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特表2024-542251オイルシリンダー用鋼管及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】オイルシリンダー用鋼管及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20241106BHJP
   C22C 38/14 20060101ALI20241106BHJP
   C21D 8/10 20060101ALI20241106BHJP
   C21D 9/08 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C22C38/00 301Z
C22C38/14
C21D8/10 A
C21D9/08 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530430
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 CN2022134015
(87)【国際公開番号】W WO2023093802
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】202111410864.7
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514216801
【氏名又は名称】バオシャン アイアン アンド スティール カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】スン, ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ, ジャン
(72)【発明者】
【氏名】マー, イェンナン
(72)【発明者】
【氏名】ズオ, ホンジー
【テーマコード(参考)】
4K032
4K042
【Fターム(参考)】
4K032AA02
4K032AA05
4K032AA16
4K032AA19
4K032AA22
4K032AA31
4K032AA35
4K032BA03
4K032CA03
4K032CC04
4K032CF03
4K042AA06
4K042BA01
4K042BA03
4K042BA04
4K042BA05
4K042BA09
4K042CA02
4K042CA08
4K042CA09
4K042CA12
4K042DA01
4K042DA02
4K042DC02
4K042DD02
4K042DE02
4K042DE05
4K042DE06
4K042DE07
4K042DF02
(57)【要約】
オイルシリンダー用鋼管及びその製造方法を開示する。上記オイルシリンダー用鋼管は、90重量%以上のFe及び不可避的不純物に加えて、重量%で、C:0.16~0.3%、Si:0.15~0.5%、Mn:1.2~1.8%、Nb:0.02~0.04%、Mo:0.1~0.2%、任意にTi:0.015~0.03%及びB:0.0015~0.0035%の化学元素を更に含む。本発明によれば、鋼管に対して張力絞り及び焼入れを行った後、それぞれ異なる段階的冷却プロセスを採用し、鋼管の剛性及び真直度を高めることで、オイルシリンダー用鋼管の壁厚全体における相変化及び熱応力の分布を制御し、オイルシリンダー用鋼管のミクロ組織におけるフェライトの分布を制御し、オイルシリンダー用鋼管の残留応力を効果的に低減し、内壁に亀裂が生じるのを防止する。その結果、強度が高く、残留応力が低いオイルシリンダー用鋼管が得られる。オイルシリンダー用鋼管は、降伏強度が600MPa以上であり、引張強度が730MPa以上であり、残留応力が50MPa以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
90重量%以上のFe及び不可避的不純物に加えて、重量%で、C:0.16~0.3%、Si:0.15~0.5%、Mn:1.2~1.8%、Nb:0.02~0.04%、Mo:0.1~0.2%、任意にTi:0.015~0.03%及びB:0.0015~0.0035%の化学元素を更に含むオイルシリンダー用鋼管。
【請求項2】
重量%で、C:0.16~0.3%、Si:0.15~0.5%、Mn:1.2~1.8%、Nb:0.02~0.04%、Mo:0.1~0.2%、任意にTi:0.015~0.03%及びB:0.0015~0.0035%の化学元素を含み、残部がFe及び不可避的不純物である、請求項1に記載のオイルシリンダー用鋼管。
【請求項3】
