(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】気体生成物を得るための電解ユニット
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20241108BHJP
C25B 9/77 20210101ALI20241108BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20241108BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C25B9/00 A
C25B9/77
C25B1/04
C25B15/00 303
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024529713
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2022082266
(87)【国際公開番号】W WO2023089024
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507128654
【氏名又は名称】インドゥストリエ・デ・ノラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カレッティン, レオネロ
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BA17
4K021BC06
4K021CA15
(57)【要約】
本発明は、電解ユニットに関する。流体マニホールドシステムが、電解液を電解セル中に給送しており、電解液を電解セルから吐出している。拡張可能閉鎖手段のキャビティが加圧され、それにより、そのシェルが拡張しキャビティの体積が増大する。拡張可能閉鎖手段は流体マニホールドシステム内に配置され、それにより、拡張可能閉鎖手段が減圧状態である場合は、流体マニホールドシステムは電解液の通過に対して開いており、拡張可能閉鎖手段が加圧状態である場合は、流体マニホールドシステムは電解液の通過に対して閉じている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電解セル(30)であって、各々がアノード(1)と、カソード(2)と、電解セル(30)をアノード区画とカソード区画とに分割するイオン交換隔膜(3)とを有する、複数の電解セル(30)と、
電解液を電解セル(30)中に給送するためおよび電解液を電解セル(30)から吐出するための、流体導管(7)を有する流体マニホールドシステム(6、7)と、
キャビティ(10)を囲む液密シェル(9)を有する拡張可能閉鎖手段(8)であって、前記液密シェル(9)が圧力ポート(11)を有する、拡張可能閉鎖手段(8)と、
液密シェル(9)が拡張しキャビティ(10)の体積が増大するようにキャビティ(10)を加圧するための、圧力ポート(11)に接続された圧力ユニット(12)と
を含む電解ユニット(20)であって、
前記拡張可能閉鎖手段(8)が流体マニホールドシステム(6、7)内に配置され、それにより、拡張可能閉鎖手段(8)が減圧状態である場合は流体マニホールドシステム(6、7)が電解液の通過に対して開いており、拡張可能閉鎖手段(8)が加圧状態である場合は流体マニホールドシステム(6、7)が電解液の通過に対して閉じている、
電解ユニット(20)。
【請求項2】
少なくとも1つの流体導管(7)が、ある電解セル(30)から別の電解セル(30)への流体接続を提供する、請求項1に記載の電解ユニット(20)。
【請求項3】
拡張可能閉鎖手段(8)が、電解セル(30)のうちの1つの入口(15)の真正面で、流体導管(7)のうちの少なくとも1つの中に配置された、請求項2に記載の電解ユニット(20)。
【請求項4】
流体マニホールドシステム(6、7)が主導管(6)を含み、主導管(6)から少なくとも1つの流体導管(7)が分岐し、前記拡張可能閉鎖手段(8)が主導管(6)中に配置されている、請求項1に記載の電解ユニット(20)。
【請求項5】
拡張可能閉鎖手段(8)が、減圧状態の拡張可能閉鎖手段(8)を流体マニホールドシステム(6、7)の底部に保持するバラストコンポーネント(13)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の電解ユニット(20)。
【請求項6】
拡張可能閉鎖手段(8)の液密シェル(9)が電気絶縁体である、請求項1から5のいずれか一項に記載の電解ユニット(20)。
【請求項7】
圧力ユニット(12)が、圧力ポート(11)の吸戻しバルブを介して気体をキャビティ(10)からポンプで汲み出すことによって拡張可能閉鎖手段(8)を減圧するように設計された、請求項1から6のいずれか一項に記載の電解ユニット(20)。
【請求項8】
電解ユニットが、大気電解槽、および/または、内部マニホールドを含む加圧スタック設計の電解槽であり、拡張可能閉鎖手段(8)が、大気電解槽、および/または加圧スタック設計の電解槽の、流体マニホールドシステム(6、7)中に置かれた、請求項1から7のいずれか一項に記載の電解ユニット(20)。
【請求項9】
電解ユニット(20)の操作のための方法であって、以下の同時または順次工程、すなわち、
流体導管(7)を有する流体マニホールドシステム(6、7)を介して電解液を電解セル(30)中に給送し、電解液を電解セル(30)から吐出させる工程と、
流体マニホールドシステム(6、7)中に置かれた拡張可能閉鎖手段(8)を加圧する工程であって、前記拡張可能閉鎖手段(8)が、キャビティ(10)を囲んでおり圧力ポート(11)を有している液密シェル(9)を有し、拡張可能閉鎖手段(8)が加圧状態になるまで、圧力ポート(11)に接続された圧力ユニット(12)を使用して圧力ポート(11)を介して加圧して、それにより液密シェル(9)が拡張しキャビティ(10)の体積が増大するようにし、加圧状態では流体マニホールドシステム(6、7)が電解液の通過に対して閉じている、拡張可能閉鎖手段(8)を加圧する工程と
