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特表2024-542494包装用途に適するポリプロピレン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】包装用途に適するポリプロピレン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/14 20060101AFI20241108BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20241108BHJP
   C08F 210/06 20060101ALI20241108BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08L23/14
C08L23/08
C08F210/06
C08F4/6592
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529838
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2022083613
(87)【国際公開番号】W WO2023099448
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21211753.5
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジンボ
(72)【発明者】
【氏名】ガーライトナー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ベルンライトナー クラウス
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ カールハインツ
(72)【発明者】
【氏名】クニーゼル クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】アッバシ マーディ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J002BB02X
4J002BB03X
4J002BB11W
4J002BB12W
4J002BB153
4J002GG01
4J002GG02
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA09
4J100DA42
4J100DA52
4J100JA58
4J100JA59
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC28
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA00B
4J128BA01A
4J128BB00B
4J128BB01A
4J128BC25A
4J128CA28A
4J128DA02
4J128DA08
4J128EA02
4J128EB04
4J128EC01
4J128ED01
4J128ED02
4J128ED09
4J128EF01
4J128EF03
4J128EF04
4J128EF05
4J128EF06
4J128FA04
4J128GA04
4J128GA21
(57)【要約】
50~95重量%、好ましくは55~90重量%、より好ましくは60~88重量%の混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンドである成分(A)と、5~50重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは12~40重量%の異相プロピレンコポリマーである成分(B)とをブレンドして得られる組成物(全てのパーセンテージは全組成物に対するものである)と、前記組成物の製造プロセスと、前記組成物を含む物品と、物品の製造における前記組成物の使用と、メルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)及び曲げ弾性率を増加させ、前記組成物のVOC及びFOG含有量を減少させるための前記組成物における成分(B)の使用とを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)と成分(B)をブレンドして得られる組成物であって、
前記成分(A)は、50~95重量%、好ましくは55~90重量%、より好ましくは60~88重量%の混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンドであり、
前記成分(B)は、5~50重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは12~40重量%の異相プロピレンコポリマーであり、ここで、全てのパーセンテージは全組成物に対するものであり、
前記混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)は、
85.0~96.0重量%の範囲、好ましくは86.5~95.5重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された結晶性画分(CF)含有量と、
4.0~15.0重量%の範囲、好ましくは4.5~13.5重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶性画分(SF)含有量と
を有し、
前記結晶性画分(CF)は、11.0~55.0重量%の範囲、好ましくは20.0~49.5重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))を有し、
前記可溶性画分(SF)は、0.9~2.1dl/gの範囲、好ましくは1.0~2.0dl/gの範囲の固有粘度(iV(SF))を有し、
前記異相プロピレンコポリマー(B)は、マトリクス相及びその中に分散したエラストマー相を含み、
105~320g/10分、好ましくは107~300g/10分、より好ましくは110~280g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)と、
10.0~35.0重量%の範囲、好ましくは11.0~32.5重量%の範囲、より好ましくは12.0~30.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶性画分(SF)含有量と、
少なくとも2.0dl/g、好ましくは2.3~4.5dl/gの範囲、より好ましくは2.5~4.3dl/gの範囲の、DIN ISO1628/1に従って135℃でデカリン中で測定された前記可溶性画分の固有粘度(iV(SF))と
を有し、
前記組成物は、少なくとも9.0g/10分、好ましくは9.5~100g/10分、より好ましくは10.0~75g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)を有する、組成物。
【請求項2】
EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO178に従って決定された、800~1300MPaの範囲、好ましくは850~1200MPaの範囲、より好ましくは865~1050MPaの範囲の曲げ弾性率(FM)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO179/eAに従って決定された、5.0~25.0kJ/mの範囲、好ましくは5.5~20.0kJ/mの範囲の23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
メルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)に関して以下の不等式を満たす、23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
CNIS、23℃[kJ/m]>7.8[kJ/m]-0.17[kJ/m/g/10分]・MFR[g/10分]
(式中、
CNIS、23℃は、EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO179/eAに従って決定された、前記組成物の23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度であり、
MFRは、前記組成物のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)である。)
【請求項5】
EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO179/eAに従って決定された、1.7~5.0kJ/mの範囲、好ましくは1.9~4.0kJ/mの範囲の-20℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
VDA 278に従って決定された、100μg/g以下、好ましくは5~95μg/gの範囲、より好ましくは10~90μg/gの範囲の揮発性有機化合物(VOC)含有量、及び/又は
VDA 278に従って決定された、1100μg/g以下、好ましくは50~1050μg/gの範囲、より好ましくは80~1000μg/gの範囲のFOG含有量、及び/又は
厚さ2mmの圧縮成形プラークに対してDIN75201、方法Bに従って決定された、5.0mg以下、好ましくは0.5~4.5mgの範囲のフォギング量
という特性の1つ以上、好ましくは全てを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
最大5重量%、好ましくは最大2重量%、より好ましくは0重量%の量の追加のポリマー成分を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)は、
1.0~2.6未満dl/gの範囲、より好ましくは1.2~2.5dl/gの範囲の、DIN ISO1628/1に従って135℃でデカリン中で測定された結晶性画分の固有粘度(iV(CF))、
20.0~55.0重量%の範囲、好ましくは22.0~50.0重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定された可溶性画分のエチレン含有量(C2(SF))、
5.0~50g/10分、好ましくは5.2~45g/10分、より好ましくは5.4~40g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)、
5.0~50.0重量%、より好ましくは10.0~48.5重量%、更に好ましくは25.0~47.0重量%の量のエチレンに由来する単位、
50.0~95.0重量%、より好ましくは51.5~90.0重量%、更に好ましくは53.0~75.0重量%の量のプロピレンに由来する単位、
固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を使用して決定された、0.1~50ppmのリモネン含有量、及び/又は
800~1400MPa、好ましくは850~1200MPaの引張弾性率、及び/又は
4.0~8.5kJ/m、好ましくは5.0~8.0kJ/mの23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度(CNIS、23℃)、及び/又は
1.0~4.5kJ/m、好ましくは1.5~4.0kJ/mの-20℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度(CNIS、-20℃)
という特性の1つ以上、好ましくは全てを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記異相プロピレンコポリマー(B)は、
前記異相プロピレンコポリマー(B)の総重量に対して、65.0~90.0重量%の範囲、好ましくは67.5~89.0重量%の範囲、より好ましくは70.0~88.0重量%の範囲の量の、CRYSTEX QC分析に従って決定された結晶性画分(CF)、
1.2dl/g以下、好ましくは0.4~1.1dl/gの範囲の結晶性画分の固有粘度(iV(CF))、
定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定された、結晶性画分(CF)の総重量に対して、1.0重量%以下、好ましくは0~0.9重量%の範囲の結晶性画分のエチレン含有量(C2(CF))、
定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定された、可溶性画分(SF)の総重量に対して、14.0~29.0重量%、好ましくは17.0~26.0重量%の範囲、より好ましくは19.0~24.0重量%の範囲の可溶性画分のエチレン含有量(C2(SF))、及び/又は
EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO178に従って決定された、800~1500MPaの範囲、好ましくは850~1450MPaの範囲の曲げ弾性率、
定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定された、前記異相プロピレンコポリマー(B)の総重量に対して、2.0~5.5重量%の範囲、好ましくは2.5~5.0重量%の範囲の総エチレン含有量、
ISO3146(第3部、方法C2)に従ってDSCによって決定された、150~162℃の範囲、好ましくは152~160℃の範囲の融解温度、
ISO3146(第3部、方法C2)に従ってDSCによって決定された、110~130℃の範囲、好ましくは115~125℃の範囲の結晶化温度、
EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO179/eAに従って決定された、2.5~15.0kJ/mの範囲、好ましくは3.0~12.0kJ/mの範囲の23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度、
VDA 278に従って決定された、50μg/g以下、好ましくは40μg/g以下、より好ましくは35μg/g以下の揮発性有機化合物(VOC)含有量、及び/又は
VDA 278に従って決定された、300μg/g以下、好ましくは250μg/g以下、より好ましくは225μg/g以下のFOG含有量
という特性の1つ以上、好ましくは全てを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
第1重合反応器内でシングルサイト触媒系の存在下でプロピレンを重合させて、第1プロピレンポリマー画分を製造するステップa)と、
前記シングルサイト触媒系及び前記第1プロピレンポリマー画分を含む重合混合物を前記第1重合反応器から第2重合反応器に移送するステップb)と、
