(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】神経血管インプラント及び送達システム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/91 20130101AFI20241106BHJP
A61F 2/86 20130101ALI20241106BHJP
A61F 2/89 20130101ALI20241106BHJP
【FI】
A61F2/91
A61F2/86
A61F2/89
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530055
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 US2022050609
(87)【国際公開番号】W WO2023091762
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522151695
【氏名又は名称】インパラティブ、ケア、インク.
【氏名又は名称原語表記】IMPERATIVE CARE,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン、リー
(72)【発明者】
【氏名】リリップ、ラウ
(72)【発明者】
【氏名】ショーン、トッテン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ エイチ.、シルバー
(72)【発明者】
【氏名】マドリン ルイーズ、デセナ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA44
4C267AA47
4C267AA53
4C267AA55
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB05
4C267BB06
4C267BB15
4C267BB17
4C267BB47
4C267BB63
4C267CC08
4C267CC09
4C267GG22
4C267GG24
4C267GG32
(57)【要約】
被験者の神経血管系内に配置可能なインプラント、装置及びシステムが開示される。インプラントは、血管壁への適合性を高めるように構成され、血栓抵抗性に設計された特徴及びコーティングを有する。インプラント配置のための装置は、インプラントの正確な配置、部分的に配置されたインプラントの再シース、及びインプラントの位置を歪めることなくインプラントを確実に切り離すように構成されている。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己拡張型血栓抵抗性管腔内インプラントであって、前記インプラントは、概ね管状のフレームを備え、
前記管状のフレームは、
前記管状フレームの円周に沿って延びるリングを備える近位部分であって、前記リングは複数のリング支柱を備え、前記リング支柱の隣接する対は、複数の近位頂部及び複数の遠位頂部で結合して山形パターンを形成する、近位部分と、
前記管状フレームの円周に沿って延びるリングを備える遠位部分であって、前記リングは複数のリング支柱を備え、前記リング支柱の隣接する対は、複数の近位頂部及び複数の遠位頂部で結合して山形パターンを形成する、遠位部分と、
前記近位部分と前記遠位部分との間の中央部分と、を備え、
前記中央部分は、
前記管状フレームの円周に沿って延びる、長手方向に間隔をあけて配置された複数のリングであって、前記複数のリングの各リングは、複数のリング支柱を有し、前記リング支柱の隣接する対は、複数の近位頂部及び複数の遠位頂部で結合して山形パターンを形成する、複数のリングと、
前記管状フレームの円周に沿って少なくとも部分的に延びる複数の連結支柱であって、前記複数の連結支柱の各連結支柱は、前記複数のリングのうちの1つのリングの遠位頂部を、前記複数のリングのうちの隣接するリングの近位頂部に連結する、複数の連結支柱と、を含む、
管腔内インプラント。
【請求項2】
前記複数の連結支柱の各連結支柱は、前記中央部分の最遠位リングの複数の遠位頂部の各1つ、及び前記中央部分の最近位リングの複数の近位頂部の各1つを除いて、前記中央部分の前記複数のリングのうちの1つのリングの前記複数の遠位頂部の各1つを、前記中央部分の前記複数のリングのうちの隣接するリングの前記複数の近位頂部の各1つに連結し、前記中央部分が自由頂部を備えないようにする、
請求項1に記載の管腔内インプラント。
【請求項3】
前記中央部分の最遠位リングの前記複数の遠位頂部のそれぞれの遠位頂部は、前記遠位部分の前記リングの前記複数の近位頂部のそれぞれの近位頂部に接続し、前記中央部分の最近位リングの前記複数の近位頂部のそれぞれの近位頂部は、前記近位部分の前記リングの前記複数の遠位頂部のそれぞれの遠位頂部に接続する、
請求項2に記載の管腔内インプラント。
【請求項4】
前記中央部分の前記複数のリングのうちの前記1つのリングの前記複数の遠位頂部のそれぞれの遠位頂部は、前記複数の連結支柱の各連結支柱の少なくとも一部が前記管状フレームの前記円周の少なくとも部分的に螺旋経路に沿って延びるように、前記中央部分の前記複数のリングのうちの隣接するリングの前記複数の近位頂部のそれぞれの近位頂部から回転方向にオフセットされる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項5】
前記中央部分の前記複数のリングのうちの1つのリングの前記複数の遠位頂部のうちの各遠位頂部を前記中央部分の前記複数のリングのうちの隣接するリングの前記複数の近位頂部のうちの各近位頂部に連結する前記複数の連結支柱の各連結支柱の少なくとも一部は、前記管状フレームの前記円周の少なくとも部分的に第1の螺旋方向に螺旋経路に沿って延びており、
前記中央部分の前記複数のリングの隣接するリングの前記複数の遠位頂部の各遠位頂部を、前記中央部分の前記複数のリングの別の隣接するリングの複数の近位頂部の各近位頂部に連結する前記複数の連結支柱の各連結支柱の少なくとも一部が、前記管状フレームの前記円周の周りを少なくとも部分的に前記第1の螺旋方向とは概ね反対である第2の螺旋方向に前記螺旋経路に沿って延びている、
請求項4に記載の管腔内インプラント。
【請求項6】
前記近位部分の前記リングの前記複数の近位頂部のそれぞれの1つ以上の近位頂部から概ね近位に延びる1つ以上の支柱を更に備える、
請求項1~5のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項7】
前記概ね近位に延びる1つ以上の支柱の各々は、ネック部分と接続部分とを備え、前記接続部分は、放射線不透過性マーカに接続するように構成される、
請求項6に記載の管腔内インプラント。
【請求項8】
前記遠位部分の前記リングの前記複数の遠位頂部のそれぞれの1つ以上の遠位頂部から概ね遠位に延びる1つ以上の支柱を更に備える、
請求項1~7のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項9】
前記概ね遠位に延びる1つ以上の支柱の各々は、ネック部分と接続部分とを備え、前記接続部分は、放射線不透過性マーカに接続するように構成される、
請求項8に記載の管腔内インプラント。
【請求項10】
前記接続部分において、前記概ね近位に延びる1つ以上の支柱及び/又は前記概ね遠位に延びる1つ以上の支柱に接続するように構成された1つ以上の放射線不透過性マーカを更に備える、
請求項7または9に記載の管腔内インプラント。
【請求項11】
前記近位部分は、近位方向に向かって半径方向外側に拡開している、
請求項1~10のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項12】
前記遠位部分は、遠位方向に向かって半径方向外側に拡開している、
請求項1~11のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項13】
前記複数の連結支柱は互いに重ならない、
請求項1~12のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項14】
前記管腔内インプラントと血管の内壁との間の不完全密着が、前記血管の屈曲部の外側に配置されるよりも前記血管の前記屈曲部の内側に配置される場合の方が少なくなるように、前記管腔内インプラントが構成されている、
請求項1~13のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項15】
前記管状フレームの前記中央部分は約3mmの直径を有する、
請求項1~14のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項16】
前記管腔内インプラントは、曲げ半径4.9mmで内径3mmの可撓性シリコーンのU字屈曲チューブ内の中心に配置された場合、前記U字屈曲チューブの内壁との不完全密着は16箇所以下である、
請求項15に記載の管腔内インプラント。
【請求項17】
前記16箇所以下の不完全密着の最大不完全密着距離は0.400mm以下である、
請求項16に記載の管腔内インプラント。
【請求項18】
前記16箇所以下の不完全密着の平均不完全密着距離は0.120mm以下である、
請求項16に記載の管腔内インプラント。
【請求項19】
前記管状フレームの前記中央部分は約4mmの直径を有する、
請求項1~14のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項20】
前記インプラントは約10mmから約50mmの間の長さを有する、
請求項1~19のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項21】
前記管状フレームは、前記管状フレームの前記中央部分の直径とほぼ同じ直径のチューブから切断される、
請求項1~20のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項22】
前記インプラントは移植片、被覆、又はライナを含まない、
請求項1~21のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項23】
ヘパリンコーティングを更に含む、
請求項1~22のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項24】
自己拡張型血栓抵抗性管腔内インプラントであって、
前記インプラントは、概ね管状のフレームを備え、
前記管状のフレームは、
前記管状フレームの円周に沿って延びる、長手方向に間隔をあけて配置された複数のリングであって、前記複数のリングの各リングは、複数のリング支柱を有し、前記リング支柱の隣接する対は、複数の近位頂部及び複数の遠位頂部で結合して山形パターンを形成する、複数のリングと、
前記管状フレームの円周に沿って少なくとも部分的に延びる複数の連結支柱であって、前記複数の連結支柱の各連結支柱は、前記複数のリングのうちの1つのリングの遠位頂部を、前記複数のリングのうちの隣接するリングの近位頂部に連結する、複数の連結支柱と、を含み、
前記管状フレームは約45μm以下の壁厚を有し、
前記インプラントはヘパリンコーティングを含む、
自己拡張型血栓抵抗性管腔内インプラント。
【請求項25】
前記ヘパリンコーティングは約30nm以下の厚さを有する、
請求項24に記載の管腔内インプラント
【請求項26】
前記ヘパリンコーティングは約1.0ug以下の質量を有する、
請求項24または25に記載の管腔内インプラント。
【請求項27】
前記インプラントの総表面積に対する前記ヘパリンコーティングの質量の比は、約0.007ug/mm
2以上である、
請求項24~26のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項28】
前記管状フレームの壁厚に対する前記ヘパリンコーティングの質量の比は、約0.007μg/mm以上である、
請求項24~27のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項29】
前記インプラントの反管腔側の表面積に対する前記ヘパリンコーティングの質量の比は、約0.03μg/mm
2以上である、
請求項24~28のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項30】
前記管状フレームの壁厚に対する前記ヘパリンコーティングの厚さの比は、約0.00016以上である、
請求項24~29のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項31】
前記ヘパリンコーティングの全体に相当する粒子サイズは、直径約101μm以下である、
請求項24~30のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項32】
前記管状フレームの前記壁厚に対する前記ヘパリンコーティングのヘパリン活性の比は、約0.80pmol AT/cm
2/μm以上である、
請求項24~31のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項33】
前記管状フレームは約3mmの直径を有する、
請求項24~32のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項34】
前記管状フレームは約4mmの直径を有する、
請求項24~33のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項35】
前記インプラントは約10mmから約50mmの間の長さを有する、
請求項24~34のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【請求項36】
前記インプラントは移植片、被覆、又はライナを含まない、
請求項24~35のいずれか一項に記載の管腔内インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本明細書は、2021年11月22日に出願された「NEUROVASCULAR DEVICES HAVING THREE DIMENSIONAL CONFIGURATIONS AND SURFACE CHEMISTRIES FOR ENHANCED THROMBORESISTANCE AND/OR ENDOTHELIALIZATION」と題する米国特許出願第63/281923号明細書の優先権を主張し、当該米国特許出願に記載された全ての記載内容が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、血管疾患を治療するための装置、システム、及び方法に関し、ステントインプラントを患者の血管系に制御的かつ選択的に送達するための装置、システム、及び方法を含む。
【背景技術】
【0003】
哺乳類の循環系は、ポンプとして働く心臓と、血液を体内のさまざまな場所に運ぶ血管系を備えている。流れる血液が血管に及ぼす力のために、血管は様々な血管欠損を生じる可能性がある。動脈瘤として知られる一般的な血管欠損の一つは、血管壁の弱化とそれに続く血管壁の膨張及び拡張の結果として形成される。動脈瘤を治療せずに放置しておくと、血管壁は徐々に薄くなって損傷し、ある時点で血流の継続的な圧力によって破裂する可能性がある。神経血管瘤や脳動脈瘤は人口の約5%が罹患している。特に脳動脈瘤の破裂は脳出血を引き起こし、脳出血は死に至る可能性があるため、他の動脈瘤よりも生命を脅かす深刻な結果をもたらす。
【0004】
脳動脈瘤は、血液が動脈瘤に流入するのを防ぐために動脈瘤の頸部の周りに結紮クリップを配置するために、外科医が頭蓋及び場合によっては脳を通して動脈瘤にアクセスすることを含む高度に侵襲的な技術によって治療されることがある。
【0005】
侵襲性の低い治療手順には、動脈瘤への塞栓形成材料又は塞栓形成装置の送達を伴う。このような塞栓形成材料又は塞栓形成装置の送達は、止血を促進するため、又は動脈瘤の空洞を完全に充填するために使用することができる。塞栓形成材料又は塞栓形成装置は、典型的にはマイクロカテーテルを介して人体の血管系内に配置され、塞栓の形成によって動脈瘤を有する血管を通る血液の流れを遮断するか、又は血管に起因する動脈瘤内にそのような塞栓を形成する。種々のコイル塞栓形成装置が知られている。コイルは概ね、通常は金属(例えば白金)又は金属合金からなるワイヤを、螺旋状に巻いた構造をなしている。このような装置のコイルは、それ自体が二次コイル形状に形成されていてもよく、また、様々なより複雑な二次形状のいずれかに形成されていてもよい。コイルは脳動脈瘤を治療するために一般的に使用されているが、充填密度の低さ、血流による流体力学的圧力による圧縮、頸部の広い動脈瘤における安定性の低さ、及びこのアプローチによる動脈瘤治療のほとんどが複数のコイルの配置を必要とするためその配置が複雑で困難であることなど、いくつかの制限に悩まされている。
【0006】
塞栓物質又はコイルを動脈瘤内に保持し、血流を迂回させ、及び/又は血管内腔の開存性を保持するために、ステントなどの様々なインプラントをマイクロカテーテルを介して動脈瘤などの患者の血管部位に送達することができる。典型的には、インプラントは、送達マイクロカテーテル又はマイクロカテーテル内に含まれるガイドワイヤのいずれかの遠位端に解放可能に保持され、そこから治療すべき血管部位に制御可能に放出される。インプラントを送達する臨床医は、マイクロカテーテル又はガイドカテーテルを血管系を通してナビゲートしなければならず、頭蓋内の治療部位の場合、マイクロカテーテルの操作は曲がりくねった微小血管系を通して行われる。この送達は、蛍光透視法又は他の適切な手段で可視化することができる。剥離は、電解剥離、化学的剥離、機械的剥離、水圧剥離、熱剥離など、さまざまな手段で起こり得る。マイクロカテーテルが装着されたインプラントを所望の血管配置部位に位置決めしたら、臨床医はインプラントの位置決めを歪めることなく、カテーテル又はガイドワイヤからインプラントを切り離そうとする。
【0007】
既存の様々なインプラント脱着技術/送達技術にはそれぞれ長所と短所がある。例えば、1つの機械的配置システムは、スリーブによって拘束された自己拡張型ステントインプラントを露出させるために、外側のスリーブを近位側に後退させる。残念なことに、外側のチューブが部分的に引き込まれ、ステントの露出部分が膨張し、ステントが所望の配置部位を超えて遠位側に推進されるため、ステントが早期に配置される可能性がある。また、ステントが部分的に抜き出てしまうと、ステントの配置を調整する必要があると判断される可能性がある。既存のシステムでは、ステントがシースから外れて血管壁に接触する傾向があるため、ステントの調整又は再収納が困難又は不可能になる。更に、既存のステントには通常、部分的に配置された状態であっても組織内に埋め込む可能性のある1つ以上の自由頂部又は自由構造部分があり、ステントの調整又は再収納を更に困難又は不可能にしている。
【0008】
ステントは塞栓物質又はコイルを動脈瘤内に保持するのに有用であるが、ステントインプラント自体はそれ自体の合併症を引き起こす可能性がある。おそらくステントインプラントの主な合併症は、ステント自体の存在による血栓形成の促進であり、その結果塞栓及び脳卒中の危険性が生じる。ステントの不完全な密着、又はステントの構造と、側枝の上にない下にある血管壁との間の接触不足は、ステントインプラントによる血栓症を促進するもう1つの要因である。頭蓋内治療部位の曲がりくねった微小血管では、ステントを完全に密着させることは困難である。ステント内腔の周囲に高分子材料のスリーブを備える被覆ステント又はステント移植片を使用することによるもう一つの合併症は、動脈瘤に近接する小さな穿通血管や分枝血管を不注意に閉塞させてしまう可能性である。
【0009】
更に、神経血管装置は頭蓋内動脈狭窄症(intracranial artery stenosis、ICAS)の治療にも適応される。ICASは脳梗塞症例の約10%を占める。しかし、その発生率は民族によって異なり、白人では脳卒中の5%~10%、黒人では脳卒中の15%~29%、アジア人では脳卒中の30%~50%である。ICASに由来する脳卒中は3つのメカニズムに起因し、a)動脈から動脈への塞栓、b)低灌流、c)穿通部へのプラークの進展と閉塞である。ICASの約67%は非脳底動脈(頭蓋内及び頭蓋外のICAなど)で起こり、ICASの残りの約33%は脳底動脈で起こる。ICASステント留置術における手術中のリスクは大きく、主に穿通部閉塞によるものである。プラーク破裂の可能性もあるが、ICAS病理生物学は冠動脈病変に比べて理解されていない(あるいは研究されていない)ため、未確認である。脳底動脈ICASにおける血管形成術(ステント留置術を含む)は、穿通部がかなり多いため、手術中のリスクが高い。再狭窄は、血管形成術(ステント留置術を含む)症例でより長い時間枠で起こる。SAAMPRIS試験、WASID試験、WARSS試験は臨床的事象のメカニズムについて仮説を生み出す洞察を与えてくれるが、有効な治療法はまだ実現されていない。このように、ICASの治療は、神経血管インプラントの改善に対する重要な臨床的ニーズも提示している。
【0010】
これまでの努力にもかかわらず、改良された管腔内ステントインプラント及び改良された剥離/送達装置の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0011】
本明細書において提供されるのは、血行力学的に強化された形状、インプラントと血管壁との密着を最大化するように強化された適合性、及び/又は血栓抵抗性コーティングを有する血栓抵抗性ステントインプラントである。また、本明細書においては、ステントインプラントの正確な配置、部分的に露出したステントインプラントの再シース、及びステントインプラントの位置決めを歪めることなくステントインプラントの確実な剥離を可能にする送達装置も提供される。
【0012】
本明細書に記載のインプラントは、永久的に移植可能であるか、配置及び回収可能であるか、又はインターベンション用カテーテルの一部若しくは他の一過性の血管内装置の一部である。神経血管用途では、インプラントは動脈瘤ブリッジ又は脳卒中の予防又は治療に関連する他のインプラントであってもよい。例えば、本明細書に記載のインプラントは、広頚部動脈瘤のステント併用コイル塞栓術、頭蓋内アテローム性動脈硬化性狭窄の治療、又は血栓回収療法と併用した急性虚血性脳卒中における流れの維持に使用することができる。本明細書に記載のインプラントはまた、動脈瘤、血管狭窄、心臓病、動脈疾患、深部静脈血栓症、又は他の疾患の治療及び/又は予防のためなど、身体の他の血管及び/又は血管系に使用することもできる。
【0013】
本明細書で開示される血行力学的形状と表面改質との組み合わせは、約5ml/分から約400ml/分までの流速範囲にわたって血栓塞栓症抵抗性インプラントを生成する。この組み合わせは、血栓形成の複数のメカニズムを標的とすることにより、すべてのタイプの血栓(赤色血栓、白色血栓、混合血栓)及び白血球-血栓の組み合わせを最小化又は防止するはずである。更に、形状及び表面改質を組み合わせた本明細書に記載のインプラントは、インプラント部位での耐血栓性及びインプラント部位から遠位塞栓が流出することに対する耐性の両方を有することができる。いくつかの実施態様では、インプラントは機能的な内皮化の速度を速める。
【0014】
インプラントの形状は、耐荷重機能、解剖学的コンプライアンス、低血小板活性化のための流体力学的相互作用、及び/又は処置配置の容易さのために最適化され得る。インプラントの表面は、インプラント表面と血小板及び/又は原因タンパク質との間の有害な相互作用を調節及び防止し、また、表面接触血小板集団及び壁面近傍過剰血小板集団の両方と相互作用することにより、表面を越えてインプラント近傍での血小板活性化を防止する、ように設計することができる。
【0015】
本明細書で開示されるのは、自己拡張型血栓抵抗性管腔内インプラントであり、このインプラントは概ね管状のフレームを備える。概ね管状のフレームは、近位部分、遠位部分、及び中央部分を備えることができる。近位部分は、管状フレームの円周に沿って延びるリングを備えることができ、リングは複数のリング支柱を備え、リング支柱の隣接する対は複数の近位頂部及び複数の遠位頂部で結合して山形パターンを形成する。遠位部分は、管状フレームの円周に沿って延びるリングを備えることができ、リングは複数のリング支柱を備え、リング支柱の隣接する対は複数の近位頂部及び複数の遠位頂部で結合して山形パターンを形成する。中央部分は、近位部分と遠位部分との間に配置され得、中央部分は、管状フレームの円周に沿って延びる長手方向に間隔をあけて配置された複数のリングと、管状フレームの円周に沿って少なくとも部分的に延びる複数の連結支柱と、を含み、複数のリングの各リングは、複数のリング支柱を有し、隣接する対のリング支柱は、複数の近位頂部及び複数の遠位頂部で結合して山形パターンを形成し、複数の連結支柱の各連結支柱は、複数のリングの1つのリングの遠位頂部を複数のリングの隣接するリングの近位頂部に連結する。
【0016】
