(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】終末糖化産物受容体(RAGE)に対する抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241108BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241108BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241108BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241108BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241108BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20241108BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61P29/00
A61P35/00
A61K39/395 N
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P1/16
A61P11/00
A61P31/00
A61P27/02
A61P37/06
A61K39/395 D
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529732
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 US2022080159
(87)【国際公開番号】W WO2023092082
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524187726
【氏名又は名称】サルバアールエックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ベントレー、コーネリア
(72)【発明者】
【氏名】ピットマン、ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ホームズ、エバン
(72)【発明者】
【氏名】デロスリオス、ミゲル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZC412
4C084ZC751
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4C085EE01
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4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書は、終末糖化産物の受容体(RAGE)に対する抗体と、前記抗体の使用方法とを開示する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
終末糖化産物受容体(RAGE)のV及び/又はC1ドメインに対する特異的抗体であって、相補性決定領域(CDR)の少なくとも1つが配列番号4~9又は12~17のいずれか1つのアミノ酸配列を有する、抗体。
【請求項2】
RAGEのV及び/又はC1ドメインに対する特異的抗体であって、前記抗体の可変重鎖(VH)領域が配列番号2又は10のアミノ酸配列を有する、抗体。
【請求項3】
RAGEのV及び/又はC1ドメインに対する特異的抗体であって、前記抗体の可変軽鎖(VL)領域が配列番号3又は11のアミノ酸配列を有する、抗体。
【請求項4】
モノクローナル抗体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項5】
キメラ抗体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項6】
ヒト化抗体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項7】
抗原結合抗体断片である、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗原結合抗体断片は、Fab、Fab′、F(ab′)
2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、多重特異性抗体、二重特異性抗体(dual specific antibody)、二重可変ドメイン免疫グロブリン、重鎖抗体(HCAb)、又は二重特異性抗体(bispecific antibody)である、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
配列番号4、5及び6のCDRを含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項10】
配列番号7、8及び9のCDRを含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項11】
配列番号12、13及び14のCDRを含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項12】
配列番号15、16及び17のCDRを含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項13】
配列番号2のVHと、配列番号3のVLとを含む、請求項2又は3に記載の抗体。
【請求項14】
配列番号10のVHと、配列番号11のVLとを含む、請求項2又は3に記載の抗体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体を含む、医薬組成物。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の抗体又は請求項15に記載の医薬組成物の有効量を、RAGE活性の阻害を必要とする対象に投与することを含む、RAGE活性を阻害する方法。
【請求項17】
RAGE活性を阻害することは前記対象におけるがんを治療することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
がんを治療することは、腫瘍微小環境を変化させる、腫瘍への血管形成を阻害する、腫瘍の成長を阻害する、腫瘍内の成長因子及び/又は炎症因子の発現を阻害又は減少させる、単球性骨髄由来抑制細胞(MDSC)を減少させる、炎症性単球(iMonos)を減少させる、M2腫瘍関連マクロファージ(M2 TAM)を減少させる、M1マクロファージ及びM1マクロファージシグナル伝達を増加させる、M1/M2マクロファージ腫瘍浸潤及び/又はシグナル伝達を増加させる、M2からM1への分極を増加させる、及び/又は、T細胞活性及び腫瘍への浸潤を促進することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
RAGE活性を阻害することは、前記対象における炎症を低減することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記炎症は、慢性炎症又は急性炎症である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記慢性炎症は、自己免疫疾患の結果である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
RAGE活性を阻害することは、肝臓損傷及び/又は線維症を予防又は治療することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
RAGE活性を阻害することは、眼における新生血管形成を予防又は治療することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
RAGE活性を阻害することは、呼吸器疾患を予防又は治療することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
RAGE活性を阻害することは、感染を予防又は治療することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
第2の医薬の有効量を投与することを更に含む、請求項16~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記方法はがんを治療し、前記第2の医薬は免疫チェックポイント阻害剤である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1又はPDL-1に対する抗体を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の医薬はワクチンである、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記がんは大腸がんである、請求項17に記載の方法。
【請求項31】
生物学的試料中のRAGEタンパク質を検出する方法であって、
前記試料を請求項1~14のいずれか1項に記載の抗RAGE抗体と接触させること、及び、
前記抗体と前記試料中のRAGEタンパク質との複合体の形成を検出すること、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は2021年11月18日に提出された米国仮特許出願番号第63/280,999号の利益を主張し、米国仮特許出願番号第63/280,999号の全体を参照としてここに取り込む。
【0002】
(技術分野)
本開示は、抗RAGE抗体及びその断片、抗体製剤、投与レジメン、並びにこれらの使用方法に関する。抗RAGE抗体及びその断片は、特定のがん、炎症状態、及び/又はRAGE発現の増加若しくは機能異常と関連する他の状態の治療及び診断において使用される場合がある。
【背景技術】
【0003】
終末糖化産物(advanced glycation end product)の受容体(RAGE又はAGER、配列番号1又は23を参照せよ。)は、骨髄由来抑制細胞(MDSC)のような免疫細胞、腫瘍関連マクロファージ(TAM)及び間葉系間質細胞を含むいくつかの細胞タイプに発現されるマルチリガンド受容体である。RAGEの発現は腫瘍免疫細胞浸潤で増加し、RAGEはいくつかの腫瘍細胞タイプでも過剰発現している。
【0004】
RAGEはまた、急性炎症反応から慢性炎症反応へのマスタースイッチのような働きもする。いくつかの既知のリガンドの1つによって活性化されると、細胞は抗アポトーシス活性と腫瘍細胞増殖のためにプライミングされる。活性化されたRAGEは、それ自身といくつかの既知の活性化リガンドとの発現を増強するフィードフォワードループを形成する。
【0005】
RAGEの既知のリガンドは、高移動度グループボックス1(HMGB1)、S100カルシウム結合タンパク質、アミロイド線維、核酸骨格などを含む損傷関連分子パターン(DAMP)に属するリガンドを含む。その他のリガンドは、細胞外シグナル制御キナーゼ(Erk、マイトジェン活性化プロテインキナーゼまたはMAPKとしても知られる)経路のリガンドと、細胞移動の制御に関与するリガンドとを含む。
【0006】
RAGEの活性化によって引き起こされる慢性炎症状態は、いくつかの機序によって免疫抑制的な環境を作り出す。これらのメカニズムには、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン6(IL-6)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)などの炎症性分子の発現及び活性化を含む。RAGEはまた、接触によって抗腫瘍性リンパ球の活性を抑制するように直接作用する。RAGE活性は、MDSCs及びTAMsのような免疫抑制細胞を集め、腫瘍浸潤を促進する。
【0007】
本開示は、RAGEに結合し、治療方法及び/又は診断方法に使用可能な新規抗体について説明する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、部分的にはRAGEに対する抗体に基づく。本開示はまた、RAGEの発現及び/又は活性に関連する病態を標的として使用するための治療薬及び診断薬としての抗体を提供する。そして、本開示は、RAGEに関連する方法、組成物、キット、及び製造品を提供する。
【0009】
本開示は、RAGEに特異的に結合する結合分子、特に抗体を提供する;本開示の代表的な抗RAGE抗体は、以下でより詳細に規定されるように、配列番号2、3、10、及び11に示される抗体可変領域アミノ酸配列、又はその個々のCDR、又は関連CDR配列の少なくとも1つを含む場合がある。
【0010】
具体的には、本開示は、RAGEに結合する抗体、より具体的にはRAGEのV及び/又はC1ドメインに結合するモノクローナル抗体を提供する。本開示はまた、配列番号2、3、10、11のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるRAGE結合断片を提供する。
【0011】
本開示に含まれるのは、RAGEに特異的に結合し、配列番号3、及び11のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む抗RAGE抗体、又は前記配列を含む抗体のRAGE結合フラグメント若しくはその相同変異体である抗RAGE抗体である。また、本開示には、RAGEに特異的に結合し、配列番号3又は11に含まれるCDR(本明細書で同定される)と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む抗RAGE抗体も含む。
【0012】
また、RAGEに特異的に結合し、配列番号2、及びその10のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含むか、又は前記配列を含む抗体のRAGE結合フラグメント若しくはその相同変異体である抗RAGE抗体及びそのフラグメントも含む。また、本開示には、RAGEに特異的に結合し、配列番号2又は10に含まれるCDR(本明細書で同定される)と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む抗RAGE抗体も含む。
【0013】
本開示の抗RAGE抗体は、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体又はヒト化抗体、一本鎖抗体、融合タンパク質、及びヒト抗体からなる群から選択される、上述した抗RAGE抗体若しくはその断片、又はRAGE結合断片若しくはその相同変異体を含む。
【0014】
特定の実施態様において、RAGE(配列番号1)若しくはその断片に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで、抗体又はその断片は、配列番号2又は10のアミノ酸配列からなる重鎖(VH)及び配列番号3又は11のアミノ酸配列からなる軽鎖(VL)を含む可変ドメインを含む。
【0015】
特定の実施態様において、RAGEに結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで抗体又はその断片は、配列番号4又は12のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号5又は13のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び配列番号6又は14のアミノ酸配列を含むCDR-H3相補性決定領域(CDR)配列の少なくとも1、2、3、4、5又は6個を含む可変ドメインを含む。特定の実施態様において、抗体又はその断片は、配列番号7又は15のアミノ酸配列からなるCDR-L1;配列番号8又は16のアミノ酸配列からなるCDR-L2;及び配列番号9又は17のアミノ酸配列からなるCDR-L3をさらに含む。特定の実施態様において、抗体又はその断片は、配列番号4~9又は12~17のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列からなる少なくとも1、2、3、4、5又は6個の相補性決定領域(CDR)配列を含む可変ドメインを含む。
【0016】
特定の実施態様において、RAGE又はその断片に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで抗体又はその断片は、配列番号4又は12のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号5又は13のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び配列番号6又は14のアミノ酸配列を含むCDR-H3のアミノ酸配列を含む、CDR配列を含む可変ドメインを含む。特定の実施態様において、抗体又はその断片は、配列番号7又は15のアミノ酸配列からなるCDR-L1;配列番号8又は16のアミノ酸配列からなるCDR-L2;及び配列番号9又は17のアミノ酸配列からなるCDR-L3をさらに含む。特定の実施態様において、抗体又はその断片は、配列番号4~9又は12~17のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR配列を含む可変ドメインを含む。
【0017】
1の実施態様では、RAGE又はその断片に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで抗体は、配列番号2のアミノ酸配列からなるVHを含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号3のアミノ酸配列からなるVLをさらに含む。特定の実施態様において、抗体は、配列番号2に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及び/又は、配列番号3に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施態様において、抗体又はその断片は、配列番号4~9のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、少なくとも1個のCDR配列を含む可変ドメインを含む。
【0018】
1つの実施態様では、配列番号10のアミノ酸配列を含むVHを含む、RAGE又はその断片に結合する抗体又は抗体断片が提供される。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号10のアミノ酸配列を含むVH及び配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを更に含む。特定の実施態様において、抗体は、配列番号10と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むVH、及び/又は、配列番号11と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施態様において、抗体又はその断片は、配列番号12~17のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む少なくとも1つのCDR配列を含む可変ドメインを含む。
【0019】
1つの実施態様では、RAGE又はその断片に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで該抗体又はその断片は:
(1)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(2)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(3)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(4)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(5)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(6)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3;
を含む。
【0020】
特定の実施態様において、抗体又は抗体断片は、配列番号4~9のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0021】
1つの実施態様では、RAGEに結合する抗体又はその断片が提供され、該抗体又はその断片は:
(1)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(2)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(3)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(4)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(5)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び
(6)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L3
を含む。
【0022】
特定の実施態様では、抗体又は抗体断片は、配列番号12~17のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0023】
特定の実施態様では、RAGEに結合する抗体又は抗体断片が提供され、該抗体又はその断片は、(a)配列番号2又は配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列;又は(b)配列番号3又は配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列を含む。
【0024】
1つの実施態様では、RAGE又はその断片に結合する抗体又は抗体断片が提供され、該抗体又はその断片は、配列番号2のVH配列及び配列番号3のVL配列を含む。別の実施態様では、RAGE又はその断片に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで、該抗体又はその断片は、配列番号10のVH配列及び配列番号11のVL配列を含む。
【0025】
特定の実施態様では、RAGE又はその断片に結合する抗体又は抗体断片が提供され、該抗体はRAGEの断片内のエピトープに結合する。特定の実施態様では、RAGE又はその断片に結合する抗体又は抗体断片が提供され、該抗体又はその断片は、配列番号1のヒトRAGEアミノ酸配列のV及び/又はC1ドメインを含むRAGEの断片内のエピトープに結合する。ヒトRAGEのVドメインは配列番号1(配列番号18としても提供される)のアミノ酸23~116を含み、C1ドメインは配列番号1(配列番号19としても提供される)のアミノ酸124~221を含み、C2ドメインは配列番号20(配列番号20としても提供される)のアミノ酸227~317を含む。
【0026】
1つの実施態様では、抗RAGE抗体はモノクローナル抗体である。特定の実施態様では抗RAGE抗体はヒト化される。特定の実施態様では抗RAGE抗体はヒト抗体である。1つの実施態様では、抗RAGE抗体のフレームワーク配列の少なくとも一部は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列又はヒト生殖細胞系列配列である。1つの実施態様では、抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、又は(Fab’)2断片から選択される抗体断片である。
【0027】
1つの態様において、上記の抗RAGE抗体及び又はその断片のいずれかをコードする核酸が提供される。1つの実施態様では、該核酸を含むベクターが提供される。1つの実施態様では、該ベクターは発現ベクターである。1つの実施態様では、該ベクターを含む宿主細胞が提供される。1つの実施態様では、該宿主細胞は真核生物である。別の実施態様では、前記宿主細胞は哺乳動物である。さらに別の実施態様では、前記宿主細胞は原核生物である。1つの実施態様では、抗RAGE抗体及び又はその断片を作製する方法が提供され、該方法は、抗体をコードする核酸の発現に適した条件下で宿主細胞を培養し、抗体を単離することを含む。ある実施態様では、前記方法は、宿主細胞から抗RAGE抗体及びその断片を回収することを更に含む。特定の実施態様では、本明細書で説明する抗RAGE抗体及び又はその断片のいずれかを含む組成物が提供される。1つの実施態様では、該組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0028】
