(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】汚染土壌からのPFASの除去
(51)【国際特許分類】
B09C 1/06 20060101AFI20241108BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20241108BHJP
C02F 11/06 20060101ALI20241108BHJP
F23G 7/14 20060101ALI20241108BHJP
F23G 5/30 20060101ALI20241108BHJP
F23G 7/04 20060101ALI20241108BHJP
F23G 7/00 20060101ALI20241108BHJP
B09B 101/90 20220101ALN20241108BHJP
【FI】
B09C1/06
B09B3/40
C02F11/06
F23G7/14
F23G5/30 M
F23G7/04 601J
F23G7/00 G
B09B101:90
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525827
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2022080121
(87)【国際公開番号】W WO2023073123
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524160084
【氏名又は名称】ハーバー ストーン ビー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファレカンプ、アリエン
(72)【発明者】
【氏名】カンプ、コルスティアーン ペートルス ヴィレム
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ゾン、ヴィルヘルムス ヘンドリクス
【テーマコード(参考)】
3K161
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
3K161AA05
3K161AA11
3K161BA02
3K161BA07
3K161CA01
3K161CA03
3K161DA52
3K161DA53
3K161EA31
3K161EA36
3K161GA13
3K161GA15
3K161LA25
3K161LA41
4D004AA41
4D004AB08
4D004AC04
4D004CA24
4D004CB34
4D004DA06
4D004DA10
4D059AA03
4D059AA09
4D059BB01
4D059BB13
4D059CA14
4D059EB09
(57)【要約】
本発明は、PFASを含む土壌の浄化方法を含む。本方法は、ステップa)~d)を含む。ステップa)では、汚泥及び第1のガス流を第1の噴流床焼却炉内で加熱することにより、セラミック物品の原料と、第1の排出ガスを含み、少なくとも800℃の温度を有する第1のガス流とを生成する。ステップb)では、空気対空気熱交換器内で第1の排出ガスを含む第1のガス流を第2のガス流と熱交換することにより、少なくとも500℃の温度を有する第2のガス流を生成する。ステップc)では、乾燥器内でPFASを含む土壌を第2のガス流と接触させることにより、土壌からPFASを気化させ、清浄な土壌とPFASを含む第2のガス流とを生成する。ステップd)では、PFASを含む第2のガス流を第2の噴流床焼却炉内で少なくとも1000℃の温度までさらに加熱することにより、分解されたPFASを含む第2のガス流を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PFASを含む土壌の浄化方法であって、
a)汚泥及び第1のガス流を第1の噴流床焼却炉内で加熱するステップであって、それにより、汚泥中の有機物質を焼却すると共に、セラミック物品のための原料と、第1の排出ガスを含む第1のガス流とを生成し、前記第1のガス流が少なくとも800℃の温度を有する、ステップと、
b)空気対空気熱交換器内で前記第1の排出ガスを含む前記第1のガス流を第2のガス流と熱交換するステップであって、それにより、少なくとも500℃の温度を有する第2のガス流を生成する、ステップと、
c)乾燥器内でPFASを含む前記土壌を少なくとも500℃の温度を有する前記第2のガス流と接触させるステップであって、それにより、前記土壌から前記PFASを気化させ、清浄な土壌とPFASを含む第2のガス流とを生成する、ステップと、