上記の管腔内インプラント、又は本明細書に記載されるような他の実装において、以下の特徴のうちの1つ以上についても提供が可能である。いくつかの実装では、複数の連結支柱の各連結支柱は、中央部分の最遠位リングの複数の遠位頂部の各1つ、及び中央部分の最近位リングの複数の近位頂部の各1つを除いて、中央部分の複数のリングのうちの1つのリングの複数の遠位頂部の各1つを、中央部分の複数のリングのうちの隣接するリングの複数の近位頂部の各1つに連結し、中央部分が自由頂部を備えないようにする。いくつかの実装では、中央部分の最遠位リングの複数の遠位頂部のそれぞれの遠位頂部は、遠位部分のリングの複数の近位頂部のそれぞれの近位頂部に接続し、中央部分の最近位リングの複数の近位頂部のそれぞれの近位頂部は、近位部分のリングの複数の遠位頂部のそれぞれの遠位頂部に接続する。いくつかの実装では、中央部分の複数のリングのうちの1つのリングの複数の遠位頂部のそれぞれの遠位頂部は、複数の連結支柱の各連結支柱の少なくとも一部が管状フレームの円周の少なくとも部分的に螺旋経路に沿って延びるように、中央部分の複数のリングのうちの隣接するリングの複数の近位頂部のそれぞれの近位頂部から回転方向にオフセットされる。いくつかの実装では、中央部分の複数のリングのうちの1つのリングの複数の遠位頂部のうちの各遠位頂部を中央部分の複数のリングのうちの隣接するリングの複数の近位頂部のうちの各近位頂部に連結する複数の連結支柱の各連結支柱の少なくとも一部は、管状フレームの円周の少なくとも部分的に第1の螺旋方向に螺旋経路に沿って延びる、中央部分の複数のリングの隣接するリングの複数の遠位頂部の各遠位頂部を、中央部分の複数のリングの別の隣接するリングの複数の近位頂部の各近位頂部に連結する複数の連結支柱の各連結支柱の少なくとも一部が、管状フレームの円周の周りを少なくとも部分的に第1の螺旋方向とは概ね反対である第2の螺旋方向に螺旋経路に沿って延びている。いくつかの実装では、管腔内インプラントは、近位部分のリングの複数の近位頂部のそれぞれの1つ以上の近位頂部から概ね近位に延びる1つ以上の支柱を更に備える。いくつかの実装では、概ね近位に延びる1つ以上の支柱の各々は、ネック部分と接続部分とを備え、接続部分は、放射線不透過性マーカに接続するように構成される。いくつかの実装では、管腔内インプラントは、遠位部分のリングの複数の遠位頂部のそれぞれの1つ以上の遠位頂部から概ね遠位に延びる1つ以上の支柱を更に備える。いくつかの実装では、概ね遠位に延びる1つ以上の支柱の各々は、ネック部分と接続部分とを備え、接続部分は、放射線不透過性マーカに接続するように構成される。いくつかの実装では、管腔内インプラントは、その接続部分において、概ね近位に延びる1つ以上の支柱及び/又は概ね遠位に延びる1つ以上の支柱に接続するように構成された1つ以上の放射線不透過性マーカを更に備える。いくつかの実装では、近位部分は、近位方向に半径方向外側に拡開している。いくつかの実装では、遠位部分は、遠位方向に半径方向外側に拡開している。いくつかの実装では、複数の連結支柱は互いに重ならない。いくつかの実装では、管腔内インプラントは、管腔内インプラントと血管の内壁との間の不完全密着が、血管の屈曲部の外側に配置されるよりも血管の屈曲部の内側に配置される場合の方が少なくなるように構成されている。いくつかの実装では、管状フレームの中央部分は約3mmの直径を有する。いくつかの実装では、管腔内インプラントは、曲げ半径4.9mmで内径3mmの可撓性シリコーンのU字屈曲チューブ内の中心に配置された場合、U字屈曲チューブの内壁との不完全密着は16箇所以下である。いくつかの実装では、16箇所以下の不完全密着の最大不完全密着距離は0.400mm以下である。いくつかの実装では、16箇所以下の不完全密着の平均不完全密着距離は0.120mm以下である。いくつかの実装では、管状フレームの中央部分は約4mmの直径を有する。いくつかの実装では、インプラントは約10mmから約50mmの間の長さを有する。いくつかの実装では、管状フレームは、管状フレームの中央部分の直径とほぼ同じ直径のチューブから切断される。いくつかの実装では、インプラントは移植片、被覆、又はライナを含まない。いくつかの実装では、管腔内インプラントはヘパリンコーティングを更に備える。
【0017】
本明細書は、自己拡張型血栓抵抗性管腔内インプラントを開示する。このインプラントは、概ね管状のフレームを備える。概ね管状のフレームは、管状フレームの円周に沿って延びる、長手方向に間隔をあけて配置された複数のリングであって複数のリングの各リングは、複数のリング支柱を有し、隣接するリング支柱の対が、複数の近位頂部及び複数の遠位頂部で結合して山形パターンを形成する、複数のリングと、管状フレームの円周に沿って少なくとも部分的に延びる複数の連結支柱であって、複数の連結支柱の各連結支柱が、複数のリングの1つのリングの遠位頂部を複数のリングの隣接するリングの近位頂部に連結する、複数の連結支柱と、を含み、管状フレームは約45μm以下の壁厚を有し、インプラントはヘパリンコーティングを含む。
【0018】
上記の管腔内インプラント、又は本明細書に記載されるような他の実装において、以下の特徴のうちの1つ以上についても提供が可能である。いくつかの実装では、ヘパリンコーティングは約30nm以下の厚さを有する。いくつかの実装では、ヘパリンコーティングは約1.0ug以下の質量を有する。いくつかの実装では、インプラントの総表面積に対するヘパリンコーティングの質量の比は、約0.007ug/mm2以上である。いくつかの実装では、管状フレームの壁厚に対するヘパリンコーティングの質量の比は、約0.007μg/mm以上である。いくつかの実装では、インプラントの反管腔側の表面積に対するヘパリンコーティングの質量の比は、約0.03μg/mm2以上である。いくつかの実装では、管状フレームの壁厚に対するヘパリンコーティングの厚さの比は、約0.00016以上である。いくつかの実装では、ヘパリンコーティングの全体に相当する粒子サイズは、直径約101μm以下である。いくつかの実装では、管状フレームの壁厚に対するヘパリンコーティングのヘパリン活性の比は、約0.80pmol AT/cm2/μm以上である。いくつかの実装では、管状フレームは約3mmの直径を有する。いくつかの実装では、管状フレームは約4mmの直径を有する。いくつかの実装では、インプラントは約10mmから約50mmの間の長さを有する。いくつかの実装では、インプラントは移植片、被覆、又はライナを含まない。
【0019】
本明細書で開示されるのは、患者の血管をステント留置する方法であり、この方法は、前述の説明の管腔内インプラント、送達装置及び/又はシステムを使用することを含む。
【0020】
本明細書で開示されるのは、前述の説明の1つ以上の特徴を備えるシステムである。
【0021】
本明細書で開示されるのは、前述の説明の1つ以上の特徴を備えるインプラントである。
【0022】
本明細書で開示されるのは、前述の説明の1つ以上の特徴を備える管腔内送達装置である。
【0023】
本明細書で開示されるのは、前述の説明の1つ以上の特徴を含む患者の血管系を治療する方法である。
【0024】
本開示を要約する目的で、いくつかの実装の特定の態様、利点、及び新規な特徴を本明細書で説明してきた。必ずしも全てのそのような利点が、本明細書で開示される技術の任意の特定の実装に従って達成されるわけではないことを理解されたい。したがって、本明細書で開示される実装は、本明細書で教示又は示唆され得る他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点又は利点群を達成又は最適化する態様で実装又は実行され得る。
【0025】
本開示の特定の特徴を、図面を参照して以下に説明する。図示された実装は、実装を例示することを意図しているが、限定することを意図していない。異なる開示された実装の様々な特徴を組み合わせて、本開示の一部である更なる実装を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】
図1Aは、本開示のいくつかの態様による、鼠径部を通って患者の神経血管領域へのマイクロカテーテルの挿入を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、本開示のいくつかの態様による、患者の脳底動脈及び非脳底動脈の潜在的な治療部位を示す図である。
【
図2A】
図2A~
図2Eは、本開示のいくつかの態様による、自己拡張型血栓抵抗性管腔内インプラントを示す図である。
【
図2B】
図2A~
図2Eは、本開示のいくつかの態様による、自己拡張型血栓抵抗性管腔内インプラントを示す図である。
【
図2C】
図2A~
図2Eは、本開示のいくつかの態様による、自己拡張型血栓抵抗性管腔内インプラントを示す図である。
【
図2D】
図2A~
図2Eは、本開示のいくつかの態様による、自己拡張型血栓抵抗性管腔内インプラントを示す図である。
【
図2E】
図2A~
図2Eは、本開示のいくつかの態様による、自己拡張型血栓抵抗性管腔内インプラントを示す図である。
【
図3】
図3は、本開示のいくつかの態様による、不完全密着曲げ試験における
図2A~
図2Eの管腔内インプラントを示す図である。
【
図4】
図4は、本開示のいくつかの態様による、
図2A~
図2Eの管腔内インプラントの変形例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示のいくつかの態様による、
図2A~
図2Eの管腔内インプラントの変形例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示のいくつかの態様による、送達ワイヤを示す図である。
【
図14A】
図14A~
図14Fは、本開示のいくつかの態様による、管腔内インプラント送達システムの他の実装を示す図である。
【
図14B】
図14A~
図14Fは、本開示のいくつかの態様による、管腔内インプラント送達システムの他の実装を示す図である。
【
図14C】
図14A~
図14Fは、本開示のいくつかの態様による、管腔内インプラント送達システムの他の実装を示す図である。
【
図14D】
図14A~
図14Fは、本開示のいくつかの態様による、管腔内インプラント送達システムの他の実装を示す図である。
【
図14E】
図14A~
図14Fは、本開示のいくつかの態様による、管腔内インプラント送達システムの他の実装を示す図である。
【
図14F】
図14A~
図14Fは、本開示のいくつかの態様による、管腔内インプラント送達システムの他の実装を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本開示の様々な特徴及び利点を、添付の図面を参照して説明する。以下の説明は、本質的に単なる例示であり、決して本開示、その適用、又は用途を限定することを意図するものではない。本開示は、具体的に開示された実装及び/又は用途、並びにそれらの明らかな変更及び均等物を超えて拡張される。従って、本開示の範囲は、以下に説明する特定の実装によって限定されるべきではないことが意図される。図示された実装の特徴は、本明細書で開示される原理を考慮することにより、当業者に明らかになるように変更、組み合わせ、除去、及び/又は置換することができる。更に、本明細書で開示される実装には、いくつかの新規な特徴が含まれる可能性があり、そのうちのいずれも、その望ましい属性を単独で担うものではなく、本明細書で開示されるシステム、装置、及び/又は方法の実施に必須なものではない。
【0028】
概要
本開示は、管腔内インプラント(例えば、ステントインプラント)、管腔内インプラント送達装置、管腔内インプラントシステム、及び管腔内インプラントを移植する方法についての様々な実装を記載する。このようなインプラント、装置、システム、及び方法は、患者の神経血管系の血管などの、患者の血管をステント留置するために使用することができる。更に、このようなインプラント、装置、システム、及び方法は、神経血管動脈瘤などの患者の動脈瘤を治療するため、及び/又は頭蓋内及び/又は頭蓋外の動脈狭窄症を治療するために使用することができる。本明細書で開示されるインプラント、装置、システム、及び方法は、有利には、患者の血管内へのインプラントの正確な配置、部分的に露出又は配置されたインプラントの再収納、及び/又はインプラントの位置決めを歪めることなくインプラントの確実な剥離を可能にすることができる。更に、本明細書で開示されるインプラント、装置、システム、及び方法は、有利には、血栓抵抗性管腔内インプラントを提供することができる。例えば、本明細書で開示される管腔内インプラントは、インプラントと血管壁との密着を最大化し、インプラントと血管壁との不完全密着を最小化するように構成することができ、これにより、インプラントが配置される血管を通る体液(例えば、血液)の停滞流又は低流量となる領域を有利に防止及び/又は低減することができる。このような構成は、頭蓋内治療部位の曲がりくねった微小血管系において特に有利であり得、このような微小血管系は、狭い屈曲部を有する小径の血管を有し得る。他の例として、本明細書で開示される管腔内インプラントは、ヘパリンコーティングなどの血栓抵抗性コーティングを有するように構成することができる。他の例として、本明細書で開示される管腔内インプラントは、移植後にそこを流れる血液などの体液にほとんど影響を与えないように構成することができる。更に、本明細書で開示されるインプラントは、有利には、インプラントの部位に近接する小さな穿通血管又は分枝血管の閉塞を防止及び/又は制限するように構成することができる。例えば、本明細書で開示される管腔内インプラントは、インプラントのフレームを通る体液の流れを防止及び/又は制限するような移植片/スリーブのないフレームを有することができる。
【0029】
本明細書に記載の管腔内インプラント、装置、システム及び方法は、経皮送達に適合させることができる。このように、本明細書に記載の管腔内インプラントは、本明細書に記載の送達装置(例えば、カテーテルベースの送達装置)を介して送達されるように構成することができ、患者内への送達のために折り畳まれた構成を有し、患者内への移植のために折り畳まれた構成から拡張された構成に拡張することができる。例えば、本明細書に記載の管腔内インプラントは、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、又は少なくとも約8:1の拡張比を有する自己拡張型であり得る。いくつかの実装では、本明細書に記載のインプラント、装置及びシステムは、患者の血管系内に移植するように構成することができる。例えば、本明細書に記載されるような管腔内インプラントは、本明細書に記載されるような送達装置を介して、患者の動脈を通って患者内の頭蓋内送達部位に経皮的に移植することができる。このような管腔内インプラントは、頭蓋内送達部位において患者の血管をステント留置し、血管を通じて血流を許容することができる。送達は、カテーテル/マイクロカテーテル又はPTCAバルーンのガイドワイヤ内腔を通して行うことができる。標的治療動脈としては、本明細書に記載されているように、特に前遠位-M1、M2、M3、Acom、ACA、後位、脳底、Pcomを挙げることができる。送達は遠隔によるものでもよく、ロボット制御によるものでもよい。送達は3本のカテーテルではなく2本のカテーテル(マイクロカテーテル、.088ガイド)で行うこともできる。
【0030】
本明細書に記載の管腔内インプラント、装置、及びシステムは、患者の対象となる標的血管内にインプラントを移植するためのサイズ及び構成にすることができる。例えば、本明細書に記載の管腔内インプラント、装置、及びシステムは、前大脳動脈、内頸動脈、脳底動脈、前下小脳動脈、中大脳動脈、後下小脳動脈、椎骨動脈、前交通動脈、後大脳動脈、後交通動脈、レンズ状脳動脈、内頸動脈、又はこれらの血管分枝のいずれか1つ以上といった任意の頭蓋内血管内にインプラントを移植するためのサイズ及び構成にすることができる。別の例として、本明細書に記載の管腔内インプラント、装置、及びシステムは、内膜静脈、前心静脈、右縁静脈、小心静脈、大心静脈、前心室間静脈、中隔静脈、マーシャル斜静脈、左縁静脈、左後静脈、左心房静脈、後室間静脈、鋭縁動脈、左回旋動脈、左前下行動脈、中隔動脈、円錐枝、SA結節枝、左回旋動脈、鈍縁動脈、後外側枝、右冠状動脈、後下行動脈、又はこれらの枝のいずれか1つ以上といった任意の心臓血管内にインプラントを移植するためのサイズ及び構成にすることができる。
【0031】
本明細書においてインプラント、ステント、及び/又はステントインプラントとも呼ばれ得る管腔内インプラントは、約1mm~約6mm、約2mm~約5mm、約3mm~約4mmの範囲の拡張(例えば、移植)直径を有することができ、又は用途に応じて約1mmを超える直径若しくは約6mm未満の直径を有することができる。いくつかの実装では、本明細書に記載のインプラントは、約1mm~約6.5mm、約2mm~約5.5mm、約3mm~約4.5mmの範囲の拘束されない拡張直径を有することができ、又は用途に応じて約1mmを超える直径若しくは約6.5mm未満の直径を有することができる。本明細書に記載されるようなインプラントは、対象となる血管に対して特大とすることができ、したがって、(例えば、血管内での固定を改善するために)それが移植される血管に外向きの力を付与することができる。インプラントは、約5mm~約50mm、約5mm~約45mm、約5mm~約40mm、約5mm~約35mm、約5mm~約30mm、約10mm~約30mm、約10mm~約25mm、約15mm~約23mmの範囲の拡張された(例えば、移植された)長さを有することができ、又は用途に応じて約5mmより大きいか、又は約50mmより小さい長さを有することができる。
【0032】
患者の血管内に移植するように構成された本明細書に記載の管腔内インプラントは、血栓抵抗性コーティングを有する概して管状で拡張可能なフレーム(本明細書に記載のように経皮送達用に構成された)を含むことができる。管状フレームは、近位端、遠位端、及び近位端から遠位端まで延びる内腔を有し得る。管状フレームは、概して、管状フレームの円周に沿って延びる複数のリングを備えることができ、隣接するリングは、概して、複数の連結支柱によって互いに連結される。フレームのリング支柱及び連結支柱は、強化された可撓性及び適合性を有する管腔内インプラントを提供するように構成することができる。更に、管状フレームは、インプラントの部分的配置後にインプラントが再収納及び/又は再位置決めされる能力を促進するために、管状フレームの中央部分に沿った自由頂部を概してなくすことができる。
【0033】
管状本体は、送達時に膨張するように構成された材料で作ることができ、そのような材料として、ニチノールのような形状記憶材料を備えることができる。いくつかの実装では、拡張可能な本体は、半径方向に折り畳む/圧着するように構成することができる。いくつかの変形例では、拡張可能な本体は、形状記憶のない、又は形状記憶をほとんどしない材料を備えることができ、移植のために拡張可能な本体を拡張するためにバルーンを使用することができる。このようなバルーンは、閉塞性バルーン、又は中空バルーンなどの非閉塞性バルーンとすることができる。管腔内インプラントは、1つ以上の抗血栓性コーティング及び/又は1つ以上の薬剤溶出性コーティングなどの、1つ以上のコーティングを含むことができる。いくつかの実装では、インプラントは、例えば、抗再狭窄特性を有する、及び/又は急性脳卒中の設定における、ICAD/ICASの治療のための薬剤溶出性インプラントを備えることができる。いくつかの実装では、後のインプラントの回収及び/又は除去を促進するために、インプラント内での内植を防止する材料及び/又はコーティングを利用することが望ましい。逆に、いくつかの場合では、インプラント内及び/又はフレーム及びインプラントの支柱又は放射線不透過性マーカのいずれかの周囲での内植を許容及び/又は促進する材料及び/又はコーティングを利用することが望ましい。
【0034】
本明細書に記載されるような管腔内インプラントを送達するための血管アクセスとして、内頸静脈、鎖骨下静脈、大腿静脈及び/又はその他を含むことができる。このようなアクセスポイントから、インプラントは、移植の所望の位置に達するまで、本明細書に記載の送達装置(例えば、送達カテーテル)によって患者の血管系内で前進させることができ、その上で、インプラントを送達して移植のために拡張させることができる。導入用シース、ガイドワイヤ、ガイドカテーテル、アクセスカテーテル、及び/又は他の装置又は構成要素が、標準的な画像化方法と同様に、送達のために利用され得る。更に、本明細書に記載のインプラント及び関連する送達装置は、送達及び移植を促進するために放射線不透過性の特徴を含むことができる。
【0035】
本明細書に記載されているような1つ以上の管腔内インプラントを患者内に移植することができる。いくつかの場合では、患者内に1つの管腔内インプラントのみを移植させることが有益であり得、又は患者内に複数の管腔内インプラントを移植させることが有益であり得る。複数の管腔内インプラントが患者内に移植される場合には、そのようなインプラントは、所望の治療結果を達成するために必要に応じて協働することが可能である。更に、同じ患者内に同じサイズ又は異なるサイズの管腔内インプラントを移植することができる。
【0036】
本明細書に記載された実装のいずれかにおいて、移植可能な装置は、動脈瘤及び/又はICASの治療における使用のために構成及び/又は被覆され得る。
【0037】
インプラントのコーティングは血栓形成を抑制するか、又は実質的に抑制することができる(例えば、コーティングは血栓抵抗性であり得る)。いくつかの実装では、インプラントの形状及び/又はコーティングは、内皮化を促進又は実質的に防止することができる。血栓抵抗性は、例えば、タンパク質吸着、細胞接着、及び/又は血小板及び凝固因子の活性化(例えば、低血小板ストレス蓄積(δdt))の減少によって達成され得る。内皮化は、本来の血管壁の内膜表面から、又は循環内皮前駆細胞からインプラント上への内皮細胞の遊走及び接着を促進することによって、及び/又は移植前にインプラント上に内皮細胞を播種することによって達成され得る。好ましい実施態様において、コーティングは、薄く、堅牢であり(例えば、機械的摩擦で剥がれ落ちない)、及び/又はニチノール、コバルトクロム、ステンレス鋼などの金属表面に被着させることができる。コーティング特性は、コーティング材料の選択、インプラント上のコーティングの処理、及び/又はコーティング表面の設計によって達成することができる。いくつかの実装では、インプラントの他の耐荷重特性を維持しながら、血小板応力の小蓄積量化を達成するようにインプラントの形状を最適化することができる。
【0038】
いくつかの実装では、インプラント用のコーティングは、コーティングがインプラント表面でタンパク質及び血液成分又は因子(例えば、血小板、細胞など)と相互作用するような、受動的血栓塞栓症抵抗性コーティングを含むことができる。本明細書の他の箇所に記載されるように、受動的血栓塞栓症抵抗性コーティングの好ましい非限定的な実装としては、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体)(poly(vinylidene fluoride co-hexafluoropropylene)、PVDF-HFP)、フルオロホスファゼン、ヘパリンポリビニルピロリドンポリ(エチレングリコール)(heparin-polyvinylpyrrolidone-poly(ethylene glycol)、HEP-PVP-PEG)、及びホスホリルコリンポリビニルピロリドン(PC-PVP)が挙げられる。
【0039】
いくつかの実施態様において、インプラント用のコーティングは、コーティングがインプラント表面及び/又は表面近傍領域においてタンパク質及び血液成分又は因子(例えば、血小板、細胞など)と相互作用するような、活性型血栓塞栓症抵抗性コーティングを含むことができる。活性型血栓塞栓症抵抗性コーティングは、局所溶出システム及び/又はタンパク質及び/又は血液成分、例えば内皮前駆細胞(endothelial progenitor cells、EPC)を捕捉する(例えば、表面受容体と相互作用又は結合する)ように構成されたコーティングを含むことができる。
【0040】
いくつかの実装では、インプラントコーティングは、ICASの治療中における処置中のリスク及び/又は処置直後のリスクを低減することができる。いくつかの実装では、ICASを治療するためのインプラントは、
図1Bに示されるように、非脳底動脈への挿入のために構成される。いくつかの実装では、ICASを治療するためのインプラントは、
図1Bに示されるように、脳底動脈への挿入のために構成される。いくつかの実装では、ICASを治療するためのインプラントは、プラークを安定化させ、破裂又は破裂の可能性を減少させ、及び/又は再狭窄を防止するように構成される。いくつかの実装では、ICASを治療するためのインプラントは、二重抗血小板療法(dual antiplatelet therapy、DAPT)又は単一抗血小板療法(single antiplatelet therapy、SAPT)とともに使用するように構成される。
【0041】
コーティング材料は、フッ素化又はペルフルオロポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVDF)又はその共重合、フルオロホスファゼンなど);プラズマ蒸着フッ素材料;双性イオン性物質;ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP);ホスホリルコリン(phosphorylcholine、PC);ポリ(メタクリル酸ブチル)(poly(butyl methacrylate)、PBMA);ポリジメチルシロキサン(polydimethyl siloxane、PDMS);アルブミン、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan、GAG);スルホン酸材料、グライム材料;ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)ベースの材料;カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、又はそれらのメタクリル酸バージョン;自己組織化単分子膜(例えば、フルオロシラン);ヘパリン又はヘパリン様分子又は他の抗凝固剤;直接トロンビン阻害剤(例えば、ヒルジン、ビバリルジン、レピルジン、デシルジン、アルガトロバン、イノガトラン、メラガトラン、キシメラガトラン、ダビガトラン、など);クルクミン;トロンボモジュリン;プロスタサイクリン;DMP728(血小板GPIIb/IIIa拮抗薬);キトサン又は硫酸化キトサン;ヒアルロン酸;タンタルドープ酸化チタン;酸窒化物;酸化物層、ダイヤモンド状炭素膜(diamond-like carbon、DLC)又はフッ素化DLCなどの無機材料、炭化ケイ素などを含むが、これらに限定されない多数の材料の組み合わせから選択されるか、そこから誘導されるか、部分的に構成されるか、又はそれらから生成され得る。
【0042】
いくつかの実装では、コーティングは主にヘパリンを含む。ヘパリンコーティングは、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第5529986号明細書に記載されている方法に従って作成することができる。追加的に、又は代替的に、ヘパリンコーティングは、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第7550444号明細書に記載されている方法に従って、ベンゾフェノンなどの光化学架橋剤を用いて作成することができる。例えば、ヘパリンコーティングは、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene、PVDF-HFP)表面に適用できる。PVDF-HFP表面は、ヘパリンがPVDF-HFP表面上又は表面下に塗布されるように、例えば薬剤溶出ステント上にあってもよい。例えば、ポリエチレンイミン(polyethylene imine、PEI)は溶液(純粋なPEI、又は水、メタノール、エタノール若しくはクロロホルムで希釈したPEI)からPVDFコーティング上に吸着される。参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許5529986号明細書に記載されているように、ヘパリンとポリリジンの高分子複合体が調合され、PEI層に適用される。化学吸着が起こり、1つ以上又は複数のイオン性相互作用を介してヘパリンが表面に結合する。
【0043】