1つの局面において、本明細書で提供されるのは、抗RAGE抗体又はその断片を含む医薬組成物である。特定の実施態様では、該組成物は皮下投与に適している。特定の実施態様では、組成物は静脈内投与に適している。特定の実施態様では、組成物の粘度は、25℃で約10cP未満である。他の実施態様では、組成物の粘度は、25℃で約20cP未満であり、例えば、限定するものではないが、約15cP、約16cP、約17cP、約18cP、及び約19cPなどである。前記技術分野で公知であるか又は本明細書に説明する抗RAGE抗体は、前記組成物に配合される場合がある。
【0029】
1つの局面において、本明細書で提供されるのは、本明細書で説明する抗RAGE抗体及びその断片、又は抗RAGE抗体及びその断片を含む組成物を含む皮下投与デバイスである。特定の実施態様では、該デバイスは、抗体の約200~約1200mgの範囲の固定用量を個人に送達するためのものである。
【0030】
1つの局面において、本開示は、対象におけるErk/MAPK経路又はp53経路のRAGE介在活性化を阻害する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体及びその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。別の局面において、本開示は、被験体において、慢性炎症、免疫抑制、がん/腫瘍細胞遊走、がん/腫瘍細胞浸潤、腫瘍への抑制性免疫細胞浸潤、腫瘍促進性免疫細胞浸潤、がん/腫瘍増殖、肝臓損傷及び線維症、眼球新生血管、呼吸器疾患、感染症、及び/又は、がん/腫瘍進行の少なくとも1つを低減する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を被験体に投与することを含む。
【0031】
1つの局面において、本開示は、対象におけるErk/MAPK経路又はp53経路のRAGE介在活性化を阻害する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体及びその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。別の局面において、本開示は、CD8+T細胞の浸潤、M1 TAMの浸潤又はM2からM1 TAMへの分極、NKT細胞、NK細胞、CD8+抗腫瘍記憶細胞、(IL-27の産生の増加のような)M1機能の増加の少なくとも1つを増加させる方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0032】
1つの局面において、本開示は、例えば、限定するものではないが、大腸がん及び腎がんのような高い血管形成を特徴とするがんのようながんを予防及び/又は治療するためにRAGE活性を阻害する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体及び又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0033】
別の局面において、本開示は、例えば、腫瘍への血管形成を阻害する、腫瘍の成長を阻害する、腫瘍内の成長因子及び/又は炎症因子の発現を阻害又は減少させる、単球性骨髄由来抑制細胞(MDSC)を減少させる、炎症性単球(iMonos)を減少させる、M2腫瘍関連マクロファージ(M2 TAM)を減少させる、M1マクロファージ及びM1マクロファージシグナル伝達を増加させる、M1/M2マクロファージ腫瘍浸潤及び/又はシグナル伝達を増加させる、M2からM1への分極を増加させる、及び/又は、T細胞活性及び腫瘍への浸潤を促進することを含むが、これらに限定されない、腫瘍微小環境を変化させるためにRAGE活性を阻害する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0034】
別の局面において、本開示は、慢性炎症の発症を予防するためにRAGE活性を阻害する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体及びその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。関連する局面において、本開示は、急性炎症状態を維持するためにRAGE活性を阻害する方法に関し、該方法は、本明細書に説明するいずれかの抗RAGE抗体又はその断片の有効量を対象に投与することを含む。
【0035】
別の局面において、本開示は、肝臓損傷及び/又は線維症を予防するためにRAGE活性を阻害する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0036】
別の局面において、本開示は、眼における新生血管形成を予防するためにRAGE活性を阻害する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0037】
別の局面において、本開示は、呼吸器疾患及び/又は呼吸器疾患の発症を予防するためにRAGE活性を阻害する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0038】
別の局面において、本開示は、感染症及び/又は感染症の発症を予防するためにRAGE活性を阻害する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0039】
1つの局面において、本開示は、例えば、大腸がん及び腎がんのような高い血管形成を特徴とするがんに限定されないがんを治療する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0040】
別の局面において、例えば、限定するものではないが、腫瘍への血管形成を阻害する、腫瘍の増殖を阻害する、腫瘍内の増殖因子の発現を阻害若しくは減少させる、骨髄系細胞タイプの浸潤及び/若しくは活性を減少若しくは変化させる、間葉系/間質系細胞型の浸潤及び/若しくは活性を減少若しくは変化させ、及び/又はT細胞の活性及び腫瘍への浸潤を促進するために、腫瘍微小環境を変化させる方法であって、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0041】
別の局面において、本開示は、慢性炎症の発症を予防する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。関連する局面において、本開示は、急性炎症状態を維持する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0042】
別の局面において、本開示は、肝臓損傷及び/又は線維症を予防する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0043】
別の局面において、本開示は、眼における新生血管形成を予防する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0044】
別の局面において、本開示は、呼吸器疾患及び/又は呼吸器疾患の発症を予防する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0045】
別の局面において、本開示は、呼吸器疾患及び/又は呼吸器疾患の発症を予防する方法に関し、該方法は、本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。
【0046】
特定の実施態様では、本明細書に説明する方法は、抗RAGE抗体又はその断片が第1の医薬品である、有効量の第2の医薬品を対象に投与することをさらに含む。いくつかの実施態様では、第2の医薬品は、感染因子に対するワクチンのようなワクチンである。いくつかの実施態様では、第2の医薬品は生物学的がん治療薬である。例示的な生物学的がん治療薬は、抗体、サイトカイン、造血成長因子、がんワクチン、バシルス・カルメット・ゲラン、腫瘍溶解性ウイルス、遺伝子治療、養子T細胞移入療法、キメラ抗原受容体改変細胞を含むが、これらに限定されない。例示的な抗体は、PD-1、PD-L1、CTLA-4、GITIR、LAIR-1、TIGIT、CD73、OX40、TLR2、TLR4、TLR7、TLR8、TLR9、EP2受容体、EP4受容体、VEGF、CD20、CD52、EGF、HER-2に結合する抗体を含むが、これらに限定されない。また、例えばS100ファミリーリガンド、HBGB1、NFκB、TGF-BetaIDO、TDO、ARG1、ARG2、iNOS、TLR2、TLR4、TLR7、TLR8、TLR9、PDE5、P2X7、P2Y11、A2A受容体、A2A受容体、A2B受容体、CD39、CD73、COX2、EP2受容体、EP4受容体、CXCR1、CXCR2、CXCR4、CCR2、CCR5、ALK5、BRAF、RON、CSF1、PI3Kγ、PI3Kδ、CSF受容体1を標的とする低分子化合物、及び抗体によっても標的とされるものも含む。
【0047】
特定の実施態様では、対象又は個体はヒトである。
【0048】
1つの局面において、本開示は、RAGEタンパク質を含むと疑われる試料中のRAGEタンパク質を検出する方法に関し、該方法は、(a)本明細書に説明する抗RAGE抗体又はその断片と試料を接触させること;及び(b)抗RAGE抗体又はその断片とRAGEタンパク質との間の複合体の形成を検出することを含む。1つの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は検出可能に標識されている。
【0049】
本明細書で説明する任意の実施態様又はそのいずれかの組み合わせは、本明細書で説明する本開示の任意の及び全ての抗RAGE抗体又はその断片、方法及び使用に適用される。
【0050】
本願の抗体又はその断片は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域のような重鎖定常領域を含む。さらに、抗体は、κ軽鎖定常領域またはλ軽鎖定常領域のいずれかの軽鎖定常領域を含むことができる。特に、抗体はκ軽鎖定常領域を含む。あるいは、抗体部分は、例えば、Fab断片又は一本鎖Fv断片であり得る。抗体のエフェクター機能を変化させるためのFc部分のアミノ酸残基の置換は、当技術分野で知られている(米国特許第5,648,260号;同第5,624,821号)。抗体のFc部分は、いくつかの重要なエフェクター機能、例えば、サイトカイン誘導、ADCC、貪食、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体及び抗原抗体複合体の半減期/クリアランス速度などに介在する。いくつかの場合には、これらのエフェクター機能は治療用抗体として望ましいものであるが、別の場合には不必要なもの、あるいは有害なものでさえあるかもしれない。特定のヒトIgGアイソタイプ、特にIgG1及びIgG3は、それぞれFcγ R及び補体C1qへの結合を介してADCC及びCDCに介在する。新生児Fc受容体(FcRn)は、抗体の循環半減期を決定する重要な成分である。さらに別の実施態様では、抗体の定常領域、例えば抗体のFc領域において、抗体のエフェクター機能が変化するように、少なくとも1つのアミノ酸残基が置換される。
【0051】
本開示のこれら及び他の物、特徴及び利点は、添付の説明、特許請求の範囲及び図面と併せて以下の明細書を読めばより明らかになるであろう。
【0052】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図は、以下に説明するいくつかの局面を図示する。特許ファイルまたは出願ファイルには、少なくとも1枚のカラー図面を含む。カラー図面を含む本特許又は特許出願公開公報の写しは,請求及び必要な手数料の支払により特許庁から提供される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1A】
図1A及びBは、本開示の抗体のフローサイトメトリーによるヒト及びマウスRAGEタンパク質との結合及び交差反応性を示す。
図1AはヒトRAGEタンパク質との結合を示す。
【
図1B】
図1A及びBは、本開示の抗体のフローサイトメトリーによるヒト及びマウスRAGEタンパク質との結合及び交差反応性を示す。
図1BはマウスRAGEタンパク質との結合を示す。
【
図2A】
図2A~2Cは、本開示の抗体のRAGEタンパク質ドメインへの結合部位のマッピングを示す。
図2Aは、ドメインV、C1、C2を示すRAGEタンパク質の概略図である。
【
図2B】
図2A~2Cは、本開示の抗体のRAGEタンパク質ドメインへの結合部位のマッピングを示す。
図2Bは、本開示の抗体とRAGEドメインV、C1、C2との相互作用を示す棒グラフである。
【
図2C】
図2A~2Cは、本開示の抗体のRAGEタンパク質ドメインへの結合部位のマッピングを示す。
図2Cは、特定のRAGEドメインに対する本開示のいくつかの例示的抗体の結合部位を示す模式図である。
【
図3A】
図3A~C-3は、細胞遊走(
図3A)を含む種々の細胞機能に対する本開示の抗RAGE抗体の効果を示す。具体的には、AGE-BSAに対するTHP-1細胞(ヒト急性単球性白血病株)の遊走が測定された。
【
図3B】
図3A~C-3は、細胞遊走(
図3A)を含む種々の細胞機能に対する本開示の抗RAGE抗体の効果を示す。
図3Bは、本開示の抗RAGE抗体が、マウス黒色腫細胞株におけるNFκBシグナル伝達の基底レベルを阻害することを示す。
【
図3C-1】
図3A~C-3は、細胞遊走(
図3A)を含む種々の細胞機能に対する本開示の抗RAGE抗体の効果を示す。
図3C-1は、本開示の抗体が、単球及び顆粒球へのS100A8/9の結合を阻害することを示す。
【
図3C-2】
図3A~C-3は、細胞遊走(
図3A)を含む種々の細胞機能に対する本開示の抗RAGE抗体の効果を示す。
図3C-2は、本開示の抗体が、単球へのS100A8/9の結合を阻害することを示す。
【
図3C-3】
図3A~C-3は、細胞遊走(
図3A)を含む種々の細胞機能に対する本開示の抗RAGE抗体の効果を示す。
図3C-3は、本開示の抗体が、顆粒球へのS100A8/9の結合を阻害することを示す。
【
図4】
図4は、Erkシグナル伝達に対する本開示の抗RAGE抗体の効果を示す。
【
図5A】
図5A~5Eは、ヒト大腸がん腺がん細胞株における特異的抗RAGE抗体RFT01の結合を示す。
図5Aは、ステージIII細胞に対するRFT01抗体の結合を示す。
【
図5B】
図5A~5Eは、ヒト大腸がん腺がん細胞株における特異的抗RAGE抗体RFT01の結合を示す。
図5Bは、ステージIV細胞に対するRFT01抗体の結合を示す。
【
図5C】
図5A~5Eは、ヒト大腸がん腺がん細胞株における特異的抗RAGE抗体RFT01の結合を示す。
図5Cは、
図5A及び5BのRAGE抗体浸潤細胞の定量を示す。
【
図5D】
図5A~5Eは、ヒト大腸がん腺がん細胞株における特異的抗RAGE抗体RFT01の結合を示す。
図5Dは、ヒト大腸がん骨髄系細胞におけるRFT01抗RAGE抗体の結合を示す。
【
図5E】
図5A~5Eは、ヒト大腸がん腺がん細胞株における特異的抗RAGE抗体RFT01の結合を示す。
図5Eは、ヒト大腸がんリンパ系細胞におけるRFT01抗RAGE抗体の結合を示す。
【
図6A】
図6Aは、同系動物モデルCT26及びColon26における腫瘍浸潤性骨髄球集団に対するRS15処理の効果を示す。
【
図6B】
図6Bは、より免疫抑制的でない微小環境に向かってのColon26腫瘍における腫瘍サイトカインプロフィールの対応する変化を示す。
【
図7】
図7は、腫瘍浸潤リンパ球集団のFACS分析によって、CT26腫瘍を有するマウスのRAGE(RS15)処置が腫瘍浸潤T細胞を増加させることを示す。
【
図8A】
図8A及び
図8Bは、RFT01処置が腫瘍増殖を阻害することを示す。
図8Aは、CT26腫瘍増殖が同系マウスモデル(具体的には、BALB/Cマウスに移植されたマウス大腸がん細胞株CT26)において阻害されることを示す。
【
図8B】
図8A及び
図8Bは、RFT01処置が腫瘍増殖を阻害することを示す。
図8Bは、100mm
3の腫瘍から開始したRFT01の投与により、Colon26腫瘍体積が経時的に減少したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
定義
本開示の様々な実施態様の原理及び特徴の理解を容易にするために、様々な例示的実施態様を以下に説明する。本開示の例示的実施態様を詳細に説明するが、他の実施態様も想定されることを理解されるべきである。従って、本開示が、その範囲において、以下の説明又は実施例に記載される構成要素の構造及び配置の詳細に限定されることは意図されない。本開示は、他の実施態様、及び様々なやり方で実施又は実行することが可能である。また、例示的な実施態様を説明する際には、明確性のために特定の用語が用いられるであろう。
【0055】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形“a”、“an”及び“the”は、文脈上そうでないことが明らかに指示されない限り、複数形の参照を含むことにも留意しなければならない。例えば、成分への言及は、複数の成分の組成物を含むことも意図される。“a”を伴う構成成分を含む組成物への言及は、その名前を付された構成成分に加えて、他の構成成分を含むことが意図される。言い換えれば、“a”又は“an”は、「少なくとも1つ」又は「1個又はそれ以上」を意味する。
【0056】
本明細書で用いる場合、用語「及び/又は」は、「及び」を意味する場合があり、「又は」を意味する場合があり、「排他的な又は(exclusive-or)」を意味する場合があり、「1つ」を意味する場合があり、「一部ではあるが全てではない」を意味する場合があり、「どちらでもない」を意味する場合があり、又は「両方」を意味する場合がある。
【0057】
また、例示的な実施態様を説明する際には、明確性のために用語が用いられる。各用語は、当業者によって理解されるその最も広い意味を企図し、同様の目的を達成するために同様の方法で動作する全ての技術的等価物を含むことが意図される。
【0058】
範囲は、本明細書において、「約」若しくは「約」若しくは「実質的に」ある特定の値から、及び/又は「約」若しくは「約」若しくは「実質的に」別の特定の値までとして表される場合がある。このような範囲が表現されるとき、他の例示的実施態様は、前記1つの特定の値から及び/又は前記他の特定の値までを含む。更に、「約」という用語は、当業者によって決定される、特定の値に対する許容可能な誤差範囲内を意味し、これは、値がどのように測定又は決定されるか、即ち、測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、当技術分野における慣行に従って、許容可能な標準偏差の範囲内を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の±20%まで、±10%まで、±5%まで、又は±1%までの範囲を意味することができる。あるいは、特に生物学的システム又は方法に関して、この用語は、ある値の2倍以内などの1桁以内を意味し得る。本出願及び特許請求の範囲において特定の値が説明される場合、特に断りのない限り、「約」という用語は暗黙的なものであり、この文脈では、特定の値について許容可能な誤差範囲内であることを意味する。いくつかの実施態様では、及び特に断りのない限り、「約」という用語は、所与の値の±10%までの値を意味する。
【0059】
同様に、本明細書で用いるとき、何かを「実質的に含まない」、又は「実質的に純粋である」、及び同様の特徴付けは、何かを「少なくとも実質的に含まない」、又は「少なくとも実質的に純粋である」こと、及び何かを「完全に含まない」、又は「完全に純粋である」ことの両方を含み得る。
【0060】
「を含む(comprising)」又は「含有する(containing)」又は「含む(including)」とは、少なくとも名前を付けられた前記化合物、要素、粒子、又は方法ステップが、組成物又は物品又は方法中に存在することを意味するが、たとえ他の化合物、材料、粒子、方法ステップが、名前を付けられたものと同じ機能を有するとしても、これらの他の化合物、材料、粒子、方法ステップの存在を排除するものではない。
【0061】
本明細書を通じて、様々な構成要素が特定の値又はパラメータを有することが特定され得るが、これらの項目は例示的な実施形態として提供される。実際、多くの同等のパラメータ、サイズ、範囲、及び/又は値が実施され得るので、例示的な実施形態は、本開示の様々な態様および概念を限定するものではない。「第1」、「第2」及びこれらに類する用語、「一次」、「二次」及びこれらに類する用語は、いかなる順序、量、または重要性も示すものではなく、むしろ、1つの要素を別の要素から区別するために使用される。
【0062】
「具体的には」、「好ましくは」、「典型的には」、「一般的には」、及び「しばしば」のような用語は、本明細書において、特許請求の範囲を限定するため、又は特定の特徴が特許請求される主題の構造若しくは機能にとって重要、必須、又は重要でさえあることを暗示するために利用されるものではないことに留意されたい。むしろ、これらの用語は、単に、本開示の特定の実施形態において利用されても利用されなくてもよい代替的又は追加的な特徴を強調することを意図している。また、「実質的に」及び「約」のような用語は、本明細書において、任意の定量的比較、値、測定、又は他の表記に起因し得る不確実性の固有の程度を表すために利用されることに留意されたい。
【0063】
本明細書で開示される寸法および値は、記載された正確な数値に厳密に限定されると理解されるべきではない。その代わりに、特段の指定がない限り、そのような各寸法は、記載された値と、その値の周囲にある機能的に等価な範囲の両方を意味することを意図している。例えば、「50mm」と開示された寸法は、「約50mm」を意味することが意図されている。
【0064】
また、一又は複数の方法ステップの記載は、明示的に同定されたこれらのステップ間の追加の方法ステップ又は介在する方法ステップの存在を排除するものではないことも理解されるべきである。同様に、組成物中の一又は複数の成分の記載は、明示的に特定された成分以外の追加の成分の存在を排除するものではないことも理解されるべきである。
【0065】
本開示の様々な要素を構成するものとして以下に説明する材料は、例示であって制限的なものではないことを意図している。本明細書に説明する材料と同一の又は同様の機能を果たす多くの適切な材料が、本開示の範囲内に包含されることが意図される。本明細書に説明しないそのような他の材料は、例えば、時間的に後に開発される材料を含み得るが、これらに限定されない。様々な図面に記載されたいかなる寸法も、例示のみを目的とするものであり、限定することを意図するものではない。他の寸法及び比率は本開示の範囲内に含まれることが企図及び意図される。
【0066】
本明細書で用いる場合、「対象」又は「患者」又は「個体」という用語は、哺乳動物を指し、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含むがこれらに限定されない。特定の実施態様では、対象はヒトである。
【0067】
本明細書で使用されるとき、「試料」という用語は、分析物アッセイが望まれる分析物を含有している可能性のあるあらゆるものを指す。試料は、生物学的液体や生物学的組織などの生物学的試料であってもよい。生物学的液体の例としては、血液、血清、血漿、唾液、喀痰、眼水晶体液、汗、尿、牛乳、腹水、粘液、滑液、腹膜液、経皮滲出液、咽頭滲出液、気管支肺胞洗浄液、気管吸引液、脳脊髄液、精液、子宮頸管粘液、膣または尿道分泌液、羊水などを含む。生体組織は、結合組織、上皮組織、筋肉組織及び神経組織を含む、ヒト、動物、植物、細菌、真菌、又はウイルス構造の構造材料の一つを形成する、通常、特定の種類の細胞の集合体をその細胞間物質とともに含む。生体組織の例は、臓器、腫瘍、リンパ節、動脈及び個々の細胞も含む。試料は、供給源から直接得られたものとして、又は、その性質を変えるような前処理の後で、使用できる。
【0068】
本明細書で使用するとき、「特異的に結合する」という用語は、特異的結合対の結合特異性を意味する。他の潜在的ターゲットの存在下での特定のターゲットの抗体による認識は、そのような結合の一つの特徴である。
【0069】
本明細書で使用するとき、抗RAGE抗体と、少なくとも第2の医薬活性成分との「組合せ」という用語は、少なくとも2つを意味するが、化合物の任意の所望の組合せを同時に又は順次(例えば、24時間以内に)送達することができる。種々の疾患を治療するために使用されるとき、本開示の組成物及び方法は、同一の又は類似の疾患に適した他の治療方法/薬剤とともに利用され得ることが企図される。そのような他の治療方法/薬剤は、相加的又は相乗的効果を生成するために(同時に又は逐次的に)共投与され得る。各薬剤の適切な治療有効量は、相加作用または相乗作用により低下し得る。
【0070】
本開示の意味内では、「併用投与」という用語は、本開示による組成物と、別の治療剤とを、1つの組成物において同時に、又は異なる組成物において同時に、又は逐次的に(例えば24時間以内に)投与することを指すために使用される。
【0071】
