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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】熱界面装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/62 20060101AFI20241108BHJP
   H05B 3/02 20060101ALI20241108BHJP
   F28F 13/00 20060101ALI20241108BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H05B3/62
H05B3/02 Z
F28F13/00
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527390
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2022083183
(87)【国際公開番号】W WO2023094548
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】2116943.8
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519224731
【氏名又は名称】ゲノムテック、スプウカ、アクツィーナ
【氏名又は名称原語表記】GENOMTEC SA
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ログシュチャク, ヘンリク
【テーマコード(参考)】
3K092
4B029
【Fターム(参考)】
3K092PP09
3K092QA05
3K092SS04
3K092SS05
3K092SS19
3K092VV23
4B029AA07
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA15
(57)【要約】
加熱対象の物体(20)との熱界面を形成するように構成された、ヒータシステムのための熱界面装置は、支持構造(14)と、支持構造(14)に取り付けられた界面アセンブリ(12)と、を備える。界面アセンブリ(12)は、物体(20)と係合して熱界面を形成するように構成された界面部材(16)と、使用時に、支持構造(14)と界面部材(16)との間で、界面部材(16)を、支持構造(14)から遠ざかりかつ物体(20)に係合するよう付勢するように機能する付勢部材(18)と、を有する。付勢部材(18)は、断熱材を有し、界面部材(16)から支持構造(14)への熱輸送に抵抗するように構成される。界面部材(16)は、リジッド基板層(34)に支持された熱伝導層(30,36)を有してもよく、熱伝導層(30,36)は、リジッド基板層(34)の表面領域の少なくとも大部分を覆っていてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象の物体との熱界面を形成するように構成された、ヒータシステムのための熱界面装置であって、
支持構造と、
前記支持構造に取り付けられた界面アセンブリと、
を備え、
前記界面アセンブリは、
前記物体と係合して熱界面を形成するように構成された界面部材と、
使用時に、前記支持構造と前記界面部材との間で、前記界面部材を、前記支持構造から遠ざかりかつ前記物体に係合するよう付勢するように機能する付勢部材と、
を有し、
前記付勢部材は、断熱材を有し、前記界面部材から前記支持構造への熱輸送に抵抗するように構成される、熱界面装置。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記界面部材に一体形成されている、請求項1に記載の熱界面装置。
【請求項3】
前記界面部材は、断熱材で分離された複数の加熱領域に分けられている、請求項1または2に記載の熱界面装置。
【請求項4】
前記界面部材の温度を示す信号を生成するように構成された温度センサをさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱界面装置。
【請求項5】
前記温度センサは、前記界面部材に取り付けられており、
前記付勢部材は、前記温度センサに接続されかつ前記支持構造まで延びる導電経路を有する、請求項4に記載の熱界面装置。
【請求項6】
前記支持構造は、回路基板を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱界面装置。
【請求項7】
前記界面部材は、リジッド基板層に支持された熱伝導層を有し、
前記熱伝導層は、前記リジッド基板層の表面領域の少なくとも大部分を覆っている、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱界面装置。
【請求項8】
前記基板層は、一対の伝導層の間に配置される、請求項7に記載の熱界面装置。
【請求項9】
前記界面部材は、前記伝導層の間を延びる熱リンクを有する、請求項8に記載の熱界面装置。
【請求項10】
前記界面部材は、リジッド基板層およびフレキシブル基板層を有する、請求項7~9のいずれか1項に記載の熱界面装置。
【請求項11】
前記付勢部材は、前記界面部材の前記フレキシブル基板層と同じ材料で構成される、請求項10に記載の熱界面装置。
【請求項12】
前記付勢部材は、前記界面部材の前記フレキシブル基板層と連続している、請求項11に記載の熱界面装置。
【請求項13】
前記界面アセンブリは、リジッドフレックスプリント回路基板として形成されている、請求項7~12のいずれか1項に記載の熱界面装置。
【請求項14】
前記界面アセンブリは、少なくとも1つの対称軸、および/または少なくとも1回の回転対称性を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の熱界面装置。
【請求項15】
断熱材は、前記付勢部材の体積の少なくとも半分に相当する、請求項1~14のいずれか1項に記載の熱界面装置。
【請求項16】
前記付勢部材は、大部分が断熱材で構成される、請求項15に記載の熱界面装置。
