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特表2024-542430開放HTSチャネルに金属を充填するためのプロセス、システムおよびデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】開放HTSチャネルに金属を充填するためのプロセス、システムおよびデバイス
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/81 20230101AFI20241108BHJP
   H01F 6/06 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H10N60/81
H01F6/06 110
H01F6/06 140
H01F6/06 150
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527677
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 US2022049876
(87)【国際公開番号】W WO2023086655
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/279,443
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】521259219
【氏名又は名称】コモンウェルス・フュージョン・システムズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【弁理士】
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】ハバード,アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】ラボンバード,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】マレー,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】アービー,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエイラ,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ベック,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】トーランド,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フライ,ビンセント
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァイガー,シェーン
(72)【発明者】
【氏名】ワターソン,アメリア
(72)【発明者】
【氏名】チェンバレン,サラ
(72)【発明者】
【氏名】エストラーダ,ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ムラティディス,セオドア
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス,ケネス
【テーマコード(参考)】
4M114
【Fターム(参考)】
4M114AA40
4M114CC03
4M114DA03
(57)【要約】
基礎板(19)の開放チャネル(12)に金属を充填するための概念、システム、構造および技術が説明される。基礎板の開放チャネルの金属充填は、真空圧力含浸(VPI)を使用して達成される。溶融金属を充填される基礎板の開放チャネル(12)の上に圧縮板(14a)が配設される。圧縮板(14a)と基礎板チャネル(12)の直近の基礎板(10)の表面との間にガスケット(97)が配設される。開放チャネルの上にチャネルキャップ(26)が配設される。チャネルキャップ(26)の表面にははんだ流路(29、32)が設けられている。はんだ流路(29、32)は蛇行形状を有する。圧縮板(14a)および/または基礎板(10)に、はんだ流路(29、32’)が設けられている。本明細書で説明される概念、システム、構造および技術は、非絶縁、非ねじれ(NINT)高温超伝導(HTS)磁石の製造における使用に適する。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にチャネルが設けられている基礎板と、
前記チャネルの上に配設されたチャネルキャップと、
前記基礎板の前記開放チャネルの少なくとも一部に配設された1つまたは複数の高温超伝導(HTS)テープと、
前記基礎板チャネル内に配設され、前記チャネル内の前記1つまたは複数のHTSテープを囲む金属と、
を備える、非絶縁、非ねじれ(NINT)磁石。
【請求項2】
前記チャネルキャップの表面にはんだチャネルが設けられている、請求項1に記載のNINT磁石。
【請求項3】
前記チャネルキャップの前記はんだチャネルが蛇行形状を有する、請求項2に記載のNINT磁石。
【請求項4】
前記基礎板の前記チャネル内に蛇行形状を有するはんだチャネルが設けられている、請求項2に記載のNINT磁石。
【請求項5】
前記1つまたは複数のHTSテープの各部分が、前記1つまたは複数のHTSテープが前記基礎板の前記チャネルの中へ実質的に持ち上がるのを防止するために十分な複数のポイントにおいて拘束されるように、前記蛇行チャネルの周期が選択されている、請求項3もしくは請求項4または請求項3および請求項4の両方に記載のNINT磁石。
【請求項6】
前記チャネルキャップの表面にセグメント化はんだチャネルが設けられている、請求項1に記載のNINT磁石。
【請求項7】
前記セグメント化はんだチャネルが、前記はんだチャネルの側壁から突出する複数の部材によって形成される、請求項6に記載のNINT磁石。
【請求項8】
前記セグメント化はんだチャネルが、全テープチャネルにわたって実質的に一様な幅の空隙を有し、前記チャネルには、前記チャネル内にはんだが流れることをなお可能にしながら前記キャップを前記1つまたは複数のHTSテープの上に持ち上げておくように構成されたスペーサが配設される、請求項6に記載のNINT磁石。
【請求項9】
前記基礎板が、1つまたは複数の金属入力、ならびに/あるいは、1つまたは複数の金属出力を有する、請求項1に記載のNINT磁石。
【請求項10】
前記基礎板の前記チャネルに配設された1つまたは複数のばねクリップをさらに備える、請求項1に記載のNINT磁石。
【請求項11】
前記基礎板の前記チャネルに配設された1つまたは複数のコイルばねをさらに備える、請求項1に記載のNINT磁石。
【請求項12】
前記1つまたは複数のHTSテープの直近のチャネル内に配設された共巻き材料であって、前記チャネル内に前記1つまたは複数のHTSテープを配置してもはんだ流路が遮られないように選択されたサイズおよび形状を有する共巻き材料をさらに備える、請求項1に記載のNINT磁石。
【請求項13】
前記基礎板内の前記チャネルが、はんだ用の流路をもたらす側方流れチャネルをさらに備える、請求項1に記載のNINT磁石。
【請求項14】
基礎板のチャネル内に配置されるように構成されたチャネルキャップであって、はんだ流れ用のはんだチャネルを備える、チャネルキャップ。
【請求項15】
前記はんだチャネルが直線状であって、前記はんだチャネルの少なくとも一部が前記チャネルの中心線に沿って配置されている、請求項14に記載のチャネルキャップ。
【請求項16】
前記はんだチャネルが直線状であって、前記はんだチャネルの少なくとも一部が前記チャネルの中心線からオフセットされている、請求項14に記載のチャネルキャップ。
【請求項17】
前記はんだチャネルが蛇行形状を有する、請求項14に記載のチャネルキャップ。
【請求項18】
基礎板のチャネル内に配置されるように構成されたチャネルキャップであって、前記チャネルキャップのはんだチャネル内に配設された1つまたは複数のセグメント化構造を有するはんだチャネルを備え、前記セグメント化構造が前記チャネルの内部にはんだの流れを導くように構成されている、チャネルキャップ。
【請求項19】
前記はんだチャネルが直線状であって、前記はんだチャネルの少なくとも一部が前記チャネルの中心線に沿って配置されている、請求項18に記載のチャネルキャップ。
【請求項20】
前記はんだチャネルが直線状であって、前記はんだチャネルの少なくとも一部が前記チャネルの中心線からオフセットされている、請求項18に記載のチャネルキャップ。
【請求項21】
前記はんだチャネルが蛇行形状を有する、請求項18に記載のチャネルキャップ。
【請求項22】
複数の非絶縁巻線を備えるコイルを備える磁石であって、
前記巻線が、
高温超伝導体(HTS)テープの積層であって、前記HTSテープの各々がHTS材料を含む、高温超伝導体(HTS)テープの積層と、
前記HTSテープの積層の上に配置された共導体層と、
1つまたは複数のスペーサ構造と、
前記HTSテープの積層、前記共導体層、および前記1つまたは複数のスペーサ構造に接触して配置されたはんだの領域と、
を備える、磁石。
【請求項23】
前記複数の巻線が、第1の方向に整列した軸のまわりに巻きつけられており、前記HTSテープの積層の前記HTSテープが、前記軸に対して放射状に積み重ねられている、請求項22に記載の磁石。
【請求項24】
前記共導体層が、前記第1の方向に沿って前記HTSテープの積層の上に配置されている、請求項23に記載の磁石。
【請求項25】
前記はんだが、200℃未満の融点を有する金属を含み、前記金属の少なくとも50wt%が鉛(Pb)および/または錫(Sn)である、請求項22に記載の磁石。
【請求項26】
前記1つまたは複数のスペーサ構造が前記共導体層と一体的に形成されている、請求項22に記載の磁石。
【請求項27】
前記1つまたは複数のスペーサ構造が、前記巻線の側面に沿って配置されており、前記HTSテープの側面と接触する1つまたは複数のスペーサを含む、請求項22に記載の磁石。
【請求項28】
前記1つまたは複数のスペーサ構造が、前記共導体層と前記HTSテープの積層との間に配置された複数のスペーサ構造を含む、請求項22に記載の磁石。
【請求項29】
前記1つまたは複数のスペーサ構造が1つまたは複数のばねを備える、請求項22に記載の磁石。
【請求項30】
前記巻線が、前記HTSテープの積層と前記共導体層との間に、前記1つまたは複数のスペーサ構造と並んで配置されたはんだを含む、請求項22に記載の磁石。
【請求項31】
前記磁石が、内部にチャネルを形成された基礎板を備え、前記基礎板の前記チャネルの内部に前記複数の巻線が配置されている、請求項22に記載の磁石。
【請求項32】
前記1つまたは複数のスペーサ構造が前記HTSテープの積層に接触して配置されている、請求項22に記載の磁石。
【請求項33】
複数の非絶縁巻線を備えるコイルを備える磁石であって、
前記巻線が、
高温超伝導体(HTS)テープの積層であって、前記HTSテープの各々がHTS材料を含む、高温超伝導体(HTS)テープの積層と、
前記巻線の幅にわたって蛇行するはんだチャネルを備える共導体層と、
前記はんだチャネルの内部に配置されたはんだと、
を備える、磁石。
【請求項34】
前記はんだチャネルが、前記HTSテープの積層と接触する前記共導体層の表面の内部に配置されており、前記はんだが前記HTSテープの積層と接触している、請求項33に記載の磁石。
【請求項35】
前記はんだチャネルが正弦波形状を有する、請求項33に記載の磁石。
【請求項36】
前記複数の巻線が、第1の方向に整列した軸のまわりに巻きつけられており、前記HTSテープの積層の前記HTSテープが、前記軸に対して放射状に積み重ねられている、請求項33に記載の磁石。
【請求項37】
前記共導体層が、前記第1の方向に沿って前記HTSテープの積層の上に配置されている、請求項33に記載の磁石。
【請求項38】
前記はんだが、200℃未満の融点を有する金属を含み、前記金属の少なくとも50wt%が鉛(Pb)および/または錫(Sn)である、請求項33に記載の磁石。
【請求項39】
非絶縁、非ねじれ(NINT)高温超伝導(HTS)磁石を形成する方法であって、
基礎板の開放HTSチャネル内にHTS材料を配置するステップと、
前記開放HTSチャネルを覆って閉鎖HTSチャネルを形成するステップと、
ガスケット、Oリングまたは他の圧縮シールを使用して前記チャネルを密封することにより、前記チャネルの加圧および/またはポンピングを可能にするステップと、
前記HTSチャネルに溶融金属を少なくとも部分的に充填するステップと、
を含む、方法。
【請求項40】
前記開放HTSチャネルを覆って閉鎖HTSチャネルを形成するステップが、前記基礎板の前記開放HTSチャネルの上に、はんだ流路を備えるチャネルキャップを配置して、前記閉鎖チャネルを形成するステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記基礎板を加熱するステップをさらに含み、
