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特表2024-542292流体を富化ガスで富化させるためのデバイス、使用、方法、および富化装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】流体を富化ガスで富化させるためのデバイス、使用、方法、および富化装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20241106BHJP
   A61M 1/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
A61M1/16 107
A61M1/00 140
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024549249
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 DE2022100830
(87)【国際公開番号】W WO2023083415
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】102021129141.0
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524173671
【氏名又は名称】エイチボックス・セラピーズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニクラス・シュトイアー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・シュランシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・メンネ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアーネ・ホフマン
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA03
4C077BB06
4C077CC04
4C077DD07
4C077EE01
4C077EE05
4C077HH03
4C077HH07
4C077HH13
4C077JJ06
4C077JJ13
(57)【要約】
本発明は、デバイス(1)を流れるとき、デバイス(1)の内部の高圧領域(2)において流体(F)を富化ガスで富化させるためのデバイス(1)であって、高圧領域(2)は、入口側(11)と出口側(12)との間に延在し、流体の流れ方向(D)において所定の長さを有し、デバイス(1)は、周囲圧力(UD)に対して流体(F)の圧力を増加させるための、高圧領域(2)の開始部(21)における、好ましくは第1の蠕動ポンプである圧力増加ユニット(3)と、周囲圧力(UD)に対する増加圧力(HD2)の下にある富化ガス(AG)を、増加圧力(HD1)の下にすでにある流体へと供給するための、高圧領域(2)におけるガス供給ユニット(4)と、流体(F)の圧力を少なくとも有効圧力(ND)へと低下させるため、および好ましくは、流体(F)をデバイス(1)の外へ搬送するための、高圧領域(2)の終了部(22)における、好ましくは第2の蠕動ポンプである圧力低下ユニット(5)とを備える、デバイスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス(1)を流れるとき、前記デバイス(1)の内部の高圧領域(2)において流体(F)を富化ガスで富化させるためのデバイス(1)であって、前記高圧領域(2)は、入口側(11)と出口側(12)との間に存在し、前記流体(F)の流れ方向(D)において延び、前記デバイス(1)は、周囲圧力(UD)に対して前記流体(F)の圧力を増加させるための、前記高圧領域(2)の開始部(21)における、好ましくは第1の蠕動ポンプである圧力増加ユニットと、前記周囲圧力(UD)に対する増加圧力(HD2)の下にある前記富化ガス(AG)を、増加圧力(HD1)の下にすでにある前記流体(F)へと供給するための、前記高圧領域(2)におけるガス供給ユニット(4)と、前記流体(F)を少なくとも有効圧力(ND)へと減圧するため、および好ましくは、前記流体(F)を前記デバイス(1)の外へ搬送するための、前記高圧領域(2)の終了部(22)における、好ましくは第2の蠕動ポンプである圧力低下ユニット(5)とを備える、デバイス(1)。
【請求項2】
前記富化ガス(AG)の前記増加圧力(HD2)は、前記周囲圧力(UD)よりも高いが、前記流体(F)の前記増加圧力(HD1)よりも低いことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記ガス供給ユニット(4)は、前記流体(F)の変動する増加圧力(HD1)の事象において、前記富化ガス(AG)の前記増加圧力(HD2)が前記流体(F)の前記変動する増加圧力(HD1)に従うように構成されることを特徴とする、請求項2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
前記高圧領域(2)において、前記流体(F)の前記増加圧力(HD1)は、2barから4barまで、好ましくは2.5barから3.5barまで、特に好ましくは実質的に3.0barの、前記周囲圧力(UD)と比べての超過圧力に対応することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
前記第1の蠕動ポンプとしての前記圧力増加ユニット(3)および前記第2の蠕動ポンプとしての前記圧力低下ユニット(5)について、前記第1および/または第2の蠕動ポンプ(3、5)はそれぞれ、ホース区分(6、6a、6b)を有し、
前記ホース区分(6、6a、6b)の内径が前記ホース区分(6、6a、6b)の一方向において先細りであり、好ましくは、前記内径は対称的に先細りではなく、および/または、
前記ホース区分(6、6a、6b)の弾性が、特定の区分の膨張が防止または少なくとも低減され得るような方法で、前記ホース区分(6、6a、6b)にわたって変化する、
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
ローラポンプとして設計される前記第1および/または第2の蠕動ポンプ(3、5)において、ローラ(61)、前記ローラ(61)の接触面、および/またはポンプヘッド(62)の寸法が、前記圧力を上昇または低下させるために異なって設計されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記第1および/または第2の蠕動ポンプ(3、5)において、ホース区分(6)は、前記第1および/または第2の蠕動ポンプ(3、5)を通じて同じ方向に2回以上経路が取られることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
前記第2の蠕動ポンプ(5)は前記第1の蠕動ポンプ(3)よりも低い速度で動作させられることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
少なくとも前記第1の蠕動ポンプ(3)は動作圧力において完全な閉塞で動作することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項10】
前記圧力低下ユニット(5)は、前記流れ方向(D)に抗するポンプ作用で動作させられ、前記ポンプ作用は、流体が前記流れ方向において前記圧力低下ユニット(5)を通過することができるような寸法とされることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項11】
この目的のために、前記圧力低下ユニットは、前記流れ方向(D)に抗する回転の意味を有する第2の蠕動ポンプ(5)として動作させられ、前記第2の蠕動ポンプ(5)は部分的な閉塞のみで動作させられることを特徴とする、請求項10に記載のデバイス(1)。
【請求項12】
前記圧力増加ユニット(3)は第1の蠕動ポンプとして動作させられ、前記圧力低下ユニット(5)は第2の蠕動ポンプとして動作させられ、前記第1および第2の蠕動ポンプ(3、5)は、共通のポンプ絞り機構を有する共通ポンプ(3、5)として設計され、前記第1の蠕動ポンプ(3)は、前記絞り機構へと挿入される第1のホース区分(6a)によって形成され、前記第2の蠕動ポンプ(5)は、前記第1のホース区分(6a)に沿って同じ前記絞り機構へと挿入される第2のホース区分(6b)によって形成されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項13】
前記第1のホース区分(6a)および前記第2のホース区分(6b)は、前記第2の蠕動ポンプ(5)が前記流れ方向(D)に送出するとき、同じ側から前記共通ポンプ(3、5)へと挿入されるか、
または、
前記第1のホース区分(6a)および前記第2のホース区分(6b)は、前記第2の蠕動ポンプ(5)が前記流れ方向(D)に抗して送出する場合、反対側から前記共通ポンプ(3、5)へと挿入される
ことを特徴とする、請求項12に記載のデバイス(1)。
【請求項14】
前記ガス供給ユニット(4)は膜接触器供給ユニットとして設計されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項15】
前記膜接触器供給ユニット(4)は流体密であるが気体透過性の複数の膜(41)を備え、前記膜(41)は、前記富化ガス(AG)が前記膜(41)を介して前記流体(F)に入ることができるような方法で、前記流体(F)と前記富化ガス(AG)とを分離することを特徴とする、請求項14に記載のデバイス(1)。
【請求項16】
流体(F)または富化ガス(AG)の第1の材料流れ(M1)が前記膜接触器供給ユニット(4)を通過させられ、前記第1の材料流れ(M1)における前記膜(41)は前記膜接触器供給ユニット(4)に配置され、前記第1の材料流れ(M1)を形成しない富化ガス(AG)または流体(F)の第2の材料流れ(M2)が、前記第1の材料流れ(M1)とは別に前記膜(41)を通過させられることを特徴とする、請求項15に記載のデバイス(1)。
【請求項17】
前記流体(F)は前記第1の材料流れ(M1)を形成し、前記富化ガス(AG)は前記第2の材料流れ(M2)を形成することを特徴とする、請求項16に記載のデバイス(1)。
【請求項18】
前記デバイス(1)は、前記流れ方向(D)において前記ガス供給ユニット(4)の下流において前記高圧領域(2)に配置される、前記流体(F)から放出されるガス(G)を放出するためのガス放出ユニット(7)をさらに備えることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項19】
前記ガス放出ユニット(7)は膜接触器排出ユニットとして設計されることを特徴とする、請求項18に記載のデバイス(1)。
【請求項20】
富化ガス(F)で富化させられた前記流体(F)が、第3の材料流れ(M3)として前記膜接触器排出ユニット(7)を通過させられ、流体密であるが気体透過性の複数の膜(71)が前記第3の材料流れ(M3)に配置されるが、気体透過性膜(71)は、前記流体(F)から除去される前記ガス(G)が前記膜(71)を通過し、前記膜接触器排出ユニット(7)から放出され得るように、前記第3の材料流れ(M3)に配置されることを特徴とする、請求項19に記載のデバイス(1)。
【請求項21】
真空ポンプユニット(72)が、前記膜(71)を通過した前記流体(F)から除去される前記ガス(G)を抽出するために前記膜(71)に接続されることを特徴とする、請求項20に記載のデバイス(1)。
【請求項22】
前記圧力低下ユニット(5)はガス放出ユニット(7)として設計され、好ましくは、前記ガス放出ユニット(7)は、膜(71)の配置および/もしくは充填密度、ならびに/または前記流体(F)の流れ経路によって、圧力低下ユニット(5)としての使用のために設計されることを特徴とする、請求項18から21のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項23】
前記膜(41、71)は中空繊維膜または平膜であることを特徴とする、請求項14から17または請求項19から22のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項24】
前記ガス供給ユニット(4)と前記ガス放出ユニット(7)とは共通の構成要素(8)に一体化されることを特徴とする、請求項18から23のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項25】
さらなるホース区分(51)が、前記第1または第2の蠕動ポンプ(3、5)へと挿入され、前記ガス放出ユニット(7)のガス出口に接続されることを特徴とする、請求項18から24のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項26】
前記圧力増加ユニット(3)および/または前記圧力低下ユニット(5)は、前記入口側(11)における前記流体(F)の前記圧力から始まる複数のステップにおいて前記流体(F)の所望の前記増加圧力(HD1)を達成するため、または、前記流体(F)の前記圧力を前記出口側(12)における前記有効圧力(ND)へと低下させるために、多段階の設計のものであることを特徴とする、請求項1から25のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項27】
