(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】少なくとも1つの実質的に線状のポリオレフィンエラストマー成分と少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂成分との組成物ブレンドを含む射出成形クロージャ物品
(51)【国際特許分類】
B29C 45/00 20060101AFI20241108BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20241108BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20241108BHJP
A45D 34/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B29C45/00
C08L23/08
C08L23/26
A45D34/00 510A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523393
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 US2022047862
(87)【国際公開番号】W WO2023076366
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】ボナヴォーリア、バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】ビティニス、ジョージア ナターシャ エフタリエ
【テーマコード(参考)】
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
4F206AA03
4F206AA45
4F206AD03
4F206AH57
4F206JA07
4F206JL02
4J002BB051
4J002BB082
4J002FD099
4J002GB00
4J002GC00
4J002GG01
(57)【要約】
(a)例えば0.5dg/分~40dg/分のメルトインデックス及び例えば0.850g/cc~0.910g/ccの密度を有する少なくとも1つの実質的に線状のポリオレフィンエラストマー成分と、(b)例えば0.5dg/分~25dg/分のメルトインデックスを有し、20%~70%中和の範囲で少なくとも部分的に中和されている少なくとも1つの中和されたエチレン酸コポリマー樹脂成分と、の組成物ブレンドを含む射出成形クロージャ物品;上記組成物ブレンドから生産された成形クロージャ物品であって、高光沢、低ヘイズ、高耐衝撃性、及び高耐化学性を有する成形クロージャ物品;並びに上記成形クロージャ物品を製造するプロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形されたクロージャ物品であって、
(a)少なくとも1つの実質的に線状のポリオレフィンエラストマー成分であって、少なくとも1つの実質的にポリオレフィンエラストマーが、0.5デシグラム/分~40デシグラム/分のメルトインデックス及び0.850グラム/立方センチメートル~0.910グラム/立方センチメートルの密度を有する、少なくとも1つの実質的に線状のポリオレフィンエラストマー成分と、
(b)少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂成分であって、少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂が、マグネシウム、リチウム、亜鉛、ナトリウム、及びそれらの混合物を含み、少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂のコモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、又はそれらの混合物を含み、前記コモノマーの含有量が、前記少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂中に存在するモノマーの総重量に基づいて9重量パーセント~30重量パーセントであり、前記少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂のメルトインデックスが、0.5デシグラム/分~25デシグラム/分である、少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂成分と、
の組成物ブレンドを含む、射出成形されたクロージャ物品。
【請求項2】
前記少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂が、20パーセント~70パーセント中和の範囲で少なくとも部分的に中和されている、請求項1に記載の成形物品。
【請求項3】
前記成形されたクロージャ物品が、香水容器用のキャップ部材である、請求項1に記載の成形物品。
【請求項4】
前記ポリオレフィンエラストマーの濃度が0.5重量パーセント~50重量パーセントであり、前記部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂の濃度が50重量パーセント~99.5重量パーセントである、請求項1に記載の成形物品。
【請求項5】
前記少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂が、部分的に中和されたエチレンアクリル酸コポリマー又は部分的に中和されたエチレンメタクリル酸コポリマーであり、エチレンアクリル酸コポリマー又はエチレンメタクリル酸コポリマーのアクリル酸基又はメタクリル酸基の含有量が、9重量パーセント~30重量パーセントである、請求項1に記載の成形物品。
【請求項6】
前記少なくとも部分的に中和されたエチレン酸コポリマーが、エチレンメタクリル酸コポリマー又はエチレンアクリル酸コポリマーであり、前記メタクリル酸コポリマー又は前記アクリル酸コポリマーのカルボン酸基が、ナトリウムイオンで少なくとも部分的に中和されている、請求項1に記載の成形物品。
【請求項7】
前記少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂が、前記少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂中に存在するモノマーの総重量に基づいて、(i)9重量パーセント~30重量パーセントのアクリル酸又はメタクリル酸の共重合単位、及び(ii)70重量パーセント~91重量パーセントのエチレンの共重合単位を含み、前記少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂のカルボン酸基の20パーセント~70パーセントが、ナトリウムカチオンを含むカルボン酸塩として中和されている、請求項1に記載の成形物品。
【請求項8】
