(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ブレイクイン性能を強化した高トルク接続
(51)【国際特許分類】
E21B 17/042 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
E21B17/042
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024527757
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 CA2022051667
(87)【国際公開番号】W WO2023082010
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524176878
【氏名又は名称】ヴァロラ エンジニアリング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,スティーブン リー
(72)【発明者】
【氏名】トレンブレイ,ジネット マリー
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129EC06
(57)【要約】
管状部材であって、前記管状部材の第1端部上には第1コネクタが設けられており、前記第1コネクタは、別の管状部材上に設けられた対応するコネクタを受け入れることによって、ピンコネクタ、ボックスコネクタ、外径、内径、および長手方向軸線を含む管状接続部を形成するように適合されている、管状部材。複数のピンコネクタねじ山または複数のボックスコネクタねじ山は、前記ピンコネクタが前記ボックスコネクタと螺合されたとき、結果として生じる前記管状接続部の半径方向支圧強度が望ましく低減されるような少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを有するねじ山形態を特徴とする。より具体的には、好ましい実施形態では、少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンは、前記ボックスコネクタがピンコネクタと螺合されたとき、前記管状接続部の前記半径方向支圧強度が断面接続強度の100%~110%となるように構成されていることが好ましい。さらに、本明細書に記載された少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを有する複数のねじ山を備える管状部材上におけるコネクタを形成するための方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状部材であって、
前記管状部材の第1端部上にはボックスコネクタが設けられており、
前記ボックスコネクタは、別の管状部材上に設けられた対応するピンコネクタを受け入れるように適合されており、
前記ボックスコネクタは、公称ピッチ径、長手方向軸線、一次ショルダ、二次ショルダ、および複数の内部ねじ山のゾーンを含み、
複数の内部ねじ山の前記ゾーンは、前記長手方向軸線に関してテーパになった複数のねじ山を含み、
複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、少なくとも1つの荷重フランク、スタビングフランク、および少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを含み、
前記ボックスコネクタは、別の管状部材上に設けられた対応するピンコネクタと螺合されることによって管状接続部が形成されるように適合されており、
前記ボックスコネクタ上の少なくとも1つの前記荷重フランクの各々は、対応する前記ピンコネクタ上の対応するねじ山の少なくとも1つの前記荷重フランクに、投影半径方向に沿って接触し、これにより、少なくとも1つの荷重フランク投影半径方向接触面Hrが、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成され、
少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンによって、前記管状接続部の半径方向支圧強度が低減される、管状部材。
【請求項2】
管状部材であって、
前記管状部材の第1端部上にはピンコネクタが設けられており、
前記ピンコネクタは、別の管状部材上に設けられた対応するボックスコネクタに受け入れられるように適合されており、
前記ピンコネクタは、公称ピッチ径、長手方向軸線、一次ショルダ、二次ショルダ、および複数の外部ねじ山のゾーンを含み、
複数の外部ねじ山の前記ゾーンは、前記長手方向軸線に関してテーパになった複数のねじ山を含み、
複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、少なくとも1つの荷重フランク、スタビングフランク、および少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを含み、
前記ピンコネクタは、別の管状部材上に設けられた対応するボックスコネクタと螺合されることによって管状接続部が形成されるように適合されており、
前記ピンコネクタ上の少なくとも1つの前記荷重フランクの各々は、対応する前記ボックスコネクタ上の対応するねじ山の少なくとも1つの前記荷重フランクに、投影半径方向に沿って接触し、これにより、少なくとも1つの投影荷重フランク半径方向接触面H
rが、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成され、
少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンによって、前記管状接続部の半径方向支圧強度が低減される、管状部材。
【請求項3】
前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた制限フランクと、
第1曲率半径を有する、前記ねじ山頂部と前記制限フランクとの間に延在する第1半径と、
第2曲率半径を有する、前記制限フランクから前記荷重フランクまで延在する第2半径と、
を含み、
前記第1半径は、凸面の曲率半径を有し、
前記第2半径は、凹面の曲率半径を有する、請求項1または2に記載の管状部材。
【請求項4】
前記制限フランクは、前記荷重フランクから0.002~0.010インチのところに差し込まれている、請求項3に記載の管状部材。
【請求項5】
凸面の前記第1曲率半径は、0.015インチであり、凹面の前記第2曲率半径は、0.015インチである、請求項4に記載の管状部材。
【請求項6】
前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた制限フランクと、
第1曲率半径を有する、前記ねじ山根部と前記制限フランクとの間に延在する第1半径と、
第2曲率半径を有する、前記制限フランクから前記荷重フランクまで延在する第2半径と、
を含み、
前記第1半径は、凹面の曲率半径を有し、
前記第2半径は、凹面の曲率半径を有する、請求項1または2に記載の管状部材。
【請求項7】
前記制限フランクは、前記荷重フランクから0.002~0.010インチのところに差し込まれている、請求項6に記載の管状部材。
【請求項8】
凹面の前記第1曲率半径は、0.030インチであり、凹面の前記第2曲率半径は、0.015インチである、請求項4に記載の管状部材。
【請求項9】
前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた、少なくとも1つの制限フランクと、
凹面の曲率半径を有する、前記荷重フランクと前記制限フランクとの間に延在する半径と、
を含む、請求項1または2に記載の管状部材。
【請求項10】
前記制限フランクは、前記荷重フランクから0.002~0.010インチのところに差し込まれている、請求項9に記載の管状部材。
【請求項11】
凹面の前記曲率半径は、0.010インチである、請求項10に記載の管状部材。
【請求項12】
管状部材間の接続がなされたとき、前記管状接続部の前記投影荷重フランク半径方向接触面H
rは、約0.070インチに等しい、請求項1~11のいずれか一項に記載の管状部材。
【請求項13】
管状部材間の接続がなされたとき、前記管状接続部の複数の前記一次ショルダ、複数の前記二次ショルダ、平均直径、および複数の前記ねじ山は、断面接続強度S
csに対応し、
少なくとも1つの前記投影荷重フランク半径方向接触面H
rは、複数のねじ山の前記ゾーンの長さ全体に沿って、半径方向支圧強度S
rbに対応し、
少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンは、関係
【数1】
が満たされるように、前記投影荷重フランク半径方向接触面を変化させる、請求項1~12のいずれか一項に記載の管状部材。
【請求項14】
螺合されトルクが与えられたとき、ねじ山の前記荷重フランクに直接的に隣接する材料は、当該荷重フランクに対して平行に配向されたひずみ硬化金属結晶粒組織を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の管状部材。
【請求項15】
ピンコネクタとボックスコネクタとの間の管状接続部であって、
前記ピンコネクタは、前記ボックスコネクタと螺合されるように適合されており、
複数の前記コネクタの各々は、外径、貫通孔内径、公称ピッチ径、および長手方向軸線を有し、
前記接続部は、
ピン一次ショルダ、ピン二次ショルダ、および複数の外部ねじ山のゾーンを含むテーパ付きピンコネクタと、
ボックス一次ショルダ、ボックス二次ショルダ、および複数の内部ねじ山のゾーンを含むテーパ付きボックスコネクタと、
を含み、
複数の前記ねじ山ゾーンは、前記長手方向軸線に関してテーパになった複数のねじ山を含み、
複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、少なくとも1つの荷重フランク、スタビングフランク、および少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを含み、
前記ピンコネクタ上の少なくとも1つの前記荷重フランクの各々は、前記ボックスコネクタ上の対応するねじ山の少なくとも1つの前記荷重フランクに、投影半径方向に沿って接触し、これにより、少なくとも1つの投影荷重フランク半径方向接触面が、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成され、
少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンによって、前記管状接続部の半径方向支圧強度が低減される、管状接続部。
【請求項16】
複数の前記一次ショルダ、複数の前記二次ショルダ、平均直径、および複数の前記ねじ山は、断面接続強度S
csに対応し、
少なくとも1つの前記投影荷重フランク半径方向接触面は、複数のねじ山の前記ゾーンの長さ全体に沿って、半径方向支圧強度S
rbに対応し、
少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンは、関係
【数2】
が満たされるように、前記投影荷重フランク半径方向接触面を変化させる、請求項15に記載の管状接続部。
【請求項17】
管状部材上におけるボックスコネクタを製造するための方法であって、
前記ボックスコネクタは、外径、貫通孔内径、および長手方向軸線を有する別の管状部材上に設けられた対応するピンコネクタを受け入れるように適合されており、
a)前記第1管状部材の端部上にボックスコネクタを形成する工程、
ここで、前記ボックスコネクタは、外径、貫通孔内径、ボックス一次ショルダ、ボックス二次ショルダ、および公称ピッチ径を有する複数の内部ねじ山のゾーンを含み、
前記ボックスコネクタが対応するピンコネクタと螺合されたとき、前記一次ショルダ、前記二次ショルダ、前記公称ピッチ径、および複数の前記ねじ山は、断面接続強度S
csを形成する;
b)前記ボックス一次ショルダと前記ボックス二次ショルダとの間の領域に複数のねじ山を形成する工程、
ここで、複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、荷重フランク、およびスタビングフランクを含み、
前記ボックスコネクタが対応するピンコネクタと螺合されたとき、前記ボックスコネクタ上の複数の前記ねじ山の各々は、対応する前記ピンコネクタ上の対応するねじ山に、投影半径方向に沿って接触し、これにより、前記管状接続部の半径方向支圧強度S
