IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスケー イノベーション  カンパニー リミテッドの特許一覧 ▶ エスケー グローバル ケミカル カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2024-542408廃プラスチック熱分解油の精製装置および精製方法
<>
  • 特表-廃プラスチック熱分解油の精製装置および精製方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】廃プラスチック熱分解油の精製装置および精製方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 45/08 20060101AFI20241108BHJP
   B01J 23/887 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 27/16 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 23/88 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C10G45/08 A
B01J23/887 Z
B01J27/16 Z
B01J23/88 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527189
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 KR2022018736
(87)【国際公開番号】W WO2023096379
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0165915
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヒジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム オクユン
(72)【発明者】
【氏名】キム カヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ユンム
(72)【発明者】
【氏名】イ ホウォン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BB02B
4G169BC59A
4G169BC59B
4G169BC60B
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BD07B
4G169CC08
4G169DA05
4G169EC03Y
4G169EC06X
4G169EC06Y
4G169EC07Y
4G169EC11Y
4G169EC12X
4G169EC12Y
4G169EC13X
4G169EC13Y
4G169EC15X
4G169FB44
4G169FC01
4H129AA02
4H129CA22
4H129DA15
4H129KA06
4H129KB03
4H129KB04
4H129KD15X
4H129KD22X
4H129KD24X
4H129NA04
4H129NA14
4H129NA37
(57)【要約】
本開示は、廃プラスチック熱分解油が流入し、水素化処理される反応器を含み、前記反応器は、Mo含有量が1~15重量%である水素化処理触媒を含む第1領域と、Mo含有量が5~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~50重量%である水素化処理触媒を含む第2領域とを含み、前記廃プラスチック熱分解油は、前記第1領域および第2領域を順に通過して精製される、廃プラスチック熱分解油の精製装置に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチック熱分解油が流入し、水素化処理される反応器を含み、
前記反応器は、Mo含有量が1~15重量%である水素化処理触媒を含む第1領域と、
Mo含有量が5~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~50重量%である水素化処理触媒を含む第2領域とを含み、
前記廃プラスチック熱分解油は、前記第1領域および第2領域を順に通過して精製される、廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項2】
前記第1領域は、Mo含有量が1~15重量%である水素化処理触媒を含む第1-1領域と、
Mo含有量が1~15重量%およびNiまたはCo含有量が0.1~4重量%である水素化処理触媒を含む第1-2領域とを含み、
前記廃プラスチック熱分解油は、前記第1-1領域および第1-2領域を順に通過して精製される、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項3】
前記第2領域は、Mo含有量が15~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~30重量%である水素化処理触媒を含む第2-1領域と、
Mo含有量が5~15重量%、NiまたはCo含有量が30~50重量%およびW含有量が40~60重量%である水素化処理触媒を含む第2-2領域とを含み、
前記第1-2領域から排出された流体は、前記第2-1領域および第2-2領域を順に通過して精製される、請求項2に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項4】
前記第1-1領域、第1-2領域、第2-1領域および第2-2領域の水素化処理触媒の重量%は、10~30重量%(第1-1領域)、20~40重量%(第1-2領域)、30~50重量%(第2-1領域)および5~15重量%(第2-2領域)である、請求項3に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項5】
前記第1-1領域、第1-2領域および第2-1領域の水素化処理触媒は、支持体を含む担持触媒である、請求項3に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項6】
前記第1-1領域の水素化処理触媒は、100~200Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が150~250Åおよび平均気孔容積が0.7~2ml/gである、請求項2に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項7】
前記第1-2領域の水素化処理触媒は、80~150Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が100~150Åおよび平均気孔容積が0.4~0.8ml/gである、請求項2に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項8】
前記第2-1領域の水素化処理触媒は、50~100Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が50~100Åおよび平均気孔容積が0.1~0.5ml/gである、請求項3に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項9】
前記第2-2領域の水素化処理触媒は、平均気孔径が10~50Åおよび平均気孔容積が0.01~0.4ml/gである、請求項3に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項10】