前記流体(F)は生理的液体、好ましくは血液である、および/または、前記富化ガス(AG)は少なくとも主に酸素を含み、好ましくは、前記富化ガス(AG)は、80%超、特に好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超の酸素含有量を有する、もしくは純粋な酸素であることを特徴とする、請求項1から26のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項28】
前記デバイスは、適切なデータ接続を用いて、前記高圧領域(2)における前記増加圧力(HD1)を制御するために、少なくとも前記圧力増加ユニット(3)および前記圧力低下ユニット(5)に接続される制御ユニット(93)を備えることを特徴とする、請求項1から27のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項29】
前記制御ユニット(93)は、前記富化ガス(AG)の供給を制御するために前記ガス供給ユニット(4)に接続され、ならびに/または、除去される前記ガス(G)の放出を制御するために、および/もしくは、流体圧力の関数としてガス圧力を制御するために、前記ガス放出ユニット(7)に接続されることを特徴とする、請求項28に記載のデバイス(1)。
【請求項30】
前記デバイス(1)は、前記流体(F)に溶解された1つまたは複数のガスの分圧を測定するように構成され、前記制御ユニット(93)は、前記流体(F)における前記ガスの限度値を超えないように、前記ガス供給ユニット(4)における前記富化ガス(AG)の前記ガス圧力を規制または制御するために提供されることを特徴とする、請求項29に記載のデバイス(1)。
【請求項31】
請求項1から30のいずれか一項に記載のデバイス(1)の使用であって、血液が流体(F)として使用され、酸素が体外血液治療(BB)のための富化ガス(AG)として使用され、好ましくは、前記血液治療は、前記血液の体外一酸化炭素解毒か、虚血治療、もしくは癌治療、もしくは癌治療の支援のための前記血液の体外酸素投与か、または、体外式膜型人工肺である、使用。
【請求項32】
体外式膜型人工肺(BB)の間、前記デバイス(1)は、7l/分未満、好ましくは4l/分未満、特に好ましくは2l/分未満、さらにより好ましくは1l/分未満での前記デバイス(1)を通る血流で動作させられることを特徴とする、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
請求項1から30のいずれか一項に記載のデバイス(1)を流れるときに、前記デバイス(1)の内部の高圧領域において流体(F)を富化ガスで富化させるために、前記デバイス(1)を動作させるための方法(100)であって、前記高圧領域(2)は、前記流体(F)の流れ方向(D)における所定の長さの入口側(11)と出口側(12)との間で延び、前記方法は、
好ましくは周囲圧力(UD)の下で、流体(F)を前記入口側(11)において前記デバイス(1)へと導入するステップ(110)と、
前記高圧領域(2)の開始部(21)において、好ましくは第1の蠕動ポンプである圧力増加ユニット(3)によって、前記周囲圧力に対する前記流体(F)の圧力を増加圧力(HD1)へと増加させるステップ(120)と、
前記流体(F)を富化ガス(AG)で富化させるために、前記高圧領域(2)におけるガス供給ユニット(4)によって、前記周囲圧力(UD)に対する増加圧力(HD2)の下にある前記富化ガス(AG)を、増加圧力(HD1)の下にすでにある前記流体(F)へと供給するステップ(130)と、
好ましくは第2の蠕動ポンプである圧力低下ユニット(5)を用いて、前記流体(F)を、少なくとも有効圧力(ND)、好ましくは前記周囲圧力(UD)へと減圧するステップ(140)と、
好ましくは、前記第2の蠕動ポンプ(5)を使用して、富化ガス(AG)で富化させられた前記流体(F)を前記デバイス(1)の外へ搬送するステップ(150)と
を含む、方法(100)。
【請求項34】
前記流れ方向(D)における前記ガス供給ユニット(4)の下流において前記高圧領域(2)に配置されるガス放出ユニット(7)を用いて、前記流体(F)から放出されるガス(G)を放出するさらなるステップ(160)を含む、請求項33に記載の方法(100)。
【請求項35】
流体動力学の後での調査に向けて、下流撮像方法で前記流体(F)における、意図された量の気泡を視覚化することができるようにするために、放出される(160)前記ガス(G)は、前記流体(F)を減圧するステップ(140)の後に前記意図された量の気泡が前記流体(F)に残るように、前記流体(F)から完全には除去されない、請求項34に記載の方法(100)。
【請求項36】
前記富化ガス(AG)での富化のための前記流体(F)は、前記デバイス(1)を通じて数回搬送される(170)、請求項33から35のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項37】
前記流体を導入する前記ステップ(110)は、前記流体(F)を供給する前、および前記富化ガス(AG)を供給するステップ(130)の前であっても、呼び水流体(PF)を用いて前記デバイス(1)からガス(G)を排除するために、前記呼び水流体(PF)による前記デバイス(1)の事前充填(180)と、前記デバイス(1)を通じて前記呼び水流体(PF)を搬送することとによって先行させられ、好ましくは、食塩水が呼び水流体(PF)として使用される、請求項33から36のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項38】
富化装置であって、
特に、請求項1から30のいずれか一項に記載のデバイスの形態であり、
前記富化装置を流れるとき、指定流体を指定富化ガスで富化させるように構成される高圧領域を前記富化装置の内部に備え、
前記富化装置は入口側と出口側とを有し、前記富化装置は、前記入口側から前記出口側へと延びる前記指定流体のための指定流れ方向を有し、
前記高圧領域は前記入口側と前記出口側との間に存在し、前記高圧領域は開始部と終了部とを有し、前記開始部は前記入口側を向き、前記終了部は前記出口側を向き、
前記高圧領域は、
前記高圧領域の前記開始部において、具体的には圧力増加ポンプ、好ましくは第1の蠕動ポンプである圧力増加ユニットを有し、
前記高圧領域におけるガス供給ユニットであって、圧力の下で前記富化ガスを供給し、したがって、動作中に増加圧力の下にすでにある前記流体へと前記富化ガスを供給するように構成される、前記富化ガスに適した供給空洞を有し、
前記ガス供給ユニットは、具体的には弁である流れ抵抗提供部を有し、
前記流れ抵抗提供部は、前記ガス供給ユニットの前記出口側に存在し、具体的には、前記ガス供給空洞の前記出口側に存在し、
具体的には前記弁である前記流れ抵抗提供部は、流れ抵抗のための調整選択肢を有することができる、ガス供給ユニットを有し、
追加の流れ抵抗として、ならびに前記流体を減圧させるために、および好ましくは、前記流体を前記富化装置の外へ搬送するために設計された、好ましくは第2の蠕動ポンプである圧力低下ユニットを、前記高圧領域の前記終了部において有する、富化装置。
【請求項39】
前記富化装置は、請求項1から30のいずれか一項に記載のデバイスとして、および/または請求項31もしくは32に記載の使用ために、および/または、請求項33から37のいずれか一項に記載の方法を実行するために構成され、任意選択で、請求項2から30のうちの1つまたは複数に追加的に記載される、請求項38に記載の富化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を富化ガスで富化させるための装置に関し、富化ガスは、周囲圧力に対する増加圧力の下で、すでに加圧されている流体に供給される。本発明は、このような装置を動作させるための方法と、体外一酸化炭素解毒のため、虚血治療、もしくは癌治療、もしくは癌治療の支援のための血液の体外酸素投与のため、または、体外式膜型人工肺のために、流体としての血液の場合におけるデバイスの使用と、また富化装置とにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、後の処理または処置のために流体を準備するための、ガスによる流体の富化はよく知られている技術である。他の技術分野に加えて、この原理は、様々な異なる医療上の理由により患者に適切な血液を供給するために、患者の血液(流体)を準備するのに使用され得るため、医療技術において特に重要である。例えば、一酸化炭素中毒は、一酸化炭素が富化された血液から、酸素の添加を通じて一酸化炭素を少なくとも部分的に除去することで治療できる。今日、このような患者は、酸素で人工呼吸されるか、または、酸素環境を伴う加圧室に置かれる。虚血治療、癌治療、癌治療のための支援、または体外式膜型人工肺(ECMO)などの他の目的のために、患者の血液を酸素で富化させることも有益である。ここでは、血液の酸素投与が体外で適切なデバイスにおいて行われる。
【0003】
文献「Hyperbaric phototherapy augments blood carbon monoxide removal」、A. Fischbachら、Lasers Surg.Med. 2021、1~7頁では、上昇した圧力における酸素がフォトECMOデバイスを介して通常の圧力で血液に添加される、一酸化炭素中毒の治療のためのデバイスが記載されている。酸素圧力が血圧よりも高くなるにつれて、一酸化炭素排除がより多くなる。加えて、反応室を特定の波長の光で照らす一酸化炭素排除酸素の取り込みについての効果が調査されている。
【0004】
血液処理時間を短くすることで患者の治療時間を短くするために、できるだけ多くの酸素を血液へとできるだけ素早く吸収させることが望ましい。しかしながら、限界圧力を越えて圧力を上昇させることは、血液において酸素の泡の形成をもたらし、これは、例えば、患者に塞栓症を引き起こす可能性がある。血圧に対してガス側でのガス圧力を上回ると、膜からガスが抜けることにつながる。加えて、環境(患者)と比較して過飽和させられた血液を減圧させると、気泡の形成をもたらすことになる。
【0005】
そのため、ガスによる流体の富化が素早く効率的に行えるが、行われる処置が、流体または患者に損害を与える可能性のないデバイスを有することが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Hyperbaric phototherapy augments blood carbon monoxide removal」、A. Fischbachら、Lasers Surg.Med. 2021、1~7頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、先行技術の代替または改良を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、目的は、デバイス(1)を流れるとき、デバイス(1)の内部の高圧領域(2)において流体(F)を富化ガスで富化させるためのデバイス(1)であって、高圧領域(2)は、入口側(11)と出口側(12)との間に存在し、流体(F)の流れ方向(D)に延び、デバイス(1)は、周囲圧力(UD)に対して流体(F)の圧力を増加させるための、高圧領域(2)の開始部(21)における、好ましくは第1の蠕動ポンプである圧力増加ユニット(3)と、周囲圧力(UD)に対する増加圧力(HD2)の下にある富化ガス(AG)を、増加圧力(HD1)の下にすでにある流体(F)へと供給するための、高圧領域(2)におけるガス供給ユニット(4)と、流体(F)を少なくとも有効圧力(ND)へと減圧するため、および好ましくは、流体(F)をデバイス(1)の外へ搬送するための、高圧領域(2)の終了部(22)における、好ましくは第2の蠕動ポンプである圧力低下ユニット(5)とを備える、デバイス(1)によって達成される。
【0009】
ここで、以下の関連用語が説明される。
【0010】
不定冠詞、および、「1つ」、「2つ」などの数値の指示は、本特許出願の文脈において使用される限りでは、「ちょうど1つ」、「ちょうど2つ」などだけをここでは意味する、または意味し得ることが、文脈から、または技術的な知識から明確ではない場合、「少なくとも」の指示として、つまり、「少なくとも1つ」、「少なくとも2つ」などとして常に理解される。
【0011】
「流体」という用語は、富化ガスで富化され得る任意の種類の流体または液体を指す。いくつかの実施形態では、流体は、血液または血漿などの生理的流体であり得る。
【0012】
「高圧領域」という用語は、流体における圧力がデバイスの周囲圧力よりも高いデバイスにおける領域を指す。
【0013】
高圧領域は、例えば、追加の流れ抵抗器としての圧力低下ユニットの存在によって、本発明では可能とされる。流体システムにおいて圧力低下ユニットを利用することで、高圧領域における圧力を、高圧領域における個々の構成要素の流れ抵抗を単に克服するために必要となる高さを上回るように上昇させることが可能である。これは、高圧領域における流体流れと流体圧力とを互いから独立して調整することを可能にする。
【0014】
周囲圧力は、例えば、デバイスが通常の空気圧力を伴う部屋に存在する場合、通常の空気圧力であり得る。高圧領域は、例えば、単一の連続した区分であり得るか、または、Y字形コネクタを介して接続された2つの並列のホースから成る複数の隔てられた区分もしくは相互接続された区分を含み得る。
【0015】
