(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】不活性ガスパージによる熱分解油からのハロゲン化夾雑物の除去のためのシステム及び方法発明者:Fabrice Cuoq Martijn Frissen Kae Wong Carlo Geijselaers
(51)【国際特許分類】
C10G 29/00 20060101AFI20241108BHJP
C10G 31/08 20060101ALI20241108BHJP
C10G 25/02 20060101ALI20241108BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C10G29/00
C10G31/08
C10G25/02
B01D15/00 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529417
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 IB2022061356
(87)【国際公開番号】W WO2023095035
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308027031
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フエンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】クォク ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】フリッセン マルティン マルセル マルハレート
(72)【発明者】
【氏名】ゲイセラース カルロ ヨーゼフ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ケイ
【テーマコード(参考)】
4D017
4H129
【Fターム(参考)】
4D017AA03
4D017BA07
4D017CA01
4D017CA03
4D017CA17
4D017CB01
4D017DA01
4D017EA01
4H129AA02
4H129CA22
4H129CA25
4H129DA01
4H129DA07
4H129HA02
4H129HA04
4H129NA01
(57)【要約】
本明細書において、ハロゲン化夾雑物を有する熱分解油を、不活性ガスによる処理によって、実質的にハロゲンを含まない熱分解油に変換するための方法及びシステムが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱分解油を処理してハロゲン化夾雑物を除去する方法であって、
不活性ガスストリームを、ハロゲン化夾雑物を有する熱分解油を含有する保存ベッセルに供給して、ハロゲン富化不活性ガスストリーム、及び前記熱分解油と比較して少なくとも20質量パーセント少ない前記ハロゲン化夾雑物を含有する第1の脱ハロゲン化熱分解油を生成するステップと、
前記第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水を、混合要素を備えたリアクターに運ぶステップと、
前記リアクターにおいて前記第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水を混合して、ハロゲン富化水ストリーム、及び前記第1の脱ハロゲン化熱分解油と比較して少なくとも20質量パーセント少ない前記ハロゲン化夾雑物を含有する第2の脱ハロゲン化熱分解油を生成するステップと、
前記第2の脱ハロゲン化熱分解油から前記ハロゲン富化水ストリームを分離して、実質的にハロゲンを含まない熱分解油を生成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記保存ベッセルが周囲温度で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不活性ガスストリームが、窒素、アルゴン、ヘリウム、又はそれらの組合せを含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記不活性ガスストリームが、前記保存ベッセルにおいて前記熱分解油の上部のヘッドスペースに供給される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記不活性ガスストリームが、前記保存ベッセルにおいて前記熱分解油を通してバブリングされる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ハロゲン富化不活性ガスストリームをハロゲンスクラビングユニットに運んで、吸収によって前記ハロゲン化夾雑物を除去するステップ
をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ハロゲン富化不活性ガスストリーム中に存在する炭化水素を回収するステップと、
前記熱分解油を含有する前記保存ベッセルに前記炭化水素をリサイクルするステップと
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ハロゲン富化水ストリームを水処理ユニットに供給して、前記ハロゲン化夾雑物を除去し、実質的にハロゲンを含まない水ストリームを生成するステップと、
前記実質的にハロゲンを含まない水ストリームを前記リアクターにリサイクルするステップと
をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ハロゲン富化水ストリームから前記第2の脱ハロゲン化熱分解油を分離した後に、前記第2の脱ハロゲン化熱分解油を吸着剤と接触させて、前記実質的にハロゲンを含まない熱分解油を生成する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記吸着剤が、活性炭、アルミノシリケート、固体酸、又はカチオン交換樹脂である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
