(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-14
(54)【発明の名称】ゼラチン、ゼラチンフィルム、及びカプセルを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 89/00 20060101AFI20241107BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20241107BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20241107BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241107BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20241107BHJP
A23L 33/00 20160101ALI20241107BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241107BHJP
【FI】
C08L89/00
A61K47/42
A61K47/20
A61K47/10
A61K9/48
A23L33/00
A23L5/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523251
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 EP2022079268
(87)【国際公開番号】W WO2023067092
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518247656
【氏名又は名称】テッセンデルロ グループ エヌ.ヴィー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】マンドレシ, カルロス
(72)【発明者】
【氏名】マルテンス, フェイ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4C076
4J002
【Fターム(参考)】
4B018LE02
4B018LE06
4B018MD08
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4J002AD011
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4J002GC00
(57)【要約】
本発明は、フィルム形成剤としてのゼラチンと、中性pHでの溶解速度と比較して、低pHで遅延した溶解速度を提供するのに有効な量の界面活性剤と、を含むフィルムを提供する。特に、界面活性剤の有効量は、フィルムの50%以下が、37℃、約1のpHで120分以内に溶解し、フィルムの50%超が、pH6.8、37℃で、45分のうちに溶解するような溶解速度を提供するような量である。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。好ましいフィルムは、ゼラチンと、乾燥重量基準で約8重量%以上の、C8~C24アルキル鎖を有するアニオン性界面活性剤と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンと、界面活性剤と、を含む組成物であって、pH6.8の水性媒体中での固体組成物の溶解速度が、pH1の水性媒体中での溶解速度よりも高い、組成物。
【請求項2】
前記組成物がフィルムであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記溶解速度が、前記組成物又はフィルムの80%以下が37℃及び約1のpHで60分以内に溶解するようなものであり、好ましくは、前記組成物又はフィルムの80%以下が37℃及び約1のpHで120分以内に溶解し、
より好ましくは、前記溶解速度が、
(i)前記組成物又はフィルムの50%以下が、37℃、約1のpHで120分以内に溶解し、
(ii)前記組成物又はフィルムの50%以上が、pH6.8、37℃で45分以内に溶解するようなものである、請求項1又は2に記載の組成物又はフィルム。
【請求項4】
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物又はフィルム。
【請求項5】
前記組成物又はフィルムが、C
8~C
24アルキル鎖を有するアニオン性界面活性剤の乾燥重量基準で約30重量%以上、かつ80重量%以下、及び約8重量%以上、好ましくは約10重量%以上の量のゼラチンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物又はフィルム。
【請求項6】
前記アニオン性界面活性剤が、アニオン性基及びアルキル鎖部分を含み、前記アニオン性基が、サルフェート基、スルホン基、ホスフェート基、ホスホネート基、又はカルボキシレート基であり、好ましくは、前記アニオン性基が、サルフェート基又はスルホン酸基のような強酸基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物又はフィルム。
【請求項7】
前記界面活性剤が、エーテル基又はエステル基を含み、好ましくは、前記界面活性剤が、エステル基を含む非イオン性界面活性剤であり、より好ましくは、前記界面活性剤が、モノグリセリド及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステルを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物又はフィルム。
【請求項8】
前記界面活性剤の分子量が、約250g/mol~約600g/mol、好ましくは約300g/mol~約400g/molである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物又はフィルム。
【請求項9】
