(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-14
(54)【発明の名称】修飾された5’UTR
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531196
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 US2022051229
(87)【国際公開番号】W WO2023101952
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521126302
【氏名又は名称】ナットクラッカー セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ドイッチュ、サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】フリーマンソン、ダニエル オマール
(72)【発明者】
【氏名】ハーベス、オーレ
(57)【要約】
本明細書の開示は、修飾された5’UTR及び修飾された5’UTRを使用して標的mRNAの翻訳を増加させる方法の実施例を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号14、配列番号15、配列番号22、又は配列番号23を含む、修飾された5’UTR。
【請求項2】
hist1h1c又はrpl15の5’UTRを含むポリヌクレオチド配列であって、前記5’UTRが、前記5’UTRにおける二次構造の形成を低減する1つ以上の点変異を含む、ポリヌクレオチド配列。
【請求項3】
前記5’UTRがhist1h1cの5’UTRであり、前記hist1h1cの5’UTRは開始コドンを欠き、かつ前記hist1h1cの5’UTRの3’末端にコザックコンセンサス配列を含む、請求項2に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項4】
前記hist1h1cの5’UTRが、前記hist1h1cの5’UTRの5’末端から6位、8位、26位、28位、及び36位に置換変異を含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項5】
前記hist1h1cの5’UTRが、前記hist1h1cの5’UTRの前記5’末端から4位、5位、25位、27位、32位、33位、34位、41位、及び42位に置換変異を更に含む、請求項4に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項6】
前記hist1h1cの5’UTRが、前記hist1h1cの5’UTRの前記5’末端から13位に置換変異を更に含む、請求項4に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項7】
前記hist1h1cの5’UTRの前記5’末端に挿入変異を更に含む、請求項6に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項8】
前記挿入変異が前記hist1h1cの5’UTRの前記5’末端から1位のすぐ上流にある、請求項7に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項9】
前記挿入変異が、単一ヌクレオチドの挿入である、請求項8に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項10】
前記5’UTRが、前記rpl15の5’UTRであり、前記rpl15の5’UTRは開始コドンを欠き、前記hist1h1cの5’UTRの前記3’末端にコザックコンセンサス配列を含む、請求項2に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項11】
前記rpl15の5’UTRが、前記rpl15の5’UTRの5’末端から11位、13位、14位、15位、24位、及び26位に置換変異を含む、請求項10に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項12】
前記rpl15の5’UTRが、前記rpl15の5’UTRの前記5’末端から25位及び27位に置換変異を更に含む、請求項11に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項13】
前記rpl15の5’UTRが、前記rpl15の5’UTRの前記5’末端から12位、16位、及び23位に置換変異を更に含む、請求項11に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項14】
前記rpl15の5’UTRの前記5’末端に挿入変異を更に含む、請求項12に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項15】
前記挿入変異が、前記rpl15の5’UTRの前記5’末端から1位のすぐ上流にある、請求項14に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項16】
前記挿入変異が単一ヌクレオチドの挿入である、請求項15に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項17】
前記hist1h1c又は前記rpl15の5’UTRの下流に位置するコード領域を更に含む、請求項2~16のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項18】
前記5’UTRが、配列番号14、配列番号15、配列番号22、又は配列番号23を含む、請求項2~17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項19】
標的mRNAの翻訳を増加させる方法であって、前記方法が配列番号14、配列番号15、配列番号22、又は配列番号23を含む修飾された5’UTRを用いて翻訳を促進することを含み、前記修飾された5’UTRがポリヌクレオチド配列において前記標的mRNAの上流にある、方法。
【請求項20】
標的mRNAの翻訳を増加させる方法であって、前記方法がhist1h1c又はrpl15の修飾された5’UTRを用いて翻訳を促進することを含み、前記5’UTRが、前記5’UTRにおける二次構造の形成を低減させる1つ以上の点変異を含み、前記修飾された5’UTRが、ヌクレオチド配列において前記標的mRNAの上流にある、方法。
【請求項21】
前記5’UTRが前記hist1h1cの5’UTRであり、前記hist1h1cの5’UTRが開始コドンを欠き、かつ前記hist1h1cの5’UTRの3’末端にコザックコンセンサス配列を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記hist1h1cの5’UTRが、前記hist1h1cの5’UTRの5’末端から6位、8位、26位、28位及び36位に置換変異を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記hist1h1cの5’UTRが、前記hist1h1cの5’UTRの前記5’末端から4位、5位、25位、27位、32位、33位、34位、41位、及び42位に置換変異を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記hist1h1cの5’UTRが、前記hist1h1cの5’UTRの前記5’末端から13位に置換変異を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記hist1h1cの5’UTRの前記5’末端に挿入変異を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記挿入変異が、前記hist1h1cの5’UTRの前記5’末端から1位のすぐ上流にある、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記挿入変異が単一ヌクレオチドの挿入である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記5’UTRが前記rpl15の5’UTRであり、前記rpl15の5’UTRが開始コドンを欠き、前記hist1h1cの5’UTRの前記3’末端にコザックコンセンサス配列を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記rpl15の5’UTRが、前記rpl15の5’UTRの5’末端から11位、13位、14位、15位、24位、及び26位に置換変異を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記rpl15の5’UTRが、前記rpl15の5’UTRの前記5’末端から25位及び27位に置換変異を更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記rpl15の5’UTRが、前記rpl15の5’UTRの前記5’末端から12位、16位、及び23位に置換変異を更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記rpl15の5’UTRの前記5’末端に挿入変異を更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記挿入変異が、前記rpl15の5’UTRの前記5’末端から1位のすぐ上流にある、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記挿入変異が単一ヌクレオチドの挿入である、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、2021年11月30日に出願された米国仮特許出願第63/284,261号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本開示に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
