(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】二次電池及び電気使用機器
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20241108BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241108BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20241108BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20241108BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20241108BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20241108BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/13
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M4/58
H01M4/587
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581039
(86)(22)【出願日】2022-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2022144288
(87)【国際公開番号】W WO2024087388
(87)【国際公開日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】202211328888.2
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520434178
【氏名又は名称】欣旺達動力科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Sunwoda Mobility Energy Technology Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 旭▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】王 宝玉
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲耀▼
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ04
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ08
5H029HJ19
5H050AA07
5H050AA09
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050EA10
5H050EA23
5H050EA24
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA19
(57)【要約】
本願は、二次電池及び電気使用機器を開示する。二次電池は正極シートと負極シートとを含み、二次電池は0.258≦CB/PD≦0.700を満たす。本願は、CB値とPD値の範囲を適正に制御することにより、二次電池のサイクル寿命及び保存寿命を向上させるとともに、二次電池のエネルギー効率を向上させ、充放電時のエネルギー損失を低減した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、正極シートと負極シートとを含み、前記二次電池は0.258≦CB/PD≦0.700を満たし、
ここで、CBは単位面積当たりの前記負極シートの容量と単位面積当たりの前記正極シートの容量との比の値であり、
PDは前記正極シートの圧縮密度であり、単位はg/cm
3である、
二次電池。
【請求項2】
0.275≦CB/PD≦0.55を満たす、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
0.31≦CB/PD≦0.48を満たす、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
0.8≦CB≦1.1を満たす、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
1.5≦PD≦3.1を満たす、
請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記正極シートは正極活物質材料層を含み、前記正極活物質材料層は正極活物質材料を含み、前記負極シートは負極活物質材料層を含み、前記負極活物質材料層は負極活物質材料を含み、前記正極活物質材料及び前記負極活物質材料は、2≦Dv50’/Dv50≦25を満たし、
ここで、Dv50’は前記負極活物質材料の累積体積百分率が50%に達する時に対応する粒径であり、単位はμmであり、
Dv50は、前記正極活物質材料の累積体積百分率が50%に達する時に対応する粒径であり、単位はμmである、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項7】
前記正極活物質材料層及び前記負極活物質材料層は、0≦(H
1-H
2)/H
2≦0.9を満たし、
ここで、H
1は、片面の前記正極活物質材料層の厚さであり、単位はμmであり、
H
2は、片面の前記負極活物質材料層の厚さであり、単位はμmである、
請求項6に記載の二次電池。
【請求項8】
前記二次電池は電解液を含み、前記電解液は第1添加剤を含み、前記第1添加剤はビニレンカーボネート及びビニルエチレンカーボネートのうち少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の二次電池。
【請求項9】
前記電解液は第2添加剤を含み、前記第2添加剤はLiFSI、LiODFB、LiPO
2F
2、LiBF
4、LiBOBのうち少なくとも1つを含む、
請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記第1添加剤は、前記電解液の総重量のa%を占め、ここで、a、CB及びPDは、0.2≦a×CB/PD≦3を満たす、
請求項8に記載の二次電池。
