(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(54)【発明の名称】電子部品の低温アセンブリのための伝導性組成物
(51)【国際特許分類】
B23K 35/22 20060101AFI20241106BHJP
B23K 35/26 20060101ALI20241106BHJP
C22C 13/00 20060101ALI20241106BHJP
B23K 35/14 20060101ALI20241106BHJP
C22C 12/00 20060101ALI20241106BHJP
C22C 13/02 20060101ALN20241106BHJP
C22C 30/04 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
B23K35/22 310A
B23K35/26 310A
C22C13/00
B23K35/14 Z
B23K35/26 310C
C22C12/00
C22C13/02
C22C30/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024551883
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 US2022080176
(87)【国際公開番号】W WO2023097174
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524194207
【氏名又は名称】オーメット サーキッツ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ヤンロン シ
(72)【発明者】
【氏名】ションイー リー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ロシュ
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン シアラー
(57)【要約】
150℃未満の温度で電子素子間に相互接続を形成するための、2つの異なる粒子タイプを有する、電気的及び熱的伝導性組成物が提供される。第1粒子タイプは、金属試薬Aを含み、合金化促進剤元素をさらに含んでもよい。タイプ1粒子は、2つの異なるサブグループ:タイプ1A粒子及びタイプ1B粒子を含む。タイプ1A粒子は、処理温度T1で液体である。タイプ1B粒子は、T1+100℃未満の温度で液体である。タイプ1A及び/又はタイプ1Bのいずれかは、合金組成物中の試薬Aの液相線温度を低下させる役割を果たす1つ以上の促進剤元素と合金化される。第2粒子タイプは、固液相互拡散によって試薬Aと反応して、T1で固体である固溶体及び金属間化合物反応生成物を形成する金属試薬Bを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)温度T
1で液体である、約1質量%~約10質量%のタイプ1A粒子であって、前記タイプ1A粒子は少なくとも1つの試薬Aを含む、タイプ1A粒子;
b)温度T
1~T
1+100℃で液体である、約50質量%~約80質量%のタイプ1B粒子であって、前記タイプ1B粒子は少なくとも1つの試薬Aを含む、タイプ1B粒子;
c)少なくとも1つの試薬Bを含む約5質量%~約45質量%のタイプ2粒子;
及び
d)有機ビヒクル;
を含む、粒子混合組成物であって、
前記試薬A及び前記試薬Bは金属であり、前記タイプ1A粒子、若しくは前記タイプ1B粒子のいずれか、又は前記タイプ1A粒子及び前記タイプ1B粒子の両方は、少なくとも1つの促進剤元素をさらに含み得る、粒子混合組成物。
【請求項2】
前記試薬Aが、Sn、In、及びGa、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記試薬Aが、Sn、In、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記試薬Aが、実質的にSnである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記試薬Bが、Cu、Ag、Ni、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記試薬Bが、実質的にCuである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記促進剤元素が、Bi、In、Pb、Zn、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記促進剤元素が、Bi、In、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記タイプ1A粒子が、促進剤元素Inを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記タイプ1B粒子が、促進剤元素Biを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記有機ビヒクルが、熱硬化性接着樹脂を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
温度T
1において、液体である前記試薬Aが、固体である前記試薬Bと反応し、前記T
1は約80℃~約150℃の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記タイプ1A粒子が、In及びSnの合金を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記タイプ1A粒子が、In及びSnの共晶合金を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記タイプ1A粒子が、Sn及びBiの合金を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記タイプ1A粒子が、Sn及びBiの共晶合金を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記試薬A及び前記試薬Bの前記反応の生成物が、T