熱分解油を処理してハロゲン化夾雑物を除去するためのシステムであって、
ハロゲン化夾雑物を有する熱分解油を含有し、不活性ガスストリームを受け取るための第1の入口、ハロゲン富化不活性ガスストリームを吐出するための第1の出口、及びリアクターの第2の入口に接続され、流体連通した第2の出口を備えた保存ベッセルであって、前記ハロゲン富化不活性ガスストリームが、前記不活性ガスストリームと前記熱分解油との間の相互作用から、第1の脱ハロゲン化熱分解油とともに生成され、前記第1の脱ハロゲン化熱分解油が、前記熱分解油と比較して少なくとも20質量パーセント少ない前記ハロゲン化夾雑物を含有する、保存ベッセルと、
前記第1の脱ハロゲン化熱分解油を受け取る前記第2の入口、水を受け取る第3の入口、前記第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水を混合する混合要素、並びに分離器の第4の入口に接続され、流体連通した第3の出口を備えたリアクターと、
前記第3の出口から前記第1の脱ハロゲン化熱分解油及び前記水の混合物を受け取る前記第4の入口を備えた前記分離器であって、前記第1の脱ハロゲン化熱分解油及び前記水の前記混合物を分離して、ハロゲン富化水ストリーム、及び前記第1の脱ハロゲン化熱分解油と比較して少なくとも20質量パーセント少ない前記ハロゲン化夾雑物を含有する第2の脱ハロゲン化熱分解油を生成するように操作される分離器と
を備える、システム。
【請求項12】
前記保存ベッセルが周囲温度で維持される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記不活性ガスストリームが、窒素、アルゴン、ヘリウム、又はそれらの組合せを含有する、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の入口が、前記保存ベッセルにおいて前記熱分解油の上部のヘッドスペースで前記不活性ガスストリームを受け取るように配置されている、請求項11~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1の入口が、前記保存ベッセルにおいて前記熱分解油に前記不活性ガスを通すように前記保存ベッセルの床面近くに配置されている、請求項11~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記保存ベッセルの前記第1の出口に接続され、流体連通して前記ハロゲン富化不活性ガスストリームを受け取る第5の入口を備えたハロゲンスクラビングユニットであって、吸収によって前記ハロゲン富化不活性ガスストリームから前記ハロゲン化夾雑物を除去するように操作される、ハロゲンスクラビングユニット
をさらに備える、請求項11~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記ハロゲンスクラビングユニットが、前記ハロゲン富化不活性ガスストリーム中に存在する炭化水素を回収するように操作される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記ハロゲンスクラビングユニットが、前記保存ベッセルの第6の入口に接続され、流体連通して、回収された炭化水素を、前記熱分解油を含有する前記保存ベッセルに送達する第4の出口を備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記分離器の第5の出口に接続され、流体連通した第7の入口を備えた吸着剤含有ユニットであって、前記吸着剤含有ユニットが、前記第2の脱ハロゲン化熱分解油から前記ハロゲン化夾雑物を除去するように操作され、前記ハロゲン化夾雑物が前記吸着剤によって吸着されて、実質的にハロゲンを含まない熱分解油が生成する、吸着剤含有ユニット
をさらに備える、請求項11~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記吸着剤が、活性炭、アルミノシリケート、固体酸、又はカチオン交換樹脂である、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記分離器の第6の出口に接続され、流体連通した第8の入口を備えた水処理ユニットであって、前記ハロゲン富化水ストリームから前記ハロゲン化夾雑物を除去し、実質的にハロゲンを含まない水ストリームを生成するように操作される、水処理ユニット
をさらに備える、請求項11~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記水処理ユニットが、前記リアクターの第9の入口に接続され、流体連通して前記実質的にハロゲンを含まない水ストリームを前記リアクターにリサイクルする第7の出口を有する、請求項21に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年11月23日に出願された米国特許仮出願第63/264,478号の利益及びそれへの優先権を主張する。
本開示は一般に、熱分解油からハロゲン化夾雑物を除去するためのシステム及び方法に関する。より詳細には、本開示は、保存ベッセルのヘッドスペースに不活性ガスストリームを通すことによって、又は熱分解油に不活性ガスストリームをバブリングすることによって、保存ベッセルにおいて熱分解油からハロゲン化夾雑物を除去するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混合プラスチック廃棄物は、熱分解油又は合成原油のような炭化水素系生成物を作製するために使用することができる機会供給物(opportunity feed)である。混合プラスチック廃棄物を解重合すると、クラッカー及び他の精油機(refinery)ユニットによって処理できる液体生成物が得られる。この化学リサイクル経路は、従来の機械によるリサイクル又は焼却の代替法として出現している。