mRNAからタンパク質を効率的に翻訳するために、mRNA分子は、5’キャップ、5’非翻訳領域(untranslated region、UTR)、オープンリーディングフレーム、3’非翻訳領域、及びポリアデニル化テールを含む、いくつかの配列又は構造成分を含む。5’及び3’UTRは、タンパク質翻訳のための独特の調節因子であり、具体的には、5’UTRは翻訳速度を調整するが、3’UTRは転写物分解速度に影響を及ぼす。翻訳速度の調節因子として、5’UTRのデノボ発見及び設計は、mRNA治療薬の製造可能性及び投薬のための重要な考慮事項である。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本開示は、配列番号14、配列番号15、配列番号22、又は配列番号23を含む修飾された5’UTRを提供する。
【0004】
別の態様では、本開示は、hist1h1c又はrpl15の5’UTRを含むポリヌクレオチド配列であって、5’UTRが、5’UTRにおける二次構造の形成を低減する1つ以上の点変異を含む、ポリヌクレオチド配列を提供する。
【0005】
ポリヌクレオチド配列のいくつかの態様では、5’UTRは、hist1h1cの5’UTRであり、hist1h1cの5’UTRは、開始コドンを欠き、hist1h1cの5’UTRの3’末端にコザックコンセンサス配列を含む。
【0006】
ポリヌクレオチド配列のいくつかの態様では、hist1h1cの5’UTRは、hist1h1cの5’UTRの5’末端から6位、8位、26位、28位、及び36位に置換変異を含む。
【0007】
ポリヌクレオチド配列のいくつかの態様では、hist1h1cの5’UTRは、hist1h1cの5’UTRの5’末端から4位、5位、25位、27位、32位、33位、34位、41位、及び42位に置換変異を更に含む。
【0008】
ポリヌクレオチド配列のいくつかの態様では、hist1h1cの5’UTRは、hist1h1cの5’UTRの5’末端から13位に置換変異を更に含む。
【0009】
ポリヌクレオチド配列のいくつかの態様では、hist1h1cの5’UTRは、hist1h1cの5’UTRの5’末端から13位に置換変異、及びhist1h1cの5’UTRの5’末端に挿入変異を更に含む。いくつかの態様では、挿入変異は、hist1h1cの5’UTRの5’末端から1位のすぐ上流にある。いくつかの態様では、挿入変異は、単一ヌクレオチドの挿入である。
【0010】
ポリヌクレオチド配列のいくつかの態様では、5’UTRは、rpl15の5’UTRであり、rpl15の5’UTRは、開始コドンを欠き、hist1h1cの5’UTRの3’末端にコザックコンセンサス配列を含む。
【0011】
ポリヌクレオチド配列のいくつかの態様では、rpl15の5’UTRは、rpl15の5’UTRの5’末端から11位、13位、14位、15位、24位、及び26位に置換変異を含む。
【0012】
ポリヌクレオチド配列のいくつかの態様では、rpl15の5’UTRは、rpl15の5’UTRの5’末端から25位及び27位に置換変異を更に含む。
【0013】
ポリヌクレオチド配列のいくつかの態様では、rpl15の5’UTRは、rpl15の5’UTRの5’末端から12位、16位、及び23位に置換変異を更に含む。
【0014】
ポリヌクレオチド配列のいくつかの態様では、rpl15の5’UTRは、rpl15の5’UTRの5’末端から25位及び27位に置換変異、並びにrpl15の5’UTRの5’末端に挿入変異を更に含む。いくつかの態様では、挿入変異は、rpl15の5’UTRの5’末端から1位のすぐ上流にある。いくつかの態様では、挿入変異は、単一ヌクレオチドの挿入である。
【0015】
ポリヌクレオチド配列のいくつかの態様では、ポリヌクレオチド配列は、hist1h1c又はrpl15の5’UTRの下流に位置するコード領域を更に含む。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド配列は、配列番号14、配列番号15、配列番号22、又は配列番号23から選択される配列を有する5’UTRを含む。
【0016】
別の態様では、本開示は、標的mRNAの翻訳を増加させる方法であって、配列番号14、配列番号15、配列番号22、又は配列番号23を含む修飾された5’UTRで翻訳を促進することを含み、修飾された5’UTRが、ポリヌクレオチド配列において標的mRNAの上流にある、方法を提供する。
【0017】
更に別の態様では、本開示は、標的mRNAの翻訳を増加させる方法であって、hist1h1c又はrpl15の修飾された5’UTRで翻訳を促進することを含み、5’UTRが、5’UTRにおける二次構造の形成を低減する1つ以上の点変異を含み、修飾された5’UTRが、ヌクレオチド配列において標的mRNAの上流にある、方法を提供する。
【0018】
本方法のいくつかの態様では、5’UTRは、hist1h1cの5’UTRであり、hist1h1cの5’UTRは、開始コドンを欠き、hist1h1cの5’UTRの3’末端にコザックコンセンサス配列を含む。
【0019】
本方法のいくつかの態様では、hist1h1cの5’UTRは、hist1h1cの5’UTRの5’末端から6位、8位、26位、28位、及び36位に置換変異を含む。
【0020】
本方法のいくつかの態様では、hist1h1cの5’UTRは、hist1h1cの5’UTRの5’末端から4位、5位、25位、27位、32位、33位、34位、41位、及び42位に置換変異を更に含む。
【0021】
本方法のいくつかの態様では、hist1h1cの5’UTRは、hist1h1cの5’UTRの5’末端から13位に置換変異を更に含む。
【0022】
本方法のいくつかの態様では、hist1h1cの5’UTRは、hist1h1cの5’UTRの5’末端から13位に置換変異、及びhist1h1cの5’UTRの5’末端に挿入変異を更に含む。いくつかの態様では、挿入変異は、hist1h1cの5’UTRの5’末端から1位のすぐ上流にある。いくつかの態様では、挿入変異は、単一ヌクレオチドの挿入である。
【0023】
本方法のいくつかの態様では、5’UTRは、rpl15の5’UTRであり、rpl15の5’UTRは、開始コドンを欠き、hist1h1cの5’UTRの3’末端にコザックコンセンサス配列を含む。
【0024】
本方法のいくつかの態様では、rpl15の5’UTRは、rpl15の5’UTRの5’末端から11位、13位、14位、15位、24位、及び26位に置換変異を含む。
【0025】
本方法のいくつかの態様では、rpl15の5’UTRは、rpl15の5’UTRの5’末端から25位及び27位に置換変異を更に含む。
【0026】
本方法のいくつかの態様では、rpl15の5’UTRは、rpl15の5’UTRの5’末端から12位、16位、及び23位に置換変異を更に含む。
【0027】
本方法のいくつかの態様では、rpl15の5’UTRは、rpl15の5’UTRの5’末端から25位及び27位に置換変異、並びにrpl15の5’UTRの5’末端に挿入変異を更に含む。いくつかの態様では、挿入変異は、rpl15の5’UTRの5’末端から1位のすぐ上流にある。いくつかの態様では、挿入変異は、単一ヌクレオチドの挿入である。
【0028】
本開示の他の態様及び特徴は、添付の図と併せて本開示の特定の態様の以下の説明を検討することで、当業者に明らかになるであろう。
【0029】