【請求項11】
前記第2添加剤は、前記電解液の総重量のb%を占め、
a及びbは、下記の特徴の少なくとも1つを満たす、
(I)0.1≦a+b≦5;
(II)0.1≦a/b≦10、
請求項10に記載の二次電池。
【請求項12】
前記負極活物質材料の粒子径は、5≦Dv50’≦25を満たし、前記正極活物質材料の粒子径は、0.3≦Dv50≦3.5を満たす、
請求項6に記載の二次電池。
【請求項13】
前記負極活物質材料の粒子径は、0.5≦Dv10’≦10、2.5≦Dv90’≦45、Dv99’≦50、Dn10’≦4、0.5≦Dn50’≦10.5、1.5≦Dn90’≦25、Dn99’≦40を満たし、粒子径の単位はμmである、
請求項6に記載の二次電池。
【請求項14】
前記正極活物質材料の粒子径は、0.1≦Dv10≦1、0.5≦Dv90≦6.5、3.5≦Dv99≦20、0.05≦Dn10≦1、0.1≦Dn50≦2.5、0.5≦Dn90≦3.5、1.5≦Dn99≦10を満たし、粒子径の単位はμmである、
請求項6に記載の二次電池。
【請求項15】
40≦H
1≦160、30≦H
2≦120を満たす、
請求項7に記載の二次電池。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の二次電池を含む、
電気使用機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年10月27日に中国専利局に出願された出願番号が202211328888.2、発明の名称が「二次電池及び電気使用機器」である中国特許出願の優先権を主張し、当該出願のすべての内容は引用により本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、電池技術分野に関し、具体的に二次電池及び電気使用機器に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池はエネルギー貯蔵分野での優位性が大きいが、実際の応用には依然としていくつかの問題が存在し、リン酸鉄リチウム電池を例にとると、リン酸鉄リチウム単体電池の耐用寿命は4000~6000回であるため、寿命に対する要求が高いエネルギー貯蔵プロジェクトの20~30年の耐用寿命(サイクル回数は10000回を超える)の要求を満たすことが困難であり、活性リチウムの損失はエネルギー貯蔵リチウムイオン電池の寿命減衰の要因である。電池がリチウムを脱着するサイクルにおいて、黒鉛の膨張収縮、正極遷移金属の溶出等の原因により、SEI(solid electrolyte interphase,固体電解液界面)の破断と生成が引き起こされ、SEI膜面積と厚さが増加し、電池システムの限られた活性リチウムを消耗し、最終的に電池の耐用年数の短縮がもたらされる。電池の減衰過程における活性リチウムの消耗を如何に低減し補充するかは、リン酸鉄リチウム電池の寿命を向上させる重要な課題である。
【0004】
このような課題を解決するために、負極に対し「リチウム補給」を行う方法が一般的であり、リチウム補給方法の違いによって、物理的なリチウム補給と電気化学的なリチウム補給に分けられる。しかし、物理的なリチウム補給は後続のサイクルで電池のリチウム析出を引き起こしやすいため、電池の短絡を招き、安全上の危険がある。電気化学的なリチウム補給は物理的なリチウム補給の欠点を補うことができるが、現在の方法は効果が顕著ではなく、工程が簡単ではなく、コストが高く、実際の生産の普及に適さない。
【0005】
従って、サイクル寿命が長く、電気化学特性に優れ、加工製造が容易であり、且つ使用コストが安い二次電池の開発が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願は、電池のCB値と正極シートの圧縮密度との関係を調整することにより、二次電池のサイクル寿命及び保存寿命を向上させた二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の側面では、本願の実施例は二次電池を提供し、この二次電池は、正極シートと負極シートとを含み、前記二次電池は、0.258≦CB/PD≦0.700を満たし、ここで、CBは単位面積当たりの前記負極シートの容量と単位面積当たりの前記正極シートの容量との比の値であり、PDは前記正極シートの圧縮密度であり、単位はg/cm3である。
【0008】
一部の実施例では、0.275≦CB/PD≦0.55を満たす。
【0009】
一部の実施例では、0.31≦CB/PD≦0.48を満たす。
【0010】
一部の実施例では、0.8≦CB≦1.1を満たす。
【0011】
一部の実施例では、0.8≦CB≦1.05を満たす。
【0012】
一部の実施例では、正極シートの圧縮密度PDは、1.5≦PD≦3.1(g/cm3)を満たす。
【0013】
前記正極シートは正極活物質材料層を含み、前記正極活物質材料層は正極活物質材料を含み、前記負極シートは負極活物質材料層を含み、前記負極活物質材料層は負極活物質材料を含み、前記正極活物質材料及び前記負極活物質材料は、2≦Dv50’/Dv50≦25を満たし、ここで、Dv50’は前記負極活物質材料の累積体積百分率が50%に達する時に対応する粒径であり、単位はμmであり、Dv50は、前記正極活物質材料の累積体積百分率が50%に達する時に対応する粒径であり、単位はμmである。
【0014】
一部の実施例では、前記負極活物質材料の粒子径は、5≦Dv50’≦25を満たす。
【0015】
一部の実施例では、前記正極活物質材料の粒子径は、0.3≦Dv50≦3.5を満たす。
【0016】
一部の実施例では、前記負極活物質材料の粒子径は、0.5≦Dv10’≦10、2.5≦Dv90’≦45、Dv99’≦50、Dn10’≦4、0.5≦Dn50’≦10.5、1.5≦Dn90’≦25、Dn99’≦40を満たし、粒子径の単位はμmである。
【0017】
一部の実施例では、前記正極活物質材料の粒子径は、0.1≦Dv10≦1、0.5≦Dv90≦6.5、3.5≦Dv99≦20、0.05≦Dn10≦1、0.1≦Dn50≦2.5、0.5≦Dn90≦3.5、1.5≦Dn99≦10を満たし、粒子径の単位はμmである。
【0018】
一部の実施例では、前記正極活物質材料層及び前記負極活物質材料層は、0≦(H1-H2)/H2≦0.9を満たし、ここで、H1は、片面の前記正極活物質材料層の厚さであり、単位はμmであり、H2は、片面の前記負極活物質材料層の厚さであり、単位はμmである。
【0019】
