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特表2024-542290光散乱媒体内の光を局所化するための光測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】光散乱媒体内の光を局所化するための光測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/49 20060101AFI20241106BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20241106BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01N21/49 Z
G01N33/483 C
G01N21/17 610
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547824
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2022079495
(87)【国際公開番号】W WO2023067198
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】2151298-3
(32)【優先日】2021-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524156401
【氏名又は名称】ディープ ライト ヴィジョン アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロル、 ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ヒル、 ダヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ベングトソン、 アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】リッペ、 ラース
(72)【発明者】
【氏名】クリテ スヴァンベリ、 エミリエ
【テーマコード(参考)】
2G045
2G059
【Fターム(参考)】
2G045CB01
2G045FA11
2G045JA07
2G059BB08
2G059BB12
2G059BB14
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE16
2G059GG01
2G059JJ02
(57)【要約】
被験体における光測定システムにおいて、音波トランスデューサと、赤外光(IR)、可視光または紫外光の波長範囲内の光を出射するレーザと、光学フィルタ、光検出器と、光反射部材とを備えている光測定システム。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における光測定システムにおいて、
超音波トランスデューサと、赤外光(IR)、可視光または紫外光の波長範囲内の光を出射するレーザと、光学フィルタと、光検出器と、光反射部材とを備え、
前記超音波トランスデューサが、超音波の周波数を有する超音波の音場を前記被験体の組織部位内の少なくとも1つの位置に向けるように構成され、
前記レーザが、光周波数を有する光を前記被験体の前記組織部位内に向けるように構成され、
前記光学フィルタが、前記光周波数を抑圧する一方で、前記超音波の周波数により周波数シフトした光周波数を有する光を透過するように前記光検出器の上流に配置され、
前記光検出器が、前記超音波の周波数により周波数シフトした前記光を検出し、
前記光反射部材が、前記被験体の前記組織部位の面に配置されているように構成されている、光測定システム。
【請求項2】
前記光反射部材が、前記組織部位の面に配置されて前記光検出器により検出される光量を増加させる、請求項1に記載の光測定システム。
【請求項3】
前記光反射部材が、前記レーザの注入点の周囲に配置されているように構成されている、請求項1または請求項2に記載の光測定システム。
【請求項4】
前記光反射部材が、前記周波数シフトした光が前記光学フィルタに向かって前記組織部位を退出する点の周囲に配置されている、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の光測定システム。
【請求項5】
前記光反射部材が、前記光が前記組織部位に入るためおよび/または前記周波数シフトした光が退出するための孔部を有し、
前記孔部が、3mm~4mmの直径を有している、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の光測定システム。
【請求項6】
前記組織部位内の少なくとも1つの位置が、少なくとも1つの超音波の音場により占められ、
前記レーザが、前記出射された光の少なくとも一部が前記位置を通過するように光を前記組織部位内に向けられている、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の光測定システム。
【請求項7】
前記周波数シフトした光が、前記組織部位内の少なくとも1つの位置のみからの情報を担っている、請求項1~請求項6の何れか1項に記載の光測定システム。
【請求項8】
レーザおよび超音波源が、前記組織部位内の光学的コントラストのマップまたは画像、例えば、前記組織部位における酸素飽和度に関する情報を得るために少なくとも1つの位置を走査するように構成されている、請求項1~請求項7の何れか1項に記載の光測定システム。
【請求項9】
前記光反射部材が、ガラス、金属ミラー、金属面、光反射合成樹脂、または、反射塗料で被覆されている面のうちの少なくとも1つから構成されている、請求項1~請求項8の何れか1項に記載の光測定システム。
【請求項10】
前記光学フィルタが、スローライトフィルタ構造である、請求項1~請求項9の何れか1項に記載の光測定システム。
【請求項11】
前記スローライトフィルタ構造が、2つの異なる吸収線を備え、2つの波長でフィルタを構成する、請求項10に記載の光測定システム。
【請求項12】
前記スローライトフィルタ構造が、ホスト結晶を備えている、請求項10または請求項11に記載の光測定システム。
【請求項13】
前記ホスト結晶が、単一のイオンを用いるか、複数のイオンと同時ドープされるか、スプライスまたはサンドイッチした複数の異なる結晶から構成されるかの何れかである、請求項12に記載の光測定システム。