1では固体の固溶体及び金属間化合物である、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物を製造する方法であって、前記方法は:所定の比率の前記タイプ1A粒子、前記タイプ1B粒子、前記タイプ2粒子、及び前記有機ビヒクルを混合し、それによって成分の混合物を形成することを含む、方法。
【請求項19】
a)少なくとも2つの部品のアセンブリにある量の請求項1に記載の組成物を適用する工程であって、前記少なくとも2つの部品は、電気的に相互接続される、工程;
b)温度T
1まで前記組成物を加熱する工程であって、前記T
1は約80℃~約150℃である、工程;
を含み、それによって電気的及び熱的伝導性の相互接続を得る、電気的及び熱的伝導性の相互接続を行うための方法。
【請求項20】
a)温度T
1で液体である、少なくとも1つの試薬Aを含む、タイプ1A粒子;
b)温度T
1~T
1+100℃で液体である、少なくとも1つの試薬Aを含む、タイプ1B粒子;
c)少なくとも1つの試薬Bを含むタイプ2粒子;
及び
d)有機ビヒクル;
を含む、粒子混合組成物であって、
前記試薬A及び前記試薬Bは金属であり、前記タイプ1A粒子、若しくは前記タイプ1B粒子のいずれか、又は前記タイプ1A粒子及び前記タイプ1B粒子の両方は、少なくとも1つの促進剤元素をさらに含み得て、
ここで、タイプ1A粒子対タイプ1B粒子の重量比が、約1:20~約1:2である、粒子混合組成物。
【請求項21】
前記試薬AがSnを含むか、又は前記試薬BがCuを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記タイプ1A粒子が、In及びSnの合金を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記タイプ1A粒子が、In及びSnの共晶合金を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記タイプ1B粒子が、Sn及びBiの合金を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
前記タイプ1B粒子が、Sn及びBiの共晶合金を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記タイプ1A粒子対タイプ1B粒子の重量比が、約1:18~約1:4である、請求項20に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照として本明細書に組み込まれる、2021年11月23日に出願された米国特許仮出願第63/282,604号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、金属組成物、その調製方法及び使用に関する。より具体的には、本開示は、金属微粒子充填剤の組み合わせを利用する伝導性金属組成物に関する。
【0003】
電子産業はより小さい形態因子において、絶えず、より高い性能及び機能性に向かって進んできた。これらの推進力は、より小さな回路フィーチャ、より効率的な回路配線をサポートする設計及び製造方法、パッケージングの層の除去、単一の電子パッケージへの複数部品の統合、並びに精巧な工学的材料に変換されている。これらの傾向によって悪化させられた問題は、熱管理及び異種材料の近接並置により生成される熱機械的応力の管理を含む。
【0004】
一例は、複数の半導体ダイ部品及び受動部品が単一の大きなパッケージに統合される、半導体プロセッサのパッケージングである。さらに、機械的安定性及び熱管理、並びにマザーボード上の回路形状と適合するパターンにチップレベルの相互接続点を広げるための広範な回路配線を提供するための構造もまた組み込まれる。そのようなパッケージ内の、受信マザーボード内と同様に、多数の材料は、マザーボードへのパッケージのアセンブリ操作において遭遇するような熱の適用で悪化し得る反りを頻繁にもたらす。パッケージ及び/又はマザーボードが反った場合、共平面性の欠如が、アセンブリ操作中に2つの間に形成された不十分な又は存在しない電気的相互接続をもたらす著しいリスクがある。したがって、アセンブリ操作のための処理温度を低減することは、パッケージ及びマザーボードの両方の反りを低減することにより、この重大なリスクを軽減することができる。
【0005】
低温アセンブリプロセスの採用に対する障害は、現在、そのようなプロセスに適合する材料である。伝導性充填剤を受動的に装填した熱硬化性接着剤は、高性能計算についての電気的及び熱的性能と信頼性に欠ける。低融点はんだ合金材料は、許容可能な性能を提供するが、操作時又は上限温度が想定アセンブリ温度と同じ範囲にある一般的な熱サイクル信頼性試験において、再溶解する可能性を有する。
【0006】
遷移的液相焼結(TLPS)は、これらの問題を解決するために採用され得る技術である。TLPSペースト組成物において、2つの異なる種類の金属粒子の混合物が存在する。第1の種類の粒子は、アセンブリ処理温度又はその付近で液体となり、第2の種類の粒子中の元素と反応性がある元素を含有する。第2の種類の粒子は、アセンブリ処理温度で、液体にはならない。アセンブリ処理温度では、第1の粒子タイプ中の反応性元素は、相互拡散し、第2の粒子タイプ中の反応性元素と急速に反応し、したがって、新しい反応生成物の形成のために、第1の粒子タイプ中の反応性元素の消費をもたらす。得られた反応生成物は、アセンブリ処理温度を超える溶解温度を有する。
