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特表2024-542431生理学的検出および警告のための方法およびシステム
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  • 特表-生理学的検出および警告のための方法およびシステム 図1A
  • 特表-生理学的検出および警告のための方法およびシステム 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】生理学的検出および警告のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20241108BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20241108BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G16H10/00
A61B5/00 G
A61B10/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527712
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 US2022051365
(87)【国際公開番号】W WO2023102023
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/284,891
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230891
【弁理士】
【氏名又は名称】里見 紗弥子
(72)【発明者】
【氏名】サムヤク メフル シャー
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン イー クローン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー エル クラウス
【テーマコード(参考)】
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XC11
4C117XC12
4C117XD01
4C117XD06
4C117XE13
4C117XE14
4C117XE15
4C117XE20
4C117XE26
4C117XE28
4C117XE30
4C117XE33
4C117XE37
4C117XE43
4C117XJ45
5L099AA03
5L099AA22
(57)【要約】
生理学的検出および警告のための方法が開示され、該方法は、ユーザから生体センサデータを取得するステップと、生体センサデータのセットから、処理された生体センサデータを生成するステップと、処理された生体センサデータから、1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズと関連付けられる、特徴を生成するステップと、処理された生体センサデータのセット、または両方から、特徴的な生理学的イベントフェーズの、それぞれの特徴的な生理学的イベントフェーズについて、データ区分内のそのフェーズの存在を示す、信頼度スコアを決定するステップと、すべての特徴的な生理学的イベントの信頼度スコアの間の関係に基づいて、生理学的イベントの発生を示唆する最終信頼度スコアを決定するステップと、特定の生理学的イベントの発生を示唆する累積信頼度スコアを決定するステップであって、生理学的イベントは特徴的な生理学的イベントフェーズから構成される、ステップと、累積信頼度スコアに基づいて、潜在的な生理学的イベントの警告を提供するステップとを、含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的イベント検出および警告のための方法であって、
1つまたは複数の生体センサから、ユーザからの生体センサデータのセットを取得するステップと、
1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって、前記生体センサデータのセットから、処理された生体センサデータのセットを生成するステップと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって、前記処理された生体センサデータから、1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズと関連付けられる、特徴のセットを生成するステップであって、前記特徴のセットと前記1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズとの間の関連付けに基づくデータが、1つまたは複数の非一過性の記憶媒体に記憶される、ステップと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、生成された前記特徴のセット、前記処理された生体センサデータのセット、または生成された前記特徴のセットおよび前記処理された生体センサデータの両方から、前記1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズの、それぞれの特徴的な生理学的イベントフェーズについて、データ区分内のそのフェーズの存在を示す、信頼度スコアを決定するステップと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、それぞれの特徴的な生理学的イベントフェーズの前記信頼度スコアの間の関係から、1つまたは複数の前記生理学的イベントフェーズの信頼度スコアの間の関係に基づいて、生理学的イベントの発生を示唆する最終信頼度スコアを決定するステップと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、最終信頼度スコアの累積から、特定の生理学的イベントの発生を示唆する累積信頼度スコアを決定するステップであって、前記生理学的イベントは1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズを含む、ステップと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって、前記累積信頼度スコアに基づいて、潜在的な生理学的イベントの警告を提供するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の生体センサは、加速度計および光電式(PPG)センサを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の生体センサは、腕時計または眼鏡から構成される装着型デバイスに組み込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、さらに、
前記生体センサデータのセットを処理して、前記処理された生体センサデータのセットを作成するステップと、
前記処理された生体センサデータにおける生理学的イベントと非生理学的イベントとの間のデータセットの不均衡を、非生理学的イベントの生体センサデータにおける異常な区分を識別するために1つまたは複数のモデルを反復的に訓練し、使用して、バランシングされたデータセットを作成することによって低減するステップであって、前記1つまたは複数のモデルは、1つまたは複数の異常検出方法を含む、ステップと、
前記バランシングされたデータセットを使用して、各特徴的な生理学的イベントフェーズについて前記信頼度スコアを作成する、各特徴的な生理学的イベントフェーズに対する1つまたは複数の分類器を訓練するステップとを含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記処理された生体センサデータから生成される前記特徴のセットは、時間領域特徴抽出または周波数領域特徴抽出のうちの1つまたは複数を含む技法を使用する、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記最終信頼度スコアを決定する前記信頼度スコアの間の関係は、前記信頼度スコアの平均、前記信頼度スコアの加重和、前記信頼度スコアの演算式、確率的グラフィカルモデル、またはそれらの組み合わせを含む、前記信頼度スコアを集約する技法を含む、方法。
【請求項7】
前記累積信頼度スコアを生成するための前記最終信頼度スコアの累積は、一次無限インパルス応答(IIR)フィルタを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記潜在的な生理学的イベントの警告は、前記ユーザが装着する装着型デバイスのユーザインタフェース上に提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記潜在的な生理学的イベントの警告は、前記ユーザ、介護者、医療提供者、または法的保護者のうちの一または複数に提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、生理学的イベントとは、1つまたは複数の前記生体センサを通じて識別できる1つまたは複数の特徴的なパターンを引き起こす任意のイベントであり、これらのイベントは、てんかん発作、失神、心因性非てんかん発作、運動障害、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項11】
前記生理学的イベントは、神経学的イベント、心臓性イベント、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記神経学的イベントは発作である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
生理学的イベント検出および警告のためのシステムであって、
ユーザからの生体センサデータを捕捉、記録、または捕捉および記録の両方を行う1つまたは複数の生体センサと、
1つまたは複数のハードウェアプロセッサと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって実行されるとき、生理学的検出および警告の方法を実施する命令を記憶する、1つまたは複数の非一過性のコンピュータ可読媒体とを備え、
前記生理学的検出および警告の方法は、
1つまたは複数の生体センサから、ユーザからの生体センサデータのセットを取得するステップと、
1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって、前記生体センサデータのセットから、処理された生体センサデータのセットを生成するステップと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって、前記処理された生体センサデータから、1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズと関連付けられる、特徴のセットを生成するステップであって、前記特徴のセットと前記1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズとの間の関連付けが、1つまたは複数の非一過性の記憶媒体に記憶される、ステップと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、生成された前記特徴のセット、前記処理された生体センサデータのセット、または生成された前記特徴のセットおよび前記処理された生体センサデータの両方から、前記1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズの、それぞれの特徴的な生理学的イベントフェーズについて、データ区分内のそのフェーズの存在を示す、信頼度スコアを決定するステップと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、それぞれの特徴的な生理学的イベントフェーズの前記信頼度スコアの間の関係から、1つまたは複数の前記生理学的イベントフェーズの信頼度スコアの間の関係に基づいて、生理学的イベントの発生を示唆する最終信頼度スコアを決定するステップと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、最終信頼度スコアの累積から、特定の生理学的イベントの発生を示唆する累積信頼度スコアを決定するステップであって、前記生理学的イベントは1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズから構成される、ステップと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって、前記累積信頼度スコアに基づいて、潜在的な生理学的イベントの警告を提供するステップと、
