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特表2024-542450接触熱分解供給原料からの再生可能なディーゼルの製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】接触熱分解供給原料からの再生可能なディーゼルの製造
(51)【国際特許分類】
   C10G 45/44 20060101AFI20241108BHJP
   C10G 1/00 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 29/06 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C10G45/44
C10G1/00 B
B01J29/06 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529173
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2022081445
(87)【国際公開番号】W WO2023088771
(87)【国際公開日】2023-05-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ドレイラール マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ファンジェ ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】フューネ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ボナルド ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ソレンセン チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】カルトラーノ アンソニー ロッコ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA07A
4G169CC07
4G169ZA11A
4G169ZA12A
4G169ZA16A
4G169ZA22A
4H129AA03
4H129BA03
4H129BA08
4H129BB04
4H129BC13
4H129BC14
4H129BC26
4H129CA07
4H129CA22
4H129CA25
4H129DA19
4H129KA02
4H129KB02
4H129KC16X
4H129KC17X
4H129NA15
4H129NA23
(57)【要約】
本発明は、再生可能なディーゼル燃料の製造のための接触熱分解方法を提供する。本発明は、再生可能なディーゼル燃料を調製するための方法を提供し、以下によって再生可能なディーゼル燃料を調製することを含んでいる:a)再生可能な芳香族類を含んでいる混合物を分画して、大気圧条件で180℃~350℃で沸騰する第1の画分と、第1の画分の沸点未満で沸騰する画分とを生じさせ、第1の画分の少なくとも一部を、第1の画分よりも芳香族含有率が低い少なくとも1つの蒸留物留分とブレンドする工程、およびb)第1の画分と芳香族含有率がより低い蒸留物留分とのブレンドを水素化して、再生可能なディーゼル燃料を含んでいる水素化済み画分を生じさせる工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能なディーゼル燃料を調製するための方法であって、以下の工程によって再生可能なディーゼル燃料を調製することを含む、方法:
a) 再生可能な芳香族化合物を含んでいる混合物を分画して、大気条件で180℃~350℃で沸騰する第1の画分と、第1の画分の沸点未満で沸騰する画分とを生じさせ、第1の画分の少なくとも一部を、第1の画分よりも低い芳香族含有率を有する少なくとも1つの蒸留物留分とブレンドする工程、および
b) 第1の画分とより低い芳香族含有率を有する蒸留物留分とのブレンドを水素化して、再生可能なディーゼル燃料を含んでいる水素化済み画分を生じさせる工程。
【請求項2】
再生可能なディーゼル燃料を調製するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
a) バイオマス、触媒組成物、および輸送流体を、反応条件で維持された接触熱分解方法の流動床反応器に給送して、原料流体生成物流れを製造する工程、
b) a)の原料流体生成物流れを固体の分離およびストリッピングのシステムに給送して、分離された固体と、流体生成物流れとを生じさせる工程、
c) b)の流体生成物流れを分画システムに給送して、180℃以上かつ350℃までで沸騰する第1の画分を回収する工程、
d) c)の第1の画分を、第1の画分よりも低い芳香族含有率を有する少なくとも1つの蒸留物留分と混合して、得られた混合物の芳香族含有率を60重量%未満に希釈する工程であって、少なくとも1つの蒸留物留分の沸騰範囲は、ディーゼル燃料と適合可能であり、工程d)のブレンド中の第1の画分の割合よりも低い芳香族含有率を有する蒸留物留分は、好ましくは40重量%を上回り、好ましくは50重量%を上回り、70重量%を上回り、80重量%~100重量%であり、
e) d)で作製されたブレンドの少なくとも一部を水素化条件で水素により水素化して、水素化済み画分を生じさせる工程、
f) 場合による、e)の水素化済み画分からナフテン類を含んでいるディーゼル燃料を回収する工程。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、以下の工程を含む、方法:
a) 再生可能な芳香族化合物を含んでいる混合物を分画して、大気条件で180℃以上で沸騰する第1の画分と、第1の画分を下回る沸点を有する画分とを生じさせ、第1の画分の少なくとも一部を、第1の画分よりも低い芳香族含有率を有する少なくとも1つの蒸留物留分とブレンドする工程、および
b)第1の画分と蒸留物留分とのブレンドを水素化する工程。
【請求項4】
c)において、b)の流体生成物流れを分画システムに給送して、180℃以上で沸騰する第1の画分を回収することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
d)は、c)の第1の画分を、第1の画分よりも低い芳香族含有率を有する少なくとも1つの蒸留物留分と混合して、得られる混合物の芳香族含有率を50重量%未満に希釈することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
d)は、c)の第1の画分を、第1の画分よりも低い芳香族含有率を有する少なくとも1つの蒸留物留分と混合して、得られる混合物の芳香族含有率を40重量%未満に希釈することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
再生可能な芳香族化合物を含んでいる混合物は、バイオマスの熱分解の生成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
バイオマスは、木材、林業廃棄物、コーンストーバー、農業固形廃棄物、都市固形廃棄物、消化物、食品廃棄物、動物廃棄物、炭水化物、リグノセルロース系材料、キシリトール、グルコース、セロビオース、ヘミセルロース、リグニン、またはそれらの組み合わせである、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
蒸留物留分は、直留ガスオイル、または直留ガスオイルとライトサイクルオイルとの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
蒸留物留分は、直留ガスオイル、または直留ガスオイルとライトサイクルオイルとの混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
a)の原料流体生成物流れは、ナフタレンに富む油である、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
水素化により、芳香環を有する化合物をナフテン類に転化する、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
a)において、熱分解を、300℃~1000℃の操作温度、0.1~3.0MPaの圧力、および0.1~40の固体触媒/バイオマスの質量比で行う、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
a)において、熱分解を、12を超えるシリカ対アルミナ比および10nm未満の平均細孔サイズを有する内部多孔度部を有する結晶性モレキュラーシーブである触媒により行う、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
触媒は、ZSM-5、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50またはそれらの混合物である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
c)において、第1の画分は、最低25容積%のナフタレンおよび置換型ナフタレン類を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
e)における水素化済み画分は、テトラリン類、デカリン類およびナフテン類を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
e)からの水素化済み画分の一部をa)における熱分解にリサイクルすることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
請求項2に記載の方法により製造される、再生可能な燃料を含有しているディーゼル燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された接触熱分解方法に関する。特に、本発明は、再生可能な供給原料からナフタレンに富む油相の接触熱分解および水素化を介して再生可能なディーゼル燃料を製造する方法に関する。この水素化工程は、慣例的な石油材料または生物起源のものであり得る任意の外部蒸留物留分とともに共処理して、接触熱分解方法から得られるナフタレンに富む油相によって主としてもたらされる混合物の芳香族濃度を適切に調節するにあたって行われ、これにより水素化の発熱管理が可能となり、規格通りの最終ディーゼル生成物が得られる。ナフタレンに富む油相の終沸点の調節は、ディーゼル燃料仕様を満たすことに加えて、残留部分の流動を可能にするのに非常に重要である。
【背景技術】
【0002】
現代の製油所は、原油を多数の単位操作および転化反応を通じて転化して、ディーゼル、ジェット燃料、およびガソリンブレンドストックを含むいくつかの個々の流れとし、これらは、別々のタンクに貯蔵されることで、計算された割合で一緒にブレンドされ、自動車、トラック、および航空機で用いられる種々のグレードの「完成」燃料グレードを得ることができる。
