(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-14
(54)【発明の名称】少なくとも2つの操舵可能な車輪を有する車輪付き車両用のステアリング・システム、及び、特にそのようなステアリング・システムの動作を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
B62D 3/12 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
B62D3/12 503Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522551
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 FR2022052046
(87)【国際公開番号】W WO2023073325
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524128501
【氏名又は名称】トレルボルグ カルクフー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイタイ、フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ブールビゴ、リオネル
(72)【発明者】
【氏名】ポーラウエック、ジェレミー
(57)【要約】
少なくとも2つの操舵可能な車輪を有する車輪付き車両用のステアリング・システム(1)は、ラック(2)と、ラック(2)の周囲に配置されたステアリング・ハウジング(3)と、ハウジング(3)の内部の摺動運動でのラック(2)を駆動するための部材(4)と、関節式連結部(6)によってラック(2)の端部に結合された一端部と車両の操舵可能な車輪のうちの1つに結合可能な反対側の一端部とを有する2つの連結棒(5)と、それぞれが関節式連結部(6)を保護し、連結棒(5)をハウジング(3)に連結する2つのベロー7であって、ベロー(7)及びハウジング(3)が、閉鎖された気密空間(8)の範囲を定める、2つのベロー(7)と、を備える。ステアリング・システム(1)は、閉鎖空間のガス気密性を表すパラメータを決定するセンサ(10)を備える監視装置(9)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの被操舵車輪を有する車輪付き機械用のステアリング・システム(1)であって、前記ステアリング・システム(1)は、ラック(2)と、前記ラック(2)の周囲に配置されたステアリング・ケーシング(3)と、前記ステアリング・ケーシング(3)の内部の前記ラック(2)の前記軸方向摺動運動を推進するための少なくとも1つの部材(4)と、関節式連結部(6)によって前記ラック(2)の端部に結合された一端部と前記機械の前記被操舵車輪のうちの1つに結合可能な反対側の端部とを有する2つのステアリング連結棒(5)と、それぞれが関節式連結部(6)を保護し且つそれぞれが連結棒(5)を前記ステアリング・ケーシング(3)に連結する2つのベロー(7)であって、前記ベロー(7)及び前記ステアリング・ケーシング(3)が少なくとも外気に対して気密であるように閉鎖された容積(8)の範囲を定める、2つのベロー(7)と、を備える、ステアリング・システム(1)において、前記ステアリング・システム(1)は、監視装置(9)を備え、この監視装置(9)は、前記ベロー(7)と前記ステアリング・ケーシング(3)とによって範囲を定められた前記閉鎖容積(8)の少なくともガスに対する前記気密性を表すパラメータを決定するための少なくとも1つのセンサ(10)を備えることを特徴とする、ステアリング・システム(1)。
【請求項2】
前記ベロー(7)と前記ステアリング・ケーシング(3)とによって範囲を定められた前記閉鎖容積(8)は、充填ガスと呼ばれるガスで少なくとも部分的に事前充填され、前記ベロー(7)と前記ステアリング・ケーシング(3)とによって範囲を定められた前記閉鎖容積(8)の少なくともガスに対する前記気密性を表すパラメータを決定するための前記センサ(10)又は前記センサ(10)のうちの少なくとも1つは、前記閉鎖容積(8)の内部の前記充填ガスの前記存在又は前記ガス濃度を決定するためのセンサであることを特徴とする、請求項1に記載のステアリング・システム(1)。
【請求項3】
前記ステアリング・システム(1)は、前記ベロー(7)と充填ガスを有する前記ステアリング・ケーシング(3)とによって範囲を定められた前記容積(8)の前記少なくとも部分的な事前充填のために、前記容積(8)と連通する少なくとも1つの閉鎖可能なガス取入れオリフィス(11)を備え、前記ガス取入れオリフィス(11)は、前記容積(8)が前記事前充填状態にあるときは閉鎖状態にあることを特徴とする、請求項2に記載のステアリング・システム(1)。