一部の実施例では、40≦H1≦160、30≦H2≦120を満たす。
【0020】
一部の実施例では、前記正極活物質材料の化学式は、LiyAxFe(1-x)PO4を含み、0.8≦y≦1.2、0<x<1、元素Aは、Ni、Co、Mn、Mg、Ca、Ba、Ti、Vのうち少なくとも1つを含む。
【0021】
一部の実施例では、元素Aは、前記正極活物質材料の重量の0%~36%を占める。
【0022】
前記二次電池は電解液を含み、前記電解液は第1添加剤を含み、前記第1添加剤はビニレンカーボネート及びビニルエチレンカーボネートのうち少なくとも1つを含む。
【0023】
前記電解液は第2添加剤を含み、前記第2添加剤はLiFSI、LiODFB、LiPO2F2、LiBF4、LiBOBのうち少なくとも1つを含む。
【0024】
一部の実施例では、前記第1添加剤は、前記電解液の総重量のa%を占め、ここで、a、CB及びPDは、0.2≦a×CB/PD≦3を満たす。
【0025】
一部の実施例では、前記第2添加剤は、前記電解液の総重量のb%を占める。a及びbは、下記の特徴の少なくとも1つを満たす。
(I)0.1≦a+b≦5;
(II)0.1≦a/b≦10。
【0026】
一部の実施例では、前記二次電池は、1.1≦CB’≦1.3を満たし、ここで、CB’は、単位面積当たりの前記負極シートの可逆容量と単位面積当たりの前記正極シートの実際の容量との比の値である。
【0027】
第2の側面では、本発明は、電気使用機器をさらに提供し、この電気使用機器は二次電池を含み、前記二次電池は前記電気使用機器の給電電源として用いられる。
【発明の効果】
【0028】
従来技術と比較して、本願の二次電池は、正極シートと負極シートとを含み、二次電池は、0.258≦CB/PD≦0.700を満たし、本願は電池設計CB値と正極シートPD値の比に対する制御によって、二次電池のサイクル及び保存寿命を向上させたとともに、二次電池のエネルギー効率を向上させ、充放電過程におけるエネルギー損失を低減させた。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本願は二次電池及び電気使用機器を提供し、本願の目的、技術案及び技術的効果をより明瞭且つ明確にするために、以下、実施例により本願をさらに詳細に説明する。なお、本明細書に記載された具体的な実施例は、本願を説明することのみを目的とするものであり、本願を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。
【0030】
二次電池
【0031】
本願は二次電池を提供し、この二次電池は、正極シートと負極シートとを含み、0.258≦CB/PD≦0.700を満たし、ここで、CBは単位面積当たりの負極シートの容量と単位面積当たりの正極シートの容量との比の値であり、PDは正極シートの圧縮密度(g/cm3)である。
【0032】
CB値を計算するためには、正負極シートの単位面積を等しく保つ必要があり、CB値は、電池の負極シートの可逆容量/電池の正極シートの可逆容量である。本願はCB/PDの比の値を限定することによって、正負極物質のリチウムイオンの脱着速度を平衡させ、二次電池のサイクル及び保存寿命を向上させた。
【0033】
一部の実施例では、CB値は、下記の試験方法によって得られる。
【0034】
単位面積当たりの負極シートの容量は、下記の方法により得られる。単位面積の負極シートに一面の活物質材料を残し、それをリチウム片と、セパレータと、電解液と組み合わせてボタン電池を構成し、0.1Cで0.005Vまで放電し、0.05mAで0.005Vまで放電し、0.02mAで0.005Vまで放電し、0.1Cで2Vまで充電し、得られた充電容量が単位面積当たりの負極シートの容量である。
【0035】
単位面積当たりの正極シートの容量は、下記の方法により得られる。単位面積の正極シートに一面の活物質材料を残し、それをリチウム片と、セパレータと、電解液と組み合わせてボタン電池を構成し、0.1Cで3.7Vまで充電し、50μAまで定電圧にし、0.1Cで2.0Vまで放電し、得られた放電容量が単位面積当たりの正極シートの容量である。
【0036】
一部の実施例では、圧縮密度は、下記の式によって計算される。
【0037】
圧縮密度=面密度/(シートが圧延された後の厚さ-集電体の厚さ)、単位はg/cm3である。
【0038】
一部の実施例では、正極シートの圧縮密度は、下記の式によって計算して得られる。
【0039】
正極シートの圧縮密度=正極シートの面密度/(正極シートが圧延された後の厚さ-正極集電体の厚さ)、単位はg/cm3である。
【0040】
一部の実施例では、圧縮密度は圧縮密度計によっては試験され、試験過程は国際標準GB/T24533-2019を参照することができる。
【0041】
一部の実施例では、CB/PDの数値は、0.258、0.28、0.30、0.32、0.33、0.341、0.35、0.353、0.36、0.367、0.37、0.38、0.383、0.39、0.40、0.41、0.43、0.45、0.458、0.47、0.48、0.50、0.52、0.54、0.55、0.57、0.59、0.60、0.62、0.64、0.65、0.67、0.69、0.70のいずれか、又はこれらのうちの任意の2つの値からなる範囲であってもよい。
【0042】
一部の実施例では、CBの数値は、0.8、0.81、0.82、0.821、0.83、0.845、0.846、0.85、0.852、0.86、0.87、0.88、0.89、0.896、0.9、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.952、0.958、0.96、0.97、0.98、0.99、1.0、1.05、1.10のいずれか、又はこれらのうちの任意の2つの値からなる範囲であってもよい。
【0043】
本願は正極シートの余剰化設計によって、電池正極シートの可逆容量を増加させ、電池動作過程において充電試験制御によって定容量の方式を採用して正極シートに一部のリチウムイオンのみを放出させ、余剰リチウムイオンを予備として二次電池の作動過程における活性リチウムの損失を補うために用い、それにより、活性リチウムを常に適切な範囲内にさせ、保存容量の回復率及びエネルギー効率を向上させた。
【0044】
一部の実施例では、PD(g/cm3)の数値は、1.5、1.6、1.8、1.9、2.0、2.2、2.4、2.5、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1のいずれか、又はこれらのうちの任意の2つの値からなる範囲であってもよい。