【0003】
米国において、ガソリン、ジェット、およびディーゼルの燃料に特定の最小レベルから最大レベルの間で再生可能な起源のブレンドストックを含めることを義務付ける追加の法律がある。現在、これらの制限は、議会によって再生可能な燃料の基準(Renewable Fuels Standards:RFS)を介して設定されている。RFSは、2022年までに210億ガロンの先進バイオ燃料が製造される必要があることを義務付けている。これらの先進バイオ燃料の一部は、代替可能な輸送用燃料、例えば、バイオマス由来のガソリン、ジェット燃料、およびディーゼルとなるだろう。この義務を果たすためにバイオマスからそのような燃料を製造する努力が続けられており、バイオマスから経済的に製造されるガソリン、ジェット、およびディーゼルの燃料に対する強い需要が存在するだろうことが認識されている。ガソリンのブレンド要件を満たすのに米国において用いられる主な再生可能な起源のガソリンブレンドストックは、主としてトウモロコシまたは糖の発酵から製造されるエタノールである。小規模ではあるが、国の再生可能なガソリンプールへの寄与が増えつつあるのは、非食品バイオマス、例えば、コーンストーバーから作られるいわゆる「第二世代」セルロース系エタノールである。
【0004】
2020年9月に発表されたUS DOE Office of Energy Efficiency and Renewable Energy (EERE)の報告(非特許文献1)に記載されているように、世界の1060億ガロン(国内では210億ガロン)の商用ジェット燃料市場は2050年までに2倍を超えると見積もられている。
【0005】
再生可能なディーゼル燃料は、石油ディーゼル燃料と同じ化学的特性を示す必要があるバイオ燃料である。現時点で、再生可能なディーゼルは、主として植物油、脂肪から製造されており、より程度は低いがリグノセルロース系バイオマス材料、例えば、木材、おがくず、作物残渣、およびスイッチグラスから製造されている。それは、水素化処理、ガス化、および熱分解のような種々の方法を通じて製造される。
【0006】
それは、再生可能な燃料の基準(Renewable Fuel Standard:RFS)プログラム下に先進バイオ燃料として認定されており、石油ディーゼルに関する米国試験材料協会(American Society for Testing and Materials:ASTM)の仕様ASTM D975を満たす必要がある。ディーゼル燃料は、主にパラフィン類、芳香族化合物、およびナフテン類からなる。ディーゼルの炭化水素は、典型的には12~20個の炭素原子を含み、170~360℃の沸騰範囲を有する。ディーゼル燃料の品質を測る主な基準は、そのセタン価である。セタン価は、ディーゼル燃料の着火遅延の尺度である。セタン価が高いほど、高温の圧縮空気に噴霧されたときに燃料がより容易に着火することを示している。欧州(EN590規格)の道路用ディーゼルの最小セタン価は、51である。より高いセタン価を有する燃料、通常は追加の洗浄剤およびいくつかの合成内容物を含む「プレミアム」ディーゼル燃料は、一部の市場で入手可能である。
【0007】
米国において、石油由来のディーゼルは、約75%の飽和炭化水素(主にノルマルパラフィン、イソパラフィン、およびシクロパラフィンを含むパラフィン類)と、25%の芳香族炭化水素(ナフタレン類およびアルキルベンゼン類を含む)とから構成されている。
【0008】
製造のルートに応じて、再生可能なディーゼルを適切な組成および仕様、つまり商用ディーゼルとして販売されるのに必須の条件にするのに後処理が必要とされる。
【0009】
再生可能なディーゼルは低いレベルの硫黄を含有するため、酸性雨の主成分である硫黄酸化物および硫酸塩の排出量は、低い。再生可能なディーゼルの使用により、未燃炭化水素、一酸化炭素(CO)、および粒子状物質の削減ももたらされる。バイオディーゼルを用いるCO排出量は、ほとんどの石油由来のディーゼル燃料と比較して50%ほど大幅に削減される。バイオディーゼルからの粒子状物質の排気ガス排出量は、石油由来のディーゼルからの粒子状物質の排出量全体よりも30%低いことが判明している。総炭化水素の排気ガス排出量(スモッグおよびオゾンの局所的形成における寄与要因)は、再生可能なディーゼルの方がディーゼル燃料よりも最大93%低い。
【0010】
2019年に、米国の再生可能なディーゼルの総消費量は、約9億ガロンであった。
【0011】
バイオマス熱分解は、再生可能な燃料および燃料ブレンドストックを提供するための代替として開発されてきた。バイオマス熱分解の生成物は、複雑で不安定なバイオオイルであり、その組成は、供給原料および熱分解条件に応じて大幅に変わり、過度の酸素化物を含む何百種もの化合物を含む。一般に、バイオオイルには、20重量%~40重量%の酸素と、少割合(%)の硫黄含有物質とが含まれている。バイオオイルの水素化処理には、水素化脱酸素(HDO)、水素化脱硫(HDS)、オレフィン水素化および芳香族の飽和を含めて、オイルをブレンドストックまたは単独燃料として適したものにすることが必要とされる。水素化処理は、酸素をほとんど含まない石油供給原料向けには十分に開発されているが、バイオオイルを水素化処理するという課題は、より実質的である。現在までのところ、バイオオイルを水素化処理するのに好適な方法は、高圧の水素、貴金属触媒、および多数の単位操作を必要とする多段階システムである(例えば、非特許文献2が参照され、これは、http://www.osti.gov/bridgeにおいて電子的に入手可能である)。
【0012】
バイオマスの接触熱分解は、バイオマスを化学物質および燃料にアップグレードするための改善された熱的方法として開発されている。この方法は、流動床反応器における触媒の存在中でのバイオマスの転化を含む。触媒は、通常、酸性のミクロ多孔質の結晶性物質、通常はゼオライトである。ゼオライトは、バイオマス分解の一次熱分解生成物のアップグレードに有効であり、これらを芳香族化合物、オレフィン類、CO、CO、炭、コーク、水、およびその他の有用な材料に転化する。芳香族化合物としては、数ある芳香族化合物の中でも、ベンゼン、トルエン、キシレン類(総称してBTX)、およびナフタレン/アルキルナフタレンが挙げられる。オレフィン類には、エチレン、プロピレン、およびより少量のより高分子量のオレフィン類が含まれる。BTX芳香族化合物は、これらの価値が高く、かつ輸送し易いため望ましい生成物である。トルエンおよびキシレン類がガソリン成分として特に望ましいのは、それらのオクタン等級およびエネルギー密度が高いことに起因している。より重質の芳香族化合物は、ジェットおよびディーゼルの燃料の適切な前駆体である。適切な条件下で製造された場合、接触熱分解の生成物は、酸素含有率が非常に低い。
【0013】
特許文献1には、バイオマス接触熱分解方法からのナフタレンに富む油相の単離が記載されている。ナフタレンに富む油相または多核芳香族化合物を含む他の材料を水素化処理または水素化することの言及はなされていない。
【0014】
バイオマス由来の供給原料をディーゼルまたはジェットの燃料に転化するのに種々の技術が開発されており、例えば、アルコールの脱水、油の水素化、ガス化、および糖の転化がある。これらの技術の全ては、再生可能な燃料を作り出す多段の処理工程を含んでおり、再生可能な燃料前駆体を作り出す木質バイオマスの1工程の接触熱分解は記載されていない。多くのこのような方法は、非特許文献3に詳細に記載されており、ここで、「固体ベースの供給原料は、ガス化を通じてバイオマス由来の中間体に転化され、生化学的方法または熱化学的方法を通じてアルコールに転化され、生化学的方法を通じて糖に転化され、そして熱分解方法を通じてバイオオイルに転化される」。Wangは、「バイオオイルは、C1からC21以上の範囲にわたる炭素を含有している酸素化有機化学種の混合物である」と指摘している。Wangによって考えられた方法はいずれも、残留ヘテロ原子、例えば、S、N、およびOの除去並びに特定の芳香族部分の飽和しか必要とせずに固形供給原料を酸素含有率が非常に低い物質に直接的に転化して再生可能なディーゼル燃料またはディーゼル燃料ブレンドストックを生じさせることはできない。
【0015】
特許文献2~7(それぞれは参照としてその全体が本明細書に援用される)において、接触熱分解に適した装置および方法の条件が記載されている。
【0016】
現在の商業慣行および技術の開示を踏まえると、バイオマスの単一工程接触熱分解の使用によって、技術上および規制上の制限を満たす再生可能な燃料、特に再生可能なディーゼル燃料を製造するための簡単で経済的な方法が求められている。本発明は、そのような方法、および得られるディーゼル燃料組成物および化学物質を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0165527号明細書
【特許文献2】米国特許第8277643号明細書
【特許文献3】米国特許第8864984号明細書
【特許文献4】米国特許第9790179号明細書
【特許文献5】米国特許第10370601号明細書
【特許文献6】米国特許第10767127号明細書
【特許文献7】米国特許第10822562号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】“Sustainable Aviation Fuel: Review of Technical Pathways”、2020年9月出版
【非特許文献2】S. Jones ら著、“Process Design and Economics for the Conversion of Lignocellulosic Biomass to Hydrocarbon Fuels: Fast Pyrolysis and Hydrotreating Bio-oil Pathway,” PNNL-23053, November 2013
【非特許文献3】W-C Wangら著、“Review of Biojet Fuel Conversion Technologies,” Technical Report NREL/TP-5100-66291, July 2016
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の概要)
本発明の種々の態様は、接触熱分解および選択された接触熱分解生成物の水素化または他の方法を介した再生可能な供給原料からのディーゼル燃料の製造を含む。本発明は、経済的な改善された方法でこれを提供する。
【0020】
第1の態様において、本発明は、再生可能なディーゼル燃料を調製するための改善された方法を提供し、当該方法は、以下の工程を含んでいる:接触熱分解方法からの再生可能な芳香族化合物を含んでいる混合物を分画システムに給送して、画分、例えば、大気条件で180℃以上で沸騰する画分および大気条件において180℃以下で沸騰する画分を回収する工程、180℃以上で沸騰する工程a)の回収された画分の少なくとも一部を、より低い芳香族含有率を示す蒸留物留分の任意の供給源とブレンドして、このブレンドの全芳香族含有率を制限し、混合物を水素化条件下に処理して水素化済み画分を生じさせる工程、および生成物回収システムにおいて工程b)の水素化済み画分から再生可能な燃料を回収する工程。