前記第2重合反応器内で前記シングルサイト触媒系の存在下でプロピレンを重合させて、第2プロピレンポリマー画分を製造するステップc)と、
前記シングルサイト触媒系、前記第1プロピレンポリマー画分及び前記第2プロピレンポリマー画分を含む重合混合物を前記第2重合反応器から第3重合反応器に移送するステップd)と、
前記第3重合反応器内でシングルサイト触媒系の存在下でプロピレン及びエチレンを重合させて、第3プロピレン-エチレンコポリマー画分を製造するステップe)と、
前記シングルサイト触媒系、前記第1プロピレンポリマー画分、前記第2プロピレンポリマー画分及び前記第3プロピレン-エチレンコポリマー画分を含む重合混合物を前記第3重合反応器から取り出すステップf)と、
前記第1プロピレンポリマー画分、前記第2プロピレンポリマー画分及び前記第3プロピレン-エチレンコポリマー画分を含む前記異相プロピレンコポリマー(B)を得るステップg)と、
5~50重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは12~40重量%の前記異相プロピレンコポリマー(B)を、50~95重量%、好ましくは55~90重量%、より好ましくは60~88重量%の前記混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)とブレンドするステップh)と
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項11】
前記シングルサイト触媒系は、
(i)以下の一般式(I)のメタロセン錯体と、
【化1】
(式中、
各Xは、独立してシグマ供与性配位子であり、
Lは、-R’C-、-R’C-CR’-、-R’Si-、-R’Si-SiR’-、-R’Ge-から選択される二価の架橋であり、ここで、各R’は、独立して、水素原子、又は、元素周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子若しくはフッ素原子を任意に含むC~C20-ヒドロカルビル基であり、あるいは、任意に2つのR’基は、一緒に環を形成することができ、
各Rは、独立して同じであるか又は異なってもよく、水素、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基、C7~20アリールアルキル、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基、又は、OY基であり、ここで、Yは、C1~10ヒドロカルビル基であり、任意に2つの隣接するR基は、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよく、
各Rは、独立して同じであるか又は異なってもよく、CH-R基であり、ここで、Rは、H、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状のC1~6アルキル基、C3~8シクロアルキル基、C6~10アリール基であり、
は、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基、C7~20アリールアルキル、C7~20アルキルアリール基若しくはC~C20アリール基であり、
は、C(R基であり、ここで、Rは、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基であり、
は、水素、又は、元素周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子を任意に含む脂肪族C~C20ヒドロカルビル基であり、
は、水素、又は、元素周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子を任意に含む脂肪族C~C20ヒドロカルビル基であるか、あるいは
及びRは一緒に、n個(nは0~4である)のR10基で任意に置換された5員の飽和炭素環を形成することができ、
各R10は、同じであるか又は異なり、C~C20ヒドロカルビル基、又は、元素周期表の第14~16族に属する1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC~C20ヒドロカルビル基であってもよく、
は、H、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基、又は、1~3つのR11基で任意に置換された、炭素原子数6~20のアリール基若しくはヘテロアリール基であり、
各R11は、独立して同じであるか又は異なってもよく、水素、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基、C7~20アリールアルキル、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基、又は、OY基であり、ここで、Yは、C1~10ヒドロカルビル基である。)
(ii)アルミノキサン共触媒と、
(iii)シリカ担体と
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物を含む、物品。
【請求項13】
自動車用物品又は包装物品である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
物品の製造のための配合物基材としての、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物の使用。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物における異相プロピレンコポリマーの使用であって、前記異相プロピレンコポリマーは、
105~320g/10分、好ましくは107~300g/10分、より好ましくは110~280g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)と、
10.0~35.0重量%の範囲、好ましくは11.0~32.5重量%の範囲、より好ましくは12.0~30.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶性画分(SF)含有量と、
少なくとも2.0dl/g、好ましくは2.3~4.5dl/gの範囲、より好ましくは2.5~4.3dl/gの範囲の、DIN ISO1628/1に従って135℃でデカリン中で測定された前記可溶性画分の固有粘度(iV(SF))と
を有し、前記使用により、メルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)及び曲げ弾性率を増加させ、前記組成物のVOC及びFOG含有量を減少させる、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的特性及び衝撃特性に関する特性のバランスが改善された高メルトフローポリプロピレン組成物、上記ポリプロピレン組成物の製造プロセス、上記ポリプロピレン組成物を含む物品及び物品の製造における上記ポリプロピレン組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
異相プロピレンコポリマーは、剛性と衝撃挙動との優れた組み合わせにより、包装業界で広く使用されている。異相プロピレンコポリマーは、日常生活の多くの面で応用されている。ポリプロピレンの主な応用分野の1つは、薄肉物品の射出成形に見られる。代表的な例としては、主に食品包装を目的とするプラスチック製のカップ、ペール及び小型容器が挙げられる。薄肉射出成形用途に適するために、ポリプロピレンは、通常、高メルトフローレート(MFR)、即ち低平均分子量によって表される、優れた加工性/流動性を示す必要がある。それでも、ポリマー及び包装業界では、機械的特性、特に不純物の量の観点から、高メルトフローレート(MFR)を有する使用可能な異相ポリプロピレン組成物を改善することが望まれている。
【0003】
ポリマービジネスにおける根本的な課題の1つは、リサイクルである。現時点では、リサイクル品、特に、一般的に使用済みリサイクル品(post-consumer recyclates、「PCR」)と呼ばれる家庭ゴミからのリサイクル品の市場は、多少の制限がある。家庭ゴミから出発すると、使用された選別及び分離プロセスにより純粋なポリマーを調製することができない。即ち、常に何らかの汚染物質が存在するか、又はプロセスによっては異なるポリマーのブレンドが生じる可能性がある。収集された家庭ゴミのポリマー画分の大部分を占めるポリオレフィンに関しては、ポリプロピレンとポリエチレンを完全に分離することは非常に難しく、コストがかかる。リサイクルポリオレフィン材料、特に使用済み樹脂は、従来、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリスチレンなどの非ポリオレフィン材料、又は木材、紙、ガラス、アルミニウムなどの非ポリマー物質により交差汚染されている。更に悪いことに、これらの使用済みリサイクルポリオレフィン材料は、数トン規模で容易に入手できるが、残念ながら、機械的特性が限られており、しばしば深刻な臭気及び/又は放出の問題を抱えている。
包装業界の用途には、良好な流動性、少量の不純物、剛性と衝撃強度とのバランスを取った機械的特性を併せ持つ材料が必要である。最近、市場の需要は、特定の要件を満たすためにリサイクルポリオレフィンをバージンポリマーとブレンドして使用する方向に拡大している。
しかしながら、健康及び安全に害を及ぼすことなく、使用済みポリオレフィンリサイクル品を最終製品にアップサイクル及び再利用できるようにする必要性が強く感じられる。
【0004】
未公開特許出願である欧州特許出願第21178566.2号及び欧州特許出願第21178547.2号は、使用済みリサイクルポリオレフィン流(stream)に由来する混合プラスチックポリプロピレンベースのブレンドと、タルクなどの無機充填材とを含む、自動車の外装及び内装用途のためのポリプロピレン組成物に関する。これらの組成物は、機械的特性と良好な流動性の有益なバランスを示す。しかしながら、これらの組成物はかなり多量のバージンポリマーを必要とするため、使用済みリサイクル品の量は制限される。
【0005】
本発明は、使用済みリサイクルポリオレフィン流に由来する混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンドを含むポリプロピレンベースの組成物中の異相プロピレンコポリマーベースのバージン成分を慎重に選択することにより、衝撃特性、曲げ弾性率などの機械的特性、高メルトフローレートで示される流動性、及び少量のVOC及びFOGで例示される少量の不純物に関する特性の優れたバランスを示すポリプロピレンベースの組成物を得るという驚くべき発見に基づくものである。これらの組成物は、使用済みリサイクルポリオレフィン流に由来する混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンドを大量に含む。したがって、使用済みリサイクルポリオレフィン流に由来する混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンドを含む本発明の組成物は、射出成形用途、特に薄肉包装用途などの包装用途に適し、複雑な異相ポリプロピレンコポリマーに代わることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願第21178566.2号
【特許文献2】欧州特許出願第21178547.2号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、成分(A)と成分(B)をブレンドして得られる組成物に関し、
前記成分(A)は、50~95重量%、好ましくは55~90重量%、より好ましくは60~88重量%の混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンドであり、
前記成分(B)は、5~50重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは12~40重量%の異相プロピレンコポリマーであり、ここで、全てのパーセンテージは全組成物に対するものであり、
前記混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)は、
・85.0~96.0重量%の範囲、好ましくは86.5~95.5重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された(特定された。determined)結晶性画分(CF)含有量と、
・4.0~15.0重量%の範囲、好ましくは4.5~13.5重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶性画分(SF)含有量と
を有し、
・前記結晶性画分(CF)は、11.0~55.0重量%の範囲、好ましくは20.0~49.5重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))を有し、
・前記可溶性画分(SF)は、0.9~2.1dl/gの範囲、好ましくは1.0~2.0dl/gの範囲の固有粘度(iV(SF))を有し、
前記異相プロピレンコポリマー(B)は、マトリクス相及びその中に分散したエラストマー相を含み、
・105~320g/10分、好ましくは107~300g/10分、より好ましくは110~280g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)と、
・10.0~35.0重量%の範囲、好ましくは11.0~32.5重量%の範囲、より好ましくは12.0~30.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶性画分(SF)含有量と、
・少なくとも2.0dl/g、好ましくは2.3~4.5dl/gの範囲、より好ましくは2.5~4.3dl/gの範囲の、DIN ISO1628/1に従って135℃でデカリン中で測定された前記可溶性画分の固有粘度(iV(SF))と
を有し、
前記組成物は、
・少なくとも9.0g/10分、好ましくは9.5~100g/10分、より好ましくは10.0~75g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)を有する。
【0008】
また、本発明は、上記又は下記組成物の製造プロセス(方法)に関し、前記プロセスは、
第1重合反応器内でシングルサイト触媒系の存在下でプロピレンを重合させて、第1プロピレンポリマー画分を製造するステップa)と、
前記シングルサイト触媒系及び前記第1プロピレンポリマー画分を含む重合混合物を前記第1重合反応器から第2重合反応器に移送するステップb)と、
前記第2重合反応器内で前記シングルサイト触媒系の存在下でプロピレンを重合させて、第2プロピレンポリマー画分を製造するステップc)と、