【0003】
混合プラスチック廃棄物を供給原料として使用するための1つの課題は、ハロゲン、硫黄、窒素及び酸素含有化合物を添加剤として含有するハロゲン化ポリマー又は配合プラスチック(formulated plastics)の存在である。これらの材料の化学的なリサイクルの結果、熱分解油生成物中の夾雑物として、ハロゲン、硫黄、窒素及び酸素含有化合物が存在することになりうる。これらの夾雑物は、夾雑熱分解油のクラッキング中の汚損及び腐食につながり、したがって、流動接触クラッキング、スチームクラッカー及び精油機ユニットなどの大規模処理ユニットにおいて処理されうる夾雑熱分解油の量を制限しうる。ハロゲン、硫黄、窒素及び酸素化合物夾雑物は、商業用精油機の容積に大規模化可能な、単純で費用効果的な方法で除去することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
当技術分野におけるこれらの欠点に対処するために、出願人は、熱分解油からハロゲン化夾雑物を除去するためのシステム及び方法を開発した。ある特定の実施形態では、熱分解油を処理してハロゲン化夾雑物を除去する方法は、不活性ガスストリームを、ハロゲン化夾雑物を有する熱分解油を含有する保存ベッセルに供給して、ハロゲン富化不活性ガスストリーム、及び熱分解油と比較して少なくとも20質量パーセント少ないハロゲン化夾雑物を含有する第1の脱ハロゲン化熱分解油を生成するステップと、第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水を、混合要素を備えたリアクターに運ぶステップと、リアクターにおいて第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水を混合して、ハロゲン富化水ストリーム、及び第1の脱ハロゲン化熱分解油と比較して少なくとも20質量パーセント少ないハロゲン化夾雑物を含有する第2の脱ハロゲン化熱分解油を生成するステップと、第2の脱ハロゲン化熱分解油からハロゲン富化水ストリームを分離して、実質的にハロゲンを含まない熱分解油を生成するステップとを含む。熱分解油は、保存ベッセルにおいて、あらゆる触媒の非存在下で不活性ガスにより処理される。
【0005】
ある特定の実施形態では、保存ベッセルは、周囲温度に維持される。ある特定の実施形態では、不活性ガスストリームは、窒素、アルゴン、ヘリウム、又はそれらの組合せを含有する。ある特定の実施形態では、不活性ガスストリームは、熱分解油上部のヘッドスペースに供給されるか、又は保存ベッセルにおいて熱分解油を通してバブリングされる。
ある特定の実施形態では、方法は、ハロゲン富化不活性ガスストリームをハロゲンスクラビングユニットに運んで、吸収によってハロゲン化夾雑物を除去するステップと、ハロゲン富化不活性ガスストリーム中に存在する炭化水素を回収するステップと、熱分解油を含有する保存ベッセルに炭化水素をリサイクルするステップとをさらに含む。
ある特定の実施形態では、方法は、ハロゲン富化水ストリームを水処理ユニットに供給して、ハロゲン化夾雑物を除去し、実質的にハロゲンを含まない水ストリーム及び第2の脱ハロゲン化熱分解油を生成するステップと、実質的にハロゲンを含まない水ストリームをリアクターにリサイクルするステップと、第2の脱ハロゲン化熱分解油を吸着剤と接触させて、実質的にハロゲンを含まない熱分解油を生成するステップとをさらに含む。吸着剤は、活性炭、アルミノシリケート、固体酸、又はカチオン交換樹脂のうちの1種又は複数でありうる。
【0006】
実施形態はまた、熱分解油を処理してハロゲン化夾雑物を除去するシステムを含む。1つのそのようなシステムは、ハロゲン化夾雑物を有する熱分解油を含有し、不活性ガスストリームを受け取る第1の入口、ハロゲン富化不活性ガスストリームを吐出するための第1の出口、リアクターの第2の入口に接続され、流体連通した第2の出口を備えた保存ベッセルを備える。ハロゲン富化不活性ガスストリームは、不活性ガスストリームと熱分解油の間の相互作用から第1の脱ハロゲン化熱分解油とともに生成される。第1の脱ハロゲン化熱分解油は、熱分解油と比較して少なくとも20質量パーセント少ないハロゲン化夾雑物を含有する。システムは、第2の出口に接続され、流体連通して第1の脱ハロゲン化熱分解油を受け取る第2の入口、水ストリームを受け取る第3の入口、第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水を混合する混合要素、並びに分離器の第4の入口に接続され、流体連通した第3の出口を備えたリアクターをさらに備える。システムは、第3の出口に接続され、流体連通して、第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水の混合物を受け取る第4の入口を備えた分離器をさらに備える。ある特定の実施形態では、分離器は、ハロゲン富化水ストリーム及び第1の脱ハロゲン化熱分解油と比較して少なくとも20質量パーセント少ないハロゲン化夾雑物を含有する第2の脱ハロゲン化熱分解油を分離するように操作される。
【0007】
ある特定の実施形態では、保存ベッセルは、周囲温度で維持される。不活性ガスストリームは、窒素、アルゴン、ヘリウム、又はそれらの組合せのうちの1種又は複数を含有する。
第1の入口は、保存ベッセルにおいて熱分解油上部のヘッドスペースで不活性ガスを受け取るように保存ベッセルに配置されてもよく、又は第1の入口は、保存ベッセルにおいて熱分解油に不活性ガスを通すように保存ベッセルの床面近くに配置されてもよい。
ある特定の実施形態では、システムは、保存ベッセル第1の出口に連結され、流体連通して、ハロゲン富化不活性ガスストリームを受け取る第5の入口を有するハロゲンスクラビングユニットを備える。ハロゲンスクラビングユニットは、吸収によって、ハロゲン富化不活性ガスストリームからハロゲン化夾雑物を除去するように操作される。ある特定の実施形態では、システムは、保存ベッセルの第6の入口に接続され、流体連通して、ハロゲン富化不活性ガスストリームから回収された炭化水素を、熱分解油を含有する保存ベッセルに送達する第4の出口を備えたハロゲンスクラビングユニットを備える。