いくつかの実装では、ヘパリンコーティングは、例えば、透過型電子顕微鏡集束イオンビーム(transmission electron microscope focused ion beam、TEM-FIB)による測定で、約1nm~約1μmの範囲、好ましくは1μm未満、又は100nm未満、又は50nm未満、又は15nm未満、又は10NM未満の範囲の薄さであってもよい。いくつかの実装では、ヘパリンコーティングは、TEM-FIBによる測定で、約5nm~約15nm、約5nm~約12nm、約4nm~約13nm、好ましくは約5.4nm~約12nm、更に好ましくは約8nm~約9nmの範囲であってもよい。
【0044】
いくつかの実装では、ニチノールを含むインプラントにこれらのコーティングを適用する場合、光照射を減らすか、又は光照射をしないことが望ましい。電解研磨されたニチノールの表面は酸化チタンを含み、酸化チタンは光触媒として働き、多くの有機分子を分解することができる。電解研磨されたニチノール装置は、ニッケルイオンが実質的に枯渇し、非晶質TiOXである表面層を有する(例えば、Nagaraja,S及びPelton,A. “Corrosion resistance of a Nitinol ocular microstent:Implications on biocompatibility”, J.Biomed Mater Res.2020;108B:2681-2690を参照)。TiO2による光触媒作用は、紫外線(ultraviolet、UV)光(例えば、約413nm未満、約420nm未満、約415nm未満、又は約315nmから約415nmの間の波長)が使用される場合に最も効率的である。酸素及び水の存在下での二酸化チタンの照射は、ヘパリン及び他の有機種を分解し得るヒドロキシラジカル種を生成する(例えば、Blazkova,A.ら、“Photocatalytic degradation of heparin over titanium dioxide” J.Materials Science 30(1995)729-733を参照。参照によりその全体が本明細書に援用される)。この過程で生成するヒドロキシラジカルは、ヘパリンを含む有機種の分解を引き起こす可能性がある。更に、このプロセスはまた、インプラント表面をより親水性又は比較的親水性にする可能性があり、これはインプラント表面と、本明細書に記載のプライマ及び/又はコーティングなどの様々なプライマ又はコーティングとの間の相互作用を潜在的に妨害する可能性がある。したがって、いくつかの実装では、処理後にインプラントの表面の疎水性を改質することが有利であり、例えば、プライマ及び/又はコーティングとの結合を改善するために、インプラント表面の疎水性を高める(例えば、より疎水性にする)。
【0045】
ヘパリンや同種の物質の光分解を防止するために、製造、保管、輸送、最終使用時の光曝露を最小化する必要がある。これは、コーティングされた装置をポリイミドチューブ、又はUV光を遮断する他の不透明な保管容器に保管することによって行うことができる。
【0046】
いくつかの実装では、コーティングは、疎水性表面を形成するために、主にプラズマ蒸着フッ素を含む。フッ素は、パーフルオロプロピレン(perfluoropropylene、C3F6)などのフルオロカーボンガス(プラズマフッ素化)に由来してもよく、前駆体分子を装置表面上で架橋させて、より堅牢なコーティングを形成することができる。
【0047】
いくつかの実装では、コーティングは主にプラズマ蒸着されたグライムからなる。グライムとはグリコールエーテル溶媒のことであり、ポリ(エチレンオキシド)(poly(ethylene oxide)、PEO)及びポリ(エチレングリコール)(poly(ethylene glycol)、PEG)と同じ繰り返し単位を共有するため、これらのポリマーに由来する材料と同じ生物学的特性の一部を示す。グライムは、例えばテトラグライム(tetraglyme、CH3O(CH2CH2O)4CH3)に由来するものであってもよく、前駆体分子を装置表面で架橋させて、より堅牢なコーティングを形成することができる。
【0048】
いくつかの実装では、コーティングは主にホスホリルコリン生体材料からなる。ホスホリルコリンは、赤血球上の二層細胞膜を形成する多くのものを含む、いくつかのリン脂質の親水性極性頭部基である。ホスホリルコリンは双性イオン性で、プラスに帯電したコリン基と共有結合した、マイナスに帯電したリン酸を含む。分子の極性が高いため、ホスホリルコリン生体材料には、タンパク質の吸収や細胞の接着に抵抗する強力な水和殻が付与されると考えられている。ホスホリルコリンは、再狭窄を防ぎ、血栓症に抵抗するために、冠動脈薬剤溶出ステントのコーティングに一般的に使用されている。ポリマー性ホスホリルコリン生体材料は、疎水性ドメインとホスホリルコリン基の両方をポリマー鎖に結合させることができ、疎水性ドメインはポリマー鎖をコーティングされる表面に固定し、ホスホリルコリン基は水性の生物学的環境に向かって配向する。ホスホリルコリン生体材料は、ステンレス鋼、ニチノール、チタン、金、及び白金などの金属;ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、ポリメタクリル酸メチル(poly(methyl methacrylate)、PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリウレタン(polyurethane、PU)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroetylene、PTFE)などのプラスチック;シリコーン、ラテックス、ポリイソブチレン(polyisobutylene、PIB)などのゴム;ガラス;セラミック;歯のエナメル質などの生体組織のコーティングに使用することができる。ホスホリルコリン共役ポリマーは、ポリマー骨格が架橋されたバルク生体材料を形成するためにも使用することができる。
【0049】
いくつかの実装では、ポリマー骨格は、ホスホリルコリンを組み込んだメタクリレートポリマーであり得る。多くの実装において、ホスホリルコリン基は、ポリマー骨格に結合した官能基の少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、又は25%を超えて含むであろう。これらのポリマーは、分子構造を精密に制御できるように合成的に生成してもよいが、天然に存在する生体分子を忠実に模倣してもよい。様々なモノマーがホスホリルコリンポリマーに含まれ、その正確な化学的性質を変化させ、薬物ペイロードとの相互作用に影響を与えることにより、薬物送達のためのホスホリルコリン生体材料を調整するのに有用である。ホスホリルコリン生体材料は、含水率、硬度、及び/又は弾性を容易に調節することができる。ホスホリルコリン生体材料のコーティングは、信頼性が高く再現性の高い溶液ベースの技術によって表面に適用され、滅菌が比較的簡単である。ホスホリルコリンの適切な組成物としては、Vertellus社のPC1036及び/又はPC1059が挙げられる。
【0050】
いくつかの実装では、コーティングは、主に、溶液ベースの処理によって適用されるフッ素化ポリマー又はペルフルオロポリマーを含む。プラズマ蒸着フッ素表面と同様に、フッ素化ポリマー又はペルフルオロ化ポリマーは疎水性表面をもたらす。接着を促進するために、好ましくは約264kDa~376kDaのポリn-ブチルメタクリレート(poly n-butyl methacrylate、PBMA)などのプライマをまずインプラントに付着する。適切なポリマー前駆体はポリ(フッ化ビニリデンco-ヘキサフルオロプロピレン)(poly(vinylidene fluoride co-hexafluoropropylene)、PVDF-HFP)であり得、好ましくは約254kDa~293kDaの分子量を含むことができる。PVDF-HFPは、広がりを容易にするために表面張力の低い溶媒、好ましくは速やかに蒸発する溶媒を介して適用することができる。ポリマー溶液は、浸漬コーティング、又はスピン若しくは乾燥技術によって適用することができる。塗布したての装置に加熱乾燥や強制給気を適用することで、ウェビングを減らすことができる。フッ素化ポリマーやペルフルオロポリマーは、より堅牢なコーティングを生成するために、インプラント表面で架橋させることができる。他の適切なフッ素ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVDF)、フルオロホスファゼン、フッ素化エチレンプロピレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ素化シラン(例えば、パーフルオロウンデカノイルシラン)が挙げられる。
【0051】
コーティングの組み合わせの好ましい非限定的な例としては、PC、PEG、ヘパリン及びPVP;PCとPEG;ヘパリン、PEG、及びPVP;PC及びPVP;PEG-co-PBMA-co-PEG;PC及びPBMA;PEG及びPBMA、ランダム又はブロック構造のいずれか、が挙げられる。例えば、インプラント(例えば、PBMA)の金属表面への接着性を高めるため、インプラント(例えば、ホスホリルコリン)の生体模倣性を高めるため、インプラント(例えば、PEG)のタンパク質反発性を高めるためなど、1つ以上のポリマーを添加することができる。2つ以上のポリマーの比率及び/又は分岐(例えば、直鎖状、分岐状、高分岐状、櫛歯状、多腕星状など)は、疾患の種類(例えば、動脈瘤、頭蓋内アテローム性動脈硬化症など)、位置、誘因となった損傷又は事故後の時間などに応じて最適化することができる。
【0052】
いくつかの実装では、装置をコーティングするためのポリマーは、ランダム又はブロック構成のPC-co-X-co-PEGを含むターポリマーを含むことができ、ここでXはPBMAのような金属接着基からなる。例えば、ポリマー構成はPC-X-PEG;X-PC-PEG(ブロック);X-PEG-PC(ブロック);又はX-(PEG-PC-PEG-PC-PEG-PC-PEG-PC-PEG-PC)(ランダム)を含むことができる。ポリマーの分岐構造(例えば、直鎖状、分岐状、高分岐状、櫛歯状、多腕星状など)も最適化され得る。
【0053】
いくつかの実装では、コーティングは、バルクポリマーと混和性である一方のブロックを含み、他方のブロックがバルクポリマーと非混和性であり、熱処理中に添加される官能性ブロックであるブロック共重合体である表面改質添加剤(surface modifying additives、SMA)を含むことができる。いくつかの実装では、SMA加工は、バルクポリマーのガラス転移(glass transition、Tg)よりわずかに小さいが、SMA-Tgを超える温度に最適化するなどの二次加工によって、表面ブルーミングを更に促進するように改質することができ、SMAの遊走を可能にしながら、バルクポリマーの熱特性の変化を最小限に抑えることができる。いくつかの実装では、チューブ又はワイヤを形成する押出部又は成形部を、SMAの遊走を促進し得るバルクポリマーを可塑化する溶媒環境にさらすことができる。いくつかの実装では、SMAの遊走には良溶媒(例えば、溶媒に対する溶解度が80%まで)を使用してもよいが、バルクポリマーには限界溶媒(例えば、溶媒に対する溶解度が0.5%以下)を使用して、バルクポリマーが可塑化してチューブ、ワイヤ、及び/又はフィルムを形成することもできる。表1は、SMAの遊走に使用可能な溶媒をまとめたもので、Xは不溶性、Oは可溶性、#は部分的に可溶性、*は不明である。溶媒への曝露は、直接接触でも、溶媒曝露の継続時間を一定又は周期的にオン・オフする溶媒湿潤環境でもよい。いくつかの実装では、SMA及びバルクポリマーは、チューブ、ワイヤ、及び/又はフィルムを形成するために、エレクトロスプレー法、エレクトロスピン法、又は溶液紡糸法を用いることができる。
【0054】
【0055】
いくつかの実装では、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ポリ(アクリルアミド)(poly(acrylamide)、PAAm)、ポリ(n-イソプロピルアクリルアミド)(poly(n-isopropylacrylamide)、NIPAAM)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose、CMC)、及び他のポリマーを含むSMAの親水性ブロックによる外径/内径(outside diameter/inside diameter、OD/ID)潤滑性のために、SMAをカテーテルシステムのコーティングとして使用することができる。
【0056】
いくつかの実装では、SMAはOD/ID低摩擦表面としてカテーテルシステムのコーティングとして使用することができる。例えば、このような用途では、SMAは、ヘキサフルオロポリプロピレン(hexafluoropolypropylene、HFP)、フッ化ビニリデン(vinylidene fluoride、VDF)、及び他のフルオロポリマーを含むが、これらに限定されないフッ素化ブロック内のものであってもよい。
【0057】
いくつかの実装では、SMAは、OD/ID血栓抵抗性のための高分子インプラント又はカテーテルシステムのコーティングとして使用することができる。例えば、このような用途では、SMAは、PEG、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene difluoride、PDVF)、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデン(tetrafluoroethylene, hexafluoropropylene, and vinylidene fluoride、THV)のターポリマー、及び他のポリマーを含むが、これらに限定されない機能ブロック内のものであってもよい。いくつかの実装では、OD及びIDは、上記の2つの異なるSMAを有するように非対称にコーティングされ得る。例えば、ODにはPEGを、IDにはPVDFを使用することができる。
【0058】
いくつかの実装では、SMA上の不飽和アリル基、アクリレート基、-SH基を用いてSMA構造を改質することができる。表面へのブルーム後、これらの基は、カテーテル用の親水性コーティングを含む表面コーティングと架橋するために使用することができる。いくつかの実装では、ジブロックアーキテクチャの代わりにトリブロックアーキテクチャ(フランキングブロックがバルクポリマーと非混和性)を用いると、フランキングブロック及びバルクポリマーブロックの様々なブロックサイズ比と分子量により、表面への熱力学的駆動力が増加する。いくつかの実装では、ジブロックアーキテクチャの代わりにトリブロックアーキテクチャ(フランキングブロックがバルクポリマーと混和性)を用いると、フランキングポリマー及びバルクポリマーの様々なブロックサイズ比と分子量により、ポリマー表面の安定性が増加する。
【0059】
いくつかの実装では、SMA構造は、例えばフッ素又はPEGなどの血栓抵抗性頭部基を含むように改質されることがあり、これにより、表面へのブルーム後に、血液と接触するインプラントの表面に血栓塞栓抵抗性が付与される。
【0060】
コーティング材料は、選択された組成に応じて、プロセス数に従ってインプラント表面に適用することができる。これらのプロセスには、プラズマ蒸着、グロー放電蒸着、化学蒸着、低圧化学蒸着、物理蒸着(液体源又は固体源)、プラズマ強化化学蒸着、プラズマ支援化学蒸着、熱分解(例えば、パリレンなどのフルオロポリマーによるもの)、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、パリレンなどのフルオロポリマーによるもの)、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、マグネトロンスパッタリング、スパッタ蒸着、イオンプレーティング、パウダーコーティング、熱溶射コーティング、シラン化、及び/又はレイヤーバイレイヤー重合が含まれるが、これらに限定されない。いくつかのプロセス(例えば、シラン化又はレイヤーバイレイヤー重合)は、薄いコーティングを形成するために特に有用であり得る。適用プロセスは、蒸着プロセス又は溶液ベースのプロセスに大別することができる。いくつかの実装では、蒸着プロセスは平衡反応又は非平衡反応に従って進行し、安定な前駆体又は容易に気化する活性前駆体を使用することができる。蒸着プロセスは、特に複雑なパターン又は形状が関与する場合、特定の組成物を装置の異なる領域に選択的にのみ適用するコンフォーマルコーティングの作製に特に適している可能性がある。蒸着は比較的短時間で行うことができ、薄い高純度コーティング(例えば、20nm未満、20nm~50nm、50nm~75nm、75nm~100nm、100nm~150nm、150nm~300nm、300nm~500nm、500nmより大きい、又はその間の任意の範囲の厚さ)を容易に生成することができる。溶液ベースのプロセスは、信頼性の高い分子構造をもたらし、分子構造及び/又は生物学的活性を変化させることなく、滅菌に容易に適応し得る。材料の多くは、熱溶融及び/又は架橋によって、適用後に硬化させることができる。
【0061】
いくつかの実装では、コーティングを適用する前にインプラントを下地処理することができる。インプラントを下地処理することにより、コーティングをインプラントに(例えば、インプラントの支柱又はワイヤに)付着しやすくすることができる。表面の下地処理は、メディアブラスト、サンディング、スクライビングなどの機械的手段によって行うことができる。機械的な下地処理は、インプラントの表面積を増大させることができる。表面積の増大は、コーティング分子及び/又はコーティング細胞(例えば、内皮細胞)の接着を促進させることができる。いくつかの実装では、インプラントの電解研磨を非最適化して、インプラントの少なくともいくらかの表面粗さを達成することができる。表面の下地処理は、エッチング(例えば、プラズマエッチング)などの化学的手段、又は分子結合部位を活性化するための水素イオン又は窒素イオンによる照射などの他の表面官能化法によって行うことができる。表面の下地処理は、基材の蒸着(例えば、パリレン、シランなど)、スパッタリングコーティング、及び/又は電気メッキコーティング(例えば、白金、金、酸化アルミニウム)など、最終ポリマーコーティングの被着を助ける基材によるプレコーティングによって行うことができる。いくつかの実装では、複数のコーティング層又は複数コーティングをインプラントに適用することができる。インプラントの下地処理は、表面での余分な材料(例えば、ニチノール)の成長を含むことができる。下地処理は犠牲粒子法によって行うことができ、粒子を表面に付着させ、インプラントの余分な材料をそのような粒子の上に成長させ、次いでインプラントをヒートサイクルして、粒子、その上に成長した余分な材料、及びそのような余分な材料に付着した少なくとも一部の材料をインプラント表面から除去し、微細孔のある表面を形成する。下地処理は、基礎となるインプラント上及び/又はインプラントの1つ以上のコーティング上に行うことができる。いくつかの実装では、下地処理層は、例えば、熱処理、光化学処理、音波処理、及び/又は電磁場による処理を用いて、インプラントの一部から反応除去することができる。
【0062】
いくつかの実装では、インプラントの表面の疎水性を高めて、プライマ及び/又はコーティングの被着性を向上させることができ、特に、そのようなプライマ及び/又はコーティングがニチノールインプラントの表面に直接適用される場合に、そのようなプライマ及び/又はコーティングの被着性を向上させることができる。ニチノールインプラントは、例えば、その腐食のリスクを低減するために電解研磨され、その結果、酸化チタンの薄い表面層を有することがある。この酸化チタン層は、UV光に反応して表面の濡れ性が変化する。例えば、電解研磨されたニチノールの空気-水接触角は、一般的に45度から95度の範囲(例えば、極親水性から極疎水性まで)であると報告されている。PEIやPAVのようなプライマは疎水性効果を利用して表面に結合することができるため、ニチノールの表面自由エネルギーが変化すると、プライマとコーティングの被着性に影響を与える可能性がある。
【0063】
インプラントを洗浄する方法は、インプラントの表面の疎水性を高めることができる。例えば、漂白剤を使用してインプラントを洗浄することができる。炭化水素をインプラントに適用して、その表面の疎水性を高めることができる。例えば、アルカン(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、又は高級アルカン)又はシクロヘキサノンなどの水とほとんど混和しない高沸点の溶媒をインプラントに適用して、その疎水性を高めることができる。フッ化炭素をインプラントに適用して、その表面の疎水性を高めることができる。例えば、パーフルオロオクタン(CF3(CF2)6CF3)、フロリナートFC-40若しくはFC-70、又は1,1,2,2,9,9,10,10-オクタフルオロ[2,2]パラシクロファンをインプラントに適用して疎水性を高めることができる。インプラント表面は、(3-アミノプロピル)トリエトキシシランなどのアミノシラン、又はカルボキシシラントリオールなどのシランを用いて改質し、その疎水性を高めることができる。例えば、カルボキシエチルシラントリオール、二ナトリウム塩;又はN-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、三酢酸、三ナトリウム塩(Gelest社(三菱化学)から入手可能)を用いてインプラント表面を改質し、その表面の疎水性を高めることができる。これらのシランが提供するカルボキシ官能基は、ポリ(アリルアミン)塩酸塩と共有結合することができる。インプラント表面は、(トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)シラン(Gelest社(三菱化学)から入手可能)、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン(Millipore-Sigma社から入手可能)、又はトリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業から入手可能)などのフルオロシランを用いて改質し、疎水性を高めることができる。いくつかの実装では、シラン及びプライマは、例えば、ジメトキシシリルメチルプロピル変性(ポリエチレンイミン)、又はトリメトキシシリルプロピル変性(ポリエチレンイミン)(Gelest社から入手可能)を用いて、単一の工程にまとめることができる。
【0064】
ニチノールインプラントの表面の疎水性を高める代わりに、又はそれに加えて、本明細書に記載されているようなコーティング(例えば、ヘパリンコーティング)とニチノールインプラント表面との結合及び/又は結合の耐久性を向上させる他の様々な方法がある。ニチノールインプラント表面は、Denton Vacuum社(米国ニュージャージー州、Moorestown)が提供するようなタンタル層の物理蒸着によって改質し、疎水性を高め、及び/又はその結合を改善することができる。ニチノールインプラントの表面を蒸着によって酸化アルミニウム(Al2O3)でコーティングして、疎水性を高め、及び/又はその結合性を向上させることができる。ニチノールインプラントの表面を炭素又は白金でスパッタコーティングして、疎水性を高め、及び/又はその結合性を向上させることができる。ニチノールインプラントの表面を粗面化して、疎水性を高め、及び/又はその結合性を向上させることができる。ニチノールインプラントの表面を、マイクロブラストなどの機械的摩耗によって粗面化して、疎水性を高め、及び/又はその結合性を向上させることができる。ニチノールインプラントの表面を、例えば化学エッチング剤H2SO4/H2O2、HCl/H2SO4、及びNH4OH/H2O2を用いた湿式化学エッチングによって粗面化して、疎水性を高め、及び/又はその結合性を向上させることができる。ニチノールインプラントの表面を、例えば分子量が約100と低く、約100000と高いポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS)でコーティングすることで、疎水性を高め、及び/又はその結合性を向上させることができる。いくつかの実装では、ニチノールインプラントの表面をレーザ照射によって粗面化し、次いでPDMSの溶液でコーティングし、次いでPDMSを硬化させることで、疎水性を高め、及び/又はその結合性を向上させることができる。ニチノールインプラントの表面を、磁場アシスト放電機械加工又はマンガ電解研磨によって粗面化することで、疎水性を高め、及び/又はその結合性を向上させることができる。ニチノールインプラントの表面は、NiTiTaやNiTiCrなどのドーピング元素をニチノールに添加することで、疎水性又はより疎水性にすることができる。ニチノールインプラントの表面は、例えばフルオロカーボンやHFガスを使用したプラズマ処理によって、疎水性又はより疎水性にすることができる。ニチノールインプラントの表面は、P2iからのコーティングの蒸着によって、疎水性又はより疎水性にすることができる。いくつかの実装では、ニチノールインプラントの表面上の酸化チタン層は、赤外光への曝露によって、疎水性又はより疎水性にすることができる。ニチノールインプラントの表面は、パリレン-C、パリレン-N、パリレン-F、パリレン-D、パリレン-HT、及びパリレン-AF4を含むパリレンでコーティングすることで、疎水性を高め、及び/又はその結合性を向上させることができる。
【0065】
追加的又は代替的に、インプラントは内皮細胞の完全又は部分的な内腔層を含むか、又は移植前に内皮細胞で播種することができる。
【0066】
いくつかの実装では、コーティングを処理して、コーティングとインプラントとの被着性を高めることができる。例えば、全ての溶媒又は実質的に全ての溶媒をコーティングから除去して、ポリマー鎖を再配列及び/又はコンパクト化することができる。コーティングの被着性を向上させるための好ましい実装には、以下に順番に説明するように、化学エッチング、微粒子エッチング、蒸発した溶媒で環境を飽和させること、熱処理、及び/又はコーティング後の溶媒浸漬又は噴霧が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
化学エッチング(例えば、HF、HF+HNO3、など)は、コーティングが被着のためにより多くの表面積を有することを可能にすることができるテクスチャー表面を提供することができる。この方法は、広範囲の表面粗さを生成することができる。粒子エッチング(例えば、プラスチック部品又は重曹を使った場合)も、装置の表面を粗くすることができる。これは化学エッチングと同じ働きをするが、エッチング粒子が大きいため、より大きな欠陥が残る。
【0068】
更に、インプラントをコーティングする溶液に使用される溶媒と同じ溶媒を蒸発させた溶媒で環境を飽和させることにより、均一又は実質的に均一なコーティングが生成される前にコーティングを乾燥させることなく、コーティングがインプラント表面上に均一に広がるようにすることができる。
【0069】