【請求項4】
前記ベロー(7)と前記ステアリング・ケーシング(3)とによって範囲を定められた前記閉鎖容積(8)の少なくともガスに対する前記気密性を表すパラメータを決定するための前記センサ(10)又は前記センサ(10)少なくとも1つは、前記ステアリング・ケーシング(3)に配置されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載のステアリング・システム(1)。
【請求項5】
前記ベロー(7)と前記ステアリング・ケーシング(3)とによって範囲を定められた前記閉鎖容積(8)の少なくともガスに対する前記気密性を表すパラメータを決定するための前記センサ(10)又は前記センサ(10)のうちの少なくとも1つは、赤外線測定センサであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載のステアリング・システム(1)。
【請求項6】
前記監視装置(9)は、可聴又は発光警告信号を発するための装置(13)と制御ユニット(14)とを備え、前記制御ユニット(14)は、前記閉鎖容積(8)の少なくともガスに対する前記気密性を表すパラメータを決定するための前記少なくとも1つのセンサによって提供されるデータを取得するように、且つ、可聴又は発光警告信号を前記データに応じて発するための前記装置(13)を制御するように構成されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載のステアリング・システム(1)。
【請求項7】
前記ステアリング・ケーシング(3)の内部の前記ラック(2)の前記軸方向摺動運動を推進するための前記部材(4)は、前記ラック(2)と噛み合って係合される回転部材であり、前記ステアリング・システム(1)は、前記ステアリング・ケーシング(3)の内部の前記ラック(2)の前記軸方向摺動運動を推進するための前記部材(4)を回転駆動するための少なくとも1つの部材(15)を備えることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載のステアリング・システム(1)。
【請求項8】
少なくとも2つの被操舵車輪を有する車輪付き機械用のステアリング・システム(1)を制御するための方法であって、前記ステアリング・システム(1)は、ラック(2)と、前記ラック(2)の周囲に配置されたステアリング・ケーシング(3)と、前記ステアリング・ケーシング(3)の内部の前記ラック(2)の前記軸方向摺動運動を推進するための部材(4)と、関節式連結部(6)によって前記ラック(2)の端部に結合された一端部と前記機械の前記被操舵車輪のうちの1つに結合可能な反対側の端部とを有する2つのステアリング連結棒(5)と、それぞれが関節式連結部(6)を保護し且つそれぞれが連結棒(5)を前記ステアリング・ケーシング(3)に連結する2つのベロー(7)であって、前記ベロー(7)及び前記ステアリング・ケーシング(3)が、少なくとも外気に対して気密であるように閉鎖された容積(8)の範囲を定める、2つのベロー(7)と、を備える方法において、前記ステアリング・システム(1)は、請求項1から7までのいずれか一項に記載のものであり、前記方法は、前記ベロー(7)と前記ステアリング・ケーシング(3)とによって範囲を定められた前記閉鎖容積(8)の少なくともガスに対する前記気密性を表すパラメータを決定する少なくとも1つのステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記ベロー(7)と前記ステアリング・ケーシング(3)とによって範囲を定められた前記閉鎖容積の少なくともガスに対する前記気密性を表すパラメータを決定する前記ステップの前に、前記方法は、少なくとも1つの充填ガスで前記容積(8)を少なくとも部分的に事前充填するステップを含み、前記ベロー(7)と前記ステアリング・ケーシング(3)とによって範囲を定められた前記閉鎖容積(8)の少なくともガスに対する前記気密性を表すパラメータを決定する前記ステップは、前記閉鎖容積(8)の内部の前記充填ガスの前記存在又は前記ガス濃度を決定するステップであることを特徴とする、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記監視装置(9)は、可聴又は発光警告信号を発するための装置(13)と制御ユニット(14)とを備え、前記方法は、前記閉鎖容積(8)の少なくともガスに対する前記気密性を表すパラメータを決定するための前記センサ(10)によって提供されるデータを前記制御ユニット(14)によって取得するステップと、可聴又は発光警告信号を前記データに応じて発するための前記装置(13)を制御するステップと、を含むことを特徴とする、請求項8及び9のいずれか一項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの被操舵車輪を有する車輪付き機械用のステアリング・システム、及び、特にそのようなステアリング・システムの動作を制御するための方法に関する。
