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特表2024-542284COVID-19の重篤性の予測及び処置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】COVID-19の重篤性の予測及び処置方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241106BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241106BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241106BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241106BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P31/14
G01N33/53 D
G01N33/569 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533147
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 US2022080795
(87)【国際公開番号】W WO2023102512
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/264,896
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313006588
【氏名又は名称】バンダ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VANDA PHARMACEUTICALS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スミースゼク、サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ポリメロプロス、ヴァシリオス
(72)【発明者】
【氏名】ポリメロプロス、クリストス
(72)【発明者】
【氏名】プルズィホドシェン、バルトロミェイ
(72)【発明者】
【氏名】ポリメロプロス、ミハエル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA05
4C084ZB33
4C085AA14
4C085BB17
(57)【要約】
本発明は一般にコロナウイルス疾患2019(COVID-19)に関し、より詳細には、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の患者若しくは感染のリスクがある個人における、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド16(CXCL16)発現のレベル及び/又はrs10490770遺伝子型に基づく、前記患者又は個人のCOVID-19症状発現の重篤性の予測に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナウイルス疾患2019(COVID-19)と診断された患者を処置する方法であって:
前記患者におけるケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド16(CXCL16)の発現のレベルを決定すること;及び
前記のCXCL16の発現のレベルがより重篤なCOVID-19の症状発現(manifestation)と関連するものである場合、前記患者のCOVID-19の症状発現の実際の重篤性にかかわらず、前記のより重篤なCOVID-19の症状発現について前記患者を処置すること
を含む前記方法。
【請求項2】
前記のより重篤なCOVID-19の症状発現に関連する前記のCXCL16発現のレベルが600pg/mL以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者を処置することが、前記患者におけるCXCL16活性を阻害することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者におけるCXCL16活性を阻害することが、CXCL16活性を阻害するのに十分な量の抗CXCL16抗体を前記患者に投与することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
コロナウイルス疾患2019(COVID-19)と診断された患者を処置する方法であって:
前記患者がrs10490770一塩基多型(SNP)部位により重篤なCOVID-19の症状発現に関連する遺伝子型を有することを決定すること;及び
前記患者のCOVID-19の症状発現の実際の重篤性にかかわらず、前記のより重篤なCOVID-19の症状発現について前記患者を処置すること
を含む前記方法。
【請求項6】
前記のより重篤なCOVID-19の症状発現に関連する前記rs10490770SNPにおける遺伝子型が、TTではない遺伝子型である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者を処置することが、前記患者におけるCXCL16活性を阻害することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記患者におけるCXCL16活性を阻害することが、CXCL16活性を阻害するのに十分な量の抗CXCL16抗体を前記患者に投与することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
