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特表2024-542502陽極酸化アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面コントラストレーザマーキング方法
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  • 特表-陽極酸化アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面コントラストレーザマーキング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】陽極酸化アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面コントラストレーザマーキング方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 11/18 20060101AFI20241108BHJP
   C25D 11/04 20060101ALI20241108BHJP
   C25D 11/06 20060101ALI20241108BHJP
   C25D 11/24 20060101ALI20241108BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20241108BHJP
【FI】
C25D11/18 301E
C25D11/04 101A
C25D11/06 B
C25D11/06 C
C25D11/18 301C
C25D11/24 301
B23K26/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529957
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 FR2022052161
(87)【国際公開番号】W WO2023094766
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】2112629
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522300189
【氏名又は名称】サフラン・エアロシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エパル,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ドルベ,ジャン-アルチュール
(72)【発明者】
【氏名】マッカルーフ,ノルディーヌ
(72)【発明者】
【氏名】モワルー,シンシア
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA00
4E168DA02
4E168DA28
4E168DA45
4E168JA03
(57)【要約】
本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面をマーキングするための方法に関し、少なくとも以下のステップ:A)陽極酸化ステップ、B)封孔処理ステップ及びD)ファイバレーザビームによるマーキングのステップを含む。本発明はまた、航空、航空宇宙、自動車、鉄道、時計製造、医療、原子力及び石油産業を対象とするアルミニウム又はアルミニウム合金部品の製造、又はマーキングするための、本発明によるマーキング方法の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面マーキング方法であって、少なくとも以下のステップ、すなわち、
A)陽極酸化ステップと、
B)ステップAの最後に前記部品に形成されたアノード層を封孔処理するステップであって、
封孔処理は、
温度60℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上である脱イオン水と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のケイ酸塩1~500g/Lとの水溶液中で、
又は
温度60℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上である脱イオン水中で、
実行されるステップと、
D)以下の特徴、すなわち、
-波長800nm超、
-パルス持続時間0.5~10ns、
-レーザ周波数400~3000kHz、
-出力5~80W、
-速度1000~3000mm/s、
-ライン間隔0.0001~0.1mm、
-マーキング時間4~200秒、
のうちの1つ以上を有するファイバレーザビームを使用するマーキングステップと、
を含む方法。
【請求項2】
ステップA)は、TSA(酒石硫酸陽極酸化)、OAS(硫酸陽極酸化)、微細OAS(微細硫酸陽極酸化)、PSAA(リン酸硫酸陽極酸化)、BSAA(ホウ酸硫酸陽極酸化)又はOAC(クロム酸陽極酸化)型の陽極酸化であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
陽極酸化ステップA)は、前記部品が濃度150~250g/Lの硫酸を含有する水浴に温度14~21℃で浸漬される陽極酸化ステップであり、
プラトー値と称する電圧値5~13Vに達するまで、1V/分未満の速度での電圧上昇を備える電圧プロファイルに従い、前記浸漬部分に直流電圧が印加されることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
アルミニウム合金は、積層造形によって得られた2014、2017A、2024、2214、2219、2618、AU5NKZr、7175、5052、5086、6061、6063、7010、7020,7050,7050 T7451、7055 T77、7068、7085 T7651、7075、7175及び7475、AS7G06、AS7G03、AS10G、AS9U3、AS7G06、AS7G06及びAS10Gからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属のケイ酸塩は、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム及びケイ酸マグネシウムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップDは、増幅媒体がイッテルビウムを添加した光ファイバであるシステムであるファイバレーザを用いて実行されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップDは、主発振器出力増幅器レーザ又はMOPAであるファイバレーザを用いて実行されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップA)の後、かつケイ酸塩封孔処理ステップ(ステップB)の前に、
-CrF・xHO、CrCl・xHO、Cr(NO・xHO、(CHCOCr・xHO、(CHCOCr(OH)・xHO、Cr(SO・xHO、CrK(SO・xHOからなる群から選択される三価クロム塩を含有する水浴中で(ステップA1-1)、
続いて任意選択で、
-過酸化水素(H)、フッ化アンモニウム(NHF)、フルオロジルコン酸カリウム(KZrF)、過マンガン酸カリウム(KMnO)、過マンガン酸ナトリウム(NaMnO)からなる群から選択される酸化化合物を含有する水浴中で(ステップA1-2)、
前記部品を浸漬するステップA1)を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップD)前及びステップB)による封孔処理後に、96℃超の温度にて、抵抗率が0.01MOhm以上である脱イオン水中での最終熱水封孔処理であるステップC)を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