【0008】
ある特定の実施形態では、システムは、分離器の第5の出口に接続され、流体連通した第7の入口を備えた吸着剤含有ユニットを備える。この吸着剤含有ユニットは、第2の脱ハロゲン化熱分解油からハロゲン化夾雑物をさらに除去し、実質的にハロゲンを含まない熱分解油を生成するように操作される。この吸着剤は、活性炭、アルミノシリケート、固体酸、シリカ系材料、又はカチオン交換樹脂のうちの1種又は複数でありうる。
ある特定の実施形態では、システムは、分離器の第6の出口に接続され、流体連通した第8の入口を備えた水処理ユニットを備える。この水処理ユニットは、ハロゲン富化水ストリームからハロゲン化夾雑物を除去し、実質的にハロゲンを含まない水ストリームを生成するように操作される。ある特定の実施形態では、水処理ユニットは、リアクターの第9の出口に接続され、流体連通して、実質的にハロゲンを含まない水ストリームをリサイクルする第7の出口を備える。
【0009】
これらの例示的な実施形態及び他の実施形態のなお他の態様及び利点について、本明細書で詳細に論じる。さらに、前述の情報及び以下の詳細な説明の両方が、様々な態様及び実施形態の単なる例示的な例を提供し、特許請求される態様及び実施形態の性質及び特徴を理解するための概要又はフレームワークを提供することを意図されることが理解されることになる。したがって、これら及び他の目的は、本開示の利点及び特徴とともに、以下の説明及び添付の図面を参照することにより明らかになるであろう。さらに、本明細書に記載される様々な実施形態の特徴は、互いに排他的ではなく、様々な組合せ及び順列で存在してもよいことが理解されることになる。
【0010】
添付の図面は、本開示の実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部に組み込まれ、それを構成し、本開示の実施形態を例示し、詳細な説明と一緒に、本明細書で論じられる実施形態の原理を説明するのに役立つ。この開示の構造的な詳細を、本明細書で論じられる実施形態及びそれらが実施されうる様々な方法の基本的な理解のために必要でありうるよりも詳細に示す意図はない。常識に従って、下記で論じられる図面の様々な特徴は、必ずしも縮尺通りに描かれるとは限らない。図面中の様々な特徴及び要素の寸法は、本開示の実施形態をより明確に例示するために拡大又は縮小されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】保存ベッセルにおいて、不活性ガスストリームを熱分解油に供給することによって熱分解油を処理してハロゲン化夾雑物を除去し、続いてリアクターにおいて熱分解油を水処理して、実質的にハロゲンを含まない熱分解油を生成する方法の模式図である。
【
図2】ハロゲン化夾雑物を含有する熱分解油を処理して実質的にハロゲンを含まない熱分解油を生成するシステムであって、保存ベッセルと、リアクターと、分離器とを備える、システムの模式図である。
【
図3】ハロゲン化夾雑物を含有する熱分解油を処理して実質的にハロゲンを含まない熱分解油を生成するシステムであって、保存ベッセルと、リアクターと、分離器と、ハロゲンスクラビングユニットと、吸着剤含有ユニットとを備える、システムの模式図である。
【
図4A】窒素ストリッピング、水洗、及び窒素ストリッピングと水洗の組合せを含む様々な技術による熱分解油からの有機塩化物除去についての実際の結果に対する予測二乗平均平方根誤差(RMSE)のグラフ表示である。
【
図4B】窒素ストリッピング、水洗、及び窒素ストリッピングと水洗の組合せを含む様々な技術による熱分解油の有機塩化物ストリッピングの観察値の可能性がより高い又は低い、相対確率の表形式の表示である。
【
図5A】吸着剤媒体X3、水洗、及び水洗と吸着剤媒体の組合せによる熱分解油からの有機窒素化合物の除去についての実際の結果に対する予測二乗平均平方根誤差(RMSE)のグラフ表示である。
【
図5B】吸着剤媒体X3、水洗、及び水洗と吸着剤媒体の組合せによる熱分解油からの有機窒素化合物の除去の観察値の可能性がより高い又は低い、相対確率の表形式の表示である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、ハロゲン化夾雑物を有する熱分解油を、実質的にハロゲンを含まない熱分解油に変換するための方法、デバイス及びシステムに関する様々な実施形態を記載する。より詳細には、本開示は、ハロゲン化夾雑物を有する熱分解油を、クラッキングユニット又は他の精油機ユニットに使用可能な実質的にハロゲンを含まない熱分解油に変換するためのシステム及び方法に関する。さらなる実施形態が、記載及び開示されうる。以下の記載において、様々な実施形態の完全な理解を提供するために多数の詳細が示される。他の例では、周知の方法、デバイス及びシステムは、様々な実施形態を不必要に曖昧にしないために、特に詳細には記載されないことがある。さらに、様々な実施形態の例示は、様々な実施形態を曖昧にしないためにある特定の特徴又は詳細を省略することがある。
【0013】
本記載は、「ある特定の実施形態では」、「様々な実施形態では」、「ある実施形態では」、又は「実施形態では」という句を使用することがあり、これらは各々、同じ又は異なる実施形態のうちの1つ又は複数を指しうる。さらに、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」などの用語は、本開示の実施形態に関して使用される場合、同義である。「約」という用語は、当業者によって理解されるように、近いこととして定義される。非限定的な一実施形態では、これらの用語は、10%以内、好ましくは5%以内、より好ましくは1%以内、最も好ましくは0.5%以内であると定義される。