【0007】
TLPSペースト組成物は、従来のはんだペーストのように処理され、はんだ濡れ性表面への強固な冶金的学的接合部を形成することができるが、はんだとは異なり、これらの組成物は処理中に本質的に金属「熱硬化性」を生成する。この「熱硬化性の」特性は、ペースト材料を使用して、元の処理温度で再溶解するおそれなく低温アセンブリをもたらすことができるため、有利である。
【0008】
先行技術のTLPS組成物において、第1の粒子タイプは、典型的には、スズの合金を含み、第2の粒子タイプは、典型的には、銅、銀、及びニッケルの1つ以上を含む。これらの組成物において、スズは、第1のタイプの粒子における反応性元素としての役割を果たし、銅、銀、及びニッケルと反応性があり、処理温度をはるかに超える融点を有する結晶性金属間化合物(intermetallics)を形成する。一般に、スズは、処理温度の低下、接合される表面の濡れ性の改善、又は機械的特性の改善を提供するために、1つ以上の追加の元素と合金化される。
【0009】
低アセンブリ温度プロセスについて、スズの溶解温度を低下させるための適切な合金元素は、インジウム及びビスマスを含み得る。例えば、スズは232℃の融点を有するが、インジウム又はビスマスとの二元合金の形成を通して、得られた合金の溶解温度は、組成物に応じて、それぞれ118℃及び138℃に低下させることができる。追加の合金元素は、少ない割合で、融点をさらに低下させることができる。
【0010】
電子パッケージング産業界は、140℃以下の処理温度を極低温アセンブリプロセスと指定している。溶融合金の高いフローを達成し、強固な接合を確保するために、典型的には、合金の溶解温度は、処理温度より少なくとも10℃低い必要がある。したがって、138℃のSnBi共晶合金は、極低温アセンブリに適切でない。逆に、118℃のSnIn共晶合金は、125℃の上限温度を有する典型的な工業的熱サイクル要件に耐えるためには低すぎる溶解温度を有する。
【0011】
In及びBiの両方は、追加の有害な特性に悩まされる。Inは高価であり、タイプ2粒子中の反応性元素と様々な反応生成物を形成する極めて反応性の高い金属であり、その幾つかは低融点で、機械的特性に不十分である。Biは脆く、極めて不十分な熱的及び電気的伝導体である。
【0012】
極低温アセンブリプロセスについての産業界のニーズを、TLPSペースト組成物中でSnIn合金の低溶解温度とSnBi合金の費用削減とを組み合わせることによって、満たし、粒子組成物の幾つかをCu、Ag、Ni、及びそれらの組み合わせを含むタイプ2の粒子と置き換え、処理温度を超える溶解温度を有する反応生成物をもたらすことによって、これら2つの合金族の有害な特性を軽減することができれば有利である。
【発明の概要】
【0013】
本特許請求の範囲は、140℃以下の温度で処理することができ、冶金成分選択の高い特異性を有する金属粒子の組成物、並びに得られる金属間化合物生成物及びその相互接続ネットワークに関する。本組成物は、熱機械的応力に対する高い耐性を有し、熱的に安定なバルク並びに電気的及び熱的界面抵抗を有する。本組成物は、被着体及び周囲の材料に対して特定の用途を持つ有機化合物を追加で含んでもよい。
【0014】
本開示の組成物は、2種類の、処理温度で液体又は半液体であるタイプ1と、処理温度で液体ではないタイプ2との金属粒子の混合物を含む。本開示の組成物において、タイプ1粒子及びタイプ2粒子内に含有される特定の金属元素は、有機化学反応に類似した反応を受ける。金属試薬がどのように導入されるか、金属試薬の割合、及び非常に少量であっても他の金属種の存在は、反応の生成物に実質的な影響を及ぼす。本組成物の反応によって形成される金属生成物は、合金(固溶体)及び金属間化合物(特定の元素の割合を有する結晶構造)の両方を含む。有機化学における試薬として多くのものは、促進基(例えば、ハロゲン又はp-トルエンスルホン酸のような脱離基)と共に導入されることが多く、タイプ1粒子は、一次金属元素試薬に加えて促進金属元素を含み得る。また、有機反応と同様に、本出願の幾つかの組成物は、金属反応に対して触媒効果を与える金属元素を使用する。
【0015】
金属間化合物種を形成する反応を受ける本組成物中の金属元素は、タイプ1粒子中に存在する金属試薬A、及びタイプ2粒子中に存在する金属試薬Bという用語で指定される。実際には、タイプ1粒子は、液体試薬Aが試薬Bとの液体-固体相互拡散に伴い、金属溶液及び処理温度T1で固体である金属間化合物結晶を生じるように、液体又は半液体になる。T1におけるタイプ1粒子の液化又はほぼ液化は、促進剤と指定された1つ以上の合金化金属元素によって可能になる。促進剤元素は、タイプ1粒子の融点を低下させることによって液体-固体相互拡散を促進し、その結果、タイプ1粒子の少なくとも一部は、処理温度T1で液体である。タイプ1粒子及びタイプ2粒子の両方は、試薬及び促進剤元素以外の追加の元素を含み得る。
【0016】
組成物の幾つかの実施形態において、試薬Aを含むタイプ1粒子は、容易に区別される2つのセットで組成物に導入される。タイプ1A粒子は、T1で完全に液体であると特徴付けられ、一方、タイプ1B粒子は、T1+100℃未満の温度で完全に液体であると特徴付けられる。
【0017】
より具体的には、幾つかの実施形態において、少なくとも1つの試薬Aを含む約1質量%~約10質量%のタイプ1A粒子;少なくとも1つの試薬Aを含む約50質量%~約80質量%のタイプ1B粒子;少なくとも1つの試薬Bを含む約5質量%~約45質量%のタイプ2粒子;及び有機ビヒクルを含む、粒子の混合物を含む組成物が提供される。
【0018】
