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特表2024-542451接触熱分解供給原料からの再生可能なジェットの製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】接触熱分解供給原料からの再生可能なジェットの製造
(51)【国際特許分類】
   C10G 45/02 20060101AFI20241108BHJP
   C10G 1/00 20060101ALI20241108BHJP
   C10G 45/06 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 27/051 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 23/883 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C10G45/02
C10G1/00 B
C10G1/00 C
C10G45/06 Z
B01J27/051 M
B01J23/883 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529175
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 EP2022081446
(87)【国際公開番号】W WO2023088772
(87)【国際公開日】2023-05-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ドレイラール マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ファンジェ ベルトラン
(72)【発明者】
【氏名】フューネ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ボナルド ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ソレンセン チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】カルトラーノ アンソニー ロッコ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA03A
4G169BA07A
4G169BB02A
4G169BB09B
4G169BC57A
4G169BC59B
4G169BC65A
4G169BC68B
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169CC05
4G169DA06
4H129AA03
4H129BA03
4H129BA08
4H129BB04
4H129CA22
4H129CA25
4H129DA15
4H129DA19
4H129KA06
4H129KA10
4H129KC03X
4H129KC04X
4H129KC10X
4H129KC13X
4H129KD15Y
4H129KD18X
4H129KD21X
4H129KD24Y
4H129KD25X
4H129KD26X
4H129NA15
4H129NA23
(57)【要約】
本発明は、再生可能なジェット燃料ブレンドストックを調製することを含んでいる方法であって、以下による方法を提供する:a)バイオマス、触媒、および任意選択で輸送流体を、反応条件に維持された触媒熱分解方法の流動床反応器に給送して、再生可能な芳香族化合物を含有している未加工の流体生成物流れを製造する工程、b)a)の未加工の流体生成物流れを固体の分離およびストリッピングのシステムに給送して、分離された固体と、流体生成物流れを生じさせる工程、c)b)の流体生成物流れを分画システムに給送して、180℃~300℃で沸騰する画分を回収する工程、d)c)において生じた画分の少なくとも一部を水素化条件で水素により水素化して、ジェット燃料ブレンドストックとして適したナフテンを含有している水素化済み画分を生じさせる工程、e)任意選択で、生成物回収システムにおいて、d)の水素化済み画分からナフテンを含んでいるジェット燃料ブレンドストックを回収する工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能なジェット燃料ブレンドストックを調製することを含んでいる方法であって、以下の工程による方法:
a) バイオマス、触媒、および場合による輸送流体を、反応条件で維持された接触熱分解方法の流動床反応器に給送して、再生可能な芳香族化合物を含有する原料流体生成物流れを製造する工程、
b) a)の原料流体生成物流れを固体の分離およびストリッピングのシステムに給送して、分離された固体と、流体生成物流れとを生じさせる工程、
c) b)の流体生成物流れを分画システムに給送して、180℃~300℃で沸騰する画分を回収する工程、
d) c)において生じた画分の少なくとも一部を水素化条件で水素により水素化して、ジェット燃料ブレンドストックとして適したナフタレン類を含有している水素化済みの画分を生じさせる工程、
e) 場合による、生成物回収システムにおいてd)の水素化済み画分からナフテン類を含んでいるジェット燃料ブレンドストックを回収する工程。
【請求項2】
バイオマスは、木材、林業廃棄物、コーンストーバー、農業固形廃棄物、都市固形廃棄物、消化物、食品廃棄物、動物廃棄物、炭水化物、リグノセルロース系材料、キシリトール、グルコース、セロビオース、ヘミセルロース、リグニン、またはそれらの組み合わせである、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
再生可能な芳香族化合物は、ベンゼン、トルエン、インダン、インデン、2-エチルトルエン、3-エチルトルエン、4-エチルトルエン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、クメン、n-プロピルベンゼン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、アントラセン、メチルアントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、ピレン、フェナントレン、ジメチルナフタレン、エチルナフタレン、1-インデノール、アセナフタレン、フェノール、クレゾール、ベンゾフラン、ナフタレノール、メチルナフタレノール、ジメチルナフタレノール、アニリン、インドール、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
a)における再生可能な芳香族化合物は、最低25容積%のナフタレン、置換型ナフタレン類、ナフタレノール類、メチルナフタレノール類、およびナフタレンジオール類と、最低3重量%のキシレノール類と、15重量%未満のフェナントレン、アントラセン、および他の材料の合計とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
b)の流体生成物流れの少なくとも一部を水素化処理してヘテロ原子を除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
d)における水素化用の触媒は、少なくとも1種の第VIII族金属、および少なくとも1種の第VI族金属をアルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミナとシリカとの混合物上に担持されて含む;または触媒は、ゼオライト触媒、若しくは貴金属がロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、および白金のうちの1種または複数種、若しくはそれらの組み合わせである貴金属触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
d)における水素化を、200℃~400℃の反応温度および4.0MPa~12MPaの水素圧力で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
水素化を行う際の液体毎時空間速度は、0.1時間-1超であり、反応器操作条件でのガス対液体の容積比は、0.1~20:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ジェット燃料ブレンドストックとして適したd)における水素化済み画分は、10~16個の炭素原子を有する炭化水素を最低50重量%で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
水素化済み画分は、テトラリン類、デカリン類、または置換型のテトラリン類若しくはデカリン類を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
水素化済み画分は、30重量%~98重量%のナフテン類と、3重量%~50重量%のテトラリン類と、30重量%以下のナフタレン類およびアルキルナフタレン類と、0.1重量%以下のアセナフテン類、アセナフチレン類、フルオレン類、フェナントレン類、およびアントラセン類の合計とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
b)の流体生成物流れを、炭化水素の急冷または冷却を利用した急冷蒸気/液体分離システムに給送して、酸素化物、C9+芳香族化合物、および同伴されたチャー、コーク、灰、触媒微粒子を含んでいる液相流れと、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、オレフィン類、および芳香族化合物を含んでいる蒸気相流れとを生じさせ、蒸気相流れの前記芳香族化合物は、ベンゼン、トルエン、キシレン類、フェノール類、ナフトール類、ベンゾフラン、エチルベンゼン、スチレン、ナフタレン、メチルナフタレン、またはそれらの組み合わせを含んでおり、その後にc)において分画する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
分画c)において三環化学種を分離し、前記化学種をa)における熱分解にリサイクルすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
第1の水素化として、d)を、2.0~7.0MPaでCoMo含有触媒により行い、部分的に水素化された芳香環の部分的に水素化された流れを生じさせ、キシレノール類をベンゼン、トルエン、およびキシレン類に還元し、ナフタレン類をナフテン類に還元し、アルカン類を生じさせる第2の水素化を、Pd、若しくはPt、またはそれらの組み合わせ含有している貴金属触媒により、第1の水素化の圧力よりも高い2.0MPa~8.0MPaの圧力で行うことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法によって製造されたジェット燃料ブレンドストック。
【請求項16】
請求項9に記載の方法によって製造されたジェット燃料ブレンドストック。
【請求項17】
請求項11に記載の方法によって製造されたジェット燃料ブレンドストック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された接触熱分解方法に関する。特に、本発明は、再生可能な供給原料からナフタレンに富む油相の接触熱分解および水素化を介して再生可能な航空燃料ブレンドストックおよび化学物質を製造する方法、化学物質、燃料ブレンドストック、およびそれにより製造された燃料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の製油所は、原油を多数の単位操作および転化反応を通じて転化して、ディーゼル、ジェット燃料、およびガソリンブレンドストックを含むいくつかの個々の流れとし、これらは、別々のタンクに貯蔵されることで、計算された割合で一緒にブレンドされ、自動車、トラック、および航空機で用いられる種々のグレードの「完成」燃料グレードを得ることができる。
【0003】
