IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルバー アクツィエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2024-542419組成物中のアピシジン濃度を低下させるための手段及び方法
<>
  • 特表-組成物中のアピシジン濃度を低下させるための手段及び方法 図1
  • 特表-組成物中のアピシジン濃度を低下させるための手段及び方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】組成物中のアピシジン濃度を低下させるための手段及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20241108BHJP
   A23K 20/147 20160101ALI20241108BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20241108BHJP
   A23L 33/00 20160101ALI20241108BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20241108BHJP
   A23L 5/20 20160101ALI20241108BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C12N1/20 F ZNA
A23K20/147
A23K10/16
A23L33/00
A23L33/135
A23L5/20
C12N15/11 Z
C12N1/20 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527381
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2022083729
(87)【国際公開番号】W WO2023099500
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21211878.0
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520222298
【氏名又は名称】デーエスエム オーストリア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】クレイナー, フローリアン
(72)【発明者】
【氏名】ラブドヴァ, シルヴィア
(72)【発明者】
【氏名】ノバク, バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】レイナー, バレンティナ
(72)【発明者】
【氏名】シャッツマイヤー, ディアン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B035
4B065
【Fターム(参考)】
2B150AC01
2B150DC23
4B018MD85
4B018ME14
4B035LC09
4B035LG04
4B035LG50
4B035LP41
4B065AA01X
4B065BB23
4B065BB26
4B065BD50
4B065CA41
4B065CA43
(57)【要約】
本発明は、配列番号1~7からなる群から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも95%の同一性を有する微生物を提供することにより、組成物中のアピシジン濃度を低下させる方法及び前記微生物の使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アピシジンを含む栄養組成物中のアピシジン濃度を低下させる方法であって、
a)アピシジンを含む前記栄養組成物を提供するステップ;
b)少なくとも1つの微生物を提供するステップであって、前記少なくとも1つの微生物は、配列番号1~7からなる群から選択されるヌクレオチド配列、好ましくは配列番号1~4からなる群から選択されるヌクレオチド配列、より好ましくは配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有する16S rDNAを含み;好ましくは、前記少なくとも1つの微生物は、ラウルティバクター(Raoultibacter)属に属する、ステップ;
c)水、a)の前記栄養組成物及びb)の前記少なくとも1つの微生物を含む混合物を形成するステップ;
d)ステップc)の前記混合物をインキュベートするステップ
を含む方法。
【請求項2】
ステップc)の前記混合物をインキュベートするステップd)は、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2時間、更により好ましくは少なくとも1日、最も好ましくは少なくとも2日にわたって且つ少なくとも10℃、好ましくは少なくとも15℃、より好ましくは少なくとも20℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの微生物は、ラウルティバクター種ノバ(Raoultibacter species nova)、ラウルティバクター・マシリエンシス(Raoultibacter massiliensis)、ラウルティバクター・チモネンシス(Raoultibacter timonensis)及びラウルティバクター・フォカエエンシス(Raoultibacter phocaeensis)からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの微生物は、DSM 33979、DSM 33980、DSM 33991及びDSM 33992からなる株の群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
a)の前記栄養組成物は、食料品;飼料;餌;食料品添加物;飼料添加物;餌添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
食料品;飼料;餌;食料品添加物;飼料添加物;餌添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物を処理する方法であって、前記食料品;飼料;餌;食料品添加物;飼料添加物;餌添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物は、アピシジンを含み、前記方法は、
a)少なくとも1つの微生物を提供するステップであって、前記少なくとも1つの微生物は、配列番号1~7からなる群から選択されるヌクレオチド配列、好ましくは配列番号1~4からなる群から選択されるヌクレオチド配列、より好ましくは配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有する16S rDNAを含み;好ましくは、前記少なくとも1つの微生物は、ラウルティバクター(Raoultibacter)属に属する、ステップと;
