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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】吸着体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20241108BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20241108BHJP
   B01D 53/02 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B01J20/22 A
B01J20/18 A
B01J20/20 A
B01J20/20 D
B01J20/20 E
B01J20/26 A
B01J20/28 Z
B01J20/30
B01D53/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529525
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2022082166
(87)【国際公開番号】W WO2023088982
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】21209144.1
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】2116675.6
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503421575
【氏名又は名称】ケンブリッジ エンタープライズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】バブ,ロビン
(72)【発明者】
【氏名】カムール, セレン
(72)【発明者】
【氏名】マッデン,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】フェアレン‐ヒメネス,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】マースデン, アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】スペンサー, グレアム
(72)【発明者】
【氏名】カーリントン, マーク
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA03
4D012CA20
4D012CG01
4D012CG02
4G066AA05B
4G066AA61B
4G066AB24B
4G066AC11B
4G066AC12D
4G066AC13D
4G066AC17D
4G066AC26D
4G066AC27D
4G066AC28D
4G066AC31D
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA24
4G066BA25
4G066BA26
4G066CA35
4G066CA38
4G066DA01
4G066FA03
4G066FA11
4G066FA21
4G066FA33
4G066FA34
4G066FA35
4G066FA37
4G066FA40
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、吸着体を製造する方法に関するものであり、方法は:(a)吸着剤材料を初期混合物と接触させて、第1の溶媒中で溶媒和した吸着剤混合物を形成するステップと;(b)第1の溶媒を除去し、第1の溶媒中で溶媒和した吸着剤混合物から第1の溶媒の少なくとも一部を除去して、初期吸着体を形成するステップと;(c)初期吸着体を第2の溶媒と接触させて、第2の溶媒中でバインダ低減吸着体を形成するステップと;(d)バインダ低減吸着体を溶媒乾燥させて、吸着体を形成するステップと、を含んでなる。本発明はさらに、吸着体、およびガス貯蔵における前記吸着体の使用法を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)吸着剤材料を初期混合物と接触させて、第1の溶媒中で溶媒和した吸着剤混合物を形成するステップであって、前記吸着剤材料が、金属有機構造体またはそれらの前駆体、共有結合有機構造体またはそれらの前駆体、ゼオライト類、活性炭、有機ケージ、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され、前記初期混合物が、ポリマー有機バインダおよび第1の溶媒を含んでなり、前記溶媒和した吸着剤混合物が、吸着剤材料、ポリマー有機バインダ、および第1の溶媒を含んでなり、前記ポリマー有機バインダが、前記吸着剤材料の表面に吸着され、前記第1の溶媒が、前記溶媒和した吸着剤混合物全体に分布する、ステップと;
(b)前記第1の溶媒中で溶媒和した吸着剤混合物から前記第1の溶媒の少なくとも一部を除去して、初期吸着体を形成するステップと;
(c)前記初期吸着体を前記第2溶媒と接触させて、バインダ低減吸着体を形成するステップであって、ステップ(c)の間に、少なくとも20wt%から80wt%の前記ポリマー有機バインダが、前記初期吸着体から除去されて前記第2溶媒に溶解し、前記バインダ低減吸着体が、吸着剤材料、ポリマー有機バインダ、第2の溶媒、および残留する第1の溶媒を含んでなり、前記ポリマー有機バインダが、前記吸着剤材料の表面に吸着され、前記第2の溶媒が、前記バインダ低減吸着体全体に分布する、ステップと;
(d)前記バインダ低減吸着体を溶媒乾燥させて吸着体を形成するステップと、
を含んでなる、吸着体を製造する方法であって、前記第1の溶媒中のポリマー有機バインダの溶解度が、前記第2の溶媒中のポリマー有機バインダの溶解度と同一またはそれより高い、方法。
【請求項2】
前記第1の溶媒中のポリマー有機バインダの溶解度が、前記第2の溶媒中のポリマー有機バインダの溶解度より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸着剤材料が、微粒子形態の金属有機構造体本体であり、前記溶媒和した吸着剤混合物中に存在するポリマー有機バインダに対する吸着剤材料の重量比が1:1から9:1の範囲である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着体中に存在するポリマー有機バインダに対する吸着剤材料の重量比が3:1より大きい、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着剤材料が、900nm未満の平均粒子サイズを有する微粒子形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(b)が、溶媒乾燥ステップ、または遠心分離および/もしくはろ過のステップに続く溶媒乾燥ステップを含んでなる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)における溶媒乾燥ステップが:
(i)50℃未満の温度で、5時間より長い時間の間、0.5barから1.0barの圧力で実行される低温乾燥ステップであって、前記第1の溶媒が100℃以下の沸点を有するステップ;
(ii)超臨界乾燥ステップ;
(iii)凍結乾燥ステップ;
(iv)50℃より高く200℃未満の温度で乾燥させるステップであって、前記第1の溶媒が100℃より高い沸点を有するステップ;および
(v)50℃より高い温度で乾燥させるステップであって、前記溶媒和した吸着剤混合物の上部空間において除去される前記第1の溶媒のガス濃度が、所与の乾燥温度でその飽和値の60%から95%の間に少なくとも1時間、維持されるステップ、
から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)の間に、前記初期吸着体が、10時間より長い時間の間、前記第2の溶媒と接触している、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記吸着剤材料が:
(i)Zr含有MOF;
(ii)ゼオライト・イミダゾラート構造体(Zeolite Imidazolate Frameworks)、Zn含有UTSA-16、CALF-15、CALF-20、ZnNi(NA)などのZn含有MOF;
(iii)MOF-74およびその誘導体;
(iv)Al系MOF;
(v)Fe系MOF;
(vi)M(F6-x)LファミリーのMOF;
(vii)Cu系MOF;
(viii)Co系MOF;
(ix)Cr系MOF;
(x)NbOFFIVEなどのNb系MOF;
(xi)Ni系MOF;
(xii)Mn系MOF;
(xiii)混合金属MOF;ならびに
(xiv)それらのいずれかの組み合わせ、
から選択される金属有機構造体(MOF)本体である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー有機バインダが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタート、ポリエチレンイミン、ポリイミド(PI)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルホルマール、ポリアクリル酸、ナトリウムポリアクリラート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(1,4-フェニレン-エーテル-エーテル-スルホン)(PFEES)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(テトラヒドロフラン)(PTHF)、ポリオレフィン、ポリアミド、キトサン、セルロースアセタート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、およびそれらのいずれかの組み合わせ、
から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の溶媒が、アルコール類およびグリコール類から選択され、前記第2の溶媒が、600Da未満の分子量を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記吸着体が:
(a)金属および金属塩のナノ粒子;
(b)酵素;
(c)磁性材料;
(d)染料および顔料;
(e)グラフェンおよび酸化グラフェン;ならびに
(f)それらのいずれかの組み合わせ、
から選択される材料を含んでなる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記吸着剤材料がAlフマラートまたはZrフマラートから選択され、前記ポリマー有機バインダがポリビニルアルコール、メチルセルロース、またはポリイミドから選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法にしたがって製造された吸着体。
【請求項15】
前記吸着剤材料が金属有機構造体(MOF)を含んでなる、請求項14に記載の吸着体であって:
(a)少なくとも50wt%の金属有機構造体(MOF)粒子と;
(b)5.0wt%から25wt%の有機ポリマーバインダと、
を含んでなり、
(i)0.3g/cmより大きいかさ密度と;
(ii)0.3より大きく1.2未満の相対密度と;
(iii)100m/gより大きいBET面積と;
(iv)N吸着によって測定される、総細孔体積の40%より大きいミクロ細孔率と;
(v)水銀ポロシメトリーで測定される15%未満のマクロ細孔率と、
を有する吸着体。
【請求項16】
ガス貯蔵、好ましくは二酸化炭素または水素の貯蔵において請求項14または15に記載の吸着体を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着体を製造する方法、吸着体(複数可)、および前記吸着体(複数可)の使用に関する。製造された吸着体は、堅牢で、摩耗に強く、高性能である。吸着体は、ガス貯蔵システム、そして特に、使用中に吸着体が移動および振動を受けるガス貯蔵システム、例えば、車両燃料タンクでの使用に好適である。吸着体は典型的には、高レベルのミクロ細孔率およびメソ細孔率と、比較的低レベルのマクロ細孔率とを有する所望の細孔率プロファイルを有しており、高表面積を有する高密度吸着体を提供する。
【背景技術】
【0002】