前記HTSチャネルに溶融金属を少なくとも部分的に充填するステップが、溶融金属に圧力をかけて、前記閉鎖HTSチャネルを通して前記溶融金属を押し進めるステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記溶融金属が容器内に保持され、前記溶融金属に圧力をかけるステップが、前記容器の内部の前記溶融金属に圧力をかけるステップを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記チャネルの内部の開放空間に溶融はんだを引き込むために、前記チャネルの一端が減圧される、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]高温超伝導(HTS)磁石の、非絶縁、非ねじれ(NINT)磁石と称されるクラスでは、鋼などの抵抗性媒体で作製された基礎板のチャネルに、HTSテープの形態のHTS材料が、HTSテープ間の絶縁なしで挿入される。
【発明の概要】
【0002】
[0002]本明細書で説明される概念の一態様によれば、基礎板の開放チャネルに配設された(たとえばHTSテープの形態の)高温超伝導(HTS)材料を導電性金属で囲むのが望ましいことが認識されている。そのため、本明細書では、基礎板の開放チャネルの金属充填のための概念、システム、構造および技術が説明される。
【0003】
[0003]金属充填HTSチャネルは、鋼などの抵抗性媒体で作製された基礎板のチャネルにHTS材料が配設される、非絶縁、非ねじれ(NINT)高温超伝導磁石の製造に用途がある。基礎板のチャネルが螺旋状の構成である実施形態では、HTS材料の巻きの間に絶縁体は存在しない。実施形態において、HTS材料は、挿入されたHTSテープ(またはHTSテープの束もしくはスタック)の形態で設けられるか、または、基礎板のチャネルにおいて、HTS材料の巻きの間に非絶縁で配設される。
【0004】
[0004]実施形態において、基礎板の開放チャネルの金属充填は、真空圧力含浸(VPI)を使用して達成される。実施形態において、溶融金属を充填される開放チャネルの上に圧縮板が配設される。実施形態において、圧縮板の面と基礎板の面との間にガスケットが配設される。
【0005】
[0005]実施形態において、開放チャネルの上にチャネルキャップが配設される。実施形態において、チャネルキャップ自体に開放チャネル(本明細書でははんだチャネルと称されることもある)が設けられる。実施形態において、チャネルキャップに、蛇行形状のはんだチャネルが設けられる。
【0006】
[0006]実施形態において、基礎板チャネルおよび/またはチャネルキャップのはんだチャネルは、セグメント化構造を含み得る。
【0007】
[0007]本明細書で説明される概念の一態様によれば、方法は、(a)HTS材料を配設された開放チャネルを有する基礎板を用意するステップと、(b)真空圧力含浸を使用して、基礎板の開放チャネルに導電性金属を充填するステップとを含む。
【0008】
[0008]この特定の機構を用いて、基礎板チャネルに配設されたHTS材料(たとえばHTSテープ)の少なくとも一部と接触する導電性金属を堆積するための方法が提供される。場合によっては、導電性金属は、部分的または全体的にHTS材料を囲み得る。基礎板チャネルに配設されたHTSテープを導電性金属で全体的または部分的に囲むと、それだけではないが、(金属充填チャネルのない基礎板と比較して)機械的安定性が向上すること、(金属充填チャネルのない基礎板と比較して)電気伝導が向上して、HTSテープの間の電流の共有が可能になり、HTSテープと基礎板との間の電流の共有も可能になること、および/または(金属充填溝のない基礎板と比較して)熱伝導が向上することを含む、複数の利点をもたらす。NINT高温超伝導磁石では、臨界電流に近い場合および/またはテープに欠陥がある場合には、HTSテープの間や、HTSテープと基礎板との間で電流を共有することが特に重要になり得る。チャネルに金属を充填して熱伝導を向上することは、ベース板のチャネルを通じた磁石の冷却や、冷却する場合の熱の分散を支援する。
【0009】
[0009]実施形態において、VPI技術を使用して基礎板の開放チャネルに導電性金属を充填するステップは、チャネルを洗浄するステップと、チャネルにHTS材料を配設するステップと、チャネルを真空引きするステップと、チャネルを不活性ガスで浄化するステップと、チャネルに溶剤を堆積して、チャネルや基礎板に配設されたHTSを覆うステップと、チャネルからあらゆる過剰溶剤を排出するステップと、基礎板チャネルおよび金属を加熱して溶融金属をもたらすステップと、基礎板チャネルに溶融金属を流し込むステップとの、順不同の実行を含む。
【0010】
[0010]実施形態において、金属は合金を含む。実施形態において、流される金属ははんだである。実施形態において、流される金属は錫-鉛(SnPb)はんだである。
【0011】
[0011]実施形態において、基礎板チャネルを加熱するステップは、基礎板チャネルを、堆積される合金の溶融温度以上まで実質的に加熱するステップと、基礎板チャネルに溶融合金を流し込むステップとを含む。
【0012】
[0012]NINT基礎板チャネルにHTS材料(たとえばHTSテープ)を挿入するためにVPI技術を使用すると利点があることは認識されるが、VPI技術を使用すると課題が増えることも認識される。
【0013】
[0013]たとえば、基礎板が複数のチャネルを含む実施形態では、チャネルが熱的に結合される可能性がある。さらに、基礎板は、たとえばHTSケーブルの熱質量と比較して、比較的大きい熱質量を有し得る。したがって、基礎板のチャネル内に溶融金属を流すのに適切な温度に達するまでに要する時間は、HTSケーブル内に溶融金属を流すのに適切な温度に達するまでに要する時間よりも、一般的には長い。
【0014】
[0014]NINTチャネル内にHTS材料(たとえば1つまたは複数のHTSテープ)が配設されていることがあるので、チャネルに溶融金属を充填するとき、HTS材料の機械的特性または電気的特性を損なう可能性がある温度を超えないことが重要になり得る。その上、HTS材料の機械的特性または電気的特性を損なう可能性がある時間と温度の組合せ(すなわち、HTS材料を、所与の期間にわたってその温度に曝露すること)を超えないことが重要になり得る。
【0015】
[0015]本明細書で説明される、チャネルの金属充填のために使用される構造およびプロセスは、HTSテープ束の機械的特性または電気的特性(たとえば超伝導特性)を実質的に劣化させることがない。したがって、そのような構造およびプロセスは、基礎板の開放チャネルにHTSテープ束が配設されているNINT磁石における使用に適する。
【0016】
[0016]一実施形態では、NINTチャネルに溶融金属を充填する方法は、真空と圧力の両方を使用して、チャネルを通してはんだを流すステップを含む(いわゆる「真空圧力含浸技術」すなわち「VPI技術」)。
【0017】
[0017]実施形態において、基礎板の開放チャネルを、1つの金属流路を有する真空密封組立体に変換するのに、ガスケットとともに圧縮板が使用される。これによって、VPIはんだ充填プロセスに適する、テープチャネルに沿った単調な圧力勾配が可能になる。実施形態において、基礎板の開放チャネルを、複数の流路を有する真空密封組立体に変換するのに、ガスケットとともに圧縮板が使用される。
【0018】
[0018]実施形態において、チャネルキャップは、特にはんだ流れ用のチャネルを有する。実施形態において、チャネルキャップ内のチャネルは、直線状であって中央に配置され得る。実施形態において、チャネルキャップ内のチャネルは、直線状であって中央に配置されるのではなく、端から端まで(たとえばS字形に)蛇行する。
【0019】
[0019]実施形態において、チャネルキャップ内に、セグメント化構造を備えるはんだチャネルが設けられてもよく、溶融金属(たとえばはんだ)が流れ得る空隙または空間の圧縮を防止する。実施形態において、基礎板チャネルは、セグメント化構造を備えてもよく、金属充填プロセス中の、基礎板チャネルにおける溶融金属(たとえばはんだ)の流れを助長する。
【0020】
[0020]説明される構造および技術によって、NINT磁石のチャネルまたは直線状のHTSチャネルに、はんだまたは他の溶融金属を充填することが可能になる。
【0021】
[0021]説明される構造および技術は、チャネルの各種サイズおよび/または形状寸法(直線状、螺旋状、曲線状、他のもの)に対して容易に適合可能である。
【0022】
[0022]開示された実施形態を作製したり使用したりするやり方およびプロセスは、添付図面の図を参照することによって理解され得る。図中に示される構成要素や構造は、必ずしも原寸に比例するわけではなく、本明細書で説明される概念の原理を図示するように強調されていることを理解されたい。類似の符号は、種々の図の全体にわたって対応する部分を指定する。その上、図において、実施形態は、限定ではなく例として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】[0023]螺旋状機構内に開放チャネルが配設された磁石を形成する際に使用するのに適する、非絶縁、非ねじれ(NINT)板の等角図である。
図2】[0024]真空圧力含浸(VPI)板組立体の一部の断面図である。
図3A】[0025]圧縮板上に複数の補強材が配設されているVPI板組立体の等角図である。
図3B】[0026]VPI板組立体の一部の断面図である。
図3C】VPI板組立体の一部の断面図である。
図4A】[0027]基礎板の開放チャネルの上に配設されたチャネルキャップの断面図である。
図4B】[0028]基礎板のチャネルの上に配設された、はんだ流路を有するチャネルキャップの断面図である。
図4C】[0029]基礎板の開放チャネルの上に配設されたチャネルキャップの、図4Dの一点鎖線で得られた端面図である。
図4D】[0030]基礎板のチャネルの上に配設された、はんだ流路を有するチャネルキャップの上面図である。
図5】[0031]蛇行形状のはんだチャネルを有するチャネルキャップの等角図である。
図6A】[0032]セグメント化はんだチャネルを有するチャネルキャップの一部の上面図である。
図6B】[0033]セグメント化はんだチャネルを有するチャネルキャップの代替実施形態の上面図である。
図7】[0034]基礎板の金属充填開放チャネルに関する例示のVPIプロセスの流れ図である。
図8】[0035]図7に関連して説明されたプロセスと同一または類似であり得る金属充填プロセスを実施するための例示の処理ステーションの概略図である。
図9】[0036]表面に複数のヒータを配設された下部圧縮板を含むVPI板組立体の下面図である。
図10A】[0037]はんだチャネルおよびチャネルキャップ用の代替単位セル機構を示す図である。
図10B】はんだチャネルおよびチャネルキャップ用の代替単位セル機構を示す図である。
図10C】はんだチャネルおよびチャネルキャップ用の代替単位セル機構を示す図である。
図10D】はんだチャネルおよびチャネルキャップ用の代替単位セル機構を示す図である。
図10E】はんだチャネルおよびチャネルキャップ用の代替単位セル機構を示す図である。
図10F】はんだチャネルおよびチャネルキャップ用の代替単位セル機構を示す図である。
図10G】はんだチャネルおよびチャネルキャップ用の代替単位セル機構を示す図である。
図10H】[0038]はんだチャネル用の代替単位セルの実施形態を示す図である。
図10I】はんだチャネル用の代替単位セルの実施形態を示す図である。
図10J】はんだチャネル用の代替単位セルの実施形態を示す図である。
図10K】はんだチャネル用の代替単位セルの実施形態を示す図である。
図10L】はんだチャネル用の代替単位セルの実施形態を示す図である。
図10M】はんだチャネル用の代替単位セルの実施形態を示す図である。
図10N】はんだチャネル用の代替単位セルの実施形態を示す図である。
図11A】[0039]VPIプロセス中に銅キャップの1つまたは複数の縁部を濡らすために使用され得るはんだチャネルの概念を示す図である。
図11B】VPIプロセス中に銅キャップの1つまたは複数の縁部を濡らすために使用され得るはんだチャネルの概念を示す図である。
図12A】[0040]はんだバー方法を示す図である。
図12B】はんだバー方法を示す図である。
図12C】はんだバー方法を示す図である。
図13A】[0041]二重パンケーキの等角部分断面図である。
図13B】二重パンケーキの等角部分断面図である。
図14】[0042]はんだ流れ用の複数の入力/複数の出力を有する基礎板を示す図である。
図15A】[0043]1つの入口および1つの出口を有する基礎板を示す図である。
図15B】[0044]1つの入口および2つの出口を有する基礎板を示す図である。