状態、障害又は病態の「治療」又は「処置」という用語は、以下を含む:(1)状態、障害又は病態に罹患している又は罹患しやすい場合があるが、状態、障害又は病態の臨床症状又は不顕性症状をまだ経験又は示していない対象において発症している状態、障害又は病態の少なくとも1つの臨床症状又は不顕性症状の出現を予防又は遅延させること;又は(2)(維持療法の場合)状態、障害又は病態を抑制すること、即ち、又はその少なくとも1つの臨床的若しくは亜臨床的症状を阻止、軽減又は遅延させること;又は(3)疾患を緩和すること、すなわち、状態、障害若しくは状態又はその少なくとも1つの臨床的若しくは亜臨床的症状を退縮させること。治療される対象への利益は、統計的に有意であるか、又は患者又は医師に少なくとも知覚可能である。
【0072】
本明細書で用いるとき、用量又は量に適用される「治療上有効な」又は「有効な」という用語は、状態、障害又は病態を治療(例えば、予防又は改善)するために対象に投与したとき、そのような治療又は予防の結果をもたらすのに十分な化合物又は医薬組成物の量を指す。「治療上有効な量」は、投与される化合物又は細菌又は類似体、並びに疾患及びその重篤度、並びに治療される哺乳動物の年齢、体重、身体的状態及び反応性に依存して変化する。
【0073】
本開示の組成物に関連して使用される「医薬的に許容される」という文言は、生理学的に許容され、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与された場合に典型的には有害な反応を引き起こさない、組成物の分子実体及び他の成分を指す。本明細書で用いるとき、いくつかの実施態様では、用語「医薬的に許容される」とは、連邦政府又は州政府の規制機関により承認されるか、又は哺乳動物、又はそれ以上ヒトでの使用について米国薬局方又は他の一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。
【0074】
「医薬製剤」又は「医薬組成物」という用語は、その中に含まれる有効成分の生物学的活性が有効であるような剤形であり、かつ、その製剤が投与される対象にとって許容できないほど有毒な追加成分を含まない、製剤を指す。
【0075】
「担体」という用語は、化合物とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤又はビヒクルを指す。このような医薬担体は、水及び油のような無菌液体であり得、石油、動物、植物又は合成起源のもの、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等を含む。水又は水溶液の生理食塩水及びデキストロースの水溶液及びグリセロールの水溶液が、特に注射液のための担体として採用される。あるいは、担体は、(圧縮錠剤用)結合剤、滑沢剤、カプセル化剤、香味剤及び着色剤の一又は複数を含むが、これらに限定されない、固体剤形担体であり得る。適切な医薬担体は、E.W.Martin著、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Remington薬学)に説明される。
【0076】
「抗RAGE抗体」、「抗RAGE」、「RAGE抗体」又は「RAGEに結合する抗体」という用語は、抗体がRAGEを標的とする診断及び/又は治療剤として有用であるように、十分な親和性でRAGE(例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するヒトRAGE)を結合することができる抗体を指す。1つの実施態様では、抗RAGE抗体と無関係な非RAGEタンパク質との結合の程度は、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定されるRAGEに対する抗体の結合の約10%未満である。特定の実施態様では、PCSK9に結合する抗体は、<1μΜ、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、又は<0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の実施態様では、抗RAGE抗体は、異なる生物種のRAGE間で保存されているRAGEのエピトープに結合する。
【0077】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で用いられ、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体(bispecific antibody))及び抗体断片を含むが、これらに限定されない、様々な抗体構造を含む。抗体とは、広義には、2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖の4本のポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン(Ig)分子、又はIg分子の本質的なエピトープ結合機能を保持する機能的断片、突然変異体、変異体、又はこれらの誘導体を指す。このような突然変異体、変異体、又は誘導体の抗体フォーマットは当技術分野で知られており、その非限定的実施態様については以下に説明する。抗体は、分子と特異的に反応して分子を抗体に結合させることができる場合、分子を「結合することができる」と言われる。本明細書で用いるとき、「断片」という用語は、RAGE結合抗体断片のような抗原結合断片を意味するものと解すべきである。
【0078】
抗体の「抗原結合部分」又は「抗原結合断片」(又は単に「抗体部分」又は「抗体断片」)とは、インタクトな抗体が結合する抗原と結合するインタクトな抗体の一部(例えば、抗原と特異的に結合する能力を保持する抗体の一又は複数の断片)を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、直鎖抗体、単鎖抗体分子(例えばscFv)、重鎖のみ抗体(HCAb)、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体を含むが、これらに限定されない。抗体をパパイン消化すると、それぞれが単一の抗原結合部位を持つ「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及び結晶化しやすいことからその名が付いた残存「Fc」断片が生成される。ペプシン処理により、抗原結合部位を2つ持ち、かつ抗原を架橋できるF(ab’)2断片が得られる。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片で実行できることが示されている。このような抗体の実施態様では、二重特異性、二重特異性、又は多重特異性のフォーマットもあり得、一又は複数の異なる抗原に特異的に結合する。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例は、(i)Fab断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる1価の断片、(ii)F(ab′)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド橋によって連結された2つのFab断片からなる2価の断片、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)単一の可変ドメインを含むdAb断片(引用により本明細書に取り込まれるWO90/05144 A1)、及び、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは別々の遺伝子によってコードされているが、組換え方法を用いて、VL及びVH領域が対になって一価の分子を形成する単一タンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られている)として作製することを可能にする合成リンカーによって結合させることができる。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図されている。ダイアボディのような他の形態の一本鎖抗体も含まれる。
【0079】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の供給源又は種に由来し、重鎖及び/又は軽鎖の少なくとも1つの他の部分(その残りを含む)が異なる供給源又は種に由来する抗体を指す。
【0080】
抗体の「クラス」とは、その重鎖が持つ定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体には5つの主要なクラスがある:例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2などである。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、μと称される。
【0081】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を持つ抗体断片を指し、これらの断片は、同一のポリペプチド鎖(VH-VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)と連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同一の鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは別の鎖の相補的ドメインと対合することを余儀なくされ、2つの抗原結合部位が形成される。ダイアボディは二価及び/又は二重特異性の場合がある。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudsonら、Nat. Med. 9:129-134,2003、及び、Hollingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448、1993にもっと詳細に説明されている。トリアボディ及びテトラボディも、Hudsonら、Nat. Med. 9:129-134. 2003.に説明されている。
【0082】
用語「エピトープ」又は「抗原決定基」は、免疫グロブリン又はT細胞レセプターに特異的に結合することができる任意のポリペプチド決定基を含む。特定の実施態様では、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、又はスルホニルのような化学的に活性な分子の表面基を含み、特定の実施態様では、特異的な三次元構造特性、及び/又は特異的な電荷特性を有する場合がある。エピトープは、抗体によって結合される抗原の領域である。特定の実施態様では、抗体は、タンパク質及び/又は高分子の複雑な混合物においてその標的抗原を優先的に認識するとき、抗原と特異的に結合するといわれる。
【0083】
「Fab」断片は重鎖及び軽鎖可変ドメインを含み、さらに軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1定常ドメイン(CHI)を含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CHIドメインのカルボキシ末端の残基数個の付加によってFab断片と異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’に対する本明細書における名称である。F(ab’)2抗体断片は元来、ヒンジシステインを間に有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0084】
本明細書で用いる用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義する。本用語は、ネイティブ配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む。
【0085】
「フレームワーク」又は「FR」は、相補性決定領域(CDR)の残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは一般的に4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。従って、CDR及びFRの配列は、一般にVH(又はVL)において以下のような配列:FR1-CDRH1(CDRL1)-FR2-CDRH2(CDRL2)-FR3-CDRH3(CDRL3)-FR4で現れる。
【0086】
本明細書では、「全長抗体」、「インタクト抗体」及び「全抗体」という用語は、ネイティブ抗体構造に実質的に類似した構造を有する抗体、又は本明細書で定義するFc領域を含む重鎖を有する抗体を指すために互換的に用いられる。
【0087】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小限の抗体断片である。1つの実施態様では、2本鎖Fv種は、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインが強固に非共有結合した2量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種では、1つの重鎖及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種におけるものと類似の「二量体」構造で会合し得るように、可撓性ペプチドリンカーによって共有結合され得る。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH-VL二量体の表面に抗原結合部位を規定するのはこの構造である。全体として、6つのCDRは抗体に抗原結合特異性を与える。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても、結合部位全体よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識し結合する能力を有する。
【0088】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養」という用語は、互換的に使用され、外来性核酸が導入された細胞の子孫を含む、外来性核酸が導入された細胞を指す。宿主細胞は「形質転換体」及び「形質転換細胞」を含み、継代回数に関係なく、初代形質転換細胞及びこれに由来する子孫を含む。子孫は、親細胞と核酸含量が完全に同一ではなく、突然変異を含む場合がある。本来の形質転換細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同一の機能又は生物学的活性を有する変異子孫を本明細書に含む。
【0089】
「ヒト抗体」とは、ヒト若しくはヒト細胞により産生される抗体、又はヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源由来の抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。本開示のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダム変異誘発又は部位特異的変異誘発、又はin vivoでの体細胞変異によって導入された変異)を、例えばCDR、特にCDR3に含む場合がある。しかしながら、本明細書で用いる「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの他の哺乳動物種の生殖細胞系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図していない。
【0090】
「ヒト化」抗体とは、非ヒト種(例えばマウス)由来の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH及び/又はVL配列の少なくとも一部がよりもっと「ヒト様」、すなわちヒト生殖細胞系列可変配列にもっと類似するように改変された抗体を指す。ヒト化抗体の1つのタイプはCDRグラフト抗体で、ヒト以外のVH及びVL配列にヒトのCDR配列が導入され、対応するヒト以外のCDR配列と置き換えられている。ヒト化抗体は、非ヒトCDRのアミノ酸残基と、ヒトFRのアミノ酸残基とを含む場合がある。特定の実施態様では、ヒト化抗体は、CDRの全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のものに対応する、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体は、任意でヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含む場合がある。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化形態」とは、ヒト化を施された抗体を指す。ヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリン(即ち、ドナー抗体)に対応し、フレームワーク領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメイン(Fab、Fab′、F(ab′)2、FabC、Fv)の実質的に全てを含む。特に、ヒト化抗体はまた免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の、少なくとも一部を含む。いくつかの実施態様では、ヒト化抗体は、軽鎖と、重鎖の少なくとも可変ドメインとの両方を含む。抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、及びCH4領域を含むことがある。いくつかの実施態様では、ヒト化抗体はヒト化軽鎖のみを含む。いくつかの実施態様では、ヒト化抗体はヒト化重鎖のみを含む。具体的な実施態様では、ヒト化抗体は、軽鎖のヒト化可変ドメイン及び/又はヒト化重鎖のみを含む。ヒト化抗体は、IgY、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含む任意のクラスの免疫グロブリンと、IgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含むがこれらに限定されない、任意のアイソタイプとから選択され得る。ヒト化抗体は、一又は複数のアイソタイプからの配列を含む場合があり、特定の定常ドメインは、当技術分野で周知の技術を用いて、所望のエフェクター機能を最適化するように選択してもよい。ヒト化抗体のフレームワーク及びCDR領域は、親配列に正確に対応する必要はなく、例えば、ドナー抗体CDR又はコンセンサスフレームワークは、その部位のCDR又はフレームワーク残基がドナー抗体又はコンセンサスフレームワークのいずれにも対応しないように、少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入及び/又は欠失により突然変異が導入される場合がある。しかし、特定の実施態様では、このような突然変異が広範囲に及ぶことはない。通常、ヒト化抗体残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%又は80%、特に少なくとも85%、より特に少なくとも90%、及び特に少なくとも95%が、親FR及びCDR配列の残基に対応するであろう。したがって、CDRの少なくとも1つが配列番号4~9及び12~17の1つに対応するヒト化抗体が本明細書で開示される。
【0091】
「CDRグラフト抗体」という用語は、マウスCDRの一又は複数(例えば、CDR3)がヒトCDR配列で置換されたマウス重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体のように、ある種の重鎖及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH及び/又はVLのCDR領域の一又は複数の配列が他の種のCDR配列で置換されている抗体を指す。
【0092】
「免疫複合体」とは、細胞傷害性薬剤を含むがこれに限定されない、一又は複数の異種分子に結合した抗体である。
【0093】
「単離された」抗体とは、その自然環境の構成要素から分離された抗体のことである。いくつかの実施態様では、抗体は、例えば、電気泳動法(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー法(例えば、イオン交換若しくは逆相HPLC)に限られない方法によって測定される95%又は99%を超える純度まで精製される。単離された抗体は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない(例えば、ヒトRAGEと特異的に結合する単離された抗体は、ヒトRAGE以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、ヒトRAGEと特異的に結合する単離された抗体は、他の種のRAGE分子などの他の抗原に対して交差反応性を有する場合がある。
【0094】
「単離された」核酸とは、自然環境の構成要素から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、通常核酸分子を含む細胞内に含まれる核酸分子を含むが、その核酸分子は染色体外又は本来の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0095】
「抗RAGE抗体をコードする単離された核酸」とは、抗体重鎖及び軽鎖(又はその断片)をコードする一又は複数の核酸分子をいい、単一ベクター又は別個のベクター中の核酸分子と、宿主細胞中の一又は複数の位置の核酸分子とを含む。
【0096】
本明細書で用いる「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、その集団を含む個々の抗体は同一であり、及び/又は、同一のエピトープに結合する。ただし、例えば、天然に生じる突然変異を含むか、モノクローナル抗体製剤の製造中に生じるかの可能性がある変異体抗体を除き、このような変異体は一般に微量しか存在しない。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むのが典型的なポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤の各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に向けられている。従って、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示すものであり、特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるものではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない、様々な技術によって作製される場合があり、モノクローナル抗体を作製するためのこのような方法及び他の例示的な方法は本明細書で説明される。
【0097】
「裸の抗体」とは、異種部分(例えば、細胞傷害性部分)又は放射性標識と結合していない抗体を指す。裸の抗体は医薬製剤中に存在する場合がある。
【0098】
「ネイティブ抗体」とは、様々な構造を持つ天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、ネイティブIgG抗体は、約15万ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であり、ジスルフィド結合をした2本の同一の軽鎖及び2本の同一の重鎖で構成される。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)と、これに続く3つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3)とを有する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)と、それに続く定常軽鎖(CL)ドメインとを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのいずれかに割り当てられる場合がある。
【0099】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」とは、配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入して最大パーセント配列同一性を達成した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮しない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当技術分野の技術の範囲内である種々の方法で達成され得る。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要ないずれかのアルゴリズムを含む、配列をアライメントするための適切なパラメータを決定することができる。
