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特表2024-542274陰イオン交換膜水電解のガス拡散層およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】陰イオン交換膜水電解のガス拡散層およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/031 20210101AFI20241106BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20241106BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241106BHJP
【FI】
C25B11/031
C25B1/04
C25B9/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532298
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 KR2022018750
(87)【国際公開番号】W WO2023101321
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0169324
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サラン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ド・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミュン・ソク・オ
(72)【発明者】
【氏名】ウイ-ドゥク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョジン・ジョン
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA04
4K011AA11
4K011AA23
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB13
4K021DB16
4K021DB36
4K021DB53
(57)【要約】
本発明は、親水性であり、優れた気体透過性を示す陰イオン交換膜水電解のガス拡散層、およびこれらの製造方法を提供しようとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素ナノ繊維が網形態であるフィルムを含み、前記炭素ナノ繊維は直径が500nm以下である、陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層。
【請求項2】
前記陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層は、水に対する接触角が20°以下である、請求項1に記載の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層。
【請求項3】
前記陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層は、気体透過度が1×10-12以上である、請求項1に記載の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層。
【請求項4】
前記陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層は、網状の炭素ナノ繊維フィルム一面に多孔性支持体をさらに含む、請求項1に記載の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層。
【請求項5】
前記多孔性支持体は、多孔性カーボン紙、炭素繊維フィルム、炭素ナノ繊維フィルム、および炭素ナノチューブフィルムからなる群より選択された1種以上である、請求項4に記載の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層。
【請求項6】
炭素前駆体物質を紡糸して網成形品を形成する段階(段階1);および
前記網成形品を熱処理して網状の炭素ナノ繊維フィルムを収得する段階(段階2);
を含む、陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層の製造方法。
【請求項7】
前記段階1で炭素前駆体物質は、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびこれらの前駆体、セルロース、リグニン、およびピッチからなる群より選択された1種以上である、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層の製造方法。
【請求項8】
前記(段階1)の紡糸は、電気紡糸、遠心ジェット紡糸、メルトブローン、および噴射紡糸からなる群より選択された1種以上である、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層の製造方法。
【請求項9】