【0021】
より詳細には、本発明は、以下の工程を含む:
a) バイオマス、触媒組成物、および輸送流体を、反応条件で維持された接触熱分解方法の流動床反応器に給送して、原料流体生成物流れを製造する工程、
b) 工程a)の原料流体生成物流れを固体の分離およびストリッピングシステムに給送して、分離された固体および流体生成物流れを生じさせる工程、
c) 工程b)の流体生成物流れを分画システムに給送して、180℃以上の画分;好ましくは180℃~350℃で沸騰する画分、さらに好ましくは200℃~320℃で沸騰する画分を回収する工程、
d) 180℃以上で沸騰する工程c)の画分を、この画分よりも低い芳香族含有率を示す蒸留物留分の任意の供給源と混合して、ブレンドの芳香族化合物を希釈し、ブレンドの芳香族化合物濃度を60重量%未満または50重量%未満または40重量%未満に適切に調節する工程;ここで、外部蒸留物留分の供給源は、ディーゼル仕様と適合可能な沸騰範囲によって規定され、ナフテン類、パラフィン類などのような芳香族化合物以外の分子を示す。一例であって、限定されるものではないが、これらの外部蒸留物留分は、原油の常圧蒸留に起因する直留ガスオイル、または直留ガスオイルと流体接触分解ユニットに起因するライトサイクルオイル(LCO)との混合物であり得るだろう。両方の材料は、典型的には、適切にアップグレードした後に、製油所におけるディーゼルの主な供給源である。他の蒸留物留分は、HVOのような任意の生物起源の蒸留物、または脂肪およびバイオマスの転化から得られると見なされ得る。ナフタレンに富むオイルベースへのそれらの添加は、ブレンドの全芳香族含有率を低下させる必要がある。
e) 工程d)において作製されたブレンドの少なくとも一部を水素化条件で水素により水素化して、水素化済みの画分を生じさせる工程、
f) 生成物回収システムにおいて工程e)の水素化済み画分からナフテン類を含んでいる燃料、例えばディーゼル燃料を回収する工程。
【0022】
本発明において示される沸騰範囲は、控え目な圧力操作下、典型的には大気圧または大気圧に近い圧力、例えば0.1MPaでの沸騰範囲を指す。
【0023】
(用語集)
本明細書において用いられる場合、用語「バイオマス」は、当該技術分野におけるその慣例的な意味を有し、再生可能なあらゆる有機エネルギー源または化学物質を指す。その主な構成要素は、以下であり得る:(1)樹木(木材)および全ての他の植生;(2)農産物および廃棄物(コーンストーバー、果物、生ゴミのエンシレージ(garbage ensilage)など);(3)藻類およびその他の海洋植物;(4)代謝廃棄物(堆肥、下水)、並びに(5)セルロース系都市廃棄物、および炭素質都市廃棄物。バイオマス材料の例は、例えば、Huber, G.W. et al, “Synthesis of Transportation Fuels from Biomass: Chemistry, Catalysts, and Engineering,” Chem. Rev. 106, (2006), pp. 4044-4098に記載されている。
【0024】
バイオマスは、慣例的に、燃料としての使用または工業生産のために転化され得る生きているまたは最近死んだばかりの生物学的材料として定義されている。バイオマスとしての基準は、その材料が最近炭素循環に加わったばかりであるべきであり、そのため、燃焼方法における炭素の放出が、適度に短い期間にわたる平均では炭素循環に加わる炭素の純増加をもたらさないことにある(この理由のため、化石燃料、例えば、泥炭、褐炭および石炭がこの定義によるバイオマスとはみなされないのは、それらは、長い間炭素循環に加わっていなかった炭素を含有しているため、それらの燃焼が大気中の二酸化炭素の純増加をもたらすからである)。最も一般的には、バイオマスは、バイオ燃料としての使用のために栽培された植物性物質を指すが、それは、繊維、化学物質または熱の生産に用いられる植物または動物の物質も含む。バイオマスは、燃料として燃焼されることができるまたは化学物質に転化されることができる生分解性廃棄物または副産物を含む場合もあり、都市廃棄物、植物性廃棄物(庭または公園の廃棄物から構成される生分解性廃棄物、例えば、草または花の切り取ったものおよび生け垣の刈り取ったもの)、動物の糞尿を含む農業の副産物、食品加工廃棄物、下水汚泥、および木材パルプまたは藻類からの黒液を含む。バイオマスは、地質学的プロセスによって石炭、オイルシェールまたは石油などの物質に変換された有機材料を除外する。バイオマスは、広範かつ典型的には、ススキ、トウダイグサ、ヒマワリ、スイッチグラス、麻、トウモロコシ(メイズ)、ポプラ、ヤナギ、サトウキビ、およびアブラヤシ(パーム油)を含む植物から栽培され、根、茎、葉、種皮および果実の全てが役立つ可能性がある。加工処理ユニットに導入するための原材料の加工処理は、ユニットの要求およびバイオマスの形態に応じて異なる場合がある。ASTM法のD 6866-06によって決定される化石燃料中に見られる量よりも大幅に多い量の14Cの存在によって、バイオマスは、化石由来の炭素と区別されることができる。
【0025】
本発明の方法において用いられるバイオマスは、最も好ましくは、木材、林業廃棄物、コーンストーバー、農業固形廃棄物、都市固形廃棄物、消化物、食品廃棄物、動物廃棄物、炭水化物、リグノセルロース系材料、キシリトール、グルコース、セロビオース、ヘミセルロース、リグニン、およびそれらの組み合わせの中から選ばれる固形材料であり得る。
【0026】
用語「再生可能」は、バイオマス由来の物質を指す;好ましくは、最低50質量%のバイオマス由来のC、または最低80質量%のバイオマス由来のCを含有しており、典型的には、90~100%のCのは、バイオマス由来である。
【0027】
本明細書において用いられる接触熱分解におけるバイオマス転化から得られる用語「ナフタレンに富む油」には、ナフタレン、メチルナフタレン類(例えば、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレンなど)、ジメチルナフタレン類(例えば、1,5-ジメチルナフタレン、1,6-ジメチルナフタレン、2,5-ジメチルナフタレンなど)、エチルナフタレン類、その他のポリ芳香族化合物(例えば、アントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、ピレン、フェナントレンなど)、並びにヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、窒素など)を含有する芳香族化合物およびポリ芳香族化合物が含まれる。ナフタレンに富む油は、典型的には約180℃~約575℃の温度範囲で沸騰する流れである。この流れは、接触熱分解方法におけるバイオマス転化から得られる。
【0028】
ナフタレンに富む留分は、最低25重量%、または最低35重量%、または最低40重量%、または25重量%~90重量%、または35重量%~80重量%、または40重量%~75重量%のナフタレン、置換型ナフタレン類、ナフタレノール類、メチルナフタレノール類、およびナフタレンジオール類の合計と、最低3重量%、または最低5重量%、または最低6重量%、または3重量%~15重量%、または5重量%~10重量%、または6重量%~8重量%のキシレノール類と、15重量%未満、または10重量%未満、または5重量%未満、または0.01重量%~20重量%、または1重量%~15重量%、または5重量%~13重量%のフェナントレン、アントラセン、および他の材料の合計とを含む。
【0029】
本明細書において用いられる場合、蒸留物留分の任意の供給源は、ディーゼル仕様と適合可能であり、かつ、接触熱分解方法におけるバイオマス転化から得られる再生可能なナフタレンに富む留分よりも少ない芳香族化合物を示す沸騰範囲によって規定される。これらの蒸留物留分には、ナフテン類、パラフィン類などのような分子が存在する可能性がある。例として、しかし、限定するものではなく、これらの蒸留物留分は、原油の常圧蒸留に起因する直留ガスオイルまたは直留ガスオイルと流動接触分解ユニットに起因するライトサイクルオイル(LCO)との混合物であり得るだろう。両方の材料は、典型的には、適切にアップグレードした後に、製油所におけるディーゼルの主な供給源である。他の蒸留物留分は、HVOのような任意の生物起源の蒸留物として、または脂肪およびバイオマスの転化から得られると見なされ得る。ナフタレンに富むオイルベースへのそれらの添加は、ブレンドの全芳香族含有率を低下させる必要がある。
【0030】
本明細書において用いられる場合の用語「オフガス」には、H、CO、CO、Nおよび1~6個の炭素原子を含有している炭化水素(例えば、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン、イソブテン、1-ブテン、2-ブテン、ペンタン、ペンテン、ヘキサン、ヘキセンなど)が含まれる。
【0031】
本明細書において用いられる場合の複数種または1種の用語「タール」は、約310℃~約575℃の温度範囲で典型的に沸騰する流れであり、この流れは、通常、暗褐色または黒色で、瀝青質かつ粘稠性である。
【0032】
本明細書において用いられる場合、用語「芳香族化合物(aromatics)」または「芳香族性化合物(aromatic compound)」は、1つまたは複数の芳香族基、例えば、単一の芳香族環系(例えば、ベンジル、フェニルなど)および縮合ポリ環系芳香族環系(例えば、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチルなど)を含んでいる炭化水素の1種または複数種の化合物を指す。