【0100】
本明細書でいう用語「ポリヌクレオチド」とは、リボヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドのいずれか、又は、いずれかのタイプのヌクレオチドの修飾体である、2つ又はそれ以上のヌクレオチドの重合体を意味する。この用語は、DNAの一本鎖及び二本鎖形態を含むが、特に二本鎖DNAである。
【0101】
本明細書で使用される用語「単離されたポリヌクレオチド」とは、その起源により、「単離されたポリヌクレオチド」が自然界でともに見出されるポリヌクレオチドの全部又は一部と会合していないか、自然界では連結していないポリヌクレオチドに作動可能に連結しているか、もっと大きな配列の一部として自然界に存在しないかである、(例えば、ゲノム起源、cDNA起源、又は合成起源、又はそれらのいずれかの組み合わせの)ポリヌクレオチドを意味する。
【0102】
本明細書で用いる用語「ポリペプチド」は、アミノ酸の重合体鎖を指す。用語「ペプチド」及び「タンパク質」は、用語ポリペプチドと互換的に使用され、アミノ酸の重合体鎖をも指す。用語「ポリペプチド」は、ネイティブ又は人工タンパク質、タンパク質断片及びタンパク質配列のポリペプチド類似体を含む。ポリペプチドは単量体又は多量体の場合がある。
【0103】
用語「単離されたタンパク質」又は「単離されたポリペプチド」は、その起源又は由来源により、ネイティブな状態で付随する天然に会合する成分と会合していないか、同一の種由来の他のタンパク質が実質的に含まれていないか、異なる種由来の細胞により発現されるか、又は、自然界に存在しないかである、タンパク質又はポリペプチドである。従って、化学的に合成されるか、又は、天然に由来する細胞とは異なる細胞系で合成されるかであるポリペプチドは、天然に会合する成分から「分離」されるであろう。タンパク質はまた、当技術分野で周知のタンパク質精製技術を使用して、単離によって天然に会合する成分を実質的に含まないとされる場合がある。
【0104】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のドメインのうち、抗体と抗原との結合に関与するドメインを指す。ネイティブ抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は一般的に類似の構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの超可変領域とを含む(例えば、Kindtら、Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照)。抗原結合特異性を付与するには、単一のVH又はVLドメインで十分な場合がある。更に、特定の抗原に結合する抗体は、前記抗原に結合する抗体からVH又はVLドメインを用いて、それぞれ相補的なVL又はVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることにより単離される場合がある。
【0105】
本明細書で用いる用語「ベクター」は、それが連結している別の核酸を増殖させることができる核酸分子を指す。本用語は、自己複製核酸構造としてのベクターと、それが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターとを含む。ある種のベクターは、動作可能に連結されている核酸の発現を指令することができる。このようなベクターを本明細書では「発現ベクター」と称する。
【0106】
本開示に従って、当業者の技術範囲内の従来の分子生物学、微生物学、及び組換えDNA技術が採用される場合がある。このような技術は、文献において十分に説明されている。なかでも、例えば、Sambrook、 Fritsch & Maniatis、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(本明細書において「Sambrookら、 1989」); DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II (D.N. Glover 編. 1985);Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait 編. 1984);Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames & S.J. Higgins 編.(1985);Transcription and Translation (B.D. Hames & S.J. Higgins 編.(1984);Animal Cell Culture (R. I. Freshney 編.(1984);Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, (1986)); B. Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); F.M. Ausubelら、 (編),Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (1994)などを参照せよ。
【0107】
組成物及び方法
ヒトRAGEの構造は、リガンド結合型(ヒトS100A6に結合)及び非結合型で決定されている。RAGEは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び短い細胞質部分を有する。他のタンパク質との相同性から、RAGEはいくつかの細胞外ドメインを有するというモデルが導かれた。これらの細胞外ドメインは免疫グロブリンと同様に、Vドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン(免疫グロブリンのVドメイン及びCドメインと相同性を有することから命名された)と命名された。VドメインはN末端にあり、S100(具体的にはS100B、S100A1、S100A2、S100A4、S100A5、S100A6、S100A7、S100A8/9、S100A11、S100A12、S100A13、S100P)及びAGEsのようないくつかのリガンドと結合する。RAGEのV-様ドメインに結合するモノクローナル抗体は、S100b、HMGB1、及びアミロイドβを含むが、これらに限定されない、異なるリガンドの結合と競合することから、これらのリガンドも同一のドメインを介してRAGEに結合することが示唆される。RAGEには免疫グロブリンのC2ドメインと相同性を持つドメインが2つあり、そのうちの1つはC1と称される。このドメインに結合するいくつかのリガンドが記載されており、例えばS100A12(ENRAGE又はカルグラヌリンCとも称される)及びアミロイドβペプチド凝集体がある。第2のC2様ドメインはC2と称される。RAGEのリガンドS100A6はC2ドメインに結合する。ヒトRAGEはシグナルペプチドも有する。一般に、ヒトRAGEの全体的な構造は、シグナルペプチド(配列番号1のアミノ酸1-22;配列番号21にも示されている)に続いて、Ig様V-タイプドメイン(配列番号1のアミノ酸23-116;配列番号18にも示される)及び2つのIg様C2タイプ1/2ドメイン(配列番号1のアミノ酸124-221;C1ドメインとも称され、配列番号19に示される;及び配列番号1のアミノ酸227-317;C2ドメインとも称され、配列番号20に示される)を含む3つの免疫グロブリン様ドメイン、単一の膜貫通ドメイン(配列番号1のアミノ酸343-363)、並びに短い細胞質尾部(配列番号1のアミノ酸364-404;配列番号22にも示される)であると考えられている。ヒトRAGEは、膜結合型と、V、C1及びC2細胞外ドメインに由来する可溶性型との両方を含む。
【0108】
RAGEは、炎症誘発、増幅、及び新生血管形成を介して組織機能不全を引き起こす、炎症主導型の病態を示す他の適応症のターゲットである。これらの適応症の例は、アテローム性動脈硬化症、乾癬、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、腎症、及びアルツハイマー病を含む。
【0109】
RAGE多型もまた、いくつかの疾患適応症と関連している。自己免疫疾患の適応症は、例えば1型糖尿病、乾癬、関節リウマチを含む。血管疾患の適応症は、例えば、アテローム性動脈硬化症、散発性腹部大動脈瘤、及び糖尿病性微小血管皮膚症を含むが、これらに限定されない。腫瘍学的適応症は、例えば胃がんを含むが、これらに限定されない。
【0110】
RAGEの発現は、ヒトの腫瘍における予後不良、生存率、病期、及び転移と相関する。具体的には、RAGEの高発現は、文献上、特定のがんタイプ(胃がん、乳がん、腎がんなどが挙げられるが、これらに限定されない)の臨床転帰不良と関連する。
【0111】
様々な動物モデルでRAGEをノックアウトした場合の効果を調べる実験が行われてきた。例えば、RAGEノックアウトマウスはCAC(大腸炎関連発がん)に抵抗性であることが示されている。RAGEノックアウトマウスは、7,12-ジメチルベンザントラセン(DMBA)及び12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート(TPA)をそれぞれ腫瘍のイニシエータ及びプロモータとして用いた化学物質誘発皮膚発がんの一般的なモデルである、DMBA/TPA誘発皮膚発がんに抵抗性である。RAGEノックアウトマウスは、変異Rasが促進する膵臓発がんの遅延も示す。RAGEノックアウトマウスは、同所性のポリオーマミドルTオンコプロテイン(PyMT)乳がんの増殖の減少を示した。他の研究者らは、RAGEノックアウトマウスをGL261神経膠腫細胞株と同所移植したとき、おそらくTAMやミクログリアが介在する腫瘍の炎症や血管形成が減少した結果、生存期間が延長することを示した。さらに他の研究者らは、腫瘍抑制抗原提示細胞(APC)変異マウスでは、RAGEノックアウトマウス対照における腸腫瘍の発生率及び大きさが減少することを示した。さらに、膵管がんのKras変異モデルトランスジェニックマウスは、RAGEノックアウトマウスと交配したとき、発がんを示した。同所性乳がんモデルでは、RAGEリガンドS100a7a15を過剰発現するトランスジェニックマウスに可溶型RAGE又はRAGE中和抗体のいずれかが投与された。その結果、RAGEの阻害は、腫瘍増殖、肺転移、血管形成(CD31)、及びTAMのリクルート(f4/80)を減少させた。
【0112】
同系動物モデルにおいて、RAGEをトランスフェクションしたMC-38腫瘍細胞を門脈に注入すると、対照と比較して腫瘍負担が増加した。別の同系動物モデルでは、CT26腫瘍細胞を門脈に注入し、可溶性RAGEで処理した。その結果、肝臓における腫瘍負荷が減少した。
【0113】
RAGE阻害は異種移植モデルでも有効であり、免疫介在性でない機序が示唆される。例えば、siRAGEをトランスフェクションしたMDA-MB-231細胞をNOD/SCIDの乳腺脂肪パッドに移植し、その後S100A8/9を腫瘍内注射したところ、肺への転移が少ないことが示された。ヌードマウスに心臓内注射したMBA-MD-231の単一子孫クローン2は、RAGE中和抗体で処理すると転移能が有意に減少した。
【0114】
1つの局面において、本開示は、抗RAGE抗体で得られた実験及び臨床結果に一部基づいている。得られた結果は、本開示の抗RAGE抗体が、Erk/MAPKシグナル伝達を阻害し、がん細胞の運動性および浸潤性を阻害し、腫瘍細胞へのT細胞浸潤を促進し、腫瘍微小環境を変化させ、及び腫瘍増殖を阻害することが可能であることを示す。
【0115】
A.例示的抗RAGE抗体
1つの局面において、本開示は、ヒトRAGEアイソフォームのようなRAGEに結合する単離された抗体又はその断片を提供する。特定の実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、RAGE活性を変調する。本明細書で説明する抗体又はその断片はいずれも、本明細書で論じるRAGEの特定のドメインを含むがこれらに限定されない、RAGEと、RAGEのエピトープとに特異的に結合することができる。
【0116】
特定の実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、例えば、限定されないが、ヒトRAGEのV及び/又はC1ドメインのようなRAGEの少なくとも1つのドメインに結合する。特定の実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、例えば、限定されないが、ヒトRAGEのV及び/又はC1ドメインに見出されるエピトープを含む、RAGEの少なくとも1つのエピトープに結合する。
【0117】
特定の実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号1の少なくとも一部と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列に結合する。この部分は、ヒトRAGEのV、C1、及び/又はC2ドメインのいずれか、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は全てに含まれる場合がある。特定の実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEのV及び/又はC1ドメインの少なくとも一部と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列に結合する。特定の実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号18、19、及び/又は20の少なくとも一部と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列に結合する。
【0118】
1つの局面において、本開示は、RAGE(例えば、配列番号1)又はその断片(RAGEの相同変異体及びその断片を含む)に結合する抗体又は抗体断片を提供し、ここで、前記抗体又はその断片は、配列番号2又は配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖(VH)と、配列番号3又は配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖(VL)とを含む可変ドメインを含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号2又は10と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むVHドメインを含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号3又は11と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むVLドメインを含む可変ドメインを含む。特定の実施態様では、配列の同一性は、本明細書に開示される全長配列に対するものである。
【0119】
1つの実施態様では、RAGE又はその断片(RAGEの相同変異体及びその断片を含む)に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで前記抗体又はその断片は、配列番号2のアミノ酸配列からなるVHを含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVLを更に含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号2のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号3のアミノ酸配列を含むVLとを含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号2と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むVHドメインを含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号3に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含むVLドメインを含む。特定の実施態様では、配列の同一性は、本明細書に開示される全長配列に対するものである。
【0120】
1つの実施態様では、RAGE又はその断片(RAGEの相同変異体及びその断片を含む)に結合する抗体又は抗体断片が提供され、前記抗体又はその断片は、配列番号10のアミノ酸配列からなるVHを含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号11のアミノ酸配列を含むVLを更に含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号10のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号11のアミノ酸配列を含むVLとを含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号10と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖(VH)を含む可変ドメインを含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号11と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖(VL)を含む可変ドメインを含む。
【0121】
特定の実施態様では、RAGE又はその断片(RAGE及びその断片の相同変異体を含む)に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで、前記抗体又はその断片は、配列番号2、又は配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するVH配列を含む。特定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するVH配列は、参照配列に関して置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む抗RAGE抗体又はその断片は、RAGE(例えば、配列番号1)に結合する能力を保持する。
【0122】
特定の実施態様では、RAGE又はその断片(RAGE及びその断片の相同変異体を含む)に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで、前記抗体又はその断片は、配列番号3、又は配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するVL配列を含む。特定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に関し、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む抗RAGE抗体はRAGE(例えば、配列番号1)に結合する能力を保持する。
【0123】
1つの実施態様では、RAGE又はその断片(RAGE及びその断片の相同変異体を含む)に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで、前記抗体又はその断片は、配列番号2のVH配列及び配列番号3のVL配列を含む。1つの実施態様では、RAGE又はその断片に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで前記抗体は配列番号10のVH配列及び配列番号11のVL配列を含む。
【0124】
特定の実施態様では、RAGE又はその断片(RAGE及びその断片の相同変異体を含む)に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで、前記抗体又はその断片は、配列番号4又は12のアミノ酸配列を含むCDR-H1;配列番号5又は13のアミノ酸配列を含むCDR-H2;及び配列番号6又は14のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む、相補性決定領域(CDR)配列の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つを含む可変ドメインを含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号7又は15のアミノ酸配列を含むCDR-L1;配列番号8又は16のアミノ酸配列を含むCDR-L2;及び配列番号9又は17のアミノ酸配列を含むCDR-L3を更に含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号4~9又は12~17のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はCDR配列(at least one, two, three, four, five or CDR sequences)を含む可変ドメインを含む。
【0125】
特定の実施態様では、RAGE又はその断片(RAGE及びその断片の相同変異体を含む)に結合する抗体又はその断片が提供され、ここで、前記抗体又はその断片は、配列番号4又は12のアミノ酸配列を含むCDR-H1と、配列番号5又は13のアミノ酸配列を含むCDR-H2と、配列番号6又は14のアミノ酸配列を含むCDR-H3とを含む、6つのCDR配列を含む可変ドメインを含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号7又は15のアミノ酸配列を含むCDR-L1と、配列番号8又は16のアミノ酸配列を含むCDR-L2と、配列番号9又は17のアミノ酸配列を含むCDR-L3とを更に含む。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号4~9又は12~17のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む6つのCDR配列を含む可変ドメインを含む。
【0126】
1つの局面において、本開示は、(a)配列番号4又は配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1と、(b)配列番号5又は配列番号13のアミノ酸配列から含むCDR-H2と、(c)配列番号6又は配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3とから選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は3つ全てのVH CDR配列を含む、RAGE又はその断片(RAGE及びその断片の相同変異体を含む)に結合する抗体又は抗体断片を提供する。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号4~6又は12~14のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は3つ全てのVH CDR配列を含む可変ドメインを含む。
【0127】
1つの局面において、本開示は、(a)配列番号7又は配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1と、(b)配列番号8又は配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L2と、(c)配列番号9又は配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L3とから選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は3つ全てのVL CDR配列を含む、RAGE又はその断片(RAGE及びその断片の相同変異体を含む)に結合する抗体又は抗体断片を提供する。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号7~9又は15~17のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は3つ全てのVL CDR配列を含む、可変ドメインを含む。
【0128】