d)前記第2のガス流に含まれるPFASを第2の噴流床焼却炉内で少なくとも1000℃の温度で分解するステップであって、それにより、分解されたPFASを含む第2のガス流を生成する、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の排出ガスを含む前記第1のガス流の温度が、800℃~1400℃、好ましくは850℃~1350℃、より好ましくは900℃~1100℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも500℃の温度を有する前記第2のガス流の温度が、500℃~900℃、好ましくは550℃~850℃、より好ましくは600℃~800℃である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)の後に、前記第1の排出ガスを含む前記第1のガス流が、冷却されて前記第1の排出ガスを含む冷却された第1のガス流となり、前記第1の排出ガスを含む前記冷却された第1のガス流が、第1の清浄器で浄化される、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップd)の後に、分解されたPFASを含む前記第2のガス流が、第2の清浄器で浄化される、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
分解されたPFASを含む前記第2のガス流が、気体/固体分離器を通して前記第2の噴流床焼却炉から排出されると共に、固体流が前記気体/固体分離器から排出され、前記固体流が、ステップc)においてPFASを含む前記土壌と混合される、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップa)における加熱のための追加の熱が、第1の燃料、好ましくは固体回収燃料(SRF)又はごみ由来燃料(RDF)の燃焼によって生成される、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップd)におけるPFASを分解するための熱が、第2の燃料、好ましくは固体回収燃料(SRF)、ごみ由来燃料(RDF)又は天然ガス、最も好ましくは天然ガスの燃焼によって生成される、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記清浄な土壌が、それぞれ単独のPFAS化合物を、3.0μg/kg未満、好ましくは1.4μg/kg未満、より好ましくは0.1μg/kg未満で含む、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
PFASを含む土壌の浄化方法における噴流床焼却炉の使用であって、前記噴流床焼却炉が、PFASを含むガス流の温度をPFASの分解に適した温度まで上昇させるために使用され、これにより前記PFASを分解し、前記ガス流は、少なくとも500℃、好ましくは500℃~900℃の間の初期温度を有する、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PFASを含む土壌の浄化方法(a process for remediation of soil)と、この浄化方法における噴流床焼却炉の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
1960年代以降、多くの新しい化学物質が開発され、様々な工業製品や家庭用品に使用されてきた。その一例が、ペルフルオロ及びポリフルオロアルキル物質(PFAS:per- and polyfluoroalkyl substances)群である。これらの物質は、それらのユニークな特性のために使用されてきた。それらは、撥水性及び撥油性の両方であり、例えば、熱及び酸に対する耐性である。様々な種類のPFASが存在し、物質群には現在6000種類を超える化合物が含まれる。
【0003】
工業製品又は家庭用品におけるこれらの化合物の用途は非常に多様である。それらは、カーペットの防汚剤、撥水性繊維、金属加工プロセス、非粘着性材料の製造、及び特定のタイプの消火フォームの補助物質として使用されてきた。しかしながら、2000年頃から、PFAS群の物質がますます注目されるようになった。というのは、これらの物質が難分解性(persistent)、生物蓄積性、及び毒性(PBT)であることが科学的研究により明らかになったからである。さらに、これらの物質が環境中に大規模に存在することが測定によって明らかになっている。
