(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-14
(54)【発明の名称】超音波装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01B 17/02 20060101AFI20241107BHJP
G01N 29/265 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G01B17/02
G01N29/265
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547951
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 IB2022000640
(87)【国際公開番号】W WO2023067393
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524152285
【氏名又は名称】ビーダブリューエックスティー カナダ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デッカー、ロバート、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、ロバート、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ウェスト、マイケル、ルーカス
【テーマコード(参考)】
2F068
2G047
【Fターム(参考)】
2F068AA01
2F068AA28
2F068BB09
2F068DD12
2F068FF12
2F068JJ11
2F068KK04
2F068LL04
2F068PP02
2F068TT04
2G047AA05
2G047AB01
2G047AC01
2G047BA03
2G047BB02
2G047BC18
2G047GA03
2G047GB02
2G047GJ11
(57)【要約】
対象物をスキャンするための超音波装置であって、前記装置は、対象物に結合するように構成されたカラーであって、弓形セグメントを有するカラーと、カラーに結合されたキャリッジであって、弓形セグメントに沿って変位するように構成されたキャリッジと、カラーに結合され、対象物の表面に対して適合接触を維持するように構成された輪郭形成面を有するウェッジを備える超音波プローブ・ユニットであって、ウェッジの輪郭形成面を通って対象物内に送信するための超音波ビームを放出するように構成された超音波プローブ・ユニットと、キャリッジに結合された位置探知器であって、超音波プローブ・ユニットの位置を記録するように構成された位置探知器とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物をスキャンするための超音波装置であって、前記装置は、
前記対象物に結合するように構成されたカラーであって、弓形セグメントを有するカラーと、
前記カラーに結合されたキャリッジであって、前記弓形セグメントに沿って変位するように構成されたキャリッジと、
前記カラーに結合され、前記対象物の表面に対して適合接触を維持するように構成された輪郭形成面を有するウェッジを備える超音波プローブ・ユニットであって、前記ウェッジの前記輪郭形成面を通って前記対象物内に送信するための超音波ビームを放出するように構成された超音波プローブ・ユニットと、
前記キャリッジに結合された位置探知器であって、前記超音波プローブ・ユニットの位置を記録するように構成された位置探知器と
を備える、超音波装置。
【請求項2】
前記超音波プローブ・ユニットは、前記ウェッジの前記輪郭形成面上への分散のために超音波カプラントを受容する、請求項1に記載の超音波装置。
【請求項3】
前記超音波プローブ・ユニットの前記位置は調整可能である、請求項2に記載の超音波装置。
【請求項4】
前記超音波プローブ・ユニットは、前記対象物に対して入射角で前記超音波ビームを放出する、請求項3に記載の超音波装置。
【請求項5】
前記超音波プローブ・ユニットは、ビーム・ステアリングを使用して前記入射角を調整するように構成される、請求項4に記載の超音波装置。
【請求項6】
前記入射角は、前記超音波ビームを前記対象物の背面に対して実質的に垂直に反射するように選択される、請求項5に記載の超音波装置。
【請求項7】