rb’に対応する投影荷重フランク半径方向接触面H
r’が、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成される;
c)複数の前記ボックスコネクタねじ山の複数の前記荷重フランク上に、少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを形成する工程、
ここで、前記ボックスコネクタが対応するピンコネクタと螺合されたとき、少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンによって、前記管状接続部の前記半径方向支圧強度S
rb’がS
rbに低減されるように、前記投影荷重フランク半径方向接触面H
r’がH
rに低減される、
を含む、管状部材上におけるボックスコネクタを製造するための方法。
【請求項18】
管状部材上におけるピンコネクタを製造するための方法であって、
前記ピンコネクタは、外径、貫通孔内径、および長手方向軸線を有する別の管状部材上に設けられた対応するボックスコネクタに受け入れられるように適合されており、
a)前記第1管状部材の端部上にピンコネクタを形成する工程、
ここで、前記ピンコネクタは、外径、貫通孔内径、ピン一次ショルダ、ピン二次ショルダ、および公称ピッチ径を有する複数の外部ねじ山のゾーンを含み、
前記ピンコネクタが対応するボックスコネクタと螺合されたとき、前記一次ショルダ、前記二次ショルダ、前記公称ピッチ径、および複数の前記ねじ山は、断面接続強度S
csを形成する;
b)前記ピン一次ショルダと前記ピン二次ショルダとの間の領域に複数のねじ山を形成する工程、
ここで、複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、荷重フランク、およびスタビングフランクを含み、
前記ピンコネクタが対応するボックスコネクタと螺合されたとき、前記ピンコネクタ上の複数の前記ねじ山の各々は、対応する前記ボックスコネクタ上の対応するねじ山に、投影半径方向に沿って接触し、これにより、管状接続部の半径方向支圧強度S
rb’に対応する投影荷重フランク半径方向接触面H
r’が、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成される;
c)複数の前記ピンコネクタねじ山の複数の前記荷重フランク上に、少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを形成する工程、
ここで、前記ピンコネクタが対応するボックスコネクタと螺合されたとき、少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンによって、前記管状接続部の前記半径方向支圧強度S
rb’がS
rbに低減されるように、前記投影荷重フランク半径方向接触面H
r’がH
rに低減される、
を含む、管状部材上におけるピンコネクタを製造するための方法。
【請求項19】
工程(c)の前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた制限フランク、第1曲率半径を有する、前記ねじ山頂部と前記制限フランクとの間に延在する第1半径、第2曲率半径を有する、前記制限フランクから前記荷重フランクまで延在する第2半径を形成する工程
をさらに含み、
前記第1半径は、凸面の第1曲率半径を有し、
前記第2半径は、凹面の第2曲率半径を有する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記制限フランクは、前記荷重フランクから0.002~0.010インチのところに差し込まれている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
凸面の前記第1曲率半径は、0.015インチであり、凹面の前記第2曲率半径は、0.015インチである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
工程(c)の前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた制限フランク、第1曲率半径を有する、前記ねじ山根部と前記制限フランクとの間に延在する第1半径、第2曲率半径を有する、前記制限フランクから前記荷重フランクまで延在する第2半径を形成する工程
をさらに含み、
前記第1半径は、凹面の第1曲率半径を有し、
前記第2半径は、凹面の曲率半径を有する、請求項17または18に記載の方法。
【請求項23】
前記制限フランクは、前記荷重フランクから0.002~0.010インチのところに差し込まれている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
凹面の前記第1曲率半径は、0.030インチであり、凹面の前記第2曲率半径は、0.015インチである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程(c)の前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた制限フランク、および凹面の曲率半径を有する、前記荷重フランクと前記制限フランクとの間に延在する半径を形成する工程
をさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項26】
前記制限フランクは、前記荷重フランクから0.002~0.010インチのところに差し込まれている、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
凹面の前記曲率半径は、0.010インチである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
工程(c)は、
荷重低減ゾーンを形成する工程、
ここで、前記投影荷重フランク半径方向接触面H
rは、約0.070インチに等しい、
をさらに含む、請求項17~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記コネクタが対応するコネクタと螺合されたとき、管状接続部が形成され、それによって、少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンは、関係
【数3】
が満たされるように、前記管状接続部を変化させる、請求項17~28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔先行出願の相互参照〕
本出願は、2021年11月12日に出願された米国出願第63/264,001号に対して、パリ条約に基づく優先権を主張するものである。かかる先行出願の内容全体が、本明細書に記載されているかのように、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
〔本開示の分野〕
本出願は概して、ねじ切り(された)接続部(threaded connection)を有する管状部材に関する。より具体的には、本出願は、ドリルパイプ、ドリルカラー、ツールジョイントおよびダウンホール(下げ孔)ツール等、ダウンホールドリリング作業で利用される高強度ダブルショルダねじ切り接続部を有する管状部材に関する。
【0003】
〔背景〕
本セクションでは、本発明の様々な態様をより理解しやすくするための背景情報が提供される。本文献のこのセクションの記述は、この点を考慮して読まれるべきものであり、従来技術を認めるものではないことを理解されたい。
【0004】
石油ドリリングおよびガスドリリングでは、様々なサブアセンブリおよび管状部材で構成されたドリルストリングの端部に、ドリルビットが螺合して取り付けられている。ドリルビットは従来、ドリルストリングの底部にあるボトムホールアセンブリ(Bottom Hole Assembly:BHA)に取り付けられる。これには、現代のドリリング技術の中でも特に、回転操縦可能ツール(rotary steerable tool)、マッドモータ(mud motor)、ドリリング間測定(Measurement-While-Drilling:MWD)ツール、ドリリング間ロギング(Logging-While-Drilling:LWD)ツール、スタビライザ、リーマ、ジャー、ショック、アジテータ、および複数のドリルカラーの構成等、様々なダウンホールツールおよび管状部が含まれ得る。BHAに接続されるのは、複数の重量ドリルパイプ(Heavy Weight Drill Pipe:HWDP)およびドリルパイプを通常含む、別の管状部材の一構成である。これらは、ドリルビットおよびBHAを表面に結合させてドリルストリングを完成させ、表面の回転、トルク、圧縮、および張力がドリルストリングに、ひいてはドリルビットに加えられることを可能にし、ボーリング孔をさらに前進させる。さらに、組み立てられたドリルストリングは、十分に中空な内径を通してドリリング流体を圧送して、ボーリング孔をクリーニングし、ダウンホールツールに流体動力を供給し、ドリルビットとダウンホールとの摩擦によって発生する熱を冷却するための導管としても機能する。ボーリング孔がさらに前進するにつれて、表面において管状部材のスレッディングまたはアンスレッディングによってドリルストリングを順次に組み立てまたは分解できるように、これらのドリルストリング管状部材はすべて、管状接続によって互いに螺合して取り付けられるのが一般的である。ドリルストリングで使用するための最も一般的な管状接続部は、ロータリショルダ接続部であり、現代のほとんどのバリエーションでは、ピンコネクタがボックスコネクタと螺合されたときにボックスコネクタの後部に接触するピンコネクタのノーズ上に、二次トルクベアリングショルダを導入している。
【0005】
ドリリング作業中、隣り合うドリルストリング管状部材間における前述した管状接続部のすべてが、ドリリング作業中にそれらにかかる荷重(例えば、ねじれ荷重、引張荷重、圧縮荷重等)に耐えるのに十分な機械的および冶金的な性能を有することが望ましい。一般に、管状コネクタを構成するのに利用される標準的な材料(例えば、鋼、アルミニウム、チタン)の機械的挙動は、外部から加えられる荷重に対する材料の変形応答と力との間の関係性を反映している。材料、特に、管状部材の構成に使用される金属の応力-ひずみ挙動は、管状接続部の性能に大きな影響を与えることが理解されるだろう。さらに、当業者であれば理解するように、材料の変形機構の巨視的挙動と微視的挙動との両方の応力-ひずみ特性を活用して、管状接続部を含めて、設計を強化および改善することが望ましい。その結果、望ましくない変形、損傷および破壊を軽減しつつ、高荷重下での管状接続部の機械的挙動を、望ましく強く、かつより予測可能となるように強化し得る。
【0006】
この技術もしくは理論、または他の任意の技術もしくは理論に限定されるものではないが、所与の材料の機械的挙動は、応力-ひずみ試験によって確かめられ得ることが理解されるだろう。この方法では、応力は、既知の試験片の断面に対する、それに垂直に加えられる荷重の関係性を通じて定義され得、ひずみは、前記試験片の元の長さに対する、当該試験片の長さの変化の比率として定義され得る。大雑把に言えば、弾性変形とは、加えられた荷重が取り除かれたとき、負荷が加えられた試験片がその元の大きさおよび形状に戻る非永続的な変形であり、塑性変形とは、加えられた荷重が取り除かれたとき、負荷が加えられた試験片がその元の大きさおよび形状に戻らない永続的な変形である。より詳細には、巨視的な弾性変形は、原子間間隔の小さな変化と原子間結合の伸張とを示すものである一方、塑性変形は、原子間結合の破壊と新たな原子間結合の形成とを示すものであり、塑性変形では、多数の原子または分子が互いに対して永続的に移動する。
【0007】
さらに、金属等の結晶性材料は、原子スケールでは完全な秩序を有せず、様々な不完全性および結晶的完全性からの逸脱を多数含むことが、当技術分野で知られている。特に、材料の冶金的性質および機械的性質の多くは、完全に秩序立った結晶構造からの逸脱に非常に敏感である。これらの欠陥が常に悪影響を及ぼすとは限らず、しばしば、望ましい欠陥をその量を制御して意図的に導入することによって、特定の機械的特性が調整および形成される。より詳細には、上述したように、塑性変形は、材料に対する永続的な変化であり、微視的なスケールでは、加えられた応力への応答としての、多数の原子の正味の移動に相当する。この過程の間、原子間結合が破壊され、転位の周囲で再形成されるはずである。転位(dislocation)とは、原子の一部がずれた線状の欠陥である。巨視的には、塑性変形は、多数の転位の運動に相当し、金属が塑性変形する全体的な能力は、転位の移動能力に依存する。
