(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-14
(54)【発明の名称】抗炎症活性を有するポリケチド化合物及びその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
C07D 407/04 20060101AFI20241107BHJP
C12N 1/14 20060101ALI20241107BHJP
C12P 1/02 20060101ALI20241107BHJP
C12P 17/00 20060101ALI20241107BHJP
A61K 31/335 20060101ALI20241107BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241107BHJP
A61K 36/062 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C07D407/04
C12N1/14 A
C12P1/02 Z
C12P17/00
A61K31/335
A61P29/00
A61K36/062
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533327
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 CN2022101720
(87)【国際公開番号】W WO2023240679
(87)【国際公開日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】202210664749.0
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517234538
【氏名又は名称】大▲連▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】盧 軒
(72)【発明者】
【氏名】唐 小渊
(72)【発明者】
【氏名】唐 川
(72)【発明者】
【氏名】馮 偉星
(72)【発明者】
【氏名】馮 宝民
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AE43
4B064CA05
4B064CC03
4B064CC06
4B064CC12
4B064CC15
4B064CD22
4B064CD30
4B064CE02
4B064CE08
4B064CE10
4B064CE20
4B064DA08
4B064DA20
4B065AA57X
4B065AC14
4B065BB26
4B065BB40
4B065BC03
4B065BC26
4B065BC50
4B065CA18
4B065CA44
4B065CA60
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA10
4C086GA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB11
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA05
4C087BC04
4C087CA10
4C087CA25
4C087CA37
4C087NA14
4C087ZB11
(57)【要約】
本発明は、抗炎症活性を有するポリケチド化合物及びその製造方法と使用を開示し、医薬技術分野に属する。本願は、チベットイワベンケイRhodiola tibeticaの葉部位からAlternaria属内生菌(Alternaria sp.)HJT-Y7を分離し、得られたAlternaria属内生菌(Alternaria sp.)HJT-Y7に対して固体発酵を行い、一連の分離精製方法で分離して2つのポリケチド化合物を得、その2つのポリケチド化合物はいずれも良好な抗炎症活性を有し、抗炎症薬剤の開発のための新たなアプローチを提供する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式に示す構造を有するポリケチド化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化1】
【請求項2】
2022年5月6日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに寄託され、寄託番号がCGMCC No.40166で、寄託機関の住所が北京市朝陽区北辰西路一号院三号であるAlternaria属内生菌(Alternaria sp.)HJT-Y7。
【請求項3】