を含む方法。
【請求項10】
拡張可能閉鎖手段(8)が、電解ユニット(20)の遮断中に加圧状態にされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
拡張可能閉鎖手段(8)のキャビティ(10)が圧縮窒素または圧縮空気で加圧される、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
拡張可能閉鎖手段(8)を、電解ユニット(20)の稼働中に収縮させ、それにより減圧状態になり、減圧状態では流体マニホールドシステム(6、7)が電解液の通過に対して開いている、請求項9または11に記載の方法。
【請求項13】
拡張可能閉鎖手段(8)が、電解ユニット(20)の稼働中に流体導管(7)中に留まる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
電解液の温度が測定され、
電解ユニット(20)の遮断のために、電解質溶液が定められた温度未満に冷えた後で圧力ユニット(12)がアクティブ化され、
拡張可能閉鎖手段(8)を、所定のしきい値圧力値に達するまで膨張させ、
電解ユニット(20)の操作のために拡張可能閉鎖手段(8)を収縮させ、
電解プロセスが開始される、
請求項9または13に記載の方法。
【請求項15】
電解ユニット(20)が、アルカリ水の電解液を用いて操作される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質(水やブラインなど)が電気分解されて酸素や水素や塩素などの気体生成物が得られる電解ユニットに関する。さらに、本発明は、水が電気分解されて酸素と水素が得られる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶液の電気分解によって水素と酸素を生成することは、よく知られた技法である。過去には酸性またはアルカリ性の溶液の電気分解に基づく技術が使用されてきたが、後者は、電解質の攻撃性がより低いせいであり、こうした電解質は、これらの生成のためのより幅広い金属材料をもたらす。
【0003】
電解槽を、ソーラーパワーなどの再生可能エネルギー源とともに有利に使用することができる。水をその成分である水素と酸素とに分離するために電解槽に加えられなければならない電流が、ソーラーパワーを使用して発生させられる。このような構成では、夜間は電解槽を遮断する必要がある。というのは、再生可能ソーラーエネルギーが利用可能でないからである。
【0004】
この期間中、分極がオフに切り替えられたとき、アノードおよびカソードの被覆は保護されておらず、被覆は、電解槽のすべてのセルを液圧接続するドレインマニホールドの中を流れる迷走電流から生じる逆電流によって損傷を受ける可能性がある。
【0005】
JP5876811B2に、イオン交換膜電解セルのための逆電流防止方法が記載されており、このイオン交換膜電解セルは、アノードを収容するアノードチャンバと、カソードを収容するカソードチャンバと、アノードチャンバにアノード液を供給するアノード液供給マニホールドと、カソードチャンバにカソード液を供給するカソード液供給マニホールドとを含む。イオン交換膜電解セルの動作停止後、アノード液またはカソード液よりも低い電気伝導率を有する低導電性材料が、アノード液をアノード液タンクからアノード液供給マニホールドに供給するアノード液供給パイプと、カソード液をカソード液タンクからカソード液供給マニホールドに供給するカソード液供給パイプとのうちの少なくとも一方に注がれる。
【0006】
現在の最新技術では、バルブを有する閉鎖システムを使用して、各セルが封止され、迷走電流の可能性が回避される。
【0007】
このコンテキストで、JP-2020012146Aは、電気分解ユニットが遮断されたときの逆電流を防止するために電解槽の電極チャンバへの流路に設けられるカットオフバルブを記載している。
【0008】
この方法は、個別のセルの各々が各入口の前のバルブによって別々に閉鎖されることを必要とする。したがって、より多数のセルに対する実行は、複雑であり時間がかかる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、電解槽が遮断されたときに電解ユニット中の電解質のアノードおよびカソードの被覆を迷走電流による損傷から保護するための改良された閉鎖構造を用いるシステムおよび方法を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
前述の目的は、請求項1において定義される電解ユニットと、請求項9において定義される電気分解のための方法とよって達成された。有利な構成および発展が、従属請求項から明らかである。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、電解ユニットは複数の電解セルを含み、各電解セルは、アノードと、カソードと、電解セルをアノード区画とカソード区画とに分割するイオン交換隔膜とを有する。ユニットはまた、電解液を電解セル中に給送するためおよび電解液を電解セルから吐出するための、流体導管を有する流体マニホールドシステムを含む。さらに、ユニットは、キャビティを囲む液密シェルを有する拡張可能閉鎖手段を含み、前記液密シェルは圧力ポートを有する。ユニットはまた、液密シェルが拡張しキャビティの体積が増大するようにキャビティを加圧するための、圧力ポートに接続された圧力ユニットを含む。拡張可能閉鎖手段は流体マニホールドシステム内に配置され、それにより、拡張可能閉鎖手段が減圧状態である場合は、流体マニホールドシステムは電解液の通過に対して開いており、拡張可能閉鎖手段が加圧状態である場合は、流体マニホールドシステムは電解液の通過に対して閉じている。
【0012】
