(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】高分子電解質膜、その製造方法及びそれを含む膜電極アセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1018 20160101AFI20241106BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20241106BHJP
【FI】
H01M8/1018
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529632
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 KR2022016864
(87)【国際公開番号】W WO2023113218
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0179455
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】ユン ソンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュンハ
(72)【発明者】
【氏名】イ ドンフン
(72)【発明者】
【氏名】ソン クムソク
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒェソン
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA05
5H126BB06
5H126FF04
5H126FF05
5H126GG18
5H126HH03
5H126HH04
5H126JJ06
(57)【要約】
本発明は、イオン伝導体を含む高分子電解質膜であって、前記イオン伝導体は、陽イオン伝導性基及び陰イオン伝導性基を含む高分子電解質膜、その製造方法及びそれを含む膜電極アセンブリに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導体を含む高分子電解質膜であって、
前記イオン伝導体は陽イオン伝導性基及び陰イオン伝導性基を含む高分子電解質膜。
【請求項2】
前記陽イオン伝導性基はスルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、スルホン酸フルオライド基及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つである請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項3】
前記陰イオン伝導性基は、アンモニウム基、アミン基及び金属水酸化物がドープされたポリマー及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つである請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項4】
前記イオン伝導体は同一主鎖または異なる主鎖内に前記陽イオン伝導性基及び前記陰イオン伝導性基をそれぞれ2以上含み、
前記陽イオン伝導性基は、それぞれ独立的に1以下の陰イオン伝導性基と隣接することを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項5】
前記陽イオン伝導性基は、2以上の陽イオン伝導性基が互いに隣接するブロックを形成することを特徴とする請求項4に記載の高分子電解質膜。
【請求項6】
前記イオン伝導体は、2以上の第1陽イオン伝導体が互いに隣接する第1ブロックと2以上の第1陰イオン伝導体が互いに隣接する第2ブロックとを含む第1イオン伝導体及び2以上の第2陽イオン伝導体が互いに隣接する第3ブロックと2以上の第2陰イオン伝導体が互いに隣接する第4ブロックとを含む第2イオン伝導体を含み、
前記第1ブロックは前記第4ブロックに隣接して位置し、
前記第2ブロックは前記第3ブロックと隣接して位置することを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項7】
前記高分子電解質膜は、前記イオン伝導体が外部電場による厚さ方向に形成されたイオンチャネルを含み、
前記イオン伝導体の厚さ方向イオンチャネル配向が誘導された電解質膜のイオン選択性が0.98ないし0.99である請求項1に記載の高分子電解質膜。
【請求項8】
第1項による高分子電解質膜の製造方法であって、
(i)イオン伝導体の分散液を基材(Substrate)上に塗布するか又は基材に含浸させる段階;
(ii)前記基材を乾燥して高分子電解質膜を製造する段階;
(iii)前記基材に電場を加える段階;及び
(iv)前記基材から乾燥した前記高分子電解質膜を分離する段階
を含み、
ここで、前記(iii)電場を加える段階は、前記(i)段階の間、前記(i)段階後に、または前記(ii)段階後に実施されることである、高分子電解質膜の製造方法。
【請求項9】
前記イオン伝導体分散液は、陽イオン伝導性基と陰イオン伝導性基を含む高分子の分散液であるかまたは陽イオン伝導性基を含む高分子と陰イオン伝導性基を含む高分子を混合した分散液である、請求項8に記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項10】
前記電場は、5~50V/cmの電場を加えるものである請求項8に記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項11】
前記電場を加える前の高分子電解質膜は、イオン伝導体が一般的に形成された状態でイオン選択性が0.90ないし0.96であり、
前記電場を加えた後の高分子電解質膜は、厚さ方向に配向されたイオンチャネル及び陽イオン交換作用基と陰イオン交換作用基の相互作用によるイオン選択性が0.98ないし0.99である請求項8に記載の高分子電解質膜の製造方法。
【請求項12】
請求項1による高分子電解質膜を含む膜電極アセンブリであって、
互いに対向して位置するアノード電極とカソード電極、及び
