(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】歯牙動揺検出を用いた口腔ケアデバイス
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20241108BHJP
【FI】
G16H50/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529749
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2022081703
(87)【国際公開番号】W WO2023088814
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ブランダオ シルヴァ プリシラ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト ルツ クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン マーク トーマス
(72)【発明者】
【氏名】コーイマン ヘルベン
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
本発明は、歯牙動揺のレベルを検出する手段が組み入れられた口腔ケアデバイスを提供する。清掃セッション中にデバイスの清掃要素に加えられる力若しくは圧力を示す又は清掃要素の動きを示す検知信号を出力するセンサ手段が含まれる。この信号の波形を処理して1つ又は複数の信号特性を検出することによって、歯牙動揺のレベル又は程度を示す尺度を導出することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体の表面から突出する複数の清掃要素であって、口腔表面との機械的係合のための複数の清掃要素と、
前記清掃要素のうちの少なくとも1つに加えられる負荷力若しくは圧力を示す又は前記清掃要素のうちの少なくとも1つの動きを示す測定値を検知する、センサ手段と、
1つ又は複数のプロセッサを含む処理構成部とを備える、口腔ケアデバイスであって、
前記処理構成部は、
口腔清掃セッション中に、少なくとも1本の歯との少なくとも1つの前記清掃要素の機械的係合の時間期間に対応する、前記センサ手段からの検知信号を受信し、
前記時間期間にわたり、前記検知信号の信号波形を処理して、前記信号波形の1つ又は複数の特性を抽出し、
前記少なくとも1本の歯についての歯牙動揺の程度を示す尺度を求め、
前記口腔ケアデバイスからの出力のため、求めた前記歯牙動揺の程度を示す前記尺度を示すデータ信号を生成する、口腔ケアデバイス。
【請求項2】
前記歯牙動揺の程度を求めることは、前記検知信号のスペクトル分析を行うことを有する、請求項1に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項3】
前記歯牙動揺の程度を求めることは、前記検知信号についての周波数スペクトルを計算すること、
前記検知信号の1つ又は複数の周波数成分の振幅を検出すること、及び/又は
前記周波数スペクトルにおける支配的なピークに関連付けられた帯域幅又は品質係数を検出すること
を有する、請求項2に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項4】
前記口腔ケアデバイスは、少なくとも1つの前記清掃要素の振動運動を駆動する作動手段を備え、前記振動運動は、基準状態において、支配的なピークを有する基準振動周波数スペクトルを呈し、前記歯牙動揺の程度を求めることは、前記基準周波数スペクトルと検知された前記周波数スペクトルとの間での、
前記周波数スペクトルの前記支配的なピークの中心周波数成分の振幅、
前記周波数スペクトルの前記支配的なピークに関連付けられた帯域幅、及び/又は
前記周波数スペクトルの前記支配的なピークに関連付けられた品質係数
の、変化を求めることを有する、請求項3に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項5】
前記センサ手段は、少なくとも1つの前記清掃要素にかけられる力又は圧力を検知するためのものである、請求項1から4のいずれか一項に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項6】
前記処理構成部は、少なくとも1つの清掃セッション中に少なくとも1つの前記清掃要素に加えられるベースライン又は平均負荷の力を検知することを有する較正動作を行い、前記歯牙動揺の程度は、前記ベースライン又は平均負荷の力に応じて求められる、請求項5に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項7】
前記口腔ケアデバイスは、ブラシヘッドが本体に結合された歯ブラシであり、前記本体は、前記口腔ケアデバイス用のハンドルを形成し、前記支持体は、前記ブラシヘッドのプラテンであり、好ましくは、前記清掃要素は剛毛を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項8】
前記センサ手段は、前記本体に対して前記ブラシヘッドに加えられる負荷の力を検出する力又は圧力センサを含む、請求項7に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項9】
前記センサ手段は、前記清掃要素の延出方向に対して垂直な少なくとも1つの方向に前記清掃要素に加えられる負荷の圧力を検出する、少なくとも1つの前記清掃要素のベースの周りに延びる感圧リング部材を含み、
任意選択的に、前記感圧リング部材は、圧力応答性電気活性材料を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項10】
前記口腔ケアデバイスは、マウスピースデバイスであり、前記支持体は、口腔の内部に受け入れられるためのものである、請求項1から9のいずれか一項に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項11】
前記支持体は、少なくとも1つの歯受容チャネルを画定し、ここで、
前記センサ手段は、前記歯受容チャネルの少なくとも1つの壁に組み入れられた1つ又は複数の力又は圧力センサを含み、及び/又は
前記清掃要素は、歯との係合のために前記歯受容チャネルに延出し、少なくとも1つの前記清掃要素は、前記清掃要素に加えられる力又は圧力を検知する圧力応答性材料を含み、前記圧力応答性材料は、前記センサ手段の少なくとも一部を形成する、請求項10に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項12】
前記支持体は、ユーザの歯列弓の一部分の輪郭に沿うためのJ字状弓状体を含み、前記支持体は、前記ユーザによって口の一方の側から他方の側へ移動可能であり、前記処理構成部は、前記口の各側について少なくとも1つの歯牙動揺度測定基準を取得する、請求項10又は11に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項13】
前記支持体は、複数のセクションを含み、各前記セクションは、それぞれの前記セクションから突出する少なくとも1つの前記清掃要素にかかる力又は少なくとも1つの前記清掃要素の動きを検知するそれぞれのセンサを含み、それぞれの歯牙動揺測定値が各前記セクションについて求められる、請求項10又は11に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項14】
前記処理構成部はさらに、
前記口腔清掃セッションにわたって前記口腔における複数本の歯のそれぞれについての歯牙動揺の程度を求めることにより、前記口腔清掃セッションについて歯牙動揺データ記録を生成し、
タイムスタンプでタグ付けされた、任意選択的に、ユーザ識別情報でタグ付けされた、前記歯牙動揺データ記録を、データストアに転送する、請求項1から13のいずれか一項に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の口腔ケアデバイスと、
1人又は複数人の対象者についての予め求められた歯牙動揺度測定基準を記憶するデータストアと、