図16】[0045]入口の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0046]本明細書で開示される広範な概念、構造および技術の説明の明瞭さを助長するために、これらの概念、構造および技術は、時には、螺旋形状のチャネルを有する基礎板の開放チャネルに配設されたHTSテープを有する、非絶縁、非ねじれ(NINT)磁石の状況で説明されることを理解されたい。しかしながら、当業者なら、本明細書で提供される説明を読み取った後に、本明細書で説明された金属充填の概念、構造および技術は、NINT磁石以外のデバイスにおいて使用され得る、1つの、直線状または曲線状のHTSチャネルなどの他のチャネルの形状寸法にも使用され得ることを理解するであろう。たとえば、説明される構造および方法は、直線状のHTSチャネルに、はんだを含み、これに限定されない溶融金属を充填するのに適するものである。
【0025】
[0047]本明細書において以下で説明されるいくつかの実施形態は、(たとえばNINT磁石設計の一部として)導電性の「チャネルカバー」または「チャネルキャップ」を含み得るが、他の実施形態はチャネルキャップを含まなくてもよいことも理解されたい。本明細書で説明される金属充填技術は、チャネルキャップの使用の有無にかかわらず、開放基礎板チャネルを充填するのに使用され得る。
【0026】
[0048]本明細書で説明されるプロセス、システムおよびデバイスは、螺旋形状以外の形状を有する基礎板のチャネルの金属充填において使用するのにも適することも理解されたい。一般に、本明細書で説明されるプロセス、システムおよびデバイスは、内部にHTS材料(たとえば1つまたは複数のHTSテープまたはテープ束)を与えられた開放チャネルの金属充填における使用に適する(内部にHTS材料を有する基礎板の開放チャネルは、本明細書では、「開放HTSチャネル」またはより簡単に「HTSチャネル」と称されることもある)。
【0027】
[0049]本明細書で保護を求める概念の説明における明瞭さを助長するために、基礎板チャネルをはんだまたは特定のタイプのはんだで充填することについて、時には本明細書で参照されることも理解されたい。当業者なら、本明細書で提供される説明を読み取った後には、溶融して基礎板チャネルに流れ込むことができる任意の金属または合金が使用され得ることを理解するであろう。
【0028】
[0050]本明細書で説明されるプロセス、システムおよびデバイスは、開放HTSチャネルに対して、詳細には板(基礎板としても知られている)に設けられた開放HTSチャネルに対して真空圧力含浸(VPI)金属充填技術を適用するために必要な複数の課題(構造上の課題とプロセスの課題の両方)に対応するものである。
【0029】
[0051]そのような課題は、それだけではないが、以下の(1)~(5)を含む。(1)チャネルに沿って連続した圧力勾配をかけることができる構造を有する開放HTSテープチャネルを密封すること。密封構造は、真空を維持することと、溶融金属(たとえば溶融はんだ)の流れを達成するために必要な圧力を持続することとの両方を必要とされ、この圧力は、チャネルに配設されたHTSテープが損傷しないように、十分に短い期間内にHTSテープチャネルに溶融金属を充填することを可能にするとともに、はんだ流れ用の1つまたは複数の入口および出口も見込むものである。(2)HTSテープが長期間にわたって比較的高い温度に暴露されることのないように、十分に短い時間で再び充填するために、はんだ流れ用の十分に大きな開放チャネルを保証すること。(3)VPI板組立体の温度をはんだ流れのための最適温度まで均一に上昇させるように加熱する一方で、HTSテープの時間-温度とはんだ暴露とを低減する(理想的には最小化する)こと。(4)はんだ流れの後に、VPI板組立体を急速冷却して、再びHTSテープの時間-温度とはんだ暴露とを低減する(理想的には最小化する)こと。(5)大きな磁石用の、複数の入口または出口を有する分割されたチャネルと、流れの独立した制御とのための選択肢。
【0030】
[0052]本明細書で説明される概念、システム、デバイス、技術および機能は、これらの課題の各々に(総体として、または個々に)対応する。
【0031】
[0053]次に図1を参照して、例示の基礎板5Aにはチャネル6(または「溝」)が配設されている。以下で詳細に説明されるように、図1の例示の実施形態では、HTSチャネル6には溶融金属8が充填されている。開放HTSチャネルに金属を充填するための技術は、本明細書において以下で説明される。図1の例示の実施形態では、螺旋状の構成7(すなわち、螺旋形状または螺旋状機構であり、競走場構成と称されることもある)を有するチャネル6が用意されている。螺旋形状の溝を有する基礎板は、螺旋状の溝がある板と称されることもあり、螺旋状の溝があるNINT磁石を形成するのに使用するのに適する。本明細書で説明される、1つまたは複数の基礎板チャネルに金属を充填するための金属充填技術は、それだけではないが、螺旋状の構成以外の構成を含む任意の構成を有するチャネルに対して使用するのに適することを理解されたい。本明細書では、実質的に断面形状を有するチャネルを充填することが参照されているが、本明細書で説明される金属充填技術は、任意の規則的または不規則な幾何学的断面形状を含む任意の断面形状を有するチャネルに対して使用され得ることも理解されたい。
【0032】
[0054]図1の例示的な実施形態は、そのような基礎板5Aと5Bとの対を示し、基礎板5Bは、金属を充填されたチャネル6も有することに留意されたい。
【0033】
チャネルの密封および分離
[0055]図2を参照して、図1の基礎板5と類似または同一であり得る基礎板10の一部が示されている。基礎板10は、反対の第1の面10aと第2の面10bとを有し、面10aには複数のチャネル領域12(より簡単には「チャネル」)が設けられている。基礎板10は、面10bに配設された複数のチャネル13を任意選択で含み得る。したがって、基礎板12は、本明細書では、「チャネル化基礎板」またはより簡単に「チャネル化板」と称される。チャネル13は、冷却チャネル(たとえば冷却液または冷却物質が配設され得るチャネル)である。本明細書で説明されるVPIプロセスでは、これらのチャネルははんだと接触しない。
【0034】
[0056]そのようなチャネル化基礎板は、たとえば融合磁石コイルにおいて使用するのに適切であり得る。チャネル領域は、1つの連続したチャネル(たとえば、図1の基礎板5に設けられた螺旋状チャネル7など)の部分でもよく、あるいは2つ以上の個別の(または分離した)チャネルの一部に相当してもよいことを理解されたい。図2に見られるように、チャネル12には、まだ金属が充填されていない。したがって、基礎板チャネルは、暴露されているか、または一方の側が「開放されている」。それ故に、基礎板チャネル12は、「開放」基礎板チャネル、またはより簡単に「開放チャネル」と称されることもある。
【0035】
[0057]図2には示されていないが、チャネルのうちいくつかまたはすべて(あるいは、1つの基礎板チャネルのいくつかの領域またはすべての領域)においてHTS材料(たとえばHTSテープ)が配設され得ることに留意されたい。チャネル内にHTSテープを配設されたそのような基礎板は、磁石コイルに使用するのに適する。
【0036】
[0058]前述のように、開放基礎板チャネルに溶融金属を充填するのが有利であり得る。これは、たとえば、真空圧力含浸(VPI)金属充填技術を使用して達成され得る。しかしながら、VPIを利用するには、開放チャネルを、VPI流れに適する閉鎖チャネルに変える必要がある。一実施形態では、VPIプロセスを利用するには、適切な厚さ(すなわち、圧力下の変形を低減するかまたは理想的には防止する厚さ)のカバー板を有する開放基礎板チャネルの上に、圧縮板14a(本明細書では、「カバー板」、「第1のカバー板」、「上部カバー板」またはより簡単に「上部板」と称されることもある)を配設する必要がある。
【0037】
[0059]カバー板の表面と基礎板の表面との間に真空気密シールを形成することも必要とされる。この例示の実施形態では、基礎板の表面とカバー板14aの表面との間に配設されたOリング16が、チャネル12のまわりに真空シールを形成する。したがって、Oリングは、基礎板の上に上部板が配設されたら、基礎板チャネル内の真空を維持するように構成されている。
【0038】
[0060]基礎板チャネル12にそれぞれ、溶融金属(たとえばはんだ)が流入し、基礎板チャネル12から溶融金属が流出し得る入口チャネルや出口チャネル(図18A図18C参照)も必要である。そのような入口チャネルや出口チャネルは、上部カバー板14a、下部カバー板14bおよび/または基礎板12に設けられてもよい。
【0039】
[0061]また、(図2に示されるように)複数のチャネルが接近している場合には、上部カバー板14aと基礎板10の上面との間にガスケット15aが配設されてもよい。ガスケット15aは、チャネル12の間に溶融金属(たとえばはんだ)が伝わる(または漏れる)のを防止するとともに、溶融金属が基礎板チャネルを通って入口から出口まで流れるのを保証し、かつ/または改善するのを支援するように、構成して配設され得る。実施形態において、ガスケット15aは圧縮性材料から用意され得る。実施形態において、設けられ得る板14aは、面に1つまたは複数の切欠き(または窪んだ領域)があって、ここにガスケット15aが配設され得る。
【0040】
[0062]はんだ付けされる対象物(たとえば基礎板および開放チャネル(複数可))のサイズや、適切な流れのために必要な圧力に応じて、さらなる付加物が役に立つかまたは必要とされることがある。そのようなさらなる付加物は、基礎板の、上部板が配設されている面の反対側の面に配設された圧縮板14b(本明細書では「第2のカバー板」、「下部カバー板」またはより簡単に「下部板」と称されることもある)を含み得る。この例示の実施形態では、下部板14bは、いわゆる冷却チャネル13にわたって配設されている。板10の第2の面10bの上と、チャネル13のまわりとに、ガスケット15bが配設されている。実施形態において、ガスケット15bは圧縮性材料から用意され得る。実施形態において、設けられ得る板14bは、面に1つまたは複数の切欠き(または窪んだ領域)を有し、ここにガスケット15bが配設され得る。
【0041】
[0063]下部板14bは、基礎板の変形および/または形崩れを低減するように構成され(たとえば、そのようなサイズ、形状および厚さを持って提供され)選択される。基礎板のそのような変形および/または形崩れは、金属充填プロセス(たとえばVPIプロセス)中に基礎板が暴露され得る圧力および温度によるものであり得る。したがって、上部板14aおよび下部板14bを使用すると、熱膨張を均一に(または実質的に等しく)して熱変形を低減するのを支援し得る。実施形態において、開放チャネル12に溶融金属を充填するプロセス中には、0.207MPa(30psig)までの圧力および200℃の温度範囲が使用され得る。
【0042】
[0064]上部板および/または下部板を基礎板に固定するために、基礎板と、上部板と、(存在する場合には)下部板との組合せを、関連する任意の密封機構および/または結合機構と併せて使用した組立体は、本明細書では「VPI板組立体」20(またはより簡単に「板組立体」)と称されることがある。実施形態において、上部板14aおよび/または下部板14bは、アルミニウムまたはアルミニウムに類似もしくは実質的に同一の熱伝導率および熱質量特性を有する他の材料から用意され得、そのため、熱伝導率特性は、他の材料の熱伝導率と比較して相対的に高く、そのような熱質量特性は、他の材料の熱質量特性と比較して比較的低い。もちろん、アルミニウム以外の材料も使用され得る。
【0043】
[0065]次に図3Aを参照して、上記で言及したそのようなさらなる付加物は、圧力下での上部カバー板(および存在する場合には下部カバー板)の変形をさらに低減するように構成して配設された機械的構造21(本明細書では「補強材」と称されることもある)も含み得る。実施形態において、そのような変形の距離は、好ましくはチャネル間の金属はんだ漏れを(そのような漏れたはんだは、チャネル間に1つまたは複数の電流経路すなわち「電気ブリッジ」をもたらして磁石の動作を損い、かつ/またはすべてのチャネルにはんだを十分に充填するのを妨げる可能性があるので)防止するために、下部ガスケットの圧縮(すなわち下部ガスケットが圧縮する量(または物理的距離))未満である。図3Aでは、補強材は、上部板の表面および下部板の表面から突出するか、またはこれらに配設された一連のフィンとして示されているが、第1および第2の板の変形を低減するために他の機械的構造または他の手段も使用され得る。
【0044】
[0066]また、上部カバー板にはんだ出口が設けられる実施形態では、基礎板の下部および(存在する場合には)下部カバー板には、はんだを施す前に融剤を十分に排出するために、反対側の穴が含まれてもよい。
【0045】
はんだ流路
