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特表2024-542183がんの処置において有用な免疫原性細胞死(ICD)を誘導するプロドラッグを含む製剤化および/または共製剤化されたナノ担体組成物、ならびにその方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】がんの処置において有用な免疫原性細胞死(ICD)を誘導するプロドラッグを含む製剤化および/または共製剤化されたナノ担体組成物、ならびにその方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/54 20170101AFI20241106BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20241106BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20241106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61K47/54
A61K47/69
A61K31/704
A61K47/62
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529181
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 US2022000028
(87)【国際公開番号】W WO2023091168
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/361,075
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522185368
【氏名又は名称】ナミ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ストーバー, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】バラリ, ドゥルバ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイ, ブルース エー.
(72)【発明者】
【氏名】サファイエ, タハミネー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC42
4C076DD41
4C076EE41
4C076EE59
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086MA03
4C086MA24
4C086MA38
4C086NA13
4C086NA15
4C086ZB26
(57)【要約】
ICDプロドラッグを含む製剤化および/または共製剤化されたナノ担体(例えば、LNPおよび/またはSLNP)、ならびにナノ担体を作製する方法が、本明細書において開示される。ICDプロドラッグ組成物は、薬物部分と、脂質部分と、免疫原性細胞死(ICD)を誘導する連結ユニットとを含む。ICDプロドラッグは、標的化された薬物送達ビヒクルを利用することによって、がん、免疫学的障害、および他の疾患を処置する方法を提供するために、ナノ担体に製剤化および/または共製剤化され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICDプロドラッグ組成物であって、
(iv)薬物部分と、
(v)脂質部分と、
(vi)連結ユニット(「LU」)と
を含み、
前記薬物部分が、ICDを誘導する薬剤を含み、前記LUが、前記薬物部分を前記脂質部分にコンジュゲートする、
ICDプロドラッグ組成物。
【請求項2】
前記薬物部分が、IC1として記載される化学構造を含む、請求項1に記載のICDプロドラッグ。
【請求項3】
前記LUが、ヒドラゾンリンカーである、請求項1に記載のICDプロドラッグ。
【請求項4】
前記脂質部分が、表IIIに記載される脂質を含む、請求項1に記載のICDプロドラッグ。
【請求項5】
前記脂質部分が、ステアリン酸を含む、請求項1に記載のICDプロドラッグ。
【請求項6】
前記薬物部分が、IC1として記載される化学構造を含み、前記脂質部分が、ステアリン酸を含み、化合物が、以下の化学構造:
【化27】
を有する、請求項1に記載のICDプロドラッグ。
【請求項7】
ICDプロドラッグ組成物であって、
(iv)IC1を含む、薬物部分と、
(v)ステアリン酸を含む、脂質部分と、
(vi)ヒドラゾンリンカーを含む、LUと
を含む、ICDプロドラッグ組成物。
【請求項8】
以下の化学構造:
【化28】
を有する、請求項7に記載のICDプロドラッグ組成物。
【請求項9】
ICDプロドラッグを含むナノ担体であって、LUの切断後に免疫原性細胞死(ICD)を誘導する薬剤を放出する、ナノ担体。
【請求項10】
前記LUが、ヒドラゾンリンカーである、請求項9に記載のナノ担体。
【請求項11】
表IIに記載されるヘルパー脂質をさらに含む、請求項9に記載のナノ担体。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載のナノ担体を含む、キット。
【請求項13】
前記ナノ担体が、固体脂質ナノ粒子(SLNP)である、請求項9に記載のナノ担体。
【請求項14】
前記ICDプロドラッグが、IC1を含み、SLNP-IC1と称される、請求項13に記載のSLNP。
【請求項15】
請求項8に記載のIC1プロドラッグを含む、固体脂質ナノ粒子(SLNP)。
【請求項16】
SLNP-IC1と称される、請求項15に記載のSLNP。
【請求項17】
TR12と共製剤化される、請求項15に記載のSLNP。
【請求項18】
RGDと共製剤化される、請求項15に記載のSLNP。
【請求項19】
前記SLNPが、TR12と共製剤化されたIC1をさらに含む(SLNP-IC1-TR12と称される)、請求項15に記載のSLNP。
【請求項20】
前記SLNPが、RGDと共製剤化されたIC1をさらに含む(SLNP-IC1-RGDと称される)、請求項15に記載のSLNP。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年11月18日に提出された米国仮特許出願第63/361,075号に基づく優先権を主張し、その内容は、すべてが参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究下でなされた発明に対する権利の記述
該当なし。
【0003】
発明の分野
本明細書に記載される発明は、プロドラッグおよびそのようなプロドラッグを含むナノ製剤からの活性誘導剤/阻害剤の放出後に免疫原性細胞死(ICD)を誘導する、プロドラッグ組成物に関する。具体的には、本発明は、ナノ担体(例えば、リポソーム)内に製剤化され、ヒトにおいてがん療法のビヒクルとして使用される、プロドラッグ組成物に関する。本発明はまた、そのようなプロドラッグの、他の免疫モジュレーション剤もしくはプロドラッグまたはそれらの様々な組合せとの共製剤にも関する。本発明はさらに、がんならびに他の免疫学的障害および疾患の処置に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
がんは、冠状動脈疾患に次いで世界で2番目に多い死因である。毎年、数百万人ががんで死亡しており、米国単独で年間50万をはるかに超えるがんによる死亡があり、2017年には、1,688,780件の新しいがん症例が診断されている(American Cancer Society)。心臓疾患による死亡は著しく低下してきたが、がんによるものは、一般に増加している。来世紀の初期には、医療の発展により現在の傾向が変化しない限り、がんが1番の死因となることが予測される。
【0005】
いくつかのがんは、高い死亡率を有するものとして際立っている。具体的には、肺の癌腫(すべてのがん死亡数の18.4%)、乳房の癌腫(すべてのがん死亡数の6.6%)、結腸直腸の癌腫(すべてのがん死亡数の9.2%)、肝臓の癌腫(すべてのがん死亡数の8.2%)、および胃の癌腫(すべてのがん死亡数の8.2%)が、世界ですべての年齢で両性別について、がんによる死亡の主な原因となっている(GLOBOCAN 2018)。これらおよび事実上すべての他の癌腫は、それらが、原発性腫瘍から遠位の部位へと転移し、ほとんど例外なく、転移性疾患が致死となるという点で、共通した致死特性を共有している。さらに、初期に原発性がんから生き残ったがん患者であっても、その生活が激変するという一般的な経験が示されている。多くのがん患者は、再発または処置失敗の可能性を意識することによる強い不安を経験する。多くのがん患者はまた、処置後に身体的衰弱も経験する。さらに、多くのがん患者は、その疾患の再発を経験する。
【0006】
がん療法は過去数十年間にわたって向上し、生存率は増加したが、がんの不均一性により、複数の処置モダリティを利用する新しい治療戦略が依然として必要である。これは、解剖学的に重大な部位における固形腫瘍(例えば、神経膠芽腫、頭頸部の扁平上皮癌、および肺腺癌)の処置において特に当てはまり、これらは、標準的な放射線療法および/または化学療法に限定されることがある。いずれにせよ、これらの治療法の有害作用は、化学療法および放射線療法耐性であり、これらは、患者の生活の質を低減させる重篤な副作用に加えて、局所領域的再発、遠位転移、および二次原発性腫瘍を促進する。
【0007】
一般的に述べると、ICDは、免疫応答を誘起する任意の種類の細胞死である。ICDは、いずれの応答も誘起せずそれどころか免疫寛容を媒介する他の形態の細胞死(例えば、アポトーシス、オートファジー、およびその他のもの)とは対照的である。ICDは、膜完全性を維持するアポトーシス形態学によって特徴付けられる。GARG, et. al., Int. J. Dev. Biol. 59: pp. 131-140 (2015)を参照されたい。加えて、ICDは、損傷関連分子パターン(DAMP)の分泌によって特徴付けられる。一般に、ICDの際に細胞表面に曝露される3つの主要なDAMPが存在する。第1のものは、通常は小胞体のルーメンに存在するDAMP分子のうちの1つであるカルレティキュリン(CRT)であり、免疫原性死の誘導後に死滅する細胞の表面に転位される。そこで、それが、プロフェッショナル食細胞に対する「私を食べて」のシグナルとして機能する。第2のものは、熱ショックタンパク質(HSP)、すなわち、HSP70およびHSP90として公知の表面曝露DAMPであり、これは、ストレス条件下において、さらに形質膜へと転位する。細胞表面上で、それらは、CD91およびCD40といったいくつかの抗原提示細胞(APC)表面受容体との相互作用に基づいて、免疫刺激性作用を有し、また、MHCクラスI分子上の腫瘍細胞に由来する抗原の交差提示を促進し、次いで、これが、CD8+ T細胞応答を引き起こす。ICDに特徴的な第3のDAMPは、分泌型HMGB1およびATFである。HMGB1は、後期ICDのマーカーであると考えられており、細胞外空間へのその放出は、樹状細胞による最適な抗原提示に必要とされることが示されている。それは、APCに発現されるいくつかのパターン認識受容体(PRR)、例えば、Toll様受容体(TLR)2および4に結合する。免疫原性細胞死の際に放出されるATPは、分泌されると食細胞に対する「私を見つけて」のシグナルとして機能し、ICDの部位へのそれらの誘引を誘導する。加えて、標的細胞上のプリン受容体へのATPの結合は、インフラマソーム活性化を通じて免疫刺激性作用を有する。ICDの際に放出されるDNAおよびRNA分子は、死滅する細胞および食細胞の両方において、TLR3およびcGAS応答を活性化することが示されている。GALLUZZI, et. al., Cell Death and Diff. (2018) 25:pp. 486-451を参照されたい。
【0008】
一般的に、2つの群のICD誘導剤が、当該技術分野において認識されている。I型誘導剤は、付随的な損傷としてのみ小胞体(ER)に対するストレスを引き起こし、主として、DNAまたはクロマチン維持装置または膜成分を標的とする。II型誘導剤は、ERを特異的に標的とする。
【0009】
ICDは、一部の細胞増殖抑制剤、例えば、アントラサイクリン、オキサリプラチン、およびボルテゾミブ、または放射線療法および光線力学的療法(PDT)によって誘導される。加えて、ICDの生物学的原因のなかでもとりわけ、いくつかのウイルスを挙げることができる。感染細胞の免疫原性死が感染作用物質に対する免疫応答を誘導するように、がん細胞の免疫原性死は、樹状細胞(DC)の活性化および結果としての特異的T細胞応答の活性化を通じて、有効な抗腫瘍免疫応答を誘導し得る。この作用は、抗腫瘍療法において使用されている。KRYSKO, et. al., Nat. Revs, Cancer 12(12):pp860-875 (2012)およびSPISEK, et. al., Cell Cycle 6(16)pp. 1962-1965 (Aug. 2007)を参照されたい。
【0010】
細胞死を誘導するために使用される様々な薬剤が使用され、現在、がん療法として評価されている。とりわけ、ドキソルビシンは、1974年以来、米国において医療使用が認められている。ドキソルビシンは、インターカレーションおよび高分子生合成の阻害によって、DNAと相互作用する。これは、転写のためにDNAにおけるスーパーコイルを弛緩させる酵素であるトポイソメラーゼIIの進行を阻害する。ドキソルビシンは、DNA鎖を複製のために破壊した後にトポイソメラーゼII複合体を安定化させ、DNA二重ヘリックスが放出されるのを防止し、それによって、複製のプロセスを停止させる。TACAR, et. al., J. Pharm. & Pharmcol, 65, pp. 157-170 (2012)を参照されたい。
【0011】
ドキソルビシンのペグ化バージョン(MYOCET)およびリポソームバージョン(DOXIL)もまた、がんおよび他の疾患の処置について、米国および他の国々において市販入手可能である。
【0012】
プロドラッグは、投与後に薬理学的に活性な薬物へと代謝される(すなわち、体内で変換される)医薬品または化合物である。薬物を直接的に投与するのではなく、対応するプロドラッグを、医薬がどのように吸収され、分配され、代謝され、および/または排出されるかを改善するために代わりに使用する。プロドラッグは、例えば、薬物自体が消化管から吸収されにくい場合に、バイオアベイラビリティを改善するようにデザインされることが多い。プロドラッグは、薬物がその意図される標的ではない細胞またはプロセスとどれほど選択的に相互作用するかを改善するために使用され得る。これによって、薬物の有害なまたは意図されない効果が低減され、これは、特に、重篤な意図されないおよび望ましくない副作用を有する場合のある化学療法などの処置において重要である。プロドラッグは、したがって、親分子の望ましくない特性を変更または排除するために一過的な様式で使用される、特化した非毒性保護基を含む薬物とみなすことができる。
【0013】
最後に、ナノ担体は、別の物質、例えば、薬物の輸送手段として使用されているナノ材料である。多数の異なるタイプのナノ担体が存在する。例えば、ナノ担体としては、数例挙げると、ポリマーコンジュゲート、ポリマーナノ粒子、脂質に基づく担体、およびデンドリマーが挙げられる。ナノ担体において異なるタイプのナノ材料が使用されることにより、疎水性および親水性の薬物が身体全体に送達されることが可能となる。ヒトの身体は主として水を含んでいるため、疎水性薬物をヒトにおいて効果的に送達する能力は、ナノ担体の主要な治療上の利点である。ナノ担体は、薬物を部位特異的標的に送達することができ、薬物を、その他のものではなくある特定の器官または細胞に送達することを可能にするため、薬物送達プロセスにおいて有望である。部位特異性は、薬物が誤った位置へと送達されるのを防止するため、主要な治療上の利点である。加えて、ナノ担体は、身体の健常な成長速度の早い細胞に対する化学療法の有害なより広範な毒性を減少させるのに役立ち得るため、化学療法における使用に特に有望である。化学療法薬は、ヒト細胞に対して極めて毒性であり得るため、それらが身体の他の部位に放出されることなく腫瘍へと送達されることが重要である。
【0014】
上記のことから、当業者であれば、がんおよび他の免疫学的疾患の処置において、新しい処置パラダイムが必要とされることは容易に明らかであろう。新規なプロドラッグを、現代のナノ担体モダリティと併せて使用することによって、新しい疾患処置が、がんの処置、特に、固形腫瘍におけるがんの処置において、より有効な処置、低減された副作用、およびより高い治療上の有用性を全体目標として、達成することができる。
がん処置と関連する現在の欠陥を踏まえ、ナノ担体内にカプセル封入されたプロドラッグを利用して、がん、免疫学的障害、および他の疾患を処置する新規かつ改善された方法を提供することが、本発明の目的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】GARG, et. al., Int. J. Dev. Biol. 59: pp. 131-140 (2015)
【非特許文献2】GALLUZZI, et. al., Cell Death and Diff. (2018) 25:pp. 486-451
【非特許文献3】KRYSKO, et. al., Nat. Revs, Cancer 12(12):pp860-875 (2012)
【非特許文献4】SPISEK, et. al., Cell Cycle 6(16)pp. 1962-1965 (Aug. 2007)
【非特許文献5】TACAR, et. al., J. Pharm. & Pharmcol, 65, pp. 157-170 (2012)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の概要
本発明は、ICD誘導剤と、脂質と、生物学的切断性リンカーとを含む、ICD誘導プロドラッグ(「ICDプロドラッグ」)組成物を提供する。ある特定の実施形態では、ICDプロドラッグを含むナノ担体は、ヒト疾患、例えば、固形腫瘍がんを含むがん、ならびに他の免疫学的障害を処置するための送達モダリティとしての使用のために製剤化される。ある特定の実施形態では、ナノ担体は、薬物送達ビヒクル(すなわち、リポソーム)に組み込むことができる脂質二重層を含む。さらなる実施形態では、ナノ担体は、固体脂質ナノ粒子(「SLNP」)を含む。さらなる好ましい実施形態では、リポソームは、ヘミコハク酸コレステロール(「CHEMS」)を含む。さらなる好ましい実施形態では、本発明のリポソームは、ステアリン酸を含む。さらなる好ましい実施形態では、本発明のリポソームは、ステアリン酸およびヒドラゾンを含む。
【0017】
さらなる実施形態では、本開示のICDプロドラッグは、IC1プロドラッグを含む。
【0018】
さらなる実施形態では、本発明は、ICD誘導剤を腫瘍に送達する方法であって、(i)ICDプロドラッグを合成するステップと、(ii)本発明のICDプロドラッグを、本発明のナノ担体において製剤化するステップと、(iii)ナノ担体を患者に投与するステップとを含む、方法を含む。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、1つまたは複数の追加の免疫モジュレーション剤を有するICD誘導剤を腫瘍に送達する方法であって、(i)ICDプロドラッグを合成するステップと、(ii)本発明のICDプロドラッグを、ナノ担体において本発明の1つまたは複数の追加の免疫モジュレーション剤と共製剤化するステップと、(iii)ナノ担体を患者に投与するステップとを含む、方法を含む。
【0020】
別の実施形態では、免疫モジュレーション剤は、A2aRアンタゴニスト、PD-1アンタゴニスト、toll受容体アゴニスト、STINGアゴニスト、IDO阻害剤、CTLA4阻害剤、CD1Dアゴニスト、TGFb阻害剤、および/またはこれらのプロドラッグを含む。加えて、追加の免疫原性細胞死を誘導する化学療法薬および/またはそのプロドラッグとの共製剤化が、本明細書において企図される。
【0021】
別の実施形態では、本開示は、ICDプロドラッグを合成する方法を教示する。
【0022】
別の実施形態では、本開示は、IC1プロドラッグを合成する方法を教示する。
【0023】
別の実施形態では、本開示は、リポソームを含むがこれに限定されないナノ担体内にICDプロドラッグを製剤化する方法を教示する。
【0024】
別の実施形態では、本開示は、リポソームを含むがこれに限定されないナノ担体内にIC1プロドラッグを製剤化する方法を教示する。
【0025】
別の実施形態では、本開示は、SLNPを含むがこれに限定されないナノ担体内にIC1プロドラッグを製剤化する方法を教示する。
【0026】
別の実施形態では、本開示は、本開示のナノ担体を使用して、ヒトにおけるがん、免疫学的障害、および他の疾患を処置する方法を教示する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】IC1プロドラッグの化学合成。
図2】カルボン酸官能性を用いたICD誘導剤プロドラッグ合成スキーム。
図3】アルコール官能性を用いたICD誘導剤プロドラッグ合成スキーム。
図4】第二級アミン、アミド、またはアニリン官能性を用いたICD誘導剤プロドラッグ合成スキーム。
図5】SLNP-IC1固体脂質ナノ担体の特徴付け。
図6】SLNP-IC1固体脂質ナノ担体の特徴付け(ゼータ電位)。
図7】SLNP-IC1-RGD固体脂質ナノ担体の特徴付け。
図8】SLNP-IC1-RGD固体脂質ナノ担体の特徴付け(ゼータ電位)。
図9】SLNP-Dox固体脂質ナノ担体の特徴付け。
図10】SLNP-Dox固体脂質ナノ担体の特徴付け(ゼータ電位)。
図11】SLNP-IC1-TR12固体脂質ナノ担体の特徴付け。
図12】SLNP-IC1-TR12固体脂質ナノ担体の特徴付け(ゼータ電位)。
図13】ドキソルビシン(SLNP-DoxおよびLNP-Dox)ならびにIC1(SLNP-IC1およびSLNP-IC1-RGD)の血清安定性/放出動態。
図14】in vitroでのEMT-6細胞におけるIC1の細胞傷害性評価。
図15】in vitroでの4T-1細胞におけるIC1の細胞傷害性評価。
図16】in vivoでのEMT-6細胞を使用したDoxil(LNP-Dox)と比較した複数用量でのSLNP-IC1の腫瘍阻害。
図17】EMT-6腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図18】EMT-6乳がん腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図19】EMT-6腫瘍モデルにおける固体脂質ナノ粒子(「SLNP」)での単独および/またはDSR-6434-ステアリン酸と組み合わせた複数用量のドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図20】Balb/cマウスモデルにおける固体脂質ナノ粒子(「SLNP」)での単独およびDSR-6434-ステアリン酸と組み合わせたドキソルビシンプロドラッグの最大耐用用量(「MTD」)。
図21】B16F10黒色腫腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図22】MPC11多発性骨髄腫腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図23】Neuro2A神経芽細胞腫腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図24】CT26結腸腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図25】MC38結腸腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図26】Renca腎臓腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図27】H22肝臓腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図28】Hepa1-6肝臓腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図29】LLC1肺腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図30】KLN205肺腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図31】B16BL6黒色腫腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図32】Pan-02.03膵臓腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図33】RM-1前立腺腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図34】MBT2膀胱腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図35】クローンM-3黒色腫腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
図36】4T1乳房同所性腫瘍モデルにおけるドキソルビシンプロドラッグ有効性のin-vivo検証。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
節の概要
I.)定義
II.)プロドラッグ
III.)化学的化合物
IV.)脂質
V.)連結ユニット(「LU」)
VI.)ナノ担体
VII.)リポソーム
VIII.)医薬製剤
IX.)組合せ療法
X.)プロドラッグを含むリポソームを細胞に送達する方法
XI.)がんおよび他の免疫学的障害を処置する方法
XII.)キット/製造物品
【0029】
I.)定義:
別途定義されない限り、本明細書に使用されるすべての専門用語、表記、および他の科学用語または用語法は、別途文脈により明確に示されない限り、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味を有することが意図される。一部の場合には、一般的に理解されている意味を有する用語は、明確さおよび/または即時参考のために本明細書において定義されており、そのような定義を本明細書に含めることは、必ずしも当該技術分野において一般的に理解されているものとの実質的な違いを表すと解釈されるものではない。
【0030】
商標名が本明細書において使用されている場合、商標名への参照は、別途文脈により示されない限り、商標名製品の製品配合、ジェネリック薬、および活性医薬成分も指す。
【0031】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、値またはサイズの量(すなわち、直径)、重量、濃度、またはパーセンテージに言及する場合、指定された量から、1つの例では±20%または±10%、別の例では±5%、別の例では±1%、なおも別の例では±0.1%の変動を包含することを意味し、そのような変動は、開示される方法を行うのに適切であるようなものである。