前記アニオン性界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリルフマル酸カルシウム、ステアロイル-2-乳酸ナトリウム、ステアロイル-2-乳酸カルシウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(ドクサートナトリウム)、セテアリル硫酸ナトリウムからなる群から選択され、好ましくは、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、及びステアロイル-2-乳酸ナトリウムからなる群から選択され、より好ましくは、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、及びステアロイル-2-乳酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物又はフィルム。
【請求項10】
前記界面活性剤の量が、8重量%以上、好ましくは10重量%以上、かつ30重量%以下、好ましくは20重量%以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物又はフィルム。
【請求項11】
前記組成物又はフィルムが、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3~6個の炭素原子を有する糖アルコール、クエン酸トリエチル及びフタル酸ジエチルなどの有機エステル、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの可塑剤を更に含み、好ましくは、前記可塑剤が、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、又はそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、前記可塑剤が、グリセロールを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物又はフィルム。
【請求項12】
前記組成物又はフィルムが、少なくとも1つの可塑剤を含み、前記可塑剤の重量が、乾燥重量基準で約10~約40重量%、好ましくは約15重量%~約30重量%である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物又はフィルム。
【請求項13】
カプセルであって、前記カプセルが、カプセルシェルを含むハードカプセルであり、前記カプセルシェルが、請求項2~10のいずれか一項に記載のフィルムを含み、好ましくは前記フィルムからなるか、又は
前記カプセルが、カプセルシェルを含むソフトカプセルであり、前記カプセルシェルが、請求項2~12のいずれか一項に記載のフィルムを含み、好ましくは前記フィルムからなる、カプセル。
【請求項14】
請求項2~13のいずれか一項に記載のフィルムが、栄養補助食品又は医薬品有効成分を含む充填材料を封入している、請求項13に記載のカプセル。
【請求項15】
請求項2~13のいずれか一項に記載のフィルムが、前記カプセルの外層である、請求項13又は14に記載のカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼラチン及び界面活性剤を含む組成物に関し、より詳細には、フィルム形成剤としてのゼラチン及び界面活性剤を含むフィルムと、そのようなフィルムを含むカプセルとに関する。本発明はまた、フィルムを調製するための方法と、ゼラチン組成物、フィルム、及びカプセルにおける界面活性剤の使用とに関する。
【0002】
本発明の組成物、フィルム、及びカプセルは、低pHで遅い溶解速度を示し、中性pHで速い溶解速度を示す。したがって、有効成分を有する本発明のカプセルは、低pHで遅延放出プロファイルを提供し、中性pHで速い放出プロファイルを提供する。
【背景技術】
【0003】
ゼラチンは、沸騰している動物組織に由来する半透明で無味の水溶性タンパク質である。これは、医薬及び食品サプリメント用途のための賦形剤として一般的に使用され、例えば、ハード又はソフトゼラチンカプセルを作製するために使用される。
【0004】
ハードカプセルは、概して、粉末、ペレット、顆粒、又はミニ錠剤などの固体製品、例えば、不快な味であるか、又は胃腸管と直接接触すると刺激性となる固体で充填される。ハードカプセルは、互いに嵌合する2つの半分(カプセル本体及びカプセルキャップ)で構成される。
【0005】
ソフトカプセル(ソフトゲルとも呼ばれる)は、概して、液体、油、ペースト、又は懸濁液を含有する薬物製剤に有用である。ソフトカプセルの利点は、製品安定性(酸化分解の防止)、飲み込みやすさ、及び低用量薬物の良好な用量均一性(液体流及び均質性は粉末流よりも正確であるため)である。
【0006】
ゼラチンの融点は体温に近く、ゼラチンは、中性環境よりも酸性環境でより容易に溶解する。したがって、ゼラチンカプセルは、胃の中で容易に消化され、したがってそれらの内容物も胃の中で放出される。胃の酸性条件に感受性である(例えば、酵素、ペプチド、又はプロトンポンプ阻害剤)、胃粘膜を刺激する(例えば、非ステロイド性抗炎症薬、NSAID)、及び/又は局所効果を得るために腸(例えば、結腸)に送達される必要がある薬物又は栄養補助食品については、カプセルがそれらの内容物を放出する前に腸に到達することが好ましい。また、カプセルを、それらの内容物を放出する前に腸に到達させて、げっぷ及び胃酸の逆流を最小限に抑えることが好ましい場合もある。
【0007】
そのような特定の溶解プロファイルを達成するために、遅延放出カプセル、特にいわゆる「腸溶カプセル」などのいくつかの解決策が存在する。遅延放出カプセルは、投与後しばらくしてから、一般的には徐々にそれらの内容物を放出するように設計されており、これは有利であり得る。場合によっては、この期間が経過した後、放出は急速であってもよい。腸溶カプセルは、遅延放出カプセルのサブグループである。腸溶カプセルは、低pH(胃など)ではそれらの内容物をほとんど又は全く放出しないが、より高いpH(腸など)ではそれらの内容物の大部分を放出する。
【0008】
ゼラチンカプセルでそのような腸溶挙動を達成するために、そのようなカプセルは、概して、いわゆる腸溶コーティングでコーティングされる。このコーティングは、ゼラチンカプセルを低pHでの早期崩壊から保護するポリマーバリアである。コーティングは、典型的にはpH活性化され、低pHでは無傷のままであるが、腸のpHが上昇するにつれて容易に溶解する。