【0002】
本発明は、特に、少なくとも2つの被操舵車輪を有する車輪付き機械用のステアリング・システムに関し、前記ステアリング・システムは、
- ラックと、
- ラックの周囲に配置されたステアリング・ケーシングと、
- ステアリング・ケーシングの内部のラックの軸方向摺動運動を推進するための少なくとも1つの部材と、
- 関節式連結部によってラックの端部に結合された一端部と機械の被操舵車輪のうちの1つに結合可能な反対側の端部とを有する2つのステアリング連結棒と、
- それぞれが関節式連結部を保護し且つそれぞれが連結棒をステアリング・ケーシングに連結する2つのベローであって、ベロー及びステアリング・ケーシングが、少なくとも外気に対して気密であるように閉鎖された容積の範囲を定める、2つのベローと、
を備える。
【背景技術】
【0003】
特に自動車用のこのようなラック・アンド・ピニオン式ステアリングは、当業者に良く知られている。上記のように、このようなステアリングは、ステアリング・ケーシング内へのガス又は液体の形態の流体のいかなる進入も回避するように、完全に密閉した方式で製造される。ステアリング・ホイールなどの、ラックとステアリングを制御するための部材との間の機械的連結部の場合、例えば、ステアリング・ホイールによる回転で駆動されるステアリング・コラムを介して、ドライバが、例えば、腐食から生じるステアリングの動作における障害又は悪化を検出することが容易である。この検出は、ラックとステアリングを制御するための部材との間の機械的連結部がないときに、もはや効果がない可能性がある。
【0004】
文献DE102012019427は、車輪が左又は右に操舵されるときの圧力曲線を測定するように構成された制御ユニットを有するステアリング・システムを記載している。これらの圧力曲線の特性は、ステアリング・システムにおけるいかなる漏れをも検出するために分析される。このようなステアリング・システムは、複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、ステアリング・ホイールなどのステアリングを制御するための部材の動きがどのようにラックに伝達されるかに関係なく、ステアリングの動作の悪化又は悪化のリスクを検出することを可能にする設計のステアリング・システムを提案することである。
【0007】
この目的を達成するために、本発明の主題は、少なくとも2つの被操舵車輪を有する車輪付き機械用のステアリング・システムであり、ステアリング・システムは、ラックと、ラックの周囲に配置されたステアリング・ケーシングと、ステアリング・ケーシングの内部のラックの軸方向摺動運動を推進するための少なくとも1つの部材と、関節式連結部によってラックの端部に結合された一端部と機械の被操舵車輪のうちの1つに結合可能な反対側の端部とを有する2つのステアリング連結棒と、それぞれが関節式連結部を保護し且つそれぞれが連結棒をステアリング・ケーシングに連結する2つのベローであって、ベロー及びステアリング・ケーシングが、少なくとも外気に対して気密であるように閉鎖された容積の範囲を定める、2つのベローと、を備えるステアリング・システムであって、ステアリング・システムは、監視装置を備え、この監視装置は、ベローとステアリング・ケーシングとによって範囲を定められた閉鎖容積の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するための少なくとも1つのセンサを備えることを特徴としている。ステアリング・システムのガス気密性の喪失を検出することによって、ステアリング・システムの腐食、ひいてはステアリング・システムの障害を防止することができる。このような検出によって、ステアリング・システムの気密性をリアル・タイムで連続的に監視することができる。
【0008】
本発明の一実施例によれば、ベローとステアリング・ケーシングとによって範囲を定められた閉鎖容積は、充填ガスと呼ばれるガスで少なくとも部分的に事前充填され、ベローとステアリング・ケーシングとによって範囲を定められた閉鎖容積の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するための前記センサ又は前記センサのうちの少なくとも1つは、閉鎖容積内部の前記充填ガスの存在又はガス濃度を決定するためのセンサである。この結果、監視がより簡単になる。