処理構成部を含む二次的デバイスとを備える、システムであって、
前記処理構成部が、
前記データストアにアクセスし、
一連の異なる時点にわたる所与の対象者についての複数の歯牙動揺データ記録であって、各歯牙動揺データ記録が1本又は複数本の歯についての歯牙動揺度測定基準を含む、複数の歯牙動揺データ記録を検索し、
時間の関数として1つ又は複数の前記歯牙動揺度測定基準を示す傾向情報を表示するように前記二次的デバイスのユーザインタフェースを制御する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、口腔ケアデバイス、特に口腔清掃デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
口腔ケアにおいて歯の動揺度は役立つ臨床マーカである。
【0003】
例えば、歯牙動揺度(TM)を知ることは、歯周炎疾患進行をモニタリングすることに関して、骨欠損に関して、並びに、歯周又は矯正治療応答及び治療効果をモニタリングするために、重要である。歯牙動揺の増加は、歯周病の一般的な症状であり、歯科医(DP)を訪れる主な理由の1つである。
【0004】
歯は歯周靱帯によって顎骨槽内に固定されている。歯周靱帯は、歯に堅固な結合支持を与えるだけでなく、咀嚼時に歯の僅かな動きも可能にする。この生理的動揺は、咀嚼時に歯が著しい力に耐えることを可能にする。
【0005】
正常な(生理的)歯牙動揺は、種々の歯間及び範囲間、例えば40μm(大臼歯の場合)~120μm(切歯の場合)まで、様々である。しかしながら、骨又は歯周靱帯の特定の病的状態が、歯牙動揺に悪影響を及ぼす可能性がある。歯牙動揺の増加は、漸進的且つ不可逆的なプロセスである。この増加は、正すのが間に合わなければ、歯の損失を引き起こす可能性もある。
【0006】
例えば、30歳以上の米国人の50%(6千5百万人)に歯周炎がある。研究では、歯周炎患者の10~20%が、ある程度の歯牙動揺を複数の歯部位において示している。歯牙動揺の増加はまた、矯正治療、不正咬合問題、及び歯ぎしりによって引き起こされる可能性がある。
【0007】
臨床決定は、歯牙動揺が治療応答を必要とするかどうかに関して、検出された、歯牙動揺の重度又は程度に基づく。
【0008】
歯牙動揺度評価についての既存の臨床方法は主観的であり、時間がかかり、誤りがちである。研究者らは、レーザビーム又はペリオテストデバイス(歯又はインプラントの安定性を判定するために急速連続で歯又はインプラントに接触する、電気プランジャを有するハンドヘルドデバイス)の使用など、他の方法を提案している。しかしながら、これらは複雑であり、専門的な歯科医師によってしか使用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現行の技術水準において、在宅でも行われ得る、簡単なやり方で歯牙動揺度測定及び診断を提供するのに利用可能なシステムはない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、特許請求の範囲によって定義される。
【0011】
本発明の一態様による例によれば、口腔ケアデバイスであって、
支持体と、
支持体の表面から突出する、口腔表面との機械的係合のための複数の清掃要素と、
清掃要素のうちの少なくとも1つに加えられる負荷力若しくは圧力を示す又は清掃要素のうちの少なくとも1つの動きを示す測定値を検知するようになっている、センサ手段と、
1つ又は複数のプロセッサを含む処理構成部であって、
口腔清掃セッション中に、少なくとも1本の歯との少なくとも1つの清掃要素の機械的係合の期間に対応する、センサ手段からの検知信号を受信するようになっており、
時間期間にわたり、信号の波形を処理して、信号波形の1つ又は複数の特性を抽出するようになっており、
少なくとも1本の歯についての歯牙動揺の程度を示す測定値を求めるようになっており、
デバイスからの出力のため、歯牙動揺の程度を示す求められた測定値を示すデータ信号を生成するようになっている、処理構成部と、
を備える、口腔ケアデバイスが提供される。
【0012】
したがって、実施形態は、在宅口腔ケアデバイスの口腔ケア機能について、口腔ケアデバイスの通常使用の間に歯牙動揺の程度又はレベルを検出するために、力、圧力又は動き検知を在宅口腔ケアデバイスに組み入れることを提案する。例えば、歯牙動揺度は、歯ブラシ又はマウスピースデバイスなどの口腔清掃デバイスの口腔清掃セッション中に取得されるセンサ測定から評価することができる。このようにして、好都合なやり方で歯牙動揺度を在宅で評価することができる。
【0013】
歯牙動揺の程度を求めることは、検知信号のスペクトル分析を行うことを有する。
【0014】
特に、口腔ケアデバイスは、少なくとも1つの清掃要素の振動運動を駆動する作動手段を備え、この振動運動が、周波数スペクトルを有する振動運動パターンを有する。歯牙動揺が、歯牙動揺度の程度に確実に関連付けられるようにして清掃要素の振動運動パターンに影響する。したがって、この因子は、少なくとも1つの組の実施形態による歯牙動揺の検出に用いることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、歯牙動揺の程度を求めることは、検知信号についての周波数スペクトルを計算することを有する。歯牙動揺の程度を求めることは、検知信号の1つ又は複数の周波数成分の振幅を検出することをさらに有する。歯牙動揺の程度を求めることは、周波数スペクトルにおける少なくとも主又は支配的なピーク(すなわち、最も高いピーク)の中心周波数の振幅を検出することを有する。追加的又は代替的に、歯牙動揺の程度を求めることは、周波数スペクトルの前述の主又は支配的なピークに関連付けられた帯域幅、又は、周波数スペクトルの主又は支配的なピークに関連付けられた品質係数を検出することをさらに有してもよい。歯牙動揺の程度を求めることは、これらの特性のうちのいずれかを基準又はベースラインと比較することを有する。歯牙動揺の程度を求めることは、予め定められた伝達関数又はルックアップテーブルを用いて、これらの特性のうちのいずれかを処理して、歯牙動揺の程度を導出することを有する。歯牙動揺の程度を求めることは、1つ又は複数の清掃セッションにわたって同じユーザについてのこれらの特性のうちのいずれかの変化を監視することを有する。
【0016】
上述したように、口腔ケアデバイスはいくつかの実施形態では、少なくとも1つの清掃要素の振動運動を駆動する作動手段を備え、この振動運動は、基準状態又は較正状態において、主又は支配的なピークを含む基準周波数スペクトルを有する振動運動パターンを呈し、このピークは、中心周波数成分を有する。歯牙動揺の程度を求めることは、基準周波数スペクトルと検知された周波数スペクトルとの間での、周波数スペクトルの主又は支配的なピークの中心周波数の振幅、周波数スペクトルの主又は支配的なピークに関連付けられた帯域幅、及び/又は、周波数スペクトルの主又は支配的なピークに関連付けられた品質係数、のうちの1つ又は複数の変化を求めることを有する。
【0017】
換言すると、振動運動は、スペクトルシグネチャを有し、歯牙動揺度測定基準を求めることは、前記スペクトシグネチャにおける変化を検出することを有する。しかしながら、検知された周波数スペクトル、又はその特性を、基準周波数スペクトルと比較することは不可欠ではない。周波数信号特性は単に、歯牙動揺の程度を導出するために測定されるとともに例えば伝達関数と組み合わせて用いられる。
【0018】
上記で言及した基準周波数スペクトルは例えば、制御された較正状態についての、例えば基準負荷についての、及び、例えば、歯科検査後のブラッシングセッションにおける、又は、標準化された方法を用いての明確な規定表面に対しての、特定の基準歯(例えば、非動揺歯)についての、予測された動作周波数スペクトルに対応し得る。
【0019】
基準周波数スペクトルは、較正データとして処理構成部のメモリに記憶され得る。
【0020】
考えられ得る種々の加えられるユーザ負荷に対応する複数の異なる基準周波数スペクトルが記憶され得る。
【0021】
センサ手段について種々の選択肢がある。
【0022】
いくつかの実施形態では、センサ手段は、少なくとも1つの清掃要素にかけられる力又は圧力を検知するためのものである。
