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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】二次電池及び電気機器
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20241108BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20241108BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/136
H01M4/58
H01M10/0567
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501608
(86)(22)【出願日】2022-12-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 CN2022144292
(87)【国際公開番号】W WO2024087389
(87)【国際公開日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】202211327756.8
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520434178
【氏名又は名称】欣旺達動力科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Sunwoda Mobility Energy Technology Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 耀
(72)【発明者】
【氏名】王 明旺
(72)【発明者】
【氏名】張 旭輝
(72)【発明者】
【氏名】王 宝玉
(72)【発明者】
【氏名】陳 輝
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ04
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AL07
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ07
5H029HJ19
5H050AA07
5H050AA09
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB08
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA19
(57)【要約】
本発明は二次電池及び電気機器を提供し、二次電池は正極シートと負極シートとを含み、前記二次電池のCB値、充電エネルギー、放電エネルギーは0.74≦(W/W)*CB≦1.03の関係を満たし、これにより、二次電池はより高いエネルギー密度を有するとともに、より長いサイクル寿命及びより良い貯蔵性能を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートと負極シートとを含み、
前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体の一つの面に配置された正極膜シートとを含み、前記正極膜シートは正極活物質を含み、
前記負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体の一つの面に配置された負極膜シートとを含み、前記負極膜シートは括負極活物質を含み、
前記二次電池は0.74≦(W/W)*CB≦1.03を満たし、
ここで、Wは前記二次電池の充電エネルギーであり、Wは前記二次電池の放電エネルギーであり、WとWの単位はワットアワーであり、CBは前記負極シートの単位面積あたりの容量と前記正極シートの単位面積あたりの容量との比の値である、
ことを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記二次電池は0.92≦W/Wを満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記CBの範囲は0.8 ≦CB≦1.08である、
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記正極活物質は、LiFe(1-y)POを含み、ここで、0.8≦X≦1.2、0≦y<1を満たし、A元素は、ニッケル、コバルト、マンガン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、チタン、バナジウムのうち一つ以上を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
