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特表2024-542500金属有機フレームワークへのアミンの付加
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】金属有機フレームワークへのアミンの付加
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/41 20060101AFI20241108BHJP
   C07C 65/105 20060101ALI20241108BHJP
   C07C 211/14 20060101ALI20241108BHJP
   C07F 3/02 20060101ALN20241108BHJP
   C07F 13/00 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
C07C51/41
C07C65/105
C07C211/14
C07F3/02 Z
C07F13/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529939
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 US2022050744
(87)【国際公開番号】W WO2023096909
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】63/282,796
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(71)【出願人】
【識別番号】505477235
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アブニー, カーター ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ソ, ジュリー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チュアン, ウェンイン
(72)【発明者】
【氏名】コロス, ウィリアム ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ライブリー, ライアン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ピータース, アーロン ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】イヴァシコ, アンナ シー.
(72)【発明者】
【氏名】カペレウスキ, マシュー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ウエストン, サイモン シー.
【テーマコード(参考)】
4H006
4H048
4H050
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC90
4H048AA02
4H048AC90
4H048VA60
4H048VB10
4H050AA02
4H050AC90
4H050WB13
(57)【要約】
金属有機フレームワーク(MOF)組成物にアミンを付加するための方法が提供される。一部の態様では、本方法は、MOFを合成するために使用される溶液または合成溶液中でアミンを付加することを可能にし得る。このような態様では、内在するアミン付加されていないMOF組成物を最初に分離し乾燥させることを必要とすることなく、アミン付加されたMOFを形成することができる。他の態様では、MOFを水またはアルコールなどのプロトン性溶媒中、好適なアミンに曝露することによって、既存のMOF組成物にアミンを付加することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン付加された金属有機フレームワーク組成物を作製する方法であって、前記方法は、
溶媒中に複数の固体試薬を溶解させて、合成溶液を用意する工程であって、前記複数の固体試薬が、少なくとも1つの金属塩および少なくとも1つの有機リンカーを含み、前記複数の固体試薬が、塩基または緩衝剤のうちの少なくとも1つを含む、工程、
前記合成溶液を加熱して、金属有機フレームワークを含む中間生成物混合物を形成する工程、および
前記中間生成物混合物に1種または複数種のポリアミンを添加して、アミン付加された金属有機フレームワークを形成する工程であって、前記1種または複数種のポリアミンの添加後に、前記中間生成物混合物中の前記溶媒が、50体積%またはそれを超える水、アルコールまたはこれらの組合せ物を含む、工程
を含み、
前記金属有機フレームワークが、前記少なくとも1つの金属塩の前記金属および前記有機リンカーを含む、方法。
【請求項2】
前記合成溶液が、40体積%もしくはそれを超える水を含むか、または前記溶媒が、99体積%もしくはそれを超える水を含むか、またはこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機リンカーが、多環ジサリチレート有機リンカーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多環ジサリチレート有機リンカー中の複数の環が、サリチレート官能基を含むか、または前記多環ジサリチレート有機リンカー中の複数の環が、ビフェニル連結、ビニル連結およびアルキル連結のうちの少なくとも1つによって接続されているか、または前記リンカーが、4,4’-ジヒドロキシ-[1,1’-ビフェニル]-3,3’-ジカルボン酸であるか、またはこれらの組合せである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属有機フレームワークが、式:M (A)(式中、Mは、金属陽イオンを含み、Aは、多環ジサリチレート有機リンカーを含む)のものであるか、または
前記金属有機フレームワークが、式:M (2-x)(A)(式中、MおよびMは、金属陽イオンを含み、xは、0~2の範囲であり、Aは、多環ジサリチレート有機リンカーを含む)のものである、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
およびMが、異なる金属元素を含むか、またはAが、複数の多環ジサリチレート有機リンカーを含むか、またはMおよびMのうちの少なくとも1つが、二価金属イオンを含むか、またはこれらの組合せである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記中間生成物混合物が、50体積%またはそれを超える水、アルコールまたはこれらの組合せ物を含み、前記アルコールが、エタノール、イソプロピルアルコールまたはこれらの組合せ物を必要に応じて含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記合成溶液が、50体積%またはそれを超える水、アルコールまたはこれらの組合せ物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1種または複数種のポリアミンが、ジアミン、テトラアミンまたはこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの金属塩が、金属酸化物を含み、前記金属酸化物が、前記塩基または緩衝剤のうちの少なくとも1つの少なくとも一部分を含むか、または前記少なくとも1つの金属塩が、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩もしくはこれらの組合せを含み、前記少なくとも1つの金属塩が、前記塩基または緩衝剤のうちの少なくとも1つの少なくとも一部分を含むか、またはこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記合成溶液が、溶媒1リットルあたり2.1モルまたはそれを超える合計濃度の金属とリンカーを含むか、または前記複数の固体試薬が、前記合成溶液の重量の0.01重量%~40重量%を構成する、またはこれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記塩基が有機塩基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記合成溶液は、前記少なくとも1つの金属塩に由来する金属に対して前記少なくとも1つのリンカーを、0.20~0.60のモル比で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記合成溶液が分散固体をさらに含み、前記分散固体が、前記複数の固体試薬に由来する1つまたはそれより多くの固体試薬を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の固体試薬が、複数の金属塩を含み、前記複数の金属塩が、少なくとも1つのマグネシウム塩および少なくとも1つのマンガン塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記金属有機フレームワークが、MOF-274、EMM-67またはこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記合成溶液が、50℃~175℃の間に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
アミン付加された金属有機フレームワーク組成物を作製する方法であって、前記方法は、
洗浄溶媒を使用して、多環ジサリチレート有機リンカーを含む金属有機フレームワークを洗浄して、洗浄済み金属有機フレームワークを形成する工程であって、前記洗浄溶媒が、90体積%またはそれを超える1種または複数種のプロトン性溶媒を含み、前記洗浄が、前記金属有機フレームワークを前記洗浄溶媒に2回またはそれより少ない回数、曝露することを含む、工程、および
付加溶液において、前記洗浄済み金属有機フレームワークの少なくとも一部分の懸濁液を形成することにより、前記洗浄済み金属有機フレームワークの前記少なくとも一部分を前記付加溶液に曝露する工程であって、前記付加溶液が、1種または複数種のプロトン性溶媒および1種または複数種のポリアミンを含む、工程
を含み、
前記付加溶液が、50体積%またはそれを超える水、アルコールまたはこれらの組合せ物を含む、方法。
【請求項19】
溶媒中に複数の固体試薬を溶解させて、合成溶液を用意する工程であって、前記複数の固体試薬が、少なくとも1つの金属塩および少なくとも1つの有機リンカーを含み、前記複数の固体試薬が、塩基または緩衝剤のうちの少なくとも1つを含む、工程、
前記合成溶液を加熱して、前記金属有機フレームワークを含む中間生成物混合物を形成する工程、
前記中間生成物混合物から前記金属有機フレームワークを分離する工程、および
前記分離した金属有機フレームワークを乾燥させる工程
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記洗浄溶液が、前記付加溶液中の前記1種または複数種のプロトン性溶媒とは異なる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記合成溶液が分散固体をさらに含み、前記分散固体が、前記複数の固体試薬に由来する1つまたはそれより多くの固体試薬を含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、特許協力条約の第8条の下、2021年11月24日出願の米国仮特許出願第63/282,796号に基づく利益および優先権を主張するものであり、この米国仮特許出願の全内容が、あたかも完全に再度主張されているかのごとく、参照により完全に組み込まれる。
【0002】
分野
金属有機フレームワーク材料へアミン含有官能基を付加するための方法が提供される。
【背景技術】
【0003】
背景
金属有機フレームワーク(MOF)は、様々な用途に使用する可能性があり得る、比較的新しい材料である。可能性のある用途の1つの群は、CO収着のための材料などの、収着材料としてのMOFの使用に関するものである。MOFの高い表面積および細孔構造は、このような収着用途において利点をもたらす可能性があり得る。
【0004】
MOF材料の収着能を増強するための1つの選択肢は、収着特性の増強および/または目標とする収着特性を実現する官能基をMOF材料に付加することである。例えば、増大させた収着能、および/またはグループV型の収着等温線などの好都合な型の等温線を有する、アミン付加されたMOF材料を得るために、いくつかのタイプのMOF構造にジアミン(または他のポリアミン)官能基を付加することができる。不運なことに、MOF材料にアミンを付加するための従来の方法は、MOF材料を、有機溶媒中、高温でアミン含有化合物と反応させることを一般的に含む。このような方法は、1つには、多量のそのような有機溶媒の取り扱いに伴う安全性の懸念もあるために、商業的生産のためのスケールアップを難しくし得る。特別な取り扱いを必要とする有機溶媒の使用を回避することができる、アミン付加されたMOF材料を形成するための合成法を持つことが望ましいであろう。
【0005】
Babaei et. al. (J. Chem Eng. Data (2018), Vol. 63, 1657 - 1662)による学術論文は、MOF MIL-100およびMIL-101のp-フェニレンジアミンによるアミン官能基化を記載している。まず、合成混合物を使用して、MIL-100またはMIL-101を形成する。MIL-100は、合成混合物から固体として回収し、アセトンおよび脱イオン水で洗浄し、次に、空気中、周囲温度で乾燥させた。MIL-101は、合成混合物からろ過によって回収し、次に、真空下で乾燥させた。得られた乾燥後の粉末を、次に、ジメチルホルムアミドに溶解させ、未反応リンカーを除去し、次いでろ過し、エタノールで洗浄し、次に、真空下343Kで乾燥させた。乾燥させた結晶性MOFが形成した後、MOF材料の試料を10%のp-フェニレンジアミンのエタノール溶液に添加し、次いで、12時間373Kで還流することによって、アミンを付加した。次に、付加したアミンを含むMOF組成物をろ過によって回収し、エタノールで洗浄して、室温で乾燥させた。