幾つかの実施形態において、タイプ1A粒子、若しくはタイプ1B粒子のいずれか、又はタイプ1A粒子及びタイプ1B粒子の両方は、少なくとも1つの促進剤元素をさらに含んでもよく;ここで、タイプ1A粒子中の前記促進剤元素は、タイプ1B粒子中の促進剤元素と、元素の種類及び/又は割合のいずれかによって異なり得る。
【0019】
本開示の特定の態様において、試薬A及び試薬Bは、T1で反応し、T1で固体である金属溶液及び金属間化合物結晶を形成する。組成物の他の態様において、試薬Aは、さらに、Sn、Ag、Au、Ni、Pd及びCuからなる群から選択される元素を含む表面と反応して、そのような表面への金属接合部を生成する。
【0020】
また、本開示により、約80℃~150℃の温度で、熱プロセス処理によって本組成物から形成される固溶体及び金属間化合物が提供される。
【0021】
さらに、所定の比率のタイプ1A粒子、タイプ1B粒子、タイプ2粒子、及び有機ビヒクルを組み合わせることで成分の混合物を形成することにより、本開示の組成物を製造するための方法が提供され、ここで、有機ビヒクルは、混合物中で粒子を一緒に保持し、典型的にはフラックスを含む。有機ビヒクルはまた、樹脂、ポリマー、反応性モノマー、揮発性溶媒、及び他の充填剤を含有してもよい。
【0022】
本開示はまた、少なくとも2つの部分のアセンブリに、本明細書に記載されるある量の粒子混合組成物を適用することにより、電気的及び熱的に伝導性の相互接続を作製するための方法を提供し、ここで、少なくとも2つの部分は、一緒に電気的に接合されるべきであり、組成物を温度T1に加熱し、ここで、T1は、約80℃~約150℃であり、組成物中の試薬A及び試薬Bは、反応して固溶体及び金属間化合物を形成し、固溶体及び金属間化合物生成物は、電気的及び熱的に伝導性である。本開示の幾つかの実施形態において、固溶体及び金属間化合物種は、処理温度T1よりも少なくとも10℃高い溶解温度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
開示される主題のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、開示される主題の実施形態を図示し、記述と共に、開示される主題の原理を説明する役割を果たす。図面において:
【
図1】
図1は、ボールグリッドアレイ(BGA)電子パッケージを、銅端子を有する電子基板に接続する実施形態の組成物の断面光学画像である。
【
図2】
図2及び
図3は、
図1に示した実施形態の組成物を用いて140℃のプロセスで基板に取り付けられた大規模半導体パッケージのX線画像である。
【
図3】
図2及び
図3は、
図1に示した実施形態の組成物を用いて140℃のプロセスで基板に取り付けられた大規模半導体パッケージのX線画像である。
【
図4A】
図4A及び
図4Bは、それぞれ、処理されたままの及び追加のリフローサイクル後のアセンブリの断面図である。
【
図4B】
図4A及び
図4Bは、それぞれ、処理されたままの及び追加のリフローサイクル後のアセンブリの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものにすぎず、特許請求される主題を限定するものではないことが理解されるべきである。本明細書で使用される場合、単数形の使用は、特に断りのない限り複数を含む。
【0025】
本明細書で使用される場合、「又は」は、特に断りのない限り「及び/又は」を意味する。さらに、用語「含む(including)」並びに「含む(includes)」及び「含まれる(included)」のような他の形態の使用は、「含む(comprising)」として理解され、限定されない。本明細書で使用される項目見出しは、構成的な目的のためでしかなく、記載される主題を限定すると解釈すべきではない。
【0026】
「1~20」のような整数値の数値範囲は、本明細書中に現れる場合は常に、所与の範囲における各整数を指し;例えば、「1%~20%」は、その割合が1%、2%、3%など、20%を含む20%までであり得ることを意味する。本明細書に記載される範囲が「1.2%~10.5%」などの小数値を含む場合、範囲は、所与の範囲に示される最も小さいインクリメントの各小数値を指し;例えば、「1.2%~10.5%」は、その割合が1.2%、1.3%、1.4%、1.5%など、10.5%を含む10.5%まであり得ることを意味し;「1.20%~10.50%」は、その割合が1.20%、1.21%、1.22%、1.23%など、10.50%を含む10.50%までであり得ることを意味する。
【0027】
用語、定義、略語
本明細書で使用される用語「約」は、「約」と呼ばれる数が、記載された数に記載された数のプラス又はマイナス1%~10%を含むことを意味する。例えば、「約」100度は、状況に応じて、95度~105度又はわずか99度~101度を意味し得る。
【0028】
用語「合金」は、2つ以上の金属、及び任意に追加の非金属を含有する混合物を指し、合金の元素は、溶解時に一緒に融合されるか、又は互いに溶解する。本開示において参照される合金組成物は、構成元素の重量%によって定義される。
【0029】
本明細書で使用される「フラックス」は、しばしば酸又は塩基を指し、金属の融合を促進し、特に、金属酸化物の形成を除去、妨害する物質を指す。
【0030】
本明細書で使用される用語「液相線温度」は、固体が大気圧で液体になる温度(点)を指す。
【0031】
本明細書で使用される用語「タイプ1A粒子」は、約150℃以下の液相線温度を有する金属粒子を指す。
【0032】
本明細書で使用される用語「タイプ1B粒子」は、約250℃未満の液相線温度を有する金属粒子を指す。
【0033】
本明細書で使用される用語「タイプ2粒子」は、約550℃より高い液相線温度を有する金属を指す。
【0034】
本明細書で使用される用語「促進剤」は、粒子の液相線温度を低下させるために、タイプ1A粒子、又はタイプ1B粒子において試薬Aと合金化され得る元素を指す。