[0067]開放チャネル内に配設されたHTS材料(たとえばHTSテープまたはHTSテープの積層もしくは束)のまわりの十分な金属充填を保証するために、構成(たとえば基礎板チャネルおよび上部板の構成)は、好ましくは、溶融金属(たとえばはんだ)が、HTS材料の機械的特性または電気的特性を劣化させない時間および温度においてHTS基礎板チャネルを充填するようにスムーズに流れるための十分な開放空間を含むべきである。そのようなスムーズな溶融金属流れ(たとえばはんだ流れ)を可能にするそのような開放空間(または「空隙」)の必要な量(またはサイズ)は、それだけではないが、基礎板の寸法、チャネル内に配設される金属(すなわち溶融金属または特定のタイプのはんだ)およびHTS材料の選択、ならびに基礎板チャネル内に配設され得る何らかの共巻き材料の寸法を含む特定の用途に依拠することになる。実施形態において、流れ時間を推定するために、空間の水力直径が使用され得る。HTSチャネルが長ければ、所与の時間で充填するために、より大きな水力直径が必要になる。実施形態において、いくつかの用途については、一般的には1mm~数mmの空隙が必要になる。
【0046】
[0068]一実施形態では、約100mの長さのチャネルにはんだを施すのに数mm(たとえば約3mm~約4mm)の直径が使用された(すなわち約100mの長さのチャネルが金属を充填された)。流れにおける重要な要因の1つは最大の流路であることが注目される(たとえば、多くの細いチャネルの合計は、それほど大きな要因にならない)。
【0047】
[0069]実施形態において、基礎板チャネル(たとえば図1のチャネル6または図2のチャネル12)には、金属を充填する前にHTSテープが配設されてもよい。HTSテープが含み得るHTS材料の長いより線は、厚さ(すなわち高さ)が約0.001mm~約0.1mmで幅が約1mm~約12mmの断面を有する(また、チャネルの長さに沿って、すなわち図2図3Bの例ではページに対して垂直な方向に、延在する長さを有する)。いくつかの実施形態によれば、HTSテープは、銅などのクラッド材に加えてHTS材料を含み得る。いくつかの実施形態では、HTSテープは、多結晶HTSを含み得、かつ/または高レベルの結晶整列を有し得る。
【0048】
矩形チャネル
[0070]図3Bおよび図3Cが示す基礎板10の一例において、チャネル12(図2)には、積層HTSテープ22(HTSテープ積層22とも称される)および共巻きテープ24(銅などの導電材料から用意され得る)が配設されている。積層HTSテープ22と共巻きテープ24(存在する場合には)の組合せは、本明細書では「共巻きHTSテープ25」と称されることがある。
【0049】
[0071]HTS材料がHTSテープとして与えられる状況では、デバイス(たとえばNINT磁石などの磁石)の内部のHTSテープ積層の位置に応じてHTSテープ積層22におけるHTS導体の数を変えることによって、デバイスを構成するのに必要なHTSテープの全体量を低減するのが望ましいであろう。図3Bが示す板の一例では、基礎板チャネルに、導電性共巻きテープ24(たとえば銅テープ)に加えてHTSテープ積層22が配設されている。共巻きHTSテープ25のまわりに導電材料23(たとえばはんだなどの金属)が配設されている。
【0050】
[0072]図3Bに見られるように、それぞれのHTSテープ積層22におけるHTSテープの数は、それぞれの巻きが図3Bの右から左へと減少し、一方、導電性共巻きテープの数は右から左へと増加し、それによって導電性共巻き24の厚さが増加する。図3の例示の実施形態は、基礎板の開放チャネル(たとえば図2の開放チャネル12など)の上に配設された任意選択のチャネルキャップ26も含む。チャネルキャップの幅は、導電性共巻きテープの数に関連して、それらを組み合わせた断面積が、すべての巻きにおいてほぼ一定になるように変化され得る。このようにして、共導体の単位長さあたりの抵抗が一定に保たれ、いくつかの用途では望ましいと言える。
【0051】
[0073]HTSのNINT磁石の場合には、HTSテープや共巻き導電性テープの量およびチャネルキャップのサイズを調整すると、冷却中の磁気エネルギーの散逸率を制御するためのやり方を提供し得、場合によっては、全磁石冷却イベント中に、巻きパックの全体にわたって磁気エネルギーを均一に散逸し得る。加えて、HTSテープや共巻き導電性テープの量およびチャネルキャップのサイズを調整すると、隣接区域における磁気エネルギー付与の量を変化させ得る。これによって、たとえば接合がある領域などにおいて、重要部位における磁気エネルギー付与の低減が可能になり得る。
【0052】
[0074]図3Bの例では、基礎板は、開放チャネル12の板の反対側に配置された冷却チャネル28(HTSテープまたはHTSテープ積層などのHTS材料が配設されているときには、導通チャネルまたはHTSチャネルと称されこともある)を含む。様々な幅を有する冷却チャネル28が用意され得る(すなわち、各冷却チャネルの幅が同一である必要はない)。実施形態において、冷却チャネル28の幅と冷却チャネルの直近のHTSテープ積層22の幅との間に相伴う関係があり得る。たとえば、HTSテープ積層が広いほど、冷却チャネルも広くなる。場合によっては、導通チャネルの中に冷却チャネル28を設けるのが好ましいことがある。
【0053】
[0075]実施形態において、冷却チャネルは、導通チャネルの間に設けられ得る。冷却チャネルにはんだが流れ込むのを防止するために、冷却チャネルがはんだから遮断されるべきであることが注目される。これは、たとえば、チャネル内でHTSの隣に(たとえば隣接して、または直近に)チューブを敷設することによって達成され得る。
【0054】
[0076]次に図4A図4Bを参照して、実施形態では、チャネルキャップ26は、開放チャネル内に配設されるときには、チャネルキャップの縁部に沿ってチャネルまたは溝27が形成されるように構成され得る。はんだペーストまたははんだワイヤ28が、チャネル27の縁部上に配置されてもよく、または縁部に沿って配設されてもよい。チャネルキャップと基礎板壁との間の優れた接着を保証するのを支援するために、チャネル27の中ではんだが溶融される(チャネルキャップと基礎板との間の優れた接着は、磁石を冷却する場合の導電性や熱伝導性にとって重要になり得る)。
【0055】
[0077]この例示の実施形態では、チャネル内のHTS積層(または共巻きHTSテープ)と平坦なチャネルキャップ(図4Aにより明瞭に示されている)との間に、溶融金属が流れ得る空間(または「空隙」)30が残される。HTSテープ22のまわりの優れた浸潤性を可能にするように、共巻きHTSテープ25の隣にも空間30が設けられ得る。上記で論じられたガスケットおよび上部板は、チャネルキャップおよび基礎板の上部に直接配設されることになる。他の設計では、チャネルキャップが不要であり、上部板は、開放チャネルの上に直接配設され得る(すなわち、基礎板と物理的に接触するが、チャネル内のHTS積層(または共巻きHTSテープ)と上部板の面との間の空間は引き続き残す)。この場合、ガスケットで空間を遮断しないように注意する必要があり得る。
【0056】
[0078]図4Aに示された設計には、簡易さという利点があり、チャネルキャップは、製造が簡単であって、図4Aに示されるように、積層テープの上に空隙30を確保するように、基礎板における1つまたは複数の移動止め31(「棚」を形成し得る)上に配設され得る(すなわち「位置し得る」)。そのような空隙は、溶融金属(たとえばはんだ)を流し得るチャネルとして働く。いくつかの用途では、空隙30は、チャネルの高さおよび/または幅と比較して比較的狭い(たとえば1~2mm)。空隙の特定の寸法は、特定の用途に依拠することになる。当業者なら、本明細書で提供される開示を読み取った後に、HTSを劣化させない時間内にチャネルを充填するために、特定の用途において使用する特定の空隙寸法を選択するためのやり方を理解するであろう。
【0057】
[0079]実際には、HTS材料を配設された基礎板チャネルに沿って空隙を均一に保つのは困難であろう。空隙が不均一であると、空隙またはチャネル内のはんだ流れの部分的または全面的な遮断を引き起こす可能性がある。不均一な空隙をもたらす可能性がある影響は、それだけではないが、基礎板(移動止めなど基礎板のすべての機能を含む)の製造における達成可能な公差と、チャネルキャップの製造における達成可能な公差と、基礎板とカバー板の熱膨脹差による基礎板の撓み(たとえば、板の終端が下方へ曲がって、テープが真っすぐなままであると、チャネルは中間において縮小する)と、ガスケット圧縮と板の熱膨張の組合せによって、チャネルキャップが「棚」(たとえばベース板のチャネル領域における移動止め)から滑り落ちることと、テープが、溶けたはんだまたは他の溶融金属よりも密度が低いために、基礎板チャネルの上部に「浮遊する」こととを含む。
【0058】
[0080]これらの影響のうちいずれか、またはいずれかの組合せより、基礎板チャネル内のはんだ流れ(より一般的には溶融流れ)が減速するかまたは完全に失速して、不完全な、非常に遅い、または再現性のないはんだ充填になってしまう可能性がある。
【0059】
[0081]溶融金属が空隙30に充填され凝固すると、空隙30に金属が充填される。
【0060】
チャネルのキャップ
[0082]次に図4Bを参照すると、前述の課題を克服するために、(図4Aに示されるように)銅キャップの下の空間に溶融金属が流れるのに頼るのではなく、1つまたは複数のはんだ流路(簡単に「はんだチャネル」と称されることもある)を含むチャネルキャップの概念が考案された。図4Bの例示の実施形態に明瞭に見られるように、チャネルキャップ26は、特にはんだ流れ用のチャネル32を含む。この例示の実施形態では、チャネルは1つしか示されていないが、当業者なら、いくつかの実施形態では2つ以上のはんだ流路を含むチャネルキャップが使用され得ることを理解するであろう。チャネルキャップが複数のはんだ流路を備える実施形態では、そのようなはんだ流路は交差してもしなくてもよい。そのようなはんだチャネル32は、それだけではないが、矩形もしくは(図4Bに示されるような)実質的な矩形、半円形または別の形状を含む、複数の断面形状のうち任意のものを有し得る。キャップにはんだチャネルが設けられているとき、キャップの下の空間(すなわち、キャップの表面とチャネル内に配設されたHTSテープの縁部または表面との間の空間または空隙)は、キャップが(たとえば図4Aに示されるように)はんだチャネルを含まないときのものよりも小さい。いくつかの実施形態では、チャネルキャップとHTSテープ22(または共巻きHTSテープ25)との間の空間は不要になり得る。
【0061】
[0083]その上、チャネルキャップにはんだチャネルを設けることによって、(図4Aに示されるような)非チャネルキャップの実施形態で達成可能なものよりも、大きい水力直径(したがって流量)が達成され得る。実施形態において、チャネルキャップは銅を含み得る。したがって、銅チャネルキャップにはんだチャネルを設けることによって、非チャネルキャップの実施形態で達成可能なものよりも大きい水力直径が達成され得、磁石性能のために同一の量の銅を維持することもできる。
【0062】
[0084]はんだチャネルを設けられたチャネルキャップを利用すると、少なくとも、基礎板が撓んでも、溶融金属を流すための開放チャネルを維持すること、キャップが撓んだり滑ったりしても、溶融金属を流すための開放チャネルを維持すること、基礎板においてHTSテープが移動しても、溶融金属を流すための開放チャネルを維持すること、といった課題を解決し得る。
【0063】
[0085]いくつかの実施形態では、チャネルキャップのはんだチャネル(またはその一部)は、直線状であって、チャネルの中心線に沿って配置され得るが、他の実施形態では、直線状ではあっても、チャネルキャップ(たとえば図4Bに示されるように)の中心線からオフセットされ得る。
【0064】
蛇行形状のはんだチャネルを有するキャップ
[0086]チャネルキャップのはんだチャネルがHTSテープチャネルに沿って均一であると、HTSテープが(たとえば浮上し)移動して、キャップのはんだチャネルを部分的または全面的に遮断してしまう可能性がなお残ることも認識される。したがって、次に図5を参照すると、チャネルキャップの中央の縦軸のまわりで蛇行するはんだチャネル34を有するチャネルキャップ26が示されている。チャネルキャップは、蛇行形状を有するはんだチャネル(本明細書では、「蛇行はんだチャネル」もしくはより簡単に「蛇行チャネル」34、または「コッパーヘッドキャップ」と称されることもある)を備える。蛇行はんだチャネルを備えるチャネルキャップを使用すると、チャネルキャップの撓みまたは滑り、および基礎板チャネル内のHTS材料の移動(たとえば浮遊)の際に、溶融金属を流すための開放チャネルを維持するという上記の問題を解決し得る。
【0065】
[0087]蛇行チャネルの実施形態では、チャネルキャップのはんだチャネルは、直線状ではなく、図5の例示の実施形態に示されるように(たとえば中心線のまわりで)端から端まで蛇行し得る。この例示の実施形態では、はんだチャネルは波形である。実施形態において、「波」の周期Lは、垂直なHTSテープ積層(垂直方向においてかなり堅いものであり得る)の各部分が、重大な動き(たとえばHTSテープがチャネルキャップのチャネルへと持ち上がること)を防止するのに十分なポイント(たとえば複数のポイント)に拘束されるように選択される。いくつかの実施形態では、蛇行形状のはんだチャネル(またはその一部)は、チャネルキャップの中心線のまわりで蛇行し得るが、他の実施形態では、チャネルキャップの中心線からオフセットされた軸のまわりで蛇行し得る。いくつかの実施形態では、チャネルキャップ内の蛇行チャネルは、直線部分と、チャネルキャップの幅に沿って蛇行する部分とを含み得る。いくつかの実装形態では、たとえば、蛇行チャネルは、斜めの無限角形パターン(たとえば「ジグザグ」パターン)に配置された複数の直線部分から形成され得、かつ/または、1つまたは複数の曲線状のチャネル部分によって接続された直線のチャネル部分を含み得る。
