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特表2024-542414人間の病状を判断するためのデータ分析のシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】人間の病状を判断するためのデータ分析のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20241108BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61B5/00 G
A61B10/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527311
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 IB2022060595
(87)【国際公開番号】W WO2023084363
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/277,456
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523473084
【氏名又は名称】アルトイダ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Altoida,Inc.
【住所又は居所原語表記】80 M St SE,Washington,District of Columbia 20003 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】タルナナス,イオアニス
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XB02
4C117XB09
4C117XB12
4C117XC11
4C117XC21
4C117XE13
4C117XE26
4C117XE27
4C117XE28
4C117XE37
4C117XE43
4C117XJ18
4C117XJ34
4C117XJ35
(57)【要約】
個人の病状を判断するためのシステムであって、被験者と関連付けられたセンサから、被験者からの第1の組のデジタル・バイオマーカを取得し;第1の組のデジタル・バイオマーカから、デジタル神経シグネチャを生成し;デジタル神経シグネチャから、第1のデジタル神経フィンガープリントを生成し、そのフィンガープリントは、第1のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、第1の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較であり;第1のデジタル神経フィンガープリントから、被験者の第1の病状を特定し;1つ又は複数のセンサから第2の組のバイオマーカを取得して、第2のデジタル神経シグネチャを生成し、それから、第2のデジタル神経フィンガープリントを生成し、その第2のデジタル神経フィンガープリントは、前記第2のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第2の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較であり;第2のデジタル神経フィンガープリントから、被験者の第2の病状を特定し;第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて、データパターンを特定し、第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおけるパターンを利用して、第1のデジタル神経フィンガープリントにおいて第2の病状を特定することを含む。システム及び方法は、そのコア・データセットから明らかにならない病状を含む、患者の病状を判断するために異なるソースからのバイオマーカ・データを相関させることができる。それらは、生物学的症状が従来の診断法により明らかになるよりずっと前に、個人の認知状態または健康状態の識別に使用され得る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の病状を判断する方法であって、
被験者と関連付けられた1つ又は複数のセンサから第1の組のデジタル・バイオマーカを取得し、
前記第1の組のデジタル・バイオマーカから、その被験者の第1のデジタル神経シグネチャを生成し、
前記第1のデジタル神経シグネチャから、第1のデジタル神経フィンガープリントを生成し、前記第1のデジタル神経フィンガープリントは、前記第1のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第1の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較であり、
前記第1のデジタル神経フィンガープリントから、被験者の第1の病状を特定し、
1つ又は複数のセンサから第2の組のバイオマーカを取得して、それから第2のデジタル神経シグネチャを生成し、
前記第2のデジタル神経シグネチャから、第2のデジタル神経フィンガープリントを生成し、前記第2のデジタル神経フィンガープリントは、前記第2のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第2の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較であり、
前記第2のデジタル神経フィンガープリントから、被験者の第2の病状を特定し、
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて、何らかのデータパターンを特定し、
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて特定された何らかのパターンを利用して、前記第1のデジタル神経フィンガープリントにおいて、前記第2の病状を特定すること、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる被験者に関して取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる病状と関連付けられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、疾病または病気の異なるステージと関連付けられる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の組のバイオマーカは、疾病または病気の症状発現前ステージと関連付けられ、前記第2の組のバイオマーカは、疾病または病気の前駆症状ステージ又は臨床ステージと関連付けられる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる疾病または病気と関連付けられる、請求項3、4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて特定された何らかのパターンを使用して、前記第1のデジタル神経フィンガープリントにおける前記第1の病状の判定を強化する、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記閾値は、所定の状態を有すると考えられる被験者のグループにおけるそのバイオマーカの平均値を表わす、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記所定の状態は、健康な状態である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
一組の被験者から取得された一組の前記第1のデジタル神経フィンガープリントから、原型的な第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するステップと、
一組の前記第2のデジタル神経フィンガープリントから、原型的な第2のデジタル神経フィンガープリントを生成するステップとを含み、
前記何らかのデータパターンを特定するステップは、前記原型的な第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントで実施される、請求項1~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記特定するステップにおいて求められた何らかのデータパターンの一致から新たな第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するステップを含み、
その新たな第1のデジタル神経フィンガープリントは、被験者の前記第2の病状を示す、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記デジタル神経フィンガープリントは、それぞれがバイオマーカと関連付けられた複数の要素から形成され、各要素は、測定されたバイオマーカの、前記閾値に対する偏差を示す値を有する、請求項1~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記デジタル神経フィンガープリントのそれぞれの値は、所与の範囲内にある、請求項1~12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記各要素の値は、光学的値である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記光学的値は、測定されたバイオマーカの、前記関連付けられた閾値に対する前記偏差に依存して変化する色である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
光学的パターン認識により、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおけるパターンを特定するステップを含む、請求項12~15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なるセンサ又は異なるセンサセットから取得される、請求項1~16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから、組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを生成するステップと、
被験者の第1及び/又は第2の病状の判定において、前記組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを利用するステップを含む、請求項1~17の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから、新たなデジタル神経フィンガープリントを生成するステップと、
被験者の第1及び/又は第2の病状の判定において、前記新たなデジタル神経フィンガープリントを利用するステップを含む、請求項1~18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1及び/又は第2の組のバイオマーカは、スマートフォン、タブレット・コンピュータ、スマートウォッチ、スマートブレスレット、一対のスマートグラス、及びカメラの1つ又は複数から取得される、請求項1~19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
疾患カテゴリーの診断におけるものである、請求項1~20の何れか1項に記載の方法。
【請求項22】
パーキンソン病、アルツハイマー病、ALSの1つ又は複数の診断におけるものである、請求項1~21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントの多数の要素が、設定された割合を超える場合に、一致が特定される、請求項1~22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントの多数の要素が、少なくとも1つのデジタル神経フィンガープリントにおける要素の総数の80%を超える場合に、一致が特定される、請求項1~23の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
パターンを特定する前記ステップは、シャープレイ値を生成して使用する、請求項1~24の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
個人の病状を判断するためのシステムであって、
被験者の1つ又は複数のバイオマーカを取得するように動作可能である、被験者と関連付けられた1つ又は複数のセンサと、
前記バイオマーカを処理するための処理ユニットとを含み、その処理ユニットは、
被験者と関連付けられた1つ又は複数のセンサから取得された被験者からの第1の組のデジタル・バイオマーカを含む第1のレジスタと、
前記第1の組のデジタル・バイオマーカから、その被験者の第1のデジタル神経シグネチャを生成するように構成された第1のデジタル神経シグネチャ生成器と、
前記第1のデジタル神経シグネチャから、第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された第1のデジタル神経フィンガープリント生成器であって、前記第1のデジタル神経フィンガープリントは、前記第1のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第1の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較である、第1のデジタル神経フィンガープリント生成器と、
前記第1のデジタル神経フィンガープリントから、被験者の第1の病状を特定するように構成された特定ユニットと、
1つ又は複数のセンサから第2の組のバイオマーカを受け取るように構成された入力と、
前記第2の組のバイオマーカから第2のデジタル神経シグネチャを生成するように構成された第2のデジタル神経シグネチャ生成器と、
前記第2のデジタル神経シグネチャから、第2のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された第2のデジタル神経フィンガープリント生成器であって、前記第2のデジタル神経フィンガープリントは、前記第2のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第2の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較である、第2のデジタル神経フィンガープリント生成器と、