【0035】
用語「共晶」は、融点が可能な限り低く、構成成分が同時に溶解するような割合で構成部分が存在する混合物又は合金を指す。したがって、共晶合金又は混合物は単一の温度で液化する。
【0036】
用語「非共晶」は、共晶特性を持たない混合物又は合金を指す。したがって、非共晶合金が液化すると、その成分は異なる温度で液化し、液相線温度以下に広がる溶解範囲を示す。
【0037】
用語「示差走査熱量測定」(「DSC」)は、試料及び基準の温度を上昇させるために必要な熱量の差を温度の関数として測定する熱分析の方法を指す。
【0038】
用語「焼結」は、金属粉末粒子の隣接する表面が加熱によって結合されるプロセスを指す。「液相焼結」とは、固形粉末粒子が液相と共存する焼結の形態を指す。混合物の緻密化及び均一化は、金属が互いに拡散し、新しい合金及び/又は金属間化合物種を形成するにつれて生じる。
【0039】
用語「遷移的液相焼結」又は「TLPS」は、粉末に関して、固体合金及び/又は金属間化合物種の混合物を形成するための金属の均一化の結果として、液体が短時間のみ存在するプロセスを記載する。液相は、周囲の固相に非常に高い溶解度を有し、したがって、急速に固体中に拡散し、最終的に固化する。拡散均一化は、混合物をその平衡溶解温度を超えて加熱する必要なく、最終組成物を生成する。
【0040】
用語「処理温度」又は「T1」は、試薬A及び試薬B(両方とも、本出願の以下において詳細に記載及び議論される)が反応して、固溶体及び金属間化合物種を形成する温度を指す。
【0041】
用語「金属間化合物」又は「金属間化合物種」は、その構成金属のものとは異なる明確な構造を有する、特定の割合で2種以上の金属原子を含む固体材料を指す。
【0042】
用語「バルク抵抗率」は、「バルクで」、すなわち、形状又はサイズにかかわらず、材料の固有の電気抵抗を指す。
【0043】
本明細書で使用される用語「実質的に」は、所与の種の90重量%よりも高い割合を指す。
【0044】
粉末冶金を含むTLPS組成物において、試薬A及び試薬Bを含む粒子が混合される。温度が処理温度T1まで上昇するにつれて、試薬Aを含む少なくとも1つの粒子タイプが液体になる。この転移は、示差走査熱量測定(DSC)における吸熱事象として観察することができる。次に、これらの粒子内の試薬Aは、試薬Bと反応して、T1で固体である固溶体及び金属間化合物を形成する。固溶体及び金属間化合物の反応生成物の形成は、DSCにおける発熱事象として観察することができる。したがって、典型的なTLPS DSC「サイン」は、吸熱、続いて発熱である。液体形態で利用可能な試薬A、及び固体形態の試薬Bの拡散及び反応は、試薬が完全に枯渇するか、処理温度で液相がもはや存在しないか、又は混合物を冷却することによって反応がクエンチされるいずれかまで続く。冷却後、温度が変化して元の溶解温度を超えても、混合物の元の溶解サインは再現されない。これは、典型的な遷移的液相焼結金属混合物のDSC「サイン」である。
【0045】
しかしながら、上記で示唆したように、TLPSは、試薬A及び試薬Bの割合によって制限され、そのうちの1つは、反応生成物への処理中に消耗され得る。試薬Aを含む単一の粒子タイプのみを含む先行技術のTLPS組成物において、試薬Aが過剰である場合、望ましくない特性を有する残存促進剤金属(例えば、Bi)もまた、処理された混合物において大部分を占める。逆に、試薬Bが過剰な場合、一度液化粒子中の試薬Aが消耗されると、試薬A及び試薬Bとの間の追加の反応生成物を迅速に形成する能力が消耗する。試薬Aと試薬Bとの間の固体状態相互拡散は継続し得るが、実質的に低下した速度においてである。
【0046】
先行技術の組成物は、複数のSn系合金を銅と組み合わせて、合金の少なくとも1つの融点未満の温度でTLPS処理を達成する使用を教示する。Shearerら(米国特許第8,221,518号明細書、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は、少なくとも1つの高融点金属を含む、約30質量%~約70質量%の第1の金属粒子と;反応性低融点金属及びキャリア金属の合金を含む、約10質量%~約60質量%の第2の金属粒子であって、反応性低融点金属が、高融点金属と反応して金属間化合物を形成することができる、第2の金属粒子と;反応性低融点金属を少なくとも40質量%含む、約25質量%~約75質量%の第3の金属粒子と;有機ビヒクルとを含む、粒子の混合物を含む組成物を教示する。Shearerはさらに、「合金をブレンド又は混合することによって、最終的に処理されたTLPSネットワーク中の望ましくない特性を有する残存担持金属(例えば、Bi)の割合を制御することができる一方で、形成される望ましい金属間化合物種の量を最大にすることができる。」と教示している。しかしながら、Shearerは、インサイチュで非溶融合金から溶融合金中にSnを補充するための実際的な限界は、非溶融合金3部当たり溶融合金1部の比であると教示している:「この現象は、非溶融合金相対溶融合金相の割合が3:1と高いTLPS組成物において観察され、その結果、組成物中の望ましくないBiの割合が実質的に減少する。」
【0047】
本開示は、Shearerの教示に反して、溶融(又は液体)合金対非溶融合金の実質的により低い比(約1:20~約1:2の範囲内)が実現可能であるだけでなく、幾つかの組成物及び用途においてより良好な性能及び信頼性を達成するという観察に基づいている。
【0048】
本開示の組成物。
したがって、本開示は、有機ビヒクル中に3種類の金属粒子:タイプ1A、タイプ1B、及びタイプ2を含有する組成物を提供する。
【0049】
簡単に表現すれば、開示された組成物は、以下を含む粒子混合物からなる:
a)少なくとも1つの試薬Aを含み、温度T1で液体である、1質量%~10質量%のタイプ1A粒子;