上記オイルシリンダー用鋼管の壁厚は、20mm以上であり、上記オイルシリンダー用鋼管は、Ti:0.015~0.03%及びB:0.0015~0.0035%を含む、請求項1又は2に記載のオイルシリンダー用鋼管。
【請求項4】
上記オイルシリンダー用鋼管の壁厚方向において、外壁からt/2地点までのミクロ組織は焼戻しソルバイトであり、上記t/2地点から内壁までのミクロ組織は焼戻しソルバイト+フェライトであり、上記フェライトは勾配を持って分布しており、上記フェライトの含有量は、上記内壁への距離が近いほど多くなり、上記t/2地点における上記ミクロ組織中のフェライト含有量は3%以上であり、上記内壁における上記ミクロ組織中のフェライト含有量は5%以上であり、ここで、tは上記オイルシリンダー用鋼管の壁厚(mm)である、請求項1~3のいずれか一項に記載のオイルシリンダー用鋼管。
【請求項5】
上記オイルシリンダー用鋼管は、降伏強度が600MPa以上であり、引張強度が730MPa以上であり、残留応力が50MPa以下、好ましくは40MPa以下であり、好ましくは、上記オイルシリンダー用鋼管は、降伏比が0.92以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のオイルシリンダー用鋼管。
【請求項6】
上記オイルシリンダー用鋼管のt/2地点におけるミクロ組織中のフェライト含有量は、0.5t~1.0t%である、請求項1~5のいずれか一項に記載のオイルシリンダー用鋼管。
【請求項7】
上記オイルシリンダー用鋼管の内壁におけるミクロ組織中のフェライト含有量は、1.5t~2.0t%である、請求項1~6のいずれか一項に記載のオイルシリンダー用鋼管。
【請求項8】
上記オイルシリンダー用鋼管の壁厚は、9mm以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載のオイルシリンダー用鋼管。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のオイルシリンダー用鋼管の製造方法であって、
(1)製錬及び鋳造工程:請求項1に記載の元素組成を有する溶鋼を製錬及び鋳造して鋳造ビレットを得る工程;
(2)上記鋳造ビレットを加熱する工程;
(3)上記加熱した鋳造ビレットに穿孔する工程;
(4)上記穿孔した鋳造ビレットを連続的に圧延して鋼管を得る工程;
(5)上記鋼管を強制空冷し、再加熱する工程;
(6)上記再加熱した鋼管に対して張力絞り及び冷却を行う工程:上記張力絞り後に上記鋼管の外壁に対して水冷を行い、上記鋼管の冷却開始温度を≧Arに制御し、上記鋼管の冷却終了温度を≧Bかつ≦B-100℃に制御し、冷却速度を25~35℃/sの範囲となるように制御する工程;
(7)上記冷却した鋼管を矯正する工程;
(8)上記矯正した鋼管を焼入れする工程:焼入れ温度をAc+30≦かつ≦Ac+60℃に制御し、上記焼入れ後、上記鋼管を回転させながら水冷により段階的冷却を行うが、上記水冷は、まず外部散水により行い、Ar-70℃≦内壁温度≦Ar-30℃未満となった時、上記鋼管の内孔が冷却水で満たされるまで上記鋼管の一端から上記鋼管内に水を注入し、上記鋼管を室温まで冷却する工程;
(9)上記焼入れした鋼管を焼戻しする工程;及び
(10)炉から排出された後の上記鋼管を矯正して上記オイルシリンダー用鋼管を得る工程
を含む方法。
【請求項10】
以下の条件:
工程(2)において、上記加熱は、1250~1280℃の温度で3~4時間行う;
工程(3)において、上記穿孔は、1100~1230℃の温度で行う;
工程(4)において、上記仕上げ圧延は、900~1000℃の温度で行う;
工程(5)において、上記鋼管は、Ar-50℃以下に強制空冷し、その後に950~980℃に再加熱する;
工程(6)において、上記張力絞りは、850~900℃の温度で行う;
工程(7)において、上記矯正した鋼管は、室温まで自然冷却する;
工程(9)において、上記焼戻しは、(550-2×t)℃の温度で行う;及び
工程(10)において、上記矯正は、≧400℃の温度で行う
のうち1つ以上を満たす請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料分野に関する。特に、オイルシリンダー用鋼管及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オイルシリンダー用鋼管は、建設機械用オイルシリンダーやエアシリンダーバレルに広く使用されており、使用時の衝撃疲労、摩擦などの負荷に耐える。残留応力は、継目無管の疲労寿命、押し出し抵抗、内圧抵抗、及び機械加工による変形に影響を与える重要な要因である。オイルシリンダー用鋼管の残留応力を低減又は除去することで、オイルシリンダー用鋼管の耐用年数を大幅に向上させることができる。このことは、その後のオイルシリンダー用鋼管の生産管理における重要な目標の1つである。
