、配列番号1の塩基配列と80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、または99%以上の配列同一性を示す塩基配列で構成される18S rRNAを有するものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0022】
本明細書で使用される用語、「ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid;DHA)」は、C22H32O2の化学式を有する多価不飽和脂肪酸のうちの一つであって、アルファ-リノレン酸(α-linolenic acid;ALA)およびエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid;EPA)とともにオメガ-3脂肪酸に該当し、慣用名はセルボン酸(cervonic acid)であり、略称として22:6n-3でも表記することができる。
【0023】
本明細書で使用される用語、「エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid;EPA)」は、C20H30O2の化学式を有する多価不飽和脂肪酸のうちの一つであって、ALAおよびDHAとともにオメガ-3脂肪酸に該当し、略称として20:5n-3でも表記することができる。
【0024】
前記シゾキトリウム属微細藻類は、脂肪酸の総重量を基準に、35ないし60重量%のDHAを生産および/または含むものであってもよい。例えば、前記シゾキトリウム属微細藻類は、脂肪酸の総重量を基準に、40ないし65重量%、45ないし65重量%、50ないし65重量%、40ないし60重量%、45ないし60重量%、50ないし60重量%、(35ないし58重量%、40ないし58重量%、45ないし58重量%、または48ないし52重量%)または55ないし60重量%のDHAを生産および/または含むものであってもよい。
【0025】
前記シゾキトリウム属微細藻類は、脂肪酸の総重量を基準に、0.1ないし2重量%のEPAを生産および/または含むものであってもよい。例えば、前記シゾキトリウム属微細藻類は、脂肪酸の総重量を基準に、0.2ないし2重量%、0.2ないし1.5重量%、0.2ないし1重量%、0.3ないし2重量%、0.3ないし1.5重量%、0.3ないし1重量%、0.5ないし2重量%、0.5ないし1.5重量%、0.5ないし1重量%、0.5ないし0.9重量%、または0.6ないし0.8重量%のEPAを生産および/または含むものであってもよい。
【0026】
本出願の他の一つの様態は、前記シゾキトリウム属CD01-1821微細藻類、前記微細藻類の培養物、前記培養物の乾燥物、または前記乾燥物の破砕物を含む、シゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマスまたはバイオオイルを提供する。
【0027】
前記シゾキトリウム属微細藻類は、前記した通りである。
【0028】
本明細書で使用される用語、「バイオマス(biomass)」は、化学的エネルギーとして使用可能な植物、動物、微生物などの生物体、つまり、バイオエネルギーのエネルギー源を意味し、生態学的に単位時間および空間内に存在する特定の生物体の重量またはエネルギー量を意味することもある。また、前記バイオマスは、細胞によって分泌される化合物を含むが、これに制限されず、細胞外の物質だけでなく細胞および/または細胞内の内容物を含有するものであってもよい。本出願で前記バイオマスはシゾキトリウム属微細藻類それ自体、その培養物、その乾燥物、その破砕物、または前記微細藻類を培養するか発酵して生産された産物であってもよく、または前記バイオマスの濃縮物または乾燥物であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0029】
前記シゾキトリウム属微細藻類の「培養物」は、前記微細藻類を培養して生成された産物を称すものであって、具体的に微細藻類を含む培養液または前記培養液から微細藻類が除去された培養ろ液であってもよいが、これに制限されるものではない。前記シゾキトリウム属微細藻類培養物の「乾燥物」は、前記微細藻類培養物から水分が除去されたものであって、例えば、前記微細藻類の乾燥菌体形態であってもよいが、これに制限されるものではない。また、前記乾燥物の「破砕物」は、前記微細藻類培養物から水分が除去された乾燥物を破砕した結果物を総称するものであって、例えば、乾燥菌体粉末であってもよいが、これに制限されるものではない。前記シゾキトリウム属微細藻類の培養物は、微細藻類培養培地に前記微細藻類を接種し、当該技術分野で公知の培養方法によって製造されてもよく、前記培養物の乾燥物およびその破砕物もまた当該技術分野で公知の微細藻類または培養液の処理または乾燥方法によって製造されてもよい。