【0032】
本明細書において使用される場合、「および/または」という用語は、実体の一覧の文脈で使用される場合、単独または組合せで存在する実体を指す。したがって、例えば、「A、B、C、および/またはD」という語句は、A、B、C、およびDを個別に含むだけでなく、A、B、C、およびDのありとあらゆる組合せおよび部分組合せも含む。
【0033】
本明細書において端点によって列挙される数値範囲は、その範囲内に含まれるすべての数および分数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、および5を含むがこれらに限定されない)。
【0034】
本明細書において使用される場合、「から本質的になる」という語句は、本特許請求の範囲を、指定された材料またはステップ、さらにそれらに加えて、特許請求される主題の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。
【0035】
「進行がん」、「局所進行がん」、「進行疾患」、および「局所進行疾患」という用語は、関連する組織カプセルを通じて拡大されたがんを意味し、これらは、American Urological Association(AUA)システム下におけるステージCの疾患、Whitmore-Jewettシステム下におけるステージC1~C2の疾患、ならびにTNM(腫瘍、節、転移)システム下におけるステージT3~T4およびN+の疾患を含むことを意味する。一般に、外科手術は、局所進行疾患を有する患者には推奨されず、これらの患者は、臨床的に局在化した(器官が限定された)がんを有する患者と比較して、実質的にあまり好ましくない予後を有する。
【0036】
本明細書において使用される場合、「アルキル」という用語は、C~C20(端点を含む)、線形(すなわち、「直鎖」)、分岐鎖、または環状の飽和または少なくとも部分的におよび一部の場合には不飽和の(すなわち、アルケニルおよびアルキニル)炭化水素鎖を指し得、これには、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、ブタジエニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、およびアレニル基が挙げられる。「分岐鎖」とは、低級アルキル基、例えば、メチル、エチル、またはプロピルが、線形アルキル鎖に結合した、アルキル基を指す。「低級アルキル」とは、1~約8個の炭素原子(すなわち、C~Cアルキル)、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、または8個の炭素原子を有するアルキル基を指す。「高級アルキル」とは、約10個~約20個の炭素原子、例えば、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個の炭素原子を有するアルキル基を指す。ある特定の実施形態では、「アルキル」は、特に、C~C直鎖アルキルを指す。他の実施形態では、「アルキル」は、特に、C1~8分岐鎖アルキルを指す。
【0037】
アルキル基は、必要に応じて、同じかまたは異なってもよい1つまたは複数のアルキル基置換基で置換され得る(「置換アルキル」)。「アルキル基置換基」という用語は、アルキル、置換アルキル、ハロ、アリールアミノ、アシル、ヒドロキシル、アリールオキシル、アルコキシル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルオキシル、アラルキルチオ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、オキソ、およびシクロアルキルを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、必要に応じて、アルキル鎖に沿って、1つまたは複数の酸素、硫黄、または置換もしくは非置換窒素原子が挿入されてもよく、ここで、窒素置換基は、水素、低級アルキル(本明細書において、「アルキルアミノアルキル」とも称される)、またはアリールである。
【0038】
したがって、本明細書において使用される場合、「置換アルキル」という用語は、アルキル基の1つまたは複数の原子または官能基が、例えばアルキル、置換アルキル、ハロゲン、アリール、置換アリール、アルコキシル、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、硫酸、およびメルカプトを含む別の原子または官能基と置き換えられた、本明細書に定義されるアルキル基を含む。
【0039】
「アリール」という用語は、単一の芳香環であり得るか、あるいは一緒に縮合されたか、共有結合で連結されたか、またはメチレンもしくはエチレン部分などであるがこれらに限定されない共通の基に連結された、複数の芳香環であり得る、芳香族置換基を指して本明細書に使用される。共通の連結基はまた、ベンゾフェノンにあるようなカルボニル、またはジフェニルエーテルにあるような酸素、またはジフェニルアミンにあるような窒素であり得る。「アリール」という用語は、具体的には、複素環式芳香族化合物を包含する。芳香環は、とりわけ、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルアミン、およびベンゾフェノンを含み得る。特定の実施形態では、「アリール」という用語は、約5~約10個の炭素原子、例えば、5個、6個、7個、8個、9個、または10個の炭素原子を含む芳香環を意味し、これには、5および6員の芳香環および複素芳香環が含まれる。アリール基は、必要に応じて、同じかまたは異なってもよい1つまたは複数のアリール基置換基で置換されていてもよく(「置換アリール」)、ここで、「アリール基置換基」としては、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アリールオキシル、アラルキルオキシル、カルボキシル、アシル、ハロ、ニトロ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アシルオキシル、アシルアミノ、アロイルアミノ、カルバモイル、アルキルカルバモイル、ジアルキルカルバモイル、アリールチオ、アルキルチオ、アルキレン、および-NR’R”が挙げられ、ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、およびアラルキルであり得る。アリール基の具体的な例としては、シクロペンタジエニル、フェニル、フラン、チオフェン、ピロール、ピラン、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピラゾール、ピラジン、トリアジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、インドール、カルバゾールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
「ヘテロアリール」は、本明細書において使用される場合、環構造の骨格において1つまたは複数の非炭素原子(例えば、O、N、S、Seなど)を含む、アリール基を指す。窒素含有ヘテロアリール部分としては、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、ピラジン、トリアジン、ピリミジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「抗がん薬」、「化学療法薬」、および「抗がんプロドラッグ」という用語は、がんを処置する(すなわち、がん細胞を殺滅させるか、がん細胞の増殖を阻止するか、またはがんに関連する症状を処置する)ことが公知であるか、またはそれが可能であると疑われる薬物(すなわち、化学的化合物)またはプロドラッグを指す。一部の実施形態では、「化学療法薬」という用語は、本明細書において使用される場合、がんを処置するために使用される、および/または細胞傷害性能力を有する、非PS分子を指す。より古典的または従来的な化学療法剤は、作用機序または化学的化合物のクラスによって説明することができ、これらとしては、アルキル化剤(例えば、メルファラン)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)、細胞骨格破壊剤(例えば、パクリタキセル)、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、ボリノスタット)、トポイソメラーゼIまたはIIの阻害剤(例えば、イリノテカンもしくはエトポシド)、キナーゼ阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、ヌクレオチドアナログまたはその前駆体(例えば、メトトレキサート)、ペプチド抗生物質(例えば、ブレオマイシン)、白金系薬剤(例えば、シスプラチンもしくはオキサリプラチン)、レチノイド(例えば、トレチノイン)、ならびにビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0042】
「アラルキル」は、-アルキル-アリール基を指し、必要に応じて、アルキルおよび/またはアリール部分は、置換される。
【0043】
「アルキレン」は、1個~約20個の炭素原子、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個の炭素原子を有する、直鎖または分岐鎖の二価脂肪族炭化水素基を指す。アルキレン基は、直鎖、分岐鎖、または環状であり得る。アルキレン基はまた、必要に応じて、不飽和であってもよく、および/または1つもしくは複数の「アルキル基置換基」で置換されてもよい。必要に応じて、アルキレン基に沿って、1つまたは複数の酸素、硫黄、または置換もしくは非置換窒素原子が挿入されてもよく(本明細書において、「アルキルアミノアルキル(alkylaminoalkyi)」とも称される)、窒素置換基は、前述のように、アルキルである。例示的なアルキレン基としては、メチレン(-CH-)、エチレン(-CH-CH-)、プロピレン(-(CH)3-)、シクロヘキシレン(-C10-)、-CH=CH-CH=CH-、-CH=CH-CH-、-(CH-N(R)-(CH),-(式中、qのそれぞれは、0~約20の整数、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であり、Rは、水素または低級アルキルである)、メチレンジオキシル(-O-CH-O-)、ならびにエチレンジオキシル(-O-(CH-O-)が挙げられる。アルキレン基は、約2個~約3個の炭素原子を有し得、さらに、6個~20個の炭素を有し得る。
【0044】
「アリーレン」という用語は、二価芳香族基、例えば、二価フェニルまたはナフチル基を指す。アリーレン基は、必要に応じて、1つもしくは複数のアリール基置換基で置換され得、および/または1つもしくは複数のヘテロ原子を含み得る。
【0045】
「アミノ」という用語は、基-N(R)を指し、ここで、それぞれのRは、独立して、H、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アラルキル、または置換アラルキルである。「アミノアルキル」および「アルキルアミノ」という用語は、基-N(R)を指し得、ここで、それぞれのRは、H、アルキル、または置換アルキルであり、少なくとも1つのRは、アルキルまたは置換アルキルである。「アリールアミン」および「アミノアリール」は、基-N(R)を指し、ここで、それぞれのRは、H、アリール、または置換アリールであり、少なくとも1つのRは、アリールまたは置換アリール、例えば、アニリン(すなわち、-NHC)である。
【0046】
「バルク薬」(原薬としても知られる)は、分配のための最終容器に充填されていない、原薬または薬物製品を意味する。最終製剤化バルク薬は、一般に、製剤化され、充填する前に保管または保持されている薬物製品を指す。原薬は、薬物製品への製剤化の前に、「バルク薬」または「濃縮バルク薬」として保管または保持されてもよい。
【0047】
「カルボキシレート」および「カルボン酸」という用語は、それぞれ、-C(=O)Oおよび-C(=O)OHという基を指し得る。「カルボキシル」という用語はまた、-C(=O)OH基を指し得る。
【0048】
「コンジュゲート」および「コンジュゲートされた」という用語は、本明細書において使用される場合、2つまたはそれよりも多くの成分(例えば、化学的化合物、ポリマー、生体分子、粒子など)の互いとの結合(例えば、共有結合)を指し得る。一部の実施形態では、コンジュゲートは、二価リンカー部分(例えば、必要に応じて置換されたアルキレンまたはアリーレン)を介して共有結合的に連結された2つの異なる化学的化合物に由来する一価の部分を含み得る。一部の実施形態では、リンカーは、プロドラッグが特定の生理学的環境または酵素(例えば、エステラーゼ)に曝露されるとリンカー内の1つまたは複数の結合が破壊され得るように、1つまたは複数の生体分解性結合を含み得る。
【0049】
「化合物」という用語は、化学的化合物(例えば、プロドラッグ)自体、ならび明示的に言及されるかどうかにかかわらず、かつ以下のものが除外されることが文脈により明らかでない限り、次のものを包含する:多型形態を含む化合物の非晶質形態および結晶質形態、これらの形態は混合物の一部であり得るかまたは単離状態にあり得る;化合物の遊離酸および遊離塩基の形態、これらは典型的には本明細書に提供される構造に示される形態である;化合物の異性体、これは、光学異性体および互変異性体を指し、ここで、光学異性体は、エナンチオマーおよびジアエステレオマー、キラル異性体および非キラル異性体を含み、光学異性体は、単離された光学異性体ならびにラセミ混合物および非ラセミ混合物を含む光学異性体の混合物を含み、異性体は、単離された形態であり得るか、または1つもしくは複数の他の異性体との混合物の状態にあり得る;化合物の同位体、これには、重水素およびトリチウムを含む化合物が含まれ、また治療および診断に有効な放射性同位体を含めた放射性同位体を含む化合物が含まれる;化合物の多量体形態、これには、二量体、三量体などの形態が含まれる;化合物の塩、好ましくは、薬学的に許容される塩、これには、酸付加塩および塩基付加塩が含まれ、有機対イオンおよび無機対イオンを有する塩、ならびに双性イオン形態が含まれ、ここで、化合物が2つまたはそれよりも多くの対イオンと会合する場合、2つまたはそれよりも多くの対イオンは同じであっても異なってもよい;ならびに化合物の溶媒和物、これには、半溶媒和物、一溶媒和物、二溶媒和物など、有機溶媒和物および無機溶媒和物が含まれ、前記無機溶媒和物には水和物が含まれ、化合物が2つまたはそれよりも多くの溶媒分子と会合する場合、2つまたはそれよりも多くの溶媒分子は、同じであっても異なってもよい。一部の事例では、本明細書においてなされる本発明の化合物への参照は、上述の形態のうちの1つまたは複数、例えば、塩および/または溶媒和物への明示的な参照を含むが、しかしながら、この参照は、強調のみのために行われ、上記に特定された上述の形態のその他のものを排除すると解釈されるものではない。
【0050】
「薬物製品」とは、概して、不活性成分が付随するが、必ずしもそうとは限らない、活性医薬成分(すなわち、ICD誘導プロドラッグを含むリポソーム)を含む最終製剤を意味する。この用語はまた、活性成分を含まないが、プラセボとして使用されることが意図される最終剤形も含む。
【0051】
「ジスルフィド」という用語は、-S-S-基を指し得る。
【0052】
「空の小胞」という用語は、ロードされていない脂質小胞自体を意味する。
【0053】
「エステル」という用語は、本明細書において使用される場合、少なくとも1つの-OHヒドロキシル基が-O-アルキル(アルコキシ)またはO-アリール(アリールオキシ)基によって置き換えられた、酸(有機または無機)に由来する化学的化合物を意味する。
【0054】
「エステラーゼ」という用語は、本明細書において使用される場合、エステルを酸とアルコールとに分割するヒドロラーゼ酵素である。
【0055】
「賦形剤」とは、ワクチンなどの薬物において活性成分の担体として使用される不活性物質を意味する。賦形剤はまた、便宜的かつ正確な投薬量を可能にするために、非常に強力な活性成分を有する製剤をかさ増しするために使用されることもある。賦形剤の例としては、抗接着剤、結合剤、コーティング剤、崩壊剤、増量剤、希釈剤、香味剤、着色剤、滑沢剤、および保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
「ハロ」、「ハロゲン化物」、または「ハロゲン」という用語は、本明細書において使用される場合、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨード基を指す。
【0057】
「ヒドラゾン(hydrazone)」または「ヒドラゾン(hydrazones)」という用語は、構造RC=NNHを有する有機化合物のクラスを指す。
【0058】
「ヒドラゾンリンカー」という用語は、血液循環の中性pHにおいて安定なままであるが、細胞コンパートメントの酸性環境において加水分解を受けて連結された化合物を放出するように特にデザインされている、酸切断性リンカーを意味する。
【0059】
「ヒドロキシル」および「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を指す。
【0060】
「阻害する」または「の阻害」という用語は、本明細書において使用される場合、測定可能な量で低減させること、または完全に防止することを意味する。
【0061】
「個体」または「患者」という用語は、本開示の文脈において使用される場合、互換可能に使用され得る。
【0062】
本明細書において使用される場合、「リガンド」という用語は、一般的に、なんらかの手段で別の種と相互作用、例えば、結合する、1つの種、例えば、分子またはイオンを指す。Martell, A. E., and Hancock, R. P., Metal Complexes in Aqueous Solutions, Plenum: New York (1996)を参照されたく、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0063】
「脂質」という用語は、本明細書において使用される場合、極性溶媒中に不溶性である天然に存在する(有機)化合物のクラスを指す。本開示の文脈において、脂質は、従来的な脂質、リン脂質、コレステロール、PEGおよびリガンドの結合のための化学的に官能化された脂質などを指す。
【0064】
「脂質二重層」または「LB」という用語は、炭化水素尾部が内側を向いて連続的な非極性相を形成した配向の両親媒性脂質分子の任意の二重層を指す。
【0065】
「リポソーム」または「脂質小胞」または「小胞」という用語は、従来的に定義されるように脂質二重層によって封入された水性コンパートメントを指して互換可能に使用される(Stryer (1981) Biochemistry, 2d Edition, W. H. Freeman & Co., p. 213を参照されたい)。
【0066】
「哺乳動物」という用語は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、およびヒトを含む、哺乳動物として分類される任意の生物を指す。本発明の一実施形態では、哺乳動物は、マウスである。本発明の別の実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
【0067】
「メルカプト」または「チオール」という用語は、-SH基を指す。
【0068】
「転移性がん」および「転移性疾患」という用語は、領域リンパ節または遠位部位へと拡がったがんを意味し、AUAシステム下におけるステージDの疾患およびTNMシステム下におけるステージT×N×M+を含むことを意味する。
【0069】
「ナノ担体」、「ナノ粒子」、および「ナノ粒子薬物担体」という用語は、互換可能に使用され、水溶性、固体、またはポリマー性の内部コアを有するナノ構造体を指す。ある特定の実施形態では、ナノ担体は、多孔質粒子コアを包み込む(または包囲または封入する)脂質二重層を含む。ある特定の実施形態では、ナノ担体は、リポソーム、脂質ナノ粒子(「LNP」)、または固体脂質ナノ粒子(「SLNP」)である。
【0070】
「ナノスケール粒子」、「ナノ材料」、「ナノ担体」、および「ナノ粒子」という用語は、約1,000nm未満の寸法(例えば、長さ、幅、直径など)を有する少なくとも1つの領域を有する構造体を指す。一部の実施形態では、寸法は、より小さい(例えば、約500nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約125nm未満、約100nm未満、約80nm未満、約70nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、またはさらには約20nm未満)。一部の実施形態では、寸法は、約20nm~約250nm(例えば、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、または250nm)である。
【0071】
「ナノ小胞」という用語は、約20nmから、または約30nmから、または約40nmから、または約50nmから、最大約500nm、または最大約400nm、または最大約300nm、または最大約200nm、または最大約150nmまで、または最大約100nmまで、または最大約80nmまでの範囲に及ぶ直径を有する「脂質小胞」(またはそのような平均直径を有する小胞の集団)を指す。ある特定の実施形態では、ナノ小胞は、約40nmから最大約80nmまで、または約50nmから最大約70nmまでの範囲に及ぶ直径を有する。
【0072】
「薬学的に許容される」とは、ヒトまたは他の哺乳動物と生理学的に適合性のある非毒性、不活性、および/または組成物を指す。
【0073】
「医薬製剤化」とは、異なる化学物質を組み合わせて純粋な原薬にして、最終薬物製品を産生させるプロセスを意味する。
【0074】
「ホスホネート」という用語は、-P(=O)(OR)基を指し、ここで、それぞれのRは、独立して、H、アルキル、アラルキル、アリール、または負電荷(すなわち、有効に、酸素原子に結合するR基が存在せず、酸素原子上に共有されていない電子対が存在する)であり得る。したがって、換言すると、それぞれのRは、存在しても存在しなくてもよく、存在する場合には、H、アルキル、アラルキル、またはアリールから選択される。
【0075】
「ホスフェート」という用語は、-OP(=O)(OR’)基を指し、ここで、R’は、Hまたは負電荷である。
【0076】
「プロドラッグ」という用語は、投与後に薬理学的に活性な薬物へと代謝される、医薬品または化合物を意味する。本開示の目的で、本発明のプロドラッグは、以下の3つの成分:(i)薬物部分、(ii)脂質部分、および(iii)連結ユニット(「LU」)を含む。
【0077】
「ICDプロドラッグ」という用語は、薬物部分がICD誘導剤を含む、本発明のプロドラッグを意味する。
【0078】
「ピロ脂質(pyrolipid)」という用語は、脂質と、ポルフィリン、ポルフィリン誘導体、またはポルフィリンアナログとのコンジュゲートを指す。一部の実施形態では、ピロ脂質は、ポルフィリンまたはその誘導体もしくはアナログが、脂質側鎖に共有結合的に結合した、脂質コンジュゲートを含み得る。例えば、米国特許出願公開第2014/0127763号を参照されたい。
【0079】
本明細書において使用される場合、「特異的」、「特異的に結合する(specifically binds)」、および「特異的に結合する(binds specifically)」という用語は、ICDを誘導する、対象標的への本発明のナノ担体の選択的結合を指す。
【0080】
「支持型脂質二重層」という用語は、多孔質粒子コアを封入している脂質二重層を意味する。本開示に記載されるこの定義は、脂質二重層が表面上に位置しており、多孔質粒子コアによって支持されているため、示される。ある特定の実施形態では、脂質二重層は、約6nm~約7nmの範囲に及ぶ厚さを有し得、これには、3~4nmの厚さの疎水性コアに加えて、水和した親水性頭部基層(それぞれ約0.9nm)に加え、2つの部分的に水和したそれぞれ約0.3nmの領域が含まれる。様々な実施形態では、リポソームの周囲の脂質二重層は、ICD誘導剤を効果的に封入および封止する連続した二重層または実質的に連続した二重層を含む。
【0081】
「チオアルキル」という用語は、-SR基を指し得、ここで、Rは、H、アルキル、置換アルキル、アラルキル、置換アラルキル、アリール、および置換アリールから選択される。同様に、「チオアラルキル」および「チオアリール」という用語は、-SR基を指し、ここで、Rは、それぞれ、アラルキルおよびアリールである。
【0082】
本明細書において使用される場合、「処置するため」または「治療用」および文法的に関連する用語は、疾患の任意の結果の任意の改善、例えば、生存期間の延長、病態の減少、および/または代替的な治療モダリティの副産物である副作用の減少を指し、当該技術分野で容易に理解されているように、疾患の完全な根絶は、好ましくはあるが処置作用の要件ではない。
【0083】
「治療有効量」という用語は、組織、系、動物、個体、またはヒトにおいて生物学的または医学的応答を誘起する、活性プロドラッグ、ナノカプセル封入プロドラッグ、または薬学的薬剤の量を指す。
【0084】
「非支持型脂質二重層」という用語は、脂質小胞またはリポソームにおいてコーティングされていない脂質二重層を意味する。
【0085】
II.)プロドラッグ
本開示において示されるように、また本発明の目的で、好適なプロドラッグは、本発明の薬物部分(薬物部分と題される節を参照されたい)を、本開示のLU(連結ユニットと題される節を参照されたい)を介して本発明の脂質部分(脂質と題される節を参照されたい)にコンジュゲートすることによって形成される。本開示の目的で、ICDプロドラッグの形成は、いくつかの戦略を利用し得る。(例えば、図2図3、および図4を参照されたい)。
【0086】
したがって、一部の実施形態では、プロドラッグは、本開示のICD誘導剤を含む薬物-脂質部分である。
【0087】
一実施形態では、プロドラッグは、図2に記載されるICD誘導剤を含む薬物-脂質部分である。
【0088】
一実施形態では、プロドラッグは、図3に記載されるICD誘導剤を含む薬物-脂質部分である。
【0089】
一実施形態では、プロドラッグは、図4に記載されるICD誘導剤を含む薬物-脂質部分である。
【0090】
さらなる実施形態では、ICDプロドラッグは、本開示の脂質を含む薬物-脂質部分である。
【0091】
さらなる実施形態では、ICDプロドラッグは、脂質がCHEMSである薬物-脂質部分である。
【0092】
さらなる実施形態では、ICDプロドラッグは、脂質がステアリン酸である薬物-脂質部分である。
【0093】
さらなる実施形態では、ICDプロドラッグは、本開示のLUを含む薬物-脂質部分である。
【0094】
さらなる実施形態では、ICDプロドラッグは、LUがヒドロメチルカルバメートリンカーである薬物-脂質部分である。
【0095】
さらなる実施形態では、ICDプロドラッグは、LUがヒドラゾンリンカーである薬物-脂質部分である。
