(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】直接トランス分化誘導用組成物およびこれにより処理された幹細胞
(51)【国際特許分類】
A61K 35/30 20150101AFI20241106BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241106BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241106BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20241106BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20241106BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20241106BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241106BHJP
C12N 5/0797 20100101ALI20241106BHJP
A61K 31/423 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
A61K35/30
A61P9/10
A61P25/00
A61P25/02
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/28
C12N5/0797
A61K31/423
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530500
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 KR2022018430
(87)【国際公開番号】W WO2023090971
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0161446
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522194315
【氏名又は名称】ワイジェイ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ユン,テ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジ ユン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BD32
4B065BD34
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4B065CA46
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC70
4C086NA14
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4C086ZB26
4C087AA01
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4C087ZA02
4C087ZA16
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4C087ZA36
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、CtBPsのオリゴマー化を通じた直接トランス分化を誘導する組成物と、これを処理した幹細胞の用途に関し、本発明によると、本発明の化合物は、CtBPsのオリゴマー化を調節することで、これを媒介に成体幹細胞を神経前駆細胞に直接トランス分化誘導することができるので、CtBPsのオリゴマー化誘導または直接トランス分化誘導用途で活用することができ、直接トランス分化誘導されたciNSC5は、ALSマウスモデル、MSマウスモデル、PDレットモデルおよび慢性脊髄損傷レットモデルの両方で顕著な治療効果を示したので、細胞治療剤として活用することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む、CtBPs(C-terminal Binding Proteins)のオリゴマー化誘導用組成物:
【化1】
【請求項2】
CtBPsは、CtBP1またはCtBP2である、請求項1に記載のCtBPsのオリゴマー化誘導用組成物。
【請求項3】
化学式Iの化合物は、CtBP1のSer100に結合する、請求項1に記載のCtBPsのオリゴマー化誘導用組成物。
【請求項4】
化学式IIの化合物は、CtBP1のSer100およびArg266に結合する、請求項1に記載のCtBPsのオリゴマー化誘導用組成物。
【請求項5】
化学式3の化合物は、CtBP1のPhe102、Arg184およびHis236に結合する、請求項1に記載のCtBPsのオリゴマー化誘導用組成物。
【請求項6】
CtBPs-媒介によって成体幹細胞を神経前駆細胞に分化させる、請求項1に記載のCtBPsのオリゴマー化誘導用組成物。
【請求項7】
化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む、成体幹細胞(adult stem cell)の神経前駆細胞への直接トランス分化(direct conversion)誘導用組成物。
【請求項8】
成体幹細胞は、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、MSC)である、請求項7に記載の直接トランス分化誘導用組成物。
【請求項9】
間葉系幹細胞は、臍帯血由来間葉系幹細胞(umbilical cord blood-derived mesenchymal stem cells、UCB-MSC)、臍帯由来間葉系幹細胞(umbilical cord-derived mesenchymal stem cells、UC-MSC)、脂肪由来間葉系幹細胞(adipose-derived mesenchymal stem cells、AD-MSC)または骨髄由来間葉系幹細胞(bone marrow-derived mesenchymal stem cells、BM-MSC)である、請求項8に記載の直接トランス分化誘導用組成物。
【請求項10】
神経前駆細胞は、ciNSC5(chemical induced neural stem cell 5)である、請求項7に記載の直接トランス分化誘導用組成物。
【請求項11】
Tuj1、TBR2、MASH1、GAP-43またはp75の発現を増加させる、請求項7に記載の直接トランス分化誘導用組成物。
【請求項12】
Tuj1タンパク質、CD325(N-cadherin)タンパク質、p75タンパク質、GAP-43タンパク質、CD54タンパク質、CD309タンパク質、CD56(NCAM)タンパク質、PSA-NCAMタンパク質、CD29タンパク質、MASH1タンパク質またはTBR2タンパク質の発現を増加させる、請求項7に記載の直接トランス分化誘導用組成物。
【請求項13】
CD44、CD73またはCD105の発現を減少させる、請求項7に記載の直接トランス分化誘導用組成物。
【請求項14】
PlGF、NGF、BDNF、VEGFA、MMP1、MMP2、MMP7、TIMP2、SHH、Notch1、TNFSF12またはIL-16の分泌を増加させる、請求項7に記載の直接トランス分化誘導用組成物。
【請求項15】
in vitroで試料に化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を処理するステップを含む、CtBPsのオリゴマー化を誘導する方法。
【請求項16】
試料は、成体幹細胞(adult stem cell)である、請求項15に記載のCtBPsのオリゴマー化を誘導する方法。
【請求項17】
化合物処理前に比べて処理後に試料でTuj1、CD325(N-cadherin)、p75、GAP-43、CD309、CD56(NCAM)、PSA-NCAM、CD29、MASH1またはTBR2発現を増加させる、請求項15に記載のCtBPsのオリゴマー化を誘導する方法。
【請求項18】
化合物処理前に比べて処理後に試料でPlGF、NGF、BDNF、VEGFA、MMP1、MMP2、MMP7、TIMP2、SHH、Notch1、TNFSF12またはIL-16の分泌を増加させる、請求項15に記載のCtBPsのオリゴマー化を誘導する方法。
【請求項19】
化合物処理前に比べて処理後に試料でCD44、CD73またはCD105の発現を減少させる、請求項15に記載のCtBPsのオリゴマー化を誘導する方法。
【請求項20】
in vitroで化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を成体幹細胞に処理するステップを含む、成体幹細胞を神経前駆細胞に直接トランス分化を誘導する方法。
【請求項21】
化合物処理前に比べて処理後に細胞でTuj1、CD325(N-cadherin)、p75、GAP-43、CD54、CD309、CD56(NCAM)、PSA-NCAM、CD29、MASH1またはTBR2発現を増加させる、請求項20に記載の直接トランス分化を誘導する方法。
【請求項22】
化合物処理前に比べて処理後に細胞でPlGF、NGF、BDNF、VEGFA、MMP1、MMP2、MMP7、TIMP2、SHH、Notch1、TNFSF12またはIL-16の分泌を増加させる、請求項20に記載の直接トランス分化を誘導する方法。
【請求項23】
化合物処理前に比べて処理後に細胞でCD44、CD73またはCD105の発現を減少させる、請求項20に記載の直接トランス分化を誘導する方法。
【請求項24】
下記化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を処理した幹細胞:
【化2】
【請求項25】
化合物が処理された幹細胞は成体幹細胞(adult stem cell)である、請求項24に記載の幹細胞。
【請求項26】
成体幹細胞は、臍帯血由来間葉系幹細胞(umbilical cord blood-derived mesenchymal stem cells、UCB-MSC)、臍帯由来間葉系幹細胞(umbilical cord-derived mesenchymal stem cells、UC-MSC)、脂肪由来間葉系幹細胞(adipose-derived mesenchymal stem cells、AD-MSC)または骨髄由来間葉系幹細胞(bone marrow-derived mesenchymal stem cells、BM-MSC)である、請求項25に記載の幹細胞。
【請求項27】
in vitroで化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を3~7日間処理した、請求項24に記載の幹細胞。
【請求項28】
化合物処理によって成体幹細胞で神経前駆細胞(neural progenitor cell)に直接トランス分化(direct conversion)されたことである、請求項24に記載の幹細胞。
【請求項29】
神経前駆細胞は、ciNSC5(chemical induced neural stem cell 5)である、請求項28に記載の幹細胞。
【請求項30】
化合物が処理されていない幹細胞に比べてTuj1、TBR2、MASH1、GAP-43またはp75の発現が増加した、請求項24に記載の幹細胞。
【請求項31】
化合物が処理されていない幹細胞に比べてTuj1タンパク質、CD325(N-cadherin)タンパク質、p75タンパク質、GAP-43タンパク質、CD54タンパク質、CD309タンパク質、CD56(NCAM)タンパク質、PSA-NCAMタンパク質、CD29タンパク質、MASH1タンパク質またはTBR2タンパク質の発現が増加した、請求項24に記載の幹細胞。
【請求項32】
化合物が処理されていない幹細胞に比べてCD44、CD73またはCD105の発現が減少した、請求項24に記載の幹細胞。
【請求項33】
化合物が処理されていない幹細胞に比べてPlGF、NGF、BDNF、VEGFA、MMP1、MMP2、MMP7、TIMP2、SHH、Notch1、TNFSF12またはIL-16の分泌が増加した、請求項24に記載の幹細胞。
【請求項34】
化合物が処理されていない幹細胞に比べてHES1、Sox2またはOCT4の発現が増加した、請求項24に記載の幹細胞。
【請求項35】
化合物の処理によってCtBPs(C-terminal Binding Proteins)のオリゴマー化が誘導された、請求項24に記載の幹細胞。
【請求項36】
MAP2、NSE、NeuN、doublecortin、NeuroD1(Neurogenic differentiation 1)、Nestin、Mussashi 1またはGFAPを発現しない、請求項24に記載の幹細胞。
【請求項37】
ドーパミン性神経細胞、神経細胞または成熟した神経細胞に分化可能な、請求項24に記載の幹細胞。
【請求項38】
請求項24に記載の幹細胞、幹細胞培養物または懸濁培養物を有効成分として含む、神経損傷疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項39】
神経損傷疾患が中枢または末梢神経系の損傷、または神経変性疾患である、請求項38に記載の神経損傷疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項40】
中枢または末梢神経系の損傷が脊髄損傷(SCI)、外傷性脳損傷(TBI)、末梢神経損傷、脳卒中または脳癌である、請求項39に記載の神経損傷疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項41】
神経変性疾患がアルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)または多系統萎縮症(multiple system atrophy)である、請求項39に記載の神経損傷疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項42】
CtBPsのオリゴマー化誘導に使用するための、化学式Iの化合物、化学式IIの化合物または化学式IIIの化合物の用途。
【請求項43】
直接トランス分化誘導に使用するための、化学式Iの化合物、化学式IIの化合物または化学式IIIの化合物の用途。
【請求項44】
化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を処理した幹細胞の神経損傷疾患の予防または治療用途。
【請求項45】
化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を処理した幹細胞を神経損傷疾患を有する個体に移植するステップを含む、神経損傷疾患の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CtBPsのオリゴマー化を通じた直接トランス分化を誘導する組成物と、これを処理した幹細胞の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
神経系は、中枢神経系(central nervous system)と末梢神経系(peripheral nervous system)に分けられ、中枢神経系には脳と脊髄が該当し、その他のものは末梢神経系に該当する。末梢神経系は、運動神経と感覚神経を含む体性神経系と自律神経系に分けられる。中枢神経系(脳と脊髄)を構成する神経細胞(neuron)、星状細胞(astrocyte)、および希突起膠細胞(oligodendrocyte)は、多能性幹細胞に分化された神経幹細胞(neural stem cell:NSC)または神経前駆細胞(neural progenitor cell:NPC)を分化させて作ることができ、一方、末梢神経系を構成する末梢神経(自律神経、運動神経、感覚神経)とシュワン細胞(Schwann cells)は、多能性幹細胞に分化された神経堤幹細胞(neural crest stem cell:NCSC)から由来する。神経組織を構成する神経細胞は、樹状突起(dendrite)と軸索(axon)を通じて中枢神経系からの命令信号を末梢神経系に伝達するか、末梢神経系から入力される情報を中枢神経系に伝達する役割を遂行する。軸索は、中枢神経系からより遠い側の神経細胞に電気信号を伝達し、信号伝達を速くするために絶縁体の構造である髄鞘(myelin)で取り囲まれているが、これを髄鞘化(myelination)と言う。哺乳動物の脳は、神経幹細胞の分裂と分化および生存と死滅、シナプス形成などの一連の過程を経て体系的な神経回路網(neural network)を発生することで複雑な機能を遂行することができるようになる。成体時期にも動物の脳神経細胞では神経成長に必要な多くの物質を生産して軸索と樹状突起が成長するようになり、新たな学習と記憶をする度にシナプス連結と神経回路網を絶えずに再構成(synaptic remodeling)するので、分化が続くと言える。神経細胞は細胞分化し、シナプスを形成する過程で神経成長因子のような標的由来生存因子(target-derived survival factor)を受けることができなければ細胞死滅が発生し、ストレスと細胞毒性物質(cytotoxic agent)による細胞死滅は、変性脳疾患の主要原因となる。動物の末梢神経系は、損傷されたとき中枢神経系とは異なり軸索が長時間にわたって再生する。神経傷害部位の後側軸索は、ワーラー変性(Wallerian degeneration)と知られている過程によって退化し、神経の細胞体は軸索の成長(axonal regrowth)をさらに始め、シュワン細胞は分裂した後に生存と死滅によって標的神経を決定し、さらに分化するなど、発生過程をさらに経て再生するようになる。
【0003】
変性神経疾患は、多様な原因により神経細胞の漸進的な構造的、機能的な損失が発生して、認知、運動、感覚などの中枢神経系機能が退化する疾患である。変性神経疾患は、神経系特定部位の神経細胞退化が進行されて、認知症、錐体外路異常、小脳異常、感覚障害、運動障害などの症状を伴い、同時に様々な部位に異常が現れて症状が複合的に現れることもある。これに対して、患者が見せる臨床様相によって疾患を診断するが、症状が多様に現れ、互いに異なる疾患が共通的な臨床症状を見せる場合が多くて診断に困難があるという特徴がある。このような変性神経疾患は、疾患徴候が徐々に現れ、老化とともに発病する場合が多い。一旦発病すれば、死亡まで数年あるいは数十年にわたって持続的に病気が進行され、根本的な治療が難しくて社会的な負担が非常に大きく、発病原因として家族力による遺伝的な影響があるが、後天的な要因も重要に作用することが知られている。変性神経疾患は、その臨床症状によって大きく進行性認知症(アルツハイマー病など)、および神経学的異常(ピック病など)、姿勢および運動異常(パーキンソン病など)、進行性失調症、筋萎縮および萎弱、感覚および運動障害などに区分される。
【0004】
多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)は、遺伝的に感受性のある個体で起こり、ウイルスなどの環境因子による先天的な免疫反応の媒介体、抗体および補体のような免疫学的因子と関連した自己免疫、慢性炎症性および脱髄鞘中枢神経系疾患である。MSは、炎症性脱髄鞘疾患に分類され、すべての年齢層で発生する可能性があるが、主に20~40歳に最も多く発生し、女性の発病率が男性に比べて2倍程度高いと知られている。このような神経性障害は、中枢神経系内の炎症性反応による神経細胞の軸索を取り囲んでいる髄鞘の損傷に起因する。病変は脳と脊髄の白質部位に散在性で現れ、病変部では典型的な現象である原発性炎症疾患である。初期には炎症が一時的であり、損傷した髄鞘の復旧が起こるが持続しない。しかし、時間が経過するほど集中的且つ慢性的な神経退行と関連した幅広い小膠細胞(microglia)の活性化により、病理学的変化が進行され、臨床的に障害症状が次第に危篤になる。
【0005】
ルーゲーリッグ病としても知られている筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis、ALS)は、一次運動皮質、脳幹および脊髄で運動神経細胞の著しい損失を特徴とする最も致命的な進行性神経変性疾患である。運動神経細胞の損失は、呼吸のような基本的且つ根本的な動きを破壊し、一般的に診断後2~5年以内に患者の死亡を招く。患者の運動機能の漸進的な悪化は、結局、患者の呼吸能力を深刻に阻害して、患者の生存のためのある形態の呼吸補助具を必要とする。他の症状としては、手、腕、脚または嚥下筋肉の筋肉弱化をまた含む。一部患者(例えば、前頭側頭葉認知症(FTD)-ALS)は、前頭側頭葉認知症を発達させる可能性もある。ALS協会によると、米国で約5,600人が毎年ALSと診断される。ALSの発病率は、100,000人当たり2人である。2種形態のALSが記述されている:一つは、散発性ALS(sporadic ALS、sALS)であって、これは、米国で最も一般的な形態のALSであり、診断されたすべての事例の90~95%を占める;また他の一つは、家族性ALS(familial ALS、fALS)であって、主に優性遺伝を持つ家族系統で発生し、米国ですべての事例の約5~10%のみを占める。sALSとfALSは、臨床的に区別することができない。現在、臨床でグルタミン酸毒性抑制剤であるリルゾールや抗酸化剤であるエダラボンが処方されているが、薬物はALS進行を多少遅らせる効果を見せるものの治療効果を期待することはできない。ALS治療のためのまた他の戦略は、幹細胞に基づいた治療法である。幹細胞は、運動ニューロンに分化して、ALS患者の中枢神経系、例えば、一次運動皮質、脳幹および脊髄で変性運動ニューロンを代替する潜在力がある。実際に人工多能性幹細胞(iPSC)、間葉系幹細胞(MSC)(例えば、骨髄間質細胞(BMSC)および脂肪由来幹細胞(ASC))および神経組織起源神経幹細胞(例えば、胎児脊髄神経幹細胞(NSC)、多能性神経前駆細胞(NPC))を含み、様々なソースから誘導された幹細胞がALS進行過程で変性運動ニューロンを代替する可能性が提示された(例えば、Kim et al.、Exp.Neurobiol.、2014、23(3)、207-214参照)。