電解質が流体導管を介して電解セルのアノードチャンバまたはカソードチャンバに給送されるが、これは、アルカリ溶液供給をもたらし、セルの反対側では、流体導管を通した排液をもたらす。拡張可能閉鎖手段は、電解セルの作動に先立ってこのような導管の内部に置かれる。拡張可能閉鎖手段は、システム外部の圧力ユニットに接続されたホースを介して扱われ得る圧力ポートを有する。動作中、すなわちアルカリ水電解が実施されるとき、拡張可能閉鎖手段は収縮させられ、これは減圧状態に対応する。これは、閉鎖手段に囲まれたキャビティが周囲の電解質によって圧縮されることを意味する。
【0013】
拡張可能閉鎖手段のこの配置は、ユニットの遮断中にセル間で迷走電流がおそらく形成されず、逆電流を回避し、したがってアノードおよびカソードの被覆を損傷するのを回避する、という利点を有する。したがって、ユニットの動作寿命が延長され、材料コストおよびメンテナンスコストを削減することができる。拡張可能閉鎖手段は、圧力ユニットをアクティブ化することによって外部から容易に制御できるという、単純なバルブの設置に勝る利点を有する。拡張可能閉鎖手段の配置に応じて、いくつかの導管すべてをバルブで個別に閉鎖する代わりにこれらの導管を同時に隔離することができる。この結果、時間が節約され、さらに、電解ユニットのアクティブモードへの切替え時にユニットの複雑な変換は必要ない。拡張可能閉鎖手段は、減圧状態にするだけで収縮させることができる。したがって、導管を速い頻度で開閉することが容易に実施可能である。拡張可能閉鎖手段を含むこのユニットは、可逆的な、かつ何度も繰り返すことができるプロセスを可能にする。
【0014】
別の実施形態によれば、ユニットは、アルカリ水電解に使用されることが可能である。アルカリ水の電解液が電気分解されて、酸素と水素が得られる。
【0015】
電解ユニットのさらに他の構成によれば、少なくとも1つの流体導管が、ある電解セルから別の電解セルへの流体接続を提供する。したがって、いくつかのセルで構築された電解ユニットが、共通の電解質マニホールドシステムを介して供給を受けることが可能である。
【0016】
電解ユニットの一実施形態によれば、拡張可能閉鎖手段は、電解セルの入口の真正面で、流体導管のうちの少なくとも1つの中に配置される。この場合、拡張可能閉鎖手段の加圧状態すなわち膨張状態では、セルの直接供給導管中に拡張可能閉鎖手段が設置されているセルと、近隣の導管との間には、したがってもはやどのような接続もない。このように、セルは、普通なら電解質を介して伝播する可能性のある迷走電流から保護される。拡張可能閉鎖手段は、その単純な設計により、空間的にフレキシブルに使用されることが可能である。これをセルの直接供給導管中に置くことによって、ユニットの個々のセルのみをブロックすることが可能である。例えば、これは、ユニットまたはその一部の遮断中に有益である可能性がある。
【0017】
複数の拡張可能閉鎖手段を個々のセルの入口の各々において直接供給導管中に置くことによって、完全なユニットのための閉鎖システムが達成され得、これは、これらのセルの個別隔離を可能にする。それでもなお、拡張可能閉鎖手段の個々の圧力ポートからの圧力ホースを、圧力ユニット、例えば圧力ポンプに接続することによって、いくつかの閉鎖手段が同時に膨張または収縮させられることも可能である。
【0018】
電解ユニットの別の実施形態によれば、流体マニホールドシステムは主導管を含み、主導管から少なくとも1つの流体導管が分岐し、前記拡張可能閉鎖手段は主導管中に配置される。
【0019】
例えば、主導管は、電解ユニットの流体マニホールドシステムの下方部分または下流部分に位置し、アルカリ溶液を電解ユニットの近傍に送達する。主導管は、この主導管から分岐して、直列に電気接続された個々のセルに至る、流体導管に給送する。
【0020】
拡張可能閉鎖手段は、主導管中に事前に設置されてよい。膨張時、拡張可能閉鎖手段は、ユニットの主導管中に完全に拡張し、主導管から電解セルに分岐するすべての流体導管をブロックする。したがって、各個別セルの供給を別々に制御しなければならないのではなく、ユニット全体の電解質供給を一度にブロックすることができる。このようにして、すべてのセルは隔離され、したがって、ユニット全体の中で迷走電流が形成されることは不可能である。これにより、その後、個々のセル中での逆電流の形成が防止される。
【0021】
主導管中に単一の拡張可能閉鎖手段を置くことは、メンテナンス作業を実施するときに有利である可能性がある。個々のセルは、依然として、拡張可能閉鎖手段の設置から完全に独立している。ユニットがメンテナンスされる必要がある場合、1つの閉鎖デバイスのみが影響を受け、主導管のみが関係する。このセットアップは、材料節約的したがってコスト節約的であり、ユーザによる適用を単純化する。完全なユニットのための1つの閉鎖デバイスが提供され、主導管中に置かれた拡張可能閉鎖手段を膨張および収縮させることによって操作される。
【0022】
拡張可能閉鎖手段は、外部の気体供給システムを介して操作されることが可能である。この目的で、圧力ポートが拡張可能閉鎖手段の液密シェル上に設けられ、圧力ポートはホースに接続されてよい。このホースは、マニホールドシステムから出て圧力ユニットに至る。
【0023】
圧力ユニットを適用して、周囲の空気が供給システムを通して拡張可能閉鎖手段のキャビティに直接にポンプ注入され得る。代替として、圧力ユニットはタンクに接続され、タンクには窒素が格納され、タンクは、拡張可能閉鎖手段を加圧状態にするのに必要とされる流体をシステムに提供することができる。
【0024】
窒素や空気など入手しやすい気体でキャビティを満たすことは、コスト効果の高いオプションである。さらに、満たしたり空にしたりするプロセスは、複雑でなく、速く、エラー耐性がある。事故や気体漏れが起こった場合でも、大きい危険は想定されないことになり、したがって追加の安全対策は必要ない。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、拡張可能閉鎖手段は、収縮時に拡張可能閉鎖を流体マニホールドシステムの底部に保持するバラストコンポーネントを含む。
【0026】