米国において、ガソリン、ジェット、およびディーゼルの燃料に特定の最小レベルから最大レベルの間で再生可能な起源のブレンドストックを含めることを義務付ける追加の法律がある。現在、これらの制限は、議会によって再生可能な燃料の基準(Renewable Fuels Standards:RFS)を介して設定されている。RFSは、2022年までに210億ガロンの先進バイオ燃料が製造される必要があることを義務付けている。これらの先進バイオ燃料の一部は、代替可能な輸送用燃料、例えば、バイオマス由来のガソリン、ジェット燃料、およびディーゼルとなるだろう。この義務を果たすためにバイオマスからそのような燃料を製造する努力が続けられており、バイオマスから経済的に製造されるガソリン、ジェット、およびディーゼルの燃料に対する強い需要が存在するだろうことが認識されている。ガソリンのブレンド要件を満たすのに米国において用いられる主な再生可能な起源のガソリンブレンドストックは、主としてトウモロコシまたは糖の発酵から製造されるエタノールである。小規模ではあるが、国の再生可能なガソリンプールへの寄与が増えつつあるのは、非食品バイオマス、例えば、コーンストーバーから作られるいわゆる「第二世代」セルロース系エタノールである。
【0004】
2020年9月に発表されたUS DOE Office of Energy Efficiency and Renewable Energy(EERE)の報告(非特許文献1)に記載されているように、世界の1060億ガロン(国内では210億ガロン)の商用ジェット燃料市場は、2050年までに2倍を超えると見積もられている。この市場は、年間数億トンのバイオマスを消費する可能性があり、これは米国における現在のバイオマスの利用可能量(年間3億4000万トン)と一致している。コスト競争力のある持続可能な航空燃料(SAF)は、この市場の成長に対処する上で重要な部分として認識されている。再生可能なおよび/または廃棄の炭素は、低コストで、燃焼による大気汚染が少なく、かつ煤の発生が少ないジェット燃料への道筋を提供することができる。この燃料経路にとってキーとなるのは、3種のSAFブレンドストック-イソアルカン類、シクロアルカン類、および高性能分子-を廉価な再生可能な資源から調達することにある。廃炭素から調達する際には、しばしば、追加の利点、例えば、湿潤汚泥から炭素を調達する場合には、水がよりきれいになること、または都市固形廃棄物から炭素を調達する場合には埋立地に行く廃棄物がより少なくなることがある。さらに、現在のSAFの価格は、石油ベースのJet A燃料よりも高い。燃料価格がハードルとなるのは、燃料が航空会社の運航コストの20%~30%であるためである。
【0005】
民間または商用の航空機の場合、ジェット燃料には、2つの主なグレードがある:Jet A-1およびJet A。どちらのグレードのジェット燃料もケロセン型燃料であり、これらの間の違いは、Jet A-1が最大-47℃の凝固点の要件を満たしているのに対し、Jet Aが最大-40℃の凝固点の要件を満たしているということにある。ジェット燃料には別のグレードがある:非常に寒冷な気候で使用されるJet Bは、ナフサおよびケロシンからの画分をカバーするワイドカット燃料であり、最大-50℃の凝固点の要件を満たしている。
【0006】
ジェット燃料は、n-アルカン類、イソアルカン類、シクロアルカン類、および芳香族化合物からなり、5~16個の炭素原子を有している。芳香族化合物は、アルカン類ほどにはきれいに燃えないので、粒子状物質の排出量が多くなり、比エネルギーも低くなる。n-アルカン類は、許容可能であるが、流動性および取り扱い性の特性を満たしておらず、それらのブレンドのポテンシャルを制限する。イソアルカン類は、高い比エネルギー、良好な熱安定性、および低い凝固点を有している。シクロアルカン類は、イソアルカン類に補足的な価値をもたらし、燃料が密度の要件を満たすことを可能にし、かつ現在は芳香族化合物から提供されるシール膨張能を潜在的に提供することによって、芳香族化合物と同じ機能上の利益を提供する。イソアルカン類とシクロアルカン類とを組み合わせると、高い比エネルギーとエネルギー密度を実現し、排出特性を最小限に抑えることによって、燃料に付加価値を与える可能性がある。
【0007】
シクロアルカン類は、多様な範囲の分子および特性を含み、3つのクラスに分類される:単環式、縮合二環式、および歪み分子。これらのシクロアルカンのクラスのそれぞれは、典型的なJet A燃料よりも高いエネルギー密度を有する。名目上、平均的なJet A燃料は、およそ25/7/0のwt%(重量%)の単環式/縮合二環式/歪みのシクロアルカンである。単環式アルカン類は、従来の燃料の要件を超える密度、凝固点、引火点、および比エネルギーを有することができる。再生可能な起源に由来するベンゼンからシクロヘキサンを製造する方法は、特許文献1および2の主題である。
【0008】
Jet A燃料中の縮合二環式アルカン類は、ナフテン類、例えば、デカリン(C1018)から構成され、これは、ナフタレン(C10)の完全に水素化された類似体であり、しばしば、様々なアルキル長の追加の炭素および分岐を有する。これらの縮合二環式アルカン類は、高いエネルギー密度、平均的なJet Aと同様の比エネルギー、および優れた熱安定性を特徴としている。デカリンおよび単環式アルカン類は、芳香族化合物を含むJet A燃料のものと同様の膨張能を示していることから、前述の芳香族濃度の最小値に取って代わる可能性がある。三環式および四環式の物質、例えば、フェナントレン、ピレン、クリセン、およびフルオランテンは、ジェット燃料ブレンドの一部となり得る多環式パラフィン類の潜在的な供給源である。経済的かつ環境的な要件を満たす再生可能な材料から縮合多環式芳香族化合物を製造する方法は、現時点ではまだ存在しない。
【0009】
2020年1月に、ASTMは、従来のジェット燃料の厳格な組成および性能の要件を満たし、Jet AまたはJet A-1とのブレンドレベルを最大10%に制限するD4054のファストトラック付属書(Fast Track Annex)(図9)を承認した。組成の要件には、ブレンド中の炭化水素のタイプに対する制限が含まれる。シクロパラフィン濃度は、30重量%未満でなければならず、芳香族組成は、20重量%未満でなければならない。さらに、テトラリン類およびインダン類(C10)は、6重量%未満(または芳香族化合物30重量%未満)の組成を有しなければならない。
【0010】
バイオマス熱分解は、再生可能な燃料および燃料ブレンドストックを提供するための代替として開発されてきた。バイオマス熱分解の生成物は、複雑で不安定なバイオオイルであり、その組成は、供給原料および熱分解条件に応じて大幅に変わり、過度の酸素化物を含む何百種もの化合物を含む。一般に、バイオオイルには、20重量%~40重量%の酸素と、少割合(%)の硫黄含有物質とが含まれている。バイオオイルの水素化処理には、水素化脱酸素(HDO)、水素化脱硫(HDS)、およびオレフィンの水素化を含めて、オイルをブレンドストックまたは単独燃料として適したものにすることが必要とされる。水素化処理は、酸素をほとんど含まない石油供給原料向けには十分に開発されているが、バイオオイルを水素化処理するという課題は、より実質的である。現在までのところ、バイオオイルを水素化処理するのに好適な方法は、高圧の水素、貴金属触媒、および多数の単位操作を必要とする多段階システムである(例えば、非特許文献2が参照され、これは、http://www.osti.gov/bridgeにおいて電子的に入手可能である)。
【0011】
バイオマスの接触熱分解は、バイオマスを化学物質および燃料にアップグレードするための改善された熱的方法として開発されてきた。この方法は、流動床反応器における触媒の存在中でのバイオマスの転化を含む。触媒は、通常、酸性のミクロ多孔質の結晶性物質であり、通常、ゼオライトである。ゼオライトは、バイオマス分解の一次熱分解生成物のアップグレードに有効であり、これらを芳香族化合物、オレフィン類、CO、CO、炭、コーク、水、およびその他の有用な材料に転化する。芳香族化合物としては、数ある芳香族化合物の中でも、ベンゼン、トルエン、キシレン類(総称してBTX)、およびナフタレンが挙げられる。オレフィン類には、エチレン、プロピレン、およびより少量のより高分子量のオレフィン類が挙げられる。BTX芳香族化合物は、これらの価値が高く、かつ輸送し易いため望ましい生成物である。トルエンおよびキシレン類がガソリン成分として特に望ましいのは、それらのオクタン等級およびエネルギー密度が高いことに起因している。より重質の芳香族化合物は、ジェットおよびディーゼルの燃料の適切な前駆体である。適切な条件下で製造された場合、接触熱分解の生成物は、酸素含有率が非常に低い。
【0012】
特許文献3には、バイオマス接触熱分解方法からのナフタレンに富む油相の単離が記載されている。ナフタレンに富む油相または多核芳香族化合物を含む他の材料を水素化処理または水素化することの言及はなされていない。
【0013】
先の刊行物には、同様の二環式ナフタレン性および置換型ナフタレン性の構造を含む石炭抽出物を水素化処理して、ジェット燃料として用いられるのに適した流れを生じさせる有効性が示されている。この出願には、再生可能な供給原料、例えば、米国南東部産のテーダマツまたは他の同様のバイオマス資源にほぼ完全に由来するジェット燃料添加剤またはブレンドストックを製造する水素化方法が開示されている。
【0014】
バイオマス由来の供給原料をジェット燃料に転化するために開発された種々の技術があり、例えば、アルコールの脱水、油の水素化、ガス化、および糖の転化がある。これらの技術の全ては、再生可能な燃料からジェット燃料を作り出す多段の処理工程を含んでおり、ジェット燃料前駆体を作り出す木質バイオマスの1工程の接触熱分解は記載されていない。多くのこのような方法は、非特許文献3に詳細に記載されており、ここで、「固体ベースの供給原料は、ガス化を通じてバイオマス由来の中間体に転化され、生化学的または熱化学的方法を通じてアルコールに転化され、生化学的方法を通じて糖に転化され、そして熱分解方法を通じてバイオオイルに転化される」。Wangは、「バイオオイルは、C1からC21以上の範囲にわたる炭素を含有している酸素化有機化学種の混合物である」と指摘している。Wangによって考えられた方法はいずれも、残留ヘテロ原子、例えば、S、N、およびOの除去並びに特定の芳香族部分の飽和しか必要とせずに固形供給原料を酸素含有率が非常に低い物質に直接的に転化して再生可能なジェット燃料またはジェット燃料ブレンドストックを生じさせることはできない。
【0015】
Zhangらは、非特許文献4の中で、再生可能なジェット燃料を製造するための多工程方法を記載しており、木材の接触熱分解を含み、続いて、生じた芳香族化合物をイオン液触媒および軽質(C2~C4)オレフィン類を用いてバッチ方式において25℃~80℃にて20~240分にわたって接触アルキル化し、得られたアルキル化芳香族化合物を5重量%のPd/活性炭触媒を用いて120~200℃にて6時間にわたって水素化する。
【0016】
特許文献4~7、1および2(それぞれは参照としてその全体が本明細書に援用される)において、接触熱分解に適した装置および方法の条件が記載されている。
【0017】
現在の商業慣行および技術の開示を踏まえると、バイオマスの単一工程接触熱分解の使用によって、技術上および規制上の制限を満たす再生可能なジェット燃料ブレンドストックまたは燃料を製造するための簡単で経済的な方法が求められている。本発明は、そのような方法および得られるジェット燃料ブレンド組成物および化学物質を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第10767127号明細書
【特許文献2】米国特許第10822562号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2020/0165527号明細書
【特許文献4】米国特許第8277643号明細書
【特許文献5】米国特許第8864984号明細書
【特許文献6】米国特許第9790179号明細書
【特許文献7】米国特許第10370601号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】“Sustainable Aviation Fuel: Review of Technical Pathways,”
【非特許文献2】S. Jones ら著、“Process Design and Economics for the Conversion of Lignocellulosic Biomass to Hydrocarbon Fuels: Fast Pyrolysis and Hydrotreating Bio-oil Pathway,” PNNL-23053, November 2013
【非特許文献3】W-C Wangら著、“Review of Biojet Fuel Conversion Technologies,” Technical Report NREL/TP-5100-66291, July 2016
【非特許文献4】Zhang ら著、“Production of jet and diesel biofuels from renewable lignocellulosic biomass,”、2015年、Applied Energy 150 、p. 128-137