【0030】
前記シゾキトリウム属CD01-1821微細藻類由来のバイオマスは、バイオマス総重量を基準に、40ないし85重量%、45ないし80重量%、50ないし75重量%、50ないし70重量%、は54ないし66重量%の粗脂肪を含むものであってもよい。
【0031】
前記シゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマスは、バイオマス総重量を基準に、5ないし25重量%、5ないし20重量%、10ないし20重量%、または15ないし20重量%の粗タンパクを含むものであってもよい。
【0032】
前記シゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマスは、脂肪酸の総重量を基準に、35重量%以上、または35ないし60重量%のDHAを含むものであってもよく、脂肪酸の総重量を基準に、0.1重量%以上、または0.1ないし2重量%のEPAを含むものであってもよく、脂肪酸の総重量を基準に、30ないし40重量%以上のパルミチン酸を含むものであってもよい。
【0033】
前記シゾキトリウム属微細藻類はオイル含有量が高く、その中で、オメガ-3含有量が高いため複合糖内で培養時間を短縮してスケールアップ工程に有利である。
【0034】
本明細書において、前記「オイル含有量」は、「粗脂肪含有量」と互換的に使用され得る。
【0035】
前記バイオマスは、一様態に係るシゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマスの製造方法によって製造されるものであってもよい。
【0036】
本出願の他の一つの様態は、シゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)CD01-1821微細藻類、前記微細藻類の培養物、前記培養物の乾燥物、前記乾燥物の破砕物を含む組成物を提供する。
【0037】
前記組成物は、前記シゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマス、バイオオイル、またはこれらの組み合わせを含むものであってもよい。
【0038】
本出願の他の一つの様態は、シゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)CD01-1821微細藻類由来のバイオマス、または前記バイオマスの濃縮物または乾燥物を含む飼料組成物を提供する。
【0039】
前記シゾキトリウム属微細藻類、バイオマス、前記微細藻類の培養物、前記培養物の乾燥物、および前記乾燥物の破砕物は、前記した通りである。
【0040】
前記バイオマスの濃縮物または乾燥物は、当該技術分野で公知の微生物バイオマスの処理、濃縮または乾燥方法によって製造されてもよい。
【0041】
本明細書で使用される用語、「バイオオイル(bio-oil)」は、生物学的、熱化学および物理化学的抽出工程によってバイオマスから得られるオイルを意味し、本出願で製造されたバイオオイルは多価不飽和脂肪酸を含有するものであってもよく、具体的にDHAおよびEPAを含有するものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0042】
本明細書で、前記バイオオイルは、バイオマスの抽出物を含むものであってもよい。
【0043】
前記バイオオイル抽出物を製造する方法で、細胞膜または細胞壁成分を破砕または溶解する方法によってプロテアーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼまたはキチナーゼなどの酵素を利用する方法、ホモジナイザー、超音波紛砕機、ビーズ処理などを用いて物理的に細胞膜または細胞壁成分を破砕する方法、溶媒を直接添加して細胞内への透過によって抽出する方法、多様な破砕工程後に遠心分離過程を通じて分離する無溶媒抽出工程などが用いられてもよいが、これに制限されるものではない。
【0044】
前記組成物は、溶液、粉末、または懸濁液形態であってもよいが、これに制限されるものではない。前記組成物は、例えば、食品組成物、飼料組成物または、飼料添加剤組成物であってもよい。
【0045】
本明細書で使用される用語、「飼料組成物」は、動物に給餌される飼料を称す。前記飼料組成物は、動物の生命を維持、または肉、乳などを生産するために必要な有機または無機栄養素を供給する物質をいう。前記飼料組成物は、動物の生命維持、または肉、乳などを生産するために必要な栄養成分を追加的に含んでもよい。前記飼料組成物は、当業界の公知された多様な形態の飼料として製造可能であり、具体的には、濃厚飼料、粗飼料および/または特殊飼料が含まれてもよい。
【0046】