以下のステップ、すなわち、
A)請求項3に記載の条件下で実行される陽極酸化ステップと、
B)ステップA)の最後に前記部品上に形成されたアノード層を封孔処理するステップであって、封孔処理は、請求項1に記載の条件下で実行されるステップと、
D)請求項1に記載の特徴のうちの1つ以上を有するファイバレーザマーキングステップと、を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
以下のステップ、すなわち、
A)請求項3に記載の条件下で実行される陽極酸化ステップと、
A1)ステップA1-1)及びその後のステップA1-2)は、請求項8に記載の条件下で実行される、前記部品を浸漬するステップと、
B)ステップA)の最後に前記部品上に形成されたアノード層を封孔処理するステップであって、封孔処理は、請求項1に記載の条件下で実行されるステップと、
D)請求項1に記載の特徴のうちの1つ以上を有するファイバレーザマーキングステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
以下のステップ、すなわち、
A)請求項3に記載の条件下で実行される陽極酸化ステップと、
A1)ステップA1-1)及びその後のステップA1-2)は、請求項8に記載の条件下で実行される、前記部品を浸漬するステップと、
B)ステップA)の最後に前記部品上に形成されたアノード層を封孔処理するステップであって、封孔処理は、請求項1に記載の条件下で実行されるステップと、
C)請求項9に記載の条件下での最終熱水封孔処理と、
D)請求項1に記載の特徴のうちの1つ以上を有するファイバレーザマーキングステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
以下のステップ、すなわち、
A)請求項3に記載の条件下で実行される陽極酸化ステップと、
A1)前記部品を浸漬するステップであって、ステップA1-1)は、請求項8に記載の条件下で実行されるステップと、
B)ステップA)の最後に前記部品上に形成されたアノード層を封孔処理するステップであって、封孔処理は、請求項1に記載の条件下で実行されるステップと、
D)請求項1に記載の特徴のうちの1つ以上を有するファイバレーザマーキングステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
以下のステップ、すなわち、
A)請求項3に記載の条件下で実行される陽極酸化ステップと、
Im)有機染料又は無機染料の浴中で、ステップA)の最後に前記陽極酸化部分を浸透させるステップとを含み、次に、任意選択的に、
A1)前記部分を浸漬するステップであって、ステップA1-1)及びその後のステップA1-2)は、請求項8に記載の条件下で実行されるステップと、
B)ステップA)の最後に前記部分上に形成されたアノード層を封孔処理するステップであって、封孔処理は、請求項1に記載の条件下で実行されるステップと、
D)請求項1に記載の特性のうちの1つ以上を有するファイバレーザマーキングステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
航空、航空宇宙、自動車、鉄道、時計製造、医療、原子力及び石油産業などを対象とするアルミニウム又はアルミニウム合金部品の製造、又はそのマーキングを目的とする、請求項1~14のいずれか一項に記載のマーキング方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、生物腐食及び塩水噴霧環境に対するアルミニウム又はアルミニウム合金部品の耐性を向上させるための、これらの部品のコントラストレーザマーキング又は刻印に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面に、何らかの物質を除去することなくコントラストマーキングを生成するために、コントラストレーザマーキングを使用することもできる。このことは、例えば、読み取られる環境(暗所又は明所)及び読み取られる角度にかかわらず、視認性があり、信頼がある反復可能なデータマトリックスコード(Data Matrix Code、DMC)又は機器固有識別(Unique Device Identification、UDI)コードの読み取りを促進し、かつ保証する。
【0003】
コントラストレーザでマーキングされたアルミニウム又はアルミニウム合金部品は、とりわけ航空、航空宇宙、自動車、鉄道、時計製造、医療、原子力及び石油産業で使用される。
【0004】
トレーサビリティ、偽造防止及び/又は部品の識別を目的とする、テキスト、ロゴ、画像、数字、2Dコードなどを付したマーキング金属部品は、航空機、航空宇宙、自動車、鉄道、時計製造、医療、原子力、石油産業などの多くの分野で使用されている。この説明の目的は、「マーキング」及び「刻印」といった用語は、同じ操作又は方法を指すことを目的に互換的に使用され得る。レーザマーキングは、迅速である、安定した品質の高精度マーキングが可能である、摩耗及び熱に強いといった多くの利点を提供することから、この数十年にわたって関心が高まってきている方法である。ただし、レーザマーキングは、各レーザパルスで物質を取り除くレーザビームの使用に基づいたサブトラクティブ法である。金属部品、特に、このような方法でマーキングされたアルミニウム又はアルミニウム合金から作製されたものは露出しており(例えば、白色-未加工のアルミニウム)、これらは腐食及び生物腐食への耐性がない。現在、マーキング後の防食処理は、例えば、Henkel社製のBonderite MCR1200又はSurtec社製のSurtec 650を用いる保護コーティングを施すことによる化成処理からなる。これは、製造サイクルの工程が多いことで施工不良のリスクがより大きくなることなどから、部品又は装置製造における多くの工程、より長い製造サイクル時間、及び品質に関係しないリスクの増大を意味する。
【0005】
白色の色合いを有する刻印/マーキングの場合には、部品は、処理(例えば、化成処理)後であっても生物腐食に耐えることができない。
【0006】
米国特許出願公開第2003/0201259号明細書は、表面上に陽極酸化層を有するアルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面をマーキングするための方法を説明しているが、この方法は、700~1400nm、特に1000~1100nm、より詳細には1064nmの波長を有するレーザビームで表面の領域をマーキングするステップを含む。レーザビームは、陽極酸化表面層の少なくとも大部分を貫通し、裸眼で観察可能である視覚的変化を局所的に引き起こす。更に外側に配置されているマーキングされていない陽極酸化層のゾーンは、変化しないままである。陽極酸化層の保護効果が損なわれることはなく、層は、マーキング適用前のように外側にむらのない状態を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0201259号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
金属部品、特にアルミニウム又はアルミニウム合金へのレーザマーキングの別の欠点は、その視認性及び可読性である。現在、マーキングのコントラストは低く、そのため、視認性/判読可能性があまり高くないか、ある特定の環境及びある特定の条件下でのみ判読可能である。化成処理によるマーキング後処理はまた、マーキングの視認性/可読性を変化させる可能性がある。
【0009】
したがって、マーキング後の化成処理を必要とすることなく、アルミニウム又はアルミニウム合金部品の生物腐食及び腐食への耐性を向上させるために、アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面をマーキングするためのレーザによる方法が実際に必要とされている。これは、REACH規制に準拠している。