芳香族性化合物の例は、ベンゼン、フェノール、ベンゼンジオール類、ベンゼントリオール類、トルエン、クレゾール類、メトキシベンゼン、メチルベンゼンジオール類、エチルベンゼン、キシレン類、スチレン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、メチルベンゼンメタノール、ジメチルフェノール類、エチルフェノール類、ジメチルベンゼンジオール類、エチルカテコール、レゾルシノールモノアセタート、ベンゾフラン、3,4-ジヒドロキシエチルベンゼン、ホロン、エチルトルエン類、プロピルベンゼン類、トリメチルベンゼン類、ベンゼン-1-エチル-4-メトキシ、フェノール-2,3,6-トリメチル、フェノール-4-エチル-2-メトキシ、α-メチルスチレン、メチルスチレン類、1-プロペニルベンゼン、2-プロペニルベンゼン、インダン、2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、1,2-インダンジオール、3-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸メチル、4-(2-プロペニル)-フェノール、(2e)-3-フェニルプロパ-2-エナール、インデン、フェノール-2-(2-プロピニル)、メチルベンゾフラン類、1H-インデノール、2-メチルベンゾチオフェン、1-メチル-4-プロピルベンゼン、1-メチル-4-(プロパン-2-イル)ベンゼン、4-イソプロピルベンジルアルコール、5-イソプロピル-2-メチルフェノール、カルバクロール、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ベンゼンジオール、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、メチルインダン類、2,4-ジメチルスチレン、1-エテニル-4-エチルベンゼン、2-メチル-1-プロペニルベンゼン、2,3-ジヒドロ-5-メチル-1H-インデン、5-メトキシインダン、1,5-ジヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ベンゼン、(1-メチル-2-シクロプロペン-1-イル)、1-メチルインデン、2-メチルインデン、3-メチルインデン、4-メチルインデン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,4-ジヒドロナフタレン、5,8-ジヒドロ-1-ナフタレノール、2-メチル-1-インダノン、2,3-ジメチルベンゾフラン、ナフタレン、ナフタレノール類、ペンタメチルベンゼン、メチルテトラリン類、2,2-ジメチルインダン、1H-インデン 1-エチル-2,3-ジヒドロ、ジメチルインデン類、エチルインデン類、ジヒドロメチルナフタレン類、メチルナフタレン類、メチルナフトール類、1-フェニルシクロヘキセン、エチルナフタレン類、ジメチルナフタレン類、ビフェニル、アセナフテン、ジベンゾフラン、2-(1-メチルエチル)ナフタレン、トリメチルナフタレン類、トリメチルアズレン、3-メチル-1,1-ビフェニル、フルオレン、2-フェナントレニル-1,2,3,4-テトラヒドロ、9H-フルオレン-1-メチル-、9H-フルオレン-2-メチル、9H-フルオレン-4-メチル、アントラセン、フェナントレン、3-フェナントロール、メチルアントラセン類、2,6-ジメチルフェナントレン、2-フェニルナフタレン、ピレン、1-ベンジルナフタレン、7H-ベンゾ-[c]-フルオレン、11H-ベンゾ-[b]-フルオレン、1-メチル-7-イソプロピルフェナントレン、1,4-ジメチル-2-フェニルナフタレン、クリセン、アニリン、ピリジン、ピロールを含むが、これらに限定されない。
【0033】
単環および/または多環の芳香族化合物も、いくつかの実施形態において生じさせられ得る。芳香族化合物は、ヘテロ原子置換基を含む単環および多環の化合物、すなわちフェノール、クレゾール、ベンゾフラン、アニリン、インドールなども含む。再生可能な芳香族化合物は、再生可能な資源、例えば、バイオマスから調製された上記の材料である。
【0034】
本明細書において用いられる場合の用語「ナフテン類」には、少なくとも1つの飽和パラフィン環を有する化合物、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、およびシクロヘプタンを含む一般式C2nの炭化水素環化合物、アルキル化シクロパラフィン類、例えば、メチル-、エチル-、ジメチル-、プロピル-、トリメチル-、およびブチル-のシクロヘキサン類、シクロペンタン類、およびシクロヘプタン類、並びに多環シクロパラフィン類、例えば、デカリン、アルキル化デカリン類、テトラリン、およびアルキル化テトラリン類が含まれる。
【0035】
本明細書において用いられる場合、用語「オレフィン」または「オレフィン化合物」(別名「アルケン」)は、当該技術分野におけるそれらの通常の意味を有し、二重結合によって連結された1対または複数対の炭素原子を含有しているあらゆる不飽和炭化水素を指す。オレフィン類には、環式および非環式の(脂肪族の)オレフィン類の両方が含まれ、二重結合は、それぞれに、環式(閉環)基または開鎖基の一部を形成している炭素原子の間に位置している。さらに、オレフィン類は、あらゆる適切な数の二重結合を含んでもよい(例えば、モノオレフィン類、ジオレフィン類、トリオレフィン類など)。オレフィン化合物の例は、とりわけ、エテン、プロペン、アレン(プロパジエン)、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン(2-メチルプロペン)、ブタジエン、およびイソプレンなどを含むが、これらに限定されるものではない。環式オレフィン類の例は、シクロペンテン、シクロヘキセン、およびシクロヘプテンなどを含む。芳香族性化合物、例えば、トルエンは、オレフィン類とみなされない;しかしながら、芳香族部分を含むオレフィン類は、オレフィン類とみなされ、例えば、アクリル酸ベンジルまたはスチレンがある。
【0036】
本明細書において用いられる場合、用語「酸素化物」は、その構造中に少なくとも1つの酸素の原子を含有するあらゆる有機化合物を含み、例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)、酸(例えば、酢酸、プロピオン酸など)、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチルなど)、エーテル(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなど)、置換基を含有している酸素を有する芳香族化合物(例えば、フェノール、クレゾール、安息香酸、ナフトールなど)、環式エーテル、酸、アルデヒド、およびエステル(例えば、フラン、フルフラールなど)などがある。
【0037】
本明細書において用いられる場合、用語「フェノール油」および「酸素化油」には、置換基を含有する酸素を有する芳香族化合物(例えば、フェノール、m-クレゾール、o-クレゾール、p-クレゾール、キシレノール類など)およびBio-TCat反応器流出物からの、典型的には80℃~220℃の範囲で沸騰する他の化合物(例えば、ベンゼン、トルエン、p-キシレン、m-キシレン、α-キシレン、インダン、インデン、2-エチルトルエン、3-エチルトルエン、4-エチルトルエン、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、クメン、プロピルベンゼン、ナフタレンなど)が含まれる。フェノール油および酸素化油は、典型的には80℃~220℃の温度範囲で沸騰する流れである。
【0038】
本明細書において用いられる場合、用語「熱分解」および「熱分解する」は、当該技術分野におけるそれらの慣例的な意味を有し、化合物、例えば固形炭化水素質材料の、熱による、好ましくは分子酸素、すなわちOの添加なくまたはその不存在下での、1種または複数種の他の物質、例えば揮発性有機化合物、ガス、およびコークへの変換を指す。好ましくは、熱分解反応チャンバー内に存在する酸素の容積分率は0.5%以下である。熱分解は、触媒を用いてまたは用いずに行われてよい。「接触熱分解」は、触媒の存在中で実行される熱分解を指し、以下により詳細に説明される工程を含んでよい。接触熱分解(接触高速熱分解(catalytic fast pyrolysis:CFP)とも呼ばれる)は、芳香族化合物、オレフィン類、およびその他の種々の材料の混合物を生じさせる接触流動床反応器内でバイオマスの転化を含み、この接触熱分解は、特に有益な熱分解方法である。接触熱分解方法の例は、例えば、Huber, G.W. et al, “Synthesis of Transportation Fuels from Biomass: Chemistry, Catalysts, and Engineering,” Chem. Rev. 106, (2006), pp. 4044-4098において概説され、参照として本明細書に援用される)。接触熱分解方法からの生成物には、例えば、以下の材料が含まれてよい:ベンゼン、フェノール、ベンゼンジオール類、ベンゼントリオール類、トルエン、クレゾール類、メトキシベンゼン、メチルベンゼンジオール類、エチルベンゼン、キシレン類、スチレン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、メチルベンゼンメタノール、ジメチルフェノール類、エチルフェノール類、ジメチルベンゼンジオール類、エチルカテコール、レゾルシノールモノアセタート、ベンゾフラン、3,4-ジヒドロキシエチルベンゼン、ホロン、エチルトルエン類、プロピルベンゼン類、トリメチルベンゼン類、ベンゼン-1-エチル-4-メトキシ、フェノール-2,3,6-トリメチル、フェノール-4-エチル-2-メトキシ、α-メチルスチレン、メチルスチレン類、1-プロペニルベンゼン、2-プロペニルベンゼン、インダン、2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、1,2-インダンジオール、3-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸メチル、4-(2-プロペニル)-フェノール、(2e)-3-フェニルプロパ-2-エナール、インデン、フェノール-2-(2-プロピニル)、メチルベンゾフラン類、1H-インデノール、2-メチルベンゾチオフェン、1-メチル-4-プロピルベンゼン、1-メチル-4-(プロパン-2-イル)ベンゼン、4-イソプロピルベンジルアルコール、5-イソプロピル-2-メチルフェノール、カルバクロール、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ベンゼンジオール、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、メチルインダン類、2,4-ジメチルスチレン、1-エテニル-4-エチルベンゼン、2-メチル1-プロペニルベンゼン、2,3-ジヒドロ-5-メチル-1H-インデン、5-メトキシインダン、1,5-ジヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ベンゼン、(1-メチル-2-シクロプロペン-1-イル)、1-メチルインデン、2-メチルインデン、3-メチルインデン、4-メチルインデン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,4-ジヒドロナフタレン、5,8-ジヒドロ-1-ナフタレノール、2-メチル-1-インダノン、2,3-ジメチルベンゾフラン、ナフタレン、ナフタレノール類、ペンタメチルベンゼン、メチルテトラリン類、2,2-ジメチルインダン、1H-インデン 1-エチル-2,3-ジヒドロ、ジメチルインデン類、エチルインデン類、ジヒドロメチルナフタレン類、メチルナフタレン類、メチルナフトール類、1-フェニルシクロヘキセン、エチルナフタレン類、ジメチルナフタレン類、ビフェニル、アセナフテン、ジベンゾフラン、2-(1-メチルエチル)ナフタレン、トリメチルナフタレン類、トリメチルアズレン、3-メチル-1,1-ビフェニル、フルオレン、2-フェナントレニル-1,2,3,4-テトラヒドロ、9H-フルオレン-1-メチル-、9H-フルオレン-2-メチル、9H-フルオレン-4-メチル、アントラセン、フェナントレン、3-フェナントロール、メチルアントラセン類、2,6-ジメチルフェナントレン、2-フェニルナフタレン、ピレン、1-ベンジルナフタレン、7H-ベンゾ-[c]-フルオレン、11H-ベンゾ-[b]-フルオレン、1-メチル-7-イソプロピルフェナントレン、1,4-ジメチル-2-フェニルナフタレン、クリセン、アニリン、ピリジン、ピロールなど。