特に、拡張可能閉鎖手段は、永続的に、すなわち電解プロセス中も、導管中に留まる。したがって、収縮させられた拡張可能閉鎖手段が電解プロセスを妨害しないことが重要である。一方では、減圧された拡張可能閉鎖手段は、小さい体積を有し導管の断面積の小部分のみをブロックすべきである。他方では、拡張可能閉鎖手段は、流体マニホールドシステム中で動いてはならない。これは、拡張可能閉鎖手段が再膨張させられるときに特に重要である。拡張可能閉鎖手段が依然として同じ場所にあること、例えば、主導管から分岐する流体導管を再膨張中にブロックできるようにこれらの流体導管の真正面に置かれていることが、確実にされなければならない。さらに、減圧状態では、マニホールド内部での拡張可能閉鎖手段の浮動は入口の開口を塞ぐおそれがあり、この浮動が防止されなければならない。減圧された拡張可能閉鎖手段の液密シェルが導管中で動いて望ましくない位置決めを引き起こすことがないのを確実にするために、この実施形態ではバラストコンポーネントが使用される。このようにして、減圧された拡張可能閉鎖手段の液密シェルは、流体導管の下方の壁に付けられ、折り畳まれることはない。バラストコンポーネントは、拡張可能閉鎖手段のキャビティに挿入された金属ロッドであり、長さは、拡張可能閉鎖手段に収納されるように拡張可能閉鎖手段よりもやや短い。
【0027】
収縮させられた拡張可能閉鎖手段の断面積は導管の内断面積よりも小さいので、収縮させられた拡張可能閉鎖手段は普通、電解プロセスを妨害しないが、バラストコンポーネントは、有利にも、収縮させられた拡張可能閉鎖手段を導管の底部に保持するので、電解プロセスのどのような妨害も防止するためのさらによい手段を提供する。
【0028】
別の実施形態では、拡張可能閉鎖手段は、流体導管の壁に固定され、例えば、導管の、特に主導管の下方部分に固定される。収縮させられた拡張可能閉鎖手段が流体導管の壁に沿って取り付けられているとき、拡張可能閉鎖手段は自由に動くことができず、したがって電解プロセスを妨害しない。再膨張時、拡張可能閉鎖手段が依然としてその所定位置にあることが確実にされ、例えば、拡張可能閉鎖手段が置かれている導管、例えば主導管、から分岐する流体導管の真正面に置かれてそれらをブロックすることが確実にされる。この場合、追加のバラストコンポーネントは必要とされない。
【0029】
本発明のさらに別の実施形態では、拡張可能閉鎖手段のシェルの少なくとも一部分は、浮動しない重い材料から製造されることが可能である。言い換えれば、バラストコンポーネントは、拡張可能閉鎖手段のシェル全体にわたって均一に分散される。これは、拡張可能閉鎖手段中に追加のコンポーネントがなく、それにより空間が節約されメンテナンスを被りにくい、という利点を有する。重さのせいで、拡張可能閉鎖手段は、膨張させられていないときは重力によりそれ自体を流体導管の底部に降下させる。この場合、追加のバラストコンポーネントは必要とされない。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態では、流体マニホールドシステムは一体型チャンバを保有することができ、この一体型チャンバでは、収縮させられた拡張可能閉鎖手段は、電解プロセスが継続する限り退縮させられ格納される。このチャンバは、圧力ポートの搭載場所の付近に位置することができる。圧力ユニットが収縮するとき、拡張可能閉鎖手段は、わずかな陰圧を生み出すことができる。このようにして、拡張可能閉鎖手段は、格納チャンバ中に引き込まれることが可能であり、膨張時には再び格納チャンバから容易に押し出されることが可能である。
【0031】
本発明の一実施形態では、拡張可能閉鎖手段の液密シェルは、電気絶縁体である。
【0032】
迷走電流を効果的に防止するために、この実施形態では、電解質を含む区画を分離することによる液圧障壁だけでなく、電流フロー障壁もまた実装される。液密シェルは、その中を迷走電流が伝播するのを抑止する材料で設計される。これは、電気絶縁体を使用することによって最もよく達成される。加えて、この材料は、弾性、耐UV性、耐温度性、および耐老朽化性があるとともに耐引裂き性があるように選択されることが可能である。考えられるエラストマー材料は、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、フッ素ゴム(FKM)、または当技術分野で知られている他の材料である。ゴム、例えばEPDMは、ニッケル部品などの金属部品を含み得る。圧力ポートやバラスト要素など、他のすべてのコンポーネントにも同様に絶縁材料が使用され得る。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、圧力ユニットは、圧力ポートの吸戻しバルブを介して気体をキャビティからポンプで汲み出すことによって拡張可能閉鎖手段を減圧するように設計される。
【0034】
電解ユニットは、様々な方式で構築されることが可能である。典型的な設計は、大気電解槽、および、圧力スタック設計の電解槽である。
【0035】
本発明の一実施形態では、電解ユニットは、大気電解槽、および/または、内部マニホールドを含む加圧スタック設計の電解槽であり、拡張可能閉鎖手段は、大気電解槽、および/または加圧スタック設計の電解槽の、流体マニホールドシステム中に置かれる。
【0036】
大気電解槽中では、個別の電解セルを相互の隣に置くことによって、個別の電解セルがセルユニットにグループ化される。セルに電解質を送達するためのマニホールドシステムは、外部にある。主マニホールドが、電解媒体をセルユニットに搬送する。次いで、主マニホールドは、分岐して個々のセルに至る。排出口もまた外部にあり、個々のセルから出ているパイプを介する。
【0037】
加圧スタック設計の電解槽は、内部マニホールドを含む。いくつかのセルコンポーネントの加圧配置の中を、1つまたは複数の電解パイプが流れる。電解質の吐出もまた、システムを貫通するパイプを通して行われる。
【0038】