本明細書で使用される用語、「飼料添加剤」は、栄養素の補充および体重減少の予防、飼料内の繊維質の消化利用性の増進、乳質の改善、繁殖障害の予防および受胎率の向上、夏期高温ストレスの予防など多様な効果を目的で飼料に添加する物質を含む。本出願の飼料添加剤は、飼料管理法上の補助飼料に該当し、炭酸水素ナトリウム、ベントナイト(bentonite)、酸化マグネシウム、複合ミネラルなどのミネラル製剤、亜鉛、銅、コバルト、セレニウムなどの微量ミネラルのミネラル製剤、ケロチン、ビタミンE、ビタミンA、D、E、ニコチン酸、ビタミンB複合体などのビタミン剤、メチオニン、リシンなどの保護アミノ酸剤、脂肪酸カルシウム塩などの保護脂肪酸剤、プロバイオティクス(乳酸菌剤)、酵母培養物、カビ発酵物などの生菌、酵母剤などが追加的に含まれてもよい。
【0047】
本明細書で使用される用語、「食品組成物」は、機能性食品(functional food)、栄養補助剤(nutritional supplement)、健康食品(health food)および食品添加剤(food additives)などのすべての形態を含み、前記類型の食品組成物は、当該技術分野で公知の通常の方法によって多様な形態に製造することができる。
【0048】
本出願の組成物は、穀物、例えば、粉砕または破砕された小麦、エンバク、大麦、トウモロコシおよび米;植物性タンパク質飼料、例えば、大豆およびひまわりを主成分とする飼料;動物性タンパク質飼料、例えば、血粉、肉粉、骨粉および魚粉;糖分および乳製品、例えば、各種粉乳および乳清粉末からなる乾燥成分などをさらに含んでもよく、その他にも栄養補充剤、消化および吸収向上剤、成長促進剤などをさらに含んでもよい。
【0049】
本出願の組成物は、動物に単独で投与するか食用担体中で他の飼料添加剤と組み合わせて投与してもよい。また、前記組成物は、トップドレッシングとしてまたはこれらを飼料に直接混合するかまたは飼料と別途の経口製剤で容易に動物に投与してもよい。前記組成物を飼料と別途に投与する場合、当該技術分野でよく知られているように、薬剤学的に許容可能な食用担体と組み合わせて、即時放出または徐放性製剤に製造することができる。このような食用担体は、固体または液体、例えば、トウモロコシデンプン、ラクトース、スクロース、大豆フレーク、ピーナッツ油、オリーブ油、ゴマ油およびプロピレングリコールであってもよい。固体担体が用いられる場合、前記組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、トローチ剤または含糖錠剤または微分散性形態のトップドレッシングであってもよい。液体担体が用いられる場合、前記組成物は、ゼラチン軟質カプセル剤、またはシロップ剤や懸濁液、エマルジョン剤、または溶液剤の剤形であってもよい。
【0050】
本出願の組成物は、例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、凍結保護剤、または賦形剤などを含有してもよい。前記凍結保護剤は、グリセロール、トレハロース、マルトデキストリン、脱脂粉乳およびデンプンからなる群より選択される一つ以上であってもよい。
【0051】
前記保存剤、安定化剤、または賦形剤は、前記組成物に含まれるシゾキトリウム属微細藻類の劣化(deterioration)を減少させるのに十分な有効量で組成物に含まれるものであってもよい。また、前記凍結保護剤は、前記組成物が乾燥された状態であるとき、組成物に含まれるシゾキトリウム属微細藻類の劣化を減少させるのに十分な有効量で組成物に含まれるものであってもよい。
【0052】
前記組成物は、浸漬、噴霧または混合して動物の飼料に添加して用いられてもよい。
【0053】
本出願の組成物は哺乳類、鳥類、魚類、甲殻類、頭足類、爬虫類および両生類を含む多数の動物の飼料に適用することができるが、これに制限されない。例えば、前記哺乳類は、豚、牛、羊、ヤギ、実験用齧歯動物、または愛玩動物などを含んでもよく、前記鳥類は、家禽類を含んでもよく、前記家禽類は、鶏、七面鳥、鴨、ガチョウ、キジ、またはウズラなどを含んでもよいが、これに制限されない。また、前記魚類は、商業的畜養魚類およびその稚魚類、観賞魚などを含んでもよく、前記甲殻類は、エビ、フジツボなどを含んでもよいが、これに制限されない。また、前記組成物は、動物性プランクトンのワムシ(rotifer)の食餌にも適用することができる。
【0054】
本出願のまた他の一つの様態は、シゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)CD01-1821微細藻類を培養するステップと、前記微細藻類、前記微細藻類の培養物、前記培養物の乾燥物、または前記乾燥物の破砕物からバイオマスを回収するステップと、を含む、シゾキトリウム属微細藻類由来のバイオマス製造方法を提供する。