【0006】
パーキンソン病(Parkinson′s disease)は、1817年James Parkinsonによって初めて報告された疾病であって、年を取るにつれ、老化によって筋肉を調節する神経伝達物質であるドーパミン分泌が行われる黒質(substantia nigra、SN)の神経細胞の損失と線条体のドーパミン欠乏により運動能力を喪失する代表的な変性脳疾患の一種である。パーキンソン病は、65歳以上の人口の1%、85歳以上の人口では5%程度が発病する(Twelves et al.、Mov Disord 18, 19-31)。特徴的な臨床的症状としては、安静時振戦(resting tremor)、動作緩慢(bradykinesia)、固縮(rigidity)および姿勢の不安定(postural instability)を伴い、黒質内ドーパミン神経(dopaminergic neuron)の選択的消失(selective loss)によって誘発され、レビー小体(Lewy body)と知られた神経細胞間タンパク凝集体(intraneuronal proteinous inclusion)の存在が代表的な病理学的特性である(Olanow et al.、Annu Rev Neurosci 22、123-44)。パーキンソン病の発病原因は正確に明かされていない。大部分のパーキンソン病である散発型(sporadic form)の場合、その原因は特発性(idiopathic)でほぼ知られていないが、環境的要因(environmental factor)とまだ完全に究明されていない遺伝的感受性(genetic susceptibility)との間の複雑な相互作用が重要な原因として推定されている(Langston et al.、Ann Neurol 44(3 Suppl 1):S45-52)。パーキンソン病は、病理学的に中脳の黒質に存在するメラニン色素を含むドーパミン性神経細胞と神経線維 (neurite fiber)の特異的損失と線条体(striatum)のドーパミン欠乏によって行動学的異常症状を表すようになる。また、パーキンソン病患者の神経細胞では、タンパク質凝集体であるレビー小体が疾病の標識因子として観察される。パーキンソン病の代表的な発病機序としては、酸化ストレス(oxidative stress)、ミトコンドリア機能不全(mitochondrial dysfunction)、ユビキチン-プロテアソーム機能不全(ubiquitin-proteasome dysfunction)および異常タンパク質蓄積(accumulation of misfolded proteins)がある。
【0007】
外傷などによって脊髄神経が損傷を受けるようになれば、人体機能の麻痺を招く。脊髄神経組織は、脳に比べて単純な構造を有しているが、再生は容易でない。脊髄損傷後に起こる病理学的現象は、時間に応じて大きく一次的損傷と二次的損傷に分けられる。一次的損傷は、損傷直後の数分内に起こる現象であって、主に傷部位の細胞が壊死(necrosis)するが、この時期にはあまりにも早く細胞が破壊されるため、薬物学的な治療で扱うことがほとんど不可能である。一次的損傷に続く二次的損傷は、数時間から数日にわたってゆっくりと進行されるが、傷部位の細胞だけ退化するのではなく、周辺の損傷されていない神経細胞と希突起膠細胞までもアポトーシス(apoptosis)によって徐々に細胞死滅が始まる。細胞死滅は、傷部位を中心として持続的に進行されて、結局、脊髄内部の損傷部位が次第に拡がるようになる。また、神経信号の移動通路である軸索と軸索の機能を助けるミエリン髄鞘の退化が起き、終局的に脊髄内の空いた空間(cystic cavity)が形成され、これ以上の神経信号伝達が行われなくなり、永久的な機能消失が引き起こされる。長期間脊髄神経外傷後に起こる病理作用に対する原因究明と再生に関する研究を通じて、脊髄損傷による永久的な機能麻痺を抑制するか、緩和させようとする研究が進行されてきた。脊髄損傷の初期機序はあまりにも早く進行されて、薬物学的な治療と扱い難いため、二次的な機序を扱う薬物学的な戦略の治療剤開発が重要である。
【0008】
現在までステロイド、抗酸化剤、グルタミン酸水溶体抑制剤、イオンチャンネル抑制剤、抗炎症剤、神経成長因子など、多様な薬物学的治療が試みられたことがあるが、メチルプレドニゾロンだけが現在臨床で唯一に使用されている。しかし、メチルプレドニゾロンは、脊髄損傷後8時間内に投与すればこそ効果を期待することができるという限界を持ち、抗炎症、抗酸化、抗細胞自滅効果があり、二次損傷を減らして少しの回復を起こすが、感染の危険性および胃臓管合併症を誘発することができる副作用があって、事実上、現在としては効果的な脊髄損傷治療剤が全くない実情である。
【0009】
これまでは神経の再生ではなく、損傷後に発生する二次損傷程度を減らすための治療法開発にのみ主眼点を置いたが、近来、幹細胞に対する研究が多様な分野で活発に行われるとともに、脊髄損傷のような非可逆的な神経系損傷に対して神経再生治療の可能性が次第に高まっている。
【0010】
一方、細胞性治療法は、例えば、再生医療、臓器移植および、その上に癌のような任意の状態の診断または予防目的を含む任意の目的のために、生きている細胞を投与することを含む。幹細胞は、細胞治療法において非常に立派な潜在性を持つと評価されている。幹細胞は、生物組織を構成する多様な細胞に分化(differentiation)できる細胞であって、胚芽、胎児および成体の各組織で得ることができる分化される前ステップの未分化細胞を総称する。幹細胞は、分化刺激(環境)によって特定細胞への分化が進行され、分化が完了して細胞分裂が止められた細胞とは異なり、細胞分裂によって自分と同一の細胞を生産(self-renewal)することができ、増殖(proliferation;expansion)する特性があり、他の環境または他の分化刺激によって他の細胞にも分化することができるので、分化に柔軟性(plasticity)を持っていることが特徴である。幹細胞は、大きく胚芽(embryo)から得られ、すべての細胞に分化できる潜在力(totipotent)を持つ全分化能(pluripotency)の胚芽幹細胞(embryonic stem cell、ES cell)と各組織から得られる多分化能(multipotency)の成体幹細胞(adult stem cell)とに区分される。成体幹細胞は、造血幹細胞(Hematopoietic stem cell)、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、MSC)、神経幹細胞(Neural stem cell、NSC)、腸幹細胞、筋肉幹細胞、毛包幹細胞および内皮幹細胞などがある。このうち間葉系幹細胞は、多くの成熟した組織に存在し、自己再生能力および多様な系統に分化できる可能性を持つものとよく知られており、骨髄、脂肪組織、胎盤、臍帯血、ホウォートンゼリー(Wharton′s jelly)などの成体組織から容易に得ることができる。
【0011】
従来の人工多能性幹細胞を利用した特定細胞への分化およびこれを通じた細胞治療の限界点を克服するために、任意の体細胞をすべての細胞に分化が可能な人工多能性幹細胞に逆分化させた後、さらに下位に分化させる過程(re-differentiation)を経ずに、「直接」所望の特定細胞に転換させる技術である直接トランス分化(direct conversion)に対する研究が多く行われている。しかし、既存の直接トランス分化方法は様々な問題点が存在する。例えば、逆分化幹細胞誘導過程で形成された多能性幹細胞を利用した交差分化法によっては多様な組織細胞を誘導することができるが、奇形腫発生の危険を内包し、逆分化幹細胞因子と発掘した特定組織細胞特異転写因子の遺伝子組み合わせによる分化法は、奇形腫の発生危険が少ないが、それぞれの組織細胞分化を誘導する特異因子を発掘するのに困難がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Kim et al.、Exp.Neurobiol.、2014、23(3)、207-214
【非特許文献2】Twelves et al.、Mov Disord 18, 19-31
【非特許文献3】Olanow et al.、Annu Rev Neurosci 22、123-44
【非特許文献4】Langston et al.、Ann Neurol 44(3 Suppl 1):S45-52
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、CtBPs(C-terminal binding proteins)のオリゴマー化誘導用組成物を提供することである。
【0014】
また、本発明の目的は、直接トランス分化誘導用組成物を提供することである。
【0015】
また、本発明の目的は、CtBPsのオリゴマー化を誘導する方法を提供することである。
【0016】
また、本発明の目的は、直接トランス分化を誘導する方法を提供することである。
【0017】
また、本発明の目的は、化学式1の化合物、化学式2の化合物および化学式3の化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を処理した幹細胞を提供することである。
【0018】
また、本発明の目的は、前記幹細胞を有効成分として含む、神経損傷疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【0019】
また、本発明の目的は、CtBPsのオリゴマー化誘導に使用するための、化学式1の化合物、化学式2の化合物または化学式3の化合物の用途を提供することである。
【0020】
また、本発明の目的は、直接トランス分化誘導に使用するための、化学式1の化合物、化学式2の化合物または化学式3の化合物の用途を提供することである。
【0021】
また、本発明の目的は、化学式1の化合物、化学式2の化合物および化学式3の化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を処理した幹細胞の神経損傷疾患の予防または治療用途を提供することである。
【0022】
さらに、本発明の目的は、神経損傷疾患の治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明は、化学式1の化合物、化学式2の化合物および化学式3の化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む、CtBPsのオリゴマー化誘導用組成物を提供する。
【0024】
また、本発明は、化学式1の化合物、化学式2の化合物および化学式3の化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む、成体幹細胞の神経前駆細胞への直接トランス分化誘導用組成物を提供する。
【0025】
また、本発明は、CtBPsのオリゴマー化を誘導する方法を提供する。
【0026】
また、本発明は、直接トランス分化を誘導する方法を提供する。
【0027】
また、本発明は、化学式1の化合物、化学式2の化合物および化学式3の化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を処理した幹細胞を提供する。
【0028】
また、本発明は、前記幹細胞、幹細胞培養物または懸濁培養物を有効成分として含む、神経損傷疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0029】
また、本発明は、CtBPsのオリゴマー化誘導に使用するための、化学式1の化合物、化学式2の化合物または化学式3の化合物の用途を提供する。
【0030】
また、本発明は、直接トランス分化誘導に使用するための、化学式1の化合物、化学式2の化合物または化学式3の化合物の用途を提供する。
【0031】
また、本発明は、化学式1の化合物、化学式2の化合物および化学式3の化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を処理した幹細胞の神経損傷疾患の予防または治療用途を提供する。
【0032】
さらに、本発明は、化学式1の化合物、化学式2の化合物および化学式3の化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を処理した幹細胞を神経損傷疾患を有する個体に移植するステップを含む、神経損傷疾患の治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、本発明の化合物は、CtBPsのオリゴマー化を調節することで、これを媒介に成体幹細胞を神経前駆細胞に直接トランス分化誘導することができる。このように直接トランス分化誘導されたciNSC5は、神経幹細胞(neural stem cell)マーカーおよび成熟した神経細胞(mature neuron)マーカーを発現しないとともに、中間神経前駆体(intermediate neuronal progenitor)または未成熟神経細胞(immature neuron)マーカータンパク質の発現が成体幹細胞に比べて顕著に増加し、成長因子、組織分解因子、神経分化、神経生成および軸索再生に関与するリガンド、およびサイトカインを含む分泌タンパク質の分泌が増加し、神経生成、神経再生、神経保護、神経膠瘢痕分解のための酵素、神経発生関連因子の発現が増加し、ドーパミン性神経細胞または神経細胞に分化能を有するので、本発明の化合物をCtBPsのオリゴマー化誘導または直接トランス分化誘導用途で活用することができ、ALSマウスモデル、MSマウスモデル、PDレットモデルおよび慢性脊髄損傷レットモデルの両方で顕著な治療効果を示したので、本発明の化合物を処理した幹細胞を細胞治療剤として活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】YJ101、YJ102およびYJ103のDARTS(Drug Affinity Responsive Target Stability)分析結果を示した図である。
【
図2】YJ102のCTBP1オリゴマー化調節様相を免疫沈澱法で確認した図である。
【
図3】CtBP1とYJ101、YJ102、YJ103の分子ドッキング結果を示す。
【
図4】ChIP方法でCtBP1-YJ102の標的遺伝子を確認した図である。
【
図5】YJ102によるCtBP1-媒介ciNSC5分化有無を確認した図である。
【
図6】YJ101、YJ102またはYJ103を処理したヒトUCB-MSCの直接トランス分化有無を確認した図である。
【
図7】多様な由来の間葉系幹細胞がYJ102によって直接トランス分化されるかを確認した図である。
【
図8】YJ101、YJ102およびYJ103のUCB-MSCに対する細胞毒性を確認した図である。
【
図9】YJ101、YJ102およびYJ103がUCB-MSCの細胞増殖に及ぼす影響を確認した図である。
【
図10】YJ102を5日間処理したciNSC5で神経マーカーの発現を免疫蛍光分析で確認した図である。
【
図11】YJ102を5日間処理したciNSC5で神経前駆細胞マーカータンパク質の発現をウェスタンブロット分析で確認した図である。
【
図12】YJ102を5日間処理したciNSC5でMSC細胞表面抗原マーカータンパク質発現をウェスタンブロット分析で確認した図である。
【
図13】
図11および12のウェスタンブロット分析結果の増減率を整理した図である。
【
図14】YJ102を5日間処理したciNSC5で増加する成長因子、組織分解および神経分化/再生関連因子を確認した図である。
【
図16】YJ102処理によってUCB-MSCから分化されたciNSC5を継代してYJ102のない培地で2日間培養した後、培地内の成長因子、組織分解および神経分化/再生関連タンパク質をウェストンブロッで確認した図である。
【
図18】YJ102処理によってUCB-MSCから分化されたciNSC5をYJ102が含まれない培地で4日または7日間追加培養した後、培地内成長因子、組織分解および神経分化/再生関連タンパク質をウェストンブロッで確認した図である。
【
図20】ciNSC5をYJ102を含まない培地で2日間培養した後、該当培地内のciNSC5で増加する成長因子および組織分解関連6種因子の量をELISAで測定した結果である。
【
図21】ELISA結果値とMSC培地で確認された量対比ciNSC5培地で増加した割合を示した図である。
【
図22】ciNSC5で発現される遺伝子をRNA-seqで分析した結果をheat mapで示した図である。
【
図23】RNA-seq結果を基盤に5日目に培地で発現が変化する因子のうち神経発生、シナプス、神経伝達物質、神経成長因子などに関与した遺伝子を選択して分析した図である。
【
図24】
図23の遺伝子オントロジー分析結果を表で示した図である。
【
図25】5日間YJ102を処理したUCB-MSCから分化されたciNSC5で神経膠瘢痕分解のための酵素の発現をリアルタイムRT-PCRで分析した図である。
【
図26】5日間YJ102を処理したUCB-MSCから分化されたciNSC5で神経発生に関連した転写因子の発現をリアルタイムRT-PCRで分析した図である。
【
図27】5日間YJ102を処理したUCB-MSCから分化されたciNSC5でミエリン化、シナプシス、マトリックス/細胞付着、カルシウムシグナリングのようなニューロンマーカーの発現をリアルタイムRT-PCRで分析した図である。
【
図28】5日間YJ102を処理したUCB-MSCから分化されたciNSC5でニューロンレセプターおよびチャンネルの発現をリアルタイムRT-PCRで分析した図である。
【
図29】ciNSC5の継代培養時の細胞特性変化を継代別ダブリング時間で確認した図である。
【
図30】ciNSC5の継代培養時の細胞特性変化を継代数によるCPDL値で確認した図である。
【
図31】継代培養時ciNSC5のTuj1発現を確認した図である。
【
図32】karyotypingを通じてciNSC5の継代培養時の染色体異常を確認した図である。
【
図33】ciNSC5の神経細胞への分化有無を確認した図である。
【
図34】MDI処理時の脂肪生成(adipogenesis)をそのマーカーであるC/EBPαおよびPPARγの発現で確認した図である。
【
図35】ciNSC5移植後のALSマウスモデルの寿命を確認した図である。
【
図36】ciNSC5移植後のALSマウスモデルの挙動分析(ロータロッド、運動スコア、ハンギングワイヤーテストおよびバランスビームテスト)を遂行した図である。
【
図37】ciNSC5移植後のALSマウスモデルの腰椎脊髄神経損失を確認した図である。
【
図38】ciNSC5移植後のEAEマウスモデルの挙動分析を遂行した図である。
【
図39】ciNSC5移植後のEAEマウスモデルの脱髄鞘化範囲および程度を確認した図である。
【
図40】ciNSC5移植後のEAEマウスモデルの脊髄白質周囲に浸透された単核細胞を確認した図である。
【
図41】ciNSC5移植後のEAEマウスモデルの脊髄白質に浸透されたマクロファージを確認した図である。
【
図42】ciNSC5移植後のEAEマウスモデルの脊髄で小膠細胞および星状細胞の活性化を確認した図である。
【
図43】ciNSC5移植後のEAEマウスモデルの脊髄で小膠細胞および星状細胞の活性化を確認した図である。
【
図44】6-OHDA注入を通じたPDレットモデルを製作過程およびStereotaxicの位置(Partial injury:AP+0.7、ML+2.6、DV -4.5 from bregma;およびComplete injury:AP -2.2、ML+1.5、DV-8.0 from bregma)を示した図である。
【
図45】ciNSC5移植後のPDレットモデルで運動機能回復を挙動分析(ローテーションテストおよびステッピングテスト)で確認した図である。
【
図46】ciNSC5移植後のPDレットモデルでドーパミン神経細胞の消失を確認した図である。
【
図47】ciNSC5移植後のPDレットモデルでヒト特異的抗体(STEM121)で移植を確認した図である。
【
図48】ciNSC5移植後のPDレットモデルに細胞を移植した部位でヒト特異的抗体(STEM121)およびドーパミン神経細胞(TH-陽性細胞)を確認することでciNSCsが移植後のヒトドーパミン神経細胞に分化されたことを確認した図である。
【