前記電気紡糸は溶液状態の炭素前駆体物質を1~5mm直径のノズルを通じて紡糸し、前記ノズルは5~30kV電圧が印加される、請求項8に記載の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層の製造方法。
【請求項10】
前記段階2の熱処理段階は、温度700~1500℃で1時間以上行われることである、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層の製造方法。
【請求項11】
前記段階1の炭素前駆体物質の紡糸は、多孔性支持体上に紡糸されることである、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層の製造方法。
【請求項12】
前記製造方法は、段階2で得られた網状の炭素ナノチューブフィルムに多孔性支持体に付着する段階をさらに含む、請求項6に記載の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層の製造方法。
【請求項13】
前記多孔性支持体は、多孔性カーボン紙、炭素繊維フィルム、炭素ナノ繊維フィルム、および炭素ナノチューブフィルムからなる群より選択された1種以上である、請求項11または請求項12に記載の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2021年11月30日付韓国特許出願第10-2021-0169324号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
本発明は、陰イオン交換膜水電解のガス拡散層およびこれらの製造方法に関するものである。具体的に、本発明は網状の炭素ナノ繊維フィルムを含むガス拡散層およびこれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス拡散層(GDL、gas diffusion layer)は燃料電池(FC、fuel cell)および水電解(EC、electrolysis)で電極に反応物を伝達すると同時に、生成物を排出する通路であり、熱排出と電極支持台などの役割を果たす核心構成要素である。
【0003】
商用化されたGDLは大部分が高分子電解質燃料電池(PEMFC、polymer electrolyte membrane fuel cell)用で、多孔性炭素紙(carbon paper)の上に疎水性の高分子が含有された微細多孔層(MPL、microporous layer)をコーティングした構造を有している。この時、燃料電池の場合、酸素極(cathode)から発生した水がガス拡散層の気孔をふさぐ現象(water flooding)が発生することがあって、ガス拡散層が疎水性を有することが要求される。よって、燃料電池のガス拡散層は疎水性を付与するために、高分子としてPTFEおよびバインダーを使用するのである。
【0004】
水電解用ガス拡散層は、電気化学反応の反応物と生成物である水素(H)、酸素(O)、および水(HO)などの気体が触媒層と電極の間で自由に移動しながら電気伝導が起こる界面である。よって、電気化学反応のための塩(salt)との副反応がなく、多孔性および電気伝導性を有する炭素繊維などの多孔性炭素材料が使用された。
【0005】
しかし、従来使用されていた炭素繊維紙は表面の粗さのため電極層と触媒層の間の界面接触抵抗が発生する問題があった。よって、これを解消するためにパウダー状態の炭素ペーストまたはバインダーなどの高分子材料を適用して微細多孔層を形成した。しかし、炭素ペーストまたはバインダーなどの高分子材料を含む微細多孔層は、高分子成分によって親水性と電気伝導性が低下して水電解用ガス拡散層の特性を劣るようにする問題がある。
よって、微細多孔層に含まれるバインダー高分子を制御して親水性を付与する方法が考案されたが、依然として電気伝導度が低下する問題があり、追加的に気体移動の妨害になる問題があった。
【0006】
よって、陰イオン交換膜水電解に使用可能な親水性であり優れた電気伝導性を有するガス拡散層、およびその製造方法の開発が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、陰イオン交換膜水電解のガス拡散層およびその製造方法を提供しようとする。
具体的に本発明は、親水性であり、気体透過度に優れた網状の炭素ナノ繊維フィルムを含む陰イオン交換膜水電解のガス拡散層、およびこれらの製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明一実施形態の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層は炭素ナノ繊維が網形態であるフィルムを含み、前記炭素ナノ繊維は直径が500nm以下であってもよい。
また、本発明一実施形態の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層の製造方法は、炭素前駆体物質を紡糸して網成形品を形成する段階(段階1);および前記網成形品を熱処理して網状の炭素ナノ繊維フィルムを収得する段階(段階2);を含むことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明による網状の炭素ナノ繊維フィルムを含むガス拡散層はパウダー状態の炭素資料やバインダーなどの高分子より多孔性が高くて触媒層で発生した水素気体と酸素気体の移動に非常に有利で電解質から外部に気体移動が容易であるところ、水電解槽の効率を向上させることができる陰イオン交換膜水電解のガス拡散層を提供することができる。