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の概要)
本発明の種々の態様は、接触熱分解および選択された接触熱分解生成物の水素化または他の方法を介した再生可能な供給原料からのジェット燃料ブレンドストックおよび化学物質の製造を含む。本発明は、経済的な改善された方法でこれを提供する。
【0021】
第1の態様において、本発明は、再生可能なジェット燃料ブレンドストックを調製するための改善された方法を提供し、当該方法は、以下の工程を含んでいる:再生可能な芳香族化合物を含んでいる混合物を分画システムに給送して、画分、例えば、大気条件で180℃以上で沸騰する画分および大気条件において180℃以下で沸騰する画分を回収する工程、大気条件で180℃以上で沸騰する工程a)の回収された画分の少なくとも一部を水素化処理して、水素化済み画分を生じさせる工程、および生成物回収システムにおいて工程b)の水素化済み画分から再生可能な燃料ブレンドストックを回収する工程。
【0022】
より詳細には、本発明は、以下の工程を含む:
a) バイオマス、触媒組成物、および輸送流体を、反応条件で維持された接触熱分解方法の流動床反応器に給送して、原料流体生成物流れを製造する工程、
b) 工程a)の原料流体生成物流れを固体の分離およびストリッピングのシステムに給送して、分離された固体と、流体生成物流れとを生じさせる工程、
c) 工程b)の流体生成物流れを分画システムに給送して、180℃以上の画分;好ましくは180℃~350℃で沸点するような画分;さらに好ましくは180℃~320℃で沸騰するような画分、さらにより好ましくは200℃~300℃で沸騰するような画分を回収する工程、
d) 工程c)において作製された生成物流れの少なくとも一部を水素化条件で水素により水素化して、水素化済みの画分を生じさせる工程、
e) 生成物回収システムにおいて工程d)の水素化済み画分からナフテン類を含んでいる燃料、例えばジェット燃料ブレンドストックを回収する工程。
【0023】
本発明において示される沸騰範囲は、控え目な圧力操作下、典型的には大気圧または大気圧に近い圧力、例えば0.1MPaでの沸騰範囲を指す。
【0024】
(用語集)
本明細書において用いられる場合、用語「バイオマス」は、当該技術分野におけるその慣例的な意味を有し、再生可能なあらゆるエネルギー有機供給源または化学物質を指す。その主な構成要素は、以下であり得る:(1)樹木(木材)および全ての他の植生;(2)農業の産物および廃棄物(コーンストーバー、果物、生ゴミのエンシレージ(garbage ensilage)など);(3)藻類およびその他の海洋植物;(4)代謝廃棄物(堆肥、下水)、並びに(5)セルロース系都市廃棄物、および炭素質都市廃棄物。バイオマス材料の例は、例えば、Huber, G.W. et al, “Synthesis of Transportation Fuels from Biomass: Chemistry, Catalysts, and Engineering,” Chem. Rev. 106, (2006), pp. 4044-4098に記載されている。
【0025】
バイオマスは、慣例的に、燃料としての使用または工業生産のために転化され得る生きているまたは最近死んだばかりの生物学的材料として定義される。バイオマスとしての基準は、その材料が最近炭素循環に加わったばかりであるべきであり、そのため、燃焼方法における炭素の放出が、適度に短い期間にわたって平均されて炭素循環に加わる炭素の純増加をもたらさないことにある(この理由のため、化石燃料、例えば、泥炭、褐炭および石炭がこの定義によるバイオマスとはみなされないのは、それらは、長い間にわたって炭素循環に加えられなかった炭素を含有しているため、それらの燃焼が大気中の二酸化炭素の純増加をもたらすからである)。最も一般的には、バイオマスは、バイオ燃料としての使用のために栽培された植物性物質を指すが、それは、繊維、化学物質または熱の生産に用いられる植物または動物の物質も含む。バイオマスは、燃料として燃焼されることができるかまたは化学物質に転化されることができる生分解性廃棄物または副産物を含む場合もあり、都市廃棄物、植物性廃棄物(庭または公園の廃棄物から構成される生分解性廃棄物、例えば、草または花の切り取ったものおよび生け垣の刈り取ったもの)、動物の糞尿を含む農業の副産物、食品加工廃棄物、下水汚泥、および木材パルプまたは藻類からの黒液を含む。バイオマスは、地質学的プロセスによって石炭、オイルシェールまたは石油などの物質に変換された有機材料を除外する。バイオマスは、広範かつ典型的には、ススキ、トウダイグサ、ヒマワリ、スイッチグラス、麻、トウモロコシ(メイズ)、ポプラ、ヤナギ、サトウキビ、およびアブラヤシ(パーム油)を含む植物から栽培され、根、茎、葉、種皮および果実の全てが役立つ可能性がある。加工処理ユニットへの導入のための原材料の加工処理は、ユニットの要求およびバイオマスの形態に応じて異なる場合がある。バイオマスは、ASTM法のD 6866-06によって決定される化石燃料中に見られる量よりも大幅に多い量の14Cの存在によって、化石由来の炭素と区別されることができる。
【0026】
本発明の方法において用いられるバイオマスは、最も好ましくは、木材、林業廃棄物、コーンストーバー、農業固形廃棄物、都市固形廃棄物、消化物、食品廃棄物、動物廃棄物、炭水化物、リグノセルロース系材料、キシリトール、グルコース、セロビオース、ヘミセルロース、リグニン、およびそれらの組み合わせの中から選ばれる固形材料であり得る。
【0027】
用語「再生可能」は、バイオマス由来の物質を指す;好ましくは、最低50質量%のバイオマス由来のC、または最低80質量%のバイオマス由来のCを含有しており、典型的には、90~100質量%のCは、バイオマスに由来する。
【0028】
本明細書において用いられ場合の接触熱分解におけるバイオマス転化から得られる用語「ナフタレンに富む油」には、ナフタレン、メチルナフタレン類(例えば、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレンなど)、ジメチルナフタレン類(例えば、1,5-ジメチルナフタレン、1,6-ジメチルナフタレン、2,5-ジメチルナフタレンなど)、エチルナフタレン類、その他のポリ芳香族化合物(例えば、アントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、ピレン、フェナントレンなど)、並びにヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄、窒素など)を含有する芳香族化合物およびポリ芳香族化合物が含まれる。ナフタレンに富む油は、典型的には約180℃~約575℃の温度範囲で沸騰する流れである。この流れは、接触熱分解方法におけるバイオマス転化から得られる。
【0029】
ナフタレンに富む留分は、最低25重量%、または最低35重量%、または最低40重量%、または25重量%~90重量%、または35重量%~80重量%、または40重量%~75重量%のナフタレン、置換型ナフタレン類、ナフタレノール類、メチルナフタレノール類、およびナフタレンジオール類の合計と、最低3重量%、または最低5重量%、または最低6重量%、または3重量%~15重量%、または5重量%~10重量%、または6重量%~8重量%のキシレノール類と、15重量%未満、または10重量%未満、または5重量%未満、または0.01重量%~20重量%、または1重量%~15重量%、または5重量%~13重量%のフェナントレン、アントラセン、および他の材料の合計とを含む。
【0030】
本明細書において用いられる場合の用語「オフガス」には、H、CO、CO、Nおよび1~6個の炭素原子を含有している炭化水素(例えば、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン、イソブテン、1-ブテン、2-ブテン、ペンタン、ペンテン、ヘキサン、ヘキセンなど)が含まれる。
【0031】
本明細書において用いられる場合の複数種または1種の用語「タール」は、約310℃~約575℃の温度範囲で典型的に沸騰する流れであり、この流れは、通常、暗褐色または黒色で、瀝青質かつ粘稠性である。
【0032】
本明細書において用いられる場合、用語「1種または複数種の芳香族化合物」は、1つまたは複数の芳香族基、例えば、単一の芳香族環系(例えば、ベンジル、フェニルなど)および縮合ポリ環系芳香族環系(例えば、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチルなど)を含んでいる炭化水素の1種または複数種の化合物を指す。芳香族性化合物の例は、ベンゼン、フェノール、ベンゼンジオール類、ベンゼントリオール類、トルエン、クレゾール類、メトキシベンゼン、メチルベンゼンジオール類、エチルベンゼン、キシレン類、スチレン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、メチルベンゼンメタノール、ジメチルフェノール類、エチルフェノール類、ジメチルベンゼンジオール類、エチルカテコール、レゾルシノールモノアセタート、ベンゾフラン、3,4-ジヒドロキシエチルベンゼン、ホロン、エチルトルエン類、プロピルベンゼン類、トリメチルベンゼン類、ベンゼン-1-エチル-4-メトキシ、フェノール-2,3,6-トリメチル、フェノール-4-エチル-2-メトキシ、α-メチルスチレン、メチルスチレン類、1-プロペニルベンゼン、2-プロペニルベンゼン、インダン、2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、1,2-インダンジオール、3-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸メチル、4-(2-プロペニル)-フェノール、(2e)-3-フェニルプロパ-2-エナール、インデン、フェノール-2-(2-プロピニル)、メチルベンゾフラン類、1H-インデノール、2-メチルベンゾチオフェン、1-メチル-4-プロピルベンゼン、1-メチル-4-(プロパン-2-イル)ベンゼン、4-イソプロピルベンジルアルコール、5-イソプロピル-2-メチルフェノール、カルバクロール、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ベンゼンジオール、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、メチルインダン類、2,4-ジメチルスチレン、1-エテニル-4-エチルベンゼン、2-メチル-1-プロペニルベンゼン、2,3-ジヒドロ-5-メチル-1H-インデン、5-メトキシインダン、1,5-ジヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ベンゼン、(1-メチル-2-シクロプロペン-1-イル)、1-メチルインデン、2-メチルインデン、3-メチルインデン、4-メチルインデン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,4-ジヒドロナフタレン、5,8-ジヒドロ-1-ナフタレノール、2-メチル-1-インダノン、2,3-ジメチルベンゾフラン、ナフタレン、ナフタレノール類、ペンタメチルベンゼン、メチルテトラリン類、2,2-ジメチルインダン、1H-インデン 1-エチル-2,3-ジヒドロ、ジメチルインデン類、エチルインデン類、ジヒドロメチルナフタレン類、メチルナフタレン類、メチルナフトール類、1-フェニルシクロヘキセン、エチルナフタレン類、ジメチルナフタレン類、ビフェニル、アセナフテン、ジベンゾフラン、2-(1-メチルエチル)ナフタレン、トリメチルナフタレン類、トリメチルアズレン、3-メチル-1,1-ビフェニル、フルオレン、2-フェナントレニル-1,2,3,4-テトラヒドロ、9H-フルオレン-1-メチル-、9H-フルオレン-2-メチル、9H-フルオレン-4-メチル、アントラセン、フェナントレン、3-フェナントロール、メチルアントラセン類、2,6-ジメチルフェナントレン、2-フェニルナフタレン、ピレン、1-ベンジルナフタレン、7H-ベンゾ-[c]-フルオレン、11H-ベンゾ-[b]-フルオレン、1-メチル-7-イソプロピルフェナントレン、1,4-ジメチル-2-フェニルナフタレン、クリセン、アニリン、ピリジン、ピロールを含むが、これらに限定されない。
【0033】