【0009】
より具体的には、腸溶剤形が特定の時間(通常、37℃の0.1M塩酸中で2時間)にわたって胃酸性度で溶解又は崩壊しない場合、腸溶挙動が得られる。更に、腸溶剤形は、シミュレートされた腸環境において(例えば、ある特定の期間内に約6.8のpH値の緩衝液中で)それらの内容物を放出しなければならない。詳細な評価技法は、欧州薬局方(European Pharmacopoeia)のような国内及び国際薬局方に記載されている。
【0010】
例えば、カプセル用の腸溶コーティングの例は、中国特許出願公開第103800303A号、同第104434870A号、米国特許第5330759A号、欧州特許出願公開第3090637A号及び同第2255794A号に記載されている。
【0011】
そのような保護層を提供することは、カプセルの製造プロセスにおいて余分な、どちらかといえば複雑なプロセスステップを必要とする。これは、より長い処理時間、より複雑なプロセス、及び収率損失をもたらし得る。更に、追加されたプロセスステップは、封止の問題をもたらす可能性がある。
【0012】
更に、多数のプロセスパラメータが、コーティングプロセス及びコーティングの品質に影響を与え得る。これは、コーティングの変動性と、チッピング、クラック、及び剥離などの欠陥とに起因する剥離挙動の望ましくない変動をもたらし得る。加えて、コーティングプロセス中に使用される水性溶媒は、乾燥時間及び微生物学的安定性に影響を及ぼし得るが、有機溶媒は、安全性及び環境ハザード並びに溶媒残留物問題をもたらし得る。Eudragitのようないくつかの耐酸性コーティングは、不十分なフィルム接着及び形成されたフィルムの脆性のために、ゼラチンカプセルの直接コーティングに好適でない場合がある。カプセルの不透明度は、コーティングによって影響を受ける可能性があり、あまり魅力的でないカプセルをもたらす。
【0013】
ソフトゼラチンカプセルをコーティングする場合、それらの滑らかで非吸収性の表面、可撓性、及び弾性のために、更なる困難が生じ得る。
【0014】
本発明の目的は、低pHで遅い溶解速度を示し、中性pHで速い溶解速度を呈するフィルム又はフィルムを含むカプセルを提供することである。
【0015】
本発明の更なる目的は、コーティングを必要とせずに、所望の腸溶放出プロファイルを有するカプセルを提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、低pHで比較的遅い溶解速度を呈し、一方で中性pHで速い溶解速度を示すフィルムを調製するためのより効率的な方法を提供することである。
【発明の概要】
【0017】
上記目的のうちの1つ以上は、水性媒体中の中性pHでの速い溶解速度と比較して、水性媒体中の低pHでの遅い溶解速度を提供するために、ゼラチン及び界面活性剤、特にフィルム形成剤としてのゼラチン及び界面活性剤、好ましくは有効量の界面活性剤を含むフィルムを含む、組成物、好ましくは均質組成物、より好ましくは均質固体又は液体組成物、更により好ましくは均質固体組成物を提供する本発明によって達成される。
【0018】
好ましくは、溶解速度は、
-フィルムの50%以下が、37℃、約1のpHで120分以内に、より具体的には0.1MのHCl水溶液中で溶解し、
-フィルムの50%以上が、pH6.8、37℃で45分以内に、より具体的には0.05Mのリン酸ナトリウム緩衝液中で溶解するようなものである。
【0019】
フィルムの溶解速度は、好ましくは、胃において遅延放出するカプセル、より好ましくは腸溶挙動を有するカプセル(2時間で胃において10%未満の放出であり、腸において完全な放出を提供する)を提供するようなものである。
【0020】
界面活性剤に応じて、必要量又は有用量は変化し得るが、概して、界面活性剤の量は、約3重量%以上、好ましくは約5重量%以上であり、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、10重量%以上であり得る。当業者は、低pHでの好適な遅延溶解のために必要な量を容易に評価することができる。
【0021】
概して、界面活性剤の量は、約30重量%以下、好ましくは約20重量%以下、更により好ましくは約15重量%以下である。
【0022】
重量百分率は、特に明記しない限り、本出願において、12重量%の水分を有する乾燥ゼラチンフィルム(又はカプセルシェル)に対するものとして定義される。
【0023】
予期せぬことに、有効量の界面活性剤をフィルムに組み込むと、低pHでは遅延した溶解速度をもたらすが、中性pHでは急速な溶解速度をもたらす。したがって、フィルムを含むカプセルは、所望の遅延放出挙動を示す。
【0024】
好適な界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0025】
ひとつの好ましい実施形態では、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。
【0026】
別の好ましい実施形態では、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤である。
【0027】
別の好ましい実施形態では、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。
【0028】
別の好ましい実施形態では、界面活性剤は、両性界面活性剤である。
【0029】
更に、本発明のフィルムが充填材料を封入しているカプセルが提供され、そのような充填材料は、好ましくは栄養補助食品又は医薬品有効成分を含む。
【0030】
フィルムを調製する方法であって、
(a)20重量%以上50重量%以下のゼラチンと、3重量%以上の界面活性剤と、を含むゼラチン水溶液を調製するステップと、
(b)乾燥によりフィルムを形成するステップと、を含み、
フィルムが、pH1で遅い溶解速度を呈し、中性pHで速い溶解速度を呈する、方法が更に提供される。
【0031】
本発明の方法は、腸溶挙動を提供するためのポリマーによる追加のコーティングステップを必要とせず、より効率的なプロセスをもたらす。
【0032】
特に好ましい実施形態では、本発明は、ゼラチンと、C8~C24アルキル鎖を有する約8重量%以上のアニオン性界面活性剤と、を含むフィルムを提供する。
【0033】