Xian et. al. (Chem. Eng. Journal, Vol. 280 (2015) 363-369)による学術論文は、ZIF-8をポリエチレンイミンに含浸させることを記載している。ZIF-8の形成後、ZIF-8粉末を真空下、423Kに12時間加熱して、水を除去した。次に、ポリエチレンイミンのメタノール溶液を、乾燥させたZIF-8粉末に滴下により添加した。
米国特許第10,780,388号は、MOFのCO収着挙動を記載しており、これは、(2-アミノメチル)ピペリジンなどの環式ジアミンがMOF組成物に付加されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第10,780,388号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Babaei et. al. (2018), J. Chem Eng. Data, Vol. 63, 1657-1662
【非特許文献2】Xian et. al. (2015), Chem. Eng. Journal, Vol. 280, 363-369
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
要約
一態様では、アミン付加された金属有機フレームワーク組成物を作製する方法が提供される。本方法は、溶媒中に複数の固体試薬を溶解させて、合成溶液を用意する工程を含む。複数の固体試薬は、少なくとも1つの金属塩および少なくとも1つの有機リンカーを含むことができる。複数の固体試薬は、塩基または緩衝剤のうちの少なくとも1つを含むことができる。少なくとも1つの金属塩は、塩基または緩衝剤のうちの少なくとも一部分として働くことができることが留意される。本方法は、合成溶液を加熱して、金属有機フレームワークを含む中間生成物混合物を形成する工程をさらに含む。金属有機フレームワークは、少なくとも1つの金属塩の金属および有機リンカーを含むことができる。さらに、本方法は、中間生成物混合物に1種または複数種のポリアミンを添加して、アミン付加された金属有機フレームワークを形成する工程を含む。必要に応じて、1種または複数種のポリアミンを添加後、中間生成物混合物中の溶媒は、50体積%またはそれを超える水、アルコールまたはこれらの組合せ物に相当し得る。
【0009】
別の態様では、アミン付加された金属有機フレームワーク組成物を作製する方法が提供される。本方法は、洗浄溶媒を使用して、多環ジサリチレート有機リンカーを含む金属有機フレームワークを洗浄して、洗浄済み金属有機フレームワークを形成する工程を含む。洗浄溶媒は、90体積%またはそれを超える1種または複数種のプロトン性溶媒を含有することができる。洗浄は、金属有機フレームワークを洗浄溶媒に2回またはそれより少ない回数、曝露することに相当し得る。さらに、本方法は、付加溶液中で、洗浄済み金属有機フレームワークの少なくとも一部分の懸濁液を形成することにより、洗浄済み金属有機フレームワークの少なくとも一部分を付加溶液に曝露する工程を含む。付加溶液は、1種または複数種のプロトン性溶媒および1種または複数種のポリアミンを含むことができる。付加溶液は、50体積%またはそれを超える水、アルコールまたはこれらの組合せ物を含有することができる。必要に応じて、洗浄溶液は、付加溶液中の1種または複数種のプロトン性溶媒とは異なり得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、EMM-67を形成するために使用された中間生成物混合物中でEMM-67にアミンを付加することによって形成されたEMM-44のPXRDデータを示す。
【0011】
図2図2は、中間生成物混合物から回収した後の、図1に示されているEMM-44のH NMRデータを示す。
【0012】
図3図3は、乾燥後の、図1に示されているEMM-44のH NMRデータを示す。
【0013】
図4図4は、さらに乾燥させた後の、図1に示されているEMM-44のH NMRデータを示す。
【0014】
図5図5は、図4に示されているEMM-44のCO吸着等温線を示す。
【0015】
図6図6は、中間生成物混合物中でEMM-67にアミンを付加することによって形成されたEMM-53(3-4-3)のH NMRデータを示す。
【0016】
図7図7は、中間生成物混合物中でEMM-67にアミンを付加することによって形成されたEMM-53(3-2-3)のH NMRデータを示す。
【0017】
図8図8は、先に合成されたEMM-67にアミンを付加することによって形成されたEMM-44のPXRDデータを示す。
【0018】
図9図9は、図8に示されているEMM-44のH NMRデータを示す。
【0019】
図10図10は、図9に示されているEMM-44のCO吸着等温線を示す。
【0020】
図11図11は、先に合成されたEMM-67にアミンを付加することによって形成されたEMM-53のPXRDデータを示す。
【0021】
図12図12は、図11に示されているEMM-53のH NMRデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
様々な態様では、金属有機フレームワーク(MOF)組成物にアミンを付加するための方法が提供される。一部の態様では、本方法は、MOFを合成するために使用される溶液または合成溶液中でアミンを付加することを可能にし得る。このような態様では、内在するアミン付加されていないMOF組成物を最初に分離し乾燥させることを必要とすることなく、アミン付加されたMOFを形成することができる。他の態様では、MOFを水またはアルコールなどのプロトン性溶媒中、好適なアミンに曝露することによって、既存のMOF組成物にアミンを付加することができる。これによって、アミン付加するための、トルエンまたはヘキサンなどの従来の溶媒の使用を回避することができる。
【0023】
金属有機フレームワークとは、適切な条件下、金属イオン前駆体(単数または複数)を多座リンカー(単数または複数)と組み合わせることによって形成され得る材料のことである。別個の塩基または緩衝剤も、必要に応じて存在することができ、あるいはこれに代えて、金属イオン前駆体(金属酸化物など)は、MOF形成を可能にするほど十分な塩基性をもたらすことができる。金属イオン前駆体およびリンカーを混合し、必要に応じて、MOFを形成する反応を促進するために加熱することができる。従来、MOF材料の形成後、MOFは、合成混合物(合成溶液など)から分離されて、次に乾燥させられて、結晶性MOF材料が回収される。
【0024】
MOF材料のいくつかの例は、多環ジサリチレートリンカーを使用して形成されるMOFである。MOF-274は、このような材料の一般的なファミリーに相当する。MOF-274の例の1つは、リンカーHdobpdc(4,4’-ジヒドロキシ-1,1’-ビフェニル-3,3’-ジカルボン酸)ベースのMOF材料である、EMM-67である。様々な金属または金属の組合せを使用して、MnおよびMgの混合物などのEMM-67を形成することができる。
【0025】
MOF-274は、COなどの様々な化合物に対する収着剤として作用することができるが、MOF-274材料へのアミンの付加によって、収着能が増大し、かつ/または収着等温線が改変された組成物を形成することができる。付加したアミンは、ジアミン、テトラアミンまたは別のタイプのポリアミンに相当し得る。従来、最初にMOF材料を合成し、分離し、次にMOF材料を乾燥させて、少なくとも部分的に結晶性のMOF(場合により、様々な不純物を含有する)を回収することによるMOF材料に、このようなアミンが付加される。乾燥させた結晶性MOFは、次に、トルエンまたはヘキサンなどの溶媒の存在下で、ポリアミンに曝露される。
【0026】
従来、アミン付加は、MOFの形成に使用された合成溶液からMOF材料を分離した後に、MOF材料に対して行う。MOF形成に使用される慣例的な溶媒は、アミン付加過程を妨害すると従来考えられている。例えば、多環ジサリチレートリンカーをベースとするMOFの場合、MOFを形成するための慣例的な合成混合物は、典型的には、半分を超えて有機溶媒を含むが、水などのプロトン性溶媒をわずか30体積%またはそれ未満しか含まない。さらに、従来の合成混合物に使用される溶媒に関しては、合成溶液からのMOF材料の分離は、付加のためのアミンとMOFを接触させる前にMOFが完全に形成されることを確実にする一助となり得ると従来考えられている。
【0027】
様々な態様では、付加したアミンを伴うMOFは、最初に、内在するアミン付加されていないMOF構造体を分離して乾燥させる必要なしに、MOFの合成に使用される合成溶液中で生成することができることが発見された。特に、MOFを形成するための合成溶液が、プロトン性溶媒をベースとする合成溶液に相当する場合、付加のためのアミン前駆体を、中間生成物混合物に加えて(MOF形成後であるが、溶液からMOFを回収する前に)、アミン付加されたMOF組成物の形成を可能にし得ることが発見された。このような態様では、MOFを形成するための合成溶液の混合および何らかの必要に応じた加熱後に、その溶液を、ほぼ周囲温度などの目標温度(10℃~80℃の間の温度など)に冷却することができる。次に、MOFへの付加のためのアミンは、この段階で溶液に添加され得る。アミンの添加により好都合である場合には、より高い目標温度を選択することができることが留意される。アミンの添加後、溶液(アミンを含む)を混合し、次いで、その溶液を静置させる(必要に応じて、さらに加熱する)ことができる。付加したアミンを含むMOFは、次に、溶液から結晶構造体(場合により、不純物を含有する)として回収することができる。付加したアミンを含むMOFは、結晶化/回収の間に、付加したアミンがさらに存在するにも関わらず、結晶構造体として回収することができることが発見された。
【0028】
プロトン性溶媒をベースとする最初の合成溶液から、アミン付加されたMOFを直接形成することができることにより、様々な利点が提供され得ることが留意される。まず、MOF組成物を乾燥させ、結晶化し、次いで、付加のためのアミンを含有するプロトン性溶媒へその後に添加する必要がないので、いくつかの製造ステップを回避することができる。さらに、プロトン性溶媒をベースとする溶液中で、アミンを付加することができ、同時に、ヘキサンまたはトルエンなどの非極性有機溶媒を添加する必要性を低減すること、最小限に抑えること、またはなくすことができる。合成条件を単純にすることに加え、有機溶媒の使用の回避は、アミン付加されたMOF組成物の回収後の溶液の残り部分の取り扱いをやはり単純にすることができる。合成溶液への直接のアミノ化の別の利点は、中間体MOFの分離ステップおよび乾燥ステップが回避されるだけではなく、典型的には分離ステップと乾燥ステップとの間に行われる、時間を要する複数の溶媒洗浄/浸漬ステップも回避されることである。
【0029】
様々な追加的な態様では、付加したアミンを伴うMOFは、最初の合成溶液から先に分離されたMOFへのアミンの添加によって、プロトン性溶媒環境中で形成することができる。アルコールなどのプロトン性溶媒は、付加したアミンを含むMOF組成物からアミンをストリップすることが公知であるが、アミンが、このようなプロトン性溶媒中で、MOF組成物に付加され得ることを発見した。さらに、プロトン性溶媒中でのアミン付加を使用して、アミンを付加する前に必要とされるMOFを洗浄する溶媒量を低減するまたは最小限に抑えると同時に、アミン添加を可能にし得ることをさらに発見した。
中間生成物混合物中でのアミン付加
【0030】
様々な態様では、最初にMOF組成物を分離して乾燥させる必要なしに、MOF組成物を形成するために使用される溶液中で、アミンをMOF組成物に付加することができることが発見された。これによって、例えば、合成溶液中の溶媒の最大で実質的にすべてが水、アルコールまたはこれらの組合せ物に相当するなど、溶媒の50体積%もしくはそれを超える体積%、または70体積%もしくはそれを超える体積%、または90体積%もしくはそれを超える体積%が、水、アルコールまたはこれらの組合せ物に相当する合成溶液中でMOFが形成されることが達成され得る。
【0031】
アミン付加を行うために、溶媒の50体積%またはそれを超える体積%(例えば、最大で実質的にすべてなど)が、水、アルコールまたはこれらの組合せ物に相当する、合成溶液を形成することができる。合成溶液はまた、有効量の金属前駆体(単数または複数)、リンカーならびに必要に応じて塩基および/または緩衝剤を含むことができる。次に、合成溶液を混合し、そして/または必要に応じて、金属およびリンカーをベースとするMOFの形成を可能にするほど十分な時間、加熱することができる。溶液中でのMOF材料の形成後、この溶液は、中間生成物混合物と称され得る。中間生成物混合物中のMOF材料は、結晶性固体などの、沈殿および/または懸濁した固体の形態で存在する場合があることに留意されたい。
【0032】
合成におけるこの時点で、中間生成物混合物から生じたMOFを分離する代わりに、MOFへの付加のための1種または複数種のアミンを溶液に添加することができる。次に、アミンを含む中間生成物混合物を混合し、次いで、中間生成物混合物(アミンを含む)を追加の時間、目標温度に維持することができる。次に、付加したアミンを含むMOF組成物を溶液から回収することができる。
【0033】