単環および/または多環の芳香族化合物が、いくつかの実施形態において生じさせられてもよい。芳香族化合物は、ヘテロ原子置換基を含む単環および多環の化合物、すなわちフェノール、クレゾール、ベンゾフラン、アニリン、インドールなども含む。再生可能な芳香族化合物は、再生可能な資源、例えば、バイオマスから調製された上記の材料である。
【0034】
本明細書において用いられる場合の用語「ナフテン類」には、少なくとも1つの飽和パラフィン環を有する化合物、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、およびシクロヘプタンを含む一般式C2nの炭化水素環化合物、アルキル化シクロパラフィン類、例えば、メチル-、エチル-、ジメチル-、プロピル-、トリメチル-、およびブチル-のシクロヘキサン類、シクロペンタン類、およびシクロヘプタン類、並びに多環シクロパラフィン類、例えば、デカリン、アルキル化デカリン類、テトラリン、およびアルキル化テトラリン類が含まれる。
【0035】
本明細書において用いられる場合、用語「オレフィン」または「オレフィン化合物」(別名「アルケン」)は、当該技術分野におけるそれらの通常の意味を有し、二重結合によって連結された1対または複数対の炭素原子を含有しているあらゆる不飽和炭化水素を指す。オレフィン類には、環式および非環式の(脂肪族の)オレフィン類の両方が含まれ、二重結合は、それぞれに、環式(閉環)基または開鎖基の一部を形成している炭素原子の間に位置している。さらに、オレフィン類は、あらゆる適切な数の二重結合を含んでもよい(例えば、モノオレフィン類、ジオレフィン類、トリオレフィン類など)。オレフィン化合物の例は、とりわけ、エテン、プロペン、アレン(プロパジエン)、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン(2-メチルプロペン)、ブタジエン、およびイソプレンなどを含むが、これらに限定されるものではない。環式オレフィン類の例は、シクロペンテン、シクロヘキセン、およびシクロヘプテンなどを含む。芳香族性化合物、例えば、トルエンは、オレフィン類とみなされない;しかしながら、芳香族部分を含むオレフィン類は、オレフィン類とみなされ、例えば、アクリル酸ベンジルまたはスチレンがある。
【0036】
本明細書において用いられる場合、用語「酸素化物」は、その構造中に少なくとも1つの酸素の原子を含有するあらゆる有機化合物を含み、例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)、酸(例えば、酢酸、プロピオン酸など)、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチルなど)、エーテル(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなど)、置換基を含有している酸素を有する芳香族化合物(例えば、フェノール、クレゾール、安息香酸、ナフトールなど)、環式エーテル、酸、アルデヒド、およびエステル(例えば、フラン、フルフラールなど)などがある。
【0037】
本明細書において用いられる場合、用語「フェノール油」および「酸素化油」には、酸素含有置換基を有する芳香族化合物(例えば、フェノール、m-クレゾール、o-クレゾール、p-クレゾール、キシレノール類など)およびBio-TCat反応器流出物からの、典型的には80℃から220℃までの範囲で沸騰する他の化合物(例えば、ベンゼン、トルエン、p-キシレン、m-キシレン、α-キシレン、インダン、インデン、2-エチルトルエン、3-エチルトルエン、4-エチルトルエン、1,3,5-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、スチレン、クメン、プロピルベンゼン、ナフタレンなど)が含まれる。フェノール油および酸素化油は、典型的には80℃から220℃までの温度範囲で沸騰する流れである。
【0038】
本明細書において用いられる場合、用語「熱分解」および「熱分解する」は、当該技術分野におけるそれらの慣例的な意味を有し、化合物、例えば固形炭化水素質材料の、熱による、好ましくは分子酸素、すなわちOの添加なくまたはその不存在下での、1種または複数種の他の物質、例えば揮発性有機化合物、ガスおよびコークへの変換を指す。好ましくは、熱分解反応チャンバ内に存在する酸素の容積分率は、0.5%以下である。熱分解は、触媒を用いてまたは用いずに行われてよい。「接触熱分解」は、触媒の存在中で実行される熱分解を指し、以下により詳細に説明される工程を含んでよい。接触流動床反応器内でバイオマスの転化を伴い芳香族化合物、オレフィン類、および種々の他の材料の混合物を生じさせる接触熱分解は、接触高速熱分解(catalytic fast pyrolysis:CFP)とも呼ばれ、特に有益な熱分解方法である。接触熱分解方法の例は、例えば、Huber, G.W. et al, “Synthesis of Transportation Fuels from Biomass: Chemistry, Catalysts, and Engineering,” Chem. Rev. 106, (2006), pp. 4044-4098において概説され、参照として本明細書に援用される。接触熱分解方法からの生成物には、例えば、以下の材料を含んでよい:ベンゼン、フェノール、ベンゼンジオール類、ベンゼントリオール類、トルエン、クレゾール類、メトキシベンゼン、メチルベンゼンジオール類、エチルベンゼン、キシレン類、スチレン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、メチルベンゼンメタノール、ジメチルフェノール類、エチルフェノール類、ジメチルベンゼンジオール類、エチルカテコール、レゾルシノールモノアセタート、ベンゾフラン、3,4-ジヒドロキシエチルベンゼン、ホロン、エチルトルエン類、プロピルベンゼン類、トリメチルベンゼン類、ベンゼン-1-エチル-4-メトキシ、フェノール-2,3,6-トリメチル、フェノール-4-エチル-2-メトキシ、α-メチルスチレン、メチルスチレン類、1-プロペニルベンゼン、2-プロペニルベンゼン、インダン、2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、1,2-インダンジオール、3-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸メチル、4-(2-プロペニル)-フェノール、(2e)-3-フェニルプロパ-2-エナール、インデン、フェノール-2-(2-プロピニル)、メチルベンゾフラン類、1H-インデノール、2-メチルベンゾチオフェン、1-メチル-4-プロピルベンゼン、1-メチル-4-(プロパン-2-イル)ベンゼン、4-イソプロピルベンジルアルコール、5-イソプロピル-2-メチルフェノール、カルバクロール、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ベンゼンジオール、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、メチルインダン類、2,4-ジメチルスチレン、1-エテニル-4-エチルベンゼン、2-メチル 1-プロペニルベンゼン、2,3-ジヒドロ-5-メチル-1H-インデン、5-メトキシインダン、1,5-ジヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ベンゼン、(1-メチル-2-シクロプロペン-1-イル)、1-メチルインデン、2-メチルインデン、3-メチルインデン、4-メチルインデン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,4-ジヒドロナフタレン、5,8-ジヒドロ-1-ナフタレノール、2-メチル-1-インダノン、2,3-ジメチルベンゾフラン、ナフタレン、ナフタレノール類、ペンタメチルベンゼン、メチルテトラリン類、2,2-ジメチルインダン、1H-インデン 1-エチル-2,3-ジヒドロ、ジメチルインデン類、エチルインデン類、ジヒドロメチルナフタレン類、メチルナフタレン類、メチルナフトール類、1-フェニルシクロヘキセン、エチルナフタレン類、ジメチルナフタレン類、ビフェニル、アセナフテン、ジベンゾフラン、2-(1-メチルエチル)ナフタレン、トリメチルナフタレン類、トリメチルアズレン、3-メチル-1,1-ビフェニル、フルオレン、2-フェナントレニル-1,2,3,4-テトラヒドロ、9H-フルオレン-1-メチル-、9H-フルオレン-2-メチル、9H-フルオレン-4-メチル、アントラセン、フェナントレン、3-フェナントロール、メチルアントラセン類、2,6-ジメチルフェナントレン、2-フェニルナフタレン、ピレン、1-ベンジルナフタレン、7H-ベンゾ-[c]-フルオレン、11H-ベンゾ-[b]-フルオレン、1-メチル-7-イソプロピルフェナントレン、1,4-ジメチル-2-フェニルナフタレン、クリセン、アニリン、ピリジン、ピロールなど。
【0039】
水素化加工処理(hydroprocessing)は、有機材料の水素との反応であり、水素化処理、水素化、および水素化分解の方法を含む。本明細書において用いられる場合、用語「水素化処理」は、有機給送材料を水素と反応させるための比較的穏やかな水素化加工処理の方法を指し、有機液体画分から汚染物質、例えば、窒素、硫黄、および酸素の最低90%を除去するのに用いられる。これらの汚染物質は、設備、触媒、および最終生成物の品質に悪影響を及ぼす可能性がある。水素化処理により、多くの材料のオレフィン部分の大部分が飽和もして対応する材料になり、オレフィン部分はパラフィン相当部分に転化され、例えば、1-ヘキセンは、ヘキサンに飽和される場合があり、スチレンはエチルベンゼンに飽和される場合がある。水素化処理により、材料の芳香族部分、例えば、ベンゼンをシクロヘキサンに大幅には飽和せず、すなわち、芳香環の飽和は、材料中の芳香環の10%未満である。水素化処理が水素化などの方法の前に行われるのは、水素化触媒が未処理の供給原料中の汚染物質によって汚染されないようにするためである。水素化処理が接触分解または水素化分解の前に用いられるのは、硫黄を削減し、生成物収率を向上させ、石油画分を完成したジェット燃料、ディーゼル燃料、および暖房用燃料油にアップグレードするためである。
【0040】
水素化処理器における使用のための適切な水素化処理触媒は、既知の従来の水素化処理触媒であり、少なくとも1種の第VIII族金属(すなわち、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、または白金、好ましくは鉄、コバルト、またはニッケル、より好ましくはコバルトおよび/またはニッケル)および少なくとも1種の第VI族金属(好ましくは、モリブデン若しくはタングステンまたはその両方)から構成されるものを、高表面積担体材料、好ましくはアルミナ若しくはシリカまたはアルミナとシリカの混合物上に含む。他の適切な水素化処理触媒としては、ゼオライト触媒、並びに、貴金属触媒が挙げられ、貴金属は、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、および白金の1種または複数種から選択される。複数タイプの水素化処理触媒が同じ反応容器内で用いられることは、本発明の方法の範囲内である。第VIII族金属は、典型的には約0.5重量パーセントから約20重量パーセントまでの範囲にわたる、好ましくは約0.5重量パーセントから約10重量パーセントまでの範囲にわたる量で存在する。第VI族金属は、典型的には、約1重量パーセントから25重量パーセントまでの範囲、好ましくは約1重量パーセントから12重量パーセントまでの範囲にわたる量で存在することになる。水素化処理用のいくつかの例示的な触媒が上記で説明されているが、特定の供給原料および所望の流出物の質に応じて他の水素化処理および/または水素化脱硫の触媒が用いられてもよい。触媒および水素化処理条件は、水素化処理器への給送物中の芳香環における芳香族炭素-炭素結合の10%未満、または5%未満、または2%未満、または1%未満の水素化を達成するように選択され得る。
【0041】
水素化処理に使用される反応条件は、選択された特定の反応器の設計および個々の化学種の濃度に一部依存することになるが、200℃~400℃の反応温度および4.0MPa(40bar)~12MPa(120bar)の水素圧力が通常好適である。有利には、この接触工程は、0.1時間-1を超える液体毎時空間速度で行われてよい。反応器操作条件での水素化処理器内のガス対液体の容積比(「G:L比」)は、0.1~20:1、より典型的には0.1~10:1の範囲にわたり得る。
【0042】
