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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】圧縮天然ガス燃焼及び排気システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20241108BHJP
   F01N 3/36 20060101ALI20241108BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20241108BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20241108BHJP
   F01N 3/00 20060101ALI20241108BHJP
   F02D 41/30 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 29/068 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20241108BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
F01N3/08 A
F01N3/36 A
F01N3/28 301P
F01N3/10 A
F01N3/00 F
F02D41/30
B01J29/068 A
B01J23/44 A
B01D53/94 280
B01D53/94 ZAB
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529450
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 GB2022053285
(87)【国際公開番号】W WO2023118826
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/265,733
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ハイ-イン
(72)【発明者】
【氏名】フェデイコ、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ジン
(72)【発明者】
【氏名】ラージ、アグネス
(72)【発明者】
【氏名】レイニング、アーサー
【テーマコード(参考)】
3G091
3G301
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA19
3G091BA27
3G091EA05
3G091EA18
3G091GA06
3G091GB07W
3G091GB09W
3G301HA22
3G301JA21
3G301LB00
3G301PD11Z
4D148AA17
4D148AB01
4D148AC02
4D148BA11X
4D148BA31X
4D148BB02
4D148BC01
4D148BD03
4D148DA02
4D148DA03
4D148DA20
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169CA03
4G169ZA01A
4G169ZA01B
(57)【要約】
本発明は、(i)天然ガス燃焼エンジンと、(ii)排気処理システムとを含む圧縮天然ガス燃焼及び排気システムに関し、排気処理システムは、燃焼エンジンからの排気ガスを受け入れるための吸気口と、排気ガスを受け入れて処理するように配置された触媒物品とを備え、触媒物品は、少なくとも第1及び第2のコーティングを有する基材を含み、第1のコーティングはパラジウム含有アルミナ及び/又は卑金属含有アルミナを含み、第2のコーティングはパラジウム含有ゼオライトを含み、第1のコーティングは第2のコーティングの前に排気ガスと接触するように配置され、システムは、(a)硫黄が第1のコーティング上に捕捉されるリーンな第1のモードと、(b)硫黄が第1のコーティングから放出されるリッチな第2のモードとで選択的に動作するように構成されている。本発明は更に、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮天然ガス燃焼及び排気システムであって、
(i)天然ガス燃焼エンジンと、
(ii)排気処理システムと、を含み、前記排気処理システムが、前記燃焼エンジンから排気ガスを受け取るための吸気口、及び前記排気ガスを受け取り、処理するように配置された触媒物品を備え、前記触媒物品が、
少なくとも第1及び第2のコーティングを有する基材であって、前記第1のコーティングが、パラジウム含有アルミナ及び/又は卑金属含有アルミナを含み、前記第2のコーティングがパラジウム含有ゼオライトを含む、基材を含み、
前記第1のコーティングが、前記第2のコーティングの前に前記排気ガスに接触するように配置され、前記システムは、
(a)硫黄が前記第1のコーティング上に捕捉されるリーンな第1のモードと、
(b)硫黄が前記第1のコーティングから放出されるリッチな第2のモードとで、選択的に動作するように構成される、圧縮天然ガス燃焼及び排気システム。
【請求項2】
前記リッチな第2のモードの間、前記触媒物品によって受け取られる前記排気ガス中の酸素濃度が減少する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムは、前記触媒物品の上流にインジェクタを更に含み、前記インジェクタが、前記リッチな第2のモードでの前記システムの動作中に、1つ以上の炭化水素を前記排気ガス中に注入するように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記排気ガスの温度が、前記リーンな第1のモード及び前記リッチな第2のモードの間、実質的に同じままである、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記リッチな第2のモードの間に、前記排気ガスの温度が上昇し、任意選択で、前記第1のリーンモードの間に、前記排気ガスの温度が750℃未満であり、前記リッチな第2のモードの間に、前記排気ガスの温度が800℃超に上昇する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のコーティングが、ゾーン化された構成において前記第2のコーティングの上流に配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記基材が入口端及び出口端を備え、任意選択で、前記第1のコーティングが前記基材の前記入口端から延在し、前記第2のコーティングが前記基材の前記出口端から延在する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1のコーティングが