請求項2に記載のAlternaria属内生菌(Alternaria sp.)HJT-Y7を真菌4号培地に接種して、振とう培養し、得られた発酵液を菌糸体とともに米固体培地に接種し、20~30℃で10~40日間静置して発酵させ、固体発酵生成物を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた固体発酵生成物を、メタノールを用いて抽出してろ過し、得られた抽出液をシリカゲルクロマトグラフィーカラムにロードし、体積比100:0~0:100のクロロホルム/メタノールを移動相として勾配溶出を行い、TLCの結果に基づき、画分1~16を順次に得、画分7をシリカゲルクロマトグラフィーカラムにロードし、体積比10:1~10:9の石油エーテル/酢酸エチルを移動相として勾配溶出を行い、TLCの結果に基づき、画分7-1~7-10を順次に得、画分7-6をSephadex LH-20ゲルカラムにロードし、体積比1:1のジクロロメタン/メタノール混合液を移動相して溶出を行い、画分7-6-1~7-6-6を順次に得、画分7-6-3をAgilent C18高速液体クロマトグラフィーカラムにロードし、55%のメタノール水溶液を移動相として溶出を行って、化合物1と化合物2を得るステップ(2)と、を含む、請求項1に記載のポリケチド化合物の製造方法。
【請求項4】
ステップ(1)における前記振とう培養の条件は、20~30℃で、100~200r/分である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
ステップ(1)における前記米固体培地は、米と純水を80:80~120g/mLの質量体積比で調製して得られる、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップ(1)における前記真菌4号培地は、2%のマンニトール、2%のブドウ糖、0.5%の酵母エキス、1%のペプトン、0.05%のKH
2PO
4、0.03%のMgSO
4・7H
2O、0.1%のコーンスティープリカー、脱イオン水により構成される、請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
ステップ(2)における前記勾配溶出の過程において、クロロホルム/メタノールの体積比は、100:0、100:1、100:2、100:3、100:5、100:10、0:100である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項8】
ステップ(2)における前記勾配溶出の過程において、石油エーテル/酢酸エチルの体積比は10:1、10:3、10:5、10:6、10:7、10:9である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載のポリケチド化合物又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される添加剤を含む、医薬組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のポリケチド化合物又はその薬学的に許容される塩又は請求項9に記載の医薬組成物の、抗炎症薬物の製造のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬技術分野に関し、具体的には、抗炎症活性を有する新たな骨格のポリケチド系エピマー及びその製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
薬用植物内生菌には多様性があり、内生菌のそれぞれに豊富な二次代謝産物があり、現在、内生菌の二次代謝産物から生物活性を有するアルカロイド、ポリペプチド、ポリケチド類、テルペノイドなどの物質が多数発見され、これらの二次代謝産物は、例えば抗菌、抗炎症、抗腫瘍、抗高血糖、抗寄生虫など、寄主植物と同じ又は似た生物活性を持つだけでなく、新たな生物活性を多数有する。そのため、薬用植物内生菌の二次代謝産物は、膨大な潜在の薬用物質資源庫となり、良好な開発見込みがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、抗炎症活性を有するポリケチド化合物及びその製造方法と使用を提供することを目的とする。本発明は、植物内生菌資源を十分に活用するよう植物内生菌に対して研究を行い、チベットイワベンケイ(Rhodiola tibetica)の葉部位からAlternaria属内生菌(Alternaria sp.)HJT-Y7を分離し、これは2022年5月6日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに寄託され、寄託番号はCGMCC No.40166で、寄託機関の住所は北京市朝陽区北辰西路一号院三号であり、得られたAlternaria属内生菌(Alternaria sp.)HJT-Y7に対して固体発酵を行い、一連の分離精製方法を用いて分離して1対の新規構成を有するポリケチド系エピマーを得、薬剤の開発のための新たなリード化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は以下の技術的手段により達成することができる。
【0005】
本発明の一態様によれば、下式に示す構造を有するポリケチド化合物又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【化1】
