(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】キュウリモザイクウイルス基盤改良型組換えベクター
(51)【国際特許分類】
C12N 15/83 20060101AFI20241108BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241108BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241108BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241108BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241108BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241108BHJP
C07K 14/415 20060101ALI20241108BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241108BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C12N15/83 Z ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C07K14/415
C07K19/00
C12P21/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518263
(86)(22)【出願日】2023-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 KR2023018034
(87)【国際公開番号】W WO2024101936
(87)【国際公開日】2024-05-16
(31)【優先権主張番号】10-2022-0150990
(32)【優先日】2022-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0038110
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519217032
【氏名又は名称】ケーティー アンド ジー コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ヒョ セオク
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ジャン キュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヨウン ギ
(72)【発明者】
【氏名】クウォン、スン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、デュク ス
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジェオン ヘオン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミュン フウィ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CC24
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA60
4H045AA10
4H045AA20
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA30
4H045EA60
(57)【要約】
一態様は、キュウリモザイクウイルス基盤改良型組換えベクターに係り、一実施例による組換えベクターは、植物における外来タンパク質発現効率を著しく増進させることができ、既存組換えベクターより、外来タンパク質発現効率が顕著であるので、さまざまな植物種において、有用タンパク質の生産及びその研究に幅広く活用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1によってなるヌクレオチドを含む、キュウリモザイクウイルス(CMV)組換えベクター。
【請求項2】
配列番号2によってなるヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載のキュウリモザイクウイルス組換えベクター。
【請求項3】
配列番号3によってなるヌクレオチドをさらに含む、請求項1に記載のキュウリモザイクウイルス組換えベクター。
【請求項4】
前記キュウリモザイクウイルスは、P1タイプキュウリモザイクウイルスである、請求項1に記載のキュウリモザイクウイルス組換えベクター。
【請求項5】