、前記基材の軸方向長さの20~80%、好ましくは60~80%に延在し、並びに/又は前記第2のコーティングが、前記基材の軸方向長さの20~80%、好ましくは20~40%に延在し、並びに/又は前記第1のコーティング及び前記第2のコーティングが共に前記基材を実質的に覆う、請求項6又は7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1のコーティング及び第2のゾーンが、前記基材の軸方向長さの少なくとも10%だけ重なり合う、請求項6、7、又は8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1のコーティングが、層状構成で前記第2のコーティング上に配置される、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1のコーティングが、前記基材上にウォッシュコートとして提供され、1~50g/ftのウォッシュコート担持量を有し、及び/又は前記第2のコーティングが、前記基材上にウォッシュコートとして提供され、1~50g/ftのウォッシュコート担持量を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムが、前記リッチな第2のモードの間に前記第1のコーティングから放出された硫黄を受け取るための硫黄トラップを前記触媒物品の下流に更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2のコーティングの下流のSOセンサと、前記センサによって閾値を上回る排気流のSOレベルが検出されると、前記リッチな第2のモードで動作するように前記システムを切り替えるように構成されたコントローラと、を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記基材が、フロースルー基材である、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記ゼオライトが少なくとも1500のSARを有し、及び/又は前記アルミナがガンマアルミナである、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
1サイクル中に、前記システムが、5分未満、好ましくは3分未満、より好ましくは1分以下の間、前記第2のリッチモードで動作し、10分超、好ましくは30分超、好ましくは60分以上の間、前記第1のリーンモードで動作するように構成される、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
天然ガス燃焼エンジンからの排気ガスを処理するための方法であって、
前記排気ガスを排気処理システムの触媒物品と接触させることを含み、
前記触媒物品が、
少なくとも第1及び第2のコーティングを有する基材であって、前記第1のコーティングが、パラジウム含有アルミナ及び/又は卑金属含有アルミナを含み、前記第2のコーティングがパラジウム含有ゼオライトを含む、基材を含み、
前記第1のコーティングが、前記第2のコーティングの前に前記排気ガスに接触するように配置され、
前記方法は、硫黄が前記第1のコーティング上に捕捉されるリーンな第1のモードで前記排気システムを動作させることと、硫黄が前記第1のコーティングから放出されるリッチな第2のモードで前記排気システムを断続的に動作させることと、を更に含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮天然ガス燃焼及び排気システムに関し、特に、耐硫黄性が改善されたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、伝統的にガソリン及びディーゼル燃料を使用する車両及び定置エンジンのための代替燃料として関心が高まっている。天然ガスは、主にメタン(典型的には70~90%)から構成され、エタン、プロパン及びブタンなどの他の炭化水素(いくつかの鉱床では20%まで)及び他のガスを様々な割合で含む。これは、油田又は天然ガス田から商業的に生産することができ、発電、工業用コージェネレーション及び家庭用暖房のための燃焼エネルギー源として広く使用されている。また、車両燃料として使用することもできる。
【0003】
天然ガスは、圧縮天然ガス(compressed natural gas、CNG)及び液化天然ガス(liquefied natural gas、LNG)の形態で輸送燃料として使用することができる。CNGは、3600psi(約248バール)に加圧されたタンクで運ばれ、単位体積当たりガソリンの約35%のエネルギー密度を有する。LNGは、CNGの2.5倍のエネルギー密度を有し、主に大型車両に使用される。LNGは-162°Cで液体形態に冷却され、その結果、体積は600分の1に減少し、これはLNGがCNGより容易に輸送されることを意味する。バイオLNGは、天然(化石)ガスの代替物となり得るものであり、バイオガスから生産され、埋立地廃棄物又は肥料などの有機物からの嫌気性消化によって得られる。
【0004】
天然ガスは、多くの環境上の利点を有しており、すなわち、典型的には不純物をほとんど含有しないよりクリーンな燃焼燃料であり、従来の炭化水素燃料よりも炭素当たりのエネルギー(Bti)が高く、結果として二酸化炭素排出量が低く(温室効果ガス排出量が25%少ない)、ディーゼル及びガソリンと比較してPM及びNOの排出量が低い。バイオガスは、このような排出を更に低減することができる。
【0005】
天然ガスの採用を更に推進するのは、他の化石燃料と比較して高い存在量及びより低いコストが挙げられる。
【0006】
天然ガスエンジンは、大型及び小型ディーゼルエンジンと比較して、非常に低いPM及びNOを放出する(それぞれ、最大95%及び70%未満)。しかしながら、NGエンジンによって生成される排気ガスは、かなりの量のメタン(いわゆる「メタンスリップ」)を含有することが多い。これらのエンジンからの排出を制限する規制は、現在、Euro VI及び米国環境保護庁(US Environmental Protection Agency、EPA)温室効果ガス法を含む。これらは、メタン、窒素酸化物(nitrogen oxide、NOx)及び粒子状物質(particulate matter、PM)の排出制限を課す。
【0007】
メタン燃料エンジンに使用される2つの主な動作モードは、化学量論的条件(λ=1)及びリーン燃焼条件(λ≧1.3)である。パラジウム系触媒は、両方の条件下でメタン酸化のための最も活性なタイプの触媒として周知である。化学量論的圧縮天然ガスエンジンとリーン燃焼圧縮天然ガスエンジンの両方について規制された排出制限は、それぞれパラジウム-ロジウム三元触媒(three-way catalyst、TWC)又は白金-パラジウム酸化触媒のいずれかを適用することによって満たすことができる。
【0008】