【0006】
本発明の他の態様によれば、Alternaria属内生菌(Alternaria sp.)HJT-Y7を提供し、該HJT-Y7は2022年5月6日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに寄託され、寄託番号がCGMCC No.40166、寄託機関の住所が北京市朝陽区北辰西路一号院三号である。
【0007】
本発明の他の態様によれば、前記ポリケチド化合物の製造方法を提供し、主に以下のステップ(1)とステップ(2)と、を含む。
ステップ(1):上記Alternaria属内生菌(Alternaria sp.)HJT-Y7を真菌4号培地に接種して、振とう培養し、得られた発酵液を菌糸体とともに米の固体培地に接種し、20~30℃で10~40日間静置して発酵させ、固体発酵生成物を得る。
ステップ(2):ステップ(1)で得られた固体発酵生成物を、メタノールを用いて抽出してろ過し、得られた抽出液をシリカゲルクロマトグラフィーカラムにロードし、体積比100:0~0:100のクロロホルム/メタノールを移動相として勾配溶出を行い、TLCの結果に基づき、画分1~16を順次に得、画分7をシリカゲルクロマトグラフィーカラムにロードし、体積比10:1~10:9の石油エーテル/酢酸エチルを移動相として勾配溶出を行い、TLCの結果に基づき、画分7-1~7-10を順次に得、画分7-6をSephadex LH-20ゲルカラムにロードし、体積比1:1のジクロロメタン/メタノール混合液を移動相して溶出を行い、画分7-6-1~7-6-6を順次に得、画分7-6-3をAgilent C18高速液体クロマトグラフィーカラムにロードし、55%のメタノール水溶液を移動相として溶出を行って、化合物1と化合物2を得る。
【0008】
さらに、ステップ(1)における上記振とう培養の条件は、20~30℃で、100~200r/分である。
【0009】
さらに、ステップ(1)における上記米固体培地は、米と純水を80:80~120g/mlの質量体積比で調製して得られる。
【0010】
さらに、ステップ(1)における上記真菌4号培地は、2%のマンニトール、2%のブドウ糖、0.5%の酵母エキス、1%のペプトン、0.05%のKH2PO4、0.03%のMgSO4・7H2O、0.1%のコーンスティープリカー、脱イオン水により構成される。
【0011】
さらに、ステップ(2)における上記勾配溶出の過程において、クロロホルムとメタノールとの体積比は100:0、100:1、100:2、100:3、100:5、100:10、0:100である。
【0012】
さらに、ステップ(2)における上記勾配溶出の過程において石油エーテルと酢酸エチルとの体積比は、10:1、10:3、10:5、10:6、10:7、10:9である。
【0013】
本発明は、さらに、上記ポリケチド化合物又はその薬学的に許容される塩と薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明は、さらに、上記ポリケチド化合物又はその薬学的に許容される塩又は前記医薬組成物の、抗炎症薬物の製造のための使用を提供する。
【発明の効果】
【0015】
従来技術と比べると、本発明は、以下のメリットがある。
本発明は、植物内生菌資源を活用するよう植物内生菌に対して研究を行って、新規ポリケチド系活性化合物を探し出し、抗炎症活性実験の結果、モデル群と比較して、化合物1と化合物2は、濃度によってNOの放出を異なる程度に抑制し、濃度が5μMの場合、陽性対照群よりも優れた抑制能力を示し、化合物1と化合物2は良好な抗炎症効果があることを表明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下、本発明の実施例をより明確に説明するために、実施例に係る図面を簡単に説明する。
【0017】
【
図1】実施例1で分離された化合物1の
1H-NMR図である。
【
図2】実施例1で分離された化合物1の
13C-NMR図である。
【
図3】実施例1で分離された化合物1のHSQC図である。
【
図4】実施例1で分離された化合物1のHMBC図である。
【
図5】実施例1で分離された化合物1のNOESY図である。
【
図6】実施例1で分離された化合物2の
1H-NMR図である。
【
図7】実施例1で分離された化合物2の
13C-NMR図である。
【
図8】実施例1で分離された化合物2のHSQC図である。
【
図9】実施例1で分離された化合物2のHMBC図である。
【
図10】実施例1で分離された化合物2のNOESY図である。
【
図11】実施例1で分離された化合物1-2のCD図である。
【
図12】実施例1で分離された化合物1-2のDP4+図である。
【