電解ユニットがオフに切り替えられたときに起こる迷走電流および逆電流の問題は、一般的な問題である。迷走電流は、外部マニホールドと内部マニホールドのいずれでも生じ、等しくセル中の逆電流につながる。電解質が電解ユニットにまたは個々のセル中に給送される際に通る導管の構造的コンポーネントは、両方のシステムに共通であり、サイズおよび形状のみが異なり得る。有利なことに、拡張可能閉鎖手段は、種々のサイズおよび長さで製造および設置されることが可能である。したがって、拡張可能閉鎖手段は、種々の電解槽設計に適する。
【0039】
さらに、本発明は、電解ユニットの動作のための方法に関する。この方法は、以下の同時または順次工程を含む。すなわち、流体導管を有する流体マニホールドシステムを介して電解液を電解セル中に給送し、電解液を電解セルから吐出する工程と;流体マニホールドシステム中に置かれた拡張可能閉鎖手段を加圧する工程であって、前記拡張可能閉鎖手段が、キャビティを囲んでおり圧力ポートを有している液密シェルを有し、拡張可能閉鎖手段が加圧状態になるまで、圧力ポートに接続された圧力ユニットを使用して圧力ポートを介して加圧して、それにより液密シェルが拡張しキャビティの体積が増大するようにし、加圧状態では流体マニホールドシステムが電解液の通過に対して閉じている、拡張可能閉鎖手段を加圧する工程とを含む。
【0040】
本発明による方法は、本発明による電解ユニットを使用するように特に意図されている。したがって、この方法は、本発明によるシステムと同じ利点を有する。
【0041】
この方法の一実施形態によれば、拡張可能閉鎖手段は、電解ユニットの遮断中に加圧状態にされる。
【0042】
この方法の一実施形態によれば、拡張可能閉鎖手段のキャビティは、圧縮窒素または圧縮空気で加圧される。これは、窒素や空気など入手しやすい気体でキャビティを満たすための、コスト効果の高いオプションである。
【0043】
この方法の一実施形態によれば、拡張可能閉鎖手段は、電解ユニットの稼働中に収縮させられ、それにより減圧状態になり、減圧状態では、流体マニホールドシステムは電解液の通過に対して開いている。
【0044】
この方法の一実施形態によれば、拡張可能閉鎖手段は、電解ユニットの稼働中に流体導管中に留まる。特に、拡張可能閉鎖手段は、事前に設置される。
【0045】
拡張可能閉鎖手段の膨張と収縮は繰り返しアクティブ化およびアクティブ化解除されなければならないので、毎回それを設置および除去するのは時間がかかり実際的ではない。しかし、電解プロセスは、追加のコンポーネントによって制限されてはならない。拡張可能閉鎖手段の収縮と、それに関連する、導管における体積およびブロックされる横断面の低減とにより、拡張可能閉鎖手段が電解プロセスを邪魔することなく流体導管中に留まれることが実現可能である。電解質は導管中で自由に動くことができ、収縮させられた拡張可能閉鎖手段は、小さい面積を占めるだけである。
【0046】
電気分解を可能にするには、電解ユニットに電圧が加えられなければならない。電解ユニットをオフに切り替える必要がある場合、例えば終夜のソーラーパワーの欠乏により電圧を加えることができない場合は、流体マニホールドシステムおよび流体導管の中を流れる残留逆電流からアノードおよびカソードの被覆が保護されなければならない。この場合、終夜の遮断が実施されることがある。第1の工程で、分極整流器を数時間にわたってオンに切り替えられたままにして、吐出口における温度が指定のしきい値温度未満に下がるまで電解槽を冷たい電解質で満たす必要がある。次いで、分極整流器はオフに切り替えられることが可能であり、電解質循環が停止される。この瞬間から、迷走電流が現れることがあり、これは、セル中の逆電流につながり、アノードおよびカソードの表面を損傷する。この理由で、拡張可能閉鎖手段がアクティブ化され、すなわちキャビティが加圧され、それにより、拡張可能閉鎖手段は膨張させられる。これは、拡張可能閉鎖手段が加圧状態にされることを意味する。
【0047】
流体マニホールドシステム中の拡張可能閉鎖手段は、マニホールド内で完全に拡張するのに十分な圧力で膨張させられる。拡張可能閉鎖手段のキャビティは、拡張可能閉鎖手段の外壁が流体導管の内壁に密着するまで、圧力ポートを介して、加圧された気体で満たされる。この結果、電解質溶液がもはや通過することができないので、拡張可能閉鎖手段の前後の区画の液圧隔離がもたらされる。特に、拡張可能閉鎖手段は、電解プロセスが遮断されたときの迷走電流を防止するように設計される。
【0048】
この方法のさらに他の構成によれば、電解槽がアクティブ化されるとき、拡張可能閉鎖手段は減圧される。したがって、電気分解が行われているとき、拡張可能閉鎖手段はシステム中に留まってよい。よって、加圧状態と減圧状態との間で、可逆的な使用と、速く、複雑でない切替えとが達成され得る。電解質の流れを再開する前に、拡張可能閉鎖手段は収縮させられなければならない。これは、前に注入された気体をポンプで汲み出すことによって行われる。膨張工程に使用されたのと同じ圧力ユニットおよび圧力ポートが、収縮工程に使用されることが可能である。これにより、セットアップが扱いやすいままであることが確実になる。特に、使用された気体は、タンクに収集され、必要な場合に再使用されることが可能である。
【0049】
この方法の一実施形態によれば、電解液の温度が測定され、電解ユニットの遮断のために、電解質溶液が定められた温度未満に冷えた後で、圧力ユニットが例えば制御ユニットを介してアクティブ化される。次いで、拡張可能閉鎖手段は、所定のしきい値圧力値に達するまで膨張させられる。電解ユニットの動作のために、拡張可能閉鎖手段は収縮させられ、電解プロセスが開始される。
【0050】
この方法の一実施形態によれば、電解ユニットは、アルカリ水の電解液を用いて動作させられる。
【0051】
特に、この方法は、事前に定められた時点で、例えば日光の始まりとともに、再び動作させられる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の電解ユニットの一実施形態の側面図である。
【
図2】
図1に示される実施形態の流体マニホールドシステムの横断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら述べる。
【0054】
図1~