b)少なくとも1つの試薬Aを含み、温度T1~T1+100℃で液体である、50質量%~80質量%のタイプ1B粒子;
c)少なくとも1つの試薬Bを含み、約5質量%~約45質量%のタイプ2粒子;及び
d)有機ビヒクル。
ここで、タイプ1A粒子、若しくはタイプ1B粒子のいずれか、又はタイプ1A粒子及びタイプ1B粒子の両方は、少なくとも1つの促進剤元素をさらに含む。
【0050】
試薬Aは、液体形態において、固体試薬Bと急速に相互拡散し、処理温度T1で固体である固溶体及び金属間化合物を形成する反応性金属である。試薬Aとしての使用が想定される元素は、Sn、In、Ga及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。本開示の幾つかの実施形態において、試薬AはSnである。
【0051】
促進剤元素は、タイプ1A粒子及びタイプ1B粒子のいずれか又は両方において、タイプ1A粒子又はタイプ1B粒子の液相線温度を低下させる目的で試薬Aと合金化され得る元素として定義される。例えば、Ag及びCuと合金化する場合、Snの液相線温度は、合金形態において232℃から217℃に低下し得る。また、SnがBi又はInと合金化する場合、Sn元素の液相線温度は、共晶合金組成において、それぞれ138℃及び118℃に低下し得る。非共晶合金が形成される場合、促進剤元素は、元素試薬Aの液相線温度を、液相の形成が緩やかである所定の範囲まで低下させ、合金の液相線温度に達するまで「ムーシー(mushy)」相をもたらすことができる。したがって、促進剤元素及び試薬Aとの合金中のその比率の両方を独立して操作して、所望の結果を達成することができる。促進剤としての使用が想定される元素は、Bi、In、Pb、Zn、Ag、Cuを含む。In、Ag、及びCuなどの特定の元素は、各粒子タイプにおいて独立した能力を果たす促進剤及び試薬の両方として組成物中に存在し得る。組成物は、組成物全体の元素表示よりはむしろ、3つの個別の粒子タイプの特性及びそれらの特性の各々を達成するために必要とされる元素組成によって定義される。定義された3つの粒子タイプを通して元素を送達する方法は、本開示にとって重要である。
【0052】
粒子タイプ1Aは、試薬Aを含み、少なくとも1つの促進剤元素と合金化され得る。温度T1(後述)では、タイプ1A粒子は液体である。本開示の幾つかの実施形態において、タイプ1A粒子は、共晶合金中にSn及びInを含む。SnとInの共晶合金は、118℃の液相線温度を有し、これは電子産業界が望む非常に低いアセンブリ温度である140℃を大幅に下回っている。Inは高価であり、望ましくない低溶解温度金属間化合物を形成する傾向を有するけれども、開示された組成物中のタイプ1A粒子の割合が低いことは、これらの不利な特性を著しく緩和する。
【0053】
粒子タイプ1Bは、試薬Aを含み、少なくとも1つの促進剤元素と合金化され得る。粒子タイプ1Bは、T1+100℃未満の温度で液体である。本開示の幾つかの実施形態において、粒子タイプ1Bは、非共晶組成物中にSn元素及びBi元素を含む。Biは、非常に不十分な電気的及び熱的伝導体であり、脆性であり、Snとの共晶組成物では、低品質なアセンブリをもたらす不十分な濡れ特性を有する。しかしながら、170℃の液相線温度を有する非共晶Sn60:Bi40組成物において、開示された組成物中のBiの合計の割合は比較的低く維持され、濡れ特性ははるかに改善されている。
【0054】
幾つかの実施形態において、タイプ1A粒子対タイプ1B粒子の重量比は、約1:20~約1:2である。他の実施形態において、タイプ1A粒子対タイプ1B粒子の重量比は、約1:18~約1:4である。
【0055】
したがって、開示された組成物の割合において、共晶SnInを含有するタイプ1A粒子及び非共晶SnBiを含有するタイプ1B粒子の混合物は、有利には、In及びBiの両方の好ましい特性を利用し、同時にそれらの有害な特性を緩和する。
【0056】
開示された組成物の割合において、共晶SnInを含有するタイプ1A粒子及び共晶SnBiを含有するタイプ1B粒子の混合物は、機械的性能及びリフロー安定性に関する好ましい特性を示す。
【0057】
タイプ2粒子は試薬Bを含む。試薬Bは、T1で固体である反応生成物を形成するために、固液拡散のメカニズムを通してT1で試薬Aと反応性でなければならない。試薬Bとしての使用が想定される元素は、Cu、Ag、Ni、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。タイプ2粒子は、試薬Bに加えて合金元素をさらに含んでもよい。
【0058】
Cuを含むタイプ2粒子は、約5質量%~約45質量%、より好ましくは約7質量%~約40質量%、最も好ましくは8質量%~約35質量%で存在してもよい。
【0059】
Cuは比較的安価で、豊富であり、電子回路元素に典型的に使用される冶金と適合し、1000℃を超える溶解温度を有し、延性であり、種々の粉末形態で容易に入手でき、優れた電気的及び熱的伝導体である。
【0060】
Agはまた、特に、銅粒子がその後の製造プロセス(例えば、銅エッチング)には脆弱である用途において、又は貴金属の使用が粒子上の金属酸化物を除去するための有機フラックスの必要性を実質的に低下させる場合において、本開示の組成物における使用のための試薬Bとして特に想定される。
【0061】
Niはまた、比較的安価で、豊富であり、電子回路元素に典型的に使用される冶金と適合する。Cuと併用する場合、Niは、疲労寿命に有害であり得る密度変化を伴って186℃で結晶形態が変化するCu6Sn5金属間化合物の形成を抑制することができる。Niはまた、Cuよりも低い熱膨張係数を示し、これはSiダイのような非常に低い熱膨張係数被着体とのより良好な適合性を提供し得る。
【0062】