図13】実施例1で分離された化合物1-2の抗炎症効果図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施例に関連して本発明を詳細に説明するが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。以下に説明する実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、当業者にとって創造的労働を行うことなく得た他の同様の実施例は本発明が保護する範囲に含まれることは明らかである。特に説明がない限り、本発明で使用される実験方法は全て通常の方法であり、使用される実験器具、材料、試薬等はすべて市販されているものである。
【0019】
(実施例1)
ポリケチド化合物の製造方法は、主にステップ(1)とステップ(2)を含む。
【0020】
(1)菌種発酵:チベットイワベンケイの葉部位から採集したAlternaria属内生菌(Alternaria sp.)HJT-Y7を真菌4号培地(2%のマンニトール、2%のブドウ糖、0.5%の酵母エキス、1%のペプトン、0.05%のKH2PO4、0.03%のMgSO4・7H2O、0.1%のコーンスティープリカー、脱イオン水により調製したものである)で振とう培養し、培養条件は、28℃、180r/分であり、振とう培養して得られた発酵液を菌糸体とともに、米固体培地(米と純水を80g:110mLの質量体積比で調製したものである)が加えている三角フラスコに接種し、培養温度28℃で40日間静置して発酵培養し、固体発酵生成物を得る。
【0021】
(2)代謝産物の抽出分離:ステップ(1)で得られた固体発酵生成物を、等体積のメタノールで超音波抽出し、8層のガーゼでろ過し、抽出液を菌糸体及び米から分離し、抽出液を濃縮し、抽出液をシリカゲルクロマトグラフィーカラムにロードして分離を行い、ここで、300-400メッシュのシリカゲルを固定相とし、クロロホルム/メタノールを移動相として勾配溶出を行い、勾配が順にクロロホルム:メタノール=100:0、100:1、100:2、100:3、100:5、100:10、0:100(v/v)であり、溶出剤(移動相)の流速は30mL/分で、勾配ごとに10000mLを溶出させ、溶出液(500mLごとに1瓶)を収集して濃縮し、TLCの結果に基づき、瓶を合わせて、画分1~16を順次に得、画分7をシリカゲルクロマトグラフィーカラムにロードして分離を行い、ここで、200-300メッシュのシリカゲルを固定相とし、石油エーテル/酢酸エチルを移動相として勾配溶出を行い、勾配が順に石油エーテル:酢酸エチル=10:1、10:3、10:5、10:6、10:7、10:9(v/v)であり、溶出剤の流速は30mL/分で、溶出液(500mLごとに1瓶)を収集して濃縮し、TLCの結果に基づき、瓶を合わせて、画分7-1~7-10を順次に得、画分7-6をSephadex LH-20ゲルカラムにロードして分離を行い、ここで、移動相はジクロロメタン/メタノール=1:1(v/v)の混合液であり、流速は0.3mL/分であり、溶出液(10mlごとに1回集める)を収集し、溶出液を4つずつ合わせて一つの画分とし、順に画分7-6-1~7-6-6を得、画分7-6-3をAgilent C18高速液体クロマトグラフィーカラムにロードして分離を行い、ここで、移動相は55%のメタノール水溶液であり、流速が3mL/分であり、検出器が210nmの紫外線検出器で、保持時間59分で単量体化合物1が得られ、保持時間62分で単量体化合物2が得られる。
【0022】
(3)構造同定:重水素置換のジメチルスルホキシドを溶媒とし、Bruker AvanceII 500M 核磁気共鳴スペクトロメータを用いて、分離された化合物1と化合物2の核磁気共鳴スペクトルを測定し、質量スペクトルを利用して分子式を推定し、円偏光二色性分析器J-810-150Sを用いて化合物1と化合物2の円偏光二色スペクトルを検測し、使用DP4+ソフトを用いて化合物1と化合物2の立体構造を計算し、核磁気共鳴スペクトル、CDの結果及び計算の結果に基づき、最終的に生成物の構造を同定する。
【0023】
化合物1のスペクトルデータは、以下に示すとおりである。
1H-NMR (500 Hz, DMSO-d6) δ : 3.14 (1H, d, J = 13.5 Hz, H-1a), 4.17 (1H, d, J = 13.5 Hz, H-1b), 9.45 (1H, s, H-3OH), 6.63 (1H, d, J = 8.0 Hz, H-4), 7.00 (1H, t, J = 8.0 Hz, H-5), 6.72 (1H, d, J = 8.0 Hz, H-6), 6.56 (1H, d, J = 12.5 Hz, H-8), 6.01 (1H, d, J = 12.5Hz, H-9), 3.72 (1H, q, J = 6.0 Hz, H-11), 0.87 (3H, d, J = 6.0 Hz, H-12), 5.04 (1H, d, J = 12.5 Hz, H-1’a), 5.23 (1H, d, J = 12.5 Hz, H-1’b), 9.67 (1H, s, H-3’OH), 6.83 (1H, d, J = 8.0 Hz, H-4’), 7.05 (1H, t, J = 8.0 Hz, H-5’), 6.76 (1H, d, J = 8.0 Hz, H-6’), 4.04 (1H, d, J = 10.0Hz, H-8’), 4.54 (1H, d, J = 10.0 Hz, H-9’), 3.66 (1H, s, H-10’), 2.17 (3H, s, H-12’)。
