(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】CLEC-1リガンドの同定及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20241108BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241108BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20241108BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241108BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20241108BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241108BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20241108BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20241108BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20241108BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
A61K45/00
C07K16/28 ZNA
C07K14/705
C07K19/00
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K38/17
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K39/395 Y
A61P43/00 107
A61P43/00 121
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C12N15/12
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024527215
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2022081332
(87)【国際公開番号】W WO2023083890
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517118478
【氏名又は名称】オーエスイー・イミュノセラピューティクス
(71)【出願人】
【識別番号】507421289
【氏名又は名称】ナント・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】NANTES UNIVERSITE
(71)【出願人】
【識別番号】507241492
【氏名又は名称】アンスティトゥート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシャルシュ・メディカル・(インセルム)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネッサ・ゴーティエ
(72)【発明者】
【氏名】カロリーヌ・マリー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ポワリエ
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル・ウィレルム
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルディーヌ・テパッツ
(72)【発明者】
【氏名】エリゼ・シフォロー
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA40
4C084AA02
4C084AA17
4C084AA19
4C084BA04
4C084BA41
4C084BA44
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4C084MA17
4C084MA44
4C084MA66
4C084NA14
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4C085CC23
4C085DD62
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4C085EE03
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、CLEC-1/TRIM21相互作用によって誘導されるシグナル伝達経路を減少させる化合物、特に相互作用、特にCLEC-1とTRIM21との間の結合に拮抗する化合物の、使用、CLEC-1を発現する細胞と相互作用する疑いのある細胞の同定における、患者における処置を設計するための、同定されたリガンドTRIM21の使用、並びに治療におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を患っているヒト対象の処置における使用のための、CLEC-1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である、化合物。
【請求項2】
CLEC-1、特にヒトCLEC-1に結合するか、又はCLEC-1、特にヒトCLEC-1の機能的同等物であるポリペプチドである、請求項1に規定の使用のための、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
CLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路を阻害し、CLEC1、特にヒトCLEC-1に結合するか、又は機能性CLEC1の発現を減少させるか、又はCLEC1の機能的同等物であるポリペプチドである、請求項1又は2に規定の使用のための、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
CLEC-1、特にヒトCLEC-1、より具体的にはヒトCLEC-1の細胞外ドメインに結合し、抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスである、請求項2又は3に規定の使用のための、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
キメラ抗体、ヒト化抗体、組換え抗体、完全ヒト化抗体、モノクローナル抗体、脱免疫化抗体、特にヒト化モノクローナル抗体である、請求項4に規定の使用のための、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
配列番号10の重鎖可変ドメイン及び配列番号11の軽鎖可変ドメインを有する抗CLEC-1A抗体と、CLEC-1、特にヒトCLEC-1への結合について競合する、請求項4又は5に規定の使用のための、請求項4又は5に記載の化合物。
【請求項7】
ヒトCLEC-1の機能的同等物であるポリペプチドであり、特に前記ポリペプチドは免疫グロブリン定常ドメインに融合している、請求項2又は3に規定の使用のための、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項8】
骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力を増大させ、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる、TRIM21陽性細胞、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増大させ、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増大させる、請求項1から7のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
TRIM21陽性腫瘍細胞の食作用を増大させることによる、請求項1から8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
具体的には対象、特に、癌、特にTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌、慢性感染症、敗血症を患っているか、又は感染症、特にコクサッキーウイルス若しくは脳炎ウイルス、より具体的にはコクサッキーウイルスB3若しくは日本脳炎ウイルスによる感染症を患っているか、又は心血管疾患、自己免疫疾患、特にシェーグレン症候群若しくは全身性エリテマトーデス若しくは全身性硬化症を患っているか、又は炎症性疾患を患っているヒト対象の処置における、医薬としての使用のための、C型レクチン様受容体1(CLEC-1)/三要素モチーフ含有タンパク質21(TRIM21)シグナル伝達経路を阻害する化合物であって、前記化合物はTRIM21に結合するか、又はCLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路に関与する細胞内分子に結合するか、又は機能性TRIM21の発現を減少させるか、又はTRIM21の機能的同等物、特に、TRIM21、より具体的にはヒトTRIM21に結合する、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬である化合物である、化合物。
【請求項11】
骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力を増大させ、特に、樹状細胞及び/マクロファージによるTRIM21陽性腫瘍細胞の食作用を増大させ、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる、腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又はTRIM21陽性二次壊死細胞の食作用を増大させる、請求項10に規定の使用のための、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
対象が、液性癌又は固形癌、より具体的にはリンパ腫、白血球、大腸癌、中皮腫又は肝細胞癌を患っている、請求項10又は11に規定の使用のための、請求項10又は11に記載の化合物。
【請求項13】
対象が、TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を患っている、請求項10から12のいずれか一項に規定の使用のための、請求項10から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
抗体、その抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクス、又はTRIM21の機能的同等物であるペプチド若しくはポリペプチド、TRIM21の発現を減少させる核酸分子、特にオリゴヌクレオチド分子、より具体的にはRNA分子、siRNA分子若しくはmiRNA分子である、請求項10から13のいずれか一項に規定の使用のための、請求項10から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
ヒトTRIM21の機能的同等物であるポリペプチドであり、特に前記ポリペプチが免疫グロブリン定常ドメインに融合している、請求項14に規定の使用のための、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
ヒトTRIM21に結合する、ヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である、請求項10から14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項10から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
TRIM21のコイルドコイルドメイン、特に配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基128と238との間に局在するコイルドコイルドメイン内に局在するエピトープ配列に結合及び/又はTRIM21のPRY-SPRYドメイン、特に配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基268と465との間に局在するPRY-SPRYドメイン内に局在するエピトープ配列に結合する、請求項14又は16に規定の使用のための、請求項14又は16に記載の化合物。
【請求項18】
キメラ抗体、ヒト化抗体、組換え抗体、完全ヒト化抗体、モノクローナル抗体、脱免疫化抗体、特にヒト化モノクローナル抗体である、請求項14、16又は17のいずれか一項に規定の使用のための、請求項14、16又は17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
TRIM21に結合してCLEC1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合に拮抗する、抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスである、請求項10から13のいずれか一項に規定の使用のための、請求項10から13のいずれか一項に記載の化合物であって、前記抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスが、抗TRIM21抗体sc-25351、PA5-22294、PA5-18147及びMAB-62191からなるリストの中から選択される少なくとも1つの競合抗体と、TRIM21への結合について、特にTRIM21のコイルドコイルドメイン、特に配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基128と238との間に局在するコイルドコイルドメイン内に局在する連続するアミノ酸残基への結合について、及び/又はTRIM21のPRYSPRYドメイン、特に配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基268と465との間に局在するPRYSPRYドメイン内に局在する連続するアミノ酸残基への結合について競合し、前記抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスが、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力を増強し、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによるTRIM21陽性細胞、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増大させ、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増大させる、化合物。
【請求項20】
TRIM21陽性細胞の食作用を増大させることによる、請求項10から19のいずれか一項に規定の使用のための、請求項10から19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
第1の治療剤と、少なくとも1つの更なる治療剤を含む、化合物の組合せであって、
i)第1の治療剤が、請求項1から20のいずれか一項に規定の化合物であり、
ii)更なる治療剤の少なくとも1つが、腫瘍標的化抗体若しくはその抗原結合断片、特に腫瘍標的化モノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片、骨髄系細胞、特にマクロファージによる、腫瘍細胞の食作用を活性化及び/若しくは増強する腫瘍標的化モノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片、又はより具体的にはアレムツズマブ、アテゾリズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ハーセプチン、パニツムマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、抗PDL-1抗体及び抗CD47抗体からなる群から選択されるモノクローナル抗体、並びに/又は抗PD1抗体及び抗SIRP抗体からなる群から選択される別の抗体若しくはモノクローナル抗体、並びに/又は化学療法薬、特に抗増殖性、アポトーシス促進性、細胞周期停止、及び/若しくは分化誘導効果を有する細胞傷害性薬物、より具体的には細胞傷害性抗体、アルキル化薬、アントラサイクリン、代謝拮抗剤、微小管阻害薬剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アルカロイド、ブレオマイシン、抗悪性腫瘍薬、シクロホスファミドからなる群から選択される細胞傷害性薬物からなるリストから選択される、化合物の組合せ。
【請求項22】
第1の治療剤が、TRIM21に結合する、抗体、その抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクス、又はTRIM21、特にヒトTRIM21の機能的同等物であるペプチド若しくはポリペプチド、又はTRIM21の発現を減少させる核酸分子、特にオリゴヌクレオチド分子、より具体的にはRNA分子、siRNA分子若しくはmiRNA分子からなる群から選択される、請求項21に記載の化合物の組合せ。
【請求項23】
第1の治療剤が、CLEC-に結合する、抗体、その抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクス、又はCLEC-1、特にヒトCLEC-1の機能的同等物であるペプチド若しくはポリペプチド、又はCLEC-1の発現を減少させる核酸分子、特にオリゴヌクレオチド分子、より具体的にはRNA分子、siRNA分子若しくはmiRNA分子からなる群から選択される、請求項21に記載の化合物の組合せ。
【請求項24】
第1の治療剤が、CLEC-1に結合し、配列番号10の重鎖可変ドメイン及び配列番号11の軽鎖可変ドメインを有する抗CLEC-1A抗体と、CLEC-1、特にヒトCLEC-1への結合について競合する、抗体、その抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクスからなる群から選択される、請求項23に記載の化合物の組合せ。
【請求項25】
第1の治療剤が、CLEC-1の機能的同等物であるポリペプチドであり、特に前記ポリペプチドは免疫グロブリン定常ドメインに融合している、請求項23に記載の化合物の組合せ。
【請求項26】
特に、癌、特にTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌、慢性感染症、敗血症、感染症、特にコクサッキーウイルス又は脳炎ウイルス、より具体的にはコクサッキーウイルスB3又は日本脳炎ウイルスによる感染症、心血管疾患、自己免疫疾患、特にシェーグレン症候群又は全身性エリテマトーデス又は全身性硬化症、炎症性疾患を有する患者の処置における、医薬としての、同時使用、別々の使用又は連続的使用のための、請求項21から25のいずれか一項に記載の化合物の組合せ。
【請求項27】
C型レクチン様受容体1(CLEC-1)/三要素モチーフ含有タンパク質21(TRIM21)シグナル伝達経路を調節する化合物、特に増強するか、又は減少させる化合物、より具体的には阻害する化合物、特にCLEC-1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である化合物を選択するための方法であって、前記方法が、
a)少なくとも1つの化合物を提供し、それ(それら)がCLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路に干渉する能力、特にCLEC1とTRIM21との間の相互作用に干渉する能力、より具体的にはCLEC-1とTRIM21との間の結合に競合又は拮抗する能力を評価する工程であって、特に前記相互作用はCLEC-1と、TRIM21の少なくとも1つのドメインとの間で決定される、工程、
b)前記化合物の存在下で、CLEC1/TRIM21シグナル伝達経路の活性及び/又はCLEC-1とTRIM21との間の結合を測定する工程、
c)化合物が、負の対照と比較して、工程b)で測定されたCLEC1/TRIM21シグナル伝達経路の活性及び/又は結合を増強するか、又は減少させる場合、CLEC1/TRIM21シグナル伝達経路の活性及び/又はCLEC-1とTRIM21との間の結合を調節する化合物を同定し、特にCLEC-1とTRIM21との間の相互作用を増強するか、又は減少させる化合物を同定する、工程
を含む、方法。
【請求項28】
TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を処置するのに有用な化合物を選択するための方法であって、請求項27に記載の方法を行う工程を含み、CLEC1/TRIM21シグナル伝達経路の活性及び/又はCLEC-1とTRIM21との間の結合を減少させる化合物が選択される、方法。
【請求項29】
疾患、特に癌、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を有する患者を、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬である、CLEC-1又はTRIM21に結合する化合物で処置することが、有効である見込みがあるか否かを評価するためのインビトロ試験におけるバイオマーカーとしての、TRIM21、特にヒトTRIM21の使用。
【請求項30】
疾患、特に癌を有する患者を、抗TRIM21、特に抗ヒトTRIM21化合物、抗CLEC-1、特に抗ヒトCLEC-1化合物、又はTRIM21、特にヒトTRIM21の機能的同等物若しくはCLEC-1、特にヒトCLEC-1の機能的同等物で処置することが、有効である見込みがあるか否かを決定するための、インビトロ又はエクスビボの方法であって、前記方法が、患者から予め得られた生体試料中のTRIM21の発現を検出する工程を含み、生体試料内に存在する細胞、特に腫瘍細胞の表面上及び/又はサイトゾル内でTRIM21が検出される場合、処置の有効性の見込みがある、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CLEC-1タンパク質のリガンド、特にTRIM21の同定の結果として生じる。本発明は、CLEC-1/TRIM21相互作用によって誘導されるシグナル伝達経路を減少させる化合物、特に相互作用、特にCLEC-1とTRIM21との間の結合に拮抗する化合物の、使用、CLEC-1を発現する細胞と相互作用する疑いのある細胞の同定における、患者における処置を設計するための、同定されたリガンドTRIM21の使用、並びに治療におけるそれらの使用に関する。
【0002】
本発明はまた、CLEC-1とTRIM21との間の相互作用の検出を可能にしてCLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路に対する化合物の拮抗薬としての能力(antagonist capability)を評価するか、又はCLEC-1若しくはTRIM21に結合することができる化合物、特にCLEC-1とTRIM21との間の結合に競合することができる化合物をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