【0004】
基本的にPFASは、炭素(C)原子とフッ素(F)原子の鎖からなり、特定の物質基(substance group)が付加されている。最もよく知られている物質は、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)及びPFOA(ペルフルオロオクタン酸)である。最近まで、PFOSは、例えば泡消火薬剤(fire extinguishing foams)に使用されていた。PFOSは液体と泡消火薬剤との間に水性皮膜を形成し、非常に高い温度にも耐える。このため、この種の泡消火薬剤(fire-fighting foam)は、空港、燃料貯蔵所、掘削プラットフォーム、及び大量の液体燃料を使用する他の施設で処方されていた。PFOAはテフロン(登録商標)製造におけるアジュバントであり、優れた撥油・撥水効果に寄与するので、他の多くの製品に使用されてきた。
【0005】
オランダでは、PFOS及びPFOAの使用は、可能な限り法律で禁止されている。段階的な廃止にもかかわらず、これらの物質は、環境中に依然として存在している。さらに、これらの物質は、現在も使用されている他のPFASに置き換えられ、その程度は低いとはいえ、依然としてPBTである。
【0006】
PFAS汚染物質を分解可能な技術は限られている。通常の汚染物質に使用できる技術の多くは、揮発性が低く分解性が低いため、PFASに使用することができない。最も一般的な原位置浄化方法(ex-situ)による実行可能性試験は、掘削された土壌の浄化には、抽出浄化(土壌洗浄)が現在唯一の実行可能な方法であることを示している。土壌洗浄とは、土壌を液体(多くの場合、化学添加剤を用いて)で洗浄し、土壌をスクラビングした後、汚染土壌と洗浄水から清浄な土壌を分離することによって、土壌から有害な汚染物質を除去する、原位置改善技術(ex-situ remediation technique)である。その後、PFASは、活性炭などへの吸着によって液相から除去され得る。しかしながら、汚染された炭素のその後の処理には注意すべき点が残っている。PFASを完全に分解するには非常に高い温度(1000~1200℃)が必要であり、そのためPFAS処理からの追加の廃棄物流を分解するには非常にエネルギーが必要であり、その結果、高価になる。
【0007】
PFASの分解温度が高いことも、例えば、従来の熱土壌洗浄(500~600℃で汚染化合物を気化させ、続いて約750℃で後燃焼させる)が、PFOS及びPFOAで汚染された土壌に対して有効ではないと証明された理由である(Een handelingskader voor PFAS - Expertisecentrum PFAS - 25-6-2018 - ISBN/EAN: 978-90-815703-0-5)。
【0008】
現在、汚染土壌からのPFAS除去に関連する限られた数の特許公報のみが存在している。例えば、米国特許出願公開第2018/319685号、米国特許出願公開第2019/300387号、及び国際公開第2019/113268号は、PFASで汚染された土壌が、土壌を洗浄することによって浄化される方法を開示している。また、米国特許出願公開第2018/282530号のシクロデキストリンは、液体媒体中で使用される。米国特許出願公開第2019/314876号は、まずPFASを気化させるために225~440℃の範囲の温度で土壌を加熱することを開示している点で異なる。気化させたPFASに水蒸気が加えられ、濃縮されたPFAS水溶液が生成される。このように、米国特許出願公開第2019/314876号は、土壌の洗浄を開示していないが、PFASは水相中で得られる。したがって、上述の方法はいずれも、廃棄物流がさらに発生し、その分解には大きなエネルギー投入が必要であるという欠点を有する。
【0009】