前記アノード電極とカソード電極の間に位置する高分子電解質膜を含む膜電極アセンブリ。
【請求項13】
請求項12による高分子電解質膜を含む膜電極アセンブリを含む燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の電場を利用してイオン伝導体の配列を調節して製造された高分子電解質膜からさらに進み、イオン伝導性基の静電気的引力と電場によるイオン伝導体の配列調節によりイオンチャネルの直径が調節された高分子電解質膜、その製造方法及びそれを含む膜電極アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料の酸化により発生する化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換させる電池であり、高いエネルギー効率性と汚染物排出が少ない環境にやさしい特徴により次世代エネルギー源として脚光を浴びている。
【0003】
燃料電池は、一般的に電解質膜を挟んでその両側に酸化極(Anode)と還元極(Cathode)がそれぞれ形成された構造を有し、このような構造を膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)と称する。
【0004】
燃料電池は、電解質膜の種類に応じてアルカリ電解質燃料電池、高分子電解質燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell:PEMFC)などに区分できるが、そのうち、高分子電解質燃料電池は100℃未満の低い作動温度、速い始動と応答特性及び優れた耐久性などの長所により携帯用、車両用及び家庭用電源装置として脚光を浴びている。
【0005】
このような高分子電解質燃料電池の代表的な例としては、水素ガスを燃料として使用する水素イオン交換膜燃料電池(Proton Exchange Membrane Fuel Cell:PEMFC)などがある。
【0006】
高分子電解質燃料電池において起こる反応を要約すると、まず、水素ガスのような燃料が酸化極に供給されると、酸化極においては水素の酸化反応により水素イオン(H+)と電子(e-)が生成される。生成された水素イオン(H+)は高分子電解質膜を介して還元極に伝達され、生成された電子(e-)は外部回路を介して還元極に伝達される。還元極においては酸素が供給され、酸素が水素イオン(H+)及び電子(e-)と結合して酸素の還元反応により水が生成される。
【0007】
高分子電解質膜は、酸化極において生成された水素イオン(H+)が還元極に伝達される通路であるので、基本的に水素イオン(H+)の伝導度が優れていなければならない。また、高分子電解質膜は、酸化極に供給される水素ガスと還元極に供給される酸素を分離する分離能に優れていなければならず、その他にも機械的強度、寸法安定性、耐化学性などが優れていなければならず、高電流密度で抵抗損失(ohmic loss)が小さくなければならないなどの特性が要求される。
【0008】
前記高分子電解質燃料電池の運転に必要な高分子電解質膜の要求条件としては、高い水素イオン伝導度、化学的安定性、低い燃料透過性、高い機械的強度、低い含水率、優れた寸法安定性などがある。
【0009】
高分子電解質膜はイオン伝導性を有するイオノマーを含み、イオノマーは水がないかまたは非常に少ない条件でもイオン伝導性が高いという特性を有する。具体的に、イオノマーは高分子鎖からなり、主鎖に連結された側鎖にイオン伝導性基を有する。イオン伝導性基は陽イオンや陰イオンのようなイオン性を帯びるようになり、イオン性を帯びるイオン伝導性基は主鎖とは異なって親水性を有するので、親水性領域が互いに固まった形態のクラスターを形成する。
【0010】
前記クラスターはイオン伝導性基が互いに固まり、主鎖は相対的にクラスター外部に位置するものの、このような自然的な現象によりチャネル形態のイオンチャネルが形成される。
【0011】
イオンチャネルの内部を介して水素イオンなどの陽イオンや、アンモニウムイオンのような陰イオンが移動する。イオンチャネル内部の環境やイオンチャネルの直径などがこれを通過するイオンの選択的伝導性に影響を及ぼすことになる。
【0012】
先行技術である韓国公開特許第2004-0092332号及び韓国公開特許第2008-0019284号は、電場を利用してイオン伝導性を向上させる技術を開示している。
【0013】
しかしながら、前記先行文献では、陽イオン伝導性基や陰イオン伝導性基のみを有するイオノマーを利用した技術を開示しているだけで、陽イオン伝導性基と陰イオン伝導性基を同時に含めて相互間に規則的な静電気的引力を形成するように構成して電場を加えて製造された高分子電解質膜については開示していない。
【0014】
従って、高分子電解質膜のイオンの選択的伝導性をより向上させることができるように、イオン伝導性作用基の種類と電場による配列に応じてイオンチャネルの調節及びイオン選択度を改善できる高分子電解質膜及びその製造方法に対する研究が必要な実情である。
【0015】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】韓国公開特許第2004-0092332号
【0017】
【特許文献2】韓国公開特許第2008-0019284号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、高分子電解質膜の製造過程で電場に露出させることによりイオンチャネルの配列によるイオン選択度が制御可能な高分子電解質膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0019】
本発明は、イオノマー内の陽イオン伝導性基と陰イオン伝導性基が共存する状況で陽イオン作用基と陰イオン作用基の引力と共に外部から印加される静電気的電場によりイオンチャネルの配列を誘導することが容易でありながらも、イオン交換膜のイオン選択性が良好ないし改善された高分子電解質膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一側面によれば、イオン伝導体を含む高分子電解質膜として、前記イオン伝導体は陽イオン伝導性基及び陰イオン伝導性基を含む高分子電解質膜が提供されることができる。