本開示の幾つかの実施形態において、タイプ1A粒子及びタイプ1B粒子の試薬Aは、同じ金属であり、粒子タイプは、合金化促進剤元素及び/又はそれぞれの合金中の促進剤元素の割合によって区別される。
【0063】
幾つかの実施形態において、タイプ1A粒子の組成は共晶であり、タイプ1B粒子の組成は非共晶である。幾つかの実施形態において、タイプ1B粒子は、In52Sn48(共晶合金)などのスズ合金を含む。幾つかの実施形態において、タイプ1B粒子は、Sn60Bi40(非共晶合金)又はSn96.5:Ag3.0Cu0.5(SAC305)などのスズ合金を含む。幾つかの実施形態において、タイプ1A粒子の組成は共晶(In52:Sn48)であり、タイプ1B粒子の組成は共晶(Sn42:Bi58)である。
【0064】
組成物は、微粒子形態で、又はタイプ1微粒子若しくはタイプ2微粒子中の合金化元素としてのいずれかで、追加の元素をさらに含んでもよい。幾つかの実施形態において、T1で処理された組成物の反応生成物が、意図された用途のための属性の最適な組み合わせを有するように、このような追加の元素が含まれる。考慮され得る属性は、典型的には、熱的に安定な抵抗、延性、高い導電率及び熱伝導度、周囲の材料と同様の熱膨張係数などを包含する。
【0065】
特定の理論に拘束されることを望まないが、液化タイプ1A粒子中の試薬Aは、試薬Bとの反応生成物中で消費されるため、追加の試薬Aは、液化タイプ1A粒子中のタイプ1B粒子の溶解性によって供給されると考えられる。したがって、液化タイプ1A粒子は、試薬A又は試薬Bの供給がなくなるまで、T1で連続的にインサイチュで再生される。
【0066】
本組成物中の3つの粒子タイプの全ては、1~50μmのサイズ範囲であってもよく、各々は、この範囲内に1つ又は複数の粒度分布のいずれかで存在してもよい。タイプ2粒子のサイズ範囲は、T1における試薬Aとの反応で実際に利用可能な試薬Bの量に影響を及ぼすことが、当業者によって理解される。
【0067】
有機ビヒクルは、単に、適用を容易にするために混合物を一緒に保持し、様々な粒子を互いに近接して保つ役割を果たす、金属粒子のためのキャリアであってもよい。より典型的には、有機ビヒクルの重要な属性は、粒子表面から金属酸化物を低減及び/又は除去することである。金属酸化物の除去はフラックスと呼ばれ、有機酸及び強塩基を含む当業者に公知の種々の化学種によって達成することができる。有機ビヒクルの他の属性は、用途に特異的である。例えば、本開示の金属組成物がはんだペースト代替物として使用される用途では、有機ビヒクル全体は、処理中に揮発するように配合することができる。本金属組成物が非金属表面上の被着体の被覆に使用される用途において、有機ビヒクルは、接着機能を果たす成分を含み得る。したがって、フラックス成分の必要性とは別に、有機ビヒクルは、多種多様な有機構成成分を含み得る。
【0068】
本組成物は、3種類の金属粒子を所定の割合で秤量し、それらを混合し、有機ビヒクルとブレンドしてペースト様組成物を形成することによって調製することができる。このような配合物のブレンド技術は、当業者に周知である。全ての粒子及び有機ビヒクルの成分は、複数の供給元から市販されている。
【0069】
調製に続いて、次に、組成物は様々なアセンブリ用途において使用され得る。例えば、20分未満の間における温度T1又は約T1度における処理後、半導体パッケージは、本組成物を使用して、機械的に接合され、金属化基板に電気的に相互接続され得る。これらの種類のアセンブリにおいて電子産業界で問題となる反りの課題の低減を達成するために、T1は、好ましくは150℃未満であり、より好ましくは140℃以下である。
【0070】
T1での処理が完了すると、本開示の組成物から形成された接合部は、その後の熱的変化を通して、電気的及び機械的に安定である。
【0071】
本開示の組成物が有用である用途の追加の例は、半導体ダイをパッケージング要素に接続し、パッケージングされた半導体構成要素をプリント回路基板に接続し、他の個別構成要素を電子基板に接続し、積み重ねられたダイ間に接続を形成し、インターポーザ構造を通して電気サブシステムを電気的に相互接続することなどである。
【0072】
上述の組成物は、限定されないが、ニードル分注、ステンシル、スクリーン印刷、インクジェット、押出、キャスティング、スプレー又は当業者に公知の他の方法を含む、様々な技術を使用して適用され得る。一旦適用された後、記載された組成物は、オーブン中で、ホットプレート上で、リフロー炉中で、又ははんだ若しくは充填有機接着剤の処理に典型的に使用される他の手段によって熱処理される。特定の熱プロセス条件は、TLPSシステム及び任意の有機ビヒクル構成成分の選択と同様に、用途に依存する。
【実施例】
【0073】
ここで、本開示のより具体的な実施形態及びそのような実施形態のサポートを提供する実験結果を参照する。実施例は、開示される主題をより詳細に例示するために以下に与えられ、開示される主題を決して限定するものと解釈されるべきではない。
【0074】
実施例1
表1に詳述される割合で、配合物成分を秤量し、混合することにより、一連の組成物を調製した:
【表1】
【0075】
BGAパターン及びその受信回路パッドに対応する開口を有するステンシルを用いて回路化基板に組成物の各々を適用し、パターン化堆積物上にBGAパッケージを配置し、BGA-ペースト-基板アセンブリをピーク温度及び合計時間15分で窒素下において熱暴露することによって、組成物を用いてBGAアセンブリを調製した。
【0076】
受信基板の回路パターンは、全てのボールが基板に電気的に必ず接続されるように、又はプローブされたときに、テストパターンが電気的に開放するように設計される。
【0077】
比較組成物1から構築されたアセンブリの25%は、処理されたままで電気的に開放していた。配合物2及び配合物3の両方は、100%の電気接続を有した。
【0078】