前記潜在的な生理学的イベントの警告を提供するユーザインタフェースを提供するステップとを含む、システム。
【請求項14】
前記1つまたは複数の生体センサは、加速度計および光電式(PPG)センサを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記1つまたは複数の生体センサは、腕時計または眼鏡から構成される装着型デバイスに組み込まれる、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
請求項13に記載のシステムであって、前記方法はさらに、
前記生体センサデータのセットを処理して、前記処理された生体センサデータのセットを作成するステップと、
前記処理された生体センサデータにおける生理学的イベントと非生理学的イベントとの間のデータセットの不均衡を、非生理学的イベントの生体センサデータにおける異常な区分を識別するために1つまたは複数のモデルを反復的に訓練し、使用して、バランシングされたデータセットを作成することによって低減するステップであって、前記1つまたは複数のモデルは、1つまたは複数の異常検出方法を含む、ステップと、
前記バランシングされたデータセットを使用して、各特徴的な生理学的イベントフェーズについて前記信頼度スコアを作成する、各特徴的な生理学的イベントフェーズに対する1つまたは複数の分類器を訓練するステップとを含む、システム。
【請求項17】
請求項13に記載のシステムであって、前記処理された生体センサデータから生成される前記特徴のセットは、時間領域特徴抽出または周波数領域特徴抽出のうちの1つまたは複数を含む技法を使用する、システム。
【請求項18】
請求項13に記載のシステムであって、前記最終信頼度スコアを決定する前記信頼度スコアの間の関係は、前記信頼度スコアの平均、前記信頼度スコアの加重和、前記信頼度スコアの演算式、確率的グラフィカルモデル、またはそれらの組み合わせを含む、前記信頼度スコアを集約する技法を含む、システム。
【請求項19】
前記累積信頼度スコアを生成するための前記最終信頼度スコアの累積は、一次無限インパルス応答(IIR)フィルタを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記潜在的な生理学的イベントの警告は、前記ユーザが装着する装着型デバイスのユーザインタフェース上に提供される、請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
前記潜在的な生理学的イベントの警告は、前記ユーザ、介護者、医療提供者、または法的保護者のうちの一または複数に提供される、請求項13に記載のシステム。
【請求項22】
請求項13に記載のシステムであって、生理学的イベントとは、1つまたは複数の前記生体センサを通じて識別できる1つまたは複数の特徴的なパターンを引き起こす任意のイベントであり、これらのイベントは、てんかん発作、失神、心因性非てんかん発作、運動障害、またはそれらの組み合わせを含む、システム。
【請求項23】
前記生理学的イベントは、神経学的イベント、心臓性イベント、またはそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項24】
前記生理学的イベントは発作である、請求項23に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2021年12月1日に出願された米国特許出願第63/284,891号の優先権を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[政府の支援]
本発明は、Maryland Innovation Initiativeから授与された助成金番号2018-MII-4922に基づく政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本出願は、生理学的検出および警告のための方法およびシステムを対象とする。
【背景技術】
【0004】
制御不能な発作は、てんかん患者の最大56%に影響を及ぼし、相当の身体的、心理的および経済的負担を課す。より良い管理には正確な情報が必要であるが、外来患者においてこれを得ることは困難である。患者報告転帰(PRO)は発作日誌の形で提案されているが、アドヒアランスの悪さおよび発作後の健忘によって制限されている。制御不能な強直間代発作(TCS)は、てんかんにおける予期せぬ突然死(SUDEP)のリスクを最大27倍と大きく増加させる。SUDEPのリスクは介護者の介入によって大幅に低減することができるが、そのためには継続的なモニタリングおよびタイムリーな警告が必要である。実際、複数の調査で、介護者に警告を発し、発作の正確な記録を提供する、信頼性の高い発作モニタリング機能を備えた、装着型機器の必要性が強調されており、過去10年間にそのような様々なデバイスが開発されている。
【0005】
今日まで、非脳波記録(非EEG)ベースのTCSモニタリングデバイスは、一般に、入院患者環境において許容可能な感度(90%超)を実証してきたが、その誤警報率(FAR)は、入院患者および外来患者の両方の環境において高すぎた。FARが高いと、介護者および患者の双方に警報疲労を引き起こし、その結果、デバイスのモニタリングおよび警告に対するアドヒアランスが低くなる危険性がある。これは、日常的な動作が頻繁に誤警報の引き金となり得る外来ユーザ環境では、さらに一般的である。現在までのところ、大規模なビデオ脳波記録(vEEG)で検証された前向き多施設共同研究(4000時間超の記録)では、平均FARは0.2/日~0.83/日であったが、アルゴリズム、年齢層、EMU内の活動レベルによって有意な差異があった。したがって、EMUおよび外来患者の両方の環境において、現在の感度基準を維持または改善しながら、FARを有意に低下させることができる発作検出アルゴリズムを開発する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施例によれば、生理学的イベント検出および警告のための方法が開示される。該方法は、1つまたは複数の生体センサから、ユーザからの生体センサデータのセットを取得するステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって、生体センサデータのセットから、処理された生体センサデータのセットを生成するステップと、該ハードウェアプロセッサによって、処理された生体センサデータから、1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズと関連付けられる、特徴のセットを生成するステップであって、特徴のセットと1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズとの間の関連付けが、1つまたは複数の非一過性の記憶媒体に記憶される、ステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、生成された特徴のセット、処理された生体センサデータのセット、または生成された特徴のセットおよび処理された生体センサデータの両方から、1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズの、それぞれの特徴的な生理学的イベントフェーズについて、データ区分内のそのフェーズの存在を示す、信頼度スコアを決定するステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、それぞれの特徴的な生理学的イベントフェーズの信頼度スコアの間の関係から、すべての生理学的イベントフェーズの信頼度スコアの間の関係に基づいて、生理学的イベントの発生を示唆する最終信頼度スコアを決定するステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、最終信頼度スコアの累積から、特定の生理学的イベントの発生を示唆する累積信頼度スコアを決定するステップであって、生理学的イベントは1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズから構成される、ステップと、該1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって、累積信頼度スコアに基づいて、潜在的な生理学的イベントの警告を提供するステップとを、含む。
【0007】
本開示の実施例によれば、生理学的イベント検出および警告のためのシステムが開示される。該システムは、ユーザからの生体センサデータを捕捉、記録、または捕捉および記録の両方を行う1つまたは複数の生体センサと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサと、該1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって実行されるとき、生理学的検出および警告の方法を実施する命令を記憶する、1つまたは複数の非一過性のコンピュータ可読媒体と、潜在的な生理学的イベントの警告を提供するユーザインタフェースとを備える。上記生理学的検出および警告の方法は、1つまたは複数の生体センサから、ユーザからの生体センサデータのセットを取得するステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって、生体センサデータのセットから、処理された生体センサデータのセットを生成するステップと、該ハードウェアプロセッサによって、処理された生体センサデータから、1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズと関連付けられる、特徴のセットを生成するステップであって、特徴のセットと1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズとの間の関連付けが、1つまたは複数の非一過性の記憶媒体に記憶される、ステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、生成された特徴のセット、処理された生体センサデータのセット、または生成された特徴のセットおよび処理された生体センサデータの両方から、1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズの、それぞれの特徴的な生理学的イベントフェーズについて、データ区分内のそのフェーズの存在を示す、信頼度スコアを決定するステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、それぞれの特徴的な生理学的イベントフェーズの信頼度スコアの間の関係から、すべての生理学的イベントフェーズの信頼度スコアの間の関係に基づいて、生理学的イベントの発生を示唆する最終信頼度スコアを決定するステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、最終信頼度スコアの累積から、特定の生理学的イベントの発生を示唆する累積信頼度スコアを決定するステップであって、生理学的イベントは1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズから構成される、ステップと、該1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって、累積信頼度スコアに基づいて、潜在的な生理学的イベントの警告を提供するステップとを、含む。