【0021】
前記陽イオン伝導性基は、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、スルホン酸フルオライド基及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0022】
前記陰イオン伝導性基は、アンモニウム基、アミン基及び金属水酸化物がドープされたポリマー及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つであってもよい。
【0023】
前記イオン伝導体は、同一主鎖または異なる主鎖内に前記陽イオン伝導性基及び前記陰イオン伝導性基をそれぞれ2以上含み、前記陽イオン伝導性基はそれぞれ独立的に1以下の陰イオン伝導性基と隣接するものであってもよい。
【0024】
前記陽イオン伝導性基は、2以上の陽イオン伝導性基が互いに隣接するブロックを形成するものであってもよい。
【0025】
前記イオン伝導体は、2以上の第1陽イオン伝導体が互いに隣接する第1ブロックと2以上の第1陰イオン伝導体が互いに隣接する第2ブロックを含む第1イオン伝導体及び2以上の第2陽イオン伝導体が互いに隣接する第3ブロックと2以上の第2陰イオン伝導体が互いに隣接する第4ブロックを含む第2イオン伝導体を含み、前記第1ブロックは前記第4ブロックと隣接して位置し、前記第2ブロックは前記第3ブロックと隣接して位置するものであってもよい。
【0026】
前記高分子電解質膜は、前記イオン伝導体が外部電場による厚さ方向に形成されたイオンチャネルを含み、前記イオン伝導体の厚さ方向イオンチャネル配向が誘導された電解質膜のイオン選択性が0.98ないし0.99であってもよい。
【0027】
本発明の他の一側面によれば、前述の高分子電解質膜の製造方法であって、(i)イオン伝導体の分散液を基材(Substrate)上に塗布するかまたは基材に含浸させる段階;(ii)前記基材を乾燥して高分子電解質膜を製造する段階;(iii)前記基材に電場を加える段階;及び(iv)前記基材から乾燥された前記高分子電解質膜を分離する段階を含み、ここで、前記(iii)電場を加える段階は前記(i)段階の間、前記(i)段階後に、または前記(ii)段階後に実施されることである、高分子電解質膜の製造方法が提供される。
【0028】
前記イオン伝導体分散液は、陽イオン伝導性基と陰イオン伝導性基を含む高分子の分散液であるかまたは陽イオン伝導性基を含む高分子と陰イオン伝導性基を含む高分子を混合した分散液であってもよい。
【0029】
前記電場は5ないし50V/cmの電場を加えるものであってもよい。
【0030】
前記電場を加える前の高分子電解質膜はイオン伝導体が一般的に形成された状態でイオン選択性が0.90ないし0.96であり、前記電場を加えた後の高分子電解質膜は厚さ方向に配向されたイオンチャネル及び陽イオン交換作用基と陰イオン交換作用基の相互作用によるイオン選択性が0.98ないし0.99であってもよい。
【0031】
本発明のまた他の一側面によれば、前述の高分子電解質膜を含む膜電極アセンブリであって、互いに対向して位置するアノード電極とカソード電極、及び前記アノード電極とカソード電極の間に位置する高分子電解質膜を含む膜電極アセンブリが提供される。
【0032】
本発明のまた他の一側面によれば、前述の高分子電解質膜を含む膜電極アセンブリを含む燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0033】
本発明による高分子電解質膜は、電場に露出させることによりイオンチャネルの配列を誘導してイオン選択性の調節が可能な効果を有する。
【0034】
本発明による高分子電解質膜は、イオンチャネルの厚さ方向配列を誘導して選択的イオン伝導性の調節が可能であるため、陽イオン交換膜に陰イオン交換作用基を一部混合して互いに異なる極性の作用基が相互引力を有するとともに、外部から印加する静電気強度により厚さ方向イオンチャネルの配列を誘導して、最適のイオン選択度を示す高分子構造及び製造方法を最適化できる長所を有する。
【0035】
本発明による高分子電解質膜の製造方法は、イオン選択性が良好ないし改善された高分子電解質膜を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明による高分子電解質膜内部のイオンチャネルにおいてイオン伝導性基の相互作用及び静電気による配列を示した模式図である。
【0037】
【
図2】本発明による高分子電解質膜を含む膜電極アセンブリの垂直断面図である。
【0038】
【
図3】本発明の一実施例による燃料電池の全体的な構成を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の各構成をより詳しく説明するが、これは1つの例に過ぎず、本発明の権利範囲が次の内容により制限されない。
【0040】
本発明に使用された「好ましい」または「好ましくは」は、特定の条件で特定の長所を有する本発明の実施例を示す。しかしながら、他の実施例も同一条件または異なる条件で好ましい場合もある。また、1つ以上の好ましい実施例は、他の実施例が有用でないことを意味するものではなく、本発明の範囲内にある他の実施例を排除するものでもない。
【0041】
本明細書に使用された「含む」という用語は、本発明に有用な材料、組成物、装置及び方法を羅列する時に使用され、その羅列された例に制限されるものではない。
【0042】
【0043】
本発明による高分子電解質膜は、陽イオン伝導性基及び陰イオン伝導性基を同一主鎖または異なる主鎖に含むイオン伝導体を含む。
【0044】
一般的なイオン伝導体は、それぞれ独立的にプロトンのような陽イオン交換グループを有する陽イオン伝導体であるか、またはヒドロキシイオン、カーボネートまたはバイカーボネートのような陰イオン交換グループを有する陰イオン伝導体である。
【0045】