【0014】
「除去する」、「除去された」、「減少させる」、「減少した」という用語、又はそれらの任意の変化形は、特許請求の範囲及び/又は本明細書において使用される場合、所望の結果を実現するための混合物中の1種又は複数の成分の任意の測定可能な減少を含む。特許請求の範囲又は本明細書における「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する」又は「有する」という用語のうちのいずれかと組み合わせて使用される場合、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という単語の使用は、「1つ」を意味しうるが、また、「1つ又は複数」、「少なくとも1つ」及び「1つ又は1つよりも多く」の意味とも一致する。「質量%」、「体積%」、又は「モル%」という用語は、それぞれ、成分を含む総質量、材料の総体積、又は総モルに対する成分の質量、体積又はモルパーセンテージを指す。非限定例において、100グラムの材料中10グラムの成分は、10質量%の成分である。様々な態様において、「実質的に含まない」は、ある成分を約95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、又は99.99%含まない組成物を含みうる。ある特定の実施形態では、組成物が特定の成分を実質的に含まない場合、組成物は、その成分を500ppm、400ppm、300ppm、200ppm、又は100ppm未満含有する。ある特定の実施形態では、組成物が特定の成分を実質的に含まない場合、組成物は、その成分を90ppm、80ppm、70ppm、60ppm、又は50ppm未満含有する。
【0015】
実施形態は、熱分解油を処理してハロゲン化夾雑物を除去する方法を含む。混合プラスチック廃棄物は、少量のハロゲン化ポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル及びフルオロポリマーと、添加剤として臭素系可塑剤及びハロゲン化難燃剤を含有する配合プラスチックとを含有しうる。混合プラスチック廃棄物を脱重合して熱分解油を生成する条件は、ハロゲン化化合物を遊離させ、夾雑物として熱分解油中に取込みうる。1つのそのような方法は、不活性ガスストリームを、ハロゲン化夾雑物を有する熱分解油を含有する保存ベッセルに供給して、ハロゲン富化不活性ガスストリーム及び第1の脱ハロゲン化熱分解油を生成するステップを含む。熱分解油は、保存ベッセルにおいて、あらゆる触媒の非存在下で不活性ガスにより処理される。ガスを液体熱分解油に通すことによる夾雑物の除去は、ガス流量、ガス流の持続時間、夾雑物の揮発性、及び気液界面の大きさによって推進される。ある特定の実施形態では、液体への不活性ガスの導入は、ガスをノズル、リング、ヘッド、パイプ、多孔質スパージャ要素、又はそれらのあらゆる組合せなどのスパージ装置に通すことによって、高い気液界面を有する細かく分散した気泡の形態となりうる。ある特定の実施形態では、不活性ガスは、液体熱分解油上部のヘッドスペースに通されて、保存ベッセルからハロゲン化夾雑物をスイープする。このステップにおいて、熱分解油中に存在するハロゲン化夾雑物の少なくとも20質量パーセントが除去される。このステップにおいて、熱分解油中に存在するハロゲン化夾雑物の少なくとも40質量パーセントが除去される。このステップにおいて、熱分解油中に存在するハロゲン化夾雑物の少なくとも60質量パーセントが除去される。ある特定の実施形態では、保存ベッセルは、周囲温度で維持される。
【0016】
ある特定の実施形態では、不活性ガスストリームは、窒素、アルゴン、ヘリウム、又はそれらの組合せを含有する。ある特定の実施形態では、ガス流量は、毎分1~5リットルの範囲である。ある特定の実施形態では、ガス流量は、毎分0.05~3リットルの範囲である。ある特定の実施形態では、ガス流量は、毎分0.10~1.5リットルの範囲である。ガス流量は、ベッセル中の熱分解油の量、並びに保存ベッセルの寸法及び設計に依存する。ある特定の実施形態では、パージされる窒素の量は、1平方メートル当たり約10リットル~約400L/m2である。
【0017】
方法は、第1の脱ハロゲン化熱分解油を、混合要素を備えたリアクターに、水とともに運ぶステップをさらに含む。一部の実施形態では、水の代わりに、第1の脱ハロゲン化熱分解油は、アルカリ性水溶液で処理されうる。第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水は混合されて、ハロゲン富化水ストリーム及び第2の脱ハロゲン化熱分解油が生成する。このステップにおいて、第1の脱ハロゲン化熱分解油中に存在するハロゲン化夾雑物の少なくとも20質量パーセントが除去される。このステップにおいて、第1の脱ハロゲン化熱分解油中に存在するハロゲン化夾雑物の少なくとも30質量パーセントが除去される。このステップにおいて、熱分解油中に存在するハロゲン化夾雑物の少なくとも40質量パーセントが除去される。このステップにおいて、熱分解油中に存在するハロゲン化夾雑物の少なくとも60質量パーセントが除去される。ある特定の実施形態では、混合要素は、第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水の効果的な混合をもたらすようにリアクター内に構成された撹拌機、インペラ、バッフル、又はドラフト管のうちの1種又は複数である。ある特定の実施形態では、インペラは、プロペラ、パドル又はタービンなどの3種類のうちの1種であり、これらは、リアクター内の流体の軸流又は輻流のいずれかを生じさせる。ある特定の実施形態では、ハロゲン富化水ストリームは、分離器において第2の脱ハロゲン化熱分解油から分離されて、実質的にハロゲンを含まない熱分解油が生成する。ある特定の実施形態では、相分離されたハロゲン富化水相及び第2の脱ハロゲン化熱分解油相は、リアクターから選択的に除去されうる。ある特定の実施形態では、分離器は、2又は3相を分離するように垂直又は水平に配置構成されうる。ある特定の実施形態では、分離器は、ハロゲン富化水相及び第2の脱ハロゲン化熱分解油相を分離するための暫時の重力沈降又は合体機構を使用しうる。