図49】ciNSC5移植後の慢性脊髄損傷レットモデルで運動機能回復を挙動分析(BBB、グリッドワークおよびフットプリント)で確認した図である。
【
図50】ciNSC5移植後の慢性脊髄損傷レットモデルで運動機能回復をFRIで分析した図である。
【
図51】ciNSC5移植後の慢性脊髄損傷レットモデルで病変体積およびミエリン損失を確認した図である。
【
図52】ciNSC5移植後の慢性脊髄損傷レットモデルで病変部位の神経膠症的傷形成程度を確認した図である。
【
図53】ciNSC5移植後の慢性脊髄損傷レットモデルで軸索再生をBDA先行軸索追跡で確認した図である。
【
図54】ciNSC5移植後の慢性脊髄損傷レットモデルで軸索再生をフルオロゴールド逆行軸索追跡で確認した図である。
【
図55】ciNSC5移植後の慢性脊髄損傷レットモデルで軸索再生因子であるGAP43の発現様相をウェスタンブロットで確認した図である。
【
図56】ciNSC5移植後の慢性脊髄損傷レットモデルに細胞移植6週後に成熟した神経細胞に分化されたかを確認するために、ヒト特異的抗体であるSTEM121抗体および神経細胞マーカーを利用して免疫組織化学染色を遂行した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付の図面を参照して、本発明の具現例で本発明を詳しく説明することにする。ただし、下記の具現例は、本発明に対する例示として提示されるものであって、当業者に周知著名な技術または構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曇ることができるものと判断される場合には、その詳細な説明を省略することができ、これにより本発明が制限されることはない。本発明は、後述する特許請求の範囲の記載およびそれから解析される均等範疇内で多様な変形および応用が可能である。
【0036】
また、本明細書において使用される用語(terminology)は、本発明の好ましい実施例を適切に表現するために使用された用語であって、これは、使用者、運用者の意図または本発明の属する分野の慣例などによって変わることがある。したがって、本用語に対する定義は、本明細書全般にわたった内容に基づいて下されなければならない。明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0037】
本発明において使用されるすべての技術用語は、特に定義されない限り、本発明の関連分野における通常の当業者が一般的に理解するような意味で使用される。また本明細書には、好ましい方法や試料が記載されるが、これと類似するか、または同等なものも本発明の範疇に含まれる。本明細書に参考文献として記載されるすべての刊行物の内容は、本発明に統合される。
【0038】
本明細書の全体にわたって、特定物質の濃度を示すために使用される「%」は、別途の言及がない場合、固体/固体は(w/w)%、固体/液体は(w/v)%、そして液体/液体は(v/v)%である。
【0039】
一側面において、本発明は、下記の化1で表されるベンゾオキサゾール誘導体、その立体異性体、その薬剤学的に許容される塩、またはその溶媒和物あるいは水和物に関する。
【0040】
【0041】
化1において、
R1~R3は、それぞれ独立して水素;ハロゲン基;C1-C4の直鎖または分枝鎖のアルキル基;C1-C4の直鎖または分枝鎖のアルコキシ基;ニトロ基(-NO2);またはアミノ基(-NH2)であり、
Lは、C1-C4アルキレン基であり、
R4は、C1-C4の直鎖または分枝鎖のアルコキシ基;-C(=O)OR6;または-OC(=O)R7であり、
R5は、水素;ハロゲン基;C1-C4の直鎖または分枝鎖のアルキル基;またはC1-C4の直鎖または分枝鎖のアルコキシ基であり、
R6およびR7は、それぞれ独立してC1-C4の直鎖または分枝鎖のアルキル基である。
【0042】
本発明において、前記立体異性体(stereoisomer)は、分子内の原子または原子団の配置が空間的に異なって生じる異性体であって、光学異性体(enantiomer)と幾何異性体(geometric isomer)をすべて含む。
【0043】
本発明において、前記水和物は、ベンゾオキサゾール誘導体、その薬学的に許容可能な塩、またはその立体異性体などと水が非共有的分子間の力で結合されているものであって、化学量論的または非化学量論的の量の水を含むものであってよい。具体的には、前記水和物は、活性成分1モルを基準に水を約0.25モル~約10モル比で含むことができ、より具体的には、約0.5モル、約1モル、約1.5モル、約2モル、約2.5モル、約3モル、約5モルなどを含むことができる。
【0044】
本明細書において、「溶媒和物」は、ベンゾオキサゾール誘導体、その薬学的に許容可能な塩、またはその立体異性体などと水ではない溶媒が分子間の力で結合されているものであって、溶媒を化学量論的または非化学量論的量で含むことができる。具体的には、前記溶媒和物は、活性成分1モルを基準に溶媒分子を約0.25モル~約10モル比で含むことができ、より具体的には、約0.5モル、約1モル、約1.5モル、約2モル、約2.5モル、約3モル、約5モルなどで含むことができる。
【0045】
一具現例において、前記化1で表されるベンゾオキサゾール誘導体は、下記化学式2で表されるベンゾオキサゾール誘導体であることであるベンゾオキサゾール誘導体、その立体異性体、その薬剤学的に許容される塩、またはその溶媒和物あるいは水和物であってよい。
【0046】
【0047】
化2において、
LおよびR1~R5の定義は、前記化1で定義したとおりである。
一具現例において、R1~R3のうち2つは水素であり、残り1つは水素;ハロゲン基;C1-C4の直鎖または分枝鎖のアルキル基;C1-C4の直鎖または分枝鎖のアルコキシ基;ニトロ基(-NO2);またはアミノ基(-NH2)であってよい。
【0048】
本発明の実施例において、前記化1で表されるベンゾオキサゾール誘導体は、下記化学式I、化学式IIまたは化学式IIIの化合物のうちいずれか1つであってよい。
【0049】
【0050】
一側面において、本発明は、化3のうち、化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む、CtBPs(C-terminal Binding Proteins)のオリゴマー化誘導用組成物に関する。
【0051】
一具現例において、CtBPsは、CtBP1またはCtBP2であってよい。
【0052】
一具現例において、前記組成物は、CtBPsを酵素から保護してオリゴマー化を誘導することができる。
【0053】
一具現例において、前記オリゴマー化は、CtBP1-CtBP1またはCtBP2-CtBP2のホモオリゴマー化であってよい。
【0054】
一具現例において、化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物は、CtBP1と直接結合することができ、化学式2の化合物は、CtBP2とも直接結合することができる。
【0055】
一具現例において、化学式Iの化合物は、CtBP1のSer100に結合し、化学式IIの化合物は、CtBP1のSer100およびArg266に結合し、化学式IIIの化合物は、CtBP1のPhe102、Arg184およびHis236に結合することができる。
【0056】
一具現例において、前記組成物は、HES1の発現を減少させることができる。
【0057】
一具現例において、前記組成物は、Sox2の発現を増加させることができる。
【0058】
一具現例において、前記組成物は、OCT4の発現を誘導することができる。
【0059】
一具現例において、前記組成物は、CtBPs-媒介によって成体幹細胞を神経前駆細胞に分化させることができる。
【0060】
一具現例において、成体幹細胞は、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、MSC)であってよく、間葉系幹細胞は、臍帯血由来間葉系幹細胞(umbilical cord blood-derived mesenchymal stem cells、UCB-MSC)、臍帯由来間葉系幹細胞(umbilical cord-derived mesenchymal stem cells、UC-MSC)、脂肪由来間葉系幹細胞(adipose-derived mesenchymal stem cells、AD-MSC)または骨髄由来間葉系幹細胞(bone marrow-derived mesenchymal stem cells、BM-MSC)であってよい。
【0061】
一具現例において、神経前駆細胞は、ciNSC5(chemical induced neural stem cell 5)であってよい。
【0062】
一具現例において、前記組成物は、試薬組成物または培地組成物であってよい。
一側面において、本発明は、化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含む、成体幹細胞(adult stem cell)の神経前駆細胞への直接トランス分化(direct conversion)誘導用組成物に関する。
【0063】
一具現例において、前記組成物は、成体幹細胞からCtBPsのオリゴマーを誘導してCtBPs-媒介による神経前駆細胞への直接トランス分化を誘導することができる。
【0064】
一具現例において、成体幹細胞は、間葉系幹細胞であってよく、間葉系幹細胞は、臍帯血由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞または骨髄由来間葉系幹細胞であってよく、成体幹細胞なら特定組織細胞に関係なく適用することができるので、これに制限されない。多数の本発明の具体的な実施例においては、臍帯(血)に由来した間葉系幹細胞を使用したが、脂肪由来間葉系幹細胞および骨髄由来間葉系幹細胞からも神経前駆細胞に直接トランス分化が可能であることを確認した。
【0065】
一具現例において、神経前駆細胞は、ciNSC5であってよい。
【0066】
一具現例において、前記組成物は神経マーカーの発現を増加させることができ、神経マーカーはTuj1、TBR2、MASH1、GAP-43またはp75であってよい。
【0067】
一具現例において、前記組成物は神経前駆細胞マーカータンパク質の発現を増加させることができ、神経前駆細胞マーカータンパク質はTuj1タンパク質、CD325(N-cadherin)タンパク質、p75タンパク質、GAP-43タンパク質、CD54タンパク質、CD309タンパク質、CD56(NCAM)タンパク質、PSA-NCAMタンパク質、CD29タンパク質、MASH1タンパク質またはTBR2タンパク質であってよく、直接トランス分化誘導前に比べて誘導後にTuj1タンパク質を6倍以上、好ましくは6~8倍、CD325(N-cadherin)タンパク質を7倍以上、好ましくは7~10倍、p75タンパク質を4倍以上、好ましくは4~8倍、GAP43タンパク質を4倍以上、好ましくは4~7倍、CD54タンパク質を2倍以上、好ましくは2~5倍、CD309タンパク質を3倍以上、好ましくは3~7倍、CD56(NCAM)タンパク質を3.5倍以上、好ましくは3.5~6倍、PSA-NCAMタンパク質を4倍以上、好ましくは4~6倍、CD29タンパク質を4.5倍以上、好ましくは4.5~8倍、MASH1タンパク質を4倍以上、好ましくは4~8倍、またはTBR2タンパク質を3倍以上、好ましくは3~7倍発現増加させることができる。
【0068】
一具現例において、前記組成物は成体幹細胞マーカータンパク質の発現を減少させることができ、成体幹細胞マーカータンパク質はCD44、CD73またはCD105であってよく、直接トランス分化誘導前に比べて誘導後にCD44タンパク質を50~90%、CD73タンパク質を30~70%またはCD105タンパク質を50~90%発現減少させることができる。
【0069】
一具現例において、前記組成物は分泌タンパク質の分泌を増加させることができ、分泌タンパク質は成長因子、組織分解因子、リガンドまたはサイトカインであってよい。
【0070】
一具現例において、前記成長因子はPlGF、NGF、BDNFまたはVEGFAであってよく、直接トランス分化誘導前に比べて誘導後にPlGFを1.5~4倍、NGFを1.5~6倍、BDNFを1.5~3倍またはVEGFAを1.5~5倍分泌増加させることができる。
【0071】
一具現例において、前記組織分解因子はMMP1、MMP2、MMP7またはTIMP2であってよく、直接トランス分化誘導前に比べて誘導後にMMP1を1.5~3.5倍またはMMP2を2~6倍分泌増加させることができる。
【0072】
一具現例において、前記リガンドはSHHまたはNotch1であってよい。
【0073】
一具現例において、前記サイトカインはTNFSF12またはIL-16であってよく、直接トランス分化誘導前に比べて誘導後にTNFSF12を1.5~4倍分泌増加させることができる。
【0074】
一具現例において、前記組成物は試薬組成物または培地組成物であってよい。
【0075】
本発明において、前記マーカー遺伝子のmRNAの発現水準は、前記マーカーの核酸配列、前記核酸配列に相補的な核酸配列、前記核酸配列および相補的な配列の断片を特異的に認識するプライマー対、プロブ、またはプライマー対およびプロブを利用して重合酵素連鎖反応、リアルタイムRT-PCR(Real-time RT-PCR)、逆転写重合酵素連鎖反応、競争的重合酵素連鎖反応(Competitive RT-PCR)、Nuclease保護分析(RNase、S1 nuclease assay)、in situ交雑法、核酸マイクロアレイ、ノーザンブロットまたはDNAチップ方法で測定されることができ、前記マーカーのタンパク質発現水準はマーカーのタンパク質全長またはその断片を特異的に認識する抗体、抗体断片、アプタマー(aptamer)、アビマー(avidity multimer)またはペプチド模倣体(peptidomimetics)を利用してウエスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射線免疫分析(RIA:Radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、免疫電気泳動、組織免疫染色、免疫沈殿分析法(Immunoprecipitation assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、FACS、質量分析またはタンパク質マイクロアレイ方法で測定されることができる。
【0076】
本発明において使用された用語「直接トランス分化(Direct reprogramming、Direct conversion、Transdifferentiation)」とは、高等生物で全く異なる細胞タイプを有する成熟した(分化が終わった)細胞間の転換を誘導する過程で、任意の体細胞(cell type A)をすべての細胞に分化が可能な人工多能性幹細胞に逆分化させた後に再分化させる過程(re-differentiation)を経ずに、「直接」所望の特定細胞(cell type B)に転換させる技術である。現在、直接トランス分化は、疾病モデリングと新薬発掘などに利用される可能性を認められており、未来には遺伝子治療、そして再生医学などにも応用されることができるものと予想される。
【0077】
一側面において、本発明は、in vitroで試料に化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を処理するステップを含むCtBPsのオリゴマー化を誘導する方法に関する。
【0078】
一具現例において、前記化合物は、3~7日間処理されることができ、5日間処理されることが最も好ましい。
【0079】
一具現例において、CtBPsは、CtBP1またはCtBP2であってよい。
【0080】
一具現例において、前記オリゴマー化は、CtBP1-CtBP1またはCtBP2-CtBP2のホモオリゴマー化であってよい。
【0081】
一具現例において、前記試料は、成体幹細胞(adult stem cell)であってよく、一具現例において、成体幹細胞は、間葉系幹細胞であってよく、間葉系幹細胞は、臍帯血由来間葉系幹細胞(umbilical cord blood-derived mesenchymal stem cells、UCB-MSC)、臍帯由来間葉系幹細胞、脂肪由来中肝葉幹歳または骨髄由来間葉系幹細胞であってよい。
【0082】
一具現例において、前記方法は、化合物処理前に比べて処理後に試料でTuj1、CD325(N-cadherin)、p75、GAP-43、CD309、CD56(NCAM)、PSA-NCAM、CD29、MASH1またはTBR2発現を増加させることができ、Tuj1を6倍以上、好ましくは6~8倍、CD325(N-cadherin)を7倍以上、好ましくは7~10倍、p75を4倍以上、好ましくは4~8倍、GAP43を4倍以上、好ましくは4~7倍、CD54を2倍以上、好ましくは2~5倍、CD309を3倍以上、好ましくは3~7倍、CD56(NCAM)を3.5倍以上、好ましくは3.5~6倍、PSA-NCAMを4倍以上、好ましくは4~6倍、CD29を4.5倍以上、好ましくは4.5~8倍、MASH1を4倍以上、好ましくは4~8倍、またはTBR2を3倍以上、好ましくは3~7倍発現増加させることができる。
【0083】
一具現例において、前記方法は、化合物処理前に比べて処理後に試料で成長因子、組織分解因子、リガンドまたはサイトカインの分泌を増加させることができ、化合物処理前に比べて処理後に試料でPlGF、NGF、BDNF、VEGFA、MMP1、MMP2、MMP7、TIMP2、SHH、Notch1、TNFSF12またはIL-16の分泌を増加させ、PlGFを1.5~4倍、NGFを1.5~6倍、BDNFを1.5~3倍、VEGFAを1.5~5倍、MMP1を1.5~3.5倍、MMP2を2~6倍またはTNFSF12を1.5~4倍分泌増加させることができ、化合物処理前に比べて処理後に試料でCD44、CD73またはCD105の発現を減少させることができ、CD44の発現を50~90%、CD73の発現を30~70%またはCD105の発現を50~90%減少させることができる。
【0084】
一側面において、本発明は、in vitroで化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を成体幹細胞に処理するステップを含む成体幹細胞を神経前駆細胞に直接トランス分化を誘導する方法に関する。
【0085】
一具現例において、前記化合物は、3~7日間処理されることができ、5日間処理されることが最も好ましい。
【0086】
一具現例において、CtBPs-媒介によって直接トランス分化が誘導されることができ、CtBPsのオリゴマー化を通じて直接トランス分化が誘導されることがさらに好ましい。
【0087】
一具現例において、前記方法は、化合物処理前に比べて処理後に細胞でTuj1、CD325(N-cadherin)、p75、GAP-43、CD309、CD56(NCAM)、PSA-NCAM、CD29、MASH1またはTBR2の発現を増加させることができ、Tuj1を2~5倍、CD325(N-cadherin)を3~6倍、p75を1.5~4倍、GAP43を2~6倍、CD309を1.5~3倍、CD56(NCAM)を1.5~4.5倍、PSA-NCAMを1.5~4倍、CD29を1.5~4倍、MASHを2~4倍またはTBR2を5~9倍発現増加させることができる。
【0088】
一具現例において、前記方法は、化合物処理前に比べて処理後に細胞で成長因子、組織分解因子、リガンドまたはサイトカインの分泌を増加させることができる。
【0089】
一具現例において、前記方法は、化合物処理前に比べて処理後に細胞でPlGF、NGF、BDNF、VEGFA、MMP1、MMP2、MMP7、TIMP2、SHH、Notch1、TNFSF12またはIL-16の分泌を増加させて、PlGFを1.5~4倍、NGFを1.5~6倍、BDNFを1.5~3倍、VEGFAを1.5~5倍、MMP1を1.5~3.5倍、MMP2を2~6倍またはTNFSF12を1.5~4倍分泌増加させることができる。
【0090】
一具現例において、前記方法は、化合物処理前に比べて処理後に細胞でCD44、CD73またはCD105の発現を減少させることができ、CD44の発現を50~90%、CD73の発現を30~70%またはCD105の発現を40~80%減少させることができる。
【0091】
本発明の直接トランス分化誘導用組成物および直接トランス分化方法で誘導される直接トランス分化によって、成体幹細胞から神経前駆細胞への直接的分化誘導が可能であり、ここで、さらに神経細胞および/またはドーパミン神経細胞に分化されることができる。この場合、前記直接トランス分化方法は、先立って説明した本発明の化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上、またはこれを含む直接トランス分化組成物を成体幹細胞に取り入れて得た神経前駆細胞を神経細胞またはドーパミン神経細胞に分化させるステップをさらに含むことができ、このとき間葉系幹細胞を神経細胞またはドーパミン神経細胞に分化させるステップは、一般的な分化技術を適用して遂行されるものであってよい。
【0092】
一側面において、本発明は、化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を処理した幹細胞に関する。