低pHでは遅い溶解速度を達成するが、中性pHでは速い溶解速度を有するための、ゼラチンフィルム中の界面活性剤、好ましくは約8重量%以上の量の、C8~C24アルキル鎖を有するアニオン性界面活性剤の使用が更に提供される。
【0034】
欧州特許出願公開第EP1210936A号は、1重量%以下の界面活性剤を使用しながら、静電気の発生を低減し、カプセルフィルム表面の潤滑性を向上させたゼラチンカプセルの調製のためのプロセスを開示している。このカプセルは、酸性環境において腸溶又は遅延溶解プロファイルを示すことは開示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のフィルムは、フィルム形成剤としてのゼラチンと、中性pHでの速い溶解速度と比較して、低pHでゼラチンフィルムの遅延した溶解速度を提供するのに有効な量の界面活性剤と、を含む。
【0036】
ゼラチン
好ましくは、フィルムは、乾燥重量基準で約30重量%以上かつ約87重量%以下、好ましくは約35重量%以上かつ約80重量%以下の量でゼラチンを含む。
【0037】
量は、特に明記しない限り、12重量%の水分含有量を有するフィルムに対する重量で与えられる。
【0038】
ゼラチンは、タイプBゼラチン(アルカリ処理された)又はタイプAゼラチン(酸処理された)を含むことができる。
【0039】
ゼラチンは、ブタ、肉牛、家禽、ヤギ、ロバなどの様々な動物の骨及び/若しくは皮/外皮及び/若しくは軟骨、又は魚の鱗及び/若しくは皮などの任意の好適な原材料に由来し得る。好ましくは、ゼラチンは、ブタ及び/又は肉牛の骨及び/又は外皮に由来する。
【0040】
好ましい実施形態では、ゼラチンは、好ましくは「高ブルーム」タイプであり、より好ましくは約200~約280gブルームのブルーム強度を有する。好ましくは、粘度は、約4~約5mPa sである。
【0041】
ブルーム強度は、一般的に知られており、GMEモノグラフ(バージョン15、2020年10月)に記載されているブルーム試験に従って測定される。粘度はまた、このGMEモノグラフに従って決定される。ゼラチンの6.67%溶液について、標準ピペットを通る100mlの流動時間を60℃で測定し、動的粘度を計算する。
【0042】
本明細書で与えられる重量%値は、乾量基準を指す場合、12重量%の水分で測定される。
【0043】
高ブルームタイプは、好ましくはハードカプセルにおいて使用される。ハードカプセル用のゼラチンタイプは、多くの場合Bタイプであるが、Aタイプのハードカプセルも存在する。
【0044】
別の好ましい実施形態において、ゼラチンは、好ましくは「中ブルーム」タイプであり、より好ましくは約120~約220gブルームである。好ましくは、粘度は、約2~約4mPa sである。
【0045】
中ブルームタイプは、好ましくはソフトゲルカプセルにおいて使用される。ソフトカプセルは、Aタイプゼラチンであることが多いが、Bタイプゼラチンのソフトカプセルも一般的である。
【0046】
界面活性剤
ひとつの好ましい実施形態では、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。好適なアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS、sodium dodecyl sulfate)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリルフマル酸カルシウム、ステアロイル-2-乳酸ナトリウム、ステアロイル-2-乳酸カルシウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(ドクサートナトリウム)、セテアリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0047】
更に好ましい実施形態では、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤である。好適なカチオン性界面活性剤としては、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウムなどの四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0048】
更に好ましい実施形態では、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。好適な非イオン性界面活性剤としては、マクロゴールセトステアリルエーテル、マクロゴールラウリルエーテル、マクロゴールオレイルエーテル、マクロゴールステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル(マクロゴール);ソルビタンモノステアレート(E491)、ソルビタントリステアレート(E492)、ソルビタンモノラウレート(E493)、ソルビタンモノオレエート(E494)、ソルビタンモノパルミテート(E495)、ソルビタントリオレエート(E496)などのソルビタンエステル;ポリソルベート20(E432)、ポリソルベート40(E434)、ポリソルベート60(E435)、ポリソルベート65(E436)、ポリソルベート80(E433)、ポリオキシル8ステアレート(E430)、ポリオキシル40ステアレート(E431)などのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート);スクロースエステル、例えばヒマシ油(E498)の重縮合脂肪酸の部分ポリグリセロールエステルなどのポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;脂肪酸のスクロースエステル(E473);グルコースエステル及びその誘導体、グリセリルモノオレエートなどのグリセロールエステル;エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化脂肪アミン、エトキシ化脂肪酸、エトキシ化脂肪エステル及び油、脂肪酸、モノグリセリド及び誘導体、プロポキシ化及びエトキシ化脂肪酸、エチレンオキシド(ethylene oxide、EO)及びプロピレンオキシド(propyleneoxide、PO)のブロックコポリマー、シリコーン系界面活性剤、並びに有機ケイ素界面活性剤と非イオン性又はイオン性界面活性剤との混合物などのエトキシ化アルコール;多糖類、アクリルアミド及びアクリル酸のコポリマー;並びにアセチレンジオール誘導体又はトリスチリルフェノール、エトキシ化ソルビタンエステルが挙げられる。