癌の処置における問題の1つは、健康な組織に損傷を与えることなく腫瘍細胞を破壊することである。近年では、癌の処置における主な問題は、健康な組織に損傷を与えることなく腫瘍細胞を標的化することである。抗腫瘍免疫療法は、患者の免疫系をリダイレクトして癌細胞を破壊するので、過去10年間でますます関心を得ている。腫瘍細胞は免疫チェックポイントを利用して免疫防御を免れることが明らかに示されている。抗腫瘍免疫の妨害におけるこれらの阻害チェックポイントの重要な役割は、抗体によって駆動されるT細胞免疫チェックポイントの遮断の著しい成功によって説明されている。しかしながら、有意な割合の患者は、一般に典型的な化学療法の失敗の後に、これらのチェックポイント阻害剤(CKI)療法に応答しないか、又はそれらに対する抵抗性を生じる。これらの患者には、有効な新しい処置が必要であり、骨髄系細胞は、見込みのある治療標的の代表である。実際、骨髄系細胞は、最も豊富な腫瘍浸潤性免疫細胞である。免疫細胞上で発現されるC型レクチン(CLEC)は、環境のセンサー及び免疫応答調節因子である。CLEC-1は、骨髄系細胞及び抗腫瘍応答をブーストする潜在的な治療標的を代表する。CLEC-1の機能をより解読し、その活性の調節を目的とする化合物を開発するために、特に腫瘍環境の文脈において、そのリガンドを同定する必要がある。
【0004】
CLEC-1(CLEC-1A、又はCLEC1、又はCLEC1Aとも呼ばれる)は、特に哺乳動物種、より具体的にはヒトにおいて特に発現される、C型レクチン様受容体、即ちC型レクチン様受容体1である。より正確には、CLEC-1は、CLEC-2、DECTIN-1(CLEC7-A)、CLEC-9A、MICL、MAH及びLOX-1も含むC型レクチン様受容体(CTLR)のDECTIN-1クラスターに属する(Colonna M, Samaridis J, Angman L. Molecular characterization of two novel C-type lectin-like receptors, one of which is selectively expressed in human dendritic cells. Eur J Immunol. 2000;30(2):697-704)。機能的に、C型レクチン受容体(CLR)は、病原体上又は自己タンパク質上の病原体上の多種多様なグリカンを認識することができる1つ又は複数の糖鎖認識ドメインを含む、膜貫通及び可溶性受容体の大きなファミリーである。これらの受容体について、グリカン認識は、Ca2+に依存する。それにもかかわらず、多くの関連するCLRは、Ca2+と無関係に糖を認識することができる。これらの受容体は、C型レクチン様受容体(CTLR)という。これらの受容体は、自然免疫及び獲得免疫の両方の結び付けにおけるそれらの役割について、特に興味深い。CTLRは主に、単核球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、及び好中球等の骨髄細胞系統の細胞によって発現される。CTLRは、内在化及びT細胞への提示のための抗原取り込み受容体として働くだけでなく、NF-κB、I型インターフェロン(IFN)及び/又はインフラマソーム活性化につながる複数のシグナル伝達経路を誘発する。それらが抗原を提示して細胞活性化と抑制との間の均衡を確実にする能力によって、CTLRは、癌、自己免疫疾患又はアレルギーを含む多種多様な疾患を処置するための、難しいがやりがいのある、薬理学的標的として現れた。CTLR調節は、疾患管理のための、見込みのある戦略を代表するようであるが、リガンドを同定する試み及び免疫におけるそれらの役割を明らかにする努力は、現在までのところ、まだ不十分である。
【0005】
CLEC-1は、骨髄系細胞及び内皮細胞で発現されることが公知である。CLEC-1は、免疫調節性の媒介物によってアップレギュレーションされ得、T細胞活性化を和らげ得る受容体として、記載されている(Thebault P. et al The C-Type Lectin-Like Receptor CLEC-1, Expressed by Myeloid Cells and Endothelial Cells, Is Up-Regulated by Immunoregulatory Mediators and Moderates T Cell Activation. J Immonol 2009; 183:3099-3108)。本発明者らは、ヒト血液において、従来のDC(cDC)によって、及び単核球及びDCの小さいサブセットによって、CLEC-1が細胞表面で発現され、免疫抑制性サイトカインTGFβによって増強されることを示した(国際出願第WO2018073440号を参照のこと)。齧歯動物及びヒトの両方で、CLEC-1が骨髄系細胞で抑制性受容体として働き、IL 12p40発現及び下流のTh1及びTh17のインビボの応答を防ぐことが示されている(Lopez-Robles MD et al., Cell-surface C-type lectin-like receptor CLEC-1 dampens dendritic cell activation and downstream Th17 responses Blood Adv. 2017;Mar 22;1(9) 557-568)。
【0006】
これらの特性は、特に癌に対する新しい処置を開発するために、患者の免疫応答を伴う健康状態の処置のための更なる手段の設計において、CLEC-1を検討する利益を提供する。特に、これらの結果は、受容体の内在性リガンドであり得る発現化合物を同定するために、更なる研究を必要とする。内在性リガンドは、哺乳動物以外の種から発せられる外因性リガンドとの比較によって、哺乳動物リガンド、特にヒトリガンドをいう。実際、CLEC-1の外因性リガンドは、病原性生物、即ちアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus Fumigatus)で同定されており、当該リガンドは、1,8-ジヒドロキシナフタレン(DHN)-メラニンのナフタレンジオール単位である(Stappers MHT et al Recognition of DHN-melanin by a C-type lectin receptor is required for immunity to Aspergillus Nature 2018 Mar 15;555(7696):382-386)。この外因性リガンドは、当該病原真菌による感染の状態のマウス又はヒトに存在することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際出願第WO2018073440号
【特許文献2】WO 96/34103
【特許文献3】WO 94/04678
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Colonna M, Samaridis J, Angman L. Molecular characterization of two novel C-type lectin-like receptors, one of which is selectively expressed in human dendritic cells. Eur J Immunol. 2000;30(2):697-704
【非特許文献2】Thebault P. et al The C-Type Lectin-Like Receptor CLEC-1, Expressed by Myeloid Cells and Endothelial Cells, Is Up-Regulated by Immunoregulatory Mediators and Moderates T Cell Activation. J Immonol 2009; 183:3099-3108
【非特許文献3】Lopez-Robles MD et al., Cell-surface C-type lectin-like receptor CLEC-1 dampens dendritic cell activation and downstream Th17 responses Blood Adv. 2017;Mar 22;1(9) 557-568
【非特許文献4】Stappers MHT et al Recognition of DHN-melanin by a C-type lectin receptor is required for immunity to Aspergillus Nature 2018 Mar 15;555(7696):382-386
【非特許文献5】Brauner et al, Journal of Internal Medicine, Vol. 278(3), September 2015, pages 323-332
【非特許文献6】Ding, Q., He, D., He, K. et al. Downregulation of TRIM21 contributes to hepatocellular carcinoma carcinogenesis and indicates poor prognosis of cancers. Tumor Biol. 36, 8761-8772 (2015). https://doi.org/10.1007/s13277-015-3572-2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
免疫応答の調節に関与する経路又は免疫応答を調節するための化合物の設計/同定に使用される経路を同定するために、CLEC-1リガンド、特に内在性リガンドの同定、及びそれへのCLEC-1の結合の決定の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ヒト細胞に内在するCLEC-1のリガンドの同定に依拠する。本発明者らは、TRIM21(三要素モチーフ含有タンパク質21)が、少なくともヒトにおいて、CLEC-1のリガンドであることを同定した。本発明者らは、TRIM21及びCLEC-1がインビトロで相互作用し得る(即ち、互いに結合する)ことを観察できた。RAJI細胞系の溶解物から開始して、本発明者らは、CLEC-1の機能性領域(Fc-CLEC1)と相互作用する(即ち、結合する)ことができるタンパク質を精製及び同定することができた。本発明者らはまた、いくつかの抗TRIM21抗体及び抗CLEC-1抗体が、TRIM21とCLEC-1との間の相互作用を阻害し得、それゆえCLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬であることを観察した。特に、本発明者らは、特に組換え又は融合ポリペプチドを含む、組換え又は融合分子であって、CLEC-1の細胞外ドメイン、特にヒトCLEC-1の細胞外ドメインを含む当該分子(本明細書でFc-CLEC-1によって説明される)が、TRIM21に結合し得ること、及びこの結合がいくつかの抗TRIM21及び抗CLEC-1抗体によって破壊されることを観察した。
【0011】
本明細書で更に詳説されるように、本発明者らは、CLEC1/TRIM21シグナル伝達経路の拮抗作用が、骨髄系細胞、特にマクロファージ及び/又は樹状細胞の、食作用能力の増大に著しくつながり、特に骨髄系細胞によるTRIM21陽性細胞の食作用の増大、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる、腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞(secondary necrotic cell)の食作用、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用の増大につながることの証拠を提供する。
【0012】
三要素モチーフ含有(TRIM)タンパク質は全て、Really Interesting New Gene(RING)モチーフとその後のB-boxと呼ばれる1つ又は2つのzincフィンガードメイン及びコイルドコイル(CC)ドメインを有する、構造的に保存されたN末端を含む。他のファミリーメンバーのように、TRIM21は、RINGドメインを介したE3リガーゼである。TRIM21は、TRIMファミリーの一員として、5つのドメインで構成される:RING、B-box、コイルドコイル、PRY及びSPRY(これらの最後の2つのドメインは、しばしばPRY-SPRYドメインと関連している)。ヒトTRIM21は、配列番号2のアミノ酸配列を有し得、RING、B-box、コイルドコイル、PRY-SPRYドメインは、それぞれアミノ酸残基16と55、92と123、128と238、268と465の間に局在し得る。TRIM21は、そのE3リガーゼ機能を介して、自然免疫シグナル伝達を制御する。これは、全身性エリテマトーデス及びシェーグレン症候群等の自己免疫疾患に関する自己抗原である。以前の研究(Brauner et al, Journal of Internal Medicine, Vol. 278(3), September 2015, pages 323-332)により、TRIM21が腫瘍形成において役割を果たし得ることが示唆され、最近の研究では、TRIM21発現と腫瘍の予後との間の関係が調査された(Ding, Q., He, D., He, K. et al. Downregulation of TRIM21 contributes to hepatocellular carcinoma carcinogenesis and indicates poor prognosis of cancers. Tumor Biol. 36, 8761-8772 (2015). https://doi.org/10.1007/s13277-015-3572-2)。TRIM21の高レベル及び低レベルの発現は、通常、それぞれ予後良好及び予後不良と関連する。TRIM21がCLEC-1のリガンドであるという本発明の発見に続いて、及び免疫応答へのCLEC-1の関与のために、TRIM21は、特に癌又は自己免疫疾患、並びにTRIM21/CLEC1経路、特に相互作用の処置における、新しい治療剤の開発のための標的、新しい診断ツール、予後因子、及び治療因子として考えられ得た。
【0013】
第1の態様では、本発明は、具体的には、乳癌、肝細胞癌、リンパ腫、より具体的にはB細胞リンパ腫、結腸癌、甲状腺癌、肝癌、腎癌、黒色腫、大腸癌、上咽頭癌、膵癌等の、本明細書で挙げられる癌、特にTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌、慢性感染症、敗血症、感染症、ウイルス感染、特にコクサッキーウイルス又は脳炎ウイルス、より具体的にはコクサッキーウイルスB3又は日本脳炎ウイルスによる感染症、真菌感染、心血管疾患、自己免疫疾患、特にシェーグレン症候群又は全身性エリテマトーデス又は全身性硬化症、炎症性疾患から選択される疾患を有する、対象、特にヒト対象の処置における、医薬としての使用のための、C型レクチン様受容体1(CLEC-1)/三要素モチーフ含有タンパク質21(TRIM21)シグナル伝達経路を阻害する化合物に関する。
【0014】
別の態様では、本発明は、特に、乳癌、肝細胞癌、リンパ腫、より具体的にはB細胞リンパ腫、結腸癌、甲状腺癌、肝癌、腎癌、黒色腫、大腸癌、上咽頭癌、膵癌等の、本明細書で挙げられる癌、特にTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌、慢性感染症、敗血症、感染症、特にコクサッキーウイルス又は脳炎ウイルス、より具体的にはコクサッキーウイルスB3又は日本脳炎ウイルスによる感染症、心血管疾患、自己免疫疾患、特にシェーグレン症候群若しくは全身性エリテマトーデス又は全身性硬化症、炎症性疾患から選択される疾患を有する、対象、特にヒト対象の処置のための、医薬としての使用のための、TRIM21に結合する、CLEC-1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である化合物に関する。好ましい実施形態では、患者は癌、敗血症又は慢性感染症を有する。
【0015】
別の態様では、本発明はまた、骨髄系細胞、特にマクロファージ及び/又は樹状細胞による、細胞、特にTRIM-21陽性細胞、特に腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞、より具体的にはTRIM-21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増大させるための、C型レクチン様受容体1(CLEC-1)/三要素モチーフ含有タンパク質21(TRIM21)シグナル伝達経路を阻害する化合物の使用に関する。使用され得る化合物としては、抗体、その抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクス、限定されないがFc-CLEC-1、特に配列番号3に示されるアミノ酸残基を含むFc-CLEC-1のような、TRIM21又はCLEC-1の機能的同等物(functional equivalent)であるペプチド又はポリペプチド、TRIM21及び/又はCLEC-1の発現を減少させる、核酸分子、特にオリゴヌクレオチド分子、より具体的にはRNA分子、siRNA分子又はmiRNA分子が挙げられる。
【0016】
別の態様では、本発明はまた、CLEC-1とTRIM21との間の相互作用が、抗癌剤及び/又は拮抗薬である抗ヒトCLEC-1抗体若しくはその抗原結合断片、又は抗TRIM21抗体若しくはその抗原結合断片での処置の有効性の見込みを評価するため、拮抗薬化合物をスクリーニングするため、疾患を処置するために使用される、方法に関する。
【0017】
定義
本明細書で使用される場合、「CLEC-1」及び「CLEC-1A」という用語は、哺乳動物種、好ましくはヒトCLEC-1又はCLEC-1A由来のCLEC-1Aタンパク質に関する。ヒトCLEC-1A受容体の参照配列は、受託番号Q8NC01 Uniprotに関連する配列に対応する。好ましくは、「ヒトCLEC-1」という用語は、Q8NC01 Uniprot受託番号によって参照され、51267 NCBI受託番号によって参照されるCLEC-1遺伝子によってコードされるアミノ酸配列のタンパク質をいう。本明細書では、CLEC-1A、CLEC-1、CLECA、CLEC-1、Clec1、Clec-1、CLEC-A1及びClec-1Aという用語は互換可能に使用され、全て、受託番号Q8NC01 Uniprotに関連するアミノ酸配列によって特徴付けられる、ヒトCLEC-1A受容体に対応する哺乳動物のCLEC1受容体、そのオルソログタンパク質、又はその相同タンパク質を示す。
【0018】
好ましくは、「ヒトCLEC-1」という用語は、Q8NC01 Uniprot受託番号によって参照され、51267 NCBI受託番号によって参照されるCLEC-1遺伝子によってコードされるアミノ酸配列のタンパク質をいう。CLEC-1は、配列番号1に示されるアミノ酸配列によって特徴付けられ得る。特定の実施形態では、ヒトCLEC-1の細胞外ドメインのアミノ酸配列は、
【0019】
【0020】
の配列を含むか、又は当該配列にある。
【0021】
本明細書で使用される場合、「CLEC-1の機能的同等物」、特に「ヒトCLEC-1の機能的同等物」は、特に、CLEC-1の細胞外ドメインの少なくとも断片(又は部分)を含み、おそらくCLEC-1の細胞外ドメインを、CLEC-1ポリペプチド全体ではないという条件で含む、ポリペプチド、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質である。かかるCLEC-1の細胞外ドメインの断片又はCLEC-1の細胞外ドメイン全体は、ペプチド、又は抗体等の別のタンパク質の断片等の別の分子と組み合わされて、CLEC-1の細胞外ドメイン又はその断片の構造を安定化させ、CLEC-1の細胞外ドメインの少なくとも断片を含む融合タンパク質の提供につながり得る。かかる、CLEC-1、特にヒトCLEC-1の機能的同等物は、或いは、アミノ酸配列が配列番号3に示されるアライメントされたアミノ酸配列に少なくとも80%、特に少なくとも90%同一性を有する、ポリペプチド、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質(いわゆる配列番号3のバリアント)であり得る。
【0022】
特に、CLEC-1の機能的同等物は、CLEC-1の細胞外ドメインを含むか、又は、特に配列番号3に示される配列の、CLEC-1の細胞外ドメインと少なくとも80%、特に80%より高く、特に少なくとも85%、特に85%より高く、少なくとも90%、特に90%より高く、少なくとも95%、特に95%より高い同一性を有する配列を含む。
【0023】
特に、CLEC-1の機能的同等物は、ヒトCLEC-1の機能的同等物であり、ヒトCLEC-1の細胞外ドメインを含むか、又はヒトCLEC-1の細胞外ドメインと少なくとも80%、特に80%より高く、特に少なくとも85%、特に85%より高く、少なくとも90%、特に90%より高く、少なくとも95%、特に95%より高い同一性を有する配列、より具体的には配列番号3に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(特に少なくとも85%又は85%より高く、少なくとも90%又は90%より高く、少なくとも95%又は95%より高い)同一性を有する配列を含む。
【0024】
CLEC-1、特にヒトCLEC-1の機能的同等物は、例えば、CLEC-1の細胞外ドメインの断片、若しくは細胞外ドメイン全体、又はその、配列番号3に示される配列のアライメントされたアミノ酸配列と少なくとも80%若しくは80%より高く、特に少なくとも90%若しくは90%より高く、特に少なくとも95%若しくは95%より高い同一性を有するバリアントを含み得、リンカーペプチド、タグ、抗体のFc部分を更に含む。Fc-CLEC-1は、例えば、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み得る。このCLEC-1の機能的同等物は、例えば、融合ポリペプチドであり得る。特定の実施形態では、本発明の化合物は、免疫グロブリン定常ドメインに融合している、CLEC-1、特にヒトCLEC-1の機能的同等物であるポリペプチドである。
【0025】
本発明の特定の実施形態によれば、本明細書で定義されるようなCLEC-1の機能的同等物の特色をなす融合分子が提供される。したがって、CLEC-1の細胞外ドメインは、(アミノ酸配列を含むタグ等の)タグに融合させてもよく、リガンド及び/又は免疫グロブリン定常ドメイン(Fc領域)、特にヒト免疫グロブリンの定常ドメインを標的化して、本明細書で定義されるようなヒト抗体及び/又はリンカーの貴重な化学的及び生物学的特性の多くを有し得る融合分子を形成するのに使用した場合にCLEC-1の細胞外ドメインを安定させるのに適した部分に融合させてもよい。
【0026】
融合分子の特定の実施形態では、Fc-CLEC-1融合分子に含まれるヒト免疫グロブリンのFc断片は、ヒトIgGのFc断片であり、Fc断片はN末端で哺乳動物CLEC-1、特にヒトCLEC-1の細胞外ドメインに融合する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「TRIM21」という用語は、当該分野で一般的な意味を有し、具体的には哺乳動物種由来の、三要素モチーフ含有タンパク質21、より具体的にはヒトTRIM21をいう。
【0028】
好ましくは、「ヒトTRIM21」という用語は、P19474 Uniprot受託番号によって参照され、Gene ID 6737(NCBI受託番号)によって参照されるTRIM21遺伝子によってコードされるアミノ酸配列のタンパク質をいう。特定の実施形態では、TRIM21は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する。特に、TRIM21はCLEC-1のリガンドであり、CLEC-1、特にCLEC-1の細胞外ドメイン、特に配列番号1のCLEC-1に、結合することができる(例えば、TRIM21を発現する細胞が、透過性RAJI細胞のように、又はある種の腫瘍細胞のように、透過処理される場合)。
【0029】
本明細書で使用される場合、「TRIM21陽性細胞」、「TRIM21陽性腫瘍」及び「TRIM21陽性腫瘍細胞」という用語は、恒常的発現(例えば、細胞による、TRIM21タンパク質をコードする遺伝子の正常な発現による)又は発現誘導(例えば、外部刺激によって、又はストレス状態若しくはアポトーシス経路等に進行中の細胞によって)のいずれかによってTRIM21タンパク質を発現する細胞又は細胞の群をいう。
【0030】
CLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路の拮抗薬