幅広い範囲の溶液濃度に対して、中間生成物混合物にアミンを添加することによって、アミンをMOF材料に付加することができる。態様に応じて、MOF材料を形成するための最初の合成溶液は、0.01重量%~40重量%または0.01重量%~20重量%または0.1重量%~40重量%または0.1重量%~35重量%または0.1重量%~30重量%または0.1重量%~25重量%または0.1重量%~20重量%または1.0重量%~40重量%または1.0重量%~35重量%または1.0重量%~30重量%または1.0重量%~25重量%または1.0重量%~20重量%または10重量%~40重量%または10重量%~30重量%の範囲の固形分を有することができる。加えてまたはその代わりに、MOF材料の形成後、得られる中間生成物混合物は、0.01重量%~40重量%または0.01重量%~20重量%または0.1重量%~40重量%または0.1重量%~35重量%または0.1重量%~30重量%または0.1重量%~25重量%または0.1重量%~20重量%または1.0重量%~40重量%または1.0重量%~35重量%または1.0重量%~30重量%または1.0重量%~25重量%または1.0重量%~20重量%または10重量%~40重量%または10重量%~30重量%の範囲の固形分を有することができる。この議論では、合成溶液または中間生成物混合物中の溶媒は、20℃および100kPa-aにおいて液体である合成溶液/中間生成物混合物の一部分と定義される。
【0034】
いくつかの有機化合物は、溶媒環境の一部と溶媒環境中のpHを制御するための弱塩基との両方として働く可能性があり得る、弱塩基に相当することが留意される。このような有機化合物が20℃および100kPa-aにおいて液体である範囲で、このような有機化合物は、溶媒の一部と考えられる。金属有機フレームワーク組成物の合成反応に関与する固体試薬は、溶媒環境中の水の体積%を決定するとき、溶媒の一部とはみなされないことがさらに留意される。例えば、水酸化ナトリウムの水溶液が、合成溶液中の塩基として使用される場合、水酸化ナトリウム自体は、溶媒の一部とはみなされない。水酸化ナトリウム溶液に由来する水だけが、溶媒の一部としてカウントされる。最後に、付加のためのアミンが20℃および100kPa-aにおいて液体に相当する範囲で、このようなアミン試薬は、中間生成物混合物に添加されたとき、溶媒の一部としてカウントされない。しかし、1種または複数種のポリアミンは、室温で固体であってもよい。
【0035】
アミンを添加する前の合成溶液および/または中間生成物混合物において、溶媒は、例えば、溶媒の最大で実質的にすべて(すなわち、約100体積%)が、水、アルコールまたはこれらの組合せ物に相当するなど、50体積%もしくはそれを超える、または60体積%もしくはそれを超える、または70体積%もしくはそれを超える、または80体積%もしくはそれを超える、または90体積%もしくはそれを超える水、アルコールまたはこれらの組合せ物に相当し得る。一部の態様では、アミンを添加する前の合成溶液/中間生成物混合物における溶媒は、例えば、溶媒の最大で実質的にすべて(すなわち、約100体積%)が水に相当するなど、50体積%もしくはそれを超える、または60体積%もしくはそれを超える、または70体積%もしくはそれを超える、または80体積%もしくはそれを超える、または90体積%もしくはそれを超える水に相当し得る。他の態様では、アミンを添加する前の合成溶液/中間生成物混合物における溶媒は、例えば、溶媒の最大で実質的にすべて(すなわち、約100体積%)がアルコールに相当するなど、50体積%もしくはそれを超える、または60体積%もしくはそれを超える、または70体積%もしくはそれを超える、または80体積%もしくはそれを超える、または90体積%もしくはそれを超えるアルコールに相当し得る。アルコールの例としては、以下に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、および/または4個もしくはそれ未満の炭素を含む他のアルコール(Cアルコール)が挙げられる。
【0036】
溶媒の50体積%またはそれを超える体積%が水、アルコールまたはこれらの組合せ物である溶液からMOF材料を形成した後、中間生成物混合物の温度は、アミン付加を行うために、目標温度に調節され得る。アミン付加は、任意の好都合の温度で行うことができる。周囲温度(約20℃)は、一部の態様では好適であり得る。20℃および100kPa-aにおいて固体であるアミン試薬の場合、中間生成物混合物とアミン試薬の両方の温度を、20℃より高い温度に調節し、その結果、アミンを液体試薬として添加して混合することができることが有利となることがある。
【0037】
次に、アミン試薬を中間生成物混合物に添加して、アミンの付加を可能にすることができる。一部の態様では、溶媒は、MOF形成後の中間生成物混合物中に既に存在するので、アミン試薬は、さらなる溶媒を添加することなく、添加され得る。他の態様では、さらなる溶媒が、アミン試薬と共に添加され得る。さらなる溶媒がアミン試薬と共に添加される場合、アミンの添加後に、例えば、組み合わせた溶媒の最大で実質的にすべて(すなわち、約100体積%)など、中間生成物混合物およびアミン試薬と一緒に添加されたさらなる溶媒に由来する組み合わせた溶媒の50体積%もしくはそれを超える体積%、または60体積%もしくはそれを超える体積%、または70体積%もしくはそれを超える体積%、または80体積%もしくはそれを超える体積%、または90体積%もしくはそれを超える体積%が、水、アルコールまたはこれらの組合せ物に相当し得る。加えてまたはその代わりに、さらなる溶媒がアミン試薬と共に添加される場合、例えば、さらなる溶媒の最大で実質的にすべて(すなわち、約100体積%)など、さらなる溶媒の50体積%もしくはそれを超える体積%、または60体積%もしくはそれを超える体積%、または70体積%もしくはそれを超える体積%、または80体積%もしくはそれを超える体積%、または90体積%もしくはそれを超える体積%が、水、アルコールまたはこれらの組合せ物に相当し得る。
【0038】
一部の態様では、中間生成物混合物へのアミンの添加により、溶液中で5体積%~35体積%または10体積%~30体積%または15体積%~30体積%のアミン濃度となり得る。アミンと一緒に導入されるいずれのさらなる溶媒も、中間生成物混合物への添加後にアミンの体積%を決定する際に含まれることが留意される。
【0039】
中間生成物混合物にアミン(および必要に応じた溶媒)を添加した後に、中間生成物混合物を混合することができ、その結果、アミン試薬が、中間生成物混合物全体に分布させられる。次に、中間生成物混合物は、付加したアミンを伴うMOF材料の形成を可能とするために、一定時間維持され得る。付加したアミンを伴うMOF材料の形成のためのこの時間は、0.1時間~72時間に相当し得る。アミン付加されたMOF材料の形成のための時間中、混合が必要に応じて行われ得ることが留意される。
【0040】
アミン付加された材料の形成後、アミン付加された材料は、任意の便利な方法によって、溶液から回収することができる。好適な回収方法は、以下に限定されないが、遠心分離、ろ過、真空乾燥または別の便利な方法を含むことができる。
【0041】
付加したアミンを伴うMOF材料を形成するために、様々なタイプのアミンを使用することができる。一般的に、アミンは、ジアミン、テトラアミン、または1分子あたり2つもしくはそれより多いアミン官能基を含む他のアミンに相当し得る。付加したアミンを伴うMOF材料を形成する際に使用することが公知である任意の好都合なアミンを、本明細書に記載されている方法と共に使用することができる。付加することができるアミンの例としては、以下に限定されないが、2-アミノメチルピペリジン、p-フェニレンジアミンおよびN,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)が挙げられる。N,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)が、テトラアミンの一例であることが留意される。
プロトン性溶液中でのMOF材料へのアミン付加
【0042】
様々な追加的な態様では、プロトン性溶液は、MOFを形成するために使用される溶液から先に分離されたMOF材料にアミンを付加するために使用することもできる。MOF材料は、最初の合成溶液から分離されるので、MOFを、付加するのに十分な濃度のアミンを含有する溶媒に添加すること/同溶媒中に懸濁させることができる。
【0043】
アミンを含有する溶液は、プロトン性溶媒中のアミンの溶液に相当し得る。アミンの濃度は、溶液の5.0体積%~35体積%、または10体積%~30体積%、または15体積%~30体積%に相当し得る。プロトン性溶液は、例えば、最大で100体積%など、50体積%もしくはそれを超える、または60体積%もしくはそれを超える、または70体積%もしくはそれを超える、または80体積%もしくはそれを超える、または90体積%もしくはそれを超える水、アルコールまたはこれらの組合せ物を含有することができる。MOF材料の添加後、MOF材料は、MOF材料にアミン溶液を加えた重量の40重量%またはそれ未満に相当し得る。
【0044】
付加したアミンを伴うMOF材料を形成するために、様々なタイプのアミンを使用することができる。一般的に、アミンは、ジアミン、テトラアミン、または1分子あたり2つもしくはそれより多いアミン官能基を含む他のアミンに相当し得る。付加したアミンを伴うMOF材料を形成する際に使用することが公知である任意の好都合なアミンを、本明細書に記載されている方法と共に使用することができる。付加することができるアミンの例としては、以下に限定されないが、2-アミノメチルピペリジン、p-フェニレンジアミンおよびN,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)が挙げられる。
【0045】
アミン溶液にMOF材料を添加した後、この溶液を混合し、次いで、付加したアミンを伴うMOF材料の形成を可能とするために、溶液を一定時間維持することができる。付加したアミンを伴うMOF材料の形成のためのこの時間は、0.1時間~72時間に相当し得る。アミン付加された材料の形成後、アミン付加された材料は、任意の便利な方法によって、溶液から回収することができる。好適な回収方法は、以下に限定されないが、遠心分離、ろ過、真空乾燥または別の便利な方法を含むことができる。
【0046】
アミン溶液にMOF材料を添加する前に、MOF材料は、必要に応じて、例えばアルコールでの洗浄など、プロトン性溶媒中で洗浄され得る。必要に応じて、MOF材料は、このような洗浄後に乾燥させることができる。
【0047】
一部の態様では、アミン付加のためのプロトン性溶液の使用は、アミン付加されたMOFを調製するために必要な洗浄ステップ数および/もしくは洗浄溶媒の量を低減するまたは最小限に抑えるという利点をもたらすことができることが発見された。特に、アミン付加のためのプロトン性溶液を使用することによって、アミン付加ステップは、MOF材料中に取り込まれるまたは捕捉される合成溶液物質を除去するための洗浄ステップとして使用され得る。
【0048】
従来のMOF合成法では、合成溶液からMOF材料を合成した後、生じたMOF材料を分離して乾燥させ、いかなる過剰な溶媒も除去する。次に、典型的には、MOF材料を最初の有機ベースの合成溶液環境から分離した後に、MOFは複数回洗浄される。複数の洗浄ステップは、典型的には、有機溶媒を伴う少なくとも1回の洗浄ステップを含む。これらの従来の洗浄ステップの目的は、MOF材料から使用前に未反応物質および/または不純物を除去することである。従来、アミン付加を行う際に、複数の洗浄ステップを使用して未反応物質/不純物を除去し、これは、MOFへのアミン付加を試みる前に行われる。次に、アミン付加が行われる。
【0049】
様々な態様では、非プロトン性有機溶媒に対応する少なくとも1つの洗浄ステップを含めた複数の洗浄ステップを使用する代わりに、アミン付加は、MOF材料に対する最終洗浄ステップの一部として行うことができることが発見された。このような態様では、MOF材料を合成して乾燥させた後に、MOF材料は、実質的にプロトン性の溶媒を使用して1回または2回洗浄され得る。例えば、MOF材料は、溶媒の90体積%またはそれを超える体積%が、水、エタノールおよび/またはイソプロピルアルコールなどの1種または複数種のプロトン性溶媒に相当する溶媒中で洗浄され得る。次に、MOF材料に対する最終洗浄は、洗浄ステップとアミン付加ステップの両方に相当し得、付加のためのアミンも含むプロトン性溶液に相当する洗浄溶液を用い得る。後続のアミン付加に必要な別個の洗浄ステップの数を低減することまたは最小限に抑えることに加え、最終洗浄溶液としてアミン付加溶液を使用することにより、アミン付加を行う前のMOF材料の乾燥の必要性もまた回避することができる。
定義
【0050】
本明細書における詳細な説明および特許請求の範囲内の数値はすべて、表示値に付く「約」または「ほぼ」によって修飾されており、当業者によって予想される実験誤差および変動が考慮される。
【0051】
特に示さない限り、本発明は、具体的な化合物、構成成分、組成物、反応物、反応条件、配位子、触媒構造、メタロセン構造などに限定されず、したがって、別段の指定がない限り、変わり得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0052】
本開示を目的として、以下の定義が適用される。
【0053】
本明細書において使用する場合、本明細書において使用される「ある1つの(a)」および「その(the)」という用語は、複数および単数を包含すると理解される。
【0054】
本明細書において使用する場合、用語「ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)およびケイ素(Si)、ホウ素(B)およびリン(P)を含む。
【0055】