前記超音波プローブ・ユニットは、前記超音波ビームを放出するように構成されたフェーズド・アレイ超音波プローブを備える、請求項6に記載の超音波装置。
【請求項8】
前記フェーズド・アレイ超音波プローブは、前記超音波ビームを生成するように構成された複数の超音波要素を備える、請求項7に記載の超音波装置。
【請求項9】
前記位相アレイ超音波プローブは、少なくとも16個の超音波要素と、32個以下の超音波要素とを備える、請求項8に記載の超音波装置。
【請求項10】
前記超音波プローブ・ユニットに結合された付勢要素をさらに備え、前記付勢要素は、前記ウェッジと前記対象物との間に接触圧力を加えるように構成されている、請求項9に記載の超音波装置。
【請求項11】
前記付勢要素はばねである、請求項10に記載の超音波装置。
【請求項12】
対象物をスキャンするための超音波装置であって、前記装置は、
前記対象物に結合するように構成されたカラーであって、弓形セグメントを有するカラーと、
前記カラーに結合されたキャリッジであって、前記弓形セグメントに沿って変位するように構成されたキャリッジと、
前記カラーに結合され、前記対象物の表面に対して適合接触を維持するように構成された輪郭形成面を有するウェッジを備える超音波プローブ・ユニットであって、前記ウェッジの前記輪郭形成面を通って前記対象物内に送信するための超音波ビームを放出するように構成された超音波プローブ・ユニットと、
前記キャリッジに結合された位置探知器であって、前記超音波プローブ・ユニットの位置を記録するように構成された位置探知器と
を備え、
前記弓形セグメントは、前記カラーの円周の約180度から約220度未満にわたる、超音波装置。
【請求項13】
前記超音波プローブ・ユニットは、前記ウェッジの前記輪郭形成面上への分散のために超音波カプラントを受容する、請求項12に記載の超音波装置。
【請求項14】
前記超音波プローブ・ユニットは、前記対象物に対して入射角で前記超音波ビームを放出する、請求項12に記載の超音波装置。
【請求項15】
前記超音波プローブ・ユニットは、前記超音波ビームを放出するように構成されたフェーズド・アレイ超音波プローブを備える、請求項14に記載の超音波装置。
【請求項16】
前記超音波プローブ・ユニットに結合された付勢要素をさらに備え、前記付勢要素は、前記ウェッジと前記対象物との間に接触圧力を加えるように構成されている、請求項15に記載の超音波装置。
【請求項17】
前記付勢要素はばねである、請求項16に記載の超音波装置。
【請求項18】
対象物をスキャンするための超音波装置であって、前記装置は、
前記対象物に結合するように構成されたカラーであって、弓形セグメントを有するカラーと、
前記カラーに結合されたキャリッジであって、前記弓形セグメントに沿って変位するように構成されたキャリッジと、
前記カラーに結合され、前記対象物の表面に対して適合接触を維持するように構成された輪郭形成面を有するウェッジを備える超音波プローブ・ユニットであって、前記ウェッジの前記輪郭形成面を通って前記対象物内に送信するための超音波ビームを放出するように構成された超音波プローブ・ユニットと、
前記キャリッジに結合された位置探知器であって、前記超音波プローブ・ユニットの位置を記録するように構成された位置探知器と
を備え、
前記カラーは、前記カラーと前記対象物との間の適合接触を提供するための複数の弾性的な圧縮可能な要素をさらに備える、超音波装置。
【請求項19】
前記超音波プローブ・ユニットは、前記超音波ビームを放出するように構成されたフェーズド・アレイ超音波プローブを備える、請求項18に記載の超音波装置。
【請求項20】
前記カラーは、前記対象物に解除可能に取り付けるように構成されたクランプである、請求項19に記載の超音波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2021年10月21日に出願した米国仮特許出願第63/270,286号の優先権を主張するものであり、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般的に、超音波装置に関し、より詳細には、対象物の壁厚を測定するための超音波装置に関する。
【背景技術】
【0003】