別の局面において、本開示は、(a)(i)配列番号4又は配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1と、(ii)配列番号5又は配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2と、(iii)配列番号6又は配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3とから選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は3つ全てのVH CDR配列を含むVHドメインと、(b)(i)配列番号7又は配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1と、(ii)配列番号8又は配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L2と、(iii)配列番号9又は配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L3とから選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は3つ全てのVL CDR配列を含むVLドメインとを含む、RAGE又はその断片(RAGE及びその断片の相同変異体を含む)に結合する抗体又は抗体断片を提供する。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、配列番号4~9又は12~17のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列からなる少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は3つ全てのVH及びVL CDR配列を含む可変ドメインを含む。
【0129】
特定の実施態様では、RAGE又はその断片(RAGE及びその断片の相同変異体を含む)に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで前記抗体又はその断片は、(i)配列番号4又は配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するCDR-H1と、(ii)配列番号5又は配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するCDR-H2と、(iii)配列番号6又は配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するCDR-H3とから選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は3つ全てのVH CDR配列を含むVHドメインを含む。特定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するCDR-H1、CDR-H2、又はCDR-H3配列は、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む抗RAGE抗体又はその断片はRAGE(例えば、配列番号1)に結合する能力を保持する。
【0130】
特定の実施態様では、RAGE又はその断片(RAGE及びその断片の相同変異体を含む)に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで前記抗体又はその断片は、(i)配列番号7又は配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するCDR-L1と、(ii)配列番号8又は配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するCDR-L2と、(iii)配列番号9又は配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するCDR-L3とから選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、又は3つ全てのVL CDR配列を含むVLドメインを含む。特定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するCDR-L1、CDR-L2、又はCDR-L3配列は、置換(例えば、保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む抗RAGE抗体又はその断片はRAGE(例えば、配列番号1)に結合する能力を保持する。
【0131】
1つの実施態様では、RAGE又はその断片(RAGEの相同変異体及びその断片を含む)に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで前記抗体又はその断片は:
(1)配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1と、
(2)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2と、
(3)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3と、
(4)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-L1と、
(5)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-L2と、
(6)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-L3と
を含む。
【0132】
特定の実施態様では、抗体又は抗体断片は、配列番号4~9のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0133】
1つの実施態様では、RAGE又はその断片(RAGEの相同変異体及びその断片を含む)に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで前記抗体又はその断片は:
(1)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H1と、
(2)配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-H2と、
(3)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-H3と、
(4)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L1と、
(5)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L2と、
(6)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L3と
を含む。
【0134】
特定の実施態様では、抗体又は抗体断片は、配列番号12~17のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0135】
1つの実施態様では、RAGE又はその断片(RAGEの相同変異体及びその断片を含む)に結合する抗体又はその断片が提供され、ここで、前記抗体又はその断片は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16及び配列番号17からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、少なくとも1つのCDRを含む。
【0136】
1つの実施態様では、RAGE又はその断片(RAGEの相同変異体及びその断片を含む)に結合する抗体又はその断片が提供され、ここで、前記抗体又はその断片は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16及び配列番号17からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を有する、少なくとも1つのCDRを含む。
【0137】
別の局面において、抗RAGE抗体又はその断片が提供され、ここで、前記抗体又はその断片は、上記で提供された実施態様のいずれかにおけるとおりのVHと、上記で提供された実施態様のいずれかにおけるとおりのVLとを含む。
【0138】
別の局面において、抗RAGE抗体又はその断片が提供され、ここで、前記抗体又はその断片は、上記の実施態様のいずれかにおけるとおりのいずれかのCDRを含む。別の局面において、抗RAGE抗体又はその断片が提供され、ここで、前記抗体又は断片は、上記で提供された実施態様のいずれかにおけるとおりのいずれかのCDR-H1、CDR-H2、又はCDR-H3と、上記で提供された実施態様のいずれかにおけるとおりのいずれかのCDR-L1、CDR-L2、又はCDR-L3とを含む。
【0139】
別の局面において、抗RAGE抗体又はその断片は、翻訳後修飾を含む。
【0140】
特定の実施態様では、RAGE又はその断片に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで前記抗体又はその断片は、RAGEの断片内のエピトープに結合する。特定の実施態様では、RAGE又はその断片に結合する抗体又は抗体断片が提供され、ここで前記抗体は、配列番号1のヒトRAGEアミノ酸配列のV及び/又はC1ドメインを含むRAGEの断片内のエピトープに結合する。特定の実施態様では、抗体又はその断片は、ヒトRAGEのV及び/又はC1ドメインを含む断片を含むがこれに限定されない、RAGE及び/又はその断片に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を有するエピトープに結合する。
【0141】
特定の実施態様では、抗RAGE抗体はモノクローナル抗体である。特定の実施態様では、抗RAGE抗体はキメラ抗体である。特定の実施態様では、抗RAGE抗体はヒト化抗体である。特定の実施態様では、抗RAGE抗体はヒト抗体である。特定の実施態様では、抗RAGE抗体のフレームワーク配列の少なくとも一部は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列である。1つの実施態様では、抗体は、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、又は(Fab’)2断片から選択されるRAGE結合抗体断片である。いくつかの実施態様では、本明細書に開示されるRAGE結合抗体又はその断片は、配列番号4~9及び12~17から選択される一又は複数のCDRを含み、ヒトRAGEに結合する、抗体又はその変異体である。
【0142】
上記実施態様のいずれかでは、抗RAGE抗体又はその断片は、RAGE分子から選択されるターゲットに結合可能である。上記実施態様のいずれかでは、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEに結合可能である。上記実施態様のいずれかでは、抗RAGE抗体又はその断片は、マウス又はラットのRAGEに結合可能である。
【0143】
上記実施態様のいずれかにおいて、抗RAGE抗体又はその断片は、RAGE分子から選択されるターゲットの生物学的機能を変調、特に中和することができる。上記実施態様のいずれかにおいて、抗RAGE抗体又はその断片は、RAGEがそのリガンドの少なくとも1つに結合する能力を変調、特に阻害する。
【0144】
上記実施態様のいずれかにおいて、抗RAGE抗体又はその断片は、リンカーポリペプチド又は免疫グロブリン定常ドメインを含む。
【0145】
上記実施態様のいずれかにおいて、抗RAGE抗体又はその断片は、免疫グロブリン分子、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ヒト化抗体、Fab、Fab′、F(ab′)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、多重特異性抗体、二重特異性抗体(dual specific antibody)、二重可変ドメイン免疫グロブリン、重鎖抗体(HCAb)、及び二重特異性抗体(bispecific antibody)からなる群から選択される。
【0146】
上記実施態様のいずれかにおいて、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトIgM定常ドメイン、ヒトIgG1定常ドメイン、ヒトIgG2定常ドメイン、ヒトIgG3定常ドメイン、ヒトIgG4定常ドメイン、ヒトIgE定常ドメイン、ヒトIgD定常ドメイン、ヒトIgA1定常ドメイン、ヒトIgA2定常ドメイン、ヒトIgY定常ドメイン、及び対応する突然変異ドメインからなる群から選択される免疫グロブリン重鎖定常ドメインを含む。
【0147】
上記実施態様のいずれかにおいて、抗RAGE抗体又はその断片は、免疫複合体として存在し、免疫接着分子、(例えば、限定するものではないが、放射性標識(例えば、3H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、及び153Sm)、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、及びビオチンを含むが、これらに限定されない)画像化剤、治療剤、及び細胞毒性剤からなる群から選択される薬剤をさらに含む。例示的な治療剤又は細胞毒性剤としては、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗生物質、成長因子、サイトカイン、抗血管新生剤、抗有糸分裂剤、アントラサイクリン、毒素、及びアポトーシス剤を含む。
【0148】
1つの局面において、本開示は、本明細書に説明するとおりの抗体の単離されたCDRを提供する。
【0149】
別の局面において、本開示は、RAGEタンパク質の少なくとも1つのエピトープ、及び/又は、RAGEと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するそのエピトープの相同変異体と特異的に相互作用する、単離された結合タンパク質を提供する。関連する局面において、単離された結合タンパク質は抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施態様では、抗体又はその抗原結合断片は、VH及びVLドメイン、及び/又は、少なくとも1つのCDRを含む。
【0150】
1つの局面において、上記抗RAGE抗体又はその断片のいずれかをコードする核酸が提供される。1つの実施態様では、核酸を含むベクターが提供される。1つの実施態様では、ベクターは発現ベクターである。1つの実施態様では、ベクターを含む宿主細胞が提供される。別の実施態様では、ベクターで形質転換された宿主細胞が提供される。1つの実施態様では、宿主細胞は、(例えば、限定するものではないが、原生生物細胞、動物細胞、植物細胞、真菌細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、昆虫細胞、HEK細胞、CHO細胞、COS細胞及び酵母細胞のような)真核生物である。別の実施態様では、宿主細胞は哺乳動物である。さらに別の実施態様では、宿主細胞は原核細胞である。
【0151】
1つの局面において、本開示は、抗RAGE抗体又はその抗原結合断片を産生するハイブリドーマ細胞株を提供する。特定の実施態様では、ハイブリドーマは、マウス、ヒト、ラット、ヒツジ、ブタ、ウシ、ヤギ、及びウマのハイブリドーマからなる群から選択される。特定の実施態様では、ハイブリドーマ細胞株は、RAGEタンパク質の少なくとも1つのエピトープに特異的に結合する抗RAGE抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体)を産生する。
【0152】
1つの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片を作製する方法が提供され、ここで、前記方法は、抗体をコードする核酸の発現に適した条件下で宿主細胞を培養すること、及び抗体を単離することを含む。特定の実施態様では、本方法は、宿主細胞から抗RAGE抗体を回収することをさらに含む。
【0153】
1つの局面において、本明細書に記載されている抗RAGE抗体又はその断片を含む医薬組成物が提供される。特定の実施態様では、組成物は皮下投与に適する。特定の実施態様では、組成物は静脈内投与に適する。特定の実施態様では、組成物の粘度は、25℃で約10cP未満である。他の実施態様では、組成物の粘度は、25℃で、例えば、限定するものではないが、約15cP、約16cP、約17cP、約18cP、及び約19cPのように、約20cP未満である。前記技術分野において知られているか、又は本明細書に記載されているかである任意の抗RAGE抗体が、組成物に配合さてもよい。特定の実施態様では、組成物は、例えば限定されないがポリマー担体のような医薬的に許容される担体を含む。特定の実施態様では、組成物は、アルブミン、スクロース、トレハロース、ラクチトール、ゼラチン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、メトキシポリエチレングリコール及びポリエチレングリコール、アルギニン、及びTweenのうちの一又は複数を更に含む場合がある。
【0154】
特定の実施態様では、組成物は、アジュバントをさらに含む場合がある。
【0155】
特定の実施態様では、組成物は、例えば、非限定的に、治療剤、画像化剤、細胞毒性剤、血管新生阻害剤;キナーゼ阻害剤;共刺激分子遮断剤;接着分子遮断剤;抗サイトカイン抗体又はその機能断片;メトトレキサート;シクロスポリン;ラパマイシン;FK506;検出可能な標識又はレポーター;TNF拮抗剤;抗リウマチ剤;筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬、抗乾癬薬、副腎皮質ホルモン、蛋白同化ステロイド、エリスロポエチン、免疫剤、免疫グロブリン、免疫抑制剤、成長ホルモン、ホルモン補充薬、放射性医薬品、抗うつ薬、抗精神病薬、興奮薬、喘息薬、β作動薬、吸入ステロイド、エピネフリン又は類似体、サイトカイン、及びサイトカイン拮抗薬追加の薬剤を更に含む場合がある。更なる例は、ラトレピルジン、抗Aβ抗体、βセクレターゼ阻害剤、タウ調節剤、例えば5-HT6拮抗剤のような認知機能増強剤、コレステリナーゼ阻害剤(例えば、タクトリン、ドネペジル、リバスチグミン又はガランタミン)、部分的NMDA受容体遮断薬(例えば、メマンチン)、グリコサミノグリカン模倣薬(例えば、トラミプロセート)、γセクレターゼの阻害剤又はアロステリックモジュレーター(例えば、R-フルルビプロフェン)、黄体形成ホルモン遮断性ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(例えば、リュープロレリン)、セロトニン5-HT1A受容体アンタゴニスト、キレート剤、神経選択的L型カルシウムチャネルブロッカー、免疫調節剤、アミロイド線維形成阻害剤又はアミロイドタンパク質沈着阻害剤(例えば、M266)、別の抗体(例えば、バピヌズマブ)、5-HT1a受容体拮抗薬、PDE4阻害薬、ヒスタミン作動薬、終末糖化産物受容体タンパク質、PARP刺激剤、セロトニン6受容体拮抗薬、5-HT4受容体作動薬、ヒトステロイド、神経細胞代謝を促進するグルコース取り込み促進薬、選択的CB1拮抗薬、ベンゾジアゼピン受容体部分作動薬、アミロイドβ産生拮抗薬又は阻害薬、アミロイドβ沈着阻害薬、NNRα7部分拮抗薬、PDE4標的治療薬、RNA翻訳阻害薬、ムスカリン作動薬、神経成長因子(NGF)受容体作動薬、及び遺伝子治療モジュレーターである。
【0156】
1つの局面において、本明細書に記載される、抗RAGE抗体か、抗RAGE抗体又はその断片を含む組成物かを含む皮下投与デバイスが提供される。特定の実施態様では、本装置は、1回あたり抗体約10~約1200mgの範囲の用量を個体に送達するためのものである。
【0157】
B.治療方法及び/又は診断方法
1つの局面において、本開示は、対象におけるRAGEのErk/MAPK経路タンパク質への結合を阻害する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。別の局面において、本開示は、対象における、慢性炎症、免疫抑制、がん/腫瘍細胞遊走、がん/腫瘍細胞浸潤、腫瘍への抑制性免疫細胞浸潤、腫瘍促進性免疫細胞浸潤、がん/腫瘍増殖、肝臓損傷及び線維化、眼球新生血管、呼吸器疾患、感染症、及び/又はがん/腫瘍進行の少なくとも1つを低減する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ、及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0158】
1つの局面において、本開示は、例えば、限定するものではないが、大腸がん及び腎がんのような高い血管形成を特徴とするがんのようながんを予防及び/又は治療するためにRAGE活性を阻害する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0159】
別の局面において、本開示は、例えば、限定するものではないが、腫瘍への血管形成を阻害する、腫瘍の増殖を阻害する、腫瘍内の増殖因子の発現を阻害又は減少させる、骨髄系譜の細胞タイプの浸潤及び/又は活性を減少又は変化させることのように、腫瘍微小環境を変化させるためにRAGE活性を阻害する方法に関し、前記方法は、間葉系/間質系細胞系譜の細胞タイプの浸潤及び/又は活性を減少又は変化させ、及び/又は、T細胞活性及び腫瘍への浸潤を促進するために、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ、及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列のうち少なくとも1つを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0160】
別の局面において、本開示は、慢性炎症の発症を予防するためにRAGE活性を阻害する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。関連する局面において、本開示は、急性炎症状態を維持するためにRAGE活性を阻害する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載されている抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0161】
別の局面において、本開示は、肝臓損傷及び/又は線維症を予防するためにRAGE活性を阻害する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ、及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0162】
別の局面において、本開示は、眼における新生血管形成を予防するためにRAGE活性を阻害する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0163】
別の局面において、本開示は、呼吸器疾患及び/又は呼吸器疾患の発症を予防するためにRAGE活性を阻害する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ、及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。いくつかの実施態様では、呼吸器疾患は、アレルギー性気道炎症(AAI)及び喘息、肺線維症、肺がん、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性肺損傷、肺炎、嚢胞性線維症、及び気管支肺異形成である。
【0164】
別の局面において、本開示は、感染症及び/又は感染症の発症を予防するためにRAGE活性を阻害する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ、及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。いくつかの実施態様では、感染症は、ウイルス、細菌、真菌、プリオン、寄生虫等の一又は複数による感染の結果である。
【0165】
1つの局面において、本開示は、疾患又は障害を治療する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ、及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0166】
1つの局面において、本開示は、例えば、限定するものではないが、大腸がん及び腎がんのような高い血管形成を特徴とするがんのようながんを治療する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0167】