【0009】
本発明の一実施例によれば、ステアリング・システムは、ベローと充填ガスを有するステアリング・ケーシングとによって範囲を定められた容積の少なくとも部分的な事前充填のために、容積と連通する少なくとも1つの閉鎖可能なガス取入れオリフィスを備え、前記ガス取入れオリフィスは、前記容積が事前充填状態にあるときは閉鎖状態にある。したがって、ガス取入れオリフィスを介して充填ガスを噴射することが可能であり、このガスの噴射によって、既に存在するガスがガス排出オリフィスを介して放出される。
【0010】
本発明の一実施例によれば、ベローとステアリング・ケーシングとによって範囲を定められた閉鎖容積の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するための前記センサ又は前記センサのうちの少なくとも1つは、ステアリング・ケーシングに配置される。この結果、センサ又はセンサのうちの少なくとも1つの位置決めが確実になる。一変形例では、ベローとステアリング・ケーシングとによって範囲を定められた閉鎖容積の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するためのセンサ又はセンサのうちの少なくとも1つは、ベローのうちの少なくとも1つに配置される。
【0011】
本発明の一実施例によれば、ベローとステアリング・ケーシングとによって範囲を定められた閉鎖容積の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するためのセンサ又はセンサのうちの少なくとも1つは、赤外線測定センサである。
【0012】
本発明の一実施例によれば、監視装置は、可聴又は発光警告信号を発するための装置と制御ユニットとを備え、前記制御ユニットは、閉鎖容積の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するための少なくとも1つのセンサによって提供されるデータを取得するように、且つ、可聴又は発光警告信号を前記データに応じて発するための装置を制御するように構成されている。したがって、気密性の喪失は、気密性の喪失から生じるステアリング・システムのいかなる悪化をも回避するために迅速に報告され得る。
【0013】
本発明の一実施例によれば、ステアリング・ケーシングの内部のラックの軸方向摺動運動を推進するための部材は、ラックと噛み合って係合される回転部材であり、ステアリング・システムは、ステアリング・ケーシングの内部のラックの軸方向摺動運動を推進するための部材を回転駆動するための少なくとも1つの部材を備える。ラックと噛み合って係合される回転部材である、ステアリング・ケーシングの内部のラックの軸方向摺動運動を推進するための部材は、一般的に、ピニオン又は歯車などの歯車部材である。ステアリング・ケーシングの内部のラックの軸方向摺動運動を推進するための部材を回転駆動するための部材は、その部分について、ステアリング・コラムによって形成されてもよく、その動きは、ステアリング・ホイール又は、例えばステアリング・ホイールの作動に応じて制御される、モータなどの電動アクチュエータによって、それ自体が駆動される。
【0014】
本発明のさらなる主題は、少なくとも2つの被操舵車輪を有する車輪付き機械用のステアリング・システムを制御するための方法であり、前記ステアリング・システムは、ラックと、ラックの周囲に配置されたステアリング・ケーシングと、ステアリング・ケーシングの内部のラックの軸方向摺動運動を推進するための部材と、関節式連結部によってラックの端部に結合された一端部と機械の被操舵車輪のうちの1つに結合可能な反対側の端部とを有する2つのステアリング連結棒と、それぞれが関節式連結部を保護し且つそれぞれが連結棒をステアリング・ケーシングに連結する2つのベローであって、ベロー及びステアリング・ケーシングが、少なくとも外気に対して気密であるように閉鎖された容積の範囲を定める、2つのベローと、を備え、ステアリング・システムは、前述のタイプのものであり、前記方法は、ベローとステアリング・ケーシングとによって範囲を定められた閉鎖容積の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定する少なくとも1つのステップを含むことを特徴とする。
【0015】