【請求項17】
前記界面部材は、前記界面部材が光源で照らされたとき、光子エネルギーを吸収して熱を生じるように構成された吸収層を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の熱界面装置。
【請求項18】
前記支持構造に取り付けられた複数の界面アセンブリを備える、請求項1~17のいずれか1項に記載の熱界面装置。
【請求項19】
前記界面アセンブリは、前記支持構造と前記界面部材との間で機能する複数の付勢部材を有する、請求項1~18のいずれか1項に記載の熱界面装置。
【請求項20】
前記複数の付勢部材は、実質的に同じ長さを有する、請求項19に記載の熱界面装置。
【請求項21】
加熱対象の物体との熱界面を形成するように構成された、ヒータシステムのための界面要素であって、
前記物体に係合するように構成された界面部材であって、リジッド基板層に支持されかつ前記リジッド基板層の表面領域の少なくとも大部分を覆う熱伝導層を有する界面部材と、
前記界面部材から延びると共に、使用時に、前記界面部材を、前記物体に係合するよう付勢するように構成された少なくとも1つのフレキシブルな付勢部材と、
を備え、
前記付勢部材は、断熱材を有し、前記界面部材から熱が逃げるのに抵抗するように構成される、界面要素。
【請求項22】
前記基板層は、一対の伝導層の間に配置される、請求項21に記載の界面要素。
【請求項23】
前記界面部材は、前記伝導層の間を延びる熱リンクを有する、請求項22に記載の界面要素。
【請求項24】
前記界面部材は、リジッド基板層およびフレキシブル基板層を有する、請求項21~23のいずれか1項に記載の界面要素。
【請求項25】
前記付勢部材は、前記界面部材の前記フレキシブル基板層と同じ材料で構成される、請求項24に記載の界面要素。
【請求項26】
前記付勢部材は、前記界面部材の前記フレキシブル基板層と連続している、請求項25に記載の界面要素。
【請求項27】
前記伝導層は、断熱領域で分離された複数の熱伝導領域に分けられている、請求項21~26のいずれか1項に記載の界面要素。
【請求項28】
前記付勢部材の長さに沿って前記界面部材上に延びる導電経路を備える、請求項21~27のいずれか1項に記載の界面要素。
【請求項29】
リジッドフレックスプリント回路基板として形成されている、請求項21~28のいずれか1項に記載の界面要素。
【請求項30】
前記界面部材の周りに配置された一組の付勢部材を備える、請求項21~29のいずれか1項に記載の界面要素。
【請求項31】
前記付勢部材は、実質的に同じ長さを有する、請求項30に記載の界面要素。
【請求項32】
少なくとも1つの対称軸、および/または少なくとも1回の回転対称性を有する、請求項21~31のいずれか1項に記載の界面要素。
【請求項33】
断熱材は、前記付勢部材の体積の少なくとも半分に相当する、請求項21~32のいずれか1項に記載の界面要素。
【請求項34】
前記付勢部材は、大部分が断熱材で構成される、請求項33に記載の界面要素。
【請求項35】
前記界面部材は、前記界面部材が光源で照らされたとき、光子エネルギーを吸収して熱を生じるように構成された吸収層を有する、請求項21~34のいずれか1項に記載の界面要素。
【請求項36】
前記界面アセンブリは、請求項21~35のいずれか1項に記載の界面要素によって規定される、請求項1~20のいずれか1項に記載の熱界面装置。
【請求項37】
請求項1~20および36のいずれか1項に記載の熱界面装置と、
前記界面部材を加熱するように構成されたヒータ装置と、
を備える、ヒータシステム。
【請求項38】
前記ヒータ装置は、前記熱界面装置に一体化されている、請求項37に記載のヒータシステム。
【請求項39】
前記ヒータ装置は、前記界面部材に放射線を向けるように動作可能な光源を有する、請求項37または38に記載のヒータシステム。
【請求項40】
前記光源は、前記熱界面装置の前記支持構造に取り付けられている、請求項39に記載のヒータシステム。
【請求項41】
前記光源は、発光ダイオードを有する、請求項39または40に記載のヒータシステム。
【請求項42】
前記光源は、紫外および/または可視領域の放射線を発するように構成される、請求項39~41のいずれか1項に記載のヒータシステム。
【請求項43】
前記ヒータ装置は、前記界面部材に取り付けられ、または組み込まれたヒータを有する、請求項37~42のいずれか1項に記載のヒータシステム。
【請求項44】
前記ヒータ装置は、各界面部材を加熱するように構成される、請求項18に従属する請求項37~43のいずれか1項に記載のヒータシステム。
【請求項45】
前記ヒータ装置は、各界面部材を個別に加熱するように構成される、請求項44に記載のヒータシステム。
【請求項46】
請求項1~20および36のいずれか1項に記載の熱界面装置、前記21~35のいずれか1項に記載の界面要素、または請求項37~45のいずれか1項に記載のヒータシステムを備える、診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱界面装置およびそのような装置を備えるヒータシステムに関する。特に、限定的ではないが、本発明は、診断装置において生体サンプルを加熱するためのヒータシステムのための熱界面装置および関連する界面要素に関する。
【背景技術】
【0002】
生体サンプルを処理する診断装置、例えば、病原体を示唆する核酸を検出するように構成されたポイントオブケア(PoC)装置では、往々にしてサンプルを加熱する必要がある。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスを実施する装置は、検出対象の遺伝物質を増幅するためにサンプルの熱サイクルを実行する。他の装置は、ループ媒介等温増幅(LAMP)などの等温法を用い、一定温度でサンプルを加熱することで遺伝物質を増幅する。また、試験の異なる段階において異なる温度でサンプルを加熱する必要があることも多く、それに伴って、典型的には、試験工程の間に装置内をサンプルが移動する際、複数箇所で局所的な加熱がなされる。
【0003】