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて、何らかのデータパターンを特定するように構成されたデータパターン識別器と、を含み、
前記処理ユニットは、前記第1のデジタル神経フィンガープリントにおいて前記第2の病状を特定するために、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおける特定された何らかのパターンを利用するように構成されている、システム。
【請求項27】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる被験者から取得される、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる病状と関連付けられる、請求項26又は27に記載のシステム。
【請求項29】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、疾病または病気の異なるステージと関連付けられる、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記第1の組のバイオマーカは、疾病または病気の症状発現前ステージと関連付けられ、前記第2の組のバイオマーカは、疾病または病気の前駆症状ステージ又は臨床ステージと関連付けられる、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる疾病または病気と関連付けられる、請求項28、29又は30に記載のシステム。
【請求項32】
前記処理ユニットは、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて特定された何らかのパターンから、前記第1の病状の強化された判定をもたらすように構成される、請求項26~31の何れか1項に記載のシステム。
【請求項33】
前記閾値は、所定の状態を有すると考えられる被験者のグループにおけるそのバイオマーカの平均値を表わす、請求項26~32の何れか1項に記載のシステム。
【請求項34】
一組の被験者から取得された一組の第1のデジタル神経フィンガープリントから原型的な第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された原型的な第1のデジタル神経フィンガープリント生成器と、
一組の第2のデジタル神経フィンガープリントから、原型的な第2のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された原型的な第2のデジタル神経フィンガープリント生成器とを含み、
前記処理ユニットは、前記第1及び第2の原型的なデジタル神経フィンガープリントから何らかのデータパターンを特定するように構成される、請求項26~33の何れか1項に記載のシステム。
【請求項35】
特定ステップにおいて求められた何らかのデータパターンの一致から新たな第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された新たな第1のデジタル神経フィンガープリント生成器を含み、前記新たな第1のデジタル神経フィンガープリントは、被験者の第2の病状を表わす、請求項26~34の何れか1項に記載のシステム。
【請求項36】
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリント生成器は、要素のアレイとして前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントを形成するように構成され、当該要素のそれぞれはバイオマーカと関連付けられ、そのアレイにおいて、各要素は、測定されたバイオマーカの閾値に対する偏差を表わす値を有する、請求項26~35の何れか1項に記載のシステム。
【請求項37】
前記各要素の値は、光学的値であり、各要素は、ディスプレイのピクセルであり、前記システムは、前記光学的値を求めるための光学センサを含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記処理ユニットは、光学的パターン識別ユニットを含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから、組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された、組み合わされたデジタル神経フィンガープリント生成器を含み、前記処理ユニットは、被験者の前記第1及び/又は第2の病状の判定において、前記組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを利用するように構成されている、請求項26~38の何れか1項に記載のシステム。
【請求項40】
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから、新たなデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された、新たなデジタル神経フィンガープリント生成器を含み、前記処理ユニットは、被験者の前記第1及び/又は第2の病状の判定において、前記新たなデジタル神経フィンガープリントを利用するように構成されている、請求項26~39の何れか1項に記載のシステム。
【請求項41】
前記第1及び/又は第2の組のバイオマーカを取得するように構成された、スマートフォン、タブレット・コンピュータ、スマートウォッチ、スマートブレスレット、一対のスマートグラス、及びカメラの1つ又は複数を含む、請求項26~40の何れか1項に記載のシステム。
【請求項42】
疾病または疾患カテゴリーを診断するように構成された診断ユニットを含む、請求項26~41の何れか1項に記載のシステム。
【請求項43】
前記診断ユニットは、パーキンソン病、アルツハイマー病、ALSの1つ又は複数を診断するように構成されている、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
個人の病状を判断する方法であって、
被験者と関連付けられた第1の組のセンサから第1の組のデジタル・バイオマーカを取得し、
前記第1の組のデジタル・バイオマーカから、その被験者のデジタル神経シグネチャを生成し、
前記デジタル神経シグネチャから、第1のデジタル神経フィンガープリントを生成し、前記第1のデジタル神経フィンガープリントは、前記第1のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第1の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較であり、
前記第1のデジタル神経フィンガープリントから、被験者の第1の病状を特定し、
前記第1の組のセンサとは異なる第2の組のセンサから第2の組のバイオマーカを取得して、それから第2のデジタル神経シグネチャを生成し、
前記第2のデジタル神経シグネチャから、第2のデジタル神経フィンガープリントを生成し、前記第2のデジタル神経フィンガープリントは、前記第2のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第2の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較であり、
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて、何らかのデータパターンを特定し、
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて特定された何らかのパターンを利用して、被験者の前記第1の病状の判定を強化すること、を含む、方法。
【請求項45】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる被験者から取得される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる病状と関連付けられる、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、疾病または病気の異なるステージと関連付けられる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる疾病または病気と関連付けられる、請求項44、45又は46に記載の方法。
【請求項49】
前記閾値は、所定の状態を有すると考えられる被験者のグループにおけるそのバイオマーカの平均値を表わす、請求項44~48の何れか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記所定の状態は、健康な状態である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
一組の被験者から取得された一組の前記第1のデジタル神経フィンガープリントから、原型的な第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するステップと、
一組の前記第2のデジタル神経フィンガープリントから、原型的な第2のデジタル神経フィンガープリントを生成するステップとを含み、
前記何らかのデータパターンを特定するステップは、前記原型的な第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントで実施される、請求項44~50の何れか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記特定するステップにおいて求められた何らかのデータパターンの一致から新たな第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するステップを含み、
その新たな第1のデジタル神経フィンガープリントは、被験者の前記第1の病状を示す、請求項44~51の何れか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記デジタル神経フィンガープリントは、それぞれがバイオマーカと関連付けられた複数の要素から形成され、各要素は、測定されたバイオマーカの、前記閾値に対する偏差を示す値を有する、請求項44~52の何れか1項に記載の方法。
【請求項54】
光学的パターン認識により、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおけるパターンを特定するステップを含む、請求項44~53の何れか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから、組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを生成するステップと、
被験者の第1及び/又は第2の病状の判定において、前記組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを利用するステップを含む、請求項44~54の何れか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから、新たなデジタル神経フィンガープリントを生成するステップと、
被験者の第1及び/又は第2の病状の判定において、前記新たなデジタル神経フィンガープリントを利用するステップを含む、請求項44~55の何れか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記第1及び/又は第2の組のバイオマーカは、スマートフォン、タブレット・コンピュータ、スマートウォッチ、スマートブレスレット、一対のスマートグラス、及びカメラの1つ又は複数から取得される、請求項44~56の何れか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントの多数の要素が、設定された割合を超える場合に、一致が特定される、請求項44~57の何れか1項に記載の方法。
【請求項59】
個人の病状を判断するためのシステムであって、
被験者の1つ又は複数のバイオマーカを取得するように動作可能である、被験者と関連付けられた第1の組のセンサと、
前記バイオマーカを処理するための処理ユニットとを含み、その処理ユニットは、
被験者と関連付けられた前記第1の組のセンサから取得された被験者からの第1の組のデジタル・バイオマーカを含む第1のレジスタと、
前記第1の組のデジタル・バイオマーカから、その被験者の第1のデジタル神経シグネチャを生成するように構成された第1のデジタル神経シグネチャ生成器と、
前記第1のデジタル神経シグネチャから、第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された第1のデジタル神経フィンガープリント生成器であって、前記第1のデジタル神経フィンガープリントは、前記第1のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第1の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較である、第1のデジタル神経フィンガープリント生成器と、
前記第1のデジタル神経フィンガープリントから、被験者の第1の病状を特定するように構成された特定ユニットと、
前記第1の組のセンサとは異なる第2の組のセンサから第2の組のバイオマーカを受け取るように構成された入力と、
前記第2の組のバイオマーカから第2のデジタル神経シグネチャを生成するように構成された第2のデジタル神経シグネチャ生成器と、
前記第2のデジタル神経シグネチャから、第2のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された第2のデジタル神経フィンガープリント生成器であって、前記第2のデジタル神経フィンガープリントは、前記第2のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第2の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較である、第2のデジタル神経フィンガープリント生成器と、
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて、何らかのデータパターンを特定するように構成されたデータパターン識別器と、を含み、