【0008】
これらの新たな転位の重要な源の1つは、荷重下で増す既存の転位であり、この性質は転位密度(dislocation density)として知られる。より具体的には、結晶粒界、ならびに内部欠陥および表面凹凸(例えば、傷および刻み目等)が転位形成の場として機能し得る。転位の運動が制限されないほど、金属はより変形しやすくなり、より弱く振る舞う。逆に、強度は塑性変形のしやすさに関係しているため、圧縮力を加えて意図的に塑性変形を誘起することで、転位の運動性を制限および低減させ、その結果、材料の機械的強度を高め得る。より簡単に言えば、さらなる塑性変形を開始するためには、より大きな機械的力が必要となるため、材料の性能が向上する。一般に、これは、ひずみ硬化(strain hardening)、加工硬化(work hardening)、または冷間加工(cold working)として、当技術分野で知られており、これらによって、金属は、塑性変形するにつれて強度が増す。
【0009】
本明細書で論じられる材料については、材料の弾性挙動は応力とひずみとの間の略比例的な関係性として現れることが理解されるだろう。フックの法則として知られるこの線形関係は、ヤング率として知られる材料の性質に対応している。幾何学的形状の永続的な変化のゆえに、ひいては材料の機械的性能に対する永続的な変化のゆえに、塑性変形が始まる応力レベルを確かめることが望ましい。当技術分野で知られているように、この性質は、材料の降伏強度(
図1に、σ
yとして示されている)として知られ、金属の降伏強度の全体的な大きさは、塑性変形に対する耐性の指標となる。より具体的には、この理論または他の任意の理論に限定されるものではないが、
図1の例示的な工学的応力-ひずみ曲線を検討すると、ある特定のひずみオフセット(通常は、0.002(0.2%))で、工学的応力-ひずみ曲線の直線弾性部分に対して平行な直線が構成され、この直線と工学的応力-ひずみ曲線の交点に対応する応力が、材料の降伏強度として一般的に定義される慣例が確立されていることが理解されるだろう。この交点は、グラフ内で小さな量の非直線性が発生した後に生じるものであり、非常に小さな程度の塑性変形が生じたことを示すものであることが理解されるだろう。この直線の傾きは、ヤング率(
図1に、Eとして示されている)に対応する。ヤング率の大きさは、原子間結合力の分離に対する耐性の尺度である。
【0010】
材料に荷重を加えて降伏強度を超える応力レベルを誘起させると、弾性変形と塑性変と形が組み合わさって、同時に起こることが理解されるだろう。加えられた荷重を解放すると、総変形の一部が、弾性ひずみとして復帰し、残りの変形は、永続的な塑性変形となる。
図2に示すように、除荷(アンローディング)サイクルの間、応力-ひずみ曲線は、除荷点からほぼ直線の経路をたどる。除荷曲線の傾きは、曲線の初期弾性部分に対して平行となるため、ヤング率と実質的に同じになる。除荷の間に回復されるこの弾性ひずみの大きさが、ひずみの復帰に対応する。荷重が再び加えられた場合、曲線は同じ直線部分を除荷のときとは反対の方向に移動するため、材料、ひいては設計の機械的な性能は、ある程度の塑性ひずみが以前に誘起されているにもかかわらず、弾性的に振る舞うことができる。
図2に示すように、この条件下では、残留塑性ひずみを有する材料に関して新たな有効降伏強度(effective yield strength)が存在することが理解されるだろう。このようにして、材料内に塑性ひずみを望ましく誘起して、設計の機械的な性能および強度を向上させることができる。
【0011】
管状コネクタを強化するためにひずみ硬化を利用する既知の方法として、ねじ山の冷間圧延によるものがある。しかしながら、この手法では、ねじ山フランクには応力が付与されない。その代わりに、冷間圧延では、コネクタの疲労亀裂を低減するための試みとして、ねじ山根部に残留圧縮応力が生み出される。また、ねじ山フランクおよびシール面に冷間加工を施すために、ピンコネクタおよびボックスコネクタに対してショットピーニングが実施され得る。しかしながら、これは通常、摩擦防止コーティングが望ましく施されない材料(例えば、非磁性鋼)のためのものである。一般に、ショットピーニングは、高度のひずみ硬化をもたらすことなく、コネクタあたりのコストを増大させるのである。ショットピーニングビードの大きさ、したがってピーニングの全体的な強度が、ねじ山根部半径等のねじ山形態(形状)の最小の特徴部に制限されるのである。
【0012】
ねじ山形態のフランクに対する一般的な形態の損傷は、管状接続部のスレッディング(threading)またはアンスレッディング(unthreading)の間に、ねじ山フランク材料の「テアリング(tearing)」または「冷間接合(cold welding)」として観察される。この種の損傷は、当技術分野において「かじり(galling)」として知られており、この理論または他の任意の理論に限定されるものではないが、引張応力が支配的な状態の材料間における高い静的接触応力または動的接触応力の結果であると理解される。一般的な例としては、新たに製造されたボックスコネクタおよびピンコネクタの2つが螺合して組み立てられ、互いにトルク(ねじり)が与えられる(かけられる)ような場合だろう。コネクタねじ山を製造する際に使用されたカッディングツールの剪断性のため、機械加工されたばかりのねじ山形態の荷重フランクの表面は、引張応力が支配的な状態にあり得る。そのため、接続部の接触荷重フランクの高応力状態によって、これらの表面の間にかじりが誘起され、結果として、修理または交換が必要となる損傷が生じ得る。
【0013】
この損傷を防ぐために、複数の技術および方法が開発および採用されている。最も一般的な技術は、ピンコネクタねじ山およびボックスコネクタねじ山の表面コーティングである。表面コーティングは、特にリン酸塩、銅、またはスプレーコーティングを含む、多くの形態を取り得、かじりに対する追加的な耐性をもたらすのにある程度有効であり、概して非常に望ましい。しかしながら、コーティングはひずみ硬化をもたらすものではないため、ねじ山フランクの応力状態は変更されない。むしろ、ほとんどのコーティングは、管状接続部の複数回の組立ておよび取り外しのサイクルによって摩耗することが知られているため、一時的にねじ山内の摩擦を低減させる役割しか果たさない。そのため、ねじ山フランクにひずみ硬化を付与することが、損傷に対する永続的な予防策となるために望ましいことが理解されるだろう。
【0014】
ねじ山フランクをひずみ硬化させる試みとして、「メイクアンドブレイク(Make and Break)」という手法がある。この手法は、新たに製造または修理された管状コネクタを、運用開始前に複数回のメイクアップトルクサイクルにかけるものである。1回のメイクアップサイクルでは、コネクタの荷重フランク上に冷間加工が、あったとしてもほとんど誘起されないことが当技術分野において知られているため、ねじ山フランクの損傷が軽減または完全に排除され得る望ましい応力状態をねじ山荷重フランク内につくり出すことを目的として、3~5回のサイクルが実施されるのが一般的である。
【0015】
メイクアンドブレイクは、新たに製造されたドリルパイプ上のねじ切りコネクタにとって都合がよい。通常、ツールジョイントは、管本体にまだ溶接されていないため、取り扱いおよび螺合接続することが容易であるからである。しかしながら、修理または再製造された管状部材の場合、管理された環境でメイクアンドブレイク作業を実施するのは現実的でないことが多い。ほとんどの製造施設には、管状部材を完全な長さで螺合接続し、トルクを与えるのに必要な設備も処理能力もないためである。このため、メイクアンドブレイクを実施するために、コストのかかる第三者サービスを利用する必要がある。例えば、メイクアンドブレイクサービスを利用すると、単一のロータリショルダコネクタの製造または修理の価格が100%以上も高くなってしまうことがしばしばある。あるいは、メイクアンドブレイクは、ドリルストリングを組み立てる間に、ドリリング作業の間のドリリングリグ(掘削装置)に対して実施され得る。これは、あまり望ましいことではない。それは、ドリリングリグタイム(drilling rig time)を消費し、これはショップタイム(shop time)よりも何桁も高いものであり得、そして、新たなコネクタの各々が複数回、組立ておよび分解されるため、ドリリング作業をさらに遅延させるからである。
【0016】
したがって、この実施に関連する時間およびコストのゆえに、新たに製造されたコネクタについては、例えばドリルストリングの管状接続部の転換のように、大量の管状部材が機械加工された場合であっても、メイクアンドブレイクが全く実施されないことが多い。このため、ドリルストリングにおける新たなコネクタの各々は、運用開始時に損傷を非常に受けやすい。
【0017】
加えて、管状接続部のメイクアップトルク(組立てトルク:makeup torque)は、主に接続部の断面領域特性を利用して計算されることが、当技術分野で知られている。これらの断面特性、したがって計算されるメイクアップトルクは、管状接続部を含む管状コネクタの外径および内径に大きく影響され、ねじ山の幾何学的形状が一定の場合であっても、大きく変動し得る。例えば、外径が5.250インチ、内径が2.688インチのDS40接続部は、外径が5.250インチ、内径が2.437インチのDS40接続部よりも、断面強度の相違のため、より小さなメイクアップトルクを有するだろう。しかしながら、ねじ山フランクの性質に基づいて計算される管状接続部の半径方向支圧強度は、同一のままとなるだろう。メイクアンドブレイクの間にねじ山荷重フランクに与えられる力の量、ひいてはひずみ硬化は、メイクアップトルクを計算するために断面特性が利用される所与の管状接続部については、一貫しないことがあり得る。
【0018】
さらに、大半の管状接続部では、断面強度に対する半径方向支圧強度の比は、不釣り合いなほど高く、場合によっては2.0を超えることさえある。このことは、外径および内径が一定の場合であっても、メイクアンドブレイクの間にねじ山荷重フランクに加えられる力は接続部の断面特性によって支配されることを示している。このため、管状接続部のメイクアップの間にねじ山荷重フランクにかかる力は、十分な冷間加工を誘起するには低すぎ得るため、ねじ山荷重フランクのひずみ硬化は、まったく生じないことがあり得る。
【0019】
伝統的に、新たな管状接続部設計を開発する際の目標は、所与の接続部の外径および内径の計算上のトルク伝達能力を最大化することであった。例えば、US5908212、US7210710、およびUS9816646には、管状接続部のねじれ能力および取り扱い特性の増大を目的とする、様々な管状接続部設計が開示されている。しかしながら、これらの発明は、ねじ山荷重フランクに望ましい圧縮応力を誘起するための方法を明らかにするものではない。
【0020】
US5492375に開示されているように、ねじ山の剪断に先立って、管状コネクタのピンノーズまたはボックスのカウンタボアを降伏させることが好ましい。US5492375には、接続部ねじ山ゾーンの長さを確立し得る方法が教示されている。しかしながら、特許文献‘375には、ねじ山荷重フランク支圧応力の挙動についていかなる主張も行われておらず、高トルク荷重下においてねじ山が剪断強度に近づくもののそれを超えない最適な構成を達成することを目的として、管状接続部ねじ部の長さが様々な断面積と相関させられている。管状接続部設計の外径および内径を変更する場合には、ねじ部長さを修正する必要があり、この修正によって、修正後の接続部がすべての先行変形形態との適合性をもはや維持し得なくなるという望ましくない副作用が生じる。加えて、特許‘375の教示の下で、ねじ山剪断の懸念が少なくなることが保証されるようにねじ部長さを増大させる必要がある場合、荷重フランクエリアが増大するために、管状接続部の半径方向支圧強度が増大し得る。この作用の結果、メイクアンドブレイクまたは接続部の使用の間にねじ山荷重フランクに与えられる力が比例的に低減され、ひいてはひずみ硬化が低減されることになるだろう。
【0021】