カナダ型重水(CANDU:Canada Deuterium Uranium)炉などの原子炉で使用されるフィーダ・パイプは、原子炉の過熱、溶融、及びその他の否定的な事象を防ぐための熱輸送システムの一部を形成する。流れ加速型腐食により、フィーダ・パイプの強度及び完全性が低下し、壁がより薄くなり、亀裂が生じ、その他の悪化した状態が生じる。フィーダ・パイプをGrayloc(商標)ハブなどのハブに接続するためのフィーダ・ハブ溶接は、特に、流れ加速型腐食の影響を受けやすい。その結果、フィーダ・パイプの機械的適合性、特にフィーダ・ハブ溶接位置での壁厚を定期的に検査することが必要とされる。
【0004】
手作業による検査は、フィーダ・ハブの壁厚を検出するために超音波ペンシル・プローブを使用することができるが、操作者のエラーが生じやすい。フィーダ・ハブ溶接面上の複雑なトポグラフィは、ペンシル・プローブを手作業で配置して正確な測定を行う際に課題となる。隣接するフィーダ・パイプなどの環境障害物により、検査位置とその周辺の物理的なスペースが制限され、検査位置でのプローブの配置及び配向がさらに妨げられ得る。検査員は、厚い手袋を含む放射線防御具を何層も着用することにより器用さが抑制されるため、正確な壁厚の測定を行うための手作業の精度をさらに欠く。検査中に放射線にさらされるため、迅速な検査の必要性も伴う。既知の技術の欠点を克服し、さらなる利点を提供するために、超音波検査のさらなる改善及び進歩を生み出すことが依然として望ましい。
【0005】
このセクションは、本開示に関連し得る技術のさまざまな態様を導入することを意図している。この議論は、本開示の特定の態様のよりよい理解を容易にするためのフレームワークを提供するのに役立つと考えられる。したがって、このセクションは、必ずしも先行技術の承認としてではなく、この観点から読む必要があることを理解されたい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施例は、対象物をスキャンするための超音波装置を提供し、この装置は、対象物に結合するように構成されたカラーであって、弓形セグメントを有するカラーと、カラーに結合されたキャリッジであって、弓形セグメントに沿って変位するように構成されたキャリッジと、カラーに結合され、対象物の表面に対して適合接触を維持するように構成された輪郭形成面を有するウェッジを備える超音波プローブ・ユニットであって、ウェッジの輪郭形成面を通って対象物内に送信するための超音波ビームを放出するように構成された超音波プローブ・ユニットと、キャリッジに結合された位置探知器であって、超音波プローブ・ユニットの位置を記録するように構成された位置探知器とを有する。
【0007】
本開示の別の実施例は、対象物をスキャンするための超音波装置を提供し、この装置は、対象物に結合するように構成されたカラーであって、弓形セグメントを有するカラーと、カラーに結合されたキャリッジであって、弓形セグメントに沿って変位するように構成されたキャリッジと、カラーに結合され、対象物の表面に対して適合接触を維持するように構成された輪郭形成面を有するウェッジを備える超音波プローブ・ユニットであって、ウェッジの輪郭形成面を通って対象物内に送信するための超音波ビームを放出するように構成された超音波プローブ・ユニットと、キャリッジに結合された位置探知器であって、超音波プローブ・ユニットの位置を記録するように構成された位置探知器とを有しており、弓形セグメントは、カラーの円周の約180度から約220度未満にわたる。
【0008】
本開示の別の実施例は、対象物をスキャンするための超音波装置を提供し、この装置は、対象物に結合するように構成されたカラーであって、弓形セグメントを有するカラーと、カラーに結合されたキャリッジであって、弓形セグメントに沿って変位するように構成されたキャリッジと、カラーに結合され、対象物の表面に対して適合接触を維持するように構成された輪郭形成面を有するウェッジを備える超音波プローブ・ユニットであって、ウェッジの輪郭形成面を通って対象物内に送信するための超音波ビームを放出するように構成された超音波プローブ・ユニットと、キャリッジに結合された位置探知器であって、超音波プローブ・ユニットの位置を記録するように構成された位置探知器とを有しており、カラーは、カラーと対象物との間の適合接触を提供するための複数の弾性的に圧縮可能な要素をさらに備える。
【0009】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の1つ又は複数の実施例を示し、明細書とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0010】