第1の態様では、本発明は、CLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路の拮抗薬である化合物、即ち、CLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路を阻害する化合物に関する。本明細書では、「CLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路の拮抗薬である化合物」という表現及び「拮抗薬化合物」という用語は互換可能に使用される。CLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路は、細胞における化学反応に関与して、CLEC-1とTRIM21との間の相互作用に続く細胞機能を制御する、あらゆる化合物を含む。細胞は、CLEC-1とTRIM21とが相互作用すると、その環境からシグナルを受け取り、CLEC-1化合物又はTRIM21化合物が細胞によって発現される。経路の第1の分子は、シグナルを受け取った後、別の分子を活性化する。このプロセスは、最後の分子が活性化されて細胞機能が行われるまで、シグナル伝達経路全体を通して繰り返される。CLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路の拮抗薬、即ちCLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路を阻害する化合物は、下記の分子の1つに相当し得る:
- TRIM21又はCLEC1に結合、特に特異的に結合して、TRIM21とCLEC-1との間の結合に拮抗する、分子、又は
- 細胞内の機能性TRIM21若しくはCLEC1分子の発現を減少させる、限定されないが、オリゴヌクレオチド分子、より具体的にはRNA分子、siRNA分子若しくはmiRNA分子等の、TRIM21若しくはCLEC1の機能性タンパク質への発現若しくは翻訳を阻害し得る核酸分子等の、細胞内のTRIM21若しくはCLEC1の発現を減少させる化合物、又は
- TRIM21若しくはCLEC-1の機能的同等物、又は
- CLEC-1及びTRIM21との間の結合によって誘導される化学反応に関与する化合物の能力を減少させるか、若しくは阻害して、同じシグナル伝達経路に関与する別の異なる化合物を活性化若しくは阻害することができる、化合物。
【0031】
CLEC-1とTRIM21との間の相互作用の後に活性化又は阻害されるシグナル伝達経路に拮抗することができる他の化合物は、本発明の使用のために意図される。
【0032】
CLEC-1/TRIM21経路に対する化合物の拮抗薬効果は、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる、細胞、特にTRIM21陽性細胞、より具体的には腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用の増大(負の対照と比較して)を測定することによって評価し得る。
【0033】
一実施形態では、本発明は、特に、乳癌、肝細胞癌、リンパ腫、より具体的にはB細胞リンパ腫、結腸癌、甲状腺癌、肝癌、腎癌、黒色腫、大腸癌、上咽頭癌、膵癌等の、癌、特にTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌、慢性感染症、敗血症、感染症、特にコクサッキーウイルス又は脳炎ウイルス、より具体的にはコクサッキーウイルスB3又は日本脳炎ウイルスによる感染症、心血管疾患、自己免疫疾患、特にシェーグレン症候群又は全身性エリテマトーデス又は全身性硬化症、炎症性疾患から選択される疾患を患っている、特に、対象、特にヒト対象の処置における、医薬としての使用のための、TRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合する、CLEC-1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である化合物に関する。
【0034】
本明細書で使用される場合、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬である化合物(本明細書では、「拮抗薬」又は「拮抗薬化合物」とも呼ばれる)は、TRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合する化合物を示し得、抗体、抗体の抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクス、抗体の抗原結合断片又は抗体全体を含む巨大分子、小さい有機化合物、ポリペプチド、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質からなる群から選択され得る。或いは、化合物は、TRIM21、特にヒトTRIM21の機能的同等物に相当し得る。かかる機能的同等物は、特に、TRIM21の細胞外ドメインの、少なくとも断片を含む、ポリペプチド、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質であり得る。かかる断片は、ペプチド、又は抗体等の別のタンパク質の断片等の別の分子と組み合わされて、TRIM21の細胞外ドメインの断片の構造を安定化させ、TRIM21の細胞外ドメインの少なくとも断片を含む融合タンパク質の提供につながり得る。かかる融合タンパク質は、例えば、TRIM21の細胞外ドメインの断片及びリンカーペプチド、タグ、抗体のFc部分を含み得る。特定の実施形態では、化合物は、CLEC-1、特にヒトCLEC-1の機能的同等物であり得る。かかる機能的同等物は、特にCLEC-1の細胞外ドメインの少なくとも断片を含む、ポリペプチド、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質であり得るか、又は、アミノ酸配列が、配列番号3に示される成立したアミノ酸配列と少なくとも80%又は80%より高く、特に少なくとも85%又は85%より高く、特に少なくとも90%又は90%より高い同一性を有する、ポリペプチド、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質(いわゆるバリアント)であり得る。かかる断片又はバリアントは、ペプチド、又は抗体等の別のタンパク質の断片等の別の分子と組み合わされて、CLEC-1の細胞外ドメインの断片の構造を安定化させ、CLEC-1の細胞外ドメインの少なくとも断片を含む融合タンパク質の提供につながり得る。かかる融合タンパク質は、例えば、CLEC-1の細胞外ドメインの断片及びリンカーペプチド、タグ、抗体のFc部分を含み得る。Fc-CLEC-1は、例えば、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含み得る。CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬である化合物は、インビトロ、インビボ及び/又はエクスビボで、CLEC-1とTRIM21との間の相互作用を減少させるか、阻害するか、又は遮断することができる化合物である。CLEC-1とTRIM21との間の結合に対する拮抗薬効果は、本明細書の実施例で説明されるような方法を使用して決定し得る。言い換えれば、拮抗薬であってTRIM21に結合する化合物は、CLEC-1とTRIM21との間の相互作用に有害に干渉し、その結果、CLEC-1とTRIM21との間の相互作用によって誘導されるシグナル伝達経路をダウンレギュレーションするか、減少させるか、又は阻害する。CLEC-1とTRIM21との間の結合に対するかかる拮抗薬能力の有無は、本発明の実施例、特に実施例3に従って評価し得、抗TRIM21抗体存在下でのFc-CLEC-1タンパク質へのTRIM21の結合を測定するための競合試験が開示される
図5及び
図6で、説明され得る。好ましい実施形態では、本発明の拮抗薬化合物は、本明細書に開示されるように、CLEC-1又はFc-CLEC-1と、TRIM21への結合について競合する。一方のTRIM21と他方の本発明の拮抗薬化合物及びCLEC-1又はFc-CLEC-1との間の競合アッセイにおける拮抗薬能力の存在は、本発明の拮抗薬化合物の存在下で、CLEC-1又はFc-CLEC-1へのTRIM21の結合が、同じ実験条件だが評価される本発明の拮抗薬が存在しない条件下で、CLEC-1又はFc-CLEC-1へのTRIM21の結合に関して、90%より低い場合、より好ましくは80%より低い場合、更により好ましくは50%より低い場合、及び最も好ましくは20%より低い場合に、決定され得る。或いは、CLEC-1/TRIM21結合に対する拮抗薬能力は、本発明の実施例で説明される方法に従って決定され得る。特に、TRIM21に結合する化合物は、評価される化合物がない同じ結合実験と比較して、TRIM21への、CLEC-1の細胞外ドメインの結合を減少させる場合、特に、TRIM21への、ヒト免疫グロブリン、特にヒトIgGのFc断片と融合したヒトCLEC-1受容体の細胞外ドメインを含む融合タンパク質の結合が減少する場合、CLEC-1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の相互作用の拮抗薬と考えられ得る。減少は、結合が、対照実験と比較して、少なくとも1-log、より具体的には少なくとも2-log、最も好ましくは少なくとも3-log減少する場合に認められる。
【0035】
本発明の一態様では、拮抗薬化合物はTRIM21に結合、特に特異的にTRIM21、特にヒトTRIM21に結合する。言い換えれば、本発明の拮抗薬化合物は、その標的であるTRIM21に特異的親和性を示す。本明細書に開示される本発明の別の態様では、拮抗薬化合物は、CLEC-1、特にヒトCLEC-1に結合する。言い換えれば、本発明の拮抗薬化合物は、その標的であるCLEC-1に特異的親和性を示す。「特異的に結合する」及び「に特異的に結合する」「に特異的親和性」という用語は、本発明に従って使用される拮抗薬化合物、特に抗体、その抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクス又は本発明の修飾抗体が、TRIM21若しくはそれぞれCLEC-1に、少なくとも1×10-6M、1×10-7M、1×10-8M、1×10-9M、1×10-10M、1×10-11M、1×10-12M、若しくはそれ以上の親和性で結合、及び/又はTRIM21若しくはそれぞれCLEC-1に、非特異的標的(即ち、CLEC-1のような、TRIM21の別のタンパク質、又はTRIM21のような、CLEC-1のそれぞれ別のタンパク質)に対するその親和性の少なくとも2倍大きい親和性で結合する能力をいう。親和性は、当業者に周知の種々の方法に従って評価し得る。これらの方法としては、限定されないが、Biacore解析、BLItz解析及びスキャッチャードプロット等のバイオセンサーが挙げられる。
【0036】
拮抗薬化合物は、抗体、抗体の抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクス、小さい有機化合物、ペプチド、ポリペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、特に、配列番号2の配列のような連続するアミノ酸残基を含むTRIM21アミノ酸配列の一部を含むペプチド又はポリペプチドであり得る。拮抗薬化合物はまた、RNA分子、特に、限定されないが、低分子干渉RNA、二本鎖RNA、マイクロRNA(miRNA)等の、TRIM21タンパク質の発現を減少させるRNA分子、及びRNA干渉(RNAi)経路に干渉する能力を有するRNA分子であり得る。かかるRNA分子は、trim21遺伝子の転写の後にmRNAを分解し、それによってTRIM21タンパク質へのその翻訳を防ぐことによって、相補的なヌクレオチド配列で、TRIM21をコードする遺伝子の発現に干渉する。最も好ましい拮抗薬化合物は、抗TRIM21抗体である。
【0037】
本発明の特定の実施形態では、化合物は、TRIM21のコイルドコイルドメイン、特に配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基128と238との間に局在するコイルドコイルドメイン若しくは配列番号4のアミノ酸残基に対応するコイルドコイルドメイン内に局在するエピトープ配列に結合、及び/又はTRIM21のPRY-SPRYドメイン、特に配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基268と465との間に局在するPRY-SPRYドメイン若しくは配列番号5のアミノ酸残基に対応するPRY-SPRYドメイン内に局在するエピトープ配列に結合する、抗体、抗体の抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクスである。特定の実施形態では、化合物は、配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基141と280との間に局在するエピトープ配列、又は配列番号7に示されるアミノ酸配列内に局在するエピトープに結合する、抗体、抗体の抗原結合断片である。特定の実施形態では、化合物は、配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基195と293との間に局在するエピトープ配列、又は配列番号8に示されるアミノ酸配列内に局在するエピトープに結合する、抗体、抗体の抗原結合断片である。特定の実施形態では、化合物は、配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基254と475との間に局在するエピトープ配列、又は配列番号6に示されるアミノ酸配列内に局在するエピトープに結合する、抗体、抗体の抗原結合断片である。特定の実施形態では、化合物は、配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基463と475との間に局在するエピトープ配列、又は配列番号9に示されるアミノ酸配列内に局在するエピトープに結合する、抗体、抗体の抗原結合断片である。
【0038】
本発明の特定の実施形態では、化合物は、TRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合し、CLEC1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合を認識する、抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスであり、当該抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスは、抗TRIM21抗体sc-25351、PA5-22294、PA5-18147及びMAB-62191からなるリストの中から選択される、少なくとも1つの競合抗体と、TRIM21への結合について、特にTRIM21のコイルドコイルドメイン、特に配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基128と238との間に局在するコイルドコイルドメイン若しくは配列番号4のアミノ酸のコイルドコイルドメイン内に局在する連続するアミノ酸残基への結合について、及び/又はTRIM21のPRY-SPRYドメイン、特に配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基268と465との間に局在するPRYSPRYドメイン若しくは配列番号5のアミノ酸配列に対応するPRY-SPRYドメイン内に局在する連続するアミノ酸残基への結合について競合し、当該抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスは、競合抗体と比較して、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる、細胞、特にTRIM21陽性細胞、特に腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増強する。
【0039】
試験抗体が、抗TRIM21抗体sc-25351、PA5-22294、PA5-18147及びMAB-62191からなるリストの中から選択される少なくとも1つの競合抗体によって結合される、同じ標的への結合について競合し得るか否かを決定するために、交差遮断(cross-blocking)アッセイ(例えば、競合ELISAアッセイ)を行い得る。例示的な競合ELISAアッセイにおいて、配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基128と238との間に局在するコイルドコイルドメイン若しくは配列番号4のアミノ酸残基に対応するコイルドコイルドメインを含むか、又はこれからなる、及び/又はTRIM21のPRY-SPRYドメイン、特に配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基268と465との間に局在するPRY-SPRYドメイン若しくは配列番号5のアミノ酸残基に対応するPRY-SPRYドメイン内に局在するエピトープ配列に結合する、ポリペプチドを、マイクロタイタープレートのウェル上でコートして、候補の競合抗体あり又はなしでプレインキュベートしてもよく、次いでビオチン標識候補抗体が加えられる。ポリペプチドに結合した、標識された候補抗体の量は、アビジン-ペルオキシダーゼコンジュゲート及び適切な基質を使用して測定される。抗体は、放射性標識又は蛍光標識で標識してもよく、又は一部の他の検出可能且つ測定可能な標識で標識してもよい。ポリペプチドに結合した、標識された候補抗体の量は、候補抗体が同じエピトープへの結合について競合する能力と間接的な相関を有し、即ち、標的に対する候補抗体の親和性が高いほど、ポリペプチドコートされたウェルに結合する、標識された競合抗体は少なくなる。候補抗体は、候補抗体が、候補抗体の非存在下で並行して行われる(が、公知の非競合抗体の存在下であってもよい)対照と比較して、競合抗体の結合を少なくとも20%、好ましくは少なくとも20~50%、更により好ましくは少なくとも50%遮断し得る場合に、本発明の、競合抗体と同じポリペプチドへの結合について競合する抗体と考えられる。このアッセイの変化を行って同じ定量値に到達してもよいことが理解されよう。
【0040】
もちろん、競合抗体に依存して、プレートをコートするポリペプチドを変化させて、競合抗体によって認識されるドメインにより近く対応させてもよい。
【0041】
本発明の特定の実施形態では、化合物は、TRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合し、CLEC1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合に拮抗する、抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスであり、当該抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスは、配列番号6に示されるアミノ酸配列への結合について、競合抗体PA5-22294と競合し、抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスは、競合抗体と比較して、骨髄系細胞による細胞、特にTRIM21陽性細胞、具体的には腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用、具体的には骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる、TRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増強する。
【0042】
本発明の特定の実施形態では、化合物は、TRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合し、CLEC1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合に拮抗する、抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスであり、当該抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスは、配列番号7に示されるアミノ酸配列への結合について、競合抗体sc-25351と競合し、抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスは、競合抗体と比較して、骨髄系細胞による細胞、特にTRIM21陽性細胞、具体的には腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用、具体的には骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる、TRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増強する。
【0043】
本発明の特定の実施形態では、化合物は、TRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合し、CLEC1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合に拮抗する、抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスであり、当該抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスは、配列番号8に示されるアミノ酸配列への結合について、競合抗体MAB6219と競合し、抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスは、競合抗体と比較して、骨髄系細胞による細胞、特にTRIM21陽性細胞、具体的には腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用、具体的には骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる、TRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増強する。
【0044】
本発明の特定の実施形態では、化合物は、TRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合し、CLEC1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合に拮抗する、抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスであり、当該抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスは、配列番号9に示されるアミノ酸配列への結合について、競合抗体PA5-18147と競合し、抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスは、競合抗体と比較して、骨髄系細胞による細胞、特にTRIM21陽性細胞、具体的には腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用、具体的には骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる、TRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増強する。
【0045】
「小さい有機化合物」という表現は、医薬品において一般に使用される有機分子と同等のサイズの分子を包含する。当該用語は、生体高分子(例えば、タンパク質、核酸等)を除く。好ましい小さい有機分子のサイズは、約5000Daまで、より具体的には2000Daまで、最も具体的には約1000Daまでの範囲である。