図3を参照しながら、本発明による電解ユニット20の一実施形態について述べる。
【0055】
電解ユニット20は、個別の電解セル30に細分される。
図1は、これらの個別の電解セル30のうちの2つのみを描いている。電解セル30はアノード区画およびカソード区画で構築され、これらの区画はイオン交換隔膜3によって分離される。アノード区画は、隔膜3に対向する側でアノード壁4によって区切られた液体チャンバを有する。アノード区画の内部には、メッシュまたは他の多孔性金属構造からなる基板で構築されたアノード1が存在する。アノード区画では、酸素が生成され、電解質相内で気泡の形で吐出される。カソード区画は、隔膜3に対向する側でカソード壁5によって区切られた気体チャンバである。カソード生成物は水素である。
【0056】
主導管6と複数の流体導管7とを含む流体マニホールドシステムが、電解液を電解セル30中に給送し、電解液を電解セル30から吐出する。流体マニホールドシステム6の主導管6は、電解質が電解セル30の近傍に到達できるようにする。より小さい流体導管7が、主導管6から分岐しており、個々のセル30に接続されてそれらに電解質を供給する。
【0057】
このような電解ユニット20は、それ自体で知られている。これは、酸素と水素を得るためにアルカリ水の電解液を電気分解するように設計される。これは、大気電解槽、または、内部マニホールドを含む加圧スタック設計の電解槽であり得る。
【0058】
本発明による電解ユニットは、
図1に描かれるように流体マニホールドシステム中に置かれた拡張可能閉鎖手段8を含む。拡張可能閉鎖手段8は、液密シェル9を有し、キャビティ10を囲む。これは、圧力ポート11およびホース14を介して外部の圧力ユニット12に接続される。拡張可能閉鎖手段8は、
図1および2に示されるような加圧状態、ならびに
図3に示されるような減圧状態にされることが可能である。
【0059】
加圧状態では、ポンプであり得る圧力ユニット12が、周囲の空気、または外部タンクに格納されたものであり得る窒素を圧縮し、これを、ホース14を介して流体マニホールドシステム内の拡張可能閉鎖手段8の圧力ポート11に供給する。圧力ユニット12によって供給された圧縮気体は、液密シェル9が流体マニホールドシステムの内壁に押し付けられるまで、拡張可能閉鎖手段8のキャビティ10を膨張させる。加圧状態では、拡張可能閉鎖手段8は、流体マニホールドシステムの、拡張可能閉鎖手段8が置かれている部分を封止し、電解質溶液が通過するのを防止する。
【0060】
図3に示される減圧状態では、拡張可能閉鎖手段8は収縮させられ、それにより、拡張可能閉鎖手段8の横断面は、電解質溶液が流体マニホールドシステムの中を通るのをブロックしない。この場合、拡張可能閉鎖手段8の液密シェル9の内壁に圧力は加えられない。液密シェル9は、
図3に示される弛緩状態に退縮する。
【0061】
液密シェル9の材料は弾性であり、それにより、圧力下で拡張して、
図2に示される加圧状態になる。拡張可能閉鎖手段8の液密シェル9は、ハイパロンから製造される。液密シェル9の材料はまた、EPDMとすることもでき、または、弾性、耐UV性、耐温度性、および耐老朽化性があるとともに耐引裂き性がある他の材料とすることもできる。さらに、液密シェル9は電気絶縁体である。
【0062】
拡張可能閉鎖手段8はさらに、バラストコンポーネント13を含む。これらは、キャビティ10内に置かれ、液密シェル9の内表面に取り付けられる。液密シェル9の幾何形状に応じて、拡張可能閉鎖手段8よりもやや短い長さのバラストコンポーネント13が、
図1に示されるように拡張可能閉鎖手段8の長さに沿って置かれてよい。
【0063】
本発明の別の実施形態では、いくつかのバラストコンポーネント13が、拡張可能閉鎖手段8の長さに沿って分散されてよい。
【0064】
加圧状態では、拡張可能閉鎖手段8は、ずらされることが不可能なように流体マニホールドシステムの壁に押し付けられる。しかし、減圧状態では、拡張可能閉鎖手段8は、例えば流体マニホールドシステム内を流れる電解液の力によって、流体マニホールドシステム内で流動するおそれがある。この場合、バラストコンポーネント13は、拡張可能閉鎖手段8を押し下げて、それらを流体マニホールドシステムの底部に保持する。したがって、拡張可能閉鎖手段8のずれがバラストコンポーネント13によって防止される。
【0065】
流体マニホールドシステム内での拡張可能閉鎖手段8の配置には、いくつかの可能な配置がある。ある配置によれば、拡張可能閉鎖手段8は、電解セル30の入口15の真正面に配置される。この場合、拡張可能閉鎖手段8の加圧状態では、このセル30中への電解液の通過が防止される。
【0066】
別の配置によれば、拡張可能閉鎖手段8は、
図1に示されるように流体マニホールドシステムの主導管6中に配置される。この場合、この拡張可能閉鎖手段8の加圧状態では、いくつかの流体導管7への、またはこれらの流体導管7のすべてへの、電解質溶液の通過が防止され得る。
【0067】
本発明の別の実施形態では、バラストコンポーネント13を使用する代わりに、拡張可能閉鎖手段8は、流体マニホールドシステムの壁に、例えば主導管6の下方部分に固定される。この場合、拡張可能閉鎖手段8の液密シェル9が、例えば接着剤で、主導管7の壁に長手方向に取り付けられる。固定は、膨張時には拡張可能閉鎖手段8の配置が流体導管7への入口を閉鎖し、収縮時にはランダムにしぼむことなく流れを乱さずに整然と主導管7の底部に配置されるようにして、実行される。
【0068】
本発明の別の実施形態では、拡張可能閉鎖手段8は、流体導管7の壁に固定される。固定は、膨張時には拡張可能閉鎖手段8の配置がセル30の入口15を閉鎖し、収縮時にはこの入口から間隔を空けて配置されるようにして、実行される。
【0069】
本発明の別の実施形態では、バラストコンポーネント13を使用する代わりに、拡張可能閉鎖手段8のシェル9の少なくとも一部分が、浮動しない重い材料から製造される。これにより、拡張可能閉鎖手段8は、非膨張時にそれ自体を主導管6の底部に降下させる。
【0070】