【0008】
生理学的検出および警告のための方法および/またはシステムには、以下に説明する1つまたは複数の特徴を含む、様々な追加の特徴を含めることができる。
【0009】
1つまたは複数の生体センサは、加速度計、光電式(PPG)センサ、ジャイロスコープ、マイクロフォン、血中酸素濃度センサ、血圧センサ、血糖値センサ、眼球センサ、皮膚電気活動センサ、視線センサもしくはトラッカー、瞳孔計センサ、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を備える。
【0010】
1つまたは複数の生体センサは、腕時計、眼鏡(glasses)、カフ、ネックレス、ブレスレット、眼鏡(eyeglasses)、ヘッドセット、1つもしくは複数の指輪、またはそれらの組み合わせから構成される、装着型デバイスに組み込まれる。
【0011】
前処理された生体データのセットは、ノイズ低減および補間のためにフィルタリングされた生体データを含む。
【0012】
生理学的検出および警告のための方法は、さらに、生体センサデータのセットを処理して、処理された生体センサデータのセットを作成するステップと、処理された生体センサデータにおける生理学的イベントと非生理学的イベントとの間のデータセットの不均衡を、非生理学的イベントの生体センサデータにおける異常な区分を識別するために1つまたは複数のモデルを反復的に訓練し、使用して、バランシングされたデータセットを作成することによって低減するステップであって、該1つまたは複数のモデルは、1つまたは複数の異常検出方法を含む、ステップと、バランシングされたデータセットを使用して、各特徴的な生理学的イベントフェーズについて信頼度スコアを作成する、各特徴的な生理学的イベントフェーズに対する1つまたは複数の分類器を訓練するステップとを、含み得る。
【0013】
1つまたは複数の異常検出方法は、分離フォレスト、1クラスサポートベクターマシン(SVM)、隠れマルコフモデル(HMM)、オートエンコーダ、変分オートエンコーダ、クラスタベース異常値検出、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。
【0014】
各特徴的な生理学的イベントフェーズは、生理学的イベントの全体または一部に関連する特徴的な生体信号パターンを引き起こすイベントを含む。ここで、特徴的な生体信号パターンは、強直運動および/または関連する生理学的変化、間代運動および/または関連する生理学的変化、発作後運動抑制もしくは障害および/または関連する生理学的変化、前駆運動および/または関連する生理学的変化、発作初期運動および/または関連する生理学的変化、発作後期運動および/または関連する生理学的変化、発作時叫び声および/または関連する生理学的変化、手の震え、震え、発作性瞬目もしくは凝視、サッカード、固視、雑音、運動停止のうちの1つまたは複数を含む特定の自動症、または、心拍数変化もしくは血圧変化の1つまたは複数を含む特定の生理学的反応、のうちの1つまたは複数を含む。
【0015】
処理された生体センサデータから生成される特徴のセットは、手動特徴抽出、自動特徴抽出、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む技法を使用する。手動特徴抽出は、時間領域特徴抽出、周波数領域特徴抽出、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。時間領域特徴抽出は、線交差、分散、歪度、尖度、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。周波数領域特徴抽出は、ファン・チャープ変換、フーリエ変換、チャープZ変換、定Q変換、ウェーブレット変換、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。自動特徴抽出は、1つもしくは複数のディープラーニング法および1つもしくは複数の畳み込みニューラルネットワークのうちの、1つまたは複数を含む。
【0016】
各特徴的なフェーズの信頼度スコアは、1つもしくは複数の線形モデル、1つもしくは複数のツリーベースの手法、1つもしくは複数のクラスタリング手法、1つもしくは複数の確率的グラフィカルモデル、1つもしくは複数のディープラーニングモデル、またはそれらの組み合わせを含む、古典的技法を含む、分類器を使用して計算される。
【0017】
最終信頼度スコアを決定する信頼度スコア間の関係は、単一の時点を分析する1つもしくは複数の非時間的技法、過去の複数の時点を分析する1つもしくは複数の古典的な時間的技法、1つもしくは複数のディープラーニング技法、またはそれらの組み合わせのうちの、1つまたは複数を含む、信頼度スコアを集約する技法を含む。非時間的技法は、平均、加重平均、信頼度スコアの演算式、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。時間的技法は、確率的グラフィカル手法を含む。確率的グラフィカル手法は、1つもしくは複数の隠れマルコフモデル、1つもしくは複数の条件付き確率場、またはその両方を含む。ディープラーニング技法は、回帰型ニューラルネットワーク、長短期記憶ネットワーク、ゲート付き回帰型ユニットネットワーク、時間的畳み込みネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、多層パーセプトロン、またはそれらの組み合わせのうちの、1つまたは複数を含む。
【0018】
累積信頼度スコアを生成するための最終信頼度スコアの累積は、ローパスフィルタおよび時間的モデリング技法のうちの1つまたは複数を含む。時間的モデリング技法は、隠れマルコフモデル、条件付き確率場、回帰型ニューラルネットワーク、長短期記憶ネットワーク、ゲート付き回帰型ユニットネットワーク、時間的畳み込みネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。
【0019】
潜在的な生理学的イベントの警告は、ユーザが装着する装着型デバイスのユーザインタフェース上に提供される。潜在的な生理学的イベントの警告は、ユーザ、介護者、医療提供者、または法的保護者のうちの一または複数に提供される。生理学的イベントとは、1つまたは複数の生体センサを通じて識別できる1つまたは複数の特徴的なパターンを引き起こす任意のイベントであり、これらのイベントは、てんかん発作、失神、心因性非てんかん発作、運動障害、またはそれらの組み合わせを含む。
【0020】
1つまたは複数のハードウェアプロセッサは、頭部または顔面に装着される第1のデバイス内の第1のプロセッサと、手首または身体の他の部分に装着される第2のデバイス内の第2のプロセッサとを備える。頭部または顔面に装着される第1のデバイスは眼鏡であり、第2のデバイスは腕時計である。生理学的イベントは、神経学的イベント、心臓性イベント、またはそれらの組み合わせを含む。神経学的イベントは発作である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本教示の実施形態を図示するものであり、本明細書の説明と共に、本教示の原理を説明するのに役立つ。
【0022】
図1図1Aおよび図1Bは、それぞれ、本開示の例によるスマートウォッチの背面透視図および正面透視図である。
図2図2は、本開示の例によるスマート眼鏡の図である。
図3図3Aおよび図3Bは、本開示の例によるEMUおよび外来環境によって区分された、異なる患者についての個々のFAR率の分布を示す図であり、極プロットの円周は24時間形式で1日の時間を指定し、半径はその時間帯に記録されたセッション数を示す。
図4図4は、本開示の例によるEMUおよび外来環境によって区分された、異なる患者についての個々のFAR率の分布を示す図である。
図5図5は、本開示の例による検出時刻を中心とした、前向き試験中に検出された強直間代発作(TCS)の一部を示す図である。
図6図6は、本開示の例による生理学的イベント検出および警告の方法を示す図である。
図7図7は、本開示の例によるデータを訓練する方法を示す図である。
図8図8は、本開示の例による強直間代発作からのデータを示す図である。
図9図9は、本開示の例による間代期のみ(TCSではない)からのデータを示す図である。
図10図10は、本開示の例による、強直期が大半を占める(TCSではない)運動例からのデータを示す図である。
図11図11は、本開示の例による長い単相からのデータを示す図である。
図12図12は、本開示の例による焦点起始両側強直間代発作(FBTCS)からのデータを示す図である。
図13図13は、本開示の例によるコンピューティングシステムの概略図である。
図14図14は、本開示の例による、データ訓練ならびに生理学的イベント検出および警告のための例示的な方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、添付の図および図面に例を示す、実施形態を詳細に参照する。以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細を記載する。しかしながら、本発明がこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、回路およびネットワークは、実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないように、詳細には説明されていない。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、複数形への言及を含む。従って、例えば、「方法(a method)」への言及は、本明細書に記載される、および/または本開示等を読めば当業者に明らかになる種類の1つまたは複数の方法および/もしくはステップを含む。
【0025】
また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定的であることを意図するものではないことを理解されたい。さらに、他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0026】
一般的に、本開示は、生理学的検出および警告のための方法およびシステムについて説明する。該方法およびシステムは、1つまたは複数の生体センサを使用して、ユーザから生体データを収集、記録、処理、前処理、またはそれらの任意の組み合わせを行うことができる。1つまたは複数の生体センサは、1つまたは複数の生体センサのうちの1つまたは複数と同位置にある、またはそこから離れた位置にある、1つまたは複数のハードウェアプロセッサと共に動作することができ、生体データを処理するためにネットワーク環境上で生体データを通信することを含む。開示された方法およびシステムは、1つまたは複数の生体センサから、ユーザからの生体センサデータのセットを取得する。本開示の方法およびシステムは、次に、生体センサデータのセットから、処理された生体センサデータのセットを生成する。本開示の方法およびシステムは、次に、処理された生体センサデータから、1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズに関連付けられる特徴のセットを生成する。本開示の方法およびシステムは、次に、生成された特徴のセット、処理された生体センサデータのセット、または生成された特徴のセットおよび処理された生体センサデータの両方から、1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズの、それぞれの特徴的な生理学的イベントフェーズについて、データ区分内のそのフェーズの存在を示す、信頼度スコアを決定する。本開示の方法およびシステムは、次に、それぞれの特徴的な生理学的イベントフェーズの信頼度スコアの間の関係から、すべての生理学的イベントフェーズの信頼度スコアの間の関係に基づいて、生理学的イベントの発生を示唆する最終信頼度スコアを決定する。本開示の方法およびシステムは、次に、最終信頼度スコアの累積から、特定の生理学的イベントの発生を示唆する累積信頼度スコアを決定し、ここで生理学的イベントは、1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズから構成される。本開示の方法およびシステムは、次に、累積信頼度スコアに基づいて、潜在的な生理学的イベントの警告を提供する。
