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特表2024-542333固体電解質及びこれを含む全固体電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】固体電解質及びこれを含む全固体電池
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/04 20060101AFI20241108BHJP
   C03C 10/12 20060101ALI20241108BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241108BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241108BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20241108BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C03C10/04
C03C10/12
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01B1/06 A
H01B1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554917
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 KR2022019339
(87)【国際公開番号】W WO2023101459
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0170735
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0151209
(32)【優先日】2022-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、キュンロック
(72)【発明者】
【氏名】フワン、ヨンジン
【テーマコード(参考)】
4G062
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G062AA11
4G062BB05
4G062BB06
4G062CC10
4G062DA03
4G062DA04
4G062DB01
4G062DB02
4G062DB03
4G062DC04
4G062DD03
4G062DD04
4G062DE01
4G062DF01
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4G062FK01
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5G301CA28
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5H029AJ06
5H029AJ11
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(57)【要約】
本開示は、固体電解質及びこれを含む全固体電池に関する。具体的には、第1成分としての特定の成分系の酸化物を含む一方で第2成分としての別の成分系の酸化物又は塩をさらに含む、固体電解質(第1の固体電解質)及び固体電解質(第2の固体電解質)としての、特定の成分系の酸化物が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li、Si、B、Zr、及びPを含む固体電解質。
【請求項2】
2Li、Si、2B、Zr、及び2Pの総量の100mol%に基づいて、前記固体電解質中、2Liは、約40mol%よりも多いか又はそれに等しく、約80mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれており、Siは、約0mol%よりも多く、約30mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれており、2Bは、約0mol%よりも多く、約60mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれており、Zrは、約0mol%よりも多く、約50mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれており、2Pは、約0mol%よりも多く、約60mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれている
請求項1に記載の固体電解質。
【請求項3】
前記固体電解質中の2Li/(Si+2B+Zr)のモル分率は、約0.5~約5である、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項4】
前記固体電解質は、化学式1によって表され、
[化学式1]
a(LiO)・b(SiO)・c(B)・d(P)・e(ZrO
化学式1中、
aからeは、モル分率を表す実数であり、40≦a≦60、0<b≦30、0<c≦60、0<d≦60、及び0<e≦50である
請求項1に記載の固体電解質。
【請求項5】
a+b+c+d+e=100である、請求項4に記載の固体電解質。
【請求項6】
前記固体電解質の軟化点は、約500℃よりも高いか又はそれに等しく、約550℃よりも低いか又はそれに等しい、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項7】
前記固体電解質は、ガラス又はガラスセラミックである、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項8】
前記固体電解質は、Cu-Kαを用いたX線回折(XRD)分析においてLiPOに起因するピークが出現するガラスセラミックである、請求項7に記載の固体電解質。
【請求項9】
前記固体電解質は、非晶質構造中、約1nmよりも大きいか又はそれに等しく、約10nmよりも小さいか又はそれに等しいサイズを有するLiPO結晶相を有する、請求項8に記載の固体電解質。
【請求項10】
前記固体電解質は、約1.0×10-7S/cmよりも高いか又はそれに等しいイオン伝導率を有する、請求項1に記載の固体電解質。
【請求項11】
第1成分としての、Li、Si、B、Zr、及びPを含む酸化物;及び、
第2成分としての、Li、Al、Na、Mg、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Se、Rb、S、Y、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Pb、Bi、Au、La、Nd、Eu、I、Cl、Br、又はFのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物又は塩
を含む固体電解質。
【請求項12】
前記固体電解質中の2Li/(Si+2B+Zr)のモル分率は、約0.5~約5である、請求項11に記載の固体電解質。
【請求項13】
前記固体電解質は、化学式2によって表され、
[化学式2]
a(LiO)・b(SiO)・c(B)・d(P)・e(ZrO)・f(X
化学式2中、aからfは、モル分率を表す実数であり、40≦a≦60、0<b≦30、0<c≦60、0<d≦60、0<e≦50、0≦f≦50であり;
Xは、Li、Al、又はそれらの組み合わせであり;
Yは、Cl、O、又はそれらの組み合わせであり;
0<m≦5であり、0<n≦5である
請求項11に記載の固体電解質。
【請求項14】
a+b+c+d+e+f=100である、請求項13に記載の固体電解質。
【請求項15】
前記固体電解質の軟化点は、約500℃よりも高いか又はそれに等しく、約550℃よりも低いか又はそれに等しい、請求項11に記載の固体電解質。
【請求項16】
前記固体電解質は、ガラス又はガラスセラミックである、請求項11に記載の固体電解質。
【請求項17】
前記固体電解質は、Cu-Kαを用いたX線回折(XRD)分析においてLiPOに起因するピークを有する、請求項16に記載の固体電解質。
【請求項18】
前記固体電解質は、非晶質構造中、約1nmよりも大きいか又はそれに等しく、約10nmよりも小さいか又はそれに等しいサイズを有するLiPO結晶相を有する、請求項17に記載の固体電解質。
【請求項19】
前記固体電解質は、Cu-Kαを用いたX線回折(XRD)分析においてLi12Cl、又はAlに起因するピークをさらに有する、請求項17に記載の固体電解質。
【請求項20】