的確で信頼できる結果を得るために、加熱は、連続する試験工程にわたって、各サンプルに対して正確かつ実質的に均一になされる必要がある。また、特にバッテリー式であり得る携帯型装置において、サンプルが効率的に加熱されることも重要である。
【0004】
装置構成要素の汚染を回避するために、使い捨ての試験カートリッジにサンプルを入れ、それが装置にドッキングされる構成も存在する。そして、装置は、サンプルとの直接的な接触を避けつつ、カートリッジに収容されたサンプルを処理し、試験が完了すれば、カートリッジと中のサンプルは処分され得る。その後、装置は、洗浄を要することなく、次の試験を行うためにすぐ使用することができる。
【0005】
使い捨ての試験カートリッジは、電子部品を含まないという意味で受動的に構成されてもよく、それによりコストが低減され、かつ使い捨てしやすくなる。そのような構成では、メイン装置は、ドッキングされたカートリッジ内のサンプルに熱を輸送するように構成された加熱部品を備える。サンプルにおいて実現される加熱の正確性、スピード、および効率は、加熱部品と試験カートリッジとの間に形成される熱界面の特性に依存する。とりわけ、そのような界面は、恒久的でないものの、新しいカートリッジが装置にドッキングされる度に形成される。連続する試験工程を通して新しいカートリッジの各々に対する効率的な熱輸送を実現するためには、カートリッジと加熱部品との間の熱界面における堅牢かつ完全な接触が、再現可能かつ信頼可能な態様で作り出される必要がある。
【0006】
ある公知の解決策は、各試験カートリッジの外装に、メイン装置によって加熱され、ひいてはカートリッジ内のサンプルに熱を輸送し得る熱界面プレートとして機能する銅プレートを設けることである。銅プレートは、例えば装置内のLEDを利用して当該プレートを輻射加熱するなど、非接触法を用いて加熱されてもよい。その高い熱伝導率により、銅プレートは、カートリッジとの間の界面にわたって熱を均一に分散させ、ひいては実質的に均一にサンプルが加熱され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、銅プレートは、試験カートリッジにおける追加部品であり、よってカートリッジのコストが上昇する。また、銅プレートは、必要な熱界面を作り出すために、典型的には接着剤を用いて、カートリッジ筐体にしっかり取り付ける必要があり、それにより製造工程が増え、よってコストが増大する。
【0008】
本発明は、このような背景に対してなされた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面は、ヒータシステム、例えば診断装置のヒータシステムのための界面要素を提供する。界面要素は、ヒータシステムの加熱対象である物体と熱界面を形成するように構成される。当該要素は、物体に係合するように構成された界面部材を備える。界面部材は、リジッド基板層に支持された熱伝導層を有し、熱伝導層は、リジッド基板層の表面領域の少なくとも大部分を覆っている。界面要素は、界面部材に接続されかつそこから延びる少なくとも1つのフレキシブルな付勢部材を、また必要に応じて一組のそのような付勢部材をさらに備える。付勢部材は、使用時に、物体と係合するように界面部材を付勢するように構成される。付勢部材は、断熱材を有し、界面部材から熱が逃げるのに抵抗するように構成される。
【0010】
基板層は、一対の伝導層の間に配置されてもよく、その場合、界面部材は、当該伝導層の間を延びる熱リンク、例えば熱ビアを備えてもよい。
【0011】
界面部材は、リジッド基板層およびフレキシブル基板層を備えてもよい。そのような実施形態において、付勢部材は、界面部材のフレキシブル基板層と同じ材料で構成されてもよく、フレキシブル基板層に連続していてもよい。
【0012】
当該伝導層は、必要に応じて、断熱領域で分離された複数の熱伝導領域に分けられる。これにより、例えば、各領域を異なる温度に加熱することが可能となる。
【0013】
界面要素は、付勢部材の長さに沿って界面部材上に延びる導電経路を備えてもよい。そのような経路は、界面部材に設けられた構成要素、例えば温度センサへの電力供給を可能とし得る。
【0014】
好適には、界面要素は、リジッドフレックスプリント回路基板として形成されていてもよい。したがって、界面要素は、従来的な材料やプロセスを使用するプリント回路基板(PCB)メーカーによって製造され得る。
【0015】
一組の付勢部材が、界面部材の周りに配置されてもよい。当該付勢部材は、界面部材の周りに等間隔に配置されてもよいし、界面部材の縁部から直角に延びるか、あるいは当該縁部に接して延びていてもよい。
【0016】
界面要素は、少なくとも1つの対称軸、および/または少なくとも1回の回転対称性を有してもよい。各対称軸または対称性は、例えば、各付勢部材を通って延びていてもよい。界面要素は、各付勢部材に対応して対称軸および/または対称性を有してもよい。
【0017】
本発明の別の一局面は、ヒータシステム、例えば診断装置のヒータシステムのための熱界面装置を提供する。熱界面装置は、ヒータシステムの加熱対象である物体と熱界面を形成するように構成される。当該装置は、支持構造と、支持構造に取り付けられた界面アセンブリとを備える。界面アセンブリは、物体と係合して熱界面を形成するように構成された界面部材と、使用時に、支持構造と界面部材との間で、界面部材を、支持構造から遠ざかりかつ物体に係合するよう付勢するように機能する付勢部材とを有する。付勢部材は、断熱材を有し、界面部材から支持構造への熱輸送に抵抗するように構成される。
【0018】
熱界面装置の界面アセンブリは、界面要素、例えば上記局面の界面要素によって規定されてもよい。
【0019】
上述の熱界面装置または界面要素において、断熱材は、付勢部材の体積の少なくとも半分に相当してもよい。当該付勢部材は、大部分が断熱材で構成されてもよい。
【0020】
付勢部材は、界面部材に一体形成されていてもよい。
【0021】
界面部材は、必要に応じて、断熱材で分離された複数の加熱領域に分けられていてもよく、それにより複数の加熱領域を異なる温度に加熱することが可能となる。このことは、例えば、当該領域が、異なる加熱態様を必要とする異なる試験工程の段階に対応する物体の領域に接触している場合に有益であり得る。