前記処理ユニットは、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて特定された何らかのパターンを利用して、被験者の前記第1の病状の判定を強化するように構成されている、システム。
【請求項60】
一組の被験者から取得された一組の第1のデジタル神経フィンガープリントから原型的な第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された原型的な第1のデジタル神経フィンガープリント生成器と、
一組の第2のデジタル神経フィンガープリントから、原型的な第2のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された原型的な第2のデジタル神経フィンガープリント生成器とを含み、
前記処理ユニットは、前記第1及び第2の原型的なデジタル神経フィンガープリントから何らかのデータパターンを特定するように構成される、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
特定ステップにおいて求められた何らかのデータパターンの一致から新たな第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された新たな第1のデジタル神経フィンガープリント生成器を含む、請求項59又は60に記載のシステム。
【請求項62】
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリント生成器は、複数の要素として前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントを形成するように構成され、当該要素のそれぞれはバイオマーカと関連付けられ、各要素は、測定されたバイオマーカの閾値に対する偏差を表わす値を有する、請求項59、60又は61に記載のシステム。
【請求項63】
前記各要素の値は、光学的値であり、各要素は、ディスプレイのピクセルであり、前記システムは、前記光学的値を求めるための光学センサを含む、請求項62に記載のシステム。
【請求項64】
前記処理ユニットは、光学的パターン識別ユニットを含む、請求項63に記載のシステム。
【請求項65】
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから、組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された、組み合わされたデジタル神経フィンガープリント生成器を含み、前記処理ユニットは、被験者の前記第1及び/又は第2の病状の判定において、前記組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを利用するように構成されている、請求項59~64の何れか1項に記載のシステム。
【請求項66】
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから、新たなデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された、新たなデジタル神経フィンガープリント生成器を含み、前記処理ユニットは、被験者の前記第1及び/又は第2の病状の判定において、前記新たなデジタル神経フィンガープリントを利用するように構成されている、請求項59~65の何れか1項に記載のシステム。
【請求項67】
前記第1及び/又は第2の組のバイオマーカを取得するように構成された、スマートフォン、タブレット・コンピュータ、スマートウォッチ、スマートブレスレット、一対のスマートグラス、及びカメラの1つ又は複数を含む、請求項59~66の何れか1項に記載のシステム。
【請求項68】
疾病または疾患カテゴリーを診断するように構成された診断ユニットを含む、請求項59~67の何れか1項に記載のシステム。
【請求項69】
前記特定された病状を治療するために調剤または他の処置を行うために、前述の請求項の何れか1項に記載されたような方法により又はシステムにより取得された被験者の特定された病状の判定の使用法。
【請求項70】
特定された病状を治療するために調剤または他の処置を行うために、前述の請求項の何れか1項に記載されたような方法により又はシステムにより取得された被験者の特定された病状の判定に基づいて、被験者を治療する方法。
【請求項71】
示唆された処置が薬剤介入であり、情報が、個人に投与されるべき特定の薬の特徴に関係する、請求項69又は70に記載された使用法または方法。
【請求項72】
前記薬は、コリンエステラーゼ阻害剤(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンの如き)、メマンチン(任意選択的にコリンエステラーゼ阻害剤と併用)、モノクローナル抗体(アデュカヌマブ(アデュヘルム)の如き)、BAN2401、ガンテネルマブ(任意選択的にソラネズマブと併用)、ソラネズマブ(任意選択的にガンテネルマブと併用)、シグマ-1受容体アゴニスト(任意選択的にまたANAVEX2(ブラルカメシン)、AVP-786またはAXS-05のようなM2自己受容体アンタゴニストまたはNMDA受容体アンタゴニスト)、SV2Aモジュレーター(AGB101(低用量レベチラセタム)の如き)、肥満細胞安定剤(ALZT-OP1(クロモリン+イブプロフェン)の如き)、抗炎症剤(ALZT-OP1(クロモリン+イブプロフェン)の如き)、RAGEアンタゴニスト(アゼリラゴンの如き)、グルタミン酸モジュレーター(BHV4157(トロリルゾール)の如き)、D2受容体部分アゴニスト(ブレクスピプラゾールの如き)、セロトニン・ドーパミンモジュレーター(ブレクスピプラゾールの如き)、アミロイドワクチン(CAD106の如き)、細菌性プロテアーゼ阻害剤(COR388の如き)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(エスシタロプラムの如き)、抗酸化剤(イチョウの如き)、植物抽出物(イチョウの如き)、α-2アドレナリンアゴニスト(グアンファシンの如き)、オメガ-3脂肪酸(エイコサペンタエン酸の精製物であるイコサペント酸エチル(IPE)の如き)、アンジオテンシンII受容体ブロッカー(ロサルタンの如き)、カルシウムチャネルブロッカー(アミオジピンの如き)、コレステロール剤(アトルバスタチンの如き)、運動の有無にかかわらずアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ロサルタンの如き)とカルシウムチャネル拮抗薬(アミオジピンの如き)とコレステロール剤(アトルバスタチンの如き)の組み合わせ、チロシンキナーゼ阻害剤(マシチニブの如き)、インスリン抵抗性改善剤(メトホルミンの如き)、ドーパミン再取り込み阻害剤(メチルフェニデートの如き)、α-1アンタゴニスト(ミルタザピンの如き)、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(コハク酸オクトヒドロアミノアクリジンの如き)、ケトン体刺激剤(トリカプリリンの如き)、カプリル酸トリグリセリド(トリカプリリンの如き)、タウ蛋白凝集阻害剤(AADvac1又はTRx0237(LMTX)の如き)、GABA-A受容体のポジティブアロステリックモジュレーター(ゾルピデムおよびゾプリコン)、又はBPDO-1603、或いは一緒に又は別個に投与されるこれらの任意の組み合わせである、請求項71に記載された使用法または方法。
【請求項73】
アデュカヌマブ(アデュヘルム)が被験者に投与される、請求項71又は72に記載された使用法または方法。
【請求項74】
示唆された処置が薬剤介入であり、情報が、個人に投与されるべき薬剤介入または特定の薬の頻度および/または用量に関係する、請求項69~73の何れか1項に記載された使用法または方法。
【請求項75】
個人は、軽度の認識機能障害と以前に診断されており、情報出力により提供される薬剤介入または他の処置に関係する情報は、以前に処方された処置がその個人に有効であるか否かに関係する、請求項69~74の何れか1項に記載された使用法または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の病状(状態)を判断するためにデータを分析するシステム及び方法に関する。好適な実施形態は、異なるソース(出所、供給源)からのデータセット(特に、バイオマーカ・データ)を相関させ、患者の病状(第1のデータセット又はコア・データセットに関連した特定の病状だけでなく、そのコア・データセットから直ぐに明らかにならない他の病状も)をそれらから判断することが可能なシステム及び方法を提供する。当該システム及び方法は、多くの場合に生物学的症状が従来の診断法により明らかになるよりずっと前に、個人の認知状態または健康状態の識別に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
当該技術において十分に文章化されているように、本出願人は、1つ又は複数の活動の経過にわたって人間を観測(観察)するように構成された1つ又は複数のセンサから得られる一組のバイオマーカに基づいて、デジタル神経(ニューラル)シグネチャ(Digital Neuro Signature:DNS)(登録商標)を生成する、人間の状態を分析するシステム及び方法を開発した。本出願人の技術の好適な実用上の具現化形態において、最適なDNSは、784個の活性デジタル・バイオマーカを含む。使用されるデジタル・バイオマーカの数は、本明細書の教示に重要ではなく、バイオマーカの任意の選択された又は所望のセット及び数で実施され得る。より大きい数のバイオマーカは、本出願人が現時点で実施しているシステムと一致して、人間の健康状態または認知状態の分類化を最適化することができる。
【0003】
本出願人は、一例が図1に示されているマトリックス(行列)として、人間のバイオマーカを視覚化するためのシステムを開発した。この視覚化システムは以降、デジタル神経フィンガープリント(Digital Neuro Fingerprint:DNF)(登録商標)と呼ばれる。
【0004】
この例のマトリックスは、当該マトリックスを形成するピクセルのカラーベースの符号化を含む。カラー(色)コードは、特性/バイオマーカの求められた数値を表わすために使用される。図示された例において、緑色は、特性/バイオマーカ(健常対照群の既存のデータセットに基づいた)のほぼ平均値を表わすために使用されるが、赤色は、何れかの方向(平均値より下または上)における曲線の限界を表わす。緑色と赤色の異なる色調(色合い)は、識別された数値、及びそれらがどれぐらい平均に近いかに対応する。
【0005】
この例の784個の活性デジタル・バイオマーカは、携帯電話、及びスマートウオッチ及びスマートブレスレット(一例は、フィットビット(FitBit)(登録商標)である)のような、他のウェアラブルデバイスで見出され得るタイプの慣性測定ユニット(Inertial Measurement Unit:IMU)により、生成される。活性デジタル・バイオマーカを得るための手法は、本出願人の以前の特許出願および当該技術の多くの広く利用可能な、つい最近の刊行物において、詳細に開示されている。当該手法は、本明細書の教示の限定の要因ではない。
【0006】
図1のマトリックスにより提供されるDNFは、人間の病状を分析する際の非常に有用なツールである。それは、パターンが被験者間(一般的に、健康であることが分かっている又は特定の病気または疾病を有することが分かっている被験者間)で容易に識別されて相関され得る視覚的マトリックスを提供することができる。当該システム及び方法は例えば、アルツハイマー病のような認識機能障害を特定(識別)するために使用され得るが、認知機能を越える多くの他の応用形態に使用され得る。
【0007】
当該システムは、従来の方法がそのように行うことがきる前の重要な時期に認識機能障害の発病を特定することができることが見出された。アルツハイマー病のような疾病の早期発見は、更にいっそう効果的な早期治療を可能にし、治療を認めない場合には、当該疾病の進行を大幅に遅らさせることを可能にすることができる。
【0008】
アルツハイマー病および他の認識機能障害のような、疾病の早期の発病を診断するために、本出願人が開発した技術は、広く報じられている。更に、2021年の夏に、本出願人は、アルツハイマー病の予測のための世界初の精密な神経学的装置の開発に関して、FDAのブレイクスルー指定を授与された。
【0009】
本出願人により開発された当該システムは、多次元デジタル・バイオマーカをキャプチャすることができ、待ち時間ベースの測定、又は精度ベースの測定に制限されない。幾つかの客観的に測定される特性を単一のタスクへ統合することができる。この統合は、従来の臨床試験設定においてよりも一般化可能な「現実世界の状況」をもたらすことができるので、観察の生態学的妥当性を増加させることができる。本出願人のシステムにより、及び複数の認知領域ならびにセンサデータにわたって対処する複数の変数の新規な組み合わせにより収集された大量のデータは、特に変動測定が検討される際に、より高い感度をもたらす。デジタル・バイオマーカ・プラットフォームは、認知処理および信号伝達細胞の処理を含む場合がある大量の高分解能データ;疾病の兆候が毎日の機能に何処で、いつ及び如何にして影響を及ぼすかを明らかにする感情状態およびマイクロエラー(micro-error)を示す音声ベースのデータを生じさせる。これらデータは、疾患進行のモデリングのために、脳の健康の大規模な非浸入型の生涯にわたるモニタリングにつながる、より正確な転換事象の予測または薬物効果のモデリングのために、更に活用されるべき可能性を有する。
【0010】
本明細書の教示は、本出願人の文書で十分に裏付けられた既存の技術を基礎とする。
【0011】
発明の概要
本発明は、上述された技術を、好適には現時点で確認できない他の疾病および病気の特定を可能にする方法で広げることが可能なシステム及び方法を提供しようとする。好適な実施形態において、これは、他のソース(源)からのデータを収集し、これらの他の病気または疾病を示し且つコア・フィンガープリント/シグネチャだけから識別できない元のデジタル神経フィンガープリント及び関連したシグネチャにおいてデータパターン及びセットを特定することができる新たなデジタル神経フィンガープリントを生成するために、他のソースからのデータを既存の又はコアのデジタル神経フィンガープリントと相関させることにより、達成される。別の態様において、他のソース(一般に他のセンサ)からのデータは、個人の病状のより良い特定(識別、同定)を提供するように及び/又は他のセンサ源に基づいて第1の病状を特定することができる新たなデジタル神経フィンガープリントを創り出すように、デジタル神経フィンガープリントを強化するために使用される。