前記固体電解質は、約1.0×10-7S/cmよりも高いか又はそれに等しいイオン伝導率を有する、請求項11に記載の固体電解質。
【請求項21】
-B-O-Si-O-P-O-Zr-ネットワークに基づく非晶質構造を含む固体電解質。
【請求項22】
LiPO結晶相をさらに含む、請求項21に記載の固体電解質。
【請求項23】
前記LiPO結晶相は、約1nmよりも大きいか又はそれに等しく、約10nmよりも小さいか又はそれに等しいサイズを有する、請求項22に記載の固体電解質。
【請求項24】
Li12Cl結晶相又はAl結晶相をさらに含む、請求項22に記載の固体電解質。
【請求項25】
固体電解質層、及び、前記固体電解質層を間に配置して交互に積み重ねられた正極層及び負極層を含む本体;及び
前記本体の両側にそれぞれ配置された第1の外部電極及び第2の外部電極
を備え、
前記固体電解質層は、請求項1に記載の固体電解質を含む
全固体電池。
【請求項26】
前記正極層及び前記負極層は、集電層及び前記集電層上の電極活物質層をそれぞれ含み;
前記集電層及び前記電極活物質層は、請求項1から24のいずれか一項に記載の固体電解質及び炭素系導電材料をそれぞれ含み;
前記電極活物質層は、電極活物質をさらに含む
請求項25に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解質及びこれを含む全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
再充電可能なリチウム電池は、移動電話、ラップトップ、スマートフォンなどのような小型電子デバイスを駆動するための電力源として広く使用されており、電気車両を駆動するための及びエネルギー貯蔵デバイスなどのための電力を貯蔵するための電力源としてさらに発展的に応用されている。
【0003】
再充電可能なリチウム電池の最も一般的なタイプはリチウムイオン電池であるが、これは、液体電解質を使用するものであり、したがって問題(例えば、漏液、発火、爆発などの潜在的危険性)を有する。
【0004】
近年、リチウムイオン電池の問題を解決する次世代電池として、液体電解質を固体電解質に置き換えた「全固体電池」が脚光を浴びている。しかしながら、固体電解質は、液体電解質よりも低いイオン伝導率を有し、ひいては、電極及び電解質の間のイオン移動に対する界面抵抗の問題を有する。したがって、全固体電池の工業大量生産のためには、固体電解質のイオン伝導率、及び、電極及び電解質の間のイオン移動に対する界面抵抗を減少させる必要がある。
【0005】
他方、全固体電池がマイクロチップ形状を有するように製造される場合、全固体電池は、基本的に電池特性を有し、また、そのサイズ及び形状に基づいて、MLCC、パワーインダクタ部品などのようなIT部品とともに使用され得る。マイクロチップタイプ全固体電池において、環境保全性、製品性能、及び大量生産の観点から、硫化物系固体電解質又はポリマー系固体電解質ではなく、酸化物系固体電解質を使用することが有利である。しかしながら、一般に知られている酸化物系固体電解質は、非晶質ガラス構造を有し、したがって、マイクロチップタイプ全固体電池を製造するための共焼成処理(co-firing process)中に熱膨張するか又は容易に破壊されることがある。
[開示]
[技術的課題]
【0006】
一実施形態は、イオン伝導率を増加させ、電極及び電解質の間の界面抵抗を低下させ、熱膨張を抑制するとともに強度を高めることができる、固体電解質(第1の固体電解質)としての特定の成分系(component system)の酸化物を提供する。
【0007】
別の実施形態は、第1成分としての特定の成分系の酸化物及び第2成分としての別の成分系の酸化物又は塩を同時にさらに含むことによってさらに改善されたイオン伝導率を有する固体電解質(第2の固体電解質)を提供する。
【0008】
別の実施形態は、第1の実施形態による固体電解質及び第2の実施形態による固体電解質のいずれか1つの固体電解質を含む全固体電池を提供する。
[技術的解決手段]
【0009】
一実施形態は、第1の固体電解質を提供する。
【0010】
第1の固体電解質は、Li、Si、B、Zr、及びPを含む酸化物であってよい。
【0011】
2Li、Si、2B、Zr、及び2Pの総量の100mol%に基づいて、第1の固体電解質中、2Liは、約40mol%よりも多いか又はそれに等しく、約80mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよく、Siは、約0mol%よりも多く、約30mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよく、2Bは、約0mol%よりも多く、約60mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよく、Zrは、約0mol%よりも多く、約50mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよく、2Pは、約0mol%よりも多く、約60mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよい。
【0012】
第1の固体電解質中の2Li/(Si+2B+Zr)のモル分率は、約0.5~約5であり得る。
【0013】
第1の固体電解質は、化学式1によって表され得る。
[化学式1]
a(LiO)・b(SiO)・c(B)・d(P)・e(ZrO
ここで、化学式1中、aからeは、モル分率を表す実数であり、40≦a≦60、0<b≦30、0<c≦60、0<d≦60、及び0<e≦50である。
【0014】
a、b、c、d、及びeは、a+b+c+d+e=100を満たし得る。
【0015】
第1の固体電解質の軟化点は、約500℃よりも高いか又はそれに等しく、約550℃よりも低いか又はそれに等しくてよい。
【0016】
第1の固体電解質は、ガラス又はガラスセラミックであってよい。
【0017】
第1の固体電解質は、ガラスセラミックであってよく、Cu-Kαを用いたX線回折(XRD)分析においてLiPOに起因する結晶相が出現してよく、具体的には、約1nmよりも大きいか又はそれに等しく、約10nmよりも小さいか又はそれに等しいサイズを有するLiPO結晶相が、非晶質構造中に存在してよい。
【0018】
第1の固体電解質は、約1.0×10-8S/cmよりも高いか又はそれに等しいイオン伝導率を有してよい。
【0019】
別の実施形態は、第2の固体電解質を提供する。
【0020】
第2の固体電解質は、Li、Si、B、Zr、及びPを含む酸化物を含んでよく;第2成分として、Li、Al、Na、Mg、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Se、Rb、S、Y、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Pb、Bi、Au、La、Nd、Eu、I、Cl、Br、又はFのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物又は塩をさらに含んでよい。
【0021】
第2の固体電解質中の2Li/(Si+2B+Zr)のモル分率は、約0.5~約5であり得る。
【0022】
第2の固体電解質は、化学式2によって表され得る。
[化学式2]
a(LiO)・b(SiO)・c(B)・d(P)・e(ZrO)・f(X
ここで、化学式2中、aからfは、モル分率を表す実数であり、40≦a≦60、0<b≦30、0<c≦60、0<d≦60、0<e≦50、0≦f≦50であり;Xは、Li、Al、又はそれらの組み合わせであり;Yは、Cl、O、又はそれらの組み合わせであり;0<m≦5であり、0<n≦5である。
【0023】
a、b、c、d、e、及びfは、a+b+c+d+e+f=100を満たし得る。
【0024】
第2の固体電解質の軟化点は、約500℃よりも高いか又はそれに等しく、約550℃よりも低いか又はそれに等しくてよい。
【0025】
第2の固体電解質は、ガラス又はガラスセラミックであってよい。
【0026】
第2の固体電解質は、Cu-Kαを用いたX線回折(XRD)分析においてLiPOに起因するピークが出現するガラスセラミックであってよく、具体的には、約1nmよりも大きいか又はそれに等しく、約10nmよりも小さいか又はそれに等しいサイズを有するLiPO結晶相が、非晶質構造中に存在してよい。任意選択で、第2の固体電解質は、Cu-Kαを用いたX線回折(XRD)分析においてL Li12Cl又はAlに起因するピークをさらに示してよい。
【0027】
第2の固体電解質は、約1.0×10-7S/cmよりも高いか又はそれに等しいイオン伝導率を有してよい。
【0028】
固体電解質は、-B-O-Si-O-P-O-Zr-ネットワークに基づく非晶質構造を含んでよい。
【0029】