US10041307には、バランスの取れたねじ山形態が開示されている。US10041307には、半径方向荷重フランク支圧強度をねじ山形態の剪断強度で最適化することを目的とするねじ山形態が明らかにされている。しかしながら、ねじ山剪断による現代の管状接続部のダウンホール破損は、特にダブルショルダ接続部ではまれである。ダウンホールで高荷重がかかる場合は、一般的に、一次ショルダおよび/もしくは二次ショルダの膨張、またはピンコネクタおよび/もしくはボックスコネクタの伸張等、断面降伏破損をもたらす高ねじれ荷重によって引き起こされる。さらに、純粋に引っ張りのドリルストリング荷重の場合、単純なねじ切り締結具のように、ロータリショルダ接続部のメイクアップトルクは、ねじ山形態に直接的な剪断荷重を加えるために克服される必要がある圧縮力で、一次ショルダに予荷重をかける。多くの場合、ドリルストリングそれ自体、特に、ドリルパイプ管本体は、複数のねじ山全体の破滅的な剪断を引き起こすことは言うまでもなく一次ショルダを分離するために管状接続部に加えられ得る引張力キャパシティよりも、小さな引張力キャパシティを有する。さらに、半径方向荷重フランク支圧強度の荷重および応力は、断面領域応力とは相関せず、ひいては、ねじ山形態の設計におけるメイクアップトルクまたはドリリングトルクとも相関しない。本発明は、’307に開示された接続の様式に効果的に適用され、適合性を維持しつつもその性能をさらに高めることができるだろう。
【0022】
〔概要〕
第1ねじ切りコネクタを有する第1端部と、第2ねじ切りコネクタを有する第2端部と、を有する管状部材が提供される。前記第1コネクタおよび前記第2コネクタは、隣接する管状部材とともに、管状接続部を形成するように構成されている。好ましい実施形態では、前記管状接続部は、ボックスコネクタである前記第1コネクタと、ピンコネクションである前記第2コネクタとから形成されている。しかしながら、本明細書に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、ねじ切りコネクタのその他の構成が可能であることが理解されるであろう。さらに、管状部材間の前記管状接続部は、外径、貫通孔内径、公称(呼び:nominal)ピッチ径、および長手方向軸線を含む。一実施形態では、テーパ付きピンコネクタは、テーパ付きボックスコネクタの一次ショルダおよび二次ショルダに係合するように構成された一次ショルダおよび二次ショルダを含む。加えて、前記一次ショルダと前記二次ショルダとの間において、前記ピンコネクタおよび前記ボックスコネクタはそれぞれ、複数の外部ねじ山(おねじ)のゾーンおよび複数の内部ねじ山(めねじ)のゾーンを含む。複数の前記ねじ山ゾーンは、前記長手方向軸線に関してテーパになった複数のねじ山を含む。さらに、複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部(ねじ山の山頂部:thread crest)、ねじ山根部(ねじ溝の谷底部:thread root)、前記ねじ山根部から前記ねじ山頂部までの線に沿って延在する少なくとも1つの荷重フランク(圧力側フランク:load flank)、前記ねじ山根部から前記ねじ山頂部までの線に沿って延在するスタビングフランク(stabbing flank)、および少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを含む。前記ピンコネクタの前記荷重フランクは、前記一次ショルダにより近接しており、前記ボックス荷重フランクは、前記二次ショルダにより近接している。前記ピンコネクタの前記スタビングフランクは、前記二次ショルダにより近接しており、前記ボックススタビングフランクは、前記一次ショルダにより近接している。前記ピンコネクタが前記ボックスコネクタと螺合されたとき、前記ピンコネクタ上の少なくとも1つの前記荷重フランクの各々は、前記ボックスコネクタ上の対応するねじ山の少なくとも1つの前記荷重フランクに、投影半径方向(projected radial direction)に沿って接触し、これにより、インチ単位で測定される少なくとも1つの投影荷重フランク半径方向接触面Hrが、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成される。複数のねじ山の前記ゾーンの長さに沿って、この荷重フランク半径方向接触面は、複数の前記ねじ山についての半径方向支圧強度(radial bearing strength)Srbに対応する。これは、複数の前記荷重フランク内に塑性変形を誘起するのに必要な力の量を表す。この変形の結果、複数の荷重フランク上の前記ねじ山内における永続的な圧縮応力の材料の層が生じる。前記接続部は、複数の前記ねじ山、前記公称ピッチ径、複数の前記一次ショルダ、および複数の前記二次ショルダの幾何学的形状に基づく断面接続強度Scs(cross sectional connection strength)を有する。これは、前記接続部の最も弱い断面領域に塑性変形(または「降伏」)を誘起するのに必要な力の量を表す。この変形の結果、接続部断面の幾何学的形状の永続的な伸張(stretching)、ネッキング(necking)、ベリング(belling)、膨張(swelling)、または圧縮が生じる。より具体的には、一実施形態において、少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンは、前記半径方向支圧強度が前記断面接続強度の100%~110%となるように構成されていることが好ましい。前記管状接続部が螺合して組み立てられ、所望の大きさまでトルクが与えられたとき、複数の前記ねじ山の前記荷重フランクは、前記管状接続部の断面とほぼ同じレベルの応力を受けることとなる。それによって、冷間加工の増大および圧縮応力の残留で荷重フランクが強化されるため、耐かじり性が大幅に改善されつつ、前記支圧強度が常に前記断面接続強度以上となることが保証されるため、ねじ山形態に対する過度の塑性変形が防止される。
【0023】
当技術分野で知られているように、前記管状接続部のねじれ強度およびメイクアップトルクは、当該接続部の断面強度によって決定される。そのため、半径方向支圧強度が接続部の断面接続強度に等しいか、または接続部の断面接続強度よりもわずかに大きいことが保証されることによって、過大な応力による破損から複数のねじ山が保護される。さらに、本明細書で説明する好ましい一実施形態のように、少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンが適切に構成されれば、管状接続部の剪断強度が最大に保たれるため、ねじ山の剪断破損による破局的破損の懸念が排除される。
【0024】
好ましい一実施形態では、前記荷重フランク低減ゾーンは、前記荷重フランクから(前記荷重フランクを起点として)平行に差し込まれた制限フランク(limiting flank)と、第1曲率半径を有する、前記ねじ山頂部と前記制限フランクとの間に延在する第1半径と、第2曲率半径を有する、前記制限フランクから前記荷重フランクまで延在する第2半径と、を含む。さらに、前記第1半径は、凸面の第1曲率半径を有し、前記第2半径は、凹面の第2曲率半径を有する。前記ピンコネクタが前記ボックスコネクタと螺合されたとき、前記ピンコネクタ上の荷重フランクの各々は、前記ボックスコネクタ上の対応するねじ山の前記荷重フランクに、投影半径方向に沿って接触し、これにより、少なくとも1つの投影荷重フランク半径方向接触面Hrが、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成され、少なくとも1つの当該投影荷重フランク半径方向接触面Hrは、約0.070インチに等しい。
【0025】
代替的な一実施形態では、前記荷重フランク低減ゾーンは、前記荷重フランクから平行に差し込まれた制限フランクと、第1曲率半径を有する、前記ねじ山根部と前記制限フランクとの間に延在する第1半径と、第2曲率半径を有する、前記制限フランクから前記荷重フランクまで延在する第2半径と、を含む。さらに、前記第1半径は、凸面の第1曲率半径を有し、前記第2半径は、凹面の第2曲率半径を有する。前記ピンコネクタが前記ボックスコネクタと螺合されたとき、前記ピンコネクタ上の荷重フランクの各々は、前記ボックスコネクタ上の対応するねじ山の前記荷重フランクに、投影半径方向に沿って接触し、これにより、少なくとも1つの投影荷重フランク半径方向接触面Hrが、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成され、少なくとも1つの投影荷重フランク半径方向接触面Hrは、約0.070インチに等しい。
【0026】
また、テーパ付きピンコネクタをテーパ付きボックスコネクタと螺合接続するための管状部材上における管状コネクタを形成するための方法が提供される。前記管状接続部は、外径、貫通孔内径、公称ピッチ径、および長手方向軸線を有する。一実施形態において、前記方法は、(a)第1管状部材の端部上にボックスコネクタを形成する工程を含み、前記ボックスコネクタは、外径、貫通孔内径、ボックス一次ショルダ、ボックス二次ショルダ、および公称ピッチ径を有する複数の内部ねじ山のゾーンを含み、前記ボックスコネクタがピンコネクタと螺合されたとき、前記一次ショルダ、前記二次ショルダ、前記公称ピッチ径、および複数の前記ねじ山は、断面接続強度Scsを形成する。加えて、前記方法は、(b)前記ボックス一次ショルダと前記ボックス二次ショルダとの間の領域に複数のねじ山を形成する工程を含み、複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、荷重フランク、およびスタビングフランクを含み、前記ボックスコネクタがピンコネクタと螺合されたとき、前記ボックスコネクタ上の複数の前記ねじ山の各々は、前記ピンコネクタ上の対応するねじ山に、投影半径方向に沿って接触し、これにより、インチ単位で測定される投影荷重フランク半径方向接触面Hr’が、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成される。さらに、前記方法は、(c)複数の前記ボックスコネクタねじ山の複数の前記荷重フランク上に、少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを形成する工程を含み、前記ボックスコネクタがピンコネクタと螺合されたとき、少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンによって、前記投影荷重フランク半径方向接触面Hr’が低減され、低減された少なくとも1つの投影荷重フランク半径方向接触面Hrが形成される。より具体的には、一実施形態において、少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンは、前記ボックスコネクタがピンコネクタと螺合されたとき、前記半径方向支圧強度が前記断面接続強度の100%~110%となるように構成されていることが好ましい。
【0027】
〔図面の簡単な説明〕
これらの構成およびその他の構成は、以下の図面を参照した以下の説明から、さらに明らかになるであろう。図面において、参照番号は同様の部分を示す。図面は、単に例示を目的とするものであって、必ずしも拡大縮小比通りのものではなく、また、図示された特定の実施形態に本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではない。明瞭性および簡潔性の観点から、本明細書に論じられる特定の態様は、誇張したスケールで図示され得、または従来の要素の一部の詳細が省略された、簡略化された概略的形態で図示され得る。
【0028】
【0029】
図2は、荷重(ローディング)曲線および除荷(アンローディング)曲線を示す工学的応力-ひずみ曲線の一例である。
【0030】
図3は、管状コネクタを有する管状部材の一実施形態の斜視図である。
【0031】
図4は、管状コネクタを有する管状部材の部分的断面斜視図である。
【0032】
図5は、ねじ切りピンコネクタの四分の一断面側面図である。
【0033】
図6は、ねじ切りボックスコネクタの断面側面図である。
【0034】
図7は、螺合されていない管状接続部の部分的断面斜視図である。
【0035】
【0036】
図9は、従来技術に係るピンコネクタの一部分の拡大断面図である。
【0037】
図10は、螺合された従来技術に係るコネクタの一部分の拡大断面図である。