【0046】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又は組換え抗体を含む。本明細書で使用される場合、異なるアミノ酸配列の抗体の混合物を含む「ポリクローナル」抗体調製物に対し、「モノクローナル抗体」という用語は、共通の重鎖及び共通の軽鎖アミノ酸配列を共有する抗体を得るための抗体分子の調製物をいうよう意図される。モノクローナル抗体は、ファージ、細菌、酵母又はリボソームディスプレイ等のいくつかの公知の技術、及びハイブリドーマ由来の抗体によって例示される典型的な方法によって、生成され得る。それらはまた、開示されるアミノ酸配列を参照として使用して合成し得る。よって、「モノクローナル」という用語は、1つの核酸クローンに由来する全ての抗体をいうよう使用される。
【0047】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、野生型抗体と比較して修飾されている抗体を更に示し、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト化抗体、脱免疫化抗体(de-immunized antibody)、修飾抗体、及び抗原結合抗体ミメティクスを包含する。本発明の特定の実施形態では、化合物は、TRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合し、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4定常領域を含む、抗体又はその抗原結合断片である。
【0048】
本発明の抗体は、組換え抗体を含む。本明細書で使用される場合、「組換え抗体」という用語は、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子によるトランスジェニックな動物(例えば、マウス)から単離された抗体等の、組換え手段によって産生、発現、生成若しくは単離された抗体、又は特定の免疫グロブリン遺伝子配列(ヒト免疫グロブリン遺伝子配列等)が他のDNA配列とアセンブリするあらゆる他の方法で産生、発現、生成若しくは単離された抗体をいう。組換え抗体としては、例えば、キメラ及びヒト化抗体が挙げられる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」という用語は、マウス等の哺乳動物種の生殖細胞系由来の可変ドメインの配列が、ヒト等の別の哺乳動物種の生殖細胞系由来の定常ドメインの配列に移植された抗体をいう。
【0050】
本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」は、第1の実施形態では、マウス等の別の哺乳動物種の生殖細胞系由来のCDR配列がヒト、又は特にヒト化フレームワーク配列に移植された抗体をいう。更なる実施形態では、「ヒト化抗体」は、少なくとも1つのCDR及び全て又は一部のフレームワーク配列がヒト化されている抗体をいう。
【0051】
本明細書で使用される場合、「抗体の抗原結合断片」は、TRIM21又はCLEC-1への、おそらく天然の形態での、抗原結合能力を示す、抗体の一部、即ち、本発明の抗体の構造の一部に対応する分子を意味し、かかる断片は、対応する四本鎖抗体の抗原結合特異性と比較して、当該抗原と同じ又は実質的に同じ抗原結合特異性を特に示す。有利なことに、抗原結合断片は、対応する四本鎖抗体と同様の結合親和性を有する。しかしながら、対応する四本鎖抗体に対して抗原結合親和性の減少した抗原結合断片もまた、本発明の範囲内に包含される。抗原結合能力は、抗体と標的断片との間の親和性を測定することによって決定し得る。これらの抗原結合断片はまた、抗体の「機能的断片」とも呼ばれ得る。
【0052】
抗体の抗原結合断片は、CDR(相補性決定領域)と呼ばれる、それらの超可変ドメイン、又は抗原、即ちTRIM21に対する認識部位を包含するそれらの一部を含む断片である。当該抗体のCDRを含む可変ドメインを含む、抗体の抗原結合断片は、Fv、dsFv、scFv、Fab、Fab'、F(ab')2を包含する。これらの、本発明の基本的な抗原結合断片を組み合わせて、二重特異性抗体、三重特異性抗体(tribody)又は四重特異性抗体(tetrabody)等の多価抗原結合断片を得てもよい。これらの多価抗原結合断片もまた、本発明の一部である。
【0053】
抗原結合抗体ミメティクスは、抗原に特異的に結合するが、構造的に抗体と関連していない有機化合物である。抗原結合抗体ミメティクスは、通常、約3~20kDaのモル質量を有する、人工のペプチド又は小タンパク質である。核酸及び小分子も抗体ミメティクスと考えられる場合があるが、人工抗体、抗体断片、及びこれらで構成される融合タンパク質は抗体ミメティクスと考えられない。抗体にまさる一般的な利点は、より高い可溶性、組織浸透、熱及び酵素に対する安定性、並びに比較的低い生産コストである。抗体ミメティクスは、治療剤及び診断用薬として開発されている。抗原結合抗体ミメティクスはまた、Affibody、Affilin、アプタマー、Anticalin、Affimer、Affitin、DARPin、及びモノボディを含む群の中から選択され得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、ありとあらゆる長さのアミノ酸残基を有するアミノ酸のポリマーを意味する。よって、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質が「ポリペプチド」の定義に含まれ、これらの用語は本明細書全体を通して、及び特許請求の範囲において、互換可能に使用される。「ポリペプチド」という用語は、リン酸化、アセチル化、グリコシル化等を含むがこれらに限定さない翻訳後修飾を排除しない。
【0055】
「機能的に同等な断片」という用語は、本明細書で使用される場合、TRIM21、又はTRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合するCLEC-1の、あらゆる断片又は断片の集合体を意味し得る。したがって、本発明は、CLEC-1のTRIM21への結合を低下/減少させるか、又は阻害することができるポリペプチド、特に機能的同等物を提供し、当該ポリペプチドは、TRIM21の機能的同等物についてはCLEC-1に結合するTRIM21のドメインの少なくとも一部の配列であるか、又はCLEC-1の機能的同等物についてはTRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合する、CLEC-1の細胞外ドメインの少なくとも一部の配列である配列を有する、連続するアミノ酸を含む。CLEC-1の機能的同等物は上記で定義されており、特に配列番号3のアミノ酸配列のCLEC1の細胞外ドメインの断片、又は、配列番号3の配列中のアライメントされたアミノ酸配列と少なくとも80%若しくは80%より高く、特に少なくとも85%若しくは85%より高く、特に少なくとも90%若しくは90%より高い同一性を有するポリペプチドである、そのバリアントを包含する。
【0056】
一部の実施形態では、機能的同等物は、異種ポリペプチドに融合して、融合タンパク質を形成する。本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」は、異種ポリペプチド(即ち、同じポリペプチド以外のポリペプチド)に動作可能に連結された、全て又は一部の(典型的には生物学的に活性のある)本発明の機能的同等物を含む。融合タンパク質内で、「作動可能に連結された」という用語は、本発明の機能的同等物と異種ポリペプチドとがインフレームで互いに融合していることを示すよう意図される。異種ポリペプチドは、本発明の機能的同等物のN末端又はC末端に融合し得る。
【0057】
一部の実施形態では、機能的同等物は、免疫グロブリン定常ドメイン(Fcドメイン)に融合して、イムノアドヘシンを形成する。イムノアドヘシンは、ヒト抗体の貴重な化学的及び生物学的特性の多くを有し得る。イムノアドヘシンは、適切なヒト免疫グロブリンヒンジ及び定常ドメイン(Fc)配列に連結された、所望の特異性を有するヒトタンパク質配列から構築され得るので、完全にヒト成分を使用して、目的の結合特異性が達成され得る。かかるイムノアドヘシンは、患者にとって免疫原性が最小であり、長期の使用又は反復使用に安全である。一部の実施形態では、Fc領域は、天然の配列のFc領域である。一部の実施形態では、Fc領域は、バリアントFc領域である。更に別の実施形態では、Fc領域は機能性Fc領域である。本明細書で使用される場合、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するよう使用され、天然の配列のFc領域及びバリアントFc領域を含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常Cys226位又はPro230位のアミノ酸残基からそのカルボキシ末端まで伸びるよう定義される。イムノアドヘシンの接着部分及び免疫グロブリン配列部分は、最小限のリンカーによって連結され得る。免疫グロブリン配列は、典型的には免疫グロブリン定常ドメインであるが、必ずしもそうではない。本発明のキメラ中の免疫グロブリン部分は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgD又はIgMから得られ得るが、典型的にはIgG1又はIgG4から得られ得る。一部の実施形態では、CLEC-1又はTRIM21の機能的同等物とイムノアドヘシンの免疫グロブリン配列部分とは、最小限のリンカーによって連結される。本明細書で使用される場合、「リンカー」という用語は、本発明のポリペプチドと免疫グロブリン配列部分とを連結させる、少なくとも1つのアミノ酸の配列をいう。かかるリンカーは、立体障害を防ぐのに有用であり得る。一部の実施形態では、リンカーは、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30個のアミノ酸残基を有する。しかしながら、上限は決定的ではないが、例えばかかるポリペプチドの生物製剤生産に関する簡便さの理由により、選択される。リンカー配列は、天然起源の配列又は非天然起源の配列であり得る。治療目的で使用される場合、リンカーは、典型的には、イムノアドヘシンが投与される対象において非免疫原性である。一つの有用な群のリンカー配列は、WO 96/34103及びWO 94/04678に記載されているように、重鎖抗体のヒンジ領域由来のリンカーである。他の例は、ポリアラニンリンカー配列である。
【0058】
本発明の特定の実施形態では、拮抗薬化合物は、TRIM21の機能的同等物である。TRIM21の機能的同等物としては、限定されないが、CLEC-1に結合し、CLEC-1に結合できる可溶性受容体を形成するようにTRIM21の全て又は一部を含む分子が挙げられる。かかるTRIM21の機能的同等物は、ペプチド又はポリペプチドであり得る。特に、かかるTRIM21の機能的同等物は、配列番号2内の、少なくとも20、特に少なくとも25、特に少なくとも30、特に少なくとも40、特に50個のアミノ酸残基、特に少なくとも80個のアミノ酸残基、特に少なくとも100個のアミノ酸残基、特に少なくとも200個のアミノ酸残基、特に少なくとも300個の連続するアミノ酸残基を含む、ペプチド又はポリペプチドであり得る。或いは、拮抗薬は、配列番号2のTRIM21の、少なくとも20個のアミノ酸残基、特に少なくとも25個のアミノ酸残基、特に少なくとも30個のアミノ酸残基、特に少なくとも40個のアミノ酸残基、特に50個のアミノ酸残基、特に少なくとも80個のアミノ酸残基、特に少なくとも100個のアミノ酸残基、特に少なくとも200個のアミノ酸残基、特に少なくとも300個を含み、TRIM21又は対応するタンパク質、特に配列番号2のTRIM21と少なくとも80%同一性、より具体的には少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%及び更により具体的には少なくとも99%の同一性を有するか、又は100%同一性を共有する、ペプチド又はポリペプチドである。拮抗薬化合物は、TRIM21又は対応するタンパク質、特に配列番号2のTRIM21と少なくとも80%同一性、より具体的には少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%及び更により具体的には少なくとも99%を有するか、又は100%同一性を共有するアミノ酸配列を含むか、又はこれからなる、免疫グロブリン定常ドメインに融合したポリペプチドであり得る。本明細書で使用される場合、「対応するタンパク質」という用語は、本明細書で定義されるように、本発明の機能的同等物が同様の機能を有するタンパク質をいう。本発明の提示で参照される同一性のパーセンテージは、例えばNeedleman and Wunsch 1970のアルゴリズムを使用して、比較される配列のグローバルアライメント、即ち、配列の全長にわたるアライメントに基づいて決定される。この配列比較は、例えば、10.0に等しい「ギャップオープン」パラメータ、0.5に等しい「ギャップエクステンド」パラメータ及び「BLOSUM 62」マトリックスを使用することによって、needleソフトウエアを使用して、行われ得る。needle等のソフトウエアは、「needle」の名称で、ウェブサイトebi.ac.uk worldwideで利用可能である。
【0059】
CLEC-1の機能的同等物としては、限定されないが、TRIM21に結合し、TRIM21に結合できる可溶性受容体を形成するようにCLEC-1の細胞外ドメインの全て又は一部を含む分子が挙げられる。よって、機能的同等物としては、可溶型のCLEC-1が挙げられる。適切な可溶型のこれらのタンパク質、又はその機能的同等物は、例えば、膜貫通ドメインが化学的方法、タンパク質分解による方法又は組換え方法によって除去された、切断型のタンパク質を含み得、本明細書で定義されるように、CLEC-1の細胞外ドメイン若しくはその断片を含み得るか、又はこれにあり得る。具体的には、機能的同等物は、対応するタンパク質の全長にわたって、対応するタンパク質と少なくとも80%又は80%より高く、より具体的には少なくとも85%又は85%より高く、少なくとも86%又は86%より高く、少なくとも87%又は87%より高く、少なくとも88%又は88%より高く、少なくとも89%又は89%より高く、少なくとも90%又は90%より高く、少なくとも91%又は91%より高く、少なくとも92%又は92%より高く、少なくとも93%又は93%より高く、少なくとも94%又は94より高く、少なくとも95%又は95%より高く、少なくとも96%又は96%より高く、少なくとも97%又は97%より高く、少なくとも98%又は98%より高く、更により具体的には少なくとも99%の同一性を有し、特に、配列番号3のアライメントされたアミノ酸配列と少なくとも80%若しくは80%より高いか、又は少なくとも85%若しくは85%より高く、特に少なくとも90%若しくは90%より高い同一性を有する、アミノ酸配列からなる。本明細書で使用される場合、「対応するタンパク質」という用語は、本発明の機能的同等物が同様の機能を有するタンパク質をいう。本発明の提示で参照される同一性のパーセンテージは、例えばNeedleman and Wunsch 1970のアルゴリズムを使用して、比較される配列のグローバルアライメント、即ち、配列の全長にわたるアライメントに基づいて決定される。この配列比較は、例えば、10.0に等しい「ギャップオープン」パラメータ、0.5に等しい「ギャップエクステンド」パラメータ及び「BLOSUM 62」マトリックスを使用することによって、needleソフトウエアを使用して、行われ得る。needle等のソフトウエアは、「needle」の名称で、ウェブサイトebi.ac.uk worldwideで利用可能である。
【0060】
拮抗薬化合物は、医薬としての使用のために提供される。特に、拮抗薬化合物は、対象(即ち、患者、特にヒト患者)、特に癌、敗血症又は感染症を有する対象における疾患の処置における使用のために提供される。別の実施形態では、拮抗薬化合物は、対象における疾患の予防における使用のために提供され得る。本明細書で使用される場合、「処置」又は「処置する」は、有益な結果又は所望の結果を得るためのアプローチである。有益な臨床結果又は所望の臨床結果としては、限定されないが、以下の、疾患から生じる1つ若しくは複数の症状の緩和、予防若しくは消滅、疾患の治癒、疾患の程度の減少、疾患の安定化(例えば、疾患の悪化の予防又は遅延)、疾患の蔓延の予防若しくは遅延、疾患の再発の予防若しくは遅延、疾患の進行の遅延若しくは低速化、疾患状態の改善、疾患の寛解(部分又は完全)の提供、疾患を処置するのに必要な1つ若しくは複数の他の薬物治療の用量の減少、疾患の進行の遅延、生活の質の向上、及び/又は生存の延長の中から1つ以上が挙げられる。一実施形態によれば、「処置」という用語は、予防処置に関する。本明細書で使用される場合、「予防する」という用語は、所定の状態が獲得されるか、又は発生するリスクの減少をいう。
【0061】
本発明の特定の実施形態では、拮抗薬化合物は、患者の処置における使用のために提供され、ここで、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる、特にTRIM21を発現する細胞、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞等の標的細胞の食作用の調節によって、疾患の結果が改善される。よって、特定の実施形態では、骨髄系細胞、具体的には樹状細胞及び/又はマクロファージによる、細胞、特にTRIM21陽性細胞、より具体的には腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞、更により具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又はTRIM21陽性二次壊死細胞の食作用を増大させるための拮抗薬化合物が提供される。よって、TRIM21陽性腫瘍(即ち、TRIM21を発現、特に異常に発現する、少なくとも1つの細胞を含む腫瘍)が、本発明の化合物によって標的とされ得る。実際、TRIM21-CLEC1シグナル伝達経路の拮抗薬(例えば、CLEC-1とTRIM21との間の結合を阻害する、TRIM21若しくはCLEC1に結合する化合物、又はTRIM21若しくはCLEC1の機能的同等物、又は機能性TRIM21若しくはCLEC1の発現を減少させる化合物、又はTRIM21とCLEC-1との間の結合によって誘導されるシグナル伝達経路を減少させるか、若しくは阻害する化合物)は、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる、TRIM21を発現する腫瘍細胞等の標的細胞の食作用を、調節、特に増強することができ、それによって、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる、腫瘍細胞又はTRIM21を発現する細胞等の標的細胞の食作用の調節によって患者の健康が改善される治療又は疾患の処置におけるそれらの使用につながることが示された。それによって、TRIM21の拮抗薬化合物の使用は、CLEC-1(樹状細胞及びマクロファージの細胞表面で発現される)の、そのリガンドであるTRIM21(例えば、少なくとも腫瘍細胞によって発現される)との相互作用を少なくとも減少させ、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる、腫瘍細胞等の細胞の食作用の調節に有用であり得る。CLEC-1A発現骨髄系細胞、特にマクロファージ又は樹状細胞が、TRIM21を発現する細胞と相互作用する場合、これらのマクロファージ又は樹状細胞による食作用は、阻害されるか、又は減少し得る。一例として、TRIM21を発現する腫瘍細胞(即ち、Raji細胞)はマクロファージによって発揮される食作用を免れることが示された。CLEC-1発現骨髄系細胞とTRIM21発現細胞、特にTRIM21陽性腫瘍細胞との間の相互作用を調節する本発明の拮抗薬化合物を使用することによって、骨髄系細胞、特に樹状細胞又はマクロファージによる、TRIM21発現細胞の食作用の減少又は阻害が低下する。結果として、腫瘍細胞のようなTRIM21発現細胞の食作用は、本発明の拮抗薬化合物の存在下で増強される。
【0062】
より具体的には、本発明は、患者における状態又は疾患の処置における拮抗薬化合物の使用に関し、ここで当該状態又は疾患は、乳癌、肝細胞癌、リンパ腫、より具体的にはB細胞リンパ腫、結腸癌、甲状腺癌、肝癌、腎癌、黒色腫、大腸癌、上咽頭癌、膵癌等の、本明細書で挙げられる癌、特にTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌、慢性感染症、敗血症、感染症、ウイルス感染、特にコクサッキーウイルス若しくは脳炎ウイルス、より具体的にはコクサッキーウイルスB3若しくは日本脳炎ウイルスによる感染症、心血管疾患、自己免疫疾患、特にシェーグレン症候群若しくは全身性エリテマトーデス若しくは全身性硬化症、炎症性疾患であるか、又はこれに関する。
【0063】
「癌」という用語は、当該分野におけるその一般的な意味を有し、体の他の部分へ侵襲又は蔓延する可能性のある、異常な細胞増殖を伴う疾患の群をいう。「癌」という用語は、原発癌及び転移癌の両方を更に包含する。本発明の方法及び組成物によって処置され得る癌の例としては、限定されないが、TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌、TRIM21陽性腫瘍を有する癌、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭部、腎臓、肝臓、肺、上咽頭、頸部、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、又は子宮由来の癌が挙げられる。また、癌は、特に以下の組織学的タイプのものであり得るが、これらに限定されない: 新生物、悪性;癌腫;癌腫、未分化;巨細胞及び紡錘形細胞癌;小細胞癌;乳頭状癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛基質癌;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性;胆管癌;肝細胞癌;混合型肝細胞胆管癌;索状腺癌;腺様のう胞癌;腺腫様ポリープ内腺癌;家族性大腸ポリポーシス;固形癌;カルチノイド腫瘍、悪性;細気管支肺胞腺癌;乳頭状腺癌;嫌色素性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;ろ胞腺癌;乳頭状ろ胞腺癌;非被包性硬化癌;副腎皮質癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;脂腺癌;耳垢腺癌;粘表皮癌;のう胞腺癌;乳頭状のう胞腺癌;乳頭状漿液性のう胞腺癌;粘液性のう胞腺癌;粘液腺癌;印環細胞癌;浸潤性導管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;Paget症、乳房;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;胸腺腫、悪性;卵巣間質腫瘍、悪性;莢膜細胞腫、悪性;顆粒膜細胞腫、悪性;並びに神経芽腫(roblastoma)、悪性;セルトリ細胞癌;ライディッヒ細胞腫瘍、悪性;脂質細胞腫、悪性;傍神経節腫、悪性;乳房外傍神経節腫、悪性;褐色細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表層拡大性黒色腫;巨大色素性母斑内悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑、悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫、悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋腫;横紋筋腫;胎芽性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍、悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉腫、悪性;ブレンナー腫瘍、悪性;葉状腫瘍、悪性;滑膜肉腫;中皮腫、悪性;未分化胚腫;胎芽性癌;奇形腫、悪性;卵巣甲状腺腫、悪性;絨毛癌;中腎腫、悪性;血管肉腫;血管内皮腫、悪性;カポジ肉腫;血管外皮腫、悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍皮質骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽腫、悪性;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍、悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫、悪性;エナメル上皮線維肉腫;松果体腫、悪性;脊索腫;グリオーマ、悪性;上衣腫;アストロサイトーマ;原形質性アストロサイトーマ;細線維性アストロサイトーマ;星芽腫;膠芽腫;希突起膠腫;希突起芽腫;原始神経外胚葉腫瘍;小脳肉腫;神経節神経芽腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅神経原腫瘍;髄膜腫、悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫、悪性;顆粒細胞腫、悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;傍肉芽腫;悪性リンパ腫、リンパ球性;悪性リンパ腫、大細胞型、びまん性;悪性リンパ腫、ろ胞性;菌状息肉症;他の特定された非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;並びに有毛細胞白血病。