このPd系触媒の技術の発展は、コスト並びに硫黄、水及び熱老化による触媒失活に関する課題を克服することに依存する。
【0009】
メタンは最も反応性の低い炭化水素であり、一次C-H結合を切断するのに高エネルギーが必要である。アルカンの発火温度は、一般に、燃空比の増加及びC-H結合強度と相関する炭化水素鎖長の増加とともに低下する。Pd系触媒では、メタン転化のライトオフ温度が他の炭化水素よりも高いことが知られている(「ライトオフ温度」とは、転化率が50%に達する温度を意味する)。
【0010】
化学量論的条件(λ=1)で動作するとき、TWCは、メタンを燃焼させるための効果的かつ費用効率の高い後処理システムとして使用される。200gft-3を超える高い総白金族金属(platinum group metal、pgm)担持量を有する大部分の二元金属Pd-Rh触媒は、この炭化水素の非常に低い反応性並びに熱及び化学的影響による触媒失活に起因して、寿命末期の全炭化水素(total hydrocarbon、THC)規制を満たすために、高レベルのメタン転化に必要とされる。高いpgm担持量の使用は、化学量論的CNGエンジンにおける全HC転化率を改善する。しかしながら、高いメタン転化率は、エンジン較正に基づいて比較的低いpgmで達成することができ、すなわち、化学量論量付近又は化学量論量よりもリッチで動作するように空燃比を制御することで達成することができる。pgm担持量は、メタン及び非メタン転化に関する地域の法律要件に対応して変更することもできる。
【0011】
NOの還元及びメタンの酸化もまた、非常に酸化性の条件下ではより困難である。リーン燃焼CNG用途では、より低い温度でのメタン燃焼のために、高い総pgm担持量(>200gft-3)でのPd-Ptが必要とされる。化学量論的エンジンとは異なり、過剰酸素の存在下でNOを還元することができるように、還元剤も排気流に注入する必要がある。これは、通常、アンモニア(NH)の形態であり、したがって、リーン燃焼用途は、化学量論的なものとは完全に異なる触媒系を必要とし、ここで、効率的なNO還元は、わずかにリッチな又は化学量論的条件でCO又はHCを使用して達成することができる。
【0012】
より低い温度でのメタンの非反応性(又は不十分な反応性)のために、コールドスタート及びアイドル状態の間にメタン排出が増加する場合がある。より低い温度でのメタンの反応性を改善するために、選択肢の1つは、高いpgm担持量を使用することであるが、これはコストを増加させる。
【0013】
天然ガス触媒、特にPd系触媒は、特にリーン条件下で水(5~12%)及び硫黄(潤滑油中<0.5ppmのSO)による被毒に悩まされる場合があり、これは経時的な触媒の転化率の劇的な低下をもたらす。水による失活は、触媒表面上にヒドロキシル、カーボネート、ホルメート及び他の中間体が形成されるために顕著である。活性は可逆的であり、水が除去されると完全に回復することができる。しかしながら、これは、メタン燃焼供給物が、メタン中の高含有量のHに起因して高レベルの水を常に含有するので、非実用的である。
【0014】
Oは、空燃比、すなわちλに応じて、抑制剤又は促進剤のいずれかであり得る。化学量論的条件及び還元条件(λ>1)下で、HOは、CNGエンジン及びガソリンエンジンの両方において、水蒸気改質反応による炭化水素の酸化のための促進剤として作用することができる。しかしながら、λ>1で動作するリーン燃焼CNGでは、HOはメタン酸化の阻害剤として作用する。水抑制効果を理解し、HOの存在に対してより耐性のある触媒を設計することが重要である。これは、リーン燃焼CNGからのメタン排出を制御しようとするときの改善を可能にする。
【0015】
エンジン排気中の硫黄レベルは非常に低いが、Pd系触媒は、安定な硫酸塩の形成に起因して、硫黄曝露時に著しく失活する。硫黄被毒後に活性を回復させるための触媒の再生は困難であり、通常、高温、リッチ運転、又はその両方を必要とする。これは化学量論的運転では容易に達成可能であるが、リーン燃焼ではより困難である。リーン燃焼車両は、化学量論的車両よりもはるかに高い空燃比で動作し、リッチ運転に切り替えるためにはるかに高い濃度の還元剤の注入を必要とする。不十分なエンジン過渡制御及び点火システムによる高レベルの失火事象から生じる熱失活は、触媒を破壊し、それに対応して高レベルの排気排出をもたらす。
【0016】
パラジウム含有触媒は、リーン及び化学量論的の両方の条件下で失活するが、硫黄被毒は、リーン動作における熱老化よりも劇的な影響を有する。硫黄被毒は、Pd触媒に少量のPtを添加することによって改善することができる。これは、硫酸パラジウムの形成による硫黄阻害が、Ptの添加により著しく低減され得るためである。しかしながら、Ptの添加は更にコストを増加させる。
【0017】
したがって、触媒のコストを増加させることなく、硫黄、水、及び熱老化などによる触媒失活に取り組むことによってメタン排出を低減するために、天然ガス燃焼及び排気ガス処理用の改善されたシステムを提供することが望まれている。本発明の目的は、この問題に対処し、先行技術に関連する欠点に取り組み、又は少なくとも商業的に有用なその代替物を提供することである。
【発明の概要】
【0018】
第1の態様によれば、圧縮天然ガス燃焼及び排気システムであって、
(i)天然ガス燃焼エンジンと、
(ii)排気処理システムとを含み、排気処理システムは、燃焼エンジンから排気ガスを受け取るための吸気口、及び排気ガスを受け取り、処理するように配置された触媒物品を備え、触媒物品が、
少なくとも第1及び第2のコーティングを有する基材であって、第1のコーティングが、パラジウム含有アルミナ及び/又は卑金属含有アルミナを含み、第2のコーティングがパラジウム含有ゼオライトを含む、基材を含み、
第1のコーティングが、第2のコーティングの前に排気ガスに接触するように配置され、システムは、
(a)硫黄が第1のコーティング上に捕捉されるリーンな第1のモードと、
(b)硫黄が第1のコーティングから放出されるリッチな第2のモードとで選択的に動作するように構成される。
【0019】
以下の節では、異なる態様/実施形態がより詳細に定義される。そのように定義された各態様/実施形態は、別途明確に示されていない限り、任意の他の態様/実施形態又は複数の態様/実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0020】
本発明は、圧縮天然ガス燃焼及び排気システムに関する。
【0021】
天然ガス燃焼エンジンは、天然ガスを燃焼させるために使用されるエンジンである。天然ガス燃焼エンジンは、移動用エンジンであり得、概して、自動車又は他の車両(例えば、オフロード車両)における使用に好適であることを意味し、そのようなシステムでは、加速などのオペレータ要件に応じて、動作中に燃料供給及び需要の変化があり得る。移動用途では、天然ガス燃焼は、リーン又は化学量論的構成で動作するように構成され得る。移動用途では、一般に、システムをリッチモードで一時的に動作させることが可能である。エンジンは「移動用」であるものとして説明されているが、様々な異なる用途にわたって使用することができることを理解されたい。