【0038】
図11は、荷重フランク低減ゾーンの好ましい一実施形態を有するピンコネクタの一部分の拡大断面図である。
【0039】
図12は、ピンコネクタおよびボックスコネクタであって、荷重フランク低減ゾーンの好ましい一実施形態をともに有するピンコネクタおよびボックスコネクタによって形成された管状接続部の一部分の拡大断面図である。
【0040】
図13は、外部荷重を加える前、外部荷重を加えている間、および外部荷重を加えた後における、荷重フランク低減ゾーンの好ましい一実施形態を有するピンコネクタの一部分を、原子間相互作用を誇張して示す、一連の拡大断面図である。
【0041】
図14は、ねじ山根部の近傍に形成された荷重フランク低減ゾーンの代替的な一実施形態を有するピンコネクタの一部分の拡大断面図である。
【0042】
図15は、荷重フランク低減ゾーンの溝の代替的な一実施形態を有するピンコネクタの一部分の拡大断面図である。
【0043】
図16は、ピンコネクタおよびボックスコネクタであって、荷重フランク低減ゾーンの代替的な一実施形態をともに有するピンコネクタおよびボックスコネクタによって形成された管状接続部の一部分の拡大断面図である。
【0044】
図17は、2つの荷重フランク低減ゾーンの溝の代替的な一実施形態を有するピンコネクタの一部分の拡大断面図である。
【0045】
図18は、複数の荷重フランク低減ゾーンの溝の代替的な一実施形態を有するピンコネクタの一部分の拡大断面図である。
【0046】
図19は、本明細書に論じられた原理および実施形態による管状コネクタを製造するための方法についてのブロック図である。
【0047】
〔好ましい実施形態の詳細な説明〕
本明細書で使用される測定単位、およびねじ山荷重フランクの相互作用を説明する方法は、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、可能な限り最も広い意味で解釈されるべきものである。「ピンコネクタ」および「ボックスコネクタ」という用語はそれぞれ、当技術分野で知られる「オスコネクタ」および「メスコネクタ」と同等に解釈されるべきである。そのため、ピンコネクタまたはオスコネクタは、ねじ切りされた外面を有する管状部材の一端部におけるゾーンを含む。同様に、ボックス接続端部またはメス接続端部は、ねじ切りされた内面を有する管状部材の一端部におけるゾーンを含む。
【0048】
図3および
図4を参照すると、上端部12および下端部14と、長手方向軸線16と、を有する管状部材10が示されている。軸線方向に隣接する追加的な管状部材への管状部材10の接続が可能となるように、ねじ切りコネクタが各端部に配置されている。例えば、図示されているように、管状部材10は、さらなる管状部材10を螺合接続し、それによって後に
図8に示す管状接続部100が形成され得るように、上端部12に配置されたボックスコネクタ152と、下端部14に配置されたピンコネクタ102と、を有する。これを連続して実施して、ドリルストリングを組み立ててもよい。しかしながら、管状部材10は、本明細書に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、上端部12または下端部14のいずれか一方または両方に、ボックスコネクタ152またはピンコネクタ102の任意の組み合わせを有し得ることを理解されたい。管状接続部100、ならびにピンコネクタ102およびボックスコネクタ152について、さらなる詳細を以下に示す。
【0049】
次に
図5を参照すると、ピンコネクタ102の側面図が、四分の一断面図で示されている。ピンコネクタ102は、外径120および貫通孔内径122を有し、一次ショルダ104および二次ショルダ106から構成され、2つのショルダの間には複数の外部ねじ山のゾーン108がある。複数の外部ねじ山のゾーンは、完全に形成された(fully formed)複数のねじ山110から構成される。完全に形成された複数のねじ山110について、さらなる詳細を以下に示す。ピンコネクタ102は、ピンコネクタねじ山110と公称ピッチ径54と内径122とによって実質的に決定される断面領域130を有する。さらに、ピンコネクタ102は、ピンノーズの外径124および内径122によって形成されるノーズ断面領域132を有する。
【0050】
次に
図6を参照すると、ボックスコネクタ152の側面図が、全断面図で示されている。ボックスコネクタ152は、外径170および貫通孔内径172を有し、一次ショルダ154および二次ショルダ156から構成され、2つのショルダの間には複数の内部ねじ山のゾーン158がある。複数の内部ねじ山のゾーンは、完全に形成された複数のねじ山160から構成される。完全に形成された複数のねじ山160について、さらなる詳細を以下に示す。ボックスコネクタ152は、外径170およびカウンタボア内径174によって形成されるカウンタボア断面領域180を有する。さらに、ボックスコネクタ152は、外径170および内径172によって形成される断面領域182を有する。
【0051】
図7は、ピンコネクタ102およびボックスコネクタ152が螺合されて管状接続部100を形成する前の当該ピンコネクタ102およびボックスコネクタ152を、長手方向軸線16上に互いに位置合わせされた状態で、等角図で示す。
図7および
図8に示す実施形態では、ピンコネクタの外径120および内径122はそれぞれ、ボックスコネクタの外径170および内径172と実質的に同じである。しかしながら、コネクタの外径120および外径170は、本明細書に開示された原理から逸脱することなく、互いに異なり得ることが当業者には理解されるだろう。同様に、接続部の内径122および内径172は、本明細書に開示された原理から逸脱することなく、互いに異なり得る。このとき重要なことは、管状接続部100が螺合可能である状態を維持することを保証するために、互いに適合性を維持する必要があるのは、完全に形成された複数のピンねじ山110と完全に形成された複数のボックスねじ山160とであるということである。
【0052】
さらに、次いで
図8を参照すると、管状接続部100の一実施形態が示されている。
図5に示されたピンコネクタ102と、
図6に示されたボックスコネクタ152とが、螺合されている。この理論または他の任意の理論に限定されるものではないが、管状接続部100の断面強度(断面耐力:cross sectional strength)S
csは、次式によって計算され得ることが、当業者には理解されるだろう。
【0053】
【0054】
ここで、Ysは、管状接続部100を構成する材料の降伏強度であり(単位は、ポンド毎平方インチ(psi))、ANは、ピンノーズの断面積132であり(単位は、平方インチ)、APINは、最後に係合したねじ山におけるピンの断面積130であり(単位は、平方インチ)、ACBは、ボックスのカウンタボアの断面積180である(単位は、平方インチ)。
【0055】
図9、
図11、
図13~
図15、および
図17~
図18を参照すると、完全に形成された複数のピンねじ山110の様々な実施形態の拡大図が示されている。ボックスコネクタ152上における完全に形成された複数のねじ山160は、複数のボックスコネクタねじ山160が、図示された複数のピンねじ山に対して横方向および縦方向に反転したものとなるように形成されることとなることを除いて、複数のピンコネクタねじ山110と実質的に同じとなるように形成され得ることを理解されたい。完全に形成された複数のピンコネクタねじ山110のかかる説明は、それと等価である完全に形成された複数のボックスコネクタねじ山160を十分に説明するものであるため、完全に形成された複数のボックスコネクタねじ山160の別個の詳細な説明は、簡潔にするために本明細書では省略する。
【0056】
次に
図9および
図10を参照すると、完全に形成された複数のピンねじ山110’および完全に形成された複数のボックスねじ山160’の拡大図が、従来技術に係る複数のねじ山の実施形態に一般的であり得る構成で示されている。当業者であれば、各ピンねじ山110’が、頂部200、根部202、荷重フランク204、およびスタビングフランク206の特徴部を有することを理解するであろう。
図10に示すように、接続部100’が螺合されたとき、ピンねじ山110’の荷重フランク204の各々は、対応するボックスねじ山160’の荷重フランクに、投影半径方向に沿って接触し、これにより、半径方向接触面H
r’が、互いに噛み合う荷重フランクによって形成される。例えば、従来技術において、H
r’は、0.082インチに等しい。
【0057】
この理論または他の任意の理論に限定されるものではないが、管状接続部100の半径方向支圧強度Srbは、次式によって計算され得ることが、当業者には理解されるだろう。
【0058】
【0059】
ここで、Ysは、管状接続部100を構成する材料の降伏強度であり(単位は、ポンド毎平方インチ(psi))、Dは、管状接続部100の複数のピンねじ山110および複数のボックスねじ山160の平均直径であり(単位は、インチ)、Lは、ピンコネクタ102とボックスコネクタ152との間で係合される複数のねじ山のゾーンの長さであり(単位は、インチ)、TPIは、管状接続部100のねじ山密度(thread density)であり(単位は、ねじ山数毎インチ)、Hrは、総半径方向接触面である(単位は、インチ)。Hrは、本明細書に開示された概念から逸脱することなく、単一の半径方向接触面の単一の測定値であり得、または複数の半径方向接触面の和であり得ることが、当業者には理解されるだろう。
【0060】
次に
図11を参照すると、管状部材10の好ましい一実施形態上における、管状接続部100の完全に形成された複数のピンねじ山110の拡大図が示されている。各ねじ山110は、頂部200、根部202、荷重フランク204、およびスタビングフランク206の特徴部を有する。さらに、各ねじ山は、ピンコネクタ102がボックスコネクタ152と螺合されたときの複数のピンコネクタねじ山110と複数のボックスコネクタねじ山160との間の荷重フランク接触面積を低減させるように働く荷重フランク低減ゾーン220を含む。同様に、具体的には図示されていないが、当業者であれば理解するように、荷重フランク低減ゾーン220は、複数のピンコネクタねじ山110の代替として、複数のボックスコネクタねじ山160上に含まれていてもよい。好ましい一実施形態では、荷重フランク低減ゾーン220は、複数のボックスコネクタねじ山160上と、複数のピンコネクタねじ山110上とに含まれる。複数のピンコネクタねじ山110が複数のボックスコネクタねじ山160の完全な対称物であることは、本発明の要件ではなく、複数のピンコネクタねじ山110または複数のボックスコネクタねじ山160のうちの少なくとも一方が、荷重低減ゾーン220を特徴部として有するにすぎないことが理解されるだろう。より具体的な一実施形態では、少なくとも1つの荷重低減ゾーン220は、管状接続部100の半径方向支圧強度S
rbが断面接続強度S
csの100%~110%となるように構成されている。
【0061】
引き続き
図11に示す実施形態を参照すると、荷重低減ゾーン220は、荷重フランク204から差し込み距離(inset distance)224だけ差し込まれた制限フランク222と、荷重フランク204から制限フランク222まで延在する凹面の半径R
204-222と、制限フランク222からねじ山頂部200まで延在する凸面の半径R
222-200と、から構成される。特に、好ましい実施形態では、半径R
204-222および半径R
222-200は等しく、制限フランク222の差し込み距離224は、およそ0.002~0.010インチである。より詳細には、差し込み距離224は、0.005インチに等しく、半径R
204-222および半径R
222-200は、0.015インチに等しい。しかしながら、差し込み距離224の値、ならびに半径R
204-222および半径R
222-200の値は、本明細書に開示された原理から逸脱することなく、他の実施形態において大きな範囲に及び得ることを理解されたい。荷重低減ゾーン220、および、その結果としての、複数のピンコネクタねじ山110の複数のボックスコネクタねじ山160との相互作用について、さらなる詳細を以下に示す。
【0062】
図12の好ましい実施形態を参照すると、図示のように管状接続部100が螺合されたとき、ピンコネクタねじ山110の荷重フランク204の各々は、対応するボックスコネクタねじ山160の荷重フランクに、投影半径方向に沿って接触し、これにより、半径方向接触面H