【0055】
前記シゾキトリウム属微細藻類、バイオマス、前記微細藻類の培養物、前記培養物の乾燥物、および前記乾燥物の破砕物は、前記した通りである。
【0056】
本明細書で使用される用語、「培養」は、前記微細藻類を適当に調節された環境条件で生育させることを意味する。本出願の培養過程は、当業界に知られた適当な培地と培養条件によって行われてもよい。このような培養過程は選択される微細藻類に応じて当業者が容易に調整して用いてもよい。
【0057】
具体的に、本出願のシゾキトリウム属微細藻類の培養は、従属栄養条件下で行われるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0058】
本明細書で使用される用語、「従属栄養」は、エネルギー源または栄養源を体外から得た有機物に依存する栄養方式であって、独立栄養に対応する用語であり、用語「暗培養」と互換的に使用され得る。
【0059】
前記シゾキトリウム属微細藻類を培養するステップは、特にこれに制限されないが、公知された回分式培養方法、連続式培養方法、流加式培養方法などによって行われてもよい。本出願の微細藻類の培養に用いられる培地およびその他の培養条件は、通常の微細藻類の培養に用いられる培地であれば、特別な制限なしにいずれも用いてもよい。具体的に、本出願の微細藻類を適当な炭素源、窒素源、リン源、無機化合物、アミノ酸および/またはビタミンなどを含有する通常の培地内で、好気性条件下で温度、pHなどを調節しながら培養することができる。
【0060】
具体的に、塩基性化合物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア)または酸性化合物(例:リン酸または硫酸)を用いて適正pH(例えば、pH5ないし9、具体的には、pH6ないし8、最も具体的には、pH6.8)を調節してもよいが、これに制限されるものではない。
【0061】
また、培養物の好気状態を維持するために、培養物内に酸素または酸素含有気体を注入するか、嫌気および微好気状態を維持するために気体の注入なしにあるいは窒素、水素または二酸化炭素ガスを注入してもよいが、これに制限されるものではない。
【0062】
また、培養温度は、20ないし45℃または25ないし40℃を維持することができ、約10ないし160時間培養することができるが、これに制限されるものではない。また、培養中には、脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡の生成を抑制してもよいが、これに制限されるものではない。
【0063】
前記シゾキトリウム属微細藻類を培養するステップで使用される培地に含まれる炭素源は、グルコース、フルクトース、マルトース、ガラクトース、マンノース、スクロース、アラビノース、キシロースおよびグリセロールからなる群より選択されるいずれか一つ以上であってもよいが、微細藻類を培養することに使用される炭素源であれば、これに制限されない。
【0064】
前記シゾキトリウム属微細藻類を培養するステップで使用される培地に含まれる窒素源は、i)酵母抽出物(yeast extract)、牛肉抽出物(beef extract)、ペプトンおよびトリプトンからなる群より選択されるいずれか一つ以上の有機窒素源、または、ii)酢酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素およびMSG(グルタミン酸ナトリウム:Monosodium glutamate)からなる群より選択されるいずれか一つ以上の無機窒素源であってもよいが、微細藻類を培養することに使用される窒素源であれば、これに制限されない。
【0065】
前記シゾキトリウム属微細藻類を培養するステップで使用される培地に、リン供給源として、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、これに相応するナトリウム含有塩などを個別に含むかまたは混合して含んでもよいが、これに制限されない。
【0066】
前記微細藻類、前記微細藻類の培養物、前記培養物の乾燥物、または前記乾燥物の破砕物からバイオマスを回収するステップは、当該技術分野で公知の適した方法を用いて目的とするバイオマスを収集するものであってもよい。例えば、遠心分離、ろ過、陰イオン交換クロマトグラフィー、結晶化およびHPLCなどが用いられもよく、精製工程をさらに含むものであってもよい。
【0067】
本出願のまた他の一つの様態は、シゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)CD01-1821微細藻類を培養するステップと、前記微細藻類、前記微細藻類の培養物、前記培養物の乾燥物、または前記乾燥物の破砕物から脂質を回収するステップと、を含む、シゾキトリウム属微細藻類由来のバイオオイル製造方法を提供する。