【0022】
排気処理システムは、燃焼エンジンからの排気ガスを処理するのに適したシステムである。排気処理システムは、燃焼エンジンから排気ガスを受け取るための吸気口と、排気ガスを受け入れ、処理するように配置された触媒物品とを備える。吸気口は、燃焼機関からの排気を触媒物品に導くように構成された導管又はパイプであってもよい。
【0023】
触媒物品は、排気ガスシステムにおける使用に適した構成要素である。典型的には、そのような物品はハニカムモノリスであり、「レンガ」と呼ばれることもある。これらは、処理されるべきガスを触媒材料と接触させて排気ガスの成分の変換又は転化を行うのに適した高表面積構成を有する。触媒物品の他の形態も知られており、プレート構成、並びにラップされた金属触媒基材を含む。本明細書に記載される触媒物品は、これらの既知の形態の全てにおいて使用に適しているが、コストと製造の単純さとの良好なバランスを提供するので、ハニカムモノリスの形態をとることが特に好ましい。
【0024】
触媒物品は、天然ガス燃焼エンジンからの排気の処理のためのものである。すなわち、触媒物品は、天然ガス燃焼エンジンからの排気ガスの触媒処理のためのものであり、排出規制を満たすためにガスの成分を大気に放出する前に転化又は変換する。天然ガスが燃焼されるとき、それによって二酸化炭素と水の両方が生成されるが、排気ガスはまた、排気が大気に放出される前に触媒的に除去される必要がある追加のメタン(及び他の短鎖炭化水素)の量を含有する。排気ガスはまた、典型的には、蓄積して触媒を失活させ得るかなりの量の水及び硫黄を含有する。
【0025】
触媒物品は、少なくとも第1及び第2のコーティングを有する基材を含む。好ましくは、第1のコーティングは基材上にウォッシュコートとして提供される、及び/又は第2のコーティングは基材上にウォッシュコートとして提供される。好ましくは、両方のコーティングが基材上にウォッシュコートとして提供される。好ましくは、基材は、フロースルーモノリスである。
【0026】
第1のコーティングは、パラジウム含有アルミナ及び/又は卑金属含有アルミナを含む。第1のコーティングは、リーン条件(λ>1)においてCNGエンジンから受け取った排気ガス中に存在する硫黄を吸収又は捕捉するのに有効であり、リッチ条件(λ<1)において短時間にわたって再生することができる(すなわち、そこから硫黄が放出される)。有利には、第1のコーティングからの硫黄の放出、したがって第1のコーティングの再生は、本出願の図2に示されるデータに関して議論されるように、触媒物品によって受け取られる排気ガスの酸素濃度を低下させることによって、及び任意選択で、触媒物品によって受け取られる排気ガス中に炭化水素を注入することによっても、化学的に誘発され得る。換言すれば、リッチな第2のモードのリッチ条件は、触媒物品によって受け取られる排気ガスの酸素濃度を低下させることによって、また任意選択で、触媒物品によって受け取られる排気ガス中に燃料又は炭化水素を注入することによっても達成することができる。
【0027】
アルミナは、アルファ又はガンマアルミナなどの任意のタイプのアルミナであってよい。更に、アルミナは、当技術分野で知られているようにドープされてもよい。例えば、15重量%まで、例えば1~10重量%、好ましくは約5重量%の量のSi又はLaによるドーピングは、熱安定性の改善を提供することができる。好ましくは、第1のコーティング中のアルミナはガンマアルミナである。好ましくは、第1のコーティングは、1~50g/ft、より好ましくは5~40g/ft、最も好ましくは10~30g/ftのウォッシュコート担持量を有する。
【0028】
第2のコーティングは、パラジウム含有ゼオライトを含む。このようなパラジウム含有ゼオライトは、排気ガス中に水が存在するにもかかわらず、CNGエンジンからの排気ガスの処理について優れた活性を示すが、硫黄阻害を受けやすい。そのようなパラジウム含有触媒は、リッチな第2のモードの間にリッチ条件に曝露されたときに高い安定性を有し、リッチな第2のモードの間などの高濃度の硫黄への周期的曝露に耐えることができる。本出願の図1のデータによって示され、本明細書で後述されるように、リッチな第2のモードの間の排気ガス中のSOの存在は、パラジウム含有ゼオライトの活性を一時的に低下させる。しかしながら、パラジウム含有ゼオライトは、システムが第2のリッチモードで動作する短い期間にわたってSOに曝露されたときにSOを有意に貯蔵しないので、パラジウム含有ゼオライトの活性は、リーンな第1のモードが再開したときに実質的に回復する。換言すれば、パラジウム含有ゼオライトは、リッチな第2のモードでのシステムの断続的な動作中に第1のコーティングから放出された硫黄によって不安定化されない。これは、以下で更に詳細に議論される図1のデータによって示されるように、アルミナ上に担持されたパラジウムなどの他のパラジウム含有触媒とは対照的である。
【0029】
好ましくは、ゼオライトは、≧1200、好ましくは≧1300、例えば≧1500(例えば、≧1700)、より好ましくは≧2000、例えば≧2200のSARを有する。好ましくは、第2のコーティングは、1~50g/ft、より好ましくは5~40g/ft、最も好ましくは10~30g/ftのウォッシュコート担持量を有する。
【0030】
第1のコーティングは、第2のコーティングの前に排気ガスと接触するように配置される。この配置により、第1のリーンモードの間に第2のコーティングによって受け取られる排気ガスが低減された硫黄含有量を有するように、排気ガス内の硫黄を第1のコーティングが捕捉することが可能になる。その結果、第1のリーンモードの間に硫黄による第2のコーティングのパラジウム含有ゼオライトの不活性化が低減される。
【0031】
好ましくは、第1のコーティングは、ゾーン化された構成において第2のコーティングの上流にある。これにより、第1のコーティングが第2のコーティングの前に排気ガスと接触することが可能になる。
【0032】
好ましくは、基材は入口端及び出口端を有し、任意選択で、第1のコーティングは入口端から延在し、第2のコーティングは出口端から延在する。これにより、第1のコーティングが第2のコーティングの前に排気ガスと接触することが可能になる。
【0033】
好ましくは、第1のコーティングは、基材の軸方向長さの20~80%、好ましくは60~80%に延在し、並びに/又は第2のコーティングは、基材の軸方向長さの20~80%、好ましくは20~40%に延在し、並びに/又は第1のコーティング及び第2のコーティングは共に基材を実質的に覆う。
【0034】
好ましくは、第1のコーティング及び第2のゾーンは、基材の軸方向長さの少なくとも10%だけ重なり合う。好ましくは、第1のコーティング及び第2のゾーンは、基材の軸方向長さの最大25%だけ重なり合う。