前記シングルサイト触媒系、前記第1プロピレンポリマー画分及び前記第2プロピレンポリマー画分を含む重合混合物を前記第2重合反応器から第3重合反応器に移送するステップd)と、
前記第3重合反応器内でシングルサイト触媒系の存在下でプロピレン及びエチレンを重合させて、第3プロピレン-エチレンコポリマー画分を製造するステップe)と、
前記シングルサイト触媒系、前記第1プロピレンポリマー画分、前記第2プロピレンポリマー画分及び前記第3プロピレン-エチレンコポリマー画分を含む重合混合物を前記第3重合反応器から取り出すステップf)と、
前記第1プロピレンポリマー画分、前記第2プロピレンポリマー画分及び前記第3プロピレン-エチレンコポリマー画分を含む前記異相プロピレンコポリマー(B)を得るステップg)と、
5~50重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは12~40重量%の前記異相プロピレンコポリマー(B)を、50~95重量%、好ましくは55~90重量%、より好ましくは60~88重量%の前記混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)とブレンドするステップh)と
を含む。
【0009】
更に、本発明は、上記又は下記組成物を含む物品に関する。
【0010】
付加的には、本発明は、物品の製造における上記又は下記組成物の使用に関する。
【0011】
最後に、本発明は、上記又は下記組成物における異相プロピレンコポリマーの使用に関し、前記異相プロピレンコポリマーは、
・105~320g/10分、好ましくは107~300g/10分、より好ましくは110~280g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)と、
・10.0~35.0重量%の範囲、好ましくは11.0~32.5重量%の範囲、より好ましくは12.0~30.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶性画分(SF)含有量と、
・少なくとも2.0dl/g、好ましくは2.3~4.5dl/gの範囲、より好ましくは2.5~4.3dl/gの範囲の、DIN ISO1628/1に従って135℃でデカリン中で測定された前記可溶性画分の固有粘度(iV(SF))と
を有し、前記使用により、メルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)及び曲げ弾性率を増加させ、前記組成物のVOC及びFOG含有量を減少させる。
【0012】
定義
本明細書に使用される全ての技術用語及び科学用語は、特に定義されない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料を実際に本発明の試験に使用することができるが、好ましい材料及び方法が本明細書に記載されている。本発明の説明及び特許請求の範囲において、以下の用語は、以下に示す定義に従って使用される。他に明確に示されない限り、「a」、「an」などの用語の使用は1つ以上のものを指す。
【0013】
混合プラスチックは、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、木材、紙、リモネン、アルデヒド類、ケトン類、脂肪酸、金属、及び/又は安定剤の長期分解生成物などの、バージンポリプロピレン組成物には通常見られない少量の化合物の存在として定義される。バージンポリプロピレンブレンドとは、中間使用を行わずに製造プロセスに直接由来するブレンドを指す。
定義事項としては、「混合プラスチック」は、ポリスチレン及び/又はポリアミド-6及び/又はリモネン及び/又は脂肪酸の検出可能な量と同等と見なすことができる。
これにより、混合プラスチックは、バージンポリマーとは対照的に、使用済み廃棄物と産業廃棄物の両方に由来する可能性がある。使用済み廃棄物とは、少なくとも最初の使用サイクル(又はライフサイクル)を完了した、即ち最初の目的を既に果たした物体を指す。それとは対照的に、産業廃棄物とは、通常は消費者に届かない製造スクラップ又は加工スクラップを指す。
【0014】
CRYSTEX QC分析によって得られる、0.9~2.1dl/gの範囲の固有粘度(iV(SF))を有する可溶性画分(SF)が、リサイクル流からの材料中に典型的に見られることは、当業者には理解される。本発明の好ましい態様では、CRYSTEX QC分析によって得られる可溶性画分(SF)は、1.0~2.0dl/gの範囲の固有粘度(iV(SF))を有する。
【0015】
ポリマーブレンドは、2つ以上のポリマー成分の混合物である。一般的には、ブレンドは、2つ以上のポリマー成分を混合することによって調製することができる。当技術分野で周知の適切な混合手順は、重合後ブレンドである。重合後ブレンドは、ポリマー粉末及び/又は配合後のポリマーペレットなどのポリマー成分のドライブレンド、又はポリマー成分を溶融混合することによる溶融ブレンドであってもよい。
【0016】
プロピレンホモポリマーは、本質的にプロピレンモノマー単位からなるポリマーである。特に商業的重合プロセスにおける不純物のため、プロピレンホモポリマーは、最大0.1mol%のコモノマー単位、好ましくは最大0.05mol%のコモノマー単位、最も好ましくは最大0.01mol%のコモノマー単位を含むことができる。
【0017】
「ポリプロピレン-ポリエチレンブレンド」とは、ポリプロピレンコポリマー及びポリエチレンコポリマーも含めて、ポリプロピレンとポリエチレンの両方を含む組成物を指す。ポリプロピレン含有量とポリエチレン含有量を直接決定することは不可能であるため、ポリプロピレン対ポリエチレンの重量比20/80~80/20は、iPP及びHDPEによる較正とIR分光法による決定から決定された当量比を示す。
【0018】
ポリプロピレンとは、50mol%を超える量のプロピレンに由来する単位から構成されるポリマーを意味する。
ポリエチレンとは、50mol%を超える量のエチレンに由来する単位から構成されるポリマーを意味する。
【0019】
異相性質の存在は、動的機械分析(DMA)におけるガラス転移点などのガラス転移点数、及び/又は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)若しくは原子間力顕微鏡(AFM)などの高解像度顕微鏡によって簡単に判断することができる。
【0020】
「XCS」という用語は、ISO16152に従って25°Cで決定された冷キシレン可溶性画分(XCS、重量%)を指す。「XCI」という用語は、ISO16152に従って25°Cで決定された冷キシレン不溶性画分(XCI、重量%)を指す。
【0021】
反応器ブレンドは、直列に接続された2つ以上の反応器、又は2つ以上の反応区画を有する反応器での製造に由来するブレンドである。代替的には、反応器ブレンドは、溶液中でブレンドすることによって得られてもよい。反応器ブレンドは、溶融押出によって製造された配合物とは対照的である。
【0022】
他に示されない限り、「%」は重量%を指す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
組成物
第1態様では、本発明は、成分(A)と成分(B)をブレンドして得られる組成物に関し、
成分(A)は、50~95重量%、好ましくは55~90重量%、より好ましくは60~88重量%の混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンドであり、
成分(B)は、5~50重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは12~40重量%の異相プロピレンコポリマーであり、ここで、全てのパーセンテージは全組成物に対するものであり、
混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)は、
・85.0~96.0重量%の範囲、好ましくは86.5~95.5重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された結晶性画分(CF)含有量と、
・4.0~15.0重量%の範囲、好ましくは4.5~13.5重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶性画分(SF)含有量と
を有し、
・上記結晶性画分(CF)は、11.0~55.0重量%の範囲、好ましくは20.0~49.5重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))を有し、
・上記可溶性画分(SF)は、0.9~2.1dl/gの範囲、好ましくは1.0~2.0dl/gの範囲の固有粘度(iV(SF))を有し、
異相プロピレンコポリマー(B)は、マトリクス相及びその中に分散したエラストマー相を含み、
・105~320g/10分、好ましくは107~300g/10分、より好ましくは110~280g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)と、
・10.0~35.0重量%の範囲、好ましくは11.0~32.5重量%の範囲、より好ましくは12.0~30.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶性画分(SF)含有量と、
・少なくとも2.0dl/g、好ましくは2.3~4.5dl/gの範囲、より好ましくは2.5~4.3dl/gの範囲の、DIN ISO1628/1に従って135℃でデカリン中で測定された可溶性画分の固有粘度(iV(SF))と
を有し、
・この組成物は、
少なくとも9.0g/10分、好ましくは9.5~100g/10分、より好ましくは10.0~75g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)を有する。
【0024】
本発明に係る組成物は、以下の1つ以上の特性を有する。
【0025】
組成物は、少なくとも9.0g/10分、好ましくは9.5~100g/10分、より好ましくは10.0~75g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)を有する。
【0026】
本発明に係る組成物は、曲げ弾性率などの機械的特性、衝撃特性、上記メルトフローレートから分かる流動性、及び特にVOC及びFOG含有量とフォギングから分かる少量の不純物に関する特性の優れたバランスを示すことが好ましい。
【0027】
組成物は、EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO178に従って決定された、800~1300MPaの範囲、好ましくは850~1200MPaの範囲、より好ましくは865~1050MPaの範囲の曲げ弾性率(FM)を有することが好ましい。
【0028】
また、組成物は、EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO179/eAに従って決定された、5.0~25.0kJ/mの範囲、好ましくは5.5~20.0kJ/mの範囲の23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度(CNIS、23℃)を有することが好ましい。
【0029】
組成物は、メルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)に関して以下の不等式を満たす、23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度を有することが好ましい。
CNIS、23℃[kJ/m]>7.8[kJ/m]-0.17[kJ/m/g/10分]・MFR[g/10分]
式中、
CNIS、23℃は、EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO179/eAに従って決定された、組成物の23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度であり、
MFRは、組成物のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)である。
【0030】
更に、組成物は、EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO179/eAに従って決定された、1.7~5.0kJ/mの範囲、好ましくは1.9~4.0kJ/mの範囲の-20℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度(CNIS、-20℃)を有することが好ましい。
【0031】
付加的には、組成物は、
・VDA 278に従って決定された、100μg/g以下、好ましくは5~95μg/gの範囲、より好ましくは10~90μg/gの範囲の揮発性有機化合物(VOC)含有量、及び/又は
・VDA 278に従って決定された、1100μg/g以下、好ましくは50~1050μg/gの範囲、より好ましくは80~1000μg/gの範囲の半揮発性有機化合物(FOG)含有量、及び/又は
・厚さ2mmの圧縮成形プラーク(plaque)に対してDIN75201、方法Bに従って決定された、5.0mg以下、好ましくは0.5~4.5mgの範囲のフォギング(fogging)量
という特性の1つ以上、好ましくは全てを有することが好ましい。
【0032】
本発明の組成物は、上記又は下記成分(A)と成分(B)を、それに応じて記載される量で含むことを必須とする。
【0033】
組成物は、追加のポリマー成分を任意に含んでもよい。
更なるポリマー成分が存在する場合、組成物中のそのポリマー成分の量は、組成物の総重量に対して、通常5重量%以下、好ましくは2重量%以下である。
更なるポリマー成分が存在する場合、その下限は、組成物の総重量に対して、通常少なくとも0.1重量%、好ましくは0.2重量%である。
しかしながら、当該組成物が更なるポリマー成分を含まないこと、即ち、組成物中の更なるポリマー成分の量が0重量%であることが好ましい。
【0034】
一実施形態では、組成物は、タルク、雲母、珪灰石又はガラス繊維などの無機充填材を含まないことが好ましい。
別の実施形態では、組成物は、タルク、雲母、珪灰石又はガラス繊維などの無機充填材を、組成物の総重量に対して、好ましくは5~40重量%の量で含むことが好ましい。
【0035】
混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)
混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)は、CRYSTEX QC分析によって適切に特性評価される。CRYSTEX QC分析では、モノマーとコモノマーの含有量、及び固有粘度(iV)に関して定量及び分析できる結晶性画分(CF)と可溶性画分(SF)が得られる。
混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)は、CRYSTEX QC分析では、
