IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セインダ ファーマシューティカル グアンジョウ コーポレイションの特許一覧

特表2024-542280アラニル-グルタミンおよびアラニル-グルタミンを含む眼科用組成物の新規な使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】アラニル-グルタミンおよびアラニル-グルタミンを含む眼科用組成物の新規な使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/05 20060101AFI20241106BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241106BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 27/10 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61K38/05
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/10
A61P27/02
A61P27/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532667
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 CN2022133753
(87)【国際公開番号】W WO2023098537
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】202111450922.9
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520274231
【氏名又は名称】セインダ ファーマシューティカル グアンジョウ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ジンフェン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ヤナン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,ティエリャン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA07
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA16
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD05
4C076DD08
4C076DD09
4C076DD22
4C076DD23
4C076DD34
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD45
4C076DD46
4C076DD49
4C076DD50
4C076DD55
4C076EE10G
4C076EE23F
4C076EE37
4C076EE45G
4C076EE48G
4C076FF16
4C076FF35
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA14
4C084BA23
4C084CA59
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA28
4C084MA58
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
(57)【要約】
非ドライアイの眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。視覚疲労を軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。眼精疲労を軽減または緩和する美容製品および健康ケア製品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ドライアイの眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項2】
角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項3】
糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項4】
糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項5】
再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項6】
外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項7】
眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項8】
結膜炎に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項9】
眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項10】
マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項11】
眼精疲労に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項12】
近視を防止するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項13】
眼精疲労を軽減または緩和するための美容製品、健康ケア製品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項14】
近視を防止するための美容製品、健康ケア製品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項15】
目のための美容製品、健康ケア製品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項16】
アラニル-グルタミンおよび眼科的に許容される賦形剤を含む眼科用組成物であって、点眼薬、懸濁剤、ゲル剤、目軟膏剤、乳剤、目用パッド、目用パッチ剤、目用マスク、目用クリーム剤、噴霧剤、注射剤または留置剤の形態である、眼科用組成物。
【請求項17】
等張性または低張性の形態である、請求項16に記載の眼科用組成物。
【請求項18】
眼科用組成物中のアラニル-グルタミンの濃度が、0.05%w/w~10%w/wである、請求項16または17に記載の眼科用組成物。
【請求項19】
眼科的に許容される賦形剤が、浸透圧調整剤、静菌剤、増粘剤、pH調整剤、安定剤、界面活性剤、保水剤などのうちの1つまたは複数を含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の眼科用組成物。
【請求項20】
非ドライアイの眼表面疾患および/または状態、角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態、再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態、結膜炎に関連する眼表面疾患および/または状態、眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態、マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態、眼精疲労、近視に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法であって、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む、方法。
【請求項21】
非ドライアイの眼表面疾患および/または状態、角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態、再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態、結膜炎に関連する眼表面疾患および/または状態、眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態、マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態、眼精疲労、近視に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法であって、対象に、治療有効量の請求項16~19のいずれか一項に記載の眼科用組成物を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生物工学および薬学の分野に関し、詳細には、アラニル-グルタミンの新規な使用、より詳細には非ドライアイの眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用;角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用;糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用;外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用;結膜炎(目の発赤)に関連する結膜うっ血および/または他の状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用;マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用;眼精疲労に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用;眼精疲労を軽減または緩和するための美容製品、健康ケア製品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用;ならびに目のための美容製品、健康ケア製品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用に関する。本開示は、さらに、アラニル-グルタミンおよび眼科的に許容される賦形剤を含む眼科用組成物であって、点眼薬、懸濁剤、目軟膏剤、乳剤、目用パッド、目用パッチ剤、目用マスク、目用クリーム剤、噴霧剤、ゲル剤、注射剤または留置剤の形態である、眼科用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