前記組成物が、顔料、顔料マスターバッチ、蛍光増白剤、相溶化剤、及びそれらの混合物からなる群から選択されるさらなる添加剤を含む、請求項1に記載の成形物品。
【請求項9】
射出成形されたクロージャ物品を調製するプロセスであって、
(I)
(a)少なくとも1つの実質的に線状のポリオレフィンエラストマー成分であって、少なくとも1つの実質的に線状のポリオレフィンエラストマーが、0.5デシグラム/分~40デシグラム/分のメルトインデックス及び0.850g/cc~0.910g/ccの密度を有する、少なくとも1つの実質的に線状のポリオレフィンエラストマー成分と、
(b)少なくとも1つの中和されたエチレン酸コポリマー樹脂成分であって、少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂が、マグネシウム、リチウム、亜鉛、ナトリウム、及びそれらの混合物を含み、少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂のコモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、又はそれらの混合物を含み、前記コモノマーの含有量が、前記少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂中に存在するモノマーの総重量に基づいて9重量パーセント~30重量パーセントであり、前記少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂のメルトインデックスが、0.5デシグラム/分~25デシグラム/分である、少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂と、
の組成物ブレンドを含む、射出成形組成物を提供する工程と、
(II)工程(I)の射出成形組成物を射出成形装置に供給する工程と、
(III)工程(II)の射出成形装置を用いて工程(I)の組成物を射出成形して、高光沢、低ヘイズ、高耐衝撃性、及び高耐化学性を有する前記射出成形クロージャ物品を形成する工程と、
を含む、プロセス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂が、20パーセント~70パーセント中和の範囲で少なくとも部分的に中和されている、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記射出成形されたクロージャ物品が、香水容器用のキャップ部材である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項9に記載のプロセスによって調製された、成形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形物品に関し、より具体的には、本発明は、香水及び化粧品の包装に使用するために製作された射出成形物品に関する。特定の一実施形態においては、例えば、射出成形物品は、化粧品用途の容器に使用される半透明の及び/又は着色された香水容器キャップ部材又はクロージャ部材であってよく、クロージャ部材は、成形ポリマーブレンド組成物から製作され得る。
【背景技術】
【0002】
香水及び化粧品産業は製品のための包装材料を常に探しているが、その理由は、化粧品包装が企業のブランド価値及びアイデンティティ、並びに企業の使命を表すためである。同時に、香水及び化粧品産業は、高品質の包装を提供し、高衝撃強度、高耐化学性、可撓性、及び高光沢表面などの特性を有する化粧品包装材料を望んでいる。香水キャップ産業では、香水瓶用のカラフルな又は自然に見えるキャップ、すなわち、半透明の、着色され、装飾されたキャップが非常に望ましい。
【0003】
ポリオレフィン系ブレンドは様々な用途に使用されてきたが(例えば、ゴルフボール用途で使用するためのメタロセン触媒ポリマー及びアイオノマーブレンドの組成物について開示している米国特許第5703166(A)号を参照されたい)、そのような既知のポリオレフィン系ブレンドによって提供される包装製品は香水及び化粧品用途に必要とされる審美的特性(例えば、高光沢及び半透明性)を欠くので、ポリオレフィン系ブレンドは、香水及び化粧品用途のための包装製品を製造するために一般的には使用されていない。代わりに、既知のポリオレフィン系ブレンドは、低光沢及び不透明な外観を有する包装製品を提供する。したがって、香水及び化粧品用途において、特に香水及び化粧品産業のための半透明の及び/又は着色された香水キャップを生産するために使用することができるポリオレフィン系ブレンド組成物を提供することが課題である。香水及び化粧品用途に使用されるポリマーブレンド組成物は、高光沢及び低ヘイズなどの適切な光学特性を有する香水及び化粧品包装製品を製造するのに適切であるように設計及び選択されるべきである。
【0004】
したがって、例えば香水及び化粧品産業用の半透明の及び/又は着色された香水キャップを含む、香水及び化粧品容器用のクロージャ物品(例えば、キャップ)などの香水及び化粧品包装物品を提供することが望ましい。また、高い耐衝撃性及び耐化学性などのキャップの他の機械的特性を維持しながら、高光沢及び低ヘイズを有する香水キャップなどの射出成形物品を提供することができるポリオレフィン/部分的に中和されたエチレン酸コポリマーブレンドを使用して射出成形物品を生産することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
一般的な一実施形態においては、本発明は、香水又は化粧品の入れ物又は容器(例えば、瓶)用の射出成形キャップ又はクロージャなどの射出成形物品であって、(a)少なくとも1つのポリオレフィンエラストマー(POE)成分と、(b)少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂成分と、のブレンドを含む射出成形組成物を含み、高光沢、低ヘイズ、高耐衝撃性、及び高耐化学性などのいくつかの良好な特性を示す、射出成形物品を目的とする。
【0006】
好ましい一実施形態においては、射出成形クロージャ物品は、(a)少なくとも1つの実質的に線状のポリオレフィンエラストマー成分などの少なくとも1つのPOE成分であって、当該少なくとも1つの実質的にポリオレフィンエラストマーが、例えば0.5dg/分~40dg/分のメルトインデックス及び例えば0.850g/cc~0.910g/ccの密度を有する、少なくとも1つのPOE成分と、(b)少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂成分であって、少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂が、マグネシウム、リチウム、亜鉛、ナトリウム、及びそれらの混合物を含み、少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂のコモノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、又はそれらの混合物を含み、コモノマーの含有量が、例えば、少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂中に存在するモノマーの総重量に基づいて9重量%~30重量%であり、少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂のメルトインデックスが、例えば0.5dg/分~25dg/分である、少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂と、の射出成形組成物ブレンドを含む。