【0022】
熱界面装置は、界面部材の温度を示す信号を生成するように構成された温度センサ、例えばPT100またはPT1000を備えてもよい。温度センサは、界面部材に取り付けられていてもよく、その場合、付勢部材は、温度センサに接続されかつ支持構造まで延びる導電経路を有してもよい。
【0023】
支持構造は、回路基板を有してもよい。
【0024】
熱界面装置は、支持構造に取り付けられた複数の界面アセンブリを備えてもよい。
【0025】
界面アセンブリは、支持構造と界面部材との間で機能する複数の付勢部材を有してもよい。界面アセンブリの複数の付勢部材は、実質的に同じ長さを有してもよい。複数の付勢部材は、界面部材の周りに等間隔に配置されてもよく、界面部材の縁部に対して実質的に垂直に延びるか、あるいは当該縁部に接して延びていてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態において、界面部材は、熱伝導材料を有し、それは界面部材の表面領域の少なくとも大部分を覆っていてもよい。界面アセンブリの界面部材は、リジッド基板層に支持された熱伝導層を有してもよく、熱伝導層は、リジッド基板層の表面領域の少なくとも大部分を覆っている。当該基板層は、一対の伝導層の間に配置されてもよく、その場合、界面部材は、当該伝導層の間を延びる熱リンクを有してもよい。界面部材は、必要に応じて、リジッド基板層およびフレキシブル基板層を有する。付勢部材は、界面部材のフレキシブル基板層と同じ材料で構成されてもよい。付勢部材は、界面部材のフレキシブル基板層に連続していてもよい。界面アセンブリは、リジッドフレックスプリント回路基板として形成されていてもよい。
【0027】
界面アセンブリは、少なくとも1つの対称軸、および/または少なくとも1回の回転対称性を有してもよい。
【0028】
上述の界面要素または熱界面装置において、複数の付勢部材は、実質的に同じ長さを有してもよい。また、複数の付勢部材は、同じ幅および厚さを有してもよい。これにより、付勢部材が、圧縮されたときに同様のばね力を生じ、バランスの取れた態様で界面部材が付勢されることが促される。
【0029】
界面要素または界面アセンブリの界面部材は、界面部材が光源で照らされたとき、光子エネルギーを吸収して熱を生じるように構成された吸収層を有してもよい。
【0030】
本発明は、上記局面の熱界面装置と、熱界面部材を加熱するように構成されたヒータ装置とを備えるヒータシステムにも及ぶ。
【0031】
ヒータ装置は、熱界面装置と一体化されていてもよい。
【0032】
ヒータ装置は、界面部材に放射線を向けるように動作可能な光源を有してもよい。光源は、熱界面装置の支持構造に取り付けられてもよい。光源は、発光ダイオードを有してもよい。光源は、紫外および/または可視領域の放射線を発するように構成されてもよい。そのような放射線は、界面部材によって、または界面部材の表面を覆う被覆によって吸収され、物体へ輸送される熱に変換される。赤外領域の放射線を使用することに比べて、可視および/または紫外領域の放射線を使用することは、電気的により効率的であり得、また、例えば高温計を用いた、赤外領域での非接触温度センシングを可能とし得る。
【0033】
ヒータ装置は、界面部材に取り付けられ、または組み込まれたヒータを有してもよい。
【0034】
熱界面装置が複数の界面部材を備える場合、ヒータ装置は、各界面部材を加熱するように構成されてもよい。ヒータ装置は、各界面部材を個別に加熱するように、例えば各界面部材を異なる温度に、および/または異なる加熱力で加熱するように構成されてもよい。
【0035】
本発明は、さらに、上記局面の界面要素、熱界面装置、またはヒータシステムを備える診断装置に及ぶ。
【0036】
本発明の上記局面において、物体に係合するように界面部材を付勢することで、それを介して物体に熱が輸送され得る強固な熱界面の形成が促進される。付勢部材の断熱材は、付勢部材を介した熱輸送に抵抗し、したがって界面部材から、付勢部材が接触する任意の構造、例えば上述の熱界面装置の支持構造へ熱を伝える熱ブリッジを当該付勢部材が形成する程度が最小化される。そのため、界面要素または界面アセンブリは、物体へ輸送される熱の割合を最大化するように構成される。
【0037】
本発明の各局面の好ましいおよび/または任意的な特徴は、単独でまたは適当な組合せにおいて、本発明の別の局面に組み込まれ得ることを認識されたい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るヒータアセンブリの斜視図である。
図2図2は、図1のヒータアセンブリの平面図である。
図3図3は、図1のヒータアセンブリの側面斜視図である。
図4図4は、診断装置内における図1のヒータアセンブリを示す図である。
図5図5は、図1のヒータアセンブリの界面要素に対応するフラットパターンを示す図である。
図6図6は、図1のヒータアセンブリの界面プレートの断面図である。
図7図7は、本発明の別の実施形態に係るヒータアセンブリの斜視図である。
図8図8は、図7のヒータアセンブリの平面図である。
図9図9は、図7のヒータアセンブリの界面要素に対応するフラットパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明についての理解を容易にするため、以下では、その好ましい非限定的な実施形態につき、単なる例として、添付の図面を参照しながら説明する。その中で、同様の特徴には同様の参照番号を付す。
【0040】
一般論として、本発明の実施形態は、加熱対象の物体に係合するように付勢された界面部材を用いることで、当該物体との一時的な高性能熱界面を作り出すように構成された熱界面装置を提供する。また、本発明の実施形態は、そのような熱界面装置と、界面部材を加熱可能で、ひいては熱界面を介して物体を加熱可能なヒータ装置とを備えるヒータシステムを提供する。
【0041】