固体電解質は、LiPO結晶相をさらに含んでよい。
【0030】
LiPO結晶相は、約1nmよりも大きいか又はそれに等しく、約10nmよりも小さいか又はそれに等しいサイズを有してよい。
【0031】
固体電解質は、Li12Cl結晶相又はAl結晶相をさらに含んでよい。
【0032】
別の実施形態は、固体電解質層、及び、前記固体電解質層を間に配置して交互に積み重ねられた正極層及び負極層を含む本体;及び、前記本体の両側にそれぞれ配置された第1の外部電極及び第2の外部電極を備え、前記固体電解質層は、第1の固体電解質及び第2の固体電解質のいずれか1つを含む、全固体電池を提供する。
【0033】
前記正極層及び前記負極層は、集電層及び前記集電層上の電極活物質層をそれぞれ独立に含んでよく;前記集電層及び前記電極活物質層は、第1の固体電解質及び第2の固体電解質のいずれか1つ及び炭素系導電材料をそれぞれ独立に含み;前記電極活物質層は、電極活物質をさらに含んでよい。
[発明の有利な効果]
【0034】
第1の固体電解質は、高いイオン伝導率、電極及び電解質の間の低い界面抵抗、抑制された熱膨張及び強い強度を有し、その結果、多層マイクロチップタイプ全固体電池は、共焼成処理を通して製造され得る。
【0035】
さらに、第2の固体電解質は、第1の固体電解質に比較してより高いイオン伝導率を有し、したがって、マイクロチップタイプ全固体電池の性能がさらに改善され得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施形態による固体電解質を構成する元素間の結合関係を示している((a):第1の固体電解質、(b):第2の固体電解質)。
【0037】
図2】一実施形態による全固体電池の断面概略図である。
【0038】
図3】実施例1による固体電解質に対する熱機械分析(TMA)の結果を示している。
【0039】
図4】実施例8による固体電解質に対する熱機械分析(TMA)の結果を示している。
【0040】
図5】2つの実施例1及び8(左:実施例1、右:実施例8、スケールバーは1μmである)による固体電解質の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示している。
【0041】
図6】実施例1による固体電解質に対する、Cu-Kαを用いたX線回折(XRD、Bruker AXS D4-Endeavor XRD)分析の結果を示している。
【0042】
図7】実施例5による固体電解質に対する、Cu-Kαを用いたX線回折(XRD、Bruker AXS D4-Endeavor XRD)分析の結果を示している。
【0043】
図8】実施例6による固体電解質に対する、Cu-Kαを用いたX線回折(XRD、Bruker AXS D4-Endeavor XRD)分析の結果を示している。
【0044】
図9】本発明の実施例7による固体電解質に対する、Cu-Kαを用いたX線回折(XRD、Bruker AXS D4-Endeavor XRD)分析の結果を示している。
【0045】
図10】本発明の実施例8による固体電解質に対する、Cu-Kαを用いたX線回折(XRD、Bruker AXS D4-Endeavor XRD)分析の結果を示している。
【0046】
図11】TEM装置を使用して取得された、実施例1による固体電解質の局所領域の画像(右拡大図)を示している。
【0047】
図12】TEMデバイスを使用した、実施例8による固体電解質の局所領域の画像を示している。
【0048】
図13】実施例1及び8の固体電解質のそれぞれに関する抵抗測定結果を示している。
【0049】
図14】実施例1による全固体電池セルに関する電気化学評価結果を示している。 [本発明の態様]
【0050】
本開示は、本発明の実施形態が示されている添付図面を参照しながら、以下でより完全に説明される。図面及び説明は、本質的に例示とみなされるものであり、限定するものではない。類似の参照符号は、本明細書全体を通して類似の要素を示している。さらに、添付図面は、本明細書において開示される実施形態が容易に理解されるようにするためにのみ提供されており、本明細書において開示される趣旨を限定するものと解釈されるものではなく、本発明は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、全ての変形、均等物、及び置換を含むことが理解される。さらに、添付図面中のいくつかの構成要素は、誇張、省略、又は概略的に示されており、各構成要素のサイズは、実際のサイズを完全に反映するものではない。
【0051】
第1、第2などのような序数詞を含む用語は、様々な構成要素を説明するためにのみ用いられており、これらの構成要素を限定するものと解釈されるものではない。これらの用語は、或る構成要素を他の構成要素から区別するためにのみ用いられている。
【0052】
或る構成要素が別の構成要素に「接続されている」又は「結合されている」ものとして言及されている場合、それは、当該他の構成要素に直接接続又は結合されていてもよいし、又は、さらなる構成要素を間に介在させて、当該他の構成要素に接続又は結合されていてもよいことが理解される。対照的に、或る要素が別の要素に「直接結合されている」又は「直接接続されている」と記載されている場合、その要素及び当該他の要素の間に要素が存在しないことを理解すべきである。
【0053】
本明細書全体を通して、「含む」、「備える」、「有する」、又は「構成する」という用語は、本明細書において説明される特徴、数、段階、動作、構成要素、部分、又はそれらの組み合わせが存在しているが、前もって、1又は複数の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部分、又は組み合わせの存在又は追加の可能性を排除しないことを示すことを理解すべきである。別段の明示的な記載がない限り、「備える(comprise)」という単語及び「備える(comprises)」又は「備える(comprising)」などの変形は、一切の他の要素の排除ではなく、述べられた要素の包含を示唆することが理解される。
【0054】
本明細書全体を通して、「固体電解質」は、固体の状態でイオンの移動によって電流を流すことができる物質を指す。
【0055】
本明細書全体を通して、「ガラス」は、一般に、結晶化していないが、珪砂、ソーダ灰、炭酸石灰(carbonate lime)などの混合物を高温で溶解し、それを冷却する処理中に固化した透明性の高い物質であり、これを後で説明する「ガラスセラミック」と区別するために、「非晶質ガラス」と記載することがある。
【0056】
本明細書全体を通して、「ガラスセラミック」は、ガラス成形本体を遷移温度又はそれよりも高い温度及び軟化温度又はそれよりも低い温度で熱処理することによって取得される均質な微小結晶の集合体であり、「結晶化ガラス」と呼ばれる。
【0057】
「ガラスセラミック」は、非晶質相及び少なくとも1つの結晶相を有し、したがって、非晶質及び結晶質特性の両方を有する。具体的には、「ガラスセラミック」は、高強度、安定性、高温での耐化学性、イオン伝導率などを有し、非晶質ガラスに比較して熱膨張が抑制される。
【0058】
本明細書全体を通して、「イオン伝導率」は、物質のイオン伝導傾向を示す基準であり、理論上は、イオンの濃度、電荷の量、及び電荷の移動度に比例して増加する。
【0059】
以下、図面を参照しながら、様々な実施形態が詳細に説明される。
【0060】
(第1の固体電解質)
一実施形態は、Li、Si、B、Zr、及びPを含むガラス又はガラスセラミックである固体を提供する。
【0061】
第1の固体電解質は、Li、Si、B、及びPを含むがZrを含まない酸化物固体電解質に比較して、高いイオン伝導率、電極及び電解質の間の低い界面抵抗、抑制された熱膨張及び強い強度を有し、したがって、共焼成処理を通して多層マイクロチップタイプ全固体電池へと良好に製造され得る。
【0062】
第1の固体電解質を構成する元素の説明は、次の通りである。
【0063】
Li、Si、及びBは、固体電解質のための一般に知られている非晶質ガラスの必須構成元素であり、第1の固体電解質における非晶質構造も形成する。
【0064】