前記正極膜シートの面積はSであり、前記負極膜シートの面積はSであり、SとSはS/S≦0.995を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
/SとW/WはS/S ≧W/Wを満たす、
ことを特徴とする請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記正極活物質の容量毎グラムは130~159 mAh/gであり、前記正極膜シートの面密度は150~600 g/mである、
ことを特徴とする請求項5に記載の二次電池。
【請求項8】
前記二次電池は電解液をさらに含み、前記電解液は有機溶媒を含み、前記有機溶媒は不飽和カーボネートと硫黄酸素二重結合化合物とを含み、
前記不飽和カーボネートは、ビニレンカーボネートとビニルエチレンカーボネートの少なくとも一方を含み、
前記硫黄酸素二重結合化合物は、1,3-プロパンスルトン、硫酸エチレン、1,4-ブタンスルトン、亜硫酸エチレン、メチレンメタンジスルホナートのうち一つ以上を含む、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記電解液の重量に基づき、前記不飽和カーボネートの含有量はa%であり、前記硫黄酸素二重結合化合物の含有量はb%であり、前記二次電池は、
(I) 0.1≦a+b≦7、
(II) 0.1≦a/b≦10、
(III) 0.05≦a≦3、
(IV) 0.05≦b≦4、
(V) 0.06≦a/CB≦3.75、
(VI) 0.06≦b/CB≦5.0、
上記特徴のうち一つ以上を満たす、
ことを特徴とする請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記二次電池の実CB’値は1.10~1.30であり、ここで、CBとCB’は0.88≦CB*CB’≦1.375を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の二次電池を含み、前記二次電池は前記電気機器の給電電源として利用される、
ことを特徴とする電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2022年10月27日に中国特許局に出願され、出願番号が202211327756.8、発明の名称が「二次電池及び電気機器」の中国特許出願の優先権を主張し、そのすべての内容は引用により本願に組み込まれる。
【0002】
本願はエネルギー貯蔵装置の技術分野に関し、具体的に二次電池及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0003】
新エネルギ自動車は世界の自動車産業の発展の方向性を示している。二次電池は新しいタイプの高電圧、高エネルギー密度の充電可能な電池として、軽量、高エネルギー密度、無公害、メモリー効果なし、長寿命などの優れた特徴を備えており、新エネルギ自動車とエネルギー貯蔵技術分野で幅広く利用されている。
現在、純電気自動車、プラグインハイブリッド自動車などに幅広く利用されているのはリチウムイオン二次電池である。自動車の耐用年数を考慮すると、電池の寿命に深刻な課題をもたらしている。既存のリチウムイオン電池は自動車の長時間航続の需要にますます応えられなくなってきており、そのため、如何に電池のサイクル性能をさらに向上させることは二次電池の研究開発における重要な技術課題となっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願は、既存の二次電池のサイクル寿命及び貯蔵性能が悪いという課題を解決することを目的とした二次電池及び電気機器を提供する。
【0005】
一態様では、二次電池を提供し、この二次電池は、正極シートと負極シートとを含み、前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一つの面に配置された正極膜シートとを含み、前記正極膜シートは正極活物質を含む。前記負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一つの面に配置された負極膜シートとを含み、前記負極膜シートは負極活物質を含む。前記二次電池は0.74≦(W/W)*CB≦1.03を満たす。ここで、Wは前記二次電池の充電エネルギーであり、Wは前記二次電池の放電エネルギーであり、WとWの単位はワットアワーである。CBは前記負極シートの単位面積あたりの容量と前記正極シートの単位面積あたりの容量との比の値である。
【0006】
さらに、前記二次電池は0.92≦W/Wを満たす。
さらに、前記CBの範囲は0.8 ≦CB≦1.08である。