本明細書において用いられる場合、用語「水素化」は、有機給送材料を水素と反応させて給送混合物中の芳香環の実質的な部分を飽和させるための水素化加工処理方法を指す。水素化により、2つ以上の芳香環を有する材料が、芳香環の1つ以上が飽和された材料に転化される場合がある。例えば、水素によるナフタレンのテトラリン、またはデカリンまたはテトラリンおよびデカリンの混合物への転化は、水素化方法である。典型的には、ナフテン類を生じさせる材料中の芳香環の転化率は、混合物中の芳香環の最低15%、または最低25%または最低35%、または15%~99%、または25%~90%、または35%~85%である。水素化の典型的な加工処理条件としては、少なくとも280℃、または少なくとも300℃、または少なくとも320℃、または280~450℃、または300~400℃、または320~350℃の温度が挙げられる。芳香環の水素化のための典型的な水素圧力としては、少なくとも4MPa、または少なくとも6MPa、または少なくとも8MPa、または4~20MPa、または6~15MPa、または8~12MPaが挙げられる。水素化のための典型的な液体毎時空間速度は、少なくとも0.5時間-1、または少なくとも1時間-1、または少なくとも2時間-1、または10時間-1以下、または5時間-1以下、または3時間-1以下、または0.5時間-1~5時間-1、または1時間-1~4時間-1、または2時間-1~3時間-1であり、ここで、液体毎時空間速度は、時間当たりの触媒上に給送される液体給送物の容積対反応器中の触媒の容積の比である。水素化のための典型的な水素流通速度は、液体給送物の容積(m)当たりH少なくとも100Nm、または少なくとも1000Nm、または少なくとも2000Nm、または100~5000Nm、または1000~4500Nm、または2000~4000Nmである。水素化のための典型的な触媒としては、CoMo、NiMo、Pt、Pd、Rh、Ru、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
本発明のコンテクストにおいて有用な触媒成分は、当該技術分野において知られているか、または当業者によって理解されるであろうあらゆる触媒から選択され得る。触媒は、反応を促進し、および/または反応を引き起こす。そのため、本明細書において用いられる場合、触媒は、化学的プロセスの活性化エネルギーを低下させ(速度を増加させ)、および/または化学反応における生成物または中間体の分布を改善する(例えば、形状選択的触媒)。触媒され得る反応の例としては、以下のものが挙げられる:脱水、脱水素、水素化、異性化、オリゴマー化、分解、水素移動、芳香族化、環化、脱カルボニル、脱カルボキシル、アルドール縮合、分子分解(crackingおよびdecomposition)、それらの組み合わせ、並びに他の反応。当業者に理解されるよであろうように、触媒成分は、酸性、中性、または塩基性であるとみなされ得る。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(発明の詳細な説明)
上記を考慮した広範な調査の結果、一連の逐次的工程により、接触熱分解方法を経済的かつ効率的に実施して、価値のある燃料ブレンドストックおよび化学製品の製造を強化することができることが判明した。
【0045】
本発明の改善された方法の実施形態は、以下の工程を含む:
a) バイオマス、例えば、有機材料の再生可能な供給源から提供されるバイオマス等、触媒組成物、例えば、1種または複数種の結晶性モレキュラーシーブを含んでいる触媒組成物、例えばシリカ対アルミナのモル比(SAR)が12超であり、制約指数(Constraint Index:CI)が1~12であることを特徴とする触媒組成物、および輸送流体を、反応条件、例えば300℃から1000℃までの温度および0.1MPaから1.5MPaまでの圧力で維持された流動床反応器に給送して、原料流体生成物流れを製造する工程、
b) 工程a)の原料流体生成物流れを固体の分離およびストリッピングのシステムに給送して、分離された固体と、流体生成物流れとを生じさせる工程、
c) 工程b)の流体生成物流れを分画システムに給送して、画分、180℃~350℃で沸騰するような画分、好ましくは180℃~320℃で沸騰するような画分、より好ましくは例えば200~310℃で沸騰するような画分を回収する工程、
d) 工程c)の高沸騰画分の少なくとも一部を水素化条件で水素化して、水素化済み画分を生じさせる工程、および
e) 燃料ブレンドストック、例えば、ジェット燃料ブレンドストックであって、0.4重量%未満のオレフィン類と、10重量ppm(parts per million:百万分率)未満の硫黄と、10重量ppm未満の窒素と、1重量%未満の酸素とを含んでいるものを工程d)の水素化済み画分から生成物回収システムにおいて回収する工程。
【0046】
本発明の実施形態には、工程e)によって回収された新規な燃料ブレンドストックと、燃料、例えば、ジェット燃料または他の燃料ブレンドストックとのその混合物が含まれる。
【0047】
バイオマス接触熱分解生成物の一部の水素化処理および水素化により、C10~C16芳香族成分を効率的に水素化して再生可能なジェット燃料添加剤またはブレンドストックを生じさせることができる。この材料を効率的に生じさせるためのキーとなる規定パラメータは、水素化への給送物から三環化学種を除去して、触媒のファウリングを避けるようにすることである。これは、蒸留された生成物の終沸点を310-320℃以下、好ましくは300-310℃に制限することにより行われて、フェナントレン、アントラセン、および関連化合物などの化合物の存在を最小限に抑えることができる。
【0048】
本発明の1つの実施形態において、再生可能な燃料ブレンドストックは、最低50重量%、または最低75重量%、または最低90重量%、または50重量%~99重量%、または75重量%~95重量%の10~16個の炭素原子を有する炭化水素を含む。本発明の別の実施形態は、上記ブレンドストックのジェット燃料製品中の石油由来材料との混合物を含む。本発明の別の実施形態は、再生可能な燃料ブレンドストックの石油由来材料、例えば、ジェット燃料との混合物を含み、ここで、再生可能な燃料ブレンドストックは、0.1容積%~80容積%、または3容積%~70容積%、または5容積%~60容積%のジェット燃料を含み、この混合物の残部は、石油由来のジェット燃料を含む。
【0049】
(図面の簡単な説明)
図1、2、3および4は、本発明の方法の種々の特徴のブロックフロー図である。
【0050】
本発明の改善された方法の実施形態は、以下の工程を含む:
a) バイオマス、例えば、有機材料の再生可能な供給源から提供されるバイオマス等、触媒組成物、例えば、1種または複数種の結晶性モレキュラーシーブを含んでいる触媒組成物、例えばSARが12超であり、CIが1~12であることを特徴とする触媒組成物、および輸送流体を、反応条件、例えば300℃から1000℃までの温度および0.1MPaから1.5MPaまでの圧力で維持された接触熱分解方法の流動床反応器に給送して、原料流体生成物流れを製造する工程、
b) 工程a)の原料流体生成物流れを固体の分離およびストリッピングのシステムに給送して、分離された固体および流体生成物流れを生じさせる工程、
c) 工程b)の流体生成物流れを分画システムに給送して、画分、180℃~350℃で沸騰するような画分、好ましくは180℃~320℃で沸騰するような画分、より好ましくは例えば200~310℃で沸騰するような画分を回収する工程、
d) 工程c)の180℃~350℃で沸騰する画分の少なくとも一部を水素化条件で水素化して、水素化済み画分を生じさせる工程、および
e) 生成物回収システムにおいて、テトラリン類、デカリン類、置換型のテトラリン類若しくはデカリン類、またはそれらのいくつかの組み合わせを含んでいる化学物質を回収する工程であって、生成物中の炭素原子の数は、10~16個の炭素原子を含む、工程。
【0051】
(発明の方法の詳細)
(接触熱分解の説明)
本発明のいくつかの実施形態が図1に示されており、ここで、流れ(1)は、Bio-TCat(登録商標)方法に由来する。Bio-TCat(登録商標)方法に適した装置および方法条件の例は、米国特許8,277,643、8,864,984、9,169,442、9,790,179、10,370,601、10,767,127;および10,822,562に記載されており、それぞれ参考として本明細書に援用される。バイオマスのBio-TCat(登録商標)の転化についての条件には、以下の特徴の1つまたはそれらの組み合わせが含まれてよい(これらは、本発明のより広範な態様を制限することを意図するものではない):バイオマス処理;触媒組成物;触媒組成物は、場合によっては、金属を含んでいること;流動床、循環床、移動床、またはライザー反応器;流動化流体;300℃~1000℃、または450℃~800℃、または500℃~650℃の範囲の操作温度、および0.1~3.0MPa(1~30気圧)の範囲の圧力;並びに0.1~40、または2~20、または3~10の固体触媒/バイオマスの質量比。固形バイオマスは、連続的または間欠的な様式で反応器に給送される場合がある。固体触媒は、酸化方法で再生されてよく、一部、反応器に戻される。固体触媒は、反応器から取り出されてよく、水蒸気によりストリッピングされて、有機材料および反応性ガスを追い出すようにした後に、流動床触媒再生器において酸素含有ガスによる処理により再生され、一部、反応器に戻される。生成物中の非芳香族成分の割合を減らし、それによって下流の分離および転化の技術に利益をもたらすために、Bio-TCat(登録商標)の反応器における反応の厳格性は、高められ得る。より大きな反応の厳格性を達成する方法には、より高い反応温度、より高い触媒活性(これらは、フレッシュな触媒のより高い補給率および使用済み触媒の除去率によって、若しくは触媒の変更(例えば、より高いゼオライト含有率、より低いシリカ/アルミナ比、より大きなマクロ多孔性およびメソ多孔性など)によって達成され得る)、より高い圧力、またはより長い滞留時間が含まれる。
【0052】
バイオマスは、Bio-TCat(登録商標)方法の流動床反応器において加工処理するのに便利な形で入手可能でない場合がある。固形バイオマスが好適な給送物である一方で、固形バイオマスは、周囲条件で液体の部分を含む場合がある。固形バイオマスは、加工処理するのにより適したものにするための、カッティング、チョッピング、チッピング、細断、粉砕、研磨、サイジング、乾燥、焙煎、焙焼、洗浄、抽出、またはこれらのいくつかの組み合わせを含む多数の方法のいずれかにおいて任意の順序において処理されてよく、サイズ、水分、硫黄および窒素の不純物含有率、密度、並びに金属含有率に関して、バイオマス給送物の望みの特性を達成する。バイオマスの集塊および凝集を抑える手順が使用されてよい。
【0053】
流動床反応器における転化の後に、Bio-TCat(登録商標)方法の生成物は、固体分離、炭化水素の急冷若しくは冷却、気体-液体分離、圧縮冷却、気体-液体吸収、凝縮性化合物の凝縮、または当該技術分野において知られている他の方法の組み合わせによって回収されて、沸点がガソリンまたは道路用ディーゼル燃料の沸点よりも高い化学種を含むC 炭化水素の混合物を生じさせる。蒸留は、沸点の範囲ごとに所望の留分を分離取り出しするために用いられ得る。所望の生成物留分は、次いで、水素化処理に供されて、ヘテロ原子、例えば、O、N、またはSを除去し、オレフィン類を飽和させ、第1の液体流れを提供することができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、接触熱分解方法からの生成物混合物は、2-メチルナフタレン、ナフタレン、インデン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,5-ジメチルナフタレン、2-メチルインダン、1-メチルアントラセン、-メチルスチレン、5-メチルインダン、インダン 3-エチルトルエン、1-メチルインデン、2-フェニルナフタレン、アントラセン、2,3-ジメチルインデン、1-ベンジルナフタレン、2,6-ジメチルナフタレン、4-エチルトルエン、1,3-ジメチルインデン、9H-フルオレン、2-メチルビフェニル、1-メチル-4-プロピルベンゼン、1-メチルナフタレン、1,7-ジメチルナフタレン、9H-フルオレン、1-メチル-4-メチルインデン、2-(1-メチルエチル)ナフタレン、1H-インデン 1-エチル-2,3-ジヒドロ、1-フェニルシクロヘキセン、n-プロピルベンゼン、11H-ベンゾ-[b]-フルオレン、1,4-ジエチルシクロヘキサン、1、2,3-トリメチルベンゼン、1-エテニル-4-エチルベンゼン、1-メチルインダン、2,3,5-トリメチルナフタレン、3-メチル-1,1-ビフェニル、プロパジエニルシクロヘキサン、トリメチルアズレン、フェナントレン、2-エチルナフタレン、フルオレン、1,2-ジヒドロナフタレン、2-メチルインデン、1,2-ジヒドロ 4-メチルナフタレン、2,6-ジメチルフェナントレン、1-メチル-7-イソプロピルフェナントレン、1,2-ジヒドロ 3-メチルナフタレン、1,4,6-トリメチルナフタレン、2-フェナントレニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-4-メチルインダン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、2,2-ジメチルインダン、1,4-ジヒドロナフタレン、1-メチル-4-(プロパン-2-イル)ベンゼン、1,4-ジメチル-2-フェニルナフタレン、および酸素化物である3-フェナントロール、1H-インデノール、1-ナフタレノール(1-ナフトール)、2-メチル-1-ナフトール、2-メチルベンゾフラン、2-アセチル-5-ノルボルネン、ジベンゾフラン、2-ナフタレノール、7-メチル-1-ナフトール、5-イソプロピル-2-メチルフェノール、2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-オール、5,8-ジヒドロ-1-ナフタレノール、5-メトキシインダン、1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン、2-(2-プロピニル)-フェノール、(2E)-3-フェニルプロパ-2-エナール(シンナムアルデヒド)、2,3-ジメチルベンゾフラン、2,3,6-トリメチル-フェノールの中からの化合物、並びにそれらの組み合わせを含む。