具体的には、第1の固体電解質中、2Li、Si、2B、Zr、及び2Pの総量の100mol%に基づいて、2Liは、約40mol%よりも多いか又はそれに等しく、約80mol%よりも少ないか又はそれに等しい、約40mol%よりも多いか又はそれに等しく、約70mol%よりも少ないか又はそれに等しい、又は、約40mol%よりも多いか又はそれに等しく、約60mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよい。Siは、約0mol%よりも多く、約30mol%よりも少ないか又はそれに等しい、約3mol%よりも多いか又はそれに等しく、約20mol%よりも少ないか又はそれに等しい、又は、約5mol%よりも多いか又はそれに等しく、約15mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよい。2Bは、約0mol%よりも多く、約60mol%よりも少ないか又はそれに等しい、約5mol%よりも多いか又はそれに等しく、約40mol%よりも少ないか又はそれに等しい、又は、約10mol%よりも多いか又はそれに等しく、約20mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよい。「約」という用語の意味は、当業者が認識可能な製造工程中に生じる処理誤差、測定誤差などを含み得る。例えば、「約X」であることは、「X」が数である場合、厳密に「X」であることも意味し得るし、又は、当業者が認識可能な製造工程中に生じる処理誤差、測定誤差などに起因する「X」からの許容可能な逸脱も含み得る。
【0065】
その一方、Zr及びPは、Li、Si、及びBとともに特定の構造を有する非晶質構造を形成し得る。具体的には、図1の(a)は、第1の固体電解質を構成する元素間の結合関係を示している。図1の(a)に示されているように、第1の固体電解質中、Li、Si、B、Zr、及びPは、非架橋酸化物(NBO)構造中に空孔を形成する-B-O-Si-O-P-O-Zr-ネットワークに基づく非晶質構造を提供し、そのため、高いイオン伝導率、低い熱膨張、及び高強度などの特性が実現され得る。
【0066】
対照的に、Li、Si、B、及びPを含むがZrを含まない酸化物固体電解質は、-B-O-Si-O-P-O-ネットワークに基づく非晶質構造を形成し得、これは、-B-O-Si-O-P-O-Zr-ネットワークに基づく非晶質構造とは異なり、非架橋酸化物(NBO)構造中に、より少数の空孔を有する不安定な構造を形成する。したがって、イオン伝導率、熱膨張、及び強度などの特性は、第1の固体電解質のそれらに劣ることがある。
【0067】
具体的には、Zrは、約0mol%よりも多く、約50mol%よりも少ないか又はそれに等しい、約1mol%よりも多いか又はそれに等しく、約20mol%よりも少ないか又はそれに等しい、又は、約1mol%よりも多いか又はそれに等しく、約10mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよい。2Pは、約0mol%よりも多く、約60mol%よりも少ないか又はそれに等しい、約1mol%よりも多いか又はそれに等しく、約20mol%よりも少ないか又はそれに等しい、又は、約5mol%よりも多いか又はそれに等しく、約15mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよい。
【0068】
参照のために、第1の固体電解質中の2Li、Si、2B、Zr、及び2Pの総量の100mol%に基づく各元素のモル含有量は、ICP分析を通して確認され得る。
【0069】
第1の固体電解質中の2Li/(Si+2B+Zr)のモル分率は、約0.5~約5であり得る。
【0070】
これは、第1の固体電解質を構成する主要元素のモル含有量を関係式として表している。上で言及したように、Li、Si、及びBは、非晶質ガラスの一般に知られている必須元素であり、Zrは、第1の固体電解質の特定のネットワーク構造の非晶質構造の形成に貢献する元素である。これらが上の関係式を満たす場合、-B-O-Si-O-P-O-Zr-ネットワークに基づく非晶質構造、及び、結果として非架橋酸化物(NBO)構造中の空孔が有効に形成され得る。
【0071】
例えば、第1の固体電解質中の2Li/(Si+2B+Zr)のモル分率は、約0.5よりも多いか又はそれに等しく、約1よりも多いか又はそれに等しく、又は約1.5よりも多いか又はそれに等しく、約5よりも少ないか又はそれに等しく、約4よりも少ないか又はそれに等しく、約3よりも少ないか又はそれに等しく、又は、約2よりも少ないか又はそれに等しくてよい。
【0072】
参照のために、第1の固体電解質中の2Li/(Si+2B+Zr)のモル分率は、第1の固体電解質中の2Li、Si、2B、Zr、及び2Pの総量の100mol%に基づく各元素のモル含有量から計算され得る。
【0073】
第1の固体電解質は、化学式1によって表され得る。
[化学式1]
a(LiO)・b(SiO)・c(B)・d(P)・e(ZrO
ここで、化学式1中、aからeは、モル分率を表す実数であり、40≦a≦80、40≦a≦0、又は40≦a≦60;0<b≦30、3≦b≦20、又は5≦b≦15;0<c≦60、5≦c≦40、又は10≦c≦20;0<d≦60、1≦d≦20、又は1≦d≦15;及び0<e≦50、1≦e≦20、又は1≦e≦10である。
【0074】
これらの説明は、第1の固体電解質中の2Li、Si、2B、Zr、及び2Pの総量の100mol%に基づく各元素のモル含有量の説明と同じである。
【0075】
第1の固体電解質は、その非晶質特性に基づいて特定の温度範囲で軟化し得る。
【0076】
第1の固体電解質の軟化点は、約500℃よりも高いか又はそれに等しく、約505℃よりも高いか又はそれに等しく、又は、約510℃よりも高いか又はそれに等しく、約550℃よりも低いか又はそれに等しく、約540℃よりも低いか又はそれに等しく、又は、約530℃よりも低いか又はそれに等しくてよい。
【0077】
参照のために、第1の固体電解質の軟化点は、TMA熱分析を通して確認され得る。
【0078】
第1の固体電解質は、ガラス又はガラスセラミックであってよい。
【0079】
上で定義されたように、「ガラス」は、非晶質物質であり、「ガラスセラミック」は、非晶質構造中に1又は複数の結晶相を含む物質である。
【0080】
特に、第1の固体電解質がガラスセラミックである場合、非晶質ガラスの場合に比較して、イオン伝導率は高く、電極及び電解質の間の界面抵抗は低く、熱膨張が抑制され、強度は強く、したがって、共焼成処理を通して多層マイクロチップタイプ全固体電池を製造するために有利である。
【0081】
具体的には、第1の固体電解質がガラスセラミックである場合、Cu-Kαを用いたX線回折(XRD)分析において、約22°~約25°の2θの範囲でLiPOに起因するピークが出現し得る。ここで、非晶質構造は、-B-O-Si-O-P-O-Zr-ネットワークを含むことが推定され、-B-O-Si-O-P-O-Zr-ネットワークに基づく非晶質構造は、非架橋酸化物(NBO)構造中に空孔を有し得る。
【0082】
さらに、第1の固体電解質がガラスセラミックである場合、FE-SEM、TEMなどのような分析を通して、非晶質構造中、約1nmよりも大きいか又はそれに等しく、又は約3nmよりも大きいか又はそれに等しく、約10nmよりも小さいか又はそれに等しい又は約5nmよりも小さいか又はそれに等しいサイズを有する結晶相が同定され得る。
【0083】
要するに、第1の固体電解質がガラスセラミックである場合、-B-O-Si-O-P-O-Zr-ネットワークを含む非晶質構造中、約1nmよりも大きいか又はそれに等しく、又は約3nmよりも大きいか又はそれに等しく、約10nmよりも小さいか又はそれに等しい又は約5nmよりも小さいか又はそれに等しいサイズを有するLiPO結晶相が存在し得る。
【0084】
第1の固体電解質は、約1.0×10-8S/cmよりも高いか又はそれに等しいイオン伝導率を有してよい。これは、第1の固体電解質を間に含む固体電解質層の両側にInGaペースト、Agペーストなどを塗布することによって;又は、Au、Pt、Agなどをスパッタリングし、金属電極を形成し、全固体電池試料を製造し、これらをジグ上に設置し、100mVの基準周波数10-6Hzの範囲内のEIS電圧を測定することによって、取得される。
【0085】
第1の固体電解質の生成方法は、特に限定されるものではなく、酸化物系固体電解質の一般に知られている生成方法に従ってよい。
【0086】
酸化物系固体電解質を生成するための一般に知られている方法として、従来の溶融急冷法(melt-quenching method)、加圧溶融急冷法(press melt-quenching method)、及びツインローラー溶融急冷法(twin-roller melt quenching method)などの様々なガラス生成法が採用され得る。デバイス内のるつぼは、アルミナ、高密度アルミナ、プラチナコーティング、又はイリジウムコーティングを用いた製品であった。
【0087】
上述した原料を、ターゲット組成の化学量論モル比に従って混合し、次に、混合原料中のアンモニアを十分に揮発させるように約450℃~約700℃の範囲で熱処理し、連続して、ガラス化処理を実行するために約1200℃で約2時間維持する。ガラス化した融解溶液を、約500℃~約700℃で冷却し、カレットタイプバルク材料として回収する。このカレットを、一定の(constant)粉砕処理を通して無水エタノール中で二次粒子(凝集体)を伴わずに粉末化して乾燥させ、次に、分類して、約1.5~約3.0μmの平均粒子径(D50)を有する粒子の形態のガラスセラミックを得る。