前述の概念及び以下でより詳細に考察される追加の概念の全ての組み合わせは(そのような概念が相互に矛盾しないことを条件として)、本明細書で開示される本発明の主題の一部であることが企図され、本明細書に説明される利益を達成するものとして採用され得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】一実施態様における、コザックコンセンサス配列(配列番号2)を有するhist1h1c 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図1B】一実施態様における、変異体1(配列番号3)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するhist1h1c 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図1C】一実施態様における、変異体2(配列番号4)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するhist1h1c 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図1D】一実施態様における、変異体3(配列番号5)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するhist1h1c 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図1E】一実施態様における、変異体4(配列番号6)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するhist1h1c 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図1F】一実施態様における、変異体5(配列番号7)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するhist1h1c 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図1G】一実施態様における、変異体6(配列番号8)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するhist1h1c 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図1H】一実施態様における、変異体7(配列番号9)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するhist1h1c 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図1I】一実施態様における、変異体8(配列番号10)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するhist1h1c 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図1J】一実施態様における、変異体10(配列番号12)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するhist1h1c 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図1K】一実施態様における、変異体11(配列番号13)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するhist1h1c 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図1L】一実施態様における、変異体12(配列番号14)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するhist1h1c 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図1M】一実施態様における、変異体13(配列番号15)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するhist1h1c 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図2A】一実施態様における、コザックコンセンサス配列(配列番号18)を有するrpl15 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図2B】一実施態様における、変異体14(配列番号19)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するrpl15 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図2C】一実施態様における、変異体15(配列番号20)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するrpl15 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図2D】一実施態様における、変異体16(配列番号21)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するrpl15 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図2E】一実施態様における、変異体17(配列番号22)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するrpl15 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図2F】一実施態様における、変異体18(配列番号23)によるコザックコンセンサス配列及び点変異を有するrpl15 5’UTRの結果として得られた二次RNA構造を図示する。
【
図3】一実施態様における、本開示の修飾された5’UTRを含む発現ベクターをトランスフェクトしたHEK293細胞におけるルシフェラーゼ発現の時間経過を表現するグラフである。
【
図4】一実施態様における、本開示の修飾された5’UTRを含む発現ベクターをトランスフェクトしたJAWSII細胞におけるトランスフェクションの12時間後におけるルシフェラーゼ発現を表現するグラフである。
【
図5】一実施態様における、本開示の修飾された5’UTRを含む発現ベクターをトランスフェクトしたPBMCにおけるルシフェラーゼ発現の時間経過を表現するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
用語
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press、The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは本開示において使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0032】
発現:本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」は、以下の事象のうちの1つ以上を指す:(1)DNA配列からのRNA鋳型の産生(例えば、転写による)、(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/又は3’末端プロセシングによる)、(3)RNAからポリペプチド又はタンパク質への翻訳、及び(4)ポリペプチド又はタンパク質の翻訳後修飾。
【0033】
同一性:本明細書で使用される場合、「同一性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、ポリヌクレオチド分子(例えば、DNA分子及び/若しくはRNA分子)間、並びに/又はポリペプチド分子間の全体的なモノマー保存を指す。2つのポリヌクレオチド配列の同一性パーセントの計算は、例えば、最適な比較目的のために2つの配列を整列させることによって行うことができる(例えば、最適な整列のために第1及び第2の核酸配列の一方又は両方にギャップを導入することができ、比較目的のために非同一配列を無視することができる)。ある種の態様では、比較目的のために整列される配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約100%である。次に、対応するヌクレオチド位置におけるヌクレオチドを比較する。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じヌクレオチドによって占められている場合、分子はその位置において同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適な整列のために導入される必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。配列の比較及び2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。DNA及びRNAを比較する場合、チミン(T)及びウラシル(U)は等価であると考えることができる。
