(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】吸収及び分離のためのポリ(イオン性液体)複合材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/00 20060101AFI20241108BHJP
B32B 3/10 20060101ALI20241108BHJP
C08J 9/40 20060101ALI20241108BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20241108BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20241108BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20241108BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20241108BHJP
B01D 71/28 20060101ALI20241108BHJP
B01D 71/82 20060101ALI20241108BHJP
B01D 71/36 20060101ALI20241108BHJP
B01D 71/34 20060101ALI20241108BHJP
B01D 71/48 20060101ALI20241108BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08J9/00 A CEW
B32B3/10
C08J9/40
B01D53/22
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/26
B01D71/28
B01D71/82 500
B01D71/36
B01D71/34
B01D71/48
B01D69/00 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529301
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 US2022049798
(87)【国際公開番号】W WO2023091369
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】シャオフォン ラン
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ジェイ.シャファー
【テーマコード(参考)】
4D006
4F074
4F100
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA11
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4F100YY00A
(57)【要約】
本明細書において、薄く、強く、湿気及び温度に耐性があり、可撓性、強度及び耐久性を有するなどの望ましい機械的特性と組み合わせて、高いCO2吸収性、CO2透過性及びCO2/N2選択性を含む優れた性能特性を示す、延伸多孔質膜及びポリ(イオン性液体)(PIL)を有する複合材料、該複合材料を含むラミネート及び物品、ならびに複合材料の製造方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さを有する延伸多孔質膜であって、フィブリルと、場合により該フィブリルを相互接続するノードとからなる微細構造、及び、細孔を提供するボイド体積、を有する延伸多孔質膜、並びに、ポリ(イオン性液体)ポリマー(PIL)、
を含んでなる複合材料。
【請求項2】
前記PILは、前記延伸多孔質膜のノード及びフィブリル上にコーティングを形成する、請求項1記載の複合材料。
【請求項3】
前記PILは、前記延伸多孔質膜の前記ボイド体積の全体を充填する、請求項1又は2記載の複合材料。
【請求項4】
前記PILは、前記延伸多孔質膜の前記ボイド体積の少なくとも一部を充填する、請求項1~3のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項5】
前記PILは、前記延伸多孔質膜の前記ボイド体積の大半を充填する、請求項1~4のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項6】
前記延伸多孔質膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリパラキシリレン(PPX)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、二フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー又はポリ(エチレンテトラフルオロエチレン)(ETFE)のうちの1つ以上を含む、請求項1~5のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項7】
前記延伸多孔質膜は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)又は延伸超高分子量ポリエチレン(eUHMWPE)を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項8】
前記PILは、アンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ホスホニウム及びピロリドンからなる群より選ばれるカチオンと、ハロゲン化物、ビストリフルオロメチルスルホンイミド、テトラフルオロボレート及びアセテートからなる群より選ばれる対アニオンとを含む、請求項1~7のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項9】
前記PILは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(PDDMATFSI)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロリド(PDDMACl)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)テトラフルオロボレート(PDDMABF4)、ポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(PVBTMATFSI)、ポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)クロリド(PVBTMACl)、ポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)テトラフルオロボレート(PVBTMABF4)及びポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)アセテート(PVBTMAOAc)からなる群より選ばれる、請求項1~8のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項10】
前記複合材料は、約20%を超えて約99%以下の多孔度を有する、請求項1~9のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項11】
前記複合材料は20%未満の多孔度を有する、請求項1~10のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項12】
少なくとも1つの活性剤をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項13】
前記活性剤は前記PILに共有結合又は非共有結合する、請求項12記載の複合材料。
【請求項14】
前記活性剤は、無機粒子、無機ナノ粒子、金属、金属酸化物、金属塩、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、グラフェン、触媒粒子、ポリオキソメタレート(POM)、有機金属フレームワーク(MOF)、追加のポリマー、シリカ、量子ドット、イオン性液体、生物学的活性分子及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選ばれる、請求項12又は13記載の複合材料。
【請求項15】
前記生物学的活性分子は、ポリペプチド、タンパク質、酵素触媒、酵素、酵素抽出物、全細胞、抗体、脂質、核酸分子、炭水化物又はそれらの任意の組み合わせである、請求項14記載の複合材料。
【請求項16】
前記複合材料の総質量に対する前記ポリ(イオン性液体)ポリマーの質量パーセントは、約1wt%~約90wt%の範囲である、請求項1~15のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項17】
前記複合材料は支持層をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項18】
前記複合材料は、約0.3ミリモルCO
2/gPIL~約1.2ミリモルCO
2/gPILのCO
2吸収容量を有する、請求項1~17のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項19】
前記複合材料は、1.0バーラーを超えるCO
2透過度を有する、請求項1~18のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項20】
前記複合材料は、1.5バーラー未満のN
2透過度を有する、請求項1~19のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項21】
前記複合材料は、CO
2透過度/N
2透過度として計算される、8.0を超える選択性を有する、請求項1~20のいずれか1項記載の複合材料。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項記載の複合材料を含む、ラミネート。
【請求項23】