【0023】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、1つの清掃セッション中に又は複数の清掃セッションにわたって少なくとも1つの清掃要素に加えられるベースライン又は平均負荷の力を検知することを有する較正動作を行うようになっており、歯牙動揺の程度は、ベースライン又は平均負荷の力に応じて求められる。
【0024】
例えば、歯牙動揺度測定基準は、清掃要素の振動の周波数スペクトルにおける支配的なピークの振幅又は幅の測定された変化(すなわち、減衰)に基づいており、例えば、検出された振幅変化又は減衰変化を正規化するために、この計算においてベースライン負荷力が考慮される。
【0025】
減衰は、ピークの中心周波数についての共振ピークの幅に比例する。
【0026】
いくつかの実施形態では、口腔ケアデバイスは歯ブラシである。歯ブラシは、本体に結合されたブラシヘッドを含む。本体は、デバイス用のハンドルを形成する。支持体は、ブラシヘッドのプラテンである。清掃要素は、剛毛を含む。
【0027】
検知手段は、本体に対してブラシヘッドに加えられる負荷力を検出するようになっている力又は圧力センサを含む。
【0028】
例えば、検知手段は、本体に対してヘッドに加えられる旋回力を検出するようになっている。
【0029】
検知手段は、ヘッドに組み入れられても若しくは本体に組み入れられてもよく、又は、それら両方の部品に組み入れられた構成要素を有してもよい。
【0030】
追加的又は代替的に、センサ手段は、少なくとも1つの清掃要素に加えられる負荷力を検出するように配置された、支持体によって含まれる圧力又は力センサを含んでもよい。例えば、センサ手段は、少なくとも1つの清掃要素との機械的連通のために配置される。
【0031】
例えば、少なくとも1つの組の実施形態では、センサ手段は、清掃要素の延出方向に対して垂直な少なくとも1つの方向に清掃要素に加えられる負荷圧力を検出する、少なくとも1つの清掃要素のベースの周りに延びる感圧リング部材を含む。
【0032】
感圧リング部材は、圧力応答性電気活性材料、例えば、ピエゾ抵抗材料又は電気活性ポリマーを含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、口腔ケアデバイスは、マウスピースデバイスである。支持体は、口腔の内部に受け入れられるためのものである。支持体は、ユーザの歯列弓の少なくとも一部の周りに延びる弓状形状を有する。
【0034】
マウスピースデバイスは、少なくとも1つの歯受容チャネルを含む。
【0035】
清掃要素は、歯受容チャネルに突出する。
【0036】
いくつかの実施形態では、検知手段は、歯受容チャネルの少なくとも1つの壁に組み入れられた1つ又は複数の力又は圧力センサを含む。
【0037】
追加的又は代替的に、清掃要素は、歯との係合のために歯受容チャネルに延出してもよく、少なくとも1つの清掃要素は、少なくとも1つの清掃要素に加えられる力又は圧力を検知する圧力応答性材料を含み、圧力応答性材料は、センサ手段の少なくとも一部を形成する。
【0038】
いくつかの実施形態では、マウスピースデバイスの支持体は、ユーザの歯列弓の一部分のみの輪郭に沿うための弓状体を含み、弓状体は、ユーザによって口の一方の側から他方の側へ移動可能であり、プロセッサは、口の各側について少なくとも1つの歯牙動揺度測定基準を取得するようになっている。この構成は、J字状マウスピースと呼ばれる。
【0039】
プロセッサは、左側及び右側、又は上列及び下列からの結果を比較して、歯牙動揺検出の位置特定の程度を提供する。
【0040】
一方の側から他方の側へのユーザ実施による移動は、いくつかの実施形態では支持体に組み入れられた慣性センサにより検出される。例えば、他方の側への移動は、支持体を反転させること又はひっくり返すことを伴い、この動きは検出することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、支持体は、複数のセクションを含み、各セクションが、それぞれのセクションから突出する少なくとも1つの清掃要素にかかる力又は少なくとも1つの清掃要素の動きを検知するそれぞれのセンサを含み、それぞれの歯牙動揺度測定基準が各セクションについて求められる。
【0042】
セクションは、例えば関節構造でともに連結される。
【0043】
いくつかの実施形態では、支持体の各セクションは、各隣接したセクションから防振される。追加的又は代替的に、支持体の各セクションは、振動運動に伴い個別に駆動可能である
【0044】
上記で説明した実施形態のいずれかでは、検知手段は、支持体の表面に対して垂直な方向、及び、支持体の表面と平行な1つ又は複数の方向のうちの、1つ又は複数の方向に、少なくとも1つの清掃要素に加えられる負荷力又は少なくとも1つの清掃要素の動きを検出するようになっている。
【0045】
検知手段は、3つの直交方向に少なくとも1つの清掃要素に加えられる負荷力若しくは圧力又は少なくとも1つの清掃要素の動きを検出するようになっている。
【0046】
いくつかの実施形態では、処理構成部はさらに、口腔清掃セッションにわたって口腔における複数本の歯のそれぞれについての歯牙動揺の程度を求めることにより、口腔清掃セッションについて歯牙動揺データ記録を生成するようになっている。処理構成部はさらに、タイムスタンプでタグ付けされた、任意選択的に、ユーザ識別情報でタグ付けされた、歯牙動揺データ記録を、データストアに転送するようになっている。
【0047】
データストアは、デバイスにローカルであっても又はデバイスからリモートであってもよく、例えば、物理的な記憶手段を有するクラウドベースのデータストアがリモートサーバに配置されてもよい。
【0048】
本発明のさらなる態様は、本開示において説明されるいずれもの実施形態による又は本出願のいずれもの請求項による口腔ケアデバイスを含むとともに、1つ又は複数のさらなる構成要素を含むシステムを提供する。
【0049】
システムは、1人又は複数人の対象者についての予め求められた歯牙動揺度測定基準を記憶するデータストアをさらに含む。
【0050】
システムは、データストアにアクセスするようになっているとともに、ユーザについての1つ又は複数の歯牙動揺データ記録を検索するようになっている処理構成部を含む二次的デバイスをさらに含む。二次的デバイスは、一連の異なる時点にわたる所与のユーザについての複数の歯牙動揺データ記録であって、各記録が1本又は複数本の歯についての歯牙動揺度測定基準を含む、複数の歯牙動揺データ記録を検索するようになっており、時間の関数として1つ又は複数の歯牙動揺度測定基準を示す傾向情報を表示するように二次的デバイスのユーザインタフェースを制御するようになっている。
【0051】
二次的デバイスは例えば、スマートフォンなどのモバイルコンピューティングデバイスを含む。
【0052】
本発明のこれら及び他の態様が、以下に説明する実施形態(複数可)から明らかとなり、実施形態を参照しながら解明される。
【0053】
ここで、本発明のよりよい理解のために、また、本発明がどのように実施されるかをより明確に示すために、単に例として、添付の図面の参照を行う。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】1つ又は複数の実施形態による例示的な口腔ケアデバイスを示す。
【
図2】1つ又は複数の実施形態による例示的な口腔ケアデバイスの構成要素のブロック図を示す。
【
図3】口腔ケアデバイスの清掃要素にかかる力又は清掃要素の動きを検知する検知原理を示す。
【
図4】口腔ケアデバイスの清掃要素にかかる力又は清掃要素の動きを検知する検知原理を示す。
【
図6】検知信号波形の一セグメントの例示的な周波数スペクトルを示す。
【
図7】いくつかの実施形態による例示的な口腔ケアデバイスを示す。
【
図8】いくつかの実施形態によるさらなる例示的な口腔ケアデバイスを示す。
【
図9】周囲の清掃要素房についての感度リング要素の形態の例示的なセンサ手段を示す。
【
図10】加えられたユーザ負荷と測定された検知信号応答との間の関係を示す。
【
図11】マウスピースデバイスの形態の例示的な口腔ケアデバイスを示す。
【