【0055】
(接触熱分解のための触媒)
接触熱分解の場合、有用な触媒としては、細孔サイズ(例えば、典型的にはゼオライトに関連するメソ多孔質および細孔サイズ)、例えば、10nm未満(1nmは10オングストローム(Å)に等しい)、5nm未満、2nm未満、1nm未満、0.5nm未満、またはそれより小さい平均細孔サイズに従って選択される内部多孔度部を含有している触媒が挙げられる。いくつかの実施形態において、0.5nmから10nmまでの平均細孔サイズを有する触媒が用いられてよい。いくつかの実施形態において、0.5nm~0.65nm、または0.59nm~0.63nmの平均細孔サイズを有する触媒が用いられてよい。場合によっては、0.7nm~0.8nm、または0.72nm~0.78nmの平均細孔サイズを有する触媒が用いられてよい。
【0056】
本発明の接触熱分解流動床反応器において特に有利な触媒組成物は、12を超えるシリカ対アルミナ比(SAR)および1~12の制約指数(CI)を特徴とする結晶性モレキュラーシーブを含む。これらの結晶性モレキュラーシーブの非限定的な例は、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-22、ZSM-23、ZSM-35、ZSM-48、ZSM-50の構造、またはそれらの組み合わせを有するものである。実施形態として、触媒組成物は、12超から240までのSARおよび5~10のCIを特徴とする結晶性モレキュラーシーブ、例えば、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-22、ZSM-23の構造、またはそれらの組み合わせを有するモレキュラーシーブを含む。CIが決定される方法は、米国特許No. 4,029,716により十分に記載されており、参考として本方法の詳細のために援用される。
【0057】
限定なく、一部のそのようなおよび他の触媒は、自然発生ゼオライト、合成ゼオライトおよびそれらの組み合わせから選択され得る。所定の実施形態において、触媒は、当業者には理解されるであろうように、ZSM-5ゼオライト触媒であってよい。場合によっては、そのような触媒は、酸性部位を含むことができる。他のタイプのゼオライト触媒として、フェリエライト、ゼオライトY、ゼオライトベータ、モルデナイト、MCM-22、ZSM-23、ZSM-57、SUZ-4、EU-1、ZSM-11、(S)AIPO-31、SSZ-23等が挙げられる。他の実施形態において、非ゼオライト触媒が用いられてよい;例えば、WO/ZrO、リン酸アルミニウムなど。いくつかの実施形態において、触媒は、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、銅、ガリウム、希土類元素、すなわち、57番元素~71番元素、セリウム、ジルコニウム、および/またはそれらの酸化物のいずれかの中から選ばれる金属および/または金属酸化物、またはそれらのいくつかの組み合わせを含んでよい。さらに、場合によっては、触媒の特性(例えば、細孔構造、酸部位のタイプおよび/または数など)は、所望の生成物を選択的に生じさせるように選ばれてよい。
【0058】
本明細書における使用のためのモレキュラーシーブまたはそれを含む触媒組成物は、高温で熱処理されてよい。この熱処理は、一般に、最低370℃の温度で少なくとも1分、かつ、一般に20時間以下にわたって(典型的には、酸素含有雰囲気中、好ましくは空気中で)加熱することによって実行される。大気圧未満の圧力が熱処理のために使用され得るが、便宜上大気圧が望ましい。熱処理は、約925℃までの温度で実行され得る。熱処理された生成物は、本方法において特に有用である。
【0059】
本発明において有用な触媒組成物のために、適切なモレキュラーシーブは、担体またはバインダの材料との組み合わせで使用されてよく、例えば多孔質無機酸化物担体または粘土バインダがある。このようなバインダ材料の非限定的な例としては、アルミナ、ジルコニア、シリカ、マグネシア、トリア、チタニア、ボリアおよびそれらの組み合わせが挙げられ、一般に、乾燥無機酸化物ゲルおよびゼラチン状沈殿物の形態にある。適切な粘土材料としては、例として、ベントナイト、珪藻土およびそれらの組み合わせが挙げられる。全触媒組成物の適切な結晶性モレキュラーシーブの相対割合は、組成物の重量で30重量パーセント~90重量パーセントの範囲、より通常には組成物の重量で40重量パーセント~70重量パーセントの範囲にわたるモレキュラーシーブ含有率で広範に変動してよい。触媒組成物は、押出物、ビーズまたは流動性微小球の形態にあってよい。
【0060】
本明細書における使用のためのモレキュラーシーブまたはそれを含んでいる触媒組成物は、元からのカチオンを有してよく、当該技術において周知な技術に従って、少なくとも一部、水素または水素前駆体カチオンおよび/または周期律表の第VIII族の非貴金属イオン、すなわち、すなわちニッケル、鉄、若しくはコバルト、またはそれらのいくつかの組み合わせとのイオン交換によって置き換えられる。
【0061】
(分画)
接触熱分解からの流出物(1)は、熱交換器(150)において冷却され、場合によっては、水蒸気を生じさせ、次いで、主分画塔(200)に給送される。ナフタレンおよびタールを含有している流れ(4)の一部は、分画塔(200)にリサイクルされ、別の部分は、分画塔の底部から取り出され、追加の蒸留塔(400)に送られ、流れ(13)中の三環化学種を、キシレノール類を含有する場合があるナフタレンに富む流れ(12)から、上記のように350℃以下、または好ましくは320℃以下、またははるかに好ましくは310℃以下の終沸点の標的に達するように効率的に分離する。
【0062】
終沸点は、310-320℃以下、好ましくは300-310℃以下に固定され、フェナントレン、アントラセン、および関連化合物のような化合物の存在を最小限に抑えるようにする。
【0063】
180℃以下で沸騰する材料の除去の後に、混合物は、最低25重量%、または最低35重量%、または最低40重量%、または25重量%~90重量%、または35重量%~80重量%、または40重量%~75重量%のナフタレン、置換型ナフタレン類、ナフタレノール類、メチルナフタレノール類、およびナフタレンジオール類の合計と、最低3重量%、または最低5重量%、または最低6重量%、または3重量%~15重量%、または5重量%~10重量%、または6重量%~8重量%のキシレノール類と、15重量%未満、または10重量%未満、または5重量%未満、または0.01重量%~20重量%、または1重量%~15重量%、または5重量%~13重量%のフェナントレン、アントラセン、および他の材料の合計とを含む場合がある。
【0064】
場合によっては、流れ(3)若しくは(13)の少なくとも一部、または分画工程において回収された310℃未満、若しくは320℃未満、若しくは350℃未満で沸騰する画分が除去された後に残る画分の少なくとも一部、またはそれらのいくつかの組み合わせは、水素化分解方法において水素化分解されることができる。
【0065】
図2および3は、概念的なブロックフロー図であり、ナフタレンに富む流れのシクロアルカン類への水素を用いた水素化を示し、5%未満、または3%未満、または1%未満のナフタレン系化学種を含有している流れを生じさせる。水素化ユニットの設計は、石油化学のナフタレン性化学種の水素化の技術に精通した者によって容易に行われる。反応器は、当業者によって典型的に実施される水素化の発熱をコントロールするという特徴を組み込むことができる。これらの特徴は、以下の中から選ばれ得る:1)冷却された水素のリサイクル、2)給送物の希釈による給送物の総質量に添加される水素の割合(%)の制限、3)反応器内の種々の点での「急冷流体」の導入(それによって、液体の気化熱は、発熱を和らげるために用いられる)、またはそれらのいくつかの組み合わせ。このような急冷液は、典型的には、より揮発性の成分の除去前または除去後のいずれかの生成物流れに由来する。
【0066】
図2において、ナフタレンに富む流れの水素化および精製の方法の1つの実施形態が示されている。ナフタレンに富む流れ(12)は、場合によっては、キシレノール類を含有し、例えば、図1における方法または同様の方法によってバイオマスから生じたものであり、このものは、水素(22)とともに水素化反応器(500)に通される。水素化反応器において、ナフタレンに富む流れは、テトラリン類、デカリン類、他のナフテン類、および同様のシクロアルカン材料に水素化され、この混合物(23)は、精製塔(600)に通される。存在する任意のキシレノール類は、この反応器において同様にベンゼン、トルエン、キシレン類、およびナフテン類に水素化されることになる。精製塔(600)において、軽質材料(24)は、デカンタ/還流ドラム(700)に通され、そこでキシレン類は、流れ(25)において回収され、混合物(27)の一部は、分離塔に戻され、水画分(26)が分離される。流れ(27)は、典型的には、テトラリン類、デカリン類、他のナフテン類、並びに、一部のキシレン類、および一部の水を含む。精製されたシクロアルカンを含有する流れ(28)は、分離され、生成物として回収される。シクロアルカン類のスリップストリーム(28)は、分離塔に戻される。より重質の材料の一部を塔(600)に戻すことにより、効率および収率を改善することができる。ナフタレンに富む流れ(12)は、最低25重量%、または最低35重量%、または最低40重量%、または25重量%~90重量%、または35重量%~80重量%、または40重量%~75重量%のナフタレン、置換型ナフタレン類、ナフタレノール類、メチルナフタレノール類、およびナフタレンジオール類の合計と、最低3重量%、または最低5重量%、または最低6重量%、または3重量%~15重量%、または5重量%~10重量%、または6重量%~8重量%のキシレノール類と、15重量%未満、または10重量%未満、または5重量%未満、または0.01重量%~20重量%、または1重量%~15重量%、または5重量%~13重量%のフェナントレン、アントラセン、および他の材料の合計とを含む場合がある。
【0067】
図2において、水素化は、1工程で行われ、得られた生成物は、蒸留塔に給送されて、酸素含有二環化学種およびその他の化合物の水素化に由来する水を除去し、キシレノール類の脱酸素から生じたキシレン類を除去し、これは、US2020/0165527に記載されるように精製スキームに給送され得る。蒸留塔からの缶出液(28)は、バイオマス由来の成分を90%超の含有率で含むジェット燃料添加剤またはブレンドストックとして販売され得る。
【0068】