【0027】
以下の議論では、主に発作に関連して行われた研究を扱うが、これは、本開示の方法およびシステムを使用して検出および警告することができる生理学的イベントの一例に過ぎない。他の神経学的イベントまたは心臓性イベントを検出し、1つまたは複数の生体センサから収集され、本開示の方法を動作させる1つまたは複数のプロセッサによって分析された生体センサデータに基づいて、警告を提供することができる。
【0028】
図1Aおよび図1Bは、本開示の例によるスマートウォッチ100の背面透視図102および正面透視図104を示す。ユーザの皮膚と接触するスマートウォッチ100の背面には、1つまたは複数のPPGセンサなどの1つまたは複数の生体センサ106がある。スマートウォッチ100の前面には、ユーザにパーソナライズされた警告を提供するためのユーザインタフェース108が含まれる。スマートウォッチ100は、加速度計、ジャイロスコープ、マイクロフォン、血中酸素濃度センサ、血圧センサ、血糖値センサ、皮膚電気活動センサ、それらの組み合わせなどの追加のセンサを含むことができるが、これらに限定されない。図2は、本開示の例によるセンサ205を備えたスマート眼鏡を示す。センサ205は、眼球センサ、視線センサもしくはトラッカー、瞳孔計センサ、またはそれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。スマート眼鏡は、単独で、またはスマートウォッチ100と組み合わせて使用することができ、生理学的イベントの検出および警告に使用することができる生体センサデータを提供する。
【0029】
例えば、強直間代発作(TCS)のモニタリングは、安全性を高め、自立を促し、てんかんにおける予期せぬ突然死(SUDEP)を回避するために重要である。TCSモニタリングのためのいかなるシステムも、高感度であること、低い誤警報率(FAR)を示すこと、および入院患者と外来患者の両方の環境での使用において低潜時で介護者に警告を提供することが必要である。理想的には、これらの機器は非侵襲的で、多機能であり、スティグマを回避するべきである。以下に述べる予備研究は、開示された方法を使用し、民生用スマートウォッチに実装された発作モニタリングアプリケーションの性能特性を示すもので、入院患者と外来患者の両方の環境でテストされた。この研究では、TCSは、全般強直間代発作(GTCS)、焦点起始両側強直間代発作(FBTCS)、起始不明強直間代発作(UTCS)およびミオクロニー-強直間代発作(MTCS)を含む、ILAEによって定義されたすべての主要な強直間代発作タイプを包含した。
【0030】
この研究では、まず、4つのてんかんモニタリングユニット(EMU)にいる340人の患者、および21人の外来ユーザ(てんかん外来患者13人、てんかんを持たない健常対照者8人)からデータを収集した。スマートウォッチ用に開発されたアプリケーションを用いて、加速度計(ACM)および心拍信号を記録した。筋電図(EMG)、光電式容積脈波(PPG)、皮膚電気活動(EDA)を含むが、これらに限定されない、他の生体データも収集可能である。EMUでの発作はビデオ脳波記録(vEEG)で検証したが、外来ユーザの発作イベントは自己申告であり、検証が困難なため訓練セットには含めなかった。この結果、79回のTCS(58回はEMU患者)を含む20,388時間のデータセットと、外来ユーザ(外来患者および健常対照者)の発作のない5,642時間のデータセットが得られた。このデータは、オフライン環境での新規な分類器の訓練に使用し、その後、発作モニタリングアプリケーションの一部として、スマートウォッチに実装した。EMU患者85人および外来ユーザ15人(外来患者9人、健常対照者6人)に対して前向き検査を実施した。EMU患者は発作の検出に対して盲検化し、発作はvEEGで検証した。外来ユーザは発作の検出に対して盲検化せず、発作は自己申告か、または独立した生体信号解分析を通じて遡及的に識別した。検査データセットは、EMUでは4,279時間で、19件の発作があり(15人の患者)、外来患者では6,735時間で、10件の発作の自己申告があった(3人の患者)。前向き検査の結果、陽性一致率(PPA)は100%、EMUでのFARは1日当たり0.05(陽性的中率(PPV)は68%)、外来ユーザでは1日当たり0.13(PPVは22%)であった。31件の全誤警報のうち8件は1人の外来患者によるものであった。この外来患者を除く他のすべての外来ユーザのFARは1日当たり0.10であった。平均検出潜時はEMUで37.38秒(標準偏差13.24秒)、外来ユーザで32.07秒(標準偏差10.22秒)であった。
【0031】
この研究では、すべてのバイオセンサデータは、スマートウォッチおよびペアリングされたスマートフォンを使用して収集した。各スマートウォッチには、EpiWatchと呼ばれるアプリケーションをインストールし、ウォッチに内蔵された3軸加速度計(ACM;サンプリング周波数50Hz)およびPPG(サンプリング周波数0.2Hz)センサからの収集を可能にした。ウォッチの本体は手首の背側に装着し、PPGセンサと皮膚とがぴったりとフィットするようにして、データの損失を防いだ。EMUの全施設において、運動発現がより明瞭であることがわかっている場合には、ウォッチは運動発現がより明瞭な腕に装着された。
【0032】
ウォッチが活発にモニタリングしているとき、EpiWatchアプリケーションは、さらなる分析およびアルゴリズム開発のために、ウォッチのセンサデータを非識別化、暗号化し、クラウドベースのバックエンドに記憶した。研究において、TCS検出アルゴリズムを、センサデータを継続的にモニタリングして、TCS検出および警告を提供するEpiWatchアプリケーションに実装した。モニタリングからのすべての警告およびイベントは、クラウドベースのバックエンドにも記憶された。冗長性のため、すべての警告もウォッチに保存され、手動で読み出すことも、あるいは接続が一時的に中断した場合にクラウドベースのバックエンドに自動的に記憶することもできた。
【0033】
20,388時間のデータからなるEMU訓練データセットを、Johns Hopkins Hospital Adult EMU(ジョンズ・ホプキンス病院成人用EMU)(JHA)、Le Bonheur Children’s Hospital Pediatric EMU(ル・ボヌール小児病院小児用EMU)(LBH)Ruber International Hospital Adult EMU(ルーバー国際病院成人用EMU)(RBI)、およびthe University of Maryland Medical Center Adult EMU(メリーランド大学医療センター成人用EMU)(UMD)の4施設にわたって記録した。合計340人のユーザおよび79件の発作(58人のユーザによる)があった。各発作は、2名の認定臨床神経科医によってvEEGを使用して検証し、TCSか否かに分類した。
【0034】
外来ユーザ(AMB)データセットは、外来てんかん患者ユーザ(OUT)およびてんかんを有さない健常対照ユーザ(NC)にわたって記録された、合計5,462時間からなるものであった。外来患者セットは、病院外での通常の活動中における、アルゴリズムのPWEテストからなるものであった。外来患者ユーザの発作は、vEEGなしで発作のタイプおよび発生を検証することの内在的な限界のため、訓練データセットに含めなかった。これらの発作区分は、PRO(Patient Reported Outcomes)(患者報告転帰)、自動運動検出、および時系列区分の視覚的分析を用いて発見した。最善の努力にもかかわらず、このデータセットにはまだTC発作が存在する可能性がある。
【0035】
健常対照データセットは、従来モニタリングデバイスで誤警報を引き起こしていた活動中のFARを推定するために取得した、日常的なユーザ活動で構成されている。これらの活動には、歯磨き、運動、皿洗い、ドラム演奏、ダンスなどが含まれる。訓練データセットの内訳を表1に示す。
【0036】
表1.モニタ訓練に使用されたデータは、記録された時間、記録されたユーザ数、強直間代発作(TCS)総数、および少なくとも1回の発作を経験したユーザ数からなる。外来(AMB)環境は、外来患者(OUT)および非対照ユーザ(NC;てんかんのない外来ユーザ)に区分される。EMU環境は4つの別々の病院EMUに区分される:Johns Hopkins Adult(JHA)、University of Maryland(UMD)、Ruber International(RBI)、La Bonheur Children’s(LBH)である。
【0037】
【表1】

【0038】
検出アルゴリズムのリアルタイムのサンプル外性能試験を、4つのてんかんモニタリングユニット(EMU)にわたって実施した。ジョンズ・ホプキンス病院(Johns Hopkins Hospital)の成人用(adult)EMUおよび小児用(pediatric)EMU(それぞれJHA6床およびJHP4床)、ル・ボヌール病院(Le Bonheur Hospital)の小児用EMU(LBH10床)、ルーバー国際病院(Ruber International Hospital)の成人用EMU(RBI3床)である。テスト段階に参加した患者は、発作検出アルゴリズムの訓練のためにデータを提供した患者とは異なった。全テスト期間中、アルゴリズムは変更しなかった。患者/介護者のバイアスを防ぐため、すべての検出はサイレントで、警告は中央コーディネータに直接送信され、対応するタイムスタンプはクラウドベースのバックエンドに記録された。EMUの発作は、2名の認定臨床神経科医によりビデオEEGを使用して検証した。ビデオEEGデータは、暗号化されたハードドライブを介して送信した後、EMU施設のある病院か、またはジョンズ・ホプキンス病院で調査した。継続的な追跡を確実にするため、EMU施設の看護スタッフは1日に2回、午前7時ごろに1回、および午後7時ごろにもう1回、ウォッチを充電するように、あるいはウォッチが入手可能であれば、一人の患者に複数のウウォッチを使用するように、求められた。これらの時間帯は、充電期間中に発作を見逃すリスクを低減するために選択した。充電は、人為的に全体の記録期間が長くなるのを防ぐため、手動で行われない場合は自動的に追跡を中止した。
【0039】
検出アルゴリズムは、外来患者に対してもテストし、実生活環境での性能を取得した。ユーザは、スマートフォンとペアリングされたスマートウォッチを既に所有しているか、または提供され、アプリケーションストアを通じてアプリケーションをダウンロードするよう求められた。このアプリケーションには、被験者および介護者のための電子同意機能が組み込まれており、被験者または法的に認められた代理人が同意すると、外来環境でのアルゴリズムのテストに参加するよう招待された。被験者および介護者には、発作の助けを得るための単独の方法としてEpiWatchの検出に頼らないよう警告した。全テスト期間中、外来患者に対する検出アルゴリズムの変更は行われなかった。ほとんどの外来患者が現実的な方法でアプリケーションを使用していたため、これらの患者に対しては警告機能を有効化し、警告は選択した介護者に送信された。