請求項1~20のいずれか1項記載の複合材料又は請求項22記載のラミネートを含む、物品。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか1項記載の複合材料、ラミネート又は物品を提供すること、及び、前記複合材料、前記ラミネート又は前記物品と混合物を接触させることによって、前記混合物からガスを分離することを含む、混合物からガスを分離する方法。
【請求項25】
前記ガスは二酸化炭素である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
(a)固体のポリ(イオン性液体)ポリマーを溶媒に溶解して、ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液を形成すること、
(b)前記ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液を、細孔を提供するボイド体積と、フィブリルによって相互接続されたノード、又はフィブリルのみ、からなる微細構造とを有する多孔質ポリマー膜に適用すること、及び、
(c)前記ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液を前記多孔質ポリマー膜に適用した後に、前記溶媒を除去すること、
を含んでなる、複合材料を形成する方法。
【請求項27】
前記ポリ(イオン性液体)ポリマーは、前記多孔質ポリマー膜の微細構造のボイド体積中に部分的又は完全に吸収される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
(d)工程(b)の後及び/又は工程(c)の後に前記複合材料を延伸させる工程をさらに含む、請求項26又は27記載の方法。
【請求項29】
(f)工程(b)、工程(c)及び/又は工程(d)の後に、前記複合材料を圧縮することをさらに含む、請求項26、27又は28記載の方法。
【請求項30】
(a)(i)ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液、及び、
(ii)第一の側と第二の側とを有する延伸多孔質膜であって、フィブリルと、場合により該フィブリルを相互接続するノードとからなる微細構造、及び、細孔を提供するボイド体積、を有する延伸多孔質膜を提供すること、並びに、
(b)前記ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液を前記延伸多孔質膜の少なくとも1つの側に堆積させることにより複合材料を形成させること、
(c)場合により、工程(b)の複合材料を、加熱、伸長、圧縮化又はそれらの任意の組み合わせの1つ以上の工程にかけること、
を含んでなる、複合材料を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年11月19日に出願された仮出願第63/281,235号の利益を主張し、その全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、所望の機械的特性(可撓性、強度、耐久性など)と組み合わせて、高いCO2吸収性、高いCO2透過性及びCO2/N2選択性を含む優れた性能特性を有する、延伸多孔質膜及びポリ(イオン性液体)(PIL)を含む複合材料、該複合材料を含むラミネート及び物品、ならびに前記複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン性液体は、陽イオン及び陰イオンから構成され、常温(<100℃)周囲圧下で液体として存在する材料として知られており、高い熱安定性、高い電気化学的安定性及び低い揮発性など、既知の溶媒と異なる特定の特性で注目が集められている。一般に、イオン性液体は、カチオン種とアニオン種を適切に選択し、組み合わせることにより、様々な特性を有するように調整できる。イオン性液体は、電気化学デバイス、分離用途及び反応溶媒など、様々な用途での利用が検討されている。
【0004】
重合イオン性液体又はポリ(イオン性液体)(PIL)は、イオン性液体のポリマー形態である。一般に、イオン性液体は固定化が難しく、例えば溶媒キャスティングによってポリ(イオン性液体)から直接得られるPIL膜は脆く、取り扱いが難しく、低いCO2透過性を示すことがある。また、イオン性液体モノマーを多孔質ポリマー膜支持体に含浸させることは可能であるが、これらの構造は、圧力が上昇すると、例えば1~2気圧を超えると破損する傾向があり、その結果、イオン性液体の漏れ又は吹き出しが発生する。
【0005】
二酸化炭素は、主要な温室効果ガスの1つであることが確認されており、CO2排出が地球大気のオゾン層に対して、CO2がその緯度に蓄積する大気層に応じて、影響を及ぼす可能性があることが広く受け入れられている。大気中のCO2の過剰な蓄積が地球温暖化に寄与していると考えられている。その結果、政府機関の協力を得て、環境面でも商業面でも、発電所のフルーガスなどのガス流源からCO2を回収し、その後の利用又は地下隔離が推進されてきた。既知の方法は、アミン溶液を使用してCO2を捕捉することである。しかしながら、アミン溶液で捕捉されたCO2はカルバミン酸塩又はカルボン酸塩を形成する可能性があり、これらは元に戻して再利用することはできるが、有意な熱又は酸化劣化を受けるため、その使用はあまり魅力的ではない。
【0006】
同様に、CO2を選択的に透過させることによって混合ガスからCO2を分離するのに有用な様々なポリマー膜、特にCO2選択性膜が開発されてきた。しかしながら、ポリマー膜は溶液拡散メカニズムに基づいてCO2を物理的に透過するため、達成できるCO2透過性及びCO2/N2選択性の改善には限界がある。さらに、フルーガス分離用途は、高温、高酸性、高湿度など、殆どのポリマー膜にとって過酷であると考えられている。
【0007】
延伸多孔質膜は当該技術分野で知られている。例えば、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)フィルムは、Gore社の米国特許第3,953,566号明細書に教示されているプロセスによって製造することができる。このプロセスで形成された多孔質 ePTFEは、フィブリルで相互接続されたノードの微細構造を有し、未延伸PTFEよりも高い強度を示し、未延伸PTFEの化学的不活性性及び広い有効温度範囲を保持する。しかしながら、このような延伸PTFE膜は多孔質であるため、単独では選択性膜として使用することができない。
【0008】
したがって、当該技術分野において、高いCO2捕捉及び分離性、高いCO2/N2選択性を含む望ましい性能特性の組み合わせを有し、同時に、薄い、強い、湿気、温度及び化学薬品に対する耐性などの望ましい機械的特性を有する、改善された性能を示す複合材料に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0009】
本明細書には、薄い、強い、湿気及び温度に対する耐性などの望ましい機械的特性と組み合わせて、高いCO2吸収性、透過性及びCO2/N2選択性を含む優れた性能特性を示し、そして可撓性、強度、及び耐久性を有する、延伸多孔質膜及びポリ(イオン性液体)(PIL)を有する複合材料、該複合材料を含むラミネート及び物品、ならびに該複合材料の製造プロセスが提供される。
【0010】
本明細書で扱う概念の様々な態様は、従来の多孔質膜、シート又はフィルムの既存の機械的、化学的及び熱的特性を損なうことなく、優れたCO2吸収及び分離特性を有する複合材を提供する。幾つかの例において、複合材は、通常と異なり又は驚くほど薄い形状で作られるが、他の例では複合材は実質的な厚さであることができる。
【0011】
第一の実施形態(「実施形態1」)によれば、複合材料は、厚さを有する延伸多孔質膜であって、フィブリルと、場合により該フィブリルを相互接続するノードとからなる微細構造、及び、細孔を提供するボイド体積、を有する延伸多孔質膜、並びに、ポリ(イオン性液体)ポリマー(PIL)を含む。
【0012】
実施形態1に加えて、第二の実施形態(「実施形態2」)によれば、前記PILは、前記延伸多孔質膜のノード及びフィブリル上にコーティングを形成する。
【0013】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第三の実施形態(「実施形態3」)によれば、前記PILは、前記延伸多孔質膜のボイド体積全体を充填する。
【0014】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第四の実施形態(「実施形態4」)によれば、前記PILは、前記延伸多孔質膜のボイド体積の少なくとも一部を充填する。
【0015】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第五の実施形態(「実施形態5」)によれば、前記PILは、前記延伸多孔質膜のボイド体積の大半を充填する。
【0016】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第六の実施形態(「実施形態6」)によれば、前記延伸多孔質膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリパラキシリレン(PPX)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、二フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー又はポリ(エチレンテトラフルオロエチレン)(ETFE)のうちの1つ以上を含む。
【0017】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第七の実施形態(「実施形態7」)によれば、延伸多孔質膜は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)又は延伸超高分子量ポリエチレン(eUHMWPE)を含む。