コロナウイルス疾患2019(COVID-19)と診断された又は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染のリスクがある患者における、COVID-19の症状発現の重篤性を予測する方法であって:
前記患者におけるケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド16(CXCL16)の発現のレベルを決定すること;及び
前記のCXCL16発現のレベルがより重篤なCOVID-19の症状発現と関連するものである場合、前記患者がより重篤なCOVID-19の症状発現を呈することになると予測すること;又は
前記のCXCL16発現のレベルがより重篤なCOVID-19の症状発現と関連するものではない場合、前記患者が呈するCOVID-19の症状発現の重篤性がより低いものとなると予測すること
を含む前記方法。
【請求項10】
前記のより重篤なCOVID-19の症状発現に関連する前記のCXCL16発現のレベルが600pg/mL以上であり、前記の重篤性がより低いCOVID-19の症状発現に関連する前記のCXCL16発現のレベルが600pg/mL未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記患者がCOVID-19と診断された場合、前記患者におけるCXCL16活性を阻害することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記患者におけるCXCL16活性を阻害することが、CXCL16活性を阻害するのに十分な量の抗CXCL16抗体を前記患者に投与することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
コロナウイルス疾患2019(COVID-19)と診断された患者又は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染のリスクがある個人における、COVID-19の症状発現の重篤性を予測する方法であって:
前記患者又は個人のrs10490770遺伝子型を決定すること;及び
前記患者又は個人のrs10490770遺伝子型がTTであると決定される場合、前記患者又は個人が重篤なCOVID-19の症状発現を呈しない可能性が高いと予測すること;又は
前記患者又は個人のrs10490770遺伝子型がTTではないと決定される場合、前記患者又は個人が重篤なCOVID-19の症状発現を呈する可能性が高いと予測すること
を含む前記方法。
【請求項14】
前記患者がCOVID-19と診断された場合、前記患者のCOVID-19の症状発現の実際の重篤性にかかわらず、より重篤なCOVID-19の症状発現について前記患者を処置することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者を処置することが、前記患者におけるCXCL16活性を阻害することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記患者におけるCXCL16活性を阻害することが、CXCL16活性を阻害するのに十分な量の抗CXCL16抗体を前記患者に投与することを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は2021年12月3日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第63/264,896号の優先権を主張し、その全体は、完全に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
SARS-CoV-2
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2又は時には2019-nCoV)、球状プラス一本鎖RNAウイルスは、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)の進行中のパンデミックを引き起こしている。現在までに、SARS-CoV-2は世界中で1億2600万人を超える個人に感染し、270万人を超える死亡者をもたらした。SARS-CoV-2は、ベータコロナウイルス属のSARS-CoV種の株である。
【0003】
他のコロナウイルスと同様に、SARS-CoV-2は、S(スパイク)、E(エンベロープ)、M(膜)、及びN(ヌクレオカプシド)の4つの構造タンパク質を有する。S、E、及びMタンパク質はウイルスエンベロープを形成し、一方、Nタンパク質はウイルス粒子のコアに位置し、ウイルスRNAに結合し、ウイルス粒子化(conformation into the viral particle)に関与する。いくつかのベータコロナウイルスはまた、粒子表面上に、宿主細胞への侵入を増強し得るヘマグルチニン-エステラーゼ(HE)タンパク質を含む。
【0004】
スパイクタンパク質は三量体クラスI融合タンパク質であり、高度にグリコシル化され、ビリオン表面から突出し、宿主細胞への付着及び宿主細胞への侵入を促進する。いくつかのコロナウイルスでは、Sタンパク質がウイルス粒子の表面上の2つのサブユニットS1及びS2からなる。SARS-CoV-2を含む他のコロナウイルスではSタンパク質がS1及びS2ドメインを含むが、ウイルス侵入中にエンドサイトーシス小胞内で切断されるまで、ウイルス粒子表面上に無傷で残っている。
【0005】
宿主細胞膜とのSタンパク質の融合には、Sタンパク質の有意な構造的再編成が関与する。具体的には、Sタンパク質のS1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)が、S1サブユニットの結合受容体が接近不可能な「ダウン」コンフォメーションから、受容体が接近可能な「アップ」コンフォメーションへのコンフォメーション移動(conformational movement)を行う。「アップ」コンフォメーションは、「ダウン」コンフォメーションよりも安定性が低いと考えられる。