前記第1-1領域は、廃プラスチック熱分解油内の重質(heavy)炭化水素留分に含まれた不純物を選択的に除去し、前記第1-2領域は、廃プラスチック熱分解油内の中間(middle)炭化水素留分に含まれた不純物を選択的に除去する、請求項2に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項11】
前記第2-1領域は、廃プラスチック熱分解油内の軽質(light)炭化水素留分に含まれた不純物を選択的に除去し、前記第2-2領域は、廃プラスチック熱分解油の不飽和二重結合を選択的に除去する、請求項3に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項12】
前記廃プラスチック熱分解油の精製装置は、ガード床をさらに含み、前記ガード床で廃プラスチック熱分解油が水素化処理された後、前記反応器に前記廃プラスチック熱分解油が流入する、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項13】
前記第1領域および第2領域を順に通過して精製された廃プラスチック熱分解油は、全重量に対して、塩素を10ppm以下および窒素を30ppm以下含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項14】
廃プラスチック熱分解油をMo含有量が1~15重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第1ステップと、
前記第1ステップから生成された流体をMo含有量が5~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~50重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第2ステップとを含む、廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項15】
前記第1ステップは、廃プラスチック熱分解油をMo含有量が1~15重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第1-1ステップと、
前記第1-1ステップから生成された流体をMo含有量が1~15重量%およびNiまたはCo含有量が0.1~4重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第1-2ステップとを含む、請求項14に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項16】
前記第2ステップは、前記第1-2ステップから生成された流体を前記Mo含有量が15~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~30重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第2-1ステップと、
前記第2-1ステップから生成された流体をMo含有量が5~15重量%、NiまたはCo含有量が30~50重量%およびW含有量が40~60重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第2-2ステップとを含む、請求項15に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項17】
前記第1-1ステップ、第1-2ステップ、第2-1ステップおよび第2-2ステップの水素化処理触媒の重量%は、10~30重量%(第1-1ステップ)、20~40重量%(第1-2ステップ)、30~50重量%(第2-1ステップ)および5~15重量%(第2-2ステップ)である、請求項16に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項18】
前記第1-1ステップ、第1-2ステップ、第2-1ステップおよび第2-2ステップの水素化処理触媒は、支持体を含む担持触媒である、請求項16に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項19】
前記第1-1ステップの水素化処理触媒は、100~200Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が150~250Åおよび平均気孔容積が0.7~2ml/gである、請求項15に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項20】
前記第1-2ステップの水素化処理触媒は、80~150Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が100~150Åおよび平均気孔容積が0.4~0.8ml/gである、請求項15に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項21】
前記第2-1ステップの水素化処理触媒は、50~100Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が50~100Åおよび平均気孔容積が0.1~0.5ml/gである、請求項16に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項22】
前記第2-2ステップの水素化処理触媒は、平均気孔径が10~50Åおよび平均気孔容積が0.01~0.4ml/gである、請求項16に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項23】
前記第1ステップの前に、水素化処理触媒に硫黄供給源(sulfur source)を供給するステップをさらに含む、請求項14に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃プラスチック熱分解油の精製装置および精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックは、石油を原料として製造されたものであり、リサイクル率が低く、ほとんどがゴミとして廃棄処分されている。このような廃棄物は、自然状態で分解されるのに長い時間がかかるため、土壌を汚染し、深刻な環境汚染を引き起こしている状況である。廃プラスチックをリサイクルするための方法として、廃プラスチックを熱分解し、使用可能な留分に転換することができ、これを廃プラスチック熱分解油としている。
【0003】
しかし、廃プラスチックを熱分解して得られた熱分解油は、一般的な方法で原油から製造される留分に比べて、塩素、窒素、金属などの不純物の含有量が高いため、ガソリン、ディーゼル油などの高付加価値の石油化学製品としてすぐ使用することができず、精製工程を経なければならない。
【0004】
例えば、廃プラスチック熱分解油に含有された塩素、窒素、金属などの不純物を除去するための精製方法として、水素化処理触媒下で、廃プラスチック熱分解油と水素を反応させて、脱塩素化/脱窒素化する方法または塩素吸着剤を用いて、廃プラスチック熱分解油に含有された塩素を吸着除去する方法などが知られている。
【0005】
廃プラスチック熱分解油は、様々な沸点および様々な分子量分布を有する炭化水素留分の混合物であり、前記沸点および分子量分布の特性に応じて熱分解油内の不純物の組成や反応活性が変化する。廃プラスチック熱分解油の全体フィード(whole feed)を対象に精製工程を行う場合、廃プラスチック熱分解油内の不純物の含有量が高くて、過剰な運転条件(高温、高圧)で過剰な水素化処理を行うことになり、これによって、アンモニウム塩(NHCl)の生成が活性化する。反応器の内部に生成されるアンモニウム塩(NHCl)は、反応器の腐食を引き起こして耐久性を減少させるだけでなく、差圧の発生、工程効率の低下などの様々な工程的問題を引き起こす。
【0006】