【0018】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第八の実施形態(「実施形態8」)によれば、前記PILは、アンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ホスホニウム及びピロリドンからなる群より選ばれるカチオンと、ハロゲン化物、ビストリフルオロメチルスルホンイミド、テトラフルオロボレート及びアセテートからなる群より選ばれる対アニオンとを含む。
【0019】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第九の実施形態(「実施形態9」)によれば、前記PILは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(PDDMATFSI)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロリド(PDDMACl)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)テトラフルオロボレート(PDDMABF4)、ポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(PVBTMATFSI)、ポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)クロリド(PVBTMACl)、ポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)テトラフルオロボレート(PVBTMABF4)及びポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)アセテート(PVBTMAOAc)からなる群より選ばれる。
【0020】
前述の実施形態いずれかに加えて、第十の実施形態(「実施形態10」)によれば、前記複合材料は、約20%を超えて約99%以下の多孔度を有する。
【0021】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第十一の実施形態(「実施形態11」)によれば、前記複合材料は20%未満の多孔度を有する。
【0022】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第十二の実施形態(「実施形態12」)によれば、少なくとも1つの活性剤をさらに含む。
【0023】
実施形態12に加えて、第十三の実施形態(「実施形態13」)によれば、前記活性剤は前記PILに共有結合又は非共有結合する。
【0024】
実施形態12又は13に加えて、第十四の実施形態(「実施形態14」)によれば、前記活性剤は、無機粒子、無機ナノ粒子、金属、金属酸化物、金属塩、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、グラフェン、触媒粒子、ポリオキソメタレート(POM)、有機金属フレームワーク(MOF)、追加のポリマー、シリカ、量子ドット、イオン性液体、生物学的活性分子及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選ばれる。
【0025】
実施形態14に加えて、第十五の実施形態(「実施形態15」)によれば、前記生物学的活性分子は、ポリペプチド、タンパク質、酵素触媒、酵素、酵素抽出物、全細胞、抗体、脂質、核酸分子、炭水化物又はそれらの任意の組み合わせである。
【0026】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第十六の実施形態(「実施形態16」)によれば、前記複合材料の総質量に対するポリ(イオン性液体)ポリマーの質量パーセントは、約1wt%~約90wt%の範囲である。
【0027】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第十七の実施形態(「実施形態17」)によれば、前記複合材料は支持層をさらに含む。
【0028】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第十八の実施形態(「実施形態18」)によれば、前記複合材料は、約0.3ミリモルCO2/gPIL~約1.2ミリモルCO2/gPILのCO2吸収容量を有する。
【0029】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第十九の実施形態(「実施形態19」)によれば、前記複合材料は、1.0バーラーを超えるCO2透過度を有する。
【0030】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第二十の実施形態(「実施形態20」)によれば、前記複合材料は、1.5バーラー未満のN2透過度を有する。
【0031】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第二十一の実施形態(「実施形態21」)によれば、前記複合材料は、CO2透過度/N2透過度として計算される、8.0を超える選択性を有する。
【0032】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第二十二の実施形態(「実施形態22」)によれば、前述の実施形態のいずれかの複合材料を含むラミネートが提供される。
【0033】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第二十三の実施形態(「実施形態23」)によれば、実施形態1~20の複合材料又は実施形態22のラミネートを含む物品が提供される。
【0034】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第二十四の実施形態(「実施形態24」)によれば、混合物からガスを分離する方法は、前述の実施形態いずれかの複合材料、ラミネート又は物品を提供すること、及び、前記複合材料、前記ラミネート又は前記物品と混合物を接触させることによって、前記混合物からガスを分離することを含む。
【0035】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第二十五の実施形態(「実施形態25」)によれば、前記ガスは二酸化炭素である。
【0036】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第二十六の実施形態(「実施形態26」)によれば、前記方法は、
(a)固体のポリ(イオン性液体)ポリマーを溶媒に溶解して、ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液を形成すること、
(b)前記ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液を、細孔を提供するボイド体積と、フィブリルによって相互接続されたノード、又はフィブリルのみ、からなる微細構造とを有する多孔質ポリマー膜に適用すること、及び、
(c)前記ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液を前記多孔質ポリマー膜に適用した後に、前記溶媒を除去すること、
を含む。
【0037】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第二十七の実施形態(「実施形態27」)によれば、前記ポリ(イオン性液体)ポリマーは、前記多孔質ポリマー膜の微細構造のボイド体積中に部分的又は完全に吸収される。
【0038】
実施形態26又は27に加えて、第二十八の実施形態(「実施形態28」)によれば、(d)工程(b)の後及び/又は工程(c)の後に前記複合材料を延伸させることをさらに含む。
【0039】
実施形態26~28に加えて、第二十九の実施形態(「実施形態29」)によれば、(f)工程(b)、工程(c)及び/又は工程(d)の後に、前記複合材料を圧縮することをさらに含む。
【0040】
前述の実施形態のいずれかに加えて、第三十の実施形態(「実施形態30」)によれば、前記複合材料を形成する方法は、(a)(i)ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液、及び、(ii)第一の側と第二の側とを有する延伸多孔質膜であって、フィブリルと、場合により該フィブリルを相互接続するノードとからなる微細構造、及び、細孔を提供するボイド体積、を有する延伸多孔質膜を提供すること、(b)前記ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液を前記延伸多孔質膜の少なくとも1つの側に堆積させることにより複合材料を形成させること、(c)場合により工程(b)の複合材料を、加熱、伸長(stretching)、圧縮化(compacting)又はそれらの任意の組み合わせの1つ以上の工程にかけることを含む。
【0041】
前述の実施形態は、まさに実施形態であり、本開示によって提供される本発明の概念の範囲を限定したり又は狭めたりするように解釈されるべきではない。複数の例が開示されているが、さらに他の実施形態は、例示的な例を示し説明する以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に制限的なものではなく、本質的に例示的なものと考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
添付図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、実施形態を示し、説明とともに本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0043】
【
図1】
図1は、1つの実施形態による、モノリシックトップコーティングを含む、PILが完全に吸収されたePTFE膜の断面サンプルのSEM顕微鏡写真である。
【0044】
【
図2】
図2は、ePTFE膜のノード及びフィブリル上のPILコーティングを示す、EDS(エネルギー分散型X線分光法)画像によって分析されたPILコーティングされたサンプルの断面のSEM顕微鏡写真である。
【0045】
【
図3】