【0088】
(第2の固体電解質)
別の実施形態は、Li、Si、B、Zr、及びPを含む酸化物を含む第2の固体電解質を提供し;第2成分として、Li、Al、Na、Mg、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Se、Rb、S、Y、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Pb、Bi、Au、La、Nd、Eu、I、Cl、Br、又はFのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物又は塩をさらに含む。
【0089】
第2の固体電解質は、第1の固体電解質に比較して、特定の元素又は原子団をさらに含み、したがって、はるかにより高いイオン伝導率を実現し、マイクロチップタイプ全固体電池の性能を大きく改善し得る。
図1の(b)は、第2の固体電解質を構成する要素間の結合関係を示している。本明細書において、Li及びClを第2成分として含む場合が例示されている。
【0090】
図1の(b)を参照すると、第1の固体電解質と同様に第2の固体電解質中、-B-O-Si-O-P-O-Zr-ネットワークに基づく非晶質構造が、非架橋酸化物(NBO)構造の空孔を形成する。しかしながら、第2の固体電解質は、第1の固体電解質に比較して第2成分をさらに含むので、非架橋酸化物(NBO)構造の空孔は、より大きなサイズを有する。さらに、第2成分としてのアニオン成分(Cl)の一部が酸素に置換されるか又は静電結合され、したがって、第2の固体電解質の電気陰性度を低下させ得る。結果として、第2成分は、活物質電極から放出されたLi+カチオンを容易に通すように有効なイオン経路を形成し得る。
【0091】
2Li、Si、2B、Zr、及び2Pの総量の100mol%に基づいて、第2の固体電解質中、2Liは、約40mol%よりも多いか又はそれに等しく、約80mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよく、Siは、約0mol%よりも多く、約30mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよく、2Bは、約0mol%よりも多く、約60mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよく、Zrは、約0mol%よりも多く、約50mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよく、2Pは、約0mol%よりも多く、約60mol%よりも少ないか又はそれに等しい量で含まれてよい。その説明は、第1の固体電解質のそれと同じである。
【0092】
さらに、第2の固体電解質中の2Li/(Si+2B+Zr)のモル分率は、約0.5~約5であってよい。その説明も第1の固体電解質のそれと同じである。
【0093】
参照のために、2Li/(Si+2B+Zr)のモル分率は、第1の固体電解質中よりも第2の固体電解質中において部分的に高くてもよく、これは、なぜなら、Li/(Si+B+Zr)のモル分率が第2成分の存在に依拠して比較的高いからである。
【0094】
具体的には、第2の固体電解質は、化学式2によって表され得る。
[化学式2]
a(LiO)・b(SiO)・c(B)・d(P)・e(ZrO)・f(X
【0095】
化学式2中、aからfは、モル分率を表す実数であり、40≦a≦80、40≦a≦0、又は40≦a≦60;0<b≦30、3≦b≦20、又は5≦b≦15;0<c≦60、5≦c≦40、又は10≦c≦20;0<d≦60、1≦d≦20、又は1≦d≦15;0<e≦50、1≦e≦20、又は1≦e≦10;0≦f≦50、1≦f≦10、又は1≦f≦5;Xは、Li、Al、又はそれらの組み合わせであり;Yは、Cl、O、又はそれらの組み合わせであり;0<m≦5又は1≦m≦3であり;0<n≦5又は1≦n≦4である。
【0096】
第2の固体電解質も、非晶質特性に基づいて特定の温度範囲で軟化し得る。
【0097】
具体的には、第2の固体電解質の軟化点は、約500℃よりも高いか又はそれに等しく、約550℃よりも低いか又はそれに等しい温度範囲内にあってよい。その説明も第1の固体電解質のそれと同じである。
【0098】
第2の固体電解質もガラス又はガラスセラミックであってよく、その説明は、第1の固体電解質のそれと同じである。
【0099】
特に、第2の固体電解質がガラスセラミックである場合、Cu-Kαを用いたX線回折(XRD)分析において、約22°~約25°の2θの範囲でLiPOに起因するピークが出現し得るか、約42°~約45°の2θの範囲でLi12Clに起因するピークが出現し得るか、又は、約15°~約20℃の2θの範囲でAlに起因するピークがさらに出現し得る。第1の固体電解質がガラスセラミックである場合と共通して、LiPOに起因するピークが出現し、第2成分に起因して、Li12Clに起因するピーク及びAlに起因するピークが出現する。
【0100】
要するに、第2の固体電解質がガラスセラミックである場合、-B-O-Si-O-P-O-Zr-ネットワークを含む非晶質構造中には、約1nmよりも大きいか又はそれに等しく又は約3nmよりも大きいか又はそれに等しく、約10nmよりも小さいか又はそれに等しい又は約5nmよりも小さいか又はそれに等しいサイズを有するLiPO結晶相が必然的に存在し、任意選択で、LiPO結晶相のそれと同じ又は類似のサイズを有するLi12Cl結晶相又はAl結晶相がさらに存在し得る。
【0101】
上で説明したように、第2の固体電解質は、第1の固体電解質よりも高いイオン伝導率を示し得る。具体的には、第2の固体電解質のイオン伝導率は、約1.0×10-7S/cmよりも高いか又はそれに等しくてよい。その測定方法は、上で説明された通りである。
【0102】
第2の固体電解質は、ターゲット組成に従った化学量論モル比で第1の固体電解質に添加物を添加することによって調製され、次に、空気雰囲気下で、約525℃~約530℃で約8時間~約10時間熱処理され得る。
【0103】
(全固体電池)
別の実施形態は、固体電解質層、及び、この固体電解質層を間に配置して交互に積み重ねられた正極層及び負極層を含む本体;及び、本体の両側にそれぞれ配置された第1の外部電極及び第2の外部電極を備える、全固体電池を提供する。固体電解質層は、第1の固体電解質及び第2の固体電解質のいずれか1つを含む。
【0104】
上記実施形態の全固体電池は、マイクロチップタイプ全固体電池であってよい。上で言及されたように、マイクロチップタイプ全固体電池は、電池特性を基本的に有し、MLCC、パワーインダクタ部品などのようなIT部品と同等に取り扱われる場合がある。
【0105】
チップのようなマイクロチップタイプ全固体電池それ自体は、基板上にSMD実装されて、さらに、受動素子などの上で回路設計自由度を有し得る。
【0106】
マイクロチップタイプ全固体電池においては、硫化物系固体電解質又はポリマー系固体電解質ではなく、酸化物系固体電解質が一般に使用される。酸化物系固体電解質は、広い電気化学電位窓、二次界面反応の優れた抑制、低い製造コスト、様々な組成範囲の適用性などの利益を有し、共焼成処理を通して多層マイクロチップタイプ全固体電池を実現し得る。
【0107】
特に、一実施形態の全固体電池は、固体電解質層中に第1の固体電解質及び第2の固体電解質のいずれか1つを含むので、Li、Si、B、及びPを含むがZrを含まない酸化物固体電解質が固体電解質層に適用される場合に比較して、優れた性能及び耐久性を示し得る。
【0108】
図2は、一実施形態による全固体電池の断面概略図である。
【0109】
図2を参照すると、全固体電池は、固体電解質層123、及び、中間に固体電解質層123を伴って交互に積み重ねられた正及び負極層を含む本体を備えてよい。さらに、全固体電池は、本体の両側にそれぞれ配置された第1の外部電極131及び第2の外部電極132をさらに備えてよい。
【0110】
具体的には、全固体電池は、電極層、及び、積層方向において電極層に隣接して配置された固体電解質層を備える。電極層は、集電体125、及び、集電体125の一方の表面又は両方の表面にコーティングされた電極活物質層121及び122を基本的に含んでよい。
【0111】