すなわち、既存のイオン伝導体は陽イオンまたは陰イオンのいずれか1つに対するイオン伝導性を有するように構成され、このような特性を有するためにイオン伝導体に陰イオン性を有するスルホン酸基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルホン基及びリン酸基などの陽イオン交換グループ(伝導性基)を有する陽イオン伝導体であるか、陽イオン性を有するアンモニウム基、アミン基及びリン酸塩基などの陰イオン交換グループ(伝導性基)を有する陰イオン伝導体に区別された。
【0046】
本発明は、このような既存のイオン伝導体とは異なり、陽イオン伝導性基と陰イオン伝導性基を1つの主鎖または異なる主鎖に両方とも含むハイブリッド(Hybrid)型イオン伝導体を含むことを特徴とする。
【0047】
前述したように、本発明による陽イオン伝導性基は、スルホン酸基、カルボキシル基、ボロン酸基、リン酸基、イミド基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、スルホンフルオライド基及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。好ましくは、スルホン酸基を含んでもよく、スルホン酸基を含むとともに、他の陽イオン伝導性基をさらに含んでも構わない。
【0048】
前記陰イオン伝導性基は、アンモニウム基、アミン基、金属水酸化物がドープされたポリマー及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたいずれか1つであってもよい。具体的に、前記金属水酸化物がドープされたポリマーにおいて、前記ポリマーはポリ(エーテルスルホン)、ポリスチレン、ビニル系ポリマー、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ベンズイミダゾール)またはポリ(エチレングリコール)からなる群から選択された1つ以上であってもよい。
【0049】
一般的な陽イオン伝導体としては、前記陽イオン交換グループを含み、主鎖にフッ素を含むフルオロ系高分子;ベンズイミダゾール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルスルホン、ポリホスファゼン又はポリフェニルキノキサリンなどの炭化水素系高分子;ポリスチレン-グラフト-エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、またはポリスチレン-グラフト-ポリテトラフルオロエチレン共重合体などの部分フッ素化された高分子;スルホンイミドなどが挙げられる。
【0050】
より具体的に、水素イオン陽イオン伝導体の場合、前記高分子は、側鎖にスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホニン酸基及びこれらの誘導体からなる群から選択される陽イオン交換基を含んでもよく、その具体例としては、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、ポリ(パーフルオロカルボン酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体、脱フッ素化された硫化ポリエーテルケトン又はこれらの混合物を含むフルオロビニド系高分子;スルホン化ポリイミド(sulfonated polyimide、S-PI)、スルホン化ポリアリールエーテルスルホン(sulfonated polyarylethersulfone、S-PAES)、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(sulfonated polyetheretherketone、SPEEK)、スルホン化ポリベンズイミダゾール(sulfonated polybenzimidazole、SPBI)、スルホン化ポリスルホン(sulfonated polysulfone、S-PSU)、スルホン化ポリスチレン(sulfonated polystyleene、S-PS)、スルホン化ポリホスファゼン(sulfonated polyphosphazene)、スルホン化ポリキノキサリン(sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化ポリケトン(sulfonated polyketone)、スルホン化ポリフェニレンオキシド(sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化ポリエーテルスルホン(sulfonated polyether sulfone)、スルホン化ポリエーテルケトン(sulfonated polyether ketone)、スルホン化ポリフェニレンスルホン(sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化ポリフェニレンスルフィド(sulfonated polyphenylene sulfide)、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホン(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホンニトリル(sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化ポリアリーレンエーテル(sulfonated polyarylene ether)、スルホン化ポリアリーレンエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化ポリアリーレンエーテルエーテルニトリル(sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、ポリアリーレンエーテルスルホンケトン(sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)、及びこれらの混合物を含む炭化水素系高分子などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0051】