【0039】
水素化加工処理(hydroprocessing)は、有機材料の水素との反応であり、水素化処理、水素化、および水素化分解の方法を含む。本明細書において用いられる場合、用語「水素化処理」は、有機給送材料を水素と反応させるための比較的穏やかな水素化加工処理の方法を指し、有機液体画分から汚染物質、例えば、窒素、硫黄、および酸素の最低90%を除去するのに用いられる。これらの汚染物質は、設備、触媒、および最終生成物の品質に悪影響を及ぼす可能性がある。水素化処理により、多くの材料のオレフィン部分の大部分が飽和もして対応する材料になり、オレフィン部分はパラフィン相当部分に転化され、例えば、1-ヘキセンは、飽和されてヘキサンとなる場合があり、スチレンは飽和されてエチルベンゼンとなる場合がある。水素化処理により、材料の芳香族部分、例えば、ベンゼンをシクロヘキサンに大幅には飽和せず、すなわち、芳香環の飽和は、材料中の芳香環の10%未満である。水素化処理が水素化などの方法の前に行われるのは、水素化触媒が未処理の供給原料中の汚染物質によって汚染されないようにするためである。水素化処理が接触分解または水素化分解の前に用いられるのは、硫黄を削減し、生成物収率を向上させ、石油画分を完成したジェット燃料、ディーゼル燃料、および暖房用燃料油にアップグレードするためである。
【0040】
水素化処理器における使用のために適切な水素化処理触媒は、既知の従来の水素化処理触媒であり、少なくとも1種の第VIII族金属(すなわち、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、または白金、好ましくは鉄、コバルト、またはニッケル、より好ましくはコバルトおよび/またはニッケル)から構成されるものを、高表面積担持材料、好ましくはアルミナ若しくはシリカまたはアルミナおよびシリカの混合物上に含む。他の適切な水素化処理触媒としては、ゼオライト触媒、並びに、貴金属触媒が挙げられ、貴金属は、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、および白金の1種または複数種から選択される。複数タイプの水素化処理触媒が同じ反応容器内で用いられることは、本発明の方法の範囲内である。第VIII族金属は、典型的には約0.5重量パーセントから約20重量パーセントまでの範囲にわたる、好ましくは約0.5重量パーセントから約10重量パーセントまでの範囲にわたる量で存在する。第VI族金属は、典型的には、約1重量パーセントから25重量パーセントまでの範囲、好ましくは約1重量パーセントから12重量パーセントまでの範囲にわたる量で存在することになる。水素化処理用のいくつかの例示的な触媒が上記で説明されているが、特定の供給原料および所望の流出物の質に応じて他の水素化処理および/または水素化脱硫の触媒が用いられてもよい。触媒および水素化処理条件は、水素化処理器への給送物中の芳香環における芳香族炭素-炭素結合の10%未満、または5%未満、または2%未満、または1%未満の水素化を達成するように選択され得る。
【0041】
水素化処理に使用される反応条件は、選択された特定の反応器の設計および個々の化学種の濃度に一部依存することになるが、200℃~400℃の反応温度および1.5MPa(15bar)~10MPa(100bar)の水素圧力が通常好適である。有利には、この接触工程は、0.1時間-1を超える液体毎時空間速度で行われてよい。反応器の操作条件での水素化処理器内のガス対液体の容積比(「G:L比」)は、0.1~20:1、より典型的には0.1~10:1の範囲にわたり得る。
【0042】
本明細書において用いられる場合、用語「水素化」は、有機給送材料を水素と反応させて給送混合物中の芳香環の実質的な部分を飽和させるための水素化加工処理方法を指す。水素化により、2つ以上の芳香環を有する材料が、芳香環の1つ以上が飽和された材料に転化される場合がある。例えば、水素によるナフタレンのテトラリン、またはデカリンまたはテトラリンおよびデカリンの混合物への転化は、水素化方法である。典型的には、ナフテン類を生じさせる材料中の芳香環の転化率は、混合物中の芳香環の最低15%、または最低25%または最低35%、または15%~80%、または25%~70%、または35%~60%である。水素化の典型的な加工処理条件としては、少なくとも280℃、または少なくとも300℃、または少なくとも320℃、または280~450℃、または300~400℃、または320~350℃の温度が挙げられる。典型的な水素圧力は、1.5~10MPaである。好ましくは、2つの操作様式が実行され得る:
- 1.5~4.0MPa、好ましくは2.5~4.0MPa、
- 4.0~10MPa、好ましくは7.0~10MPa。
【0043】
水素化のための典型的な液体毎時空間速度は、少なくとも0.5時間-1、または少なくとも1時間-1、または少なくとも2時間-1、または10時間-1以下、または5時間-1以下、または3時間-1以下、または0.5時間-1~5時間-1、または1時間-1~4時間-1、または2時間-1~3時間-1であり、ここで、液体毎時空間速度は、時間当たりの触媒上に給送される液体給送物の容積対反応器中の触媒の容積の比である。水素化のための典型的な水素流通速度は、液体給送物の容積(m)当たりH少なくとも70Nm、または少なくとも100Nm、または少なくとも300Nm、または70Nm~1000Nm、または7000Nm~800Nm、または100Nm~700Nmである。水素化のための典型的な触媒としては、アルミナ担体上のCoMo、アルミナ担体上のNiMo、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
本発明のコンテクストにおいて有用な触媒成分は、当該技術分野において知られているか、または当業者によって理解されるであろうあらゆる触媒から選択され得る。触媒は、反応を促進し、および/または反応を引き起こす。そのため、本明細書において用いられる場合、触媒は、化学的プロセスの活性化エネルギーを低下させ(速度を増加させ)、および/または化学反応における生成物または中間体の分布を改善する(例えば、形状選択的触媒)。触媒され得る反応の例としては、以下のものが挙げられる:脱水、脱水素、水素化、異性化、オリゴマー化、分解、水素移動、芳香族化、環化、脱カルボニル、脱カルボキシル、アルドール縮合、分子分解および分解、それらの組み合わせ、並びに他の反応。当業者に理解されるように、触媒成分は、酸性、中性、または塩基性であるとみなされ得る。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(発明の詳細な説明)
上記を考慮した広範な調査の結果、一連の逐次的工程により、接触熱分解方法を経済的かつ効率的に実施して、価値のある燃料および化学製品の製造を強化することができることが判明した。
【0046】
本発明の改善された方法の実施形態は、以下の工程を含む:
a) バイオマス、例えば、有機材料の再生可能な供給源から提供されるバイオマス等、触媒組成物、例えば、1種または複数種の結晶性モレキュラーシーブを含んでいる触媒組成物、例えばシリカ対アルミナのモル比(SAR)が12超であり、制約指数(Constraint Index:CI)が1~12であることを特徴とする触媒組成物、および輸送流体を、反応条件、例えば300℃~1000℃の温度および0.1~1.5MPaの圧力で維持された流動床反応器に給送して、原料流体生成物流れを製造する工程、
b) 工程a)の原料流体生成物流れを固体の分離およびストリッピングのシステムに給送して、分離された固体および流体生成物流れを生じさせる工程、
c) 工程b)の流体生成物流れを分画システムに給送して、画分、例えば、180℃~350℃で沸騰する画分、好ましくは、例えば180℃~320℃で沸騰する画分、さらに好ましくは例えば200~320℃で沸騰する画分などの画分を回収する工程。出発沸点は、仕様に関して指定され、終沸点は、加工処理可能な残留物部分を得るように調節される。終点が高すぎると、残留生成物の粘度に影響が及ぼされ、不十分な流動性特性につながることになる、
g) 180℃以上で沸騰する工程c)の画分を、この留分よりも低い芳香族含有率を示す蒸留物留分の任意の供給源と混合して、ブレンドの芳香族化合物を希釈し、ブレンドの芳香族化合物濃度を60重量%未満、または50重量%未満または40重量%未満に適切に調節する工程;ここで、外部蒸留物留分の供給源は、ディーゼル仕様と適合可能な沸騰範囲によって指定され、ナフテン類、パラフィン類などのような芳香族化合物以外の分子を示す。例として、これらの外部蒸留物留分は、原油の常圧蒸留に起因する直留ガスオイルまたは直留ガスオイルと流体接触分解ユニットに起因するライトサイクルオイル(LCO)との混合物であり得るだろうが、これらに限定されるものではない。両方の材料は、典型的には、適切にアップグレードした後に製油所におけるディーゼルの主供給源である。他の蒸留物留分は、HVOのような任意の生物起源の蒸留物として、または脂肪およびバイオマスの転化から得られると見なされ得る。ナフタレンに富むオイルベースへのそれらの添加により、ブレンドの総芳香族含有率を低下させる必要がある、
d) 工程d)において作製されたブレンドの少なくとも一部を水素により水素化条件で水素化して、水素化済み画分を生じさせる工程、
e) 燃料、例えば、ディーゼル燃料であって、0.4重量%未満のオレフィン類と、10重量ppm(parts per million:百万分率)未満の硫黄と、10重量ppm未満の窒素と、1重量%未満の酸素とを含んでいるものを工程f)の水素化済み画分から生成物回収システムにおいて回収する工程。
【0047】
本発明の実施形態には、工程e)によって回収された新規燃料、および他の燃料とのその混合物が含まれる。バイオマス接触熱分解芳香族化合物の一部の水素化処理および水素化により、C10~C16芳香族成分を効率的に水素化して再生可能な燃料を生じさせることができる。この材料を効率的に生じさせるのにキーとなる規定パラメータは、水素化への給送物から三環化学種を除去して、触媒のファウリングおよびコーキングを避けるようにすることにある。これは、蒸留された生成物の終沸点を制限し、フェナントレン、アントラセン、および関連化合物などの化合物の存在を最小限に抑えるようにすることによってなされ得る。
【0048】
本発明の1つの実施形態において、再生可能な燃料は、最低50重量%、または最低75重量%、または最低90重量%、または50重量%~99重量%、または75重量%~95重量%の10~16個の炭素原子を有する炭化水素を含む。
【0049】
さらなる態様において、本発明が提供するディーゼル燃料は、0.1容積%~90容積%、または1容積%~70容積%、または1容積%~50容積%、または1容積%~20容積%、または0.1容積%~10容積%、または最低0.1容積%、または最低5容積%、または最低10容積%、または最低20容積%の再生可能な燃料を含んでいる。