事実上すべての吸着剤材料は、微粉末として合成または形成され、自立性ではない。工業的方法において有用であるためには、これらの材料は典型的には、流体の流れおよび性能を低下させる圧縮およびチャンネリングなどの問題を回避するために、さらに大きい本体に形成される必要がある。このようなさらに大きい本体は、工業的に有用であるためには、機械的に堅牢で耐摩耗性である必要がある。
【0003】
このような微粉末をさらに大きい本体、例えばタブレットや押出成形品に形成する多くの工業的方法が存在しており、この形成は通常、高圧の印加もしくはバインダ材料の使用、またはそれら両方によってなされる。しかし、これらの方法は、吸着剤材料の吸着特性を低下させることが非常に多い。例えばタブレット形成方法でよく使用される高圧の印加は、吸着剤材料の内部細孔を破壊する可能性がある。これは、金属有機構造体(MOF)や共有結合有機構造体(COF)などの、さらに繊細な材料に特に関わってくる。内部細孔の崩壊を特に起こしやすい金属有機構造体(MOF)の例が、Zr-フマラートである。タブレットに形成するのが非常に難しいもうひとつのMOFがAl-フマラートであり、その結晶が小板状であることがその原因であると考えられている。この微結晶形態を相殺するのに必要な高圧は、内部細孔を崩壊させる傾向があり、吸着剤の能力を大きく失う傾向がある。処理中に単に高圧を印加することによって高密度の吸着体を実現することは、そうすることで吸着剤材料の内部細孔の著しい崩壊を生じるのであれば逆効果になり得る。
【0004】
タブレット形成の代替法が、バインダを用いた細孔性材料の押出しである。しかし、バインダの使用は別の問題をもたらす。アルミナなどの高レベルの微粒子状バインダは、本体内の吸着剤材料の量を低減させることによって、吸着体の性能を低下させる。溶液または液体として適用される高レベルのバインダは非常に典型的には、吸着剤材料の細孔を塞ぎ、性能を低下させる。しかし、低レベルのバインダが使用されるのであれば、吸着体の機械的堅牢性、例えば耐摩耗性は、典型的には、充分に高くはならない。
【0005】
理想的な吸着体は、高い吸着剤特性(通常、BET面積およびN吸着等温線によって測定される)と、物理的堅牢性、例えば耐摩耗性とを兼ね備えたものである。また、吸着体が、高密度と、高表面積および良好な吸着性能とを兼ね備えていれば、工業的に好ましい。高密度とは、低密度の吸着体と比較して、所与の工程要件に必要な本体の体積が少ないことを意味する。このことは、機器の小型化、軽量化、ひいては低価格化など、工業的に非常に大きな利点を有することができる。これらの要求は通常、相互に矛盾している。高表面積の吸着体は典型的には、低密度と関連している。
【0006】
吸着体内のMOFまたはCOFの内部細孔が処理中に崩壊してしまっているか否かは、典型的には、得られるMOF本体またはCOF本体の相対密度によって示される。
【0007】
相対密度は、MOFまたはCOF本体のかさ密度をMOFまたはCOFの結晶密度で割ったものとして定義される。MOFまたはCOFの結晶密度は、MOFまたはCOFの単結晶の理論密度である。非常に多くの結晶密度が計算されており、ケンブリッジ結晶構造データベース(Cambridge Structural Database)で入手可能である。
【0008】
異なるMOFまたはCOFは、その構造に応じて異なる結晶密度を有することができる。吸着体のかさ密度が結晶密度よりも大きい(すなわち、相対密度が>1)ならば、これは内部細孔の崩壊が原因である可能性が高い。相対密度が1より大きいほど、内部細孔が崩壊して吸着能力が低下していることになる。高い相対密度を制限することは、非効率的な内部細孔崩壊を回避するには必要である。しかし、吸着体の相対密度は典型的には、1よりずっと小さくしないことが望ましく、これは体積的に非効率的であるためである。非常に低い相対密度は典型的には、過剰なレベルの望ましくないさらに大きいマクロ細孔を示している。
【0009】
本出願全体を通して、ミクロ細孔(<2nmの直径)、メソ細孔(2nm~50nmの直径)およびマクロ細孔(>50nmの直径)のIUPAC定義が使用される。
【0010】
本体のかさ密度は、本体の重量(グラム単位)をそのかさ体積(cmの単位)で割ることによって測定することができる。かさ体積は、ASTM D3766において、「各片内の固体の体積と、各片の内部、すなわち、各片を完全に取り囲む密着した仮想的な包絡体内部の空隙の体積との総和に対する、粒子の質量の比」と定義されている。本体のかさ密度は、体積排除のアルキメデスの原理に基づく、後述する手法を用いて測定することができる。
【0011】
理想的な吸着体は、矛盾する要件に見える可能性のあるものを同時に満たすものであり得る。吸着体は堅牢で耐摩耗性であるのが望ましい。良好な吸着能力を有するには、高表面積を有するのが望ましい。吸着体は理想的には、所与の工程に必要な材料の体積を最小限にするよう、高い相対密度とかさ密度を有する必要がある。これらの要求は、相容れないように見えることが多い。例えば、高レベルの微粒子状バインダ(アルミナ類や粘土類など)が、堅牢性の面から要求されることが多いが、これは、本体中に存在する吸着剤材料の量の減少によって吸着体の吸着能力を低下させる。溶液または液体として適用される高レベルのバインダは、MOFなどの吸着剤材料の細孔を塞ぐ可能性があり、ひいては性能を低下させる可能性がある。しかし、低レベルのバインダを、特に要求の厳しい用途に使用する場合には、吸着体の機械的堅牢性は典型的には、充分に高いわけではない。
【0012】
本発明は、先行技術にともなうこれらおよび他の問題に少なくともある程度まで対処するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
よって、第1の態様では、本発明は:
(a)吸着剤材料を初期混合物と接触させて、第1の溶媒中で溶媒和した吸着剤混合物を形成するステップであって、吸着剤材料が、金属有機構造体またはそれらの前駆体、共有結合有機構造体またはそれらの前駆体、ゼオライト類、活性炭、有機ケージ、アルミニウムホルマート、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され、初期混合物が、ポリマー有機バインダおよび第1の溶媒を含んでなり、溶媒和した吸着剤混合物が、吸着材料、ポリマー有機バインダ、および第1の溶媒を含んでなり、ポリマー有機バインダが、吸着剤材料の表面に吸着され、第1の溶媒が、溶媒和した吸着剤混合物全体に分布するステップと;
(b)第1の溶媒中で溶媒和した吸着剤混合物から第1の溶媒の少なくとも一部を除去して、初期吸着体を形成するステップと;
(c)初期吸着体を第2の溶媒と接触させて、バインダ低減吸着体を形成するステップであって、ステップ(c)の間に、(初期吸着体中に初期に存在する)ポリマー有機バインダの20wt%から80wt%が初期吸着体から除去されて第2の溶媒に溶解し、バインダ低減吸着体が、吸着剤材料、ポリマー有機バインダ、第2の溶媒、および残留する第1の溶媒を含んでなり、ポリマー有機バインダが、吸着剤材料の表面に吸着され、第2の溶媒が、バインダ低減吸着体全体に分布するステップと;
(d)バインダ低減吸着体を溶媒乾燥させて吸着体を形成するステップと、
を含んでなる、吸着体を製造する方法であって、
第1の溶媒中のポリマー有機バインダの溶解度が、第2の溶媒中のポリマー有機バインダの溶解度と同一またはそれより高い、方法を提供する。
【0014】
本発明はまた、吸着体(複数可)、特に本発明の方法によって製造された吸着体(複数可)、および吸着に基づく方法(例えばガス貯蔵、特に二酸化炭素または水素の貯蔵)におけるそのような吸着体(複数可)の使用法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
吸着体を製造する方法
吸着体を製造する方法は:
(a)吸着剤材料を初期混合物と接触させて、第1の溶媒中で溶媒和した吸着剤混合物を形成するステップであって、吸着剤材料が、金属有機構造体またはそれらの前駆体、共有結合有機構造体またはそれらの前駆体、ゼオライト類、活性炭、有機ケージ、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択され、初期混合物が、ポリマー有機バインダおよび第1の溶媒を含んでなり、溶媒和した吸着剤混合物が、吸着剤材料、ポリマー有機バインダ、および第1の溶媒を含んでなり、ポリマー有機バインダが、吸着剤材料の表面に吸着され、第1の溶媒が、溶媒和した吸着剤混合物全体に分布するステップと;
(b)第1の溶媒中で溶媒和した吸着剤混合物から第1の溶媒の少なくとも一部を除去して、初期吸着体を形成するステップと;
(c)初期吸着体を第2溶媒と接触させて、バインダ低減吸着体を形成するステップであって、ステップ(c)の間に、初期に存在するポリマー有機バインダの20wt%から80wt%が初期吸着体から除去されて第2の溶媒に溶解し、バインダ低減吸着体が、吸着剤材料、ポリマー有機バインダ、第2の溶媒、および残留する第1の溶媒を含んでなり、ポリマー有機バインダが、吸着剤材料の表面に吸着され、第2の溶媒が、バインダ低減吸着体全体に分布するステップと;
(d)バインダ低減吸着体を溶媒乾燥させて吸着体を形成するステップと、
を含んでなり、
第1の溶媒中のポリマー有機バインダの溶解度が、第2の溶媒中のポリマー有機バインダの溶解度と同一またはそれより高い。
【0016】
方法の間、吸着剤材料は、第1の溶媒と接触させるのに先立って、ポリマー有機バインダと接触させ得る。
【0017】
吸着剤材料が、AlフマラートもしくはZrフマラート、またはUTSA-16、またはCPO-27、またはUiO-66、またはアルミニウムホルマート、またはNbOFFIVE、またはCALF-15、またはCALF-20、またはゼオライト-4A(Zeolite-4A)から選択されることが好ましいことがあり得る。ポリマー有機バインダが、ポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアセタート、またはポリイミド、またはポリアミド、またはポリビニルピロリドン、またはヒドロキシエチルセルロースもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはメチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、もしくはキサンタムガムなどのガムなどのバイオポリマー系材料、またはそれらの混合物から選択されることが好ましいことがあり得る。ポリマー有機バインダは、より疎水性であることが好ましいことがあり得る。ポリマー有機バインダ(複数可)が、水や溶媒の水性混合物に可溶性であるか、または非水性溶媒にのみ可溶性であれば、いくつかの実施形態では好ましいことがあり得る。いくつかの実施形態では、本質的に疎水性であるバインダ、よって典型的には水に高度には可溶性でないか、または不溶性でさえあるバインダを使用することが好ましいことがあり得る。
【0018】
明確化のため、MOFまたは他の吸着剤材料に言及があればこれは、配位子の誘導体を含むその材料の誘導体、および使用される金属イオンへの変更、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物を含む。例えば、CPO-27に言及があればこれは、CPO-27-Ni、CPO-27-Mg、および他の変形形態を含む可能性がある。
【0019】
溶媒和した吸着剤混合物を形成するステップ(a)
ステップ(a)は、吸着剤材料を初期混合物と接触させ、第1の溶媒中で溶媒和した吸着剤混合物を形成する。
【0020】
吸着剤材料は、以下にさらに詳述される。
【0021】
初期混合物は、ポリマー有機バインダおよび第1の溶媒を含んでなる。第1の溶媒は、単一溶媒を含んでなり得るか、または複数の溶媒の混合物を含んでなり得る。
【0022】
溶媒和した吸着剤混合物は、吸着剤材料と、ポリマー有機バインダと、第1の溶媒とを含んでなる。
【0023】
ステップ(a)の間、ポリマー有機バインダは吸着剤材料の表面に吸着される。
【0024】
ステップ(a)の間、第1の溶媒は、溶媒和した吸着剤混合物全体に分布する。
【0025】
ステップ(a)の間、第1の溶媒の一部分が、連続した液体媒体および/または分散媒体を提供し得る。本明細書では、有機バインダを表面に吸着させた吸着剤材料は、分散相を提供し得る。
【0026】
第1の溶媒は、「遊離溶媒」を含んでなり得る。本発明の目的にとっては、「遊離溶媒」は、吸着剤材料の粒子または本体の外部にある溶媒(第1または第2のもの)の部分である。遊離溶媒は、吸着剤材料の内部細孔内に吸着または保持されない。典型的には遊離溶媒は、遠心分離やデカンテーション、またはろ過などの工程によって少なくとも部分的に除去することができる。