図3A及び3Bは、例6で測定された速度論的データ及び温度スイング収着サイクルのグラフ画像である。
図3Aは、ePTFEポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)アセテート(PVBTMAOAc)膜複合材について収集されたデータを表し、一方、
図3Bは、PVBTMAOAc粉末について収集されたデータを表す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
定義と用語
本開示は、限定的に読まれることを意図したものではない。例えば、本出願で使用される用語は、その分野の専門家がそのような用語に帰するであろう意味の文脈で広く読まれるべきである。
【0047】
不正確さの用語に関して、「約」及び「およそ」という用語は、記載された測定値、及び記載された測定値に合理的に近い任意の測定値を含む測定値を指すために互換的に使用されうる。記載された測定値に合理的に近い測定値は、関連技術の当業者によって理解され容易に確認されるように、記載された測定値から合理的に小さな量だけ逸脱している。このような逸脱は、測定誤差、測定及び/又は製造装置の校正の違い、測定値の読み取り及び/又は設定における人為的エラー、他の構成要素に関連する測定値の違いを考慮して性能及び/又は構造パラメータを最適化するために行われた微調整、特定の実装シナリオ、人又は機械による対象物の不正確な調整及び/又は操作などに起因する可能性がある。関連技術の当業者がそのような合理的に小さな差異の値を容易に確認できないと判断された場合には、「約」及び「およそ」という用語は、記載された値のプラス又はマイナス10%を意味すると理解できる。
【0048】
範囲は、本明細書において、「約」1つの特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表現される場合がある。このような範囲が表現されるときに、別の実施形態には、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までが含まれる。同様に、先行詞「約」を使用して値が近似値として表現されるときに、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。さらに、各範囲の端点は、他の端点との関係においても、他の端点から独立しても重要であることが理解されるであろう。明細書及び特許請求の範囲に範囲が記載されているときに、具体的に開示されているかどうかにかかわらず、その範囲内の小数を含むすべての数値が含まれることが理解される。例えば、範囲が1~10の場合に、範囲にはその範囲内のすべての数値、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9及び10が含まれる。なお、特に断らない限り、「0」は以下の範囲には含まれないこと、同様に、特に断らない限り、「100」は以上の範囲には含まないことがさらに理解される。
【0049】
本出願で使用されるときに、「細孔サイズ」という用語は、多孔質膜の細孔の平均サイズを意味する。細孔サイズは、本明細書でより詳細に説明されるように、バブルポイント、平均流れ細孔サイズ又は水侵入圧力によって特性化することができる。
【0050】
本明細書で使用されるときに、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形の言及を含む。本明細書で使用されるときに、「上(on)」という用語は、ある要素が別の要素「上(on)」にあるときに、それが他の要素上に直接存在することも、又は、介在要素が存在することもできることを表すことが意図される。「微粉末」及び「粉末」という用語は、本明細書で互換的に使用されうることを理解されたい。また、用語「ePTFE膜」及び「膜」は、本明細書で互換的に使用されうる。さらに、本出願において、「ePTFE膜」という用語は、単層又は複数層のePTFE膜を含むことが意図される。機械方向及び長手方向は同じであり、本明細書で互換的に使用できることを理解されたい。さらに、用語「微孔質ePTFE膜」及び「ePTFE膜」は、本明細書で互換的に使用されうる。
【0051】
PTFE出発材料は、PTFEホモポリマー、変性PTFEホモポリマー、又はPTFEホモポリマーのブレンドであることができる。別の実施形態において、PTFE出発材料は、PTFEホモポリマーと、純粋なホモポリマーPTFEの非溶融加工性特性をコポリマーに失わせる量のコモノマー単位が存在しないPTFEコポリマーとのブレンドであることができる。PTFEコポリマー中の適切なコモノマーの例としては、限定するわけではないが、エチレン及びプロピレンなどのオレフィン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、フッ化ビニリデン(VDF)及びクロロフルオロエチレン(CFE)などのハロゲン化オレフィン、及び、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PPVE)及びペルフルオロスルホニルビニルエーテル(PSVE)が挙げられる。さらに別の実施形態において、第一のPTFE膜及び/又は第二のPTFE膜は、高分子量PTFEホモポリマーと低分子量変性PTFEポリマーとのブレンドから形成されうる。
【0052】
様々な実施形態の説明
当業者は、本開示の様々な態様が、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることを容易に理解するであろう。また、本明細書で参照される添付の図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示のさまざまな態様を説明するために誇張されていることがあり、その点において、図面は限定的なものとして解釈されるべきではないことにも留意されたい。
【0053】
本明細書で取り上げる様々な概念は、延伸多孔質膜及びポリ(イオン性液体)を含む複合材料に関する。本記載は、複合材料の製造方法も提供する。複合材料は、比較的高い可撓性、強度及び耐久性の1つ以上などの望ましい機械的特性を組み合わせて、非常に高いCO2吸収容量、高いCO2/N2及びCO2/CH4選択性の1つ以上を含む優れた性能特性を有することができる。
【0054】
1つの実施形態による複合材料は、多孔質膜及びポリ(イオン性液体)ポリマー(PIL)を含む。本実施形態の主旨の範囲内で、複数のタイプの多孔質膜及び複数のタイプのPILを組み合わせることができることは容易に理解されるべきである。本実施形態の多孔質膜は、所望の複合材料性能を達成するために任意の適切な微細構造を有することができる。例えば、多孔質膜は、実質的にフィブリルのみの微細構造、又は場合によりフィブリルを相互接続するノード、及び細孔を提供するボイド体積を有することができる。多孔質PTFE膜は、Goreの米国特許第3,953,566号明細書、Brancaの米国特許第5,814,405号明細書、Bacinoの米国特許第7,306,729号明細書、及びBacinoの米国特許第5,476,589号明細書に記載されているような、当業者に知られている方法を使用して調製することができる。
【0055】
1つの実施形態において、多孔質膜は、Bacinoの米国特許第7,306,729号明細書に一般的に教示されているように、実質的にフィブリルのみの微細構造を有することができる。図示されるような実質的にフィブリルのみを有する延伸多孔質膜は、例えば約20m2/gを超える、又は約25m2/gを超える高い表面積を有することができ、幾つかの実施形態において、少なくとも1.5×105MPa2の2つの直交する方向におけるマトリックスの引張強さの積、及び/又は、2未満、及び場合によっては1.5未満の2つの直交する方向におけるマトリックスの引張強さの比を有する、高度にバランスのとれた強度の材料を提供することができる。実施形態によれば、延伸多孔質膜は、約5μm未満、約1μm未満及び約0.10μm未満の平均流れ細孔サイズを有することが予想される。延伸多孔質膜は、実質的にすべてのフィブリルの直径が約1μm未満であることができることが予想される。
【0056】
別の実施形態において、延伸フルオロポリマーは、Goreの米国特許第3,953,566号明細書に記載されているような、フィブリルによって相互接続されたノードの微細構造を有することができる。フィブリルはノードから複数の方向に延在しており、膜はほぼ均質な構造を有している。例えば、微細構造は、2つの直交方向におけるマトリックス引張強さの比が2未満、場合によっては1.5未満を示すことができ、他の比も同様に適切であることが理解されるであろう。さらに、延伸フルオロポリマー膜は、幾つかの実施形態によれば、約5μm未満、約1μm未満及び約0.10μm未満の平均流れ細孔サイズを有することができる。幾つかの実施形態において、延伸フルオロポリマー膜は、約1μm未満の直径を有するノード-フィブリル構造におけるフィブリルを有することができる。さらに他の実施形態において、延伸フルオロポリマー膜は、約1μm未満の直径を有する実質的にすべてがフィブリルの微細構造を有することができる。
【0057】
適切な合成ポリマー膜の非限定的な例としては、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、変性ポリテトラフルオロエチレンポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー、ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリアルキレン、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエステル、米国特許公開第2016/0032069号明細書で教示されているような多孔質ポリ(p-キシリレン)(ePPX)、Sbrigliaの米国特許第9,926,416号明細書で教示されているような多孔質超高分子量ポリエチレン(eUHMWPE)、Sbrigliaの米国特許第9,932,429号明細書で教示されるような多孔質エチレンテトラフルオロエチレン(eETFE)、Sbrigliaらの米国特許第7,932,184号明細書で教示されているような多孔質ポリ乳酸(ePLLA)、Sbrigliaの米国特許第9,441,088号明細書に教示されているような多孔質フッ化ビニリデン-コ-テトラフルオロエチレン又はトリフルオロエチレン[VDF-コ-(TFE又はTrFE)]ポリマー、及び、それらのコポリマー及びそれらの組み合わせが挙げられる。少なくとも1つの実施形態において、合成ポリマー膜は、ノードアンドフィブリル微細構造を有する微孔質フルオロポリマー膜などの微孔質合成ポリマー膜であり、ここで、ノードはフィブリルによって相互接続されており、細孔は膜全体にわたってノード及びフィブリルの間に位置するボイド又は空間である。例示的なノードアンドフィブリル微細構造は、Goreの米国特許第3,953,566号明細書に記載されている。