図12】マウスピースデバイスの形態の例示的な口腔ケアデバイスをさらに示す。
【
図13】センサ手段が1つ又は複数の歯受容チャネルの壁に組み入れられている例示的なマウスピースデバイスを示す。
【
図14】検知機能を行う電気活性清掃要素を有する例示的なマウスピースデバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明を、図面を参照しながら説明する。
【0056】
詳細な説明及び特定の例は、装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しつつ、単に例示のために意図されており、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面から、よりよく理解されることになる。図面は単に概略的にすぎず、縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。同じ又は同様の部品を示すために図面全体を通して同じ参照番号が使用されていることも理解されたい。
【0057】
本発明は、歯牙動揺のレベルを検出する組み入れた手段を有する口腔ケアデバイスを提供する。清掃セッション中にデバイスの清掃要素に加えられた力若しくは圧力又は清掃要素の動きを示す検知信号を出力するセンサ手段が含まれる。この信号の波形を処理して1つ又は複数の信号特性を検出することによって、歯牙動揺のレベル又は程度を示す測定値を導出することができる。
【0058】
例えば、特定の実施形態は、使用時に歯と接触する、口腔ヘルスケアデバイスの機能的構成要素(電動歯ブラシ又は清掃マウスピースの清掃要素など)のダイナミクスに関連する力、圧力、又は加速度信号の変化の測定を用いることを提案する。そのような信号の変化は、接触する歯の歯牙動揺の程度に応じて予期することができる。したがって、信号は、口腔ケアデバイスが清掃セッション中(例えばブラッシング中)に歯にわたって動かされるにつれて変化する。測定された信号を(例えば、アルゴリズム又は伝達関数を用いて)歯変位測定値又は歯牙動揺のレベルを示す測定値に変換するようになっている処理構成部を提供することができる。
【0059】
処理構成部はまた、例えば、歯牙動揺の進行又は開始を監視することに用いるために、複数の口腔ケアセッションにわたって測定された力/圧力/加速度信号から導出された特性信号パラメータ(振幅、減衰)の変化を監視する。
【0060】
特定の実施形態は、求められた歯牙動揺レベルに基づいて、トリアージ及び/又は診療予約の自動スケジューリングを実行する、1つ又は複数のアルゴリズムなどの機能性を含む。
【0061】
図1及び
図2は、本発明の少なくとも1つの組の実施形態による口腔ケアデバイス10を示す。デバイス10は、支持体12を備え、支持体12の少なくとも1つの表面から、口腔表面42との機械的係合のための複数の清掃要素14が突出している。口腔表面42は、歯40又は例えば歯科インプラントの表面である。デバイスは、清掃要素14又は支持体のうちの少なくとも一方に加えられる負荷力若しくは圧力を示す又はその少なくとも一方の動きを示す測定値を検知するようになっているセンサ手段30をさらに備える。
【0062】
デバイスは、処理構成部20をさらに備える。
【0063】
処理構成部は、入力/出力部(I/O)22と、1つ又は複数のプロセッサ24であって、口腔清掃セッション中に少なくとも1本の歯との少なくとも1つの清掃要素14の機械的係合の期間に対応する、センサ手段30から検知信号32を、I/O22において受信するようになっており、時間期間にわたり、信号32の波形を処理して、信号波形の1つ又は複数の特性を抽出するようになっており、少なくとも1本の歯40についての歯牙動揺の程度26を示す測定値を求めるようになっており、入力/出力部22における、デバイスからの出力のため、歯牙動揺の程度を示す求められた測定値を示すデータ信号25を生成するようになっている、1つ又は複数のプロセッサ24とを備える。
【0064】
したがって、実施形態は、例えば、検知信号の波形の特定の信号特性に反映されるように、例えば、少なくとも1本の歯との係合の期間にわたる検知信号の変化パターンに基づいて、歯牙動揺の程度又はレベルと相関した測定値を検出することを提案する。
【0065】
上述の処理構成部はまた、口腔ケアデバイスの他の特徴とは関係なく、本発明の別個の態様として提供されてもよいことに留意されたい。
【0066】
図1を参照すると、例示の実施形態における口腔ケアデバイスは、ブラシヘッド16が本体18に結合された状態の歯ブラシの形態で示されている。本体は、デバイス用のハンドルを形成する。支持体12がブラシヘッドのプラテンによって提供されている。清掃要素14が剛毛を含む。剛毛は、房になるように配置される。上記の少なくとも1つの清掃要素への言及は、この組の実施形態における少なくとも1つの剛毛房へ言及であり得る。
【0067】
剛毛が一例として述べられているが、当業者は、エラストマー清掃要素(典型的な個別の剛毛よりも太い)、又は、拡張形状を有する支持体から突出するが機械的清掃動作を提供するように口腔表面と係合するようにも設計されている清掃構造体などの、他の様々な清掃要素も可能であることが分かるであろう。
【0068】
歯ブラシが
図1に示されているが、さらなる例では、口腔ケアデバイスは、ブラッシングマウスピースデバイス、口腔洗浄デバイス、又は口腔フロッシングデバイスなどの異なる形態をとり得る。
【0069】
図2のブロック図構造は、歯ブラシだけでなく任意の特定のタイプの口腔ケアデバイスに適用可能である。
【0070】
図1をさらに参照すると、好ましくは、口腔ケアデバイスは、少なくとも1つの清掃要素14の振動運動を駆動する作動手段19を備える。
【0071】
少なくとも1つの清掃要素のこの誘起される振動運動パターンは、周波数スペクトルを呈する。デバイスは、特定の基準負荷力の存在下などの特定の基準状態又は較正状態での駆動される振動運動パターンの周波数スペクトルに対応する、また、基準レベルの動揺(例えば、ゼロ動揺)を有する特定の歯に対応する1つ又は複数の基準周波数スペクトルを、処理構成部20のメモリ(図示せず)に記録する。基準状態は、例えば、少なくとも1つの清掃要素に対して外部から加えられる負荷力がない場合における、及び/又は、ゼロではない動揺を有する歯についての、任意の所望の状態であり得る。種々の条件、例えば、種々の加えられるユーザ負荷(これは以下でさらに論じる)について、2つ以上の基準スペクトルが記憶され得る。すべての場合において、基準周波数スペクトルは、1つ又は複数の支配的なピークを有し、支配的なピークは、最も高い振幅を有するピークを意味する。支配的なピークは、中心周波数成分を有し、それに関連付けられた帯域幅及び品質係数をさらに有する。検知された振動運動パターンの周波数スペクトルの特性を基準振動運動パターンの特性と比較することによって、歯牙動揺のレベルが検出可能である。
【0072】
各支配的なピークは、加えられる振動パターンの支配的な成分の調波に対応し、すなわち、共振ピークである。本明細書における、支配的なピークへの言及は、最も高い振幅を有するピークを意味する。
【0073】
上記で言及したセンサ手段30は、種々の形態、例えば、圧力センサ、力センサ、慣性センサ(例えば、加速度計)、又はロードセルの形態をとってもよい。センサ手段は、例えば、清掃要素が突出する支持体表面に対して垂直な、1つ又は複数の方向への、或いは好ましくは、3つの直交軸への、支持体又は清掃要素における加速度、圧力、及び/又は力の変化を検知するようになっている。
【0074】
処理構成部は、検知負荷信号の変化を歯牙動揺レベル又はグレードの特定に変換するようになっている。
【0075】
図2を参照すると、任意選択的に、いくつかの実施形態では、処理構成部20はさらに、口腔清掃セッションにわたって口腔における複数本の歯40のそれぞれについての歯牙動揺の程度26を求めるようになっており、複数本の歯についての歯牙動揺測定値26を含む、口腔清掃セッションについての歯牙動揺データ記録を生成するようになっている。処理構成部はさらに、タイムスタンプでタグ付けされた、任意選択的に、ユーザ識別情報でタグ付けされた、歯牙動揺データ記録を、データストア28に転送するようになっている。各動揺測定値が一致する特定の歯の特定もまた(例えば、測位手段を用いて)得られ、この特定は、データ記録における歯牙動揺測定値に関連して記憶される。