【0027】
典型的には、第1の遊離溶媒は、吸着剤材料および周囲のマトリックスの一部を取り囲む第1の溶媒であって、遠心分離の後のデカンテーションまたはろ過などの物理的工程によって吸着剤材料から少なくとも部分的に分離することができるものである。
【0028】
ステップ(a)は、一つまたは複数の処理ステップを含んでなり得る。好適な処理ステップには:(i)濃縮ステップ、例えば、ろ過、沈降、および/または遠心分離によるものであって、少なくともなんらかの第1の溶媒、例えば遊離溶媒が、第1の溶媒中のさらに希薄な吸着剤材料の混合物から除去されるステップ;(ii)混合ステップ;(iii)押出しステップ;(iv)およびそれらのいずれかの組み合わせなどがある。
【0029】
ステップ(a)の間、吸着剤材料は、初期混合物との接触の前または後のいずれかにおいて、ろ液または沈殿物として回収され得る。吸着剤材料は、押出し成形、球状化、および/またはタブレット化され得るが、典型的には吸着剤材料は、ろ液または沈殿物として回収された後に、押出し成形される。ステップ(a)の間、吸着剤材料を押出し成形し、次いで球状化するのが好ましいことがあり得る。好適な押出し機器には、単軸または二軸押出し機、随意にダイフェースカッター(die-face cutter)、およびスフェロナイザー(spheroniser)などがある。好適な機器が、カレヴァ社(Caleva Ltd.)から供給されている。
【0030】
ステップ(a)の間、初期混合物は、吸着剤材料と第1の溶媒との混合物に粉末化ポリマーバインダを加えることによって形成され得る。
【0031】
初期吸着体を形成するステップ(b)
ステップ(b)は、第1の溶媒中の溶媒和した吸着剤混合物から第1の溶媒の少なくとも一部を除去して、初期吸着体を形成する。典型的には、ステップ(b)は、第1の遊離溶媒の除去、好ましくは実質的にその全ての除去を含む。典型的には、ステップ(b)における第1の溶媒の除去は、初期吸着体の硬化を伴うが、これは、第1の溶媒、特に第1の遊離溶媒が可塑剤および潤滑剤として作用し、よって初期吸着体を軟化させることになるからである。溶媒和した吸着剤混合物に吸着剤粉末を加えることによって、ステップ(b)の間に第1の溶媒を低減させることもできる。吸着剤粉末は、第1の溶媒、特に第1の遊離溶媒の一部をそれ自体の内部細孔に吸着させることができ、ひいては遊離している第1の溶媒の量を低減させる。これにより、処理を単純化することができる。
【0032】
ステップ(b)は:
(i)50℃未満の温度で、5時間より長い時間の間、0.5barから1.0barの圧力で実行される低温乾燥ステップであって、第1の溶媒が100℃以下の沸点を有する、ステップ;
(ii)超臨界乾燥ステップ;
(iii)凍結乾燥ステップ;
(iv)50℃より高く200℃未満の温度で乾燥させるステップであって、第1の溶媒が100℃より高い沸点を有する、ステップ;および
(v)50℃より高い温度で乾燥させるステップであって、溶媒和した吸着剤混合物の上部空間において除去されている第1の溶媒のガス濃度が、少なくとも1時間、所与の乾燥温度でその飽和値の60%と95%の間に維持されるステップ、
から選択することができる。
【0033】
好ましくは、ステップ(b)は、遠心分離および/またはろ過のステップに続く溶媒乾燥ステップを含んでなる。ステップ(b)は、溶媒乾燥ステップのみを含んでなるものとすることもできる。
【0034】
典型的には、ステップ(b)は、温和な条件下で実行される。ステップ(b)の条件は、使用される第1の溶媒の種類に依存し得る。揮発性の低い第1の溶媒は、揮発性の高い第1の溶媒よりも高温で乾燥させることができる。乾燥の間、接触している固体を引っ張る乾燥用液体の表面張力は、好ましくは最小化される。急激な乾燥は望ましくなく、吸着体を形成する際の吸着剤材料の密で一貫した充填に影響を及ぼし得る。ステップ(b)の間の乾燥速度を低減させることが好ましい。
【0035】
ステップ(b)では、マイクロ波乾燥を含め、いずれの好適な熱源をも使用することができる。
【0036】
ステップ(b)はまた、ステップ(c)に先だって初期吸着体のサイズを低減させるサイズ低減ステップを含むこともできる。このようなサイズ低減ステップ、例えば切削ミルを使用するものは、さらに小さい初期吸着体、例えば2mm未満の直径または1mm未満の直径さえ有する本体を製造することができ、これらの初期吸収体によって、後に続くステップを加速させることができる。
【0037】
バインダ低減吸着体を形成するステップ(c)
ステップ(c)は、初期吸着体を第2の溶媒と接触させて、バインダ低減吸着体および第2の溶媒を形成する。典型的には、第2の溶媒は、遊離溶媒、例えば第2の遊離溶媒を含んでなる。
【0038】
ここで、第2の遊離溶媒は、初期吸着体を取り囲む第2の溶媒である。典型的には、溶解したポリマー有機バインダ材料は、初期吸着体から第2の溶媒(第2の遊離溶媒)中に拡散して出ていく。ポリマー有機バインダの溶解度は、第1の溶媒中よりも第2の溶媒中で低ければ、好ましい。
【0039】
第2の遊離溶媒は典型的には、初期吸着体の外部にある、そして周囲のマトリックスの一部を含んでなる、第2の溶媒を指す。典型的には、第2の遊離溶媒は、ろ過の工程によって容易に除去することができる。
【0040】
ステップ(c)の間、ポリマー有機バインダの少なくとも20wt%から80wt%が、初期吸着体から除去されて第2の溶媒に溶解する。典型的には、除去されたポリマーバインダの量は、本明細書に記載されるとおり、熱重量分析を用いて評価され得る。
【0041】
理論に拘束されることを望むものではないが、ステップ(c)の間の初期吸着体からのポリマー有機バインダの除去では、最も接近しやすいポリマー有機バインダが除去されると考えられ、このバインダは、吸着剤材料を一つに結合することに最も関与しないものであり、むしろバインダ低減吸着体中の吸着剤材料の細孔を塞ぐ可能性の最も高いものである。
【0042】
ステップ(c)の間、第2の溶媒は、バインダ低減吸着体全体に分布する。
【0043】
好ましくは、ステップ(c)の間、初期吸着体は、10時間より長い、または15時間より長い、または20時間より長い、または25時間より長い、または30時間より長い、または50時間より長い、または96時間より長い時間の間でさえ、第2の溶媒と接触している。
【0044】
理論に拘束されることを望むものではないが、初期吸着体を第2の溶媒と接触させることで、初期吸着体の外表面からポリマー有機バインダの一部が溶解する。本発明者らは、吸着剤材料に最も密に接触しているポリマー有機バインダが最も接近しづらいので、最もゆっくり溶解すると考えている。あとに残されたポリマー有機バインダは、吸着剤材料粒子同士を結合するのに最も効果的であると考えられる。このようにして、ステップ(c)は、初期吸着体のいずれかの細孔を塞いでいる可能性の最も高いポリマー有機バインダを除去する。ステップ(c)はまた、初期吸着体からいずれかの残留反応物を除去し得る。ステップ(c)は、1回のステップで多量の第2の溶媒を使用するのではなく、定期的にもっと少量の第2の溶媒を交換する数回のステップで行われ得る。このことは、ポリマーバインダを初期吸着体から除去する速度を制御することによりマクロ細孔率を制限することにおいて、利点を有することができる。例えば、本発明の例1では、メタノール(第2の溶媒)を12時間ごとに交換すると、初期吸着体を85mlのメタノールに同じ合計時間の間、加えるのに比べて、さらに有利であることが見出された。
【0045】
ステップ(c)の間、第2の溶媒中のポリマー有機バインダの溶解度は高くなくてもよい。ステップ(c)の目的は、初期吸着体からポリマー有機バインダを全て除去することではない。
【0046】
吸着体を形成するステップ(d)
ステップ(d)は、バインダ低減吸着体を溶媒乾燥させて吸着体を形成する。これは、一回または複数回の工程ステップにわたって行われるものとすることができ、典型的には、吸着剤材料の内部細孔内から残留溶媒を除去するようにさらに高い温度(例えば、>100℃)を伴う。
【0047】
吸着体
吸着体は、吸着剤材料とポリマー有機バインダとを含んでなる。
【0048】
典型的には、吸着体中に存在するポリマー有機バインダに対する吸着剤材料の重量比は、1:1から25:1、または2:1から20:1、または4:1から15:1でさえある。吸着体中に存在するポリマー有機バインダに対する吸着剤材料の重量比が5:1より大きいことが好ましいことがあり得る。これらのレベルのポリマー有機バインダは、本発明の吸着体に良好な機械的堅牢性を与えるのに充分である。
【0049】
吸着体は:
(a)金属および金属塩のナノ粒子;
(b)酵素;
(c)磁性材料;
(d)染料および顔料;
(e)グラフェン;および
(f)それらのいずれかの組み合わせ、
から選択される材料を含んでなり得る。
【0050】
好適なナノ粒子には、Pd、Au、Ru、Rh、Pt、Fe、Sn、Zn、Ti、Pd、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される金属および金属酸化物ナノ粒子などがある。ナノ粒子は、光活性、例えば光触媒活性を有するものとすることができる。光活性ナノ粒子は、ペロブスカイト、具体的にはハロゲンペロブスカイトなどとすることができる。ナノ粒子は吸着体に埋め込むことができ、この場合には、吸着剤粒子同士の結合を支援し得るか、または吸着剤材料の粒子内に捕捉され得る。いずれかのナノ粒子が存在するならば、吸着体中のそのレベルは通常、吸着体の0.15体積%未満である。好適なナノ粒子は典型的には、200nm未満の重量平均粒子サイズを有する。
【0051】
加えられるこれらの材料は典型的には、ステップ(d)の前に加えられ、典型的にはステップ(a)の間に加えられる。ナノ粒子などの材料は好ましくは、吸着剤材料の合成中に吸着剤材料粒子に組み込まれる。
【0052】
吸着体は、使用前に吸着体のサイズを低減させるためにサイズ低減ステップに通すことができる。このようなサイズ低減ステップ、例えば切削ミルを使用するものは、さらに小さい吸着体、例えば2mm未満の直径または1mm未満の直径さえ有する本体を製造することができる。
【0053】
金属有機構造体(MOF)吸着体
上記工程により製造されたMOF吸着体は、典型的には以下の特性を有する。理論に拘束されることを望むものではないが、初期吸着体からバインダが部分的に除去される結果、ミクロ細孔およびメソ細孔のレベルが高まり、マクロ細孔率のレベルが低下するという好ましい細孔率プロファイルが得られると考えられる。よって、それらの吸着体を製造することは、ガス貯蔵に特に好適である。他の工程では、結果として典型的には、マクロ細孔のレベルが高くなり、その結果、密度が低くなる。
【0054】
よって、さらなる態様では、本発明は、好ましくは、本明細書に記載される方法(複数可)にしたがって製造される吸着体を提供し、吸着剤材料は、金属有機構造体(MOF)を含んでなり、吸着体は:
(a)少なくとも50wt%の金属有機構造体(MOF)粒子と;
(b)5.0wt%から25wt%の有機ポリマーバインダと、
を含んでなり、
吸着体は:
(i)0.3g/cmより大きいかさ密度と;
(ii)0.3より大きく1.2未満の相対密度と;
(iii)100m/gより大きいBET面積と;
(iv)N吸着によって測定される、総細孔体積の40%より大きいミクロ細孔率と;
(v)水銀圧入ポロシメトリーで測定される15%未満のマクロ細孔率と、を有する。
【0055】
吸着体は、100m/gより大きい、または200m/gより大きい、または300m/gより大きい、または400m/gより大きい、または700m/gより大きいBET面積を有することができる。吸着体のBET面積は、2000m/gまで高くすることができる。
【0056】
吸着体のマクロ細孔は、好ましくは吸着体の15%未満を含んでなる。好ましくは、マクロ細孔率は、水銀圧入ポロシメトリーによって測定されるかさ体積の12%未満、または10%未満、または7%未満、または5%未満でさえある。
【0057】
本発明の目的のために、そしてIUPAC定義にしたがって、ミクロ細孔は2nm未満の直径を有し、メソ細孔は2nmから50nmの直径を有し、マクロ細孔は50nmより大きい直径を有する。
【0058】
吸着剤材料