コーティング完了後、コーティングされたインプラントを熱処理することで、コーティングからの溶媒除去を促進し、コーティングの表面を滑らかにすることができる。熱処理は、30℃~80℃の温度で行うことができる。代替的又は追加的に、高温で熱処理を行うと、溶媒が除去されるだけでなく、ポリマー鎖が稠密構造に配列し、更に薄く滑らかなコーティングが得られる。例えば、熱処理は、81℃~250℃の温度で行うことができる。
【0070】
コーティング後の溶媒浸漬又はスプレーはまた、又は代替的に、コーティングの表面を平滑化し、及び/又はコーティングの厚さを減少させることができる。このような実装において、好適な溶媒は、元のコーティング溶液に使用された溶媒及び/又はポリマーを溶解する溶媒である。浸漬又は噴霧の工程は、短時間で行われるか、又は元のコーティングが完全に除去される前に平衡に達することがある。
【0071】
いくつかの実装では、コーティングの前にプラズマ洗浄を行うと、ステントインプラントの表面にわずかな電荷が残り、より滑らかなコーティングが可能になる。
【0072】
コーティングは、特に神経血管用途において、組織破片が危険な塞栓を生じる危険性を低減するために、薄いことが好ましい。同じ理由で、コーティングは、インプラントが拡張されるとき(例えば、支柱が互いに擦れ合うか、又はその送達装置の部品と擦れ合う可能性があるとき)に生じる摩擦時に、組織破片の生成に対して耐久性があり、また生成しにくいことが好ましい。いくつかの実装では、コーティングの厚さは約300nm以下である。機械的に堅牢であり、コーティング後に剥がれたり割れたりしないコーティング材料は、より厚いコーティング(例えば、300nmの厚さのコーティング)に特に適している。いくつかの実装では、コーティングの厚さは、約3nm以下、5nm以下、8nm以下、10nm以下、15nm以下、20nm以下、25nm以下、30nm以下、40nm以下、50nm以下、60nm以下、75nm以下、100nm以下、150nm以下、200nm以下、又は300nm以下である。いくつかの実装では、コーティングの厚さは300nmを超えることもあれば、3nm未満(例えば、オングストロームのレベル)であってもよい。より薄いコーティング(例えば、厚さ75nm以下)は、インプラントの中心内腔を通る流れ特性に対するコーティングの機械的寄与を最小限に抑えながら、内皮化及び/又は抗血栓形成において強固な性能を提供することができる。より薄いコーティングは、脳卒中のような塞栓形成のリスクをもたらす可能性のある、より大きなサイズの組織破片を生成する可能性がより低くなり得る。好ましい実装では、コーティングの厚さは、約4nm~15nm、5nm~20nm、5nm~30nm、25nm~50nm、30nm~50nm、30nm~40nm、40nm~50nm、35nm~40nm、40nm~60nm、50nm~60nm、25nm未満の厚さ、15nm未満の厚さ、4nmを超える厚さ、又は60nmを超える厚さであってもよい。最適な範囲内のコーティングは、潜在的な毒性の懸念を最小限に抑えながら、十分な表面被覆と血栓形成性の低減を提供することができる。例えば、幾つかの実装では、全てのコーティングが装置から剥がされたとしても、薄いコーティング中のコーティング材料の量は毒性の閾値を下回る。コーティングの被覆率及び厚さは、走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy、SEM)によって決定することができる。いくつかの実装では、100%の表面被覆率が達成される。いくつかの実装では、100%未満の表面被覆率が達成される(例えば、25%、50%、75%、80%、90%、25%未満、90~100%の間、又はその間の任意の範囲)。いくつかの実装では、装置は、十分な抗血栓形成特性を達成するために100%の表面被覆率を必要としないものであってもよい。耐久性は、模擬疲労の前後にSEMを実施することによって評価することができる。また、好ましい実装において、コーティングされたインプラントはUSP788規格を満足する。すなわち、コーティングされたインプラントは、25μm以上の粒子を600個以下、又は10μm~25μmの間の粒子を6000個以下だけ生成する。更に、インプラントは好ましくは約2μm未満の微粒子を生成しない。
【0073】
コーティングは、インプラントの異なる領域に個別に施すことができる。いくつかの実装では、インプラント内腔の内径には血栓抵抗性を最適化するコーティングが適用され、インプラントの外径には内皮化を最適化するコーティングが適用されるか、又はその逆が適用される。あるいは、インプラントが送達装置を通過して血管内に配置される際の塞栓破片のリスクを低減するために、インプラントの外径はコーティングされない(例えば、インプラントの内径のみがコーティングされる)ようにすることができる。いくつかの実装では、コーティングは、インプラントの中央部に向かって(例えば、動脈瘤頸部に近接して配置されるように構成された部分に沿って)内皮化を促進し、インプラントの近位端及び遠位端に向かって血栓症を低減するように最適化される。動脈瘤頸部近傍の内皮化を促進することにより、動脈瘤を血管から閉塞させる内膜層の成長を促進することができる。前述の空間分布のさまざまな組み合わせも適用が可能である。具体的な実装の1つとしては、動脈瘤嚢の開口部に対向するインプラントの中央部分に抗CD34内皮前駆細胞(endothelial progenitor cell、EPC)捕捉コーティングを施す一方、近位端及び遠位端をPVDF-HFPでコーティングすることを含むことができる。他の実装では、インプラントの内径にPVDF-HFPとEPC捕捉コーティングが混在した空間分布パターンを含むことができる。分布パターンの指標は、EPCドメインの空間的周期性とEPCドメインのサイズによって定量化することができ、これら2つの指標の組み合わせによって、EPCドメインとPVDF-HFPドメインの全体的な面積割合が決定される。特殊なケースとして、EPC捕捉コーティングで100%カバーすることが考えられる。多機能コーティングパターンの空間分布は、急性期(t=0-1d)、亜急性期(t=1-30d)、長期(>30d)の異なるタイムスケールにおいて血栓塞栓性保護を提供する。メカニズム的には、EPC/PVDF-HFPパターン化コーティングは、表面及び表面近傍領域で血液タンパク質と血小板を調節することにより、血栓塞栓症抵抗性となる。さらなる生物学的な成果として、親血管からの動脈瘤嚢の隔離及び封止がより速くなる。更に、インプラントの長さに沿った特性のこのような変化は、別個の特性を有する別個の領域としてではなく、特性の勾配として達成することができる。特性の差は、コーティングの組成を変化させることによって、及び/又はコーティングを適用する際にコーティン差別化処理することによって達成することができる。任意の点におけるコーティングの組成は、上述した材料のうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実装では、このようなコンフォーマルコーティング方法は、動脈瘤が最終的に血管の本来の内腔から封止されるように、動脈瘤頸部に沿ってインプラントの内皮化を促進するために使用することができる。
【0074】
本明細書に記載の表面改質の少なくともいくつかは、現実のコーティング(25nm~1000nm、又は5000nmまで)として分類することができる。コーティングは、例えばPVDF-HFP、THV、PC-PBMA、PEG-PBMAのように、巨視的に蒸着させることができる。あるいは、表面移植片法(厚さ2nm~25nm又は100nmまで;分子レベルの表面反応;例としてフッ素化、PC移植片、PEG移植片、又はヘパリン移植片)を用いてコーティングすることもできる。
【0075】
コーティングされたインプラントの異なる領域では、異なる作用メカニズムによって血栓抵抗性が達成される可能性がある。例えば、コーティングは血小板の付着を防止する作用があり、比較的剪断力が高く、流速の速い領域では有効であるが、トロンビンフィブリンが血栓を発生させ成長させやすい鬱血した低流速領域ではあまり効果がない。したがって、潜在的な鬱血点を最小化することが重要となり得る。これは、前縁の総面積を最小にし、血流を妨げる各支柱又は支柱部分の前縁を丸くし、下流方向に面する支柱の後縁も任意で丸くすることによって達成できる。また、頂部の凹面が上流を向いている場合、頂部は潜在的な鬱血点を提供することができる。半径方向外側に偏るように「下流側」を向いた頂部を予め調節することで、隣接する血管壁に頂部をもう少し深く埋め込み、頂部の外形を低くして、血流との干渉を減らすことができる。上流側を指す頂部も同様に、半径方向外側に偏らせることができる。
【0076】
インプラントの物理的設計は、特に自然な血流を変化させる方法によって、その生体適合性に影響を与える可能性がある。血小板の活性化は、血液がインプラントを横切って流れる際に血小板が経験するストレスを減らすことによって減少させることができる。血液が流れる際に遭遇する装置材料の量(すなわち、装置が血管断面に占める割合)及び装置が血流と接する角度(テイクオフ角)の両方が、血小板が経験するストレス及びその結果生じる活性化に影響を及ぼす可能性がある。
【0077】
インプラントは、配置可能な血管ステント又は一時的な足場などの、永久的又は一時的な血管内足場であってもよい。いくつかの実装では、インプラントは動脈瘤治療装置であってもよい。このような実装では、インプラントはコイル又は他の塞栓インプラントに機械的支持を与え、それらが血流中に落下するのを防止し、コイルの高い充填密度を可能にする。いくつかの実装では、インプラントは動脈瘤内にコイル又はインプラントを一時的に保持することができる。コイルの充填密度が十分に高くなると、コイルは互いに十分な圧力を及ぼし合ってコイルを動脈瘤内に保持し、コイルが動脈瘤頸部を通って血流中に落下するのを防止することができる。いくつかの実装では、インプラントは血管内に移植されたままでよく、動脈瘤内でのコイルの保持を促進することができる。インプラントは、境界を機械的に支持するために、近位及び遠位の両方向において動脈瘤頸部の縁を少なくとも約3mm又は4mm以上越えて延びるものであってもよい。
【0078】
拡張前に、本明細書に記載のインプラントは、約0.41mm~約0.54mmの内径(例えば、インプラントの外径は約0.40mm~約0.48mmに折り畳まれていてもよい)を有する管状送達シース/カテーテル内に受容されるようなサイズにすることができる。様々な実装において、中央部分(又は動脈瘤と接するインプラントの部分)は、支柱間の間隙(例えば、間隙の最大寸法)は約0.125mm未満、約0.150mmインチ未満、約0.175mm未満、約0.225mm未満、約0.250mm未満、約0.275mm未満、約0.300mm未満、約0.325mm未満、約0.350mm未満、約0.375mm未満、約0.400mm未満、又は約0.400mmより大きい。いくつかの実装では、コイルの脱落を防止し、高いコイル充填密度を促進するために、ギャップは好ましくは約0.200mm以下である。いくつかの実装では、本明細書に記載のインプラントの支柱間の間隙は、実用的な程度に小さくすることができるが、マイクロカテーテルがそこを通過できる程度に大きく(0.500mm~1.1mm)することもできる。いくつかの実装では、本明細書に記載のインプラントの近位端及び/又は遠位端付近の支柱間の間隙は、動脈瘤頸部(例えば、インプラントの中央付近)に隣接して配置された支柱間の間隙より大きくすることができる。間隙寸法が大きい領域は、間隙寸法が小さい領域と比較して低密度の局所的な領域を形成することができる。いくつかの実装では、低密度の領域に介在する間隙は、高密度の領域に介在する間隙に比べて、約105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、150%、175%、200%、250%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、2000%、5000%、100%と105%の間、5000%より大きい、又はこれらの範囲内での任意の割合で、より大きな領域又は寸法(例えば、直径)を有することができる。
【0079】
本明細書に開示された管腔内インプラント、装置、システム及び方法は、特定の利点を提供し得る特定の態様で記載されているが、このような記載は限定することを意図するものではない。本明細書に記載された管腔内インプラントは、患者の脈管系の血管(例えば、静脈、動脈)、患者のリンパ系、患者の生殖系などを含む患者の様々な血管及び/又は通路に移植することができる。
【0080】
本明細書に記載及び/又は図示された管腔内インプラント、装置、システム、及び方法の実装及び/又は特徴のいずれか及び/又は全ては、2021年11月22日に出願された米国仮特許出願第63/281923号明細書「ENHANCED THROMBORESISTANCE AND/OR ENDOTHELIALIZATION FOR THREE DIMENSIONAL CONFIGURATIONS AND SURFACE CHEMISTRIES」に記載及び/又は図示された様々な装置、システム、及び方法に適用及び/又は利用することができ、その全ての記載内容が参照により本明細書に援用される。例えば、血栓抵抗性管腔内インプラント及び関連送達装置のような、本明細書に記載及び/又は図示される管腔内インプラント、装置、システム及び方法の実装及び/又は特徴のいずれか及び/又は全ては、米国仮特許出願第63/281923号明細書に適用することができる。
【0081】
管腔内インプラント
図1Aは、送達ワイヤ600を介したインプラント100の送達のために、被験者の血管系を通って被験者の神経血管部位への経皮的経路を確立するために使用されるインプラント送達カテーテル1100を有する被験者1の解剖学的構造を簡略化して示す図である。
図1Bは、被験者1の脳底及び非脳底動脈の解剖学的構造を簡略化して示す図である。本明細書に記載されるインプラント、装置、及びシステムは、
図1Bに示される解剖学的構造内、又は本明細書に記載されるように被験者の体内の他の場所にアクセスして配置するように構成することができる。
【0082】
図2A~
図2Eは、管腔内インプラント100の実装を示す。
図2Aは透視図であり、
図2Bは端面図であり、
図2C~
図2Dは側面図であり、
図2Eはインプラント100の平坦化パターン図である。インプラント100は、チューブから切断(例えば、レーザ切断)して、図示の概ね管状のフレーム110を形成することができる。インプラント100を形成するために使用されるチューブは、ニチノールなどの形状記憶材料及び/又は超弾性材料とすることができる。更に、管状フレーム110を形成するために切断されたチューブは、最終的なインプラントの直径(例えば、非拘束な/拡張された直径)とほぼ同じ直径の拡張チューブとすることができ、これは、最終的な直径に形状設定するよりも有利な製造方法となり得る。いくつかの実装では、インプラントは、後に最終的な直径に形状設定されるチューブから切断することができ、又は、インプラントは、本明細書に図示及び説明される構成に形状設定されたワイヤから製造することができる。インプラント100の管状フレーム110は、概して、切断、形状設定、メディアブラスト(例えば、形状設定の結果生じた炭素層を除去するため)、及び電解研磨が可能である。電解研磨により、管状フレーム110の縁部に有利に丸みをつけることができる。インプラント100は自己拡張型であり、送達時には折り畳まれたり又は圧着した構成を有し、移植時には拡張された構成を有することができる。
【0083】
少なくとも
図2Aに示されるように、インプラント100は概して、管状フレーム110が長手方向軸線103を有する内腔104を規定する近位端101及び遠位端102を有することができる。更に図示のように、インプラント100は1つ以上の放射線不透過性マーカを含むことができる。このような放射線不透過性マーカは、近位端101及び/又は遠位端102に配置することができ、又は近位端101及び/又は遠位端102に隣接させることができる。例えば、及び
図2Aに示されるように、インプラント100は、近位端101に1つ以上の近位放射線不透過性マーカ181を含むことができ、遠位端102に1つ以上の遠位放射線不透過性マーカ182を含むことができる。いくつかの実装では、インプラント100は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の近位放射線不透過性マーカ181など、少なくとも1つの近位放射線不透過性マーカ181を含むことができる。いくつかの実装では、インプラント100は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上の遠位放射線不透過性マーカ182など、少なくとも1つの遠位放射線不透過性マーカ182を含むことができる。このような放射線不透過性マーカは、インプラント100に接続(例えば、圧着)するか(例えば、インプラント100の管状フレーム110に接続するか)、又はインプラント100の一体部分とすることができる。放射線不透過性マーカ181、182は、送達中及び移植中のインプラント100の視覚化を促進することができる。いくつかの実装では、放射線不透過性マーカ181、182は、インプラント100の送達中に撮影されたときに、可視性のしきい値どおりか、又はしきい値を少し超えるサイズ及び構成となっている。放射線不透過性マーカ181、182のこのようなサイズ及び構成は、移植後に放射線不透過性マーカ自体が血栓を生じさせないようにして、血栓抵抗性インプラント100を提供するのに役立つ。
【0084】
少なくとも
図2Aに更に示されているように、インプラント100の一部又は端部は、半径方向外側に拡開させることができる。例えば、近位端101に隣接するインプラント100の一部分は、近位方向に向かって半径方向外側に拡開状とすることができ、及び/又は遠位端102に隣接するインプラント100の一部分は、遠位方向に向かって半径方向外側に拡開状とすることができる。このような拡開部は、有利には、インプラント100の近位端及び遠位端(及びインプラント100のあらゆる放射線不透過性マーカ、例えば放射線不透過性マーカ181、182)と、インプラント100が移植される血管の壁、特に血管の湾曲部の近傍又はカーブ部の近傍との間の位置合わせを確実にし、血管に移植されたときにインプラント100の近位端及び遠位端で可能な限り低い外形を確保し、これにより、例えば、移植部位の血管を通る体液(例えば、血液)の流れに対するインプラント100の影響を最小化又は排除し、送達中及び血管に移植されたときの所望の位置でのインプラント100の固定を促進し、及び/又は血管に移植されたときの所望の位置からのインプラント100の遊走の防止を促進することができる。いくつかの実装では、インプラント100は、拡開状の近位部分及び/又は遠位部分、又は近位端及び/又は遠位端を有さない。
【0085】
インプラント100(例えば、インプラント100の管状フレーム110)は、厚さ(例えば、壁厚)約10ミクロン(μm)~約100μm、約20μm~約90μm、約25μm~約80μm、約30μm~約70μm、約35μm~約60μm、約40μm~約55μm、約40μm~約50μm、約40μm、約41μm、約42μm、約43μm、約44μm、約45μm、約46μm、約47μm、約48μm、約49μm、約60μm未満、約50μm未満、又は約25μmより大きい厚さを有することができる。このような薄い壁厚は、移植部位の血管を通る体液(例えば、血液)の流れに及ぼすインプラント100の影響を有利に最小化又は排除することができる。複数のリング支柱122、142、162、複数の連結支柱145、1つ以上の近位側延在支柱125、及び/又は1つ以上の遠位側延在支柱165などのインプラント100の支柱の幅は、それらの壁厚(例えば、管状フレーム110の壁厚)とほぼ同じにすることができる。いくつかの実装では、複数の連結支柱145の幅は、複数のリング支柱122、142、162の幅よりも小さい。このような構成は、インプラント100をより柔軟に、よじれに強く、及び/又は隣接する血管壁にふさわしいものとすることができる。いくつかの実装では、インプラント100の支柱の幅は互いにほぼ同じである。いくつかの実装では、インプラント100の支柱の幅の少なくとも一部は互いに異なっている。
【0086】
インプラント100(例えば、インプラント100の管状フレーム110)は、約1mm~約6mm、約1.5mm~約5.5mm、約2mm~約5mm、約2.5mm~約4.5mm、約3mm~約4mm、約3mm、約4mm、約5mm未満、又は約2mmより大きい直径111を有することができる。このような直径は、拡張された/非拘束な状態にあるときのインプラント100の中央部分(例えば、拡開状の遠位端及び近位端/近位部分及び遠位部分を含む場合は含まない)に沿って測定することができる。
【0087】
インプラント100(例えば、インプラント100の管状フレーム110)は、約5mm~約70mm、約8mm~約65mm、約10mm~約60mm、約12mm~約55mm、約15mm~約50mm、約15mm、約16mm、約20mm、約23mm、約30mm、約40mm、約50mm、約50mm未満、約25mm未満、又は約12mmより大きい長さ112を有することができる。このような長さは、インプラント100が拡張された/非拘束な状態にあるときに測定することができる。
【0088】
図2Cは、放射線不透過性マーカを有しない(例えば、管状フレーム110のみを示す)インプラント100の側面図であり、
図2Dは、放射線不透過性マーカ181、182を有するインプラント100の側面図である。概して、インプラント100は、管状フレーム110及び放射線不透過性マーカ181、182を含むことができる。これらの側面図に示されているように、インプラント100(例えば、管状フレーム110)は、概して、管状フレーム110の円周に沿って延びる長手方向に間隔をあけて配置された複数のリングを含むことができる。複数のリングは、概して、管状フレーム110の円周に沿って少なくとも部分的に延びる複数の連結支柱によって互いに連結され得る。
【0089】
引き続き
図2C~
図2Dを参照すると、インプラント100(例えば、管状フレーム110)は、近位部分120、遠位部分160、及び近位部分120と遠位部分160との間の中央部分140を含むことができる。近位部分120は、近位端101に隣接して配置され得、遠位部分160は、遠位端102に隣接して配置され得る。近位部分120は、管状フレーム110の円周に沿って延びるリング121を含むことができる。リング121は、複数のリング支柱122を含むことができ、リング支柱の隣接する対は、複数の近位頂部123及び複数の遠位頂部124で接合して、図示のように山形パターンを形成する。同様に、遠位部分160は、管状フレーム110の円周に沿って延びるリング161を含むことができる。リング161は、複数のリング支柱162を含むことができ、リング支柱の隣接する対は、複数の近位頂部163及び複数の遠位頂部164で接合して、図示のように山形パターンを形成する。拡開部の近位端及び/又は遠位端、近位部分及び/又は遠位部分を含むインプラント100の実装では、そのような拡開部は、それぞれ、近位部分120及び/又は遠位部分160(例えば、近位部分120及び/又は遠位部分160が中央部分140に接続する位置)から始まることができる。中央部分140は、管状フレーム110の円周に沿って延びる長手方向に間隔をあけて配置された複数のリング141を含むことができる。複数のリング141の各リングは、複数のリング支柱142を含むことができ、リング支柱の隣接する対は、複数の近位頂部143及び複数の遠位頂部144で接合して、図示のように山形パターンを形成する。
図2C~
図2Dは、5つのリング141を有する中央部分140を有するインプラント100を示しているが、インプラント100は、5つ未満のリング141、5つのリング141、又は5つより多いリング141を含むことができる。
【0090】
中央部分140はまた、管状フレーム110の円周に沿って少なくとも部分的に延びる複数の連結支柱145を含むことができる。複数の連結支柱145の各連結支柱は、図示のように、複数のリング141のうちの1つのリングの遠位頂部を複数のリング141のうちの隣接するリングの近位頂部に連結することができる。また、図示のように複数の連結支柱145の各連結支柱は、中央部分140の最遠位リングの複数の遠位頂部の各1つ、及び中央部分140の最近位リングの複数の近位頂部の各1つを除いて、中央部分140の複数のリング141のうちの1つのリングの複数の遠位頂部144の各1つを、中央部分140の複数のリング141のうちの隣接するリングの複数の近位頂部143の各1つに連結し、中央部分140が自由頂部を備えない(例えば、連結されていない頂部はない)ようにする。換言すれば、インプラント100は、その近位端101とその遠位端102との間に連結されていない頂部を有さないように構成できるが、図示されているように、その近位端101とその遠位端102とに自由頂部を有してもよい。このような構成は、送達カテーテルの遠位縁部/遠位端部及び/又は組織に引っ掛かる頂部がないため、送達中に必要な場合、インプラント100の再位置決めを有利に促進することができる。更に、このような構成は、インプラント100の移植後のインプラントの再位置決め又は除去を有利に促進することができる。
【0091】
少なくとも
図2C~
図2Dに更に図示されるように、中央部分140の最遠位リングの複数の遠位頂部の各遠位頂部は、遠位部分160のリング161の複数の近位頂部163の各近位頂部に接続することができる。同様に、中央部分140の最近位リングの複数の近位頂部の各近位頂部は、近位部分120のリング121の複数の遠位頂部124の各遠位頂部に接続することができる。更に、図示のように、中央部分140の複数のリング141のリングの複数の遠位頂部144の各遠位頂部は、中央部分140の複数のリング141の隣接するリングの複数の近位頂部143の各近位頂部から回転方向にオフセットすることができる。そのような構成において、そのような回転オフセットされた遠位頂部144と近位頂部143とを連結する複数の連結支柱145の各連結支柱の少なくとも一部は、管状フレーム110の円周の少なくとも部分的に、螺旋経路に沿って延びることができる。このような螺旋経路は、図示のように、中央部分140の隣接する一組のリング141の間で第1の螺旋方向に延び、中央部分140の隣接する次の一組のリング141の間で第1の螺旋方向と概ね反対である第2の螺旋方向に延びることができる。換言すれば、連結支柱145の列(例えば、隣接するリング141の組を結合する)は、管状フレーム110の円周の周りを少なくとも部分的に一方の螺旋方向に延びることができ、連結支柱145の次の列(例えば、隣接するリング141の次の組を結合する)は、管状フレーム110の円周の周りを少なくとも部分的に反対の螺旋方向に延びることができる。図示のように、複数の連結支柱145は、互いに重ならないように構成することができる。
【0092】