本発明では、前記陽イオン伝導体の一部に追加陰イオン伝導性基をさらに含むか、追加反応により陽イオン伝導性基が一部変形されて陰イオン伝導性基に導入されることができる。
【0052】
一般的な陰イオン伝導体はヒドロキシイオン、カーボネートまたはバイカーボネートのような陰イオンを移送できるポリマーであり、陰イオン伝導体はハイドロキシドまたはハライド(一般的に、クロライド)形態が商業的に入手可能であり、前記陰イオン伝導体は産業的浄水(water purification)、金属分離または触媒工程などに使用できる。
【0053】
陰イオン伝導体としては、アンモニウム基、アミン基、金属水酸化物がドープされたポリマーを使用してもよく、具体的に、金属水酸化物がドープされたポリ(エーテルスルホン)、ポリスチレン、ビニル系ポリマー、ポリ(ビニルクロライド)、ポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ベンズイミダゾール)またはポリ(エチレングリコール)などを使用してもよい。
【0054】
本発明では、前記陰イオン伝導体の一部に追加陽イオン伝導性基をさらに含むか、追加反応により陰イオン伝導性基が一部変形されて陽イオン伝導性基に導入されることができる。
【0055】
または、本発明において、イオン伝導体は陽イオン伝導体と陰イオン伝導体を混合したものであってもよい。
【0056】
前記イオン伝導体の中でもフッ素系高分子を使用することができる。前記フッ素系高分子は、例えば、パーフルオロスルホン酸(perfluorosulfonic acid:PFSA)系高分子またはパーフルオロカルボン酸(perfluorocarboxylic acid:PFCA)系高分子をメインにして、一部のスルホン酸基を陰イオン伝導性基に置き換えたものであってもよい。
【0057】
具体的に、前記イオン伝導体は同一または異なる主鎖内に前記陽イオン伝導性基及び前記陰イオン伝導性基をそれぞれ2以上含み、前記陽イオン伝導性基は1以下の陰イオン伝導性基と隣接するものであってもよい。
【0058】
すなわち、本発明によるイオン伝導体内において前記陽イオン伝導性基は1個または0個の陰イオン伝導性基に隣接するので、陽イオン伝導性基にのみ隣接するように構成されるか、いずれか一側にのみ陰イオン伝導性基が隣接した形態で配置されてもよい。
【0059】
例えば、陽イオン伝導性基と陰イオン伝導性基がそれぞれ2つずつ存在する場合、2つの陽イオン伝導性基は互いに隣接した状態で位置し、隣接した2つの陽イオン伝導性基の両端に陰イオン伝導性基が1つずつ位置する形態またはいずれかの一端に陰イオン伝導性基2つが隣接した形態で陽イオン伝導性基の隣に位置してもよい。
【0060】
より具体的には、前記陽イオン伝導性基はブロック形態で互いに隣接した1つの連続した配列を有するように構成されてもよく、同様に、陰イオン伝導性基も互いに隣接した1つの連続した配列を有してブロック形態で構成されてもよい。
【0061】
前記のようにブロック形態の陽イオン伝導性基ブロックと陰イオン伝導性基ブロックをそれぞれ含むものの、一定間隔で離隔した状態または相異なるイオン伝導体内のそれぞれのブロックが位置するように構成されて、相異なる極性を帯びるブロックが互いに静電気的引力により隣接して配置されることができる。
【0062】
例えば、前記イオン伝導体は、2以上の第1陽イオン伝導性基が隣接する第1ブロックと2以上の第1陰イオン伝導性基が隣接する第2ブロックとを含む第1イオン伝導体及び2以上の第2陽イオン伝導性基が隣接する第3ブロックと2以上の第2陰イオン伝導性基が隣接する第4ブロックとを含む大2イオン伝導体を含み、前記第1ブロックは前記第4ブロックに隣接して位置し、前記第2ブロックは前記第3ブロックに隣接して位置するように構成されてもよい。
【0063】
各ブロックは相異なる極性を有するので、静電気的引力により互いに隣接して位置することができ、互いに隣接したブロックの絶対的なサイズと相対的なサイズに応じて隣接したブロック間の離隔距離が変わる。
【0064】
相異なる極性のブロックがそれぞれ絶対的なサイズの側面で大きくなるほど距離、すなわち、イオンチャネルの直径が小さくなり、相異なる極性のブロックの相対的なサイズに応じてはイオンチャネルの反りや形態が変わることがある。
【0065】
より簡単な理解のために第1ブロックないし第4ブロック間の関係から説明したが、本発明による高分子電解質膜を構成する前記イオン伝導性基のブロックは限定されず、より多くて多様な形態で構成されることができる。
【0066】
特に、本発明では、前記イオン伝導体を利用してイオンチャネルを形成するものの、高分子電解質膜の成膜段階で電場を加えて、前記陰イオン伝導性基と陽イオン伝導性基の引力とともに外部電場による配向を調節することにより、相互間の静電気的引力を形成することがより容易になるように調節する段階をさらに経ることができる。
【0067】
前記電場を加える段階は、イオン伝導体分散液を利用して基材上に塗布するか、多孔性支持体に含浸させた状態で厚さ方向に電場を加えることにより、イオン伝導性基が配向を異にし、配向を異にした過程で静電気的相互作用を経て相異なる極性のブロックが互いに隣接して維持されるか、または同一のイオン伝導体内に位置するより強力な極性のイオン伝導性基ブロックの相互作用により互いに隣接した状態で維持できずに離れるなどの相互作用を経てイオンチャネルの配向度が調節される。
【0068】
このように電場を加える処理を経た本発明による高分子電解質膜のイオン選択性は0.98ないし0.99であってもよい。
【0069】
一方、一般的な高分子電解質膜と同様に、本発明による高分子電解質膜はイオン伝導性を有するイオン伝導体をモールドに入れてキャストすることにより形成される単一膜と、イオン伝導体が分散された分散液に多孔性支持体を浸漬して製造される複合材料を含む強化複合膜のように、いかなる形態でも構わない。
【0070】
強化複合膜の形態の場合、多孔性支持体の内部に形成されるイオンチャネルに対しても前述のイオン伝導体を利用してイオンチャネルの配向性を制御してイオン選択性を調節することができる。
【0071】