高圧領域は、行き渡る圧力において関連の弾性を有する高圧領域におけるホース区分が構成要素の上流または下流に存在しないような方法、および、2つ以上の構成要素が高圧領域に存在する場合、前記構成要素同士の間の接続がホース区分でないような方法で、構成され得る。接続が高圧領域に存在する場合、前記接続は、例えば、行き渡る圧力に耐えることができる関連の弾性を伴わない管であり得るか、または、前記接続がホース区分である場合、前記区分は、行き渡る圧力によるホース区分の膨張を、定められた手法で制限するためのシースが設けられてもよく、このシースは、例えば耐圧ホースシースとして実施される。
【0016】
任意選択で、高圧領域は所定の長さを有し得る。
【0017】
「所定の長さの」という用語は、デバイスの動作の間に変えることができない、装置によって決定付けられた長さを指す。前記長さは、デバイスにおける特定の構成要素の設置場所によって定められ、デバイスの構成要素として固定された位置を有する、圧力増加ユニットから圧力低下ユニットまでの範囲であり、これが所定の長さを決定する。
【0018】
「圧力増加ユニット」という用語は、流体に発揮される圧力を増加させるために使用され得る任意の種類の構成要素を指す。
【0019】
圧力増加ユニットは、例えば、ピストンポンプ、遠心式ポンプ、または、ローラポンプもしくは線形蠕動ポンプなどの蠕動ポンプであり得る。この列記は包括的ではない。
【0020】
圧力を増加させる主な目的は、高圧領域を通る流体流れを発生させることである。本発明では、圧力は、具体的には、圧力低下ユニットの流れ抵抗が克服されるような程度まで増加させられなければならない。そのため、圧力低下ユニットが存在しない場合、高圧領域における圧力の高さは、圧力増加ユニットを通じて、他の構成要素の流れ抵抗が克服されるような程度まで上昇するだけとなる。
【0021】
「圧力低下ユニット」という用語は、流体に発揮される圧力を低下させるために使用され得る任意の種類の構成要素を指す。
【0022】
「圧力低下ユニット」は、例えば、出口の方向において高圧領域を制限する。この構成要素は、高圧領域における、先に高められた圧力を低下させる。しかしながら、具体的には、圧力低下ユニットは、第1の場所において高圧領域を高めることを可能にする追加の流れ抵抗を提起する。この点において、圧力低下ユニットは高圧領域のための意図的な圧力増加ユニットとしても作用し、それによって、高圧領域における流体圧力は、本発明によるデバイスにおける他の構成要素の抵抗に抗して流体を搬送するためだけに必要となる圧力を超えて増加させられる。
【0023】
しかしながら、先行技術では、すべての回路における圧力は、すべての抵抗が具体的な流れにおいて克服され得るような程度まで増加させられ、それによって、圧力における変化が流れも変化させるため、流れと圧力とを互いから独立して設定することができない。前記構成要素は、例えば、ホース締め具、オリフィス、または直径の制約などの受動的要素、あるいは、ポンプ(例えば、ピストンポンプ、遠心式ポンプ、または、ローラポンプもしくは線形蠕動ポンプなどの蠕動ポンプ)などの能動的要素とでき、ポンプは、(流れの方向における具体的な流れ能力において)流体の流れの方向に抗して、または、流れの方向における圧力増加ユニットよりも低い配送速度で輸送する。圧力低下ユニットは、流体における圧力が、流れエネルギーを流体から羽根車などの回転構成要素の回転へと伝えることで低下させられ得るように、流体が通って流れる他の回転構成要素として設計されてもよい。圧力における低下に影響を与えるために、筐体における回転構成要素の気密性、または回転構成要素を越える流体の漏れ、または回転構成要素の回転抵抗が、設定または定義され得る。圧力低下ユニットは、例えば回転繊維束であってもよい。
【0024】
「流れ方向」という用語は、入口側から出口側への流体の流れの方向を指す。本発明では、流れ方向は、圧力増加ユニットが流体を同じ方向である流れ方向に常に搬送するように、装置によって逆にされることはない。
【0025】
「富化ガス」という用語は、流体へと移送され得るすべてのガスを基本的に指す。これらのガスは、例えば、オゾン、酸素、または、他の搬送ガスにおける1つまたは複数のガスの異なる濃度を有する任意のガス混合物を含む。
【0026】
「有効圧力」という用語は、圧力低下ユニットの下流において流体に適用される圧力を指す。適用に依存して、有効圧力は、デバイスの周囲圧力、空気の通常の圧力、または他の圧力レベルに対応してもよい。
【0027】
「ガス供給ユニット」という用語は、富化ガスが流体に供給される構成要素を指す。これは、流体との富化ガスの直接的な接触によって、または、ガス側から流体側への気体透過性の表面(膜)を通じての間接的な接触および移送によってのいずれかで行われ得る。ガス側は、流体が流れないが、例えば膜によって流体から分離されるガス供給ユニットの一部であり、つまり、富化ガスが流体内への移送のために適用される側である。
【0028】
「ガス放出ユニット」という用語は、その中で、除去されるガスが流体から抽出される構成要素を指す。ガス側および流体側に関してガス供給ユニットについて述べられていることは、原理的にガス放出ユニットにも当てはまる。流体中およびガス側に存在するガスの部分圧に依存して、1つの気体成分のためのガス供給ユニットは、流体におけるこの気体成分の富化をもたらすことができるだけでなく、流体における他の気体成分がガス供給ユニットのガス側よりも高い分圧を有する場合、ガス除去ユニットとしても作用することができる。そのため、他の気体成分は流体からガス側へと通過し、隣接のガス流れと離れるように輸送されることになる。
【0029】
「除去されるガス」という用語は、流体から除去されるすべてのガスを基本的に指す。適用に依存して、除去されるガスは、例えば、デバイスにとって望まれないガス、有害なガス、危険なガス、もしくは過剰なガス、または、流体における1つまたは複数のこのようなガスの異なる濃度を有する任意のガス混合物を含む。本発明によるデバイスを用いた一酸化炭素中毒の治療の例示の場合では、COが除去されるガスである。
【0030】
本発明は、周囲圧力を上回る圧力で流体を処理するためのデバイスに関する。デバイスの適用において、任意の液体と任意の分散との両方を含む流体が、流体が富化ガスと接触させられ、増加した物理的圧力が高圧領域において流体に作用する少なくとも1つの圧力領域(高圧領域)があるシステムを通じて搬送される。流体が周囲圧力の領域における圧力に曝され、流体がまた、ガスと接触させられ得る加圧されていない領域である他の領域がデバイスにあってもよい。圧力増加ユニット、ガス供給ユニット、および圧力低下ユニットに加えて、高圧領域は、流体が存在できるかまたは流体が通って流れることができる以下の構成要素、すなわち、ホース区分、ホースコネクタ、コネクタ、室、空洞、ガス除去ユニット、熱供給ユニット、熱除去ユニットなどのうちの1つまたは複数を備えてもよい。1つの高圧領域に加えて、デバイスは、入口側および出口側にも接続される他の高圧領域を備えてもよい。さらなる前記高圧領域は、流体がデバイスの並列の高圧領域を通る並列な配管内を流れるように、または、流体が直列に配置されたデバイスの高圧領域を通る1つの配管内を流れるように、連続的に配置されても、または、互いと並列に配置されてもよい。個々の高圧領域は、周囲圧力に対して、流体に同じ増加圧力または異なる増加圧力を発揮することができる。流体および/または富化ガスは、連続的な流れ、もしくは脈動の流れ、もしくは不連続な流れ、または前記流れの種類の組合せにおいて、デバイスを通じて、またはデバイス内へと送り込むことができ、具体的には、高圧領域を通じて、または高圧領域内へと送り込むことができる。
【0031】
デバイスは、流体を富化ガスで重度に富化させるために使用される。流体としての血液の場合、血液は、通常の生理的飽和値を上回る、例えば、酸素などの富化ガスで富化させられる。
【0032】
デバイスは、流体への機械的負荷ができるだけ低く保たれるように構成され得る。例えば、デバイスが医療用途において血液などの生物流体に適用されるとき、血液への低い機械的負荷は、血液における血球への最小限の損傷をもたらす。デバイスの設計は流体への低い機械的負荷を可能にする。
【0033】
したがって、本発明によるデバイスは、流体または患者に許容不可能な損傷をもたらすガス吸入無しで、流体をガスで素早く効果的に富化させることを可能にする。
【0034】
一実施形態では、富化ガスの増加圧力は、周囲圧力よりも高いが、流体の増加圧力よりも低い。
【0035】
これによって、流体は、富化ガスが流体において泡を形成することなく、高品質の富化ガスで富化させられることを可能にする。高圧領域において泡を回避することによって、より大きな気泡が高圧領域においてデバイスの特定の位置に蓄積するのを防止することも可能である。これは、血液が流体として使用されるとき、患者に大きな危険をもたらすことになる。
【0036】
さらなる実施形態では、少なくともガス供給ユニットは、流体の変動する増加圧力の事象においては、富化ガスの増加圧力が流体の変動する増加圧力に従うように構成される。
【0037】
高圧領域においてガス供給ユニットおよび/またはガス放出ユニットを使用するとき、本発明によるデバイスは、流体側における圧力が制御され得る、および/または、ガス側における圧力が制御され得るように構成され得る。この感知手段において制御されることは、構造もしくは設計によって、影響され得る、および/または調整され得る、および/または測定され得る、および/または規制され得る、および/または、定められる。例えば、流体における制御された圧力およびガスにおける制御された圧力が、ガス圧力が高圧領域における流体圧力と同様の高さにあるが、流体圧力と常に同じか、または若干低いことを意味するように、ガス供給ユニットおよび/またはガス放出ユニットは構成され得る。例えば、ガス圧力が流体側においてよりもガス側において高い場合、流体とガスとの間に存在する膜が、ガス側から流体側へとガスが通過することなく前記圧力差を維持するために使用され得る。例えば、2つの圧力の互いとの直接的な機械的または空気圧の連結によってこの性質を確保することができ、例えば、ガス源からのガス圧力が最初に流体側における圧力伝達要素に作用することで流体における圧力を調整し、次に同じガス流は、若干低下した圧力で、ガス供給ユニットおよび/またはガス放出ユニットのガス側を通り抜けることができる。例えば、ガス圧力は流体圧力を用いて規制することができる。本発明のさらなる実施形態では、流体に溶解した1つまたは複数のガスの分圧が、例えば、ルミネセンス発光を測定することによって、または、電気化学的センサを用いて測定することができる。測定原理に依存して、センサは高圧領域の内部または外部に存在してもよい。そのため、この情報は、流体におけるガスの特定の限度値を超えないような方法でガス供給ユニットにおける富化ガスのガス圧力を規制および/または制御するために使用できる。限度値は、例えば、ガスが流体から抜けることができないような有効圧力での流体におけるガスの溶解度の限度、または、治療効果を得るための限度値であり得る。
【0038】
さらなる実施形態では、高圧領域における流体の増加圧力は、2barから4bar、好ましくは2.5barから3.5bar、特に好ましくは実質的に3.0barの、周囲圧力と比べての超過圧力に対応する。原理的には、デバイスをさらに高い圧力において動作させることが可能になる。
【0039】
第1および/または第2の蠕動ポンプとして実施される圧力増加ユニットおよび/または圧力低下ユニットの場合、第1および/または第2の蠕動ポンプはそれぞれホース区分を有し、そのホース区分では、
- ホース区分の内径がホース区分の一方向において先細りであり、好ましくは、内径は対称的に先細りではなく、および/または、
- ホース区分の弾性が、特定の区分の膨張が防止または少なくとも低減され得るような方法で、ホース区分にわたって変化する。
【0040】
ローラポンプとして設計される第1および/または第2の蠕動ポンプのさらなる実施形態において、ローラ、ローラの放出面、および/またはポンプヘッドの寸法が、圧力を上昇または低下させるために異なって設計される。
【0041】
さらなる実施形態では、第1および/または第2の蠕動ポンプにおいて、ホース区分は、第1および/または第2の蠕動ポンプを通じて同じ方向に2回以上経路が取られる。
【0042】
結果として、圧力は、蠕動ポンプを通るいくつかの通路において高められ、これは流体における、より低い機械的負荷をもたらす。
【0043】
さらなる実施形態では、第2の蠕動ポンプは第1の蠕動ポンプよりも低い速度で動作させられる。
【0044】
一方では、これは高圧領域を高め、他方では、高圧領域における増加圧力から、流れ方向における第2の蠕動ポンプの下流の有効圧力までの圧力低下が達成できる。
【0045】
さらなる実施形態では、少なくとも第1の蠕動ポンプは高圧領域における動作圧力において完全な閉塞で動作する。
【0046】
閉塞は、蠕動ポンプを通じて経路が取られる管区分の閉鎖であり、その閉鎖は、流体が管区分を通じて移動させられる蠕動ポンプの外側から管区分に沿って移動させられる加圧手段(例えば、ローラ)による。これは、流体が通って第1の蠕動ポンプの前に流れ戻ることができる、不完全な閉塞による蠕動ポンプの管区域における隙間を塞ぐ。このような隙間において、大きな機械的負荷が加圧手段の移動によって流体に発揮され、このような隙間では、入口と高圧領域との間の圧力差が、隙間を通じて流体を後方へ押し、流体に大きな機械的負荷を発揮することになる。完全な閉塞があれば、この負荷は、ホース区分における圧力手段の前において押されるだけで、ホース区分の壁に押し付けられない流体によって、および流体における増加圧力が流体における可能な限り最小の負荷で優しく高められるように搬送方向に流れるだけである流体によって防止される。これは、相当に少ない血球および血液成分しか圧力増加ユニットにおいて損傷されないため、流体としての血液の場合に特に重要である。