【0010】
特に、レーザを使用してアルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面をマーキングするための方法が実際に必要とされており、このことによって、
-レーザマーキングと処理された基板との間のコントラストが実質的に増大し、任意の環境での前記マーキングの視認性、認識可能性及び可読性を促進させるコントラストマーキングが可能となり、かつ/又は、
-摩耗及び引裂、並びに腐食環境に耐性がある安定した品質の高精度マーキングが可能となり、かつ/又は、
-DMC(データマトリックスコード)及びUDI(機器固有識別)コードなどの小さな表面上への小さく微細なマーキングに好適であり、かつ/又は、
-更なるマーキング後の化成処理ステップを必要とすることなく、マーキング部分が腐食環境、塩水噴霧及び生物腐食に耐えることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、特に、アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面マーキング方法を提供することによって、処理部品の腐食及び生物腐食への耐性及びマーキングの視認性/可読性といった観点において、これらの必要性を正確に満たすことであり、少なくとも以下のステップ、すなわち、
A)陽極酸化ステップと、
B)ステップAの最後に前記部品に形成されたアノード層を封孔処理するステップであって、
封孔処理は、
温度60℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である脱イオン水と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のケイ酸塩1~500g/Lのとの水溶液中で、
又は、
温度60℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である水溶液中で、実行されるステップと、
D)以下の特徴、すなわち、
-800nm超、例えば1064nmに等しい波長、
-パルス持続時間0.5~10ns、
-レーザ周波数400~3000kHz、
-5~80W、例えば8~20Wの出力、
-速度1000~3000mm/s、
-ライン間隔0.0001~0.1mm、
-マーキング時間4~200秒、
のうちの1つ以上を有するファイバレーザビームを使用するマーキングステップと、
を含む。
【0012】
腐食及び生物腐食耐性の封孔処理なしにはもはや適合しないことから、ステップBは必須である。ただし、ステップB後には、ケイ酸塩で封孔処理すること、又は(ケイ酸塩なしで)沸騰水のみで封孔処理することの2つの選択肢が存在する。前者によって、実質的な刻印(本願の主題である)は腐食及び生物腐食耐性を保証するが、一方で後者は、このようにして製造された刻印の腐食耐性を保証するのみである。
【0013】
好ましい一実施形態では、ファイバレーザは、主発振器出力増幅器(Master Oscillator Power Amplifier、MOPA)レーザである。
【0014】
本発明の方法によるアルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面マーキングは、十分にコントラストがつけられている。これはすなわち、レーザマーキングと処理部分の表面とのコントラストは実質的に増大しており、それによって、環境及び光度にかかわらず前記マーキングの視認性及び読み取りが促進される。更には、本発明の方法で製造されたマーキングが設けられたアルミニウム又はアルミニウム合金部品は、任意のマーキング後に化学処理を行うことなく、生物腐食、腐食、特に塩水噴霧、及び腐食環境又は酸性環境に対する良好な耐性を有する。
【0015】
本発明の別の目的は、航空、航空宇宙、自動車、鉄道、時計製造、医療、原子力及び石油産業などを対象とするアルミニウム又はアルミニウム合金部品の製造、又はマーキングするための、本発明によるマーキング方法の使用に関する。
【0016】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになり、その理解のために添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】標準MIL-C-27725Bの4.7.19節に従った、本発明の方法によって処理された試験片で生物腐食試験を実行するための設定図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的は、特に、アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面マーキング方法を提供することによって、処理部品の腐食及び生物腐食への耐性及びマーキングの視認性/可読性といった観点では、これらの必要性に正確に合致することであり、少なくとも以下のステップ、すなわち、
A)陽極酸化ステップと、
B)ステップAの最後に前記部品に形成されたアノード層を封孔処理するステップであって、
封孔処理は、
60℃~100℃の温度で、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である脱イオン水と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のケイ酸塩1~500g/Lとを有する水溶液中で、
又は
60℃~100℃の温度で、0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上の抵抗率を有する脱イオン水で実行されるステップと、
D)以下の特徴、すなわち、
-800nm超、例えば1064nmに等しい波長、
-パルス持続時間0.5~10ns、
-レーザ周波数400~3000kHz、
-5~80W、例えば8~20Wの出力、
-速度1000~3000mm/s、
-ライン間隔0.0001~0.1mm、
-マーキング時間4~200秒、
のうちの1つ以上を有するファイバレーザビームを使用するマーキングステップと、
を含む。
【0019】
本発明による方法によって、マーキングを施した部分が、特に塩水噴霧環境での腐食、及び生物腐食に耐性があるように、アルミニウム又はアルミニウム合金部品上にコントラストマーキングすることが可能になる。
【0020】
陽極酸化ステップA)は、仏国特許出願公開第3106837号明細書に説明される条件下で実行される。
【0021】
封孔処理ステップB)は、上に定義されるように、脱イオン水とアルカリ金属又はアルカリ土類金属のケイ酸塩との水溶液中で行われるとき、仏国特許出願公開第3106837号明細書に説明される条件下で実行される。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、陽極酸化ステップA)は、前記部品を濃度150~250g/Lで硫酸を含有する水浴に温度14~21℃まで浸漬し、プラトー値と称する電圧値5~13Vに達するまで、1V/分未満の速度での電圧上昇を備える電圧プロファイルに従い、浸漬された前記部品に直流電圧が印加される陽極酸化ステップである。
【0023】
プラトー値と称する電圧値に達すると、印加電圧は、厚さ2~7μmの前記部品の表面上にアノード層を得るために、適切な期間にわたって前記プラトー値に維持される。
【0024】
前記浸漬部分に印加された電圧は、20~80分の期間にわたってプラトー値に維持されてもよい。
【0025】
プラトー値と称する電圧値は、6~10Vに維持されることができる。
【0026】
この陽極酸化は、微細OAS(微細硫酸陽極酸化)である。
【0027】