米国特許出願公開第2021/106860号は、例えばPFASによって汚染された土壌などの汚染された固形物質を、真空下で汚染物質を揮発させ得る温度で加熱することによって、汚染除去することを開示している。国際公開第2021/102519号は、熱分解によるPFASで汚染された土壌の汚染除去を開示している。米国特許出願公開第2018/345338号及びDuchesne等(Environ. Sci. Technol. 2020, 54, 12631)も、全熱分解法(all thermal destruction method)を開示している。PFASを含む土壌を汚染除去するために、くすぶり燃焼(Smoldering combustion)が使用される。土壌は、有機物質を含む固体燃料で処理される。混合物が200℃~400℃に加熱されてくすぶり燃焼が開始されると共に、混合物がPFAS分解温度に達し、ペルフルオロアルキル化物質が熱的に分解されるまでくすぶり燃焼が持続するように、加熱された混合物に酸化剤ガスが強制的に通される。得られる燃焼排出ガス(flue gas)は、フッ化水素や他のフッ素ガスを放出するため、処理を必要とする。米国特許出願公開第2018/345338号は、エネルギー及びコストの負担を軽減するために、他の廃棄物、例えば、炭化水素の影響を受けた土壌、コールタール又はその他の燃料の処理から発生するエネルギーを利用する仕組みが存在しないことに言及している。これは、Een handelingskader voor PFAS - Expertisecentrum PFAS - 25-6-2018 - ISBN/EAN: 978-90-815703-0-5で報告された内容、すなわち、洗浄方法が唯一の実行可能な方法であると思われることと一致している。
【発明の概要】
【0010】
関連コストが高いため、PFASで汚染された廃棄物を受け入れる施設は限られている。しかしながら、環境中にPFASが大量に存在し、土壌中のPFAS汚染の許容レベルに関連する厳しい要求があるため、PFAS浄化の新規でより費用効果の高い方法が必要である。本発明の目的は、PFASを含む土壌を浄化するための改良された方法及びシステムを提供すること、又は少なくとも有用な代替手段を提供することである。
【0011】
さらに、本発明は、PFASを含む土壌の浄化方法であって、この方法は、
a)汚泥(sludge)及び第1のガス流を第1の噴流床焼却炉内で加熱するステップであって、それにより、汚泥中の有機物質を焼却すると共に、セラミック物品のための原料と、第1の排出ガスを含む第1のガス流とを生成し、前記第1のガス流が少なくとも800℃の温度を有する第1の排出ガスを含む、ステップと、
b)空気対空気熱交換器内で前記第1の排出ガスを含む前記第1のガス流を第2のガス流と熱交換するステップであって、それにより、少なくとも500℃の温度を有する第2のガス流を生成する、ステップと、
c)乾燥器内でPFASを含む前記土壌を少なくとも500℃の温度を有する前記第2のガス流と接触させるステップであって、それにより、前記土壌から前記PFASを気化させ、清浄な土壌とPFASを含む第2のガス流とを生成する、ステップと、
d)前記第2のガス流に含まれるPFASを第2の噴流床焼却炉内で少なくとも1000℃の温度で分解するステップであって、それにより、分解されたPFASを含む第2のガス流を生成する、ステップと、
を含む。
【0012】
驚くべきことに、他の廃棄物の処理から発生するエネルギーは、PFAS汚染土壌の浄化に有利に使用することができないという一般的な見解に反して、汚泥からセラミック物品の原料を調製するプロセスで発生する排出ガスを含むガス流を、PFASを含む土壌の浄化プロセスで有利に使用できることが見出された。特徴のユニークな組み合わせによって、すなわち、PFASを2段階で加熱すること(まずステップc)で乾燥器内で加熱し、次にステップd)で噴流床焼却炉のより高い温度で加熱する)と、加熱にガス流を使用することと、噴流床焼却炉を使用することとによって、ステップd)における温度は、汚染土壌からPFASを除去するプロセスにおいて水相を必要とせずに、汚染土壌からのPFASが分解され得る値まで上昇させることができ、したがって、従来のPFAS浄化技術と比較して、これらの廃棄物流の量と必要とされる洗浄工程とを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
国際公開第2019/160409号から、汚泥からセラミック物品の原料を調製する方法が知られている。この出願は、産業汚泥、家庭汚泥、又は天然汚泥を含むセラミック物品の調製方法を開示する。汚泥は、汚泥を最大10重量%の含水率まで乾燥させ、乾燥汚泥を得て、汚泥又は乾燥汚泥を噴流床焼却炉で加熱し、有機物の含有量を5重量%未満まで減少させるという、任意のステップを含むプロセスによって前処理されて、セラミック物品の原料を得ている。
【0015】
本発明では、汚泥の同様の前処理プロセスから発生するエネルギーが、PFASを含む土壌の浄化方法において有利に使用される。