吸着剤材料は、金属有機構造体(MOF)またはそれらの前駆体、共有結合有機構造体(COF)またはそれらの前駆体、ゼオライト類、活性炭、有機ケージ、アルミニウムホルマート、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される。好ましくは、吸着剤材料は、金属有機構造体(MOF)もしくはその前駆体、またはそれらのいずれかの組み合わせ、または共有結合有機構造体(COF)もしくはその前駆体、またはそれらのいずれかの組み合わせである。より好ましくは、吸着剤材料は金属有機構造体(MOF)である。吸着剤材料は、二種類以上の金属有機構造体(MOF)の組み合わせとすることができる。
【0059】
吸着剤材料は、微粒子形態の金属有機構造体本体であり得る。吸着剤材料が、微粒子形態の金属有機構造体本体である場合には、溶媒和した吸着剤混合物中に存在するポリマー有機バインダに対する吸着剤材料の重量比は、1:1から10:1の範囲であることが好ましいことがあり得る。
【0060】
好ましくは、吸着剤材料は微粒子形態である。吸着剤材料は、ゲルまたはスラリー中に分散させることができる。より好ましくは、吸着剤材料は、900nm未満の平均粒子サイズを有する微粒子形態である。好ましくは、吸着剤微粒子材料のSAXS粒子サイズ分布は単峰性である。しかし、吸着剤微粒子材料のSAXS粒子サイズ分布は双峰性であり得る。単峰性によって、典型的には、吸着剤材料のサイズが一つのピークを有する一つの分布を含んでなることが企図される。吸着剤材料が単峰性の粒子サイズ分布を確実に有するようにすることによって、吸着剤材料をさらに密に充填することができると考えられ、高密度を有する吸着体の形成が可能になる。
【0061】
好ましくは、吸着剤材料は微結晶の形態である。
【0062】
好ましくは、吸着剤材料は、小さい粒子サイズを有しており、好ましくは5nmから900nm、または10nmから800nm、または12nmから700nm、または15nmから500nmの重量平均粒子サイズを有する。粒子サイズの測定方法を、以下にさらに詳述する。吸着剤材料の粒子サイズは、材料を吸着体に形成すると、好ましくは、後述するとおりXRD法を使用して測定される。しかし、吸着剤材料の粒子サイズは、スラリーの形態である場合には、ステップ(a)に先だって測定することもできる。この場合には、粒子サイズを測定する動的光散乱法を使用する必要がある。
【0063】
結果が一貫しない場合には、吸着体のXRD試験が最も適している。
【0064】
吸着剤材料の粒子サイズ制御は、高品質の一貫した吸着体を確実に形成するために重要であると考えられる。粒子が大きすぎると、これは、密度の劣悪な(低い)プロファイルおよび/または堅牢性の劣悪な吸着体の形成につながる可能性がある。
【0065】
好ましくは、吸着剤材料は:
(i)Zr含有MOF;
(ii)ゼオライト・イミダゾラート構造体(Zeolite Imidazolate Frameworks)、Zn含有UTSA-16、CALF-15、およびCALF-20などのZn含有MOF。
(iii)MOF-74、MOF-274、およびそれらの誘導体;
(iv)Al系MOF;
(v)Fe系MOF;
(vi)M(F6-x)LファミリーのMOF;
(vii)Cu系MOF;
(viii)Co-UTSA-16を含むCo系MOF;
(ix)Cr系MOF
(x)Nb系MOF;
(xi)Ni系MOF;
(xii)Mn系MOF;
(xiii)混合金属MOF;ならびに
(xiv)それらのいずれかの組み合わせ、
から選択される金属有機構造体(MOF)本体である。
【0066】
好適なZr含有MOFには、UiO-66、UiO-67、UiO-68、NU-1000、PCN-222、MOF-808、およびZr-フマラートなどがある。
【0067】
好適なZIFモノリス類には、ZIF-8、ZIF-67、ZIF-71、およびZIF-90などがある。
【0068】
好適なMOF-74s誘導体には、Mn、Ni、Co、Cu、およびZn変形形態などがある。
【0069】
好適なAl系MOFには、Al-フマラート、MIL-53、CAU-10、MIL-160(Al)、およびAl-soc-MOF-1などがある。
【0070】
好適なCr系MOFには、MIL-101(Cr)などがある。
【0071】
M(F6-x)Lファミリーの好適なMOFには、SIFSIX-3-Ni、TIFSIX-3-Ni、NbOFFIVE-1-Ni、およびSIFSIX-2-Cu-iなどがある。
【0072】
好適なCu系MOFには、HKUST-1、およびROS-17などがある。
【0073】
好適なCo系MOFには、コバルト系UTSA-16、およびその誘導体などがある。
【0074】
好適なFe系MOFには、MIL-100(Fe)、およびMIL-101(Fe)などがある。
【0075】
MOF本体を含んでなる好適な吸着体は:
(i)MOFが、UiO-66、および/もしくはその誘導体例えばUiO-66-NHから選択され、有機ポリマーバインダが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリイミド、ポリアミド、メチルセルロース、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される;または
(ii)MOF化合物が、ZIF-8、および/もしくはその誘導体から選択され、有機ポリマーバインダが、PVA、メチルセルロース、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される;または
(iii)MOFが、Al-フマラート、および/もしくはその誘導体から選択され、有機ポリマーバインダが、PVA、ポリアミド、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される;または
(iv)MOFが、Zr-フマラート、および/もしくはその誘導体から選択され、有機ポリマーバインダがPVAである;または
(v)MOFが、Co UTSA-16またはZn UTSA-16、および/またはその誘導体であり、有機ポリマーバインダが、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアミド、メチルセルロース、およびそれらのいずれかの組み合わせから選択される、
本体などとすることができる。
【0076】
好適な混合金属MOFには、Fe、Ti、およびZnから選択される二種類以上の金属の混合物系のMOFなどがある。
【0077】
好適なMOFは、同一金属イオンに結合した少なくとも二種類の化学的にはっきりと異なる有機配位子を含んでなる混合配位子または共微結晶MOFを、含んでなるものとすることができる。この特徴は、MOFの化学的挙動を調整するのに役立てることができる。
【0078】
二種類の化学的にはっきりと異なる有機配位子は、化学的類似体であるのが好ましいことがあり得る。化学的類似体によって、配位子の構造的側面、具体的には、金属イオンへの結合に関与する部分と同様に骨格が同一であることが企図される。
【0079】
特に好ましい特徴は、化学的にはっきりと異なる有機配位子が、同一骨格構造を有するが骨格構造の官能基化に起因して互いに異なるような、化学的類似体であるということである。異なる有機配位子アニオンが、金属イオンにいかにして結合するかということについて構造的に類似しているということは、特定のMOFの変形形態を形成できるということを意味している。有機配位子の非類似性が大きすぎるならば、MOFは非晶質または欠陥だらけであり得る。
【0080】
例えば、多くのMOFは、それらの有機配位子としてジカルボン酸を有する。各カルボン酸基は、金属イオンとの結合に関与する。骨格構造は、二つのカルボン酸結合基の間の構造を指す。
【0081】
骨格構造の寸法は、金属イオンと結合する有機配位子によって形成される細孔の寸法を決定する。化学的な違いは、骨格構造に取り付いた官能性ペンダント基に由来する。
【0082】
代表的な例を以下に示す。これらの場合には、骨格構造は(脱プロトン化)テレフタル酸(A)である。
【0083】
【化1】

【0084】
さらなる代表的な例を以下に説明する。二種類の代表的な化学類似体が、テレフタル酸(CAS 100-21-0)および2-アミノテレフタル酸(CAS 10312-55-7)である。テレフタル酸の他の代表的な類似体には、2-ブロモテレフタル酸(CAS 586-35-6)、2-ニトロテレフタル酸(CAS 610-29-7)、トリメリット酸(CAS 528-44-9)、および2-ヒドロキシテレフタル酸(CAS 636-94-2)などがある。
【0085】
このような化学類似体の使用によって、可変的な化学的特性を有する特定のMOFを製造することが可能になる。また、二種類の化学的にはっきりと異なる有機配位子が、異なる骨格構造を含んでなることが好ましいことがあり得る。異なる骨格構造を有する有機配位子の使用によって、MOFの構造が不完全であるモノリス本体に「欠陥」を導入可能にできる、またはより複雑なMOF構造を可能にできる。これらの欠陥によって、状況によっては細孔率を増加させることができる。
【0086】
好ましくは、第2の有機配位子に対する第1の有機配位子のモル比は、1:2より大きい。より好ましくは、第2の有機配位子に対する第1の有機配位子のモル比は、1:3より大きい。このような比は、このような共微結晶から製造されるモノリス類の物理的特性および/または化学的性質を改良するのに有効である。
【0087】
吸着剤材料の混合物を含んでなる吸着体は、ポリマー有機バインダを加えるのに先立って、異なる吸着剤材料を一緒に混合することによって調製することができる。
【0088】
好適なMOF吸着体は、異なる配位子を用いて製造されたMOF微結晶の混合物を含んでなるものとすることができる。例えば、好適なUiO-66系MOFは、UiO-66 BDCとUiO-66 BDC-NHとの混合物を含んでなるものとすることができる。
【0089】
本発明とともに使用するのに好適なCOFには、イミン結合COFおよび/またはヒドラゾン結合COFなどがある。したがって、吸着体は、イミン結合COFおよび/またはヒドラゾン結合COFを含んでなり得る。
【0090】
イミン結合COFの例には、3D-COOH-COF、3D-COOH-COF、3D-CuPor-COF、3D-CuPor-COF-0P、3D-OH-COF、3D-Por-COF、3D-Por-COF-0P、3D-Py-COF、3D-Py-COF-2P、4PE-1P、4PE-1P-oxi、4PE-2P、4PE-3P、4PE-TT、BF-COF-1、BF-COF-2、BW-COF-AA、BW-COF-AB、CCOF-1、CCOF-2、CC-TAPH-COF、COF-112、COF-300、COF-320、COF-366-Co、COF-366-F4-Co、COF-366-F-Co、COF-366、COF-366-(Ome)2-Co、COF-505、COF-AA-H、COFBTA-PDA、COF-DL229、COF-LZU1、COF-SDU1、COF-TpAzo、CuP-Ph COF、CuP-TFPh COF、DAAQ-TFP COF、DABQ-TFP-COF、DAQ-TFP COF、DaTP、DhaTab、2,3-DhaTab、2,5-DhaTab、2,3-DhaTph、2,5-DhaTph、2,3-DhaTta、2,3-DmaTph、DMTA-TPB1/2’、DMTA-TPB1/3’、DMTA-TPB1/4’、DMTA-TPB1/5’、DMTA-TPB2、DMTA-TPB3、DMTA-TPB4、EB-COF:Br、EB-COF:Cl、EB-COF:F、EB-COF:I、FL-COF-1、HAT-COF、HAT-NTBA-COF、HBC-COF、HB-COF-AA、HB-COF-AB、HCC-H2P-COF、HO2C-H2P-COF、SIOC-COF-5、SIOC-COF-6、SIOC-COF-7、TAPB-BMTTPA-COF、TAPB-PDA COF、TAPB-TFP、TAPB-TFPB、Tb-DANT-COF、TBI-COF、TDFP-1、TEMPO-COF、TFB-COF、TfBD、TfpBDH、TH-COF-1、Thio-COF、TPA-COF-1、TPA-COF-2、TpBD、TpBD-2NO2、TP-BDDA-COF、TpBDH、TPBD-ME2、TPB-DMTP-COF、TpBD-NH2、TpBD-NHCOCH3、TpBD-NO2、TpBD-(OMe)2、TpBPy、TP-COF-BZ、TP-COF-DAB、Tp-DANT-COF、TPE-COF-I、TPE-COF-II、TPE-COF-III、TPE-COF-IV、TP-EDDA-COF、TpMA、TpPa-1、TpPa-2、TpPa-F4、TpPa-NO2、TpPa-Py、TpPa-SO3H、TpPa-SO3H-Py、Tp-Stb、TPT-COF-1、TPT-COF-2、TpTD、TpTG-Br、TpTG-Cl、TpTG-I、TpPa-1-F2、Tp-Ttba、TRIPTA、TTF-COF、TTF-Py-COF、TTI-COF、TzDa、Tp-Azo、HPB-COF、ILCOF-1-AA、ILCOF-1-AB、iPrTAPB-TFP、iPrTAPB-TFPB、LZU-301、LZU-301-sol、LZU-70、LZU-72、LZU-76、N3-COF、NN-TAPH-COF、NS-COF、NUS-10、NUS-14、NUS-15、NUS-9、HO-H2P-COF、OH-TAPH-COF、PC-COF、PI-2-COF、PI-3-COF、Por-COF、Py-1P COF、Py-1PF COF、Py-2,2’-BPyPh-COF、Py-2,3-BPyPh-COF、Py-2,3-DHPh-COF、Py-2PE COF、Py-3PEBTD COF、Py-3PE COF、Py-An COF、Py-DHPh COF、PyTTA-BFBIm-iCOF、RT-COF-1、SA-COF、Salen-COF、SB-PORPy、SIOC-COF-3-AB、およびSIOC-COF-4-ABなどが挙げられる。