本発明の方法では、陽極酸化ステップA)はまた、TSA、OAS、PSAA、BSAA又はOACタイプの陽極酸化ステップであってよい。これらの陽極酸化は当業者に周知であり、TSA(酒石硫酸陽極酸化)については、https://www.a3ts.org/actualite/commissions-techniques/fiches-techniques-traitement-surface/anodisation-sulfo-tartrique-oast-tartric-sulfuric-anodizing-tsa/、OAS(酸化陽極酸化硫酸)については、https://www.a3ts.org/actualite/commissions-techniques/fiches-techniques-traitement-surface/anodisation-sulfurique-version-5-2/、BSAA(ホウ酸硫酸陽極酸化)については、https://www.anoplate.com/finishes/boric-sulfuric-acid-anodize-bsaa/、PSAA(リン酸硫酸陽極酸化)については、http://www.metroplating.co.uk/phosphoric-acid-anodizing.phpにも説明されている。
【0028】
好ましくは、ステップA)での陽極酸化は微細OASである。
【0029】
本発明の方法は、異なる製造方法、すなわち積層造形によって得られた2014、2017A、2024、2214、2219、2618、AU5NKZr、7175、5052、5086、6061、6063、7010、7020,7050,7050 T7451、7055 T77、7068、7085 T7651、7075、7175及び7475、AS7G06、AS7G03、AS10G、AS9U3、AS7G06及びAS10Gからなる群から選択されるアルミニウム及びアルミニウム合金部品に特に好適である。
【0030】
示されるように、部品に印加される電圧プロファイルは、プラトー値と称する電圧値5~13V(好ましくは6~10V)に到達するまで、1V/分未満の速度で、好ましくは0.3V/分~0.7V/分で、開始値0Vからの電圧上昇を備える。前記浴に浸漬されている前記部品に印加された電圧は、そして、厚さ2~7μm、例えば約5μmに等しい厚さを有する、前記部品の表面上に酸化アルミニウム/水酸化アルミニウムのアノード層を得るために、好適な期間にわたって前記プラトー値で維持される。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、前記浸漬部分に印加される電圧は、20~80分、好ましくは30~60分の期間にわたってプラトー値に維持される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態による陽極酸化ステップA)では、水浴中の硫酸濃度は、160g/L~220g/Lが好ましく、例えば190g/Lに等しい。
【0033】
本発明の好ましい実施形態による陽極酸化ステップA)では、水浴の温度は、10~25℃とすることができ、14~21℃が好ましく、例えば18℃である。
【0034】
陽極酸化ステップA)の後、ステップA)中に前記部品上に形成されるアノード層を封孔処理するステップであるステップB)が続く。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、方法は、陽極酸化ステップA)、封孔処理ステップB)及びマーキングステップD)を含む。
【0036】
本発明の変形例では、ステップB)の封孔処理は、
-抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1Mohm以上、より好ましくは10Mohm以上である脱イオン水と、
-アルカリ金属又はアルカリ土類金属のケイ酸塩1~500g/Lと、
を含む水溶液中で実行される。
【0037】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属のケイ酸塩は、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム及びケイ酸マグネシウムからなる群から選択されることができる。
【0038】
封孔処理浴の水質は、表面部分に形成されたアノード層の生物腐食に対する耐性に影響を有することから重要である。抵抗率が10MOhm以上である水など、より純水な水は、抵抗率が10MOhm未満である水よりも経時的にはより良好な性能をもたらす可能性がある。好ましい変形例によれば、脱イオン水は会合水である。これはすなわち、その会合/充填中に活性浴を満たすために使用される水であり、前記水の抵抗率は、0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である。
【0039】
封孔処理ステップB)では、溶液中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のケイ酸塩濃度は15~40g/Lが好ましく、例えば23g/Lに等しい。
【0040】
別の変形例では、ステップB)の封孔処理は、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1Mohm以上、より好ましくは10Mohm以上である脱イオン水中で実行される。
【0041】
本発明のすべての変形例及び実施形態では、ステップB)の封孔処理溶液の温度は、60℃~100℃、好ましくは97℃~100℃、例えば98℃とすることができる。
【0042】
本発明のすべての変形例及び実施形態では、封孔処理ステップB)の持続時間は、1~40分、好ましくは15~40分、例えば30分である。これは、封孔処理が上記のケイ酸塩を含まない水のみで実行されるときに適用可能である。
【0043】
ケイ酸塩を用いて封孔処理するときには、期間は15~25分、好ましくは20分である。
【0044】
本発明の一実施形態に従い、ステップA)の後、及びケイ酸塩封孔処理ステップ(ステップB)の前には、浸漬ステップA1)は、
-CrF・xHO、CrCl・xHO、Cr(NO・xHO、(CHCOCr・xHO、(CHCOCr(OH)・xHO、Cr(SO・xHO、CrK(SO・xHOからなる群から選択される三価クロム塩を含有する水浴中で、前記部品に実行され(ステップA1-1)、
続いて任意選択で、
-過酸化水素(H)、フッ化アンモニウム(NHF)、フルオロジルコン酸カリウム(KZrF)、過マンガン酸カリウム(KMnO)、過マンガン酸ナトリウム(NaMnO)からなる群から選択される酸化化合物を含有する水浴中で行う(ステップA1-2)ことができる。
【0045】
三価クロム塩は、例えば、以下:SURTEC社製のSurtec 650、COVENTYA社製のLanthane 613.3、SOCOMORE社製のTCS、HENKEL社製のBonderite MNT 65000の市販品のうちの1つとすることができる。
【0046】
酸化化合物は、例えば、SOCOMORE社の製品であるPACSとすることができる。
【0047】
浸漬ステップA1)では、ステップA1-1)及びステップA1-2)は、ステップA1-1)、続いてステップA1-2)の順で連続して行うことができる。浸漬ステップA1)はまた、続けてステップA1-2)を行うことなく、ステップA1-1)単独で行うこともできる。
【0048】
ステップA1-1)及びA1-2)における三価クロム塩を含有する水浴の温度及び酸化化合物を含有する水浴の温度は、20~80℃、好ましくは20~60℃である。2つの浴の温度は、同じ又は異なり得る。
【0049】
ステップA1)における各浴での浸漬時間は、同じ又は異なっていてもよい。これは、5~40分、好ましくは5~20分とすることができる。
【0050】
三価クロム塩を含有する浴のpHは、3~4.5、好ましくは3~4、例えば3.5とすることができる。
【0051】
浴中の三価クロム塩の濃度は、0.5~500g/Lであることが好ましい。
【0052】
酸化化合物を含有する浴のpHは、3~6である。
【0053】