以下、本発明のすべてではないが、いくつかの実施例が示されている添付図面を参照して、本発明がさらに詳しく説明される。実際、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載された実施例に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施例は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本明細書に開示される超音波装置の斜視図である。
【
図3】
図1及び
図2に示す超音波装置の後部の拡大斜視図である。
【
図4】
図1~
図3に示す超音波プローブ・ユニットの斜視図である。
【
図5】Grayloc(商標)ハブの溶接継手にクランプされた
図1~
図3に示す超音波装置の斜視図である。
【
図6】
図5に示すような、Grayloc(商標)ハブにクランプされた超音波装置の上面図である。
【
図7】
図6に示すような、Grayloc(商標)ハブにクランプされた超音波装置の側方断面立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び図面において参照文字を繰り返し使用することは、本開示による発明の同一又は類似の特徴又は要素を表すことを意図している。
【0013】
ここで、本発明の現在好ましい実施例を参照するが、その1つ又は複数の実例が添付の図面に示されている。各実例は、本発明を限定するものではなく、説明のために提供されている。実際、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明に修正及び変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。例えば、一実施例の一部として図示又は説明される特徴は、別の実施例で使用されて、さらに別の実施例を生み出すことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に入るような修正及び変形を網羅することが意図される。
【0014】
本明細書で使用されるように、例えば「垂直の」、「水平の」、「上部の」、「下部の」、「上方に」又は「下方に」などであるが、これらに限定されない、開示された超音波装置の向きに対する方向又は位置を指す用語は、本明細書の図に示されるように、その通常の意図された動作における装置の向きに対する方向及び相対的な位置を指す。したがって、「垂直の」及び「上方の」という用語は、例えば、図面のうちの斜視図において、垂直方向及び相対的な上方位置を指し、異なる向きに配置することができる超音波装置に関してさえも、その文脈で理解されるべきである。
【0015】
さらに、本開示及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、「又は」という用語は、排他的な「又は」ではなく、包含的な「又は」を意味することが意図されている。すなわち、特に指定がない限り、又は、文脈から明らかでない限り、「Xは、A又はBを使用する」という語句は、自然な包含的置換のいずれかを意味することが意図されている。すなわち、「Xは、A又はBを使用する」という語句は、XがAを使用する、XがBを使用する、又はXがA及びBの両方を使用する、という場合のいずれによっても満たされる。さらに、本願及び添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「a」及び「an」は、一般的に、特に指定がない限り、又は文脈から単数形を対象とすることが明らかでない限り、「1つ又は複数」を意味するように解釈すべきである。本明細書及び特許請求の範囲の全体を通じて、以下の用語は、文脈上、特に指示がない限り、少なくとも本明細書に明示的に関連付けられている意味を取る。以下で特定される意味は、必ずしも用語を限定するものではなく、用語についての例示的な実例にすぎない。「a」、「an」及び「the」の意味は、複数の言及を含む場合があり、「in」の意味は、「in」及び「оn」を含む場合がある。本明細書で使用されるような「一実施例では」の語句は、同じ実施例を指す場合もあるが、必ずしも同じ実施例を指すとは限らない。
【0016】
図1及び
図2は、
図5~
図7にさらに示す対象物200の壁厚などの、対象物の最小壁厚を決定する際に使用するための超音波装置の例示的な実施例である。超音波装置100は、一般的に、カラー110と、キャリッジ120と、位置探知器130と、プローブ・ウェッジ140を備える超音波プローブ・ユニット150とを備える。カラー110は、対象物200上の所望のスキャン位置の近くにプローブ・ウェッジ140と超音波プローブ・ユニット150とを配置するために、対象物200に取り外し可能に結合するように設計される。