rが、互いに噛み合う荷重フランクによって形成される。より具体的には、この好ましい実施形態では、H
rは、0.070インチに等しい。
【0063】
次に
図13を参照すると、管状接続部100の完全に形成された複数のピンコネクタねじ山110の一連の拡大誇張図が、内部の原子間隔を誇張して示されている。この理論または他の任意の理論に限定されるものではないが、管状接続部100が螺合されたとき、複数のピンコネクタねじ山110は、
図13bに示すように、荷重フランク204上で荷重を受ける。荷重低減ゾーン220の好ましい一実施形態が存在することで、荷重フランク204は、ひずみ硬化(変形および原子の転位によって図示)を受け得、それによって、新たな原子間結合が形成される。荷重を取り除くと、荷重低減ゾーン220の存在および原子間結合の増加により、少量の塑性変形が荷重フランク204に生じるものと理解される。しかしながら、複数のピンコネクタねじ山110の巨視的な幾何学的形状および性質(例えば、剪断強度)は、明らかには変化しないこと、また、複数のピンコネクタねじ山110は、相手側のボックスコネクタねじ山160との適合性を維持することが理解されるだろう。
【0064】
次に
図14を参照すると、荷重低減ゾーン220の代替的な一実施形態を有する、管状接続部100の完全に形成された複数のピンコネクタねじ山110が、拡大図で示されている。荷重フランク低減ゾーン220は、荷重フランク204から差し込み距離224だけ差し込まれた制限フランク222と、ねじ山根部202から制限フランク222まで延在する凹面の半径R
202-220と、制限フランク222から荷重フランク204まで延在する凸面の半径R
220-204と、から構成される。特に、好ましい実施形態では、半径R
202-220および半径R
220-204はそれぞれ、0.030インチおよび0.015インチに等しく、制限フランク222の差し込み距離224は、およそ0.002~0.010インチである。より詳細には、差し込み距離224は、0.005インチに等しい。しかしながら、差し込み距離224の値、ならびに半径R
204-222および半径R
222-200の値は、本明細書に開示された原理から逸脱することなく、他の実施形態において大きな範囲に及び得ることを理解されたい。
【0065】
次に
図15を参照すると、荷重低減ゾーン220の代替的な一実施形態を有する、管状接続部100の完全に形成された複数のピンコネクタねじ山110が、拡大図で示されている。荷重フランク低減ゾーン220は、荷重フランク204が、ねじ山頂部200により近接した第1荷重フランク204aと、ねじ山根部202により近接した第2荷重頂部204bとに分岐するように、荷重フランク204から差し込み距離224だけ差し込まれた制限フランク222から構成される。その結果として、
図16は、管状接続部100が螺合されたとき、ピンコネクタねじ山110の荷重フランク204aおよび荷重フランク204bの各々が、対応するボックスコネクタねじ山160の少なくとも1つの荷重フランクに、投影半径方向に沿って接触し、これにより、少なくとも2つの半径方向接触面H
r1およびH
r2が、互いに噛み合う荷重フランクによって形成されることを示す。H
r1およびH
r2の和は、上記の好ましい一実施形態で開示されたものと同等の総半径方向接触面H
rを形成することが、当業者には理解されるだろう。荷重低減ゾーン220はさらに、第2荷重フランク204bから制限フランク222まで延在し、第1荷重フランク204aに接続する凸面の半径R
220から構成される。特に、この実施形態では、制限フランク220の差し込み距離224は、およそ0.002~0.010インチである。より詳細には、差し込み距離224は、0.005インチに等しく、半径R
220は、0.010インチに等しい。しかしながら、差し込み距離224の値、および半径R
220の値は、本明細書で開示された原理から逸脱することなく、他の実施形態において大きな範囲に及び得ることを理解されたい。複数のピンコネクタねじ山110または複数のボックスコネクタねじ山160の剪断強度を損なうような位置に荷重低減ゾーン220を配置することが望ましくないことを、当業者であれば理解するだろう。
【0066】
次に
図19を参照すると、管状コネクタを製造するための方法300が示されている。初めに、方法300は、ブロック305において、第1管状部材(例えば、管状部材10)の一端部上に、ピンコネクタ(例えば、ピンコネクタ102)、またはボックスコネクタ(例えば、ボックスコネクタ152)を形成する工程を含む。ブロック310において、管状接続部(例えば、管状接続部100)が螺合されたとき、管状コネクタの複数のねじ山(例えば、複数のピンコネクタねじ山110’、または複数のボックスコネクタねじ山160’)の各々が、相手側のコネクタの複数の荷重フランクに接触して、投影荷重フランク半径方向接触面H
r’を形成し、管状接続部が、対応する断面接続強度S
csおよび半径方向支圧強度S
rb’を有するように、複数のねじ山(例えば、複数のピンコネクタねじ山110’、または複数のボックスコネクタねじ山160’)がねじ切りコネクタ上に形成される。最後に、ブロック315において、投影荷重フランク半径方向接触面H
r’がH
rに低減され、複数のねじ山が、複数のねじ山のゾーンの長さに沿って低減した半径方向支圧強度S
rbを有する完全に形成された複数のねじ山(例えば、完全に形成された複数のピンコネクタねじ山110、または完全に形成された複数のボックスコネクタねじ山160)へと形成されるように、少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーン(例えば、荷重フランク低減ゾーン220)が、複数のねじ山(例えば、複数のピンコネクタねじ山110’、または複数のボックスコネクタねじ山160’)上に形成される。より具体的な一実施形態では、少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーン220は、管状接続部100の半径方向支圧強度S
rbが断面接続強度S
csの100%~110%となるように構成されている。
【0067】
一部の図には、複数のピンコネクタねじ山110上または複数のボックスコネクタねじ山160上に形成された、少なくとも1つの荷重低減ゾーンが具体的に示されているが、これは例示の一貫性および簡潔さのためのものであること、また、かかる荷重低減ゾーン220は、本明細書に開示された原理の範囲から逸脱することなく、複数のピンコネクタねじ山110上、複数のボックスコネクタねじ山160上、または互いに噛み合うピンコネクタねじ山110とボックスコネクタねじ山160との両方の上に形成され得ることが、当業者には理解されるだろう。管状接続部100が螺合して組み立てられるとき、管状接続部100の半径方向支圧強度S
rbが低減され、好ましい一実施形態では断面接続強度S
csの100%~110%となるように、少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーン220が構成されていることを条件として、荷重フランク低減ゾーン220の任意の組み合わせ(例えば、
図16および
図17に示すさらなる実施形態、または本明細書で論じられる荷重フランク低減ゾーンの組み合わせ)があり得ることが、当業者にはさらに理解されるであろう。
【0068】
要素間の相互作用を説明する用語の本明細書におけるいかなる使用も、対象となる要素間の直接的な相互作用にその相互作用を限定することを意図するものではなく、別段の記載が特にない限り、例えば二次的または中間的な構造を介した、要素間の間接的な相互作用をも含み得るものである。さらに、明示的に別段の記載がない限り、方法または方法の請求項における工程は、任意の順序で実行されてもよい。方法を説明する際に工程の前に記載された識別子(a)、(b)、(c)等の使用は、特定の順序を工程に対して指定するものと解釈されるべきではなく、それらは、かかる工程を後に参照する際の明瞭性および簡潔性のために使用されるものである。
【0069】
本発明の範囲内にあるままで、例示的な実施形態に変更が加えられ得ることは明らかであろう。そのため、以下の特許請求の範囲は、上述した実施例および図面に記載された好ましい実施形態によって限定されるものべきものではなく、本明細書全体と整合する最も広い解釈が与えられるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図2】荷重曲線および除荷曲線を示す工学的応力-ひずみ曲線の一例である。
【
図3】管状コネクタを有する管状部材の一実施形態の斜視図である。
【
図4】管状コネクタを有する管状部材の部分断面斜視図である。
【
図5】ねじ切りピンコネクタの四分の一断面側面図である。
【
図6】ねじ切りボックスコネクタの断面側面図である。
【
図7】螺合されていない管状接続部の部分断面斜視図である。
【
図9】従来技術に係るピンコネクタの一部分の拡大断面図である。
【
図10】螺合された従来技術に係るコネクタの一部分の拡大断面図である。
【
図11】荷重フランク低減ゾーンの好ましい一実施形態を有するピンコネクタの一部分の拡大断面図である。
【
図12】ピンコネクタおよびボックスコネクタであって、荷重フランク低減ゾーンの好ましい一実施形態をともに有するピンコネクタおよびボックスコネクタによって形成された管状接続部の一部分の拡大断面図である。
【
図13】外部荷重を加える前、外部荷重を加えている間、および外部荷重を加えた後における、荷重フランク低減ゾーンの好ましい一実施形態を有するピンコネクタの一部分を、原子間相互作用を誇張して示す、一連の拡大断面図である。
【
図14】ねじ山根部の近傍に形成された荷重フランク低減ゾーンの代替的な一実施形態を有するピンコネクタの一部分の拡大断面図である。
【
図15】荷重フランク低減ゾーンの溝の代替的な一実施形態を有するピンコネクタの一部分の拡大断面図である。
【
図16】ピンコネクタおよびボックスコネクタであって、荷重フランク低減ゾーンの代替的な一実施形態をともに有するピンコネクタおよびボックスコネクタによって形成された管状接続部の一部分の拡大断面図である。
【
図17】2つの荷重フランク低減ゾーンの溝の代替的な一実施形態を有するピンコネクタの一部分の拡大断面図である。
【
図18】複数の荷重フランク低減ゾーンの溝の代替的な一実施形態を有するピンコネクタの一部分の拡大断面図である。
【
図19】本明細書に論じられた原理および実施形態による管状コネクタを製造するための方法についてのブロック図である。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状部材であって、
前記管状部材の第1端部上にはボックスコネクタが設けられており、
前記ボックスコネクタは、別の管状部材上に設けられた対応するピンコネクタを受け入れるように適合されており、
前記ボックスコネクタは、公称ピッチ径、長手方向軸線、一次ショルダ、二次ショルダ、および複数の内部ねじ山のゾーンを含み、
複数の内部ねじ山の前記ゾーンは、前記長手方向軸線に関してテーパになった複数のねじ山を含み、
複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、少なくとも1つの荷重フランク、スタビングフランク、および少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを含み、
前記ボックスコネクタは、別の管状部材上に設けられた対応するピンコネクタと螺合されることによって管状接続部が形成されるように適合されており、
前記ボックスコネクタ上の少なくとも1つの前記荷重フランクの各々は、対応する前記ピンコネクタ上の対応するねじ山の少なくとも1つの前記荷重フランクに、投影半径方向に沿って接触し、これにより、少なくとも1つの荷重フランク投影半径方向接触面Hrが、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成され、
前記荷重フランク低減ゾーン
は、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた制限フランクと、
第1曲率半径を有する、前記ねじ山頂部と前記制限フランクとの間に延在する第1半径と、
第2曲率半径を有する、前記制限フランクから前記荷重フランクまで延在する第2半径と、