用語「多環」は、本明細書において、2つまたはそれより多い環構造を含む化合物を指すために定義される。環は、ナフタレン型構造などの縮合環、ビフェニル連結などの、原子を共有せずに一つに結合した環、またはメチル連結によって分かれた環などの、1個もしくは複数個の原子によって分かれた環などに相当し得る。これは、単環化合物とは対照的である。多環化合物は、芳香族多環、非芳香族多環(飽和環、および/または芳香族性をもたらすには不十分な数の二重結合を含む環など)、またはこれらの組合せを含むことができる。
【0056】
用語「アリール」は、特に明記しない限り、単環、または一つに縮合しているもしくは共有結合により連結されている多環であり得る、多不飽和芳香族置換基を意味する。一態様では、置換基は、1~11個の環、またはより詳細には1~3個の環を有する。用語「ヘテロアリール」とは、N、OおよびSから選択される1~4個のヘテロ原子を含有するアリール置換基(または環)を指し、ここで、窒素原子および硫黄原子は、必要に応じて酸化されており、窒素原子は、必要に応じて四級化されている。例示的なヘテロアリール基は、6員アジン、例えば、ピリジニル、ジアジニルおよびトリアジニルである。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残部に結合し得る。アリール基およびヘテロアリール基の非限定例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンゾイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルが挙げられる。上に明記したアリール環系およびヘテロアリール環系の各々に対する置換基は、下記の許容される置換基の群から選択される。
【0057】
本明細書において使用する場合、用語「アルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」は、表示される種の置換形態および無置換形態の両方を必要に応じて含むことができる。アリール基およびヘテロアリール基に対する置換基は、「アリール基置換基」と一般的に称される。前記置換基は、例えば、炭素またはヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、SiまたはB)を介して、ヘテロアリール核またはヘテロアレーン核に結合する基(この基としては、非限定的に、置換または無置換アルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、置換または無置換ヘテロシクロアルキル、--OR’、=O、=NR’、=N--OR’、--NR’R’’、--SR’、-ハロゲン、--SiR’R’’R’’’、--OC(O)R’、--C(O)R’、--CO.sub.2R’、--CONR’R’’、--OC(O)NR’R’’、--NR’’C(O)R’、--NR’--C(O)NR’’R’’’、--NR’’C(O).sub.2R’、--NR--C(NR’R’’R’’’).dbd.NR’’’’、--NR--C(NR’R’’)=NR’’’、--S(O)R’、--S(O)R’、--S(O)NR’R’’、--NRSOR’、--CNおよび、--R’、--、--CH(Ph)、フルオロ(C~C)アルコキシおよびフルオロ(C~C)アルキルが挙げられる)から、ゼロから芳香族環系上の空原子価(open valences)の総数までの範囲の数で、選択される。上で命名されている基はそれぞれ、アリール核またはヘテロアリール核に、直接結合しているか、またはヘテロ原子(例えば、P、N、O、S、SiまたはB)を介して結合しており、ここで、R’、R”、R’’’およびR’’’’は、水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換アリールおよび置換または無置換ヘテロアリールから好ましくは独立して選択される。本発明の化合物が1つ超のR基を含む場合、例えば、R基はそれぞれ、R’、R”、R’’’およびR’’’’基のうちの1つ超が存在するときの各R’基、各R”基、各R’’’基および各R’’’’基と同様に、独立して選択される。
【0058】
用語「アルキル」は、単独でまたは別の置換基の一部として、特に明記しない限り、直鎖もしくは分岐鎖もしくは環式炭化水素ラジカル、またはこれらの組合せを意味し、これらは、完全飽和、一不飽和または多不飽和であり得、指定される炭素原子数(すなわち、C~C10は、1~10個の炭素を意味する)を有する二価、三価および多価ラジカルを含むことができる。飽和炭化水素ラジカルの例としては、以下に限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルなどの同族体および異性体などの基が挙げられる。不飽和アルキル基は、1つもしくは複数の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、以下に限定されないが、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、ならびに高級の同族体および異性体が挙げられる。用語「アルキル」は、特に明記されていない限り、「ヘテロアルキル」などの、以下により詳細に定義されているアルキルの誘導体を必要に応じて含むことも意図されている。
【0059】
用語「ヘテロアルキル」は、単独でまたは別の用語と組み合わせて、特に明記しない限り、明記した数の炭素原子、ならびにO、N、SiおよびSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子からなる、安定な直鎖もしくは分岐鎖もしくは環式炭化水素ラジカル、またはこれらの組合せを意味し、窒素原子および硫黄原子は、必要に応じて酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は、必要に応じて四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、NおよびSおよびSiは、ヘテロアルキル基の内部位置のいずれかに位置していてもよく、アルキル基が分子の残りに結合している位置に位置していてもよい。例としては、以下に限定されないが、--CH--CH--O--CH、--CH--CH.--NH--CH、--CH--CH--N(CH)--CH、--CH--S--CH--CH、--CH--CH、--S(O)--CH、--CH2--CH--S(O)--CH、--CH=CH--O--CH、--Si(CH、--CH-CH=N--OCH、および-CH=CH--N(CH)--CHが挙げられる。例えば、--CH--NH--OCHおよび--CH--O--Si(CHなどの、最大で2個のヘテロ原子が連続していてもよい。同様に、用語「ヘテロアルキレン」とは、単独でまたは別の置換基の一部として、以下に限定されないが、--CH--CH--S--CH--CH--および--CH--S--CH--CH--NH--CH--によって例示されるような、ヘテロアルキルから誘導される二価ラジカルを意味する。ヘテロアルキレン基の場合、ヘテロ原子はまた、鎖の末端のいずれか一方または両方を占めることができる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。なおもさらに、アルキレン連結基およびヘテロアルキレン連結基の場合、連結基の配向は、連結基の式が記載されている方向によって暗示されているわけではない。例えば、式--COR’--は、--C(O)OR’と--OC(O)R’の両方を表す。
【0060】
本明細書において使用する場合、用語「リンカー」とは、1個または複数の金属に結合してMOFを形成する、1つまたは複数の有機分子を指す。
【0061】
本明細書において使用する場合、用語「配位子」は、ルイス塩基(電子ドナー)として機能することが可能な1つまたは複数の置換基を含む分子を意味する。一態様では、配位子は、酸素、リンまたは硫黄であり得る。一態様では、配位子は、1~10個のアミン基を含有するアミン(単数または複数)であり得る。配位子は、MOFが形成された後のMOFに結合することができる。
【0062】
用語「ポリアミン」とは、複数のアミン基を含む化合物を指す。ポリアミンの例は、ジアミンおよびテトラアミンである。
【0063】
用語「ハロ」または「ハロゲン」とは、単独でまたは別の置換基の一部として、特に明記しない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。
【0064】
記号「R」は、H、置換または無置換アルキル、置換または無置換ヘテロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリールおよび置換または無置換ヘテロシクロアルキル基から選択される置換基を表す、一般的な略語である。
【0065】
本明細書において使用する場合、用語「周期表」は、2015年12月付けの国際純正・応用化学連合(IUPAC)の元素周期表を意味する。
【0066】
用語「塩」は、本明細書において記載されている化合物に見出される具体的な配位子または置換基に応じて、酸または塩基の中和によって調製される化合物の塩を含む。本発明の化合物が比較的酸性の官能基を含有する場合、このような化合物の中性形態を、ニートでまたは好適な不活性溶媒中のどちらか一方で、十分な量の所望の塩基と接触させることによって、塩基付加塩を得ることができる。塩基付加塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩もしくはマグネシウム塩、または類似の塩が挙げられる。酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸または亜リン酸などのような無機酸から誘導されるもの、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的非毒性の有機酸から誘導される塩が挙げられる。本開示のある特定の具体的な化合物は、その化合物が塩基付加塩または酸付加塩のどちらかに変換されることを可能とする、塩基性官能基と酸性官能基の両方を含有する。塩の水和物もまた含まれる。
【0067】
1個または複数のキラル中心を有する本明細書に記載されている任意の化合物において、絶対立体化学が明示的に表示されていない場合、各中心は独立して、R配置もしくはS配置の中心またはこれらの混合物であり得ることが理解される。したがって、本明細書において提供される化合物は、鏡像異性体として純粋であってもよく、立体異性体混合物であってもよい。さらに、EまたはZと定義することができる幾何異性体を発生させる1つまたは複数の二重結合を有する本明細書に記載されているあらゆる化合物において、各二重結合は独立して、EもしくはZまたはこれらの混合物であり得ることが理解される。同様に、記載されているあらゆる化合物において、すべての互変異性体もまた含まれることが意図されることが理解される。
【0068】
さらに、本明細書において提供される化合物はまた、このような化合物を構成する原子の1個または複数において、原子同位体を非天然の比率で含有し得る。例えば、本化合物は、例えば、トリチウム(H)、ヨウ素-125(125I)または炭素-14(14C)などの放射性同位体により放射性標識されていてもよい。放射性であるか否かに関わらず、対象化合物のすべての同位体変化形態が本開示の範囲内に包含されることが意図されている。
【0069】
一部の必要に応じた態様では、脱酸素水が使用され得る。脱酸素水は、酸素含有率が、0.1wppmもしくはそれ未満、または0.01wppmもしくはそれ未満の水に相当する。水は、実質的に無酸素の雰囲気中(窒素ブランケット下など)、水に窒素ガスを通気することによって水をスパージするなどの、任意の便利な方法によって脱酸素化することができる。さらに一般的には、水と有機溶媒の混合物を脱酸素化するために、スパージ技法および/または他の脱酸素化技法を使用することができる。
金属有機フレームワーク材料の合成:高い水分および/または高い固体合成法
【0070】
アミン付加が中間生成物混合物(すなわち、MOF材料を形成するための合成溶液)中で行われる態様では、MOF材料は、40体積%またはそれを超える水(最大で100体積%など)を含む合成溶液を使用して形成することができる。このような合成溶液からMOF材料を形成することにより、中間生成物混合物からMOF材料を分離する前のアミン付加を可能にするのに十分な含有量のプロトン性溶媒を伴う中間生成物混合物がもたらされ得る。多環ジサリチレートリンカーに基づいたMOF材料は、40体積%またはそれを超える水を含む合成溶液を使用して形成され得るMOF材料の例である。
【0071】
一部の態様では、金属有機フレームワーク組成物の合成を行うための溶媒環境は、脱酸素水などの水に相当し得る。そのような態様では、水酸化ナトリウムなどの塩基を水性環境に添加して、水性環境のpHを制御することができる。加えてまたはその代わりに、水性環境のpHを制御するために、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩および/または金属酢酸塩に相当する金属試薬を使用することができる。
【0072】
他の態様では、溶媒環境は、水と有機溶媒との混合物に相当し得る。従来の有機溶媒に比べて安全な取り扱いに対する要件を低減するまたは最小限に抑えるCアルコールなどのアルコールが、使用され得る有機溶媒の例である。好適なアルコールの例として、エタノールおよびイソプロピルアルコールが挙げられるが、メタノール、ならびにプロパノールおよびn-ブタノールの異性体もまた好適であり得る。有機溶媒の他の例としては、テトラヒドロフランなどの他の酸素化溶媒が挙げられ得る。溶媒が、水と1種または複数種の他の有機溶媒との混合物に相当する態様では、水は、溶媒の40体積%~99体積%(または50体積%~99体積%)に相当し得る。この考察では、99.0体積%またはそれを超える水を含む溶媒は、本質的に水からなる溶媒と定義される。そのような態様では、1つまたは複数の緩衝剤は、溶媒環境のpHを制御するために、溶媒環境に添加され得る。加えてまたはその代わりに、溶媒環境のpHを制御するために、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩および/または金属酢酸塩に相当する金属試薬を使用することができる。