【0050】
(図面の簡単な説明)
図1および2は、本発明による方法の種々の特徴のブロックフロー図である。
【0051】
図3は、残留初沸点に応じた残留留分粘度を示す。
【0052】
(接触熱分解の説明)
本発明のいくつかの実施形態が図1に示されており、ここで、流れ(1)は、好ましくはBio-TCat(登録商標)方法に由来する。Bio-TCat(登録商標)方法に適した装置および方法条件の例は、米国特許8,277,643、8,864,984、9,169,442、9,790,179、10,370,601、10,767,127;および10,822,562に記載されており、それぞれ参考として本明細書に援用される。バイオマスのBio-TCat(登録商標)の転化についての条件には、以下の特徴の1つまたはそれらの組み合わせが含まれてよい(これらは、本発明のより広範な態様を制限することを意図するものではない):バイオマス処理;触媒組成物;触媒組成物は、場合によっては、金属を含んでいること;流動床、循環床、移動床、またはライザー反応器;流動化流体;300℃~1000℃、または450℃~800℃、または500℃~650℃の範囲の操作温度、および0.1~3.0MPa(1~30気圧)の範囲の圧力;並びに0.1~40、または2~20、または3~10の固体触媒/バイオマスの質量比。固形バイオマスは、連続的または間欠的な様式で反応器に給送される場合がある。固体触媒は、酸化方法で再生されてよく、一部、反応器に戻される。固体触媒は、反応器から取り出され、水蒸気によりストリッピングされて、有機材料および反応性ガスを追い出すようにした後に、流動床触媒再生器において酸素含有ガスによる処理により再生され、一部、反応器に戻される。生成物中の非芳香族成分の割合を減らし、それによって下流の分離および転化の技術に利益をもたらすために、Bio-TCat(登録商標)の反応器における反応の厳格性は、高められ得る。より大きな反応の厳格性を達成する方法には、より高い反応温度、より高い触媒活性(これは、フレッシュな触媒のより高い補給率および使用済み触媒の除去率によって、若しくは触媒の変更(例えば、より高いゼオライト含有率、より低いシリカ/アルミナ比、より大きなマクロ多孔性およびメソ多孔性など)によって達成され得る)、より高い圧力、またはより長い滞留時間が含まれる。
【0053】
バイオマスは、Bio-TCat(登録商標)方法の流動床反応器において加工処理するのに便利な形で入手可能でない場合がある。固形バイオマスが好適な給送物である一方で、固形バイオマスは、周囲条件で液体の部分を含む場合がある。固形バイオマスは、加工処理するのにより適したものにするための、カッティング、チョッピング、チッピング、細断、粉砕、研磨、サイジング、乾燥、焙煎、焙焼、洗浄、抽出、またはこれらのいくつかの組み合わせを含む多数の方法のいずれかにおいて任意の順序において処理されてよく、サイズ、水分、硫黄および窒素の不純物含有率、密度、並びに金属含有率に関して、バイオマス給送物の望みの特性を達成する。バイオマスの集塊および凝集を抑える手順が使用されてよい。
【0054】
流動床反応器における転化の後に、Bio-TCat(登録商標)方法の生成物は、固体分離、炭化水素の急冷若しくは冷却、気体-液体分離、圧縮冷却、気体-液体吸収、凝縮性化合物の凝縮、または当該技術分野において知られている他の方法の組み合わせによって回収されて、沸点がガソリンまたは道路用ディーゼル燃料の沸点よりも高い化学種を含むC 炭化水素の混合物を生じさせる。蒸留は、沸騰範囲ごとに所望の留分を分離取り出しするために用いられ得る。所望の生成物留分は、次いで、水素化処理に供されて、ヘテロ原子、例えば、O、N、またはSを除去し、オレフィン類を飽和させ、第1の液体流れを提供することができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、接触熱分解方法からの生成物混合物は、2-メチルナフタレン、ナフタレン、インデン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,5-ジメチルナフタレン、2-メチルインダン、1-メチルアントラセン、-メチルスチレン、5-メチルインダン、インダン 3-エチルトルエン、1-メチルインデン、2-フェニルナフタレン、アントラセン、2,3-ジメチルインデン、1-ベンジルナフタレン、2,6-ジメチルナフタレン、4-エチルトルエン、1,3-ジメチルインデン、9H-フルオレン、2-メチルビフェニル、1-メチル-4-プロピルベンゼン、1-メチルナフタレン、1,7-ジメチルナフタレン、9H-フルオレン、1-メチル-4-メチルインデン、2-(1-メチルエチル)ナフタレン、1H-インデン 1-エチル-2,3-ジヒドロ、1-フェニルシクロヘキセン、n-プロピルベンゼン、11H-ベンゾ-[b]-フルオレン、1,4-ジエチルシクロヘキサン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1-エテニル-4-エチルベンゼン、1-メチルインダン、2,3,5-トリメチルナフタレン、3-メチル-1,1-ビフェニル、プロパジエニルシクロヘキサン、トリメチルアズレン、フェナントレン、2-エチルナフタレン、フルオレン、1,2-ジヒドロナフタレン、2-メチルインデン、1,2-ジヒドロ 4-メチルナフタレン、2,6-ジメチルフェナントレン、1-メチル-7-イソプロピルフェナントレン、1,2-ジヒドロ 3-メチルナフタレン、1,4,6-トリメチルナフタレン、2-フェナントレニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-4-メチルインダン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、2,2-ジメチルインダン、1,4-ジヒドロナフタレン、1-メチル-4-(プロパン-2-イル)ベンゼン、1,4-ジメチル-2-フェニルナフタレン、および酸素化物である3-フェナントロル、1H-インデノール、1-ナフタレノール(1-ナフトール)、2-メチル-1-ナフトール、2-メチルベンゾフラン、2-アセチル-5-ノルボルネン、ジベンゾフラン、2-ナフタレノール、7-メチル-1-ナフトール、5-イソプロピル-2-メチルフェノール、2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、5,8-ジヒドロ-1-ナフタレノール、5-メトキシインダン、1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン、2-(2-プロピニル)-フェノール、(2E)-3-フェニルプロパ-2-エナール(シンナムアルデヒド)、2,3-ジメチルベンゾフラン、2,3,6-トリメチル-フェノールの中からの化合物、並びにそれらの組み合わせを含む。
【0056】
(接触熱分解のための触媒)
接触熱分解の場合、有用な触媒としては、細孔サイズ(例えば、メソ多孔質および典型的にはゼオライトに関連する細孔サイズ)、例えば、10nm未満(1nmは10オングストローム(Å)に等しい)、5nm未満、2nm未満、1nm未満、0.5nm未満、またはそれより小さい平均細孔サイズに従って選択される内部多孔度部を含有している触媒が挙げられる。いくつかの実施形態において、0.5nmから10nmまでの平均細孔サイズを有する触媒が用いられてよい。いくつかの実施形態において、0.5nm~0.65nm、または0.59nm~0.63nmの平均細孔サイズを有する触媒が用いられてよい。場合によっては、0.7nm~0.8nm、または0.72nm~0.78nmの平均細孔サイズを有する触媒が用いられてよい。
【0057】
本発明の接触熱分解流動床反応器において特に有利な触媒組成物は、12を超えるシリカ対アルミナ比(SAR)および1~12の制約指数(CI)を特徴とする結晶性モレキュラーシーブを含む。これらの結晶性モレキュラーシーブの非限定的な例は、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50の構造、またはそれらの組み合わせを有するものである。実施形態として、触媒組成物は、12超から240までのSARおよび5~10のCIを特徴とする結晶性モレキュラーシーブ、例えば、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-23の構造、またはそれらの組み合わせを有するモレキュラーシーブを含む。CIが決定される方法は、米国特許No. 4,029,716により十分に記載されており、参考として本方法の詳細のために援用される。
【0058】
限定なく、一部のそのようなおよび他の触媒は、自然発生ゼオライト、合成ゼオライトおよびそれらの組み合わせから選択され得る。所定の実施形態において、触媒は、当業者には理解されるであろうように、ZSM-5ゼオライト触媒であってよい。場合によっては、そのような触媒は、酸性部位を含むことができる。他のタイプのゼオライト触媒として、フェリエライト、ゼオライトY、ゼオライトベータ、モルデナイト、MCM-22、ZSM-23、ZSM-57、SUZ-4、EU-1、ZSM-11、(S)AIPO-31、SSZ-23等が挙げられる。他の実施形態において、非ゼオライト触媒が用いられてよい;例えば、WO/ZrO、リン酸アルミニウムなど。いくつかの実施形態において、触媒は、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、銅、ガリウム、希土類元素、すなわち、57番元素~71番元素、セリウム、ジルコニウム、および/またはそれらの酸化物のいずれかの中から選ばれる金属および/または金属酸化物、またはそれらのいくつかの組み合わせを含んでよい。さらに、場合によっては、触媒の特性(例えば、細孔構造、酸部位のタイプおよび/または数など)は、所望の生成物を選択的に生じさせるように選ばれてよい。
【0059】
本明細書における使用のためのモレキュラーシーブまたはそれを含む触媒組成物は、高温で熱処理されてよい。この熱処理は、一般に、最低370℃の温度で少なくとも1分、かつ、一般に20時間以下にわたって(典型的には、酸素含有雰囲気中、優先的には空気中で)加熱することによって実行される。大気圧未満の圧力が熱処理のために使用され得るが、便宜上大気圧が望ましい。熱処理は、約925℃までの温度で実施され得る。熱処理された生成物は、本方法において特に有用である。
【0060】
本発明において有用な触媒組成物のために、適切なモレキュラーシーブは、担体またはバインダの材料との組み合わせで使用されてよく、例えば多孔質無機酸化物担体または粘土バインダがある。このようなバインダ材料の非限定的な例としては、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、トリア、チタニア、ボリアおよびそれらの組み合わせが挙げられ、一般に、乾燥無機酸化物ゲルおよびゼラチン状沈殿物の形態にある。適切な粘土材料としては、例として、ベントナイト、珪藻土およびそれらの組み合わせが挙げられる。触媒組成物全体の適切な結晶性モレキュラーシーブの相対割合は、組成物の重量で30重量パーセント~90重量パーセントの範囲、より一般的には40重量パーセント~70重量パーセントの範囲にわたるモレキュラーシーブ含有率で広範に変動してよい。触媒組成物は、押出物、ビーズ、または流動性微小球の形態にあってよい。