いくつかの実施態様では、がんは、白血病(例えば、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリーセル白血病)、副腎皮質がん、肛門がん、星細胞腫、カポジ肉腫、リンパ腫(例えば、エイズ関連リンパ腫、中枢神経系原発リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉症)、皮膚がん(例えば、皮膚がん(基底細胞がん、メラノーマ、メルケル細胞がん)、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、乳がん、がん腫、原発不明がん、中枢神経系がん、子宮頸がん、慢性骨髄増殖性新生物、大腸がん、頭蓋咽頭腫、胚性腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、骨髄芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、錐体外胚細胞腫瘍、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管がん、線維性組織球腫、胆嚢がん、胃がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、胚細胞腫瘍、頭頸部がん、肝細胞がん、ランゲルハンス細胞組織球症、下咽頭がん、膵島細胞腫瘍、腎細胞がん、喉頭がん、口唇及び口腔がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん及び小細胞肺がん)、悪性中皮腫、口腔がん、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻腔がん、上咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、原発性腹膜がん、前立腺がん、大腸がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(例えば、横紋筋肉腫、血管腫、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、骨肉腫、子宮肉腫、軟部肉腫)、セザリー症候群、扁平上皮がん、精巣がん、胸腺腫及び胸腺がん、甲状腺がん、尿道がん、子宮がん、子宮肉腫、膣がん、血管腫瘍、外陰がん、及びウィルムス腫瘍である。
【0168】
いくつかの実施形態では、がんは大腸がんである。特徴的な4つのコンセンサス分子サブタイプ(CMS):
CMS1(MSI免疫型、14%):高変異、マイクロサテライト不安定、強い免疫活性化;
CMS2(カノニカル(canonical)、37%):上皮性、染色体不安定、顕著なWNT及びMYCシグナル活性化;
CMS3(代謝性、13%):上皮性、明らかな代謝異常;及び
CMS4(間葉系、23%):顕著なトランスフォーミング増殖因子β活性化、間質浸潤、血管新生を示す
がある。
混合した特徴を有する大腸がんサンプル(13%)は、おそらく移行表現型又は腫瘍内不均一性を表す。いくつかの実施形態において、本明細書に開示された抗RAGE抗体は、大腸がんのCMSのためにカスタマイズされた生物学的免疫療法と組み合わせて大腸がんを治療するために使用される。
【0169】
別の局面において、本開示は、例えば、限定するものではないが、腫瘍への血管形成の阻害、腫瘍の成長の阻害、腫瘍内の成長因子の発現の阻害又は減少、骨髄系細胞タイプの浸潤及び/又は活性の減少又は変化、間葉系/間質系細胞タイプの浸潤及び/又は活性の減少又は変化、及び/又はT細胞活性及び腫瘍への浸潤の促進のような、腫瘍微小環境を変化させる方法に関し、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0170】
別の局面において、本開示は、慢性炎症の発症を予防する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。関連する局面において、本開示は、急性炎症状態を維持することに関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ、及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0171】
別の局面において、本開示は、肝臓損傷及び/又は線維症を予防する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ、及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0172】
別の局面において、本開示は、眼における新生血管形成を予防する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0173】
別の局面において、本開示は、呼吸器疾患及び/又は呼吸器疾患の発症を予防する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ、及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。いくつかの実施態様では、呼吸器疾患は、アレルギー性気道炎症(AAI)及び喘息、肺線維症、肺がん、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性肺損傷、肺炎、嚢胞性線維症、及び気管支肺異形成である。
【0174】
別の局面において、本開示は、感染症及び/又は感染症の発症を予防する方法に関し、前記方法は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかの有効量を対象に投与することを含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。いくつかの実施態様では、感染症は、ウイルス、細菌、真菌、プリオン、寄生虫等の1又は複数に感染した結果である。
【0175】
別の局面において、本開示は、ヒトRAGEを、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかと接触させることを含む、ヒトRAGE活性を低下させる方法を提供する。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ、及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0176】
別の局面において、本開示は、その必要な対象に、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかを対象に投与するステップを含む、Erk、S100b、AGE、HMGB1(アンフォテリン)、S100A12(EN-RAGE)、S100A7(ソリアシン)、S100P、S100A8/A9複合体カルプロテクチン)、アミロイド-β-タンパク質、Mac-1、ホスファチジルセリン、及びS100A4から選択される少なくとも1つのリガンドへのヒトRAGE結合を減少させる方法を提供する。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0177】
別の局面において、本開示は、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかを単独で、又は他の治療薬と併用して、投与する工程を含む、RAGE活性に関連する障害の対象を治療する方法を提供する。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0178】
別の局面において、本開示は、RAGE活性が有害である障害に罹患している対象においてRAGE活性を低下させるための方法であって、本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片のいずれかを、単独で又は他の治療剤と併用して、対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0179】
特定の実施態様では、本明細書に記載される方法は、第2の医薬又は治療薬の有効量を対象に投与することを更には含み、抗RAGE抗体又はその断片は、第1の医薬又は治療薬である。1つの実施態様では、第2の医薬又は治療剤はがん治療剤である。特定の実施態様では、対象又は個体はヒトである。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0180】
1つの局面において、本開示は、RAGEタンパク質を含むと疑われる試料中のRAGEタンパク質を検出する方法に関し、前記方法は、(a)本明細書に記載される抗RAGE抗体又はその断片と試料を接触させるステップ;及び(b)抗RAGE抗体又はその断片とRAGEタンパク質との間の複合体の形成を検出するステップを含む。1つの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は検出可能に標識されている。
【0181】
本開示はまた、高レベルのRAGEによって特徴付けられる疾患又は状態を発症するか又は有する、個人のリスクを特徴付けるための、並びに、RAGEレベルを低下させるための特定の治療又は治療薬に反応する又は反応する可能性が高い高レベルのRAGEを有する対象を同定するための、新たな診断検査を提供する。更に他の診断検査は、治療中のRAGEのレベルをモニタリングすることを含む。
【0182】
特定の実施態様では、本明細書に記載される方法は、抗RAGE抗体治療に反応する対象を同定することを含み、本明細書に記載される抗体を用いて対象からの試料中のRAGEのレベルを決定すること、及び、一般集団又はヒト対象の選択集団から得られた同等の試料とRAGEのレベルを比較することを含む。前記レベルは、抗RAGE抗体治療を開始する前の対象におけるRAGEのレベルと比較する場合もある。このような比較は、抗RAGE抗体治療に対する対象の反応を特徴付ける。
【0183】
特定の実施態様では、本明細書に記載される方法は、(例えば、限定するものではないが、がん、慢性炎症、がん/腫瘍細胞遊走、がん/腫瘍細胞浸潤、腫瘍への抑制性免疫細胞浸潤、腫瘍促進性免疫細胞浸潤、がん/腫瘍の増殖、肝臓損傷及び線維症、眼における新生血管形成、呼吸器疾患、感染症、がん/腫瘍の進行、及び/又は血管脱形成(devascularized)された腫瘍微小環境のような)高レベルのRAGEを特徴とする疾患又は状態に対する治療に反応する対象を同定することを含み、本明細書に記載される抗体を用いて被験者からの試料中のRAGEのレベルを決定すること、RAGEのレベルを一般集団又はヒト被験者の選択された集団からの同等の試料と比較することを含む。前記レベルは、抗RAGE抗体治療を開始する前の対象におけるRAGEのレベルと比較する場合もある。このような比較は、抗RAGE抗体治療に対する対象の反応を特徴付ける。
【0184】
本開示はまた、対象におけるRAGEレベルの状態を経時的に監視する方法を提供する。前記方法は、最初の時点に対象から採取した試料及びその後の時点に対象から採取した対応する試料中のRAGEのレベルを決定することを含む。最初の時点と比較して、その後の時点に採取された試料からのRAGEレベルの増加は、対象が将来RAGEに関連する状態又は障害を有する又は発症するリスクが増加したことを示す。最初の時点と比較して、その後の時点で採取された試料からのRAGEレベルの低下は、対象が将来RAGEに関連した状態又は障害を有する、又は発症するリスクが低下していることを示す。
【0185】
他の実施態様では、本開示は、高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患を有する又は有することが疑われる対象における治療を評価する方法を提供する。前記方法は、治療前に対象から採取した試料及び治療中又は治療後に対象から採取した対応する試料中のRAGEのレベルを決定することを含む。治療前に採取された試料中のRAGEレベルと比較して、治療後又は治療中に採取された試料中のRAGEレベルの低下は、治療対象におけるRAGE関連疾患又は状態に対する治療の積極的な効果を示す。
【0186】
1つの局面において、本開示は、対象における高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患を診断するための方法であって、以下:
a)対象から採取した試料中のRAGEレベルを測定するステップ、
b)対象から得られたRAGEレベルを、一般集団又はヒト被験者の選択集団から得られた同等の試料中のRAGEレベルと比較するステップ、及び、
c)(i)対象のRAGEレベルが比較試料のRAGEレベル以上であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患を有する、又は(ii)対象のRAGEレベルが比較試料のRAGEレベル未満であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患を有さない、として対象を同定するステップ、
を含む方法を提供する。
【0187】
別の局面において、本開示は、対象におけるRAGEの高レベルに関連する状態又は疾患を検出するための方法であって、以下:
a)対象から採取した試料中のRAGEレベルを測定するステップ、
b)対象から得られたRAGEレベルを、一般集団又はヒト被験者の選択集団から得られた同等の試料中のRAGEレベルと比較するステップ、及び、
c)(i)対象のRAGEレベルが比較試料のRAGEレベル以上であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患を有する、又は(ii)対象のRAGEレベルが比較試料のRAGEレベル未満であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患を有さない、として対象を同定するステップ、
を含む、方法を提供する。
【0188】
1つの局面において、本開示は、高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患を有するか、又は、そのような疾患又は状態を有さないかとして、対象を分類するための方法であって、以下:
a)対象から採取した試料中のRAGEレベルを測定するステップ、
b)対象から得られたRAGEレベルを、一般集団又はヒト被験者の選択集団から得られた同等の試料中のRAGEレベルと比較するステップ、及び、
c)(i)対象のRAGEレベルが比較試料のRAGEレベル以上であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患を有する、又は(ii)対象のRAGEレベルが比較試料のRAGEレベル未満であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患を有さない、として対象を同定するステップ、
を含む、方法を提供する。
【0189】
別の局面において、本開示は、対象における高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患を監視する方法であって、以下:
a)対象から採取した試料におけるRAGEレベルを測定するステップ、
b)対象から得られたRAGEレベルを、一般集団又は選択されたヒト集団から得られた比較可能な試料におけるRAGEレベルと比較するステップ、及び、
c)(i)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル以上であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態若しくは疾患を有する、若しくは引き続き有する、又は(ii)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル未満であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態若しくは疾患を有さない、若しくはもはや有さない、として対象を同定するステップ、
を含む方法を提供する。
【0190】
1つの局面において、本開示は、抗RAGE抗体治療組成物及び/又は方法の臨床試験のための対象を選択する方法であって、以下:
a)対象から採取した試料におけるRAGEレベルを測定するステップ、
b)対象から得られたRAGEレベルを、一般集団又はヒト被験者の選択集団から得られた比較可能な試料におけるRAGEレベルと比較するステップ、及び、
c)(i)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル以上であるとき、臨床試験に適する、又は(ii)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル未満であるとき、臨床試験に適さない、として対象を同定するステップ、
を含む方法を提供する。
【0191】
1つの局面において、本開示は、対象におけるRAGEの高レベルに関連する状態又は疾患を治療及び/又は予防する方法であって、以下:
a)対象から採取した試料におけるRAGEレベルを測定するステップ、
b)対象から得られたRAGEレベルを、一般集団又は選択されたヒト集団から得られた比較可能な試料におけるRAGEレベルと比較するステップ、
c)(i)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル以上であるとき、対象がRAGE高レベルの治療に適する、又はRAGE高レベルと関連する状態若しくは疾患を有する、又は(ii)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル未満であるとき、対象がRAGE高レベルの治療に適さない、又はRAGE高レベルと関連する状態若しくは疾患を有さない、として同定するステップ、及び、
d)対象におけるRAGEが高レベルに関連する状態又は疾患を有するか、又は治療に適する場合に、適切な治療用組成物及び/又は予防用組成物及び/又は方法を利用するステップ、
を含む方法を提供する。
【0192】
別の局面において、本開示は、対象におけるRAGEの高レベルに関連する状態又は疾患の発症リスクを予測する方法であって、以下:
a)対象から採取した試料におけるRAGEレベルを測定するステップ、
b)対象から得られたRAGEレベルを、一般集団又はヒト被験者の選択集団から得られた比較可能な試料におけるRAGEレベルと比較するステップ、及び
c)(i)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル以上であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態または疾患を有するまたは発症するリスクがある、又は(ii)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル未満であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態または疾患を有するまたは発症するリスクがない、として対象を同定するステップ、
を含む方法を提供する。
【0193】
1つの局面において、本開示は、対象におけるRAGEの高レベルに関連する状態又は疾患の治療に対する対象の応答を予測する方法であって、以下:
a)対象から採取した試料におけるRAGEレベルを測定するステップ、
b)対象から得られたRAGEレベルを、一般集団又は選択されたヒト集団から得られた比較可能な試料におけるRAGEレベルと比較するステップ、
c)(i)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル以上であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態若しくは疾患に罹患若しくは発症するリスクがある、又は(ii)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル未満であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態若しくは疾患に罹患若しくは発症するリスクがない、として対象を同定するステップ、及び、
(d)前記同定するステップに基づいて、対象における重症又は致死的GVHDの治療に対する応答を予測するステップと、
を含む方法を提供する。
【0194】
1つの局面において、本開示は、対象における高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患を発症する可能性を監視する方法であって、以下:
a)対象から採取した試料におけるRAGEレベルを測定するステップ、
b)対象から得られたRAGEレベルを、一般集団又はヒト被験者の選択集団から得られた比較可能な試料におけるRAGEレベルと比較するステップ、及び、
c)(i)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル以上であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態若しくは疾患に罹患若しくは発症するリスクがある、又は(ii)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル未満であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態若しくは疾患に罹患若しくは発症するリスクがない、として対象を同定するステップ、
を含む方法を提供する。
【0195】
別の局面において、本開示は、高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患を有するか又は発症する可能性のある対象の治療及び/又は予防の成功及び/又は有効性を監視する方法であって、以下:
a)対象から採取した試料におけるRAGEレベルを測定するステップ、
b)対象から得られたRAGEレベルを、一般集団又はヒト被験者の選択集団から得られた比較可能な試料におけるRAGEレベルと比較するステップ、及び、
c)(i)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル以上であるとき、治療及び/又は予防が成功している、又は(ii)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル未満であるとき、治療及び/又は予防が成功していないとして同定するステップ、
を含む方法を提供する。任意で、ステップa、b、及び/又はcは、治療及び/又は予防の経過中及び経過後に繰り返される場合がある。
【0196】
1つの局面において、本開示は、高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患の治療及び/又は予防のために対象を選択する方法であって、以下:
a)対象から採取した試料におけるRAGEレベルを測定するステップ、
b)対象から得られたRAGEレベルを、一般集団又はヒト被験者の選択集団から得られた比較可能な試料におけるRAGEレベルと比較するステップ、及び、
c)(i)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル以上であるとき、対象が治療及び/又は予防に適する、又は(ii)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル未満であるとき、対象が治療及び/又は予防に適さない、として同定するステップ、
を含む方法を提供する。任意で、ステップa、b、及び/又はcは、治療及び/又は予防の経過中及び経過後に繰り返される場合がある。
【0197】
関連する局面において、本開示は、高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患の予後のための方法であって、以下:
a)対象から採取した試料におけるRAGEレベルを測定するステップ、
b)対象から得られたRAGEレベルを、一般集団又はヒト被験者の選択集団から得られた比較可能な試料におけるRAGEレベルと比較するステップ、及び、
c)(i)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル以上であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態若しくは疾患を発症する可能性がある、又は(ii)対象におけるRAGEレベルが比較可能な試料におけるRAGEレベル未満であるとき、高レベルのRAGEに関連する状態若しくは疾患を発症する可能性がない、として対象を同定するステップ、
を含む方法を提供する。
【0198】
上記実施態様のいずれかでは、ステップ(b)及び/又は(c)は、コンピュータによって実行される場合がある。
【0199】
前記方法のいずれかにおいて、ステップ(a)は、対象における血液サンプルを取得し、その後RAGEを単離することを更に含む。前記方法のいずれかにおいて、ステップ(b)は、一般集団又は選択集団のメンバーから血液試料を取得し、その後RAGEを単離することを更に含む。
【0200】
前記方法のいずれかにおいて、ステップ(a)及び/又は(b)は、試料中のRAGEのレベルを決定することを更に含む。
【0201】
前記方法のいずれかにおいて、RAGEのレベルの決定は、試料から核酸及び/又はタンパク質を単離することを更に含む。
【0202】