【0073】
非限定例として、金属有機フレームワークは、合成溶液を生成するための目標モル比の溶媒中に、1つまたは複数の金属塩を1つまたは複数のリンカーと共に溶解させることによって合成することができる。この目標モル比は、例えば、金属塩中の金属の合計モルに対するリンカーのモル比に基づいて指定することができる。様々な態様では、合成溶液中の、金属塩中の金属に対するリンカーの比は、0.20~0.60、または0.25~0.60、または0.30~0.60、または0.20~0.55、または0.25~0.55、または0.30~0.55、または0.20~0.50、または0.25~0.50であり得る。金属塩中の金属は、金属有機フレームワーク組成物に組み込むための金属塩に由来する金属を指すことが留意される。Naなどの金属は、金属有機フレームワーク組成物に化学量論的様式で組み込まれないので、塩基または緩衝剤の一部として添加される金属(NaOHに由来するNaなど)は含まれない。しかし、MgO、Mg(OH)またはMn(OH)などの金属は、金属有機フレームワーク組成物に化学量論的に組み込まれる金属を含有する試薬に相当するので、当該金属は含まれる。この議論では、金属酸化物は、金属塩の定義の範囲内に含まれることが留意される。
【0074】
固体試薬を溶解させる場合、溶解した試薬は、溶媒に添加される試薬の総量のうちの一部分にしか相当しない場合があることが留意される。一部の態様では、1つまたはそれより多くの固体試薬の追加部分は、合成溶液中の分散固体として存在することができる。
【0075】
MOF-274金属有機フレームワーク組成物および/または多環ジサリチレート有機リンカーを含む金属有機フレームワーク組成物の合成は、水性溶媒環境、および/または水が溶媒環境の40体積%またはそれを超える体積%に相当する環境において達成され得ることは予想外であった。従来、MOF-274の合成は、メタノールおよびN,N-ジメチルホルムアミドの混合物などの有機溶媒中で行われる。ハンセン溶解度パラメータに基づき、溶媒系のある変化を使用することができ、水は、類似の溶媒系を構築しようと試みる場合、溶媒の一部分として含まれる可能性があり得る。しかし、ハンセン溶解度パラメータの3つのタイプのうちの1つはδであり、これは、可能性のある溶媒の水素結合特徴に関連する。水の場合のδ値は、メタノールなどのアルコールと比べた場合でさえ、極めて高い。したがって、ハンセン溶解度パラメータに基づいて可能性のある代替溶媒系を特定しようとする場合、水は、低いδ値を有する有機溶媒と対を形成する必要があることが予想される。これは、水と任意の相当な量のアルコールとの組合せ物を除外するものである。さらに、水の量は、低いδ値を有する有機溶媒と対を形成する場合でさえ、ほぼ30体積%またはそれ未満に限定される必要があり、その結果、組み合わせた溶媒系は、従来の有機溶媒系と同等のδを有することになる。リンカーの多環性質に起因して、単環リンカーに基づく金属有機フレームワークの場合の合成手順は、MOF-274についての合成条件の特定に対して関係があるとは予想されないことがさらに留意される。例えば、単環リンカーは、水性環境において、多環リンカーよりも高い溶解度を有することが予想される。さらに、多環リンカーは、単環リンカーよりも大きな細孔の材料を形成するために一般的に使用される。より大きな細孔径は、他の欠陥相を収容する能力があり得、かつ/または細孔崩壊の影響を受けやすくなり得るので、このようなより大きな細孔径は、材料の生成に困難さを増大させる。
【0076】
ハンセン溶解度パラメータに基づく従来の理解とは対照的に、水または水/アルコール溶媒は、MOF-274金属有機フレームワーク構造体の合成のための溶媒環境として使用することができることが予想外なことに発見された。さらに、この予想外の溶媒環境は、従来の有機溶媒における従来の合成手順の場合の試薬濃度よりも実質的に高い試薬濃度を使用して、MOF-274金属有機フレームワーク構造体を合成するために使用され得ることがさらに発見された。
【0077】
溶媒環境として、水または高い水分含量の溶媒を使用して形成される金属有機フレームワーク組成物は、様々な特徴を有することができる。一部の態様では、金属有機フレームワーク組成物は、窒素吸着(ASTM D3663、BET表面積)によって決定される場合、例えば、最大で4000m/gまたは場合により、より一層高いm/gなど、700m/gもしくはそれを超える、または900m/gもしくはそれを超える、または1500m/gもしくはそれを超える表面積を有することができる。加えてまたはその代わりに、金属有機フレームワーク組成物は、窒素吸着(ASTM D4641)によって決定される場合、0.6cm/g~1.6cm/gの細孔体積を有することができる。
【0078】
少なくとも部分的に水に基づく溶媒環境を使用することによって、合成溶液中の試薬濃度を高めて、有機溶媒中での従来のソルボサーマル合成よりも最大で30倍の試薬を含ませることができることが発見された。本明細書において使用する場合、用語「固体試薬」とは、1つまたは複数の金属塩および1つまたは複数の有機リンカー(「リンカー」)との組合せを指す。一般的に、有機リンカーは、多環リンカーに相当し得る。一部の態様では、有機リンカーは、2つもしくはそれより多いフェニル環、あるいはビフェニル基、ビニル基またはアルキニル基によって繋げられた2つのフェニル環を有する分子などの多重架橋アリール種を含む。例えば、有機リンカーは、ジサリチレートに相当し得る。一部の態様では、多環ジサリチレート有機リンカー中の複数の環は、サリチレート官能基を含むことができる。
【0079】
溶液中の試薬濃度の増加は、少なくとも部分的に水性の環境における様々なタイプの固体試薬のより高い溶解度によって、ある程度促進される。溶媒環境がまたアルコールを含む態様では、高濃度の固体試薬の溶解をさらに促進するために、所望の範囲のpHに維持するよう溶媒に緩衝剤を添加することができる。水が実質的に唯一の溶媒である(すなわち、溶媒の99体積%またはそれを超える体積%が水である)態様では、水のpHを調節するために塩基を加えることができる。
【0080】
合成は、金属有機フレームワークを作製する方法を含むことができ、この方法では、1つまたは複数の金属塩、1つまたは複数のリンカーならびに必要に応じて緩衝剤混合物および/または塩基を組み合わせて、少なくとも部分的に水性の溶媒に溶解させて、合成溶液を用意する。1つまたは複数の金属塩が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩および/または金属酢酸塩に相当する場合、緩衝剤または塩基を必要としない可能性があることが留意される。同様に、溶媒の一部が塩基に対応する場合、別個の緩衝剤または塩基を必要としない可能性がある。必要に応じて、試薬の溶解は、完全な溶解が達成されるまで、溶液の撹拌を含むことができる。次に、合成溶液は、密封されて、様々な方法の1つによって加熱される。
【0081】
一態様では、1つまたは複数の金属塩の累積濃度は、100mM~4850mMの間(または0.1M~4.85Mと同等)の量で提供され得る。一態様では、1つまたは複数のリンカーは、30mM~1950mMの間(または0.03M~1.95Mと同等)の量で提供され得る。緩衝剤が添加される態様では、緩衝剤濃度は、100mM~7800mMの間(または0.1M~7.8Mと同等)であり得る。塩基が添加される態様では、塩基濃度は、100mM~5000mMの間(または0.1M~5.0Mと同等)であり得る。このような態様では、合成溶液は、130mM~6800mM(または0.13M~6.8Mと同等)の、金属塩とリンカーとの合計濃度を有することができる。このような態様では、合成溶液は、230mM~14500mM(または0.23M~14.5Mと同等)の総試薬濃度(金属塩、リンカー、必要に応じた緩衝剤および/または塩基)を有することができる。
【0082】
加えてまたはその代わりに、一部の態様では、より一層高い濃度の金属とリンカーを使用することができる。一部の態様では、高い固体の合成溶液は、例えば、最大で15Mまたは場合により、より一層高いMなど、溶媒1リットルあたり、2.1モルもしくはそれを超える(すなわち、2.1Mまたはそれを超えるモル濃度)、2.5Mもしくはそれを超える、または3.0Mもしくはそれを超える、または3.5Mもしくはそれを超える合計濃度の金属とリンカーを有することができる。例えば、合成溶液が、溶媒として水を含み、1リットルあたり2.0モル(2.0M)のMgおよび1リットルあたり1.5モル(1.5M)のリンカーをさらに含む場合、合計濃度は、3.5Mになる。加えてまたはその代わりに、合成溶液中の金属の濃度は、例えば、最大で15Mまたは場合により、より一層高いMなど、1.5Mもしくはそれを超える(すなわち、溶媒1リットルあたり1.5モルまたはそれを超える金属)、または2.0Mもしくはそれを超える、または2.5Mもしくはそれを超える濃度であり得る。さらに加えてまたはその代わりに、合成溶液中のリンカーの濃度は、例えば、最大で10Mまたは場合により、より一層高いMなど、0.6Mもしくはそれを超える、または1.0Mもしくはそれを超える、または1.5Mもしくはそれを超える濃度であり得る。15M超のモル濃度値の場合、固体の量が十分に多いので、溶媒1リットルあたりの固体のモル量を表す場合とは対照的に、合成混合物中の固体の重量百分率、体積百分率および/またはモル百分率を指定するのが一般的により適切であることが留意される。
【0083】
様々な態様では、金属塩は、二価金属塩であり得る。例えば、金属塩は、式MXを有する二価の第一列遷移金属塩(例えば、M=Mg、Mn;X=(Oac)、(HCO、(FCCO、(acac)、(Facac)、(NO、SO;M=Ni、X=(Oac)、(NO、SO;M=Zn、X=(Oac)、(NOなど)であり得る。一態様では、金属塩は、結晶または結晶性粉末の形態であり得る。一態様では、金属塩は、例えば、Mg(NO・6HOおよびMnCl・4HOである。一部の態様では、1つまたは複数の金属塩は、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩および/または金属酢酸塩に相当し得る。一態様では、生じる金属有機フレームワークはMg/Mn-MOF-274であり、これは、MOF-274またはEMM-67と称される場合がある。
【0084】
本明細書に記載されているとおり、いくつかの好適なリンカーは、3,3’の炭素上にカルボン酸および4,4’の炭素上にアルコールを有する、1,1’の炭素において繋げられた2つのフェニル環(すなわち、ビフェニルタイプの連結)によって形成され得る。このリンカーは、「Hdobpdc」と称することができる。このような態様では、カルボン酸およびアルコールの位置を交換(例えば、「pc-Hdobpdc」または「pc-MOF-274」)しても、金属有機フレームワークの形成は依然として可能である。一態様では、リンカーは、Hdobdpcである。
【0085】
一部の態様では、溶媒環境は、水から実質的に構成され得、かつ/または水から本質的になり得る(すなわち、溶媒環境は、99体積%またはそれを超える水である)。他の態様では、溶媒は、1種または複数種のアルコールと混合された、40体積%~99体積%の水を含むことができる。好適なアルコールの例としては、エタノールおよびイソプロピルアルコールが挙げられるが、他のCアルコール(例えば、メタノール、ならびにプロパノールおよびn-ブタノールの異性体)もまた好適であり得る。さらに他の態様では、溶媒は、1種または複数種の他の有機溶媒と混合された、40体積%~99体積%の水を含むことができる。テトラヒドロフランは、可能性がある別の溶媒の例である。さらに一般的には、水と完全に混和性の有機溶媒もまた使用することができる。ピリジンまたはジメチルホルムアミドなどのいくつかの有機塩基は、溶媒および/または塩基として働くことが可能であり得ることが留意される。
【0086】
金属有機フレームワークは、室温で、または従来の電気加熱、マイクロ波加熱、電気化学、機械化学および/もしくは超音波照射法を使用して合成することができる。従来のステップバイステップ法、およびハイスループット法も同様に、採用され得る。しかし、いずれの合成でも、有機リンカーの分解を伴わずに規定された無機ビルディングブロックを生成するための条件を確立しなければならない。同時に、結晶化の動力学によって、所望の相の核生成および成長が起こることが可能にならなければならない。
【0087】
加熱および密封ステップは、約96時間の静的条件で反応溶液を加熱することを含むことができる。加熱および密封ステップは、約24時間の動的(例えば、撹拌、振とう、混合、かき混ぜ)条件下で反応溶液を加熱することを含むことができる。加熱および密封ステップは、約120℃の静的オーブン中で反応溶液を加熱することを含むことができる。加熱および密封ステップは、約150℃の回転式オーブン中で反応溶液を加熱することを含むことができる。加熱は、密封することなく行われる場合があり、MOFは、ほぼ1barの圧力下、溶媒を還流して合成される。一態様では、反応溶液は、一般的には、1時間~7日間、または6時間~5日間、または12時間~3日間、50℃~175℃(または100℃~160℃または115℃~145℃)に加熱される。反応溶液を遠心分離またはろ過して、金属有機フレームワークを得て、洗浄することができる。
【0088】
一態様では、緩衝剤は、ブレンステッド酸およびその共役塩基、またはブレンステッド塩基およびその共役酸を含む。一態様では、反応溶液または反応混合物は、25℃~160℃の間に加熱される。
【0089】