【0035】
あるいは、第1のコーティングは、層状構成で第2のコーティング上に配置されてもよい。これにより、第1のコーティングが第2のコーティングの前に排気ガスと接触することが可能になる。
【0036】
システムは、(a)硫黄が第1のコーティング上に捕捉されるリーンな第1のモードと、(b)硫黄が第1のコーティングから放出されるリッチな第2のモードとで選択的に動作するように構成される。リーンな第1のモードの間、システムはリーン燃焼条件、すなわち(λ>1)で動作し、リッチな第2のモードの間、システムはリッチ燃焼条件(すなわちλ<1)で動作する。
【0037】
リーンな第1のモードの間、第1のコーティングは、第2のコーティングによって受け取られた排気ガスが低減された硫黄含有量を有するように、排気ガス中に存在する硫黄を捕捉する。これは、第2のコーティング中に存在するパラジウム含有ゼオライト触媒の不活性化/被毒を低減し、それによって、リーンな第1のモードでのシステムの動作中にその高い酸化性能を維持する。触媒、特に触媒の第1のコーティングを再生するために、システムは、第1のコーティングから硫黄が放出されるリッチな第2のモードで周期的/断続的に動作する。
【0038】
リッチな第2のモードの間、触媒物品によって受け取られる排気ガス中の酸素濃度は、例えば、アルゴンなどの不活性ガスを注入することによって減少させることができる。システムは、リッチな第2のモードでのシステムの動作中に、アルゴンなどの不活性ガスを排気ガスに注入するように構成されたインジェクタを触媒物品の上流に備えることができる。
【0039】
リッチな第2のモードの間、触媒物品によって受け取られる排気ガス中の炭化水素の濃度は、排気ガス中への1つ以上の炭化水素の注入によって増加され得る。例えば、システムは、リッチな第2のモードでのシステムの動作中に、プロピレンなどの1つ以上の炭化水素を排気ガス中に注入するように構成されたインジェクタを触媒物品の上流に備えてもよい。
【0040】
排気ガス中の酸素濃度を低下させ、任意選択で炭化水素含有量も増加させることによって、硫黄を第1のコーティングから放出させ、それによって第1のコーティングを再生させるリッチ条件を達成することができる。言い換えれば、リッチな第2のモードでのシステムの動作は、触媒物品によって受け取られる排気ガス中の酸素の濃度を低下させることによって、及び任意選択で1つ又は複数の炭化水素の注入によっても達成され得る。有利なことに、このような化学的に誘導される硫黄放出は、排気ガスの温度を上昇させる必要がない。言い換えれば、排気ガスの温度は、リーンな第1のモードとリッチな第2のモードとの間で実質的に同じに維持され得る。対照的に、既知の硫黄トラップ装置の再生のための典型的な技術は、貯蔵された硫黄の熱放出を伴い、それは、その動作温度からの実質的な温度上昇(すなわち、数百摂氏度高い)を必要とする。これは、必要とされるエンジン制御の増加、触媒物品の熱失活の可能性、及びターボチャージャーなどのエンジンの構成要素の熱劣化の可能性に起因して、適用することが極めて困難であり得る。
【0041】
上述したように、排気ガスの温度は、リーンな第1のモード及びリッチな第2のモードの間、実質的に同じままであり得る。例えば、リーンな第1のモードの間の排気ガスの温度は、第2のリッチモードの間の排気ガスの温度の20℃以内、好ましくは10℃以内、より好ましくは5℃以内であってもよい。リーンな第1のモード及びリッチな第2のモードの間の排気ガスの温度は、750℃未満、好ましくは650℃未満、最も好ましくは500~600℃であってもよい。
【0042】
代替的であるがあまり好ましくない配置では、リッチな第2のモードの間、排気ガスの温度が上昇し得る。第1のリーンモードの間、排気ガスの温度は750℃未満であってもよい。好ましくは、リッチな第の2モードの間、排気ガスの温度は850℃を超えない。
【0043】
好ましくは、1サイクル中に、システムは、5分未満、好ましくは3分未満、より好ましくは1分以下の間、第2のリッチモードで動作し、10分超、好ましくは30分超、好ましくは60分以上の間、第1のリーンモードで動作するように構成される。換言すれば、システムは、第2のリッチモードでの動作に断続的に切り替わってもよい。第2のリッチモードで断続的に動作することによって、硫黄トラップとして機能する第1のコーティングは、第2のコーティングのパラジウム含有ゼオライトの性能を不安定にすることなく再生することができる。換言すれば、下流の第2のコーティングは、これらの短い期間の間、第2のリッチモードの間に経験されるリッチ条件及び高濃度の硫黄に耐えることができる。システムは、そのような短い期間にわたって第1のコーティングの効果的な再生を可能にするので、再生間隔の間の時間(すなわち、システムが第1のリーンモードで動作する時間)を増加させることができる。
【0044】
好ましくは、システムは、リッチな第2のモードの間に第1のコーティングから放出された硫黄を受け取るために、触媒物品の下流に硫黄トラップを更に含む。硫黄トラップは、リッチな第2のモードの間に第1のコーティングから放出された硫黄を捕捉し、それによってシステムからの硫黄排出を低減することができる。
【0045】
任意選択で、システムは、第2のコーティングの下流のSOセンサと、センサによって閾値を上回る排気流SOレベルが検出されると、リッチな第2のモードで動作するようにシステムを切り替えるように構成されたコントローラとを含む。これは、第2のコーティングの下流の排気ガス中のSOレベルを測定することによって、SOセンサが第1のコーティングによるSO吸収を監視し、第1のコーティングが再生される必要があるかどうかを決定することができるので、有利である。例えば、排気ガス中のSOレベルが著しく増加した場合、これは、排気ガス中の硫黄が第1のコーティングによって十分に捕捉/吸収されておらず、その結果、第1のコーティングは、リッチな第2のモードでのシステムの動作によって再生される必要があることを実証する。SOセンサは、触媒物品の下流に位置決めされてもよい。
【0046】
本発明の更なる態様によれば、天然ガス燃焼エンジンからの排気ガスを処理する方法が提供され、方法は、
排気ガスを排気処理システムの触媒物品と接触させることを含み、
触媒物品が、
少なくとも第1及び第2のコーティングを有する基材であって、第1のコーティングが、パラジウム含有アルミナ及び/又は卑金属含有アルミナを含み、第2のコーティングがパラジウム含有ゼオライトを含む、基材を含み、
第1のコーティングが、第2のコーティングの前に排気ガスに接触するように配置され、
方法は、硫黄が第1のコーティング上に捕捉されるリーンな第1のモードで排気システムを動作させることと、硫黄が第1のコーティングから放出されるリッチな第2のモードで排気システムを断続的に動作させることと、を更に含む。
【0047】