【0018】
ある特定の実施形態では、方法は、ハロゲン富化不活性ガスストリームをハロゲンスクラビングユニットに運んで、吸収によってハロゲン化夾雑物、有機及び無機塩化物の両方を除去するステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、ハロゲンスクラビングユニットは、中和ウェットスクラバ、イオン交換床、吸着剤床(例えば、活性炭、シリカ系のもの又はアルミノシリケート)又は充填塔スクラバである。ある特定の実施形態では、方法は、ハロゲン富化不活性ガスストリーム中に存在する炭化水素を回収するステップと、熱分解油を含有する保存ベッセルに炭化水素をリサイクルするステップとをさらに含む。ある特定の実施形態では、炭化水素は、揮発性低沸点パラフィン、オレフィン、ナフテン若しくは芳香族化合物、又はそれらのあらゆる組合せである。
【0019】
ある特定の実施形態では、方法は、分離器又はリアクターからのハロゲン富化水ストリームを水処理ユニットに供給して、ハロゲン化夾雑物を除去するステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、水処理は、アルカリ浴、又は吸着剤が活性炭である吸着剤床、アルミノシリケート、固体酸、又はカチオン交換樹脂である。水処理ユニットはまた、湿式空気酸化システム、オゾン処理、又はバイオ廃棄物水処理システム又は膜ユニットでありうる。実質的にハロゲンを含まない水は、リアクターにリサイクルされうる。
ある特定の実施形態では、第2の脱ハロゲン化熱分解油は、吸着剤により処理されて、さらなる夾雑物が除去されうる。ある特定の実施形態では、この吸着剤は、活性炭、アルミノシリケート、固体酸、シリカ系材料、又はカチオン交換樹脂のうちの1種又は複数でありうる。
【0020】
図1は、保存ベッセルにおいて、不活性ガスストリームを夾雑熱分解油に供給することによって熱分解油を処理してハロゲン化夾雑物を除去し、続いてリアクターにおいて夾雑熱分解油を水処理して、実質的にハロゲンを含まない熱分解油を生成する方法100の模式図である。この方法100は、不活性ガスストリームを、ハロゲン化夾雑物を有する熱分解油を含有する保存ベッセルに供給して、ハロゲン富化不活性ガスストリーム及び第1の脱ハロゲン化熱分解油を生成するステップ102を含む。第1の脱ハロゲン化熱分解油は、ストリッピングされていない夾雑熱分解油と比較して少なくとも20質量パーセント少ないハロゲン化夾雑物を含有する。ある実施形態では、保存ベッセルは、周囲温度で維持される。ある実施形態では、不活性ガスストリームは、窒素、アルゴン、ヘリウム、又はそれらの組合せを含有する。ある特定の実施形態では、不活性ガスは、保存ベッセルにおいて熱分解油上部のヘッドスペースに供給される。ある特定の実施形態では、不活性ガスは、保存ベッセルにおいて熱分解油にバブリングされる。ある特定の実施形態では、方法は、ハロゲン富化不活性ガスストリームをハロゲンスクラビングユニットに運んで、吸収によってハロゲン化夾雑物を除去するステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、ハロゲンスクラビングユニットから回収された炭化水素は、熱分解油を含有する保存ベッセルにリサイクルされる。
【0021】
方法は、第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水を、混合要素を備えたリアクターに運ぶさらなるステップ104を含有する。第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水は、リアクターにおいて混合106されて、ハロゲン富化水ストリーム及び第2の脱ハロゲン化熱分解油が生成する。ある特定の実施形態では、ハロゲン富化水ストリームは、水処理ユニットに供給されて、ハロゲン化夾雑物が除去され、実質的にハロゲンを含まない水が生成する。特定の実施形態では、実質的にハロゲンを含まない水ストリームはリアクターにリサイクルされる。
方法は、第2の脱ハロゲン化熱分解油からハロゲン富化水ストリームを分離して、実質的にハロゲンを含まない熱分解油を生成するさらなるステップ108を含有する。ある特定の実施形態では、第2の脱ハロゲン化熱分解油は、吸着剤とさらに接触させられて、実質的にハロゲンを含まない熱分解油が生成する。ある特定の実施形態では、吸着剤は、活性炭、アルミノシリケート、固体酸、又はカチオン交換樹脂である。
【0022】
実施形態はまた、熱分解油を処理してハロゲン化夾雑物を除去するシステムを含む。
図2は、ハロゲン夾雑熱分解油を処理するシステム200の模式図である。このシステム200は、不活性ガスストリーム204及びハロゲン夾雑熱分解油を受け取るように備えられた保存ベッセル202を備える。保存ベッセル202は、第1の入口、第1の出口、第2の出口、及び第6の入口を有する。第1の入口は、不活性ガスストリーム204を受け取る開口を有する。保存ベッセルの第1の入口は、不活性ガスを熱分解油上部のヘッドスペースに通すように構成されうる。或いは、保存ベッセルの第1の入口は、不活性ガス204を液体熱分解油を通してバブリングするように構成されうる。保存ベッセル202の第1の出口は、ハロゲン富化不活性ガスストリーム206を吐出するように構成される。保存ベッセル202の第2の出口は、第1の脱ハロゲン化熱分解油208をリアクター210に吐出するように構成される。第1の脱ハロゲン化熱分解油208は、ストリッピングされていない夾雑熱分解油と比較して少なくとも20質量パーセント少ないハロゲン化夾雑物を含有する。ある特定の実施形態では、保存ベッセル202は、周囲温度で維持される。リアクター210は、第2の入口、第3の入口、及び第3の出口を有する。