【0045】
本願は、正極シートの圧縮密度をさらに限定することにより、電池の使用可能容量を増加させ、電池のサイクル寿命を向上させた。リチウムイオン電池の製造過程において、圧縮密度が電池性能に大きな影響を与える。圧縮密度は比容量、効率、内部抵抗及び電池サイクル性能と密接な関係があることが実験により証明されたため、圧縮密度も材料エネルギー密度の参考指標の1つとされている。
【0046】
一部の実施例では、本願の正極活物質材料粒子Dv50(単位はμmである)及び負極活物質材料粒子Dv50’(単位はμmである)は、2≦Dv50’/Dv50≦25を満たす。
【0047】
一部の実施例では、5≦Dv50’/Dv50≦25を満たす。
【0048】
一部の実施例では、10≦Dv50’/Dv50≦25を満たす。
【0049】
一部の実施例では、14≦Dv50’/Dv50≦25を満たす。
【0050】
一部の実施例では、Dv50’/Dv50は、5.0、5.5、5.9、6.0、6.3、6.5、6.8、7.0、7.3、7.8、8.0、8.3、8.5、8.8、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7、10.8、10.9、11.0、11.1、11.2、11.3、11.4、11.5、11.6、11.7、11.8、11.9、12.0、12.1、12.2、12.3、12.5、12.7、13.0、13.3、13.5、13.7、13.9、14.0、14.3、14.5、14.8、15.0、15.3、15.5、15.7、16.0、16.3、16.5、16.7、17.0、17.3、17.5、17.7、18.0、18.3、18.5、18.7、19.0、19.3、19.5、19.9、20.0、20.5、21.0、21.5、22.0、23.0、24.0、25.0のいずれか、又はこれらのうちの任意の2つの値からなる範囲であってもよい。
【0051】
本願はさらに正極活物質材料の粒子及び負極活物質材料の粒子を最適化することによって、正負極活物質材料のリチウムイオン脱着速度の整合性を改善し、二次電池のサイクル寿命を向上させる。
【0052】
一部の実施例では、正極活物質材料の粒子径は、0.3≦Dv50≦3.5、0.1≦Dv10≦1.0、0.5≦Dv90≦6.5、3.5≦Dv99≦20、0.1≦Dn50≦2.5、0.05≦Dn10≦1.0、0.5≦Dn90≦3.5、1.5≦Dn99≦10を満たし、粒子径の単位はμmである。
【0053】
一部の実施例では、正極活物質材料の粒子径Dv50(μm)は、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5のいずれか、又はこれらのうちの任意の2つの値からなる範囲であってもよい。
【0054】
一部の実施例では、負極活物質材料の粒子径は、5.0≦Dv50’≦25.0、0.5≦Dv10’≦10.0、2.5≦Dv90’≦45.0、Dv99’≦50.0、0.5≦Dn50’≦10.5、Dn10’≦4.0、1.5≦Dn90’≦25.0、Dn99’≦40.0を満たし、粒子径の単位はμmである。
【0055】
一部の実施例では、負極活物質材料の粒子径Dv50’(μm)は、5.0、5.5、6.0、6.3、6.5、6.7、7.0、7.3、7.5、7.8、8.0、8.3、8.5、8.8、9.0、9.3、9.5、9.8、10.0、10.3、10.5、10.8、11.0、11.3、11.5、11.8、12.0、12.3、12.5、12.8、13.0、13.3、13.5、13.8、14.0、14.3、14.5、14.8、15.0、15.3、15.5、15.8、16.0、16.3、16.5、16.8、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5、20.0、21.0、22.0、23.0、24.0、25.0のいずれか、又はこれらのうちの任意の2つの値からなる範囲であってもよい。
【0056】
本願における正極材料の粒子径及び負極材料の粒子径の定義は、本技術分野において周知の意味を有する。Dv10’は、負極活物質材料粒子の累積体積百分率が10%に達する時に対応する粒径である。Dv50’は、負極活物質材料粒子の累積体積百分率が50%に達する時に対応する粒径である。Dv90’は、負極活物質材料粒子の累積体積百分率が90%に達する時に対応する粒径である。Dv99’は、負極活物質材料粒子の累積体積百分率が99%に達する時に対応する粒径である。Dn10’は、負極活物質材料粒子の分布数が10%に達する時に対応する粒径である。Dn50’は、負極活物質材料粒子の分布数が50%に達する時に対応する粒径である。Dn99’は、負極活物質材料粒子の分布数が99%に達する時に対応する粒径である。
【0057】
Dv10は、正極活物質材料粒子の累積体積百分率が10%に達する時に対応する粒径である。Dv50は、正極活物質材料粒子の累積体積百分率が50%に達する時に対応する粒径である。Dv90は、正極活物質材料粒子の累積体積百分率が90%に達する時に対応する粒径である。Dv99は、正極活物質材料粒子の累積体積百分率が99%に達する時に対応する粒径である。Dn10は、正極活物質材料粒子の分布数が10%に達する時に対応する粒径である。Dn50は、正極活物質材料粒子の分布数が50%に達する時に対応する粒径である。Dn99は、正極活物質材料粒子の分布数が99%に達する時に対応する粒径である。
【0058】
一部の実施例では、正極活物質材料層(片面の活物質材料の厚さ,H1,単位はμmである)及び負極活物質材料層(片面の活物質材料の厚さ,H2,単位はμmである)は、0≦(H1-H2)/H2≦0.9を満たし、正極活物質材料層及び負極活物質材料層の厚さがこの範囲内にあると、正負極材料のリチウムイオン脱着速度の整合性が向上し、二次電池のサイクル寿命が向上する。
【0059】
一部の実施例では、(H1-H2)/H2は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9のいずれか、又はこれらのうちの任意の2つの値からなる範囲であってもよい。
【0060】
一部の実施例では、40≦H1≦160を満たす。
【0061】
一部の実施例では、H1(単位はμmである)は、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160のいずれか、又はこれらのうちの任意の2つの値からなる範囲であってもよい。