【0010】
また、本発明による網状の炭素ナノ繊維フィルムは、親水性が高くてガス拡散層の電解質のぬれ性が改善できる。
また、本発明により紡糸法を用いた陰イオン交換膜水電解のガス拡散層の製造方法を提供することができる。
【0011】
また、本発明により網状の炭素ナノ繊維フィルムをガス拡散層自体として使用および製造する方法を提供することができる。
また、本発明により網状の炭素ナノ繊維フィルムに加えて従来使用されていたガス拡散層を共に適用する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明一実施形態のガス拡散層の表面構造をSEMで観察したものである。
図2】本発明一実施形態のガス拡散層の側面構造をSEMで観察したものである。
図3】本発明一実施形態のガス拡散層の接触角と既存ガス拡散層の接触角を比較した実験写真を示したのである。
図4】本発明一実施形態のガス拡散層の気体透過度と既存のガス拡散層の気体透過度を測定して比較したグラフを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0014】
また、本明細書で使用される用語はただ例示的な実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、“含む”、“備える”、または“有する”などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在するのを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0015】
また、本発明において、各層または要素が各層または要素の“上に”または“の上に”形成されると言及される場合には各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、または他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成できるのを意味する。
【0016】
本発明は多様な変更を加えることができ様々の形態を有することができるところ、特定実施形態を例示し下記で詳細に説明しようとする。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0017】
陰イオン交換膜水電解では、ガス拡散層の親水性が増加するほど電解液のぬれ性と透過率が増加するので、セル(cell)の効率が増加できる。したがって、疎水性の微細多孔層を有する既存の燃料電池用ガス拡散層は電解液のぬれ性を低下させると同時に、数十マイクロメートル(μm)に達する微細多孔層の厚さはガス拡散層の多孔性支持体の多孔性も減少させる原因となることがある。
【0018】
よって、本発明者らは従来使用していた疎水性を付与するバインダーのような高分子材料を使用せずに(binder-free)、網状の炭素ナノ繊維フィルムをガス拡散層として使用する方法を考案するに至った。
【0019】
本発明により網状の炭素ナノ繊維フィルム材料としてペーストを形成するための高分子を使用しなければ、電極と触媒の間の界面の粗さ(roughness)および界面抵抗が減少すると期待される。また、パウダー状態の炭素資料やバインダーなどの高分子より炭素ナノ繊維の多孔性が高くて触媒層で発生した水素気体と酸素気体の移動に非常に有利で電解質から外部に気体移動が容易であるところ、水電解槽の効率を向上させることができると期待される。また、本発明による炭素ナノ繊維フィルムは親水性が高くて電解質のぬれ性も向上すると期待される。
【0020】
以下、本発明の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層について具体的に見てみようとする。
【0021】
本発明の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層は、網状の炭素ナノ繊維フィルム自体であってもよい。また、本発明の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層は、多孔性支持体;および網状の炭素ナノ繊維フィルムを含むことができる。
【0022】
本発明一実施形態のガス拡散層は炭素ナノ繊維が網形態であるフィルムを含み、前記炭素ナノ繊維は直径が500nm以下であってもよい。具体的にガス拡散層は、網状の炭素ナノ繊維フィルムであってもよい。
【0023】
具体的に前記炭素ナノ繊維は、直径が50nm以上、100nm以上、または150nm以上であり、500nm以下、400nm以下、300nm以下、または200nm以下であってもよい。
【0024】
前記ガス拡散層は、厚さが50~500μmであってもよい。具体的にガス拡散層は、厚さが50μm以上、100μm以上、150μm以上、または200μm以上であり、500μm以下、450μm以下、400μm以下、350μm以下、300μm以下、または250μm以下であってもよい。
【0025】