リアクター210は、第2の出口に接続され、流体連通して第1の脱ハロゲン化熱分解油208を受け取る第2の入口を有する。リアクターは、水212を受け取る第3の入口を有する。リアクター210は、第1の脱ハロゲン化熱分解油208及び水212を混合するように構成された混合要素を備える。リアクター210は、第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水の混合物216を分離器220に吐出する第3の出口を有する。分離器220は、第4の入口、第5の出口、及び第6の出口を備える。分離器220は、第3の出口に接続され、流体連通して第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水の混合物216を受け取る第4の入口を有する。分離器220は、第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水の混合物216を分離して、ハロゲン富化水ストリーム218及び第2の脱ハロゲン化熱分解油222を生成するように操作される。第2の脱ハロゲン化熱分解油222は、第1の脱ハロゲン化熱分解油と比較して少なくとも20質量パーセント少ないハロゲン化夾雑物を含有する。
【0023】
ある特定の実施形態では、システムはまた、ハロゲン富化不活性ガスストリーム206を処理するハロゲンスクラビングユニットを備える。ハロゲンスクラビングユニットは、ハロゲン化夾雑物を除去し、炭化水素を回収するように操作される。ハロゲン夾雑物は、吸収によってハロゲン富化不活性ガスストリーム206から除去される。ハロゲンスクラビングユニットは、ハロゲン富化不活性ガスストリーム206から炭化水素を回収するように操作される。ハロゲンスクラビングユニットは、回収された炭化水素を保存ベッセル202にリサイクルする第4の出口を有する。
【0024】
ある特定の実施形態では、システムはまた、第7の入口を有する吸着剤含有ユニットを備える。第7の入口は、第5の出口に接続され、流体連通して、第2の脱ハロゲン化熱分解油222を受け取る。吸着剤含有ユニットは、第2の脱ハロゲン化熱分解油222からハロゲン化夾雑物を除去するように操作される。吸着剤含有ユニットは、実質的にハロゲンを含まない熱分解油を生成する。ある特定の実施形態では、吸着剤は、活性炭、アルミノシリケート、固体酸、又はカチオン交換樹脂である。
【0025】
ある特定の実施形態では、システムはまた、第8の入口及び第7の出口を有する水処理ユニットを備える。第8の入口は、第6の出口に接続され、流体連通して、分離器220からハロゲン富化水ストリーム218を受け取る。水処理ユニットは、ハロゲン富化水218からハロゲン化夾雑物を除去するように操作される。水処理ユニットは実質的にハロゲンを含まない水ストリームを生成する。ある特定の実施形態では、水処理ユニットは、実質的にハロゲンを含まない水をリアクター210に吐出する第7の出口を有する。リアクター210は、実質的にハロゲンを含まない水ストリームを受け取り、リサイクルする第9の入口を有する。
【0026】
実施形態はまた、熱分解油を処理してハロゲン化夾雑物を除去するシステムを含む。
図3は、ハロゲン夾雑熱分解油を処理するシステム300の模式図である。このシステム300は、不活性ガスストリーム304及びハロゲン化熱分解油を受け取るように備えられた保存ベッセル302を備える。保存ベッセル302は、第1の入口、第1の出口、第2の出口、及び第6の入口を有する。保存ベッセル302は、不活性ガスストリーム304を受け取る第1の入口を有する。保存ベッセル302の第1の入口は、不活性ガスストリーム304を熱分解油液体上部のヘッドスペースに通すように配置されうる。保存ベッセル302の第1の入口は、不活性ガスストリーム304を熱分解油液体を通してバブリングするように配置されうる。保存ベッセル302は、周囲温度で維持される。保存ベッセル302は、ハロゲン富化不活性ガスストリーム306を吐出する第1の出口を有する。保存ベッセル302は、第1の脱ハロゲン化熱分解油308をリアクター310に吐出する第2の出口を有する。第1の脱ハロゲン化熱分解油308は、ストリッピングされていない夾雑熱分解油と比較して少なくとも20質量パーセント少ないハロゲン化夾雑物を含有する。ある特定の実施形態では、保存ベッセル302は、周囲温度で維持される。リアクター310は、第2の入口、第3の入口、第3の出口、及び第9の入口を有する。リアクター310は、第2の出口に接続され、流体連通して第1の脱ハロゲン化熱分解油308を受け取る第2の入口を有する。リアクター310は、水312を受け取る第3の入口を有する。リアクター310は、第1の脱ハロゲン化熱分解油308及び水312を混合するように構成された混合要素を備える。リアクター310は、第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水の混合物316を分離器320に吐出する第3の出口を有する。分離器320は、第4の入口、第5の出口、及び第6の出口を備える。分離器320の第4の入口は、第3の出口に接続され、流体連通して、第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水の混合物316を受け取る。分離器320は、第1の脱ハロゲン化熱分解油及び水の混合物316を分離して、ハロゲン富化水ストリーム318及び第2の脱ハロゲン化熱分解油322を生成するように操作される。第2の脱ハロゲン化熱分解油322は、第1の脱ハロゲン化熱分解油308と比較して少なくとも20質量パーセント少ないハロゲン化夾雑物を含有する。
【0027】