【請求項14】
前記スローライトフィルタ構造が、前記周波数シフトした光以外の全ての光を阻止するノッチフィルタ構成を備えている、請求項10~請求項13の何れか1項に記載の光測定システム。
【請求項15】
前記スローライトフィルタ構造が、元の周波数の光のみを阻止するバンドストップフィルタ構成を備えている、請求項10~請求項14の何れか1項に記載の光測定システム。
【請求項16】
電場および/または磁場を作製する要素が、前記スローライトフィルタ構造の寿命に影響を及ぼすように構成されている、請求項10~請求項14の何れか1項に記載の光測定システム。
【請求項17】
前記電場および/または磁場が、前記スローライトフィルタ構造のアンチホールを前記レーザの元のレーザ周波数に位置付けられている、請求項16に記載の光測定システム。
【請求項18】
前記磁場作製要素が、永久磁石を備えている、請求項16または請求項17に記載の光測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物組織などの光散乱媒体(light scattering medium)の深部の光を選択的に得るための装置および方法に関する。
本発明は、光散乱媒体の深部の光を用いて、従来の方法よりも、さらに局所化された測定を達成する装置および方法に関する。
特に、本発明は、光散乱媒体の深部において局所化された光測定を達成するように、音響周波数シフトされたレーザ光および光学部材を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
濁った不透明な光散乱媒体内、つまり、光を散乱させる光散乱媒体内に光を照射する能力は、生物医学的用途等を含む多くのセッティングにおいて重要である。
光画像化は、高感度の分子コントラストを簡単かつ非侵襲的に提供する。
従来の光学顕微鏡検査法は、数十マイクロメートル程度の浅い層を通る光が透過することに依存している。
共焦点顕微鏡検査法は、侵達深さを0.1mm程度まで拡張する一方、光干渉断層撮影は、0.5mm程度の深さまで到達することができる。
これは、拡散散乱光の抑圧に依存する高分解能光撮影法(limit of high-resolution optical imaging modalities)のほぼ限界値である。
さらなる深さにおいては、拡散光散乱は、光線場と光散乱媒体との相互作用に多大な影響を及ぼす。
特定の深さにおける光線の減衰は、光散乱媒体の散乱によって大きく決定される。
この基本的な様相が意味しているのは、最も好ましい波長であっても、光を検出することができる最大侵達深さは、一般的な生物組織においては、10cm程度に制限されている。
【0003】
約1ミリメートルから数センチメートルまでの拡散散乱領域では、他の光学分析および光学撮影法が展開されている。
1つの例は、血中の酸素飽和度を決定するためのパルスオキシメトリーである。
光画像化の1つの例は、拡散光断層撮影であり、例えば、内因性組織コントラストを用いて、投与蛍光造影剤を用いて、または、投与蛍光剤を用いて行うことができる。
一般的に、拡散散乱のため、これらの手法を用いた空間的な位置特定は、数ミリメートルから1センチメートル程度に制限される。
また、検出された光においては、光強度が非常に低いため、検出手法は、多くの場合、非効率的、煩雑であり、高度かつ高価な装置を必要とする。
【0004】
光を用いて濁った不透明な光散乱媒体を探針検査する際の空間的な位置特定を改善するために、光音響断層撮影手法が考案されている。
この光音響断層撮影法においては、レーザパルスの吸収に起因する、生体組織の僅かな加熱によって、局所的に放射される音波が、超音波トランスデューサにより検出される。
光音響断層撮影法は、超音波は生体組織における光波よりも散乱が数桁小さいことを利用している。
このようにして、音波の発生源の空間的な位置特定は、1ミリメートル程度以下とすることができる。
【0005】
生体組織における光相互作用の局所化を改善するために音響を使用する別の例は、例えば、非特許文献1に記載されている音響光子タグ付け(acoustic photon tagging)の使用である。
生体組織のインソニフィケーション(insonifying tissue)と、この生体組織内にレーザ光を向けることによって、音場が占めている領域を通過するレーザ光のみが音響周波数により周波数シフトすることになる。
周波数シフトした光のみを光学的に検出することによって、音場と光が相互作用したことを把握することができ、光と比較して小さく局所化されたボリュームを占めるようにすることができる。
【0006】
音響を使用する別の例は、非特許文献2に記載されている。
超音波が光学分光と重複するさらなる例は、特許文献1に記載されている。
超音波トランスデューサからの出力を用いて、超音波を様々な変調周波数で選択対象物内へ集束させ、超音波の放射圧により対象物を物理的に変調(振動)させる。
しかし、光音響手法は、純粋な光学的手法よりも良好な空間分解能を提供することができる一方、散乱による強い減衰のために、光が光散乱媒体の深部に簡単には浸透しないという限界を有している。
【0007】
上述のように、光散乱媒体内の光測定を行う既知の方法では、浸透深さに限界があり、および/または、空間分解能が低いという問題があった。
従って、新たに改善された、光散乱媒体への深い光浸透(deep light penetration)のための装置および方法が、有利となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願第20060253007号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J. Gunther & S. Anderson-Engels (2017, October), Review of current methods of acousto-optical tomography for biomedical applications, Frontiers of Optoelectronics, 10(3), 211-238.
【非特許文献2】M. Kempe et al, Acousto-optic tomography with multiply scattered light, Vol. 14, No. 5/May 1997/J. Opt. Soc. Am. A.