強化複合膜は、多孔性支持体及び前記多孔性支持体の空隙に満たされたイオン伝導体を含むことにより、寸法安定性と物理、機械的特性が改善された効果を有し、高分子電解質膜自体の抵抗は多少増加しても、電池の性能低下が防止されるので燃料電池自体の性能と寿命は優秀に維持される長所を有する。
【0072】
強化複合膜を構成する多孔性支持体は、一般的に高分子フィブリルの微細構造により多数の空隙を含む過フッ素化重合体シートまたはナノ繊維が多数の空隙を含む不織布形態で集積されたナノウェブを含む形態などの高分子素材からなる。
【0073】
前記多孔性支持体は、3次元的に不規則に且つ不連続的に連結されたナノ繊維の集合体からなり、これによって均一に分布された多数の気孔を含む。このように均一に分布された多数の気孔からなる前記多孔性支持体は、優れた多孔度とイオン伝導体の物性を補完できる特性(寸法安定性など)を有するようになる。
【0074】
前記多孔性支持体に形成される気孔の直径である孔径は0.05ないし30μm(マイクロメートル)の範囲内で形成されてもよいが、前記孔径が0.05μm未満で形成される場合、高分子電解質のイオン伝導度が低下する可能性があり、前記孔径が30μmを超過する場合、高分子電解質の機械的強度が低下する可能性がある。
【0075】
また、前記多孔性支持体の気孔の形成程度を示す多孔度は50~98%の範囲内で形成されてもよい。
【0076】
前記多孔性支持体の多孔度が50%未満の場合は、高分子電解質のイオン伝導度が低下する可能性があり、前記多孔度が98%を超過する場合は、高分子電解質の機械的強度及び形態安定性が低下する可能性がある。
【0077】
前記多孔度(%)は下記の数式1のように、前記多孔性支持体の全体体積対比空気体積の比率により計算することができる。
【0078】
[数式1]
【0079】
多孔度(%)=(空気体積/全体体積)×100
【0080】
この時、前記多孔性支持体の全体体積は長方形状の多孔性支持体のサンプルを製造して横、縦及び厚さを測定して計算し、前記多孔性支持体の空気体積は前記多孔性支持体サンプルの質量を測定した後、密度から逆算した高分子体積を前記多孔性支持体の全体体積から引いて得ることができる。
【0081】
前記多孔性支持体を構成する前記ナノ繊維の平均直径は0.005ないし5μm(マイクロメートル)範囲であってもよい。前記ナノ繊維の平均直径が0.005μm未満の場合、前記多孔性支持体の機械的強度が低下する可能性があり、前記ナノ繊維の平均直径が5μmを超過する場合、多孔性支持体の多孔度調節が容易ではない可能性がある。
【0082】
前記多孔性支持体は、ナイロン、ポリイミド、ポリベンズオキサゾール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアリーレンエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、これらの共重合体及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか1つであってもよいが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0083】
前記多孔性支持体は5ないし30μm(マイクロメートル)の厚さで形成されてもよい。前記多孔性支持体の厚さが5μm未満の場合、高分子電解質の機械的強度及び形態安定性が低下する可能性があり、前記多孔性支持体の厚さが30μmを超過する場合、高分子電解質の抵抗損失が増加する可能性がある。
【0084】
【0085】
一方、本発明による高分子電解質膜の製造方法は、(i)イオン伝導体を分散液に分散させた後、基材(Substrate)上に塗布するかまたは基材に含浸させる段階;(ii)前記基材を乾燥して高分子電解質膜を製造する段階;(iii)前記基材に電場を加える段階;(iv)前記基材から乾燥した前記高分子電解質膜を分離する段階;及び(v)分離段階の前/後に高分子電解質膜を熱処理する段階を含み、ここで、前記(iii)電場を加える段階は前記(i)段階中にまたは(i)段階後に実施されるか、前記(ii)段階後に実施されてもよい。例えば、前記(iii)の電場は、前記(i)イオン伝導体分散液を基材上に塗布する段階の後に実施されるか、前記(i)イオン伝導体分散液を基材に含浸させた状態で、すなわち、前記(i)段階中に実施されてもよい。このとき、前記電場は基材の厚さ方向に加えられる。
【0086】
前記イオン伝導体は、前述したように、同一主鎖または相異なる主鎖に陽イオン伝導性基と陰イオン伝導性基を両方とも含むハイブリッド型イオン伝導体であり、これに関する詳細は前述の内容を参考する。
【0087】
前記電場を加える段階で、前記電場は5ないし50V/cmの電場を5分ないし24時間加えることであってもよい。
【0088】
前記電場より低い電流を加える場合は、イオンチャネルの配向ができない問題があり、前記電流より高い電流を加える場合は、溶媒の電気分解が行われて副産物に分解される恐れがある。
【0089】
また、前記時間より短い時間の間に電場を加える場合は、イオンチャネルの配向変化がほとんどない問題があり、前記時間より長い時間の間に電場を加える場合は、イオンチャネルの直径が十分に変化した後にこれ以上の変化を見せない区間に至ることになり、製造効率の低下を誘発する問題がある。
【0090】
前記のような電場を加える段階を経ることにより、電場を加える前に電解質膜のイオン選択度である移動数が0.90ないし0.96であった高分子電解質膜は、電場を加えた後にイオンチャネルの配向によるイオン選択度である移動数が0.98ないし0.99に変化することができる。
【0091】
このような過程を経て、製造された高分子電解質膜はイオンチャネルを通過するイオンの種類に応じて調節が可能であり、イオンチャネルの厚さ方向配向を誘導してイオン選択性を高めることにより、燃料電池が駆動する環境に合わせてイオン選択性及び水素透過度を改善して燃料電池性能を向上させることができる長所を有する。
【0092】
【0093】
以下では、図面に基づいて本発明をより詳しく説明する。
【0094】
ただし、これは、本発明を説明するための一例に過ぎず、本発明の権利範囲は次の記載により制限されない。
【0095】