図5~
図7に示すように、例示的な対象物200は、フィーダ・パイプ210と、ハブ220と、フィーダ・パイプ210及びハブ220の間に形成された溶接継手230とを備える。
図5~
図7に特に示すように、ハブ220は、CANDU炉内で使用され得るGrayloc(商標)ハブ220aである。
【0017】
図1に示すように、カラー110は、略円形の形状とクランプ端部112とを有するクランプ状のカラーである。クランプ端部112は、第1のカラー端部112a及び第2のカラー端部112bを解除可能に接続するための掛け留め機構114と、掛け留め機構114を係止するための係止機構116とを含む。したがって、カラー110は、端部112a及び112bが互いに分離した開放状態と、端部112a及び112bが互いに留められた閉鎖状態とを含む。開放状態では、第1のカラー端部112aと第2のカラー端部112bとの間の開口部により、カラー110が対象物200の周りに巻き付くことができる。その後、第1のカラー端部112a及び第2のカラー端部112bは、係止機構116を使用して互いに留められ、係止することができ、それによって、対象物200の周りで、カラー110を閉鎖状態で係止することができる。逆に、超音波装置100が対象物200に取り付けられると、係止機構116は、掛け留め機構114の係止を解除するために解放することができ、カラー端部112a及び112bが離れて、超音波装置100を対象物200から取り外すためにカラー110を開くことができる。カラー110は、対象物200の表面にカラー110の嵌合を一致させるための複数のゴム片118をさらに含み得る。例えば、カラー110は、ゴムの弾性的に圧縮可能な性質により、溶接継手に存在し得るでこぼこの表面トポグラフィに適合するように取り付けることができる。一実施例では、ゴム片118は、弾性的に圧縮可能な材料で形成される。
【0018】
キャリッジ120は、カラー110の周りに位置探知器130と超音波プローブ・ユニット150とを取り付けて移動させるためのプラットフォームを提供する。キャリッジ120に結合された締付機構122は、カラー110の弓形セグメント111などの、カラー110の一部にキャリッジ120を解除可能に固定することができる。キャリッジ120は、位置探知器130及び超音波プローブ・ユニット150を変位させるために、カラー110の周りを移動するように構成される。
図1及び
図2の例示的な実施例では、キャリッジ120は、カラー110の円周の一部にわたるトラックなどの弓形セグメント111に移動可能に取り付けられる。キャリッジ120は、位置探知器130及び超音波プローブ・ユニット150を対象物200に対して位置決めするために、弓形セグメント111の周りを移動する。
【0019】
図1及び
図2に示す弓形セグメント111は、カラー110の円周の一部にしか及んでおらず、キャリッジ120をカラー110の部分的な円周に沿って変位することを制限する。その結果、
図1及び
図2に開示されているような超音波装置100の一実施例を使用して対象物200の全周を検査するには、複数のスキャンを完了する必要がある場合がある。例えば、カラー110は、第1のスキャンを完了するために、第1の半径方向位置でクランプすることができ、その後、第2のスキャンを完了するために、カラー110を第1の半径方向位置からクランプ解除し、回転させて、カラー110を第2の半径方向位置で再クランプする。このプロセスは、対象物200の全周をスキャンするために必要に応じて繰り返されてもよい。
【0020】
エンコーダなどの位置探知器130は、キャリッジ120がカラー110の周りを変位するときに、位置データを記録する。一実施例では、位置探知器130は、キャリッジ110をゼロ位置で記録し、ゼロ位置に対するその後のキャリッジ110の変位を記録する。位置探知器130によって記録された位置データと、超音波プローブ・ユニット150によって作成された厚さ測定値とを組み合わせることによって、対象物200の厚さ測定値が限局化され、体積測定スキャン・データを生成するために使用することができる。
【0021】