【0012】
本発明の一態様に従って、個人の病状を判断する方法が提供され、その方法は、
被験者と関連付けられた1つ又は複数のセンサから第1の組のデジタル・バイオマーカを取得し、
前記第1の組のデジタル・バイオマーカから、その被験者の第1のデジタル神経シグネチャを生成し、
前記第1のデジタル神経シグネチャから、第1のデジタル神経フィンガープリントを生成し、前記第1のデジタル神経フィンガープリントは、前記第1のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第1の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較であり、
前記第1のデジタル神経フィンガープリントから、被験者の第1の病状を特定し、
1つ又は複数のセンサから第2の組のバイオマーカを取得して、それから第2のデジタル神経シグネチャを生成し、
前記第2のデジタル神経シグネチャから、第2のデジタル神経フィンガープリントを生成し、前記第2のデジタル神経フィンガープリントは、前記第2のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第2の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較であり、
前記第2のデジタル神経フィンガープリントから、被験者の第2の病状を特定し、
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて、何らかのデータパターンを特定し、
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて特定された何らかのパターンを利用して、前記第1のデジタル神経フィンガープリントにおいて、前記第2の病状を特定すること、を含む。
【0013】
有利には、前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる被験者に関して取得される。
【0014】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、例えば、一方では疾病または病気の症状発現前ステージ、他方では、疾病または病気の前駆症状ステージ又は臨床ステージである疾病または病気の異なるステージのような、異なる病状と関連付けられ得る。前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる疾病または病気と関連付けられ得る。
【0015】
一実施形態において、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて特定された何らかのパターンを使用して、前記第1のデジタル神経フィンガープリントにおける前記第1の病状の判定を強化する。
【0016】
好適には、前記閾値は、健康な状態である場合がある、所定の状態を有すると考えられる被験者のグループにおけるそのバイオマーカの平均値を表わす。
【0017】
方法は好適には、
一組の被験者から取得された一組の前記第1のデジタル神経フィンガープリントから、原型的な第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するステップと、
一組の前記第2のデジタル神経フィンガープリントから、原型的な第2のデジタル神経フィンガープリントを生成するステップとを含み、
何らかのデータパターンを特定するステップは、前記原型的な第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントで実施される。
【0018】
有利には、方法は、
前記特定するステップにおいて求められた何らかのデータパターンの一致から新たな第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するステップを含み、
その新たな第1のデジタル神経フィンガープリントは、被験者の前記第2の病状を示す。
【0019】
好適な実施形態において、前記デジタル神経フィンガープリントは、それぞれがバイオマーカと関連付けられた複数の要素から形成され、各要素は、測定されたバイオマーカの、前記閾値に対する偏差を示す値を有する。前記デジタル神経フィンガープリントのそれぞれの値は有利には、所与の範囲内にある。好適な実施形態において、前記各要素の値は、光学的値であり、その光学的値は好適には、測定されたバイオマーカの、前記関連付けられた閾値に対する前記偏差に依存して変化する色である。前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおけるパターンを特定するステップは好適には、光学的パターン認識による。
【0020】
認識されるように、色パターン認識は、ほんの1つの例示的な具現化形態にすぎない。例えば、数値マーク又は他のマーク、グレースケール尺度、及び白黒パターンなどを含む他の体系が使用され得る。
【0021】
一実施形態において、前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なるセンサ又は異なるセンサセットから取得される。
【0022】
方法は、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから、組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを生成するステップと、被験者の第1及び/又は第2の病状の判定において、前記組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを利用するステップを含む場合がある。
【0023】
方法は、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから、新たなデジタル神経フィンガープリントを生成するステップと、被験者の第1及び/又は第2の病状の判定において、前記新たなデジタル神経フィンガープリントを利用するステップを含む場合がある。
【0024】
有利には、前記第1及び/又は第2の組のバイオマーカは、スマートフォン、タブレット・コンピュータ、スマートウォッチ、スマートブレスレット、一対のスマートグラス、及びカメラの1つ又は複数から取得される。
【0025】
好適な実施形態において、方法は、疾病または疾患カテゴリーの診断において、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、ALSの1つ又は複数の診断において使用され得る。
【0026】
好適には、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントの多数の要素が、設定された割合を超える場合に、一致が特定される。例えば、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントの多数の要素が、少なくとも1つのデジタル神経フィンガープリントにおける要素の総数の80%を超える場合に、一致が特定され得る。理解されるべきは、閾値は、当業者により選択されることができ、与えられた例から外れる場合がある。より低い閾値は、データセット間でより多くのパターン一致を見出せるが、潜在的にそれほど信頼できず、一方で、より高い閾値は、より少ない一致を見出しそうであるが、より信頼できる。
【0027】
好適には、パターンを特定する前記ステップは、シャープレイ値を生成して使用する。
【0028】
本発明の別の態様に従って、個人の病状を判断するためのシステムが提供され、
被験者の1つ又は複数のバイオマーカを取得するように動作可能である、被験者と関連付けられた1つ又は複数のセンサと、
前記バイオマーカを処理するための処理ユニットとを含み、その処理ユニットは、
被験者と関連付けられた1つ又は複数のセンサから取得された被験者からの第1の組のデジタル・バイオマーカを含む第1のレジスタと、
前記第1の組のデジタル・バイオマーカから、その被験者の第1のデジタル神経シグネチャを生成するように構成された第1のデジタル神経シグネチャ生成器と、
前記第1のデジタル神経シグネチャから、第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された第1のデジタル神経フィンガープリント生成器であって、前記第1のデジタル神経フィンガープリントは、前記第1のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第1の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較である、第1のデジタル神経フィンガープリント生成器と、
前記第1のデジタル神経フィンガープリントから、被験者の第1の病状を特定するように構成された特定プロセッサと、
1つ又は複数のセンサから第2の組のバイオマーカを受け取るように構成された入力と、
前記第2の組のバイオマーカから第2のデジタル神経シグネチャを生成するように構成された第2のデジタル神経シグネチャ生成器と、
前記第2のデジタル神経シグネチャから、第2のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された第2のデジタル神経フィンガープリント生成器であって、前記第2のデジタル神経フィンガープリントは、前記第2のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第2の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較である、第2のデジタル神経フィンガープリント生成器と、
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて、何らかのデータパターンを特定するように構成されたデータパターン識別器と、を含み、
前記処理ユニットは、前記第1のデジタル神経フィンガープリントにおいて前記第2の病状を特定するために、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおける特定された何らかのパターンを利用するように構成されている。
【0029】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる被験者から取得され得る。前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる病状と関連付けられ得る。それらは、疾病または病気の異なるステージと関連付けられる場合があり、例えば、前記第1の組のバイオマーカは、疾病または病気の症状発現前ステージと関連付けられる場合があり、前記第2の組のバイオマーカは、疾病または病気の前駆症状ステージ又は臨床ステージと関連付けられ得る。
【0030】
好適には、前記処理ユニットは、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて特定された何らかのパターンから、前記第1の病状の強化された判定をもたらすように構成される。
【0031】
有利には、前記閾値は、所定の状態を有すると考えられる被験者のグループにおけるそのバイオマーカの平均値を表わす。
【0032】
システムは、一組の被験者から取得された一組の第1のデジタル神経フィンガープリントから原型的な第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された原型的な第1のデジタル神経フィンガープリント生成器と、一組の第2のデジタル神経フィンガープリントから、原型的な第2のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された原型的な第2のデジタル神経フィンガープリント生成器とを含み、前記処理ユニットは、前記第1及び第2の原型的なデジタル神経フィンガープリントから何らかのデータパターンを特定するように構成される。
【0033】
システムは、特定ステップにおいて求められた何らかのデータパターンの一致から新たな第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された新たな第1のデジタル神経フィンガープリント生成器を含む場合があり、前記新たな第1のデジタル神経フィンガープリントは、被験者の第2の病状を表わす。
【0034】
好適な実施形態において、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリント生成器は、要素のアレイとして前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントを形成するように構成され、当該要素のそれぞれはバイオマーカと関連付けられ、そのアレイにおいて、各要素は、測定されたバイオマーカの、閾値に対する偏差を表わす値を有する。
【0035】
実際の実施形態において、前記各要素の値は、光学的値であり、各要素は、ディスプレイのピクセルであり、前記システムは、前記光学的値を求めるための光学センサを含む。このため、前記処理ユニットは、光学的パターン識別ユニットを含む場合がある。
【0036】
システムは、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから、組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された、組み合わされたデジタル神経フィンガープリント生成器を含む場合があり、前記処理ユニットは、被験者の前記第1及び/又は第2の病状の判定において、前記組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを利用するように構成されている。
【0037】
システムは、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから、新たなデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された、新たなデジタル神経フィンガープリント生成器を含む場合があり、前記処理ユニットは、被験者の前記第1及び/又は第2の病状の判定において、前記新たなデジタル神経フィンガープリントを利用するように構成されている。
【0038】