【0058】
幾つかの実施形態において、多孔質膜としては、以下の1つ以上:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリパラキシリレン(PPX)、 ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、二フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー、ポリ(エチレンテトラフルオロエチレン)(ETFE)及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0059】
1つの好ましい実施形態において、複合材料は、例えば米国特許第7,306,729号明細書に一般的に記載されているような、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)又は延伸超高分子量ポリエチレン(eUHMWPE)から作製された延伸多孔質膜を含むことができる。延伸ePTFEは、PTFEホモポリマーを含むことができる。代替実施形態において、PTFE、延伸性変性PTFE及び/又はPTFEの延伸コポリマーのブレンドを使用することができる。適切なフルオロポリマー材料の非限定的な例は、例えば、Malhotra の米国特許第4,576,869号明細書、Brancaの米国特許第5,814,405号明細書及び同第5,708,044号明細書、Baillieの米国特許第6,541,589号明細書、Sabolの米国特許第7,531,611号明細書、Fordの米国特許第8,637,144号明細書及びXuの米国特許第9,139,669号明細書に記載されている。
【0060】
実施形態による多孔質膜は、PTFEの密度約2.18g/cm3に基づいて、約50MPa~約2000MPa又はそれ以上の範囲のマトリックス引張強さを有することができる。
【0061】
本実施形態の多孔質膜は、所望の複合材料性能を達成するために、任意の適切な厚さ及び質量を有するように調整することができる。幾つかの場合に、厚さが約10.0μm未満である非常に薄い延伸多孔質膜を使用することが望ましい場合がある。他の実施形態において、約15μmより大きく約250μm未満の厚さを有する延伸多孔質膜を使用することが望ましい場合がある。延伸多孔質膜は、約5g/m2未満から約200g/m2を超える比重を有することができる。
【0062】
複合材料に含まれうる複数のタイプのPILは、カチオンがアンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ホスホニウム及びピロリドンからなる群より選ばれ、対アニオンがハロゲン化物、ビストリフルオロメチルスルホンイミド、テトラフルオロボレート及びアセテートからなる群より選ばれるPILを含むことができる。対アニオンはまた、ポリ(アニオン)であることができる。
【0063】
幾つかの実施形態において、例えば、PILは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(PDDMATFSI)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロリド(PDDMACl)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)テトラフルオロボレート(PDDMABF4)、ポリ((ビニルベンジル) トリメチルアンモニウム)ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(PVBTMATFSI)、ポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)クロリド(PVBTMACl)、ポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)テトラフルオロボレート(PVBTMABF4)又はポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)アセテート(PVBTMAOAc)を含むことができる。
【0064】
1つの実施形態において、PILは、延伸多孔質膜の多孔質構造内のボイド体積又は空間の実質的にすべてを占める。あるいは、PILは、延伸多孔質膜のボイド体積を部分的に充填することができ、又はPILはボイド体積の全体、すなわち100%を充填することができ、これを完全に充填したとも称することができる。別の実施形態において、PILは、延伸多孔質膜の細孔の実質的に全部又は一部に存在する。さらに別の実施形態において、PILは、延伸多孔質膜のノード及びフィブリル上にコーティングを形成することができる。例えば、PILは、延伸多孔質膜のボイド体積の少なくとも一部を充填することができ、ここで、一部とは、約10%、約20%、約30%、約40%又は約50%として規定されうる。あるいは、PILは、延伸多孔質膜のボイド体積の大半を充填することができ、ここで「大半」とは、約50%、約60%、約70%、約80%又は約90%として規定されうる。
【0065】
さらなる実施形態において、複合材料は、約20%を超える、約30%を超える、約40%を超える、約50%を超える、約60%を超える、約70%を超える、約80%を超える、又は約90%を超える多孔度を有することができる。複合材料は、約95%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、又は約20%未満の多孔度を有することができる。複合材料は、約20%を超えて約90%までの範囲の多孔度を有することができ、又はこれらの端点に含まれる任意の多孔度を有することができる。また、多孔度が小さすぎると、ガス透過性が低下する可能性があることも容易に理解されたい。
【0066】
多孔質膜は、細孔を提供するボイド体積を有することができる。細孔は、約0.001μm~約10μmの範囲の平均直径を有することができ、又はこれらの端点に含まれる平均直径を有することができる。
【0067】
追加の材料は、複合材料又はラミネートの所望の特性を強化又は調整するために、細孔内、複合材料内又は該複合材料を含むラミネートの層間に組み込まれることができる。1つの実施形態において、複合材料は少なくとも1つの活性剤を含むことができる。活性剤は、PILに共有結合又は非共有結合されうる。活性剤の例としては、無機粒子、無機ナノ粒子、金属、金属酸化物、金属塩、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、グラフェン、触媒粒子、ポリオキソメタレート(POM)、有機金属フレームワーク(MOF)、追加のポリマー、シリカ、量子ドット、イオン性液体及び生物学的活性分子を挙げることができる。
【0068】
生物学的活性分子としては、例えば、ポリペプチド、タンパク質、酵素触媒、酵素、酵素抽出物、全細胞、抗体、脂質、核酸分子又は炭水化物を挙げることができる。
【0069】
複合材料の総質量に対するPILポリマーの質量パーセントは、いずれかの実施形態において1wt%~90wt%の範囲であることができ、又は複合材料の総質量に対するPILポリマーの質量パーセントは、これらの端点の間にある任意の百分率であることができる。
【0070】
本発明の実施形態による複合材料又はラミネートは、CO2分離膜として利用することができ、複合材料は高いCO2透過性及びCO2/N2選択性を示す。例えば、複合材料は、1.0バーラーを超える、又は2.0バーラーを超える、又は3.0バーラーを超える、又は4.0バーラーを超える、又は5.0バーラーを超える、又は6.0バーラーを超える、7.0バーラーを超える、又は8.0バーラーを超える、又は9.0バーラーを超える、又は9.5バーラーを超える、又は10.0バーラーを超えるCO2透過度を有することができ、ここで、1.0バーラーは3.35×10-16モル・m/(s・m2・Pa)である。同様に、複合材料は、1.5バーラー未満、1.3バーラー未満、又は1.1バーラー未満のN2透過度を有することができる。幾つかの実施形態において、複合材料は、約1.0バーラー~約4.0バーラー、又は約1.0バーラー~約3.0バーラー、又は約1.0バーラー~約2.0バーラー、又は約1.0バーラー~約1.5バーラー、又は約1.0バーラー~約1.4バーラー、又は約1.0バーラー~約1.3バーラー、又は約1.0バーラー~約1.2バーラー、又は約1.0バーラー~約1.1バーラーのCO2透過度を有することができ、又はこれらの端点に含まれるいずれかの値のCO2透過度を有することができる。複合材料は、CO2透過度/N2透過度として計算される、8.0を超える、9.0を超える、又は10.0を超える選択性を有することができる。
【0071】
同様に、本発明の実施形態による複合材料又はラミネートは、高いCO2吸収容量を有することができる。複合膜は、複合材料中のPILの質量当たりの吸収が、PIL粉末中の吸収よりも高くなることができる。例えば、複合材料は、0.3ミリモルCO2/gPILを超える、0.4ミリモルCO2/gPILを超える、0.5ミリモルCO2/gPILを超える、0.6ミリモルCO2/gPILを超える、0.7ミリモルCO2/gPIL、0.8ミリモルCO2/gPILを超える、0.9ミリモルCO2/gPILを超える、1.0ミリモルCO2/gPILを超える、1.5ミリモルCO2/gPILを超える、又は2.0ミリモルCO2/gPILを超えるCO2吸収容量を有することができる。複合材料は、約0.3ミリモルCO2/gPIL~約2.0ミリモルCO2/gPILのCO2吸収容量を有することができる。