好ましくは、この態様で説明される方法は、本明細書で説明されるシステムに適用することができる。したがって、システムに好ましいものとして説明される全ての特徴は、方法の態様にも等しく適用される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
以下の非限定的な図に関して本発明を更に説明する。
図1図1の上のグラフは、550℃でのシミュレートされた定常状態反応器条件下での実施例1及び実施例2の触媒のメタン転化性能を示し、1分の持続時間を有する50ppmのSOのパルスが、触媒を通って流れる合成ガス混合物中に毎時導入された。 図1の中央のグラフは、550℃でのシミュレートされた定常状態反応器条件下での、パラジウム含有ゼオライトである実施例2の触媒からのSOスリップを示し、1分の持続時間を有する50ppmのSOのパルスが、触媒を通って流れる合成ガス混合物中に毎時導入された。 図1の下のグラフは、550℃でのシミュレートされた定常状態反応器条件下での、アルミナ上に担持されたパラジウムである実施例1の触媒からのSOスリップを示し、1分の持続時間を有する50ppmのSOのパルスが、触媒を通って流れる合成ガス混合物中に毎時導入された。
図2】酸素濃度の低下及び触媒を通って流れる合成ガス混合物へのポリプロピレンの注入時に、アルミナ上に担持されたパラジウムである実施例2の触媒からの貯蔵硫黄の放出を示すグラフである。
図3】550℃でのシミュレートされた定常状態反応器条件下での実施例1及び2の触媒のメタン及びエタンの転化性能を示し、1分の持続時間を有するリッチパルスが、4.5、10.5及び16.5時間で1分の持続時間にわたって生じた。合成ガス混合物へのNOガスの供給を7.5時間でオフにし、14時間で再びオンにして、7.5~14時間に合成ガス混合物中にNOが存在しないようにした。上のグラフは、アルミナ上に担持されたパラジウムである実施例2の触媒についてのメタン及びエタンの転化率を示し、下のグラフは、パラジウム含有ゼオライトである実施例1の触媒についてのメタン及びエタンの転化率を示す。
【実施例
【0049】
ここで、以下の非限定的な実施例に関して本発明を更に説明する。
【0050】
(実施例1)
実施例1の触媒は、2~3重量%のパラジウム含有量を有するパラジウム含有高シリカ質(SAR>1500)ゼオライトを有する触媒である。
【0051】
実施例1の触媒は、シリカ質ゼオライト(SAR>1500)の粉末試料に硝酸パラジウムの溶液を従来の初期湿潤技術によって含浸させることによって調製した。含浸後、試料を80℃で5時間乾燥させ、静的オーブン内で空気中500℃で2時間焼成した。
【0052】
予め形成されたPd含有シリカ質ゼオライト、アルミナ結合剤及びシリカ結合剤を含むウォッシュコートをセラミック基材に適用し、次いで、ウォッシュコートを、真空を使用して基材に引き下ろした。物品を乾燥させ、約500℃で約1時間焼成した。物品上のPdの担持量は、120g/ftであった。
【0053】
(実施例2)
実施例2の触媒は、アルミナにパラジウムを担持した触媒であり、3重量%のパラジウム含有量を有する。
【0054】
硝酸パラジウム、ガンマ-アルミナ、アルミナ結合剤及びクエン酸を含むウォッシュコートをセラミック基材に適用し、次いで、真空を使用してウォッシュコートを基材に引き下ろした。物品を乾燥させ、約500℃で約1時間焼成した。物品上のPdの担持量は、120g/ftであった。
【0055】
実施例1及び実施例2の触媒の耐硫黄性は、550℃でのシミュレートされた定常状態反応器条件下でそれらのメタン転化率を測定することによって試験され、1分の持続時間を有する50ppmのSOのパルスが、触媒を通って流れる合成ガス混合物中に毎時導入された。合成ガス混合物は、空間速度100,000h-1で、1000ppmのCH、25ppmのC、5ppmのC、1000ppmのCO、500ppmのNO、12%のO、8%のHO、7.2%のCO、残部のN2の組成を有していた。耐硫黄性からのデータを図1の上のグラフに示す。
【0056】
この試験は、第1のコーティングからの硫黄の放出によるリッチな第2のモードでの本発明のシステムの周期動作中に生じる硫黄の増加をシミュレートし、各サイクルで、リッチな第2のモードが1分間動作され、リーンな第1のモードが59分間動作された。
【0057】
実施例1の触媒は、本発明の第2のコーティング(パラジウム含有ゼオライト)の組成と同じ組成を有する。したがって、この試験は、リッチな第2のモード(1サイクル当たり1分間)でのシステムの周期的動作中の本発明の第2のコーティングの耐硫黄性を、代わりにアルミナ上に担持されたパラジウムを含む実施例2と比較する。
【0058】
図1において、パラジウム含有ゼオライトである実施例1の触媒のメタン転化性能は、全て90~100%である一連のピークによって示される。アルミナ上に担持されたパラジウムである実施例2の触媒のメタン転化性能は、80%未満まで連続的に減少する一連のピークによって示される。図1に示されるように、実施例1の触媒については、排気ガス中の硫黄によるパラジウム含有ゼオライトの不活性化に起因して、各SOパルス中に性能の急激な低下が生じたが、性能の低下は、ガス流から硫黄を除去すると急速に回復し、複数サイクル後に95%を超えるメタン転化率で性能が安定した。対照的に、実施例2の触媒(アルミナ上に担持されたパラジウム)については、触媒の性能は各SOパルスで連続的に低下し、複数サイクル後に安定しなかった。性能回復における対照的な挙動は、耐硫黄性試験中の実施例1及び実施例2の触媒からのSOスリップを監視することによって説明することができ、これは図1の中央及び下のグラフに示されている。図1の中央のグラフに示されるように、アルミナ上に担持されたパラジウムは、SOパルス中にかなりの量のSOを貯蔵した。対照的に、図1の下のグラフに示されるように、SOは、より大きなSOスリップによって実証されるように、SOパルス中に実施例1のパラジウム含有ゼオライトを通過する。実施例1のパラジウム含有ゼオライトは、SOパルス中に硫黄を有意に貯蔵しないので、高硫黄濃度のこれらの短い期間にわたって硫黄によって不活性化されない。
【0059】
図2は、本発明の触媒の第1のコーティングと同じ組成である実施例2の触媒(アルミナ上に担持されたパラジウム)からの貯蔵された硫黄の化学的に誘導された放出を示すグラフである。0.5ppmのSO及び1000ppmのCH、25ppmのC、5ppmのC、1000ppmのCO、500ppmのNO、12%のO、8%のHO、7.2%のCO、残部のNの組成を有する実施例2の触媒に、空間速度100,000h-1、温度550℃で合成ガス混合物を流した。ガス混合物中にプロピレンを1分/時間サイクルで周期的に注入することによって、ガス混合物の酸素濃度を低下させた。換言すれば、各サイクルで、リーンガス混合物を59分間触媒に供給し、リッチガス混合物を1分間触媒に供給した。
【0060】