【0096】
さらなる実施形態では、ICDプロドラッグは、LUがヒドラゾンである薬物-脂質部分である。
【0097】
さらなる実施形態では、プロドラッグは、本発明のICD誘導剤を含む薬物-脂質部分であり、ここで、ICD誘導剤は、IC1と称される化学的組成物を含む。
【0098】
さらなる実施形態では、プロドラッグは、本発明のICD誘導剤を含む薬物-脂質部分であり、ここで、ICD誘導剤は、IC1を含み、以下の化学構造:
【化1】
を有する。
【0099】
さらなる実施形態では、プロドラッグは、本発明のICD誘導剤を含む薬物-脂質部分であり、ここで、ICD誘導剤は、IC1を含み、以下の化学式:
【化2】
を有する本開示の脂質をさらに含む。
【0100】
さらなる実施形態では、プロドラッグは、本発明のICD誘導剤を含む薬物-脂質部分であり、ここで、ICD誘導剤は、IC1を含み、CHEMSをさらに含む。
【0101】
さらなる実施形態では、プロドラッグは、本発明のICD誘導剤を含む薬物-脂質部分であり、ここで、ICD誘導剤は、IC1を含み、ステアリン酸をさらに含む。
【0102】
さらなる実施形態では、プロドラッグは、本発明のICD誘導剤を含む薬物-脂質部分であり、ここで、ICD誘導剤は、IC1を含み、CHEMSをさらに含み、LUは、ヒドロメチルカルバメートリンカーである。
【0103】
さらなる実施形態では、プロドラッグは、本発明のICD誘導剤を含む薬物-脂質部分であり、ここで、ICD誘導剤は、IC1を含み、ステアリン酸をさらに含み、LUは、ヒドロメチルカルバメートリンカーである。
【0104】
さらなる実施形態では、プロドラッグは、本発明のICD誘導剤を含む薬物-脂質部分であり、ここで、ICD誘導剤は、IC1を含み、CHEMSをさらに含み、LUは、ヒドラゾンリンカーである。
【0105】
さらなる実施形態では、プロドラッグは、本発明のICD誘導剤を含む薬物-脂質部分であり、ここで、ICD誘導剤は、IC1を含み、ステアリン酸をさらに含み、LUは、ヒドラゾンリンカーである。
【0106】
さらなる実施形態では、プロドラッグは、本発明のICD誘導剤を含む薬物-脂質部分であり、ここで、ICD誘導剤は、IC1を含み、以下の構造:
【化3】
を有するステアリン酸をさらに含む。
【0107】
本開示の追加の実施形態では、本主題は、脂質にコンジュゲートされた治療剤親薬物を含む、ICD誘導剤プロドラッグを提供する。一部の実施形態では、プロドラッグは、(a)一価薬物部分、(b)一価脂質部分、および(c)in vivoで分解される連結ユニットを含む二価リンカー部分、例えば、ジスルフィド結合を含み、ここで、一価薬物部分および一価脂質部分は、リンカーを介して連結(例えば、共有結合的に連結)される。一価薬物部分および一価脂質部分は、それぞれ、化学的化合物および脂質の一価誘導体であってもよい。例えば、一価誘導体は、ヒドロキシル、チオール、アミノ、またはカルボン酸基を含む化学的化合物または脂質の脱プロトン化誘導体であり得る。
【0108】
本開示のさらなる実施形態では、本主題は、脂質にコンジュゲートされた治療剤親薬物を含む、ICD誘導剤プロドラッグを提供する。一部の実施形態では、プロドラッグは、(a)二価薬物部分、(b)二価脂質部分、および(c)in vivoで分解される連結を含む二価リンカー部分を含み、ここで、二価薬物部分および二価脂質部分は、リンカーを介して連結(例えば、共有結合的に連結)される。二価薬物部分および二価脂質部分は、それぞれ、化学的化合物および脂質の二価誘導体であってもよい。例えば、二価誘導体は、ヒドロキシル、チオール、アミノ、またはカルボン酸基を含む化学的化合物または脂質の脱プロトン化誘導体であり得る。
【0109】
当業者であれば、本明細書に開示される本発明の機能および目的を変更することなく、開示される実施形態に対する変動形態および改変形態を理解し、それを作製することができるであろう。そのような変動形態および改変形態は、本開示の範囲内であることが意図される。
【0110】
III.)薬物部分
本発明の別の態様は、IC1と称される以下の式を有するICD誘導剤を含む新規なICDプロドラッグ化合物を提供する。
【0111】
当業者であれば、化合物が、当該技術分野において公知の様々な手段により免疫原性細胞死を誘導または媒介するという点で、ICD誘導剤として有用であることを理解するであろう。簡略的な背景として、ICDは、危険関連分子パターン(DAMP)ファミリーのクラスである特定の分子の放出によって特徴付けられるアポトーシスの形態である。DAMPは、生きた細胞において典型的には見られない、死滅する細胞によって曝露または分泌されると免疫刺激性特性を獲得する、細胞内因子である。DAMPは、そのステージおよび局在化/放出の場所に応じて、3つの主なサブクラスに分割され得る。DAMPの1つのサブクラスは、細胞表面上に出現する(例えば、CRT、HSP 70、HSP 90)。DAMPの別のサブクラスは、細胞外に出現する(例えば、HMGB1、尿酸、および炎症促進性サイトカイン)。DAMPの最後のサブクラスは、後期分解因子として出現する(例えば、ATP、DNA、およびRNA)。
【0112】
一般的に、DAMPは、toll様受容体(TLR)、NOD様受容体(NLR)、およびレチノイン酸誘導性遺伝子I様受容体(RIG-I様受容体(RLR))を含む、パターン認識受容体によって感作される。主要なDAMPとしては、CRT、HMGB1、ATP、HSP 70および90、ならびに1型インターフェロンおよびANXA1が挙げられる。これらの分子は、それらの受容体を感作することによって、免疫細胞を動員およびトリガーし、これによって、ファゴサイトーシスおよびTリンパ球の活性化が引き起こされて、腫瘍細胞が根絶される。KROEMER, et. al., Annu. Rev. Immunol. 2013, 31, pp. 51-72を参照されたい。ICDの際に産生されるDAMPの能力は、同時発生したかまたは活性酸素種(ROS)によって活性化された、小胞体(ER)ストレスに依存する。ASADZADEH, et. al., Cancers 2020, 12, 1047 (pp. 1-38)を参照されたい。
【0113】
当該技術分野において公知のいくつかのICDを誘導する化合物が存在し、これらとしては、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ジギトキシン、ドゴトキシン、およびスプタシジンが挙げられるが、これらに限定されない。KEPP, et. al., Oncotarget (July 2014): 5(14): pp. 5190-5191を参照されたい。
【0114】
上記のことに基づいて、本開示は、ICD誘導剤のクラスについて説明する。
【0115】
一実施形態では、本開示の薬物部分は、以下の化学構造:
【化4】
を有する化合物(IC1と称される)を含む。
【0116】
当業者であれば、本明細書に開示される本発明の機能および目的を変更することなく、開示される実施形態に対する変動形態および改変形態を理解し、それを作製することができるであろう。そのような変動形態および改変形態は、本開示の範囲内であることが意図される。
【0117】
IV.)脂質
一般的に述べると、また本開示の目的で、「脂質」という用語は、そのもっとも広範な意味で使用され、リン脂質/脂肪酸を含むがこれらに限定されないいくつかの部分カテゴリーの脂質を含む。当業者には理解されるように、リン脂質は、すべての細胞膜の主要な成分である脂質のクラスを表す。リン脂質は、それらの両親媒性特徴に起因して、脂質二重層を形成し得る。リン脂質分子の構造は、一般的に、2つの疎水性脂肪酸「尾部」と、単純な有機分子、例えば、コリン、エタノールアミン、またはセリンで改変されていてもよいリン酸基からなる親水性「頭部」とからなる。これらの2つの構成要素は、通常、グリセロール分子によって一緒に結合されている。本発明のリン脂質/脂肪酸の代表的なリストは、表IIIに記載されている。
【0118】
簡略的な背景として、もっとも基礎的なレベルで、リポソームの特性は、その組成における様々な脂質種の間の緻密な物理化学的相互作用に依存する。個々の脂質が組み合わされて、二重層を含む多数の上位構造が形成され得、二重層の特性は、薬物放出および膜安定性をモジュレートするように調整され得る。単純化された二重層モデルでは、アシル鎖の長さにより、二重層の厚さおよび相転移温度(Tm)が決定され、アシル鎖の飽和により、二重層の流動性が制御され、頭部基の相互作用により、脂質分子間力および脂質分子内力が影響を受ける。リポソームの挙動は、合成脂質、例えば、脂質プロドラッグ、融合性脂質、および官能化可能な脂質を二重層に組み込むことによって、調節することができる。KOHLI, et. al., J. Control Release, 0: pp. 274-287 (Sept. 28, 2014)を参照されたい。
【0119】
本開示の一実施形態では、ICDプロドラッグは、一価脂質部分を含む。
【0120】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、二価脂質部分を含む。
【0121】
一実施形態では、脂質は、以下の化学構造:
【化5】
を有するコレステロールを含む。
【0122】
一実施形態では、脂質は、以下の化学構造:
【化6】
を有するDPPGを含む。
【0123】
一実施形態では、脂質は、以下の化学構造:
【化7】
を有するDMPGを含む。
【0124】
一実施形態では、脂質は、以下の化学構造:
【化8】
を有するLyso PCを含む。
【0125】
一実施形態では、脂質は、以下の化学構造:
【化9】
を有する(Δ9-Cis)PGを含む。
【0126】
一実施形態では、脂質は、以下の化学構造:
【化10】
を有するSoy Lyso PCを含む。
【0127】
一実施形態では、脂質は、以下の化学構造:
【化11】
を有するPGを含む。
【0128】
一実施形態では、脂質は、以下の化学構造:
【化12】
を有するC16 PEG2000セラミド(Ceramde)を含む。
【0129】
一実施形態では、脂質は、以下の化学構造:
【化13】
を有するヘミコハク酸コレステロール(「CHEMS」)を含む。
【0130】
参照として、本明細書に開示される脂質の化学式および略語の完全なリストは、表Iに記載される。
【0131】
追加の実施形態では、脂質は、本明細書に開示され表IIIに記載されるリン脂質/脂肪酸を含む。
【0132】
さらなる実施形態では、脂質は、ステアリン酸を含む。
【0133】
加えて、本開示のICDプロドラッグおよび/またはリポソームは、本明細書において「ヘルパー脂質成分」とも称される1つまたは複数のヘルパー脂質を含み得る。ヘルパー脂質成分は、好ましくは、リン脂質およびステロイドを含む群から選択される。リン脂質は、好ましくは、リン酸のジエステルおよびモノエステルである。リン脂質の好ましいメンバーは、ホスホグリセリドおよびスフィンゴ脂質である。ステロイドは、本明細書において使用される場合、部分的に水素化されたシクロペンタ[a]フェナントレンに基づく天然に存在する化合物および合成化合物である。好ましくは、ステロイドは、21~30個のC原子を含む。特に好ましいステロイドは、コレステロールである。
【0134】
いずれの理論によっても束縛されることを望むものではないが、ヘルパー脂質がPEG不含ヘルパー脂質であるか、または特にPEG含有ヘルパー脂質であるかのいずれであってもよい本発明による脂質組成物に含まれるヘルパー脂質の具体的なmolパーセンテージに起因して、より具体的には、この種類のヘルパー脂質のいずれかの含有量が本明細書に指定される濃度範囲内に含まれる場合に、驚くべき作用が実現され得ることに留意されたい。
【0135】
本発明のさらなる態様では、好ましくはリポプレックスまたはリポソームとして存在する脂質組成物は、好ましくは、中性または全体的にアニオン性の電荷を示す。アニオン性脂質は、好ましくは、本明細書に記載される任意の中性またはアニオン性脂質である。脂質組成物は、好ましい実施形態では、任意のヘルパー脂質またはヘルパー脂質の組合せ、ならびに本明細書に記載される任意のICD誘導剤(例えば、IC1)を含む。さらなる実施形態では、核酸を含む本発明による組成物は、リポプレックスを形成する。好ましい実施形態では、リポプレックスという用語は、本明細書において使用される場合、本発明の中性またはアニオン性脂質、中性ヘルパー脂質、およびICD誘導剤から構成される組成物を指す。当該技術分野におけるヘルパー脂質の使用への参照については、例として、米国特許出願公開第2011/0178164号、OJEDA, et. al., Int. J. of Pharmaceutics (March 2016)、DABKOWSKA, et. al., J. R. Soc. Interface 9, pp. 548-561 (2012)、およびMOCHIZUKI, et. al., Biochimica et. Biophysica Acta, 1828, pp. 412-418 (2013)を参照されたい。
【0136】
好ましい実施形態では、本発明のヘルパー脂質は、表IIに記載されるヘルパー脂質を含む。
【0137】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はCHEMSであり、薬物部分はIC1である。
【0138】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はCHEMSであり、薬物部分はIC1のうちのいずれかであり、さらにLUを含み、LUはヒドロメチルカルバメートリンカーである。
【0139】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はCHEMSであり、薬物部分はIC1のうちのいずれかであり、さらにLUを含み、LUはヒドラゾンリンカーである。
【0140】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はCHEMSであり、薬物部分はIC1のうちのいずれかであり、さらにLUを含み、LUはヒドロメチルカルバメートリンカーであり、さらにヘルパー脂質成分を含み、ヘルパー脂質成分は表IIのヘルパー脂質を含む。
【0141】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はCHEMSであり、薬物部分はIC1のうちのいずれかであり、さらにLUを含み、LUはヒドラゾンリンカーであり、さらにヘルパー脂質成分を含み、ヘルパー脂質成分は表IIのヘルパー脂質を含む。
【0142】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はCHEMSであり、薬物部分はIC1のうちのいずれかであり、CHEMSは一価である。
【0143】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はステアリン酸であり、薬物部分はIC1のうちのいずれかである。
【0144】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はステアリン酸であり、薬物部分はIC1のうちのいずれかであり、ステアリン酸は一価である。
【0145】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はステアリン酸であり、薬物部分はIC1のうちのいずれかであり、さらにLUを含み、LUはヒドロメチルカルバメートリンカーである。
【0146】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はステアリン酸であり、薬物部分はIC1のうちのいずれかであり、さらにLUを含み、LUはヒドラゾンリンカーである。
【0147】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はステアリン酸であり、薬物部分はIC1のうちのいずれかであり、さらにLUを含み、LUはヒドラゾンである。
【0148】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はステアリン酸であり、化学的組成物はIC1のうちのいずれかであり、さらにLUを含み、LUはヒドロメチルカルバメートリンカーであり、さらにヘルパー脂質成分を含み、ヘルパー脂質成分は表IIのヘルパー脂質を含む。
【0149】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はステアリン酸であり、化学的組成物はIC1のうちのいずれかであり、さらにLUを含み、LUはヒドラゾンリンカーであり、さらにヘルパー脂質成分を含み、ヘルパー脂質成分は表IIのヘルパー脂質を含む。
【0150】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はステアリン酸であり、薬物部分はIC1のうちのいずれかである。
【0151】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はステアリン酸であり、薬物部分はIC1のうちのいずれかであり、ARプロドラッグは、本明細書に記載される実施例1に従って合成される。
【0152】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はステアリン酸であり、薬物部分はIC1のうちのいずれかであり、ARプロドラッグは、本明細書に記載される図1に従って合成される。
【0153】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、本発明の脂質を含み、ここで、脂質はステアリン酸であり、薬物部分は、以下の化学構造:
【化14】
を有するIC1のうちのいずれかである。
【0154】
一実施形態では、ヒドラゾン脂質のクラスが、本明細書に開示される。上記のこれまでの教示のように、一般的なヒドラゾン脂質は、表IIIに記載されている。加えて、本開示のヒドラゾン脂質は、以下の化学式:
【化15】
に記載され、
式中、n=8~30である。
【0155】
さらなる実施形態では、本開示のヒドラゾン脂質は、以下の化学式:
【化16】
に記載され、
式中、x=3~16であり、
式中、y=3~16である。
【0156】
当業者であれば、本明細書に開示される本発明の機能および目的を変更することなく、開示される実施形態に対する変動形態および改変形態を理解し、それを作製することができるであろう。そのような変動形態および改変形態は、本開示の範囲内であることが意図される。
【0157】
V.)連結ユニット(「LU」)
一部の実施形態では、本開示の主題は、生体分解性連結、例えば、エステル、チオエステル、および当該技術分野において公知の他のリンカーを含む、薬物-脂質コンジュゲートを含むプロドラッグを提供する。
【0158】
エステル化学反応の例示的な実施形態が、本明細書に記載されている:
【化17】
【0159】
一部の実施形態では、プロドラッグは、薬物-脂質コンジュゲートであり、薬物-脂質コンジュゲートは、エステラーゼによって切断される。
【0160】
一実施形態では、本発明のプロドラッグは、以下のスキームを使用して、第二級アミン、アミド、またはアニリンを介したLUを含む:
【化18】
例示的な合成は、以下の通りである:
【化19】
第二級アミン、アミド、またはアニリンを含むプロドラッグ構造の切断は、以下の例示的な合成下における第二級アミン、アミド、またはアニリンプロドラッグのエステラーゼ加水分解によって得られる:
【化20】
式中、
-NH-Rは、第二級アミン、アミド、またはアニリンを有する任意の分子であり得る。
【0161】
一実施形態では、IC1薬物部分の第二級アミドの窒素は、ヒドロメチルカルバメートリンカーを介してCHEMSにコンジュゲートされる。
【0162】
一実施形態では、IC1薬物部分の第二級アミドの窒素は、ヒドロメチルカルバメートリンカーを介してステアリン酸にコンジュゲートされる。
【0163】
さらなる実施形態では、本開示の主題は、水性酸性条件下において、以下の例示的な合成を利用して、薬物を遊離ケトンおよび脂質-ヒドラジン誘導体として放出するヒドラゾン加水分解を含むプロドラッグを提供する。
【化21】
【0164】
さらなる好ましい実施形態では、本開示のIC1プロドラッグは、水性酸性条件下におけるヒドラゾン加水分解を利用して、IC1薬物部分(「薬物部分」と題される節を参照されたい)を放出して、以下の例示的な合成下において、IC1および脂質-ヒドラジン誘導体を放出する。
【化22】
【0165】
当業者であれば、本明細書に開示される本発明の機能および目的を変更することなく、開示される実施形態に対する変動形態および改変形態を理解し、それを作製することができるであろう。そのような変動形態および改変形態は、本開示の範囲内であることが意図される。
【0166】
VI.)ナノ担体
一般的に述べると、また本開示の目的で、ナノ担体は、本発明の範囲内である。ナノ担体は、別の物質、例えば、薬物の輸送モジュールとして使用されているナノ材料である。一般的に使用されるナノ担体としては、ミセル、ポリマー、炭素に基づく材料、リポソーム、および他の物質が挙げられる。それらのサイズが小さいことから、ナノ担体は、それ以外ではアクセスできない身体内の部位に、薬物を送達することができる。ナノ担体としては、ポリマーコンジュゲート、ポリマーナノ粒子、脂質に基づく担体、デンドリマー、カーボンナノチューブ、および金ナノ粒子を挙げることができる。脂質に基づく担体は、リポソームおよびミセルの両方を含む。ある特定の実施形態では、ナノ担体は、リポソーム、脂質ナノ粒子(「LNP」)、または固体脂質ナノ粒子(「SLNP」)である。
【0167】
加えて、ナノ担体は、薬物を部位特異的標的に送達することができ、薬物を、その他のものではなくある特定の器官または細胞に送達することを可能にするため、薬物送達プロセスにおいて有用である。部位特異性は、薬物が誤った位置へと送達されるのを防止するため、主要な治療上の利点をもたらす。加えて、ナノ担体は、身体の健常な成長速度の早い細胞に対する化学療法の有害なより広範な毒性を減少させるのに役立ち得るため、化学療法における使用に有望である。化学療法薬は、ヒト細胞に対して極めて毒性であり得るため、それらが身体の他の部位に放出されることなく腫瘍へと送達されることが重要である。
【0168】
一般的に述べると、ナノ担体が薬物を送達することができる方法は4つ存在し、それらには、受動的標的化、能動的標的化、pH特異性、および温度特異性が含まれる。
【0169】
受動的標的化は、腫瘍の血管系へと移動し、そこで捕捉され、腫瘍に蓄積する、ナノ担体の能力を指す。この蓄積は、透過性および保持作用の増強によって引き起こされる。腫瘍のリーキー血管系(leaky vasculature)は、多数の細孔を含む、腫瘍において形成される血管のネットワークである。これらの細孔は、ナノ担体の進入を可能にするだけでなく、ナノ担体が捕捉された状態となることを可能にする多数の屈曲部も含む。より多くのナノ担体が捕捉された状態となるにつれて、薬物が腫瘍部位に蓄積される。この蓄積により、多用量の薬物が腫瘍部位に直接的に送達される。
【0170】
能動的標的化は、身体内のある特定の種類の細胞に特異的な標的化モジュール、例えば、リガンドまたは抗体をナノ担体の表面上に組み込むことを含む。一般的に、ナノ担体は、体積に対する表面積の比が高く、複数のリガンドをそれらの表面上に組み込むことが可能である。
【0171】
加えて、ある特定のナノ担体は、特定のpH範囲でのみ、それらが含む薬物を放出する。pH特異性もまた、ナノ担体が薬物を腫瘍部位に直接的に送達することを可能にする。これは、腫瘍が、一般的に、およそ6.8のpHを有し、正常なヒト細胞よりも酸性であるという事実に起因する。正常組織は、およそ7.4のpHを有する。したがって、ある特定のpH範囲でのみ薬物を放出するナノ担体は、したがって、酸性腫瘍環境内でのみ薬物を放出させるように使用することができる。高い酸性環境は、ナノ担体の構造を分解する酸性環境に起因して、薬物が放出されることを引き起こす。一般的に、これらのナノ担体は、中性または塩基性環境においては薬物を放出せず、腫瘍の酸性環境を効果的に標的化しながら、正常な身体細胞は影響を受けないまま残す。このpH感受性はまた、pH非依存性様式で作用することが決定されているミセルにコポリマー鎖を付加することにより、ミセル系において誘導することも可能である。WU, et. al., Biomaterials, 34(4): 1213-1222 (2012)を参照されたい。これらのミセル-ポリマー複合体はまた、がん細胞が多剤耐性を生じることを予防するのにも役立つ。低pH環境は、ミセルポリマーの迅速な放出をトリガーし、他の薬物処置のように緩徐にではなく、薬物の大半を一度に放出させる。
【0172】
加えて、一部のナノ担体はまた、ある特定の温度において、より効果的に薬物を送達することが示されている。腫瘍温度は、一般的に、40℃程度であり、身体の残部全体よりも温度が高いため、この温度勾配は、腫瘍特異的な部位送達の防御として作用するのに役立つ。REZAEI, et. al., Polymer, 53(16): 3485-3497 (2012)を参照されたい。
【0173】
本明細書に開示されるように、脂質に基づくナノ担体、例えば、リポソームは、本発明の範囲内である。脂質に基づくナノ粒子(LBNPまたはLNP)、例えば、リポソーム、固体脂質ナノ粒子(SLN)、およびナノ構造化脂質担体(NLC)は、疎水性および親水性分子を輸送することができ、最小限の毒性を示すかまたは毒性を示さず、半減期の延長および薬物放出の制御を用いて、薬物作用の時間を増加させることができる。脂質ナノ粒子は、免疫系による検出を回避するため(ガングリオシドもしくはポリエチレングリコール(PEG))または薬物の可溶性を改善するための化学的改変を含み得る。加えて、それらは、酸性環境において薬物放出を促進するために、pH感受性の製剤に調製することができ、また、腫瘍細胞およびそれらの受容体(例えば、葉酸(FoA))を認識する小分子または抗体と会合させることができる。ナノ薬物はまた、患者の応答を改善するために他の治療戦略と組み合わせて使用することもできる。GARCIA-PINEL, et. al., Nanomaterials 9(639) (2019)を参照されたい。
【0174】
様々な実施形態では、本明細書に記載されるシリカソーム(silicasome)薬物担体は、脂質二重層でコーティングされた多孔質シリカ(または他の材料)ナノ粒子(例えば、表面を有し、中に分子を受容するのに好適な複数の細孔を定める、シリカ体)を含む。ナノ粒子がシリカナノ粒子と称されるという事実は、シリカ以外の材料もまたシリカナノ粒子内に組み込まれていることを除外するものではない。一部の実施形態では、シリカナノ粒子は、実質的に球状であり得、細孔へのアクセスを提供する表面を通る複数の細孔開口部を有する。しかしながら、様々な実施形態では、シリカナノ粒子は、実質的に球状の形状以外の形状を有してもよい。したがって、例えば、ある特定の実施形態では、シリカナノ粒子は、実質的に卵形、ロッド形状、実質的に正多角形、不規則な多角形などであってもよい。
【0175】