b)a)の前記少なくとも1つの微生物を前記食料品;飼料;餌;食料品添加物;飼料添加物;餌添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物に適用し、したがって処理混合物を形成するステップと;
c)ステップb)の前記処理混合物をインキュベートするステップと
を含む、方法。
【請求項7】
ステップb)の前記処理混合物をインキュベートするステップc)は、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2時間、更により好ましくは少なくとも1日、最も好ましくは少なくとも2日にわたって且つ少なくとも10℃、好ましくは少なくとも15℃、より好ましくは少なくとも20℃の温度で行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの微生物は、ラウルティバクター種ノバ(Raoultibacter species nova)、ラウルティバクター・マシリエンシス(Raoultibacter massiliensis)、ラウルティバクター・チモネンシス(Raoultibacter timonensis)及びラウルティバクター・フォカエエンシス(Raoultibacter phocaeensis)からなる群から選択され、好ましくは、前記少なくとも1つの微生物は、DSM 33979、DSM 33980、DSM 33991及びDSM 33992からなる株の群から選択される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの微生物は、液体組成物の1mL当たり少なくとも10cfu又は固体組成物、例えば食料品;飼料;餌;食料品添加物、飼料添加物若しくは餌添加物などの添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物の1g当たり少なくとも10cfuの濃度;好ましくは液体組成物の1mL当たり少なくとも1.7*10cfu又は固体組成物、例えば食料品;飼料;餌;食料品添加物、飼料添加物若しくは餌添加物などの添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物の1g当たり少なくとも1.7*10cfuの濃度を達成するような量で適用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって製造可能であるか又は製造される食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物。
【請求項11】
アピシジンを含む組成物中のアピシジン濃度を低下させるための少なくとも1つの微生物の使用において、前記少なくとも1つの微生物は、配列番号1~7からなる群から選択されるヌクレオチド配列、好ましくは配列番号1~4からなる群から選択されるヌクレオチド配列、より好ましくは配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有する16S rDNAを含み;好ましくは、前記少なくとも1つの微生物は、ラウルティバクター(Raoultibacter)属に属することを特徴とする使用。
【請求項12】
前記少なくとも1つの微生物は、ラウルティバクター種ノバ(Raoultibacter species nova)、ラウルティバクター・マシリエンシス(Raoultibacter massiliensis)、ラウルティバクター・チモネンシス(Raoultibacter timonensis)及びラウルティバクター・フォカエエンシス(Raoultibacter phocaeensis)からなる群から選択され、好ましくは、前記少なくとも1つの微生物は、DSM 33979、DSM 33980、DSM 33991及びDSM 33992からなる株の群から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
マイコトキシン症、特にアピシジン中毒症によって引き起こされる症状の治療、改善、予防及び/又は診断に使用するための微生物において、配列番号1~7からなる群から選択されるヌクレオチド配列、好ましくは配列番号1~4からなる群から選択されるヌクレオチド配列、より好ましくは配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有する16S rDNAを含み;好ましくはラウルティバクター(Raoultibacter)属に属することを特徴とする微生物。
【請求項14】
ラウルティバクター種ノバ(Raoultibacter species nova)、ラウルティバクター・マシリエンシス(Raoultibacter massiliensis)、ラウルティバクター・チモネンシス(Raoultibacter timonensis)及びラウルティバクター・フォカエエンシス(Raoultibacter phocaeensis)からなる群から選択され、好ましくはDSM 33979、DSM 33980、DSM 33991及びDSM 33992からなる株の群から選択される、請求項13に記載の微生物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]本発明は、微生物を提供することにより、栄養組成物中のアピシジン濃度を低下させる方法、食料品、餌等を処理する方法及び前記微生物の使用に関する。
【0002】
[0002]アピシジン(CAS番号:183506-66-3;例えば、(3S,6S,9S,15aR)-9-[(2S)-ブタン-2-イル]-6-[(1-メトキシ-1H-インドール-3-イル)メチル]-3-(6-オキソオクチル)オクタヒドロ-2H-ピリド[1,2-a][1,4,7,10]テトラアザシクロドデシン-1,4,7,10(3H,12H)-テトラオンとも言われる)は、フザリウム属(Fusarium)菌、例えばF.セミテクツム(F.semitectum)によって産生される、毒性が高い代謝物である。アピシジンは、以下に示される分子構造を有する環状テトラペプチドであり、ヒストン脱アセチル化酵素を阻害すると記載されている。
【化1】
【0003】
[0003]28種の他の試験された菌代謝物の中で、アピシジンは、最も低いIC50値を有すること、すなわち最も強い細胞毒性作用を示すことが見出された(Novak et al.2019.Toxins 11:537)。アピシジンの毒性効果は、ラット給飼トライアル、ブラインシュリンプ並びにヒト及びマウス細胞株で示された(Park et al.1999.Appl.Environ.Microbiol 65:126)。菌代謝物であるため、アピシジンは、例えば、農作物などの一次産品に由来する組成物中に見出され得る。とりわけ、アピシジンは、デオキシニバレノールなどの他の毒性物質と同時に現れ得る。特にデオキシニバレノール及びアピシジンでの同時汚染の場合、アピシジンの共存在なしでは細胞に影響を及ぼさないであろう濃度のデオキシニバレノールで複合毒素との接触時に上皮細胞のバリア機能の欠陥が観察されている(Springler et al.2016.Toxins 8:345)。