を含み、
前記第1半径は、凸面の曲率半径を有し、
前記第2半径は、凹面の曲率半径を有する、管状部材。
【請求項2】
管状部材であって、
前記管状部材の第1端部上にはピンコネクタが設けられており、
前記ピンコネクタは、別の管状部材上に設けられた対応するボックスコネクタに受け入れられるように適合されており、
前記ピンコネクタは、公称ピッチ径、長手方向軸線、一次ショルダ、二次ショルダ、および複数の外部ねじ山のゾーンを含み、
複数の外部ねじ山の前記ゾーンは、前記長手方向軸線に関してテーパになった複数のねじ山を含み、
複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、少なくとも1つの荷重フランク、スタビングフランク、および少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを含み、
前記ピンコネクタは、別の管状部材上に設けられた対応するボックスコネクタと螺合されることによって管状接続部が形成されるように適合されており、
前記ピンコネクタ上の少なくとも1つの前記荷重フランクの各々は、対応する前記ボックスコネクタ上の対応するねじ山の少なくとも1つの前記荷重フランクに、投影半径方向に沿って接触し、これにより、少なくとも1つの投影荷重フランク半径方向接触面H
rが、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成され、
前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた制限フランクと、
第1曲率半径を有する、前記ねじ山頂部と前記制限フランクとの間に延在する第1半径と、
第2曲率半径を有する、前記制限フランクから前記荷重フランクまで延在する第2半径と、
を含み、
前記第1半径は、凸面の曲率半径を有し、
前記第2半径は、凹面の曲率半径を有する、管状部材。
【請求項3】
前記制限フランクは、前記荷重フランクから0.002~0.010インチのところに差し込まれている、請求項
1または2に記載の管状部材。
【請求項4】
凸面の前記第1曲率半径は、0.015インチであり、
凹面の前記第2曲率半径は、0.015インチである、請求項
3に記載の管状部材。
【請求項5】
管状部材間の接続がなされたとき、前記管状接続部の複数の前記一次ショルダ、複数の前記二次ショルダ、平均直径、および複数の前記ねじ山は、断面接続強度S
cs
に対応し、
少なくとも1つの前記投影荷重フランク半径方向接触面H
r
は、複数のねじ山の前記ゾーンの長さ全体に沿って、半径方向支圧強度S
rb
に対応し、
少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンは、関係
【数1】
が満たされるように、前記投影荷重フランク半径方向接触面を変化させる、請求項1または2に記載の管状部材。
【請求項6】
管状部材上におけるボックスコネクタを製造するための方法であって、
前記ボックスコネクタは、外径、貫通孔内径、および長手方向軸線を有する別の管状部材上に設けられた対応するピンコネクタを受け入れるように適合されており、
a)前記第1管状部材の端部上にボックスコネクタを形成する工程、
ここで、前記ボックスコネクタは、外径、貫通孔内径、ボックス一次ショルダ、ボックス二次ショルダ、および公称ピッチ径を有する複数の内部ねじ山のゾーンを含み、
前記ボックスコネクタが対応するピンコネクタと螺合されたとき、前記一次ショルダ、前記二次ショルダ、前記公称ピッチ径、および複数の前記ねじ山は、断面接続強度S
cs
を形成する;
b)前記ボックス一次ショルダと前記ボックス二次ショルダとの間の領域に複数のねじ山を形成する工程、
ここで、複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、荷重フランク、およびスタビングフランクを含み、
前記ボックスコネクタが対応するピンコネクタと螺合されたとき、前記ボックスコネクタ上の複数の前記ねじ山の各々は、対応する前記ピンコネクタ上の対応するねじ山に、投影半径方向に沿って接触し、これにより、前記管状接続部の半径方向支圧強度S
rb
’に対応する投影荷重フランク半径方向接触面H
r
’が、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成される;
c)複数の前記ボックスコネクタねじ山の複数の前記荷重フランク上に、少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを形成する工程、
ここで、前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた制限フランクと、
凸面の第1曲率半径を有する、前記ねじ山頂部と前記制限フランクとの間に延在する第1半径と、
凹面の第2曲率半径を有する、前記制限フランクから前記荷重フランクまで延在する第2半径と、
を含み、
前記ボックスコネクタが対応するピンコネクタと螺合されたとき、少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンによって、前記管状接続部の前記半径方向支圧強度S
rb
’がS
rb
に低減されるように、前記投影荷重フランク半径方向接触面H
r
’がH
r
に低減される、
を含む、管状部材上におけるボックスコネクタを製造するための方法。
【請求項7】
管状部材上におけるピンコネクタを製造するための方法であって、
前記ピンコネクタは、外径、貫通孔内径、および長手方向軸線を有する別の管状部材上に設けられた対応するボックスコネクタに受け入れられるように適合されており、
a)前記第1管状部材の端部上にピンコネクタを形成する工程、
ここで、前記ピンコネクタは、外径、貫通孔内径、ピン一次ショルダ、ピン二次ショルダ、および公称ピッチ径を有する複数の外部ねじ山のゾーンを含み、
前記ピンコネクタが対応するボックスコネクタと螺合されたとき、前記一次ショルダ、前記二次ショルダ、前記公称ピッチ径、および複数の前記ねじ山は、断面接続強度S
cs
を形成する;
b)前記ピン一次ショルダと前記ピン二次ショルダとの間の領域に複数のねじ山を形成する工程、
ここで、複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、荷重フランク、およびスタビングフランクを含み、
前記ピンコネクタが対応するボックスコネクタと螺合されたとき、前記ピンコネクタ上の複数の前記ねじ山の各々は、対応する前記ボックスコネクタ上の対応するねじ山に、投影半径方向に沿って接触し、これにより、管状接続部の半径方向支圧強度S
rb
’に対応する投影荷重フランク半径方向接触面H
r
’が、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成される;
c)複数の前記ピンコネクタねじ山の複数の前記荷重フランク上に、少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを形成する工程、
ここで、前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた制限フランクと、
凸面の第1曲率半径を有する、前記ねじ山頂部と前記制限フランクとの間に延在する第1半径と、
凹面の第2曲率半径を有する、前記制限フランクから前記荷重フランクまで延在する第2半径と、
を含み、
前記ボックスコネクタが対応するピンコネクタと螺合されたとき、少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンによって、前記管状接続部の前記半径方向支圧強度S
rb
’がS
rb
に低減されるように、前記投影荷重フランク半径方向接触面H
r
’がH
r
に低減される、
を含む、管状部材上におけるピンコネクタを製造するための方法。
【請求項8】
前記制限フランクは、前記荷重フランクから0.002~0.010インチのところに差し込まれている、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
凸面の前記第1曲率半径は、0.015インチであり、
凹面の前記第2曲率半径は、0.015インチである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記コネクタが対応するコネクタと螺合されたとき、管状接続部が形成され、それによって、少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンは、関係
【数2】
が満たされるように、前記管状接続部を変化させる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項11】
管状部材であって、
前記管状部材の第1端部上にはボックスコネクタが設けられており、
前記ボックスコネクタは、別の管状部材上に設けられた対応するピンコネクタを受け入れるように適合されており、
前記ボックスコネクタは、公称ピッチ径、長手方向軸線、一次ショルダ、二次ショルダ、および複数の内部ねじ山のゾーンを含み、
複数の内部ねじ山の前記ゾーンは、前記長手方向軸線に関してテーパになった複数のねじ山を含み、
複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、少なくとも1つの荷重フランク、スタビングフランク、および少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを含み、
前記ボックスコネクタは、別の管状部材上に設けられた対応するピンコネクタと螺合されることによって管状接続部が形成されるように適合されており、
前記ボックスコネクタ上の少なくとも1つの前記荷重フランクの各々は、対応する前記ピンコネクタ上の対応するねじ山の少なくとも1つの前記荷重フランクに、投影半径方向に沿って接触し、これにより、少なくとも1つの荷重フランク投影半径方向接触面Hrが、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成され、
管状部材間の接続がなされたとき、前記管状接続部の複数の前記一次ショルダ、複数の前記二次ショルダ、平均直径、および複数の前記ねじ山は、断面接続強度S
cs
に対応し、
少なくとも1つの前記投影荷重フランク半径方向接触面H
r
は、複数のねじ山の前記ゾーンの長さ全体に沿って、半径方向支圧強度S
rb
に対応し、
少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンは、関係
【数3】
が満たされるように、前記投影荷重フランク半径方向接触面を変化させる、管状部材。
【請求項12】
管状部材であって、
前記管状部材の第1端部上にはピンコネクタが設けられており、
前記ピンコネクタは、別の管状部材上に設けられた対応するボックスコネクタに受け入れられるように適合されており、
前記ピンコネクタは、公称ピッチ径、長手方向軸線、一次ショルダ、二次ショルダ、および複数の外部ねじ山のゾーンを含み、
複数の外部ねじ山の前記ゾーンは、前記長手方向軸線に関してテーパになった複数のねじ山を含み、
複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、少なくとも1つの荷重フランク、スタビングフランク、および少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを含み、
前記ピンコネクタは、別の管状部材上に設けられた対応するボックスコネクタと螺合されることによって管状接続部が形成されるように適合されており、
前記ピンコネクタ上の少なくとも1つの前記荷重フランクの各々は、対応する前記ボックスコネクタ上の対応するねじ山の少なくとも1つの前記荷重フランクに、投影半径方向に沿って接触し、これにより、少なくとも1つの投影荷重フランク半径方向接触面H
r
が、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成され、
管状部材間の接続がなされたとき、前記管状接続部の複数の前記一次ショルダ、複数の前記二次ショルダ、平均直径、および複数の前記ねじ山は、断面接続強度S
cs
に対応し、
少なくとも1つの前記投影荷重フランク半径方向接触面H
r
は、複数のねじ山の前記ゾーンの長さ全体に沿って、半径方向支圧強度S
rb
に対応し、