前記P1タイプキュウリモザイクウイルスは、CMV-GTNストレインである、請求項4に記載のキュウリモザイクウイルス組換えベクター。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のキュウリモザイクウイルス組換えベクターによって形質転換された、形質転換微生物。
【請求項7】
配列番号1によってなるヌクレオチドを含むキュウリモザイクウイルス組換えベクターを作製する段階と、
前記キュウリモザイクウイルス組換えベクターを菌に形質転換する段階と、
前記形質転換された菌を植物に接種する段階と、を含む、タンパク質生産方法。
【請求項8】
前記タンパク質生産方法によって製造されたタンパク質は、C末端に2xFLAGタグ及び6xHISタグを含む、請求項7に記載のタンパク質生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年11月11日出願された大韓民国特許出願第10-2022-0150990号、及び2023年3月23日に出願された大韓民国特許出願第10-2023-0038110号を優先権として主張し、前述の明細書全体は、本出願の参考文献である。
【0002】
本発明は、キュウリモザイクウイルス(CMV:cucumber mosaic virus)基盤遺伝子組換えベクターに関する。
【背景技術】
【0003】
植物ウイルスは、寄主植物体に感染したとき、数日内に全身感染を起こし、寄主の要素を利用し、自体の遺伝体を増殖する。そのような増殖過程においてウイルスは、自体のタンパク質を植物細胞内で大量に発現することになる。また、ウイルスは、遺伝体の大きさが小さく、分子生物学的な操作を介し、遺伝体構造や遺伝子発現メカニズムの調節が可能である。
【0004】
そのような植物ウイルスの特徴を活用し、外来遺伝子の挿入及び発現が可能になるように、ウイルスの遺伝体構造を操作することにより、遺伝子伝達ベクターに開発する研究が活発に進められているが、さらに効率的なベクターの開発が持続的に要求されている実情である。
【0005】
そのような背景下、本発明者らは、目的タンパク質の発現レベルを顕著に上昇させるのに適するベクターを開発するために研究努力した結果、キュウリモザイクウイルスに基づく組換えベクターが、目的タンパク質の発現を顕著に増進させうるということを確認し、発明完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一態様は、配列番号1によってなるヌクレオチドを含むキュウリモザイクウイルス(CMV:cucumber mosaic virus)組換えベクターを提供するものである。
【0007】
他の態様は、前記組換えベクターによって形質転換された、形質転換微生物を提供するものである。
【0008】
さらに他の態様は、配列番号1によってなるヌクレオチドを含むキュウリモザイクウイルス組換えベクターを作製する段階と、前記組換えベクターを菌に形質転換する段階と、前記形質転換された菌を植物に接種する段階と、を含むタンパク質生産方法を提供するものである。
【0009】
しかしながら、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及された課題に制限されるものではなく、言及されていない他の課題は、以下の記載から、当該技術分野の通常の知識を有する者に明確に理解されうるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様は、配列番号1によってなるヌクレオチドを含むキュウリモザイクウイルス(CMV:cucumber mosaic virus)組換えベクターを提供する。
【0011】
前記キュウリモザイクウイルス組換えベクターは、配列番号2によってなるヌクレオチドをさらに含むものでもあり、配列番号3によってなるヌクレオチドをさらに含むものでもある。以下のところに制限されるものではないが、前記キュウリモザイクウイルス組換えベクターは、配列番号1、配列番号2及び配列番号3によってなるヌクレオチドを含むものでもある。
【0012】
前記キュウリモザイクウイルス(CMV)は、国内唐辛子栽培において、発生頻度が最も高く、深刻な被害を与えるウイルスであり、キュウリモザイクウイルス(CMV)は、65属885種の植物に感染される寄主範囲が広く、3個の分節ゲノムで構成されている一本鎖陽方向鎖RNAウイルス(positive-sense single stranded RNA virus)である。キュウリモザイクウイルス(CMV)の分離株は、塩基配列により、サブグループ(subgroup)IA,IB及びIIに区分されうるが、キュウリモザイクウイルス(CMV)分離株において、P0タイプのCMV-Fny(CMV-Fny strain)は、サブグループIAに属し、P1タイプのCMV-GTN(CMV-GTN strain)の場合、サブグループIBに属する。本明細書で、前記CMV-GTNの場合、高病原性P1タイプであり、2013年、忠北槐山郡の唐辛子栽培農家で生育している唐辛子品種「青陽」から純粋分離されたものを意味する(Res. Plant Dis. 21(2): 99-102 (2015))。