【0093】
一具現例において、化合物が処理された幹細胞は、成体幹細胞(adult stem cell)であってよく、成体幹細胞は、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells、MSC)であってよく、間葉系幹細胞は、臍帯血由来間葉系幹細胞(umbilical cord blood-derived mesenchymal stem cells、UCB-MSC)、臍帯由来間葉系幹細胞(umbilical cord-derived mesenchymal stem cells、UC-MSC)、脂肪由来間葉系幹細胞(adipose-derived mesenchymal stem cells、AD-MSC)または骨髄由来間葉系幹細胞(bone marrow-derived mesenchymal stem cells、BM-MSC)であってよい。
【0094】
一具現例において、本発明の幹細胞は、in vitroで化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を3~7日間処理した幹細胞であってよく、幹細胞に化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を処理するステップ;および化合物が処理された幹細胞を3~7日間培養するステップを含む方法で製造された幹細胞であってよい。
【0095】
一具現例において、本発明の幹細胞は、前記化合物をDMSOに30mMで溶解して5~100uMの濃度で処理した幹細胞であってよい。
【0096】
一具現例において、本発明の幹細胞は、化合物処理によって成体幹細胞に直接トランス分化(direct conversion)された神経前駆細胞(neural progenitor cell)であってよく、神経前駆細胞は、ciNSC5(chemical induced neural stem cell 5)であってよい。
【0097】
一具現例において、本発明の幹細胞は、化合物が処理されていない幹細胞に比べて神経マーカーの発現が増加することができ、神経マーカーは、Tuj1、TBR2、MASH1、GAP-43またはp75であってよい。
【0098】
一具現例において、本発明の幹細胞は、化合物が処理されていない幹細胞に比べて神経前駆細胞マーカータンパク質の発現が増加することができ、神経前駆細胞マーカータンパク質は、Tuj1タンパク質、CD325(N-cadherin)タンパク質、p75タンパク質、GAP-43タンパク質、CD54タンパク質、CD309タンパク質、CD56(NCAM)タンパク質、PSA-NCAMタンパク質、CD29タンパク質、MASH1タンパク質またはTBR2タンパク質であってよい。
【0099】
一具現例において、本発明の幹細胞は、化合物が処理されていない幹細胞に比べてTuj1タンパク質が6倍以上、好ましくは6~8倍、CD325(N-cadherin)タンパク質が7倍以上、好ましくは7~10倍、p75タンパク質が4倍以上、好ましくは4~8倍、GAP43タンパク質が4倍以上、好ましくは4~7倍、CD54タンパク質が2倍以上、好ましくは2~5倍、CD309タンパク質が3倍以上、好ましくは3~7倍、CD56(NCAM)タンパク質が3.5倍以上、好ましくは3.5~6倍、PSA-NCAMタンパク質が4倍以上、好ましくは4~6倍、CD29タンパク質が4.5倍以上、好ましくは4.5~8倍、MASH1タンパク質が4倍以上、好ましくは4~8倍、またはTBR2タンパク質が3倍以上、好ましくは3~7倍発現増加することができる。
【0100】
一具現例において、本発明の幹細胞は、化合物が処理されていない幹細胞に比べてCD44、CD73またはCD105の発現が減少することができ、CD44タンパク質の発現が50~90%、CD73タンパク質の発現が30~70%またはCD105タンパク質の発現が50~90%減少することができる。
【0101】
一具現例において、本発明の幹細胞は、化合物が処理されていない幹細胞に比べて分泌タンパク質の分泌が増加することができ、分泌タンパク質は、成長因子、組織分解因子、リガンドまたはサイトカインであってよい。
【0102】
一具現例において、成長因子は、PlGF、NGF、BDNFまたはVEGFAであってよく、本発明の幹細胞は、化合物が処理されていない幹細胞に比べてPlGFの分泌が1.5~4倍、NGFの分泌が1.5~6倍、BDNFの分泌が1.5~3倍またはVEGFAの分泌が1.5~5倍増加することができる。
【0103】
一具現例において、組織分解因子は、MMP1、MMP2、MMP7またはTIMP2であってよく、本発明の幹細胞は、化合物が処理されていない幹細胞に比べてMMP1の分泌が1.5~3.5倍またはMMP2の分泌が2~6倍増加することができる。
【0104】
一具現例において、リガンドは、SHHまたはNotch1であってよい。
【0105】
一具現例において、サイトカインは、TNFSF12またはIL-16であってよく、本発明の幹細胞は、化合物が処理されていない幹細胞に比べてTNFSF12の分泌が1.5~4倍増加することができる。
【0106】
一具現例において、本発明の幹細胞は、化合物が処理されていない幹細胞に比べてHES1、Sox2またはOCT4の発現が増加することができる。
【0107】
一具現例において、本発明の幹細胞は、化合物の処理によってCtBPs(C-terminal Binding Proteins)のオリゴマー化が誘導されることができ、化合物がCtBPsを酵素から保護することでオリゴマー化が誘導されることができる。
【0108】
一具現例において、CtBPsは、CtBP1またはCtBP2であってよい。
【0109】
一具現例において、前記オリゴマー化は、CtBP1-CtBP1またはCtBP2-CtBP2のホモオリゴマー化であってよい。
【0110】
一具現例において、化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物は、CtBP1と直接結合することができ、化学式IIの化合物は、CtBP2とも直接結合することができる。
【0111】
一具現例において、化学式Iの化合物は、CtBP1のSer100に結合し、化学式IIの化合物は、CtBP1のSer100およびArg266に結合し、化学式IIIの化合物は、CtBP1のPhe102、Arg184およびHis236に結合することができる。
【0112】
一具現例において、前記化合物は、CtBPs-媒介によって成体幹細胞を神経前駆細胞に分化させることができる。
【0113】
一具現例において、前記化合物は、成体幹細胞からCtBPsのオリゴマーを誘導してCtBPs-媒介による神経前駆細胞への直接トランス分化を誘導することができる。
【0114】
一具現例において、成体幹細胞は、間葉系幹細胞であってよく、間葉系幹細胞は、臍帯血由来間葉系幹細胞(umbilical cord blood-derived mesenchymal stem cells、UCB-MSC)、臍帯由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞または骨髄由来間葉系幹細胞であってよく、成体幹細胞なら特定組織細胞に関係なく適用することができるので、これに制限されない。多数の本発明の具体的な実施例においては、臍帯(血)に由来した間葉系幹細胞を使用したが、脂肪由来間葉系幹細胞および骨髄由来間葉系幹細胞からも神経前駆細胞に直接トランス分化が可能であることを確認した。
【0115】
一具現例において、本発明の幹細胞は、MAP2、NSE、NeuN、doublecortin、NeuroD1(Neurogenic differentiation 1)、Nestin、Mussashi 1またはGFAPを発現しなくてよい。
【0116】
一具現例において、本発明の幹細胞は、化合物が処理されていない幹細胞に比べて神経生成を誘導遺伝子、誘導性神経栄養因子(neurotrophic factor)分泌遺伝子、神経発生関連遺伝子、ニューロンマーカー遺伝子、ニューロンレセプター遺伝子およびチャンネル関連遺伝子の発現が増加することができる。
【0117】
一具現例において、本発明の幹細胞は、化合物が処理されていない幹細胞に比べて神経膠瘢痕分解のための酵素の発現が増加することができる。
【0118】
一具現例において、本発明の幹細胞は、ドーパミン性神経細胞、神経細胞または成熟した神経細胞に分化ができる。
【0119】
一具現例において、本発明の幹細胞は、脂肪生成(adipogenesis)が誘導されなくてよい。
【0120】
本発明において使用された用語「発現」は、核酸がDNA鋳型から(例えば、mRNAまたはその他のRNA転写物に)転写される過程および/または以後に転写されたmRNAがペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に翻訳される過程を指称する。
【0121】
本発明において、前記遺伝子のmRNAの発現水準は、前記マーカーの核酸配列、前記核酸配列に相補的な核酸配列、前記核酸配列および相補的な配列の断片を特異的に認識するプライマー対、プロブ、またはプライマー対およびプロブを利用して重合酵素連鎖反応、リアルタイムRT-PCR(Real-time RT-PCR)、逆転写重合酵素連鎖反応、競争的重合酵素連鎖反応(Competitive RT-PCR)、Nuclease保護分析(RNase、S1 nuclease assay)、in situ交雑法、核酸マイクロアレイ、ノーザンブロットまたはDNAチップ方法で測定されることができ、前記遺伝子のタンパク質発現水準は、該当タンパク質全長またはその断片を特異的に認識する抗体、抗体断片、アプタマー(aptamer)、アビマー(avidity multimer)またはペプチド模倣体(peptidomimetics)を利用してウエスタンブロット、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射線免疫分析(RIA:Radioimmunoassay)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、免疫電気泳動、組織免疫染色、免疫沈殿分析法(Immunoprecipitation assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、FACS、質量分析またはタンパク質マイクロアレイ方法で測定されることができる。
【0122】
本発明において使用された用語「直接トランス分化(Direct reprogramming、Direct conversion、Transdifferentiation)」とは、高等生物で全く異なる細胞タイプを有する成熟した(分化が終わった)細胞間の転換を誘導する過程で、任意の体細胞(cell type A)をすべての細胞に分化が可能な人工多能性幹細胞に逆分化させた後に再分化させる過程(re-differentiation)を経ずに、「直接」所望の特定細胞(cell type B)に転換させる技術である。
【0123】
本発明の化合物を処理した幹細胞は、神経前駆細胞に直接トランス分化され、ここで、さらに成熟した神経細胞および/またはドーパミン神経細胞に分化されることができる。この場合、前記化合物を処理した幹細胞神経細胞またはドーパミン神経細胞に分化させる構成を本発明にさらに含むことができ、このとき間葉系幹細胞を神経細胞またはドーパミン神経細胞に分化させるステップは、一般的な分化技術を適用して遂行されるものであってよい。
【0124】
一側面において、本発明は、本発明の幹細胞、幹細胞培養物または懸濁培養物を有効成分として含む、神経損傷疾患の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【0125】
一具現例において、神経損傷疾患は、中枢または末梢神経系の損傷、または神経変性疾患であってよく、CNS(central nerve system)損傷疾患であってよい。
【0126】
一具現例において、中枢または末梢神経系の損傷が脊髄損傷(SCI)、外傷性脳損傷(TBI)、末梢神経損傷、脳卒中または脳癌であってよい。
【0127】
一具現例において、脊髄損傷は、外傷または炎症によって誘発されることができ、急性横断性脊髄炎、急性種まき性脊髄炎、脊髄病症、非ホジキンリンパ腫、水頭症、遺伝性失調症、神経梅毒、水俣病、ルーゲーリッグ病および多発性硬化症からなる群より選択された一つ以上によって誘発されることができる。
【0128】
一具現例において、神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)、多発性硬化症(MS)または多系統萎縮症(multiple system atrophy)であってよく、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)または多発性硬化症(MS)であることがさらに好ましい。
【0129】
一具現例において、本発明の組成物は、脊髄内運動神経細胞の死滅を有意的に抑制し、運動機能の障害が同伴されるルーゲーリッグ病症状の進行を遅延し、寿命を延長することでルーゲーリッグ病の予防または治療効果を達成することができる。
【0130】
一具現例において、本発明の組成物は、CNSの脱髄鞘化を抑制し、脊髄白質への単核細胞またはマクロファージの浸透を抑制し、小膠細胞または星状細胞の活性化を抑制することで、多発性硬化症(MS)の予防または治療効果を達成することができる。
【0131】
一具現例において、本発明の組成物は、ドーパミン神経細胞の消失を抑制し、移植された本発明の幹細胞がドーパミン神経細胞に分化することで、パーキンソン病(PD)の予防または治療効果を達成することができる。
【0132】
一具現例において、本発明の組成物は、ミエリン損失を減少させ、神経膠症的傷(gliotic scar)形成を減少させ、軸索(axon)を増加させ、移植された本発明の幹細胞が成熟した神経細胞に分化することで、慢性脊髄損傷の予防または治療効果を達成することができる。
【0133】
本発明において使用される用語「予防」とは、本発明による組成物の投与により神経損傷疾患の発生、発達および再発を抑制または遅延させるすべての行為を意味する。
【0134】
本発明において使用される用語「治療」とは、本発明による組成物の投与で神経損傷疾患およびこれによる合併症の症状を好転させるか、有利に変更すべての行為を意味する。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、大韓医学協会などで提示された資料を参照して本願の組成物の効果がある疾患の正確な基準が分かり、改善、向上および治療された程度を判断することができるはずである。
【0135】
本明細書において使用される用語「治療」は、有利であるか、好ましい臨床的結果を得るための接近を意味する。本発明の目的のために、有利であるか、好ましい臨床的結果は、非制限的に、症状の緩和、疾病範囲の減少、疾病状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾病進行の遅延または速度の減少、疾病状態の改善または一時的緩和および軽減(部分的や全体的に)、検出可能であるか、または検出されないか否かを含む。
【0136】
また、「治療」は、治療を受けなかった場合に予想される生存率と比較して生存率を伸ばすことを意味することもできる。「治療」は、治療学的治療および予防的または予防措置方法のすべてを示す。前記治療は、予防される障害だけでなく、既に発生した障害において要求される治療を含む。疾病を「緩和(Palliating)」することは、治療をしない場合と比較して、疾病状態の範囲および/または好ましくない臨床的徴候が減少するか、および/または進行の時間的推移(time course)が遅くなるか、長くなることを意味する。
【0137】
本発明の組成物の治療的に有効な量は、様々な要素、例えば、投与方法、目的部位、個体の状態などによって変わることがある。
【0138】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において使用される用語「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受益/危険割合で疾患を治療するのに十分であり、副作用を起こさない程度の量を意味し、有効用量水準は、個体の健康状態、神経損傷疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路および排出割合、治療期間、配合または同時使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野によく知られている要素によって決定されることができる。本発明の組成物は、個別治療剤で投与するか、他の治療剤と併用して投与されることができ、従来の治療剤と順次にまたは同時に投与されることができ、単一または多重投与されることができる。上記の要素をすべて考慮して、副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定されることができる。
【0139】
前記治療とは、特に言及されない限り、前記用語が適用される疾患または疾病、または前記疾患または疾病の一つ以上の症状を逆転させるか、緩和させるか、その進行を抑制するか、または予防することを意味し、本願において使用された前記治療という用語は、「治療する」が前記のように定義されるとき、治療する行為を言う。したがって、哺乳動物において自己免疫疾患の治療または治療療法は、下記の一つ以上を含むことができる:
(1)神経損傷疾患の成長を阻害する、すなわち、その発達を阻止させる、
(2)神経損傷疾患の拡散を予防する、すなわち、転移を予防する、
(3)神経損傷疾患を軽減させる。
(4)神経損傷疾患の再発を予防する、および
(5)神経損傷疾患の症状を緩和する(palliating)。
【0140】
もし、受益動物が組成物の投与に耐えることができるか、組成物のその動物への投与が適した場合であれば、組成物は「薬学的にまたは生理学的に許容可能である」ことを示す。投与された量が生理学的に重要な場合には、前記製剤は「治療学的に有効量」で投与されたと言える。前記製剤の存在が移植患者の生理学的に検出可能な変化を招いた場合であれば、前記製剤は生理学的に意味がある。
【0141】
本明細書において使用される「有効量」は、有利であるか、好ましい臨床的または生化学的結果に影響を与える適切な量である。有効量は、一度またはそれ以上投与されることができる。本発明の目的のために、促進剤の有効量は、関連疾病状態の進行を一時的に緩和、改善、安定化、戻す、速度を遅らせるか、または遅延させるのに適切な量である。
【0142】
本発明の組成物の治療的に有効な量は、多くの要素、例えば、投与方法、目的部位、患者の状態などによって変わることがある。よって、人体に使用時投与量は、安全性および効率性を一緒に考慮して適正量で決定しなければならない。動物実験を通じて決定した有効量からヒトに使用される量を推定することも可能である。有効な量の決定時に考慮すべきこのような事項は、例えば、Hardman and Limbird、eds.、Goodman and Gilman′s The Pharmacological Basis of Therapeutics、10th ed.(2001)、Pergamon Press;およびE.W.Martin ed.、Remington′s Pharmaceutical Sciences、18th ed.(1990)、Mack Publishing Co.に記述されている。
【0143】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において使用される用語「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受益/危険割合で疾患を治療するのに十分であり、副作用を起こさない程度の量を意味し、有効用量水準は、患者の健康状態、疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路および排出割合、治療期間、配合または同時使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野によく知られた要素によって決定されることができる。本発明の組成物は、個別治療剤で投与するか、他の治療剤と併用して投与されることができ、従来の治療剤と順次にまたは同時に投与されることができ、単一または多重投与されることができる。上記の要素をすべて考慮して、副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定されることができる。
【0144】