【0061】
本明細書における使用のためのモレキュラーシーブまたはそれを含む触媒組成物は、元からのカチオンを有してよく、当該技術において周知な技術に従って、少なくとも一部、水素または水素前駆体カチオンおよび/または周期律表の第VIII族の非貴金属イオン、すなわち、すなわちニッケル、鉄、若しくはコバルト、またはそれらのいくつかの組み合わせとのイオン交換によって置き換えられる。
【0062】
(分画)
接触熱分解からの流出物(1)は、熱交換器(150)において冷却され、場合によっては、水蒸気を生じさせ、次いで、主分画塔(200)に給送される。ナフタレンおよびタールを含有している流れ(4)の一部は、分画塔(200)にリサイクルされ、別の部分は、分画塔の底部から取り出され、追加の蒸留塔(400)に送られ、流れ(13)中の三環化学種を、任意選択にキシレノール類を含有する場合があるナフタレンに富む流れ(12)から、上記のように350℃以下、または好ましくは320℃以下の終沸点の標的に達するように効率的に分離する。場合によっては、流れ(3)若しくは(13)の少なくとも一部、またはそれらのいくつかの組み合わせは、接触熱分解方法の給送物に戻され、さらなる価値のある生成物に転化することができる。場合によっては、流れ(3)若しくは(13)の少なくとも一部、または工程a)において回収された320℃未満、若しくは330℃未満、若しくは340℃未満、若しくは350℃未満で沸騰する画分が除去された後に残る画分の少なくとも一部、またはそれらのいくつかの組み合わせは、水素化分解方法において水素化分解され得る。
【0063】
終沸点は、残留部分にいくらかのジ芳香族化合物を保持して良好な流動性に適合するレベルでその粘度を維持する必要性に関して固定されている。そうしないと、残留部分が難溶性になり過ぎて、分画システムの操作性を保証することができない。この局面は、大部分が芳香族成分から構成されて異常な高粘度レベルがもたらされる接触熱分解方法を通じて生じた生成物の種類に非常に特有である。
【0064】
180℃以下で沸騰する材料の除去の後に、混合物は、最低25重量%、または最低35重量%、または最低40重量%、または25重量%~90重量%、または35重量%~80重量%、または40重量%~75重量%のナフタレン、置換型ナフタレン類、ナフタレノール類、メチルナフタレノール類、およびナフタレンジオール類の合計と、最低3重量%、または最低5重量%、または最低6重量%、または3重量%~15重量%、または5重量%~10重量%、または6重量%~8重量%のキシレノール類と、15重量%未満、または10重量%未満、または5重量%未満、または0.01重量%~20重量%、または1重量%~15重量%、または5重量%~13重量%のフェナントレン、アントラセン、および他の材料の合計とを含む場合がある。
【0065】
(ナフタレンに富む留分および外部蒸留物留分の水素化)
図2は、概念的なブロックフロー図であり、任意の芳香族化合物をより少なく含有している蒸留物留分とブレンドした後のナフタレンに富む流れのシクロアルカン類への水素を用いた水素化を示し、5%未満、または3%未満、または1%未満のナフタレン系化学種を含有している流れを生じさせる。
【0066】
外部蒸留物留分の供給源は、ディーゼル仕様と適合可能であり、かつナフテン類、パラフィン類のような芳香族化合物以外の分子を示す沸騰範囲によって規定される。例として、これらの外部蒸留物留分は、原油の常圧蒸留に起因する直留ガスオイルまたは直留ガスオイルと流動接触分解ユニットに起因するライトサイクルオイル(LCO)との混合物であることができるだろうが、これらに限定されるものではない。両方の材料は、典型的には、適切なアップグレードの後に、製油所におけるディーゼルの主要供給源である。他の蒸留物留分は、HVOのような任意の生物供給源の留分として、または脂肪およびバイオマスの転化から得られると見なされ得る。ナフタレンに富むオイルベースへのそれらの添加は、ブレンドの総芳香族含有率を60重量%未満に低下させる必要がある。この特徴を達成するために、工程d)のブレンドにおける外部蒸留物留分の割合は、好ましくは40重量%を上回り、好ましくは50重量%を上回り、70重量%を上回り、80重量%~100重量%である。
【0067】
水素化の発熱は、したがって、ナフテン系に富む留分のものよりも低い芳香族含有率を示す外部蒸留物留分の添加を通じてブレンドの芳香族含有率を最大値に制限することによって緩和される。
【0068】
水素化の発熱はまた、水素化の生成物をリサイクルして水素化反応器への給送物を希釈することによって、および/または反応器に沿った1つ以上の点で液体急冷剤として水素化の生成物を用いることによって、より低い程度に緩和される。
【0069】
水素化ユニットの設計は、水素化の技術に精通した者によって容易に行われる。反応器は、当業者によって典型的に実施されるブレンド効果を補って水素化の発熱をコントロールするという特徴を組み込むことができる。これらの特徴は、以下の中から選ばれ得る:1)冷却された水素のリサイクル、2)給送物の希釈による給送物の総質量に添加される水素の割合(%)の制限、3)反応器内の種々の点での「急冷流体」の導入(それによって、液体の気化熱は、発熱を和らげるために用いられる)、またはそれらのいくつかの組み合わせ。このような急冷液は、典型的には、より揮発性の成分の除去前または除去後のいずれかの生成物流れに由来する。
【0070】
図2において、ナフタレンに富む流れの水素化および精製の方法の1つの実施形態が示されている。ナフタレンに富む流れ(12)は、場合によっては、キシレノール類を含有し、例えば、図1における方法または同様の方法によってバイオマスから生じたものであり、このものは、水素(22)および流れ(12)より少ない芳香族化合物を示す蒸留物留分の任意の供給源(14)とともに水素化反応器(500)に通される。水素化反応器において、ナフタレンに富む流れは、テトラリン類、デカリン類、他のナフテン類、および同様のシクロアルカン材料に水素化され、この混合物(23)は、精製塔(600)に通される。存在する任意のキシレノール類は、この反応器において同様にベンゼン、トルエン、キシレン類、およびナフテン類に水素化される。精製塔(600)において、軽質材料(24)は、デカンタ/還流ドラム(700)に通され、そこでキシレン類が任意選択に流れ(25)において回収され、混合物(27)の一部は、分離塔に戻され、水画分(26)が分離される。流れ(27)は、典型的には、テトラリン類、デカリン類、他のナフテン類、並びに、一部のキシレン類、および一部の水、および共給送物(14)の水素化から得られた軽質化学種も含む。ディーゼル燃料(28)は、分離され、生成物として回収される。ディーゼル燃料(28)のスリップストリームは、分離塔に戻される。より重質の材料の一部を塔(600)に戻すことにより、効率および収率を改善することができる。ナフタレンに富む留分は、最低25重量%、または最低35重量%、または最低40重量%、または25重量%~90重量%、または35重量%~80重量%、または40重量%~75重量%のナフタレン、置換型ナフタレン類、ナフタレノール類、メチルナフタレノール類、およびナフタレンジオール類の合計と、最低3重量%、または最低5重量%、または最低6重量%、または3重量%~15重量%、または5重量%~10重量%、または6重量%~8重量%のキシレノール類と、15重量%未満、または10重量%未満、または5重量%未満、または0.01重量%~20重量%、または1重量%~15重量%、または5重量%~13重量%のフェナントレン、アントラセン、および他の材料の合計とを含む。ナフタレンに富む流れ(12)は、最低25容積%、または最低35容積%、または最低40容積%、または25容積%~65容積%、または35容積%~60容積%、または40容積%~55容積%のナフタレン、置換型ナフタレン類、およびナフトール類の合計と、最低3重量%、または最低5重量%、または最低6重量%、または3重量%~15重量%、または5重量%~10重量%、または6重量%~8重量%のキシレノール類と、15重量%未満、または10重量%未満、または5重量%未満、または0.01重量%~20重量%、または1重量%~15重量%、または5重量%~13重量%のフェナントレン、アントラセン、および他の材料の合計とを含む場合がある。
【0071】
図2において、水素化は、1工程で行われ、得られた生成物は、蒸留塔に給送されて、酸素含有二環化学種およびその他の化合物の水素化に由来する水を除去し、キシレノール類の脱酸素から生ずるキシレン類を除去し、これは、US2020/0165527に記載されるように精製スキームに給送され得る。蒸留塔からの缶出液(28)は、ディーゼル燃料として販売され得る。
【0072】
このディーゼル燃料の再生可能な部分は、ブレンド中の再生可能なナフタレンに富む留分の割合および水素が再生可能でないならば水素化を達成するのに用いられるこの水素の消費量に相当する。水素がバイオマスの接触熱分解に由来するならば、生じた燃料のバイオマス由来の含有率は、水素の消費によって増加する。カーボン14年代測定は、ブレンド中の再生可能な材料の正確な割合を決定する一般的な方法である。
【0073】
図1および図2に示される実施形態のそれぞれにおいて、未反応の水素の一部は、任意選択に、水素化反応器(500)、または分離塔(600)、またはそれらのいくつかの組み合わせの頂部から収集され、1基または複数基の水素化反応器にリサイクルされる。
【0074】
回収される180℃以上で沸騰する画分は、キシレノール類を含み、これらはキシレン類に転化され、場合によっては、ベンゼンおよびトルエンに分解される。場合によっては、ベンゼンおよびトルエンは、分離され、接触高速熱分解方法から回収されたBTX流れと合わせられる。
【0075】
場合によっては、図2において、(500)における水素化は、2つの工程に分けられ得、それにより、水素化反応器(500)は、実質的に、芳香環を部分的に水素化しかつキシレノール類をベンゼン、トルエン、およびキシレン類に還元し、ナフタレン類をナフテン類に還元するようにより低い圧力での操作によって部分的に水素化された流れを生じさせる水素化と、より高い圧力での操作により芳香族化合物をさらに水素化する第2の反応器(示していない)とを含む。この場合、第1の水素化は、CoMo含有触媒により2.0MPa~7.0MPaの範囲内で操作され得る。(500)の第1の水素化工程の後に任意選択の蒸留が挿入され、反応の水並びにキシレン類を除去することができる。(500)における第2の水素化方法(示していない)は、シクロアルカン類を生じさせる芳香族化合物の水素化を完結し、貴金属触媒、例えば、Pd、若しくはPt、またはその2種の組み合わせを含有しているものを用いることができる。第2の水素化は、第1の水素化と同様であるがより高い圧力にて、4.0~10.0MPaの範囲内で操作され得る。(500)における低圧水素化と、任意選択の蒸留(示していない)と、より高圧の水素化とのこの組み合わせにより、追加の精製を一切必要としない生成物を生じさせることになる。代替的な実施形態は、(500)における第2の水素化工程の後に蒸留を行うことである。