・85.0~96.0重量%の範囲、好ましくは86.5~95.5重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された結晶性画分(CF)含有量、及び
・4.0~15.0重量%の範囲、好ましくは4.5~13.5重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶性画分(SF)含有量
という特性を示す。
【0036】
上記結晶性画分(CF)は、
・11.0~55.0重量%の範囲、好ましくは20.0~49.5重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))、及び/又は
・好ましくは1.0~2.6未満dl/gの範囲、より好ましくは1.2~2.5dl/gの範囲の、DIN ISO1628/1に従って135℃でデカリン中で測定された固有粘度(iV(CF))
という特性の1つ以上、好ましくは全てを有する。
【0037】
上記可溶性画分(SF)は、
・好ましくは20.0~55.0重量%の範囲、好ましくは22.0~50.0重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(SF))、及び/又は
・0.9~2.1dl/gの範囲、好ましくは1.0~2.0dl/gの範囲の、DIN ISO1628/1に従って135℃でデカリン中で測定された固有粘度(iV(SF))
という特性の1つ以上、好ましくは全てを有する。
【0038】
好ましくは、混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)は、ポリプロピレンとポリエチレンを、20/80~80/20の重量比、好ましくは25/75~75/25の重量比で含む。
【0039】
混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)は、好ましくは50.0~95.0重量%、より好ましくは51.5~90.0重量%、更に好ましくは53.0~75.0重量%の量のプロピレンに由来する単位を含む。
【0040】
混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)は、好ましくは5.0~50.0重量%、より好ましくは10.0~48.5重量%、更に好ましくは25.0~47.0重量%の量のエチレンに由来する単位を含む。
【0041】
また、混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)は、
・5.0~50g/10分、好ましくは5.2~45g/10分、より好ましくは5.4~40g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)、及び/又は
・固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を使用して決定された、0.1~50ppmのリモネン含有量、及び/又は
・800~1400MPa、好ましくは850~1200MPaの引張弾性率、及び/又は
・4.0~8.5kJ/m、好ましくは5.0~8.0kJ/mの23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度(CNIS、23℃)、及び/又は
・1.0~4.5kJ/m、好ましくは1.5~4.0kJ/mの-20℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度(CNIS、-20℃)
という特性の1つ以上、好ましくは全てを有することが好ましい。
【0042】
本発明に係る混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)は、ペレットの形態で存在することが好ましい。ペレット化により、揮発性物質の量が少なくなる。
【0043】
異相プロピレンコポリマー(B)
異相ポリプロピレンコポリマー(B)は、マトリクス相及びその中に分散したエラストマー相を含む。
【0044】
異相プロピレンコポリマー(B)は、
・105~320g/10分、好ましくは107~300g/10分、より好ましくは110~280g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)、
・10.0重量%~35.0重量%の範囲、好ましくは11.0~32.5重量%の範囲、より好ましくは12.0~30.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶性画分(SF)含有量、及び
・少なくとも2.0dl/g、好ましくは2.3~4.5dl/gの範囲、より好ましくは2.5~4.3dl/gの範囲の、DIN ISO1628/1に従って135℃でデカリン中で測定された可溶性画分の固有粘度(iV(SF))
という特徴を有する。
【0045】
異相プロピレンコポリマー(B)は、
・65.0~90.0重量%の範囲、好ましくは67.5~89.0重量%の範囲、より好ましくは70.0~88.0重量%の範囲の量の、CRYSTEX QC分析に従って決定された結晶性画分(CF)、及び/又は
・1.2dl/g以下、好ましくは0.4~1.1dl/gの範囲の結晶性画分の固有粘度(iV(CF))、及び/又は
・定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定された、結晶性画分(CF)の総重量に対して、1.0重量%以下、好ましくは0~0.9重量%の範囲の結晶性画分のエチレン含有量(C2(CF))、及び/又は
・定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定された、可溶性画分(SF)の総重量に対して、14.0~29.0重量%、好ましくは17.0~26.0重量%の範囲、より好ましくは19.0~24.0重量%の範囲の可溶性画分のエチレン含有量(C2(SF))、及び/又は
・EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO178に従って決定された、800~1500MPaの範囲、好ましくは850~1450MPaの範囲の曲げ弾性率、及び/又は
・定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定された、異相プロピレンコポリマー(B)の総重量に対して、2.0~5.5重量%の範囲、好ましくは2.5~5.0重量%の範囲の総エチレン含有量、及び/又は
・ISO3146(第3部、方法C2)に従ってDSCによって決定された、150~162℃の範囲、好ましくは152~160℃の範囲の融解温度、及び/又は
・ISO3146(第3部、方法C2)に従ってDSCによって決定された、110~130℃の範囲、好ましくは115~125℃の範囲の結晶化温度、及び/又は
・EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO179/eAに従って決定された、2.5~15.0kJ/mの範囲、好ましくは3.0~12.0kJ/mの範囲の23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度、及び/又は
・VDA 278に従って決定された、50μg/g以下、好ましくは40μg/g以下、より好ましくは35μg/g以下、また通常少なくとも2μg/g、好ましくは少なくとも4μg/gの揮発性有機化合物(VOC)含有量、及び/又は
・VDA 278に従って決定された、300μg/g以下、好ましくは250μg/g以下、より好ましくは225μg/g以下、また通常少なくとも20μg/g、好ましくは少なくとも40μg/gのFOG含有量
という特性の1つ以上、好ましくは全てを有することが好ましい。
【0046】
異相プロピレンコポリマー(B)は、可溶性画分(SF)の量に関して以下の不等式を満たす曲げ弾性率(FM)を有することが好ましい。
FM[MPa]>1550[MPa]-33.4[MPa/重量%]・量(SF)[重量%]
好ましくは、
FM[MPa]>1575[MPa]-33.4[MPa/重量%]・量(SF)[重量%]、
より好ましくは、
FM[MPa]>1600[MPa]-33.4[MPa/重量%]・量(SF)[重量%]、
最も好ましくは、
FM[MPa]>1625[MPa]-33.4[MPa/重量%]・量(SF)[重量%]、
式中、
FM[MPa]は、異相プロピレンコポリマー(B)の曲げ弾性率であり、単位は、MPaであり、
量(SF)[重量%]は、異相プロピレンコポリマー(B)中の可溶性画分(SF)の量であり、単位は、重量%である。
【0047】
ポリプロピレン組成物は、メルトフローレート(MFR)に関して以下の不等式を満たす23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度(CNIS、23℃)を有することが好ましい。
CNIS、23℃[kg/m]>10.0[kg/m]-0.05[kg/m/g/10分]・MFR[g/10分]
好ましくは、
CNIS、23℃[kg/m]>10.5[kg/m]-0.05[kg/m/g/10分]・MFR[g/10分]、
より好ましくは、
CNIS、23℃[kg/m]>11.0[kg/m]-0.05[kg/m/g/10分]・MFR[g/10分]、
最も好ましくは、
CNIS、23℃[kg/m]>11.5[kg/m]-0.05[kg/m/g/10分]・MFR[g/10分]。
【0048】
異相プロピレンコポリマー(B)は、プロピレン単位とエチレン単位とからなることが好ましい。
測定されていないが、可溶性画分(SF)におけるプロピレン(C3)に由来する単位の含有量は、可溶性画分(SF)におけるエチレン(C2)に由来する単位の含有量と合計して100重量%になることが好ましい。
【0049】
可溶性画分(SF)におけるプロピレン(C3)に由来する単位の含有量は、好ましくは71.0~86.0重量%、より好ましくは74.0~83.0重量%、更に好ましくは76.0~81.0重量%である。
測定されていないが、結晶性画分(CF)におけるプロピレン(C3)に由来する単位の含有量は、結晶性画分(CF)におけるエチレン(C2)に由来する単位の含有量と合計して100重量%になることが好ましい。
結晶性画分(CF)におけるプロピレン(C3)に由来する単位の含有量は、好ましくは少なくとも99.0重量%、より好ましくは99.1~100重量%である。
異相プロピレンコポリマー(B)におけるプロピレン(C3)に由来する単位の総含有量は、好ましくは94.5~98.0重量%、より好ましくは95.0~97.5重量%である。
【0050】
このような異相プロピレンコポリマーは、シングルサイト触媒系の存在下で本発明の上記又は下記プロセスに従って製造されることが好ましい。
【0051】
添加剤
添加剤は、本発明に係る組成物において慣用される。好ましくは、添加剤は、酸化防止剤、UV安定剤、スリップ剤、核剤、顔料、潤滑剤、マスターバッチポリマー及び/又は防曇剤のうちの1つ以上から選択される。
添加剤は、通常、全組成物に対して、0.01~5.0重量%の量で、好ましくは0.05~3.5重量%の量で組成物中に存在する。
【0052】
プロセス
更なる態様では、本発明は、上記又は下記組成物の製造プロセスに関し、このプロセスは、
第1重合反応器内でシングルサイト触媒系の存在下でプロピレンを重合させて、第1プロピレンポリマー画分を製造するステップa)と、
シングルサイト触媒系及び第1プロピレンポリマー画分を含む重合混合物を第1重合反応器から第2重合反応器に移送するステップb)と、
第2重合反応器内で上記シングルサイト触媒系の存在下でプロピレンを重合させて、第2プロピレンポリマー画分を製造するステップc)と、
シングルサイト触媒系、第1プロピレンポリマー画分及び第2プロピレンポリマー画分を含む重合混合物を第2重合反応器から第3重合反応器に移送するステップd)と、
第3重合反応器内でシングルサイト触媒系の存在下でプロピレン及びエチレンを重合させて、第3プロピレン-エチレンコポリマー画分を製造するステップe)と、
シングルサイト触媒系、第1プロピレンポリマー画分、第2プロピレンポリマー画分及び第3プロピレン-エチレンコポリマー画分を含む重合混合物を第3重合反応器から取り出すステップf)と、
第1プロピレンポリマー画分、第2プロピレンポリマー画分及び第3プロピレン-エチレンコポリマー画分を含む異相プロピレンコポリマー(B)を得るステップg)と、
5~50重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは12~40重量%の異相プロピレンコポリマー(B)を、50~95重量%、好ましくは55~90重量%、より好ましくは60~88重量%の混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)とブレンドするステップh)と
を含む。
【0053】
第1重合反応器は、ループ反応器などのスラリー相反応器であることが好ましい。
【0054】
第1重合反応器、好ましくはループ反応器内の動作温度は、62~85℃の範囲、より好ましくは65~82℃の範囲、更に好ましくは67~80℃の範囲にあることが好ましい。
【0055】
典型的には、第1重合反応器、好ましくはループ反応器内の圧力は、20~80バール(bar)、好ましくは30~70バール、例えば35~65バールの範囲にある。
【0056】
第1重合反応器、好ましくはループ反応器内で、プロピレンホモポリマーを製造することが好ましい。したがって、第1プロピレンポリマー画分は、プロピレンホモポリマー画分であることが好ましい。
【0057】
好ましくは、分子量、即ちメルトフローレートMFRを制御するために、水素を第1重合反応器内に添加する。
好ましくは、第1ポリプロピレン反応器、好ましくはループ反応器内の水素対プロピレン比(H2/C3比)は、0.70~2.5mol/kmol、より好ましくは0.75~2.0mol/kmolの範囲にある。
【0058】
触媒の強い水素応答とかなり多量の水素のため、第1プロピレンポリマー画分のメルトフローレートは非常に高くなる。
第1プロピレンポリマー画分は、1000~15000g/10分の範囲、好ましくは1100~13500g/10分の範囲、より好ましくは1250~11500g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)を有することが好ましい。
【0059】
第2重合反応器は、第1流動床気相反応器などの第1気相反応器であることが好ましい。
【0060】
第2重合反応器、好ましくは第1気相反応器内の動作温度は、75~95℃の範囲、より好ましくは78~92℃の範囲にあることが好ましい。
【0061】
典型的には、第2重合反応器、好ましくは第1気相反応器内の圧力は、5~50バール、好ましくは15~40バールの範囲にある。
【0062】