本発明の薬学的組成物は、生物学的製剤に通常的に使用される担体、希釈剤、賦形剤または2つ以上のこれらの組み合わせを含むことができる。本発明において使用される用語「薬学的に許容可能な」とは、前記組成物に露出する細胞やヒトに毒性がない特性を示すことを意味する。前記担体は、組成物を生体内伝達に適したものであれば特に制限されず、例えば、Merck Index、13th ed.、Merck & Co.Inc.に記載された化合物、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールおよびこれらの成分のうち1成分以上を混合して利用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など、他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤を付加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような主利用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または精製で製剤化することができる。さらに、当分野の適正な方法で、またはRemington′s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company、Easton PA、18th、1990)に開示されている方法を利用して各疾患によって、または成分によって、好ましく製剤化することができる。
【0145】
一具現例において、前記薬学組成物は、経口型剤形、外用剤、坐剤、滅菌注射溶液および噴霧剤を含む群から選択される一つ以上の剤形であってよい。
【0146】
本発明の組成物はまた生物学的製剤に通常的に使用される担体、希釈剤、賦形剤または2つ以上のこれらの組み合わせを含むことができる。薬学的に許容可能な担体は、組成物を生体内伝達にてき適したものであれば特別に制限されず、例えば、Merck Index、13th ed.、Merck & Co.Inc.に記載された化合物、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールおよびこれらの成分のうち1成分以上を混合して利用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤を付加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような主利用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または精製で製剤化することができる。さらに当分野の適正な方法でまたはRemington′s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company、Easton PA、18th、1990)に開示されている方法を利用して各疾患によって、または成分によって好ましく製剤化することができる。
【0147】
本発明の組成物にさらに同一または類似する機能を示す有効成分を1種以上含むことができる。
【0148】
本発明の薬学的組成物は、薬剤学的に許容可能な添加剤をさらに含むことができ、このとき、薬剤学的に許容可能な添加剤としては、テンプン、ゼラチン化テンプン、非晶セルロース、乳糖、ポビドン、コロイダルシリコンジオキシド、リン酸水素カルシウム、ラクトース、マンニトール、飴、アラビアガム、前糊化テンプン、トウモロコシテンプン、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オパドライ、テンプングリコール酸ナトリウム、カルナバロウ、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、白糖、デキストロース、ソルビトールおよびタルクなどが使用され得る。本発明による薬剤学的に許容可能な添加剤は、前記組成物に対して0.1重量部~90重量部含まれることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0149】
本発明の組成物は、目的とする方法によって非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)するか、経口投与することができ、投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによってその範囲が多様である。本発明による組成物の一日投与量は、0.0001~10mg/mlであり、好ましくは0.0001~5mg/mlであり、一日一回~数回に分けて投与することがさらに好ましい。
【0150】
本発明の組成物の経口投与のための液状製剤としては、懸濁液剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、通常的に使用される単純希釈剤である水、液体パラフィン以外に多様な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが一緒に含まれることができる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁液剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。
【0151】
一側面において、本発明は、CtBPsのオリゴマー化誘導に使用するための、化学式Iの化合物、化学式IIの化合物または化学式IIIの化合物の用途に関する。
【0152】
一側面において、本発明は、直接トランス分化誘導に使用するための、化学式Iの化合物、化学式IIの化合物または化学式IIIの化合物の用途に関する。
【0153】
一側面において、本発明は、化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を処理した幹細胞の神経損傷疾患の予防または治療用途に関する。
【0154】
一側面において、本発明は、化学式Iの化合物、化学式IIの化合物および化学式IIIの化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の化合物を処理した幹細胞を神経損傷疾患を有する個体に移植するステップを含む、神経損傷疾患の治療方法に関する。
【0155】
下記の実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明の内容を具体化するためのものであるだけであって、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0156】
実施例1.本発明の化合物のCTBP1オリゴマー化(oligomerization)調節
1-1.DART分析を通じたYJ101、YJ102およびYJ103結合タンパク質確認
ヒトUCB-MSC(umbilical cord blood-derived mesenchymal stem cells)で本発明の化合物であるYJ101(化学式I)、YJ102(化学式II)およびYJ103(化学式III)と結合するタンパク質を確認するために、DART分析を遂行した。具体的に、UCB-MSC(Kang Stem Cell、Passage#6)を100mM培養ディッシュに分注し、10%FBS(Cat.16000044)が含まれたKSB-3培地(Cat.K3901、Kang Stem Cell)で培養した後、これを収集してPBSで洗浄した。その次に、IP50破砕バッファー(Lysis Buffer)[50mM Tris-HCl(pH7.4)、150mM NaCl、2mM MgCl2および0.1% NP40]を入れて超音波破砕し、4℃で13,000×gで10分間遠心分離して上澄み液を得た。上澄み液に1/10体積の10X TNC buffer[500mM Tris-HCl(pH8.0)、500mM NaClおよび100mM CaCl2]を添加し、Bradford方法でタンパク質濃度を測定した。その次に、9μlの細胞破砕物(lysate)と1μlのYJ101(20または40μM)、YJ102(20または30μM)またはYJ103(20または40μM)をマイクロセントリフューズチューブに入れて混合し、室温で1時間の間インキュベーションした。対照群は1μlのDMSOを処理した。インキュベーションが終わったマイクロセントリフューズチューブに1×TNCバッファーを利用して1mg/mlで希釈したプロナーゼ(Pronase)(Cat.10 165 921 001、Roche)1μl(1mg/ml)を添加し、37℃で15分間インキュベーションした。インキュベーション後、1/5体積の5X SDS-PAGEローディングバッファーを添加し、100℃で5分間加熱した後、SDS-PAGEおよびcoomassie blue stainingを遂行した。また、UCB-MSCを60mM培養ディッシュに4×105 cells/mlで分注し、24時間後、4ugのFLAG-CtBP1またはFLAG-CtBP2 DNAを4μlのjetPRIMEを使用してトランスフェクションした。48時間後に細胞を収集して前記と同じ方法でタンパク質を抽出および定量した。FLAGで標識されたCtBP1の細胞破砕物とY102でDARTS分析を遂行し、flag抗体(Cat.F3165、Sigma)でウェスタンブロット分析を遂行した。
【0157】
その結果、DARTS分析後、YJ102によって保護されたバンド(*)を確認し、CtBP1(C-terminal Binding Proteins)で同定された(
図1A)。YJ102がCtBP1を保護してプロナーゼによって分解されず(
図1B)、過発現されたCtBP1がYJ102によって保護されてプロナーゼによって分解されておらず(
図1C)、過発現されたCtBP1(flag-CtBP1)がYJ101、YJ102およびYJ103によって保護されてプロナーゼによって分解されないことが示された(
図1D)。また、YJ102がCtBP2も保護してプロナーゼによって分解されないことが示され(
図1E)、過発現されたCtBP2もYJ102によって保護されてプロナーゼによって分解されないことを確認した(
図1F)。
【0158】
これを通じて、YJ101、YJ102、YJ103のいずれもCtBP1と結合し、YJ102がヒトUCB-MSCでCtBP1およびCtBP2に結合することを確認した。
【0159】
1-2.YJ102のCTBP1オリゴマー化調節確認
ヒトUCB-MSCでCtBPs(C-terminal Binding Proteins)のオリゴマー化の調節に対するYJ102の効果を確認するために、免疫沈澱法分析を遂行した。具体的に、UCB-MSCを60mM培養ディッシュに4×105 cells/mlで分注し、翌日、FLAG-CtBP1、HA-CtBP1、FLAG-CtBP2およびHA-CtBP1を4μl jetPRIMEを使用して細胞にトランスフェクションした。その次に、YJ102(stock 30mM in DMSO)およびMTOB(stock 300mM in DMSO)を細胞にそれぞれ20uMおよび300uMでそれぞれ処理した(表1)。トランスフェクション48時間後、前記実施例1-1と同じ方法でタンパク質を抽出した。Protein Gアガローススラリー(agarose slurry)をPBSで洗浄し、1mlの1% BSAでブロッキングした後、PBSで洗浄し、1.5mlのPBSで希釈した1μgの抗-HA抗体を添加して4℃で2時間の間インキュベーションした。その次に、3,000×gで2分間遠心分離して上澄み液を除去し、IP150バッファーで2回洗浄し、前記から抽出したタンパク質1μgを添加して4℃で終夜インキュベーションした。インキュベーション後、3,000×gで2分間遠心分離して上澄み液を除去し、PBSで3回洗浄した後、PBSで希釈した1mg/mlのHAペプチド50ulを添加し、室温で10分間インキュベーションした。3,000×gで2分間遠心分離した後、上澄み液を新しいマイクロセントリフューズチューブに移して10ulの5Xサンプルバッファー(sample buffer)を添加した後、100℃で5分間加熱してFLAG抗体またはHA抗体でウェスタンブロット分析を遂行した。
【0160】
【0161】
その結果、YJ102がCtBP1のオリゴマー化を誘導することが示され、このようなオリゴマー化がMTOBによって抑制されることが示された(
図2)。一方、CtBP1-CtBP2ヘテロマー化(heteromerization)にはYJ102が影響を及ぼさないことが示された。MTOBは、CtBPが有した脱水素化酵素(dehydrogenease)の基質で高濃度でCtBPの転写活性を抑制する阻害剤として作用し、オリゴマー化を抑制すると知られている。
【0162】
1-3.YJ101、YJ102およびYJ103とCtBP1の相互作用部位確認
本発明の化合物YJ101、YJ102およびYJ103がCtBP1と相互作用する部位を確認するために分子ドッキングを遂行した。具体的に、タンパク質-リガンドドッキングはGlide(Grid based LIgand Docking with Energetics)docking application of the Schrodinger uites rogram Schrodinger LC、Y、SA)を使用して実施し、CtBP1タンパク質(PDB ID:6CDF)およびYJ102の三次元構造はSchrodinger sitesを使用して製作した。また、CtBP1に対する受容体グリッドは結合(活性)部位残基を特定して生成し、SiteMapで確認した。受容体グリッド生成後、Glide docking protocolを使用してリガンドをCtBP1にドッキングさせ、ドッキングされた配座異性体をGlide(G)Scoreを使用して評価した。G Scoreは、下記数1で計算した。
【0163】
【0164】
その結果、YJ101、YJ102およびYJ103のいずれもCtBP1のNAD(H)結合ドメインと相互作用することが示され、ΔG値は、YJ101は-4.980kcal/mol、YJ102は-5.458kcal/mol、およびYJ103は-3.767kcal/molで示された(
図3A)。また、YJ101とCTBP1の相互作用にはCTBP1のSer100が重要であり、YJ102とCtBP1の相互作用にはCTBP1のSer100およびArg266が重要であるものと予測され、YJ103とCTBP1の相互作用にはCTBP1のPhe102、Arg184およびHis236が重要に作用するものと予測された(
図3B)。
【0165】
1-4.CTBP-YJ102の標的遺伝子確認
ヒトUCB-MSCでCtBP1-YJ102の標的遺伝子を確認するために、クロマチン免疫沈降(Chromatin Immunoprecipitation;ChIP)分析を遂行した。具体的に、ヒトUCB-MSCを100mm培養ディッシュに2×106個分注し、翌日、10ulのYJ102(30mM)またはDMSO(対照群)を処理して2日間培養した。交差-結合およびDNAシェアリングのために、UCB-MSCが培養された培養ディッシュに1%になるようにホルムアルデヒドを添加し、37℃で10分間インキュベーションして固定した。培養培地を除去し、プロテアーゼ阻害剤を含有したPBSで2回洗浄して細胞を収集した。3000rpmで4℃で5分間遠心分離し、上澄み液を除去した後、プロテアーゼ阻害剤が添加されたSDS破砕バッファーを添加して氷上で10分間インキュベーションし、超音波で細胞破砕した。4℃で13,000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を新しいマイクロセントリフューズチューブに移し、1/10体積のChIP Dilution Bufferを添加した。その次に、DNAを精製し、アガロースゲル電気泳動をしてDNAが200~1000bpでシェアリングされたことを確認した。また、クロマチン免疫沈降のために、Protein GアガローススラリーをPBSで洗浄し、1mlの1%BSAでブロッキングした後、PBSで洗浄し、超音波で破砕した細胞破砕物および一次抗体として抗-CtBP1抗体(Cat.07-306、Millipore)、抗-LSD1抗体(Cat.A1156、Abclonal)およびNormal rabbit IgG(Cat.12-370、Merck Millipore)(対照群)をそれぞれ1ug添加して4℃で終夜ローテーターを利用してインキュベーションした。
【0166】
翌日、遠心分離して上澄み液を除去した後、DNA-抗体-アガロースビーズをLow Salt Immune Complex Wash Buffer;High Salt Immune Complex Wash Buffer;およびLiCl Immune Complex Wash Bufferの順で1回洗浄し、1X TEで2回洗浄した。前記DNA-抗体-アガロースビーズに250μlの溶出バッファー(1%SDS、0.1M NaHCO3)を添加し、室温で15分間ローテーターを利用してインキュベーションした後、遠心分離して上澄み液を新しいマイクロセントリフューズチューブに移した。前記の溶出過程を1回さらに繰り返して溶出物を混合した。溶出物に20μlの5M NaClを添加し、65℃で4時間の間加熱した後、10μlの0.5M EDTA、20μlの1M Tris-HCl(pH6.5)および2μlのproteinase K(10mg/ml)を添加して45℃で1時間の間インキュベーションした。フェノール/クロロホルム抽出およびエタノール沈殿を実施し、DNAペレットをDWで再懸濁した後、下記表2のプライマーを利用してリアルタイム定量PCRを遂行した。
【0167】
【0168】
その結果、YJ102によってHES1遺伝子プロモーターに結合するCtBP1が増加してHES1の発現が減少し(
図4A)、YJ102によってCtBP1-LSD1コンプレックス(complex)がSox2遺伝子プロモーターに結合してSox2の発現を増加させることが示された(
図4B)。また、YJ102がOCT4遺伝子プロモーターに結合するCtBP1-LSD1コンプレックスの量を増加させてOCT4の発現を誘導し(
図4C)、YJ102がHES1遺伝子プロモーターに結合するCtBP1を増加させ、Sox2およびOct4遺伝子プロモーターに結合するCtBP1-LSD1コンプレックスを増加させることが示された(
図4D)。
【0169】
実施例2.本発明の化合物によるciNSC5への直接トランス分化
2-1.YJ102によるUCB-MSCのciNSC5への分化確認
ヒトUCB-MSCでYJ102によるCtBP1-媒介ciNSC5分化有無を確認するために、NSC95397またはMTOB(4-methylthio-2-oxobutanoate)処理によるCTBP1機序を免疫化学分析法で分析した。具体的に、UCB-MSCを18mmカバーグラス(circular)が入っている12ウェルプレートに2.1×104 cells/wellで分注した(DMSO対照群は3.5×103 cells/wellで分注)。分注翌日、30uMのYJ102、10uM NSC95397(Cat.93718-83-3、Merck)または300uMのMTOB(Cat.K6000、Merck)を単独または組み合わせて処理し(対照群はDMSO処理)、37℃で5日間培養した。培養培地を除去し、PBSで洗浄した後、10分間室温で4%パラホルムアルデヒドで固定した。PBSで3回洗浄した後、0.5% Triton X-100が含まれたPBS-Tで10分間細胞を透過させ、PBS-Tで10分ずつ3回洗浄した後、ブロッキング溶液(5% BSAおよび5%ヤギ血清が含まれたPBS-T)で1時間の間ブロッキングした。その次に、ブロッキング溶液で1/5000希釈した抗-Tuj1抗体(Cat.801201、BioLegend)を処理して4℃で終夜インキュベーションした。翌日、PBS-Tで10分ずつ10回洗浄した後、ブロッキング溶液で1/2000希釈した抗-マウスIgG-cy3(Cat.111-165-003、Jackson ImmunoResearch)を処理して、暗条件で1時間の間インキュベーションした。その次に、PBS-Tで10分ずつ10回洗浄し、DAPIが含まれたマウンティング溶液(mounting solution)でマウンティングした後、共焦点顕微鏡で細胞を観察した。
【0170】
その結果、YJ102によってUCB-MSCから分化されたYJ102-処理ciNSC5におけるTuj1発現が、PxDLSモチーフを有するタンパク質とCtBPの結合を阻害するNSC95397によって減少することが示され(
図5A)、CtBPの転写活性を抑制するMTOBによってTuj1の発現が減少することが示された(
図5B)。
【0171】
これを通じて、YJ102がCtBP1調節を通じてUCB-MSCを神経前駆細胞であるciNSC5に分化させることを確認した。
【0172】
2-2.YJ101、YJ102またはYJ103によるUCB-MSCのciNSC5への直接トランス分化確認
本発明の化合物であるYJ101、YJ102およびYJ103によってUCB-MSCがTuj1-陽性神経前駆細胞であるciNSC5に直接トランス分化されるかを確認するために、免疫化学分析を遂行した。具体的に、UCB-MSCを18mmカバーグラスが入っている12ウェルプレートに2.1×104 cells/wellで分注した(DMSO対照群は3.5×103 cells/wellで分注)。YJ101、YJ102およびYJ103をそれぞれDMSOに30mMで溶解した後、細胞にそれぞれ30uMの濃度で処理し(対照群はDMSO処理)、37℃で5日間培養した。培養培地を除去し、PBSで洗浄した後、10分間室温で4%パラホルムアルデヒドで固定した。PBSで3回洗浄した後、0.5% Triton X-100が含まれたPBS-Tで10分間細胞を透過させ、PBS-Tで10分ずつ3回洗浄した後、ブロッキング溶液(5% BSAおよび5%ヤギ血清が含まれたPBS-T)で1時間の間ブロッキングした。その次に、ブロッキング溶液で1/5000希釈した抗-Tuj1抗体(Cat.801201、BioLegend)を処理して4℃で終夜インキュベーションした。翌日、PBS-Tで10分ずつ10回洗浄した後、ブロッキング溶液で1/500希釈した抗-マウスIgG-FITCを処理して、暗条件で1時間の間インキュベーションした。その次に、PBS-Tで10分ずつ10回洗浄し、DAPIが含まれたマウンティング溶液でマウンティングした後、共焦点顕微鏡で細胞を観察した。