【0091】
ヒドラゾン結合COFの例には、COF-42-bnn、COF-42-gra、COF-43-bnn、COF-43-gra、COF-ASB、COF-LZU8、CPF-1、CPF-2、およびTFPT-COFなどが挙げられる。
【0092】
好適なゼオライト類には、化学式NaAlSi96192・16HO(0<n<27)を有するアルミノシリカートゼオライト類などがある。この化学式を有するアルミノシリカートゼオライト類には、Zeolite Socony Mobil-5、またはZSM-5として商業的に知られ広く使用されている触媒ゼオライトなどがある。または各ゼオライト本体は、約50:1から約120:1、好ましくは約80:1から約100:1のSiO:Al比を有し得る。一般的に使用されるアルミノシリカートゼオライト類には、タイプA、タイプX、およびタイプYゼオライト類などがある。
【0093】
他のタイプのゼオライト、例えばチタンシリカート(例えばTS-1)または純粋なケイ酸質(例えばSilicalite-1)ゼオライトもまた好適である。
【0094】
初期混合物
初期混合物は、ポリマー有機バインダと第1の溶媒とを含んでなる。
【0095】
第1の溶媒に対するポリマー有機バインダの典型的な重量比は、1:50から1:4、または1:2の範囲でさえある。初期混合物は典型的には、ポリマー有機バインダを第1の溶媒に溶解または分散させることにより形成され、これは、高温で強くかく拌しながら行われることが多い。初期混合物が高濃度でありすぎるならば、吸着剤材料とうまく混合され得ない。これが希薄すぎるならば、第1の溶媒が無駄になり、吸着剤材料の表面へのポリマー有機バインダの堆積効率が制限される可能性がある。初期混合物は、吸着剤材料との接触に先だって、またはそれとの接触と同時に、形成することができる。しかし、混合均一性、および吸着剤材料粒子とバインダ材料との接触を最大にするために、初期混合物は、吸着剤材料との接触に先だって形成されることが好ましい。
【0096】
ポリマー有機バインダ
第1の溶媒中のポリマー有機バインダの溶解度は、第2の溶媒中のポリマー有機バインダの溶解度と同一またはそれより高い。好ましくは、第1の溶媒中のポリマー有機バインダの溶解度は、第2の溶媒中のポリマー有機バインダの溶解度より高い。
【0097】
好ましくは、ポリマー有機バインダは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセタート、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリイミド(PI)、ポリビニルホルマール、ポリアクリル酸およびその塩、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(1,4-フェニレン-エーテル-エーテル-スルホン)(PFEES)、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリ(テトラヒドロフラン)(PTHF)、ポリオレフィン類、ポリアミド、キトサン、セルロースアセタート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、ならびにそれらのいずれかの組み合わせから選択される。好ましいバインダ混合物は、PVAと、セルロース系ポリマー、特にヒドロキシエチルセルロースまたはメチルセルロースとを含んでなる。
【0098】
遊離溶媒
用語「遊離溶媒」は、吸着剤材料の粒子または本体の外部にある溶媒を指す。遊離溶媒は、吸着剤材料の内部細孔内には吸着されない。典型的には、遊離溶媒は、遠心分離およびデカンテーションなどの工程によって、またはろ過によって、少なくとも部分的に除去することができる。
【0099】
第1の溶媒
第1の溶媒は、第2の溶媒と化学的に同一であってもよいし、化学的に異なっていてもよい。好ましくは、第1の溶媒は、第2の溶媒とは化学的に異なる。好ましい第1の溶媒は、水(極性プロトン性溶媒)またはジメチルスルホキシド(DMSO;極性非プロトン性溶媒)である。ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMS)、およびN-メチル-2-ピロリドンなど他の極性非プロトン性溶媒もまた好ましい。他の第1の溶媒には、アルコール類、グリコール類、アセトン、および蒸留パラフィンオイル、ならびにそれらの混合物などがあり得る。
【0100】
溶媒和した吸着剤混合物
溶媒和した吸着剤混合物は、吸着剤材料と、ポリマー有機バインダと、第1の溶媒とを含んでなり、ポリマー有機バインダは、吸着剤材料の表面に吸着され、第1の溶媒は、溶媒和した吸着剤混合物全体に分布する。溶媒和した吸着剤混合物は、いずれかの以前の工程ステップ、例えば吸着剤材料の合成および洗浄に由来する、残留反応物および溶媒を含み得る。
【0101】
溶媒和した吸着剤混合物は、吸着剤材料と、ポリマー有機バインダと、第1の溶媒とを含んでなる。典型的には、溶媒和した吸着剤材料は、0.75:1から12.5:1、または1:1から9:1、または2:1から6:1の重量比で吸着剤材料とポリマー有機バインダとを含んでなる。
【0102】
第1の遊離溶媒
典型的には、第1の遊離溶媒は、吸着剤材料を取り囲む第1の溶媒であり、周囲のマトリックスの一部である。これは、吸着剤材料の細孔内に吸着している第1の溶媒ではない。遊離溶媒は典型的には、遠心分離に続くデカンテーションまたはろ過などの物理的工程によって吸着剤材料から少なくとも部分的に分離され得る。
【0103】
初期吸着体
典型的には、初期吸着体は、ポリマー有機バインダと、吸着剤材料と、いずれかの残留する第1の溶媒とを含んでなる。初期吸着体はまた、残留反応物を含んでなり得る。典型的には、溶液中のいずれかのポリマーが、溶液中に留まるのではなく吸着剤材料の表面に堆積するのが熱力学的に有利である。
【0104】
典型的には、初期吸着体は、吸着剤材料に対するポリマー有機バインダの比が高く、典型的には機械的に非常に堅牢であるが、細孔の閉塞に起因して吸着能力が乏しい。ポリマー有機バインダに対する吸着剤材料の重量比は、1:1から12:1、例えば10:1の範囲とすることができる。
【0105】
第2の溶媒
第2の溶媒は、第1の溶媒と化学的に同一であってもよいし、化学的に異なっていてもよい。好ましくは、第2の溶媒は、第1の溶媒と化学的に異なる。第2の溶媒は、第1の溶媒を含んでなる混合物を含め、溶媒の混合物を含んでなるものとすることができる。第2の溶媒は、第1の溶媒と同一とすることができるが、溶媒中のポリマーバインダの溶解度を低減させるように、さらに低い温度または異なる温度とすることができる。第2の溶媒中のバインダの溶解度は、第1の溶媒中の溶解度より低くなければならない。
【0106】
好ましくは、第2の溶媒は、アルコール類およびグリコール類から選択される。好ましくは、第2の溶媒は、600Da未満の分子量を有する。より好ましくは、第2の溶媒は、600Da未満の分子量を有し、アルコール類およびグリコール類から選択される。特に好ましい第2の溶媒は、メタノールおよびエタノールである。典型的には、最高40%までの別の溶媒を第2の溶媒に加えることができる。例えば、メタノールと水の90:10混合物を第2の溶媒として使用することができる。
【0107】
バインダ低減吸着体
バインダ低減吸着体は、吸着剤材料と、ポリマー有機バインダと、第2の溶媒と、残留する第1の溶媒とを含んでなる。
【0108】
典型的には、バインダ低減吸着体中の吸着剤材料に対するポリマー有機バインダの重量比は、初期吸着体中の吸着剤材料に対するポリマー有機バインダの比より低い。典型的には、顕著な割合のポリマー有機バインダを、例えば吸着剤材料の表面から除去し、利用可能な表面積を顕著に増加させることが必要である。表面積に有益な効果を有するためには、さらに高いバインダに対する吸着剤材料比であってさえ、存在するポリマー有機バインダの少なくとも20wt%を除去することが、典型的には必要である。存在するポリマー有機バインダの少なくとも30wt%、または少なくとも40wt%、または少なくとも50wt%でさえも除去することが好ましいことがあり得る。存在するポリマー有機バインダの20wt%から80wt%、または30wt%から80wt%、または40wt%から80wt%、または50wt%から80wt%を除去するのが好ましいことがあり得る。
【0109】
第2の遊離溶媒
第2の遊離溶媒は、初期吸着体を取り囲む第2の溶媒である。典型的には、溶解したポリマー有機バインダ材料は、初期吸着体から、遊離した第2の溶媒中に拡散する。ポリマー有機バインダの溶解度が、第1の溶媒中より第2の溶媒中で低ければ好ましい。
【0110】
第2の遊離溶媒は典型的には、初期吸着体の外部にある、そして周囲のマトリックスの一部を含んでなる、第2の溶媒を指す。典型的には、第2の遊離溶媒は、ろ過の工程によって、または第2の溶媒から吸着体を除去するだけで、容易に除去することができる。
【0111】
試験方法
XRDによる平均粒子サイズ測定
nNi
吸着体中の吸着剤材料の重量平均粒子サイズは、X線回折(XRD)により測定することができる。吸着体を構成する吸着剤材料の重量平均粒子サイズは、回折ピークの半値全幅(FWHM)の測定から粒子サイズを計算するシェラー(Scherrer)の式を使用してX線回折によって決定することができる。吸着剤材料粒子は、その形状が非常に等方的であることが多く、微結晶成長に好ましい単一の方位がないので、反射のどれを使用するかは決定的ではないが、一貫性のために(0 1 0)反射が使用され、K値は0.94で一定である。好適な機器には、パナリティカル社(PANalytical)のX’ert Proなどがある。
【0112】
ステップ(a)に先立つ吸着剤材料粒子サイズの測定
吸着剤粒子の粒子サイズ分布は、スラリーまたは懸濁液中であれば、動的光散乱法(DLS)によりステップ(a)に先だって測定することもできる。しかし、XRDが好ましい方法である。DLSに好適な機器には、コロイド・メトリクス社(Colloid Metrix)のNANO-flex IIなどがある。懸濁液の希釈は通常、必要でない。
【0113】
溶媒中のバインダ溶解度を測定する方法
溶媒中のバインダの溶解度は、周囲温度で100gの溶媒に10gの粉末状のバインダを加え、2時間かく拌することによって決定することができる。この後、混合物を、11ミクロンの細孔サイズを有するワットマン・グレード1(Whatman Grade 1)などのろ紙でろ過し、ろ液を100℃で減量がなくなるまで乾燥させた後、乾燥重量を測定するのが望ましい。試験中にすべてのバインダが溶解するならば、さらに10gのバインダを加え、混合物をさらに2時間かく拌するのが望ましい。必要であれば、測定される溶解度が飽和溶解度となるようにして、かく拌終了時に固体のバインダが残るまでこれを繰り返す。溶媒中のバインダの溶解度は、溶解したバインダの総重量を溶媒の重量で割ったものである。
【0114】
吸着体のBET面積を測定する方法。
吸着体のBET表面積は、ASTM法D3663-03「触媒および触媒担体の表面積の標準試験方法(Standard test method for surface area of catalysts and catalyst carriers)」を使用して測定することができる。BET表面積は、様々な低圧レベルでモノリス試料により吸着された窒素ガスの体積を測定することによって決定される。試験装置内で一定体積の窒素にモノリス表面積を導入することによって生じる圧力差を測定し、BET表面積の計算に使用する。BET表面積の測定に好適な機器には、マイクロメトリクス・コーポレーション(Micromeritics Corporation)の3Flexなどがあり、製造元のガイドラインに従って使用する。