したがって、インプラント100(例えば、インプラント100の管状フレーム110)は、概して、上述したように連結支柱145と長手方向に交互に配置される、山形状の構成を有することができるリング141などのリングを含むことができる。管状フレーム110のこのような構造を組み合わせることにより、インプラントと血管との不完全密着を最小限に抑えるための適合性の高いインプラント100を提供することができる。また、管状フレーム110のこのような構造は、インプラント100の長さ全体にわたって実質的に一定の直径に拡張するのではなく、隣接する血管壁の様々な異なる直径及び構成にインプラント100を自己拡張させることができる。例えば、リング(リング141、121、及び161など)のこのような構成は、インプラント100が血管壁(例えば、血管内壁)に適合するように膨張及び収縮することを可能にするように、インプラント100(例えば、インプラント100の管状フレーム110)の半径方向の適合を有利に提供することができる。更に、複数の連結支柱145のこのような螺旋状の巻回により、インプラント100(例えば、インプラント100の管状フレーム110)の長手方向の適合を有利に提供することができ、例えば、インプラント100が血管の屈曲部又は湾曲部の外側に沿って拡張して適合し、血管の屈曲部又は湾曲部の内側に沿って収縮して適合するようにすることができる。更に、連結支柱145の隣接する列のこのような交互の螺旋経路が存在する場合、インプラント100のトルク又はねじれを解消するのに役立つ。
【0093】
いくつかの実装では、インプラント100の直径は、近位部分、中央部分、及び遠位部分のリング121、141、及び161をそれぞれ構成する複数のリング支柱122、142、及び162の数を増減することによって調整することができる。複数のリング支柱142の数の増加又は減少に伴って、複数の連結支柱145の数は、連結されていない遠位頂部144及び/又は連結されていない近位頂部143が存在しないことを確実にするために、種類に応じて増加又は減少し得る。いくつかの実装では、インプラント100の長さは、複数のリング141の数を増加又は減少することによって調整することができる。複数のリング141の数の増加又は減少に伴って、複数の連結支柱145の数も増加又は減少し得る。
【0094】
少なくとも
図2C及び
図2Eに示されるように、インプラント100(例えば、インプラント100の管状フレーム110)は、概ね近位に延びる1つ以上の支柱125及び/又は概ね遠位に延びる1つ以上の支柱165を含むことができる。そのような概ね近位に延びる1つ以上の支柱125は、近位部分120のリング121の複数の近位頂部123のそれぞれの1つ以上の近位頂部から延びることができる。同様に、そのような概ね遠位に延びる1つ以上の支柱165は、遠位部分160のリング161の複数の遠位頂部164のそれぞれの1つ以上の遠位頂部から延びることができる。概ね近位に延びる1つ以上の支柱125の各々及び概ね遠位に延びる1つ以上の支柱165の各々は、それぞれ、近位放射線不透過性マーカ181及び遠位放射線不透過性マーカ182などの放射線不透過性マーカに接続するように構成され得る。概ね近位に延びる1つ以上の支柱125の各々は、ネック部分126及び接続部分127を含むことができ、接続部分127は、ネック部分126の近位に配置され、近位放射線不透過性マーカ181に接続するように構成されている。同様に、概ね遠位に延びる1つ以上の支柱165の各々は、ネック部分166及び接続部分167を含むことができ、接続部分167は、ネック部分166に対して遠位に配置され、遠位放射線不透過性マーカ182に接続するように構成されている。例えば、接続部分127、167は、圧着された放射線不透過性マーカを受容するように構成された、貫通孔を有する長円形状を有することができる。いくつかの実装では、インプラント100(例えば、インプラント100の管状フレーム110)は、1本、2本、3本、4本、5本、又はそれ以上の近位に延びる支柱125など、少なくとも1本の近位に延びる支柱125を含むことができる。近位に延びる支柱125の数は、近位放射線不透過性マーカ181の数に対応し得る。同様に、いくつかの実装では、インプラント100(例えば、インプラント100の管状フレーム110)は、1本、2本、3本、4本、5本、又はそれ以上の遠位に延びる支柱165など、少なくとも1本の遠位に延びる支柱165を含むことができる。遠位に延びる支柱165の数は、近位放射線不透過性マーカ182の数に対応し得る。近位方向に延びる支柱125及び/又は遠位方向に延びる支柱165は、含まれる場合、近位部分120及び/又は遠位部分160の半径方向外向きの拡開部の延長として続くように、長手方向軸線103と角度をなして、それぞれ近位方向及び遠位方向に延びることができる。近位方向に延びる支柱125及び/又は遠位方向に延びる支柱165は、それぞれ、近位放射線不透過性マーカ181及び/又は遠位放射線不透過性マーカ182と組み合わせて、以下で更に説明されるように、インプラント100の送達のために送達ワイヤと解放可能に結合するように構成され得る。
【0095】
インプラント100(例えば、インプラント100の管状フレーム110)は、最小の反管腔側の表面積(例えば、インプラント100が移植される血管壁と接触する表面積となる外表面積)を有するように構成することができる。例えば、インプラント100(例えば、インプラント100の管状フレーム110)は、約3%~約11%、約4%~約10%、約5%~約9%、約4%、約5%、約5.5%、約5.8%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.1%、約8.5%、約3%より大きい、又は約10%未満の反管腔側の表面積を有することができる。
【0096】
インプラント100(例えば、インプラント100の管状フレーム110)は、最小限の端面視表面積を有するように構成することができる。換言すれば、インプラント100は、それが移植される血管断面の最小部分を占めるように構成することができる。例えば、インプラント100(例えば、インプラント100の管状フレーム110)は、その非拘束な/拡張された状態の端面において、その長手方向軸線103の下に見たときに、インプラント100の外径によって画定される断面積の、約20%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約3%~約7%の間、約4%~約6%の間、約4.5%、又は約5.9%を占めることができる。いくつかの実装では、インプラント100(例えば、管状フレーム110)の中央部分140は、その非拘束な/拡張された状態の端面において、その長手方向軸線103の下に見たときに、インプラント100の中央部分140の外径によって画定される断面積の、約20%未満、約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約3%~約7%、約4%~約6%、約4.5%、又は約5.9%を占めることができる。
【0097】
いくつかの実装では、インプラント100(例えば、インプラント100の管状フレーム110)は、血管の屈曲部の外側に配置されるよりも血管の屈曲部の内側に配置される場合の方が、インプラント100が配置されている血管の内壁とインプラント100との間の不完全密着が少なくなるように構成されている。このような構成により、血管の屈曲部の内側における低流量又は停滞流の潜在的な領域を有利に制限又は除去することができ、血栓抵抗性インプラント100を提供することができる。
【0098】
インプラント100は、約0.50mg~約6.00mg、約1.00mg~約4.00mg、約2.00mg、約2.10mg、約2.20mg、約2.30mg、約2.40mg、約2.50mg、約2.60mg、約2.70mg、約2.80mg、約2.90mg、約3.00mg、少なくとも約0.50mg、又は約4.00mg以下の質量を有することができる。例えば、直径が約3.0mmで長さが約15mmの本明細書に記載のインプラント100は、約2.04mgの質量を有することができる。他の例として、直径が約3.0mmで長さが約20mmの本明細書に記載のインプラント100は、約2.09mgの質量を有することができる。他の例として、直径約3.0mmで長さ約23mmの本明細書に記載のインプラント100は、約2.36mgの質量を有することができる。他の例として、直径約4.0mmで長さ約20mmの本明細書に記載のインプラント100は、約2.50mgの質量を有することができる。他の例として、直径約4.0mmで長さ約23mmの本明細書に記載のインプラント100は、約2.69mgの質量を有することができる。
【0099】
コーティング
インプラント100は、血栓抵抗性コーティングなど、本明細書に記載のコーティングを有することができる。例えば、管状フレーム110及び放射線不透過性マーカ181、182などの放射線不透過性マーカを含むインプラント100は、ヘパリンコーティングを有することができる。ヘパリンコーティングは、単層又は多層を含むことができる。いくつかの実装では、インプラント100のコーティングは、インプラント100の表面に付着したポリアミン層(例えば、カチオン性ポリアミン層)と、ポリアミン層に付着した(例えば、イオン相互作用又は共有結合を介して付着した)ヘパリン複合体層を含むことができる。更に、いくつかの実装では、このようなポリアミン層に続いてヘパリン複合体層を、インプラント100上に複数の層を形成するように繰り返し蒸着させることができる。例えば、インプラント100は、ポリアミン層、ヘパリン錯体層、ポリアミン層、ヘパリン錯体層などを繰り返し有することができる。このような繰り返し積層により、ポリアミンとヘパリンの2つの交互層、ポリアミンとヘパリンの3つの交互層、ポリアミンとヘパリンの4つの交互層、又はそれより多くの層を有するインプラント100を製造することができる。インプラント100のヘパリンコーティングは、含まれる場合、インプラント100を完全に覆うことができ、インプラント100に露出部分又はコーティングされていない部分がないようにすることができる。いくつかの実装では、インプラント100のヘパリンコーティングは永久コーティング(例えば、非溶出コーティング)となるように構成される。いくつかの実装では、ヘパリンコーティングは、インプラント100の表面に適用されているポリマー層(例えば、フルオロポリマー)に適用することができる。いくつかの実装では、ヘパリンコーティングはインプラント100の表面に直接適用され、この表面は本明細書に記載されているニチノール表面であり得る。
【0100】
インプラント100のヘパリンコーティングは、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、約25nm未満、約20nm未満、約15nm未満、約14nm未満、約13nm未満、約12nm未満、約11nm未満、約10nm未満、約9nm未満、約8nm未満、約7nm未満、約6nm未満、約5nm未満、約20nm、約19nm、約18nm、約17nm、約16nm、約15nm、約14nm、約13nm、約12nm、約11nm、約10nm、約9nm、約8nm、約7nm、約6nm、約5nm、約4nm、約3nm~約60nm、約4nm~約30nm、又は約5nm~約20nmの厚さを有することができる。ヘパリンコーティングのこのような厚さは、透過型電子顕微鏡集束イオンビーム(transmission electron microscope focused ion beam、TEM-FIB)イメージングを用いて、乾燥状態(例えば、真空)で測定することができる。更に、ヘパリンコーティングのこのような厚さは、インプラント100の様々な位置で測定された厚さの平均厚さとすることができる。インプラント100のヘパリンコーティングは、均一又は実質的に均一な厚さを有することができる。例えば、インプラント100のヘパリンコーティングの厚さは、測定された平均厚さの3つの標準偏差、2つの標準偏差、又は1つの標準偏差の範囲内とすることができる。薄いヘパリンコーティングはある種の利点をもたらす。例えば、コーティング全体が剥離して単一の塞栓粒子を形成する場合、その直径は約101μm未満であろう。もしコーティング全体が剥離して直径10μmの粒子が形成されたとすると、粒子は約1000個となり、USP788による制限値より少なくとも約6倍低い。
【0101】
インプラント100のヘパリンコーティングは、約1.50μg未満、約1.25μg未満、約1.00μg未満、約0.90μg未満、約0.80μg未満、約0.70μg未満、約0.60μg未満、約0.55μg未満、約0.50μg未満、約0.45μg未満、約0.40μg、約0.35μg未満、約0.30μg未満、約0.25μg未満、約0.75μg、約0.70μg、約0.65μg、約0.60μg、約0.55μg、約0.50μg、約0.45μg、約0.40μg、約0.35μg、約0.30μg、約0.25μgから約0.75μg、又は約0.30μgから約0.60μgの質量を有することができる。
【0102】
インプラント100のヘパリンコーティングは、アンチトロンビン(antithrombin、AT)結合アッセイで測定して、約10pmolAT/cm2超、約15pmolAT/cm2超、約20pmolAT/cm2超、約25pmolAT/cm2超、約30pmolAT/cm2超、約35pmolAT/cm2超、約40pmolAT/cm2超、約45pmolAT/cm2超、約50pmolAT/cm2超、約55pmolAT/cm2超、約60pmolAT/cm2超、約65pmolAT/cm2超、約70pmolAT/cm2超、約20pmolAT/cm2、約25pmolAT/cm2、約30pmolAT/cm2、約35pmolAT/cm2、約40pmolAT/cm2、約45pmolAT/cm2、約50pmolAT/cm2、約55pmolAT/cm2、約60pmolAT/cm2、約65pmolAT/cm2、又は約70pmolAT/cm2の活性(例えば、表面活性)を有することができる。
【0103】
本明細書に記載のヘパリンコーティングを有する場合、インプラント100は、インプラント100の総表面積に対するヘパリンコーティングの質量の比は、約0.005μg/mm2~約0.011μg/mm2、約0.007μg/mm2~約0.009μg/mm2、約0.005μg/mm2超、約0.007μg/mm2超、約0.008μg/mm2超、約0.015μg/mm2未満、約0.009μg/mm2未満、約0.008μg/mm2、又は約0.009μg/mm2とすることができる。
【0104】
本明細書に記載のヘパリンコーティングを有する場合、インプラント100は、インプラント100の反管腔側の表面積に対するヘパリンコーティングの質量の比は、約0.01μg/mm2~約0.06μg/mm2、約0.02μg/mm2~約0.05μg/mm2、約0.03μg/mm2~約0.04μg/mm2、約0.01μg/mm2超、約0.02μg/mm2超、約0.03μg/mm2超、約0.06μg/mm2未満、約0.05μg/mm2未満、約0.03μg/mm2、約0.035μg/mm2、又は約0.04μg/mm2とすることができる。
【0105】
本明細書に記載のヘパリンコーティングを有する場合、インプラント100は、インプラント100の壁厚に対するヘパリンコーティングの質量の比は、約0.005μg/mm~約0.015μg/mm、約0.007μg/mm~約0.014μg/mm、約0.008μg/mm~約0.013μg/mm、約0.005μg/mm超、約0.007μg/mm超、約0.008μg/mm超、約0.015μg/mm未満、約0.013μg/mm未満、約0.008μg/mm、約0.009μg/mm、約0.010μg/mm、約0.011μg/mm、約0.012μg/mm、又は約0.013μg/mmとすることができる。
【0106】
インプラント100は、本明細書に記載のヘパリンコーティングを有する場合、インプラント100(例えば、管状フレーム120)の壁厚に対するヘパリンコーティングの厚さの比は約0.00005以上、例えば約0.00016以上とすることができる。
【0107】
インプラント100は、本明細書に記載のヘパリンコーティングを有する場合、インプラント100の壁厚に対するヘパリンコーティングの活性の比は、約0.30pmolAT/cm2/μm超、約0.35pmolAT/cm2/μm超、約0.40pmolAT/cm2/μm超、約0.45pmolAT/cm2/μm超、約0.50pmolAT/cm2/μm超、約0.55pmolAT/cm2/μm超、約0.60pmolAT/cm2/μm超、約0.65pmolAT/cm2/μm超、約0.70pmolAT/cm2/μm超、約0.75pmolAT/cm2/μm超、約0.80pmolAT/cm2/μm超、約0.85pmolAT/cm2/μm超、約0.90pmolAT/cm2/μm超、約0.95pmolAT/cm2/μm超、約1.00pmolAT/cm2/μm超、約1.10pmolAT/cm2/μm超、約1.15pmolAT/cm2/μm超、約1.20pmolAT/cm2/μm超、約1.25pmolAT/cm2/μm超、約1.30pmolAT/cm2/μm超、約1.35pmolAT/cm2/μm超、約1.40pmolAT/cm2/μm超、約1.45pmolAT/cm2/μm超、約1.50pmolAT/cm2/μm超、約0.45pmolAT/cm2/μm、約0.50pmolAT/cm2/μm、約0.55pmolAT/cm2/μm、約0.60pmolAT/cm2/μm、約0.65pmolAT/cm2/μm、約0.70pmolAT/cm2/μm、約0.75pmolAT/cm2/μm、約0.80pmolAT/cm2/μm、約0.85pmolAT/cm2/μm、約0.90pmolAT/cm2/μm、約0.95pmolAT/cm2/μm、約1.00pmolAT/cm2/μm、約1.10pmolAT/cm2/μm、約1.15pmolAT/cm2/μm、約1.20pmolAT/cm2/μm、約1.25pmolAT/cm2/μm、約1.30pmolAT/cm2/μm、又は約1.35pmolAT/cm2/μmとすることができる。
【0108】
いくつかの実装では、インプラント100は移植片、被覆、又はライナを含まない。例えば、いくつかの実装では、インプラント100は、本明細書に記載されるようなコーティングのみを含む。
【0109】
以下の表2は、本開示のいくつかの態様による、インプラント100の好ましい構成及び特性を要約したものである。
【0110】
表2 インプラントの好ましい構成及び特性
【表2】
【0111】
密着
図3は、
図2A~
図2Eによる、管腔内インプラント100の不完全密着曲げ試験を示す図である。この場合、直径3mmのインプラント100は、曲げ半径4.9mm、内径3mmの可撓性シリコーンのU字屈曲チューブ30内の中心に配備された状態で示されている。左の画像は、U字屈曲チューブ内のインプラント100の半分を示し、右の画像は、U字屈曲チューブ内のインプラント100のもう半分を示している。丸く囲まれているのは、この試験におけるインプラント100とU字型ベントシリコンチューブ30の内壁との間の不完全密着の位置であり、囲みの位置31は0.10mm未満の不完全密着を有し、囲みの位置32は0.10mm以上0.20mm未満の不完全密着を有し、囲みの位置33は0.20mm以上の不完全密着を有する。この例では、インプラント100は、インプラント100(例えば、インプラントの支柱)とU字型に曲げられたシリコーンチューブの内壁との間に少なくともいくらかの不完全密着を有すると測定された15箇所を有していた。インプラント100(例えば、インプラントの支柱)とU字型に曲がったシリコーンチューブの内壁との間で測定された最大不完全密着は0.375mmであった。更に、インプラント100(例えば、インプラントの支柱)とU字型に曲がったシリコーンチューブの内壁との間で測定された平均不完全密着は0.116mmであった。
【0112】
本明細書に記載されるようなインプラント(例えば、インプラント100)は、上記の不完全密着曲げ試験において記載されるように、インプラントと可撓性シリコーンのU字屈曲チューブ30との間の少なくともいくらかの不完全密着を約50箇所以下、約30箇所以下、約25箇所以下、約20箇所以下、約15箇所以下、約10箇所以下、又は約5箇所以下有するように構成することができる。本明細書に記載のインプラント(例えば、インプラント100)は、インプラントと上記の不完全密着曲げ試験で説明した可撓性シリコーンのU字屈曲チューブ30との間の最大不完全密着が、約1.00mm以下、約0.75mm以下、約0.50mm以下、約0.40mm以下、約0.375mm以下、約0.35mm以下、約0.325mm以下、約0.30mm以下、約0.275mm以下、約0.25mm以下、約0.225mm以下、約0.20mm以下、約0.175mm以下、約0.15mm以下、約0.125mm以下、約0.10mm以下、約0.075mm以下、又は約0.05mm以下となるように構成することができる。更に、本明細書に記載のインプラント(例えば、インプラント100)は、インプラントと上記の不完全密着曲げ試験で説明した可撓性シリコーンのU字屈曲チューブ30との間の平均不完全密着が、約0.35mm以下、約0.325mm以下、約0.30mm以下、約0.275mm以下、約0.25mm以下、約0.225mm以下、約0.20mm以下、約0.175mm以下、約0.15mm以下、約0.125mm以下、約0.120mm以下、約0.115mm以下、約0.10mm以下、約0.075mm以下、約0.05mm以下、又は約0.025mm以下となるように構成することができる。
【0113】
インプラントの変形例
図4は、
図2A~
図2Eに関して説明したインプラント100の一変形例であるインプラント400を示す。インプラント400は、いくつかの点又は多くの点でインプラント100と類似し得る。例えば、インプラント400は、近位端401、遠位端402、及びインプラント100の管状フレーム110及び複数のリング141と同一又は類似の管状フレーム410の円周に沿って延びる長手方向に間隔をあけて配置された複数のリング441を有する、概ね管状のフレーム410を有することができる。インプラント400の複数のリング441の各リングは、複数のリング支柱442を含むことができ、リング支柱の隣接する対は、インプラント100の複数のリング141、複数のリング支柱142、複数の近位頂部143、及び複数の遠位頂部144と同一又は類似の図示のような山形パターンを形成するように、複数の近位頂部443及び複数の遠位頂部444で接合する。更に、インプラント400は、管状フレーム410の円周に沿って少なくとも部分的に延びる複数の連結支柱445を含むことができ、複数の連結支柱445の各連結支柱は、インプラント100の連結支柱145と同一又は類似して図示されるように、複数のリング441のうちの1つのリングの遠位頂部と複数のリング441の隣接するリングの近位頂部とを連結する。インプラント400は、インプラント100に含まれ得るコーティングと同一又は類似の、ヘパリンコーティングなどの血栓抵抗性コーティングを含むことができる。
【0114】
インプラント400は、インプラント100に含まれ得るようなリングを有する近位部分及び/又はリングを有する遠位部分(例えば、リング121を有する近位部分120及び/又はリング161を有する遠位部分160)を除外し得る点でインプラント100と異なり得るが、いくつかの実装では、インプラント400はそのような近位部分及び/又は遠位部分を含み得る。インプラント400はまた、インプラント100に含まれ得るような拡開端部/拡開部分を除外し得るという点で、インプラント100と異なり得るが、いくつかの実装では、インプラント400はそのような拡開端部/拡開部分を含み得る。インプラント400は、インプラント100に含まれ得るような放射線不透過性マーカ(例えば、1つ以上の近位に延びる支柱125、1つ以上の遠位に延びる支柱165、及び放射線不透過性マーカ181、182)とともに1つ以上の近位に延びる支柱及び/又は1つ以上の遠位に延びる支柱を除外し得るという点で、インプラント100と異なり得るが、いくつかの実装では、インプラント400は、そのような1つ以上の近位に延びる支柱、そのような1つ以上の遠位に延びる支柱、及び/又はそのような放射線不透過性マーカを含み得る。
【0115】
図5は、
図2A~
図2Eに関して説明したインプラント100の一変形例であるインプラント500を示す。インプラント500は、いくつかの点又は多くの点でインプラント100と類似し得る。例えば、インプラント500は、インプラント100の概ね管状のフレーム110と同一又は類似の近位端501及び遠位端502を有する、概ね管状のフレーム510を有することができる。インプラント500は、長手方向に間隔をあけて配置されたリング141(例えば、インプラントの長さに沿って長手方向に間隔をあけて配置された離散的なリング)を有する代わりに、インプラント500は、管状フレーム510の円周を螺旋状に回転する連続的なリング541を含むことができるという点で、インプラント100と異なることができる。リング541は、複数のリング支柱542を含むことができ、リング支柱の隣接する対は、複数の近位頂部543及び複数の遠位頂部544で接合して、図示のように山形パターンを形成する。更に、インプラント500は、管状フレーム510の円周に沿って少なくとも部分的に延びる複数の連結支柱545を含むことができ、複数の連結支柱545の各連結支柱は、インプラント100の連結支柱145と同様に、複数の遠位頂部544の遠位頂部と複数の近位頂部543の近位頂部とを連結する。インプラント500は、インプラント100に含まれ得るコーティングと同一又は類似の、ヘパリンコーティングなどの血栓抵抗性コーティングを含むことができる。
【0116】
インプラント500は、インプラント100に含まれ得るようなリングを有する近位部分及び/又はリングを有する遠位部分(例えば、リング121を有する近位部分120及び/又はリング161を有する遠位部分160)を除外し得る点でインプラント100と更に異なり得るが、いくつかの実装では、インプラント500はそのような近位部分及び/又は遠位部分を含み得る。インプラント500はまた、インプラント100に含まれ得るような拡開端部/拡開部分を除外し得るという点で、インプラント100と異なり得るが、いくつかの実装では、インプラント500はそのような拡開端部/拡開部分を含み得る。インプラント500は、インプラント100に含まれ得るような放射線不透過性マーカ(例えば、1つ以上の近位に延びる支柱125、1つ以上の遠位に延びる支柱165、及び放射線不透過性マーカ181、182)とともに1つ以上の近位に延びる支柱及び/又は1つ以上の遠位に延びる支柱を除外し得るという点で、インプラント100と異なり得るが、いくつかの実装では、インプラント500は、そのような1つ以上の近位に延びる支柱、そのような1つ以上の遠位に延びる支柱、及び/又はそのような放射線不透過性マーカを含み得る。
【0117】
送達システム