【0066】
[0088]図5に示されるような蛇行はんだチャネルを有するチャネルキャップは、直線状の1つのチャネル(すなわち1つの直線流路を有する基礎板)ならびに螺旋溝(たとえば、NINT磁石用のいわゆるパンケーキコイルで使用され得る、基礎板における(図1図3Aに示されるような)螺旋チャネルまたは溝)に用途があり得る。蛇行はんだチャネルを有するチャネルキャップは、HTSチャネル(すなわちHTSテープが配設され得る基礎板のチャネル)での使用に適する、チャネルの水力直径に基づく予測と実質的に一致する溶融金属流量をもたらす。
【0067】
[0089]次に、図4A図4Bの類似の要素が類似の参照指示を得て提供されている図4C図4Dを参照すると、図5に示されるチャネルキャップの蛇行はんだチャネルの代わりに、またはそれに加えて、1つまたは複数の蛇行はんだチャネル32’が、HTSテープ積層25が配設されている基礎板10のHTSチャネルに切り出され、形成され、または設けられ得る。HTSチャネル(たとえば図1のHTSチャネル6など)にはんだ流路32’を設けることにより、はんだ流路32’はHTSテープ積層25の下方および/またはその下に配設される。
【0068】
[0090]いくつかの実施形態では、基礎板のHTSチャネルの内部の1つまたは複数のはんだ流路は、チャネルの直線部分と、基礎板の内部のHTSチャネルの幅に沿って蛇行する部分とを含み得る。図4C図4Dの例示の実施形態では、たとえば、斜めの無限角形パターン(たとえば「ジグザグ」パターン)に配置された複数の直線部分から、はんだ流路が形成されている。図4C図4Dの例示の実施形態では、はんだ流路は、相互接続された直線のチャネル部分を含み得る。
【0069】
[0091]したがって、はんだ流路32’は、相互接続された直線状のチャネル部分、あるいは1つまたは複数の曲線状のチャネル部分によって接続された1つまたは複数の直線のチャネル部分を含み得る。
【0070】
[0092]しかしながら、任意の適切な構成(それだけではないが、正弦波状または実質的に正弦波状の構成、ぎざぎざまたは実質的にぎざぎざの構成、蛇行形状の構成など)を有するはんだ流路32’が設けられ得ることを理解されたい。
【0071】
[0093]図4C図4Dに示された例示の実施形態では、はんだチャネル32’が矩形の断面形状を有するように示されているが、はんだチャネル32’は、任意の規則的な幾何学的断面形状(たとえば正方形、半円形、楕円形、三角形)または不規則な幾何学的断面形状を有して設けられ得ることを理解されたい。
【0072】
[0094]したがって、本明細書で説明される技術は、示された特定の形状または何らかの特定の形状を有するはんだ流路を使用ことに限定されない。たとえば、本明細書で説明されるはんだチャネルのうち任意のものが、図に示された矩形または角断面の形状ではなく半円の断面形状(または別の適切な断面形状)を有し得る。
【0073】
[0095]この例示の実施形態では、チャネルは1つしか示されていないが、当業者なら、いくつかの実施形態では、基礎板のHTSチャネルが2つ以上のはんだ流路を備え得ることを理解するであろう。HTSチャネルが複数のはんだ流路を備える実施形態では、そのようなはんだ流路は交差してもしなくてもよい。
【0074】
[0096]いくつかの実施形態によれば、図4A図4Bまたは図5のチャネルキャップは銅を含み得、または銅から成り得る。もちろん、チャネルキャップを用意するために、導電性かつ熱伝導性の他の材料が使用され得る。実施形態において、図4A図4Bの板のHTSやキャップの形状は、(たとえば図1および図3Aに示されたような競走場の)螺旋体のものでもよい。
【0075】
[0097]図4A図4Bに示されるように、キャップ26は、基礎板チャネルの上部内に配置されており、この上部は、図3B図4Bに示されるようなHTS材料および/または共巻き材料が配置されている下部よりも広い。いくつかの実施形態では、組み立ててから、基礎板の開放チャネルの内部にHTSおよびチャネルキャップを配置した後に、基礎板に導電性溶融金属(たとえばはんだ)が導入され得る。結果として、はんだは、HTSとキャップとの間の空間を充填したり、HTSおよび/またはチャネルキャップの側面のまわりに、はんだの充填前または占有前に空間がある場合には、いかなる空間も充填したりすることができる。
【0076】
[0098]いくつかの実施形態では、HTSと溶融金属との間の優れた接着を促進するために、HTSテープ積層(またはHTSテープ積層を備える1つまたは複数のHTSテープ)は、金属(たとえばPbSnはんだ)で事前に錫めっきを施されてもよい。いくつかの実施形態によれば、真空圧力含浸(VPI)プロセスによって、はんだまたは他の溶融金属材料が堆積され得る。そのようなVPIプロセスは、本明細書において以下で詳細に説明される。しかしながら、手短に言えば、VPIプロセスは、開放基礎板チャネルを酸性溶液で洗浄してから水洗浄するステップと、開放チャネルの内部空間を真空引きする(すなわち開放チャネルの内部または周囲に真空を形成する)ステップと、開放チャネルを不活性ガスで浄化するステップと、HTSおよび導電材料をコーティングするために、開放チャネルに融剤を堆積するステップと、基礎板チャネルからあらゆる過剰溶剤を排出するステップと、基礎板チャネルを再度真空引きするステップと、基礎板(およびあらゆる任意選択のカバー板)を、開放チャネルに堆積される金属の溶融温度以上に加熱する(すなわち溶融金属を形成する)ステップと、基礎板に溶融金属(たとえばSnPbはんだなどの溶融合金)を流し込むステップとのうち1つまたは複数を含み得る。
【0077】
[0099]図4A図4Bの例示の実施形態には、基礎板チャネルの特定の形状(すなわち断面形状および/または構成)ならびにチャネルキャップのはんだチャネルの特定の形状が示されているが、本明細書で説明される技術はこれら特定の形状のチャネルに限定されないことが理解されよう。たとえば、チャネルは、示された矩形断面の代わりに、半円断面または他の適切な断面形状を有し得る。
【0078】
セグメント化チャネル
[0100]図6A図6Bはセグメント化構造36を示す。セグメント化構造36は、溶融金属が流れ得る空間の内部に配置されている。上記空間は、たとえば(たとえば図4Bの)チャネルキャップのはんだ流路または(たとえば図4C図4Dの)基礎板のHTSチャネルのはんだ流路などのはんだ流路に相当し得る。
【0079】
[0101]セグメント化構造は、基礎板チャネル内でHTSテープが移動する(たとえば、持ち上がるか、浮遊するか、または移動する)ことによって、溶融金属が流れ得るチャネルを遮断してしまう問題に対処する。セグメント化構造36を利用する(溶融金属が流れ得るセグメント化チャネルをもたらす)実施形態では、空隙は、HTSテープが配設されている基礎板チャネルの全幅にわたって均一になり得るが、チャネル内に(たとえばセグメント化構造として)スペーサ(たとえば固体スペーサ)が配設されて、チャネルキャップを持ち上げて保ち、引き続きはんだの流れを可能にする。したがって、図6A図6Bは、1つまたは複数のセグメント化構造を配設されたチャネルを示しており、セグメント化構造は、基礎板チャネルを通してはんだの流れを導くように構成されている。チャネルの圧縮を防止し、テープの上昇防止を支援するために、チャネル内にセグメント化構造が構成され、それによって、チャネルの内部で溶融金属が実質的にスムーズに流れることができる。実施形態において、セグメント化構造36自体に開口(またはチャネル)が設けられ得る。セグメント化構造36には、銅または別の金属を含み得る任意の固体材料が配置され得て、チャネルの内部にはんだが流れ込むのを阻止する。いくつかの実施形態では、セグメント化構造36は、チャネルキャップ26の下側に一体的に形成され得る。
【0080】
VPI板組立体の加熱
[0102]チャネルを通して溶融金属(たとえばはんだ)を流すために、金属を液態(または実質的に液態)で流れるように保つように、基礎板およびHTS積層は十分に高温でなくてはならない。必要な温度は、使用される金属(たとえばはんだ)のタイプに依拠する。たとえば、通常の錫-鉛はんだ(Sn60Pb40はんだ)は、約191℃の液相線を有する。基礎板の開放チャネルに配設されたHTSテープの状況で使用する、本明細書で説明されたプロセスの目標温度は、一般的には200℃である。流れを保証するためのマージンは小さくなるが、やや低い温度(たとえば約196℃~約198℃)を使用することも可能である。そのような温度では、被曝熱量およびはんだ暴露によるHTSテープの機械的劣化および/または電気的劣化が問題になる。したがって、チャネル内に配設されたはんだ(または他の金属)の均一性を保ちながら、HTSテープがそのような温度に暴露される時間を短縮すること、理想的には最短にすることが重要である。
【0081】
[0103]要求温度を達成する一方で、HTSテープがそのような温度に暴露される時間も制限する(すなわち、金属充填プロセス中にHTSテープが暴露される最高温度を制限し、金属充填プロセス中にHTSテープがそのような温度に暴露される時間も短縮する)ために、2つの技術(すなわち方法および関連システム)が開発された。
【0082】
[0104]第1の技術(以下で説明される)は加熱室(たとえばオーブン)の使用を含み、この中にVPI板組立体(たとえば図3AのVPI板組立体20など)が配設される。手短に言えば、上記技術は、オーブン(すなわち、NINT磁石またはVPI板組立体を保持するようにサイズ設定されたオーブン)の中にVPI板組立体(またはNINT磁石も)を配置し、対流加温を使用して磁石またはVPI板組立体を加熱することを含む。この手法には、簡易さ、温度均一性、または所望の温度を超えてNINT磁石もしくはVPI板組立体を加熱してしまう危険性の低下(理想的には回避)という利点がある。しかしながら、NINT磁石用の基礎板は熱質量が比較的大きい可能性があり、熱質量が大きい組立体を対流だけで加熱するための時間スケールは長く(数時間)、これは非効率なプロセスとなり、HTSが熱劣化する潜在的危険性がある。
【0083】
[0105]第2の技術(図7に関連して説明される)は、VPI板組立体に結合されたヒータ(たとえば抵抗ヒータ)を使用することを含む。手短に言えば、実施形態において、基礎板上に配設されたカバー板に対して1つまたは複数の抵抗ヒータが熱的に結合され得る。上部カバー板と下部カバー板の両方を含む実施形態では、両方のカバー板に対して1つまたは複数のヒータが結合され得る。実施形態において、カバー板の一方または両方(たとえば図2の上部板12、下部板14)に対して、ヒータが適用されるかまたは熱的に結合され得る。ヒータ手法は、基礎板組立体を加熱するための所要時間を短縮する(場合によっては大幅に短縮する)ことができる。しかしながら、基礎板組立体の温度の均一性が問題になる可能性がある。上部板の温度と下部板の温度との間に大きな差があると、基礎板が変形する可能性がある。プロセスの間、この危険性を防止するために、許容温度差に対する限度が設定されてもよい。基礎板の領域の間で温度に差があると、HTSのいくつかの部分が、より大きい被曝熱量を受ける可能性がある。これは、所与の用途向けのヒータ電力および配置を選択することによって防止されるべきである。例示の実施形態が図9に示されている。ヒータと圧縮板の表面または基礎板の表面との間に熱伝導性接着材を使用すると、ヒータと板との間の温度差を低減して(理想的には最小化して)、ヒータ寿命を延ばすことができ、ヒータ電力の結合をより効率的にすることができる。このヒータ技術は、上記で説明された加熱室の代わりに、またこれと組み合わせて使用され得る。加熱室が使用されない場合には、はんだを液状に保つために、はんだ流路に沿ったすべての構成要素の温度を、別個に、十分に高く保つ必要がある。
【0084】
[0106]全体として、はんだ流れプロセスの間、はんだがガスで加圧される一方で基礎板チャネル出口は真空に保たれ、それによって、HTSチャネルに沿って圧力勾配をもたらす。実施形態において、ガスはアルゴンが供給され得るが、もちろん他のガスも使用され得る。図8に(図15Aにも)示されたVPI板組立体の一実施形態は、1つのチャネル入口および1つのチャネル出口を有する基礎板を使用する。他の実施形態では、VPI板組立体は、(たとえば図14および図15Bに示されるように)1つまたは複数の入口および/または1つまたは複数の出口を含み得る。
【0085】
[0107]はんだを流す時間は、チャネル長さに比例して線形に増加する。したがって、流れ時間によってHTSが劣化してしまうほどチャネルが細くて長い基礎板を有する実施形態については、VPI板組立体は、溶融金属の入口(たとえばはんだ入口)がチャネルの終端ではなくチャネルの途中にあって、各終端に2つの出口があるのが望ましいであろう。そのような一実施形態は、図15Bに関連して説明される。この実施形態は、完全な充填および溶剤の水洗浄を保証しながら並列経路がない利点を有する。さらに別の実施形態は、複数の入力および複数の出力を有するVPI板組立体(図14)を利用し得る。