有利には、システムは、前記第1及び/又は第2の組のバイオマーカを取得するように構成された、スマートフォン、タブレット・コンピュータ、スマートウォッチ、スマートブレスレット、一対のスマートグラス、及びカメラの1つ又は複数を含む。
【0039】
システムは有利には、パーキンソン病、アルツハイマー病、ALSの1つ又は複数のような、疾病または疾患カテゴリーを診断するように構成された診断ユニットを含む。
【0040】
本発明の別の態様に従って、個人の病状を判断する方法が提供され、
被験者と関連付けられた第1の組のセンサから第1の組のデジタル・バイオマーカを取得し、
前記第1の組のデジタル・バイオマーカから、その被験者のデジタル神経シグネチャを生成し、
前記デジタル神経シグネチャから、第1のデジタル神経フィンガープリントを生成し、前記第1のデジタル神経フィンガープリントは、前記第1のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第1の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較であり、
前記第1のデジタル神経フィンガープリントから、被験者の第1の病状を特定し、
前記第1の組のセンサとは異なる第2の組のセンサから第2の組のバイオマーカを取得して、それから第2のデジタル神経シグネチャを生成し、
前記第2のデジタル神経シグネチャから、第2のデジタル神経フィンガープリントを生成し、前記第2のデジタル神経フィンガープリントは、前記第2のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第2の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較であり、
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて、何らかのデータパターンを特定し、
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて特定された何らかのパターンを利用して、被験者の前記第1の病状の判定を強化すること、を含む。
【0041】
前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる被験者から取得され得る。
【0042】
有利には、前記第1及び第2の組のバイオマーカは、異なる病状、例えば、疾病または病気の異なるステージ及び/又は異なる疾病または病気と関連付けられる。
【0043】
前記閾値は、所定の状態、例えば健康な状態を有すると考えられる被験者のグループにおけるそのバイオマーカの平均値を表わす場合がある。
【0044】
方法は、一組の被験者から取得された一組の前記第1のデジタル神経フィンガープリントから、原型的な第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するステップと、一組の前記第2のデジタル神経フィンガープリントから、原型的な第2のデジタル神経フィンガープリントを生成するステップとを含み、何らかのデータパターンを特定するステップは、前記原型的な第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントで実施される。
【0045】
方法は、前記特定するステップにおいて求められた何らかのデータパターンの一致から新たな第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するステップを含み、その新たな第1のデジタル神経フィンガープリントは、被験者の前記第1の病状を示す。
【0046】
特定の実施形態において、前記デジタル神経フィンガープリントは、それぞれがバイオマーカと関連付けられた複数の要素から形成され、各要素は、測定されたバイオマーカの、前記閾値に対する偏差を示す値を有する。
【0047】
方法は好適には、光学的パターン認識により、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおけるパターンを特定するステップを含む。
【0048】
方法は、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから、組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを生成するステップと、被験者の第1及び/又は第2の病状の判定において、前記組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを利用するステップを含む。
【0049】
方法は、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから、新たなデジタル神経フィンガープリントを生成するステップと、被験者の第1及び/又は第2の病状の判定において、前記新たなデジタル神経フィンガープリントを利用するステップを含む場合がある。
【0050】
本発明の別の態様に従って、個人の病状を判断するためのシステムが提供され、
被験者の1つ又は複数のバイオマーカを取得するように動作可能である、被験者と関連付けられた第1の組のセンサと、
前記バイオマーカを処理するための処理ユニットとを含み、その処理ユニットは、
被験者と関連付けられた前記第1の組のセンサから取得された被験者からの第1の組のデジタル・バイオマーカを含む第1のレジスタと、
前記第1の組のデジタル・バイオマーカから、その被験者の第1のデジタル神経シグネチャを生成するように構成された第1のデジタル神経シグネチャ生成器と、
前記第1のデジタル神経シグネチャから、第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された第1のデジタル神経フィンガープリント生成器であって、前記第1のデジタル神経フィンガープリントは、前記第1のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第1の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較である、第1のデジタル神経フィンガープリント生成器と、
前記第1のデジタル神経フィンガープリントから、被験者の第1の病状を特定するように構成された特定プロセッサと、
前記第1の組のセンサとは異なる第2の組のセンサから第2の組のバイオマーカを受け取るように構成された入力と、
前記第2の組のバイオマーカから第2のデジタル神経シグネチャを生成するように構成された第2のデジタル神経シグネチャ生成器と、
前記第2のデジタル神経シグネチャから、第2のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された第2のデジタル神経フィンガープリント生成器であって、前記第2のデジタル神経フィンガープリントは、前記第2のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、前記第2の組のバイオマーカと関連付けられた閾値との比較である、第2のデジタル神経フィンガープリント生成器と、
前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて、何らかのデータパターンを特定するように構成されたデータパターン識別器と、を含み、
前記処理ユニットは、前記第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて特定された何らかのパターンを利用して、被験者の前記第1の病状の判定を強化するように構成されている。
【0051】
本明細書で開示された本発明の様々な態様は上記で及び特許請求の範囲において示されるが、理解されるべきは、これらの態様は、単一の方法およびシステムへ一緒になるように結合可能であり且つそれらの要素は同じように互いと結合可能でもある。
【0052】
本発明の好適な実施形態は、他のソースから取得されたデータで強化された基本デジタル神経フィンガープリント(Digital Neuro Fingerprint:DNF)からのデータセットを使用して新規なデジタル神経フィンガープリント(DNF)を作成するシステム及び方法を提供する。追加データは、慣性測定ユニットを含む他のデバイス(装置)から収集され得るが、後述されるような他のセンサを用いる任意の他のデータソースから収集され得る。
【0053】
システム及び方法は、係る他のソースからのデータを、共通特性化フレームワーク(この例において、図1に示されたカラー符号化方式、より好適には、基本デジタル神経シグネチャから生成された基本DNFで使用されるフレームワークと共通)へ相関させるように構成される。追加データは、以前に分かっていた病状の特定においてだけでなく、コアDNFから即座に導き出せない患者の潜在的な新たな病状の特定においても使用され得る、組み合わされたデジタル神経フィンガープリント又はデジタル神経フィンガープリントの新たな組み合わせを生成するために使用され得る。
【0054】
好適な実施形態において、システム及び方法は、健康状態または認知状態の特定に有用なデータパターンの場所を特定するために光学的パターン認識を使用する。
【0055】
実際の実施形態において、システム及び方法は、以下のことを提供する。即ち、
(a)バイオマーカの基本セットの収集のためのデバイス(単数)を用いてデータを最初に収集しないデータセットの内部に、IMU又は他のセンサを含む他のデバイスを用いて、新たなDNFを作成すること。例は、フィットビット(FitBit)(登録商標)、及びアップルウオッチ(Apple Watch)(登録商標)などのような、スマートウォッチ又はブレスレットを含む;
(b)光学的パターン認識装置または方法を用いて、これらのDNFの数学的処理;
(c)IMU以外のセンサを利用する活性デジタル・バイオマーカ及び/又は新規なデジタル・バイオマーカのコアセットを用いて、組み合わされたDNF又はDNFの組み合わせの作成。
【0056】
本明細書で開示されたシステム及び方法の主な利点は、DNF類似性に基づいて、新たな疾病分野に対して、本出願人の以前に出願された特許出願の主題のデバイスのような、1つのソースから取得されたDNFを急速に別の用途に使うことを可能にすることである。ひとたび組み合わされたDNF又はDNFの新たな組み合わせにおいて、係る類似性が見出されれば、新たな疾病分野の特定の検証に関する臨床試験では、必要な患者を大幅に少なくし、研究期間を低減することができ、かくして臨床試験をより効率的かつ機敏(明敏)にする。
【0057】
本発明の別の態様に従って、特定された病状を治療するために調剤または他の処置を行うために、前述の記載の何れかに記載されたような方法により又はシステムにより取得された被験者の特定された病状の判定の使用法が提供される。
【0058】
本発明の別の態様に従って、特定された病状を治療するために調剤または他の処置を行うために、前述の記載の何れかに記載されたような方法により又はシステムにより取得された被験者の特定された病状の判定に基づいて、被験者を治療する方法が提供される。
【0059】
使用法または方法において、示唆された処置が薬剤介入である場合があり、情報は、個人に投与されるべき特定の薬の特徴に関係する。
【0060】
使用法または方法において、当該薬は、コリンエステラーゼ阻害剤(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンの如き)、メマンチン(任意選択的にコリンエステラーゼ阻害剤と併用)、モノクローナル抗体(アデュカヌマブ(アデュヘルム)の如き)、BAN2401、ガンテネルマブ(任意選択的にソラネズマブと併用)、ソラネズマブ(任意選択的にガンテネルマブと併用)、シグマ-1受容体アゴニスト(任意選択的にまたANAVEX2(ブラルカメシン)、AVP-786またはAXS-05のようなM2自己受容体アンタゴニストまたはNMDA受容体アンタゴニスト)、SV2Aモジュレーター(AGB101(低用量レベチラセタム)の如き)、肥満細胞安定剤(ALZT-OP1(クロモリン+イブプロフェン)の如き)、抗炎症剤(ALZT-OP1(クロモリン+イブプロフェン)の如き)、RAGEアンタゴニスト(アゼリラゴンの如き)、グルタミン酸モジュレーター(BHV4157(トロリルゾール)の如き)、D2受容体部分アゴニスト(ブレクスピプラゾールの如き)、セロトニン・ドーパミンモジュレーター(ブレクスピプラゾールの如き)、アミロイドワクチン(CAD106の如き)、細菌性プロテアーゼ阻害剤(COR388の如き)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(エスシタロプラムの如き)、抗酸化剤(イチョウの如き)、植物抽出物(イチョウの如き)、α-2アドレナリンアゴニスト(グアンファシンの如き)、オメガ-3脂肪酸(エイコサペンタエン酸の精製物であるイコサペント酸エチル(IPE)の如き)、アンジオテンシンII受容体ブロッカー(ロサルタンの如き)、カルシウムチャネルブロッカー(アミオジピンの如き)、コレステロール剤(アトルバスタチンの如き)、運動の有無にかかわらずアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ロサルタンの如き)とカルシウムチャネル拮抗薬(アミオジピンの如き)とコレステロール剤(アトルバスタチンの如き)の組み合わせ、チロシンキナーゼ阻害剤(マシチニブの如き)、インスリン抵抗性改善剤(メトホルミンの如き)、ドーパミン再取り込み阻害剤(メチルフェニデートの如き)、α-1アンタゴニスト(ミルタザピンの如き)、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(コハク酸オクトヒドロアミノアクリジンの如き)、ケトン体刺激剤(トリカプリリンの如き)、カプリル酸トリグリセリド(トリカプリリンの如き)、タウ蛋白凝集阻害剤(AADvac1又はTRx0237(LMTX)の如き)、GABA-A受容体のポジティブアロステリックモジュレーター(ゾルピデムおよびゾプリコン)、又はBPDO-1603、或いは一緒に又は別個に投与されるこれらの任意の組み合わせである。
【0061】
使用法または方法において、アデュカヌマブ(アデュヘルム)が被験者に好適に投与される。
【0062】
使用法または方法において、示唆された処置が薬剤介入である場合があり、情報は、個人に投与されるべき薬剤介入または特定の薬の頻度および/または用量に関係する。
【0063】