下記の実施形態において、加熱対象の物体は、診断装置用の試験カートリッジであり、試験カートリッジは、試験工程の一部として加熱される生体サンプルを収容している。しかしながら、本発明の熱界面装置およびヒータシステムは、様々な種類の物体や筐体を加熱するその他の幅広い用途に使用可能であり、一般論として、物体の表面を加熱する必要がある任意の状況において有用であり得ることを認識されたい。
【0042】
本発明の実施形態において、界面プレートの形態における1つ以上の界面部材は、1つ以上の弾性付勢部材によって、加熱対象の物体の表面に接触するように付勢される。各界面プレートおよびそれに対応する付勢部材は、加熱対象の物体との一時的な熱界面を、信頼可能かつ再現可能な態様で作り出すのに使用される界面アセンブリを構成する。したがって、界面アセンブリは、加熱アセンブリとして機能すると考えることができる。
【0043】
界面プレートを物体と接触するように付勢することで、界面プレートと物体との間の熱接触が改善され、それにより接着剤や機械的固定手段を用いてプレートを物体に恒久的に固定する必要なくして、熱界面が強化される。診断装置で使用される場合、界面プレートは、カートリッジに熱を輸送するために使用される上述の銅プレートを置き換え得る。界面プレートは、試験カートリッジに取り付けられないので、連続する試験カートリッジに対して再利用されるメイン装置の一部となり得る。それに応じて、カートリッジは、銅プレートを省くことで簡素化され、より使い捨てしやすくなり得る。
【0044】
付勢部材は、断熱材を備え、そのような材料で大部分が構成されてもよく、よって界面プレートと当該プレートが取り付けられる支持構造との間で熱ブリッジが形成されるのを回避するように構成される。そのような熱ブリッジは、さもなければ、界面プレートから支持構造へ熱が伝わるのを許容し、それにより加熱効率を低めることで、ヒータアセンブリの性能を損なうだろう。
【0045】
いくつかの実施形態では、一組の付勢部材が、界面プレートの縁部周りに均一に分布しており、それにより界面プレートにわたって付勢力がバランスされ、界面プレートの表面が試験カートリッジまたはその他の筐体の表面にしっかりと接触して保持される。
【0046】
有利には、界面アセンブリは、1つ以上の付勢部材が界面プレートと一体形成された界面要素として構成されてもよい。例えば、界面要素は、界面プレートから延びる付勢部材を構成する弾性脚部を有してもよい。後述の実施形態において、そのような界面要素は、PCBの電気回路を規定する通常の導電パターン網に代えて実質的に連続した導電層を伴うとしても、リジッドフレックスプリント回路基板(PCB)の態様で形成されてもよい。好適には、そのような界面要素は、従来的なPCB製造技術を用いて生産されてもよく、脚部は、フレキシブル基板材料から形成される一方、界面プレートは、リジッドであり、各面上に高効率の熱伝導体として機能する銅の導電層を備える。
【0047】
あるいは、界面プレートまたはその他の界面部材に、任意の適当な接続技術を用いて、1つ以上の付勢部材を接続することで、界面アセンブリを形成することも可能であり、その場合、付勢部材は界面プレートと別体である。
【0048】
典型的には、界面プレートの質量は小さく、それにより界面プレートの熱慣性が低くなる。これにより、界面プレートに熱エネルギーが蓄積されず、よって物体へ素早く輸送される。したがって、熱慣性が低いことで、物体の加熱が促進され、あるいは加熱力が取り除かれたときの急速冷却が可能となり、それにより物体の温度を制御する機能が大幅に向上する。
【0049】
ここで図1図3を参照すると、本発明の一実施形態に係るヒータシステムまたはヒータアセンブリ10が示されている。ヒータアセンブリ10は、診断装置において使用され、処理のために当該装置にドッキングされた試験カートリッジに保持された生体サンプルを加熱するように構成されていて、そのような状況において図4に示されている。
【0050】
ヒータアセンブリ10は、制御基板14を規定するPCBに直線状に並んで取り付けられた3つの界面要素12を備える。制御基板14は、界面要素12に対する支持構造として機能し、制御基板14および界面要素12は、試験カートリッジとの熱界面を形成するように構成された熱界面装置を共に規定する。
【0051】
支持構造は、ヒータアセンブリ10のヒータ装置の構成要素も支持し、当該ヒータ装置は、界面要素12を加熱するように構成される。したがって、ヒータアセンブリ10は、熱界面装置とヒータ装置を一体化し、よって試験カートリッジとの熱界面を形成すると共に当該界面へ加熱力を供給するように構成される。しかしながら、別の実施形態では、熱界面装置は、ヒータ装置から分離されていてもよい。その逆に、後述するように、熱界面装置は、一体型のヒータ装置を備えてもよい。
【0052】
各界面要素12は、平坦な円形の界面プレート16を備え、界面プレート16からは、8つの同じ細長い脚部18が等間隔に配置されて径方向外側へ延びている。各界面プレート16は、制御基板14に対向する裏面と、使用時に試験カートリッジの表面に係合する係合面を規定する外向き面とを有する。
【0053】
界面要素12の各界面プレート16は、試験カートリッジ筐体の異なる部分に係合して当該試験カートリッジとの熱界面を形成し、それにより試験工程中に局所的な加熱を提供するように構成される。したがって、界面要素12は、加熱要素として機能すると考えることができる。例えば、各界面プレート16は、係合時、試験カートリッジ内の各窪み内に保持されたサンプル流体を加熱するために当該窪みに位置合わせされてもよい。試験カートリッジは、界面プレート16が当該カートリッジに係合する際、正確な位置合わせを実現するように当該プレート16を収容する凹部を有してもよい。
【0054】
本実施形態において、各界面プレート16は、約8mmの直径を有する。これは、界面プレート16が位置合わせされる窪みの大きさに概ね対応してもよく、それにより各界面プレート16は、その対応する窪みの全体に均一的に熱を輸送する。界面プレート16は、レスト状態で、制御基板14の約6mm上方に位置する。
【0055】