【0034】
適切なソフトウェアプログラムは、様々な供給源から、タンパク質配列及びヌクレオチド配列の両方の整列のために入手可能である。配列の同一性パーセントを決定するための1つの適切なプログラムは、米国政府のNational Center for Biotechnology InformationのBLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なプログラムのBLASTスイートの一部であるbl2seqである。Bl2seqは、BLASTN又はBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して2つの配列間の比較を行う。BLASTNは核酸配列を比較するために使用され、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために使用される。他の適切なプログラムは、例えば、バイオインフォマティクスプログラムのEMBOSSスイートの一部であり、European Bioinformatics Institute(EBI)からも入手可能である、Needle、Stretcher、Water、又はMatcherである。
【0035】
配列整列は、MAFFT、Clustal(ClustalW、Clustal X若しくはClustal Omega)、又はMUSCLEなどの方法を用いて行うことができるが、これらに限定されない。
【0036】
ポリヌクレオチド又はポリペプチド参照配列と整列する単一のポリヌクレオチド又はポリペプチド標的配列内の異なる領域はそれぞれ、それら自体の配列同一性パーセントを有すことができる。
【0037】
インビトロ:本明細書で使用される場合、「インビトロ」は、生物(例えば、動物、植物、又は微生物)内ではなく、人工環境、例えば、試験管中又は反応容器中、細胞培養中、ペトリ皿中などで起こる事象を指す。
【0038】
インビボ:本明細書で使用される場合、「インビボ」は、生物(例えば、動物、植物、若しくは微生物、又はそれらの細胞若しくは組織)内で起こる事象を指す。
【0039】
単離された:本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、それが会合していた成分(天然であるか、又は実験設定であるかにかかわらず)の少なくともいくつかから分離されている物質又は実体を指す。単離された物質(例えば、ヌクレオチド配列又はタンパク質配列)は、それらが会合している物質に関して様々なレベルの純度を有すことができる。単離された物質及び/又は実体は、それらが最初に会合していた他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又はそれ以上から分離され得る。いくつかの態様では、単離された薬剤は、約80%超、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約99%超純粋である。本明細書で使用される場合、物質は、他の成分を実質的に含まない場合、「純粋」である。「実質的に単離された」という用語は、化合物が、それが形成又は検出された環境から実質的に分離されていることを意味する。部分的な分離は、例えば、本開示の化合物内で濃縮された組成物を含むことができる。実質的な分離は、本開示の化合物又はその塩の少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、又は少なくとも約99重量%を含有する組成物を含み得る。
【0040】
本明細書に開示される「単離された」ポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、細胞、又は任意の組成物は、天然には見出されない形態であるポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、細胞、又は組成物である。単離されたポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、又は組成物は、それらがもはや天然に見出される形態ではない程度まで精製されたものを含む。いくつかの態様では、単離されたポリヌクレオチド、ベクター、ポリペプチド、又は組成物は、実質的に純粋である。
【0041】
ヌクレオチドは、それらの一般に受け入れられている1文字コードによって言及される。他に示されない限り、核酸は、5’から3’の方向で左から右に書かれる。ヌクレオチドは、本明細書において、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されるその一般的に公知の1文字記号によって言及される。したがって、Aはアデニンを表し、Cはシトシンを表し、Gはグアニンを表し、Tはチミンを表し、Uはウラシルを表す。
【0042】
メッセンジャーRNA(mRNA):本明細書で使用される場合、「メッセンジャーRNA」(mRNA)という用語は、対象となるポリペプチドをコードし、翻訳されて、コードされたポリペプチドをインビトロ、インビボ、インサイチュ又はエクスビボで産生することができる任意のポリヌクレオチドを指す。
【0043】
天然又は天然に存在する:本明細書で使用される場合、「天然」又は「天然に存在する」ポリヌクレオチド配列は、人工的な補助なしに天然に存在するポリヌクレオチド配列を意味する。
【0044】
核酸配列:「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」又は「ポリヌクレオチド配列」という用語は互換的に使用され、連続した核酸配列を指す。この配列は、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNA(例えば、mRNA)のいずれかであり得る。
【0045】
「核酸」という用語は、その最も広い意味において、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/又は物質を含む。これらのポリマーは、しばしばポリヌクレオチドと呼ばれる。本開示の核酸又はポリヌクレオチドの例としては、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
「コードするヌクレオチド配列」という語句は、ポリペプチドをコードする核酸(例えば、mRNA又はDNA分子)コード配列を指す。本明細書で使用される場合、「コード領域」及び「コード配列」という用語は、発現の際にポリペプチド又はタンパク質を生じるポリヌクレオチド中のオープンリーディングフレーム(Open Reading Frame、ORF)を指す。コード配列は、核酸が投与される個体又は哺乳動物の細胞における発現を指向し得るプロモーター及びポリアデニル化シグナルを含む、調節要素に作動可能に連結された開始シグナル及び終結シグナルを更に含み得る。コード配列は、シグナルペプチドをコードする配列を更に含み得る。
【0047】
オープンリーディングフレーム:本明細書で使用される場合、「オープンリーディングフレーム」又は「ORF」は、所与のリーディングフレーム中に終止コドンを含有しない配列を指す。
【0048】
部分:本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドの「部分」又は「領域」は、ポリヌクレオチドの全長未満であるポリヌクレオチドの任意の部分として定義される。同様に、ポリペプチドの「部分」又は「領域」は、ポリヌクレオチドの全長未満であるポリペプチドの任意の部分として定義される。
【0049】
点変異:本明細書で使用される場合、「点変異」は、単一の核酸塩基が、ポリヌクレオチド配列から置換、挿入、又は欠失される遺伝子変異を指す。本明細書で使用される場合、「核酸塩基置換」、「置換」、又は「置換変異」という用語は、参照ポリヌクレオチド配列(例えば、野生型配列又は天然型配列)中に存在する単一の核酸塩基を別の核酸塩基で置き換えることを指す。したがって、「X位での置換」への言及は、X位に存在する核酸塩基と代替核酸塩基との置換を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「核酸塩基挿入」、「挿入」、又は「挿入変異」は、参照ポリヌクレオチド配列の特定の位置における核酸塩基に直接隣接して単一の核酸塩基を挿入することを指す。本明細書で使用される場合、「核酸塩基欠失」、「欠失」、又は「欠失変異」は、参照ポリヌクレオチド配列の特定の位置における核酸塩基に直接隣接する単一の核酸塩基を欠失させることを指す。
【0051】