13C-NMR (125 Hz, DMSO-d6) δ : 59.5 (C-1), 126.8 (C-2), 153.3(C-3), 114.4 (C-4), 128.3 (C-5), 121.2 (C-6), 137.4 (C-7), 131.1 (C-8), 137.1 (C-9), 93.7 (C-10), 81.7 (C-11), 12.9 (C-12), 61.0 (C-1’), 122.8 (C-2’), 156.1 (C-3’), 115.3 (C-4’), 128.6 (C-5’), 123.3 (C-6’), 139.3 (C-7’), 59.8 (C-8’), 79.3 (C-9’), 79.7 (C-10’), 209.5 (C-11’), 28.0 (C-12’)。
【0024】
化合物1のHMBCスペクトルの結果は、以下に示すとおりである。
【化2】
【0025】
化合物1のNOESYスペクトルの結果は、以下に示すとおりである。
【化3】
【0026】
化合物2のスペクトルデータは、以下に示すとおりである。
1H-NMR (500 Hz, DMSO-d6) δ : 4.33 (1H, d, J = 13.5 Hz, H-1a), 5.11 (1H, d, J = 13.5 Hz, H-1b), 9.62 (1H, s, H-3OH), 6.83 (1H, d, J = 8.0 Hz, H-4), 7.16 (1H, t, J = 8.0Hz, H-5), 6.85 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.63 (1H, d, J = 12.5 Hz, H-8), 5.85 (1H, d, J = 12.5 Hz, H-9), 4.31 (1H, q, J = 6.5 Hz, H-11), 1.31 (3H, d, J = 6.5 Hz, H-12), 4.33 (1H, d, J = 13.5 Hz, H-1’a), 5.27 (1H, d, J = 13.5 Hz, H-1’b), 9.40 (1H, s, H-3’OH), 6.58 (1H, d, J = 7.8 Hz, H-4’), 6.53 (1H, t, J = 7.8 Hz, H-5’), 6.82 (1H, d, J = 7.8 Hz, H-6’), 3.84 (1H, d, J = 10.0 Hz, H-8’), 3.75 (1H, d, J = 10.0 Hz, H-9’), 4.01 (1H, s, H-10’), 2.14 (3H, s, H-12’)。
13C-NMR (125 Hz, DMSO-d6) δ : 59.1 (C-1), 126.0 (C-2), 154.0 (C-3), 115.2 (C-4), 128.6 (C-5), 122.1 (C-6), 137.5 (C-7), 131.6 (C-8), 132.9 (C-9), 92.5 (C-10), 84.6 (C-11), 20.7 (C-12), 64.0 (C-1’), 126.4 (C-2’), 154.4 (C-3’), 113.8 (C-4’), 127.9 (C-5’), 119.8 (C-6’), 136.7 (C-7’), 52.5 (C-8’), 78.7 (C-9’), 91.5 (C-10’), 205.3 (C-11’), 27.7 (C-12’).
【0027】
化合物2のHMBCスペクトルの結果は、以下に示すとおりである。
【化4】
【0028】
化合物2のNOESYスペクトルの結果は、以下に示すとおりである。
【化5】
【0029】
(実施例2)
実施例1で製造された化合物1-2の抗炎症活性に対する研究
マウスRAW 264.7マクロファージの培養:RAW 264.7マクロファージを、10%のウシ胎仔血清(<0.5EU/mL)、1%のペニシリンとストレプトマイシンを含む高糖質DMEMの培地に接種し、37℃、5%のCO2インキュベーターに置いて培養する。細胞被覆率が約90%に達すると、上清を捨て、直接37℃の培地を加えて吹き付け、継代培養する。対数増殖期の細胞を取って、後の実験に用いる。
【0030】