前記方法のいずれかにおいて、前記方法は、高レベルのRAGEと関連する状態又は疾患を有する、又はその危険性があると判定された対象の治療及び/又は予防を更に含む。
【0203】
前記方法のいずれかの1つの実施態様では、治療は予防的であり、適切な予防的に有効な医薬組成物の投与及び/又は適切な予防的に有効な方法の使用を含む。1つの実施態様では、予防的治療は、免疫抑制薬、抗炎症薬、細胞毒性薬、免疫調節薬などを含む。他の実施態様では、予防的治療は、本明細書に記載される少なくとも1つの抗RAGE抗体又はその断片を含む。さらに他の実施態様では、予防的治療は、治療薬及び本明細書に記載される少なくとも1つの抗RAGE抗体又はその断片を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0204】
前記方法のいずれかの1つの実施態様では、治療は、適切な治療上有効な医薬組成物の投与及び/又は適切な治療上有効な方法の使用を含む。1つの実施態様では、治療上有効な組成物は、がん治療薬及び/又は免疫調節療法(例えば、限定するものではないが、ニボルマブ及びペムブロリズマブのようなチェックポイント阻害剤、白金化合物、タキサン、及びアルキル化剤(例えば、オキサリプラチン、パクリタキセル及びシクロホスファミドのそれぞれ)のような免疫原性細胞死(ICD)を誘導する抗がん剤、それぞれベバシズマブ及びスニチニブのようなVEGF経路及び血管標的抗体及びチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、5-フルオロウラシル及びゲムシタビンのような代謝拮抗剤、セツキシマブ及びトラスツズマブのようなADCC応答に関与する抗体療法)を含む。別の実施態様では、治療的に有効な方法は、高用量のステロイド(例えば、コルチコステロイド)の使用及び/又は免疫抑制療法の使用及び/又はがん治療薬の使用を含む。他の実施態様では、治療的処置は、本明細書に記載される少なくとも1つの抗RAGE抗体又はその断片を含む。更に他の実施態様では、治療処置は、治療剤及び本明細書に記載される少なくとも1つの抗RAGE抗体又はその断片を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0205】
高レベルのRAGEに関連する状態及び/又は疾患を有する又は有するリスクのある対象の治療及び/又は予防は、任意の適切な投与経路を介して対象に投与される場合がある。投与されるそのような治療及び/又は予防の有効量又は用量は、対象における治療的又は予防的反応を妥当な時間枠で提供するのに十分であるべきである。例えば、免疫抑制剤の用量は、RAGEのレベルを低下させるとともに、そのような状態及び/又は疾患の症状を減少させるのに十分であるべきである。投与量は、特定の活性薬剤の有効性及び対象(例えばヒト)の状態、並びに治療される対象(例えばヒト)の体重によって決定される。
【0206】
本明細書に記載されるいずれかの実施態様、又はそれらの組合せは、本明細書に記載される本開示のいずれか及び全ての抗RAGE抗体、方法及び使用に適用される。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体及びその断片は、配列番号2~17のアミノ酸配列の少なくとも1つ及び/又は配列番号2~17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様では、抗RAGE抗体又はその断片は、ヒトRAGEタンパク質(例えば、配列番号1)の少なくとも1つのエピトープ、例えば、限定するものではないが、ヒトRAGEタンパク質のV及び/又はC1ドメイン(例えば、配列番号19及び/又は20)に存在するエピトープに結合する。
【0207】
本出願のRAGEと相互作用する単離された抗体又はその断片は、抗体又はその抗原結合部分が1つ以上の炭水化物残基を含むグリコシル化結合タンパク質であってもよいことも意図されている。新生生体内タンパク質産生は、翻訳後修飾として知られる更なる方法を経る場合がある。特に、糖(グリコシル)残基が酵素的に付加される場合があり、この方法はグリコシル化として知られている。得られたオリゴ糖側鎖を持つタンパク質はグリコシル化タンパク質又は糖タンパク質として知られている。タンパク質のグリコシル化は、目的のタンパク質のアミノ酸配列と、そのタンパク質が発現される宿主細胞に依存する。異なる生物は異なるグリコシル化酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ及びグリコシダーゼ)を産生し、異なる基質(ヌクレオチド糖)を利用できる場合がある。このような要因により、タンパク質のグリコシル化パターン及びグリコシル残基の組成は、特定のタンパク質が発現される宿主系によって異なる場合がある。本開示において有用なグリコシル残基としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、n-アセチルグルコサミン及びシアル酸を含むことがあるが、これらに限定されない。
【0208】
本願の抗体又はその断片は、重鎖定常領域、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域を含む。更に、抗体は、κ軽鎖定常領域又はλ軽鎖定常領域のいずれかの軽鎖定常領域を含むことができる。特に、抗体はκ軽鎖定常領域を含む。あるいは、抗体部分は、例えば、Fab断片又は一本鎖Fv断片であり得る。抗体のエフェクター機能を変化させるためのFc部分のアミノ酸残基の置換は当該技術分野において知られている(米国特許第5,648,260号;同第5,624,821号)。抗体のFc部分は、例えばサイトカイン誘導、ADCC、貪食作用、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体及び抗原抗体複合体の半減期/クリアランス速度など、いくつかの重要なエフェクター機能に介在する。これらのエフェクター機能は治療用抗体として望ましい場合もあるが、治療目的によっては不要な場合、又は有害な場合さえある。特定のヒトIgGアイソタイプ、特にIgG1及びIgG3は、それぞれFcγレセプター及び補体C1qへの結合を介してADCC及びCDCに介在する。新生児Fc受容体(FcRn)は、抗体の循環半減期を決定する重要な成分である。さらに別の実施態様では、抗体の定常領域、例えば抗体のFc領域において、抗体のエフェクター機能が変化するように、少なくとも1つのアミノ酸残基が置換される。
【0209】
種々の疾患を処置するために使用されるとき、本開示の組成物及び方法は、同一の疾患又は類似の疾患に適した他の治療剤と併用され得ることが企図される。また、本開示の2つ又はそれ以上の実施態様もまた、相加効果又は相乗効果を生成するために共投与され得る。第2の治療剤と共投与するとき、本開示の実施態様及び第2の治療剤は、同時又は順次(任意の順序で)である場合がある。各薬剤の治療上有効な適切な投与量は、相加作用又は相乗作用により低下する場合がある。
【0210】
非限定的な例として、本開示は、炎症を遮断する他の療法(例えば、IL1、INFα/β、IL6、TNF、IL13、IL23などの遮断を介する)と組み合わせることができる。
【0211】
本開示の組成物及び方法はまた、抗腫瘍抗体又は病原性抗原若しくはアレルゲンを指向する抗体と組み合わせて投与することもできる。
【0212】
本開示の組成物及び方法は、例えば、治療用ワクチン(GVAX、DCに基づくワクチン等を含むが、これらに限定されない)、チェックポイント阻害剤(CTLA4、PD1、LAG3、TIM3等を阻害する薬剤を含むが、これらに限定されない)又は活性化剤(41BB、OX40等を増強する薬剤を含むが、これらに限定されない)等の他の免疫調節治療と組み合わせることができる。本開示の阻害処置はまた、CD1d、CD1d融合タンパク質、CD1d二量体又はCD1dの大きなポリマーを含むがこれらに限定されない、抗原を負荷していない又は抗原を負荷したナチュラルキラーT細胞の機能又は安定性を調節する能力を有する他の処置と組み合わせることができる、CD1d-キメラ抗原レセプター(CD1d-CAR)、又は現にヒトに存在する5つの既知のCD1異性体(CD1a、CD1b、CD1c、CD1e)の他のいずれかを、前述の形態又は製剤のいずれかにおいて、単独で又は他の薬剤と組み合わせて用いる。
【0213】
本開示の治療方法は、追加の免疫療法及び治療と組み合わせることができる。例えば、がんを治療するために使用されるとき、本開示の抗RAGE抗体又はその断片は、腫瘍のタイプ、患者の状態、他の健康問題、及び様々な要因に応じて、例えば、手術、放射線療法、化学療法、又はその組み合わせ等の従来のがん治療と組み合わせて使用され得る。ある局面において、本開示の阻害剤との併用がん療法に有用な他の治療剤には、抗血管新生剤を含む。多くの抗血管新生剤が同定されており、例えば、以下、TNP-470、血小板因子4、トロンボスポンジン-1、組織メタロプロテアーゼ阻害剤(TIMP1及びTIMP2)、プロラクチン(16-Kd断片)、アンジオスタチン(プラスミノーゲンの38-Kd断片)、エンドスタチン、bFGF可溶性受容体、トランスフォーミング増殖因子β、インターフェロンα、可溶性KDR及びFLT-1受容体、並びに胎盤プロフェリン関連タンパク質を含み、当該技術分野において知られている。1つの実施態様では、本開示の抗RAGE抗体又はその断片は、抗VEGF抗体、VEGF変異体、可溶性VEGF受容体断片、VEGF又はVEGFRを遮断することができるアプタマー、中和抗VEGFR抗体、VEGFRチロシンキナーゼの阻害剤、及びその任意の組み合わせ(例えば、抗hVEGF抗体A4.6.1、ベバシズマブ又はラニビズマブ)で使用できる。
【0214】
本開示の併用治療において使用され得る化学療法化合物の非限定的な例は、例えば、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンポテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルヒチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムヌスティン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、アイロノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、マイトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルティトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、チタノセンジクロリド、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビンを含む。
【0215】
これらの化学療法化合物は、その作用機序により、例えば以下のグループに分類される場合がある:ピリミジンアナログ(5-フルオロウラシル、フロクスリジン、カペシタビン、ゲムシタビン及びシタラビン)及びプリンアナログ、葉酸拮抗剤及び関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))などの抗代謝物/抗がん剤;ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)などの天然物、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン及びナベルビン、エピポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)、DNA損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、サイトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルネルアミンオキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、マークロレハタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホラミド及びエトポシド(VP16));ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシン等の抗生物質;酵素(L-アスパラギンを全身的に代謝し、アスパラギンを合成する能力を持たない細胞からアスパラギンを奪うL-アスパラギナーゼ);抗血小板剤;窒素マスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド及びその類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、アルキルスルホン酸塩-ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)及びその類似体、ストレプトゾシン)、トラゼネス-ダカルバジニン(DTIC)などの抗増殖/抗増悪アルキル化剤;葉酸アナログ(メトトレキサート)のような抗増殖/抗増悪性代謝拮抗薬;白金錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモンアナログ(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)及びアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩及びその他のトロンビン阻害剤);線溶薬(組織プラスミノーゲンアクチベーター、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼなど)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ、抗刺激剤;分泌抑制剤(ブレベルジン);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(例えば、TNP-470、ゲニステイン、ベバシズマブ)及び成長因子阻害剤(例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体拮抗剤;一酸化窒素供与剤;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ);細胞周期阻害剤及び分化誘導剤(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン及びミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルペドニゾロン、プレドニゾン及びプレニゾロン);成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤、ミトコンドリア機能障害誘導剤及びカスパーゼ活性化剤、及びクロマチン破壊剤。
【0216】
本開示の組成物は、担体及び/又は賦形剤を含むことができる。賦形剤及び/又は担体は、製剤の他の成分と適合性があり、及びその受容者にとって有害ではないという意味で、「受容可能」でなければならない。治療用に許容される賦形剤及び担体は当該技術分野において周知であり、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy. Lippincott Williams & Wilkins (A.R. Gennaro edit. 2005)に記載されている。製薬用賦形剤及び担体の選択は、意図される投与経路及び標準的な製薬慣行を考慮して選択することができる。当業者であれば、適切な溶液を調製することができる。
【0217】
本開示の組成物のいずれかの1つの実施態様では、組成物は、例えば、経口投与、局所投与、直腸投与、粘膜投与、舌下投与、鼻腔投与、鼻/胃内投与、非経口投与、腹腔内投与、皮内投与、経皮投与、髄腔内投与、鼻腔内投与、及び気管内投与などの経路による送達のために処方される。本開示の組成物のいずれかの1つの実施態様では、組成物は、液体、泡、クリーム、スプレー、粉末、又はゲルの形態である。本開示の組成物のいずれかの1つの実施態様では、組成物は、緩衝剤(例えば、炭酸水素ナトリウム)を含む。
【0218】
本開示の方法における化合物及び組成物の投与は、当該技術分野において知られている任意の方法によって達成され得る。有用な送達経路の非限定的な例としては、経口投与、直腸投与、結腸投与(浣腸による)、及び経鼻/胃経口投与、並びに非経口投与、腹腔内投与、皮内投与、静脈内投与、皮下投与、経皮投与、髄腔内投与、経鼻投与、及び気管内投与を含む。活性薬剤は、投与後に全身性になる場合があり、局所投与、硬膜内投与、又は活性用量を植え込み部位に保持するように作用するインプラントの使用により、局在する場合がある。担体材料は、対象/患者に対して無毒でなければならない。
【0219】
本開示の化合物及び製剤の有用な投与量は、疾患の性質、患者の病歴、投与頻度、投与方法、宿主からの薬剤のクリアランス等に応じて大きく異なる。初回投与量を多くし、その後維持投与量を少なくする場合がある。投与は、週1回又は隔週1回という少ない頻度で行う場合があり、又は有効な投与量レベルを維持するために、より少ない投与量に分割して毎日、半週1回等投与する場合がある。治療効果を得るためには、様々な用量が有効であることが想定される。本開示の化合物をそのまま治療に使用することも可能であるが、医薬製剤、例えば、意図される投与経路及び標準的な医薬慣行に関して選択される適切な医薬賦形剤、希釈剤又は担体との混合物で投与することが好ましい場合がある。賦形剤、希釈剤及び/又は担体は、製剤の他の成分と適合性があり、かつその受容者にとって有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。治療用に許容される賦形剤、希釈剤及び担体は、当該技術分野において著名であり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy. Lippincott Williams & Wilkins (A.R. Gennaro edit. 2005)に記載される。医薬賦形剤、希釈剤及び担体の選択は、意図される投与経路及び標準的な製薬慣行を考慮して選択することができる。
【0220】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を意図される被投与者の血液と等張にする溶質を含むことができる、水性及び非水性の等張無菌注射液、並びに、懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、及び保存剤を含むことができる水性及び非水性の無菌懸濁液を含む。
【0221】
溶液又は懸濁液は、以下の成分:例えば、注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒を含むが、これらに限定されない、無菌希釈剤;例えば、ベンジルアルコール及びメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸及び重亜硫酸ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(edta)のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩及びリン酸塩のような緩衝剤;及び塩化ナトリウム又はブドウ糖のような浸透圧調整剤のいずれかを任意の組合せで含むことができる。
【0222】
薬剤が不十分な溶解性を示す場合には、薬剤を可溶化する方法が使用される場合がある。これらの方法は当該技術分野において知られており、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)のような共溶媒の使用、TWEEN(登録商標)80のような界面活性剤の使用、又は炭酸水素ナトリウム水溶液への溶解を含むが、これらに限定されない。薬剤の医薬的に許容される誘導体もまた、有効な医薬組成物の製剤化に使用される場合がある。
【0223】
組成物は、活性薬剤と共に、例えば、及び限定されないが、以下:ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウム、又はカルボキシメチルセルロースなどの希釈剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、及びタルクなどの滑沢剤;並びにデンプン、アカシアガム・ゼラチンなどの天然ガム、グルコース、糖蜜、ポリビニルピロリドン、セルロース及びその誘導体、ポビドン、クロスポビドン、及び当該技術分野において知られている他のこのような結合剤などの結合剤を含むことができる。液状の薬学的に投与可能な組成物は、例えば、上記で定義された活性薬剤及び任意選択的な薬学的アジュバントを、例として、限定されるものではないが、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノール等の担体中に溶解、分散又はその他の方法で混合し、それにより溶液又は懸濁液を形成することにより調製することができる。所望により、投与される医薬組成物は、湿潤剤、乳化剤、又は可溶化剤、pH緩衝剤等のような無毒の補助物質、例えば、酢酸塩、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンアセテートナトリウム、トリエタノールアミンオレエート、及び他のそのような薬剤を少量含む場合がある。このような剤形を調製する実際の方法は、当該技術分野において知られているか、又は当業者には明らかであろう(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 15th Edition, 1975)。いずれにしても、投与される組成物又は製剤は、治療対象における症候を緩和するのに十分な量の活性薬剤を含む。
【0224】
活性薬剤又は医薬的に許容される誘導体は、時限放出型製剤又はコーティングのような、体内からの急速な排泄から薬剤を保護する担体と共に調製される場合がある。組成物は、所望の特性の組み合わせを得るために、他の活性薬剤を含むことがある。
【0225】
非経口投与は、一般に、皮下、筋肉内又は静脈内のいずれかの注射によって特徴付けられるが、本明細書においてしばしば企図される。注射剤は、液体溶液又は懸濁液として、注射前の液体への溶液又は懸濁液に適した固体形態として、又はエマルジョンとして、従来の形態で調製することができる。好適な賦形剤としては、例として、及び限定するものではないが、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、又はエタノールを含む。さらに、所望により、投与される医薬組成物は、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、及びシクロデキストリンのような、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解性増強剤、及び他のこのような薬剤のような、非毒性の補助物質を少量含有する場合がある。
【0226】
一定レベルの投与量が維持されるような徐放性又は持続放出性システムの移植(例えば、米国特許第3,710,795号)もまた、本明細書において企図される。簡単に述べると、本明細書に開示される抗RAGE抗体は、固体内部マトリックス(例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化又は未可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、アクリル酸とメタクリル酸のエステルのヒドロゲルのような親水性ポリマー、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール及び架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニル)であって、体液中で不溶性の外側の高分子膜(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルとの塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレン、アイオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロルヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、エチレン/ビニロキシエタノールコポリマー)に囲まれる。薬剤は、放出速度を制御するステップで外側のポリマー膜を通って拡散する。このような非経口組成物に含まれる活性薬剤の割合は、その特定の性質、薬剤の活性及び対象における必要性に大きく依存する。
【0227】