従来、原油のfeedを沸点別に分離した後、精製する技術が行われているが、廃プラスチック熱分解油と原油は、その成分および組成比が相違するため、これを廃プラスチック熱分解油の精製にそのまま適用する場合、不純物の除去効率が低下し、沸点別に分離する工程を別に行うことになり、経済性の面でも非効率的な問題がある。
【0007】
そのため、廃プラスチック熱分解油を沸点別に分離する工程なしに、単一反応器で水素化処理して不純物を効果的に除去することができる廃プラスチック熱分解油の精製装置および精製方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許公開公報第111171865号(公開日:2020年05月19日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、取得した精製油内の塩素(Cl)および窒素(N)の含有量を最小化することができる廃プラスチック熱分解油の精製装置および精製方法を提供することを目的とする。
【0010】
本開示は、取得した精製油内のオレフィンのvol%を最小化することができる廃プラスチック熱分解油の精製装置および精製方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、廃プラスチック熱分解油が流入し、水素化処理される反応器を含み、前記反応器は、Mo含有量が1~15重量%である水素化処理触媒を含む第1領域と、Mo含有量が5~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~50重量%である水素化処理触媒を含む第2領域とを含み、前記廃プラスチック熱分解油は、前記第1領域および第2領域を順に通過して精製される、廃プラスチック熱分解油の精製装置を提供する。
【0012】
本開示の一例において、前記第1領域は、Mo含有量が1~15重量%である水素化処理触媒を含む第1-1領域と、Mo含有量が1~15重量%およびNiまたはCo含有量が0.1~4重量%である水素化処理触媒を含む第1-2領域とを含み、前記廃プラスチック熱分解油は、前記第1-1領域および第1-2領域を順に通過して精製されることができる。
【0013】
本開示の一例において、前記第2領域は、Mo含有量が15~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~30重量%である水素化処理触媒を含む第2-1領域と、Mo含有量が5~15重量%、NiまたはCo含有量が30~50重量%およびW含有量が40~60重量%である水素化処理触媒を含む第2-2領域とを含み、前記第1-2領域から排出された流体は、前記第2-1領域および第2-2領域を順に通過して精製されることができる。
【0014】
本開示の一例において、前記第1-1領域、第1-2領域、第2-1領域および第2-2領域の水素化処理触媒の重量%は、10~30重量%(第1-1領域)、20~40重量%(第1-2領域)、30~50重量%(第2-1領域)および5~15重量%(第2-2領域)であることができる。
【0015】
本開示の一例において、前記第1-1領域、第1-2領域および第2-1領域の水素化処理触媒は、支持体を含む担持触媒であることができる。
【0016】
本開示の一例において、前記第1-1領域の水素化処理触媒は、100~200Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が150~250Åおよび平均気孔容積が0.7~2ml/gであることができる。
【0017】
本開示の一例において、前記第1-2領域の水素化処理触媒は、80~150Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が100~150Åおよび平均気孔容積が0.4~0.8ml/gであることができる。
【0018】
本開示の一例において、前記第2-1領域の水素化処理触媒は、50~100Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が50~100Åおよび平均気孔容積が0.1~0.5ml/gであることができる。
【0019】
本開示の一例において、前記第2-2領域の水素化処理触媒は、平均気孔径が10~50Åおよび平均気孔容積が0.01~0.4ml/gであることができる。
【0020】
本開示の一例において、前記第1-1領域は、廃プラスチック熱分解油内の重質(heavy)炭化水素留分に含まれた不純物を選択的に除去し、前記第1-2領域は、廃プラスチック熱分解油内の中間(middle)炭化水素留分に含まれた不純物を選択的に除去することができる。
【0021】
本開示の一例において、前記第2-1領域は、廃プラスチック熱分解油内の軽質(light)炭化水素留分に含まれた不純物を選択的に除去し、前記第2-2領域は、廃プラスチック熱分解油の不飽和二重結合を選択的に除去することができる。
【0022】
本開示の一例において、前記廃プラスチック熱分解油の精製装置は、ガード床をさらに含み、前記ガード床で廃プラスチック熱分解油が水素化処理された後、前記反応器に前記廃プラスチック熱分解油が流入することができる。
【0023】
本開示の一例において、前記第1領域および第2領域を順に通過して精製された廃プラスチック熱分解油は、全重量に対して、塩素を10ppm以下および窒素を30ppm以下含むことができる。
【0024】
また、本開示は、廃プラスチック熱分解油をMo含有量が1~15重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第1ステップと、前記第1ステップから生成された流体をMo含有量が5~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~50重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第2ステップとを含む、廃プラスチック熱分解油の精製方法を提供する。
【0025】
本開示の一例において、前記第1ステップは、廃プラスチック熱分解油をMo含有量が1~15重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第1-1ステップと、前記第1-1ステップから生成された流体をMo含有量が1~15重量%およびNiまたはCo含有量が0.1~4重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第1-2ステップとを含むことができる。
【0026】
本開示の一例において、前記第2ステップは、前記第1-2ステップから生成された流体を前記Mo含有量が15~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~30重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第2-1ステップと、前記第2-1ステップから生成された流体をMo含有量が5~15重量%、NiまたはCo含有量が30~50重量%およびW含有量が40~60重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第2-2ステップとを含むことができる。
【0027】
本開示の一例において、前記第1-1ステップ、第1-2ステップ、第2-1ステップおよび第2-2ステップの水素化処理触媒の重量%は、10~30重量%(第1-1ステップ)、20~40重量%(第1-2ステップ)、30~50重量%(第2-1ステップ)および5~15重量%(第2-2ステップ)であることができる。
【0028】
本開示の一例において、前記第1-1ステップ、第1-2ステップ、第2-1ステップおよび第2-2ステップの水素化処理触媒は、支持体を含む担持触媒であることができる。
【0029】
本開示の一例において、前記第1-1ステップの水素化処理触媒は、100~200Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が150~250Åおよび平均気孔容積が0.7~2ml/gであることができる。