LPS誘発によるRAW 264.7マクロファージ炎症モデルの作成:対数増殖期のRAW 264.7細胞を取って、一ウェル当たり1×104個の細胞を96ウェルの細胞培養プレートに接種し、24時間経って細胞が接着されてから、正常対照群、LPSモデル群、陽性対照群及び化合物群を設置し、各群は6ウェルずつ設ける。正常対照群とLPSモデル群は、まず無血清DMEM培地で細胞を培養し、化合物群はそれぞれ終濃度が40.00、20.00、10.00、5μMの化合物1又は化合物2を含む無血清DMEMで細胞を培養し、陽性対照群は終濃度が200μMのL-NAME(一酸化窒素シンターゼ阻害剤)を含む無血清DMEMで細胞を培養し、上記のようにして細胞を4時間培養してから、正常対照群を無血清DMEMで引き続き培養する他、ほかの群に終濃度が1μg/mLのLPSを加えて細胞を刺激し、24時間後に各ウェル当たり50μLの培地を収集し、一酸化窒素スクリーニングキットでNOの分泌状況を検出し、且つ各ウェルに濃度が5g/LのMTTを10μL加え、引き続き4時間培養してから上清を捨て、各ウェルにDMSOを150μL加え、10分振とうし、570nm下で各ウェルの吸光度を測定する。
【0031】
MTTの結果は、実施例1で製造された化合物1と化合物2のIC
50が100μMより大きい(IC
50>100μM)ことを示し、抗炎症実験の結果は
図13に示し、モデル群と比べて、化合物1と化合物2は、濃度によって、NOの放出を異なる程度で抑制し、その中、5μMの濃度でいずれも陽性対照群よりも優れた抑制活性を示し、これにより、化合物1と化合物2は良好な抗炎症活性を有することは明らかである。
【0032】
最後に以下のことを説明すべきである。以上の各実施例は本発明の技術的手段を説明するためのものにすぎなく、それを限定するものではない。上述した各実施例を参照しながら本発明を詳細に説明したが、上述した各実施例に記載の技術的手段を修正するか、またはその技術的特徴の一部または全部に同等な取り替えを実施することも可能であり、それらの修正や取り替えによって、対応する技術的手段の本質が本発明の各実施例の技術的手段の範囲から逸脱しないことは当業者に理解されよう。
【0033】
[付記]
[付記1]
下式に示す構造を有するポリケチド化合物又はその薬学的に許容される塩。
【化6】
【0034】
[付記2]
2022年5月6日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに寄託され、寄託番号がCGMCC No.40166で、寄託機関の住所が北京市朝陽区北辰西路一号院三号であるAlternaria属内生菌(Alternaria sp.)HJT-Y7。
【0035】
[付記3]
付記2に記載のAlternaria属内生菌(Alternaria sp.)HJT-Y7を真菌4号培地に接種して、振とう培養し、得られた発酵液を菌糸体とともに米固体培地に接種し、20~30℃で10~40日間静置して発酵させ、固体発酵生成物を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた固体発酵生成物を、メタノールを用いて抽出してろ過し、得られた抽出液をシリカゲルクロマトグラフィーカラムにロードし、体積比100:0~0:100のクロロホルム/メタノールを移動相として勾配溶出を行い、TLCの結果に基づき、画分1~16を順次に得、画分7をシリカゲルクロマトグラフィーカラムにロードし、体積比10:1~10:9の石油エーテル/酢酸エチルを移動相として勾配溶出を行い、TLCの結果に基づき、画分7-1~7-10を順次に得、画分7-6をSephadex LH-20ゲルカラムにロードし、体積比1:1のジクロロメタン/メタノール混合液を移動相して溶出を行い、画分7-6-1~7-6-6を順次に得、画分7-6-3をAgilent C18高速液体クロマトグラフィーカラムにロードし、55%のメタノール水溶液を移動相として溶出を行って、化合物1と化合物2を得るステップ(2)と、を含む、付記1に記載のポリケチド化合物の製造方法。
【0036】
[付記4]
ステップ(1)における前記振とう培養の条件は、20~30℃で、100~200r/分である、付記3に記載の製造方法。
【0037】
[付記5]
ステップ(1)における前記米固体培地は、米と純水を80:80~120g/mLの質量体積比で調製して得られる、付記3に記載の製造方法。
【0038】
[付記6]
ステップ(1)における前記真菌4号培地は、2%のマンニトール、2%のブドウ糖、0.5%の酵母エキス、1%のペプトン、0.05%のKH2PO4、0.03%のMgSO4・7H2O、0.1%のコーンスティープリカー、脱イオン水により構成される、付記3に記載の製造方法。
【0039】
[付記7]
ステップ(2)における前記勾配溶出の過程において、クロロホルム/メタノールの体積比は、100:0、100:1、100:2、100:3、100:5、100:10、0:100である、付記3に記載の製造方法。
【0040】
[付記8]
ステップ(2)における前記勾配溶出の過程において、石油エーテル/酢酸エチルの体積比は10:1、10:3、10:5、10:6、10:7、10:9である、付記3に記載の製造方法。
【0041】
[付記9]
付記1に記載のポリケチド化合物又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される添加剤を含む、医薬組成物。
【0042】
[付記10]
付記1に記載のポリケチド化合物又はその薬学的に許容される塩又は付記9に記載の医薬組成物の、抗炎症薬物の製造のための使用。
【国際調査報告】