浴中の酸化化合物の濃度は、0.1~500g/Lであることが好ましい。
【0054】
本発明の別の実施形態によれば、プロセスはまた、ステップDの前、及びステップB)に記載の封孔処理後に、ステップC)と称する最終熱水封孔処理を含む。最終熱水封孔処理C)は、96℃超、例えば97~100℃の温度にて、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上の脱イオン水中で実行される。
【0055】
最終熱水封孔処理C)では、部品は、有利には抵抗率が10MOhm以上である脱イオン水中に浸漬される。このステップにおける部品の浸漬は、10~30分とすることができ、15~25分であることが好ましい。
【0056】
マーキングステップD)は、以下の特徴、すなわち、
-800nm超、例えば1064nmに等しい波長、
-パルス持続時間0.5~10ns、
-レーザ周波数400~3000kHz、
-5~80W、例えば8~20Wの出力、
-速度1000~3000mm/s、
-ライン間隔0.0001~0.1mm、
-マーキング時間4~200秒、
のうちの1つ以上を有するファイバレーザビームで実行される。
【0057】
本発明者らは、ステップD)のファイバレーザ処理後のアルミニウム及びアルミニウム合金部品の腐食挙動は、
(1)パラメータの巧みかつ適切な選択を使用し、異なる幾何学的形状及び構造的特徴を有する表面コントラストマークを生成することができること、
(2)ステップD)による超高速かつ効率的なレーザ処理は、アルミニウム又はアルミニウム合金部品の微細構造に影響を及ぼすことなく、及び/又はこれを変更することなく表面にコントラストマーキングを生成すること、
を示していることを見出した。
【0058】
事実、ステップD)のレーザ処理によって、暗色、又は更には黒色のマークを形成することが可能であり、それによってアルミニウム又はアルミニウム合金部品上にコントラストをつけるが、したがって、これはすべての光条件にて高コントラストであり、かつ読み取りが容易である。
【0059】
ステップD)におけるマーキングは、アノード層を貫通することなく、ファイバ強化レーザ光線を用いて陽極酸化表面をマーキングし、層へと高コントラストの濃い刻印を生成することを含む。このマーキングは、任意の物質を取り除くことなく、表面上に高コントラストの極度に濃いマーキングを生成するレーザ加工方法として見られることができる。極端に短いレーザパルスは、表面上にナノスケール構造を生成する。この微細構造表面によって、光散乱が低減され、得られたマークは深く安定した黒染部分を有する。
【0060】
パラメータを巧みに選択することによって、ステップD)は部品に影響を及ぼすことを避けてマークを酸化物層の厚さ内に維持する。現在公知であり、使用されているマーキング方法とは異なり、ステップD)の条件下でマーキングされた部品は、腐食及び生物腐食に対して保護されるためのマーキング後の処理(例えば、化成処理)を必要としない。これは、アルミニウム基板に達することなく、マーキングが(下地の)アノード層に含まれるからである。生物腐食及び腐食に対するマーキング部分の耐性は、特に塩及び塩水噴霧に曝露されるときには、別の刻印/マーキング技術と比較して向上される。
【0061】
マーキングステップD)は、上述の特徴を有する任意の種類のファイバレーザを使用して実行されることができる。
【0062】
ファイバレーザの場合には、増幅媒体は、サマリウム、エルビウム、イッテルビウム、ネオジウム、ジスプロシウム、プラセオジウム、ツリウム及びホルミウムなどの希土類元素が添加された光ファイバである。得られた波長は、選択した元素に応じて変化する。いくつかの元素についての例として、サマリウム 0.6μm、イッテルビウム 1.05μm、エルビウム 1.55μm、ツリウム 1.94μm、ホルミウム 2.1μmなどの波長を示す。
【0063】
ファイバレーザビームによって生成されるスポットは小さく、熱エネルギーに変換されるエネルギーの量が制限される。これは、処理された表面が、熱又は破壊によって生じた損傷から保護されることを意味する。
【0064】
別の利点は、ファイバレーザがエネルギー効率が高いことである。
【0065】
本発明の一実施形態では、ファイバレーザは、増幅媒体がイッテルビウムをドープした光ファイバであるシステムである。
【0066】
好ましい一実施形態では、ステップD)におけるマーキングは、主発振器出力増幅器(MOPA)レーザであるファイバレーザを用いて実行される。この種類のレーザの例としては、TECHNIFOR製のTF 420レーザ、又はTROTEC製のSpeedMarker 700が挙げられる。
【0067】
既に示されているように、ステップD)でのマーキングは、任意の物質を取り除くことなく、かつ部品それ自体に到達することなく、酸化アルミニウム/水酸化アルミニウム層の厚さ内で実行される。したがって、ステップD)でのレーザマーキングは、少なくとも3μmの厚さ、例えば少なくとも4μmの厚さ、例えば4~6μmの厚さである酸化アルミニウム/水酸化アルミニウムの層上で実行される。好ましくは、ステップD)でのレーザマーキングは、約5μmの厚さである酸化アルミニウム/水酸化アルミニウムの層上で実行される。
【0068】
ステップD)は、800nm超、例えば1064nmの波長を有するファイバレーザを使用して実行されることができる。
【0069】
レーザパルス持続時間は、0.5~10ns、好ましくは1~7ns、より好ましくは1~4nsとすることができる。
【0070】
レーザ周波数は、400~3000kHzとすることができる。
【0071】
ファイバレーザの出力は、5~80W、例えば8~20Wである。
【0072】
ファイバレーザビームの速度は、1000~3000mm/sとすることができる。
【0073】
ライン間隔は、0.0001~0.1mmとすることができる。
【0074】
ステップD)のマーキング時間は、4~200秒とすることができる。
【0075】
レーザビームはパルス化され、特定の間隔でエネルギーを放出する。速度及びライン間隔は、2つのパルス間の距離を決定する2つのパラメータである。
【0076】
本発明の一実施形態では、アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面マーキング方法は、以下のステップ、
A)前記部品は、濃度150~250g/L、温度14~21℃で、硫酸を含有する水浴中に浸漬され、
直流電圧は、5~13Vのプラトー値と称する電圧値に到達するまで、1V/分未満の速度での電圧上昇を備える電圧プロファイルに従い、前記浸漬部分に印加される、陽極酸化ステップと、
B)ステップA)の最後に前記部品上に形成されるアノード層を封孔処理するステップであって、
封孔処理は、所定の位置で、
温度60℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である脱イオン水と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のケイ酸塩1~500g/Lとの水溶液中で、
又は、
温度60℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である脱イオン水中で行うステップと、
D)以下の特徴、すなわち、
-800nm超、例えば1064nmに等しい波長、
-パルス持続時間0.5~10ns、
-レーザ周波数400~3000kHz、
-5~80W、例えば8~20Wの出力、
-速度1000~3000mm/s、
-ライン間隔0.0001~0.1mm、
-マーキング時間4~200秒、
のうちの1つ以上を有するファイバレーザマーキングステップと、を含む。
【0077】
本発明の別の実施形態では、アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面をマーキングするための方法は、以下のステップ、すなわち、