【0003】
現在、残留応力を低減又は除去する従来の方法としては、高温応力除去焼鈍や機械・物理的方法がある。しかしながら、これらのプロセスはコストがかかり、生産プロセスが増加してしまう。
【0004】
中国特許出願公開第201810365440.5号明細書には、「焼戻し継目無鋼管の残留応力の除去方法及び採用された双方向チェーン式冷却床」が開示されており、圧延後及び焼戻し前の鋼管の真直度と、焼戻し後の冷却床の双方向チェーンを制御して残留応力を除去することで、焼戻し及び応力除去焼鈍プロセスが不要となり、コスト削減という目標を達成している。
【0005】
中国特許出願公開第201420805596.8号明細書には、「非対称鋼管矯正ローラー」が開示されており、矯正プロセスにおいて鋼管にかかる力を制御することによって、鋼管の残留応力及び酸化皮膜を除去する特殊な矯正ローラーが設計されている。
【0006】
中国特許出願公開第200910210718.2号明細書には、「コンベヤ用鋼管の残留応力レベルを制御する方法」が開示されており、ある公式を導き出し、その公式と鋼管の測定された弾性回復量を比較することによって鋼管の残留応力レベルを得ており、鋼管の残留応力レベルを測定して特徴付ける方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、オイルシリンダー用鋼管及びその製造方法を提供することを目的とする。本発明は、従来のオイルシリンダー用鋼管製品と比較して、オイルシリンダー用鋼管の残留応力を大幅に低減し、内壁に亀裂が生じないようにしながら、より高い強度を得ることができる。本発明によれば、オイルシリンダー用鋼管の降伏強度は600MPa以上であり、引張強度は730MPa以上であり、残留応力は50MPa以下である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、90重量%以上のFe及び不可避的不純物に加えて、重量パーセント(重量%)で、C:0.16~0.3%、Si:0.15~0.5%、Mn:1.2~1.8%、Nb:0.02~0.04%、Mo:0.1~0.2%、任意にTi:0.015~0.03%及びB:0.0015~0.0035%の化学元素を更に含むオイルシリンダー用鋼管を提供する。
【0009】
好ましくは、上記オイルシリンダー用鋼管は、重量%で、C:0.16~0.3%、Si:0.15~0.5%、Mn:1.2~1.8%、Nb:0.02~0.04%、Mo:0.1~0.2%、任意にTi:0.015~0.03%及びB:0.0015~0.0035%の化学元素を含み、残部がFe及び不可避的不純物である。
【0010】
好ましくは、上記不可避的不純物のうち、P≦0.01%及びS≦0.001%である。
【0011】
一部の実施形態では、上記オイルシリンダー用鋼管の壁厚は、20mm以上であり、上記オイルシリンダー用鋼管は、Ti:0.015~0.03%及びB:0.0015~0.0035%を含む。一部の実施形態では、上記オイルシリンダー用鋼管の壁厚は、20mm未満であり、上記オイルシリンダー用鋼管は、Ti:0.015~0.03%及びB:0.0015~0.0035%を含んでも含まなくてもよい。
【0012】
好ましくは、上記オイルシリンダー用鋼管の壁厚は、9mm以上である。
【0013】
好ましくは、上記オイルシリンダー用鋼管の壁厚方向において、外壁からt/2地点までのミクロ組織は焼戻しソルバイトであり、t/2地点から内壁までのミクロ組織は焼戻しソルバイト+フェライトであり、フェライトは勾配を持って分布しており、フェライトの含有量は、内壁への距離が近いほど多くなり、t/2地点におけるミクロ組織中のフェライト含有量は3%以上であり、内壁における(すなわち、内壁の表面における)ミクロ組織中のフェライト含有量は5%以上である。
【0014】
ここで、特にはっきりと断りのない限り、tは上記オイルシリンダー用鋼管の壁厚(mm)を示す。
【0015】
好ましくは、上記オイルシリンダー用鋼管は、降伏強度が600MPa以上であり、引張強度が730MPa以上であり、残留応力が50MPa以下である。
【0016】
好ましくは、上記オイルシリンダー用鋼管の残留応力は、40MPa以下である。
【0017】
好ましくは、上記オイルシリンダー用鋼管は、降伏比(すなわち、降伏強度と引張強度との比)が0.92以下である。
【0018】
好ましくは、本発明のオイルシリンダー用鋼管のt/2地点におけるミクロ組織中のフェライト含有量は、0.5t~1.0t%である。
【0019】