第2重合反応器、好ましくは第1気相反応器内で、プロピレンホモポリマーを製造することが好ましい。したがって、第2プロピレンポリマー画分は、プロピレンホモポリマー画分であることが好ましい。
【0063】
好ましくは、分子量、即ちメルトフローレートMFRを制御するために、水素を第2重合反応器内に添加する。
好ましくは、第2ポリプロピレン反応器、好ましくは第1気相反応器内の水素対プロピレン比(H2/C3比)は、2.0~6.5mol/kmolの範囲、より好ましくは2.8~5.5mol/kmolの範囲にある。
【0064】
触媒の強い水素応答とかなり多量の水素のため、組み合わされた第1プロピレンポリマー画分と第2プロピレンポリマー画分のメルトフローレートは非常に高くなる。
組み合わされた第1プロピレンポリマー画分と第2プロピレンポリマー画分は、少なくとも1000g/10分、好ましくは1200~9000g/10分の範囲、より好ましくは1500~8000g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)を有することが好ましい。
【0065】
組み合わされた第1プロピレンポリマー画分と第2プロピレンポリマー画分は、組み合わされた第1プロピレンポリマー画分と第2プロピレンポリマー画分の総重量に対して、2.0重量%以下、好ましくは0.1~1.5重量%の範囲の量の25℃での冷キシレン可溶性(XCS)画分を有することが更に好ましい。
【0066】
第3重合反応器は、第2流動床気相反応器などの第2気相反応器であることが好ましい。
【0067】
第3重合反応器、好ましくは第2気相反応器内の動作温度は、65~85℃の範囲、より好ましくは68~82℃の範囲にあることが好ましい。典型的には、第3重合反応器内の動作温度は、第2重合反応器内の動作温度よりも低い。
【0068】
典型的には、第3重合反応器、好ましくは第2気相反応器内の圧力は、5~50バール、好ましくは15~40バールの範囲にある。
【0069】
第3重合反応器、好ましくは第2気相反応器内で、プロピレンエチレンコポリマーを製造することが好ましい。したがって、第3プロピレンポリマー画分は、プロピレンエチレンコポリマー画分である。
【0070】
第3重合重合反応器、好ましくは第2気相反応器内のエチレン対プロピレン比(C2/C3比)は、700~1000mol/kmolの範囲、より好ましくは800~950mol/kmolの範囲にある。
エチレン対プロピレン比(C2/C3比)が高いため、第3プロピレンコポリマー画分は、プロピレンリッチな部分とエチレンリッチな部分とを有するエラストマーブロックコポリマーであることが好ましい。
【0071】
好ましくは、分子量、即ちメルトフローレートMFRを制御するために、水素を第2重合反応器内に添加する。
【0072】
好ましくは、第3重合反応器、好ましくは第2気相反応器内の水素対エチレン比(H2/C2比)は、0.5~3.5mol/kmol、より好ましくは1.0~2.5mol/kmolの範囲にある。
【0073】
組み合わされた第1プロピレンポリマー画分、第2プロピレンポリマー画分及び第3プロピレンポリマー画分は、少なくとも150g/10分、好ましくは165~500g/10分の範囲、より好ましくは175~400g/10分の範囲のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)を有することが好ましい。
【0074】
組み合わされた第1プロピレンポリマー画分、第2プロピレンポリマー画分及び第3プロピレンポリマー画分は、異相プロピレンコポリマー(B)の総重量に対して、8.0~32.0重量%の範囲、好ましくは9.0~30.0重量%の範囲、より好ましくは10.0~28.0重量%の範囲の量の25℃での冷キシレン可溶性(XCS)画分を有することが更に好ましい。XCS画分は、
・少なくとも2.2dl/g、好ましくは2.3~4.6dl/gの範囲、より好ましくは2.5~4.4dl/gの範囲の固有粘度(iV(XCS))、及び
・定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定された、可溶性画分(SF)の総重量に対して、15.0~30.0重量%の範囲、好ましくは18.0~27.0重量%の範囲、より好ましくは20.0~25.0重量%の範囲のエチレン含有量(C2(XCS))
という特性を有することが好ましい。
【0075】
また、組み合わされた第1プロピレンポリマー画分、第2プロピレンポリマー画分及び第3プロピレンポリマー画分は、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定された、ポリプロピレン組成物の総重量に対して、2.0~5.5重量%の範囲、好ましくは2.5~5.0重量%の範囲の総コモノマー含有量、好ましくはエチレン(C2)含有量を有することが好ましい。
【0076】
組み合わされた第1プロピレンポリマー画分、第2プロピレンポリマー画分及び第3プロピレンポリマー画分は、異相プロピレンコポリマーを形成することが好ましい。
【0077】
第1プロピレンポリマー画分、第2プロピレンポリマー画分及び第3プロピレンポリマー画分の調製は、少なくとも3回の重合における(主)重合段階に加えて、その前に、第1重合反応器の上流にある予備(前)重合反応器内の予備重合を含んでもよい。
【0078】
予備重合反応器内で、ポリプロピレンを製造する。予備重合は、シングルサイト重合触媒系の存在下で行われることが好ましい。本実施形態によれば、シングルサイト重合触媒系を予備重合ステップに導入する。しかしながら、これは、例えば後期段階では、重合プロセスにおいて、更なる共触媒を例えば第1反応器内に添加するという選択肢を排除するものではない。一実施形態では、予備重合を適用する場合、シングルサイト触媒の全ての成分を予備重合反応器のみ内に添加する。
【0079】
予備重合反応は、典型的には0~60℃、好ましくは15~50℃、より好ましくは20~45℃の温度で行われる。
【0080】
予備重合反応器内の圧力は、特に限定されないが、反応混合物を液相に維持するために十分に高くなければならない。したがって、圧力は、20~100バール、例えば30~70バールであってもよい。
【0081】
好ましい実施形態では、予備重合は、液体プロピレンにおいてバルクスラリー重合として行われ、即ち、液相は主にプロピレンを含み、任意に不活性成分がその中に溶解される。
【0082】
予備重合段階に他の成分を添加することも可能である。したがって、当技術分野で周知のように、ポリプロピレンの分子量を制御するために、予備重合段階に水素を添加してもよい。また、粒子が相互に付着したり、反応器の壁に付着したりするのを防止するために、帯電防止剤を使用してもよい。
【0083】
予備重合条件及び反応パラメータの正確な制御は、当業者の技術範囲内である。
【0084】
予備重合における規定された上記プロセス条件により、好ましくは、シングルサイト触媒系と予備重合反応器内で製造されたポリプロピレンとの混合物が得られる。好ましくは、シングルサイト触媒系は、ポリプロピレンに(細かく)分散される。言い換えれば、予備重合反応器内に導入されたシングルサイト触媒粒子は、成長するポリプロピレン内に均一に分布する小さな断片に分割される。導入されたシングルサイト触媒粒子のサイズと得られた断片のサイズは、本発明にとって本質的な関連性がなく、当業者の知識の範囲内である。
【0085】
上述のとおり、予備重合を使用する場合、上記予備重合に続いて、シングルサイト触媒と予備重合反応器内で製造されたポリプロピレンとの混合物を、第1重合反応器に移送する。典型的には、第1プロピレンポリマー画分、第2プロピレンポリマー画分及び第3プロピレンポリマー画分内の、予備重合反応器内で製造されたポリプロピレンの総量は、かなり少なく、典型的には5.0重量%以下、より好ましくは4.0重量%以下、更に好ましくは0.5~4.0重量%の範囲、例えば1.0~3.0重量%の範囲にある。
【0086】
予備重合を使用しない場合、プロピレンと、シングルサイト触媒系などの他の成分とを、第1重合反応器内に直接導入する。
【0087】
異なる重合段階における重合混合物の滞留時間は、組み合わされた第1ポリマー画分、第2ポリマー画分及び第3ポリマー画分内の第1ポリマー画分、第2ポリマー画分及び第3ポリマー画分のそれぞれの量を得るために調整される。
【0088】
好ましくは、第1プロピレンポリマー画分は、組み合わされた第1プロピレンポリマー画分、第2プロピレンポリマー画分及び第3プロピレンポリマー画分の総重量に対して、40~60重量%、より好ましくは45~55重量%の量で存在する。予備重合反応器が存在する場合、その中で製造されたポリプロピレンポリプロピレンの量は、一般的には、第1プロピレンポリマー画分の量に加算される。
【0089】
好ましくは、第2プロピレンポリマー画分は、組み合わされた第1プロピレンポリマー画分、第2プロピレンポリマー画分及び第3プロピレンポリマー画分の総重量に対して、25~45重量%、より好ましくは30~40重量%の量で存在する。
【0090】
好ましくは、第3プロピレンポリマー画分は、組み合わされた第1プロピレンポリマー画分、第2プロピレンポリマー画分及び第3プロピレンポリマー画分の総重量に対して、10~30重量%、より好ましくは15~25重量%の量で存在する。
【0091】
触媒系
本発明に係るシングルサイト触媒系は、アイソタクチックポリプロピレンの製造に適する任意の担持型メタロセン触媒系であってもよい。
【0092】
シングルサイト触媒系は、メタロセン錯体、ホウ素含有共触媒及び/又はアルミノキサン共触媒を含む共触媒系、並びにシリカ担体を含むことが好ましい。
【0093】
特に、シングルサイト触媒系は、
(i)以下の一般式(I)のメタロセン錯体と、
【化1】
(式中、
各Xは、独立してシグマ供与性配位子であり、
Lは、-R’C-、-R’C-CR’-、-R’Si-、-R’Si-SiR’-、-R’Ge-から選択される二価の架橋であり、ここで、各R’は、独立して、水素原子、又は、元素周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子若しくはフッ素原子を任意に含むC~C20ヒドロカルビル基であり、あるいは、任意に2つのR’基は、一緒に環を形成することができ、
各Rは、独立して同じであるか又は異なってもよく、水素、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基、C7~20アリールアルキル、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基、又は、OY基であり、ここで、Yは、C1~10ヒドロカルビル基であり、任意に2つの隣接するR基は、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよく、
各Rは、独立して同じであるか又は異なってもよく、CH-R基であり、ここで、Rは、H、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状のC1~6アルキル基、C3~8シクロアルキル基、C6~10アリール基であり、
は、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基、C7~20アリールアルキル、C7~20アルキルアリール基若しくはC~C20アリール基であり、
は、C(R基であり、ここで、Rは、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基であり、
は、水素、又は、元素周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子を任意に含む脂肪族C~C20ヒドロカルビル基であり、
は、水素、又は、元素周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子を任意に含む脂肪族C~C20ヒドロカルビル基であるか、あるいは
及びRは一緒に、n個(nは0~4である)のR10基で任意に置換された5員の飽和炭素環を形成することができ、
各R10は、同じであるか又は異なり、C~C20ヒドロカルビル基、又は、元素周期表の第14~16族に属する1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC~C20ヒドロカルビル基であってもよく、
は、H、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基、又は、1~3つのR11基で任意に置換された、炭素原子数6~20のアリール基若しくはヘテロアリール基であり、
各R11は、独立して同じであるか又は異なってもよく、水素、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基、C7~20アリールアルキル、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基、又は、OY基であり、ここで、Yは、C1~10ヒドロカルビル基である。)
(ii)ホウ素含有共触媒及び/又はアルミノキサン共触媒を含む共触媒系と、
(iii)シリカ担体と
を含むことが好ましい。
【0094】
「シグマ供与性配位子」という用語は、当業者にはよく理解されており、即ちシグマ結合を介して金属に結合する基を指す。したがって、アニオン性配位子である「X」は、独立してハロゲンであるか、又はR’、OR’、SiR’、OSiR’、OSOCF、OCOR’、SR’、NR’及びPR’基からなる群から選択されてもよく、ここで、R’は、独立して水素、直鎖状若しくは分岐鎖状の、環式若しくは非環式の、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、C~C20アルキニル、C~C12シクロアルキル、C~C20アリール、C~C20アリールアルキル、C~C20アルキルアリール、C~C20アリールアルケニルであり、R’基は、第14~16族に属する1つ以上のヘテロ原子を任意に含んでもよい。好ましい実施形態では、アニオン性配位子である「X」は、同一であり、Clなどのハロゲン、又はメチル、又はベンジルである。
【0095】
好ましい一価のアニオン性配位子は、ハロゲン、特に塩素(Cl)である。
【0096】
好ましいメタロセン錯体としては、以下が挙げられる:
rac-ジメチルシランジイルビス[2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(4’-tert-ブチルフェニル)-インデン-1-イル][2-メチル-4-(4’-tert-ブチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(4’-tert-ブチルフェニル)-インデン-1-イル][2-メチル-4-フェニル-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4-(3’,5’-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(4’-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-5-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド。