ある特定の実施形態では、システムはまた、第5の入口及び第4の出口を有するハロゲンスクラビングユニット330を備える。ハロゲンスクラビングユニット330の第5の入口は、保存ベッセル302の第1の出口に接続され、流体連通して、ハロゲン富化不活性ガスストリーム306を受け取る。ハロゲンスクラビングユニット330は、吸収によってハロゲン富化不活性ガスストリーム306からハロゲン化夾雑物332を除去するように操作される。ハロゲンスクラビングユニット330はまた、ハロゲン富化不活性ガスストリーム306から炭化水素を回収するように操作される。ハロゲンスクラビングユニット330の第4の出口は、保存ベッセル302の第6の入口に接続され、流体連通して、回収された炭化水素334を保存ベッセル302にリサイクルする。
【0028】
ある特定の実施形態では、システムはまた、第7の入口を有する吸着剤含有ユニット326を備える。第7の入口は、第5の出口に接続され、流体連通して、分離器320から第2の脱ハロゲン化熱分解油322を受け取る。吸着剤含有ユニット326は、第2の脱ハロゲン化熱分解油322からハロゲン化夾雑物336を除去するように操作される。吸着剤含有ユニット326は、実質的にハロゲンを含まない熱分解油328を生成する。ある特定の実施形態では、吸着剤は、活性炭、アルミノシリケート、固体酸、又はカチオン交換樹脂である。
【0029】
ある特定の実施形態では、システムはまた、第8の入口及び第7の出口を有する水処理ユニット324を備える。第8の入口は、第6の出口に接続され、流体連通して、分離器320からハロゲン富化水ストリーム318を受け取る。水処理ユニット324は、ハロゲン富化水318からハロゲン化夾雑物及び他の夾雑物(窒素、酸素、炭化水素)を除去するように操作される。水処理ユニット324は、実質的にハロゲンを含まない水ストリーム314を生成するように操作される。ある特定の実施形態では、実質的にハロゲンを含まない水ストリーム314は、リアクター310にリサイクルし戻されうる。リアクターは、第7の出口に接続され、流体連通して実質的にハロゲンを含まない水ストリーム314を受け取る第9の入口を有する。
【0030】
ある特定の実施形態では、窒素パージは水洗とともに、熱分解油からの有機Cl除去に最も強い影響を有する。
図4Aは、実験計画(DOE)モデルからの予測有機Cl濃度(ppm)に対する実際の有機Cl濃度(ppm)の二乗平均平方根誤差(root mean squared error)(RMSE)のグラフ表示である。モデルの予測精度は、0.94の平方根(RSq)値によって記載される。0.85超のRSq値は、高度の予測精度を示すと考えられる。予測値及び実際の値の間の誤差は、8.0539のRMSEによって記載される。10未満のRSME値は、良好なモデルを示すと考えられる。モデルによって試験されるパラメーターの統計的有意性は、<0.0001のp値によって記載される。0.05未満のp値は、統計的に有意であり、生じる又は生じない可能性がより高いと考えられる。
図4Bは、DOEモデルにおいて試験されたパラメーター、並びにp値及び対数価値によって記載される通りのそれらの統計的有意性の表である。対数価値は、p値の負のlog10である。表は、水洗、窒素パージ及び吸着剤の使用の3つの因子すべてが塩化物含有量を低減するために組み合わせて作用することを示す。これらの方法の組合せは、相互作用因子が重大であるため、塩化物のより強い低減をもたらす。
【0031】
ある特定の実施形態では、吸着剤を水洗とともに使用することは、熱分解油から有機窒素化合物の除去に対する顕著な効果を有する。
図5Aは、実験計画(DOE)モデルからの予測有機窒素化合物濃度(ppm)に対する実際の有機窒素化合物濃度(ppm)の二乗平均平方根誤差(root mean squared error)(RMSE)のグラフ表示である。モデルの予測精度は、0.99554の平方根(RSq)値によって記載される。0.85超のRSq値は、高度の予測精度を示すと考えられる。予測値及び実際値の間の誤差は、21.337のRMSEによって記載される。30未満のRSME値は、適性なモデルを示すと考えられる。モデルによって試験されるパラメーターの統計的有意性は、<0.0001のp値によって記載される。0.05未満のp値は、ある事象が起こる又は起こらないことについて統計的に有意であると考えられる。
【0032】
図5Bは、DOEモデルにおいて試験されたパラメーター、並びにp値及び対数価値によって記載される通りのそれらの統計的有意性の表である。対数価値は、p値の負のlog10である。表の結果は、吸着剤及び水洗が、有機窒素化合物除去に対する主な効果を有することを示す。窒素パージは、有機窒素化合物濃度に対する影響を有さない。水洗及び吸着剤の組合せは、熱分解油中の有機窒素化合物濃度をさらに減少させるのに効率的である。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
熱分解油を窒素流に供して、塩化物夾雑物を除去した。熱分解油の試料、20~150mLを、毎分0~2リットル(LPM)の間の範囲の窒素流量が可能なガスパージラインを備えた試験バイアルに入れた。試験バイアルを窒素流でスパージし、スパージガスを凝縮器で凝縮し、分析のために収集した。窒素のパージを2時間維持した。2時間後に試験バイアルを密封し、塩化物含有量について分析した。塩化物分析は、UOP 779プロトコルに従って実施した。凝縮物試料の塩化物濃度値を元の試料と比較して、窒素スパージによる塩化物の選択的除去の指標である凝縮物中の塩化物のパーセント富化を決定した。
【0034】
【0035】
本開示の他の目的、特徴及び利点は、以下の図面、詳細な説明及び実施例から明らかになるであろう。しかしながら、図面、詳細な説明及び実施例は、本開示の具体的な実施形態を示すものの、例示によってのみ示され、限定を意味しないことが理解されるべきである。さらに、詳細な説明から、本開示の趣旨及び範囲内で変更及び修正が当業者には明らかとなることが企図される。さらなる実施形態では、具体的な実施形態からの特徴は、他の実施形態からの特徴と組み合わせられてもよい。例えば、一実施形態からの特徴が、他の実施形態のうちのいずれかからの特徴と組み合わせられてもよい。さらなる実施形態では、追加の特徴が、本明細書に記載される具体的な実施形態に付加されてもよい。
【国際調査報告】