例えば、積層方向の最上部に配置された電極層は、負極集電体125の一方の表面に負極活物質層122をコーティングすることによって形成されてよく、最下部に配置された別の電極層は、正極集電体125の一方の表面に正極活物質層121をコーティングすることによって形成されてよい。さらに、最上部及び最下部に配置された電極層は、正極集電体125の両方の表面に正極活物質層121を、及び、負極集電体125の両方の表面に負極活物質層122をコーティングすることによって形成されてよい。
【0112】
固体電解質層123が、正極層及び負極層の間に配置されて積み重ねられてよい。したがって、固体電解質層123は、正極層の正極活物質層121及び負極層の負極活物質層122の間に、積層方向において隣接して配置されてよい。したがって、全固体電池においては、複数の正極層及び複数の負極層が交互に配置され、複数の固体電解質層123がそれらの間に配置されて積み重ねられてよい。
【0113】
絶縁層124が、正極層及び負極層の縁部に沿って配置されてよい。絶縁層124は、固体電解質層123上に配置されており、正極層又は負極層の縁部に横方向に隣接するように形成されてよい。したがって、絶縁層124は、正極層及び負極層と同じ層上にそれぞれ配置されてよい。絶縁層124は、固体電解質層123と同じ材料を使用することによって形成されてよい。したがって、全固体電池においては、絶縁層124及び固体電解質層123は、境界において互いに区別されず、固体電解質層123の1つの本体にして一体に形成されている。
【0114】
正極層、固体電解質層123、負極層、及び絶縁層124は、上述したように積み重ねられて、全固体電池のセルスタックを構成する。全固体電池のセルスタックの上及び下端部において、絶縁材料の保護層が形成されてよい。さらに、全固体電池のセルスタックの両側において、正極集電体125の末端及び負極集電体125の末端が露出しており、外部電極131及び132は、この露出した末端に接続されて、これらと結合されている。換言すると、外部電極131及び132は、正極を有するように正極集電体125の末端に、また、負極を有するように負極集電体125の末端に、それぞれ接続されてよい。正極集電体125の末端及び負極集電体125の末端が互いに反対方向を向くように構成されている場合、外部電極131及び132もそれぞれ両側に配置されてよい。
【0115】
正極層、固体電解質層123、及び負極層は、積み重ねられて、したがって、全固体電池のセルスタックを形成してよい。全固体電池のセルスタックの最上部及び最下部において、絶縁材料の保護層140が形成されてよく、この絶縁材料は、固体電解質層123と同じ材料であってよい。
【0116】
正極層に含まれている正極活物質は、リチウムをインターカレーション及びデインターカレーションすることができる化合物(リチウム化インターカレーション化合物(lithiated intercalation compound))を含んでよい。具体的には、リチウム、及び、コバルト、マンガン、ニッケル、又はそれらの組み合わせの少なくとも1つの金属の複合酸化物を使用してよく、その特定の例は、次の化学式のいずれか1つによって表される化合物であってよい。Li1-b(ここで、上記化学式中、0.90≦a≦1.8であり、0≦b≦0.5である);Li1-b2-c(ここで、上記化学式中、0.90≦a≦1.8であり、0≦b≦0.5であり、0≦c≦0.05である);LiE2-b4-c(ここで、上記化学式中、0≦b≦0.5であり、0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCoα(ここで、上記化学式中、0.90≦a≦1.8であり、0≦b≦0.5であり、0≦c≦0.05であり、0<α≦2である);LiNi1-b-cCo2-αα(ここで、上記化学式中、0.90≦a≦1.8であり、0≦b≦0.5であり、0≦c≦0.05であり、0<α<2である);LiNi1-b-cCo2-α(ここで、上記化学式中、0.90≦a≦1.8であり、0≦b≦0.5であり、0≦c≦0.05であり、0<α<2である);LiNi1-b-cMnα(ここで、上記化学式中、0.90≦a≦1.8であり、0≦b≦0.5であり、0≦c≦0.05であり、0<α≦2である);LiNi1-b-cMn2-αα(ここで、上記化学式中、0.90≦a≦1.8であり、0≦b≦0.5であり、0≦c≦0.05であり、0<α<2である);LiNi1-b-cMn2-α(ここで、上記化学式中、0.90≦a≦1.8であり、0≦b≦0.5であり、0≦c≦0.05であり、0<α<2である);LiNi(ここで、上記化学式中、0.90≦a≦1.8であり、0≦b≦0.9であり、0≦c≦0.5であり、0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMn(ここで、上記化学式中、0.90≦a≦1.8であり、0≦b≦0.9であり、0≦c≦0.5であり、0≦d≦0.5であり、0.001≦e≦0.1である);LiNiG(ここで、上記化学式中、0.90≦a≦1.8であり、0.001≦b≦0.1である);LiCoG(ここで、上記化学式中、0.90≦a≦1.8であり、0.001≦b≦0.1である);LiMnG(ここで、上記化学式中、0.90≦a≦1.8であり、0.001≦b≦0.1である);LiMn(ここで、上記化学式中、0.90≦a≦1.8であり、0.001≦b≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiTO;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2である);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2である);及び、LiFePO
【0117】
上記化学式中、Aは、Ni、Co、Mn、又はそれらの組み合わせであり;Rは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、又はそれらの組み合わせであり;Dは、O、F、S、P、又はそれらの組み合わせであり;Eは、Co、Mn、又はそれらの組み合わせであり;Zは、F、S、P、又はそれらの組み合わせであり;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、又はそれらの組み合わせであり;Qは、Ti、Mo、Mn、又はそれらの組み合わせであり;Tは、Cr、V、Fe、Sc、Y、又はそれらの組み合わせであり;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、又はそれらの組み合わせである。
【0118】
正極活物質(positive active material)は、コーティング層を伴う正極活物質、又はコーティング層でコーティングされた活物質の化合物及び活物質を含んでよい。コーティング層は、コーティング元素の酸化物又は水酸化物、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、又はコーティング元素のヒロドキシカーボネートの、コーティング元素化合物を含んでよい。コーティング層のための化合物は、非晶質又は結晶質のいずれかであってよい。コーティング層に含まれているコーティング元素は、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、又はそれらの混合物であってよい。コーティング処理は、それが正極活物質の特性にいかなる副作用も引き起こさない限り、任意の従来の処理(例えば、スプレーコーティング、ディップなど)を含んでよく、これは、当業者にはよく知られているので、その詳細な説明は省略する。
【0119】
負極層に含まれている負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションする物質、リチウム金属、リチウム金属合金、リチウムをドーピング及び脱ドーピングすることができる物質、又は遷移金属酸化物を含んでよい。
【0120】
リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションする物質は、炭素物質であってよく、これは、リチウムイオン二次電池における、任意の一般に使用される炭素系負極活物質(negative active material)であり、それらの例は、結晶性炭素、非晶質炭素、又はそれらの組み合わせであり得る。結晶性炭素の例は、非晶質、シート状、フレーク、球状、又は繊維状の天然黒鉛又は人造黒鉛などのグラファイトであってよい。非晶質炭素の例は、ソフトカーボン(低温での焼成炭素)又はハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化生成物、焼成コークスなどであり得る。
【0121】
リチウム金属合金は、リチウム、及び、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、又はSnから選択される金属の合金であってよい。