好ましくは、本発明のオイルシリンダー用鋼管の内壁におけるミクロ組織中のフェライト含有量は、1.5t~2.0t%である。
【0020】
ここで、フェライト含有量は、ミクロ組織中のフェライトの割合を面積%で表したものと定義し、金属組織学的方法によって測定する。
【0021】
本発明のオイルシリンダー用鋼管における元素は、以下の原理に基づいて設計される。
【0022】
C:Cは侵入型固溶強化元素であり、焼入れ性に大きな影響を及ぼす。C含有量が0.16%未満であると、強度が低くなりすぎ、C含有量が0.3%を超えると、段階的冷却後に内壁に亀裂が生じる。そこで、本発明ではC含有量を0.16~0.3%の範囲となるように制御する。
【0023】
Si:Siは一般的に使用される脱酸剤であり、鉄を析出させる強力な元素でもあり、焼入れ性をある程度向上させる。Si含有量が0.15%未満であると、上記効果が十分に発揮されず、Si含有量が0.5%を超えると、Siが表面品質に問題を引き起こす。そこで、本発明ではSi含有量を0.15~0.5%の範囲となるように制御する。
【0024】
Mn:Mnは固溶強化元素であり、焼入れ性を向上させる強力な元素でもある。Mn含有量が1.2%未満であると、焼入れ性が不十分であり、強度が低く、Mn含有量が1.8%を超えると、焼入れ性が高くなりすぎるため、段階的冷却後のt/2地点から内壁までのフェライト含有量の析出が少なくなり、内壁の相変化及び熱応力がともに顕著な引張応力となるため、内壁に亀裂が生じる。そこで、本発明ではMn含有量を1.2~1.8%の範囲となるように制御する。
【0025】
Nb:Nbは炭化物析出強化元素であり、オーステナイト粒を微細化し、核生成点として機能して、段階的冷却中にフェライトの析出を促進する。
【0026】
Mo:Moは焼入れ性を大幅に向上させるとともに、強度と靱性のバランスや焼戻し安定性を向上させる。Mo含有量が0.1%~0.2%の範囲であると、焼入れ性に対するMoの効果により、t/2地点から内壁までのフェライトが勾配を持って分布するように制御され、段階的冷却プロセスにおいて内壁に亀裂が生じないようにしつつ、強度が確保される。
【0027】
Ti及びB:Ti及びBの複合添加により、焼入れ性が大幅に向上する。壁厚が20mm以上の管に関しては、オイルシリンダー用鋼管の焼入れ性を向上させる必要があり、また、t/2地点から内壁までのフェライト含有量が大幅に増加することで強度が低下することを回避する必要がある。一方、Tiは炭窒化物として析出するが、段階的冷却プロセスにおいてフェライトの核生成点として機能することができ、フェライトの析出率を効果的に制御することができる。Ti含有量が0.015%未満であるか、又はB含有量が0.0015%未満であると、上記効果が十分に発揮されず、Ti含有量が0.03%を超えるか、又はB含有量が0.0035%を超えると、焼入れ性を向上させる顕著な改善効果はない。そこで、本発明ではTi含有量を0.015~0.03%の範囲となるように制御し、B含有量を0.0015~0.0035%の範囲となるように制御する。
【0028】
不可避的不純物にはPとSが含まれており、どちらも鋼において有害な元素であることに留意すべきである。Pの質量割合が高すぎると、粒界にバイアスが生じ、粒界が脆くなり、靭性が著しく低下する可能性がある。Sの質量割合が高すぎると、鋼中の介在物の量が増加し、低温靭性に悪影響を及ぼす。そこで、鋼中のP及びSの含有量を最小限に抑えるべきである。
【0029】
本発明は、Nb、Mo、Ti等の元素の含有量を制御することにより、オイルシリンダー用鋼管中のフェライトの分布を制御する。オイルシリンダー用鋼管の壁厚方向において、外壁からt/2地点までのミクロ組織が焼戻しソルバイトであり、t/2地点から内壁までのミクロ組織が焼戻しソルバイト+フェライトであり、該フェライトは勾配を持って分布しており、該フェライトの含有量は、内壁への距離が近いほど多くなる。t/2地点におけるミクロ組織中のフェライト含有量は3%以上であり、内壁におけるミクロ組織中のフェライト含有量は5%以上である。ここで、tはオイルシリンダー用鋼管の壁厚(mm)である。外壁からt/2地点までのミクロ組織は焼戻しソルバイトであり、焼戻しソルバイトの強度及び靭性のレベルは良好であり、オイルシリンダー用鋼管の外層の剛性を十分に確保できる。t/2地点から内壁までのミクロ組織は焼戻しソルバイト+フェライトであり、オイルシリンダー用鋼管の良好な靭性と低い降伏比を確保できる。
【0030】
また、フェライト組織の析出は勾配を持って分布しており、フェライト含有量は、内壁への距離が近いほど多くなる。フェライトは良好な延性と靭性を有するため、冷却プロセスにおいてオイルシリンダー用鋼管の内壁の残留応力を良好に制御することができ、水焼入れプロセスにおいて内壁に亀裂が生じるのを防止できる。また、オイルシリンダー用鋼管の残留応力を大幅に低減しつつ、オイルシリンダー用鋼管に高い強度を確保することができる。