【0062】
一部の実施例では、30≦H2≦120を満たす。
【0063】
一部の実施例では、H2(単位はμmである)は、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120のいずれか、又はこれらのうちの任意の2つの値からなる範囲であってもよい。
【0064】
一部の実施例では、正極活物質材料の化学式は、LiyAxFe(1-x)PO4を含み、0.8≦y≦1.2、0<x<1であり、元素Aは、Ni、Co、Mn、Mg、Ca、Ba、Ti、Vのうち少なくとも1つを含む。
【0065】
一部の実施例では、正極活物質材料のリチウム含有化合物におけるA元素の含有量が適当であり、これにより、正極活物質材料粒子により高いエネルギー密度及び安定性を付与でき、電気使用機器がより優れた総合性能を有することができる。
【0066】
一部の実施例では、元素Aは、正極活物質材料の重量の0%~36%を占める。
【0067】
一部の実施例では、元素Aは、正極活物質材料の重量の1%、重量の2%、重量の3%、重量の4%、重量の5%、重量の6%、重量の7%、重量の8%、重量の9%、重量の10%、重量の11%、重量の12%、重量の13%、重量の14%、重量の15%、重量の16%、重量の17%、重量の18%、重量の19%、重量の20%、重量の21%、重量の22%、重量の23%、重量の24%、重量の25%、重量の26%、重量の27%、重量の28%、重量の29%、重量の30%、重量の31%、重量の32%、重量の33%、重量の34%、重量の35%、重量の36%のいずれか、又はこれらのうちの任意の2つの値からなる範囲を占めてもよい。
【0068】
本願は、正極活物質材料にA元素を添加して、且つA元素の含有量を限定することによって、二次電池の動作電圧プラットフォームを向上させ、エネルギー密度を向上させたとともに、正極材料動力学を改善し、二次電池のサイクル寿命とエネルギー効率を向上させた。
【0069】
一部の実施例では、二次電池は電解液を含み、電解液は第1添加剤を含み、第1添加剤はビニレンカーボネート及びビニルエチレンカーボネートのうち少なくとも1つを含む。第1添加剤の含有量は、電解液の総重量に対してa%である。
【0070】
一部の実施例では、電解液は第2添加剤を含み、第2添加剤はLiFSI、LiODFB、LiPO2F2、LiBF4、LiBOBのうち少なくとも1つを含む。第2添加剤の含有量は、電解液の総重量に対してb%である。
【0071】
一部の実施例では、0.2≦a*CB/PD≦3を満たす。
【0072】
一部の実施例では、0.1≦a+b≦5を満たす。
【0073】
一部の実施例では、0.1≦a/b≦10を満たす。
【0074】
一部の実施例では、a*CB/PDの数値は、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0のいずれか、又はこれらのうちの任意の2つの値からなる範囲であってもよい。
【0075】
一部の実施例では、a+bの数値は、0.1、0.5、0.8、1.0、1.3、1.5、1.8、2.0、2.3、2.5、2.8、3.0、3.3、3.5、3.8、4.0、4.3、4.5、4.8、5.0のいずれか、又はこれらのうちの任意の2つの値からなる範囲であってもよい。
【0076】
一部の実施例では、a/bの数値は、0.1、0.3、0.5、0.7、0.9、1.0、1.3、1.5、1.7、2.0、2.3、2.5、2.8、3.0、3.3、3.5、3.7、4.0、4.3、4.5、4.8、5.0、5.3、5.5、5.8、6.0、6.3、6.5、7.0、7.3、7.5、7.8、8.0、8.3、8.5、8.8、9.0、9.3、9.5、9.7、10.0のいずれか、又はこれらのうちの任意の2つの値からなる範囲であってもよい。
【0077】
本願は、二次電池の全ライフサイクルにおいて第1添加剤量、第2添加剤量を十分に確保することにより、添加剤量不足による容量減衰の加速を招かない。
【0078】
一部の実施例では、正極容量が相対的に過剰であるため、充電過程において負極のリチウム析出が二次電池の寿命及び安全性能に影響を及ぼすことを防止するために、二次電池の動作中に定容量充電の充電方法が用いられる。
【0079】
一部の実施例では、二次電池は、サイクル前期の充電時にn1/n2(単位:A)でn2時間充電し、前記n2≧0.5、ここで、n1は二次電池の公称容量であり、即ち実際の使用容量であり、単位はAhであり、n2は二次電池の充電時間であり、単位はhである。
【0080】
公称容量は、電池の出荷時に定められた規格容量である。
【0081】
一部の実施例では、二次電池は、1.10≦n4/n1≦1.3、0.8≦n4/n3≦1.1を満たし、ここで、n3は二次電池の正極可逆容量であり、単位はAhであり、n4は二次電池の負極可逆容量であり、単位はAhである。
【0082】
一部の実施例では、実際の使用CB’値は、1.10≦CB’≦1.30であり、即ち電池の負極可逆容量/電池の正極の実際の容量は、1.10~1.30にある。
【0083】
一部の実施例では、CB’値は、1.10、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.20、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.30のいずれか、又はこれらのうちの任意の2つの値からなる範囲であってもよい。
【0084】
一部の実施例では、正極シートは、正極集電体と、正極集電体に配置された正極活物質材料とを含む。
【0085】
一部の実施例では、正極活物質材料は、リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、又はマンガン酸リチウムのうち1つ以上であってもよい。
【0086】
一部の実施例では、正極活物質材料は、リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、及びマンガン酸リチウムであり、その製造方法は、高温固相法、炭素熱還元法、噴霧乾燥法、テンプレート法、又は水熱合成法であってもよい。
【0087】
具体的に実施する時、正極活物質材料であるリン酸鉄リチウムは、下記の方法で製造されることができる。リチウム源(Li2CO3)、鉄源(FePO4)、炭素源を混合し、300℃~500℃の条件で予め処理し、その後600℃~850℃で焼結し、リン酸鉄リチウムを製造して正極活物質材料とする。