【0122】
リチウムをドーピング及び脱ドーピングすることができる物質は、Si、SiO、(0<x<2)、Si-Cコンポジット、Si-Q合金(ここで、Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族~第16族の元素、遷移元素、希土類元素、及びそれらの組み合わせから選択され、Siではない)、Sn、SnO、Sn-Cコンポジット、Sn-R(ここで、Rは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族から第16族の元素、遷移元素、希土類元素、及びそれらの組み合わせから選択され、Snではない)であってよい。元素Q及びRは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、又はそれらの組み合わせから選択されてよい。
【0123】
遷移元素酸化物は、酸化バナジウム、酸化リチウムバナジウム、酸化リチウムバナジウム、りん酸リチウムバナジウム(Li(PO、LVP)などを含んでよい。
【発明を実施するための形態】
【0124】
以下、本開示の例及び比較例を説明する。しかしながら、これらの例は、本開示の範囲を限定するものと決して解釈されるものではない。
【0125】
[実施例1]
ガラスセラミックを生成するために、LiCO(純度:99%);SiO(純度:99.8%);B(純度:95%);ZrO(純度:98%);及びP(純度:98%)、又は(NHHPO(純度:98%)を原料として使用した。
【0126】
ガラスセラミックを生成する方法として、ツインローラー溶融急冷法を用い、ツインローラー溶融急冷法を用いる装置におけるるつぼは、プラチナ製品であった。
【0127】
ターゲット組成として57(LiO)・10(SiO)・18(B)・12(P)・3(ZrO)[mol%]を得るために、化学量論モル比に従って原料を混合し、混合原料中のアンモニアを十分揮発させるように450℃~700℃の範囲内で熱処理し、次に、1200℃で約2時間連続して維持した後にガラス化した。ガラス化された溶融金属を、500℃~700℃の範囲内で冷却した後に、カレットタイプバルク材料として回収した。これらのカレットを、無水エタノール中での一定の研削加工を通して粉砕して、二次粒子(凝集体)を有しない粉末を得て、次に、乾燥及び分類して、粒子が1.5μm~3.0μmの平均粒子径(D50)を有するガラスセラミックを得た。実施例1の固体電解質として、ガラスセラミックを使用した。
【0128】
[実施例2]
ターゲット組成を57(LiO)・10(SiO)・18(B)・14(P)・1(ZrO)[mol%]に変更したことを除き、実施例1と同じ方式で、実施例2の固体電解質を調製した。
【0129】
[実施例3]
ターゲット組成を57(LiO)-10(SiO)・18(B)・10(P)・5(ZrO)[mol%]に変更したことを除き、実施例1と同じ方式で、実施例3の固体電解質を調製した。
【0130】
[実施例4]
ターゲット組成を57(LiO)-10(SiO)・18(B)・5(P)・10(ZrO)[mol%]に変更したことを除き、実施例1と同じ方式で、実施例4の固体電解質を調製した。
【0131】
[実施例5]
実施例1によるガラスセラミックにLiClを後で添加することによって、混合粉末を調製した。混合粉末の100wt%に基づき、後で添加したLiClの含有量は、5wt%であった。
【0132】
続いて、混合粉末を、空気雰囲気下で525~530℃の温度範囲内で8時間~10時間熱処理した。
【0133】
したがって、実施例5の固体電解質を得て、ここで、対応する固体電解質のターゲット(期待される)組成は、56(LiO)・10(SiO)・16(B)・10(P50)・3(ZrO)・5(LiCl)[mol%]であった。
【0134】
[実施例6]
57(LiO)・10(SiO)・16(B・14P)・3(ZrO)[mol%]のターゲット組成を有するように、LiClの代わりにLiPOを後で添加したことを除き、実施例5と同じ方式で、実施例6の固体電解質を調製した。
【0135】
[実施例7]
61(LiO)・10(SiO)・16(B)・10(P)・3(ZrO)[mol%]のターゲット組成を有するように、LiClの代わりにLiCOを後で添加したことを除き、実施例5と同じ方式で、実施例7の固体電解質を調製した。
【0136】
[実施例8]
56(LiO)・10(SiO)・16(B)・10(P)・3(ZrO)・5(Al)[mol%]のターゲット組成を有するように、LiClの代わりにα-Alを後で添加したことを除き、実施例5と同じ方式で、実施例8の固体電解質を調製した。
【0137】
[実施例9]
ターゲット組成を56(LiO)・10(SiO)・16(B)・10(P)・7(ZrO)・1(Al)[mol%]に変更したことを除き、実施例8と同じ方式で、実施例9の固体電解質を調製した。
【0138】
[実施例10]
ターゲット組成を56(LiO)・10(SiO)・16(B)・10(P)・5(ZrO)・3(Al)[mol%]に変更したことを除き、実施例8と同じ方式で、実施例10の固体電解質を調製した。
【0139】
[比較例1]
ターゲット組成を57(LiO)・10(SiO)・18(B)・15(P)[mol%]に変更したことを除き、実施例1と同じ方式で、比較例1の固体電解質を調製した。
【0140】
[比較例2]
原料としてZrOの代わりにGeOを用いることによってターゲット組成を57(LiO)・10(SiO)・18(B)・12(P)・3(GeO)[mol%]に変更したことを除き、実施例1と同じ方式で、比較例2の固体電解質を調製した。
【0141】
参照のために、実施例1から10及び比較例1及び2の各固体電解質を調製するために用いられたターゲット組成を、表1に示している。
[表1]
(単位:mol%)
【表1】
評価例1:固体電解質(1)ICP分析の評価
【0142】
実施例1及び8の各固体電解質を、主要な要素のモル分率を測定するためにICP分析した。
【0143】
ICP分析は、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-OES、デバイス名:Optima 7300DV、製造業者:PerkinElmer Inc.)を用いることによって実行した。具体的には、約0.7gの固体電解質試料をプラチナ(Pt)るつぼに投入し、これに約1mLの濃縮硫酸(98wt%、ELグレード(electronic grade))を添加し、次に、300℃で3時間加熱し、電気炉(Lindberg Blue M、ThermoFisher Scientific Corp.)内で以下の段階1から3のプログラムで焼却した(incinerated)。
1)段階1:初期温度0℃、レート(温度/時間)180℃/時間、温度(保持時間)180℃(1時間)
2)段階2:初期温度180℃、レート(温度/時間)85℃/時間、温度(保持時間)370℃(2時間)
3)段階3:初期温度370℃、レート(温度/時間)47℃/時間、温度(保持時間)510℃(3時間)続いて、1mLの濃縮硝酸(48wt%)及び20μlの濃縮フッ化水素酸(50wt%)を残留物に加え、次に、プラチナるつぼを封止するとともに、それを30分又はそれより長く振とうさせた後、これに1mLのホウ酸を加え、次に、0℃で2時間又はそれよりも長く保管し、次に、30mLの超純水で希釈し、測定を実行するために焼却した。
【0144】
したがって、実施例1及び8の各固体電解質の主要な要素のモル分率を測定し、結果は表2に示されている。さらに、実施例1及び5の各固体電解質を調製するために用いたターゲット組成が、表2に示されている。
[表2]
(単位:mol%)
【表2】
【0145】
表2を参照すると、実施例1及び8の各固体電解質を調製する処理中に一部の元素が消失するが、ターゲット組成は実測値と実質的に同じである。さらに、実施例1及び8の各固体電解質は、2Li/(Si+2B+Zr)のモル分率が0.5~5の範囲内であった。具体的には、実測値に基づくと、実施例1の固体電解質は、2Li/(Si+2B+Zr)のモル分率が1.87であり、実施例8の固体電解質は、2Li/(Si+2B+Zr)のモル分率が約1.99であった。実施例8の固体電解質中において、2Li/(Si+2B+Zr)のモル分率が実施例1のそれよりも高い理由は、(Si+2B+Zr)のモル分率が、第2成分の存在によって低下するからである。
【0146】
本明細書において、実施例1及び8の固体電解質を代表して評価したが、実施例2~4、9及び10及び比較例1及び2の各固体電解質も、実測値と実質的に同じターゲット組成を示すことが推定された。
【0147】
[(2)TMA熱分析]