使用に際し、界面プレート16は、加熱されて自身が接触している試験カートリッジの部分に熱を輸送する。したがって、本実施形態では、界面プレート16の外面は、試験カートリッジとの界面における効率的かつ均一な加熱を促進するために熱伝導材料、例えば銅で構成される。界面プレート16は、試験カートリッジと係合するよう加圧された際に変形しにくいように硬く、カートリッジとの界面にわたって均一な接触が可能であり、したがって接触領域によって規定される熱界面にわたって均一な熱輸送が促される。
【0056】
図1に最もよく表れているように、各脚部18は、弾性を有し、その長さに沿って曲げられて、各界面プレート16の下で半円アーチを形成している。各脚部18は、近位端において界面プレート16から、遠位端において制御基板14まで延びている。したがって、界面要素12は、概ね蜘蛛のような形になっている。各脚部18は、この例では、ろう付けによって遠位端で制御基板14に固定されているが、例えば接着や機械的固定など、任意の適当な取付手段が使用されてもよい。本実施形態では、脚部18は、界面プレート16と一体に形成されている。
【0057】
脚部18は、断熱材を備えていて、本実施形態では、そのような材料で大部分が形成され、よって界面プレート16が加熱される際に、界面プレート16と制御基板14との間に熱ブリッジを作り出さない。これにより、脚部18は、界面プレート16と制御基板14との間に一定程度の熱的分離を作り出し、ひいては界面プレート16で生じた熱が係合対象の試験カートリッジへ輸送される割合を最大化する。一方、付勢部材として金属ばねが使用される場合、アセンブリの効率は著しく低減するだろう。
【0058】
また、各界面要素12の脚部18は、各界面プレート16を制御基板14から遠ざかるように共同で付勢するように機能する。したがって、界面プレート16が制御基板14の方へ押された場合、対応する脚部18は、界面プレート16を図1図3に示すレスト位置に戻すように作用する対抗ばね力を生じる。界面プレート16の縁部周りに脚部18が等間隔に設けられていることで、バランスの取れた付勢力が生じ、界面プレート16の向きが適切に維持されると共に、界面プレート16の全体が試験カートリッジに係合するように押される。
【0059】
図4は、装置内にある状態のヒータアセンブリ10を示しており、界面要素12が、当該装置内のヒータアセンブリ10の下でドッキングされた試験カートリッジ20に係合している。図1図3に示すレスト位置に対して界面要素12の脚部18が大きく変形していることから明らかなように、装置は、試験カートリッジ20が、ドッキング時に、レスト位置にあるときの界面プレート16よりも制御基板14に近くなるように構成されており、界面要素12は、制御基板14とカートリッジ20との間で圧縮される。具体的に、本実施形態では、カートリッジ20がドッキングされたとき、試験カートリッジ20と制御基板14との間に4mmのギャップが存在する。界面要素12は、レスト状態で制御基板14の6mm上方に位置するので、カートリッジ20が所定位置に移動したときに2mm変形する。
【0060】
したがって、カートリッジ20が装置内で所定位置に移動するとき、カートリッジ20によって界面プレート16が制御基板14の方へ押され、それにより脚部18がさらに曲がる。それに応じて、脚部18は、界面プレート16を試験カートリッジ20の表面に押し付けるばね力を生じ、それにより界面プレート16の係合面と試験カートリッジ20の表面との間で、強めの接触が形成され、ひいては堅牢な熱界面が形成される。本実施形態では、試験カートリッジ20が所定位置に移動する際に各界面プレート16が2mm変位することで、30グラム相当のばね力が生じ、当該ばね力は、界面プレート16の変位に比例する。
【0061】
図1図3に戻ると、各界面要素12の下において、制御基板14は、表面実装型の発光ダイオード(LED)22の形態における光源を有しており、各LED22は、各界面プレート16の中心に位置合わせされている。LED22は、使用時に、対応する界面プレート16を加熱するヒータ装置の一部を構成する。
【0062】
本実施形態では、各LED22は、紫外および/または可視領域の放射線を発すると共に、当該放射線を各界面プレート16の下面に向けるように構成される。各界面プレート16は、放射線を照射されると、放射線の光子が運ぶエネルギーを熱に変換するスペクトル変換を通じて熱を生じるように構成される。例えば、界面プレート16の下面は、必要な変換を行う吸収層を構成する材料で被覆されていてもよく、適当な材料には、酸化アルミニウムまたはカーボンやグラフェンなどの変性ポリマーが含まれる。吸収層は、それに代えてまたは加えて、必要な吸収作用を提供するよう実質的に黒色であってもよい。
【0063】
制御基板14は、電気的接続のネットワークを提供する表面トラック24および一並びの接点26を備える。このネットワークは、いくつかの接点26と各LED22との間の接続部を含み、それにより装置は、動作時、対応する接点26を介してLED22に電力を供給することができる。別の接続部は、詳しくは後述するように、各界面プレート16に埋設された温度センサに関連しており、試験カートリッジ20を正確に加熱するための、各界面プレート16の温度のフィードバックループ制御を可能とする。そのような制御は、装置のメイン制御器(図示せず)によって実行される。
【0064】
また、制御基板14は、各角部に取付け穴27を有し、装置内におけるヒータアセンブリ10の取付けに供される。
【0065】
したがって、ヒータアセンブリ10は、各界面プレート16を非接触態様で加熱するように構成される。例えば界面プレート16に直接取り付けたヒータを使用することで、界面プレート16を直接的に加熱することも可能であるが、これには制御基板14と界面プレート16との間に、ヒータへ電力を供給するための導電経路を設けることが必要になる。例えば、ヒータは、界面プレート16の表面にエッチングされた1つ以上の銅トラックで規定されてもよく、電力は、界面部材の脚部18に延在する銅トラックを介してヒータに供給されてもよい。そのようなトラックは、ヒータの電力消費のために比較的大きくする必要がある。したがって、そのような経路は、界面プレート16で生じる熱が制御基板14へ逆に伝わるような大きな熱ブリッジを形成し、よって試験カートリッジ20へ供給される加熱力を低減する。そのため、界面プレート16を非接触態様で加熱することで、試験カートリッジ20に輸送される加熱力が増大し、よって装置の効率が高められる。