【0047】
さらなる実施形態では、圧力低下ユニットは、流れ方向に抗するポンプ作用で動作させられ、それによってポンプ作用は、流体が流れ方向において圧力低下ユニットを通過することができるような寸法とされる。
【0048】
これは、高圧領域において増加圧力を維持するが、流体が高圧領域の外へ流れることを確保する。
【0049】
さらなる実施形態では、圧力低下ユニットは、流れの方向に抗する回転の意味で、第2の蠕動ポンプとして動作させられ、それによって、第2の蠕動ポンプは部分的な閉塞のみで動作させられる。
【0050】
第2の蠕動ポンプは反対方向において送出するが、部分的な閉塞は、流体が流れの方向に第2の蠕動ポンプを流れることを可能にする。
【0051】
さらなる実施形態では、圧力増加ユニットは第1の蠕動ポンプとして動作させられ、圧力低下ユニットは第2の蠕動ポンプとして動作させられ、第1および第2の蠕動ポンプは、共通のポンプ絞り機構を有する共通ポンプとして設計され、第1の蠕動ポンプは、絞り機構へと挿入される第1のホース区分によって形成され、第2の蠕動ポンプは、第1のホース区分に沿って同じ絞り機構へと挿入される第2のホース区分によって形成される。
【0052】
これは、1つだけのモータが共用ポンプを動作させるために必要とされるように相乗効果が達成されることを可能にする。これは、デバイスをよりコンパクトに構築させることも可能にする。
【0053】
さらなる実施形態では、第1のホース区分および第2のホース区分は、第2の蠕動ポンプが流れの方向に送出する場合、同じ側から共通ポンプへと挿入される。これは、モータが、圧力を高めるために、一方の回転の方向において力を加えて第1の蠕動ポンプを動作させる必要があり、制御された圧力低下のために、反対の回転の方向において反対に作用する力を加えて第2の蠕動ポンプを動作させる必要があるため、特に有利であり、本実施形態では、これらの2つの力が反対の方向に作用し、モータにおける力の要件を低下させる。または、第1のホース区分および第2のホース区分は、第2の蠕動ポンプが流れの方向に抗して送出する場合、反対側から共通ポンプへと挿入される。
【0054】
以下に記載されている蠕動ポンプの実施形態は、第1および/または第2の蠕動ポンプにおいて、個別に、または組合せで実施され得る。
【0055】
(a)直径変更を伴うホース区分
蠕動ポンプを高圧領域の開始部および/または終了部において使用するとき、蠕動ポンプには、蠕動ポンプの領域において先細りのホース区分を有するホース区分が適合させられ得る。先細りのホース区分は、連続的な壁厚と、先細りの内径および外径とを有するホースから、または可変の壁厚と、一定の外径を有する先細りの内径とを有するホースから、または、非対称的に可変の壁厚と、非対称的に先細りの内径とを有するホースから形成され得る。蠕動ポンプの領域における管区分は、断面が円、楕円、正方形、長方形、または任意の他の形であってもよく、この意味における内径および外径は、断面が円でない場合であっても、管の内側管腔および外側管腔を意味する。ホース区分を通る流体の流れの方向に関して、記載されているホース区分は、初めに、ある部分的な区分において広がり、他の部分的な区分において再び狭くなるように構成でき、それによって、広がる前または広がった後の直径、および狭くなる前または狭くなった後の直径、およびこのような部分的な区分の可能な繰り返しの事象では、互いから独立し、必ずしも最初の直径に戻される必要がない。高圧領域の終了部において圧力低下を達成するために、太くなった直径を有するホース区分が使用され得る。
【0056】
(b)ホース区分の弾性
第1および/または第2の蠕動ポンプは、例えば、ホース区分の特定の区分または側の膨張が、例えばホースにおける増加した内部圧力によって影響させられ得るかまたは防止され得るように、例えばケーシング表面の一方の端および/または一方の側において、ケーシング表面の他方の端および/または他方の側よりも低い弾性を有する、異なる材料の性質を有するホース区分と適合させることができる。
【0057】
(c)ポンプおよびホース区分の寸法
高圧領域の開始部における第1の蠕動ポンプは、高圧領域の終了部における第2の蠕動ポンプが適合させられるホース区分と異なる寸法を有するホース区分と適合させられ得る。高圧領域の開始部における第1の蠕動ポンプは、高圧領域の終了部における第2の蠕動ポンプと異なる寸法を有することもできる。ローラポンプとして設計される蠕動ポンプを使用するとき、前記ポンプは、高圧領域の開始部と終了部との両方において、ローラおよびポンプヘッドの寸法に関して異なるように設計されてもよい。
【0058】
(d)1つのポンプにおける2つのホース区分
高圧領域の開始部におけるホース区分は、高圧領域の終了部におけるホース区分と同じ第1の蠕動ポンプへと挿入させることができる。ホース区分は同じ寸法もしくは異なる寸法を有することができるか、または、2つのホース区分のうちの少なくとも一方は、先に記載されている先細りのホース区分を有することができ、両方のホース区分が高圧領域の入口および出口において先細りのホース区分を有する場合、前記区分は、圧力領域を通る流体の流れの方向の意味で反対方向において同じ蠕動ポンプへと挿入させることができ、圧力領域を通る流体の流れの方向の意味で1つが先細りで1つが先太であるか、または両方が先細りもしくは両方が先太である。両方のホース区分が共通ポンプとしての蠕動ポンプへと挿入される場合、高圧領域の開始部および終了部におけるホース区分は、前記区分同士が接触するように設計されてもよい。ホース区分は、少なくとも所定位置において互いに接触することができ、ホース壁は、一方のホース区分における圧力および膨張が他方のホース区分における圧力および膨張に影響するような方法で互いに触れることができる。2つのホース区分の定められた誘導について、前記区分は、例えば、ローラポンプの転動面における輪郭もしくは凹みにおいて、ローラポンプのローラにおいて、または、蠕動ポンプの基部もしくはプランジャにおいて、共通ポンプの中で案内させることができる。2つのホース区分の前記経路は、記載されているシステムとの関連での任意の他の記載されている蠕動ポンプにおいても可能であり、1つだけのホース区分または3つ以上のホース区分でも可能である。高圧領域の開始部および終了部において接触している2つのホース区分は、例えば、高圧領域の開始部における圧力と比較して、高圧領域の終了部においてのホース区分における、より高い圧力が、高圧領域の開始部におけるホース区分の、より少ない充填をもたらし、これがさらに、高圧領域における圧力の低下をもたらすように、二重管腔ホースが使用されるように構成されてもよい。反対に、高圧領域の開始部における圧力と比較して、高圧領域の終了部における、より低い圧力が、高圧領域の開始部におけるホース区分の、より多い充填をもたらすことができ、これはさらに、例えば、高圧領域における圧力の全体の規制システムが作り出され得るように、高圧領域における圧力の増加をもたらす。二重管腔管の管腔は、互いに隣り合って、互いの内側に、異なる大きさで、または、形および寸法が可変で、配置され得る。
【0059】
(e)ホース循環および複数回のホース循環
ローラポンプを高圧領域の開始部および/または終了部において第1および/または第2の蠕動ポンプとして使用するとき、ホース区分は、>0°の任意の角度、特に0~360°の領域だけでなく、それを超える角度で、それぞれのローラポンプへと挿入され得る。この設計は、例えば、蠕動ポンプを通じてホース区分を同じ方向に2回以上配置することによって、線形蠕動ポンプを使用するときに実施されてもよい。結果として、圧力は、蠕動ポンプを通るいくつかの通路において高められ、これは流体により低い機械的負荷をもたらす。
【0060】
(f)ローラの数およびホース締め具機能
ローラポンプを高圧領域の開始部において第1の蠕動ポンプとして使用するとき、ローラは、高圧領域において圧力を高めるために、および、流体を搬送するために使用することができ、その場合、ホース区分を絞る機能が、ローラポンプの出口において一体化されてもよく、例えば、1つのローラがローラと絞り機能位置との間で特定の圧力に高まったとき、ローラポンプの出口における流れが高圧領域へと常に能動的に放出されるように、ローラポンプの回転速度と同期させられ能動的に開けられて再び閉じられるか、または、受動的に開けられて閉じられるかのいずれかとされ得る。高圧領域の出口においてローラポンプを使用するとき、ローラは、高圧領域において圧力を低下させるために、および、流体を搬送するために使用でき、ホース区分を絞る機能がローラポンプの入口において一体化されてもよい。ローラポンプを、高圧領域の開始部および/または終了部において第1および/または第2の蠕動ポンプとして使用するとき、2つ、または3つ、またはそれ以上のローラを伴うローラポンプが使用されてもよく、記載されている絞り機能は、高圧領域の入口におけるローラポンプの出口において、および/または、高圧領域の出口におけるローラポンプの入口において、一体化されてもよい。
【0061】
(g)周囲方向における可変ローラ距離
ローラポンプを高圧領域の開始部および/または終了部において第1および/または第2の蠕動ポンプとして使用するとき、ポンプヘッドは、ローラポンプの転動面においてポンプヘッドの周囲方向に回転するときに、ローラ同士が互いと同じ距離を常に有するとは限らないように構成できるが、1つまたは複数のローラが、ホース区分の循環の1つまたは複数の定められた位置において、ポンプヘッドの回転の方向に、またはその回転の方向に抗して移動する一方で、他のローラのうちの1つまたは複数が、同時にポンプヘッドの回転の方向に、またはその回転の方向に抗して移動せず、そのため、ローラ同士による絞りによって2つのローラの間で塞がれるホース区分が、例えばより短くなるか、またはより長くなるように構成できる。例えば、ローラ同士による絞りによって2つのローラの間で塞がれるホース区分は、より短く、またはより長くなり、したがって、ホース区分における流体への圧力が増加または減少する。回転における1つまたは複数の特定の位置において、回転の方向における他のローラへの距離を変化させるローラの特性は、例えば、ポンプヘッドの回転の方向においてローラを加速または減速させるバネ力または空気圧力で実現でき、それによって、加速または減速の効果は、外側から、ポンプヘッドと共に移動していない位置からのいずれかからローラに作用することができるか、または、ポンプヘッドからローラに作用することができる。1つまたは複数の位置における1つまたは複数のローラへの減速の効果は、例えば、ポンプヘッドが移動し続けた後にだけ克服され、例えばバネ力が克服される、ローラの転動面(例えば、「持ち上げ隆起」)における上昇を用いて一体化されてもよい。他のローラに対する少なくとも短期間の循環の変位のローラの性質はまた、連結または歯車接続などの機構によって実施することができ、その機構は、ポンプヘッドとローラとの間で、循環の1つまたは複数の特定の位置において、ポンプヘッドの回転の方向、またはその回転の方向に抗してのローラの移動を加速または減速させることをもたらす。
【0062】
(h)ローラ同士またはプランジャ同士の接触圧力
ローラポンプまたは線形蠕動ポンプを高圧領域の開始部および/または終了部において第1および/または第2の蠕動ポンプと使用するとき、例えば、ローラポンプの転動面におけるローラと、そこに位置する絞られるホース区分との接触圧力、または、例えばホース区分におけるプランジャの接触圧力は、バネ力によって適用され得る、または、例えば高圧領域における圧力を接触圧力と直接的に結び付けることによって、高圧領域における圧力に依存し得る。これは、蠕動ポンプのホース区分または構成要素の熱膨張、製造公差、蠕動ポンプのホース区分または構成要素の摩耗の影響、先細りまたは先太のホース区分の場合における材料の厚さなどの影響を相殺するために、ローラポンプのローラまたは線形蠕動ポンプのプランジャの一定の接触圧力を確保することができ、そのため、例えば、ホース区分は、高圧領域を封止するために、必要なだけ絞られるか、または閉塞され得る。ローラポンプを高圧領域の開始部および/または終了部において第1および/または第2の蠕動ポンプとして使用するとき、ローラは、バネ力または空気圧を使用して、ローラポンプの転動面、およびその転動面で絞られるホース区分に押し付けられ得る。この場合、ローラは、ホースにおける転動の動きが均一とならないように偏心して搭載されてもよく、例えば、2つのローラの間でそれらローラによる挟み付けによって分離されるホース区分における流体への圧力を増加または減少させることができるように設計される。
【0063】
(i)ローラの形および転動面
ローラポンプを高圧領域の開始部および/または終了部において第1および/または第2の蠕動ポンプとして使用するとき、ローラは、円錐形などの非円筒形を有し得る。一方で、絞られるホースがローラと巻き戻し面との間に同じ距離を伴って常に圧縮されるように、例えば、巻き戻し面が円錐形と並行に配置されてもよい。例えば、転動面に接するホース区分が、ポンプ入口からポンプ出口へと、先細りローラの軸方向に沿って、先細りの端に向けて延びる場合、2つの回転する先細りのローラの間のホース区分に沿った距離は、2つのローラの間でそれらローラによる挟み付けによって分離されるホース区分における流体への圧力が増加または減少させられ得るように、小さくなる。他方で、巻き戻し面は、例えば、先細りのローラと巻き戻し面との間の距離が常に同じとは限らないように、円筒形であってもよく、例えば、ホース区分が、ポンプ入口からポンプ出口へと、先細りのローラの軸方向に沿って、先細りの端から先太の端へと延びる場合、ホース区分は、圧力の高まりが起こり得るように益々きつく絞られる。同様の効果は、円筒形のローラが円錐形の転動面に沿って転動するときに達成され得る。