【0173】
その結果、YJ101、YJ102およびYJ103によってUCB-MSCから分化されたciNSC5でTuj1の発現が増加したことが示され(
図6)、YJ101、YJ102およびYJ103のいずれもUCB-MSCからciNSC5に直接トランス分化を誘導することを確認した。
【0174】
2-3.由来が異なる間葉系幹細胞のYJ101、YJ102またはYJ103による直接トランス分化確認
YJ101、YJ102またはYJ103を5日間ヒトUCB-MSCに処理したとき、神経前駆細胞であるciNSC5に直接トランス分化される現象の由来が異なるMSCでも類似に発生するかを確認するために、ヒトAD-MSC(adipose-derived mesenchymal stem cells)、ヒトBM-MSC(bone marrow-derived mesenchymal stem cells;ATCC)およびヒトUCB-MSC(umbilical cord blood-derived mesenchymal stem cells;Promo Cell)のMSCを使用して分化されたciNSC5で神経マーカーの発現を免疫化学分析法で確認した。具体的に、AD-MSC(StemPro Human Adipose-Derived Stem Cell、Gibco、Passage#6)はMesenPRO RS 培地で、BM-MSC(ATCC、Passage # 6)はMesenchymal Stem Cell Basal Medium for Adipose、Umbilical and Bone Marrow-derived MSC(Cat.PCS-500-030、ATCC)培地で、およびUCB-MSC(Promo Cell、Passage#6)はCellCor CD MSC(Cat.YSP001、Xell Therapeutics)培地で培養した後、18mmカバーグラス(circular)が入っている12ウェルプレートに2.1×104 cells/wellで分注した(DMSO対照群は3.5×103 cells/wellで分注)。YJ101、YJ102およびYJ103をそれぞれDMSOに30mMで溶解した後、細胞にそれぞれ10、20または30uMの濃度で処理し(対照群はDMSO処理UCB-MSC)、37℃で5日間培養した。培養培地を除去してPBSで洗浄した後、10分間室温で4%パラホルムアルデヒドで固定した。PBSで3回洗浄した後、0.5% Triton X-100が含まれたPBS-Tで10分間細胞を透過させ、PBS-Tで10分ずつ3回洗浄した後、ブロッキング溶液(5% BSAおよび5%ヤギ血清が含まれたPBS-T)で1時間の間ブロッキングした。その次に、ブロッキング溶液で1/5000希釈した抗-Tuj1抗体(Cat.801201、BioLegend)を処理して4℃で終夜インキュベーションした。翌日、PBS-Tで10分ずつ10回洗浄した後、ブロッキング溶液で1/2000希釈した抗-マウスIgG-cy3を処理して、暗条件で1時間の間インキュベーションした。その次に、PBS-Tで10分ずつ10回洗浄してDAPIが含まれたマウンティング溶液でマウンティングした後、共焦点顕微鏡で細胞を観察した。
【0175】
その結果、YJ101、YJ102およびYJ103によってAD-MSCから分化されたciNSC5でTuj1の発現が増加したことが示され(
図7A)、YJ101、YJ102およびYJ103によってBM-MSCから分化されたciNSC5でもTuj1の発現が増加することが示され(
図7B)、YJ101、YJ102およびYJ103によってUCB-MSCから分化されたciNSC5でもTuj1の発現が増加したことが示された(
図7C)。
【0176】
2-4.化合物の細胞毒性確認
YJ101、YJ102およびYJ103の細胞毒性をヒトUCB-MSCでCaspase-Glo(登録商標)3/7 Assay System(Cat.G8091、Promega)を利用して確認した。具体的に、UCB-MSCを96ウェルプレートの各ウェルに100μl(6,000 cells)ずつ分注し、YJ101、YJ102およびYJ103をそれぞれDMSOに30mMで溶解した後、前記細胞に10、20または40uMの濃度でそれぞれ処理し(対照群はDMSO処理)、37℃で3日または5日間培養した。化合物プレートは96ウェルプレートで40μMから系列希釈して準備した。最も高い投与量は4、8および12列にプレイティングし、DMSO(賦形剤対照)は1、5および9列にプレイティングした(表3)。化合物プレートをシェーカーで1分間混合し、UCB-MSCが分注された前記96ウェルプレートの培地を除去した後、100μlの化合物溶液を処理した後、37℃で3日および5日間培養した。その次に、Place Caspase-Glo 3/7 BufferをCaspase-Glo 3/7基質と混合して製造したCaspase-Glo 3/7試薬100μlを96ウェルプレートの各ウェルに添加し、プレート蓋をした後、、300~500rpmで30秒間振とうして混合した。その次に、室温で30分間インキュベーションし、plate-reading luminometerを使用して発光を測定した後、下記数2で計算してフローティングした。
【0177】
【0178】
【0179】
その結果、本発明の化合物YJ101、YJ102およびYJ103はいずれもUCB-MSCの細胞アポトーシスを誘導しないことが示された(
図8)。
【0180】
2-5.化合物がMSC増殖に及ぼす影響確認
YJ101、YJ102およびYJ103がMSCの増殖に及ぼす影響を確認するために、UCB-MSCを96ウェルプレートの各ウェルに100μl(6,000 cells)ずつ分注し、YJ101、YJ102およびYJ103をそれぞれDMSOに30mMで溶解した後、前記細胞に10、20または40uMの濃度でそれぞれ処理し(対照群はDMSO処理)、37℃で3日または5日間培養した。化合物プレートは前記実施例2-4と同じ方法で製作し、UCB-MSCが分注された前記96ウェルプレートの培地を除去した後、100μlの化合物溶液を処理した後、37℃で3日および5日間培養した。その次に、CellTiter-Glo BufferをCellTiter-Glo基質と混合して製造したCellTiter-Glo試薬100μlを96ウェルプレートの各ウェルに添加し、プレート蓋をして室温で30分間インキュベーションした。その次に、plate-reading luminometerを使用して発光を測定した後、下記数3で計算してフローティングした。
【0181】
【0182】
その結果、本発明の化合物YJ101、YJ102およびYJ103はいずれも濃度依存的に細胞増殖を減少させた(
図9)。一般的に細胞分化時に細胞増殖が減少する。
【0183】
実施例3.本発明の化合物によって直接トランス分化されたciNSC5の特性
3-1.ciNSC5の神経マーカー発現分析
前記実施例2の方法でYJ102を5日間処理して、ヒトUCB-MSCから直接トランス分化されたciNSC5(chemical induced neural stem cell 5)で神経マーカーの発現を免疫化学分析法およびウェスタンブロット分析で確認した。具体的に、免疫化学分析のために、UCB-MSCを18mmカバーグラスが入っている12ウェルプレートに2.1×104 cells/wellで分注した(DMSO対照群は3.5×103 cells/wellで分注)。分注翌日、YJ102をDMSOに30mMで溶解した後、細胞に30uMの濃度で処理し(対照群はDMSO処理)、37℃で5日間培養した。培養培地を除去してPBSで洗浄した後、10分間室温で4%パラホルムアルデヒドで固定した。PBSで3回洗浄した後、0.5% Triton X-100が含まれたPBS-Tで10分間細胞を透過させ、PBS-Tで10分ずつ3回洗浄した後、ブロッキング溶液(5% BSAおよび5%ヤギ血清が含まれたPBS-T)で1時間の間ブロッキングした。その次に、ブロッキング溶液で希釈した1次抗体として抗-Tuj1抗体、抗-TBR2抗体(Cat.Ab23345、abcam)、抗-MASH1抗体(Cat.Ab74065、abcam)、抗-GAP43抗体(Cat.Ab16053、abcam)、抗-p75抗体(Cat.G323A、Promega)、抗-MAP2抗体(Cat.4542、Cell signaling)、抗-NSE抗体(Cat.AB951、Chemicon)、抗-NeuN抗体(Cat.MAB377、Chemicon)、抗-Calretinin抗体(Cat.180211、Invitrogen)、抗-Doublecortin抗体(Cat.Ab18723、abcam)、抗-NeuroD1抗体(Cat.Ab213725、abcam)、抗-Nestin抗体(Cat.Ab18102、abcam)、抗-Musashi 1抗体(Cat.AB5977、Chemicon)および抗-GFAP抗体(Cat.G3893、Sigma)をそれぞれ処理して、4℃で終夜インキュベーションした。翌日、PBS-Tで10分ずつ10回洗浄した後、ブロッキング溶液で希釈した抗-マウスIgG-cy3または抗-ラビットIgG-cy3(Cat.111-165-003、Jackson ImmunoResearch)を処理して、暗条件で1時間の間インキュベーションした。その次に、PBS-Tで10分ずつ10回洗浄し、DAPIが含まれたマウンティング溶液でマウンティングした後、共焦点顕微鏡で細胞を観察した。また、ウェスタンブロット分析のために、培養培地を除去して細胞をPBSで洗浄した後、破砕バッファー(1% Nonidet(登録商標)P-40、20mM Tris(pH8.0)、137mM NaCl、0.5mM EDTA、10% glycerol、10mM Na2P2O7、10mM NaF、1μg/ml aprotinin、10μg/ml leupeptin、1mM vanadateおよび1mM PMSF)を入れ、スクレイパーを利用して細胞を集め、4℃で20分間rockingした後、12,000rpmで30分間遠心分離した。遠心分離後、上澄み液を他のe-チューブに移し、BCA分析キットを利用してタンパク質を定量して同じ量のタンパク質をSDS-PAGEにローディングして電気泳動を行った。その次に、Nitrocelluloseメンブレインにトランスファーし、1次抗体である抗-CD325抗体(Cat.10-0224、Invitrogen)、抗-p75抗体、抗-GAP43抗体、抗-CD54抗体(Cat.67836、Cell signaling)、抗-CD309抗体(Cat.MA5-15157、Invitrogen)、抗-CD56抗体(Cat.A7913、Abclonal)、抗-PSA-NCAM抗体(Cat.5324、Millipore)、抗-CD29抗体(Cat.Ab183666、abcam)、抗-MASH1抗体、抗-TBR2抗体、抗-CD44抗体、抗-CD73抗体および抗-CD105抗体それぞれのantibody data sheetに出されるプロトコルによってウェスタンブロットを施行した。
【0184】
免疫分析結果、YJ102を5日間処理して、ヒトUCB-MSCから直接トランス分化されたciNSC5は、神経前駆(neural progenitor)マーカーであるTuj1、TBR2、MASH1、GAP-43およびp75を発現し、成熟した神経マーカー(mature neuronal marker)であるMAP2、NSEおよびNeuNは発現しないことが示され、神経細胞の初期分化過程に発現されると知られたdoublecortinとNeuroD1(Neurogenic differentiation 1)を発現せずに、初期神経幹細胞マーカー(neural stem cell marker)であるNestin、Mussashi 1およびGFAPも発現しないことが示された(
図10)。また、神経前駆細胞マーカータンパク質のウェスタンブロット分析結果、MSCに比べてciNSC5でTuj1タンパク質が6倍以上(約、6~8倍)、CD325(N-cadherin)タンパク質が7倍以上(約、7~10倍)、p75タンパク質が4倍以上(約、4~8倍、GAP43タンパク質が4倍以上(約、4~7倍)、CD54タンパク質が2倍以上(約、2~5倍)、CD309タンパク質が3倍以上(約、3~7倍)、CD56(NCAM)タンパク質が3.5倍以上(約、3.5~6倍)、PSA-NCAMタンパク質が4倍以上(約、4~6倍)、CD29タンパク質が4.5倍以上(約、4.5~8倍)、MASH1タンパク質が4倍以上(約、4~8倍)、またはTBR2タンパク質が3倍以上(約、3~7倍)増加した(
図11および
図13)。一方、MSCマーカーであるCD44、CD73およびCD105のタンパク質発現はMSCに比べてciNSC5でそれぞれ90%、50%および80%以上減少することが示された(
図12および
図13)。
【0185】
3-2.ciNSC5の分泌タンパク質分析
前記実施例2の方法でYJ102を5日間処理して、ヒトUCB-MSCから直接トランス分化されたciNSC5の治療効果を成長因子、組織分解および神経分化/再生関連因子の分泌を通じて確認するためにウェスタンブロットおよびELISA分析を遂行した。具体的に、UCB-MSCを100mm培養ディッシュに3×105 cells/wellで分注し、(DMSO対照群は5×104 cells/wellで分注)、分注翌日、YJ102をDMSOに30mMで溶解した後、細胞に30uMの濃度で処理し(対照群はDMSO処理)、37℃で5日間培養してUCB-MSCから分化されたciNSC5の細胞破砕物を修得した。また、UCB-MSCから分化されたciNSC5で培養培地を除去し、PBSで洗浄した後に継代してYJ102のない新しい培養培地を添加して37℃で2日、または4および7日間培養した。その次に、各細胞を破砕してウェスタンブロット分析を遂行した。以後、ciNSC5の細胞破砕物と培養培地でウェスタンブロット分析を遂行した。分析時に使用した抗体情報は表4と表5に表示した。
【0186】
【0187】
【0188】
その結果、YJ102処理によってUCB-MSCから分化されたciNSC5の場合、MSCに比べてciNSC5で成長因子PlGFおよびVEGFA(VEGF-A)が増加し、組織分解因子MMP1、MMP2、MMP7およびTIMP2が増加することが示され、神経分化(neural differentiation)、神経生成(neurogenesis)および軸索再生(axon regeneration)などに関与するリガンドのうちSHHおよびNotch1が増加することが示された(
図14および
図15)。また、YJ102処理によってUCB-MSCから分化されたciNSC5を継代して、YJ102のない培地で2日間培養した場合、MSCに比べてciNSC5培養培地で増加する成長因子はPlGF、NGF、BDNFおよびVEGFA(PlGF:2.5倍、NGF:3.8倍、BDNF:2倍およびVEGFA:2.1倍)で示され、サイトカインはTNFSF12およびIL-16が増加することが示された(
図16および
図17)。また、組織分解因子はMMP1およびMMP2が増加し、MMP7およびTIMP2が増加することが示され、神経分化、神経生成および軸索再生などに関与するリガンドのうちSHHおよびNotch1が増加することが示された(
図16および
図17)。また、ciNSC5をYJ102が含まれない培地で4日または7日間追加培養した後、培地内タンパク質をウェストンブロッで確認した結果、
図18および
図19に示されたように成長因子、組織分解および神経分化/再生関連タンパク質の分泌が変化することが示された。併せて、前記ウェスタンブロット分析結果でciNSC5で増加したことが示された成長因子および組織分解関連因子のうちVEGFA、MMP-2、NGF、MMP1、PlGFおよびTNFSF12の量をciNSC5をYJ102を含まない培地で2日間培養した培地で確認した結果、ciNSC5培地に分泌したVEGFA、MMP-2、NGF、MMP1、PlGFおよびTNFSF12の量がMSC培地で確認された量に比べて顕著に増加したことが示された(
図20および
図21)。
【0189】
3-3.RNA-seqを利用したciNSC5で発現される遺伝子分析
YJ102を5日間処理して、ヒトUCB-MSCから直接トランス分化されたciNSC5の発現遺伝子プロファイルをgenome-wide RNA-seqで分析した。具体的に、60mM培養ディッシュにヒトUCB-MSCを1×10
5個分注した後(対照群は1.67×10
4個分注)、DMSOに30mMで溶解したYJ102を細胞に30uMの濃度で処理し(対照群はDMSO処理)、37℃で2、3または5日間培養した。その次に、培養培地を除去してPBSで洗浄し、スクレイパーで細胞を集めてマイクロセントリフューズチューブに移した。遠心分離してPBSを除去し、500μlのTri-RNA Reagentを添加してパイペットティングしてよく混合した。100μlのクロロホルムを添加してチューブを15秒間ボルテキシングして混合した後、4℃で14,000rpmで20分間遠心分離した。その次に、上部水性相をパイペットを利用して新しいマイクロセントリフューズチューブに移し、550μlのイソプロパノールを添加して混合した。4℃で14,000rpmで20分間遠心分離し、上澄み液を廃棄した後、1mlの70%エタノールでペレットを洗浄した。2分間14,000rpmで遠心分離した後、上澄み液を廃棄した。ペレットを空気乾燥した後、50μl RNase遊離DIWでRNAを溶解させた。1μl DNaseを添加して37℃で30分間インキュベーションした。その次に、同一体積の8M LiClを添加して氷上に1時間の間置き、4℃で14,000rpmで10分間遠心分離した後、70%エタノールで洗浄した後、空気乾燥した。100μl RNase遊離DIWでペレットを再懸濁し、4℃で14,000rpmで10分間遠心分離して上澄み液を除去し、ペレットを空気乾燥した後、nanodropを使用してRNA濃度を定量した。その次に、Theragen BioでRNAseqを遂行し、サンプル間の遺伝子の発現程度はFPKM(Fragments Per Kilobase of transcript per Million)で比較した。正確性検証のために、Fisher′s methodを利用してp-valueが0.05未満である遺伝子を基準に有意な遺伝子オントロジー分類を選択し、DMSOを処理したUCB-MSCと比較して2倍以上増加するか、0.5倍以下に減少した遺伝子を選択して機能分析を遂行した。遺伝子発現プログラムファイルは、発現値によるRGB(red、green、black)の3色を持つヒートマップ(heat map)で示し(
図22)、遺伝子機能データベースであるReactomeを利用して遺伝子オントロジー(Gene Ontology、GO)を確認して傾向成分析を遂行した。
【0190】
RNA-seq結果、YJ102を3日間処理したUCB-MSCで細胞分裂関連遺伝子の発現は減少し、神経系関連遺伝子の発現は増加し、これを基盤に5日目に培地で発現が変化する因子のうち神経発生、シナプス、神経伝達物質(neurotransmitter)、神経成長因子などに関与した遺伝子を選択して分析した結果、ciNSC5で神経生成を誘導する遺伝子(転写因子、ligandおよびreceptor)と神経再生と神経保護のための脳由来神経栄養因子(neurotrophic factor)分泌に関与する遺伝子の発現が目立つことが示された(
図23および24)。
【0191】
3-4.Real time RT-PCRを利用したciNSC5で発現される遺伝子分析
前記実施例3-3のRNA-seq分析結果を基盤に選別した遺伝子の発現をreal time RT-PCRで確認してMSCおよびciNSC5での遺伝子の発現様相を確認した。具体的に、60mM培養ディッシュにヒトUCB-MSCを1×105個分注した後(対照群は1.67×104個分注)、DMSOに30mMで溶解したYJ102を細胞に30uMの濃度で処理し(対照群はDMSO処理)、37℃で5日間培養した。その次に、RNAを前記実施例と同じ方法で抽出した後に定量した。
【0192】
その結果、5日間YJ102を処理したUCB-MSCから分化されたciNSC5で神経膠瘢痕分解のための酵素の発現が対照群に比べて顕著に増加したことが示され(
図25)、神経発生に関連した転写因子の発現も対照群に比べて増加したことが示された(
図26)。また、ミエリン化、シナプシス、マトリックス/細胞付着、カルシウムシグナリングのようなニューロンマーカーの発現も大部分対照群に比べて増加したことが示され(
図27)、ニューロンレセプターおよびチャンネルの発現も大部分対照群に比べて増加したことが示された(
図28)。
【0193】
これを通じて、YJ102処理が多様な神経発生遺伝子プログラムを誘導し、神経発生およびエクソン再生に関連した分泌分子も誘導することが分かった。また、YJ102はciNSC5で神経膠瘢痕分解を可能にする酵素の発現も増加させ得ることを確認した。