図2は、アルミナ上に担持されたパラジウムが、リーン動作中に硫黄を効果的に吸収し、周期的なリッチパルス中に硫黄を放出することを示す。各リッチパルス中に放出された硫黄の濃度は、時間とともに増加した(すなわち、9.5時間のリッチパルスよりも15.5時間のリッチパルス中により多くの量の硫黄が放出された)。これは、ガス混合物へのアルミナ上に担持されたパラジウムのより長い曝露が、その後リッチパルス中に放出され得る、より多くの硫黄をその上に吸収させたためであると予想される。
【0061】
図2は、触媒によって受け取られるガスの酸素濃度を減少させると同時に、炭化水素濃度を増加させることによって、周期的なリッチパルスが作り出され得ることを実証している。換言すれば、図2は、アルミナ上に担持されたパラジウムからのSOの放出を化学的に誘導することができ、したがって、アルミナ上に担持されたパラジウムの再生中に排気ガスの温度を550℃に維持することができることを実証している。
【0062】
したがって、図2は、本発明の第1のコーティングの組成物であるアルミナ上に担持されたパラジウムが、リーン動作中に硫黄を吸収することができ、実質的な温度上昇はないが、代わりに化学誘導によって再生することができることを実証している。換言すれば、図2のデータは、リッチな第2のモードでの本発明のシステムの動作中に触媒によって受け取られる排気ガスの酸素濃度を低下させ、炭化水素濃度を増加させると、排気ガスの温度を上昇させる必要なく、第1のコーティングから硫黄が放出されることを実証している。これは、貯蔵された硫黄の熱放出が、通常、その動作温度からの実質的な温度上昇(すなわち、摂氏数百度高い)を必要とするため、有利であり、これは、エンジン制御、潜在的な触媒の熱失活、ターボチャージャーなどの構成要素の潜在的な熱劣化の観点から適用することが極めて困難であり得る。
【0063】
実施例1及び実施例2の触媒に対するリッチパルスの効果を、触媒を通して合成ガス混合物を流したときの550℃でのシミュレートされた定常状態反応器条件下でのそれらのメタン及びエタンの転化率を測定することによって試験した。合成ガス混合物は、空間速度100,000h-1で、1000ppmのCH、25ppmのC、5ppmのC、1000ppmのCO、500ppmのNO、12%のO、8%のHO、7.2%のCO、残部のNを含んでいた。合成混合物内の酸素濃度がプロピレンの注入を介して減少されるリッチパルスは、4.5、10.5及び16.5時間で1分間にわたって生じた。合成ガス混合物へのNOガスの供給を7.5時間でオフにし、14時間で再びオンにして、7.5~14時間に合成ガス混合物中にNOが存在しないようにした。この試験からのデータを図3に示す。
【0064】
図3において、実施例1及び実施例2の両方のエタン転化率は90~100%のままである。実施例1の触媒(パラジウム含有ゼオライト)のメタン転化率は、100%で始まり、リーン動作中は90~100%のままであるが、各リッチパルス中に約20~25%の急激な減少を示す。実施例2の触媒(パラジウム含有ゼオライト)のメタン転化率は、100%で始まり、各リッチパルスの前後で徐々に減少することを示す。実施例1及び実施例2の両方について、入口での排気ガスの温度は、2時間後に700~710℃から減少し、その後、約560℃のままであり、出口での排気ガスの温度は、2時間後に650℃から減少し、約570~580℃のままであり、リッチパルス中に約610℃まで急激に増加する。
【0065】
図3に示すように、アルミナ上に担持されたパラジウムである実施例2の触媒によって行われる転化は、各リッチパルスの前後の両方で経時的に徐々に減少する。これは、水によって誘発される触媒の不活性化に起因すると予想される。しかしながら、リッチパルスの後、NOが合成ガス混合物中に存在しない場合、実施例2の触媒の不活性化速度は急激な増加を示した。これは、触媒のパラジウムに有意な変化が生じたこと、及びメタン酸化活性が供給物中のNOの存在に依存することを示唆する。実施例2の触媒のパラジウムへの変化は、金属PdへのPdOの還元であったことが予想され、この評価は試料の色の目視観察によって支持された。対照的に、図3のグラフは、パラジウム含有ゼオライトである実施例1の触媒の性能が、リッチパルスの前後両方で極めて安定しており、供給物のNOの存在/供給物からのNOの除去によって影響されないことを実証する。全体として、これらの結果は、アルミナ上に担持されたパラジウムと比較して、リッチパルスにかかわらず、パラジウム含有ゼオライトのはるかに高い安定性を示唆している。このより高い安定性は、本発明のシステムが第1の触媒コーティングを再生するためにリッチな第2のモードで動作するときにリッチ条件に耐えることができるので、そのような触媒が本発明の第2のコーティングとして使用されるときに特に有利であることに留意されたい。
【0066】
本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数の指示対象を含む。「含む(comprising)」という用語の使用は、そのような特徴を含むが他の特徴を除外しないものとして解釈されることが意図され、また、記載されたものに必然的に限定される特徴の選択肢を含むことが意図される。換言すれば、この用語はまた、文脈が明らかに他を示さない限り、「本質的に~からなる」(特定の更なる構成要素が、記載された特徴の本質的な特性に実質的に影響を及ぼさないという条件で存在し得ることを意味することが意図される)及び「~からなる」(構成要素がそれらの割合によるパーセンテージとして表された場合、任意の不可避不純物を考慮しながら、これらが合計して100%になるように、他の特徴が含まれ得ないことを意味することが意図される)の限定を含む。
【0067】
様々な要素、層、及び/又は部分を説明するために「第1」、「第2」などの用語が本明細書で使用される場合があるが、要素、層、及び/又は部分は、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、ある要素、層、又は部分を、別の又は更なる要素、層、又は部分と区別するためにのみ使用される。「上」という用語は、別の材料の「上」にあると言われるある材料の間に介在層が存在しないように、「直接上」を意味することが意図されることが理解されよう。ある要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明するための記載を容易にするために、「下(under)」、「下方(below)」、「真下(beneath)」、「下部(lower)」、「上(over)」、「上方(above)」、「上部(upper)」などの空間的に相対的な用語が本明細書で使用される場合がある。空間的に相対的な用語は、図に示された向きに加えて、使用中又は動作中のデバイスの異なる向きを包含することが意図されることが理解されよう。例えば、本明細書に記載のデバイスを反転させた場合、他の要素又は特徴の「下」又は「下方」であると記載された要素は、他の要素又は特徴の「上」又は「上方」に配向される。したがって、例示的な用語「下」は、上及び下の両方の向きを包含することができる。デバイスは、別の向きであってもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語は、それに応じて解釈される。