ポリヌクレオチド:本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、それらの類似体、又はそれらの混合物を含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指す。この用語は、分子の一次構造を指す。したがって、この用語は、三本鎖、二本鎖及び一本鎖デオキシリボ核酸(「DNA」)、並びに、三本鎖、二本鎖及び一本鎖リボ核酸(「RNA」)を含む。より具体的には、「ポリヌクレオチド」という用語は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含有する)、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含有する)(スプライスされているか、又はスプライスされていないかにかかわらずtRNA、rRNA、hRNA、siRNA、及びmRNAを含む)、プリン又はピリミジン塩基のN-又はC-グリコシドである任意の他のタイプのポリヌクレオチド、並びに非ヌクレオチド骨格を含有する他のポリマー、例えば、ポリアミド(例えば、ペプチド核酸「PNA」)及びポリモルホリノポリマー、並びに他の合成配列特異的核酸ポリマーを含む。ただし、ポリマーは、DNA及びRNAにおいて見出されるような塩基対合及び塩基スタッキングを可能にする立体配置で核酸塩基を含有する。特定の態様では、ポリヌクレオチドはmRNAを含む。
【0052】
本明細書に開示されるコドンマップ中のT塩基は、DNA中に存在するが、T塩基は、対応するRNA中のU塩基によって置換され得る。例えば、本明細書に開示されるDNA形態のコドン-ヌクレオチド配列、例えば、ベクター又はインビトロ翻訳(in vitro translation、IVT)鋳型は、その対応する転写mRNAにおいてU塩基として転写されるそのT塩基を有し得る。この点において、コドン最適化DNA配列(Tを含む)及びそれらの対応するRNA配列(Uを含む)の両方が、本開示のコドン最適化ヌクレオチド配列と見なされる。等価なコドンマップは、1つ以上の塩基を非天然塩基で置換することによって生成され得る。したがって、例えば、TTCコドン(DNAマップ)は、UUCコドン(RNAマップ)に対応し得、これは、次に、「P」Cコドン(Uがプソイドウリジンで置換されているRNAマップ)に対応し得る。
【0053】
標準的なA-T及びG-C塩基対は、チミジンのN3-H及びC4-オキシとアデノシンのそれぞれN1及びC6-NH2との間、並びにシチジンのC2-オキシ、N3及びC4-NH2とグアノシンのそれぞれC2-NH2、N’-H及びC6-オキシとの間の水素結合の形成を可能にする条件下で形成される。したがって、例えば、グアノシン(2-アミノ-6-オキシ-9-β-D-リボフラノシル-プリン)を修飾して、イソグアノシン(2-オキシ-6-アミノ-9-β-D-リボフラノシル-プリン)を形成することができる。このような修飾はヌクレオシド塩基をもたらし、これはもはやシトシンと標準塩基対を効果的に形成しない。しかしながら、イソシトシン(1-β-D-リボフラノシル-2-アミノ-4-オキシ-ピリミジン-)を形成するためのシトシン(1-β-D-リボフラノシル-2-オキシ-4-アミノ-ピリミジン)の修飾は、グアノシンと効果的に塩基対を形成しないが、イソグアノシンと塩基対を形成する修飾ヌクレオチドをもたらす。
【0054】
ポリペプチド:「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは修飾アミノ酸を含むことができる。これらの用語は、天然に又は介入によって修飾されたアミノ酸ポリマーも含む。例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は標識成分とのコンジュゲーションなどの任意の他の操作若しくは修飾が挙げられる。例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体(例えば、ホモシステイン、オルニチン、p-アセチルフェニルアラニン、D-アミノ酸、及びクレアチンのような非天然アミノ酸を含む)を含有するポリペプチドもまた、この定義内に含まれる。
【0055】
この用語は、本明細書で使用される場合、任意のサイズ、構造、又は機能のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。ポリペプチドには、遺伝子産物、天然に存在するポリペプチド、合成ポリペプチド、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片並びに前述の他の等価物、変異体、及び類似体が含まれる。ポリペプチドは、単一のポリペプチドであってもよく、又は二量体、三量体、若しくは四量体などの多分子複合体であってもよい。それらは、単鎖又は多重鎖ポリペプチドも含み得る。最も一般的には、ジスルフィド結合は、多重鎖ポリペプチドにおいて見出される。ポリペプチドという用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的な化学的類似体であるアミノ酸ポリマーにも適用することができる。いくつかの態様では、「ペプチド」は、約50アミノ酸長以下、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50アミノ酸長であり得る。
【0056】
参照核酸配列:「参照核酸配列」、「参照核酸」、又は「参照ヌクレオチド配列」又は「参照配列」という用語は、配列最適化され得る開始核酸配列(例えば、RNA配列、例えば、mRNA配列)を指す。いくつかの態様では、参照核酸配列は、野生型核酸配列又は天然型核酸配列、その断片又は変異体である。
【0057】
配列最適化:本明細書で使用される場合、「配列最適化」とは、参照核酸配列中の核酸塩基が代替核酸塩基で置換され、改善された特性を有する核酸配列をもたらすプロセス又は一連のプロセスを指す。本開示の文脈において、配列最適化は、5’UTRが適切な発現系に組み込まれた場合に下流遺伝子標的の翻訳の改善をもたらす、5’UTRのヌクレオチド配列における修飾を指す。
【0058】
類似性:本明細書で使用される場合、「類似性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、ポリヌクレオチド分子(例えば、DNA分子及び/若しくはRNA分子)間、並びに/又はポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。ポリマー分子の互いに対する類似性パーセントの計算は、類似性パーセントの計算が保存的置換を考慮に入れることを除いて、同一性パーセントの計算と同じように行われ得る。
【0059】
実質的に:本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、対象となる特徴又は特性の全体又はほぼ全体の範囲又は程度を示す定性的状態を指す。生物学的及び化学的現象は、完了に至る及び/若しくは完全性に進むこと、又は絶対的な結果を達成若しくは回避することは、あったとしても稀である。したがって、「実質的に」という用語は、本明細書では、多くの生物学的及び化学的現象に固有の完全性の潜在的な欠如を捉えるために使用される。例えば、「実質的に」とは、対象となる特徴又は特性の少なくとも約20%、あるいは少なくとも約10%、あるいは少なくとも約5%以内であることを指し得る。
【0060】
合成:「合成」という用語は、人の手によって生産、調製、及び/又は製造されることを意味する。本開示のポリヌクレオチド又は他の分子の合成は、化学的又は酵素的であり得る。
【0061】
末端:本明細書で使用される場合、「末端」という用語は、ポリペプチドに言及する場合、ペプチド又はポリペプチドの末端を指す。このような末端は、ペプチド又はポリペプチドの最初又は最後の部位のみに限定されず、末端領域に追加のアミノ酸を含み得る。本開示のポリペプチドベースの分子は、N末端(遊離アミノ基(NH2)を有するアミノ酸によって終結する)とC末端(遊離カルボキシル基(COOH)を有するアミノ酸によって終結する)の両方を有するものとして特徴づけることができる。本開示のタンパク質は、場合によっては、ジスルフィド結合又は非共有結合力(多量体、オリゴマー)によって一緒にされた複数のポリペプチド鎖から構成される。これらの種類のタンパク質は、複数のN-及びC-末端を有する。あるいは、ポリペプチドの末端は、場合によっては、有機結合体などの非ポリペプチドベースの部分で開始又は終結するように修飾され得る。
【0062】
トランスフェクション:本明細書で使用される場合、「トランスフェクション」は、ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドが発現される(例えば、mRNA)か、又はポリペプチドが細胞機能を調整する(例えば、siRNA、miRNA)、細胞へのポリヌクレオチドの導入を指す。本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」は、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)からポリペプチド若しくはタンパク質への翻訳、及び/又はポリペプチド若しくはタンパク質の翻訳後修飾を指す。