【0031】
本発明者らは、鋭意研究の結果、オイルシリンダー用鋼管中のフェライトの析出量と、オイルシリンダー用鋼管の壁厚とが、特定の形で直接関連していることを見出した。オイルシリンダー用鋼管の壁厚のt/2地点におけるフェライト含有量は0.5t~1.0t%の範囲であり、内壁におけるミクロ組織中のフェライト含有量は1.5t~2.0t%の範囲である。フェライト含有量が低すぎると、降伏比が高くなりすぎて、残留応力が大きくなりすぎ、使用安全性が低下する他、水焼入れ時に内壁に亀裂が生じるリスクが高くなる。フェライト含有量が高すぎると、オイルシリンダー用鋼管の強度が低くなりすぎ、使用要件を満たすことができない。また、壁厚が大きくなると、十分なフェライトが析出しなければ、オイルシリンダー用鋼管の残留応力が増加してしまい、内壁に亀裂が生じる傾向が強い。
【0032】
他の態様において、本発明は、上述したオイルシリンダー用鋼管の製造方法であって、
(1)製錬及び鋳造工程:上述した元素組成を有する溶鋼を製錬及び鋳造して鋳造ビレットを得る工程;
(2)鋳造ビレットを加熱する工程;
(3)加熱した鋳造ビレットに穿孔する工程;
(4)穿孔した鋳造ビレットを連続的に圧延して鋼管を得る工程;
(5)鋼管を強制空冷し、再加熱する工程;
(6)再加熱した鋼管に対して張力絞り(tension reduction)及び冷却を行う工程:再加熱した鋼管に対して張力絞り(すなわち、ストレッチリデューシング(stretch reducing)による縮径)を行った後、鋼管の外壁のみに水冷を行い(すなわち、この工程では鋼管の内壁は水冷しない)、鋼管の冷却開始温度を≧Arに制御し、鋼管の冷却終了温度を≧Bかつ≦B-100℃に制御し、冷却速度を25~35℃/sの範囲となるように制御する工程;
(7)冷却した鋼管を矯正する工程;
(8)矯正した鋼管を焼入れする工程:矯正した鋼管をAc+30~Ac+60℃に加熱し(すなわち、焼入れ温度をAc+30≦かつ≦Ac+60℃に制御し)、焼入れ後、鋼管を回転させながら水冷により段階的冷却を行うが、水冷は、まず外部散水により行い、Ar-70℃≦内壁温度≦Ar-30℃未満となった時、鋼管の内孔が冷却水で満たされるまで鋼管の一端から鋼管内に水を注入し、鋼管を室温まで冷却する工程;
(9)焼入れした鋼管を焼戻しする工程;及び
(10)炉から排出された後の鋼管を矯正してオイルシリンダー用鋼管を得る工程
を含む方法を提供する。
【0033】
好ましくは、工程(2)において、加熱は、1250~1280℃の温度で3~4時間行う。
【0034】
好ましくは、工程(3)において、穿孔は、1100~1230℃の温度で行う。
【0035】
好ましくは、工程(4)において、仕上げ圧延は、900~1000℃の温度で行う。
【0036】
好ましくは、工程(5)において、鋼管は、Ar-50℃以下に強制空冷し、その後に950~980℃に再加熱する。
【0037】
好ましくは、工程(6)において、張力絞りは、850~900℃の温度で行う。
【0038】
好ましくは、工程(7)において、矯正した鋼管は、室温まで自然冷却する。
【0039】
好ましくは、工程(9)において、焼戻しは、(550-2×t)℃の温度で行う。
【0040】
好ましくは、工程(10)において、矯正は、≧400℃の温度で行う。
【0041】
本発明は、オイルシリンダー用鋼管の組成を設計し、水焼入れ時の冷却プロセスを制御することで、更なる製造プロセスを追加することなく、オイルシリンダー用鋼管の残留応力を低減でき、オイルシリンダー用鋼管の使用性能を向上できる。
【0042】
鋼管に対して850~900℃で張力絞りを行った後、鋼管の外壁のみに水冷を行い、冷却開始温度を≧Arに制御し、冷却終了温度を≧Bかつ≦B-100℃に制御し(ここで、Bは冷却プロセスにおけるベイナイトの相変化終了時の温度であり、Bは冷却プロセスにおけるベイナイトの相変化開始時の温度である。)、冷却プロセスにおいて冷却速度を25~35℃/sとなるように制御する。このプロセスの主な目的は、均一な冷却によって鋼管を急速に冷却して硬化させることである。これにより、鋼管の真直度を2mm/m以下、好ましくは1.5mm/m未満にすることができ、同時に圧延状態の組織が微細化され、その後の焼戻し後に良好な性能のバランスを得るための基礎が築かれる。さらに、このように冷却することで、圧延状態における残留応力レベルが低減される。
【0043】