【0064】
特定の実施形態では、対象は、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳及び中枢神経系癌、乳癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、大腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胆のう癌、消化管カルチノイド、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎癌、喉頭・下咽頭癌、肝癌、肺癌、中皮腫、形質細胞腫、鼻・副鼻腔癌、上咽頭癌、神経芽腫、口腔・中咽頭癌、卵巣癌、膵癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、皮膚癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、膣癌、外陰癌、並びに子宮癌からなる群から選択される癌を患っている。
【0065】
本発明はまた、特に樹状細胞及び/又はT細胞が関与し、T細胞の増殖並びに/又は骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/若しくはマクロファージによる食作用の刺激によって状態又は疾患が改善又は処置される、有害な状態又は疾患の予防的処置を含む、処置における化合物の使用に関する。特定の実施形態では、疾患又は状態は、癌、特に本明細書で、上記で挙げられた癌、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌、液性癌(liquid cancer)、固形癌、リンパ腫、大腸癌、中皮腫又は肝癌からなる群から選択される。
【0066】
本発明の特定の実施形態では、TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を患っているヒト対象の処置における使用のための、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である化合物が提供される。
【0067】
言い換えれば、特定の実施形態では、本発明は、特にTRIM21陽性腫瘍細胞を有するかかる癌を患っているヒト対象における、TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌の処置における使用のための、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である化合物に関する。
【0068】
特定の実施形態では、TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を患っているヒト対象の処置における使用のため又はTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌の処置における使用のためのかかる化合物は、CLEC-1、特にヒトCLEC-1に結合、特に特異的にCLEC-1に結合、特に特異的にヒトCLEC-1に結合するか、又はCLEC-1、特に上記で定義されるようなヒトCLEC-1の機能的同等物であり、特にポリペプチドである。
【0069】
特定の実施形態では、本発明は、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる、TRIM21陽性腫瘍細胞の食作用を増大させることによる、TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を患っているヒト対象の処置における使用のため又はTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌の処置における使用のための、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬である、かかる拮抗薬化合物に関する。
【0070】
特定の実施形態では、癌を患っている患者における、TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌の処置における使用のための化合物は、特に、乳癌、肝細胞癌、リンパ腫、より具体的にはB細胞リンパ腫、結腸癌、甲状腺癌、肝癌、腎癌、黒色腫、大腸癌、上咽頭癌、膵癌から選択される癌の処置のためである。
【0071】
本発明はまた、TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を患っているヒト対象の処置のための医薬の製造のための、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である、化合物に使用に関する。
【0072】
本発明はまた、特にTRIM21陽性腫瘍細胞を有するかかる癌を患っているヒト対象における、TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌の処置のための医薬の製造のための、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である、化合物の使用に関する。化合物は、本明細書に開示される実施形態のいずれかで定義される通りである。
【0073】
本発明はまた、それを必要とするヒト対象における、TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を処置する方法であって、有効量の、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である化合物の当該対象への投与を含む、方法に関する。化合物は、本明細書に開示される実施形態のいずれかで定義される通りである。
【0074】
本発明はまた、TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を患っているヒト対象を処置する方法であって、有効量の、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である化合物の当該対象への投与を含む、方法に関する。化合物は、本明細書に開示される実施形態のいずれかで定義される通りである。
【0075】
本発明はまた、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる、TRIM21陽性細胞、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増大させるための方法であって、それを必要とする患者における、有効量の本発明の化合物の投与を含む、方法に関し、ここで特に、当該化合物は、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬である。化合物は、本明細書に開示される実施形態のいずれかで定義される通りである。
【0076】
本発明の別の特定の実施形態では、C型レクチン様受容体1(CLEC-1)/三要素モチーフ含有タンパク質21(TRIM21)シグナル伝達経路を阻害する化合物であって、当該化合物はCLEC1に結合、特に特異的にCLEC-1に結合するか、又は機能性CLEC1の発現を減少させるか、又は、CLEC1の機能的同等物、特にCLEC-1の機能的同等物であるポリペプチドであり、特に当該化合物は、TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を患っている対象、特にヒト対象の処置における使用のための、CLEC1に結合、より具体的にはヒトCLEC-1に結合、特に特異的にヒトCLEC-1に結合し、より具体的な実施形態ではヒトCLEC-1の細胞外ドメインに特異的に結合する、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬化合物である、化合物が提供される。好ましくは、当該化合物は、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力を増大させ、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる、TRIM21陽性細胞、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増大させ、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる、腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増大させる。特に、当該化合物は、CLEC-1に結合、特にヒトCLEC-1に結合し、したがって特に特異的にCLEC-1に結合する、抗体、その抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクスから選択され、当該化合物は、CLEC-1、特にヒトCLEC-1への結合について、配列番号10の重鎖可変ドメイン及び配列番号11の軽鎖可変ドメインを有する抗CLEC-1A抗体と競合し、化合物は骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによるTRIM21陽性細胞、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用、より具体的には樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増強する、CLEC-1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である。
【0077】
本発明の特定の実施形態では、CLEC-1、特にヒトCLEC-1に結合し、したがって特に特異的にCLEC-1に結合する、抗体、その抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクスから選択される化合物が提供され、当該化合物は、CLEC-1、特にヒトCLEC-1への結合について、配列番号10の重鎖可変ドメイン及び配列番号11の軽鎖可変ドメインを有する抗CLEC-1抗体と競合し、特に当該化合物は、癌、特にTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を患っている患者の処置における使用のために、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによるTRIM21陽性細胞、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用、より具体的には樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増強する、CLEC-1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である。処置され得る癌は、例として、乳癌、肝細胞癌、リンパ腫、より具体的にはB細胞リンパ腫、結腸癌、甲状腺癌、肝癌、腎癌、黒色腫、大腸癌、上咽頭癌、膵癌を包含する。
【0078】
本発明の特定の実施形態では、CLEC-1、特にヒトCLEC-1に結合し、したがって特に特異的にCLEC-1(特にその細胞外ドメイン)に結合する、抗体、その抗原結合断片、抗原結合断片ミメティクスから選択される化合物が提供され、当該化合物は、CLEC-1、特にヒトCLEC-1への結合について、配列番号10の重鎖可変ドメイン及び配列番号11の軽鎖可変ドメインを有する抗CLEC-1抗体と競合する、CLEC-1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬であり、特に当該化合物は、TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を有する患者の処置における使用のために、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによるTRIM21陽性細胞、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用、より具体的には樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増強する。
【0079】
本発明の実施例における、参照される抗体、抗CLEC-1 mAb #5(αCLEC-1 #5とも呼ばれる)は、配列番号10の重鎖可変ドメイン及び配列番号11の軽鎖可変ドメインを有する。CLEC-1への結合についての競合は、交差遮断アッセイ(例えば、競合ELISAアッセイ)によって評価し得る。例示的な競合ELISAアッセイにおいて、少なくともCLEC-1の細胞外ドメインを含むか、又はこれからなるポリペプチドを、マイクロタイタープレートのウェル上でコートして、候補の競合抗体あり又はなしでプレインキュベートしてもよく、次いでビオチン標識候補抗体が加えられる。ポリペプチドに結合した、標識された候補抗体の量は、アビジン-ペルオキシダーゼコンジュゲート及び適切な基質を使用して測定される。抗体は、放射性標識又は蛍光標識で標識してもよく、又は一部の他の検出可能且つ測定可能な標識で標識してもよい。ポリペプチドに結合した、標識された候補抗体の量は、候補抗体が同じエピトープへの結合について競合する能力と間接的な相関を有し、即ち、標的に対する候補抗体の親和性が高いほど、ポリペプチドコートされたウェルに結合する、標識された競合抗体は少なくなる。候補抗体は、候補抗体が、候補抗体の非存在下で並行して行われる(が、公知の非競合抗体の存在下であってもよい)対照と比較して、競合抗体の結合を少なくとも20%、好ましくは少なくとも20~50%、更により好ましくは少なくとも50%遮断し得る場合に、本発明の、競合抗体と同じポリペプチドへの結合について競合する抗体と考えられる。このアッセイの変化を行って同じ定量値に到達してもよいことが理解されよう。
【0080】
CLEC-1、特にヒトCLEC-1に結合、特に特異的にヒトCLEC-1に結合する化合物は、抗体であり、キメラ抗体、ヒト化抗体、組換え抗体、完全ヒト化抗体、モノクローナル抗体、脱免疫化抗体、特にヒト化モノクローナル抗体であってもよい。
【0081】
特定の実施形態では、本発明は、CLEC-1、特にヒトCLEC-1の機能的同等物であるポリペプチドである化合物に関し、本明細書に開示されているように、特に免疫グロブリン定常ドメインに融合したかかるポリペプチドに関する。
【0082】
医薬組成物
本発明はまた、本明細書で定義されるような、CLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路の拮抗薬、特にTRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合する拮抗薬化合物、又は、本明細書に開示されるあらゆる実施形態に従って、CLEC-1に結合し、したがって特に特異的にCLEC-1に結合する、抗体若しくはその抗原結合断片、若しくは抗原結合抗体ミメティクスであるCLEC-1A拮抗薬を、治療剤として、単独で、又は第2の治療剤と組み合わせて、それを必要とする患者に投与され得る製剤のための薬学的に許容され得る医薬の適切な媒体と共に含む、疾患を有する患者の処置における使用のための医薬組成物に関する。これらの製剤は、特に、等張で無菌な生理食塩水(リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウム等、又はそれらの塩の混合物)、又は、場合により滅菌水若しくは生理食塩水の添加の際に注射可能な溶液の構成が可能になる、乾燥、特に凍結乾燥組成物であり得る。
【0083】
化合物の組合せ
本発明はまた、第1の治療剤及び少なくとも1つの更なる治療剤を含む、化合物の組合せに関する。
【0084】
化合物の組合せは、共に包装されるか、又は別々に包装され得、同時投与(simultaneous administration)、同時投与(co-administration)、又は協調投与(coordinated administration)(又は連続的投与)のために調製された、少なくとも2つの異なる生成物、又は薬剤、又は化合物を含む製剤である。特に、組合せ内の各化合物の量は、患者の体重あたり、1μg/kgと100mg/kgの間で含まれ得る。
【0085】
第1の治療剤は、本明細書で開示される発明のいずれかの実施形態で定義されるような拮抗薬(即ち、本発明の実施形態に開示されるような抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクス、TRIM21とCLEC-1との間の相互作用の後に活性化されるシグナル伝達経路を減少させるか、又は阻害する化合物、TRIM21の発現を減少させる化合物等のような、TRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合する拮抗薬)である。
【0086】
更なる治療剤の少なくとも1つは、腫瘍標的化抗体若しくはその抗原結合断片、特に腫瘍標的化モノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片、より具体的には、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/若しくはマクロファージによる、腫瘍細胞若しくはTRIM21を発現する細胞の食作用を活性化及び/若しくは増強する腫瘍標的化モノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片、並びに更により具体的にはアレムツズマブ、アテゾリズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ハーセプチン、パニツムマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、抗PDL-1抗体及び抗CD47抗体からなる群から選択されるモノクローナル抗体、又は抗PD1抗体及び抗SIRP抗体からなる群から選択される別の抗体若しくはモノクローナル抗体、並びに/又は化学療法薬、特に抗増殖性、アポトーシス促進性、細胞周期停止、及び/若しくは分化誘導効果を有する細胞傷害性薬物、より具体的には細胞傷害性抗体、アルキル化薬、アントラサイクリン、代謝拮抗剤、微小管阻害薬剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アルカロイド、ブレオマイシン、抗悪性腫瘍薬、シクロホスファミドからなる群から選択される細胞傷害性薬物からなるリストから選択される。腫瘍標的化抗体は、腫瘍特異的膜タンパク質を認識し、細胞シグナル伝達を遮断し、Fcによって駆動される自然免疫応答を通して腫瘍傷害を誘導する、治療用モノクローナル抗体として定義され得る。化学療法剤は、従来の細胞傷害性薬物、即ち、曝露の後、DNA複製、有糸分裂等の干渉を通して不可逆的な致死病変を誘導する化合物であり得る。これらの薬剤は、抗増殖性、アポトーシス促進性、細胞周期停止、及び分化誘導効果を有し得る。これらの薬剤は、アルキル化薬(シスプラチン、クロラムブシル、プロカルバジン、カルムスチン)、アントラサイクリン及び他の細胞傷害性抗体、代謝拮抗薬(即ち、メトトレキサート、シタラビン、ゲムシタビン)、微小管阻害薬(即ち、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル)、トポイソメラーゼ阻害剤(即ち、エトポシド、ドキソルビシン)、アルカロイド(即ち、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、カンプトテシン)又はブレオマイシン(DNA鎖へのチミジンの取り込みを阻害する)からなる群から優先的に選択される。組合せは、リストから選択される、1つより多い第2の治療剤を含み得る。組合せはまた、リストに引用されていない更なる治療剤、及び/又は、限定されないが、医薬品賦形剤若しくは投与媒体のような成分を更に含み得る。
【0087】
特定の実施形態では、治療剤は、疾患の処置において、同時に、別々に、又は連続的に投与され得る。
【0088】
CLEC-1のリガンドとしてのTRIM21の同定
出願人の知識によれば、CLEC-1のリガンドを同定する、以前の方法によって、CLEC1の、壊死腫瘍細胞によって過剰発現されるリガンドとの相互作用を同定することが可能になったが、リガンドを同定することはできなかった。出願人は、重要な内在性リガンドとしてのTRIM21につながる、進歩性のある方法を開発し、当該方法は、特定の非変性状態の使用を含む。
【0089】
CLEC-1は、C型レクチンファミリーの一部である。このファミリーに属する化合物は、核酸中の炭水化物、タンパク質、脂質等の、多種多様な外因性及び内在性リガンドを認識する。CLEC1の内在性リガンドを同定しようとする以前の試みから、天然のタンパク質(proteic nature)の少なくとも1つのリガンドが、二次壊死細胞に見られることが明らかになった。しかしながら、いくつかのアプローチが展開されて、少なくともCLEC-1のリガンドが貴重なリガンドを全く示さなかったことが同定された。
【0090】
まず、限定は、リガンドの不特定の性質のためであった。この挑戦は、様々な実験条件及び種々の出発物質の使用を必要とする。死滅したセンサー(dead sensor)の、二次壊死細胞によって放出された潜在的に不安定なリガンドへの相互作用を取得及び維持するには、技術的な微調整が必要であった。成功なく、CLEC-1リガンドを同定するいくつかのアプローチを試験した後、溶液が作り上げられ、その中で:1)白血病/活性化単核球cDNAライブラリーの二重ハイブリッドスクリーニング(double-hybrid screening);2)保持されたリガンドの質量分析同定と組み合わせた、CLEC-1リガンドを含むと期待される多様な細胞抽出物(MoDC、PBMC、K562細胞系)由来の、表面プラズモン共鳴(Biacore社)チップに固定された多様なCLEC-1融合タンパク質のパネルによるリガンド捕捉試験(ligand capture trial);3)インセルロ(in cellulo)でのCLEC-1のリガンドへの結合、細胞タンパクの架橋及び抽出の後に得られた細胞抽出物のCLEC-1の免疫沈降。
【0091】
相当な努力にもかかわらず、これらのアプローチのうち、CLEC-1との選択的相互作用について、ELISA又はBLItzによって更に確認され得る候補リガンドの同定につながったものはなかった。二次壊死を経た細胞及び樹状細胞で発現されることが公知である、CLEC-1リガンドを捕捉、単離及び同定するための、感度が高く、選択的な方法を開発する必要があった。
【0092】
出願人は、急速な凍結融解に基づく機械的拘束と組み合わせて、タンパク質の翻訳後修飾を維持しながらタンパク質を細胞から抽出するための細胞コンパートメント破壊を最大にする、低い界面活性剤濃度に基づく、非凡な、化学的に穏やかなタンパク質抽出方法を開発した。
【0093】