本発明のさらに別の実施形態では、流体マニホールドシステムは一体型チャンバを有し、この一体型チャンバでは、収縮させられた拡張可能閉鎖手段8は、電解プロセスが継続する限り退縮させられ格納される。チャンバは、圧力ポート11内に、または圧力ポート11の近くに配置される。圧力ユニット12は、拡張可能閉鎖手段8を収縮させ、追加的にわずかな陰圧を生み出す。このようにして、拡張可能閉鎖手段8は、格納チャンバ中に引き込まれ、膨張時には再び格納チャンバから容易に押し出されることが可能である。
【0071】
電解ユニット20は、アクティブ状態および非アクティブ状態にされることが可能である。
【0072】
アクティブ状態では、電解プロセスのために、アノード1とカソード2との間の電流が加えられる。この場合、拡張可能閉鎖手段8は、
図3に示されるような減圧状態である。バラストコンポーネント13が、収縮させられた拡張可能閉鎖手段8を、主導管6または流体導管7の下側で、延びた状態で保持する。主導管6または流体導管7は、電解液によって通過可能である。
【0073】
アクティブ化解除された状態では、電流は存在しない。圧力ユニット12が拡張可能閉鎖手段8のキャビティ10に圧力を加えており、それにより、拡張可能閉鎖手段8は、
図2に示されるような加圧状態にされる。この場合、電解質溶液は、拡張可能閉鎖手段8が置かれている場所では流体マニホールドシステムの中を通らないものとされ得る。主導管6の通行がブロックされるか、1つまたは複数の流体導管7の通行がブロックされるかのいずれかである。
【0074】
以下では、
図4を参照しながら本発明の方法の一実施形態について述べ、また、電解ユニット20の実施形態のさらに他の詳細についても述べる。特に、前述の電解ユニット20が、本発明の方法の実施形態に使用される。
【0075】
この方法では、電解ユニット20は、電気分解のための電力を電解ユニット20に提供するソーラーパネルに接続される。方法の開始点は、電解ユニット20のアクティブ状態であり、ソーラーパネルによって提供される電力によって酸素と水素が発生させられる。前述のように、この場合、拡張可能閉鎖手段8が主導管6内に置かれている。しかし、電解液のための通路がブロックされないように、拡張可能閉鎖手段8は減圧状態である。
【0076】
工程S1で、ソーラーパネルによって提供される電圧が測定される。加えて、電解液の温度が測定される。陽が落ちたとき、ソーラーパネルは、電気分解に必要とされる電力を発生させるためにそれ以上使用されることは不可能である。ソーラーパネルによって提供される電力の一定の低下が検出されると、工程S2で、電解ユニット20の遮断が開始される。工程S3で、分極整流器が数時間(2~3時間)にわたってオンに切り替えられたままにされ、電解セル30は、吐出ヘッダにおける温度が88℃から45~50℃に下がるまで、冷たい電解質溶液で満たされる。この後、工程S4で、分極整流器はオフに切り替えられ、電解質循環が停止される。分極がオフに切り替えられたとき、電解ユニット20のすべての電解セル30を液圧接続する流体マニホールドシステムの中を流れる迷走電流から逆電流が形成される可能性がある。
【0077】
アノード1およびカソード2の保護されない被覆を損傷し得るこのような迷走電流を回避するために、拡張可能閉鎖手段8が加圧状態にされる。このために、工程S5で、圧力ユニット12が開始され、窒素、代替として空気を、タンクからホース14を通して拡張可能閉鎖手段8中にポンプ注入する。液密シェル9が膨張させられ、キャビティ10の体積が増大し、横断面が直径25から直径60mmに増大する。拡張可能閉鎖手段8を流体マニホールドシステムの主導管6中に完全に拡張させるのに十分な圧力が加えられる。膨張させられた拡張可能閉鎖手段8は、個々のセル30に分岐する流体導管7への入口をブロックする。セル30は相互から液圧分離され、それにより、電流が電解質液体導管の中を流れることはできない。拡張可能閉鎖手段8にわたって拡散する可能性のある電流は、液密シェル9に絶縁材料を使用することによって防止される。
【0078】
酸素と水素を発生させるために電解ユニット20が再びアクティブ状態にされる場合は、工程S6で、圧力ユニット12に接続された圧力ポート11の吸戻しバルブを介して窒素を排出することによって、拡張可能閉鎖手段8が収縮させられる。拡張可能閉鎖手段8は、より小さい横断面および体積の、元のサイズに再び縮小する。アクティブな電解プロセスの間、拡張可能閉鎖手段8のこのしぼまされたシェル9は、流体マニホールドシステム中に留まる。バラストコンポーネント13により、しぼまされたシェルは、その周りを流れる電解質溶液によって漂流させられることなく、流体マニホールドシステムの底部、例えば主導管6の底部に確実に留まる。
【0079】
別の実施形態では、いくつかの拡張可能閉鎖手段8が使用され、これらは、流体マニホールドシステムの主導管6から個々のセル30に至る流体導管7中に事前に設置される。液密シェル9の材料および構造は、第1の実施形態で述べたものと同一である。しかし、拡張可能閉鎖手段8は、より細い導管に適合された、より小さい横断面を提供する。個々の閉鎖手段8の圧力ポート11は、バルブシステムを介して接続され、すべての拡張可能閉鎖手段8が1つの外部圧力ユニット12を介して同時に制御されるのを可能にする。
【0080】
いくつかの拡張可能閉鎖手段8の液密シェル9が膨張させられ、キャビティ10の体積が増大する。拡張可能閉鎖手段8を流体導管7中に完全に拡張させるのに十分な圧力が加えられる。膨張させられた拡張可能閉鎖手段8は、個々の流体導管7のすべてをブロックする。電解セル30は相互から液圧分離され、したがって、電流が電解質液体導管の中を流れることはできない。拡張可能閉鎖手段8にわたって拡散する可能性のある電流は、絶縁材料の使用によって防止される。
【0081】
電解ユニット20を再通電することを見込んで電解質の流れを再開する前に、拡張可能閉鎖手段8は、窒素を排出することによって収縮させられる。圧力ユニット12は、拡張可能閉鎖手段8を減圧する。圧力ユニット12によって、圧力ポートの吸戻しバルブを介して圧縮窒素をポンプで汲み出して戻す。拡張可能閉鎖手段8は、より小さい横断面および体積の、それらの元のサイズに再び縮小する。バラストコンポーネント13により、拡張可能閉鎖手段8は、流体導管7中に確実に留まる。