一態様では、反応溶液は、自己生成加圧を受ける。一態様では、リンカーは、2つまたはそれより多いフェニル環、あるいはビニル基またはアルキニル基によって繋げられた2つのフェニル環を有する多重架橋アリール種を含む。一態様では、リンカーは、Hdobpdcである。一態様では、金属塩は、金属イオンの酸または塩基の中和によって調製される。一態様では、金属塩は、Mg(NO・6HOおよびMnCl・4HOである。一態様では、緩衝剤は、Na MOPSである。一態様では、金属有機フレームワークは、もう1つの異なる元素の金属イオンおよび複数の有機リンカーを含み、各有機リンカーは、2つまたはそれより多い異なる元素の金属イオンの1つに接続されている。一態様では、有機リンカーは、ジサリチレートリンカーに相当する。一態様では、金属有機フレームワークは、MOF-274である。一態様では、反応溶液の見かけのpHにより、リンカーの脱プロトン化が可能となる。一態様では、溶媒は、ハンセン溶解度パラメータの評価によって選択される。一態様では、反応溶液は、静的条件で加熱される。態様では、反応溶液は、約120℃で加熱される。一態様では、金属有機フレームワークは、約0.1~約0.9の間の相対圧において、約25mmol/g~約45mmol/gの間のN吸着を有する。一態様では、金属有機フレームワークは、約4°~約6°の間および約7°~約9°の間の2θ値において粉末X線回折ピークを生じる。一態様では、金属有機フレームワークは、慣例的な合成によって作製される金属有機フレームワークにほぼ等しい2θ値において、粉末X線回折ピークを生じる。
【0090】
一態様では、金属有機フレームワークは、六方晶単位格子にインデックス分類することができる単位格子を有するX線回折パターンをもたらす。一態様では、単位格子は、International Tables for Crystallographyに規定されている空間群168~194から選択される。一態様では、本金属有機フレームワークは、Schoedel, Li, Li, O’Keeffe, and Yaghi, Chem Rev. 2016 116, 12466-12535によって特定されるとおり、Lidin-Andersson helixによって記載されている、面共有八面体から構成される金属ロッド構造体をさらに含む。一態様では、金属有機フレームワークは、金属ロッド構造体と平行に配向された六角形細孔を有する。一態様では、本金属有機フレームワークは、Schoedel, Li, Li, O’Keeffe, and Yaghi, Chem Rev. 2016 116, 12466-12535に記載されている手法に従い、(3,5,7)-c msiネットを示す。一態様では、金属有機フレームワークは、Schoedel, Li, Li, O’Keeffe, and Yaghi, Chem Rev. 2016 116, 12466-12535に記載されている手法に従い、(3,5,7)-c msgネットを示す。
【0091】
一態様では、対象とする金属有機フレームワークは、N下にて250℃で30分間乾燥後に、30℃におけるX線回折パターンに以下のピーク極大値を表す。
【表5】
【0092】
一態様では、N下にて250℃で30分間乾燥後に、30℃におけるX線回折パターンに以下のピーク極大値を示す。
【表6】
【0093】
一態様では、単位格子のA軸および単位格子のB軸はそれぞれ、18Åよりも長く、c軸は、6Åよりも長い。
【0094】
様々な態様では、水性環境、および/または40体積%またはそれを超える水を含む溶媒環境でのMOFの合成は、このような合成法が、高品質MOFを得るために必要な費用および労力を低減することができるので、有利となり得る。本方法は必要とする時間がより少なく、より多くの材料が合成され得るので、得られた方法はまた、試験および特性評価に利用可能な材料をより多くもたらすことができ、時間量を著しく削減することができ、これらは、著しい経済的効果を有することができる。したがって、水中合成、および/または40体積%もしくはそれを超える水を含む溶媒環境での合成は、MOF合成のプロセス強化を表し得る。
金属有機フレームワーク
【0095】
様々な態様では、水性合成混合物または水を相当な分量で含む合成混合物から金属有機フレームワーク組成物を形成するための方法が提供される。金属有機フレームワークは、単一金属元素を含むことができるか、または金属有機フレームワークは、複数の異なる金属元素を含む混合金属有機フレームワークに相当し得る。金属有機フレームワーク中の金属元素は、複数の有機リンカーによって架橋され得、各リンカーは、少なくとも1つの金属イオンに接続されている。
【0096】
単一金属元素(単一の二価金属イオンなど)が使用される例では、金属有機フレームワークは、式M Aによって表すことができ、式中、Mは金属であり、Aは、1つまたは複数のジサリチレートリンカーなどの本明細書に記載されている有機リンカーである。
【0097】
別の態様では、混合金属有機フレームワークは、一般式I:
(2-X)(A)

を有することができ、
【0098】
式中、Mは金属であり、Mは金属であるが、MはMではなく、
【0099】
Xは、0~2または0.01~1.99の値であり、
【0100】
Aは、1つまたは複数のジサリチレートリンカーなどの本明細書に記載されている有機リンカーである。
【0101】
一般的に、Xは、0~2の間の任意の値を有することができる。X=0とX=2のどちらも、単一金属しか含まない金属有機フレームワークをもたらすことが留意される。一態様では、Xは、0.01~1.99の値である。一態様では、Xは、0.1~1の値である。一態様では、Xは、0.05、0.1、0.5および1からなる群から選択される値である。さらに、Xおよび2-Xは、Mに対するMの相対比を表すが、いかなる特定の化学量論も、本明細書に記載されている式I、式IA、式IIまたは式IIIに暗示されていないことが理解されるべきである。したがって、式I、IA、IIまたはIIIの混合金属有機フレームワークは、Mに対するMの特定の相対比に限定されない。金属は、典型的には、イオン形態で提供され、利用可能な原子価は、選択される金属に応じて変わり得ることがさらに理解される。
【0102】
本明細書に記載されている金属有機フレームワーク(式I、IA、IIまたはIIIによる金属有機フレームワークを含む)の金属は、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、CuおよびZnを含む、周期表の第4周期の第IIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII、IBおよびIIB族ならびに第3周期の第IIA族の元素の1つであり得る。さらに、複数の金属が存在する態様では、混合金属有機フレームワークは、2つまたはそれより多い異なる元素、および理論的にM …M (A)(B)|x+y+…+z=2およびM≠M≠…≠Mと表される金属の異なる組合せを含むことができる。
【0103】
単一金属だけが存在する一部の態様では、金属は、Mg、V、Ca、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、CuおよびZnから選択され得る。式Iによる場合などの、複数の金属が存在する一部の態様では、Mは、Mg、V、Ca、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、CuおよびZnから選択され得、Mは、Mg、V、Ca、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、CuおよびZnから選択され得るが、ただし、MはMではないことを条件とする。別の態様では、Mは、Mg、Mn、NiおよびZnからなる群から選択され、Mは、Mg、Mn、NiおよびZnからなる群から選択されるが、ただし、MはMではないことを条件とする。さらに別の態様では、MはMgであり、MはMnである。なおも別の態様では、MはMgであり、MはNiである。さらに別の態様では、MはZnであり、MはNiである。金属は、典型的には、イオン形態で提供され、原子価は、選択される金属に応じて変わり得ることがさらに理解される。さらに、金属は、塩として、または塩形態で提供され得る。
【0104】
加えてまたはその代わりに、金属有機フレームワークが混合金属有機フレームワークに相当する態様では、少なくとも1つの金属は、Aをリンカーのプロトン化形態H-Aにする一価金属であり得る。例えば、金属は、Naまたは第I族からの1つであり得る。同様に、金属は、2種またはそれより多種の二価陽イオン(「二価金属」)または三価陽イオン(「三価金属」)のうちの1つであり得る。一態様では、混合金属の混合有機フレームワークは、+2以外の酸化状態にある金属を含む(すなわち、まさに二価超、三価、四価、・・・)。フレームワークは、異なる酸化状態の混合物を含む金属を有することができる。例示的な混合物は、Fe(II)およびFe(III)、Cu(II)およびCu(I)ならびに/またはMn(II)およびMn(III)を含む。より詳細には、三価金属は、+3の酸化状態を有する金属である。混合金属有機フレームワークを形成するために使用されるいくつかの金属、具体的にはFeおよびMnは、比較的穏やかな条件下では、+2(二価)または+3(三価)の酸化状態をとることができる。Chem. Mater, 2017, 29, 6181。同様に、Cu(II)は、穏やかな条件下で、Cu(I)を形成することができる。したがって、金属のいずれかの酸化状態への任意のわずかな変化、および/または金属の酸化状態の選択的な変化を使用して、本混合金属有機フレームワークを修飾することができる。さらに、様々な分子断片C、C、…Cの任意の組合せが存在してもよい。最後に、上記の変化形態のすべて、例えば、複数の価数を有する複数の金属(2種またはそれより多種の異なる金属)および電荷のバランスをとる複数の分子断片が、組み合わされ得る。
【0105】
好適な有機リンカー(本明細書において、「リンカー」とも称される)は、混合金属有機フレームワークの構造、および混合金属有機フレームワークの金属ノードに結合する有機リンカーの部分を関連づける対称操作から決定することができる。化学的または構造的に異なるリンカーは、それにも関わらず、金属ノード結合領域がC軸対称性によって関係付けられることを可能にし、同じトポロジーの混合金属有機フレームワークを形成する。一態様では、有機リンカーは、3,3’の炭素上にカルボン酸および4,4’の炭素上にアルコールを有する、1,1’の炭素において繋げられた2つのフェニル環によって形成され得る。カルボン酸およびアルコールの位置を交換(例えば、以下に記載の「pc-Hdobpdc」)しても、混合金属有機フレームワークの形成は依然として可能である。
【0106】
一般的に、リンカーは、ジサリチレートに相当し得る。ジサリチレートは、2つのモノヒドロキシベンゾエート基を含むリンカーに相当する。
【0107】
一態様では、有用なリンカーは、
【化1】
を含み、
【0108】
ここで、Rは、R’に接続されており、Rは、R”に接続されている。
【0109】
このようなリンカーの例としては、
【化2】
が挙げられ、ここで、Rは、任意の分子断片である。
【0110】
好適な有機リンカーの例としては、パラ-カルボキシレート(「pc-リンカー」)、例えば、4,4’-ジオキシドビフェニル-3,3’-ジカルボキシレート(DOBPDC);4,4’-ジオキシド-[1,1’:4’,1”-テルフェニル]-3,3’-ジカルボキシレート(DOTPDC);およびジオキシドビフェニル-4,4’-ジカルボキシレート(pc-DOBPDCとも称される、3,3’-パラ-カルボキシレート-DOBPDC)、ならびに以下の化合物:
【化3】
などが挙げられる。
【0111】
一態様では、有機リンカーは、式:
【化4】
を有し、
【0112】
式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19およびR20はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換されたメチルから選択される。
【0113】
一態様では、有機リンカーは、式:
【化5】
を有し、
【0114】
式中、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、およびハロゲン置換されたメチルから選択される。
【0115】
一態様では、有機リンカーは、式:
【化6】
を有し、
【0116】
式中、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換されたメチルから選択され、R17は、置換または無置換アリール、ビニル、アルキニルおよび置換または無置換ヘテロアリールから選択される。
【0117】
一態様では、有機リンカーは、式:
【化7】
を有し、
【0118】
式中、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換されたメチルから選択される。
【0119】
式中、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、メチル、またはハロゲン置換されたメチルから選択され、R17は、置換または無置換アリール、ビニル、アルキニルおよび置換または無置換ヘテロアリールから選択される。
【0120】
一態様では、有機リンカーは、2つの(もしくはそれより多い)フェニル環、あるいはビニル基またはアルキニル基によって繋げられた2つのフェニル環を有する分子などの多重架橋アリール種を含む。
【0121】
一態様では、混合金属有機フレームワークは、構造式IA:
(2-x)(A)
IA
に相当し得、
【0122】
式中、Mは、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、CuまたはZnから独立して選択される金属、またはその塩であり、