方法の実装例の一形態によれば、ベローとステアリング・ケーシングとによって範囲を定められた閉鎖容積の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するステップの前に、方法は、少なくとも1つの充填ガスで閉鎖容積を少なくとも部分的に事前充填するステップを含み、ベローとステアリング・ケーシングとによって範囲を定められた閉鎖容積の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するステップは、閉鎖容積の内部の前記充填ガスの存在又はガス濃度を決定するステップである。
【0016】
方法の実装例の一形態によれば、監視装置は、可聴又は発光警告信号を発するための装置と制御ユニットとを備え、前記方法は、閉鎖容積の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するためのセンサによって提供されるデータを前記制御ユニットによって取得するステップと、可聴又は発光警告信号を前記データに応じて発するための装置を制御するステップと、を含む。
【0017】
本発明は、添付図面を参照しながら、例示的な実施の形態の以下の説明を読めば、明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明によるステアリング・システムの部分正面図を示す。
【
図2】本発明によるステアリング・システムの部分断面図を示す
【
図3】ステアリング・システムの要素をブロックの形態で示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述したように、本発明は、自動車などの少なくとも2つの被操舵車輪を有する車輪付き機械(図示せず)用のステアリング・システム1に関する。
【0020】
図2に示すように、このステアリング・システム1は、2つの端部を有するラック2を備える。具体的には、ラック2は、一般的に、長線状の(lоngilinear)要素の形態にあり、前記要素の2つの端部の間で長手方向に延在する。この長線状の要素には、歯部が設けられている。このラック2は、一般的に金属でできている。
【0021】
ステアリング・システム1はまた、ラック2の周囲に配置されたステアリング・ケーシング3を備える。このステアリング・ケーシング3は、その端部のそれぞれにおいて開いた管状の覆いを形成する。このステアリング・ケーシング3は、ラック2を取り囲んでおり、その結果、ラックの2つの端部は、前記ケーシング3から突出する。
【0022】
ステアリング・システム1はまた、ラック2の軸方向摺動運動を推進するための部材4を備え、前記部材は、ステアリング・ケーシング3の内部に配置される。図示されている例では、ステアリング・ケーシング3の内部のラック2の軸方向摺動運動を推進するためのこの部材4は、回転部材、特にラック2の歯部に噛み合って係合される歯付きピニオンである。
【0023】
ステアリング・ケーシング3の内部のラック2の軸方向摺動運動を推進するためのこの部材4は、この場合、ステアリング・コラム15にも係合されて示されている。このステアリング・コラム15は、ステアリング・ホイールを用いて巧みに操縦することができる回転コラムである(図示せず)。従来、ステアリング・ホイールの回転は、コラム15及び歯付きピニオンの回転、ひいてはラックの軸方向摺動運動、すなわち、ステアリング・ホイールの回転方向に応じて一方向又は反対方向にその長手方向軸に平行なラックの軸方向摺動運動を推進する。
【0024】
一変形例では、ステアリング・ケーシング3の内部のラック2の軸方向摺動運動を推進するための部材4は、モータ、シリンダ又は同様のものなどの電動アクチュエータによる回転で駆動されることができ、回転は、いわゆる電動ステアリング・ホイールから制御することができる。
【0025】
ステアリング・システム1はまた、2本の連結棒5を備える。したがって、ケーシング3から突出するラックの2つの端部は、車輪付き機械の左右の被操舵車輪(図示せず)にそれぞれ関連付けられたステアリング連結棒5に結合される。
【0026】
ラック2の一端と連結棒5との間の連結部は、関節式連結部6である。したがって、ラック2の各端部と対応する連結棒5との間の関節式連結部6は、軸方向ボール・ジョイントと呼ばれるボール・ジョイント連結部であり、ラックの端部に固定された軸方向ボール・ジョイント・ハウジングによって、及び、連結棒に固定された球状頭部を有する軸方向ボール・ジョイント・ピボットによって製造され、軸方向ボール・ジョイント・ハウジング内のいかなる方向にも回転するように取り付けられている。
【0027】
ラック2に結合された端部の反対側の連結棒5のその端部は、車輪に、特に、車輪のステアリング・ナックルに結合可能である。
【0028】