【非特許文献3】H. Zang et al (2012, March), Slow light for deep tissue imaging with ultrasound modulation, Appl. Phys. Lett. 100(13), 131102.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の実施形態は、その単体または任意の組み合わせにおいて、光散乱媒体の深部での高い光強度を選択的に達成するために、特許請求の範囲に記載の光測定システムを提供することにより、例えば、上述したような、当技術分野の1つまたは複数の欠陥、不利な点または問題点を軽減、緩和または除去することを追求する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光測定システム100は、光学部および音響部を備えている。
図1の光測定システム100は、レーザ12と光学フィルタ14とを有する光学部を備えている。
また、この光測定システム100の音響部は、超音波装置13を備えている。
そして、この超音波装置13は、音場を光散乱媒体11内へと出射する。
音場の位置は、15である。
レーザ12は、1つまたは複数の入力開口部19を介して、光散乱媒体11内へと向けられてよく、光18は、光散乱媒体11において拡散散乱する。
そして、その拡散光18cの一部は、超音波の音場である位置15を通過し、その光の一部は、超音波の音場との相互作用を通して周波数シフトすることができる。
レーザ光の光周波数は、超音波の周波数よりもオーダが非常に大きいため、周波数シフトは、レーザ光の小さい波長差に対応する。
周波数シフトした光は、位置15から拡散して光散乱媒体11を通って伝播してよく、その一部は、1つまたは複数の出力開口部20を介して光散乱媒体11を退出して光学フィルタ14に到達する可能性がある。
そして、この光学フィルタ14が、元のレーザ周波数の大部分を除去することにより、実質的に周波数シフトした光を得ることができ、これを検出することができる。
周波数シフトした光は、位置15のみからの情報を担っており、このような設定により、光散乱媒体11内の空間情報を提供することができる。
この位置15を走査することにより、光散乱媒体11内の光学的コントラストのマップまたは画像、例えば、生体組織における酸素飽和度に関する情報等を得ることができる。
本実施形態の光測定システム100により得られた画像が、図2に示されている。
【0012】
レーザ注入点の周囲には、光反射部材16を設けられ、この光反射部材16は、光散乱媒体11から漏れるあらゆる光の大部分を反射する場合がある。
同様に、光反射部材17は、周波数シフトした光が光学フィルタに向かって光散乱媒体を退出する点の周囲に設けることができる。
【0013】
光反射部材16は、レーザ光が超音波の音場15と相互作用する前に、このレーザ光の一部が光散乱媒体11から漏れることを防止する機能を有している。
このようにして、光反射部材16は、点15を含む生体組織における総光量を増加させる役割を果たすことができ、周波数シフトした光量を増加させることができる。
その結果、信号を増加させることができる。
【0014】
同様に、光反射部材17は、周波数シフトした光の一部が出力開口部20以外を通って光散乱媒体11が流出することを防止する機能を有することができ、このようにして、光学フィルタ14を通過する光の量を増加させることができる。
また、その結果として、信号を増加させることができる。
【0015】
ここで、この光学フィルタ14は、図3および図4に示されているように、スローライトフィルタ(slow-light filter)から構成することができる。
また、この光学フィルタ14は、レーザ23の元の周波数で強い吸光を有するイオン22をドープしたホスト結晶21から構成されてよい。
そして、このイオン22がホスト結晶21の他の原子を置き換わると、イオン22は、その結晶格子21を僅かに歪ませることがある。
これらのイオン22の個々の吸収は、強く、周波数が狭いが、ドープしたイオンの集合全体では異なる結晶場が見られ、従って、相互に関連して吸収する周波数が僅かに変化することがある。
図3には、図3b)に見るように、基底状態と励起状態との間のエネルギ分離が異なる。3つの異なるイオンクラス22が示されている。
多数の異なるイオンクラスにより、ホスト結晶のドープしたイオンの集合体の全吸収プロファイルが得られ、その周波数は、音場により生じるいかなる周波数シフトよりも数桁広くなる可能性がある。
【0016】
この吸収プロファイルでは、光ポンピング技術を用いて、異なる永続的なスペクトル構造を構築することが可能である。
この光ポンピングは、イオンのエネルギ準位を分裂させるための電場および/または磁場を印加してまたは印加せずに行うことができる。
図4には、その結果得られるフィルタと結晶吸収プロファイルの例が、見られる。
図4では、、元のレーザ周波数の光23の吸収は、影響を受けないかまたは高い可能性があるが、周波数シフトされた光24の吸収は除外することができ、周波数シフトした光24は、検出器まで進むことができる。
この修正された吸収プロファイルの副作用は、周波数シフトした光の群速度が数桁のオーダで減少することがある。
従って、時間ゲーティングによって、信号24を元のレーザ光23からさらに識別することができる。
本明細書で用いられる「光」という用語は、人間の目に可視である光に限定されるものではなく、紫外領域および赤外領域の波長も含むことは強調されるべきである。