早くも1984年に、Nelsonは、眼表面疾患という概念を提唱した。解剖学的に、眼表面は、上まぶた縁と下まぶた縁の間の粘膜上皮層全体を含む。組織学的に、この上皮層は、2つの主要領域、すなわち角膜と結膜を覆っている。眼表面の主要な機能は、目が開いている場合に明瞭な視界を確保することである。眼表面は、角膜上皮、結膜上皮、および涙液膜を含む。これら3つは密接に関連し、互いに影響し合う。3つのうちのいずれかにおける変化は、眼表面の不安定性をもたらす。したがって、狭い展望からは、眼表面疾患は、角膜上皮および結膜上皮の疾患のみを指す。相対的により広い展望からは、眼表面疾患は、表層性の角膜および結膜の疾患ならびに涙液膜の機能異常をもたらし得る疾患、すなわち、「眼表面疾患」を含むべきである。
【0003】
角膜の透明性および機能的完全性は、角膜組織の層の正常な構造および代謝に依存し、最外層に位置する角膜上皮組織は、この点に関して間違いなく非常に重要な役割を果たす。さまざまな物理的傷害、化学的傷害、機械的傷害、病原微生物、内分泌因子および免疫因子は、角膜上皮傷害を起こし得る。角膜上皮は、外部の病原因子による侵入に対する物理的障壁である。その完全性の維持は、上皮細胞の間、ならびに細胞と基底膜との間の密着結合およびつなぎ留める結合、同様に上皮細胞の連続的な自己再生に依存する。角膜上皮層への傷害は、細胞間の結合に影響を及ぼし、細胞膜の貫通性および選択性に変化を起こすことによって、その障壁機能に影響を及ぼし得る。これによって、角膜が外部の病原因子に対して脆弱となり、炎症、角膜混濁、失明さえもたらす場合がある。正常かつ完全な上皮障壁が破壊されるために、持続性の角膜上皮傷害によって、病原微生物がボウマン膜を容易に貫通し、角膜実質に侵入して、角膜炎症、角膜間質混濁、角膜潰瘍を形成するコラーゲン融解、角膜穿孔、および眼球欠損さえ起こし、重篤な結果をもたらす場合がある。現在、持続的な角膜上皮傷害に対する伝統的な処置は:代用涙液、角膜コンタクトレンズ、瞼板縫合、成長因子、自己血清などを含み、これらは効果的ではない。
【0004】
角膜潰瘍は、細菌、ウイルス、もしくは真菌の感染、機械的傷害、または重度のアレルギー疾患の結果として、表層角膜上に発生する開放創である。角膜潰瘍は、視力喪失を伴う問題を回避するために迅速に処置しなければならない重篤な状態である。角膜の炎症は、炎症または傷害に起因して、重度の視力喪失または失明さえもたらし得る。角膜潰瘍が深くなるほど、状態はより重篤となり、非常に深い潰瘍は、角膜に瘢痕をもたらす場合があり、それは続いて目に入る光を遮断する。処置は、通例、抗生物質および抗ウイルス性または抗真菌性の薬物を含む。ステロイド点眼薬もまた、炎症を低減するために与えられてもよい。しかしながら、創傷閉鎖を高め、かつ瘢痕を回避する薬物はない。重度の場合は、既存の処置が助けとならなかった場合、視力を回復させるために角膜移植が必要とされる場合がある。
【0005】
糖尿病性角膜症(DK)は、糖尿病の目における一般的な合併症の1つである。その主要な臨床所見は、点状角膜炎、角膜上皮再生の遅延、再発性角膜上皮びらん、角膜知覚鈍麻、および角膜浮腫を含む。糖尿病性角膜症は、Schultzによって初めて提唱され、命名された。糖尿病患者の47%~64%がDKを発症すると報告されている。DKは2種類に分類される:一次性DKおよび二次性DK。一次性DKは、糖尿病自体によって引き起こされる角膜症を指し、二次性DKは、糖尿病患者における目の手術によって引き起こされる角膜合併症を指す。
【0006】
再発性角膜びらんは、角膜上皮が傷害され(角膜破裂)、再生された上皮と基底膜およびボウマン膜との間の接着が十分に強固ではなく、目を閉じた安静後に目を開くと、不完全に治癒した角膜傷害が再び断裂する可能性を引き起こし、角膜破裂の症状(目の刺すような痛み、発赤、光不快(photodysphoria)、流涙、目を開くことができないなどを含む)の反復をもたらし、一方、また細菌が角膜感染および潰瘍化を起こす機会も与える。
【0007】
結膜は、まぶたの内表面および眼球前部の白目の表面を覆っている透明な膜である。結膜の大部分は外界と直接接触しているため、周囲の環境における感染性因子(細菌、ウイルス、およびクラミジアなど)および非感染性因子(外傷、化学物質、および物理的因子など)によって容易に刺激され、結膜は血管およびリンパ組織が豊富であり、結膜自体および外部の抗原によって感作されやすい。結膜炎は、結膜において起こる炎症または感染である。結膜炎は、眼科学において一般的な疾患であり、外部因子および身体自体の因子によって結膜組織に引き起こされる浮腫および発赤などの炎症性応答に対する一般的な用語である。結膜炎自体は視力に重篤に影響を及ぼすことはないが、その炎症が角膜に広がるか、または合併症を起こした場合、視力傷害を起こす場合がある。現在、結膜炎の臨床的な防止および処置は、主に結膜炎の臨床的症状を軽減するための人工涙液の外的補充、または眼表面の炎症を低減するためのステロイドホルモンもしくは非ステロイド系抗炎症薬の局所的使用を含む。上記の処置は、結膜炎のいくつかの臨床的症状をある程度軽減することができるが、根本的原因ではなく症状を処置し得るのみであり、外的な点眼薬への依存を引き起こす場合さえある。加えて、点眼薬適用によって引き起こされる目の感染症を回避するために、点眼薬は長期保存用の防腐剤を含有することが多く、防腐剤を含有する点眼薬の長期使用は、結膜炎の処置に好ましくないだけでなく、目の乾燥、痛みおよびかゆみを起こすこともあり、それによって乾燥性の角膜炎/結膜炎の臨床的症状を悪化させ、重度の場合に角膜上皮に傷害を起こす。伝染性急性結膜炎は、細菌またはアデノウイルスの感染によって引き起こされる一般的な急性流行性の目の疾患である。その主要な特徴は、明らかな結膜うっ血および化膿性または粘液膿性の分泌物である。細菌は多様な媒体を通して結膜と直接接触し、公共の場所、幼稚園、学校および家庭などの集合単位で急速に広がり、流行をもたらし得る。伝染性急性結膜炎の典型的な症状は、以下の通りである:患者の75%は流涙があり、患者の75%は目の分泌物が増加し、患者の75%は羞明であり、患者の65%は眼うっ血および目の充血があり、患者の65%は目に浮腫がある。患者は、目に意識的に異物感のようなちくちくした感じがあり、まぶたを重く感じ、羞明および流涙があり、目のかゆみが重度である場合、灼熱感がある。分泌物が角膜表面の瞳孔部に接着することによって一時的な霧視が引き起こされる場合もあり、流した後に視力は回復し得る。炎症刺激に起因して、多量の粘液膿性分泌物が生じ、患者は、朝起きた時に上まぶたおよび下まぶたが分泌物によって接着していることがあり、病変が角膜内に浸潤した場合、羞明、疼痛、視力の低下(hypopsia)および他の症状が明らかに増悪し、少数の患者は、同時に上気道感染症または他の全身的な症状を示す場合がある。現在、伝染性急性結膜炎を処置する主要な方法は:生理食塩水または水中の2%ホウ酸などの適切な洗浄剤を使用して結膜嚢を洗浄すること、およびまぶた縁を無菌綿棒で拭くこと;発症した目に、抗生物質点眼薬、抗ウイルス性点眼薬、およびホルモン性抗炎症薬などの点眼薬または目軟膏剤を適用することである。しかしながら、上述した方法は、長い処置期間を有し、重篤な副作用を有する。
【0008】
眼うっ血は、一定の状況下で眼球結膜および強膜組織の血管が拡張され、うっ血し、血行停止するか、または出血し始めた場合の白目の発赤を指す。目のさまざまな部分の血液供給源が異なるため、目のうっ血パターンも異なり、反映される病変もまた異なる。したがって、眼うっ血は、多くの目の疾患に共通する一般的な症状である。眼球うっ血は2種類に分類される:表在性および深在性。表在性は明赤色を特徴とし、「結膜うっ血」と呼ばれ;深在性は暗赤色を特徴とし、「毛様体うっ血」と呼ばれる。両方の組合せは、「混合性うっ血」と呼ばれる。結膜うっ血は、結膜または周辺の副器官の一次性または二次性の疾患を表す。毛様体うっ血は、角膜炎、強膜炎、虹彩毛様体炎、うっ血緑内障などの眼球自体の疾患を表す。血管自体に疾患があるかまたは傷害された場合、出血が眼球結膜の下に蓄積する場合があり、これは結膜下出血と呼ばれ、また眼うっ血の一種である。眼球うっ血は、眼球表面の毛細血管が赤くなり、膨張し、うっ血した場合に起こり、角膜または目の表面の他の組織への不十分な酸素供給に起因することが多い。眼疲労および誤った食習慣、特に多量のエタノールを消費した場合もまた、この現象が生じる場合がある。
【0009】
マイボーム腺機能不全(MGD)は、マイボーム腺の末端管の閉塞および/または異常な質もしくは量のマイボーム分泌を特徴とする、慢性のびまん性マイボーム腺疾患であり、臨床では一般的な眼表面疾患である。マイボーム腺管の閉塞は、眼表面の細菌感染を起こし、炎症性応答、目の刺激性症状、角膜および結膜の対応する変化をもたらし、重度の場合は、視力低下、および予後不良を起こし得る。ダニ感染もまたMGDを起こす因子であり、MGDに対する主要な処置は、まぶた加温、機械的まぶたケア、ならびに抗生物質および抗炎症剤などの医薬的処置を含む。しかしながら、これらの処置には一定の限界がある。まぶた加温は脂質を溶かすことができるが、角質化された物質の動きに対処することができず、また角膜変形に起因する一時的な視覚的劣化が起きる場合もある。機械的なまぶたケアは、閉塞を除去するのに必要とされる力が大きい場合があり、患者に著しい痛みを起こし得るので、マイボーム腺閉塞の部分的かつ一時的な軽減を提供し得るだけである。MGDに関連するまぶた縁の細菌コロニー形成および炎症を阻害するための抗生物質および副腎皮質ステロイドの局所的使用は、MGDの症状および身体的徴候の軽減に効果的であることが示されてきた。しかしながら、一方では、この処置の成功がマイバムの変化に関連しない場合があり、他方では、薬物不耐性および長期間の処置が経口抗生物質の臨床使用を制限する。
【0010】