【0004】
[0004]これらの好ましくない効果にもかかわらず、且つフモニシン、デオキシニバレノール又はゼラレノンなどの他の有毒菌代謝物とは対照的に、アピシジンの毒性効果を弱めるための手段は、現在まで見出されていない。
【0005】
[0005]上記で概説されたような先行技術を考慮して、したがって、栄養組成物中のアピシジンの濃度を低下させるための手段及び対策を提供することが本発明の目的である。
【0006】
[0006]この目的は、アピシジンを含む栄養組成物中のアピシジン濃度を低下させる方法であって、a)アピシジンを含む栄養組成物を提供するステップ;b)少なくとも1つの微生物を提供するステップであって、少なくとも1つの微生物は、配列番号1~7からなる群から選択されるヌクレオチド配列、好ましくは配列番号1~4からなる群から選択されるヌクレオチド配列、より好ましくは配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有する16S rDNAを含み;好ましくは、少なくとも1つの微生物は、ラウルティバクター(Raoultibacter)属に属する、ステップ;c)水、a)の栄養組成物及びb)の少なくとも1つの微生物を含む混合物を形成するステップ;d)ステップc)の混合物をインキュベートするステップを含む方法を提供することによって達成されることが見出された。本明細書により、栄養組成物は、処理前と比較してより少ない又は更にゼロのアピシジンを含有するように改変され得、したがってアピシジン及び前記アピシジンによって引き起こされる毒性効果を低下させるか又は更に排除することができる。一実施形態では、本発明は、アピシジンを含む栄養組成物中のアピシジン濃度を低下させる方法であって、a)アピシジンを含む栄養組成物を提供するステップ;b)少なくとも1つの微生物を提供するステップであって、少なくとも1つの微生物は、ラウルティバクター(Raoultibacter)属に属する、ステップ;c)水、a)の栄養組成物及びb)の少なくとも1つの微生物を含む混合物を形成するステップ;d)ステップc)の混合物をインキュベートするステップを含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】微生物(1.7*107cfu/mL出発濃度)による組成物中のアピシジンの低下を示す。
図2】飼料の1g当たり1.7*104cfu(コロニー形成濃度)のみのラウルティバクター(Raoultibacter)種を使用する飼料からのアピシジンの除去を示す。
【0008】
[0007]本明細書で言及されるような栄養組成物は、栄養価を有する1種以上の成分を含む組成物である。多くの場合そのような成分は、エネルギーを栄養組成物の消費者に提供する。栄養組成物は、一般的に使用される動物飼料組成物など、完全に又は少なくとも部分的に草木又は植物ベースであり得る。ステップc)の混合物中に含まれる水は、栄養組成物中に含まれる水分に由来し得、例えば水分の形態で存在し得るか、又はその水は、本方法のオペレータによって添加され得るか、又は水は、唾液に由来し得るであろう。
【0009】
[0008]用語「16S rDNA」は、原核細胞リボソームの30Sサブユニットの16Sリボ核酸成分をコードするリボソームデオキシリボ核酸(rDNA)を指す。2つ以上の核酸配列(例えば、DNA又はRNA)の類似度又は関連性は、配列同一性の観点から説明することができる。配列同一性は、当業者に公知の一般的な方法によって決定することができる。本明細書では、2つ以上の16S rDNA配列の中での配列同一性の好ましい決定方法は、デフォルト設定を用いたEMBL-EBIのClustal Omegaヌクレオチド配列アラインメントツール(https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/;Sievers et al.2011.Mol.Syst.Biol.7:539)の使用である。代わりに、例えば、全米バイオテエクノロジー情報センターによって提供されるようなデフォルト設定(Match/Mismatch Scores:2,-3;Gap Costs:Existence:5 Extension 2)を使用する、グローバル配列アラインメンのためのNeedleman-Wunschアルゴリズム(「Needleman-Wunsch Global Align Protein Sequences」)が使用され得る。
【0010】
[0009]酵素又は微生物などの生物系によって触媒される反応などの化学反応は、環境条件に応じてより速く又はより遅く起こり得る。好ましい方法で本出願の方法を行うために、したがって、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2時間、更により好ましくは少なくとも1日、最も好ましくは少なくとも2日にわたり、上記に記載された方法のステップd)を行うことが考えられる。更に、上記に記載された方法のステップd)を少なくとも10℃、好ましくは少なくとも15℃、より好ましくは少なくとも20℃の温度で行うことが好ましい。最大で50℃、好ましくは最大で40℃の温度で前記インキュベーションを行うことが更に好ましい。一実施形態では、本出願の方法は、通常の周囲温度(すなわち15~35℃、好ましくは18~30℃、より好ましくは18~25℃)で行われる。本明細書で記載される方法を前記条件下で行う場合、組成物中のアピシジン濃度又は含有量の特に効率的な低下が達成され得る。ステップd)のインキュベーションがより長く行われるほど、より多くのアピシジンが栄養組成物から除去されるであろう。とりわけ、そのような長いインキュベーション時間の全体を通してさえ、微生物は、アピシジンを除去できることが見出され得る。それにもかかわらず、当業者は、本明細書で記載されるようなタイプの反応が前記好ましい条件外でも達成され得ることを知っている。単に明確にするために、インキュベーションは、本明細書で言及されるような微生物と、本明細書で言及されるようなアピシジンを含む組成物とが接触すると直ちに始まると考えられる。当業者は、組成物中に存在するアピシジン濃度を所望の程度まで低下させるのに適切なインキュベーション条件を良好に選択することができる。
【0011】