【0068】
前記シゾキトリウム属微細藻類、バイオオイル、前記微細藻類の培養物、前記培養物の乾燥物、および前記乾燥物の破砕物、前記微細藻類を培養するステップは、前記した通りである。
【0069】
前記微細藻類、前記微細藻類の培養物、前記培養物の乾燥物、または前記乾燥物の破砕物から脂質を回収するステップは、当該技術分野で公知の適した方法を用いて目的とする脂質を収集するものであってもよい。例えば、遠心分離、ろ過、陰イオン交換クロマトグラフィー、結晶化およびHPLCなどが用いられもよく、精製工程をさらに含むものであってもよい。
【0070】
例えば、脂肪アルデヒド、脂肪アルコールおよび炭化水素(例えば、アルカン)のような脂質および脂質誘導体は、ヘキサンのような疎水性溶媒で抽出することができる。脂質および脂質誘導体はまた、液化、オイル液化および超臨界CO2抽出など方法を用いて抽出することができる。また、公知の微細藻類脂質回収方法は、例えば、i)遠心分離によって細胞を回収し、蒸留水で洗浄した後、凍結乾燥によって乾燥させ、ii)得られた細胞粉末を粉砕した後、n-ヘキサンで脂質を抽出する方法がある(Miao、X and Wu、Q、Biosource Technology(2006)97:841~846)。
【0071】
本出願のまた他の一つの様態は、シゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)CD01-1821微細藻類、前記微細藻類の培養物、前記培養物の乾燥物、または前記乾燥物の破砕物のバイオマスまたはバイオオイルを製造するための使用を提供する。
【0072】
前記シゾキトリウム属微細藻類、バイオマス、前記微細藻類の培養物、前記培養物の乾燥物、および前記乾燥物の破砕物は、前記した通りである。
【0073】
本出願のまた他の例は、シゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)CD01-1821微細藻類、前記微細藻類の培養物、前記培養物の乾燥物、または前記乾燥物の破砕物の飼料組成物または食品組成物を製造するための使用を提供する。
【0074】
前記シゾキトリウム属微細藻類、バイオマス、前記微細藻類の培養物、前記培養物の乾燥物、および前記乾燥物の破砕物は、前記した通りである。
【発明の効果】
【0075】
本発明の新規のスラウストキトリッド系の微細藻類は、バイオマスのうち脂肪含有量が高く、その中でもドコサヘキサエン酸およびエイコサペンタエン酸のような不飽和脂肪酸の含有量が高いため、それ自体または培養および発酵によって生産されたバイオマスおよびバイオマスからの不飽和脂肪酸を含む脂肪成分の抽出が非常に容易である。よって、前記微細藻類、これから製造されるバイオマス乾燥物およびバイオオイルは、飼料組成物または食品組成物などに有用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】
図1は、スラウストキトリッド系微細藻類菌株を分離する過程を示す模式図である。
【
図2】
図2は、分離されたスラウストキトリッド系微細藻類29種の総脂質含有量、オメガ-3のうちのドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid;DHA)およびエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid;EPA)含有量を分析した結果を示した図である。
【
図3】
図3は、野生型シゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)菌株CD01-1821を光学顕微鏡で観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下、本発明を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これら実施例は一つ以上の具体例を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0078】
実施例1.スラウストキトリッド(Thraustochytrid)系微細藻類の分離
スラウストキトリッド(Thraustochytrid)系微細藻類を分離するために、韓国の西海岸地域、西天、群山、扶安および霊光郡の海岸一帯の総40個余り地域から海水、木の葉および堆積物形態の環境サンプルを採取した。有機堆積物が発達して観察される特定の地域を中心にサンプリングを実施し、採取された環境サンプルは実験室環境に7日以内に運ばれて分離しようとするスラウストキトリッド(Thraustochytrid)系微細藻類を除く細菌類微生物およびカビ、原生生物などのその他の汚染源除去作業を行った。持続的な顕微鏡検鏡を通じてスラウストキトリッド系微細藻類の特徴的な形態(Morphology)を示し、生態周期(Life cycle)内で観察可能な遊走子(Zoospore)を形成するか、発達段階上で生成される外質網(Ectoplasmic network)が構成されているサンプルを中心にスラウストキトリッド系微細藻類細胞を分離した(