視覚表示端末(VDT)はまた、VDT症候群としても公知であり、視覚表示端末を使用した後の眼疲労、目の乾燥、目における異物感、まぶたの重感、霧視、羞明および流涙、目の腫脹痛および眼うっ血などの眼精疲労の特徴をなす一連の症状を伴う症候群を指す。米国労働安全衛生研究所からの統計によると、1日当たり平均3時間以上、表示機器を使用する人の約90%がコンピュータ視覚症候群の影響を受けている。第42回「Statistical Report on Internet Development in China」によると、中国ネットワーク市民の規模は2018年6月までに8億2百万人に達し、同期間の中国ネットワーク市民の1週間の平均オンライン時間は、27.7時間に上り、これは昨年と比較して0.7時間増加しており、インターネット普及率は、昨年末の55.8%から57.7%に増加している。インターネットの利便性の発展に伴い、ますます多くのオンライン教育が出現している。生徒の両親の大部分は子どもたちにオンライン授業を選択し、そのため、子どもたちが電子製品を使用する機会が増えている。これらのネットワーク市民および生徒は、眼精疲労になりがちで、近視およびMGDなどの問題をさらに引き起こす場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
要約すると、角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または障害、特に疾患によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態、再発性角膜上皮びらん、特に外科関連の再発性角膜上皮びらん、結膜炎(目の発赤)、眼うっ血、マイボーム腺機能不全、眼精疲労および近視などに関連する非ドライアイの一連の眼表面疾患および/または状態に対して、良好な治療効果を有し、長期間使用され得て、明らかな局所的または全身的な毒性および副作用を持たない眼科用治療薬および/または美容製品、健康ケア製品を開発することが緊急に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の技術的問題を解決するために、本発明者らは、徹底的な調査を実行し、最終的に技術的な解決策を見出した。詳細には、本開示は、非ドライアイの眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供する。
【0013】
本開示は、角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用をさらに提供する。
【0014】
本開示は、糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供する。
【0015】
本開示は、糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供する。
【0016】
本開示は、再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供する。
【0017】
本開示は、外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供する。
【0018】
本開示は、眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供する。
【0019】
本開示は、結膜炎(目の発赤)に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用をさらに提供する。
【0020】
本開示は、眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供する。
【0021】
本開示は、マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供する。
【0022】
本開示は、眼精疲労に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用をさらに提供する。
【0023】
本開示は、近視を防止するための医薬品の調製におけるアラニル-グルタミンの使用を提供する。
【0024】
本開示は、眼精疲労を軽減または緩和する美容製品、健康ケア製品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用をさらに提供する。
【0025】
本開示は、近視を防止する美容製品、健康ケア製品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供する。
【0026】
本開示は、目のための美容製品、健康ケア製品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用をさらに提供する。
【0027】
本開示は、アラニル-グルタミンおよび眼科的に許容される賦形剤を含む眼科用組成物であって、点眼薬、懸濁剤、目軟膏剤、乳剤、目用パッド、目用パッチ剤、目用マスク、目用クリーム剤、噴霧剤、ゲル剤、注射剤または留置剤の形態である、眼科用組成物をさらに提供する。
【0028】
本開示は、非ドライアイの眼表面疾患および/または状態、角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態、再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態、結膜炎に関連する眼表面疾患および/または状態、眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態、マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態、眼精疲労、近視に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法であって、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む、方法を提供する。
【0029】
本開示は、非ドライアイの眼表面疾患および/または状態、角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態、再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態、結膜炎に関連する眼表面疾患および/または状態、眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態、マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態、眼精疲労、近視に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法であて、対象に、本開示によって提供される治療有効量の眼科用組成物を投与することを含む、方法をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0031】
本明細書で使用される場合、表現「Aおよび/またはB」は、3つの場合を含む:(1)A;(2)B;ならびに(3)AおよびB。
【0032】
本明細書で使用される場合、アラニル-グルタミンへの言及は、特に明記されない限り、または文脈に矛盾しない限り、アラニル-グルタミン自体および薬学的に許容されるその塩を包含する。
【0033】
本明細書で使用される場合、表現「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容される酸を用いて形成される酸付加塩、同様に薬学的に許容される塩基を用いて形成される塩を含む。薬学的に許容される酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸、および酢酸、クエン酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸などの有機酸を含む。薬学的に許容される塩基を用いて形成される塩は、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などを含むが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の発明者らは、予期しなかったことだが、アラニル-グルタミンを含有する眼科用液剤、眼科用ゲル剤ならびに眼科用パッチ剤およびマスクが、マイボーム腺機能不全を効果的に緩和し、結膜炎(目の発赤)を処置し、角膜潰瘍を処置し、眼精疲労を有意に軽減し、近視を防止できることを発見し、したがって、非ドライアイの眼表面疾患および/または状態、角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態、特に糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和し、再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、特に外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和し、眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和し、結膜炎(目の発赤)に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和し、眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和し、マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態、眼精疲労に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和し、かつ近視を防止するためのための医薬品におけるアラニル-グルタミンの使用を示す。
【0035】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、非ドライアイの眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0036】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0037】
一部の実施形態では、「角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態」は、さまざまな因子によって引き起こされる、角膜炎、角膜ジストロフィー、機械的角膜上皮傷害、再発性角膜上皮びらん、眼瞼内反、睫毛乱生;眼瞼炎、マイボーム腺機能不全、ハイポファシス(hypophasis)、角膜の帯状変性、ザルツマン結節状角膜変性、コンタクトレンズ後面角膜上皮傷害、薬物関連角膜上皮傷害、外科関連の角膜上皮傷害、スティーブン・ジョンソン症候群、シェーグレン症候群、瘢痕性類天疱瘡などを含むが、これらに限定されない。