さらに、前記正極活物質はLiFe(1-y)POを含み、ここで、0.8≦X≦1.2、0≦y<1、A元素はニッケル、コバルト、マンガン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、チタン、バナジウムのうち一つ以上を含む。
【0007】
さらに、前記正極シートは正極膜シートを含み、前記負極シートは負極膜シートを含む。ここで、前記正極膜シートの面積はSであり、前記負極膜シートの面積はSであり、SとSはS/S≦0.995を満たす。
さらに、前記正極活物質の容量毎グラムは130~159 mAh/gであり、前記正極膜シートの面密度は150~600 g/mである。
さらに、S/SとW/WはS/S ≧W/Wを満たす。
【0008】
さらに、前記二次電池は電解液をさらに含み、前記電解液は有機溶媒を含み、前記有機溶媒は不飽和カーボネート及び/又は硫黄酸素二重結合化合物を含み、前記不飽和カーボネートはビニレンカーボネート及び/又はビニルエチレンカーボネートを含み、前記硫黄酸素二重結合化合物は1,3-プロパンスルトン、硫酸エチレン、1,4-ブタンスルトン、亜硫酸エチレン、メチレンメタンジスルホナートのうち一つ以上を含む。
【0009】
さらに、前記電解液の重量に基づき、前記不飽和カーボネートの含有量をa%とし、前記硫黄酸素二重結合化合物の含有量をb%とすると、前記二次電池は以下の特徴のうち一つ以上を満たす。
(I) 0.1≦a+b≦7。
(II) 0.1≦a/b≦10。
(III) 0.05≦a≦3。
(IV) 0.05≦b≦4。
(V) 0.06≦a/CB≦3.75。
(VI) 0.06≦b/CB≦5.0。
【0010】
さらに、前記二次電池の実CB’値は1.10~1.30である。ここでCBとCB’は0.88≦CB*CB’≦1.375を満たす。
一方、本願の実施例は上記実施態様のいずれかに記載の二次電池を給電電源として利用する電気機器をさらに提供している。
【0011】
従来の技術と比べ、本願は二次電池及び電気機器を提供し、二次電池は正極シート及び負極シートを含み、且つ前記二次電池は0.74≦(W/W)*CB≦1.03を満たし、電池のCB値、充電エネルギー、放電エネルギーの間は上記の関係を満たすため、二次電池はより高いエネルギー密度を有するとともに、より長いサイクル寿命及びより良い貯蔵性能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下は本願の実施例に係る技術案を明確かつ完全に説明する。明らかに、説明した実施例は本願の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本願の実施例に基づき、当業者は創造的な努力をすることなく得られた他のすべての実施例は、本願の請求範囲に属する。
【0013】
本実施例は正極シートと負極シートとを含む二次電池を提供し、前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一つの面に配置された正極膜シートとを含み、前記正極膜シートは正極活物質を含む。前記負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一つの面に配置された負極膜シートとを含み、前記負極膜シートは負極活物質を含む。前記二次電池は0.74≦(W/W)*CB≦1.03を満たす。ここで、Wは前記二次電池の充電エネルギーであり、Wは前記二次電池の放電エネルギーであり、WとWの単位はワットアワーである。CBは前記負極シートの単位面積あたりの容量と前記正極シートの単位面積あたりの容量との比の値である。本実施例において、 CB値と電池の充放電エネルギーの関係は、電池の性能に大きな影響があり、二次電池の充電エネルギーW、放電エネルギーW及びCB値が0.74≦(W/W)*CB≦1.03の関係を満たす場合、二次電池は良いサイクル性能、急速充電能力及びより高いエネルギー密度を有し、これにより、二次電池はより高いエネルギー効率とより長いサイクル寿命を兼備する。
【0014】
本願のいくつかの実施態様により、前記正極活物質の容量毎グラムは130~159 mAh/gであり、前記正極膜シートの面密度は150~600 g/mである。好ましくは、前記正極活物質の容量毎グラムは133mAh/g、135mAh/g、143mAh/g、145mAh/g、153mAh/g、155mAh/g、158mAh/gのうちいずれかの値でもよく、または任意の2つの値からなる範囲にあってもよい。前記正極膜シートの面密度は155 g/m、200 g/m、255 g/m、300 g/m、355 g/m、400 g/m、455 g/m、500 g/m、555 g/mのうちいずれかの値でもよく、または任意の2つの値からなる範囲にあってもよい。前記正極活物質の容量毎グラムが小さすぎる場合、二次電池のエネルギー密度に影響を及ぼし、前記正極活物質の容量毎グラムが大きすぎる場合、前記正極活物質の安定性に影響を及ぼし、安定性が悪くなり、二次電池のサイクル寿命に影響を与える。前記正極膜シートの面密度が小さすぎる場合、二次電池のエネルギー密度に影響を及ぼし、前記正極活膜シートの面密度が大きすぎる場合、二次電池のシステムカイネティクスが悪くなり、そのサイクル寿命に影響を与える。そのため、本実施例に係る正極活物質の容量毎グラム及び正極膜シートの面密度が適切に決められることにより、より高い電子伝導性能を確保するとともに、前記正極シートにより高い容量利用率を与え、これにより、電池のカイネティクス性能、サイクル性能、貯蔵性能、及びエネルギー密度に有利である。