【0030】
本開示の一例において、前記第1-2ステップの水素化処理触媒は、80~150Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が100~150Åおよび平均気孔容積が0.4~0.8ml/gであることができる。
【0031】
本開示の一例において、前記第2-1ステップの水素化処理触媒は、50~100Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が50~100Åおよび平均気孔容積が0.1~0.5ml/gであることができる。
【0032】
本開示の一例において、前記第2-2ステップの水素化処理触媒は、平均気孔径が10~50Åおよび平均気孔容積が0.01~0.4ml/gであることができる。
【0033】
本開示の一例において、前記第1ステップの前に、水素化処理触媒に硫黄供給源(sulfur source)を供給するステップをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0034】
本開示による廃プラスチック熱分解油の精製装置および精製方法は、取得した精製油内の塩素(Cl)および窒素(N)の含有量を最小化することができる。
【0035】
本開示による廃プラスチック熱分解油の精製装置および精製方法は、取得した精製油内のオレフィンのvol%を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本開示による廃プラスチック熱分解油の精製装置を図示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書に記載されている図面は、当業者に本開示の思想が十分に伝達されるようにするために、例として提供される。したがって、本開示は、提示される図面に限定されず、他の形態に具体化されてもよく、前記図面は、本発明の思想を明確にするために、誇張して図示されることがある。
【0038】
本明細書で使用されている技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付の図面において、本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0039】
本明細書で使用されている用語の単数形態は、特別な指示がない限り、複数形態も含むものと解釈することができる。
【0040】
本明細書で使用されている数値範囲は、下限値と上限値と、その範囲内でのすべての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、二重限定されたすべての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限のすべての可能な組み合わせを含む。本明細書において特別な定義がない限り、実験誤差または値の四捨五入によって発生する可能性がある数値範囲以外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0041】
本明細書で言及される「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」、「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であり、さらに列挙されていない要素、材料または工程を排除しない。
【0042】
本明細書で特別な言及なしに使用されている%の単位は、特に定義がない限り、重量%を意味し、vol%(体積%)の単位は、1atm、25℃でのvol%を意味する。
【0043】
本明細書で特別な言及なしに使用されているppm単位は、特に定義がない限り、質量ppmを意味する。
【0044】
本明細書で特別な言及なしに使用されている沸点(boiling point、bp)は、1atmでの沸点を意味する。
【0045】
本明細書で言及されるMoは、モリブデン金属、Niは、ニッケル金属、Coは、コバルト金属、Wは、タングステン金属を意味する。
【0046】
本明細書で言及される水素化触媒に含まれるMo、NiまたはCo金属成分の重量%は、支持体およびこれに担持された前記金属成分を含む水素化触媒の全重量に対する重量%を意味する。
【0047】
廃プラスチックを熱分解して得られた熱分解油は、一般的な方法で原油から製造される留分に比べて、塩素、窒素、金属など不純物の含有量が高いことから、ガソリン、ディーゼル油などの高付加価値の石油化学製品としてすぐ使用することができず、精製工程を経なければならない。
【0048】
廃プラスチック熱分解油は、様々な沸点および様々な分子量分布を有する炭化水素留分の混合物であり、前記沸点および分子量分布の特性に応じて熱分解油内の不純物の組成や反応活性が変化する。廃プラスチック熱分解油の全体フィードを対象に精製工程を行う場合、廃プラスチック熱分解油内の不純物の含有量が高くて、過剰な運転条件(高温、高圧)で過剰な水素化処理を行うことになり、これによって、アンモニウム塩(NHCl)の生成が活性化する。反応器の内部に生成されるアンモニウム塩(NHCl)は、反応器の腐食を引き起こして、耐久性を減少させるだけでなく、差圧の発生、工程効率の低下などの様々な工程的問題を引き起こす。
【0049】
したがって、本開示は、廃プラスチック熱分解油が流入して水素化処理される反応器を含み、前記反応器は、Mo含有量が1~15重量%である水素化処理触媒を含む第1領域と、Mo含有量が5~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~50重量%である水素化処理触媒を含む第2領域とを含み、前記廃プラスチック熱分解油は、前記第1領域および第2領域を順に通過して精製される、廃プラスチック熱分解油の精製装置を提供する。
【0050】
前記廃プラスチック熱分解油は、廃プラスチックを熱分解して生成された炭化水素留分混合物であることができ、ここで、廃プラスチックは、廃合成樹脂、廃合成繊維、廃合成ゴム、廃ビニルなど、合成高分子化合物と関連した固相または液相のゴミを含むことができる。
【0051】
前記廃プラスチック熱分解油は、例えば、1気圧で、沸点が150℃未満である第1留分1~40重量%以下、沸点が150℃以上および265℃未満である第2留分1~50重量%、沸点が265℃以上および340℃未満である第3留分1~50重量%および沸点が340℃以上である第4留分1~70重量%を含む炭化水素留分であることができる。具体的には、1気圧で、沸点が150℃未満である第1留分5~30重量%、沸点が150℃以上および265℃未満である第2留分15~40重量%、沸点が265℃以上および340℃未満である第3留分25~30重量%および沸点が340℃以上である第4留分20~60重量%を含む炭化水素留分混合物であることができる。
【0052】
前記炭化水素留分混合物は、炭化水素留分の他に、塩素化合物、窒素化合物、金属化合物などの不純物を含むことができ、炭化水素内に塩素、窒素または金属が結合した化合物形態の不純物を含むことができ、オレフィン形態の炭化水素を含むことができる。前記廃プラスチック熱分解油は、全重量に対して、塩素10ppm以上および窒素200ppm以上を含むことができる。また、オレフィン20vol%(1atm、25℃基準)以上、共役ジオレフィン(Conjugated diolefin)1vol%(1atm、25℃基準)以上を含むことができる。しかし、前記不純物の含有量は、廃プラスチック熱分解油に含まれ得る例示であって、廃プラスチック熱分解油の組成は、必ずしもこれに限定されない。
【0053】