【0049】
更なる好適な非イオン性界面活性剤としては、モノ及びジグリセリドのエステル(E472)、例えば、モノ及びジグリセリドの酢酸エステル(E472a)、モノ及びジグリセリドの乳酸エステル(E472b)、モノ及びジグリセリドのクエン酸エステル(E472c)(CITREMとしても知られ、市販されている)、モノ及びジグリセリドの酒石酸エステル(E472d)、モノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(E472e)(DATEMとしても知られ、市販されている)、並びにモノ及びジグリセリドの混合エステル(酢酸及び酒石酸エステル)(E472f)が挙げられる。このタイプの好ましい非イオン性界面活性剤としては、モノ及びジグリセリドのクエン酸エステル(E472c)、並びにモノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(E472e)が挙げられる。フィルム中の非イオン性界面活性剤の量は、好ましくは乾燥重量基準で3重量%以上、好ましくは5重量%以上である。フィルム中の非イオン性界面活性剤の量は、乾燥重量基準で好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
【0050】
更に好ましい実施形態では、界面活性剤は、両性界面活性剤である。好適な両性界面活性剤としては、レシチン(E322)及びレシチン誘導体;並びにイミダゾリン及びイミダゾリン誘導体;オレイン酸トリエタノールアミン;コカミドプロピルベタインなどのベタインが挙げられる。
【0051】
本発明の特に好ましいフィルムは、ゼラチンと、約8重量%以上、好ましくは10重量%以上の量の、C8~C24アルキル鎖を有する少なくとも1種のアニオン性界面活性剤と、を含む。好ましくは、フィルム中のC8~C24アルキル鎖を有するアニオン性界面活性剤の量は、40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0052】
特に好ましいアニオン性界面活性剤は、C8~C24のアルキル鎖(長鎖アルキル基)及びアニオン性基を有する(以下、長鎖アニオン性界面活性剤とも略記される)。
【0053】
好ましくは、この長鎖アニオン性界面活性剤のアニオン性基は、サルフェート基、スルホン酸基、ホスフェート基、ホスホネート基、又はカルボキシレート基である。より好ましくは、アニオン性基は、サルフェート基又はスルホン酸基のような強酸基である。
【0054】
長鎖アルキル基は、直鎖であることも分枝鎖であることもできる。
【0055】
好ましくは、長鎖アニオン性界面活性剤は、エーテル基又はエステル基を含む。
【0056】
長鎖アニオン性界面活性剤の分子量は、好ましくは約250g/mol~約600g/mol、より好ましくは約300g/mol~約400g/molである。
【0057】
好ましくは、長鎖アニオン性界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリルフマル酸カルシウム、ステアロイル-2-乳酸ナトリウム、ステアロイル-2-乳酸カルシウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(ドクサートナトリウム)、セテアリル硫酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0058】
より好ましくは、長鎖アニオン性界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)及びラウリルエーテル硫酸ナトリウムからなる群から選択され、更により好ましくはラウリル硫酸ナトリウム(SLS)である。
【0059】
ラウリル硫酸ナトリウムは、化粧品及び非経口でない医薬製剤、すなわち経口及び局所適用において広く使用されている。これは、GRASに列挙され、FDA Inactive Ingredients Guide(歯科調製物;経口カプセル剤、懸濁剤、及び錠剤;局所及び膣調製物)に含まれている。英国で認可された非経口でない医薬品、及びCanadian List of Acceptable Non-Medicinal Ingredientsに含まれている。
【0060】
ラウリル硫酸ナトリウムと同様に、セチル硫酸ナトリウム及びステアリル硫酸ナトリウムは、脂肪酸硫酸塩である。セテアリル硫酸ナトリウムは、セチル硫酸ナトリウムとステアリル硫酸ナトリウムとの混合物である。それらは、既知の医薬品賦形剤である。
【0061】
ラウレス硫酸ナトリウムとしても知られるラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)は、脂肪酸鎖中にエトキシル基を含む脂肪酸硫酸塩である。これは、以下の式を有する。
【0062】
【0063】
ラウリルエーテル硫酸アンモニウムは、ナトリウムの代わりにカチオンとしてアンモニウムを有する。ラウリルエーテル硫酸ナトリウム及びラウリルエーテル硫酸アンモニウムの両方が、既知の医薬品賦形剤である。
【0064】
脂肪酸のナトリウム、カリウム、及びカルシウム塩は、E番号E470aの下でEUにおいて食品添加物として承認されており、脂肪酸のマグネシウム塩は、E番号E470bで承認されている。これらには、ステアリン酸、ラウリン酸などの塩が含まれる。
【0065】
ドクサートナトリウムとしても知られ、E番号E480を有するスルホコハク酸ジオクチルナトリウムは、既知の医薬品賦形剤である。ドクサートナトリウムは、以下の式を有する。
【0066】
【0067】
ステアロイル-2-乳酸ナトリウム及びステアロイル-2-乳酸カルシウムは、それぞれE番号E481及びE482の下でEUにおいて食品添加物として承認されており、以下の式を有する。
【0068】
【0069】
ステアリルフマル酸ナトリウム及びステアリルフマル酸カルシウムは、それぞれE番号E485及びE486の下で知られており、以下の式を有する。
【0070】
【0071】
可塑剤及び他の成分