【0040】
外来患者の発作は、主に患者/介護者とのコミュニケーション、PRO(上記参照)、および手動の生体信号分析によって検証した。自宅にビデオモニタリングが設置されている被験者で、痙攣行動の証拠ビデオを提供した者もいた。看護師はまた、発作を目撃した、あるいは発作発生直後に到着した患者の介護者との面接も行った。報告されていない可能性のある発作による偽陰性のリスクを軽減するため、自動運動検出および手動生体信号分析に加えて、外来患者および/または介護者とのフォローアップのコミュニケーションを実施した。可能性は低いが、外来患者に対する前向き研究中に偽陰性が依然として発生した可能性もある。
【0041】
EMU訓練および前向きテストセットでは、特定の記録区分を、本予備研究のために有効なTCSとして分類するための、一連の除外基準を開発した。基準のいずれかを満たした発作は、最終的な測定基準から除外された。
E1.発作が発生した時間帯のEEGデータが存在しなかった。
E2.発作が発生した時間帯に患者がビデオに映っていなかった。
E3.作動中の検出アルゴリズムを搭載したアップルウォッチが患者の手首に装着されておらず、活発にモニタリングされていなかった。
E4.少なくとも2人の認定てんかん専門医が、ILAE分類システムに従ったビデオEEGの見直しの結果、TCS分類について意見の一致に至らなかった。
E5.TCSの運動症状が、片側TCSなど、ウォッチでモニタリングしている四肢に発現しなかった。
E6.四肢の運動が外部(介護者/看護師/医師)によって過度に抑制された。この場合、TCSモニタリングは必要ないことに注意されたい。
【0042】
加えて、前向き研究の間、デバイスが検出を記録するとすぐに、ビデオEEGおよび収集されたデータを介して、検出時にウォッチが患者に装着されておらず追跡していないことが確認できない限り、検出として結果にカウントした。
【0043】
研究中、vEEGで検証した各発作および/またはアルゴリズム検出は、真陽性(True Positive、TP;区分がTCSであり、アルゴリズムによって検出された)、偽陽性(False Positive、FP;区分がTCSではないが、アルゴリズムによって検出された。誤警報とも呼ぶ)、または偽陰性(False Negative、FN;区分がTCSであるが、アルゴリズムによって検出されなかった)のいずれかに分類されるイベントとして扱った。この分野の他の論文との比較を可能にするため、同様の測定基準、すなわち、95%信頼区間(CI)付き感度/陽性一致率(PPA)、95%CI付き精度/陽性的中率(PPV)、95%CI付き誤警報率(FAR)、および潜時が使用されている。
【0044】
PPAは、検出器がTCSをどの程度効果的に検出できるかを示す。偽陰性の潜在的な悪影響のため、PPA値は理想的には100%であるが、実際には許容できないほど高い誤警報率を発生させなければ不可能である。PPVは、ある検出が真陽性である可能性がどの程度かを示す。多くの偽陽性(誤警報)を発生させる検出器では、PPV値は低くなる(0に近い)。PPAおよびPPVはともに二項比率の測定基準であるため(したがって0と1の間である)、95%CIを計算するために、連続性補正を用いたウィルソンスコアを使用した。ウィルソンスコアは、既知の二項比率信頼区間計算法の中で最も正確かつ頑強であることが示されている。我々は、連続性補正を用いたが、これは補正を行わない場合と比べて、若干低いCI推定値を提供するためである。
【0045】
FARは、24時間あたりに発生する誤警報(FA、あるいは偽陽性FP)の数として定義される。FARを計算するためにデータをどのように分割すべきかについて普遍的な基準はないため、マイクロFARおよびマクロFARの測定基準を使用することにした。ミクロFARは、全ユーザにわたる誤警報の合計数を全ユーザにわたる記録時間の合計数で割ったものとして計算する。マクロFARは、ユーザごとに個々に計算されたFARの平均として計算する。ミクロFARは、マクロFARの加重バージョンと考えることができ、特定のユーザについて記録された時間の比例数によって加重される。一般的に、ほとんどの論文では、その測定基準においてミクロFARを報告している。
【0046】
FARは二項比率ではないため、ノンパラメトリックのブートストラップ法を使用して95%信頼区間を近似した。患者内のばらつきを考慮し、我々が選択したα値0.05に対して十分な大きさとなるように、FARについて10,000の個別のサンプルを抽出して、置換を伴うサンプリングを患者レベルで実施した。得られた分布はほぼ正規分布である。信頼区間を求めるために、サンプルの2.5パーセンタイルおよび97.5パーセンタイルを、最も近いサンプル値から選択した。本方法は、マイクロFARとマクロFARとで若干異なり、10,000個のサンプルのそれぞれについて個別に計算した。しかし、1度だけブートストラップを実施し、同じサンプルデータをミクロおよびマクロ-FARのCIを推定するために使用した。
【0047】
潜時は、発作開始後、検出が行われるまでの時間と定義される。発作開始時刻の設定はやや主観的であるため、統一することが困難な測定基準である。我々は、ビデオおよび記録されたACMデータで明らかな強直間代フェーズの運動発現の開始を、開始時刻として選択した。本研究におけるすべての発作の開始時刻は、少なくとも1名の認定てんかん専門医によって決定された。入院患者および外来患者について、潜時の平均値および標準偏差値を測定した。
【0048】
図3Aおよび図3Bは、本開示の例によるEMUおよび外来環境によって区分された、異なる患者についての個々のFAR率の分布を示す図であり、極プロットの円周は24時間形式で1日の時間を指定し、半径はその時間帯に記録されたセッション数を示す。
【0049】
206日間(4,279.88時間)にわたり、てんかんと診断された85人の新規のサンプル外(OOS;以前は訓練データに含まれていなかった)患者が、4つのEMU施設(JHA(29人)、LBH(17人)、RBI(37人)、およびジョンズ・ホプキンス病院小児用EMU(Johns Hopkins Hospital Pediatric EMU)(JHP;2人))で、vEEGモニタリングのために登録された。これらの患者を、TCSのリアルタイムモニタリングを行うEpiWatch研究アプリを作動させるスマートウォッチを使用して、モニタリングした。4つのEMUにわたって28件の検出があり、15人の患者から19件のTCSがvEEGによって確認された。図3Aおよび図3BのEMUセッション範囲の内訳は、平均して、スマートウォッチが1日に約2回、午前7時に1回および午後7時に1回、充電されたことを示している。
【0050】
外来患者ユーザ(9名、サンプル外5名)および健常対照ユーザ(6名、サンプル外1名)の2つのグループから、合計15名のユーザ(サンプル外ユーザ6名)に対して、6,735.03時間超の外来ユーザテストを実施した。外来ユーザには、24時間カバーすることを目標に、できる限り頻繁にアルゴリズムを使用するよう求めたが、ユーザによって1日の中でデバイスを充電する時間帯が異なるため、タイミングにはばらつきがあった。外来ユーザのセッション範囲の内訳は、図3Aおよび図3Bに示されている。
【0051】
表2.前向きテスト中の合計記録時間、ならびに合計ユーザ数およびサンプル外(OOS)ユーザ数。データは、外来(AMB)およびEMUの環境、ならびにそれぞれの施設ごとに区分されている。外来環境は、外来患者(OUT)および非対照ユーザ(NC;てんかんのない外来ユーザ)に区分される。EMU環境は4つの別々の病院EMUに区分される:Johns Hopkins Adult(JHA)、Johns Hopkins Pediatric (JHP),、Ruber International(RBI)、La Bonheur Children’s(LBH)である。
【0052】
【表2】

【0053】
継続的なモニタリングの性能評価については、検出アルゴリズムの性能測定基準が、1日の任意の時間帯に収集されたデータ量の偏りによってバイアスされていないかどうかを判定した。この目的のために、累積記録期間の極プロットを図3Aおよび図3Bに示し、1日を通しての時間帯がほぼ均一にモニタリングされたことを確認した。特に、EMUユーザでは06:00~08:00および19:00~21:00、外来患者では11:00~13:00および19:00~21:00の時間帯に記録時間が減少していることは、アップルウォッチが充電されている時間帯を示している。外来ユーザは夜間(特に01:00~09:00)の追跡セッションが多い傾向があり、EMUユーザは日中(特に13:00~17:00)の追跡セッションが多い傾向があった。
【0054】
図3Aおよび図3Bは、追跡セッション中に記録された時間帯の経時的分布を示す。図3AはEMUの追跡分布を示し、図3Bは外来ユーザの追跡分布を示す。極プロットの円周は24時間形式で1日の時間を指定している。半径はその時間帯に記録されたセッション数を示す。
【0055】
EMU(19件のTCS)および外来患者(10件のTCS)にわたる10,990.81時間のモニタリング中に、合計29件の発作が発生した。特にEMUでは、発作の分布は比較的均一で、15人の患者が発作を起こした。外来患者においては、発作を起こした患者は3名のみで、1名は8件のTCSを起こした。成人患者および小児患者の記録時間数は比較的類似しており、成人用EMUでは2,483時間、小児用EMUでは1,796時間であった。
【0056】
外来患者およびEMU患者の両方において、すべての発作がモニタリングアプリケーションにより検出され、PPAは100%(1.0)となった。外来患者のデータセットには10件の発作しかなく、より控えめな連続性補正ウィルソン法を使用したため、95%CIは広く、下限は0.66であった。EMU PPAの95%CIは、サンプル数の増加によりはるかに狭く、下限値は0.79であった。このクラスのデバイスに対する最近のFDAの認可では、最低限必要なPPA CI下限値は0.7と指定されている[5](ただし、CI算出にどのような方法を用いたかは不明である)。
【0057】
この研究のために選択された動作ポイントでは、4つのEMUすべてにわたる4,280時間の追跡で、誤警報はわずか9件であった。これは、0.05/日のミクロFARに換算され、95%CIは[0.02、0.08]であった。ミクロFARとマクロFARはすべてのEMUでよく一致しているようであり、つまり1人の患者もFAR計算に大きな影響を及ぼしていないことを意味する。例外はRBIで、マクロFARが0.22であったことから、少数の患者が、短い記録期間で高いFARを有していることが示唆された。これは実際にそうであり、1人のRBI患者は合計7.9時間の記録期間で1回のFAを起こし、その患者のFARは3.05/日となった。EMUにおける合計記録時間4,280時間で起きた発作は19回のみで、PPVは0.68[0.48、0.83]であり、各1回のFAあたりTPが約2回であることを意味している。興味深いことに、小児患者(LBHおよびJHP)のマクロFAR0.03/日と、成人患者(JHAおよびRBI)のマクロFAR0.07/日とを比較すると、成人用EMUの患者は小児用EMUの患者よりも多くのFAを引き起こしているようであった。
【0058】