一般的に、シリカナノ粒子は、細孔開口部間の外表面ならびに細孔内の側壁を定めるシリカ体を含む。細孔は、シリカ体から別の細孔開口部へと延在していてもよく、または細孔は、シリカ体によって定められる底面を有するように、シリカ体から部分的にのみ延在していてもよい。
【0176】
一部の実施形態では、シリカ体は、メソポーラスである。他の実施形態では、シリカ体は、マイクロポーラスである。本明細書において使用される場合、「メソポーラス」とは、直径が約2nm~約50nmである細孔を有することを意味し、一方で「マイクロポーラス」とは、直径が約2nmよりも小さい細孔を有することを意味する。一般的に、細孔は、任意のサイズのものであってもよいが、典型的な実施形態では、1つまたは複数の治療用化合物を中に含むために十分な大きさである。そのような実施形態では、細孔は、小分子、例えば、治療用化合物、例えば、抗がん化合物が、細孔の内部表面に付着または結合し、治療目的で使用される場合にはシリカ体から放出されることを可能にする。一部の実施形態では、細孔は、実質的に円筒状である。
【0177】
ある特定の実施形態では、ナノ粒子は、約1nm~約10nmの直径、または約2nm~約8nmの細孔径を有する細孔を含む。ある特定の実施形態では、ナノ粒子は、約1nm~約6nm、または約2nm~約5nmの細孔径を有する細孔を含む。他の実施形態は、2.5nm未満の細孔径を有する粒子を含む。
【0178】
他の実施形態では、細孔径は、1.5~2.5nmである。他の細孔サイズを有するシリカナノ粒子は、例えば、シリカナノ粒子の調製中に異なる界面活性剤または膨張剤を使用することによって、調製され得る。様々な実施形態では、ナノ粒子は、約1000nm程度の大きさ(例えば、平均、または中央値直径(または他の特徴寸法)の粒子を含み得る。しかしながら、様々な実施形態では、一般的に、300nmよりも大きな粒子は、生きた細胞または血管の穿孔部(fenestration)に進入するのにあまり有効ではない可能性があるため、ナノ粒子は、典型的に、500nm未満または約300nm未満である。ある特定の実施形態では、ナノ粒子は、サイズが、約40nmまたは約50nmまたは約60nmから、最大約100nmまたは最大約90nmまたは最大約80nmまたは最大約70nmまでの範囲に及ぶ。ある特定の実施形態では、ナノ粒子は、サイズが約60nm~約70nmの範囲に及ぶ。一部の実施形態は、約50nm~約1000nmの平均最大寸法を有するナノ粒子を含む。他の実施形態は、約50nm~約500nmの平均最大寸法を有するナノ粒子を含む。他の実施形態は、約50nm~約200nmの平均最大寸法を有するナノ粒子を含む。
【0179】
一部の実施形態では、平均最大寸法は、約20nmを上回るか、約30nmを上回るか、40nmを上回るか、または約50nmを上回る。他の実施形態は、約500nm未満、約300nm未満、約200nm未満、約100nm未満、または約75nm未満の平均最大寸法を有するナノ粒子を含む。本明細書において使用される場合、ナノ粒子のサイズは、透過電子顕微鏡法(TEM)または当該技術分野において公知の類似の視覚化技法によって測定される、主要な粒子の平均または中央値サイズを指す。メソポーラスシリカナノ粒子のさらなる例としては、MCM-41、MCM-48、およびSBA-15が挙げられるが、これらに限定されない。KATIYARE, et. al., J. Chromotog. 1122(1-2): 13-20 (2006)を参照されたい。
【0180】
多孔質シリカナノ粒子を作製する方法は、当業者に周知である。ある特定の実施形態では、メソポーラスシリカナノ粒子は、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)をミセル状ロッドから作製された鋳型とともに反応させることによって合成される。結果は、規則的な配置の細孔で充填されたナノサイズの球体またはロッドの集合体である。鋳型は、次いで、適切なpHに調節した溶媒で洗浄することによって除去することができる(例えば、TREWYN et al. (2007) Chem. Eng. J. 137(1): 23-29を参照されたい)。
【0181】
ある特定の実施形態では、メソポーラス粒子はまた、単純なゾル-ゲル方法を使用して合成することもできる(例えば、NANDIYANTO, et al. (2009) Microporous and Mesoporous Mat. 120(3): 447-453を参照されたい)。ある特定の実施形態では、オルトケイ酸テトラエチルはまた、鋳型として追加のポリマーモノマーとともに使用され得る。ある特定の実施形態では、3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MPTMS)が、TEOSの代わりに使用される。
【0182】
ある特定の実施形態では、メソポーラスシリカナノ粒子は、MENG et. al. (2015) ACS Nemo, 9(4): 3540-3557によって記載されるゾル/ゲル手順の改変形態によって合成されるコアである。
【0183】
本明細書に記載される方法は、多孔質シリカナノ粒子(例えば、メソポーラスシリカ)に関して示されているが、当業者であれば、類似の方法を他の多孔質ナノ粒子で使用することができることを認識するであろう。薬物送達ナノ粒子において使用することができる多数の他のメソポーラス材料が、当業者に公知である。例えば、ある特定の実施形態では、メソポーラスカーボンナノ粒子が、利用され得る。
【0184】
メソポーラスカーボンナノ粒子は、当業者に周知である(例えば、HUANG et. al. (2016) Carbon, 101: 135-142、ZHU et. al. (2014) Asian J. Pharm. Sci., 9(2): 82-91などを参照されたい)。
【0185】
同様に、ある特定の実施形態では、メソポーラスポリマー粒子が、利用され得る。蒸発に誘導される自己アセンブリ戦略による、可溶性の低分子量フェノール樹脂前駆体(resol)を用いたトリブロックコポリマーの有機-有機アセンブリからの高次メソポーラスポリマーおよびカーボンフレームワークの合成が、MENG, et. al. (2006) Chem. Mat. 6(18): 4447-4464によって報告されている。
【0186】
本明細書に記載されるナノ粒子は、例示的であり、非限定的である。本明細書に提供される教示を使用することで、多数の他の脂質二重層でコーティングされたナノ粒子が、当業者には利用可能となろう。
【0187】
一実施形態では、本発明は、ICDプロドラッグを含むナノ担体を教示する。
【0188】
一実施形態では、本発明は、リポソームを含むナノ担体であって、脂質がCHEMSを含む、ナノ担体を教示する。
【0189】
一実施形態では、本発明は、リポソームを含むナノ担体であって、脂質がステアリン酸を含む、ナノ担体を教示する。
【0190】
一実施形態では、本発明は、リポソームを含むナノ担体であって、脂質がCHEMSを含み、リポソームがICDプロドラッグをさらに含む、ナノ担体を教示する。
【0191】
一実施形態では、本発明は、リポソームを含むナノ担体であって、脂質がCHEMSを含み、リポソームがIC1をさらに含む、ナノ担体を教示する。
【0192】
一実施形態では、本発明は、リポソームを含むナノ担体であって、脂質がステアリン酸を含み、リポソームがICD誘導剤をさらに含む、ナノ担体を教示する。
【0193】
一実施形態では、本発明は、リポソームを含むナノ担体であって、脂質がステアリン酸を含み、リポソームがIC1をさらに含む、ナノ担体を教示する。
【0194】
一実施形態では、本発明は、リポソームを含むナノ担体であって、脂質がステアリン酸およびヒドラゾンを含み、リポソームがIC1をさらに含む、ナノ担体を教示する。
【0195】
一実施形態では、本発明は、リポソームを含むナノ担体であって、脂質がステアリン酸を含み、リポソームがIC1をさらに含む、ナノ担体を教示する(LNP-IC1と称される)。
【0196】
さらなる実施形態では、本発明は、リポソームを含むナノ担体であって、脂質がステアリン酸を含み、リポソームがIC1をさらに含み、リポソームがtoll様受容体アゴニストと共製剤化され、toll様受容体アゴニストが、TR12と称されるtoll様受容体アゴニストを含む、ナノ担体を教示する(LNP-IC1-TR12と称される)。
【0197】
好ましい実施形態では、脂質粒子は、ICDプロドラッグを含むリポソームを含む固体脂質ナノ粒子(SLNP)を含む。
【0198】
一実施形態では、本発明は、固体脂質ナノ粒子(「SLNP」)を含むナノ担体であって、固体脂質ナノ粒子がドキソルビシンを含む、ナノ担体を教示する(SLNP-Doxと称される)。
【0199】
好ましい実施形態では、脂質粒子は、ICDプロドラッグを含むリポソームを含む固体脂質ナノ粒子(SLNP)を含み、ここで、ICDプロドラッグは、IC1を含む。
【0200】
一実施形態では、本発明は、固体脂質ナノ粒子(「SLNP」)を含むナノ担体であって、固体脂質ナノ粒子がステアリン酸を含み、固体脂質ナノ粒子がIC1をさらに含む、ナノ担体を教示する(SLNP-IC1と称される)。
【0201】
さらなる実施形態では、本発明は、SLNPを含むナノ担体であって、脂質がステアリン酸を含み、SLNPがIC1をさらに含み、SLNPがtoll様受容体アゴニストと共製剤化され、toll様受容体アゴニストが、TR12と称されるtoll様受容体アゴニストを含む、ナノ担体を教示する(SLNP-IC1-TR12と称される)。
【0202】
さらなる実施形態では、本発明は、SLNPを含むナノ担体であって、脂質がステアリン酸を含み、SLNPがIC1をさらに含み、SLNPがRGDペプチドと共製剤化される、ナノ担体を教示する(SLNP-IC1-RGDと称される)。
【0203】
さらなる好ましい実施形態では、本発明の固体脂質ナノ粒子は、以下の比:
【表1】
を有する組成物を含む。
【0204】
さらなる好ましい実施形態では、本発明の固体脂質ナノ粒子は、以下の比:
【表2】
を有する組成物を含む。
ここで、脂質1は、IC1プロドラッグを含み、脂質部分は、ステアリン酸を含み、ヘルパー脂質は、表IIに記載されるヘルパー脂質であり、安定化剤は、ポリビニルアルコール(例えば、Moliwol 488)、ポロキサマー(例えば、Pluronic(登録商標)F127)、Tween(登録商標)80、PEG400、およびKolliphor RH 40からなる群から選択され、脂質2および脂質3(脂質プロドラッグ)は、本開示の脂質プロドラッグ、またはID3、PD3、TR3、TB4阻害剤(例えば、ID3-STEA、ID3-CHEM、PD3-STEA、TR3-STEA、TB4-STEAなど)、MPLA、およびテルラトリモドからなる群から選択される脂質プロドラッグを含む。
【0205】
当業者であれば、本明細書に開示される本発明の機能および目的を変更することなく、開示される実施形態に対する変動形態および改変形態を理解し、それを作製することができるであろう。そのような変動形態および改変形態は、本開示の範囲内であることが意図される。
【0206】
本開示の範囲は、本発明の製剤化されたプロドラッグを使用して、3つの可能性のある処置モダリティを教示する。PCT特許公開第WO2018/213631号を参照されたい。
【0207】
第1の処置モダリティは、腫瘍部位への全身的(または局所的)な生体分布および薬物送達を可能にする、単一のリポソームへの、別の治療薬(例えば、ICDを誘導する別の製剤化されたプロドラッグ、および他のファミリーメンバー、追加の化学療法剤(例えば、ICD誘導性化学療法)など)と組み合わせたICDプロドラッグの組合せを含む。二重送達アプローチは、獲得免疫および自然免疫の相乗的な増強を達成し、動物の生存に著しい改善をもたらす。ある特定の実施形態では、ナノ担体は、小胞(すなわち、流体を封入した脂質二重層)を含む。
【0208】
第2の処置モダリティは、ICDを誘導する薬剤および/または他のファミリーメンバーのICDを誘導する追加の薬剤を含む脂質(例えば、リポソーム)との組合せの腫瘍または腫瘍周囲の領域への局所的な送達を含む。
【0209】
第3の処置モダリティは、死滅するがん細胞(例えば、KPC細胞)を利用したワクチン接種を含み、ICDは、ex vivoで誘導される。そのようなワクチン接種は、遠位部位で腫瘍成長を妨害することができる全身的な免疫応答を生じ得ること、ならびに非免疫動物への養子移入を可能にすることが発見されている。当業者であれば、本明細書に提供される処置モダリティの方法を理解し、それを実行することが可能であろう。
【0210】
VII.)リポソーム
一態様では、本開示の主題は、対応するプロドラッグの送達の増強を提供するための脂質コーティング層を含むナノ担体への組込みに好適な本開示のICDプロドラッグ(プロドラッグと題される節を参照されたい)を提供するためおよびプロドラッグを含む組合せ療法を提供するためのアプローチに基づく。本発明のプロドラッグを使用する利点としては、本開示のLNP(例えば、リポソーム)への制御された製剤化の促進を含む。これは、プロドラッグを、全身循環中は不活性形態で維持することを可能にし、これにより、例えば腫瘍内の細胞によって取り込まれた後に、リポソームが活性剤を放出することが可能となる。
【0211】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のICDプロドラッグ(例えば、本開示において教示されるICDプロドラッグ阻害剤のうちのいずれか1つもしくは複数、および/またはIC1プロドラッグ)(プロドラッグと題される節を参照されたい)は、水溶液中で小胞(例えば、リポソーム)構造を形成するか、またはリポソームを含む脂質二重層の成分を形成し得る、脂質部分に製剤化される。リポソームは、直接的に使用されてもよく、組合せ製剤(例えば、本明細書に開示される別の薬物部分または治療モダリティとの組合せ)中の成分として提供されてもよい。
【0212】
ある特定の実施形態では、ICDプロドラッグとともに製剤化されるリポソームは、脂質、PHGP、ビタミンE、コレステロール、および/または脂肪酸を含む。
【0213】
一実施形態では、リポソームは、コレステロールを含む。
【0214】
一実施形態では、リポソームは、DSPCを含む。
【0215】
一実施形態では、リポソームは、HSPCを含む。
【0216】
一実施形態では、リポソームは、DSPE-PEG2000を含む。
【0217】
一実施形態では、リポソームは、DPPGを含む。
【0218】
一実施形態では、リポソームは、DMPGを含む。
【0219】
一実施形態では、リポソームは、Lyso PCを含む。
【0220】
一実施形態では、リポソーム、(Δ9-Cis)PGを含む。
【0221】
一実施形態では、リポソームは、Soy Lyso PCを含む。
【0222】
一実施形態では、リポソームは、PGを含む。
【0223】
一実施形態では、リポソームは、PA-PEG3-マンノースを含む。
【0224】
一実施形態では、リポソームは、C16 PEG2000セラミドを含む。
【0225】
一実施形態では、リポソームは、MPLAを含む。
【0226】
一実施形態では、リポソームは、CHEMSを含む。
【0227】
一実施形態では、リポソームは、ステアリン酸を含む。
【0228】
一実施形態では、リポソームは、表IIIに記載されるリン脂質を含む。
【0229】
一実施形態では、リポソームは、IC1を含み、CHEMSをさらに含み、LUをさらに含み、前記LUはヒドロメチルカルバメートリンカーである。
【0230】
一実施形態では、リポソームは、IC1を含み、ステアリン酸をさらに含み、LUをさらに含み、前記LUはヒドロメチルカルバメートリンカーである。
【0231】
一実施形態では、リポソームは、IC1を含み、ステアリン酸をさらに含み、LUをさらに含み、前記LUはヒドラゾンリンカーである。
【0232】
一実施形態では、リポソームは、IC1を含み、CHEMSをさらに含み、LUをさらに含み、前記LUはヒドロメチルカルバメートリンカーであり、表IIに記載されるヘルパー脂質をさらに含む。
【0233】
一実施形態では、リポソームは、IC1を含み、ステアリン酸をさらに含み、LUをさらに含み、前記LUはヒドロメチルカルバメートリンカーであり、表IIに記載されるヘルパー脂質をさらに含む。
【0234】
一実施形態では、リポソームは、IC1を含み、ステアリン酸をさらに含み、LUをさらに含み、前記LUはヒドラゾンリンカーであり、表IIに記載されるヘルパー脂質をさらに含む。
【0235】
一実施形態では、本開示のリポソームは、1つまたは複数の追加の免疫モジュレーション剤と共製剤化されたICDプロドラッグを含み、免疫モジュレーション剤は、免疫原性細胞死を誘導する化学療法薬、toll様受容体アゴニスト、stingアゴニスト、IDO阻害剤、CTLA4阻害剤、PD-1阻害剤、および/またはそれらのプロドラッグを含むが、これらに限定されない。
【0236】
好ましい実施形態では、リポソームは、ICDを誘導する化学療法薬と共製剤化されたIC1プロドラッグを含む。
【0237】
好ましい実施形態では、リポソームは、以下のリスト:ドキソルビシン(DOX)、ミトキサントロン(MTO)、オキサリプラチン(OXA)、シクロホスファミド(CP)、ボルテゾミブ、カルフィルジミブ(Carfilzimib)、またはパクリタキセルから選択されるICDを誘導する化学療法薬と共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0238】
好ましい実施形態では、リポソームは、Toll様受容体TLRアゴニスト/プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0239】
好ましい実施形態では、リポソームは、以下のリスト:TR12、レシキモド(R848)、ガーディキモド、852A、DSR 6434、テルラトリモド、CU-T12-9、モノホスホリルリピドA(MPLA)、3D(6-アシル)-PHAD(登録商標)、SMU127、Pam3CSK4、もしくは3D-PHAD(登録商標)、またはこれらのプロドラッグから選択されるToll様受容体(TLR)アゴニスト/プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0240】
好ましい実施形態では、リポソームは、PD-1阻害剤/プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0241】
好ましい実施形態では、リポソームは、以下のリスト:PD3、AUNP12、CA-170、もしくはBMS-986189、またはこれらのプロドラッグから選択されるPD-1阻害剤/プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0242】
好ましい実施形態では、リポソームは、IDO-1阻害剤/プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0243】
好ましい実施形態では、リポソームは、以下のリスト:ID3、エパカドスタット、L-1-メチルトリプトファン(インドキシモド)、D-1-メチルトリプトファン、リンロドスタットメシル酸塩(BMS 986205)、MK-7162、LY-3381916、KHK-2455、HTI-1090、DN-1406131、またはBGB-5777から選択されるIDO-1阻害剤/プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0244】
好ましい実施形態では、リポソームは、ドキソルビシン(DOX)と共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0245】
好ましい実施形態では、リポソームは、ミトキサントロン(MTO)と共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0246】
好ましい実施形態では、リポソームは、ドキソルビシン(DOX)およびPD-1プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0247】
好ましい実施形態では、リポソームは、ミトキサントロン(MTO)およびPD-1プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0248】
好ましい実施形態では、リポソームは、ドキソルビシン(DOX)およびIDO-1プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0249】
好ましい実施形態では、リポソームは、ミトキサントロン(MTO)およびIDO-1プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0250】
好ましい実施形態では、リポソームは、ドキソルビシン(DOX)およびTLRアゴニスト/プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0251】
好ましい実施形態では、リポソームは、ミトキサントロン(MTO)およびTLRアゴニスト/プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0252】
好ましい実施形態では、リポソームは、ドキソルビシン(DOX)およびPD-1プロドラッグおよびTLRアゴニスト/プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0253】
好ましい実施形態では、リポソームは、ミトキサントロン(MTO)およびPD-1プロドラッグおよびTLRアゴニスト/プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0254】
好ましい実施形態では、リポソームは、TLRアゴニスト/プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0255】
好ましい実施形態では、リポソームは、TGFb阻害剤/プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0256】
好ましい実施形態では、リポソームは、IDOアンタゴニスト/プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0257】
好ましい実施形態では、リポソームは、CTLA4アゴニスト/プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0258】
好ましい実施形態では、リポソームは、TLRアゴニスト/プロドラッグおよびPD-1プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0259】
好ましい実施形態では、リポソームは、TLRアゴニスト/プロドラッグおよびIDO-1プロドラッグと共製剤化されたICDプロドラッグを含む。
【0260】
好ましい実施形態では、リポソームは、ミトキサントロン(MTO)と共製剤化されたIC1プロドラッグを含む。
【0261】
好ましい実施形態では、リポソームは、ドキソルビシン(DOX)および/またはIDOプロドラッグおよび/またはTLRアゴニスト/プロドラッグと共製剤化されたIC1プロドラッグを含む。
【0262】
好ましい実施形態では、リポソームは、ミトキサントロン(MTO)および/またはIDOプロドラッグおよび/またはTLRアゴニスト/プロドラッグと共製剤化されたIC1プロドラッグを含む。
【0263】
当業者であれば、可溶性が、薬物開発プロセスにおいて技術者が直面するもっとも一般的な問題の1つであることを認識し、理解するであろう。脂質分子を介した薬物/抗がん剤の化学的コンジュゲーション(すなわち、脂質に基づくプロドラッグ)は、薬物を水性懸濁液において製剤化する問題を解決するためのプラットフォームを提供する。脂質コンジュゲーション(脂質に基づくプロドラッグ)を用いて薬物を送達する主要な利点は、薬物動態/半減期および標的化送達を改善するその能力に依存する。
【0264】
脂質分子を好適に選択することにより、脂質に基づくプロドラッグは、当該技術分野において公知の技法を使用してリポソーム製剤に組み込むこと/製剤化することができ、これは、従来的な薬物送達系よりも多くの利点を有する。(KOHLI, et. al., J. Control Release, 0: pp 274-287 (Sept. 28, 2014)、およびGARCIA-PINEL, et. al., Nanomaterials 9:638 (2019)。脂質プロドラッグをリポソームと組み合わせる利点は、二重にある:(i)脂質プロドラッグを含むリポソームは、薬物/プロドラッグ自体の可溶性を増加させるだけでなく、(ii)複数の薬物を封入する能力も有する(親水性および親油性の両方)(ナノ担体と題される節を参照されたい)。
【0265】
本開示の目的で、リポソーム製剤の主要な利点は、以下の通りである。
i)リポソーム製剤には生体適合性/生体分解性があり、一般毒性がないこと。
ii)サイズおよび表面電荷の柔軟性、ならびに必要とされる目的に応じたそれらの操作。リポソーム製剤は、本開示の目的で、40~150nmのサイズ範囲の直径、および-40~+40mVの範囲の表面電荷を有し得る。
iii)本発明のリポソームは、リポソームの構成要素脂質部分として、単一または複数の脂質プロドラッグを有する。加えて、複数の薬物(例えば、異なる作用機序で機能するもの)、および異なる可溶性プロファイル(親水性または親油性)を、これらのリポソームにおいて(脂質二重層または親水性コアのいずれかで)製剤化することができる。
【0266】
当業者には理解されるように、リポソームを作製するすべての方法は、以下の4つの基本的ステージを含む:
(i)脂質を有機溶媒から乾燥させること、
(ii)脂質を水溶液中に分散させること、
(iii)結果として得られるリポソームを精製すること、および
(iv)最終産物を分析すること。
AKBARZADEH, et. al., Nanoscale Research Letters, 8:102 (2013)を参照されたい。
【0267】
本発明の別の態様は、薬物を移送するために使用される送達技法であるリポソーム封入技術(LET)を開示する。LETは、多数の材料を封入する、リポソームと称される超顕微鏡的泡沫体を生成する方法である。これらの「リポソーム」は、内容物の周囲にバリアを形成し、これは、ヒトの身体において生成される口内および胃内の酵素、アルカリ性溶液、消化液、胆汁塩、ならびに腸内フローラ、ならびにフリーラジカルに対して耐性である。リポソームの内容物は、したがって、酸化および分解から保護される。この保護的リン脂質シールドまたはバリアは、リポソームの内容物が、内容物が利用されるであろう正確な標的腺、器官、または系に送達されるまで、損傷を受けないままとどまる(ナノ担体と題される節を参照されたい)。
【0268】
一実施形態では、本開示のリポソームは、複数の異なる比のICDプロドラッグ、脂質、および/または脂質プロドラッグを使用して合成される。本明細書において開示されるように、ICDプロドラッグは、本明細書に開示されるヘルパー脂質を含み得る(例えば、表IIを参照されたい)。
【0269】