図1)。前記分離過程で利用した分離および培養培地としては、改変YEP培地(酵母抽出物(Yeast extract)0.1g/L、ペプトン0.5g/L、MgSO
4・7H
2O 2g/L、海塩(Sea salt)50g/L、H
3BO
3 5.0mg/L、MnCl
2 3.0mg/L、CuSO
4 0.2mg/L、NaMo
4・2H
2O 0.05mg/L、CoSO
4 0.05mg/L、ZnSO
4・7H
2O 0.7mg/L、アガー(Agar)15g/L)を利用した。数回にわたる分離および継代培養過程を通じて汚染源が除去された純粋分離コロニーを得ることができ、分離されたコロニーは、抗生剤カクテルミックス溶液(硫酸ストレプトマイシン(Streptomycin sulfate)0~50mg/L、アンピシリン(Ampicillin)0~30mg/L、ペニシリン(Penicillin)G 0~30mg/L、硫酸カナマイシン(Kanamycin sulfate)0~30mg/L)を含む固体培地で、再び汚染源の制御および除去過程を経て純粋分離可能なコロニーを得た。
【0079】
実施例2.分離された微細藻類の培養評価および優れた菌株の選別
前記実施例1で純粋分離されたコロニーを対象に培養評価を行い、これによって優れた菌株を選別した。
【0080】
具体的に、前記実施例1で純粋分離されたコロニーを、改変GGYEP培地(グルコース5g/L、グリセロール5g/L、酵母抽出物0.1g/L、ペプトン0.5g/L、MgSO4・7H2O 2g/L、海塩50g/L、H3BO3 5.0mg/L、MnCl2 3.0mg/L、CuSO4 0.2mg/L、NaMo4・2H2O 0.05mg/L、CoSO4 0.05mg/L、ZnSO4・7H2O 0.7mg/L)を用いて、250mLフラスコで10~35℃、100~200rpm条件で約2日間培養した。行われた培養結果に基づいて、30℃以上の温度条件で成長が可能であり、成長速度に優れて菌体量が確保可能な微細藻類29種を選別した。選別された微細藻類菌株を対象に30g/Lのグルコースを炭素源として含む改変GYEP培地および培養条件30℃、150rpm、500mlフラスコのスケール培養を2日間行った。2日間の培養環境で投入された炭素源を全て消耗したことを確認した後、培養液全体を回収して60℃のドライオーブンで一晩乾燥してバイオマスを得た。
【0081】
前記培養した微細藻類菌体の脂質および多価不飽和脂肪酸含有量を分析するために、下記のような方法を用い、乾燥菌体を利用した微細藻類由来の脂肪酸含有オイルは、次の方法で測定した。乾燥菌体5gに8.3M塩酸溶液(HCl)を加え、80℃で微細藻類菌体の細胞壁を加水分解した後、エチルエーテル30mLおよび石油エーテル(Petroleum ether)20mLを添加して30秒間混ぜた後、遠心分離する過程を3回以上繰り返した。分離された溶媒層を回収して、予め重量を測定しておいたラウンドフラスコに移した後、窒素パージにより溶媒を除去してデシケーター(Desicator)で冷却恒量した。乾燥後、フラスコ重量から空のフラスコ重量を引いた値で乾燥されたオイルの重量を測定し、全体オイル含有量を算出した。オイル中に含まれたドコサヘキサエン酸(DHA)含有量は、メタノール性0.5N NaOHおよび14%トリフルオロボランメタノール(BF3)を通じて前処理し、気体クロマトグラフィー法で測定して示した。
【0082】
[計算式1]
全体オイル含有量(%)=(*オイルg/乾燥菌体量g)×100
*オイルg:酸加水分解および溶媒除去後のフラスコ重量-空のフラスコ重量
【0083】
下記の表1の「バイオマス」は、培養液内の菌体濃度を意味するものであって、下記の表2のDCW(乾燥細胞重量:dry cell weight)と互換的に使用され得る。
【0084】
【0085】
(前記の表で、TFAは、総脂肪酸を意味し、粗脂肪量または総脂質と互換的に使用され得る。)
【0086】
その結果、表1および
図2に示しているように、CD01-1821およびCD01-1822の2種の菌株が、細胞内のDHA含有量が50%以上で非常に高く現れた。
【0087】