【0038】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0039】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0040】
一部の実施形態では、「糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態」は、表層性の点状角膜炎、角膜上皮再生の遅延、再発性角膜上皮びらん、持続的な角膜上皮喪失、慢性上皮炎、表層角膜潰瘍、線維状角膜炎、無菌の角膜潰瘍、デスメ膜折りたたみ、角膜知覚鈍麻、および角膜浮腫を含むが、これらに限定されない。
【0041】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0042】
本開示の一部の実施形態では、再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態は、外科関連または非外科関連であってもよい。
【0043】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0044】
一部の実施形態では、「外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態」は、表層性の点状角膜炎、角膜上皮再生の遅延、再発性角膜上皮びらん、持続的な角膜上皮喪失、慢性上皮炎、表層角膜潰瘍、線維状角膜炎、無菌の角膜潰瘍、デスメ膜折りたたみ、角膜知覚鈍麻、および角膜浮腫を含むが、これらに限定されない。
【0045】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0046】
一部の実施形態では、「眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態」は、白内障手術後の眼組織傷害および眼の異物感、緑内障手術後の眼組織傷害および眼の異物感、眼外傷および/または手術後の眼の傷、機械的眼傷害によって引き起こされる傷害、眼内異物によって引き起こされる傷害、眼化学熱傷によって引き起こされる傷害、眼熱傷によって引き起こされる傷害、放射線誘発眼傷害によって引き起こされる傷害、光傷害によって引き起こされる傷害、電離放射線およびマイクロ波によって引き起こされる傷害、目の感電およびストレス誘発性の眼傷害によって引き起こされる傷害を含むが、これらに限定されない。
【0047】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、結膜炎(目の発赤)に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0048】
一部の実施形態では、「結膜炎(目の発赤)に関連する眼表面疾患および/または状態」は、細菌性結膜炎、ウイルス性結膜炎、トラコーマクラミジア結膜炎、封入体性結膜炎、春季角結膜炎、アレルギー性結膜炎、季節性アレルギー性結膜炎、巨大乳頭結膜炎、フリクテン性角結膜炎、自己免疫結膜炎、結膜腫瘍、翼状片を含むが、これらに限定されない。
【0049】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0050】
一部の実施形態では、「眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態」は、細菌性結膜炎、ウイルス性結膜炎、トラコーマクラミジア結膜炎、封入体性結膜炎、春季角結膜炎、アレルギー性結膜炎、季節性アレルギー性結膜炎、急性虹彩毛様体炎、角膜炎、結膜下出血、巨大乳頭結膜炎、フリクテン性角結膜炎、自己免疫結膜炎、結膜腫瘍、翼状片、白内障および緑内障の手術ならびにレーザー近視手術などの眼手術によって引き起こされるうっ血を含むが、これらに限定されない。
【0051】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0052】
一部の実施形態では、「マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態」は、眼瞼炎、マイボーム腺機能不全、およびマイボーム腺機能不全に起因する結膜うっ血を含むが、これらに限定されない。
【0053】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、眼精疲労に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0054】
一部の実施形態では、「眼精疲労に関連する眼表面疾患および/または状態」は、結膜炎、マイボーム腺機能不全、眼瞼炎、結膜炎、または眼瞼下垂を含むが、これらに限定されない。
【0055】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、近視を防止するための医薬品の調製におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0056】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、眼精疲労を軽減または緩和する美容製品、健康ケア製品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0057】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、近視を防止する美容製品、健康ケア製品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「美容製品」は、目用クリーム剤、目用ゲル剤、目用噴霧剤、目用パッチ剤、目用パッド、目用マスクなどを含むが、これらに限定されない形態をとり得る。
【0059】
本明細書で使用される場合、「健康ケア製品」は、「消毒製品番号」、「健康製品番号」および「医療機器製品番号」の点眼薬、洗眼剤、目用ゲル剤、目用噴霧剤、目用パッチ剤、目用パッド、目用マスクなどを含み得るが、これらに限定されない。
【0060】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、目のための美容製品、健康ケア製品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用を提供し得る。
【0061】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、アラニル-グルタミンおよび眼科的に許容される賦形剤を含む眼科用組成物であって、点眼薬、懸濁剤、目軟膏剤、乳剤、目用パッド、目用パッチ剤、目用マスク、目用クリーム剤、噴霧剤、ゲル剤、注射剤または留置剤の形態である、眼科用組成物を提供し得る。
【0062】
一部の実施形態では、眼科用組成物は、医薬製品、美容製品または健康ケア製品であってもよい。
【0063】
一部の実施形態では、点眼薬は、眼科用液剤または眼科用懸濁剤であり得る。
【0064】
一部の実施形態では、眼科用組成物は、等張性または低張性の形態である。
【0065】
本明細書で使用される場合、「等張性」は、眼科用医薬組成物の浸透圧が、眼表面上皮細胞の浸透圧と同一または実質的に同一であることを指す。本明細書で使用される場合、「低張性」は、眼科用医薬組成物の浸透圧が、眼表面上皮細胞の浸透圧より低いことを指す。
【0066】
一部の実施形態では、眼科用組成物中のアラニル-グルタミンの濃度は、0.05%w/w~10%w/wである。
【0067】
一部の実施形態では、眼科用組成物中のアラニル-グルタミンの濃度は、0.05%w/w~9%w/w、0.05%w/w~8%w/w、0.05%w/w~7%w/w、0.05%w/w~6%w/w、0.05%w/w~5%w/w、0.05%w/w~4%w/w、0.05%w/w~3%w/w、0.05%w/w~2%w/w、0.05%w/w~1%w/wまたは0.05%w/w~0.1%w/wである。
【0068】
一部の実施形態では、眼科的に許容される賦形剤は、浸透圧調整剤、静菌剤、増粘剤、pH調整剤、安定剤、界面活性剤、保水剤などのうちの1つまたは複数を含む。
【0069】
一部の実施形態では、浸透圧調整剤は、ラウロカプラム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ホウ酸、ホウ砂、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、マンニトール、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、2-(4-n-オクチルフェニルエチル)-2-アミノプロピレングリコール塩酸塩、グルコース、スクロース、フルクトースおよびラクトースのうちの1つまたは複数から選択される。一部の実施形態では、浸透圧調整剤は、ラウロカプラム、ホウ酸、グリセリン、プロピレングリコール、および/または塩化ナトリウムである。
【0070】
一部の実施形態では、静菌剤は、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、クオタニウム塩-73、酢酸クロルヘキシジン、グルコースクロルヘキシジン、トリクロロtert-ブタノール、フェノキシエタノール、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸エチル、およびヒドロキシ安息香酸プロピルのうちの1つまたは複数から選択される。一部の実施形態では、静菌剤は、塩化ベンザルコニウム、クオタニウム-73、フェノキシエタノール、および/またはヒドロキシ安息香酸エチルである。
【0071】
一部の実施形態では、増粘剤は、ヒアルロン酸ナトリウム、トリエタノールアミン、カーボポール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールおよびポビドンのうちの1つまたは複数から選択される。一部の実施形態では、増粘剤は、ヒアルロン酸ナトリウム、カーボポール940、および/またはトリエタノールアミンである。
【0072】
一部の実施形態では、pH調整剤は、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、ホウ酸、ホウ砂、酢酸、酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸およびリン酸のうちの1つまたは複数から選択される。一部の実施形態では、pH調整剤は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、および水酸化ナトリウムのうちの1つまたは複数から選択される。一部の実施形態では、pH調整剤は水酸化ナトリウムである。