一実施形態では、本開示のリポソームは、複数の異なる比のICDプロドラッグ、脂質、および/または脂質プロドラッグを使用して合成される。本明細書において開示されるように、ICDプロドラッグは、DSPE-PEGをさらに含み得る。
【0270】
好ましい実施形態では、本発明のリポソームは、以下の比:
【表3】
を有する組成物を含む。
【0271】
さらなる好ましい実施形態では、本発明のリポソームは、以下の比:
【表4】
を有する組成物を含む。
【0272】
さらなる好ましい実施形態では、本発明のリポソームは、以下の比:
【表5】
を有する組成物を含む。
ここで、脂質1は、IC1プロドラッグを含み、脂質部分は、CHEMSを含む。
【0273】
さらなる好ましい実施形態では、本発明のリポソームは、以下の比:
【表6】
を有する組成物を含む。
ここで、脂質1は、IC1プロドラッグを含み、脂質部分は、ステアリン酸を含む。
【0274】
さらなる好ましい実施形態では、本発明のリポソームは、以下の比:
【表7】
を有する組成物を含む。
ここで、脂質1は、IC1プロドラッグを含み、脂質部分はステアリン酸を含み、脂質2および脂質3(脂質プロドラッグ)は、本開示の脂質プロドラッグまたはID3、PD3、TR3、TR12、RGD、およびTB4阻害剤(例えば、ID3-STEA、ID3-CHEM、PD3-STEA、TR3-STEA、TB4-STEAなど)、MPLA、ならびにテルラトリモドからなる群から選択される脂質プロドラッグを含む。
【0275】
当業者であれば、本明細書に開示される本発明の機能および目的を変更することなく、開示される実施形態に対する変動形態および改変形態を理解し、それを作製することができるであろう。そのような変動形態および改変形態は、本開示の範囲内であることが意図される。
【0276】
VIII.)医薬製剤化
本明細書において使用される場合、「薬物」という用語は、「医薬」と同義である。ある特定の実施形態では、本開示のナノ担体は、封入された剤形として製造され、疾患の処置のために患者に提供される。
【0277】
一般的に述べると、医薬製剤化は、異なる化学物質を組み合わせて純粋な原薬にして、最終薬物製品を産生させるプロセスである。製剤化研究は、安定であり、かつ患者に許容される、薬物の調製を開発することを含む。経口で服用される薬物に関して、これは、通常、薬物を錠剤またはカプセルに組み込むことを含む。剤形が、薬物自体とは別の様々な他の物質を含むこと、薬物がこれらの他の物質と適合性があることを確実にするために研究を行う必要があることを理解することが、重要である。
【0278】
賦形剤は、薬物製品の活性成分の担体として使用される不活性物質であり、本事例では、ICDプロドラッグを含むナノ担体である。加えて、賦形剤は、薬物製品が製造されるプロセスを補助するために使用され得る。活性物質は、そのため、賦形剤で溶解されるか、またはそれと混合される。賦形剤はまた、便宜的かつ正確な投薬量を可能にするために、非常に強力な活性成分を有する製剤をかさ増しするために使用されることもある。活性成分が精製されると、それは、長期間精製された形態でとどまることができない。多くの場合、それは、変性するか、溶液から出るか、または容器の側面に付着することになる。
【0279】
活性成分を安定させるために、賦形剤を添加して、活性成分が、活性なままとどまり、製品の寿命が他の製品と競合でき、最終使用者にとって安全となるのに十分に長期間、安定となることを確実にする。賦形剤の例としては、抗接着剤、結合剤、コーティング剤、崩壊剤、増量剤、希釈剤、香味剤、着色剤、滑沢剤、および保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。最終製剤は、活性成分および賦形剤を含み、これらは、次いで、医薬剤形に封入される。
【0280】
前製剤化は、他の成分のどれを調製物において使用すべきかを選択するために、薬物の物理的、化学的、および機械的特性の特徴付けを含む。製剤化研究は、次いで、安定性、粒子サイズ、多型性、pH、および可溶性といった因子のすべてが薬物のバイオアベイラビリティおよびしたがって活性に影響を及ぼし得るため、これらの因子を考慮する。薬物は、存在する薬物の量がそれぞれの投薬単位(例えば、それぞれのバイアル)において一定であることを確実にする方法によって、不活性添加剤と組み合わされなければならない。投薬形態は、均一な外観を有するべきである。
【0281】
これらの研究が、臨床試験が始まる時点で完了している可能性は低い。これは、単純な調製物が、フェーズI臨床試験において使用するためにまず開発されることを意味する。これらは、典型的に、バイアル、少量の薬物を含む手作業で充填されたカプセル、および希釈剤から構成される。これらの製剤の長期安定性の証明は、それらが数日間で使用(試験)されるため、必要とされない。しかしながら、長期安定性は、最終製剤がパッケージングされてから患者に届くまでの期間が、数カ月間または数年間となり得るため、サプライチェーンマネジメントにおいては極めて重要である。薬物ロード(すなわち、用量の総内容量に対する活性薬物の比)と称されるものに対して、考察がなされるべきである。低薬物ロードは、均質性の問題を引き起こし得る。高薬物ロードは、流動性の問題をもたらし得るか、または化合物が低いバルク密度を有する場合には大きなカプセルを必要とし得る。フェーズIII臨床試験に到達するまでに、薬物の製剤は、最終的に市場において使用されるであろう調製物に近くなるように開発されている必要がある。
【0282】
安定性に関する知識は、このステージに必須であり、薬物が調製物において安定であることを確実にするような条件が、開発されていなければならない。薬物が不安定であることが証明された場合、投与された用量が実際にどうであったかを把握することは不可能となるため、臨床試験による結果は無効となるであろう。安定性研究は、温度、湿度、酸化、または光分解(紫外光または可視光)が、なんらかの作用を有するかどうかを試験するために行われ、調製物は、任意の分解産物が形成されたかどうかを確認するために分析される。調製物と容器との間になんらかの望ましくない相互作用が存在するかどうかを調べることもまた、重要である。プラスチック製の容器が使用される場合、成分のうちのいずれかがプラスチックに吸着されるようになるかどうか、および任意の可塑剤、滑沢剤、顔料、または安定化剤が、プラスチックから調製物中に滲出するかどうかを確認するために、試験が行われる。容器ラベルの接着剤がプラスチック製容器を通って調製物中へと滲出しないことを確認するために、それさえも試験する必要がある。薬物が製剤化される手段により、経口投与と関連する問題のうちのいくつかを回避することができる。薬物は、通常、錠剤またはカプセル剤として経口で服用される。薬物(活性物質)自体は、制御された速度で水溶液中に可溶性である必要がある。粒子サイズおよび結晶形態といった因子は、溶解に著しく影響を及ぼし得る。高速な溶解が必ずしも理想的とは限らない。例えば、緩徐な溶解速度は、作用の持続期間を延長することができるか、または初期の高血漿レベルを回避することができる。
【0283】
一部の実施形態では、免疫モジュレーション剤と共製剤化されたナノ担体(例えば、ICDプロドラッグを含むリポソームもしくはSLNP)および/またはICDプロドラッグを含むリポソームもしくはSLNPは、単独で、または投与経路および標準的な医薬実務に応じて選択される生理学的に許容される担体(例えば、生理食塩水もしくはリン酸緩衝液)との混合物で、投与される。例えば、注射剤として使用される場合、ナノ担体は、薬学的に許容される担体を用いた滅菌懸濁液、分散液、またはエマルションとして製剤化され得る。ある特定の実施形態では、生理食塩水を、薬学的に許容される担体として利用することができる。他の好適な担体としては、例えば、水、緩衝化水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシン、5%グルコースなどが挙げられ、これは、安定性の増強のための糖タンパク質、例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどを含む。食塩水または他の塩含有担体を含む組成物において、担体は、好ましくは、ナノ担体形成の後に添加される。したがって、ナノ担体が形成され、好適な薬物がロードされた後に、ナノ担体は、薬学的に許容される担体、例えば、生理食塩水中に希釈され得る。同様に、ICDプロドラッグリポソームまたはSLNPは、ナノ材料の懸濁化(例えば、乳化、希釈など)を促進する担体中に導入され得る。
【0284】
医薬組成物は、従来的な周知の滅菌技法によって、滅菌することができる。結果として得られる水溶液、懸濁液、分散液、エマルションなどは、使用のためにパッケージングされ得るか、無菌条件下において濾過され得る。ある特定の実施形態では、薬物送達ナノ担体(例えば、LNPまたはSLNPでコーティングされたナノ粒子)は、凍結乾燥され、凍結乾燥された調製物は、投与の前に滅菌水溶液と合わされる。組成物はまた、生理学的条件を微調整するために必要とされる薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調節剤および緩衝化剤、等張剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどを含み得る。
【0285】
加えて、ある特定の実施形態では、医薬製剤は、フリーラジカルおよび保管時の脂質過酸化反応による損傷から脂質を保護する脂質保護剤を含み得る。親油性フリーラジカルクエンチャー、例えば、アルファ-トコフェロールおよび水溶性鉄特異的キレート剤、例えば、フェリオキサミンが、好適であり、本明細書において企図される。医薬製剤中のナノ担体(例えば、ICDプロドラッグを含むSLNPまたはリポソーム)の濃度は、広範に、例えば、およそ0.05重量%未満、通常は少なくともおよそ2~5重量%から、10~50重量%まで、または40重量%まで、または30重量%まで、変動し得、選択される具体的な投与様式に応じて、主として、流体体積、粘度などによって選択される。例えば、濃度は、処置と関連する流体ロードを低下させるように、増加させてもよい。これは、アテローム性動脈硬化症関連のうっ血性心不全または重篤な高血圧を有する患者において、特に望ましい場合がある。あるいは、刺激性脂質から構成されるナノ担体は、投与の部位における炎症を減少させるために、低い濃度に希釈させてもよい。投与されるナノ担体の量は、使用される具体的な薬物、処置されている疾患状態、および医師の判断に依存することになるが、一般に、体重1キログラム当たりおよそ0.01~およそ50mg、好ましくは、体重1kg当たりおよそ0.1~およそ5mgであろう。
【0286】
当業者であれば、正確な投薬量が、具体的なICDプロドラッグおよび任意の共製剤化される免疫モジュレーション剤、ならびに望ましい医薬作用、ならびに患者の因子、例えば、年齢、性別、全般的な状態などに応じて変動するであろうことを理解するであろう。当業者であれば、容易にこれらの因子を考慮に入れ、それらを使用して過度の実験を行うことなく有効な治療濃度を確立することができる。
【0287】
本明細書に記載される疾患の治癒的、寛解的、遅延的、または予防的処置におけるヒト(または非ヒト哺乳動物)への投与のために、処方医師が、最終的に、所与のヒト(または非ヒト)対象に適切な薬物の投薬量を決定し、これは、個体の年齢、体重、および応答、ならびに患者の疾患の性質および重篤性に応じて変動することが予測され得る。ある特定の実施形態では、ナノ担体によって提供される薬物の投薬量は、遊離薬物に利用されるものにほぼ等しくてもよい。しかしながら、上述のように、本明細書に記載されるナノ担体は、それによって投与される薬物の毒性を有意に低減させることができ、治療ウインドウを有意に増加させることができる。したがって、一部の場合には、遊離薬物に処方されるものを超える投薬量が、利用されることになる。
【0288】
当業者であれば、本明細書に開示される本発明の機能および目的を変更することなく、開示される実施形態に対する変動形態および改変形態を理解し、それを作製することができるであろう。そのような変動形態および改変形態は、本開示の範囲内であることが意図される。
【0289】
IX.)組合せ療法
当業者であれば認識および理解するように、がん細胞の成長および生存は、複数のシグナル伝達経路によって影響を受け得る。したがって、活性をモジュレートする標的において異なる優先度を示す異なる酵素/タンパク質/受容体阻害剤を組み合わせて、そのような状態を処置することが、有用である。1つを上回るシグナル伝達経路(または1つの所与のシグナル伝達経路に関与する1つを上回る生物学的分子)を標的とすることは、細胞集団において生じる薬物耐性の可能性を低減させ得、かつ/または処置の毒性を低減させ得る。
【0290】
したがって、本開示のICDプロドラッグを含むリポソームまたはSLNPは、1つもしくは複数の他の酵素/タンパク質/受容体阻害剤、または疾患、例えば、がんもしくは感染症の処置のための1つもしくは複数の治療法と組み合わせて使用することができる。組合せ療法で処置することができる疾患および適応症の例としては、本開示に記載されるものが挙げられる。がんの例としては、固形腫瘍および液性腫瘍、例えば、血液がんが挙げられるが、これらに限定されない。感染症の例としては、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、または寄生生物感染症が挙げられる。
【0291】
例えば、本開示のICDプロドラッグを含むリポソームまたはSLNPは、がんの処置のために、以下のキナーゼの1つまたは複数の阻害剤と組み合わせることができる:Akt1、Akt2、Akt3、TGF-βR、PKA、PKG、PKC、CaM-キナーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、MEKK、ERK、MAPK、mTOR、EGFR、HER2、HER3、HER4、INS-R、IGF-1R、IR-R、PDGFαR、PDGFβR、PI3K(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ)、CSFIR、KIT、FLK-II、KDR/FLK-1、FLK-4、flt-1、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、c-Met、Ron、Sea、TRKA、TRKB、TRKC、TAMキナーゼ(Axl、Mer、Tyro3)、FLT3、VEGFR/Flt2、Flt4、EphA1、EphA2、EphA3、EphB2、EphB4、Tie2、Src、Fyn、Lck、Fgr、Btk、Fak、SYK、FRK、JAK、ABL、ALKおよびB-Raf。
【0292】
さらなる実施形態では、本開示のICDプロドラッグを含むリポソームまたはSLNPは、がんまたは感染症の処置のために、以下の阻害剤のうちの1つまたは複数と組み合わせることができる。がんおよび感染症の処置のために本開示の化合物と組み合わせることができる阻害剤の非限定的な例としては、FGFR阻害剤(FGFR1、FGFR2、FGFR3、もしくはFGFR4、例えば、INCB54828、INCB62079、およびINCB63904)、JAK阻害剤(JAK1および/もしくはJAK2、例えば、ルキソリチニブ、バリシチニブ、もしくはINCB39110)、IDO阻害剤(例えば、エパカドスタット、NLG919、もしくはBMS-986205)、LSD1阻害剤(例えば、INCB59872およびINCB60003)、TDO阻害剤、PI3K-デルタ阻害剤(例えばINCB50797およびINCB50465)、PI3K-ガンマ阻害剤、例えば、PI3K-ガンマ選択的阻害剤、Pim阻害剤(例えば、INCB53914)、CSF1R阻害剤、TAM受容体チロシンキナーゼ(Tyro-3、Axl、およびMer)、アデノシン受容体アンタゴニスト(例えば、A2a/A2b受容体アンタゴニスト)、HPK1阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDAC)、例えば、HDAC8阻害剤、血管新生阻害剤、インターロイキン受容体阻害剤、ブロモおよび余剰末端ファミリーメンバー阻害剤(例えば、ブロモドメイン阻害剤もしくはBET阻害剤、例えば、INCB54329およびINCB57643)、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤、例えば、ルカパリブ、オラパリブ、ニラパリブ、ベリパリブ、もしくはタラゾパリブ、アルギナーゼ阻害剤(INCB01158)、TGFb阻害剤、PD-1阻害剤、PD-1/L-1阻害剤、PD-1/L-2阻害剤、CTLA-4アンタゴニスト、ならびにアデノシン受容体アンタゴニスト、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0293】
加えて、本開示のICDプロドラッグを含むリポソームまたはSLNPは、さらに、例えば、化学療法、放射線療法、腫瘍標的化療法、アジュバント療法、免疫療法、または外科手術による、がんを処置する他の方法と組み合わせて使用することができる。
【0294】
免疫療法の例としては、サイトカイン処置(例えば、インターフェロン、GM-CSF、G-CSF、IL-2)、CRS-207免疫療法、がんワクチン、モノクローナル抗体、養子T細胞移入、Toll様受容体アゴニスト、STINGアゴニスト、腫瘍溶解性ウイルス療法、および免疫モジュレーション小分子が挙げられ、これにはサリドマイドまたはJAK1/2阻害剤などが含まれる。
【0295】
ICDプロドラッグを含むリポソームまたはSLNPは、1つまたは複数の抗がん薬、例えば、化学療法薬と組み合わせて投与され得る。化学療法薬の例としては、アバレリクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アザシチジン、ベバシズマブ、ベキサロテン、バリシチニブ、ブレオマイシン、ボルテゾンビ(bortezombi)、ボルテゾミブ、静脈内用ブスルファン、経口用ブスルファン、カルステロン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルテパリンナトリウム、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デニロイキン、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エクリズマブ、エピルビシン、エルロチニブ、エストラムスチン、リン酸エトポシド、エトポシド、エキセメスタン、クエン酸フェンタニル、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、酢酸ゴセレリン、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、メシル酸イマチニブ、インターフェロンアルファ2a、イリノテカン、ジトシル酸ラパチニブ(lapatinib ditosylate)、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリン、酢酸ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、フェンプロピオン酸ナンドロロン(nandrolone phenpropionate)、ネララビン、ノフェツモマブ、オラパリブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、パニツムマブ、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、ルキソリチニブ、ルカパリブ、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、リンゴ酸スニチニブ、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ボリノスタット、ニラパリブ、ベリパリブ、タラゾパリブ、およびゾレドロネートのうちのいずれかが挙げられる。
【0296】
他の抗がん剤としては、抗体治療薬、例えば、トラスツズマブ(ハーセプチン)、共刺激性分子に対する抗体、例えば、CTLA-4(例えば、イピリムマブ)、4-1BB(例えば、ウレルマブ、ウトミルマブ)、PD-1およびPD-L1/L2に対する抗体、またはサイトカイン(IL-10、TGF-ベータなど)に対する抗体が挙げられる。
【0297】
がんまたは感染症、例えば、ウイルス、細菌、真菌、および寄生生物感染症の処置のために本開示の化合物と組み合わせることができるPD-1および/またはPD-L1/L2に対する抗体の例としては、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、MPDL3280A、MEDI-4736、およびSHR-1210が挙げられるが、これらに限定されない。
【0298】
加えて、本開示のICDプロドラッグを含むリポソームまたはSLNPは、疾患、例えば、がんまたは感染症の処置のために、1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて使用することができる。免疫チェックポイント阻害剤の例としては、免疫チェックポイント分子、例えば、CD27、CD28、CD40、CD122、CD96、CD73、CD47、OX40、GITR、CSF1R、JAK、PI3Kデルタ、PI3Kガンマ、TAM、アルギナーゼ、CD137(4-1BBとしても公知である)、ICOS、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、LAG3、TIM3、VISTA、PD-1、PD-L1、およびPD-L2に対する阻害剤が挙げられる。
【0299】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント分子は、CD27、CD28、CD40、ICOS、OX40、GITR、およびCD137から選択される刺激性チェックポイント分子である。さらなる実施形態では、免疫チェックポイント分子は、A2aR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、PD-1、TIM3、およびVISTAから選択される阻害性チェックポイント分子である。さらなる実施形態では、本明細書に提供されるICDプロドラッグを含むリポソームまたはSLNPは、KIR阻害剤、TIGIT阻害剤、LAIR1阻害剤、CD160阻害剤、2B4阻害剤、およびTGFベータ(「TGFb」)阻害剤から選択される1つまたは複数の薬剤と組み合わせて使用することができる。
【0300】
X.)ICDプロドラッグを含むナノ担体を細胞に送達する方法
当該技術分野において公知のように、プロドラッグおよび/またはナノ担体を使用して腫瘍細胞を殺滅させるための広範な組成物および方法が、当該技術分野において公知である。がんの文脈において、典型的な方法は、腫瘍を有する哺乳動物に、生物学的に有効な量の本開示のICDプロドラッグ、および/またはICDプロドラッグを含む本開示のナノ担体を投与するステップを含む。
【0301】
典型的な実施形態は、治療剤を細胞に送達する方法であって、本開示の薬物部分を、連結ユニットを介して本開示の脂質にコンジュゲートすることによってICDプロドラッグを形成するステップ、および細胞をICDプロドラッグに曝露するステップを含む、方法である。
【0302】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、ヒドロメチルカルバメートリンカーを含むLUを介してコンジュゲートされた、薬物部分およびCHEMSを含む。
【0303】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、ヒドロメチルカルバメートリンカーを含むLUを介してコンジュゲートされた、薬物部分およびステアリン酸を含む。
【0304】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、ヒドラゾンリンカーを含むLUを介してコンジュゲートされた、薬物部分およびステアリン酸を含む。
【0305】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、IC1プロドラッグを含み、脂質部分は、ヒドロメチルカルバメートリンカーを含むLUを介してコンジュゲートされたCHEMSを含む。
【0306】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、IC1プロドラッグを含み、脂質部分は、ヒドロメチルカルバメートリンカーを含むLUを介してコンジュゲートされたステアリン酸を含む。
【0307】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、IC1プロドラッグを含み、脂質部分は、ヒドラゾンリンカーを含むLUを介してコンジュゲートされたステアリン酸を含む。
【0308】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、IC1プロドラッグを含み、脂質部分は、図1に示されるように合成されたヒドラゾンリンカーを含むLUを介してコンジュゲートされたステアリン酸を含む。
【0309】
別の例示的な実施形態は、転移がんを患うことが疑われる個体を処置する方法であって、前記個体に、薬物部分を連結ユニットを介して本開示の脂質にコンジュゲートすることによって産生された治療有効量のICDプロドラッグを含む医薬組成物を非経口投与するステップ、および細胞をICDプロドラッグに曝露するステップを含む、方法である。
【0310】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、ヒドロメチルカルバメートリンカーを含むLUを介してコンジュゲートされた、薬物部分およびCHEMSを含む。
【0311】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、ヒドロメチルカルバメートリンカーを含むLUを介してコンジュゲートされた、薬物部分およびステアリン酸を含む。
【0312】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、ヒドラゾンリンカーを含むLUを介してコンジュゲートされた、薬物部分およびステアリン酸を含む。
【0313】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、IC1プロドラッグを含み、脂質部分は、ヒドロメチルカルバメートリンカーを含むLUを介してコンジュゲートされたCHEMSを含む。
【0314】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、IC1プロドラッグを含み、脂質部分は、ヒドロメチルカルバメートリンカーを含むLUを介してコンジュゲートされたステアリン酸を含む。
【0315】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、IC1プロドラッグを含み、脂質部分は、ヒドラゾンリンカーを含むLUを介してコンジュゲートされたステアリン酸を含む。
【0316】