前記脂肪酸の分析結果、細胞内のDHA含有量に優れたCD01-1821、CD01-1822の2種の菌株を対象に5Lスケール培養器で培養評価を行った。種菌培養(Seed culture)は、500mLフラスコで滅菌したMJW02培地(グルコース30g/L、MgSO4・7H2O 3.0g/L、Na2SO4 15g/L、NaCl 0.8g/L、酵母抽出物1.0g/L、MSG・1H2O 1.0g/L、NaNO3 1.0g/L、KH2PO4 0.8g/L、K2HPO4 1.5g/L、CaCl20.5g/L、ビタミン混合溶液10ml/L)を用いて、30℃、150rpm条件で約24時間培養した。種菌培養したフラスコは5L培養器に分注および接種した。総培養液に対して28%のグルコース炭素源を供給し、約72時間培養を行い、滅菌したMJW02培地および培養環境で30℃、500rpm、1.5vvm、pH5~8の条件で培養を行った。
【0088】
【0089】
その結果、表2に示しているように、CD01-1821菌株が同一の発酵条件内のバイオマス総生産量と粗脂肪量がCD01-1822菌株より高いため、スケールアップ(Scale-up)工程により容易であることを確認した。よって、CD01-1821菌株を選定して菌株の配列の同定および追加菌株の開発に利用した。前記選定されたCD01-1821菌株の形態は、光学顕微鏡を用いて観察して
図3に示した。
【0090】
実施例3.複合炭素源条件下でCD01-1821菌株の培養特性の確認
従属栄養微生物ベースの発酵では、主にグルコース成分を炭素源の原材料として利用する。このときのグルコースは、90%以上精製された形態の単糖類であって、他の炭素源原材料成分に比べて産業的スケールの発酵時にその費用がさらに発生する。安価な炭素源原材料の利用およびこれを通じた価格競争力の確保のために、精製された形態のグルコースではない微生物が発酵時に利用可能であり、安価な炭素源成分で正常培養が可能な菌株を発掘することが重要である。
【0091】
よって、前記実施例2で選別したCD01-1821菌株とCJM01(登録特許10-2100650)菌株をグルコース(Glucose)、フルクトース(Fructose)またはスクロース(Sucrose)を主成分とする粗糖での発酵培養評価を行って培養特性を確認した。培養は30L培養器で行い、改変MJW02培地をベースとし主要炭素源成分をグルコース450g/L、グルコース225g/Lとフルクトース225g/Lとの混合物、グルコース225g/L、フルクトース220g/Lおよび硫酸塩(sulfate)1.51g/Lを含む粗糖分解物でそれぞれ実験した。培養条件は、30℃、500rpm、1.5vvm、pH5~8の条件として同一に設定し、総培養液体積の35%の炭素源をそれぞれ供給した。
【0092】
【0093】
その結果、表3に示しているように、CD01-1821菌株は、グルコースの単一成分ではなく、フルクトース混合物または粗糖分解物の培地条件の発酵でも同等以上レベルの総バイオマス生産量および粗脂肪量を示した。これに対し、CJM01菌株は、グルコース成分以外の糖成分が培地内に添加され、二元化した炭素源の消耗および細胞の成長パターンの二段階成長(Diauxic growth)形態を示し、総培養時間が長くなる現象を示した。当該実験結果を通じて、CD01-1821菌株は、複合炭素源条件でのスケールアップ化した発酵の可能性を確認することができた。
【0094】
実施例4.新規のシゾキトリウム属菌株CD01-1821の同定
前記実施例1および実施例2で分離および選定された微細藻類菌株CD01-1821の分子生物学的同定のために18S rRNA遺伝子配列を分析した。
【0095】
具体的に、純粋分離された微細藻類CD01-1821のコロニーからgDNAを抽出および分離した後、表4に記載された18s rRNA部位の遺伝子増幅用プライマー18s-Fwd、LABY-ARevを用いて、PCR増幅反応を行った。
【0096】
【0097】
PCR反応は、taqポリメラーゼ(taq polymerase)を含有する反応液を用いて、95℃で5分間変性した後、95℃で30秒変性、50℃で30秒アニーリング、72℃で2分重合を35回繰り返した後、72℃で5分間重合反応を行った。PCR過程を通じて増幅された反応液は、1%アガロースゲルに電気泳動して約1000bpサイズのDNA断片が増幅されたことを確認し、塩基配列シーケンシング分析を行った。分析結果、確保された当該配列は、NCBI BLAST検索を通じて、スラウストキトリッド(Thraustochytrid)科系微細藻類に属するシゾキトリウムリマシヌム(Schizochytrium limacinum)菌株OUC109の18S rRNA遺伝子塩基配列と95.11%の相同性を示し、シゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)菌株LY-2012の18S rRNA遺伝子塩基配列と95.0%の相同性を示すことを確認した。これを通じて、分離された微細藻類CD01-1821は、新規のシゾキトリウム属菌株であることを確認し、これをシゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)CD01-1821菌株に命名し、2021年8月23日付で韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC)に寄託して受託番号KCTC14660BPが与えられた。