前記反応器は、Mo含有量が1~15重量%である水素化処理触媒を含む第1領域と、Mo含有量が5~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~50重量%である水素化処理触媒を含む第2領域とを含み、前記廃プラスチック熱分解油は、前記第1領域および第2領域を順に通過して精製されることができる。前記廃プラスチック熱分解油が相違する組成の水素化処理触媒をそれぞれ備えた2つの領域を順に通過することにより、炭化水素留分混合物の分子量分布の特性によって不純物を効果的に除去することができる。
【0054】
本開示の一例において、前記第1領域は、Mo含有量が1~15重量%である水素化処理触媒を含む第1-1領域と、Mo含有量が1~15重量%およびNiまたはCo含有量が0.1~4重量%である水素化処理触媒を含む第1-2領域とを含み、前記廃プラスチック熱分解油は、前記第1-1領域および第1-2領域を順に通過して精製されることができる。具体的には、前記第1-1領域は、Mo含有量が5~10重量%である水素化処理触媒を含むことができ、前記1-2領域は、Mo含有量が5~10重量%およびNiまたはCo含有量が1~3重量%である水素化処理触媒を含むことができる。
【0055】
前記第1領域が第1-1領域および第1-2領域を含む場合、炭化水素留分混合物の分子量分布の特性によって不純物をより効果的に除去することができ、特に、第1-1領域では、重質(heavy)炭化水素留分内の不純物を選択的に除去することができ、第1-2領域では、中間(middle)炭化水素留分内の不純物を選択的に除去することができる。前記重質(heavy)炭化水素留分は、廃プラスチック熱分解油内の沸点340℃以上の炭化水素留分を含むことができ、前記中間(middle)炭化水素留分は、沸点150~265℃の炭化水素留分を含むことができるが、これは一例として提示されているものであって、本開示がこれに限定して解釈されるものではない。
【0056】
本開示の一例において、前記第2領域は、Mo含有量が15~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~30重量%である水素化処理触媒を含む第2-1領域と、Mo含有量が5~15重量%、NiまたはCo含有量が30~50重量%およびW含有量が40~60重量%である水素化処理触媒を含む第2-2領域とを含み、前記第1-2領域から排出された流体は、前記第2-1領域および第2-2領域を順に通過して精製されることができる。具体的には、前記第2-1領域は、Mo含有量が20~30重量%およびNiまたはCo含有量が10~20重量%である水素化触媒を含むことができ、前記第2-2領域は、Mo含有量が7~13重量%、NiまたはCo含有量が35~45重量%およびW含有量が45~55重量%である水素化触媒を含むことができる。
【0057】
前記第2領域が第2-1領域および第2-2領域を含む場合、炭化水素留分混合物の分子量分布の特性によって不純物をより効果的に除去することができ、特に、第2-1領域では、軽質(light)炭化水素留分内の不純物を選択的に除去することができ、第2-2領域では、廃プラスチック熱分解油内の不飽和二重結合を選択的に除去することができる。前記軽質(light)炭化水素留分は、廃プラスチック熱分解油内の沸点80~150℃の炭化水素留分を含むことができ、前記不飽和二重結合は、廃プラスチック熱分解油内に存在するオレフィンなどを含むことができるが、これは、一例として提示されているものであって、必ずしもこれに限定して解釈されるものではない。
【0058】
前記第1領域と第2領域の水素化処理触媒の重量比は、100:50~150、具体的には100:70~130であることができる。また、前記1-1領域と1-2領域の水素化処理触媒の重量比は、100:70~200、具体的には100:100~150であることができ、第2-1領域と第2-2領域の水素化処理触媒の重量比は、100:10~60、具体的には100:20~40であることができる。上述の重量比を満たす場合、前記各領域で、炭化水素留分混合物の分子量分布の特性による選択的不純物の除去効果を最適化することができる
【0059】
本開示の一例において、前記第1-1領域、第1-2領域、第2-1領域および第2-2領域の水素化処理触媒の重量%は、10~30重量%(第1-1領域)、20~40重量%(第1-2領域)、30~50重量%(第2-1領域)および5~15重量%(第2-2領域)であることができる。上述の範囲を満たす場合、前記各領域で、炭化水素留分混合物の分子量分布の特性による選択的不純物の除去効果を最適化することができる。具体的には、前記各領域の順に、15~25重量%、15~35重量%、35~55重量%および7~13重量%であることができ、より具体的には17~23重量%、17~33重量%、37~53重量%および9~11重量%であることができ、前記各領域の水素化処理触媒の重量%の総和が100重量%を満たすように使用されることができる。
【0060】
本開示の一例において、第1-1領域、第1-2領域および第2-1領域の水素化処理触媒は、支持体を含む担持触媒であることができる。前記支持体は、活性金属を担持することができる耐久性を有するものであればよく、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコン、ナトリウムおよびマンガンチタンなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む金属;前記金属の酸化物;およびカーボンブラック、活性炭素、グラフェン、カーボンナノチューブおよび黒鉛などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む炭素系素材;などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。一方、前記2-2領域の水素化処理触媒は、支持体を含まない無担持触媒であることができる。この場合、担持触媒に比べて、同一触媒体積当たり高いオレフィンの除去効率を期待することができ、運転温度領域が相対的に広く、高い触媒寿命を期待することができる。
【0061】
本開示の一例において、前記第1-1領域の水素化処理触媒は、100~200Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が150~250Åおよび平均気孔容積が0.7~2ml/gであることができる。上述の気孔特性を満たす場合、分子量分布の特性によって不純物を効果的に除去することができ、特に、重質(heavy)炭化水素留分内の不純物を選択的に除去する効果を向上させることができる。具体的には、120~180Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含むことができ、平均気孔径が170~230Åおよび平均気孔容積が1~1.5ml/gであることができる。
【0062】
本開示の一例において、前記第1-2領域の水素化処理触媒は、80~150Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が100~150Åおよび平均気孔容積が0.4~0.8ml/gであることができる。上述の気孔特性を満たす場合、分子量分布の特性によって不純物を効果的に除去することができ、特に、中間(middle)炭化水素留分内の不純物を選択的に除去する効果を向上させることができる。具体的には100~130Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含むことができ、平均気孔径が110~140Åおよび平均気孔容積が0.5~0.7ml/gであることができる。
【0063】