【0115】
ミクロ細孔率
MOF本体は好ましくは、N吸着によって測定される総細孔体積の40%より大きく75%より小さいミクロ細孔率を有する。メソ細孔率(ミクロ細孔よりも大きいがマクロ細孔よりも小さい細孔を有するもの)の一部が、MOF本体全体を通した流体の移送を有益に支援し得る。
【0116】
本体のミクロおよびメソ細孔率プロファイルは、試験方法ASTM D4641-17によって決定することができる。このような試験を実施するのに好適な機器は、マイクロメトリクス・コーポレーションのASAP 2020 Plusである。試験方法は以下のとおりである。
【0117】
試験試料(0.5g)を典型的には、真空下で300℃に加熱し、吸着されたガスおよび蒸気を表面から除去する。次いで、等温線の窒素吸着枝を決定するが、これは、試料を真空下に置き、試料を液体窒素の沸点(約77.3K)まで冷却し、次いで、吸着等温線の形が適切に定義されるような、そして窒素の飽和圧力に達するような量の試料に、既知量の窒素ガスを、圧力Pを増加させながら段階的に加えることによって行う。
【0118】
加えられる窒素の各量は、窒素の先行量が試料との吸着平衡に達した後にのみ試料に導入される。
【0119】
典型的には、ガス圧の変化が0.1torr/5分間隔以下であれば平衡に達する。これを、P(ガス飽和圧)に達するまで続ける。
【0120】
データは典型的には、P/Pの関数としての吸着/脱着されたガスの量(および導出された細孔率プロファイル)としてプロットされる。脱着等温線は、吸着条件下で適用されるものと同一の、脱着平衡化を確実にするために取られる注意事項を用いて、段階的に飽和試料から窒素を脱着させることによって決定する。ミクロ細孔率は、P/P値が<0.1で吸着されるガスの体積に関連している一方、メソ細孔率は、P/P値が0.1と0.98の間で吸着されるガスの体積に関連している。
【0121】
水銀ポロシメトリーによりマクロ細孔率を測定する方法
水銀細孔率値は、ASTM D4284-12にしたがって測定することができる。ASTM D4284-12を実行するのに好適な機器には、米国マイクロメトリクス・コーポレーションのMicromeritics AutoPore VI 9510などがある。水銀の表面張力および接触角を、それぞれ485mN/mおよび130°とする。ASTM D4284-12では、水銀は加圧下で細孔内に押し込まれる。1gの試料サイズを好ましくは使用する。吸着体を、710ミクロンと250ミクロンの間で断片化してふるい分けし、ふるい分けされた材料を使用する。
【0122】
試料の細孔内に水銀を押し込むのに必要な圧力は、ウォッシュバーン(Washburn)の式にしたがって細孔のサイズに反比例する。特性評価を目的として、すべての細孔が円柱状であると仮定する。ポロシメーターは、試料ホルダー内の水銀にかかる圧力を増加させて、小さい試料細孔に水銀を次第に侵入させる。AutoPore VIは、ウォッシュバーンの式および上記の接触角と表面張力の値を使用して、印加された圧力を等価な細孔直径に自動的に変換する。
【0123】
試料のかさ体積は、大気圧によって排除される水銀の体積によって決まる。印加圧力を上げると、水銀は内部細孔内に押し込まれる。したがって、試料の%マクロ細孔率は、圧力を1.001atmから292atmに上昇させるにつれて試料内に侵入した水銀の体積を、大気圧での排除体積の割合として示したものである。
【0124】
水銀ポロシメトリーは、ミクロ細孔率やメソ細孔率の測定には好適ではなく、これは、小さい細孔内に水銀を押し込むのに必要な圧力があまりに高く実用的でないからである。
【0125】
吸着体のかさ密度を測定する方法
吸着体は、0.4g/cmより大きい、0.6g/cmより大きい、0.8g/cmより大きい、または1.0g/cmより大きいかさ密度を有し得る。
【0126】
本体のかさ密度は、本体の重量(グラム単位)をそのかさ体積(mmの単位)で割ることによって測定することができる。かさ体積は、ASTM D3766において、「各片内の固体の体積と、各片の内部、すなわち、各片を完全に取り囲む密着した仮想的な包絡体内部の空隙の体積との総和に対する、粒子の質量の比」と定義されている。本体のかさ密度は、体積排除のアルキメデスの原理に基づく手法を使用して測定することができる。例えば、かさ密度は、水銀ポロシメトリーによって測定することができる。大気圧では、水銀は内部細孔に侵入しない。したがって、大気圧下で本体によって排除される水銀の体積が、その物体のかさ体積である。試料の重量をこの体積で割ると、かさ密度が得られる。水銀ポロシメトリーの使用法は、上に記載されている。
【0127】
さらに大きい本体、典型的には直径>2mmのものに適した代替の実行可能な手法が、正確な3Dスキャナーを使用して本体の体積を測定することである。好適な機器には、ライカ社(Leika)のBLK360などがある。好ましくは、粉末ピクノメーター、例えばマイクロエレクトロニクス・インスツルメント社(Micrometrics Instrument Corp)のGeoPyc Model 1360を使用して、本体のかさ体積および密度を測定することもできる。必要であれば、これらの手法によって測定されたかさ体積は、水銀ポロシメトリーによって測定されたかさ体積と互換的に使用することができる。
【0128】
吸着体中のバインダのレベルを測定する方法
吸着体中のポリマー有機バインダのレベルは、高温での重量損失に基づく熱重量測定法によって決定することができる。使用される高温(600℃)では、有機種が燃焼して除かれ、金属酸化物種などが後に残る。吸着剤材料の試料と、吸着剤材料の試料に加えバインダとの間の%重量損失の差は、バインダのレベルを示す。吸着体を粉砕し、吸着体材料の試料を600℃まで加熱して、定常状態での重量損失を測定し、規格化する。次いで、吸着剤材料の試料を同一条件で加熱し、重量損失を規格化する。%wt損失どうし間の差は、存在するバインダの%である。この方法は、吸着体がMOFおよび/またはゼオライトを含んでなる場合に、特に好適である。
【0129】
試料中の残留溶媒レベルは、真空下で12時間、120℃まで試料を加熱した後の試料の重量損失によって決定することができる。次いで、試料中のバインダレベルは、先に記載したとおりに熱重量分析によって決定することができる。
【0130】
機械的完全性の評価
吸着剤MOF本体の相対的な機械的完全性は、10gの吸着剤MOF本体を密閉ガラス瓶(容量100mlが好適である可能性がある)に入れ、1分間、手で激しく振ることによって評価することができる。吸着体の堅牢性は、ガラス瓶の内面上の塵の存在によって視覚的に評価することができる。さらにストレスのかかる環境、例えば車両貯蔵タンクを試験するのに典型的には好適な、さらに定量的な試験を行うことができ、これは、タンブリングミキサー、例えばエリーズ社(Eriez)のMacsalab Mixerに、同量、例えば10gの吸着体を入れ、同様の時間と速度、例えば200rpmで試料をタンブリングして生成された微細な材料(<150ミクロン)の相対量を比較し、次いでその材料をふるいにかけることによってなされる。試験のストレスを増加させるために、粉砕媒体、例えばボールを加えることができる。
【0131】
相対密度
相対密度は、吸着剤材料の結晶密度と比較した結晶性吸着体のかさ密度の比を指す。
【0132】
MOFなどの結晶性材料の結晶密度は、単結晶の密度であり、構造から理論的に計算される。MOFなどの結晶性吸着剤材料の構造的および他の情報は、ケンブリッジ結晶構造データベースから入手できる。
【0133】
1よりずっと小さい、例えば0.3未満の相対密度は、過剰な細孔率であることを意味しており、その大部分は本体内の大きい(したがって有用性の低い)細孔の形態になっている。1より大きい相対密度は、細孔率の無駄な損失を示唆しており、これは、そうした高い値が、有用な細孔の一部を破壊することによってしか実現できないからである。
【0134】
吸着体は、好ましくは、0.3より大きく、または0.5より大きく、または0.7より大きく1.2未満の相対密度を有する。
【実施例
【0135】
例1(本発明)
Zr-フマラートとポリビニルアルコール(PVA)とを含んでなる吸着体の製造。
初期混合物の調製。
1.6gのPVA(Mowiol 10-98、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich))を40mlの無水99.9%DMSO(シグマアルドリッチにより供給されるジメチルスルホキシド)に、80℃で1時間、加熱することによって溶解させた。
【0136】
吸着剤材料 - Zr-フマラートMOFの調製。
2.34gのZr-アセチルアセトナート(TCIにより供給されるもの、CAS 17501-44-9)および0.557gのフマル酸(99%、アクロスオーガニクス社(Acros Organics))を7.8mlの水と混合した後、4.2mlの氷酢酸(99%、フィッシャーサイエンティフィック社(Fisher Scientific))を加えた。次いで、得られた懸濁液を周囲温度(20~25℃)で3日間、かく拌した。3日後、得られた混合物をファルコンチューブ(Falcon tube)に移し、30mlのアセトンを加えた。混合物を5250rpmで25分間、遠心分離した(ベックマン・コールター(Beckman-Coulter)のJ-15R)。上澄み液を除去し、手で強くかく拌しながらさらに30mlのアセトンを加え、遠心分離ステップを繰り返し、上澄み液をデカントした。この後、ファルコンチューブには、約1.0gの吸着剤材料の濃縮ゲルペレットが入っていた。
【0137】
吸着剤材料と初期混合物との接触。
周囲温度で上に調製した5mlの初期混合物を、吸着剤材料の入ったファルコンチューブに加え、ファルコンチューブを5分間、手で強くかく拌して、すべてが分散して一体に混ったことを確認した。これを5回繰り返し、試料を一晩14時間、放置した。次いで試料を、J-15Rを使用して5250rpmで30分間、遠心分離し、上澄み液を注いで除いた。次いで、開栓したファルコンチューブを35℃で2週間、乾燥させて、初期吸着体を得た。
【0138】
初期吸着体は、18.3%のPVA、73.4%のZr-フマラート、および8.3%の残留DMSOという組成を有していた。
【0139】
バインダ低減吸着体の形成。
次いで、初期吸着体を5mlのメタノールに浸漬させた。12時間ごとにメタノールを新しい5mlの試料と交換した。これを合計9日間にわたって繰り返して、バインダ低減吸着体を得た。
【0140】
吸着体の形成。
次いで、バインダ低減吸着体をメタノールから除去し、室温で一晩、乾燥させた。次いで、溶媒乾燥させたバインダ低減吸着体を、真空下120℃で12時間、加熱することにってさらに乾燥させ活性化させて、91.74%のZr-フマラートと8.26%のPVAとを含んでなる吸着体を得た。
【0141】
明確化のため - 上記の分析は、初期吸着体が100部のMOFごとに24.9部のPVAを有することを意味した。吸着体は(よってバインダ低減吸着体も)、100部のMOFごとに9部のPVAであった。これは、もともと存在していたPVAの63.8%が除去されたことを表していた。第1の溶媒はDMSOであり、第2の溶媒はメタノールである。メタノール中のPVAの溶解度は、DMSO中より低い。
【0142】
例2(比較)
Zr-フマラートを含んでなる吸着体の製造。
Zr-フマラートを、「吸着剤材料 - Zr-フマラートMOFの調製」に上記された手順にしたがって合成した。次いで、濃縮吸着剤材料ゲルのペレットの入った開栓したファルコンチューブを、35℃で2週間、乾燥させた。乾燥させた本体を5mlのメタノールと12時間、接触させた後、メタノールを5mlの新しいメタノールと交換した。これを12時間ごとに3日間、繰り返して、残留DMSOを溶媒交換した。次いで、Zr-フマラート体を真空下、120℃で12時間、乾燥させることにより活性化させた。
【0143】
例3(比較)
Zr-フマラートとPVAとを含んでなる初期吸着体を実施例1のとおりに調製した。
【0144】
この初期吸着体は、バインダ還元ステップ等を通っていないが、真空下120℃で加熱して残留DMSOを除去することによって直接活性化されて、得られた乾燥吸着体中に実質的に全てのPVAを保持していた。
【0145】
例4(比較)
Zr-フマラート(吸着剤材料)と初期混合物を、例1のとおりに調製した。