【0086】
[0108]図7を参照して、一実施形態では、板の開放チャネルに金属充填するためのVPIプロセスは、処理ブロック40に示されるように、VPI板組立体を準備することによって始まる。そのような準備は、基礎板の開放チャネルにHTSテープ(および任意選択の共巻き)を巻き付け、開放チャネルにおいてテープ積層の上にチャネルキャップ(任意選択ではんだチャネルを有する)を配設することを含み得る。圧縮ガスケット(たとえば、シリコンまたは類似の機械的特性および電気的特性を有する他の材料から用意される)は、上部圧縮板の表面と、基礎板の、上にチャネルキャップを配設された表面との間に配設される。実施形態において、他の材料またはテフロン(登録商標)、バイトンまたはアラミド繊維シートなどの材料の組合せも使用され得る。次いで、基礎板の上に圧縮板が配設される。VPI板組立体が下部圧縮板も含む場合には、下部圧縮板の表面と基礎板の表面との間に圧縮ガスケットも配設されてもよい。これは真空シールのためにはなくてもよいが、上部板と下部板との間の摩擦の均一化を促進し、したがって加熱中や冷却中の変形を低減し得る。
【0087】
[0109]前述のように、チャネルが真空下に置かれ得ることを保証するのを支援するために、上部板の部分および基礎板の部分の近くでOリングシール(たとえば図2示されている)が使用され得る。
【0088】
[0110]実施形態において、チャネルキャップと基礎板との間の優れた接着を保証するために、はんだペーストまたははんだワイヤ(たとえば図4A図4Bに示されたはんだペーストまたははんだワイヤ28)が、縁部またはチャネル(たとえば、VPIはんだチャネルにはないはずの、図4A図4Bに示された空隙またはチャネル27)上に配置されるか、またはこれに沿って配設される。
【0089】
[0111]チャネルキャップと基礎板との間の接着をさらに改善するために、チャネルキャップが配設される領域において、(たとえば、チャネルキャップがチャネルの中に配置されるのに先立って、チャネルキャップの側面にはんだペーストを配設することによって)チャネルキャップの側面と基礎板チャネルの側面との間にはんだペーストが配設され得る。
【0090】
[0112]溶融金属の入口(複数可)および出口(複数可)における管継手のために、開口が、一般的には上部板および基礎板に残され、また、(たとえば液体溶剤が使用される場合には)溶剤を排出するために、下部板にも残される。
【0091】
[0113]全体のVPI板組立体(たとえば基礎板、圧縮板(複数可)および補強材)が、(たとえば、ボルト、留め具、クランプまたは他のタイプの結合手段または固定手段を使用して)一緒に結合される。前述のように、補強材は任意選択であり、板の変形を低減するために、必要なら含まれてもよい。VPI板組立体を結合すると、Oリングを圧縮して主要な真空シールを形成し、ガスケットをチャネルの間の隆起部に圧着する。
【0092】
[0114]VPI板組立体が一緒に結合されると、板組立体が真空引きすなわち「ポンプダウン」され得(すなわち、VPI板組立体が真空引きされ得)、加熱の準備がされる(たとえばオーブンなどの加熱室に配置される)。次いで、VPI板組立体および関連するVPI充填構造に対してヒータおよび熱電対が結合され得る。ヒータおよび熱電対は、任意選択で試験されてもよい。そのような試験は、抵抗加熱要素および/または加熱室の温度の循環(すなわち上昇および低下)を包含し得る。他の試験技術も使用され得る。
【0093】
[0115]VPI板組立体は、処理ブロック42に示されるように浄化されるべきである。溶融されて、チャネル(複数可)を通して流される金属がはんだ(たとえば錫-鉛はんだ)である実施形態では、溶剤を使用して洗浄が達成され得る。実施形態において、酸化を解消するために溶剤が使用され得、優れたはんだ接合を達成するのを支援し得る。実施形態において、はんだ入口に、液体溶剤が注がれるかまたは供給され得、ガスで加圧されてチャネルを充填する。実施形態において、RMA5溶剤およびアルゴンガスが使用され得る。実施形態において、HTSの材料と、基礎板の材料と、存在する場合にはキャップの材料とに適する他の溶剤または他のガスが使用されてもよい。
【0094】
[0116]実施形態において、チャネルに液体溶剤が充填されたら、HTS積層やそのまわりに液体溶剤を押し進めるために、圧力が上昇され得る。実施形態において、0.103MPa(15psig)の圧力を5分間維持すれば十分であろう。
【0095】
[0117]出口(図18Bに示されるような二重流の場合には複数の出口)は、配管に結合されており(または配管と流体連通しており)、入口は、溶剤をできるだけ除去するために加圧され得る。
【0096】
[0118]VPI板組立体が下部排出孔を含む場合には、排出孔が開かれてもよく、(残っている場合には)溶剤を除去するためにガス流れが継続され得る。
【0097】
[0119]VPI板組立体は、はんだ入口およびはんだ出口に結合され、密封される。チャネルに残っているいくらかのアルコール成分も低減するために、はんだプロセスの前にポンピングおよびガス抜きのプロセスが使用され得る。
【0098】
[0120]次に、処理ブロック43~50で例示のはんだプロセスが説明される。組立体およびはんだ缶は、処理ブロック43に示されるように、加熱に先立って真空引きされる。液体溶剤は酸化すると固化する可能性があるので、これは重要である。また、圧力差があると、はんだ流れの開始が時期尚早になる可能性がある。
【0099】
[0121]処理ブロック44に示されるように、金属(たとえばはんだ)が溶融され、VPI板組立体が加熱され得る。これらのプロセスの実行は、同時であってもなくてもよい(すなわち、金属が溶融され得る一方でVPI板組立体を加熱する)。実施形態において、処理ブロック46に示されるように、VPI板組立体は、たとえばオーブンまたは他の加熱室の中で、180℃または約180℃の第1のはんだ温度範囲に加熱され得る。
【0100】
[0122]この段階中に、オーブン(または加熱室)の設定値は、185℃または約185℃まで上げられ得る。ヒータが、(たとえば図9に示されるように)VPI板組立体上に配設されているか、またはこれと熱的に結合されている実施形態では、VPI板組立体上のヒータは、オーブン加熱と並行して使用されて、VPI板組立体が180℃または約180℃の第1のはんだ温度に達するまでの加熱プロセスを速めることができ、また、VPI板組立体のこの温度を均一に保つのを支援し得る。
【0101】
[0123]はんだ缶上のヒータ(たとえば、はんだ缶上の電気ヒータ)および缶出口とVPI板組立体の入口との間に延在する配管上のヒータは、場合により並行して、はんだを溶融し、缶からVPI板組立体までの配管を加熱するために使用され得る。缶の内部で出口の近くに熱電対および接触センサが配設され、はんだが十分に溶融されて一般的には約200℃である目標温度に達したことを判定するために使用され得る。一実施形態では、進行を監視するために、PLC上のHMIスクリーンが使用され得る。
【0102】
[0124]この、はんだ溶融/VPI板組立体加熱の段階44の全体を通して、はんだ流れなしで真空が保たれる。これが達成され得て、たとえば、はんだ缶やあらゆるはんだ集積場(複数可)の圧力の均一化が保証され、それによってはんだ流れを防止する。溶剤を加熱しながらOのない環境を保つことが重要である。ガスシステムに含有されているあらゆる残留蒸気が、ポンプ排出口を通って排出され得る。
【0103】
[0125]次いで、VPI板組立体は、処理ブロック46に示されるように、中間のはんだ温度にされる。はんだが目標温度で溶融されて、板がオーブン温度に平衡すると、オーブンおよびヒータの設定値によって板温度が上昇される。したがって、200℃の近くで費やす時間を短縮する(理想的には最短にする)ために採用される、プロセスにおける1ステップは、VPI板組立体を中間はんだ温度193℃にして、VPI板組立体が平衡することを可能にする。HTSは、この温度において、機械的特性や電気的特性の劣化が、少なくとも2時間にわたってほとんどなく、または無視できる程度に保たれ得ることが実験的に発見された。
【0104】
[0126]次いで、処理は、処理ブロック48に進み、VPI板組立体が最終的なはんだ温度にされる。すなわち、VPI板組立体の板(たとえば圧縮板および基礎板)は、はんだが流れ得る温度にされる。いくつかの実施形態およびはんだの選択において、はんだ流れによるHTSの損傷を小さくする(理想的には最小限にする)ための比較的狭い温度範囲(たとえば約195℃~約200℃)があり得、HTSの時間-温度への暴露を低減する(理想的には最小化する)のが重要であることが注目される。
【0105】
[0127]プロセスの別の部分では、HTS材料(たとえばHTSテープ積層)が板と同一の温度に加熱されていることを保証するために、待機/浸漬期間が使用され得る。何らかの位置(たとえばVPIシステムまたはチャネル基礎板の何らかの位置)が、はんだ液相線未満の温度であると、はんだの流れを阻止し、さらには停止させてしまう可能性がある。そのような待機/浸漬期間は、実施形態(たとえば、板やチャネルのサイズおよび形状寸法、ならびにチャネルを通って流されるはんだまたは他の金属のタイプ)に依拠して、数分から数時間まで持続することがある。いくつかの実施形態では、VPI板組立体に対して、198℃~201℃の目標温度範囲および10分の浸漬時間が使用され得る。
【0106】
[0128]実施形態において、両方の板(たとえば圧縮板およびHTSチャネルを有する基礎板)とはんだとが、所定の浸漬時間に関する目標温度範囲内の温度まで加熱されると、処理ブロック50に示されるように、HTSチャネルを通してはんだ(または他の溶融金属)を流すVPI流れプロセスが実行され得る。流れの進行を監視するために、はんだが存在するとき回路を閉じる接触センサが使用され得る。
【0107】
[0129]はんだ流れが完了したら(理想的には流れが完了したら直ちに)、冷却プロセス52を開始してもよい。液態状態のいくつかの溶融金属(たとえば金属充填プロセスで使用されるはんだ)は、通常HTSテープに使用される銅(Cu)コーティングを腐食させ、またHTSを劣化させると知られていることが理解される。したがって、いくつかの実施形態では、チャネルを通してはんだ(または他の溶融金属)を流してから流れを停止した直後に、板およびはんだを固相線温度までできるだけ迅速に冷却することが重要になり得る。以下で説明されるように、NINT磁石での使用に適する基礎板のチャネル内の溶融金属を冷却するための複数の方法が開発されている。冷却プロセス中に板の温度が監視され得る。
【0108】
[0130]一実施形態では、冷却は、(存在する場合には)ヒータをオフにして、オーブンの設定値を室温まで下げ、オーブンを換気することによって始まり得る。オーブンの換気は、基礎板チャネルに溶融金属を充填した後に、VPI板組立体を冷却するために、オーブンの排気口を全開にして、対流用ファンを作動させることによって達成され得る。水冷が使用される場合、冷却構造体(たとえばスプリッツァー)上のノズルへのポンプがオンにされ、VPI板組立体の少なくともいくつかの表面(好ましくはほとんどまたはすべての表面)に水(または他の冷却液)を噴霧する。板の温度が固相線に達したら、ノズルへのポンプがオフにされてもよい。対流冷却は、安全な処理温度に達するまで継続してもよい。
【0109】
[0131]冷却後に、入口配管および出口配管は、VPI板組立体から切断または分離されてもよく、VPI板組立体は取り外されてから分解され、完成した金属充填基礎板(NINTコイルまたは他の形状のHTS物体であり得る)が残る。圧縮板は、別の基礎板のVPI充填のために容易に再利用され得る。
【0110】
[0132]上記で説明されたはんだ充填方法は、充填されたチャネルにおける優れたはんだ品質をもたらし、高性能デバイス(たとえば高い磁石性能)をもたらす。また、上記の方法は、1つのはんだ入口および1つのはんだ出口を有するVPI組立体で使用され得る。本明細書で説明される代替方法も考案された。そのような代替方法は、種々の用途にうまく適合し得る。
【0111】
[0133]たとえば、非常に長いチャネルを有する基礎板については、VPI組立体において複数の入口および/または複数の出口を使用することにより、はんだを流す必要のある経路の長さを短縮することができる。VPI組立体において複数の入口および/または複数の出口を使用すると、金属充填プロセス中の流れ時間を大幅に短縮し得、したがって、はんだ暴露時間も大幅に短縮し得る。複数の入口および/または複数の出口を利用するシステムでは、1つの入口および1つの出口を有するVPI板組立体で必要な弁の数と比較して、真空/ガスシステムに追加の弁が必要になり得る。
【0112】