【0064】
(j)偏心ポンプヘッド
ローラポンプを高圧領域の開始部および/または終了部において第1および/または第2の蠕動ポンプとして使用するとき、ポンプヘッドは転動面に対して偏心して配置でき、1つまたは複数のローラは、ポンプヘッドの径方向に移動させることができるそのような方法でポンプヘッドに搭載され得る。ローラは、例えば、ポンプヘッドが回転し、ホース区分に封入された流体における圧力が増加または減少させられるとき、2つのローラの間で絞られるホース区分の長さが短縮または延長されるように、ホース区分の必要な絞りを適用すると、同時に、ポンプヘッドの径方向における移動を可能にする径方向におけるバネ力を受けることができる。
【0065】
(k)外部で隣接または非隣接のホース区分
ローラポンプを高圧領域の開始部および/または終了部において第1および/または第2の蠕動ポンプとして使用するとき、ホース区分は、例えば、ローラの転動面とどこかで接触するような方法で、または、ローラがホース区分をローラポンプの転動面に押し付ける位置を除いて、どの位置でも転動面と接触しないような方法で、挿入することができる。ローラポンプの入口において、および/または、ローラポンプの出口において、またはローラポンプの中に、ホース区分を適切に固定することで、ホース区分は、記載されている完全に取り付けられた位置、もしくは、記載されている完全に取り付けられていない位置のいずれかに保持され得るか、または、2つの記載されている位置の間の位置で延びる。例えば高圧領域の開始部においてローラポンプを使用するとき、ホース区分はローラの巻き戻し面に対して完全に挿入され得る。動作の間、ホース区分はローラポンプの入口から充填させることができ、ローラが入口においてホースと係合するとき、圧力が、ローラポンプの出口に向けて高まり、ホースがローラポンプの出口において変形すること、例えば、捩じれを防止し、ホース区分は、例えば変形が起こらないように、この位置で固くされ得るか、または、ローラポンプは、変形しないように、例えばホース区分を案内する保持体を有する。例えば、通常圧力領域からの高圧領域の入口において、または、例えば、高圧領域からの高圧領域の出口においてのいずれかで、ホース区分が充填されるときの長さに対する、ホースが挿入されるときのローラポンプの中のホース区分の長さの比は、例えば、2つのローラの間でそれらローラによるひだによって分離されるホース区分における流体への圧力を増加または減少させるために使用することができる。
【0066】
(l)高圧領域の開始部または終了部における複数のローラポンプまたはポンプヘッド
ローラポンプを高圧領域の開始部および/または終了部において第1および/または第2の蠕動ポンプとして使用するとき、ローラポンプは2つ以上のローラポンプユニットから成り得るか、または2つ以上のポンプヘッド、もしくはポンプヘッドが軸方向に上下に配置される2つ以上のポンプヘッドレベルを有するポンプヘッドから成り得るか、または、ローラポンプはこれらの変形の組合せから成り得、それによって、いくつかのローラポンプユニット、またはポンプヘッド、またはポンプヘッドレベル、およびそれらのローラは、異なる大きさを有してもよい。適切な調整を用いて、様々なローラポンプユニットの2つのローラの間で、それらのローラによる絞りによって分離される流体における圧力は、例えば、ホース区分の区分における高圧領域の入口において、増加または低下させることができる。
【0067】
(m)高圧領域の出口における受動的ローラポンプ
ローラポンプを高圧領域の終了部において第2の蠕動ポンプとして使用するとき、受動的に回転するローラポンプが使用されてもよく、そのローラポンプは、ローラポンプの出口の下流の通常圧力領域におけるより低い圧力と比較して、高圧領域における増加圧力によって駆動され、そのため、高圧領域における流体への圧力を、例えば通常の圧力である、有効圧力へと低下させる。ポンプヘッドは、例えば、ポンプヘッドの回転速度が所望の圧力低下を伴うホース区分を通る所望の流れをもたらすように、例えば、バネ力、または磁気抵抗、または空気圧力、または摩擦抵抗、または電気モータもしくはステッピングモータなどの反作用モータユニットによって、調整することができる。
【0068】
(n)真空ポンプヘッド
蠕動ポンプを高圧領域の開始部および/または終了部において第1および/または第2の蠕動ポンプとして使用するとき、2つの絞り体の間の領域における圧力を徐々におよび/または連続的に増加または低下させることでホースの膨張に影響を与えることによって、ポンプにおけるホース区分への外圧が制御できるように、その領域が加圧され得る蠕動ポンプが使用され得る。ローラポンプの場合、例えば、ローラによるひだによって2つのローラの間で分離されるホース区分の区分は、この領域が空気圧で加圧および低下させることができるように、環境に対して密閉するように設計されてもよい。
【0069】
(o)蠕動の駆動
蠕動ポンプを高圧領域の開始部および/または終了部において第1および/または第2の蠕動ポンプとして駆動するとき、蠕動ポンプは、空気圧で、または電子的に、または電気的に、または液圧で駆動され得る。ローラポンプが、ポンプヘッド全体が回転するようにして、第2のホース区分における増加圧力がポンプヘッドにおけるローラなどの蠕動体を押すように、例えば、ポンプヘッドにおいて挿入される第2のホース区分によって、例えば空気圧駆動によって回転させることができる。ガスが空気圧駆動のために使用される場合、ガスは、例えば、高圧領域において圧力を高めるために、駆動エネルギーとしての使用の後もしくは前に使用されてもよい、および/または、例えば、ガスが流体に供給されるか、もしくはガスが流体から除去される、ガス供給ユニットまたはガス放出ユニットに通されてもよい。線形蠕動ポンプでは、例えば、ポンプのプランジャが空気圧で駆動されてもよい。ガスが空気圧駆動のために使用される場合、ガスは、例えば、高圧領域において圧力を高めるために、駆動エネルギーとしての使用の後または前に使用されてもよい、および/または、例えば、ガスが流体に供給されるか、もしくはガスが流体から除去される、ガス供給ユニットまたはガス放出ユニットに通されてもよい。
【0070】
さらなる実施形態では、ガス供給ユニットは膜接触器供給ユニットとして設計される。
【0071】
ここで、膜接触器供給ユニットは流体密であるが気体透過性の複数の膜を備えることができ、それによって、膜は、富化ガスが膜を介して流体に入ることができるような方法で、流体と富化ガスとを分離する。
【0072】
好ましい実施形態では、流体または富化ガスの第1の材料流動が膜接触器供給ユニットを通過させられ、第1の材料流動における膜は膜接触器供給ユニットに配置され、第1の材料流動を形成しない富化ガスまたは流体の第2の材料流動が、第1の材料流動とは別に膜を通過させられる。
【0073】
好ましくは、流体は第1の材料流れを形成し、富化ガスは第2の材料流れを形成する。
【0074】
富化ガスは、溶解した形態、または結合された形態、または化学的に変換された形態で存在するかまたは消費されてよく、それによって、流体に存在するガスの形態は、相互依存であり、温度または圧力などの物理的パラメータにも依存する。ガス側から流体側へのガス移送、または、流体側からガス側へのガス移送またはその逆は、膜を通る拡散または対流のガス通路によって行うことができる。代替の直接的なガス-流体の接触では、ガス移送は、富化ガスと流体との間のインターフェースにおいて行われる。富化ガスが溶解した形態で流体に少なくとも部分的に存在する場合、溶解度が、流体におけるガス濃度の溶解の比率として、または分圧として表すことができる。流体における富化ガスまたは他のガスの分圧は、ガス側におけるこのガスの濃度によって、または供給されたガスの量によって、または、富化ガスおよび流体圧力のガス圧力によってのいずれかで、高圧領域において影響され得る。流体側におけるガスの濃度または分圧がガス側よりも高い場合、ガスは、例えばガス放出ユニットにおいて、流体からガス側へと通ることになる。ガス側におけるガスの濃度または分圧が流体側よりも高い場合、富化ガスは、例えばガス供給ユニットにおいて、ガス側から流体側へと通ることになる。例えば、流体圧力が周囲圧力よりも高い場合、流体は、周囲圧力に等しい圧力におけるよりも多くの溶解ガスを吸収することができる。ガス圧力は、例えば、流体へと移送される富化ガスの量、または、流体から放出されるガスの量に影響を与えるために使用できる。例えば、ガス圧力が周囲圧力を上回り、流体圧力を若干下回る場合、特に高い比率の富化ガスが、溶解した形態で流体へと移送され得るか、または流体内に存在し得る。例えば、ガス圧力が流体圧力を下回る場合、または周囲圧力さえ下回る場合、流体におけるガス(例えば、除去されるガス)の溶解の比率が低減され得る。通常の圧力、正圧、負圧、または真空がガス側に適用され得る。例えば、負圧がガス側に適用され、富化ガスまたは除去されるガスが、このガスのより低い濃度が流体側に対してガス側にある、そのような多さの量で流体に存在する場合、それぞれのガスはガス放出ユニットにおいて流体から除去され得る。本明細書に記載されているシステムによる処理を使用するとき、記載されている流体圧力およびガス圧力は、処理の期間にわたって必要とされるように変化および組合せることができる。これは、すべての異なるガスの異なる濃度が処理の期間にわたって流体において設定できることを意味する。高圧領域における圧力増加および/または圧力低下のために使用することもできる蠕動ポンプをデバイスにおいて使用するとき、負圧または真空が、例えば、ガス運搬ホース区分を蠕動ポンプへと挿入することなどで、ガス放出ユニットのガス側において発生させることができ、これは、ガスを搬送することによってポンプの入口側に負圧または真空を作り出す。
【0075】
そのため、さらなる実施形態では、デバイスは、流れの方向においてガス供給ユニットの下流において高圧領域に配置される、流体から放出されるガスを放出するためのガス放出ユニットも備える。
【0076】
ここで、ガス放出ユニットは、膜アクチュエータ放出ユニットとして定められてもよい。
【0077】
ガス(富化ガスまたは他のガス)が高圧領域における流体において溶解した形態で存在する場合、およびこの流体が高圧領域の終了部において圧力低下を受ける場合、流体におけるガスは気体状態に変化することができ、例えば、泡は微視的な泡と巨視的な泡との両方を、流体に形成し得る。このガスが抜ける効果は、例えば、高圧領域においてガス放出ユニットを使用することで、低減または完全に防止することができ、これは、高圧領域におけるガス供給ユニット無しと、高圧領域におけるガス供給ユニット有りの両方で使用することができる。しかしながら、高圧領域を通る流体の流れの方向に関するガス放出ユニットの位置は、これが使用される場合、ガス供給ユニットの上流または下流のいずれかとすることもできる。ガス除去ユニットが、ガス除去の機能を満たす場合、流体側における除去されるガスの濃度またはこのガスの分圧よりも低いこのガスの濃度をガス側において有していなければならない。この濃度勾配は、ガス側におけるガス組成、もしくは供給および放出されるガスの量によって、または流体における圧力比およびガスにおける圧力比によって影響され得る。例えば、放出されるガスの分圧がガス側よりも流体側において高い場合、ガスは拡散によって流体から除去される。ガス側は、通常の圧力を上回る超過圧力の状態、または通常の圧力、または通常の圧力を下回る不十分な圧力の状態、または真空にあり得る。ガス濃度を低下させるために、入口の上流のガス除去ユニットを低圧領域に配置することで、低圧領域に入るときに、ガスが抜けるのを防止するために、ガス除去ユニットが使用されてもよい。ガス放出ユニットを使用するとき、ベンチュリ効果が行き渡る要素にガス流を通過させることと、負圧が環境に対して存在する要素に接続位置があることと、この接続位置がガス放出ユニットのガス側に接続されることとによって、負圧または真空をガス側に発生させることができる。ガス供給ユニットを使用するとき、ベンチュリ効果に基づく負圧または真空を発生させるためのガス流は、例えば、ガス供給ユニットへと進むかまたはガス供給ユニットから出てくるガス流と部分的または完全に同じであり得る。
【0078】
好ましい実施形態では、富化ガスで富化された流体が、第3の材料流れとして膜接触器排出ユニットを通過させられ、流体密であるが気体透過性の複数の膜が、除去されるガスが流体から膜を通過することができ、膜接触器排出ユニットから放出させることができるように、第3の材料流れに配置される。
【0079】
周囲圧力または負圧を伴う空気が、例えば中空繊維膜において、膜の他方の側(ガス側)に存在してもよい。ガス供給ユニットおよび/またはガス放出ユニットにおいて、膜は中空繊維膜または平膜として設計されてもよい。膜接触器の代替として、気泡塔を伴う区画室が使用されてもよい。
【0080】
好ましい実施形態では、真空ポンプユニットが、膜を通過した流体から抽出されるガスを抽出するために膜に接続される。一方で、放出されるガスは、流体内の有害ガス、例えば、毒性ガス、または、それ自体において害はないが、増加圧力においてのみ、高すぎる比率で流体内に存在し、そのため、より低い外圧による圧力低下の後に流体から泡立つことになるガスである。