【0076】
図2を参照すると、本発明の別の態様が、本開示において説明されるいずれもの実施形態による又は本出願のいずれもの請求項による口腔ケアデバイス10を含むとともに、1人又は複数人の対象者についての予め求められた歯牙動揺度測定基準を記憶するデータストア28をさらに含むシステム8を提供する。
【0077】
図2を再び参照すると、任意選択的に、いくつかの実施形態では、システムは、データストア28にアクセスするようになっているとともに、1つ又は複数の種々の時点にわたる所与の対象者についての複数の歯牙動揺データ記録を検索するようになっている処理構成部104を備える二次的デバイス112をさらに含んでもよい。
【0078】
複数の異なる時点にわたるデータ記録が検索され、各記録は、1本又は複数本の歯についての歯牙動揺度測定値を含む。二次的デバイス112のプロセッサ104は、検索されたデータ記録を処理することによって、時間の関数として1つ又は複数の歯牙動揺度測定値を示す傾向情報を生成する。二次的デバイス112のプロセッサ104は、傾向情報を表示するように二次的デバイスのユーザインタフェース106を制御する。
【0079】
二次的デバイスは例えば、スマートフォンなどのモバイルコンピューティングデバイスを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、処理構成部104は、検知信号波形の1つ又は複数の特性を、記憶されたベースライン又は基準検知信号についての対応する特性と比較して、歯牙動揺レベルを求めるようになっている。基準信号は例えば、特定の基準歯(例えば、歯科医師によって示され得る健康な永久歯)についての信号に対応する。
【0081】
いくつかの実施形態では、複数の清掃セッションについて平均化された検知信号が、各セッションについての検知信号をメモリに記憶することによって、次いで、記憶された信号を検索するとともに平均を計算することによって、計算される。この平均信号は、単一の清掃セッションのみについての信号の代わりに(又はその信号に加えて)歯牙動揺のレベルを求めるのに使用され得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、歯牙動揺の測定値は、所与の歯についての信号波形の1つ又は複数の特性を、同じ清掃セッション内で取得された1本又は複数本の他の歯の特性と比較することによって、所与の歯について導出され得る。
【0083】
実施形態の少なくとも1つの組では、検知信号のスペクトル分析を用いて歯牙動揺度を求めることが提案される。例えば、歯牙動揺度を求めることは、1つ又は複数の周波数点における信号振幅の変化、及び/又は、1つ又は複数の清掃セッションにわたる振動パターンの主調波成分の減衰を、検知信号の周波数領域内で評価することを含む。変化は、種々の歯間で示差測定を用いて、複数の清掃セッションにわたって、又は同じ清掃セッション内で監視される。
【0084】
図3及び
図4を参照しながら、検知原理を示す。
図3は、歯40との例示的な口腔ケアデバイス10の清掃要素14の機械的係合を示す。ユーザは、自身の歯を清掃する際に、特定のユーザ負荷力を清掃要素にかけ、このユーザ負荷力は、歯の表面に対して垂直な成分を含む。
図4に示すように、清掃要素が、高レベルの動揺を有する歯(「ぐらついた歯」)に係合すると、歯は動きを呈する。強調された歯40aの動きは主として、y軸の周りの動きであるが、x軸の周りのいくらかより小さな動き度も呈する。
【0085】
図3及び
図4は、歯牙動揺を検出する実現可能性を試験及び明示するために実行されたコンピュータシミュレーションの基礎となる、幾何学形状及び物理的原理を概略的に表す。モデルはin-silico歯-顎モデルを用いた。
【0086】
図4(a)は、関心の歯40aが低レベルの歯牙動揺(最大の歯変位が、正常な生理的歯牙移動を表す0.05mmである)を示しているシミュレーションを表す。
図4(b)は、関心の歯が高レベルの歯牙動揺(最大の歯変位が、実質的に失われることになる歯についての歯牙動揺に特有である1.5mmの大きなウォブリング振幅である)を示すぐらつく歯であるシミュレーションを表す。
【0087】
in-silicoモデルは、
図3に概略的に示すように、柔らかい歯肉が基準歯40aの周りにある顎からなり、基準歯は、近心-遠位(Y)軸の周りに自由に回転し、ねじりばねにより歯根に接続されている。
【0088】
基準歯の動揺のレベルは、モデルに取り付けられたねじりばねの剛性係数を調整することによって、モデルにおいて調節される。歯表面に対する清掃要素の90°角度(90°のブラッシング角度)及び1.88Nの一定のユーザ負荷(Philips歯ブラシのユーザ間での平均負荷)で、Philips A3ブラシヘッドに基づいて、ブラッシング条件をシミュレートした。電動歯ブラシの作動/駆動機構によって誘起される、より小さな振幅振動運動パターンと重ね合わされる、大振幅の近心-遠位ストローク(ユーザによって加えられる)として、清掃要素の運動パターンをモデル化した。
【0089】
ブラシヘッドプラテン12にかかる反力を時間の関数として表すシミュレートされた検知信号と、シミュレートされた歯変位とを、
図4(a)及び
図4(b)の2つの動揺条件におけるモデルから計算した。
【0090】
図5は、時間領域における、得られたシミュレートされた検知信号の波形60の描写を示す。
【0091】
受信された検知信号波形60は典型的に、複数本の歯のそれぞれとの少なくとも1つの清掃要素の係合のそれぞれの期間に対応する信号セグメントを含む。処理構成部20が、複数本の歯のそれぞれについてのそれぞれの歯牙動揺度測定基準を求めるようになっている。歯のそれぞれの特定がいくつかの例においてさらに得られる。
【0092】
図5のシミュレートされた検知信号結果において、関心のモデル化された歯40aに対応する信号セグメント62が示されている。
【0093】
少なくとも1つの組の実施形態によれば、歯牙動揺の程度を求めることは、検知信号のスペクトル分析を行うことを有する。
【0094】
【0095】
歯牙動揺の程度を示す尺度を計算するために、少なくとも1つの組の実施形態による処理構成部は、検知信号について周波数スペクトル70、72を計算するようになっている。
【0096】
図6のプロットはそれぞれ、A、B及びCを付された3つの異なる歯牙動揺レベルのそれぞれについての周波数スペクトルを示す。レベルAは、0.05mmの動揺振幅に対応する。レベルBは、0.44mmの動揺振幅に対応する。レベルCは、1.5mmの動揺振幅に対応する。
【0097】
図6(a)は、3つの異なる歯牙動揺レベルA、B、Cのそれぞれにおける検知信号の法線反力成分(
図3~
図4におけるx方向)について計算された周波数スペクトル70を示す。
【0098】
図6(b)は、3つの異なる歯牙動揺レベルA、B、Cのそれぞれにおける検知信号の近心-遠位反力成分(
図3~
図4におけるy方向)について計算された周波数スペクトル72を示す。
【0099】
上述したように、この例では、口腔ケアデバイスは、少なくとも1つの清掃要素14の振動運動を駆動する作動手段19を備える口腔ケアデバイスであり、この振動運動はベースライン/基準周波数スペクトルを呈し、この周波数スペクトルはそのスペクトル内に主ピーク又は支配的なピークを有する。この主ピーク又は支配的なピークは、加えられた振動パターンの主調波成分に対応する。
【0100】
反力についての周波数領域プロット72、74を観察すると、作動手段の基準周波数スペクトルの主振動周波数(およそ250Hz)の調波の周りの周波数成分についての反力振幅レベルに大きな増加がある。これらは、周波数スペクトルにおける支配的なピークを示す。これらの支配的なピークの周りの周波数成分間における減衰レベルにも増加がある。特に、(およそ250Hzで)作動手段によって加えられる振動駆動力の主調波成分に対応する周波数成分の振幅は、シミュレートされた歯牙動揺の最も低いレベルから最も高いレベルへの、(法線方向において)約4dB及び(近心-遠位方向において)9.6dBの振幅増加を示す。