【0017】
本明細書で用いられる「備える」という用語は、記載の特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を示すものとして解釈され、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施形態が実現できるこれらおよび他の態様、特徴は、図面を参照して、以下の本発明の実施形態の説明から明らかとなり解明される。
【0019】
図1】音響光子タグ付けを用いた画像化の設定例を示す。
図2図1の光測定システムの実施形態を用いて光吸光性介在物を撮影した画像を示す。
図3】3つの異なるクラスのドープしたイオンを有している模式的結晶を示す。そのような結晶を用いてスローライトフィルタを作製することができる。
図4】概略的なスローライトフィルタを示す。 結晶のイオンクラスの吸収を操作して、周波数シフトした光(実線)の通過を可能にし、元のレーザ周波数(破線)は、吸収される。
図5】均質媒体を用いた概略的な透過モード実験設定を示す。
図6】様々な深さでの光反射部材の使用/不使用の場合について周波数シフトした信号強度を示す。
図7】単一信号について所定の深さでの光反射部材の使用/不使用の場合について周波数シフトした信号強度を示す。
図8】音響光子タグ付け信号強度に対する光反射部材のサイズの影響を示す。
図9】光吸光性介在物を画像化するための反射モード実験設定を示す。
図10】入力側を覆う反射部材を使用した場合(a)と使用しない場合(b)に撮影した光吸光性介在物の画像を示す。
図11】光反射部材の使用/不使用の場合について酸素化レベルを識別する能力に対する光反射部材の影響を示す。
図12】音響光子タグ付けを用いて組織の酸素化を画像化する際の最適な設計構成が存在していることを示す。
図13】中空コアの光ガイドが低温装置(cryostatic device)内の結晶へと案内される光の量をどのようにして改善するかを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の発明は、光散乱媒体における光相互作用の局所化を改善するために適用可能である本発明の実施形態に焦点を置く。
本発明は、被験者、例えば、人間または動物の測定に適用可能であってよい。
本発明は、生体組織、例えば、脳、心臓、女性の乳房、筋組織等の深部の酸素飽和度の測定に適用可能であってよい。
その一方、本記載は、この用途に限定されず、光散乱媒体における光相互作用を局所化することが有用である多数の他のシステムに適用することができる。
【0021】
本発明は、一般に光学部および音響部を備えている。
図1において、光測定システム100は、光源12、例えば、レーザ、および、光学フィルタ14を有しているシステムの光学部を備えている。
光測定システム100の音響部は、超音波装置13を有している。
超音波装置13は、点15を占めるように、音場を光散乱媒体11内へと出射する。
レーザ12が出射した光線18aは、光散乱媒体11内へと向けられ、光線18aは、光散乱媒体11において拡散散乱して拡散光18bとなる。
拡散光18bの一部は、超音波の音場15が占めている位置を通過することができ、超音波の音場15との相互作用を通して周波数シフトすることができる。
超音波の周波数は、10Hz程度であってよく、光周波数は、1014Hz程度であってよい。
レーザ光の光周波数は、超音波の周波数よりもオーダが非常に大きいため、周波数シフトは、レーザ光の小さい波長差に対応し、この波長差は、数フェムトメートル程度であってよい。
周波数シフトした光は、超音波の音場15が占めている位置から拡散して光散乱媒体を通って伝播してよく、周波数シフトした光18cの一部は、光散乱媒体を退出して光学フィルタ14に達することができる。
光学フィルタ14が、元のレーザ周波数の大部分を除去することにより、実質的に周波数シフトした光が得られ、これを検出することができる。
周波数シフトした光が、10Hz程度により分離されるに過ぎない場合、光学フィルタ14は、約1014Hzの搬送周波数を抑圧するための特別な性能を有する必要がある。
また、光学フィルタ14は、拡散する入射光の角度から大部分独立している必要がある。
この性能は、非特許文献3に記載されているような、いわゆる、スローライトフィルタとして実装することができる。
周波数シフトした光は、位置15のみからの情報を担っており、従って、このセットアップは、光散乱媒体11内の空間情報を提供する。
超音波が占めているボリュームを表している位置15を走査することにより、光散乱媒体11内の光学的コントラストのマップまたは画像、例えば、組織における酸素飽和度に関する情報等を得ることができる。
横方向の走査は、超音波源を機械的に移動させることによるか、超音波源の個々の素子を制御して超音波の音場を電子的に移動させることによるかの何れかにより行うことができる。
縦方向の走査は、光パルスを超音波パルスの様々な深さの位置に合わせて時間調整することにより行われる。
このようにして生成する実験的に得られた画像が、図2において見られ、位置15が、波長が800nm未満の高吸収領域、つまり、低酸素飽和度領域にわたって走査されている。
酸素飽和度に関する情報を抽出するためには、測定を少なくとも2つの異なる波長で行うことが好ましい。
例えば、約800nmの波長が一つと、600nm~770nmの波長が一つあることが好ましい。
酸素飽和ヘモグロビンおよび非酸素飽和ヘモグロビンの分光吸収プロファイルは、約800nmでの吸光は類似するが、800nm未満または800nm超の波長では吸光が異なって構成されている。