前記陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層は、水に対する接触角が20°以下であってもよい。本発明のガス拡散層は炭素ナノ繊維によって親水性を示すので、接触角(water contect angle)の下限を限定しないことが好ましく、具体的に接触角は0°であってもよい。接触角が20°以下の超親水性を示すことによって、水電解用ガス拡散層として使用時、電解液のぬれ性が確保できる。これは疎水性の微細多孔層が適用されたガス拡散層に比べて電解質の移動および内部循環が有利で水の電気分解反応が容易であるという長所がある。
【0026】
本発明での接触角(water contact Angle)とは、液体と気体が高体表面の上で熱力学的に平衡をなす時になす角を称する言葉である。本発明の接触角は平らな表面にフィルム状態のサンプルを置いて5~10μlの蒸留水を落とした後、その形状をDSAで側面から観察して角度を計算する方法で測定することができる。図4によれば、既存のガス拡散層と比較した時、本発明のガス拡散層は接触角が0°であって超親水性を示すのを確認することができる。
【0027】
また、前記陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層は気体透過度が1×10-12以上であってもよい。本発明の陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層は気体透過度が高いほど良品であるので、上限を限定しないことが好ましい。具体的に、気体透過度は1×10-12以上、1.25×10-12以上、1.5×10-12以上、1.75×10-12以上、または2×10-12以上であり、4×10-12以下、3×10-12以下、または2.5×10-12以下であってもよい。
【0028】
気体透過度が低ければ、ガス拡散層を通じて外部に排出されなければならない酸素および水素の移動性が低まるという点から、水電解などに使用時、全体的な効率が低まる問題が発生することがある。
【0029】
本発明の気体透過度はGDL基本物性評価装置(CPRT 10、韓国エネルギー技術院自体規格)を活用し、無作為にガス拡散層表面を接触して合計3回測定して下記の論文および式1を使用して気体透過度を求めることができる。
【0030】
気体透過度は論文“In-plane and through-plane gas permeability of carbon ber electrode backing layers(Jeff T. Gostick, et al., Sep 1 2006”のTrough plane permeability方式で求め、下記[式1]で気体透過度(K、単位m)を計算することができる。
【0031】
【数1】
【0032】
上記式1中、Kは気体透過度であり、μは使用した気体の動的粘性度、Aは気体が透過した断面の面積、tは気体が透過したガス拡散層の厚さ、mは単位面積を流れる気体の流量(質量)、Pは気体透過前の圧力、Pは気体透過後の圧力、Rは気体定数、Tは温度、Mは使用した気体の重量、およびPavgはPとPの平均値を意味する。
【0033】
また、前記陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層は、網状の炭素ナノ繊維フィルムの一面に多孔性支持体をさらに含むことができる。具体的に、前記ガス拡散層は炭素ナノ繊維フィルムが多孔性支持体の一面に備えられている形態であってもよい。
【0034】
前記多孔性支持体は多孔性物質であれば制限しないが、例えば多孔性カーボン紙、炭素繊維フィルム、炭素ナノ繊維フィルム、および炭素ナノチューブフィルムなどであってもよい。また、前記多孔性支持体は厚さが50~500μmであってもよい。または多孔性支持体は厚さが100~500μmであってもよい。
【0035】
また、本発明は、炭素前駆体物質を紡糸して網成形品を形成する段階(段階1);および前記網成形品を熱処理して網状の炭素ナノ繊維フィルムを収得する段階(段階2);を含む、陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層の製造方法を提供することができる。
【0036】
前記(段階1)の炭素前駆体物質は、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびこれらの前駆体、セルロース、リグニン、およびピッチからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0037】
前記(段階1)の紡糸は、電気紡糸、遠心ジェット紡糸、メルトブローン、および噴射紡糸からなる群より選択された1種以上であってもよい。具体的に、前記紡糸は電気紡糸であってもよい。
【0038】
前記電気紡糸を通じて紡糸が行われる場合には、溶液状態の炭素前駆体物質が1~5mm直径のノズルを通じて紡糸できる。また、ノズルには5~30kVの電圧が印加されてもよく、ノズルと接地の間の間隔は5~30cmであってもよい。この時、ノズルを通じて溶液状態の炭素前駆体物質が1~10ml/時間の間の一定の速度で紡糸できる。ノズルは一つ以上使用可能であり、所望の厚さを得るためにノズルの個数を増やすか、または紡糸時間を増やすことができる。