【0098】
実施例5.CD01-1821菌株培養液サンプルの粗タンパク含有量の分析
Schizochytrium sp.CD01-1821菌株(およびCD01-2147菌注)培養液サンプルの粗タンパク含有量を分析するために、下記のような方法を用いた。
【0099】
具体的に、乾燥菌体、約20~30mgに相当するそれぞれの発酵液乾燥物(検体)を精密に測定し、分解チューブに入れて分解促進剤2粒を入れた。前記分解促進剤は、硫酸(H2SO4)と硫酸カリウム(K2SO4)の比率が、1.4~2.0:1.0にならないと分解が効率的に行われない。その後、分解チューブに濃硫酸(H2SO4)12~15mLを添加し、420℃の分解装置で45ないし60分間分解して分解液の色が透明な淡い青色(銅触媒剤を用いた場合)または透明な黄色(セレニウム触媒剤を用いた場合)になると、常温に冷却させた。冷却後、分解された試験溶液に80mLの蒸留水を添加した。25mLの混合指示薬が混合した捕集溶液を三角フラスコに入れた後、これを蒸留装置に置き、蒸留時に蒸留液が捕集溶液に入るように三角フラスコ台を持ち上げた。水酸化ナトリウム溶液(NaOH)50mL(分解時に用いた硫酸の4倍に相当する量)を分解チューブに入れ、蒸留装置で3ないし4分間蒸留した。蒸留装置の三角フラスコにある捕集溶液が蒸留液に含有されているアンモニア(NH3)を捕集しながら、緑色に変わることを確認した。蒸留液を塩酸溶液(一般に、0.1Nまたは0.2N)を用いて、終末点が薄いピンク色に至るまで滴定し、滴定に用いられた酸の量を記録した。自動装置の場合、蒸留、滴定、計算過程がいずれも自動的に行われる。前記実験結果を用いて、下記の計算式2によって窒素%を導出した。タンパク質定量は、先に導出した窒素%に平均窒素係数の6.25をかけて表記した。
【0100】
[計算式2]
窒素(%)={(HCl量mL-ブランク試験mL)×M×14.01/検体量mg}×100
*14.01:窒素の原子量
*M:HClのモル濃度
*分解促進剤:Kjeltabsまたはこれと同等なもの
*ホウ酸溶液:H3BO3 100g(または、400g)、0.1%ブロモクレゾールグリーン溶液100mLおよび0.1%メチルレッド溶液100mLを入れ、10Lに定容した1%(または、4%)ホウ酸溶液
【0101】
アミノ酸含有量の分析のために、CD01-1821菌株培養液から約1gの発酵液乾燥物(検体)サンプルを採取した。6N濃度のHCl溶液を利用して細胞内のタンパク質の酸加水分解を行った後、蒸留水で希釈およびろ過して液体クロマトグラフィーを行った。
【0102】
【0103】
その結果、表5に示しているように、CD01-1821乾燥菌体内の粗タンパク含有量は17%であることを確認した。また、乾燥菌体内のアミノ酸含有量は、グルタミン酸が最も高く、チロシン、アラニン、フェニルアラニン、グリシン、アルギニン、セリン、バリン、リシン、アスパラギン酸、メチオニン、イソロイシン、ロイシンの順に高かった。これによって、CD01-1821乾燥菌体内のアミノ酸は、グルタミン酸、チロシン、アラニン、フェニルアラニン、グリシン、アルギニン、セリン、バリン、リシン、アスパラギン酸、メチオニン、イソロイシン、ロイシンで構成されることを確認した。
【0104】
以上の説明から、本出願が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本出願がその技術的な思想や必須的特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するはずである。これに関連して、以上で記述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであって限定的なものではないと理解しなければならない。本出願の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲の意味および範囲、並びにその等価概念から導出されるあらゆる変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【0105】
[受託番号]
寄託機関名:韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC)
受託番号:KCTC14660BP
受託日付:20210823
【配列表】
【国際調査報告】