A)前記部品は、濃度150~250g/L、温度14~21℃で、硫酸を含有する水浴中に浸漬され、
直流電圧は、5~13Vのプラトー値と称する電圧値に到達するまで、1V/分未満の速度での電圧上昇を備える電圧プロファイルに従い、前記浸漬部分に印加される、陽極酸化ステップと、
A1)前記部品を、
-CrF・xHO、CrCl・xHO、Cr(NO・xHO、(CHCOCr・xHO、(CHCOCr(OH)・xHO、Cr(SO・xHO、CrK(SO・xHOからなる群から選択される三価クロム塩を含有する水浴中で浸漬し(ステップA1-1)、
続いて(任意で)
-過酸化水素(H)、フッ化アンモニウム(NHF)、フルオロジルコン酸カリウム(KZrF)、過マンガン酸カリウム(KMnO)、過マンガン酸ナトリウム(NaMnO)からなる群から選択される酸化化合物を含有する水浴中で浸漬する(ステップA1-2)ステップと、
B)ステップA)の最後に前記部品上に形成されたアノード層を封孔処理するステップであって、
封孔処理は、所定の位置で、
温度60℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である脱イオン水と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のケイ酸塩1~500g/Lとの水溶液中で、
又は、
温度60℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である脱イオン水中で行われるステップと、
D)以下の特徴、すなわち、
-800nm超、例えば1064nmに等しい波長、
-パルス持続時間0.5~10ns、
-レーザ周波数400~3000kHz、
-5~80W、例えば8~20Wの出力、
-速度1000~3000mm/s、
-ライン間隔0.0001~0.1mm、
-マーキング時間4~200秒、のうちの1つ以上を有するファイバレーザマーキングステップと、
を含む。
【0078】
本発明の別の実施形態では、アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面をマーキングするための方法は、以下のステップ、すなわち、
A)前記部品は、濃度150~250g/L、温度14~21℃で、硫酸を含有する水浴中に浸漬され、
直流電圧は、5~13Vのプラトー値と称する電圧値に到達するまで、1V/分未満の速度での電圧上昇を備える電圧プロファイルに従い、前記浸漬部品に印加される、陽極酸化ステップと、
A1)前記部品を、
-CrF・xHO、CrCl・xHO、Cr(NO・xHO、(CHCOCr・xHO、(CHCOCr(OH)・xHO、Cr(SO・xHO、CrK(SO・xHOからなる群から選択される三価クロム塩を含有する水浴中で浸漬し(ステップA1-1)、
続いて(任意で)
-過酸化水素(H)、フッ化アンモニウム(NHF)、フルオロジルコン酸カリウム(KZrF)、過マンガン酸カリウム(KMnO)、過マンガン酸ナトリウム(NaMnO)からなる群から選択される酸化化合物を含有する水浴中で浸漬する(ステップA1-2)ステップと、
B)ステップA)の最後に前記部品上に形成されたアノード層を封孔処理するステップであって、
封孔処理は、所定の位置で、
温度60℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である脱イオン水と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のケイ酸塩1~500g/Lとの水溶液中で、
又は、
温度60℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である脱イオン水中で行われるステップと、
C)温度97℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である脱イオン水中での最終熱水封孔処理を行うステップと、
D)以下の特徴、すなわち、
-800nm超、例えば1064nmに等しい波長、
-パルス持続時間0.5~10ns、
-レーザ周波数400~3000kHz、
-5~80W、例えば8~20Wの出力、
-速度1000~3000mm/s、
-ライン間隔0.0001~0.1mm、
-マーキング時間4~200秒、のうちの1つ以上を有するファイバレーザマーキングステップと、
を含む。
【0079】
本発明の別の実施形態では、アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面マーキング方法は、以下のステップ、
A)前記部品は、濃度150~250g/L、温度14~21℃で、硫酸を含有する水浴中に浸漬され、
直流電圧は、5~13Vのプラトー値と称する電圧値に到達するまで、1V/分未満の速度での電圧上昇を備える電圧プロファイルに従い、前記浸漬部品に印加される、陽極酸化ステップと、
A1)前記部品を、
-CrF・xHO、CrCl・xHO、Cr(NO・xHO、(CHCOCr・xHO、(CHCOCr(OH)・xHO、Cr(SO・xHO、CrK(SO・xHOからなる群から選択される三価クロム塩を含有する水浴中で、浸漬するステップ(ステップA1-1)と、
B)ステップA)の最後に前記部品上に形成されたアノード層を封孔処理するステップであって、
封孔処理は、所定の位置で、
温度60℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である脱イオン水と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のケイ酸塩1~500g/Lとの水溶液中で、
又は、
温度60℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である脱イオン水中で行われるステップと、
D)以下の特徴、すなわち、
-800nm超、例えば1064nmに等しい波長、
-パルス持続時間0.5~10ns、
-レーザ周波数400~3000kHz、
-5~80W、例えば8~20Wの出力、
-速度1000~3000mm/s、
-ライン間隔0.0001~0.1mm、
-マーキング時間4~200秒、のうちの1つ以上を有するファイバレーザマーキングステップと、
を含む。
【0080】
本発明の別の実施形態では、アルミニウム又はアルミニウム合金部品の表面をマーキングするための方法は、以下のステップ、
A)前記部品は、濃度150~250g/L、温度14~21℃で、硫酸を含有する水浴中に浸漬され、
直流電圧は、5~13Vのプラトー値と称する電圧値に到達するまで、1V/分未満の速度での電圧上昇を備える電圧プロファイルに従い、前記浸漬部分に印加される、陽極酸化ステップと、
Im)有機染料又は無機染料の浴中で、ステップA)の最後に前記陽極酸化部分を浸透させるステップと、
続いて任意選択で、
A1)前記部品を、
-CrF・xHO、CrCl・xHO、Cr(NO・xHO、(CHCOCr・xHO、(CHCOCr(OH)・xHO、Cr(SO・xHO、CrK(SO・xHOからなる群から選択される三価クロム塩を含有する水浴中で浸漬し(ステップA1-1)、
続いて(任意で)
-過酸化水素(H)、フッ化アンモニウム(NHF)、フルオロジルコン酸カリウム(KZrF)、過マンガン酸カリウム(KMnO)、過マンガン酸ナトリウム(NaMnO)からなる群から選択される酸化化合物を含有する水浴中で浸漬する(ステップA1-2)ステップと、続いて任意選択で、
B)ステップA)の最後に前記部品上に形成されたアノード層を封孔処理するステップであって、
封孔処理は、所定の位置で、
温度60℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である脱イオン水と、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属のケイ酸塩1~500g/Lとの水溶液中で、