使用法または方法において、個人は、軽度の認識機能障害と以前に診断されていた場合があり、情報出力により提供される薬剤介入または他の処置に関係する情報は、以前に処方された処置がその個人に有効であるか否かに関係する。
【0064】
本発明の他の利点および態様は、以下の詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。
【0065】
本発明の実施形態は、添付図面に関連して、単なる例示のために後述される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】個人から取得された一組のバイオマーカから生成されたデジタル神経シグネチャ自体から生成されたデジタル神経フィンガープリントの一例である。
図2】複数の異なる被験者セットからのデジタル神経フィンガープリントにおいてパターン一致を求めるためのシステム及び方法の一実施形態の流れ図である。
図3】パターン一致の一例を示す図である。
図4】シャープレイ値を用いるパターン一致の一例を示す図である。
図5】パターン一致マトリックスの一例である。
図6】組み合わされたデジタル神経フィンガープリントの一例である。
図7】本明細書の教示に従って、新たな組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを生成するためのシステム及び方法の一実施形態の流れ図である。
図8】本明細書の教示に従って、システムの一実施形態の略図である。
図9】本明細書の教示に従って、処理ユニットの一実施形態の略図である。
【0067】
好適な実施形態の説明
活性バイオマーカ
バイオマーカは、心臓疾患の診断に役立つ。バイオマーカ又は生物学的マーカ(生物学的指標)は、病状の存在および重症度を確実に且つ正確に示すために測定され得るパラメータを意味する。バイオマーカは、感染症を示すために白血球数の増加から、アルツハイマー病を示すために脳内のβアミロイド斑の存在までの範囲に及ぶ豊富な測定可能な指標を含む場合がある。
【0068】
デジタル健康データの収集の台頭と共に、研究者および提供者は同様に、デジタル・バイオマーカの潜在力を活用している。本出願人のシステムは、本出願人が見出したデジタル装置を介して臨床的に意味のあるデータを収集し、個人の状態(病状)をモニタリング及び診断するための新規でより安定している方法を提供することができる。それらは、疾病の予知診断に使用され得る生理学的データ及び行動データの収集および分析を可能にする。
【0069】
デジタル・バイオマーカは、疾病がより治療可能である際に医療と治療をより早く利用するために早期診断を提供および容易にすることができ、より良い健康転帰を提供する。
【0070】
デジタル・バイオマーカは、デジタル装置を介して収集および測定され得る定量化可能な概して客観的な生理学的データ及び行動データである。例示的な装置は、携帯機器、ウェアラブル機器、埋め込み型のもの、又は消化できるものを含む。デジタル・バイオマーカは、特定の疾病の微妙な差異についてより多く学ぶ、且つ価値のある健康洞察力を得るために使用され得る安定したデータセットを生じる。
【0071】
スマートウオッチのようなウェアラブル装置へ一体化されたセンサからの受動的データは、ユーザが当該装置を単に着用する際に生成される。次いで、収集されたデータは、受動的デジタル・バイオマーカ・データと呼ばれる。同様に、デジタル・バイオマーカ・データは、ユーザがアクティブプロンプトに応じて、スマートフォン及びタブレットのようなスマートデバイスと相互作用する際に、当該デバイスから生成およびキャプチャされ得る。カメラ、マイクロホン、タッチスクリーンセンサ、加速度計、及びジャイロスコープを含む、一体化された又は別個のセンサは、能動的デジタル・バイオマーカ・データを収集するために使用され得る。
【0072】
ウェアラブル機器は、心拍数、心拍変動、及び酸素飽和度レベルのような、より明白なデータを、光電脈波センサから収集するが、スマートフォン及びタブレットは、さほど直感的でないが、非常に強力なデータを収集する。スマートデバイスから収集され得るデジタル・バイオマーカ・データの幾つかの例は、
(a)マイクロフォン(流ちょうさ、機嫌、及び感情のような、会話のバイオマーカを検出するために使用され得る);
(b)カメラ(目の動き、瞳孔拡張、及び顔の表情を検出することができる);
(c)タッチスクリーンセンサ(タッピング、スワイプ、及びタイピングに必要な微細運動能力を特定することができる);
(d)慣性センサ(人間の動作と姿勢を検出することができ、歩行の計量の測定を可能にする加速度計およびジャイロスコープを含む)
を含む。
【0073】
本出願人が見出した、使用される多数の及び複数のタイプのバイオマーカは、個人の病状(状態)の包括的な見解を提供することができる。それらは、例えば運動の速度、運動の範囲、活動に印可される力(例えば、ボタン又は感圧パッドを押す)、震え、及び反応時間などを含む運動マーカーを含むことができ、且つそれらは、タスクを完了するための時間、動作または反応の正確さ、及び一連のエクササイズを完了するための正確さ及び時間などのような、認知指標も含む場合がある。
【0074】
また、デジタル・バイオマーカは、個人レベルにおいて及び集団レベルにおいて、長期的(経時的)なデータ収集も行うことができる。脳の健康を評価するために使用される大部分のツールは、長期的な分析のための基盤(インフラストラクチャー)を欠いており、一般に断面データ収集および断面データ解析の手段を提供するのみである。長期的なデータは、個人の脳の健康が時間と共に如何にして変化しているかの洞察を得るために、個人向けベースで脳の健康を解析するための能力を提供する。デジタル・バイオマーカの推移を経時的に追跡する長期的なデータを用いて、処理ユニット(好適には、人工知能)は、個人がアルツハイマー病のような特定の病気または疾病を発病しているか否か、いつ発病したか、及び如何にして発病したかを判断するために、データから予測することができる。
【0075】
ますます個人がより新しい健康関連技術を利用するので、利用可能な健康データの量は、驚異的な速度で増大している。この量のデータが強い解析ツールと組み合わされる場合、それは潜在的に、多くの疾病に関する傾向(トレンド)とパターンを追跡するために活用され得る。
【0076】
本出願人は、広範囲の認知および機能性デジタル・バイオマーカを測定および解析することができる精密な神経プラットフォームを開発し、それは、個人向けレベルで神経認知機能およびより一般的な機能の包括的な解析を提供する。当該プラットフォームは、好適な具現化形態において、個人の健康に関する断面解析および長期的な解析のための特異的で正確な一般化できるデータを可能にする、ほぼ800個の活性デジタル・バイオマーカを収集および解析するために開発された。
【0077】
係るデータセット及びデジタル神経シグネチャ(DNS)を生成するための本出願人のシステム及び方法に関連した更なる情報は、2021年6月17日に出願された米国特許出願第63/211953号に開示されており、参照により全体として本明細書に援用される。
【0078】
被験者のコアDNFの作成
システム及び方法は、一般に広く利用可能なセンサからのデータセットを生成するように構成される。これは例えば、ウェアラブル・センサによってもたらされ得る。これらは例えば、以下の、即ちPIR運動センサ、装着式センサ(通常、IMUを内蔵する)、圧力センサ、ビデオ監視、及び録音などの1つ又は複数を含む場合がある。主な実施形態は、(i)装着式センサ、及び(ii)ビデオ監視を優先的に使用する。センサからの信号は、所定のセットのバイオマーカと比較され、この比較から、コア・デジタル神経フィンガープリントは、センサ(単数または複数)の出力がそのバイオマーカに関連した所定の状態(病状)に適合するか否かに基づいて創り出される。複数のセンサが使用される場合、好適な実施形態は、ほんの1つのセンサの出力がその状態を示すかどうかを満たしたとして、その状態を取り扱う。他の実施形態において、システム及び方法は、複数のセンサ又は当該状態に適合する各センサの出力、或いは適合されるべき出力の幾つかの他の相関の出力を要求するように構成され得る。
【0079】
所定の病状(状態)は、健常人から得られた反応である場合があるが、他の実施形態において、これは、特定された病状(ほんの一例として、例えば、認識機能障害)を有する個人から得られた反応である場合がある。それが何であれ、任意の信頼できる反応は、基準として使用され得る。
【0080】
使用事例/実施形態
本明細書の教示による一実施形態において、装着式センサのデータ点(例えば、スマートウオッチ又はフィットビット(FitBit)(登録商標)のようなブレスレット)及びビデオ監視モダリティ(例えば、家庭用カメラ)の双方を含む、特定の疾病または病気(例えば、パーキンソン病)に関する公有財産データセットが提供され得る。この実施形態において、当該分野の研究者は、装着式センサからのデータストリームを、ビデオ監視システムによりキャプチャされた日常生活の「行為」と関連した特定の活動に対応するIMU出力へ分ける(セグメント化する)ことができる。これらの行為は最も一般的には、例えば、30~90秒以上の設定された持続時間を有する。1つの実例は、個人が車の鍵を見つけるために歩いている間に、又はテレビのリモコンのような物体を探すためにリビングルームに歩いて入る間に得られたIMUセンサ出力である。係るデータセットの一例は、ORCATECH研究所によるCART Home(登録商標)及び他の多くのものである。即ち、
https://www.ohsu.edu/collaborative-aging-research-using-technology/cart-home
【0081】
ひとたびIMU出力が分けられたならば、それらは、デジタル神経シグネチャの知識を有する或る人により、デジタル神経シグネチャの一組のデジタル・バイオマーカ(例えばAltoida 784 DNS)にマッピングされ得る。このプロセスの結果は、デジタル神経シグネチャに対応し、且つ鍵を見つけるために歩いている時間、及びリモコンを見つけるための時間などのような、関連した行為の「行為」時間ウィンドウに類似した持続時間を有する一組の(この例において、一組の784個の)異なる数値入力の生成である。これら時間ウィンドウの総和は一般に、どんなものでも2~10分である。
【0082】
次いで、デジタル神経シグネチャは、各セッションの終わりにデジタル神経フィンガープリントを生成するために基準マトリックスにマッピングされる(図1のマトリックスが一例である)。実際面で、係る処理は10分の範囲内の時間を費やすと予想され得る。当該プロセスは、迅速にマッピングを達成するように、ひとたびセットアップされたならば、自動化され得る。
【0083】
当該異なる数値入力は好適には、特定の行動または他の測定可能な特性と関連付けられる。
【0084】
別の実施形態において、利用可能である又は使用されるセンサである公有財産(パブリック・ドメイン)は、装着式センサのデータ点のみを含み、ビデオ監視モダリティを含まない。例えば、この実施形態の、前日の間の被験者の行為からの裏付けに乏しい情報は、IMU出力を、日常生活の「行為」の活動に対応する時間フレームへ分けるために使用される。ひとたびこれらの行為が完了したならば、上記と同じプロセスが後続する。この特定の例において、結果としてのデジタル神経フィンガープリントは、装着式センサのデータ点およびビデオ監視データ点の双方を有するデータセットよりも多くのノイズを含む場合がある。しかしながら、そのノイズは、後続の処理において、又はより大きなデータセットに依存することにより、考慮され得る。
【0085】
新しいDNF(複数)のニューラル・ネットワーク処理
この例における好適は方法は、様々な疾病のデータセット(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、ALSなど)において、様々な疾患カテゴリーに関して「原型的なDNF」を生成し、光学的照合アルゴリズムを用いてそれらを一緒に比較する。
【0086】
使用事例/実施形態
一実施形態において、パーキンソン病(PD)の公有財産データセットは、1つ又は複数のデジタル神経フィンガープリントの生成のために、上述した状態を満たし、この例において、以下の患者のカテゴリーを含む、即ち、
a)症状発現前PD(n=100)
b)前駆症状PD(n=50)
c)臨床治療PD(n=500)など。
【0087】
プロセスにおける最初の段階は、これらの疾患カテゴリーのそれぞれに関してデジタル神経フィンガープリントを作成することである、即ち、
・症状発現前の被験者に関して、100個のデジタル神経フィンガープリント
・前駆症状の被験者に関して、50個のデジタル神経フィンガープリント
・臨床治療PDの被験者に関して、500個のデジタル神経フィンガープリント。
【0088】
その後、以下のアルゴリズムが適用されて、これらのカテゴリーのそれぞれに関して1個の「原型的な」デジタル神経フィンガープリントが作成される、即ち、症状発現前に関して1個、前駆症状に関して1個、臨床治療PDに関して1個である。
【0089】
各カテゴリー(例えば、症状発現前の被験者)におけるデジタル神経フィンガープリントの正方形のそれぞれに関して、アルゴリズムは、左上の正方形から開始して、症状発現前の被験者の100個の事例から、赤、緑、薄緑、及びライトレッドなどであったものがどれぐらいの数であるかを計数する。過半数が勝る。例えば、症状発現前のPD被験者の100個の事例以内で、70個の赤色バイオマーカ、20個のライトレッド色バイオマーカ、7個の薄緑色バイオマーカ、及び3個の緑色バイオマーカがあった場合、症状発現前のPD被験者カテゴリーの「原型的な」デジタル神経フィンガープリントは、赤色として設定された左上の正方形(このプロセスにおいて最初の1つ)を有する。新たな「原型的なデジタル神経フィンガープリント」が症状発現前のPD被験者のカテゴリーに生成されるまで、同じプロセスが残りの783個の正方形に行われる。
【0090】
同じプロセスは、このデータセットにおいて他のカテゴリーのそれぞれに実行され、それにより3個の「原型的な」デジタル神経フィンガープリントが生成される。この特定のアルゴリズムに関して、色分け(カラーコーディング)を引き起こす数値は、重要ではない。当該プロセスは、「原型的な」デジタル神経フィンガープリントの生成に関して色分けを単純にランク付けする。最終結果は、このカテゴリーの平均デジタル・バイオマーカ値の正確さに少し欠ける表現である場合があるが、これは、この実施形態に関して受け入れ可能である。
【0091】