膜統合性の喪失(例えば、RAJI細胞系)後のCLEC-1結合が観察された細胞に焦点を合わせた。低い非特異的結合を維持しながら内在性リガンドへのCLEC-1結合を最大にするために、出願人は、
1)プロテインGビーズへの、Fc-CLEC-1又はFc-対照の直接結合;いかなる中間の抗体も使用しない、
2)非特異的結合を最小限にするための、磁気ビーズの使用、
3)細胞抽出物中に存在する低い界面活性剤濃度を除く更なる界面活性剤なしのみでの、PBS中の相互作用、
4)高い塩濃度(有利には、500mM NaCl)でのみストリンジェンシーを増大させて非特異的結合混入物を除去する、界面活性剤なしでの穏やかな洗浄、
5)熱によるタンパク質凝集、及び特に糖タンパク質凝集を避けるための、室温でのみの、DTT変性での、結合したリガンドの溶出
を含む、免疫沈降方法を設ける。
【0094】
この原法は、SDS-PAGEの溶出物からの、分離したバンドの単離につながった。質量分析による解析は、CLEC-1Aへの選択的相互作用についてのELISAによって確認された、内在性CLEC-1AリガンドとしてのTRIM-21の同定をもたらした。
【0095】
CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬及び作動薬をスクリーニングするための方法
別の態様では、本発明は、小さい有機化合物、抗体又はその抗原結合断片、ポリペプチド(特にヒトCLEC-1又はヒトTRIM21の機能的同等物)を含むがこれらに限定されない化合物、特にTRIM21又はCLEC-1に結合してCLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路を標的とする(即ち、破壊するか、減少させるか、阻害するか、又は増強する)治療剤、特に、CLEC-1とTRIM21との間の結合に競合又は拮抗する化合物を、スクリーニングする方法に関し、当該方法は、
a)少なくとも1つの化合物を提供し、それ(それら)がCLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路に干渉する能力、特にCLEC1とTRIM21との間の相互作用に干渉する能力、より具体的にはCLEC-1とTRIM21との間の結合に競合又は拮抗する能力を評価する工程であって、特に当該相互作用はFc-CLEC-1融合分子と、TRIM21、特に全長TRIM21の少なくとも1つのドメインとの間、又はCLEC-1と、TRIM21の少なくとも1つのドメイン、特に全長TRIM21との間で決定される、工程、
b)当該化合物の存在下で、CLEC1/TRIM21シグナル伝達経路の活性及び/又はCLEC-1とTRIM21との間の結合を測定する工程、
c)化合物が、負の対照と比較して、工程b)で測定されたCLEC1/TRIM21シグナル伝達経路の活性及び/又は結合を増強するか、又は減少させる場合、CLEC1/TRIM21シグナル伝達経路の活性及び/又はCLEC-1とTRIM21との間の結合を調節する化合物を同定し、特にCLEC-1とTRIM21との間の相互作用を増強するか、又は減少させる化合物を同定する、工程
を含む。
【0096】
工程b)における測定は、化合物の存在下での骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力を測定することによって評価し得、その結果を、化合物の非存在下で観察される結果と比較する。骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力は、TRIM21陽性細胞、特にTRIM21陽性腫瘍細胞又は二次壊死細胞、具体的には腫瘍細胞又は二次壊死細胞に関して評価し得る。
【0097】
別の態様では、本発明は、小さい有機化合物、抗体又はその抗原結合断片、ポリペプチド(特にヒトCLEC-1又はヒトTRIM21の機能的同等物)を含むがこれらに限定されない化合物、特にTRIM21又はCLEC-1に結合してCLEC-1とTRIM21との間の結合を標的とする(即ち、破壊するか、減少させるか、又は阻害する)治療剤、特に、CLEC-1とTRIM21との間の結合に競合又は拮抗する又は作用する化合物を、スクリーニングする方法に関し、当該方法は、
a)少なくとも1つの化合物を提供し、それ(それら)がCLEC-1とTRIM21との間の結合に干渉する能力、特にCLEC-1とTRIM21との間の結合に競合又は拮抗する能力を評価する工程であって、特に当該相互作用はCLEC-1とTRIM21の少なくとも1つのドメインとの間で決定される、工程、
b)CLEC-1とTRIM21との間の相互作用(例えば、結合)を調節する化合物を単離及び/又は同定する場合、特に、CLEC-1とTRIM21との間の相互作用を増強するか、及び/又は減少させる化合物を単離及び/又は同定する場合、
c)場合により、TRIM21、特にヒトTRIM21に対する、及び/又はCLEC-1、特にヒトCLEC-1に対する、CLEC-1とTRIM21との間の相互作用(例えば、結合)を調節する化合物の結合能力を試験する工程
を含む。
【0098】
本発明はまた、TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を処置するのに有用な化合物を選択するための方法であって、本明細書に記載されるような化合物をスクリーニングするための方法を行う工程を含み、CLEC1/TRIM21シグナル伝達経路の活性及び/又はCLEC-1とTRIM21との間の結合を減少させる化合物が選択される、方法に関する。
【0099】
特に、TRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合し、CLEC-1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合に拮抗する拮抗薬を選択するための方法は、以下の工程:
a)TRIM21タンパク質、又はその、RING、B-box、コイルドコイル、PRY、PRYSPRY及びSPRYからなる群から選択されるTRIM21の少なくとも1つのドメインを含む一部、並びにCLEC-1タンパク質、又はその、CLEC-1、特にFc-CLEC-1、より具体的には配列番号3を含むFc-CLEC-1の細胞外ドメインを含む一部を提供する工程、
b)CLEC-1とTRIM21との間の結合に拮抗する能力を試験される化合物を提供する工程、
c)当該化合物の存在下で、CLEC-1とTRIM21との間の結合を測定する工程、
d)場合により、TRIM21、特にヒトTRIM21への化合物の結合を測定する工程、及び/又はCLEC-1、特にヒトCLEC-1への化合物の結合を測定する工程であって、当該化合物が、負の対照と比較して、工程c)で測定された結合を減少させる場合、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬であり、当該化合物が、工程d)で測定されたTRIM21への結合がCLEC-1への結合より高い場合、特にTRIM21に対する化合物の親和性がCLEC-1に対する親和性の少なくとも2倍大きい場合、TRIM21に更に特異的に結合する、工程
を含み得る。
【0100】
負の対照は、例えば対照がTRIM21とCLEC-1の一方又は両方に結合も干渉もしないために、CLEC-1とTRIM21との間の結合を干渉しないことが公知である、同様の性質の化合物(例えば、試験化合物が抗体である場合は抗体、試験される化合物が有機分子である場合は有機分子)に対応し得る。
【0101】
本発明はまた、TRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合し、CLEC-1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である、化合物を選択するための方法に関し、当該方法は、
a)少なくとも1つの化合物を、それ(それら)がTRIM21に結合し、CLEC-1とTRIM21との間の相互作用に干渉する能力、特にCLEC-1とTRIM21との間の結合に競合又は拮抗する能力を試験するために提供し、特に当該相互作用はCLEC-1の細胞外ドメインを含むポリペプチド若しくはペプチドと、TRIM21の少なくとも1つのドメイン、特に全長TRIM21、又はFc-CLEC-1融合分子とTRIM21、特に全長TRIM21の少なくとも1つのドメインとの間で決定され、特に当該相互作用はCLEC-1と、TRIM21の少なくとも1つのドメイン、特に全長TRIM21との間で決定される、工程、
b)当該化合物の存在下で、CLEC-1とTRIM21との間の相互作用(例えば、結合)を測定する工程、
c)化合物が、負の対照と比較して、工程b)で測定された結合を、増強するか、又は減少させる場合、CLEC-1とTRIM21との間の結合を調節する化合物を同定し、特にCLEC-1とTRIM21との間の相互作用を増強するか、又は減少させる化合物を同定する、工程
を含む。
【0102】
本発明の拮抗薬、特にTRIM21に結合する拮抗薬、特に特異的にTRIM21に結合し、CLEC-1とTRIM21との間の結合に拮抗する拮抗薬は、少なくとも下記の工程を含む、下記の方法によって同定し得る:
a)TRIM21、又はRING、B-box、コイルドコイル、PRY及びSPRYからなる群から選択されるTRIM21の少なくとも1つのドメインを含むその断片を発現する、複数の細胞を提供する工程、
b)当該細胞、特に当該細胞の溶解物を、CLEC-1の細胞外ドメインの少なくとも一部を含むポリペプチドの存在下及び/又は非存在下で、CLEC-1とTRIM21との間の結合に拮抗する能力を試験される候補化合物と共にインキュベートする工程、
c)当該候補化合物がCLEC-1とTRIM21との間の結合に結合し、遮断するか、抑制するか、又は減少させるか否かを決定する工程、並びに
d)CLEC-1とTRIM21との間の結合に結合し、遮断するか、抑制するか、又は減少させる候補化合物を選択する工程。
【0103】
処置が有効である見込みを評価するための方法
別の態様では、本発明は、特に、乳癌、肝細胞癌、リンパ腫、より具体的にはB細胞リンパ腫、結腸癌、甲状腺癌、肝癌、腎癌、黒色腫、大腸癌、上咽頭癌、膵癌等の、癌、特にTRIM21陽性腫瘍又はTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌、慢性感染症、敗血症、特にコクサッキーウイルス若しくは脳炎ウイルス、より具体的にはコクサッキーウイルスB3若しくは日本脳炎ウイルスによる感染症、心血管疾患、自己免疫疾患、特にシェーグレン症候群又は全身性エリテマトーデス又は全身性硬化症、炎症性疾患、特に癌と診断されたヒト患者における、抗癌剤及び/又はCLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路の拮抗薬での処置の有効性の見込みを評価するための方法に関し、当該方法は、
- 生体試料中、特に腫瘍細胞を含む生体試料中の、TRIM21の発現を決定する工程であって、試料がヒト患者から予め得られている、工程
- 試料がTRIM21の発現について陽性である場合、患者が、本発明の抗癌剤及び/又は拮抗薬化合物、特に抗TRIM21拮抗薬である抗体又はその抗原結合断片での処置の恩恵を受ける見込みがあると結論付ける工程
を含む。
【0104】
本発明はまた、上述の抗体、又はその抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクス、CLEC-1又はTRIM21の機能的同等物、TRIM21の発現を減少させる化合物のような、抗癌剤及び/又はCLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路の拮抗薬である化合物での処置の有効性の見込みを評価するための方法に関し、試料が、ヒトTRIM21の発現について陽性である場合、治療量の、抗体及び/又はその抗原結合断片のような、抗癌剤及び/又は抗ヒトTRIM21若しくは抗CLEC-1の投与に関する。
【0105】
本発明はまた、疾患を有する患者を抗TRIM21、特に抗ヒトTRIM21化合物、抗CLEC-1、特に抗ヒトCLEC-1化合物、又はTRIM21、特にヒトTRIM21の機能的同等物若しくはCLEC-1、特にヒトCLEC-1の機能的同等物で処置することが有効である見込みがあるか否かを決定するための、インビトロ又はエクスビボの方法に関し、当該方法は、患者から予め得られた生体試料中のTRIM21の発現の検出を含み、患者から予め得られた生体試料内に存在する、細胞、特に腫瘍細胞の、表面及び/又はサイトゾル内でTRIM21が検出される場合、処置の有効性の見込みがある。
【0106】
一態様では、本発明は、疾患を有する患者を抗TRIM21、特に抗ヒトTRIM21化合物、抗CLEC-1、特に抗ヒトCLEC-1化合物、又はTRIM21、特にヒトTRIM21の機能的同等物若しくはCLEC-1、特にヒトCLEC-1の機能的同等物で処置することが有効である見込みがあるか否かを決定するための、インビトロ又はエクスビボの方法に関し、ここで疾患は、乳癌、肝細胞癌、リンパ腫、より具体的にはB細胞リンパ腫、結腸癌、甲状腺癌、肝癌、腎癌、黒色腫、大腸癌、上咽頭癌、膵癌等の、癌、特にTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌であるか、又は疾患は慢性感染症、敗血症、特にコクサッキーウイルス若しくは脳炎ウイルス、より具体的にはコクサッキーウイルスB3若しくは日本脳炎ウイルスによる感染症、心血管疾患、自己免疫疾患、特にシェーグレン症候群若しくは全身性エリテマトーデス又は全身性硬化症、炎症性疾患であり、上述の本発明の拮抗薬化合物でのこの疾患について患者を処置することが有効である見込みがあると決定する方法は、患者から予め得られた生体試料中のTRIM21の発現の検出を含み、患者から予め得られた生体試料内に存在する、細胞、特に腫瘍細胞の、表面及び/又はサイトゾル内でTRIM21が検出される場合、処置の有効性の見込みがある。
【0107】
よって、更なる態様では、本発明は、乳癌、肝細胞癌、リンパ腫、より具体的にはB細胞リンパ腫、結腸癌、甲状腺癌、肝癌、腎癌、黒色腫、大腸癌、上咽頭癌、膵癌等の、癌、特にTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌、慢性感染症、敗血症、感染症、特にコクサッキーウイルス若しくは脳炎ウイルス、より具体的にはコクサッキーウイルスB3若しくは日本脳炎ウイルスによる感染症、心血管疾患、自己免疫疾患、特にシェーグレン症候群若しくは全身性エリテマトーデス又は全身性硬化症、炎症性疾患と診断されたヒト患者を処置するための方法に関し、当該方法は、
- 生体試料中、特に腫瘍細胞を含む生体試料中の、TRIM21の発現を決定する工程であって、試料がヒト患者から予め得られている、工程、並びに
- TRIM21の発現が陽性である場合、薬剤、特に抗癌剤、及び/又は限定されないが、抗体又はその抗原結合断片のような抗ヒトTRIM21拮抗薬を、当該ヒト患者に投与する工程
を含む。
【0108】
更なる態様では、本発明は、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力を増強するため、特に、骨髄系細胞によるTRIM21陽性細胞、特に腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞、特にTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又はTRIM21陽性二次壊死細胞の食作用を増強するための方法に関し、当該方法は、
- TRIM21陽性細胞に関連する障害、特にTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又はTRIM21陽性二次壊死細胞と関連する障害を有する患者を選択する工程、並びに
- CLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路を阻害する、有効量の本発明の化合物を、患者に投与する工程
を含む。
【0109】
更なる態様では、本発明は、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力を増強するため、特に、骨髄系細胞によるTRIM21陽性細胞、特に腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞、特にTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又はTRIM21陽性二次壊死細胞の食作用を増強するための方法に関し、当該方法は、それを必要とする患者への、CLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路を阻害する、有効量の本発明の化合物の投与を含む。
【0110】
更なる態様では、本発明は、C型レクチン様受容体1(CLEC-1)/三要素モチーフ含有タンパク質21(TRIM21)シグナル伝達経路を阻害する、特にCLEC-1とTRIM21との間、より具体的にはヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合に拮抗する、化合物の使用に関し、当該化合物は、疾患、特に、乳癌、肝細胞癌、リンパ腫、より具体的にはB細胞リンパ腫、結腸癌、甲状腺癌、肝癌、腎癌、黒色腫、大腸癌、上咽頭癌、膵癌等の癌、特にTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌、慢性感染症、敗血症、感染症、ウイルス感染、特にコクサッキーウイルス又は脳炎ウイルス、より具体的にはコクサッキーウイルスB3又は日本脳炎ウイルスによる感染症、心血管疾患、自己免疫疾患、特にシェーグレン症候群又は全身性エリテマトーデス又は全身性硬化症、炎症性疾患からなる群から選択される疾患を有する患者の処置のための医薬の製造のための、TRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合するか、若しくはCLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路に関与する細胞内分子に結合するか、又は機能性TRIM21の発現を減少させるか、又は、TRIM21の機能的同等物、特に、TRIM21に結合、より具体的にはヒトTRIM21に結合、特に特異的にTRIM21に結合するCLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬化合物である。
【0111】
特に、乳癌、肝細胞癌、リンパ腫、より具体的にはB細胞リンパ腫、結腸癌、甲状腺癌、肝癌、腎癌、黒色腫、大腸癌、上咽頭癌、膵癌等の癌、特にTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌、慢性感染症、敗血症、感染症、ウイルス感染、特にコクサッキーウイルス又は脳炎ウイルス、より具体的にはコクサッキーウイルスB3又は日本脳炎ウイルスによる感染症、心血管疾患、自己免疫疾患、特にシェーグレン症候群又は全身性エリテマトーデス又は全身性硬化症、炎症性疾患、特に癌と診断されたヒト患者を処置するための方法は、薬剤、特に抗癌剤の投与の前、又はかかる薬剤、特にかかる抗癌剤での処置の間、又は第1の薬剤若しくは更なる薬剤、特に抗癌剤での処置の後に、患者から得られた生体試料、特に病的な細胞、特に腫瘍細胞を含む生体試料が、TRIM21を発現する細胞を含むか否かを決定する工程を含み得る。当該試料がTRIM21陽性であると考えられ得る場合、具体的には患者がTRIM21陽性腫瘍細胞を有する場合、処置が投与される。
【0112】
ヒトTRIM21の発現の決定は、本明細書に記載されるようなCLEC-1の細胞外ドメインを含むキメラ分子の使用、特に本明細書に記載されるようなFc-CLEC-1の使用を伴い得る。
【0113】
本発明の化合物は、特にCLEC-1陽性腫瘍細胞及び/若しくはTRIM21陽性腫瘍細胞を有する患者に、治療剤として、特に抗癌剤として投与され得るか、又は、別の薬剤、特に抗癌剤での処置において、更なる有効成分として加えられ得る。
【0114】
したがって、本発明は、免疫療法的な抗癌剤又は化学療法的な抗癌剤での処置のための患者の選択のための陽性マーカーとしての使用のための、腫瘍細胞又はアポトーシス細胞又は壊死細胞を含む試料等の、患者から予め採取された生体試料の細胞中で発現されたTRIM21を提供する。場合により、当該使用は、マーカーの定量化を含む。
【0115】
よって、更なる態様では、本発明は、癌と診断されたヒト患者、TRIM21陽性腫瘍を有するヒト患者を処置するための方法に関する。TRIM21陽性腫瘍は、少なくとも1つの細胞がTRIM21を発現する腫瘍に相当し得る。よって、本発明はまた、患者から(予め)得られた生体試料中で、腫瘍細胞内のTRIM21の存在又はTRIM21の異常な発現が測定される方法に関し、腫瘍細胞がTRIM21を発現するか、又はTRIM-21の異常な発現を示す場合、本明細書で詳説されるような、CLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路を阻害する化合物が、患者に投与される。TRIM21の異常な発現は、同じ患者から得られた健康な細胞又は別の患者から得られた健康な細胞中のTRIM-21の発現を比較することによって、評価し得る。
【0116】
本発明はまた、疾患、特に癌、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を有する患者を、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬である、CLEC-1又はTRIM21に結合する化合物で処置することが、有効である見込みを評価するための、インビトロ試験におけるバイオマーカーとしての、TRIM21、特にヒトTRIM21の使用に関する。
【0117】
本発明の更なる態様及び特徴は、下記の実施例及び図面に見られる。
【0118】
下記の図面及び実施例は、本発明をどのように作成及び使用するかの完全な開示及び説明を当業者に提供するよう述べられ、本発明者らがその発明であると考える範囲を限定するよう意図されず、下記の実験が行われた全ての実験であるか又は下記の実験のみが行われたことを表すようにも意図されない。本発明は、その特定の実施形態を参照して説明されているが、本発明の真の精神及び範囲を逸脱することなく、種々の変化が為され得、同等物で置換され得ることが、当業者に理解されるべきである。また、特定の状況、材料、物質の組成、方法、方法の1つ又は複数の工程を、本発明の目的、精神及び範囲に適合させるために、多くの変更が為され得る。全てのかかる変更は、本明細書に添付される特許請求の範囲内であるよう意図される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1】RAJI細胞系溶解物の内容物での、Fc-CLEC-1の免疫沈降のSDS-PAGEを示す図である。A:免疫沈降溶出産物を、ステインフリーの4~15%ゲル上でSDS-PAGEによって分離させた。プロテインG磁気ビーズをFcのみ(レーン1及び2)、Fcタンパク質なし(レーン3)、Fc-CLEC-1タンパク質(レーン4及び5)でコートした。RAJI WCE(全細胞抽出物)タンパク質のFc-CLEC-1A免疫沈降(レーン5)を、いくつかの対照、Fcのみ(レーン1)、Fc+RAJI WCE(レーン2)、RAJI WCE(レーン3)、及びFc-CLEC-1Aのみ(レーン4)と比較した。灰色及び白色の三角形は、Fc-CLEC-1A+RAJI WCE条件(レーン5)でのみ存在する、分離したバンドを示す。アスタリスクは、単量体*(即ち、部分的に変性)及び二量体**Fc融合組換えタンパク質を示す。B:免疫沈降溶出産物を、コロイダルクーマシーで染色した4~15%ゲル上でSDS-PAGEによって分離させた。免疫沈降は、Aのように行った。四角形は、質量分析解析のためにゲルから切り出された領域を示し、Fc-CLEC-1-RAJI WCE免疫共沈降に特異的な主なバンドに相当する(レーン7及び8の四角形はAの白色の三角形に相当し、レーン5と同じ抽出物から発せられた)。レーン6及び9及び10の四角形は、見かけ上同じサイズのレベルで対照に相当する(レーン6:Fc-CLECのみ、レーン9及び10:RAJI WCEのみ)。
【
図2】CLEC-1Aのリガンド候補の解析を示す図である。