【0073】
一部の実施形態では、安定剤は、エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸ジアミン、2,3-ジメルカプト-1-プロパンスルホン酸、ジメルカプトコハク酸、ジメルカプロール、メシル酸デフェロキサミン、α-リポ酸、ニトリロトリアセテート、ペニシラミン、エチレングリコールジメタクリレート、オレイン酸ナトリウム、無水亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、デフェロキサミン、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、ならびにリンゴ酸、クエン酸およびコハク酸のナトリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩のうちの1つまたは複数から選択される。一部の実施形態では、安定剤はエデト酸二ナトリウムである。
【0074】
一部の実施形態では、界面活性剤は、ポロキサマー、ドデシル硫酸ナトリウム、Tween-20、Tween-40、Tween-60、Tween-65、Tween-80、Tween-85、レシチン、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコール15-ヒドロキシステアレートのうちの1つまたは複数から選択される。一部の実施形態では、界面活性剤はTween-80から選択される。
【0075】
一部の実施形態では、保水剤は、グリセロール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、キシリトール、ポリプロピレングリコール、ソルビトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、尿素、ヒドロキシエチル尿素、メチルグルコースポリエーテル、キチン誘導体、トレハロース、シロキクラゲ多糖体、ヒアルロン酸ナトリウム、パンテノール、セラミド、天然植物抽出物などのうちの1つまたは複数から選択される。
【0076】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、非ドライアイの眼表面疾患および/または状態、角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態、再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態、結膜炎に関連する眼表面疾患および/または状態、眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態、マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態、眼精疲労、近視に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法であって、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む、を提供し得る。
【0077】
本明細書で使用される場合、表現「対象」は、哺乳動物、霊長類(例えば、ヒト、男性または女性)、イヌ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスなどを指す。一部の実施形態では、対象は霊長類である。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0078】
本明細書で使用される場合、表現「治療有効量」は、疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する量などの、対象における生物学的または医学的な応答を引き出すことができる、本開示のアラニル-グルタミンまたは眼科用組成物の量を指す。
【0079】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、非ドライアイの眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む。
【0080】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む。
【0081】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む。
【0082】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む。
【0083】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む。
【0084】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む。
【0085】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む。
【0086】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、結膜炎に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む。
【0087】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む。
【0088】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む。
【0089】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、眼精疲労に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む。
【0090】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、近視を防止する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量のアラニル-グルタミンを投与することを含む。
【0091】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、非ドライアイの眼表面疾患および/または状態、角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態、再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態、結膜炎に関連する眼表面疾患および/または状態、眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態、マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態、眼精疲労、近視に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法であって、対象に、本開示の眼科用組成物を投与することを含む、方法を提供し得る。
【0092】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、非ドライアイの眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するする方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量の本開示の眼科用組成物を投与することを含む。
【0093】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量の本開示の眼科用組成物を投与することを含む。
【0094】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量の本開示の眼科用組成物を投与することを含む。
【0095】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量の本開示の眼科用組成物を投与することを含む。
【0096】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量の本開示の眼科用組成物を投与することを含む。
【0097】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量の本開示の眼科用組成物を投与することを含む。
【0098】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量の本開示の眼科用組成物を投与することを含む。
【0099】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、結膜炎に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量の本開示の眼科用組成物を投与することを含む。
【0100】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量の本開示の眼科用組成物を投与することを含む。
【0101】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量の本開示の眼科用組成物を投与することを含む。
【0102】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、眼精疲労に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効量の本開示の眼科用組成物を投与することを含む。
【0103】
本開示の一実施形態によれば、本開示は、近視を防止する方法を提供し得て、本方法は、対象に、治療有効用量の本開示の眼科用組成物を投与することを含む。
【0104】
本開示の技術的な解決策は、実施例と組み合わせて説明することによって、より明瞭となりかつ明確に記載される。これらの実施例は単に例示的な目的のためのものであって、本開示の保護範囲の制限を意図するものではないことが理解されよう。本開示の保護範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義される。
【実施例
【0105】