図3において、本発明方法の別の実施形態が示されており、第2の水素化工程を含んでいる。ナフタレンに富む流れ(12)、例えば、図1における方法、または他の方法によってバイオマスから生じたものは、水素(22)とともに水素化反応器(500)に通される。水素化反応器において、ナフタレンに富む流れは、テトラリン類、デカリン類、他のナフテン類、および同様の材料に水素化されて、その混合物(23)は、精製塔(600)に通される。存在するあらゆるキシレノール類は、この反応器(500)において同様にキシレン類、トルエン、ベンゼン、およびナフテン類の混合物に水素化されることになる。精製塔(600)において、軽質材料(24)は、デカンタ/還流ドラム(700)に通され、そこでキシレン類は、流れ(25)において回収される;混合物(27)の一部は、分離塔に戻され、水画分(26)が分離される。精製された部分的に水素化されたシクロアルカン類を含有する流れ(28)は、塔(600)から分離され、第2の水素化反応器(800)に送られる一方で、シクロアルカン類の流れのスリップストリーム(28)は、分離塔に戻される。水素(29)も第2の水素化反応器(800)に送られ、そこで生成物は、さらに水素化され、水素化された生成物(30)が回収される。
【0069】
場合によっては、図3において、(500)における水素化は、2工程に分けられ得、それにより、水素化反応器(500)は、実質的に、芳香環を部分的に水素化しかつキシレノール類をベンゼン、トルエン、およびキシレン類に還元し、ナフタレン類をナフテン類に還元するようにより低い圧力での操作によって部分的に水素化された流れを生じさせる水素化と、より高い圧力での操作により芳香族化合物をさらに水素化する第2の反応器(示していない)とを含み、水素化反応器(800)は、除去される。この場合、第1の水素化は、CoMo含有触媒により2.0~7.0MPaの範囲内で操作され得る。(500)の第1の水素化工程の後に任意選択の蒸留が挿入され、反応の水並びにキシレン類を除去するようにすることができる。(500)における第2の水素化方法(示していない)は、シクロアルカン類を生じさせる芳香族化合物の水素化を完結し、貴金属触媒、例えば、Pd、若しくはPt、またはその2種の組み合わせを含有しているものを用いることができる。第2の水素化は、第1の水素化と同様であるがより高い圧力にて、2.0~8.0MPaの範囲内で操作され得る。(500)における低圧水素化と、任意選択の蒸留(示していない)と、より高圧の水素化とのこの組み合わせにより、追加の精製を一切必要としない生成物を生じさせることになる。代替的な実施形態は、(500)における第2の水素化工程の後に蒸留を行うことである。
【0070】
本発明の別の実施形態が図4に示されており、この実施形態において、テトラリン類若しくはデカリン類またはその両方が分解または水素化分解されて、アルキル化ベンゼン類、若しくはアルキル化テトラリン類、またはこれらのいくつかの組み合わせを含んでいる流れを生じさせる。ナフタレンに富む流れ(12)、例えば、図1のいずれかにおける方法、または他の方法によってバイオマスから生じたものは、水素(22)とともに水素化反応器(500)に通される。水素化反応器において、ナフタレンに富む流れは、テトラリン類、デカリン類、他のナフテン類、および同様の材料に水素化されて、その混合物(23)は、精製塔(600)に通される。存在するあらゆるキシレノール類は、水素化反応器(500)において同様にベンゼン、トルエン、およびキシレン類に水素化されることになる。精製塔(600)において、軽質材料(24)は、デカンタ/還流ドラム(700)に通され、そこでキシレン類は、流れ(25)において回収される;混合物(27)の一部は、分離塔に戻され、水画分(26)が分離される。精製され、部分的に水素化されたシクロアルカン類を含有している流れ(28)は、任意選択に塔(600)から分離され、任意選択の第2の水素化反応器(800)に送られる一方で、シクロアルカン類の流れのスリップストリーム(28)は、分離塔に戻される。水素(29)も第2の任意選択の水素化反応器(800)に送られ、そこで生成物は、さらに水素化され、水素化済み生成物(30)が回収される。流れ(28)または流れ(30)のいずれかがユニット(900)において分解または水素化分解(すなわち水素を用いてまたは水素を用いずに)されて、パラフィン系環式の分子部分を開環させて、アルキル化ベンゼン類、アルキル化シクロヘキサン類、またはその両方を流れ(32)として生じさせ、水素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン類、ブテン類、またはこれらの混合物を含む場合があるガスの画分を流れ(31)において生じさせる。生成物流れ(32)は、ジェット燃料AまたはA-1の仕様により密接に適合するジェット燃料ブレンド流れを含む。
【0071】
上記のどの場合にも、水素がバイオマスの接触熱分解に由来するならば、生じた燃料のバイオマス由来の含有率は、100%に近づくことができる。図3~7に示される実施形態のそれぞれにおいて、未反応の水素の一部は、任意選択に、水素化反応器(500)、または水素化反応器(800)、または分離塔(600)、または反応器(900)、またはそれらのいくつかの組み合わせの頂部から収集され、1基または複数基の水素化反応器にリサイクルされる。
【0072】
(水素化)
ナフタレンに富む画分の水素化は、液体をH含有ガスと、4MPa~15MPa(40~150気圧)、好ましくは6~12MPa(60~120気圧)の圧力で、280~400℃、好ましくは320~350℃の温度にて固体触媒の存在中で接触させることによって行われてよい。水素化方法に有用な固体触媒としては、Ni/Mo、Co/Moが挙げられ、場合によっては、Fe、Cu、Zn、Ag、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Mo、W、またはそれらの組み合わせを含有し、Al、Si、Ti、Zr、Th、Mg、Caの酸化物またはこれらのいくつかの組み合わせを含む、結晶性固体または無定形混合物のいずれかとしての酸化物担体上に堆積させられる。水素化は、固定床、トリクルベッド、接触蒸留の反応器、多管式反応器、または流動床反応器において、給送物および水素の向流または並流にして行われ得る。
【0073】
ジェット燃料は、何百種もの個別の化学物質の複雑な混合物であり、製油所において生産されるか、または他の場所で生産され、製油所または流通ターミナルでブレンドされる様々なブレンドストックから作られる。技術的、規制的、および商業的要件を満たすには、いくつかの制約を満たさなければならず、この制約には、引火点、発煙点、自着火温度、密度、凝固点に対する制限(-47℃未満)、芳香族含有率に対する制限(25重量%未満)、ナフタレン含有率に対する制限(3.0重量%未満)、硫黄に対する制限(0.3重量%未満)、比エネルギーに対する制限(42.8MJ/kg超)、沸騰範囲に対する制限(10重量%未満は205℃未満、残部は205~300℃)が挙げられる。したがって、種々のブレンドストックの2つ以上の組み合わせおよび割合により、制約および要件の全部を満たす完成ジェット燃料をもたらすことができることが可能である。
【0074】
(ブレンドストック)
本発明の実施形態は、ナフテン類、芳香族化合物、およびパラフィン類の混合物を含む再生可能なジェット燃料ブレンドストックであり、流動床反応器においてバイオマスを熱分解し、触媒反応させる工程と、炭化水素液体と混合するか、または冷却することによって生成物混合物を急冷する工程と、急冷混合物から蒸気を分離する工程と、蒸気から有機相を凝縮・分離する工程と、有機相をより高沸点の画分と、より低沸点の画分とに分離する工程と、より高沸点の画分の少なくとも一部を水素化する工程と、180℃~300℃で沸騰する再生可能なジェット燃料ブレンドストックの生成物画分を分離・回収する工程とによって製造されるものである。
【0075】
1つの実施形態において、再生可能なジェット燃料ブレンドストック混合物は、質量分析によって決定されるとして、30重量%~98重量%、または50重量%~97重量%、または65重量%~95重量%のナフテン類と、3重量%~50重量%のテトラリン類と、30重量%以下、または20重量%以下、または10重量%以下、または5重量%以下、または1重量%~30重量%、または2重量%~20重量%、または2重量%~15重量%、または2重量%~10重量%のナフタレン類およびアルキルナフタレン類と、0.1重量%以下、または1重量%以下、または2重量%以下、または3重量%以下、または5重量%以下、または0.1重量%~5重量%、または0.5重量%~3重量%、または0.5重量%~2重量%のアセナフテン類、アセナフチレン類、フルオレン類、フェナントレン類、およびアントラセン類の合計とを含んでよい。
【0076】
別の実施形態において、再生可能なジェット燃料ブレンドストックは、最低30重量%、または最低50重量%、または最低65重量%、または最低90重量%、または30重量%~95重量%、または50重量%~95重量%、または65重量%~95重量%の飽和物と、55重量%以下、または40重量%以下、または30重量%以下、または7重量%以下、または2重量%~75重量%、または3重量%~40重量%、または4重量%~26重量%のモノ芳香族化合物と、12重量%以下、または9重量%以下、または5重量%以下、または3重量%以下、または0.5重量%~20重量%、または1重量%~12重量%、または2重量%~7重量%のジ芳香族化合物と、0.5重量%以下、または0.3重量%以下、または0.2重量%以下、または0.01重量%~0.5重量%、または0.1重量%~0.3重量%のトリ芳香族化合物とを含んでよい。
【0077】
本発明の他の実施形態は、芳香族化合物およびナフテン類の混合物を含む再生可能な燃料ブレンドストックまたは加工処理供給原料であり、流動床反応器においてバイオマスを熱分解・触媒反応させる工程と、炭化水素液体と混合するか、または冷却することによって生成物混合物を急冷する工程と、急冷混合物から蒸気を分離する工程と、蒸気から有機相を凝縮・分離する工程と、有機相をより高沸点の画分と、より低沸点の画分とに分離する工程と、より高沸点の画分の少なくとも一部を水素化する工程と、そこから凝縮可能な生成物を回収する工程と、凝縮された生成物を180℃未満で沸騰する画分と、180℃~300℃で沸騰する画分と、約300℃超で沸騰する画分とに分離する工程とによって製造されるものである。180℃~300℃で沸騰する画分は、最低75重量%、または最低85重量%、または最低90重量%、または75重量%~99.9重量%、または85重量%~99重量%のナフテン類と、20重量%未満、または15重量%未満、または10重量%未満、または1重量%~20重量%、または5重量%~10重量%のベンゼン、トルエン、およびキシレン類の合計と、3重量%未満、または2重量%未満、または1重量%未満、または0.001重量%~3重量%、または0.01重量%~2重量%のナフタレン類と、0.4重量%未満、または0.1重量%未満、または100重量ppm未満、または25重量ppm未満、または1重量ppm~1000重量ppm、または2重量ppm~25重量ppmのオレフィン類と、10重量ppm未満、または5重量ppm未満、または2重量ppm未満、または0.01重量ppm~10重量ppm、または0.01重量ppm~5重量ppmの三環芳香族化合物と、0.4重量%未満、または0.1重量%未満、または100重量ppm未満、または25重量ppm未満、または1重量ppm~1000重量ppm、または2重量ppm~25重量ppmのオレフィン類と、10重量ppm未満、または5重量ppm未満、または2重量ppm未満、または0.01重量ppm~10重量ppm、または0.01重量ppm~5重量ppmの硫黄と、10重量ppm未満、または5重量ppm未満、または2重量ppm未満、または0.01重量ppm~10重量ppm、または0.01重量ppm~5重量ppmの窒素と、1重量%未満、または0.1重量%未満、または0.01重量%未満、または100重量ppm未満、または10重量ppm未満、または1重量ppm未満、または0.01重量ppm~1000重量ppm、または0.01重量ppm~10重量ppmの酸素とを含んでよい。より低沸点の画分は、最低50容積%、または最低60容積%、または最低65容積%のベンゼン、トルエン、およびキシレン類の合計と、15容積%未満、または10容積%未満、または6容積%未満のC9以上の芳香族化合物と、2容積%未満、または1容積%未満、または0.5容積%未満のパラフィン類と、0.4重量%未満、または0.1重量%未満、または100重量ppm未満、または25重量ppm未満のオレフィン類と、10重量ppm未満、または5重量ppm未満、または2重量ppm未満の硫黄と、10重量ppm未満、または5重量ppm未満、または2重量ppm未満の窒素と、1重量%未満、または0.1重量%未満、または0.01重量%未満、または100重量ppm未満、または10重量ppm未満、または1重量ppm未満の酸素とを含んでよい。
【0078】