【0013】
一実施例によれば、前記配列番号1のヌクレオチドは、外来遺伝子挿入が可能になるように作動自在になるように連結されたMCS(multiple cloning site)を含むものでもあり、発現される外来タンパク質の検出及び抽出のために、該MCSの後ろに、2xFLAGタグと6xHISタグとをさらに含むものでもある。それにより、前記組換えベクターによって製造されたタンパク質は、該2xFLAGタグと該6xHISタグとをC末端に含むものでもある。
【0014】
本明細書において用語「組換えベクター」は、宿主細胞において目的とする外来遺伝子を発現することができるベクターであり、遺伝子挿入物が発現されるように、作動自在に連結された必須な調節要素を含むベクターを意味する。適するベクターは、プローモーター、オペレーター、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナル及びエンヘンサーのような発現調節配列以外にも、膜標的化または分泌のためのシグナル配列、またはリーダー配列を含み、目的によって多様に製造されうる。
【0015】
本明細書において用語「作動自在に連結された」は、発現が必要な遺伝子と、その調節配列とが互いに結合され、遺伝子発現を可能にする方式で連結されることを意味する。
【0016】
他の態様は、前記組換えベクターによって形質転換された形質転換微生物を提供する。
【0017】
前記形質転換微生物において、前記組換えベクターと重複される部分は、その説明を省略する。
【0018】
一実施例によれば、前記微生物は、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)でもある。
【0019】
さらに他の態様は、配列番号1によってなるヌクレオチドを含むキュウリモザイクウイルス組換えベクターを作製する段階と、前記組換えベクターを菌に形質転換する段階と、前記形質転換された菌を植物に接種する段階と、を含むタンパク質生産方法を提供する。
【0020】
前記タンパク質生産方法によって製造されたタンパク質は、C末端に、2xFLAGタグ及び6xHISタグを含むものでもある。
【0021】
前記タンパク質生産方法において、前記組換えベクター及び形質転換微生物と重複される部分は、その説明を省略する。
【発明の効果】
【0022】
一態様によるキュウリモザイクウイルス基盤組換えベクターを介し、植物における外来タンパク質発現効率を著しく増進させることができる。本実施例による組換えベクターは、既存組換えベクターより外来タンパク質発現効率が顕著であるので、さまざまな植物種において、有用タンパク質生産及びその研究に幅広く活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】キュウリモザイクウイルス基盤改良型ベクターの構造において、一実施例によるpCMV-GTN-R1、pCMV-GTN-R2及びpCMV-GTN-R3の構造を示した図である。
【
図1B】キュウリモザイクウイルス基盤改良型ベクターの構造において、一実施例によるpCMV-R3Vの構造を示した図である。
【
図1C】キュウリモザイクウイルス基盤改良型ベクターの構造において、一実施例によるpCMV-R2V-B2の構造を示した図である。
【
図1D】キュウリモザイクウイルス基盤改良型ベクターの構造において、一実施例によるpCMV-R3Vの効果を確認するために、蛍光と結合したpCMV-R3V-GFPの構造を示した図である。
【
図1E】キュウリモザイクウイルス基盤改良型ベクターの構造において、一実施例によるpCMV-Fny-R1及びpCMV-Fny-R2の構造を示した図である。
【
図1F】キュウリモザイクウイルス基盤改良型ベクターの構造において、一実施例によるPZP-GFPの構造を示した図である。
【
図2A】CMV-GTN-GFP組合わせベクター(pCMV-GTN-R1+pCMV-GTN-R2+pCMV-R3V-GFP)の発現効率を評価するために、PZP-GFPとの比較実験を行った図である。
【
図2B】CMV-GTN-GFP組合わせベクター(pCMV-GTN-R1+pCMV-GTN-R2+pCMV-R3V-GFP)の発現効率を評価するために、pCMV-Fny-R1+pCMV-Fny-R2+pCMV-R3V-GFP組合わせベクターとの比較実験を行った図である。
【
図3A】CMV-GTN-B2-GFP組合わせベクター(pCMV-R1+pCMV-R2V-B2+pCMV-R3V-GFP)の発現効率を評価するために、GFP発現レベルを蛍光測定装備で確認した図である。
【