【0088】
一部の実施例では、正極活物質材料はコバルト酸リチウムであり、製造方法は、高温固相法、ゾルゲル法等の従来技術であってもよい。
【0089】
具体的に実施する時、正極活物質材料であるコバルト酸リチウムは、下記の方法で製造されることができる。リチウム源(Li2CO3)、コバルト源(Co3O4)、エタノールを混合粉砕し、300℃で予め処理した後、600℃で焼成し、800℃で固相反応させてコバルト酸リチウムを得る。
【0090】
一部の実施例では、最適化された粒径分布と比表面積を有する正極活物質材料を得るために、正極活物質材料の製造過程において得られた中間生成物を破砕処理してふるい分ける。ここで、破砕の方式は特に制限されず、実際の要求に応じて選択されることができ、例えば、粒子破砕機を用いる。本願の正極活物質材料の製造方法は、上記の製造方法に限らず、形成された正極活物質材料が本願に示す特徴を有するものであればよい。
【0091】
一部の実施例では、正極シートの製造工程は、攪拌、コーティング、乾燥、冷間プレス、スリッティング、及びシート化等のステップを含むことができる。
【0092】
一部の実施例では、正極シートは、導電剤と結合剤とをさらに含み、導電剤及び結合剤の種類及び含有量は、特に限定されず、実際の要求に応じて選択されることができる。一部の実施例では、導電剤は、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン等を含むことができ、結合剤は、ポリフッ化ビニリデンを含むことができる。
【0093】
一部の実施例では、正極シートの製造は、前記正極活物質材料、導電剤、結着剤を特定の割合でN-メチルピロリドン(NMP)中に分散し、得られたスラリーをアルミ箔に塗布し、乾燥し、その後、冷間プレス、スリッティングを経て正極シートを得ることを含む。
【0094】
負極シート
【0095】
一部の実施例では、負極シートは、負極集電体と、負極集電体を覆う負極活物質材料と、結着剤と、導電剤とを含む。負極活物質材料、結着剤及び導電剤の種類及び含有量は、特に限定されず、実際の要求に応じて選択されることができる。一部の実施例では、負極活物質材料は、人造黒鉛、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(mesocarbon microbeads)、非晶質炭素、チタン酸リチウム、又はシリコン炭素合金のうち1つ以上を含む。負極活物質材料も、圧縮密度が高く、質量比容量が高く、及び体積比容量が高い等の特徴を有する必要がある。
【0096】
電解液
【0097】
一部の実施例では、電解液の主成分は、リチウム塩、有機溶剤、及び添加剤を含む。ここで、リチウム塩及び有機溶剤の種類及び組成は、特に限定されず、実際の要求に応じて選択されることができる。ここで、リチウム塩は六フッ化リン酸リチウムを含むことができ、溶剤はエチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピルプロピオネート等を含むことができる。
【0098】
セパレータ
【0099】
一部の実施例では、セパレータのタイプは特に限定されず、実際の要求に応じて選択されることができる。セパレータはポリプロピレン膜、ポリエチレン膜、ポリフッ化ビニリデン、スパンデックス膜、アラミド膜又はコーティング変性後の多層複合膜とすることができる。
【0100】
一部の実施例では、二次電池の製造は下記のステップを含む。正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層して、セパレータは正極シートと負極シートとの間に位置して絶縁の役割を果たし、次に正方形のベア電気コアに巻いた後、電池のハウジングに入れて、65℃~95℃で焼いて水を除去し、その後、電解液を注入してシーリングし、静置、熱間および冷間プレス、化成、クランプ、容量分離等の工程を経て、二次電池を得る。
【0101】
一部の実施例では、二次電池の製造は下記のステップを含む。
(1)リン酸鉄リチウム、正極導電剤、正極結着剤及び正極溶剤を混合して正極スラリーを製造し、前記正極スラリーを正極集電体の表面に塗布して、正極シートを得る。
(2)黒鉛、負極分散剤、負極導電剤、負極結着剤及び負極溶剤を混合して負極スラリーを製造し、前記負極スラリーを負極集電体の表面に塗布して、負極シートを得る。
(3)リチウムイオン電池の製造過程において、本願で製造した正極シート、負極シート、セパレータ及び他の電池部品を組み立て、整形、焼成、シーリング、注液、化成、容量分離等の工程を経て、長寿命を有するリン酸鉄リチウムリチウムイオン電池を得て、電池タイプはソフトパック、円柱、アルミニウムハウジング等を含む。ここで、電池の設計CB値は0.8≦CB≦1.10を満たし、即ち電池の負極シートの可逆容量/電池の正極シートの可逆容量は0.8~1.10であり、且つ0.258≦電池設計CB/正極シートPD≦0.700、2.0≦負極Dv50’/正極Dv50≦25を満たす。
【0102】
一部の実施例では、電池の使用過程において、電池の充電ルールを最適化し、電池の充電容量を厳格に制御することによって、電池の実際の使用CB値を1.10~1.30に安定させ、即ち電池の負極シートの可逆容量/電池の正極シートの実際の容量が1.10~1.30にある。
【0103】
一部の実施例では、二次電池は、リチウムイオン電池を含み、上記では、ソフトパックリチウムイオン電池のみを例に挙げているが、本願はソフトパック電池への用途に限定されず、アルミニウムハウジング電池、円筒形電池等の一般的なリチウムイオン電池の形態の用途も含む。
【0104】
電気使用機器
【0105】
一部の実施例では、本願は電気使用機器を提供し、本願が提供する電気使用機器は上記の二次電池を含み、この電気使用機器は、バックアップ電源、モータ、電気自動車、電動オートバイ、アシスト自転車、自転車、電動工具、家庭用大型蓄電池等に用いられるが、これらに限定されない。
【0106】
実施例1
【0107】
リン酸鉄リチウム、正極導電剤、正極結着剤及び正極溶剤を混合して正極スラリーを製造し、前記正極スラリーを正極集電体の表面に塗布して、正極シートを得る。
【0108】