【0101】
調波周波数成分の周りの減衰の変化は、帯域幅の変化によって定性的に観察可能であり、例えば、品質係数(Qファクタ)、すなわち、共振中心周波数対その帯域幅の比として定義される無次元パラメータを計算することによって、定性的に求められ得る。例えば、-3dB帯域幅について、主調波成分についてのQファクタは、法線力について、低レベルの動揺(ケースA)の場合の30から、高い動揺のケース(ケースC)の場合の25まで及び、同様に近心-遠位力について、31~25.7に減少する。
【0102】
したがって、この手法に続き、少なくとも1つの組の実施形態によれば、歯牙動揺の程度を求めることは、検知信号の1つ又は複数の周波数成分の振幅を検出することを有する。
【0103】
いくつかの例では、歯牙動揺の程度を求めることは、作動手段によって加えられた振動の周波数スペクトルと、検知された周波数スペクトルとの間での、加えられた振動周波数スペクトルにおける支配的なピークの中心周波数の振幅の変化を求めることによって行われる。
【0104】
追加的又は代替的に、いくつかの例では、歯牙動揺の程度を求めることは、作動手段によって加えられた振動の振動周波数スペクトルと、検知された周波数スペクトルとの間での、周波数スペクトルの支配的なピークに関連付けられた帯域幅の、又は、周波数スペクトルの支配的なピークに関連付けられた品質係数の変化を求めることによって行われてもよい。
【0105】
清掃要素における力、圧力、又は変位を検知するのに用いられるセンサ手段30について種々の選択肢がある。
【0106】
図7は、少なくとも1つの組の実施形態による一例を概略的に示す。
【0107】
図7を参照すると、この例では、センサ手段30は、口腔清掃デバイスの本体部分18(デバイス用のハンドルを形成する)に組み入れられて提供される力、圧力又は慣性センサ(例えば、IMU)52の形態をとる。ハンドルは、ブラシヘッド16に弱結合され、ブラシヘッド運動ダイナミクス/パターンにおける変化が、ブラシヘッド16とハンドルとの間の相対的な動き/力を測定することによって監視され得る。さらなる例では、ブラシヘッドと本体18との間の強結合及び低減衰の場合、ブラシヘッド16の振動パターンを本体におけるセンサ52に結合するために機械的結合手段、例えば、シャフト又はロッドなどの機械的要素が提供される。
【0108】
どちらの場合にも、センサ52は、歯牙動揺によって引き起こされる動的信号変化を検出することができる。シミュレーションからの結果は、ブラシヘッドプラテンダイナミクス(反力信号)が歯牙動揺の小変化に感度が高いことを示す。
【0109】
信号取得及び処理機能を提供する処理構成部20は、ハンドル18内に配置され、センサ52と処理構成部との間に電気的接続が提供される。
【0110】
したがって、要約すると、この実施形態では、検知手段30は、本体18に対してブラシヘッド16に加えられた負荷力を検出するようになっている力又は圧力センサ52を含む。
【0111】
図8は、少なくとも1つの組の実施形態によるさらなる例を概略的に示す。
【0112】
図8を参照すると、この例では、センサ手段30は、支持体12に組み入れられた力、圧力又は動きセンサの形態で提供されている。この例では、口腔ケアデバイスは、歯ブラシの形態であり、支持体は、ブラシヘッド16のプラテンによって形成されている。センサは、例えば、支持体12の動きの検出(例えば慣性検知)、又は、支持体表面にかけられた力/圧力若しくは清掃要素自体にかけられた力/圧力の検出により、動き及び/又は清掃要素14に加えられる力を検出する。力/圧力の検出の場合、検知手段は、支持体によって含まれるとともに、少なくとも1つの清掃要素に加えられる負荷力を検出するために、少なくとも1つの清掃要素との機械的連通のために配置された圧力又は力センサ54を含む。
【0113】
ブラシヘッドプラテン又は清掃要素のダイナミクス(すなわち、単一の(法線)方向又は複数の方向における加速度、力)の変化が、種々の歯牙動揺レベルに関連付けられる。
【0114】
このようなやり方でのブラッシングダイナミクスの変化の評価のための適切な技術は、単一の又は好ましくは複数の方向において支持体12(例えば、ブラシヘッドプラテン)の動的な動きを測定することが可能な、慣性センサ(例えば、多軸加速度計)、力センサ、圧力センサ(例えば、光学圧力検知を用いる)又はIMUを含み得る。
【0115】
使用されるセンサ手段30は、
図8に示すように、支持体に組み入れられる。口腔ケアデバイスが歯ブラシである場合、センサ手段は、ブラシヘッドのプラテンに組み入れられる。そうではなく口腔ケアデバイスがマウスピースデバイスである場合、以下でさらに論じるように、マウスピースデバイスの1つ又は複数の壁に組み入れられる。センサ手段と処理構成部との間に通信チャネルが設けられる。
【0116】
図9を参照すると、1つ又は複数の代替的な実施形態では、検知手段30は、少なくとも1つの方向に清掃要素に加えられる負荷力又は圧力を検出する、少なくとも1つの清掃要素14のベースの周りに延びて配置された感圧又は力感応リング部材80を含む。少なくとも1つの方向は、清掃要素の延出方向に対して垂直な方向である。
【0117】
例として、リング部材80は、電気活性ポリマーなどの、圧電材料(例えば感圧シリコーン)のような電気活性材料から形成される。さらなる例として、各リング部材に配置された、例えば、リング部材に蒸着及び印刷された検知要素が設けられる。例えば、これら検知要素は、歪みゲージを含む。
【0118】
図9(b)を参照すると、いくつかの例では、リング部材は、セグメント検知信号をそれぞれが独立して生成する複数の周方向セグメント82a、82b、82c、82dを提供するように周方向にセグメント化される。このことは、リング部材が方向検知情報を提供することを可能にし、この方向検知情報に基づいて、セグメントが圧力の印加によってシミュレートされる。したがって、感圧リング部材は、力又はモーメントセンサ、すなわち3Dダイナモメータとして効果的に働く。
【0119】
リングは、
図9(b)の特定の例では4つのセグメントを有して示されているが、これは単に明らかに例示的であり、リング部材80は、例えば、
図9(a)に示すようなセグメントに対し、任意の所望の数のセグメントに分割されても又は全くセグメント化されなくてもよい。
【0120】
図9に示すように、リング部材80は、支持体12の表面に配置されて提供される。リング部材は、少なくとも1つの清掃要素14のベースを囲むように配置されている。いくつかの例では、清掃要素は剛毛である。いくつかの例では、清掃要素は、房になるように配置され、その場合、リングがそれぞれ清掃要素の房のベースの周りに延びるように配置される。本開示における、「少なくとも1つの清掃要素」への言及は、清掃要素の少なくとも1つの房への言及である。さらなる例では、清掃要素は、シリコン清掃要素(典型的な剛毛よりも太い)などのエラストマー清掃要素を含み、リングは、そのようなエラストマー清掃要素を囲む。
【0121】
提案される実施形態は、清掃セッションにおいて口腔ケアデバイスの使用時に力、圧力又は動きを検知することを伴う。そのような文脈において、ユーザは、自身の歯を清掃する際に清掃要素14及び支持体12に負荷をかける。測定の特異性を高めるために、歯牙動揺度を求めることに対するユーザ負荷の影響の表示を提供する、例えば、所与のユーザ圧力レベルについて評価され得る動揺範囲を示す較正データが用いられ得る。
【0122】
例えば、いくつかの実施形態では、処理構成部20が、清掃セッション時に少なくとも1つの清掃要素に加えられるベースライン又は平均負荷の力を検知することを有する較正動作を行うようになっていてもよく、歯牙動揺の程度が、ベースライン又は平均負荷の力に応じて求められる。
【0123】
例えば、導出された、歯牙動揺の程度は、清掃要素の振動の周波数スペクトルにおける支配的なピークの振幅又は幅の測定された変化(すなわち、減衰)に基づいており、例えば、検出された振幅又は減衰変化を正規化するために、この計算においてベースライン負荷力が考慮される。
【0124】
減衰は、ピークの中心周波数についての支配的な(すなわち、共振)ピークの幅に比例する。
【0125】
例えば、
図10を参照し、
図10は、加えられたユーザ負荷と、法線力成分(