超音波プローブ・ユニット150は、対象物200の表面と一致するように輪郭付けられた輪郭形成面142を有するプローブ・ウェッジ140を備える。輪郭形成面は、キャリッジ110を移動させるときでも、プローブ・ウェッジ140が対象物200の表面との適合接触を維持することを促進する。一実施例では、プローブ・ウェッジ140は、硬質プラスチック材料を含む。一実施例では、超音波プローブ・ユニット150は、プローブ・ウェッジ140と対象物200との間に接触圧力を加えるためのばね152をさらに備えてもよい。例えば、ばね152は、対象物200の周りに巻き付き、プローブ・ウェッジ140と対象物200との間に追加の接触圧力を加えるために超音波プローブ・ユニット150をさらに取り付ける。
【0022】
図4に示すように、輪郭形成面142は湾曲しており、輪郭形成面142の頂部142aから底部142bまでテーパ状になっている。そのような輪郭形成されたプロファイルは、特に、テーパ状の円錐形の設計を有するGrayloc(商標)ハブ220aに適合するのに特に適している。輪郭形成面142は、プローブ・ウェッジ140と対象物200との間の接触を改善し、プローブ・ウェッジ140が、対象物の周りを回転するときに、対象物200との適合接触を維持することを可能にする。したがって、キャリッジ120が弓形セグメント11の周りを変位するときに、プローブ・ウェッジ140は、ハブ220及び溶接継手縁部230aとの接触を維持するなど、対象物との一貫した適合接触を維持することができる。プローブ・ウェッジ140は、本明細書に開示された実施例では、輪郭形成面142上に特定のテーパリングを有するように示されているが、当業者であれば、輪郭が、プローブ・ウェッジ140と対象物との間の適合接触を促進するために対象物の表面に一致するように設計され、したがって、他のタイプの形状、テーパ、及び輪郭を使用して、プローブ・ウェッジを対象物の表面に一致させることができることを理解するであろう。
【0023】
超音波プローブ・ユニット150は、対象物200の壁厚を測定する際に使用するための超音波信号を放出する。超音波信号は、送信のために物理的な媒体を必要とする。超音波プローブ・ユニット150は、超音波信号をプローブ・ウェッジ140を介して対象物200内に放出する。カプラントは、プローブ・ウェッジ140の表面上、例えば、輪郭形成面142上に提供され、輪郭形成面142と対象物200との間に存在する接触部の間隙を埋める。カプラントの実施例は、水、純水、ゲル、及び、当技術分野で知られている他の超音波カプラントを含む。
図3及び
図4に示すように、超音波プローブ・ユニットは、輪郭形成面142への送信及び輪郭形成面142上での分散のために、カプラントを受容するためのコネクタ154を含むことができる。この点に関して、カプラントは、超音波装置100の外部の貯蔵ユニット又は容器内に収容され、さらに輪郭形成面142の周りに分散するために、コネクタ154を介して超音波装置100内に送り込むことができる。一実施例では、超音波装置100は、放射線環境で動作し、カプラントは純水である。
【0024】
対象物200の厚さは、超音波信号の発信と、対象物200の内部から反射する超音波信号のエコーの受信との間の伝播遅延に基づいて決定することができる。厚さ測定値は、位置探知器130によって記録された位置データを使用して、対象物200上でさらに限局化できる。本明細書に開示するように、超音波プローブ・ユニット150は、対象物200内へ送信するために、プローブ・ウェッジ140と対象物200との間の接触点において、隣接するプローブ・ウェッジ140を介して超音波信号をパルス化することができる。プローブ・ウェッジ140と対象物200との間の接触不良又は接触の断絶により、プローブ・ウェッジ140と対象物200との間の超音波信号がひずむか、さもなければ超音波信号の送信が妨げられる。しかしながら、本明細書に開示されているような輪郭形成面142を有するプローブ・ウェッジ140は、対象物200に対する密着した適合接触を維持し、対象物200内への超音波信号の連続した送信に最適な媒体を提供する。さらに、プローブ・ウェッジ140が代わりに対象物200に接触するため、超音波プローブ・ユニット150は、対象物200に直接接触する必要がなく、それによって、超音波プローブ・ユニット150上の接触摩耗を防止する。
【0025】
図5~
図7に示すように、カラー110は、溶接継手230でしっかりとクランプされ、ハブ220又は溶接継手縁部230aなどの所望のスキャン位置の近位にプローブ・ウェッジ140及び超音波プローブ・ユニット150を位置決めする。