【0066】
別の代替例は、赤外線を発して界面プレート16を加熱するLEDを使用するものであり、それにより本実施形態のように放射線を熱に変換することが不要となる。しかしながら、本実施形態のように、紫外および/または可視領域で動作するLEDを使用することで、有利には赤外線LEDに比べて効率を高めることができ、さらに、加熱とセンシングが異なる周波数領域の放射線を用いて実行されるため、例えば高温計を用いて、同時的な非接触熱センシングが可能となる。
【0067】
各界面プレート16が分離したLED22を用いて加熱されるため、界面プレート16は、互いに独立して加熱され得る。これにより、例えば、各界面プレート16を異なる温度まで加熱することができ、このことは、サンプルに対する異なる温度の連続的な加熱段階を要する処理を行う装置において有用であり得る。
【0068】
本実施形態では、各界面要素12は、電気回路の代わりに実質的に連続した導電層を有するものの、リジッドフレックスPCBの態様で形成されており、脚部18は、界面プレート16に一体化されている。したがって、脚部18は、PCBのフレキシブル部分に相当すると考えることができ、またフレキシブル基板材料で形成されている一方、界面プレート16は、PCBのリジッド部分に相当し、よってリジッド基板材料を備える。一般論として、界面要素12は、従来的な態様で、PCBメーカーに適切な設計パラメータを提供することによって製造可能である。これにより、既に利用可能な工程や材料を用いて界面要素12を製造するための便利な手段が得られる。
【0069】
ここで、図5は、フラットパターンを規定する、組み立てられていない初期状態における界面要素12を示しており、PCBメーカーによって供給される製品に相当する。フラットパターンは、後に界面プレート16になる中央円板部を備えており、後に脚部18になる円形に並んだ長形部がそこから放射状に延びている。脚部18は、制御基板14に界面要素12を組み付けるために、図1図3に示す形状に曲げられ得る。図5から明らかなように、界面要素12のプロファイルは、8回回転対称性と、界面プレート16の中心で交差する8つの対称軸とを有する。
【0070】
本実施形態では、界面要素12は、図5に示す形状の単一の連続したフレキシブル基板を有しており、フレキシブル基板の層は、界面要素12の全体にわたって延びている。PCBのフレキシブル基板には、例えばポリイミドなど、様々な材料が使用されており、そのいずれもが本発明の実施形態における使用に適する。本実施形態では、フレキシブル基板は、0.15mmの厚さを有しており、それは脚部18の厚さに対応する。なお、フレキシブル基板は、従来のように、複数層に積層されたFPC層で構成されてもよく、カバーレイを備えてもよい。
【0071】
また、界面プレート16は、フレキシブル基板に接合され、界面プレート16に剛性を付与するリジッド基板層を備える。リジッド基板層は、任意の適当な非導電リジッド材料、例えば、FR-4ガラス強化エポキシ、またはアルミナ、窒化アルミニウム、および酸化ベリリウムを含むセラミックで構成されてもよい。
【0072】
PCBで用いられる基板材料が導電性の観点から非導電性であることを基本に選択されるところ、有利には、そのような材料は、一般に低い熱伝導性を有し、ヒータアセンブリ10の目的において断熱材と考えることができる。
【0073】
界面プレート16の基板層は、銅の導電層の間に挟まれて積層体を構成している。ここで、図6は、界面プレート16の断面を説明的に示しており、当該プレート16を形成する複数の層が見えている。上へ連続して、これらの層は、吸収層28と、下側導電層30と、フレキシブル基板層32と、リジッド基板層34と、上側導電層36とを含む。導電層30,36の間にさらなる基板層が含まれてもよい。したがって、上側および下側導電層30,36は、基板層32,34によって分離されていて、任意の被覆が施されていてもよいが、積層体の主外面を規定している。任意の被覆には、吸収層28や、構造に剛性を付加しかつ界面プレート16に対応する平滑面を作り出す熱伝導性樹脂などの保護被膜が含まれる。
【0074】
銅層は、従来的にはエッチングされてPCBに必要な回路を形成するが、本実施形態では、導電層30,36は、実質的に手つかずのままで、界面プレート16の表面の大部分を覆っている。導電層30,36は、典型的には、界面プレート16の表面を可能な限り完全に覆っている。例えば、導電層30,36は、界面プレート16の外面の少なくとも半分、典型的には75%以上、好ましくは80%以上を覆っている。後述の存在する何らかのセンサやビアが占めるスペースを考慮に入れると、95%に達するかそれ以上のカバー範囲が実現可能であり得る。導電層30,36のカバー範囲の大きさは、製造工程の制約を考慮した上で、各用途における必要性に応じて決定される。
【0075】
本実施形態では、各導電層30,36の厚さは、約70μmである。導電層30,36の銅材料は、必要に応じて、例えば、1U、2U、または3Uの厚さの金被膜を有してもよい。
【0076】
界面プレート16は、界面プレート16にわたって均一に分布した複数の貫通孔によって貫かれており、当該孔の内面は、銅またはその他の熱伝導材料でめっきされている。当該孔は、上側および下側導電層30,36の間を延び、使用時に導電層30,36の間で熱を輸送する熱リンクを形成する熱ビア38を規定している。
【0077】
界面要素12のうち脚部18を規定する領域は、リジッド基板が設けられておらず、ほとんど全体がフレキシブル基板層32で形成されている。したがって、各脚部18は、フレキシブル基板層32に使用される断熱材で大部分が構成される。そのため、脚部18は、フレキシブル材料で構成され、弾性を有する。
【0078】
図5に示すように、各脚部18の遠位端には、導電材料、例えば銅でできた矩形の当て板40が備えられる。これらの当て板40により、制御基板14に脚部18をろう付けすることが可能となる。当て板40は、対応する界面プレート16の導電材料から分離されていて、よって脚部18を介した熱輸送には大きく寄与しない。図5は、各当て板における中心孔41を示しており、これは、例えば一時的なリベットを使用することで、組立時に制御基板14上における当て板40の配置を補助する。