本開示の一例において、前記第2-1領域の水素化処理触媒は、50~100Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が50~100Åおよび平均気孔容積が0.1~0.5ml/gであることができる。上述の気孔特性を満たす場合、分子量分布の特性によって不純物を効果的に除去することができ、特に、軽質(light)炭化水素留分内の不純物を選択的に除去する効果を向上させることができる。具体的には60~90Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が60~90Åおよび平均気孔容積が0.2~0.4ml/gであることができる。
【0064】
本開示の一例において、前記第2-2領域の水素化処理触媒は、平均気孔径が10~50Åおよび平均気孔容積が0.01~0.4ml/gであることができる。気孔構造をほとんど含まない上述の気孔特性を満たす場合、廃プラスチック熱分解油内の不飽和二重結合を選択的に除去する効果を向上させることができ、運転温度領域が相対的に広く、高い触媒寿命を期待することができる。具体的には、平均気孔径が20~40Åおよび平均気孔容積が0.1~0.2ml/gであることができる。
【0065】
前記1-1領域、第1-2領域、第2-1領域および第2-2領域を含む反応器内に廃プラスチック熱分解油および水素ガスが流入し、前記廃プラスチック熱分解油が前記領域を順に通過しながら水素化処理されて不純物が除去される。前記反応器の水素化処理時の温度条件は、250~400℃であることができる。具体的には280℃~370℃、より具体的には300℃~350℃であることができる。前記範囲を満たす場合、水素化処理反応効率が向上することができる。しかし、これは例示であって、必ずしもこれに限定して解釈されるものではない。
【0066】
前記反応器の水素化処理時の反応圧力は、200bar以下であることができる。具体的には、アンモニウム塩(NHCl)の生成をさらに抑制することができる面で、150bar以下、非制限的には50以上150bar以下で行うことができる。しかし、これは例示であって、必ずしもこれに限定して解釈されるものではない。
【0067】
前記反応器の水素化処理時の液空間速度(LHSV)は、0.1~10h-1であることができる。LHSVが前記の範囲を満たす場合、塩素、窒素または金属などの不純物が除去された精製油がより安定的に得られる効果がある。具体的には0.5~9h-1、より具体的には1~7h-1であることができる。しかし、これは、例示であって、必ずしもこれに限定して解釈されるものではない。
【0068】
前記反応器に流入する廃プラスチック熱分解油と水素ガスの供給流量比は、水素化処理が行われることができる程度であればよく、例えば、1気圧基準体積流量比が1:300~3,000、具体的には1:500~2、500であることができる。しかし、これは例示であって、必ずしもこれに限定して解釈されるものではない。
【0069】
本開示の一例において、前記第1-1領域は、廃プラスチック熱分解油内の重質(heavy)炭化水素留分に含まれた不純物を選択的に除去し、前記第1-2領域は、廃プラスチック熱分解油内の中間(middle)炭化水素留分に含まれた不純物を選択的に除去することができる。上述のように、前記第1-1領域は、Mo含有量が1~15重量%、100~200Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が150~250Åおよび平均気孔容積が0.7~2ml/gである支持体に担持された水素化触媒を含むことにより、廃プラスチック熱分解油内の重質(heavy)炭化水素留分に含まれた不純物を選択的に除去することができる。前記第1-2領域は、Mo含有量が1~15重量%およびNiまたはCo含有量が0.1~4重量%、80~150Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が100~150Åおよび平均気孔容積が0.4~0.8ml/gである支持体に担持された水素化触媒を含むことにより、廃プラスチック熱分解油内の中間(middle)炭化水素留分に含まれた不純物を選択的に除去することができる
【0070】
本開示の一例において、前記第2-1領域は、廃プラスチック熱分解油内の軽質(light)炭化水素留分に含まれた不純物を選択的に除去し、前記第2-2領域は、廃プラスチック熱分解油の不飽和二重結合を選択的に除去することができる。上述のように、前記第2-1領域は、Mo含有量が15~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~30重量%、50~100Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が50~100Åおよび平均気孔容積が0.1~0.5ml/gである支持体に担持された水素化触媒を含むことにより、廃プラスチック熱分解油内の軽質(light)炭化水素留分に含まれた不純物を選択的に除去することができる。前記第2-2領域は、Mo含有量が5~15重量%、NiまたはCo含有量が30~50重量%およびW含有量が40~60重量%、平均気孔径が10~50Åおよび平均気孔容積が0.01~0.4ml/gである支持体に気孔構造がほとんどなく、支持体に担持されていない無担持水素化触媒を含むことにより、廃プラスチック熱分解油の不飽和二重結合を選択的に除去することができる。
【0071】
本開示の一例において、前記廃プラスチック熱分解油の精製装置は、ガード床をさらに含み、前記ガード床で廃プラスチック熱分解油が水素化処理された後、前記反応器に前記廃プラスチック熱分解油が流入することができる。前記ガード床で廃プラスチック熱分解油を水素化処理した後、反応器に導入することにより、精製工程の安定性を向上させることができる。前記ガード床は、水素化処理触媒を含み、前記ガード床内の水素化処理触媒は、水素化脱硫化触媒、水素化脱窒素化触媒、水素化脱塩素化触媒および水素化脱金属化触媒などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。このような触媒は、脱金属化反応が行われるとともに、上述の温度などの条件に応じて脱窒素化反応または脱塩素化反応が行われるようにする。より具体的には、前記水素化処理触媒能を有する活性金属を含むことができ、好ましくは、支持体に活性金属が担持されたものであり得る。前記ガード床の温度、圧力など反応条件は、上述の反応器の反応条件を参照すれば良い。
【0072】
本開示の一例において、前記第1領域および第2領域を順に通過して精製された廃プラスチック熱分解油は、全重量に対して、塩素10ppm以下および窒素30ppm以下を含むことができる。具体的には、塩素5ppm以下および窒素20ppm以下を含むことができる。上述のように、廃プラスチック熱分解油は、様々な沸点および様々な分子量分布を有する炭化水素留分の混合物であり、前記第1領域および第2領域、具体的には、第1-1領域、第1-2領域、第2-1領域および第2-2領域を順に通過することで、分子量の特性に応じて不純物を選択的に除去することにより、不純物の除去効率を最適化して取得した精製油内の不純物の含有量を最小化することができる。
【0073】
また、本開示は、廃プラスチック熱分解油をMo含有量が1~15重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第1ステップと、前記第1ステップから生成された流体をMo含有量が5~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~50重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第2ステップとを含む、廃プラスチック熱分解油の精製方法を提供する。
【0074】
上述のように、前記廃プラスチック熱分解油は、様々な沸点および様々な分子量分布を有する炭化水素留分の混合物であり、塩素化合物、窒素化合物、金属化合物などの不純物を含むことができ、炭化水素内に、塩素、窒素または金属が結合した化合物形態の不純物を含むことができ、オレフィン形態の炭化水素を含むことができる。前記廃プラスチック熱分解油を、相違する組成を有する水素化処理触媒下で、第1ステップおよび第2ステップで連続して水素化処理することにより、炭化水素留分混合物の分子量分布の特性によって不純物を効果的に除去することができる。