同じプロセスは、例えば、本出願人の既存のデータベースからアルツハイマー病(AD)のデータセットである場合がある、この比較のための第2のデータセットに関して繰り返され、以下のカテゴリーを有する、即ち、
a)症状発現前AD(n=20)
b)前駆症状AD(n=500)
c)臨床治療AD(n=50)など。
【0092】
合計3個の原型的なデジタル神経フィンガープリントが、上記と同じアルゴリズムを用いて、アルツハイマー病のデータセットに関して生成される。
【0093】
当該プロセスの最終段階は、原型的なデジタル神経フィンガープリントに基づいた、光学的パターン認識である。人工ニューラル・ネットワーク(神経回路網)又は別のパターン認識アルゴリズムを利用して、類似性に関して、上記の例で生成された6個の原型的なデジタル神経フィンガープリントを比較する。この実施形態における許容可能な一致は、>80%である。他の実施形態は、望み通りに、より高いパーセンテージ又はより低いパーセンテージである一致閾値に設定する場合がある。
【0094】
ひとたび係る一致が見出されれば、例えば、症状発現前PD被験者の原型的なデジタル神経フィンガープリントが、前駆症状AD被験者の原型的なデジタル神経フィンガープリントとの>80%の一致を有し、及び症状発現前AD被験者の原型的なデジタル神経フィンガープリントとの>90%の一致を有するなどが、明らかにされ得る。
【0095】
次いで、最も多く一致するデジタル神経フィンガープリントが選択されて、データセットに存在する臨床情報に基づいて、臨床プロフィールを作成するためにリバース・エンジニアリングされる。例えば、色分けに基づいた症状発現前PD被験者の原型的なデジタル神経フィンガープリントは、被験者の59%における睡眠障害、被験者の76%における鬱病症候群、及び被験者の74%における幻視と最も高い頻度で関連付けられ得る。更に、原型的な症状発現前ADデジタル神経フィンガープリントは、被験者の61%における微小運動障害、被験者の46%における気分障害、及び被験者の64%における知覚運動機能障害と最も高い頻度で関連付けられ得る。
【0096】
図2は、このプロセスを実施する例示的な流れ図を示す。
【0097】
当該流れ図に関連して、ステップ100において、症状発現前PD被験者1-100のデジタル神経フィンガープリントが収集されてそこから、ステップ102において、症状発現前PDの原型的なデジタル神経フィンガープリントが生成される。同様に、ステップ104において、前駆症状PD被験者のデジタル神経フィンガープリントが取得されて処理され、ステップ106において、前駆症状PDの原型的なデジタル神経フィンガープリントが生成される。上述されたように、これらは、以下のステップにおいて、アルツハイマー病のデジタル神経フィンガープリントと組み合わせられる。ステップ108において、症状発現前AD被験者(この例において1-20)のデジタル神経フィンガープリントが取得されてそこから、ステップ110において、症状発現前ADの原型的なデジタル神経フィンガープリントが生成される。同様に、ステップ112において、前駆症状AD被験者(この例において500)のデジタル神経フィンガープリントが取得されてそこから、ステップ114において、前駆症状ADの原型的なデジタル神経フィンガープリントが生成される。
【0098】
ステップ116において、この例において、処理ユニット、望ましくは人工神経回路網を用いて、原型的なデジタル神経フィンガープリント内のパターンが、識別されて、これらのパターンから新たなデジタル神経フィンガープリントが、以前には特定されていなかったパーキンソン病およびアルツハイマー病に関して、創り出され得る。
【0099】
これらの明らかにされた情報の全ては、臨床試験の検証に適切な神経心理学的バッテリを選択することに役立ち、そうでなければ、データ収集に関して、更に多くの包括的な神経心理学的バッテリを有する必要がある。また、検証に関して係る臨床試験の結果も早めることもでき、その理由は、治験責任医師(研究者)が臨床試験から新たに作成されたデジタル神経フィンガープリントを収集して、上記の同じ光学的認識アルゴリズムを用いて、それらが、母集団の「原型的なデジタル神経フィンガープリント」と如何に良く一致するかを確かめることができるからである。
【0100】
原型的なデジタル神経フィンガープリントから臨床プロフィールに対するリバース・エンジニアリングの方法は、機能競合スコア(Feature Interaction Score:FIS)としてシャープレイ値(例えば、https://github.com/slundberg/shapを参照)を用いて予測への機能寄与を利用し、モデル出力に対するシャープレイ・インパクトに基づいて、データポイントの値を推定する。図3及び図4を参照すると、ひとたびFISに対応する正方形のパターンが特定されたならば、プロセスは、最も重要な色付きのデジタル神経フィンガープリントの正方形i(1-784)のリストを作成し、それらに値Φを与えて、それらの実際の平均値が取得される。最も重要な正方形は、一致に対する最大の寄与を見出され且つ関連したバイオマーカに最も関連するものである。例えば、活動を行っている間の被験者の分析に関連したバイオマーカに関して、最も重要な正方形は、その活動(例えば、目の動き、被験者の行動(被験者がどちらの方向へ向くかのような))に最も関連したものである。例えば血圧または睡眠パターンのような他のバイオマーカは、それほど関連していないと見なされる。
【0101】
このことから、プロセスにおいて、システムは、上記のデジタル神経フィンガープリントΦi-m(or more)とXGBoost and SHAP「交互作用効果」を用いた元のデータセットからの臨床データとの間の非線形パターンを計算する。最終結果は、デジタル神経フィンガープリントΦi-m(or more)との興味深い相互作用を明らかにすることができる、最も関連した臨床的特徴のマトリックスを生成する。一例が図5に示される。
【0102】
組み合わされたDNF又は新たなDNFの組み合わせの作成
場合によっては、データセットは、(例えば、784個の)DNSデジタル・バイオマーカのセットの一部でない、IoT(インターネット・オブ・シングス)ウェアラブル・センサからの新しい種類(新規)のデータ(例えば、握力データ)を含む。同様に、DNSデジタル・バイオマーカ・ライブラリは、IMUの一部ではない新しい種類のセンサデータで更新され得る。これらの場合、以下の手順を辿ることができる。
【0103】
(i)使用事例/実施形態
パーキンソン病の公有財産データセットが例えば、握力データのような、医療機器からの、及び装着式センサ・データポイント(例えば、フィットビット(FitBit)(登録商標)から)又は1個のビデオ監視モダリティ(例えば、スマートホーム・カメラから)からの新しい種類のデータを含む場合、当業者は、デジタル神経フィンガープリントの作成の最初のステップとして、装着式IMU出力またはビデオシステムの出力の何れかに対して握力からの新しい種類のデータストリームをセグメント化することができる。同様に、ビデオシステムが注釈に使用されない場合、逸話的注釈が使用され得る。次いで、新しい種類のセンサ数値を利用して、新たな独立したデジタル神経フィンガープリント((例えば、784個の)デジタル神経シグネチャ・デジタル・バイオマーカのセットにより作成されるコア・デジタル神経フィンガープリントとは別個)が作成される。
【0104】
説明に役立つ例として、新たなデジタル神経フィンガープリントは、120個のデジタル神経フィンガープリント・デジタル・バイオマーカを有する場合があり、同じ色分け規則に基づいて生成される。言い換えれば、新たなデジタル神経フィンガープリントは、同じセンサ・デバイスから又は他のタイプのセンサから生成された否か、他のデジタル神経フィンガープリントとの比較を可能にするために識別子フレームワーク又はシステムを用いて生成される。「コア・デジタル神経フィンガープリント」(例えば、784個のデジタル・バイオマーカ)と「新規(新しい種類)のデジタル神経フィンガープリント」(120個のデジタル・バイオマーカ)の双方を含む結果としてのデジタル神経フィンガープリントの可能な視覚化が、図6に示される。
【0105】
本質的に、「コア・デジタル神経フィンガープリント」と「新規のデジタル神経フィンガープリント」を組み合わせる新たに組み合わされたデジタル神経フィンガープリントが作成される。この組み合わせの形状は、左下から始めて、それに新たな形状を追加する(例えば、「新規のDNF2」、「新規のDNF3」など)ように行われ得る。
【0106】
組み合わされたデジタル神経フィンガープリントの作成の後、新たな「原型的な組み合わされたDNF」が前記データセットにおいて患者の疾患カテゴリーのそれぞれに関して作成されることができ、例えば、a)症状発現前PD(n=100)、b)前駆症状PD(n=50)、c)臨床治療PD(n=500)などである。このプロセスにおける最終ステップは、「原型的な組み合わされたDNF」に基づく光学的パターン認識である。
【0107】
「原型的な組み合わされたDNF」を比較する場合、以下の状況が発生する場合がある、即ち、a)原型的な組み合わされたデジタル神経フィンガープリントが>80%で一致、b)コア・デジタル神経フィンガープリントのみと>80%で一致、及びc)「新規の」デジタル神経フィンガープリントのみと>80%で一致である。原型的な組み合わされたデジタル神経フィンガープリントが上記(a)のような状況と一致する場合、当該一致は、臨床プロフィールがデータセットに存在する臨床情報に基づいて作成されるように、リバース・エンジニアリングされる。「コアDNF」又は「新規のDNF」のみが一致する場合、以下の手順を辿ることができる、即ち、光学的認識探索は、>80%一致が見出されるまで、一致しないデジタル神経フィンガープリント(例えば、コア又は新規)に集中することが繰り返される。次いで、これらの2つの別個の一致(「コアDNF」に関する一致、及び「新規のDNF」に関する一致)は、より深い探索の結果であり且つ上述された作成に基づいた最初の注釈の結果ではない新たな「原型的な組み合わされたDNF」を作成するために使用される。
【0108】
図7は、このプロセスを実施する例示的な流れ図を示す。
【0109】
図7を参照すると、この例において、ステップ200において、症状発現前パーキンソン病のコア及び新規のデジタル神経フィンガープリントが、複数の被験者1-100からの組み合わせされたデジタル神経フィンガープリント(ステップ202)と組み合わせられて、症状発現前パーキンソン病の原型的な組み合わされたデジタル神経フィンガープリントが生成される。これと並行して、ステップ204において、前駆症状パーキンソン病のコア及び新規のデジタル神経フィンガープリントが、複数の前駆症状PD被験者1-50の組み合わされたデジタル神経フィンガープリント(ステップ206)と組み合わされて、前駆症状パーキンソン病の原型的な組み合わされたデジタル神経フィンガープリントが生成される(ステップ208)。
【0110】
更に、ステップ212において、症状発現前アルツハイマー病のコア及び新規のデジタル神経フィンガープリントが、複数の症状発現前アルツハイマー病被験者1-20からの組み合わされたデジタル神経フィンガープリント(ステップ214)と組み合わされて、ステップ220において、症状発現前アルツハイマー病の原型的な組み合わされたデジタル神経フィンガープリントが生成される。
【0111】
更に、ステップ222において、前駆症状アルツハイマー病のコア及び新規のデジタル神経フィンガープリントが、複数の前駆症状アルツハイマー病被験者1-50の組み合わされたデジタル神経フィンガープリント(ステップ226)と組み合わされて、前駆症状アルツハイマー病の原型的な組み合わされたデジタル神経フィンガープリントが生成される(ステップ230において)。ステップ240において、より深い探索の結果である新たな原型的な組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを生成するために、上述されたように処理ユニット、望ましくは人工知能において一致したパターンが存在する。
【0112】
ステップ250を参照すると、組み合わされたデジタル神経フィンガープリントがステップ240において不一致であると判断される場合、新たな組み合わされたデジタル神経フィンガープリントが、症状発現前パーキンソン病被験者のコア・デジタル神経フィンガープリント及び前駆症状パーキンソン病被験者の新規のデジタル神経フィンガープリント(それぞれステップ254及び256)から生成された、ステップ252における症状発現前パーキンソン病の原型的な組み合わされたデジタル神経フィンガープリントに基づいて、処理ユニット(又は人工ニューラル・ネットワーク)により作成される。これは、前駆症状アルツハイマー病被験者からのコア・デジタル神経フィンガープリントからステップ260で生成された症状発現前アルツハイマー病の原型的な組み合わされたデジタル神経フィンガープリント、及び前駆症状アルツハイマー病被験者からの新規のデジタル神経フィンガープリント(それぞれステップ262及び264)と比較される。
【0113】
別の例において、データセットの1つは、一致されるべき何らかの「新規のDNF」を有さない。このような場合、一致は、「コアDNF」のみを用いて行われ、一致は、臨床プロフィールが医療機器の新しい種類(新規)のデータ(例えば、握力)により強化されるようにリバース・エンジニアリングされる。これは、例えば既知の疾病の新規な亜類型を通知する一意の臨床的特徴を有する場合がある新たな臨床プロフィールを作成する。この例の症状発現前PDの以前の原型的なデジタル神経フィンガープリントの事例は、患者の59%における睡眠障害、患者の76%における鬱病症候群、及び患者の74%における幻視と最も高い頻度で関連付けられたが、新規のデジタル神経フィンガープリントは、患者の34%において握力の低下も明らかにする場合がある。
【0114】
「原型的な組み合わせられたDNF」の場合、PDにおいて握力の低下に関する新規のデジタル神経フィンガープリントが前駆症状AD患者の25%における握力の低下に関する類似した新規のデジタル神経フィンガープリントと一致する可能性がある。これは、臨床試験により実証され得る前駆症状PDの新規な亜類型である。上記の例の全ては、システム及びプロセスが臨床試験の検証に適切な神経心理学的バッテリを選択することに役立つ情報(そうでなければ、データ収集に関して、更に多くの包括的な神経心理学的バッテリを有する必要がある)を明らかにすることができることを示す。また、検証に関して臨床試験の結果も早めることもでき、その理由は、治験責任医師(研究者)が臨床試験から新たに作成されたデジタル神経フィンガープリントを収集して、本明細書で説明される同じ光学的認識アルゴリズムを用いて、それらが、その母集団の「原型的な組み合わされたDNF」と如何に良く一致するかを確かめることができるからである。