【0068】
前述の詳細な説明は、説明及び例示の目的で提供されており、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に示される現時点で好ましい実施形態の多くの変形例は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に留まる。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-05-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮天然ガス燃焼及び排気システムであって、
(i)天然ガス燃焼エンジンと、
(ii)排気処理システムと、を含み、前記排気処理システムが、前記燃焼エンジンから排気ガスを受け取るための吸気口、及び前記排気ガスを受け取り、処理するように配置された触媒物品を備え、前記触媒物品が、
少なくとも第1及び第2のコーティングを有する基材であって、前記第1のコーティングが、パラジウム含有アルミナ及び/又は卑金属含有アルミナを含み、前記第2のコーティングがパラジウム含有ゼオライトを含む、基材を含み、
前記第1のコーティングが、前記第2のコーティングの前に前記排気ガスに接触するように配置され、前記システムは、
(a)硫黄が前記第1のコーティング上に捕捉されるリーンな第1のモードと、
(b)硫黄が前記第1のコーティングから放出されるリッチな第2のモードとで、選択的に動作するように構成される、圧縮天然ガス燃焼及び排気システム。
【請求項2】
前記リッチな第2のモードの間、前記触媒物品によって受け取られる前記排気ガス中の酸素濃度が減少する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムは、前記触媒物品の上流にインジェクタを更に含み、前記インジェクタが、前記リッチな第2のモードでの前記システムの動作中に、1つ以上の炭化水素を前記排気ガス中に注入するように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記排気ガスの温度が、前記リーンな第1のモード及び前記リッチな第2のモードの間、実質的に同じままである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記リッチな第2のモードの間に、前記排気ガスの温度が上昇し、任意選択で、前記第1のリーンモードの間に、前記排気ガスの温度が750℃未満であり、前記リッチな第2のモードの間に、前記排気ガスの温度が800℃超に上昇する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1のコーティングが、ゾーン化された構成において前記第2のコーティングの上流に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記基材が入口端及び出口端を備え、任意選択で、前記第1のコーティングが前記基材の前記入口端から延在し、前記第2のコーティングが前記基材の前記出口端から延在する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1のコーティングが、前記基材の軸方向長さの20~80%、好ましくは60~80%に延在し、並びに/又は前記第2のコーティングが、前記基材の軸方向長さの20~80%、好ましくは20~40%に延在し、並びに/又は前記第1のコーティング及び前記第2のコーティングが共に前記基材を実質的に覆う、請求項6又は7に記載のシステム。
【請求項9】
前記第1のコーティング及び第2のゾーンが、前記基材の軸方向長さの少なくとも10%だけ重なり合う、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1のコーティングが、層状構成で前記第2のコーティング上に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1のコーティングが、前記基材上にウォッシュコートとして提供され、1~50g/ftのウォッシュコート担持量を有し、及び/又は前記第2のコーティングが、前記基材上にウォッシュコートとして提供され、1~50g/ftのウォッシュコート担持量を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムが、前記リッチな第2のモードの間に前記第1のコーティングから放出された硫黄を受け取るための硫黄トラップを前記触媒物品の下流に更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記第2のコーティングの下流のSOセンサと、前記センサによって閾値を上回る排気流のSOレベルが検出されると、前記リッチな第2のモードで動作するように前記システムを切り替えるように構成されたコントローラと、を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記基材が、フロースルー基材である、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記ゼオライトが少なくとも1500のSARを有し、及び/又は前記アルミナがガンマアルミナである、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
1サイクル中に、前記システムが、5分未満、好ましくは3分未満、より好ましくは1分以下の間、前記第2のリッチモードで動作し、10分超、好ましくは30分超、好ましくは60分以上の間、前記第1のリーンモードで動作するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
天然ガス燃焼エンジンからの排気ガスを処理するための方法であって、
前記排気ガスを排気処理システムの触媒物品と接触させることを含み、
前記触媒物品が、
少なくとも第1及び第2のコーティングを有する基材であって、前記第1のコーティングが、パラジウム含有アルミナ及び/又は卑金属含有アルミナを含み、前記第2のコーティングがパラジウム含有ゼオライトを含む、基材を含み、
前記第1のコーティングが、前記第2のコーティングの前に前記排気ガスに接触するように配置され、
前記方法は、硫黄が前記第1のコーティング上に捕捉されるリーンな第1のモードで前記排気システムを動作させることと、硫黄が前記第1のコーティングから放出されるリッチな第2のモードで前記排気システムを断続的に動作させることと、を更に含む、方法。
【国際調査報告】