【0006】
S2ドメインは、宿主細胞へのウイルスの侵入を制御する。I型膜タンパク質であるアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)は、肺、心臓、腎臓、腸、及び脂肪組織を含むヒト組織にわたって広く発現される。ACE2は以前のSARS-CoV株の宿主細胞受容体として同定されており、SARS-CoV-2 Sタンパク質RBDの標的である。RBD結合はACE2タンパク質の外表面上で起こると考えられ、一方、アンギオテンシン基質結合はタンパク質の深い裂け目内で起こる。
【0007】
最近、Sタンパク質の3.5オングストローム解像構造が報告された。上記のように、Sタンパク質は、そのS1サブユニット及びS2サブユニットの2つに切断される。宿主プロテアーゼによるSタンパク質のこの切断は、ウイルス感染及びリソソームを介した細胞からのウイルス脱出にとって重要である。
【0008】
感染の間、Sタンパク質は宿主細胞プロテアーゼによって切断され、S2ドメインの融合ペプチドを露出させる。Sタンパク質の切断はS1ドメインとS2ドメインとの間で起こり、続いて融合ペプチドの近位のS2ドメイン(S2’)内で起こる。これは、ウイルス膜及び細胞膜の融合、ならびに宿主細胞の細胞質へのウイルスゲノムの放出をもたらす。両方の部位での切断は、宿主細胞へのウイルス侵入に必要であると考えられる。
【0009】
CXCR6及びCXCL16
最近のゲノムワイド関連研究により、COVID-19の重篤な症状発現(manifestation)のリスクがより高い、C-X-Cモチーフケモカイン受容体6(CXCR6)遺伝子を含む染色体3(3p21.31; rs73064425)上の遺伝子クラスターが同定された。このDNAセグメントはサイズが約50kbであり、CXCR6遺伝子に加えて、LZTFL1、SLC6A20、FYCO1、CCR9、及びXCR1を含む。別のバリアントであるrs10490770(T>C)は、より高い入院率、重篤な疾患(重篤な呼吸不全及び静脈血栓塞栓症に至る)、及び死亡と関連している。このセグメント内の、重篤なCOVIDと関連する遺伝的変異は、ネアンデルタール人から受け継がれ、南アジア及びヨーロッパにおいて高い割合の個体によって保有されている。
【0010】
ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド16(CXCL16)は、膜貫通分子として合成され、細胞表面結合分子及び可溶性ケモカインとして発現される。CXCL16は、走化性又は細胞接着を促進する白血球及び他の細胞においてCXCR6と相互作用する。IFNγ及びTNFαなどの炎症性サイトカインは、CXCL16発現を促進する。CXCL16は、放出されるとCXCR6T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、及び樹状細胞の化学誘引物質として機能する肺損傷の病因に以前に関与している。CXCL16レベルは、急性肺損傷患者の血清中で上昇することが示されている。
【発明の概要】
【0011】
一実施形態では、本発明は、患者においてケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド16(CXCL16)の発現レベルを測定すること、及びCXCL16の発現レベルがより重篤なCOVID-19の症状発現と関連するものである場合には、患者の実際のCOVID-19の症状発現の重篤性にかかわらず、COVID-19のより重篤な症状発現について患者を処置することを含む、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)と診断された患者を処置する方法を提供する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)と診断された患者を処置する方法であって、前記患者がrs10490770一塩基多型(SNP)部位により重篤なCOVID-19の症状発現に関連する遺伝子型を有することを決定することと、患者のCOVID-19の症状発現の実際の重篤性にかかわらず、COVID-19のより重篤な症状発現について患者を処置することとを含む方法を提供する。
【0013】
さらに別の実施形態では、本発明は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)と診断された患者又は重篤な急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染のリスクがある患者におけるCOVID-19の症状発現の重篤性を予測する方法であって、患者におけるケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド16(CXCL16)の発現レベルを決定すること;及びCXCL16発現レベルがCOVID-19のより重篤な症状発現と関連するものである場合、患者がCOVID-19のより重篤な症状発現を呈することになると予測すること;又はCXCL16発現レベルがCOVID-19のより重篤な症状発現と関連するものではない場合、患者の呈するCOVID-19の症状発現の重篤性がより低いものとなると予測すること、を含む方法を提供する。
【0014】