【0015】
本願のいくつかの実施態様において、前記負極活物質の容量毎グラムは260~380 mAh/gである。例えば、前記負極活物質の容量毎グラムは265 mAh/g、270 mAh/g、275 mAh/g、280 mAh/g、285 mAh/g、290 mAh/g、295 mAh/g、300 mAh/g、315 mAh/g、325 mAh/g、335 mAh/g、345 mAh/g、355 mAh/g、365 mAh/g、375 mAh/gのうちいずれかの値でもよく、または任意の2つの値からなる範囲にあってもよい。
【0016】
前記負極膜シートの面密度は80~290 g/mであり、前記負極膜シートの面密度は90g/m、100g/m、110g/m、120g/m、130g/m、140g/m、150g/m、160g/m、170g/m、180g/m、190g/m、200g/m、210g/m、220g/m、230g/m、240g/m、250g/m、260g/m、270g/m、280g/m、285g/m、288g/mのうちいずれかの値でもよく、または任意の2つの値からなる範囲にあってもよい。本願のいくつかの実施態様において、前記二次電池は0.92≦W/Wを満たし、前記CBの範囲は0.8 ≦CB≦1.08である。W/WとCBの範囲をさらに限定すれば、エネルギー効率を確保するとともに、二次電池のサイクル寿命と貯蔵性能をさらに向上させることができる。本実施例では、W/Wは1.15以下である。
【0017】
本願のいくつかの実施態様において、前記二次電池の実CB’値は1.10~1.30である。ここでCBとCB’は0.88≦CB*CB’≦1.375を満たし、このように、一方では二次電池が充電中にリチウム析出が発生しないことを確保し、二次電池のサイクル寿命と貯蔵性能を延長することができる。他方では二次電池の動作中に負極に大量の過剰なリチウム埋め込み空孔が存在することを回避することができる。なお、こちらのCBは設計CB値であり、CB’は実用CB値である。
【0018】
本願のいくつかの実施態様において、前記正極活物質の分子式はLiFe(1-y)POを含み、ここで、0.8≦X≦1.2、0≦y<1である。A元素はニッケル、コバルト、マンガン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、チタン、バナジウムのうち一つ以上を含み、例えば、正極活物質はLiFePO、LiFe0.97Co0.03PO、LiFe0.98Ti0.02PO、LiFe0.995Mg0.005PO、LiFe0.99Mn0.01POのうち一つ以上を含む。
【0019】
本願のいくつかの実施態様において、前記A元素は前記正極活物質の総重量の0%~36%を占める。例えば、前記A元素が前記正極活物質の総重量を占める割合は1%、5%、9%、11%、15%、19%、21%、25%、29%、31%、35%のうちいずれかの値でもよく、または任意の2つの値からなる範囲にあってもよい。正極活物質に上記A元素が混合されているため、二次電池の電圧プラットフォームとエネルギー密度を向上させることができる。
【0020】
本願のいくつかの実施態様において、前記正極膜シートは粘着剤、導電剤及び分散剤をさらに含み、ここで、正極膜シートの重量に基づき、正極活物質の含有量が80%~99%、粘着剤含有量が1%~6%、導電剤含有量が0%~20%、分散剤が0%~8%とされる。このように、二次電池のエネルギー密度を確保するとともに、二次電池システムのカイネティクスを改善し、正/負極シートのリチウム脱離速度をバランスさせ、負極シートのリチウムインターカレーション過程における過度の膨張を抑制し、活性リチウムの損耗を減少し、サイクル寿命を向上させる。
【0021】
いくつかの実施例では、粘接剤はPVDFであり、導電剤はカーボンブラックなどの炭素材料であり、分散剤はPVP(ポリメチルピロリドン)である。