鋼管は、仕上げ冷却温度まで急速冷却した後、直ちに矯正する。温度による矯正は、真直度を確保する助けとなり、同時に圧延状態での残留応力レベルが低減し、矯正した鋼管の真直度が2mm/m以下、好ましくは1.5mm/m未満となる。その後、鋼管は、冷却床上に送って室温まで自然冷却する。
【0044】
本発明の鋼管は、焼入れ後に水冷して段階的に冷却し、冷却プロセスにおいて回転させる。冷却中、まず外部散水により鋼管の外壁を冷却し、Ar-70℃≦内壁温度≦Ar-30℃未満となった時、内部散水をオンにして鋼管内に水を注入して、鋼管の内孔が冷却水で満たされるまで鋼管の内壁を冷却し、鋼管を室温まで冷却する。
【0045】
本発明は、以下の原理に基づいて段階的冷却プロセスによりオイルシリンダー用鋼管に対して冷却を行う。
【0046】
1)外部散水により鋼管の全長が同時に冷却されるため、冷却の均一性が良好である。鋼管の内壁に対して冷却を行う際、まず鋼管の一端が冷却され、後で他端が冷却されるため、鋼管の剛性が高まり、良好な冷却の均一性によって、鋼管の真直度レベルがより良好に確保され、その後の管の曲げによる矯正変形によってもたらされる大きな残留応力が回避される。
【0047】
2)鋼管の残留応力は、冷却プロセスにおける相変化及び熱応力と密接に関係する。段階的冷却により、鋼管の壁厚全体にわたる相変化及び熱応力の分布を効果的に制御し、マルテンサイトの相変化応力と熱応力の相互除去を実現し、鋼管の残留応力レベルを効果的に低減することができる。本発明の技術的解決手段では、外部散水に続いて内部散水を行う段階的冷却方法を用いることによって、鋼管の外壁については、相変化応力が引張応力であり、熱応力が圧縮応力であり、鋼管の中心部については、相変化応力が圧縮応力であり、熱応力が引張応力であり、両者を互いに相殺することができる。
【0048】
3)内壁の冷却変態組織により、完全なマルテンサイト組織ではなく、フェライト組織が部分的に析出するため、内壁の残留応力を効果的に低減することができる。本発明の技術的解決手段では、内壁の相変化応力と熱応力はともに引張応力であるが、内壁は後から冷却される面である。内壁の冷却は、外部散水による冷却後、Ar-70℃≦内壁温度≦Ar-30℃となった時に開始する。このとき、内壁にはフェライト組織が析出しており、マルテンサイト組織の変態割合が低下し、内壁における相変化応力が低減される。そのため、内壁の残留応力レベルが効果的に低減され、内壁に亀裂が生じなくなる。
【0049】
本発明では、張力絞り後の冷却プロセスに急速冷却を採用して、オイルシリンダー用鋼管の硬度及び均一性を高め、圧延状態にあるオイルシリンダー用鋼管の残留応力レベルを低減する。さらに、焼入れ後に段階的冷却を行うことにより、壁厚方向に冷却速度勾配が形成される。冷却プロセスでは、まず外壁を冷却し、次に中心部と内壁を冷却する。中心部と内壁の冷却速度は、外壁の冷却速度よりも遅い。フェライト組織の変態がまず起こり、その後、マルテンサイトの変態が起こる。内壁に近づくにつれて、冷却速度は徐々に遅くなり、フェライトの析出量が増加する。また、オイルシリンダー用鋼管の壁厚が大きくなると、中心部と内壁の冷却速度がさらに低下し、フェライトの析出が促進され、それに応じてフェライトの析出量が増加する。
【0050】
Ar-70℃≦内壁温度≦Ar-30℃となった時、内壁に水を注入して冷却する。このとき、内壁にはフェライト組織が析出しており、マルテンサイト組織の変態の割合が低下する。そのため、内壁から1mm以内における残留応力レベルが効果的に低減される。
【0051】
本発明は、段階的冷却プロセスによってオイルシリンダー用鋼管のミクロ組織におけるフェライトの析出を制御し、フェライト含有量は、内壁に近いほど多くなる。フェライトは良好な延性と靭性を有しているため、冷却時にオイルシリンダー用鋼管の内壁の残留応力を良好に制御することができ、水焼入れプロセスにおいて内壁に亀裂が生じないようになる。
【0052】
本発明は、以下の有益な効果を発揮する。
【0053】
本発明のオイルシリンダー用鋼管の組成設計では、C元素、Si元素、及びMn元素の含有量を制御することで、オイルシリンダー用鋼管の焼入れ性を向上させて、その後の段階的冷却プロセスにおいてオイルシリンダー用鋼管の内壁に亀裂が生じないようにする。一方、Nb元素及びMo元素の含有量を制御することで、オイルシリンダー用鋼管におけるフェライトの分布を制御し、これにより、段階的冷却プロセスにおいて内壁に亀裂が更に生じないようになる。
【0054】
また、オイルシリンダー用鋼管の壁厚にもよるが、焼入れ性を向上させるためにTiやBを添加してもよい。これにより、オイルシリンダー用鋼管の壁厚が20mm以上の場合、t/2地点から内壁までのフェライト含有量が大幅に増加して強度が低くなることを回避できる。
【0055】