したがって、それ自体知られている方式で、ステアリング・ホイールの一方向又は他の方向への回転、ひいては、ステアリング・ピニオンの対応する回転は、対応するラックの並進に変換され、それは、連結棒及びステアリング・ナックルを介して、それ自体が車輪の向きを右折又は左折するようにさせる。
【0029】
ステアリング・システム1はまた、2つのベロー7を備え、それらは、それぞれが関節式連結部6のうちの1つを保護し、それぞれが連結棒5をステアリング・ケーシング3に連結する。
【0030】
図示されている例では、各ベローは、周囲側壁によって範囲を定められたスリーブを備える。スリーブは、好ましくは、円筒形状又は円筒円錐形状である。一般的に、射出成形又は吹込成形によって合成材料から製造されるこのスリーブは、軸方向に連続して、大基部と呼ばれる、保護されるステアリング・ケーシング3にベローを締結するための一端を形成することが可能な少なくとも1つの第1の環状端部と、同軸回転の連続によって形成されるベロー7の伸長又は短縮の方向に変形可能な部分と、小基部と呼ばれる、ステアリング連結棒5にベロー7を締結するための端部を形成することが可能な第2の環状端部と、を備える。
【0031】
ステアリング・ケーシング3に対するラック2の移動性、及び、ラック2の端部に対する連結棒5の変更可能な向きを考慮すると、各軸方向ボール・ジョイントの範囲におけるステアリングの保護は、したがって、ラック端部(ケーシングの外側の)及び軸方向ボール・ジョイントを取り囲むことによってステアリング・ケーシング3の隣接する端部を対応する連結棒5に連結するベロー7によって確実になる。
【0032】
ベロー7の大基部は、第1の取付けカラーによってステアリング・ケーシング3の端部の周囲に締結され、第1の取付けカラーは、この端部の周囲にしっかり固定されている。ベロー7の小基部は、第2の取付けカラーによって連結棒5又は軸方向ボール・ジョイント・ピボットの周囲に締結され、第2の取付けカラーは、この小基部の周囲にしっかり固定されている。
【0033】
ステアリング・ベロー7の変形可能な部分は、ステアリング・ケーシング3に対するラック2の位置に応じて、このベロー7を伸長又は短縮することができる。
【0034】
ベロー7及びステアリング・ケーシング3は、少なくとも外気に対して気密であるように閉鎖された容積8の範囲を定める。実際には、この容積8は、流体に対して、すなわち、ガスに対して及び液体に対して気密であるように閉鎖される。
【0035】
このような気密性をチェックするために、ステアリング・システム1は、監視装置9を備える。この監視装置9は、ベロー7とステアリング・ケーシング3とによって範囲を定められた閉鎖容積8の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するための少なくとも1つのセンサ10を備える。
【0036】
好ましくは、ベロー7とステアリング・ケーシング3とによって範囲を定められた閉鎖容積8は、充填ガスと呼ばれるガスで少なくとも部分的に事前充填され、ベロー7とステアリング・ケーシング3とによって範囲を定められた容積8の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するためのセンサ10又はセンサ10の少なくとも1つは、閉鎖容積8の内部の前記充填ガスの存在又はガス濃度を決定するためのセンサである。
【0037】
容積8をこのように充填ガスで少なくとも部分的に事前充填することを可能にするために、ステアリング・システム1は、容積8と連通する少なくとも1つの閉鎖可能なガス取入れオリフィス11、場合によっては閉鎖可能なガス排出オリフィス12を備え、ガス取入れオリフィス11及び存在する場合にはガス排出オリフィス12は、容積8が事前充填状態にあるときは閉鎖状態にある。
【0038】
したがって、ステアリング・システムの製造中、容積8に連通している、すなわち、容積8内へと開くガス取入れオリフィス11及びガス排出オリフィス12は、開いている。充填ガスは、ガス取入れオリフィス11を介して容積8内に噴射され、ガス排出オリフィス12を介して、容積8内に既に含まれているガスを放出する。
【0039】
この充填ガスが十分に噴射されたと考えられるとき、ガス取入れオリフィス11及びガス排出オリフィス12は、気密に閉鎖され、閉鎖容積8の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するための1つ又は複数のセンサ10は、次いで、容積8内の前記充填ガスの存在又はガス濃度に関する情報を提供することができる。
【0040】