図3B】CMV-GTN-B2-GFP組合わせベクター(pCMV-R1+pCMV-R2V-B2+pCMV-R3V-GFP)の発現効率を評価するために、接種後2日目、接種部位タンパク質を抽出し、SDS PAGE分析した結果を示した図である。
【
図3C】CMV-GTN-B2-GFP組合わせベクター(pCMV-R1+pCMV-R2V-B2+pCMV-R3V-GFP)の発現効率を評価するために、ImageJを利用し、GFPバンド定量分析を行った図である。
【
図3D】CMV-GTN-B2-GFP組合わせベクター(pCMV-R1+pCMV-R2V-B2+pCMV-R3V-GFP)の発現効率を評価するために、生重量当たりのGFP発現レベルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明につき、実施例を介してさらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0025】
本明細書で使用されているように、単数形態は、文脈上、他のところではないとする場合を確かに指摘するものでないならば、複数の形態を含むものでもある。また、本明細書で使用される場合、「含む(comprise,include)」及び/または「含むところの(comprising,including)」は、言及された形状、数、段階、動作、部材、要素、及び/またはそれらグループの存在を特定するものであるが、1以上の他の形状、数、動作、部材、要素、及び/またはグループの存在または付加を排除するものではない。
【0026】
実施例
1.キュウリモザイクウイルス基盤改良型ベクターの製造
以下、実施例による改良型ベクターの製造方法につき、
図1Aから
図1Fを参照して説明する。
図1Aから
図1Fは、一実施例によるキュウリモザイクウイルス(CMV:cucumber mosaic virus)基盤改良型ベクターの製造方法を概略的に図示したものである。具体的には、キュウリモザイクウイルス(CMV)感染性cDNAクローン、組換えベクター、及び緑蛍光タンパク質(GFP)過発現のために作製された組換えクローンの模式図を示したものである。
【0027】
キュウリモザイクウイルス(CMV)を基にする遺伝子過発現ベクターを作製するためのナイナリー(binary)ベクターとして、pCass-Rzベクターを利用した。pCass-Rzベクターは、T-DNAのleft border、CaMVのdouble 35Sプロモーター、MCS(multiple cloning site)(StuI、KpnI、XbaI、BamHI)、cis-cleaving ribozyme sequence(Rz)、35S terminator(T)、T-DNAのright borderを順に含んでおり、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)に形質転換し、アグロインフィルトレーション(agroinfiltration)を介し、植物に対象遺伝子を伝達しうる。また、pCass-Rzベクターは、カナマイシン(kanamycin)抵抗性遺伝子を含んでおり、大腸菌とアグロバクテリウム属(Agrobacterium)とに形質転換するとき、形質転換体を選択培養しうる。
【0028】
キュウリモザイクウイルス(CMV)基盤組換えタンパク質過発現ベクターを作製するために、既分離のCMV-GTN(唐辛子から分離されたキュウリモザイクウイルス)(Res. Plant Dis. 21(2): 99-102 (2015))系統の感染性cDNAクローン(Virus Evolution, Volume 6, Issue 2, July 2020, veaa070参照)を利用した。キュウリモザイクウイルス(CMV)のゲノムは、RNA切片である、RNA1、RNA2、RNA3によってなる。RNA1は、RNA複製に関与する1a遺伝子をコーディングしており、RNA2は、複製酵素である2a遺伝子と、遺伝子沈黙抑制因子である2b遺伝子とをコーディングしている。RNA3は、ウイルスの移動タンパク質(MP)遺伝子と、外被タンパク質(CP)遺伝子とをコーディングしている。
【0029】
韓国内圃場の唐辛子から分離された高病原性のCMV-GTN系統のRNA1、RNA2、RNA3に係わるゲノムDNAを、RT-PCRを介してそれぞれ増幅した。各ゲノムRNAに係わるPCR産物を、pCass-RZベクターのMCSに存在する制限酵素サイトを利用し、それぞれクローニングした。その結果として得られたCMV-GTN RNA1,RNA2,RNA3に係わる感染性cDNAクローンを、それぞれpCMV-GTN-R1(配列番号3)、pCMV-GTN-R2(配列番号4)、pCMV-GTN-R3(配列番号5)と命名した。それに加え、pCMV-R3Vは、配列番号6の配列を意味し、pCMV-R3V-GFPは、配列番号7の配列を意味し、pCMV-Fny-R1は、配列番号8の配列を意味し、pCMV-Fny-R2は、配列番号9の配列を意味し、PZP-GFPは、配列番号10の配列を意味する。