本発明によれば、組成設計に基づいて、鋼管に対して張力絞り及び焼入れを行った後、それぞれ異なる段階的冷却プロセスを採用する。一方では、鋼管の剛性と真直度を高めることで、その後の管の曲げによる矯正変形によってもたらされる大きな残留応力が回避される。他方では、オイルシリンダー用鋼管の壁厚全体にわたる相変化及び熱応力の分布を制御することで、マルテンサイトの相変化応力と熱応力の相互除去を実現でき、鋼管の残留応力レベルを効果的に低減できる。最後に、オイルシリンダー用鋼管のミクロ組織におけるフェライトの分布を制御することにより、内壁における相変化応力が低減され、内壁の残留応力レベルが効果的に低減され、内壁に亀裂が生じないようになる。その結果、強度が高く、残留応力が低いオイルシリンダー用鋼管が得られる。オイルシリンダー用鋼管の降伏強度は600MPa以上であり、引張強度は730MPa以上であり、残留応力は0MPa以上50MPa以下である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明の比較例1で製造したオイルシリンダー用鋼管の残留応力の測定をスリット法で行った写真である。
図2】本発明の実施例1で製造したオイルシリンダー用鋼管の残留応力の測定をスリット法で行った写真である。
図3】本発明の実施例1のオイルシリンダー用鋼管の外壁面の金属組織の写真である。
図4】本発明の実施例1のオイルシリンダー用鋼管の1/2の壁厚の地点における金属組織の写真である。
図5】本発明の実施例1のオイルシリンダー用鋼管の内壁面の金属組織の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、実施例と共に本発明をさらに説明する。
【0058】
本発明の実施例1~8のオイルシリンダー用鋼管は、上述した方法に従って製造した。比較例1~8のオイルシリンダー用鋼管は、実施例1~8と実質的に同じ方法で製造したが、比較例1~8の元素組成及び/又は製造プロセスパラメータのうち1つ以上は、本発明の保護範囲に含まれなかった。
【0059】
本発明の実施例1~8及び比較例1~8の化学組成を表1に示す。
【0060】
本発明の実施例1~8及び比較例1~8の具体的な製造プロセスパラメータを表2に示す。工程(1)では、表1に示す元素組成に従って溶鋼を製錬及び鋳造して鋳造ビレットを得た。工程(7)では、工程(6)で得られた処理鋼管を矯正し、矯正した鋼管を室温まで自然冷却した。
【0061】
本発明の実施例1~8及び比較例1~8で得られたオイルシリンダー用鋼管の性能パラメータを表3に示す。
【0062】
本出願では、降伏強度及び引張強度はGB/T228に従って測定し、残留応力はISO/TR10400規格に従って測定する。
【0063】
図1及び図2はそれぞれ、本発明の比較例1及び実施例1で製造したオイルシリンダー用鋼管の残留応力の測定をスリット法で行った写真である。図からわかるように、本発明のオイルシリンダー用鋼管の残留応力は、従来のオイルシリンダー用鋼管の残留応力よりも著しく小さく、本発明の方法で得られた継目無管のスリットは、従来のプロセスで製造した継目無管のスリットよりも小さく、本発明で得られた継目無管(例えば実施例1)の残留応力は、従来のプロセスで製造した継目無管(例えば比較例1)の残留応力よりも著しく小さいことが明らかである。
【0064】
図3図5は、本発明のオイルシリンダー用鋼管の各部分の金属組織の写真である。写真からわかるように、外壁からt/2地点までの金属組織は焼戻しソルバイトであり、t/2地点ではt%の割合のフェライト組織が析出した。t/2地点から内壁までのフェライトは勾配を持って分布していた。フェライト含有量は、内壁への距離が近いほど多くなった。内壁の金属組織におけるフェライト含有量は2t%に達した。
【0065】
表3からわかるように、本発明で得られたオイルシリンダー用鋼管の内壁には亀裂がなく、残留応力は50MPa未満であり、さらには残留応力を0にまで低くすることができる。
【0066】
元素組成及び/又は製造プロセスパラメータのうち1つ以上が本発明の保護範囲に含まれなかったため、比較例1~8で得られたオイルシリンダー用鋼管は、より高い残留応力を示し、内壁に亀裂が生じる可能性もある。壁厚が20mmを超える場合、比較例4及び5では、Ti元素及びB元素を添加しなかったことにより、オイルシリンダー用鋼管の残留応力は低かったものの、オイルシリンダー用鋼管の強度は本発明の要件を満たせなかった。
【0067】
要約すると、本発明は、オイルシリンダー用鋼管の化学元素組成を特定の製造プロセスと組み合わせて設計することにより、従来技術と比較して、総合的な性能に優れたオイルシリンダー用鋼管を得ている。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