特に明記されない限り、以下の実施例で使用した試薬および器具は、市販されている従来の製品である。特に明記されない限り、実験は、従来の条件または製造業者によって推奨される条件下で実施される。実施例で使用した「L-アラニル-L-グルタミン」、すなわち、アラニル-グルタミン自体は、Hubei Bioche Pharmaceutical Technology Co.,Ltd.から入手可能であった。実施例で使用した0.25%クロラムフェニコール点眼薬はShandong Bausch & Lamb Freda Pharmaceutical Co.,Ltd.から入手可能であり、0.1%ジクロフェナクナトリウム点眼薬はShenyang Xingqi Eye Medicine Co.,Ltd.から入手可能であり、0.1%プラノプロフェン点眼薬はGuangdong Zhongsheng Pharmaceutical Co.,Ltd.から入手可能であり、ヒアルロン酸ナトリウム点眼薬はZhejiang Jianfeng Pharmaceutical Co.,Ltd.から入手可能であり、Zhenshiming点眼薬はZhenshiming Pharmaceutical Co.,Ltd.から入手可能であり、ポリビニルアルコール点眼薬はHubei Yuanda Tiantianming Pharmaceutical Co.,Ltd.から入手可能であった。
【0106】
実施例1
アラニル-グルタミンを含有する眼科用液剤、眼科用クリーム剤および眼科用ゲル剤の調製
アラニル-グルタミンを含有する眼科用液剤、眼科用クリーム剤、および眼科用ゲル剤を、以下の組成および調製方法により調製した:
【0107】
【表1】
【0108】
眼科用液剤の調製方法:
(1)ホウ酸、塩化ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、およびエデト酸二ナトリウムを表1に記載の比率で秤量し、80%の注射用水を添加し、撹拌下で溶解した。
(2)L-アラニル-L-グルタミンを表1に記載の比率で添加し、撹拌下で溶解した。撹拌下で水酸化ナトリウム0.5mol/Lを用いて、pHを6.0に調整した。
(3)残りの量を注射用水で補い、得られた混合物には、それぞれ0.45μmおよび0.22μmの無菌濾過器を通して2段階の濾過を施し、次に点眼薬瓶に充填した。
【0109】
溶液賦形剤を、上述の組成および方法により調製した。溶液賦形剤と眼科用液剤との間の唯一の違いは:L-アラニル-L-グルタミンを、等量の水で置き換えることであった。
【0110】
【表2】
【0111】
眼科用クリーム剤の調製方法:
(1)白色ワセリン、流動パラフィン、ステアリン酸およびモノステアリン酸グリセリルを表2に記載の比率で秤量し、油相タンクに加え、75~85℃に加熱して溶解し、均等に撹拌し、油相として使用した。
(2)精製水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、ヒアルロン酸ナトリウム、およびエデト酸二ナトリウムを表2に記載の比率で秤量し、水相タンクに加え、75~85℃に加熱し、撹拌して溶解し、水相として使用した。
(3)L-アラニル-L-グルタミンを表2に記載の比率で水相に添加し、溶解した。
(4)油相液を乳化タンクに加え、撹拌を開始し、次に水相液を乳化タンクに加えた。混合物を65~75℃で20~30分間乳化し、35℃未満まで冷却し、撹拌を停止して、クリーム剤を得た。
【0112】
クリーム賦形剤を、上述の組成および方法により調製した。クリーム賦形剤と眼科用クリーム剤と間の唯一の違いは:L-アラニル-L-グルタミンを、等量の水で置き換えることであった。
【0113】
【表3】
【0114】
眼科用ゲル剤の調製方法:
(1)L-アラニル-L-グルタミンを精製水50mlに溶解して、L-アラニル-L-グルタミン水溶液を得た。
(2)カーボポール940およびグリセリンを十分に混合し、(1)で得たL-アラニル-L-グルタミン水溶液に添加し、カーボポールを十分に膨潤させた。
(3)ヒドロキシ安息香酸エチルをエタノールに溶解し、プロピレングリコールと混合し、撹拌して、(2)の溶液にゆっくりと添加した。
(4)Tween-80およびトリエタノールアミンを残りの量の精製水に溶解し、撹拌下で(3)の溶液に添加し、均一になるまで撹拌して、ゲルを得た。
【0115】
ゲル賦形剤を、上述の組成および方法により調製した。クリームゲル剤と眼科用ゲル剤との間の唯一の違いは:L-アラニル-L-グルタミンを、等量の水で置き換えることであった。
【0116】
実施例2
刺激性試験
(1)皮膚刺激性試験
健康なニュージーランド種ウサギ36羽を、ウサギ6羽/群、半数は雄および半数は雌で無作為に6群に分け、単回投与および複数回投与の皮膚刺激実験に使用し、それぞれの実験を2群に、すなわち、無傷皮膚群および傷害皮膚群に分け、ホモボディ左右自己制御(homobody left-right self-control)法を使用して全ての比較を実施した。ニュージーランド種ウサギの背部で、8.0%硫化ナトリウム水溶液を使用して、各ウサギの背部の2部位(およそ3.0cm×3.0cmの範囲)を除毛し、除毛領域に紅斑、浮腫または傷害を有するニュージーランド種ウサギは除外した。傷害皮膚モデルを、除毛の24時間後に確立:最初に、除毛領域を温水で洗浄し、ヨードフォールで消毒し、次に無菌針を使用してそこに「#」記号を軽く印付けし、皮膚にわずかな程度に集中的出血する皮膚傷害を起こし;無傷皮膚モデルを確立:無傷の、傷害されていない、異常のない皮膚範囲を選択した。
【0117】
10%眼科用液剤および溶液賦形剤、10%眼科用クリーム剤およびクリーム賦形剤、10%眼科用ゲル剤およびゲル賦形剤を、異なるニュージーランド種ウサギ(傷害皮膚群および無傷皮膚群)の除毛領域に均等に適用し、表面を薄ガーゼで覆い、包帯をし、非刺激性の通気性不織布テープで固定した。単回投与皮膚刺激性実験(1回投与)および複数回投与皮膚刺激性実験(1日1回、14日間連続投与)。特定の工程:試験物質を皮膚に24時間接触させ、試験薬に対する異なる部位の皮膚応答(紅斑、浮腫)を、毎日、それぞれ投与の0.5時間前および1時間前に、ならびに薬物除去後に裸眼で観察して、記録した。最後の薬物除去後72時間に、全ての動物を安楽死させ、投与部位からの皮膚組織を組織病理学的検査用に採取した。皮膚刺激性応答点数化標準を参考にして統計的点数化を実施し、算出された点数に基づいて皮膚刺激性の強度を評価した。
【0118】
【表4】
【0119】
【表5】
【0120】
本試験の条件下で、単回適用投与を、従来のニュージーランド種ウサギの無傷皮膚および傷害皮膚に対して実施し、裸眼で観察された投与部位の平均刺激性点数は0であり、刺激性がなかったことを示している。特定の結果を表6に示す。
【0121】
反復適用投与を、従来のニュージーランド種ウサギの無傷皮膚および傷害皮膚に対して1日1回、14日間連続して実施した。裸眼で観察された投与部位の平均刺激性点数は全て0であり、刺激性がなかったことを示し;組織病理学的検査の平均刺激性点数は0であり、刺激性がなかったことを示している。特定の結果を表7に示す。
【0122】
【表6】
【0123】
【表7】
【0124】
(2)皮膚アレルギー性試験
健康なモルモット56匹を無作為に7群に分け、すなわち、10%眼科用液剤および溶液賦形剤、10%眼科用クリーム剤およびクリーム賦形剤、10%眼科用ゲル剤およびゲル賦形剤、正の対照群に分け、各群に8匹、半数は雄および半数は雌とした。エタノール中の10%硫化ナトリウム水溶液を使用して、モルモットの背部の除毛を実施し、除毛領域は約3.0cm×3.0cmであった。除毛の24時間後、皮膚傷害のない対象を選別し、実験用として選択した。投与方法は、単回投与皮膚刺激性試験の投与方法と同じであった。正の対照群では、1%の2,4-ジニトロクロロベンゼン0.2mlを、各モルモットの除毛領域に6時間適用し、次に温水で洗い流した。7日目および14日目に同じ方法を使用して再び感作させ、合計3回の感作を行った。試験物質の最終の感作後14日に、試験物質(正の対照群:0.1%の2,4-ジニトロクロロベンゼン)を対応するモルモット群の除毛領域に再び適用した。6時間後、試験部位を温水で洗浄し、皮膚アレルギー応答を直ちに観察して、試験物質の洗浄後24時間、48時間、および72時間に1回記録して、アレルギー応答を皮膚アレルギー応答点数化標準により点数化した(表4)。試験物質の感作強度を感作発生率に基づいて評価し、ここで、平均点数=(紅斑形成合計点数+浮腫形成合計点数)/動物の合計数、感作率%=(紅斑、浮腫、または全身的なアレルギー応答を有する動物の数/試験動物の合計数)×100%である。
【0125】
【表8】
【0126】
試験中に、全ての動物において、明らかな異常は全般に観察されなかった。正の対照群中の8件(8/8)において、動物に対する各感作および薬物除去後1時間および24時間に、投与部位に軽度から重度の症状の紅斑および浮腫が見られ、感作の4日目から最終の感作後の7日目までに、動物の投与部位にさまざまな大きさの白色から暗赤色の痂皮が見られ得た。感作発生率は100%であり、等級はレベルVであり、感作強度は極度の感作であった。
【0127】
10%眼科用液剤群および溶液賦形剤群、10%眼科用クリーム剤群およびクリーム賦形剤群、10%眼科用ゲル剤群およびゲル賦形剤群の各群に関して:チャレンジ投与および薬物除去後1時間、24時間、および48時間に、8匹の動物(8/8)の投与部位における皮膚に、アレルギー応答の症状は見られなかった。平均点数は0であり、感作発生率は0%であり、等級はレベルIであり、感作強度は弱い感作であった。特定の結果を表9に示す。
【0128】
【表9】
【0129】
実施例3
伝染性急性結膜炎の軽減の有効性に対する試験
(1)重度の状態を有する伝染性急性結膜炎の処置に関する試験
試験群:同等の状態を有する24人の患者、13人の男性および11人の女性、年齢8~75歳、重度の状態(患者は、両目に発赤、まぶたの発赤および腫脹、羞明、目のかゆみ、目の灼熱感、流涙または涙漏、ならびに目に多くの目やにを有した)を有する患者を選択した。実施例1で調製した0.05%眼科用液剤を、1日3回、5日間連続して点眼した。
【0130】
対照群:同等の状態を有する23人の患者、12人の男性および11人の女性、年齢8~73歳、重度の状態(患者は、両目に発赤、まぶたの発赤および腫脹、羞明、目のかゆみ、目の灼熱感、流涙または涙漏、ならびに目に多くの目やにを有した)を有する患者を選択した。0.25%クロラムフェニコール点眼薬を、1日3回、5日間連続して点眼した。
【0131】
5日後に治療効果を観察し、15日後に追跡訪問を実行して、再発しているかどうかを観察した。試験群を対照群と比較して、治癒率および再発率を表10に示す。
【0132】
【表10】
【0133】