正極シートの製造方法は下記の通りである。リン酸鉄リチウム、導電性カーボンブラック(SP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比97:0.7:2.3で混合し、その後、それらをNMPに添加して十分に混合し、均一に混合した後(12+1+1)μmの炭素アルミニウム箔の上に両面コーティングし、次にシートに対し乾燥、圧延、ストリップ、切断片を行い正極シートを得、片面の正極活物質材料層の厚さは81μmであり、リン酸鉄リチウムの粒子径は、Dv50(0.67μm)、Dv10(0.15μm)、Dv90(5.5μm)、Dv99(9.2μm)、Dn50(0.33μm)、Dn10(0.10μm)、Dn90(1.15μm)、Dn99(3.20μm)である。
【0109】
黒鉛、負極分散剤、負極導電剤、負極結着剤及び負極溶剤を混合して負極スラリーを製造し、負極スラリーを負極集電体の表面に塗布して、負極シートを得る。
【0110】
負極シートの製造方法は下記の通りである。黒鉛、導電性カーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)を質量比96.3:0.7:1.1:1.9で混合し、その後、水中で十分に混合し、均一に混合した後、6μmの銅箔の2つの表面に塗布し、次にシートに対し乾燥、圧延、スリッティング、切断を行い負極シートを得、片面の負極活物質材料層の厚さは65μmであり、負極活物質材料の粒子径は、Dv50’(16.3μm)、Dv10’(8.5μm)、Dv90’(30.2μm)、Dv99’(40.4μm)、Dn50’(8.2μm)、Dn10’(3.1μm)、Dn90’(15.2μm)、Dn99’(25.3μm)である。
【0111】
セパレータは、ポリエチレン膜である。
【0112】
電解液の製造方法は下記の通りである。ビニレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネートを質量比1:1:1で混合し、その後、六フッ化リン酸リチウムを加え、均一に混合して添加剤を加える。ここで、電解液の質量に基づいて、六フッ化リン酸リチウムの含有量が12%であり、添加剤のビニレンカーボネートの含有量が0.5%である。
【0113】
リチウムイオン電池の製造過程において、本願で製造した正極シート、負極シート、セパレータ及び他の電池部品を組み立て、整形、焼成、シーリング、注液、化成、容量分離等の工程を経て、長寿命を有するリン酸鉄リチウムリチウムイオン電池を得る。
【0114】
実施例2~16の製造は下記の通りである。活物質材料の粒子径をスクリーニングして異なる粒子径の活物質材料を得、正極シート及び負極シートの活物質材料の塗布重量を調整して設計CB値を制御し、活物質材料層の圧延厚さを調整することによって圧縮密度を制御し、実施例1の方法によって実施例2~実施例16を製造し、実施例2~実施例16のパラメータは表1に示される。
【0115】
電池の性能試験
【0116】
サイクル容量保持率は下記の通りである。二次電池の公称容量をC1とし、特定の温度(25℃、45℃、60℃)で、1C/1Cで対応するサイクル数をサイクルさせて、放電容量C2を得、容量保持率=C2/C1×100%とした。
【0117】
エネルギー効率は、リチウムイオン電池の放電時に出力されたエネルギーと、前の充電時に入力されたエネルギーとの割合である。
【0118】
エネルギー効率の試験方法は、下記の通りである。
【0119】
二次電池は1C定電流で電池の公称容量まで充電し、充電エネルギーをE1とし、30分間放置し、1C定電流で電圧下限(2.5V)まで放電し、放電エネルギーをE2とし、二次電池のエネルギー効率値はE2/E1とする。
【0120】
保存容量の回復率の試験方法は、下記の通りである。
【0121】
常温で、二次電池を1C定電流で電池の公称容量X1Ahまで充電する。
【0122】
二次電池を60℃のオーブンに移して400日間保管し、常温で、二次電池を1Cで2.5Vまで放電して30分間放置し、その後、二次電池を1C定電流定電圧で3.65Vまで充電し、カットオフ電流は0.05Cであり、そして30分間放置し、二次電池を1C定電流で2.5Vまで放電し、放電容量をX2Ahとし、二次電池の容量回復率はX2/X1×100%とする。
【0123】
【0124】
表1の結果を参照すると、電池設計CB/正極シートPDが0.258~0.700の範囲内にあり、且つDv50’/Dv50が2~25の範囲内に、特に、実施例1~実施例16に示されているDv50’/Dv50が14~25の範囲内に限定されると、正負極材料のリチウムイオン脱着速度の整合性が改善され、二次電池のサイクル寿命が向上した。電池設計CB/正極シートPDが0.258~0.700の範囲内にあり、Dv50’/Dv50の範囲が上記の区間内にないと、正負極の脱着速度の不一致が生じ、電池のサイクル寿命が十分にならない。Dv50’/Dv50が2.0~20の範囲内にあり、電池設計CB/正極シートPDが0.258~0.700の範囲にないと、二次電池のサイクル、保存寿命を満足できず、電池のサイクル寿命を延ばすことができない。本願は、実際の使用CB値を1.1~1.3の範囲内に限定することによって、負極が動作過程において適切な量のリチウム空孔を有することを確保することができる。実際の使用CB値が1.3より大きい場合、負極が動作過程においてリチウム空孔が過剰になり、SEIを生成する過程において過度な活性リチウムを消耗し、サイクル寿命/保存寿命の向上に不利である。実際の使用CBが1.1より小さい場合、負極が動作過程においてリチウム空孔が不足してリチウムが析出し、二次電池の副反応を増加させ、サイクル保存寿命に影響を与える。
【0125】
上記の表における電池の試験結果を比較して、本願で製造した長寿命のリン酸鉄リチウムリチウムイオン電池を用いると、25℃ 1C/1C、45℃ 1C/1Cでのサイクル容量保持率、60℃ 100%SOC保存容量回復率、及びエネルギー効率の方面で、正極の余剰化設計を採用しない通常のリン酸鉄リチウムリチウムイオン電池より明らかに優れている。
【0126】
実施例17~実施例20は、下記の方法で製造される。
【0127】
リン酸鉄リチウム、正極導電剤、正極結着剤及び正極溶剤を混合して正極スラリーを製造し、前記正極スラリーを正極集電体の表面に塗布して、正極シートを得る。
【0128】
正極シートの製造方法は下記の通りである。リン酸鉄リチウム、導電性カーボンブラック(SP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比96.7:0.9:2.4で混合し、その後、それらをNMPに添加して十分に混合し、均一に混合した後、(12+1+1)μmの炭素アルミニウム箔の上に両面コーティングをし、次にシートに対し乾燥、圧延、スリッティング、切断を行い正極シートを得、片面の正極活物質材料層の厚さは81μmである。