【0097】
特に好ましいのは、rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリドである。
【0098】
本発明の錯体、ひいては触媒系を形成するのに必要な配位子は、任意のプロセスによって合成することができ、当業者である有機化学者は、必要な配位子材料を製造するための様々な合成プロトコルを考案することができるであろう。例えば、国際公開第2007/116034号には、必要な化学薬品が開示されている。合成プロトコルは、一般的には、国際公開第2002/002576号、国際公開第2011/135004号、国際公開第2012/084961号、国際公開第2012/001052号、国際公開第2011/076780号、国際公開第2015/158790号及び国際公開第2018/122134号にも見出すことができる。特に、本発明の最も好ましい触媒が記載されている国際公開第2019/179959号を参照する。
【0099】
共触媒
活性触媒種を形成するためには、当技術分野で周知のように、共触媒を使用することが通常必要である。
【0100】
本発明によれば、ホウ素含有共触媒及び/又はアルミノキサン共触媒を含む共触媒系は、上記で定義されたメタロセン触媒錯体と組み合わせて使用される。
【0101】
アルミノキサン共触媒は、以下の式(II)のものであってもよい。
【0102】
【化2】
式中、nは通常6~20であり、Rは以下の意味を有する。
【0103】
アルミノキサンは、有機アルミニウム化合物の部分的加水分解、例えば式AlR、AlRY、Alの有機アルミニウム化合物の部分的加水分解により生成され、ここで、Rは、例えば、C~C10アルキル、好ましくはC~Cアルキル、又はC~C10シクロアルキル、C~C12アリールアルキル若しくはアルキルアリール、及び/又はフェニル若しくはナフチルであってもよく、Yは、水素、ハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素、又はC~C10アルコキシ、好ましくはメトキシ若しくはエトキシであってもよい。得られる酸素含有アルミノキサンは、一般的に純粋な化合物ではなく、式(II)のオリゴマーの混合物である。
【0104】
好ましいアルミノキサンは、メチルアルミノキサン(MAO)である。本発明に係る共触媒として使用されるアルミノキサンは、それらの調製様式のため、純粋な化合物ではないため、以下のアルミノキサン溶液のモル濃度は、それらのアルミニウム含有量に基づくものとする。
【0105】
本発明によれば、アルミノキサン共触媒の代わりにホウ素含有共触媒を使用することもできるし、又はアルミノキサン共触媒をホウ素含有共触媒と組み合わせて使用することもできる。
【0106】
ホウ素系共触媒を使用する場合、錯体を、TIBAのようなアルミニウムアルキル化合物と反応させることによって予備アルキル化することが通常であることは、当業者には理解されるであろう。この手順は、周知であり、任意の適切なアルミニウムアルキル、例えばAl(C~Cアルキル)を使用することができる。好ましいアルミニウムアルキル化合物は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリイソヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム及びトリイソオクチルアルミニウムである。
【0107】
代替的には、ボレート共触媒を使用する場合、メタロセン触媒錯体はそのアルキル化バージョンであり、即ち、例えば、ジメチル又はジベンジルメタロセン触媒錯体を使用することができる。
【0108】
関心のあるホウ素系共触媒としては、以下の式(III)のものが挙げられる。
BY (III)
式中、Yは同じであるか又は異なり、水素原子、炭素原子数1~約20のアルキル基、炭素原子数6~約15のアリール基、それぞれアルキルラジカル中に炭素原子数1~10であるとともにアリールラジカル中に炭素原子数6~20であるアルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル若しくはハロアリール、又はフッ素、塩素、臭素若しくはヨウ素である。好ましい選択肢は、トリフルオロボラン、トリフェニルボラン、トリス(4-フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(トリル)ボラン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン及び/又はトリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボランである。
【0109】
特に好ましいのは、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0110】
しかしながら、ボレート、即ちボレート3+イオンを含有する化合物を使用することが好ましい。このようなイオン性共触媒は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びテトラフェニルボレートなどの非配位性アニオンを含有することが好ましい。適切な対イオンは、プロトン化アミン又はアニリン誘導体、例えば、メチルアンモニウム、アニリニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、N-メチルアニリニウム、ジフェニルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ-n-ブチルアンモニウム、メチルジフェニルアンモニウム、ピリジニウム、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリニウム又はp-ニトロ-N,N-ジメチルアニリニウムである。
【0111】
驚くべきことに、あるホウ素共触媒が特に好ましいことが発見された。したがって、本発明で使用する好ましいボレートは、トリチルイオンを含む。したがって、N,N-ジメチルアンモニウム-テトラキスペンタフルオロフェニルボレートとPhCB(PhF及びその類似体の使用が特に好ましい。
【0112】
好ましい共触媒は、アルミノキサン、より好ましくはメチルアルミノキサン、アルミノキサンとAl-アルキルとの組み合わせ、ホウ素又はボレート共触媒、及びアルミノキサンとホウ素系共触媒との組み合わせである。
【0113】
本発明の触媒系は、担持形態で使用される。使用される粒子状担体材料は、シリカ又はシリカ-アルミナなどの混合酸化物、特にシリカである。シリカ担体の使用が好ましい。当業者は、メタロセン触媒を担持するのに必要な手順を知っている。
【0114】
好ましい実施形態では、触媒系は、国際公開第2020/239598A1号のICS3に対応する。
【0115】
このプロセスは、ポリマー画分を、好ましくは最後の重合段階から得られた重合混合物から分離し、任意に本明細書に記載されている更なるポリマー成分などの他の成分及び/又は添加剤の存在下で、5~50重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは12~40重量%の量の異相プロピレンコポリマー(B)を50~95重量%、好ましくは55~90重量%、より好ましくは60~88重量%の量の混合プラスチックポリプロピレンブレンド(A)とブレンドして組成物を得るという反応器後処理ステップを更に含む。
【0116】
このブレンドステップは、典型的な配合条件を使用して二軸押出機などの押出機内で成分を配合することによって行われることが好ましい。反応器後処理ステップは、当技術分野では既に充分に確立されている。
【0117】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載されているプロセスを通じて得ることができる、より好ましくは得られる、上記組成物に関する。上記及び下記組成物に関して与えられた全ての好ましい実施形態及び代替手段は、必要な変更を加えて本発明のプロセスに適用される。
【0118】
物品
別の態様では、本発明は、上記又は下記組成物を含む物品に関する。
物品は、好ましくは、射出成形品などの成形品、繊維又は鉱物で強化された複合材である。
物品は、上記又は下記組成物を含む自動車物品であってもよい。
物品は、例えば、上記又は下記組成物を含む食品包装を目的とする包装物品、好ましくは薄壁包装物品、例えばプラスチックカップ、ペール、蓋を含む小型容器であってもよい。
【0119】
一実施形態では、物品の組成物は、ガラス繊維又は炭素繊維などの繊維を含んでもよい。物品の組成物中に繊維が存在する場合、繊維の量は、物品の組成物に対して、5~40重量%の範囲にある。
【0120】
別の実施形態では、物品の組成物は、タルク、雲母、珪灰石などの鉱物充填材を含んでもよい。物品の組成物中に鉱物充填材が存在する場合、充填材の量は、物品の組成物に対して、5~40重量%の範囲にある。
【0121】
使用
更に別の態様では、本発明は、物品の製造における上記又は下記組成物の使用に関する。
【0122】
また、本発明は、上記又は下記組成物における異相プロピレンコポリマーの使用に関し、この異相プロピレンコポリマーは、
・105~320g/10分、好ましくは107~300g/10分、より好ましくは110~280g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)と、
・10.0~35.0重量%の範囲、好ましくは11.0~32.5重量%の範囲、より好ましくは12.0~30.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶性画分(SF)含有量と、
・少なくとも2.0dl/g、好ましくは2.4~4.8dl/gの範囲、より好ましくは2.5~4.5dl/gの範囲の、DIN ISO1628/1に従って135℃でデカリン中で測定された、可溶性画分の固有粘度(iV(SF))と
を有し、この使用により、メルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)及び曲げ弾性率を増加させ、上記組成物のVOC及びFOG含有量を減少させる。
【0123】
上記及び下記の異相プロピレンコポリマー(B)、組成物及び/又は物品に関して与えられた全ての好ましい実施形態及び代替手段は、必要な変更を加えて本発明の使用に適用される。
【実施例
【0124】
実験部
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の特定の態様及び実施形態を実証するために含まれる。しかしながら、以下の説明が単なる例示であり、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことは、当業者に理解されるべきである。
【0125】
1. 決定方法
MFR(230℃)は、ISO1133に従って230℃、荷重2.16kgで測定した。
【0126】
CRYSTEX
結晶性画分及び可溶性画分、ならびにそれぞれの特性(IV及びエチレン含有量)の決定
ポリプロピレン(PP)組成物の結晶性画分(CF)及び可溶性画分(SF)、ならびにそれぞれの画分のコモノマー含有量及び固有粘度は、Polymer Char(スペイン、バレンシア)のCRYSTEX装置を使用して分析した。技術と方法の詳細については、文献(Ljiljana Jeremic、Andreas Albrecht、Martina Sandholzer及びMarkus Gahleitner (2020)、Rapid characterization of high-impact ethylene-propylene copolymer composition by crystallization extraction separation: comparability to standard separation methods、International Journal of Polymer Analysis and Characterization、25:8、581-596)で見つけることができる。
結晶性画分と非晶質画分を、160℃での溶解、40℃での結晶化及び160℃での1,2,4-トリクロロベンゼンへの再溶解の温度サイクルによって分離する。SF及びCFの定量ならびにエチレン含有量(C2)の決定を、一体型赤外検出器(IR4)によって行い、そして固有粘度(iV)の決定を、オンライン2毛細管粘度計を使用して行う。
IR4検出器は、エチレン-プロピレンコポリマーの濃度決定及びエチレン-プロピレンコポリマー内のエチレン含有量の決定に役立つ2つの異なるバンド(CH伸縮振動(約2960cm-1を中心とする)とCH伸縮振動(2700~3000cm-1))のIR吸光度を測定する多波長検出器である。IR4検出器は、2重量%~69重量%の範囲の既知のエチレン含有量(13C-NMRによって決定される)を有し、それぞれが2~13mg/mlの範囲の様々な濃度を有する一連の8つのEPコポリマーを使用して較正される。Crystex分析中に予想される様々なポリマー濃度について、濃度とエチレン含有量の両方の特徴に同時に遭遇するために、以下の較正式を適用した:
Conc=a+b×Abs(CH)+c×(Abs(CH))+d×Abs(CH)+e×(Abs(CH+f×Abs(CH)×Abs(CH) (式1)
CH/1000C=a+b×Abs(CH)+c×Abs(CH)+d×(Abs(CH)/Abs(CH))+e×(Abs(CH)/Abs(CH)) (式2)
【0127】
式1の定数a~e及び式2の定数a~fは、最小二乗回帰分析を使用して決定した。
CH/1000Cは、以下の関係式を使用してエチレン含有量(重量%)に変換される。
重量%(EPコポリマー内のエチレン)=100-CH/1000TC×0.3 (式3)
【0128】
可溶性画分(SF)及び結晶性画分(CF)の量は、XS較正によって、ISO16152による標準的な重量測定的方法に従って決定した、「冷キシレン可溶性」(XCS)定量及び個々の冷キシレン不溶性(XCI)画分と相関する。XS較正は、2~31重量%の範囲のXS含有量を有する様々なEPコポリマーを試験することによって達成される。決定したXS較正は線形である。
重量%XS=1.01×重量%SF (式4)
親EPコポリマーならびにその可溶性画分及び結晶性画分の固有粘度(iV)は、オンライン2毛細管粘度計を使用して決定され、そしてISO1628-3に従ってデカリン中で標準的な方法によって決定される対応するiVと相関する。較正は、iV=2~4dL/gを有する様々なEP PPコポリマーを使用して達成される。決定した較正曲線は線形である。
iV(dL/g)=a×Vsp/c (式5)
【0129】