代替的に、一方の波長を約800nm、他方の波長を820nm~1200nmの区間として選択することができる。
信号を2つの波長で比較することにより、非酸素飽和ヘモグロビンに対する酸素飽和ヘモグロビンの比率を推定することができる。
なお、この手法は、2つの波長に限定されない。
例えば、酸素飽和度を決定する際の正確度を向上させるために、3つ以上の波長を用いることが好ましい場合がある。
【0022】
信号レベルを十分に向上させるためには、光反射部材をレーザ注入位置および/または光学フィルタ退出位置の周囲に追加することが有利である。
図1を参照すると、レーザ注入点の周囲には、光散乱媒体11から漏れる光の大部分を反射する第1光反射部材16が設けられている。
同様に、第2光反射部材17を、周波数シフトした光が光学フィルタ14に向かって光散乱媒体を退出する点の周囲に設けることができる。
【0023】
第1光反射部材16は、レーザ光が点15で超音波の音場と相互作用する前に、このレーザ光の一部が光散乱媒体11から漏れることを防止する機能を有している。
このようにして、第1光反射部材16は、点15における総光量を増加させ、これにより、周波数シフトした光の量を増加させる役割を果たすことができる。
その結果、信号を増加させることができる。
【0024】
同様に、第2光反射部材17は、周波数シフトした光が出て光学フィルタ14により収集される前に、この周波数シフトした光の一部が光散乱媒体11を流出することを防止する機能を有している。
このようにして、第2光反射部材17は、光学フィルタ14が収集する周波数シフトした光の量を増加させる役割を果たすことができる。
また、その結果として、信号を増加させることができる。
【0025】
上述のように、光散乱媒体の表面に光反射部材を追加することが光音響手法の場合に有利であるのは、この光音響手法では、元のレーザ光を空間的に局所化する必要がないからである。
このことは、例えば、拡散光断層撮影とは対照的であり、拡散光断層撮影においては、光散乱媒体の表面に光反射部材を追加することにより、光散乱媒体内の光フルエンスが増加する一方で、拡散光断層撮影の重要な性能である光の空間的な位置特定性を低下させてしまうことがある。
【0026】
また、この光反射部材は、関連する波長で高い反射率を有する任意の好適な材料から形成されてよい。
これには、ガラスまたは金属ミラー、金属面、高い反射率を有する合成樹脂、反射塗料で被覆されている表面等が含まれる。
この文脈において、約80%超の反射率を有する表面は、高い反射率を有するとみなされるが、低い反射率の値であっても、任意の反射面を追加することは、有利である。
【0027】
光散乱媒体の表面に光反射部材を用いることの利点を証明すべく実験を行った。
実験の設定は、図5に示されている。
中心周波数fUSを有する超音波パルスが、超音波トランスデューサ13から生成され、この超音波パルスが、既知の光学特性を有するファントム組織スラブ(phantom tissue slab)11内に伝播した。
超音波の音場が点15に到達したとき、周波数fCを有する狭周波数レーザ12からの短光パルスをスラブに向けて点サイズの入力開口部19内へと出射した。
この初期光を搬送光と称することができる。
搬送光は、超音波パルス内へと拡散し、その一部は、音響光学効果により周波数シフトして、周波数fS = fC + fUSとなった。
この超音波シフトした光をタグ付けした光と称することもできる。
その次に、両方の光場を、入力側とは反対側で、直径1cmの1つの出力開口部20で収集した。
タグ付けした光を搬送光からスローライトフィルタを用いて分離し、光電子増倍管で検出した。
スローライトフィルタと光電子増倍管は、総称的に14で示されている。
反射率R = 0.98の光反射フィルムを、光反射部材16として用い、搬送光を透過させるための直径2.6mmの孔部が設けられた入力側に配置して、再度、信号光を測定した。
スラブの異なる厚さについて、信号光をフィルム有りとフィルム無しの場合について測定した。
【0028】
検出した光子の量をファントム厚さの関数として、図6に示す。
図7は、厚さ6.7cmのファントム(phantom)について、1000ショット平均の時間における信号を示している。
図6図7は、共に、信号強度が2~3倍改善され、イメージング深さが深くなるほど効果が大きいことを示している。
【0029】
光散乱媒体11の表面に光反射部材を用いることの有利な点をさらに証明すべくシミュレーションを行った。
光散乱媒体11における光フルエンスFを算出するために拡散方程式を用いることは、当技術分野において周知である。
拡散方程式は、以下のように書くことができる。
【0030】
【数1】
【0031】
上記数式において、D = 1/(3(a + c))は、拡散定数、aは、吸収係数、cは、減衰散乱係数であり、Sは、光源を示す。
光検出器が検出できる光は、光検出器の面に切迫する光子流束Jにより示される。
フィックの法則による流束は、以下の通りである。
【0032】
【数2】
【0033】
光拡散方程式の境界条件は、以下の通りである。
【0034】
【数3】
【0035】
上記数式において、Aは、生体組織とその周囲の光散乱媒体(例えば、空気または反射部材)との間の法線ベクトルnのインタフェースでの光の平均反射率により与えられる定数である。
拡散方程式は、例えば、有限要素法により解くことができる。
【0036】
光散乱媒体の表面上の光反射手段の効果を評価するために、生体組織の酸素飽和度を測定する際のコントラストノイズ比(CNR)を定義することが有用である。