(燃料ブレンド)
本発明の別の実施形態は、180℃~300℃で沸騰する本発明方法の再生可能な画分の石油由来材料、例えば、ジェット燃料との混合物を含む。いくつかの実施形態において、180℃~300℃で沸騰する本発明の生成物の再生可能な画分は、0.1容積%~90容積%、または1容積%~70容積%、または1容積%~50容積%、または1容積%~20容積%、または0.1容積%~10容積%、または最低0.1容積%、または最低5容積%、または最低10容積%、または最低20容積%を構成し、この混合物の残部は、従来の石油由来ジェット燃料を含む。
【0079】
1つの実施形態において、燃料ブレンドシステムは、石油由来のジェット燃料を、本発明方法の再生可能なバイオマス由来のブレンドストックの少なくとも一部と組み合わせるために用いられ、再生可能なジェット燃料組成物を生じさせることができる。再生可能なジェット燃料ブレンド組成物は、石油由来のジェット燃料を少なくとも80容積%、または少なくとも85容積%、または少なくとも90容積%、または少なくとも95容積%、および/または最大96容積%、または最大98容積%、または最大99容積%、または最大99.5容積%;または80容積%~99.5容積%、または90容積%~98容積%の量で、および再生可能なブレンドストックの画分を最低0.1容積%、または最低0.5容積%、または最低1容積%、または最低5容積%、または20容積%以下、または15容積%以下、または10容積%以下、または5容積%以下、または0.1容積%~20容積%、または1容積%~10容積%の量で含むことができる。
【0080】
さらなる態様において、本発明は、ジェット燃料ブレンドを提供し、これは、0.1容積%~90容積%、または1容積%~70容積%、または1容積%~50容積%、または1容積%~20容積%、または0.1容積%~10容積%、または最低0.1容積%、または最低5容積%、または最低10容積%、または最低20容積%の特許請求の範囲の請求項のいずれかに記載される再生可能な燃料ブレンドストックを含み、ジェットまたはディーゼルの燃料ブレンドの残部は、石油由来のジェットまたはディーゼルの燃料を含む。
【0081】
再生可能なジェット燃料組成物は、硫黄または芳香族化合物を有する場合があり、硫黄の含有率は、0.3重量%未満、または0.2重量%未満、または0.1重量%未満、または0.01重量%~0.3重量%、または0.1重量%~0.25重量%であり、芳香族化合物の含有率は、60重量%未満、または50重量%未満、または25重量%未満、または20重量%未満、または15重量%未満、または5重量%~60重量%、または5重量%~50重量%、または10重量%~60重量%、または20重量%~60重量%、または20重量%~40重量%、または20重量%~30重量%である。
【0082】
さらなる態様において、本発明は、再生可能なジェット燃料ブレンドストック混合物を提供し、これは、質量分析によって決定されるとして、30重量%~98重量%、または50重量%~97重量%、または65重量%~95重量%のナフテン類と、3重量%~50重量%のテトラリン類と、30重量%以下、または20重量%以下、または10重量%以下、または5重量%以下、または1重量%~30重量%、または2重量%~20重量%、または2重量%~15重量%、または2重量%~10重量%のナフタレン類およびアルキルナフタレン類と、0.1重量%以下、または1重量%以下、または2重量%以下、または3重量%以下、または5重量%以下、または0.1重量%~5重量%、または0.5重量%~3重量%、または0.5重量%~2重量%のアセナフテン類、アセナフチレン類、フルオレン類、フェナントレン類、およびアントラセン類の合計とを含んでいる。
【0083】
本発明は、さらに、以下の特徴の1つまたはあらゆる組み合わせによって特徴付けられ得る:石油由来のジェット燃料を、最低80容積%、または最低85容積%、または最低90容積%、または最低95容積%、および/または最大96容積%、または最大98容積%、または最大99容積%、または最大99.5容積%;または80容積%~99.5容積%、または90容積%~98容積%の量で、および再生可能なブレンドストックの画分を最低0.1容積%、または最低0.5容積%、または最低1容積%、または最低5容積%、または20容積%以下、または15容積%以下、または10容積%以下、または5容積%以下、または、0.1容積%~20容積%、または1容積%~10容積%の量で;硫黄を0.3重量%未満、または0.2重量%未満、または0.1重量%未満、または0.01重量%~0.3重量%、または0.1重量%~0.25重量%の含有率で、または芳香族化合物を、60重量%未満、または50重量%未満、または25重量%未満、または20重量%未満、または15重量%未満、または5重量%~60重量%、または5重量%~50重量%、または10重量%~60重量%、または20重量%~60重量%、または20重量%~40重量%、または20重量%~30重量%の含有率で、またはそれらのいくつかの組み合わせを含んでいること。
【0084】
さらなる態様において、本発明は、再生可能な蒸留物の燃料ブレンドストックを提供し、これは、質量分析によって決定されるとして、最低30重量%、または最低50重量%、または最低65重量%、または最低90重量%、または30重量%~95重量%、または50重量%~95重量%、または65重量%~95重量%の飽和物と、55重量%以下、または40重量%以下、または30重量%以下、または7重量%以下、または2重量%~75重量%、または3重量%~40重量%、または4重量%~26重量%のモノ芳香族化合物と、12重量%以下、または9重量%以下、または5重量%以下、または3重量%以下、または0.5重量%~20重量%、または1重量%~12重量%、または2重量%~7重量%のジ芳香族化合物と、0.5重量%以下、または0.3重量%以下、または0.2重量%以下、または0.01重量%~0.5重量%、または0.1重量%~0.3重量%のトリ芳香族化合物とを含んでいる。
【0085】
別の態様において、本発明は、再生可能な蒸留物の燃料ブレンドストックを提供し、これは、最低75重量%、または最低85重量%、または最低90重量%、または75重量%~99.9重量%、または85重量%~99重量%のナフテン類と、20重量%未満、または15重量%未満、または10重量%未満、または1重量%~20重量%、または5重量%~10重量%のベンゼン、トルエン、およびキシレン類の合計と、3重量%未満、または2重量%未満、または1重量%未満、または0.001重量%~3重量%、または0.01重量%~2重量%のナフタレン類と、0.4重量%未満、または0.1重量%未満、または100重量ppm未満、または25重量ppm未満、または1重量ppm~1000重量ppm、または2重量ppm~25重量ppmのオレフィン類と、10重量ppm未満、または5重量ppm未満、または2重量ppm未満、または0.01重量ppm~10重量ppm、または0.01重量ppm~5重量ppmの三環芳香族化合物と、0.4重量%未満、または0.1重量%未満、または100重量ppm未満、または25重量ppm未満、または1重量ppm~1000重量ppm、または2重量ppm~25重量ppmのオレフィン類と、10重量ppm未満、または5重量ppm未満、または2重量ppm未満、または0.01重量ppm~10重量ppm、または0.01重量ppm~5重量ppmの硫黄と、10重量ppm未満、または5重量ppm未満、または2重量ppm未満、または0.01重量ppm~10重量ppm、または0.01重量ppm~5重量ppmの窒素と、1重量%未満、または0.1重量%未満、または0.01重量%未満、または100重量ppm未満、または10重量ppm未満、または1重量ppm未満、または0.01重量ppm~1000重量ppm、または0.01重量ppm~10重量ppmの酸素とを含んでいる。
【0086】
以下の実施例は、本発明およびその使用可能性を実証する。本発明は、他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の明らかな点で改変が可能である。したがって、実施例は、例示的な性質とみなされるべきであって、限定とみなされるべきではない。特段の指示がない限り、全ての部数および割合(%)は重量基準であり、全ての温度は、摂氏度において未補正で示されている。
【0087】
全ての出願、特許および刊行物、試験手順、優先権書類、論文、刊行物、マニュアル、並びに本明細書に引用されるその他の文書、並びに同時係属中の米国仮出願(代理人整理番号PET-3515-V01)の開示全体は、このような援用が許可されている全ての管轄について、参照として本明細書に援用される。
【0088】
さらなる詳細がなくても、当業者は、上述の説明を用いて、本発明を最大限に活用することができると考えられる。上述の好適な具体的な実施形態は、したがって、単に例示として解釈されるべきであり、決して本開示の残りの部分を限定するものではない。
【0089】
(実施例1~3)
供給原料としてテーダマツを用いた接触熱分解Bio-TCatパイロットプラント(T-Cat8)の操作から得られた有機液体生成物のいくつかのサンプルを蒸留して、沸騰範囲204+、204-320、204-300(全て℃)に基づく種々の留分を得た。ここで、204+は、204℃以上で沸騰する全ての材料を意味し、ここで、「+」は、この温度より上で沸騰する全ての材料が留分に含まれることを示す。
【0090】
GC-MSによって決定された種々の留分の組成を表1にまとめる。
【0091】
【表1】
【0092】
(実施例4~7)
再生可能なジェット燃料を生じさせるための給送物として204-300℃留分を選択した;204-300℃留分および生成物の分析結果は表3にある。
【0093】
水素化実験を、選択された給送物に対して、33ccの下降流充填床反応器ユニットにおいて行った。この反応器ユニットは、独立した供給原料および生成物の回収セクションを備えている。触媒は、水素化を開始する前に現場内で完全に硫化された市販のNiMo/Al触媒であった。反応器流出物を減圧し、Hストリッパに送る。ガス画分をストリッパ上部で回収し、オンラインガスクロマトグラフィーを通じて分析する。液体画分をストリッパ底部から回収し、オフラインで分析する。加工処理を定常状態にラインアウトさせた後に、生成物の収集および分析を開始する。
【0094】
4回の水素化実験を行った。試験についての実験パラメータを表2に示す。生成物特性評価データとJet A-1仕様のデータとの比較を表3に示す。水素化生成物についての詳細な分析データを表4に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4A】
【0098】
【表4B】
【0099】
【表4C】
【0100】
実施例4~7は、再生可能なジェット燃料ブレンド成分を、従来の水素化方法における接触熱分解方法の生成物の一部から、330-340℃の範囲の温度および90-120barの範囲の水素の圧力で優れた収率で製造することができることを示している。生成物の硫黄含有率および凝固点は全て、十分にJet A-1仕様の範囲内にある。2つの条件で、芳香族含有率は、Jet A-1の仕様の範囲内(25%未満)であり、かつ実施例4における最高圧力120barにおいて、ナフタレン類は、Jet A仕様の範囲内(3%未満)である。
【0101】
生成混合物の全部は、Jet A-1仕様を上回る最大沸点を示すが、材料の97%がJet A-1仕様の範囲内で沸騰することも示している。単純な蒸留により、例えば、図5、6、または7に示される方法によって、より重質な物質が除去され得る。
【0102】
生成物混合物の密度は全て、Jet A-1仕様を上回るため、これらの材料は、ジェット燃料として直接的に用いられることはできず、ブレンドされなければならない。しかしながら、密度が高いほど、燃料ブレンドは、低密度パラフィン、例えば、直鎖アルカン、2-および3-メチルアルカン、2,2-ジメチルアルカン、並びにアルキルペンタンおよびヘキサン類をより多く含有することが可能となり、全て、炭素数10~16である。
【0103】
ブレンドストックの芳香族含有率は、ジェット燃料のブレンドにおいて利点であることもできる。例えば実施例5および6からのより高い芳香族生成物は、芳香族化合物の少ないジェット燃料ストックのために良好なブレンドストックであることができ、実施例4および7からの生成物は、芳香族化合物が既に多いジェット燃料とブレンドされて、芳香族含有率を25%の限界未満に下げることができるだろう。
【0104】
数値の下限および数値の上限が本明細書に列挙される場合、任意の下限から任意の上限までの範囲が企図される。
【国際調査報告】