好ましくは、ソフトゲルが目的とされる場合、フィルムは可塑剤を含む。可塑剤を使用して、フィルムの物理的特性を改変し、ソフトカプセルゼラチンフィルムを弾性及び柔軟性にすることができる。
【0072】
好ましくは、ソフトゲルフィルムは、約10重量%~約40重量%、より好ましくは約15重量%~約30重量%の量の可塑剤を含む。
【0073】
好ましくは、可塑剤は、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3~6個の炭素原子を有する糖アルコール(ソルビトール及びマンニトールなど)、クエン酸トリエチル及びフタル酸ジエチルなどの有機エステル、並びにそれらの組合せからなる群から選択される。より好ましくは、当該可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。更により好ましくは、当該可塑剤は、グリセロールを含む。
【0074】
更に好ましい実施形態では、フィルムは、酸、好ましくは弱酸、例えばクエン酸、乳酸、グリコール酸、又は塩酸を更に含む。より好ましくは、フィルムは、クエン酸又は乳酸を含む。
【0075】
フィルムは、アゾ染料若しくは非アゾ染料などの合成染料、又は天然染料のような着色剤を更に含んでもよい。フィルムは、TiO2などの乳白剤を更に含んでもよい。これにより、感光性充填材料の光分解を防止する不透明シェルを製造することが可能になる。
【0076】
フィルム及びカプセル
フィルム及びフィルムを含むカプセルは、低pHで遅延した(比較的遅い)溶解速度を示し、中性pHで速い溶解速度を示す。それによって、活性化合物を含むカプセルは、低pHで遅延放出を示すが、中性pHで急速に溶解し、それによって、そのような中性pHで活性化合物の完全放出を提供する。
【0077】
好ましくは、フィルムの50%以下、より好ましくは40%以下、更により好ましくは30%以下、なお更により好ましくは20%以下が、37℃及び約1のpHで120分以内に溶解する。例えば、0.1M塩酸溶液を使用して、この試験を行うことができる。
【0078】
好ましくは、フィルムの50%以上、より好ましくは70%以上、更により好ましくは80%以上、なお更により好ましくは90%以上が、37℃及び約6.8のpHで45分以内に溶解する。緩衝液、例えばpH6.8の0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液を使用して、この試験を行うことができる。
【0079】
単純な遅延放出製剤では、溶解が、37℃、約1のpHで最初の60分間に80%以下であっても、依然として商業的に興味深い。したがって、好ましくは、フィルムの80%未満、より好ましくは70%以下、更により好ましくは60%以下が、37℃及び約1のpHで60分以内に溶解する。好ましくは、フィルムの80%未満、より好ましくは70%以下、更により好ましくは60%以下が、37℃及び約1のpHで120分以内に溶解する。好ましくは、フィルムの80%以上、より好ましくは90%以上が、37℃及び約6.8のpHで45分以内に溶解する。
【0080】
フィルム厚さは、溶解速度に著しい影響を及ぼさないようであった。したがって、溶解試験は、例えばハードカプセル剤又はソフトカプセル剤に通常好適なフィルムを用いて行うことができる。
【0081】
好ましくは、必要又は有用である場合、ソフトカプセルとして好適なフィルムについての溶解試験は、1mmフィルムで行われるが、好ましくは、ハードカプセルに好適なフィルムについての試験は、0.1mmフィルムで行われる。
【0082】
より好ましくは、フィルムを含むカプセルは、米国薬局方(UnitedStates Pharmacopeia、USP)に従って定義される腸溶挙動を示す。USPは、1時間の期間の酸段階を必要とし、培地は、0.084MのHCl、0.034MのNaCl及び0.32%w/vのペプシンを含む。この段階の間、有効成分の10%未満が溶液中に存在し得る。更に、pH6.8の緩衝液段階を必要とし、培地は、0.05Mのリン酸緩衝液、0.05MのK+、0.022MのNa+、胃酵素を含み、0.094Mのイオン強度を有する。45分後、85%を超える有効成分が溶液中に存在するはずである。
【0083】
より好ましくは、フィルムを含むカプセルは、European Pharmacopoeia(Ph.Eur.)に従って定義される腸溶挙動を示す。Ph.Eur.は、0.1MのHCl媒体による2時間の酸段階を必要とし、その間、有効成分は溶液中に存在すべきではない。pH6.8緩衝液段階は、0.463Mのイオン強度を有する0.154Mの緩衝液を含む。対イオンは、Na+である。45分後、有効成分の85%超が溶液中に存在するはずである。
【0084】
更により好ましくは、フィルムを含むカプセルは、European Pharmacopoeiaにおいて定義される崩壊試験に合格する。これは、酸段階の間、カプセル中に欠陥が観察されてはならないことを意味する。フィルムは、第2段階の間に崩壊するはずである。
【0085】
ひとつの好ましい実施形態では、フィルムは、カプセルキャップ及びカプセル本体を含むハードカプセルシェルを形成する。ハードカプセルは、固体製品を投与するために好ましい。ハードカプセルシェルは、好ましくはタイプBゼラチン(アルカリ処理された)を含むが、タイプAゼラチン(酸処理された)を含んでもよい。したがって、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、カプセルキャップ及びカプセル本体を含む、ハードカプセルシェルである。
【0086】
好ましくは、ハードカプセルシェルは、「高ブルーム」タイプのゼラチン、より好ましくは約200~約280gブルームのブルーム強度を有するゼラチンを含む。ゼラチンは、好ましくは約4~約5mPa sの粘度を有する。
【0087】
好ましくは、フィルムは、ソフトカプセルシェルを形成する。ソフトゼラチンカプセルは、概してタイプBゼラチン(アルカリ処理された)を含有するが、タイプAゼラチン(酸処理された)を含んでもよい。ゼラチンは、好ましくは「中ブルーム」タイプであり、より好ましくは約120~約220gブルームのブルーム強度を有する。ゼラチンは、好ましくは約2~約4mPa sの粘度を有する。したがって、好ましい実施形態では、本発明の組成物は、ソフトカプセルシェルである。