【0072】
幾つかの実施形態において、複合材料は薄く、約1000μm(1.0mm)未満、約500μm未満、約100μm未満、約50μm未満、約10μm未満、約1μm未満、約0.5μm未満、又は約0.1μm未満、又は約0.05μm未満の厚さを有することができる。例えば、複合材料は、約0.04μm~約1.0mmの厚さを有することができ、あるいはこの範囲に含まれる任意の値の厚さを有することができる。
【0073】
複合材料は、基材又は支持層を含むことができ、基材又は支持層にラミネート化、接着、又は他の方法で結合(例えば、熱的、機械的又は化学的)されることができる。適切な基材又は支持層の非限定的な例としては、限定するわけではないが、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンとのターポリマー(THV)、ポリウレタン、ポリアミド、エチレンビニルアルコール(EVOH)及びポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられる。基材はまた、金属シート、無機シート又は感圧接着剤であることができる。このようなラミネート化構造は、テキスタイルなどの追加の層へのさらなる結合を促進又は強化することができる。基材又は支持層は、編物材料、織物材料又は不織材料を含むテキスタイル層を含むことができる。
【0074】
複合材料を含むラミネートは、1層以上、例えば2層又は3層又はそれ以上の層を有することができる。1つの実施形態において、複合材料は、第一の層と第二の層との間に配置されうる。
【0075】
複合材料を含む物品又はラミネートは、優れた吸収性及び機械的特性を示すことができる。複合材料を含む物品は、シート、チューブ又は自立する三次元形状の形態であることができる。あるいは、物品はラミネート又は複合材に含まれることができる。複合材料、物品又はラミネートは、CO2隔離のための直接空気捕捉、流体流からのガス吸収、例えば発電所フルーガス中のCO2捕捉及び分離、CO2センサとして、又は、CO2/N2又はCO2/CH4分離が必要な用途で使用されうる。
【0076】
上述したように、PILは、PILが延伸多孔質膜内のボイド体積又は細孔を部分的又は実質的に完全に充填するように、延伸多孔質膜と組み合わされる。この延伸多孔質膜の細孔へのPILの充填は、ドローダウンバー、ワイヤーバー、グラビアローリング又はスピンコーティングによる吸収などの様々な方法によって行うことができる。1つの実施形態において、延伸多孔質膜の細孔を充填する方法は、延伸多孔質膜の細孔中に部分的又は完全に流れ込むのに適切な粘度及び表面張力を有する溶液を生成するのに適した溶媒にポリ(イオン性液体)を溶解すること、及び、前記溶媒を蒸発させてPILを残すことを含む。
【0077】
様々な実施形態において、複合材料は、吸収ゾーン及び非吸収ゾーンを含むことができ、吸収ゾーンは、例えば、多孔質膜の一部でPILを多孔質膜に吸収させることによって形成することができる。このような吸収ゾーンは、例えば、「バターコーティング」又はスロットダイコーティングによって形成することができる。
【0078】
1つの実施形態において、複合材料を形成する方法は、固体のPILポリマーを溶媒に溶解してPILポリマー溶液を形成すること、前記PILポリマー溶液を、細孔を提供するボイド体積及びフィブリルによって相互接続されたノードの微細構造又はフィブリルのみの微細構造を有する多孔質ポリマー膜に適用すること、及び、前記PILポリマー溶液を前記多孔質ポリマー膜に適用した後に前記溶媒を除去することを含む。PILポリマーは、多孔質ポリマー膜の微細構造のボイド体積に部分的又は完全に吸収されうる。
【0079】
別の実施形態において、複合材料を形成する方法は、スピンコーティングすることを含むことができる。例えば、複合材料は、PILポリマー溶液、及び、第一の側と第二の側を有する延伸多孔質膜を提供すること、ここで、前記延伸多孔質膜は、細孔を提供するボイド体積及びフィブリルの微細構造、及び、場合によってフィブリルを相互接続するノードの微細構造を有する、及び、前記PIL溶液を前記膜にスピニングし、そこで前記PILポリマー溶液を前記延伸多孔質膜の少なくとも片側に堆積させ、それによって、複合材料を形成することによって形成されうる。
【0080】
追加の処理工程が本実施形態の主旨の範囲内であることは容易に理解されるべきである。追加の処理としては、場合により、複合材料を以下の1つ以上の工程:加熱、伸長、圧縮、圧縮又はそれらの任意の組み合わせにかけることを挙げることができる。例えば、複合材料は、PILポリマー溶液を多孔質ポリマーに適用した後、又は、PILポリマー溶液を適用した後に溶媒を除去した後、又はこれらの各プロセス工程の後に延伸されることができる。他の実施形態において、複合材料は、PILポリマー溶液を多孔質ポリマーに適用した後、又はPILポリマー溶液を適用した後に溶媒を除去した後、又は複合材料を延伸させた後、又はこれらの各プロセス工程の後に圧縮されることができる。本発明者らは、これらの独特の処理能力の組み合わせにより、複合膜のePTFE細孔構造、多孔度及び密度を操作することができ、次いで、それにより、脆弱なPIL膜の適切な支持を提供すると同時に、透過性及び選択性の最適化が可能になることを発見した。
【0081】
要約すると、本明細書で提供される方法によって調製される複合材料、及び該複合材料を含む物品又はラミネートは、高いCO2透過性及びCO2/N2選択性を含む望ましい吸収特性、ならびに、可撓性、強度及び耐久性を含む非常に望ましい機械的特性の組み合わせを示す。本明細書で提示される方法は、脆弱なPIL膜の支持を提供すると同時に、複合膜のePTFE細孔構造、多孔度及び密度を操作するための独自の処理能力を通じて透過性及び選択性を最適化することを可能にする。
【実施例】
【0082】
試験方法
特定の方法及び装置を以下に説明するが、当業者によって適切と判断される他の方法又は装置を代替的に利用できることを理解されたい。
【0083】
本明細書で別途定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の概念は、以下の実施例でさらに規定される。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、例示のみを目的として与えられていることが理解されるべきである。上記の議論及びこれらの実施例から、当業者は、幾つかの実施形態による本質的な特徴を確認することができ、その主旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の概念を様々な用途及び条件に適合させるために様々な変更及び改変を加えることができる。
熱重量分析(TGA)
熱重量収着データは、TA Instruments (デラウェア州ニューキャッスル)のDiscovery TGA 5500 熱重量分析装置を使用して収集した。二酸化炭素及びヘリウムを熱重量分析装置に配管設置した。
CO2収着法1
CO2収着法1では、以下のプロセス工程を利用した。
プログラム工程 説明
1.ガス選択1 ヘリウムを25mL/分でパージする。
2.20℃/分で70℃まで傾斜 脱気のために70℃まで加熱する。
3.300分間等温 5時間脱気する。
4.20℃/分で30℃まで傾斜 収着分析のために30℃まで冷却する。
5.30分間等温 温度が安定するまで時間を置く。
6.ガス選択2 CO2を25mL/分でパージする。
7.60分間等温 吸着中の質量取り込みを測定する。
8.ガス選択1 ヘリウムを25mL/分でパージする。
9.60分間等温 脱着中の質量減少を測定する。
10.6~9の3回繰り返し サイクルを3回繰り返し、再現性を評価する。
CO2収着法2
吸着/脱着反応速度を測定するためのCO2収着方法2では、以下のプロセス工程を利用した。
プログラム工程 説明
1.データストレージオン
2.ガス選択1 ヘリウムを25mL/分でパージする。
3.10℃/分で100℃まで傾斜 脱気のために100℃まで加熱する。
4.120分間等温 2時間脱気する。
5.10℃/分で30℃まで傾斜 収着分析のために30℃まで冷却する。
6.30分間等温 温度が安定するまで時間を置く。
7.ガス選択2 CO2を25mL/分でパージする。
8.480分間等温 吸着中の質量取り込みを測定する。
9.ガス選択1 ヘリウムを25mL/分でパージする。
10.10℃/分で100℃まで傾斜 脱着分析のために加熱する。
11.120分間等温 脱着中の質量減少を測定する。
12.データストレージオフ
13.10℃/分で30℃まで傾斜
CO2収着法3(温度スイング吸収/脱着サイクル、TSA)
CO2収着法3では、以下の工程を利用する。
プログラム工程 説明
1.データストレージオン
2.ガス1:N2 窒素を90mL/分で2時間パージする。
3.10℃/分で100℃まで傾斜 脱気のために100℃まで加熱する。
4.120分間等温 2時間脱気する。
5.10℃/分で30℃まで傾斜 収着分析のために30℃まで冷却する。
6.30分間等温 温度が安定するまで時間を置く。
7.ガス2:CO2 CO2を90mL/分でパージする。
8.60分間等温 吸着中の質量取り込みを測定する。
11.ガス1:N2 窒素を90mL/分でパージする。
12.10℃/分で100℃まで傾斜 脱着分析のために加熱する。
13.30分間等温 脱着中の質量減少を測定する。
14.シーケンス6~13の10回繰り返し
15.データストレージオフ
16.10℃/分で30℃まで傾斜
【0084】
ATEQエアフロー
ATEQエアフローは、膜サンプルを通過する空気の層流体積流速度を測定するための試験方法である。各膜について、流路を横切る2.99cm2の領域をシールするようにサンプルを2枚のプレートの間にクランプした。ATEQ(登録商標)(ATEQ Corp.、ミシガン州リボニア)プレミアDコンパクトフローテスターを使用して、膜を通過する1.2kPa(12ミリバール)の差圧で空気流を課すことにより各膜サンプルを通過する空気流速(L/hr)を測定した。