従って、正極シート、負極シートが上記容量毎グラム範囲の活物質を含み、同時に二次電池が0.74≦(W/W)*CB≦1.03を満たす場合、前記正極シートと前記負極シートをより効果的に整合でき、前記二次電池はより高い容量を持ち、貯蔵とサイクルの過程における電池の容量維持率を向上させるとともに、前記正極シートの電子伝導性能と、電池の動力性能を向上させることができる。これにより、二次電池はより高いエネルギー密度、サイクル性能、貯蔵性能とカイネティクス性能を兼備する。
【0022】
本実施例において、前記正極膜シートの面積はSであり、前記負極膜シートの面積はSであり、S、SはS/S≦0.995を満たす。例えば、S/Sは0.702、0.902、0.922、0.945、0.955、0.965、0.975、0.985のうちいずれかの値でもよく、または任意の2つの値からなる範囲にあってもよい。ここで、S、Sがこの関係式を満たせば、二次電池の動作中に負極シートに十分なリチウム空孔を確保でき、充電中に負極シートのリチウム埋め込み空孔の不足によるリチウム析出を回避でき、二次電池のサイクルの安定性能を向上させることができる。本実施例のS/Sの値は0.70以上であり、S/Sの値が0.70より小さくなると、電池の容量利用率に影響を与える。
【0023】
いくつかの実施例では、S/SとW/WはS/S ≧W/Wを満たす。正極膜シートと負極膜シートとの面積比と、電池の放電エネルギーと充電エネルギーとの比を、上記範囲に制限することにより、二次電池のエネルギー密度とエネルギー効率を効果的にバランスでき、エネルギー効率を確保するとともに、二次電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0024】
別の実施例では、前記二次電池は電解液をさらに含み、前記電解液は有機溶媒を含み、前記有機溶媒は不飽和カーボネート及び/又は硫黄酸素二重結合化合物を含む。前記不飽和カーボネートはビニレンカーボネート及び/又はビニルエチレンカーボネートを含む。前記硫黄酸素二重結合化合物は1,3-プロパンスルトン、硫酸エチレン、1,4-ブタンスルトン、亜硫酸エチレン、メチレンメタンジスルホナートのうち一つ以上を含む。
【0025】
さらに、前記不飽和カーボネートの含有量はa%であり、前記硫黄酸素二重結合化合物の含有量はb%であり、前記二次電池は以下の特徴のうち一つ以上を満たす。
(I) 0.1≦a+b≦7。
(II) 0.1≦a/b≦10。
(III) 0.05≦a≦3。
(IV) 0.05≦b≦4。
(V) 0.06≦a/CB≦3.75。
(VI) 0.06≦b/CB≦5.0。
【0026】
a+bの値は0.15、0.55、1.5、1.55、2.5、2.55、3.5、3.55、4.5、4.55、7のうちいずれかの値でもよく、または任意の2つの値からなる範囲にあってもよい。ここで、a+bの値が0.1~5の範囲内にあると、寿命を確保した上で、二次電池のエネルギー効率を向上させることができる。
【0027】
a/bの値は1.2、2、2.2、3、3.2、4、4.2、5、5.2、6、6.2、7、7.2、8、8.2、9、9.2のうちいずれかの値でもよく、または任意の2つの値からなる範囲にあってもよい。ここで、a/bの値が0.1~10の範囲内にあると、寿命を確保した上で、二次電池のエネルギー効率を向上させることができる。
【0028】
aの値は0.15、0.55、1、1.15、1.55、2、2.15、2.55、2.85、2.95のうちいずれかの値でもよく、または任意の2つの値からなる範囲にあってもよい。ここで、aの値が0.1~3の範囲内にあると、寿命を確保した上で、二次電池のエネルギー効率を向上させることができる。
【0029】
bの値は0.15、0.55、1、1.15、1.55、2、2.15、2.55、3.15、3.55、3.85、3.95のうちいずれかの値でもよく、または任意の2つの値からなる範囲にあってもよい。ここで、bの値が0.1~4の範囲内にあると、寿命を確保した上で、二次電池のエネルギー効率を向上させることができる。
【0030】
一実施態様において、a/CBの値は0.06、0.15、0.55、1.5、1.55、2.5、2.55、2、65、2.75、2.85、2.95、3、3.75のうちいずれかの値でもよく、または任意の2つの値からなる範囲にあってもよい。ここで、a/CBの値が0.06~3.75の範囲内にあると、寿命を確保した上で、二次電池のエネルギー効率を向上させることができる。
【0031】
b/CBの値は0.15、0.55、1.5、1.55、2.5、2.55、3.5、3.55、4.1、4.15、4.2、4.25、5.0のうちいずれかの値でもよく、または任意の2つの値からなる範囲にあってもよい。ここで、b/CBの値が0.06~5の範囲内にあると、寿命を確保した上で、二次電池のエネルギー効率を向上させることができる。
【0032】