【0076】
水素化は、液体をH含有ガスと1.5~10MPaの水素の圧力で接触させることによって実施されてよい。好ましくは、2つの操作様式が実施され得る:
- 1.5~4.0MPa、好ましくは2.5~4.0MPa、
- 4.0~10MPa、好ましくは7.0~10MPa。
【0077】
水素化のための加工処理条件としては、固体触媒の存在中、少なくとも280℃、または少なくとも300℃、または少なくとも320℃、または280℃~450℃、または300℃~400℃、または320℃~350℃の温度が挙げられる。
【0078】
水素化方法に有用な固体触媒としては、Ni/Mo、Co/Moが挙げられ、場合によっては、Fe、Cu、Zn、Ag、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Mo、W、またはそれらの組み合わせを含有し、Al、Si、Ti、Zr、Th、Mg、Caの酸化物、またはこれらの一部の組み合わせを結晶性固体または無定形混合物のいずれかとして含む酸化物担体上に堆積される。水素化は、固定床、トリクルベッド、接触蒸留反応器、多管式反応器、または流動床反応器において、給送物および水素の向流または並流により行われ得る。
【0079】
水素化のための加工処理条件としては、少なくとも0.5時間-1、または少なくとも1時間-1、または少なくとも2時間-1、または10時間-1以下、または5時間-1以下、または3時間-1以下、または0.5時間-1~5時間-1、または1時間-1~4時間-1、または2時間-1~3時間-1の液体毎時空間速度、液体給送物の容積(m)当たりH少なくとも70Nm、または少なくとも100Nm、または少なくとも300Nm、または70Nm~1000Nm、または7000Nm~800Nm、または100Nm~700Nmの水素化のための水素流通速度が挙げられる。水素化のための典型的な触媒としては、アルミナ担体上のCoMo、アルミナ担体上のNiMo、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0080】
混合された芳香族化合物の水素化の生成物の回収により、シクロヘキサン、アルキル化シクロヘキサン類を含むシクロヘキサン類、テトラリン類、アルキル化テトラリン類、デカリン類の中から選ばれる化合物を含んでいる生成物混合物が生じる可能性があり、生成物のディーゼル燃料は、水素化済み生成物における芳香環中の芳香族炭素-炭素結合の10%未満、または5%未満、または2%未満、または1%未満を示す。
【0081】
1つの実施形態において、生成物のディーゼル燃料は、0.4重量%未満、または0.1重量%未満、または100重量ppm未満、または25重量ppm未満、または0.1重量ppm~4000重量ppm、または1重量ppm~1000重量ppmのオレフィン類と、10重量ppm未満、または5重量ppm未満、または2重量ppm未満、または0.1重量ppm~10重量ppm、または0.2重量ppm~5重量ppmの硫黄と、10重量ppm未満、または5重量ppm未満、または2重量ppm未満、または0.1重量ppm~10重量ppm、または0.2重量ppm~5重量ppmの窒素と、1重量%未満、または0.1重量%未満、または0.01重量%未満、または100重量ppm未満、または10重量ppm未満、または1重量ppm未満、または0.1重量ppm~10000重量ppm、または0.2重量ppm~1000重量ppmの酸素とを含む。
【0082】
以下の実施例は、本発明およびその使用可能性を実証する。本発明は、他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の明らかな点で改変が可能である。したがって、実施例は、例示的な性質とみなされるべきであって、限定とみなされるべきではない。特段の指示がない限り、全ての部数および割合(%)は、重量基準であり、全ての温度は、摂氏度において未補正で示されている。数値の下限および数値の上限が本明細書に列挙される場合、任意の下限から任意の上限までの範囲が企図される。
【0083】
全ての出願、特許および刊行物、並びに同時係属中の米国仮出願(代理人整理番号PET-3516-V01)の開示全体は、参照として本明細書に援用される。
【0084】
さらなる詳細なく、当業者は、上述の説明を用いて、本発明を最大限に活用することができると考えられる。上述の好適な具体的な実施形態は、したがって、単に例示として解釈されるべきであり、決して本開示の残りの部分を限定するものではない。
【0085】
(実施例)
(実施例1:再生可能なナフタレンに富む留分の終沸点管理)
実施例1は、システムの加工処理可能性を保証するのに、再生可能なナフタレンに富む留分の終沸点をどのように選ばなければならないかを例証する。
【0086】
残留留分の動粘度を、図3において残留留分の初沸点の関数として示している。参考までに、残留初沸点は、ナフタレンに富む留分の終沸点にほぼ相当する。
【0087】
プロットされたデータは、所定の接触熱分解の厳度で取得されたものであり、考慮されるケースに応じて変動する。
【0088】
この実施例は、このケースについて、320℃超で、残留留分の粘度が大幅に増加し、あまりに高い値に達するため、商用システムにおいてこの留分を容易に加工処理可能とすることができないことを明確に実証している。
【0089】
ナフタレンに富む留分の終沸点を制限することは、したがって、最終生成物の仕様の懸念にも増して必須である。
【0090】
(実施例2:SR GO給送物の導入によるナフタレンに富む留分の芳香族含有率の管理による水素化処理反応の発熱の制限)
実施例1に基づいて、204℃から320℃までの沸騰範囲を示す接触熱分解方法からのナフタレンに富む留分を検討する。その組成を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
再生可能なナフタレンに富む留分は、したがって、100%の芳香族化合物から、約65重量%の二環芳香族化学種から構成される。
【0093】
表2により、SRガスオイル供給原料について、および再生可能なナフタレンに富む留分と混合された場合のそのブレンドについての組成および特性が与えられる。例示により、それぞれ90重量%/10重量%および80重量%/20重量%のSRガスオイル/ナフタレンに富む留分を含有している2つのブレンドについて与えられている。
【0094】
【表2】
【0095】
ナフタレンに富む留分と比較して、SR GOとのブレンドでは、大幅により低い芳香族含有率(約100%から35重量%および43重量%へ)、特に二環芳香族化学種含有率(約65重量%から18重量%および28重量%へ)がもたらされる。
【0096】
芳香族化合物、特にジ芳香族化合物の水素化では高い発熱が生ずることが分かっているため、SRガスオイルの導入は、水素化処理中に発生した過剰な熱およびその有害効果を管理する効果的な解決策である。
【0097】
この段階で、実施例1および実施例2は、再生可能なナフタレンに富む留分のアップグレードを可能にする提案された解決策の組み合わせの有効性を明確に実証している。
【0098】
(実施例3:SR GO/LCO給送物の導入によるナフタレンに富む留分の芳香族含有率の管理による水素化処理反応の発熱の制限)
実施例3は、実施例2で強調した効果と同じ様式を例証するが、今回はSRガスオイル給送物にLCO給送物が加えられる。結論は同じであるが、この実施例は、多数の外部蒸留物の給送物を検討し得ることを示している。
【0099】
表3には、SRガスオイルおよびLCOの供給原料(それぞれ65重量%および35重量%)について、並びに再生可能なナフタレンに富む留分と混合した場合のそのブレンドについての組成および特性が与えられている。それぞれ90重量%/10重量%および80重量%/20重量%のSRガスオイルおよびLCO/ナフタレンに富む留分を含有しているブレンドについての例示を与える。
【0100】
【表3】
【0101】
(実施例4:規格通りの再生可能なディーゼルを作る水素化処理工程)
水素化実験を、選択された給送物に対して33ccの下降流充填床反応器ユニットにおいて行った。当該反応器ユニットは、独立した供給原料および生成物の回収セクションを備えている。触媒は、市販のNiMo/AlおよびCoMo/Alの触媒であり、水素化を開始する前に現場内で完全に硫化されていた。反応器流出物を減圧し、Hストリッパに送る。ガス画分をストリッパ上部のところで回収し、オンラインガスクロマトグラフィーを通じて分析する。液体画分をストリッパ底部から回収し、オフラインで分析する。加工処理を定常状態にラインアウトさせた後に、生成物の収集および分析を開始する。
【0102】
表4は、ナフタレンに富む留分がSR GOと混合される場合およびSR GO+LCOと混合される場合の水素化処理の操作条件を示す。
【0103】
【表4】
【0104】
多くの難溶性材料が存在するため、LCOの存在中でより高い圧力レベルが必要とされる。
【0105】
表5および表6は、それぞれSR GOを用いた場合およびSR GO+LCOを用いた場合について、米国仕様と比較した水素化処理の後のブレンドの特性を示している。
【0106】
容易に理解されるように、これらの特性は、水素化処理の操作条件を調節することによって、米国仕様よりもはるかに制限のある欧州仕様に適合するように改善され得る。
【0107】
【表5】
【0108】
【表6】
【0109】
表7は、表4に示されるのと同じ条件下での直接的なナフタレンに富む留分(204-320℃)の水素化処理から得られた生成物のいくつかの特性を示している。
【0110】
【表7】
【0111】
反応の発熱の懸念にも増して、これらの結果は、この給送物をディーゼル商用仕様にするには非常に厳しいHDT条件が必須であり、これは初期の高い芳香族化合物濃度のためであることを明確に指し示している。
【0112】
結論として、実施例4により、ナフタレンに富む留分の終沸点管理と、適切な蒸留物留分割合での混合によるその総芳香族含有率の制限との組み合わせにより、再生可能なディーゼルに適合する商用仕様へのアップグレードが可能となることが例証される。
【0113】
前述の実施例は、本発明の一般的または具体的に説明された反応物および/または操作条件に前述の実施例で用いられたものを置き換えることによって、同様の成功をもって繰り返され得る。
【0114】
上述の説明から、当業者は、本発明の本質的な特質を容易に確認することができ、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に種々の変更および改変を加えて、本発明を種々の用途および状態に適合させることができる。
【国際調査報告】