図1は、本発明による高分子電解質膜内部のイオンチャネルにおいてイオン伝導性基の相互作用及び静電気による配列を示した模式図である。
【0096】
図1を参照すると、既存のイオンチャネルには1つの極性を有するイオン伝導性基がクラスターになって形成されたイオンチャネルで形成され、これにより同じ極性を有するイオン伝導性基の相互間の斥力によりイオンチャネルの厚さ方向配向にもかかわらずイオン選択性が多少低下する傾向がある。
【0097】
イオン選択性が低下する場合は水素透過度が高いという問題があるので、イオンの種類に合わせてイオンチャネルの配向及びイオン交換作用基間の相互引力を調節することにより、イオン選択度を調節することができる。
【0098】
図1の右側に位置する本発明の場合は、一部のイオン伝導性基が極性の異なるイオン伝導性基で構成されることにより、相異なる極性の作用基が静電気的引力と外部電気場による厚さ方向イオンチャネルの配向性によりイオンチャネル直径がより小さくなり、その結果として、イオン選択度及び水素透過度が改善される効果を誘発する。
【0099】
図2は、本発明による高分子電解質膜を含む膜電極アセンブリを概略的に示した断面図である。
図2を参照して説明すると、前記膜電極アセンブリ100は、前記高分子電解質膜50及び前記高分子電解質膜50の両面にそれぞれ配置される電極20、20’を含む。前記電極20、20’は、電極基材40、40’と前記電極基材40、40’の表面に形成された触媒層30、30’とを含み、前記電極基材40、40’と前記触媒層30、30’の間に前記電極基材40、40’における物質拡散を容易にするために、炭素粉末、カーボンブラックなどの導電性微細粒子を含む微細気孔層(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0100】
前記膜電極アセンブリ100において、前記高分子電解質膜50の一面に配置されて前記電極基材40を経て前記触媒層30に伝達された燃料から水素イオンと電子を生成させる酸化反応を起こす電極20をアノード電極といい、前記高分子電解質膜50の他方の一面に配置されて前記高分子電解質膜50を介して供給された水素イオンと電極基材40’を経て前記触媒層30’に伝達された酸化剤から水を生成させる還元反応を起こす電極20’をカソード電極という。
【0101】
前記電極基材40、40’としては水素または酸素の供給が円滑に行われるように多孔性の導電性基材が使用されてもよい。その代表的な例として、炭素ペーパー(carbon paper)、炭素布(carbon cloth)、炭素フェルト(carbon felt)または金属布(繊維状態の金属布で構成された多孔性のフィルムまたは高分子繊維で形成された布の表面に金属フィルムが形成されたものをいう)が使用できるが、これに限定されるものではない。また、前記電極基材40、40’はフッ素系樹脂で撥水処理したものを使用することが燃料電池の駆動時に発生する水により反応物拡散効率が低下することを防止できるため好ましい。前記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリパーフルオロスルホニルフルオライドアルコキシビニルエーテル、フルオリネイテッドエチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene)、ポリクロロトリフルオロエチレンまたはこれらのコポリマーを使用することができる。
【0102】
【0103】
本発明の一実施例による燃料電池は、前記膜電極接合体を含むものであり、例えば、水素気体を燃料とする燃料電池であってもよい。
【0104】
図3は、前記燃料電池の全体的な構成を示した模式図である。
図3を参照すると、前記燃料電池200は、燃料と水が混合された混合燃料を供給する燃料供給部210、前記混合燃料を改質して水素ガスを含む改質ガスを発生させる改質部220、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスが酸化剤と電気化学的反応を起こして電気エネルギーを発生させるスタック230、並びに酸化剤を前記改質部220及び前記スタック230に供給する酸化剤供給部240を含む。
【0105】
【0106】
前記スタック230は、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスと酸化剤供給部240から供給される酸化剤の酸化/還元反応を誘導して電気エネルギーを発生させる複数の単位セルを備える。
【0107】
それぞれの単位セルは電気を発生させる単位のセルを意味し、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤中の酸素を酸化/還元させる膜電極アセンブリと、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤を膜電極アセンブリに供給するための分離板(またはバイポーラプレート(bipolar plate)ともいい、以下、「分離板」という。)と、を含む。前記分離板は、前記膜電極アセンブリを中心に置き、その両側に配置される。この時、前記スタックの最外側にそれぞれ位置する分離板を特にエンドプレートと称する。
【0108】
前記分離板のうち前記エンドプレートは、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスを注入するためのパイプ状の第1供給管231と、酸素ガスを注入するためのパイプ状の第2供給管232とを備え、他の1つのエンドプレートは、複数の単位セルにおいて最終的に未反応して残った水素ガスを含む改質ガスを外部に排出するための第1排出管233と、前記単位セルにおいて最終的に未反応して残った酸化剤を外部に排出するための第2排出管234とを備える。
【0109】
以下、本発明の実施例に基づいてより詳しく説明するが、これは本発明の理解のための1つの例示的な記載に過ぎず、本発明の権利範囲が次の実施例により限定または制限されない。
【実施例】
【0110】
高分子電解質膜の製造
【0111】
【0112】