【0007】
別の実施形態においては、本発明は、上記の射出成形物品を調製するためのプロセスを目的とする。
【0008】
さらに別の実施形態においては、本発明は、POE/部分的に中和されたエチレン酸コポリマー組成物ブレンドを含む、香水及び/又は化粧品容器のための半透明の及び/又は着色された香水キャップ又はクロージャを目的とする。
【0009】
上記の射出成形物品が示す良好な特性に加えて、本発明は、有利には、例えば、射出成形物品の良好な加工性を含む。
【0010】
本発明の本明細書に記載される実施形態の上記の特徴及び他の特徴、態様、並びに利点は、添付の特許請求の範囲を含むがこれらに限定されない以下の詳細な説明を参照することにより、当業者により深く理解され、容易に明らかになるであろう。
【0011】
上記の全般的な説明及び下記の詳細な説明はいずれも、様々な実施形態について説明し、本発明の特許請求される主題の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みの提供を意図していることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用される温度は、摂氏温度(℃)である。
【0013】
本明細書で使用するとき、ポリオレフィンポリマーに関する「実質的に線状のポリオレフィンエラストマー」は、本明細書では、ポリマーが任意のコモノマーの組み込みに起因する短鎖分岐を含み、ポリマーが長鎖分岐を含むことを意味する。例えば、「実質的に線状の」ポリマーは、ポリマーの主鎖における炭素1,000個当たり0.01~3個の長鎖分岐で置換された主鎖を有するポリマーを含む。さらに、実質的に線状のポリマーは、狭い分子量分布及び狭い短鎖分岐分布を特徴とする。本発明の実施において使用されるエチレンポリマーエラストマーなどの実質的に線状のポリオレフィンエラストマー(又は「実質的に線状のエチレン/α-オレフィンコポリマー」)は既知であり、一実施形態においては、これらのポリマー及びこれらのポリマーを調製する方法は、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、及び同第5,705,565号に記載されている。実質的に線状のエチレンポリマーはまた、5.63以上であるメルトフロー比I10/I2、及びI10/I2-4.63以下である分子量分布(ゲル透過クロマトグラフィーによって求められる)Mw/Mnを有することも特徴とする。
【0014】
一般に、実質的に線状のエチレンポリマーは、束縛構造触媒を使用することによって調製され、狭い分子量分布を特徴とし、インターポリマーである場合は狭いコモノマー分布を特徴とする。本明細書で使用するとき、「インターポリマー」は、2つ以上のコモノマーのポリマー、例えば、コポリマー、ターポリマーなど、又は換言すれば、エチレンを少なくとも1つの他のコモノマーと重合させることによって作製されるポリマーを意味する。これらの実質的に線状のエチレンポリマーの他の基本的特徴としては、残留物含量が低い(すなわち、実質的に線状のエチレンポリマー中における、ポリマーを調製するために使用される触媒、未反応のコモノマー、及び重合の過程で作製される低分子量オリゴマーの濃度が低い)、及び分子量分布が従来のオレフィンポリマーと比較して狭いにもかかわらず良好な加工性を提供する制御された分子構造が挙げられる。
【0015】
本明細書における「コポリマー」という用語は、2つのコモノマーの共重合から生じる共重合単位を含むポリマーを指す。
【0016】
本明細書における「酸コポリマー」は、α-オレフィン、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位を含むポリマーを指す。
【0017】
本明細書における「エチレン酸コポリマー」という用語は、エチレンと少なくとも1つの酸系モノマーとのコポリマーを指す。
【0018】
本明細書における「部分的に中和されたエチレン酸コポリマー」(「アイオノマー」とも呼ばれる)という用語は、エチレンと少なくとも1つの酸系モノマーとのコポリマーであって、金属含有中和剤によって少なくとも部分的に中和されている、エチレンと少なくとも1つの酸系モノマーとのコポリマーを指す。
【0019】
「化粧品」は、天然源又は合成的に作製されたもののいずれかに由来する化学化合物の混合物で構成される製品である。本明細書における「化粧品」又は「化粧品製品」という用語は、米国において化粧品を規制する米国食品医薬品局(FDA)に従って定義される。本明細書における「化粧品」又は「化粧品製品」という用語は、人体の構造又は機能に影響を及ぼすことなく、洗浄、美化、魅力の増進、又は人体の外観の変更のために、人体に擦り付けられる、注がれる、振りかけられる、又は噴霧される、導入される、又は他の方法で適用されることが意図される材料又は物品を意味する。本明細書における上記用語「化粧品」又は「化粧品製品」には、化粧品製品の成分として使用することが意図される任意の材料が含まれる。化粧品としては、例えば、口紅、マスカラ、アイシャドウ、ファンデーション、頬紅、ハイライター、ブロンザーなどの目及び顔の「メイクアップ製品」、並びに芳香剤、香水、マニキュア液、皮膚保湿剤、シャンプー、パーマネントウェーブ、ヘアカラー、練り歯磨き、防臭剤などのいくつかの他の製品タイプを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書における「化粧品用途」としては、(1)クレンザー、トナー、セラム、保湿剤、及びバームの使用を通して、皮膚を洗浄し、剥脱し、保護する、並びに皮膚への補給を行うために使用することができる、スキンケア用に設計された化粧品、(2)身体を洗浄するために使用することができる、シャンプー及びボディウォッシュなどのより全身的なパーソナルケアのために設計された化粧品、(3)しみを隠し、自然な特徴(眉毛及び睫毛など)を向上させ、顔に色を加えるために使用することができ、パフォーマンス、ファッションショー、及び衣装を着けた人々のために使用されるメイクアップのより極端な形態の場合には、顔の外観を完全に変化させて異なる人、生物、又は物体に似せるために使用することができる、外観を向上させるように設計された化粧品(「メイクアップ」)、並びに(4)香水の使用などによって人体に芳香を加えるように設計された化粧品、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書における「化粧品包装」という用語は、化粧品製品の「一次包装」及び「二次包装」を含む。本明細書における「一次包装」という用語は、容器の内側に化粧品製品を有する容器などの化粧品製品の筐体を意味する。本明細書における「二次包装」という用語は、1つ又はいくつかの一次包装又は化粧品容器の外側包装材を意味する。