[0134]1つの中央入口および複数の出口を利用するシステムの一例が、図8に関連して説明される。図8のシステムは、2つの出口と独立した流量制御とを可能にする真空ガスシステムを利用するものである。図8は、VPI板組立体の基礎板のチャネルに溶融金属を充填するのに適するVPIシステムを示す。下記の図8の説明では、基礎板チャネルにはんだを充填することが参照されるが、当業者なら、本明細書で提供される説明を読み取った後には、溶融して基礎板チャネル内を流れることができる任意の金属または合金が使用され得ることを認識するであろう。
【0113】
[0135]次に図8を参照すると、示された例示の実施形態における基礎板のチャネルは、チャネル中央の直近に配置された1つの入口と、基礎板チャネルの第1の終端の直近の第1の出口と、第1の終端の反対側の第2の終端の直近の第2の出口とを有する。したがって、基礎板チャネルは、中央の入力と、それぞれの終端における出口とを有する。
【0114】
[0136]特定の用途では、この、1つの入口および2つの出口の機構は、1つの入口および1つの出口のシステムと比較して、溶融金属を流すために使用される同一の圧力について、はんだ流れ時間を約1/3に短縮し得るので、有利であり得る。はんだ流れ時間を短縮すると、基礎板チャネル内に配設されたHTS材料が液状はんだなどの液体金属に暴露される時間を短縮する(すなわち、HTS材料が液相線に暴露される時間を短縮する)。HTS材料が液相線に暴露される時間を短縮することは、HTS材料(たとえばHTSテープ)の機械的特性や電気的特性(たとえば超電導特性)の劣化の軽減において重要であり得る。
【0115】
[0137]図8のシステムは、流量が同一でない場合には、それぞれの集積タンクが目標充填レベルに達したとき、各出口(すなわち、図8において集積場1および集積場2と表されたそれぞれの集積タンクに通じるVPI板組立体出口)における圧力を別個に等化することができるように配置された弁MV1~MV5およびV1~V9を含むことに留意されたい。したがって、金属充填プロセス中に、充填が不完全になる危険性、溶剤が閉じ込められる危険性、またははんだが不足する危険性はほとんどない(実質的にはない)。
【0116】
[0138]図8のシステムは、多くの用途に適する1つの入口/1つの出口の動作も可能にすることに留意されたい。この実施形態では、図15Aに示されるように、チャネルの一端に入口があり、他端に出口があって、集積場は1つしか使用されていない。
【0117】
[0139]NINTのVPIはんだプロセスに必要な他の機器は、それだけではないが、はんだを溶融するためのヒータを有するはんだタンクまたはるつぼと、基礎板チャネルを通って、過剰はんだを収容する「集積場」へと流れる、はんだの進行を監視するための接触センサのセットとを含む。
【0118】
[0140]図8を参照して、VPI流れプロセスは以下のように実行され得る。ポンプからはんだ缶への弁V5が閉じられる。集積場/出口の終端において真空引きが継続される。アルゴン圧は、通常は0.0345~0.207MPa(5~30psig)の動作圧に設定される。アルゴンへの弁V7およびV4が開かれて、はんだ缶に圧力がかかる。上昇率を制限するために流量弁が使用される。はんだは、入口サイホンを通じて基礎板入口に移動され(たとえば、引き寄せられ、押し出され、または押し進められ)、基礎板チャネルを通って出口に、そしてそれぞれの集積場に移動される。
【0119】
[0141]はんだの進行は、VPIシステムの全体にわたって配設された接触センサCS1~CS16のうち1つまたは複数によって監視され得る。はんだが各位置の接触センサに到達すると、回路が閉じられ(すなわち活性化され)、指示器が連動する(たとえば、光などの視覚的指示器がオンにされるか、または音声指示器が提供される)。
【0120】
[0142]接触センサによって、はんだが集積場の目標レベルに到達したと判定されると、流れが停止される。集積場1については、V1を閉じて(ポンピングを停止して)V2を開く(たとえばアルゴン(Ar)であるガスの圧力を缶と等しくする)。集積場2も使用される実施形態では、目標に到達したとき、弁V3を閉じて弁V6が開かれ得る。このように、2つのラインの圧力が独立して制御され得る。
【0121】
[0143]開放チャネルが充填されたら、冷却プロセスが行われ得る。以下で説明されるように、NINT磁石での使用に適する基礎板のチャネル内の溶融金属を冷却するための複数の技術が開発されている。
【0122】
[0144]図9は、VPI組立体を目標温度に加熱するために(または加熱を支援するために)VPI板組立体に結合されたヒータ(たとえば抵抗ヒータ)H5~H29の使用を示す。図9の例示の実施形態に見られるように、1つまたは複数のシリコンヒータが下部圧縮板の表面に配設されている。実施形態において、下部圧縮板の表面に1つまたは複数のシリコンヒータが配設され得、全体のVPI板組立体が、オーブンの中で対流によって均一に加熱される。下部板の表面にヒータを取り付けるかまたは機械的かつ熱的に結合するために、熱伝導性RTVが使用され得る。温度を測定して、温度を指示する信号をコントローラ(たとえばPIDコントローラ)に供給するために、各ヒータに複数の熱電対が組み込まれるかまたは配設されてもよく、コントローラは、ヒータの動作を制御する(たとえば、ヒータのオン・オフおよび/またはヒータの設定温度を制御する)。基礎板における加熱および温度を監視するために、追加の熱電対も使用され得る。実施形態において、そのような追加の熱電対は、上部圧縮板および下部圧縮板の一方または両方、ならびに/あるいは基礎板および接合部のうち1つまたは複数に、取付け、結合、または配設されてもよい。
【0123】
[0145]図10A図10Gは、はんだチャネルおよびチャネルキャップ用の代替単位セル機構を示す。
【0124】
[0146]図10A図10Cは、テープ積層の上に流路がある機構を示す。チャネルキャップは、積層の上にあってもよく(図10A)、下にあってもよく(図10C)、不要なこともある(図10B)。
【0125】
[0147]図10Dは、チャネルキャップ26に専用はんだ流路29が組み込まれている機構を示す。論じられたように、はんだ流路を有するチャネルキャップには、水力直径がより大きくなり、流路が遮断される可能性が低下する(またはいくつかの設計では可能性がなくなる)という利点がある。
【0126】
[0148]図10E図10Gは、上部圧縮板14aに流路29が組み込まれている機構を示す。この場合、チャネルの上のガスケットが省略され得、板材料は、除去することができるように、はんだに接合しないものでもよい。
【0127】
[0149]図10H図10Nは、チャネルキャップに設けられたはんだ流路に加えて、またはその代わりに、側方流動チャネル(より簡単に「側方チャネル」)を有する機構を示す。
【0128】
[0150]図10Hは、HTSテープの側部に流路29および共巻きを有する構成を示す。本明細書で説明されるVPI流れプロセスでは、側方チャネル29およびHTSチャネルに溶融金属(たとえばはんだ23)が流れる。この場合、チャネルを開放状態に保ついくつかの手段が必要である。HTSテープが螺旋状の構成を有するチャネルに配設される場合には、チャネルを開放に保つ手段は、テープ巻取張力によって与えられ得る。
【0129】
[0151]あるいは開放チャネルが維持されることを保証するために、図10Iに示されるように、はんだチャネルに1つまたは複数のばねクリップ60または他の構造体が挿入され得る。
【0130】
[0152]あるいは、図10J図10Kに示されるように、はんだチャネル29に、1つまたは複数のコイルばね61(すなわち、密巻きまたは開放巻きの螺旋形状の機械デバイス)が挿入または配設され得る。1つまたは複数のコイルばねが、VPIプロセス中に開放チャネルが維持されることを保証して、はんだ(または他の溶融金属)がコイル61の内部領域から外部領域に流れるように十分な横方向のばね力(すなわち、図10Kの座標系における±X方向の力)を供給するように選択されたサイズおよび形状を有して設けられ得る。たとえば、ばねの巻線ピッチ(すなわち、ばねの1つのコイル中心から隣接するコイルの中心までの距離であり、簡単にピッチと称されることもある)は、特定の用途のニーズに適合するように、長くしたり短くしたり(たとえば複数の直径)され得る。
【0131】
[0153]図10L-10Nは、側方流れチャネルの形状寸法の実施形態と、テープ積層が移動することによる閉塞を防止する、導電性かつ熱伝導性の構造体の配置とを示す。
【0132】
[0154]図10Lは、導電性かつ熱伝導性の材料(たとえば銅共巻き材料などの共巻き材料)から用意されて、共巻きHTSテープ25と板10に設けられたチャネルの壁との間に配設されたU字形の構造体60を備える。
【0133】
[0155]図10Mは、導電性かつ熱伝導性の構造体62(たとえば銅共巻き材料などの共巻き材料)と、共巻きHTSテープ25が配設されているチャネル内に設けられた移動止め64とを備える。
【0134】
[0156]図10Nの例示の実施形態では、共巻きHTSテープ25が配設されているチャネルは拡張領域66(側方流れチャネル)を備える。側方流れチャネル66は、水力直径を増加し、したがって溶融金属用流路の遮断の可能性を低下させる(またはいくつかの設計では可能性を解消する)。
【0135】
[0157]図11A図11Bは、VPIプロセス中に、チャネルキャップの濡れた縁部を、基礎板チャネルを定義する壁にはんだ付けすることを可能にするはんだ流れの構成を示す。図11Aは上部ラバーガスケット70を有し、図11Bでは、上記ガスケットは透明である。したがって、図11A図11Bが示す概念によってチャネルが形成されるかまたは設けられ、そのため、VPIはんだ流れプロセスは、1つのステップで、HTSチャネルにはんだ(すなわちはんだ23)を流し、銅キャップの縁部にはんだ(すなわちはんだ72)を流す。
【0136】
[0158]図12A図12Cの3つの図は、基礎板チャネルを定義する壁にチャネルキャップを結合するためのはんだバー技術のシーケンスを示す。この技術では、VPI板組立体を組み立て、加熱して、HTSチャネルにVPIはんだを流すのに先立って、銅キャップの縁部にはんだバーが配置される。図12A図12Bは、事前のはんだバーの加熱およびVPIはんだ流れを示す(図13Bでは上部板が透明である)。はんだバーの代わりに、またははんだバーと組み合わせて、はんだペーストが使用されてもよく、組合せは、組立て中にペーストがバーを所定位置に保つので、とても効果的であることが判明している。図12Cは、はんだバーの加熱、基礎板のチャネルを通るVPIはんだ流れの後の最終結果を示す。したがって、図12A図12Cの技術には、はんだバー溶融プロセスとVPIはんだ流れプロセスとの両方が必要である。
【0137】
[0159]図13A図13Bは、金属を充填されたHTSチャネルを有する2重パンケーキの一例を示す。この例示の実施形態では、HTSチャネル12(または溝)は、銅カバーとHTS積層との間にはんだ流れ用の0.5mmの隙間を与えるように機械加工されている。この例示の実施形態は、溝80に配設された4つのOリング16(図13B)および封じ込めシリンダ82を利用する。シリンダと遷移部との間の少容量84は、溶融金属(たとえばはんだ)を充填され、たとえばシリコーンゴムのシール86として用意されるシール86によって包含されることになる。この実施形態では、シリコーンゴムのシールは、導電性(たとえば銅)の螺旋状カバー88を所定位置に押しつけ、チャネル12に配設されたHTSテープ積層(図13A図13Bには示されていない)に対して密封するシリコーンゴムのシートによって用意される。
【0138】
[0160]この実施形態は、シール92によって板に対して密封された入口/出口マニホールド90も含み、入口90aは、図8のはんだ缶などのはんだ貯槽(「VPI貯槽」と称されることもある)に結合されており、出口は、はんだ集積場(「VPI集積場」と称されることもある)に結合されている。マニホールドは、板のチャネルに対するはんだの流入および流出を導く。はんだ流れを溝へ導くために、ベース板5a、5bと封じ込め板14a、14bとの間にシール92が配設される。
【0139】
[0161]図14は、複数の入口および複数の出口を有する板を示す。この例では、入口は並列であり、出口も並列である。他の実施形態では、入口および出口は、並列であってもなくてもよい。はんだの所望の流路は、符号93によって示された矢印によって示されている。流れ制限(たとえばフェルト金属材料または固体金属材料として用意される)は、符号95によって示された矢印の方向の望ましくない流れを低減しようとする(または最小限にするかもしくは遮断しようとする)ものである。
【0140】
[0162]図15Aは、1つの入力および1つの出力を有する板を示し、図15Bは、1つの入力および一対の出力を有する一実施形態を示す。
【0141】
[0163]図16は、はんだ流入口の断面図である。ガスケット材97の下にはんだを導くスリーブを備えるはんだ注入器取付け器具が示されている。この手法は、ガスケットが移動して流れを遮断してしまう危険性を低下させる(理想的には最小化するかまたは解消する)。加えて、はんだキャップ26は、はんだキャップ26のはんだチャネル29にはんだが入るのを可能にする開口を備える。