【0146】
5mlの初期混合物を加える代わりに、2mlの初期混合物と3mlのDMSOを加えた以外には、実施例1と同様なやり方で吸着剤材料を初期混合物と接触させた。次いで、例1のとおりの手順にしたがって初期吸着体を調製し、7.5%のPVAと、86%のZr-フマラートと、6.5%の残留DMSOとを含んでなる初期吸着体を得た。
【0147】
次いで、この初期吸着体を真空下120℃で12時間、乾燥させることにより活性化させて、8%のPVAと92%のZr-フマラートとを含んでなる吸着体を得た。
【0148】
例4は、同様なレベルのバインダを有する試料どうしの間の違いを示したが、この場合には、一方の試料(例1)は本発明の方法によって調製され、他方の試料(例4)はそうではなかった。例1は例4より明らかに堅牢であった。
試験データを以下に示す
【0149】
【表1】
【0150】
例5(本発明)
UiO-66 MOFとポリイミド(PI)バインダとを含んでなる吸着体の製造。
初期混合物の調製。
1.6gのポリイミド(CAS 62929-02-6、アルファエイサー(Alfa Aesar)により供給されるもの)を、80℃で1時間、加熱することによって、40mlの99.9%無水DMSO(シグマアルドリッチにより供給されるジメチルスルホキシド)に溶解させた。
【0151】
吸着剤材料 - UiO-66 MOFの調製。
ベンゼン-1,4-ジカルボン酸(98%、シグマアルドリッチ、7.25mmol)とZrOCl・8HO(98%、アクロスオーガニクス、5.0mmol)を30mlのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(99%、アルファエイサー)に完全に溶解させ、続いて1.5mlの濃塩酸(37%、ハネウェル・フルカ(Honeywell Fluka))と2.0ml(99+%、アルファエイサー)の氷酢酸を加えた。次いで、得られた溶液を密封し、100℃の恒温槽で2時間、加熱した結果、UiO-66の濃厚な白色ゲルが得られた。上記の合成されたゲルを、50mlのDMFを加えることによって希釈し、次いで遠心分離した(5分、5250rpm、ベックマン・コールターのJ-15R)。ゲルを50mlの新しいDMFでさらに洗浄し、同様の条件下で再度遠心分離した。次いで、上澄み液を注いで除いた。1本のファルコンチューブに約0.5gの吸着剤材料の濃縮ゲルペレットが入っていた。
【0152】
吸着剤材料と初期混合物との接触。
周囲温度で上に調製した2.5mlの初期混合物を、吸着剤材料の入ったファルコンチューブに加え、ファルコンチューブを5分間、手で強くかく拌して、すべてが分散して一体に混ざったことを確認した。これを5回繰り返し、試料を一晩14時間、放置した。次いで試料を、J-15Rを使用して5250rpmで120分間、遠心分離し、上澄み液を注いで除いた。次いで、開栓したファルコンチューブを35℃で2週間、乾燥させて、初期吸着体を得た。
【0153】
初期吸着体は、17.9%のポリイミド、70.6%のUiO-66、および12.5%の残留DMFという組成を有していた。
【0154】
バインダ低減吸着体の形成。
次いで、初期吸着体を5mlのメタノールに浸漬させた。12時間ごとにメタノールを新しい5mlの試料と交換した。これを合計2日間にわたって繰り返して、バインダ低減吸着体を得た。
【0155】
吸着体の形成。
次いでこれをメタノールから除去し、室温で一晩、乾燥させた。次いで、溶媒乾燥させたバインダ低減吸着体を、真空下120℃で12時間、さらに乾燥させて、76.9%のUiO-66と13.1%のポリイミドとを含んでなる吸着体を得た。この吸着体は以下の特性を有していた。
【0156】
明確化のため - 上記の分析は、初期吸着体が100部のMOFごとに25.3部のポリイミドを有することを意味した。吸着体は(したがってバインダ低減吸着体も)、100部のMOFごとに17.0部のポリイミドを有していた。これは、もともと存在していたポリイミドの32.8%が除去されたことを表していた。DMSO中のポリイミドの溶解度はメタノール中より高い。
【0157】
例6(比較)
UiO-66吸着体の調製。
UiO-66を例5のとおりに合成した。次いで、ファルコンチューブ内のUiO-66の濃縮ゲルペレットを35℃で2週間、放置して乾燥させた。次いで、乾燥させた本体を5mlのメタノールに浸漬させた。12時間ごとにメタノールを新しい5mlの試料と交換した。これを合計2日間にわたって繰り返して、UiO-66の精製された吸着体を得た。次いで、これを真空下120℃で12時間、加熱して活性化させた。
【0158】
例7(比較)
バインダ低減ステップを伴わない、UiO-66のMOFとポリイミド(PI)バインダとを含んでなる吸着体の製造。
UiO-66および初期混合物を実施例5のとおりに調製した。
【0159】
周囲温度で上に調製した2.5mlの初期混合物を、吸着剤材料の入ったファルコンチューブに加え、ファルコンチューブを5分間、手で強くかく拌して、すべてが分散して一体に混ざったことを確認した。これを5回繰り返し、試料を一晩14時間、放置した。次いで試料を、J-15Rを使用して5250rpmで120分間、遠心分離し、上澄み液を注いで除いた。次いで、開栓したファルコンチューブを35℃で2週間、乾燥させて、初期吸着体を得た。これを真空下120℃で12時間、加熱して活性化させた。
【0160】
試験データを以下に示す。
【0161】
【表2】
【0162】
例8(本発明)
Al-フマラートMOFとポリビニルアルコール有機ポリマーバインダとを含んでなる吸着体の製造。
初期混合物の調製。
1.8gのPVA(Mowiol 10-98、シグマアルドリッチ)を、50mlの99.9%無水DMSO(シグマアルドリッチにより供給されるジメチルスルホキシド)に、80℃で1時間、加熱することによって溶解させた。
【0163】
吸着剤材料 - Al-フマラートMOFの調製。
フマル酸(1.40g、フィッシャーサイエンティフィックにより供給されるラボグレードのもの)とアルミニウムアセチルアセトナート(1.55g、CAS 13963-57-0、メルク(Merck)により供給されるもの)を25mlのバイアル瓶中、12mlの水酸化ナトリウム溶液(8.3mM)とともに90℃で20時間、かく拌しながら混合した。次いで、得られた材料を、50mlのエタノールを加えることによって希釈し、遠心分離した(4750rpm、15分、ベックマン・コールターのJ-15R)。上澄みをデカントした。この遠心分離ステップを、新しいエタノールを加えながら4回繰り返して、得られたAl-フマラートを洗浄した。この後、ファルコンチューブには、約0.65gの吸着剤材料の濃縮ゲルペレットが入っていた。
【0164】
吸着剤材料と初期混合物との接触。
周囲温度で上に調製した3.0mlの初期混合物を、0.65gの吸着剤材料混合物の入ったファルコンチューブに加え、ファルコンチューブを5分間、手で強くかく拌して、すべてが分散して混ざったことを確認した。ファルコンチューブを1時間、放置して、ゲルを形成した。このゲルを60℃で4日間、乾燥させて、初期吸着体を形成した。
【0165】
初期吸着体は、12.3%のポリビニルアルコール、82.1%のAl-フマラート、および5.6%の残留DMSOという組成を有していた。
【0166】
バインダ低減吸着体の形成。
次いで、初期吸着体を5mlのメタノールに浸漬させた。12時間ごとにメタノールを新しい5mlの試料と交換した。これを合計5日間にわたって繰り返して、バインダ低減吸着体を得た。
【0167】
吸着体の形成。
次いでこれをメタノールから除去し、室温で一晩、乾燥させた。次いで、溶媒乾燥させたバインダ低減吸着体をさらに130℃で12時間、真空乾燥させて、92.4.2%のAl-フマラートと7.6%のPVAとを含んでなる吸着体を得た。
【0168】
例9(本発明)
Al-フマラートMOFとメチルセルロース有機ポリマーバインダとを含んでなる吸着体の製造。
【0169】
初期混合物の調製。
20.0gのメチルセルロース(シグマアルドリッチのMO262)を、加熱した水に加え、次いで連続かく拌下で混合物を冷却することによって、80gの脱イオン(DI)水に溶解させた。この例では、第1の溶媒は水であった。
【0170】
吸着剤材料 - Al-フマラートMOFの調製。
フマル酸(1.40g、フィッシャーサイエンティフィックから供給されるラボグレードのもの)とアルミニウムアセチルアセトナート(1.55g、CAS 13963-57-0、メルクより供給されるもの)を、25mlのバイアル中、2mlの水酸化ナトリウム溶液(0.05M)と10mlのDI水とともに90℃で20時間、かく拌しながら混合した。次いで、得られた材料を、30mlのメタノールを加えて希釈し、遠心分離した(4750rpm、15分、ベックマン・コールターのJ-15R)。上澄みをデカントした。この遠心分離ステップを、新しいメタノールを加えながら2回繰り返して、得られたAl-フマラートを洗浄した。この後、ファルコンチューブには、約1gの吸着剤材料の濃縮ゲルペレットが入っていた。
【0171】
吸着剤材料と初期混合物との接触。
周囲温度で上に調製した2mlの初期混合物を、1gの吸着剤材料混合物の入ったファルコンチューブに加え、ファルコンチューブを5分間、手で強くかく拌して、すべてが分散して混ざったことを確認した。混合物を遠心分離し、上澄み液を除去した。次いで、ファルコンチューブを60℃で4日間、乾燥させて、初期吸着体を形成した。
【0172】
初期吸着体は、64%のアルミニウムフマラート、27%のメチルセルロース、および差し引きの残留溶媒という組成を有していた。
【0173】
バインダ低減吸着体の形成。
次いで、初期吸着体を5mlの95:5エタノール:水混合物(第2の溶媒)に浸漬させた。12時間ごとに第2の溶媒を新たな5mlの試料と交換した。これを合計5日間にわたって繰り返して、バインダ低減吸着体を得た。
【0174】
吸着体の形成。
次いで、これを第2の溶媒から除去して、室温で一晩、乾燥させた。次いで、溶媒乾燥させたバインダ低減吸着体を、真空下130℃で12時間、さらに乾燥させて、77%のAl-フマラートと23%のメチルセルロースとを含んでなる吸着体を得た。
【0175】
例10(比較)
Al-フマラート吸着体の調製。
Al-フマラートを、例8のとおりに合成し濃縮してゲルペレットにした。
【0176】
このゲルを60℃で4日間、乾燥させた。次いで、乾燥させた本体を5mlのメタノールに浸漬させた。12時間ごとにメタノールを新しい5mlの試料と交換した。これを合計5日間にわたって繰り返して、精製された吸着体を得た。次いでこれをメタノールから除去して、室温で一晩、乾燥させた。溶媒乾燥させたバインダ低減吸着体を、さらに真空下130℃で12時間、乾燥させた。
【0177】
例11(比較)
バインダ低減ステップを伴わない、Al-フマラートMOFとPVAバインダとを含んでなる吸着体の製造。
初期吸着体を例8のとおりに調製した。この初期吸着体を、真空下130℃で12時間、加熱して活性化させた。これにより、13%のPVAと87%のAl-フマラートとを含む本体が得られた。試験データを以下に示す
【0178】
【表3】
【0179】
例12(本発明)
Zr-フマラートとポリビニルアルコール(PVA)とを含んでなる本発明の吸着体の製造。
初期混合物の調製。
1.6gのPVA(Mowiol 10-98、シグマアルドリッチ)を40mlの99.9%無水DMSO(シグマアルドリッチより供給されるジメチルスルホキシド)に、80℃で1時間、加熱することによって、溶解させる。
【0180】
吸着剤材料 - Zr-フマラートMOFの調製。
2.34gのZr-アセチルアセトナート(CAS 17501-44-9、TCIより供給されるもの)と0.557gのフマル酸(99%、アクロスオーガニクス)を7.8mlの水と混合し、続いて4.2mlの氷酢酸(99%、フィッシャーサイエンティフィック)を加える。次いで、得られた懸濁液を周囲温度(20~25℃)で3日間、かく拌する。3日後、得られた混合物をファルコンチューブに移し、30mlのアセトンを加えた。次いで混合物を5250rpmで25分間、遠心分離する(ベックマン・コールターのJ-15R)。上澄み液を除去し、さらに30mlのアセトンを手で強くかく拌しながら加え、遠心分離ステップを繰り返して、上澄み液をデカントする。この後、ファルコンチューブには、約1.0gの吸着剤MOF材料の濃縮ゲルペレットが入っている。
【0181】
吸着剤MOF材料と初期混合物との接触。