[0010]意外にも、特に、種ラウルティバクター種ノバ(Raoultibacter species nova)、ラウルティバクター・マシリエンシス(Raoultibacter massiliensis)、ラウルティバクター・チモネンシス(Raoultibacter timonensis)及びラウルティバクター・フォカエエンシス(Raoultibacter phocaeensis)からなる群から選択される微生物は、栄養組成物中のアピシジン濃度の低下を達成するための効率的な微生物触媒であることが本発明者らによって見出された。したがって、一実施形態では、本発明は、少なくとも1つの微生物が、ラウルティバクター種ノバ(Raoultibacter species nova)、ラウルティバクター・マシリエンシス(Raoultibacter massiliensis)、ラウルティバクター・チモネンシス(Raoultibacter timonensis)及びラウルティバクター・フォカエエンシス(Raoultibacter phocaeensis)からなる群から選択される、本明細書で記載されるような方法に関する。更により好ましくは及び具体的には、少なくとも1つの微生物は、DSM 33979、DSM 33980、DSM 33991及びDSM 33992からなる株の群から選択される。ラベル「DSM 33979、DSM 33980、DSM 33991及びDSM 33992」は、Leibniz Institute DSMZ-German Collection of microorganisms及びCell Cultures GmbHに寄託された株の識別子番号を示す。組成物中のアピシジンの傑出した及び信頼性の高い低下は、DSM 33979、DSM 33980、DSM 33991及びDSM 33992から選択される微生物株が使用された場合に達成可能であることが見出された。
【0012】
[0011]組成物は、1種以上の固体成分及び/又は1種以上の液体成分からなるか又はそれを含み得る。例えば、栄養組成物(上記で記載される本方法のステップa)で言及されるような)は、食料品;飼料;餌;食料品添加物;飼料添加物;餌添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物からなる群から選択され得る。そのような組成物は、餌/食品チェーンの一環であり、したがってアピシジンの低下又は更に除去から実質的に恩恵を受け得る。そのような組成物中のアピシジンの低下又は更に除去は、したがって、食品生産におけるより小さい損失並びにより健康的な動物及び消費者に貢献し得る。単に明確にするために、飼料又は餌は、例えば、トウモロコシ、干し草、麦わら敷きわら、大豆又はそれらから得られる生成物を含み得るか又はそれからなり得る。飼料又は餌は、押し出された餌生成物、例えばペレットも含み得るか又はそれからなり得る。食料品、飼料又は餌用の添加物は、特性を改善するか又は特性を食料品、飼料若しくは餌に追加するために使用される。例えば、そのような添加物は、感覚刺激性特性を改善するため、例えば食料品、飼料又は餌の味覚、匂い、外観、色を改善するために添加され得る。添加物は、おいしさ、栄養素利用性を改善するか、又はプロバイオティック微生物を食料品、飼料若しくは餌に追加するか、又は食料品、飼料若しくは餌のプレバイオティック活性を追加するか若しくは高めるためにも添加され得る。そのような添加物は、食料品、飼料又は餌に含まれる1種以上の望ましくない成分の除去又は減少など、食料品、飼料又は餌の潜在的に望ましくない効果を弱めるためにも添加され得る。
【0013】
[0012]代わりに、食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物から選択される組成物は、その組成物が、好適な処理後に前記処理前のアピシジン濃度と比較して低下したアピシジン濃度を有することを必要とされ得ると考えられる。この目的は、食料品;飼料;餌;食料品添加物;飼料添加物;餌添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物を処理する方法であって、食料品;飼料;餌;食料品添加物;飼料添加物;餌加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物は、アピシジンを含み、本方法は、a)少なくとも1つの微生物を提供するステップであって、少なくとも1つの微生物は、配列番号1~7からなる群から選択されるヌクレオチド配列、好ましくは配列番号1~4からなる群から選択されるヌクレオチド配列、より好ましくは配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有する16S rDNAを含み;好ましくは、少なくとも1つの微生物は、ラウルティバクター(Raoultibacter)属に属する、ステップと;b)a)の少なくとも1つの微生物を食料品;飼料;餌;食料品添加物;飼料添加物;餌添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物に適用し、したがって処理混合物を形成するステップと;c)ステップb)の処理混合物をインキュベートするステップとを含む、方法を提供することによって達成された。上記の処理方法前に、食料品;飼料;餌;食料品添加物;飼料添加物;餌添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物は、(例えば、30ppb超若しくは更に40ppb、50ppb、60ppb、70ppb、80ppb、90ppb、100ppb超又は更にそれを超える濃度で)アピシジンを含む。しかしながら、そのような方法によって得られた食料品;飼料;餌;食料品添加物;飼料添加物;餌添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物は、もはやより少ないか又は更にゼロのアピシジンを含有し、したがってアピシジン誘導悪影響を弱めるために必要ないかなる更なる手段もなしに、意図される目的のために便利に使用され得る。a)の微生物又は食料品;飼料;餌;食料品添加物;飼料添加物;餌添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/若しくはそれらの混合物が(例えば、水分の形態の)水を含まない場合、水は、ステップc)において、特にステップc)前に添加され得る。
【0014】
[0013]一実施形態では、本発明は、食料品;飼料;餌;食料品添加物;飼料添加物;餌添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物を処理する方法であって、a)少なくとも1つの微生物を提供するステップであって、少なくとも1つの微生物は、ラウルティバクター(Raoultibacter)属に属する、ステップと;b)a)の少なくとも1つの微生物を食料品;飼料;餌;食料品添加物;飼料添加物;餌添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物に適用し、したがって処理混合物を形成するステップと;c)ステップb)の処理混合物をインキュベートするステップとを含む方法に関する。好ましくは、食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物を処理する方法が行われ、ステップb)の処理混合物をインキュベートするステップc)は、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも2時間、更により好ましくは少なくとも1日、最も好ましくは少なくとも2日にわたって行われる。好ましくは、本方法は、少なくとも10℃、好ましくは少なくとも15℃、より好ましくは少なくとも20℃の温度で更に行われる。前記インキュベーションを最大で50℃、好ましくは最大で40℃の温度で行うことが更に好ましい。例えば、本出願の方法は、通常の周囲温度(すなわち15~35℃、好ましくは18~30℃、より好ましくは18~25℃)で行われる。