【0030】
CMV-GTN系統の感染性クローンを利用し、外来遺伝子の高い発現効率が予想されるRNA3のCP ORF(open reading frame)のゲノム配列を操作し、外来タンパク質を過発現するためのキュウリモザイクウイルス(CMV)基盤ベクターとして開発した。
【0031】
具体的には、RNA3 CP ORFからCP遺伝子を除外し、外来遺伝子挿入が可能になるように、MCSとして、SpeIとMluIとのサイトを導入し、発現された外来タンパク質の検出及び抽出のために、MCSの後ろに、2xFLAGタグと6xHISタグとを導入した。従って、MCSを利用してクローニングする場合、発現されるタンパク質は、2xFLAGタグと6xHISタグとをC末端に含むことになる。そのように作製されたCMV-GTN RNA3基盤ベクタークローンを、pCMV-R3V(配列番号1)と命名した。
【0032】
CMV RNA2は、遺伝子沈黙抑制因子である2b遺伝子をコーディングしている最中、一実施例においては、2b遺伝子を、さらに強力な遺伝子沈黙抑制因子として知られているFHV(flock house virus)のB2遺伝子で代替した組換えCMV RNA2感染性クローンを作製し、pCMV-R2V-B2(配列番号2)と命名した。
【0033】
具体的には、CMV RNA2の2b ORFのC末端を除外し、当該位置に、FMDV(foot and mouth disease virus)の自己切断ペプチド(self-cleaving peptide)(LLNFDLLKLAGDVESNPG/P)、MluIサイト、及びFHV B2配列を導入した。該B2遺伝子は、2b ORFの翻訳(translation)を介して発現されて、FMDV自己切断ペプチド(self-cleaving peptide)によって切断されながら、N末端にさらなるプロリン(P)アミノ酸1個を含むことになる。
【0034】
2.改良型ベクターの発現効率評価
(1)発現効率評価のためのクローン製造
前述の1.で製造されたCMV-GTN基盤ベクターを利用した植物における外来遺伝子発現効率を評価するために、pCMV-R3VのSpeIとMluIとの制限酵素サイトを利用し、緑蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を挿入したクローンを作製するものとする。そのために、緑蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を、プライマー(5'-GGACTAGTATGGTGAGCAAGGGCGAGGAG-3'及び5'-AACGACGCGTGAGGATCCCCTTGTACAGCTC-3')を利用し、PCRを介して増幅した後、SpeIとMluIとの制限酵素で処理し、pCMV-R3VベクターのSpeIとMluIとの制限酵素サイトに挿入した。そのように、緑蛍光タンパク質(GFP)を挿入したクローンを、pCMV-R3V-GFPと命名した(
図1Aから
図1F参照)。また、高病原性のキュウリモザイクウイルス(CMV)系統ではなく、CMV-Fny系統に係わる感染性クローンを作製するために、pCass-Rzベクターを利用し、pCMV-GTN-R1及びpCMV-GTN-R2のようなクローニング方法でもって、CMV-Fny RNA1とCMV-Fny RNA2とにつき、それぞれpCMV-Fny-R1及びpCMV-Fny-R2を製造した。対照群で使用するために、PZPベクターに、緑蛍光タンパク質(GFP)を挿入したPZP-GFPを作製して準備した。該PZPベクターは、T-DNAのleft border、CaMVのdouble 35Sプロモーター、TE(translation enhance element)、MCS(StuI、SpeI)、35S terminator(T)、T-DNAのright borderを順に含んでおり、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)に形質転換し、アグロインフィルトレーション(agroinfiltration)を介し、植物に対象遺伝子を伝達しうる。また、PZPベクターは、スペクチノマイシン(Spectinomycin)抵抗性遺伝子を含んでおり、大腸菌とアグロバクテリウム属(Agrobacterium)とに形質転換するとき、形質転換体を選択培養しうる。該PZPベクターのStuIとSpeIとの制限酵素サイトを利用し、緑蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を挿入し、PZP-GFPクローンを作製した
【0035】
図1Aから