図10(a))及び近心-遠位力成分(
図10(b))についての力検知信号32の周波数スペクトルの単一の周波数成分における対応する測定された法線反力との間の例示的な関係を示す。単一の周波数成分は、加えられた振動運動の支配的な周波数成分(すなわち、主調波成分)に対応する周波数成分である。
【0126】
図10は、測定された反力(法線及び近心-遠位)の主調波成分の振幅と、ユーザ負荷との間の線形関係(R
2=0.965)を(歯牙動揺の一定レベルについて)取得することができることを示す。次いで、これを用いて動揺レベル決定を較正することができる。
【0127】
これは、種々のやり方でなされ得る。例えば、専用の較正手順が実施され得る。ここでは、ユーザは、清掃要素を単一の歯にあてるとともに、清掃要素が加える負荷を変えるように指示される。較正手順について結果として得られる測定信号は、単一レベルの動揺を有する単一の歯に対応する。ユーザによって加えられる負荷の変化は、例えば、力又は圧力検知信号のベースラインを抽出することによって、検出することができ、加えられたユーザ負荷は、ベースラインの支配的な成分であると予想することができ、したがって、ベースラインの相対変化はユーザ負荷の変化に対応する。同時に、較正動作期間にわたる検知信号から、この期間にわたる時間の関数として、振動の支配的な調波成分の振幅(例えば、
図10の例における250Hz)を監視することができる。次いで、抽出されたユーザ負荷信号及び抽出された振幅信号を、互いに一時的に記録させることにより、相対的な加えられるユーザ負荷の関数として振幅のプロットを導出することができ、このプロットから、抽出されたユーザ負荷信号と抽出された振幅信号との間の線形相関関係(すなわち、線形マッピング)が導出される。
【0128】
次いで、この相関関係は、清掃セッション中にユーザ負荷を変えることに従って、或いは、1つ又は複数の清掃セッションにわたって取得されたデータから導出される平均ユーザ負荷に従って検知信号を較正するために、動作時に適用することができる。
【0129】
上述した実施形態は、動揺歯の検出のための、電動歯ブラシの形態の口腔ケアデバイスを参照しながら説明したが、部分的又は完全なマウスピースのどちらかの形態の口腔ケアデバイスについて同様の手法を用いることができる。
【0130】
特に、
図11を参照すると、少なくとも1つの組の実施形態によれば、口腔ケアデバイスは、マウスピースデバイス90の形態をとり、支持体は、口腔の内部に受け入れられるための弓状体92である。
【0131】
図11(a)を参照すると、マウスピース90は、ユーザの歯列弓のすべて又は大部分の輪郭に沿うとともにその輪郭に沿って延在する弓状支持体12、92を有する完全なマウスピースとすることができる。これは、「C字状」マウスピースと呼ばれる。代替的に、
図11(b)を参照すると、マウスピースは、ユーザの歯列弓の一部分のみの輪郭に沿う弓状支持体12、92を有する部分的なマウスピースであってもよい。後者の部分的なマウスピースの設計は「J字状」マウスピースと呼ばれ得、弓状支持体は、ユーザによって口の一方の側から口のもう一方の側へ移動可能であり、プロセッサは、口の各側について少なくとも1つの歯牙動揺度測定基準を取得するようになっている。
【0132】
各場合において、マウスピースは任意選択的に、ハンドル部分98が弓状支持体12、92の部分に取り付けられていてもよい。このハンドル部分は、ユーザがマウスピースを挿抜し、任意選択的にマウスピースを口の中であちこち移動させ、口の中でのマウスピースの配置を調整するのを助ける。ハンドル部分は、いくつかの例では処理構成部20を収容する。
【0133】
図12を参照すると、一般に、マウスピースデバイス90の支持体92は、少なくとも1つの歯受容チャネル94を画定しており、チャネルは、チャネルの両側におけるそれぞれの壁92によって囲まれている。チャネルに面した壁表面からチャネル94に突出する清掃要素が設けられる。代替的に、壁自体が清掃要素を形成してもよく、例えば振動動作による清掃機能を提供する。
【0134】
図12に示す特定の例では、歯の上列及び下列をそれぞれ受容する、上側チャネル94a及び下側チャネル94bである、2つの歯受容チャネル94a、94bがある。上側チャネル94aは、第1の壁92a及び第2の壁92bによって囲まれ、下側チャネル94bは、第3の壁92c及び第4の壁92dによって囲まれている。壁92はそれぞれ、上側チャネル94bと下側チャネル94bとを分ける役目を果たす中央プラテン96から延びている。
【0135】
代替的な実施形態では、マウスピースデバイス90は、歯受容チャネル94を1つだけ含む。これらの場合において、マウスピースは多くの場合、断面がU字状と呼ばれる。マウスピースデバイス90が上側チャネル94a及び下側チャネル94bを含む場合、マウスピースデバイスは多くの場合、断面がH字状と呼ばれる
【0136】
図13を参照すると、いくつかの実施形態では、検知手段30が、マウスピース90の支持体12の歯受容チャネル(複数可)94の少なくとも1つの壁92に組み入れられた1つ又は複数の力、圧力又は慣性センサを含む。代替的に、壁がそれ自体、例えば電気活性ポリマー材料である、電気活性材料などの、感圧又は力感応材料から形成されてもよい。これにより、壁92はそれ自体、検知手段として働く。
【0137】
図13は、各場合において1つ又は複数の歯受容チャネル94のそれぞれの1つ又は複数の壁に組み入れられた1つ又は複数の力、圧力又は慣性センサ30を有する、それぞれのH字状マウスピース90及びU字状マウスピース90の例を示す。
【0138】
壁92に組み入れられることの代わりに又はそれに加えて、1つ又は複数の圧力、力又は慣性センサは、これらの構成要素のいずれもが清掃要素と直接/間接的に機械的に結合されるため、プラテン96又はハンドル98に組み入れられ得る。センサ手段は、口に挿入されるマウスピース若しくは外部ハンドルのどちらかの部分における、プラテン96に対して垂直な方向における、又は、好ましくは、3つの直交軸における、加速度/圧力/力の変化を検知する。
【0139】
歯牙動揺の検出は、上記の電動歯ブラシについて説明したやり方と同様のやり方で行われる。動揺歯の小さな振幅変位は、マウスピース壁92、プラテン96又はハンドル98のダイナミクスの変化によって検出することができる。
【0140】
検知信号が対応する所与の歯の位置特定を可能にすることが有利である。
【0141】
単一の圧力又は慣性センサを有する完全な剛性マウスピースを含む実施形態について、動揺歯の位置を正確に位置特定することは可能ではないことがある。しかしながら、複数の清掃セッションにわたる長期的測定を用いて、歯が(より)動揺したという表示を与えることができ、その際、例えば歯科従事者とコンタクトをとるようにユーザに勧める表示をユーザに与えることができる。
【0142】
J字状マウスピースの場合において、歯のいくつかの位置特定が可能である。例えば、J字状マウスピースについて、弓状支持体12は、ユーザによって口の一方の側から口のもう一方の側へ移動可能であり、プロセッサは、口の各側について少なくとも1つの歯牙動揺度測定基準を取得するようになっている。この場合もまた、この設計において、センサ手段は、マウスピース90の支持体12の1つ又は複数の壁92に組み入れられ得、1つ又は複数の壁は、感圧又は力感応材料から形成されることにより、検知手段の機能を行う。
【0143】
例えば、口の左側及び右側についてセンサ信号を比較することによって、取得された検知信号に関する位置特定情報を提供することが可能である(ユーザが先に口の一方の側をブラッシングし、その後、マウスピースを反転させ、次いで、他方の側を扱う場合)。ユーザがマウスピースを歯列弓の周りでゆっくりと動かす場合、処理構成部は、信号を動的に監視するようになっており、(より動揺のある)動揺歯がある場合、ユーザ警告を生成するようになっており、および/又は、マウスピースが関連の歯から離れるにつれ、(より動揺のある)動揺歯信号がもはや検知されないようになっている。
【0144】
図14を参照すると、いくつかの実施形態では、清掃要素102が、歯との係合のために歯受容チャネルに延出して設けられ、少なくとも1つの清掃要素102は、清掃要素に加えられる力又は圧力を検知する圧力応答性材料を含み、圧力応答性材料は、検知手段30の少なくとも一部を形成する。