【0079】
また、図5に示すように、界面要素12は、導電材料、ここでも典型的には銅のトレース42を備えており、当該トレース42は、界面プレート16の中心を通って、かつ界面プレート16を横切って径方向に互いに対向配置された2つの脚部18の中央に沿って延びている。トレース42は、脚部18の各当て板を接続すると共に、界面プレート16に取り付けられた温度センサ44、例えばPT1000に接続している。
【0080】
トレース42は、脚部18を介した熱伝導経路を作り出すが、このことは、センサ44の要求電力が小さいためにトレース42を小さくでき、それによりトレース42を介した熱輸送を最小化できるために許容可能である。特に、センサ44のために必要なトレース42のサイズは、ヒータのために必要なサイズよりもずっと小さく、よって界面プレート16にセンサ44を組み込むことによっては、ヒータを組み込むときのようなプレート16と制御基板14との間の大きな熱ブリッジは形成されない。
【0081】
したがって、使用時、温度センサ44が生成する界面プレート16の温度を示す信号は、トレース42および制御基板14に設けられた接続部を介して、装置のメイン制御器に送られ得る。装置制御器は、その後、センサ44から受けた温度信号に応じて対応するLED22の動作を制御し、界面プレート16の温度を目標値に制御する。
【0082】
図7および図8は、本発明の第2実施形態に係る代替的なヒータアセンブリ110を示しており、図1図6に示す第1実施形態の3つの界面要素12が、単一のより大きな界面要素112で置き換えられている。
【0083】
第1実施形態と同様に、図7および図8の界面要素112は、プレート116の周縁部に分布した一組の脚部118によって制御基板114上に支持された界面プレート116を有する。界面プレート116は、角部に丸みを有しかつ長細く、第1実施形態の3つの界面プレート16が共同で占める領域の全体を覆うように寸法設定されている。
【0084】
第1実施形態と同様に、複数の脚部118は、実質的に同じ長さと幅を有する。したがって、複数の脚部118は、界面要素112が制御基板114に取り付けられる際、同様のアーチ状に曲げられ、よって同様のばね力を生じる。これにより、複数の脚部118によって生じる付勢力は、界面プレート116周りでバランスされる。
【0085】
各脚部118は、界面プレート116の縁部から直角に延びるか、あるいは当該縁部が湾曲している場合、その縁部に接して延びる。脚部118の向きをこのようにすることで、界面プレート116の下で脚部118が曲がるときに、それが捻れるのを回避することができる。
【0086】
第1実施形態と同様に、図7および図8に示す界面要素112は、リジッドフレックスPCBの態様で作られている。ここで、図9は、PCBメーカーによって提供される製品に相当するフラットパターンを示しており、その脚部118は、図7および図8に示すように、所定の形状に曲げられて制御基板114に取り付けられ得る。また、図9から明らかなように、図7および図8の界面要素112のプロファイルは、2回回転対称性と、界面プレート116の中心で交差する2つの垂直な対称軸とを有する。
【0087】
さらに、界面プレート116は、図6に示す第1実施形態の構造と同様の構造を有する。また、界面プレート116は、上側および下側導電層を接続し、界面プレート116の上側および下側面の間の熱抵抗を最小化する一並びの熱ビア138を備える。
【0088】
最もシンプルな実施態様では、界面プレート116は、連続した導電面を各面に有し、全体として均一な温度に加熱され、ひいては係合する試験カートリッジ20の対応する部分を単一温度に加熱する。制御基板114は、界面プレート116を並行して加熱するように動作する一対のLED22を備えており、当該LED22は、試験カートリッジ20の均一な加熱を促進するように、界面プレート116で生じる熱の分散を促すように離間している。また、図9は、直線状に並んだ一対の脚部を通って延び、界面プレート116に取り付けられた温度センサ44に接続する導電トレース142を示す。
【0089】
しかしながら、図7および図8に示す実施形態では、破線は、界面プレート116の導電層に形成された不連続点を示し、対応する不連続点が、図8では見えない界面プレート116の反対側に形成されている。各不連続点は、例えばエッチングによって、導電層から導電材料の細片を取り除くことで形成されてもよい。不連続点は、界面プレート116を、互いに分離された2つの個別加熱領域に分け、その各々は、対応する一方のLED22によって個別に輻射加熱されてもよい。また、各加熱領域に、それぞれ温度センサが設けられてもよい。したがって、各加熱領域は、LED22によって、必要に応じて異なる温度になるように、互いに独立して加熱されてもよい。
【0090】
当業者であれば、本発明が、添付するクレームの範囲を逸脱することなく、本明細書に記載したものと異なる多くの形態をとるように変更され得ることを認めるであろう。
【0091】
例えば、界面要素は、PCBとして作られなくてもよく、リジッドで熱伝導性の界面プレートを支持する断熱性のフレキシブル脚部を有する要素を作るのに、他の様々な製造オプションが選択可能である。
【0092】
界面要素と同じ支持構造にLEDを取り付けることでコンパクトな構成を実現できるが、別の実施形態では、LEDは、界面要素とは別に取り付けられてもよい。したがって、一般論として、界面要素および熱界面装置は、熱界面装置と共に熱界面を作り出す物体を加熱する加熱構成要素から分離されてもよい。当該界面装置は、それでもなお、界面装置を介して物体が加熱される点で、そのような構成の加熱システム全体の一部を構成すると考えることができる。したがって、熱界面装置は、加熱対象の物体への熱輸送を改善するために、既存の加熱システムに後付けされてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】