要するに、CNRは、異なる光学特性を局所的に有する2つの近接点間で位置15を移動させる場合のタグ付けした光の変化をどの程度検出可能であるかの尺度である。
これらの光学特性は、生体組織の血液酸素化に依存する。
レーザパルスショット数Nの場合の検出位置当たりのCNRは、以下のように定義される。
【0037】
【数4】
【0038】
上記数式において、ST1およびST2は、位置15の走査中に2つの異なる領域から検出した、シフトした光である。
SCは、検出した信号光であり、TFは、搬送光のフィルタ透過率である。
例えば、80dBのフィルタ抑制では、TF = 10-8である。
【0039】
シミュレーションは、市販の有限要素法ソルバであるCOMSOLを用いて行われた。
変化する厚さを有するスラブ形状は、片側に反射境界がある場合とない場合でシミュレーションした。
この反射境界は、(実験設定と同じように)その中に直径2.6mmの孔部を有している。
検出した搬送光を、フィルム孔部の下の深さ1/cにある点光源を用いて生成した、光ガイド内への反対側の流束によりシミュレーションした。
シミュレーションを検証するために、搬送光信号を実験結果と比較したところ、データは、これら2つの場合において一致した。
【0040】
光注入点周囲の光反射フィルム16により被覆される領域のサイズの影響を評価することは有益である。
実際上は、可能な限り小さい領域をカバーするように光反射境界を構成することが望ましい。
図8は、光反射フィルム16のサイズの変化が搬送光の信号に与える影響を示している。
この結果は、光反射フィルム16のサイズが拡大するにつれて信号強度が増加することを示している。
但し、光反射フィルム16のサイズが2cm~3cmを超えて拡大すると、有利な点は、減少する。
このことは、光反射フィルム16によって、被覆される領域を非常に大きく構成する必要はないことを意味している。
【0041】
また、搬送光を注入するために必要な光反射フィルム16の孔部のサイズの影響を評価することは有益である。
上述の評価と同様に、孔部のサイズが小さくなると、信号強度が増加する。
但し、孔部のサイズが3mm~4mm未満に縮小すると有利な点は、減少する。
従って、孔部を非常に小さくする必要はない。
【0042】
図5において、光源12と光検出器は、透過モードで、つまり、光散乱媒体11の対向する両側に配置されている。
しかし、本発明は、透過に限定されない。
光源12、光検出器および超音波トランスデュー13サの相対的な位置は、任意であってよい。
全ての部材を同側に配置して、反射モードで測定を行うことが実用的な場合もある。
これは、2番目の実験で行われ、この実験設定は、図9に示されている。
この実験において、吸光インクルージョン26をファントム組織11内に埋め込んだ。
超音波パルスの位置15は、ファントム表面に垂直な平面において横方向と縦方向に0.75mmの分解能で走査した。
そのような各超音波パルスの位置で、光パルスがファントムを入力開口部19で照射して、周波数シフトした信号パルスを生成し、出力開口部20の下流でスローライトフィルタを用いて分解した。
【0043】
光反射部材16と光反射部材17の両方として機能する光反射フィルムの使用/不使用の各場合について、介在物の画像を取得した。
これらの画像を、図10a)と図10b)にそれぞれ見ることができる。
光反射フィルムは、光入力、超音波源および直径1cmの光ガイドにより占められていない入力面の部分を覆った。
【0044】
追加のシミュレーションにおいて、シミュレーションを反射モードで行った。
信号光をシミュレーションするために、2段階の計算が行われ、最初に、搬送光を図8に示されるシミュレーションと同様にシミュレーションした。
その次に、タグ付けした光をパワーFUS*Kを発する超音波パルスの中心の点源としてシミュレーションしたが、ここで、FUSは、超音波パルスの搬送フルエンス、Kは、実験的に定まる経験的なタグ付け係数である。
その後、光散乱媒体の散乱および吸収特性を波長690nmで85%の酸素化された筋組織について選択した。
超音波パルスは、半径2mmの球体としてモデル化した。
そして、ST1は、超音波パルスの周囲の局所酸素化を40%に設定した場合のタグ付けした光信号、ST2は、局所酸素化が85%である場合のタグ付けした光信号であるとして、CNRを算出した。
【0045】
図11において、N = 200であり、超音波パルスにおける40%酸素化、それと比較する85%ベースラインについて、CNRが、超音波パルスの深さの関数として示されている。
光反射部材がない場合と比較して、光反射部材が適用されるとCNRは、明らかに上昇することが見られる。
シミュレーション結果におけるCNRの上昇は、実験結果において見られたCNRの上昇とよく一致しており、図10の光反射部材を使用した場合に取得した画像についてのCNRは、1.54であり、光反射部材を使用しなかった場合に取得した画像におけるCNRは、1.02である。
【0046】
レーザ注入部位と光検出部位との間の距離を評価し、CNRに関して最適距離が存在するか否か評価することは有益である。
搬送光の光学フィルタ抑制は、完全ではないため、光源と光検出器との間にある程度の距離を有することが最適であることがある。
図12は、深さ5cmでの超音波パルスと80dBのフィルタ抑制における、CNRを光源と光検出器との間の離間距離の関数として示している。
この場合の最適な離間距離は、20mmである。