図7にさらに示すように、プローブ・ウェッジ140は、輪郭形成面142を備え、ハブ220及び溶接継手縁部230aとの適合接触を維持するように位置決めされ、超音波信号を対象物200内に送信するための適合接触点を提供する。超音波信号は、対象物200の端壁に到達するまで対象物200を通って送信し、そこで、超音波信号のエコー又は反射は、超音波プローブ・ユニット150に向かって戻るように伝播する。超音波プローブ・ユニット150は、超音波信号の送信と反射の受信との間の伝播遅延に基づいて壁厚を決定する際に使用するために、超音波信号反射を受信する。したがって、超音波プローブ・ユニット150は、その位置における対象物200の厚さを決定するために、ハブ220又は溶接継手縁部230aなどを介して、超音波信号を対象物200内にパルス化することができる。超音波プローブ・ユニット150は、プローブ・ウェッジ140に対して移動することができ、対象物200の表面に対して異なる入射角で送信するように超音波信号を調整することができる。所与のスキャン位置における対象物200の真の厚さは、超音波信号が対象物200の後壁に垂直に反射するときに識別され得る。一実施例では、超音波プローブ・ユニット150は、対象物200上の特定の位置における対象物の真の厚さを決定するために、複数の入射角をスイープする。超音波プローブ・ユニット150によって作成された厚さ測定値を位置探知器130によって記録された位置データと相関させることにより、対象物200上で厚さ測定値をさらに限局化することができ、体積測定スキャン・データの生成に役立てることができる。
【0026】
超音波プローブ・ユニット150は、対象物200の複数の位置における壁厚を測定することによって、最小の壁厚のために対象物200をスキャンすることができる。位置探知器130によって記録された位置データは、壁厚測定値を限局化することができ、対象物200の体積測定スキャンを生成するためにさらに使用することができる。壁厚測定値及び/又は体積測定スキャン・データを分析することにより、対象物200の機械的適合性を評価する際に使用するために、最小の壁厚を特定することができる。例えば、キャリッジ120を弓形セグメント111に沿って移動させることにより、プローブ・ウェッジ140及び超音波プローブ・ユニット150を対象物200の周りに半径方向に位置決めする。キャリッジ110が弓形セグメント111に沿って移動すると、プローブ・ウェッジ140は、対象物200との適合接触を維持し、超音波プローブ・ユニット150は、対象物200に沿った異なる半径方向位置で、壁厚測定値を収集して記録する。同様に、キャリッジ110が移動すると、位置探知器130は、対象物200上で壁厚測定値を限局化するために、対応する位置データを収集して記録する。このようにして、超音波プローブ・ユニット150は、キャリッジ110が弓形セグメント111に沿って移動すると、対象物200をスキャンする。
図5~
図7に特に示すように、プローブ・ウェッジ140及び超音波プローブ・ユニット150は、ハブ220及び溶接継手縁部230aに沿って壁厚をスキャンするように位置決めされる。
【0027】
弓形セグメント111は、カラー110の円周に完全に及んでいるわけではないので、超音波プローブ・ユニット150は、結果的に、対象物200の部分的な円周のスキャンに限定される。例えば、カラー110は、弓形セグメント111に及ぶ第1のスキャンを完了するために、対象物200上の第1の半径方向位置でクランプすることができ、その後、弓形セグメント111に沿って第2のスキャンを完了するために、カラー110を第1の半径方向位置からクランプ解除し、回転させて、カラー110を対象物200上の第2の半径方向位置で再クランプすることができる。このプロセスは、対象物200の円周にわたる複数のスキャンを生成するために必要に応じて繰り返すことができる。同様に、カラー110は、対象物200に沿って異なる垂直高度で半径方向のスキャンを完了するために、対象物の垂直軸に沿って異なる位置でクランプすることができる。
【0028】