少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンは、関係
【数4】
が満たされるように、前記投影荷重フランク半径方向接触面を変化させる、管状部材。
【請求項13】
前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた制限フランクと、
第1曲率半径を有する、前記ねじ山頂部と前記制限フランクとの間に延在する第1半径と、
第2曲率半径を有する、前記制限フランクから前記荷重フランクまで延在する第2半径と、
を含み、
前記第1半径は、凸面の曲率半径を有し、
前記第2半径は、凹面の曲率半径を有する、請求項11または12に記載の管状部材。
【請求項14】
前記制限フランクは、前記荷重フランクから0.002~0.010インチのところに差し込まれている、請求項13に記載の管状部材。
【請求項15】
凸面の前記第1曲率半径は、0.015インチであり、
凹面の前記第2曲率半径は、0.015インチである、請求項14に記載の管状部材。
【請求項16】
前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた制限フランクと、
第1曲率半径を有する、前記ねじ山根部と前記制限フランクとの間に延在する第1半径と、
第2曲率半径を有する、前記制限フランクから前記荷重フランクまで延在する第2半径と、
を含み、
前記第1半径は、凹面の曲率半径を有し、
前記第2半径は、凹面の曲率半径を有する、請求項11または12に記載の管状部材。
【請求項17】
前記制限フランクは、前記荷重フランクから0.002~0.010インチのところに差し込まれている、請求項16に記載の管状部材。
【請求項18】
凹面の前記第1曲率半径は、0.030インチであり、
凹面の前記第2曲率半径は、0.015インチである、請求項17に記載の管状部材。
【請求項19】
前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた、少なくとも1つの制限フランクと、
凹面の曲率半径を有する、前記荷重フランクと前記制限フランクとの間に延在する半径と、
を含む、請求項11または12に記載の管状部材。
【請求項20】
前記制限フランクは、前記荷重フランクから0.002~0.010インチのところに差し込まれている、請求項19に記載の管状部材。
【請求項21】
凹面の前記曲率半径は、0.010インチである、請求項
20に記載の
管状部材。
【請求項22】
管状部材間の接続がなされたとき、前記管状接続部の前記投影荷重フランク半径方向接触面H
r
は、約0.070インチに等しい、請求項11または12に記載の管状部材。
【請求項23】
螺合されトルクが与えられたとき、ねじ山の前記荷重フランクに直接的に隣接する材料は、当該荷重フランクに対して平行に配向されたひずみ硬化金属結晶粒組織を有する、請求項11または12に記載の管状部材。
【請求項24】
ピンコネクタとボックスコネクタとの間の管状接続部であって、
前記ピンコネクタは、前記ボックスコネクタと螺合されるように適合されており、
複数の前記コネクタの各々は、外径、貫通孔内径、公称ピッチ径、および長手方向軸線を有し、
前記接続部は、
ピン一次ショルダ、ピン二次ショルダ、および複数の外部ねじ山のゾーンを含むテーパ付きピンコネクタと、
ボックス一次ショルダ、ボックス二次ショルダ、および複数の内部ねじ山のゾーンを含むテーパ付きボックスコネクタと、
を含み、
複数の前記ねじ山ゾーンは、前記長手方向軸線に関してテーパになった複数のねじ山を含み、
複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、少なくとも1つの荷重フランク、スタビングフランク、および少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを含み、
前記ピンコネクタ上の少なくとも1つの前記荷重フランクの各々は、前記ボックスコネクタ上の対応するねじ山の少なくとも1つの前記荷重フランクに、投影半径方向に沿って接触し、これにより、少なくとも1つの投影荷重フランク半径方向接触面H
r
が、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成され、
複数の前記一次ショルダ、複数の前記二次ショルダ、平均直径、および複数の前記ねじ山は、断面接続強度S
cs
に対応し、
少なくとも1つの前記投影荷重フランク半径方向接触面は、複数のねじ山の前記ゾーンの長さ全体に沿って、半径方向支圧強度S
rb
に対応し、
少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンは、関係
【数5】
が満たされるように、前記投影荷重フランク半径方向接触面H
r
を変化させる、管状接続部。
【請求項25】
管状部材上におけるボックスコネクタを製造するための方法であって、
前記ボックスコネクタは、外径、貫通孔内径、および長手方向軸線を有する別の管状部材上に設けられた対応するピンコネクタを受け入れるように適合されており、
a)前記第1管状部材の端部上にボックスコネクタを形成する工程、
ここで、前記ボックスコネクタは、外径、貫通孔内径、ボックス一次ショルダ、ボックス二次ショルダ、および公称ピッチ径を有する複数の内部ねじ山のゾーンを含み、
前記ボックスコネクタが対応するピンコネクタと螺合されたとき、前記一次ショルダ、前記二次ショルダ、前記公称ピッチ径、および複数の前記ねじ山は、断面接続強度S
cs
を形成する;
b)前記ボックス一次ショルダと前記ボックス二次ショルダとの間の領域に複数のねじ山を形成する工程、
ここで、複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、荷重フランク、およびスタビングフランクを含み、
前記ボックスコネクタが対応するピンコネクタと螺合されたとき、前記ボックスコネクタ上の複数の前記ねじ山の各々は、対応する前記ピンコネクタ上の対応するねじ山に、投影半径方向に沿って接触し、これにより、前記管状接続部の半径方向支圧強度S
rb
’に対応する投影荷重フランク半径方向接触面H
r
’が、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成される;
c)複数の前記ボックスコネクタねじ山の複数の前記荷重フランク上に、少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを形成する工程、
ここで、前記ボックスコネクタが対応するピンコネクタと螺合されたとき、少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンによって、前記管状接続部の前記半径方向支圧強度S
rb
’がS
rb
に低減されるように、前記投影荷重フランク半径方向接触面H
r
’がH
r
に低減され、
前記ボックスコネクタが対応するピンコネクタと螺合されたとき、管状接続部が形成され、それによって、少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンは、関係
【数6】
が満たされるように、前記管状接続部を変化させる、
を含む、管状部材上におけるボックスコネクタを製造するための方法。
【請求項26】
管状部材上におけるピンコネクタを製造するための方法であって、
前記ピンコネクタは、外径、貫通孔内径、および長手方向軸線を有する別の管状部材上に設けられた対応するボックスコネクタに受け入れられるように適合されており、
a)前記第1管状部材の端部上にピンコネクタを形成する工程、
ここで、前記ピンコネクタは、外径、貫通孔内径、ピン一次ショルダ、ピン二次ショルダ、および公称ピッチ径を有する複数の外部ねじ山のゾーンを含み、
前記ピンコネクタが対応するボックスコネクタと螺合されたとき、前記一次ショルダ、前記二次ショルダ、前記公称ピッチ径、および複数の前記ねじ山は、断面接続強度S
cs
を形成する;
b)前記ピン一次ショルダと前記ピン二次ショルダとの間の領域に複数のねじ山を形成する工程、
ここで、複数の前記ねじ山は、ねじ山頂部、ねじ山根部、荷重フランク、およびスタビングフランクを含み、
前記ピンコネクタが対応するボックスコネクタと螺合されたとき、前記ピンコネクタ上の複数の前記ねじ山の各々は、対応する前記ボックスコネクタ上の対応するねじ山に、投影半径方向に沿って接触し、これにより、管状接続部の半径方向支圧強度S
rb
’に対応する投影荷重フランク半径方向接触面H
r
’が、互いに噛み合う前記荷重フランクによって形成される;
c)複数の前記ピンコネクタねじ山の複数の前記荷重フランク上に、少なくとも1つの荷重フランク低減ゾーンを形成する工程、
ここで、前記ピンコネクタが対応するボックスコネクタと螺合されたとき、少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンによって、前記管状接続部の前記半径方向支圧強度S
rb
’がS
rb
に低減されるように、前記投影荷重フランク半径方向接触面H
r
’がH
r
に低減され、
前記ピンコネクタが対応するボックスコネクタと螺合されたとき、管状接続部が形成され、それによって、少なくとも1つの前記荷重フランク低減ゾーンは、関係
【数7】
が満たされるように、前記管状接続部を変化させる、
を含む、管状部材上におけるピンコネクタを製造するための方法。
【請求項27】
工程(c)の前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた制限フランク、第1曲率半径を有する、前記ねじ山頂部と前記制限フランクとの間に延在する第1半径、第2曲率半径を有する、前記制限フランクから前記荷重フランクまで延在する第2半径を形成する工程
をさらに含み、
前記第1半径は、凸面の第1曲率半径を有し、
前記第2半径は、凹面の第2曲率半径を有する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記制限フランクは、前記荷重フランクから0.002~0.010インチのところに差し込まれている、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
凸面の前記第1曲率半径は、0.015インチであり、
凹面の前記第2曲率半径は、0.015インチである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
工程(c)の前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた制限フランク、第1曲率半径を有する、前記ねじ山根部と前記制限フランクとの間に延在する第1半径、第2曲率半径を有する、前記制限フランクから前記荷重フランクまで延在する第2半径を形成する工程
をさらに含み、
前記第1半径は、凹面の第1曲率半径を有し、
前記第2半径は、凹面の曲率半径を有する、請求項25または26に記載の方法。
【請求項31】
前記制限フランクは、前記荷重フランクから0.002~0.010インチのところに差し込まれている、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
凹面の前記第1曲率半径は、0.030インチであり、
凹面の前記第2曲率半径は、0.015インチである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程(c)の前記荷重フランク低減ゾーンは、
前記荷重フランクに対して平行に差し込まれた制限フランク、および凹面の曲率半径を有する、前記荷重フランクと前記制限フランクとの間に延在する半径を形成する工程
をさらに含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項34】
前記制限フランクは、前記荷重フランクから0.002~0.010インチのところに差し込まれている、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
凹面の前記曲率半径は、0.010インチである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
工程(c)は、
荷重低減ゾーンを形成する工程をさらに含み、
ここで、前記投影荷重フランク半径方向接触面H
r
は、約0.070インチに等しい、請求項25または26に記載の方法。
【国際調査報告】