図1で説明される、SDS-PAGEから抽出された50kDaバンドの内容物、及びFc-CLEC-1と結合したビーズとの細胞タンパク質抽出物相互作用の後に得られた全溶出物の、分子解析。RAJIは、RAJI細胞から発せられた抽出物に相当する。HPB-ALLは、HPB-ALLと呼ばれる白血病細胞系(DSMZ No. ACC 483)から発せられた抽出物に相当する。
【
図3】TRIM21の、CLEC-1Aとの免疫共沈降を示す図である。RAJI細胞(レーン5~8)又はMoDC(レーン9~12)由来のWCEタンパク質の免疫沈降を、Fcのみ(レーン2、6及び10)、Fc-CLEC-1A(レーン3、7及び11)、Fc-デクチン-1A(レーン4、8及び12)又はFc融合タンパク質なし(レーン1、5及び9)を担持する磁気ビーズで行った。レーン1~4は、細胞抽出物なしで作成された対照である。A:免疫共沈降(IP)タンパク質と抗TRIM21抗体とのウエスタンブロットで明らかになったこと。TRIM21は、Fc-CLEC-1Aでの試料で明らかである(52kDaのバンド)。B:保持されていない抽出物のウエスタンブロット(IP上清から取り尽くされた試料)。Fc-CLEC-1aもまた取り尽くされる(レーン7及び11)。C:全細胞抽出物のRAJI(上)又はMoDC(下)の免疫共沈降を、50倍モル濃度過剰の多様な抗体の存在下で、Fc-CLECを固定して行った。A:負の対照抗体、B:抗TRIM21抗体(PA5-22294、Invitrogen社)。ウエスタンブロットによって、結合したTRIM21が明らかになった。
【
図4】TRIM21へのヒトFc-CLEC1及びHis-CLEC1のELISA結合を示す図である。組換えヒトTRIM21タンパク質をプレートに固定した。プレートを浸し、ビオチン化Fc-CLEC1-Aタンパク質の用量反応をTRIM21で捕捉した。Fc-CLEC1-biot及びHis-CLEC1-biotは、Hisタグ又はFcタンパク質のいずれかを有し、ビオチン化している、本明細書に記載されるようなCLEC1タンパク質に相当する。Hum Fc ctrl OSEは、自家製のヒト受容体ドメインに相当する。
【
図5】CLEC-1とTRIM21との間の結合に対する抗TRIM21抗体の拮抗活性のELISA測定を示す図である。(A)全長TRIM21タンパク質内の、抗TRIM21抗体の標的となるエピトープの局在。四角形は、TRIM21の種々のドメインを表し、矢印は、各矢印に関連する抗体によって認識される領域を表す。数字は、全長TRIM21内のアミノ酸残基の配置に対応する。(B)実験で使用される抗TRIM21抗体は、グラフの右に挙げられている。組換えヒトTRIM21タンパク質をプレートに固定した。プレートを抗TRIM21抗体に浸し、ビオチン化Fc-CLEC1タンパク質の用量反応を捕捉した。
【
図6】種々の抗CLEC1抗体(αCLEC-1 mAb #3及びαCLEC-1 mAb #5)、抗TRIM21抗体(Fisher社PA5-22295)、及びCLEC-1にもTRIM21にも結合しない対照抗体の存在下での、TRIM21とCLEC-1との間の相互作用を示す図である。(A)は、対照抗体の存在下での実験に相当するベースラインと比較した、TRIM21とCLEC1との間の相互作用のパーセンテージを表す。(B)は、上述の抗体の存在下での、TRIM21の、Fc-CLEC又はFc-対照との免疫共沈降を説明するSDS-PAGEである。(C)BIACORE。
【
図7】未処置HPC-ALL細胞と比較した、濃度の増大するFC-CLEC-1A又はFc-対照ペプチドの存在下での、ヒトマクロファージによるHPB-ALL細胞の食作用指数(phagocytosis index)を示す図である。
【
図8-1】
図8Aは、リツキシマブ(10ng/ml)及び種々の抗TRIM21抗体又は抗CLEC1抗体又は対照抗体の存在下での、TRIM-21陽性腫瘍細胞(Raji細胞)の食作用を示す図である。抗TRIM21抗体は、配列番号2のアミノ酸残基195と293との間に局在するアミノ酸配列に結合する、本明細書中でMAB-62191と呼ばれる抗TRIM21抗体に相当する。
図8Bは、リツキシマブ(10ng/ml)及び種々の抗TRIM21抗体又は抗CLEC1抗体又は対照抗体の存在下での、TRIM-21陽性腫瘍細胞(Raji細胞)の食作用を示す図である。抗TRIM21抗体は、配列番号8に示されるアミノ酸配列に対応する免疫原に結合する、本明細書中でMAB-6219(1)と呼ばれる抗TRIM21抗体に相当する。
【
図8-2】
図8Cは、リツキシマブ(10ng/ml)及び種々の抗TRIM21抗体又は抗CLEC1抗体又は対照抗体の存在下での、TRIM-21陽性腫瘍細胞(Raji細胞)の食作用を示す図である。抗CLEC1抗体は、本明細書中の、配列番号10の重鎖及び配列番号11の軽鎖を有する、αCLEC-1 mAb #5と呼ばれる抗CLEC1抗体に相当する。
図8Dは、リツキシマブ(10ng/ml)及び種々の抗TRIM21抗体又は抗CLEC1抗体又は対照抗体の存在下での、TRIM-21陽性腫瘍細胞(Raji細胞)の食作用を示す図である。Raji細胞溶解物での、抗TRIM21のウエスタンブロット。Raji細胞溶出物(50μg試料)及び対照組換えTRIM21タンパク質(0.010μg)をSDS-Pageステインフリーゲル10%(Biorad社)で移動させ、ニトロセルロース膜に転写し、抗TRIM21抗体(クローンAB01/1G5(Biorad社、#VMA00730))と共にインキュベートした後、ペルオキシダーゼ標識抗マウス抗体(Jackson Immunoresearch社#715-036-151)で明らかにした。TRIM21タンパク質は、Raji溶出物及び対照タンパク質で、50KDaで検出された。
【
図9】マクロファージ媒介性食作用に対する、TRIM21とのCLEC-1相互作用を阻害する拮抗薬モノクローナル抗体のプラスの効果を示す図である。A:CLEC-1発現を欠く(がTRIM21は発現する)腫瘍細胞系の文脈において、マクロファージ媒介性食作用活性は、TRIM21とのCLEC-1相互作用を阻害するαCLEC-1 mAb #5処置によって増強されない。B:CLEC-1とTRIM21の両方を発現する腫瘍細胞系の文脈における、TRIM21とのCLEC-1相互作用を阻害するαCLEC-1 #5での処置によるマクロファージ媒介性食作用活性の増強。
【発明を実施するための形態】
【0120】
材料及び方法
組換え可溶性ヒトFc-CLEC1タンパク質の生成
pcDNA3.1に、ヒトIgG1e3 Fc配列のN末端に融合したヒトClec-1の細胞外ドメイン(Q74-D280)をクローニングすることによって、可溶性Clec1-ヒトIgG Fcキメラ(Fc-Clec-1)を生成した。IgG1e3 Fc配列は、以下の変異E233P/L234V/L235A/ΔG236+A327G/A330S/P331S(FcγRI結合及びADCC/CDCを減少させる、IgG2及びIgG4残基への置換)を含む。詳細な配列は、技術報告書pFuse-hIgG1e3-Fc1(Invitrogen社#pfc1-hg1e3)で入手可能である。Fc-Clec配列の合成は、pcDNA3.1でのクローニングのために、5'のXhoI及び3'のXbaIの制限部位を伴って、GenScript社に注文した。哺乳動物細胞での発現のために、Kozak配列(GCCACC-配列番号10)及びIgKリーダーシグナルペプチド(METDTLLLWVLLLWVPGSTGD-配列番号9)を、配列の最初に付加した。プラスミドpcDNA3.1-Fc-ClecのミディプレップをNucleobond Xtra Midi EFキット(Macherey Nagel社#740420.50)で作成した。293fectinトランスフェクション試薬(Thermo Fisher社#12347019)を使用した一過性形質転換によって、Hek FreeStyle細胞(Thermo Fisher社#R79007)で組換えFc-Clecタンパク質を生成した。60.106個のHek FreeStyle細胞を、60mlのFreeStyle293培地(Thermo Fisher社#12338018)中の60μgのプラスミドpcDNA3.1-Fc-Clec及び120μlの293fectinでトランスフェクトした。生成を5日間維持し、次いで上清を30分間3000Gの遠心分離によって澄ませ、0.22μM Stericup(Merck Millipore社#SCGPU05RE)でろ過した。澄ませた上清をHiTrapプロテインAカラム(GE社#17040201)で、0.1Mクエン酸pH3の溶出で精製した。溶出物をMicrosep Advance 10kDa(Pall #MCP010C41)で濃縮し、0.22μMフィルターでろ過した。
【0121】
単球由来樹状細胞(MoDC)の導入
MoDCは、典型的な単球キットMiltenyi(130-117-337)又はCD14ビーズ(130-050-201)での磁気PBMC分離後に得られた単球から生成した。単球は、50ng/ml GM-CSF(Miltenyi-130-095-372)及び20ng/ml IL-4(Miltenyi-130-093-917)を添加した完全RPMI培地(10%FCS、1%PS、1%L-Gln、1x ピルビン酸Na、1x NEAA、1mM HEPES)中の培養物中で6~7日間の分化を経た。20ng/ml TGFbの存在下での2日間の培養によって、未熟な樹状細胞(iDC)を更に完全に分化したMoDCにした。
【0122】
細胞からの全細胞タンパク質抽出物(WCE)の生成
リンパ芽球細胞系RAJI及びMoDC細胞を広範囲にわたって冷PBSで洗浄した。次いで、細胞ペレットを、PBS(Corning社)、1%NP-40、0.25%デオキシコール酸Na、1xプロテアーゼ阻害剤カクテル(PIC)(全てSigma Aldrich社)で構成される5体積の氷冷された穏やかなRIPA-IP溶解バッファーに再懸濁した。細胞溶解を完了するために、試料を-150℃の急速冷凍に供し、その後氷冷水で解凍した。サイクルを2回繰り返した。細胞溶解物を、14000gで15分間、4℃の遠心分離によって澄ませた。タンパク質濃度をBCAアッセイによって評価した。
【0123】
Fc融合タンパク質免疫沈降及び候補バンド単離
製造業者の推奨に従って、プロテインG SureBeads磁気ビーズ(Biorad社)を調製し、PBS+0.1%Tween-20(Sigma Aldrich社)に再懸濁した。30pmolのFc融合タンパク質(Fcのみ、Fc-CLEC-1、又はFc-hデクチン-1A(Invivogen社))を、IPあたり30ulの元の体積のビーズに加えた。Fc融合タンパク質を、+4℃で、回転輪上で1時間ビーズに結合させた。PBS-tween中で3回の洗浄と、その後のPBS中で1回の洗浄の後、1mgのWCE抽出物を、冷PBS+1x PICの、600ulの終体積で加えた。相互作用を2~3時間、+4℃で、回転輪上で行った。上清を収集し、磁気ビーズを、車輪上で、600ul中で5分間の洗浄に供し、その後、全て+4℃で、2分間の磁気捕捉に供した;PBS中で1回、500mM NaClを含むPBS中で2回、PBS中で2回。250mM DTT(Sigma Aldrich社)を含む1x Laemmliバッファー(Biorad社)で構成される15ulの溶出バッファー中、室温で10分間のインキュベーションの後、結合したタンパク質を回収した。溶出物を収集し、タンパク質をSDS-PAGEで分離させた。SDS-ポリアクリルアミドゲルをコロイダルクーマシー:0.08%クーマシーブリリアントブルーG250、10%クエン酸、8%硫酸アンモニウム(全てSigma Aldrich社)、20%メタノール(Fisher社)で6時間~一晩、ゆっくり振とうさせながら染色した。バックグラウンドが透明になるまで、ゲルを蒸留水で脱染した。目的のバンドを切り出し、質量分析解析によって研究した。
【0124】
ゲル内消化、抽出及び質量分析解析
バンドの押し出しの後、ゲルプラグを50μLの25mM炭酸水素アンモニウム(NH4HCO3)及び50μLのアセトニトリルで4回洗浄した。システイン残基を50μLの10mMジチオスレイトールによって57℃で還元し、50μLの55mMヨードアセトアミドによってアルキル化した。アセトニトリルでの脱水の後、タンパク質を、25mM NH4HCO3中の200ngの修飾ブタトリプシン(Promega社)でゲルから切断した。37℃で一晩消化を行った。生成したペプチドを、0.1%ギ酸中の60%アセトニトリルで抽出し、その後100%アセトニトリルでの二回目の抽出を行った。アセトニトリルを真空下で蒸発させ、ペプチドを25μLのH2O及び0.1%ギ酸に再懸濁した後、質量分析解析を行った。ナノエレクトロスプレーイオン源を備えたTripleTOF 5600質量分析計(AB Sciex社)と結合させたnanoACQUITY Ultra-Performance_LCシステム(Waters社、ミルフォード、MA)で、トリプシンペプチドのNanoLC-MS/MS解析を行った。
【0125】
試料をSymmetry C18プレカラム(20×0.18mm、5μm、Waters社)で捕捉し、ACQUITY UPLC(登録商標)BEH130C18カラム(75μm×250mm、1.7μm粒子径、Waters社)でペプチドを分離させた。溶媒系は、水中の0.1%ギ酸(溶媒A)及びアセトニトリル中の0.1%ギ酸(溶媒B)からなった。捕捉は、99%の溶媒A及び1%の溶媒Bで、5μL/分で3分間の間に行われた。60分にわたって3~25%勾配(溶媒B)の後20分にわたって25~40%勾配、次いで60℃で10分にわたって80%(溶媒B)を使用して、300nL/分の流速で溶出を行った。
【0126】
下記の設定で、質量分析計をポジティブモードで稼働させた:イオンスプレー浮遊電圧(ISVF)2300V、Curtain Gas(CUR)25psi、インターフェースヒーター温度(IHT)75℃、イオン源ガス1(GS1)2psi、デクラスタリング電圧(DP)100V。上位5つのMS/MSスキャンで、情報依存取得(information-dependent acquisition)(IDA)モードを使用した。MSスキャンは、m/z[400~1250]範囲で50分の蓄積時間を有し、MS/MSスキャンは高感度モードで50分m/z[150~1600]範囲を有した。切り替え基準は、電化状態が2~4のイオンに定められ、豊富さの閾値は150カウントより多く、排除時間は12秒に定めた。自動的にCEを適合させるために、IDAローリングコリジョンエネルギースクリプト(rolling collision energy script)を使用した。分析計の質量較正は、消化されたBSA由来のペプチドを使用して達成した。完全なシステムは、AnalystTF 1.6(AB Sciex社)によって完全に制御された。
【0127】
収集された生のデータを処理し、「.mgf peak list」形式に変換した。
【0128】
データ解析及びタンパク質同定
検索エンジンMASCOT 2.6.2アルゴリズム(Matrix Science社)を使用した。同じ逆向きの配列と連結するHumanデータベースに対して、検索を行った(「Target/Decoy」データベース)。切断酵素としてトリプシンを選択し、最大1のmissed cleavageを許容し、Variable Modification(メチオニン残基の酸化)は1、Fixed Modification(システインのカルバミドメチル化)は1を指定した。
【0129】
MSは20ppm、MS/MSデータは0.07DaのMass Toleranceで、スペクトルを検索した。
【0130】
検証のために、Mascotの結果をProlineソフトウエアにロードした(http://proline.profiproteomics.fr)。検証のために、1%の偽発見率(FDR)をタンパク質セットに適用した(タンパク質レベルで)。
【0131】
ウエスタンブロット
SDS-PAGEによって分離したタンパク質をニトロセルロース膜に転写した後、PBS-tween+5%BSA(Sigma社)中でブロッキングを完了した。膜を、抗TRIM-21(SCBT社sc-25351 1/1000e)と共に4℃で一晩(O/N)、及び抗マウス-HRPコンジュゲート(Jackson社)と共に連続的にインキュベートし、Clarity ECL基質(Biorad社)で明らかにした。
【0132】
ELISA
ELISAによって、Fc-CLEC-1AとTRIM21との相互作用の測定を行った。PolySorp 96ウェルプレート(Nunc社)を、1ウェルあたり50μlの、炭酸塩バッファー(pH9.2)中2μg/mlのTRIM21-his(Sino社18010-H07B)で、4℃で一晩コートした。プレートをSuperBlockバッファー(#37515、Thermo Fisher社)に浸した。Fc及びFc-CLEC-1A biot結合タンパク質を、50μlのPBS-Tween 0.05%-BSA 1%中30μg/mlの濃度で、37℃で2時間捕捉した。広範囲な洗浄の後、結合したタンパク質を、50μl/ウェルの、PBS-Tween 0.05%中1/1000希釈のストレプトアビジン-PO(JIR社016-030-084)で、37℃で1時間検出し、TMB(Sigma社T8665)を顕色に使用した。
【0133】
CLEC1/TRIM21結合相互作用に対する市販の抗TRIM21抗体の拮抗薬効果を、ELISAによって測定した。組換えヒトTRIM21タンパク質(#18010-H07B、Sino Biological社)を、炭酸塩バッファー(pH9.2)中2μg/mlで、4℃で一晩、96ウェルPolySorpプレートに固定した。プレートをSuperBlockバッファー(#37515、Thermo Fisher社)に浸し、市販の抗TRIM21抗体を過剰に加えた(20μg/ml)。ビオチン化ヒトFc-CLEC1(#07/08/20、OSE IMMUNO社)又はHis-CLEC1(#1704-CL、Biotechne社)タンパク質を30μg/mlで用量反応的に(in dose response)加え、結合を測定した。インキュベーション及び洗浄の後、ストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ(#016-030-084、Jackson Immunoresearch社、USA)を加え、従来の方法によって明らかにした。
【0134】
BiacoreでのCLEC/TRIM21相互作用
プラットフォームPP2I(Montpellier社、フランス)によって、T200(Cytiva社、フランス)で解析を行った。組換えヒトTRIM21タンパク質(バキュロウイルスで産生、Sino Bio社#18010-H07B)を、酢酸塩10mM pH5バッファー中20μg/mlでCM5センサーチップ(Cytiva社)に固定した。固定されたTRIM-21組換えタンパク質に、His-CLEC(NSO細胞系で産生、Biotechne社#1704-CL)を、1μMで単独で、又は拮抗する抗CLEC mAbとのコインキュベーションの後に5μMで、注射した。
【0135】
co-IPによる拮抗アッセイ
量を調節し、下記の変更を伴って、上述のFc融合タンパク質免疫沈降方法のように、co-IPを行った:5pmolのFc融合タンパク質、150ug WCE、及び拮抗活性について試験される250pmolの抗体を、各反応で使用した。抗体を、+4℃で30分間、抗TRIM抗体についてはそれらの標的(WCE)と共に;抗CLEC抗体についてはFc-CLEC融合タンパク質を担持するビーズに抽出物をロードする前に、ビーズに結合したFc-CLEC融合タンパク質と共に、インキュベートした。溶出したタンパク質をSDS-PAGEによって分離させ、ウエスタンブロットで明らかにした。ChemiDocイメージングシステム(Biorad社)を通して定量化を行った。
【0136】
食作用アッセイ
無血清RPMI中で、CellTracker Green(Thermo Fisher社、ウォルサム、マサチューセッツ州、USA、1/2000、37℃で20分間)で標識した2.5×10
4個のヒトM1マクロファージ及びCPD(Thermo Fisher社、1/2000、37℃で10分間)で標識した5×10
4個の白血病HPB-ALL細胞又はRaji細胞の1時間の共培養によって、インビトロ食作用アッセイを行った。CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman社、ブレア、カリフォルニア州、USA)及びFlowJoソフトウエア(TreeStar、BD Life Sciences社、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州、USA)を使用した解析によって、食作用を解析した。食作用指数を、下記のように計算した:対照ウェル(処置なし)で検出されるものと比較した、CTG+マクロファージ中のCPD+細胞のパーセンテージの発現量比(fold change)に、対照ウェル(処置なし)で検出されたものと比較した、CTG+マクロファージ中のAPC蛍光(CPD)の幾何平均の発現量比を掛けた。適用された処置は、
図9に示される濃度のFc対照(IgG1-E3)若しくはFcCLEC1A(IgG1-E3)、又は10μg/mlの濃度のMAB-6219(1)及びMAB-62191と呼ばれる抗TRIM21抗体若しくはαCLEC-1 mAb #5と呼ばれる抗CLEC1抗体であった(
図8)。αCLEC-1 mAb #5と呼ばれる抗CLEC1抗体は、配列番号10の重鎖可変ドメイン及び配列番号11の軽鎖可変ドメインを有する。
【0137】
TRIM21+/CLEC1+対TRIM21+/CLEC1-腫瘍細胞の初代ヒトマクロファージ媒介性食作用。無血清RPMI中での、15分間の、CellTracker Green(Thermo Fisher社、ウォルサム、マサチューセッツ州、USA、1/2000、37℃で20分間)で標識した2.5×10
4個のヒトM1マクロファージと、CPD(Thermo Fisher社、1/2000、37℃で10分間)で標識された5×10
4個の腫瘍細胞との共培養によって、インビトロ食作用アッセイを行った。これらのアッセイで使用された腫瘍細胞は、CLEC-1ではなくTRIM21を発現するTHP1細胞、又はTRIM21とCLEC-1の両方を発現するTHP1細胞であった(CLEC-1遺伝子のヒト全長配列のレンチウイルス形質導入によって導入されたCLEC-1発現)。CytoFLEXフローサイトメーター(Beckman社、ブレア、カリフォルニア州、USA)及びFlowJoソフトウエア(TreeStar、BD Life Sciences社、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州、USA)を使用した解析によって、食作用を解析した。食作用指数を、下記のように計算した:アイソタイプ対照での処置によって検出されたものと比較した、CTG+マクロファージ中のCPD+細胞のパーセンテージの発現量比に、アイソタイプ対照で検出されたものと比較した、CTG+マクロファージ中のAPC蛍光(CPD)の幾何平均の発現量比を掛けた。
図9の、このアッセイで使用される拮抗薬モノクローナル抗体は、αCLEC-1 mAb #5及び対応するアイソタイプ対照(evitria社、シュリーレン、スイス)である。
【実施例1】
【0138】
CLEC-1のリガンドとしてのTRIM21の同定
ライブラリーから、又は強力なイオン性界面活性剤の条件下で得られた内在性細胞タンパク質からCLEC-1Aリガンドを捕捉しようとする以前の試みは、成功しなかった。RAJI細胞系由来の透過性細胞中でCLEC-1Aリガンドが豊富に見られることが示された。これらの細胞は、細胞培養物中で容易に拡張可能なので、リガンドが入手可能な、大量の細胞タンパク質抽出物が調製できた。強力な界面活性剤を使用する、以前の試みは、更に豊富な細胞内リガンドの捕捉ができなかったので、問題は、細胞から抽出されたリガンドの質及び統合性であった。かかる統合性を得るために、出願人は、より穏やかな界面活性剤抽出及び相互作用条件に焦点を当てて、特定の適切な条件を調査した。
【0139】