90重量%以上のFe及び不可避的不純物に加えて、重量%で、C:0.16~0.3%、Si:0.15~0.5%、Mn:1.2~1.8%、Nb:0.02~0.04%、Mo:0.1~0.2%、任意にTi:0.015~0.03%及びB:0.0015~0.0035%の化学元素を更に含むオイルシリンダー用鋼管。
【請求項2】
重量%で、C:0.16~0.3%、Si:0.15~0.5%、Mn:1.2~1.8%、Nb:0.02~0.04%、Mo:0.1~0.2%、任意にTi:0.015~0.03%及びB:0.0015~0.0035%の化学元素を含み、残部がFe及び不可避的不純物である、請求項1に記載のオイルシリンダー用鋼管。
【請求項3】
上記オイルシリンダー用鋼管の壁厚は、20mm以上であり、上記オイルシリンダー用鋼管は、Ti:0.015~0.03%及びB:0.0015~0.0035%を含む、請求項1に記載のオイルシリンダー用鋼管。
【請求項4】
上記オイルシリンダー用鋼管の壁厚方向において、外壁からt/2地点までのミクロ組織は焼戻しソルバイトであり、上記t/2地点から内壁までのミクロ組織は焼戻しソルバイト+フェライトであり、上記フェライトは勾配を持って分布しており、上記フェライトの含有量は、上記内壁への距離が近いほど多くなり、上記t/2地点における上記ミクロ組織中のフェライト含有量は3%以上であり、上記内壁における上記ミクロ組織中のフェライト含有量は5%以上であり、ここで、tは上記オイルシリンダー用鋼管の壁厚(mm)である、請求項1に記載のオイルシリンダー用鋼管。
【請求項5】
上記オイルシリンダー用鋼管は、降伏強度が600MPa以上であり、引張強度が730MPa以上であり、残留応力が50MPa以下、好ましくは40MPa以下であり、好ましくは、上記オイルシリンダー用鋼管は、降伏比が0.92以下である、請求項1に記載のオイルシリンダー用鋼管。
【請求項6】
上記オイルシリンダー用鋼管のt/2地点におけるミクロ組織中のフェライト含有量は、0.5t~1.0t%である、請求項1に記載のオイルシリンダー用鋼管。
【請求項7】
上記オイルシリンダー用鋼管の内壁におけるミクロ組織中のフェライト含有量は、1.5t~2.0t%である、請求項1に記載のオイルシリンダー用鋼管。
【請求項8】
上記オイルシリンダー用鋼管の壁厚は、9mm以上である、請求項1に記載のオイルシリンダー用鋼管。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のオイルシリンダー用鋼管の製造方法であって、
(1)製錬及び鋳造工程:請求項1に記載の元素組成を有する溶鋼を製錬及び鋳造して鋳造ビレットを得る工程;
(2)上記鋳造ビレットを加熱する工程;
(3)上記加熱した鋳造ビレットに穿孔する工程;
(4)上記穿孔した鋳造ビレットを連続的に圧延して鋼管を得る工程;
(5)上記鋼管を強制空冷し、再加熱する工程;
(6)上記再加熱した鋼管に対して張力絞り及び冷却を行う工程:上記張力絞り後に上記鋼管の外壁に対して水冷を行い、上記鋼管の冷却開始温度を≧Arに制御し、上記鋼管の冷却終了温度を≧Bかつ≦B-100℃に制御し、冷却速度を25~35℃/sの範囲となるように制御する工程;
(7)上記冷却した鋼管を矯正する工程;
(8)上記矯正した鋼管を焼入れする工程:焼入れ温度をAc+30≦かつ≦Ac+60℃に制御し、上記焼入れ後、上記鋼管を回転させながら水冷により段階的冷却を行うが、上記水冷は、まず外部散水により行い、Ar-70℃≦内壁温度≦Ar-30℃未満となった時、上記鋼管の内孔が冷却水で満たされるまで上記鋼管の一端から上記鋼管内に水を注入し、上記鋼管を室温まで冷却する工程;
(9)上記焼入れした鋼管を焼戻しする工程;及び
(10)炉から排出された後の上記鋼管を矯正して上記オイルシリンダー用鋼管を得る工程
を含む方法。
【請求項10】
以下の条件:
工程(2)において、上記加熱は、1250~1280℃の温度で3~4時間行う;
工程(3)において、上記穿孔は、1100~1230℃の温度で行う;
工程(4)において、上記仕上げ圧延は、900~1000℃の温度で行う;
工程(5)において、上記鋼管は、Ar-50℃以下に強制空冷し、その後に950~980℃に再加熱する;
工程(6)において、上記張力絞りは、850~900℃の温度で行う;
工程(7)において、上記矯正した鋼管は、室温まで自然冷却する;
工程(9)において、上記焼戻しは、(550-2×t)℃の温度で行う;及び
工程(10)において、上記矯正は、≧400℃の温度で行う
のうち1つ以上を満たす請求項9に記載の方法。
【国際調査報告】