一般的に、最適な離間は、光散乱媒体の散乱と吸収、超音波パルスの深さ、タグ付け係数K、および、フィルタ抑制に依存する。
従って、反射モードでは、これらの要因に基づいて光学測定幾何をカスタマイズすることができる。
【0047】
光源注入部位の付近または近傍で光反射部材を使用することの有利な点は、音響光子タグ付けの場合に限定されず、光音響イメージングまたは断層撮影を行う際にも有利である。
この場合、光散乱媒体11内の光量の増加により、光音響信号は、増加する。
【0048】
上述のように装置において十分な信号レベルを確保するために、光収集部位と光検出器との間での光損失を最小化することが重要である。
光は、光ガイドを用いてスローライトフィルタに案内する場合もある。
しかし、スローライトフィルタは、意図したように機能するためには、低温装置内に閉じ込め、低温で保管する必要がある。
【0049】
本発明は、身体深部の組織酸素化を測定することが医療上有益である場合に使用すると、有利である。
例えば、本発明は、虚血性脳卒中の管理に用いることができる。
緊急医療の場面では、患者の脳内の虚血領域の存在を迅速に診断することが重要である。
虚血性脳卒中の患者の大部分は、血栓を除去するために血栓回収療法を受ける。
重症の場合、患者は、血栓回収療法中に目を覚ますことができず、治療処置が成功であったか否かが即座には外科医に明らかではないという問題がある。
このような場合には、脳の酸素化状態を監視することが治療処置のフィードバック手段として有利となる。
【0050】
本発明が有利となる別の医学的適応は、心筋梗塞が疑われる場合の緊急処置のために、心筋の酸素化状態を監視することである。
【0051】
本発明が有利となる別の医学的適応は、スポーツ医学において、筋肉中の酸素摂取量および代謝を評価することである。
【0052】
本発明が有利となる別の医学的適応は、腫瘍学分野であり、腫瘍においては健康な生体組織と比較して酸素飽和状態が変化することがある。
例えば、腫瘍内には、低い酸素飽和度を示す壊死領域が存在する場合がある。
【0053】
スローライトフィルタは、結晶材料内のドーパントイオンの光学遷移の使用に依存する。
周波数シフトした光を元の周波数の光から分離するために十分に狭い周波数フィルタを作製するためには、吸収のローレンツ分布の曲線端が元のレーザ周波数と音響的にシフトした周波数との間で重ならないように、この遷移の線幅は、狭い必要がある。
これらの遷移線の幅は、遷移のコヒーレンス時間の逆数により限定される。
そして、このコヒーレンス時間が寿命限定されている場合、高い状態の寿命が短いほど線が広くなる。
結晶格子のイオンの場合、寿命が短くなる原因は、イオンとフォノンの相互作用であって、フォノンとは、結晶構造内を伝播する振動量子である。
光学遷移におけるイオンの高い状態が別の状態と近いと、1つまたは複数のフォノンを吸収または放出することにより、イオンは、この状態に遷移することができ、より多くのフォノンを含む事象の可能性は、ますます低くなる。
そして、このフォノンの最大エネルギは、ホスト結晶の特性であるため、最大フォノンエネルギが、低くなる「やわらかい」結晶を用いることにより、高い状態の寿命を長くすることができる。
この場合、これらの結晶におけるフォノン遷移は、より多数のフォノンとの相互作用を必要とし、その結果として、遷移速度が低下して、高い状態の寿命が長くなる。
やわらかい結晶を用いることにより、特定のイオンのより多くの光学遷移がフィルトレーション用の使用のために存続可能となる。
これにより、同じ結晶を用いて、生体組織の酸素化の評価のためにより多くの波長を用いることができるようになる。
【0054】
特定のドーパントイオンは、例えば、ランタンなど、このイオンに固有の波長でフィルタを作製するためにのみ用いることができる。
従って、例えば、ランタンとユウロピウムなどの複数の異なるドーパントイオンを用いることにより、どこにフィルタを作製することができるかカスタマイズすることが可能になる。
複数のイオンを同じホスト結晶にドープすること、つまり、「同時ドープ」することによって、または、異なる結晶を組み合わせることによって、複数のイオンを同じ信号光にアクセス可能とすることができる。
この組み合わせは、結晶を積み重ねるか層状にすること、つまり、「サンドイッチする」こと、または、異なる結晶を互いに溶融させること、つまり、「スプライスする」ことの何れかにより達成することができる。
【0055】
吸収プロファイルで作製される構造は、元の光の各個々の周波数シフトした側波帯を選択する1つか複数かの何れかのノッチフィルタであってよい。
また、除外されない唯一の吸収が、元の周波数でのものであるバンドストップフィルタであってもよい。
このことが有益であるのは、1次側波帯(±1超音波周波数)の周波数シフトした光は、ある超音波パルスについて元の周波数から除去される光の半分しか占めないからである。
但し、このバンドストップフィルタは、フィルタを通した光のスローライト効果がノッチフィルタほど高くない。
【0056】
用途と超音波パルスに応じて、両方のフィルタは、有益となる。
【0057】
どのスペクトル構造の最大幅も、イオンが光ポンピングする他の1つまたは複数の基底状態は、周波数が十分に離れていることを必要とする。
これは、基底状態が、複数の超微細状態へと自然に分裂するイオンと結晶自体の固有の特性であってよい。
場合によっては、この分割は、一般的に縮退している状態を分割させるように電場および/または磁場を印加することにより達成することができる。