周囲温度で上に調製した5mlの初期混合物を、吸着剤MOF材料の入ったファルコンチューブに加え、ファルコンチューブを5分間、手で強くかく拌して、すべてが分散して混ざっていることを確認する。これを5回繰り返し、試料を一晩14時間、放置する。次いで試料を、J-15Rを使用して5250rpmで30分間、遠心分離して、上澄み液を注いで除く。次いで、開栓したファルコンチューブを35℃で2週間、乾燥させて、初期吸着剤MOF本体を得る。
【0182】
初期吸着剤MOF本体は、18.3%のPVA、73.4%のZr-フマラート、および8.3%の残留DMSOという組成を有する。
【0183】
バインダ低減吸着剤MOF本体の形成。
次いで、初期吸着剤MOF本体を5mlのメタノールに浸漬させる。12時間ごとにメタノールを新しい5ml試料と交換する。これを合計9日間にわたって繰り返して、バインダ低減吸着剤MOF本体を得る。
【0184】
吸着剤MOF本体の形成。
次いで、バインダ低減吸着剤MOF本体をメタノールから除去し、室温で一晩乾燥させる。次いで、溶媒乾燥させたバインダ低減吸着剤MOF本体を、真空下120℃で12時間、加熱することによってさらに乾燥させて、活性化させ、91.3%のZr-フマラートと8.7%のPVAとを含んでなる吸着剤MOF本体を得る。
【0185】
例13(比較)
Zr-フマラートを含んでなる吸着剤MOF本体の製造。
Zr-フマラートを、上記の「吸着剤材料 - Zr-フマラートMOFの調製」(例12)に記載の手順にしたがって合成する。次いで、濃縮された吸着剤MOF材料ゲルのペレットの入った開栓したファルコンチューブを、35℃で2週間、乾燥させる。乾燥させた本体を5mlのメタノールと12時間、接触させ、このさい、メタノールを5mlの新しいメタノールと交換する。これを12時間ごとに3日間、繰り返して、残留DMSOを溶媒交換する。次いで、Zr-フマラート体を真空下、120℃で12時間、乾燥させることにより活性化させる。
【0186】
例14(比較)
Zr-フマラートとPVAとを含んでなる初期吸着剤MOF本体を、5mlではなく7mlの初期混合物を加える以外は、例12のとおりに調製する。
【0187】
この初期吸着剤MOF本体は、バインダ低減ステップ等を通っていないが、真空下120℃で12時間、加熱して残留DMSOを除去することによって直接活性化される。
【0188】
試験データを以下に示す
【0189】
【表4】
【0190】
本発明の例12だけが、機械的完全性と高い吸着能力の両方を提供した。
【0191】
例15(本発明)
Al-フマラートとメチルセルロース(MC)とを含んでなる吸着体の製造。
初期混合物の調製。
1.6gのメチルセルロース(MC)、CAS 9004-67-5、粘度400cPs、サーモサイエンティフィックを、1時間、かく拌しながら、40mlの周囲水(第1の溶媒)に溶解させた。
【0192】
吸着剤材料 - Al-フマラートMOFの調製。
フマル酸(1.40g、フィッシャーサイエンティフィックより供給されるラボグレードのもの)とアルミニウムアセチルアセトナート(1.55g、CAS 13963-57-0、メルクより供給されるもの)を、25mlのバイアル瓶中、90℃で20時間、12mlの水酸化ナトリウム/水溶液(8.3mM)と、かく拌しながら混合した。次いで、得られた材料を、50mlのエタノールを加えることによって希釈し、遠心分離した(4750rpm、15分、ベックマン・コールターのJ-15R)。上澄みをデカントした。この遠心分離ステップを、新しいメタノールを加えながら3回繰り返して、Al-フマラートを洗浄した。
【0193】
吸着剤材料と初期混合物との接触。
周囲温度で上に調製した5mlの初期混合物を、1gのAl-フマラート吸着剤材料の入ったファルコンチューブに加え、ファルコンチューブを5分間、手で強くかく拌して、例15(本発明)とした。
【0194】
Al-フマラートとメチルセルロース(MC)とを含んでなる吸着体の製造。
初期混合物の調製。
1.6gのメチルセルロース(MC)、CAS 9004-67-5、粘度400cPs、サーモサイエンティフィックを、1時間、かく拌しながら40mlの周囲水(第1の溶媒)に溶解させた。
【0195】
吸着剤材料 - Al-フマラートMOFの調製。
フマル酸(1.40g、フィッシャーサイエンティフィックより供給されるラボグレードのもの)とアルミニウムアセチルアセトナート(1.55g、CAS 13963-57-0、メルクより供給されるもの)を25mlのバイアル瓶中、90℃で20時間、12mlの水酸化ナトリウム/水溶液(8.3mM)と、かく拌しながら混合した。次いで、得られた材料を、50mlのエタノールを加えることによって希釈し、遠心分離した(4750rpm、15分、ベックマン・コールターのJ-15R)。上澄みをデカントした。この遠心分離ステップを、新しいメタノールを加えながら3回繰り返して、Al-フマラートを洗浄した。
【0196】
吸着剤材料と初期混合物との接触。
周囲温度で上に調製した5mlの初期混合物を、1gのAl-フマラート吸着剤材料の入ったファルコンチューブに加え、ファルコンチューブを5分間、手で強くかく拌して、すべてが分散して混ざったことを確認した。これを5回繰り返して、試料を一晩14時間、放置した。次いで試料を、J-15Rを使用して4750rpmで30分間、遠心分離し、上澄み液を注いで除いた。次いで、開栓したファルコンチューブを35℃で5日間、放置して乾燥させて、初期吸着体を得た。
【0197】
初期吸着体は、26.2%のMC、65.5%のAl-フマラート、および8.3%の水という組成を有していた。
【0198】
バインダ低減吸着体の形成。
次いで、初期吸着体を5mlのメタノール(第2の溶媒)に浸漬させた。12時間ごとにメタノールを新しい5mlの試料と交換した。これを合計9日間にわたって繰り返して、バインダ低減吸着体を得た。
【0199】
吸着体の形成。
次いで、バインダ低減吸着体をメタノールから除去し、室温で一晩、乾燥させた。次いで、溶媒乾燥させたバインダ低減吸着体を、真空下130℃で12時間、加熱することによってさらに乾燥させ活性化させて、78.4%のAl-フマラートと21.6%のMCとを含んでなる吸着体を得た。
【0200】
明確化のため - 上記の分析は、初期吸着体が、100部のMOFごとに40部のメチルセルロースを有することを意味した。吸着体は(したがって、バインダ低減吸着体も)、100部のMOFごとに27.6部のメチルセルロースを有していた。これは、もともと存在していたバインダの31%が除去されたことを表していた。
【0201】
例16(本発明)
UTSA-16とポリビニルアルコール(PVA)とを含んでなる吸着体の製造。
初期混合物の調製。
1.6gのPVA(Mowiol 10-98、シグマアルドリッチ)を、80℃で1時間、加熱することによって、40mlの水(第1の溶媒)に溶解させた。
【0202】
吸着剤材料 - UTSA-16 MOFの調製。
酢酸亜鉛二水和物(3.1g、CAS 5970-45-6、サーモサイエンティフィックより供給されるラボグレードのもの)とクエン酸(2.7g、CAS 77-92-9、サーモサイエンティフィックより供給されるもの)を、50mlのバイアル瓶中、脱イオン水26mLと混合した。2.3gの水酸化カリウム(85%、CAS 1310-58-3、サーモサイエンティフィックから供給されるもの)を、ビーカー中、11.3mLの脱イオン水に溶解させる。KOH溶液を亜鉛溶液に加えて、スターラーを用いて混合した。次いで、12.2mLのエタノールを加え、反応混合物の温度を85℃まで4時間、上昇させ、次いで周囲温度まで放冷した。次いで、生成物を遠心分離し、50mLの水に再分散させ、J-15Rを用いて4750rpmで20分間、遠心分離することによって、水で3回洗浄した。最後の遠心分離後、上澄み液を注いで除去すると、UTSA-16吸着剤材料の湿潤ペレットが残った。
【0203】
吸着剤材料と初期混合物との接触。
周囲温度で上に調製した5mlの初期混合物を、上に調製した1.0gの湿潤UTSA-16吸着剤材料ペレットの入ったファルコンチューブに加え、ファルコンチューブを5分間、手で強くかく拌して、すべてが分散し混ざったことを確認した。これを5回繰り返して、試料を一晩14時間、放置した。次いで試料を、J-15Rを使用して4750rpmで30分間、遠心分離して、上澄み液を注いで除いた。次いで、開栓したファルコンチューブを35℃で4日間、放置して乾燥させて、初期吸着体を得た。
【0204】
これにより、12%の水レベル、70%のUTSA-16、および18%のPVAを有する初期吸着体が得られた。
【0205】
バインダ低減吸着体の形成。
次いで、初期吸着体を5mlのエタノール(第2の溶媒)に浸漬させた。これを12時間ごとに新しい5mlの試料と交換した。これを合計9日間にわたって繰り返して、バインダ低減吸着体を得た。
【0206】
吸着体の形成。
次いで、バインダ低減吸着体を第2の溶媒から除去し、室温で一晩乾燥させた。次いで、溶媒乾燥させたバインダ低減吸着体をさらに乾燥させ、真空下130℃で12時間、加熱して活性化させた。これにより、90.1%のUTSA-16と9.9%のPVAとを含んでなる吸着体が得られた。
【0207】
明確化のため - 上記の分析は、初期吸着体が100部のMOFごとに25.7部のPVAを有することを意味した。吸着体は(よって、バインダ低減吸着体も)、100部のMOFごとに11.0部のPVAを有していた。これは、もともと存在していた有機バインダの57.3%が除去されたことを表していた。
【0208】
例17(本発明)
HKUST-1とPVA/メチルセルロース混合バインダとを含んでなる吸着体の製造。
初期混合物の調製。
0.53gのメチルセルロース(粘度400cPs、サーモサイエンティフィック)と1.07gのPVAを、40mlの99.9%の無水DMSO(シグマアルドリッチより供給されるジメチルスルホキシド)に90℃で1時間、加熱することによって溶解させた。
【0209】
吸着剤材料-HKUST-1 MOFの調製。
酢酸銅一水和物(2.4g、CAS 6046-93-1、シグマアルドリッチ)と1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(3.36g、CAS 528-44-9、シグマアルドリッチ)を水/エタノール(30%)混合物に溶解させ、室温または50℃で45分間、かく拌した。所望の時間終了後、形成されたHKUST-1を遠心分離し(4750rpm、15分、ベックマン・コールターのJ-15R)、エタノールで洗浄し、遠心分離した。上澄みをデカントした。
【0210】
吸着剤材料と初期混合物との接触。
上に調製した5mlの初期混合物を、1.0gのHKUST-1吸着剤材料の入ったファルコンチューブに加え、ファルコンチューブを5分間、手で強くかく拌して、すべてが分散し混ざったことを確認した。これを数回繰り返し、試料を数時間、放置した。次いで試料を、J-15Rを使用して4750rpmで30分間、遠心分離し、上澄み液を注いで除いた。次いで、開栓したファルコンチューブを35℃で4日間、放置して乾燥させて、初期吸着体を得た。
【0211】
初期吸着体は、18.3%のPVA/MC、73.4%のHKUST-1および8.3%のDMSOという組成を有していた。TGA法ではPVAとメチルセルロースを区別できなかったので、総バインダレベルを測定したことに留意されたい。
【0212】
バインダ低減吸着体の形成。
次いで、初期吸着体を、メタノール:PEG 600を97:3とした5mlの混合物(第2の溶媒)に浸漬させた。12時間ごとに溶媒を新しい5mlの試料と交換した。これを合計9日間にわたって繰り返して、バインダ低減吸着体を得た。
【0213】
吸着体の形成。
次いで、バインダ低減吸着体を第2の溶媒から除去し、室温で一晩乾燥させた。次いで、溶媒乾燥させたバインダ低減吸着体を、真空下130℃で12時間、加熱することによってさらに乾燥させて活性化させ、92.9%のHKUST-1と7.1%のPVA/MCとを含んでなる吸着体を得た。
【0214】
明確化のため - 上記の分析は、初期吸着体が100部のMOFごとに24.9部のPVA/MCを有することを意味した。吸着体は(よってバインダ低減吸着体も)、100部のMOFごとに7.6部のPVAを有していた。これは、もともと存在していたPVA/MCバインダの69.5%が除去されたことを表していた。
【0215】
上に調製した吸着体は、以下の特性を有していた。バインダ除去ステップなしに調製した等価な吸着体は、顕著なBET面積を有さなかった。記載された合成にしたがって調製され、次いで真空下120℃で12時間、乾燥されたHKUST-1粉末は、1560m-1のBET面積を有していた。
【0216】
【表5】
【国際調査報告】