【0145】
これに関して、上述した実施形態の変形形態を提供する。特徴的な動的過渡力信号及び力シグネチャによって典型的に表される、歯のぐらつきは、動的力センサとして働く組み入れられた電気活性清掃要素102(例えば、導電性清掃要素)を含むマウスピースを用いて測定することができる。
【0146】
電気活性清掃要素102は、歯受容チャネル94の片方又は両方の壁92からチャネルに延出する。電気活性清掃要素は、歯によって要素に加えられる圧力又は力と相関した検知信号を出力することによって、力又は圧力センサとして働く。例えば、要素102は、電気活性ポリマー材料又は圧電材料などの電気活性材料から形成されるか、又は、導電性材料から形成されてもよく、歯からの加えられた圧力による、要素の変形が、動作可能に接続された処理構成部20によって検出可能であるやり方で、抵抗又は容量などの、要素における電気的特性を変える。
【0147】
いくつかの実施形態では、マウスピースは、一連の個別に駆動されるプラテン(例えば、可撓性セクションによって接続される)から作製することができる。そのような例では、多数の力、圧力又は慣性センサを(例えば各プラテンごとにセンサを1つずつ)組み入れて、動揺歯についての信号がどのセクションに存在するかを示すことによって位置特定を助け得る。この場合もまた、口の左側及び右側からの信号を比較することが、動揺歯の検出を向上させるのにさらに役立つ。
【0148】
換言すると、これらの特定の例では、支持体92は、複数のセクションを含み、各セクションが、それぞれのセクションから突出する少なくとも1つの清掃要素にかかる力又は少なくとも1つの清掃要素の動きを検知するそれぞれのセンサを含み、それぞれの歯牙動揺測定値が各セクションについて求められる。
【0149】
これらの特定の例では、支持体の各セクションは、各隣接したセクションから防振され、及び/又は、支持体の各セクションは、振動運動に伴い個別に駆動可能である。
【0150】
本明細書において提案される実施形態は、消費者用の口腔清掃デバイスを用いてブラッシングしながら在宅での歯牙動揺度評価を可能にする。提案される実施形態は、経時的な歯牙動揺レベル又は程度の変化を監視することに基づいた、歯周病、歯ぎしり、不正咬合などの、口腔ケア疾患及び症状のトリアージのための、並びに、矯正治療のモニタリングのための、方法又はアルゴリズムを可能にする。
【0151】
本発明の別の態様は、コンピュータ実施方法であって、
口腔清掃セッション中に、少なくとも1本の歯40との少なくとも1つの清掃要素14又は口腔ケアデバイスの機械的係合の期間に対応する、センサ手段30からの検知信号を受信するステップであって、検知信号は、清掃要素14のうちの少なくとも1つに加えられる負荷力を示す又は清掃要素14のうちの少なくとも1つの動きを示す測定値を提供する、受信するステップと、
時間期間にわたり、信号32の波形60を処理して、信号波形の1つ又は複数の特性を抽出するステップと、
少なくとも1本の歯40についての歯牙動揺の程度26を示す測定値を求めるステップと、
求めた歯牙動揺の程度を示す尺度を示すデータ信号25を生成するステップと、
を有する、コンピュータ実施方法を提供する。
【0152】
信号が受信される口腔ケアデバイスは、支持体12と、支持体の表面から突出する、口腔表面42との機械的係合のための複数の清掃要素14とを備える。
【0153】
本発明の別の態様は、プロセッサ上で実行されると上記で概説した方法によるコンピュータ実施方法をプロセッサに実行させるように構成されたコード手段を含むコンピュータプログラム製品である。
【0154】
本発明の装置態様の特徴は、方法態様又はコンピュータプログラム製品態様と、それらが同じ発明的概念に関するため、組み合わせることができる。
【0155】
上述した本発明の実施形態は、処理構成部を用いる。処理構成部は一般に、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサを含む。処理構成部は、単一の収容デバイス、構造又はユニット内に配置されてもよく、又は、複数の異なるデバイス、構造又はユニット間に分散されてもよい。したがって、特定のステップ又はタスクを行うようになっている又はそのように構成されている処理構成部への言及は、ステップ又はタスクが複数の処理構成要素のうちの任意の1つ又は複数によって、単独で又は組み合わせてのどちらかで行われることに対応する。当業者であればそのような分散型処理構成部をどのように実施することができるかを理解するであろう。処理構成部は、通信モジュール、又は、さらなる構成要素に対してデータを受信するとともにデータを出力する入力/出力部を含む。
【0156】
処理構成部の1つ又は複数のプロセッサは、必要とされる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、数多くのやり方で実施することができる。プロセッサは典型的に、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を用いて、必要とされる機能を実行するようにプログラムされる1つ又は複数のマイクロプロセッサを用いる。プロセッサは、ある機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するための1つ又は複数のプログラムされるマイクロプロセッサ及び関連する回路との組み合わせとして実施されてもよい。
【0157】
本開示の様々な実施形態において用いられる回路の例として、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
様々な実施において、プロセッサは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM(登録商標)などの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリのような1つ又は複数の記憶媒体に関連付けられる。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、必要とされる機能を実行する、1つ又は複数のプログラムで符号化される。様々な記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内に取り付けられてもよく、又は、記憶媒体に記憶された1つ又は複数のプログラムをプロセッサにロードすることができるように搬送可能であってもよい。
【0159】
開示される実施形態に対する変形形態は、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求される発明を実施する際に当業者によって理解及び実施され得る。請求項において、「備える、有する」という語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形の要素は、複数であることを排除するものではない。
【0160】
請求項に記載されるいくつかの事項の機能を単一のプロセッサ又は他のユニットが実行してもよい。
【0161】
特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0162】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともに又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体に記憶/配布され得るが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介するなど、他の形態で配布されてもよい。
【0163】
「するようになっている」という用語が特許請求の範囲又は明細書において使用される場合、「するようになっている」という用語は、「するように構成されている」という用語に相当することを意図されていることが留意される。
【0164】
請求項におけるいずれの参照符号も範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【国際調査報告】