【0075】
本開示の一例において、前記第1ステップは、廃プラスチック熱分解油をMo含有量が1~15重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第1-1ステップと、前記第1-1ステップから生成された流体をMo含有量が1~15重量%およびNiまたはCo含有量が0.1~4重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第1-2ステップとを含むことができる。前記第1ステップが第1-1ステップおよび第1-2ステップを含む場合、炭化水素留分混合物の分子量分布の特性によって不純物をより効果的に除去することができ、特に、第1-1ステップでは、重質(heavy)炭化水素留分内の不純物を選択的に除去することができ、第1-2ステップでは、中間(middle)炭化水素留分内の不純物を選択的に除去することができる。
【0076】
本開示の一例において、前記第2ステップは、前記第1-2ステップから生成された流体を前記Mo含有量が15~40重量%およびNiまたはCo含有量が4~30重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第2-1ステップと、前記第2-1ステップから生成された流体をMo含有量が5~15重量%、NiまたはCo含有量が30~50重量%およびW含有量が40~60重量%である水素化処理触媒下で水素化処理する第2-2ステップとを含むことができる。前記第2ステップが第2-1ステップおよび第2-2ステップを含む場合、炭化水素留分混合物の分子量分布の特性によって不純物をより効果的に除去することができ、特に、第2-1ステップでは、軽質(light)炭化水素留分内の不純物を選択的に除去することができ、第2-2ステップでは、廃プラスチック熱分解油内の不飽和二重結合を選択的に除去することができる。
【0077】
前記第1ステップと第2ステップの水素化処理触媒の重量比は、100:50~150、具体的には100:70~130であることができる。また、前記1-1ステップと第1-2ステップの水素化処理触媒の重量比は、100:70~200、具体的には100:100~150であることができ、第2-1ステップと第2-2ステップの水素化処理触媒の重量比は、100:10~60、具体的には100:20~40であることができる。上述の重量比を満たす場合、前記各ステップで炭化水素留分混合物の分子量分布の特性による選択的不純物の除去効果を最適化することができる効果がある
【0078】
本開示の一例において、前記第1-1ステップ、第1-2ステップ、第2-1ステップおよび第2-2ステップの水素化処理触媒の重量%は、10~30重量%(第1-1ステップ)、20~40重量%(第1-2ステップ)、30~50重量%(第2-1ステップ)および5~15重量%(第2-2ステップ)であることができる。上述の範囲を満たす場合、前記各ステップで炭化水素留分混合物の分子量分布の特性による選択的不純物の除去効果を最適化することができる。具体的には、前記各ステップの順に、15~25重量%、15~35重量%、35~55重量%および7~13重量%であることができ、より具体的には17~23重量%、17~33重量%、37~53重量%および9~11重量%であることができ、前記各ステップの水素化処理触媒重量%の総和が100重量%を満たすように使用されることができる。
【0079】
本開示の一例において、前記第1-1ステップ、第1-2ステップ、第2-1ステップおよび第2-2ステップの水素化処理触媒は、支持体を含む担持触媒であることができる。前記支持体は、活性金属を担持することができる耐久性を有するものであればよく、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコン、ナトリウムおよびマンガンチタンなどから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む金属;前記金属の酸化物;およびカーボンブラック、活性炭素、グラフェン、カーボンナノチューブおよび黒鉛などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む炭素系素材;などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含むことができる。一方、前記2-2ステップの水素化処理触媒は、支持体を含まない無担持触媒であることができる。この場合、担持触媒に比べて、同一触媒体積当たり高いオレフィン除去効率を期待することができ、運転温度領域が相対的に広く、高い触媒寿命を期待することができる。
【0080】
本開示の一例において、前記第1-1ステップの水素化処理触媒は、100~200Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が150~250Åおよび平均気孔容積が0.7~2ml/gであることができる。上述の気孔の特性を満たす場合、分子量分布の特性によって不純物を効果的に除去することができ、特に、重質(heavy)炭化水素留分内の不純物を選択的に除去する効果を向上させることができる。具体的には120~180Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含むことができ、平均気孔径が170~230Åおよび平均気孔容積が1~1.5ml/gであることができる。
【0081】
本開示の一例において、前記第1-2ステップの水素化処理触媒は、80~150Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が100~150Åおよび平均気孔容積が0.4~0.8ml/gであることができる。上述の気孔の特性を満たす場合、分子量分布の特性によって不純物を効果的に除去することができ、特に、中間(middle)炭化水素留分内の不純物を選択的に除去する効果を向上させることができる。具体的には100~130Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含むことができ、平均気孔径が110~140Åおよび平均気孔容積が0.5~0.7ml/gであることができる。
【0082】
本開示の一例において、前記第2-1ステップの水素化処理触媒は、50~100Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が50~100Åおよび平均気孔容積が0.1~0.5ml/gであることができる。上述の気孔の特性を満たす場合、分子量分布の特性によって不純物を効果的に除去することができ、特に、軽質(light)炭化水素留分内の不純物を選択的に除去する効果を向上させることができる。具体的には60~90Åの気孔径を有する気孔の比率が50%以上であるメソポアを含み、平均気孔径が60~90Åおよび平均気孔容積が0.2~0.4ml/gであることができる。
【0083】
本開示の一例において、前記第2-2ステップの水素化処理触媒は、平均気孔径が10~50Åおよび平均気孔容積が0.01~0.4ml/gであることができる。気孔構造をほとんど含まない上述の気孔の特性を満たす場合、廃プラスチック熱分解油内の不飽和二重結合を選択的に除去する効果を向上させることができ、運転温度領域が相対的に広く、高い触媒寿命を期待することができる。具体的には、平均気孔径が20~40Åおよび平均気孔容積が0.1~0.2ml/gであることができる。
【0084】