【0022】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの派生語は、任意の追加の構成成分、工程、又は手順が本明細書において具体的に開示されているか否かにかかわらず、それらの存在を排除することを意図したものではない。疑義を避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求される全ての組成物は、特に反対の記載がない限り、ポリマーであるか否かにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる他の構成成分、工程、又は手順をあらゆる後続の説明の範囲から除外する。「からなる」という用語は、明確に描写又は列挙されていない任意の構成成分、工程、又は手順を除外する。「又は」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、及び任意の組み合わせで指す。単数形の使用には複数形の使用が含まれ、その逆もまた同様である。
【0023】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値から上限値までの全ての値(下限値及び上限値を含む)を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば1、又は2、又は3~5、又は6、又は7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などを含む)。
【0024】
本明細書全体にわたって使用される場合、以下の略称は、文脈から別途明確に指示されない限り、以下の意味を有する。「=」は、「等しい」又は「と等しい」を意味し、「<」は、「未満」を意味し、「>」は、「よりも大きい」を意味し、「≦」は、「以下」を意味し、「≧」は、「以上」を意味し、g=グラム、Kg=キログラム、g/cm3又はg/cc=1立方センチメートル当たりのグラム、kg/m3=1立方メートル当たりのキログラム、m=メートル、mm=ミリメートル、cm=センチメートル、μm=マイクロメートル、min=分、s=秒、dg/分=1分当たりのデシグラム、Pa=パスカル、MPa=メガパスカル、Mn=数平均分子量、Mw=重量平均分子量、pts=重量部、1/s又は秒-1=秒の逆数[s-1]、cm-1=センチメートルの逆数[cm-1]、℃=摂氏温度、kJ/m3=1立方メートル当たりのキロジュール、%=パーセント、vol%=体積パーセント又は体積によるパーセント、wt%=重量パーセント又は重量によるパーセント。
【0025】
別途明記されない限り、全てのパーセンテージ、部、比などの量は、重量によって定義される。例えば、本明細書に記載した全てのパーセンテージは、別途指示されない限り、重量パーセンテージ(重量%)である。
【0026】
本発明の具体的な実施形態が、本明細書の以下に記載される。これらの実施形態は、本開示が詳細かつ完全であり、当業者に本発明の主題の範囲を完全に伝えるように提供される。
【0027】
広範な一実施形態においては、本発明は、化粧品用途において使用するための射出成形物品を含む。本明細書における実施形態による成形物品は、任意の形状、サイズ、及び寸法を有し得る。一般的な一実施形態においては、射出成形物品は、化粧品包装を製作するために化粧品産業において有用である。例えば、いくつかの実施形態においては、成形物品は、化粧品産業での使用を意図した容器又は容器用クロージャ(例えば、香水瓶のキャップ)であってよい。
【0028】
好ましい一実施形態においては、射出成形物品は、香水瓶及び/又は他の化粧品容器のための半透明の及び/又は着色された香水キャップであって、POE/部分的に中和されたエチレン酸コポリマー組成物ブレンドを使用して製作されるキャップである。
【0029】
本発明によるブレンド組成物から形成される射出成形物品は、化粧品用途に特に有用ないくつかの特性を示す。例えば、成形物品の特性は、高光沢、低ヘイズ、高耐衝撃性、及び高耐化学性を含み得、成形物品が香水瓶用の香水キャップなどの化粧品容器用のクロージャである場合、キャップは、例えば半透明であってよい、及び/又はキャップは、着色されていてよい。
【0030】
例えば、本発明において使用される成形物品の衝撃強度は、一般に、一実施形態においては≧50kJ/m3、別の実施形態においては50kJ/m3~100kJ/m3、さらに別の実施形態においては70kJ/m3~100kJ/m3であり得る。
【0031】
例えば、本発明において使用される成形物品の曲げ弾性率は、一般に、一実施形態においては≧200MPa、別の実施形態においては250MPa~400MPa、さらに別の実施形態においては250MPa~350MPaであり得る。
【0032】
例えば、本発明で使用される成形物品のグロス60°は、一般に、一実施形態においては≧90°、別の実施形態においては90°~120°、さらに別の実施形態においては90°~110°であり得る。
【0033】
例えば、本発明において使用される成形物品のヘイズは、一般に、一実施形態においては≦60%、別の実施形態においては20%~60%、さらに別の実施形態においては20%~40%であり得る。
【0034】
着色剤及び顔料を射出成形ブレンド組成物に添加して、着色されたキャップ又はクロージャ物品を提供することができる。例えば、本発明において使用される成形物品の色の量は、一般に、一実施形態においては0.001重量%~5重量%、別の実施形態においては0.05重量%~1重量%、さらに別の実施形態においては0.05重量%~0.5重量%であり得る。他の実施形態においては、着色剤又は顔料は、マスターバッチを介して添加することができる。
【0035】
広範な実施形態においては、本発明の組成物は、2つ以上の成分のブレンド、組み合わせ、複合材料、又は混合物であり、例えば、(a)少なくとも1つのPOE成分、及び(b)少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂成分を含む。好ましい実施形態においては、本発明のブレンド組成物は、(a)所定の密度及び所定のMIを有する少なくとも1つの実質的に線状のポリオレフィンエラストマー成分(POE)成分及び(b)少なくとも1つの部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂成分を含む。部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂成分は、例えば、2つ以上の部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂のブレンド、混合物、又は組み合わせを含む1つ以上の成分であり得る。所望であれば、成分(c)として、他の任意選択の成分又は添加剤、例えば顔料、ミネラルチャージ、蛍光増白剤などをブレンド組成物に添加してもよい。