本発明の効果を検証するために、陽イオン交換膜のための高分子としてはEW1100g/mequiv.のナフィオン(Dupont、USA)を使用し、陰イオン交換膜のための高分子としては4-ビニルベンジルクロライドとジビニルベンゼンを熱共重合したコポリマー合成体(4-vinylbenzyl chloride(VBC)/divinylbenzene(DVB) copolymer)にトリメチルアミン(trimethylamine)を導入して4次アンモニウム作用基を導入した陰イオン交換作用基を有する高分子を合成して使用した。ナフィオン高分子の陽イオン交換容量(IEC、ion-exchange capacity)は0.9~1.0meq/gと測定され、合成した陰イオン交換膜の陰イオン交換容量は0.4~0.5meq/gと測定され、前記陽イオン交換高分子と陰イオン交換高分子は有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc、dimethylacetamide)溶媒に分散させ、それぞれの固形分重量比として1:0.5比で混合して陽イオン交換作用基と陰イオン交換作用基が当量比として1:0.25比率水準になるように混合して電解質膜の製造のための溶液を製造した。ただし、前記イオン交換容量と混合比は、本発明の効果を実現するための事項であり、イオン交換容量の範囲や混合の範囲を限定するものではない。
【0113】
製造された高分子溶液は10cm×10cmサイズの厚さ3mmのガラス板の上にキャストし、同一面積のステンレス金属板を上下に配置して間隔を1cmに維持するように設置し、DCパワーサプライ(Power supply、Max.60V、Agilent)を利用して前記高分子溶液をキャストしたガラス板を挟んで厚さ方向に一定のDC電圧を12時間印加して電場を利用したイオン伝導チャンネルの配向を誘導した。同一条件で、DC電圧(Voltage)は0V、10V、20V、30V、40Vを印加して、厚さ方向イオン伝導チャネルの配向を誘導するための電場強度が10V/cm、20V/cm、30V/cm。40V/cm となるようにし、製造された電解質膜の厚さは約20μm となるようにした。乾燥が完了した電解質膜は全て120℃で3時間熱処理を行い、イオン伝導チャネル形成による効果を得るためにイオン選択度のための移動数(Transport number)及びMEAを製造した水素透過度を測定した。
【0114】
【0115】
[実験例1]イオン選択性(イオン水)の測定
【0116】
本発明の比較例として陽イオン交換作用基のみで構成されたナフィオン分散液を同一条件で製造し、その結果を[表1]に示した。実施例として陽イオン交換ナフィオン分散液と前記言及されたポリスチレン高分子主鎖に4次アンモニウム作用基を導入した陰イオン交換高分子分散液を固形分重量比として1:0.5で混合した分散液を使用して同一条件で製造し、その結果を[表2]に示す。
【0117】
イオン伝導チャネルの配列とサイズによるイオン交換膜の性能を調査するためにイオン選択度の指標である移動数を測定した。移動数は0.01N NaOH(C1)と0.05N NaOH(C2)溶液に化学的な濃度差による電位差を有する2室セルに対象電解質膜を挟み込んでAg/AgCl基準電極を両側の膜表面に近く位置して電位差(Em)を読み取り、以下の式で移動数(T+)を計算する。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
前記[表1]の比較例を参考にすると、陽イオン交換膜にDC電圧を印加しながら30V/cmまでイオン選択度が0.98から0.99に改善されることが分かり、これはイオン伝導チャネルの配列によるイオンチャネルのサイズ減少を示唆する。対照的に、前記[表1]と[表2]を参考にすると、比較例1と実施例1のイオン選択度の結果のように陽イオン交換高分子と陰イオン交換高分子が単純混合される場合、選択度が0.98から0.96に減少し、結晶性を有するナフィオン高分子電解質に、非結晶性(Amorphous)のポリスチレン系の陰イオン交換作用基を同じ高分子電解質の混合によりイオン伝導チャネルが大きくなりイオン選択度が減少した。陽イオン交換作用基と陰イオン交換作用基が混合された状態で電場を順次印加すると、20、30V/cmのDC電圧強度で0.99の優れたイオン選択度を示し、これは単純混合状態の0.96より改善されたことであり、混合溶液状態で陰イオン交換作用基と陽イオン交換作用基が相互引力を形成し、イオン伝導チャネルの配向に効果があることを示唆している。
【0125】
【0126】
[実験例2]水素透過率の測定
【0127】
極性の異なる陽イオン交換作用基と陰イオン交換作用基が共存しながら、外部電気場によるイオンチャネルの配向効果をより明確に確認するために、比較例1、4と実施例1、4に対してMEAを製造して単位電池において水素透過度を測定した。水素透過度は製造された高分子電解質膜をそれぞれ含む電極活性面積が10cm2である燃料電池用膜電極接合体を製作し、温度を65℃にRH値を100%にし、アノード(Anode)にH2とカソード(Cathode)にN2ガス(gas)を流してPotentiotatを利用してLSV(linear sweep voltammetry)方法で0.2Vでの高分子電解質膜による水素透過電流密度を測定した。その結果を[表3]に示す。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
前記[表3]を参考にすると、陽イオン交換作用基のみを有する比較例1に比べて陽イオン交換作用基と陰イオン交換作用基が単純混合された状態である実施例1の水素透過度が3.2から3.6に増加し、これはイオン選択度減少とともにイオン伝導チャネルが陰イオン交換作用基を有する非結晶質高分子電解質が添加されて大きくなったためである。それに対して、膜の厚さ方向に外部電気場を印加してイオン伝導チャネルの配向を誘導した比較例4と実施例4の水素透過度を比較すると、3.0から2.8に減少したことが確認できる。これは、外部電場による厚さ方向イオンチャネルの配向の効果が極性の異なる陽イオン交換作用基と陰イオン交換作用基の混合により改善されると確認できる。
【国際調査報告】