一実施例では、超音波装置100は、超音波プローブ・ユニット150及びプローブ・ウェッジ140の高さ、角度、向き、又はその他の位置特性を調整するための複数の機構を含むことができる。例えば、つまみねじ102は、第1の軸に沿ってプローブ・ユニット150の位置を係止するために使用することができ、プローブ・ユニット150は、第1の回転軸104の周りをさらに旋回することができ、プローブ・ウェッジは、第2の回転軸106の周りを旋回することができる。このようにして、超音波プローブ・ユニット150及びプローブ・ウェッジ140の位置、角度及び向きは、調整することができ、プローブ・ウェッジ140から対象物200内に送信される超音波信号の入射角をさらに変更することができる。したがって、位置、角度及び/又は向きを調整することによって、超音波装置100は、真の壁厚を決定する際に使用するために複数の入射角をスイープすることができる。
【0029】
一実施例では、超音波プローブ・ユニット150は、超音波信号を生成するための位相アレイ超音波プローブを備える。フェーズド・アレイ超音波プローブは、複数の超音波要素を備えることができ、複数の超音波要素の各々は、対応する超音波パルスを生成し、複数の超音波パルスは、超音波信号を形成するためのものである。複数の超音波パルスは、超音波信号の入射角を修正するために、ビーム・ステアリングの原理を使用して制御することができる。
【0030】
超音波要素の数を増やすと、超音波プローブ・ユニット150のフォーム・ファクタ・サイズが大きくなると同時に、超音波プローブ・ユニット150の測定分解能も増加する。同様に、超音波要素の数を減少させると、超音波プローブ・ユニットのフォーム・ファクタ・サイズが小さくなると同時に、超音波プローブ・ユニット150の測定分解能も減少する。したがって、超音波要素の数を選択することは、性能とサイズとの間のトレードオフである。使用中、本明細書に開示されるような超音波装置100は、わずか16個の超音波要素を使用して正確な壁厚測定値を提供することが分かっており、本明細書に開示されるような超音波装置は、32個もの数の超音波要素を使用して適度に小さいフォーム・ファクタを維持することが分かっている。しかしながら、当業者は、適切なレベルの測定分解能を提供するために異なる数の超音波要素を使用する一方で、CANDU炉内のフィーダ溶接ハブを検査する場合のように、スペースが限られた環境での動作のために適度に十分小さいフォーム・ファクタを維持することもできるということを理解するであろう。
【0031】
前述の説明では、実施例を完全に理解できるように、説明の目的で多くの詳細が記載されている。しかしながら、これらの具体的な詳細が必要とされないことは、当業者には明らかであろう。他の例では、理解が曖昧にならないように、よく知られている電気構造及び回路がブロック図の形態で示されている。例えば、本明細書に説明される実施例がソフトウェア・ルーチン、ハードウェア回路、ファームウェア、又はそれらの組合せとして実装されるかどうかについては、具体的な詳細は提供されない。特許請求の範囲は、本明細書に記載された特定の実施例によって限定されるべきではなく、明細書全体と一致するように解釈されるべきである。
【0032】
本開示の実施例は、機械可読媒体(具現化されたコンピュータ可読プログラム・コードを有するコンピュータ可読媒体、プロセッサ可読媒体、又はコンピュータ使用可能媒体とも呼ばれる)に記憶されたコンピュータ・プログラム製品として表すことができる。機械可読媒体は、ディスケット、コンパクト・ディスク読出専用メモリ(CD-ROM:compact disk read only memory)、メモリ装置(揮発性又は不揮発性)、又は同様の記憶機構を含む、磁気、光学、又は電気記憶媒体を含む、任意の適切な有形の非一時的な媒体であり得る。機械可読媒体は、実行されるとき、プロセッサに本開示の一実施例による方法におけるステップを実行させる、さまざまな命令セット、コード・シーケンス、構成情報、又はその他のデータを含むことができる。当業者は、説明された実施形態を実施するために必要な他の命令及び動作も、機械可読媒体に記憶され得ることを理解するであろう。機械可読媒体に記憶された命令は、プロセッサ又はその他の適切な処理装置によって実行することができ、説明されたタスクを実行するための回路とインターフェースで連結することができる。
【0033】
本発明の1つ又は複数の好ましい実施例が上記で説明されているが、本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく、本発明にさまざまな修正及び変更を行うことができることは、当業者には理解されるべきである。本発明は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲及び趣旨に含まれるような修正及び変更を網羅することが意図される。
【国際調査報告】