【0036】
一般的な実施形態においては、本発明において使用されるPOE成分(成分(a))は、例えば、エチレンがコモノマーと共重合してPOE組成物を形成し、コモノマーが、例えばブテン、ヘキセン、オクテン、及びそれらの混合物を含む、実質的に線状のエチレン/α-オレフィンコポリマーであり得る。
【0037】
触媒は、実質的に線状のエチレン/α-オレフィンコポリマーの形成において使用され、触媒は、例えば、「メタロセン」及び「束縛構造」触媒などの当技術分野で既知のいわゆる「シングルサイト触媒」系を含み得る。本明細書における「シングルサイト触媒」とは、ポリマー鎖の延長が生じる1種類の触媒的に有効な部位を提供する触媒を意味する。シングルサイト触媒及びその調製方法は、例えば、米国特許第6,511,568(B1)号、同第6,806,338号、同第8,835,582(B2)号、及び同第9,725,537(B2)号に開示されている。エチレン/α-オレフィン共重合のためのメタロセン系シングルサイト触媒などのシングルサイト触媒は、触媒残留物がより少なくかつ官能特性が改善された樹脂を提供する。シングルサイト触媒として特に好ましいのは、任意選択で無機又は有機基質、特にシリカ、アルミナ、又はシリカ-アルミナなどの多孔質酸化物に担持されたメタロセンである。有利なことには、これらは、アルミノキサンなどの助触媒と組み合わせて使用することもできる。
【0038】
いくつかの実施形態においては、本発明において有用なPOEは、市販のPOE製品から選択され得る。例えば、ブレンド組成物を形成するために使用されるPOEには、ENGAGETM及びAFFINITYTM(いずれもThe Dow Chemical Company(Dow)から入手可能)、Exact(ExxonMobilから入手可能)、Queo(Borealisから入手可能)、Supreme POE(SK Chemicalsから入手可能)、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0039】
POE成分はまた、ブレンドPOE成分を形成するために他の任意選択の成分と組み合わせることもでき、例えば、超低密度ポリエチレン(ULDPE)を使用することができ、例えば、ATTANETM(Dowから入手可能)及びClearflex(Versalis S.p.a.から入手可能)を含む実質的に線状ではないエチレン/α-オレフィンコポリマーなどの成分を使用することができる。
【0040】
ブレンド組成物において使用されるPOEの濃度は、一般的な一実施形態においては0.5重量%~50重量%、別の実施形態においては5重量%~40重量%、さらに別の実施形態においては10重量%~30重量%である。
【0041】
本発明において有用なPOEは、所定の密度及びMIを有する。例えば、POEの所定の密度は、一般的な一実施形態においては0.910g/cm3以下、別の実施形態においては0.850g/cc~0.910g/cc、さらに別の実施形態においては0.860g/cc~0.900g/cc、さらに別の実施形態においては0.860g/cc~0.880g/ccである。
【0042】
本発明において有用なPOEの所定のMIは、一般的な一実施形態においては0.5dg/分以上、別の実施形態においては0.5dg/分~40dg/分、さらに別の実施形態においては3dg/分~40dg/分、さらに別の実施形態においては4dg/分~40dg/分である。
【0043】
一般的な実施形態においては、本発明において使用される部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂組成物成分(成分(b))は、例えば、化粧品容器などの成形物品において使用するのに非常に望ましい特性を有する材料である少なくとも部分的に中和されたエチレン酸コポリマーであり得、部分的に中和されたエチレン酸コポリマーは、そのような射出成形物品を形成するための射出成形プロセスのタイプによく適している。
【0044】
本発明において有用な部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂は、一般に、当業者に周知であり、例えば国際公開第2021/003117(A1)号に記載されている部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂のいずれかを含み得、部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂は、例えば国際公開第2021/003117(A1)号に記載されている方法に従って調製することができる。
【0045】
本発明において有用な部分的に中和されたエチレン酸コポリマー樹脂は、当業者に既知の任意の手段によって、例えば、エチレン酸コポリマーを金属含有中和剤に由来する1つ以上の金属イオンで中和することによって生成することができる。エチレン酸コポリマーは、(i)エチレン、及び(ii)アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、又はそれらのうちの2つ以上の組み合わせなどのコモノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマーである。コモノマーは、例えば、エチレン酸コポリマー中に存在するモノマーの総重量に基づいて、一般的な一実施形態においては9重量%~30重量%、さらに別の実施形態においては9重量%~25重量%で使用される。
【0046】
前述のように、いくつかの実施形態においては、中和されたエチレン酸コポリマー樹脂の酸基は、少なくとも部分的に中和される。これらの樹脂における酸基の中和は、例えば、一般的な一実施形態においては、総カルボン酸含有量に基づいて、金属含有中和剤から供給される金属イオンで中和される中和エチレン酸コポリマー樹脂中のカルボン酸基の0.1%~100%、別の実施形態においては10%~90%、さらに別の実施形態においては20%~80%、さらに別の実施形態においては20%~70%の範囲であり得る。本発明において有用な金属イオンは、一価、二価、三価、多価、又はそれらのうちの2つ以上の組み合わせを含み得る。金属イオンの例としては、Li、Na、K、Ag、Hg、Cu、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Cd、Sn、Pb、Fe、Co、Zn、Ni、Al、Sc、Hf、Ti、Zr、Ce、及びそれらのうちの2つ以上の組み合わせが挙げられる。