アニオン性界面活性剤含量の低いRIPA-IPバッファー中でRAJI細胞を溶解させ、凍結融解サイクルの繰り返しによる機械的な細胞コンパートメント破壊に供した。得られた全細胞抽出物(WCE)由来のCLEC-1のリガンドを同定するために、ヒトIgGのFc部分に融合した二量体形のヒトCLEC1A細胞外ドメインで構成される融合タンパク質を使用した。CLEC7a(デクチン-1)融合タンパク質及び二量体Fc断片を対照として使用した。まず、Fc、Fc-CLEC1A又は捕捉なしのタンパク質(no capture protein)を、Fc断片を通してプロテインG磁気SureBeadsに直接結合させた。RAJI WCEを、タンパク質と結合したこれらのビーズとの相互作用に供し、界面活性剤濃度は低いが塩濃度は高い条件下で注意深く洗浄し、加熱なしで250mM DTTで溶出させた。溶出したタンパク質のSDS-PAGE分離から、Fc-CLEC-1Aに特異的なバンドがほんの少ししかない(
図1A、レーン5)、対照条件で明らかなバックグラウンドが明らかになった(
図1A、レーン1~4)。低いバックグラウンドから、変性なしにリガンドを捕捉するには穏やかな相互作用条件が必要であるという本発明者らの仮説が確認された。質量分析解析のために、実験を二通りに繰り返して、50kDaの辺りのFc-CLEC1Aの目立った特定のバンドを切り出した(
図1B)。
【0140】
このバンドに関して、又はRAJI若しくはHPB-ALL WCEとビーズに結合したFc-CLEC対Fcのみとの相互作用の後に得られた溶出物全体に関して、質量分析解析を行った。生のデータをフィルタリングして、典型的な不純物(例えば、皮膚タンパク質)及びFcに結合したタンパク質を排除した。最終的な短いリストは、少なくとも7つの特定のペプチドと同一視されたタンパク質を含む(
図2)。TRIM21 E3ユビキチンタンパク質リガーゼは、この短いリストから傑出しており、RAJI細胞に関する3通りの条件及びHPB-ALL細胞に関する単純な条件で、50%を超える配列包括度で同一視される唯一のものである。他の候補は、より低いスコアを有し、主に細胞骨格タンパク質及び豊富な細胞タンパク質であった。
【実施例2】
【0141】
TRIM21とCLEC-1との間の相互作用
TRIM21は細胞内Fc受容体として公知なので、Fc-CLEC-1Aへの結合が、そのFc部分ではなくCLEC-1A自体を通して媒介されることを検証することは、重要である。Fc、及び対照としてのFc-デクチンを使用して、このように免疫沈降を繰り返し、抗TRIM21ウエスタンブロットによって、結合したタンパク質が明らかにされた。RAJI細胞抽出物で、これによって、RAJI WCE由来のTRIM21がFc-CLEC-1Aと強力に免疫共沈降(co-IP)した(
図3A、レーン7)が、シグナルはFc-デクチンでは検出不能であり(レーン8)、Fcのみでははるかに低かった(レーン6)ことが確認された。この弱いシグナルは、実際、主に、細胞抽出物非存在下のFcのみによって生じるバックグラウンドシグナルによるものであり、おそらく二次HRPコンジュゲート抗マウスFc抗体によるFcの交差反応性の検出によるものである。Fcのみを担持しているビーズ、Fc-デクチンを担持しているビーズ又はFc融合タンパク質なしのビーズではなくFc-CLEC-1Aを担持している磁気ビーズによってのみ(レーン7をレーン5、6及び8と比較)、保持されなったタンパク質(
図3B)を含むIP反応の後の上清からTRIM21が枯渇していることによって、Fc-CLEC-1AとTRIM21との間の特異的相互作用は更に維持された。開始内在性タンパク質混合物として単球由来樹状細胞(MoDC)タンパク質抽出物を使用して、実験を繰り返した。同じ特異的なTRIM21のco-IPを観察し(
図3A、レーン11)、CLEC-1Aによるタンパク質抽出物から、更により強い相互作用シグナル及び非常に明らかなTRIM21の枯渇が観察された(
図3B、レーン11)。まとめると、これらの実験から、融合タンパク質のFc部分を通して媒介されないがCLEC-1A自体を通して媒介される、Fc-CLEC-1Aと内在性TRIM21との間の強力で特異的な相互作用が証明される。この相互作用の現実性は、本発明者らが、以前に透過性RAJI細胞及びMoDC細胞へのCLEC-1A結合を観察したことによって維持される。
図3Cで、負の対照抗体(レーン3)と比較して、抗TRIM21抗体が、固定されたCLEC-1へのTRIM21の結合を防いだ(レーン4)ことが説明されており、そのため、抗TRIM21抗体の、CLEC-1/TRIM21相互作用に対する拮抗薬効果が示されている。
【0142】
免疫共沈降から、細胞タンパク質混合物におけるCLEC-1Aと内在性TRIM21との間の相互作用が明らかである。しかしながら、細胞抽出物中で介在し得るいかなるパートナーもない直接相互作用を証明するために、組換えFc-CLEC1A、His-CLEC1A及びTRIM21タンパク質で、ELISA実験を行った。TRIM21に結合したFc結合又はHis結合タンパク質のELISA用量依存性曲線から、1μg/mlの濃度且つFc融合タンパク質対照のいずれとも結合なしで開始する、TRIM21へのCLEC-1Aの選択的結合が明らかになった(
図4A)。興味深いことに、Fc単独(Fc-biot対照)への結合はなく、これらの濃度ではCLEC-1AとTRIM21との間の相互作用がFc断片を通して媒介されなかったことが示唆された。更に、TRIM21と他のC型レクチン受容体デクチン-1(
図4B)との間に相互作用は観察されず、特異的で選択的なTRIM21-CLEC-1A直接相互作用が支持された。ヒトHis-CLEC1及びヒトFc-CLEC1は、それぞれ13及び15μg/mlのEC50でヒトTRIM21に結合する。これは、
図4Bに更に説明されており、ここで10μg/mlの固定濃度で(CLEC1A又は対照)、Fc-CLEC1Aは、コートされたTRIM21タンパク質と相互作用する唯一のタンパク質である。コートされたTRIM21の非存在下で、いずれのFc融合タンパク質とも非特異的結合は観察されなかった。
図4Cで説明されるように、10μg/mlの濃度でFc-CLEC-1はTRIM21でコートされた表面に結合し、TRIM21でコートされていない表面に結合することができない。したがって、TRIM21とCLEC-1が相互作用することが明らかである。したがって、TRIM21又はCLEC1Aに結合し、これらの2つの分子の間の相互作用に拮抗することができる化合物は、特にTRIM21及び/又はCLEC-1、具体的にはTRIM21/CLEC-1シグナル伝達経路を伴う疾患を処置するための、潜在的な治療剤を代表する。このELISA相互作用検証によって、co-IPの結果が確認され、リンパ腫細胞又は樹状細胞由来の内在性TRIM21とCLEC-1Aとの直接相互作用が検証され、そのため第1の内在性CLEC-1Aリガンドが同定される。
【0143】
要約すると、ビオチン化His-CLEC-1A及びFC-CLEC1Aは、TRIM21に結合する。CLEC-1とTRIM21との間の結合はFcドメインと関連がなく、これらの実験から、CLEC-1とTRIM21との間の直接相互作用が説明される。このCLEC-1とTRIM21との間の直接相互作用を更に説明するために、ビオチン化Fc-CLEC-1及びHis-CLEC-1を、ヒトTRIM21でコートした表面又はコートしていない表面に加えた。
【実施例3】
【0144】
CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬化合物
5つの市販の抗TRIM21抗体を、TRIM21/CLEC1相互作用に対するそれらの拮抗活性について試験した。
【0145】
【0146】
抗TRIM21拮抗薬抗体sc-25351、PA5-22294、PA5-18147及びMAB-62191、MAB-621911は、特に見込みのある、CLEC1AとTRIM21との間の相互作用に対する拮抗である。
図5Aで、本実施例で使用される各抗TRIM21抗体とTRIM21タンパク質との間の相互作用のドメインは局在している。
図5Bで観察されるように、Fc-CLEC1とTRIM21との間の相互作用は、これらの抗体によって、50%より大きく減少する。よって、いくつかの異なる抗TRIM21抗体が、CLEC-1とTRIM21との間の結合を特異的に拮抗する。
【0147】
抗CLEC-1及び抗TRIM21拮抗薬抗体はまた、対応するアッセイにおいて、TRIM21/CLEC-1相互作用に対するそれらのそれぞれの効果を評価するために試験した。これらの実験において、2つの組織内の抗CLEC-1抗体(αCLEC-1 mAb #3及び#5)及び抗TRIM21抗体Fisher社PA5-22295の拮抗薬効果を比較した;これらの3つの抗体は、CLEC-1とTRIM21との間の結合をそれぞれ40%、55%及び65%減少させる(
図6A)。Fc-CLECによる細胞内在性TRIM-21のco-IPでの拮抗薬アッセイで、同じ効果が測定された(
図6B)。これらの結果から、抗TRIM21抗体が、CLEC-1とTRIM21との間の相互作用を減少させるか、又は阻害するために、有用であり得ることが説明される。
【実施例4】
【0148】
CLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路を遮断する化合物の存在下での、骨髄系細胞によるTRIM21陽性細胞の食作用
CLEC-1AとTRIM21との間の結合を破壊する化合物であるFc-CLEC1Aの存在下での、T細胞白血病のモデルであるHPB-ALL細胞の食作用の結果が
図7に説明されている。本発明者らは、CLEC1AとそのリガンドであるTRIM21との相互作用を予防する、TRIM-21陽性細胞であるT-ALL細胞系HPB-ALLの、FcCLEC1Aでの処置によって、HPB-ALL細胞に対するヒトマクロファージの食作用活性の増大が誘導されることを見出したが、この現象は、Fc対照での腫瘍細胞の処置の際には検出されない。
【0149】
図8で、TRIM21陽性腫瘍細胞(Raji細胞)に対する、全てCLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬であるリツキシマブ及び種々の抗TRIM21抗体(
図8A~
図8B)又は抗CLEC-1抗体(
図8C)での併用療法で得られた結果が説明されている。
図8Dに説明されるように、Raji細胞は、TRIM21陽性腫瘍細胞である。2つのタイプの抗体が投与される場合、TRIM21陽性腫瘍細胞(RAJI細胞)の食作用は、抗TRIM21抗体が存在しない場合の、25%の食作用のパーセンテージと比較して、全TRIM21陽性腫瘍細胞(Raji細胞)のおよそ40%である。よって、TRIM21陽性腫瘍細胞(RAJI細胞)の食作用は、CLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路が妨害された場合に、かなり向上する。
【0150】
図9は、マクロファージ媒介性食作用に対する、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬である抗CLEC-1抗体のプラスの効果を説明する。マクロファージ媒介性食作用活性は、CLEC-1発現を欠く(がTRIM21を発現する)腫瘍細胞系の文脈において、当該抗CLEC-1抗体によって増強されなかった。しかしながら、CLEC-1とTRIM21との間の結合の拮抗薬である抗CLEC-1抗体は、CLEC-1とTRIM21の両方を発現する腫瘍細胞系の文脈において、マクロファージ媒介性食作用活性を増強した。これらのデータの全てから、CLEC1Aと、そのリガンドであるTRIM21との相互作用の阻害のための、機能的な適用が提供される。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-02-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を患っているヒト対象の処置における使用のための、CLEC-1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である、化合物。
【請求項2】
CLEC-1、特にヒトCLEC-1に結合するか、又はCLEC-1、特にヒトCLEC-1の機能的同等物であるポリペプチドである、請求項1に規定の使用のための、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
CLEC-1/TRIM21シグナル伝達経路を阻害し、CLEC1、特にヒトCLEC-1に結合するか、又は機能性CLEC1の発現を減少させるか、又はCLEC1の機能的同等物であるポリペプチドである、請求項1又は2に規定の使用のための、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
CLEC-1、特にヒトCLEC-1、より具体的にはヒトCLEC-1の細胞外ドメインに結合し、抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスである、請求項2又は3に規定の使用のための、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
キメラ抗体、ヒト化抗体、組換え抗体、完全ヒト化抗体、モノクローナル抗体、脱免疫化抗体、特にヒト化モノクローナル抗体である、請求項4に規定の使用のための、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
配列番号10の重鎖可変ドメイン及び配列番号11の軽鎖可変ドメインを有する抗CLEC-1A抗体と、CLEC-1、特にヒトCLEC-1への結合について競合する、請求項4又は5に規定の使用のための、請求項4又は5に記載の化合物。
【請求項7】
ヒトCLEC-1の機能的同等物であるポリペプチドであり、特に前記ポリペプチドは免疫グロブリン定常ドメインに融合している、請求項2又は3に規定の使用のための、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項8】
骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力を増大させ、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる、TRIM21陽性細胞、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増大させ、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増大させる、請求項1から7のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
TRIM21陽性腫瘍細胞の食作用を増大させることによる、請求項1から8のいずれか一項に規定の使用のための、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
TRIM21、特にヒトTRIM21に結合するか、又はTRIM21、特にヒトTRIM21の機能的同等物であるポリペプチドである、請求項1又は2に規定の使用のための、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項11】
骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力を増大させ、特に、樹状細胞及び/マクロファージによるTRIM21陽性腫瘍細胞の食作用を増大させ、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによる、腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又はTRIM21陽性二次壊死細胞の食作用を増大させる、請求項10に規定の使用のための、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
対象が、TRIM21陽性腫瘍を有する癌を患っている、請求項10又は11に規定の使用のための、請求項10
から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
ヒト対象が、TRIM21陽性腫瘍細胞
及びCLEC-1陽性腫瘍細胞を有する癌を患っている、請求項
1から12のいずれか一項に規定の使用のための、請求項
1から
11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
抗体、その抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクス、又はTRIM21の機能的同等物であるペプチド若しくはポリペプチドであり、
特に前記ポリペプチドが免疫グロブリン定常ドメインに融合している、請求項
11から13のいずれか一項に規定の使用のための、請求項
11から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
TRIM21のコイルドコイルドメイン、特に配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基128と238との間に局在するコイルドコイルドメイン内に局在するエピトープ配列に結合及び/又はTRIM21のPRY-SPRYドメイン、特に配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基268と465との間に局在するPRY-SPRYドメイン内に局在するエピトープ配列に結合する、請求項
11から14のいずれか一項に規定の使用のための、請求項
11から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
キメラ抗体、ヒト化抗体、組換え抗体、完全ヒト化抗体、モノクローナル抗体、脱免疫化抗体、特にヒト化モノクローナル抗体である、請求項
11から15のいずれか一項に規定の使用のための、請求項
11から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
抗TRIM21抗体sc-25351、PA5-22294、PA5-18147及びMAB-62191からなるリストの中から選択される少なくとも1つの競合抗体と、TRIM21への結合について、特にTRIM21のコイルドコイルドメイン、特に配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基128と238との間に局在するコイルドコイルドメイン内に局在する連続するアミノ酸残基への結合について、及び/又はTRIM21のPRYSPRYドメイン、特に配列番号2のTRIM21のアミノ酸残基268と465との間に局在するPRYSPRYドメイン内に局在する連続するアミノ酸残基への結合について
競合する、抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスであり、前記抗体、その抗原結合断片、又は抗原結合抗体ミメティクスが、骨髄系細胞、特に樹状細胞及び/又はマクロファージの食作用能力を増強し、特に、樹状細胞及び/又はマクロファージによるTRIM21陽性細胞、より具体的にはTRIM21陽性腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増大させ、特に樹状細胞及び/又はマクロファージによる腫瘍細胞及び/又は二次壊死細胞の食作用を増大させる
、請求項11から16のいずれか一項に規定の使用のための、請求項11から16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
TRIM21陽性細胞の食作用を増大させることによる、請求項
11から
17のいずれか一項に規定の使用のための、請求項
11から
17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を患っているヒト対象の処置における、同時使用、別々の使用又は連続的使用のための、第一の治療剤と、少なくとも1つの更なる治療剤を含む、化合物の組合せであって、
a)第一の治療剤が、請求項1から
18のいずれか一項に規定の化合物であり、
b)更なる治療剤の少なくとも1つが、腫瘍標的化抗体若しくはその抗原結合断片、特に腫瘍標的化モノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片、骨髄系細胞、特にマクロファージによる、腫瘍細胞の食作用を活性化及び/若しくは増強する腫瘍標的化モノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片、又はより具体的にはアレムツズマブ、アテゾリズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ハーセプチン、パニツムマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、抗PDL-1抗体及び抗CD47抗体からなる群から選択されるモノクローナル抗体、並びに/又は抗PD1抗体及び抗SIRP抗体からなる群から選択される別の抗体若しくはモノクローナル抗体、並びに/又は化学療法薬、特に抗増殖性、アポトーシス促進性、細胞周期停止、及び/若しくは分化誘導効果を有する細胞傷害性薬物、より具体的には細胞傷害性抗体、アルキル化薬、アントラサイクリン、代謝拮抗剤、微小管阻害薬剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アルカロイド、ブレオマイシン、抗悪性腫瘍薬、シクロホスファミドからなる群から選択される細胞傷害性薬物からなるリストから選択される、化合物の組合せ。
【請求項20】
第1の治療剤が、
TRIM21に結合する、抗体、その抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクス、又はTRIM21、特にヒトTRIM21の機能的同等物であるペプチド若しくはポリペプチドからなる群から選択される、請求項
19に記載の化合物の組合せ。
【請求項21】
第1の治療剤が、
CLEC-に結合する、抗体、その抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクス、又はCLEC-1、特にヒトCLEC-1の機能的同等物であるペプチド若しくはポリペプチドからなる群から選択される、請求項
19に記載の化合物の組合せ。
【請求項22】
第1の治療剤が、CLEC-1に結合し、配列番号10の重鎖可変ドメイン及び配列番号11の軽鎖可変ドメインを有する抗CLEC-1A抗体と、CLEC-1、特にヒトCLEC-1への結合について競合する、抗体、その抗原結合断片、抗原結合抗体ミメティクスからなる群から選択される、請求項
21に記載の化合物の組合せ。
【請求項23】
第1の治療剤が、CLEC-1の機能的同等物であるポリペプチドであり、特に前記ポリペプチドは免疫グロブリン定常ドメインに融合している、請求項
21に記載の化合物の組合せ。
【請求項24】
C型レクチン様受容体1(CLEC-1)と三要素モチーフ含有タンパク質21(TRIM21)との間の相互作用を調節する化合物、特に増強するか、又は減少させる化合物、より具体的には阻害する化合物、特にCLEC-1とTRIM21との間、特にヒトCLEC-1とヒトTRIM21との間の結合の拮抗薬である化合物を選択するための方法であって、前記方法が、
a)少なくとも1つの化合物を提供し、
それ(それら)がCLEC1とTRIM21との間の相互作用に干渉する能力、より具体的にはCLEC-1とTRIM21との間の結合に競合又は拮抗する能力を評価する工程であって、特に前記相互作用はCLEC-1と、TRIM21の少なくとも1つのドメインとの間で決定される、工程、
b)前記化合物の存在下で、
CLEC-1とTRIM21との間の結合を測定する工程、
c)化合物が、負の対照と比較して、工程b)で測定された
CLEC1とTRIM21との間の結合を増強するか、又は減少させる場合、
CLEC-1とTRIM21との間の相互作用を調節する化合物、特にCLEC-1とTRIM21との間の相互作用を増強するか、又は減少させる化合物を同定する、工程
を含む、方法。
【請求項25】
TRIM21陽性腫瘍細胞を有する癌を処置するのに有用な化合物を選択するための方法であって、請求項
24に規定される方法を行う工程を含み、
CLEC1とTRIM21との間の相互作用、特にCLEC-1とTRIM21との間の結合を調節する化合物が選択される、方法。
【国際調査報告】