【0088】
フィルムの厚さは0.02~2mmであってもよく、好ましくは0.05~1.5mmの厚さを有する。
【0089】
概して、ハードカプセルは、0.05~0.15mmのゼラチンフィルムを含み、ソフトカプセルは、0.5~1.2mmのフィルム厚さを有する。他の目的のためのフィルムは、概して、この範囲の厚さを有する。そのような厚さは、本発明によるフィルムにとって特に好ましい。
【0090】
本発明は更に、本発明のフィルムが充填材料、概して有効成分を封入するカプセルを提供する。充填材料は、好ましくは栄養補助食品又は医薬品有効成分のような有効成分を含む。
【0091】
ひとつの好ましい実施形態では、カプセルは、ハードカプセルである。ハードカプセルは、液体成分又は固体成分を含んでもよく、好ましくは、粉末、ペレット、顆粒、又はミニ錠剤などの固体成分を含む。
【0092】
別の好ましい実施形態では、カプセルは、ソフトカプセルである。ソフトカプセルは、好ましくは、液体、油、ペースト、エマルジョン又は懸濁液を含む。
【0093】
プロセス
本発明は、フィルムを調製する方法を提供する。この方法は、(a)20重量%以上、かつ50重量%以下のゼラチンと、低pHで遅い溶解速度を達成するが、中性pHで速い溶解速度を有するのに有効な量の界面活性剤と、を含むゼラチン水溶液を調製するステップと、(b)フィルムを形成するステップと、を含む。
【0094】
特に好ましい実施形態では、溶液は、6重量%以上のC8~C24アルキル鎖を有するアニオン性界面活性剤を含む。
【0095】
ゼラチン水溶液は、ゼラチン及びアニオン性界面活性剤を水に溶解させることによって調製される。
【0096】
好ましくは、水は、脱イオン水である。
【0097】
好ましくは、ゼラチン水溶液は、約3~約6のpHを有する。
【0098】
ソフトゼラチンカプセルを調製する場合、可塑剤を、好ましくは溶液の約10~約25重量%の量で添加する。
【0099】
一実施形態では、酸が添加される。酸が使用される場合、酸は、クエン酸又は乳酸であり、より好ましくは乳酸である。酸は、とりわけ、ゼラチン水溶液を所望のpHに到達させることができる。
【0100】
好ましくは、ゼラチン及びアニオン性界面活性剤の溶解は、一定の撹拌下で行われる。
【0101】
好ましくは、ゼラチン及びアニオン性界面活性剤の溶解は、約50℃~約75℃の温度で行われる。
【0102】
好ましくは、溶解及び加熱は、ゼラチンが溶解するまで行われる。より好ましくは、溶解及び加熱は、約10分~約30分間行われる。
【0103】
好ましくは、溶液は、濾過される。これにより、フィルムに欠陥を生じさせ得る固体汚染物質が除去される。より好ましくは、溶液は、6~20メッシュ(3.3mm~0.8mmスクリーン)のメッシュを通して濾過される。
【0104】
好ましくは、溶液は、減圧下で脱気される。脱気は、フィルムに欠陥をもたらし得る気泡の発生を低減する。
【0105】
好ましくは、ステップ(b)は、(i)フィルムをカプセルキャップ及び/又はカプセル本体に形成することと、(ii)当該カプセルキャップ及び/又はカプセル本体を乾燥させて、本発明のカプセル本体又はカプセルキャップを得ることと、を含む。
【0106】
カプセルキャップ及び/又はカプセル本体の形成は、当技術分野で既知の任意の方法に従って行うことができる。概して、これは、金属棒上に列をなして配置された標準化鋼ピンの対(本体及びキャップ)をゼラチン水溶液中に浸漬することによって行われる。ピンの表面にゼラチン溶液を吸着させた後、ピンを含む棒を取り出し、数回回転させて、ピンの周りに溶液を均一に分布させ、カプセルキャップ及び/又はカプセル本体を形成する。次いで、当該カプセルキャップ及びカプセル本体をいくつかの乾燥段階に通して、所望の含水量を達成し、本発明のカプセル本体又はカプセルキャップを得ることができる。
【0107】
本発明のひとつの好ましい実施形態では、ステップ(b)の方法は、
(i)フィルムをカプセルキャップ及び/又はカプセル本体に成形することと、
(ii)当該カプセルキャップ及び/又はカプセル本体を乾燥させることと、を含む。
【0108】
本発明の別の好ましい実施形態では、ステップ(b)の方法は、
(i)栄養補助食品又は医薬品有効成分を含む充填材料をフィルム内に封入してソフトカプセルを形成することと、
(ii)当該ソフトカプセルを乾燥させることと、を含む。
【0109】
カプセル化プロセスは、プレートプロセス、回転ダイプロセス、往復ダイプロセス、アコゲルプロセス、シームレスプロセスなどの当該技術分野で既知の方法を使用して行うことができる。
【0110】
本発明は更に、中性pHでの速い溶解速度と比較して、低pHで遅い溶解速度を提供するための、ゼラチンベースのフィルムにおける有効量の界面活性剤の使用に関する。
【0111】
好ましくは、界面活性剤の量は、1mmフィルムの50%以下が37℃で約1のpHで120分以内に溶解するが、pH6.8での溶解速度が45分以下で50%を超えるような溶解速度を提供するような量である。
【0112】
本発明は更に、遅延放出挙動及び好ましくは腸溶挙動を有するカプセルを提供するための、ゼラチンベースのフィルムにおける有効量の界面活性剤の使用に関する。
【実施例】
【0113】
溶解試験のために、以下の量を使用した。
【0114】
【0115】
実施例1~2、比較例A~B
ゼラチンフィルム調製
実施例で使用されるゼラチンは、酸処理した骨ゼラチンである。これは、180gブルームのブルーム強度、及び2.5mPa sの粘度を有する。測定は、2020年10月のGMEバージョン番号15に従って行った。
【0116】
ゼラチン、グリセロール及びラウリル硫酸ナトリウムを表1に従って脱イオン水に溶解させ、超音波浴中で2時間、70℃に加熱した。
【0117】
グリセロールを86%水溶液として使用する。乾量基準の量は、100%グリセロールに基づいて計算される。
【0118】
乾量基準の量は、乾燥フィルムについてのものである。
【0119】
【0120】
得られた混合物を室温(22℃)に冷却し、フィルムに成形し、放置して固化させた。ゼラチンフィルムを、12%の水分に達するまで乾燥させた。調製されたフィルムの厚さ寸法を以下に提示する。
【0121】
【0122】
溶解試験