【0085】
バブルポイント
バブルポイント圧力は、キャピラリーフローポロメータ(フロリダ州ボイントンビーチのQuantachrome Instrumentsのモデル3Gzh)を使用して、ASTM F31 6-03の一般教示に従って測定された。サンプル膜をサンプルチャンバ内に置き、20.1ダイン/cmの表面張力を有するSilwick Silicone Fluid(Porous Materials Inc.から入手可能)で湿らせた。 サンプルチャンバの底部クランプは、直径2.54cm、厚さ0.159cmの多孔質金属ディスクインサート(Quantachrome部品番号75461ステンレス鋼フィルタ)を備え、サンプルを支持するために使用された。3GWinソフトウェアバージョン2.1を使用して、以下のパラメータをすぐ下の表に指定されているように設定した。バブルポイント圧力について示された値は、2つの測定値の平均である。バブルポイント圧力を以下の式を使用して細孔サイズに変換した。
【数1】
上式中、D
BPは細孔径サイズであり、γlvは液体の表面張力であり、θは材料表面上の流体の接触角であり、P
BPはバブルポイントである。バブルポイント測定に使用される流体はサンプルの表面を湿潤化させさなければならないことが当業者に理解される。
バブルポイント計器の設定
【表1】
【0086】
厚み測定(スナップゲージを用いた接触)
膜の厚さは、Kafer FZ1000/30厚さスナップゲージ(Kafer Messuhrenfabrik GmbH、Villingen-Schwenningen、ドイツ)の2つのプレートの間に膜を配置することによって測定された。3つの測定値の平均を使用した。
【0087】
ラミネートの厚さは、ミツトヨテクトロニクススナップゲージ(部品番号547-400S)の2枚のプレートの間に膜を配置することによって測定された。
【0088】
面積あたりの質量(質量/面積)
サンプルの面積当たりの質量は、メトラートレドスケール、モデル1060を使用して、ASTM D 3776(布帛の単位面積当たりの質量(重量)に関する標準試験法)試験方法(オプションC)に従って測定された。試験片を計量する前に秤を再校正し、結果を平方メートル当たりのグラム数(g/m2)で報告した。
【0089】
マトリックスの引張強さの測定
膜は、ASTM D412-ドッグボーンダイタイプF(D412F)を使用して長手方向及び横断方向のそれぞれに切断された。「機械方向」は押し出しの方向であり、「横断方向」はこれに垂直である。ドッグボーンサンプルを調製したら、メトラートレドスケール、モデルAG204を使用してサンプルの質量を決定するように測定した。
【0090】
引張破断荷重は、ゴム被覆面板と鋸歯状面板を備えたINSTRON(登録商標)5500R(Illinois Tool Works Inc.、マサチューセッツ州ノーウッド)引張試験機を使用して、サンプルの各端部が1つのゴム被覆板と1つの鋸歯状板の間に保持されるようにして測定した。グリップ板に加えられた圧力は約552kPaであった。グリップ間のゲージ長さを58.9mmに設定し、クロスヘッド速度(引張り速度)を508mm/分の速度に設定した。これらの測定を行うために500Nロードセルを使用し、データを50ポイント/秒の速度で収集した。比較可能な結果を保証するために、実験室の温度を20~22.2℃とした。サンプルがグリップ界面で破損した場合には、データを破棄した。サンプルを特性化するために、機械方向に少なくとも3つのサンプルと横断方向に3つのサンプルをうまく(グリップから滑り落ちたり又はグリップで破損せずに) 引っ張った。
【0091】
以下の式を使用して、マトリックス引張強さ(MTS)を計算した。
【0092】
【0093】
上式中、Fは試験における最大荷重であり、AはPTFEのx断面積である。PTFEのx断面積は、サンプル内の潜在的な細孔/欠陥のために、試験片のx断面積と同じではない。PTFEのx断面積は以下のように計算できる。
【0094】
【数3】
上式中、mは試験片の質量であり、Lは試験片の長さであり、ρはPTFEの平均固有密度であり、2.18g/ccである。
【0095】
例
延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜
本発明は、当該技術分野で知られている様々な多孔質PTFE膜を利用することができ、Malhotraの米国特許第4,576,869号明細書、Brancaの米国特許第5,814,405号明細書及び第5,708,044号明細書の教示に基づいて、異なるPTFE微粉末又は微粉末混合物、又は、Baillieの米国特許第6,541,589号明細書、Sabolの米国特許第7,531,611号明細書、Fordの米国特許第8,637,144号明細書、及びXuの米国特許第9,139,669号明細書に記載されているような変性PTFE樹脂粉末を使用することができる。PTFE微粉末は、Goreの米国特許第3,953,566号明細書、Brancaの米国特許第5,814,405号明細書、Bacinoの米国特許第7,306,729号明細書及びBacinoの米国特許第5,476,589号明細書に記載されているような、当業者に知られているプロセス方法を使用して膜に加工することができる。
【0096】
ePTFE膜タイプA
膜タイプAは、Malhotraの米国特許第4,576,869号明細書に記載のプロセスによって製造された高分子量PTFEポリマーの微粉末を使用して調製した。得られた特性を表1に示す。
【0097】
ePTFE膜タイプB
膜タイプBは、延伸ePTFE膜(上記のように製造されたePTFE膜タイプA)に親水性ポリマーコーティング(エチレンビニルアルコールコポリマー;EVOH)を適用することによって製造された。簡単に説明すると、SOARANOL(登録商標)EVOH(三菱化学株式会社、東京、日本;製品番号DT2904;エチレン含量約29モル%)をエタノールと水の混合物に溶解することにより、2wt%のコーティング溶液を調製した。ワイヤーバーを使用して室温(約22℃)で1メートル/分の速度でコーティング溶液をePTFE膜に適用し、次いで、連続プロセスで70℃で乾燥させた。コーティングされたeTPFE膜は親水性であり、すぐに湿潤可能であった。得られた特性を表1に示す。
【0098】
ePTFE膜タイプC
膜タイプCは、Malhotraの米国特許第4,576,869号明細書に記載のプロセスによって製造された高分子量PTFEポリマーの微粉末を使用して調製した。得られた特性を表1に示す。
【0099】
ePTFE膜タイプD
膜タイプDは、Brancaの米国特許第5,814,405号明細書の例1に記載されているような、微粉末PTFEブレンド(約50wt%のPTFEホモポリマー及び約50wt%の変性PTFE樹脂)を使用して調製された。得られた特性を表1に示す。
【表2】
【0100】
ポリ(イオン性液体)
本明細書では以下の略語が使用される。PDDMA=ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)、PVBTMA=ポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)、TFSI=ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド、Cl=クロリド、BF
4=テトラフルオロボレート、OAc=アセテート。ポリ(イオン性液体)は以下のベンダーから入手した。PDDMAClはSigma-Aldrich社から入手したもの(製品番号409022、CAS番号26062-79-3、Mw=200,000~350,000g/モル)、PVBTMAClはScientific Polymer Products Inc.から入手したもの(カタログ番号879、CAS No.9017-80-5、Mw=400,000g/モル)であった。その他は下記のように調製した。異なるポリ(イオン性液体)間の転化は、塩化物形態のポリ(イオン性液体)から始まるメタセシス型反応を介して行われる(例1を参照されたい)。
【表3】
【0101】
例1
PDDMAC1からPDDMATFSIへの転化
約200グラムのリチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(LiTFSI)を、機械的撹拌棒を備えた3リットルのビーカー内で1.5Lの水(RO、逆浸透、H2O)と混合した。混合物を室温(約22℃)で撹拌した。PDDMAClの溶液(20wt%水溶液500グラム)をさらに1Lの水と混合した。この溶液を添加漏斗(1500mL)に入れた。次いで、PDDMACl水溶液を、LiTFSI水溶液に撹拌しながら滴下した。得られた混合物は、水に溶解したLiCl及びPDDMATFSIの沈殿物を含んだ。PDDMATFSI固体をろ過し、3Lの水で30分間洗浄した。これを3回繰り返した。沈殿物をろ過し、次いで、60℃で4時間乾燥させ、次いで、100℃で一晩乾燥させた。得られた収率は48.27%であった。
【0102】
例2
複合膜の調製
ポリ(イオン性液体)(PIL)は、ポリ(イオン性液体)/溶媒の組み合わせに応じて2wt%~20wt%の範囲の目標濃度まで適切な溶媒に溶解された。得られた溶液を、フープ内に拘束された延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜に適用した。膜が完全にコーティングされるまで、溶液を拘束された膜の表面上に広げた。次に、溶液でコーティングされたePTFE膜を室温(約22℃)で空気中、又は70~120℃の乾燥オーブン内で約5分間乾燥させた。これにより、通常、ノードフィブリル(NF)がコーティングされた膜が得られる。完全に吸収された(FI)複合膜は、追加ラウンドのコーティング/乾燥及び/又はより濃縮された吸収溶液の使用によって調製された。
【0103】
【0104】
例3
ラミネートの調製