本実施例において、正極シートと負極シートは電解液に浸漬され、リチウムイオンは電解液を媒体として正極シートと負極シートとの間で往復することにより、電池の充放電が実現される。正/負極が電解液によって短絡することを回避するために、セパレータで正/負極シートを分離する必要がる。二次電池の形態は、例えばアルミニウムケースをケースとしてもよいし、ソフトバンク電池であってもよい。ここで、前記セパレータは、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム及びそれらの多層複合フィルムから選択されてもよい。
【0033】
以下、具体的な実施例を挙げて本願をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本願の請求範囲を限定するものではないと理解されるべきである。
【0034】
実施例1
提供された二次電池の製造方法は、以下のステップを含む。
1)セパレータが前記正極シートと前記負極シートとの間に配置されて隔離の役割を果たすように、前記正極シート、前記セパレータ、前記負極シートを順に積層して配置する。
2)前記正極シート、前記セパレータ及び前記負極シートを巻回して芯体を得る。
3)芯体を包装ケースに入れ、電解液を包装ケースに注入し、真空パッケージング、静置、化成、成形などの工程を経て、二次電池を得る。
【0035】
正極シートの製造について
正極活物質LiFePO、導電剤SP、粘接剤PVDF、分散剤PVPを重量比 97:0.7:2.2:0.1でNMPに均一に混合し、正極スラリーを形成する。正極スラリーを正極集電体のアルミニウム箔の二つの表面に被覆し、乾燥、冷間プレス、分割、切断を経て、正極シートを得る。
【0036】
負極シートの製造について
負極活物質黒鉛、導電剤SP、分散剤CMC、粘着剤SBRを重量比96.3:0.7:1.1:1.9で水に均一に混合し、均一な負極スラリーを形成する。負極スラリーを負極集電体の銅箔の二つの表面に被覆する。分割、切断を経て、負極シートを得る。
【0037】
電解液の製造について
有機溶媒であるエチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を質量比1:1:1で混合する。水分含有量<10ppmのアルゴン雰囲気のグローブボックスの中で、十分に乾燥されたLiPFリチウム塩を上記有機溶媒に溶解するとともに、ビニレンカーボネート(VC)、1,3-プロパンスルトン(PS)を加え、均一に混合し、電解液を得る。ここで、VCの含有量が電解液の総重量の1.5%を占め、PSが電解液の総重量の2%を占める。ここで、電解液におけるLiPFの濃度は1mol/Lである。
セパレータについて、セパレータはポリエチレン(PE)セパレータ又はポリプロピレン(PP)セパレータを利用する。
【0038】
測定について
1、電池エネルギー効率値W/Wの測定
(1)1Cの定電流で二次電池を電池の公称容量まで充電し、充電エネルギーをW1とする。
(2)30min静置。
(3)1C定電流で電圧下限(2.5V)まで放電し、放電エネルギーをW2とする。ここで、二次電池エネルギー効率値はW2/W1である。
【0039】
2、二次電池の容量過剰系数CB値の測定
[正極可逆容量の測定]
片側塗布の正極シートを、直径14mmの円形シートに切断し、重量を量り、正極集電体の質量を差し引き、正極膜シートの質量Mcを求め、単位はmgである。グローブボックスでボタン電池を組み立て、ここで、リチウム金属の小さい円形シートを対極とし、上記製造した電解液を利用する。25℃で6h静置した後、0.1C倍率の定電流で4.25Vまで充電し、次に0.05C倍率の定電流で4.25Vまで充電した後、5分間静置、0.1C倍率の定電流で2.8Vまで放電する。放電容量をCcとし、単位はmAhである。
【0040】
[負極可逆容量の測定]
片側塗布の負極シートを直径14mmの円形シートに切断し、重量を量り、負極集電体の質量を差し引き、負極膜シートの質量Maを求め、単位はmgである。グローブボックスでボタン電池を組み立て、ここで、リチウム金属の小さい円形シートを対極とし、上記製造した電解液を利用する。25℃で6h静置した後、0.1C倍率の定電流で5mVまで放電し、次に0.01Cの定電流で5mVまで放電した後、5分間静置、0.1C倍率の定電流で0.7Vまで充電し。充電容量をCaとし、単位はmAhである。
正極の放電容量Cc、負極の充電容量Caを求めた後、CB=Ca/Ccにより電池の容量過剰系数CBを算出する。
【0041】
3、二次電池のサイクル寿命の測定
25℃で、実施例と比較例で製造したリチウムイオン二次電池を1C倍率で定容量で公称容量まで充電し、1C倍率で2.5Vまで放電し、リチウムイオン二次電池の容量が初始容量の80%に減衰するまでサイクル測定を行い、サイクルの回数を記録する。
【0042】
4、二次電池の貯蔵寿命の測定