【0063】
非修飾:本明細書で使用される場合、「非修飾」は、何らかの方法で変化される前の任意の物質、化合物又は分子を指す。非修飾は、常にではないが、生体分子の野生型又は天然型を指すことができる。分子は、一連の修飾を受けることができ、それによって、各修飾分子は、その後の修飾のための「非修飾」出発分子として機能することができる。
【0064】
非翻訳領域:本明細書で使用される場合、「非翻訳領域」又は「UTR」は、タンパク質コード領域を形成しないmRNA構築物の5’及び3’末端に位置する領域を指す。5’UTRはコード配列の上流にある。
【0065】
修飾された5’UTR
本明細書に記載されるのは、ポリヌクレオチド配列の実施例、より具体的には、hist1h1cの5’UTRに由来する5’UTR(すなわち、「修飾されたhist1h1c 5’UTR」)又はrpl15 5’UTR(すなわち、「修飾されたrpl15 5’UTR」)である。修飾された5’UTRは、発現構築物又はベクターに組み込まれた場合に、標的ポリヌクレオチド(例えば、標的mRNA)の発現を促進するために使用され得る。本明細書で使用される場合、「修飾された」5’UTRは、配列最適化から得られる5’UTR配列を指す。
【0066】
一態様では、本開示の修飾された5’UTRを構成するポリヌクレオチド配列は、以下の特徴を共有する。
a.hist1h1c又はrpl15の天然5’UTRに由来する、
b.1つ以上の停止コドンの欠如、
c.5’末端オリゴピリミジントラクト(5’TOP)阻害モチーフの欠如、
d.3’末端におけるコザックコンセンサス配列の存在、及び
e.5’UTRにおける二次構造の形成を阻害するか、又は少なくとも低減する1つ以上の点変異の存在。
【0067】
いくつかの態様では、修飾された5’UTRは、表1に示すポリヌクレオチド配列を含む。
【0068】
【0069】
例示的な態様では、修飾された5’UTRは、配列番号15又は配列番号23を含む。
【0070】
いくつかの態様では、修飾された5’UTRは、配列番号14、配列番号15、配列番号22、及び/又は配列番号23の組み合わせを含む。いくつかの態様では、修飾された5’UTRは、配列番号15と配列番号23との組み合わせを含む。いくつかの態様では、修飾された5’UTRは、配列番号23を含む。
【0071】
いくつかの態様では、5’UTRは、5’UTRにおける二次構造の形成を低減する1つ以上の点変異を含む修飾されたhist1h1c 5’UTRである。
【0072】
いくつかの態様では、修飾されたhist1h1c 5’UTRは、全ての開始コドンを欠く。
【0073】
いくつかの態様では、修飾されたhist1h1c 5’UTRは、5’TOP阻害モチーフを欠く。
【0074】
いくつかの態様では、修飾されたhist1h1c 5’UTRは、3’末端にコザックコンセンサス配列を有する。
【0075】
いくつかの態様では、修飾されたhist1h1c 5’UTRは、5’UTRの5’末端から6位、8位、26位、28位、及び36位に置換変異を含む。
【0076】
いくつかの態様では、修飾されたhist1h1c 5’UTRは、5’UTRの5’末端から4位、5位、6位、8位、25位、26位、27位、28位、32位、33位、34位、36位、41位、及び42位に置換変異を含む。いくつかの態様では、修飾されたhist1h1c 5’UTRは、5’UTRの5’末端から6位、8位、13位、26位、28位、及び36位に置換変異を含む。
【0077】
いくつかの態様では、修飾されたhist1h1c 5’UTRは、5’UTRの5’末端に挿入変異を含み、挿入は、5’UTRの5’末端から1位のすぐ上流(すなわち、先行するヌクレオチド)にある。
【0078】
いくつかの態様では、修飾されたhist1h1c 5’UTRを構成するポリヌクレオチド配列は、以下によって特徴づけられる。
a.開始コドンの欠如、
b.5’TOP阻害モチーフの欠如、
c.3’末端におけるコザックコンセンサス配列の存在、並びに
d.5’UTRの5’末端から6位、8位、26位、28位、及び36位における置換変異の存在。
【0079】
いくつかの態様では、修飾されたhist1h1c 5’UTRを構成するポリヌクレオチド配列は、以下によって特徴づけられる。
a.開始コドンの欠如、
b.5’TOP阻害モチーフの欠如、
c.3’末端におけるコザックコンセンサス配列の存在、並びに
d.5’UTRの5’末端から4位、5位、6位、8位、25位、26位、27位、28位、32位、33位、34位、
36位、41位、及び42位における置換変異の存在。
【0080】
いくつかの態様では、修飾されたhist1h1c 5’UTRを構成するポリヌクレオチド配列は、以下によって特徴づけられる。
a.開始コドンの欠如、
b.5’TOP阻害モチーフの欠如、
c.3’末端におけるコザックコンセンサス配列の存在、並びに
d.5’UTRの5’末端から6位、8位、13位、26位、28位、及び36位における置換変異の存在。
【0081】
いくつかの態様では、修飾されたhist1h1c 5’UTRを構成するポリヌクレオチド配列は、以下によって特徴づけられる。
a.開始コドンの欠如、
b.5’TOP阻害モチーフの欠如、
c.3’末端におけるコザックコンセンサス配列の存在、
d.5’UTRの5’末端から6位、8位、13位、26位、28位、及び36位における置換変異の存在、並びに
e.5’UTRの5’末端から1位のすぐ上流における挿入変異の存在。
【0082】
いくつかの態様では、5’UTRは、5’UTRにおける二次構造の形成を低減する1つ以上の点変異を含む修飾されたrpl15 5’UTRである。
【0083】
いくつかの態様では、修飾されたrpl15 5’UTRは、全ての開始コドンを欠く。
【0084】
いくつかの態様では、修飾されたrpl15’UTRは、5’TOP阻害モチーフを欠く。
【0085】
いくつかの態様では、修飾されたrpl15’UTRは、3’末端にコザックコンセンサス配列を有する。
【0086】
いくつかの態様では、修飾されたrpl15 5’UTRは、5’UTRの5’末端から11位、13位、14位、15位、24位、及び26位に置換変異を含む。
【0087】
いくつかの態様では、修飾されたrpl15 5’UTRは、5’UTRの5’末端から11位、13位、14位、15位、24位、25位、26位、及び27位に置換変異を含む。
【0088】
いくつかの態様では、修飾されたrpl15 5’UTRは、5’UTRの5’末端から11位、12位、13位、14位、15位、16位、23位、24位、及び26位に置換変異を含む。
【0089】
いくつかの態様では、修飾されたrpl15 5’UTRは、5’UTRの5’末端に挿入変異を含み、この挿入は、5’UTRの5’末端から1位のすぐ上流(すなわち、先行するヌクレオチド)にある。
【0090】
いくつかの態様では、修飾されたrpl15 5’UTRを構成するポリヌクレオチド配列は、以下によって特徴づけられる。
a.開始コドンの欠如、
b.5’TOP阻害モチーフの欠如、
c.3’末端におけるコザックコンセンサス配列の存在、並びに
d.5’UTRの5’末端から11位、13位、14位、15位、24位、及び26位における置換変異の存在。
【0091】
いくつかの態様では、修飾されたrpl15 5’UTRを構成するポリヌクレオチド配列は、以下によって特徴づけられる。
a.開始コドンの欠如、
b.5’TOP阻害モチーフの欠如、
c.3’末端におけるコザックコンセンサス配列の存在、並びに
d.5’UTRの5’末端から11位、13位、14位、15位、24位、25位、26位、及び27位における置換変異の存在。
【0092】
いくつかの態様では、修飾されたrpl15 5’UTRを構成するポリヌクレオチド配列は、以下によって特徴づけられる。
a.開始コドンの欠如、
b.5’TOP阻害モチーフの欠如、
c.3’末端におけるコザックコンセンサス配列の存在、並びに
d.5’UTRの5’末端から11位、12位、13位、14位、15位、16位、23位、24位、及び
26位における置換変異の存在。
【0093】
いくつかの態様では、修飾されたrpl15 5’UTRを構成するポリヌクレオチド配列は、以下によって特徴づけられる。
a.開始コドンの欠如、
b.5’TOP阻害モチーフの欠如、
c.3’末端におけるコザックコンセンサス配列の存在、
d.5’UTRの5’末端から11位、13位、14位、15位、24位、25位、26位、及び27位における置換変異の存在、並びに
e.5’UTRの5’末端から1位のすぐ上流における挿入変異の存在。
【0094】
翻訳効率を増加させる方法