図6は、本開示のいくつかの態様による、送達ワイヤ600を示す図である。送達ワイヤ600は、その近位端601と遠位端602との間を概ね長手方向に延びることができる。送達ワイヤ600は、図示のように、コアワイヤ700、近位コイル620、バンパ800、遠位コイル640、カプラ900、スペーサコイル660、及び放射線不透過性コイル680を含むことができる。本明細書で説明されるように、送達ワイヤ600は、インプラント送達カテーテルを通って移動し、インプラント100などの本明細書で説明されるようなインプラントを送達するように構成され得る。
【0118】
図7A~
図7Bは、本開示のいくつかの態様による、
図6の送達ワイヤ600のコアワイヤ700の側面を示す図である。コアワイヤ700は、その近位端701と遠位端702との間を概ね長さ704に延びることができる。コアワイヤ700は、その近位端701においてその遠位端702よりも大きな直径を有するコアワイヤ700を生成するために、1つ以上の実質的に一定の直径の部分及び1つ以上のテーパ状の部分を含むことができる。例えば、及び
図7A~
図7Bに示されるように、コアワイヤ700は、直径711及び長さ712を有する第1の定径部710と、長さ722を有する第1のテーパ部720と、直径731及び長さ732を有する第2の定径部730と、長さ742を有する第2のテーパ部740と、直径751及び長さ752を有する第3の定径部750と、長さ762を有する第3のテーパ部760と、直径771及び長さ772を有する第4の定径部770とを含むことができる。図示のように、第1の定径部710は、コアワイヤ700の近位端701から遠位方向に延びることができ、第1のテーパ部720は、第1の定径部710から遠位方向に延びることができ、第2の定径部730は、第1のテーパ部720から遠位方向に延びることができ、第2のテーパ部740は、第2の定径部730から遠位方向に延びることができ、第3の定径部750は、第2のテーパ部740から遠位方向に延びることができ、第3のテーパ部760は、第3の定径部750から遠位方向に延びることができ、第4の定径部770は、第3のテーパ部760から遠位方向に延び、コアワイヤの遠位端702で終端することができる。いくつかの実装では、コアワイヤ700は、1つ以上の定径部及び1つ以上のテーパ部を形成するために研磨されたステンレス鋼スプリングワイヤ(例えば、タイプ304ステンレス鋼)である。
【0119】
コアワイヤ700は、少なくとも約1000mmの長さ704を有し得る。いくつかの実装では、コアワイヤ700は約1900mmの長さ704を有する。そのような実装では、第1の定径部710の長さ712は約1500mmとすることができ、第1のテーパ部の長さ722は約60mmとすることができ、第2の定径部730の長さ732は約200mmとすることができ、第2のテーパ部740の長さ742は約40mmとすることができ、第3の定径部750の長さ752は約88mmとすることができ、第3のテーパ部760の長さ762は約4mmとすることができ、第4の定径部770の長さ772は約8mmとすることができる。コアワイヤ700は、約0.75mm以下の最大直径を有することができる。いくつかの実装では、コアワイヤ700は、約0.3810mmの最大直径を有する。そのような実装では、第1の定径部710の直径711は約0.3810mmとすることができ、第2の定径部730の直径731は約0.1778mmとすることができ、第3の定径部750の直径751は約0.0762mmとすることができ、第4の定径部770の直径771は約0.0559mmとすることができる。更に、そのような実装において、第1のテーパ部720は、第1の定径部の直径711から第2の定径部の直径731までその長さ722にわたってテーパを設けることができ、第2のテーパ部740は、第2の定径部の直径731から第3の定径部の直径751までその長さ742にわたってテーパを設けることができ、第3のテーパ部760は、第3の定径部の直径751から第4の定径部の直径771までその長さ762にわたってテーパを設けることができる。コアワイヤ700及びその定径部及びテーパ部710、720、730、740、750、760、及び770の好ましい長さ及び直径が提供されているが、そのような長さ及び/又は直径のいずれかは、与えられたものより小さいか、又は大きくすることができ、及び/又はそのような長さ及び/又は直径は、コアワイヤが長さ及び/又は直径において減少又は増加するにつれて拡大縮小することができる。図示されていないが、いくつかの実装では、コアワイヤ700は、ガイドワイヤを挿通して受容するように構成された内腔を含み得る(したがって、送達ワイヤ600は、内腔を通してガイドワイヤが延びるように構成され得る)。
【0120】
図7Bを参照すると、コアワイヤ700は、1つ以上のマーカ780を含むことができる。1つ以上のマーカ780は、本明細書に記載されるようなインプラントの送達に有用な1つ以上の視覚的インジケータとして構成され得る。例えば、コアワイヤ700は、1つ以上のマーカ780を作成するためにレーザマークされ得る。
図7Bに示すように、コアワイヤ700は3つのマーカ780を含むことができるが、コアワイヤは1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上のマーカ780を含むことができる。また、
図7Bに示すように、マーカ780はそれぞれ長さ782を有することができ、長さ784だけ互いに間隔をあけることができる。いくつかの実装では、マーカ780の長さ782は、約6mmと約14mmとの間(例えば、約10mm)であり、間隔長さ784は約6mmと約14mmの間(例えば、約10mm)である。マーカ780の長さ782は同じでも異なっていてもよく、その間の間隔長さ784は同じでも異なっていてもよい。マーカ780は、第1の定径部710に含めることができる。例えば、最遠位マーカ780の最遠位端は、コアワイヤ700の近位端701から約1350mm遠位に配置され得る。
【0121】
図8A~
図8Dは、本開示のいくつかの態様による、
図6の送達ワイヤ600のバンパ800を示す図である。
図8Aは側面図を示し、
図8Bは端面図を示し、
図8Cは他の側面図を示し、
図8Dはバンパ800の透視図を示す。バンパ800は、近位端801、遠位端802、長さ812、及び近位端801と遠位端802との間に延びる長手方向軸線803、外径806、及び内腔804を規定する内径805を有する、概して管状本体820を有することができる。図示のように、バンパ800は、その近位端801に螺旋状の切断面807を有することができる。このような螺旋状の切断面807は、近位コイル620の遠位端などの、コイルの端部と嵌合するように構成され得る。更に、図示のように、バンパ800は、その遠位端802において実質的に平坦な面808を有することができる。バンパ800は、例えば、コアワイヤ700の上に、コアワイヤ700に取り付けられるように構成され得る。このような取り付けのために、バンパ800は、内径805から外径806を通って(例えば、バンパ800の管状本体820の厚さを通って)バンパ800の側面に沿って延びる貫通孔809を有することができる。貫通孔809は、バンパ800をコアワイヤ700に溶接して取り付けるように構成することができる。
【0122】
バンパ800の長さ812は、約0.500mmと約0.9mmの間、例えば約0.762mmとすることができる。バンパ800の外径806は、約0.200mmと約0.400mmの間、例えば約0.330mmとすることができる。バンパ800の内径805は、約0.070mmと約0.130mmの間、例えば約0.0965mmとすることができる。バンパ800は、ステンレス鋼(例えば、304ステンレス鋼)で作ることができる。
【0123】
図9A~
図9Eは、本開示のいくつかの態様による、
図6の送達ワイヤ600のカプラ900を示す図である。
図9Aは側面図を示し、
図9Bは端面図を示し、
図9Cは
図9Aの断面側面図を示し、
図9D~
図9Eはカプラ900の透視図を示す。カプラ900は、近位端901、遠位端902、長さ912、及び近位端901と遠位端902との間に延びる長手方向軸線903、外径906、内腔904を規定する内径905、及び近位端901に隣接するハブ930とを有する、概して管状本体920を有することができる。カプラ900の管状本体920は、その遠位端902に螺旋状の切断面907を有することができる。このような螺旋状の切断面907は、スペーサコイル660の近位端などの、コイルの端部と嵌合するように構成され得る。更に、図示のように、カプラ900の管状本体920は、その近位端901において実質的に平坦な面908を有することができる。カプラ900は、例えば、コアワイヤ700の上に、コアワイヤ700に取り付けられるように構成され得る。このような取り付けのために、カプラ900は、内径905から外径906を通って(例えば、カプラ900の管状本体920の厚さを通って)カプラ900の側面に沿って延びる1つ以上の貫通孔909を有することができる。1つ以上の貫通孔909は、カプラ900をコアワイヤ700に溶接して取り付けるように構成することができる。
【0124】
カプラ900は、インプラント100のような本明細書に記載のインプラントと解放可能に係合して、インプラントを送達するように構成することができる。このために、ハブ930は、管状本体920の外径906の半径方向外側に延び、本明細書に記載されるようなインプラントの少なくとも一部を解放可能に受容するように構成された1つ以上のスロット931を有することができる。例えば、1つ以上のスロット931は、インプラント100の1つ以上の近位に延びる支柱125のネック部分126を解放可能に受容するように構成され得る(例えば、各スロットは、近位に延びる支柱のネック部分を受容することができる)。
【0125】
引き続き
図9A~
図9Eを参照すると、ハブ930の1つ以上のスロット931は、管状本体920の外径906において幅937を有し、スロット角度938を有することができる。ハブ930の1つ以上のスロット931は、ハブ部分角度933を有するハブ部分932を規定することができる。ハブ930は、ハブ直径935及びハブ長さ936を有することができる。更に、ハブ930は、長手方向軸線903に対して角度944をなすことができる近位部分長さ946及び近位面941を有する近位部分940と、遠位部分長さ956及び遠位面951を有する遠位部分950を有することができる。近位面941の角度944は、インプラントの送達に関して説明されるような、送達ワイヤ600がそこから遠位に延ばされた後のカテーテル内における送達ワイヤ600の後退を有利に促進することができる(例えば、角度は、カテーテル先端における送達ワイヤ600の引っ掛かりの防止を助けることができる)。ハブ930は、図示のように、3つのハブ部分932とその間の3つのスロット931とを有することができるが、ハブ930は、それぞれ3つ未満又はそれぞれ3つより多く有するように構成することができる。
【0126】
カプラ900の長さ912は、約0.300mmと約1.000mmの間、例えば約0.635mmとすることができる。カプラ900の管状本体920の外径906は、約0.065mmと約0.265mmの間、例えば約0.165mmとすることができる。カプラ900の管状本体920の内径905は、約0.05mmと約0.1965mmの間、例えば約0.0965mmとすることができる。ハブ930の直径935は、約0.200mmと約0.500mmの間、例えば約0.381mmとすることができる。ハブ930の長さ936は、約0.050mmと約0.400mmの間、例えば約0.178mmとすることができる。管状本体920の外径906における1つ以上のスロット931の幅937は、約0.030mmと約0.130mmとの間、例えば約0.086mmとすることができる。1つ以上のスロット931のスロット角度938は、約20度から約80度の間、例えば約50度とすることができる。ハブ部分932のハブ部分角度933は、約40度と約110度の間、例えば約70度とすることができる。近位部分940の近位部分長さ946は、約0.020mmと約0.080mmとの間、例えば約0.051mmとすることができる。近位面941の角度944は、長手方向軸線903に対して約15度から約115度の間、例えば約60度とすることができる。遠位部分950の遠位部分長さ956は、約0.020mmと約0.230mmとの間、例えば約0.127mmとすることができる。カプラ900は、ステンレス鋼(例えば、304ステンレス鋼)で作ることができる。
【0127】
図10A~
図10Bは、本開示のいくつかの態様による、
図6の送達ワイヤ600の側面を示す図である。前述のように、送達ワイヤ600は、図示のように、
図7A~
図7Bに関して説明したコアワイヤ700、近位コイル620、
図8A~
図8Dに関して説明したバンパ800、遠位コイル640、
図9A~
図9Eに関して説明したカプラ900、スペーサコイル660、及び放射線不透過性コイル680を含むことができる。コアワイヤ700は、近位コイル620、バンパ800、遠位コイル640、カプラ900、スペーサコイル660、及び放射線不透過性コイル680の各々を通って延びることができる。
【0128】
近位コイル620は、約0.0635mmのワイヤ直径を有し、約0.203mmの内径及び約0.381mmの外径を有するコイルに巻かれたステンレス鋼(例えば、タイプ304ステンレス鋼)スプリングワイヤで作ることができる。近位コイル620の長さは、約200mmと約400mmの間、例えば約292mmとすることができる。
【0129】
遠位コイル640は、約0.025mmのワイヤ直径を有し、約0.076mmの内径及び約0.152mmの外径を有するコイルに巻かれたステンレス鋼(例えば、タイプ304ステンレス鋼)スプリングワイヤで作ることができる。遠位コイル640の長さは、約0.500mmと約1.500mmの間、例えば約1.02mmとすることができる。いくつかの実装では、遠位コイル640の長さは、近位放射線不透過性マーカ181の長さ及び/又はインプラント100の1つ以上の近位に延びる支柱125の接続部分127の長さ程度又はそれよりも大きくすることができる。
【0130】
スペーサコイル660は、約0.025mmのワイヤ直径を有し、約0.076mmの内径及び約0.152mmの外径を有するコイルに巻かれたステンレス鋼(例えば、タイプ304ステンレス鋼)スプリングワイヤで作ることができる。スペーサコイル660の長さは、約2.000mmと約10.000mmの間、例えば約3.277mm、約5.461mm、又は約6.807mmとすることができる。いくつかの実装では、スペーサコイル660の長さは、インプラント100などのインプラントの長さに基づいて調整することができる。
【0131】
放射線不透過性コイル680は、約0.030mmのワイヤ直径を有し、約0.076mmの内径及び約0.152mmの外径を有するコイルに巻かれた放射線不透過性材料(例えば、92/8白金-タングステン)ワイヤで作ることができる。放射線不透過性コイル680の長さは、約10.000mmから約35.000mmの間、例えば約17.221mm、約21.387mm、約22.631mm、又は約25.121mmとすることができる。いくつかの実装では、放射線不透過性コイル680の長さは、インプラント100などのインプラントの長さに基づいて調整することができる。いくつかの実装では、放射線不透過性コイル680の長さは、インプラント100が血管5内に配置された後に、インプラント100の長さとほぼ同じ長さになるように構成することができ、これは、インプラント100の縮小時の長さを含むことができる。このような実装では、スペーサコイル660の長さは、放射線不透過性コイル680の長さ及びインプラント100の構成(例えば、インプラント100の長さ及び直径)に基づいて相応に調整することができる。
【0132】
図10A~
図10Bを引き続き参照すると、近位コイル620の近位端は、コアワイヤ700に取り付ける(例えば、溶接する)ことができ、コアワイヤ700は、近位コイル620を通って延びる。いくつかの実装では、近位コイル620の近位端は、コアワイヤ700の第2の定径部730に沿ってコアワイヤ700に取り付けられる。近位コイル620の遠位端は、コアワイヤ700がバンパ800の内腔804を通って延びている状態で、バンパ800の近位端801に取り付けることができる。例えば、近位コイル620の遠位端は、バンパ800の近位端801の螺旋状の切断面807と嵌合し、そこに取り付ける(例えば、溶接する)ことができる。バンパ800は、貫通孔809を介してコアワイヤ700に取り付ける(例えば、溶接する)ことができる。いくつかの実装では、バンパ800は、コアワイヤ700の第3の定径部750に沿ってコアワイヤ700に取り付けられる。バンパ800の遠位端802は、遠位コイル640の近位端に隣接して配置され得、コアワイヤ700は、遠位コイル640を通って延びる。例えば、遠位コイル640の近位端は、バンパ800の遠位端802の平坦面808に対して静止することができる。カプラ900の近位端901は、遠位コイル640の遠位端に隣接して配置され得、コアワイヤ700は、カプラ900の内腔904を通って延びる。例えば、カプラ900の近位端901の平坦面908は、遠位コイル640の遠位端に対して静止することができる。カプラ900は、1つ以上の貫通孔909を介してコアワイヤ700に取り付ける(例えば、溶接する)ことができる。いくつかの実装では、カプラ900は、コアワイヤ700の第3の定径部750に沿ってコアワイヤ700に取り付けられる。スペーサコイル660の近位端は、コアワイヤ700がスペーサコイル660を通って延びている状態で、カプラ900の遠位端902に取り付ける(例えば、溶接する)ことができる。例えば、スペーサコイル660の近位端は、カプラ900の遠位端902の螺旋状の切断面907と嵌合し、そこに取り付ける(例えば、溶接する)ことができる。放射線不透過性コイル680の近位端は、スペーサコイル660の遠位端に取り付ける(例えば、溶接する)ことができ、コアワイヤ700が放射線不透過性コイル680を通って延びることができる。放射線不透過性コイル680の遠位端は、コアワイヤ700の遠位端702に取り付ける(例えば、溶接する)ことができる。例えば、放射線不透過性コイル680の遠位端部は、コアワイヤ700の遠位端部702と弾丸状のノージング端部を形成して、送達ワイヤ600の丸みを帯びたテーパ状の遠位端部602を形成することができる。いくつかの実装では、放射線不透過性コイル680は、コアワイヤ700の第4の定径部770の遠位端でコアワイヤ700に取り付けられる。
【0133】
図10A~
図10Bに示されるように、近位コイル620は、送達ワイヤ600の遠位端602から長さ615でコアワイヤ700に取り付けることができる。長さ615は、少なくとも約200mm又は少なくとも約300mm、例えば約312mmであり得る。近位コイル620及びバンパ800は、図示されるように嵌合されるとき、約150mmと約315mmとの間、例えば約292mmの組み合わされた長さ614を有し得る。バンパ800の遠位端802とカプラ900の近位端901とは、遠位コイル640の長さと同じ長さ613によって分離され得る。長さ613は、約0.500mmと約1.500mmとの間、例えば約1.02mmとすることができる。いくつかの実装では、長さ613は、近位放射線不透過性マーカ181の長さ及び/又はインプラント100の1つ以上の近位に延びる支柱125の接続部分127の長さ程度又はそれよりも大きくすることができる。カプラ900の近位端901と送達ワイヤ600の遠位端602との間の送達ワイヤ600の部分は、長さ612を有することができる。長さ612は、約15.00mmと約30.00mmとの間、例えば約21.08mmとすることができる。長さ611は、放射線不透過性コイル680の長さと同じであり得、約10.000mmと約35.000mmとの間、例えば約17.221mm、約21.387mm、約22.631mm、又は約25.121mmであり得る。長さ612及び611(したがって、カプラ900、スペーサコイル660及び/又は放射線不透過性コイル680の長さ)は、送達ワイヤ600が送達するように構成されるインプラント、例えば本明細書に記載されるインプラント100の長さに基づいて調整することができる。長さ616は、コアワイヤ700の長さと同じにすることができ、少なくとも約1000mm、例えば約1900mmとすることができる。送達ワイヤ600の構成要素の構成、接続、及び相対的な位置決めの例を上述してきたが、このような構成、接続、及び相対的な位置決めの修正は、本開示の範囲に含まれることが意図される。
【0134】
図11A~
図11Iは、本開示のいくつかの態様による、管腔内インプラント送達システム1100を示す図である。本明細書ではインプラント送達システム又はインプラント配置システムとも呼ばれ得る管腔内インプラント送達システム1100は、本明細書に記載の送達ワイヤ600、本明細書に記載のインプラント(例えば、インプラント100)、及びカテーテル1140を含むことができる。
図11Aは、インプラント送達システム1100の斜視図である。
図11Bは、カテーテル1140の壁の一部が視界から除去されたインプラント送達システム1100の遠位端のクローズアップ斜視図である。
図11C~
図11Dは、カテーテル1140の壁の一部が視界から除去された、インプラント送達システム1100内の折り畳まれた構成のインプラント100の近位端101及び遠位端102のそれぞれのクローズアップ斜視図である。
図11E~
図11Gは、インプラント送達システム1100内で折り畳まれた構成のインプラント100の近位端101の側面図及び関連断面図である。
図11H~
図11Iは、インプラント送達システム1100内で折り畳まれた構成のインプラント100の遠位端102の側面図及び関連断面図を示す。
【0135】
図11Aを参照すると、カテーテル1140は、その近位端1101のアクセスポート1111とその遠位端1102の出口ポート1112との間に延びる内腔1144を有する概ね管状の本体を有することができる。図示のように、カテーテル1140は、その近位端1101のアクセスポート1111に隣接するハブ1120を含むことができる。アクセスポート1111は、回転止血弁(図示せず)などの止血弁に取り付けるように構成することができる。カテーテル1140の管腔1144は、アクセスポート1111の少なくとも一部及び/又はハブ1120の少なくとも一部を通るなど、その近位端で大きな直径を有し、アクセスポート1111又はハブ1120内又はハブ1120の遠位で小さな直径に狭まることができる。いくつかの実装では、内腔1144は、アクセスポート1111及びハブ1120を通ることを含むカテーテル1140の全長に沿って実質的に同じ直径を有することができる。例えば、カテーテル1140の内腔1144は、約0.300mm~約0.600mm、例えば約0.419mmの内径を有することができる。ハブ1120の遠位側にあるカテーテル1140の外径は、カテーテルの長さに沿って変化させることもできるし、その長さに沿って実質的に同じにすることもできる。例えば、ハブ1120の遠位側のカテーテル1140の外径は、ハブ1120の遠位側の近位端付近で約0.787mm、遠位端1102で約0.610mmなど、約0.400mm~約1.000mmとすることができる。カテーテル1140の有効長(例えば、ハブ1120の遠位側のカテーテル1140の長さ)は、約100cm~約200cm、例えば約150cmとすることができる。更に、カテーテル1140は、カテーテル1140の壁を構成する1つ以上の編組部分及び/又は1つ以上のコイル部分を有するハイブリッド構造とすることができる。カテーテル1140の例示的な構成について上述したが、このような構成に対する変更も本開示の範囲に含まれることが意図される。例えば、カテーテル1140は、インプラント100及び送達ワイヤ600がカテーテル1140の内腔1144内にある間、インプラント100を送達ワイヤ600上に折り畳まれた構成に維持するように構成することができる。他の例として、カテーテル1140は、インプラント100を送達するために被験者1の神経血管部位にアクセスするように構成することができる。
【0136】
上述したように、
図11Bは、インプラント100が送達ワイヤ600の上に、カテーテル1140の壁の一部が除去されたカテーテル1140の内腔1144内に、折り畳まれた構成にあるインプラント送達システム1100の遠位端1102のクローズアップを示している。図示されているように、カテーテル1140の内腔1144は、インプラント100をその折り畳まれた構成に維持するために送達ワイヤ600と協働するように構成され得る。
【0137】
図11C~
図11Iは、インプラント100、送達ワイヤ600、及びインプラント送達システム1100のカテーテル1140の間の相互作用を更に示している。
図11C及び
図11E~
図11Fに示されるように、カプラ900のハブ930は、インプラント100の少なくとも一部を受容するように構成され得る。例えば、ハブ930の1つ以上のスロット931は、インプラント100の1つ以上の近位方向に延びる支柱125のネック部分126を受容するように構成され得る。このような構成により、送達ワイヤ600がカテーテル1140の内腔1144に対して(例えば、長手方向に)移動させられると、インプラント100は、カプラ900(例えば、カプラ900のハブ930)、インプラント100(例えば、インプラント100の1つ以上の近位に延びる支柱125のネック部分126)、及びカテーテル1140(例えば、カテーテル1140の内腔1144)の間の相互作用によって、送達ワイヤ600とともに移動させられる。更に説明すると、ハブ930及び内腔1144のハブ直径935は、ハブ930が内腔1144内に配置されている間、インプラント100の1つ以上の近位に延びる支柱125のネック部分126がハブ930の1つ以上のスロット931から移動するのを防止するように構成され得る。更に、インプラント100の1つ以上の近位に延びる支柱125は、管腔1144に対する送達ワイヤ600の遠位又は近位の移動時にハブ930の遠位面951及び近位面941がそのような拡がった部分に押し付けられるように、ネック部分126の遠位及び近位で拡がるように構成され得る。したがって、ハブ930が管腔1144内に位置している間に送達ワイヤ600がカテーテル1140に対して遠位及び/又は近位に相対的に移動すると、インプラント100はそれに対応して遠位及び/又は近位に移動する。
【0138】