本開示の一例において、前記第1ステップの前に、水素化処理触媒に硫黄供給源(sulfur source)を供給するステップをさらに含むことができる。前記硫黄供給源(sulfur source)は、精製工程中に硫黄成分を供給し続けることができるsulfur sourceを意味する。前記水素化処理触媒に硫黄供給源(sulfur source)を供給することにより、精製工程中に硫黄供給源の不足および高温運転による水素化触媒の不活性化を抑制し、触媒活性を維持することができる効果がある。
【0085】
前記硫黄供給源(sulfur source)は、硫黄含有石油系留分、硫黄含有有機化合物を含むことができる。前記硫黄含有石油系留分は、原油を原料として得られた硫黄を含有する炭化水素で構成された留分を意味する。硫黄を含有する留分であれば、特に制限されず、例えば、軽質ガスオイル、直留ナフサ、減圧ナフサ、熱分解ナフサ、直留灯油、減圧灯油、熱分解灯油、直留軽油、減圧軽油、熱分解軽油などや、これらの任意の混合物が挙げられる。前記硫黄含有有機化合物は、ジスルフィド系化合物、スルフィド系化合物、スルホネート系化合物およびサルフェート系化合物から選択される一つまたは二つ以上の硫黄含有有機化合物を含むことができる。これは、一例として提示されているものであって、本開示がこれに限定して解釈されるものではない。
【0086】
前記硫黄供給源(sulfur source)は、硫黄を1重量%以上含むことができる。硫黄成分が1重量%以下含まれると、供給される硫黄成分の含有量が少なくて、モリブデン系水素化触媒の不活性化を防止する効果が微小であり得る。具体的には、硫黄成分は、5重量%以上含むことができ、より具体的には10重量%以上含むことができ、非限定的には20重量%以下含むことができる。
【0087】
前記廃プラスチック熱分解油の精製方法においてさらに説明されていない事項は、上述の廃プラスチック熱分解油の精製装置に述べられた内容を参照すれば良い。
【0088】
以下、本開示を実施例を参照して詳細に説明するが、これらは、より詳細に説明するためのものであって、権利範囲が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0089】
実施例1
廃プラスチックを熱分解して、窒素(N)420ppm、塩素(Cl)132ppm、オレフィン18vol%、共役ジオレフィン(Conjugated diolefin)2.3重量%の高濃度の不純物を含有する廃プラスチック熱分解油を取得し、これを原料(feed)として使用した。
【0090】
図1に図示されているように、反応器内の第1-1領域、第1-2領域、第2-1領域および2-2領域が備えられた装置を設計した。前記各領域に含まれた水素化触媒の特性は、下記表1のとおりである。
【0091】
【表1】
【0092】
前記反応器内に、廃プラスチック熱分解油および水素ガスを投入した。前記廃プラスチック熱分解油を350℃、160bar、H/Oil ratio 840およびLHSV0.4h-1の条件で、前記領域を順に通過させて水素化処理した。最終的に、不純物が精製された廃プラスチック熱分解油を取得した。
【0093】
実施例2
実施例1で、300℃、130barの条件で反応を行った以外は、実施例1と同じ条件で反応を行って、不純物が精製された廃プラスチック熱分解油を取得した。
【0094】
実施例3
実施例1で、水素化触媒の重量(g)を、第1-1領域15g、第1-2領域25g、第2-1領域45g、第2-2領域15gに変更して反応を行った以外は、実施例1と同じ条件で反応を行って、不純物が精製された廃プラスチック熱分解油を取得した。
【0095】
実施例4
実施例1で、水素化触媒の組成比を下記表2のように変更して行った以外は、実施例1と同じ条件で反応を行って、不純物が精製された廃プラスチック熱分解油を取得した。
【0096】
【表2】
【0097】
比較例1
実施例1で、第1-1領域に第1-2領域の水素化触媒を適用して総50g使用した以外は、実施例1と同じ条件で反応を行って、不純物が精製された廃プラスチック熱分解油を取得した。
【0098】
比較例2
実施例1で、第1-2領域に第1-1領域の水素化触媒を適用して総50g使用した以外は、実施例1と同じ条件で反応を行って、不純物が精製された廃プラスチック熱分解油を取得した。
【0099】
比較例3
実施例1で、第2-1領域に第2-2領域の水素化触媒を適用して総50g使用した以外は、実施例1と同じ条件で反応を行って、不純物が精製された廃プラスチック熱分解油を取得した。
【0100】
比較例4
実施例1で、第2-2領域に第2-1領域の水素化触媒を適用して総50g使用した以外は、実施例1と同じ条件で反応を行って、不純物が精製された廃プラスチック熱分解油を取得した。
【0101】
比較例5
実施例1で、精製装置を、第1-1領域、第1-2領域、第2-2領域および第2-1領域の順に設計した以外は、実施例1と同じ条件で反応を行って、不純物が精製された廃プラスチック熱分解油を取得した。
【0102】
前記実施例1~4および比較例1~5の反応条件を下記表3にまとめて示した。
【0103】
【表3】
【0104】
評価例
測定方法
最終的に精製された廃プラスチック熱分解油内の塩素(Cl)含有量(ppm)と窒素(N)含有量(ppm)をICP、XRF分析法により測定した。
【0105】
最終的に精製された廃プラスチック熱分解油内のオレフィンvol%をBromine index分析法により測定した。
【0106】
塩素(Cl)および窒素(N)の含有量
実施例1~4および比較例1~3の塩素(Cl)および窒素(N)含有量に対する分析結果を下記表4に示した。
【0107】
【表4】
【0108】
実施例1~4の場合、最終的に精製された廃プラスチック熱分解油内の塩素(Cl)と窒素(N)含有量が最小化したことを確認することができ、特に、塩素(Cl)の場合、数ppm水準に除去されたことを確認することができる。
【0109】
一方、比較例1および比較例2の場合、塩素(Cl)含有量が8ppm以上と測定され、充分に除去されていないことを確認することができる。これは、反応器の第1領域で、廃プラスチック熱分解油が、1-1領域または1-2領域から選択される1個の領域でのみ精製されて、不純物の除去効率が減少したものと考えられる。
【0110】
特に、比較例3は、塩素(Cl)および窒素(N)の含有量がいずれも高く測定されているが、これは、反応器の第2領域で、廃プラスチック熱分解油が2-2領域でのみ精製されて、不純物の除去効率が減少したものと考えられる。
【0111】
オレフィンvol%
実施例1~3および比較例4~5のオレフィンvol%に対する分析結果を下記表5に示した。
【0112】
【表5】
【0113】
実施例1~3の場合、最終的に精製された廃プラスチック熱分解油内のオレフィンvol%が最小化したことを確認することができる。
【0114】
一方、比較例4の場合、廃プラスチック熱分解油からオレフィン0.1vol%が測定された。これは、反応器の第2領域で、廃プラスチック熱分解油が2-1領域でのみ精製されることからオレフィンの除去効率が減少したものと考えられる。
【0115】
また、比較例5の場合にも、オレフィン0.1vol%が測定されているが、これは、廃プラスチック熱分解油が、2-1領域および2-2領域を順に通過して精製されるものではなく、2-2領域および2-1領域の順に精製されて、オレフィンの除去効率が減少したものと考えられる。
【0116】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態に製造されてもよく、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更しなくても、他の具体的な形態で実施され得ることを理解することができる。そのため、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであって、限定的ではないことを理解すべきである。
図1
【国際調査報告】