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される修飾された5’UTRを用いて標的ポリヌクレオチド(例えば、mRNA)を発現させる方法を提供する。いくつかの態様では、修飾された5’UTR及び標的ポリヌクレオチドは、発現構築物中の1つ以上の調節ヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。いくつかの態様では、5’UTR及び標的ポリヌクレオチドの核酸配列は、調節ヌクレオチド配列を有するベクターを使用して発現させることができる。調節ヌクレオチド配列は、プロモーター配列、リーダー又はシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始配列及び転写終結配列、翻訳開始配列及び翻訳終結配列、並びにエンハンサー配列を含み得る。本明細書のプロモーターは、天然に存在するプロモーター及び2つ以上のプロモーターの要素を組み合わせたハイブリッドプロモーターを指し得る。任意の適切な発現ベクター及び適切な調節配列を選択し、特定の宿主細胞に対して最適化することができる。任意の好適な構成的又は誘導性プロモーターは、本開示の修飾された5’UTRとともに使用することが企図される。発現構築物は、プラスミドのようなエピソーム上で細胞中に存在し得るか、又は染色体中に挿入され得る。
【0095】
いくつかの態様では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択のための選択可能なマーカー遺伝子を含有することができる。選択可能なマーカー遺伝子は、特定の宿主細胞に対して選択され得る。
【0096】
宿主細胞は、修飾された5’UTR及び標的ポリヌクレオチドを含む発現ベクターでトランスフェクトすることができ、標的ポリヌクレオチド産物(例えば、タンパク質)の発現に適した条件下で培養することができる。一実施態様において、標的タンパク質は、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、及び免疫親和性精製などの適切な精製技術を使用して、細胞及び/又は細胞培養培地から単離することができる。
【0097】
適切な発現ベクターには、大腸菌などの原核細胞における発現のための、pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミド、及びpUC由来プラスミドなどのプラスミドが含まれる。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2-dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko-neo及びpHyg由来ベクターは、真核細胞のトランスフェクションに適した哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターのいくつかは、原核細胞及び真核細胞の両方における複製及び薬物の耐性選択を容易にするために、pBR322などの細菌プラスミド由来の配列で修飾される。あるいは、ウシパピローマウイルス(BPV-1)又はエプスタイン-バーウイルス(pHEBo、pREP由来及びp205)のようなウイルスの誘導体は、真核細胞におけるタンパク質の一過性発現のために使用され得る。
【0098】
組換えポリヌクレオチドを作製することは、異なるポリペプチド配列又は翻訳調節配列をコードする様々な核酸断片を連結することを伴い得る。
【0099】
いくつかの態様では、本開示の修飾された5’UTRを含む発現ベクターを使用して、細菌細胞(例えば、大腸菌)、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を使用)、酵母、又は哺乳動物細胞などの宿主細胞において標的ポリヌクレオチドを発現させることができる。他の適切な宿主細胞を用いてもよい。したがって、本開示は、修飾された5’UTR及び標的ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド、並びにポリヌクレオチドを発現する宿主細胞を含む。
【0100】
例示的な態様では、発現構築物は、本開示の修飾された5’UTRと、タンパク質(例えば、mRNA)をコードするエフェクタ領域と、3’UTRとを含む。
【0101】
更なる態様では、本開示は、本明細書に記載される修飾された5’UTRを用いて標的ポリヌクレオチドの翻訳を増加させる方法を提供する。本方法は、修飾された5’UTRを有する標的ポリヌクレオチドの翻訳を促進することを含み、5’UTRは、ポリヌクレオチド配列において標的ポリヌクレオチドの上流にある。本明細書に記載される修飾された5’UTR及び標的ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド及び/又は宿主細胞は、標的ポリヌクレオチドの翻訳を増加させる方法において利用することができる。
【0102】
実施例3及び
図3~
図5は、本開示の一態様による修飾された5’UTRを用いて標的ポリヌクレオチドの翻訳を増加させる非限定的な例である。
【0103】
組成物
更に別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるポリヌクレオチド(すなわち、修飾された5’UTR及び標的ポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド)を発現するポリヌクレオチド又は宿主細胞を含む組成物を提供する。
【0104】
いくつかの態様において、組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、若しくは塩などの賦形剤、緩衝剤、保存剤、抗接着剤、抗酸化剤、結合剤、コーティング、圧縮助剤、崩壊剤、染料、皮膚軟化剤、乳化剤、充填剤、フィルム形成剤若しくはコーティング、香味料、香料、流動促進剤、潤滑剤、吸着剤、懸濁剤若しくは分散剤、甘味料、水和水、及び/又は他の治療剤を含む治療用組成物である。
【0105】
いくつかの態様では、組成物は、本開示の修飾された5’UTRと、タンパク質(例えば、mRNA)をコードするエフェクタ領域と、3’UTRとを含む発現構築物を含む。
【0106】
いくつかの態様では、治療用組成物は、被検体における疾患又は障害を処置するために使用することができる。いくつかの態様では、治療用組成物は、被検体における疾患又は障害を予防するために使用することができる。
【0107】
キット
本開示の別の態様は、本明細書に記載される修飾された5’UTR、組成物、ポリヌクレオチド、発現構築物、又は宿主細胞と、適切な使用又は投与を指示する説明書又はラベルとを含むキットである。典型的には、キットは、使用者が被検体に1つ若しくは複数の処置を行うこと、及び/又は1つ若しくは複数の実験を行うことを可能にするのに十分な量及び/又は数の構成要素を含む。
【0108】
いくつかの態様では、研究アッセイを行うための、及び/又は治療有効量のポリヌクレオチドを投与するための追加の構成要素がキットに封入され得る。
【0109】
いくつかの態様では、キットは、修飾された5’UTRを発現構築物にクローニングして標的ポリペプチドをコードするための説明書を含み得る。
【0110】
いくつかの態様では、キットは、本開示の修飾された5’UTRと、タンパク質(例えば、mRNA)をコードするエフェクタ領域と、3’UTRとを含む発現構築物を含む。
【0111】
いくつかの態様では、キットは、例えば、本明細書に記載の宿主細胞を培養することによってポリペプチドを作製するための説明書を含み得る。
【0112】
等価物及び範囲
特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」などの冠詞は、反対の指示がない限り、又は文脈から明らかでない限り、1つ又は2つ以上を意味し得る。グループの1つ以上のメンバーの間に「又は」を含む特許請求の範囲又は説明は、反対の指示がない限り、又は文脈から明らかでない限り、グループのメンバーの1つ、2つ以上、又は全てが、所与の生成物又はプロセスに存在する、使用される、又は関連する場合、満たされると見なされる。本開示は、グループの正確に1つのメンバーが、所与の生成物又はプロセスに存在するか、使用されるか、又は関連する態様を含む。本開示は、グループのメンバーの2つ以上又は全体が、所与の生成物又はプロセスに存在するか、使用されるか、又は関連する態様を含む。
【0113】
本明細書で使用される場合、本明細書及び/又は特許請求の範囲を通して数値に関連して使用される「約」は、精度の間隔を表す。一般に、そのような精度の間隔は±10%である。対象となる1つ以上の値に適用される「およそ」は、述べられた参照値に類似する値を指す。ある種の態様では、「およそ」という用語は、別段の記載がない限り、又は文脈から明らかでない限り(そのような数が可能な値の100%を超え得る場合を除く)、記載された参照値のいずれかの方向(より大きい又はより小さい)において、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又はそれ以下に入る値の範囲を指す。
【0114】