【0016】
本発明による方法のステップa)では、汚泥及び第1のガス流は、第1の噴流床焼却炉内で加熱される。第1のガス流と第2のガス流とは、好ましくは酸素、より好ましくは少なくとも5%の酸素、さらに好ましくは少なくとも10%の酸素、例えば少なくとも15%又は20%の酸素を含む。好ましくは、第1ガス流及び/又は第2のガス流は、空気流(airstreams)である。好ましくは、第1のガス流及び第2のガス流は、ステップa)及びb)のプロセスに入る前は、それぞれ周囲温度(例えば、0℃~30℃)であるが、例えば少なくとも50℃、70℃又は90℃の温度に予熱されてもよい。
【0017】
汚泥は、建設資材に組み込まれる一般的な廃棄物である。汚泥は、様々な起源から生じ得る。家庭汚泥(農業汚泥を含む)が主に有機物であり、生分解性であるのに対し、産業汚泥は無機物(例えば、大理石汚泥、石材汚泥、セラミック汚泥)であることが多い。産業汚泥の有機成分は、通常は生分解性ではない。汚泥の別の形態は天然汚泥であり、これは家庭汚泥と同様に、有機成分及び生分解性成分を含み得る。家庭汚泥は、人間の生活廃棄物に関連するものであり、例えば、下水汚泥、廃水処理プラントからの汚泥、又は人間の生活廃棄物を処理するその他の形態の汚泥を含む。家庭汚泥及び天然汚泥は、一般に多量の水と生分解性有機物とを含む。通常、含水率(water content)は60~90%である。有機物の乾燥含有量(dry content)は、通常、乾燥物の40~80重量%である。産業汚泥は、可燃性の有機物を含んでいてもよい。本発明で使用される産業汚泥は、乾燥物の40~80重量%の範囲の、可燃性の有機物の乾燥含有量を有することができる。好ましくは、汚泥は最大10重量%の含水率まで乾燥されて、乾燥汚泥となり、この乾燥汚泥は、次いで第1の噴流床焼却炉内で加熱される。好ましくは、汚泥は、廃水処理プロセスから生じる汚泥である。
【0018】
噴流床焼却炉は、動的熱酸化(DTO:Dynamic Thermal Oxidation)の一形態である。噴流床焼却炉における焼却は、動的プロセスである。空気速度と焼却炉の燃焼室内の温度とは、原料の「切断(cutting)」を確実にする。燃焼室の形状は、供給原料粒子がその全表面積にわたって熱処理を受けるように、熱駆動循環を提供する。気流速度、温度、比重及び粒子の比重の組み合わせにより、処理粒子の滞留時間及び「除荷(unloading)」点を調整する。通常、供給原料は、それ自体で又は燃料を加えて、少なくとも4MJのカロリー値(caloric value)を有する。
【0019】
好ましくは、汚泥は少なくとも4MJのカロリー値を有する。したがって、好ましくは、第1の噴流床焼却炉には余分な燃料が供給されない。燃焼プロセスを継続させるために余分な燃料が必要とされる場合、好ましくは、その燃料は固体回収燃料(SRF:solid recovered fuel)又はごみ由来燃料(RDF:refuse derived fuel)である。RDFは、家庭系廃棄物及び事業系廃棄から製造され、生分解性物質やプラスチックが含まれる。ガラスや金属などの不燃物が取り除かれ、残渣は破砕される。SRFは、紙、カード、木材、繊維、プラスチックなどの主に商業廃棄物から製造される、化石燃料に代わる高品質な燃料である。固体回収燃料は、品質及び価値を向上させるための追加処理を経ている。SRFは、RDFよりも高い熱量(calorific value)を有する。追加的に又は代替的に、燃料は、従来の固体燃料、液体燃料、又は気体燃料などの従来の燃料であってもよい。固体燃料の例としては、木材、石炭、泥炭、糞(dung)、コークス、木炭などが挙げられる。液体燃料の例としては、石油、ディーゼル、ガソリン、灯油、LPG、コールタール、ナフタ、エタノールなどが挙げられる。気体燃料の例としては、天然ガス、水素、プロパン、メタン、石炭ガス、水ガス、高炉ガス、コークス炉ガス、CNGなどが挙げられる。
【0020】