さらに別の実施形態では、本発明は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)と診断された患者又は重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染のリスクがある個体におけるCOVID-19の症状発現の重篤性を予測する方法であって、患者又は個体のrs10490770遺伝子型を決定すること、及び患者又は個体のrs10490770遺伝子型がTTであると決定された場合に、患者又は個体がCOVID-19の重篤な症状発現を呈しない可能性が高いと予測すること、又は患者又は個体のrs10490770遺伝子型がTTではないと決定された場合に、患者又は個体がCOVID-19の重篤な症状発現を呈する可能性が高いと予測することを含む方法を提供する。
【0015】
本発明のこれら及び他の特徴は、本発明の様々な実施形態を示す添付図面と併せて、本発明の様々な態様の以下の詳細な説明からより容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】COVID-19患者及びCOVID陰性対照被験者におけるベースライン血漿CXCL16レベルを示す。
図2】死亡したCOVID-19患者及び当該疾患で生き延びたCOVID-19患者のベースライン血漿CXCL16レベルを示す。
図3】COVID-19の症状発現の重篤性に応じたCOVID-19患者におけるベースライン血漿CXCL16レベルを示す。
図4】死亡したCOVID-19患者及び当該疾患で生き延びたCOVID-19患者におけるCXCL16濃度、BMI、及び年齢のプロットを示し、CXCL16濃度との相関を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の図面の縮尺は正確ではないことに留意されたい。図面は本発明の典型的な態様のみを示すことを意図しており、したがって、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。図面において、同様の番号は、図面間で同様の要素を表す。
【0018】
本出願人のODYSSEY研究は、合計300人の入院重症COVID-19患者の計画された無作為化を伴う二重盲検第3相研究である。試験の選択基準は以下の通りである:
1.18~90歳の成人である;
2.検査室でCOVID-19感染が確認された;
3.胸部X線写真又はコンピュータ断層撮影によって肺炎が確認された;
4.入院してから又は解熱薬を使用した後、脇で36.6℃以上、口腔で37.2℃以上、又は直腸で37.8℃以上の発熱が確認された;
5.PaO/FiO≦300である;及び
6.患者が入院中である。
【0019】
主な除外基準は以下を含む:
1. インフォームド・コンセントを提供することができない、又は権限の与えられた親族若しくは指定された者にインフォームド・コンセントを提供させることができない、又はプロトコールの要件を遵守することができない;
2. トラジピタント又は他のニューロキニン-1アンタゴニストに対してアレルギーがあることがわかっている;
3. 妊娠;
4. コントロールされていないHIV感染、HBV感染、HCV感染;
5. 他のコントロールされていない医学的に重篤な疾患;
6. 他の治験薬の治験に参加している;
7. アラニンアミノトランスフェラーゼ> 5×正常又はクレアチニンクリアランスの上限<50m 174l/分;
8. 人工呼吸を72時間超必要とする。
【0020】
患者を最長28日間追跡して、臨床転帰を記録する。臨床経過は、以下のように定義される臨床状態7点で記録される:
1- 死亡;
2- 人工呼吸又はECMOのため入院;
3- 非侵襲的換気又は高流量酸素補給のため入院;
4- 酸素補給を要するため入院;
5- 酸素補給を必要としないが継続する医療ケアを必要とする入院;
6- 酸素補給を必要とせず、継続する医療ケアも必要としない入院;
7- 入院していない。
【0021】
COVID-19患者及びCOVID陰性対照被験者の詳細を以下の表1及び2に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
本明細書で使用される場合、より重篤なCOVID-19の症状発現とは、患者が入院して人工呼吸又はECMOにあること(ODYSSEY研究ではWHO=2)を意味し、COVID-19の症状発現の重篤性がより低いとは、死亡以外の任意の他の程度の重篤度であること(ODYSSEY研究ではWHO=3、4、5、6、又は7)を意味する。COVID-19で死亡した患者は明らかに重篤なCOVID-19の症状発現を呈した患者であるが、本明細書に記載の方法の目的、例えば、生きている患者におけるCOVID-19の症状発現の重篤性の予測及び/又はその生きている患者の処置のためにおいては、既にCOVID-19で死亡した患者に係る考察は関与しない。
【0025】
入院し他に除外されなかったCOVID-19患者(n=114)及びSARS-CoV-2陰性対照被験者(n=37)のCXCL16の血漿濃度を、ELISAアッセイを用いて評価して、重篤なCOVID-19の病因におけるCXCR6/CXCL16軸を特徴付ける。患者及び対照のDNA試料を、その後の配列決定のために回収する。
【0026】
結果は、入院COVID-19患者におけるCXCL16レベルの上昇を示す。図1に示されるように、ベースラインCXCL16レベルは重篤な症状発現(WHO=2)を有するCOVID-19患者において、重篤性がより低い症状発現(WHO=3、4、又は5)を示す患者よりも高く(p=0.0235)、一方、全てのCOVID-19患者(WHO=2、3、4、又は5)とCOVID陰性対照被験者との間の差異は有意に異ならない。約600pg/mL以上のCXCL16発現は、COVID-19のより重篤な症状発現と関連する。これらの結果は、患者の年齢、BMI、又は性別と相関しない。
【0027】