図示されている例では、ベロー7とステアリング・ケーシング3とによって範囲を定められた閉鎖容積の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するためのセンサ10は、ステアリング・ケーシング3に配置される。
【0041】
一変形例では、ベロー7とステアリング・ケーシング3とによって範囲を定められた容積8の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するためのこのセンサ10は、ベロー7に配置され得る。
【0042】
したがって、ベロー7又は少なくとも1つのベロー7、好ましくは、各ベロー7は、例えば、前記センサ10を収容する末端部を備え得る。
【0043】
図示されている例では、センサは、赤外線測定センサである。
【0044】
検出原理は、充填ガスによる赤外線の吸収に基づく。他の測定原理が使用されてもよく、化学センサ又は半導体を組み込んだセンサが、このような測定に利用されてもよい。このようなセンサは、当業者にはよく知られているので、詳細には説明しない。
【0045】
充填ガスは、外気中に既に存在しているガスであってもよいし、いわゆる中性ガス又は希ガス、例えばアルゴン又はその他であってもよい。
【0046】
センサからのデータは、非常に様々な方法で処理することができる。センサからのこれらのデータは、例えば、ステアリング・システムのメンテナンス中に使用されて前記データが表示される遠隔端末に通信されてもよい。
【0047】
一変形例では、
図3に示されているように、監視装置9は、可聴又は発光警告信号を発するための装置13と、制御ユニット14と、を備えていてもよい。
【0048】
制御ユニット14は、閉鎖容積8の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するための1つ又は複数のセンサ10によって提供されるデータを取得するように、且つ、可聴又は発光警告信号を前記データに応じて発するための装置13を制御するように構成されている。
【0049】
実際には、測定値は、例えば、記憶された閾値と比較されてもよく、警告は、その比較結果に応じて発せられる。
【0050】
制御ユニット14は、例えば、マイクロプロセッサとワーキング・メモリとを備える電子計算システムの形態にある。特定の態様によれば、制御ユニットは、プログラム可能な制御装置の形態にあってもよい。
【0051】
言い換えれば、記載された機能及びステップは、コンピュータ・プログラムの形態で、又はハードウェア部品(例えば、プログラマブル・ゲート・アレイ)を介して、実施され得る。特に、制御ユニット又はそのモジュールによって実行される機能及びステップは、命令のセット又はプロセッサ若しくはコントローラ内で実装されたコンピュータ・モジュールによって実行され得るか、専用の電子部品によって、又はプログラム可能な論理回路(若しくはFPGA(field-programmbale gate array))タイプの、若しくは、特定用途向け集積回路(ASIC:application-specific integrated circuit)タイプの部品によって実行され得る。コンピュータ部品と電子部品とを組み合わせることも可能である。
【0052】
ユニット又は手段又は前記ユニットのモジュールが所与の動作を実行するように構成されていることが特定される場合、このことは、ユニットがコンピュータ命令と前記動作を実行することができる対応する実行手段とを備えること、及び/又は、ユニットが対応する電子部品を備えることを意味する。
【0053】
したがって、このようなステアリング・システム1を制御するための方法は、ベロー7とステアリング・ケーシング3とによって範囲を定められた閉鎖容積8の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定する少なくとも1つのステップを含む。
【0054】
このステップの前に、少なくとも1つの充填ガスで容積8を少なくとも部分的に充填するステップがあり、ベロー7とステアリング・ケーシング3とによって範囲を定められた閉鎖容積8の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するステップは、閉鎖容積8の内部の前記充填ガスの存在又はガス濃度を決定するステップである。
【0055】
充填ガスの存在又はガス濃度を決定するステップの後には、閉鎖容積8の少なくともガスに対する気密性を表すパラメータを決定するためのセンサ10によって提供されるデータを制御ユニット14によって取得するステップ、及び、可聴又は発光警告信号を前記データに応じて発するための装置13を制御するステップが続いてもよい。
【国際調査報告】