図1Fの構造を有する、pCMV-GTN-R1,pCMV-GTN-R2,pCMV-R3V-GFP,pCMV-R2V-B2,pCMV-Fny-R1,pCMV-Fny-R2及びPZP-GFPクローンのプラスミドDNAを、それぞれアグロバクテリウム属(Agrobacterium)ストレイン(strain)EHA105に形質転換した。形質転換されたアグロバクテリウム属(Agrobacterium)を、5mlのYEP液体培地(100μg/mlのカナマイシンと、50μg/mlのリファンピシン(rifampicin)とを含む)において、30℃の条件で16時間振盪培養した後、一次培養液1mlを、50mlの新たなYEP培地(100μg/mlのカナマイシン、50μg/mlのリファンピシン、及び20μMのアセトシリンゴンを含む)に接種し、30℃の条件で6時間振盪培養した。培養液を4,800Gで10分間遠心分離し、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)を沈澱させ、MMAインフィルトレーションバッファ(MS塩,10mM MES(pH5.6)、200μMアセトシリンゴン)に、600nmの波長でもってO.D.0.7の濃度にさらに懸濁させた。その後、該懸濁液を30℃の条件で、4時間振盪培養した。
【0036】
それぞれのクローンに形質転換されたアグロバクテリウム属(Agrobacterium)懸濁液を、以下に提示されているように、同じ比率で混ぜるか、あるいは単独でタバコ植物(N. benthamiana)葉の胚軸面に、1ml注射器を利用し、圧力でインフィルトレーションした。
【0037】
1)CMV-GTN-GFP:pCMV-GTN-R1、pCMV-GTN-R2、pCMV-R3V-GFPにそれぞれ形質転換されたアグロバクテリウム属(Agrobacterium)懸濁液(O.D.0.7)を同じ比率で混ぜ、インフィルトレーションする。
【0038】
2)PZP-GFP:PZP-GFPに形質転換されたアグロバクテリウム属(Agrobacterium)懸濁液(O.D.0.7)を単独でインフィルトレーションする。
【0039】
3)CMV-Fny-GFP:pCMV-Fny-R1、pCMV-Fny-R2、pCMV-R3V-GFPにそれぞれ形質転換されたアグロバクテリウム属(Agrobacterium)懸濁液(O.D.0.7)を同じ比率で混ぜ、インフィルトレーションする。
【0040】
4)CMV-GTN-B2-GFP:pCMV-GTN-R1、pCMV-R2V-B2、pCMV-R3V-GFPにそれぞれ形質転換されたアグロバクテリウム属(Agrobacterium)懸濁液(O.D.0.7)を同じ比率で混ぜ、インフィルトレーションする。
【0041】
(2)GFP発現効率評価
1)CMV-GTN-GFP組合わせベクターの発現効率
各組み合わせのアグロバクテリウム属(Agrobacterium)懸濁液を接種した後、接種部位における経時的な緑蛍光タンパク質(GFP)発現を、蛍光測定装備(FOBI system)を利用して観察した。
【0042】
図2Aは、CMV-GTN-GFP組合わせ(pCMV-GTN-R1+pCMV-GTN-R2+pCMV-R3VGFP)とPZP-GFPとの緑蛍光タンパク質(GFP)発現効率を比較分析した図である。
【0043】
植物形質転換に広く使用される35Sプローモーターを含むバイナリーベクターを利用して作製されたPZP-GFPと比較し、CMV-GTN-GFP組合わせ(pCMV-GTN-R1+pCMV-GTN-R2+pCMV-R3V-GFP)の場合、非常に多量の緑蛍光タンパク質(GFP)が発現されることを確認した(
図2A参照)。CMV-GTN-GFP組合わせによって発現される緑蛍光タンパク質(GFP)の量は、接種後2日目(2dpi)に最も多く、経時的に徐々に減少することを確認した(
図2A参照)。
【0044】
前述のような結果を介し、配列番号1で表示されるpCMV-R3Vを含むベクターは、植物における外来タンパク質発現を顕著に増進させうることを確認した。
【0045】
また、実施例で新たに作製された高病原性のCMV-GTN系統が、他のキュウリモザイクウイルス(CMV)系統に比べ、ベクターとしての高い外来タンパク質発現効率を有するか否かということを確認するために、CMV-GTN-GFP組合わせとCMV-Fny-GFP組合わせ(pCMV-Fny-R1+pCMV-Fny-R2+pCMV-R3V-GFP)とを比較した。
【0046】
図2Bは、CMV-GTN-GFP組合わせとCMV-Fny-GFP組合わせ(pCMV-Fny-R1+pCMV-Fny-R2+pCMVR3V-GFP)との緑蛍光タンパク質(GFP)発現効率を比較分析したものである。各組み合わせのアグロバクテリウム属(Agrobacterium)懸濁液を接種した後、接種部位における経時的な緑蛍光タンパク質(GFP)発現を、蛍光測定装備(FOBI system)を利用して観察したものである。
【0047】
その結果、CMV-Fny-GFP組合わせに比べ、CMV-GTN-GFP組合わせが、はるかにすぐれる緑蛍光タンパク質(GFP)発現効率を有していることを確認することができた(