又は、
温度60℃~100℃で、抵抗率が0.01MOhm以上、好ましくは0.1MOhm以上、より好ましくは10MOhm以上である脱イオン水中で行われるステップと、
D)以下の特徴、すなわち、
-800nm超、例えば1064nmに等しい波長、
-パルス持続時間0.5~10ns、
-レーザ周波数400~3000kHz、
-5~80W、例えば8~20Wの出力、
-速度1000~3000mm/s、
-ライン間隔0.0001~0.1mm、
-マーキング時間4~200秒、のうちの1つ以上を有するファイバレーザマーキングステップと、
を含む。
【0081】
ステップA)に続くステップIm)は、当業者に公知の任意の技術を使用して実行され得る。例えばこれは、Clariantなどの企業から入手可能である表面処理に適合した染浴で実現され得る。一例として、pH5~6、温度40~65℃、好ましくは50℃に等しい温度、5~35分の期間、好ましくは20分に等しい持続時間にて酢酸ナトリウム 2g/Lを添加しなければならない、濃度 3g/Lの有機染料Sanodal Blue(Clariant社製)に言及することができる。有機染料の有効成分は、アントラキノン分子である。
【0082】
すべての実施形態では、部品を本発明の表面処理方法に供する前、したがって陽極酸化ステップA)の前に、部品は、表面上に存在するグリース、汚れ及び酸化物を取り除くために、脱脂及び/又は酸洗いによる表面調製ステップに供され得る。
【0083】
表面調製のこうした予備ステップは、以下の操作、
-部品表面上のグリースを溶解するための溶剤脱脂。この操作は、浸漬、噴霧、又は当業者に公知の任意の他の方法によって実現され得る、
-部品表面上のグリースを溶解するためのアルカリ脱脂。この操作は、浸漬、噴霧、又は当業者に公知の任意の他の技術によって実現され得る、
-部品表面上に自然に形成された酸化物を溶解するためのアルカリ酸洗い。この操作は、浸漬、噴霧、又は当業者に公知の任意の他の技術によって実現され得る。この操作の最後には、部品は、金属間化合物の酸化生成物によって形成された粉末層で覆われているが、これは酸洗いステップによって取り除かれなければならない、
-部品表面上に自然に形成された酸化物、及び/又はアルカリ洗いステップ中に部品表面上に形成された酸化層を溶解するための酸洗い。この操作は、浸漬、噴霧、又は当業者に公知の任意の他の技術によって実現され得る、のうちの1つ以上を含み得る。
【0084】
これらのステップは、例えば、国際公開第2013/117759号に詳細に説明される。
【0085】
特に、脱イオン水を用いた中間すすぎは、好ましくは、上記連続するステップ間、及び部品が陽極酸化によって処理される前に実現される。
【0086】
本発明の方法は、腐食、生物腐食、塩水噴霧及び塩曝露に対して良好な耐性を有するアルミニウム又はアルミニウム合金部品のコントラストマーキングが必要とされる任意の種類の産業では、非常に大きな関心を集めている。
【0087】
例えば、本発明の方法を使用し、2024T3合金などのアルミニウム又はアルミニウム合金部品上で(物理化学的後処理なしに)マーキングが行われると、
-部品が塩水噴霧試験(ISO9227に従った168時間の曝露)に供される場合、マーキングの可読性及び視認性は保証しているものの、試験の最後には腐食は観察されなかった、かつ、
-部品が標準MIL-C-27725Bの§4.7.19に従った15日間の浸漬生物腐食試験に供される場合、マーキングの可読性及び視認性は保証しているものの、マーキングは試験の最後には腐食されなかった。生物腐食耐性は、範囲及び関連する変形例が少なくとも上記のケイ酸塩で封孔処理するステップを含有するときにのみ保証されることに留意されたい。
【0088】
物理化学的後処理なしの、アルミニウム又は2024T3合金などのアルミニウム合金部品に到達(酸化物層を貫通)し、コントラストがついた、又はついていないレーザマーキングは、ISO9227に従って生理食塩水に168時間曝露が要求される前に腐食の兆候を示すことに留意されたい。
【0089】
本発明で説明される方法を使用したマーキングの利点の1つは、どの観察角度であっても視覚的に安定していることである。あらゆる角度からの、非常に目立ち、均一であるコントラストは、光を反射及び吸収し、これを可能な限り広範に散乱させる周期的なナノ構造によるものである。この特徴は、特に視認できる多くの部品を実装する時計産業又は自動車産業における品質の保証を示す。
【0090】
この方法によって製造された高コントラストの濃いマーキングは、手動及び自動の両方で、マーキング細部の視認性及び可読性を大幅に向上させる。
【0091】
更に、本発明のマーキング方法は、小さく微細なマーキングに、又は小さな表面上のDMC(データマトリックスコード)及びUDI(機器固有識別)コードに好適である。
【0092】
例えば、医療機器に関する欧州の規制及び米国FDA(Food and Drug Administration、食品医薬品局)の規制は、医療技術製品がそのトレーサビリティを保証し、時間が経過しても可読性を維持するUDI(機器固有識別)コードを搭載することを義務付けている。本発明の方法によるマーキングは、UDIに互換性があるマーキングの要件に見事に適合する。UDIコード、特に非常に小さなUDIコードは、腐食耐性、あらゆる視野角での安定性、及びコントラスト又は非常に濃い黒色によって長期間にわたり可読性を維持している。
【0093】
本発明の別の目的は、航空、航空宇宙、自動車、鉄道、時計製造、医療、原子力及び石油産業などを対象とするアルミニウム又はアルミニウム合金部品の製造、又はマーキングするための、本発明によるマーキング方法の使用に関する。
【実施例
【0094】
実施例1:
アルミニウム合金部品の表面マーキング方法
寸法120×60×2mmの二つの側面の一方に機械加工され、積層されたアルミニウム合金部品2024 T3及びAS7G06T6を、以下に記載の方法に従って加工する。
部品の表面調製ステップを、最初に連続して実現する:
-温度60℃で20分間、ALUMAL CLEAN 101(COVENTYA社製)の浴中に部品を浸漬することによる、アルカリ脱脂、
-水道水又は脱イオン水による濯ぎ、
-ALUMAL DEOX 411(COVENTYA社製)の溶液に部品を浸漬することによる、酸洗い、
-水道水又は脱イオン水による濯ぎ。
【0095】
続いて酸洗いし、濯いだ部品を本発明に従って陽極酸化方法に供し、その間に部品を濃度160g/L~220g/L、例えば190g/Lに等しい濃度で硫酸を備える水浴に浸漬させる。この浴を保持し、温度18℃に維持する。直流電圧を、以下の電圧プロファイル、すなわちプラトー値と称する電圧値10Vに達するまで、0.7V/分の速度で0Vの値からの電圧上昇、に従って前記浸漬部分に印加する。電圧を、40分間プラトー値に維持する。3~6μm厚さのアノード層が、部品の表面に形成される。
【0096】
比較例として、同じ表面調製操作を受けた同一部品を、従来のクロム酸陽極酸化(OAC)及び微細硫酸陽極酸化(微細OAS)の方法を使用して陽極酸化する。これらの陽極酸化の操作条件を[表1]に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
部品上に形成したアノード層の厚さを、標準ISO2360に従い、過電流により測定する。
【0099】
次いで、陽極酸化部分が、好ましくは脱イオン水を用いて1回以上の濯ぎに供され、続いて以下に示す条件および順序で、本発明に従って封孔操作が行われる。
-ステップA1.1)及びステップA1.2):前記部品を、29Vol/Vol%の三価クロム塩(化学式KCr(SOである硫酸カリウムクロム(III))を含有する水浴中に、温度40℃で20分、pH3.9で、続いて、
7Vol/Vol%のHを含有する水浴中に、温度25℃で5分、pH4.2で連続して浸漬するステップ、