【0015】
[0014]食料品;飼料;餌;食料品添加物;飼料添加物;餌添加物;湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物を処理する方法の好ましい実施形態では、少なくとも1つの微生物が、ラウルティバクター種ノバ(Raoultibacter species nova)、ラウルティバクター・マシリエンシス(Raoultibacter massiliensis)、ラウルティバクター・チモネンシス(Raoultibacter timonensis)及びラウルティバクター・フォカエエンシス(Raoultibacter phocaeensis)からなる群から選択され、好ましくは、少なくとも1つの微生物が、DSM 33979、DSM 33980、DSM 33991及びDSM 33992からなる株の群から選択される方法で行われる。
【0016】
[0015]液体組成物の1mL当たり少なくとも10cfu又は固体組成物(例えば、食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物)の1g当たり少なくとも10cfuの濃度、好ましくは液体組成物の1mL当たり少なくとも1.7*10cfu又は固体組成物(例えば、食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物)の1g当たり少なくとも1.7*10cfuの濃度を達成するような量で少なくとも1つの微生物が適用される方法において、本明細書に記載される任意の方法を行うことが好ましい。換言すれば、組成物中の少なくとも1つの微生物の最終濃度、すなわち作業濃度は、組成物(例えば、食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物)の1mL当たり又は1g当たり好ましくは少なくとも10cfu、より好ましくは組成物(例えば、食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物)の1mL当たり又は1g当たり少なくとも1.7*10cfuの濃度である。
【0017】
[0016]当業者は、本発明が、より低い濃度の微生物を使用する場合にも行われ得ることを知っている。それにもかかわらず、上記で記載されたような最低濃度を適用する場合、アピシジン低下又は除去は、最も都合のよい時間枠内で達成され得る。
【0018】
[0017]用語「cfu」は、当技術分野で知られているように、「コロニー形成単位」を指す。例えば、再生産可能な最小生物学的単位(例えば、細菌性細胞)は、コロニー形成単位である。典型的には、単一生細菌性細胞は、コロニー形成単位である。実際には、組成物中のコロニー形成単位の濃度は、その目的のために当業者に知られている任意の一般的な好適な方法、例えば栄養寒天プレート上でコロニーを計数すること又は当業者に知られているように生きている微生物を数値化するのに適したフローサイトメトリーを適用することによって決定され得る。
【0019】
[0018]本発明の別の態様は、本明細書で記載されるような方法によって製造可能であるか又は製造される食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物に関する。本明細書で記載されるような方法によって製造可能であるか又は製造される食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物は、本明細書で記載されるような方法によって製造されなかった食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物と比較してゼロの又は少なくともより低い量のアピシジンを含む。結果として、本発明によるそのような食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物は、そのような食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物の消費者にアピシジン誘導毒性効果を引き起こすより低い脅威を呈する。本明細書で記載されるような方法によって製造可能であるか又は製造される食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物は、本明細書で言及されるような少なくとも1つの微生物を含み、この少なくとも1つの微生物は、配列番号1~7からなる群から選択されるヌクレオチド配列、好ましくは配列番号1~4からなる群から選択されるヌクレオチド配列、より好ましくは配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有する16S rDNAを含み;好ましくは、少なくとも1つの微生物は、ラウルティバクター(Raoultibacter)属に属すると考えられる。したがって、そのような食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物は、本明細書で言及される少なくとも1つの微生物を含まない食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物と比較して、結果として起こる菌の生育によってアピシジンでの更なる汚染のリスクがより低いものである。好ましくは、本明細書で記載されるような方法によって製造可能であるか又は製造される食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物は、液体組成物の1mL当たり少なくとも10cfu又は固体組成物の1g当たり少なくとも10cfu、より好ましくは液体組成物の1mL当たり少なくとも1.7*10cfu又は固体組成物の1g当たり少なくとも1.7*10cfuの濃度で本発明による微生物を含む。
【0020】
[0019]ある実施形態では、本明細書で記載されるような方法によって製造可能であるか又は製造されるそのような食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌添加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物は、30ppb未満のアピシジン(例えば、25ppb若しくは15ppb又は30~20ppb、若しくは30~10ppb、若しくは30~5ppbのアピシジン)、好ましくは20ppb未満のアピシジン(例えば、15ppb又は20~5ppbのアピシジン)、より好ましくは10ppb未満のアピシジン(例えば、10~5ppbのアピシジン又は5ppb、4ppb、3ppb、2ppb等のアピシジン)を含む。
【0021】