【0081】
さらなる実施形態では、圧力低下ユニットはガス放出ユニットとして設計され、好ましくは、ガス放出ユニットは、膜の配置および/もしくは充填密度、ならびに/または流体の流れ経路によって、圧力低下ユニットとしての使用のために設計される。
【0082】
これは、例えば、流体を向く、膜および/またはガス放出ユニットの表面における流体の摩擦が圧力低下を引き起こすように、第3の材料流れにおいて、膜が適切な数、密度、および/もしくは互いに対する配置で置かれる場合、ならびに/または圧力低下ユニットとしてのガス放出ユニットが、適切な設計、例えば適切な形状を有する場合に可能である。この場合、例えば、第2の蠕動ポンプは必要ではない。
【0083】
膜は中空繊維膜または平膜であり得る。
【0084】
さらなる実施形態では、ガス供給ユニットとガス放出ユニットとは共通の構成要素に一体化される。
【0085】
ガス供給配管およびガス放出配管が両方の構成要素に必要とされるため、1つの構成要素における結合部設計は、いくつかの構成要素を一緒に利用することができ、そのため、構成要素の総数の低減が可能である。
【0086】
ここで、例えば、さらなるホース区分が第1または第2の蠕動ポンプへと挿入されてもよく、第1または第2の蠕動ポンプは、流体からの向上したガス除去に向けて真空を提供するために、ガス除去ユニットのガス出口に接続される。
【0087】
さらなる実施形態では、ガス供給ユニットおよび/またはガス放出ユニットは圧力低下ユニットと組み合わされる。
【0088】
ガス供給および/またはガス除去が行われる膜を含む区画室は、例えば、回転する円筒形構成要素である。流体が、外部から径方向においてこの構成要素に供給され、内側から径方向に放出される。前記構成要素の回転により、流体は、外側に向けて、回転圧力、または遠心加速、または遠心力を経験し、これは前記構成要素において径方向外向きの圧力の高まりを引き起こし、そのため、径方向外側から径方向内側への流体の通過は、構成要素の回転による流体における圧力低下を伴う一方で、同時に、ガス供給またはガス放出が、区画室に含まれる膜を介して行われる。
【0089】
さらなる実施形態では、圧力増加ユニットおよび/または圧力低下ユニットは、入口側における流体の圧力から始まる複数のステップで流体の所望の増加圧力を達成するため、または、流体の圧力を出口側における有効圧力へと低下させるために、多段階の設計のものである。
【0090】
これは、圧力増加ステップまたは圧力低下ステップごとの流体への機械的負荷が、1回の段階での圧力増加または圧力低下の場合、より低く保つことができる。
【0091】
さらなる実施形態では、流体は生理的液体、好ましくは血液であり、および/または、富化ガスは少なくとも主に酸素を含み、好ましくは、富化ガスは、80%超、特に好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超の酸素含有量を有するか、または純粋な酸素である。
【0092】
ガス供給ユニットおよび/またはガス放出ユニットは、富化ガスがガス供給ユニットを介して流体に供給されるように構成でき、ガス供給ユニットは、流体のさらなる進路および所在における機能を遂行することができる。例えば、ガスの種類および量が、流体における他の物質、もしくは細胞、もしくは遺伝子組み換え物質との作用様式にとって適切となるように、またはそれらの作用様式を支援もしくは防止するように、十分な量の富化ガスが流体に溶解させられ得る。デバイスの1つまたは複数のインターフェースが外部システムと連絡を取っている場合、デバイスは、例えば、ガスの種類および量が、気体成分を、例えば微小気泡の形態で、外部システムにおける流体から放出させる流体へと、過剰な富化ガスが溶解されて導入されるように設計されてもよく、これは、例えば、流体流れにおける微小気泡の撮像方法による視覚化など、外部システムにおいて機能的な便益を有する。
【0093】
デバイスの1つまたは複数のインターフェースが外部システムと連絡を取っている場合、静水的な真空または吸引圧力がシステムに作用することができ、ガス供給ユニットおよび/またはガス放出ユニットが使用される場合、ガスは膜を通過することができる。この効果を防止するために、本明細書に記載されているシステムは、例えば、ガス供給ユニットおよび/またはガス放出ユニットの中のガス側における以上の流体側への圧力が常にあり、例えば、膜をガス側から流体側へ通るガスの通過が発生ないように、周囲圧力を上回る流体圧力が、高圧領域の中に存在するガス供給ユニットおよび/またはガス放出ユニットにおいて行き渡るように構成され得る。デバイスは、本明細書に記載されているシステムが、外部システムの上方、例えば、空間的に患者の上方、したがって患者の血管系の上方に位置する場合であっても、ガス漏れが起こらないように構成され得る。このデバイスの設計は、例えば、患者の血管系など、接続された外部システムに対してデバイスが移動させられ、デバイスが外部システムの下方、または同じ高さ、または上方にあるときがあり、デバイスが空間におけるその位置および配向において変化可能に取り扱われる臨床または非臨床の用途でデバイスが使用されるとき、特に有利である。
【0094】
デバイスは、物質を流体へと送り込むことができ、流体を除去することもできる、外部へのインターフェースがデバイスの任意の位置にあるように構成されてもよい。物質を加えるとき、数ある中でも、直接的なもしくはさらなる視覚化の方法のいずれかによる流体成分の視覚化のための医薬品、もしくは薬物、もしくは物質、もしくはマーカ、または、例えばPFC流体などのガスのために流体の吸収能力を増加させる物質、または、血液を細胞損傷から保護する物質などの、熱的、もしくは化学的、もしくは機械的な影響および損傷から流体および/もしくは流体の個々の成分を保護する物質、または、等張、低張、もしくは高張のいずれかの流体が提供されるように、食塩水などの流体の張性に影響する物質を追加することが可能である。
【0095】
当然ながら、圧力増加ユニットおよび圧力低下ユニットについてだけでなく、ガス供給ユニットおよびガス放出ユニットについての設定は、手動で行われてもよいが、これは望ましくない操作の労力を通常は伴い、操作間違いをもたらすことになる。
【0096】
そのため、さらなる実施形態では、デバイスは、適切なデータ接続を用いて、高圧領域における増加圧力を制御するために、少なくとも圧力増加ユニットおよび圧力低下ユニットに接続される制御ユニットを備える。
【0097】
好ましくは、制御ユニットは、富化ガスおよびガス圧力の供給を制御するためにガス供給ユニットに接続される、ならびに/または、除去されるガスの放出およびガス圧力を制御するために、ガス放出ユニットに接続される。
【0098】
制御ユニットは、1つまたは複数の処理装置と、デバイスの動作のための実行のために処理装置にインストールされる制御プログラムを記憶するための1つまたは複数のデータ記憶装置とを好ましくは備える。デバイスパラメータが制御プログラムにおいて予め定められ得る。しかしながら、使用者は、制御ユニットが入力および/または記憶されたパラメータに従ってデバイスを制御するように、デバイスパラメータを、入力インターフェースを介してデバイスに入力することもできる。制御ユニットは、使用者がシステムを動作させるのを可能またはより容易にし、使用者に情報、例えば測定値を提供することができる。制御ユニットは、論理回路に基づいて、部分的に機械的、部分的に電気的であり得るか、またはそれら両方の組合せであり得る。この制御ユニットでは、例えば、流体側の圧力へのガス側の圧力の依存は、例えば、ガス側の圧力がシステムの動作の間に流体側の圧力未満に低下しないように、または流体側の圧力を超えないように、提供され得る。ガス供給ユニットにおけるガス圧力は、例えば、圧力が低下させられるときにガスが抜けることを回避できるように、流体におけるガス分圧に依存して行われてもよい。さらに、制御ユニットは、使用者がデバイスの流体の流量への影響を有するだけであるが、例えば、制御ユニットが、ポンプ同士の速度の比、またはオリフィスの開口、またはホースの閉塞を調整することで、システム圧力が既定値で常に自動的に維持されるように、システム圧力に依存していくつかのポンプの動作を同期させるために使用されてもよい。
【0099】
熱供給ユニットまたは熱消散ユニットは、デバイスにおいて使用されるとき、例えば、一方の側において予熱された水が供給され、他方の側において、ガス富化処理が適用される流体が供給される繊維、または板、または他の熱伝達面から成り得る。デバイスにおける熱供給ユニットまたは熱消散ユニットは、ホース区分、ホースコネクタ、コネクタ、室、および空洞の外面の外部に適用されてもよい。例えば、デバイスは、シース要素が周りに配置され、シースを介して熱をホース区分へと能動的に導入または除去するホース区分を備え得る。デバイスにおいて温度を維持するために、システムは、例えば、絶縁材料がシステムの構成要素の周りに配置される、例えば、絶縁材料から作られたシース要素がホース区分の周りに配置され得るか、または構成要素が絶縁材料から作られた筐体に配置され得るように設計されてもよい。デバイスの出口側を離れる流体が後続の処理のために特定の温度を有していなければならない場合はいつでも、流体の温度維持または温度調整が使用され得る。例えば、流体としての血液は、患者へと再び導入される前におおよそ37℃の温度を有するべきである。
【0100】
デバイスの低い圧力での適用は、入口および出口における構成要素だけが交換される必要があり、それに応じて圧力規制ユニットが動作する。
【0101】
本発明の第2の態様によれば、提起された問題が、先に記載されているデバイスを使用することによって解決され、体外血液治療については、血液は流体として使用され、酸素は富化ガスとして使用される。
【0102】
血液治療は、血液の体外一酸化炭素解毒か、虚血治療、もしくは癌治療、もしくは癌治療の支援のための血液の体外酸素投与か、または、体外式膜型人工肺であり得る。
【0103】
上記の使用の実施形態としての血液体外一酸化炭素解毒では、一酸化炭素中毒を伴う患者が、カテーテルまたは二重管腔カテーテルを介してデバイスの入口側および出口側に接続される。患者の血液は、入口側およびホース区分を通ってデバイスへと流れ、圧力増加ユニットによって高圧領域へと搬送され、次に、(血液の解毒装置としての)ガス供給ユニットを通り、(血液の脱ガス装置としての)ガス放出ユニットを通って流れ、圧力低下ユニットによって高圧領域から外へ搬送される。次に、血液は、コンプライアンスを通じ、最終的に出口側を介してフィルタを通じて、患者の血管系に戻され得る。ガス供給ユニットおよびガス放出ユニットは、例えば、流体密で気体透過性の中空繊維膜を含む。ガス供給ユニットでは、例えば、酸素が供給され、膜のガス側へと通され、それによって、酸素は圧力の下で血液へと供給され、一酸化炭素が血液から除去され、次に、例えばちょうど3bar未満である、ガス供給ユニットにおけるガス圧力において、ガス圧力低下装置を介して再び除去される。ガス除去ユニットでは、吸引が、真空ポンプによって膜のガス側の一方の側に適用され、膜の他方の側は環境に若干開放され、そのため、すべて周囲圧力を若干下回るガス圧力において、いくらかの空気が環境から吸い込まれ、空気が膜のガス側を通過させられ、それによって、酸素が、なおも増加圧力下にある血液において溶解した形態で先に導入された酸素が再び低下させられる。代替で、真空ポンプがガス放出ユニットのガス側に取り付けられなくてもよく、ガス側は環境に開放したままである。使用される膜の表面領域に依存して、この構成は、溶解酸素を低減するのにも十分であり得る。
【0104】
ガス供給ユニットにおける血圧が周囲圧力を上回り、ガス圧力が血圧を若干下回るため、非常に多くの量の溶解酸素を、体外酸素投与ために血液に供給することができる。次に、非常に高い比率の溶解酸素を伴う血液は、デバイスの出口側を通過した後、戻しカテーテルを介して患者の静脈系または動脈系へと戻される(かん流される)。戻しカテーテルは、血液の系統的なかん流がより細い血管において行われることで血液の局所的なかん流が行われるように、より太い血管に位置付けられ得る。この方法では、心臓などの臓器における虚血領域に酸素が供給できる。
【0105】
虚血領域を治療するための方法と同様の方法が、腫瘍組織がより高い酸素の濃度を有するように、固形腫瘍における低酸素環境に酸素を供給するために、上記の使用の他の実施形態において、本発明によるデバイスで使用されてもよい。低酸素の腫瘍組織は、放射線療法、化学療法、および免疫療法に対してより鈍感であり、この組織の酸素投与は、これらの治療の形態に対する腫瘍組織の感度を増加させる。加えて、身体自体の防御システム、例えばT細胞がより活発になる。高い比率の溶解酸素を伴う血液の局所的導入は、言及された治療の形態の効率を支援することができるか、または、良好な有効性を依然として保ちつつ、放射線療法の強度、化学療法剤、もしくは免疫療法剤を低減することができる。腫瘍への増加した量の酸素の導入は、放射線療法または他の治療技術とは無関係に、癌治療にとって有益でもある。
【0106】