実施例1及び8の各固体電解質が熱機械分析(TMA)され、分析結果が図3及び図4に示されている。
【0148】
具体的には、空気及び窒素雰囲気において、10mm長の試料をTMA装置(Q400、TAインストルメント)に配置し、次に、温度条件(30℃で開始し、5℃/分で上昇した)に曝露し、その間、これに19.6mNの張力を加えた。温度が上昇すると、これに伴って試料の長さが変化し、試料が壊れた温度を測定した。MD及びTDをそれぞれ測定した後、高い方の温度が、対応する試料のメルトダウン温度として定義された。
【0149】
図3及び図4を参照すると、実施例1及び8の各固体電解質は、500~550℃で軟化した。具体的には、実施例1の固体電解質は、516~526℃で溶融し始め、実施例8の固体電解質は、527℃で溶融し始めた。
【0150】
他方で、実施例1及び8による各固体電解質を、電気炉内で3℃/分で加熱し、窒素(N2)及び空気の混合雰囲気下で530℃で8時間維持し、次に、自然冷却し、そのSEM画像を得て、図6に示した。図5を参照すると、実施例1及び5による各固体電解質は、非晶質特性に基づいて熱処理後に軟化した。
【0151】
本明細書において、実施例1及び8の各固体電解質を代表して評価したが、実施例2~4、9及び10の各固体電解質も、約500℃よりも高いか又はそれに等しく、約550℃よりも低いか又はそれに等しい軟化点を有することが想定された。
【0152】
[(3)XRD分析]
Cu-Kαを用いることによって実施例1及び5から8の各固体電解質のX線回折(XRD、Bruker AXS D4-Endeavor XRD)分析を実行し、分析結果が図6から10に示されている。
【0153】
実施例1及び5から8の各固体電解質は、共通して、22°~25°の範囲の2θでLiPOに起因するピークを示した(図6から10で共通)。さらに、実施例5の固体電解質は、42°~45°の範囲の2θでLi12Clに起因するさらなるピークを示したが(図7)、これは、LiClの添加によって引き起こされた。さらに、実施例8の固体電解質は、15°~20°の範囲の2θでα-Alに起因するさらなるピークを示したが(図10)、これは、α-Alの添加によって引き起こされた。
【0154】
本明細書において、実施例1及び5から8の各固体電解質を代表して評価したが、実施例2~4、6及び7の各固体電解質は、実施例1のそれと同様の結果を示すことが推定され、実施例9及び10の各固体電解質は、実施例8のそれと同様の結果を示すことが推定された。
【0155】
[(4)FE-SEM及びTEM分析]
TEM装置を用いることによって、実施例1及び8の各固体電解質を局所領域に関して検査し、結果は図11及び12にそれぞれ示されている。
【0156】
図11及び12を参照すると、実施例1及び8の各固体電解質は、非晶質構造に存在する3~5nmサイズの結晶相を共通して示した。
【0157】
本明細書において、実施例1及び8の各固体電解質を代表して評価したが、実施例2~4の各固体電解質は、実施例1のそれと同様の結果を示すことが推定され、実施例5~7、9及び10の各固体電解質は、実施例8のそれと同様の結果を示すことが推定された。
【0158】
[(5)イオン伝導率の評価]
以下の方法において全固体電池試料を製造するために、実施例1から8及び比較例1及び2の各固体電解質を用いて、試料のイオン伝導率を測定した。
【0159】
まず、0.5gの各固体電解質を採取し、14π径の円形ダイを用いて1.5トンの圧力を加えることによってペレット化して、緑色シート状固体電解質試料を得た。
【0160】
固体電解質試料を500℃~600℃で熱処理し、その両側に金属電極を形成して、全固体電池試料を得た。本明細書において、InGaペースト、Agペーストなどのスパッタリングを通して、金属電極を形成した。
【0161】
全固体電池試料を、正及び負極方向に無関係にジグ上に設置した。そのEIS電圧を、100mVに基づく10-6Hzの周波数範囲内で測定した。実施例1から8及び比較例1及び2の各固体電解質を抵抗に関して測定し、これをイオン伝導率に変換し、表3に結果が示されている。さらに、特に、図13には、実施例1及び8による固体電解質の抵抗の結果が示されている。
[表3]
【表3】
【0162】
表3を参照すると、実施例1の固体電解質は、Li、Si、B、Zr、及びPを含む酸化物のみの固体電解質(第1の固体電解質)であり、1×10-8S/cmのイオン伝導率を確保する効果を有していた。さらに、表3及び図13を参照すると、実施例5から8の固体電解質は、主成分としてガラスセラミックを、及び同時に、特定の微量成分(第2の固体電解質)を含む固体電解質であり、1×10-7S/cmのイオン伝導率を確保する効果を有していた。
【0163】
[(6)概要]
実施例1から5の各固体電解質は、上述した第1の固体電解質(Li、Si、B、Zr、及びPを含む酸化物)に対応するものであった。これらの固体電解質は、非晶質及び結晶質特性を同時に有するガラスセラミックであり、これは、-B-O-Si-O-P-O-Zr-ネットワークに基づく非晶質構造中に存在する3~5nmサイズのLiPO結晶相を有し、1×10-8S/cmのイオン伝導率を確保した。
【0164】
さらに、実施例5から10の各固体電解質は、上述した第2の固体電解質(第1成分としてのLi、Si、B、Zr、及びPを含む酸化物;第2成分としてのLi、Al、又はClを含む酸化物又は塩を含む)であった。これらの固体電解質も、非晶質及び結晶質特性を同時に有するガラスセラミックであり、これは、-B-O-Si-O-P-O-Zr-ネットワークに基づく非晶質構造及び第2成分によるさらなる結晶相(Li12Cl又はAl)中に3~5nmサイズのLiPO結晶相を有し、1×10-7S/cmのイオン伝導率を確保した。
【0165】
実施例1から10の固体電解質は、比較例1及び2の固体電解質よりも高いイオン伝導率を有し、これは、特にZrによって引き起こされたと推定された。
【0166】
[評価例2:全固体電池セルの評価]
実施例1及び8の各固体電解質を含む全固体電池セルが製造され、充電及び放電性能に関して測定された。
【0167】
まず、0.5gの固体電解質を採取し、14πの直径を有する円形ダイを用いて1.5トンの圧力を加えることによってペレット化して、緑色シート状固体電解質試料を得た。
【0168】
それとは独立に、0.24gの固体電解質、0.24gのLi(PO、及び0.02gのカーボンブラックを混合し、円形ダイを用いて1.5トンの圧力を加えることによってペレット化して、緑色シートタイプ電極活物質層試料を得た。この電極活物質層試料を2つ調製した。
【0169】
それとは独立に、0.1gの固体電解質及び0.4gのカーボンブラックを混合し、円形ダイを用いて1.5トンの圧力を加えることによってペレット化して、緑色シートタイプ集電体層試料を得た。この集電体層試料を2つ調製した。
【0170】
集電体層試料/電極活物質層試料/電解質層試料/電極活物質層試料/集電体層試料を順次積み重ねて、500~600℃で熱処理し、実施例1及び8の各全固体電池セルを得た。
【0171】
実施例1及び8の各全固体電池セルを一度充電及び一度放電し、その充電及び放電グラフは図14に示されている。具体的には、実施例1及び8の各全固体電池セルを、+及び-の電極方向に無関係にジグ上に設置し、次に、0.025Cレートの電流密度で2.4Vの電圧まで充電し、同じ電流密度で0.001Vまで放電した。
【0172】
図14を参照すると、実施例1の全固体電池セルは、48μAh(32.13mAh/g)の初期放電容量及び1.5~1.6Vの飽和放電電圧を示した。さらに、実施例8の全固体電池セルは、63μAh(40.51mAh/g)の初期放電容量及び1.5~1.6Vの飽和放電電圧を示した。
【0173】
本明細書において、実施例1及び8の各全固体電池セルを代表として評価したが、実施例2~4の各全固体電池セルは、実施例1のそれと同様であるものと推定され、実施例5~7、9及び10の各全固体電池セルは、実施例8のそれと同様であると推定された。
【0174】
本開示は、実用的な例示的な実施形態であると現在みなされるものに関連して説明されたが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではないことが理解される。反対に、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれる様々な変形及び均等な構成を包含することが意図されている。
【符号の説明】
【0175】
121:正極活物質層
122:負極活物質層
123:固体電解質層
124:絶縁層
125:集電体
131:第1の外部電極
132:第2の外部電極
140:保護層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】