いくつかの実装では、ハブ930の遠位面951は、送達ワイヤ600がカテーテル1140に対して遠位側に移動されるときに、インプラント100の他の部分と相互作用して、インプラント100を遠位側に移動させることができる。代替的に、又は組み合わせて、バンパ800(例えば、バンパ800の平坦面808)は、インプラント100の一部(例えば、1つ以上の近位側に延びる支柱125のコネクタ部分127及び/又は近位放射線不透過性マーカ181)と相互作用して、送達ワイヤ600がカテーテル1140に対して遠位側に動かされたときにインプラント100を遠位側に動かすことができる。いくつかの実装では、ハブ930の近位面941は、送達ワイヤ600がカテーテル1140に対して近位側に移動されるときに、インプラント100の他の部分と相互作用して、インプラント100を近位側に移動させることができる。例えば、近位面941は、送達ワイヤ600がカテーテル1140に対して相対的に近位側に動かされたときにインプラント100を近位側に動かすために、1つ以上の近位側に延びる支柱125のコネクタ部分127及び/又は近位放射線不透過性マーカ181と相互作用することができる。
【0139】
引き続き
図11A~
図11Hを参照すると、送達ワイヤ600の一部は、インプラント100がその上で折り畳まれ、1つ以上の近位に延びる支柱125のネック部分126がカプラ900の1つ以上のスロット931内に配置されたときに、インプラント100(例えば、インプラント100の内腔104)を通過するように構成することができる。例えば、
図11C、
図11E、及び
図11Gは、インプラント100の1つ以上の近位に延びる支柱125のコネクタ部分127と、それに接続された近位放射線不透過性マーカ181とが、カプラ900(例えば、カプラ900のハブ930の近位面941)とバンパ800(例えば、バンパ800の遠位平坦面808)との間で送達ワイヤの周囲に折り畳まれた状態(例えば、遠位コイル640及びそれを貫通して延びるコアワイヤ700の周囲に折り畳まれている状態)を示している。他の例として、
図11D、
図11H、及び
図11Iは、カプラ900、スペーサコイル660、及び放射線不透過性コイル680の周囲に折り畳まれたインプラント100の一部(例えば、1つ以上の近位方向に延びる支柱125以外のインプラント100の一部又は全部)を示している。これら同じ図面に示されているように、インプラント100の102の遠位端は、インプラント100が送達ワイヤ600の周囲に折り畳まれ、カテーテル1140の内腔1144内にあるときに、送達ワイヤ600の遠位端602と実質的に整列することができる。
【0140】
図12A~
図12Cは、送達ワイヤ600及びカテーテル1140を介した管腔内インプラント100の送達を示す図である。
図12Aは、インプラント100及び送達ワイヤ600の遠位端102及び602が、それぞれ、実質的に互いに(例えば、長手方向に)整列し、カテーテル1140の出口ポート1112に隣接した状態で、送達ワイヤ600に対して折り畳まれたインプラント100を示している。これは、被験者1内でインプラント送達システム1100を所望の移植部位まで前進させる間に使用される相対位置決めとすることができる。
図12Bは、インプラント100の一部(例えば、その遠位端102から始まる)がカテーテル1140の遠位端1102の出口ポート1112から遠位側に延びているインプラント100を部分的に拡大して示した図である。また、カテーテル1140の出口ポート1102から遠位側に延びる送達ワイヤ600(例えば、その遠位端602から始まる)の少なくとも一部も示されている。インプラント100のこのような部分的な拡張を達成するために、送達ワイヤ600をカテーテル1140に対して遠位側に移動させることができ、及び/又は、カテーテル1140を送達ワイヤ600に対して近位側に移動させることができる。いくつかの実装では、インプラント100の配置中にカテーテル1140を近位側に、送達ワイヤ600を遠位側に同時に移動させることが有利である。
図12Bに示される部分的に拡張された状態(本明細書では部分的に配置された状態とも呼ぶことができる)では、送達ワイヤ600とカテーテル1140との間の相対的な移動は、インプラント100をカテーテル1140内に引き戻すか、又はそのまま継続して、最終的には、
図12Cに示されるように、カテーテル1140の出口ポート1112及び送達ワイヤ600からインプラント100を完全に解放することができる。本明細書で説明されるように、インプラント送達システム1100は、送達ワイヤ600のカプラ900のハブ930がカテーテル1140の内腔1144内に留まる間、及び/又は1つ以上の近位に延びる支柱125の少なくとも一部がカテーテル1140の内腔1144内に留まる間、インプラント100をカテーテル1140の内腔1144内に引き抜くことができるように(例えば、位置を調整するため、又は被験者1から取り外すために)構成することができる。
【0141】
いくつかの実装では、インプラント100の遠位端102及び送達ワイヤ600の遠位端602を出口ポート1112から離間させた状態で、被験者1内でインプラント送達システム1100を前進させることが望ましい。例えば、インプラント100の遠位端102及び送達ワイヤ600の遠位端602をカテーテル1140の内腔1144内に凹ませた状態で、被験者1内でインプラント送達システム1100を前進させることが望ましいことがある。インプラント100及び送達ワイヤ600とカテーテル1140とのこのような相対的位置決めは、有利には、カテーテル1140の遠位先端が、被験者内を横断する間に少なくとも部分的に偏向することを可能にし得る。いくつかの実装では、インプラント100の遠位端102及び送達ワイヤ600の遠位端602が出口ポート1112と実質的に整列した状態で、インプラント送達システム1100を被験者1内で前進させることが望ましい。いくつかの実装では、カテーテル1140の遠位先端部又は遠位部分の可撓性を前進中に調整するために、インプラント100及び送達ワイヤ600をカテーテル1140の出口ポート1112に対して近位側及び/又は遠位側に移動させながら、インプラント送達システム1100を被験者1内で前進させることができる。前進中の可撓性のこのような調整は、被験者1の血管をナビゲートするインプラント送達システム1100の能力を向上させることができる。
【0142】
図13Aa~
図13Gbは、本開示のいくつかの態様による、血管5内の動脈瘤7に隣接する管腔内インプラント100の送達を示す図である。
図13Aa~
図13Gbを通して、上部パネル(例えば、
図13Aa、
図13Ba、
図13Ca、
図13Da、
図13Ea、
図13Fa、
図13Ga)は、インプラント100が配備されている血管5の開いた断面及びインプラント送達システム1100(例えば、カテーテル1140、送達ワイヤ600、及びインプラント100)の概略図を示し、下部パネル(例えば、
図13Ab、
図13Bb、
図13Cb、
図13Db、
図13Eb、
図13Fb、
図13Gb)は、同様の開いた断面を示すが、その代わりに、X線撮影及び/又は透視下でのインプラントの送達中にケア提供者が視覚化するであろうインプラント送達システム1100(例えば、カテーテル1140、送達ワイヤ600、及びインプラント100)の放射線不透過性の特徴を示す。
【0143】
図13Aa~
図13Abは、インプラント送達システム1100が、インプラント100の配置前の状態において、動脈瘤7に隣接するカテーテル1140内にインプラント100を(視界から隠れて)位置決めしている状態を示した図である。図示のように、カテーテル1140は、その遠位端1102に隣接する遠位放射線不透過性マーカ1182と、遠位端1102から近位に間隔を置いた近位放射線不透過性マーカ1181を含むことができる。更に、図示のように、配置前の状態では、放射線不透過性コイル680の遠位端とインプラント100の少なくとも1つの遠位放射線不透過性マーカ182とは、互いに実質的に長手方向に整列させることができ、カテーテル1140の遠位放射線不透過性マーカ1182の近位に位置することができる(インプラント100及び送達ワイヤ600のそれぞれの遠位端102及び602がカテーテル1140の内腔1144内にあることを示している)。
【0144】
図13Ba~
図13Bbは、放射線不透過性コイル680の遠位端、インプラント100の少なくとも1つの遠位放射線不透過性マーカ182、及びカテーテル1140の遠位放射線不透過性マーカ1182が実質的に互いに整列した状態のインプラント送達システム1100を示す図である。このような位置合わせは、カテーテル1140を送達ワイヤ600(ひいてはインプラント100)に対して近位側に移動させ、及び/又は送達ワイヤ600をカテーテル1140に対して遠位側に移動させることによって達成することができる。このような位置決めでは、インプラント100及び送達ワイヤ600のそれぞれの遠位端102及び602は、管腔1144内に位置し、カテーテル1140の出口ポート1112に隣接し得る。
【0145】
図13Ca~
図13Cbは、インプラント100が血管5内に部分的に配置され(例えば、約25%配置され)、動脈瘤7に隣接するが遠位の位置にある状態のインプラント送達システム1100を示す図である。図示のように、インプラント100の放射線不透過性コイル680の遠位端及び少なくとも1つの遠位放射線不透過性マーカ182は、いずれもカテーテル1140の遠位放射線不透過性マーカ1182の遠位にある。また、放射線不透過性コイル680の遠位端は、インプラント100の少なくとも1つの遠位放射線不透過性マーカ182の遠位にある。このような位置決めは、カテーテル1140を送達ワイヤ600(したがってインプラント100)に対して相対的に近位に移動させ、及び/又は送達ワイヤ600を
図13Ba~
図13Bbに示されているよりもカテーテル1140に対して相対的に遠位に移動させることによって達成することができる。このような位置決めでは、送達ワイヤ600の遠位端602は、インプラント100の遠位端102の遠位側及びカテーテル1140の出口ポート1112の遠位及び外側に延びることができる。更に、遠位端102及びインプラント100の少なくとも一部は、カテーテル1140の出口ポート1112から遠位かつ外側に延び、血管5の内壁に対して半径方向外側に広がることができる。
【0146】
図13Da~
図13Dbは、インプラント100が部分的に配置され(例えば、約50%配置)、
図13Ca~
図13Cbに示された部分的配置状態よりも多くのインプラント100が血管5内に配置された別の状態におけるインプラント送達システム1100を示す。この部分的に配置された状態のインプラント100は、動脈瘤7を少なくとも部分的に横切って延びている。図示のように、インプラント100の放射線不透過性コイル680の遠位端及び少なくとも1つの遠位放射線不透過性マーカ182は両方とも、
図13Ca~
図13Cbに示されているよりもカテーテル1140の遠位放射線不透過性マーカ1182の遠位にある。また、図示のように、放射線不透過性コイル680の遠位端は、
図13Ca~
図13Cbに示されるよりも、インプラント100の少なくとも1つの遠位放射線不透過性マーカ182の遠位にある。このような位置決めは、カテーテル1140を送達ワイヤ600(したがってインプラント100)に対して相対的に近位に移動させ、及び/又は送達ワイヤ600を
図13Ca~
図13Cbに示されているよりもカテーテル1140に対して相対的に遠位に移動させることによって達成することができる。このような位置決めでは、送達ワイヤ600の遠位端602は、
図13Cに示されるよりも、インプラント100の遠位端102の更に遠位まで、及びカテーテル1140の出口ポート1112の更に遠位及び外側に延びることができる。更に、インプラント100の更に多くが、カテーテル1140の出口ポート1112から遠位及び外側に延び、それによって囲まれる血管5の内壁に対して半径方向外側に広がることができる。
【0147】
図13Ea~
図13Ebは、インプラント100が部分的に配置され(例えば、約75%配置され)、再シース可能限界にある別の状態のインプラント送達システム1100を示す図である。換言すれば、
図13Ea~
図13Ebは、インプラント100のさらなる配置によってインプラント100が血管5内に完全に配置し得る位置にあるインプラント送達システム1100を示している。図示されているように、インプラント100の多くは、
図13Da~
図13Dbに示されている部分的な配置状態よりも血管5内に配置されている。この部分的に配置された再シース可能な限界状態のインプラント100は、
図13Da~
図13Dbに示されるよりも動脈瘤7を横切って更に延びている。図示のように、インプラント100の放射線不透過性コイル680の遠位端及び少なくとも1つの遠位放射線不透過性マーカ182は両方とも、
図13Da~
図13Dbに示されているよりもカテーテル1140の遠位放射線不透過性マーカ1182の遠位にある。また、図示のように、放射線不透過性コイル680の遠位端は、
図13Da~
図13Dbに示されるよりも、インプラント100の少なくとも1つの遠位放射線不透過性マーカ182の遠位にあることができる。更になお、図示のように、放射線不透過性コイル680の近位端は、カテーテル1140の遠位放射線不透過性マーカ1182と実質的に整列することができ、これにより、インプラント100が再シース可能限界にあることを有利に示すことができる。このような位置決めは、カテーテル1140を送達ワイヤ600(したがってインプラント100)に対して相対的に近位に移動させ、及び/又は送達ワイヤ600を
図13Da~
図13Dbに示されているよりもカテーテル1140に対して相対的に遠位に移動させることによって達成することができる。そのような位置決めでは、送達ワイヤ600の遠位端602は、
図13Da~
図13Dbに示されるよりも、インプラント100の遠位端102の更に遠位まで延び、カテーテル1140の出口ポート1112の更に遠位及び外側に延びることができる。更に、インプラント100の更に多くが、カテーテル1140の出口ポート1112から遠位及び外側に延び、それによって囲まれる血管5の内壁に対して半径方向外側に広がることができる。
【0148】
図13Fa~
図13Fbは、インプラント100がほぼ完全に配置され(例えば、約95%配置され)、いくつかの実装では、再シース可能限界を過ぎた状態のインプラント送達システム1100を示す図である。図示されているように、インプラント100の多くは、
図13Ea~
図13Ebに示されている部分的な配置状態よりも血管5内に配置されている。このほぼ完全に配置された状態のインプラント100は動脈瘤7を横切って延びている。図示のように、インプラント100の放射線不透過性コイル680の遠位端及び少なくとも1つの遠位放射線不透過性マーカ182は両方とも、
図13Ea~
図13Ebに示されているよりもカテーテル1140の遠位放射線不透過性マーカ1182の遠位にある。また、図示のように、放射線不透過性コイル680の遠位端は、
図13Ea~
図13Ebに示されるよりも、インプラント100の少なくとも1つの遠位放射線不透過性マーカ182の遠位にあることができる。更になお、図示のように、放射線不透過性コイル680の近位端は、カテーテル1140の遠位放射線不透過性マーカ1182の遠位にあることができ、インプラントの少なくとも1つの近位放射線不透過性マーカ181は、カテーテル1140の遠位放射線不透過性マーカ1182と実質的に整列することができ、このことは、インプラント100が再シース可能限界を超えていることを有利に示すことができる。このような位置決めは、カテーテル1140を送達ワイヤ600(したがってインプラント100)に対して相対的に近位に移動させ、及び/又は送達ワイヤ600を
図13Ea~
図13Ebに示されているよりもカテーテル1140に対して相対的に遠位に移動させることによって達成することができる。そのような位置決めでは、送達ワイヤ600の遠位端602は、
図13Ea~
図13Ebに示されるよりも、インプラント100の遠位端102の更に遠位まで延び、カテーテル1140の出口ポート1112の更に遠位及び外側に延びることができる。更に、インプラント100の更に多くが、カテーテル1140の出口ポート1112から遠位及び外側に延び、それによって囲まれる血管5の内壁に対して半径方向外側に広がることができる。
【0149】
図13Ga~
図13Gbは、インプラント100が血管5内に完全に配置された状態のインプラント送達システム1100を示す図である。図示のように、
図13Fa~
図13Fbに示されたほぼ完全に配置された状態よりも多くのインプラント100が血管5内に配置されている。この完全に配置された状態のインプラント100は動脈瘤7を横切って(例えば、動脈瘤7の少なくとも部分的に遠位側及び少なくとも部分的に近位側に)延びており、送達ワイヤ600にはもはや接続されていない。図示のように、インプラント100の放射線不透過性コイル680の遠位端及び少なくとも1つの遠位放射線不透過性マーカ182は両方とも、
図13Fa~
図13Fbに示されているよりもカテーテル1140の遠位放射線不透過性マーカ1182の遠位にある。また、図示のように、放射線不透過性コイル680の遠位端は、
図13Fa~
図13Fbに示されるよりも、インプラント100の少なくとも1つの遠位放射線不透過性マーカ182の遠位にあることができる。更になお、図示のように、インプラント100の少なくとも1つの近位放射線不透過性マーカ181は、カテーテル1140の遠位放射線不透過性マーカ1182の遠位にあることができ、これは、インプラント100が完全に展開され、送達ワイヤ600にもはや接続されていないことを有利に示すことができる。このような位置決めは、カテーテル1140を送達ワイヤ600(したがってインプラント100)に対して相対的に近位に移動させ、及び/又は送達ワイヤ600を
図13Fa~
図13Fbに示されているよりもカテーテル1140に対して相対的に遠位に移動させることによって達成することができる。そのような位置決めでは、送達ワイヤ600の遠位端602は、
図13Fa~
図13Fbに示されるよりも、インプラント100の遠位端102の更に遠位まで延び、カテーテル1140の出口ポート1112の更に遠位及び外側に延びることができる。更に、インプラント100のいずれもカテーテル1140によって収容されることができず、近位端101を含むインプラント100のすべてが、それによって取り囲まれる血管5の内壁に対して半径方向外側に広がることができる。
【0150】
図14A~
図14Fは、本開示のいくつかの態様による、管腔内インプラント送達システム1400の他の実装を示す図である。
図14Aは、インプラント送達システム1400を示す斜視図である。
図14Bは、カテーテル1440の壁の一部が視界から除去されたインプラント送達システム1400の遠位端のクローズアップ斜視図である。
図14C~
図14Dは、インプラント送達システム1400内の折り畳まれた構成のインプラント1500の近位端1501の側面図及び関連断面図である。
図14E~
図14Fは、インプラント送達システム1400内で折り畳まれた構成のインプラント1500の遠位端1502の側面図及び関連断面である。
【0151】
管腔内インプラント送達システム1400は、いくつかの点又は多くの点で、インプラント送達システム1100と類似又は同一であり得、及び/又はインプラント送達システム1100の機能のいずれかを含み得る。例えば、インプラント送達システム1400は、近位端1101、アクセスポート1111、出口ポート1112、遠位端1102、及び内腔1144を有するカテーテル1140と同様又は同一の、近位端1401のアクセスポート1411と遠位端1402の出口ポート1412との間に延びる内腔1444を有する、概ね管状の本体を有するカテーテル1440を備えることができる。更に、カテーテル1440は、カテーテル1140のハブ1120と同様又は同じ近位端1401においてアクセスポート1411に隣接するハブ1420を含むことができる。インプラント送達システム1400はまた、インプラント送達システム1100のインプラント100及び送達ワイヤ600と同様の送達ワイヤ1600について折り畳まれたインプラント1500を送達するように構成され得るが、インプラント1500及び送達ワイヤ1600は異なるように構成され得る。例えば、図示のように、送達ワイヤ1600は、送達ワイヤ600と同様又は同じように、その近位端1601と遠位端1602との間を概して長手方向に延びることができる。送達ワイヤ1600はまた、送達ワイヤ600のマーカ780を有するコアワイヤ700と同様又は同じ1つ以上のマーカ1780を有するコアワイヤ1700を有することができる。送達ワイヤ1600は、近位コイル1620、近位カプラ1900、及びいくつかの実装では遠位カプラ2000を有し得、近位カプラ1900及び遠位カプラ2000は、その送達のためにインプラント1500と相互作用するように構成されている点で、送達ワイヤ600と異なり得る。送達ワイヤ600と同様に、送達ワイヤ700は、カテーテル1440を通って移動し、インプラント1500を送達するように構成され得る。
【0152】
送達ワイヤ1600の近位カプラ1900は、その近位端1901と遠位端1902との間に延びる内腔1904を有する概ね管状の本体1920を有することができる。少なくとも
図14C~
図14Dに示されるように、近位カプラ1900は、その送達のためにインプラント1500の少なくとも一部を受け入れて解放可能に連結するように構成された1つ以上の窓を有することができる。例えば、近位カプラ1900は、第1の窓1940、第2の窓1950、及び第3の窓1960を有することができる。第1の窓1940及び第2の窓1950は、近位カプラ1900の側面を横切って少なくとも部分的に互いに整列し、支柱1930によって互いに分離され得る。第3の窓1960は、近位カプラ1900を送達ワイヤ1600のコアワイヤ1700に取り付ける(例えば、溶接する)ことができる貫通孔を提供することができる。
【0153】
送達ワイヤ1600の遠位カプラ2000は、含まれる場合、その近位端2001からその遠位端2002まで少なくとも部分的に延びる内腔2004を有し、閉じた丸みを帯びた遠位端2002を有する概ね管状の本体2020を有することができる。少なくとも
図14E~
図14Fに示されるように、遠位カプラ2000は、その送達のためにインプラント1500の少なくとも一部を受け入れて解放可能に連結するように構成された1つ以上の窓を有することができる。例えば、遠位カプラ2000は、第1の窓2040、第2の窓2050、及び第3の窓2060を有することができる。第1の窓2040及び第2の窓2050は、遠位カプラ2000の側面を横切って少なくとも部分的に互いに整列し、支柱2030によって互いに分離され得る。第3の窓2060は、遠位カプラ2000を送達ワイヤ1600のコアワイヤ1700に取り付ける(例えば、溶接する)ことができる貫通孔を提供することができる。
【0154】
インプラント1500は、いくつかの点又は多くの点で、インプラント100、400、及び/又は500と同じか、又は類似していることができ、及び/又はインプラント100、400、及び/又は500の機能性のいずれかを含むことができる。例えば、インプラント1500は、インプラント100のリング141、121、161、複数のリング支柱142、122、162、複数の近位頂部143、123、163、複数の遠位頂部144、124、164、及び複数の連結支柱145と同様又は同じ連結支柱1545によって結合された複数の近位頂部1543及び複数の遠位頂部1544で結合する複数のリング支柱1542からなるリング1541を含むことができる。インプラント1500は、関連する送達ワイヤ1600と解放可能に接続するように構成される方法において、インプラント100、400、及び/又は500とは異なり得る。少なくとも
図14C~
図14Dに示されるように、インプラント1500は、インプラント1500の送達のために送達ワイヤ1600の近位カプラ1900と解放可能に接続/相互作用するように構成された近位に延びる支柱1530を有することができる。近位に延びる支柱1530は、ネック部分1532及び近位フラグ1533を有することができ、近位フラグは、近位表面1535、自由端1534、及び遠位表面1536を有する。ネック部分1532は、インプラント1500がカテーテル1444内で折り畳まれた状態にあるときにインプラント1500から近位に延びる1つ以上の近位放射線不透過性マーカ1581を越えて近位に延び、送達ワイヤ1600について近位に延びるように構成され得る。近位フラグ1533は、ネック部分1532から近位に延び、送達ワイヤ1600の近位カプラ1900と解放可能に接続するように構成され得る。このために、近位フラグ1533の自由端1534は、近位フラグ1533が少なくとも部分的に第1の窓1940及び第2の窓1950を通って延びるように、近位カプラ1900の第1の窓1940及び第1の窓1950内に挿入され得る。また、近位表面1535及び/又は遠位表面1536は、近位フラグ1533と近位カプラ1900との間の接続及び相互作用を促進するために、図示のようにインプラント1500の長手方向軸線に対して角度を付けることができる。近位カプラ1900の支柱1930は、近位フラグ1533が近位カプラ1900から半径方向外側に滑り落ちるのを防止することができ、カテーテル1440の内腔1444は、近位カプラ1900がカテーテル1440の内腔1444内に留まっている間、近位フラグ1533が第1の窓1940及び第2の窓1950から滑り落ちるのを防止することができる。更に、近位フラグ1533の近位表面1535及び遠位表面1536は、送達ワイヤ1600がカテーテル1440に対して相対的に前進又は後退させられるときに、カテーテル1440に対するインプラント1500の前進又は後退のために、第1の窓1940及び第2の窓1950の対応する近位表面及び遠位表面と相互作用することができる。
【0155】
インプラント1500が十分な押しやすさを有する場合、インプラント1500と送達ワイヤ1600は、近位フラグ1533と近位カプラ1900のみを介して解放可能に接続することができる。インプラント1500が十分な押圧性を有していない場合、インプラント1500及び送達ワイヤ1600は、近位フラグ1533及び近位カプラ1900を介した解放可能に接続することに加えて、インプラント1500の遠位方向に延びる支柱1550の遠位フラグ1553及び遠位カプラ2000を介した同様の方法で解放可能に接続することができる。少なくとも
図14E~