【符号の説明】
【0082】
1 アノード
2 カソード
3 イオン交換隔膜
4 アノード壁
5 カソード壁
6 主導管
7 流体導管
8 拡張可能閉鎖手段
9 液密シェル
10 キャビティ
11 圧力ポート
12 圧力ユニット
13 バラストコンポーネント
14 ホース
15 入口
20 電解ユニット
30 電解セル
【手続補正書】
【提出日】2023-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電解セル(30)であって、各々がアノード(1)と、カソード(2)と、電解セル(30)をアノード区画とカソード区画とに分割するイオン交換隔膜(3)とを有する、複数の電解セル(30)と、
電解液を電解セル(30)中に給送するためおよび電解液を電解セル(30)から吐出するための、流体導管(7)を有する流体マニホールドシステム(6、7)と、
キャビティ(10)を囲む液密シェル(9)を有する拡張可能閉鎖手段(8)であって、前記液密シェル(9)が圧力ポート(11)を有する、拡張可能閉鎖手段(8)と、
液密シェル(9)が拡張しキャビティ(10)の体積が増大するようにキャビティ(10)を加圧するための、圧力ポート(11)に接続された圧力ユニット(12)と
を含む電解ユニット(20)であって、
前記拡張可能閉鎖手段(8)が流体マニホールドシステム(6、7)内に配置され、それにより、拡張可能閉鎖手段(8)が減圧状態である場合は流体マニホールドシステム(6、7)が電解液の通過に対して開いており、拡張可能閉鎖手段(8)が加圧状態である場合は流体マニホールドシステム(6、7)が電解液の通過に対して閉じており、
拡張可能閉鎖手段(8)が、減圧状態の拡張可能閉鎖手段(8)を流体マニホールドシステム(6、7)の底部に保持するバラストコンポーネント(13)を含む、
電解ユニット(20)。
【請求項2】
少なくとも1つの流体導管(7)が、ある電解セル(30)から別の電解セル(30)への流体接続を提供する、請求項1に記載の電解ユニット(20)。
【請求項3】
拡張可能閉鎖手段(8)が、電解セル(30)のうちの1つの入口(15)の真正面で、流体導管(7)のうちの少なくとも1つの中に配置された、請求項2に記載の電解ユニット(20)。
【請求項4】
流体マニホールドシステム(6、7)が主導管(6)を含み、主導管(6)から少なくとも1つの流体導管(7)が分岐し、前記拡張可能閉鎖手段(8)が主導管(6)中に配置されている、請求項1に記載の電解ユニット(20)。
【請求項5】
拡張可能閉鎖手段(8)の液密シェル(9)が電気絶縁体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の電解ユニット(20)。
【請求項6】
圧力ユニット(12)が、圧力ポート(11)の吸戻しバルブを介して気体をキャビティ(10)からポンプで汲み出すことによって拡張可能閉鎖手段(8)を減圧するように設計された、請求項1から5のいずれか一項に記載の電解ユニット(20)。
【請求項7】
電解ユニットが、大気電解槽、および/または、内部マニホールドを含む加圧スタック設計の電解槽であり、拡張可能閉鎖手段(8)が、大気電解槽、および/または加圧スタック設計の電解槽の、流体マニホールドシステム(6、7)中に置かれた、請求項1から6のいずれか一項に記載の電解ユニット(20)。
【請求項8】
電解ユニット(20)の操作のための方法であって、以下の同時または順次工程、すなわち、
流体導管(7)を有する流体マニホールドシステム(6、7)を介して電解液を電解セル(30)中に給送し、電解液を電解セル(30)から吐出させる工程と、
流体マニホールドシステム(6、7)中に置かれた拡張可能閉鎖手段(8)を加圧する工程であって、前記拡張可能閉鎖手段(8)が、キャビティ(10)を囲んでおり圧力ポート(11)を有している液密シェル(9)を有し、拡張可能閉鎖手段(8)が加圧状態になるまで、圧力ポート(11)に接続された圧力ユニット(12)を使用して圧力ポート(11)を介して加圧して、それにより液密シェル(9)が拡張しキャビティ(10)の体積が増大するようにし、加圧状態では流体マニホールドシステム(6、7)が電解液の通過に対して閉じている、拡張可能閉鎖手段(8)を加圧する工程と
を含み、
拡張可能閉鎖手段(8)を、電解ユニット(20)の稼働中に収縮させ、それにより減圧状態になり、減圧状態では流体マニホールドシステム(6、7)が電解液の通過に対して開いており、
拡張可能閉鎖手段(8)が、減圧状態の拡張可能閉鎖手段(8)を流体マニホールドシステム(6、7)の底部に保持するバラストコンポーネント(13)を含む、
方法。
【請求項9】
拡張可能閉鎖手段(8)が、電解ユニット(20)の遮断中に加圧状態にされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
拡張可能閉鎖手段(8)のキャビティ(10)が圧縮窒素または圧縮空気で加圧される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
拡張可能閉鎖手段(8)が、電解ユニット(20)の稼働中に流体導管(7)中に留まる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
電解液の温度が測定され、
電解ユニット(20)の遮断のために、電解質溶液が定められた温度未満に冷えた後で圧力ユニット(12)がアクティブ化され、
拡張可能閉鎖手段(8)を、所定のしきい値圧力値に達するまで膨張させ、
電解ユニット(20)の操作のために拡張可能閉鎖手段(8)を収縮させ、
電解プロセスが開始される、
請求項8または11に記載の方法。
【請求項13】
電解ユニット(20)が、アルカリ水の電解液を用いて操作される、請求項8に記載の方法。
【国際調査報告】