噴流床焼却炉は既知である。例えば、ロシア国登録特許第2249763号には、熱動力工学(heat power engineering)で使用され得る噴流床を備える火室(fire-chambers)が記載されている。この文献の噴流床を備える火室は、円筒部の高さが円錐部の高さの10~15%で、円錐部の壁の垂直に対する傾斜角が10~20°で、円錐部の高さがその平均内径の3~5倍となるように作られた円筒形の燃焼室を含んでいる。燃焼室の下には、空気及び排出ガスを供給する接線方向の接続管と、粉砕燃料に予備点火するためのインジェクタとを備える点火室がある。燃焼室の高さに沿ったガス流の速度は様々であるため、燃料の粒子は、粒子のサイズに応じて、それらの液化速度及び空中浮遊(airborne)速度の値に従って円錐部に配置される。燃焼する燃料の粒子は、放射状シャッタの形で作られたスタビライザ-デフレクタに飛ばされる。その際、粒子の一部は偏向され、円錐部に戻される。スタビライザ-デフレクタを通過した粒子は、排出ガスと共に、火室の外側に配置された高温サイクロン分離器に送り込まれる。噴流床焼却炉はまた、米国特許第4047883号及びそこに記載されている技術文献からも公知である。さらに、噴流床焼却炉は、例えば、オランダのゲリーンにあるEMグループ(http://www.emgroup.nl/en/products/incinerators/ (Link))によって(有害)廃棄物の焼却に使用されている。
【0021】
通常、噴流床焼却炉の温度は900~1250℃の範囲である。通常、噴流床焼却炉における滞留時間は1~10秒の範囲である。ガス速度は少なくとも10m/秒である。最終処理物質の捕捉は、通常、燃焼空気によって駆動されるサイクロンによって行われる。サイクロンは、処理された物質を、空気流及び重力を介して、例えば、貯蔵所やさらなる搬送作業へと搬送する。噴流床焼却炉を使用することにより、無機物質の焼結という副作用を伴わずに、有機物質の完全な焼却が行われる。ステップa)の生成物、すなわち、サイクロン又は同様の気体/固体分離器の使用によって捕捉された前処理された汚泥又はセラミック物品の原料は、特性の劣化を恐れることなくレンガに適用することができる。
【0022】
ステップa)で生成されるセラミック物品の原料は、第1の噴流床焼却炉によって生成される物質の第1の流れを表す。物質の第2の流れは、高温ガス、すなわち、第1の排出ガスを含む第1のガス流であり、この排出ガスは、有機物の燃焼とそれに続くガス化とによって生成される。噴流床焼却炉内が高温であるため、第1の排出ガスを含む第1のガス流は、少なくとも800℃、例えば少なくとも850℃、好ましくは少なくとも900℃の温度を有する。例えば、第1の排出ガスを含む第1のガス流の温度は、800~1400℃の間、好ましくは850~1350℃の間、より好ましくは900~1100℃の間である。第2のガス流を加熱するために空気対空気熱交換器に第2のガス流が供給される場合、第2のガス流は、少なくとも500℃の温度まで加熱され得る。これが本発明の方法のステップb)であり、これにより、少なくとも500℃、好ましくは少なくとも550℃、より好ましくは少なくとも600℃(例えば500~900℃、好ましくは550~850℃、より好ましくは600~800℃)の温度を有する第2のガス流が得られる。
【0023】
熱交換器において、第1の排出ガスを含む第1のガス流は、冷却されて、第1の排出ガスを含む冷却された第1のガス流になる。第1の排出ガスを含む冷却された第1のガス流は、第1の清浄器で浄化されてもよい。第1の清浄器は、例えば、スクラバ、活性炭、ゼオライト、又はこれらのうちの1つ以上の組み合わせを含むことができる。
【0024】
ステップc)において、乾燥器内で、PFASを含む土壌を第2のガス流と接触させる。乾燥器は、例えば、回転ドラム又は篩(ふるい)であってもよい。第2のガス流との接触により、PFAS及び他の汚染化合物は、効果的かつ効率的に気化され、その後、第2のガス流によって第2の噴流床焼却炉に運ばれる。加熱にガス流を使用することは、直接燃焼や、乾燥器壁を介した間接加熱などの他の加熱方法よりも有利である。このような加熱方法は、通常、局所的に高温になり、その結果、土壌の一部が焼結(sintering)する可能性がある。本発明の方法では、ガス流の使用により焼結が回避される。したがって、生成された清浄な土壌は焼結されず、土壌の粒度に悪影響を及ぼすことがない。気化したPFAS及び他の汚染化合物は、続いて、第2のガス流によって第2の噴流床焼却炉に移送される。
【0025】
ステップd)において、第2のガス流は、第2の噴流床焼却炉において少なくとも1000℃、例えば少なくとも1100℃、好ましくは少なくとも1150℃の温度にさらに加熱され、これによって分解されたPFASを含む第2のガス流が生成される。分解されたPFASは、他の低分子量化合物の中でもフッ化水素を含む。分解されたPFASを含む第2のガス流は、サイクロン又は同様の気体/固体分離器を通って第2の噴流床焼却炉から排出されて、第2の清浄器で浄化され得る。第2の清浄器は、例えば、スクラバ、活性炭、ゼオライト、又はこれらのうちの1つ以上の組み合わせを含むことができる。少量の固体流が、サイクロン又は同様の気体/固体分離器から排出される場合がある。好ましくは、この固体流は、ステップc)にリサイクルされ、すなわち、固体流は、第2のガス流と接触する前又は接触中に、PFASを含む土壌と混合され得る。