外来ユーザデータセットでは、6,735時間の記録で36件の誤警報があり、ミクロFARは0.13/日[0.08、0.24]であった。予想通り、外来ユーザは入院患者ユーザよりFARが高かった。実際、外来患者ユーザの1人は24時間の記録で8回の誤警報を受け、その結果、デバイスの使用を中止するよう要請された。これは、アルゴリズムがまだ十分に特定できていない活動があったことを示唆しており、可能性のあるすべての外来動作の分布が訓練セット内で十分に表現されていなかったためと思われる。このユーザのFARが非常に高かったため、このユーザを外れ値として分類した場合の調整済み測定基準(斜体で示した測定基準)を表3に含めた。ミクロFARは0.03/日(0.14/日→0.11/日)しか減少しなかったが、マクロFARは0.97から0.09/日に減少し、1人のベータ・テスターからのFARへの大きな影響が確認された。外来患者データセットのPPVは0.22[0.11、0.37]であり、検出器の性能としては、各3回のFAあたり約1回のTPが検出される結果となった。
【0059】
表3.外来およびEMU環境、ならびにそれぞれの施設ごとに区分化した、発作モニタリングアプリケーションの性能特性。外来環境は、外来患者(OUT)および非対照ユーザ(NC;てんかんのない外来ユーザ)に区分される。EMU環境は4つの別々の病院EMUに区分される:Johns Hopkins Adult(JHA)、Johns Hopkins Pediatric (JHP),、Ruber International(RBI)、La Bonheur Children’s(LBH)である。
【0060】
【表3】

【0061】
図4は、本開示の例による、EMUおよび外来環境によって区分された、異なる患者の個々のFAR率の分布を示す。
【0062】
発作の行動開始時刻と検出時刻との間の差を求めることにより、捕捉されたすべての発作データについて潜時テストを実施した。これらの潜時は、バックエンドで直接捕捉された検出のタイムスタンプを使用し、テスト中にアルゴリズムが検出を生成するたびにリアルタイムで記録された。その結果、潜時の平均と標準偏差は外来患者で37.38秒(13.24秒)、EMU患者で32.07秒(10.22秒)であった。潜時の範囲は外来患者で[22秒-67秒]、EMU患者で[20秒-57秒]であった。図4には、発作検出の、発作開始に対する潜時を図示するために、検出時刻から消失までの発作中のACC信号の一部が示されている。
【0063】
図5は、本開示の例による検出時刻を中心とした、前向き試験中に検出された強直間代発作(TCS)の一部を示す図である。
【0064】
SUDEPの予防を容易にし、患者のてんかんの全体的な制御を高めるために、TCSモニタリングは、介護者が間に合うように援助を施し、生命を脅かす可能性のある結果を防ぐことができるように、PPAが非常に高く、潜時が十分に小さくあるべきである。てんかん患者の日常生活におけるモニタの一貫した継続的な使用を促進するためには、モニタリングが頻繁に誤警報を発し、ユーザおよび介護者に警報疲労を生じさせないことも同様に重要である。てんかん患者およびその介護者を対象とした調査では、スティグマのリスクなしに装着できる、非EEGベースの単独型多機能デバイスへの関心が示されている。これらを考慮して、我々は、スマートウォッチ用に開発されたカスタムアプリケーション(EpiWatch)を用いて、EMUおよび外来患者環境におけるTCSモニタリングの性能を評価することを目的とした。
【0065】
発作検出デバイスの評価に使用される一般的な測定基準は、PPA、FAR、PPV、および潜時である。これらはまた、特定のデバイスが発作検出のために認可されるかどうかを判定する際にFDAが一般的に評価する測定基準でもある。アルゴリズムは、外来患者(10件のTCS)および入院患者(19件のTCS)の両方で、1.0の完璧なPPAを示した。これは、他の市販の発作検出デバイスの性能と概ね同様であるが、より大規模な研究の多くは、より大きなサンプルサイズの発作に対してアルゴリズムをテストすることができた。SUDEPの性質上、発作終了後1分未満の間に援助が施されればSUDEPは予防可能であることから、発作を検出するだけでなく、迅速に検出することも重要である。ほとんどのTCSの長さが70秒前後であると仮定すると、発作開始から50秒以内に検出された場合、介護者が警告を受け、援助を施すのに十分な時間が得られるはずである。現在のアルゴリズムの平均潜時は、EMU発作で32秒(標準偏差=10.22秒)、外来患者の発作で37秒(標準偏差=13.24秒)であり、これは現在市販されているFDA認可の発作検出器の性能と同様であり、介護者に警告を発し、SUDEPを予防するのに十分な速さである。依然として潜時がより長い発作もあり、最も検出が遅い発作はEMU発作で67秒、外来患者の発作で57秒である。アルゴリズムの動作特性を微調整し、潜時をさらに低減することは可能かもしれないが、その代償としてFARが高くなり、アドヒアランスが低下し得る。
【0066】
一般的な使用においては、介護者および患者の双方が警報に適切に反応することが重要である。誤警報が多すぎる発作検出器は、警報疲労を引き起こし、デバイスの有効性に対する信頼を失わせ、モニタリングへのアドヒアランスを低下させる。本研究でテストされたアルゴリズムは、EMUで0.05/日、外来患者で0.13/日という優れたFARを示し、それぞれおよそ20日に1回、7.5日に1回の誤警報に換算される。FAR率は予想通り外来患者の方が高く、ほとんどの誤警報が芝刈り、屋外でのモーター始動、ドラム演奏などの行動によって引き起こされたと報告されている。EMUのマクロFARは成人(0.07/日)と小児(0.03/日)の間にも差があった。これはおそらく、訓練分布が、成人患者の行動より活発であるにもかかわらず、小児患者の行動にうまく調整されていることが原因であろう。
【0067】
図6は、本開示の例による生理学的イベント検出および警告の方法600を示す。方法600は、605のように、1つまたは複数の生体センサから、ユーザからの生体センサデータのセットを取得するステップを含む。いくつかの例では、1つまたは複数の生体センサは、加速度計、光電式(PPG)センサ、ジャイロスコープ、マイクロフォン、血中酸素濃度センサ、血圧センサ、血糖値センサ、眼球センサ、皮膚電気活動センサ、視線センサもしくはトラッカー、瞳孔計センサ、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を備える。いくつかの例では、1つまたは複数の生体センサは、腕時計、カフ、ネックレス、ブレスレット、眼鏡、ヘッドセット、1つもしくは複数の指輪、またはそれらの組み合わせから構成される、装着型デバイスに組み込まれる。
【0068】
方法600は、610のように、1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって、生体センサデータのセットから、処理された生体センサデータのセットを生成するステップをさらに含む。いくつかの例では、処理された生体センサデータから生成される特徴のセットは、手動特徴抽出、自動特徴抽出、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む技法を使用する。いくつかの例では、手動特徴抽出は、時間領域特徴抽出、周波数領域特徴抽出、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの例では、時間領域特徴抽出は、線交差、分散、歪度、尖度、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの例では、周波数領域特徴抽出は、ファン・チャープ変換、フーリエ変換、チャープZ変換、定Q変換、ウェーブレット変換、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの例では、自動特徴抽出は、1つもしくは複数のディープラーニング法および1つもしくは複数の畳み込みニューラルネットワークのうちの、1つまたは複数を含む。いくつかの例では、1つまたは複数のハードウェアプロセッサは、頭部または顔面に装着される第1のデバイス内の第1のプロセッサと、手首または身体の他の部分に装着される第2のデバイス内の第2のプロセッサとを備える。いくつかの例では、頭部または顔面に装着される第1のデバイスは眼鏡であり、第2のデバイスは腕時計である。
【0069】
いくつかの例では、前処理された生体データのセットは、ノイズ低減および補間のためにフィルタリングされた生体データを含む。いくつかの例では、処理された生体センサデータのセットは、図7に示すように、以下のように処理され得る。いくつかの例では、方法700は、さらに、705のように、生体センサデータのセットを処理して、処理された生体センサデータのセットを作成するステップを含み得る。方法700は、さらにまた、710のように、処理された生体センサデータにおける生理学的イベントと非生理学的イベントとの間のデータセットの不均衡を、非生理学的イベントの生体センサデータにおける異常な区分を識別するために1つまたは複数のモデルを反復的に訓練し、使用して、バランシングされたデータセットを作成することによって低減するステップであって、該1つまたは複数のモデルは、1つまたは複数の異常検出方法を含む、ステップを含み得る。方法700は、さらにまた、715のように、バランシングされたデータセットを使用して、各特徴的な生理学的イベントフェーズについて信頼度スコアを作成する、各特徴的な生理学的イベントフェーズに対する1つまたは複数の分類器を訓練するステップを含み得る。
【0070】
いくつかの例では、1つまたは複数の異常検出方法は、分離フォレスト、1クラスサポートベクターマシン(SVM)、隠れマルコフモデル(HMM)、オートエンコーダ、変分オートエンコーダ、クラスタベース異常値検出、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。
【0071】
図6に戻ると、方法600はさらに、615のように、ハードウェアプロセッサによって、処理された生体センサデータから、1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズと関連付けられる、特徴のセットを生成するステップを含む。いくつかの例では、各特徴的な生理学的イベントフェーズは、生理学的イベントの全体または一部に関連する特徴的な生体信号パターンを引き起こすイベントを含む。ここで、特徴的な生体信号パターンは、強直運動および/または関連する生理学的変化、間代運動および/または関連する生理学的変化、発作後運動抑制もしくは障害および/または関連する生理学的変化、前駆運動および/または関連する生理学的変化、発作初期運動および/または関連する生理学的変化、発作後期運動および/または関連する生理学的変化、発作時叫び声および/または関連する生理学的変化、手の震え、震え、発作性瞬目もしくは凝視、サッカード、固視、雑音、運動停止のうちの1つまたは複数を含む特定の自動症、または、心拍数変化もしくは血圧変化の1つまたは複数を含む特定の生理学的反応、のうちの1つまたは複数を含む。
【0072】
方法600はさらに、620のように、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、生成された特徴のセット、処理された生体センサデータのセット、または生成された特徴のセットおよび処理された生体センサデータの両方から、1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズの、それぞれの特徴的な生理学的イベントフェーズについて、データ区分内のそのフェーズの存在を示す、信頼度スコアを決定するステップを含む。いくつかの例では、各特徴的なフェーズの信頼度スコアは、1つもしくは複数の線形モデル、1つもしくは複数のツリーベースの手法、1つもしくは複数のクラスタリング手法、1つもしくは複数の確率的グラフィカルモデル、1つもしくは複数のディープラーニングモデル、またはそれらの組み合わせを含む、古典的技法を含む、分類器を使用して計算される。
【0073】