図2B参照)。そのような結果は、キュウリモザイクウイルス(CMV)系統により、ベクターとして、外来遺伝子過発現効率に差がありうることを示しており、実施例で利用されたCMV-GTN系統が、外来遺伝子過発現ベクターとしてすぐれた効果を有するということを示す。
【0048】
2)CMV-GTN-B2-GFP組合わせベクターの発現効率
次に、さらに強力な遺伝子沈黙抑制因子を発現するために、CMV2b遺伝子を、FHV B2遺伝子で代替したpCMV-R2V-B2を利用する場合、発現効率を上昇させるか否かということを確認するために、CMV-GTN-GFP組合わせとCMV-GTN-B2-GFP組合わせ(pCMV-GTN-R1+pCMV-R2V-B2+pCMV-R3V-GFP)とを比較した。
【0049】
図3Aは、各組み合わせのアグロバクテリウム属(Agrobacterium)懸濁液を接種した後、接種部位における経時的な緑蛍光タンパク質(GFP)発現を、蛍光測定装備(FOBI system)を利用して観察したものである。
図3Bは、接種後2日目、接種部位から全体タンパク質を抽出し、SDS PAGE分析したものである。
図3Cは、ImageJを利用し、Bの緑蛍光タンパク質(GFP)バンドに係わる定量的比較分析結果である。
図3Dは、組換えCMVGTN基盤ベクターの緑蛍光タンパク質(GFP)発現量に係わる、植物生重量(fresh weight)対比の定量分析結果である。
【0050】
接種したタバコ植物における発現効率を、蛍光測定装備(FOBI)で確認した結果、CMV-GTN-GFP組合わせに比べ、CMV-GTN-B2-GFP組合わせが若干高い発現効率を有していることを確認することができた(
図3A参照)。2つの組み合わせ間の緑蛍光タンパク質(GFP)発現効率をさらに正確に比較するために、接種後2日目、接種部位から全体タンパク質を抽出し、SDS-PAGE分析を実施した。その結果、CMV-GTN基盤ベクターを利用して発現された緑蛍光タンパク質(GFP)タンパク質の量が、全体抽出タンパク質において、非常に高いパーセントを占めていることを確認することができ、またCMV-GTN-GFP組合わせに比べ、CMV-GTN-B2-GFP組合わせが若干多くの緑蛍光タンパク質(GFP)発現を誘導することを確認した(
図3B)。それにつき、イメージ定量分析プログラムであるImageJを利用して分析した結果、CMV-GTN-B2-GFP組合わせが、約30%ほど上昇した緑蛍光タンパク質(GFP)発現効率を有していることを確認した(
図3C参照)。
【0051】
CMV-GTN基盤ベクターによる緑蛍光タンパク質(GFP)発現量を、植物生重量と対比させて分析するために、接種後2日目、接種部位から細胞質タンパク質を抽出し、GFP Quantification Kit(製品番号ab235672(Abcam(英国)))を利用し、緑蛍光タンパク質(GFP)定量分析を実施した。CMV-GTN-GFP組合わせの場合、生重量1mg当たり2,846ngの緑蛍光タンパク質(GFP)発現効率を示し、CMV-GTN-B2-GFP組合わせの場合、約20%上昇した、生重量1mg当たり3,444ngの緑蛍光タンパク質(GFP)発現効率を示した(
図3D参照)。
【0052】
従って、緑蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を各ベクターにクローニングし、タバコ(Nicotiana benthamiana)植物で発現させた後、発現量を比較分析した結果、高病原性であるCMV-GTN基盤ベクターの場合、一般的に研究に広く使用されるCMV-Fny系統と比較し、はるかに高いレベルの緑蛍光タンパク質(GFP)発現量を示すことを知ることができた。また、野生型CMV RNA2感染性クローン(pCMV-GTN-R2)に比べ、pCMV-R2V-B2を利用する場合、緑蛍光タンパク質(GFP)の発現量が約12%ほど上昇されることを確認した。
【0053】
前述のような結果を介し、本実施例によるCMV-GTN-B2-GFP組合わせ(pCMV-GTN-R1+pCMV-R2V-B2+pCMV-R3V-GFP)のベクターは、植物における外来タンパク質発現において、非常に向上された発現効率を示すということを知ることができる。
【0054】
前述の実施例に係わる説明は、例示的なものに過ぎず、当該技術分野において通常の知識を有する者であるならば、それらから、多様な変形、及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解するであろう。従って、発明の真の保護範囲は、添付された特許請求の範囲によって定められるものであり、特許請求の範囲に記載された内容と同等な範囲にある全ての差異は、特許請求の範囲によって定められる保護範囲に含まれると解釈されなければならないのである。
【配列表】
【国際調査報告】