凍結乾燥粉末は、溶液、乳剤、及びその他の混合物として投与するために再構成することができ、又は固体又はゲルとして製剤化することができる。無菌凍結乾燥粉末は、本明細書で提供される薬剤又はその医薬的に許容される誘導体を適切な溶媒に溶解することにより調製される。溶媒は、粉末又は粉末から調製される再構成溶液の安定性又は他の薬理学的成分を改善する賦形剤を含む場合がある。使用される場合がある賦形剤は、デキストロース、ソルビタール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース又は他の適切な薬剤を含むが、これらに限定されない。溶媒はまた、クエン酸塩、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウム又は当該技術分野において知られている他のそのような緩衝液のような、典型的には中性pH程度の緩衝液を含む場合がある。その後、溶液を無菌濾過し、当該技術分野において知られている標準的な条件下で凍結乾燥すると、所望の製剤が得られる。一般に、得られた溶液は、凍結乾燥のためにバイアルに分配される。各バイアルは、例として、及び限定するものではないが、薬剤の単回投与量(10~1000mg、例えば10~500mg)又は複数回投与量を含む場合がある。凍結乾燥粉末は、約4℃~室温などの適切な条件下で保存することができる。この凍結乾燥粉末を注射用水で再構成すると、非経口投与に用いる製剤が得られる。正確な量は選択された薬剤に依存する。そのような量は経験的に決定することができる。
【0228】
本発明組成物又はその医薬的に許容される誘導体は、例えば吸入又は経鼻的に適用するためのエアロゾルとして製剤化される場合がある。これらの製剤は、ネブライザー用のエアロゾル又は溶液の形態、又は気腹用の微粉末として、単独で又はラクトースのような不活性担体と組み合わせて用いることができる。このような場合、製剤の粒子は、例として、及び限定するものではないが、約50ミクロン未満、例えば約10ミクロン未満の直径を有する。
【0229】
キット
1つの局面において、本開示は、対象における高レベルのRAGEに関連する状態又は疾患を診断及び/又は検出するためのキットを提供し、前記キットは、RAGEに向けられた抗体を含み、前記抗体は、RAGEの発現レベルを決定するために使用され得る。キットは検出手段を含むこともできる。キットは更に任意で対照抗体を含むことがある。
【0230】
いくつかの実施態様では、これらのキットは、RAGE(例えば、配列番号1)及びその断片に特異的に結合する検出試薬を含む。キットは典型的には、例えば、限定するものではないが、RAGE及びその断片のような本開示のポリペプチドに特異的に結合する抗体及びプローブの存在を検出するための標識を含むが、これらに限定するものではない。キットは、本開示のポリペプチドに特異的な複数の抗体を含むことがある。キットは更に、タンパク質の対照レベルを提供するための対照抗体、及び/又は他の標準又は対照を含む場合がある。抗体は任意に検出可能に標識される。
【0231】
キットは、抗体(既に固体マトリックスに結合しているか、又はマトリックスに結合させるための試薬と共に別個に包装されている)、対照製剤(陽性及び/又は陰性)、及び/又はフルオレセイン、緑色蛍光タンパク質、ローダミン、シアニン色素、アレクサ色素、ルシフェラーゼ、放射性標識などの検出可能な標識を別個の容器に含む場合がある。アッセイを実行することについての説明書もキットに含むことがある。アッセイは、例えば、サンドイッチELISA又はタンパク質抗体アレイの形態である場合があるが、これらに限定されない。
【0232】
本開示のバイオマーカーを検出するための試薬は、多孔性ストリップなどの固体マトリックス上に固定化して、少なくとも1つのバイオマーカー検出部位を形成することができる。多孔性ストリップの測定又は検出領域は、抗体を含む複数の部位を含む場合がある。テストストリップは、陰性対照及び/又は陽性対照のための部位を含む場合がある。あるいは、検査ストリップとは別のストリップに対照部位を配置することもできる。任意で、異なる検出部位は異なる量の固定化抗体を含む場合があり、例えば、最初の検出部位では量が多く、それ以降の部位では量が少なくなる。試料を添加すると、検出可能なシグナルを提示する部位の数により、試料中に存在するバイオマーカーの量を定量的に示すことができる。検出部位は、任意の適切に検出可能な形状に構成される場合があり、典型的には、テストストリップの幅にわたるバー又はドットの形状である。
【0233】
キットは、陽性対照及び陰性対照と同様に、タンパク質の単離又は精製手段を更に含むことができる。キットはまた、診断キットの製造、使用又は販売を規制する政府機関により規定された様式で、それに関連する通知を含むことができる。使用、保管及びトラブルシューティングのための詳細な説明書もキットと共に提供される場合がある。キットは任意で、高スループット環境でのロボット操作に有用な適切な筐体で提供することもできる。
【0234】
キットの成分は乾燥粉末として提供される場合がある。試薬及び/又は成分が乾燥粉末として提供されるとき、粉末は適当な溶媒の添加により再構成することができる。溶媒が別の容器で提供される場合があることも想定される。容器は、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、注射器、及び/又は他の容器手段を含み、その中に溶媒が入れられ、任意で分注される。キットはまた、無菌の医薬的に許容される緩衝液及び/又は他の溶媒を含むための第2の容器手段を含む場合がある。
【0235】
キット中に1を超える成分が含まれる場合、キットは一般的に、追加の成分が別々に入れられる場合がある、第2、第3又はそれ以上の追加の容器も含む。しかし、様々な成分の組み合わせが容器に含まれる場合がある。
【0236】
このようなキットはまた、タンパク質の分解から保護する試薬のような、タンパク質を保存又は維持する成分を含むことがある。本明細書に記載される組成物又は試薬のいずれもがキットの成分である場合がある。
【0237】
いくつかの実施態様では、キットは、対象から血液サンプルを採取するための器具を更に含む。他の実施態様では、キットは、採取器具及び/又はキットを含む試薬を使用するための説明書を更に含む。
【0238】
[実施例]
実施例1 抗RAGE抗体の作成
ヒトRAGEの精製細胞外ドメインに対するマウス抗体は、BALB/cマウスで28日間のRIMMS(Rapid Immunization Multiple Sites)プロトコルとそれに続く1回のブーストを用いて作製した。ハイブリドーマは、免疫したマウスの脾臓細胞及びリンパ球とマウス骨髄腫細胞株NS1との融合から作製した。ハイブリドーマクローンは、まず精製ヒトRAGE細胞外ドメイン(ECD)に対するハイブリドーマクローン上清を用いてELISAで評価した。次にELISA陽性クローン上清をフローサイトメトリーでヒトRAGEトランスフェクション細胞へのIgG結合を調べた(
図1A)。ELISA及びフロー陽性クローンをサブクローニングし、IgG発現、ELISA及びフローサイトメトリーによるRAGE結合、in vitroでのRAGE阻害活性を評価した。ヒトRAGEに対するマウス抗体の交差反応性は、マウスRAGEをトランスフェクションした細胞に対するサブクローンのフローサイトメトリー結合で評価した(
図1B)。その結果、3つのサブクローンがマウスRAGEに結合し、ヒトRAGEと交差反応することが確認された。
【0239】
実施例2 RAGEタンパク質ドメインへの抗体結合の決定
RAGEタンパク質の細胞外部分には、IgGファミリーに類似した3つのドメインがある。3つのドメインはそれぞれV、C1、C2(可変、定常1、定常2)である。RS07はVドメインと結合し、RS15はV-C1ドメインと結合する(
図2B)。本例示的実施態様では、ネイティブシグナル配列の直後、配列番号1の第23番目のアミノ酸残基から始まる(AQNITA・・・)V-C1-C2構築体を含むRAGE構築体を使用する。C1-C2コンストラクトは、配列番号1の第117番目のアミノ酸残基で開始し(VYQIPG・・・)、C2コンストラクトは、配列番号1の第249番目のアミノ酸残基で開始する(VAPGG・・・)。マッピング実験の結果を
図2Bに示し、
図2Cに要約する。ドメインはGenbank及び結晶構造から予測した。個々のRAGEドメインへの抗体結合をマッピングするために、IL2シグナル配列をpEGFP-N2にクローニングし、その中にRAGEの一部を5’末端にIL2シグナル配列(IL2ss)とインフレームで、かつ、3’末端にeGFPとインフレームでクローニングした。RAGEの細胞外部分に加えて、全てのコンストラクトはRAGEの膜貫通領域及びC末端領域を含むため、GFPシグナルは細胞内に存在し、IL2ssはRAGEのV、C1、及び/又はC2モチーフが細胞外に存在し、抗体がアクセス可能であることを保証する。
図2BのABCコンストラクトはV、C1、C2ドメインを含み、配列番号1の第23番目のアミノ酸残基で開始する。
図2BのBCコンストラクトは、C1及びC2ドメインを含み、配列番号1の第116番目のアミノ酸残基で開始する。
図2BのCコンストラクトは、C2ドメインを含み、配列番号1の第246番目のアミノ酸残基で開始する。
【0240】
実施例3 抗体の試験管内活性
遊走
ヒト細胞株THP-1を用いて、RAGE抗体クローンの細胞遊走又は走化性の阻害を試験した。RS07ではなくRS15を含むいくつかのクローンは、THP-1細胞がRAGEリガンドであるAGE-BSA(終末糖化産物-BSA、
図3A)に向かって遊走する能力を阻害した。
図3Bは、RS7及びRS15がマウス黒色腫株B16F10におけるNFκBシグナリングの基底レベルを阻害することを示す。
図3C-1~3C-3は、RAGE抗体RS15が単球及び顆粒球へのS100A8/9の結合を阻害することを示す。ここでは、標識したS100A8/9(Alexafluor-488)と健常ドナーのヒト末梢血細胞(ACK prep)との結合をフローサイトメトリーで検出した。
【0241】
Erkシグナル伝達
ヒトTHP-1細胞を用いて、RAGE抗体クローンの基底Erk活性化レベルを阻害する能力(ホスホリル化Erk)を評価した。RS07及びRS15の両者を含むいくつかのクローンは、活性化Erkレベルを阻害した(
図4)。
【0242】
RAGEヒト腫瘍発現
フローサイトメトリーを用いて、RFT01とも称するRS15を用いた2つのヒト大腸がん試料でRAGEの発現が検出された(
図5A)。特定の細胞タイプの解析から、RAGEは腫瘍試料に浸潤している複数の骨髄系及びリンパ系に発現していることが示された(それぞれ
図5B及び5C)。
図5DはステージIII及びステージIVの大腸がん骨髄系細胞における抗RAGE結合の効果を示す。
図5Dから分かるとおり、RAGEを発現するMDSCsはT細胞の活性と増殖を抑制し、RAGE阻害はM1マクロファージ関連サイトカイン産生を促進し、RAGEはCD11bに結合して炎症性病巣の形成及び骨髄系細胞の集積を導く。細胞は以下の表1のマーカーによって同定された:
【0243】
【0244】
図5Eは、ステージIII及びステージIVの大腸がんリンパ球における抗RAGE結合の効果を示す。特に、ステージIVのがんでは、全ての細胞タイプでRAGE+浸潤細胞の割合が高かった。そして、MDSC及び炎症が、T細胞及びNK細胞活性化レセプターのζ鎖のダウンレギュレーションに介在することが判明した。以下の表2のマーカーによってがんが同定された:
【0245】
【0246】
実施例4 抗体の生体内活性
RF101処置-腫瘍浸潤免疫細胞の組成
RFT01処置の生体内での効果は、CT26及びColon-26という2つの大腸がんのマウス同系モデルで評価された。CT26腫瘍担がんマウス及びColon-26(Colon-26腺がん)腫瘍のRS15処置は、腫瘍に浸潤する潜在的に免疫阻害性の骨髄系集団の減少(
図6A)、具体的には、CT26腫瘍担がんマウスにおける総骨髄系細胞、M-MSDC及びM2_TAMの減少、Colon-26マウス及びColon-26腫瘍でのM-MSDC、iMonosの減少、M1 TAMの増加をもたらした。更に、RS15処置はColon-26腫瘍における骨髄関連サイトカインに影響を及ぼすことが示された(
図6B)。具体的には、IL27、IL17A、IFNβ、IL1β及びIL10が増加し、TGFβ及びCCL2が減少した。IL27はマクロファージや樹状細胞を含むAPCによって優占的に発現し、NK細胞の刺激及び血管新生の阻害を含む直接的及び間接的な機序によって抗腫瘍活性を示す。IL17AはCD8+ T細胞の細胞傷害性を促進し、IL17レベルはRAGEノックアウトマウスで増加する。IFNβは抗炎症状態を促進することが知られている。IL1βはM1活性化マクロファージのマーカーである。IL10はIL27によって刺激され、抗炎症性であるが、抗原環境によっては免疫刺激性又は抑制性となることが知られている。TGFβは腫瘍促進微小環境(protumor microenvironment)を促進し、CMS4タイプの大腸がんと関連する。最後に、CCL2は単球、マクロファージ及び樹状細胞により発現され、悪液質、マクロファージ及び他の免疫細胞の腫瘍への動員と関連し、腫瘍の血管形成及び増殖にも寄与する。
【0247】
RFT01処置は腫瘍に浸潤するT細胞の数も増加させ(
図7)、腫瘍に対する免疫応答の可能性を示した。早期腫瘍(腫瘍サイズの中央値200mm
3)ではCD3+ T細胞の数が増加し、後期腫瘍(腫瘍サイズの中央値3300mm
3)ではCD8+ T細胞の数が増加した。早期腫瘍におけるCD3+ T細胞浸潤の増加は、おそらくRAGEを介したMDSC及びTAMの免疫抑制及び炎症の低減に起因する。CD8+ 細胞傷害性T細胞の増加は、腫瘍に対する免疫応答が改善したことを示唆するが、これにはMDSC及びTAMの免疫抑制及び炎症の低減が介在した可能性がある。
【0248】
RF101-腫瘍増殖阻害
CT26腫瘍担がんマウスへのRFT01処置は、78%の腫瘍増殖阻害をもたらした(
図8A)。
図8Bは、Colon-26腫瘍が100mm
3から開始して、RFT01を10mg/kgで週2回静脈内投与した結果、腫瘍体積が経時的に減少したことを示す。
【0249】
【0250】
【0251】
特に断らない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分の量、分子量などの特性、反応条件などを表す全ての数値は、全ての場合において用語「約」によって修飾されていると理解すべきである。本明細書で用いる用語「約(about)」及び「約(approximately)」は、10~15%以内、好ましくは5~10%以内を意味する。従って、反対の指示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性に応じて変化する場合がある近似値である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限する試みではないが、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の桁数に照らして、通常の丸め込み技術を適用することにより解釈されるべきである。本発明の広範な範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例に記載された数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、どのような数値も、それぞれの試験測定に見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含んでいる。
【0252】
本発明を説明する文脈で(特に以下の特許請求の範囲の文脈で)用いられる用語「a」、「an」、「the」及び類似の参照語は、反対の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を含むものと解釈されるものとする。本明細書における値の範囲の記載は、単に、範囲内に入る各個別の値を個別に参照するための略記法としての役割を果たすことを意図する。本明細書において別段の指示がない限り、各個別の値は、本明細書において個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で特に示されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行され得る。本明細書で用いるあらゆる例、又は例示的な文言(例えば、「~のような」)は、単に本発明をより良く説明するためのものであり、特許請求される発明の範囲を制限するものではない。本明細書中のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠な非請求要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0253】
本明細書に開示された本発明の代替要素又は実施態様のグループ分けは、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個別に、又はグループの他のメンバー若しくは本明細書で見出される他の要素と任意の組み合わせで、参照及び請求される場合がある。利便性及び/又は特許性の理由から、グループの1又はそれ以上のメンバーがグループに含まれる又はグループから削除される場合があることが予想される。そのような包含又は削除が行われたとき、本明細書は、添付の特許請求の範囲において使用されるすべてのマーカッシュグループの記載を満たすように変更されたグループを含むものとみなされる。
【0254】
本発明の特定の実施態様を、本発明を実行することのための本発明者らに知られた最良の態様を含めて、本明細書に記載する。もちろん、これらの説明された実施態様に対する変形は、前記の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。本発明者は、当業者がこのような変形を適宜採用することを予想しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載される以外に本発明が実施されることを意図している。従って、本発明は、準拠法によって許容される、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載される対象における全ての変更及び均等物を含む。更に、本明細書に記載されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、上記要素のあらゆる可能な変形における組み合わせは、本発明に包含される。
【0255】
本明細書で開示される特定の実施態様は、特許請求の範囲において、「からなる(consisting of)」又は「から本質的になる(consisting essentially of)」の文言を用いて更なる限定がなされる場合がある。特許請求の範囲において使用されるとき、出願時のものであるか又は補正により追加されたものであるかにかかわらず、移行用語「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲において特定されていない要素、ステップ又は成分を除外する。移行用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲を、特定された材料又はステップ、及び基本的かつ新規な特性に重大な影響を与えないものに限定する。このように請求される本発明の実施態様は、本明細書に本質的又は明示的に記載され、有効である。
【0256】
更に、本明細書全体を通して、特許及び印刷刊行物が多数参照されている。前記引用文献及び印刷刊行物の各々は、参照によりその全体が本明細書に個別に組み込まれる。
【0257】
最後に、本明細書に開示された本発明の実施態様は、本発明の原理を例示するものであることを理解すべきである。採用される場合がある他の変更は、本発明の範囲内である。したがって、限定するものではないが例として、本発明の代替的な構成が、本明細書の教示に従って利用される場合がある。よって、本発明は、正確に図示及び説明したものに限定されない。
【0258】
(付記)
(付記1)
終末糖化産物受容体(RAGE)のV及び/又はC1ドメインに対する特異的抗体であって、相補性決定領域(CDR)の少なくとも1つが配列番号4~9又は12~17のいずれか1つのアミノ酸配列を有する、抗体。
【0259】
(付記2)
RAGEのV及び/又はC1ドメインに対する特異的抗体であって、前記抗体の可変重鎖(VH)領域が配列番号2又は10のアミノ酸配列を有する、抗体。
【0260】
(付記3)
RAGEのV及び/又はC1ドメインに対する特異的抗体であって、前記抗体の可変軽鎖(VL)領域が配列番号3又は11のアミノ酸配列を有する、抗体。
【0261】
(付記4)
モノクローナル抗体である、付記1~3のいずれか1つに記載の抗体。
【0262】
(付記5)
キメラ抗体である、付記1~3のいずれか1つに記載の抗体。
【0263】
(付記6)
ヒト化抗体である、付記1~3のいずれか1つに記載の抗体。
【0264】
(付記7)
抗原結合抗体断片である、付記1~3のいずれか1つに記載の抗体。
【0265】
(付記8)
前記抗原結合抗体断片は、Fab、Fab′、F(ab′)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、多重特異性抗体、二重特異性抗体(dual specific antibody)、二重可変ドメイン免疫グロブリン、重鎖抗体(HCAb)、又は二重特異性抗体(bispecific antibody)である、付記7に記載の抗体。
【0266】
(付記9)
配列番号4、5及び6のCDRを含む、付記1に記載の抗体。
【0267】
(付記10)
配列番号7、8及び9のCDRを含む、付記1に記載の抗体。
【0268】
(付記11)
配列番号12、13及び14のCDRを含む、付記1に記載の抗体。
【0269】
(付記12)
配列番号15、16及び17のCDRを含む、付記1に記載の抗体。
【0270】
(付記13)
配列番号2のVHと、配列番号3のVLとを含む、付記2又は3に記載の抗体。
【0271】
(付記14)
配列番号10のVHと、配列番号11のVLとを含む、付記2又は3に記載の抗体。
【0272】
(付記15)
付記1~14のいずれか1つに記載の抗体を含む、医薬組成物。
【0273】
(付記16)
付記1~14のいずれか1つに記載の抗体又は付記15に記載の医薬組成物の有効量を、RAGE活性の阻害を必要とする対象に投与することを含む、RAGE活性を阻害する方法。
【0274】
(付記17)
RAGE活性を阻害することは前記対象におけるがんを治療することを含む、付記16に記載の方法。
【0275】
(付記18)
がんを治療することは、腫瘍微小環境を変化させる、腫瘍への血管形成を阻害する、腫瘍の成長を阻害する、腫瘍内の成長因子及び/又は炎症因子の発現を阻害又は減少させる、単球性骨髄由来抑制細胞(MDSC)を減少させる、炎症性単球(iMonos)を減少させる、M2腫瘍関連マクロファージ(M2 TAM)を減少させる、M1マクロファージ及びM1マクロファージシグナル伝達を増加させる、M1/M2マクロファージ腫瘍浸潤及び/又はシグナル伝達を増加させる、M2からM1への分極を増加させる、及び/又は、T細胞活性及び腫瘍への浸潤を促進することを含む、付記16に記載の方法。
【0276】
(付記19)
RAGE活性を阻害することは、前記対象における炎症を低減することを含む、付記16に記載の方法。
【0277】
(付記20)
前記炎症は、慢性炎症又は急性炎症である、付記19に記載の方法。
【0278】
(付記21)
前記慢性炎症は、自己免疫疾患の結果である、付記20に記載の方法。
【0279】
(付記22)
RAGE活性を阻害することは、肝臓損傷及び/又は線維症を予防又は治療することを含む、付記16に記載の方法。
【0280】
(付記23)
RAGE活性を阻害することは、眼における新生血管形成を予防又は治療することを含む、付記16に記載の方法。
【0281】
(付記24)
RAGE活性を阻害することは、呼吸器疾患を予防又は治療することを含む、付記16に記載の方法。
【0282】
(付記25)
RAGE活性を阻害することは、感染を予防又は治療することを含む、付記16に記載の方法。
【0283】
(付記26)
第2の医薬の有効量を投与することを更に含む、付記16~25のいずれか1つに記載の方法。
【0284】
(付記27)
前記方法はがんを治療し、前記第2の医薬は免疫チェックポイント阻害剤である、付記26に記載の方法。
【0285】
(付記28)
前記免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1又はPDL-1に対する抗体を含む、付記27に記載の方法。
【0286】
(付記29)
前記第2の医薬はワクチンである、付記26に記載の方法。
【0287】
(付記30)
前記がんは大腸がんである、付記17に記載の方法。
【0288】
(付記31)
生物学的試料中のRAGEタンパク質を検出する方法であって、
前記試料を付記1~14のいずれか1つに記載の抗RAGE抗体と接触させること、及び、
前記抗体と前記試料中のRAGEタンパク質との複合体の形成を検出すること、
を含む、方法。
【配列表】
【国際調査報告】