【0039】
前記(段階2)の熱処理を通じて紡糸段階で成形された網成形品が炭化して網状の炭素ナノチューブフィルムを形成する。前記熱処理段階はまず、網成形品を200~400℃温度区間で大気雰囲気または酸素が混合された気体雰囲気で1時間以上安定化させた後、700~1500℃の温度で非活性気体を用いて1時間以上炭化させる段階である。その後、非活性気体雰囲気下で室温に冷却させて網状の炭素ナノチューブフィルムを収得する。この時、安定化工程の以後である、炭化で冷却は非活性気体雰囲気を維持して行う。
【0040】
また、前記(段階1)の炭素前駆体物質の紡糸は多孔性支持体上に紡糸されることであってもよい。
【0041】
または、前記陰イオン交換膜水電解用ガス拡散層の製造方法は、(段階2)で得られた網状の炭素ナノチューブフィルムを多孔性支持体に付着する段階をさらに含むことができる。具体的に、網状の炭素ナノチューブフィルムに多孔性支持体を付着する方法は多孔性支持体一面に接着剤を塗布して付着する方法であってもよい。この時、使用される接着剤は、電気伝導度が高い物質を含むか、または粘度が高い物質を含むか、または二つともを含むことができる。
【0042】
前記多孔性支持体は多孔性物質であれば制限しないが、例えば、多孔性カーボン紙、炭素繊維フィルム、炭素ナノ繊維フィルム、および炭素ナノチューブフィルムなどであってもよい。また、前記多孔性支持体は厚さが50~500μmであってもよい。または多孔性支持体は厚さが100~500μmであってもよい。
【0043】
以下、発明の理解を助けるために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのものに過ぎず、発明をこれらのみに限定するのではない。
【実施例
【0044】
実施例
本実施例では電気紡糸法を用いて網状の炭素ナノチューブフィルムであるガス拡散層を製造した。まず、溶液状態の炭素前駆体物質であるポリアクリロニトリルを3mm直径のノズルを通じて時間当り5mlの一定の速度で3時間紡糸した。この時、接地されたコレクタの上に試料の剥離が容易なようにアルミニウムホイルを敷きその上にポリアクリロニトリルを電気紡糸した。ノズルには15kVの電圧を印加した。ノズルと接地の間の間隔は15cmを維持した。ノズルは一つ以上使用可能であるが、本実施例ではノズルは一つを使用して厚さが500μmになるようにポリアクリロニトリルを紡糸して網成形品を形成した。
【0045】
次いで、網成形品を270~300℃温度の大気雰囲気(酸素含む)で1時間安定化させた。その後、非活性気体N雰囲気であり、1000℃温度区間で1時間炭化させた。熱処理工程以後、試料を常温に冷却させて網状の炭素ナノ繊維フィルムを収得した。形成された網状炭素ナノ繊維フィルムは厚さが200μmであった。
【0046】
比較例
比較例としては、従来商用されるジェーエンティージー社のPEMFC用ガス拡散層製品であるJTN20-A6Hを使用した。
【0047】
実験例1-表面観察
製造された網状の炭素ナノ繊維フィルムの表面と側面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察してそれぞれ図1および図2に示した。
図面から分かるように、本発明のガス拡散層である炭素ナノ繊維フィルムが網状フィルム形状に形成されて多孔性が維持されるのを確認することができた。
【0048】
実験例2-接触角の測定
実施例の網状の炭素ナノ繊維フィルムの蒸留水滴に対する接触角を測定して図3に示した。平らな表面にフィルム状態のサンプルを置き5~10μlの蒸留水を落とした後、その形状をDSAで側面から観察して角度を計算する方法で接触角を測定した。
図面から分かるように、実施例の網状の炭素ナノ繊維フィルムは比較例のガス拡散層に比べて接触角0°の超親水性を示す。
【0049】
実験例3-気体透過度観察
気体透過度はGDL基本物性評価装置(CPRT 10、韓国エネルギー技術院自体規格)を活用し、無作為にガス拡散層表面を接触して総3回測定して下記の論文および式1を使用して気体透過度を求めた。
【0050】
気体透過度は論文“In-plane and through-plane gas permeability of carbon ber electrode backing layers(Jeff T. Gostick, et al., Sep 1 2006)”のTrough plane permeability方式で求め、下記[式1]で気体透過度(K、単位m)を計算して図4に示した。
【0051】
【数2】
上記式1中、Kは気体透過度であり、μは使用した気体の動的粘性度、Aは気体が透過した断面の面積、tは気体が透過したガス拡散層の厚さ、mは単位面積を流れる気体の流量(質量)、Pは気体透過前の圧力、Pは気体透過後の圧力、Rは気体定数、Tは温度、Mは使用した気体の重量、およびPavgはPとPの平均値を意味する。
この時、使用した試験用気体は乾燥空気を使用した。
【0052】
実施例の網状の炭素ナノ繊維フィルムと比較例のガス拡散層の気体透過度を比較してみれば、実施例がさらに優れた気体透過度を示しているのを確認することができた。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】