結果は:重度の状態を有する伝染性急性結膜炎に関して、実施例1の眼科用液剤の治癒率は、0.25%クロラムフェニコール点眼薬の治癒率より有意に高く、再発率は、0.25%クロラムフェニコール点眼薬の再発率より有意に低いことを示した。
【0134】
(2)中等度の状態を有する伝染性急性結膜炎の処置に関する試験
試験群:同等の状態を有する25人の患者、13人の男性および12人の女性、年齢8~75歳、中等度の状態(患者は、両目に発赤、まぶたの発赤および腫脹、羞明、目のかゆみ、ならびに目の灼熱感を有した)を有する患者を選択した。実施例1で調製した0.05%眼科用液剤を、1日3回、5日間連続して点眼した。
【0135】
対照群:同等の状態を有する24人の患者、12人の男性および12人の女性、年齢8~73歳、中等度の状態(患者は、両目に発赤、まぶたの発赤および腫脹、羞明、目のかゆみ、ならびに目の灼熱感を有した)を有する患者を選択した。0.25%クロラムフェニコール点眼薬を、1日3回、5日間連続して点眼した。
【0136】
5日後に治療効果を観察し、15日後に追跡訪問を実行して、再発しているかどうかを観察した。試験群を対照群と比較して、治癒率および再発率を表11に示す。
【0137】
【表11】
【0138】
結果は、中等度の状態を有する伝染性急性結膜炎に関して、実施例1の眼科用液剤の治癒率は、0.25%クロラムフェニコール点眼薬の治癒率より有意に高く、再発率は、0.25%クロラムフェニコール点眼薬の再発率より有意に低いことを示した。
【0139】
要約すると、アラニル-グルタミンを含有する組成物は、伝染性急性結膜炎を効果的に処置、軽減または緩和することができる。
【0140】
実施例4
眼うっ血の軽減の有効性に対する試験
(1)白内障手術によって引き起こされる眼うっ血
試験群:白内障手術後の結膜うっ血に関する点数が全て(+++)であった19人の患者を選択した;7人の男性および12人の女性、年齢62~77歳であった。実施例1で調製した0.05%眼科用液剤を、1滴/目/回で各投与を4時間の間隔で、3回投与/日、3日間連続して点眼した。
【0141】
対照群:白内障手術後の結膜うっ血に関する点数が全て(+++)であった17人の患者を選択した;6人の男性および11人の女性、年齢62~77歳であった。0.1%ジクロフェナクナトリウム点眼薬を、1滴/目/回で各投与を4時間の間隔で、3回投与/日、3日間連続して投与した。
【0142】
2群の患者の結膜うっ血を、3日目の点眼薬による2回目の投与後、30分間観察した。結膜うっ血の等級標準を以下のように分類する:(1)うっ血なし(-);(2)軽度のうっ血(+):うっ血は瞼裂に限定され、血管は明赤色である;(3)中等度のうっ血(++):うっ血は明らかに円蓋部に到達し得て、血管は詰まり、暗赤色に見える;(4)重度のうっ血(+++):結膜全体が散在性にうっ血し、血管は赤紫色で不鮮明である。
【0143】
2群間の患者の結膜うっ血を比較した結果を表12に示す。2群の独立試料の統計にM-W U検定を使用し、マン・ホイットニーのU値は97.000、P=0.042<0.05であり;結果は、実施例1の眼科用液剤は、白内障手術によって引き起こされる眼うっ血の軽減において、0.1%ジクロフェナクナトリウム点眼薬より有意に良好であり、実施例1の眼科用液剤は、白内障手術後の有意な臨床適用価値を有することを示した。
【0144】
【表12】
【0145】
(2)他のタイプの疾患によって引き起こされる眼うっ血
免疫性眼表面疾患および炎症などの理由によって引き起こされる結膜うっ血の点数が(+++)であった患者を選択した。
【0146】
試験群:23件あり、男性12人および女性11人、年齢8~65歳であった。実施例1で調製した0.05%眼科用液剤を、1滴/目/回で各投与を4時間の間隔で、3回投与/日、3日間連続して点眼した。
【0147】
対照群:24件あり、男性13人および女性11人、年齢8~63歳であり、0.1%プラノプロフェン点眼薬を、1滴/目/回で各投与を4時間の間隔で、3回投与/日、3日間連続して点眼した。
【0148】
2群の患者の結膜うっ血を、3日目の点眼薬による2回目の投与後、30分間観察した。結膜うっ血の等級標準を以下のように分類する:(1)うっ血なし(-);(2)軽度のうっ血(+):うっ血は瞼裂に限定され、血管は明赤色である;(3)中等度のうっ血(++):うっ血は明らかに円蓋部に到達し得て、血管は詰まり、暗赤色に見える;(4)重度のうっ血(+++):結膜全体が散在性にうっ血し、血管は赤紫色で不鮮明である。
【0149】
2群間の患者の結膜うっ血を比較した結果を表13に示す。2群の独立試料の統計にM-W U検定を使用し、マン・ホイットニーのU値は182.500、P=0.031<0.05であり;結果は、実施例1の眼科用液剤は、他の疾患によって引き起こされる眼うっ血に関して、0.1%プラノプロフェン点眼薬より有意に良好な治療効果を有し、実施例1の眼科用液剤は、他のタイプの疾患によって引き起こされる眼うっ血に対しても有意な臨床適用価値を有することを示した。
【0150】
【表13】
【0151】
(3)生活様式またはアイメイクアップによって引き起こされる眼うっ血
通常の軽度の眼うっ血もしくは明らかな病原因子を伴わない軽度の眼うっ血、またはアイメイクアップによって引き起こされる軽度の眼うっ血を有する対象を集めた(患者が両目に軽度のうっ血を有した場合、各患者の右眼を観察用の目として選択した)。
【0152】
試験群:60件あり、男性15人および女性45人、年齢20~50歳であった。実施例1で調製した0.05%眼科用液剤を、1滴/目/回で各投与を4時間の間隔で、3回投与/日、3日間連続して点眼した。
【0153】
対照群:60件あり、男性16人および女性44人、年齢19~50歳であり、ヒアルロン酸ナトリウム点眼薬を、1滴/目/回で各投与を4時間の間隔で、3回投与/日、3日間連続して点眼した。
【0154】
1日目の点眼薬による1回目投与後10分および30分、ならびに2日目および3日目の点眼薬による1回目投与後30分に、2群の対象の結膜うっ血を観察した。結膜うっ血の等級標準を以下のように分類する:(1)うっ血なし(-);(2)軽度のうっ血(+):うっ血は瞼裂に限定され、血管は明赤色である;(3)中等度のうっ血(++):うっ血は明らかに円蓋部に到達し得て、血管は詰まり、暗赤色に見える;(4)重度のうっ血(+++):結膜全体が散在性にうっ血し、血管は赤紫色で不鮮明である。
【0155】
2群間の患者の結膜うっ血を比較した結果を表14に示す。1回目投与後10分および30分に、試験群の有効率はそれぞれ65%および86.3%であり、対照群の有効率はそれぞれ23.3%および28.3%であった。2群間の有効率に有意な差があった(P<0.05またはP<0.01)。2日目および3日目の投与後30分に、試験群の有効率はそれぞれ98.3%および98.3%であり、対照群の有効率はそれぞれ45%および55%であった。2群間の有効率に有意な差があった(P<0.01)。実施例1の眼科用液剤が、通常の軽度の眼うっ血もしくは明らかな病原因子を伴わない軽度の眼うっ血、またはアイメイクアップによって引き起こされる軽度の眼うっ血の処置において、有意な効果および有意な臨床適用価値を有することが示唆された。
【0156】
【表14】
【0157】
【表15】
【0158】
実施例5
角膜潰瘍の処置の有効性に関する試験
角膜潰瘍のvitroモデル
ウサギの角膜を採取し、小片に切断し、5~10倍の体積の5%トリトン溶液を添加し、塊状粒子がなくなるまで均質化し、次に3000r/分で10分間遠心分離にかけ、上清を取り出した。上清5mlを取り出し、5mlの完全フロインドアジュバントと混合して、後で使用する混合溶液を調製した。
【0159】
SPF等級ICRのマウスを、正常群、免疫群、およびシクロホスファミド群に分け、マウス10匹/群とした。正常群は、マウス1匹当たり、生理食塩水0.5mlの皮下注射を受け;免疫群およびシクロホスファミド群の各マウスは、それぞれ、混合溶液+生理食塩水、混合溶液+シクロホスファミド300mg/kgの皮下注射を受け、注射部位は重複せず;注射を1日おきに1回、合計10回実施した。最終注射後3日に、瀉血法を使用してマウスを安楽死させ、眼球を取り出し、無菌状態下で小片に切断した。同時に、角膜および自家血液から分離した白血球を、24-ウエル培養プレート中で共培養した。正常群における角膜、免疫群における角膜、シクロホスファミド群における角膜、および免疫群における角膜への投与(実施例1に記載の0.05%眼科用液剤)を設定し、各角膜に対して5個の複製ウエルを設定し、溶液を24時間毎に1回交換し、角膜組織細胞の成長を観察した。
【0160】
試験結果
正常群の72時間および120時間における角膜細胞の成長率は、24.0%および36.0%であり、一方、免疫群の角膜細胞の成長率は両方とも0%であった。0.05%眼科用液剤の投与後、72時間および120時間における角膜細胞の成長率は、8%および14%であり、免疫群と比較して有意な差(P<0.01)があり、したがって眼科用液剤が細胞成長の免疫応答を阻害し、角膜細胞の成長を促進することが証明された。したがって、アラニル-グルタミンを含む組成物は、角膜上皮傷害、角膜潰瘍、再発性角膜上皮びらん、および糖尿病性角膜症を、効果的に処置、軽減または緩和することができる。
【0161】
【表16】
【0162】
実施例6
眼精疲労の軽減の有効性に対する試験
(1)眼精疲労の症状の緩和に関する試験
本開示の実施例1で調製した0.05%眼科用クリーム剤、0.05%眼科用ゲル剤、0.05%眼科用液剤、およびZhenshiming点眼薬の使用後30分に、眼精疲労の症状の緩和を観察し、経験豊富な医師によって点数化し、合計有効率を算出した。算出式は以下の通りである:
症状点数の改善率=(処置前の点数-処置後の点数)/処置前の点数×100%
有意に有効:症状点数の改善率が80%より大きい;
有効:症状点数の改善率が40%より大きい;
無効:症状点数の改善率が40未満、または変化なし、または悪化;
合計有効率=(有意に有効+有効)の人数/合計人数×100%
【0163】
実験における合計人数は107人であり、0.05%眼科用クリーム剤群に26人、0.05%眼科用ゲル剤群に28人、0.05%眼科用液剤群に28人、およびZhenshiming点眼薬群に25人を含んだ。特定の結果を表16に示す。
【0164】
【表17】
【0165】
上記の実験結果から、実施例1の眼科用クリーム剤、眼科用ゲル剤および眼科用液剤が、眼精疲労の症状の緩和において、Zhenshiming点眼薬より有意に良好であることが分かり得る。
【0166】
(2)明所視の持続時間の試験