分析されるべきサンプルを10mg/ml~20mg/mlの濃度で秤量する。存在し得るゲル及び/又は160℃でTCBに溶解しないポリマー、例えばPETとPA、の注入を避けるために、秤量したサンプルをMW0.077/D0.05mmmのステンレス鋼メッシュに詰めた。
【0130】
酸化防止剤として250mg/lの2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含む1,2,4-TCBをバイアルに自動充填した後、該サンプルを、400rpmで絶えず撹拌しながら、完全に溶解するまで、通常60分、160℃で溶解する。サンプルの劣化を避けるために、溶解中はポリマー溶液をN2雰囲気で覆う。
規定体積のサンプル溶液を、不活性担体で満たされているカラムに注入し、カラムでは、該サンプルの結晶化及び結晶性部分から可溶性画分の分離が行われる。このプロセスを2回繰り返す。1回目の注入中に、全サンプルを高温で測定し、PP組成物のiV[dl/g]及びC2[重量%]を決定する。2回目の注入中に、結晶化サイクルを用いて可溶性画分(低温で)及び結晶性画分(高温で)を測定する(重量%SF、重量%C2、iV)。
【0131】
冷キシレン可溶性(XCS、重量%)画分は、ISO16152(第1版、2005-07-01)に従って25℃で決定した。
【0132】
固有粘度は、DIN ISO1628/1(1999年10月)に従って測定した(デカリン中、135℃)。
【0133】
NMR分光法によるミクロ構造の定量 - HECOにおけるエチレン含有量
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、ポリマーのコモノマー含有量を定量した。定量的13C{H}NMRスペクトルを、H及び13Cについてそれぞれ400.15及び100.62MHzで動作するBruker Advance III 400 NMR分光計を使用して、溶液状態で記録した。全てのスペクトルを、125℃で13C最適化10mm拡張温度プローブヘッドを使用し、全ての空気圧について窒素ガスを使用して記録した。約200mgの材料を、クロム-(III)-アセチルアセトナート(Cr(acac))とともに、3mlの1,2-テトラクロロエタン-d(TCE-d)に溶解して、溶媒中に65mMの緩和剤溶液を得た(Singh,G.、Kothari,A.、Gupta,V.、Polymer Testing 28 5 (2009)、475)。均質の溶液を確保するために、ヒートブロックにおける最初のサンプル調製の後、NMRチューブを、回転式オーブンで少なくとも1時間更に加熱した。マグネットに挿入すると、チューブを10Hzで回転させた。この設定は、主に、正確なエチレン含有量の定量のために必要な高分解能及び定量性のために選択した。最適化したチップ角、1秒のリサイクル遅延及びバイレベルのWALTZ16デカップリングスキームを使用して、NOEなしで標準的シングルパルス励起を用いた(Zhou,Z.、Kuemmerle,R.、Qiu,X.、Redwine,D.、Cong,R.、Taha,A.、Baugh,D.Winniford,B.、J.Mag.Reson.187(2007)225;Busico,V.、Carbonniere,P.、Cipullo,R.、Pellecchia,R.、Severn,J.、Talarico,G.、Macromol.Rapid Commun.2007、28、1128)。スペクトルあたり合計6144(6k)のトランジェントを得た。
定量的13C{H}NMRスペクトルを処理し、積分し、専用のコンピュータプログラムを使用して積分値から関連の定量的特性を決定した。全ての化学シフトは、溶媒の化学シフトを使用して、30.00ppmのエチレンブロック(EEE)の中央のメチレン基を間接的に基準とした。このアプローチにより、この構造単位が存在しないときでさえも、同等の基準が可能になった。エチレンの取り込みに対応する特徴的シグナルが観察された(Cheng,H.N.、Macromolecules 17(1984)、1950)。
2,1エリスロレジオ欠陥に対応する特徴的シグナルが観察され(L.Resconi、L.Cavallo、A.Fait、F.Piemontesi、Chem.Rev.2000、100(4)、1253、Cheng,H.N.、Macromolecules 1984、17、1950、及びW-J.Wang及びS.Zhu、Macromolecules 2000、33 1157に記載されている通り)、決定した特性に対するレジオ欠陥の影響の補正が必要であった。他のタイプのレジオ欠陥に対応する特徴的シグナルは観察されなかった。
Wangらの方法(Wang,W-J.、Zhu,S.、Macromolecules 33(2000)、1157)を用いて、13C{H}スペクトルのスペクトル領域全体にわたる複数のシグナルの積分によって、コモノマー画分を定量した。この方法は、そのロバストな性質と必要に応じてレジオ欠陥の存在を考慮する能力のために選択した。遭遇したコモノマー含有量の全範囲にわたる適用可能性を高めるために、積分領域をわずかに調整した。
PPEPP配列における孤立エチレンだけが観察された系では、存在しないことが知られている部位の非ゼロ積分値の影響を低下させるためにWangらの方法を修正した。このアプローチは、そのような系でのエチレン含有量の過大評価を減らし、絶対的エチレン含有量を決定するために使用する部位数の、E=0.5(Sββ+Sβγ+Sβδ+0.5(Sαβ+Sαγ))への減少によって達成した。
この部位のセットを用いると、対応する積分式は、Wangらの論文(Wang,W-J.、Zhu,S.、Macromolecules 33(2000)、1157)において使用されるのと同じ表記法を使用して、E=0.5(I+I+0.5(I+I))となる。絶対的プロピレン含有量に使用される式は修正しなかった。
コモノマー取り込みのモルパーセントを、モル分率から計算した。
E[mol%]=100×fE
コモノマー取り込みの重量パーセントを、モル分率から計算した。
E[重量%]=100×(fE×28.06)/((fE×28.06)+((1-fE)×42.08))
三連子レベルのコモノマー配列分布を、Kakugoらの分析法(Kakugo,M.、Naito,Y.、Mizunuma,K.、Miyatake,T.Macromolecules 15(1982)1150)を用いて決定した。この方法は、そのロバストな性質とより広範囲のコモノマー含有量に適用可能性を高めるようにわずかに調整された積分領域のために選択した。
【0134】
曲げ弾性率は、ISO178に従った3点曲げ法により、EN ISO1873-2に従って射出成形した80×10×4mmの射出成形片に対して決定した。
【0135】
シャルピーノッチ付き衝撃強度は、ISO179/1eAに従って、23℃及び-20℃で、EN ISO1873-2に従って射出成形した80×10×4mmの射出成形片に対して決定した。
【0136】
DSC分析、融解温度(Tm)及び結晶化温度(Tc)は、TA Instrument Q2000示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)によって5~7mgのサンプルで測定した。DSCを、ISO11357/第3部/方法C2に従って、加熱/冷却/加熱サイクルで、10℃/分の走査速度で、-30~+225℃の温度範囲で行う。結晶化温度及び結晶化エンタルピー(Hc)を冷却ステップから決定し、融解温度及び融解エンタルピー(Hm)を2回目の加熱ステップから決定する。
【0137】
VOC値及びFOG値は、EN ISO19069-2:2016に従って射出成形プラークをサンプル調製した後、VDA 278(2011年10月、Thermal Desorption Analysis of Organic Emissions for the Characterization of Non-Metallic Materials for Automobiles(自動車用非金属材料の特性評価のための有機放出物の昇温脱離分析)、VDA Verband der Automobilindustrie(ドイツ自動車工業会))に従って測定した。これらのプラークを製造直後にアルミニウム複合箔に詰め、箔を密封した。
VDA 278(2011年10月)によれば、VOC値は、「易揮発性物質から中揮発性物質の合計」として定義される。これはトルエン当量として計算される。この推奨事項に記載されている方法により、n-ペンタコサン(C25)までの沸騰/溶出範囲の物質の決定及び分析が可能になる。
FOG値は、「n-テトラデカン(これを含む)の滞留時間から溶出される揮発性の低い物質の合計」として定義される。これはヘキサデカン当量として計算される。n-アルカン「C14」~「C32」の沸点範囲の物質が決定及び分析される。
【0138】
フォギングは、DIN75201、方法Bに従って、厚さ2mmの圧縮成形プラークに対して測定した。熱処理を100℃で16時間行った。フォギングは、処理前後の重量の差として表される。
【0139】
1. 実施例
・異相プロピレンコポリマー1及び2(HECO1及びHECO2)
異相プロピレンコポリマー1(HECO1)及び2(HECO2)の重合プロセスで使用した触媒は、国際公開第2019/179959A1号にMC-2として開示されている、anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ジ(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリドであった。担持メタロセン触媒は、国際公開第2019/179959A1号のIE2と同様に製造した。
【0140】
HECO1及びHECO2は、1つの予備重合反応器、1つのループ反応器及び2つの気相反応器を含む連続プロセスを有するBorstar PPパイロットプラントで調製した。反応条件を表1にまとめる。
【0141】
【表1】
【0142】
安定化のために、HECO1及びHECO2を、それぞれ1500ppmのIrganox B215(BASF SEから市販されている、酸化防止剤であるIrgafos 168(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、CAS番号:31570-04-4)とIrganox 1010(ペンタエリトリトールテトラキス[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオナート]、CAS番号:6683-19-8)の相乗的な2:1ブレンド)及び500ppmのステアリン酸カルシウム(CAS番号:1592-23-0、商品名CEASIT-1でBaerlocher社から市販されている)と配合した。
【0143】
比較例CE3に使用されるHECO3は、国際公開第2021144401A1号のHECO3と同じように、チーグラー・ナッタ型触媒に基づくコポリマーである。
【0144】
【表2】
【0145】
・プロピレンホモポリマー2(PPH2)
PPH2は、メルトフローレート(230℃、2.16kg、ISO1133)が450g/10分、曲げ弾性率が1519MPa、VOC含有量が267μg/g、FOG含有量が629μgの、Borealis AGからHL504FBとして市販されているプロピレンホモポリマーである。
【0146】
・ポリプロピレン/ポリエチレンブレンド
評価に用いられたポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)の特性を表3に示す。これらの組成物は機械的なリサイクルプロセスから得られるため、特性は範囲として示される。
【0147】
・酸化防止剤マスターバッチ
Irganox B215(BASF SEから市販されている、酸化防止剤であるIrgafos 168(トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、CAS番号:31570-04-4)とIrganox 1010(ペンタエリトリトールテトラキス[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオナート]、CAS番号:6683-19-8)の相乗的な2:1ブレンド)を、Borealis AGから市販されているプロピレンホモポリマーHC001とブレンドして、酸化防止剤マスターバッチを形成した。Irganox B215とHC001の量を別々に表4に示す。
【0148】
【表3】
【0149】
ポリマーを酸化防止剤マスターバッチと一緒に使用して、Coperion ZSK40二軸押出機内で220℃で最終組成物を配合した。実施例の組成を表4に示す。
【0150】
【表4】
【0151】
実施例の特性を表5に示す。
【0152】
【表5】
【0153】
本発明に係る組成物は、低温でも改善された衝撃特性、十分な機械的特性、ならびに少量のVOC、FOG及びフォギングの形態の不純物を示すことが分かる。したがって、本発明の組成物は、使用済み廃棄物から得られる混合プラスチックポリプロピレンブレンドを最大84重量%の量で含む、包装を目的とする成形品に適格である。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)と成分(B)をブレンドして得られる組成物であって、
前記成分(A)は、50~95重量%、好ましくは55~90重量%、より好ましくは60~88重量%の混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンドであり、
前記成分(B)は、5~50重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは12~40重量%の異相プロピレンコポリマーであり、ここで、全てのパーセンテージは全組成物に対するものであり、
前記混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)は、
85.0~96.0重量%の範囲、好ましくは86.5~95.5重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された結晶性画分(CF)含有量と、
4.0~15.0重量%の範囲、好ましくは4.5~13.5重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶性画分(SF)含有量と
を有し、
前記結晶性画分(CF)は、11.0~55.0重量%の範囲、好ましくは20.0~49.5重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))を有し、
前記可溶性画分(SF)は、0.9~2.1dl/gの範囲、好ましくは1.0~2.0dl/gの範囲の固有粘度(iV(SF))を有し、
前記異相プロピレンコポリマー(B)は、マトリクス相及びその中に分散したエラストマー相を含み、
105~320g/10分、好ましくは107~300g/10分、より好ましくは110~280g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)と、