25℃で、実施例と比較例で製造したリチウムイオン二次電池を1C倍率で公称容量まで充電し、1C倍率で2.5Vまで放電し、電池の初始容量を求める。電池を1C倍率でフル充電した後、リチウムイオン二次電池の容量が初始容量の80%に減衰するまで電池を60℃の恒温箱に保管し、貯蔵の日数を記録する。
【0043】
5、電池のリチウム析出の測定
25℃で、実施例と比較例で製造したリチウムイオン二次電池を1C倍率で定容量で公称容量まで充電し、1Cで2.5Vまで完全放電する。10回を繰り返した後、リチウムイオン二次電池を1Cで公称容量までフル充電し、次に負極シートを取り出し、負極シートの平坦度と表面のリチウム析出の状況を観察する。ここで、負極の表面におけるリチウム析出領域の面積が1%以上5%未満の場合、軽度リチウム析出と見なされ、負極の表面におけるリチウム析出領域の面積が5%~40%の場合、中度リチウム析出と見なされ、負極の表面におけるリチウム析出領域の面積が40%を超える場合、重度リチウム析出と見なされる。
【0044】
実施例2~21、比較例1~3
二次電池の製造及び性能測定の過程は実施例1と同じであり、異なるのは、製造過程における極シートのパラメータを調整して異なる性能を持つ二次電池を製造することである。具体的に、極シートの異なるパラメータは表1に示す。
【0045】
実施例22~35
二次電池の製造及び性能測定の過程は実施例1と同じであり、異なるのは、製造過程における添加剤の添加パラメータを調整して異なる性能を持つ二次電池を製造することである。具体的に、電解液の異なるパラメータは表2に示す。
【0046】
ここで、正極スラリーと負極スラリーの塗布重量を調整して異なるCB値を制御する。二次電池の充電容量を調整して異なるCB’値を制御する。集電体における正極スラリー、負極スラリーの塗布面積を調整して異なる正極膜シートの面積S及び負極膜シートの面積Sを得る。エチレンカーボネートと1,3-プロパンスルトンの添加量を調整して、異なる不飽和カーボネートの含有量a%及び異なる硫黄酸素二重結合化合物の含有量b%を得る。
【0047】
上記方法に基づいてそれぞれ製造された実施例1~35と比較例1~3の二次電池に関するパラメータ及び測定結果は表1~3に記入され、ここで、表1のKの値は、K=(W/W)*CBを表す。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
表1-3の実施例1~35と比較例1~3に示すように、K=(W/W)*CBが0.74-1.03の範囲内にあり、CB値が0.8-1.08の範囲にある場合、二次電池の正極には動作中における活性リチウムの損耗を補充するためのリチウムが十分であり、電池は良好のサイクル寿命、貯蔵性能及びカイネティクス性能を兼備する。Kの値が0.84~0.95範囲内にある場合、電池はより優れたサイクル寿命及び貯蔵性能を持ち、Kの値が0.74未満又は1.03を超える場合、電池のサイクル性能、貯蔵性能が著しく降下し、中度リチウム析出が発生する。
【0052】
表1~3の実施例7~11に示すように、実用CB値であるCB’が1.1から1.3に増加する過程において、二次電池のサイクルと貯蔵寿命は最初に増加し後に減少する傾向がある。要因としては、CB’が増加すると、二次電池の動作中に負極のリチウム脱離の深さが減少し、負極の膨張が減少し、負極の膨張によって生じる新しい界面が減少し、これにより、新しい界面でSEIを生成する活性リチウムの消耗が減少され、寿命が増加する。しかし、CB’が大きすぎると、負極活物質の含有量が多すぎて、界面が増加し、界面でSEIを生成することによって活性リチウムの消耗が増加し、そのため、サイクル、貯蔵寿命が減少し始める。
【0053】
表1~3の実施例17~21に示すように、正極の材料に少量のTi、Co、Mg、Ni、Mnをドープすると、二次電池のサイクル、貯蔵寿命がいずれも増加する。要因としては、元素がドープされると、二次電池の電圧プラットフォームが向上し、二次電池のシステムカイネティクスが若干悪くなり、充放電過程における副反応の速度も減少し、これにより、サイクル、貯蔵性能が若干向上する。
【0054】
表1の比較例1~3の電池Kの値(即ち(W/W)*CB)が範囲(0.74~1.03)内にないため、電池のサイクル寿命、貯蔵寿命、又はカイネティクス性能が同時に兼備され得ない。そのため、本実施例に係る二次電池は高エネルギー効率と長寿命を両立できる。
表2と表3のデータに示すように、不飽和カーボネート、硫黄酸素二重結合化合物の添加により二次電池の総合性能をさらに向上させることができ、電池の中に不飽和カーボネートと硫黄酸素二重結合化合物の両方が含まれると、性能がより優れる。
【0055】