「含む(comprising)」という用語は、オープンエンドであることが意図され、追加の要素又はステップの包含を許容するが、これを必要とするものではないことにも留意されたい。「含む(comprising)」という用語が本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」という用語も包含され、開示される。
【0115】
範囲が与えられる場合、終点が含まれる。更に、別段の指示がない限り、又は文脈から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈が別段に明確に指示しない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで、本開示の異なる態様において記載された範囲内の任意の特定の値又は部分範囲を想定することができることを理解されたい。
【0116】
使用された用語は、限定ではなく説明の用語であり、より広い態様において本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更を行うことができることを理解されたい。
【0117】
本開示は、いくつかの説明された態様に関して、ある程度の長さ及びある程度詳細に説明されているが、本開示は、任意のそのような詳細若しくは態様又は任意の特定の態様に限定されるべきではなく、先行技術を考慮してそのような特許請求の範囲の最も広い可能な解釈を提供し、したがって、本開示の意図された範囲を効果的に包含するように、添付の特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。
【0118】
更に、「及び/又は」は、本明細書で使用される場合、2つの指定された特徴又は構成要素のそれぞれの、他方を伴う又は伴わない具体的な開示として解釈されるべきである。したがって、本明細書で「A及び/又はB」などの句で使用される「及び/又は」という用語は、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」などの句で使用される「及び/又は」という用語は、次の態様のそれぞれを包含することが意図される。A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)。
【0119】
本明細書において態様が「含む(comprising)」という言葉で記載されている場合は必ず、「からなる(consisting of)」及び/又は「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で記載されている他の類似の態様も提供される。
【0120】
単位、接頭辞、及び記号は、国際単位系(SI)で認められた形式で表される。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。値の範囲が列挙される場合、その範囲の列挙された上限と下限との間の各介在整数値及びその各分数もまた、そのような値の間の各部分範囲とともに具体的に開示されることを理解されたい。任意の範囲の上限及び下限は、独立して、範囲に含まれ得るか、又は範囲から除外され得、限界のいずれかが含まれるか、いずれも含まれないか、又は両方が含まれる各範囲もまた、本開示内に包含される。値が明示的に列挙される場合、列挙された値とほぼ同じ数量又は容量である値もまた、本開示の範囲内であることを理解されたい。組み合わせが開示される場合、その組み合わせの要素の各部分組み合わせも具体的に開示され、本開示の範囲内である。逆に、異なる要素又は要素群が個々に開示されている場合、それらの組み合わせもまた開示されている。開示の任意の要素が複数の代替物を有するものとして開示される場合、各代替物が単独で又は他の代替物との任意の組み合わせで除外されるその開示の例もまた、本明細書によって開示される。本開示の2つ以上の要素は、そのような除外を有することができ、そのような除外を有する要素の全ての組み合わせは、本明細書によって開示される。
【0121】
本開示は、以下の非限定的な実施例によって更に説明される。
【実施例】
【0122】
実施例1:5’UTRの発見
候補5’UTRを同定するために、JMP統計ソフトウェアを利用して、高い翻訳速度を有する遺伝子を検索した。この最初の検索基準は、約5000個の候補遺伝子を同定した。続いて、これらの候補を、UTRdb(ITB-INSTITUTE FOR BIOMEDICAL TECHNOLOGIES)を使用して、それらのそれぞれの5’UTRのサイズによって分類した。60核酸塩基より大きい5’UTRを有する遺伝子は、60核酸塩基未満の5’UTRがPCRを用いた迅速なDNA鋳型合成を可能にしたので、更なる調査から除外した。これにより50個の候補が得られ、続いてこれらをHuman Protein Atlasを用いて細胞発現についてスクリーニングした。これらの50個の候補から、9個の候補が、末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)における低い細胞特異性及び/又は高い発現によって特徴づけられる発現プロファイルを示した。2個の5’UTR遺伝子候補、hist1h1c及びrpl15を更なる調査のために選択した。表2、最初の遺伝子スクリーニングを要約する。
【0123】
【0124】
実施例2:5’UTRのデノボ合成
5’UTRのデノボ合成は、hist1h1c及びrpl15の天然5’UTRヌクレオチド配列からの阻害モチーフ及び開始コドン(例えば、ATG)の除去から開始した。具体的には、シトシン及びチミン/ウラシルの反復を含む5’末端オリゴピリミジントラクト(5’TOP)阻害モチーフを除去した。更に、コザックコンセンサス配列(すなわち、GCCACC)を5’UTRの3’末端に付加した。次に、5’UTRにおける二次構造の形成を低減するために、1つ以上の点変異をhist1h1c及びrpl15の5’UTRに導入した。
【0125】
次に表3、hist1h1c 5’UTRのデノボ合成を要約する。配列番号1(天然hist1h1c 5’UTR)に示されるように、5’TOPの除去は必要なかった。コザックコンセンサス配列(配列番号2)の付加に続いて、1つ以上の点変異(すなわち、単一の核酸塩基の置換、挿入、又は欠失)をヌクレオチド配列(配列番号3~15)に導入した。表3の各配列において、コザックコンセンサス配列の核酸塩基には下線が引かれており、置換を表す核酸塩基は太字で下線が引かれており、挿入を表す核酸塩基は太字で斜体である。
【0126】
表4は、rpl15 5’UTRのデノボ合成を要約する。天然rpl15 5’UTR(配列番号16)は、5’TOPの除去を必要とし、配列番号17をもたらした。天然rpl15 5’UTR配列は、コザックコンセンサス配列の「GCCA」を含み、コザックコンセンサス配列の末端「CC」を、rpl15 5’UTR(配列番号18)の3’末端に核酸塩基対置換を介して付加した。コザックコンセンサス配列の付加に続いて、1つ以上の点変異をヌクレオチド配列(配列番号19~23)に導入した。表4の各配列において、コザックコンセンサス配列の核酸塩基には下線が引かれており、置換を表す核酸塩基は太字で下線が引かれており、挿入を表す核酸塩基は太字で斜体である。
【0127】
修飾されたhist1h1c及びrpl15 5’UTRの得られた自由エネルギーを、それぞれ表5及び表6に示す。修飾されたhist1h1c及びrpl15 5’UTRの得られた構造をそれぞれ
図1A~
図1M及び
図2A~
図2Fに示す。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
実施例3:ルシフェラーゼレポーターアッセイ
UTR2~UTR7の発現活性を評価するために、各UTRポリヌクレオチドをPCR増幅し、ルシフェラーゼ発現ベクターにクローニングした。HEK293細胞、JAWSII(不死化マウス未成熟樹状細胞株)、及びPBMCに、UTR1(対照UTR配列)、UTR2、UTR3、UTR4、UTR5、UTR6、又はUTR7を独立してトランスフェクトし、ルシフェラーゼ発現を3時間、6時間、12時間、及び30時間で測定した。
図3は、30時間にわたるトランスフェクトされたHEK293細胞のルシフェラーゼ発現(RLU)を示す。
図4は、12時間でのトランスフェクトされたJAWSII細胞のルシフェラーゼ発現を示す。
図5は、30時間にわたるトランスフェクトされたPBMCのルシフェラーゼ発現を示す。
図3に示すように、UTR2、3、4、6及び7は、対照UTR配列と比較して相対発光単位の増加を示し、これらのUTRポリヌクレオチドがHEK293細胞にトランスフェクトされた場合の翻訳の増加を示す。
図4及び
図5に示されるように、UTR2~7は、対照UTR配列と比較して相対発光単位の増加を示し、これはまた、これらのUTRポリヌクレオチドがJAWSII細胞及びPBMCにトランスフェクトされた場合の翻訳の増加を示す。
【0133】
【0134】
【配列表】
【国際調査報告】