[0020]別の態様では、本発明は、アピシジンを含む組成物(例えば、栄養組成物)中のアピシジン濃度を低下させるための少なくとも1つの微生物の使用(例えば、非医学的使用)であって、少なくとも1つの微生物は、配列番号1~7からなる群から選択されるヌクレオチド配列、好ましくは配列番号1~4からなる群から選択されるヌクレオチド配列、より好ましくは配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有する16S rDNAを含み;好ましくは、少なくとも1つの微生物は、ラウルティバクター(Raoultibacter)属に属する、使用に関する。意外にも、そのような微生物は、食料品;飼料;餌;添加物(例えば、食料品、飼料若しくは餌加物);湿潤蒸留粕;可溶分を有する乾燥蒸留粕;栄養補助食品;プレバイオティック;プロバイオティック;それらの中間体;及び/又はそれらの混合物など、組成物中のアピシジンの濃度を低下させ得ることが見出された。これにより、低下した又は更にゼロのアピシジンを有するそのよう組成物の消費者は、アピシジンの毒性効果により少なく曝されるか又は曝されない。特に、アピシジン中毒症など、かび毒症を患っていない動物(例えば、家禽、豚、反すう動物等)は、改善された性能(例えば、体重増加の増大及び/又は飼料要求率の低下)を示すことが見出され得る。本発明の微生物は、したがって、動物がアピシジンを含む栄養組成物で飼われる場合、前記動物の性能を改善するために使用され得る。一実施形態では、本発明は、組成物(例えば、栄養組成物)中のアピシジン濃度を低下させるための少なくとも1つの微生物の使用であって、少なくとも1つの微生物は、ラウルティバクター(Raoultibacter)属に属する、使用に関する。
【0022】
[0021]好ましくは、本明細書で記載されるような組成物中のアピシジン濃度を低下させるための少なくとも1つの微生物の使用は、少なくとも1つの微生物が、ラウルティバクター種ノバ(Raoultibacter species nova)、ラウルティバクター・マシリエンシス(Raoultibacter massiliensis)、ラウルティバクター・チモネンシス(Raoultibacter timonensis)及びラウルティバクター・フォカエエンシス(Raoultibacter phocaeensis)からなる群から選択され、好ましくは、少なくとも1つの微生物が、DSM 33979、DSM 33980、DSM 33991及びDSM 33992からなる株の群から選択される方法で行われる。
【0023】
[0022]更なる態様では、本発明は、微生物に関し、且つ薬剤(例えば、獣医学における)として並びに/又は疾病の治療、改善、予防及び/若しくは診断で使用され得、微生物は、配列番号1~7からなる群から選択されるヌクレオチド配列、好ましくは配列番号1~4からなる群から選択されるヌクレオチド配列、より好ましくは配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有する16S rDNAを含み、好ましくは、微生物は、ラウルティバクター(Raoultibacter)属に属する。一実施形態では、本発明は、薬剤(例えば、獣医学における)として並びに/又は疾病の治療、改善、予防及び/若しくは診断で使用するための微生物であって、ラウルティバクター(Raoultibacter)属に属する微生物に関する。
【0024】
[0023]本発明の微生物がアピシジンを除去することができるという意外な発見により、疾病の治療、改善、予防又は診断での薬剤としてのその使用は、非常に好都合である。したがって、マイコトキシン症、特にアピシジン中毒症によって引き起こされる症状の治療、改善、予防及び/又は診断に使用するための微生物であって、配列番号1~7からなる群から選択されるヌクレオチド配列、好ましくは配列番号1~4からなる群から選択されるヌクレオチド配列、より好ましくは配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも98%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有する16S rDNAを含み;好ましくは、ラウルティバクター(Raoultibacter)属に属する微生物を提供することが本発明の更なる態様である。一実施形態では、本発明は、マイコトキシン症、特にアピシジン中毒症によって引き起こされる症状の治療、改善、予防及び/又は診断で使用するための微生物であって、ラウルティバクター(Raoultibacter)属に属する微生物に関する。
【0025】
[0024]微生物は、微生物を含む栄養組成物を提供することによってヒトに又は動物(例えば、ペット、家禽、豚、反すう動物等)に投与され得る。
【0026】
[0025]本明細書で言及されるような少なくとも1つの微生物を含む組成物は、1種以上のキノコ/植物/細菌毒を解毒することができる1種以上の追加の微生物;1種以上の更なるキノコ/植物/細菌毒素を解毒することができる1種以上の単離ポリペプチド(例えば、UniProtKB:D2D3B6に例えば記載されるようなフモニシンエステラーゼ及び/若しくはその変異体;並びに/又は例えばUniProtKB:Q8NKB0に記載されるようなゼラレノンラクトナーゼ及び/若しくはその変異体);並びに/又は1種以上の有機吸収性成分(例えば、不活性化/乾燥/凍結乾燥/生酵母、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)種、例えばS.セレビシエ(S.cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris));並びに/又は1種以上の無機吸収性成分(例えば、粘土製品、ベントナイト、ゼオライト、ベントナイト-モンモリロナイト、珪藻土);並びに/又は1種以上の植物製品(例えば、藻類製品、アザミエキス);並びに/又は1種以上のビタミン;並びに/又は1種以上の風味化合物;並びに/又は1種以上のプレバイオティック化合物(例えば、マンナン);並びに/又は1種以上のプロバイオティック化合物などの1種以上の更なる成分を含み得る。
【0027】
[0026]好ましい実施形態では、薬剤(例えば、獣医学における)として且つ/又は疾病の治療、改善、予防及び/若しくは診断で使用するための、並びに/或いは特に本明細書で言及されるようなマイコトキシン症によって(例えば、アピシジン中毒症によって)引き起こされる症状の治療、改善、予防及び/又は診断に使用するための少なくとも1つの微生物は、ラウルティバクター種ノバ(Raoultibacter species nova)、ラウルティバクター・マシリエンシス(Raoultibacter massiliensis)、ラウルティバクター・チモネンシス(Raoultibacter timonensis)及びラウルティバクター・フォカエエンシス(Raoultibacter phocaeensis)からなる群から選択され、より好ましくは、微生物は、DSM 33979、DSM 33980、DSM 33991及びDSM 33992からなる株からなる群から選択される。アピシジンの信頼性の高い低下のため、これらの好ましい実施形態による微生物は、薬剤として、特にマイコトキシン症、特にアピシジン中毒症によって引き起こされる症状の治療、改善、予防及び/又は診断での使用の目的にかなうのに特に好適であることが見出された。