【0026】
好ましくは、余分な燃料が第2の噴流床焼却炉に供給され、この燃料は好ましくはSRF又はRDFである。追加的に又は代替的に、燃料は、従来の固体燃料、液体燃料、又は気体燃料などの従来の燃料であってもよい。第2の噴流床焼却炉に供給される追加の燃料は、好ましくはSRF、RDF、又は天然ガスであり、最も好ましくは天然ガスである。
【0027】
本発明の方法により、それぞれのPFAS化合物の含有量が、3.0μg/kg未満、例えば1.4μg/kg未満、又はさらに0.1μg/kg未満である清浄な土壌が得られる。したがって、清浄な土壌は、例えば、2.5μg/kgのpfPFOS、2.5μg/kgのPFOA、及び2.5μg/kgの1つ以上の他の個別のPFAS化合物を含み得る。
【0028】
本発明はさらに、PFASを含む土壌の浄化方法における噴流床焼却炉の使用に関する。実施形態において、PFASを含むガス流の温度を、PFASの分解に適した温度(すなわち、少なくとも1000℃)まで上昇させるために噴流床焼却炉が使用され、ガス流は、少なくとも500℃、好ましくは500~900℃の間の初期温度を有する。
【0029】
(図面の詳細な説明)
図1のフローチャートは、本発明による方法の一実施形態を示す。第1の噴流床焼却炉(DTO1)には、汚泥と任意の燃料とが供給される。汚泥は、好ましくは、多くとも10%の含水率まで乾燥されている。第1の噴流床焼却炉では、汚泥中の有機物質と任意の燃料とを、800~1400℃の温度において、例えば1~10秒の滞留時間で、少なくとも10m/秒のガス速度で、典型的には周囲温度を有する空気流(空気1)などの第1のガス流で燃焼させる。これにより、レンガ等(原料)のセラミック物品を製造するための原料として使用するのに適した処理済み汚泥が得られる。第1の排出ガスを含む第1のガス流(高温空気+排出ガス1)は、少なくとも800℃、例えば800~1400℃の温度を有する。
【0030】
空気対空気(air to air)熱交換器(熱交換器)では、第1の排出ガスを含む第1のガス流と第2のガス流(空気2)との間で熱交換が行われ、第2のガス流は、通常は周囲温度である。この結果、第1の排出ガスを含む冷却されたガス流(冷却空気+排出ガス1)と第2のガス流(高温空気2)とが得られる。第1の排出ガスを含む冷却されたガス流は、約200~300℃の温度を有し、スクラバなどの第1の清浄器(清浄器1)内で浄化されて、第1の清浄なガス流(清浄空気1)が得られる。
【0031】
第2のガス流は、少なくとも500℃、例えば500~900℃の温度を有する。第2のガス流は、乾燥器(加熱器)において使用され、土壌からPFASを気化させるために、PFASを含む土壌(土壌+PFAS)を加熱する。清浄な土壌(清浄土壌)は、少なくとも約500℃の高温で乾燥器から排出され、冷却器(冷却器)内で通常50℃未満の温度に冷却されて、個々の化合物当たり3.0μg/kg未満、例えば1.4μg/kg未満、典型的には0.1μg/kg未満のPFASを含む冷却された清浄な土壌(冷却清浄土壌)を生成する。この清浄な土壌は、その後搬送される可能性があり、道路建設などの用途に使用する準備が整っている。任意選択で、冷却器からの熱を使用して、第1のガス流及び/又は第2のガス流を予熱することができる。
【0032】
PFASは、PFASを含む第2のガス流(高温空気2+PFAS)の状態で乾燥器から排出される。この第2のガス流は、通常、少なくとも500℃、例えば500~900℃の温度を有する。次いで、PFASを含むガス流は、第2の噴流床焼却炉(DTO2)内でさらに加熱され、第2の噴流床焼却炉内は、PFASとガス流中に含まれる他の不純物の燃焼、及び任意の第2の燃料の添加(燃料2)により、少なくとも1000℃の温度に到達する。第2の噴流床焼却炉から排出されるのは、分解されたPFASを含む第2のガス流(高温空気2+分解PFAS)である。第2のガス流は、スクラバなどの第2の清浄器(清浄器2)内で浄化され、第2の清浄なガス流(清浄空気2)が得られる。
【0033】