したがって、本発明の一実施形態によれば、患者のCOVID-19感染の重篤性は、患者のCXCL16発現レベルを決定することによって予測することができる。CXCL16発現のレベルがより重篤なCOVID-19の症状発現と関連する(すなわち、600pg/mL以上)場合、患者は、より重篤なCOVID-19の症状発現を呈することになると予測され得る。対照的に、CXCL16発現のレベルがより重篤なCOVID-19の症状発現と関連するものではない(すなわち、600pg/mL未満)場合、患者が呈するCOVID-19の症状発現の重篤性はより低いものとなると予測され得る。そのような予測はCOVID-19と診断された患者、又はSARS-CoV-2による感染のリスクがあり且つCOVID-19を発症する個体について行うことができる。
【0028】
同様に、COVID-19と診断された患者は、かかる判定に基づいて処置され得る。例えば、CXCL16発現のレベルがより重篤なCOVID-19の症状発現と関連すると判定すると、患者の処置は、患者が示すCOVID-19の症状発現の重篤性のレベルにかかわらず、より重篤なCOVID-19の症状発現について患者を処置することを含み得る。かかる処置は、例えば患者におけるCXCL16活性を阻害するのに十分な量の抗CXCL16抗体を患者に投与することによって、患者におけるCXC16活性を阻害することを含み得る。モノクローナルCXCL16抗体及びポリクローナルCXCL16抗体の両方が公知であり、例えば、Invitrogenから入手可能である。
【0029】
CXCL16レベルはまた、研究の終わりに生存していた患者よりも、疾患により最終的に死亡したCOVID-19患者において有意に(p=0.0004)高い。図2に見られるように、最終的にCOVID-19で死亡した患者の平均CXCL16レベルは、死亡しなかった患者の平均の2倍を超える。
【0030】
これらの結果は、図3に示されるように、70人のCOVID-19患者のその後の研究において再現される。ここで、最も重篤なCOVID-19の症状発現を有する患者(WHO=2)はやはり、重篤性がより低い症状発現を有する患者(WHO=3~7)よりも有意に高いベースラインCXCL16レベルを有していた。
【0031】
両方の研究からの結果の組み合わせは、CXCL16濃度がCOVID-19死亡率と相関することを示唆する。図4は、COVID-19患者のCXCL16濃度、BMI、及び年齢のプロットを示す。黒丸は、COVID-19で死亡した患者を表す。
【0032】
700pg/mLを超えるCXCL16濃度では、COVID-19患者の死亡率は約25%である。これは、BMIが26を超え52歳を超える患者ではほぼ50%に増加する。本研究でCOVID-19で死亡した患者は全てこの群にあった。
【0033】
結果は、CXCL16レベルとIFN-γ又はTNF-α発現との間に相関がないことを示す。
【0034】
遺伝学的分析では、rs10490770バリアントと重篤なCOVID-19感染との間の関連が明らかである。rs10490770 T>Cバリアントのキャリアは、野生型患者と比較した場合、有意に(p<0.002)高い死亡リスクを有する。
【0035】
したがって、本発明の実施形態は、患者のrs10490770遺伝子型の決定に基づいて、COVID-19の重篤性を予測する、又はCOVID-19を処置する同様の方法を含み得る。例えば、COVID-19患者又はSARS-CoV-2感染のリスクがある個人がより重篤なCOVID-19の症状発現に関連するrs10490770遺伝子型(すなわち、非TT遺伝子型)を有すると決定すると、前記患者又は個人は、より重篤なCOVID-19の症状発現を呈することになる可能性が高いと予測され得る。逆に、患者又は個人がrs10490770部位にTT遺伝子型を有すると決定された場合、患者又は個人が呈するCOVID-19の症状発現の重篤性はより低いものとなる可能性が高いと予測され得る。
【0036】
かかる予測は、COVID-19患者の処置に用いられ得る。例えば、患者が非TT rs10490770遺伝子型を有すると決定すると、前記患者は、前記患者のCOVID-19の症状発現の実際の重篤性にかかわらず、より重篤なCOVID-19の症状発現について処置され得る。かかる処置は例えば、患者におけるCXCL16活性の阻害を含み得る。かかる阻害は、CXCL16活性を阻害するのに十分な量の抗CXCL16抗体の患者への投与を含み得る。上記のように、モノクローナル及びポリクローナルCXCL16抗体は、当技術分野において公知である。
【0037】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は文脈が明らかに他意であることを示さない限り、複数形も含むことが意図される。用語「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」は本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除しないことがさらに理解されよう。
【0038】
本明細書は最良の形態を含む本発明を開示するための実施例を使用し、また、当業者が、任意のデバイス又はシステムを作製及び使用すること、ならびに任意の関連する又は組み込まれた方法を実施することを含む、本発明の実施を可能にする。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に想起される他の例を含みうる。かかる他の例は、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、又はそれらが特許請求の範囲の文言と実質的に相違しない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることが意図される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】