例2からの複合膜の少なくとも1つを別の複合膜及び/又は少なくとも1つの補強層に結合することによって、様々な多層ラミネートを調製した。2ローラー圧縮機を使用して、1m/分の速度で400N/mmの力を使用して2つ以上の層を一緒に圧縮した。形成されたラミネートの特性を表4に示す。油圧式ハンドプレスで層を積み重ね、熱を加えながら層を一緒にプレスして最終ラミネートを形成するなど、他の圧縮方法も実施できる。外層としてePTFE膜を利用した複合材と同じ方法で高密度化PTFEフィルムを利用した別の複合材を作成した。
【表5】
【0105】
例4
CO
2吸収分析
PIL粉末又は複合膜の試験サンプルを、CO
2収着法1に記載されているように、CO
2吸収分析のために熱重量分析装置(TGA)システムに入れた。試験は、70℃又は120℃で5時間サンプルを脱気することによって開始される。次に、脱気したサンプルを30℃まで冷却し、次いで、二酸化炭素(CO
2)ガス(30℃で100%)をシステムに導入する。吸収されたCO
2の量は、60分間又は飽和(最大重量)に達するまでのサンプルの重量増加によって決定される。次に、システム内の環境をヘリウムに置換し、試験サンプルに吸収されたCO
2を脱着させる。重量が減少し、次いで、約60分後に最小重量が確立される。最大値と最小値の差を使用容量として取る。これは、ポリ(イオン性液体)1グラムあたりのCO
2のミリモル(ミリモル/g)に変換できる。吸収結果を表5(70℃で脱気したPIL粉末)、表6(120℃で脱気したPIL粉末)、表7(70℃で脱気したePTFE複合材)及び表8(120℃で脱気したePTFE複合材)に示す。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0106】
表7及び8において、NFはノードアンドフィブリルコーティングを指し、BCはバターコーティングを指し、FIは完全吸収を指す。
【0107】
例5
CO2vsN2選択性透過性分析
透過性試験は、ASTM法D1434に従ってLab Think Perme VacV2透過性試験機を使用して行われた。フィルムを試験機に挿入することによってサンプルを試験し、単一ガス(CO2)を選択した。その試験の終了後に、別のガス(N2)を選択し、同じサンプルに対して試験を行った。次に、ガス透過速度(GTR)を厚さで正規化し、各フィルムの透過係数を計算した。
【0108】
選択性は、所定の複合膜についてのN2透過度に対するCO2透過度の比として計算される。
【0109】
3層ラミネートを、例3に記載のように構築し、圧縮した。対照は、PILが吸収されていない3層ラミネートであり、3層のePTFE膜のみを含み、これも例3に記載のように圧縮した。
【表10】
例6
CO
2の動的吸着及び脱着
CO
2の速度論的吸着/脱着は、CO
2収着法2を使用して測定した。速度論的データは、複合ePTFE PVBTMAOAc膜(表7のサンプル4)及びPVBTMAOAc粉末(表5のサンプル4) の両方について測定した。データを収集し、
図3A及び3Bにプロットした。折れ線プロットは、8時間の連続CO
2吸着(100%CO
2、30℃)で記録された反応速度曲線を表す。
図3A及び3Bのバーは、CO
2収着法3に従った温度スイング吸着脱着サイクル下での各サイクルで記録されたCO
2取り込み量を表す(10サイクル、条件: すべてのサンプルを脱気のためにTGA内(方法3工程4)でN
2流下で100℃で2時間等温加熱した)。吸着:30℃、100%CO
2で1時間、脱着:100℃、100%N
2で30分間。 2つの一連の実験の流速は90mL/分であった。すべての実験は乾燥条件下で行われた。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さを有する延伸多孔質膜であって、フィブリルと、場合により該フィブリルを相互接続するノードとからなる微細構造、及び、細孔を提供するボイド体積、を有する延伸多孔質膜、並びに、ポリ(イオン性液体)ポリマー(PIL)、
を含んでな
り、前記PILは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(PDDMATFSI)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)クロリド(PDDMACl)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)テトラフルオロボレート(PDDMABF4)、ポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(PVBTMATFSI)、ポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)クロリド(PVBTMACl)、ポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)テトラフルオロボレート(PVBTMABF4)及びポリ((ビニルベンジル)トリメチルアンモニウム)アセテート(PVBTMAOAc)からなる群より選ばれる、複合材料。
【請求項2】
前記PILは、前記延伸多孔質膜のノード及びフィブリル上にコーティングを形成する、請求項1記載の複合材料。
【請求項3】
前記PILは、前記延伸多孔質膜の前記ボイド体積の全体を充填する
、又は前記延伸多孔質膜の前記ボイド体積の少なくとも一部を充填する、又は前記延伸多孔質膜の前記ボイド体積の大半を充填する、請求項1又は2記載の複合材料。
【請求項4】
前記延伸多孔質膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリパラキシリレン(PPX)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、二フッ化ビニリデン(VDF)コポリマー又はポリ(エチレンテトラフルオロエチレン)(ETFE)のうちの1つ以上を含む、請求項1
又は2記載の複合材料。
【請求項5】
前記延伸多孔質膜は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)又は延伸超高分子量ポリエチレン(eUHMWPE)を含む、請求項1
又は2記載の複合材料。
【請求項6】
前記複合材料は、約20%を超えて約99%以下の多孔度を有する
、又は20%未満の多孔度を有する、請求項1
又は2記載の複合材料。
【請求項7】
少なくとも1つの活性剤をさらに含む、請求項1
又は2記載の複合材料。
【請求項8】
前記活性剤は前記PILに共有結合又は非共有結合し
、かつ、前記活性剤は、無機粒子、無機ナノ粒子、金属、金属酸化物、金属塩、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、グラフェン、触媒粒子、ポリオキソメタレート(POM)、有機金属フレームワーク(MOF)、追加のポリマー、シリカ、量子ドット、イオン性液体、生物学的活性分子及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選ばれる、請求項
7記載の複合材料。
【請求項9】
前記生物学的活性分子は、ポリペプチド、タンパク質、酵素触媒、酵素、酵素抽出物、全細胞、抗体、脂質、核酸分子、炭水化物又はそれらの任意の組み合わせである、請求項
8記載の複合材料。
【請求項10】
前記複合材料の総質量に対する前記ポリ(イオン性液体)ポリマーの質量パーセントは、約1wt%~約90wt%の範囲である、請求項1
又は2記載の複合材料。
【請求項11】
前記複合材料は支持層をさらに含む、請求項1
又は2記載の複合材料。
【請求項12】
前記複合材料は、約0.3ミリモルCO
2/gPIL~約1.2ミリモルCO
2/gPILのCO
2吸収容量を有する
、又は、1.0バーラーを超えるCO
2
透過度を有する、又は1.5バーラー未満のN
2
透過度を有する、又は、CO
2
透過度/N
2
透過度として計算される、8.0を超える選択性を有する、請求項1
又は2記載の複合材料。
【請求項13】
請求項1
又は2記載の複合材料を含む、ラミネート。
【請求項14】
請求項1
又は2記載の複合材
料を含む、物品。
【請求項15】
請求項1
又は2記載の複合材
料を提供すること、及び、前記複合材
料と混合物を接触させることによって、前記混合物からガスを分離することを含む、混合物からガスを分離する方法。
【請求項16】
前記ガスは二酸化炭素である、請求項
15記載の方法。
【請求項17】
(a)固体のポリ(イオン性液体)ポリマーを溶媒に溶解して、ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液を形成すること、
(b)前記ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液を、細孔を提供するボイド体積と、フィブリルによって相互接続されたノード、又はフィブリルのみ、からなる微細構造とを有する多孔質ポリマー膜に適用すること、及び、
(c)前記ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液を前記多孔質ポリマー膜に適用した後に、前記溶媒を除去すること、
さらに
(d)工程(b)の後及び/又は工程(c)の後に前記複合材料を延伸させること、を含んでな
り、前記ポリ(イオン性液体)ポリマーは、前記多孔質ポリマー膜の微細構造のボイド体積中に部分的又は完全に吸収される、複合材料を形成する方法。
【請求項18】
(f)工程(b)、工程(c)及び/又は工程(d)の後に、前記複合材料を圧縮することをさらに含む、請求項
17記載の方法。
【請求項19】
(a)(i)ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液、及び、
(ii)第一の側と第二の側とを有する延伸多孔質膜であって、フィブリルと、場合により該フィブリルを相互接続するノードとからなる微細構造、及び、細孔を提供するボイド体積、を有する延伸多孔質膜を提供すること、並びに、
(b)前記ポリ(イオン性液体)ポリマー溶液を前記延伸多孔質膜の少なくとも1つの側に堆積させることにより複合材料を形成させること、
(c)場合により、工程(b)の複合材料を、加熱、伸長、圧縮化又はそれらの任意の組み合わせの1つ以上の工程にかけること、
を含んでなる、複合材料を形成する方法。
【国際調査報告】