各ペースト及び各BGAの8つのアセンブリを、最初に調製し、電気的にプローブし、次に、-40℃~125℃で作動するように設定した熱衝撃チャンバに挿入した。アセンブリを250、500、750及び1000サイクルで熱衝撃チャンバから取り外し、電気プローブをし、表2の結果を得た:
【表2】
【0079】
データ表に見られるように、本発明の組成物2及び組成物3を採用するアセンブリは、厳しい空気対空気熱衝撃を通して比較的安定した電気的性能を維持したが、一方、比較組成物1は、本発明の組成物アセンブリよりも高い初期抵抗を有し、250回の衝撃によって機械的完全性を失った。
【0080】
実施例2
表3に詳述される割合で、配合物成分を秤量し、混合することにより、一連の組成物を調製した:
【表3】
【0081】
上記組成物のアセンブリは、銅基板上に0805チップ抵抗器の群に対応する開口パターンを有するステンシルを介して各ペーストを適用し、0805チップ抵抗器の端子をパターン化されたペースト堆積中に配置し、窒素還流リフロー炉内で140℃まで約15分間加熱することによって調製した。
【0082】
各アセンブリの熱処理が完了した後、得られた接合部を室温及び高温で剪断して、接合部の相対強度を特徴付けた。表3に結果を要約する。
【0083】
図1は、ボールグリッドアレイ(BGA)電子パッケージ100を、銅端子を有する電子基板に接続する一実施形態の組成物の断面光学画像である。断面画像における接合部は、窒素還流炉を使用して、140℃のピーク処理温度で形成された。各ボール101は、SAC305などのスズはんだを含む。伝導性ペースト102の接合部は、銅粒子106を含み、ボール101と銅端子110を伝導的に接合する。
【0084】
図2及び
図3は、配合物4を用いて140℃の処理において基板に取り付けられた大規模半導体パッケージ200、300のX線画像であり、この配合物もまた
図1に示す実施形態において使用される。これらのボールグリッドアレイ(BGA)パッケージは、それぞれペリフェラルアレイ及びフルアレイと呼ばれる。高温アセンブリにおいて、これらの種類の大規模パッケージでは反りが発生しやすく、したがって、アレイ内のボールの一部、特にコーナー部内の接合部の形成が妨げられる。本組成物を用いて作製されたアセンブリのX線画像は、接合部がペリフェラルアレイ及びフルアレイの両方の全体を通して、良好に形成されたことを明確に示す。16×16ペリフェラルアレイ200は、伝導性ペースト202を介して回路204及び銅端子に接合されたボール201を含む。回路端子又はプローブポイント208及び210は、BGA200の周縁部に示されている。14×14フルアレイ300は、伝導性ペースト302を介して回路304及び銅端子に接合されたボール301、並びにプローブポイント308、310を含む。
【0085】
実施例3
共晶組成Bi58:Sn42の従来のはんだペースト、本発明の配合物#9及び配合物#10の3つの配合物を調製した。配合物は、表4の割合を用いて先の実施例のように調製した。
【0086】
【0087】
各配合物を、基板上のパターン及びBGA半導体パッケージ上のはんだボールのパターンの両方に対応するステンシルマスクを用いて、パターン化された基板に適用した。はんだボールがペースト堆積と接触するように、BGAパッケージをパターン化されたペースト上に配置した。一度配置した後、BGA-ペースト-基板アセンブリは、窒素をカバーガスとして装備したトンネルリフロー炉で熱処理を受けた。熱処理は、タイプ1A粒子及びタイプ1B粒子を溶かすために、配合物9については140℃、対照はんだペーストについては165℃のピーク温度を有し、BGAと基板との間に接合部を形成することができた。
【0088】
一度熱処理した後、アセンブリは落下試験を受けた。落下試験は、8フィート部分の垂直に配向した配管パイプから構成され、それを通して、BGAが外れるまで各アセンブリを、繰り返し縁を下にして落下させた。配管パイプの直径は、各落下サイクルの間、アセンブリが縁を下にしている状態を保つように選択した。電気的連続性を5回の落下毎に試験した。機械的結果は以下の通りであった:
【表5】
【0089】
この実験は、本発明の配合物が、実質的により低いピーク処理温度で従来のはんだと同等の機械的性能を提供できることを実証する。
【0090】
実施例4
先の実施例の配合物9を再び使用し、先の実施例において使用した同じ熱処理によってBGAペーストアセンブリを作製した。
【0091】
そのような熱プロセスによって形成された接合部を、追加の熱プロセスサイクルにかけて、接続が安定したままであるかどうかを決定することは、業界の一般的な慣行である。
【0092】
配合物#9を用いて形成されたアセンブリにおける、追加の熱プロセスサイクル後において、抵抗は変化しなかった。
【0093】
処理されたままの(
図4Aに図示された)アセンブリ及び追加のリフローサイクル後の(
図4Bに図示された)アセンブリの断面は、安定性をさらに示す接合部の形態における変化を示さない。各ボール401a、401bは、SAC305などのスズはんだを含む。伝導性ペースト402a、402bの接合部は、銅粒子(図示せず)を含み、ボール401a、401b及び銅端子410a、410bを伝導性接合する。
【0094】
容易に確かめることができるように、本開示の範囲の金属粒子タイプ1Aを使用して、T1で完全な液相を提供しつつも、金属粒子タイプ1Bの優れた接合部形成能力を活用することは、組成物が工業的に望まれる140℃の温度で処理される場合、室温及び高温の両方で機械的に強い接合部を提供する。対照的に、タイプ1A金属粒子のみに依存する配合物は、140℃で処理した場合、室温及び高温の両方で劣った接合部を提供する。
【0095】
これらの具体的な実施例に関して本発明を説明してきたが、本発明の精神から逸脱することなく、他の修正及び変更が可能であることは明らかである。
【国際調査報告】