【0115】
例示的な装置/システム
教示されたシステム及び方法を具現化するための適切な装置の例は、上記の開示から当業者には即座に明らかになるであろう。それでもなお、完全性のために、一例が図8に関連して、後述される。
【0116】
図8は、本明細書の教示を具現化する際に使用するための装置300の一実施形態を示す。この例における装置300は、第1及び第2のカメラ304、306(一般に、一方は背面(ユーザから離れている)であり、他方は前面(ユーザに面しておりディスプレイと同じ側)である)を設けられたモバイル機器302を含む。また、モバイル機器302は一般に、出力ユニット310、位置センサ312(例えば、GPSモジュール、及び加速度計など)、マイクロフォン320、ユーザ入力ユニット322、及び1つ又は複数の処理ユニット330、340、360も含む。
【0117】
モバイル機器302は好適には、スマートフォンのような手で持って操作できる携帯機器である。しかしながら、モバイル機器302は、任意の他のユーザ携帯機器である場合もある。例えば、それは、スマートウォッチ又はブレスレット、スマートグラス(メガネ)又は同様のもののような、ウェアラブルである場合がある。モバイル機器302は、単一の装置である、又はスマートウォッチ又はブレスレット、或いはメガネさえと連係するスマートフォンのような複数の装置で具現化され得る。図8は、モバイル機器302と通信するように構成された外部アクセサリーとして係るスマートデバイス420を示す。
【0118】
出力ユニット310は、ディスプレイ316、及び幾つかの具現化形態において、一対のスマートグラス内のアイ(目)プロジェクタのようなプロジェクタを含む場合がある。また、出力ユニット310は、スピーカ、及び/又はイヤホン又はヘッドホンの音声出力ポートのような、音響ユニット318も含む場合がある。
【0119】
上記の教示において/そのために設けられるように、以下に制限されないが、複数の異なる被験者からのデータの計算を含む、モバイル機器302から通信回線を介して利用可能な計算作業を行うための内部装置400(一般に、処理ユニット、有利には人工ニューラル・ネットワーク)が設けられ得る。処理ユニット400は一般に、モバイル機器302に結合されて、インターネット、無線ネットワークを通じて、又はGSMネットワークを介してのように、ネット経由でデータを交換する。幾つかの具現化形態において、処理ユニット400は、中央処理コンピュータを含む場合がある。認識されるべきは、幾つかの実施形態において、全ての処理は、モバイル機器302内で実行される。
【0120】
また、装置は、上述されたように、被験者のイメージを取得し、それらをモバイル・ユニット302へ又は外部処理ユニット400へ又は双方へ伝えるように構成されたスマートホーム・カメラ又は他のカメラのような、外部光学センサ430も含む場合がある。認識されるように、外部光学ユニット430は、一組のカメラ又は同様のものを含む場合があり、被験者の複数のイメージを、逐次的に又は同時に取得することができる。
【0121】
本明細書の教示による処理ユニットの一例が図8に示される。
【0122】
システムは、被験者と関連付けられた複数のセンサ502~506を含み、各センサは、上述されたように、被験者の1つ又は複数のバイオマーカを取得するように動作可能である。また、システムは、バイオマーカを処理し且つ適切な入力/出力ユニット510を用いてセンサに結合される処理ユニット500も含む。処理ユニット500は、
被験者と関連付けられた1つ又は複数のセンサから取得される被験者からの第1の組のデジタル・バイオマーカを含む第1のレジスタ512と;
第1の組のデジタル・バイオマーカから、その被験者の第1のデジタル神経シグネチャを生成するように構成された第1のデジタル神経シグネチャ生成器514と;
第1のデジタル神経シグネチャから、第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された第1のデジタル神経フィンガープリント生成器516であって、その第1のデジタル神経フィンガープリントは、第1のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、第1の組のバイオマーカと関連した閾値との比較である、第1のデジタル神経フィンガープリント生成器516と;
被験者の第1の病状を、第1のデジタル神経フィンガープリントから特定するように構成された特定プロセッサ518と、を含む。
【0123】
また、処理ユニット500の入力ユニット510は、1つ又は複数のセンサ502~506からの第2の組のバイオマーカを受け取るようにも構成され、当該1つ又は複数のセンサ502~506は、同じセンサ、同じタイプのセンサ、又は異なるセンサ(単数または複数)タイプである場合がある。
【0124】
また、処理ユニット500は、
第2の組のバイオマーカから、第2のデジタル神経シグネチャを生成するように構成された第2のデジタル神経シグネチャ生成器530と;
第2のデジタル神経シグネチャから、第2のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された第2のデジタル神経フィンガープリント生成器532であって、その第2のデジタル神経フィンガープリントは、第2のデジタル神経シグネチャのバイオマーカの、第2の組のバイオマーカと関連した閾値との比較である、第2のデジタル神経フィンガープリント生成器532と;
第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントにおいて、何らかのデータパターンを特定するように構成されたデータパターン識別器540と、を含む。
【0125】
処理ユニット500は、第1のデジタル神経フィンガープリントにおいて第2の病状を特定するために、第1及び第2のデジタル・フィンガープリントにおいて何らかの特定されたパターンを利用するように構成される。
【0126】
また、処理ユニット500は、一組の被験者から取得された一組の第1のデジタル神経フィンガープリントから、原型的な第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された原型的な第1のデジタル神経フィンガープリント生成器520、及び一組の第2のデジタル神経フィンガープリントから、原型的な第2のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された原型的な第2のデジタル神経フィンガープリント生成器522も含む場合がある。係る実施形態において、処理ユニット500は、第1及び第2の原型的なデジタル神経フィンガープリントから何らかのデータパターンを特定するように構成される。
【0127】
幾つかの実施形態において、処理ユニット500は、特定ステップにおいて求められた(判断された)何らかのデータパターンの一致から新たな第1のデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された新たな第1のデジタル神経フィンガープリント生成器550を含む。新たな第1のデジタル神経フィンガープリントは、被験者の第2の病状を表わす。
【0128】
上述されたように、第1及び第2のデジタル神経フィンガープリント生成器516、532は好適には、要素のアレイとして第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントを形成するように構成され、当該要素のそれぞれはバイオマーカと関連付けられ、そのアレイにおいて、各要素は、測定されたバイオマーカの閾値に対する偏差を表わす値を、好適には、ディスプレイのピクセルとして有する。このために、処理ユニット500は、光学的パターン識別ユニット560を含む場合がある。
【0129】
また、処理ユニット500は、第1及び第2のデジタル神経フィンガープリントから組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを生成するように構成された、組み合わされたデジタル神経フィンガープリント生成器570も含む場合がある。このために、処理ユニット500は、被験者の第1及び/又は第2の病状の判定において、当該組み合わされたデジタル神経フィンガープリントを利用するように構成される。
【0130】
本明細書の教示により、上述されたような好ましいアルゴリズムに基づいた、又は新たな疾病または病気のサイン、又は以前に特定された疾病または病気の新たなサイン、或いは双方の組み合わせを、被験者のグループ内で特定しようとして、既存のバイオマーカ及び/又は新しい組のバイオマーカの組み合わせに基づいた、新たなデジタル神経フィンガープリントの生成を可能にする。これは、以前には特定または検討されなかったバイオマーカのコアセットから潜在的に疾病または病気にかかりやすい被験者の特定を可能にすることができる。係る被験者の特定は、臨床試験に必要な被験者の数を大幅に低減することができ、潜在的に、従来検討された症状が患者の患者自身に現われるよりかなり前に、疾病または病気のより早い診断を行うことにも役立つことができる。
【0131】
潜在的にアルツハイマー病を引き起こす認識機能障害の早期診断は、既存の方法と治療に比べて、早期治療および潜在的に大幅に改善された医学的転帰を提供することができる。
【0132】
更なる悪化を遅らせる又は防止するために又は症状を治療するために処方され得る薬は、コリンエステラーゼ阻害剤(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンの如き)、メマンチン(任意選択的にコリンエステラーゼ阻害剤と併用)、モノクローナル抗体(アデュカヌマブ(アデュヘルム)の如き)、BAN2401、ガンテネルマブ(任意選択的にソラネズマブと併用)、ソラネズマブ(任意選択的にガンテネルマブと併用)、シグマ-1受容体アゴニスト(任意選択的にまたANAVEX2(ブラルカメシン)、AVP-786またはAXS-05のようなM2自己受容体アンタゴニストまたはNMDA受容体アンタゴニスト)、SV2Aモジュレーター(AGB101(低用量レベチラセタム)の如き)、肥満細胞安定剤(ALZT-OP1(クロモリン+イブプロフェン)の如き)、抗炎症剤(ALZT-OP1(クロモリン+イブプロフェン)の如き)、RAGEアンタゴニスト(アゼリラゴンの如き)、グルタミン酸モジュレーター(BHV4157(トロリルゾール)の如き)、D2受容体部分アゴニスト(ブレクスピプラゾールの如き)、セロトニン・ドーパミンモジュレーター(ブレクスピプラゾールの如き)、アミロイドワクチン(CAD106の如き)、細菌性プロテアーゼ阻害剤(COR388の如き)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(エスシタロプラムの如き)、抗酸化剤(イチョウの如き)、植物抽出物(イチョウの如き)、α-2アドレナリンアゴニスト(グアンファシンの如き)、オメガ-3脂肪酸(エイコサペンタエン酸の精製物であるイコサペント酸エチル(IPE)の如き)、アンジオテンシンII受容体ブロッカー(ロサルタンの如き)、カルシウムチャネルブロッカー(アミオジピンの如き)、コレステロール剤(アトルバスタチンの如き)、運動の有無にかかわらずアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ロサルタンの如き)とカルシウムチャネル拮抗薬(アミオジピンの如き)とコレステロール剤(アトルバスタチンの如き)の組み合わせ、チロシンキナーゼ阻害剤(マシチニブの如き)、インスリン抵抗性改善剤(メトホルミンの如き)、ドーパミン再取り込み阻害剤(メチルフェニデートの如き)、α-1アンタゴニスト(ミルタザピンの如き)、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(コハク酸オクトヒドロアミノアクリジンの如き)、ケトン体刺激剤(トリカプリリンの如き)、カプリル酸トリグリセリド(トリカプリリンの如き)、タウ蛋白凝集阻害剤(AADvac1又はTRx0237(LMTX)の如き)、GABA-A受容体のポジティブアロステリックモジュレーター(ゾルピデムおよびゾプリコン)、又はBPDO-1603、或いは一緒に又は別個に投与されるこれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0133】
結果に応じて、システムは、薬剤介入を示唆し、既に実施されている薬剤介入に変更を加える(例えば、投薬量または投与養生法に変更を加える)場合があり、及び/又は治療が効果があるように継続するか否かを示す場合がある。
【0134】
また、システムは、個人の最適な治療を判断するために、試験の個々の分野において取得されたスコアを調査するための可能性を医師に提供する。
【0135】
かくして、システムは、軽度の認識機能障害またはADを有する個人を診断するために、又は、軽度の認識機能障害を有する個人がやがてADに変化するか否かを予測するために使用され得る。また、それは、適切な介入治療を処方している医師を支援するために、及び/又は既に処方された介入治療が効いているか否かを判断することに役立つために使用され得る。従って、システムは、介入治療を開始すること、介入治療を停止すること、或いは介入治療、薬剤または同様のものを変更することを示唆することにより、医師を支援する場合がある。それは、薬剤介入または個人に投与されるべき特定の薬の適切な頻度および/または用量を示唆する場合があり、及び/又はその個人の薬剤介入の適切な投与経路を示唆する場合がある。これは、上述された(例えば、例4において)特定の薬剤介入に、及び本明細書に開示されているかどうかに関わりなく全ての他の潜在的な調剤に適用される。
【0136】
本明細書で説明されるシステムの顕著な利点の1つは、現時点においてADを診断する際に使用される標準的な神経生理学的評価に比べて、単一の試験において認識能力を評価することができることである。結果として、認識機能(認知機能)測定が、従来の神経生理学的評価(例えば、MMSE、ADAS-Cog)の2時間と比べて、約10分で施され得る。
【0137】
本願が優先権を主張する米国特許出願第63/277456号の開示、及び本願に添付された要約書における開示は、参照によって本明細書に援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】