【0123】
は、Mg、Ca、V、Mn、Cr、Fe、Co、Ni、CuまたはZnから独立して選択される金属、またはその塩であるが、Mは、Mではなく、
【0124】
Xは、0.01~1.99の値であり、
【0125】
Aは、本明細書に記載されている有機リンカーである。
【0126】
本明細書に記載されているとおり、混合金属混合有機フレームワークは、2種またはそれより多種の異なる金属陽イオン、クラスター、または2つもしくはそれより多いマルチトピックな(multitopic)(ポリトピックな(polytopic))有機リンカーによって繋げられた鎖から形成された多孔質結晶性材料である。
化学緩衝剤および/または塩基添加
【0127】
一部の態様では、試薬の溶解度は、化学緩衝剤(本明細書において、「緩衝剤」と称される)を含ませ、反応溶液の見かけのpHを固定することによって最大化されて、リンカーの脱プロトン化とその後の金属有機フレームワークの形成を可能にする。緩衝剤は、酸およびその共役塩基、または塩基およびその共役酸を含むことができる。緩衝剤は、緩衝性酸を添加し、その後に塩基性溶液を添加して適切なpHにすることによって、インシチュで生成することができる。同様に、緩衝剤は、緩衝性塩基を添加し、その後に酸性溶液を添加して適切なpHにすることによって、インシチュで生成することができる。一態様では、緩衝剤は、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(「MOPS」)またはNa MOPSであり得る。
【0128】
他の態様では、塩基は、酸/塩基の組合せ物を添加して、緩衝剤を形成する場合と対照的に、水および/または水と有機溶媒環境に添加され得る。さらに他の態様では、一部の溶媒は、塩基および溶媒の両方として働くことが可能であり得る。このような態様では、別個の塩基または緩衝剤の添加は、必要に応じて行われる。このような溶媒の例としては、以下に限定されないが、ピリジンおよびジメチルホルムアミドが挙げられ得る。さらに他の態様では、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩および/または金属酢酸塩が、金属有機フレームワークを形成するための金属の供給源として使用される場合、別個の塩基または緩衝剤の添加は、必要に応じて行われる。
【0129】
好適な塩基の例としては、以下に限定されないが、ピペラジン、1,4-ジメチルピペラジン、ピリジン、2,6-ルチジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、様々なタイプのアミン(第一級、第二級および/または第三級)、水酸化アンモニウムなど、およびこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0130】
好適な酸の例としては、以下に限定されないが、塩酸、硝酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、酢酸、過塩素酸、リン酸、亜リン酸、硫酸、ギ酸、フッ化水素酸など、およびこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0131】
見かけのpHを緩衝化するために使用される、好適な酸および共役塩基ならびに好適な塩基および共役酸の例としては、以下に限定されないが、酢酸/酢酸塩、クエン酸/クエン酸塩、ホウ酸/ホウ酸塩など、参照により本明細書に組み込まれるBiochemistry, 1966, 5, 467-477に定義されている「良好な緩衝剤」として公知である緩衝剤、および参照により本明細書に組み込まれるAnal Chem., 1999, 71, 3140-3144に定義されている「より良好な緩衝剤」として公知である非錯体形成性第三級アミン緩衝剤が挙げられる。
【0132】
緩衝剤は、MOPSの可能性のある変化形態を含むことができ、式:
【化8】
のものであり得、
【0133】
式中、n=は、1~10の間の整数であり、RとRとを架橋しているいずれの原子も、化学置換基により官能化され得るか、または上の段落[0027]~[0030]、[0032]および[0033]に定義されている「R」であり得、
【0134】
、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、C、O、NまたはSであり、
【0135】
は、任意のブレンステッド酸官能基または対応する共役塩基、スルホン酸、ホスホン酸および/またはスルホキシレート、ホスホネート、ホスフェート、ヒドロキシル、アンモニアまたはサルフェートである。
MOF構造体に関する変化形態
【0136】
MOF-274は、ジサリチレートリンカーを使用して合成することができる、あるタイプのMOFの例である。慣例的なMOF-274構造体は、M(dobpdc)に相当し、ここで、M=様々な2+金属イオンである。金属有機フレームワーク材料にやはり相当するMOF-274の多数の変化形態が形成され得る。これらの変化形態の例が、MOF-274に関してここに記載されるが、これは、変化形態の性質を例示することが目的であることが理解される。したがって、ジサリチレートリンカーをやはり含む金属有機フレームワーク材料の他のタイプに関する類似の変化形態もまた、本明細書において企図される。
【0137】
一部の態様では、変化形態の1つのタイプは、M2-x(dobpdc)に相当し、ここで、MおよびNは、異なる2+金属イオンである。これは、2種の異なるタイプの二価金属イオンが、金属有機フレームワーク材料に含まれる変化形態を表す。別の変化形態は、2種より多い異なるタイプの二価金属イオンを有するべきであり得る。さらに別の変化形態は、複数の金属イオンを有するべきであり得、いくつかの金属イオンは、2+とは異なる酸化状態を有する。さらに別の変化形態は、Mx-y2-x-z(dobpdc)1-yに相当し、ここで、MおよびNは、同じまたは異なる2+金属イオンであり、zおよびyは、<2であり、この構造体は、金属が欠如した形態の欠陥を含む。さらに別の変化形態は、Mx-2y2-x-2y(dobpdc)1-yに相当し、ここで、MおよびNは、同じまたは異なる2+金属イオンであり、xは、0~2であってもよく、yは、0~1であってもよい。
【0138】
一部の態様では、あるタイプの変化形態は、M2-x(dobpdc)1-yに相当し、ここで、MおよびNは、同じまたは異なる2+金属イオンであり、構造体は、リンカーが欠如した形態の欠陥を含み、xは、0~2であってもよく、yは、0~1であってもよい。別のタイプの変化形態は、M2-x(dobpdc)1-yAに相当し、ここで、MおよびNは、同じまたは異なる2+金属イオンであり、構造体は、リンカーが欠如した形態の欠陥を含み、Aは、電荷のバランスをとる陰イオン(例えば、Cl、F、Br、OH、NO )である。さらに別のタイプの変化形態は、M2-x(dobpdc)1-yに相当し、ここで、MおよびNは、同じまたは異なる2+金属イオンであり、構造体は、リンカーが欠如した形態の欠陥を含み、Aは、電荷のバランスをとる陰イオン(例えば、Cl、F、Br、OH、NO )であり、xは、0~2であってもよく、yは、0~1であってもよい。さらに別のタイプの変化形態は、Mx-y2-x-y(dobpdc)Zに相当し、ここで、MおよびNは、同じまたは異なる2+金属イオンであり、構造体は、リンカーが欠如した形態の欠陥を含み、Zは、電荷のバランスをとる陽イオン(例えば、H、Na、K)である。さらに別のタイプの変化形態は、Mx-y2-x-y(dobpdc)Zに相当し、ここで、MおよびNは、同じまたは異なる2+金属イオンであり、構造体は、リンカーが欠如した形態の欠陥を含み、Zは、電荷のバランスをとる陽イオン(例えば、H、Na、K)であり、xは、0~2であってもよく、yは、0~1であってもよい。
【0139】
一部の態様では、あるタイプの変化形態は、M2-x(dobpdc)Sol0.1-2に相当し、ここで、MおよびNは、同じまたは異なる2+金属イオンであり、構造体は、リンカーが欠如した形態の欠陥を含み、Solは、配位性単座配位子(OH、MeOH、DMF、MeCN、THF、NR、HNR、HNRなど)である。別のタイプの変化形態は、M2-x(dobpdc)Sol0.05-1に相当し、ここで、MおよびNは、同じまたは異なる2+金属イオンであり、構造体は、リンカーが欠如した形態の欠陥を含み、Solは、配位性二座配位子である。別のタイプの変化形態は、M2-x(dobpdc)1-ySol2yに相当し、ここで、MおよびNは、同じまたは異なる2+金属イオンであり、構造体は、リンカーが欠如した形態の欠陥を含み、Solは、配位性二座配位子であり、yは、0.1など、0~0.5であってもよい。
【実施例
【0140】
実施例1
EMM-67合成溶液への2-ampdの添加によるEMM-44の形成
この実施例では、MOF EMM-67を含有する中間生成物混合物を最初に形成し、次いで、2-アミノメチルピペリジン(2-ampd)を中間生成物混合物に添加することによって、アミン付加されたMOF組成物(EMM-44)を形成する。
【0141】
EMM-67の合成:8mLのDI HOに、0.309g(0.0077mol)のNaOHペレットを溶解させた。この溶液に、0.532g(1.933mmol)のHdobpdcを加え、徹底的に撹拌した。別の8mLのDI HOに、1.176g(4.579mmol)のMg(NO.6HOおよび0.05g(0.252mmol)のMnCl.4HOを加え、溶解するまで撹拌した。金属含有溶液およびリンカー含有懸濁液をゆっくりと合わせて、試薬のすべてが十分に分散するまで撹拌した。反応混合物を23mLのテフロン(登録商標)内張りオートクレーブに移し、密封して、静的条件下、120℃のオートクレーブ中に24時間置き、EMM-67を含有する中間生成物混合物を形成した。次に、中間生成物混合物を、自然に室温まで冷却した。
【0142】
EMM-44を調製するためのアミン添加:上で合成した発生期のEMM-67に対し、2mLの2-アミノメチルピペリジン(2-ampd)を中間生成物混合物へ加えた。この系を徹底的に混合して、静的条件下、24時間静置し、この後に、ジアミン付加されたMOF EMM-44を遠心分離によって収集した。
【0143】
得られたEMM-44をいくつかの方法で分析した。1つの分析は、内在する非付加型のMOFであるEMM-67について結晶構造の存在を確認するためのものであった。図1は、上記の手順によって生成したEMM-44の粉末X線回折(PXRD)スペクトルを示す。図1に示されているピークは、EMM-67に相当し、EMM-67の結晶構造は、中間生成物混合物へのアミンの添加によって破壊されていなかったことを示している。
【0144】
別のタイプの特性評価は、以下に記載した様々な段階において溶液中に温浸され、図2~5のスペクトルを生成した試料についてのH NMRを使用することによって、アミンの負荷量を決定するものであった。ジアミンのプロトン積分値をMOFリンカーの積分値と比較し、アミンの負荷量の定量化を得た。図2は、遠心分離後に収集したEMM-44のH NMRスペクトルを示す。図3は、空気下、18.5時間、120℃でEMM-44を加熱した後の、EMM-44のH NMRスペクトルを示す。図2および図3におけるスペクトルを積分し、EMM-44試料中のリンカー(7.0~8.0ppmの間のピーク)の量と、付加したアミン(1.25~2.0ppmの間のピーク)の量を比較した。この積分値に基づいて、図2は、試料中のアミンの初期負荷量が、MOF中のリンカーの量の205%であることを示していると決定した。加熱後、図3は、リンカーの量の109%である最終的な負荷量を示していると決定した。NMRは、理想的な「100%」負荷量を超過した、付加したアミンの負荷量を依然として示したので、さらに30分間120℃での加熱を行い、次いで、追加加熱した試料のNMR分析を行った。追加加熱の後、得られたNMRスペクトル(図4に示されている)からのピークの積分値は、ほぼ100%負荷量の付加したアミンを示し、これは、完全にアミン付加されたEMM-44に対して予想されるものである。このほぼ100%負荷量は、別の熱重量分析によってさらに裏付けられた。
【0145】
さらに別の特性評価は、EMM-44材料のCO吸着等温線の特性評価をすることであった。図5に示されているとおり、EMM-44材料は、アミン付加された材料に対して予想されるとおり、段階的なV型の等温線を示す。
実施例2
EMM-67合成溶液にN,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)を添加することによるEMM-53の形成
【0146】
EMM-67を含有する中間生成物混合物を、実施例1に記載されている方法に準拠して形成した。
【0147】
,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)を用いて、EMM-53(3-4-3)を形成する付加:EMM-67系を室温まで自然に冷却した後、全内容物を30mLの遠心管に移し、60℃まで加熱した。これとは別に、数グラムのN,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)を、オーブン中、60℃まで加熱した。1mLのN,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)をEMM-67および合成溶液に移し、十分に混合して、次に、60℃で24時間、静的配置で置いた。次に、依然として温めながら、固体を遠心分離によって収集し、60℃のトルエンで1回洗浄した。
【0148】
次に、固体を温浸して、H NMRによって特性評価をした。得られたH NMRスペクトルを図6に示す。スペクトルを積分し、EMM-53(3-4-3)試料中のリンカー(7.0~8.0ppmの間のピーク)の量と、付加したアミン(1.25~2.0ppmの間のピーク)の量を比較した。この積分値に基づいて、付加したアミンの含有量は、リンカーの量の75%であると決定した。