方法600はさらに、625のように、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、それぞれの特徴的な生理学的イベントフェーズの信頼度スコアの間の関係から、すべての生理学的イベントフェーズの信頼度スコアの間の関係に基づいて、生理学的イベントの発生を示唆する最終信頼度スコアを決定するステップを含む。いくつかの例では、最終信頼度スコアを決定する信頼度スコア間の関係は、単一の時点を分析する1つもしくは複数の非時間的技法、過去の複数の時点を分析する1つもしくは複数の古典的な時間的技法、1つもしくは複数のディープラーニング技法、またはそれらの組み合わせのうちの、1つまたは複数を含む、信頼度スコアを集約する技法を含む。いくつかの例では、非時間的技法は、平均、加重平均、信頼度スコアの演算式、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。いくつかの例では、時間的技法は、確率的グラフィカル手法を含む。いくつかの例では、確率的グラフィカル手法は、1つもしくは複数の隠れマルコフモデル、1つもしくは複数の条件付き確率場、またはその両方を含む。いくつかの例では、ディープラーニング技法は、回帰型ニューラルネットワーク、長短期記憶ネットワーク、ゲート付き回帰型ユニットネットワーク、時間的畳み込みネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、多層パーセプトロン、またはそれらの組み合わせのうちの、1つまたは複数を含む。
【0074】
方法600はさらに、630のように、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを使用して、最終信頼度スコアの累積から、特定の生理学的イベントの発生を示唆する累積信頼度スコアを決定するステップであって、生理学的イベントは1つまたは複数の特徴的な生理学的イベントフェーズから構成される、ステップを含む。いくつかの例では、累積信頼度スコアを生成するための最終信頼度スコアの累積は、ローパスフィルタおよび時間的モデリング技法のうちの1つまたは複数を含む。いくつかの例では、時間的モデリング技法は、隠れマルコフモデル、条件付き確率場、回帰型ニューラルネットワーク、長短期記憶ネットワーク、ゲート付き回帰型ユニットネットワーク、時間的畳み込みネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む。
【0075】
方法600はさらに、635のように、1つまたは複数のハードウェアプロセッサによって、累積信頼度スコアに基づいて、潜在的な生理学的イベントの警告を提供するステップを含む。いくつかの例では、潜在的な生理学的イベントの警告は、ユーザが装着する装着型デバイスのユーザインタフェース上に提供される。潜在的な生理学的イベントの警告は、ユーザ、介護者、医療提供者、または法的保護者のうちの一または複数に提供される。生理学的イベントとは、1つまたは複数の生体センサを通じて識別できる1つまたは複数の特徴的なパターンを引き起こす任意のイベントであり、これらのイベントは、てんかん発作、失神、心因性非てんかん発作、運動障害、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの例では、生理学的イベントは、神経学的イベント、心臓性イベント、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの例では、神経学的イベントは発作である。
【0076】
図6および図7は、工程600および700の例示的なブロックを示すが、いくつかの実装形態において、工程600および700は、それぞれ、図6および図7に描かれているブロックに対して、追加のブロック、より少ないブロック、異なるブロック、または配置の異なるブロックを含んでもよい。さらに、またはあるいは、工程600および700のブロックのうちの2つ以上が並行して実施されてもよい。
【0077】
図8は、本開示の例による強直間代発作からのデータを示す。上図は、X、Y、Z加速度計のトレース、およびPPGを通して計算された心拍数(BPM)である。中図は、強直および間代分類器のモデル出力である。重複していることと、TCSの中に複数の間代期があることに注意されたい。また、分類器の訓練方法、分類に使用するデータのウィンドウの長さ(20秒)、および分類が因果的に行われるため、分類器にラグがあることに注意されたい。密なドットのテクスチャ領域は強直フェーズを示し、疎なドットのテクスチャ領域は間代フェーズを示す。下図は警告閾値が事前に設定された累積フィルタである。閾値は柔軟に設定することができ、閾値が低いと偽陽性警告(発作は起こっていないが、方法がユーザの活動を発作であると分類したことを意味する)が多くなる可能性がある。例えば、閾値を約0.5~約0.7に設定することができる。
【0078】
図9は、本開示の例による間代期のみ(TCSではない)のデータを示す。上図は、X、Y、Z加速度計のトレース、およびPPGを通して計算された心拍数(BPM)である。中図は、強直および間代分類器のモデル出力である。下図は累積フィルタである。重複していることと、TCSの中に複数の間代期があることに注意されたい。また、分類器の訓練方法、分類に使用するデータのウィンドウの長さ(20秒)、および分類が因果的に行われるため、分類器にラグがあることに注意されたい。強直フェーズ分類器による活性化は全くないことに注意されたい。
【0079】
図10は、本開示の例による、強直期が大半を占める(TCSではない)運動例からのデータを示す。上図は、X、Y、Z加速度計のトレース、およびPPGを通して計算された心拍数(BPM)である。中図は、強直および間代分類器のモデル出力である。下図は累積フィルタである。重複していることと、TCSの中に複数の間代期があることに注意されたい。また、分類器の訓練方法、分類に使用するデータのウィンドウの長さ(20秒)、および分類が因果的に行われるため、分類器にラグがあることに注意されたい。強直性および間代性の両方の活性化があるが、この区間を発作として検出するための正しい方法では起こらない(累積が閾値に達することはない)。
【0080】
図11は、本開示の例による長い単相からのデータを示す。上図は、X、Y、Z加速度計のトレース、およびPPGを通して計算された心拍数(BPM)である。中図は、強直および間代分類器のモデル出力である。下図は累積フィルタである。この場合、フェーズが1分間を超えて活性化されていても、累積フィルタは漸近的に0.5に近づくだけであることに注意されたい。閾値を満たすことはない。
【0081】
図12は、本開示の例による焦点起始両側強直間代発作(FBTCS)からのデータを示す。図は、X、Y、Z加速度計のトレース、およびPPGを通して計算された心拍数(BPM)を示す。例に示すように、焦点発作は02:02:00から02:03:50まで続き、その後実際のTCSが始まる。
【0082】
いくつかの例では、日常的な使用において、開示された方法は、検出後10分の不応期間を使用することができ、その間に他の検出が発生することはない。この不応期間は、単一のイベントが複数の警告を引き起こさないようにするために存在する。患者の発作が検出され、介助者が援助を施しに来た場合、10分以内に2回目の発作が発生すれば、その時点で介助者が立ち会うことになるので、安全性の低下は最小限である。検出器は、過去の一定数の時点を見る因果関係ウィンドウを使用して訓練することができる。多くの場合、特に間代フェーズの終了についてラグが生じる。これはモデルの訓練方法、ウィンドウの因果関係、およびウィンドウの長さによるものである。これは合わさって、検出器出力の消失として現れる。これは、図8図9に明確に見られる。いくつかの例では、図10は、強直間代発作の検出のための両方のフェーズの必要性を示す例を示す。強直フェーズのみが活性化されており、発作はおそらく選択された閾値に近づくだけで、それを越えることはないことに注意されたい。
【0083】
いくつかの実施形態において、任意の本開示の方法がコンピューティングシステムによって実行され得る。図13は、いくつかの実施形態による、そのようなコンピューティングシステム1300の例を示す。コンピューティングシステム1300は、コンピュータまたはコンピュータシステム1301Aを含み得、これは、個々のコンピュータシステム1301Aまたは分散コンピュータシステムの配列であり得る。コンピュータシステム1301Aは、本明細書に開示される1つまたは複数の方法など、いくつかの実施形態に従って様々なタスクを実施するように構成された1つまたは複数の分析モジュール1302を含む。これらの様々なタスクを実施するために、分析モジュール1302は、独立して、または1つまたは複数の記憶媒体1306に接続された1つまたは複数のプロセッサ1304と協調して、実行する。プロセッサ1304はまた、コンピュータシステム1301Aが、データネットワーク1309を介して、1つまたは複数の追加のコンピュータシステムおよび/またはコンピューティングシステム、例えば、1301B、1301C、および/または1301Dと通信できるようにするために、ネットワークインタフェース1307に接続される(コンピュータシステム1301B、1301C、および/または1301Dは、コンピュータシステム1301Aと同じアーキテクチャを共有してもしなくてもよく、異なる物理的位置に位置してもよいことに注意されたい。例えば、コンピュータシステム1301Aおよび1301Bは、1つもしくは複数のデータセンターに位置する、および/または異なる大陸の様々な国に位置する、1301Cおよび/または1301Dなどの1つまたは複数のコンピュータシステムと通信しながら、処理施設に位置していてよい)。
【0084】
プロセッサは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プロセッサモジュールもしくはサブシステム、プログラム可能な集積回路、プログラム可能なゲートアレイ、または他の制御もしくはコンピューティングデバイスを含むことができる。
【0085】
記憶媒体1306は、1つまたは複数のコンピュータ可読または機械可読記憶媒体として実装することができる。記憶媒体1306は、生理学的解釈機械学習モジュール1308に接続または結合され得る。図13の例示的な実施形態では、記憶媒体1306は、コンピュータシステム1301A内にあるものとして描かれているが、いくつかの実施形態では、記憶媒体1306は、コンピューティングシステム1301Aおよび/または追加のコンピューティングシステムの、複数の内部および/または外部エンクロージャの内部に、および/またはそれらにわたって、分布し得ることに注意されたい。記憶媒体1306は、動的または静的ランダムアクセスメモリ(DRAMまたはSRAM)、消去可能およびプログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能およびプログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)ならびにフラッシュメモリなどの半導体メモリデバイス、固定ディスク、フロッピーディスク、およびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、テープを含む他の磁気媒体、コンパクトディスク(CD)もしくはデジタル・ビデオ・ディスク(DVD)、BLURAY(登録商標)ディスクなどの光媒体、または他の種類の光記憶装置、または他の種類の記憶装置を含む、1つまたは複数の異なる形態のメモリを含み得る。上述した命令は、1つのコンピュータ可読または機械可読記憶媒体上に提供することができる、あるいは、複数のノードを有する可能性のある大規模システム内に分布する、複数のコンピュータ可読または機械可読記憶媒体上に提供することができることに注意されたい。このようなコンピュータ可読または機械可読記憶媒体は、物品(または製造品)の一部とみなされる。物品または製造品は、製造された単一の構成要素または複数の構成要素を指す。記憶媒体は、機械可読命令を実行する機械の中に位置してもよく、または機械可読命令が実行のためにネットワークを通じてダウンロードされ得る遠隔地に位置しても良い。