【0028】
[0027]好ましくは、薬剤(例えば、獣医学における)として並びに/又は疾病の治療、改善、予防及び/若しくは診断で使用するための本発明の微生物;並びに/又はマイコトキシン症によって(例えば、アピシジン中毒症によって)引き起こされる症状の治療、改善、予防及び/若しくは診断で使用するための本発明の組成物は、そのような組成物中に含まれる微生物が、液体組成物の1mL当たり少なくとも10cfu若しくは固体の1g当たり少なくとも10cfuの濃度、好ましくは液体組成物の1mL当たり少なくとも1.7*10cfu若しくは固体組成物の1g当たり少なくとも1.7*10cfuの濃度を達成するために適用される方法で適用される。換言すれば、そのような組成物中の本発明による少なくとも1つの微生物の最終濃度、すなわち作業濃度は、組成物の1mL当たり又は1g当たり好ましくは少なくとも10cfu、より好ましくは組成物の1mL当たり又は1g当たり少なくとも1.7*10cfuの濃度である。
【0029】
[0028]以下では、本発明を非限定的な図及び実施例によって更に説明し、図1は、実験セットアップでの本発明に従った微生物株によるアピシジン濃度の低下を示し;図2は、本発明による添加物による餌中のアピシジン濃度の低下を示す。
【0030】
[0029]本明細書で示される及び説明される図は、単に例示的な例としての役割を果たすにすぎず、本発明の実施形態を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0031】
[実施例]
[0030]本明細書で開示されるような本発明は、本明細書で記載される特定の実施形態、図、方法論、実施例、プロトコル等に限定されないが、特許請求の範囲によって専ら明確に規定される。以下に開示される実施例は、特許請求の範囲で明確に規定されるような根底にある本発明の例示的な実施形態に言及すると考えられるのみであり得る。
【0032】
[0031][実施例1:アピシジン低下]
【0033】
[0032]本発明による微生物でのアピシジン濃度の低下を実験的に実証するために、以下のステップを行った。アピシジンをDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させて1ppm原液を得た。以下の微生物:ラウルティバクター種ノバ(Raoultibacter species nova)(R.spec.nov.;DSM 33979)、ラウルティバクター・マシリエンシス(Raoultibacter massiliensis)(R.massiliensis;DSM 33980)、ラウルティバクター・チモネンシス(Raoultibacter timonensis)(R.timonensis;DSM 33991)、ラウルティバクター・フォカエエンシス(Raoultibacter phocaeensis)(R.phocaeensis;DSM 33992)のいずれかの前培養液を調製した。この目的のため、細菌種のいずれかからの生存能力のあるサンプルを使用して、気密の密封可能な実験室ガラス瓶又は嫌気性培養管(ハンゲイト型)中の無菌のWilkins-Chalgren培地(10g/L トリプトン、10g/L ゼラチンペプトン、5g/L 酵母エキス、1g/L グルコース、5g/L NaCl、1g/L L-アルギニン、1g/L ピルビン酸ナトリウム、0.0005g/L メナジオン、0.005g/l ヘミン、25℃でpH7;Wilkins and Chalgren.1976.Antimicrob.Agents Chemother.10:926-928)であって、更に0.5mL/Lの0.1%(w/v)レザズリンナトリウム溶液、0.3g/LのL-システイン塩酸塩一水和物及び10~20mg/Lの亜ジチオン酸ナトリウムを含む培地に水素雰囲気中で植菌した。詳細には、Wilkins-Chalgren培地の成分を蒸留水に溶解させ、次いでレザズリンナトリウムを添加することによって培地ブイヨンを調製した。この溶液を沸騰させ、次いで窒素を溶液中に分散させながら室温に冷却した。次いで、L-システイン塩酸塩一水和物及び亜ジチオン酸ナトリウムを無菌で添加した。これらの前培養物を37℃で3日間インキュベートした。前培養物のアリコートを使用して、1.7*10cfu/mL又は1.7*10cfu/mLのいずれかの細菌濃度まで上記のような培地での本培養物に植菌した。cfu/mL単位での細菌濃度は、当業者に知られている任意の方法好適な方法、例えば平板計数(すなわち培養物アリコートを栄養寒天プレート上に置くこと及びインキュベーション後の形成コロニーの数を数えること)又はフローサイトメトリーによって決定され得る。最後に、アピシジンを83ppbのターゲット濃度まで本培養物に添加した。したがって、調製された本培養物を37℃でインキュベートした。インキュベーションの全体を通してサンプルを定期的に採取して、残存アピシジンを測定した。全てのステップを水素雰囲気中で行った。対照として、本培養物を熱不活性化微生物で植菌した。熱不活性化は、95℃で15分間のインキュベーションによって達成された。
【0034】
[0033]インキュベーション後、サンプルをLC-MS/MSによって分析した。この目的のため、本培養物から採取された100μLのサンプルを100μLのアセトニトリルと混合し、これに16,600×gでの10分の遠心分離、更に無水メタノールでの1:6希釈が続いた。
【0035】
[0034]Agilent製のInfinity II 1290クロマトグラフィーシステムを使用して、Zorbax Eclipse Plus C18 RRHD 50×2.1mm、1.8μmカラムでサンプルをクロマトグラフィー的に分離した。溶離液は、A:5%メタノール、94.9%水、0.1%ギ酸、1mMギ酸アンモニア;及びB:99.9%メタノール、0.1%キサン、1mMギ酸アンモニウムであった。グラジエントは、70%のBから始まり、0.7分で100%まで増加した。次いで、それを0.9分まで一定に保った。0.91分で溶離液組成を70%に戻した。アピシジンの溶出時間は、0.3分であった。Sciex製の質量分析計TripleQuad 5500は、エレクトロスプレーイオン化イオン源を装備していた。それを負モードで使用した。イオンスプレー電圧は、-4500Vであった。イオン源の温度を500℃に設定した。カーテンガス設定は、40であった。質量分析計は、多重反応モニタリングモードで使用した。量化記号転移は、622/462(衝突エネルギー-30V)であった。量化記号転移は、622/252(衝突エネルギー-46V)であった。滞留時は、150msであった。
【0036】