【0129】
負極シートの製造方法は下記の通りである。黒鉛、導電性カーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)を質量比96.1:0.7:1.1:2.1で混合し、その後、水中で十分に混合し、均一に混合した後6μmの銅箔の2つの表面に塗布し、次にシートに対し乾燥、圧延、スリッティング、切断を行い負極シートを得、片面の負極活物質材料層の厚さは65μmである。
【0130】
セパレータは、ポリエチレン膜である。
【0131】
製造方法は実施例1と同様であり、相違点は表2に示すビニレンカーボネートの量である。
【0132】
リチウムイオン電池の製造過程において、本願で製造した正極シート、負極シート、セパレータ及び他の電池部品を組み立て、整形、焼成、シーリング、注液、化成、容量分離等の工程を経て、リチウムリチウムイオン電池を得る。
【0133】
【0134】
異なる実施例のa値は、電解液における第1添加剤の量を調整することによって得ることができる。本願は、電解液における第1添加剤aとCBとPDとの関係を制御することによって、a*CB/PDが0.2~3の範囲内に確保され、二次電池の全ライフサイクル内で、第1添加剤の含有量が十分であることが確保され、添加剤量不足による容量減衰の加速が起こらない。a*CB/PDが3より大きい場合、負極SEIの成膜が厚くなり過ぎ、二次電池のシステム動力学が悪くなり、常温サイクルにおいてリチウム析出のリスクが増加し、常温サイクル寿命に不利である。a*CB/PDが0.2より小さい場合、負極SEIの成膜厚さが不十分となり、サイクル過程における負極活性リチウムの消耗が増加し、サイクルが悪くなり、従って、同時に実際の使用CB値の範囲が1.10~1.30を満たす必要があり、それにより、負極に適切なリチウム空孔があることを確保し、電池の寿命を向上させる。
【0135】
上記の表における電池の試験結果を比較して、本願が正極の余剰化設計に基づいてa、PD及びa*CB1/PDの値を制御して製造した長寿命のリン酸鉄リチウムリチウムイオン電池を用いると、25℃ 1C/1C、45℃ 1C/1Cサイクル容量保持率、60℃ 100%SOC保存容量回復率、エネルギー効率の方面で、正極の余剰化設計を採用しない通常のリン酸鉄リチウムリチウムイオン電池より明らかに優れている。
【0136】
実施例21~実施例24は、いずれも下記の方法で製造される。
【0137】
リン酸鉄リチウム、正極導電剤、正極結着剤及び正極溶剤を混合して正極スラリーを製造し、前記正極スラリーを正極集電体の表面に塗布して、正極シートを得る。
【0138】
正極シートの製造方法は下記の通りである。リン酸鉄リチウム、導電性カーボンブラック(SP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比97.3:0.5:2.2で混合し、その後、それらをNMPに添加して十分に混合し、均一に混合した後(12+1+1)μmの炭素アルミニウム箔の上に両面コーティングし、次にシートに対し乾燥、圧延、スリッティング、切断を行い正極シートを得、片面の正極活物質材料層の厚さは81μmである。
【0139】
負極シートの製造方法は下記の通りである。黒鉛、導電性カーボンブラック(SP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)を質量比96.5:0.5:1.2:1.8で混合し、その後水中で十分に混合し、均一に混合した後6μmの銅箔の2つの表面に塗布し、次にシートに対し乾燥、圧延、スリッティング、切断を行い負極シートを得、片面の負極活物質材料層の厚さは65μmである。
【0140】
黒鉛、負極分散剤、負極導電剤、負極結着剤及び負極溶剤を混合して負極スラリーを製造し、前記負極スラリーを負極集電体の表面に塗布して、負極シートを得る。
【0141】
電解液の製造方法は下記の通りである。ビニレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピルプロピオネートを質量比1:1:1で混合し、その後、六フッ化リン酸リチウムを加え、均一に混合して添加剤を加える。ここで、電解液の質量に基づいて、六フッ化リン酸リチウムの含有量が12%であり、第1添加剤はビニレンカーボネートであり、第2添加剤はリチウムビス(オキサラト)ボラートであり、第1添加剤と第2添加剤の含有量は表3の通りである。
【0142】
リチウムイオン電池の製造過程において、本願で製造した正極シート、負極シート、セパレータ及び他の電池部品を組み立て、整形、焼成、シーリング、注液、化成、容量分離等の工程を経て、長寿命を有するリン酸鉄リチウムリチウムイオン電池を得る。
【0143】
【0144】
表3に示すように、上記a、bの値は、第1添加剤及び第2添加剤の添加量を調整することにより得られ、a+bがこの範囲内にあれば、負極の成膜添加剤の量が十分確保され、そのサイクル寿命、保存寿命が満足されることが確保され、同時に、a/bがこの範囲内にあれば、二次電池のサイクル寿命、保存寿命を向上させるとともに、そのエネルギー効率も確保することができる。上記の表に示されている電池の試験結果を比較して、本願が正極の余剰化設計に基づいてa、a+b及びa/bの値を制御して製造した長寿命のリン酸鉄リチウムリチウムイオン電池を用いると、25℃ 1C/1C、45℃ 1C/1Cサイクル容量保持率、60℃ 100%SOC保存容量回復率、エネルギー効率の方面で、正極の余剰化設計を採用しない通常のリン酸鉄リチウムリチウムイオン電池より明らかに優れている。
【0145】
上記の実施例では、各実施例に対する説明は、それぞれ独自の焦点を有し、詳細に説明されていない実施例の部分は、他の実施例の関連する記載を参照すればよい。
【0146】
以上、本願の実施例に係る二次電池及び電気使用機器について詳しく説明したが、本明細書は具体的な例を応用して本願の原理と実施形態について述べ、以上の実施例に対する説明は本願の方法及びその核心となる思想の理解を助けるためである。また、当業者は、本願の思想に照らして、具体的な実施形態及び適用範囲において変形を加えることができ、本明細書の内容は、本願を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。
【国際調査報告】