【0142】
[0164]実施形態において、VPIはんだ付けチャネルの概念は、ゆるいチャネルキャップ(たとえば、基礎板のチャネル内に配設されたHTS材料の上に「浮遊して」垂直方向に自由に移動することができる導電性キャップ)を含む。ゆるいチャネルキャップは、実際には、キャップとはんだの相対密度に依拠して、はんだの中で正または負の浮力を有することができる。実施形態において、チャネルキャップは、銅または任意の適切な導電材料から用意されてもよく、あるいは、導電材料または(たとえばめっきまたは他の技術によって)上に導電材料を配設された誘電材料から用意されてもよい。はんだ浸潤性のために、チャネルキャップとチャネル側壁との間に正確な空隙または間隔を維持する必要はない。この結果、以前に説明された他の手法と比較して、溝の形状寸法の製造が簡単になり、また、他の手法で必要とされる機械的公差よりも大きな機械的公差(たとえばHTSが配設されるチャネルの深さや幅の公差)で製造され得る構造体をもたらす。
【0143】
[0165]実施形態において、厚さ3.175mm(1/8インチ)の銅板から用意されたキャップを採用してもよい。実施形態において、はんだチャネルの隣に3mm×4mmの寸法のHTS積層が配設され得る。チャネルキャップ技術では、基礎板に簡単な溝が使用され得る(たとえば、溝は、その側壁に段または他の機械的機能を有する必要はない)。チャネルキャップは、HTSの上に配設され、VPIハンダ付け作業中にHTS積層の上で「浮遊する」。この技術は、必要な機械加工が他の技術よりも少ない(理想的には最小限である)。また、浮遊チャネルキャップ技術を使用すると、すべてのはんだがVPIによって供給され得、はんだバーまたはペーストは不要である。実施形態において、浮遊する銅が「ピストン」として働き、はんだの収縮に部分的に応じ、はんだの空隙を縮小する可能性がある。実施形態において、必要に応じて、共巻きを一巻きずつ追加することができる。実施形態において、比較的大きな導電性断面積(たとえば約45mm)が得られる。実施形態において、比較的強固な放射状の板をもたらす厚さを有する冷媒チャンネルの上に「ブリッジ」構造をもたらし得る厚さを有する導電チャネルキャップが設けられ得る(すなわち、チャネルキャップ厚さと冷媒チャンネルの上の「ブリッジ」構造の厚さとがトレードオフになり得る)。HTSの隣に流路を有する浮遊チャネルキャップの手法は、HTSを巻くための、さらにいくらかの空間(巻きツールを収容するための空間を含む)を与える。
【0144】
[0166]要約すると、一態様において、開放NINTチャネルを、1つの流路を有する真空密封された組立体に変換するための、ガスケットを有する1つまたは複数の圧縮板の使用法が説明される。これによって、VPIはんだ充填プロセスに適する、テープチャネルに沿った単調な圧力勾配が可能になる。
【0145】
[0167]開放NINTチャネルを、1つまたは複数の入力および/または1つまたは複数の出口を有することによって1つのまたは複数の流路を確立する真空密封された組立体に変換するための、ガスケットを有する1つまたは複数の圧縮板の使用法も説明される。VPI板組立体の複数の出口のいずれかへの流れを独立して制御したり停止したりすることができる真空-ガス装置も説明される。この手法は、チャネル長さに応じて、はんだ流れプロセスを改善し、理想的には最適化するため柔軟性、および/またははんだ流れ時間(すなわち基礎板のチャネルを通してはんだを流すのに必要な時間)を短縮するための柔軟性を与えるものである。実施形態において、1つの入口および一対の出口を利用する(それによって流路を半分にする)システムは、1つの入口および1つの出口のみを有するはんだ充填システムに対して流れ時間を約1/3に短縮する。
【0146】
[0168]特別にはんだ流れ用のチャネルを有するチャネルキャップ(すなわちはんだチャネルを備えるチャネルキャップ)も説明される。実施形態において、キャップ内のはんだチャネルは、直線状で中央に配置され得る。実施形態において、キャップ内のはんだチャネルは、直線状で中央に配置されたものではなく、端から端まで蛇行し(たとえば細長いS字形であり)、したがってHTSテープが基礎板チャネル内のはんだの流れを遮断するのを防止する。チャネルキャップは、はんだ流れ用の空隙の圧縮を防止する移動止め機能も有する。
【0147】
[0169]基礎板内の開放チャネルをVPI充填するための時間-温度プロセスも説明され、このプロセスは、VPI板組立体を、金属流れ温度(いくつかの実施形態では約193℃)未満の温度まで中間加熱することを含む。そのような中間加熱は、閉鎖チャネルケーブルのVPI充填や、特に熱質量が比較的大きくて加熱時間が長い大型コイルのVPI充填にも有効であり得る。
【0148】
[0170]基礎板チャネルにはんだを流した後に、圧縮部および/または基礎板に冷却液を適用して基礎板を迅速に冷却することにより、HTSテープが暴露される時間および温度を短縮する(理想的には最小限にする)蒸発冷却システムも説明される。
【0149】
[0171]説明された構造および技術は、開放HTSチャネル(すなわち、チャネル内にHTSを配設された基礎板の開放チャネル)に金属(たとえばはんだ)を充填することを可能にするものである。実施形態において、基礎板のチャネルは螺旋状でもよい(たとえば、いわゆる「競走場」の構成でもよい)。そのような金属充填開放HTSチャネルは、NINT磁石に用途がある。説明された金属充填構造および本明細書で説明された技術は、直線状のHTSチャネルの金属充填も可能にする。このように、説明された構造および技術は、それだけではないが、直線チャネル、曲線チャネル、螺旋状チャネル、および他のチャネル形状を含むチャネルの種々のサイズおよび/または形状寸法に対して容易に適合可能である。
【0150】
[0172]説明された構造および技術は、VPIはんだ充填手法で使用され、望ましいはんだ品質(たとえば低い空隙率、低抵抗性)を有するはんだ充填チャネルをもたらす。このことは、89メートルのチャネルのスケールまで実証されており、このスケールで、HTS材料特性は高々数パーセントしか劣化しなかった。この技術を用いて充填された磁石コイルのはんだ品質は、現在、HTS積層にかかるローレンツ力の本体負荷800kN/mに耐えることが実証されている。このプロセスの構造および技術は、さらに長いチャネルにも容易に拡張され得る。
【0151】
[0173]本明細書で使用される「高温超伝導体」すなわち「HTS」は、30°Kよりも高い臨界温度を有する材料を指し、臨界温度は、材料の電気抵抗率がゼロまで低下する温度を指す。
【0152】
[0174]本明細書で使用される、HTS「テープ」は、希土類元素の銅酸塩HTS(たとえばREBCO)などのHTSの層を含む任意の構造を指し得、1つまたは複数のバッファ層、安定化層、基板、オーバレイ層、および/またはクラッド層などの1つまたは複数の他の層を含有し得る。いくつかの実施形態では、HTSテープの縦横比(テープの厚さと幅の比)は、10、20、40、60、80、100、120または150以上であり得る。いくつかの実施形態では、HTSテープの縦横比は、150、120、100、80、60、40、20または10以下であり得る。上記の範囲の任意の適切な組合せ(たとえば60以上で100以下の縦横比)も可能である。いくつかの実施形態では、HTSテープの厚さは、0.01mm以上、0.05mm以上、0.1mm以上、0.15mm以上、または0.2mm以上であり得る。いくつかの実施形態では、HTSテープの厚さは、0.5mm以下、0.2mm以下、0.15mm以下、0.1mm以下、または0.05mm以下であり得る。上記の範囲の任意の適切な組合せ(たとえば0.05mm以上で0.2mm以下の厚さ)も可能である。いくつかの実施形態では、HTSテープの長さは、25m以上、50m以上、100m以上、150m以上、200m以上、300m以上または500m以上であり得る。いくつかの実施形態では、HTSテープの長さは、1000m以下、500m以下、300m以下、200m以下、150m以下、100m以下、または50m以下であり得る。上記の範囲の任意の適切な組合せ(たとえば100m以上で500m以下の長さ)も可能である。
【0153】
[0175]はんだチャネルを有するチャネルキャップの説明に役立つ例および圧縮板の使用法は、本明細書で説明され、図面に示されている。チャネルキャップの特定のサイズおよび形状と、チャネルキャップ内のはんだチャネルと、圧縮板および基礎板の特定のサイズおよび形状(ならびに、そこに設けられたチャネル、入口および出口の特定のサイズ、形状および位置)とは、単に例として提供されており、他に断らない限り、特定の断面形状またはサイズが必要であるかまたは望ましいことを意味するわけではないことが理解されよう。
【0154】
[0176]説明された概念を示す少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様をこのように説明してきたが、当業者なら、様々な改変形態、修正形態、および改善が容易に思い浮かぶはずであることを理解されたい。
【0155】
[0177]そのような改変形態、修正形態、および改善は、本開示の一部であるように意図されており、本明細書で説明された概念の趣旨および範囲の内部にあるように意図されている。さらに、本明細書で説明された概念の利点が示されているが、本明細書で説明された技術のすべての実施形態がすべての説明された利点を含むとは限らないことを理解されたい。いくつかの実施形態は、本明細書で有利なものと説明された機能を実装しない可能性があり、場合によっては、説明された機能のうち1つまたは複数が、さらなる実施形態を達成するために実施され得る。したがって、前述の説明および図面はほんの一例である。
【0156】
[0178]本明細書で説明された概念の様々な態様は、単独で、組み合わせて、または、前述の実施形態で具体的に論じられていない様々な配置で使用され得、したがって、その応用において、前述の説明や図面に示された構成要素の詳細や配置に限定されるわけではない。たとえば、1つの実施形態で説明された態様は、他の実施形態で説明された態様と任意のやり方で組み合わされ得る。
【0157】
[0179]また、本明細書で説明された概念は、例が提供されている1つまたは複数の方法として具現され得る。方法の一部として実行される行為は、任意の適切なやり方で順序付けられてもよい。したがって、構成され得る実施形態では、行為は、示されたものと異なる順序で実行され、これは、例示の実施形態で順次の行為として示されていたとしても、いくつかの行為を同時に実行することを含み得る。
【0158】
[0180]特許請求の範囲において、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの序数用語を使用して請求要素を修飾することは、それ自体で、1つの請求要素の別のものに対する優先度、優先順位、または順序、あるいは方法の行為が実行される時間的順序を暗示するのではなく、単に、特定の名称を有する請求要素を、同一の名称を有する別の要素(ただし序数用語の使用を除く)と区別するためのラベルとして使用される。
【0159】
[0181]「ほぼ」や「約」という用語は、いくつかの実施形態では目標値の±20%以内、いくつかの実施形態では目標値の±10%以内、いくつかの実施形態では目標値の±5%以内、いくつかの実施形態では目標値の±2%以内を意味するように使用されることがある。「ほぼ」や「約」という用語は目標値を含み得る。「実質的に等しい」という用語は、いくつかの実施形態では互いに±20%以内の値、いくつかの実施形態では互いに±10%以内の値、いくつかの実施形態では互いに±5%以内の値、そしてまた、いくつかの実施形態では互いに±2%以内の値を指すように使用され得る。
【0160】
[0182]「実質的に」という用語は、いくつかの実施形態では、比較対象の測定値の±20%以内の値、いくつかの実施形態では±10%以内の値、いくつかの実施形態では±5%以内の値、そしてまた、いくつかの実施形態では±2%以内の値を指すように使用され得る。たとえば、第1の方向が第2の方向に対して「実質的に」垂直であるということは、いくつかの実施形態では、第1の方向が、第2の方向に対して、90°の角度から±20%以内、いくつかの実施形態では±10%以内、いくつかの実施形態では±5%以内、そしてまた、いくつかの実施形態では±2%以内にあることを指し得る。
【0161】
[0183]また、本明細書で使用される言葉遣いおよび用語は、説明のためであって、限定するものと考えられるべきではない。本明細書における、「含む」、「備える」、または「有する」、「含有する」、「包含する」や、それらの変形の使用は、その後に列挙される項目およびそれらの等価物、ならびに追加項目を包含することを意味する。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図10I
図10J
図10K
図10L
図10M
図10N
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16
【国際調査報告】