一実施形態では、ICDプロドラッグは、IC1プロドラッグを含み、脂質部分は、図1に示されるように合成されたヒドラゾンリンカーを含むLUを介してコンジュゲートされたステアリン酸を含む。
【0317】
本開示のICDプロドラッグ、SLNP、リポソーム、共製剤化されたリポソーム、および共製剤化されたSLNPは、免疫原性細胞死を誘導し、したがって、ICD活性と関連する疾患および障害ならびにDAMPタンパク質分泌と関連する疾患および障害を処置するのに有用である。本開示のさらなる実施形態では、ICDプロドラッグ、リポソーム、SLNP、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体は、がん、慢性感染症、または敗血症において、ワクチン接種に対する応答の増強を含め、免疫を増強、刺激、および/または増加させるための治療的投与に有用である。
【0318】
さらなる実施形態では、本開示は、細胞においてICDを誘導するための方法を提供する。本方法は、個体または患者に、ICDプロドラッグ、リポソーム、SLNP、ならびに/または本明細書に記載される式のうちのいずれかのもの(例えば、IC1および/もしくはIC1プロドラッグ)、または特許請求のいずれかにおいて列挙され本明細書に記載されるICDプロドラッグ、リポソーム、SLNP、およびナノカプセル封入されたICD誘導剤プロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を投与するステップを含む。本開示のICDプロドラッグ、リポソーム、SLNP、およびナノカプセル封入されたICD誘導剤プロドラッグは、単独で、またはがんおよび他の疾患を含む疾患もしくは障害の処置のための他の薬剤もしくは治療法もしくはアジュバントもしくはネオアジュバントと組み合わせて、使用することができる。本明細書に記載される使用および方法に関して、本開示のICDプロドラッグ、リポソーム、SLNP、およびナノカプセル封入されたICDプロドラッグのうちのいずれかが、その実施形態のうちのいずれかを含め、使用され得る。
【0319】
加えて、本開示のICDプロドラッグ、リポソーム、SLNP、およびナノカプセル封入されたICDプロドラッグは、ICDおよび/またはT細胞機能を誘導し、DAMPタンパク質分泌をもたらす。
【0320】
さらなる実施形態では、本開示は、がん性腫瘍の成長が阻害されるように、ICDプロドラッグ、リポソーム、SLNP、およびナノカプセル封入されたICDプロドラッグ、またはその塩もしくは立体異性体を使用した、in vivoでの個体または患者の処置を提供する。
【0321】
ICDプロドラッグ、リポソーム、SLNP、およびナノカプセル封入されたICDプロドラッグ、または本明細書に記載される式のうちのいずれかのもの(例えば、IC1プロドラッグ)、または特許請求の範囲のうちのいずれかに列挙され本明細書に記載されるICDプロドラッグ、リポソーム、SLNP、およびナノカプセル封入されたICDプロドラッグ、またはその塩もしくは立体異性体は、がん性腫瘍の成長を阻害するために使用することができる。
【0322】
代替法において、本開示のICDプロドラッグ、リポソーム、SLNP、およびナノカプセル封入されたICDプロドラッグ、または本明細書に記載される式のうちのいずれかのもの、または特許請求の範囲のうちのいずれかに列挙され本明細書に記載される化合物(例えば、IC1プロドラッグ)、またはその塩もしくは立体異性体は、本開示に記載されるように、他の薬剤または標準的ながん処置とともに使用することができる。
【0323】
さらなる実施形態では、本開示は、腫瘍細胞の成長をin vitroで阻害するための方法を提供する。本方法は、腫瘍細胞を、in vitroで、本開示のICDプロドラッグ、リポソーム、SLNP、およびナノカプセル封入されたICDプロドラッグ、または本明細書に記載される式のうちのいずれかのもの(例えば、IC1プロドラッグ)、または特許請求の範囲のうちのいずれかにおいて列挙され本明細書に記載されるICDプロドラッグ、リポソーム、SLNP、およびナノカプセル封入されたICDプロドラッグ、またはその塩もしくは立体異性体と接触させるステップを含む。
【0324】
さらなる実施形態では、本開示は、患者において腫瘍細胞の成長を阻害するための方法を提供する。本方法は、腫瘍細胞を、本開示のICDプロドラッグ、リポソーム、SLNP、およびナノカプセル封入されたICDプロドラッグ、または本明細書に記載される式のうちのいずれかのもの(例えば、IC1プロドラッグ)、または特許請求の範囲のうちのいずれかにおいて列挙され本明細書に記載されるICDプロドラッグ、リポソーム、SLNP、およびナノカプセル封入されたICDプロドラッグ、またはその塩もしくは立体異性体と接触させるステップを含む。
【0325】
XI.)がんおよび他の免疫学的障害を処置する方法
本開示の別の実施形態は、がんを処置するための方法である。本方法は、患者に、治療有効量の本明細書におけるICDプロドラッグ(すなわち、IC1プロドラッグ)を含むナノ担体、特許請求の範囲のうちのいずれかに列挙され本明細書に記載される化合物、またはその塩を投与するステップを含む。がんの例としては、その成長が本開示のICD誘導剤および本開示のICDプロドラッグを使用して媒介され得るもの、ならびに典型的に免疫療法に応答性であるがんが挙げられる。
【0326】
一部の実施形態では、本開示は、患者における免疫応答を増強、刺激、および/または増加させる方法を提供する。本方法は、患者に、治療有効量のICDプロドラッグおよび/またはそれ(すなわち、IC1プロドラッグ)を含むリポソームもしくはSLNP、特許請求の範囲のうちのいずれかにおいて列挙され本明細書に記載される化合物もしくは組成物、またはその塩を投与するステップを含む。
【0327】
本開示のICDプロドラッグを含むナノ担体、ICDプロドラッグ、および共製剤化されたリポソームまたはSLNPを使用して処置することができるがんの非限定的な例としては、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部のがん、皮膚または眼内の悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮内膜がん、子宮頸の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病を含む慢性または急性白血病、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱のがん、腎臓または尿管のがん、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊椎軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、表皮がん、扁平上皮細胞がん、T細胞性リンパ腫、アスベストによって誘導されるものを含む環境に誘導されるがん、ならびに前記がんの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。本開示の化合物はまた、転移性がん、特に、ICDを誘導することによって媒介される転移性がんの処置に有用である。
【0328】
一部の実施形態では、本開示のリポソーム、SLNP、またはICDプロドラッグで処置することができるがんとしては、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎臓がん(例えば、明細胞癌)、前立腺がん(例えば、ホルモン不応性前立腺腺癌)、乳がん、結腸がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がんおよび小細胞肺がん)、扁平上皮細胞頭頸部がん、尿路上皮がん(例えば、膀胱)、ならびに高いマイクロサテライト不安定性(MSIhigh)を有するがんが挙げられる。加えて、本開示は、その成長を本開示のリポソーム、SLNP、もしくはICDプロドラッグ、または共製剤化されたリポソームもしくはSLNPを使用して阻害することができる難治性または再発性悪性腫瘍を含む。
【0329】
追加の実施形態では、本開示の製剤化および/または共製剤化されたリポソームもしくはSLNP、またはICDプロドラッグを使用して処置することができるがんとしては、固形腫瘍(例えば、前立腺がん、結腸がん、食道がん、子宮内膜がん、卵巣がん、子宮がん、腎臓がん、肝臓がん、膵臓がん、胃がん、乳がん、肺がん、頭頸部のがん、甲状腺がん、神経膠芽腫、肉腫、膀胱がんなど)、造血がん(例えば、リンパ腫、白血病、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、DLBCL、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(再発性もしくは難治性NHLおよび再発性濾胞性を含む)、ホジキンリンパ腫または多発性骨髄腫)、ならびに前記がんの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0330】
さらなる実施形態では、本開示の製剤化および/または共製剤化されたリポソーム、SLNP、またはICDプロドラッグを使用して処置することができるがんとしては、胆管癌、胆管がん、トリプルネガティブ乳がん、横紋筋肉腫、小細胞肺がん、平滑筋肉腫、肝細胞癌、ユーイング肉腫、脳がん、脳腫瘍、星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫、基底細胞癌、軟骨肉腫、類上皮肉腫、目のがん、卵管がん、消化管がん、消化管間質腫瘍、有毛細胞性白血病、腸のがん、膵島細胞がん、口腔がん、口がん、咽頭がん、喉頭がん、口唇がん、中皮腫、頸部がん、鼻腔がん、眼がん、眼内黒色腫、骨盤がん、直腸がん、腎細胞癌、唾液腺がん、鼻のがん、脊髄がん、舌がん、管状癌腫、尿道がん、および尿管がんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0331】
加えて、一部の実施形態では、本開示の製剤化および/または共製剤化されたリポソーム、SLNP、またはICDプロドラッグは、鎌状細胞疾患および鎌状細胞性貧血を処置するために使用することができる。
【0332】
さらに、一部の実施形態では、本開示の製剤化および/または共製剤化されたリポソーム、SLNP、またはICDプロドラッグを使用して処置することができる疾患および適応症としては、造血がん、肉腫、肺がん、消化管がん、泌尿生殖管がん、肝臓がん、骨がん、神経系がん、婦人科系がん、および皮膚がんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0333】
例示的な造血がんとしては、リンパ腫および白血病、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病(APL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(再発性または難治性NHLおよび再発性濾胞性を含む)、ホジキンリンパ腫、骨髄増殖性疾患(例えば、原発性骨髄線維症(PMF)、真性赤血球増加症(PV)、および本態性血小板増加症(ET))、骨髄異形成症候群(MDS)、T細胞性急性リンパ芽球性リンパ腫(T-ALL)、ならびに多発性骨髄腫(MM)が挙げられる。
【0334】
例示的な肉腫としては、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、骨肉腫、横紋筋肉腫、血管肉腫、線維肉腫、脂肪肉腫、粘液腫、横紋筋腫、横紋肉腫、線維腫、脂肪腫、過誤腫(harmatoma)、および奇形腫が挙げられる。
【0335】
例示的な肺がんとしては、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん、気管支癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、軟骨性過誤腫、および中皮腫が挙げられる。
【0336】
例示的な消化管がんとしては、食道(扁平上皮細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(膵管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫)、および結腸直腸がんが挙げられる。
【0337】
例示的な泌尿生殖管がんとしては、腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽細胞腫])、膀胱および尿道(扁平上皮細胞癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、ならびに精巣(セミノーマ、奇形腫、胎児性癌、奇形癌、絨毛腫、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫)が挙げられる。
【0338】
例示的な肝臓がんとしては、肝臓癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、および血管腫が挙げられる。
【0339】
例示的な骨がんとしては、例えば、骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網細胞肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫 脊索腫、オステオクロンフローマ(osteochronfroma)(骨軟骨性外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、および巨細胞腫瘍が挙げられる。
【0340】
例示的な神経系がんとしては、頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫(meduoblastoma)、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫(松果体腫)、神経膠芽腫、多型膠芽細胞腫、乏突起神経膠腫、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、および脊髄(神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫)、ならびに神経芽細胞腫およびレルミット・ダクロス病が挙げられる。
【0341】
例示的な婦人科系がんとしては、子宮(子宮内膜癌)、子宮頸(子宮頸癌、前癌性子宮頸部異形成)、卵巣(卵巣癌(漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類の癌腫)、顆粒膜-莢膜細胞腫瘍、セルトリ・ライディッヒ細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、および卵管(癌腫)が挙げられる。
【0342】
例示的な皮膚がんとしては、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、異形成母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、およびケロイドが挙げられる。一部の実施形態では、本開示の化合物を使用して処置することができる疾患および適応症としては、鎌状細胞疾患(例えば、鎌状細胞性貧血)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、骨髄異形成症候群、精巣がん、胆管がん、食道がん、および尿路上皮癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0343】
加えて、本開示の製剤化および/または共製剤化されたリポソーム、SLNP、またはICDプロドラッグによりICDを誘導する化合物はまた、感染症、例えば、ウイルス、細菌、真菌、および寄生生物感染症を処置するために使用することもできる。
【0344】
本開示は、感染症、例えば、ウイルス感染症を処置するための方法を提供する。本方法は、患者に、治療有効量の製剤化および/もしくは共製剤化されたリポソーム、SLNP、もしくはICDプロドラッグ、または特許請求の範囲のうちのいずれかにおいて列挙され本明細書に記載される本明細書に記載される式のうちのいずれかのもの(すなわち、IC1プロドラッグ)、またはその塩を投与するステップを含む。
【0345】
本開示の方法によって処置することができる感染症を引き起こすウイルスの例としては、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザ、A型、B型、C型、またはD型肝炎ウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、重症急性呼吸器症候群ウイルス、エボラウイルス、および麻疹ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、本開示の方法によって処置することができる感染症を引き起こすウイルスとしては、肝炎(A型、B型、またはC型)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II、およびCMV、エプスタインバーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デング熱ウイルス、パピローマウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス、ならびにアルボウイルス脳炎ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0346】
加えて、本開示は、細菌感染症を処置するための方法を提供する。本方法は、患者に、治療有効量の製剤化および/または共製剤化されたリポソーム、SLNP、もしくはICDプロドラッグ、または特許請求の範囲のうちのいずれかにおいて列挙され本明細書に記載される本明細書に記載される式のうちのいずれかのもの(すなわち、IC1プロドラッグ)、またはその塩を投与するステップを含む。
【0347】
本開示の方法によって処置することができる感染症を引き起こす病原性細菌の例としては、クラミジア、リケッチア菌、マイコバクテリウム属、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌、およびコノコッカス(conococci)、クレブシエラ属、プロテウス属、セラチア属、シュードモナス属、レジオネラ属、ジフテリア、サルモネラ属、桿菌、コレラ、破傷風、ボツリヌス毒、炭疽菌、ペスト、レプトスピラ、およびライム病菌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0348】
加えて、本開示は、真菌感染症を処置するための方法を提供する。本方法は、患者に、治療有効量の製剤化および/または共製剤化されたリポソーム、SLNP、もしくはICDプロドラッグ、または特許請求の範囲のうちのいずれかにおいて列挙され本明細書に記載される本明細書に記載される式のうちのいずれかのもの(すなわち、IC1プロドラッグ)、またはその塩を投与するステップを含む。
【0349】
本開示の方法によって処置することができる感染症を引き起こす病原性真菌の例としては、カンジダ(albicans、krusei、glabrata、tropicalisなど)、Cryptococcus neoformans、Aspergillus(fumigatus、Nigerなど)、Genus Mucorales(Mucor、absidia、rhizophus)、Sporothrix schenkii、Blastomyces dermatitidis、Paracoccidioides brasiliensis、Coccidioides immitis、およびHistoplasma capsulatumが挙げられるが、これらに限定されない。
【0350】
加えて、本開示は、寄生生物感染症を処置するための方法を提供する。本方法は、患者に、治療有効量の製剤化および/または共製剤化されたリポソーム、SLNP、もしくはICDプロドラッグ、または特許請求の範囲のうちのいずれかにおいて列挙され本明細書に記載される本明細書に記載される式のうちのいずれかのもの(すなわち、IC1プロドラッグ)、またはその塩を投与するステップを含む。
【0351】
本開示の方法によって処置することができる感染症を引き起こす病原性寄生生物の例としては、Entamoeba histolytica、Balantidium coli、Naegleriafowleri、Acanthamoeba sp.、Giardia lambia、Cryptosporidium sp.、Pneumocystis carinii、Plasmodium vivax、Babesia microti、Trypanosoma brucei、Trypanosoma cruzi、Leishmania donovani、Toxoplasma gondi、およびNippostrongylus brasiliensisが挙げられるが、これらに限定されない。
【0352】
本開示の範囲内である実施形態のさらなるセットでは、製剤化および/または共製剤化されたリポソーム、ナノ担体、SLNP、またはICDプロドラッグ、または本明細書に記載される式のうちのいずれかのもの(すなわち、IC1プロドラッグ)は、本開示において言及される疾患のうちのいずれかの予防またはそれを発症する危険性の低減、例えば、疾患、状態、または障害の素因を有し得るが、疾患の病態または症状を依然として経験しておらず示してもいない個体における疾患、状態、または障害の予防またはそれを発症する危険性の低減に、有用である。
【0353】
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、LNP-IC1および/または治療有効量のLNP-IC1を含む。
【0354】
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、SLNP-IC1および/または治療有効量のSLNP-IC1を含む。
【0355】
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、SLNP-IC1-TR12および/または治療有効量のSLNP-IC1-TR12を含む。
【0356】
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、SLNP-IC1-RGDおよび/または治療有効量のSLNP-IC1-RGDを含む。
【0357】
XII.)キット/製造物品
本明細書に記載される研究室、予後診断、予防、診断、および治療用途での使用に関して、キットは、本発明の範囲内である。そのようなキットは、例えば、本明細書に記載される使用など、使用の説明書を含むラベルまたは添付文書とともに、それぞれの容器が本方法において使用しようとする別個のエレメントのうちの1つを含む、1つまたは複数の容器、例えば、バイアル、チューブなどを受容するようにコンパートメント化された、担体、パッケージ、または容器を含み得る。例えば、容器は、検出可能に標識されているかまたは標識することができる、および/または本開示のICDプロドラッグがロードされた、製剤化および/または共製剤化されたリポソームを、含み得る。キットは、薬物ユニットを含む容器を含み得る。キットは、製剤化および/または共製剤化されたナノ担体、リポソーム、SLNP、および/またはICDプロドラッグのすべてまたは一部を含み得る。
【0358】
本発明のキットは、典型的には、前述の容器、ならびに商業的および使用者の観点から望ましい緩衝化剤、希釈剤、フィルター、ニードル、シリンジを含む材料を含むそれと関連する1つまたは複数の他の容器、内容物および/または使用のための説明書を示す担体、パッケージ、容器、バイアル、および/またはチューブのラベル、ならびに使用のための説明書を有する添付文書を含む。
【0359】
ラベルは、組成物が、特定の治療法または非治療的適用、例えば、予後診断、予防、診断、もしくは研究室用途に使用されることを示すために容器上またはそれに付随して存在してもよく、in vivoまたはin vitroのいずれかでの使用、例えば、本明細書に記載されるもののための案内を示し得る。案内およびまたは他の情報はまた、キットとともにまたはそれに含まれる添付文書またはラベルに含まれてもよい。ラベルは、容器上にあってもよく、それに付随してもよい。ラベルは、ラベルを形成する文字、数字、または他の特徴が容器自体に成形またはエッチングされている場合には容器上にあり、ラベルは、それが容器も保持する入れ物または運搬体内に存在する場合には、例えば、添付文書として、容器に付随し得る。ラベルは、組成物が、状態、例えば、がんまたは他の免疫学的障害を診断、処置、予防、または予後診断するために使用されることを示し得る。
【0360】
「キット」および「製造物品」という用語は、同義として使用され得る。
【0361】
本発明の別の実施形態では、組成物を含む製造物品、例えば、製剤化および/または共製剤化されたナノ担体、リポソーム、SLNP、および/またはICDプロドラッグは、本開示の範囲内である。製造物品は、典型的には、少なくとも1つの容器および少なくとも1つのラベルを含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は、ガラス、金属、またはプラスチックなどの様々な材料から形成することができる。容器は、ICDプロドラッグがロードされた製剤化および/または共製剤化されたリポソームを保持することができる。
【0362】
容器は、代替的に、状態の処置、診断、予後診断、または予防に有効である組成物を保持することができ、滅菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射用ニードルによって穿刺可能なストッパーを有する静注バッグまたはバイアルであり得る)。組成物中の活性剤は、ICDプロドラッグおよび/または本明細書に開示されるICDプロドラッグがロードされた製剤化および/または共製剤化されたナノ担体、リポソーム、またはSLNPであり得る。
【0363】
製造物品は、薬学的に許容される緩衝液、例えば、リン酸緩衝食塩水、リンガー溶液、および/またはデキストロース溶液を含む第2の容器をさらに含み得る。それは、他の緩衝化剤、希釈剤、フィルター、撹拌子、ニードル、シリンジ、ならびに/または使用のための指示書および/もしくは説明を含む添付文書を含め、商業上および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0364】
一実施形態では、キットまたは製造物品は、LNP-IC1および/または治療有効量のLNP-IC1を含む。
【0365】
一実施形態では、キットまたは製造物品は、SLNP-IC1および/または治療有効量のSLNP-IC1を含む。
【0366】
一実施形態では、キットまたは製造物品は、SLNP-IC1-TR12および/または治療有効量のSLNP-IC1-TR12を含む。
【0367】
一実施形態では、キットまたは製造物品は、SLNP-IC1-RGDおよび/または治療有効量のSLNP-IC1-RGDを含む。
【0368】
例示的な実施形態
1)ICDプロドラッグ組成物であって、
(i)薬物部分と、
(ii)脂質部分と、
(iii)連結ユニット(「LU」)と
を含み、