[0035]図1において、微生物(1.7*10cfu/mL出発濃度)による組成物中のアピシジンの低下を示す。x軸は、インキュベーションの時間経過を示す。y軸は、インキュベーションの全体を通したアピシジンの濃度を示し、最初のアピシジン濃度を100%に設定した。灰色線は、対照のアピシジン濃度を、黒色実線は、R.種ノバ(R.spec.nov.)株のアピシジン濃度を、黒色点線は、R.チモネンシス(R.timonensis)株のアピシジン濃度を、黒色破線は、R.マシリエンシス(R.massiliensis)株のアピシジン濃度を、且つ黒色一点鎖線は、R.フォカエエンシス(R.phocaeensis)株のアピシジン濃度を示す。エラーバーは、サンプリング及び/又は分析中に避けることができなかった不正確さを表すための15%のエラーを示す。
【0037】
[0036]熱不活性化ラウルティバクター(Raoultibacter)種を用いたインキュベーション時、アピシジン濃度の一定の下落が観察された。理論に制約されることを望むものではないが、本発明者らは、一定量のアピシジンが実験管壁に可逆的及び/又は不可逆的に吸着し、したがって対照バッチでのアピシジン濃度の下落を説明し得ると仮定する。とりわけ、全ての試験された種がおよそ4日以内にアピシジンを効果的に及び効率的に除去した。
【0038】
[0037][実施例2:配列比較]
【0039】
[0038]本発明の微生物株を互いに比較するために、16S rDNA配列比較を行った。この目的のため、EMBL-EBIのClustal Omegaヌクレオチド配列アラインメント(https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/;Sievers et al.2011 Mol.Syst.Biol.7:539)をデフォルト設定で使用した。しかしながら、任意の好適な配列アラインメントアルゴリズムが当業者によって選択され得る。
【0040】
[0039]以下の表1は、本発明による7つの例示的な微生物の16S rDNA配列の同一性を示し、配列番号1は、R.種ノバ(R.species nova)DSM 33979からの、配列番号2は、R.マシリエンシス(R.massiliensis)DSM 33980からの、配列番号3は、R.チモネンシス(R.timonensis)DSM 33991からの、配列番号4は、R.フォカエエンシス(R.phocaeensis)DSM 33992からの、配列番号5は、R.チモネンシス(R.timonensis)株GAMB-D35-65(GenBank ID:MT902961.1)からの、配列番号6は、ラウルティバクター(Raoultibacter)種株zg-QD-978(GenBank ID:MN938173.1)からの、且つ配列番号7は、ラウルティバクター・マシリエンシス(Raoultibacter massiliensis)株ban4-RY-D5-23(GenBank ID:MT902960.1)からの16S rDNA配列である。
【0041】
【表1】
【0042】
[0040][実施例3:飼料添加物]
【0043】
[0041]飼料などの複雑なマトリックス中のアピシジン濃度を低下させる本発明による微生物の能力を更に研究するために、以下の実験ステップを行った。以下の微生物:ラウルティバクター種ノバ(Raoultibacter species nova)(R.spec.nov.;DSM 33979)、ラウルティバクター・マシリエンシス(Raoultibacter massiliensis)(R.massiliensis;DSM 33980)、ラウルティバクター・チモネンシス(Raoultibacter timonensis)(R.timonensis;DSM 33991)、ラウルティバクター・フォカエエンシス(Raoultibacter phocaeensis)(R.phocaeensis;DSM 33992)のいずれかの前培養物を、実施例1に記載されるように調製した。125mgの無菌の典型的な豚飼料(例えば、Masching et al.2016.Toxins 8:(3):84;Schwartz-Zimmermann et al.2018.World Mycotoxin Journal,DOI 10.3920/WMJ2017.2265)であって、飼料の1g当たり1.7*10cfu又は飼料の1g当たり1.7*10cfuのいずれかの微生物濃度を達成するためのアピシジン低下添加物としての適切な量の前培養物と共にターゲット濃度の83ppbのアピシジンを含む豚飼料を植菌することによって本培養物を調製した。本培養物を37℃で更にインキュベートした。インキュベーション期間の全体を通して、実施例1で記載されたようにサンプルを定期的に採取し、分析した。周囲温度、すなわち15℃~35℃でインキュベートされた場合、同様の結果を得ることができた。
【0044】
[0042]実施例1に記載されたセットアップと同様に、飼料への添加物として微生物を使用した場合、インキュベーションの全体を通してアピシジン濃度を低下させることができた。実際に、アピシジン低下は、飼料への微生物の添加時に直ちに達成され、より長いインキュベーション時に更に進行させることができた。とりわけ、アピシジン濃度は、24hのインキュベーション後に全てのバッチで既に20ppb未満であった。以下の表2は、飼料の1g当たり1.7*10cfuの濃度で適用されたラウルティバクター(Raoultibacter)種によるアピシジンの除去を示す。
【0045】
【表2】
【0046】
[0043]更により低い濃度の本発明による微生物を使用する場合、同様の結果を得ることができる。これに関連して、飼料の1g当たり1.7*10cfu(コロニー形成濃度)のみのラウルティバクター(Raoultibacter)種を使用する飼料からのアピシジンの除去を図2に示す。その中で、x軸は、インキュベーションの時間経過を示す。y軸は、インキュベーションの全体を通したアピシジンの濃度を示し、最初のアピシジン濃度を100%に設定した。黒色実線は、R.種ノバ(R.spec.nov.)株で処理された組成物中の、黒色点線は、R.チモネンシス(R.timonensis)株で処理された組成物中の、黒色破線は、R.マシリエンシス(R.massiliensis)株で処理された組成物中の、且つ黒色一点鎖線は、R.フォカエエンシス(R.phocaeensis)株で処理された組成物中のアピシジン濃度を示す。とりわけ、1日のみのインキュベーション後、アピシジン濃度は、既に飼料中で50%超だけ低下した。
【0047】
[0044]1.7*10cfu/g飼料よりも低い微生物濃度も、本発明によればアピシジン濃度を低下させるのに好適であろうことは、当業者に明らかである。非常に低い濃度を使用する場合、当業者は、アピシジンを除去するためにインキュベーション時間を延ばすことを考え得る。しかしながら、理論上、単一の生細胞でも、十分な時間を与えられた場合に組成物からアピシジンを除去することができるであろう。上記のように処理された組成物を給餌される場合、動物(例えば、ペット、豚、家禽、反すう動物等)は、非処理の組成物を給餌される場合よりもアピシジン中毒のより少ない効果を示す。
図1
図2
【配列表】
2024542419000001.xml
【国際調査報告】