【0086】
コンピューティングシステム1300は、コンピューティングシステムの一例に過ぎず、コンピューティングシステム1300は、示されているよりも多い、または少ない構成要素を有してもよく、図13の例示的な実施形態に描かれていない追加の構成要素を組み合わせてもよく、および/またはコンピューティングシステム1300は、図13に描かれている構成要素の異なる構成もしくは配置を有してもよいことが理解されるべきである。図13に示される様々な構成要素は、1つまたは複数の信号処理および/または特定用途向け集積回路を含む、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアおよびソフトウェアの両方の組み合わせで実装されてもよい。
【0087】
さらに、本明細書で説明する処理方法のステップは、汎用プロセッサまたはASIC、FPGA、PLD、または他の適切なデバイスなどの特定用途向けチップなどの情報処理装置において、1つまたは複数の機能モジュールを動作させることによって実装することができる。これらのモジュール、これらのモジュールの組み合わせ、および/または一般的なハードウェアとの組み合わせは、すべて本発明の保護範囲に含まれる。
【0088】
生理学的イベントの検出および警告のための方法の例示的な実施形態が図14に示されており、この図では訓練および推量の方法1400が示されており、生理学的イベントはてんかん発作である。この方法は、てんかん発作を自動的に検出し、介護者に警告を発するためのサブメソッドを含む。
【0089】
不均衡低減サブメソッド1410は、発作様区分を識別し、データセットの不均衡を低減することができる。発作イベントに関連する情報を含むデータセットは、発作イベントが稀で予期せず起こる性質があり、非発作イベントの割合に対して発作イベントの割合が低くなるために、不均衡になりやすい。一実施形態において、不均衡低減サブメソッド1410は、教師なし異常検出分類器を反復的に訓練するステップと、分類が困難な非発作区分を識別するためにデータセットに対して推量を実施するステップとを含み得る。一実施形態においては、異常検出方法は、1クラスサポートベクターマシン(OCSVM)技法を含んでよい。別の実施形態において、異常検出方法は、サポートベクターデータ記述(SVDD)技法を含んでよい。別の実施形態において、異常検出方法は、拡張分離フォレスト(IF)技法を含んでよい。例示的な実施形態において、異常検出方法は、分離フォレスト(IF)技法を含んでよい。別の実施形態においては、異常検出方法は、OCSVM、SVDD、拡張IF、および/またはIFの組み合わせを含んでよい。1つまたは複数の異常検出分類器は、データセットの不均衡を大幅に低減し、教師あり分類器の使用を可能にし得る。不均衡低減サブメソッド1410は、反復サブメソッドを含んでよい。不均衡低減サブメソッド1410は、バランシングされたデータセットを出力してもよい。
【0090】
時間領域サブメソッド1420は、不均衡低減サブメソッド1410の出力であるバランシングされたデータセットを使用して、てんかん発作の特徴的なフェーズの入力生体信号の特徴を識別するのに有用な時間領域特徴を、明示的または暗黙的に生成してもよい。この時間領域サブメソッド1420は、手動特徴抽出法、または暗黙的に時間領域特徴を識別する機械学習法もしくはディープランニング法を含むことができる。てんかん発作で生じる特徴的な特徴があるが、それらはてんかん発作に限定されるものではなく、非発作区分でも生じ得る。一実施形態においては、時間領域サブメソッド1420は、(加速度計から得られたデータからの)運動および(PPGから得られたデータからの)心拍数などの入力生体信号から、てんかん発作の強直フェーズの特徴的な暗黙的特徴を識別するためのディープラーニング特徴抽出法を含んでよい。しかし、強直フェーズは、非発作区分内でも発生し得る。時間領域サブメソッド1420は、反復サブメソッドを含んでよい。
【0091】
スペクトル領域サブメソッド1430は、不均衡低減サブメソッド1410の出力であるバランシングされたデータセットを使用して、てんかん発作の特徴的なフェーズの入力生体信号の特徴を識別するのに有用なスペクトル領域特徴を、明示的または暗黙的に識別してもよい。このスペクトル領域サブメソッド1430は、手動特徴抽出法、または暗黙的にスペクトル領域特徴を識別する機械学習法もしくはディープランニング法を含むことができる。てんかん発作で生じる特徴的な特徴があるが、それらはてんかん発作に限定されるものではなく、非発作区分でも生じ得る。一実施形態においては、スペクトル領域サブメソッド1430は、入力生体信号から下降チャープを識別するためのファン・チャープ変換を含んでよい。この下降チャープは、てんかん発作の間代フェーズに特徴的であり得る。しかし、下降チャープは、非発作区分内でも発生し得る。スペクトル領域サブメソッド1430は、反復サブメソッドを含んでよい。
【0092】
特徴的フェーズサブメソッド1440は、時間領域サブメソッド1420およびスペクトル領域サブメソッド1430の出力に基づいて訓練され、てんかん発作の特徴的なフェーズを識別し得る、特徴的フェーズ分類器を含んでもよい。この特徴的フェーズサブメソッド1440に存在し得る特徴的フェーズおよびしたがって特徴的フェーズ分類器の数に制限はない。一実施形態において、各特徴的フェーズ分類器は、データの区分に特徴的フェーズが存在するかどうかに対応する、信頼値を出力してもよい。出力された信頼値は、所与の区分が発作であるか否かを判定し得るが、必ずしもそうではない。例えば、非発作区分は、1つまたは複数の特徴的フェーズにおいて高い信頼値を有し得る。特徴的フェーズサブメソッド1440は、任意の分類方法(すなわち、教師あり、教師なし、またはルールベース)として実装される分類器を記述し得る。一実施形態においては、てんかん発作において識別される2つの特徴的なフェーズ、強直フェーズおよび間代フェーズが存在し得る。これらの両フェーズの分類器は、ディープラーニングモデルとして実装されてもよい。強直フェーズ分類器の場合、特徴的フェーズサブメソッド1440は、時間領域サブメソッド1420およびスペクトル領域サブメソッド1430とともにエンドツーエンドで訓練され得る。間代フェーズ分類器の場合、特徴的フェーズサブメソッド1440は、時間領域サブメソッド1420およびスペクトル領域サブメソッド1430からの出力から、独立して訓練され得る。特徴的フェーズサブメソッド1440は、反復サブメソッドを含んでもよい。
【0093】
集約サブメソッド1450は、特徴的フェーズサブメソッド1440に記載された各特徴的フェーズ分類器からの出力を、各特徴的フェーズ分類器に対する集約信頼度スコアの形で集約するステップを含んでもよい。特徴的フェーズサブメソッド1440における複数の特徴的フェーズは、検出器が、他の運動とは対照的に、てんかん発作に特異的な特性を含む時間区分を捕捉することを確実にし得る。一実施形態においては、集約サブメソッド1450は、特徴的フェーズサブメソッド1440からの信頼値出力の平均として実装され得る。別の実施形態においては、集約サブメソッド1450は、特徴的フェーズサブメソッド1440からの信頼値出力の加重和として実装され得る。重みは、(例えば10%刻みで)すべての可能性についてグリッド検索を実施し、時系列データ(発作および非発作を含む)の推量をシミュレーションすることによって計算することができる。最良の性能をもたらす重みが選択される。非限定的な一例においては、最良の性能をもたらした重みは、強直フェーズに対して50%、間代フェーズに対して50%である。別の実施形態においては、集約サブメソッド1450は、特徴的フェーズサブメソッド1440からの信頼値出力の算術式として実施することができる。別の実施形態においては、集約サブメソッド1450は、隠れマルコフモデル、条件付き確率場、またはその両方などの確率的グラフィカルモデルとして実装されてもよい。別の実施形態においては、集約サブメソッド1450は、平均、加重和、演算式、または確率的グラフィカルモデルのうちの、1つまたは複数として実装されてもよい。例えば、確率的グラフィカル法では、ディープラーニング法と同様に、フェーズ検出器からの経時的な信頼度出力を、PGMまたはDLモデルへの入力として使用することができる。このモデルは、強直間代発作に関連する時間的特性、および経時的なフェーズ信頼度を識別して判断を行う。
【0094】
累積サブメソッド1460は、信頼度の高い過渡区分が検出を早期に発動させないように、特徴的フェーズ分類器からの集約信頼度スコアを累積してもよい。一実施形態においては、この累積サブメソッド1460は、一次無限インパルス応答(IIR)フィルタを含んでも良い。例えば、IIRフィルタは、y(n)=ay(n-1)+bx(n)を使用することによってリアルタイム再帰的な方法で実装することができるローパスフィルタであり、ここでは、a=0.95、b=0.05の値が選択される。別の実施形態では、累積サブメソッド1460は、回帰型ニューラルネットワーク、長短期記憶ネットワーク、ゲート付き回帰型ユニットネットワーク、時間的畳み込みネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、多層パーセプトロン、またはそれらの組み合わせなどのディープラーニング技法を含む、任意の累積方法を含んでもよい。例えば、ディープラーニング技法は、信頼度出力のためのPGMが使用されるシナリオと同様になるように構成することができる。DL(またはPGM)モデルへの入力は、前段階(集約)の信頼度出力とすることができ、特定の時間ウィンドウにわたる出力値をモデルへの入力とすることができる。モデルは、集約された時間と発作検出との間の時間的関連を作成する。
【0095】
警告サブメソッド1470は、累積サブメソッド1460の出力が、発動値または閾値としても知られる特定の値に達すると、発動する警告システムを含んでもよい。一実施形態においては、警告システムは、ユーザが装着する装着型デバイスのユーザインタフェース上に、潜在的な生理学的イベントの警告を提供し得る。別の実施形態においては、潜在的な生理学的警告は、ユーザ、介護者、医療提供者、法定保護者、またはそれらの組み合わせに提供されてもよい。
【0096】
生理学的解釈、モデル、および/または他の解釈補助は、反復様式で改良され得る。この概念は、本明細書で議論される本方法の実施形態に適用可能である。これは、コンピューティングデバイス(例えば、コンピューティングシステム1300、図13)におけるように、アルゴリズムベースで、および/または、所与のステップ、アクション、テンプレート、モデル、または曲線のセットが、検討中の信号の評価のために十分に正確になったかどうかについて決定を行うことができるユーザによる手動制御を通じて実行される、フィードバックループの使用を含み得る。
【0097】
前述の説明は、説明のために、特定の実施形態を参照して説明した。しかしながら、上記の例示的な議論は、網羅的であること、または開示された正確な形態に本発明を限定することを意図するものではない。上記の教示に鑑みて、多くの修正および変形が可能である。さらに、方法の要素が図示され、説明される順序は、再配置されてもよく、および/または2つ以上の要素が同時に生じてもよい。実施形態は、本発明の原理およびその実際的な応用を最もよく説明するために選択され、記載されたものであり、それにより、当業者が、本発明および企図される特定の使用に適するように様々な変更を加えた様々な実施形態を、最もよく利用できるようにするためのものである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】