薬物部分が、ICDを誘導する薬剤を含み、LUが、薬物部分を脂質部分にコンジュゲートする、
ICDプロドラッグ組成物。
2)薬物部分が、IC1として記載される化学構造を含む、請求項1に記載のICDプロドラッグ。
3)LUが、ヒドラゾンリンカーである、請求項1に記載のICDプロドラッグ。
4)脂質部分が、表Iに記載される脂質を含む、請求項1に記載のICDプロドラッグ。
5)脂質部分が、表IIIに記載される脂質を含む、請求項1に記載のICDプロドラッグ。
6)脂質部分が、CHEMSを含む、請求項1に記載のICDプロドラッグ。
7)脂質部分が、ステアリン酸を含む、請求項1に記載のICDプロドラッグ。
8)脂質部分が、ステアリン酸を含み、ヒドラゾンをさらに含む、請求項1に記載のICDプロドラッグ。
9)薬物部分が、IC1として記載される化学構造を含み、脂質部分が、ステアリン酸を含み、化合物が、以下の化学構造:
【化23】
を有する、請求項1に記載のICDプロドラッグ。
10)ICDプロドラッグ組成物であって、
(i)IC1を含む、薬物部分と、
(ii)CHEMSを含む、脂質部分と、
(iii)ヒドロメチルカルバメートリンカーを含む、LUと
を含む、ICDプロドラッグ組成物。
11)ICDプロドラッグ組成物であって、
(i)IC1を含む、薬物部分と、
(ii)ステアリン酸を含む、脂質部分と、
(iii)ヒドラゾンリンカーを含む、LUと
を含む、ICDプロドラッグ組成物。
12)以下の化学構造:
【化24】
を有する、請求項11に記載のICDプロドラッグ組成物。
13)ICDプロドラッグを含むナノ担体であって、LUの切断後に免疫原性細胞死(ICD)を誘導する薬剤を放出する、ナノ担体。
14)LUが、ヒドラゾンリンカーである、請求項13に記載のナノ担体。
15)表IIに記載されるヘルパー脂質をさらに含む、請求項13に記載のナノ担体。
16)ICDプロドラッグが、IC1を含む、請求項13に記載のナノ担体。
17)リポソームである、請求項13に記載のナノ担体。
18)ICDプロドラッグがIC1を含み、LNP-IC1と称される、請求項17に記載のリポソーム。
19)リポソームが、さらに、1つまたは複数の免疫モジュレーション剤またはその脂質プロドラッグと共製剤化され、免疫モジュレーション剤が、免疫原性細胞死を誘導する化学療法薬、toll様受容体アゴニスト、STINGアゴニスト、CTLA-4阻害剤、IDO阻害剤、PD-1/PD-L1阻害剤、CD1Dアゴニスト、A2aR阻害剤、および/またはこれらのプロドラッグからなる群から選択される、請求項18に記載のリポソーム。
20)リポソームが、さらに、ICDを誘導する化学療法薬と共製剤化され、ICDを誘導する化学療法薬が、DOX、MTO、OXA、CP、ボルテゾミブ、カーフィルジミブ、またはパクリタキセルからなる群から選択される、請求項18に記載のリポソーム。
21)OXAをさらに含む、請求項18に記載のリポソーム。
22)MTOをさらに含む、請求項18に記載のリポソーム。
23)OXAをさらに含む、請求項20に記載のリポソーム。
24)MTOをさらに含む、請求項20に記載のリポソーム。
25)リポソームが、さらに、toll受容体アゴニストまたはその脂質プロドラッグと共製剤化され、toll受容体アゴニストが、レシキモド(R848)、ガーディキモド、852A、DSR 6434、テルラトリモド、CU-T12-9、モノホスホリルリピドA(MPLA)、3D(6-アシル)-PHAD(登録商標)、SMU127、Pam3CSK4、TR5、TR6、TR3、TR12、または3D-PHAD(登録商標)からなる群から選択される、請求項18に記載のリポソーム。
26)リポソームが、さらに、PD-1/PD-L1アンタゴニストまたはその脂質プロドラッグと共製剤化され、PD-1/PD-L1アンタゴニストが、AUNP12、CA-170、PD3、またはBMS-986189からなる群から選択される、請求項18に記載のリポソーム。
27)リポソームが、さらに、TGFbアンタゴニストと共製剤化され、TGFbアンタゴニストが、TB4からなる群から選択される、請求項18に記載のリポソーム。
28)リポソームが、さらに、IDO阻害剤と共製剤化され、IDO阻害剤が、ID3からなる群から選択される、請求項18に記載のリポソーム。
29)リポソームが、さらに、A2aRアンタゴニストと共製剤化され、A2aRアンタゴニストが、AR1、AR2、AR3、AR4、またはAR5からなる群から選択される、請求項18に記載のリポソーム。
30)請求項13~17のいずれか一項に記載のナノ担体を含む、キット。
31)請求項18~29のいずれか一項に記載のリポソームを含む、キット。
32)固体脂質ナノ粒子(SLNP)である、請求項13に記載のナノ担体。
33)固体脂質ナノ粒子(SLNP)である、請求項16に記載のナノ担体。
34)ICDプロドラッグがIC1を含み、SLNP-IC1と称される、請求項32に記載のSLNP。
35)SLNP-IC1と称される、請求項33に記載のナノ担体。
36)SLNPが、さらに、1つまたは複数の免疫モジュレーション剤またはその脂質プロドラッグと共製剤化され、免疫モジュレーション剤が、免疫原性細胞死を誘導する化学療法薬、toll受容体アゴニスト、STINGアゴニスト、CTLA-4阻害剤、IDO阻害剤、PD-1/PD-L1阻害剤、CD1Dアゴニスト、および/またはこれらのプロドラッグからなる群から選択される、請求項32に記載のSLNP。
37)SLNPが、さらに、ICDを誘導する化学療法薬と共製剤化され、ICDを誘導する化学療法薬が、DOX、MTO、OXA、CP、ボルテゾミブ、カーフィルジミブ、またはパクリタキセルからなる群から選択される、請求項32に記載のSLNP。
38)OXAをさらに含む、請求項31に記載のSLNP。
39)MTOをさらに含む、請求項31に記載のSLNP。
40)OXAをさらに含む、請求項33に記載のSLNP。
41)MTOをさらに含む、請求項33に記載のSLNP。
42)リポソームが、さらに、toll受容体アゴニストまたはその脂質プロドラッグと共製剤化され、toll受容体アゴニストが、レシキモド(R848)、ガーディキモド、852A、DSR 6434、テルラトリモド、CU-T12-9、モノホスホリルリピドA(MPLA)、3D(6-アシル)-PHAD(登録商標)、SMU127、TR12、Pam3CSK4、または3D-PHAD(登録商標)からなる群から選択される、請求項32に記載のSLNP。
43)リポソームが、さらに、PD-1/PD-L1アンタゴニストまたはその脂質プロドラッグと共製剤化され、PD-1/PD-L1アンタゴニストが、AUNP12、CA-170、またはBMS-986189からなる群から選択される、請求項32に記載のSLNP。
44)SLNPが、さらに、PD-1/PD-L1アンタゴニストまたはその脂質プロドラッグと共製剤化され、PD-1/PD-L1アンタゴニストが、AUNP12、CA-170、PD3、またはBMS-986189からなる群から選択される、請求項32に記載のSLNP。
45)SLNPが、さらに、TGFbアンタゴニストと共製剤化され、TGFbアンタゴニストが、TB4からなる群から選択される、請求項32に記載のSLNP。
46)SLNPが、さらに、IDO阻害剤と共製剤化され、IDO阻害剤が、ID3からなる群から選択される、請求項32に記載のSLNP。
47)SLNPが、さらに、A2aRアンタゴニストと共製剤化され、A2aRアンタゴニストが、AR1、AR2、AR3、AR4、またはAR5からなる群から選択される、請求項12に記載のSLNP。
48)請求項32~47のいずれか一項に記載のSLNPを含む、キット。
49)がんに罹患しているかまたはがんと診断された対象を処置する方法であって、
(i)そのような処置を必要とする対象に、有効量のナノ担体を投与するステップであって、ナノ担体が、ICDプロドラッグを含む、ステップ、および
(ii)その薬学的に許容される塩
を含む、方法。
50)ICDプロドラッグが、IC1プロドラッグを含む、請求項49に記載の方法。
51)ナノ担体が、さらにtoll様受容体と共製剤化されたIC1プロドラッグを含む、請求項49に記載の方法。
52)ナノ担体が、さらに免疫モジュレーション剤と共製剤化されたIC1プロドラッグを含む、請求項49に記載の方法。
53)ナノ担体が、リポソームである、請求項49に記載の方法。
54)リポソームが、LNP-IC1である、請求項49に記載の方法。
55)ナノ担体が、固体脂質ナノ粒子である、請求項49に記載の方法。
56)SLNPが、SLNP-IC1である、請求項55に記載の方法。
57)SLNP-IC1が、PD-1抗体、CTLA4抗体、または免疫原性細胞死を誘導する化学療法薬(例えば、OXAもしくはMTO)と組み合わせて使用される、請求項56に記載の方法。
58)がんに罹患しているかまたはがんと診断された対象を処置する方法であって、
(i)そのような処置を必要とする対象に、有効量のナノ担体を投与するステップであって、ナノ担体が、ICDプロドラッグを含む、ステップ、および
(ii)その薬学的に許容される塩
を含む、方法。
59)ICDプロドラッグが、IC1プロドラッグを含む、請求項58に記載の方法。
60)ナノ担体が、さらにtoll様受容体と共製剤化されたIC1プロドラッグを含む、請求項58に記載の方法。
61)ナノ担体が、さらに免疫モジュレーション剤と共製剤化されたIC1プロドラッグを含む、請求項58に記載の方法。
62)ナノ担体が、固体脂質ナノ粒子(「SLNP」)である、請求項58に記載の方法。
63)SLNPが、SLNP-IC1である、請求項62に記載の方法。
64)ナノ担体が、リポソームである、請求項58に記載の方法。
65)リポソームが、LNP-IC1である、請求項64に記載の方法。
66)以下の化学構造:
【化25】
を有する、IC1プロドラッグ。
67)請求項66に記載のIC1プロドラッグを含む、リポソーム。
68)ヘルパー脂質をさらに含む、請求項67に記載のIC1プロドラッグを含むリポソーム。
69)ヘルパー脂質が、表IIに記載されている、請求項68に記載のリポソーム。
70)請求項66に記載のIC1プロドラッグを含む、固体脂質ナノ粒子(SLNP)。
71)LNP-IC1と称される、請求項67に記載のリポソーム。
72)SLNP-IC1と称される、請求項70に記載のSLNP。
73)TR12と共製剤化される、請求項72に記載のSLNP。
74)RGDと共製剤化される、請求項72に記載のSLNP。
75)固体脂質ナノ粒子(SLNP)を含む組成物であって、SLNPが、TR12と共製剤化されたIC1をさらに含む(SLNP-IC1-TR12と称される)、組成物。
76)固体脂質ナノ粒子(SLNP)を含む組成物であって、SLNPが、RGDと共製剤化されたIC1をさらに含む(SLNP-IC1-RGDと称される)、組成物。
【実施例
【0369】
本発明の様々な態様を、以下のいくつかの実施例を用いてさらに説明および例証するが、これらはいずれも、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0370】
(実施例1)
ステアリン酸およびヒドラゾンを含むIC1プロドラッグの化学合成。
ステアリン酸およびヒドラゾンを含むIC1プロドラッグの化学合成を、以下のプロトコールを使用して合成した。簡単に述べると、MeOH(440mL)中のドキソルビシン(11.0g、18.9mmol、1.00当量)およびステアリン酸ヒドラジド(16.9g、56.9mmol、3.00当量)の溶液に、TFA(10.1g、89.1mmol、6.60mL、4.70当量)、PTSA(4.40g、25.5mmol、1.35当量)、および分子篩4A(44.0g)を添加した。次いで、反応混合物を、55℃で12時間撹拌した。LCMSにより、ドキソルビシンのほとんど(RT=0.786分)が消費され、83%の所望される質量(RT=1.111分)が検出されたことを確認した。混合物を濾過して、濾液を得た。濾液を、順相HPLC(カラム:Welch Ultimate XB-SiOH 250×50×10um、移動相:[ヘキサン-EtOH(0.1% NH.HO)];B%:10%~50%、15分間)によって精製して、粗生成物を得、これをEtOH(50.0mL)で粉砕した。ステアリン酸ドキソルビシン-ヒドラゾン(2.50g、2.96mmol、15.6%の収率、97.6%の純度)を、赤みがかった橙色の固体として得、これを、H NMR、LCMS、およびHPLCによって確認した(図1)。この実施例に記載される合成により、以下の化学構造:
【化26】
を有するステアリン酸ヒドラゾンを含むIC1プロドラッグが得られる。
【0371】
(実施例2)
SLNP-IC1固体脂質ナノ粒子の合成および特徴付け。
別の実験において、IC1を含む固体脂質ナノ粒子(SLNP-IC1と称される)を、安定化剤ありおよびなしで、溶媒拡散によって合成した。ポリビニルアルコール(例えば、Moliwol 488)、ポロキサマー(例えば、Pluronic(登録商標)F-68、Pluronic(登録商標)F-127)、Tween(登録商標)80および20、ならびにKolliphor RH40など)を、安定化剤として使用することができる。第1のステップにおいて、DSPC、コレステロール(CHOL)、およびDSPE-PEGの脂質ストック溶液を、エタノール(2.5mg/ml)中に調製した。別個に、IC1プロドラッグストック溶液を、エタノール(2.5mg/ml)中に調製した。DSPC、CHOL、IC1、およびDSPE-PEGを、33:55:7:5のモル比で(およそ20mg/mlの脂質濃度で)混合することによって、脂質混合物を得た。この脂質混合物を、次いで、摂氏40~45度で加熱した。同様に、適切な安定化剤(例えば、2%重量/体積のPluronic(登録商標)F127)を含有する水性相を、一定の磁気撹拌(300~400rpm)で磁気加熱プレート撹拌装置を使用して加熱した。SLNPは、水性相においてDI水のみを使用して(安定化剤なしで)合成することができる。脂質混合物を、一定の撹拌下において、この水性相と緩徐に混合した。混合が完了した後、全混合物を、水超音波処理槽を使用して、約5分間超音波処理し、次いで、一定の撹拌で磁気撹拌装置プレートにおいてさらに約1時間保持した。最後に、DI水に対してカットオフが12KDaのサイズの透析膜(Sigma Aldrich)を使用して、少なくとも4~6時間、溶媒を除去した。透析水は、この期間中に少なくとも3回交換した。SLNP-IC1は、必要に応じて、Amicon遠心分離濾過デバイス(3000gでカットオフサイズ10KDa)を使用して濃縮した。
【0372】
SLNP-IC1の特徴付けを、Malvern Zetasizer(Malvern Instrumentation Co.、Westborough、MA、USA)を使用して判定した。簡単に述べると、2mlのSLNP-IC1(リポソームの濃度が0.5~1mg/mlであったもの)を、4面クリアプラスチックキュベットに入れ、25℃で直接的に分析した。図5に示される結果は、ナノ粒子のZavサイズが、およそ99.00nmであり、PDIがおよそ0.161であったことを示す。
【0373】
加えて、水性分散液中のSLNP-IC1固体脂質ナノ粒子のゼータ電位を、Malvern zeta seizer機器(Malvern Instrumentation Co、Westborough、MA、USA)を使用して判定した。簡単に述べると、およそ1mlのSLNP(DI水中、およそ3mg/mlの濃度)を、Zetasizerに利用可能な使い捨てキャピラリーゼータ電位セルに入れた。測定を、25℃で行った。結果は、SLNP-IC1のゼータ電位判定がおよそ-11.2mVであったことを示す(図6)。
【0374】
(実施例3)
SLNP-IC1-RGD固体脂質ナノ粒子の合成および特徴付け。
別の実験において、DSPE-PEG-RGD(「RGD」)と共製剤化されたIC1を含む固体脂質ナノ粒子(SLNP-IC1-RGDと称される)を、様々な種類の安定化剤を使用して、溶媒拡散によって合成した。ポリビニルアルコール(例えば、Moliwol 488)、ポロキサマー(例えば、Pluronic(登録商標)F-68、Pluronic(登録商標)F-127)、Tween(登録商標)80および20、ならびにKolliphor RH40など)を、安定化剤として使用することができる。簡単に述べると、第1のステップにおいて、DSPC、CHOL、DSPE-PEG、およびDSPE-PEG-RGDの脂質ストック溶液を、エタノール(20mg/ml)中に調製した。別個に、IC1プロドラッグストック溶液を、エタノール(2.5mg/ml)中に調製した。DSPC、CHOL、IC1、およびDSPE-PEG、およびDSPE-PEG-RGDを、33:54:7:5.1のモル比で(およそ20mg/mlの脂質濃度で)混合することによって、脂質混合物を得た。この脂質混合物を、次いで、摂氏40~45度で加熱した。同様に、適切な安定化剤(例えば、5%重量/体積のPluronic(登録商標)F127)を含有する水性相を、一定の磁気撹拌(300~400rpm)で磁気加熱プレート撹拌装置を使用して加熱した。SLNPは、水性相においてDI水のみを使用して(安定化剤なしで)合成することができる。脂質混合物を、一定の撹拌下において、この水性相と緩徐に混合した。混合が完了した後、全混合物を、水超音波処理槽を使用して、約5分間超音波処理し、次いで、一定の撹拌で磁気撹拌装置プレートにおいてさらに約1時間保持した。最後に、DI水に対してカットオフが12KDaのサイズの透析膜(Sigma Aldrich)を使用して、少なくとも4~6時間、溶媒を除去した。透析水は、この期間中に少なくとも3回交換した。SLNP-IC1-RGDは、必要に応じて、Amicon遠心分離濾過デバイス(3000gでカットオフサイズ10KDa)を使用して濃縮した。
【0375】
SLNP-IC1-RGDの特徴付けを、Malvern Zetasizer(Malvern Instrumentation Co.、Westborough、MA、USA)を使用して判定した。簡単に述べると、2mlのSLNP-IC1-RGD(リポソームの濃度が0.5~1mg/mlであったもの)を、4面クリアプラスチックキュベットに入れ、25℃で直接的に分析した。図7に示される結果は、ナノ粒子のZavサイズが、およそ102nmであり、PDIがおよそ0.149であったことを示す。
【0376】
加えて、水性分散液中のSLNP-IC1-RGD固体脂質ナノ粒子のゼータ電位を、Malvern zeta seizer機器(Malvern Instrumentation Co、Westborough、MA、USA)を使用して判定した。簡単に述べると、およそ1mlのSLNP(DI水中、およそ3mg/mlの濃度)を、Zetasizerに利用可能な使い捨てキャピラリーゼータ電位セルに入れた。測定を、25℃で行った。結果は、SLNP-IC1-RGDのゼータ電位判定がおよそ-9.9mVであったことを示す(図8)。
【0377】
(実施例4)
SLNP-Dox固体脂質ナノ粒子の合成および特徴付け。
別の実験において、ドキソルビシンを含む固体脂質ナノ粒子(SLNP-Doxと称される)を、様々な種類の安定化剤を使用して、溶媒拡散によって合成した。ポリビニルアルコール(例えば、Moliwol 488)、ポロキサマー(例えば、Pluronic(登録商標)F-68、Pluronic(登録商標)F-127)、Tween(登録商標)80および20、ならびにKolliphor RH40など)を、安定化剤として使用することができる。第1のステップにおいて、DSPC、コレステロール、およびDSPE-PEGの脂質ストック溶液を、エタノール(20mg/ml)中に調製した。別個に、ドキソルビシンストック溶液を、DMSO(20mg/ml)中に調製した。DSPC、コレステロール、ドキソルビシン、およびDSPE-PEGを、33:54:8:5のモル比で(およそ20mg/mlの脂質濃度で)混合することによって、脂質混合物を得た。この脂質混合物を、次いで、摂氏40~45度で加熱した。同様に、適切な安定化剤(例えば、5%重量/体積のPluronic(登録商標)F127)を含有する水性相を、一定の磁気撹拌(300~400rpm)で磁気加熱プレート撹拌装置を使用して加熱した。SLNPは、水性相においてDI水のみを使用して(安定化剤なしで)合成することができる。脂質混合物を、一定の撹拌下において、この水性相と緩徐に混合した。混合が完了した後、全混合物を、水超音波処理槽を使用して、約5分間超音波処理し、次いで、一定の撹拌で磁気撹拌装置プレートにおいてさらに約1時間保持した。最後に、DI水に対してカットオフが12KDaのサイズの透析膜(Sigma Aldrich)を使用して、少なくとも4~6時間、溶媒を除去した。透析水は、この期間中に少なくとも3回交換した。SLNP-Doxは、必要に応じて、Amicon遠心分離濾過デバイス(3000gでカットオフサイズ10KDa)を使用して濃縮した。
【0378】
SLNP-Doxの特徴付けを、Malvern Zetasizer(Malvern Instrumentation Co.、Westborough、MA、USA)を使用して判定した。簡単に述べると、2mlのSLNP-Dox(リポソームの濃度が0.5~1mg/mlであったもの)を、4面クリアプラスチックキュベットに入れ、25℃で直接的に分析した。図9に示される結果は、ナノ粒子のZavサイズが、およそ91.00nmであり、PDIがおよそ0.124であったことを示す。
【0379】
加えて、水性分散液中のSLNP-Dox固体脂質ナノ粒子のゼータ電位を、Malvern zeta seizer機器(Malvern Instrumentation Co、Westborough、MA、USA)を使用して判定した。簡単に述べると、およそ1mlのSLNP(DI水中、およそ3mg/mlの濃度)を、Zetasizerに利用可能な使い捨てキャピラリーゼータ電位セルに入れた。測定を、25℃で行った。結果は、SLNP-Doxのゼータ電位判定がおよそ-10.6mV(図10)であったことを示す。
【0380】
(実施例5)
SLNP-IC1-TR12(NTI 121)固体脂質ナノ粒子の合成および特徴付け。
別の実験において、TR12と共製剤化されたIC1を含む固体脂質ナノ粒子(SLNP-IC1-TR12と称される)を、様々な種類の安定化剤を使用して、溶媒拡散によって合成した。ポリビニルアルコール(例えば、Moliwol 488)、ポロキサマー(例えば、Pluronic(登録商標)F-68、Pluronic(登録商標)F-127)、Tween(登録商標)80および20、ならびにKolliphor RH40など)を、安定化剤として使用することができる。簡単に述べると、第1のステップにおいて、DSPC、CHOL、およびDSPE-PEGの脂質ストック溶液を、エタノール(20mg/ml)中に調製した。IC1プロドラッグ溶液を、エタノール中で、2.5mg/mlの濃度で調製した。別個に、TR12プロドラッグストック溶液を、DMSO(20mg/ml)中に調製した。DSPC、CHOL、IC1、TR12、およびDSPE-PEGを、33:54:56:7:0.44:5のモル比で(およそ20mg/mlの脂質濃度で)混合することによって、脂質混合物を得た。この脂質混合物を、次いで、摂氏40~45度で加熱した。同様に、適切な安定化剤(例えば、2%重量/体積のPluronic(登録商標)F127)を含有する水性相を、一定の磁気撹拌(300~400rpm)で磁気加熱プレート撹拌装置を使用して加熱した。SLNPは、水性相においてDI水のみを使用して(安定化剤なしで)合成することができる。脂質混合物を、一定の撹拌下において、この水性相と緩徐に混合した。混合が完了した後、全混合物を、水超音波処理槽を使用して、約5分間超音波処理し、次いで、一定の撹拌で磁気撹拌装置プレートにおいてさらに約1時間保持した。最後に、DI水に対してカットオフが12KDaのサイズの透析膜(Sigma Aldrich)を使用して、少なくとも4~6時間、溶媒を除去した。透析水は、この期間中に少なくとも3回交換した。SLNP-IC1-TR12は、必要に応じて、Amicon遠心分離濾過デバイス(3000gでカットオフサイズ10KDa)を使用して濃縮した。
【0381】
SLNP-IC1-TR12の特徴付けを、Malvern Zetasizer(Malvern Instrumentation Co.、Westborough、MA、USA)を使用して判定した。簡単に述べると、2mlのSLNP-IC1-TR12(リポソームの濃度が0.5~1mg/mlであったもの)を、4面クリアプラスチックキュベットに入れ、25℃で直接的に分析した。図11に示される結果は、ナノ粒子のZavサイズが、およそ102nmであり、PDIがおよそ0.166であったことを示す。
【0382】
加えて、水性分散液中のSLNP-IC1-TR12固体脂質ナノ粒子のゼータ電位を、Malvern zeta seizer機器(Malvern Instrumentation Co、Westborough、MA、USA)を使用して判定した。簡単に述べると、およそ1mlのSLNP(DI水中、およそ3mg/mlの濃度)を、Zetasizerに利用可能な使い捨てキャピラリーゼータ電位セルに入れた。測定を、25℃で行った。結果は、SLNP-IC1-TR12のゼータ電位判定がおよそ-11.2mVであったことを示す(図12)。
【0383】
(実施例6)
ドキソルビシン(SLNP-DoxおよびLNP-Dox)ならびにIC1(SLNP-IC1およびSLNP-IC1-RGD)の血清安定性/放出動態。
別の実験において、異なる時間間隔におけるドキソルビシンの累積放出/安定性を研究するために、公知の量の様々な製剤(SLNP-DOX、LNP-DOX、SLNP-IC1、およびSLNP-IC1-RGD)を、室温で10mlの20%ヒト血清中に懸濁させた。所定の時間間隔で、溶液をボルテックスし、1mlのアリコートを取り出した。ナノ製剤から放出されたドキソルビシンを分離させるために、このアリコートを、3.5kDaのカットオフの膜フィルターを通して3000rpmで30分間遠心分離した。放出されたドキソルビシンの濃度を、UV-Vis Spectrophotometer(Nanodrop 2000C UV-vis分光光度計)を使用して判定した。
【0384】
様々なナノ製剤からのドキソルビシンの放出パーセントを、以下の式を使用して計算した:
放出%=([D]f,t)/([D])×100
式中、[D]f,tは、時間tにおける濾液中のドキソルビシンの濃度であり、
[D]は、ナノ製剤中の総ドキソルビシン濃度(放出されたもの+放出されていないもの)である。
【0385】
放出動態データから、SLNP-IC1からのドキソルビシンの放出が、ヒト血清においてはるかに緩徐であること(これは、最大72時間のインキュベーション時間でさえも当てはまる)が明らかであり、これは、ヒト血清におけるSLNP-IC1内のドキソルビシンのより良好な安定性/保持可能性を示す。SLNP-DOX(50%を上回る放出%)およびLNP-Dox(約70%の放出%)と比較して、SLNP-IC1の事例では、ヒト血清から放出されたドキソルビシンは20%未満であった。(図13)。
【0386】
(実施例7)
in vitroでのEMT-6細胞におけるIC1の細胞傷害性評価。