図14Fに示されるように、インプラント1500は、インプラント1500の送達のために送達ワイヤ1600の遠位カプラ2000と解放可能に接続/相互作用するように構成された遠位延在支柱1550を有することができる。近位に延びる支柱1550は、ネック部分1552及び遠位フラグ1553を有することができ、遠位フラグは、近位表面1555、自由端1554、及び遠位表面1556を有する。ネック部分1552は、インプラント1500がカテーテル1444内で折り畳まれた状態にあるときに、インプラント1500から遠位側に延びる1つ以上の近位放射線不透過性マーカ1582を越えて遠位側に延び、送達ワイヤ1600について遠位側に延びるように構成され得る。遠位フラグ1553は、ネック部分1552から遠位に延び、送達ワイヤ1600の遠位カプラ2000と解放可能に接続するように構成され得る。このために、遠位フラグ1553の自由端1554は、遠位フラグ1553が少なくとも部分的に第1の窓2040及び第2の窓2050を通って延びるように、遠位カプラ2000の第1の窓2040及び第2の窓2050内に挿入され得る。また、近位表面1555及び/又は遠位表面1556は、遠位フラグ1553と遠位カプラ2000との間の接続及び相互作用を促進するために、図示のようにインプラント1500の長手方向軸線に対して角度を付けることができる。近遠位カプラ2000の支柱2030は、遠位フラグ1553が遠位カプラ2000から半径方向外側に滑り落ちるのを防止することができ、カテーテル1440の内腔1444は、遠位カプラ2000がカテーテル1440の内腔1444内に留まっている間、遠位フラグ1553が第1の窓2040及び第2の窓2050から滑り落ちるのを防止することができる。更に、遠位フラグ1553の近位表面1555及び遠位表面1556は、送達ワイヤ1600がカテーテル1440に対して相対的に前進又は後退させられるときに、カテーテル1440に対するインプラント1500の前進又は後退のために、第1の窓2040及び第2の窓2050の対応する近位表面及び遠位表面と相互作用することができる。インプラント1500が、近位フラグ1533と近位カプラ1900との間の連結のみを介してカテーテル1440を通って前進及び/又は後退するのに十分な押圧力を有する場合、インプラント1500は遠位方向に延びる支柱1550を有さず、送達ワイヤ1600は遠位カプラ2000を有さないことがある。
【0156】
図15A~
図15Eは、本開示のいくつかの態様による送達ワイヤ1600及びカテーテル1440を介したインプラント1500の送達を示す図である。
図15Aは、遠位フラグ1550が遠位カプラ2000の第1の窓2040及び第2の窓2050内に挿入され、カテーテル1440の出口ポート1412に隣接している状態で、カテーテル1440の内腔1444内で送達ワイヤ1600について折り畳まれたインプラント1500を示す図である。これは、被験者1内でインプラント送達システム1400を所望の移植部位まで前進させる間に使用される相対位置決めとすることができる。
図15Bは、インプラント1500の一部がカテーテル1140の遠位端1402の出口ポート1412から遠位方向に延びている状態で、インプラント1500が送達ワイヤ1600に対してまだ折り畳まれている状態を示している。また、送達ワイヤ1600の少なくとも一部がカテーテル1440の出口ポート1412から遠位側に延びており、遠位フラグ1550が遠位カプラ2000から外れ始めている様子も示されている。インプラント1500及び送達ワイヤ1600のこのような部分的な伸長及びその間のこのような部分的な切断を達成するために、送達ワイヤ1600をカテーテル1440に対して遠位側に移動させることができ、及び/又はカテーテル1440を送達ワイヤ1600に対して近位側に移動させることができる。いくつかの実装では、インプラント1500の配置中にカテーテル1440を近位側に、送達ワイヤ1600を遠位側に同時に移動させることが有利である。
図15Bに示す部分的に伸長した状態において、送達ワイヤ1600とカテーテル1440との間の相対的な移動は、インプラント1500をカテーテル1440内に引き戻し、遠位フラグ1550と遠位カプラ2000とを完全に再接続するか、又は、
図15Cに示すように、そのまま継続して最終的にフラグ1550を遠位カプラ2000から離脱させることができる。換言すれば、遠位フラグ1550がカテーテル1440の内腔1444内から出口ポート1412から遠位に完全に延出されると、遠位フラグ1553は遠位カプラ2000から切り離され得る。
図15Dは、インプラント1500の一部がカテーテル1440の遠位端1402の出口ポート1412から遠位側に延びた状態で部分的に拡張されたインプラント1500を示す図である。また、カテーテル1440の出口ポート1412から遠位側に延びる送達ワイヤ1600の少なくとも一部も示されている。インプラント1500のこのような部分的な拡張を達成するために、送達ワイヤ1600をカテーテル1440に対して遠位側に移動させることができ、及び/又は、カテーテル1440を送達ワイヤ1600に対して
図15Cに示されるよりも近位側に移動させることができる。
図15Dに示される部分的に拡張された状態(本明細書では部分的に配置された状態とも呼ばれ得る)では、送達ワイヤ1600とカテーテル1440との間の相対的な移動は、インプラント1500をカテーテル1440内に引き戻すか、又はそのまま継続して、最終的には、
図15Eに示されるように、カテーテル1440の出口ポート1412及び送達ワイヤ1600からインプラント1500を完全に解放することができる。このような相対移動は、上述したように、近位フラグ1533と近位カプラ1900との間の解放可能な接続によって達成することができる。インプラント送達システム1400は、送達ワイヤ1600のカプラ1900がカテーテル1440の内腔1444内に留まる一方で、インプラント1500がカテーテル1440の内腔1444内で引き抜かれ得るように(例えば、位置の調節又は被験者1からの除去のために)構成され得る。インプラント1500が、遠位フラグ1553を有する遠位延在支柱1550を有さず、送達ワイヤ1600が遠位カプラ2000を有さない実施態様では、インプラント1500は、上述のように、近位フラグ1533と近位カプラ1900との間の相互作用を介してカテーテル1440から展開され得る。
【0157】
図16A~
図16Dは、本開示のいくつかの態様によるインプラント1500の放射線不透過性マーカの様々な実施態様を示す図である。
図16A~
図16Dのそれぞれは、複数のリング支柱1542が複数の近位頂部1543のうちの1つ若しくは複数の遠位頂部1544のうちの1つのいずれかでそれぞれ接続するインプラント1500の近位端及び/又は遠位端を示す図である。
図16Aは、近位フラグ1533及び/又は遠位フラグ1553が放射線不透過性材料1580(例えば、フラグの一部内)を含み、そのような近位フラグ1533が対応する近位に延びる支柱1530から延び、又はそのような遠位フラグ1553が対応する遠位に延びる支柱1550から延びている実装を示す図である。
図16Bは、近位フラグ1533及び/又は遠位フラグ1553が放射線不透過性材料1580からなり、そのような近位フラグ1533が対応する近位に延びる支柱1530から延びているか、又はそのような遠位フラグ1553が対応する遠位に延びる支柱1550から延びている実装を示す図である。
図16Cは、近位に延びる支柱1530及び/又は遠位に延びる支柱1550が放射線不透過性材料1580を組み込んだ島組織1583を含む実装を示す図である。
図16Dは、近位放射線不透過性マーカ1581及び/又は遠位放射線不透過性マーカ1582が放射線不透過性材料1580を含む実装を示す図である。
【0158】
図17A~
図17Gは、本開示のいくつかの態様による、血管5の動脈瘤7を治療する方法を示す図である。
図17A~
図17Gに関して説明される方法は、インプラント送達システム1100、インプラント送達システム1400、又はそれらの変形例など、本明細書に記載されるインプラント送達システム及び/又はその構成要素のいずれかを使用して動脈瘤を治療するための一般的な非限定的な方法であることが意図される。
図17A~
図17Gは、インプラント3100と同様にコイル4000を配備する方法の一般的な進行を示す図である。
図17Aは、動脈瘤7への経路を確立するためのカテーテル3000の使用を示す図である。
図17Bは、それぞれインプラント3100及びコイル4000の両方のためのカテーテル3440、4440を動脈瘤7に誘導するのを助けるためのガイドワイヤ3200、4200の使用を示す図である(ただし、いくつかの実施態様では、このようなガイドワイヤの使用は必要でないか、又は必要でなくてもよい)。
図17Cは、コイル4000を送達するための動脈瘤7内のコイルカテーテル4440と、インプラント3100を配置するための動脈瘤7に隣接する血管5内のインプラントカテーテル3440の配置を示す図である。
図17Dは、ガイドワイヤ3200、4200の除去時のカテーテル3440、4440を示す図である。
図17Eは、それぞれのカテーテル3440、4440からのインプラント3100及びコイル4000の配置を示す図である。
図17Fは、配置時の拡張したインプラント3100とコイル4000で充填された動脈瘤7を示す図である。
図17Gは、カテーテル3440、4440が後退し、インプラント3100が動脈瘤7に隣接する血管5内に移植された後の、充填された動脈瘤7を示す図である。
図17Hは、インプラント3100が最初に動脈瘤7に隣接する血管5内に配備され、コイルカテーテル4440がコイル4000の配置のためにインプラント3100を通って動脈瘤7内に延びる方法の代替案を示す図である。このような代替手段は、配置中及び配置後の動脈瘤内でのコイル4000の保持を有利に促進することができる。
【0159】
代替的に、又はそれに加えて、カテーテル4440は、動脈瘤嚢又は動静脈奇形を充填するために二次的な化学的トリガを用いて2段階の生体位ゲルを放出することができる。例えば、第1段階は、剪断減粘性ゲル(例えば、グルコース相互作用のためのフェニルボロン基、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリエチレンイミン(polyethylenimine、PEI)、ゼラチン、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ポリアルギン酸、ヒアルロン酸、及びグリコサミノグリカン(glycosaminoglycans、GAG)などを含むビンガムプラスチック様液体、移植片又はコポリマー)を、コイルを伴って又は伴わずに動脈瘤嚢に注入することからなる。第2段階は、良性の代謝産物(例えば、グルコース、フルクトースなど)を粘性ゲル前駆体液に注入することによる架橋を含むものであってもよい。いくつかの実装では、塩濃度、カルシウムイオン濃度、エタノール、リボフラビン、及び他の代謝特性を、グルコース及び/又はフルクトースの代わりに、又はそれに加えて使用することができる。
【0160】
いくつかの実装では、カテーテル4440は、動脈瘤嚢又は動静脈奇形を充填するために物理的トリガを用いて2段階の生体位ゲルを放出することができる。例えば、第1段階は剪断減粘性ゲル(例えば、ビンガムプラスチック様液体、プルロニック(登録商標)、PNIPPAMプラスプルロニックなど)をコイルの有無にかかわらず動脈瘤嚢内に注入することからなる。第2段階は物理的架橋段階を含むものであってもよく、例えば良性の高温/低温生理食塩水を粘性ゲル前駆体液に注入することによる物理的架橋が挙げられる。あるいは、ゲルを架橋するには体温で十分である。
【0161】
いくつかの実装では、2段階の生体位ゲルが配置前に動脈瘤コイルにコーティングされるか、動脈瘤コイルに組み込まれるものであってもよい。プレコートされたコイルは、グルコース相互作用のためのフェニルボロン基、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリエチレンイミン(polyethylenimine、PEI)、ゼラチン、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ポリアルギン酸、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycans、GAG)を含む移植片又はコポリマーを含む、ビンガム、プルロニック、PNIPPAMプラスプルロニック、及び他の同様のポリマー又は粘性ゲル前駆体液を含む剪断減粘性プラスチックのような液体を含んで配置することができる。二次的な化学的又は物理的架橋は、本明細書の他の箇所に記載されているように誘導することができる。
【0162】
いくつかの実装では、本明細書に記載のインプラントはコイル4000の配置を補助するためだけに設計することができ、動脈瘤7内にコイル4000を充填した後に除去することができる。このようなインプラントは、その後、任意に、実質的に同様の設計であっても異なる設計であってもよい永久的なインプラントと交換することができる。あるいは、本明細書に記載されているように、インプラントは、動脈瘤7にコイル4000を配備して充填した後も定位置に留まる永久インプラントとして機能することができる。
【0163】
いくつかの実装では、特にICASの治療のために、本明細書に記載のインプラントを、血管内のプラークを覆うように血管内に配備することができる。
【0164】
図18A~
図18Bは、本開示のいくつかの態様による導入用シース5000を示す図である。
図18Aは、導入用シース5000の側面図であり、
図18Bは、関連する断面側面図である。導入用シース5000は、インプラント100、400、500、又は1500のような本明細書に記載のインプラントの、送達ワイヤ600又は1600のような本明細書に記載の送達ワイヤについての折り畳まれた状態での、カテーテル1140又は1440のような本明細書に記載のカテーテルの近位端を通しての、及び/又は本明細書に記載のカテーテルの近位端に取り付けられた止血弁の近位端を通しての挿入を促進するように構成され得る。
図18A~
図18Bに示すように、導入用シース5000は、近位端5001、遠位端5002、長さ5009、及び近位端5001と遠位端5002との間に延びる長手方向軸線5003、並びに内腔5004を規定する内径5005を有する概して管状本体5006を有することができる。導入用シース5000は、その近位端5001においてその遠位端5002よりも大きな外径を有する導入用シース5000を生成するために、1つ以上の実質的に一定の直径の部分及び1つ以上のテーパ状の部分を含むことができる。例えば、及び
図18A~
図18Bに示すように、導入用シース5000は、外径5011及び長さ5012を有する第1の定径部5010と、長さ5022を有する第1のテーパ部5020と、外径5031及び長さ5032を有する第2の定径部5030と、長さ5042を有する第2のテーパ部5040と、外径5051及び長さ5052を有する第3の定径部5050とを含むことができる。図示のように、第1の定径部5010は、導入用シース5000の近位端5001から遠位側に延びることができ、第1のテーパ部5020は、第1の定径部5010から遠位側に延びることができ、第2の定径部5030は、第1のテーパ部5020から遠位側に延びることができ、第2のテーパ部5040は第2の定径部5030から遠位側に延びることができ、第3の定径部5050は第2のテーパ部5040から遠位側に延び、導入用シース5000の遠位端5002で終端することができる。いくつかの実装では、導入用シース5000の遠位端5002は、例えば止血弁又はカテーテルとの係合を容易にするために丸みを帯びている。導入用シース5000は、ジャケット5007と、その長さの少なくとも一部に沿ってジャケット内に配置されたライナ5008とを含むことができる。例えば、ライナ5008は、近位端5002からジャケット5007の少なくとも一部(例えば、近位端5002から第2の定径部5030の少なくとも一部まで)に沿って遠位側に延びることができる。ジャケット5007は、グリラミドTR55LXを含むことができる。ライナ5008は、例えば押出成形又は浸漬コーティングされたPTFEを含むことができる。組み立てると、ライナ5008とジャケット5007は、図示のように、管腔5004の実質的に一定の内径5005を有する導入用シース5000を製造することができる。内腔5004の内径5005は、送達ワイヤの上に折り畳まれたインプラントをそこを通して受容し、両者が導入用シース5000内に配置され、及び/又はそこを移動する間、送達ワイヤの上に折り畳まれたインプラントの状態を維持するように構成され得る。いくつかの実装では、内径5005は約0.200mmと約0.600mmの間、例えば約0.427mmとすることができる。
【0165】
導入用シース5000は、少なくとも約250mmの長さ5009を有することができる。いくつかの実装では、導入用シース5000は約500.126mmの長さ5009を有する。そのような実装では、第1の定径部5010の長さ5012は約492.100mmとすることができ、第1のテーパ部5020の長さ5022は約1.727mmとすることができ、第2の定径部5030の長さ5032は約2.921mmとすることができ、第2のテーパ部5040の長さ5042は約2.057mmとすることができ、第3の定径部5050の長さ5052は約1.321mmとすることができる。導入用シース5000は、約3mm以下の最大外径を有することができる。いくつかの実装では、導入用シース5000は約1.346mmの最大外径を有する。そのような実装では、第1の定径部5010の外径5011は約1.346mmとすることができ、第2の定径部5030の外径5031は約0.787mmとすることができ、第3の定径部5050の外径5051は約0.597mmとすることができる。更に、このような実装では、第1のテーパ部5020は、その長さ5022にわたって、第1の定径部の外径5011から第2の定径部の外径5031までテーパを付けることができ、第2のテーパ部5040は、その長さ5042にわたって、第2の定径部の外径5031から第3の定径部の外径5051までテーパを付けることができる。導入用シース5000の実質的に一定の内径5005を考慮すると、更にそのような実装では、第1の定径部5010の厚さ5013(例えば、壁厚)は約0.460mm(これはジャケット5007及びライナ5008を含み得る)とすることができ、第2の定径部5030の厚さ5033は約0.175mm(これはジャケット5007及びライナ5008を含み得る)とすることができ、第3の定径部5050の厚さ5053は約0.838mmとすることができる。導入用シース5000及びその定径部及びテーパ部5010、5020、5030、5040、及び5050の例示的な長さ及び直径が提供されているが、そのような長さ及び/又は直径のいずれかは、与えられたものより小さいか又は大きくすることができ、及び/又は、そのような長さ及び/又は直径は、導入用シースの長さ及び/又は直径が縮小又は増大するにつれて、拡大することができる。
【0166】
好ましい使用方法において、インプラント100は、本明細書に記載されているように、送達ワイヤ600の上に折り畳まれ(例えば、送達ワイヤ600のカプラ900のハブ930の1つ以上のスロット931がインプラント100の1つ以上の近位に延びる支柱125のネック部分126を受容した状態で)、インプラント100が折り畳まれた状態に留まるように、導入用シース5000の内腔5004内に配置され得る。これは、例えば、送達ワイヤ600、インプラント100、及び導入用シース5000の出荷構成とすることができる。インプラント100がその周囲に折り畳まれた状態の送達ワイヤ600をカテーテル1140に導入するには、導入用シース5000を、カテーテル1140の近位端1101に取り付けられた止血弁の近位端に部分的に挿入することができる。その後、止血弁を締め付け、止血弁を介してシステムを洗浄することができる(例えば、流体が導入用シース5000の近位端5001から出るまで)。その後、止血弁を緩め、導入用シース5000を遠位端5002がカテーテル1140のハブ1120に着座するまで更に遠位側に前進させることができる。その後、止血弁を再び締めて、導入用シース5000をカテーテル1140に対して所定の位置に固定することができる。次いで、インプラント100全体がカテーテル1140内に入るまで、インプラント100がその周囲に潰れた状態の送達ワイヤ600を遠位側に前進させることができる。送達ワイヤ600のコアワイヤ700の最遠位マーカ780が導入用シース5000の近位端5001に隣接するまで、送達ワイヤ600を遠位側に進めることができる。次いで、止血弁を緩め、送達ワイヤ600をピン止めし、送達ワイヤ600上で導入用シース5000を近位側に引っ張ることにより、導入用シース5000を取り外すことができる。送達ワイヤ600は、同じ最遠位マーカ780が止血弁の近位端に隣接するまで前進させることができる。カテーテル1140内のインプラント100の位置は、送達ワイヤ600及びカテーテル1140を互いに相対的に移動させることによって、好ましくは、本明細書に記載されるように、被験者1内に配備されたX線撮影及び/又は透視下で調整することができる。
【0167】
本明細書に開示したインプラント、装置、システム、及び方法は、神経血管瘤などの患者の動脈瘤の治療、及び/又は頭蓋内動脈狭窄の治療に関して記載したが、このような開示は非限定的である。本明細書に開示されたインプラント、装置、システム、及び方法は、患者の他の状態の治療、及び/又は患者の任意の血管のステント留置に使用することができる。例えば、本明細書に開示されたインプラント、装置、システム、及び方法は、血栓抵抗性特性を有するステントインプラントを移植することが望まれるあらゆる状況において利用することができ、及び/又はそのような状況に適合させることができる。別の例として、本明細書に開示されたインプラント、装置、システム、及び方法は、移植部位におけるインプラントの正確な配置が所望されるあらゆる状況において利用され、及び/又は適合させることができる。別の例として、本明細書に開示されたインプラント、装置、システム、及び方法は、血管内に部分的に配置した後にインプラントの配置を調整することが望ましいあらゆる状況において利用することができ、及び/又はそのような状況に適合させることができる。
【0168】
特定の態様、実装、又は実施例に関連して記載された特徴、材料、特性、又はグループは、それと両立しない場合を除き、本明細書に記載された他の態様、実装、又は実施例に適用可能であるものと理解される。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された特徴のすべて、又はそのように開示された方法若しくはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。権利保護は、前述の実装の詳細に限定されるものではない。権利保護は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された特徴の新規なもの、又は新規な組み合わせ、又はそのように開示された方法若しくはプロセスのステップの新規なもの、又は新規な組み合わせに及ぶ。
【0169】
特定の実装について説明してきたが、これらの実装は例示として提示したに過ぎず、権利保護の範囲を限定することを意図したものではない。実際、本明細書に記載の新規な方法及びシステムは、他の様々な形態で具体化され得る。更に、本明細書に記載される方法及びシステムの形態における様々な省略、置換及び変更を行うことができる。当業者であれば、いくつかの実装では、図示又は開示されたプロセスにおいて実際に採用されるステップは、図示されたものと異なる場合があることを理解するであろう。実装によっては、上述したステップの一部が削除されることもあれば、他のステップが追加されることもある。例えば、開示されたステップで実際に採用されるステップ又はステップの順序は、図示されたものと異なる場合がある。実装によっては、上述したステップの一部が削除されることもあれば、他のステップが追加されることもある。更に、上記に開示された特定の実装の特徴及び属性は、追加の実装を形成するために異なる方法で組み合わされてもよく、これらはすべて本開示の範囲内にある。
【0170】
本開示は、特定の実装、実施例、及び用途を含むが、本開示は、具体的に開示された実装を超えて、本明細書に規定された特徴及び利点の全てを提供しない実装を含む、他の代替的な実装又は用途、及びそれらの明らかな改変及び等価物に及ぶことが、当業者には理解されるであろう。したがって、本開示の範囲は、記載された実装によって限定されることを意図するものではなく、本明細書において提示される、又は将来提示される特許請求の範囲によって定義され得る。
【0171】
「can」、「could」、「might」、又は「may」などの条件付き言語は、特に別段の記載がない限り、又は使用される文脈内で別段理解されない限り、一般に、特定の実装が特定の特徴、要素、又はステップを含み、他の実装が特定の特徴、要素、又はステップを含まないことを伝えることを意図している。したがって、このような条件付き表現は、一般に、特徴、要素、又はステップが、1つ以上の実装に何らかの形で必要であること、又は1つ以上の実装が、これらの特徴、要素、又はステップが、任意の特定の実装に含まれるか、又は実行されるかどうかを、ユーザ入力又はプロンプトの有無にかかわらず決定するためのロジックを必ず含むことを意味することを意図していない。「comprising」、「including」、「having」等の用語は、同義であり、包括的に、オープンエンド方式で使用され、追加の要素、特徴、行為、操作等を排除するものではない。また、「又は」という用語は、包括的な意味で(排他的な意味ではなく)使用されるので、例えば、要素のリストを接続するために使用される場合、「又は」という用語は、リスト内の要素の1つ、いくつか、又はすべてを意味する。同様に、2つ以上の項目のリストに関する用語「及び/又は」は、リスト内の項目のいずれか1つ、リスト内の項目のすべて、及びリスト内の項目の任意の組み合わせという、この語の解釈のすべてをカバーする。更に、本明細書で使用される「各」という用語は、その通常の意味に加え、「各」という用語が適用される要素の集合の任意のサブセットを意味することができる。更に、「本明細書」、「上記」、「下記」、及び類似の重要性を有する語は、本出願で使用される場合、本出願全体を指し、本出願の特定の部分を指すものではない。
【0172】
「X、Y、Zのうちの少なくとも1つ」というような接続詞的な表現は、特に断りのない限り、ある項目、用語などがX、Y、Zのいずれかである可能性があることを伝えるために一般的に使用されるものとして、文脈とともに理解される。したがって、このような接続詞的な表現は、一般的に、特定の実装がXの少なくとも1つ、Y少なくとも1つ、Zの少なくとも1つの存在を必要とすることを意味するものではない。
【0173】
本明細書で使用される「およそ」、「約」、「一般的に」、及び「実質的に」という用語のような、本明細書で使用される程度についての言語は、所望の機能を実行する、又は所望の結果を達成する、記載された値、量、又は特性に近い値、量、又は特性を表す。例えば、用語「およそ」、「約」、「一般的に」、及び「実質的に」は、記載された量の10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、及び0.01%未満の範囲内にある量を指す場合がある。別の例として、特定の実装において、「概ね平行」及び「実質的に平行」という用語は、完全な平行から15度以下、10度以下、5度以下、3度以下、1度以下、又は0.1度以下だけずれた値、量、又は特性を指す。
【国際調査報告】