金属イオンが多価である場合、米国特許第3,404,134号に開示されているように、ステアレート、オレエート、サリチレート、又はフェノラートラジカルなどの錯化剤が含まれ得る。いくつかの好ましい実施形態においては、本発明において使用される中和金属イオンの例としては、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、又はそれらの組み合わせが挙げられる。本発明において使用される中和金属イオンのさらなる例としては、NaOH、NaHC03、Na2CC>3、NaHS04、NaEbPC^、Na2HP03、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、フェノール酸ナトリウム、Zn(OH)2、ZnCCb、ZnCC>3、ZnSC>4、Z11HPO4、Z11HPO3、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、フェノール酸亜鉛、Mg(OH)2、MgCCb、MgSC>4、MgHP04、MgHPCb、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、フェノール酸マグネシウム、又はそれらのうちの2つ以上の組み合わせなどの塩(金属含有中和剤)に由来するNa又はZnイオンが挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態においては、中和されたエチレン酸コポリマーは、前駆体エチレン酸コポリマーから形成された部分的に中和されたエチレン酸コポリマーであってよい。前駆体エチレン酸コポリマーは、エチレンの共重合単位と、前駆体エチレン酸コポリマーの総重量に基づいて9重量%~30重量%の、3個の炭素原子~8個の炭素原子を有するα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位と、を含み得る。9重量%~30重量%の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、開示される。例えば、いくつかの実施形態においては、前駆体エチレン酸コポリマーは、エチレンの共重合単位と、前駆体エチレン酸コポリマーの総重量に基づいて、一実施形態においては9重量%~25重量%の3個の炭素原子~8個の炭素原子を有するα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位、別の実施形態においては9重量%~25重量%の3個の炭素原子~8個の炭素原子を有するα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位、さらに別の実施形態においては9重量%~22重量%の3個の炭素原子~8個の炭素原子を有するα,β-エチレン性不飽和カルボン酸の共重合単位と、を含む。コモノマー含有量は、核磁気共鳴(「NMR」)分光法に基づく技術などの任意の好適な技術を用いて、例えば、米国特許第7,498,282号に記載の13C NMR分析によって測定することができる。
【0048】
いくつかの実施形態においては、成形物品の中和された酸コポリマーは、少なくとも部分的に中和され、ASTM D1238に従って測定したときに、例えば、一般的な一実施形態においては0.5g/10分以上、別の実施形態においては0.5g/10分~25g/10分のMIを有するエチレン酸コポリマー樹脂であってよい。他の好ましい実施形態においては、成形物品の中和された酸コポリマーは、コポリマーのエチレンアクリル酸及び/又はメタクリル酸基がNaイオンで少なくとも部分的に中和されている、少なくとも部分的に中和されたエチレンアクリル酸及び/又はメタクリル酸コポリマーであってよい。さらに他の好ましい実施形態においては、成形物品の中和された酸コポリマーは、中和された酸コポリマーの総重量に基づいて、9重量%~30重量%のアクリル酸又はメタクリル酸の共重合単位と、70重量%~91重量%のエチレンの共重合単位と、を含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態においては、成形物品の中和された酸コポリマーは、ナトリウムカチオンを含むカルボン酸塩として中和される中和された酸コポリマーのカルボン酸基のうちのいくつかを有し得る。例えば、一実施形態においては、中和された酸コポリマーのカルボン酸基の20%~70%が中和され得、別の実施形態においては、中和された酸コポリマーのカルボン酸基の30%~70%が中和され得、さらに別の実施形態においては、中和された酸コポリマーのカルボン酸基の40%~70%が中和され得る。
【0050】
3個の炭素原子~8個の炭素原子を有する好適なα,β-不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、モノメチルマレイン酸、及びこれらの酸コモノマーのうちの2つ以上の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態においては、3個の炭素原子~8個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸は、アクリル酸及びメタクリル酸を含む。好ましい一実施形態においては、3個の炭素原子~8個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸は、アクリル酸を含む。
【0051】
前駆体エチレン酸コポリマーは、一般的な一実施形態においては、10g/10分~4,000g/10分のMIを有する。MIは、190℃及び2.16kgでASTM D1238に従って求められる。一般的な範囲10g/10分~4,000g/10分の全ての個々の値及び部分範囲が、本明細書に含まれ、開示される。例えば、いくつかの実施形態においては、前駆体エチレン酸コポリマーは、一実施形態においては10g/10分~2,500g/10分、別の実施形態においては10g/10分~1,250g/10分、さらに別の実施形態においては25g/10分~1,000g/10分、さらに別の実施形態においては25g/10分~750g/10分、さらになお別の実施形態においては50g/10分~500g/10分、さらになお別の実施形態においては100g/10分~450g/10分のMIを有し得る。
【0052】
前駆体エチレン酸コポリマーは、反応性コモノマー及び存在する場合は溶媒が各々、開始剤と一緒に撹拌反応器に連続的に供給される連続プロセスで合成され得る。開始剤の選択は、開始剤の分解温度に加えて予想される反応器温度範囲に基づいており、この選択の基準は、当産業において十分に理解されている。一般に、前駆体エチレン酸コポリマーを生成するためのエチレンと酸コモノマーとの共重合による合成中、反応温度は、一実施形態においては120℃~300℃、別の実施形態においては140℃~260℃で維持され得る。反応器内の圧力は、一実施形態においては130MPa~310MPa、別の実施形態においては165MPa~250MPaで維持され得る。
【0053】