別の実験において、SNLP-IC1の細胞傷害性を、以下のプロトコールを使用してMTTアッセイによって、EMT-6マウス細胞株において研究した。簡単に述べると、EMT-6細胞を、96ウェルプレートに播種し、24時間インキュベートした。成長培地を、次いで、(i)DOX(ドキソルビシンHCL)、(ii)LNP-DOX(DOXIL(すなわち、ドキソルビシンリポソーム))、(iii)SLNP-DOX(固体脂質ナノ担体形態のドキソルビシン)、(iv)SLNP-IC1、および(v)SLNP-IC1-RGDのいずれかを含む調製した培地と置き換え、それぞれ、0、2、3、6、13、25、50、または100uMの培地濃度で添加した。MTT溶液を培養物に添加し、37℃で4時間インキュベートした。次いで、SDS-HCl溶液を培養物に添加し、37℃で4時間インキュベートした。次いで、細胞を、24時間さらにインキュベートし、細胞傷害活性を、MTTアッセイを使用して評価した。プレートを読み取る前に、それぞれの試料を、ピペットを使用して混合し、570nmで吸光度を読み取り、光学密度(OD)を生成した。細胞傷害性%を、次の式を使用して以下のように計算した:
100-(試験細胞のOD/対照細胞のOD)×100%)。
【0387】
結果は、ドキソルビシンHCL遊離薬物と比較した場合に、リポソーム形態のDox(LNP-Dox(すなわち、DOXIL)、SLNP-Dox、SLNP-IC1、およびSLNP-IC1-RGDは、EMT-6細胞に対して、類似の様式で細胞傷害性を誘導し得ることを示す。(図14)。
【0388】
(実施例8)
in vitroでの4T-1細胞におけるIC1の細胞傷害性評価。
別の実験において、SNLP-IC1の細胞傷害性を、以下のプロトコールを使用してMTTアッセイによって、4T-1細胞において研究した。簡単に述べると、4T-1細胞を、96ウェルプレートに播種し、24時間インキュベートした。成長培地を、次いで、(i)DOX(ドキソルビシンHCL)、(ii)LNP-DOX(DOXIL(すなわち、ドキソルビシンリポソーム))、(iii)SLNP-DOX(固体脂質ナノ担体形態のドキソルビシン)、(iv)SLNP-IC1、および(v)SLNP-IC1-RGDのいずれかを含む調製した培地と置き換え、それぞれ、0、2、3、6、13、25、50、または100uMの培地濃度で添加した。MTT溶液を培養物に添加し、37℃で4時間インキュベートした。次いで、SDS-HCl溶液を培養物に添加し、37℃で4時間インキュベートした。次いで、細胞を、24時間さらにインキュベートし、細胞傷害活性を、MTTアッセイを使用して評価した。プレートを読み取る前に、それぞれの試料を、ピペットを使用して混合し、570nmで吸光度を読み取り、光学密度(OD)を生成した。細胞傷害性%を、次の式を使用して以下のように計算した:
100-(試験細胞のOD/対照細胞のOD)×100%)。
結果は、ドキソルビシンHCL遊離薬物と比較した場合に、リポソーム形態のDox(LNP-Dox(すなわち、DOXIL)、SLNP-Dox、SLNP-IC1、およびSLNP-IC1-RGDは、4T-1細胞に対して、類似の様式で細胞傷害性を誘導し得ることを示す。(図15)。
【0389】
(実施例9)
in vivoでのEMT-6細胞を使用した複数用量でのSLNP-IC1の腫瘍阻害。
【0390】
この実験において、複数の組合せでのSLNP-IC1の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス乳がんEMT6細胞(0.5×10個)を、Balb/cマウスの右後側腹部領域に皮下接種した。動物を、(i)ビヒクル対照、(ii)2mg/kgのSLNP-IC1、(iii)6mg/kgのSLNP-IC1、または(iv)2mg/kgのLNP-DOX(DOXIL(すなわち、リポソーム形態のドキソルビシン(LNP-Dox)))のいずれかで、1週間に2回、合計6回の投薬で、静脈内注射により処置した。
【0391】
腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。腫瘍成長阻害(TGI)を、21日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0392】
結果は、2mg/kgのSLNP-IC1および6mg/kgのSLNP-IC1での処置が、ビヒクル対照と比較した場合に、有意な抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、それぞれ、88.5%(p<0.05)および94.39%(p<0.05)と計算された。加えて、リポソーム形態のドキソルビシン(DOXIL)と比較した場合に、SLNP-IC1は、2mg/kgまたは6mg/kgのいずれかで腫瘍体積を有意に阻害した。(図16)。
【0393】
(実施例10)
in vivoでのEMT-6細胞を使用した複数用量でのSLNP-IC1の腫瘍阻害。
【0394】
この実験において、複数の組合せでのSLNP-IC1および共製剤化されたSLNP-IC1-TR12の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス乳がんEMT6細胞(0.5×10個)を、Balb/cマウスの右後側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照、2mg/kgのLNP-DOX(Doxil:リポソーム形態のドキソルビシン)、0.5mg/kgのSLNP-TR12(固体脂質ナノ粒子形態のTR12-ステアリン酸)、2mg/kgのSLNP-IC1(固体脂質ナノ粒子形態のドキソルビシンプロドラッグ)、および2/0.5mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、合計6回の投薬で、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。
結果は、2mg/kgのSLNP-IC1単独、または0.5mg/kgのTR12と共製剤化されたもの(SLNP-IC1-TR12)が、腫瘍成長阻害をもたらしたことを示す。加えて、SLNP-IC1での処置は、対照LNP-DOXと比較して、改善された腫瘍成長阻害を示した。(図17)。
【0395】
(実施例11)
in vivoでのEMT-6細胞を使用したSLNP-IC1の腫瘍阻害。
【0396】
この実験において、SLNP-IC1の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス乳がんEMT6細胞(0.5×10個)を、Balb/cマウスの右後側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照、2mg/kgのSLNP-IC1(固体脂質ナノ粒子形態のドキソルビシンプロドラッグ)、0.01mg/kgのSLNP-NK1(固体脂質ナノ粒子形態のKRN7000)、および2/0.01mg/kgのSLNP-IC1-NK1で、1週間に2回、合計6回の投薬で、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。
【0397】
結果は、2mg/kgのSLNP-IC1単独、または0.01mg/kgのNK1と共製剤化されたもの(SLNP-IC1-NK1)が、腫瘍成長阻害をもたらしたことを示す。(図18)。
【0398】
(実施例12)
in vivoでのEMT-6細胞を使用したSLNP-IC1および/またはSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
この実験において、SLNP-IC1の評価を、単独で、またはSLNP-IC1-TR12との組合せのいずれかで、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス乳がんEMT6細胞(0.5×10個)を、Balb/cマウスの右後側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照、SLNP-IC1(固体脂質ナノ粒子形態のドキソルビシンプロドラッグ)、SLNP-TR12(固体脂質ナノ粒子形態のTR12-ステアリン酸)、および共製剤化されたSLNP-IC1-TR12で処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。
【0399】
結果は、SLNP-IC1が、単独薬剤またはTR12(SLNP-IC1-TR12)との組合せのいずれにおいても、両方の用量で腫瘍成長阻害をもたらしたことを示す。(図19)。
【0400】
(実施例13)
Balb/CマウスモデルにおけるSLNP-IC1および/またはSLNP-IC1-TR12の最大耐容用量。
この実験において、SLNP-IC1の最大耐容用量(「MTD」)を、単独で、またはSLNP-IC1-TR12との組合せのいずれかで、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、balb/cマウスを、異なる用量のSLNP-IC1(SLNP形態のIC1プロドラッグ)、SLNP-TR12(SLNP形態のTR12)、およびSLNP-IC1-TR12で、静脈内注射によって処置した。動物を、眼窩の締付け、耳の位置、鼻の膨らみ、無気力、および毛並みの乱れを含む毒性に関する臨床兆候について、注射の30分後および4時間後に観察した。動物の体重は、注射の24時間後、48時間後、および72時間後に測定した。
【0401】
結果は、毒性の即時兆候がいずれの群においても観察されなかったことを示す。注目すべきことに、SLNP-IC1単独は、わずかな体重減少を引き起こした。また、SLNP-TR12は、注射の48時間後までに、中等度から重篤な体重減少を誘導し、48時間後に、体重減少は治療介入なしで回復した。最後に、SLNP-IC1およびTR12の組合せは、SLNP-TR12処置群よりも低い中等度の体重減少を誘導した。(図20)。
【0402】
(実施例14)
in vivoでのB16F10細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
【0403】
この実験において、SLNP-IC1-TR12の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス黒色腫B16F10細胞(細胞(0.2×10個)を、B57/BLマウスの右後側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、9日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0404】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、63.45%であった。(図21)。
【0405】
(実施例15)
in vivoでのMPC11細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス多発性骨髄腫MPC11細胞(0.2×10個)を、Balb/cマウスの右側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、9日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0406】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、53.38%であった。(図22)。
【0407】
(実施例16)
in vivoでのNeuro2A細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス神経芽細胞腫Neuro2A細胞(1×10個)を、A/Jマウスの右側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、10日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0408】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、88.27%であった。(図23)。
【0409】
(実施例17)
in vivoでのCT26細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
【0410】
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス結腸CT26細胞(1×10個)を、Balb/cマウスの右側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、12日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0411】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、81.16%であった。(図24)。
【0412】
(実施例18)
in vivoでのMC38細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス結腸MC38細胞(1×10個)を、CS7/b16マウスの右側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、18日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0413】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、83.59%であった。(図25)。
【0414】
(実施例19)
in vivoでの腎臓Renca細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス腎臓Renca細胞(1×10個)を、Balb/cマウスの右側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、13日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0415】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、68.18%であった。(図26)。
【0416】
(実施例20)
in vivoでのH22細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス肝臓H22細胞(2×10個)を、Balb/cマウスの右側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、21日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0417】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、100.96%であった。(図27)。
【0418】
(実施例21)
in vivoでのHepa1-6細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス肝臓Hepa1-6細胞(5×10個)を、C57/BL6マウスの右側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、16日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0419】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、100.96%であった。(図28)。
【0420】
(実施例22)
in vivoでのLLC1細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
【0421】
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス肺CCL1細胞(0.3×10個)を、C57/BL6マウスの右側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、16日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0422】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、56.65%であった。(図29)。
【0423】
(実施例23)
in vivoでのKLN205細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス肺KLN205細胞(0.8×10個)を、DBA/2マウスの右側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、21日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0424】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、64.21%であった。(図30)。
【0425】
(実施例24)
in vivoでのB16BL6細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス黒色腫B16BL6細胞(0.2×10個)を、C57BL6マウスの右側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、12日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0426】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、70.51%であった。(図31)。
【0427】
(実施例25)
in vivoでのPan-02.03細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス膵臓Pan-02.03細胞(3×10個)を、C57BL6マウスの右側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、62日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0428】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、90.42%であった。(図32)。
【0429】
(実施例26)
in vivoでのRM-1細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス前立腺RM-1細胞(1×10個)を、C57BL6マウスの右側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、14日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0430】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、50.24%であった。(図33)。
【0431】
(実施例27)
in vivoでのMBT-2細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス膀胱MBT-2細胞(1×10個)を、C3H/HEマウスの右側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、16日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0432】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、67.81%であった。(図34)。
【0433】
(実施例28)
in vivoでのクローンM-3細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス黒色腫クローンM-3細胞(0.2×10個)を、C57BL6マウスの右側腹部領域に皮下接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、12日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0434】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、74.88%であった。(図35)。
【0435】
(実施例29)
in vivoでの4T1細胞を使用したSLNP-IC1-TR12の腫瘍阻害。
この実験において、SLNP-IC1-TR12の追加の評価を、以下のプロトコールを使用して行った。簡単に述べると、マウス乳がん4T1を、Balb/cマウスの乳房脂肪体に接種した。動物を、ビヒクル対照または2/0.25mg/kgのSLNP-IC1-TR12で、1週間に2回、静脈内注射により処置した。腫瘍体積を、キャリパーを使用して2次元で3回測定し、体積を、式:V=(L×W×W)×0.5を使用して計算し、式中、Vは腫瘍の体積であり、Lは腫瘍の長さ(もっとも長い腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍の幅(Lに対して垂直なもっとも長い腫瘍寸法)である。体重を、1週間に3回測定した。腫瘍成長阻害(TGI)を、26日目の腫瘍サイズデータに基づいて計算した。
【0436】
結果は、2週間にわたる6回の用量のSLNP-IC1-TR12での処置が、ビヒクル処置群と比較して、抗腫瘍活性をもたらすことを示す。TGIは、41.34%であった。(図36)。
【0437】
(実施例30)
IC1プロドラッグを含む製剤化および/または共製剤化されたナノ担体の使用を通じたヒト癌腫の処置のためのヒト臨床試験。
【0438】
腫瘍細胞に特異的に蓄積し、ある特定の腫瘍ならびに他の免疫学的障害および/または他の疾患の処置において使用される、ICDプロドラッグを含む製剤化および/または共製剤化されたナノ担体(リポソームまたはSLNP)を、本発明に従って使用する。これらの適応症のそれぞれと関連して、2つの臨床アプローチを追求することに成功している。
【0439】
I.)補助療法:補助療法では、患者を、化学療法薬または薬学的もしくはバイオ薬学的薬剤、またはこれらの組合せと組み合わせたICDプロドラッグを含む製剤化および/または共製剤化されたナノ担体(リポソームまたはSLNP)で処置する。原発性がん標的を、ICDプロドラッグを含む製剤化および/または共製剤化されたナノ担体(リポソームまたはSLNP)の追加によって、標準的なプロトコール下で処置する。プロトコールデザインは、以下の例、原発性または転移性病変の腫瘍質量の低減、無増悪生存期間の増加、全生存期間、患者の健康状態の改善、疾患の安定化、ならびに標準的な化学療法および他の生物製剤の通常の用量を低減させる能力を含むがこれらに限定されないものによって評価される有効性に対処する。これらの投薬量の低減は、化学療法薬または生物製剤の用量関連毒性を低減させることによって、治療法の追加および/または延長を可能にする。
【0440】
II.)単剤療法:腫瘍の単剤療法でのICDプロドラッグを含む製剤化および/または共製剤化されたナノ担体(リポソームまたはSLNP)の使用と関連して、ICDプロドラッグを含む製剤化および/または共製剤化されたナノ担体(リポソームまたはSLNP)は、化学療法薬または薬学的薬剤または生物学的薬剤を伴わずに患者に投与される。一実施形態では、単剤療法は、拡がった転移性疾患を有する後期がん患者において臨床的に行われる。プロトコールデザインは、以下の例、原発性または転移性病変の腫瘍質量の低減、無増悪生存期間の増加、全生存期間、患者の健康状態の改善、疾患の安定化、ならびに標準的な化学療法および他の生物製剤の通常の用量を低減させる能力を含むがこれらに限定されないものによって評価される有効性に対処する。
【0441】
投薬量
投薬レジメンは、最適な所望される応答を提供するように調節され得る。例えば、単回のICDプロドラッグを含む製剤化および/または共製剤化されたナノ担体(リポソームまたはSLNP)を投与してもよく、いくつかの分割用量を、経時的に投与してもよく、または用量を、治療状況の緊急性によって示されるように比例的に低減もしくは増加させてもよい。「投薬単位形態」とは、本明細書において使用される場合、処置しようとする哺乳動物対象の単位投薬量として好適な物理的に別個の単位を指し、それぞれの単位は、必要とされる薬学的担体と関連して所望される治療作用をもたらすように計算された、所定の量の活性化合物を含む。本発明の投薬単位形態の仕様は、(a)ICDプロドラッグを含む製剤化および/または共製剤化されたナノ担体(リポソームまたはSLNP)の固有の特徴、(b)存在する場合は組合せ化合物の個別の機構、(c)達成しようとする具体的な治療的または予防的作用、ならびに(d)個体において感受性の処置のためのそのような化合物の配合に関する当該技術分野における固有の制限によって決定され、それらに直接的に依存する。
【0442】
臨床開発計画(CDP)
CDPは、ICDプロドラッグを含む製剤化および/または共製剤化されたナノ担体(リポソームまたはSLNP)を、補助療法と併せて、または単剤療法で使用する処置に従い、それを開発する。試験は、まず、安全性を示し、その後で、反復投薬での有効性を確認する。試験は、非盲検であり、標準的な化学療法および/または現在の標準的な治療法に加えて、ICDプロドラッグを含む製剤化および/または共製剤化されたナノ担体(リポソームまたはSLNP)を比較する。理解されるように、患者の登用に関連して利用することができる1つの非限定的な基準は、当該技術分野において公知の標準的な検出方法によって判定される腫瘍におけるDAMPタンパク質である。
【0443】
製剤化および/もしくは共製剤化されたナノ担体(リポソームもしくはSLNP)、または本明細書に開示される実施形態のうちのいずれも、十分な薬理学的プロファイルおよび有望なバイオ医薬特性、例えば、毒物学的プロファイル、代謝および薬物動態特性、可溶性、ならびに透過性を有し得ると考えられる。適切なバイオ医薬特性の判定、例えば、細胞における細胞傷害性の判定、または毒性の可能性を判定するためのある特定の標的もしくはチャネルの阻害は、当業者の知識の範囲内であることが理解される。
【0444】
本発明は、本発明の個々の態様の1つの例示を意図している本明細書において開示される実施形態によって範囲が限定されるものではなく、機能的に同等であるものはすべて、本発明の範囲内に含まれる。本発明のモデル、方法、およびライフサイクル手法に対する様々な修正形は、本明細書に記載されるものに加えて、前述の説明および教示から、当業者には明らかであり、同様に、本発明の範囲内に含まれることが意図される。そのような修正形または他の実施形態は、本発明の真の範囲および趣旨から逸脱することなく、実施することができる。
【0445】
【表I】
【0446】
【表II】
【0447】
【表III】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
【国際調査報告】