虚血領域を治療するための処理と同様の処理が、多量の酸素を伴う低流量領域(おおよそ500ml/分まで-MiniECMO)において血流を供給するために、比較的小さい膜領域を伴うが、体外式膜型人工肺における上記の使用のさらなる実施形態において、本発明によるデバイスで使用されてもよく、それによって、血液は、酸素で完全に飽和され、追加的に、酸素の非常に高い分圧を追加的に伴って、ガス供給ユニットを出て行き、それによって、大量の酸素を伴う血流は、酸素不足を伴う患者の緊急治療に寄与することができ、そのため、危機的な酸素不足を伴う患者の非常に悪い条件において、例えば、500ml/分を上回る血流による侵襲的呼吸または体外式膜型人工肺(ECMO)をなおも施すことができる。当然ながら、デバイスは、より大きな血流速(「通常の」ECMO)で動作させることもできる。これらの目的のために、デバイスは、血液が、患者の血管系から、入口側を通る入口カニューレを介してデバイスへと流れ、圧力増加ユニットによって高圧領域へと搬送され、高圧領域では、ガス供給ユニットを流れ、次に、圧力低下ユニットによって高圧領域の外へ搬送され、次に、デバイスを離れた後、カニューレを介して出口側を通り患者の血管系へと戻される。2つのローラポンプによって制限される高圧領域は、例えば、特に高い圧力を血液において発生させ、それによって、比較的小さい膜表面領域を伴うガス供給ユニットにおいて、特に大量の酸素を血液へと導入させることができる。さらに、デバイスは、1つの構成要素においてガス供給ユニットと一体化されることもあり得るガス除去ユニットも備え得る。ガス除去ユニットは、例えば、短い能動的な中空繊維膜長さを用いて、特に二酸化炭素の除去のために最適化されてもよく、これは、ガス側における低い二酸化炭素濃度を連続的に確保する。高圧領域におけるガス放出ユニットの位置は、増加圧力による二酸化炭素排除を支援するため、有利である。デバイスの有利な実施形態では、負圧がガス放出ユニットのガス側に存在するが、通常の圧力または正圧も可能である。
【0107】
一実施形態では、体外式膜型人工肺の間、デバイスは、7l/分未満、好ましくは4l/分未満、特に好ましくは2l/分未満、さらにより好ましくは1l/分未満でのデバイスを通る血流で動作させられる。
【0108】
上記の使用に加えて、デバイスは、臓器保存または臓器輸送のために使用されてもよい。
【0109】
本発明の第3の態様によれば、デバイスを流れるときに、デバイスの内部の高圧領域において流体を富化ガスで富化させるために、先に記載されているデバイスを動作させるための方法であって、高圧領域は、流体の流れ方向における所定の長さの、入口側と出口側との間に延び、方法は、
- 好ましくは周囲圧力の下で、流体を入口側においてデバイスへと導入するステップと、
- 高圧領域の開始部において、好ましくは第1の蠕動ポンプである圧力増加ユニットによって、周囲圧力に対する流体の圧力を増加圧力へと増加させるステップと、
- 流体を富化ガスで富化させるために、高圧領域におけるガス供給ユニットによって、周囲圧力に対する増加圧力の下にある富化ガスを、すでに加圧された流体へと供給するステップと、
- 好ましくは第2の蠕動ポンプである圧力低下ユニットを用いて、流体を、少なくとも有効圧力へと、好ましくは周囲圧力へと減圧するステップと、
- 好ましくは、第2の蠕動ポンプを用いて、富化ガスで富化された流体をデバイスの外へ搬送するステップと
を含む方法である。
【0110】
一実施形態では、処理は、流れ方向におけるガス供給ユニットの下流において高圧領域に配置されるガス放出ユニットで、流体から除去されるガスを放出するさらなるステップを含む。
【0111】
方法の一実施形態では、流体動力学の後での調査に向けて、下流撮像方法の流体における所望の量の気泡を視覚化することができるようにするために、好ましくはガス放出ユニットで、流体から放出されるガスは、流体が膨張させられた後に所望の量の気泡が流体に残るように、完全には放出されない。
【0112】
具体的には流体としての血液の場合に、気泡は造影剤を置き換えるために使用することができ、造影剤は、数ある中でも、血流における造影剤の一時的な分布に基づく撮像方法(例えば、レントゲン、MRI、CT)を使用して流体動力学を観察するために、現在の実施によれば、患者の血流へと処方される。これは、例えば、循環の不具合または血管の閉塞を検出するために使用されてもよい。これは、意図された泡の検出でも可能となる。泡の大きさはデバイスを使用して調整することができる。好ましくは、この目的のための泡は非常に小さい直径を有し、そのため、患者にいかなる損傷ももたらさない血液における微小気泡を呈するが、撮像技術を使用して血液において観察することができる。除去されるガスを放出するためのガス放出ユニットが提供されない場合、対応する富化ガス圧力を設定することで、圧力低下の間に、または後に患者において、富化ガスが抜けるような程度まで、流体は周囲圧力に対して過飽和させられる。これは、ガスを除去する不必要なステップを省く。
【0113】
処理の一実施形態では、富化ガスでの富化のための流体は、デバイスを通じて数回搬送される。例えば、流体は、圧力低下ユニットの上流の戻し配管を介して、圧力増加ユニットとガス供給ユニットとの間の高圧領域へと戻すように送り込まれ得る。代替で、流体はまた、出口側の上流の戻し配管を通じて、入口側と圧力増加ユニットとの間の位置へと向けられ得る。
【0114】
方法の一実施形態では、流体を導入するステップは、流体および富化ガスが供給される前であっても、呼び水流体でデバイスからガスを排除するために、呼び水流体によるデバイスの事前充填と、デバイスを通じて呼び水流体を搬送することとによって先行され、好ましくは、食塩水が呼び水流体として使用される。
【0115】
デバイスを呼び水流体で事前充填することによって、富化される流体のためのデバイスにおいて後に微視的もしくは巨視的な形態において泡がもはやないこと、または、泡の数が少なくとも決定的ではないほどに少ないことを確保することが可能である。この目的のために、デバイスを事前充填するための呼び水流体は、呼び水流体に存在または溶解したガスを排除するために、少なくとも高圧領域を通じて搬送される。デバイスは、呼び水流体容器に対して外側に1つまたは複数のインターフェースを有することができ、呼び水流体は、少なくとも高圧領域を通じて、1回または数回で搬送され得る。ガス供給ユニットまたは追加のガス放出ユニットを用いて、デバイスは、通常の圧力よりも低い圧力をガス側に適用することで、事前充填され得る。デバイスの1つまたは複数のインターフェースが呼び水流体容器のある外部に接続される場合、呼び水流体はデバイスへと吸い込まれ得る。流体を案内するデバイスは、ホース区分が高圧領域の入口において構成要素によって挟み付けられるか、またはホース区分が高圧領域の出口において構成要素によって挟み付けられるか、または、高圧領域の入口および出口においてホース区分の挟み付けがないかのいずれかとなるようにされ得る。デバイスは、デバイスの製造の間、およびデバイスが使用者によって使用されるときの両方で、呼び水流体で事前充填され得る。呼び水流体は、少なくとも1つの高圧領域を通じて1回または数回で搬送され得るか、または、呼び水流体が供給および/または除去され得る外部へのインターフェースがある。インターフェースは、デバイスの1つの開口または2つ以上の開口に存在してもよい。例えば、デバイスから環境へのインターフェースとして2つの開口がある場合、呼び水流体は、一方の開口において供給され、他方の開口において放出され得る。このインターフェースは、例えば、二重管腔管もしくは二重管腔カテーテルなど、2つの開口が近くにあるか、もしくは1つの構成要素に組み合わされ、物理的に接続されるように設計され得るか、または、2つの管開口もしくは2つのカテーテルなど、これらのインターフェースが1つの構成要素に一体化されず、互いに物理的に接続されないように設計され得る。ガスを排除するための他の解決策は、ガスの抜けが意図的に発生させられる低圧領域を通じて、呼び水流体を搬送することである。ここで泡形態において存在するガスの量は、例えばフィルタまたは泡トラップにおいて排除することができる。そのため、低下したガス負荷を伴う呼び水流体が低圧領域の出口に存在する。
【0116】
本発明の第4の態様によれば、富化装置であって、
具体的には、上記されているようなデバイスの形態で、
富化装置を流れるとき、指定流体を指定富化ガスで富化させるように適合される高圧領域を富化装置の内部に備え、
富化装置は入口側と出口側とを有し、富化装置は、入口側から出口側へと延びる指定流体のための指定流れ方向を有し、
高圧領域は入口側と出口側との間に存在し、高圧領域は開始部と終了部とを有し、開始部は入口側を向き、終了部は出口側を向き、
高圧領域は、
- 高圧領域の開始部において、具体的には圧力増加ポンプ、好ましくは第1の蠕動ポンプである圧力増加ユニットを有し、
- 高圧領域におけるガス供給ユニットであって、圧力の下で富化ガスを供給し、したがって、動作中に増加圧力の下にすでにある流体へと富化ガスを供給するように構成された、富化ガスに適した供給空洞を有し、
ガス供給ユニットは、具体的には弁である流れ抵抗提供部を有し、
それによって、流れ抵抗提供部は、ガス供給ユニットの出口側に存在し、具体的には、ガス供給空洞の出口側に存在し、
具体的には弁である流れ抵抗提供部は、流れ抵抗のための調整選択肢を有することができる、ガス供給ユニットを有し、
- 追加の流れ抵抗として、および流体を減圧させるため、好ましくは、流体を富化装置の外へ搬送するために設計される、好ましくは第2の蠕動ポンプである圧力低下ユニットを、高圧領域の終了部において有する、富化装置によって目的は達成される。
【0117】
先に列記されている実施形態は、本発明によるデバイスまたは方法を設計するために、請求項の範囲の言及から逸脱して、個別に、または任意の組合せで使用することができる。
【0118】
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下の図に詳細に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0119】
図1】本発明によるデバイスの実施形態の概略図である。
図2】本発明による蠕動ポンプの実施形態の概略図であり、(a)平面図における第1の蠕動ポンプ、(b)側面図における図2(a)による第1の蠕動ポンプ、(c)二重周囲管区分を伴う側面図における第1の蠕動ポンプ、および(d)側面図における共通ポンプとしての第1および第2の蠕動ポンプを示す。
図3】本発明によるガス供給ユニットの実施形態の概略図である。
図4】本発明によるガス除去ユニットの実施形態の概略図である。
図5】本発明による方法の実施形態の概略図である。
図6】異なる流体の流れでの高圧領域有りおよび無しでの酸素移送速さにおける実験室試験からの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0120】
図1は、デバイス1を流れるとき、デバイス1の内部の高圧領域2において流体Fを富化ガスで富化するための、本発明によるデバイス1の実施形態の概略図を示している。高圧領域2では、流体Fは、2barから4barまで、好ましくは2.5barから3.5barまで、特に好ましくは実質的に3.0barの、周囲圧力UDと比べての超過圧力の形態で、増加圧力HD1を有する。ここで、高圧領域2は、高圧領域2の構成要素同士を接続する耐圧性のホースまたはパイプで、圧力増加ユニット3から圧力低下ユニット5へと(破線によって画定された領域2を参照されたい)、流体の流れ方向Dにおいて所定の長さを伴って入口側11と出口側12との間で延びる。高圧領域2の開始部21における圧力増加ユニット3は、周囲圧力UDに対して流体Fの圧力を増加させるように意図されており、ここでは第1の蠕動ポンプとして設計されている。さらに、周囲圧力UDに対する増加圧力HD2の下にある富化ガスAGを、増加圧力HD1の下にすでにある流体Fへと供給するためのガス供給ユニット4が、高圧領域2に配置されている。ガス供給ユニットは、流体Fの変動する増加圧力HD1と共に、富化ガスAGの増加圧力HD2が流体Fの変動する増加圧力HD1に従うように構成される。加えて、流体Fから放出されるガスGを放出するためのガス放出ユニット7が、流れ方向Dにおいてガス供給ユニット4の下流において高圧領域2に配置される。この目的のために、流体側からガス側へと通過したガス成分を伴って、そのガス成分をガス放出ユニット7から除去するパージガスSGが、ガス放出ユニット7を流れる。ここで、ガス放出ユニット7は、ガス供給ユニット4の流体Fから放出されるガスGを能動的に抽出するための真空ポンプユニット72も備える。圧力増加ユニット3から圧力低下ユニット5への高圧領域2における圧力が、圧力増加ユニット3で発生させられる圧力HD1に対応することが指示されている。これは、高圧領域2において圧力損失がないことを仮定している。これは理想的な場合だけである。例えば、ガス供給ユニット4の下流および/またはガス放出ユニット7の下流には、処理に関連する若干の圧力損失があり得る。しかしながら、これらの圧力損失は、圧力増加ユニット3によって達成される圧力増加と比較して小さく、そのため、圧力仕様HD1が、高圧領域2における圧力損失無しで、デバイス1の理想的な場合について示されるように、図面では明確には考慮されていない。同じことが図3図5に当てはまる。高圧領域2の終了部22における圧力低下ユニット5は、少なくとも有効圧力NDに対して流体Fの圧力を低下させるように提供されており、ここでは第2の蠕動ポンプとして設計されている。第2の蠕動ポンプ5は、ここでは、第1の蠕動ポンプ3よりも低い速度で、または、圧力低下を達成するために流れ方向Dに抗して、動作させることができ、それによって、ポンプ作用は、流体が流れ方向において蠕動ポンプ5を通過することができるような寸法とされ得る。この目的のために、第2の蠕動ポンプ5は部分的な閉塞だけで動作させられる。圧力低下ユニット5は、流体Fをデバイス1の外へ搬送させることもできる。第1の蠕動ポンプ3および第2の蠕動ポンプ5におけるホース区分6が、図2においてより詳細に説明されている。