図中、グレーの矢印はプロセスを通過する汚泥の経路を示す。グレーのドット柄の矢印は第1のガス流の経路を示す。濃いドット柄の矢印は第2のガス流の経路を示し、黒い矢印は、土壌の経路を示す。
【0034】
(用語)
本発明において、「第1のガス流(first gaseous stream)」という用語は、「第1のガス流(first gas stream)」と互換的に読み替えることができる。「第1の排出ガスを含む第1のガス流」という用語は、「第1の排出ガスを含む第2のガス流」と互換的に読み替えることができる。「第2のガス流」という用語は、「第3のガス流」と互換的に読み替えることができる。「少なくとも500℃の温度を有する第2のガス流」という用語は、「少なくとも500℃の温度を有する第4のガス流」と互換的に読み替えることができる。「PFASを含む第2のガス流」という用語は、「PFASを含む第5のガス流」と互換的に読み替えることができる。「分解されたPFASを含む第2のガス流」という用語は、「分解されたPFASを含む第6のガス流」と互換的に読み替えることができる。したがって、本発明は同様に、以下の項に関する。
【0035】
第1項:PFASを含む土壌の浄化方法であって、
a)汚泥及び第1のガス流を第1の噴流床焼却炉内で加熱するステップであって、それにより、汚泥中の有機物質を焼却すると共に、セラミック物品のための原料と、第1の排出ガスを含む第2のガス流とを生成し、前記第2のガス流が少なくとも800℃の温度を有する、ステップと、
b)空気対空気熱交換器内で前記第1の排出ガスを含む前記第2のガス流を第3のガス流と熱交換するステップであって、それにより、少なくとも500℃の温度を有する第4のガス流を生成する、ステップと、
c)乾燥器内でPFASを含む前記土壌を少なくとも500℃の温度を有する前記第4のガス流と接触させるステップであって、それにより、前記土壌から前記PFASを気化させ、清浄な土壌とPFASを含む第5のガス流とを生成する、ステップと、
d)前記第5のガス流に含まれるPFASを第2の噴流床焼却炉内で少なくとも1000℃の温度で分解するステップであって、それにより、分解されたPFASを含む第6のガス流を生成する、ステップと、
を含む、方法。
【0036】
第2項:前記第1の排出ガスを含む前記第1のガス流の温度が、800℃~1400℃、好ましくは850℃~1350℃、より好ましくは900℃~1100℃である、第1項に記載の方法。
【0037】
第3項:少なくとも500℃の温度を有する前記第2のガス流の温度が、500℃~900℃、好ましくは550℃~850℃、より好ましくは600℃~800℃である、第1項又は第2項に記載の方法。
【0038】
第4項:ステップb)の後に、前記第1の排出ガスを含む前記第1のガス流が、冷却されて前記第1の排出ガスを含む冷却された第1のガス流となり、前記第1の排出ガスを含む前記冷却された第1のガス流が、第1の清浄器で浄化される、第1項から第3項までのいずれか一項に記載の方法。
【0039】
第5項:ステップd)の後に、分解されたPFASを含む前記第2のガス流が、第2の清浄器で浄化される、第1項から第4項までのいずれか一項に記載の方法。
【0040】
第6項:固体流が前記第2の噴流床焼却炉から排出され、ステップc)において前記固体流がPFASを含む前記土壌と混合される、第1項から第5項までのいずれか一項に記載の方法。
【0041】
第7項:ステップa)における加熱のための追加の熱が、第1の燃料、好ましくは固体回収燃料(SRF)又はごみ由来燃料(RDF)の燃焼によって生成される、第1項から第6項までのいずれか一項に記載の方法。
【0042】
第8項:ステップd)におけるPFASを分解するための熱が、第2の燃料、好ましくは固体回収燃料(SRF)、ごみ由来燃料(RDF)又は天然ガス、最も好ましくは天然ガスの燃焼によって生成される、第1項から第7項までのいずれか一項に記載の方法。
【0043】
第9項:前記清浄な土壌が、それぞれ単独のPFAS化合物を、3.0μg/kg未満、好ましくは1.4μg/kg未満、より好ましくは0.1μg/kg未満で含む、第1項から第8項までのいずれか一項に記載の方法。
【0044】
第10項:PFASを含む土壌の浄化方法における噴流床焼却炉の使用であって、前記使用がPFASの分解のための使用であり、前記噴流床焼却炉が、PFASを含むガス流の温度をPFASの分解に適した温度まで上昇させるために使用され、前記ガス流は、少なくとも500℃、好ましくは500℃~900℃の間の初期温度を有する、使用。
【国際調査報告】