明所視の持続を、「Notice on the Issuance of 9 Health Function Assessment Methods including the Method for Assessment of Antioxidant Function、Health Food and Cosmetics Supervision Department、State Food and Drug Administration(2012) No.107」における「Method for Assessment of Asthenopia Relief Function」を参考にして測定した。この研究は、自己制御処置の前と後とを比較する調査方法を採用し、結果を表17に示す。
【0167】
【表18】
【0168】
表17は:実施例1の眼科用クリーム剤、眼科用ゲル剤および眼科用液剤を使用した後、明所視の持続時間は、自己制御試験の前と比較して有意に改善され(p<0.05)、増加率は全て20%より大きく、効果はZhenshiming点眼薬より有意に良好であったことを示す。
【0169】
眼精疲労の症状の緩和および明所視の持続時間において、眼科用クリーム剤、眼科用ゲル剤および眼科用液剤の有意な効果と組み合わせると、アラニル-グルタミンを含む組成物が、眼精疲労を緩和する機能を有することが効果的に証明された。
【0170】
実施例7
異物感によって主に引き起こされる眼不快感の治療効果に関する研究
判断標準として異物感点数を使用し、点数0は異物感がないことを表し、点数10は強い異物感を表した。白内障または緑内障などの目の疾患のための手術後、6点より高い異物感の自己採点を有する合計27人の患者を選択した。
【0171】
試験群:14件あり、男性8人および女性6人、年齢63~72歳であった。実施例1で調製した0.05%眼科用液剤を、1滴/目/回で各投与を4時間の間隔で、3回投与/日、7日間連続して点眼した。
【0172】
対照群:13件あり、男性6人および女性7人、年齢63~73歳であった。ヒアルロン酸ナトリウム点眼薬を、1滴/目/回で各投与を4時間の間隔で、3回投与/日、7日間連続して投与した。
【0173】
2群の患者の異物感の自己採点を投与後に観察した。
【0174】
結果:薬物投与後の患者の異物感を2群間で比較した結果を表18に示す。統計に、2群の独立試料のT検定を使用した。対照群と比較して、すなわち群間で比較して、試験群における患者の異物感点数は、投与後1時間、3日、および7日で有意に低減し(P<0.05またはP<0.01);投与前の異物感点数と比較して、すなわち、群内で比較して、試験群における患者の異物感点数は、投与後1時間、3日、および7日に有意に低減し(P<0.05またはP<0.01)、試験群の患者の異物感は、投与回数の増加と共に、より明らかに低減した。結果は、本開示の眼科用液剤が、主に異物感を呈する術後の眼不快感を低減することができ、術後の創傷治癒を促進できることを示した。
【0175】
【表19】
【0176】
実施例8
マイボーム腺機能不全(MGD)によって引き起こされる眼表面疾患の処置、緩和または軽減に関する試験
眼科で中等度または重度のMGDと診断された90人の患者を選択した(患者が両目に中等度または重度のMGDを有した場合、各患者の右眼を観察用の目として選択した)。全ての患者を、対照群および研究群に無作為に分け、各群45件であった。
【0177】
全ての患者に基本処置を行い、特定の操作方法は:(1)眼瞼縁部の洗浄:医療用綿棒を0.9%塩化ナトリウム注射液に浸し、この綿棒を使用して眼瞼縁を1日1回洗浄した。(2)温湿布:グリーンハウスミラー(greenhouse mirror)の目用パッドを装着し、快適になるようにゴムバンドを調整し、電源を入れ、モード2を選択(陰圧マッサージ+40℃で円形温湿布)、15分/回、1回/日であった。
【0178】
試験群:男性23人および女性22人、平均年齢(37.6±7.1)歳であった。実施例1で調製した0.05%眼科用液剤を、1滴/目/回で各投与を4時間の間隔で、3回投与/日、7日間連続して点眼した。
【0179】
対照群:男性24人および女性21人、平均年齢(36.9±7.0)歳であり、ポリビニルアルコール点眼薬を、1滴/目/回で各投与を4時間の間隔で、3回投与/日で7日間連続して点眼した。
【0180】
眼瞼結膜のうっ血の程度:スリットランプ顕微鏡下で拡散照明法を使用して観察した。0点、眼瞼縁において結膜にうっ血がないかまたはわずかなうっ血があり、マイボーム腺の開口部に毛細血管拡張がない;1点、眼瞼縁において結膜にうっ血があるが、そのうっ血は円蓋部に限定され、血管は明赤色であり、マイボーム腺の開口部に毛細血管拡張がない;2点、眼瞼縁において結膜にうっ血があり、血管は暗赤色であり、不明瞭なコースを有し、マイボーム腺の開口部に毛細血管拡張があり、その範囲は眼瞼縁の1/2未満である;3点:眼瞼縁において結膜に散在性うっ血があり、血管は赤紫色であり、瞼板の質感は不鮮明で、マイボーム腺の開口部に毛細血管拡張があり、その範囲は眼瞼縁の1/2以上である。
【0181】
2群間の患者の結膜うっ血の結果を表19に示す。処置のための投与後7日に、試験群における患者の結膜うっ血点数は、処置前と比較して有意に低減したが(P<0.05)、対照群の結膜うっ血点数における差異は小さく(P>0.05);処置後、試験群における患者の結膜うっ血点数は、対照群と比較して有意に低減した(P<0.05)。上記の結果は、実施例1の眼科用液剤が、MGDを有する患者における眼瞼結膜うっ血を有意に緩和し得ることを示唆した。
【0182】
【表20】
【0183】
特定の実施形態を記載してきたが、出願人または当業者にとって、上記の実施形態の置き換え、修正、変更、改善、および実質的に等価なものが存在し得るか、または現在予見することができない。したがって、提出された添付の特許請求の範囲および修正され得る特許請求の範囲は、そのような置き換え、修正、変更、改善、および実質的に等価なものを全て網羅することを意図する。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ドライアイの眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品
角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品
糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品
糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品
再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品
外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品
眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品
結膜炎に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品
眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品
マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品
眼精疲労に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するための医薬品;または
近視を防止するための医薬品
の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項2】
眼精疲労を軽減または緩和するための美容製品または健康ケア製品;または
近視を防止するための美容製品または健康ケア製品
の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項3】
目のための美容製品または健康ケア製品の製造におけるアラニル-グルタミンの使用。
【請求項4】
アラニル-グルタミンおよび眼科的に許容される賦形剤を含む眼科用組成物であって、点眼薬、懸濁剤、ゲル剤、目軟膏剤、乳剤、目用パッド、目用パッチ剤、目用マスク、目用クリーム剤、噴霧剤、注射剤または留置剤の形態である、眼科用組成物。
【請求項5】
等張性または低張性の形態である、請求項に記載の眼科用組成物。
【請求項6】
眼科用組成物中のアラニル-グルタミンの濃度が、0.05%w/w~10%w/wである、請求項またはに記載の眼科用組成物。
【請求項7】
眼科的に許容される賦形剤が、浸透圧調整剤、静菌剤、増粘剤、pH調整剤、安定剤、界面活性剤、保水剤などのうちの1つまたは複数を含む、請求項4または5に記載の眼科用組成物。
【請求項8】
非ドライアイの眼表面疾患および/または状態、角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態、再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態、結膜炎に関連する眼表面疾患および/または状態、眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態、マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態、または、眼精疲労または近視に関連する眼表面疾患および/または状態を処置、軽減または緩和するために用いられる医薬組成物であってアラニル-グルタミンを含み、
対象に、治療有効量投与される医薬組成物
【請求項9】
前記眼科用組成物が、非ドライアイの眼表面疾患および/または状態、角膜上皮傷害に関連する眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる眼表面疾患および/または状態、糖尿病によって引き起こされる角膜症に関連する眼表面疾患および/または状態、再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、外科関連の再発性角膜上皮びらんに関連する眼表面疾患および/または状態、眼外傷ならびに/または手術後の組織修復および治癒に関連する眼表面疾患および/または状態、結膜炎に関連する眼表面疾患および/または状態、眼うっ血に関連する眼表面疾患および/または状態、マイボーム腺機能不全に関連する眼表面疾患および/または状態、または、眼精疲労または近視に関連する眼表面疾患および/または状態、を処置、軽減または緩和するために用いられる請求項4または5に記載の眼科用組成物
【国際調査報告】