真空ポンプユニット72の代替として、さらなるホース区分51(破線で示されている)が第1の蠕動ポンプ3または第2の蠕動ポンプ5へと挿入されてもよく、第2の蠕動ポンプ5はガス放出ユニット7のガス出口に接続されている。第1の蠕動ポンプ3または第2の蠕動ポンプ5のポンプ作用は、真空ポンプユニット72の代わりに、真空ポンプユニット72と同じ目的のためのガス除去ユニット7のガス出口において負圧または真空を発生させる。流体の望ましくない成分を除去するためのフィルタユニット91と、弾性要素92とが、第2の蠕動ポンプ5と出口側12との間に直列に配置されている。しかしながら、第2の蠕動ポンプ5の脈動の低減は、弾性要素92によるものとは異なって実現されてもよいか、または省略されてもよい。富化ガスAGの増加圧力HD2は周囲圧力UDよりも高いが、流体Fの増加圧力HD1よりも低い。この実施形態では、ガス供給ユニット4とガス放出ユニット7とは共通の構成要素8において一体化されており、それにより、共通の構成要素は、ここで示されているのとは異なるように設計されてもよい。圧力増加ユニット3および/または圧力低下ユニット5は、入口側11における流体Fの圧力から始まる複数のステップで流体Fの所望の増加圧力HD1を達成するために、または、流体Fの圧力を少なくとも出口側12における有効圧力NDへと低下させるために、多段階で設計されてもよい。流体Fは、生理的流体であり得、好ましくは血液であり得る。富化ガスAGは少なくとも主に酸素を含むことができ、好ましくは、富化ガスAGは、80%超、特に好ましくは90%超、さらにより好ましくは95%超の酸素含有量を有するか、または純粋な酸素である。デバイスは、適切なデータ接続を用いて、高圧領域2における増加圧力を制御するために、圧力増加ユニット3および圧力低下ユニット5に接続され、対応して、富化ガスAGの供給を制御するためにガス供給ユニット4に接続される、ならびに/または、除去されるガスGの放出を制御するために、および/もしくは、流体圧力の関数としてガス圧力を制御するために、ガス放出ユニット7にも接続される制御ユニット93も備える。明確性の理由のために、個々の構成要素へのデータおよび制御線は明確に示されていない。本発明によるデバイスは、流体Fとしての血液と、富化ガスAGとしての酸素との場合に、体外血液治療BBのために使用できる。このような体外血液治療は、例えば、血液の体外一酸化炭素解毒か、虚血治療、もしくは癌治療、もしくは癌治療の支援のための血液の体外酸素投与か、または、体外式膜型人工肺である。体外式膜型人工肺BBでは、デバイス1は、7l/分未満、好ましくは4l/分未満、特に好ましくは2l/分未満、さらにより好ましくは1l/分未満での、デバイス1を通る血流で動作させることができる。
【0121】
図2は、本発明による蠕動ポンプ3、5の実施形態の概略図を、(a)平面図における第1の蠕動ポンプ3、(b)側面図における図2(a)による第1の蠕動ポンプ3、(c)二重周囲管区分を伴う側面図における第1の蠕動ポンプ3、および(d)側面図における共通ポンプとしての第1の蠕動ポンプ3および第2の蠕動ポンプ5示している。第1の蠕動ポンプ3および第2の蠕動ポンプ5はそれぞれホース区分6、6a、6bを有し、ホース区分6、6a、6bの内径は、第1の蠕動ポンプの流れ方向において先細りであるか、または、第2の蠕動ポンプにおいて増加し、それによって、内径は先細りではない可能性があるか、または、対称的に増加しない可能性がある。ホース区分の弾性は、特定の区分の膨張が防止または少なくとも低減され得るような方法で、ホース区分6にわたって変化してもよい。第1の蠕動ポンプ3および/または第2の蠕動ポンプ5はローラポンプとして設計され、それによって、ローラ61、ローラ61の放出面、および/またはポンプヘッド62の寸法が、圧力を増加させるために異なって設計されてもよい。第1の蠕動ポンプ3および/または第2の蠕動ポンプ5では、ホース区分6は、第1の蠕動ポンプ3の例について図2(c)を参照すると、第1の蠕動ポンプ3および/または第2の蠕動ポンプ5を通じて同じ方向に2回以上置かれ得る。できるだけ小さい機械的負荷を流体に発揮するために、第1の蠕動ポンプ3は、図2を見ると、ここでは動作圧力において完全な閉塞を伴って動作させられ、特に行き渡る圧力条件の下では、ローラ61とホース区分6の壁との間に隙間がない。図2(d)では、第1の蠕動ポンプ3と第2の蠕動ポンプ5とは、共通のポンプ絞り機構(ローラ61)を伴う共通ポンプ3、5として設計されており、第1の蠕動ポンプ3は、絞り機構(ローラ61)へと挿入される第1のホース区分6aによって形成され、第2の蠕動ポンプ5は、第1のホース区分6aに沿って同じ絞り機構(ローラ61)へと挿入される第2のホース区分6bによって形成される。ここで、第1の蠕動ポンプ3のホース区分6a(右手側)は低圧側から高圧領域2へと先細りである。第2の蠕動ポンプ5(左側)では、ホース区分6bはまた、低圧を伴う側から高圧領域2へと先細りであり、第2の蠕動ポンプ5が流れ方向に送出することになるため、第1のホース区分6aおよび第2のホース区分6bが同じ側から共通ポンプ3、5へと挿入されるように、ここでのみ、流れ方向Dは高圧領域2からより低い圧力を伴う領域までとなっている。先細りは、ローラポンプの上方および下方で異なる大きさとされたホースの突出として示されている、より大きいホース直径/より小さいホース直径によって指示されている。第2の蠕動ポンプが流れ方向に抗して送出するものである場合、第1のホース区分6aと第2のホース区分6bとは反対側から共通ポンプへと挿入される必要があり、ローラ61は、例えば、ローラ61の直径における段差のため、完全な閉塞がないように構成される必要がある。
【0122】
図3は、本発明によるガス供給ユニット4の実施形態の概略図を示し、ここでは膜接触器供給ユニットとして設計されている。膜接触器供給ユニット4は流体密であるが気体透過性の複数の膜41を備え、膜41は、富化ガスAGが膜41を介して流体Fに入ることができるような方法で、流体Fと富化ガスAGとを分離する。この目的のために、流体Fの第1の材料流動M1が膜接触器供給ユニット4を通過させられ、膜41は膜接触器供給ユニット4における第1の材料流動M1に配置され、富化ガスAGの第2の材料流動M2が、第1の材料流動M1とは別に膜41を通過させられる。膜41は中空繊維膜または平膜であり得る。
【0123】
図4は、膜接触器除去ユニットとして設計されている、本発明によるガス除去ユニット7の実施形態を概略的に示している。富化ガスAGで富化された流体Fが、第3の材料流れM3として膜接触器排出ユニット7を通過させられ、流体密であるが気体透過性の複数の膜71が、流体Fから除去されるガスGが、膜71を通過することができ、膜接触器排出ユニット7から放出され得るように、第3の材料流れM3に配置される。流体Fからガスを抜くことを加速させるために、真空ポンプユニット72が、膜71を通過した流体Fから除去されるガスGを抽出するために膜71に接続される。膜71が適切に設計される、ならびに/または適切な流体経路によって、および/もしくはユニットの適切な形状/寸法によって膜が適切に配置される場合、ガス放出ユニット7は、図1に示されている第2の蠕動ポンプ5への置き換えとして、圧力低下ユニット5として機能することもできる。膜71は中空繊維膜または平膜であり得る。外部流れの場合、膜71は、圧力を低下させるためにきつく詰められ得る。
【0124】
図5は、デバイス1を流れるときに、デバイス1の内部の高圧領域2において流体Fを富化ガスAGで富化させるために、本発明によるデバイス1を動作させるための本発明による方法100の実施形態の概略図であり、高圧領域2は、流体Fの流れ方向Dにおける所定の長さの入口側11と出口側12との間で延び、好ましくは周囲圧力UDの下で、流体Fを入口側11においてデバイス1へと導入するステップ110と、高圧領域2の開始部21において、好ましくは第1の蠕動ポンプである圧力増加ユニット3によって、周囲圧力UDに対する流体Fの圧力を増加圧力HD1へと増加させるステップ120と、流体Fを富化ガスAGで富化させるために、高圧領域2におけるガス供給ユニット4によって、周囲圧力UDに対する増加圧力HD2の下にある富化ガスAGを、増加圧力HD1の下にすでにある流体Fへと供給するステップ130と、好ましくは第2の蠕動ポンプである圧力低下ユニット5によって、流体Fを、少なくとも有効圧力ND、好ましくは周囲圧力UDへと減圧するステップ140と、好ましくは、第2の蠕動ポンプ5を用いて、富化ガスAGで富化された流体Fをデバイス1の外へ搬送するステップ150とを含む方法100の実施形態の概略図を示している。この場合、流体Fから放出されるガスGを放出するさらなるステップ160が、流れ方向Dにおけるガス供給ユニット4の下流において高圧領域2に配置されるガス放出ユニット7で実施されてもよい。ガス除去ユニット7による流体Fから除去されるガスGの除去160は完全ではない可能性があり、そのため、所望の量の気泡が、流体動力学、血管解剖学などの後の調査に向けて、例えば患者において、下流の撮像処置においてこれらの泡を視覚化することができるようにするために、流体Fの膨張140の後に流体Fに残る。一実施形態では、富化ガスAGによる富化のための流体Fは、デバイス1を通じて、または、高圧領域2だけを通じて、数回にわたって搬送されてもよい170。さらなる実施形態では、流体の導入120は、流体Fおよび富化ガスAGの供給の前であっても、呼び水流体PFによってデバイス1からガスGを排除するために、呼び水流体PFによるデバイス1の事前充填180、およびデバイス1を通じて呼び水流体PFの搬送によって先行され、好ましくは、食塩水は呼び水流体PFとして使用される。呼び水流体PFは、通常は回路において数回で(ここでは明確に示されていない)、デバイス1全体を通過させられる。
【0125】
図6は、1分間あたりのリットル(L/分)での異なる流体流れにおいて、高圧領域有りおよび無しで、1分間あたりのミリリットル(ml/分)での酸素移送速さにおける実験室試験からの結果の例を示している。0.25l/分の流体流れにおいて、高圧領域有りでの本発明によるデバイスにおける酸素移送速さは、このような高圧領域無しでのデバイスにおける酸素移送速さをすでに超えている。流体流れが1.00L/分へと増加させられる場合、酸素移送速さは、高圧領域有りのデバイスと高圧領域無しのデバイスとの両方について増加し、それによって、酸素移送速さにおける差は、高圧領域を伴う本発明によるデバイスに大きく有利になって増加する。この効果は、流体流れが2.00l/分へと増加させられるときには相当に増加する。この流体流れにおいて、高圧領域有りでの本発明によるデバイスにおける酸素移送速さは、最先端の技術によるデバイスのほとんど2倍の速さである。2つのローラポンプによって制限される高圧領域は、例えば、特に高い圧力を血液において発生させ、それによって、比較的小さい膜表面領域を伴うガス供給ユニットにおいて、特に大量の酸素を血液へと導入させることができる。
【0126】
この点において、上記または特許請求の範囲および/または図に記載されている解決策の特徴が、対応する重複する手法で説明される特徴、効果、および利点を実施または達成することができるようにするために、必要な場合、組み合わされてもよいことは、明示的に指摘されるべきである。
【0127】
先に記載されている実施形態の例が本発明の第1の実施形態でしかないことは、理解されるべきである。この点において、本発明の実施形態はこれらの例に限定されない。
【符号の説明】
【0128】
1 デバイス
11 デバイスの入口側
12 デバイスの出口側
2 高圧領域
21 高圧領域の開始部
22 高圧領域の終了部
3 圧力増加ユニット、好ましくは第1の蠕動ポンプ
4 ガス供給ユニット
41 流体密であるが気体透過性の膜
5 圧力低下ユニット、好ましくは第2の蠕動ポンプ
51 さらなるホース区分
6 ホース区分
6a 第1のホース区分
6b 第2のホース区分
61 第1および/または第2の蠕動ポンプのローラ
62 第1および/または第2の蠕動ポンプのポンプヘッド
7 ガス放出ユニット
71 流体密であるが気体透過性の膜
72 真空ポンプユニット
8 ガス供給ユニットとガス放出ユニットとを備える共通の構成要素
91 フィルタユニット
92 弾性ホース要素
93 デバイスの制御ユニット
100 本発明によるデバイスを動作させる方法
110 流体を入口側においてデバイスへと導入するステップ
120 圧力増加ユニットを用いて周囲圧力に対する流体の圧力を増加圧力へと増加させるステップ
130 ガス供給ユニットを用いて、周囲圧力に対する増加圧力の下にある富化ガスを、すでに加圧された流体へと供給するステップ
140 第2の蠕動ポンプを用いて、流体を少なくとも有効圧力へと膨張させるステップ
150 第2の蠕動ポンプを用いて、富化ガスで富化させられた流体をデバイスの外へ搬送するステップ
160 ガス放出ユニットを用いて、流体から放出されるガスを除去するステップ
170 デバイスを通じて流体を複数回搬送するステップ
180 デバイスを流体で事前充填し、デバイスを通じて同じ流体を搬送するステップ
AG 富化ガス
BB 血液治療
D 流れ方向
F 流体、例えば、血液などの生理的流体
G 放出されるガス
SG パージガス
HD1 増加した流体圧力
HD2 富化ガスの増加圧力
M1 第1の材料流れ
M2 第2の材料流れ
M3 第3の材料流れ
ND 有効圧力
PF 呼び水流体
UD 周囲圧力
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】