本実施例はさらに電気機器を提供し、この電気機器は上記いずれかの実施態様に係る二次電池を含み、前記二次電池は前記電気機器の給電電源として利用される。前記電気機器はモバイル機器(例えば、携帯電話、ラップトップなど)、電気自動車(例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電気トラックなど)、電車、船舶および衛星、エネルギー貯蔵システムなどに限られない。
以上は、本願の実施例に係る二次電池及び電気機器について詳しく説明し、明細書に具体的な例を挙げて本願の原理及び実施態様を述べたが、上記の実施例に対する説明は本願の技術案及び発明思想の理解を助けるためにのみ使用されるものである。当業者であれば、前記の各実施例に記載の技術案に対する補正、或いはその中の一部の技術的特徴に対する変更は可能であるが、これらの補正や変更は、該当する技術案の本質を本願の各実施例の技術案の範囲から逸脱させるものではないと理解すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シートと負極シートとを含み、
前記正極シートは、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一つの面に配置された正極膜シートとを含み、前記正極膜シートは正極活物質を含み、
前記負極シートは、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一つの面に配置された負極膜シートとを含み、前記負極膜シートは括負極活物質を含み、
前記二次電池は0.74≦(W2/W1)*CB≦1.03を満たし、
ここで、W1は前記二次電池の充電エネルギーであり、W2は前記二次電池の放電エネルギーであり、W1とW2の単位はワットアワーであり、CBは前記負極シートの単位面積あたりの容量と前記正極シートの単位面積あたりの容量との比の値である、
ことを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記二次電池は0.92≦W2/W1を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記CBの範囲は0.8 ≦CB≦1.08である、
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記正極活物質は、LixyFe(1-y)PO4を含み、ここで、0.8≦X≦1.2、0≦y<1を満たし、A元素は、ニッケル、コバルト、マンガン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、チタン、バナジウムのうち一つ以上を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
前記正極膜シートの面積はS12であり、前記負極膜シートの面積はS2 2であり、S1とS2はS1/S2≦0.995を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
1/S2 とW2/W1はS1/S2 ≧W2/W1を満たす、
ことを特徴とする請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記正極活物質の容量毎グラムは130~159 mAh/gであり、前記正極膜シートの面密度は150~600 g/m2である、
ことを特徴とする請求項5に記載の二次電池。
【請求項8】
前記二次電池は電解液をさらに含み、前記電解液は有機溶媒を含み、前記有機溶媒は不飽和カーボネートと硫黄酸素二重結合化合物とを含み、
前記不飽和カーボネートは、ビニレンカーボネートとビニルエチレンカーボネートの少なくとも一方を含み、
前記硫黄酸素二重結合化合物は、1,3-プロパンスルトン、硫酸エチレン、1,4-ブタンスルトン、亜硫酸エチレン、メチレンメタンジスルホナートのうち一つ以上を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項9】
前記電解液の重量に基づき、前記不飽和カーボネートの含有量はa%であり、前記硫黄酸素二重結合化合物の含有量はb%であり、前記二次電池は、
(I) 0.1≦a+b≦7、
(II) 0.1≦a/b≦10、
(III) 0.05≦a≦3、
(IV) 0.05≦b≦4、
(V) 0.06≦a/CB≦3.75、
(VI) 0.06≦b/CB≦5.0、
上記特徴のうち一つ以上を満たす、
ことを特徴とする請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記二次電池の実CB’値は1.10~1.30であり、ここで、CBとCB’は0.88≦CB*CB’≦1.375を満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の二次電池を含み、前記二次電池は前記電気機器の給電電源として利用される、
ことを特徴とする電気機器。
【国際調査報告】