得られたゼラチンフィルムを、それらの遅延溶解特性について評価した。溶解試験は、溶解したゼラチンフィルムの量を時間の関数としてモニターすることによって行った。ゼラチンフィルムをシンカーに挿入し、撹拌棒及び750mlの0.1M HCl溶液(pH1)を含むビーカーに120分間入れた。その後、250mlの0.2M Na3PO4溶液を添加し、pHを6.8に調整した。ビーカーを更に45分間撹拌した。溶液中のゼラチンの量を、経時的に218nmで分光光度的に測定した。
【0123】
結果を表3に示す。
【0124】
【0125】
実施例のゼラチンフィルム1及び2は、酸性媒体中で120分後にほとんど無傷であることが分かった。緩衝媒体への曝露後、試料1及び2の溶解は急速かつ完全であった。したがって、試料1及び2は、カプセルフィルムとして使用される場合、所望の遅延放出を示す。
【0126】
実施例3
6重量%のSDS(乾燥フィルム中9重量%)を用いた実験は、酸中で30分で50%の溶解、及び60分で65%の溶解という明らかな遅延溶解を示した。
【0127】
実施例4~6、比較例A
表4によるゼラチンフィルムを同じ方法を使用して調製し、実施例1と同じ方法を使用して評価した。
【0128】
【0129】
調製されたフィルムの厚さ寸法を以下の表5に提示する。
【0130】
【0131】
遅延溶解特性について調べた結果を表6に示す。
【0132】
【0133】
実施例のゼラチンフィルム5及び6は、酸性媒体中で120分後にほとんど無傷であることが分かった。緩衝媒体への曝露後、試料5及び6の溶解は急速かつ完全であり、したがって遅延放出カプセルの要件を満たしていた。ゼラチンフィルムAは容易に溶解し、したがって遅延放出特性を呈しない。ゼラチンフィルム4は、完全な腸溶挙動には十分ではないかもしれないが、遅延溶解を示し、そのようなフィルムは、胃腸において遅延した徐放を示すカプセルに使用することができた。
【0134】
実施例7~9、比較例C
4.6mPa sの粘度を有するゼラチンブルーム243を使用して、表7に従って実施例1のプロセスに従ってハードカプセルフィルムを調製した。
【0135】
【0136】
フィルムを約0.1mmの厚さで調製した。遅延溶解特性について調べた結果を表8に示す。
【0137】
【0138】
実施例のゼラチンフィルム9は、酸性媒体中で120分後にほとんど無傷であることが分かった。緩衝媒体への曝露後、試料9の溶解は急速かつ完全であり、したがって遅延放出カプセルとしての使用のための要件を満たしていた。ゼラチンフィルムCは容易に溶解し、したがって遅延放出特性を呈しない。ゼラチンフィルム7は、わずかに遅延した溶解を示し、当該フィルムを含むカプセルは、わずかに遅延した放出を呈し得る。ゼラチンフィルム8は、カプセルの完全な腸溶挙動には十分ではないかもしれないが、明らかな遅延放出を示す。フィルム7及び8は、胃腸における遅延された段階的放出のために使用され得る。
【0139】
これらの実験は、相当量の界面活性剤の存在がハードカプセルフィルムにおいても有効であり、フィルムの遅延溶解を提供することを示している。
【0140】
実施例10~13:ドクサートナトリウム(DSS)
ソフトカプセルフィルムを、2.6mPa sの粘度を有するゼラチンブルーム175を使用して、表9に従って実施例1のプロセスに従って調製した。界面活性剤として、ドクサートナトリウムを使用した。
【0141】
【0142】
フィルムを約1mmの厚さで調製した。遅延溶解特性について調べた結果を表10に示す。
【0143】
【0144】
全てのゼラチンフィルムは、酸相では遅延放出挙動を示したが、ホスフェート相では速やかに溶解した。製剤は、遅延放出製剤に好適である。
【0145】
実施例14及び15:ステアリン酸ナトリウム(SS)
ソフトカプセルフィルムを、2.6mPa sの粘度を有するゼラチンブルーム175を使用して、表11に従って実施例1のプロセスに従って調製した。ステアリン酸ナトリウムを、界面活性剤として使用した。
【0146】
【0147】
遅延溶解特性について調べた結果を表12に示す。
【0148】
【0149】
ゼラチンフィルムは、酸相では遅延放出挙動を示したが、ホスフェート相では速やかに溶解した。製剤は、遅延放出製剤に好適である。
【0150】
実施例16~17:ステアロイル乳酸ナトリウム(Sodiumstearoyl lactylate、SSL)
ソフトカプセルフィルムを、3.6mPa sの粘度を有するブルーム150を有するタイプBゼラチンを使用して、表13に従って実施例1のプロセスに従って調製した。ステアロイル乳酸ナトリウムを、界面活性剤として使用した。実施例16において、DI水の代わりに、エタノール:水混合物を使用した。
【0151】
【0152】
遅延溶解特性について調べた結果を表14に示す。
【0153】
【0154】
ゼラチンフィルムは、酸相では遅延放出挙動を示したが、ホスフェート相では速やかに溶解した。製剤は、遅延放出製剤に好適である。実施例17は、120分マークで高い溶解を有していたが、60分マークでの62%は、溶解が遅延したことを示す。
【0155】
実施例18~22:モノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(Di-acetyltartaric acid esters of mono-and diglycerides、DATEM)
ソフトカプセルフィルムを、表15に従って実施例1のプロセスに従って調製した。実施例19及び21については、3.6mPa sの粘度を有するブルーム150を有するタイプBゼラチンを使用した。実施例18、20及び22については、2.6mPa sの粘度を有するブルーム175を有するタイプAゼラチンを使用した。モノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM)混合物を、界面活性剤として使用した。DATEMは、DynaTarから商業的に入手した。
【0156】
【0157】
遅延溶解特性について調べた結果を表16に示す。
【0158】
【0159】
ゼラチンフィルムは、酸相では遅延放出挙動を示したが、ホスフェート相では速やかに溶解した。製剤は、遅延放出製剤に好適である。実施例18~20は、120分マークで高い溶解を有したが、60分マークで60%以下の溶解は、溶解が遅延したことを示す。
【国際調査報告】