反応器は、例えば、激しい撹拌のための手段を備えた、ある種のオートクレーブ反応器について説明している米国特許第2,897,183号に記載されている反応器などのオートクレーブ反応器であってよい。米国特許第2,897,183号はまた、「実質的に一定の環境」下でエチレンを重合するための連続プロセスについても記載している。この環境は、特定のパラメータ、例えば、圧力、温度、開始剤濃度、及びポリマー生成物対未反応のエチレンの比率を重合反応中に実質的に一定に保つことによって維持される。そのような条件は、様々な連続撹拌槽型反応器のうちのいずれか、中でも、例えば、連続撹拌等温反応器及び連続撹拌断熱反応器において達成され得る。
【0054】
前駆体酸コポリマーを含有する反応混合物を激しく撹拌し、オートクレーブから連続的に取り出す。反応混合物が反応容器を出た後、得られた前駆体酸コポリマー生成物は、未重合材料及び溶媒を減圧下又は高温で気化させることなどの従来の手順によって、揮発性の未反応モノマー及び存在する場合は溶媒から分離される。前駆体酸コポリマーの非限定的な例としては、商標名NUCREL(商標)(Dowから入手可能)及びPrimacor(SK Chemicalsから入手可能)のコポリマーが挙げられる。
【0055】
一般に、前駆体エチレン酸コポリマーを生成するための重合反応の間、反応器の内容物は、実質的に反応器全体にわたって単相が存在するような条件下で維持され得る。これは、米国特許第5,028,674号に記載のように、反応器温度を調整することによって、反応器圧力を調整することによって、助溶媒を添加することによって、又はこれらの技法の任意の組み合わせによって達成され得る。単相が実質的に反応器全体にわたって維持されているかどうかを判定するために、従来の手段を使用することができる。例えば、Haschらは、”High-Pressure Phase Behavior of Mixtures of Poly(Ethylene-co-Methyl Acrylate)with Low-Molecular Weight Hydrocarbons,”Journal of Polymer Science:Part B:Polymer Physics,Vol.30,1365-1373(1992)において、単相条件と多相条件間の境界を判定する際に使用することができる曇り点測定について説明している。
【0056】
本開示の実施形態による成形物品において有用な部分的に中和されたエチレン酸コポリマーを得るために、前駆体エチレン酸コポリマーは、前駆体酸コポリマー中の酸基(例えば、カルボン酸)が反応して酸塩基(例えば、カルボン酸塩)を形成するような金属カチオンを含む塩基で中和される。本明細書におけるいくつかの実施形態においては、前駆体エチレン酸コポリマーのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸に由来する酸基の一部が中和される。上記のように、例えば、一般的な一実施形態においては、前駆体酸コポリマーのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸に由来する酸基の20%~70%が中和される。アイオノマーの調製に関する追加の情報は、米国特許第3,264,272(A)号及び同第3,322,734(A)号に見出すことができ、これらは各々、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。部分的に中和されたエチレン酸コポリマーの非限定的な例としては、商品名SURLYN(商標)(Dowから入手可能)のアイオノマーが挙げられる。
【0057】
酸基を中和して、少なくとも部分的に中和されたエチレン酸コポリマーをもたらすために、任意の安定なカチオン及び2つ以上の安定なカチオンの任意の組み合わせが、前駆体エチレン酸コポリマー中の酸基に対する対イオンとして好適であると考えられる。部分的に中和されたエチレン酸コポリマー中の酸基に対する対イオンとしては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びいくつかの遷移金属のカチオンなどの二価及び一価のカチオンを挙げることができる。いくつかの実施形態では、カチオンは、例えば、亜鉛、カルシウム、又はマグネシウムなどの2価カチオンである。他の実施形態では、カチオンは、例えば、カリウム又はナトリウムなどの1価カチオンである。さらなる実施形態では、前駆体酸コポリマーのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸に由来する酸基は、ナトリウムイオンを含有する塩基によって中和される。ナトリウムイオンを含有する塩基は、前駆体酸の酸基の水素原子がナトリウムカチオンによって置き換えられナトリウムで部分的に中和されたエチレン酸コポリマーを提供することができる。いくつかの実施形態においては中和された酸コポリマーとして有用なコポリマーを得るために、前駆体酸コポリマーは、米国特許第3,404,134号及び同第6,518,365号に記載されているものなどの任意の従来の手順によって中和され得る。
【0058】
本発明のブレンド組成物は、一般的な一実施形態においては、2つの成分(a)及び(b)を含むが、本発明のブレンド組成物の優れた利益/特性/性能を維持しながら特定の機能の遂行を可能にするために、ブレンド組成物には多種多様な任意選択の添加剤が配合され得る。任意選択の成分(成分(c))が、ブレンド組成物の成分(a)に添加されてもよく、又は任意選択の成分が、ブレンド組成物の成分(b)に添加されてもよく、又は任意選択の成分が、ブレンド組成物の成分(a)及び(b)の両方に添加されてもよい。例えば、一実施形態においては、ブレンド製剤において有用な任意選択の添加剤(成分(c))は、例えば国際公開第2021/003117(A1)号に記載されている任意の1つ以上の顔料又は着色マスターバッチのいずれか、ミネラルチャージ、蛍光増白剤、相溶化剤、及びそれらの混合物を含み得る。
【0059】
使用される場合にブレンド製剤に添加するのに有用な任意選択の添加剤(成分(c))の量は、一般に、成分の総重量に基づいて、一実施形態においては0.001重量%~約5重量%、別の実施形態においては0.01重量%~1重量%、さらに別の実施形態においては0.01重量%~0.5重量%の範囲であり得る。
【0060】
一般的な実施形態においては、ブレンド組成物は、POE成分及び部分的に中和されたエチレン酸コポリマー成分を一緒に、所望であれば任意の他の任意選択の成分と混和、ブレンド、混合して、均一な混合物を形成することによって形成される。ブレンド組成物を形成するためのプロセスは、例えば、成分(a)及び(b)を上記の所望の濃度で一緒に混合することを含み、次いで、所望に応じて1つ以上のさらなる任意選択の成分(c)を組成物に添加してもよい。成分の混合順序は重要ではなく、2つ以上の成分を一緒に混合した後、残存成分を添加してよい。ブレンド組成物の成分は、任意の従来の混合プロセス及び装置によって一緒に混合することができる。例えば、POE成分(a)及び部分的に中和されたエチレン酸コポリマー組成物成分(b)を、乾式ブレンド又は配合ブレンド(compound blended)のための適切な装置を用いて乾式ブレンド又は配合ブレンドして、ブレンド組成物を形成してよい。