ステップB):2つの先行する操作の最後に、温度98℃、20分間にわたって、ケイ酸ナトリウム23g/Lを含み、抵抗率が10MOhmである脱イオン水のマウント水溶液に部品を浸漬することによる封孔処理。
【0100】
各封孔処理ステップ間に、温度約20℃、1分間にわたって脱イオン水による濯ぎを実施する。
【0101】
(部品に影響を及ぼすことがない)MOPAファイバレーザビームを使用する非ドリルマーキングステップD)を、[表2]に指定された条件下で、TROTEC製のSpeedMarker 700レーザを使用して実行した。
【0102】
【表2】
【0103】
Alodine化成処理は、酸化に対してアルミニウム又はアルミニウム合金表面を長期保護するための排他的化学方法である、Alodine1200型の化成処理を指す。Alodine1200の処理は、塗料による仕上げを必要としない、又は局所的な仕上げのみを必要とする表面を保護するために開発された(168時間超の塩水噴霧耐性)。
【0104】
これは、処理された表面の完全な化学的安定性により、適用された仕上げの最大の接着性及び耐久性を保証する。
【0105】
硬化プロセスで使用されるAlodine1200は、実質的に過剰な厚さを有さないアルミニウム又は合金上に保護コーティングを形成する。このコーティングの色は、合金の種類又は金属の純度の程度に応じて黄色から茶色に変化する。
【0106】
Alodine1200は、標準MIL C 5541に承認されている。
【0107】
生物腐食耐性
これらの操作の最後には、封孔処理及びマーキングされたアノード層が各処理部品上に得られた。処理されると、標準MIL-27725Bの§4.7.19のプロトコルに従った生物腐食を呈する媒体中で、部品を浸漬試験に供した。標準MIL-C-27725Bの§4.7.19に従った生物腐食試験を実施するための、様々な部品を含むアセンブリ図を図1に示す。
【0108】
部品を媒体から取り出し、マーキングの視認性及び可読性、並びに処理によって生じた損傷の何らかの兆候並びに/又は媒体(より低い相)による基板への攻撃を確認することで、結果を視覚的に評価した。視覚的劣化は層のオーム抵抗率を測定することで確認されることができるが、オーム抵抗率が無限ではないときには、このオーム抵抗率は、基板まで進み得る層の劣化を強調する。
【0109】
試験前には、オーム抵抗率法は、電流が刻印の2つの点を通過する場合、生物腐食耐性を満たさないという事実を予測するのに有用である。一方、マーキング上に攻撃がない場合には、生物腐食試験後の要件は存在しない。
【0110】
この方法は、潜在的な腐食の何らかの兆候に関する生物腐食試験後、及び15日間の生物腐食試験の最後にのみ体系的に実行される。
【0111】
抵抗計を用いた抵抗を測定するための方法:
マルチメータは、抵抗性を測定するために使用されることができる。これは、抵抗計モードで使用されなければならない。
【0112】
抵抗計モードでのマルチメータの使用:
端子の選択:COM端子及び記号オームを保持する端子。
【0113】
接続:試験の最後に、二相媒体の下相と接触していた領域中で試験片上の2点にマルチメータが直接接続される。
【0114】
サイズ:最も大きいサイズが選択され、測定値を上回る最も小さなサイズが見られるまでこれを減少させる。
【0115】
[表3]は、二相媒体中での浸漬日数の関数として、異なる表面処理の生物腐食耐性試験の結果をまとめたものである。
【0116】
【表3】
【0117】
「NOK」は、読み取り又は生物腐食に対する予測された抵抗のいずれかについての基準に適合していないことを意味する。
【0118】
穴による腐食は、アルミニウム合金部品の表面に不規則な形状の空洞の形成をもたらす局所的な腐食である。こうした腐食は、アルミニウム合金部品がハロゲン化物イオン、最も頻繁には塩化物イオンを含有する水溶液と接触するときに生じる。[表3]に示された結果に基づき、ISO9227に従った168時間の抵抗は、3つの試料すべてについて良好である。試験最後には腐食は存在せず、マーキングは判読可能な状態を保っている。
【0119】
異なる基板(2024T3及びAS7G06T6)上にて様々な黒色マーキング試験を実行した。その一部は、層に残っており、基板には到達していなかったものの、その他のものについては基板に到達していた。この最後の事例は、マーキング上の2点の電流を測定することで検出され得る(電流が流れた場合、層は完全に穿孔された)。
【0120】
1)マーキング後、及びISO9227による塩水噴霧への曝露前の、硫酸陽極酸化(上記及び/又は仏国特許第3106837号明細書による)による微細OAS試験管
2024 T3合金試験片(ケイ酸塩封孔処理による微細OAS)について、及びAS7G06T6合金試験片(ケイ酸塩なしの標準的な微細OAS)については、マーキングは無傷で判読可能であった。
【0121】
2)マーキング後、及びISO9227に従った塩水噴霧への曝露168時間後の、硫酸陽極酸化(上記及び/又は仏国特許第3106837号明細書による)による微細OAS試験管
2024 T3合金試験片(ケイ酸塩封孔処理による微細OAS)については、塩水噴霧への曝露後、マーキング(試験前の電気絶縁マーキング)上では腐食は検出されなかった。マーキングは無傷であり、依然として判読可能であった。
【0122】
AS7G06T6合金試験片(ケイ酸塩なしの微細OAS標準)については、塩水噴霧への曝露後、マーキング(試験前の電気絶縁マーキング)上では腐食は検出されなかった。マーキングは無傷であり、依然として判読可能であった。ただし、他のマーキングでは著しい腐食が検出された(これらのすべては試験前には導電性であったが、これはレーザマーキングがアノード層を穿孔し、基板に到達していたことを示している)。
【0123】
3)標準MIL-C-27725Bの§4.7.19に従った15日間の浸漬生物腐食試験後の、硫酸陽極酸化(上記及び/又は仏国特許第3106837号明細書による)による微細OAS試験管
2024 T3合金試験片(ケイ酸塩封孔処理による微細OAS)について、及びAS7G06T6合金試験片(ケイ酸塩なしの標準的な微細OAS)については、標準MIL-C-27725Bの§4.7.19に従った15日間の浸漬後のマーキングでは腐食は検出されなかった。マーキングは無傷であり、コントラスト及び可読性は維持されていた。
【0124】
これらの試験は、所望の目的、すなわち、
-視認性及び可読性、並びにマーキングの読み取りを促進するためにコントラストマーキングを生成すること、
-マーキング後の化成処理、例えばBonderite MCR 1200を用いた化成処理の必要性を取り除くこと、
-最小で168時間にわたる、ISO9227に従った中性塩水噴霧に耐性がある高コントラストレーザマーキングを得ること、
-標準MIL-C-27725Bの§4.7.19に従った15日間の浸漬後の生物腐食に耐えるコントラストレーザマーキングを得ること、
は、上記方法を使用して処理した部品によって達成されたことを明確に示している。
【0125】
塩水噴霧への耐性に関する航空要件(ISO 9227による168時間の曝露)及び標準MIL-C-27725Bの§4.7.19による15日間の浸漬後の生物腐食への耐性もまた、本発明のマーキングプロセスによって満たされる。
【0126】
結論として、本発明によるアルミニウム又はアルミニウム合金部品をマーキングする方法によって、デジタルコードリーダでマークを読み取ることが容易となる。これらの部品をマーキングすることで、こうした部品は、後化成処理を必要とすることなく塩腐食に耐えることが確実となり、かつ生物腐食に耐えることが確実となる。
【0127】
したがって、本発明によるマーキング方法は、読み取りと、例えば、一般には航空及び宇宙機器、原子力、沖合(石油)、自動車、鉄道などといった(生物)腐食に対する耐性とを促進するため、最小限のコントラストを必要とするデータマトリックス又はマーキングを使用するすべての分野で高い関心を集めている。
図1
【国際調査報告】