【0194】
3-5.ciNSC5の継代による細胞特性変化確認
YJ102によってヒトUCB-MSCに分化されたciNSC5の継代による細胞特性変化有無をTuj1抗体に対する免疫化学分析法で確認した。具体的に、MSCおよびciNSC5をそれぞれ2×106個ずつ100mm培養ディッシュに分注し、2日ごとに継代を進行して総passage 6回まで培養を進行した後、培養培地を除去してPBSで洗浄し、10分間室温で4%パラホルムアルデヒドで固定した。PBSで3回洗浄した後、0.5% Triton X-100が含まれたPBS-Tで10分間細胞を透過させ、PBS-Tで10分ずつ3回洗浄した後、ブロッキング溶液(5% BSAおよび5%ヤギ血清が含まれたPBS-T)で1時間の間ブロッキングした。その次に、ブロッキング溶液で1/5000希釈した抗-Tuj1抗体を処理して4℃で終夜インキュベーションした。翌日、PBS-Tで10分ずつ10回洗浄した後、ブロッキング溶液で1/2000希釈した抗-マウスIgG-cy3を処理して、暗条件で1時間の間インキュベーションした。その次に、PBS-Tで10分ずつ10回洗浄し、DAPIが含まれたマウンティング溶液でマウンティングした後、共焦点顕微鏡で細胞を観察した。
【0195】
その結果、ciNSC5を継代してもダブリング時間(doubling time)が維持されることが示され(
図29)、継代数によるCPDL(cumulative population doubling level)値も維持されることが示された(
図30)。また、ciNSC5を継代してもTuj1の発現が維持され(
図31)、YJ102によって分化されたciNSC5で染色体異常がないことが示された(
図32)。
【0196】
これを通じて、ciNSC5を継代培養しても細胞特性が維持されることが分かった。
【0197】
3-6.ciNSC5の神経細胞への分化確認
YJ102によってヒトUCB-MSCに分化されたciNSC5が神経細胞に分化可能であるかを確認し、ciNSC5の分化安定性を調査するためにMDI(Methylisobutylxanthine、Dexamethasone、Insulin)処理によって脂肪生成(adipogenesis)が起こるかを確認した。具体的に、UCB-MSCを100mm培養ディッシュに3×105 cells/wellで分注し(DMSO対照群は5かける104 cells/wellで分注)、分注翌日、YJ102をDMSOに30mMで溶解した後、細胞に30uMの濃度で処理し(対照群はDMSO処理UCB-MSC)、37℃で5日間培養してUCB-MSCから分化されたciNSC5を修得した。その次に、ドーパミン性神経細胞または神経細胞に分化させるために、前記ciNSC5と対照群であるMSCsをそれぞれ5×105 cells/dishで60mm培養ディッシュに分注し、3日ごとに培地を入れ替って形態(morphology)の変化を観察した。また、ciNSC5が脂肪細胞に分化可能であるかを確認するために、MSCおよびciNSC5をそれぞれ5×105 cells/dishで60mm培養ディッシュに分注し、MDI(0.5mM of 3-isobutyl-1-methylxanthine、1uM dexamethasoneおよび10ug/ml insulin)が添加された培地で3日間培養した後、回収した。免疫化学分析のために、培養培地を除去し、PBSで洗浄し、10分間室温で4%パラホルムアルデヒドで固定した。PBSで3回洗浄した後、0.5% Triton X-100が含まれたPBS-Tで10分間細胞を透過させ、PBS-Tで10分ずつ3回洗浄した後、ブロッキング溶液(5% BSAおよび5%ヤギ血清が含まれたPBS-T)で1時間の間ブロッキングした。その次に、ブロッキング溶液で希釈した抗-TH抗体(Cat.p40101-150、Pel-Freez)および抗-MAP2抗体(Cat.4542、cell signaling)をそれぞれ処理し、4℃で終夜インキュベーションした。翌日、PBS-Tで10分ずつ10回洗浄した後、ブロッキング溶液で希釈した抗-ラビットIgG-cy3を処理して、暗条件で1時間の間インキュベーションした。その次に、PBS-Tで10分ずつ10回洗浄し、DAPIが含まれたマウンティング溶液でマウンティングした後、共焦点顕微鏡で細胞を観察した。また、RNAを抽出するために、培養培地を除去し、PBSで洗浄し、スクレイパーで細胞を集めてマイクロセントリフューズチューブに移した。遠心分離してPBSを除去し、500μlのTri-RNA Reagentを添加してパイペットティングしてよく混合した。100μlのクロロホルムを添加し、チューブを15秒間ボルテキシングして混合した後、4℃で14,000rpmで20分間遠心分離した。その次に、上部水性相をパイペットを利用して新しいマイクロセントリフューズチューブに移し、550μlのイソプロパノールを添加して混合した。4℃で14,000rpmで20分間遠心分離し、上澄み液を廃棄した後、1mlの70%エタノールでペレットを洗浄した。2分間14,000rpmで遠心分離した後、上澄み液を廃棄した。ペレットを空気乾燥した後、50μl RNase遊離DIWでRNAを溶解させた。1μl DNaseを添加して37℃で30分間インキュベーションした。その次に、同一体積の8M LiClを添加して氷上に1時間の間置き、4℃で14,000rpmで10分間遠心分離した後、70%エタノールで洗浄した後、空気乾燥した。100μl RNase遊離DIWでペレットを再懸濁し、4℃で14,000rpmで10分間遠心分離して上澄み液を除去し、ペレットを空気乾燥した後、nanodropを使用してRNA濃度を定量した。その次に、500ngのRNAに2ulのPrimeScript RT Master Mixを入れ、DWで全体体積を10ulで合わせた。37℃で15分間逆転写してcDNAを合成し、85℃で5秒間反応させて逆転写酵素(reverse transcriptase)を不活性化させた。合成されたcDNAを利用してリアルタイムPCRで脂肪生成(adipogenesis)のマーカーであるC/EBPαおよびPPARγの発現を確認した。
【0198】
その結果、ciNSC5は分化培地で培養したとき、神経細胞に分化されることが示され(
図33)、MSCと異なり脂肪生成誘導には反応しなかった(
図34)。
【0199】
実施例4.本発明の化合物によって直接トランス分化されたciNSC5のルーゲーリッグ病治療効果確認
4-1.ALSモデルマウスの寿命増加確認
ルーゲーリッグ病に対するciNSC5の有効性を確認するために、ALSモデルマウスを製作し、ALSモデルマウスにciNSC5を移植した後、マウスの寿命を確認した。具体的に、トランスジェニックALSマウス(B6SJL-Tg(SOD1-G93A)1Gur/J over-expressing human SOD1 containing the Gly93→Ala mutation、The Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME、USA)を類似したバックグラウンドを持つ雌マウス(B6/SJLF1)と交配させてSOD1
G93AトランスジェニックALSマウスモデルを製作した。その子孫は、PCR検定を使用して尻尾DNAの遺伝型を分析した。生後60日目に、マウスを無作為にグループ化した後、抱水クロラール(chloral hydrate)(500mg/kg、intraperitoneally)で麻酔させた後、食塩水に懸濁された10μlのMSCまたはYJ102 5日処理によってヒトUCB-MSCに分化されたciNSC5(1×10
6 cells)を大槽(cisterna magna)に注入した。対照群には同量の食塩水を大槽に注入した。その次に、各グループの寿命を確認した。
その結果、MSC-移植グループおよびciNSC5-移植グループのいずれも寿命が食塩水処理グループに比べて増加し、特に、ciNSC5を移植したグループの寿命は食塩水-移植グループに比べて12日、MSC-移植グループに比べて9日さらに延長された(
図35)。
【0200】
4-2.ALS発病(on set)および運動症状進行遅延確認
前記ALSモデルマウスにciNSC5を移植した後、生後75日目から5日ごとに行動テストを施行してマウスの運動機能を確認した。行動テストは、ロータロッドテスト(Rotarod test)、運動スコア(Motor score)、ハンギングワイヤーテスト(Hanging wire test):およびバランスビームテスト(Balance beam test)を進行した。マウスの一般運動調整力および強度およびバランスを評価するためのロータロッドテストのために、テスト3日前からマウスをロータロッドデバイス(4-40rpm.180sec)で訓練させ、テストの際に各マウスは180秒間ロータロッド上で運動し、運動中間にロータロッドからマウスが落ちる時間を記録した。マウス当たり計3回テストを進行し、テスト間10分以上の休息間隔を置いた。3回の記録に対する平均値を各マウスのスコアで決定した。また、運動スコアはマウスの尻尾を持ち上げたときの後肢の状態を確認して、[4点=正常;3.5点=後肢開き欠陥の開始;3点=非正常的な歩き方;2点=部分的な後肢麻痺(足を引きずる最初の徴候);1点=後肢麻痺および前肢弱化;0点=後肢と類似した程度の前肢の麻痺]の基準に基づいて0-4のスコアを付けた。また、重力に反して維持される足の神経筋強度を評価するハンギングワイヤーテストを実施するために、各マウスを通常のハウジングケースのワイヤリードに載せてリードを前後に覆した。テストは、計180秒間進行され、ワイヤリードに吊り下げられていたマウスが床に落ちる時点までの時間を測定した。マウス当たり計3回テストを進行し、テスト間10分以上の休息間隔を置いた。3回の記録に対する平均値を各マウスのスコアで決定した。併せて、バランスビームテストのために、マウスを丸い木材ビーム(0.5cm diameter、100cm long、および60cm high)に載せてバランスを維持する能力を[0点=マウスがビーム上に30秒間立っていることができない;1点=マウスが30秒間ビーム右上に立っていることができる、2点=マウスが歩くことはできないがビーム上で左側または右側に回転することができる;3点=マウスがビーム上で左側または右側に回転することができ一歩以上歩くことができる;4点=マウスが発病した後肢の50%以上の足スライドを見せてビームを横切ることができる;5点:マウスが発病した後肢の50%以下の足スライドを見せてビームを横切ることができる;6点=マウスが一足以下の足スライドでビームを横切ることができる]の基準に基づいて0~6のスコアを付けた。
【0201】
ロータロッドテスト結果、食塩水処理グループとMSC-移植グループとの間に有意な差はなかったが、ciNSC5移植グループでは、食塩水-移植グループおよびMSC-移植グループの両方に比べて運動能力減少がかなり遅延したことが示された(120日間食塩水グループ12.8±5.8、MSCグループ21.8±9.0およびciNSC5グループ107.4±22.7)(
図36A)。また、運動スコアを確認した結果、SOD1
G93Aトランスジェニックマウスで運動スコアは90日から減少し始めて終了点まで持続して減少し、MSC-移植マウスは食塩水-処理マウスより多少高いスコアを見せたが、有意な差はなかったのに対し、ciNSC5-移植マウスグループは120日後に運動スコアの減少を見せ、実験期間中の運動スコアは食塩水グループおよびMSCグループの両方に比べて有意に高く示された(120日間食塩水グループ2.1±0.4、MSCグループ2.3±0.4およびciNSC5グループ3.7±0.2)(
図36B)。また、ハンギングワイヤーテスト結果、食塩水-移植グループおよびMSC-移植グループマウスは80日目からワイヤから落ち始めたが、ciNSC5を移植したマウスは95日以後から落ちるマウスが一部観察されるほど発病時期が遅延した。また、ハンギングワイヤーテストが進行された全過程でciNSC5移植グループが他の2つのグループに比べて有意に高いスコアを示した(120日間食塩水グループ6.4±2.8、MSCグループ22.9±15.14およびciNSC5グループ113.1±18.2)(
図36C)。併せて、バランスビームテスト結果、ciNSC5移植グループは生後85日から実験終了時点まで他の2つのグループに比べて有意にさらに高いスコアを示した(120日間食塩水グループ1.5±0.32、MSCグループ2.3±0.5およびciNSC5グループ4.0±0.5)(
図36D)。
【0202】
4-3.脊髄内運動神経細胞消失抑制効果確認
ciNSC5移植がALSの臨床症状を伴う腰椎脊髄神経損失を緩和させるかを確認するために、移植110日目にCresyl violet染色を遂行し、腰椎脊髄での運動神経細胞の数を計数した。
【0203】
その結果、野生型マウスの平均7711.3±193.8個の運動神経細胞に比べて食塩水-処理SOD1
G93Aトランスジェニックマウスは運動神経細胞の数が顕著に減少し(3875.1±465)、MSC-移植マウスは食塩水-処理マウスに比べて運動神経細胞の数が少し増加したが、有意な差はないことが示された。しかし、ciNSC5-移植マウスグループにおける運動神経細胞の数は、食塩水-処理またはMSC-移植グループに比べて顕著に増加したことが示された(
図37)。
【0204】
これを通じて、ciNSC5はSOD1G93AトランスジェニックALSマウスモデルで食塩水-およびMSC-処理グループの両方に比べて脊髄内運動神経細胞の死滅を有意に抑制し、運動機能の障害が同伴されるルーゲーリッグ病症状の進行を遅延させ、ALSマウスの寿命を延長させることができることを確認した。
【0205】
実施例5.本発明の化合物によって直接トランス分化されたciNSC5の多発性硬化症治療効果確認
5-1.EAEマウスの挙動症状改善確認
多発性硬化症(MS)の正統的なモデルである実験的自己免疫性脳脊髄塩(experimental autoimmune encephalomyelitis;EAE)マウスモデルでciNSC5有効性を確認した。具体的に、雌成体C57BL/6NTacマウス(8~9週齢;19-21g)をNarabiotec Co.、Ltd.(Seoul、Republic of Korea)で購入し、4mg/mlの滅菌Mycobacterium tuberculosis(Difco)を含有したComplete Freund′s Adjuvant(Sigma-Aldrich)中の200ng MOG35-55ペプチド(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)を皮下免疫化してEAEを誘導した。0および2日に、免疫反応を刺激する主要役割をする200ng pertussis toxin(Sigma-Aldrich)を腹腔内注入した(
図38A)。MOG注入後8日目に、マウスを抱水クロラール(500mg/kg、intraperitoneally)で麻酔させ、食塩水に懸濁された10μlのMSCまたはciNSC5(1×10
6cells)を大槽(cisterna magna)に注入した。対照群には同一時点に同量の食塩水を注入した。以後、EAEマウスモデルの挙動症状を下記の0~7範囲の標準スコアによって毎日評価した:スコア0=症状なし;スコア1=部分的な尻尾垂下;スコア2=中間程度の後肢弱化(waddling gait);スコア3=適当にひどい後肢弱化;スコア4=両下肢麻痺;スコア5=中間程度の前肢弱化を有する両下肢麻痺;スコア6=四肢麻痺、瀕死状態;スコア7=死。挙動分析結果は、ANOVA(time vs treatment)の繰り返し評価で分析した。
【0206】
その結果、塩水-処理対照群のマウスは、EAE誘導後8-9日に(開始ステップ)麻痺が進行されていることを立証する尻尾垂下および足麻痺を始めとした典型的な挙動症状を示し始め、18-20日に最高点を取り、実験終了時点まで持続した(
図38B)。一方、MSCまたはciNSC5を移植したグループは、開始ステップでもEAEの挙動症状が有意に緩和され、特に、ciNSC5移植グループで臨床スコアがMSC移植グループより有意にさらに低い値を示した(移植後9日に食塩水グループ2.7±0.2、MSCグループ2.1±0.2およびciNSC5グループ1.5±0.2)(
図38BおよびD)。実験期間の間に実験グループの間で体重の有意な差はなかった(
図38C)。
【0207】
5-2.CNS脱髄鞘化抑制効果確認
MOG注入後30日目に、マウスを抱水クロラール(500mg/kg)で麻酔させ、0.1M PBS(pH7.4)および、引き継き0.1M PBS(pH7.4)中の4%パラホルムアルデヒドで心臓穿刺を通じて灌流させた。脊髄の腰椎分節を切開して同じ固定液に浸けて6時間の間後-固定させ、0.1M PBS(pH7.4)中の30%スクロースに入れて置いた。分節をOCTに入れて凍結切片を作り、横断面切片をcryostat(Leica、Germany)を使用して16μmで切断した。分子研究のために、動物をPBSで灌流させ、腰椎脊髄(L4-L5)の切片を分離して使用前まで-80℃で冷凍した。冷凍された切片をGFAP(DAKO、Santa Clara、CA、USA)、CD11b(Millipore、Billerica、MA)およびCD68(Millipore)に対する抗体を利用して免疫組織化学法で分析した。二重標識のために、FITCまたはcy3-接合二次抗体を使用した(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)。また、核はDAPIで標識した(Molecular Probes、Eugene、OR)。免疫染色対照研究は、一次抗体を非-免疫、対照抗体に入れ替え、過量(10μg/ml)の各抗原で予備吸着して一次抗体を脱落させて実施した。力価以上の蛍光強度をMetaMorph software(Molecular devices、Sunnyvale、CA)を使用して定量して平均化した。力価数値は少なくとも3回のバックグラウンドであり、バックグラウンドは一次抗体脱落対照について定量および平均化された。併せて、ウェスタンブロット分析のために、冷凍された脊髄組織に破砕バッファー(1% Nonidet(登録商標)P-40、20mM Tris(pH8.0)、137mM NaCl、0.5mM EDTA、10% glycerol、10mM Na2P2O7、10mM NaF、1μg/ml aprotinin、10μg/ml leupeptin、1mM vanadateおよび1mM PMSF)を入れて均質化(homogenization)した。これをe-チューブに集めた後、4℃で20分間rockingし、12,000rpmで30分間遠心分離した後、上澄み液を他のe-チューブに移してBCA分析キットを利用してタンパク質定量を遂行した後、同一量のタンパク質をSDS-PAGEにローディングして電気泳動を行った。その次に、Nitrocelluloseメンブレインにトランスファーして、それぞれのantibody data sheetに出されるprotocolによってウェスタンブロット分析を遂行した。確保したデータは平均±SEMで示し、グループ間の多重比較はone-way ANOVAを実施した。Tukey′s multiple comparisonをPost hoc analysisとして使用した。p<0.05を統計学的に意味があるものと見なした。すべての統計分析はSPSS 15.0(SPSS Science、Chicago、IL)を使用して実施した。
【0208】
その結果、luxol fast blue染色によって評価される脱髄鞘化は、免疫化後30日にEAEマウスの脊髄の白質で顕著に増加したが(
図39A、Saline)、ciNSC5-移植したEAEマウスでは脊髄の脱髄鞘化が顕著に減少することが示された(
図38AおよびB)。また、ciNSC5-移植したEAEマウスはMSC-移植したEAEマウスに比べても有意に脱髄鞘化減少効果を示した。ciNSC5の脱髄鞘化抑制効能を再検証するために、MBP(myelin basic protein)発現を免疫染色およびウェストンブロッで確認した結果、Shamに比べて食塩水を投与したEAEマウスでMBPの発現が顕著に減少し、ciNSC5を移植したマウスの脊髄ではMBPの減少が食塩水またはMSC-移植したマウスに比べて顕著に抑制された(
図39CおよびD)。ウェスタンブロット結果でも同様にciNSC5-移植マウスでMBP発現が他の2つのグループ(食塩水-移植グループまたはMSC-移植グループ)に比べて顕著に高く示された(
図39EおよびF)。これを通じて、MS患者の典型的な病理学的特徴と知られたCNS脱髄鞘化をciNSC5が抑制することで、その範囲と程度を緩和させることを確認した。
【0209】
5-3.脊髄白質への単核細胞およびマクロファージ浸透抑制効果確認
MOG免疫化後30日目に、脊髄の小血管周囲の単核細胞の浸透をcresyl violet(Cat.C5042、Sigma)染色で検出した。また、MOG免疫化後30日目にCD68-陽性マクロファージを免疫組織化学染色で確認した。
【0210】
その結果、EAEマウスは、脊髄の白質周囲に集中的な単核細胞の浸透を示したのに対し(
図40AおよびB、食塩水)、MSCまたはciNSC5処理グループでは胸椎(A)および腰椎(B)切片の両方で脊髄白質への単核細胞浸透が減少したことが示され(