【0061】
本発明の別の実施形態においては、ブレンド組成物を射出成形プロセスで使用して、香水瓶のキャップ又はクロージャなどの射出成形物品を製作することができる。一般に、成形物品を製作するプロセスは、
(I)上記のようなPOE成分及び部分的に中和されたエチレン酸コポリマー組成物成分、並びに所望に応じて、他の任意選択の材料を提供する工程と、
(II)工程(I)の成分をブレンドする工程と、
(III)工程(II)のブレンド組成物を射出成形装置に供給する工程と、
(IV)ブレンド組成物を射出成形して、射出成形物品を形成する工程と、を含む。
【0062】
工程(I)で提供される成分としては、例えば、固体粒子、ペレット、フレーク、繊維、ストランド、粉末、及びそれらの混合物などの固体、液体顔料などの液体、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0063】
本発明のプロセスのブレンド工程(II)は、一般的な一実施形態においては90℃~220℃、別の実施形態においては90℃~190℃、さらに別の実施形態においては90℃~160℃の温度で成分を一緒に乾式ブレンド又は配合することによって行われる。
【0064】
本発明のプロセスの射出成形工程(IV)は、一実施形態においては150℃~220℃、別の実施形態においては170℃~200℃の溶融温度で行われる。
【0065】
一実施形態においては、工程(IV)においてブレンド組成物から形成される成形物品は、任意の成形化粧品包装製品又は化粧品包装用途において有用な任意の成形物品を含み得、好ましい一実施形態においては、形成される成形物品は、香水容器又は化粧品容器用のキャップ又はクロージャである。
【0066】
本発明のプロセスの利点のうちの1つは、上記の本発明のプロセスの工程が、当該技術分野で既知のいくつかの従来のプロセス及び装置によって行われ得ることである。
【0067】
本開示による成形物品の実施形態は、本開示による方法の実施形態に従って、又は本開示に記載の成形物品をもたらす任意の他の適切な方法によって調製された成形物品の実施形態を含むと理解されるべきである。
【0068】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、成形物品又は成形技術の分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためであり、限定することは意図されない。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他を示していない限り、複数形も含むことが意図される。
【実施例】
【0069】
以下の本発明の実施例(本発明の実施例)及び比較例(比較例)(まとめて「実施例」とする)は、本発明の特徴をさらに詳細に説明するために本明細書で提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして明示的にも暗示的にも解釈されることを意図しない。本発明の実施例はアラビア数字によって特定され、比較実施例はアルファベット文字によって表される。以下の実験では、本明細書に記載の成形物品の実施形態の性能を分析する。成形物品及びそれに関連する調製方法の実施形態は、以下の実施例を参照することによってよりよく理解され、これらの実施例は、例示として提供され、成形物品又は成形技術の分野の当業者は、限定することを意味するものではないことを認識するであろう。特に指示しない限り、全ての部及びパーセンテージは、総重量に基づく重量による。
【0070】
原料
実施例で使用する原料は、(1)部分的に中和されたエチレン酸コポリマー成分及び(2)ポリマー成分を含む。成分は、ブレンド組成物を形成するために使用される。
【0071】
実施例で使用するポリマーは、表Iに記載するポリエチレン材料及びPOE材料を含む。
【表1】
【0072】
ブレンド組成物を製作するための一般的な手順
試験のためのブレンド組成物を製作するプロセスは、部分的に中和されたエチレン酸コポリマー(又はアイオノマー)成分及びPE成分を乾式ブレンド又は配合して、サンプルブレンド組成物を形成することを含む。実施例で使用するアイオノマーは、SURLYN(商標)PC-2000(Dowから入手可能)であり、使用するPE成分を表IIに記載する。表IIに記載の混合物又はブレンド組成物を、表IIに記載の実施例において使用した。
【表2】
【0073】
成形試験片を製作するための一般的な手順
試験のための成形試験片を製作するプロセスは、まず上記の表IIに記載したブレンド組成物を形成し、次いでブレンド組成物を射出成形して成形試験片を形成し、その後特性評価することを含む。以下の表IIIは、ISO527タイプ1A試験片の引張試験片を射出するための射出プレス(Dr Boy55E、スクリュー直径24mm、クランプ力55トン)を用いた一般的な射出成形設定について記載している。表IVは、実施例に使用した単位圧を報告する。
【表3】
【表4】
【0074】
表Vは、60mm×60mm×2mmの寸法を有する板状試験片を射出するための実施例で使用される射出プレス(Dr Boy55E、スクリュー直径24mm、55トン)の一般的な射出成形設定について記載する。表VIは、実施例に使用する単位圧を報告する。
【表5】
【表6】
【0075】
成形試験片の特性評価に使用した試験方法及び標準
試験のための試験片を製作するプロセスは、まず部分的に中和されたエチレン酸コポリマー(又はアイオノマー)成分及びPE成分を乾式ブレンド又は配合して、サンプルブレンド組成物を形成することを含む。サンプルブレンド組成物の各々を射出成形してサンプル成形試験片を形成したら、サンプル成形試験片を表VIIに記載の試験手順に従って特性評価する。
【表7】
【0076】
表VIIIは、上記の試験方法の結果を記載し、結果は、実施例の製剤についての光学特性の差を示す。
【表8】
【0077】
結果の考察
表Vに見られるように、本発明の実施例1~3の成形試験片の各々は、目的とする用途のための適切な衝撃及び機械的特性を維持しながら、比較例A~Cの成形試験片よりもはるかに低いヘイズ及び高い光沢を示す。
【0078】
特定の実施形態が、本明細書に例示及び記載されているが、特許請求される主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な他の変更及び修正が行われ得ることを理解されたい。さらに、特許請求される主題の様々な態様が本明細書に記載されているが、そのような態様は、組み合わせて利用される必要性はない。したがって、添付の特許請求の範囲は、特許請求される発明主題の範囲内にあるそのような全ての変更及び変形を網羅することが意図される。
【国際調査報告】