実施例3
EMM-67合成溶液にN,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)を添加することによるEMM-53の形成
【0149】
EMM-67を含有する中間生成物混合物を、実施例1に記載されている方法に準拠して形成した。次に、別のタイプのテトラアミンであるN,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)を中間生成物混合物に添加し、アミン付加を行った。
【0150】
,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)を用いる付加を、以下の点を除いて、実施例2に記載されている手法と同じ手法で行った。N,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)は、室温で液体であるので、中間生成物混合物およびN,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)は、アミンを中間生成物混合物に添加する際は、室温とした。アミンの添加後、この溶液を24時間、室温に維持した。次に、遠心分離によって固体を収集した。
【0151】
次に、溶液中に温浸した固体について、H NMRによって特性評価をした。得られたH NMRスペクトルを図7に示す。スペクトルを積分し、EMM-53(3-2-3)試料中のリンカー(7.0~8.0ppmの間のピーク)の量と、付加したアミン(1.25~2.0ppmの間のピーク)の量を比較した。この積分値に基づいて、付加したアミンの含有量は、リンカーの量の91%であると決定した。
実施例4
先に合成したEMM-67からのプロトン性溶媒中でのEMM-44の調製
【0152】
先に合成して単離したEMM-67の100mgをエタノールで2回洗浄し、次に、25%(v/v)の2-ampdのエタノール溶液10mL中に懸濁させた。EMM-67を溶液中で穏やかにかき混ぜ、次に、室温で24時間、静的配置で置いた。付加された材料を、遠心分離によって除去し、トルエン中で洗浄した。得られた材料についてPXRDによって特性評価をし、H NMRを行うため、溶液中に温浸した。プロトン性溶媒として、エタノールの代わりに水を使用して、類似の材料を作製したことが留意される。
【0153】
図8は、2-ampdのエタノール溶液を使用して形成したEMM-44材料のPXRDスペクトルを示す。図8に示されているとおり、EMM-67の構造は、2-ampdを付加した後に保持されて、EMM-44を形成した。
【0154】
図9は、EMM-44のH NMRスペクトルを示す。スペクトルを積分し、EMM-44試料中のリンカー(7.0~8.0ppmの間のピーク)の量と、付加したアミン(1.25~2.0ppmの間のピーク)の量を比較した。この積分値に基づいて、付加したアミンの含有量は、リンカーの量のほぼ100%であると決定した。
【0155】
この材料のCO吸着等温線は、予想される段階的なV型の等温線を示したことがさらに留意される。この材料のCO吸着等温線を図10に示す。
実施例5
先に合成したEMM-67からのプロトン性溶媒中でのEMM-53の調製
【0156】
先に合成して単離したEMM-67の100mgをエタノールで2回洗浄し、次に、60℃に予め加熱した、25%(v/v)のN,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)のエタノール溶液10mL中に懸濁させた。EMM-67を溶液中で穏やかにかき混ぜ、次に、60℃で24時間、静的配置で置いた。付加された材料を、遠心分離によって除去し、60℃のトルエンで洗浄した。得られた材料について、PXRDおよびH NMRによって特性評価をした。
【0157】
図11は、N,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)のエタノール溶液を使用して形成したEMM-53材料のPXRDスペクトルを示す。図10に示されているとおり、EMM-67の構造は、N,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)を付加した後に保持されて、EMM-53を形成した。
【0158】
図12は、溶液中に温浸した試料を使用したEMM-53のH NMRスペクトルを示す。スペクトルを積分し、EMM-53試料中のリンカー(7.0~8.0ppmの間のピーク)の量と、付加したアミン(1.25~2.0ppmの間のピーク)の量を比較した。この積分値に基づいて、付加したアミンの含有量は、リンカーの量のほぼ105%であると決定した。
【0159】
この材料のCO吸着等温線は、予想される段階的なV型の等温線を示したことがさらに留意される。
実施例6
さらなる不純物ピーク
【0160】
合成混合物の性質、反応条件(温度および混合速度を含む)、および反応時間に応じて、本明細書に記載されている方法によって形成されるMOF組成物を使用して、純粋なMOF結晶相を形成すること、またはある量の不純物を含む生成物を形成することができる。PXRDパターンで視認可能であり得る1つのタイプの不純物は、金属化合物の不完全な反応などの、試薬の不完全な反応による不純物である。別のタイプの不純物は、a)合成混合物中の別個の塩基の一部として導入された金属、およびb)合成混合物中の金属化合物の対イオンから形成される塩に相当し得る。態様に応じて、このような不純物は、例えば、実質的に不純物を有しない程度までの低下など、合成混合物から形成された生成物の20重量%もしくはそれ未満、または10重量%もしくはそれ未満、または5.0重量%もしくはそれ未満に相当し得る。
【0161】
以下の表は、MOF-274(EMM-67を含む)などの金属有機フレームワーク構造体組成物の形成に関連し得る、不純物に関する可能性のあるピーク位置の例を示す。表1~4は、MgCO(表1)、MgO(表2)、Mg(OH)(表3)およびNaNOに対応する不純物に基づいた、可能性のあるピーク位置を提供する。
【表1-1】
【表1-2】
【表2】
【表3】
【表4-1】
【表4-2】
追加の実施形態
【0162】
実施形態1.アミン付加された金属有機フレームワーク組成物を作製する方法であって、前記方法は、溶媒中に複数の固体試薬を溶解させて、合成溶液を用意する工程であって、前記複数の固体試薬が、少なくとも1つの金属塩および少なくとも1つの有機リンカーを含み、前記複数の固体試薬が、塩基または緩衝剤のうちの少なくとも1つを含む、工程;前記合成溶液を加熱して、金属有機フレームワークを含む中間生成物混合物を形成する工程;および前記中間生成物混合物に1種または複数種のポリアミンを添加して、アミン付加された金属有機フレームワークを形成する工程であって、前記1種または複数種のポリアミンの添加後に、中間生成物混合物中の溶媒が、50体積%またはそれを超える水、アルコールまたはこれらの組合せ物を含む、工程を含み、前記金属有機フレームワークが、前記少なくとも1つの金属塩の前記金属および前記有機リンカーを含む、方法。
【0163】
実施形態2.前記合成溶液が、40体積%もしくはそれを超える水を含むか、または前記溶媒が、99体積%もしくはそれを超える水を含むか、またはこれらの組合せである、実施形態1の方法。
【0164】
実施形態3.前記有機リンカーが、多環ジサリチレート有機リンカーを含む、上記の実施形態のいずれかの方法。
【0165】
実施形態4.前記多環ジサリチレート有機リンカー中の複数の環が、サリチレート官能基を含むか、または前記多環ジサリチレート有機リンカー中の複数の環が、ビフェニル連結、ビニル連結およびアルキル連結のうちの少なくとも1つによって接続されているか、または前記リンカーが、4,4’-ジヒドロキシ-[1,1’-ビフェニル]-3,3’-ジカルボン酸であるか、またはこれらの組合せである、実施形態3の方法。
【0166】
実施形態5.前記金属有機フレームワークが、式:M (A)(式中、Mは、金属陽イオンを含み、Aは、多環ジサリチレート有機リンカーを含む)のものであるか、または前記金属有機フレームワークが、式:M (2-x)(A)(式中、MおよびMは、金属陽イオンを含み、xは、0~2の範囲であり、Aは、多環ジサリチレート有機リンカーを含む)のものである、実施形態3または4の方法。
【0167】
実施形態6.i)前記中間生成物混合物が、50体積%またはそれを超える水、アルコールまたはこれらの組合せ物を含み、前記アルコールが、必要に応じて、エタノール、イソプロピルアルコールまたはこれらの組合せ物を含むか、ii)前記合成溶液が、50体積%またはそれを超える水、アルコールまたはこれらの組合せ物を含むか、またはiii)i)とii)との組合せである、請求項1に記載の方法。
【0168】
実施形態7.前記少なくとも1つの金属塩が、金属酸化物を含み、前記金属酸化物が、前記塩基または緩衝剤のうちの少なくとも1つの少なくとも一部分を含むか、または前記少なくとも1つの金属塩が、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩もしくはこれらの組合せを含み、前記少なくとも1つの金属塩が、前記塩基または緩衝剤のうちの少なくとも1つの少なくとも一部分を含むか、またはこれらの組合せである、上記の実施形態のいずれかの方法。
【0169】
実施形態8.前記塩基が有機塩基を含む、上記の実施形態のいずれかの方法。
【0170】
実施形態9.前記合成溶液は、前記少なくとも1つの金属塩に由来する金属に対して前記少なくとも1つのリンカーを、0.20~0.60のモル比で含む、上記の実施形態のいずれかの方法。
【0171】
実施形態10.A)前記合成溶液が、溶媒1リットルあたり2.1モルまたはそれを超える合計濃度の金属とリンカーを含むか、B)前記複数の固体試薬が、前記合成溶液の重量の0.1重量%~40重量%を構成するか、またはC)A)とB)との組合せである、上記の実施形態のいずれかの方法。
【0172】
実施形態11.前記複数の固体試薬が、複数の金属塩を含み、前記複数の金属塩が、少なくとも1つのマグネシウム塩および少なくとも1つのマンガン塩を含む、上記の実施形態のいずれかの方法。
【0173】
実施形態12.前記金属有機フレームワークが、MOF-274、EMM-67またはこれらの組合せを含む、上記の実施形態のいずれかの方法。
【0174】
実施形態13.前記合成溶液が50℃~175℃の間に加熱される、上記の実施形態のいずれかの方法。
【0175】
実施形態14.アミン付加された金属有機フレームワーク組成物を作製する方法であって、前記方法は、洗浄溶媒を使用して、多環ジサリチレート有機リンカーを含む金属有機フレームワークを洗浄して、洗浄済み金属有機フレームワークを形成する工程であって、前記洗浄溶媒が、90体積%またはそれを超える1種または複数種のプロトン性溶媒を含み、前記洗浄が、金属有機フレームワークを前記洗浄溶媒に2回またはそれより少ない回数、曝露することを含む、工程;および付加溶液において、前記洗浄済み金属有機フレームワークの少なくとも一部分の懸濁液を形成することにより、前記洗浄済み金属有機フレームワークの少なくとも一部分を前記付加溶液に曝露する工程であって、前記付加溶液が、1種または複数種のプロトン性溶媒および1種または複数種のポリアミンを含む、工程を含み、前記付加溶液が、50体積%またはそれを超える水、アルコールまたはこれらの組合せ物を含み、前記洗浄溶液が、必要に応じて、前記付加溶液中の前記1種または複数種のプロトン性溶媒とは異なる、方法。
【0176】
実施形態15.溶媒中に複数の固体試薬を溶解させて、合成溶液を用意する工程であって、前記複数の固体試薬が、少なくとも1つの金属塩および少なくとも1つの有機リンカーを含み、前記複数の固体試薬が、塩基または緩衝剤のうちの少なくとも1つを含む、工程;前記合成溶液を加熱して、前記金属有機フレームワークを含む中間生成物混合物を形成する工程;前記中間生成物混合物から前記金属有機フレームワークを分離する工程;および前記分離した金属有機フレームワークを乾燥させる工程をさらに含む、実施形態14の方法。
【0177】
追加の実施形態A.MおよびMが、異なる金属元素を含むか、またはAが、複数の多環ジサリチレート有機リンカーを含むか、またはMおよびMのうちの少なくとも1つが、二価金属イオンを含むか、またはこれらの組合せである、実施形態5の方法。
【0178】
追加の実施形態B.前記1種または複数種のポリアミンが、ジアミン、テトラアミンまたはこれらの組合せを含む、上記の実施形態のいずれかの方法。
【0179】
追加の実施形態C.前記合成溶液が分散固体をさらに含み、前記分散固体が、前記複数の固体試薬に由来する1つまたはそれより多くの固体試薬を含む、上記の実施形態のいずれかの方法。
【0180】
追加の実施形態D.実施形態1~15のいずれかの方法に従い作製した、アミン付加された金属有機フレームワーク。
【0181】
ある特定の特長について、一連の数字の上限値および一連の数字の下限値を使用して説明してきた。特に示さない限り、いずれかの下限値からいずれかの上限値までの範囲が企図されることを認識すべきである。ある特定の下限値、上限値および範囲は、以下の1つまたは複数の請求項に現れる。数値はすべて、当業者によって予想される実験誤差および変動を考慮する。
【0182】
本開示の上述の説明は、本方法論を例示して、説明したものである。さらに、本開示は、例示的な方法を示し、説明しているが、様々な他の組合せ、改変および環境が、採用されてもよいこと、ならびに本方法は、本明細書において表現されている概念の範囲内で、上記の教示および/または関連技術の技能もしくは知識に相応の変更または改変を行うことが可能であることを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】