図40)、ciNSC5移植が脊髄白質へのEAE-誘導単核細胞浸透を緩和させることを確認した。また、D68-陽性マクロファージが食塩水処理されたEAEマウスの白質で観察されたのに対し、MSCまたはciNSC5移植グループでは浸透されたマクロファージの数が有意に減少することが示された(
図41)。
【0211】
5-4.小膠細胞および星状細胞の活性化抑制効果確認
脊髄で小膠細胞および星状細胞のような膠細胞の活性化に対するciNSC5の効果を確認するために、免疫化後30日目にCD11b(小膠細胞マーカー)またはGFAP(星状膠細胞マーカー)抗体に対する免疫組織化学分析を遂行した。
【0212】
その結果、食塩水を処理したEAEマウスの脊髄で非常に強いGFAP免疫反応性(immunoreactivity)が示され、脊髄内星状膠細胞の活性化が起きたことを確認した(
図42)。一方、MSCまたはciNSC5を移植したEAEマウスでは脊髄内星状膠細胞の活性化が顕著に減少し、GFAP蛍光強度(intensity)を定量化した結果、MSC-移植グループおよびciNSC5-移植グループのいずれも有意にGFAP強度が減少した。特に、ciNSC5はMSCに比べて顕著なGFAP発現抑制効果を示した(
図42D)。これは、EAEマウスでciNSC5が星状膠細胞活性化を抑制させることを示す。また、CD11bで免疫染色を施行した結果、EAEマウスの脊髄内小膠細胞は細胞質が肥大になり、枝が短くなる典型的な活性化様相を見せるのに対し(
図43A)、MSCまたはciNSC5を移植したEAEマウスでは小膠細胞の活性化様相が顕著に減少した。特に、ciNSC5-移植マウスでは細長い枝を有する小膠細胞の休息期形態(resting form)も多数観察された(
図43)。この結果は、EAEマウスでciNSC5移植によって小膠細胞活性化が抑制されたことを示す。
【0213】
実施例6.本発明の化合物によって直接トランス分化されたciNSC5のパーキンソン病治療効果確認
6-1.運動機能回復改善効果確認
6-OHDA注入を通じたPD動物モデル慢性ステップで機能回復に対するciNSC5の効果を確認するために、成体Sprague-Dawley雄レット(230-250g、Sam:TacN(SD)BR、Samtako、Osan、Korea)の体重を測定し、抱水クロラール(500mg/kg、intraperitoneal injection)で麻酔させてStereotaxicにレットを固定して決まった位置(Partial injuryモデル:AP+0.7、ML+2.6、DV-4.5 from bregma;およびComplete injuryモデル:AP-2.2、ML+1.5、DV-8.0 from bregma)に8ugの6-OHDAを4μlの食塩水に溶かし、33ゲージハミルトン注射器を利用して注入した(
図44)。6-OHDA注入後4週目に、レットを抱水クロラール(500mg/kg、i.p.)で麻酔させた後、stereotaxicにレットを固定させ、右側線条体(striatum)(AP:+1.0、ML:-3.0、DV:-5.0)に食塩水に懸濁された10μlのMSCまたはciNSC5(1×10
6 cells)を移植した。その次に、アポモルヒネ(apomorphine)(0.05mg/kg)を皮下に注射して直径40cmの透明な円筒に入れ、10分間適応させた後、10分間分当たり4回以上回転した場合をパーキンソン病モデルが完成されたレットと決定した。Partial injuryモデルでのciNSC5運動機能向上効能を評価するために、細胞移植後2週ごとにrotationテストを進行した。また、Complete injuryモデルの場合、運動機能回復を確認するために、移植後2週目から週1回ステッピングテストを進行した。トレッドミルにレットの前肢を一つずつ載せ、1分間ビデオを撮って観察し、6-OHDAが注入された側の反対方向の歩行障害が現れたcontralateralと正常歩行が可能なipsilateralのステップを計数して、contralateralステップを全体ステップで除してステップピン割合(%)を計算した。正常レットは50%のステップピン割合を示し、パーキンソン病が誘発されたレットは10%以下の値を示す。
【0214】
その結果、partial injuryモデルで、移植後に時間が過ぎるほどMSCおよびciNSC5を移植したレットでrotationの数が減って、ciNSC5-移植レットでは移植後2週から6週まで食塩水移植グループに比べて顕著な運動機能回復効果が示された(
図45A)。また、complete injuryモデルで、食塩水投与グループは移植前と比較したとき全く変化がないのに対し、ciNSC5を移植したグループでは移植後2週目から食塩水グループよりステップピン頻度が顕著に増加し、移植後6週までもその効果が持続した(
図45B)。
【0215】
6-2.ドーパミン神経細胞消失抑制効果確認
6-OHDA注入PD動物モデルに細胞を移植し、4週または6週後にレットを抱水クロラール(500mg/kg)で麻酔させ、0.1M PBS(pH7.4)および引き継き0.1M PBS(pH7.4)中の4%パラホルムアルデヒドで心臓穿刺を通じて灌流させた。脳を摘出して同じ固定液に24時間の間含浸して後-固定させ、0.1M PBS(pH7.4)中の30%スクロースに入れて置いた。OCT化合物で包埋(embedding)した組織をcryostat(Leica、Germany)を使用して40μmで切断し、Substantia nigraが含まれた組織をドーパミン神経細胞マーカーであるTHに対する抗体で免疫染色して免疫組織化学染色を遂行した。
【0216】
その結果、ciNSC5を移植した組織で食塩水またはMSCを移植した組織よりドーパミン神経細胞の数が顕著に多く残っていることが示された(
図46)。
【0217】
6-3.TH-陽性ドーパミン神経細胞への分化効果確認
Partial injuryモデルで移植後6週のレットの線条体をヒト特異的抗体であるSTEM121を利用して免疫染色を遂行した結果、MSC移植グループではSTEM121陽性細胞が観察されていないが(データ図示しない)、ciNSC5移植グループではSTEM121-陽性細胞が確認された(
図47)。これは、移植後6週目にも移植したciNSC5が組織内で生存していることを意味する。また、STEM121抗体とTH抗体を利用した二重免疫染色を施行した結果、ciNSC5を移植した組織内STEM121陽性ヒト細胞がTH-陽性ドーパミン神経細胞であることが確認され(
図48)、移植されたciNSC5が線条体内でドーパミン神経細胞に分化されたことを示す。
【0218】
これを通じて、ciNSC5は6-OHDAによって誘導されるPDモデルで行動学的症状をかなり改善させるだけでなく、ドーパミン神経細胞の死滅を抑制する効果を見せ、MSCより顕著な治療効能を示し、特に、移植された神経前駆細胞であるciNSC5は移植部位である線条体でドーパミン神経細胞に分化したので、ciNSC5が神経組織に移植されたときPDによって減少したドーパミン神経細胞を振り替えることで治療効能を示すことができることが分かる。
【0219】
実施例7.本発明の化合物によって直接トランス分化されたciNSC5の慢性脊髄損傷治療効果確認
7-1.運動機能回復改善効果確認
脊髄損傷後、慢性ステップで機能回復に対するciNSC5の効果を確認するために、ciNSC5移植後、BBBオープンフィールドテスト、グリッドワークテスト(Grid walk test)およびフットプリント分析(Foot print analysis)を含む挙動テストを遂行し、これらを統合して機能回復インデックス(functional recovery index;FRI)分析を遂行した。具体的に、慢性脊髄損傷レットモデルを製作するために、手術前に成体Sprague-Dawley雄および雌レット(230-250g、Sam:TacN(SD)BR、Samtako、Osan、Korea)の体重を測定し、抱水クロラール(500mg/kg、intraperitoneal injection)で麻酔させ、背中および首部分を髭剃りをして椎弓切除(laminectomy)をT9-T10水準で実施して軽膜の損傷なしに脊髄の下部分を露出させた。その次に、T8およびT11の棘突起をクランプで固定して脊椎を安定化し、露出した脊髄の背中表面に中間程度のあざ損傷(10g×25mm)を与え、慢性脊髄損傷レットモデルを製作した。損傷後、筋肉および皮膚を覆ってレットを温度および湿度制御チャンバに終夜置いた。手術後に、レットに補充液(5 ml、lactated ringer)を皮下注入し、抗生剤(gentamicin、5mg/kg、intramuscular injection)を手術後5日間毎日1回注入した。損傷後レットをケージ当たり一匹ずつ飼育して水と飼料接近を容易にした。体重および残った食べ物と水の重量をすべての動物に対して確認して記録した。反射排尿が確立されるまで一日3回受動的に膀胱を空にした。脊髄損傷後6週目に、レットを抱水クロラール(500mg/kg、i.p.)で麻酔させ、食塩水に懸濁された10μlのMSCまたはciNSC5(1×106 cells)を病変腔に注入した。対照群は対応時点に同量の食塩水を注入した。BBBオープンフィールドテスト、グリッドワークテスト(Grid walk test)およびフットプリント分析の挙動分析は、移植後8週間に週1回実施した。BBBオープンフィールドテストは、BBBスコアを慢性SCI研究で機能回復および移動テストに使用し、完全麻痺(スコア0)から正常移動(スコア21)までのBasso、BeattieおよびBresnahan(BBB)基準によって下記のオープンフィールド移動スコア(表5)を使用して移動機能をテストしてレット脊髄でのあざ損傷後回復を評価した。また、グリッドワークテストは、床から30cm離れた1m長さの金属グリッドバーの水平ランウエーで動物を歩かせ、規定された10個バーセクターを分析するために選択した。固定されたバー間隔に対する習慣化を防止するために、このようなセクターにおけるバーを不規則的に(1-4cm間隔)配列し、テストセクションたびに替えた。分析は、足位置のエラー数を計数して実施し、動物が後肢で歩けない場合、バー当たり2つのエラーを作り、計20個のエラーを引き起こすようにして、ステップ当たり足の踏み外しの百分率を計算した。また、フットプリント分析は、動物の前肢および後肢を非毒性の赤色および青色染料に浸けた後、狭いボックス(1m長さおよび7cm幅)を横切って歩かせて足跡をスキャンし、デジタル化された像を分析した。併せて、前記3種の挙動テストを統合して、細胞移植時点および移植後8週間の挙動を比較して、8週間の移動機能回復デルタ数値を計算することで、運動機能回復のステップを定量して機能回復インデックス(Functional Recovery Index;FRI)を導き出した。各挙動実験で与えられたポイントの標準は、下記表6に示した。
【0220】
【0221】
【0222】
その結果、ciNSC5移植グループおよびMSC移植グループのいずれも脊髄損傷後BBB移動スコアをかなり増加させることが示された(
図49AおよびD)。また、ciNSC5およびMSCすべてのグリッド誤差率(ステップ当たり足踏み外し)は、食塩水-処理グループでさらに低く、ciNSC5移植グループで足踏み外しの割合は、雄および雌レットの両方でMSC移植グループに比べて顕著に減少した(
図49BおよびE)。損傷後14週目(移植後8週目)に、ciNSC5-移植レットおよびMSC-移植レットの両方で足跡はかなり一貫した前肢-後肢の調和および非常に少ない足指引きずりを示した。これに対し、食塩水-処理グループにおける足跡は、両後肢で続くインク跡で一貫性のない前肢-後肢の調和および多くの引きずりを示した。また、ciNSC5移植グループの足指引きずりは、MSC移植グループに比べて顕著に減少したことが示された(
図49CおよびF)。併せて、機能回復インデックス(functional recovery index;FRI)分析結果、ciNSC5およびMSCのFRIスコアが食塩水移植グループに比べてかなり増加し、特に、ciNSC5移植グループのFRIスコアがMSC移植グループより顕著にさらに改善した(
図50A、B、DおよびE)。行動実験が進行される期間の間ciNSC5およびMSCの移植による非正常的な体重変化は観察されなかった(
図50CおよびF)。
【0223】
7-2.病変体積およびミエリン損失減少効果確認
MSCまたはciNSC5移植後8週目に、動物を抱水クロラール(500mg/kg)で麻酔させ、0.1M PBS(pH7.4)および引き継き、0.1M PBS(pH7.4)中の4%パラホルムアルデヒドで心臓穿刺を通じて灌流させた。病変部位に集中した脊髄セクション(1.5cm)を切開して同じ固定液に6時間の間含浸して後-固定させ、0.1M PBS(pH7.4)中の30%スクロースに入れて置いた。分節をOCTに入れて凍結切片を作り、縦断または横断面切片を10または16μmで切断した。脊髄の背腹軸を通じた連続縦断面切片(10μm)を使用して病変体積を確認するために、50μmごとに切片をCresyl violet acetateで染色して光顕微鏡で観察した。低倍率レンズ(1.25X)を使用して病変領域をMetaMorph software(Molecular devices)で決定し、各縦断水準の領域を決定して連続領域の数的統合の平均で総病変体積を推論した。また、損傷後のミエリン損失を確認するために、連続的な横断クリオセックション(cryosections)(16μm厚さ)をグラススライドに載せた。選択されたスライドを95%エタノールで酸性化された0.1% Luxol fast blue(Solvent Blue 38;Sigma)とともに60℃で終夜インキュベーションした。分化は0.05% lithium carbonateで実施した。
【0224】
脊髄損傷後の組織損失を確認するために、連続縦断切片をCresyl violetで染色して病変体積を測定した結果、移植後8週目にciNSC5およびMSC-処理グループの両方で食塩水-注入グループに比べて全体病変体積がかなり減少し、ciNSC5移植グループでMSC移植グループに比べて病変体積が顕著にさらに減少した(
図51AおよびB)。また、損傷後のミエリン損失をLuxol-fast blue染色で確認した結果、ciNSC5およびMSC-処理グループの両方で食塩水-注入グループに比べてかなり抑制されたミエリン損失を示し、ciNSC5移植グループではMSC移植グループに比べて顕著にさらに減少したミエリン損失を示した(
図51CおよびD)。
【0225】
7-3.神経膠症的傷形成減少効果確認
神経膠症的傷形成に対するciNSC5の効果を確認するために、GFAPおよびCSPGに対する二重免疫染色で評価し、脊髄損傷後に病変部位内に密集されて形成された傷から分泌するCSPGは軸索再生および機能回復に対する化学的障害物とされるので、CS-56で染色してCSPGの存在有無を確認した。具体的に、冷凍された切片をGFAP(DAKO、Santa Clara、CA、USA)およびCS-56(CSPG、Millipore、Billerica、MA)に対する抗体を利用して免疫組織化学法で分析した。二重標識のために、FITCまたはcy3-接合二次抗体を使用し(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)、核はDAPIで標識した(Molecular Probes、Eugene、OR)。免疫染色対照研究は、一次抗体を非-免疫、対照抗体に入れ替え、過量(10μg/ml)の各抗原で予備吸着して一次抗体を脱落させて実施した。力価以上の蛍光強度をMetaMorph software(Molecular devices、Sunnyvale、CA)を使用して定量し、平均化した。力価数値は少なくとも3回のバックグラウンドであり、バックグラウンドは一次抗体脱落対照に対して定量および平均化された。
【0226】
CSPGの存在有無をCS-56で染色して確認した結果、食塩水-処理グループの脊髄の病変部位はCS-56およびGFAP-陽性染色信号で豊かに満たされているのに対し、CSPGおよびGFAP強度のいずれも食塩水-処理グループに比べてMSCおよびciNSC5-移植グループでかなり減少した(
図52A~C)。ウェスタンブロットでGFAP水準を確認した結果でも、免疫染色結果と類似してciNSC5移植したグループでGFAP水準(level)が食塩水グループだけではなくMSC移植グループに比べても顕著に減少することが示された(
図52D)。これを通じて、ciNSC5が神経膠症的傷(gliotic scar)形成を阻害することを確認した。
【0227】
7-4.軸索再生改善効果確認
皮質脊髄路軸索の成長に対するciNSC5の効果を確認するために、BDAを使用して先行軸索追跡を実施し、損傷部位に繋がる余分の下向き軸索(descending axon)経路の規模を確認するために、フルオロゴールド(FG)を損傷後14週目に尻尾部分を通じて病変部位に注入し、上位脊髄核(supraspinal nuclei)で選択されたFG-標識ニューロンを計数した。具体的に、MSCまたはciNSC5移植後8週目に、12匹レット(食塩水注入グループから3匹、MSC移植グループから5匹およびciNSC5移植グループから5匹)を抱水クロラール(500mg/kg)で麻酔させ、運動皮質上にある骨を除去した。10%蛍光-標識ビオチン化デキストランアミン(BDA;Molecular Probes、Eugene、OR)を運動皮質内に両方向に8箇所(各側面当たり4箇所)注入し、BDA注入後2週目に、レットを0.1Mリン酸塩バッファー(pH7.4)中の4%パラホルムアルデヒドで灌流させた。脊髄を収集して冷凍マイクロトーム上で20mm厚さで縦断切断した後、蛍光顕微鏡で20xレンズ下で軸索再生を定量した。0、500、1000、1500、2000、2500および3000μm間隔の線が描かれたグリッドで各切片を調整し、病変腔の扉側縁からの角距離で軸索の数を計数し、皮質脊髄路(corticospinal tract)を含む100μm間隔で選択された4個組織でBDA-陽性軸索を計数した。各動物における軸索の総数をグループ当たり平均化した。動物当たり4個切片で存在する軸索の総数を計数して平均化した。また、Fluorogold(FG;Invitrogen、Grand Island、NY、USA)を使用する逆行追跡で余分の下行軸索(descending axon)が扉側腰椎拡大に至る程度を決定するために、損傷後4週目に、4% FGをYJ101脊髄分画に注入し、下記定位座標によって各面に4箇所(0.5μl per injection)に注入した:(1)0.5mm medial-lateral(M-L)、0.5mm dorsal-ventral(D-V);(2)1.0mM M-L、0.5mm D-V;(3)0.5mm M-L、2.0mM D-V;および(4)1.0mM M-L、2.0mM D-V.各注入後2分以上染料を分散させ、一週間後に動物を犠牲にさせて組織学的分析を実施した。注入部位を含む5-mm脊髄切片の横断面を連続的に切断して白質を含むバルク注入の範囲を確認し、染料が注入された脊髄切片を越して拡散しないことを確認した。このような基準を満たさないケースは追加研究から排除した。感覚運動皮質を含む横断脳切片(40μm厚さ)をcryostat上で切断し、毎3番目の切片をガラススライドに載せた。レット当たり10個切片を分析し、標識されたニューロンを各レット当たり計数とし、レット全体にわたって平均化した。併せて、軸索再生因子と知られているGAP43の発現様相をウェスタンブロットで確認した。
【0228】
BDA先行軸索追跡(BDA anterograde axon tracing)結果、食塩水-移植グループおよびMSC-移植グループでは非常に少ない再生を見せたのに対し、ciNSC5移植グループでは病変腔を通じて、またこれを超えた盛んだCST軸索再生を示した(
図53)。軸索の数を計数した結果、食塩水移植グループおよびMSC移植グループでは病変腔出発点から1000μm地点で軸索が観察されていないが、ciNSC5移植グループでは2000μm地点でも軸索が観察された。また、フルオロゴールド逆行軸索追跡(Fluorogold retrograde axon tracing)結果、RN、PnC、LVe、MdVおよびMdDでFG-標識ニューロンの数は食塩水-処理対照グループに比べてciNSC5-移植グループで顕著にさらに多いことが示され、MSC移植グループではFG-標識ニューロンがLVeでのみ増加し、他の部位では効果がないことが示された(
図54)。併せて、ウェスタンブロット分析結果、ciNSC5を移植したグループレットの脊髄内GAP43発現が食塩水移植グループまたはMSC移植グループに比べて顕著に有意に増加した(
図55)。
【0229】
7-5.成熟した神経細胞への分化確認
慢性脊髄損傷モデルにciNSC5を移植してから6週後、ヒト特異的STEM121抗体を利用して免疫組織化学染色を進行した。
【0230】
その結果、移植部位の近くでSTEM121-陽性細胞が観察され、これは、移植されたciNSC5が組織内に残存していることを意味する。細胞タイプを確認するために、二重免疫染色を進行したところ、移植されたciNSC5は神経細胞マーカーであるNeuN、MAP2およびTuj1と二重染色になったことが示された(
図56)。これを通じて、移植されたciNSC5が脊髄組織で成熟した神経細胞に分化したことを示唆する。
【国際調査報告】