電場および/または磁場を印加することにより、基底状態の寿命を延長することができ、その結果、フィルタ寿命を延長することができる。
このフィルタ寿命の延長により、フィルタ準備に割り当てる必要があるイメージングシーケンス中の時間が短縮化される。
このようにして、フィルタ寿命の延長により、イメージング速度の高速化という直接的な結果が得られる。
スローライトフィルタを作製すると、1つまたは複数のいわゆる「アンチホール」が同時に作製されるこというさらなる効果がある。
そのようなアンチホールとは、吸収がむしろ増加する結晶吸収プロファイル上の位置のことである。
少なくとも1つのアンチホールは、スローライトフィルタの中心周波数から分割した基底状態と等しい周波数距離に位置する。
このことは、光ポンピングによって生じ、その時には、より多くのイオンがこの状態を占めている。
このようにして、正しい電場および/または磁場を印加することにより、ホール寿命の延長に加えて、元のレーザ周波数でアンチホールを設けることによってスローライトフィルタの効率を向上させることができる。
【0058】
極低温装置の内部では、永久磁石を用いて磁場を生成することができる。
このことは、外部の電磁石の場合のような電力供給または冷却が必要なく、超電導電磁石コイルまたはキャパシタを用いる場合のようなリード線を介してさらなる熱負荷が生じることもないという有利な点を有している。
また、磁石を低温装置の内部に配置すると、外部に配置した場合と比較して小さい磁石で強い磁場を生成することができる。
このようにして、永久磁石を用いることにより、サイズの縮小と、使用している低温クリオスタット装置の冷却電力の軽減との両方が可能になる。
【0059】
また、超音波パルスの形状も、画像の空間解像度と周波数シフトした光の強度に大きい影響を及ぼす。
そして、この超音波パルスは、チャープすることができ、これにより、スローライトフィルタと共に、同じ超音波パルスで複数の空間点を探針することが可能になる。
これにより、取得時間が効果的に短縮され、より高速な画像構築が可能になる。
【0060】
チャープ超音波パルスとは、中心周波数の勾配をその時間的および空間的プロファイルに沿って有するパルスを意味する。
短い光パルスを用いると、周波数シフトした光も、このようにしてチャープされ、各周波数成分は、異なる空間領域と関連する。
フィルタリングした光の異なる周波数は、異なる速度で伝播するため、この周波数成分をスローライトフィルタを用いて時間的に分離することができる。
その際、読み出しにおける異なる時間は、生体組織における異なるプローブ位置に対応する。
【0061】
異なる周波数で同時に複数の超音波パルスを発生し、各パルス周波数が同じ効果を発揮する場合がある。
そして、この各パルス周波数が異なる時間遅延のスローライトフィルタに適合している場合、複数の点を同じ光パルスで画像化することができる。
【0062】
検出信号を最適化するためには、信号光を光散乱媒体11から収集して可能な限り効率的にフィルタに案内することが重要である。
これを達成するためには、光ガイド装置、例えば、単一の光ガイドまたは光ファイバ束等を用いることが好ましい。
そして、この光ガイド装置がフィルタを保持している低温装置内へと結合される場合、光損失を最小化して低温室の断熱を維持することが重要である。
これを達成する実施形態が、図13に示されている。
反射壁を有している中空の光ガイド27は、外部光ガイド装置からの光を低温装置内に位置する結晶21の内外に案内する。
このようにして、フィルタに衝突もせず、その後に光検出器上で画像化できないほど大きく発散する光線28が、中空の光ガイド27によって収められる。
この装置により、真空を中空の光ガイド27内で維持することができ、サーマルインテグリティが維持される。
同時に、中空の光ガイド27は、フィルタの作用する受光面を低温装置の外側に近づける。
光学システム内に画像を保存する必要がないため、中空の光ガイド27により、フィルタに向かう光損失とフィルタからの光損失を最小限とすることが可能になる。
【0063】
酸素飽和度のデータをユーザに提示する際、従来の超音波走査(例えば、Bモード走査)と酸素飽和度を示す画像とを、絶対スケールまたは相対スケールの何れかで、同時に表示することが好ましい。
酸素飽和度は、2D輝度モノクロ画像として、または、2Dフォールスカラー画像として表現することができる。
好ましい表現は、フォールスカラーの酸素飽和度の画像を従来の超音波の画像上に重ね合わせることである。
好ましい手法では、酸素飽和度の画像は、ソフトウェア機能を用いてON/OFFを切り替えるか、超音波の画像上に徐々にブレンドすることができる。
【0064】
以上、本発明について実施形態に基づいて説明した。
しかし、上記以外の実施形態を本発明の範囲内で同様に可能である。
上記とは異なる方法ステップを本発明の範囲内で提供することができる。
本発明の様々な特徴およびステップを上記以外の組み合わせで組み合わせることができる。
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0065】
本明細書および特許請求の範囲で用いられている不定冠詞「a」および「an」は、特段の記載がない限り「少なくとも1つの」を意味する。
本明細書および特許請求の範囲で用いられている「および/または」の文言は、「何れか一方またはその両方」のように連結される要素、つまり、ある場合には結合的に存在し他の場合には非結合的に存在する要素を意味する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】