10.0~35.0重量%の範囲、好ましくは11.0~32.5重量%の範囲、より好ましくは12.0~30.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶性画分(SF)含有量と、
少なくとも2.0dl/g、好ましくは2.3~4.5dl/gの範囲、より好ましくは2.5~4.3dl/gの範囲の、DIN ISO1628/1に従って135℃でデカリン中で測定された前記可溶性画分の固有粘度(iV(SF))と
を有し、
前記組成物は、少なくとも9.0g/10分、好ましくは9.5~100g/10分、より好ましくは10.0~75g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)を有する、組成物。
【請求項2】
EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO178に従って決定された、800~1300MPaの範囲、好ましくは850~1200MPaの範囲、より好ましくは865~1050MPaの範囲の曲げ弾性率(FM)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO179/eAに従って決定された、5.0~25.0kJ/mの範囲、好ましくは5.5~20.0kJ/mの範囲の23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
メルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)に関して以下の不等式を満たす、23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度を有する、請求項1に記載の組成物。
CNIS、23℃[kJ/m]>7.8[kJ/m]-0.17[kJ/m/g/10分]・MFR[g/10分]
(式中、
CNIS、23℃は、EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO179/eAに従って決定された、前記組成物の23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度であり、
MFRは、前記組成物のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)である。)
【請求項5】
EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO179/eAに従って決定された、1.7~5.0kJ/mの範囲、好ましくは1.9~4.0kJ/mの範囲の-20℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
VDA 278に従って決定された、100μg/g以下、好ましくは5~95μg/gの範囲、より好ましくは10~90μg/gの範囲の揮発性有機化合物(VOC)含有量、及び/又は
VDA 278に従って決定された、1100μg/g以下、好ましくは50~1050μg/gの範囲、より好ましくは80~1000μg/gの範囲のFOG含有量、及び/又は
厚さ2mmの圧縮成形プラークに対してDIN75201、方法Bに従って決定された、5.0mg以下、好ましくは0.5~4.5mgの範囲のフォギング量
という特性の1つ以上、好ましくは全てを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
最大5重量%、好ましくは最大2重量%、より好ましくは0重量%の量の追加のポリマー成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)は、
1.0~2.6未満dl/gの範囲、より好ましくは1.2~2.5dl/gの範囲の、DIN ISO1628/1に従って135℃でデカリン中で測定された結晶性画分の固有粘度(iV(CF))、
20.0~55.0重量%の範囲、好ましくは22.0~50.0重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定された可溶性画分のエチレン含有量(C2(SF))、
5.0~50g/10分、好ましくは5.2~45g/10分、より好ましくは5.4~40g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)、
5.0~50.0重量%、より好ましくは10.0~48.5重量%、更に好ましくは25.0~47.0重量%の量のエチレンに由来する単位、
50.0~95.0重量%、より好ましくは51.5~90.0重量%、更に好ましくは53.0~75.0重量%の量のプロピレンに由来する単位、
固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を使用して決定された、0.1~50ppmのリモネン含有量、及び/又は
800~1400MPa、好ましくは850~1200MPaの引張弾性率、及び/又は
4.0~8.5kJ/m、好ましくは5.0~8.0kJ/mの23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度(CNIS、23℃)、及び/又は
1.0~4.5kJ/m、好ましくは1.5~4.0kJ/mの-20℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度(CNIS、-20℃)
という特性の1つ以上、好ましくは全てを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記異相プロピレンコポリマー(B)は、
前記異相プロピレンコポリマー(B)の総重量に対して、65.0~90.0重量%の範囲、好ましくは67.5~89.0重量%の範囲、より好ましくは70.0~88.0重量%の範囲の量の、CRYSTEX QC分析に従って決定された結晶性画分(CF)、
1.2dl/g以下、好ましくは0.4~1.1dl/gの範囲の結晶性画分の固有粘度(iV(CF))、
定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定された、結晶性画分(CF)の総重量に対して、1.0重量%以下、好ましくは0~0.9重量%の範囲の結晶性画分のエチレン含有量(C2(CF))、
定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定された、可溶性画分(SF)の総重量に対して、14.0~29.0重量%、好ましくは17.0~26.0重量%の範囲、より好ましくは19.0~24.0重量%の範囲の可溶性画分のエチレン含有量(C2(SF))、及び/又は
EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO178に従って決定された、800~1500MPaの範囲、好ましくは850~1450MPaの範囲の曲げ弾性率、
定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定された、前記異相プロピレンコポリマー(B)の総重量に対して、2.0~5.5重量%の範囲、好ましくは2.5~5.0重量%の範囲の総エチレン含有量、
ISO3146(第3部、方法C2)に従ってDSCによって決定された、150~162℃の範囲、好ましくは152~160℃の範囲の融解温度、
ISO3146(第3部、方法C2)に従ってDSCによって決定された、110~130℃の範囲、好ましくは115~125℃の範囲の結晶化温度、
EN ISO1873-2に従って製造された射出成形試験片(80×10×4mm)に対してISO179/eAに従って決定された、2.5~15.0kJ/mの範囲、好ましくは3.0~12.0kJ/mの範囲の23℃でのシャルピーノッチ付き衝撃強度、
VDA 278に従って決定された、50μg/g以下、好ましくは40μg/g以下、より好ましくは35μg/g以下の揮発性有機化合物(VOC)含有量、及び/又は
VDA 278に従って決定された、300μg/g以下、好ましくは250μg/g以下、より好ましくは225μg/g以下のFOG含有量
という特性の1つ以上、好ましくは全てを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
第1重合反応器内でシングルサイト触媒系の存在下でプロピレンを重合させて、第1プロピレンポリマー画分を製造するステップa)と、
前記シングルサイト触媒系及び前記第1プロピレンポリマー画分を含む重合混合物を前記第1重合反応器から第2重合反応器に移送するステップb)と、
前記第2重合反応器内で前記シングルサイト触媒系の存在下でプロピレンを重合させて、第2プロピレンポリマー画分を製造するステップc)と、
前記シングルサイト触媒系、前記第1プロピレンポリマー画分及び前記第2プロピレンポリマー画分を含む重合混合物を前記第2重合反応器から第3重合反応器に移送するステップd)と、
前記第3重合反応器内でシングルサイト触媒系の存在下でプロピレン及びエチレンを重合させて、第3プロピレン-エチレンコポリマー画分を製造するステップe)と、
前記シングルサイト触媒系、前記第1プロピレンポリマー画分、前記第2プロピレンポリマー画分及び前記第3プロピレン-エチレンコポリマー画分を含む重合混合物を前記第3重合反応器から取り出すステップf)と、
前記第1プロピレンポリマー画分、前記第2プロピレンポリマー画分及び前記第3プロピレン-エチレンコポリマー画分を含む前記異相プロピレンコポリマー(B)を得るステップg)と、
5~50重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは12~40重量%の前記異相プロピレンコポリマー(B)を、50~95重量%、好ましくは55~90重量%、より好ましくは60~88重量%の前記混合プラスチックポリプロピレン/ポリエチレンブレンド(A)とブレンドするステップh)と
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項11】
前記シングルサイト触媒系は、
(i)以下の一般式(I)のメタロセン錯体と、
【化1】
(式中、
各Xは、独立してシグマ供与性配位子であり、
Lは、-R’C-、-R’C-CR’-、-R’Si-、-R’Si-SiR’-、-R’Ge-から選択される二価の架橋であり、ここで、各R’は、独立して、水素原子、又は、元素周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子若しくはフッ素原子を任意に含むC~C20-ヒドロカルビル基であり、あるいは、任意に2つのR’基は、一緒に環を形成することができ、
各Rは、独立して同じであるか又は異なってもよく、水素、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基、C7~20アリールアルキル、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基、又は、OY基であり、ここで、Yは、C1~10ヒドロカルビル基であり、任意に2つの隣接するR基は、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよく、
各Rは、独立して同じであるか又は異なってもよく、CH-R基であり、ここで、Rは、H、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状のC1~6アルキル基、C3~8シクロアルキル基、C6~10アリール基であり、
は、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基、C7~20アリールアルキル、C7~20アルキルアリール基若しくはC~C20アリール基であり、
は、C(R基であり、ここで、Rは、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基であり、
は、水素、又は、元素周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子を任意に含む脂肪族C~C20ヒドロカルビル基であり、
は、水素、又は、元素周期表の第14~16族からの1つ以上のヘテロ原子を任意に含む脂肪族C~C20ヒドロカルビル基であるか、あるいは
及びRは一緒に、n個(nは0~4である)のR10基で任意に置換された5員の飽和炭素環を形成することができ、
各R10は、同じであるか又は異なり、C~C20ヒドロカルビル基、又は、元素周期表の第14~16族に属する1つ以上のヘテロ原子を任意に含むC~C20ヒドロカルビル基であってもよく、
は、H、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基、又は、1~3つのR11基で任意に置換された、炭素原子数6~20のアリール基若しくはヘテロアリール基であり、
各R11は、独立して同じであるか又は異なってもよく、水素、直鎖状若しくは分岐鎖状のC~Cアルキル基、C7~20アリールアルキル、C7~20アルキルアリール基若しくはC6~20アリール基、又は、OY基であり、ここで、Yは、C1~10ヒドロカルビル基である。)
(ii)アルミノキサン共触媒と、
(iii)シリカ担体と
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~のいずれか一項に記載の組成物を含む、物品。
【請求項13】
自動車用物品又は包装物品である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
物品の製造のための配合物基材としての、請求項1~のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物の使用。
【請求項15】
請求項1~のいずれか一項に記載の組成物における異相プロピレンコポリマーの使用であって、前記異相プロピレンコポリマーは、
105~320g/10分、好ましくは107~300g/10分、より好ましくは110~280g/10分のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)と、
10.0~35.0重量%の範囲、好ましくは11.0~32.5重量%の範囲、より好ましくは12.0~30.0重量%の範囲の、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶性画分(SF)含有量と、
少なくとも2.0dl/g、好ましくは2.3~4.5dl/gの範囲、より好ましくは2.5~4.3dl/gの範囲の、DIN ISO1628/1に従って135℃でデカリン中で測定された前記可溶性画分の固有粘度(iV(SF))と
を有し、前記使用により、メルトフローレートMFR(230℃、2.16kg、ISO1133)及び曲げ弾性率を増加させ、前記組成物のVOC及びFOG含有量を減少させる、使用。
【国際調査報告】